JP5542086B2 - 光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
近年液晶表示装置はその普及にともない、更なる薄層化、また高性能化が求められている。
セルロースエステルフィルムは透過率が高く、アルカリ水溶液に浸漬させてその表面を鹸化し親水化することで、偏光子との優れた密着性を実現している。しかしながら、液晶表示装置に組みこんだ場合に、特に経年劣化等により変形した液晶表示装置内の他の部材がセルロースエステルフィルムと接したときに表示ムラを生じ易いという問題が、近年著しい薄型化の要請から生じてきている。
特許文献1では、セルローストリアセテートとアクリル樹脂の積層フィルムを共流延法にて作製する技術が公開されている。例えば、同文献の実施例にはセルローストリアセテートフィルム/アクリル樹脂フィルム/セルローストリアセテートフィルム構成が記載されている。また、同文献では一般的な方法で表層のセルローストリアセテートフィルムをけん化し、偏光子と貼り合わせて偏光板を製造できることが記載されている。しかし、同文献の実施例に用いられていたアクリル樹脂は物質として具体的に特定できる記載はなかった。
ここで、特許文献2および3に記載の発明で用いることができるセルロースエステル樹脂として、アシル置換度が2.0〜3.0、炭素数3〜7のアシル置換度が1.2〜3.0で重量平均分子量が75000以上のものが記載されており、2種以上のセルロースエステル樹脂を混合して用いることもできると記載されている。しかしながら、特許文献2および3の実施例ではいずれもアセチル置換度0.19、プロピオニル置換度2.56のセルロースエステル樹脂を1種のみ用いて、アクリル樹脂と混合した表層およびその他の層を形成した例のみしか具体的な検討はされていなかった。また、特許文献2および3の実施例では、得られた積層フィルムを偏光子と貼り合わせて偏光板を製造するときに、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の混合層である表層に対して、コロナ処理を施してから、アクリル接着剤を用いて偏光子と貼合していた。
また、本発明者らが特許文献2および3に記載の方法において、積層フィルムの外層や各層のアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の含有比率を変化させるよう検討したものの、単にこれら2成分の含有比率を変化させただけでは、従来のアルカリ鹸化の手法による偏光子との接着性を改善できないどころか、含有比率を変化させると得られるフィルムのヘイズが高くなってしまう問題も生じることがわかった。
該A層の少なくとも一方の面に積層された、互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含むB層を有し、
前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜80/20(質量比)であり、前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする光学フィルム。
式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
式(2A) 0.2≦Y≦1.2
(式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
(式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。)
[2] 前記B層の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2B)を満たすことを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
[3] 前記B層の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2A)を満たすことを特徴とする[1]または[2]に記載の光学フィルム。
[4] 前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂が、重量平均分子量が100万を超え180万以下であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[5] 前記B層に含まれる重量平均分子量10万以上のポリマーが、セルロースアシレートのみであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[6] 前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂が、ポリメチルメタクリレートからなることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[7] 前記A層が、前記式(1)ならびに式(2)および(3)の少なくとも一方を満たすセルロースアシレートを含み、前記アクリル樹脂の該セルロースアシレートに対する含有比が95/5〜80/20(質量比)であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[8] 前記B層の前記第1のセルロースアシレートのアシル基がアセチル基からなり、アセチル置換度が2.7〜3.0であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[9] 前記B層の膜厚が、1μm〜10μmであり、フィルム全体の膜厚が20μm〜80μmであることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[10] ヘイズの値が0.3%以下であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[11] 光弾性係数の値が−5.0×10-12Pa-1〜5.0×10-12Pa-1であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[12] 下記式(I)で定義される面内方向のリターデーションRe及び下記式(II)で定義される膜厚方向のリターデーションRthが、25℃相対湿度60%環境下において下記式(III)及び下記式(IV)を満たすことを特徴とする、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(I) Re=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(III) |Re|<10nm
式(IV) |Rth|<25nm
(式(I)〜(IV)中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(μm)である。)
[13] 熱可塑性樹脂と溶媒を含有する少なくとも2種のドープ(A)および(B)を流延基材側から(B)−(A)の順番に同時又は逐次に流延基材上に流延する工程を含み、前記ドープ(A)は重量平均分子量が100万を超えるアクリル樹脂を含有し、前記ドープ(B)は互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含有し、前記ドープ(B)における前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜80/20(質量比)であり、前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
式(2A) 0.2≦Y≦1.2
(式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
(式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。)
[14] 前記ドープ(B)の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2B)を満たすことを特徴とする[13]に記載の光学フィルム。
[15] 前記ドープ(B)の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2A)を満たすことを特徴とする[13]または[14]に記載の光学フィルム。
