JP5157032B2 - セルロースエステルフィルム、その製造方法、光学補償フィルム、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースエステルフィルム、その製造方法、光学補償フィルム、偏光板及び液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の液晶ディスプレイの用途は広がる一方で、ラップトップ型コンピューターのSTN液晶ディスプレイやTFT液晶ディスプレイにとどまらず、モバイル性を生かしたゲーム機や情報携帯端末にも使用されている。なかでも液晶テレビとしての需要が、省スペース性という観点から特に注目されている。
【0003】
液晶ディスプレイは大型化が進むほど、視野角特性の高度な改善が求められる。それゆえ、従来より高度でかつ安価な視野角補償性能を有する光学補償フィルムが要望されてきている。
【0004】
TFT−TN液晶ディスプレイの視野角補償として、特開平7−191217号に開示されているように、ディスコチック液晶のフィルムを液晶セルの上面と下面に配置して、液晶セルの視野角特性を改善する試みがなされている。また、正の光学異方性を有するネマティック型高分子液晶性化合物を深さ方向に液晶分子のプレチルト角が変化するハイブリッド配向をさせたものや、正の光学異方性を有するネマティック型液晶性化合物を支持体上に2層構成にして各々の層の配向方向を略90°とすることにより、視野角改善する方法が試みられている。
【0005】
これらの方式の場合は、光学補償能を得るためには実質的には必ず液晶パネルのそれぞれ両面に配置しなければならず、簡便とされる光学補償フィルムによる視野角改善の方式においても非常にコスト高となる問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、1枚で高い視野角拡大効果を達成する光学補償フィルム、それに用いる優れた光学特性を有するセルロースエステルフィルム、その製造方法、偏光板及び液晶表示装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成1〜12により達成された。
【0008】
1.フィルムの面内方向の下記一般式(a)で表される、リターデーション(R0)と下記一般式(b)で表される、厚み方向のリターデーション(Rt)との関係が下記式(1)、(2)を満たし、且つ、nx>ny>nzを満たしているセルロースエステルフィルムであり、該セルロースエステルフィルムが、アシル基の置換度または置換基の異なるセルロースエステルを2種類以上含有し、且つ、総置換度が2.50以上2.90以下のセルロースエステルのうち、総置換度の差が0.02以上あるセルロースエステルを2種類以上含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
式(1) 0.8≦R t /R 0 ≦2.5
式(2) 41nm≦R 0 ≦95nm
一般式(a):R 0 =(nx−ny)×d
一般式(b):R t =((nx+ny)/2−nz)×d
〔式中、nxはフィルム面内遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの膜厚(nm)である。〕
【0011】
2.フィルムの面内方向の下記一般式(a)で表される、リターデーション(R 0 )と下記一般式(b)で表される、厚み方向のリターデーション(R t )との関係が下記式(1)、(2)を満たし、
且つ、nx>ny>nzを満たしているセルロースエステルフィルムであり、該セルロースエステルフィルムが、アシル基の置換度または置換基の異なるセルロースエステルを2種類以上含有し、且つ、総置換度が2.70以上3.00以下であるセルロースエステルAと、総置換度が2.40以上2.70未満のセルロースエステルBを混合したことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
式(1) 0.8≦R t /R 0 ≦2.5
式(2) 41nm≦R 0 ≦95nm
一般式(a):R 0 =(nx−ny)×d
一般式(b):R t =((nx+ny)/2−nz)×d
〔式中、nxはフィルム面内遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの膜厚(nm)である。〕
【0012】
3.フィルムの面内方向の下記一般式(a)で表される、リターデーション(R 0 )と下記一般式(b)で表される、厚み方向のリターデーション(R t )との関係が下記式(1)、(2)を満たし、
且つ、nx>ny>nzを満たしているセルロースエステルフィルムであり、該セルロースエステルフィルムが、アシル基の置換度または置換基の異なるセルロースエステルを2種類以上含有し、且つ、アセチル置換度が2.50から2.90のセルロースアセテートと、アセチル置換度をA、プロピオニル置換度をBとした場合、下記式(4)及び(5)を満たすセルロースアセテートプロピオネートとを各々有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
式(1) 0.8≦R t /R 0 ≦2.5
式(2) 41nm≦R 0 ≦95nm
一般式(a):R 0 =(nx−ny)×d
一般式(b):R t =((nx+ny)/2−nz)×d
式(4) 2.50≦(A+B)≦2.90
式(5) 1.40≦A≦2.30
〔式中、nxはフィルム面内遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの膜厚(nm)である。〕
【0013】
4.セルロースエステルフィルム全体のうち、セルロースアセテートプロピオネートの含有量が質量比で60%以上含有されていることを特徴とする前記3に記載のセルロースエステルフィルム。
【0014】
5.フィルムの面内方向の下記一般式(a)で表される、リターデーション(R0)と下記一般式(b)で表される、厚み方向のリターデーション(Rt)との関係が下記式(1)、(2)を満たし、
且つ、nx>ny>nzを満たしているセルロースエステルフィルムであり、該セルロースエステルフィルムが、アシル基の置換度または置換基の異なるセルロースエステルを2種類以上含有し、且つ、置換度の異なる2種類以上のセルロースアセテートプロピオネートを含有し、且つ、前記セルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度をA、プロピオニル置換度をBとした場合、これらが、下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
式(1) 0.8≦Rt/R0≦2.5
式(2) 41nm≦R0≦95nm
一般式(a):R0=(nx−ny)×d
一般式(b):Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
式(4) 2.50≦(A+B)≦2.90
式(5) 1.40≦A≦2.30
〔式中、nxはフィルム面内遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの膜厚(nm)である。〕
【0015】
6.前記1〜5のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムを作製するに当たり、溶媒を含む樹脂溶液を支持体上で流延製膜してウェブを形成し、該ウェブを該支持体から剥離、乾燥させて、前記ウェブ中の残留溶媒量を100質量%未満の状態にし、次いで、前記ウェブの温度を110℃〜160℃の範囲に保ちながら、延伸する工程を有することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0016】
7.各々、異なる置換基または置換度の異なるセルロースエステルを含有する2種類以上の溶液を、流延直前にてインラインミキサーで混合し、セルロースエステルドープを作製し、流延製膜法で製膜することを特徴とする前記6に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0017】
8.各々、異なる置換基または置換度の異なるセルロースエステルを含有する2種類以上の溶液を、同時あるいは逐次、支持体上に流延して製膜することを特徴とする前記6に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0018】
9.前記6〜8のいずれか1項に記載の製造方法を用いて作製されたことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0019】
10.前記1、3〜5、9のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムと、該セルロースエステルフィルム上に直接または、別の層を介して液晶性化合物の配向が固定化された光学異方層を有することを特徴とする光学補償フィルム。
【0020】
11.前記10に記載の光学補償フィルムを有することを特徴とする偏光板。
12.前記11に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者等は、上記の問題点を種々検討した結果、本発明のセルロースエステルフィルム、具体的には、置換度や置換基の異なるセルロースエステルを混合することにより、フィルムの面内方向のリターデーション値と厚み方向のリターデーション値等の光学特性が最適化された二軸性光学フィルムが得られることを見いだし、更に、幅手の位置による屈折率のばらつきを小さく出来る光学補償フィルム、これを用いた偏光板、及び、この偏光板を用いることにより、高い視野角改善効果を示す液晶表示装置を提供することが可能になった。
【0022】
また、光学補償フィルム1枚で高い視野角改善効果が得られるので、液晶パネル作製時の歩留まり性が大幅に向上し、コスト的にも非常にメリットが大きいことが判った。
【0023】
本発明のセルロースエステルフィルムについて説明する。
本発明のセルロースエステルフィルムの光学特性としては、フィルムの面内方向のリターデーション値(R0)が41nm〜300nmであることが必要であるが、好ましくは、41nm〜95nmであることが好ましい。
【0024】
本発明においては、更に、厚さ方向のリターデーション値(Rt)とR0の比(Rt/R0)が0.8〜2.5の範囲にあることが必要であり、且つ、nx>ny>nzである条件とが同時に満たされる時、優れた光学特性を有する本発明のセルロースエステルフィルムが得られ、それを用いた光学補償フィルムを有する液晶パネルの視野角拡大効果が発揮される。
【0025】
また、本発明のセルロースエステルフィルムのRt/R0値が1.4を超える場合には、光学異方層をはさんで本発明のセルロースエステルフィルムが接する面とは反対の面に隣接する、いわゆる偏光板保護用フィルムの光学特性については、Rtを60nm以下にすることにより視野角特性の改善効果が大きいことが明らかになった。
【0026】
本発明のセルロースエステルフィルムのRt/R0値が1.4以下である場合は、偏光板保護フィルムの光学特性の影響を受けずに視野角改善効果が得られる。
【0027】
また、このRt/R0値は、同じ置換度を有するセルロースエステルを使用してもロット間でばらつきが出ることがある。その問題を回避するためには本発明のように、製膜直後のリターデーション値を測定しRt/R0値が目的とする設定値からはずれている場合は、別の置換度を有したセルロースエステルを溶解したドープをインライン添加法などによって混合し、最適の光学特性になるように調節できるので、安定で、且つ、高品質なセルロースエステルフィルムを製造することが出来る。
【0028】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法については、詳細は後述するが、生産性の観点から好ましい製造方法は、セルロースエステル溶液(ドープ)を支持体(例えば、ベルトまたはドラム等が用いられる)上で流延製膜して、ウェブを形成し、溶媒が残存した状態で支持体(ベルトまたはドラム)からウェブを剥離し、その後乾燥しながら延伸して、セルロースエステルフィルムを得る態様である。
【0029】
