JP2007101625A - 光学フィルム、その製造方法、光学フィルムを用いた偏光板、及び液晶表示装置 - Google Patents

光学フィルム、その製造方法、光学フィルムを用いた偏光板、及び液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 平面性が高く、切り粉巻き込みによる変形故障の少ない、液晶表示装置等に用いられる光学フィルム、平面性の悪化の低減およびスリッティング時の切り粉の発生の低減し得る光学フィルムの製造方法、薄膜化とともに、耐久性及び寸法安定性、光学的等方性に優れている偏光板、また該偏光板を用い、広範囲にわたり高コントラスト比を有する見やすい表示を実現可能なVA、IPS、OCB、TN、HAN、STNのモードで動作する液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂フィルム原料を加熱溶融した溶融液または該フィルム原料を溶媒に溶解したドープを、流延ダイから金属支持体上に流延して光学フィルムを製膜する。溶融液またはドープは非ニュートン流体であり、溶融液またはドープが流延ダイのマニホールド内のスリット部を通過する際、スリット部の上流から下流に流れる溶融液またはドープの流速が、下端に向かって大きくなるようにする。
【選択図】 図4

Description

本発明は、液晶表示装置(LCD)あるいは有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレー等の各種の表示装置に用いられる光学フィルム、特にこれら表示装置に用いられる偏光板用保護フィルム、および位相差フィルムとして用いることのできる複屈折性を有する光学フィルム、その製造方法、光学フィルムを用いた偏光板、及び偏光板を用いた液晶表示装置に関するものである。
一般に、液晶表示装置の基本的な構成は、液晶セルの両側に偏光板を設けたものである。偏光板は、一定方向の偏波面の光だけを通すので、液晶表示装置においては、電界による液晶の配向の変化を可視化させる重要な役割を担っており、偏光板の性能によって液晶表示装置の性能が大きく左右される。
近年、薄膜の液晶表示装置の表示品質に対する要求が高まっており、IPS、VA、OCB等種々の液晶表示方式が提案され、位相差フィルムの必要性は高まっている。
フィルムに位相差を与える手段として、ポリカーボネートやシクロオレフィン系のフィルム、セルロースアセテート系の樹脂フィルムを延伸する方法が提案されている。ポリカーボネートやシクロオレフィン系のフィルムを用いる場合には偏光板に位相差板を貼り合わせる必要があるが、特にセルロースアセテートフィルムの場合は偏光板の保護フィルムが位相差フィルムを兼ねることもできるので、部材の減少、製造工程の簡略化、コストダウンが可能である。
さらに近年、大型液晶テレビの急速な普及により、保護フィルムおよび位相差フィルムの需要が急速に伸びており、これらに対応するため、溶液製膜では、原料溶液(ドープと呼ぶ)を高濃度化で、また、溶融押出製膜で製膜速度を上げていくと、フィルムが流延搬送方向に筋っぽくなって、平面性が悪化したり、また、フィルム端部をスリットする際に切り粉が発生しやすくなるなどの品質悪化が問題となっていた。
ところで、光学フィルムの溶液流延製膜装置において、剥離後から巻取りまでの間にフィルム端部をスリットする場合に、従来から、製膜におけるフィルム端部の断面状態が悪化すると、剥離物(切り粉)が発生し、問題となっていた。
また、フィルムの耳切り端部の断面状態が悪いと、製膜時にフィルムの破断が生じ易く、さらに、フィルム剥離物の発生に伴い、フィルム端部に、いわゆる耳立ちが生じ、その結果、フィルム端部の吸湿状態が異なり、これに起因してフィルム端部の寸法挙動が異なり、寸法安定性が劣化するという問題があった。
このような製膜におけるフィルム端部のスリッタ装置に関わる特許文献には、従来、つぎのようなものがある。
特開2001−315089号公報 特許文献1には、フィルムを品質よく裁断することができ、またフィルム裁断屑の回転刃に対する付着を低減し、裁断能力を長時間持続させるものとして、面取り部を有するスリッタ刃を備えたスリッタ装置が開示されている。 特開平7−11055号公報 特許文献2には、溶液流延製膜法によってフィルムを製造する工程において、流延から巻取の途中にフィルム端部をフィルムの搬送方法に沿って連続して裁断して除去する工程を設けたフィルムの裁断方法が開示されている。そして、この特許文献2のフィルムの裁断方法では、裁断時におけるフィルムの残留揮発分を規定していた。 特開平2003−89093号公報 特許文献3には、特許文献2の場合と同様に、溶液流延製膜法によってフィルムを製造する工程において、流延から巻取の途中にフィルム端部をフィルムの搬送方法に沿って連続して裁断して除去する工程を設けたフィルムの裁断方法が開示されている。そして、この特許文献3のフィルムの裁断方法では、フィルム裁断部分の温度をポリマーのガラス転移温度(Tg)未満に規定していた。
しかしながら、上記特許文献に記載の従来の装置または方法では、光学フィルムの製造において、フィルムの平面性の悪化の低減、およびフィルム端部のスリッティング時の剥離物(切り粉)の発生の低減を充分に果たすことができないという問題があった。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、液晶表示素子すなわち偏光板の保護フィルムとして用いられる光学フィルムについて、フィルムの全幅にわたってフィルムの面内方向リタデーション(Ro)及び厚み方向リタデーション(Rt)のバラツキが少なく、かつ優れた平面性をもつ光学フィルム、及びその製造方法を提供しようとすることにある。
また、本発明の目的は、画像表示装置に適用した場合に、広範囲に渡り高いコントラスト比を有する見やすい表示を実現可能な光学フィルムであって、高温度下や高湿度下においても剥離することが無く、安定した位相差値を確保できる光学フィルム、及び偏光板を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、特に、本発明の偏光板を用いた広範囲にわたり高コントラスト比を有する見やすい表示を実現可能な画像表示装置、特にVA、IPS、OCB、TN、HAN、STNのモードで動作する液晶表示装置を提供することにある。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、平面性が高く、切り粉巻き込みによる変形故障の少ない光学フィルムを提供することにある。また、本発明の目的は、平面性の悪化の低減およびスリッティング時の切り粉の発生の低減し得る光学フィルムの製造方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、薄膜化とともに、耐久性及び寸法安定性、光学的等方性に優れている偏光板を提供することにある。また、本発明の目的は、該偏光板を用い、広範囲にわたり高コントラスト比を有する見やすい表示を実現可能な画像表示装置、特にVA、IPS、OCB、TN、HAN、STNのモードで動作する液晶表示装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、熱可塑性樹脂フィルム原料を加熱溶融した溶融液または熱可塑性樹脂フィルム原料を溶媒に溶解したドープ(溶液)を、流延ダイから回転駆動金属製エンドレスベルトまたは回転駆動金属製ドラム(以下、金属支持体という)上に流延して製膜する光学フィルムの製造方法であって、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープが非ニュートン流体であり、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープが流延ダイのマニホールド内のスリット部を通過する際、スリット部の上流から下流に流れる熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープの流速が、下端に向かって大きくなるようにすることを特徴としている。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法であって、流延ダイのマニホールド内のスリット部を通過する熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープの送液圧力が、1〜30MPa、流延ダイのマニホールド内のスリット部上端の間隙(H)と、同スリット部下端の間隙(H)との比(H/H)が、2〜10の範囲であることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法であって、流延ダイの上端部に、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープの供給口を複数箇所設けておき、流延ダイに対して、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープを、複数箇所の供給口から流延ダイのマニホールド内に供給することを特徴としている。
請求項4の光学フィルムの発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法で製造されたことを特徴としている。
請求項5の偏光板の発明は、偏光膜およびその両側に配置された透明保護層からなる偏光板であって、両透明保護層のうちの少なくとも1つに、請求項4に記載の光学フィルムが用いられていることを特徴としている。
請求項6の発明は、液晶セルと、液晶セルを挾むように配置された2枚の偏光板を具備する液晶表示装置であって、2枚の偏光板のうちの少なくとも1枚の偏光板が、請求項5に記載の偏光板であることを特徴としている。
請求項1の光学フィルムの製造方法の発明は、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープが非ニュートン流体であり、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープが流延ダイのマニホールド内のスリット部を通過する際、スリット部の上流から下流に流れる熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープの流速が、下端に向かって大きくなるようにするもので、本発明によれば、フィルム全幅にわたってムラのないかつ平面性に優れた光学フィルムを得ることができ、画像表示装置に適用した場合に広範囲に渡り高いコントラスト比を有する見やすい表示を実現可能な光学フィルムを得ることができ、しかも高温度下や高湿度下においても安定した位相差値を確保できる光学フィルムを得ることができるという効果を奏する。
また、請求項2の発明によれば、流延ダイのマニホールド内のスリット部を通過する熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープの送液圧力が、1〜30MPa、流延ダイのマニホールド内のスリット部上端の間隙(H)と、同スリット部下端の間隙(H)との比(H/H)が、2〜10の範囲に規定することにより、フィルム全幅にわたってムラのないかつ平面性に優れた光学フィルムを得ることができ、画像表示装置に適用した場合に広範囲に渡り高いコントラスト比を有する見やすい表示を実現可能な光学フィルムを得ることができ、しかも高温度下や高湿度下においても安定した位相差値を確保できる光学フィルムを得ることができるという効果を奏する。
請求項3の発明によれば、流延ダイの上端部に、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープの供給口を複数箇所設けておき、流延ダイに対して、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープを、複数箇所の供給口から流延ダイのマニホールド内に供給するもので、本発明によれば、フィルム全幅にわたってムラのないかつ平面性に優れた光学フィルムを得ることができ、画像表示装置に適用した場合に広範囲に渡り高いコントラスト比を有する見やすい表示を実現可能な光学フィルムを得ることができ、しかも高温度下や高湿度下においても安定した位相差値を確保できる光学フィルムを得ることができるという効果を奏する。
また、請求項4の光学フィルムの発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法で製造されたものであるから、フィルムの平面性が高く、切り粉巻き込みによる変形故障が少ないという効果を奏する。
請求項5の偏光板の発明は、偏光膜およびその両側に配置された透明保護層からなる偏光板であって、両透明保護層のうちの少なくとも1つに、請求項4に記載の光学フィルムが用いられているものであるから、本発明によれば、偏光板は、薄膜化とともに、耐久性及び寸法安定性に優れているという効果を奏する。
請求項6の液晶表示装置の発明は、液晶セルを挾む2枚の偏光板のうちの少なくとも1枚の偏光板が、請求項4に記載の偏光板であるもので、本発明によれば、広範囲にわたり高コントラスト比を有する見やすい表示を実現可能な画像表示装置、特にVA、IPS、OCB、TN、HAN、STNのモードで動作する液晶表示装置を提供することができるという効果を奏する。
本発明を実施するための最良の形態について以下説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
本発明による光学フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂フィルム原料を加熱溶融した溶融液または熱可塑性樹脂フィルム原料を溶媒に溶解したドープ(溶液)を、流延ダイから回転駆動金属製エンドレスベルトまたは回転駆動金属製ドラム(金属支持体)上に流延して製膜する光学フィルムの製造方法であって、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープが非ニュートン流体であり、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープが流延ダイのマニホールド内のスリット部を通過する際、スリット部の上流から下流に流れる熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープの流速が、下端に向かって大きくなるようにすることを特徴としている。
ここで、非ニュートン流体とは、粘度のせん断速度依存性を有するものであり、ここでは、高せん断速度で、見掛け粘度が下がる特性(チクソトロピー流体)のものを示す。
そして、本発明においては、流延ダイのマニホールド内のスリット部を通過する熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープの送液圧力が、1〜30MPa、流延ダイのマニホールド内のスリット部上端の間隙(H)と、同スリット部下端の間隙(H)との比(H/H)が、2〜10の範囲であることが、好ましい。
