JP2009083343A - 光学フィルム及びその製造方法、偏光板用保護フィルム及びそれを用いた偏光板、並びに液晶表示装置 - Google Patents

光学フィルム及びその製造方法、偏光板用保護フィルム及びそれを用いた偏光板、並びに液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 光学フィルム中の不定形粒子の配向度を高めて、輝度向上効果等の光学特性や強度を高める。製造安定性に優れ、装置が小型化された光学フィルムの製造方法、偏光板用保護フィルム、偏光板、液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 光学フィルムの製造方法は、流延ダイが、ドープ流入方向の上流から順に、ダイ入口部、マニホールド部、伸張部、およびランド部から成り立っている形状で、マニホールド部にドープを攪拌する部位を有し、かつ伸張部の断面形状が下式(I)を、ランド部の断面形状が下式(II)を、それぞれ満足するものである。 A1≦A2…(I) A3=A4…(II)
式中、A1とA2は、伸張部の任意の位置P1と、これよりドープ流れ方向の上流側の位置P2における断面積を表わす。A3とA4は、ランド部の相互に異なる任意の位置P3、P4における断面積を表わす。
【選択図】 図3

Description

本発明は、液晶表示装置(LCD)あるいは有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレー等の各種の表示装置に用いられる光学フィルム、及びその製造方法、特にこれら表示装置に用いられる偏光板用保護フィルム、及びそれを用いた偏光板、並びに液晶表示装置に関し、より詳しくは、輝度向上機能付き偏光板用保護フィルム、輝度向上機能と偏光板保護機能が一体化されたフィルムを少なくとも片面に備えた偏光板、及びそれを用いた液晶表示装置に関するものである。
一般に、自然光や人為的光源からの光は無偏光(ランダム偏光)であるが、偏光板を用いることで、偏光(直線偏光、円偏光、楕円偏光)成分を取り出すことができる。現在、広く普及している液晶表示装置は、該偏光板を組み込むことにより偏光の性質を利用して画像を表示する装置であるとも言える。
偏光板に用いられる偏光フィルムとしては、一般にポリビニルアルコール系フィルムからなる光吸収型偏光フィルムが用いられている。ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸しヨウ素または二色性染料を吸着することにより製造する。
偏光フィルムの透過軸(偏光軸)は、フィルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。光吸収型偏光フィルムは、偏光軸に平行な偏光成分のみを透過して、それと直交方向の偏光成分を吸収する。従って、光の利用効率は、理論的に50%(実際にはさらに低い値)以下である。
偏光板の光学吸収による損失を抑制する手法として、透過型液晶表示装置において偏光散乱異方性を利用した光源の光利用効率向上手段が知られており、輝度向上フィルムとして広く使用されている。
偏光散乱異方性を有する偏光フィルムは、高分子と液晶の複合体を延伸したフィルムが光学的に異方性の散乱体となる性質を利用したものであり(リキッドクリスタルズ、1993年、15巻、NO.3、395〜407頁に記載)、光吸収型偏光フィルムと同様に、偏光軸と平行な偏光成分のみを透過する。
たゞし、偏光散乱異方性を有する偏光フィルムは、偏光軸と直交方向の偏光成分を吸収せずに前方もしくは後方に散乱し、偏光フィルムの光の利用効率を向上させる。
特開平9−274108号公報 特開平11−174231号公報 ここで、特許文献1および2には、正の固有複屈折性ポリマーと負の固有複屈折性ポリマーをブレンドし一軸延伸することで異方性散乱体を作製する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1および2に記載の延伸による作製方法では、十分な輝度向上効果を得るために高い配向性を出すために、非常に大きな延伸率が必要となり、適用できるポリマー種が限定されてしまうとともに、過大な延伸により、ディスプレー部材として不要なポリマー自身の複屈折率が発生してしまうという問題があった。
一方、偏光板は偏光フィルムの両面に保護フィルムを貼合することで、形状の維持や傷つきを回避するための物理的な保護及び、光、熱、酸素、水分等に基づく環境変化に基づく耐久的な保護を行なう。
偏光板用保護フィルムは、一般にセルロースエステルで構成されたフィルムが使用されているが、該フィルムは、複屈折性を有しており、リタデーション値がフィルム面内やフィルムの厚さ方向に一般に存在する。
特開2003−43261号公報 ここで、特許文献3に記載のように、二色性偏光フィルムの両面に上記リタデーション値をフィルム面内やフィルムの厚さ方向に有する保護フィルムを貼合して偏光板を形成し、該偏光板の一方の面にさらに偏光散乱異方性を有するフィルム(輝度向上フィルム)が貼合された構成が、一般的であった。
偏光散乱異方性を有するフィルムと二色性偏光フィルムが、上述のような配置であるときに、その間に複屈折性を有するフィルムが存在すると、これが位相差フィルムとしての機能として作用することになる。
結果として、両者の間に複屈折性を有するフィルムが存在すると、ディスプレイの光学特性において透過率や色味の変化を与えることとなり、不用な画像表示の要因となってしまう。従って、偏光散乱異方性を有するフィルムと二色性偏光フィルムとの間に複屈折性を示すフィルムが存在しないことが望まれていた。
また、特許文献3には、偏光散乱異方性層として透明支持体上に液晶性化合物を塗布により設ける方法が開示されているが、この方法では生産性が低いという問題があった。
特表平11−509014号公報 また、特許文献4に開示されているように、偏光散乱異方性を有するフィルム(輝度向上フィルムともいう)は、光学的連続相の屈折率と光学的異方性を有するドメインの透過軸側の屈折率とを実質的に等しくしたフィルムを形成することにより、所定の偏光を選択的に透過し、他の偏光を選択的に散乱し、散乱光を再利用することにより輝度を向上することができる。
しかしながら、十分な輝度向上効果を得るためには、光学的異方性を有するドメインが同一方向に配向している必要があるが、これらの要件を具備した材料の作成は極めて困難であるという問題があった。
本発明の目的は、光学フィルム中の不定形粒子(前述の光学的異方性を有するドメインに相当する)の配向度を高めることにより、光学フィルムの輝度向上効果等の光学特性や強度を高め、また偏光板保護フィルムに適しているうえに、製造安定性に優れた光学フィルム、及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、装置が小型化された光学フィルムの製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、偏光板用保護フィルム自身が偏光散乱異方性を有することで、ディスプレイの光学特性、特に輝度が向上でき、生産性及び耐久性に優れた偏光板用保護フィルムの提供、および該偏光板用保護フィルムを用いた偏光板の提供、並びに該偏光板を用いた液晶表示装置の提供にある。
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、本発明者が先に提案した特願2006−268776号に記載の発明において、ドープの流動方向に対する流延ダイの断面積を徐々に減少させると、ドープ中の不定形粒子がドープ流動方向と平行に配向しやすいことがわかった。本発明においては、伸張部で断面積を徐々に減少させ、不定形粒子の配向度を向上させる。
しかし、この方法を用いると、ダイ出口部の断面積に対し、ダイ入口部の断面積は、非常に広くする必要があり、配管を非常に太くする必要があった。
装置を小型化するためには、配管径は細い方が好ましく、本発明において、この問題について検討した結果、マニホールド部に、ドープを攪拌する機能を有する部位を追加することにより、配管を細くしても、不定形粒子の配向度を上昇させることができることを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、熱可塑性樹脂と、有機溶媒と、不定形粒子とを含むドープ(樹脂溶液)を、流延ダイから支持体上に流延して、樹脂フィルムを製膜する光学フィルムの製造方法において、流延ダイが、ドープ流入方向の上流から順に、ダイ入口部、マニホールド部、伸張部、およびランド部から成り立っている形状で、マニホールド部にドープを攪拌する部位を有し、かつ伸張部の断面形状が下式(I)を、ランド部の断面形状が下式(II)を、それぞれ満足するものであることを特徴としている。
A1≦A2…(I)
上記式中、A1とA2は、伸張部の任意の位置P1と、これよりドープ流れ方向の上流側の位置P2における断面積をそれぞれ表わす。
A3=A4…(II)
上記式中、A3とA4は、ランド部の相互に異なる任意の位置P3、P4における断面積を表わす。
請求項2の発明は、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法であって、ランド部の長さが、40〜200mmであることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の光学フィルムの製造方法であって、マニホールド部のドープを攪拌する部位の攪拌手段が、スクリューであることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載の光学フィルムの製造方法であって、マニホールド部のドープを攪拌する部位の攪拌手段が、邪魔板であることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法であって、ダイ入口部の断面積が、ダイ出口部(ランド部出口)の断面積より狭いことを特徴としている。
請求項6の光学フィルムの発明は、請求項1〜5の光学フィルムの製造方法で製造されたことを特徴としている。
請求項7の偏光板用保護フィルムの発明は、請求項6に記載の光学フィルムよりなり、かつ不定形粒子を含む偏光散乱異方性を有する偏光板用保護フィルムであって、フィルム製造時のドープの流延方向に対し垂直な方向を0゜、およびドープの流延方向と平行な方向を90°としたとき、各々の不定形粒子の長軸方向のなす角度(配向角度)の平均値が、60〜89.5°であることを特徴としている。
請求項8の偏光板の発明は、請求項7に記載の偏光板用保護フィルムを、少なくとも一方の面に有することを特徴としている。
請求項9の液晶表示装置の発明は、請求項8に記載の偏光板を、液晶セルの少なくとも一方の面に有することを特徴としている。
本発明により、光学フィルム中の不定形粒子(前述の光学的異方性を有するドメインに相当する)の配向度を高めることにより、光学フィルムの輝度向上効果等の光学特性や強度を高め、また製造安定性に優れた光学フィルムを製造し得るという効果を奏する。
また、本発明による光学フィルムよりなる偏光板用保護フィルム自身が偏光散乱異方性を有することで、ディスプレイの光学特性、特に輝度が向上でき、生産性及び耐久性に優れた偏光板用保護フィルムを提供することができる。
本発明の光学フィルムよりなる偏光板用保護フィルムを少なくとも一方の面に有する偏光板は、電界による液晶の配向の変化を可視化させる重要な役割を、充分に果たすことができるという効果を奏する。
さらに、本発明の偏光板を、液晶セルの少なくとも一方の面に有する液晶表示装置は、表示品質が非常に優れているという効果を奏する。
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
本発明の溶液流延製膜法を用いた光学フィルムの製造方法は、ドープ調製工程、流延工程、剥離工程、乾燥・延伸工程、乾燥工程、および巻取り工程を具備するものである。
すなわち、本発明の溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法は、樹脂フィルム原料を溶媒に溶解したドープ(樹脂溶液)を調製し(ドープ調製工程)、流延ダイから、回転駆動金属製エンドレスベルトまたは回転ドラム(支持体)上に流延し(流延工程)、支持体上から剥離し(剥離工程)、剥離後のウェブ(フィルム)を乾燥・延伸させ(乾燥・延伸工程)、さらに、ウェブ(フィルム)を乾燥させたのち(乾燥工程)、ロール状に巻き取り(巻取り工程)、光学フィルムを製造する方法である。
