つぎに、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、フィルム材料として、種々の樹脂を用いることができるが、中でもセルロースエステル系樹脂が好ましい。
セルロースエステル系樹脂は、セルロース由来の水酸基がアシル基などで置換されたセルロースエステル系樹脂である。例えば、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどのセルロースアシレートや、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートなどが挙げられる。中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートが好ましい。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その他の置換基が含まれていてもよい。
セルローストリアセテートの例としては、アセチル基の置換度が1.4以上3.0以下であることが好ましい。置換度をこの範囲にすることで、良好な成形性が得られ、かつ所望の面内方向リタデーション(Ro)、及び厚み方向リタデーション(Rt)を得ることができるのである。アセチル基の置換度が、この範囲より低いと、位相差フィルムとしての耐湿熱性、特に湿熱下での寸法安定性に劣る場合があり、置換度が大きすぎると、必要なリタデーション特性が発現しなくなる場合がある。
本発明に用いられるセルロースエステル系樹脂の原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。また、それらから得られたセルロースエステル系樹脂は、それぞれ任意の割合で混合使用することができる。
本発明において、セルロースエステル系樹脂の数平均分子量は、60000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。さらに70000〜200000が好ましい。
本発明において、セルロースエステル系樹脂には、種々の添加剤を配合することができる。
本発明による光学フィルムの製造方法では、セルロースエステル系樹脂と厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤とを含有するドープ組成物を用いるものである。
本発明において、光学フィルムの厚み方向リタデーション(Rt)を低減することが、液晶表示装置の視野角拡大の意味において重要であるが、本発明において、このような厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤としては、下記のものが挙げられる。
一般に、セルロースエステル系樹脂フィルムよりなる光学フィルムのリタデーションは、セルロースエステル系樹脂由来のリタデーションと、添加剤由来のリタデーションの和として現れる。従って、セルロースエステル系樹脂のリタデーションを低減させるための添加剤とは、セルロースエステル系樹脂の配向を乱し、かつ自身が配向しにくいおよび/または分極率異方性が小さい添加剤が厚み方向リタデーション(Rt)を効果的に低下させる化合物である。従って、セルロースエステル系樹脂の配向を乱すための添加剤としては、芳香族系化合物より、脂肪族系化合物が好ましい。
ここで、具体的なリタデーション低減剤として、例えば、つぎの一般式(1)または(2)で表わされるポリエステルが挙げられる。
一般式(1) B1−(G−A−)mG−B1
一般式(2) B2−(G−A−)nG−B2
上記式中、B1はモノカルボン酸成分を表わし、B2はモノアルコール成分を表わし、Gは2価のアルコール成分を表わし、Aは2塩基酸成分を表わし、これらによって合成されたことを表わす。B1、B2、G、およびAは、いずれも芳香環を含まないことが特徴である。m、nは、繰り返し数を表わす。
B1で表わされるモノカルボン酸成分としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸等を用いることができる。
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜12であることが特に好ましい。酢酸を含有させると、セルロースエステル系樹脂との相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましいモノカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
B2で表わされるモノアルコール成分としては、、特に制限はなく、公知のアルコール類を用いることができる。例えば炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールまたは脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜12であることが特に好ましい。
Gで表わされる2価のアルコール成分としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等を挙げることができるが、これらのうち、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましく、さらに、1,3−プロピレングリコール、、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールが好ましく用いられる。
Aで表わされる2塩基酸(ジカルボン酸)成分としては、脂肪族2塩基酸、脂環式2塩基酸が好ましく、例えば脂肪族2塩基酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等、特に、脂肪族カルボン酸としては、炭素数4〜12を有するもの、これらから選ばれる少なくとも1つのものを使用する。つまり、2種以上の2塩基酸を組み合わせて使用してよい。
上記の一般式(1)または(2)における繰り返し数m、nは、1以上で170以下が好ましい。
ポリエステルの重量平均分子量は、20000以下が好ましく、10000以下であることがさらに好ましい。特に重量平均分子量が500〜10000のポリエステルは、セルロースエステル系樹脂との相溶性が良好で、製膜において蒸発も揮発も起こらない。
ポリエステルの重縮合は常法によって行なわれる。例えば上記2塩基酸とグリコールの直接反応、上記の2塩基酸またはこれらのアルキルエステル類、例えば2塩基酸のメチルエステルとグリコール類とのポリエステル化反応またはエステル交換反応により熱溶融縮合法か、あるいはこれらの酸の酸クロライドとグリコールとの脱ハロゲン化水素反応の何れかの方法により用意に合成し得るが、重量平均分子量がさほど大きくないポリエステルは直接反応によるのが、好ましい。低分子量側に分布が高くあるポリエステルは、セルロースエステル系樹脂との相溶性が非常によく、フィルム形成後、透湿度も小さく、しかも透明性に富んだセルロースエステル系樹脂フィルムを得ることができる。
分子量の調節方法は、特に制限がなく、従来の方法を使用できる。例えば、重合条件にもよるが、1価の酸または1価のアルコールで分子末端を封鎖する方法により、これらの1価のものの添加する量によりコントロールできる。この場合、1価の酸がポリマーの安定性から好ましい。例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸等を挙げることができるが、重縮合反応中には系外に溜去せず、停止して、このような1価の酸を反応系外に除去するときに溜去しやすいものが選ばれる。これらを混合使用しても良い。また、直接反応の場合には、反応中に溜去してくる水の量により反応を停止するタイミングを計ることよっても重量平均分子量を調節できる。その他、仕込むグリコールまたは2塩基酸のモル数を偏らせることよってもできるし、反応温度をコントロールしても調節できる。
上記一般式(1)または(2)で表わされるポリエステルは、セルロースエステル系樹脂に対し、1〜40重量%含有するとが好ましい。特に5〜15重量%含有するとが好ましい。
本発明において、厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤としては、さらに下記のものが挙げられる。
本発明の光学フィルムの製造に使用するドープは、主に、セルロースエステル系樹脂、リタデーション(Rt)を低減する添加剤としてのポリマー(エチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー)、及び有機溶媒を含有する。
本発明において、厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤としてのポリマーを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量をあまり大きくしない方法でできるだけ分子量を揃えることのできる方法を用いることが望ましい。かかる重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、さらに特開2000−128911号公報または特開2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、あるいは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いられるが、特に、該公報に記載の方法が好ましい。
本発明において、有用な厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤としてのポリマーを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるがこれに限定されない。
エチレン性不飽和モノマーを重合して得られる厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤としてのポリマーを構成するエチレン性不飽和モノマー単位としては、まず、ビニルエステルとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等が挙げられる。
つぎに、アクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル等;メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものが挙げられる。
さらに、不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることができる。
上記モノマーで構成されるポリマーはコポリマーでもホモポリマーでもよく、ビニルエステルのホモポリマー、ビニルエステルのコポリマー、ビニルエステルとアクリル酸またはメタクリル酸エステルとのコポリマーが好ましい。
本発明において、アクリル系ポリマーという(単にアクリル系ポリマーという)のは、芳香環あるいはシクロヘキシル基を有するモノマー単位を有しないアクリル酸またはメタクリル酸アルキルエステルのホモポリマーまたはコポリマーを指す。
