JP2008107778A - 光学フィルム及びその製造方法、偏光板用保護フィルム、及びそれを用いた偏光板、並びに液晶表示装置 - Google Patents

光学フィルム及びその製造方法、偏光板用保護フィルム、及びそれを用いた偏光板、並びに液晶表示装置 Download PDF

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【課題】 偏光板保護フィルムに適した光学フィルム、及びその製造方法を提供する。また偏光板用保護フィルム自身が偏光散乱異方性を有することで、ディスプレイの光学特性、特に輝度が向上でき、生産性及び耐久性に優れた偏光板用保護フィルム、および該偏光板用保護フィルムを用いた偏光板、並びに該偏光板を用いた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法は、ドープが支持体上に流延されてから0.2秒以上、30秒以内の間に下式を満たす条件で、支持体上のウェブを乾燥させる。
30≦Z≦−5.40T+420
Z:ウェブ残留溶剤量(重量%)、Z={(M−N)/N}×100、
M:ウェブ重量、N:重量Mのウェブの乾燥後の重量、T:膜平均温度(℃)
【選択図】 図1

Description

本発明は、液晶表示装置(LCD)あるいは有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレー等の各種の表示装置に用いられる光学フィルム、及びその製造方法、特にこれら表示装置に用いられる偏光板用保護フィルム、及びそれを用いた偏光板、並びに液晶表示装置に関し、より詳しくは、輝度向上機能付き偏光板用保護フィルム、輝度向上機能と偏光板保護機能が一体化されたフィルムを少なくとも片面に備えた偏光板、及びそれを用いた液晶表示装置に関するものである。
一般に、自然光や人為的光源からの光は無偏光(ランダム偏光)であるが、偏光板を用いることで、偏光(直線偏光、円偏光、楕円偏光)成分を取り出すことができる。現在、広く普及している液晶表示装置は、該偏光板を組み込むことにより偏光の性質を利用して画像を表示する装置であるとも言える。
偏光板に用いられる偏光フィルムとしては、一般にポリビニルアルコール系フィルムからなる光吸収型偏光フィルムが用いられている。ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸しヨウ素または二色性染料を吸着することにより製造する。
偏光フィルムの透過軸(偏光軸)は、フィルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。光吸収型偏光フィルムは、偏光軸に平行な偏光成分のみを透過して、それと直交方向の偏光成分を吸収する。従って、光の利用効率は、理論的に50%(実際にはさらに低い値)以下である。
偏光板の光学吸収による損失を抑制する手法として、透過型液晶表示装置において偏光散乱異方性を利用した光源の光利用効率向上手段が知られており、輝度向上フィルムとして広く使用されている。偏光散乱異方性を有する偏光フィルムは、高分子と液晶の複合体を延伸したフィルムが光学的に異方性の散乱体となる性質を利用したものであり(リキッドクリスタルズ、1993年、15巻、NO.3、395〜407頁に記載)、光吸収型偏光フィルムと同様に、偏光軸と平行な偏光成分のみを透過する。たゞし、偏光散乱異方性を有する偏光フィルムは、偏光軸と直交方向の偏光成分を吸収せずに前方もしくは後方に散乱し、偏光フィルムの光の利用効率を向上させる。
特開平9−274108号公報 特開平11−174231号公報 ここで、特許文献1および2には、正の固有複屈折性ポリマーと負の固有複屈折性ポリマーをブレンドし一軸延伸することで異方性散乱体を作製する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1および2に記載の延伸による作製方法では、十分な輝度向上効果を得るために高い配向性を出すために、非常に大きな延伸率が必要となり、適用できるポリマー種が限定されてしまうとともに、過大な延伸により、ディスプレー部材として不要なポリマー自身の複屈折率が発生してしまうという問題があった。
一方、偏光板は偏光フィルムの両面に保護フィルムを貼合することで、形状の維持や傷つきを回避するための物理的な保護及び、光、熱、酸素、水分等に基づく環境変化に基づく耐久的な保護を行なう。
偏光板用保護フィルムは、一般にセルロースエステルで構成されたフィルムが使用されているが、該フィルムは、複屈折性を有しており、リタデーション値がフィルム面内やフィルムの厚さ方向に一般に存在する。
特開2003−43261号公報 ここで、特許文献3に記載のように、二色性偏光フィルムの両面に上記リタデーション値をフィルム面内やフィルムの厚さ方向に有する保護フィルムを貼合して偏光板を形成し、該偏光板の一方の面にさらに偏光散乱異方性を有するフィルム(輝度向上フィルム)が貼合された構成が、一般的であった。
偏光散乱異方性を有するフィルムと二色性偏光フィルムが、上述のような配置であるときに、その間に複屈折性を有するフィルムが存在すると、これが位相差フィルムとしての機能として作用することになる。
結果として、両者の間に複屈折性を有するフィルムが存在すると、ディスプレイの光学特性において透過率や色味の変化を与えることとなり、不用な画像表示の要因となってしまう。従って、偏光散乱異方性を有するフィルムと二色性偏光フィルムとの間に複屈折性を示すフィルムが存在しないことが望まれていた。
また、特許文献3には、偏光散乱異方性層として透明支持体上に液晶性化合物を塗布により設ける方法が開示されているが、この方法では生産性が低いという問題があった。
特開2002−86475号公報 特開2003−53750号公報 さらに、特許文献4と5には、不定形粒子を含まないドープを、支持体上に流延後、支持体上でのウェブの乾燥速度について、記載されているが、乾燥中に考慮する必要のあるドープの粘度に影響を与える温度と、残留溶媒量との関係については、記載されていない。
本発明の目的は、偏光板保護フィルムに適した光学フィルム、及びその製造方法を提供しようとすることにある。
また本発明の目的は、偏光板用保護フィルム自身が偏光散乱異方性を有することで、ディスプレイの光学特性、特に輝度が向上でき、生産性及び耐久性に優れた偏光板用保護フィルム、および偏光板用保護フィルムを用いた偏光板、並びに偏光板を用いた液晶表示装置を提供しようとすることにある。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、ポリマーと、有機溶媒と、不定形粒子とを含むドープを、流延ダイから支持体上に流延して、光学フィルムを製造する方法であって、ドープが支持体上に流延されてから0.2秒以上、30秒以内の間に下式を満たす条件で、支持体上のウェブを乾燥させることを特徴としている。
30≦Z≦−5.4T+420
Z:ウェブの任意時点の残留溶剤量(重量%)
Z={(M−N)/N}×100
M:ウェブの任意時点での重量
N:重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量
T:膜平均温度(℃)
請求項2の発明は、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法であって、流延ダイが、マニホールド部およびスリット部を具備するものであり、流延ダイのスリット部のスリットギャップの幅(スリット部の厚み方向の幅)が、ドープ流動方向の下流側に至るほど狭くなされていることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法であって、ダイリップからのドープ押出速度(V)と、支持体の表面移動速度(V)との速度比:RB=V/Vが、1.05≦RB≦20.0の範囲で製膜することを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法であって、支持体上からウェブ(流延膜)を剥離後、乾燥工程を経て、フィルムを巻き取るまでの間に、ウェブを搬送方向(MD方向)に2〜20%の延伸率で延伸する工程を経ることを特徴としている。
ただし、延伸率は以下の式で定義される。
延伸率[%]={(延伸後の長さ−延伸前の長さ)/延伸前の長さ}×100
請求項5の光学フィルムの発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法で作製されたことを特徴としている。
請求項6の偏光板用保護フィルムの発明は、請求項5に記載の光学フィルムよりなることを特徴としている。
請求項7の偏光板の発明は、請求項6に記載の偏光板用保護フィルムを、少なくとも一方の面に有することを特徴としている。
請求項8の液晶表示装置の発明は、請求項7に記載の偏光板を、液晶セルの少なくとも一方の面に有することを特徴としている。
本発明により、偏光板用保護フィルム自身が偏光散乱異方性を有することで、ディスプレイの光学特性、特に輝度が向上でき、生産性及び耐久性に優れた偏光板用保護フィルム、及び偏光板用保護フィルムを用いた偏光板、並びに偏光板を用いた液晶表示装置を提供することができる。
また、本発明による光学フィルムの製造方法は、流延ダイが、マニホールド部およびスリット部を具備するものであり、流延ダイのスリット部のスリットギャップの幅を、ドープ流動方向の下流側に至るほど狭める、すなわち、スリット部を徐々に厚み方向の間隙を狭めるようにすることで、不定形粒子をフィルム中でMD方向に高い配向度で並べることができ、輝度向上効果を高めることができるという効果を奏する。
本発明の光学フィルムよりなる偏光板用保護フィルムを少なくとも一方の面に有する偏光板は、電界による液晶の配向の変化を可視化させる重要な役割を、充分に果たすことができるという効果を奏する。
さらに、本発明の偏光板を、液晶セルの少なくとも一方の面に有する液晶表示装置は、表示品質が非常に優れているという効果を奏する。
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
本発明は、溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法で、ポリマーと有機溶媒と不定形粒子とを含むドープを、流延ダイから支持体上に流延し、支持体上から剥離したウェブ(フィルム)を乾燥させて、光学フィルムを製造するものである。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、ドープが支持体上に流延されてから0.2秒以上、30秒以内の間に下式を満たす条件で、支持体上のウェブを乾燥させるものである。
30≦Z≦−5.4T+420
Z:ウェブの任意時点の残留溶剤量(重量%)
Z={(M−N)/N}×100
M:ウェブの任意時点での重量
N:重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量
T:膜平均温度(℃)
ここで、ドープが支持体上に流延されてから0.2秒未満に、ウェブの乾燥状態を上式の範囲内にしようとすると、非常に高温の乾燥風をウェブに当てる必要があり、ウェブ中の溶剤の沸騰による発泡故障が発生しやすい。
一方、ドープが支持体上に流延されてから30秒を超える場合は、ウェブの固化に時間がかかるため、不定形粒子が熱運動や流延支持体の機械振動等で動いて配向が乱れて、その結果、十分な輝度向上効果を得ることができない。
また、ウェブの任意時点の残留溶剤量Zが、30重量%未満では、支持体表面への不定形粒子の付着汚れが発生したり、ウェブの剥離性が悪化、延伸時に問題が生じたりするので、好ましくない。また、ウェブの任意時点の残留溶剤量Zが、−5.4T+420(重量%)を超える範囲では、不定形粒子の配向は低いものになってしまう。これは、ウェット膜が乾燥してある程度の硬さになるまでに、不定形粒子がブラウン運動や支持体の微弱な振動等で動いて配向が緩和してしまうためと思われる。
というのは、一般的に、ドープの粘度は温度によって変わり、温度が低いと粘度が上昇し、温度が高いと粘度が減少する。残留溶媒量と粘度との関係は、残留溶媒量が少なくなると、粘度が上昇する。つまり、ある一定の粘度にするには、温度を下げるとともに、残留溶媒量を上げる必要がある。
ここで、不定形粒子が配向緩和しないようにするには、0.2秒以上から30秒以内に流延する高粘度にすればよく、ある高粘度以上にするためには、温度によって、ある残留溶媒量以下にする必要がある。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、流延ダイが、マニホールド部およびスリット部を具備するものであり、流延ダイのスリット部のスリットギャップの幅(スリット部の厚み方向の幅)が、ドープ流動方向の下流側に至るほど狭くなされていることが好ましい。
図9と図10は、本発明の溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法において、ドープ流延工程で使用する流延ダイを示すものである。
図9と、図10(a)及び図10(b)を参照すると、本発明で使用する流延ダイ(1)は、配管(2)からマニホールド部(3)に入ったところで、幅手流路の拡大とともに厚さ方向の間隙も小さくなっており、断面積が大きくは拡大しない形状となっている。その後、徐々に厚み方向の間隙を狭めるスリット部(4)を通る形状となっている。
流延ダイ(1)のスリット部(4)の間隙の狭め方は、直線テーパー形状であっても、曲線形状であっても良い。
なお、図示の流延ダイ(1)は、スリット部(4)が、これの上端部より下端部までテーパ状となされているが、これに限定されず、スリット部(4)のテーパ部の下部に、間隙一定の区間(図示略)が設けられていてもよい。
また、本発明では、図9と図10に示されるように、マニホールド部(3)およびスリット部(4)内の断面積:Amを、流延ダイ(2)入口の断面積:A以下になるように、マニホールド部(3)の厚み方向の内壁を曲線的に狭めていくとともに、スリット部(4)を徐々に厚み方向の間隙を狭めるようにすることで、不定形粒子をフィルム中でMD方向に高い配向度で並べることができ、輝度向上効果を高めることができる。
さらに、本発明の光学フィルムの製造方法において、ダイリップからのドープ押出速度(V)と、支持体の表面移動速度(V)との速度比:RB=V/Vが、1.05≦RB≦20.0の範囲で製膜するのが、好ましい。
流延ダイから支持体上にドープを流延する際、このように流延膜を引き延ばし気味にすることで、ウェット膜中の粒子をMD方向に配向させることができる。上記の速度RBの範囲は、1.05≦RB≦20.0であり、好ましくは、1.1≦RB≦6.0である。
ここで、速度比:RB=V/Vが上昇すると、製膜フィルムの厚みが薄くなり、乾燥速度が上昇する。また、不定形粒子の配向緩和が起こりにくい速度比:RBの下限は、後述する実施例で得られた1.05の値である。また、速度比:RB=V/Vが20より大きくなりすぎると、製膜フィルムが連続的にできず、横段(フィルム幅手方向に伸びるシワ)などが発生するので、好ましくない。
さらに、本発明の光学フィルムの製造方法において、支持体上からウェブ(流延膜)を剥離後、乾燥工程を経て、フィルムを巻き取るまでの間に、ウェブを搬送方向(MD方向)に2〜20%の延伸率で延伸する工程を経るものである。
ただし、延伸率は以下の式で定義される。
延伸率[%]={(延伸後の長さ−延伸前の長さ)/延伸前の長さ}×100
本発明による光学フィルムは、上記の光学フィルムの製造方法、すなわち、ポリマーと有機溶媒と不定形粒子とを含むドープを、流延ダイから支持体上に流延し、支持体上から剥離したウェブ(フィルム)を乾燥させて作製されたものである。
ここで、「不定形」とは、粒子の絶対最大長をY、対角幅をXとしたとき、X≠Yであり、また、前記のアスペクト比=Y/Xが2以上ある粒子を指す。本発明では、球状以外の粒子であれば何でも良く、平板状、棒状、楕円体状、針状、層状、糸状等が用いられる。