本発明の光学フィルムの製造方法は、特に、溶液流延製膜法における流延工程の流延ダイの構造に特徴を有する。
以下、本発明による光学フィルムの製造方法を、順に説明する。
[ドープ調製工程]
本発明において、光学フィルムを製造するための樹脂溶液(ドープ)は、主材としてセルロースエステル樹脂等の樹脂を含み、これらに、可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子、及び低分子量物質のうちの少なくとも1種以上の物質と、溶媒とを含むものである。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、フィルム材料として、種々の樹脂を用いることができるが、中でもセルロースエステルが好ましい。
セルロースエステルは、セルロース由来の水酸基がアシル基などで置換されたセルロースエステルである。例えば、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどのセルロースアシレートや、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートなどが挙げられる。中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートが好ましい。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その他の置換基が含まれていてもよい。
セルローストリアセテートの例としては、アセチル基の置換度が2.0以上3.0以下であることが好ましい。置換度をこの範囲にすることで、良好な成形性が得られ、かつ所望の面内リタデーション(Ro)、及び厚み方向リタデーション(Rt)を得ることができるのである。アセチル基の置換度が、この範囲より低いと、位相差フィルムとしての耐湿熱性、特に湿熱下での寸法安定性に劣る場合があり、置換度が大きすぎると、必要なリタデーション特性が発現しなくなる場合がある。
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。また、それらから得られたセルロースエステルは、それぞれ任意の割合で混合使用することができる。
本発明において、セルロースエステルの数平均分子量は、60000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。さらに70000〜200000が好ましい。
本発明において、セルロースエステルには、種々の添加剤を配合することができる。
本発明による光学フィルムの製造方法において、上記セルロース誘導体に対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
良溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類の他、メチルセロソルブ、ジメチルイミダゾリノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、ニトロエタン、塩化メチレン、アセト酢酸メチルなどが挙げられるが、1,3−ジオキソラン、THF、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸メチル及び塩化メチレンが好ましい。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40重量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。これらは、ドープをエンドレスベルトに流延した後、溶媒が蒸発し始めてアルコールの比率が多くなることで、ウェブ(エンドレスベルト上にセルロース誘導体のドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)をゲル化させ、ウェブを丈夫にして、エンドレスベルトから剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロース誘導体の溶解を促進したりする役割もある。
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。これらのうち、ドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、かつ毒性がないことなどからエタノールが好ましい。これらの有機溶媒は、単独ではセルロース誘導体に対して溶解性を有しておらず、貧溶媒という。
このような条件を満たす好ましい高分子化合物であるセルロース誘導体を高濃度に溶解する溶剤として最も好ましい溶剤は塩化メチレン:エチルアルコールの比が95:5〜80:20の混合溶剤である。あるいは、酢酸メチル:エチルアルコール60:40〜95:5の混合溶媒も好ましく用いられる。
本発明におけるフィルムには、フィルムに加工性・柔軟性・防湿性を付与する可塑剤、フィルムに滑り性を付与する微粒子(マット剤)、紫外線吸収機能を付与する紫外線吸収剤、フィルムの劣化を防止する酸化防止剤等を含有させても良い。
本発明において使用する可塑剤としては、特に限定はないが、フィルムにヘイズを発生させたり、フィルムからブリードアウトあるいは揮発しないように、セルロース誘導体や加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物の重縮合物と、水素結合などによって相互作用可能である官能基を有していることが好ましい。
このような官能基としては、水酸基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、カルボン酸残基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルホン酸残基、ホスホニル基、ホスホン酸残基等が挙げられるが、好ましくはカルボニル基、エステル基、ホスホニル基である。
このような可塑剤の例として、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることができるが、特に好ましくは多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等の非リン酸エステル系可塑剤である。
多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。
本発明に用いられる多価アルコールは、つぎの一般式(1)で表される。
一般式(1) R−(OH)n
式中、Rはn価の有機基、nは2以上の正の整数を表わす。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
好ましい多価アルコールの例としては、アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
本発明の多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させると、セルロース誘導体との相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は、特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが、さらに好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロース誘導体との相溶性の点では、小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
グリコレート系可塑剤は、特に限定されないが、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するグリコレート系可塑剤を、好ましく用いることができる。好ましいグリコレート系可塑剤としては、例えばブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等を用いることができる。
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等を用いることができるが、本発明では、リン酸エステル系可塑剤を実質的に含有しないことが好ましい。
ここで、「実質的に含有しない」とは、リン酸エステル系可塑剤の含有量が1重量%未満、好ましくは0.1重量%であり、特に好ましいのは添加していないことである。
これらの可塑剤は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
可塑剤の使用量は、1〜20重量%が好ましい。6〜16重量%がさらに好ましく、特に好ましくは8〜13重量%である。可塑剤の使用量が、セルロース誘導体に対して1重量%未満では、フィルムの透湿度を低減させる効果が少ないため、好ましくなく、20重量%を越えると、フィルムから可塑剤がブリードアウトし、フィルムの物性が劣化するため、好ましくない。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、光学フィルムに滑り性を付与するために、マット剤等の微粒子を添加するのが好ましい。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
本発明において、「不定形」とは、粒子の絶対最大長をY、対角幅をXとしたとき、X≠Yであり、また、アスペクト比=Y/Xが2以上ある粒子を指す。本発明に用いられる不定形粒子としては、球状以外の粒子であれば何でも良く、平板状、棒状、楕円体状、針状、層状、糸状等が用いられる。不定形粒子のアスペクト比(絶対最大長と対角幅の比)は、2以上、10000以下であることが好ましく、さらに好ましくは3以上、1000以下であり、特に好ましくは5以上、100以下である。
ここで、本発明で用いられる不定形粒子としては、無機化合物または有機化合物が挙げられ、無機化合物の微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレイ、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、及びリン酸カルシウム等の金属酸化物、水酸化物、ケイ酸塩、リン酸塩、炭酸酸塩、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、硼酸アルミニウム、塩基性硫酸マグネシウム、ガラスファイバーなどが挙げられる。また、有機化合物の微粒子としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の微粒子を挙げることができる。
本発明に用いる粒子は、樹脂との親和性を向上させる目的で種々の表面処理を施しておくことが好ましい。
充分に乾燥させた粒子に対し、脂肪酸系、油脂系、界面活性剤系、ワックス系、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、カルボン酸系カップリング剤、リン酸系カップリング剤、高分子系等各種改質剤を利用できる。
表面処理した粒子を樹脂中に分散させる方法としては大きく分けて、分散機を使用する方法と混練機を使用する方法の2つがある。溶融流延製膜方法を用いる場合は混練機を使用し、溶液流延製膜方法を用いる場合には、分散機または混練機共に使用することができる。
前者はさらにメディア分散とメディアレス分散に分けられる。メディア分散としては、ボールミル、サンドミル、ダイノミル等の分散機によるものが挙げられ、メディアレス分散としては、超音波型、遠心型、高圧型等が挙げられるが、本発明では、高圧型分散装置での分散あるいは、混練機を使用した分散が好ましい。混練方法としては、ロータが1本あるいは2本の押出機を用い、ホッパから樹脂を投入し、ある程度粘度が低下したところで、サイドから粒子を投入する方法をとることで、粒子の破損を最小限に抑えかつ混練性を高めることができる。
無機化合物の微粒子の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫等の微粒子が挙げられる。この中では、ケイ素原子を含有する化合物の微粒子であることが好ましく、特に二酸化ケイ素微粒子が好ましい。二酸化ケイ素微粒子としては、例えばアエロジル株式会社製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,R805、OX50、TT600などが挙げられる。