[16] 前記溶媒として、メチレンクロライドと炭素数1〜4の低級アルコールを使用し、メチレンクロライドの炭素数1〜4の低級アルコールに対する含有比率が90/10〜60/40(体積比)の範囲であることを特徴とする[13]〜[15]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[17] 前記ドープ(B)に含まれるポリマーの重量平均分子量が10万以上であって、セルロースアシレートのみであることを特徴とする[13]〜[16]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[18] [13]〜[17]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とする光学フィルム。
[19] 偏光子と、[1]〜[12]および[18]のいずれか一項に記載の光学フィルムを含むことを特徴とする偏光板。
[20] [1]〜[12]および[18]のいずれか一項に記載の光学フィルムまたは[19]に記載の偏光板を含むことを特徴とする液晶表示装置。
本発明の光学フィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、重量平均分子量が100万を超えるアクリル樹脂を含むA層と、
該A層の少なくとも一方の面に積層された、互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含むB層を有し、
前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜80/20(質量比)であり、前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする。
式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
式(2A) 0.2≦Y≦1.2
(式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
(式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。)
なお、以下において本発明のフィルムの前記A層をアクリル樹脂層とも言い、前記B層をセルロースアシレート層とも言う。
いかなる理論に拘泥するものでもないが、外層であるB層の第二のセルロースアシレートの置換度を上記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たす範囲に制御することで、前記外層であるB層の両表面(前記A層側の界面と、偏光板の偏光子側の界面)において前記第二のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基を適切な置換度まで減らして、外層であるB層の両表面の疎水性質を適度に抑制することができたと推定される。その結果、前記B層と前記A層との層間密着性を改善することができ、前記B層のアルカリ鹸化適性を高めて従来のアルカリ鹸化の手法による偏光子との接着性を改善することができたと推定される。
さらに、同様にいかなる理論に拘泥するものでもないが、上記構成に加えて重量平均分子量が従来光学フィルム分野に用いられていたアクリル樹脂よりもはるかに大きいアクリル樹脂を用い、かつ、セルロースアシレートを主成分とする外層に上記式(1)を満たす置換度の第二のセルロースアシレートを適切な割合で添加することで、前記A層とB層の界面の相溶性も高めることができ、積層フィルム全体のヘイズを低減し、透明性が高い光学フィルムを得られたと推定される。
以下、本発明のフィルムの好ましい態様について説明する。
(セルロースアシレート(B)層とアクリル樹脂(A)層の比率)
本発明のフィルムは、前記アクリル樹脂(A)層の膜厚が20〜60μmであることが好ましく、前記セルロースアシレート(B)層の膜厚が(複数のB層を含む場合はいずれのB層も)1〜10μmであることが好ましい。
また、前記セルロースアシレート(B)層の膜厚は1層当り1〜10μmであることが好ましく、1〜8μmであることがより好ましく、1〜5μmであることが特に好ましい。前記アクリル樹脂(A)層の膜厚は20〜60μmであることが好ましく、25〜50μmであることがより好ましく、25〜40μmであることが特に好ましい。
また、積層体としての光学フィルム全体の膜厚は、11〜240μmが好ましく、より好ましくは15〜150μmであり、特に好ましくは20〜80μmであり、より特に好ましくは、20〜50μmである。
本発明のフィルムは、前記B層の膜厚が、1μm〜10μmであり、フィルム全体の膜厚が20μm〜80μmであることが好ましい。
これらの関係を満たすことで、流延時の面状がより良好となる傾向にある。さらに、得られる光学フィルムの界面密着性、カール性、吸水量低減などを好ましく調整することができる。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。本願明細書においては、特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
式(11)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
式(12)
Rth={(nx+ny)/2−nz}xd
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
式(I) Re=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(III) |Re|<10nm
式(IV) |Rth|<25nm
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(μm)である。)
また、本発明のフィルムは、|Rth|<25nmを満たすことが好ましく、|Rth|≦15nmであることがより好ましく、|Rth|≦10nmであることが特に好ましい。
本発明のフィルムは、ヘイズが0.7%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることが特に好ましい。ヘイズを0.7%以下とすることでフィルムの透明性がより高くなり、光学フィルムとしてより用いやすくなる。
本発明のフィルムは、光弾性係数の絶対値が5×10-12Pa-1以下であることが好ましく、3×10-12Pa-1以下であることがより好ましく、1×10-12Pa-1以下であることが特に好ましい。光弾性係数は物質固有の性質であり、光弾性係数をほとんど発現しない物質はむしろまれである。例えば、高分子樹脂の多くは、外部応力や熱応力により複屈折を発現する。光弾性係数は、印加される応力の方向に関連して符号を定義することができる。即ち、媒体(高分子樹脂) に引っ張り応力を加えた場合、引っ張り応力と平行な方向に偏光面を有する偏光に対する屈折率nparaと、それに直交する方向に偏光面を有する偏光に対する屈折率に対して、下記(21) 式で表わされる光弾性係数cの正負で光弾性係数の符号が表現される。
c=Δn/σ=(npara−nperp)/σ ・・・・・(21)
つまり、nparaの方がよりnperpも大きい場合に光弾性係数は正、小さい場合は負となる。 本発明のフィルムの光弾性係数が−5×10-12〜5×10-12Pa-1の範囲であれば、本発明のフィルムを液晶表示装置に組み込んだときの表示ムラが抑制でき、好ましい。特に、本発明のフィルムを延伸後に液晶表示装置に組み込むときに上記範囲であることが好ましい。
本発明のフィルムは、フィルム幅が400〜2500mmであることが好ましく、1000mm以上であることがより好ましく、1500mm以上であることが特に好ましく、1800mm以上であることがより特に好ましい。
本発明のフィルムは、アクリル樹脂を含む前記アクリル樹脂層(A)層を有し、前記アクリル樹脂層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂の重量平均分子量が100万を超える。
本発明に用いられるアクリル樹脂には、メタクリル系樹脂も含まれ、アクリレート/メタクリレートの誘導体、特にアクリレートエステル/メタクリレートエステルの(共)重合体がよく知られている。前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜100質量%、及びこれと共重合可能な他の単量体単位0〜50質量%からなるものが、光弾性係数の小さいフィルムを得るために好ましく、メチルメタクリレート単位100質量%からなるポリメチルメタクリレートであることがより好ましい。