本発明において、光学的連続相とはポリマーフィルムの各部位の屈折率がほぼ一定で連続している光学相をいい、該屈折率の各部位のばらつきは0.01未満である相をいう。好ましくは屈折率のばらつきは0.005以下であり、特に好ましくは0.001以下である。
そして、本発明による偏光板用保護フィルムは、この光学フィルムよりなり、かつ少なくとも1種類以上のポリマーと、下記式で定義されるアスペクト比が2〜40の不定形粒子とを含む偏光散乱異方性を有する偏光板用保護フィルムである。
アスペクト比=絶対最大長/対角幅
ここで、対角幅とは、絶対最大長に平行な2本の直線で投影された不定形粒子像を挟んだときの2直線間の最短距離を意味する。
ここで、不定形粒子のアスペクト比が2未満の場合は、あまり配向せず、結果として、偏光散乱異方性が弱く、十分な輝度向上効果を得ることができない。一方、不定形粒子のアスペクト比が40を超えると、不定形粒子を液に分散する際に受けるせん断やドープ送液時にポンプを通過するときに折れやすく、結果として、十分な輝度向上効果を得ることができない。
偏光散乱異方性を有するフィルム(輝度向上フィルムともいう)は、特表平11−509014号公報に開示されているように、光学的連続相の屈折率と光学的異方性を有する不定形粒子の透過軸側の屈折率とを実質的に等しくしたフィルムを形成することにより、所定の偏光を選択的に透過し、他の偏光を選択的に散乱し、散乱光を再利用することにより輝度を向上することができる。
しかしながら、偏光散乱異方性を有するフィルムの光の利用率を充分に向上させるには、この他に、光学的連続相は無色透明であり、延伸しやすいことが必要であり、また光学的異方性を有する不定形粒子の透過軸側と遅相軸側の屈折率差が大きいことが必要であるが、これらの要件を具備した材料の選択は極めて困難であった。
本発明は、少なくとも1種類以上のポリマーと、上記式で定義されるアスペクト比が2以上の不定形粒子とを含む偏光散乱異方性を有する偏光板用保護フィルムであって、かつ、偏光板用保護フィルムの製膜方向を0゜、およびフィルムの幅手方向を90°としたとき、各々の不定形粒子の方位角を0.5〜25°にすることで、輝度が向上でき、生産性及び耐久性に優れた偏光板の保護フィルム、及び、該偏光板用保護フィルムを用いた偏光板、及び該偏光板を用いた液晶表示装置を提供できることを見出したものである。
図5は、本発明に係る光学フィルムを主体とした光学的連続相と不定形粒子とを含む偏光散乱異方性を有する偏光板用保護フィルムの模式図である。
図5は、セルロースエステルを主体とした光学的連続相に、光学的異方性を有する不定形粒子が偏光板用保護フィルムの長手方向(MD方向)に大凡一定方向に並んでいる状態を示している。光学的連続相(樹脂)の屈折率をn、不定形粒子の長軸方向の屈折率をn、不定形粒子の短軸方向の屈折率をnとした時、n=n、n<nである時、不定形粒子の短軸方向に平行な偏光は透過し、長軸方向に平行な偏光は散乱する。透過した偏光は光吸収型偏光子の透過軸と平行であれば該偏光子を透過することになる。
以下に、本発明に用いられる不定形粒子の例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
不定形粒子としては、無機化合物粒子または有機化合物粒子が挙げられる。
無機化合物粒子の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、クレイ、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、及びリン酸カルシウム等の金属酸化物、水酸化物、ケイ酸塩、リン酸塩、炭酸酸塩、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、硼酸アルミニウム、塩基性硫酸マグネシウム、グラスファイバーなどが挙げられる。
有機化合物粒子の例としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の微粒子が挙げことができ、シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元網状状構造を有するものが好ましい。例えばトスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(東芝シリコーン株式会社製)を挙げることができる。
また、2種以上の異なる種類(組成)、形状の粒子を併用しても構わない。
本発明に用いる粒子は、セルロースエステル系樹脂との親和性を向上させる目的で種々の表面処理を施しておくことが好ましい。
十分に乾燥させた粒子に対し、脂肪酸系、油脂系、界面活性剤系、ワックス系、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、カルボン酸系カップリング剤、リン酸系カップリング剤、高分子系等各種改質剤を利用できる。
処理方法も、脂肪酸や金属塩、界面活性剤等で表面を被覆させるコーティング法や、粒子表面にカップリング剤を結合させるトポケミカル法、さらには、粒子粉砕工程で有機処理剤を添加していくメカノケミカル法や、モノマーを粒子表面上で重合あるいはグラフト重合で粒子表面をポリマーでまぶすカプセル法など様々な方法がある。
どのような改質剤を使ってどのような方法で粒子表面を処理するかは、粒子種とセルロースエステル系樹脂の組合せによって若干異なるが、脂肪酸系改質剤を使ったコーティング処理法あるいは各種シランカップリング剤によるトポケミカル処理法が好ましい。
上記表面処理した粒子をセルロースエステル系樹脂中に分散させる方法としては大きく分けて、分散機を使用する方法と混練機を使用する方法の2つがある。
前者はさらにメディア分散とメディアレス分散に分けられる。メディア分散としては、ボールミル、サンドミル、ダイノミル等の分散機によるものが挙げられ、メディアレス分散としては、超音波型、遠心型、高圧型等が挙げられるが本発明では、高圧型分散装置での分散あるいは、混練機を使用した分散が好ましい。混練方法としては、ロータが1本あるいは2本の押出機を用い、ホッパから樹脂を投入し、ある程度粘度が低下したところで、サイドから粒子を投入する方法をとることで、粒子の破損を最小限に抑えかつ混練性を高めることができる。混練法を用いる場合、樹脂はセルロースアセテートプロピオネートであることが好ましい。
粒子の配向を製膜時のせん断応力のかかり方やその後の延伸条件、さらには磁場環境下におくなどして制御することで、バックライトの偏光板透過率を上げる効果(いわゆる、輝度向上効果)もある。
本発明に係る光学的異方性を有する不定形粒子は、前記式で定義されるアスペクト比が2以上の不定形粒子である。該アスペクト比は、2〜40の範囲である。
不定形粒子は、複数の形状、素材のものを混ぜ合わせて使用しても良い。
フィルム中の不定形粒子の配向状態及び分散状態の評価は、フィルム中の不定形粒子を電子顕微鏡によって観察した画像データを用いて求めることができる。
画像データから、各々の不定形粒子について、方位角及びアスペクト比を求める。アスペクト比は前記式によって求めることができる。絶対最大長は不定形の長軸の長さ(長軸径)に相当する。
異物もしくは壊れた不定形粒子などのアスペクト比が2未満の粒子は、ノイズとなるため平均方位角や平均粒子間距離の計算から除外し、アスペクト比2以上の各々の粒子について求める。
不定形粒子の絶対最大長をとるときの、基準軸との角度を方位角とする。基準軸はフィルム製造時の搬送方向とする。各々の不定形粒子の方位角を求め、その平均値を用いた。
具体的な評価法を説明すると、作製したフィルムを透過型電子顕微鏡で2万倍で撮影し、その画像をフラットベットスキャナを用いテ、300dpiノモノクロ256階調で読み込んだ。
読み込んだ画像は、パソコンにインストールした画像処理ソフトWinROOF(三谷商事株式会社製)に取り込んだ。
取り込んだ画像について画像前処理として2×2μmの視野の範囲について抽出(自動で画像の2値化)を行なって不定形粒子の画像抽出を行なった。不定形粒子の画像抽出後の画面で不定形粒子の90%以上が抽出されていることを確認し、もし抽出が十分でない場合は検出レベルの手動調整を行ない、粒子の90%以上が検出、抽出されるよう調整を行なう。
観察範囲の不定形粒子の個数が1000個に満たない場合はさらに別の2×2μmの視野の範囲について同様の操作を行ない、不定形粒子の個数が合計で1000個以上になるまで行なった。
このようにして抽出処理した画像データの各々の不定形粒子について、方位角の測定を行なった。不定形粒子の方位角について、図6に基づいて説明する。
図6は、顕微鏡で、不定形粒子を含有するフィルムを2万倍で撮影しスキャナで読み込んだ画像の例を示す。各々の不定形粒子について、基準軸に対する粒子の絶対最大長(長軸方向)の方位角を出す。a1、a2・・・・・an。これらの平均値A=ave(a1〜an)を算出し、方位角とする。粒子数(n)としては、1000個以上を測定し、平均値を算出する。
不定形粒子の方位角は、0.5〜25°が好ましく、さらに0.5〜15°が好ましい。
これらの不定形粒子を含有する偏光板用保護フィルムの製造方法としては、少なくとも不定形粒子と、該不定形粒子の分散用樹脂とを含有する分散液を予め調製し、ついで該分散液と、セルロースエステルとを溶剤と混合することにより調製したドープを用いて、溶液流延する偏光板用保護フィルムの製造方法により得ることができる。また、同様にして溶融流延法により偏光板用保護フィルムを得ることも可能である。
以下、本発明の光学フィルムの製造方法において使用する不定形粒子についてさらに説明する。
本発明の偏光板用保護フィルムを構成するセルロースエステルと不定形粒子の重量分率は、
0<(不定形粒子)/(セルロースエステル)<20
の関係であることが好ましい。さらに、好ましくは
0.001<(不定形粒子)/(セルロースエステル)<15
の関係であることが好ましい。
なお、本発明において、上記不定形粒子の屈折率は、1.3〜3.0の範囲内にあるものが好ましい。
本発明の偏光散乱異方性を有し輝度向上機能を有する偏光板保護フィルムには、該不定形粒子が0.1体積%以上含有されていることが好ましく、含有率の好ましい態様は、不定形粒子種やそのサイズにより各々のケースで異なるが、屈折率が2.0以上の不定形粒子の場合、5体積%以下にすることが好ましく、屈折率が1.3〜2.0未満の粒不定形粒子の場合、20体積%以下にすることが好ましい。
(ポリマー)
本発明の光学フィルムの製造方法において好ましく用いられる樹脂としては、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のアシル基の置換度が1.8〜2.80のセルロースエステル系樹脂、またセルロースメチルエーテル、セルロースエチルエーテル、セルロースプロピルエーテル等のアルキル基置換度2.0〜2.80のセルロースエーテル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、またアルキレンジカルボン酸とジアミンとの重合物のポリアミド樹脂、またアルキレンジカルボン酸とジオールとの重合物、アルキレンジオールとジカルボン酸との重合物、シクロヘキサンジカルボン酸とジオールとの重合物、シクロヘキサンジオールとジカルボン酸との重合物、芳香族ジカルボン酸とジオールとの重合物等のポリエステル樹脂、またポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル樹脂、またポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、アルキレンジイソシアナートとアルキレンジオールの線状重合物等のポリウレタン樹脂等を挙げることができ、これらから選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましい。
中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。また、相溶性のあるポリマーを2種類以上ブレンドして後で述べるドープ溶解を行なっても良いが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明において好ましく用いられるその他の樹脂としては、エチレン性不飽和単量体単位を有する単独重合体または共重合体を挙げることができる。より好ましくは、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル、ポリアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸アルキルの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸アルキルエステル共重合体等のアクリル酸またはメタクリル酸エステルの単独重合体または共重合体が挙げられる。さらにアクリル酸またはメタクリル酸のエステルは、透明性、相溶性に優れるので、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル単位を有する単独重合体または共重合体、特に、アクリル酸またはメタクリル酸メチル単位を有する単独重合体または共重合体が好ましい。具体的にはポリメタクリル酸メチルが好ましい。ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸シクロヘキサンのようなアクリル酸またはメタクリル酸の脂環式アルキルエステルは、耐熱性が高く、吸湿性が低い、複屈折が低い等の利点を有しているものが、好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法は、溶液流延製膜法により実施されるものであり、これを詳しく説明する。
(ドープを構成する材料)
以下、セルロースエステルを例に挙げて、本発明を説明する。
本発明において、セルロースエステル及び有機溶媒を含有するセルロースエステル溶液をドープといい、これをもって溶液流延製膜し、セルロースエステルフィルムを形成せしめるものである。
(セルロースエステル)
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ単独で、または任意の割合で混合して使用することができる。
本発明において、セルロースエステルは、セルロース原料のアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて反応が行なわれる。
アシル化剤が、酸クロライド(CHCOCl、CCOCl、CCOCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行なわれる。具体的には、特開平10−45804号公報に記載の方法で合成することができる。
セルロースエステルは、アシル基がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットあたり3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している。
セルロースエステルフィルムに用いることができるセルロースエステルとしては、総アシル基置換度が2.4〜2.8であることが好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルの分子量は、数平均分子量(Mn)で50,000〜200,000のものが用いられる。60,000〜200,000のものがさらに好ましく、80,000〜200,000が特に好ましい。
本発明で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、Mw/Mnが、前記のように1.4〜3.0であることが好ましく、さらに好ましくは1.7〜2.2の範囲である。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することができる。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することができる。測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex−K806、K805、K803G