また、本発明による光学フィルムの製造方法は、流延ダイの上端部に、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープの供給口を複数箇所設けておき、流延ダイに対して、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープを、複数箇所の供給口から流延ダイのマニホールド内に、同時に供給することが、好ましい。
本発明による光学フィルムの製造方法は、溶液流延製膜法でも溶融押出し製膜法でも構わない。
本発明の方法により製造する光学フィルムとしては、製造が容易であること、活性線硬化型樹脂層との接着性が良好であること、光学的に透明であること等が好ましい要件として挙げられる。
ここで、光学フィルムについて、透明とは、可視光の透過率が60%以上であることをさし、好ましくは可視光の透過率が80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
上記の性質を有していれば特に限定はないが、本発明において好ましく用いられる樹脂としては、エチレン性不飽和単量体単位を有する単独重合体または共重合体を挙げることができる。より好ましくは、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル、ポリアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸アルキルの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸アルキルエステル共重合体等のアクリル酸またはメタクリル酸エステルの単独重合体または共重合体が挙げられる。さらにアクリル酸またはメタクリル酸のエステルは透明性、相溶性に優れ、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル単位を有する単独重合体または共重合体、特に、アクリル酸またはメタクリル酸メチル単位を有する単独重合体または共重合体が好ましい。具体的にはポリメタクリル酸メチルが好ましい。ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸シクロヘキサンのようなアクリル酸またはメタクリル酸の脂環式アルキルエステルは耐熱性が高く、吸湿性が低い、複屈折が低い等の利点を有しているものが、好ましい。
本発明において好ましく用いられるその他の樹脂としては、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のアシル基の置換度が1.8〜2.80のセルロースエステル樹脂、またセルロースメチルエーテル、セルロースエチルエーテル、セルロースプロピルエーテル等のアルキル基置換度2.0〜2.80のセルロースエーテル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、またアルキレンジカルボン酸とジアミンとの重合物のポリアミド樹脂、またアルキレンジカルボン酸とジオールとの重合物、アルキレンジオールとジカルボン酸との重合物、シクロヘキサンジカルボン酸とジオールとの重合物、シクロヘキサンジオールとジカルボン酸との重合物、芳香族ジカルボン酸とジオールとの重合物等のポリエステル樹脂、またポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル樹脂、またポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、アルキレンジイソシアナートとアルキレンジオールの線状重合物等のポリウレタン樹脂等を挙げることができ、これらから選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましい。
中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。また、相溶性のあるポリマーを2種類以上ブレンドして後で述べるドープ溶解を行なっても良いが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、本発明の光学フィルムの製造方法を溶液流延製膜法で行なうの場合について、説明する。
〔ドープを形成する材料〕
以下、セルロースエステルを例に挙げて、本発明を説明する。
本発明において、セルロースエステル及び有機溶媒を含有するセルロースエステル溶液をドープといい、これをもって溶液流延製膜し、セルロースエステルフィルムを形成せしめるものである。
(セルロースエステル)
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ単独で、または任意の割合で混合して使用することができる。
本発明において、セルロースエステルは、セルロース原料のアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて反応が行なわれる。アシル化剤が酸クロライド(CHCOCl、CCOCl、CCOCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行なわれる。具体的には、特開平10−45804号公報に記載の方法で合成することができる。
セルロースエステルは、アシル基がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットあたり3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している。
セルロースエステルフィルムに用いることができるセルロースエステルとしては、総アシル基置換度が2.4〜2.8であることが好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルの分子量は、数平均分子量(Mn)で50,000〜200,000のものが用いられる。60,000〜200,000のものがさらに好ましく、80,000〜200,000が特に好ましい。
本発明で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、Mw/Mnが、前記のように1.4〜3.0であることが好ましく、さらに好ましくは1.7〜2.2の範囲である。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することができる。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することができる。
測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex−K806、K805、K803G
(昭和電工株式会社製カラムを3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1重量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所株式会社製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー株式会社製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルは、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであり、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートフタレート等や、特開平10−45804号公報、特開平8−231761号公報、及び米国特許第2,319,052号公報等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。あるいは、特開2002−179701号公報、特開2002−265639号公報、及び特開2002−265638号公報に記載の芳香族カルボン酸とセルロースとのエステル、セルロースアシレートも好ましく用いられる。
上記の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは混合して用いることもできる。
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基もしくはブチリル基の置換度をYとした時、下記式(a)及び(b)を同時に満たすセルロースエステルである。
式(a) 2.4≦X+Y≦2.8
式(b) 0≦X≦2.5
アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することができる。
これらアシル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。
アセチルセルロースの場合、酢化率を上げようとすれば、酢化反応の時間を延長する必要がある。ただし、反応時間を余り長くとると分解が同時に進行し、ポリマー鎖の切断やアセチル基の分解等が起り、好ましくない結果をもたらす。従って、酢化度を上げ、分解をある程度抑えるためには、反応時間はある範囲に設定することが必要である。反応時間で規定することは反応条件がさまざまであり、反応装置や設備その他の条件で大きく変わるので適切でない。ポリマーの分解は進むにつれ、分子量分布が広くなっていくので、セルロースエステルの場合にも、分解の度合いは通常用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値で規定できる。すなわち、セルローストリアセテートの酢化の過程で、余り長過ぎて分解が進み過ぎることがなく、かつ酢化には十分な時間酢化反応を行なわせしめるための反応度合いの一つの指標として重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値を用いることができる。
セルロースエステルの製造法の一例を以下に示すと、セルロース原料として綿化リンター100重量部を解砕し、40重量部の酢酸を添加し、36℃で20分間前処理活性化をした。その後、硫酸8重量部、無水酢酸260重量部、酢酸350重量部を添加し、36℃で120分間エステル化を行なった。24重量%酢酸マグネシウム水溶液11重量部で中和した後、63℃で35分間ケン化熟成し、アセチルセルロースを得た。これを10倍の酢酸水溶液(酢酸:水=1:1(重量比))を用いて、室温で160分間攪拌した後、濾過、乾燥させてアセチル置換度2.75の精製アセチルセルロースを得た。このアセチルセルロースはMnが92,000、Mwが156,000、Mw/Mnは1.7であった。同様にセルロースエステルのエステル化条件(温度、時間、攪拌)、加水分解条件を調整することによって置換度、Mw/Mn比の異なるセルロースエステルを合成することができる。
なお、合成されたセルロースエステルは、精製して低分子量成分を除去したり、未酢化の成分を濾過で取り除くことも好ましく行なわれる。
また、混酸セルロースエステルの場合には、特開平10−45804号公報に記載の方法によって得ることができる。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
また、セルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成することにより不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。カルシウム(Ca)成分については、地下水や河川の水等に多く含まれ、これが多いと硬水となり、飲料水としても不適当であるが、カルボン酸や、スルホン酸等の酸性成分と、また多くの配位子と配位化合物、すなわち、錯体を形成しやすく、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成する。
カルシウム(Ca)成分は60ppm以下、好ましくは0〜30ppmである。マグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると不溶分を生ずるため、0〜70ppmであることが好ましく、特に0〜20ppmであることが好ましい。鉄(Fe)分の含量、カルシウム(Ca)分含量、マグネシウム(Mg)分含量等の金属成分は、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行なった後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析を行なうことによって求めることができる。
(有機溶媒)
セルロースエステルを溶解してドープ(溶液)の形成に有用な有機溶媒としては、塩素系有機溶媒と非塩素系有機溶媒がある。塩素系の有機溶媒としてメチレンクロライド(塩化メチレン)を挙げることができ、セルロースエステル、特にセルローストリアセテートの溶解に適している。
昨今の環境問題から非塩素系有機溶媒の使用が検討されている。非塩素系有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができる。
これらの有機溶媒をセルローストリアセテートに対して使用する場合には、常温での溶解方法も使用可能であるが、高温溶解方法、冷却溶解方法、高圧溶解方法等の溶解方法を用いることにより不溶解物を少なくすることができるので好ましい。セルローストリアセテート以外のセルロースエステルに対しては、メチレンクロライドを用いることはできるが、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンが好ましく使用される。特に酢酸メチルが好ましい。本発明において、上記セルロースエステルに対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
本発明において、ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40重量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。これらはドープを金属支持体に流延後溶媒が蒸発をし始めアルコールの比率が多くなるとドープ膜(ウェブ)がゲル化し、ウェブを丈夫にし金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらのうちドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。これらの有機溶媒は単独ではセルロースエステルに対して溶解性を有していないので貧溶媒という。
ドープ中のセルロースエステルの濃度は15〜30重量%、ドープ粘度は100〜500Pa・sの範囲に調製されることが良好なフィルム面品質を得る上で好ましい。