ここで、アクリル樹脂として一般に分子量10万程度のものが製膜に用いられている。詳しくは、溶融製膜では、高分子量のアクリル樹脂フィルムを製膜することがそもそも不可能である。また、アクリル樹脂フィルムは溶液製膜によっても製膜可能だが、その場合は溶液流延しやすい粘度のドープを調製する必要がある。従来、分子量30万程度のアクリル樹脂であれば、流延適性が高いドープを調製しやすく、このようなアクリル樹脂が従来製膜に用いられていた。
これに対し、本発明のフィルムでは、前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂の重量平均分子量が100万を超える。前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂の重量平均分子量は100万を超え300万以下であることが好ましく、100万を超え180万以下であることがより好ましく、110万を超え180万以下であることが特に好ましい。
アクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。
アクリル樹脂は、更に別の熱可塑性樹脂を含むことができる。本発明においてアクリル樹脂と併用できる他の熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が100℃以上、全光線透過率が85%以上の性能を有するものが、前記アクリル樹脂と混合してフィルム状にした際に、耐熱性や機械強度を向上させる点において好ましい。
本発明のフィルムは、前記A層が、前記式(1)ならびに前記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすセルロースアシレートを含み、前記アクリル樹脂の該セルロースアシレートに対する含有比が95/5〜80/20(質量比)であることがより好ましく、93/7〜80/20(質量比)であることが特に好ましい。
なお、前記式(1)ならびに前記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすセルロースアシレートの好ましい態様の詳細については後述する。
本発明のフィルムは、前記A層の表面に少なくとも一方の面に積層された、互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含むB層を有する。さらに本発明のフィルムは、前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜80/20(質量比)であり、前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする。
式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
式(2A) 0.2≦Y≦1.2
(式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
(式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。)
本発明に用いられるセルロースアシレートは、前記B層の前記第1のセルロースアシレートは特に定めるものではなく、前記第2のセルロースアシレートは前記式(1)ならびに前記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たす限りは特に制限はない。原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
本発明の光学フィルムにおいて、前記B層は互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含む。
前記B層の前記第1のセルロースアシレートとして用いられるセルロースアシレートは、アシル基の総置換度が1.2以上3.0以下であることが好ましい。
さらに、本発明に用いられるセルロースアシレートは、アシル基の総置換度をTA全、炭素数が2のアシル基の置換度をTA2、炭素原子数が3以上7以下のアシル基の置換度をTA3としたときに、以下の条件を満たすことが好ましい。以下の範囲にすることで、隣接層との密着性、ドラム剥離性、フィルムのカール低減の観点で優れた光学フィルムを得ることができる。
2.2≦TA全≦3.0
1.5≦TA2≦3.0
0.0≦TA3≦0.7
2.5≦TA全≦3.0
2.4≦TA2≦3.0
0.0≦TA3≦0.1
さらに好ましくは、TA2、すなわちアセチル置換度が2.8〜2.94である。また、セルロースアシレートは、TA全が2.8〜2.94であることが特に好ましく、TA3は0であることが特に好ましい。セルロースアシレートは、アセチル置換度が2.8〜2.94のセルロースアセテートであることがより特に好ましい。
本発明の光学フィルムにおいて、前記B層の前記第2のセルロースアシレートとして用いられるセルロースアシレートは、前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする。
式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
式(2A) 0.2≦Y≦1.2
(式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
(式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。)
2.65≦X+Y≦2.90を満たすことが特に好ましい。
式(2B') −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.25n+2.35
式(2B'') −0.15n+1.25≦DS(n)≦−0.22n+2.1
本発明に用いられるセルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)は、前記セルロースアシレート層に主成分として用いられる前記セルロースアシレートの重量平均分子量が5万〜50万であることがフィルム面状を改善する観点から好ましく、8万〜40万であることがより好ましく、10万〜30万であることが特に好ましい。
本発明の光学フィルムは、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、前記セルロースアシレート(B)層が、前記第1のセルロースアシレートおよび前記第2のセルロースアシレート以外にその他のポリマー成分を含んでいてもよい。その他のポリマー成分としては、特に制限はないが、例えば、アクリル樹脂や、前記A層の主成分として用いられている前記アクリル樹脂などを挙げることができる。
本発明の光学フィルムは、前記B層に含まれる重量平均分子量10万以上のポリマーが、セルロースアシレートのみであることが好ましい。
本発明の光学フィルムには、前記アクリル樹脂層および前記セルロースエステル層のそれぞれにおいて、主原料となる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂とともに、添加剤を含有していてもよい。
本発明のフィルムには、光学フィルムに柔軟性を与え、寸法安定性を向上させ、耐湿性を向上させるために可塑剤を用いることが好ましい。
また、耐揮発性、ブリードアウト、低ヘイズなどの点で優れる可塑剤としては、例えば特開2009−98674号公報に記載の両末端が水酸基であるポリエステルジオールを用いるのが好ましい。また、光学フィルムの平面性や低ヘイズなどの点で優れる可塑剤としては、WO2009/031464号公報に記載の糖エステル誘導体も好ましい。
本発明では、前記高分子可塑剤として、重縮合エステルを用いることが好ましい。
本発明で使用される重縮合エステルは、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸から選ばれた少なくとも1種以上のジカルボン酸と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールに、炭素数6〜20の芳香族環含有ジオールから選ばれた少なくとも1種類以上のジオールから合成される。合成方法としては、ジカルボン酸とジオールの脱水縮合反応、又は、ジオールへの無水ジカルボン酸の付加及び脱水縮合反応などの公知の方法を利用することができる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。なかでも、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
また芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−キシリデンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
これらの中でもより好ましい脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。特に好ましくは、脂肪族ジカルボン酸としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸であり、芳香族ジカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸である。より特に好ましくは、コハク酸またはアジピン酸である。
本発明では2種以上のジカルボン酸の混合物を用いてもよく、この場合、2種以上のジカルボン酸の平均炭素数が3〜14であることが好ましく、3〜8であることがより好ましい。
ジカルボン酸の炭素数が上記範囲であれば、光ムラの改良に加えて、熱可塑性ポリマーとの相溶性に優れ、ポリマーフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。
脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを併用することも好ましい。具体的には、アジピン酸とフタル酸との併用、アジピン酸とテレフタル酸との併用、コハク酸とフタル酸との併用、コハク酸とテレフタル酸のとの併用が好ましく、コハク酸とフタル酸との併用、コハク酸とテレフタル酸との併用がより好ましい。脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを併用する場合、両者の比率(モル比)は95:5〜40:60が好ましく、55:45〜45:55がより好ましい。
脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エタンジオール(エチレングリコール)、3−オキサペンタンー1,5−ジオール(ジエチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、又は1,4−シクロヘキサンジメタノール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用される。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エタンジオール(以下、エチレングリコールとも言う)、3−オキサペンタンー1,5−ジオール、1,2−プロパンジオール(以下、プロピレングリコールとも言う)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。より特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオールである。
2種以上のジオールを用いる場合には、該2種以上の平均炭素数が2〜12となることが好ましい。
ジオールの炭素数が上記範囲であれば、光ムラの改良に加えて、熱可塑性ポリマーとの相溶性に優れ、ポリマーフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。
本発明では2種以上のジオールの混合物を用いてもよく、この場合、2種以上のジオールの平均炭素数が2〜12であることが好ましく、2〜7であることがより好ましい。
具体的には、エチレングリコールとプロピレングリコールとの併用が好ましい。2種以上のジオールの混合物を用いる場合、両者の比率(モル比)は95:5〜95:5が好ましく、55:45〜45:55がより好ましい。
重縮合エステルの両末端が未封止の場合、該オリゴマーはポリエステルポリオールであることが好ましい。
また、少なくとも一方の末端が封止され、該末端が炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族環含有基、炭素数1〜22の脂肪族カルボニル基、及び炭素数6〜20の芳香族カルボニル基から選ばれた少なくとも一種であることも好ましい。
更に、重縮合エステルの両末端が封止されている場合、モノアルコール、モノカルボン酸と反応させて封止することがより好ましい。このとき、該オリゴマーの両末端はモノアルコール残基又はモノカルボン酸残基となっている。ここで、残基とは、オリゴマーの部分構造で、オリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばモノカルボン酸R−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR−CO−である。
好ましく使用され得る末端封止用アルコール残基は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールであり、特にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ベンジルアルコールである。
ポリエステル系オリゴマーの両末端のモノカルボン酸残基の炭素数が3以下であると、揮発性が低下し、該オリゴマーの加熱による減量が大きくならず、工程汚染の発生や面状故障の発生を低減することができる。即ち、封止に用いるモノカルボン酸類としては脂肪族モノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸が炭素数2〜22の脂肪族モノカルボン酸であることがより好ましく、炭素数2〜3の脂肪族モノカルボン酸であることが更に好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられる。芳香族環含有モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等が挙げられる。
これらのなかでも、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸(末端がアセチル基となる)が最も好ましい。封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。
本発明で使用される重縮合エステルに含まれるジカルボン酸残基、ジオール残基、モノカルボン酸残基の各残基の種類及び比率はH−NMRを用いて通常の方法で測定することができる。通常、重クロロホルムを溶媒として用いることができる。
重縮合エステルの数平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することができ、通常、ポリスチレンを標準資料として用いることができる。
本発明においては、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、アクリルオリゴマーまたはアクリル樹脂を前記A層(アクリル樹脂層)または前記B層(セルロースアシレート層)に添加することもできる。前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂に対する、アクリルオリゴマーまたはアクリル樹脂の割合は、前記アクリル樹脂層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂を基準とした場合に、2〜140質量%が好ましく、より好ましくは4〜100質量%、最も好ましくは6〜60質量%である。前記B層に主成分として用いられる前記第1のセルロースアシレートに対する、アクリルオリゴマーまたはアクリル樹脂の割合は、B層に主成分として用いられる前記第1セルロースアシレートを基準とした場合に、0〜140質量%が好ましく、より好ましくは0〜100質量%、最も好ましくは0〜60質量%である。また、アクリルオリゴマーまたはアクリル樹脂の分子量は、500〜20万が好ましく、更に好ましくは1000〜10万、より更に好ましくは1200〜5万以下であり、特に好ましくは1200〜1万である。この分子量範囲にすることで、前記アクリル樹脂層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂またはセルロースアシレート層の透明性に優れる。