nxはセルロースエステルフィルムの面内での最大屈折率方向であるx方向の屈折率、nyはx方向に面内で直角方向であるy方向の屈折率である。nzは厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)を表す。
【0030】
セルロースエステルフィルムの全体の屈折率の測定は、通常の屈折率計を用いることができる。全体の屈折率を測定した後、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率nx、ny、nzを算出し、かつフィルムの厚さを測定してリターデーションR0、Rtを求める。
【0031】
本発明に係る、光学的に二軸性を有するセルロースエステルは、通常セルロースエステルを流延により製造する過程で一定の方向に張力を付与することにより得ることができる。例えば、セルロースエステルフィルムを流延後に残留溶媒が存在する条件下で延伸などの操作を行うことが特に効果的である。本発明のように実質的に巾方向に延伸する場合、巾手で屈折率に分布が生じる場合がある。これは、特にテンター法を用いた場合にみられることがあるが、巾方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、いわゆるボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。本発明では複数のセルロースエステルを混合して用いることにより、目的のRt/R0値を達成すると同時に、上記のボーイング現象をも抑制することが出来る。
【0032】
本発明のセルロースエステルフィルムに使用するセルロースエステルは、綿花リンター、木材パルプ及びケナフ等由来のセルロースを用い、それらに無水酢酸、無水プロピオン酸、または無水酪酸を常法により反応して得られるもので、セルロースの水酸基に対するアシル基の総置換度が2.40〜3.00のものが好ましく用いられる。また、アシル基の置換基には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などが挙げられ、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びセルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートフタレートが好ましく用いられる。本発明においてはこれらの範囲に含まれるセルロースエステルを2種類以上混合して使用することが、本発明の目的を達成するうえで好ましい。
【0033】
請求項1に記載の、前記式(1)、式(2)に記載のような光学特性を示すセルロースエステルフィルムを得るためには、一つの方法としては、総置換度が2.50から2.90の範囲にあるセルロースエステルを2種類以上混合する。また別の方法としては、総置換度が2.40から2.70の範囲のものと、2.70から3.00の範囲のセルロースエステルを混合する方法がある。
【0034】
もう一つの方法としては、総置換度が2.50から2.90のセルロースエステルと、アセチル基とプロピオニル基の合計の置換度が2.50から2.90であり、そのうちアセチル置換度が1.40から2.30の範囲にあるセルロースアセテートプロピオネートを含むセルロースエステルフィルムの混合、さらにもう一つの方法は置換度の異なる2種類以上のセルロースアセテートプロピオネートを、アセチル基とプロピオニル基の合計の置換度が2.50から2.90、そのうちアセチル置換度が1.40から2.30の範囲になるように混合することによって得られる。
【0035】
添加比率は、総置換度が低い方のセルロースエステルが5質量%から95質量%の範囲であることが好ましく、膜強度やインライン添加時のドープ混合性の観点から、50質量%以上100質量%未満、さらには70質量%以上100質量%未満であることがより好ましい。
【0036】
セルロースアセテートプロピオネートを含有させる場合、セルロースアセテートプロピオネートの含有量が60質量%以上100質量%以下が好ましく、さらに80質量%以上100質量%以下がより目的の光学特性を得る上で好ましい。
【0037】
ここで、本発明に係るセルロースエステルの総置換度(アシル基の置換度ともいう)について説明する。
【0038】
本発明に係るセルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−96に準じて実施することが出来る。これらのセルロースエステルの分子量は数平均分子量として、50,000〜300,000の範囲が、フィルムに成形した場合の機械的強度が強く好ましい。更に、70,000〜200,000が好ましい。通常、セルロースエステルは反応後の水洗等処理後において、フレーク状となり、その形状で使用されるが、粒子サイズは粒径を0.05〜2.0mmの範囲とすることにより溶解性を早めることが出来好ましい。また、粒子サイズが小さい場合は、生産上の取り扱い性が悪くなるため、その目的のために造粒工程を経ても良い。
【0039】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法を説明する。
セルロースエステルフィルムの製造方法としては、ドープ液を支持体上に流延、製膜し、得られたフィルムを支持体から剥ぎ取り、その後、張力をかけて乾燥ゾーン中を搬送させながら乾燥する、溶液流延製膜法が好ましい。更に好ましくは、各々、異なる置換基または置換度の異なるセルロースエステルを含有する2種類以上の溶液を、流延直前にてインラインミキサーで混合し、セルロースエステルドープを作製し、流延製膜法で製膜することが好ましい。ここで、流延直前とは、ドープ液の調製〜塗布までの時間が1時間以内であることであるが、好ましくは、30分以内である。
【0040】
下記に溶液流延製膜法について述べる。
(1)溶解工程:セルロースエステルのフレークに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該フレークを攪拌しながら溶解し、セルロースエステル溶液(ドープ)を形成する工程である。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、J.M.G.Cowie等によるMakromol.chem.143巻、105頁(1971)に記載されたような、又特開平9−95544号及び同9−95557号公報に記載された様な低温で溶解する冷却溶解法、高圧で行う方法等種々の溶解方法がある。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。
【0041】
(2)流延工程:ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に移送する無端の金属ベルトあるいは回転する金属ドラムの流延用支持体(以降、単に支持体ということもある)上に加圧ダイからドープを流延する工程である。流延用支持体の表面は鏡面となっている。その他の流延方法としては流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調製出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために加圧ダイを流延用支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。
【0042】
(3)溶媒蒸発工程:ウェブ(流延用支持体上にドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)を流延用支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。
【0043】
(4)剥離工程:支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
【0044】
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることができる)として、残留溶媒が多くとも剥離出来るゲル流延法(ゲルキャスティング)がある(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)。それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来るのである。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで剥離残留溶媒量を決められる。
【0045】
(5)乾燥工程:ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置及び/またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いてウェブを乾燥する工程である。乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通して、通常乾燥温度は40〜250℃で、70〜180℃が好ましい。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。
【0046】
流延用支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは巾方向に収縮しようとする。高温度で急激に乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この観点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を巾方向にクリップでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式)が好ましい。
【0047】
(6)巻き取り工程:ウェブを残留溶媒量が質量で2%以下となってからフィルムとして巻き取る工程である。残留溶媒量を0.4%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることが出来る。巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0048】
セルロースエステルフィルムの膜厚の調節には所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度をコントロールするのがよい。又、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【0049】
溶液流延製膜法を通しての流延直後からの乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことは勿論のことである。
【0050】
本発明の光学補償フィルムの配置形態としては、駆動用液晶セルのガラス基板又はプラスチック基板と偏光子の間であればTN型TFT液晶装置に様々な形態で配置して使用することが可能である。
【0051】
本発明の光学異方体は当該液晶パネルの両面の各々の偏光子とセルのガラス基板またはプラスチック基板の間に配置され、透過型パネルの場合における入射光側または出射光側のいずれの側にも配置することができる。または片面に同様に光学補償フィルムを1枚または2枚以上に配置しても差し支えはない。
【0052】
また、本発明の目的をより効果的に発現させる光学補償フィルムの配置方法は、前記駆動用液晶セルに最も近い面に前記光学補償フィルムの透明支持体面が接触する方向に配置し、かつ光学補償フィルムのセルロースエステルフィルムの最大屈折率方向が光学異方層の面内最大屈折率方向に実質的に直交した方向が好ましい。実質的に直交とは、当該各々の基準方向とのなす角が80°から100°の範囲であり、好ましくは87°以上93°以下、さらに好ましくは89°以上91°以下であるが、本質的に90°であることが好ましい。
【0053】
本発明において、延伸時のフィルム中の残留溶媒量は少なすぎると延伸が出来ず破断するおそれがあり、逆に多すぎた場合所望の位相差を得るためには非常に大きな延伸倍率を必要とし、特別な装置が必要となることがある。そういったことから、本発明における残留溶媒量は90質量%未満であることが好ましい。
【0054】