ドープ中に添加される添加剤としては、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、マット剤などの微粒子がある。本発明において、これらの添加剤はセルロースエステル溶液の調製の際に添加してもよいし、マット剤などの微粒子分散液の調製の際に添加してもよい。
液晶画像表示装置に使用する偏光板には、耐熱・耐湿性を付与する可塑剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤等を添加することが好ましい。下記に添加剤について説明する。
(可塑剤)
本発明において、セルロースエステル溶液またはドープには、いわゆる可塑剤として知られる化合物を、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水蒸気透過率低減、リターデーション調整等の目的で添加することが好ましく、例えばリン酸エステルやカルボン酸エステルが好ましく用いられる。
リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。
カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルホスフェート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることができ、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく用いられる。またこれらアルキルフタリルアルキルグリコレートを2種以上混合して使用してもよい。
また、多価アルコールエステルも好ましく用いられる。
本発明において用いられる多価アルコールは、次の一般式(1)で表される。
(1) R1 −(OH)n
ただし、式中、R1 はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表す。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることがさらに好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、また、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
これらの化合物は、セルロースエステルに対して1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%となるように含まれていることが好ましい。また、延伸及び乾燥中のブリードアウト等を抑制させるため、200℃における蒸気圧が1400Pa以下の化合物であることが好ましい。
これらの化合物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
この他の添加剤として、特開2002−22956号公報に記載のポリエステル、ポリエステルエーテル、特開2003−171499号公報に記載のウレタン樹脂、特開2002−146044号公報に記載のロジン及びロジン誘導体、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂、特開2003−96236号公報に記載の多価アルコールとカルボン酸とのエステル、特開2003−165868号公報に記載の一般式(1)で示される化合物、特開2004−292696号公報に記載のポリエステル重合体またはポリウレタン重合体等が挙げられる。これらの添加剤は、ドープもしくは微粒子分散液に含有させることができる。
(紫外線吸収剤)
本発明において、セルロースエステルフィルムには、紫外線吸収剤を含有させることができる。
使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報、特開2001−72782号公報に記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報、特開2002−31715号公報、特開2002−169020号公報、特開2002−47357号公報、特開2002−363420号公報、特開2003−113317号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を好ましく使用できる。高分子紫外線吸収剤としては、大塚化学社製の反応型紫外線吸収剤RUVA−93を例として挙げることができる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、ドープ中で紫外線吸収剤が溶解するようなものであれば制限なく使用できるが、本発明においては紫外線吸収剤をメチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等のセルロースエステルに対する良溶媒、または良溶媒と低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)のような貧溶媒との混合有機溶媒に溶解し紫外線吸収剤溶液としてセルロースエステル溶液に添加するかまたは直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とポリマー中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の含有量は0.01〜5重量%、特に0.5〜3重量%である。
本発明においては、これら紫外線吸収剤を単独で用いても良いし、異なる2種以上の混合で用いても良い。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して重量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
(微粒子)
本発明の光学フィルムには、滑り性を付与するため、あるいは物性を改善するために、マット剤等の微粒子を添加することができる。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられ、その形状としては、球状、平板状、棒状、針状、層状、不定形状等が用いられる。、
無機化合物の微粒子の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレイ、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、及びリン酸カルシウム等の金属酸化物、水酸化物、ケイ酸塩、リン酸塩、炭酸酸塩を挙げることができる。
有機化合物の微粒子の例としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の微粒子が挙げことができ、シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元網状状構造を有するものが好ましい。例えばトスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(東芝シリコーン株式会社製)を挙げることができる。
中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低くできるので、好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子は、有機物によって表面処理されていることが多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。
微粒子の平均粒径は大きい方が、滑り性効果は大きく、反対に、平均粒径が小さい方は透明性に優れる。また、微粒子の平均粒径は、0.005〜1.0μmの範囲である。これらの一次粒子であっても、凝集によってできた二次粒子であっても良い。微粒子の含有量は、樹脂に対して1mあたり0.01〜20g含有させることが好ましい。
二酸化ケイ素微粒子としては、例えばアエロジル株式会社製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,R805、OX50、TT600などを挙げることができ、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合は、任意の割合で混合して使用することができる。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えばアエロジル200VとR972Vを質量比で、0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用できる。
上記マット剤として用いられるフィルム中の微粒子の存在は、別の目的として、フィルムの強度向上のために用いることができる。
(界面活性剤)
本発明で用いられるドープあるいは微粒子分散液には、界面活性剤を含有することが好ましく、リン酸系、スルフォン酸系、カルボン酸系、ノニオン系、カチオン系等特に限定されない。これらは、例えば特開昭61−243837号公報等に記載されている。界面活性剤の添加量は、セルロースアシレートに対して0.002〜2重量%が好ましく、0.01〜1重量%がより好ましい。添加量が0.001重量%未満であれば添加効果を十分に発揮することができず、添加量が2重量%を超えると、析出したり、不溶解物を生じたりすることがある。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリグリシジルやソルビタンをノニオン性親水性基とする界面活性剤であり、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレンーポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルを挙げることができる。
アニオン系界面活性剤としてはカルボン酸塩、硫酸塩、スルフォン酸塩、リン酸エステル塩であり、代表的なものとしては脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、α−オレフィンスルフォン酸塩、ジアルキルスルフォコハク酸塩、α−スルフォン化脂肪酸塩、N−メチル−Nオレイルタウリン、石油スルフォン酸塩、アルキル硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニールエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩ホルムアルデヒド縮合物等である。
カチオン系界面活性剤としてはアミン塩、4級アンモニウム塩、ピリジュム塩等を挙げることができ、第1〜第3脂肪アミン塩、第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等)を挙げることができる。両性系界面活性剤としてはカルボキシベタイン、スルフォベタイン等であり、N−トリアルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン等である。
フッ素系界面活性剤は、フルオロカーボン鎖を疎水基とする界面活性剤である。フッ素系界面活性剤としては、C17CHCHO-(CHCHO)10-OSONa、C17SON(C)(CHCHO)16-H、C17SON(C)CHCOOK、C15COONH、C17SON(C) (CHCHO)-(CH-SONa、C17SON(C)(CH-N(CH・I、C17SON(C)CHCHCH(CH-CHCOO、C17CHCHO(CHCHO)16-H、C17CHCHO(CH-N(CH・I、H(CF-CHCHOCOCHCH(SO)COOCHCHCHCH(CF-H、H(CFCHCHO(CHCHO)16-H、H(CFCHCHO(CH-N(CH・I、H(CFCHCHOCOCHCH(SO)COOCHCHCH17、C17-C-SON(C)(CHCHO)16-H、C17-C-CSON(C)(CH-N(CH・I等が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
(剥離促進剤)
さらに、剥離時の荷重を小さくするための剥離促進剤も、ドープに添加してもよい。それらは、界面活性剤が有効であり、リン酸系,スルフォン酸系,カルボン酸系,ノニオン系,カチオン系等があるが、これらに特に限定されない。これらの剥離促進剤は、例えば特開昭61−243837号公報等に記載されている。特開昭57−500833号公報にはポリエトキシル化リン酸エステルが剥離促進剤として開示されている。特開昭61−69845号公報には非エステル化ヒドロキシ基が遊離酸の形であるモノまたはジリン酸アルキルエステルをセルロースエステルに添加することにより迅速に剥離できることが開示されている。また、特開平1−299847号公報には非エステル化ヒドロキシル基及びプロピレンオキシド鎖を含むリン酸エステル化合物と無機物粒子を添加することにより剥離荷重が低減できることが開示されている。
また、下記式(2)または(3)で表される化合物が含まれていることが好ましい。
(2)(R-B-O)n1-P(=O)-(OMn2
(3) R-B-X
式中、R及びRは、それぞれ、炭素数4〜40の置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基であり、Mは、アルカリ金属、アンモニア、低級アルキルアミンであり、B及びBは、それぞれ、2価の連結基であり、Xは、カルボン酸またはその塩、スルフォン酸またはその塩、あるいは硫酸エステルまたはその塩であり、n1は、1または2であり、そして、n2は、3−n1である。
上記の式(2)または(3)で表される少なくとも一種の剥離剤を、セルロースアシレートフィルムに含有することが好ましい。
以下に、これらの剥離剤について記述する。RとRの好ましい例としては、炭素数4〜40の置換、無置換のアルキル基(例えば、ブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコサニル、ドコサニル、ミリシル、等)、炭素数4〜40の置換、無置換のアルケニル基(例えば、2−ヘキセニル、9−デセニル、オレイル等)、炭素数4〜40の置換、無置換のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ジイソプロピルフェニル、トリイソプロピルフェニル、t−ブチルフェニル、ジ−t−ブチルフェニル、トリ−t−ブチルフェニル、イソペンチルフェニル、オクチルフェニル、イソオクチルフェニル、イソノニルフェニル、ジイソノニルフェニル、ドデシルフェニル、イソペンタデシルフェニル)である。
これらの中でもさらに好ましいのは、アルキルとしては、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ドコサニル、アルケニルとしてはオレイル、アリール基としてはフェニル、ナフチル、トリメチルフェニル、ジイソプロピルフェニル、トリイソプロピルフェニル、ジ−t−ブチルフェニル、トリ−t−ブチルフェニル、イソオクチルフェニル、イソノニルフェニル、ジイソノニルフェニル、ドデシルフイソペンタデシルフェニルである。
