JP4883083B2 - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液晶表示装置(LCD)あるいは有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレー等の各種の表示装置に用いられる光学フィルム、特にこれら表示装置に用いられる偏光板用保護フィルム、および位相差フィルムとして用いることのできる複屈折性を有する光学フィルムの製造方法に関するものである。
一般に、液晶表示装置の基本的な構成は、液晶セルの両側に偏光板を設けたものである。偏光板は、一定方向の偏波面の光だけを通すので、液晶表示装置においては、電界による液晶の配向の変化を可視化させる重要な役割を担っており、偏光板の性能によって液晶表示装置の性能が大きく左右される。
近年、液晶パネルの大画面化に伴って、偏光板保護フィルムや位相差フィルムの幅も広いものが望まれている。
従来、溶液流延製膜法による光学フィルムの製造では、所望の成分の樹脂溶液を、回転駆動金属製エンドレスベルト(ベルト支持体)上に流延し、搬送可能な状態まで乾燥させた後に、ベルト支持体より剥離し、その後乾燥させて、巻き取ることによってフィルムを作製している。
ここで、より広い幅のフィルムを得る方法として、剥離後のフィルムの幅延伸があるが、必要な光学特性が得られなかったり、機械特性が変化し、使用できないか、あるいは用途が限定された製品となるという問題があった。
そのため、従来は、ベルト支持体の幅を広げて流延幅を広げることで、幅の広いフィルムを製造している。
一方、ベルト支持体によるフィルム(ウェブ)搬送時の蛇行調整には、金属製エンドレスベルトを回転駆動する前後一対の回転ドラムの回転軸同士の作る角度を変化させることが行なわれており、例えばどちらか一方の回転ドラムの回転軸を、ベルト支持体の進行方向と直角より多少ずらす、などの方法が行なわれている。
しかしながら、このようなベルト支持体の蛇行制御では、ベルト端部に強い力が加わるため、繰り返し制御で、ベルト端部が変形してしまう。特にベルト支持体の幅が1.8mを越えると、この変形が顕著になる。変形が大きくなると、ベルト端部と加熱/冷却ドラムの接触が弱くなり、そこでの伝熱が少なくなって、端部の乾燥不良や端部の泡巻込み故障が発生する。ベルト端部の乾燥不良は剥離時にベルトに膜の一部が残る剥離不良となり、ベルト支持体の左右両端部の変形がさらに大きくなると、フィルム製品の平面性の劣化や、ベルト支持体端部と流延ダイとが接触して、設備にキズをつけてしまい、フィルムの生産に支障をきたすという問題があった。
ここで、従来、広幅のベルト支持体を用いた溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法に関わる特許文献には、つぎのようなものがある。
特許文献1には、溶液製膜方法が開示されており、ダイから流延されたポリマー溶液のフィルムを支持する支持体として幅1.6m以上のベルトを使用し、該ベルトの蛇行量をベルト幅に対し±0.5%以下とし、かつダイからのフィルムの流延幅をベルト幅の70%以上で、ベルト幅−(蛇行量×4)以下とすることが記載されている。
特開2002−127169号公報
上記のように、特許文献1では、広幅のベルト支持体に対して、ベルト幅に対するフィルムの流延幅を規定し、蛇行量を小さく抑えるとしているが、それでも多少の蛇行は発生し、長期間の運転では、上記のベルト端部の変形が発生してしまうという問題があった。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、広幅のベルト支持体をフィルム生産に用いた場合でも、蛇行が少なく、安定した搬送状態を保ち、流延フィルム(ウェブ)端部の乾燥不良や、フィルムの平面性の劣化がなく、安定した高生産性を得ることができる光学フィルムの製造方法を提供しようとすることにある。
本発明者は、上記の従来技術の問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、溶液流延製膜法において、下記の手段を採用することによって、蛇行制御時にベルト支持体に加わる応力が小さくなり、長時間運転後のベルト支持体両端部の変形が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記の目的を達成するために、請求の範囲第1項の発明は、熱可塑性樹脂フィルム原料を溶媒に溶解したドープ(溶液)を、流延ダイから幅1.8m以上のベルト支持体上に流延し、ベルト支持体上から剥離したウェブ(フィルム)を乾燥させて、光学フィルムを製造する方法であって、前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の2〜25%の幅(We)を有する左右両端部分の厚み(Te)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の厚み(T)よりも、5〜20%薄いことを特徴としている。
請求の範囲第2項の発明は、請求の範囲第1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の2〜25%の幅(We)を有する左右両端部分の厚み(Te)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の厚み(T)よりも、8〜15%薄いことを特徴としている。
請求の範囲第3項の発明は、請求の範囲第1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の10〜20%の幅(We)を有する左右両端部分の厚み(Te)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の厚み(T)よりも、5〜20%薄いことを特徴としている。
請求の範囲第4項の発明は、請求の範囲第1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の10〜20%の幅(We)を有する左右両端部分の厚み(Te)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の厚み(T)よりも、8〜15%薄いことを特徴としている。
請求の範囲第5項の発明は、請求の範囲第1項乃至第4項の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記ベルト支持体は、ベルト支持体の厚みの薄い左右両端部分と、幅中央部を含むその他の厚みの厚い部分とが溶接により一体化されたものであることを特徴としている。
請求の範囲第6項の発明は、熱可塑性樹脂フィルム原料を溶媒に溶解したドープ(溶液)を、流延ダイから幅1.8m以上のベルト支持体上に流延し、ベルト支持体上から剥離したウェブ(フィルム)を乾燥させて、光学フィルムを製造する方法であって、前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の2〜25%の幅(We)を有する左右両端部分の縦弾性係数(Ee)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の縦弾性係数(E)よりも、5〜20%小さいことを特徴としている。
請求の範囲第7項の発明は、請求の範囲第6項に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の2〜25%の幅(We)を有する左右両端部分の縦弾性係数(Ee)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の縦弾性係数(E)よりも、8〜15%小さいことを特徴としている。
請求の範囲第8項の発明は、請求の範囲第6項に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の10〜20%の幅(We)を有する左右両端部分の縦弾性係数(Ee)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の縦弾性係数(E)よりも、5〜20%小さいことを特徴としている。
請求の範囲第9項の発明は、請求の範囲第6項に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の10〜20%の幅(We)を有する左右両端部分の縦弾性係数(Ee)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の縦弾性係数(E)よりも、8〜15%小さいことを特徴としている。
請求の範囲第10項の発明は、請求の範囲第6項乃至第9項の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記ベルト支持体は、ベルト支持体の縦弾性係数の小さい左右両端部分と、幅中央部を含むその他の縦弾性係数の大きい部分とが溶接により一体化されたものであることを特徴としている。
請求の範囲第11項の発明は、請求の範囲第1項乃至第10項の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記光学フィルムの幅が1.7m以上であることを特徴としている。
請求の範囲第12項の発明は、請求の範囲第1項乃至第10項の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記熱可塑性樹脂フィルム原料はセルロースエステルを含むことを特徴としている。
請求の範囲第1項の発明は、溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法で、幅1.8m以上の広幅のベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の2〜25%の幅(We)を有するベルト支持体左右両端部分の厚み(Te)を、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の厚み(T)よりも、5〜20%薄くするもので、本発明によれば、広幅のベルト支持体をフィルムの生産に用いた場合に発生するフィルム両端部の変形を小さくするために、ベルト支持体の左右両側のベルト端部(あるいは縁部)の厚みを薄くすることで、蛇行制御時にベルト支持体に加わる応力が小さくなり、長時間運転後のベルト支持体両端部の変形が抑制されて、蛇行が少なく、安定した搬送状態を保ち、流延フィルム(ウェブ)端部の乾燥不良や、フィルムの平面性の劣化がなく、安定した高生産性を得ることができて、良好な品質を有する光学フィルムを製造することができるという効果を奏する。
請求の範囲第2項〜第4項の発明は、いずれも、請求の範囲第1項に記載の光学フィルムの製造方法で用いるベルト支持体を更に限定するものであり、これにより、長時間運転後のベルト支持体両端部の変形を更に効果的に抑制することができる。