芳香環及びシクロヘキシル基を有さないアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。
アクリル系ポリマーは、上記モノマーのホモポリマーまたはコポリマーであるが、アクリル酸メチルエステルモノマー単位が30重量%以上を有していることが好ましく、また、メタクリル酸メチルエステルモノマー単位が40重量%以上有することが好ましい。特にアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルのホモポリマーが好ましい。
上述のエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマーは、いずれもセルロースエステル系樹脂との相溶性に優れ、蒸発や揮発もなく生産性に優れ、偏光板用保護フィルムとしての保留性がよく、透湿度が小さく、寸法安定性に優れている。
本発明において、水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマーの場合はホモポリマーではなく、コポリマーの構成単位である。この場合、好ましくは、水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位がアクリル系ポリマー中2〜20重量%含有することが好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、ドープ組成物が、セルロースエステル系樹脂と、厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤としての重量平均分子量500以上3000以下のアクリル系ポリマーとを含有することが好ましい。
また、本発明の光学フィルムの製造方法においては、ドープ組成物が、セルロースエステル系樹脂と、厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤としての重量平均分子量5000以上30000以下のアクリル系ポリマーとを含有するが好ましい。
本発明において、厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤としてのポリマーの重量平均分子量が500以上3000以下、あるいはまたポリマーの重量平均分子量が5000以上30000以下のものであれば、セルロースエステル系樹脂との相溶性が良好で、製膜中において蒸発も揮発も起こらない。また、製膜後のセルロースエステル系樹脂フィルムの透明性が優れ、透湿度も極めて低く、偏光板用保護フィルムとして優れた性能を示す。
本発明において、厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤として、側鎖に水酸基を有するポリマーも好ましく用いることができる。水酸基を有するモノマー単位としては、前記したモノマーと同様であるが、アクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル、またはこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることができ、好ましくは、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルである。ポリマー中に水酸基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルモノマー単位はポリマー中2〜20重量%含有することが好ましく、より好ましくは2〜10重量%である。
前記のようなポリマーが上記の水酸基を有するモノマー単位を2〜20重量%含有したものは、勿論、セルロースエステル系樹脂との相溶性、保留性、寸法安定性が優れ、透湿度が小さいばかりでなく、偏光板用保護フィルムとしての偏光子との接着性に特に優れ、偏光板の耐久性が向上する効果を有している。
また、本発明においては、上記ポリマーの主鎖の少なくとも一方の末端に水酸基を有することが好ましい。主鎖末端に水酸基を有するようにする方法は、特に主鎖の末端に水酸基を有するようにする方法であれば限定ないが、アゾビス(2−ヒドロキシエチルブチレート)のような水酸基を有するラジカル重合開始剤を使用する方法、2−メルカプトエタノールのような水酸基を有する連鎖移動剤を使用する方法、水酸基を有する重合停止剤を使用する方法、リビングイオン重合により水酸基を末端に有するようにする方法、特開2000−128911号公報または特開2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、あるいは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等により得ることができ、特に該公報に記載の方法が好ましい。この公報記載に関連する方法で作られたポリマーは、綜研化学社製のアクトフロー・シリーズとして市販されており、好ましく用いることができる。
上記の末端に水酸基を有するポリマー及び/または側鎖に水酸基を有するポリマーは、本発明において、セルロースエステル系樹脂に対するポリマーの相溶性、透明性を著しく向上する効果を有する。
本発明において、有用な厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤としては、上記のほかにも、例えば特開2000−63560号公報記載のジグリセリン系多価アルコールと脂肪酸とのエステル化合物、特開2001−247717号公報記載のヘキソースの糖アルコールのエステルまたはエーテル化合物、特開2004−315613号公報記載のリン酸トリ脂肪族アルコールエステル化合物、特開2005−41911号公報記載の一般式(1)で表わされる化合物、特開2004−315605号公報記載のリン酸エステル化合物、特開2005−105139号公報記載のスチレンオリゴマー、および特開2005−105140号公報記載のスチレン系モノマーの重合体が挙げられる。
さらに、本発明において有用な厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤としては、特開2005−154764号公報の明細書中の段落番号[0031]〜[0100]に記載の化合物が挙げられる。
また、本発明に用いられる添加剤としては、セルロースアシレートとの相溶性が高く可塑化効果のあるものが好ましい。例えば特開2005−138375号公報の明細書中の段落番号[0011]〜[034]に記載の低分子化合物も好ましく用いることができる。
また、本発明において、厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤は、以下の方法によっても見出すことができる。
セルロースエステル系樹脂を塩化メチレンに溶解したドープ処方をガラス板上に製膜し、120℃/15minで乾燥して膜厚80μmのセルロースエステル系樹脂フィルムを作成する。このセルロースエステル系樹脂フィルムの厚み方向のリターデーションを測定して、これをRt1とする。
つぎに、セルロースエステル系樹脂に、上記ポリマー添加剤を10重量%添加し、塩化メチレンで溶解して、ドープ処方を作成する。このドープ処方を、上記と同様にして、膜厚80μmのセルロースエステル系樹脂フィルムを作成する。このセルロースエステル系樹脂フィルムの厚み方向のリターデーションを測定して、これをRt2とする。
そして、上記の2つのセルロースエステル系樹脂フィルムの厚み方向のリターデーションの関係が
Rt2<Rt1
であれば、セルロースエステル系樹脂に添加したポリマー添加剤は、厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤であると言える。
本発明において、セルロースエステル系樹脂の厚み方向リタデーション(Rt)は、−10nm〜+10nm、好ましくは−5nm〜+5nmである。ここで、セルロースエステル系樹脂の厚み方向リタデーション(Rt)が−10nmより小さい場合、あるいはまた+10nmより大きい場合のいずれの場合にも、視野角が狭くなり、本発明の効果が現れない。
また、本発明において、セルロースエステル系樹脂の面内方向リタデーション(Ro)は、0nm〜+5nm、好ましくは0nm〜+2nm、特に好ましくは0nm程度である。ここで、面内方向リタデーション(Ro)が+5nmより大きい場合には、視野角が狭くなり、本発明の効果が現れない。
本発明の方法において、セルロースエステルの溶解に用いる溶剤は、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率を上げる点で好ましく、良溶剤が多いほど、セルロースエステルの溶解性および微小な不溶解物によるフィルム異物を少なくする点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98重量%であり、貧溶剤が30〜2重量%である。
ここで、本発明に用いられる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するか、または溶解しないものを貧溶剤と定義している。
本発明に用いられる良溶剤としては、特に限定されないが、例えばセルローストリアセテートの場合は、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、セルロースアセテートプロピオネートの場合はメチレンクロライド、アセトン、酢酸メチルなどが挙げられる。また、貧溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。
ところで、近年、メチレンクロライドのような塩素系炭化水素溶剤は、地球環境保護の観点から、その使用が制限される方向にあり、メチレンクロライドのような塩素系炭化水素溶剤の使用を避けたいという要望が高まっている。
また、本発明の方法においては、セルロースエステル系樹脂の溶剤として、非塩素系有機溶剤を用いるのが、好ましい。
ここで、非塩素系有機溶剤としては、例えば、アセトン、酢酸メチル(MA)、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、1,3−ジオキソラン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール等が挙げられる。これらの溶剤は一種だけ用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
非塩素系有機溶剤としては、これらの中でも酢酸メチル、アセトンが最も好ましい。酢酸メチル、アセトンは、溶解性がよく、透明性に優れたフィルムを得ることができる。
本発明において、セルロースエステル系樹脂を非塩素系有機溶剤に溶解しセルロースエステル系樹脂溶液を作製する際、セルロースエステル系樹脂に対する非塩素系有機溶剤の配合重量比が2以上5以下である。セルロースエステル系樹脂に対する非塩素系有機溶剤の配合重量比は、2.5以上4.5以下であることが好ましく、3以上4以下であることが望ましい。