つぎに、B、Bの2価の連結基について記述する。炭素数1〜10のアルキレン、ポリ(重合度1〜50)オキシエチレン、ポリ(重合度1〜50)オキシプロピレン、ポリ(重合度1〜50)オキシグリセリン、でありこれらの混合したものでもよい。これらで好ましい連結基は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ポリ(重合度1〜25)オキシエチレン、ポリ(重合度1〜25)オキシプロピレン、ポリ(重合度1〜15)オキシグリセリンである。
つぎに、Xは、カルボン酸(または塩)、スルフォン酸(または塩)、硫酸エステル(または塩)であるが、特に好ましくはスルフォン酸(または塩)、硫酸エステル(または塩)である。塩としては好ましくはNa、K、アンモニウム、トリメチルアミン及びトリエタノールアミンである。以下に、本発明の好ましい化合物の具体例を記載する。
RZ−1 C17O-P(=O)-(OH)
RZ−2 C1225O-P(=O)-(OK)
RZ−3 C1225OCHCHO-P(=O)-(OK)
RZ−4 C1531(OCHCHO-P(=O)-(OK)
RZ−5 {C1225O(CHCHO)-P(=O)-OH
RZ−6 {C1835(OCHCHO}-P(=O)-ONH
RZ−7 (t-C-C-OCHCHO-P(=O)-(OK)
RZ−8 (iso-C19-C-O-(CHCHO)-P(=O)-
(OK)(OH)
RZ−9 C1225SONa
RZ−10 C1225OSNa
RZ−11 C1733COOH
RZ−12 C1733COOH・N(CHCHOH)
RZ−13 iso-C17-C-O-(CHCHO)-
(CHSONa
RZ−14 (iso-C19-C-O-(CHCHO)-
(CHSONa
RZ−15 トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−16 トリ-t-ブチルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−17 C1733CON(CH)CHCHSONa
RZ−18 C1225-CSO・NH
これらの化合物の使用量は、ドープ中に0.002〜2重量%で含有することが好ましい。より好ましくは0.005〜1重量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.5重量%である。その添加方法は、特に限定されないがそのまま液体あるいは固体のまま、溶解する前に他の素材と共に添加され溶液としてもよいし、予め作製されたセルロースアシレート溶液に後から添加してもよい。
(その他の添加剤)
この他、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩等の熱安定剤を加えてもよい。さらに帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤等も加える場合がある。
〔溶液流延製膜法〕
本発明の光学フィルムの製造方法は、溶液流延製膜法により実施される。
図1は、光学フィルムの溶液流延製膜法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程を模式的に示したフローシートである。
(1)微粒子分散液調製工程
微粒子分散液の調製方法は、特に限定はされないが、下記のa)もしくはb)の方法で行なうことが好ましい。
a)図1を参照すると、溶解釜10中に有機溶媒と微粒子分散用樹脂を導入し、攪拌溶解し、樹脂溶液とする。これとは別に、有機溶媒と微粒子の混合液を送液ポンプでマントンゴーリーやサンドミル等の分散機(図示略)に移送し、プレ分散を行なう。微粒子のプレ分散液を前記の樹脂溶液に添加し、攪拌し、これを送液ポンプ11で濾過器12に送って凝集物を取り除き、微粒子分散液として、ストックタンク(静置釜)13にストックする。調製された微粒子分散液は、さらに何回か分散と濾過を繰り返してもよい。
b)溶解釜10中に有機溶媒と例えばセルロースエステル系樹脂を加え、攪拌溶解して樹脂溶液とし、この樹脂溶液に微粒子を加えて、マントンゴーリンもしくはサンドミル等の分散機(図示略)で分散し、それを送液ポンプ11で濾過器12に送って凝集物を除き微粒子分散液とする(何回か同様な操作を繰り返し循環させてもよい)。そして微粒子分散液を切り替え弁17からストックタンク13に移送し、静置脱泡後、送液ポンプ(例えば加圧型定量ギヤポンプ)14で移送し、濾過器15で濾過して導管16で移送する。
微粒子分散液には、さらに可塑剤、紫線吸収剤、分散剤等も添加してもよい。
本発明において、上記のような微粒子分散液を調製する際に使用する分散機は、大きくはメディアレス分散機とメディア分散機とに分けられ、どちらも使用することができる。
メディアレス分散機としては、超音波型、遠心型、高圧型等があり、本発明においては高圧分散装置が好ましく用いられる。高圧分散装置は微粒子と溶媒を混合した組成物を細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態等特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理することにより、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.8×10Pa以上であることが好ましい。さらに好ましくは19.6×10Pa以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が100kcal/hr以上に達するものが好ましい。上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製の超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザー、あるいはウルトラタラックスがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えば、イズミフードマシナリ製ホモゲナイザー、三和機械株式会社社製UHN−01等が挙げられる。
メディア分散機としては、ガラスビーズ、セラミックビーズ等のメディアの衝突力を利用して分散するタイプのボールミル、サンドミル、ダイノミル等が挙げられる。本発明では、特にメディア分散機が好ましく用いられる。
このようにして調製された微粒子分散液は濾過により、凝集物や異物が除去される。得られた微粒子分散液を用いて、ドープが調製される。
(2)セルロースエステル溶液調製工程
本発明においては、上記の方法で予め調製された微粒子分散液と溶媒とセルロースエステルとを混合してドープが調製される。具体的には、溶解釜1に溶媒の一部と微粒子分散液とを添加混合した後、ここに残りの溶媒とセルロースエステルとを攪拌しながら添加し溶解させることが好ましい。可塑剤等の添加剤は、先に溶解釜1に添加していても、後から添加することもできる。
あるいは、溶解釜1中の溶媒にセルロースエステルや可塑剤等の添加剤を攪拌しながら添加し、セルロースエステルの溶解中にさらに前記微粒子分散液を添加してもよい。もしくは、溶媒とセルロースエステル及び可塑剤等の添加剤とを混合してセルロースエステル溶液を得て、ここに前記微粒子分散液を攪拌しながら添加することもできる。
セルロースエステル溶液を調製する方法を、さらに詳細に説明する。
前述のセルロースエステルに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜1中でセルロースエステルや可塑剤等の添加剤を攪拌しながら溶解する。溶解には、常圧で行なう方法、主溶媒の沸点以下で行なう方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行なう高温溶解方法、冷却して溶解する冷却溶解方法、かなりの高圧で行なう高圧溶解方法等種々の溶解方法があるが、本発明においては、高温溶解方法が好ましく用いられる。
溶解釜1の中で前記微粒子分散液とセルロースエステルと溶媒が混合されて得られたセルロースエステル溶液は、セルロースエステルが溶解した後、ポンプ2で濾過器3に送液して濾過される。
濾過は、このセルロースエステル溶液をフィルタープレス用の濾紙等の適当な濾材を用いて行なうことが好ましい。本発明において、濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると、濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題点があり、絶対濾過精度8μm以下の濾材が好ましく、1〜8μmの範囲の濾材がより好ましく、3〜6μmの範囲の濾材がさらに好ましい。濾紙としては、例えば市販品の安積濾紙株式会社のNo.244やNo.277の濾紙等を挙げることができ、好ましく用いられる。
濾過の濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材やステンレス等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過は通常の方法で行なうことができるが、加圧下で、使用有機溶媒の常圧での沸点以上で、かつ有機溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱または保温しながら濾過する方法が、濾過材前後の差圧(以下、濾圧とすることがある)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度範囲は使用有機溶媒に依存はするが、45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃の範囲であることがさらに好ましい。
濾圧は小さい方が好ましく、0.3〜1.6MPaであることが好ましく、0.3〜1.2MPaであることがより好ましく、0.3〜1.0MPaであることがさらに好ましい。
このようにして得られたドープはストックタンク4に保管され、脱泡された後、流延に用いられる。
このようにドープ釜中で微粒子分散液とセルロースエステル溶液とを混合してドープを調製することが好ましい方法として挙げられるが、セルロースエステル溶液と微粒子分散液の一部もしくは全部をインラインで混合することもできる。
例えば、図1では、インラインで微粒子分散液を添加する工程の一例を示している。微粒子分散液は、セルロースエステル溶液(もしくはドープ原液と称する場合がある)と、合流管20で合流される。合流管20の直前には、濾過器6,15が配置されており、例えば濾材交換等に伴い経路から発生する大きな異物を、送液中の微粒子分散液あるいはドープ原液から除去することができる。
ここでは、耐溶剤性を有する金属製の濾過器6,15が好ましく用いられる。濾材としては、耐久性の観点から金属、特にステンレス鋼が好ましい。目詰まりの観点から60〜80%の空孔率を有していることが好ましい。最も好ましくは、絶対濾過精度30〜60μmであって、かつ空孔率60〜80%の金属製濾材で濾過することであり、これにより、長期に亘り、確実に粗大な異物を除くことができ好ましい。絶対濾過精度30〜60μmでかつ空孔率60〜80%の金属製濾材としては、例えば、日本精線株式会社製ファインポアNFシリーズのNF−10、同NF−12、同NF−13等を挙げることができる。
本発明において、絶対濾過精度は、以下のように定義される。
図2は、絶対濾過精度を測定する装置を模式的に示した図である。ここにおいて、Aは測定しようとする濾材試料、Bは被濾過液、Cは濾液を表す。被濾過液BはスターラーSで攪拌されており、低圧真空ポンプPにより大気圧から−4kPaの圧力に維持して濾過する。Vは開閉できるバルブ、Mはマノメータである。JIS Z 8901に規定される粒径の異なる試験用粉体のガラスビーズと、純水をビーカーに入れ、スターラーで撹拌しながら、図2に示す装置で吸引濾過を行なう。
この時の被濾過液Bと濾液C中のガラスビーズの個数を顕微鏡で観察し、以下の式で粒子捕集率を求めることができる。ここでは、粒子捕集率95%の時の粒子径を絶対濾過精度とした。
粒子捕集率(%)=
{(被濾過液中の個数−濾液中の個数)/被濾過液中の個数}×100
上記濾材の空孔率は60〜80%であることが好ましく、65〜75%がより好ましい。空孔率が大きい方が圧力損失が小さくなる点で好ましく、空孔率の小さい方が耐圧性に優れるため好ましい。空孔率を求めるには、まず濾材を表面張力の低い溶媒中に浸漬し、濾材中の空気を取り除き、溶媒の増加した量から濾材の空孔量を求め、濾材の体積で割れば、算出することができる。
(3)インライン添加工程
図1に示す溶解釜1で、予め微粒子分散液とセルロースエステルと溶媒を混合してドープを調製する場合は、通常、微粒子分散液をインライン添加する必要はない。しかしながら、必要に応じて、微粒子の全部もしくは一部をインラインで混合することができる。
図1を参照してインライン添加工程を説明すると、セルロースエステル溶液(ドープ原液と称することがある)を送液ポンプ5により移送し、濾過器6で濾過し、導管8で移送する。一方、微粒子分散液それぞれを送液ポンプ14により移送し、濾過器15で濾過し、導管16で移送する。そして、合流管20で両液を合流させる。合流した両液は導管内を、層状で移送するため、そのままでは混合しにくい。そこで、両液を合流後、インラインミキサーのような混合機21で十分に混合しながら次工程に移送する。
本発明で使用できる混合機21としてのインラインミキサーとしては、例えばスタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer、東レエンジニアリング製)が好ましい。
上記(2)セルロースエステル溶液調製工程、もしくは(2)セルロースエステル溶液調製工程と(3)インライン添加工程によって調製されたドープは、ドープ中の固形分濃度は15重量%以上に調整することが好ましく、特に18〜30重量%が好ましい。ドープ中の固形分濃度が高すぎると、ドープの粘度が高くなりすぎ、流延時にシャークスキン等が生じてフィルム平面性が劣化する場合があるので、30重量%以下であることが望ましい。
(4)流延工程
前工程までに調製されたドープを、図1に示す導管22によって流延ダイ30に送液し、無限に移送する無端の金属支持体31、すなわち例えば回転駆動ステンレス鋼製エンドレスベルトまたは回転駆動ステンレス鋼製ドラム(金属支持体)31上の流延位置に、流延ダイ30からドープを流延する工程である。金属支持体31の表面は鏡面となっている。流延ダイ30(例えば加圧型ダイス)は口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすいため好ましい。流延ダイ30には、コートハンガーダイスやTダイス等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために流延ダイ30を金属支持体31上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。