有機化合物の微粒子の例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素化合物樹脂、ウレタン樹脂等の微粒子が挙げられる。
微粒子の1次粒径は、特に限定されないが、最終的にフィルム中での平均粒径は、0.05〜5.0μm程度が好ましい。さらに好ましくは、0.1〜1.0μmである。
微粒子の平均粒径は、セルロースエステルフィルムを電子顕微鏡や光学顕微鏡で観察した際に、フィルムの観察場所における、粒子の長軸方向の長さの平均値を指す。フィルム中で観察される粒子であれば、1次粒子であっても、1次粒子が凝集した2次粒子であってもよいが、通常観察される多くは2次粒子である。
測定方法の一例としては、1つのフィルムにつき、ランダムに10箇所の垂直断面写真を撮影し、各断面写真について、長軸長さが、0.05〜5μmの範囲にある100μm中の粒子個数をカウントする。このときカウントした粒子の長軸長さの平均値を求め、10箇所の平均値を平均した値を平均粒径とする。
微粒子の場合は、1次粒径、溶媒に分散した後の粒径、フィルムに添加されたの粒径が変化する場合が多く、重要なのは、最終的にフィルム中で微粒子がセルロースエステルと複合し凝集して形成される粒径をコントロールすることである。
ここで、微粒子の平均粒径が、5μmを超えた場合は、ヘイズの劣化等が見られたり、異物として巻状態での故障を発生する原因にもなる。また、微粒子の平均粒径が、0.05μm未満の場合は、フィルムに滑り性を付与するのが難しくなる。
上記の微粒子は、セルロースエステルに対して、0.04〜0.5重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.25重量%添加して使用される。微粒子の添加量が0.04重量%以下では、フィルム表面粗さが平滑になりすぎて、摩擦係数の上昇によりブロッキングを発生する。微粒子の添加量が0.5重量%を超えると、フィルム表面の摩擦係数が下がりすぎて、巻き取り時に巻きズレが発生したり、フィルムの透明度が低く、ヘイズが高くなるため、液晶表示装置用フィルムとしての価値を持たなくなるので、上記の範囲が必須である。
微粒子の分散は、微粒子と溶剤を混合した組成物を高圧分散装置で処理することが好ましい。本発明で用いる高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。
高圧分散装置で処理することにより、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が980N/cm以上であることが好ましい。さらに好ましくは、装置内部の最大圧力条件が1960N/cm以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が100kcal/hr以上に達するものが、好ましい。
上記のような高圧分散装置としては、例えばMicrofluidics Corporation社製の超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザーが挙げられ、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモゲナイザーなどが挙げられる。
本発明において、微粒子は、低級アルコール類を25〜100重量%含有する溶剤中で分散した後、セルロースエステル(セルロース誘導体)を溶剤に溶解したドープと混合し、該混合液をエンドレスベルト上に流延し、乾燥して製膜することを特徴とするセルロースエステルフィルムを得る。
ここで、低級アルコールの含有比率としては、好ましくは50〜100重量%、さらに好ましくは75〜100重量%である。
また、低級アルコール類の例としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。
低級アルコール以外の溶媒としては、特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
微粒子は、溶媒中で1〜30重量%の濃度で分散される。これ以上の濃度で分散すると、粘度が急激に上昇し、好ましくない。分散液中の微粒子の濃度としては、好ましく、5〜25重量%、さらに好ましくは、10〜20重量%である。
フィルムの紫外線吸収機能は、液晶の劣化防止の観点から、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムなどの各種光学フィルムに付与されていることが好ましい。このような紫外線吸収機能は、紫外線を吸収する材料をセルロース誘導体中に含ませても良く、セルロース誘導体からなるフィルム上に紫外線吸収機能のある層を設けてもよい。
本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報に記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
本発明において、有用な紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
また、紫外線吸収剤の市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を、好ましく使用できる。
また、本発明において使用し得る紫外線吸収剤であるベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明において、これらの紫外線吸収剤の配合量は、セルロースエステル(セルロース誘導体)に対して、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜5重量%が好ましい。紫外線吸収剤の使用量が少なすぎると、紫外線吸収効果が不充分の場合があり、紫外線吸収剤の多すぎると、フィルムの透明性が劣化する場合があるので、好ましくない。紫外線吸収剤は熱安定性の高いものが好ましい。
また、本発明の光学フィルムに用いることのできる紫外線吸収剤は、特開平6−148430号公報及び特開2002−47357号公報に記載の高分子紫外線吸収剤(または紫外線吸収性ポリマー)を好ましく用いることができる。とりわけ特開平6−148430号公報に記載の一般式(1)、あるいは一般式(2)、あるいは特開2002−47357号公報に記載の一般式(3)、(7)で表わされる高分子紫外線吸収剤が、好ましく用いられる。
酸化防止剤は、一般に、劣化防止剤ともいわれるが、光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルム中に含有させるのが好ましい。すなわち、液晶画像表示装置などが高湿高温の状態に置かれた場合には、光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルムの劣化が起こる場合がある。酸化防止剤は、例えばフィルム中の残留溶媒中のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸などによりフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、フィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、セルロース誘導体に対して重量割合で1ppm〜1.0重量%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
ところで、セルロースエステルの溶解は、図示しない溶解釜中での撹拌溶解方法、加熱溶解方法、超音波溶解方法等の手段が、通常用いられ、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。また、特開平9−95538号公報記載の冷却溶解方法、あるいはまた特開平11−21379号公報記載の高圧下で溶解する方法なども用いてもよい。
セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤、あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤と混合して溶解する方法も好ましく用いられる。このとき、セルロースエステルを貧溶媒と混合して湿潤あるいは膨潤させる装置と、良溶剤と混合して溶解する装置を別々に分けても良い。
セルロースエステルの溶解に用いる加圧容器の種類は、特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、攪拌ができればよい。加圧容器には、その他、圧力計、温度計などの計器類を適宜配設する。加圧は窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行なってもよい。加熱は外部から行なうことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、使用する溶剤の沸点以上で、2種類以上の混合溶剤の場合は、沸点が低い方の溶剤の沸点以上の温度に加温しかつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましい。加熱温度が高すぎると、必要とされる圧力が大きくなり、生産性が悪くなる。好ましい加熱温度の範囲は20〜120℃であり、30〜100℃が、より好ましく、40〜80℃の範囲がさらに好ましい。また圧力は、設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。
セルロースエステルの溶解後は、冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して、熱交換器などで冷却し、得られたポリマーのドープを製膜に供するが、このときの冷却温度は、常温まで冷却してもよい。
原料セルロースエステルと溶媒の混合物は、撹拌機を有する溶解装置で溶解し、このとき、撹拌翼の周速は少なくとも0.5m/秒以上で、かつ30分以上撹拌して溶解することが好ましい。
本発明において、セルロースエステルドープは、これを濾過することによって、異物、特に液晶画像表示装置において、画像と認識し間違う異物は、これを除去しなければならない。
濾過に使用する濾材は、絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると、濾過材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行なわなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。
このため、本発明において、セルロースエステルドープに使用する濾材は、絶対濾過精度0.008mm以下のものが好ましく、0.001〜0.008mmの範囲が、より好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材がさらに好ましい。
濾材の材質には、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
本発明において、セルロースエステルドープの濾過は通常の方法で行なうことができるが、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加圧下加熱しながら濾過する方法が、濾過材前後の差圧(以下、濾圧とすることがある)の上昇が小さく、好ましい。
好ましい温度範囲は45〜120℃であり、45〜70℃が、より好ましく、45〜55℃の範囲であることがさらに好ましい。
濾圧は、3500kPa以下であることが好ましく、3000kPa以下が、より好ましく、2500kPa以下であることがさらに好ましい。なお、濾圧は、濾過流量と濾過面積を適宜選択することで、コントロールできる。
[流延工程]
図1は、本発明の溶液流延製膜方法による光学フィルムの製造方法を実施する装置を例示する概略縦断面図である。
同図を参照すると、ドープの流延工程は、図示しない溶解釜で調整されたドープを、導管によって流延ダイ(1)に送液し、無限に移送する例えば回転駆動ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体(11)上の流延位置に、流延ダイ(1)からドープを流延する工程である。