好ましくは、これら成分の構成質量比率が、40〜100質量%、更に好ましくは60〜100質量%、最も好ましくは70〜100質量%である。
これらの好ましい可塑剤は、25℃においてTPP(融点約50℃)以外は液体であり、沸点も250℃以上である。
本発明の光学フィルムには、前記可塑剤以外に、その他の添加剤を用いてもよい。
添加剤の例には、紫外線吸収剤、フッ素系界面活性剤(好ましい添加量は熱可塑性樹脂に対して0.001〜1質量%)、剥離剤(0.0001〜1質量%)、劣化防止剤(0.0001〜1質量%)、光学異方性制御剤(0.01〜10質量%)、赤外線吸収剤(0.001〜1質量%)等が含まれる。
フィルムの表面に凹凸を与えたり、フィルム内部に光散乱性を付与したりするために粒子を添加することもでき、その場合には、粒子の粒径は1〜20μmであるのが好ましく、添加量は2〜30質量%好ましい。これら粒子屈折率は本発明のポリマーフィルムの屈折率との差が0〜0.5であるのが好ましく、例えば、無機材料の粒子の例には、酸化珪素、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粒子が含まれる。有機材料の粒子の例には、アクリル樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、スチレン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が含まれる。粒子により光学フィルムに光拡散性を付与する際には、ヘイズの値に制限はないが、後方散乱性が高くなり全光透過率の低下が大きくなり過ぎない範囲に設定することが好ましい。具体的には、ヘイズは1〜60%が好ましく、更に好ましくは3〜50%である。
本発明の光学フィルムは、例えば、その上に更に0.1μm以上15μm以下の厚みの硬化性樹脂層を設けてもよい。また、本発明の光学フィルムは、該硬化性樹脂層の上に、帯電防止層、高屈折率層、低屈折率層等の光学機能層を設けることもできる。また、硬化性樹脂層が帯電防止層や高屈折率層を兼ねることもできる。
硬化性樹脂層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を光透過性基材上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
また、硬化性樹脂層には、公知のレベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、屈折率調節用無機フィラー、散乱粒子、チキソトロピー剤等の添加剤を用いることができる。
本発明の光学フィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、熱可塑性樹脂と溶媒を含有する少なくとも2種のドープ(A)および(B)を流延基材側から(B)−(A)の順番に同時又は逐次に流延基材上に流延する工程を含み、前記ドープ(A)は重量平均分子量が100万を超えるアクリル樹脂を含有し、前記ドープ(B)は互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含有し、前記ドープ(B)における前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜80/20(質量比)であり、前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする。
式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
式(2A) 0.2≦Y≦1.2
(式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
(式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。)
本発明の第一の態様〜第三の態様の製造方法に対応して、本発明の第一の態様〜第三の態様のフィルムをそれぞれ製造することができる。
本発明の光学フィルムに用いる熱可塑性樹脂の溶液(ドープ)の調製について、その溶解方法は、室温溶解法、冷却溶解法又は高温溶解方法により実施され、更にはこれらの組合せで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号などの各公報にはセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。これらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明の熱可塑性樹脂に対しても、これらの技術を適宜適用できるものである。これらの詳細、特に非塩素系溶媒系については、前記の公技番号2001−1745号の22〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。更に熱可塑性樹脂のドープ溶液は、溶液濃縮、濾過が通常実施され、同様に前記の公技番号2001−1745号の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂を溶解し、ドープを形成する有機溶媒(溶剤とも言う)について記述する。用いる有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒が挙げられ、例えば溶解度パラメーターで17〜22の範囲ものが好ましい。溶解度パラメーターは、例えばJ.Brandrup、E.H等の「PolymerHandbook(4th.edition)」、VII/671〜VII/714に記載の内容のものを表す。低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類、フルオロアルコール類(例えば、特開平8−143709号公報 段落番号[0020]、同11−60807号公報 段落番号[0037]等に記載の化合物)等が挙げられる。
前記ドープ(A)及び(B)に含有される有機溶媒のうちアルコールの割合が有機溶剤全体の10〜50質量%であることが製膜後の支持体(流延基材)上での乾燥時間を短縮し、早く剥ぎ取って乾燥することができるという理由から好ましい。
メチレンクロライドの炭素数1〜4の低級アルコールに対する含有比率は、80/20〜60/40(体積比)の範囲であることがより好ましく、80/20〜70/30であることが特に好ましい。
前記炭素数1〜4の低級アルコールとしては、メタノール、エタノールおよびn−ブタノールが好ましく、メタノールまたはエタノールがより好ましく、メタノールが特に好ましい。
本発明の製造方法では、ドープ(B)の固形分濃度(ドープ乾燥後、固体となる成分の濃度)はその分子量に応じて適切に選ばれるものであるが、溶液流延製膜を行うのに適切な粘度のドープを得るためには、固形分濃度が16〜30質量%であることが好ましい。従来、有機溶剤の含有量を少なくでき、乾燥時間の短縮ができるという理由からは、固形分濃度が30〜50%であることが好ましいと考えられていたところ、本発明では、このような範囲に固形分濃度を調整することが本発明の効果を得る観点からはより好ましいことを見出した。前記ドープ(B)の固形分濃度は、16〜30質量%であることがより好ましく、18〜25質量%であることが特に好ましい。
特に、ドープ(B)において、乾燥後固体となる成分の和の濃度が16〜30質量%であり、かつ、ドープ(B)とドープ(A)の濃度の差が10質量%以内であることが好ましい。
本発明の製造方法では、前記ドープ(A)および前記ドープ(B)の複素粘度がいずれも10〜80Pa・s以下であることが好ましい。複素粘度をこのような範囲とすることにより、溶液流延適性がより向上する傾向にあり好ましい。ここで、本発明におけるドープの複素粘度とは、溶液剪断レオメータ測定によって測定した粘度をいう。
さらに好ましくは、20〜80Pa・sであり、とくに好ましくは、25〜70Pa・sである。粘度の測定は次のようにして行った。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定した。
試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜70℃であり、より好ましくは−5〜35℃である。