請求の範囲第5項の発明は、上記請求の範囲第1項乃至第4項の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、ベルト支持体の厚みの薄い左右両端部分と、幅中央部を含むその他の厚みの厚い部分とが溶接により一体化されているベルト支持体を用いるもので、これにより、所望の広幅を有するベルト支持体を用いることができて、蛇行が少なく、安定した搬送状態を保ち、流延フィルム(ウェブ)端部の乾燥不良や、フィルムの平面性の劣化がなく、安定した高生産性を得ることができて、良好な品質を有する光学フィルムを製造することができるという効果を奏する。
請求の範囲第6項の発明は、溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法で、幅1.8m以上のベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の2〜25%の幅(We)を有するベルト支持体左右両端部分の縦弾性係数(Ee)を、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の縦弾性係数(E)よりも、5〜20%小さくするもので、本発明によれば、広幅のベルト支持体をフィルムの生産に用いた場合に発生するフィルム両端部の変形を小さくするために、ベルト支持体の左右両側のベルト端部(あるいは縁部)の縦弾性係数を小さくすることで、蛇行制御時にベルト支持体に加わる応力が小さくなり、長時間運転後のベルト支持体両端部の変形が抑制されて、蛇行が少なく、安定した搬送状態を保ち、流延フィルム(ウェブ)端部の乾燥不良や、フィルムの平面性の劣化がなく、安定した高生産性を得ることができて、良好な品質を有する光学フィルムを製造することができるという効果を奏する。
請求の範囲第7項〜第9項の発明は、いずれも、請求の範囲第6項に記載の光学フィルムの製造方法で用いるベルト支持体を更に限定するものであり、これにより、長時間運転後のベルト支持体両端部の変形を更に効果的に抑制することができる。
請求の範囲第10項の発明は、請求の範囲第6項乃至第9項の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、ベルト支持体の縦弾性係数の小さい左右両端部分と、幅中央部を含むその他の縦弾性係数の大きい部分とが溶接により一体化されているベルト支持体を用いるもので、これにより、所望の広幅を有するベルト支持体を用いることができて、蛇行が少なく、安定した搬送状態を保ち、流延フィルム(ウェブ)端部の乾燥不良や、フィルムの平面性の劣化がなく、安定した高生産性を得ることができて、良好な品質を有する光学フィルムを製造することができるという効果を奏する。
請求の範囲第11項の発明は、請求の範囲第1項乃至第10項の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記光学フィルムの幅が1.7m以上であり、これにより、大面積の表示装置等に対応できる広幅の光学フィルムの製造に特に適した光学フィルムの製造方法を提供することができる。
請求の範囲第12項の発明は、請求の範囲第1項乃至第11項の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記熱可塑性樹脂フィルム原料はセルロースエステルを含むものであり、これにより、偏光板保護フィルムや位相差フィルムに特に適した光学フィルムの製造方法を提供することができる。
本発明の光学フィルムの製造方法を実施する溶液流延製膜装置の流延工程のベルト支持体の第1実施形態を示す部分拡大斜視図である。 図1のベルト支持体の拡大横断面図である。 図2の要部拡大断面図である。 同要部拡大断面図で、ベルト支持体の変形例を示すものである。 本発明の光学フィルムの製造方法を実施する溶液流延製膜装置の流延工程のベルト支持体の第2実施形態を示す部分拡大斜視図である。 本発明の光学フィルムの製造方法を実施する溶液流延製膜装置の流延工程のベルト支持体の第3実施形態を示す部分拡大斜視図である。 図7aは、溶液流延製膜装置の流延工程のベルト支持体による搬送時の蛇行調整のために、回転ドラムの回転軸の角度を変化させる状態を示す平面図である。図7bは、同側面図である。 本発明の実施例1〜17において、ベルト端部変形量の測定方法を示すベルト支持体端部の要部拡大断面図である。 本発明の実施例18〜23において、ベルトテストサンプルピースに繰り返し荷重を与えて、ベルト支持体端部の変形量を測定する実験装置の平面図である。 同側面図である。
符号の説明
1 金属製エンドレスベルト:ベルト支持体
1a ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分
1b ベルト支持体の左右両端部分
2 前側ドラム
3 後側ドラム
4 流延ダイ
T ベルト支持体の左右両端部分の厚み
Te ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の厚み
W ベルト支持体の左右両端部分の幅
We ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の幅
d ベルト端部変形量
11 ベルトテストサンプルピース(ベルト支持体)
12 回転ドラム
13 回転軸
15 張力計
本発明を実施するための最良の形態について以下説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
本発明は、溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法で、熱可塑性樹脂フィルム原料を溶媒に溶解したドープ(溶液)を、流延ダイから幅1.8m以上の回転駆動金属製エンドレスベルト(ベルト支持体)上に流延し、ベルト支持体上から剥離したウェブ(フィルム)を乾燥させて、光学フィルムを製造するものである。
図1〜図3を参照すると、請求の範囲第1項〜第5項に記載の発明では、前後一対の回転駆動ドラム(2)(3)に巻き掛けられた金属製エンドレスベルト(ベルト支持体)(1)の左右両側縁よりそれぞれ所定の幅(We)を有するベルト支持体の左右両端部分(1b)の厚み(Te)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分(1a)の厚み(T)よりも薄い。
ここで、ベルト支持体の幅は、図2(ベルト支持体の横断面図)で定義される寸法で、
2(%)≦(We/W)×100≦25(%)であり、
10(%)≦(We/W)×100≦20(%)であることが特に好ましい。
ベルト支持体の厚みの差は、同図2で定義される寸法で、
5(%)≦(1−Te/T)×100≦20(%)であり、
8(%)≦(1−Te/T)×100≦15(%)であることが特に好ましい。
このように、請求の範囲第1項〜第5項に記載の発明は、幅1.8m以上の広い幅のベルト支持体(1)を、光学フィルムの生産に用いた場合に発生するベルト支持体(1)の左右両端部分(1b)の変形を小さくする方法のひとつである。ベルト支持体(1)の両端部分(1b)の厚みを薄くすることで、蛇行制御時にベルト両端部分(1b)に加わる応力が小さくなり、長時間運転後のベルト両端部分(1b)の変形が抑制されるものである。
厚みの変化は、図2と図3に示すように、階段状でも良いが、図4に示すように、テーパ状に滑らかにすることが、好ましい。その場合のベルト端部の幅、および厚みは、図4に示すように定義する。
ベルト支持体(1)の左右両端部(1b)を薄くする方法としては、ベルト支持体(1)の左右両端部を機械加工しても良いし、請求の範囲第5項に記載のように、厚みの異なる素材を両端部に溶接しても良い。
本発明によれば、幅広のベルトでも蛇行が少なく、安定したフィルムの搬送状態を保ち、流延フィルム(ウェブ)端部の乾燥不良や、フィルムの平面性の劣化がなく、安定した高生産性を得ることができて、良好な品質を有する光学フィルムを製造することができる。
なお、ベルト支持体(1)の幅は、装置メーカの能力によって上限があるが、図5に示すように、2枚のベルト支持体(1A)(1B)の側縁同士を溶接して幅広の1本のベルト支持体(1)として使用することができる。より広いベルト支持体(1)が必要な場合は、図6に示すように、3枚のベルト支持体(1A)(1B)(1C)の側縁同士を溶接すればよい。
ここで、ベルト支持体(1)の溶接部(Y)は研磨され、フィルムに転写しても製品品質上問題がない程度の鏡面とされる。溶接部(Y)のフィルム品質が問題になるような場合には、溶接部(Y)が有効な製品外となるように溶接線を配置すればよい。
請求の範囲第6項〜第10項に記載の発明では、図1〜図3を参照すると、幅1.8m以上の広幅のベルト支持体(1)の左右両側縁よりそれぞれ所定の幅(We)を有するベルト支持体の左右両端部分(1b)の縦弾性係数(ヤング率)(Ee)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分(1a)の縦弾性係数(E)よりも小さい。
ここで、ベルト支持体の幅は、図2(ベルト支持体の横断面図)で定義される寸法で、
5(%)≦We/W×100≦25(%)であり、
10(%)≦We/W×100≦20(%)であることが特に好ましい。
縦弾性係数は、ベルト支持体の左右両端部分(1b)の縦弾性係数をEe、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分(1a)の縦弾性係数をEとして、
5(%)≦(1−Ee/E)×100≦20(%)であり、
8(%)≦(1−Ee/E)×100≦15(%)であることが特に好ましい。
このように、請求の範囲第6項〜第10項に記載の発明は、幅1.8m以上の広い幅のベルト支持体(1)を、光学フィルムの生産に用いた場合に発生するベルト支持体(1)の左右両端部分(1b)の変形を小さくするいまひとつの方法である。ベルト支持体(1)の左右両端部分(1b)の縦弾性係数(Ee)を小さくすることで、ベルト支持体の左右両端部分(1b)の変形が抑制されるものである。
ベルト支持体(1)の左右両端部分(1b)の縦弾性係数を変化させる方法としては、ベルト支持体の左右両端部分(1b)を熱処理したり、請求の範囲第10項に記載のように、両端部に異なる材質の金属を溶接してもよい。また、厚み方向に空洞を有するような部材を両端部に溶接してもよい。例えば、図6に示すように、異なる材質の金属よりなる3枚のベルト支持体(1A)(1B)(1C)の側縁同士を溶接すればよい。
ここで、上記の場合と同様に、ベルト支持体(1)の溶接部(Y)は研磨され、フィルムに転写しても製品品質上問題がない程度の鏡面とされる。溶接部(Y)のフィルム品質が問題になるような場合には、溶接部(Y)が有効な製品外となるように溶接線を配置すればよい。