本発明の光学フィルムの製造方法は、特に、流延工程における流延ダイ(1)の構造に特徴を有する。流延ダイ(1)としては、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法に使用する流延ダイの一例を図3に示す。ここで、図3aは、流延ダイの部分切欠き拡大正面図、図3bは、同部分切欠き拡大側面図である。
本発明の光学フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂と、有機溶媒と、不定形粒子とを含むドープ(樹脂溶液)を、流延ダイ(1)から支持体(11)上に流延して、樹脂フィルムを製膜するものである。
流延ダイ(1)は、図3に示すように、ドープ流入方向の上流から順に、ダイ入口部(2)、マニホールド部(3)、伸張部(4)、およびランド部(5)から成り立っている形状で、マニホールド部(3)に、ドープを攪拌する部位を有している。そして、伸張部(4)の断面形状が下式(I)を、ランド部(5)の断面形状が下式(II)を、それぞれ満足するものである。
A1≦A2…(I)
上記式中、A1とA2は、伸張部(4)の任意の位置P1と、これよりドープ流れ方向の上流側の位置P2における断面積をそれぞれ表わす。
A3=A4…(II)
上記式中、A3とA4は、ランド部(5)の相互に異なる任意の位置P3、P4における断面積を表わす。
ここで、流延ダイ(1)の細い配管からマニホールド部(3)に流れてきたドープ中の不定形粒子は、一旦、ドープの流れに対し垂直方向を向くが、ドープを攪拌することにより無配向状態に戻る。無配向状態の不定形粒子は、伸張部(4)でドープの流れ方向と平行に配向する。
本発明の伸張部(4)の形状としては、ドープの流動方向に垂直な面の断面積が、流動方向下流になるに従い、狭くなる形状であれば、どのような形状でも良い。
例えば、伸張部(4)の形状が入口から出口まで左右幅が一定で、厚さ(前後幅)が徐々に狭くなる形であったり、厚さ(前後幅)が一定で、左右幅が徐々に狭くなる形であったり、左右幅は広くなるが厚さ(前後幅)が狭くなり、断面積としては、伸張部(4)出口に近いほど狭くなる形状等が上げられるが、現在の光学フィルムの幅広化が望まれている状況から、伸張部(4)入口から伸張部(4)出口にかけて左右幅は一定か、広くなる方向が好ましい。また、断面の形状は、矩形や楕円等の形状が挙げられる。
流延ダイ(1)に伸張部(4)を設けることにより、光学的異方性を有するドメインが同一方向に配向し、これによって、充分な輝度向上効果を得ることができる。
そして、本発明の方法において、流延ダイ(1)のランド部(5)の長さは、40〜200mmであり、一定の断面積の部位を有することが好ましい。
本発明の方法において、流延ダイ(1)のマニホールド部(3)には、攪拌する機能を有する部位を備えている。
攪拌の方法は、特に問わないが、例えば図3に示すように、スクリュー(6)を用いて外力により攪拌する方法が好ましい。ここで、攪拌に用いるスクリュー(6)としては、いろいろな形状のものが挙げられるが、プロペラを多数配置した形状のスクリューを用いるのが好ましい。攪拌に用いるスクリュー(6)のプロペラの形状や回転数は、流延するドープの粘度によって異なるが、スクリュー(6)の回転数は、例えば10〜10000rpm、好ましくは300〜2000rpmである。なお、マニホールド部(3)の外側から磁力(駆動部)を用いてスクリュー(6)のプロペラを回転させて攪拌すると、駆動部からの液漏れが無いため、好ましい。
なお、図3に示すスクリュー(6)は、マニホールド部(3)内に1機だけ配置されているが、スクリュー(6)は、マニホールド部(3)内に複数機配置されていても良く、その場合には、複数機のスクリュー(6)を左右に並列状に配置しても良いし、上下多段に、並べて配置しても良いものである。
ここで、流延ダイ(1)のマニホールド部(3)に設けられる攪拌する機能を有する部位には、スクリュー(6)を、マニホールド部(3)の全体積の20〜50%を占めるように設置するのが、好ましい。
図4は、本発明の光学フィルムの製造方法に使用する流延ダイ(1)のいま1つの例を示すもので、図4aは、流延ダイ(1)の部分切欠き拡大正面図、図4bは、同部分切欠き拡大側面図、図4cは、同流延ダイ(1)内部の邪魔板(7)の配置を示す部分拡大斜視図である。
本発明の方法において、流延ダイ(1)のマニホールド部(3)には、攪拌する機能を有する部位を有する。攪拌の方法のいま1つは、図4に示すように、邪魔板(7)を設置し、ドープに乱流を生じさせて攪拌する方法が挙げられる。
図示の邪魔板(7)は平板状であるが、邪魔板(7)の形状は、その他、孔あき板、メッシュ板などであっても良く、ドープの流れに対して障害になるような形状であれば、良い。
ここで、流延ダイ(1)のマニホールド部(3)内の攪拌する機能を有する部位において、邪魔板(7)を設置すると、流延ダイ入口部(2)よりマニホールド部(3)内に流入したドープは、邪魔板(7)に当たることにより、渦流が発生し、ドープに乱流が生じて、ドープが充分に攪拌される。このように、ドープを攪拌することにより、流延ダイ(1)の細い配管からマニホールド部(3)に流れてきたドープの流れに対し垂直方向を向いていた不定形粒子が、無配向状態に戻る。こうして、無配向状態の不定形粒子は、その後の伸張部(4)でドープの流れ方向と平行に配向するものである。
なお、邪魔板(7)の形状は、ドープの流れに対して垂直な面が広い方が、ドープに乱流を生じやすいので、好ましい。
また、邪魔板(7)は、図4cに詳しく示すように、上下3段にかつ側面よりみて上下方向に千鳥状配置に設置されている。邪魔板(7)の設置段数は、例えば2〜100段、好ましくは2〜20段、望ましくは3〜10段である。
ここで、流延ダイ(1)のマニホールド部(3)に設けられる攪拌する機能を有する部位には、邪魔板(7)を、各段あたり、マニホールド部(3)の横断面積(水平断面積)の10〜50%を占めるように設置するのが、好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法において、ダイ入口部(2)の断面積が、ダイ出口部〔ランド部(5)出口〕の断面積より狭いことが好ましい。
また、流延ダイ(1)は、内部スリット壁面と支持体(11)表面とのなす角度を40〜90°にするのが、好ましく、特に60〜75°が好ましい。
流延ダイ(1)のダイ出口部(ダイリップ)と支持体(11)表面との間隙は、0.2〜10mmの間隙を取って設置されるのが好ましく、さらに0.5〜5mmの間隙が、より好ましい。
流延ダイ(1)のランド部(5)の幅(スリットのギャップ)は、0.05〜1.5mmが好ましく、0.15〜1.0mmが、より好ましい。
しかし、光学フィルムを製造する流涎ダイ(1)は入口部(2)に対し、ランド部(リップ部)(5)の厚さは薄く、幅は広くなっている。このため、マニホールド部(3)は幅手方向には徐々に広がる構造になってしまうため、ランド部(5)入口の端部の流動方向は斜め方向になってしまう。よって、不定形粒子をドープの流動方向に配向させても、フィルム中央部と端部で配向方向が異なる問題があった。
本発明においてこの問題について検討した結果、ランド部(5)の長さを40mm以上に設定することにより、ドープの流動方向が中央部と端部で均一になることがわかった。また、ランド部を40mm以上に設定することにより、さらに配向度が向上し、膜厚分布の均一性も向上することがわかった。
ただし、ランド部(5)の長さを200mm以上にすると、流涎ダイ(1)にかかる圧力が高くなるといった問題や、流涎ダイ(5)の製造が難しくなるといった問題があるため、本発明において、ランド部(5)のランド長は、40〜200mmであることが好ましい。
つぎに、流延支持体(11)について説明する。
図1に示すように、支持体(11)として回転駆動エンドレスベルトを具備する製膜装置では、該ベルト支持体(11)は一対のドラム(19)およびその中間に配置されかつエンドレスベルト支持体(11)の上部移行部及び下部移行部をそれぞれ裏側より支えている複数のロール(図示略)より構成される。この複数のロールはサポートロールと呼ばれ、隣り合うサポートロール同士の間の距離が0mより大きく、5m以下の範囲内、好ましくは1〜5m、望ましくは2〜5mにすることが望ましい。また、エンドレスベルト支持体(11)の上部移行部(1a)を裏側より支えているサポートロールのうち、相互に隣り合うサポートロール同士の間の距離が、エンドレスベルト支持体(11)の下部移行部を裏側より支えているサポートロールのうち、相互に隣り合うサポートロール同士の間の距離よりも、狭いものであることが好ましい。
また、回転駆動エンドレスベルト支持体(11)の両端巻回部のドラム(19)の一方、もしくは両方に、ベルト支持体(11)に張力を付与する駆動装置が設けられ、これによってベルト支持体(11)は張力が掛けられて張った状態で使用される。
支持体(11)の表面粗さRaは、0.0001〜1μmであり、0.0003〜0.1μmが、より好ましく、0.0005〜0.05μmがさらに好ましい。
また、エンドレスベルトの両端には平均粗さRa0.5〜2μmの粗面化帯を設け、該粗面化帯に5〜30mm幅ドープが重なるように流延するのが、剥離工程で、ウェブをスムーズに剥離する点から好ましい。
支持体(11)としてエンドレスベルトを用いる場合には、製膜時のベルト温度は、一般的な温度範囲0℃〜溶剤の沸点未満の温度で流延することができ、さらには5℃〜溶剤沸点−5℃の範囲が、より好ましい。このとき、周囲の雰囲気湿度は露点以上に制御する必要がある。
また、支持体(11)搬送速度が10m/分以上では、流延ダイ(1)のリップから出てくる流延膜に減圧を掛けてエア混入や、フィルム幅手方向に横段状のスジをつくる原因となる流延リボンのばたつきを抑制するため、流延ダイ(1)上流側に減圧チャンバを設け、10〜600Pa減圧するのが好ましく、さらに好ましくは10〜200Paである。
減圧チャンバの下部端面と、支持体(11)表面との間隙は、0.5〜5mmの範囲が吸引風量が大きくなり過ぎず、それにより、流延ダイ(1)リップ端部のドープ乾燥皮膜の発生が抑制されるため望ましい。
また、製膜速度を上げるために、加圧流延ダイ(1)を流延用支持体(11)上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層製膜してもよい。
支持体(11)上へドープを流延する際は、原料樹脂の溶解に用いた溶剤の沸点未満、混合溶剤では最も沸点の低い溶剤の沸点未満の温度に制御するのが好ましい。
支持体(11)としてエンドレスベルトを用いる方式においては、支持体(11)上では、ウェブ(10)が支持体(11)から剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させるため、ウェブ(10)中の残留溶媒量が150重量%以下まで乾燥させるのが好ましく、80〜120%が、より好ましい。また、支持体(11)からウェブ(10)を剥離するときのウェブ温度は、0〜30℃が好ましい。また、ウェブ(10)は、支持体(11)からの剥離直後に、支持体(11)密着面側からの溶媒蒸発で温度が一旦急速に下がり、雰囲気中の水蒸気や溶剤蒸気など揮発性成分がコンデンスしやすいため、剥離時のウェブ温度は5〜30℃がさらに好ましい。
ここで、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
式中、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量である。
エンドレスベルト支持体(11)上に流延されたドープにより形成されたドープ膜(ウェブ)を、支持体(11)上で加熱し、支持体(11)からウェブが剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法、及び/または支持体(11)の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等がある。
[剥離工程]
支持体(11)にエンドレスベルトを用いる方式においては、支持体(11)とウェブ(10)を剥離する際の剥離張力は、通常20〜25kg/mで剥離が行なわれるが、従来よりも薄膜化されている本発明により作製されたセルロースエステルフィルムでは、剥離の際にウェブ(10)にシワが入りやすいため、剥離できる最低張力〜17kg/mで剥離することが好ましく、さらに好ましくは、最低張力〜14kg/mで剥離することである。