(昭和電工株式会社製カラムを3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1重量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所株式会社製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー株式会社製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルは、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであり、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートフタレート等や、特開平10−45804号公報、特開平8−231761号公報、及び米国特許第2,319,052号公報等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。あるいは、特開2002−179701号公報、特開2002−265639号公報、及び特開2002−265638号公報に記載の芳香族カルボン酸とセルロースとのエステル、セルロースアシレートも好ましく用いられる。
上記の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは混合して用いることもできる。
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基もしくはブチリル基の置換度をYとした時、下記式(a)及び(b)を同時に満たすセルロースエステルである。
式(a) 2.4≦X+Y≦2.8
式(b) 0≦X≦2.5
アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することができる。
これらアシル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。
アセチルセルロースの場合、酢化率を上げようとすれば、酢化反応の時間を延長する必要がある。ただし、反応時間を余り長くとると分解が同時に進行し、ポリマー鎖の切断やアセチル基の分解等が起こり、好ましくない結果をもたらす。従って、酢化度を上げ、分解をある程度抑えるためには、反応時間はある範囲に設定することが必要である。反応時間で規定することは反応条件がさまざまであり、反応装置や設備その他の条件で大きく変わるので適切でない。ポリマーの分解は進むにつれ、分子量分布が広くなっていくので、セルロースエステルの場合にも、分解の度合いは通常用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値で規定できる。すなわち、セルローストリアセテートの酢化の過程で、余り長過ぎて分解が進み過ぎることがなく、かつ酢化には十分な時間酢化反応を行なわせるための反応度合いの一つの指標として重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値を用いることができる。
セルロースエステルの製造法の一例を以下に示すと、セルロース原料として綿化リンター100重量部を解砕し、40重量部の酢酸を添加し、36℃で20分間前処理活性化をした。その後、硫酸8重量部、無水酢酸260重量部、酢酸350重量部を添加し、36℃で120分間エステル化を行なった。24重量%酢酸マグネシウム水溶液11重量部で中和した後、63℃で35分間ケン化熟成し、アセチルセルロースを得た。これを10倍の酢酸水溶液(酢酸:水=1:1(重量比))を用いて、室温で160分間攪拌した後、濾過、乾燥させてアセチル置換度2.75の精製アセチルセルロースを得た。このアセチルセルロースはMnが92,000、Mwが156,000、Mw/Mnは1.7であった。同様にセルロースエステルのエステル化条件(温度、時間、攪拌)、加水分解条件を調整することによって置換度、Mw/Mn比の異なるセルロースエステルを合成することができる。
なお、合成されたセルロースエステルは、精製して低分子量成分を除去したり、未酢化の成分を濾過で取り除くことも好ましく行なわれる。
また、混酸セルロースエステルの場合には、特開平10−45804号公報に記載の方法によって得ることができる。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
また、セルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成することにより不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。カルシウム(Ca)成分については、地下水や河川の水等に多く含まれ、これが多いと硬水となり、飲料水としても不適当であるが、カルボン酸や、スルホン酸等の酸性成分と、また多くの配位子と配位化合物、すなわち、錯体を形成しやすく、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成する。
カルシウム(Ca)成分は60ppm以下、好ましくは0〜30ppmである。マグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると不溶分を生ずるため、0〜70ppmであることが好ましく、特に0〜20ppmであることが好ましい。鉄(Fe)分の含量、カルシウム(Ca)分含量、マグネシウム(Mg)分含量等の金属成分は、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行なった後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析を行なうことによって求めることができる。
(有機溶媒)
セルロースエステルを溶解してドープ(溶液)の形成に有用な有機溶媒としては、塩素系有機溶媒と非塩素系有機溶媒がある。塩素系の有機溶媒としてメチレンクロライド(塩化メチレン)を挙げることができ、セルロースエステルの溶解に適している。
昨今の環境問題から非塩素系有機溶媒の使用が検討されている。非塩素系有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができる。
これらの有機溶媒をセルロースエステルに対して使用する場合には、常温での溶解方法も使用可能であるが、高温溶解方法、冷却溶解方法、高圧溶解方法等の溶解方法を用いることにより不溶解物を少なくすることができるので好ましい。セルローストリアセテート以外のセルロースエステルに対しては、メチレンクロライドを用いることはできるが、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンが好ましく使用される。特に酢酸メチルが好ましい。本発明において、上記セルロースエステルに対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
本発明において、ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40重量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。これらはドープを支持体に流延後溶媒が蒸発をし始めアルコールの比率が多くなるとドープ膜(ウェブ)がゲル化し、ウェブを丈夫にし、金属持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらのうちドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。これらの有機溶媒は単独ではセルロースエステルに対して溶解性を有していないので貧溶媒という。
ドープ中のセルロースエステルの濃度は15〜30重量%、ドープ粘度は、B型粘度計による測定値として10〜100Pa・sの範囲に調製されることが良好なフィルム面品質を得る上で好ましい。
ドープ中に添加される添加剤としては、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、微粒子がある。本発明において、これらの添加剤はセルロースエステル溶液の調製の際に添加してもよいし、マット剤などの微粒子分散液の調製の際に添加してもよい。
液晶画像表示装置に使用する偏光板には、耐熱・耐湿性を付与する可塑剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤等を添加することが好ましい。下記に添加剤について説明する。
(可塑剤)
本発明において、セルロースエステル溶液またはドープには、いわゆる可塑剤として知られる化合物を、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水蒸気透過率低減、リタデーション調整等の目的で添加することが好ましく、例えばリン酸エステルやカルボン酸エステルが好ましく用いられる。
リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。
カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルホスフェート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることができ、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく用いられる。またこれらアルキルフタリルアルキルグリコレートを2種以上混合して使用してもよい。
また、多価アルコールエステルも好ましく用いられる。
本発明において用いられる多価アルコールは、次の一般式で表される。
−(OH)n
ただし、式中、Rはn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表す。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることがさらに好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、また、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
これらの化合物は、セルロースエステルに対して1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%となるように含まれていることが好ましい。また、延伸及び乾燥中のブリードアウト等を抑制させるため、200℃における蒸気圧が1400Pa以下の化合物であることが好ましい。
これらの化合物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
さらに、本発明では、下記一般式(2)で表される芳香族末端エステル系可塑剤を用いることが好ましい。
一般式(2) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
一般式(2)中、Bで示されるベンゼンモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基またはオキシアルキレングリコール残基またはアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基またはアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られる。
本発明に用いられる芳香族末端エステル系可塑剤のベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することができる。
本発明に用いられる芳香族末端エステル系可塑剤の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
また、芳香族末端エステルの炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
また、芳香族末端エステルの炭素数6〜12のアリールグリコール成分としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
芳香族末端エステルの炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリールジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。
芳香族末端エステル系可塑剤は、数平均分子量が、好ましくは300〜2000、より好ましくは500〜1500の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものが好適である。
〈芳香族末端エステルの酸価、水酸基価〉
酸価とは、試料1g中に含まれる酸(分子末端に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価及び水酸基価はJIS K0070(1992)に準拠して測定したものである。
以下、本発明に用いられる芳香族末端エステル系可塑剤の合成例を示す。
〈サンプルNo.1(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、フタル酸820部(5モル)、1,2−プロピレングリコール608部(8モル)、安息香酸610部(5モル)、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.30部を一括して仕込み、窒素気流中で攪拌下、還流凝縮器を付して過剰の1価アルコールを還流させながら、酸価が2以下になるまで130〜250℃で加熱を続け、生成する水を連続的に除去した。ついで200〜230℃で6.65×10Pa〜最終的に4×10Pa以下の減圧下、留出分を除去し、この後、濾過して、次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s);19815
酸価 ;0.4
〈サンプルNo.2(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、アジピン酸500部(3.5モル)、安息香酸305部(2.5モル)、ジエチレングリコール583部(5.5モル)、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.45部を用いる以外は、サンプルNo.1と全く同様にして、次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s);90
酸価 ;0.05
〈サンプルNo.3(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器にフタル酸410部(2.5モル)、安息香酸610部(5モル)、ジプロピレングリコール737部(5.5モル)、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.40部を用いる以外は、サンプルNo.1と全く同様にして、次の性状を有する芳香族末端エステル系可塑剤を得た。
粘度(25℃、mPa・s);43400
酸価 ;0.2
以下に、本発明に用いられる芳香族末端エステル系可塑剤の具体的化合物を示すが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2008107778
Figure 2008107778
本発明に用いられる芳香族末端エステル系可塑剤の含有量は、セルロースエステルフィルム中に1〜20重量%含有することが好ましく、特に3〜11重量%含有することが好ましい