図3は、本発明の光学フィルムの製造方法を実施する溶液流延製膜装置の流延ダイと、熱可塑性樹脂フィルム原料ドープの供給管との接続状態を示す拡大斜視図である。図4は、同流延ダイの拡大横断面図である。
図3と図4を参照すると、本発明においては、光学フィルムの製造方法において、流延ダイ30の上端部には、熱可塑性樹脂フィルム原料ドープの導管22に連なる1本の供給管24が接続されており、流延ダイ30の上端部には、ドープの供給口24aが1箇所設けられている。そして、流延ダイ30に対して、熱可塑性樹脂フィルム原料のドープを、1箇所の供給口24aから流延ダイ30のマニホールド(流動空間部)30a内に供給するものである。
本発明の光学フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂フィルム原料のドープが非ニュートン流体であり、熱可塑性樹脂フィルム原料のドープが流延ダイ30のマニホールド30a内のスリット部30bを通過する際、スリット部30bの上流から下流に流れる熱可塑性樹脂フィルム原料のドープの流速が、下端に向かって大きくなるようにする。
そして、本発明においては、流延ダイ30のマニホールド30a内のスリット部30bを通過する熱可塑性樹脂フィルム原料のドープの送液圧力が、1〜30MPa、流延ダイ30のマニホールド30a内のスリット部30b上端の間隙(H)と、同スリット部30b下端の間隙(H)との比(H/H)が、2〜10の範囲に規定するものである。
ここで、流延ダイ30のマニホールド30a内のスリット部30b上端の間隙(H)、および同スリット部30b下端の間隙(H)は、狭すぎると送液圧力が高くなるとともに、微小な異物がドープに混入した場合に、スリット部30b内で引っかかり、その部分がフィルムで筋になってしまう。またフィルムの膜厚制御が非常にシビアになる。また、これらの間隙が広すぎても、精密な膜厚制御がしづらくなることから、スリット部30b上端の間隙(H)は、1.0〜3.0mmの範囲が好ましい。また、同スリット部30b下端の間隙(H)は、0.2〜0.6mmの範囲が好ましい。
そして、本発明によれば、これらのことから、流延ダイ30のマニホールド30a内のスリット部30b上端の間隙(H)と、同スリット部30b下端の間隙(H)との比(H/H)が、2〜10の範囲とするものである。
ここで、比(H/H)が2未満であれば、スリット間隙が一定の流延ダイとあまり差がなく、本発明の、フィルムの平面性や、スリット時の切り粉発生防止の効果が得られず、好ましくない。また比(H/H)が10を超えると、スリット内の流れが乱れ、フィルムの幅手方向の膜厚偏差が拡大し、その影響でフィルムが筋っぽくなってしまうため、好ましくない。
流延ダイ30への送液圧力は、スリット部30b上端側の間隙が広いため、構造的に膜厚偏差が出やすいことから、ある程度の圧力は必要であり、一方、圧が高すぎると、流延ダイ30の圧力変形による膜厚偏差を引き起こすため、1〜30MPaの範囲が好ましい。
本発明においては、図3と図4に示すように、流延ダイ30の上端部に設ける熱可塑性樹脂フィルム原料のドープ供給口24aは1箇所でも良いが、フィルムの膜厚偏差は、流延ダイ30への送液供給口24aが1箇所の場合、幅手中央部の動圧が高いためにより起こりやすいことから、送液供給口は2〜4個程度が好ましい。
流延ダイ30の上端部に設けるドープ供給口の個数すなわち供給管の本数があまり多くても、流延ダイ30のマニホールド30a内のドープの流れが乱れ、フィルムの膜厚変動を生じやすくなる。また、ドープ供給管の分割部分の形状は、ドープ流れのよどみがあると、いわゆるコンタミ蓄積が起こりやすくなるため、直角ではなく、なだらかに引き回すのが好ましい。
図5は、本発明の光学フィルムの製造方法を実施する溶液流延製膜装置の流延ダイの変形例を示す拡大横断面図である。
同図を参照すると、本発明による光学フィルムの製造方法において、流延ダイ30の上端部には、熱可塑性樹脂フィルム原料ドープの導管22から分岐した3本の供給管23、24、25が接続されており、流延ダイ30の上端部には、ドープの供給口23a、24a、25aが3箇所設けられている。そして、流延ダイ30に対して、熱可塑性樹脂フィルム原料のドープを、3箇所の供給口23a、24a、25aから流延ダイ30のマニホールド(流動空間部)30a内に、同時に供給するものである。
また、本発明においては、供給口23a、24a、25a同士の間隔は、流延ダイ30幅手方向で均等配分されるように設置するのが好ましい。
本発明の方法によれば、平面性の高い光学フィルムを得ることができ、さらにフィルム端部をスリットする際の切り粉の発生も低減することができる。ここで、フィルム端部をスリットする際に切り粉が減った原因については、はっきりしたことは分からないが、流延ダイ30のスリット部30bで、ドープにせん断と伸張を同時に変化させながら押し出すことで、ポリマー分子鎖の状態に何らかの変化があったためではないか、と推測される。
本発明において、流延用の金属支持体31の表面温度は10〜55℃、ドープの温度は25〜60℃、さらに溶液の温度を支持体の温度と同じ、またはそれ以上の温度にすることが好ましく、5℃以上の温度に設定することがさらに好ましい。
溶液温度、金属支持体1の温度は、高いほど溶媒の乾燥速度が速くできるので好ましいが、あまり高すぎると発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
金属支持体1の温度のさらに好ましい範囲は、使用する有機溶媒に依存するが、20〜55℃、溶液温度のさらに好ましい範囲は、35〜45℃である。
(5)溶媒蒸発工程
ウェブ(金属支持体31上にドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)32を金属支持体31上で加熱し、金属支持体31からウェブ32が剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ32側から風を吹かせる方法、及び/または金属支持体31の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率がよく、好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。裏面液体伝熱の場合は、ドープ使用有機溶媒の主溶媒または最も低い沸点を有する有機溶媒の沸点以下で加熱するのが好ましい。
(6)剥離工程
図1を参照すると、金属支持体31上で溶媒が蒸発したウェブ32を、剥離位置33で剥離する工程である。剥離されたウェブ32は次工程に送られる。剥離する時点でのウェブ32の残留溶媒量(後述の式)があまり大き過ぎると、ウェブが剥離し難かったり、逆に、金属支持体31上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブ32の一部が剥がれたりする。本発明において、薄手のウェブを金属支持体31から剥離する際、平面性の劣化や、ツレがないように行なうには、剥離張力として剥離できる最低張力から170N/m以内の力で剥離することが好ましく、140N/m以内の力がより好ましい。
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることができる)としてゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、金属支持体31の温度を低めてゲル化する方法等がある。金属支持体31上でゲル化させ剥離時の膜の強度を上げておくことによって、剥離を早め製膜速度を上げることができるのである。金属支持体31上でのウェブ32の乾燥が条件の強弱、金属支持体31の長さ等により5〜150重量%の範囲で剥離することができるが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブ32が柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや、縦スジが発生しやすく、経済速度と品質との兼ね合いで剥離の際の残留溶媒量が決められる。従って、本発明においては、該金属支持体31上の剥離位置における温度を10〜40℃、好ましくは15〜30℃とし、かつ該剥離位置におけるウェブ32の残留溶媒量を10〜120重量%とすることが好ましい。
製造時のセルロースエステルフィルムが良好な平面性を維持するために、金属支持体31から剥離する際の残留溶媒量を10〜150重量%とすることが好ましく、より好ましくは70〜150重量%であり、さらに好ましくは100〜130重量%である。残留溶剤中に含まれる良溶剤の比率は50〜90%が好ましく、さらに好ましくは、60〜90%であり、特に好ましくは、70〜80%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記の式で表すことができる。
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での重量で、下記のガスクロマトグラフィーにより測定した重量であり、Nは該Mを110℃で3時間乾燥させた時の重量である。測定はヘッドスペースサンプラーを接続したガスクロマトグラフィーで測定する。本発明では、ヒューレット・パッカード社製ガスクロマトグラフィー5890型SERISIIとヘッドスペースサンプラーHP7694型を使用し、以下の測定条件で行なった。
ヘッドスペースサンプラー加熱条件:120℃、20分
GC導入温度:150℃
昇温:40℃、5分保持→100℃(8℃/分)
カラム:J&W社製DB−WAX(内径0.32mm、長さ30m)。
(7)乾燥工程
剥離後、一般には、図1に示すように、ウェブ32を複数の搬送ロール36に交互に通して搬送するロール乾燥装置35、及びウェブ32の両端を把持して搬送するテンター装置34を用いてウェブ32を乾燥する。上記の図1では、テンター装置34の後に、搬送ロール36具備するロール乾燥装置35が配置されているが、この配置のみに限定されるものではない。
乾燥の手段としてはウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥はでき上がりのフィルムの平面性を損ねやすい。全体を通して、通常乾燥温度は40〜250℃の範囲で行なわれる。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。37はでき上がったセルロースエステルフィルムの巻き取りである。セルロースエステルフィルムの乾燥工程において、残留溶媒量を0.5重量%以下にすることが好ましく、0.1重量%以下にして巻き取ることがより好ましい。
テンター装置34による延伸工程についてさらに詳細に説明する。本発明によるセルロースエステルフィルムを製造する際の延伸倍率は、製膜方向もしくは幅手方向に対して、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍である。2軸方向に延伸する場合、高倍率で延伸する側が、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍であり、もう一方の方向の延伸倍率は0.8〜1.5倍、好ましくは0.9〜1.2倍に延伸することができる。
これにより、所望のリターデーション値を有するセルロ−スエステルフィルムを好ましく得るとともに、平面性の良好なセルロ−スエステルフィルムを得ることができる。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸は、テンター装置34によって行なうことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
本発明に係る光学補償フィルムを作製するための延伸工程(テンター工程ともいう)の一例を説明する。
テンター装置34において、まず、第1工程では、図示されていないフィルム搬送工程から搬送されてきたフィルムを把持する工程であり、次の第2工程において、フィルムが幅手方向(フィルムの進行方向と直交する方向)に延伸され、第3工程においては、延伸が終了し、フィルムが把持したまま搬送される工程である。
フィルム剥離後から第2幅手方向延伸工程開始前、及び/または第3把持工程の直後に、フィルム幅方向の端部を切り落とすスリッターを設けることが好ましい。特に、第1把持工程開始直前にフィルム端部を切り落とすスリッターを設けることが好ましい。幅手方向に同一の延伸を行なった際、特に、第2幅手方向延伸工程開始前にフィルム端部を切除した場合と、フィルム端部を切除しない条件とを比較すると、前者がよりフィルムの幅手方向で光学遅相軸の分布(以下、配向角分布という)を改良する効果が得られる。
これは、残留溶媒量の比較的多い剥離から幅手延伸の第2工程までの間での長手方向の意図しない延伸を抑制した効果であると考えられる。
テンター工程において、配向角分布を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
なお、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することが好ましい。また、二軸延伸を行なう場合にも同時二軸延伸を行なってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行なうことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。また、同時2軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。
また、本発明における延伸方向とは、延伸操作を行なう場合の直接的に延伸応力を加える方向という意味で使用する場合が通常であるが、多段階に二軸延伸される場合に、最終的に延伸倍率の大きくなった方の意味で使用される。
セルロ−スエステルフィルムを幅手方向に延伸する場合には、配向角分布が悪くなることはよく知られている。厚み方向リタデーション(Rt)と面内方向リタデーション(Ro)の値を一定比率とし、かつ配向角分布を良好な状態で幅手延伸を行なうため、上記のテンター工程における第1把持工程、第2幅手方向延伸工程、第3把持工程で好ましいフィルム温度の相対関係が存在する。第1把持工程、第2幅手方向延伸工程、第3把持工程終点でのフィルム温度をそれぞれTa℃、Tb℃、Tc℃とすると、Ta≦Tb−10であることが好ましい。また、Tc≦Tbであることが好ましい。Ta≦Tb−10かつ、Tc≦Tbであることがさらに好ましい。
第2幅手方向延伸工程でのフィルム昇温速度は、配向角分布を良好にするために、0.5〜10℃/sの範囲が好ましい。