図2は、本発明の溶液流延製膜方法による光学フィルムの製造方法を実施する装置のいま1つの例を示す概略縦断面図で、支持体(21)としてドラムを用いている。
同図において、上記の図1の場合と同様に、熱可塑性樹脂と、有機溶媒と、不定形粒子とを含むドープを調製し、ドープは、加圧型定量ギヤポンプを通して流延ダイ(1)に送液され、流延位置においてハードクロム鍍金が施された回転ドラムよりなる支持体(21)上に流延する。支持体(21)上に形成されたウェブ(10)は、ドラム支持体(21)の回転によってほぼ3/4周移動したところで、剥離ロール(16)により剥離する。
ここで、支持体(21)として回転ドラムを用いる場合には、製膜時のドラムの支持体(21)温度は、10℃以下に冷却することが好ましく、0℃以下に冷却するとより好ましく、−10℃以下に冷却することがさらに好ましい。ドラム支持体(21)表面に流延されたドープは、冷却ゲル化によりゲル膜の強度(フイルム強度)が増加して、さらに剥ぎ取りまでの間で乾燥が促進されることによってもゲル膜の強度(フイルム強度)が増加する。
また、ウェブ(10)の残留溶媒量が10〜250重量%の状態で支持体(21)表面から剥離するのが好ましく、20〜220重量%の状態で剥離するのがより好ましい。残留溶剤量が250重量%を越えると、支持体(21)上にセルロースアシレートの剥げ残りが発生する場合がある。
また、支持体(21)に回転ドラムを用いる方式においては、支持体(21)とウェブ(10)を剥離する際の剥離張力は、0.1〜6kg/mで剥離が行なわれる。
支持体(21)に回転ドラムを用いる方式においては、剥離後、渡り部を通って、テンター乾燥装置に運ばれる。渡り部は0本以上の搬送ロールよりなり、1本以上の搬送ロールから成るのが好ましく、3本以上の搬送ロールからなるのがより好ましい。渡り部の搬送ロール(22)もドラム支持体(21)と同様に温度調整装置を取り付けて温度調整することが好ましい。例えば、搬送ロール(22)にそれぞれジャケットを取り付け、そのジャケット内に冷却用媒体を循環させる方法などが挙げられる。
また、各搬送ロール(22)の温度も、ドラム支持体(21)の温度と同様に10℃以下が好ましく、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−10℃以下とすることである。また、渡り部室内の温度もドラム支持体(21)の温度と同様に10℃以下が好ましく、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−10℃以下とすることである。なお、ウェブ(10)を冷却することにより、貯蔵弾性率を高く保持することができ、搬送時の不良の発生を防止できる。
[乾燥工程]
図1に示すように、支持体(11)にエンドレスベルトを用いる方式においては、剥離後のウェブ(10)は初期乾燥装置(13)に導入する。初期乾燥装置(13)内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロール(17)によってウェブ(10)が蛇行せられ、その間にウェブ(10)は初期乾燥装置(13)の底の前寄り部分から吹込まれ、初期乾燥装置(13)の天井の後寄り部分から排出せられる温風(23)によって乾燥される。
また、ウェブ中の残留溶媒量が10〜150重量%である間は、ウェブは非常に柔らかいため、搬送ロールの直径が細い(85mm未満)とウェブはロールに押しつけられる力により変形しやすいが、そればかりでなくウェブからの析出、蒸発または揮発する添加剤がロールに付着し、ウェブを汚したり、押されを形成したりしやすくなる。またロールが太い(300mmを超える径)の場合は、ウェブに掛かる張力が弱いと、ウェブとロールの摩擦が十分でなく滑りが生じ、ウェブに擦り傷を付けてしまう。滑らせないようにウェブに強い張力をかけると、柔らかいウェブは伸縮して所望の光学特性が得られなかったり、また、搬送方向に伸びる筋ムラが強調され、さらにウェブはロールへ強く押し付けられることから押され変形が問題となる。そこで、使用するロールの直径は85〜300mmが好ましく、100〜200mmがより好ましい。
[延伸工程]
特に、支持体(11)から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブ(またはフィルム)は幅手方向に収縮しようとする。高温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。上記の図1と図2に示すように、この収縮は、テンター(11)により可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。
画像表示部材用フィルムとしては、ウェブ(またはフィルム)の両側縁部をクリップ等で固定して延伸するテンター方式が知られており、平面性や寸法安定性を向上させるために好ましい。
テンター(14)を用いる方法としては、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅手方向にクリップでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法/テンター方式が好ましい。
残留溶媒量が10〜100重量%のときに80〜130℃、及び/又は残留溶媒量が5〜10重量%のときに90〜150℃に保持する場合、テンター(14)で幅保持もしくはフィルム幅に対して1〜20%程度の延伸を行なうと、セルロースエステルフィルムの平面性の向上効果が大きく特に好ましい。
また、テンター(14)の前後での、ウェブ(10)に搬送方向に沿って作用する張力の差を8N/mm以下とすることが好ましい。
なお、ウェブ(10)を予熱する予熱工程と、この予熱工程の後、テンター式乾燥機(14)を用いてウェブ(10)を延伸する延伸工程と、この延伸工程の後、ウェブ(10)をこの延伸工程での延伸量よりも少ない量だけ緩和させる緩和工程とを具備し、予熱工程および延伸工程における温度T1を、(フィルムのガラス転移温度Tg−60℃)以上とし、かつ、緩和工程における温度T2を、(T1℃−10℃)以下とすることが好ましい。
特に、上記延伸工程でのウェブ(10)の延伸率を、この延伸工程に入る直前のウェブ幅に対する比率で0〜30%に、他方、緩和工程でのウェブ(10)の延伸率を、−10〜10%とすることが望ましい。
テンター装置(14)による延伸工程においては、例えばセルロースエステルフィルムを製造する際の延伸倍率は、製膜方向もしくは幅手方向に対して、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍である。2軸方向に延伸する場合、高倍率で延伸する側が、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍であり、もう一方の方向の延伸倍率は0.8〜1.5倍、好ましくは0.9〜1.2倍に延伸することができる。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸は、テンター装置(14)によって行なうことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
なお、テンター装置(14)による延伸工程においては、テンター装置(14)の底の前寄り部分から吹込まれ、テンター装置(14)の天井の後寄り部分から排出せられる温風(24)によってウェブ(10)が、延伸と共に乾燥されている。
[後乾燥工程]
テンター装置(14)による延伸工程の後には、後乾燥装置(15)を設けることが好ましい。後乾燥装置(15)内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロール(17)によってウェブ(10)が蛇行せられ、その間にウェブ(10)が乾燥せられるものである。また、後乾燥装置(15)でのフィルム搬送張力は、ドープの物性、剥離時及びフィルム搬送工程での残留溶媒量、後乾燥装置(15)での温度等に影響を受けるが、30〜250N/mが好ましく、60〜150N/mがさらに好ましい。80〜120N/mが最も好ましい。
なお、ウェブ(またはフィルム)(10)を乾燥させる手段は、特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点から熱風で乾燥するのが好ましく、例えば後乾燥装置(15)の底の前寄り部分から吹込まれ、後乾燥装置(15)の天井の後寄り部分から排出せられる温風(25)によって乾燥される。乾燥温度は40〜160℃が好ましく、50〜160℃が平面性、寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。この場合、乾燥雰囲気を溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することは勿論のことである。
乾燥時のウェブ搬送張力は、30〜300N/幅mであり、40〜270N/幅mが、より好ましい。
乾燥工程及び/又は熱矯正装置の前及び/又は後に、ウェブ(またはフィルム)(10)表面のクリーン化装置が配置されるのが、好ましい。
クリーン化装置は、搬送途中のウェブ(またはフィルム)(10)に対し、超音波振動を与えると共に表面に高圧風を吹き当てて付着物を吹き飛ばして吸引し、付着している粉塵などを除去するものである。この他、火炎処理(コロナ処理、プラズマ処理)を行なう方式、粘着ロールを設置する方式など、公知の手段・方法を特別の制限なく用いることができる。
なお、配置するクリーン化手段は、単一であってもよいし、2以上の複数であってもよい。
ウェブ(10)に対する粉塵などの付着は、静電気の作用による場合が多いので、上記のクリーン化装置の前に除電手段、例えば、除電バーを配置してウェブ(10)の静電気を除去することが好ましい。除電バーとしては、公知のものを特別の制限なく用いることができる。
乾燥工程では、ウェブ(またはフィルム)(10)に含有される可塑剤が蒸発し、ロールや壁面においてコンデンスする現象を抑制する対策として、単位時間当たり供給風量に対して特定量以上の新鮮なガスを流入させることが好ましい。そして、供給する新鮮ガスの量は、全供給風量の5〜50%に設定することが好ましい。
新鮮ガス供給量を5〜50%にしているのは、5%未満では、新鮮ガス量が少なすぎて可塑剤のコンデンスを抑制しきれないためであり、50%を超えると新鮮ガス量が多すぎ、ランニングコストで無駄が多くなるためである。
なお、乾燥工程あるいは熱矯正工程室あるいはそれらから出てきたフィルムの冷却工程から、フィルムを出す際のフィルム温度は、60℃以下とすることが好ましい。
後乾燥装置(15)での搬送方向へフィルムの伸びを防止する目的で、テンションカットロールを設けることが好ましい。乾燥終了後、巻き取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。
つぎに、熱可塑性樹脂フィルムの両側縁部に設けるエンボスについて説明する。搬送乾燥工程を終えた熱可塑性樹脂フィルムに対し、巻取工程に導入する前段において、エンボス加工装置によりフィルムにエンボスを形成する加工が行なわれる。エンボス加工装置としては、特開昭63−74850号公報に記載されている装置が利用できる。
ここで、エンボスの高さh(μm)は、フィルム膜厚(T)の0.05〜0.3倍の範囲、幅Wは、フィルム幅Lの0.005〜0.02倍の範囲に設定する。例えばフィルム膜厚40μm、フィルム幅100cmであるとき、エンボス31の厚みは2〜12μm、エンボス幅は5〜30mmに設定する。
エンボスは、フィルムの両面に形成してもよい。この場合、エンボスの高さh1+h2(μm)は、フィルム膜厚Tの0.05〜0.3倍の範囲、幅Wはフィルム幅Lの0.005〜0.02倍の範囲に設定する。例えばフィルム膜厚40μmであるとき、エンボスの高さh1+h2(μm)は2〜12μmに設定する。エンボス幅は5〜30mmに設定する。
エンボス高さの下限については、フィルム間の部分的な密着ムラを防ぐために必要な高さから、一方、上限は、これ以上にするとエンボスが高すぎるため、ロール状製品形態が馬の背状に多角形状に変形し、故障を誘発するからである。