本発明に係る溶液流延製膜により作製したセルロースエステルは、加熱して延伸することが好ましい。しかし、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、室温(15℃)〜160℃以下の範囲が好ましい。本発明においてはフィルムの温度を110℃から160℃の範囲で延伸することがフィルム巾手の光学特性分布を均一化でき、さらに好ましい。
【0055】
ここで、残留溶媒量は下記の式で求める。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0056】
ウェブを延伸する方法は特に限定しないが、例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法や、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を横方向に広げて横方向に延伸する方法、いわゆるテンター法が使用できる。本発明においては、テンター法を用いて、最終的に流延の巾手方向の屈折率が面内で最大となるように延伸することが、光学補償フィルムを作製する上で都合が良く好ましい。
【0057】
巾方向の延伸倍率は、本発明の目的を達するためには制限はないが、より発明の効果を発揮するのは、1.05倍〜2.0倍が好ましく、さらに好ましいのは、1.1倍〜1.5倍である。
【0058】
以上のようにして得られたフィルムは、最終仕上がりフィルムの残留溶媒量で2質量%以下、さらに0.4質量%以下であることが、寸度安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。
【0059】
延伸処理を行ったフィルムは、内部に応力が残留し高湿雰囲気下で寸法変化が起きることがある。これをそのまま偏光板などに貼合すると経時での剥離が問題となる。本発明ではこの剥離を起こさせないために、セルロースエステルフィルムに対してあらかじめいくつかの処理を施すことが有用である。
【0060】
一つの方法として、製膜後乾燥し、巻き取ったロール状フィルムを高湿状態で保存する方法、あるいは高湿状態でもう一つのコアに巻き直す方法さらにそれらを組み合わせる方法などが挙げられる。この場合、フィルムの収縮によって生産直後の光学特性からは変化が起きるため、巻き取り張力や環境温度を最適化する必要がある。巻き取り張力は巻き取ったフィルムの平面性が保たれる範囲であれば特に制限はないが、強すぎる場合は搬送方向へのフィルムののびが発生してしまい、一方弱い場合は巻きずれが生じるため、200N/m以下が好ましい。温度は、フィルムのガラス転移温度以下であることが好ましいが、フィルム内部応力を緩和させるにはできるだけ高い温度であるほうが処理時間が短く良い。そういった点から、温度は25℃から100℃の範囲で実施することが好ましい。
【0061】
別の方法として、フィルム生産の工程内の乾燥ゾーンに、前後のロール周速差を設け、かつ該ロール間のロールスパンを通常よりも広くしたゾーンを設けることによっても同様な効果が得られる。
【0062】
セルロースエステルを溶解してドープを形成する溶媒としては、例えば、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、シクロヘキサノン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール等を挙げることができる。
【0063】
特にメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましく用いられる。特に酢酸メチルが全有機溶媒に対して50%以上含有していることが好ましい。
【0064】
本発明に用いられるセルロースエステルドープには、上記有機溶媒の他に質量で1〜30%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。このことでドープを流延用支持体に流延後、溶剤が蒸発を始め、アルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用の支持体から剥離することが容易となり、更に前記有機溶媒に対するセルロースエステルの溶解を促進する効果が得られる。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらのうち、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、かつ、毒性がないこと等からエタノールが好ましい。
【0065】
ドープの固形分濃度は通常、質量で10〜40%が好ましく、ドープ粘度は10〜50Pa・secの範囲に調整されることが良好なフィルムの平面性を得る点から好ましい。
【0066】
2種類以上のセルロースエステルを混合する混合方法としては、同一容器に2種類以上のセルロースエステルを導入し、混合溶解してドープを調製することができる。このほかに、それぞれのセルロースエステルをあらかじめ溶解しておき、流延直前に配管内で混合し流延することができる。本発明においては、光学補償フィルムを作製する上で、セルロースエステルフィルム上に設ける光学異方層の特徴に応じて光学特性を制御できるこという点で好ましく、また、素材や製造条件によって生じる光学特性の変動を調整することができるため、配管内で混合することが好ましい。またその場合、インラインミキサーなど常用の方法が利用できる。この方法によれば、素材の生産ロット等の違いによって生じるフィルムの光学特性の変動が生産中に検出される場合、セルロースエステルの混合比を調整することによって、得られるフィルムの光学特性をコントロールすることができる。より好ましくは製膜工程内で光学特性を連続的または断続的に測定し、フィードバック制御で混合比率を変更、調整することである。
【0067】
ドープ中には、可塑剤、マット剤、紫外線吸収防止剤、酸化防止剤、染料等を添加してもよい。
【0068】
本発明に使用するアセチル基およびプロピオニル置換基を有するセルロースエステルはそれ自身が可塑剤としての効果を発現するので、可塑剤を添加しなくても或いはわずかの添加量で充分なフィルム特性が得られるが、その他の目的で可塑剤を添加してもよい。例えば、フィルムの耐湿性を向上する目的では、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、リン酸エステルやカルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0069】
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えば、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
【0070】
リン酸エステル類としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等を挙げることができる。
【0071】
カルボン酸エステルとしては、例えば、フタル酸エステル類、クエン酸エステル類等があり、
フタル酸エステル類としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、
クエン酸エステル類としては、例えば、クエン酸アセチルトリエチルおよびクエン酸アセチルトリエチルおよびクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。
【0072】
又、その他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン等を単独或いは併用するのが好ましい。また、可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0073】
この目的で用いる可塑剤の量はセルロースエステルに対して質量で1〜30%が好ましく、特に4〜18%が好ましい。
【0074】
これらの化合物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶剤と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0075】
フィルムが滑りにくいとフィルム同士がブロッキングを起こし、取り扱い性に劣る場合がある。その場合、本発明に係わるフィルムには、以下に示すような微粒子を含有させても良い。
【0076】
無機化合物の微粒子としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、酸化錫、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースエステル積層フィルムの濁度を低減できるので、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
【0077】
また有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を挙げることができるが、特にこれらに限定されない。
【0078】
また、二酸化ケイ素のような微粒子は有機物によって表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。微粒子の平均径が大きいほうがマット効果は大きく、平均径の小さいほうが透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均径は5〜50nmでより好ましくは7〜20nmである。これらの微粒子はフィルム中では、通常、凝集体として存在しフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジル(株)製のAEROSIL200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600などがあげられ、好ましくはAEROSIL 200V、R972V、R974、R202、R812などがあげられる。
【0079】
これら微粒子の1次平均粒子径の測定は、やはり透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)を用い、粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって、1次平均粒子径とする。
【0080】
この目的で用いられるマット剤の含有量は、質量でセルロースエステルに対して0.005〜0.3%が好ましい。
【0081】
セルロースエステルフィルムの光学異方層を設ける側の表面をできるだけ平滑にする必要がある場合は、あえてフィルムに微粒子を添加せずに、光学異方層側とは反対の面に微粒子を含む塗布層、バックコート層等を設けて、滑り性を改善することができる。
【0082】
本発明のセルロースエステルフィルム、光学補償フィルムでは、更に好ましくはロール状に巻かれた長尺フィルム(支持体)の表裏面同士の動摩擦係数が1.0以下であることが好ましく、更に好ましくは、0.4以下である。そのため、長尺フィルム(支持体)に微粒子を添加してフィルムの表裏面同士の動摩擦係数が0.4以下とすることができる。このため、支持体が、少なくとも一方の面の表面層に微粒子を有する積層構造を有していてもよい。微粒子の添加により、ヘイズが増加することがあるが、本発明で用いられる支持体はヘイズが1%以下であることが好ましく、更に0.5%以下であることが好ましく、特に0.1%以下であることが好ましい。
【0083】
例えば、支持体の少なくとも一方の面の表面に微粒子を含む層を設けることによって、長尺ロールフィルムの支持体上に2層以上の配向層及び重合性液晶性化合物層を設け、所望の配向を有する光学補償シートを提供することができる。
【0084】
即ち、微粒子を含む塗布組成物を支持体の一方の面に塗設し、バックコート層とすることで、摩擦係数を低減させることができる。好ましくはバックコート層は重合性液晶層を設ける前に塗設されていることが好ましい。
【0085】
バックコート層は樹脂中に微粒子を混合分散した塗布液を支持体の一方の面に塗設する事で得られる。
【0086】
バックコート層に含ませる微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
【0087】
微粒子の、見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になる。
【0088】