本発明の請求の範囲第1項と請求の範囲第6項に記載の発明は、それぞれ単独で実施しても充分に効果的であるが、同時に実施するとさらに効果的になる。即ち、ベルト支持体(1)の左右両端部(1b)の厚みを薄くすると同時に縦弾性係数を小さくしても良い。

図7に示すように、ベルト支持体(1)による搬送時の蛇行調整には、金属製エンドレスベルト(1)を回転駆動する前後一対の回転ドラム(2)(3)の回転軸同士の作る角度を変化させる。例えば、一方の前側の回転ドラム(2)の回転軸を、ベルト支持体(1)の進行方向と直角より多少ずらす方法によって行なうものである。
ベルト支持体の幅が1.8m以上と大きくなった場合には、こうした蛇行制御が困難になり、ベルト支持体(1)の蛇行量が大きくなる。ベルト支持体(1)の蛇行が非常に大きいとき、流延ダイ(4)から流延されたドープ(樹脂溶液)が、ベルト支持体(1)の外に垂れ落ち、生産設備を汚染する。また、大きな蛇行を常に制御した状態で、ベルト支持体(1)を長時間運転すると、特にベルト支持体(1)の左右両端部に大きな力が加わり続けることになり、ベルト支持体(1)の左右両端部(あるいは両側縁部)が、側面よりみて波形に(いわゆるワカメ状に)変形してしまう。ベルト支持体(1)の左右両端部の変形が大きくなると、ベルト支持体端部と加熱/冷却ドラムの接触が弱くなり、そこでの伝熱が少なくなって、フィルム端部の乾燥不良や、フィルム端部の泡巻込み故障が発生する。さらに、フィルム端部の乾燥不良は、フィルムの剥離時にベルト支持体側に膜(ウェブ)の一部が残る剥離不良となる。ベルト支持体の左右両端部の変形がさらに大きくなると、フィルム製品の平面性の劣化や、ベルト支持体(1)端部と流延ダイ(4)とが接触して、設備にキズをつけてしまい、フィルムの生産に支障をきたす。
請求の範囲第1項〜第5項の発明では、ベルト支持体の左右両端部分(1b)の厚み(Te)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分(1a)の厚み(T)よりも薄い。そのため、ベルト支持体の左右両端部分(1b)に加わる力が弱くなり、繰り返し制御でもベルト支持体の左右両端部分(1b)の変形を小さくすることができる。
しかし、あまりに薄くしすぎて、(1−Te/T)×100>20(%)となると、上記変形と同様の伝熱不良による剥離不良が発生する虞がある。また左右両端部分の幅(We)が、ベルト支持体全幅(W)の25%よりも広くなると、蛇行の制御のための力が加わりにくくなり、蛇行がより強くなってしまう。
そのため、ベルト支持体の左右両端部分(1b)の厚み(Te)が、5(%)≦(1−Te/T)×100≦20(%)であり、ベルト支持体の左右両端部分(1b)の幅(We)が、2(%)≦(We/W)×100≦25(%)であるときに、ベルト支持体の左右両端部分(1b)の変形が少なく、剥離不良の発生がなく、蛇行量も小さくなる。
また、請求の範囲第6項〜第10項の発明では、ベルト支持体の左右両端部分(1b)の縦弾性係数(Ee)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分(1a)の縦弾性係数(E)よりも小さい。このように、ベルト支持体の左右両端部分(1b)の縦弾性係数(Ee)を小さくすることでも、ベルト支持体の左右両端部分(1b)の厚み(Te)を薄くした場合と同様に、ベルト支持体の左右両端部分(1b)の変形が少なく、剥離不良の発生もなく、蛇行量も小さい状態での製膜が可能になる。
ベルト支持体の左右両端部分(1b)の縦弾性係数(Ee)の小さい部分の幅(We)は、5(%)≦We/W×100≦25(%)であり、10(%)≦We/W×100≦20(%)であることが特に好ましい。また、ベルト支持体の左右両端部分(1b)の縦弾性係数(Ee)は、5(%)≦(1−Ee/E)×100≦20(%)であり、8(%)≦(1−Ee/E)×100≦15(%)であることが特に好ましい。
このように、本発明によれば、広幅のベルト支持体(1)をフィルム生産に用いた場合でも、蛇行が少なく、安定した搬送状態を保ち、流延フィルム(ウェブ)端部の乾燥不良や、フィルムの平面性の劣化がなく、安定した高生産性を得ることができるものである。
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の方法において好ましく用いられる樹脂としては、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のアシル基の置換度が1.8〜2.80のセルロースエステル系樹脂、またセルロースメチルエーテル、セルロースエチルエーテル、セルロースプロピルエーテル等のアルキル基置換度2.0〜2.80のセルロースエーテル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、またアルキレンジカルボン酸とジアミンとの重合物のポリアミド樹脂、またアルキレンジカルボン酸とジオールとの重合物、アルキレンジオールとジカルボン酸との重合物、シクロヘキサンジカルボン酸とジオールとの重合物、シクロヘキサンジオールとジカルボン酸との重合物、芳香族ジカルボン酸とジオールとの重合物等のポリエステル樹脂、またポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル樹脂、またポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、アルキレンジイソシアナートとアルキレンジオールの線状重合物等のポリウレタン樹脂等を挙げることができ、これらから選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましい。
中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。また、相溶性のあるポリマーを2種類以上ブレンドして後で述べるドープ溶解を行なっても良いが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明において好ましく用いられるその他の樹脂としては、エチレン性不飽和単量体単位を有する単独重合体または共重合体を挙げることができる。より好ましくは、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル、ポリアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸アルキルの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸アルキルエステル共重合体等のアクリル酸またはメタクリル酸エステルの単独重合体または共重合体が挙げられる。さらにアクリル酸またはメタクリル酸のエステルは、透明性、相溶性に優れるので、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル単位を有する単独重合体または共重合体、特に、アクリル酸またはメタクリル酸メチル単位を有する単独重合体または共重合体が好ましい。具体的にはポリメタクリル酸メチルが好ましい。ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸シクロヘキサンのようなアクリル酸またはメタクリル酸の脂環式アルキルエステルは、耐熱性が高く、吸湿性が低い、複屈折が低い等の利点を有しているものが、好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法は、溶液流延製膜法により実施されるものであり、これを詳しく説明する。
(ドープを形成する材料)
以下、セルロースエステルを例に挙げて、本発明を説明する。
本発明において、セルロースエステル及び有機溶媒を含有するセルロースエステル溶液をドープといい、これをもって溶液流延製膜し、セルロースエステルフィルムを形成せしめるものである。
(セルロースエステル)
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ単独で、または任意の割合で混合して使用することができる。
本発明において、セルロースエステルは、セルロース原料のアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて反応が行なわれる。アシル化剤が酸クロライド(CHCOCl、CCOCl、CCOCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行なわれる。具体的には、特開平10−45804号公報に記載の方法で合成することができる。
セルロースエステルは、アシル基がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットあたり3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している。
セルロースエステルフィルムに用いることができるセルロースエステルとしては、総アシル基置換度が2.4〜2.8であることが好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルの分子量は、数平均分子量(Mn)で50,000〜200,000のものが用いられる。60,000〜200,000のものがさらに好ましく、80,000〜200,000が特に好ましい。
本発明で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、Mw/Mnが1.4〜3.0であることが好ましく、さらに好ましくは1.7〜2.2の範囲である。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することができる。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することができる。
測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex−K806、K805、K803G
(昭和電工株式会社製カラムを3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所株式会社製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー株式会社製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルは、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであり、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートフタレート等や、特開平10−45804号公報、特開平8−231761号公報、及び米国特許第2,319,052号公報等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。あるいは、特開2002−179701号公報、特開2002−265639号公報、及び特開2002−265638号公報に記載の芳香族カルボン酸とセルロースとのエステル、セルロースアシレートも好ましく用いられる。