エンボスの幅については、エンボス部は最終的にロス部分となるため少なくしたいが、例えばフィルム厚みを80μmから40μmへと薄膜化していった際、フィルム〜ロール間の摩擦力が、50μmを境にグリップ力が極端に減少することが判明、さらにフィルム製膜速度を30m/分以上に高速化していった際、特に50m/分以上でフィルム〜ロール間の摩擦力が極端に減少することが判明した。このため、特に50μm以内の薄膜フィルムで、50m/分以上の高速製膜時において、フィルムのすべりを抑えるための最低限必要なエンボス幅である。但し、前述のエンボスの高さともリンクしており、ピラミッド状、馬の背、多角形状、巻きずれ故障を全てクリアーするエンボス高さ×エンボス幅を決定したものである。なお、エンボスは、フィルムの両端部だけでなく中央部部分にも配置することができる。
本発明において、巻取前及び巻取部直後に除電器を設置し、フィルムを除電するのが好ましい。
除電器は、元巻を再繰り出しした際の帯電電位が±2KV以下となるように、巻取時に除電装置あるいは強制帯電装置により逆電位を与える構成で行なうことができるが、強制帯電電位が、1〜150Hzで正負交互に変換される除電器により除電する構成とすることもできる。
また、上記の除電器に代えて、イオン風を発生させるイオナイザーや除電バーを利用することができる。ここで、イオナイザー除電は、エンボス加工装置から搬送ロールを経て巻き取られていくフィルムに向けてイオン風を吹き付けることによって行なわれる。イオン風は、除電器により発生される。除電器としては、公知のものを制限なく用いることができる。
製膜巻取り時の除電は、元巻を再繰出しして機能性膜塗工する際、帯電電位が±2KV以上あると塗布ムラを誘発するためであり、特に薄膜、高速化を追求した場合、再繰り出し時のフィルム剥離帯電が高くなるため、製膜時除電は必須となる。
[巻取り工程]
乾燥が終了したウェブ(10)を、フィルムとして巻取り装置(18)によって巻き取り、光学フィルムの元巻を得る工程である。乾燥を終了するフィルム14の残留溶媒量は、0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下とすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
フィルムの巻き取り方法は、一般に使用されているワインダーを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の張力をコントロールする方法があり、それらを使い分ければよい。
巻取りコア(巻芯)への、フィルムの接合は、両面接着テープでも、片面接着テープでもどちらでも良い。
初期巻取開始時は、巻取り張力は280N/m幅以下、エンボス部のみタッチロール巻取の押圧力+巻取初期張力が60N/m幅以上となるよう巻取るのが好ましい。
この巻取り条件範囲については、280N/m以上では、巻取時の張力、及びタッチロール押圧力によりエンボス部にかかる半径方向圧力が大きすぎ、前述の再繰り出し時のフィルム剥離帯電量が大きすぎるためであり、一方、60N/m以下では、巻取張力が弱すぎて、特に2000m以上の長尺巻取の際、仕上がった製品ロール輸送時に巻きずれたり、再繰り出し時の繰り出し張力により巻きずれたりするためである。
本発明においては、セルロースエステルフィルムの乾燥後の膜厚は、液晶表示装置の薄型化の観点から、仕上がりフィルムとして、20〜150μmの範囲が好ましい。ここで、乾燥後のフィルム膜厚とは、フィルム中の残留溶媒量が0.5重量%以下の状態のフィルムを言うものである。
ここで、巻き取り後のセルロースエステルフィルムの膜厚が薄過ぎると、例えば偏光板用保護フィルムとしての必要な強度が得られない場合がある。フィルムの膜厚が厚過ぎると、従来のセルロースエステルフィルムに対して薄膜化の優位性がなくなる。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、流延ダイの口金のスリット間隙、流延ダイの押し出し圧力、エンドレスベルトの速度等をコントロールするのがよい。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
溶液流延製膜法を通しての流延直後からの乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気で行なってもよい。ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことはもちろんである。
本発明において、セルロースエステルフィルムは、含水率としては0.1〜5%が好ましく、0.3〜4%がより好ましく、0.5〜2%であることがさらに好ましい。
本発明において、セルロースエステルフィルムは、透過率が90%以上であることが望ましく、さらに好ましくは92%以上であり、さらに好ましくは93%以上である。
また、本発明の方法により製造された光学フィルムは、3枚重ねた場合のヘイズが、0.3〜2.0であるもので、本発明の光学フィルムによれば、フィルムのヘイズが非常に低いものであり、透明性、平面性に優れた光学特性を有するものである。
ここで、光学フィルムのヘイズの測定は、例えば、JIS K6714に規定される方法に従って、ヘイズ・メーター(1001DP型、日本電色工業株式会社製)を用いて測定すれば、良い。
また、本発明による光学フィルムの製造方法で製造されたセルロースエステルフィルムの機械方向(MD方向)の引張弾性率が、1500MPa〜3500MPa、機械方向に垂直な方向(TD方向)の引張弾性率が、3000MPa〜4500MPaであるのが好ましく、フィルムのTD方向弾性率/MD方向弾性率の比が、1.40〜1.90であるのが好ましい。
ここで、光学フィルムのTD方向弾性率/MD方向弾性率の比が、1.40未満であれば、1650mmを超える幅のフィルムの巻取りでは中央部のたるみが大きくなり、巻き芯のフィルムの貼り付きが多くなるため、好ましくない。また、フィルムのTD方向弾性率/MD方向弾性率の比が、1.90を超えると、偏向板での過熱後のそりが生じたり、液晶パネルに組み込んだ際にバックライトの熱によりバックライト側と表面側の偏光板の寸法変化の挙動が大きく異なることにより、コーナーにムラが生じるので、好ましくない。
フィルムのMD方向、及びTD方向の引張弾性率の具体的な測定方法としては、例えばJIS K7217の方法が挙げられる。
すなわち、引っ張り試験器(ミネベア社製、TG−2KN)を用い、チャッキング圧:0.25MPa、標線間距離:100±10mmで、サンプルをセットし、引っ張り速度:100±10mm/分の速度で引っ張る。その結果、得られた引張応力−歪み曲線から、弾性率算出開始点を10N、終了点を30Nとし、その間に引いた接線を外挿し、弾性率を算出するものである。
本発明の光学フィルムでは、下記式で定義される面内リタデーション(Ro)が、温度23℃、湿度55%RHの条件下で30〜300nm、厚み方向リタデーション(Rt)が、温度23℃、湿度55%RHの条件下で70〜400nmであることが好ましい。
Ro=(nx−ny)×d
Rt={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、Roはフィルム面内リタデーション値、Rtはフィルム厚み方向リタデーション値、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率(屈折率は波長590nmで測定)、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。
なお、リタデーション値Ro、Rtは、自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて、温度23℃、湿度55%RHの環境下で、波長が590nmで求めることができる。
以上のようにして得られた幅手方向に延伸された熱可塑性樹脂フィルムは、延伸により分子が配向されて、一定の大きさのリタデーションを持つ。リタデーションのバラツキは小さいほど好ましく、通常15nm以内、好ましくは10nm以下、より好ましくは4nm以下である。
本発明の製造方法により製造された光学フィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、液晶表示装置の薄型化とフィルム強度の観点から、仕上がりフィルムとして10〜150μmの範囲に調整するのが好ましく、さらに20〜100μmの範囲の範囲に調整するのがより好ましく、特に25〜80μmの範囲の範囲に調整するのが好ましい。
本発明の製造方法により作製されたセルロ−スエステルフィルムをLCD用部材として使用する際、フィルムの光漏れを低減するために、高い平面性が要求されるが、光学フィルムの中心線平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601に規定されており、測定方法としては、例えば触針法もしくは光学的方法等が挙げられる。
本発明において、偏光板用保護フィルムは、本発明の製造方法により作製された光学フィルムよりなり、かつ不定形粒子を含む偏光散乱異方性を有するものである。
そして、本発明による偏光板用保護フィルムは、この光学フィルムよりなり、かつ少なくとも1種類以上の熱可塑性樹脂と、下記式で定義されるアスペクト比が2〜40の不定形粒子とを含む偏光散乱異方性を有する偏光板用保護フィルムであって、フィルム製造時のドープの流延方向に対し垂直な方向を0゜、およびドープの流延方向と平行な方向を90°としたとき、各々の不定形粒子の長軸方向のなす角度(配向角度)の平均値が60〜89.5°であるのが、好ましい。
アスペクト比=絶対最大長/対角幅
ここで、対角幅とは、絶対最大長に平行な2本の直線で投影された不定形粒子像を挟んだときの2直線間の最短距離を意味する。
ここで、不定形粒子のアスペクト比が2未満の場合は、あまり配向せず、結果として、偏光散乱異方性が弱く、十分な輝度向上効果を得ることができない。一方、不定形粒子のアスペクト比が40を超えると、不定形粒子を液に分散する際に受けるせん断や溶融物の送液時にポンプを通過するときに折れやすく、結果として、十分な輝度向上効果を得ることができない。
不定形粒子の平均配向角度が89.5゜を超える場合は、フィルムが長手方向に極端に裂けやすくなり、製造時にフィルムの端部をスリッティングするのが困難になってしまう。また、できたフィルムも、長手方向と幅手方向の機械強度や寸法安定性の差が大きく、液晶ディスプレーに加工した後の、環境変化で輝度ムラ故障が出やすい。
一方、不定形粒子の平均配向角度が、60゜未満である場合は、十分な輝度向上効果を得ることができない。
本発明は、少なくとも1種類以上の熱可塑性樹脂と、上記式で定義されるアスペクト比が2以上の不定形粒子とを含む偏光散乱異方性を有する偏光板用保護フィルムであって、かつ、偏光板用保護フィルムの製膜方向を90゜、およびフィルムの幅手方向を0°としたとき、各々の不定形粒子の平均配向角度を60〜89.5°にすることで、輝度が向上でき、生産性及び耐久性に優れた偏光板の保護フィルムの提供、及び、該偏光板用保護フィルムを用いた偏光板の提供、及び該偏光板を用いた液晶表示装置を提供できることを見出したものである。
本発明において、偏光板は、上記の本発明により製造された光学フィルムよりなる偏光板用保護フィルムを、少なくとも一方の面に有するものである。
そして、本発明において、液晶表示装置は、上記の偏光板を、液晶セルの少なくとも一方の面に有するものである。
つぎに、これらの偏光板、および該偏光板を用いた液晶表示装置について説明する。
偏光板は一般的な方法で作製することができる。アルカリ鹸化処理した本発明によるセルロ−スエステルフィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面にも本発明によるセルロ−スエステルフィルムを用いても、別の偏光板用保護フィルムを用いてもよい。本発明によるセルロ−スエステルフィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板用保護フィルムは市販のセルロースエステルフィルムを用いることができる。例えば、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2M、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UX−RHA−N(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)等が好ましく用いられる。あるいは、セルロースエステルフィルム以外の環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート等のフィルムをもう一方の面の偏光板用保護フィルムとして用いてもよい。この場合は、ケン化適性が低いため、適当な接着層を介して偏光板に接着加工することが好ましい。