1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることができ、例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することができる。
【0089】
《分散方法》
二酸化珪素等の微粒子を溶剤などと混合して分散するときの微粒子の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がさらに好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0090】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0091】
バックコート層のバインダーに対する微粒子の添加量は樹脂100質量部に対して、微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部がさらに好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方がヘイズが低く、凝集物も少ない点が優れている。
【0092】
分散機は通常の分散機が使用でき、セルロースエステルに対する二酸化珪素微粒子の分散のところで記載したメディア分散機またはメディアレス分散機があげられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。具体的には、前述した、支持体に微粒子を分散、添加する際に用いられる分散機が挙げられる。
【0093】
バックコート層はブロッキング防止効果も有するが、特に支持体の一方の面にのみに配向膜及び重合性液晶層を設けた場合は、カールを防止する効果を持たせることが望まれる。
【0094】
本発明のセルロースエステルフィルムには、目的に応じて添加剤をフィルムの厚み方向で分布を持たせても良い。この場合分布を持たせる製造方法としては、共流延を用いることができる。
【0095】
共流延とは、2つ以上のスリットを有するダイ内で合流させ2層以上の層構成にする同時多層流延方法、異なったダイを通じて2層以上の層構成にする逐次多層流延方法、同時多層流延と逐次多層流延とを組み合わせた多層流延方法のいずれであっても良い。
【0096】
それぞれのドープ中の各種添加剤量を変えることによって、フィルム厚み方向での該添加剤量の分布を持たせることができる。ここでいう添加剤とは、前出の可塑剤、マット剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料等を指す。
【0097】
可塑剤量に分布を持たせる場合、おもに内部の可塑剤量を多くすることによって、より優れたフィルムの透湿性を確保することができ、かつ工程への飛散が抑えられて好ましい。厚み方向中央部分の可塑剤量を100質量%とした場合、フィルムの表裏面近傍は100質量%未満が好ましく、さらに好ましくは80質量%から99質量%である。ここでいう表裏面近傍とは、表面から深さ5μmまでの領域を意味する。
【0098】
紫外線吸収剤の場合も同様で、内部の添加量を多くすることによって工程汚染が抑制されて好ましい。厚み方向中央部分の紫外線吸収剤量を100質量%とした場合、フィルムの表裏面近傍は100質量%未満が好ましく、さらに好ましくは80質量%から99質量%であることがより好ましい。
【0099】
マット剤は、おもにフィルムの取り扱い性向上やロール状フィルムの品質安定化等に効果がある一方、偏光板貼合時のケン化剤などによるマット剤自体の流出や、それに伴う平面性の悪化の原因ともなりうる。また、延伸処理などでフィルム厚みが小さくなる際にマット剤がより表面に出やすくなり、その後の塗布や貼合といった処理に悪い影響を及ぼすことがあった。そういった観点から、本発明ではマット剤を含有する層をどちらか一方の面にのみ含有させることが好ましい。特に偏光板に貼合される面に対して反対の面あるいは塗布層を形成する面に対して反対の面であることがよりその効果を発揮する。また、マット剤は一般的に不透明な球状粒子であるため、フィルム全体に多く含有されるとヘイズ値が高くなる問題がある。しかし、この方法で一方の面にのみ含有させることで、ヘイズ値を低く抑えることも可能となり有効である。
【0100】
本発明のセルロースエステルフィルムは、両端部にエンボス加工を付与させた長尺ロールを提供することが出来る。これにより、ロール状に巻かれた長尺フィルム上に、配向膜を付与する際、あるいはさらに重合性液晶性化合物を塗設する際に生じていたムラを著しく減少させることが出きる。
【0101】
エンボス加工の幅は5〜40mmが好ましく、より好ましくは7〜15mmである。フィルム端部から0〜50mmの部分にエンボス加工が施されていることが好ましく、エンボスの形態は問わないが、一ヶ所に加工するエンボスの条数は、一条でも二条でもそれ以上であってもかまわない。両端部になされていることが特に好ましい。
【0102】
エンボス加工の高さは2〜80μmであることが好ましく、更に5〜50μmであることが好ましく、7〜25μmであることが特に好ましい。エンボス加工は高すぎると巻き乱れや、ロール端部の盛り上がりなど、フィルム端部にひずみを与えてしまうため好ましくない。又、低すぎると配向の乱れを抑制する効果に乏しくなる。樹脂フィルム厚みの1〜25%の範囲で高さを調節することが好ましい。
【0103】
エンボス加工の各条の突起として観察される部分のエンボス加工部全体に対する面積の割合が、15〜50%程度が好ましく、これらの各条に含まれる突起が不連続なものである場合にはその数は1cm2あたり10〜30個程度であるのが好ましい。
【0104】
エンボス加工は、通常、金属やゴムなどのバックロール上でフィルムに刻印の刻まれたエンボスリングを押し当てることで、加工できる。加工は常温でも可能であるが、Tg+20℃以上、融点(Tm)+30℃以下で加工するのが好ましい。
【0105】
アンチカール機能の付与は、具体的には支持体として用いる樹脂フィルム基材を溶解させる溶媒又は膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することによって行われる。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒又は膨潤させる溶媒の混合物の他、さらに溶解させない溶媒を含む場合もあり、これらを樹脂フィルムのカール度合や樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物及び塗布量を用いて行う。
【0106】
バックコート層側へのカールを強めたい場合は、用いる溶媒組成を溶解させる溶媒又は膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは(溶解させる溶媒又は膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜1:9で用いられる。このような混合組成物に含まれる、樹脂フィルム基材を溶解又は膨潤させる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルムあるいはN−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどがある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノールなどがあるが、溶媒としては特にこれらに限定されるものではない。
【0107】
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、ワイヤーバーコーター、リバースコーター、押し出しコーター等を用いて樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μm塗布するのが好ましく、特に5〜30μmであると良い。
【0108】
バックコート層に用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体あるいは共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロースエステル系樹脂、マレイン酸および/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合体、メチルメタクリレート/ブタジエン/スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン/ブタジエン樹脂、ブタジエン/アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートとポリメチルアクリレートの共重合体等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。特に好ましくはジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロース系樹脂層である。
【0109】
バックコート層は、樹脂フィルム基材の反対側に光学的機能性層(配向層、重合性液晶層等)を塗設する前に塗設されていることが望ましいが、重合性液晶層塗設後に塗設する事もできる。
【0110】
本発明のセルロースエステルフィルムには直接または他の層を介して、ラビング処理などによって配向層を設けることができる。
【0111】
本発明に係るラビング処理された配向層は、セルロースエステルフィルム上に配置され、その上に塗設された光学異方層を配向させ、固定化するために用いられる。
【0112】
ここで、配向層を構成する材料について説明する。具体的には、以下の樹脂が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロースエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0113】
例えば、上記配向層を本発明のセルロースエステルフィルム上に塗布、乾燥して層を設置した後、ラビング処理することによって配向層を得ることができる。
【0114】
液晶性化合物の配向のための配向層として広く用いられているポリイミド膜(好ましくは弗素原子含有ポリイミド)も配向膜として好ましい。これはポリアミック酸(例えば日立化成(株)製のLQ/LXシリーズ、日産化学(株)製のSEシリーズ等)を塗布し、熱処理後、ラビングすることにより得られる。
【0115】
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴム或いはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いてラビングを行うことにより実施される。
【0116】
本発明に係る光学異方層について説明する。
本発明に係る光学異方層は、配向層の上に設けられ、液晶性化合物が配向された状態で固定化されて形成される。
【0117】
光学異方層の厚さは、それを構成する液晶性化合物の複屈折の大きさ、および液晶性化合物の配向状態によって異なるが、膜厚は0.2μm以上5μm以下、好ましくは0.4μm以上3μm以下である。これよりも光学異方層の厚さが薄いと目的とする光学異方性が得られにくくなり、一方前述の範囲よりも光学異方層が厚いと必要以上の光学異方性がかえって視野角特性を劣化しやすくなったり、別の課題としては光学補償フィルムがカールしやすくなることが多い。
【0118】
本発明に係る光学異方層は、セルロースエステルフィルム支持体に対して少なくとも1層設けることができる。また、光学補償フィルムはさまざまな液晶ディスプレイのモードに対して適切な補償を与えるよう設けることができる。
【0119】
本発明のセルロースエステルフィルムは特別な光学特性を有するため、該支持体上に塗設する液晶層は1層用いるだけども充分な視野角特性を有する液晶パネルの作製が可能なので、その結果として、低コスト化、生産性上のメリットが極めて大きい。
【0120】
また、本発明の光学補償フィルムは、駆動用液晶セルを挟むように配置されて、1対の偏光子のどちらか一方の面あるいは両方に少なくとも1枚を配置することができる。
【0121】
さらに、光学異方層は本発明のセルロースエステルフィルム上に直接または配向層などを介して塗設してもよく、接着層を介してもよい、また、偏光板保護フィルムに前記のような光学異方層を塗設したものを、本発明のセルロースエステルフィルムに張り合わせても良い。
【0122】