この他の添加剤として、特開2002−22956号公報に記載のポリエステル、ポリエステルエーテル、特開2003−171499号公報に記載のウレタン樹脂、特開2002−146044号公報に記載のロジン及びロジン誘導体、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂、特開2003−96236号公報に記載の多価アルコールとカルボン酸とのエステル、特開2003−165868号公報に記載の一般式(1)で示される化合物、特開2004−292696号公報に記載のポリエステル重合体またはポリウレタン重合体等が挙げられる。これらの添加剤は、ドープもしくは微粒子分散液に含有させることができる。
(紫外線吸収剤)
本発明において、セルロースエステルフィルムには、紫外線吸収剤を含有させることができる。
使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報、特開2001−72782号公報に記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報、特開2002−31715号公報、特開2002−169020号公報、特開2002−47357号公報、特開2002−363420号公報、特開2003−113317号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を好ましく使用できる。高分子紫外線吸収剤としては、大塚化学社製の反応型紫外線吸収剤RUVA−93を例として挙げることができる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、ドープ中で紫外線吸収剤が溶解するようなものであれば制限なく使用できるが、本発明においては紫外線吸収剤をメチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等のセルロースエステルに対する良溶媒、または良溶媒と低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)のような貧溶媒との混合有機溶媒に溶解し紫外線吸収剤溶液としてセルロースエステル溶液に添加するかまたは直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とポリマー中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の含有量は0.01〜5重量%、特に0.5〜3重量%である。
本発明においては、これら紫外線吸収剤を単独で用いても良いし、異なる2種以上の混合で用いても良い。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して重量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
(その他の粒子)
前記の不定形粒子以外に、滑り性を付与するために、一次粒子が球状の二酸化ケイ素を添加することもできる。これによって、搬送や巻き取りをしやすくすることができる。
二酸化ケイ素のような微粒子は、有機物によって表面処理されていることが多いが、このようなものは、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどが挙げられる。
また、平均粒径は大きい方が滑り性効果は大きく、反対に、平均粒径が小さい方は、透明性に優れる。また、微粒子の平均粒径は、0.005〜1.0μmの範囲である。これらの一次粒子であっても、凝集によってできた二次粒子であっても良い。微粒子の含有量は、樹脂に対して1mあたり0.01〜1g含有させることが好ましい。
二酸化ケイ素微粒子としては、例えばアエロジル株式会社製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,R805、OX50、TT600などを挙げることができ、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合は、任意の割合で混合して使用することができる。
この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えばアエロジル200VとR972Vを重量比で、0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用できる。
(界面活性剤)
本発明で用いられるドープあるいは微粒子分散液には、界面活性剤を含有することが好ましく、リン酸系、スルフォン酸系、カルボン酸系、ノニオン系、カチオン系等特に限定されない。これらは、例えば特開昭61−243837号公報等に記載されている。界面活性剤の添加量は、セルロースアシレートに対して0.002〜2重量%が好ましく、0.01〜1重量%がより好ましい。添加量が0.001重量%未満であれば添加効果を十分に発揮することができず、添加量が2重量%を超えると、析出したり、不溶解物を生じたりすることがある。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリグリシジルやソルビタンをノニオン性親水性基とする界面活性剤であり、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレンーポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルを挙げることができる。
アニオン系界面活性剤としてはカルボン酸塩、硫酸塩、スルフォン酸塩、リン酸エステル塩であり、代表的なものとしては脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、α−オレフィンスルフォン酸塩、ジアルキルスルフォコハク酸塩、α−スルフォン化脂肪酸塩、N−メチル−Nオレイルタウリン、石油スルフォン酸塩、アルキル硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニールエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩ホルムアルデヒド縮合物等である。
カチオン系界面活性剤としてはアミン塩、4級アンモニウム塩、ピリジウム塩等を挙げることができ、第1〜第3脂肪アミン塩、第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等)を挙げることができる。両性系界面活性剤としてはカルボキシベタイン、スルフォベタイン等であり、N−トリアルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン等である。
なお、フッ素系界面活性剤は、フルオロカーボン鎖を疎水基とする界面活性剤である。
(剥離促進剤)
さらに、剥離時の荷重を小さくするための剥離促進剤も、ドープに添加してもよい。それらは、界面活性剤が有効であり、リン酸系、スルフォン酸系、カルボン酸系、ノニオン系、カチオン系等があるが、これらに特に限定されない。これらの剥離促進剤は、例えば、特開昭61−243837号公報等に記載されている。特開昭57−500833号公報にはポリエトキシル化リン酸エステルが剥離促進剤として開示されている。特開昭61−69845号公報には非エステル化ヒドロキシ基が遊離酸の形であるモノまたはジリン酸アルキルエステルをセルロースエステルに添加することにより迅速に剥離できることが開示されている。また、特開平1−299847号公報には非エステル化ヒドロキシル基及びプロピレンオキシド鎖を含むリン酸エステル化合物と無機物粒子を添加することにより剥離荷重が低減できることが開示されている。
(その他の添加剤)
この他、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩等の熱安定剤を加えてもよい。さらに帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤等も加える場合がある。
本発明による光学フィルムの製造方法は、ドープ調製工程(溶解工程)、流延工程、乾燥工程、および巻取り工程を具備するものである。
[溶解工程]
本発明による光学フィルムの製造方法において、ポリマーフィルムが、セルロースエステルフィルムである場合を例にとると、まず、セルロースエステルの溶解は、溶解釜中での撹拌溶解方法、加熱溶解方法、超音波溶解方法等の手段が、通常用いられ、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。また、特開平9−95538号公報記載の冷却溶解方法、あるいはまた特開平11−21379号公報記載の高圧下で溶解する方法なども用いてもよい。
セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤、あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤と混合して溶解する方法も好ましく用いられる。このとき、セルロースエステルを貧溶媒と混合して湿潤あるいは膨潤させる装置と、良溶剤と混合して溶解する装置を別々に分けても良い。
セルロースエステルの溶解に用いる加圧容器の種類は、特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、攪拌ができればよい。加圧容器には、その他、圧力計、温度計などの計器類を適宜配設する。加圧は窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行なってもよい。加熱は外部から行なうことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、使用する溶剤の沸点以上で、2種類以上の混合溶剤の場合は、沸点が低い方の溶剤の沸点以上の温度に加温しかつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましい。加熱温度が高すぎると、必要とされる圧力が大きくなり、生産性が悪くなる。好ましい加熱温度の範囲は20〜120℃であり、30〜100℃が、より好ましく、40〜80℃の範囲がさらに好ましい。また圧力は、設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。
セルロースエステルと溶剤の他に、必要な可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
セルロースエステルの溶解後は、冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して、熱交換器などで冷却し、得られたポリマーのドープを製膜に供するが、このときの冷却温度は、常温まで冷却してもよい。
原料としてのセルロースエステルの粒径dは、0.1mm≦d≦20mmの粒子が60重量%以上の比率で構成されることが、セルロースエステルの凝集塊を発生させることなく、良好な溶解性を得るために、望ましい。
原料セルロースエステルと溶媒の混合物は、撹拌機を有する溶解釜で溶解し、このとき、撹拌翼の周速は少なくとも0.5m/秒以上で、かつ30分以上撹拌して溶解することが好ましい。
本発明の方法において、溶解釜で溶解したセルロースエステルのドープを、ポンプにより濾過機に送り、濾過機において濾過する。この濾過は、通常の方法で行なうことができるが、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加圧下加熱しながら濾過する方法が、濾過材前後の差圧(以下、濾圧というることがある)の上昇が小さく、好ましい。
本発明の方法において、セルロースエステルドープは、これを濾過することによって、異物、特に液晶画像表示装置において、画像と認識し間違う異物は、これを除去しなければならない。偏光板用保護フィルムの品質は、この濾過によって決まるといってもよい。
濾過に使用する濾材は、絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると、濾過材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行なわなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。
このため、本発明の方法において、セルロースエステルドープに使用する濾材は、絶対濾過精度0.020mm以下のものが好ましい。濾紙としては、例えば市販品の安積濾紙株式会社のNo.244や277等を挙げることができ、好ましく用いられる。
濾材の材質には、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
ドープ濾過の好ましい温度範囲は、45〜120℃であり、45〜70℃が、より好ましく、45〜55℃の範囲であることがさらに好ましい。
濾圧は、3500kPa以下であることが好ましく、3000kPa以下が、より好ましく、2500kPa以下であることがさらに好ましい。なお、濾圧は、濾過流量と濾過面積を適宜選択することで、コントロールできる。こうして得られたドープは、ストックタンクに保管され、脱泡された後、流延に用いられる。
このように、溶解釜中で、あらかじめドメイン形成材料とセルロースエステルと溶媒とを混合してドープを調製する場合は、通常、ドメイン形成材料をインライン添加する必要はない。しかしながら、必要に応じて、ドメイン形成材料の全部もしくは一部をインラインで混合することができる。
例えば、溶解釜中で適当な溶媒に混合または分散された不定形粒子分散液は、ポンプにより濾過機に送り、濾過機において濾過する。得られたドープは、第2ストックタンクに保管され、脱泡される。
第1ストックタンクからポンプによって導管中を移送したセルロースエステル溶液(もしくはドープ原液と称する場合がある)と、第2ストックタンクからポンプによって導管中を移送したドメイン形成材料溶液(不定形粒子分散液)とは、合流管で合流させる。
合流管の直前には、濾過器が配置されており、例えば濾材交換等に伴い経路から発生する、塊や大きな異物を、送液中の不定形粒子分散液あるいはドープ原液から除去することができる。ここでは、耐溶剤性を有する金属製の濾過器が好ましく用いられる。
濾材としては、耐久性の観点から金属、特にステンレス鋼が好ましい。目詰まりの観点から60〜80%の空孔率を有していることが好ましい。最も好ましくは、絶対濾過精度30〜60μmであって、かつ空孔率60〜80%の金属製濾材で濾過することであり、これにより、長期に亘り、確実に粗大な異物を除くことができ好ましい。絶対濾過精度30〜60μmでかつ空孔率60〜80%の金属製濾材としては、例えば日本精線株式会社製ファインポアNFシリーズのNF−10、同NF−12、同NF−13等を挙げることができる。
上記のようにして合流した両液は、導管内を層状で移送するためそのままでは混合しにくい。そこで、両液を合流後、インラインミキサーのような混合機(19)で十分に混合しながら次工程に移送する。
本発明で使用できるインラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器、Hi−Mixer、東レエンジニアリング製)が好ましい。
原料のセルロースにアシル基の未置換もしくは低置換度のセルロースエステルが含まれていると、異物故障(以下、輝点または輝点異物ということがある)が発生することがある。輝点は、直交状態(クロスニコル)の2枚の偏光板の間にセルロースエステルフィルムを置き、光を片側から照射して、その反対側から光学顕微鏡(50倍)で観察すると、正常なセルロースエステルフィルムであれば、光が遮断されていて、黒く、何も見えないが、異物があると、そこから光が漏れて、スポット状に光って見える現象である。輝点の直径が大きいほど、液晶画像表示装置とした場合に、実害が大きく、輝点の直径は、50μm以下であることが好ましく、10μm以下が、より好ましく、さらに8μm以下が好ましい。なお、輝点の直径とは、輝点を真円に近似して測定する直径を意味する。