偏光板は、本発明によるセルロ−スエステルフィルムを偏光子の少なくとも片側に偏光板用保護フィルムとして使用したものである。その際、該セルロ−スエステルフィルムの遅相軸が偏光子の吸収軸に実質的に平行または直交するように配置されていることが好ましい。
この偏光板が、横電界スイッチングモード型である液晶セルを挟んで配置される一方の偏光板として、本発明によるセルロースエステルフィルムが液晶表示セル側に配置されることが好ましい。
偏光板に好ましく用いられる偏光子としては、ポリビニルアルコール系偏光フィルムが挙げられ、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。ポリビニルアルコール系フィルムとしては、エチレンで変性された変性ポリビニルアルコール系フィルムが好ましく用いられる。偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行なったものが用いられている。
偏光子の膜厚は5〜40μm、好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。該偏光子の面上に、本発明によるセルロ−スエステルフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。また、セルロースエステルフィルム以外の樹脂フィルムの場合は、適当な粘着層を介して偏光板に接着加工することができる。
偏光子は一軸方向(通常は長手方向)に延伸されているため、偏光板を高温高湿の環境下に置くと、延伸方向(通常は長手方向)は縮み、延伸に対して直交する方向(通常は幅手方向)には伸びる。偏光板用保護フィルムの膜厚が薄くなるほど偏光板の伸縮率は大きくなり、特に偏光子の延伸方向の収縮量が大きい。通常、偏光子の延伸方向は偏光板用保護フィルムの流延方向(MD方向)と貼り合わせるため、偏光板用保護フィルムを薄膜化する場合は、特に流延方向の伸縮率を抑えることが重要である。本発明によるセルロ−スエステルフィルムは寸法安定に優れるため、このような偏光板用保護フィルムとして好適に使用される。
偏光板は、さらに該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
本発明により作製された光学フィルムを用いた液晶表示装置は、画面上にムラ等のない優れた品質を有する。
偏光子は一軸方向(通常は長手方向)に延伸されているため、偏光板を高温高湿の環境下に置くと延伸方向(通常は長手方向)は縮み、延伸に対して直交する方向(通常は幅手方向)には伸びる。偏光板用保護フィルムの膜厚が薄くなるほど偏光板の伸縮率は大きくなり、特に偏光子の延伸方向の収縮量が大きい。通常、偏光子の延伸方向は偏光板保護フィルムの流延方向(MD方向)と貼り合わせるため、偏光板用保護フィルムを薄膜化する場合は、特に流延方向の伸縮率を抑えることが重要である。本発明により作製されたセルロ−スエステルフィルムは寸法安定に優れるため、このような偏光板用保護フィルムとして好適に使用される。
偏光板は、さらに該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
(液晶表示装置)
本発明により作製された光学フィルムが用いられた偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。
ここで、液晶表示装置は、一般に、光反射板、バックライト、導光板、光拡散板に隣接して、偏光板すなわち偏光散乱異方性を有する偏光板保護フィルム/二色性物質による光吸収作用を利用した二色性偏光フィルム/偏光板保護フィルムの構成、及び液晶表示パネル、視認側偏光板の順に積層された構成をとることが好ましい。
本発明により作製された光学フィルムは、反射型、透過型、半透過型LCDあるいはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜けなどもなく、その効果が長期間維持され、MVA型液晶表示装置では顕著な効果が認められる。特に、色むら、ぎらつきや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
このように、本発明により作製された光学フィルムを用いた偏光板を、液晶セルの少なくとも一方の面に有する液晶表示装置は、表示品質が非常に優れているものである。
以下、実施例により、セルロースエステルの溶液製膜を例に取り、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例1
まず、本発明の溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法を用いた実施例について説明する。
[セルロースエステルフィルムの製造]
(ドープの調製)
セルローストリアセテートのドープを、以下のように調製した。
セルローストリアセテート 100重量部
(アセチル置換度2.88、数平均分子量15万)
トリフェニルホスフェート 10重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1重量部
AEROSIL 200V(日本アエロジル社製) 0.1重量部
針状TiO(石原産業社製、商品名FTL−100) 5重量部
メチレンクロライド 660重量部
エタノール 40重量部
上記の材料を、順次密閉容器中に投入し、釜内温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行なって、セルローストリアセテートを完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、液温を43℃まで下げた後、直ちに連結した配管を経て、濾過工程に送液し、絶対濾過精度0.005mmの濾紙を用い、濾過流量300L/m・時、濾圧1.0×10Paで濾過を行なった。
上記のように調製したドープを、図1に示す溶液流延製膜装置を用いて製膜した。すなわち、上記のドープを、温水を循環して30℃に保温した流延ダイ(1)を通して、ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体(11)上に流延した。流延時のドープ粘度は50ポイズであった。
ここで、流延ダイ(1)は、図3aと図3bに示すように、ドープ流入方向の上流から順に、ダイ入口部(2)、マニホールド部(3)、伸張部(4)、およびランド部(5)から成り立っている形状で、マニホールド部(3)に、ドープを攪拌する部位を有しており、これを流延ダイAとする。
そして、伸張部(4)の断面形状が下式(I)を、ランド部(5)の断面形状が下式(II)を、それぞれ満足するものである。
A1≦A2…(I)
上記式中、A1とA2は、伸張部(4)の任意の位置P1と、これよりドープ流れ方向の上流側の位置P2における断面積をそれぞれ表わす。
A3=A4…(II)
上記式中、A3とA4は、ランド部(5)の相互に異なる任意の位置P3、P4における断面積を表わす。
流延ダイAのマニホールド部(3)は、攪拌する機能を有する部位を備えており、この実施例では、図3に示すように、攪拌する機能を有するスクリュー(6)を用いて外力により攪拌した。また、スクリュー(6)のプロペラの回転数は、1000rpmであり、攪拌する機能を有する部位すなわちスクリュー(6)は、マニホールド部(3)の全体積の30%を占めるように設置した。
ここで、流延ダイAの細い配管からマニホールド部(3)に流れてきたドープ中の不定形粒子は、一旦、ドープの流れに対し垂直方向を向くが、ドープを攪拌することにより無配向状態に戻る。無配向状態の不定形粒子は、伸張部(4)でドープの流れ方向と平行に配向する。
本発明の伸張部(4)の形状としては、ドープの流動方向に垂直な面の断面積が、流動方向下流になるに従い、狭くなる形状である。すなわち、伸張部(4)の形状が入口から出口まで左右幅が一定で、厚さ(前後幅)が徐々に狭くなる形である。伸張部(4)の断面の形状は矩形である。
流延ダイAに伸張部(4)を設けることにより、光学的異方性を有するドメインが同一方向に配向し、これによって、充分な輝度向上効果を得ることができる。
なお、本発明の方法において、流延ダイAのランド部(5)の長さ(上下方向の高さ)は、100mmとし、一定の断面積の部位を有するものとした。また、ランド部(5)の厚さ(前後方向の幅)は、1.0mmとし、ランド部(5)の出口幅(左右方向の幅)は、1500mmとした。
流延ダイAの入口部(2)の断面積は77mm であるのに対し、流延ダイAの出口部〔ランド部(5)出口〕の断面積は、77mm であり、ダイ入口部の断面積/ダイ出口部の断面積の比を、1とした。
また、流延ダイAの伸張部(4)入口の断面積は7700mm であるのに対し、伸張部(4)出口の断面積は77mm2であり、従って、伸張部入口/伸張部出口の断面積比(伸張比)は、100とした。
そして、ウェブ(10)中の残留溶媒量が100重量%になるまで支持体(11)上で乾燥させた後、剥離ロール(16)によりウェブ(10)を支持体(11)から剥離した。
ついで、ウェブ(10)を、千鳥状に配置した搬送ロール(17)を具備する初期乾燥装置(13)で120℃の乾燥風(23)にて乾燥させ、続いてテンター(14)に導入して、ウェブ(10)両端をクリップではさみ、幅を保持したまま105℃の乾燥風(24)を当てて乾燥させ、さらに千鳥状に配置した搬送ロール(17)を具備する後乾燥装置(15)で100℃の乾燥風(25)にて乾燥させ、巻取り機(18)によりセルローストリアセテートフィルムを巻き取り、最終的に厚さ80μmのセルローストリアセテートフィルム(20)を作製した。なお、上記の全工程を通じて、ウェブ(10)およびフィルムの搬送張力は180N/幅mとなるように、エンドレスベルトよりなる支持体(11)の搬送速度、及び巻取り機(18)の巻取り速度を適宜調整した。
実施例2〜4
実施例1の場合と同様に実施するが、実施例1で使用した流延ダイAを、各種の流延ダイB〜Dに変更した以外は、実施例1の場合と同様にして製膜を行ない、セルローストリアセテートフィルムを作製した。
ここで、流延ダイBは、ダイ入口部(2)の断面積は77mm であるのに対し、流延ダイBの出口部〔ランド部(5)出口〕の断面積は、154mm であり、ダイ入口部の断面積/ダイ出口部の断面積の比を、0.5とした。なお、流延ダイBの伸張比は、実施例1の場合と同様に、100とした。
また、流延ダイCは、ダイ入口部(2)の断面積は77mm であるのに対し、流延ダイCの出口部〔ランド部(5)出口〕の断面積は、154mm であり、ダイ入口部の断面積/ダイ出口部の断面積の比を、0.5とした。
また、流延ダイCの伸張部(4)入口の断面積は154mm であるのに対し、伸張部(4)出口の断面積は154mm であり、従って、伸張部入口/伸張部出口の断面積比(伸張比)は、1とした。
さらに、流延ダイDは、ダイ入口部(2)の断面積は77mm であるのに対し、流延ダイDの出口部〔ランド部(5)出口〕の断面積は、154mm であり、ダイ入口部の断面積/ダイ出口部の断面積の比を、0.5とした。
また、流延ダイDの伸張部(4)入口の断面積は46200mm であるのに対し、伸張部(4)出口の断面積は154mm であり、従って、伸張部入口/伸張部出口の断面積比(伸張比)は、300とした。
なお、流延ダイB〜Dにおいて、マニホールド部(3)に、攪拌する機能を有するスクリュー(6)を用いて外力により攪拌し、スクリュー(6)のプロペラの回転数を1000rpmとし、攪拌する機能を有する部位すなわちスクリュー(6)は、マニホールド部(3)の全体積の30%を占めるように設置した点などその他の点は、上記実施例1の場合と同様であり、これらの流延ダイB〜Dを用いて製膜を行ない、セルローストリアセテートフィルムを作製した。
実施例5