本発明において、セルロースエステル系樹脂の溶液には、溶解性の向上、粘度調整、乾燥速度の調整、溶液を流延した際のゲル化の促進等の目的で、炭素数が1〜6の低級アルコールを含有させてもよい。これら低級アルコールとしては、例えば、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。中でもメタノール、エタノール、1−ブタノールが好ましい。これら低級アルコールは、全有機溶剤に対して2重量%以上、20重量%以下含有させるのが好ましい。炭素数が1から6の低級アルコールを含有させたセルロースエステル溶液は、流延キャステイングの際、残溶剤を多く含んだ状態でも膜の強度が強く、流延キャステイングに用いる支持体であるベルトやドラム上から剥ぎ取るのが容易となる。
本発明では、湿熱下での寸法安定性向上のために、いわゆる可塑剤を配合することが好ましい。可塑剤に湿熱下での寸法安定性改良効果があることは、これまで知られていなかった。可塑剤としては、従来公知のセルロースエステル系樹脂用の可塑剤が好ましく使用できる。特に相溶性に優れたものが好ましく、例えばリン酸エステルやカルボン酸エステルが好ましい。リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスフェイト、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることができ、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。分子量の大きい可塑剤は、押し出し成形の際の揮発が抑制でき好ましい。これらの例としては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどのグリコールと二塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのオキシカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル類、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリバレロラクトンなどのラクトンからなる脂肪族ポリエステル類、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー類などが挙げられる。上記可塑剤は、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
上述した可塑剤の含有量は、セルロースエステル系樹脂に対して1〜30重量%含有させることが好ましい。可塑剤をこの範囲含有させることで、セルロースエステル系樹脂フィルムの湿熱下での寸法安定性を向上することができる。
本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を好ましく使用できる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
これらの紫外線吸収剤の配合量は、セルロースエステル系樹脂に対して、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜5重量%が好ましい。使用量が少なすぎると、紫外線吸収効果が不十分の場合があり、多すぎると、フィルムの透明性が劣化する場合がある。紫外線吸収剤は熱安定性の高いものが好ましい。
セルロースエステル系樹脂のアセチル基の置換度が低いと、耐熱性が低下する場合がある。この場合、酸化防止剤を配合することが有効である。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
本発明におけるセルロース誘導体には、滑り性を付与するために、マット剤等の微粒子を添加するのが好ましい。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
無機化合物の微粒子の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫等の微粒子が挙げられる。この中では、ケイ素原子を含有する化合物の微粒子であることが好ましく、特に二酸化ケイ素微粒子が好ましい。二酸化ケイ素微粒子としては、例えばアエロジル株式会社製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,R805、OX50、TT600などが挙げられる。
有機化合物の微粒子の例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素化合物樹脂、ウレタン樹脂等の微粒子が挙げられる。
微粒子の1次粒径は、特に限定されないが、最終的にフィルム中での平均粒径は、0.05〜5.0μm程度が好ましい。さらに好ましくは、0.1〜1.0μmである。
微粒子の平均粒径は、セルロースエステル系樹脂フィルムを電子顕微鏡や光学顕微鏡で観察した際に、フィルムの観察場所における、粒子の長軸方向の長さの平均値を指す。フィルム中で観察される粒子であれば、1次粒子であっても、1次粒子が凝集した2次粒子であってもよいが、通常観察される多くは2次粒子である。
測定方法の一例としては、1つのフィルムにつき、ランダムに10箇所の垂直断面写真を撮影し、各断面写真について、長軸長さが、0.05〜5μmの範囲にある100μm2中の粒子個数をカウントする。このときカウントした粒子の長軸長さの平均値を求め、10箇所の平均値を平均した値を平均粒径とする。
微粒子の場合は、1次粒径、溶媒に分散した後の粒径、フィルムに添加されたの粒径が変化する場合が多く、重要なのは、最終的にフィルム中で微粒子がセルロースエステル系樹脂と複合し凝集して形成される粒径をコントロールすることである。
上記微粒子の平均粒径が、5μmを超えた場合は、ヘイズの劣化等が見られたり、異物として巻状態での故障を発生する原因にもなる。また、微粒子の平均粒径が、0.05μm未満の場合は、フィルムに滑り性を付与するのが難しくなる。
上記の微粒子は、セルロースエステル系樹脂に対して、0.04〜0.5重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.25重量%添加して使用される。微粒子の添加量が0.04重量%以下では、フィルム表面粗さが平滑になりすぎて、摩擦係数の上昇によりブロッキングを発生する。微粒子の添加量が0.5重量%を超えると、フィルム表面の摩擦係数が下がりすぎて、巻き取り時に巻きズレが発生したり、フィルムの透明度が低く、ヘイズが高くなるため、液晶表示装置用フィルムとしての価値を持たなくなるので、上記の範囲が必須である。
微粒子の分散は、微粒子と溶剤を混合した組成物を高圧分散装置で処理することが好ましい。本発明で用いる高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。
高圧分散装置で処理することにより、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が980N/cm2以上であることが好ましい。さらに好ましくは、装置内部の最大圧力条件が1960N/cm2以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が100kcal/hr以上に達するものが、好ましい。
上記のような高圧分散装置としては、例えばMicrofluidics Corporation社製の超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザーが挙げられ、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモゲナイザーなどが挙げられる。
本発明による光学フィルムの製造方法は、セルロースエステル系樹脂と厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤(リタデーション低減添加剤)とを含有するドープ(樹脂溶液)を、金属製回転ドラムまたは金属製回転エンドレスベルト(支持体)上に流延してウェブを形成する流延工程と、支持体から剥離されたウェブをテンター装置により延伸する延伸工程と、延伸後にウェブを乾燥させる乾燥工程と、乾燥したフィルムを巻き取る巻き取り工程を有するものである。
本発明の光学フィルムの製造方法の特徴の1つは、上記光学フィルムの製造方法において、連続する樹脂フィルム(ウェブ)の左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながら樹脂フィルムを搬送して延伸を行なう延伸装置を用い、該延伸装置の左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右独立に制御して延伸することにより、フィルムの面内方向リタデーション(Ro)値が0以上5以下であり、かつフィルムの厚み方向リタデーション(Rt)値が−10以上10以下である光学フィルムを製造することにある。
また、本発明の光学フィルムの製造方法のいま1つの特徴は、上記セルロースエステル系樹脂フィルムの製造方法において、連続する樹脂フィルム(ウェブ)の左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながら樹脂フィルムを搬送して延伸を行なう延伸装置を用い、該延伸装置により幅手方向に延伸するとともに、搬送方向と同一方向に延伸することにより、フィルムの面内のリタデーション値が0以上5以下であり、かつフィルムの厚み方向のリタデーション値が−10以上10以下である光学フィルムを製造することにある。
さらに、本発明の光学フィルムの製造方法の特徴は、上記セルロースエステル系樹脂フィルムの製造方法において、連続する樹脂フィルム(ウェブ)の左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながら樹脂フィルムを搬送して延伸を行なう延伸装置を用い、該延伸装置の左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右独立に制御して延伸することにより、フィルムの光学的遅相軸が、フィルムの搬送方向に対して45°±10°であり、フィルムの面内のリタデーション値が0以上5以下であり、かつフィルムの厚み方向のリタデーション値が−10以上10以下である光学フィルムを製造することにある。
本発明の上記光学フィルムの製造方法においては、延伸装置の左右把持手段が、把持開始位置を左右で変えることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものであるのが、好ましい。
また、本発明の上記光学フィルムの製造方法においては、延伸装置の左右把持手段が、把持終了位置を左右で変えることにより、フィルムの左右把持長を変化させるものであるのが、好ましい。
本発明の上記光学フィルムの製造方法においては、連続する樹脂フィルムの左右両端を把持して幅手方向に張力を付与する連結された把持手段の移動用無限軌道レールの左右の長さを、左右独立に変化させることにより、フィルムの左右把持長を変化させるのが、好ましい。