さらに、支持体離型性、界面密着性、低カールなどを達成する観点からは、前記ドープ(A)、(B)中の熱可塑性樹脂の組成は、以下の条件を満たすことも好ましい。ドープ(A)中の熱可塑性樹脂中セルロースアシレート系樹脂の占める割合は、50〜100質量%が好ましく、更に好ましくは70〜100質量%、最も好ましくは80〜100質量%である。またドープ(B)中の熱可塑性樹脂中アクリル樹脂の占める割合は、30〜100質量%が好ましく、更に好ましくは50〜100質量%、最も好ましくは70〜100質量%である。
熱可塑性樹脂と有機溶媒を含有する少なくとも2種のドープ(A)および(B)を流延基材側から(A)−(B)の順番に同時又は逐次に流延基材上に流延する工程を含む。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、前記少なくとも2種のドープ(A)、(B)を流延基材側からこの順番に同時に流延基材上に流延することが好ましい。
流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムから剥ぎ取り、更に100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
本発明の製造方法は、前記有機溶媒を除去する工程を含む。
ドラム上で乾燥され、剥離されたウェブの乾燥方法について述べる。ドラムが1周する直前の剥離位置で剥離されたウェブは、千鳥状に配置されたロ−ル群に交互に通して搬送する方法や剥離されたウェブの両端をクリップ等で把持させて非接触的に搬送する方法などにより搬送される。乾燥は、搬送中のウェブ(フィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエ−ブなどの加熱手段などを用いる方法によって行われる。急速な乾燥は、形成されるフィルムの平面性を損なう恐れがあるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で乾燥を行うのが好ましい。支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。収縮は、高温度で乾燥するほど大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているように、乾燥の全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンタ−方式)が好ましい。上記乾燥工程における乾燥温度は、100〜145℃であることが好ましい。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なるが、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。
本発明の製造方法は、前記製膜工程のあとに、製膜した前記積層フィルムを延伸する工程を含んでもよい。
本発明のフィルムの製造では、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が120質量%未満の時に延伸することが好ましい。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量の更に好ましい範囲は10質量%〜50質量%、特に12質量%〜35質量%が最も好ましい。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
また、延伸はフィルム搬送方向(縦方向)に行っても、フィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に行っても、両方向に行ってもよい。
一方、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、可塑剤として揮散しやすい低分子可塑剤を用いる場合は、室温(15℃)〜145℃以下の範囲が好ましい。
同時2軸延伸する場合、延伸温度は110℃〜190℃で行った場合でも本発明のフィルムを得ることができ、同時2軸延伸する場合の延伸温度は、120℃〜150℃であることがより好ましく、130℃〜150℃であることが特に好ましい。また、同時2軸延伸することで、ヘイズはある程度高くなるものの、光学発現性を更に高めることができる。
一方、逐次2軸延伸する場合、先にフィルム搬送方向に平行な方向に延伸し、その次にフィルム搬送方向に直交する方向に延伸することが好ましい。前記逐次延伸を行う延伸温度のより好ましい範囲は上記同時2軸延伸を行う延伸温度範囲と同様である。
本発明のフィルムの製造方法は乾燥工程終了後に熱処理工程を設けることが好ましい。当該熱処理工程における熱処理は乾燥工程終了後に行われればよく、延伸/乾燥工程後直ちに行ってよいし、あるいは乾燥工程終了後に後述する方法で一旦巻き取った後に、熱処理工程だけを別途設けてもよい。本発明においては乾燥工程終了後に一旦、室温〜100℃以下まで冷却した後において改めて前記熱処理工程を設けることが好ましい。これは熱寸法安定性のより優れたフィルムを得られる点で有利であるからである。同様の理由で熱処理工程直前において残留溶媒量が2質量%未満、好ましくは0.4質量%未満まで乾燥されていることが好ましい。
熱処理は150〜200℃の温度で行うことが好ましく、160〜180℃の温度で行うことが更に好ましい。また、熱処理は1〜20分間行うことが好ましく、5〜10分間行うことが更に好ましい。
また、延伸処理されたフィルムは、その後、100℃以上に加熱された水蒸気を吹き付けられる工程を経て製造されてもよい。この水蒸気の吹付け工程を経ることにより、製造される光学フィルムの残留応力が緩和されて、寸度変化が小さくなるので好ましい。水蒸気の温度は100℃以上であれば特に制限はないが、フィルムの耐熱性などを考慮すると、水蒸気の温度は、200℃以下となる。
本発明の光学フィルムを、偏光板の保護フィルムとして使用し、偏光子と接着させる場合には、偏光子との接着性の観点から、アルカリ鹸化処理により表面を親水的にする処理を実施することが特に好ましい。
光学フィルム表面処理としては、その他、酸処理、プラズマ処理、コロナ処理等が知られているが、安価かつ接着性良好なアルカリ鹸化処理を採用できることが求められている。本発明の光学フィルムでは、前記A層の少なくとも一方の表面に特定のセルロースアシレートを主成分とする前記B層を外層として有することから、この前記B層をアルカリ処理(アルカリ鹸化)するだけで、偏光子として通常使用されるポリビニルアルコール偏光子と貼り合わせ時の接着性が良好となる。その結果、偏光板リワーク工程において、偏光子からのフィルム剥がれが発生しにくくなり、リワーク性を改善することができる。
本発明の光学フィルムは互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含むB層を有し、前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜80/20(質量比)であり、前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が前記式(1)ならびに前記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たす。このような構成の前記B層を有することで、本発明の光学フィルムは、アクリル樹脂を主成分とする層が偏光子側の最外層である光学フィルムや、セルロースアシレート1種のみとアクリル樹脂との混合層が偏光子側の最外層である光学フィルムに対して、従来のアルカリ鹸化の手法による偏光子との接着性および各層間の界面密着性に優れる。
本発明の光学フィルムは、偏光子とその少なくとも一方の側に配置された保護フィルムとを有する偏光板において、その保護フィルムとして使用することができる。
すなわち、連続的に供給されるポリビニルアルコール系フィルムなどのポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸して、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内で、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70°傾斜するように、フィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に好適に用いられる。
液晶セルは、TNモード、VAモード、OCBモード、IPSモード又はECBモードであることが好ましい。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
<重量平均分子量測定条件>