第2幅手方向延伸工程での延伸時間は、温度80℃、湿度90%RH条件における寸法変化率を小さくするためには短時間である方が好ましい。ただし、フィルムの均一性の観点から、最低限必要な延伸時間の範囲が規定される。具体的には1〜10秒の範囲であることが好ましく、4〜10秒がより好ましい。また、第2幅手方向延伸工程の温度は40〜180℃、好ましくは100〜160℃である。
上記テンター工程において、熱伝達係数は一定でもよいし、変化させてもよい。熱伝達係数としては、41.9〜419×10J/mhrの範囲の熱伝達係数を持つことが好ましい。さらに好ましくは、41.9〜209.5×10J/mhrの範囲であり、41.9〜126×10J/mhrの範囲が最も好ましい。
温度80℃、及び湿度90%RH条件下における寸法安定性を良好にするため、上記第2幅手方向延伸工程での幅手方向への延伸速度は、一定で行なってもよいし、変化させてもよい。延伸速度としては、50〜500%/minが好ましく、さらに好ましくは100〜400%/min、200〜300%/minが最も好ましい。
テンター工程において、雰囲気の幅手方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、テンター工程での幅手方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が最も好ましい。上記温度分布を少なくすることにより、フィルムの幅手での温度分布も小さくなることが期待できる。
テンター装置34の第3把持工程において、寸法変化を抑えるため幅方向に緩和することが好ましい。具体的には、前工程のフィルム幅に対して95〜99.5%の範囲になるようにフィルム幅を調整することが好ましい。
テンター工程で処理した後、さらに後乾燥工程を設けるのが好ましい。50〜160℃で行なうのが好ましい。さらに好ましくは、80〜150℃の範囲であり、最も好ましくは110〜150℃の範囲である。
後乾燥工程で、フィルムの幅方向の雰囲気温度分布が少ないことは、フィルムの均一性を高める観点から好ましい。±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が最も好ましい。
後乾燥工程でのフィルム搬送張力は、ドープの物性、剥離時及びフィルム搬送工程での残留溶媒量、後乾燥工程での温度等に影響を受けるが、120〜200N/mが好ましく、140〜200N/mがさらに好ましい。140〜160N/mが最も好ましい。
後乾燥工程での搬送方向へフィルムの伸びを防止する目的で、テンションカットロールを設けることが好ましい。乾燥終了後、巻き取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。
(9)巻き取り工程
乾燥が終了したウェブをフィルムとして巻き取り、図1に示す光学フィルムの元巻37を得る工程である。乾燥を終了するフィルムの残留溶媒量は、0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下とすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
フィルムの巻き取り方法は、一般に使用されているワインダーを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の張力をコントロールする方法があり、それらを使い分ければよい。
セルロースエステルフィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、液晶表示装置の薄型化の観点から、仕上がりフィルムとして10〜150μmの範囲が好ましく、さらに30〜100μmの範囲がより好ましく、特に40〜80μmの範囲が好ましい。薄過ぎると例えば偏光板用保護フィルムとしての必要な強度が得られない場合がある。厚過ぎると従来のセルロースエステルフィルムに対して薄膜化の優位性がなくなる。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、流延ダイ30の口金のスリット間隙、流延ダイ30の押し出し圧力、金属支持体31の速度等をコントロールするのがよい。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
溶液流延製膜法を通しての流延直後からの乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気で行なってもよい。ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことはもちろんである。
つぎに、本発明の光学フィルムの製造方法を溶融押出し製膜法で行なうの場合について、説明する。
溶融押出し製膜法としては、図示は省略したが、Tダイを用いた方法やインフレーション法などの溶融押し出し法、カレンダー法、熱プレス法、射出成形法などがある。中でも、厚さムラが小さく、30〜200μm程度の厚さに加工しやすく、かつ、リタデーションの絶対値およびそのバラツキを小さくできるTダイを用いた溶融押し出し法が好ましい。
溶融押出し製膜法の条件は、他の熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして成形できる。例えば、乾燥したセルロースエステル系樹脂、及びノルボルネン系樹脂を1軸や2軸タイプの押し出し機を用いて、押し出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過し、異物を除去した後、Tダイからシート状に流延し、冷却ドラム上で固化させる。
図3と図4を参照すると、本発明の光学フィルムの製造方法を溶融押出し製膜法で行なうの場合は、上記の溶液流延製膜法の場合と同様に、流延ダイ30の上端部には、熱可塑性樹脂フィルム原料溶融液の導管22から分岐した3本の供給管23、24、25が接続されており、流延ダイ30の上端部には、溶融液の供給口23a、24a、25aが3箇所設けられている。そして、流延ダイ30に対して、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液を、3箇所の供給口23a、24a、25aから流延ダイ30のマニホールド(流動空間部)30a内に、同時に供給するものである。
本発明の光学フィルムの製造方法を溶融押出し製膜法で行なうの場合も、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液が非ニュートン流体であり、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液が流延ダイ30のマニホールド30a内のスリット部30bを通過する際、スリット部30bの上流から下流に流れる熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液の流速が、下端に向かって大きくなるようにする。
そして、本発明においては、流延ダイ30のマニホールド30a内のスリット部30bを通過する熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液の送液圧力が、1〜30MPa、流延ダイ30のマニホールド30a内のスリット部30b上端の間隙(H)と、同スリット部30b下端の間隙(H)との比(H/H)が、2〜10の範囲に規定するものである。
ここで、流延ダイ30のマニホールド30a内のスリット部30b上端の間隙(H)、および同スリット部30b下端の間隙(H)は、狭すぎると送液圧力が高くなるとともに、微小な異物が溶融液に混入した場合に、スリット部30b内で引っかかり、その部分がフィルムで筋になってしまう。またフィルムの膜厚制御が非常にシビアになる。また、これらの間隙が広すぎても、精密な膜厚制御がしづらくなることから、スリット部30b上端の間隙(H)は、1.0〜3.0mmの範囲が好ましい。また、同スリット部30b下端の間隙(H)は、0.2〜0.6mmの範囲が好ましい。
そして、本発明によれば、これらのことから、流延ダイ30のマニホールド30a内のスリット部30b上端の間隙(H)と、同スリット部30b下端の間隙(H)との比(H/H)が、2〜10の範囲とするものである。その理由は、上記の溶液流延製膜法の場合と同様である。
流延ダイ30への送液圧力は、スリット部30b上端側の間隙が広いため、構造的に膜厚偏差が出やすいことから、ある程度の圧力は必要であり、一方、圧が高すぎると、流延ダイ30の圧力変形による膜厚偏差を引き起こすため、1〜30MPaの範囲が好ましい。
本発明においては、流延ダイ30の上端部に設ける熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液供給口は1箇所でも良いが、フィルムの膜厚偏差は、流延ダイ30への送液供給口が1箇所の場合、幅手中央部の動圧が高いためにより起こりやすいことから、送液供給口は2〜4個程度が好ましい。溶融液供給口の個数すなわち供給管の本数がこれより多くても、流延ダイ30のマニホールド30a内の溶融液の流れが乱れ、フィルムの膜厚変動を生じやすくなる。また、溶融液供給管23、24、25の分割部分の形状は、溶融液流れのよどみがあると、いわゆるコンタミ蓄積が起こりやすくなるため、直角ではなく、なだらかに引き回すのが好ましい。
また、本発明においては、供給口23a、24a、25a同士の間隔は、流延ダイ30幅手方向で均等配分されるように設置するのが好ましい。
本発明の方法によれば、平面性の高い光学フィルムを得ることができ、さらにフィルム端部をスリットする際の切り粉の発生も低減することができる。ここで、フィルム端部をスリットする際に切り粉が減った原因については、はっきりしたことは分からないが、流延ダイ30のスリット部30bで、溶融液にせん断と伸張を同時に変化させながら押し出すことで、ポリマー分子鎖の状態に何らかの変化があったためではないか、と推測される。
本発明の方法において、供給ホッパーから押し出し機へ導入する際は、減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。冷却ドラムの温度は、セルロースエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)以下が好ましい。冷却ドラムへ樹脂を密着させるために、静電印加により密着させる方法、風圧により密着させる方法、全幅あるいは端部をニップして密着させる方法、減圧で密着させる方法などを用いることが好ましい。また、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押し出し機からダイまでの配管には滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。ダイ周辺に樹脂から揮発成分が析出しダイラインの原因となる場合があるので、揮発成分を含んだ雰囲気は吸引することが好ましい。また、静電印加等の装置にも析出する場合があるので、交流を印加したり、他の加熱手段で析出を防止することが好ましい。
酸化防止剤、可塑剤などの添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押し出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
溶融押出し製膜法で成形されたセルロースエステルフィルムは、溶液流延製膜法で成形されたセルロースエステルフィルムと異なり、厚み方向リタデーション(Rt)が小さいとの特徴があり、このようなセルロースエステルフィルムを延伸することにより面内方向リタデーション(Ro)を発現し易く、延伸倍率を大きくする必要がないので、白濁のない透明性に優れたセルロースエステルフィルムが得られるのである。
ついで、得られたフィルムを一軸方向に延伸する。延伸により分子が配向される。延伸する方法は、特に制限はないが、公知のピンテンターやクリップ式のテンターなどを好ましく用いることができる。延伸方向は長さ方向でも幅手方向でも任意の方向(斜め方向)でも可能であるが、本発明では延伸方向を幅手方向とすることで偏光フィルムとの積層がロール形態でできるので好ましい。幅手方向に延伸することでセルロースエステルフィルムの遅相軸は幅手方向になる。一方、偏光フィルムの透過軸も通常幅手方向である。偏光フィルムの透過軸とセルロースエステルフィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、良好な視野角が得られるのである。
延伸条件は、所望のリタデーション特性が得られるように温度、倍率を選ぶことができる。通常、延伸倍率は1.1〜2.0倍、好ましくは1.2〜1.5倍であり、延伸温度は、通常、フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行なわれる。延伸倍率が小さすぎると所望のリタデーションが得られない場合があり、大きすぎると破断してしまう場合がある。延伸温度が低すぎると、破断し、高すぎると、所望のリタデーションが得られない場合がある。
上記の方法で作製した光学フィルムのリタデーションを合目的の値に修正する場合、フィルムを長さ方向や幅手方向に延伸または収縮させてもよい。長さ方向に収縮するには、例えば、幅延伸を一時クリップアウトさせて長さ方向に弛緩させる、または横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。後者の方法は一般の同時二軸延伸機を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行なうことができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は、通常、フィルムが変形しており、製品として使用できないので、切除されて、原料として再利用される。
光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりのフィルムとして、本発明において使用される膜厚範囲は30〜200μmで、最近の薄手傾向にとっては30〜100μmの範囲が好ましく、特に40〜80μmの範囲が好ましい。膜厚は、所望の厚さになるように、押し出し流量、ダイスの口金のスリット間隙、冷却ドラムの速度等をコントロールすることで調整できる。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
本発明によるセルロースエステルフィルムは、良好な透湿性、寸法安定性等から液晶表示用部材、詳しくは偏光板用保護フィルムに用いられるのが好ましい。特に、透湿度と寸法安定性に対して共に厳しい要求のある偏光板用保護フィルムにおいて、本発明によるセルロースエステルフィルムは好ましく用いられる。
以下、本発明に係るセルロースエステルフィルム、並びに光学フィルムの物性に関し、以下にまとめて記載する。
(セルロ−スエステルフィルムの透過率)