本発明の上記光学フィルムの製造方法においては、連続する樹脂フィルム(ウェブ)の左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながら樹脂フィルムを搬送して延伸を行なう延伸装置を用い、該延伸装置の左右把持手段を左右独立に速度制御して延伸することが好ましい。
本発明の上記光学フィルムの製造方法においては、把持開始位置および把持終了位置での左右の把持手段の位置をオンラインで検出して、把持手段の位相差を求め、その結果をもとに、延伸装置の左右把持手段によるフィルムの把持長を左右で独立に制御するか、または延伸装置の左右把持手段の左右独立に速度制御する把持手段走行速度を制御することが好ましい。
本発明の上記光学フィルムの製造方法においては、セルロースエステル系樹脂が、セルロースアセテートフィルムであることが、特に好ましい。
本発明の上記光学フィルムの製造方法においては、ドープ組成物が、セルロースエステル系樹脂と、厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤と、有機溶媒とを含有するものであり、ドープ組成物を、表面温度が−50℃以上−10℃以下の支持体上に流延し、自己支持性を有するゲル膜を形成した後、剥離ローラにより支持体から剥離した連続する樹脂フィルム(ウェブ)を処理することが好ましい。
この場合、例えば回転ドラム及びその回転軸の内部に冷却用媒体(冷媒)の流路を設けるのが好ましく、その流路に不凍性熱媒体である冷媒が供給されることにより、回転ドラム及びその回転軸が冷却される。なお、本発明において回転ドラムの表面温度が−10℃以下とすることが好ましく、より好ましくは−30℃以下、最も好ましくは−50℃まで冷却することである。
ここで、冷媒としては、例えばグリコール系冷媒,フッ素系冷媒,アルコール系冷媒などが用いられる。
本発明の上記光学フィルムの製造方法においては、ドープ組成物が、非塩素系有機溶剤と、セルロースエステル系樹脂と、リタデーション低減添加剤とを混合し、得られた混合物を−100〜−10℃で冷却処理し、冷却処理後の混合物を0〜120℃で処理して作製されたものであり、該ドープ組成物を支持体上に流延し、剥離ローラにより支持体から剥離した連続する樹脂フィルム(ウェブ)を処理することが好ましい。
ここで、混合物の冷却温度は、溶媒の凝固点以上の温度であればよく、溶解性の点と扱い易い温度ということから−100〜−10℃の温度範囲が好ましい。この冷却混合物を0〜120℃の温度に加温すると、セルロースエステル系樹脂が溶媒中に溶解して、均一な溶液が得られる。なお、溶解を速めるために、冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が十分であるかどうかは、目視により溶液の概観を観察することで判断することができる。冷却溶解方法においては、冷却時の結露による水分の混入を避けるため、密閉容器を用いることが好ましい。また、冷却操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、さらに溶解時間を短縮することができる。加圧及び減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法を溶液流延製膜法にて実施する場合、図示は省略したが、セルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを、流延ダイによって無限に移送する無端の金属ベルトあるいは回転する金属ドラムの流延用支持体上に流延する。流延によって支持体上に形成されたドープ膜すなわちウェブは支持体上を約一周したところで、剥離ロールによって剥離する。剥離されたウェブ(フィルム)を、ついでテンターよりなる延伸装置に導入する。
流延工程は、例えばドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、支持体上に加圧ダイからドープを流延する工程である。流延用支持体の表面は鏡面となっている。
その他の流延方法としては、流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、いずれも好ましく用いられる。
溶媒蒸発工程では、ウェブ(ドープ膜)を流延用支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率が好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。流延後の支持体上のウェブを温度40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。温度40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか、赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
剥離工程では、支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で支持体から剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると、剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
支持体上の剥離位置における温度は、好ましくは10〜40℃であり、さらに好ましくは11〜30℃である。
本発明の上記光学フィルムの製造方法においては、ドープ組成物が、有機溶剤と、セルロースエステル系樹脂と、リタデーション低減添加剤とを含むものであり、該ドープ組成物を支持体上に流延し、剥離ローラにより支持体から剥離した連続する樹脂フィルム(ウェブ)を処理する際、剥離時の樹脂フィルム(ウェブ)の残留溶媒量が、50〜120重量%であることが好ましく、さらに好ましくは40〜100重量%である。
ここで、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
式中、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量である。
上記のように剥離時の残留溶媒量を調整するには、流延後の流延用支持体の表面温度を制御し、ウェブからの有機溶媒の蒸発を効率的に行なえるように、流延用支持体上の剥離位置における温度を上記の温度範囲に設定することが、好ましい。支持体温度を制御するには、伝熱効率のよい伝熱方法を使用するのがよく、例えば、液体による裏面伝熱方法が、好ましい。
つぎに、本発明の光学フィルムの製造方法に用いるテンター延伸装置について、図面を参照して詳しく説明する。
図1は、テンター延伸装置(10)の一般的な実施形態を模式的に示すものである。同図に示すように、テンター(10)は、ハウジング(図示略)の左右両側部に、前後スプロケットに巻き掛けられた無端チェンよりなる左右一対の回転駆動装置(輪状のチェーン)(1a)(1b)が設けられ、これらの回転駆動装置(1a)(1b)に多数のクリップ(2a)(2b)が1列状態に具備されている。
ここで、クリップ(2a)(2b)は、多数のものがおのおの連結されて、最終的に輪状のチェーン(1a)(1b)になり、それが案内レール(図示略)上を(乗り物のモノレールのように)走行するものである。そして、これらのチェーン(1a)(1b)は一部に圧力をかけて弛まないように「張って」おり、レールはチェーン(1a)(1b)の長さにならって変化するような構造になっている。
このチェーン(1a)(1b)に圧力をかけて張る設備を『テンショナー』(5)(6)(図4、図5及び図8参照)と称し、左右でチェーン(1a)(1b)の張り状態を変えて、輪状チェーン(1a)(1b)の全体の長さを変更するものである。
そして、テンター(10)のクリップ(2a)(2b)によってフィルム(F)の左右両側縁部が保持され、この状態でテンター(10)の入口へと導入される。テンター(10)内において、フィルム(F)は、これの左右両側縁部がテンター左右両側のクリップ(2a)(2b)により挟まれて延伸させられながら一緒に搬送されると同時に、乾燥される。
その後、フィルム(F)は乾燥装置(図示略)内に送り込まれ、乾燥装置のハウジング内に千鳥状に配置されたすべての搬送ロールを経由して搬送され、その搬送中に乾燥風吹き込み口から吹き込まれる乾燥風により乾燥させられることにより、セルロースエステルフィルムが得られ、このフィルムが巻取ロール(図示略)に巻き取られる。
なお、フィルム(F)の搬送速度は、通常、2〜200m/分、好ましくは10〜100m/分である。
本発明による光学フィルムの製造方法は、連続する樹脂フィルム(F)の左右両端を把持して幅手方向に張力を付与しながら樹脂フィルム(F)を搬送して延伸を行なう延伸装置(10)を用いて光学フィルムを製造する方法であって、該延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)によってフィルム(F)の把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御して、光学的遅相軸がフィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内)となるように延伸を行なうものである。
ここで、本発明でいう配向角とは、熱可塑性樹脂フィルムの面内における遅相軸の方向(製膜時の幅手方向に対する角度)を表わし、また配向角の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADHを用いて行なう。配向角の測定方法は、フィルム幅手方向に3〜10cm間隔で、例えば9点で測定を行ない、全ての配向角が±1.0°以内になっていることが好ましい。
テンター延伸装置(10)で樹脂フィルム(F)の左右両端を把持している部分の長さを左右独立に制御して、フィルム(F)の把持長を左右で異なるものとする手段としては、具体的には、例えば図2に示すようなものがある。図2は、本発明の方法に使用するテンター延伸装置(10)の第1実施形態を模式的に示すものである。同図において、テンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)の把持開始位置を左右で変える、すなわちクリップクローザー(3a)(3b)の設置位置を左右で変えて、把持開始位置を左右で変えることにより、フィルム(F)の左右把持長を変化させ、これによってテンター(10)内で樹脂フィルム(F)をねじるような力が発生し、テンター(10)以外の搬送・乾燥設備の不均一性で生じた配向角のずれを矯正することができ、フィルム(F)の略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一である光学フィルムを製造することができる。
なお、図示のテンター延伸装置(10)は模式的に記載されているが、通常は、無端チェンよりなる左右一対の回転駆動装置(輪状のチェーン)(1a)(1b)の1列状態に具備された多数のクリップ(2a)(2b)のうち、フィルム(F)の左右両端部を把持して引っ張るチェーン往路側直線移行部のクリップ(2a)(2b)がフィルム(F)の幅手方向に漸次離れるように、左右のチェーン(1a)(1b)の軌道が設置されており、フィルム(F)の幅手方向の延伸が行なわれるようになされている(以下の図示において、同じ)。