輝点異物は、上記の直径のものが400個/cm以下であれば、実用上問題ないが、300個/cm以下が好ましく、200個/cm以下が、より好ましい。このような輝点異物の発生数、及び大きさを減少させるために、細かい異物を充分に濾過する必要がある。
なお、例えば特開2000−137115号公報に記載されるような、一度製膜したセルロースエステルフィルムの粉砕品を、ドープにある割合で再添加して、セルロースエステル及びその添加剤の原料とする方法は、輝点異物を低減することができるため、好ましく用いることができる。
[流延工程]
図1は、本発明の溶液流延製膜方法により光学フィルムを製造する装置を例示するものである。
同図を参照すると、溶解釜で調整されたドープを、導管によって流延ダイ(1)に送液し、無限に移送する例えば回転駆動ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体(11)上の流延位置に、流延ダイ(1)からドープを流延する工程である。
本発明の流延ダイ(1)としては、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。
流延ダイ(1)は、内部スリット壁面と支持体(11)表面とのなす角度を40〜90°にするのが、好ましく、特に60〜75°が好ましい。
流延ダイ(1)のダイリップと支持体(11)表面との間隙は、0.2〜10mmの間隙を取って設置されるのが好ましく、さらに0.5〜5mmの間隙が、より好ましい。
流延ダイ(1)のスリットのギャップは0.05〜1.5mmが好ましく、0.15〜1.0mmが、より好ましい。
また、本発明では、ダイリップからのドープ押出速度(V)と、支持体(11)の表面移動速度(V)との速度比:RB=V/Vが、1.05≦RB≦20.0の範囲で製膜することが好ましい。
流延ダイ(1)側面の下部付近の下記式で示す溶剤蒸気濃度:α(%)と、
溶剤蒸気濃度:α(%)=
(溶剤蒸気の容積/溶剤を含む空間の容積)×100
同じく流延ダイ(1)側面の下部付近の風速V(m/秒)との比:α/V(秒/m)を、10以上とするのが好ましい。これによって、流延ダイ(1)側面の下部付近の溶剤蒸気濃度が常に最適な値に保たれ、流延ダイ(1)から支持体(11)に流延されるウェブのエッジが鋸歯状(ダイリップ端部に皮膜ができ、それがウェブ端部に振動しながら接触することで発生、剥離以降の後工程でフィルム破断の原因となる)になるのを効果的に防ぐことができる。
本発明の光学フィルムの製造装置では、流延ダイ(1)の側面側下端部付近に囲いを設けること、あるいは溶剤蒸気の吹き付けを行なうことにより、流延ダイ(1)の側面側下端部付近を所期の溶剤蒸気濃度とすることが好ましい。これによっても、フィルムの品質を一層良好なものとすることができる。
また、同様の目的で、上記ドープ流延工程においては、流延ダイ(1)の側面側下端部から支持体(11)上に、ドープ可溶な溶剤を流下させるとともに、このドープ可溶な溶剤の流下量を0.1〜1.0cm/分とし、さらにドープ可溶な溶剤の温度を、その沸点以下とすることが望ましい。
つぎに、流延支持体(11)について説明する。
支持体(11)の表面粗さRaは、0.0001〜1μmであり、0.0003〜0.1μmが、より好ましく、0.0005〜0.05μmがさらに好ましい。
また、エンドレスベルトの両端には平均粗さRa0.5〜2μmの粗面化帯を設け、該粗面化帯に5〜30mm幅ドープが重なるように流延するのが、剥離工程で、ウェブをスムーズに剥離する点から好ましい。
支持体(11)として回転駆動エンドレスベルトを具備する図示の製膜装置では、該ベルト支持体(11)は一対のドラム(19)およびその中間に配置されかつエンドレスベルト支持体(11)の上部移行部及び下部移行部をそれぞれ裏側より支えている複数のロール(図示略)より構成される。この複数のロールはサポートロールと呼ばれ、隣り合うサポートロール同士の間の距離が0mより大きく、5m以下の範囲内、好ましくは1〜5m、望ましくは2〜5mにすることが望ましい。また、エンドレスベルト支持体(11)の上部移行部(1a)を裏側より支えているサポートロールのうち、相互に隣り合うサポートロール同士の間の距離が、エンドレスベルト支持体(11)の下部移行部を裏側より支えているサポートロールのうち、相互に隣り合うサポートロール同士の間の距離よりも、狭いものであることが好ましい。
また、回転駆動エンドレスベルト支持体(11)の両端巻回部のドラム(19)の一方、もしくは両方に、ベルト支持体(11)に張力を付与する駆動装置が設けられ、これによってベルト支持体(11)は張力が掛けられて張った状態で使用される。
支持体(11)としてエンドレスベルトを用いる場合には、製膜時のベルト温度は、一般的な温度範囲0℃〜溶剤の沸点未満の温度で流延することができ、さらには5℃〜溶剤沸点−5℃の範囲が、より好ましい。このとき、周囲の雰囲気湿度は露点以上に制御する必要がある。
また、支持体(11)搬送速度が10m/分以上では、流延ダイ(12)のリップから出てくる流延膜に減圧を掛けてエア混入や、フィルム幅手方向に横段状のスジをつくる原因となる流延リボンのばたつきを抑制するため、流延ダイ(12)上流側に減圧チャンバを設け、10〜600Pa減圧するのが好ましく、さらに好ましくは10〜200Paである。
減圧チャンバの下部端面と、支持体(11)表面との間隙は、0.5〜5mmの範囲が吸引風量が大きくなり過ぎず、それにより、流延ダイ(12)リップ端部のドープ乾燥皮膜の発生が抑制されるため望ましい。
また、製膜速度を上げるために、加圧流延ダイ(12)を流延用支持体(11)上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層製膜してもよい。
支持体(11)上へドープを流延する際は、原料ポリマーの溶解に用いた溶剤の沸点未満、混合溶剤では最も沸点の低い溶剤の沸点未満の温度に制御するのが好ましい。
支持体(11)としてエンドレスベルトを用いる方式においては、支持体(11)上では、ウェブ(10)が支持体(11)から剥離ロール(16)によって剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させるため、ウェブ(10)中の残留溶媒量が150重量%以下まで乾燥させるのが好ましく、80〜120%が、より好ましい。また、支持体(11)からウェブ(10)を剥離するときのウェブ温度は、0〜30℃が好ましい。また、ウェブ(10)は、支持体(11)からの剥離直後に、支持体(11)密着面側からの溶媒蒸発で温度が一旦急速に下がり、雰囲気中の水蒸気や溶剤蒸気など揮発性成分がコンデンスしやすいため、剥離時のウェブ温度は5〜30℃がさらに好ましい。
ここで、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
式中、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量である。
[溶媒蒸発工程]
エンドレスベルト支持体(11)上に流延されたドープにより形成されたドープ膜(ウェブ)を、支持体(11)上で加熱し、支持体(11)から剥離ロール(16)によってウェブが剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法、及び/または支持体(11)の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等がある。
[剥離工程]
支持体(11)にエンドレスベルトを用いる方式においては、支持体(11)(1)とウェブ(10)を剥離ロール(16)によって剥離する際の剥離張力は、通常20〜25kg/mで剥離が行なわれるが、従来よりも薄膜化されている本発明により作製されたセルロースエステルフィルムでは、剥離の際にウェブ(10)にシワが入りやすいため、剥離できる最低張力〜17kg/mで剥離することが好ましく、さらに好ましくは、最低張力〜14kg/mで剥離することである。
[ドライブロール延伸工程]
本発明による光学フィルムの製造方法においては、支持体上からウェブ(流延膜)を剥離後、乾燥工程を経て、フィルムを巻き取るまでの間に、ウェブを搬送方向(MD方向)に2〜20%の延伸率で延伸する工程を経ることを特徴としている。
ただし、延伸率は以下の式で定義される。
延伸率[%]={(延伸後の長さ−延伸前の長さ)/延伸前の長さ}×100
図1では、支持体(11)上でウェブ(10)が支持体(11)から剥離ロール(16)によって剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させた後に剥離し、ついで周速度をコントロールできるドライブロールを少なくとも1つ具備する搬送方向(MD方向)延伸ユニット(30)により、剥離工程直後のウェブ(10)を、搬送方向(MD方向)に2〜20%の延伸率で延伸するものである。
図3と図4に、延伸ユニット(30)の2つの例を示している。まず、図3においては、前後一対の搬送ロール(31)(32)の間に、ダンサーロール(ドライブロール)(33)が配置され、これらのロール群が2セット設けられて、延伸ユニット(30)が構成されている。そして、これらのダンサーロール(ドライブロール)(33)を搬送ロール(31)(32)より周速度を速く回転させることで、ウェブ(10)をMD方向(製膜方向)に延伸することができる。
また、図4においては、前後一対の搬送ロール(31)(32)の間に、第1ドライブロール(34)〜第5ドライブロール(38)が配置され、これらのロール群によって延伸ユニット(30)が構成されている。そして、これらの第1ドライブロール(34)〜第5ドライブロール(38)の周速度をコントロールすることにより、ウェブ(10)をMD方向(製膜方向)に延伸することができるものである。
[乾燥工程]
支持体(11)にエンドレスベルトを用いる方式においては、剥離後のウェブ(10)は初期乾燥装置(13)に導入する。初期乾燥装置(13)内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロール(17)によってウェブ(10)が蛇行せられ、その間にウェブ(10)は初期乾燥装置(13)の底の前寄り部分から吹込まれ、初期乾燥装置(13)の天井の後寄り部分から排出せられる温風(23)によって乾燥される。
また、ウェブ中の残留溶媒量が10〜150重量%である間は、ウェブは非常に柔らかいため、搬送ロールの直径が細い(85mm未満)とウェブはロールに押しつけられる力により変形しやすいが、そればかりでなくウェブからの析出、蒸発または揮発する添加剤がロールに付着し、ウェブを汚したり、押されを形成したりしやすくなる。またロールが太い(300mmを超える径)の場合は、ウェブに掛かる張力が弱いと、ウェブとロールの摩擦が十分でなく滑りが生じ、ウェブに擦り傷を付けてしまう。滑らせないようにウェブに強い張力をかけると、柔らかいウェブは伸縮して所望の光学特性が得られなかったり、また、搬送方向に伸びる筋ムラが強調され、さらにウェブはロールへ強く押し付けられることから押され変形が問題となる。そこで、使用するロールの直径は85〜300mmが好ましく、100〜200mmがより好ましい。
[ドラムでの流延〜ドライブロール延伸工程]
図2は、本発明の溶液流延製膜方法により光学フィルムを製造する装置のいま1つのを例を示すもので、支持体(21)としてドラムを用いている。
同図において、上記の方法と同様にドープを調製し、ドープを流延ダイ(1)からハードクロム鍍金が施されたドラム支持体(21)上に流延してウェブ(10)を得、ウェブ(10)がドラム支持体(21)の回転によってほぼ3/4周移動したところで、剥離ロール(16)により剥離する。
ドープは、加圧型定量ギヤポンプを通して流延ダイ(1)に送液され、流延位置においてドラムよりなる支持体(21)上に、流延ダイ(1)からドープを流延する。
また、支持体(21)としてドラムを用いる場合には、製膜時のドラムの温度は、10℃以下に冷却することが好ましく、0℃以下に冷却するとより好ましく、−10℃以下に冷却することがさらに好ましい。ドラム表面に流延されたドープは冷却ゲル化によりゲル膜の強度(フイルム強度)が増加して、さらに剥ぎ取りまでの間で乾燥が促進されることによってもゲル膜の強度(フイルム強度)が増加する。
支持体(21)としてドラムを用いる方式においては、支持体(21)上では、ウェブ(10)が支持体(21)から剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させるため、ドラムの温度は10℃以下に冷却することが好ましく、0℃以下に冷却するとより好ましく、−10℃以下に冷却するのがさらに好ましい。また、ウェブ(10)の支持残留溶媒量が10〜250重量%の状態で剥離するのが好ましく、20〜220重量%の状態で剥離するのがより好ましい。残留溶剤量が250重量%を越えると、支持体(21)上にセルロースアシレートの剥げ残りが発生する場合がある。
また、支持体(21)にドラムを用いる方式においては、支持体(21)とウェブ(10)を剥離する際の剥離張力は、0.1〜6kg/mで剥離が行なわれる。
支持体(21)にドラムを用いる方式においては、剥離後、渡り部を通って、テンター乾燥装置に運ばれる。渡り部は0本以上の搬送ロールより成り、1本以上の搬送ロールから成るのが好ましく、3本以上の搬送ロールから成るのがより好ましい。渡り部の搬送ロール(22)もドラムと同様に温度調整装置を取り付けて温度調整することが好ましい。例えば、搬送ロール(22)にそれぞれジャケットを取り付け、そのジャケット内に冷却用媒体を循環させる方法などが挙げられる。
また、各搬送ロール(22)の温度も、ドラムの温度と同様に10℃以下が好ましく、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−10℃以下とすることである。また、渡り部室内の温度もドラムの温度と同様に10℃以下が好ましく、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−10℃以下とすることである。なお、ウェブ(10)を冷却することにより、貯蔵弾性率を高く保持することができ、搬送時の不良の発生を防止できる。
上記のように、本発明による光学フィルムの製造方法においては、支持体上からウェブ(流延膜)を剥離後、乾燥工程を経て、フィルムを巻き取るまでの間に、ウェブを搬送方向(MD方向)に2〜20%の延伸率で延伸する工程を経ることを特徴としている。
図2では、支持体(21)上でウェブ(10)が支持体(21)から剥離ロール(16)によって剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させた後に剥離し、ついで周速度をコントロールできるドライブロールを少なくとも1つ具備する搬送方向(MD方向)延伸ユニット(30)により、剥離工程直後のウェブ(10)を、搬送方向(MD方向)に2〜20%の延伸率で延伸するものである。
延伸ユニット(30)の例としては、図3に示すダンサーロール(ドライブロール)(33)を用いたもの、および図4に示す第1ドライブロール(34)〜第5ドライブロール(38)を用いたものが挙げられる。
[テンター延伸工程]
画像表示部材用フィルムとしては、ウェブ(またはフィルム)の両側縁部をクリップ等で固定して延伸するテンター方式が知られており、平面性や寸法安定性を向上させるために好ましい。
図1と図2を参照すると、このテンター(14)を用いる方法として、例えば、特開昭59−211006号公報には、フェノキシ樹脂等のフィルムから液晶表示パネルの基板を製造する技術が開示されており、このフィルムにはセルロースアセテートフィルムも使用できることが、その中に示唆されている。また、特開平4−284211号、特開昭62−115035号公報には、テンター乾燥装置を用いたセルローストリアセテートフィルムの製造方法が開示されている。