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した。測定条件は以下の通りである。
溶媒 テトラヒドロフラン
装置名 TOSOH HLC−8220GPC
カラム TOSOH TSKgel Super HZM−H(4.6mm×15cm)を3本接続して使用した。
カラム温度 25℃
試料濃度 0.1質量%
流速 0.35ml/min
校正曲線 TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000〜1050までの7サンプルによる校正曲線を使用した。
サンプルフィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃、相対湿度60%において、フィルム表面に対し垂直方向及び遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差を測定して、面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出した。
ヘイズの測定は、フィルム試料40mm×80mmを、25℃、相対湿度60%でヘイズメーター"HGM−2DP"{スガ試験機(株)製}を用いJIS K−6714に従って測定した。
作製した光学フィルムから1cm×5cmのサンプルを切り出し、分光エリプソメーター(M−220、日本分光株式会社製)を用いて、サンプルに25℃で応力をかけながら、フィルム面内のレターデーション値を測定し、レターデーション値と応力の関数の傾きから算出した。
JIS P8115に従い、MIT試験機によって折り曲げ試験を行い、耐折回数を測定した。耐折回数は実用上、1回以上が必要である。
なお、耐折回数は10回以上であることが好ましく、30回以上であることがより好ましい。
<ドープの作製>
下記表4の組成に従ってコア層用ドープおよび外層用ドープを作製し、さらに各ドープに熱可塑性樹脂100質量部に対して10質量部の可塑剤Aを添加した。可塑剤Aは、アジピン酸/プロピレングリコールの縮合物(数平均分子量=1000、末端アセチルエステル残基)である。
ここで、実施例1では下記表4に記載の組成のドープ溶媒を用いてドープを調製し、コア層用ドープ(A)は固形分濃度20質量%、複素粘度40Pa・sであり、外層用ドープ(B)は固形分濃度18質量%、複素粘度20Pa・sであった。その他の実施例においても、コア層用ドープ(A)は固形分濃度18〜22質量%、複素粘度20〜60Pa・s、外層用ドープ(B)は固形分濃度16〜22質量%、複素粘度10〜30Pa・sに調製した。
下記表4中、PMMAは、ポリメチルメタクリレート、数平均分子量=150万を表す。
下記表4中に記載したセルロースアシレートCA−1〜CA−6としては、下記表3に記載のものを用いた。なお、下記表3中におけるX、Yおよびnは、前記式(1)、式(2A)および式(2B)におけるX、Yおよびnと同義である。
下記表4に記載のドープを用いて溶液流延製膜を行い、下記表4の構成となるように光学フィルムを作製した。具体的には、3層共流延が可能な流延ギーサーを通して、金属支持体上に、表4に記載の層構成となるように流延した。このとき、金属支持体面側から順にB層、A層、B層となるように流延した。膜厚構成は、各ドープ流量から均一厚みの膜が形成されたと仮定したときの換算膜厚である。金属支持体上にある間、ドープを40℃の乾燥風により乾燥してフィルムを形成した後に剥ぎ取り、フィルム両端をピンで固定し、その間を同一の間隔で保ちつつ105℃の乾燥風で5分間乾燥した。ピンを外した後、さらに130℃で20分間乾燥した。
なお、比較例7のフィルムについては3層共流延が可能な流延ギーサーの中央部のみを用いて単層のPMMAフィルムを製膜した。
比較例8では、外層用ドープ(B)の主成分として、第1のセルロースアシレートの代わりに、コア層用ドープ(A)に用いたPMMAと同じPMMAを用いた。
比較例9では、コア層用ドープ(A)に用いたPMMAを重量平均分子量100万以下のアクリル樹脂であるアクリル2(重量平均分子量670000のPMMA樹脂)を用いた以外は実施例2と同様にして製膜したところ、製膜中に面状が著しく悪化し、フィルムを採取することができなかった。
各実施例及び比較例で作成した光学フィルムをそれぞれ実施例1〜5および比較例1〜7の光学フィルムとした。
得られた各実施例及び比較例の光学フィルムについて、上記の測定方法にしたがって、Re、Rth、ヘイズ、光弾性係数、耐折回数を評価した。その結果を下記表4に記載した。
各実施例及び比較例で作成した各光学フィルム及びフジタックTD60UL(富士フイルム(株)製)を37℃に調温した4.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(けん化液)に1分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を通した。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムを作製した。
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光子を調製した。
このようにして得た偏光子と、前記鹸化処理したフィルムのうちから2枚選び、これらで前記偏光子を挟んだ後、PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とフィルムの長手方向とが直交するようにロールツーロールで貼り合わせて各実施例及び比較例の偏光板を作成した。ここで、偏光子の一方のフィルムは、表4に記載の各実施例または比較例の光学フィルムを鹸化したフィルムとし、他方のフィルムはフジタックTD60ULを鹸化したフィルムとした。
こうして加工した各実施例及び比較例の偏光板を、吸収軸と平行に4cm角の大きさで切り取り、綜研化学社製粘着剤SK−2057を用いて、サンプル面をガラス板に貼り合せた。この偏光板を、吸収軸に対して45°方向に剥離し、偏光子とサンプルフィルムの剥離の程度から、以下の基準で評価した。ランク4および5が実用上求められるレベルである。
5:ガラス側にフィルムの剥げ残りが発生しない。
4:ガラス側に剥げ残ったフィルムの面積が貼り合わせ面積の1/4以下。
3:ガラス側に剥げ残ったフィルムの面積が貼り合わせ面積の1/4を超え、1/2以下。
2:ガラス側に剥げ残ったフィルムの面積が貼り合わせ面積の1/2を超え、3/4以下。
1:ガラス側に剥げ残ったフィルムの面積が貼り合わせ面積の3/4を超える。
評価した結果を下記表4に記載した。
一方、比較例1の光学フィルムは、外層中の炭素数3〜7のアシル基の置換度が高いセルロースアシレートの比率が高く、脆性およびリワーク性が悪化したことがわかった。
比較例2の光学フィルムは、前記式(1)〜(3)をいずれも満たさないセルロースアシレートとして低置換度のセルロースアセテートCA−2をコア層および外層に添加したものであり、得られたフィルムはヘイズが高く、各層間の密着性改良も不十分であった。いかなる理論に拘泥するものではないが、特にCA−2がコア層中のアクリル樹脂と混じり合わなかったことが主な原因と推測された。
比較例3の光学フィルムは、プロピオニル置換度が高く前記式(2)および式(3)をいずれも満たさないセルロースアシレートCA−3をコア層および外層に添加したものであり、密着改良効果が不十分であった。
比較例4の光学フィルムは、前記式(1)を満たさないセルロースアシレートCA−4をコア層および外層に添加したものであり、得られたフィルムはヘイズが高く、各層間の密着性改良も不十分であった。いかなる理論に拘泥するものではないが、特にCA−4がコア層中のアクリル樹脂と混じり合わなかったことが主な原因と推測された。
比較例5の光学フィルムは、ブチリル置換度が高く前記式(2)および式(3)をいずれも満たさないセルロースアシレートCA−5をコア層および外層に添加したものであり、ヘイズが高かった。いかなる理論に拘泥するものでもないが、特にCA−5が外層の第一のセルロースアシレートと混じり合わなかったことが主な原因と推測された。
比較例6の光学フィルムは、PMMA/CA−1/PMMAの3層共流延フィルムであり、外層に第二の樹脂成分として第2のセルロースアシレートをブレンドしなかった例であり、各層間の密着性が不十分であった。
比較例7の光学フィルムは、PMMAとセルロースアシレートCA−3をブレンドした単層フィルムであり、リワーク性が悪かった。