つぎに、図3は、本発明の方法に使用するテンター延伸装置(10)の第2実施形態を模式的に示すものである。同図において、テンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)の把持終了位置を左右で変える、すなわちクリップオープナー(4a)(4b)の設置位置を左右で変えることにより、フィルム(F)の左右把持長を変化させ、これによってテンター(10)内で樹脂フィルム(F)をねじるような力が発生し、テンター以外の搬送・乾燥設備の不均一性で生じた配向角のずれを矯正することができ、フィルム(F)の略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一である光学フィルムを製造することができる。
さらに、本発明による光学フィルムの製造方法においては、連続する樹脂フィルム(F)の左右両端を把持して幅手方向に張力を付与する連結された把持手段 (クリップ)(2a)(2b)の移動用無限軌道レール(図示略)の左右の長さを、左右独立に変化させることにより、フィルム(F)の左右把持長を変化させ、例えば左右のクリップ(2a)(2b)の数が同じで、左右のレール長を変えると、各クリップ(2a)(2b)間の距離が左右でわずかに異なることになる。各クリップ(2a)(2b)間の変化量は微小であるが、テンター(10)全体では数百〜数千のクリップ(2a)(2b)を使用しており、フィルム(F)の左右把持長は実質的に変化することになる。これによってテンター(10)内で樹脂フィルム(F)をねじるような力が発生し、テンター以外の搬送・乾燥設備の不均一性で生じた配向角のずれを矯正することができ、フィルム(F)の略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一である光学フィルムを製造することができる。
なお、テンター装置(10)では、連結されたクリップチェーン(1a)(1b)に張力を与えているが、その張力を左右で変化させることでも、フィルム(F)の把持長が変化する。例えば図4は、本発明の方法に使用するテンター延伸装置(10)の第3実施形態を模式的に示すものである。同図において、一方の右側クリップチェーン(1b)の直線状戻り側移行部の途上にテンショナー(5)を設けておき、右側クリップチェーン(1b)に大きな張力を与えて、フィルム(F)の把持長を左右で変化させている。
また、例えば図5は、本発明の方法に使用するテンター延伸装置(10)の第3実施形態の変形例を模式的に示すものである。同図において、一方の右側クリップチェーン(1b)の無端折返し部にテンショナー(6)を設けておき、右側クリップチェーン(1b)の無端折返し部に大きな張力を与えて、フィルム(F)の把持長を左右で変化させている。
さらに左右のレール長を変える手段としては、図6aと図6bに示すようなものがある。図6aと図6bは、本発明の方法に使用するテンター延伸装置(10)の第4実施形態を模式的に示すものである。同図において、クリップ(2a)(2b)がある面内で変える以外にも、右側クリップチェーン(1b)の直線状戻り側移行部を上下方向に曲げることにより、フィルム(F)の把持長を左右で変化させても良い。
つぎに、本発明による光学フィルムの製造方法は、テンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)を左右独立に速度制御して、光学的遅相軸がフィルム搬送方向に概ね直交(平均値が90°±1.5°以内)または概ね平行(平均値が0°±1.5°以内となるように延伸を行なうことにより、樹脂フィルム(F)の左右の把持長を変えるだけでなく、クリップ(2a)(2b)の走行速度を左右で変えることで、樹脂フィルム(F)をねじる力が生じ、配向角のずれを矯正することができる。
ここで、テンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)を左右独立に速度制御する手段としては、例えば図7に示すようなものがある。図7は、本発明の方法に使用するテンター延伸装置(10)の第5実施形態を模式的に示すもので、左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)を左右独立に速度制御する手段として左右独立の駆動モータ(7a)(7b)を使用する。なお従来は、延伸装置の左右把持手段(クリップ)は、同一の駆動モータにより左右等速度に制御されている。
このように、樹脂フィルム(F)の左右の把持長を変えるだけでなく、クリップ(2a)(2b)の走行速度を左右で変えることで、樹脂フィルム(F)をねじる力が生じ、配向角のずれを矯正できる。なお、独立した速度制御には、図7に示すような左右独立のモータ(7a)(7b)を使用したり、一般的には2軸延伸装置(10)として用いられるパンタグラフやスピンドル、あるいはリニアモータのような手段を使用することができる。
つぎに、図8は、本発明の方法に使用するテンター延伸装置(10)の第6実施形態を模式的に示すものである。同図において、巻取り前の樹脂フィルム(F)の配向角を、配向角測定装置(8)によってオンラインで測定し、その結果をもとに、延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)によってフィルム(F)の把持長を左右で独立に制御するか、またはテンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)の左右独立に速度制御する駆動モータ(7a)(7b)(図7参照)により左右把持クリップ(2a)(2b)の走行速度を制御するものである。一般に、樹脂フィルム(F)を一定の条件で生産していても、材料や設備の微小な変動により配向角が変動してしまうため、製品巻き取り前に配向角を、配向角測定装置(8)によってオンライン測定し、その結果をフィードバックして、フィルム(F)の把持長または走行速度を変化させることで、長手方向にも均一な樹脂フィルムができる。
また、図9は、本発明の方法に使用するテンター延伸装置(10)の第7実施形態を模式的に示すものである。同図において、テンター延伸装置(10)の把持開始位置および把持終了位置での左右の把持手段(クリップ)(2a)(2b)の位置をオンラインで検出して、把持手段(クリップ)(2a)(2b)の位相差を求め、その結果をもとに、テンター延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)によるフィルム(F)の把持長を、同図に示すように、一方の右側クリップチェーン(1b)の直線状戻り側移行部の途上にテンショナー(5)を設けておき、右側クリップチェーン(1b)に大きな張力を与えて、フィルム(F)の把持長を左右で変化させるか、または例えば上記図7に示すように、延伸装置(10)の左右把持手段(クリップ)(2a)(2b)の左右独立に速度制御する駆動モータ(7a)(7b)により、左右把持クリップ(2a)(2b)の走行速度を制御する。
ここで、使用する左右把持クリップの位置を検出する手段としては、接触式、光電式、レーザ式、超音波式、渦電流式等の変位計、あるいはスイッチセンサや、CCDカメラを用いた画像解析による方法などがあるが、メンテナンス性を考えると、非接触型のセンサが望ましい。センサは左右の把持開始位置および左右の把持終了位置の4箇所に設置することが望ましいが、さらに多数の箇所に設置しても良い。あるいは、把持終了位置付近で同期して回転する左右のスプロケットに駆動されることで、左右の把持クリップの位置が同期していることが明らかな場合には、左右把持開始位置の2箇所のセンサだけで左右把持長を確認することも可能である。
こうして、左右のクリップ(2a)(2b)の位置をテンター延伸装置(10)の入口と出口で検出することで、フィルム(F)の左右把持長が確実にわかる。すなわち、テンター把持手段のベアリングの摩耗等による経時的な配向角の変動に速やかに対応できることになる。このデータを元に、所望のフィルム(F)の左右把持長差となるように制御することにより、樹脂フィルム(F)をねじる力が生じ、配向角のずれを矯正することができるものである。
なお、上記においては、ウェブ(フィルム)の乾燥工程で、剥離後のウェブの両端部をクリップで把持することにより坦持して搬送しながら乾燥させるクリップテンター方式について説明したが、その他のテンターとして、剥離後のウェブの両端部をピン(針)でさすことにより、ピンテンターで坦持して搬送しながら乾燥させるピンテンター方式が知られており、このようなピンテンター方式を用いて、ウェブ(フィルム)の乾燥工程を実施しても、勿論よい。
上記の本発明による方法で製造した光学フィルムよりなる位相差フィルムは、フィルム(F)の略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有している。
また、上記の本発明による方法で製造しかつ樹脂フィルムがセルロースエステルフィルムよりなる光学フィルムは、やはりフィルム(F)の略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有している。
さらに、本発明の方法により製造された光学フィルムは、溶液流延製膜法でインラインで延伸する際に、上記のうちのいずれかの延伸方法を用いて製造されたものであるから、フィルム(F)の略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有している。
本発明の方法により製造された光学フィルムは、延伸する際の樹脂フィルム(F)中の残留溶媒量を5〜50重量%としたもので、溶液流延法で延伸時の樹脂フィルムの残留溶媒量が小さすぎると、膜が比較的固く、このため大きな制御が必要になり、制御性が悪い。逆に、樹脂フィルムの残留溶媒量が大きすぎると、膜が柔らかく、微妙な制御が必要になって、制御困難であり、上記の範囲に調整することにより、延伸する際の制御性に優れていて、フィルムの略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一でかつ優れた位相差補償性能と視野角拡大機能を有する光学フィルムを得ることができる。
本発明において、連続する樹脂フィルムに延伸するには、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップまたはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が、好ましく用いられる。
テンターを行なう場合の乾燥温度は、30〜150℃が好ましく、80〜150℃がさらに好ましく、100〜140℃が最も好ましい。乾燥温度の低い方が紫外線吸収剤、可塑剤などの蒸散が少なく、工程汚染に優れ、乾燥温度の高い方がフィルムの平面性、弾性率に優れる。セルロースエステル系樹脂フィルムを延伸すると、異物が表面に突出しやすく、通常よりも異物故障が多く発生する。そのため、本発明は延伸するプロセスを有するセルロースエステル系樹脂フィルムにおいて特に効果を発揮するものである。