上記の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは混合して用いることもできる。
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基もしくはブチリル基の置換度をYとした時、下記式(a)及び(b)を同時に満たすセルロースエステルである。
式(a) 2.4≦X+Y≦2.8
式(b) 0≦X≦2.5
アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することができる。
これらアシル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。
アセチルセルロースの場合、酢化率を上げようとすれば、酢化反応の時間を延長する必要がある。ただし、反応時間を余り長くとると分解が同時に進行し、ポリマー鎖の切断やアセチル基の分解等が起こり、好ましくない結果をもたらす。従って、酢化度を上げ、分解をある程度抑えるためには、反応時間はある範囲に設定することが必要である。反応時間で規定することは反応条件がさまざまであり、反応装置や設備その他の条件で大きく変わるので適切でない。ポリマーの分解は進むにつれ、分子量分布が広くなっていくので、セルロースエステルの場合にも、分解の度合いは通常用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値で規定できる。すなわち、セルローストリアセテートの酢化の過程で、余り長過ぎて分解が進み過ぎることがなく、かつ酢化には十分な時間酢化反応を行なわせしめるための反応度合いの一つの指標として重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値を用いることができる。
セルロースエステルの製造法の一例を以下に示すと、セルロース原料として綿化リンター100質量部を解砕し、40質量部の酢酸を添加し、36℃で20分間前処理活性化をした。その後、硫酸8質量部、無水酢酸260質量部、酢酸350質量部を添加し、36℃で120分間エステル化を行なった。24質量%酢酸マグネシウム水溶液11質量部で中和した後、63℃で35分間ケン化熟成し、アセチルセルロースを得た。これを10倍の酢酸水溶液(酢酸:水=1:1(質量比))を用いて、室温で160分間攪拌した後、濾過、乾燥させてアセチル置換度2.75の精製アセチルセルロースを得た。このアセチルセルロースはMnが92,000、Mwが156,000、Mw/Mnは1.7であった。同様にセルロースエステルのエステル化条件(温度、時間、攪拌)、加水分解条件を調整することによって置換度、Mw/Mn比の異なるセルロースエステルを合成することができる。
なお、合成されたセルロースエステルは、精製して低分子量成分を除去したり、未酢化の成分を濾過で取り除くことも好ましく行なわれる。
また、混酸セルロースエステルの場合には、特開平10−45804号公報に記載の方法によって得ることができる。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
また、セルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成することにより不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。カルシウム(Ca)成分については、地下水や河川の水等に多く含まれ、これが多いと硬水となり、飲料水としても不適当であるが、カルボン酸や、スルホン酸等の酸性成分と、また多くの配位子と配位化合物、すなわち、錯体を形成しやすく、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成する。
カルシウム(Ca)成分は60ppm以下、好ましくは0〜30ppmである。マグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると不溶分を生ずるため、0〜70ppmであることが好ましく、特に0〜20ppmであることが好ましい。鉄(Fe)分の含量、カルシウム(Ca)分含量、マグネシウム(Mg)分含量等の金属成分は、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行なった後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析を行なうことによって求めることができる。
(有機溶媒)
セルロースエステルを溶解してドープ(溶液)の形成に有用な有機溶媒としては、塩素系有機溶媒と非塩素系有機溶媒がある。塩素系の有機溶媒としてメチレンクロライド(塩化メチレン)を挙げることができ、セルロースエステル、特にセルローストリアセテートの溶解に適している。
昨今の環境問題から非塩素系有機溶媒の使用が検討されている。非塩素系有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができる。
これらの有機溶媒をセルローストリアセテートに対して使用する場合には、常温での溶解方法も使用可能であるが、高温溶解方法、冷却溶解方法、高圧溶解方法等の溶解方法を用いることにより不溶解物を少なくすることができるので好ましい。セルローストリアセテート以外のセルロースエステルに対しては、メチレンクロライドを用いることはできるが、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンが好ましく使用される。特に酢酸メチルが好ましい。本発明において、上記セルロースエステルに対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
本発明において、ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。これらはドープを支持体に流延後溶媒が蒸発をし始めアルコールの比率が多くなるとドープ膜(ウェブ)がゲル化し、ウェブを丈夫にし、金属持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらのうちドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。これらの有機溶媒は単独ではセルロースエステルに対して溶解性を有していないので貧溶媒という。
ドープ中のセルロースエステルの濃度は15〜30質量%、ドープ粘度は100〜500Pa・sの範囲に調製されることが良好なフィルム面品質を得る上で好ましい。
ドープ中に添加される添加剤としては、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、マット剤などの微粒子がある。本発明において、これらの添加剤はセルロースエステル溶液の調製の際に添加してもよいし、マット剤などの微粒子分散液の調製の際に添加してもよい。
液晶画像表示装置に使用する偏光板には、耐熱・耐湿性を付与する可塑剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤等を添加することが好ましい。下記に添加剤について説明する。
(可塑剤)
本発明において、セルロースエステル溶液またはドープには、いわゆる可塑剤として知られる化合物を、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水蒸気透過率低減、リターデーション調整等の目的で添加することが好ましく、例えばリン酸エステルやカルボン酸エステルが好ましく用いられる。
リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。
カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルホスフェート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることができ、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく用いられる。またこれらアルキルフタリルアルキルグリコレートを2種以上混合して使用してもよい。
また、多価アルコールエステルも好ましく用いられる。
本発明において用いられる多価アルコールは、次の一般式で表される。
R1−(OH)n
ただし、式中、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表す。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることがさらに好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、また、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
これらの化合物は、セルロースエステルに対して1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%となるように含まれていることが好ましい。また、延伸及び乾燥中のブリードアウト等を抑制させるため、200℃における蒸気圧が1400Pa以下の化合物であることが好ましい。
これらの化合物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
この他の添加剤として、特開2002−22956号公報に記載のポリエステル、ポリエステルエーテル、特開2003−171499号公報に記載のウレタン樹脂、特開2002−146044号公報に記載のロジン及びロジン誘導体、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂、特開2003−96236号公報に記載の多価アルコールとカルボン酸とのエステル、特開2003−165868号公報に記載の一般式(1)で示される化合物、特開2004−292696号公報に記載のポリエステル重合体またはポリウレタン重合体等が挙げられる。これらの添加剤は、ドープもしくは微粒子分散液に含有させることができる。
(紫外線吸収剤)
本発明において、セルロースエステルフィルムには、紫外線吸収剤を含有させることができる。