特に、支持体(11)から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブ(またはフィルム)は幅手方向に収縮しようとする。高温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。
この点から、テンター(14)を用いる方法としては、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅手方向にクリップでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法/テンター方式が好ましい。
残留溶媒量が10〜100重量%のときに80〜130℃、及び/又は残留溶媒量が5〜10重量%のときに90〜150℃に保持する場合、テンター(14)で幅保持もしくはフィルム幅に対して1〜20%程度の延伸を行なうと、セルロースエステルフィルムの平面性の向上効果が大きく特に好ましい。
また、テンター(14)の前後での、ウェブ(10)に搬送方向に沿って作用する張力の差を8N/mm以下とすることが好ましい。
なお、ウェブ(10)を予熱する予熱工程と、この予熱工程の後、テンター式乾燥機(14)を用いてウェブ(10)を延伸する延伸工程と、この延伸工程の後、ウェブ(10)をこの延伸工程での延伸量よりも少ない量だけ緩和させる緩和工程とを具備し、予熱工程および延伸工程における温度T1を、(フィルムのガラス転移温度Tg−60℃)以上とし、かつ、緩和工程における温度T2を、(T1℃−10℃)以下とすることが好ましい。
特に、上記延伸工程でのウェブ(10)の延伸率を、この延伸工程に入る直前のウェブ幅に対する比率で0〜30%に、他方、緩和工程でのウェブ(10)の延伸率を、−10〜10%とすることが望ましい。
テンター装置(14)による延伸工程においては、例えばセルロースエステルフィルムを製造する際の延伸倍率は、製膜方向もしくは幅手方向に対して、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍である。2軸方向に延伸する場合、高倍率で延伸する側が、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍であり、もう一方の方向の延伸倍率は0.8〜1.5倍、好ましくは0.9〜1.2倍に延伸することができる。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸は、テンター装置(14)によって行なうことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
なお、テンター装置(14)による延伸工程においては、テンター装置(14)の底の前寄り部分から吹込まれ、テンター装置(14)の天井の後寄り部分から排出せられる温風(24)によってウェブ(10)が、延伸と共に乾燥されている。
テンター装置(14)による延伸工程の後に、後乾燥装置(15)を設けることが好ましい。後乾燥装置(15)内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロール(17)によってウェブ(10)が蛇行せられ、その間にウェブ(10)が乾燥せられるものである。また、後乾燥装置(15)でのフィルム搬送張力は、ドープの物性、剥離時及びフィルム搬送工程での残留溶媒量、後乾燥装置(15)での温度等に影響を受けるが、30〜250N/mが好ましく、60〜150N/mがさらに好ましい。80〜120N/mが最も好ましい。
なお、ウェブ(またはフィルム)(10)を乾燥させる手段は、特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点から熱風で乾燥するのが好ましく、例えば後乾燥装置(15)の底の前寄り部分から吹込まれ、後乾燥装置(15)の天井の後寄り部分から排出せられる温風(25)によって乾燥される。乾燥温度は40〜160℃が好ましく、50〜160℃が平面性、寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。この場合、乾燥雰囲気を溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することは勿論のことである。
乾燥時のウェブ搬送張力は、30〜300N/幅mであり、40〜270N/幅mが、より好ましい。
乾燥工程及び/又は熱矯正装置の前及び/又は後に、ウェブ(またはフィルム)(10)表面のクリーン化装置が配置されるのが、好ましい。
クリーン化装置は、搬送途中のウェブ(またはフィルム)(10)に対し、超音波振動を与えると共に表面に高圧風を吹き当てて付着物を吹き飛ばして吸引し、付着している粉塵などを除去するものである。この他、火炎処理(コロナ処理、プラズマ処理)を行なう方式、粘着ロールを設置する方式など、公知の手段・方法を特別の制限なく用いることができる。
なお、配置するクリーン化手段は、単一であってもよいし、2以上の複数であってもよい。
ウェブ(10)に対する粉塵などの付着は、静電気の作用による場合が多いので、上記のクリーン化装置の前に除電手段、例えば、除電バーを配置してウェブ(10)の静電気を除去することが好ましい。除電バーとしては、公知のものを特別の制限なく用いることができる。
乾燥工程では、ウェブ(またはフィルム)(10)に含有される可塑剤が蒸発し、ロールや壁面においてコンデンスする現象を抑制する対策として、単位時間当たり供給風量に対して特定量以上の新鮮なガスを流入させることが好ましい。そして、供給する新鮮ガスの量は、全供給風量の5〜50%に設定することが好ましい。
新鮮ガス供給量を5〜50%にしているのは、5%未満では、新鮮ガス量が少なすぎて可塑剤コンデンスを抑制しきれないためであり、50%を超えると新鮮ガス量が多すぎ、ランニングコストで無駄が多くなるためである。
上記の対策の他、例えば、つぎのような構成が採用可能である。第1に、乾燥・矯正工程室内の空気を一部循環させ、クーラーコイルなどに通すことにより可塑剤を強制的に除去した後、ヒーターで規定温度に上昇させる構成、第2に、可塑剤が金属面に接触する部分の温度を上げる構成、例えば、蒸気・面ヒーターなどにより金属面弥接触する部分の温度を上げる構成である。第3に、ロール面上での可塑剤の蒸気圧を下げるために、新鮮空気を供給する構成である。新鮮空気を供給する手段としては、ロールの近傍に幅手方向にスリットを設け、パンチ板箱からエア風を供給し、供給空気の風速分布を抑える構成などが採用されるが、これに限定されるものではない。
なお、乾燥工程あるいは熱矯正工程室あるいはそれらから出てきたフィルムの冷却工程から、フィルムを出す際のフィルム温度は、60℃以下とすることが好ましい。
ここで、60℃を超える温度で矯正、冷却工程ボックスから搬出した場合には、可塑剤のコンデンスが発生しやすい条件下にあるからである。
後乾燥装置(15)での搬送方向へフィルムの伸びを防止する目的で、テンションカットロールを設けることが好ましい。乾燥終了後、巻き取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。
[エンボス工程]
つぎに、ポリマーフィルムの両側縁部に設けるエンボスについて説明する。搬送乾燥工程を終えたポリマーフィルムに対し、巻取工程に導入する前段において、エンボス加工装置によりフィルムにエンボスを形成する加工が行なわれる。エンボス加工装置としては、特開昭63−74850号公報に記載されている装置が利用できる。
ここで、エンボスの高さh(μm)は、フィルム膜厚Tの0.05〜0.3倍の範囲、幅Wは、フィルム幅Lの0.005〜0.02倍の範囲に設定する。例えばフィルム膜厚40μm、フィルム幅100cmであるとき、エンボス31の厚みは2〜12μm、エンボス幅は5〜30mmに設定する。
エンボスは、フィルムの両面に形成してもよい。この場合、エンボスの高さh1+h2(μm)は、フィルム膜厚Tの0.05〜0.3倍の範囲、幅Wはフィルム幅Lの0.005〜0.02倍の範囲に設定する。例えばフィルム膜厚40μmであるとき、エンボスの高さh1+h2(μm)は2〜12μmに設定する。エンボス幅は5〜30mmに設定する。
エンボス高さの下限については、フィルム間の部分的な密着ムラを防ぐために必要な高さから、一方、上限は、これ以上にするとエンボスが高すぎるため、ロール状製品形態が馬の背状に多角形状に変形し、故障を誘発するからである。
エンボスの幅については、エンボス部は最終的にロス部分となるため少なくしたいが、例えばフィルム厚みを80μmから40μmへと薄膜化していった際、フィルム〜ロール間の摩擦力が、50μmを境にグリップ力が極端に減少することが判明、さらにフィルム製膜速度を30m/分以上に高速化していった際、特に50m/分以上でフィルム〜ロール間の摩擦力が極端に減少することが判明した。このため、特に50μm以内の薄膜フィルムで、50m/分以上の高速製膜時において、フィルムのすべりを抑えるための最低限必要なエンボス幅である。但し、前述のエンボスの高さともリンクしており、ピラミッド状、馬の背、多角形状、巻きずれ故障を全てクリアーするエンボス高さ×エンボス幅を決定したものである。なお、エンボスは、フィルムの両端部だけでなく中央部部分にも配置することができる。
[除電工程]
本発明において、巻取前及び巻取部直後に除電器を設置し、フィルムを除電するのが好ましい。
除電器は、元巻を再繰り出しした際の帯電電位が±2KV以下となるように、巻取時に除電装置あるいは強制帯電装置により逆電位を与える構成で行なうことができるが、強制帯電電位が、1〜150Hzで正負交互に変換される除電器により除電する構成とすることもできる。
また、上記の除電器に代えて、イオン風を発生させるイオナイザーや除電バーを利用することができる。ここで、イオナイザー除電は、エンボス加工装置から搬送ロールを経て巻き取られていくフィルムに向けてイオン風を吹き付けることによって行なわれる。イオン風は、除電器により発生される。除電器としては、公知のものを制限なく用いることができる。
製膜巻取り時の除電は、元巻を再繰出しして機能性膜塗工する際、帯電電位が±2KV以上あると塗布ムラを誘発するためであり、特に薄膜、高速化を追求した場合、再繰り出し時のフィルム剥離帯電が高くなるため、製膜時除電は必須となる。
[巻き取り工程]
乾燥が終了したフィルム(20)を巻取り装置(18)によって巻き取り、光学フィルムの元巻を得る工程である。乾燥を終了するフィルム14の残留溶媒量は、0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下とすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
フィルムの巻き取り方法は、一般に使用されているワインダーを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の張力をコントロールする方法があり、それらを使い分ければよい。
巻取りコア(巻芯)への、フィルムの接合は、両面接着テープでも、片面接着テープでもどちらでも良い。
初期巻取開始時は、巻取り張力は280N/m幅以下、エンボス部のみタッチロール巻取の押圧力+巻取初期張力が60N/m幅以上となるよう巻取るのが好ましい。
この巻取り条件範囲については、280N/m以上では、巻取時の張力、及びタッチロール押圧力によりエンボス部にかかる半径方向圧力が大きすぎ、前述の再繰り出し時のフィルム剥離帯電量が大きすぎるためであり、一方、60N/m以下では、巻取張力が弱すぎて、特に2000m以上の長尺巻取の際、仕上がった製品ロール輸送時に巻きずれたり、再繰り出し時の繰り出し張力により巻きずれたりするためである。
タッチロール(図示略)の押圧は、押し圧検出器を設置して監視し、3〜100N/m幅に設定するのが好ましい。
タッチロールの押圧手段としては、例えば、複動式低摩擦シリンダあるいは張力フィードバックをかけるためにサーボモータが利用され、両サイドからそれぞれ単独にて制御できるように押圧する。押圧検出機にて両サイドの押圧を測定するのが好ましい。
タッチロールの材質は、金属あるいは硬質合成樹脂とする。タッチさせる位置は、フィルムが製品ロールと接する接線直後の位置とすることが好ましい。
巻き上がるにつれタッチロールの移動する方向は、巻取芯からの法線方向が、より好ましい。
巻取終了前0〜5秒及び巻き取り開始後の0〜5秒間において、巻取部のエッジポイントコントロール(EPC)の制御を自動から固定になるように設定して巻き取りを行なうのが好ましい。
巻取られた製品元巻の巻き硬度は、
〔エンボス部の巻き硬度−フィルム端部から中央部の中間位置の巻き硬度〕<170
とするのが、好ましい。
巻き硬度が170を超えると、エンボス部の密着力が大きすぎ、製品ロールの再繰り出し時に、前述の再繰り出し時のフィルム剥離帯電量が大きすぎる問題が発生するため、好ましくなく、さらに、元巻き途中の巻き状態がぶかぶかした緩巻き状態となり、製品元巻が多角形状に歪んだ故障を招くからである。
巻き硬度は、JIS規格のビスカス硬度計、あるいは、スイス国、PROCEQ S.A.社製の電子式フィルム硬さ試験機・エコーチップ、あるいはパロテスター2などを利用することができる。インパクト装置はD型を利用する。
硬さ値:Lは、反発速度V/打撃速度V0で計測する。反発速度Vは、インパクトボディの供試体からの反発速度、打撃速度V0は、インパクトボディの供試体からの打撃速度であり、10点測定の平均値を算定した。なお、元巻における硬度測定点は、中央部の硬度は、ばらつきが大きいため、エンボス加工部の上面とエンボス加工部と中央部との中間部とする。
ウェブ(10)を支持体(11)(21)から剥離させるまでのプロセス平均雰囲気(米国連邦規格 Federal Standard 209D)を、クラス10以上、クラス10000以下とし、ウェブ(10)を支持体(11)(21)から剥離させた以降のプロセス平均雰囲気(米国連邦規格 Federal Standard 209D)を、クラス100以上、クラス10000以下とすることで、表示装置に加工した際に表示の欠陥、外観の劣化で大きな問題となる異物の個数を大幅に低減したフィルムが得られる。
本発明による光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、液晶表示装置の薄型化の観点から、仕上がりフィルムとして10〜150μmの範囲が好ましく、さらに20〜100μmの範囲がより好ましく、特に25〜80μmの範囲が好ましい。
フィルムの膜厚が薄過ぎると、例えば偏光板用保護フィルムとしての必要な強度が得られない場合がある。フィルムの膜厚が厚過ぎると、従来のセルロースエステルフィルムに対して薄膜化の優位性がなくなる。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、流延ダイの口金のスリット間隙、流延ダイの押し出し圧力、支持体の速度等をコントロールするのがよい。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
溶液流延製膜法を通しての流延直後からの乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気で行なってもよい。ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことはもちろんである。
本発明による光学フィルムは、良好な透湿性、寸法安定性等から液晶表示用部材、詳しくは偏光板用保護フィルムに用いられるのが好ましい。特に、透湿度と寸法安定性に対して共に厳しい要求のある偏光板用保護フィルムにおいて、本発明による光学フィルムは好ましく用いられる。
一般的に、セルロ−スエステルフィルムを偏光板用保護フィルムとして使用する場合、偏光子との接着性を良好なものにするため、アルカリ鹸化処理が行なわれる。アルカリ鹸化処理後のフィルムと偏光子とをポリビニルアルコール水溶液を接着剤として接着するため、セルロ−スエステルフィルムのアルカリ鹸化処理後の水との接触角が高いとポリビニルアルコールでの接着ができず偏光板用保護フィルムとしては問題となる。