上記の方法で作製したセルロースエステル系樹脂フィルムのリタデーションを合目的の値に修正する場合、フィルムを長さ方向や幅手方向に延伸または収縮させてもよい。長さ方向に収縮するには、例えば、幅延伸を一時クリップアウトさせて長さ方向に弛緩させる、または横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。後者の方法は一般の同時二軸延伸機を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行なうことができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は、通常、フィルムが変形しており、製品として使用できないので、切除されて、原料として再利用される。
本発明において、フィルムのリタデーション値は自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて、590nmの波長において、三次元屈折率測定を行ない、得られた屈折率Nx、Ny、Nzから算出することができる。
Ro=(Nx−Ny)×d
Rt=((Nx+Ny)/2−Nz)×d
(式中、Nx、Ny、Nzはそれぞれ屈折率楕円体の主軸x、y、z方向の屈折率を表わし、かつ、Nx、Nyはフィルム面内方向の屈折率を、Nzはフィルムの厚み方向の屈折率を表わす。また、Nx≧Nyであり、dはフィルムの厚み(nm)を表わす。)
本発明において、セルロースエステル系樹脂フィルムは、遅相軸方向と製膜方向とのなす角度θ(ラジアン)と面内方向のリタデーション値(Ro)が下記の関係にあり、特に偏光板用保護フィルム等のセルロースエステル系樹脂フィルムとして好ましく用いられる。
P≦1−sin2(2θ)sin2(πRo/λ)
ここで、Pは0.9999以下である。
θはフィルム面内の遅相軸方向と製膜方向(フィルムの直尺方向)とのなす角度(°ラジアン)、λは上記Nx、Ny、Nz、θを求める三次元屈折率測定の際の光の波長590nm、πは円周率である。
乾燥工程では、ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置及び/またはクリップまたはピンでウェブの両端を保持して搬送するテンター装置を用いて幅保持しながら、ウェブを乾燥する工程である。乾燥工程における搬送張力も可能な範囲で低めに維持することが、リタデーション値(Ro)が低く維持できるために好ましく、190N/m以下であることが好ましい。さらに170N/m以下であることが好ましく、さらに140N/m以下であることが好ましく、100〜130N/mであることが特に好ましい。特に、フィルム中の残留溶媒量が少なくとも5重量%以下となるまで、上記搬送張力以下に維持することが効果的である。
乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥はでき上がりのフィルムの平面性を損ねやすい。高温による乾燥は残留溶媒が8重量%以下くらいから行なうのがよい。全体を通し、乾燥温度は概ね40〜250℃で行なわれる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
流延用支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは幅方向に収縮しようとする。高温度で急激に乾燥するほど、収縮が大きくなる。
この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。
このとき、幅手方向の延伸倍率は、IPSモードで動作する液晶表示装置の視野角拡大の目的用いられる場合は、1〜12%が好ましい。延伸倍率によってリタデーション値(Ro)をコントロールすることが可能である。
テンターを行なう場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜120重量%であるのが好ましく、かつ、ウェブの残留溶媒量が10重量%以下になるまでテンターをかけながら乾燥を行なうことが好ましく、さらに好ましくは5重量%以下である。
テンターを行なう場合の乾燥温度は、110〜160℃が好ましい。乾燥温度の低い方が紫外線吸収剤、可塑剤などの蒸散が少なく、工程汚染に優れ、乾燥温度の高い方がフィルムの平面性に優れる。なお、乾燥温度が高い場合でも蒸散しにくい紫外線吸収剤を使用することにより、テンター乾燥温度が高く、延伸倍率の高い製造条件のときに、その効果が顕著に発揮される。
また、フィルムの後乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を0.5重量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1重量%以下であり、さらに好ましくは0〜0.01重量%以下とすることである。
溶液流延製膜方法を通しての流延直後から乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気で行なってもよい。
ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことは勿論のことである。
巻き取り工程では、ウェブ中の残留溶媒量が2重量%以下となってからセルロースエステル系樹脂フィルムとして巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4重量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
また、本発明によるセルロースエステル系樹脂フィルムの製造方法において、溶液流延製膜方法で膜厚35〜85μmのセルロースエステル系樹脂フィルムを製膜するにあたり、フィルムの樹脂材料としてセルロースアシレート樹脂を使用するのが、好ましい。
膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度等をコントロールするのがよい。
また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが、好ましい。
セルロースエステル系樹脂フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりフィルムとして、通常35〜85μmの範囲が好ましく、特に液晶画像表示装置用フィルムとしては40〜80μmの範囲が用いられる。
本発明において、セルロースエステル系樹脂フィルムは抗張力がMD方向、TD方向共に90〜170N/mm2であることが好ましく、特に120〜160N/mm2であることが好ましい。
含水率としては0.1〜5%が好ましく、0.3〜4%がより好ましく、0.5〜2%であることがさらに好ましい。
本発明において、セルロースエステル系樹脂フィルムは、透過率が90%以上であることが望ましく、さらに好ましくは92%以上であり、さらに好ましくは93%以上である。また、ヘイズは0.5%以下であることが好ましく、特に0.1%以下であることが好ましく、0%であることがさらに好ましい。
本発明において、セルロースエステル系樹脂フィルムにおいては、カール値は絶対値が小さい方が好ましく、変形方向は、+方向でも、−方向でもよい。カール値の絶対値は30以下であることが好ましく、さらに好ましくは20以下であり、10以下であることが特に好ましい。なお、カール値は、曲率半径(1/m)で表わされる。
本発明の方法により製造された光学フィルムからなる偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化とともに、耐久性及び寸法安定性、光学的等方性に優れた偏光板を提供することができる。
ここで、偏光フィルムは、従来から使用されている、例えば、ポリビニルアルコールフィルムの如き延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光フィルム自身では、十分な強度、耐久性がないので、一般的にはその両面に保護フィルムとしての異方性のないセルローストリアセテートフィルムを接着して偏光板としている。
上記において、偏光板は、上記偏光板に、本発明の方法により製造された位相差フィルムを貼り合わせて作製してもよいし、また本発明の方法により製造された位相差フィルムを保護フィルムも兼ねて、直接偏光フィルムと貼り合わせて作製してもよい。貼り合わせる方法は、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行なうことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコール水溶液が好ましく用いられる。さらに、若干前述したが、長手方向に延伸し、二色性染料処理した長尺の偏光フィルムと長尺の本発明の方法により製造された位相差フィルムとを貼り合わせることによって長尺の偏光板を得ることができる。偏光板はその片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
また特に、液晶層を挟持する一対の基板からなるIPSモードにて駆動される液晶セルと当該液晶セルの両側に直交状態に配置される一対の偏光板とを有する液晶表示装置であって、少なくとも一方の偏光板の液晶セル側に上記の本発明の方法により製造された光学フィルムが備えられている液晶表示装置が好ましい。
本発明は、特に、本発明の方法により製造された光学フィルムを用いた広範囲にわたり高コントラスト比を有する見やすい表示を実現可能な画像表示装置、特にIPSモードで動作する液晶表示装置を提供するものであり、本発明の方法により製造された光学フィルムを備えた液晶表示装置は、長期間に亘って安定した表示性能を維持することができるものである。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1
本発明の方法により、溶液流延製膜法によるセルローストリアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムを製造した。
(ドープの調製)
まず、セルローストリアセテートプロピオネートのドープを、以下のように調製した。
セルローストリアセテートプロピオネート 100重量部
(アセチル基置換度1.95、プロピオニル基置換度0.7)
アクリル系樹脂よりなるリタデーション低下添加剤 10重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1重量部
AEROSIL 200V(日本アエロジル社製) 0.1重量部
メチレンクロライド 300重量部
エタノール 40重量部
なお、アクリル系樹脂よりなるリタデーション低下添加剤は、つぎのようにして製造したものである。
メチルアクリレート 10重量部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 1重量部
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 2重量部
トルエン 30重量部