使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報、特開2001−72782号公報に記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報、特開2002−31715号公報、特開2002−169020号公報、特開2002−47357号公報、特開2002−363420号公報、特開2003−113317号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を好ましく使用できる。高分子紫外線吸収剤としては、大塚化学社製の反応型紫外線吸収剤RUVA−93を例として挙げることができる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、ドープ中で紫外線吸収剤が溶解するようなものであれば制限なく使用できるが、本発明においては紫外線吸収剤をメチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等のセルロースエステルに対する良溶媒、または良溶媒と低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)のような貧溶媒との混合有機溶媒に溶解し紫外線吸収剤溶液としてセルロースエステル溶液に添加するかまたは直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とポリマー中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の含有量は0.01〜5質量%、特に0.5〜3質量%である。
本発明においては、これら紫外線吸収剤を単独で用いても良いし、異なる2種以上の混合で用いても良い。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
(微粒子)
本発明の光学フィルムには、滑り性を付与するため、あるいは物性を改善するために、マット剤等の微粒子を添加することができる。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられ、その形状としては、球状、平板状、棒状、針状、層状、不定形状等が用いられる。
無機化合物の微粒子の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレイ、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、及びリン酸カルシウム等の金属酸化物、水酸化物、ケイ酸塩、リン酸塩、炭酸酸塩を挙げることができる。
有機化合物の微粒子の例としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の微粒子が挙げことができ、シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元網状状構造を有するものが好ましい。例えばトスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(東芝シリコーン株式会社製)を挙げることができる。
中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低くできるので、好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子は、有機物によって表面処理されていることが多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。
微粒子の平均粒径は大きい方が、滑り性効果は大きく、反対に、平均粒径が小さい方は透明性に優れる。また、微粒子の平均粒径は、0.005〜1.0μmの範囲である。これらの一次粒子であっても、凝集によってできた二次粒子であっても良い。微粒子の含有量は、樹脂に対して1mあたり0.01〜20g含有させることが好ましい。
二酸化ケイ素微粒子としては、例えばアエロジル株式会社製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,R805、OX50、TT600などを挙げることができ、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合は、任意の割合で混合して使用することができる。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えばアエロジル200VとR972Vを質量比で、0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用できる。
上記マット剤として用いられるフィルム中の微粒子の存在は、別の目的として、フィルムの強度向上のために用いることができる。
(界面活性剤)
本発明で用いられるドープあるいは微粒子分散液には、界面活性剤を含有することが好ましく、リン酸系、スルフォン酸系、カルボン酸系、ノニオン系、カチオン系等特に限定されない。これらは、例えば特開昭61−243837号公報等に記載されている。界面活性剤の添加量は、セルロースアシレートに対して0.002〜2質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%未満であれば添加効果を十分に発揮することができず、添加量が2質量%を超えると、析出したり、不溶解物を生じたりすることがある。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリグリシジルやソルビタンをノニオン性親水性基とする界面活性剤であり、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレンーポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルを挙げることができる。
アニオン系界面活性剤としてはカルボン酸塩、硫酸塩、スルフォン酸塩、リン酸エステル塩であり、代表的なものとしては脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、α−オレフィンスルフォン酸塩、ジアルキルスルフォコハク酸塩、α−スルフォン化脂肪酸塩、N−メチル−Nオレイルタウリン、石油スルフォン酸塩、アルキル硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニールエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩ホルムアルデヒド縮合物等である。
カチオン系界面活性剤としてはアミン塩、4級アンモニウム塩、ピリジウム塩等を挙げることができ、第1〜第3脂肪アミン塩、第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等)を挙げることができる。両性系界面活性剤としてはカルボキシベタイン、スルフォベタイン等であり、N−トリアルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン等である。
フッ素系界面活性剤は、フルオロカーボン鎖を疎水基とする界面活性剤である。
(剥離促進剤)
さらに、剥離時の荷重を小さくするための剥離促進剤も、ドープに添加してもよい。それらは、界面活性剤が有効であり、リン酸系、スルフォン酸系、カルボン酸系、ノニオン系、カチオン系等があるが、これらに特に限定されない。これらの剥離促進剤は、例えば特開昭61−243837号公報等に記載されている。特開昭57−500833号公報にはポリエトキシル化リン酸エステルが剥離促進剤として開示されている。特開昭61−69845号公報には非エステル化ヒドロキシ基が遊離酸の形であるモノまたはジリン酸アルキルエステルをセルロースエステルに添加することにより迅速に剥離できることが開示されている。また、特開平1−299847号公報には非エステル化ヒドロキシル基及びプロピレンオキシド鎖を含むリン酸エステル化合物と無機物粒子を添加することにより剥離荷重が低減できることが開示されている。
(その他の添加剤)
この他、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩等の熱安定剤を加えてもよい。さらに帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤等も加える場合がある。
つぎに、本発明による光学フィルムの製造方法は、溶液流延製膜法によるもので、ドープ調製工程、流延工程、乾燥工程、及び巻取り工程を具備するものである。
溶解工程
まず、熱可塑性樹脂フィルム原料(高分子材料)の例としてセルロースエステルについて説明すると、セルロースエステルの溶解は、溶解釜中での撹拌溶解方法、加熱溶解方法、超音波溶解方法等の手段が、通常用いられ、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。また、特開平9−95538号公報記載の冷却溶解方法、あるいはまた特開平11−21379号公報記載の高圧下で溶解する方法なども用いてもよい。
セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤、あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤と混合して溶解する方法も好ましく用いられる。このとき、セルロースエステルを貧溶媒と混合して湿潤あるいは膨潤させる装置と、良溶剤と混合して溶解する装置を別々に分けても良い。
本発明において、セルロースエステルの溶解に用いる溶解釜(加圧容器)の種類は、特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、攪拌ができればよい。溶解釜(加圧容器)には、その他、圧力計、温度計などの計器類を適宜配設する。加圧は窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行なってもよい。加熱は外部から行なうことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易であるので、好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、使用する溶剤の沸点以上で、2種類以上の混合溶剤の場合は、沸点が低い方の溶剤の沸点以上の温度に加温しかつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましい。加熱温度が高すぎると、必要とされる圧力が大きくなり、生産性が悪くなる。好ましい加熱温度の範囲は20〜120℃であり、30〜100℃が、より好ましく、40〜80℃の範囲がさらに好ましい。また圧力は、設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。