LCD表示装置の部材としては高い透過率が求められ、上述の添加剤を組み合せて添加し、製造されたセルロ−スエステルフィルムの500nm透過率は、85〜100%が好ましく、90〜100%がさらに好ましく、92〜100%が最も好ましい。400nm透過率は40〜100%が好ましく、50〜100%がさらに好ましく、60〜100%が最も好ましい。また、紫外線吸収性能が求められることがあり、その場合は、380nm透過率は0〜10%が好ましく、0〜5%がさらに好ましく、0〜3%が最も好ましい。
(セルロ−スエステルフィルムの幅手方向の膜厚分布)
本発明において、セルロ−スエステルフィルムは、幅手方向での膜厚分布R(%)を0≦R(%)≦5%であることが好ましく、さらに好ましくは、0≦R(%)≦3%であり、特に好ましくは、0≦R(%)≦1%である。
(セルロ−スエステルフィルムのヘイズ値)
本発明において、セルロースエステルフィルムは、ヘイズ値が、2%以内が好ましく、1.5%がより好ましく、1%以内が最も好ましい。
(セルロ−スエステルフィルムの弾性率)
弾性率は1.5〜5GPaの範囲が好ましく、さらに好ましくは、1.8〜4GPaであり、特に好ましくは、1.9〜3GPaの範囲である。
また、破断点応力が50〜200MPaの範囲であることが好ましく、70〜150MPaの範囲であることがさらに好ましく、80〜100MPaの範囲であることが最も好ましい。
温度23℃、湿度55%RHでの破断点伸度が20〜80%の範囲であることが好ましく、30〜60%の範囲であることがさらに好ましく、40〜50%の範囲であることが最も好ましい。
また、吸湿膨張率が−1〜1%の範囲であることが好ましく、−0.5〜0.5%の範囲がさらに好ましく、0〜0.2%以下が最も好ましい。
また、本発明において、光学フィルムの輝点異物が0〜80個/cmであることが好ましく、0〜60個/cmの範囲であることがさらに好ましく、0〜30個/cmの範囲であることが最も好ましい。
一般的に、セルロ−スエステルフィルムを偏光板保護フィルムとして使用する場合、偏光子との接着性を良好なものにするため、アルカリ鹸化処理が行なわれる。アルカリ鹸化処理後のフィルムと偏光子とをポリビニルアルコール水溶液を接着剤として接着するため、セルロ−スエステルフィルムのアルカリ鹸化処理後の水との接触角が高いとポリビニルアルコールでの接着ができず偏光板保護フィルムとしては問題となる。
このため、アルカリ鹸化処理後のセルロ−スエステルフィルムの接触角は、0〜60°が好ましく、5〜55°がさらに好ましく、10〜30°が最も好ましい。
{セルロ−スエステルフィルムの中心線平均粗さ(Ra)}
セルロ−スエステルフィルムをLCD用部材として使用する際、フィルムの光漏れを低減するため高い平面性が要求される。中心線平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601に規定された数値であり、測定方法としては、例えば、触針法もしくは光学的方法等が挙げられる。
本発明において、セルロ−スエステルフィルムの中心線平均粗さ(Ra)としては、20nm以下が好ましく、さらに好ましくは、10nm以下であり、特に好ましくは、4nm以下である。
(リタデーション値)
本発明に係る光学フィルムの面内方向リタデーション(Ro)及び厚み方向リタデーション(Rt)は、0≦Ro≦300nm、−100≦Rt≦400nmであることが好ましい。またNzは、0≦Nz≦6であることが好ましい。
また、Rtの変動や分布の幅は、±10nm未満であることが好ましく、±8nm未満であることが好ましく、±5nm未満であることが好ましい。さらに、±3nm未満であることが好ましく、±1nm未満であることが好ましい。最も好ましくはRtの変動がないことである。
なお、光学フィルムの面内方向リタデーション(Ro)及び厚み方向リタデーション(Rt)は、下記の式によって求めることができる。
Ro=(nx−ny)×d
Rt={(nx+ny)/2−nz}×d
Nz=(nx−nz)/(nx−ny)×d
ここにおいて、dはフィルムの厚み(nm)、屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう)、屈折率ny(フィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率)、屈折率nz(厚み方向におけるフィルムの屈折率)である。
なお、リタデーション値(Ro)と(Rt)は、自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて、温度23℃、湿度55%RHの環境下で、波長590nmで求めることができる。
また、遅相軸は、長尺フィルムの幅手方向±1°、もしくは長手方向±1°にあることが好ましい。より好ましくは、フィルムの幅手方向または長手方向に対して±0.7°、さらに好ましくは、フィルムの幅手方向または長手方向に対して±0.5°であり、特に好ましくは、±0.1°である。
(偏光板)
本発明による偏光板、それを用いた本発明による液晶表示装置について説明する。
偏光板は一般的な方法で作製することができる。アルカリ鹸化処理した本発明によるセルロ−スエステルフィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面にも本発明によるセルロ−スエステルフィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本発明によるセルロ−スエステルフィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは市販のセルロースエステルフィルムを用いることができる。例えば、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2M、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UX−RHA−N(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)等が好ましく用いられる。あるいは、セルロースエステルフィルム以外の環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート等のフィルムをもう一方の面の偏光板保護フィルムとして用いてもよい。この場合は、ケン化適性が低いため、適当な接着層を介して偏光板に接着加工することが好ましい。
本発明による偏光板は、本発明によるセルロ−スエステルフィルムを偏光子の少なくとも片側に偏光板保護フィルムとして使用したものである。その際、該セルロ−スエステルフィルムの遅相軸が偏光子の吸収軸に実質的に平行または直交するように配置されていることが好ましい。
この偏光板が、横電界スイッチングモード型である液晶セルを挟んで配置される一方の偏光板として、本発明によるセルロースエステルフィルムが液晶表示セル側に配置されることが好ましい。
本発明による偏光板に好ましく用いられる偏光子としては、ポリビニルアルコール系偏光フィルムが挙げられ、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。ポリビニルアルコール系フィルムとしては、エチレンで変性された変性ポリビニルアルコール系フィルムが好ましく用いられる。偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行なったものが用いられている。
偏光子の膜厚は5〜40μm、好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。該偏光子の面上に、本発明によるセルロ−スエステルフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。また、セルロースエステルフィルム以外の樹脂フィルムの場合は、適当な粘着層を介して偏光板に接着加工することができる。
偏光子は一軸方向(通常は長手方向)に延伸されているため、偏光板を高温高湿の環境下に置くと、延伸方向(通常は長手方向)は縮み、延伸に対して直交する方向(通常は幅方向)には伸びる。偏光板保護フィルムの膜厚が薄くなるほど偏光板の伸縮率は大きくなり、特に偏光子の延伸方向の収縮量が大きい。通常、偏光子の延伸方向は偏光板保護フィルムの流延方向(MD方向)と貼り合わせるため、偏光板保護フィルムを薄膜化する場合は、特に流延方向の伸縮率を抑えることが重要である。本発明によるセルロ−スエステルフィルムは寸法安定に優れるため、このような偏光板保護フィルムとして好適に使用される。
偏光板は、さらに該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
本発明による液晶表示装置は、棒状の液晶分子が一対のガラス基板に挟持された液晶セルと、液晶セルを挾むように配置された偏光膜及びその両側に配置された透明保護層からなる2枚の偏光板を持つ液晶表示装置であって、2枚の偏光板のうち、例えば1枚の偏光板が、フィルムの面内方向リタデーション(Ro)値が0以上300以下でありかつフィルムの厚み方向リタデーション(Rt)値が−100以上400以下である光学フィルムを具備するものであり、もう1枚の偏光板が、本発明による上記の光学フィルムを具備するものである。
本発明の液晶表示装置によれば、広範囲にわたり高コントラスト比を有する見やすい表示が実現可能であり、特にVA、IPS、OCB、TN、HAN、STNのモードで動作する液晶表示装置を提供するものであり、本発明の液晶表示装置は、長期間に亘って安定した表示性能を維持することができるものである。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1〜35
(溶液流延製膜法による光学フィルムの製造)
溶液流延製膜法により目標ドライ膜厚80μmの本発明のセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造するにあたり、まずドープを調製した。
(ドープの調製)
セルロースアセテートプロピオネート 100重量部
(アセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8)
トリフェニルフォスフェート 8重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
メチレンクロライド 300重量部
エタノール 60重量部
図1を参照すると、上記の材料を密閉容器(溶解釜)1に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、ポンプ2で濾過器3に送液して、安積濾紙株式会社製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープを調製した。得られたドープをストックタンク4に保管し、脱泡した後、送液ポンプ5により移送し、濾過器6において日本精線株式会社製のファインメットNFでドープを濾過した。
(二酸化珪素分散液)
アエロジル972V(日本アエロジル株式会社製) 10重量部
(一次粒子の平均径16nm、見掛け比重90g/リットル)
エタノール 75重量部
上記の材料をディゾルバー(図示略)で30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行なった。分散後の液濁度は200ppmであった。二酸化珪素分散液に75重量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。
(インライン添加液の作製)
メチレンクロライド 100重量部
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製) 4重量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製) 4重量部
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製) 2重量部
上記の材料を密閉容器(溶解釜)10に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。
これに二酸化珪素分散希釈液を20重量部、撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8)5重量部を撹拌しながら加えて、さらに60分間撹拌した後、これを送液ポンプ11で濾過器12に送って、アドバンテック東洋株式会社のポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1Nで濾過して、凝集物を取り除き、インライン添加液を調製した。このインライン添加液をストックタンク(静置釜)13にストックした。
静置脱泡後、送液ポンプ(加圧型定量ギヤポンプ)14で移送し、インライン添加液のライン中で、濾過器15において日本精線株式会社製のファインメットNFでインライン添加液を濾過した。
つぎに、セルロースアセテートプロピオネートのドープとインライン添加液とを合流管20で合流させ、濾過したドープ100重量部に対し、濾過したインライン添加液を4重量部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)21で十分混合し、図1に示す導管22によって流延ダイ30に送液した。
図3と図4を参照すると、本発明の光学フィルムの製造方法では、セルロースアセテートプロピオネートフィルム原料のドープが非ニュートン流体であり、セルロースアセテートプロピオネートフィルム原料のドープが流延ダイ30のマニホールド30a内のスリット部30bを通過する際、スリット部30bの上流から下流に流れるセルロースアセテートプロピオネートフィルム原料のドープの流速が、下端に向かって大きくなるようにしている。
本発明においては、流延ダイ30のマニホールド30a内のスリット部30b上端の間隙(H)と、同スリット部30b下端の間隙(H)との比(H/H)を、2〜10の範囲と規定しており、下記の表1に示すように、本発明の実施例1〜27では、スリット部30b上端の間隙(H)と、同スリット部30b下端の間隙(H)との比(H/H)を上記の範囲内のものとしている。
また、流延ダイ30のマニホールド30a内のスリット部30bを通過するセルロースアセテートプロピオネートフィルム原料のドープの送液圧力は、マニホールド30a内のスリット部30bの間隙とスリット長、流量で決まるが、本発明では、スリット部30bの間隙を上流から下流に向けて変化しているので、ここでは、下式で算出された数値で取り扱うことにする。また、ステンレス鋼製エンドレスベルト31の走行速度は、前記のスリット間隙およびドープ流量の変更に合わせて、仕上がりフィルムの膜厚が80μmになるよう調整した。
<送液圧力の算出式>
送液圧力:P(MPa)
流延ダイのスリット幅:W(mm)
流延ダイのスリット上端の間隙:H1(mm)
流延ダイのスリット下端の間隙:H2(mm)