本発明の方法により製造されたセルロ−スエステルフィルムをLCD用部材として使用する際、フィルムの光漏れを低減するため高い平面性が要求されるが、光学フィルムの中心線平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601に規定されており、測定方法としては、例えば触針法もしくは光学的方法等が挙げられる。
本発明において、セルロ−スエステルフィルムの中心線平均粗さ(Ra)としては、20nm以下が好ましく、さらに好ましくは、10nm以下であり、特に好ましくは、4nm以下である。
本発明による偏光板は、上記の本発明の方法により製造された光学フィルムよりなる偏光板用保護フィルムを、少なくとも一方の面に有するものである。
そして、本発明による液晶表示装置は、上記の偏光板を、液晶セルの少なくとも一方の面に有するものである。
つぎに、これらの偏光板、および該偏光板を用いた液晶表示装置について説明する。
偏光板は一般的な方法で作製することができる。アルカリ鹸化処理した本発明によるセルロ−スエステルフィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面にも本発明によるセルロ−スエステルフィルムを用いても、別の偏光板用保護フィルムを用いてもよい。本発明によるセルロ−スエステルフィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板用保護フィルムは市販のセルロースエステルフィルムを用いることができる。例えば、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2M、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UX−RHA−N(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)等が好ましく用いられる。あるいは、セルロースエステルフィルム以外の環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート等のフィルムをもう一方の面の偏光板用保護フィルムとして用いてもよい。この場合は、ケン化適性が低いため、適当な接着層を介して偏光板に接着加工することが好ましい。
偏光板は、本発明によるセルロ−スエステルフィルムを偏光子の少なくとも片側に偏光板用保護フィルムとして使用したものである。その際、該セルロ−スエステルフィルムの遅相軸が偏光子の吸収軸に実質的に平行または直交するように配置されていることが好ましい。
この偏光板が、横電界スイッチングモード型である液晶セルを挟んで配置される一方の偏光板として、本発明によるセルロースエステルフィルムが液晶表示セル側に配置されることが好ましい。
偏光板に好ましく用いられる偏光子としては、ポリビニルアルコール系偏光フィルムが挙げられ、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。ポリビニルアルコール系フィルムとしては、エチレンで変性された変性ポリビニルアルコール系フィルムが好ましく用いられる。偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行なったものが用いられている。
偏光子の膜厚は5〜40μm、好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。該偏光子の面上に、本発明によるセルロ−スエステルフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。また、セルロースエステルフィルム以外の樹脂フィルムの場合は、適当な粘着層を介して偏光板に接着加工することができる。
偏光子は一軸方向(通常は長手方向)に延伸されているため、偏光板を高温高湿の環境下に置くと、延伸方向(通常は長手方向)は縮み、延伸に対して直交する方向(通常は幅手方向)には伸びる。偏光板用保護フィルムの膜厚が薄くなるほど偏光板の伸縮率は大きくなり、特に偏光子の延伸方向の収縮量が大きい。通常、偏光子の延伸方向は偏光板用保護フィルムの流延方向(MD方向)と貼り合わせるため、偏光板用保護フィルムを薄膜化する場合は、特に流延方向の伸縮率を抑えることが重要である。本発明によるセルロ−スエステルフィルムは寸法安定に優れるため、このような偏光板用保護フィルムとして好適に使用される。
偏光板は、さらに該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
本発明により作製された光学フィルムを用いた液晶表示装置は、画面上にムラ等のない優れた品質を有する。
偏光子は一軸方向(通常は長手方向)に延伸されているため、偏光板を高温高湿の環境下に置くと延伸方向(通常は長手方向)は縮み、延伸に対して直交する方向(通常は幅手方向)には伸びる。偏光板用保護フィルムの膜厚が薄くなるほど偏光板の伸縮率は大きくなり、特に偏光子の延伸方向の収縮量が大きい。通常、偏光子の延伸方向は偏光板保護フィルムの流延方向(MD方向)と貼り合わせるため、偏光板用保護フィルムを薄膜化する場合は、特に流延方向の伸縮率を抑えることが重要である。本発明のセルロ−スエステルフィルムは寸法安定に優れるため、このような偏光板用保護フィルムとして好適に使用される。
偏光板は、さらに該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
(液晶表示装置)
本発明の光学フィルムが用いられた偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。
図7を参照すると、本発明の液晶表示装置は、光反射板(44)、バックライト(47)、導光板(45)、光拡散板(46)に隣接して、本発明に係る偏光板(40)すなわち偏光散乱異方性を有する偏光板保護フィルム(41)/二色性物質による光吸収作用を利用した二色性偏光フィルム(42)/偏光板保護フィルム(43)の構成、及び液晶表示パネル(48)、視認側偏光板(49)の順に積層された構成をとることが好ましい。
本発明の光学フィルムは、反射型、透過型、半透過型LCDあるいはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜けなどもなく、その効果が長期間維持され、MVA型液晶表示装置では顕著な効果が認められる。特に、色むら、ぎらつきや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
このように、本発明の偏光板を、液晶セルの少なくとも一方の面に有する液晶表示装置は、表示品質が非常に優れているものである。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜4
(ベルト製膜)
(ドープの調製)
セルロースアセテートプロピオネート 100重量部
(アセチル基置換度1.95、プロピオニル基置換度0.7)
トリフェニルホスフェート 10重量部
エチルフタレルグリコール 2重量部
メチレンクロライド 300重量部
エタノール 50重量部
チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1重量部
上記の材料を、順次密閉容器中に投入し、釜内温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行なって、セルロースアセテートプロピオネートを完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、液温を43℃まで下げた後、直ちに連結した配管を経て、濾過工程に送液し、絶対濾過精度0.005mmの濾紙を用い、濾過流量300L/m・時、濾圧1.0×10Paで濾過を行なった。
(マット剤分散液の調製)
アエロジル972V(日本アエロジル株式会社製) 12重量部
エタノール 88重量部
以上の材料をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行なった。その後、二酸化珪素分散液に88重量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。
(不定形粒子分散液の調製)
不定形粒子 50重量部
(棒状二酸化チタン、石原産業社製、商品名FTL−100)
エタノール 50重量部
以上の材料をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行なった。その後、不定形粒子分散液に50重量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、不定形粒子分散液を作製した。
前記のように調製したドープに、二酸化珪素分散希釈液および不定形粒子分散液をそれぞれセルロースアセテートプロピオネート重量に対し、分散液中の二酸化珪素が0.1重量部、不定形粒子が2重量部の比率になるよう添加した。
上記のように調製したドープを、図1に示す溶液流延製膜装置を用いて、流延を行なった。すなわち、ドープを、温水を循環して30℃に保温した図9と図10に示すスリット部(4)のスリットギャップの幅(スリット部の厚み方向の幅)が、ドープ流動方向の下流側に至るほど狭くなされている流延ダイ(1)を通して、図1に示すステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体(11)の上に、ダイリップからのドープ押出速度(V)と、支持体(11)の表面移動速度 (V)との速度比:RBを、各実施例においてそれぞれ変化させて流延した。支持体(11)は表面温度が20℃(実施例1)、または30℃(実施例2〜4)となるように温度調整した。流延時のドープ粘度は50ポイズであった。
ついで、ドープの流延により形成された支持体(11)上の流延膜(ウェブ)を、最初に平行流の乾燥風を送り乾燥した。この乾燥風の強さを変えることで、残留溶媒量を制御した。
ここで、ウェブ中の残留溶媒量を調べるには、手引きして作製したウェブ(フィルム)を用いて行なった。まず、簡易製膜機を用いて、温度を予め設定した30cm×30cmのステンレス板上に膜厚40μmのウェブ(フィルム)を作製した。その後すぐに、ベルトゾーンの乾燥条件と同じ乾燥風をこのステンレス板に平行に当てた。乾燥後に重量を測定した。また、そのステンレス板を乾燥室に入れて、完全に溶剤を飛ばし、ステンレス板の重量を測定した。この2つの値からウェブ(フィルム)の溶剤残留量を求めた。
最終的に、ウェブ中の残留溶媒量が所定の値になるまで支持体(11)上で乾燥させた後、剥離ロール(16)によりウェブ(10)を支持体(11)から剥離した。
支持体(11)から剥離した後のウェブ(10)を、図3に示すような周速度をコントロールできるダンサーロール(ドライブロール)(33)にウェブ(10)を巻き掛け、他の搬送ロール(31)(32)より周速度を速くすることで、MD(製膜)方向に2〜20%の延伸率で延伸を行なった。
ついで、ウェブ(10)を、側面から見て千鳥配置せられた多数の搬送ロール(17)を具備する初期乾燥装置(13)に導入し、120℃の乾燥風(23)によって乾燥させ、続いてテンター(14)に導入して、ウェブ両端をクリップではさみ、幅を保持したまま105℃の乾燥風(24)を当てて乾燥させ、さらに側面から見て千鳥配置せられた多数の搬送ロール(17)を具備する後乾燥装置(15)で100℃の乾燥風(25)にて乾燥させた。乾燥が終了したフィルム(20)を巻取り装置(18)によって巻き取り、最終的に厚さ40μm、幅1.8mのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製した。
なお、上記の全工程を通じて、ウェブおよびフィルムの搬送張力は180N/幅mとなるように、エンドレスベルトよりなる支持体(11)の搬送速度、及び巻取り装置(18)の巻取り速度を適宜調整した。
本発明は、ドープが支持体(11)上に流延されてから0.2秒以上、30秒以内の間に下式を満たす条件で、支持体(11)上のウェブ(10)を乾燥させることを特徴としている。
30≦Z≦−5.4T+420
Z:ウェブの任意時点の残留溶剤量(重量%)
Z={(M−N)/N}×100
M:ウェブの任意時点での重量
N:重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量
T:膜平均温度(℃)
また、本発明は、流延ダイ(1)のダイリップからのドープ押出速度(V)と、支持体(11)の表面移動速度(V)との速度比:RB=V/Vが、1.05≦RB≦20.0の範囲で製膜することを特徴としている。
さらに、本発明は、支持体(11)上からウェブ(流延膜)(10)を剥離後、乾燥工程を経て、フィルムを巻き取るまでの間に、ウェブを搬送方向(MD方向)に2〜20%の延伸率で延伸する工程を経ることを特徴としている。
ただし、延伸率は以下の式で定義される。
延伸率[%]={(延伸後の長さ−延伸前の長さ)/延伸前の長さ}×100
下記の表1に、各実施例における支持体(11)上の膜平均温度:T(℃)、残留溶剤量:Z(重量%)、速度比RB、延伸率(%)の各条件を記載した。
なお、実施例1では、支持体(11)上の膜平均温度:T=20℃であるから、ウェブ(10)の任意時点の残留溶剤量:Z(重量%)は、上記の式より算出すると、30≦Z≦312となり、実施例1でのウェブ(10)の任意時点の残留溶剤量:Z(重量%)は、本発明の範囲内である。
同様に、実施例2〜4では、支持体(11)上の膜平均温度:T=30℃であるから、ウェブ(10)の任意時点の残留溶剤量:Z(重量%)は、上記の式より算出すると、30≦Z≦258となり、実施例2〜4でのウェブ(10)の任意時点の残留溶剤量:Z(重量%)は、それぞれ本発明の範囲内である。
比較例1〜6
比較のために、実施例1の場合と同様に実施するが、実施例1の場合と異なる点は、ドープ押出速度(V)と、支持体(11)の表面移動速度(V)との速度比:RBを、いずれも本発明の範囲外とした点にある。
また、比較例1と3では、支持体(11)上からウェブ(10)を剥離後、乾燥工程を経て、フィルムを巻き取るまでの間に、ウェブを搬送方向(MD方向)に延伸する際の延伸率を、本発明の範囲外とした。
さらに、比較例4と6では、ウェブ(10)の任意時点の残留溶剤量:Z(重量%)を、本発明の範囲外とした。
その他の点は、実施例1の場合と同様にして製膜を行ない、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製した。
なお、比較例5では、ウェブに横段状のシワが発生し、ウェブを搬送方向(MD方向)に延伸することができなかった。
実施例5〜10
(ドラム製膜)
(ドープの調製)
セルローストリアセテート 100重量部
(アセチル置換度2.88、数平均分子量15万)
トリフェニルホスフェート 10重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1重量部
メチレンクロライド 233重量部
メタノール 33重量部
ブタノール 8重量部
上記の材料を、順次密閉容器中に投入し、釜内温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行なって、セルローストリアセテートを完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、液温を35℃まで下げた後、直ちに連結した配管を経て、濾過工程に送液し、絶対濾過精度0.005mmの濾紙を用い、濾過流量300L/m・時、濾圧1.0×10Paで濾過を行なった。
(マット剤分散液の調製)
アエロジル972V(日本アエロジル株式会社製) 12重量部
メタノール 88重量部