セルロースエステルと溶剤の他に、必要な可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
セルロースエステルの溶解後は、冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して、熱交換器などで冷却し、得られたセルロースエステルのドープを製膜に供するが、このときの冷却温度は、常温まで冷却してもよい。
本発明の方法において、セルロースエステルドープは、これを濾過することによって、異物、特に液晶表示装置において、画像と認識し間違う異物は、これを除去しなければならない。光学フィルムとしての品質は、この濾過によって決まるといってもよい。
流延工程
溶解釜で調整されたドープを、導管によって流延ダイに送液し、無限に移送する無端の支持体すなわち例えば回転駆動ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体上の流延位置に、流延ダイからドープを流延する工程である。支持体の表面は鏡面となっている。
図7に示すように、前後一対のドラム(2)(3)に巻き掛けられたエンドレスベルトよりなるベルト支持体(1)の上部移行部の表面(キャスト面)上に、フィルムの原料溶液であるドープを流延するドープ流延ダイ(4)が具備されている。ここで、ベルト支持体(1)が巻き掛けられている前側ドラム(2)は、例えば温水ドラムであり、後側ドラム(3)は例えば冷水ドラムである。
流延ダイ(例えば加圧型ダイス)(4)は、口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすいため好ましい。流延ダイ(4)には、コートハンガーダイスやTダイス等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために流延ダイを支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。そして、ドープ粘度が1〜200ポイズになるように調整されたドープを、流延ダイ(4)からベルト支持体(1)上にほぼ均一な膜厚になるよう流延する。
本発明においては、例えばセルロースエステル系樹脂を溶媒に溶解したドープ(溶液)を流延ダイ(4)から、走行するベルト支持体(1)上に流延して、製膜する。
ここで、本発明の請求の範囲第1項〜第5項の発明では、前後一対の回転駆動ドラム(2)(3)に巻き掛けられた金属製エンドレスベルト(ベルト支持体)(1)の左右両側縁よりそれぞれ所定の幅(We)を有するベルト支持体の左右両端部分(1b)の厚み(Te)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分(1a)の厚み(T)よりも薄い。
また、請求の範囲第6項〜第10項の発明では、幅1.8m以上の広幅のベルト支持体(1)の左右両側縁よりそれぞれ所定の幅(We)を有するベルト支持体の左右両端部分(1b)の縦弾性係数(Ee)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分(1a)の縦弾性係数(E)よりも小さい。
本発明のいずれの方法によっても、広幅のベルト支持体(1)をフィルム生産に用いた場合でも、蛇行が少なく、安定した搬送状態を保ち、流延フィルム(ウェブ)端部の乾燥不良や、フィルムの平面性の劣化がなく、安定した高生産性を得ることができる。
溶媒蒸発工程
エンドレスベルト(ベルト支持体)上に流延されたドープにより形成されたドープ膜(ウェブ)を、ベルト支持体上で加熱し、ベルト支持体からウェブが剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法、及び/またはベルト支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等がある。
剥離工程
ベルト支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離ロールで剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(後述の式)があまり大き過ぎると、ウェブが剥離し難かったり、逆に、ベルト支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。本発明において、薄手のウェブを支持体から剥離する際、平面性の劣化や、ツレがないように行なうには、剥離張力として剥離できる最低張力から170N/m以内の力で剥離することが好ましく、140N/m以内の力がより好ましい。
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることができる)としてゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。支持体上でゲル化させ剥離時の膜の強度を上げておくことによって、剥離を早め製膜速度を上げることができるのである。支持体上でのウェブの乾燥が条件の強弱、支持体の長さ等により5〜150質量%の範囲で剥離することができるが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや、縦スジが発生しやすく、経済速度と品質との兼ね合いで剥離の際の残留溶媒量が決められる。従って、本発明においては、該支持体上の剥離位置における温度を10〜40℃とすることが好ましく、15〜30℃とすることがより好ましい。
製造時のセルロースエステルフィルムが良好な平面性を維持するために、支持体から剥離する際の残留溶媒量を10〜150質量%とすることが好ましく、より好ましくは70〜150質量%であり、さらに好ましくは100〜130質量%である。残留溶剤中に含まれる良溶剤の比率は50〜90%が好ましく、さらに好ましくは、60〜90%であり、特に好ましくは、70〜80%である。
本発明において、残留溶媒量は下記の式で表すことができる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量で、下記のガスクロマトグラフィーにより測定した質量であり、Nは該Mを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。測定は、例えばヒューレット・パッカード社製ガスクロマトグラフィー5890型SERISIIと、ヘッドスペースサンプラーHP7694型を使用して行なうことができる。
乾燥工程
支持体からの剥離後、一般的には、ウェブを複数の搬送ロールに交互に通して搬送するロール乾燥装置、及びウェブの両端を把持して搬送するテンター装置を用いてウェブを乾燥する。ウェブ(フィルム)乾燥手段としては、ウェブ(フィルム)の表面に温風を吹き付けるのが一般的である。
延伸工程
テンター装置による延伸工程においては、例えばセルロースエステルフィルムを製造する際の延伸倍率は、製膜方向もしくは幅手方向に対して、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍である。2軸方向に延伸する場合、高倍率で延伸する側が、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍であり、もう一方の方向の延伸倍率は0.8〜1.5倍、好ましくは0.9〜1.2倍に延伸することができる。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸は、テンター装置によって行なうことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
テンター装置による延伸工程の後に、後乾燥工程を設けることが、好ましい。後乾燥工程でのフィルム搬送張力は、ドープの物性、剥離時及びフィルム搬送工程での残留溶媒量、後乾燥工程での温度等に影響を受けるが、30〜250N/mが好ましく、60〜150N/mがさらに好ましい。80〜120N/mが最も好ましい。
後乾燥工程での搬送方向へフィルムの伸びを防止する目的で、テンションカットロールを設けることが好ましい。乾燥終了後、巻き取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。
巻き取り工程
乾燥が終了したウェブを、フィルムとして巻取り装置によって巻き取り、光学フィルムの元巻を得る工程である。乾燥を終了するフィルム14の残留溶媒量は、0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以下とすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
フィルムの巻き取り方法は、一般に使用されているワインダーを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の張力をコントロールする方法があり、それらを使い分ければよい。
本発明による光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、液晶表示装置の薄型化の観点から、仕上がりフィルムとして10〜150μmの範囲が好ましく、さらに30〜100μmの範囲がより好ましく、特に40〜80μmの範囲が好ましい。
フィルムの膜厚が薄過ぎると、例えば偏光板用保護フィルムとしての必要な強度が得られない場合がある。フィルムの膜厚が厚過ぎると、従来のセルロースエステルフィルムに対して薄膜化の優位性がなくなる。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、流延ダイの口金のスリット間隙、流延ダイの押し出し圧力、支持体の速度等をコントロールするのがよい。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
溶液流延製膜法を通しての流延直後からの乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気で行なってもよい。ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことはもちろんである。
本発明による光学フィルムは、良好な透湿性、寸法安定性等から液晶表示用部材、詳しくは偏光板用保護フィルムに用いられるのが好ましい。特に、透湿度と寸法安定性に対して共に厳しい要求のある偏光板用保護フィルムにおいて、本発明による光学フィルムは好ましく用いられる。
一般的に、セルロ−スエステルフィルムを偏光板保護フィルムとして使用する場合、偏光子との接着性を良好なものにするため、アルカリ鹸化処理が行なわれる。アルカリ鹸化処理後のフィルムと偏光子とをポリビニルアルコール水溶液を接着剤として接着するため、セルロ−スエステルフィルムのアルカリ鹸化処理後の水との接触角が高いとポリビニルアルコールでの接着ができず偏光板保護フィルムとしては問題となる。