流延ダイのスリット長さ:L(mm)(ドープ流動方向の長さ)
せん断応力:τ(MPa)
せん断速度:γ(/sec)
せん断粘度:η(mPa・s)(スリット部におけるγの見掛け粘度)
γ=6×Q×10/[W×{(H+H)/2)}]
τ=γ×η×10−6
P=τ×2L/{(H+H)/2}
本発明においては、流延ダイ30のマニホールド30a内のスリット部30bを通過するセルロースアセテートプロピオネートフィルム原料のドープの送液圧力が1〜30MPaと規定しており、下記の表1に示すように、本発明の実施例では、実施例27を除き、このドープの送液圧力を、上記の範囲内のものとしている。
なお、下記の表1に示すように、実施例1〜24と実施例27〜35では、流延ダイ30に対して、セルロースアセテートプロピオネートフィルム原料のドープを1箇所の供給口24a(図3と図4参照)から流延ダイ30のマニホールド(流動空間部)30a内に供給した。これに対し、実施例25と26においては、流延ダイ30の上端部には、セルロースアセテートプロピオネートフィルム原料ドープの導管22から分岐した2本または3本の供給管が接続されており、流延ダイ30の上端部には、ドープの供給口が2箇所または3箇所設けられていて(図5参照)、実施例25と26では、流延ダイ30に対して、セルロースアセテートプロピオネートフィルム原料のドープを、2箇所または3箇所の供給口から流延ダイ30のマニホールド30a内に同時に供給した。
流延ダイ30は、温水を循環して30℃に保温し、この流延ダイ30を通して、セルロースアセテートプロピオネートフィルム原料のドープを、ステンレス鋼製エンドレスベルト支持体31上に均一に流延した。
その後、温風をベルト表裏両面から吹かせて、残留溶剤量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体31上から剥離ロール33によって剥離した。剥離したセルロースエステルフィルムのウェブ32を、温度40℃で残留溶剤量を20%まで溶媒を蒸発させた後、テンター装置34でTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に130℃で1.3倍に延伸した。その後、120℃の乾燥ゾーン35を多数の搬送ロール36で搬送させながら乾燥を終了させ、フィルム両端を30mmずつスリットし、膜厚80μmのセルロースエステルフィルムの元巻37を得た。
フィルム端部のスリットは、図示は省略したが、フィルム幅方向の両端にフィルム表裏面に、フィルムを挾むように配置された一対のロータリ式裁断刃からなり、一方は円盤状の断裁刃、他方は、断裁刃を受ける溝付ボトムロールからなり、それぞれフィルム搬送方向に回転してフィルムを連続的に裁断した。
比較例1
比較のために、実施例1の場合と同様に実施するが、下記の表1に示すように、比較例1では、図6に示す従来の流延ダイ40を使用した。この従来の流延ダイ40の上端部には、セルロースアセテートプロピオネートフィルム原料ドープの導管に連なる1本の供給管41が接続されており、流延ダイ40の上端部には、ドープの供給口が1箇所設けられている。そして、流延ダイ40に対して、セルロースアセテートプロピオネートフィルム原料のドープを、1箇所の供給口から流延ダイ40のマニホールド40a内に供給するものである。
また、比較例1では、マニホールド40a内のスリット部40bの間隙(H)が一定であり、換言すれば、スリット部40b上端の間隙と、同スリット部40b下端の間隙との比が1であり、本発明の範囲外である。
比較例1のその他の点は、上記実施例1の場合と同様にして、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製した。
本発明の実施例1〜35及び比較例1で作製したセルロースアセテートプロピオネートフィルムを、下記に示す方法に従って評価した。得られた結果を下記の表1に示した。
(切り粉の発生数)
本発明の実施例1〜35及び比較例1で作製したセルロースアセテートプロピオネートフィルムについて、フィルムロール(元巻)37の状態では、100μm程度の微小な切り粉でも、微小な突起による変形が非常に見やすいため、巻き取りが終わったフィルムロール(元巻)37を1周ゆっくり回して、目視にてその部分の個数をカウントし、1m当たりの個数に換算して、評価した。
(フィルム平面性の評価)
本発明の実施例1〜35及び比較例1で作製したセルロースアセテートプロピオネートフィルムを、それぞれ全幅×長手方向1mのサイズに切り出し、黒色布を貼り付けた台に広げた。一方、この台の上方1.5mのところに、40Wの蛍光灯8本を10cm間隔に並べた照明板を準備し、フィルムに映る照明のゆがみ具合で、ムラの発生すなわちフィルム平面性を目視評価し、下記のランクに分類した。
ランク フィルム平面性
A: 全くムラがない
B: 弱いムラが2〜3個ある
C: 規則性のある強いムラが多数ある
また、上記の評価結果を踏まえて、実施例1〜35及び比較例1で作製したセルロースアセテートプロピオネートフィルムが、液晶表示装置(LCD)用の光学フィルムとしての使用に適するか、どうかを総合的に判定し、下記のランクに分類した。
ランク 光学フィルムとしての適性
◎: 光学フィルムとしての使用に充分に適する
○: 光学フィルムとしての使用に適する
×: 光学フィルムとしての使用に適さない
Figure 2007101625
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜35によれば、フィルム端部の切り粉の発生数が非常に少なく、フィルム平面性についても、ランクAまたはBで、全くムラがないか、または弱いムラが若干あるだけで、セルロースアセテートプロピオネートフィルムは液晶表示装置(LCD)用の光学フィルムとしての使用に適するものであった。
このように、本発明の方法によれば、平面性の高いセルロースアセテートプロピオネートフィルムを得ることができた。さらに、フィルム端部をスリットする際の切り粉の発生も低減することができた。切り粉が減った原因については、はっきりしたことは分からないが、流延ダイ30のスリット部30bで、ドープにせん断と伸張を同時に変化させながら押し出すことで、ポリマー分子鎖の状態に何らかの変化があったためではないか、と推測される。
これに対し、比較例1のセルロースアセテートプロピオネートフィルムでは、フィルム端部の切り粉の発生数が非常に多いものであり、またフィルム平面性についても、比較例1ではランクCで、フィルムに、規則性のある強いムラが多数存在した。従って、比較例1のセルロースアセテートプロピオネートフィルムは、液晶表示装置(LCD)用の光学フィルムとしての使用に適さないものであった。
実施例36
(溶融押出し製膜法による光学フィルムの製造)
溶融押出し製膜法により目標ドライ膜厚80μmの本発明の光学フィルムとしてのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造した。
セルロースアセテートプロピオネート 100重量部
(60℃で24時間真空乾燥済みのアセチル基置換度1.9、
プロピオニル基置換度0.7、Mn=75,000)
トリメチロールプロパンベンゾエート 10重量部
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールペンタエリスリチル
−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキ
シフェニル)プロピオネート〕 0.01重量部
上記材料の混合物を、図示しない2軸式押し出し機を用いて250℃で溶融混合し、日本精線社製ファインメットNF(公称濾過精度は15μm)で濾過した後、ペレット化した。このペレットを用いて日本精線社製ファインメットNF(公称濾過精度は20μm)で2回目の濾過を行なった。
図示は省略したが、本発明の実施例36においては、溶融押し出しTダイの上端部には、セルロースアセテートプロピオネート溶融液の導管22に連なる1本の供給管が接続されており、Tダイの上端部には、溶融液の供給口が1箇所設けられている。上記の表1に示すように、その他の条件、すなわち、流延ダイ30のマニホールド30a内のスリット部30bを通過するセルロースアセテートプロピオネートフィルム原料のドープの送液圧力、及びスリット部30b上端の間隙(H)と、同スリット部30b下端の間隙(H)との比(H/H)を、上記実施例1の場合と同様にして、Tダイに対して、セルロースアセテートプロピオネートフィルム原料の溶融液を、1箇所の供給口からTダイのマニホールド(流動空間部)内に、同時に供給した。そして、Tダイから溶融液を、溶融温度250℃でフィルム状に、30℃の冷却ドラム上に溶融押し出しし、冷却固化させて、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを得た。
比較例2
比較のために、実施例36の場合と同様に実施するが、下記の表1に示すように、比較例2では、図6に示す従来の流延ダイ40を使用した。この従来の流延ダイ40は、マニホールド40a内のスリット部40bの間隙(H)が一定であり、換言すれば、スリット部40b上端の間隙と、同スリット部40b下端の間隙との比が1であり、本発明の範囲外である。
上記の実施例36及び比較例2で得られたセルロースアセテートプロピオネートフィルムについて、上記実施例1の場合と同様に、切り粉の発生数、及びフィルム平面性を評価した。また、これらの評価結果を踏まえて、実施例36及び比較例2で作製したセルロースアセテートプロピオネートフィルムが、液晶表示装置(LCD)用の光学フィルムとしての使用に適するか、どうかを総合的に判定し、得られた結果を、上記の表1にあわせて示した。
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例36によれば、フィルム端部の切り粉の発生数が非常に少なく、フィルム平面性についても、ランクAで、全くムラがないセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造することができ、該フィルムは液晶表示装置(LCD)用の光学フィルムとしての使用に適するものであった。
これに対し、比較例2のセルロースアセテートプロピオネートフィルムでは、フィルム端部の切り粉の発生数がいずれも非常に多いものであり、またフィルム平面性についても、ランクCで、フィルムに、規則性のある強いムラが多数存在し、総合判定では、液晶表示装置(LCD)用の光学フィルムとしての使用に適さないものであった。
つぎに、本発明の上記実施例1〜36で作製したセルロースアセテートプロピオネートフィルムを用いて、偏光板を常法により作製した。一方、市販の液晶表示装置(IPSモード、VAモード)の偏光板を剥し、これに代えて、本発明の上記の偏光板を、偏光軸が同じになるように貼り付けて評価した結果、コントラストが高く、カラーシフトも改善されることが確認された。
本発明の光学フィルムの製造方法を実施する溶液流延製膜装置のフローシートである。 濾材の絶対濾過精度を測定する装置を模式的に示した図である。 本発明の光学フィルムの製造方法を実施する溶液流延製膜装置の流延ダイと、フィルム原料ドープの供給管との接続状態を示す拡大斜視図である。 同流延ダイの拡大横断面図である。 本発明の光学フィルムの製造方法を実施する溶液流延製膜装置の流延ダイの変形例を示す拡大横断面図である。 従来の光学フィルムの製造方法を実施する溶液流延製膜装置の流延ダイの一例を示す拡大横断面図である。
符号の説明
1:溶解釜
2:送液ポンプ
3:濾過器
4:ストックタンク
5:送液ポンプ
6:濾過器
8:導管
10:溶解釜
11:送液ポンプ
12:濾過器
13:ストックタンク
14:送液ポンプ
15:濾過器
16:導管
20:合流管
21:混合機
22:導管
23:供給管
23a:供給口
24:供給管
24a:供給口
25:供給管
25a:供給口
30:流延ダイ
30a:マニホールド
30b:スリット部
31:金属支持体
32:ウェブ
33:剥離位置
34:テンター装置
35:ロール乾燥装置
36:搬送ロール
37:元巻
A:濾材試料
B:被濾過液
C:濾液
M:マノメータ
P:低圧真空ポンプ
S:スターラー
V:バルブ
L:スリット長さ
H:スリット間隙
:スリット上端の間隙
:スリット下端の間隙

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂フィルム原料を加熱溶融した溶融液または熱可塑性樹脂フィルム原料を溶媒に溶解したドープ(溶液)を、流延ダイから回転駆動金属製エンドレスベルトまたは回転駆動金属製ドラム(以下、金属支持体という)上に流延して製膜する光学フィルムの製造方法であって、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープが非ニュートン流体であり、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープが流延ダイのマニホールド内のスリット部を通過する際、スリット部の上流から下流に流れる熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープの流速が、下端に向かって大きくなるようにすることを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
  2. 流延ダイのマニホールド内のスリット部を通過する熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープの送液圧力が、1〜30MPa、流延ダイのマニホールド内のスリット部上端の間隙(H)と、同スリット部下端の間隙(H)との比(H/H)が、2〜10の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 流延ダイの上端部に、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープの供給口を複数箇所設けておき、流延ダイに対して、熱可塑性樹脂フィルム原料の溶融液またはドープを、複数箇所の供給口から流延ダイのマニホールド内に供給することを特徴とする、請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする、光学フィルム。
  5. 偏光膜およびその両側に配置された透明保護層からなる偏光板であって、両透明保護層のうちの少なくとも1つに、請求項4に記載の光学フィルムが用いられていることを特徴とする、偏光板。
  6. 液晶セルと、液晶セルを挾むように配置された2枚の偏光板を具備する液晶表示装置であって、2枚の偏光板のうちの少なくとも1枚の偏光板が、請求項5に記載の偏光板であることを特徴とする、液晶表示装置。
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