液晶表示装置が特にツイステッドネマティック型(TN型)液晶表示装置である場合、TN型液晶セルに最も近い面に前記光学補償フィルムのセルロースエステルフィルム支持体面が接触する方向に貼合し、かつ該光学補償フィルムのセルロースエステルフィルム支持体の面内の最大屈折率方向が、光学補償フィルムに隣接する面のネマティック液晶の配向方向と実質的に直交した方向に貼合することが本発明の目的を効果的に発現できる。実質的に直交とは、90°±5°であるが、特に90°±1°にすることが好ましい。
【0123】
本発明に係る光学異方層においては、配向し固定化された液晶の平均チルト角が、光学異方層の断面方向から観察した場合、斜めであることが好ましく、チルト角は光学異方層の厚さ方向に対して一定であってもよく、厚さ方向に対して配向角度が変化してもよい。平均チルト角はディスプレイの視野角を補償するため、ディスプレイの設計により異なるが、15°以上50°以下であることが特にTN型液晶表示装置に適応する場合において好ましい。光学異方層を構成する液晶性化合物のチルト角は、より好ましくは厚さ方向に対して変化し、該チルト角が配向膜側から増加または減少して変化することが本発明においてはより効果的である。
【0124】
また、本発明においては、光学異方層の最大屈折率方向をセルロースエステルフィルム支持体面に投影した方向が、該セルロースエステルフィルム支持体のny方向と実質的に等しいことが好ましい。ここで、ny方向と実質的に等しいとは、これら2つの方向の軸のなす角度が±2°以内であることを意味する。
【0125】
本発明に係る液晶性化合物について説明する。
ここでいう液晶性化合物とは、配向した状態で固定化して光学異方層とすることを目的として使用される。
【0126】
本発明に係る液晶性化合物は、液晶性化合物が配向できるものであれば特に限定されるものではなく、配向によって可視光領域で光散乱することなく光学的に異方性が付与される。
【0127】
本発明に係る液晶性化合物が高分子液晶である場合、例えば、登録2592694号、同2687035号、同2711585号、同2660601、特開平10−186356号、特開平10−206637号、同10−333134号に記載の化合物を用いることができ、特に光学的に正の複屈折性を有するものが好ましい。
【0128】
本発明に係る液晶性化合物が高分子液晶以外の液晶性化合物としては、一般に棒状の液晶性化合物が挙げられ、光学的に正の複屈折性を示す液晶性化合物が好ましく、更に好ましくは不飽和エチレン性基を有する正の複屈折性の液晶性化合物が配向の固定化の観点から好ましく、例えば特開平9−281480号、同9−281481号記載の構造の化合物が挙げられるが特に限定されない。
【0129】
本発明に係る液晶性化合物の構造は特に限定されないが、光学異方性を発現させるために液晶分子を配向させた状態で化学反応または温度差を利用した処理により液晶性化合物の配向が固定化された状態で用いることが求められる。
【0130】
上述のような配向層を透明樹脂基板上に設置しその上に液晶性化合物を塗設して配向処理が行われることが好ましい。液晶性化合物の配向処理は、液晶転移温度以上に加熱することが好ましく、液晶転移温度は透明樹脂基板を変質させない温度以下で処理することが好ましい。また、本発明に係る液晶性化合物が高分子液晶である場合、高分子液晶の配向を行うためには、高分子液晶のガラス転移温度以上の温度処理を行うことが好ましい。
【0131】
また、液晶性化合物と有機溶媒を含む溶液を調製し、その溶液を塗布、乾燥して光学異方層を作製する場合、液晶転移温度以上に加熱しなくても該温度以下で液晶性化合物の配向処理をすることも可能である。
【0132】
本発明に係る液晶性化合物が液晶性高分子である場合、その化合構造としては主鎖型の液晶性高分子、例えばポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルイミド等が挙げられる。又、側鎖型の液晶性高分子、例えばポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリマロネート等を用いてもよい。
【0133】
液晶性化合物を含む溶液を塗布した場合、塗布後、溶媒を乾燥して除去し、膜厚が均一な液晶層を得ることができる。液晶層は、熱または光エネルギーの作用、または熱と光エネルギーの併用で化学反応によって、液晶の配向を固定化することができる。特に高分子液晶性化合物ではないモノメリックな液晶性化合物は一般に粘度が低く、熱的が外因によって液晶の配向が変化しやすいため、光重合性開始剤を用いて、重合性液晶性化合物を光ラジカル反応等で硬化反応を実施して固定化することができる。
【0134】
本発明において、液晶性化合物の配向を固定化するとき、重合性基としてエチレン性不飽和基を用いた場合、光重合開始剤を使用することが反応の活性を上げることで製造時の硬化時間を短縮できる。光重合用のラジカル発生のための活性線としては、電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)を必要に応じて用いることができるが、一般的には、紫外線が好ましい。
【0135】
一方、エチレン性不飽和基の重合反応のためのラジカル重合開始剤は、例えばアゾビス化合物、パーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、レドックス触媒など、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、tert−ブチルパーオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、イソプロピルパーカーボネート、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーキサイド、ジクミルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド或いはベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾイン類、チオキサントン類等を挙げることができる。これらの詳細については「紫外線硬化システム」総合技術センター、63頁〜147頁、1989年等に記載されている。又、エポキシ基を有する化合物の重合には、紫外線活性化カチオン触媒として、アリルジアゾニウム塩(ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボラート)、ジアリルヨードニウム塩、VIa族アリロニウム塩(PF6、AsF6、SbF6のようなアニオンをもつアリルスルホニウム塩)が一般的に用いられる。
【0136】
また、ラジカル反応を用いて硬化反応を行う場合、空気中の酸素の存在による重合反応の遅れをさけるために窒素またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で上記活性線を照射することが、反応時間の短縮化と少ない光量で硬化できる点で好ましい。
【0137】
一方、液晶性化合物が高分子液晶である場合、上記化学反応による硬化反応を実施して液晶の配向を固定しなくてもよい。これは、セルロースエステルフィルムが熱によって変質しない温度範囲で、高分子液晶性化合物が液晶転移温度を示す場合、配向膜上に高分子液晶を塗布して設置した後、液晶転移温度範囲内に加熱し配向させた後、ガラス転移温度よりも低い温度まで冷却することによって液晶の配向が維持される。
【0138】
また、高分子液晶のガラス転移温度がセルロースエステルフィルムの耐熱性温度よりも高い場合は、別の耐熱性支持体上に前記配向膜を設置し高分子液晶を塗設後、高分子液晶のガラス転移温度以上に加熱し配向させることができる。これを室温に放冷し高分子液晶の配向を固定化したのち本発明の支持体に接着剤を用いて転写して光学異方層を作製することができる。
【0139】
本発明に用いられる溶出ブロック層について説明する。
本発明のセルロースエステルフィルム支持体と配向層との接着性向上と配向阻害防止のために、溶出ブロック層が設けられることが好ましい。
【0140】
溶出ブロック層とは、配向層や液晶性化合物を塗設する際、これらの有機溶媒溶液として塗設する場合、有機溶媒の存在によりセルロースエステルフィルム支持体から配向層あるいは液晶性化合物が存在する光学異方層へ、セルロースエステルフィルム支持体を構成する化合物の何れかが溶出するのを抑制することを意味する。薄膜として配向層や液晶性化合物の層を設置する場合、これらの化合物の有機溶媒溶液を調製して塗布することは好ましい手法である。しかしながら、特にセルロースエステルフィルムなどの樹脂は可塑剤やその他の添加剤を含むことが多く、これらの溶出により液晶の配向を阻害することがある。
【0141】
そのため、配向層の下引きとして、前述の有機溶媒に不溶もしくは溶けにくい溶媒に溶解する樹脂を設置することにより、塗設時の層間拡散、層間混溶を抑制することが可能となる。溶質ブロック層としては水溶性ポリマーあるいは活性線硬化樹脂が好ましく用いられる。
【0142】
本発明のセルロースエステルフィルム支持体に水溶性ポリマー、例えば、有機酸基含有ポリマーを含有する溶出ブロック層を設けることは、セルロースエステルフィルム支持体と配向層との接着性向上の観点から、製造上メリットが大きく効果的である。
【0143】
有機酸基含有ポリマーは、ポリマー側鎖に有機酸基を有する構造が挙げられるが特に限定されない。有機酸基としては、例えば−COOH基が上げられる。このような化合物例としては特に限定されることはないが、例えば特開平7−333436号記載の一般式[1]または一般式[2]で示される構造が挙げられる。−COOH基の水素は、アンモニア、アルカリ金属カチオン(ナトリウムカチオン、リチウムカチオン)で置換されていてもよい。有機酸基をもつポリマーを構成するモノマー単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。また、無水マレイン酸を共重合モノマーとして高分子量化したのち、酸無水環を開環させて有機酸基を得てもよい。
【0144】
さらに本発明に係る溶出ブロック層の形態として活性線硬化樹脂層の設置がある。特に紫外線硬化樹脂が好ましく用いられる。
【0145】
活性線硬化性樹脂は、重合可能なビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソプロペニル基、エポキシ基等の重合性基を二つ以上有するもので、活性エネルギー線に照射により架橋構造または網目構造を形成するものが好ましい。これら活性基のうちアクリロイル基、メタクリロイル基またはエポキシ基が重合速度、反応性の面から好ましく多官能モノマーまたはオリゴマーが好ましい。例として紫外線硬化型のアクリウルレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂が好ましく用いられる。
【0146】
紫外線硬化樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0147】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば特開昭59−151110号)。
【0148】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号)。
【0149】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることが出来る(例えば、特開平1−105738号)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種もしくは2種以上を選択して使用することが出来る。
【0150】
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。これらの樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。また上記光反応開始剤も光増感剤としても使用出来る。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。塗布乾燥後に揮発する溶媒成分を除いた紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる光反応開始剤または光増感剤は該組成物の0.5〜5質量%であることが特に好ましい。