以上の材料をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行なった。その後、二酸化珪素分散液に88重量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。
(不定形粒子分散液の調製)
不定形粒子 50重量部
(棒状二酸化チタン、石原産業社製、商品名FTL−100)
メタノール 50重量部
以上の材料をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行なった。その後、二酸化チタン分散液に50重量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、不定形粒子分散液を作製した。
上記のように調製したドープに、二酸化珪素分散希釈液および不定形粒子分散液をそれぞれセルローストリアセテートの重量に対し、二酸化珪素分散希釈液中の二酸化珪素が0.1重量部、および不定形粒子分散液中の不定形粒子(棒状二酸化チタン)が2重量部の比率になるよう添加した。
上記のように調製したドープを、図2に示す溶液流延製膜装置を用いて、流延を行なった。すなわち、ドープを、温水を循環して30℃に保温した流延ダイ(1)を通して、ハードクロム鍍金が施されたドラムよりなる支持体(21)の上に、ダイリップからのドープ押出速度(V)と、ドラム支持体(21)の表面移動速度(V)との速度比:RBを、各実施例においてそれぞれ変化させて流延した。ドラム支持体(21)は表面温度が−10(実施例5、6、8)、または−20℃(実施例7、9、10)となるように温度調整した。
ついで、ドープの流延により形成されたドラム支持体(21)上の流延膜(ウェブ)を、最初に平行流の乾燥風を送り乾燥した。この乾燥風の強さを変えることで、残留溶媒量を制御した。
なお、ウェブ中の残留溶媒量は、上記実施例1の場合と同様の方法により行なった。
そして最終的に、ウェブ(10)をドラム支持体(21)上で300°回転させて、冷却した後、剥離ロール(16)によりウェブ(10)をドラム支持体(21)から剥離した。
ドラム支持体(21)から剥離した後のウェブ(10)を、図3に示すような周速度をコントロールできるダンサーロール(ドライブロール)(33)にウェブ(10)を巻き掛け、他の搬送ロール(31)(32)より周速度を速くすることで、MD(製膜)方向に2〜20%の延伸率で延伸を行なった。
ついで、ウェブ(10)をテンター(14)に導入して、ウェブ両端をクリップではさみ、幅を保持したまま105℃の乾燥風(24)を当てて乾燥させ、さらに側面から見て千鳥配置せられた多数の搬送ロール(17)を具備する後乾燥装置(15)で100℃の乾燥風(25)にて乾燥させた。乾燥が終了したフィルム(20)を巻取り装置(18)によって巻き取り、最終的に厚さ40μm、幅1.8mのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
なお、上記の全工程を通じて、ウェブおよびフィルムの搬送張力は180N/幅mとなるように、ドラム支持体(21)の搬送速度、及び巻取り装置(18)の巻取り速度を適宜調整した。
下記の表1に、各実施例におけるドラム支持体(21)上の膜平均温度:T(℃)、残留溶剤量:Z(重量%)、速度比RB、延伸率(%)の各条件を記載した。
なお、実施例5、6、8では、ドラム支持体(21)上の膜平均温度:T=−10℃であるから、ウェブ(10)の任意時点の残留溶剤量:Z(重量%)は、上記の式より算出すると、30≦Z≦474となり、実施例5、6、8でのウェブ(10)の任意時点の残留溶剤量:Z(重量%)は、本発明の範囲内である。
同様に、実施例7、9、10では、ドラム支持体(21)上の膜平均温度:T=−20℃であるから、ウェブ(10)の任意時点の残留溶剤量:Z(重量%)は、上記の式より算出すると、30≦Z≦528となり、実施例7、9、10でのウェブ(10)の任意時点の残留溶剤量:Z(重量%)は、それぞれ本発明の範囲内である。
比較例7〜9
比較のために、実施例5の場合と同様に実施するが、実施例5の場合と異なる点は、比較例7では、ドラム支持体(21)上からウェブ(10)を剥離後、乾燥工程を経て、フィルムを巻き取るまでの間に、ウェブを搬送方向(MD方向)に延伸する際の延伸率が30%であり、本発明の範囲外とした点にある。
また、比較例8では、ウェブ(10)の任意時点の残留溶剤量:Z(重量%)が480重量%であり、本発明の範囲外とした。
また、比較例9では、ドープ押出速度(V)と、ドラム支持体(21)の表面移動速度(V)との速度比:RBが25であり、本発明の範囲外とした。
その他の点は、実施例1の場合と同様にして製膜を行ない、セルロースアセテートフィルムを作製した。
なお、比較例7では、ウェブが搬送の際に破断した。また比較例8では、ウェブに横段状のシワが発生し、ウェブを搬送方向(MD方向)に延伸することができなかった。
<不定形粒子の長軸径、短軸径、アスペクト比、平均方位角の測定>
上記実施例と比較例で作製したセルロースアセテートプロピオネートフィルム、またはセルロースアセテートフィルムの表面付近を、ミクロトームを使って数100nm程度の厚みの薄い切片を取り出し、これを透過型電子顕微鏡で2万倍で撮影し、その画像をフラットベットスキャナを用いて、300dpiのモノクロ256階調で読み込み、読み込んだ画像はパソコンにインストールした画像処理ソフトWinROOF(三谷商事株式会社製)に取り込む。取り込んだ画像についてドメインの画像抽出を行ない、不定形粒子の画像抽出後の画面で300個以上の不定形粒子があることを確認し、もし抽出が十分でない場合は検出レベルの手動調整を行ない、300個以上の不定形粒子が検出、抽出されるよう調整を行なう。このようにして抽出処理した画像データの各々の不定形粒子について、長軸径/短軸径(長軸方向長さ/短軸方向長さ)の測定を行ない、不定形粒子個数平均のアスペクト比を算出した。また、偏光板用保護フィルムの製膜方向と不定形粒子の長軸方向とのなす角度を平均方位角とした時に、該方位角の絶対値の平均値は透過型電子顕微鏡を用い、フィルム切片の製膜方向の位置決めを行なった後、この軸と各不定形粒子300個程度との各々の角度を測定、これらの合計を個数平均して求めた。得られた結果を下記の表1に示した。
<表示画面、画像の外観評価>
作製した上記実施例と比較例で作製したセルロースエステルフィルムを用いて、下記の方法で偏光板を作製し、それをパネルに貼り付けて見た目の外観評価を行なった。
(偏光板の作製)
厚さ50μmのポリビニルアルコールフィルムを製膜方向に一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム6g、水100gの比率からなる水溶液に60秒間浸漬し、ついでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gの比率からなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。この偏光子は吸収軸が製膜方向にあった。
ついで、下記の第1程1〜第5工程に従って偏光板を作製した。
第1工程:偏光板用保護フィルムとして、実施例と比較例で作製したセルロースエステルフィルムを60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、ついで水洗、乾燥して偏光子と貼合する側をケン化した。
同様に、反対側の偏光板用保護フィルムとして、市販のセルローストリアセテートフィルムKC8UCR−5(コニカミノルタオプト株式会社製:位相差フィルム)のケン化も行なった。
第2工程:前記偏光子を固形分2重量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
第3工程:図8に示すように、第2工程で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、該偏光子(5)を、第1工程で処理した本発明による偏光板用保護フィルムとして輝度向上セルロースエステルフィルム(6)の鹸化した面上にのせ、さらに反対側の偏光板用保護フィルムとして、第1工程で処理した市販のセルローストリアセテート(TAC)フィルムKC8UCR−5(7)の鹸化した面が、偏光子(5)に接するようにして積層し、偏光板とした。
第4工程:第3工程で輝度向上セルロースエステルフィルム(6)及びセルローストリアセテート(TAC)フィルム(7)と、偏光子(5)とを積層した偏光板を、圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に第4工程で作製した偏光板を2分間乾燥した。
<偏光板の評価>
上記のようにして作製した偏光板を用いて、以下の評価を実施した。
(液晶表示装置の作製)
視認性評価を行なう液晶パネルを以下のようにして作製した。
富士通製15型液晶ディスプレイVL−1530Sの予め貼合されていたバックライト側の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板をそれぞれ液晶セルのガラス面に貼合した。
その際、偏光板の貼合の向きは、該偏光板の輝度向上セルロースエステルフィルム(6)の面が、バックライト側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行ない、液晶表示装置を各々作製した。
<液晶表示装置の輝度の評価>
作製した各液晶表示装置の正面輝度を評価した。正面輝度は、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング社製)で測定した輝度を用いて輝度(cd/m)を求めた。
なお、比較のために、偏光子の両面に市販のセルローストリアセテート(TAC)フィルムKC8UYを用いて、その他は、上記実施例の偏光板作製の場合と同様にして輝度を比較するための偏光板(ブランク)を作製した。この輝度を比較するための偏光板をバックライト側に予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くよう貼合した。このとき白色表示を行ない、正面輝度が200cd/mとなるように表示した。
液晶表示装置は、同一の白色表示条件で測定された正面輝度が、輝度を比較するための偏光板を用いた液晶表示装置−REF(反射板)の正面輝度よりも高い値を示すと優れているといえる。
◎:液晶表示装置−REFの正面輝度に対し、1.20倍以上である
○:液晶表示装置−REFの正面輝度に対し、1.10倍以上かつ1.20
倍未満である
△:液晶表示装置−REFの正面輝度に対し、1.05倍以上、1.10
倍未満である
×:液晶表示装置−REFの正面輝度に対し、1.05倍に満たない
Figure 2008107778
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜10による方法では、不定形粒子は、セルロースエステルフィルムの製膜方向によく配向しており、このセルロースエステルフィルムを用いた偏光板用保護フィルムが貼合された液晶表示装置では、比較例1〜4、6、8、10に対して、優れた輝度向上効果を示していることが分かる。
本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置の1例を示す概略フローシートである。 本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置のいま1つ例を示す概略フローシートである。 本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置における延伸ユニットの1例を示す概略フローシートである。 本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置における延伸ユニットのいま1つ例を示す概略フローシートである。 本発明に係る光学フィルムを主体とした光学的連続相と不定形粒子とを含む偏光散乱異方性を有する偏光板用保護フィルムの模式図で、セルロースエステルを主体とした光学的連続相に、光学的異方性を有する不定形粒子が偏光板用保護フィルムの長手方向(MD方向)に大凡一定方向に並んでいる状態を示している。 不定形粒子の方位角を示す模式図で、顕微鏡で、不定形粒子を含有するフィルムを2万倍で撮影しスキャナで読み込んだ画像の例を示している。 本発明の液晶表示装置の構成を示す拡大断面図である。 本発明に好ましいロールトゥロールによる偏光板製造の模式図である。 本発明の光学フィルムの製造方法において、ドープ流延工程で使用する流延ダイの斜視図である。 図10aは、同流延ダイの概略正面図、図10bは、同概略側面図である。
符号の説明
1:流延ダイ
2:配管
3:マニホールド部
4:スリット部
5:偏光子
6:輝度向上セルロースエステルフィルム
7:セルローストリアセテート(TAC)フィルム
8:偏光板
10:ウェブ
11:ベルト支持体
12:ウェブ
13:初期乾燥装置
14:テンター
15:後乾燥装置
16:剥離ロール
17:搬送ロール
18:巻取り装置
20:フィルム
21:ドラム支持体
23:乾燥風
24:乾燥風
25:乾燥風
30:延伸ユニット
31:搬送ロール
32:搬送ロール
33:ダンサーロール(ドライブロール)
34〜38:第1ドライブロール〜第5ドライブロール
40:偏光板
41:偏光板保護フィルム
42:二色性偏光フィルム
43:偏光板保護フィルム
44:光反射板
45:導光板
47:バックライト
46:光拡散板
48:液晶表示パネル
49:視認側偏光板

Claims (8)

  1. ポリマーと、有機溶媒と、不定形粒子とを含むドープを、流延ダイから支持体上に流延して、光学フィルムを製造する方法であって、ドープが支持体上に流延されてから0.2秒以上、30秒以内の間に下式を満たす条件で、支持体上のウェブを乾燥させることを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
    30≦Z≦−5.4T+420
    Z:ウェブの任意時点の残留溶剤量(重量%)
    Z={(M−N)/N}×100
    M:ウェブの任意時点での重量
    N:重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量
    T:膜平均温度(℃)
  2. 流延ダイが、マニホールド部およびスリット部を具備するものであり、流延ダイのスリット部のスリットギャップの幅(スリット部の厚み方向の幅)が、ドープ流動方向の下流側に至るほど狭くなされていることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 流延ダイのダイリップからのドープ押出速度(V)と、支持体の表面移動速度(V)との速度比:RB=V/Vが、1.05≦RB≦20.0の範囲で製膜することを特徴とする、請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 支持体上からウェブ(流延膜)を剥離後、乾燥工程を経て、フィルムを巻き取るまでの間に、ウェブを搬送方向(MD方向)に2〜20%の延伸率で延伸する工程を経ることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
    ただし、延伸率は以下の式で定義される。
    延伸率[%]={(延伸後の長さ−延伸前の長さ)/延伸前の長さ}×100
  5. 請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法により作製されたことを特徴とする、光学フィルム。
  6. 請求項5に記載の光学フィルムよりなることを特徴とする、偏光板用保護フィルム。
  7. 請求項6に記載の偏光板用保護フィルムを、少なくとも一方の面に有することを特徴とする、偏光板。
  8. 請求項7に記載の偏光板を、液晶セルの少なくとも一方の面に有することを特徴とする、液晶表示装置。
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