これらの組成物を四つ口フラスコ(投入口、温度計、環流冷却管、窒素導入口、攪拌機を装着)に投入し、徐々に80℃まで昇温し、攪拌しながら5時間重合を行ない、重合終了後ポリマー溶液を多量のメタノールに投入して沈殿させ、さらにメタノールで洗浄し、精製して乾燥し、重量平均分子量2,000(GPCにて測定)のアクリル系樹脂よりなるリタデーション低下添加剤を得た。
上記セルローストリアセテートプロピオネート樹脂フィルムの材料を、順次密閉容器中に投入し、容器内温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行なって、セルローストリアセテートプロピオネートを完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、液温を43℃まで下げた。このドープを濾紙(安積濾紙株式会社製、安積濾紙No.244)を使用して濾過し、ドープを得た。
上記のように調製したドープを、30℃に保温した流延ダイを通して、ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる30℃の支持体上に流延してウェブ(ドープ膜)を形成し、そして最終的に、ウェブ中の残留溶媒量が80重量%になるまで支持体上で乾燥させた後、剥離ロールによりウェブを支持体から剥離した。
ついで、ウェブを、千鳥状に配置したロール搬送乾燥工程で乾燥させ、続いてテンターよりなる延伸装置(10)に導入して、ウェブ両端をクリップではさみ、残留溶媒が存在する条件下で、実質的に幅手方向に延伸し、乾燥風を当てて乾燥させた。
さらに、ウェブ(フィルム(F))を、千鳥状に配置したロール搬送乾燥工程で乾燥させ、巻取り機により巻き取り、最終的に膜厚40μmのセルローストリアセテートプロピオネートフィルム(F)を作製した。
この実施例1においては、テンター装置(10)によるウェブの延伸の際、左右のクリップ(2a)(2b)の走行速度を左右同一とするが、クリップ(2a)(2b)の把持開始位置を左右で変える、すなわちクリップクローザー(3a)(3b)の設置位置を左右で5mm変更して、フィルム(F)の左右把持長を変化させた。なお、延伸時のフィルム(F)の残留溶媒量は14重量%であった。
実施例2
上記実施例1の場合と同様に、膜厚40μmのセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを製造するが、上記実施例1の場合と異なる点は、つぎのようにして製造したアクリル系樹脂よりなるリタデーション低下添加剤を用いた点にある。
メチルアクリレート 12重量部
アゾビス(2−ヒドロキシエチルブチレート) 2.4重量部
トルエン 30重量部
これらの組成物を、上記実施例1の場合と同様に、重合、沈殿、精製して重量平均分子量2,000のアクリル系樹脂よりなるリタデーション低下添加剤を得た。
実施例3
上記実施例1の場合と同様に、膜厚40μmのセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを製造するが、上記実施例1の場合と異なる点は、アクリル系樹脂よりなるリタデーション低下添加剤の代わりに、本発明に用いられる添加剤としては、セルロースアシレートとの相溶性が高く可塑化効果のある下記式(1)で表わされる低分子化合物を用いた点にある。
実施例4
上記実施例1の場合と同様に、膜厚40μmのセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを製造するが、上記実施例1の場合と異なる点は、アクリル系樹脂よりなるリタデーション低下添加剤の代わりに、本発明に用いられる添加剤としては、セルロースアシレートとの相溶性が高く可塑化効果のある下記式(2)で表わされる低分子化合物を用いた点にある。
比較例1と2
つぎに、比較のために、上記実施例1の場合と同様に、膜厚40μmのセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを製造するが、上記実施例1の場合と異なる点は、比較例1では、アクリル系樹脂よりなるリタデーション低下添加剤の代わりに、トリクレジルホスフェートを用いた点にある。また、比較例2では、テンター延伸装置でのフィルム延伸の際、左右の把持手段のフィルムの把持長を等しく設定するとともに、左右のクリップの走行速度を等しくした。
なお、比較例1と2では、フィルム延伸時の残留溶媒量を、それぞれ本発明の範囲外とした。
こうして、実施例1〜4、及び比較例1と2で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムについて、それらの製造時、連続する樹脂フィルム(ウェブ)を支持体から剥離する際の残留溶媒量を測定し、得られた結果を下記の表1に示した。
また、実施例1〜4、及び比較例1と2で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムについて、フィルムのリタデーションの評価を行なうとともに、フィルム配向角の測定、ヘイズ値の測定、及び偏光板によるクロスニコル下でのフィルムの色ムラ(クロスニコル下での透過光の濃淡のムラ)の評価を、それぞれつぎのようにして行ない、得られた結果を、下記の表1に示した。
(残留溶剤量の評価)
実施例1〜4、及び比較例1と2で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムについて、つぎの基準で、残留溶剤量を評価した。
○:残留溶剤量が50重量%以上150重量%以下
△:残留溶剤量が20重量%以上50重量%未満、または150重量%を超え、 170重量%以下
×:残留溶剤量が20重量%未満、または170重量%を超える
(リタデーションの評価)
実施例1〜4、及び比較例1と2で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを、200mm角に切り出し、自動副屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器社製)を用いて、温度23℃、湿度55%RHの環境下で、5mmピッチで、波長が590nmにおける屈折率Nx、Ny、Nzを求め、下記の式に従って、フィルム面内方向のリタデーション(Ro)、及び厚み方向のリタデーション(Rt)を算出した。
Ro=(Nx−Ny)×d
Rt=((Nx+Ny)/2−Nz)×d
ここで、Nxはフィルムの面内における遅相軸方向の屈折率、Nyはフィルム面内における進相軸方向の屈折率、Nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)をそれぞれ表わす。
なお、表1には、つぎの基準で、フィルムの面内方向のリタデーション(Ro)を評価した。
○:Roが0nm以上5nm以下
△:Roが5nmを超え、40nm以下
×:Roが40nmを超える
また、フィルムの厚み方向のリタデーション(Rt)は、以下の基準で評価した。
○:Rtが−10nm以上10nm以下
△:Rtが−50nm以上−10未満、または10nmを超え、50nm以下
×:Rtが−50nm未満、または50nmを超える
(フィルム配向角の測定)
本発明の方法において、セルローストリアセテートプロピオネートフィルムを幅手方向に延伸する際に、幅手方向での配向角分布をある範囲に制御しながら延伸することが特に好ましい。配向角が幅手方向の何れの測定点においても、測定点すべての平均配向角の角度から±2°以内が好ましい。
ここで、配向角とは、セルローストリアセテートプロピオネートフィルムの面内における遅相軸の方向(流延製膜時の幅手方向に対する角度)を表わし、また配向角の測定は、自動複屈折計KOBURA−21ADHを用いて行なった。
なお、表1には、つぎの基準で、実施例1〜4、及び比較例1と2で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムの配向角を評価した。なお、配向角は、フィルムのTD方向を0°としたときの最も悪い値で示した。
○:配向角が35度以上55度以下
△:配向角が20度以上35度未満、または55度を超え、70度以下
×:配向角が20度未満、または70度を超える
(ヘイズ値の測定)
つぎに、実施例1〜4、及び比較例1と2で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムのヘイズ値(3枚値)を、東京電色株式会社製のTURBIDITYMETERT−2600DAを用いて測定した。
なお、表1には、つぎの基準で、ヘイズ値(3枚値)を評価した。
○:ヘイズ値が2%以下
△:ヘイズ値が2%を超え、6%以下
×:ヘイズ値が6%を超える
(色ムラの評価)
ついで、実施例1〜4、及び比較例1と2で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを、偏光板によるクロスニコル下、すなわち、直交状態(クロスニコル状態)に配置した2枚の偏光子で挟み、一方の偏光板の外側から光を当て、他方の偏光板の外側から目視で観察した。
○:フィルムに色ムラが無い
○:フィルムに色ムラが見られる
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムは、いずれもフィルム面内方向のリタデーション(Ro)値、及び厚み方向のリタデーション(Rt)値が低いものであった。また、セルローストリアセテートプロピオネートフィルムの配向角が好適な範囲内のものであり、セルローストリアセテートプロピオネートフィルムの光学的遅相軸が、フィルム搬送方向に概ね直交で、フィルムの略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一であった。さらに、セルローストリアセテートプロピオネートフィルムのヘイズ値は、低いものであるとともに、偏光板によるクロスニコル下で観察したところ、フィルムに色ムラは生じなかった。
このように、本発明の実施例1〜4で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムは、フィルムの全幅にわたってムラがなく、かつリタデーション値が実質的にゼロであり、本発明の方法により製造されたセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを画像表示装置に適用した場合に、広範囲に渡り高いコントラスト比を有する見やすい表示が実現可能であり、さらに、高温度下や高湿度下においても剥離することが無く、安定した位相差値を確保でき、ひいては、広範囲にわたり高コントラスト比を有する見やすい表示を実現可能な画像表示装置、特にIPSモードで動作する液晶表示装置に適用可能なものであった。
これに対し、比較例1と2で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムは、フィルム面内方向のリタデーション(Ro)値、及び厚み方向のリタデーション(Rt)値、並びにフィルムの配向角が、いずれも規定範囲外のものであり、しかもセルローストリアセテートプロピオネートフィルムのヘイズ値が高く、偏光板によるクロスニコル下で観察したところ、フィルムに色ムラが生じていた。従って、比較例1と2で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムは、偏光板用保護フィルムとしては、不適当なものであった。