比較例8の光学フィルムは、外層用ドープ(B)の主成分として、第1のセルロースアシレートの代わりに、コア層用ドープ(A)に用いたPMMAと同じPMMAを用いたフィルムであり、リワーク性が悪かった。
市販の液晶テレビ(IPSモードのスリム型42型液晶テレビ)から、液晶セルを挟んでいる偏光板を剥がし取り、前記作製した各実施例及び比較例の偏光板を、表4に記載の各実施例及び比較例の光学フィルム側が液晶セル側に配置されるように、粘着剤を介して液晶セルに再貼合した。組みなおした液晶テレビを、50℃、相対湿度80%の環境で3日間保持した後に、25℃、相対湿度60%の環境に移し、黒表示状態で点灯させ続け、48時間後に目視観察して、光ムラを評価した。
その結果、各実施例の液晶表示装置は、各比較例の液晶表示装置に比べて、光ムラが少ないことがわかった。
102 ドラム
14 流延ダイ
12 ドープ
PS 流延開始位置
105 凝縮板
53 液受け
56 回収タンク
36 フィルム
37 剥ぎ取りローラ
Claims (20)
- 重量平均分子量が100万を超えるアクリル樹脂を含むA層と、
該A層の少なくとも一方の面に積層された、互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含むB層を有し、
前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜80/20(質量比)であり、
第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
式(2A) 0.2≦Y≦1.2
(式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
(式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。) - 前記B層の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2B)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
- 前記B層の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2A)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
- 前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂が、重量平均分子量が100万を超え180万以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
- 前記B層に含まれるポリマーの重量平均分子量が10万以上であって、セルロースアシレートのみであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
- 前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂が、ポリメチルメタクリレートからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
- 前記A層が、前記式(1)ならびに式(2)および(3)の少なくとも一方を満たすセルロースアシレートを含み、
前記アクリル樹脂の該セルロースアシレートに対する含有比が95/5〜80/20(質量比)であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。 - 前記B層の前記第1のセルロースアシレートのアシル基がアセチル基からなり、アセチル置換度が2.7〜3.0であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
- 前記B層の膜厚が、1μm〜10μmであり、
フィルム全体の膜厚が20μm〜80μmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。 - ヘイズの値が0.3%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
- 光弾性係数の値が−5.0×10-12Pa-1〜5.0×10-12Pa-1であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
- 下記式(I)で定義される面内方向のリターデーションRe及び下記式(II)で定義される膜厚方向のリターデーションRthが、25℃相対湿度60%環境下において下記式(III)及び下記式(IV)を満たすことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
式(I) Re=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(III) |Re|<10nm
式(IV) |Rth|<25nm
(式(I)〜(IV)中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(μm)である。) - 熱可塑性樹脂と溶媒を含有する少なくとも2種のドープ(A)および(B)を流延基材側から(B)−(A)の順番に同時又は逐次に流延基材上に流延する工程を含み、
前記ドープ(A)は重量平均分子量が100万を超えるアクリル樹脂を含有し、
前記ドープ(B)は互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含有し、
前記ドープ(B)における前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜80/20(質量比)であり、
前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする液晶表示装置の偏光板保護フィルムの製造方法。
式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
式(2A) 0.2≦Y≦1.2
(式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
(式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。) - 前記ドープ(B)の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2B)を満たすことを特徴とする請求項13に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルムの製造方法。
- 前記ドープ(B)の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2A)を満たすことを特徴とする請求項13または14に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルムの製造方法。
- 前記溶媒として、メチレンクロライドと炭素数1〜4の低級アルコールを使用し、メチレンクロライドの炭素数1〜4の低級アルコールに対する含有比率が90/10〜60/40(体積比)の範囲であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルムの製造方法。
- 前記ドープ(B)に含まれるポリマーの重量平均分子量が10万以上であって、セルロースアシレートのみであることを特徴とする請求項13〜16のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルムの製造方法。
- 請求項13〜17のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とする液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
- 偏光子と、請求項1〜12および18のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルムを含むことを特徴とする偏光板。
- 請求項1〜12および18のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルムまたは請求項19に記載の偏光板を含むことを特徴とする液晶表示装置。
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