本発明の方法により製造されたセルロ−スエステルフィルムをLCD用部材として使用する際、フィルムの光漏れを低減するため高い平面性が要求されるが、光学フィルムの中心線平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601に規定されており、測定方法としては、例えば触針法もしくは光学的方法等が挙げられる。
本発明において、セルロ−スエステルフィルムの中心線平均粗さ(Ra)としては、20nm以下が好ましく、さらに好ましくは、10nm以下であり、特に好ましくは、4nm以下である。
つぎに、本発明の方法により製造されたセルロ−スエステルフィルムを偏光板用保護フィルムとして使用した偏光板、および該偏光板を用いた液晶表示装置について説明する。
偏光板は一般的な方法で作製することができる。アルカリ鹸化処理した本発明によるセルロ−スエステルフィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面にも本発明によるセルロ−スエステルフィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本発明によるセルロ−スエステルフィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは市販のセルロースエステルフィルムを用いることができる。例えば、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2M、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UX−RHA−N(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)等が好ましく用いられる。あるいは、セルロースエステルフィルム以外の環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート等のフィルムをもう一方の面の偏光板保護フィルムとして用いてもよい。この場合は、ケン化適性が低いため、適当な接着層を介して偏光板に接着加工することが好ましい。
偏光板は、本発明によるセルロ−スエステルフィルムを偏光子の少なくとも片側に偏光板保護フィルムとして使用したものである。その際、該セルロ−スエステルフィルムの遅相軸が偏光子の吸収軸に実質的に平行または直交するように配置されていることが好ましい。
この偏光板が、横電界スイッチングモード型である液晶セルを挟んで配置される一方の偏光板として、本発明によるセルロースエステルフィルムが液晶表示セル側に配置されることが好ましい。
偏光板に好ましく用いられる偏光子としては、ポリビニルアルコール系偏光フィルムが挙げられ、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。ポリビニルアルコール系フィルムとしては、エチレンで変性された変性ポリビニルアルコール系フィルムが好ましく用いられる。偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行なったものが用いられている。
偏光子の膜厚は5〜40μm、好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。該偏光子の面上に、本発明によるセルロ−スエステルフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。また、セルロースエステルフィルム以外の樹脂フィルムの場合は、適当な粘着層を介して偏光板に接着加工することができる。
偏光子は一軸方向(通常は長手方向)に延伸されているため、偏光板を高温高湿の環境下に置くと、延伸方向(通常は長手方向)は縮み、延伸に対して直交する方向(通常は幅方向)には伸びる。偏光板保護フィルムの膜厚が薄くなるほど偏光板の伸縮率は大きくなり、特に偏光子の延伸方向の収縮量が大きい。通常、偏光子の延伸方向は偏光板保護フィルムの流延方向(MD方向)と貼り合わせるため、偏光板保護フィルムを薄膜化する場合は、特に流延方向の伸縮率を抑えることが重要である。本発明によるセルロ−スエステルフィルムは寸法安定に優れるため、このような偏光板保護フィルムとして好適に使用される。
偏光板は、さらに該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
本発明により作製された光学フィルムを用いた液晶表示装置は、画面上にムラ等のない優れた品質を有する。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1〜17
実施例1〜17は、請求の範囲第1項〜第4項の発明に対応するもので、本発明の光学フィルムの製造方法により溶液流延製膜法による目標ドライ膜厚80μmのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造するにあたり、まずドープを調製した。
(ドープの調製)
セルロースアセテートプロピオネート 100質量部
(アセチル基置換度1.95、プロピオニル基置換度0.7)
トリフェニルホスフェート 10質量部
エチルフタレルグリコール 2質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1質量部
AEROSIL 200V(日本アエロジル社製) 0.1質量部
上記の材料を、順次密閉容器中に投入し、容器内温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行なって、セルローストリアセテートプロピオネートを完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、液温を43℃まで下げた。このドープを濾過器に送液して、濾紙(安積濾紙株式会社製、安積濾紙No.244)を使用して濾過し、流延用ドープを得た。
上記のように調製したドープを、35℃に保温した流延ダイを通して、ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなるベルト支持体上に流延して膜(ウェブ)を形成し、ウェブ中の残留溶媒量が80質量%になるまでベルト支持体上で乾燥させた後、剥離ロールによりフィルムをベルト支持体から剥離し、その後、ロール搬送しつつ乾燥し、巻取り機により巻き取って、最終的には幅1700mmのセルローストリアセテートプロピオネートフィルムを作製した。
ここで、図1に示すベルト支持体(1)としては、1900mm幅を有し、下記の表1に示すように、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の2〜25%の幅(We)を有するベルト支持体の左右両端部分(1b)の厚み(Te)を、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分(1a)の厚み(T)よりも、5〜20%の範囲で薄くした本発明の範囲内であるベルト支持体(1)を使用した。
累積500時間の製膜運転後、下記のベルト端部変形量、ベルト蛇行量(ベルト搬送性)、及びベルト端部観察(ベルト端部乾燥)の3点で評価を行なった。得られた結果を表1にあわせて示した。
ベルト端部変形量:ベルト端部(1b)とベルト中央部(1a)との高さの差(d)を、図8に示すように測定した。測定には、株式会社キーエンス製のレーザ変位計LK−010を用い、ベルト最端部(1b)とベルト中央部(1a)の2箇所を、長手10mmおきに1000点測定し、ベルト端部(1b)とベルト中央部(1a)の高さの差(d)をプロットし、ピーク高さを最大値から大きい順に10点取り出し、その平均値をベルト端部変形量とした。
ベルト端部変形量の評価は、ベルト端部(1b)とベルト中央部(1a)の高さの差(d)が、300μm以下を◎、500μm以下を○、1000μm以下を△、1000μmより大きいものを×、とランク分けして評価した。
ベルト蛇行量:図7に示すように、ベルト支持体(1)による搬送時の蛇行制御を、ベルト支持体(1)を回転駆動する前後一対の回転ドラム(2)(3)の回転軸同士の作る角度を変化させ、一方の前側の回転ドラム(2)の回転軸を、ベルト支持体(1)の進行方向と直角より多少ずらす方法により行なった。そして、制御を行なっている駆動ドラム(2)の直前で、株式会社キーエンスLS3000でベルト端部(1b)の位置を測定し、ベルト全幅(W)に対する蛇行量を算出した。
ベルト蛇行量の評価は、ベルト蛇行量が±0.2%以下である場合を、蛇行が少なく、安定した搬送状態を保つという意味で、搬送性が◎、ベルト蛇行量が±0.3%以下を〇、ベルト蛇行量が±0.5%以下を△、ベルト蛇行量が±0.5%より大きいものを×、とランク分けして評価した。
ベルト端部観察:剥離直後のベルト表面を観察し、剥離残りの有無を確認した。
ベルト端部観察の評価は、剥離残りなしを、ベルト端部乾燥が○、剥離残り発生を△、ベルト端部乾燥が×、とランク分けして評価した。
比較例1〜25
比較のために、上記実施例1の場合と同様に、1900mm幅を有するベルト支持体を用いて幅1700mmのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製するが、実施例1の場合と異なる点は、下記の表2に示すように、ベルト支持体(1)の左右端部分(1b)の幅(We)、および/またはベルト支持体(1)の左右端部分(1b)の厚み(Te)が、本発明の範囲外の割合のもの(*印を記載)とした点にある。
累積500時間の製膜運転後、上記実施例1の場合と同様に、ベルト端部変形量、ベルト蛇行量(ベルト搬送性)、及びベルト端部観察(ベルト端部乾燥)について、同様に評価を行なった。得られた結果を、下記の表2にあわせて示した。
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜17によれば、ベルト端部変形量、ベルト蛇行量(ベルト搬送性)、及びベルト端部観察(ベルト端部乾燥)についての評価がいずれも高く、広幅のベルト支持体をフィルムの生産に用いた場合に発生するフィルム両端部の変形を小さくするために、ベルト支持体の左右両側のベルト端部(あるいは縁部)の厚みを薄くすることで、蛇行制御時にベルト支持体に加わる応力が小さくなり、長時間運転後のベルト支持体両端部の変形が抑制されており、広幅のベルト支持体をフィルム生産に用いた場合でも、蛇行が少なく、安定した搬送状態を保ち、流延フィルム(ウェブ)端部の乾燥不良や、フィルムの平面性の劣化がなく、安定した高生産性を得ることができた。
中でも、10(%)≦(We/W)×100≦20(%)、及び、8(%)≦(1−Te/T)×100≦15(%)を満足する実施例4〜6、8〜10、12〜14については、特に高い効果が確認された。