とすることにある。
実施例5
(ドープの調製)
セルローストリアセテートプロピオネートのドープを、以下のように調製した。
セルローストリアセテートプロピオネート 100重量部
(アセチル基置換度1.95、プロピオニル基置換度0.7)
トリフェニルホスフェート 10重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1重量部
AEROSIL 200V(日本アエロジル社製) 0.1重量部
メチレンクロライド 300重量部
エタノール 40重量部
上記の材料を、順次密閉容器中に投入し、容器内温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行なって、セルローストリアセテートプロピオネートを完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、液温を43℃まで下げた。このドープを濾紙(安積濾紙株式会社製、安積濾紙No.244)を使用して濾過し、ドープを得た。
上記のように調製したドープを、30℃に保温した流延ダイを通して、ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる30℃の支持体上に流延してウェブ(ドープ膜)を形成し、そして最終的に、ウェブ中の残留溶媒量が80重量%になるまで支持体上で乾燥させた後、剥離ロールによりウェブを支持体から剥離した。
ついで、ウェブを、千鳥状に配置したロール搬送乾燥工程で120℃の乾燥風にて乾燥させ、続いてテンターに導入して、ウェブ両端をクリップではさみ、残留溶媒が存在する条件下で、実質的に幅手方向に延伸し、乾燥風を当てて乾燥させた。
このとき、フィルム(ウェブ)をTD方向に延伸するのと同時に、TD方向延伸率(%)×0.1〜TD方向延伸率(%)×0.3の範囲のMD方向の緩和収縮を行なうように、MD方向の収縮率を変化させて、TD延伸率20%の延伸を行なった。
また、剥離からテンター間の乾燥部の雰囲気温度を変化させ、フィルム延伸時の残留溶媒量を変化させた。延伸時のフィルムの残留溶媒量は、テンター内でフィルム(ベース)一部をサンプリングして測定した。
さらに、ウェブ(フィルム)を、千鳥状に配置したロール搬送乾燥工程で100℃の乾燥風にて乾燥させ、巻取り機により巻き取り、最終的に膜厚40μmのセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを作製した。
この実施例5では、フィルム延伸時の残留溶媒量を、本発明の範囲内のものとした。
また、この実施例5では、フィルムのTD方向の延伸時にフィルムの両端部をそれぞれ把持する各クリップ1個の把持長を100mm(フィルム幅の10%)とした。
実施例6
上記実施例5の場合と同様に、膜厚40μmのセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを製造するが、上記実施例5の場合と異なる点は、つぎのようにして製造したアクリル系樹脂よりなるリタデーション低下添加剤を用いた点にある。
メチルアクリレート 12重量部
アゾビス(2−ヒドロキシエチルブチレート) 2.4重量部
トルエン 30重量部
これらの組成物を、上記実施例5の場合と同様に、重合、沈殿、精製して重量平均分子量2,000のアクリル系樹脂よりなるリタデーション低下添加剤を得た。
実施例7
上記実施例5の場合と同様に、膜厚40μmのセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを製造するが、上記実施例1の場合と異なる点は、アクリル系樹脂よりなるリタデーション低下添加剤の代わりに、本発明に用いられる添加剤としては、セルロースアシレートとの相溶性が高く可塑化効果のある下記式で表わされる低分子化合物を用いた点にある。
実施例8
上記実施例5の場合と同様に、膜厚40μmのセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを製造するが、上記実施例1の場合と異なる点は、アクリル系樹脂よりなるリタデーション低下添加剤の代わりに、本発明に用いられる添加剤としては、セルロースアシレートとの相溶性が高く可塑化効果のある下記式で表わされる低分子化合物を用いた点にある。
実施例9
本発明の方法により、溶液流延製膜法によるセルローストリアセテートプロピオネート樹脂よりなる光学フィルムを製造した。
(ドープの調製)
まず、セルローストリアセテートプロピオネートのドープを、以下のように調製した。
セルローストリアセテートプロピオネート 100重量部
(アセチル基置換度1.95、プロピオニル基置換度0.7)
前記式(1)で表わされる低分子化合物 10重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1重量部
AEROSIL 200V(日本アエロジル社製) 0.1重量部
メチレンクロライド 300重量部
エタノール 40重量部
上記の材料を混合し、膨潤させた。つぎに、この混合物を二重構造の密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら外側のジャケットに冷媒を導入した。これにより内側容器内の混合物を−70℃まで冷却した。混合物が均一に冷却されるまで30分冷却した。密閉容器の外側のジャケット内の冷媒を排出し、代わりに温水をジャケットに導入。続いて内容物を攪拌し、40分かけて100℃まで上げた。容器内は2.5気圧となった。攪拌しながら50℃まで温度を下げ常圧に戻し、一晩そのまま放置しドープを得た。このドープを安積濾紙株式会社製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、さらに日本精線株式会社製のファインメットNM(絶対濾過精度100μm)、ファインポアNF(絶対濾過精度50μm、15μm、5μmの順に順次濾過精度を上げて使用)を使用して濾過圧力0.98MPaで濾過し製膜に供した。
つぎに、下記の条件に設定した溶液流延製膜装置を用いて、セルローストリアセテートプロピオネートフィルムの製膜を行った。
すなわち、流延ダイにはコートハンガー型ダイを用いた。また支持体である回転ドラムの表面粗さが0.04Sになるように鏡面仕上げをした。この回転ドラムに冷媒供給装置から冷媒を供給することで、その表面温度を−20℃に保持した。また、周速度の比(V1/V0)を1.1とするために、回転ドラムの周速度V0(流延速度)を100m/minとし、剥離ローラの周速度V1を110m/minとした。回転ドラムと剥離ローラとのクリアランスは、5mmとした。また、第1乾燥ガスは風速1m/s、温度35℃、第2乾燥ガスは風速5m/s、温度80℃、第3乾燥ガスは風速5m/s、温度25℃と、それぞれ設定したものを吹き付けた。
上記条件に設定した後に、30℃の上記ドープを、乾燥後のフィルムの膜厚が40μmとなるように回転ドラム上に流延した。ウェブ(ゲル膜)を剥離ローラで剥離する際のフィルム応力を測定したところ、50万Paであった。またウェブ(ゲル膜)の剥離時にウェブ(ゲル膜)を目視で観察したところ、剥ぎ残り、剥離位置の上昇は見られなかった。
さらに、このフィルムをテンタ乾燥装置で135℃、3分間乾燥した後、135℃の乾燥ゾーンで10分間乾燥した。その後、80℃の冷却室でフィルムを1分間冷却し、最後に、巻取機で巻き取った。
比較例3と4
つぎに、比較のために、上記実施例5の場合と同様に、膜厚40μmのセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを製造するが、上記実施例5の場合と異なる点は、比較例3では、アクリル系樹脂よりなるリタデーション低下添加剤の代わりに、トリクレジルホスフェートを用いた点にある。また、比較例4では、テンター延伸装置でのフィルム延伸の際、左右の把持手段のフィルムの把持長を等しく設定するとともに、左右のクリップの走行速度を等しくした。
なお、比較例3と4では、フィルム延伸時の残留溶媒量を、それぞれ本発明の範囲外とした。
こうして、実施例5〜9、及び比較例3と4で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムについて、それらの製造時、連続する樹脂フィルム(ウェブ)を支持体から剥離する際の残留溶媒量を測定し、得られた結果を下記の表2に示した。
また、実施例5〜9、及び比較例3と4で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムについて、フィルムのリタデーションの評価を行なうとともに、フィルム配向角の測定、ヘイズ値の測定、及び偏光板によるクロスニコル下でのフィルムの色ムラ(クロスニコル下での透過光の濃淡のムラ)の評価を、上記実施例1〜4の場合と同様に行ない、得られた結果を、下記の表2に示した。
上記表2の結果から明らかなように、本発明の実施例5〜9で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムは、いずれもフィルム面内方向のリタデーション(Ro)値、及び厚み方向のリタデーション(Rt)値が低いものであった。また、セルローストリアセテートプロピオネートフィルムの配向角が好適な範囲内のものであり、セルローストリアセテートプロピオネートフィルムの光学的遅相軸が、フィルム搬送方向に概ね直交で、フィルムの略全域にわたって配向角が幅手方向(TD方向)に均一であった。さらに、セルローストリアセテートプロピオネートフィルムのヘイズ値は、低いものであるとともに、偏光板によるクロスニコル下で観察したところ、フィルムに色ムラは生じなかった。
このように、本発明の実施例5〜9で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムは、フィルムの全幅にわたってムラがなく、かつリタデーション値が実質的にゼロであり、本発明の方法により製造されたセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを画像表示装置に適用した場合に、広範囲に渡り高いコントラスト比を有する見やすい表示が実現可能であり、さらに、高温度下や高湿度下においても剥離することが無く、安定した位相差値を確保でき、ひいては、広範囲にわたり高コントラスト比を有する見やすい表示を実現可能な画像表示装置、特にIPSモードで動作する液晶表示装置に適用可能なものであった。
これに対し、比較例3と4で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムは、フィルム面内方向のリタデーション(Ro)値、及び厚み方向のリタデーション(Rt)値、並びにフィルムの配向角が、いずれも規定範囲外のものであり、しかもセルローストリアセテートプロピオネートフィルムのヘイズ値が高く、偏光板によるクロスニコル下で観察したところ、フィルムに色ムラが生じていた。従って、比較例3と4で作製したセルローストリアセテートプロピオネートフィルムは、偏光板用保護フィルムとしては、不適当なものであった。
とすることにある。