【0151】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押出コーター、エアードクターコーター等公知の方法を用いることが出来る。活性線硬化樹脂層の硬化後の膜厚は0.05μm以上30μm以下が適当で、好ましくは、0.1〜15μmである。この乾燥膜厚が薄すぎると溶出ブロック性が低下し、また乾燥膜厚が厚すぎるとフィルムがカールしやすくなり、取り扱いが困難になる。
【0152】
溶出ブロック層の塗布溶媒について説明する。セルロースエステルフィルム支持体を構成する樹脂あるいは可塑剤を溶解する有機溶媒よりも、むしろ、それらが溶解しにくいか、または、不溶な溶媒を溶出ブロック層の塗布溶媒として選択することが本発明の目的にとって好ましい。
【0153】
本発明の溶出ブロック層を塗設するための溶媒としては、水、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒を混合して使用することができる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール等が挙げられ、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられ、エステル類としては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸メチル等が挙げられ、グリコールエーテル(C1〜C4)類としては、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、又はプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、その他の溶媒としてメチレンクロライド、N−メチルピロリドンなどがあげられる。特にこれらに限定されるものではない。
【0154】
溶出ブロック層の樹脂の分子量は高い方が配向層や液晶層への拡散がし難い観点から好ましく、数平均分子量が80万以上であることが好ましい。
【0155】
この溶出ブロック層は、セルロースエステルフィルム支持体からの可塑剤、紫外線吸収剤などの添加剤の溶出を防止する目的の他に、当該支持体と光学異方層または配向層との密着性を向上させて剥離するのを防止する機能をも求められる。当該目的のためには、セルロースエステルフィルム支持体において、プラズマ処理を行うことが効果的である。セルロースエステルフィルムを搬送しながらプラズマ処理を行うことは、連続的に処理が可能であり、特に真空にすることなく大気圧下で、反応性のガス雰囲気下で該処理を行うことは、フィルム表面上に必要な反応を行うことが出来るので好ましい。
【0156】
反応性のガスとしては特に限定されるものではないが、希ガス、窒素、酸素、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、過酸化水素、オゾン等が挙げられる。本発明においてプラズマ処理とは、プラズマ放電を利用することであり、放電によりプラズマ状態を発生させることである。好ましくは、少なくとも2つの対向する電極に電圧を印加することによって行なう。
【0157】
本発明において処理系とは、前記反応性ガス存在下プラズマ放電を行なう処理空間のことであり、具体的には壁等で仕切りを設けて隔離した処理室のことである。前記処理室の気圧を真空に近い0.007hPa〜27hPaで行なう真空プラズマ放電処理の場合には、反応性ガスの導入を調整する必要がある。処理速度を増加させるためには、電極に印加する電圧を高くする必要があるが、電界強度を上げすぎると被処理体にダメージを与える場合があり、注意が必要である。
【0158】
また、別の様態として、前記処理室の気圧を大気圧もしくは大気圧近傍で行なう大気圧プラズマ処理の場合には、処理室に導入する気体として、前記反応性ガス以外に不活性ガスを導入することが、安定な放電を発生させる上で好ましい。大気圧もしくは大気圧近傍とは、133〜1064hPaの圧力下のことであり、好ましくは931〜1037hPaの範囲である。
【0159】
不活性ガスはプラズマ放電により反応を起こさせない気体のことであり、アルゴンガス、ヘリウムガス、キセノンガス、クリプトンガスがある。この中で好ましいガスはアルゴンガスまたはヘリウムガスである。大気圧プラズマ処理時に処理室に導入する不活性ガスは90%以上に調整することが、放電を安定に発生させる観点から好ましい。印加する電圧高くすると処理速度を上げることができるが、電界強度を上げすぎると被処理体にダメージを与えることになるので注意が必要である。
【0160】
しかし、前記大気圧プラズマ処理であっても、パルス化された電界でプラズマを発生させる場合には、不活性ガスは必ずしも必要でなく、処理系における反応性ガスの濃度を上げることが可能となり、生産効率を上げることができる。
【0161】
本発明の偏光板、それを用いた本発明の液晶表示装置について説明する。
本発明の偏光板に用いる偏光子としては、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリビニルアルコールの如き親水性ポリマーからなるフィルムを、ヨウ素の如き二色性染料で処理して延伸したものや、塩化ビニルの如きプラスチックフィルムを処理して配向させたものを用いる。こうして得られた偏光子を、セルロースエステルフィルムによりラミネートする。
【0162】
そして、偏光板は、本発明の光学補償フィルムを偏光子の少なくとも片側に積層したものとして構成され、片側のみの場合は、他面に液晶層を塗設しない本発明のセルロースエステルフィルム支持体やその他の透明支持体もしくはTAC(トリアセテート)フィルムを使用してもよい。
【0163】
この様にして得られた偏光板が、液晶セルのセル側一面に設けても良く、両面側に設けてもよい。片側に設けられる場合、本発明の光学補償フィルムは偏光子に対して液晶セルに近い方に貼りつけて、本発明の液晶表示装置が得ることが出来る。
【0164】
液晶表示装置に本発明の光学補償フィルムを設置する場合、駆動用液晶セルの両側に位置する一対の基板の上下に配置された上側偏光子と下側偏光子が通常構成されるが、このとき該基板と上側もしくは下側偏光子のどちらか一方の間、または該基板と上側および下側偏光子のそれぞれ間に本発明の光学補償フィルムを少なくとも1枚設置されるが、低コスト化の観点と本発明の目的を効果的に発現させるためには、表示装置とした場合の観察者側の偏光子と駆動セル側との基板の間に本発明の光学補償フィルムを1枚設置することが好ましい。
【0165】
液晶表示装置が特にツイステッドネマティック型(TN型)液晶表示装置である場合、TN型液晶セルに最も近い基板に前記光学補償フィルムのセルロースエステルフィルム支持体面が接触する方向に光学補償フィルムを貼合し、かつ光学補償フィルムのセルロースエステルフィルム支持体面内の最大屈折率方向が前記液晶セルに最も近い基板のネマティック液晶の配向方向と実質的に直交した方向に貼合することが本発明の目的を効果的に発現できる。実質的に直交とは、90°±5°であるが、90°にすることが好ましい。
【0166】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが本発明はこれらに限定されない。
【0167】
実施例1
《セルロースエステルフィルム1−1〜1−7の作製》
下記のようにドープを調製し、そのドープを用いてセルロースエステルフィルムを作製した。
【0168】
(ドープの調製)
表1に記載の置換基および置換度を有するセルロースエステルAおよびBと、下記の材料を所定量混合し、その混合物を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて45℃まで上げ溶解した。容器内を1.2気圧に調整した。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、一晩そのまま放置しドープを得た。
【0169】
セルロースエステルA A、B合計で100質量部
セルロースエステルB
トリフェニルフォスフェート 3質量部
メチルフタリルエチルグリコレート 4質量部
チヌビン109(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製) 3質量部
メチレンクロライド 455質量部
エタノール 36質量部
(セルロースエステルフィルムの作製)
上記のように調製したドープをダイからステンレスベルト(流延用支持体ともいう)上にドープ温度30℃で流延し、ウェブを形成した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上でウェブを1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ウェブをステンレスベルトからフィルムを剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は100質量%であった。
【0170】
次いでテンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔を巾方向に変化させることで、表1に記載の延伸倍率までフィルムを延伸した。その際のフィルム温度は140℃になるように調整した。その後、乾燥過程で張力カット装置を導入した部分を通過させることで、巻き取り張力を100N/mとなるように調整した。このようにして膜厚100μmのセルロースエステルフィルム1−1〜1−7を、各々得た。
【0171】
作製したセルロースエステルフィルム1−1〜1−7は、各々コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、フィルムの両端部に幅15mmで高さ10μmのエンボス加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0172】
《セルロースエステルフィルムの光学特性評価》
得られたセルロースエステルフィルム1−1〜1−7の各々について、フィルム面内方向のリターデーション値(R0(nm))、厚み方向のリターデーション値(Rt(nm)、Rt/R0)測定を自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおける屈折率nx、ny、nzを求め、下記式に従って、R0およびRtを算出した。
【0173】
R0=(nx−ny)×d
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
ここで、(nxはフィルムの面内における遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内における進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)をそれぞれ表す。)
但し、R0、Rtの測定に当たり、幅手5点について各々、測定を実施し、それらのばらつきを評価した。5点の内訳は、フィルムの幅手中央部(C)、中央から左右それぞれ200mmのところ(L1、R1)、および中央から左右400mmのところ(L2、R2)の5点である。
【0174】
得られた結果を表1、表2に示す。
【0175】
【表1】
【0176】
【表2】
【0177】
表1、表2のセルロースエステルフィルム1−1〜1−5から、異なる置換度または異なる置換基を有する2種類のセルロースエステルの混合比を変化させることにより、セルロースエステルフィルムの光学特性(R0、Rt、R0/Rt比)を前記式(1)、(2)の範囲に入るように調整できることが判る。また、セルロースエステルフィルム1−6、1−7の作製条件から、本発明の範囲外の光学特性を与える作製条件についても知見を得ることが出来た。
【0178】
実施例2
《セルロースエステルフィルム2−1〜2−6の作製》
下記のようにドープを調製し、そのドープを用いてセルロースエステルフィルムを作製した。
【0179】
(ドープの調製)