これに対し、比較例1〜25では、ベルト端部変形量、ベルト蛇行量(ベルト搬送性)、及びベルト端部観察(ベルト端部乾燥)について、いずれか1つ、または2つの評価が低いものであり、すべての比較例1〜25において、流延フィルム(ウェブ)端部の乾燥不良が生じ、かつ比較例によっては、ベルトの蛇行量が多く、搬送状態が不安定であった。
なお、上記実施例1〜17、比較例1〜25では幅1900mmのベルト支持体を用いて、幅1700mmのフィルムを作製したが、剥離後の製膜条件によってはより広いフィルムの作製は可能である。また、ベルト支持体の幅が1900mmよりも大きい場合には、より広い幅のフィルムが作製できる。
実施例18〜23
実施例18〜23は、請求の範囲第6項〜第10項の発明に対応するもので、全幅500mm、長さ1000mmのベルトテストサンプルピース(ベルト支持体)(11)を準備した。各ベルトテストサンプルピース(11)のサンプルピース本体(11a)の一側縁には、サンプルピース端部分(11b)が溶接されている。
ベルトテストサンプルピース(11)の材質はSUS316(縦弾性係数220[GPa])を用いた。また、サンプルピース端部分(11b)は、SUS316の処理温度の異なる2種類の材質(縦弾性係数220、200[GPa])、SUS304(縦弾性係数190[GPa])、SUS405の処理温度の異なる2種類の材質(縦弾性係数180、175[GPa])を適宜組み合わせて、縦弾性係数を調整した。
ここで、サンプルピース端部分(11b)は、下記の表3に示すように、ベルトテストサンプルピース(ベルト支持体)(11)の一側縁よりベルトテストサンプルピース(ベルト支持体)(11)の全幅(W)の2〜25%の幅(We)を有するもので、サンプルピース端部分(11b)の縦弾性係数(ヤング率)(Ee)を、その他のサンプルピース本体(11a)の縦弾性係数(E)よりも、5〜20%の本発明の範囲内で小さくしたものである。これらのベルトテストサンプルピース(11)を、図9と図10に示す装置にセットし、繰り返し荷重を与え、ベルトテストサンプルピース(ベルト支持体)(11)の端部の変形量を測定した。
図9と図10に示すように、ベルトテストサンプルピース(ベルト支持体)(11)を、直径100mmのロール(12)にラップ角180°でかけまわし、ベルトテストサンプルピース(ベルト支持体)(11)の長手方向の両端を、壁(14)に固定する。ロール(12)は、ロール軸(13)の片側の端部(13a)を支点に、図示されない往復駆動源により全体が首振り運動をするようになっている。ロール軸(13)の稼動側の端部(13b)には、張力計(15)が取り付けられ、ベルトテストサンプルピース(ベルト支持体)(11)の端部に加わる張力が測定できるようになっており、この張力が9800Nとなるようにベルトを固定する。その状態で張力が±10%変動するように稼動側ロール軸を0.5Hzで振動させる。このテストを100時間実施した後のベルトテストサンプルピース(ベルト支持体)(11)の端部の変形量を同様に測定し、上記実施例1の場合と同様の基準で評価した。得られた結果を、下記の表3に示した。
比較例26〜32
比較のために、上記実施例18の場合と同様に、全幅500mm、長さ1000mmのベルトテストサンプルピース(ベルト支持体)(11)を用いて実施するが、実施例18の場合と異なる点は、下記の表3に示すように、サンプルピース端部分(11b)の幅(We)、および/またはサンプルピース端部分(11b)の厚み(Te)が、本発明の範囲外の割合のもの(*印を記載)とした点にある。これらのベルトテストサンプルピース(11)を、上記実施例18〜23の場合と同様に、図9と図10に示す装置にセットし、繰り返し荷重を与え、ベルトテストサンプルピース(ベルト支持体)(11)の端部の変形量を測定し、得られた結果を、下記の表3にあわせて示した。
上記表3の結果から明らかなように、本発明の実施例18〜23によれば、ベルト端部変形量についての評価が高く、ベルトテストサンプルピース(ベルト支持体)(11)のベルト端部(あるいは縁部)の縦弾性係数を小さくすることで、蛇行制御時にベルト支持体(11)に加わる応力が小さくなり、長時間運転後のベルト支持体端部の変形が抑制されて、蛇行が少なく、安定した搬送状態を保ち得ることを確認した。
なお、上記実施例18〜23では、全幅500mm、長さ1000mmのベルトテストサンプルピース(ベルト支持体)(11)を用いて実験を行なったが、得られた結果から、本発明の幅1.8m以上の広幅のベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の2〜25%の幅(We)を有するベルト支持体の左右両端部分の縦弾性係数(Ee)を、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の縦弾性係数(E)よりも、5〜20%小さくすることで、広幅のベルト支持体をフィルムの生産に用いた場合に発生するフィルム両端部の変形を小さくすることができ、蛇行制御時にベルト支持体に加わる応力が小さくなり、長時間運転後のベルト支持体両端部の変形が抑制されて、蛇行が少なく、安定した搬送状態を保ち、ひいては流延フィルム(ウェブ)端部の乾燥不良や、フィルムの平面性の劣化がなく、安定した高生産性を得ることを確認することができた。
これに対し、比較例26〜32では、ベルト端部変形量についての評価が低いものであり、ベルトの蛇行量が多く、搬送状態が不安定であった。

Claims (12)

  1. 熱可塑性樹脂フィルム原料を溶媒に溶解したドープ(溶液)を、流延ダイから幅1.8m以上のベルト支持体上に流延し、ベルト支持体上から剥離したウェブ(フィルム)を乾燥させて、光学フィルムを製造する方法であって、前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の2〜25%の幅(We)を有する左右両端部分の厚み(Te)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の厚み(T)よりも、5〜20%薄いことを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
  2. 前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の2〜25%の幅(We)を有する左右両端部分の厚み(Te)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の厚み(T)よりも、8〜15%薄いことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の10〜20%の幅(We)を有する左右両端部分の厚み(Te)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の厚み(T)よりも、5〜20%薄いことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の10〜20%の幅(We)を有する左右両端部分の厚み(Te)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の厚み(T)よりも、8〜15%薄いことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 前記ベルト支持体は、ベルト支持体の厚みの薄い左右両端部分と、幅中央部を含むその他の厚みの厚い部分とが溶接により一体化されたものであることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第4項の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 熱可塑性樹脂フィルム原料を溶媒に溶解したドープ(溶液)を、流延ダイから幅1.8m以上のベルト支持体上に流延し、ベルト支持体上から剥離したウェブ(フィルム)を乾燥させて、光学フィルムを製造する方法であって、前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の2〜25%の幅(We)を有する左右両端部分の縦弾性係数(Ee)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の縦弾性係数(E)よりも、5〜20%小さいことを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
  7. 前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の2〜25%の幅(We)を有する左右両端部分の縦弾性係数(Ee)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の縦弾性係数(E)よりも、8〜15%小さいことを特徴とする請求の範囲第6項に記載の光学フィルムの製造方法。
  8. 前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の10〜20%の幅(We)を有する左右両端部分の縦弾性係数(Ee)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の縦弾性係数(E)よりも、5〜20%小さいことを特徴とする請求の範囲第6項に記載の光学フィルムの製造方法。
  9. 前記ベルト支持体は、ベルト支持体の左右両側縁よりそれぞれベルト支持体全幅(W)の10〜20%の幅(We)を有する左右両端部分の縦弾性係数(Ee)が、ベルト支持体の幅中央部を含むその他の部分の縦弾性係数(E)よりも、8〜15%小さいことを特徴とする請求の範囲第6項に記載の光学フィルムの製造方法。
  10. 前記ベルト支持体は、ベルト支持体の縦弾性係数の小さい左右両端部分と、幅中央部を含むその他の縦弾性係数の大きい部分とが溶接により一体化されたものであることを特徴とする請求の範囲第6項乃至第9項の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  11. 前記光学フィルムの幅が1.7m以上であることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第10項の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  12. 前記熱可塑性樹脂フィルム原料は、セルロースエステルを含むことを特徴とする請求の範囲第1項乃至第11項の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
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