実施例2の場合と同様に実施するが、実施例2の場合と異なる点は、流延ダイEのマニホールド部(3)の攪拌する機能を有する部位に、図4に示すように、邪魔板(7)を上下3段に、かつ側面よりみて千鳥状配置に設置した点にある。
用いた邪魔板(7)は、ステンレス鋼製の平板であり、邪魔板(7)を、各段あたり、マニホールド部(3)の横断面積(水平断面積)の20〜40%を占めるように設置した。
このように、流延ダイEのマニホールド部(3)内の攪拌する機能を有する部位において、邪魔板(7)を設置すると、流延ダイ入口部(2)よりマニホールド部(3)内に流入したドープは、邪魔板(7)に当たることにより、渦流が発生し、ドープに乱流が生じて、ドープが充分に攪拌される。このように、ドープを攪拌することにより、流延ダイEの細い配管からマニホールド部(3)に流れてきたドープの流れに対し垂直方向を向いていた不定形粒子が、無配向状態に戻る。こうして、無配向状態の不定形粒子は、その後の伸張部(4)でドープの流れ方向と平行に配向するものである。
こ実施例5のその他の点は、実施例2の場合と同様にして製膜を行ない、セルローストリアセテートフィルムを作製した。
実施例6〜9
実施例2の場合と同様に実施するが、実施例2で使用した流延ダイBを、各種の流延ダイF〜Iに変更した以外は、実施例2の場合と同様にして製膜を行ない、セルローストリアセテートフィルムを作製した。
ここで、実施例2で使用した流延ダイBは、ランド部の長さが100mmであるのに対し、実施例6の流延ダイFのランド部(5)の長さが40mm、実施例7の流延ダイGのランド部(5)の長さが200mm、実施例8の流延ダイHのランド部(5)の長さが10mm、および実施例9の流延ダイIのランド部(5)の長さが300mmである。
なお、流延ダイF〜Iにおいて、マニホールド部(3)に、攪拌する機能を有するスクリュー(6)を用いて外力により攪拌し、スクリュー(6)のプロペラの回転数を1000rpmとし、攪拌する機能を有する部位すなわちスクリュー(6)は、マニホールド部(3)の全体積の30%を占めるように設置した点などその他の点は、実施例2の場合と同様であり、これらの流延ダイF〜Iを用いて製膜を行ない、セルローストリアセテートフィルムを作製した。
比較例1〜3
比較のために、実施例1の場合と同様に実施するが、流延ダイAを、流延ダイJ〜Lに変更した以外は、実施例1の場合と同様にして製膜を行ない、セルローストリアセテートフィルムを作製した。
ここで、比較例1の流延ダイJと比較例2の流延ダイKでは、マニホールド部に、攪拌手段としてのスクリューや邪魔板を設置しなかった。また、比較例1では、ダイ入口部の断面積/ダイ出口部の断面積の比を、2.0としたのに対し、比較例2では、ダイ入口部の断面積/ダイ出口部の断面積の比を、0.5とした。 比較例3の流延ダイLでは、マニホールド部に、実施例1の場合と同様に、攪拌手段としてのスクリューを備えているが、ダイ入口部の断面積/ダイ出口部の断面積の比を、0.5とするとともに、流延ダイLの伸張比を、0.5とした。
これらの比較例1〜3のその他の点は、上記実施例1の場合と同様であり、これらの流延ダイJ〜Lを用いて製膜を行ない、セルローストリアセテートフィルムを作製した。
<不定形粒子の平均配向角度の測定>
上記実施例1〜9および比較例1〜3で作製したセルローストリアセテートフィルムの表面付近をミクロトームを使って数100nm程度の厚みの薄い切片を取り出し、これを透過型電子顕微鏡で2万倍で撮影し、その画像をフラットベットスキャナを用いて、300dpiのモノクロ256階調で読み込み、読み込んだ画像はパソコンにインストールした画像処理ソフトWinROOF(三谷商事株式会社製)に取り込む。取り込んだ画像についてドメインの画像抽出を行ない、不定形粒子の画像抽出後の画面で300個以上の不定形粒子があることを確認し、もし抽出が十分でない場合は検出レベルの手動調整を行ない、300個以上の不定形粒子が検出、抽出されるよう調整を行なう。このようにして抽出処理した画像データの各々の不定形粒子について、長軸径/短軸径(長軸方向長さ/短軸方向長さ)の測定を行ない、不定形粒子個数平均のアスペクト比を算出した。また、偏光板用保護フィルムの製膜方向と不定形粒子の長軸方向とのなす角度を配向角度とした時に、該配向角度の絶対値の平均値は透過型電子顕微鏡を用い、フィルム切片の製膜方向の位置決めを行なった後、この軸と各不定形粒子300個程度との各々の角度を測定、これらの合計を個数平均して求めた。得られた結果を下記の表1に示した。
ここで、平均配向角度において、0度は、樹脂溶液の流延方向に対し、垂直な方向を表わし、90度は、樹脂溶液の流延方向に対し、平行な方向を表わす。
<表示画面、画像の外観評価>
作製したセルローストリアセテートフィルムを用いて、下記の方法で偏光板を作製し、それをパネルに貼り付けて見た目の外観評価を行なった。
(偏光板の作製)
厚さ50μmのポリビニルアルコールフィルムを製膜方向に一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム6g、水100gの比率からなる水溶液に60秒間浸漬し、ついでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gの比率からなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。この偏光子は吸収軸が製膜方向にあった。
ついで、下記の第1程1〜第5工程に従って偏光板を作製した。
第1工程:偏光板用保護フィルムとして、実施例および比較例で作製した前記作製したセルローストリアセテートフィルムを60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、ついで水洗、乾燥して偏光子と貼合する側をケン化した。
同様に、反対側の偏光板用保護フィルムとして、市販のセルローストリアセテートフィルムKC8UCR−5(コニカミノルタオプト株式会社製:位相差フィルム)のケン化も行なった。
第2工程:前記偏光子を固形分2重量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
第3工程:第2工程で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、該偏光子を、第1工程で処理した偏光板用保護フィルムとして輝度向上セルローストリアセテートフィルムの鹸化した面上にのせ、さらに反対側の偏光板用保護フィルムとして、第1工程で処理した市販のセルローストリアセテート(TAC)フィルムKC8UCR−5の鹸化した面が、偏光子に接するようにして積層し、偏光板とした。
第4工程:第3工程でセルローストリアセテートフィルム及びセルローストリアセテート(TAC)フィルムと、偏光子とを積層した偏光板を、圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に第4工程で作製した偏光板を2分間乾燥した。
<偏光板の評価>
上記のようにして作製した偏光板を用いて、以下の評価を実施した。
(液晶表示装置の作製)
視認性評価を行なう液晶パネルを以下のようにして作製した。
富士通製15型液晶ディスプレイVL−1530Sの予め貼合されていたバックライト側の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板をそれぞれ液晶セルのガラス面に貼合した。
その際、偏光板の貼合の向きは、該偏光板のセルローストリアセテートフィルムの面が、バックライト側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行ない、液晶表示装置を各々作製した。
(輝度向上効果の評価)
作製した液晶表示装置の正面輝度を、目視により評価した。評価は、下記の×〜◎の4段階で評価を行なった。
◎:非常に高い輝度向上効果あり
○:輝度向上効果あり
△:やや輝度向上効果あり
×:輝度向上効果なし
Figure 2009083343
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜9で作製したセルローストリアセテートフィルム中の不定形粒子(光学的異方性を有するドメインに相当する)の配向度を高めることができて、光学フィルムの輝度向上効果等の光学特性や強度を高めることができ、本発明の実施例1〜9で作製したセルローストリアセテートフィルムは、偏光板保護フィルムに適しているものであった。
これに対し、比較例1〜3で作製したセルローストリアセテートフィルムでは、不定形粒子の配向度を高めることができず、光学フィルムの輝度向上効果が不充分なものであり、偏光板保護フィルムに適さないものであった。
本発明の溶液流延製膜方法による光学フィルムの製造方法を実施する装置の例を示す概略縦断面図である。 本発明の溶液流延製膜方法による光学フィルムの製造方法を実施する装置のいま1つの例を示す概略縦断面図である。 本発明の光学フィルムの製造方法に使用する流延ダイの1つの例を示すもので、図3aは部分切欠き拡大正面図、図3bは同部分切欠き拡大側面図である。 本発明の光学フィルムの製造方法に使用する流延ダイのいま1つの例を示すもので、図4aは、部分切欠き拡大正面図、図4bは、同部分切欠き拡大側面図、図4cは、同流延ダイ内部の邪魔板部分の拡大斜視図である。
符号の説明
1:流延ダイ
2:入口部
3:マニホールド部
4:伸張部
5:ランド部
6:スクリュー
7:邪魔板
10:ウェブ
11:エンドレスベルト支持体
12:流延ダイ
13:ロール搬送初期乾燥装置
14:テンター乾燥装置
15:ロール搬送後乾燥装置
16:剥離ロール
17:ガイドロール(搬送ロール)
18:巻取り機
20:フィルム

Claims (9)

  1. 熱可塑性樹脂と、有機溶媒と、不定形粒子とを含むドープ(樹脂溶液)を、流延ダイから支持体上に流延して、樹脂フィルムを製膜する光学フィルムの製造方法において、流延ダイが、ドープ流入方向の上流から順に、ダイ入口部、マニホールド部、伸張部、およびランド部から成り立っている形状で、マニホールド部にドープを攪拌する部位を有し、かつ伸張部の断面形状が下式(I)を、ランド部の断面形状が下式(II)を、それぞれ満足するものであることを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
    A1≦A2…(I)
    上記式中、A1とA2は、伸張部の任意の位置P1と、これよりドープ流れ方向の上流側の位置P2における断面積をそれぞれ表わす。
    A3=A4…(II)
    上記式中、A3とA4は、ランド部の相互に異なる任意の位置P3、P4における断面積を表わす。
  2. ランド部の長さが、40〜200mmであることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. マニホールド部のドープを攪拌する部位の攪拌手段が、スクリューであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. マニホールド部のドープを攪拌する部位の攪拌手段が、邪魔板であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. ダイ入口部の断面積が、ダイ出口部(ランド部出口)の断面積より狭いことを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 請求項1〜5の光学フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする、光学フィルム。
  7. 請求項6に記載の光学フィルムよりなり、かつ不定形粒子を含む偏光散乱異方性を有する偏光板用保護フィルムであって、フィルム製造時のドープの流延方向に対し垂直な方向を0゜、およびドープの流延方向と平行な方向を90°としたとき、各々の不定形粒子の長軸方向のなす角度(配向角度)の平均値が、60〜89.5°であることを特徴とする、偏光板用保護フィルム。
  8. 請求項7に記載の偏光板用保護フィルムを、少なくとも一方の面に有することを特徴とする、偏光板。
  9. 請求項8に記載の偏光板を、液晶セルの少なくとも一方の面に有することを特徴とする、液晶表示装置。
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