表3に記載の置換度を有するセルロースエステルAと酢酸メチルおよびアセトンを所定量混合し、それを二重構造の密閉容器に入れ、ゆっくり攪拌しながら外側のジャケットに冷媒を導入した。これにより内側容器内の混合物を−70℃まで冷却した。混合物が均一に冷却されるまで30分冷却した。密閉容器の外側のジャケット内の冷媒を排出し、代わりに温水をジャケットに導入。続いて内容物を攪拌し、40分かけて100℃まで上げた。容器内は2.5気圧となった。攪拌しながら50℃まで温度を下げ常圧に戻し、一晩そのまま放置しドープ1を得た。その後溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、調製した。
【0180】
一方、表3のセルロースエステルBと酢酸エチルおよびアセトンを所定量混合し、同様の方法によりドープ2を調整した。
【0181】
(ドープ1の組成)
セルロースエステルA 20質量部
トリフェニルフォスフェート 2質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
チヌビン109(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製) 3質量部
酢酸メチル 184質量部
エタノール 16質量部
(ドープ2の組成)
セルロースエステルB 80質量部
トリフェニルフォスフェート 1質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
酢酸メチル 184質量部
エタノール 16質量部
(セルロースエステルフィルムの作製)
表3に記載のセルロースエステルフィルム2−1、2−3、2−5については、セルロースエステルAを溶解したドープ1とセルロースエステルBを溶解したドープ2をインラインミキサーにより流延直前に混合することにより調製し、流延製膜した。
【0182】
また、表3に記載のセルロースエステルフィルム2−2、2−4、2−6については、ドープ1を流延したあと、そのドープフィルム上に、各々、2秒後、10秒後、30秒後にドープ2を流延する、いわゆる共流延法を用いて流延製膜を行った。
【0183】
上記の流延製膜においては、流延直前のドープ温度を30℃とし、流延してウェブを形成後、ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上でウェブを1分間乾燥した後、更に、ステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトからウェブを剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は100質量%であった。
【0184】
次いでテンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔を巾方向に変化させることで、表3に記載の延伸倍率までフィルムを延伸した。その際のフィルム温度(延伸温度ともいう)は表3に記載の温度とし、延伸部に入り口でのフィルム中の残留溶媒量は、剥離からの搬送速度とパス長変更により行った。更にローラ搬送しながら乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム2−1〜2−6を各々得た。
【0185】
得られたセルロースエステルフィルム2−1〜2−6の各々については、実施例1に記載と同様に光学特性評価を行った。得られた結果を、表4に示す。
【0186】
【表3】
【0187】
【表4】
【0188】
表3、表4のセルロースエステルフィルム2−1〜2−2から、また、セルロースエステルフィルム2−3〜2−5から、各々、セルロースエステルの混合比をA:B=20:80にした時に、延伸温度、残留溶媒量、延伸倍率などの製膜条件の変化により、得られるセルロースエステルフィルムの光学特性(R0、Rt、R0/Rt)を前記式(1)、(2)の範囲に入るように調整するための知見を得ることが出来た。
【0189】
また、セルロースエステルフィルム2−6の作製から、アセチル置換度、プロピオニル置換度が共に異なるセルロースエステルを用いた場合に得られるセルロースエステルフィルムの光学特性(R0、Rt、R0/Rt比)を前記式(1)、(2)の範囲に入るように調整するための知見を得ることが出来た。
【0190】
実施例3
《光学補償フィルムの作製》
実施例1で作製したセルロースエステルフィルム1−1〜1−7を用い、以下のようにして光学補償フィルムを作製した。
【0191】
(液晶配向層の作製)
上記セルロースエステルフィルムを支持体とし、直鎖アルキル変性ポリビニルアルコール(MP203;クラレ(株)製)の水:メタノール=60:40(質量比)の1質量%溶液を作製し、乾燥膜厚が0.2μmとなるように押し出しコーティング機で塗布した。これらを80℃温風にて乾燥させた後、ラビング処理を行い、配向層を形成した。
【0192】
(光学補償フィルム3−1〜3−7の作製)
上記で作製した液晶配向層上に、下記に示す組成の塗布溶液をワイヤバー#5を用いて塗設した。さらにこれを55℃の無風状態で30秒乾燥、次いで75度、30秒熱処理を行い、98kPaで60秒間窒素パージした後、酸素濃度0.1%条件下で450mJ/cm2の紫外線により硬化させた膜を作製した。こうして1層の光学異方層を有する光学補償フィルム3−1〜3−7を、各々得た。
【0193】
(塗布溶液の組成)
MEK 89.5部
化合物1 2部
化合物2 4部
化合物3 3部
イルガキュアー369(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)
1.5部
【0194】
【化1】
【0195】
【化2】
【0196】
【化3】
【0197】
上記で作製した光学補償フィルム3−1〜3−7を以下のように評価した。
《光学補償フィルムの寸法安定性評価》
23±3℃、55±3%RHの常温常湿雰囲気下における光学補償フィルムの寸法をそれぞれLmd(nm セルロースエステルの流延方向)、Ltd(nmセルロースエステルの幅方向)とし、80±3℃、90±3%RHの高温高湿雰囲気下で24時間処理後、該常温常湿雰囲気に戻した時のセルロースエステルの流延方向の寸法をHmd(nm)、幅方向の寸法をHtd(nm)とし、下記式に示す伸縮率SmdおよびStdについて評価した。
【0198】
Smd(%)={(Hmd−Lmd)/Lmd}×100
Std(%)={(Htd−Ltd)/Ltd}×100
得られた結果を表5に示す。
【0199】
【表5】
【0200】
表5から、比較に比べて、本発明の光学補償フィルムは高湿条件下での寸法変化が小さいことが明らかである。
【0201】
実施例4
《偏光板4−1〜4−7の作製》
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光子を作製した。この偏光子の一方の面には、60℃で2モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液中に2分間浸漬し水洗した後100℃で10分間乾燥した80μmの偏光板保護フィルム(コニカタックKC8UX(コニカ(株)製))を、完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液の粘着剤を用いて貼り合わせ、もう一方の面には実施例3で作製した光学補償フィルム3−1〜3−7を同様の処理を行って貼合した。この場合、光学補償フィルムの光学異方層を有する側が偏光子側になるようにし、アクリル系接着剤を用いて偏光子の透過軸が光学補償フィルムの支持体(セルロースエステルフィルム)の最大屈折率を与える方向と一致するようにして貼合し、偏光板4−1〜4−7を各々得た。
【0202】
(偏光板のカール性評価)
作製した偏光板のセルロースエステルフィルム作製時における流延幅手ほぼ中央部から、流延方向300mm、幅方向200mmのサイズで切り出したものを使用し、23±3℃、80±3%RHの環境で平らな台上に静置し、偏光板の四隅の浮き上がり高さを複数回(4回〜5回)測定し、平均値を算出して得られた結果を表6に示した。
【0203】
【表6】
【0204】
表6から、比較に比べて本発明の偏光板は、表裏面のセルロースエステルフィルムの厚みが異なるにもかかわらず、カール特性が良好な偏光板が作製できることが分かる。
【0205】
実施例5
《液晶表示装置の作製及び評価》
液晶セルとして、NEC製15インチディスプレイMulti Sync LCD1525Jのあらかじめ貼合されていた光学補償フィルムおよび偏光板を剥がしたものを使用し、前記液晶セルの観察者側の偏光板とその反対側の偏光板は各々以下のように作製し、各々貼合して表7に湿すように液晶表示装置5−a〜5−qを各々作製した。
【0206】
(観察者側偏光板の作製と液晶セルへの貼合方法)
液晶表示装置5−a〜5−iについては、実施例4で作製した偏光板4−1〜4−7を表7に示すようにそのまま使用した。次いで、液晶表示装置5−j〜5−qについては、実施例2で作製したセルロースエステルフィルム2−1〜2−6を用いて、実施例3に記載と同様にして光学補償フィルム5−1〜5−6を作製し、次いで、実施例4に記載と同様にして作製した偏光板5−1〜5−6を観察者側偏光板として用いた。
【0207】
(観察者側と反対側に配置する偏光板の作製と液晶セルへの貼合方法)
液晶表示装置5−a〜5−qの観察者側と反対側に配置する偏光板は下記に記載の偏光板保護フィルムa、b、cを表7に記載のように用いた。
【0208】
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光子を作製した。この偏光子の一方の面には、60℃で2モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液中に2分間浸漬し水洗した後100℃で10分間乾燥した80μmの偏光板保護用セルロースエステルフィルム(コニカタックKC8UX(コニカ(株)製))を、完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液の粘着剤を用いて貼り合わせ、もう一方の面には、下記に記載のRt値が各々異なる3種の偏光板保護用フィルムa、b、cを作製し、アクリル系接着剤を用いて貼合した。尚、Rt値の異なるセルロースエステルフィルムの作製方法としては、従来公知の方法を適用して作製してもよい。
【0209】
(偏光板保護用セルロースエステルフィルムa、b、cの作製)
(ドープ液の調製)
セルロースエステル(アセチル置換度2.88) 100質量部
トリフェニルホスフェート 5質量部
チヌビン109(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製) 1質量部
メチレンクロライド 455質量部
エタノール 36質量部
上記の材料を混合、攪拌してドープ液を調製した。
【0210】
上記で調製したドープ液をダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延し、ウェブを形成した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温水を接触させて温度制御して、ステンレスベルト上でウェブを乾燥し、次いで、15℃の冷水を接触させて、ウェブをステンレスベルト上から剥離した。
【0211】
尚、乾燥時にベルトの運転速度を調整して、剥離時のウェブ中の残留溶媒量が20質量%、40質量%、90質量%になるように3種のウェブを調製した。
【0212】
その後、得られたウェブを140℃に設定されたテンターゾーンにおいて、幅手方向で1.01倍の延伸処理を施し、残留溶媒量が0.05%になるまで乾燥させた。また、膜厚が60μmになるように調整し、偏光板保護用セルロースエステルフィルムa、b、cを得た。
【0213】
得られた偏光板保護用セルロースエステルフィルムの厚み方向のリターデーション値(Rt)を実施例1に記載の方法を用いて測定したところ、偏光板保護用セルロースエステルフィルムaのRtは50nm、偏光板保護用セルロースエステルフィルムbのRtは20nm、偏光板保護用セルロースエステルフィルムのRtは40nmであった。
【0214】
光学補償フィルムの貼合においては、液晶セル側が支持体に接し、液晶セルの近接する基板面のラビング方向が本発明の光学補償フィルムのラビング軸−Y方向と一致するように配置し、当該ラビング軸と偏光板透過軸が直交するように貼合した。
【0215】
尚、ラビング処理した光学補償フィルムの方向については、配向層を塗布した支持体を配向層面側からみて直線状にラビングした方向をY軸の+方向とし、反対方向を−方向とし、それに直交するX軸を同様に支持体面内に設定し、基準配置とした。以後、光学補償フィルム面の面内方向の特定については、とくに断わらない限りラビング方向を基準として同様に行った。
【0216】
こうして得られた本発明の光学補償フィルムを貼合した液晶パネル(5−a〜5−q)を、ELDIM社製EZ−contrastにより視野角を測定した。視野角は、液晶パネルの白表示と黒表示時のコントラスト比が10以上を示すパネル面に対する法線方向からの傾き角の範囲であらわした。その結果、本発明の光学補償フィルムについて得られた視野角の値を表7に示した。
【0217】
得られた結果を表7に示す。
【0218】
【表7】
【0219】
表7から、比較に比べて、本発明の液晶表示装置は、優れた視野角拡大機能を示していることが明らかである。
【0220】
実施例6
《セルロースエステルフィルムの作製》
以下に示すようにして、ドープ調製し、次いで、セルロースエステルフィルムを作製した。
【0221】
(ドープの調製)
表8または9に記載のロット番号(A〜F)を有するセルロースエステルと、下記の材料を所定量混合し、その混合物を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて45℃まで上げ溶解した。容器内を1.2気圧に調整した。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、一晩そのまま放置しドープを得た。
【0222】
(ドープ液の組成)
セルロースエステル(表8、9に記載) 100質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 4質量部
チヌビン109(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製) 3質量部
メチレンクロライド 455質量部
エタノール 36質量部
(セルロースエステルフィルム6−1〜6−5、7−1〜7−5の作製)
上記作製したドープをダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延し、ウェブ形成した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上でウェブを1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトからウェブを剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は100質量%であった。
【0223】
但し、インライン添加を行ったセルロースエステルフィルム6−4、6−5、7−4、7−5については、実施例2に記載のセルロースエステルフィルム2−1、2−3、2−5の作製と同様にしてインライン添加を行った。
【0224】
次いでテンターを用いて剥離したフィルムの両端をクリップで掴み、クリップ間隔を巾方向に変化させることで、延伸倍率1.15倍にフィルムを延伸した。
その際のフィルム温度は140℃あるいは160℃とした。その後乾燥過程で張力カット装置を導入した部分を通過させ、巻き取り張力を100N/mとなるように調整した。このようにして膜厚90μmのセルロースエステルフィルム6−1〜6−5、7−1〜7−5を各々得た。得られたセルロースエステルフィルムの光学特性は実施例1に記載と同様に評価した。
【0225】
得られた結果を表8、表9に示す。
【0226】
【表8】
【0227】
【表9】
【0228】
表8、表9から、下記のようにインラインブレンドによるRt/R0の調整についての知見を得た。
【0229】
《インラインブレンドによるRt/R0の調整について》
表8のセルロースエステルフィルム6−1〜6−3の各々のRt/R0値、表9のセルロースエステルフィルム7−1〜7−3の各々のRt/R0値から判るように、流延製膜後、延伸して得られたセルロースエステルフィルムのRt/R0値は、作製時に使用したセルロースエステルのロットによって、同じ置換度の材料を用いても得られるセルロースエステルフィルムの光学特性が必ずしも同一にならず、少しずつではあるが変動することが判る。
【0230】
このようなロット変動による、Rt/R0値の調製に対応する為には、表8の6−4、6−5に示すように2種類のセルロースエステルBとD,CとEをインラインブレンドすることにより、セルロースエステルフィルム6−1のRt/R0(2.2)になるように調製することができる。
【0231】
同様に、表9のセルロースエステルフィルム7−4、7−5に示すように2種類のセルロースエステルGとI,HとJをインラインブレンドすることにより、セルロースエステルフィルム7−1のRt/R0(1.8)になるように調製することが出来た。
【0232】
以上から、本発明では、置換度の異なるセルロースエステルドープをインラインで混合することで、素材ロット.No等の影響によるRt/R0の値の変動を最小限になるように制御し、ばらつきを防止することが出来た。
【0233】
【発明の効果】
本発明により、1枚で高い視野角拡大効果を達成する光学補償フィルム、それに用いる優れた光学特性を有するセルロースエステルフィルム、その製造方法、偏光板及び液晶表示装置を提供することが出来た。
Claims (12)
- フィルムの面内方向の下記一般式(a)で表される、リターデーション(R0)と下記一般式(b)で表される、厚み方向のリターデーション(Rt)との関係が下記式(1)、(2)を満たし、
且つ、nx>ny>nzを満たしているセルロースエステルフィルムであり、該セルロースエステルフィルムが、アシル基の置換度または置換基の異なるセルロースエステルを2種類以上含有し、且つ、総置換度が2.50以上2.90以下のセルロースエステルのうち、総置換度の差が0.02以上あるセルロースエステルを2種類以上含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
式(1) 0.8≦Rt/R0≦2.5
式(2) 41nm≦R0≦95nm
一般式(a):R0=(nx−ny)×d
一般式(b):Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
〔式中、nxはフィルム面内遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの膜厚(nm)である。〕 - フィルムの面内方向の下記一般式(a)で表される、リターデーション(R 0 )と下記一般式(b)で表される、厚み方向のリターデーション(R t )との関係が下記式(1)、(2)を満たし、
且つ、nx>ny>nzを満たしているセルロースエステルフィルムであり、該セルロースエステルフィルムが、アシル基の置換度または置換基の異なるセルロースエステルを2種類以上含有し、且つ、総置換度が2.70以上3.00以下であるセルロースエステルAと、総置換度が2.40以上2.70未満のセルロースエステルBを混合したことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
式(1) 0.8≦R t /R 0 ≦2.5
式(2) 41nm≦R 0 ≦95nm
一般式(a):R 0 =(nx−ny)×d
一般式(b):R t =((nx+ny)/2−nz)×d
〔式中、nxはフィルム面内遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの膜厚(nm)である。〕 - フィルムの面内方向の下記一般式(a)で表される、リターデーション(R 0 )と下記一般式(b)で表される、厚み方向のリターデーション(R t )との関係が下記式(1)、(2)を満たし、
且つ、nx>ny>nzを満たしているセルロースエステルフィルムであり、該セルロースエステルフィルムが、アシル基の置換度または置換基の異なるセルロースエステルを2種類以上含有し、且つ、アセチル置換度が2.50から2.90のセルロースアセテートと、アセチル置換度をA、プロピオニル置換度をBとした場合、下記式(4)及び(5)を満たすセルロースアセテートプロピオネートとを各々有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
式(1) 0.8≦R t /R 0 ≦2.5
式(2) 41nm≦R 0 ≦95nm
一般式(a):R 0 =(nx−ny)×d
一般式(b):R t =((nx+ny)/2−nz)×d
式(4) 2.50≦(A+B)≦2.90
式(5) 1.40≦A≦2.30
〔式中、nxはフィルム面内遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの膜厚(nm)である。〕 - セルロースエステルフィルム全体のうち、セルロースアセテートプロピオネートの含有量が質量比で60%以上含有されていることを特徴とする請求項3に記載のセルロースエステルフィルム。
- フィルムの面内方向の下記一般式(a)で表される、リターデーション(R0)と下記一般式(b)で表される、厚み方向のリターデーション(Rt)との関係が下記式(1)、(2)を満たし、
且つ、nx>ny>nzを満たしているセルロースエステルフィルムであり、該セルロースエステルフィルムが、アシル基の置換度または置換基の異なるセルロースエステルを2種類以上含有し、且つ、置換度の異なる2種類以上のセルロースアセテートプロピオネートを含有し、且つ、前記セルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度をA、プロピオニル置換度をBとした場合、これらが、下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
式(1) 0.8≦Rt/R0≦2.5
式(2) 41nm≦R0≦95nm
一般式(a):R0=(nx−ny)×d
一般式(b):Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
式(4) 2.50≦(A+B)≦2.90
式(5) 1.40≦A≦2.30
〔式中、nxはフィルム面内遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの膜厚(nm)である。〕 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムを作製するに当たり、
溶媒を含む樹脂溶液を支持体上で流延製膜してウェブを形成し、該ウェブを該支持体から剥離、乾燥させて、前記ウェブ中の残留溶媒量を100質量%未満の状態にし、次いで、前記ウェブの温度を110℃〜160℃の範囲に保ちながら、延伸する工程を有することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。 - 異なる置換基または置換度の異なるセルロースエステルを含有する2種類以上の溶液を、流延直前にてインラインミキサーで混合し、セルロースエステルドープを作製し、流延製膜法で製膜することを特徴とする請求項6に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 異なる置換基または置換度の異なるセルロースエステルを含有する2種類以上の溶液を、同時あるいは逐次、支持体上に流延して製膜することを特徴とする請求項6に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法を用いて作製されたことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
- 請求項1、3〜5、9のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムと、該セルロースエステルフィルム上に直接または、別の層を介して液晶性化合物の配向が固定化された光学異方層を有することを特徴とする光学補償フィルム。
- 請求項10に記載の光学補償フィルムを有することを特徴とする偏光板。
- 請求項11に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。
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