JP5542086B2 - 光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

Info

Publication number
JP5542086B2
JP5542086B2 JP2011080593A JP2011080593A JP5542086B2 JP 5542086 B2 JP5542086 B2 JP 5542086B2 JP 2011080593 A JP2011080593 A JP 2011080593A JP 2011080593 A JP2011080593 A JP 2011080593A JP 5542086 B2 JP5542086 B2 JP 5542086B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
cellulose acylate
layer
formula
liquid crystal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2011080593A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2012215688A (ja
Inventor
克己 篠田
元 中山
修介 有田
一男 蒲原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Corp
Original Assignee
Fujifilm Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujifilm Corp filed Critical Fujifilm Corp
Priority to JP2011080593A priority Critical patent/JP5542086B2/ja
Publication of JP2012215688A publication Critical patent/JP2012215688A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5542086B2 publication Critical patent/JP5542086B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Polarising Elements (AREA)
  • Liquid Crystal (AREA)

Description

本発明は、光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、低消費電力で、薄層化が可能であることから、TVやパーソナルコンピューター等の画像表示装置として広く採用されている。液晶表示装置は液晶セルの両側に偏光板を設置したもので、偏光板はヨウ素や染料を吸着配向させた偏光フィルムの両側を透明な樹脂層で挟み込んだ構成をしている。このような透明な樹脂層は偏光子を保護する目的を持ち、いわゆる偏光板保護フィルムとしてセルロースエステルフィルムが良く使用されている。
近年液晶表示装置はその普及にともない、更なる薄層化、また高性能化が求められている。
セルロースエステルフィルムは透過率が高く、アルカリ水溶液に浸漬させてその表面を鹸化し親水化することで、偏光子との優れた密着性を実現している。しかしながら、液晶表示装置に組みこんだ場合に、特に経年劣化等により変形した液晶表示装置内の他の部材がセルロースエステルフィルムと接したときに表示ムラを生じ易いという問題が、近年著しい薄型化の要請から生じてきている。
この課題を解決するために、セルロースエステルに代わる偏光板保護フィルムとして、光弾性係数が小さいアクリル樹脂フィルムが提案されたが、偏光子との接着性は十分に高いものとは言えず、アクリル単層フィルムは偏光子との貼り合せが困難であることから不満が残るものであった。
そこで、それぞれのフィルムの課題を、これらフィルムを積層することにより解決し、従来のアルカリ鹸化の手法によって偏光子との優れた密着性を得られ、液晶表示装置に組みこんだ場合に他の部材が偏光板保護フィルムと接しても表示ムラを生じにくい偏光板保護フィルムを提供する技術が提案された(特許文献1参照)。
特許文献1では、セルローストリアセテートとアクリル樹脂の積層フィルムを共流延法にて作製する技術が公開されている。例えば、同文献の実施例にはセルローストリアセテートフィルム/アクリル樹脂フィルム/セルローストリアセテートフィルム構成が記載されている。また、同文献では一般的な方法で表層のセルローストリアセテートフィルムをけん化し、偏光子と貼り合わせて偏光板を製造できることが記載されている。しかし、同文献の実施例に用いられていたアクリル樹脂は物質として具体的に特定できる記載はなかった。
別の構成として、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の積層フィルムにおいて、各層をアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂を含有させた混合層とすることで、折り曲げ耐性と表面硬度を高めた光学フィルムが開示されている(特許文献2および3)。これらの文献では、積層フィルムの表層ではアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂をアクリル樹脂の割合が30〜50質量%(特許文献2)または85〜95質量%(特許文献3)となるように含有させ、表層以外の層ではアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂をアクリル樹脂の割合が55〜80質量%となるように含有させることで、透明性も高く、折り曲げ耐性と表面硬度も高くすることができると記載されている。また、特許文献2および3では用いられるアクリル樹脂の重量平均分子量は、製造上の観点から100万以下とされることが記載されている。
ここで、特許文献2および3に記載の発明で用いることができるセルロースエステル樹脂として、アシル置換度が2.0〜3.0、炭素数3〜7のアシル置換度が1.2〜3.0で重量平均分子量が75000以上のものが記載されており、2種以上のセルロースエステル樹脂を混合して用いることもできると記載されている。しかしながら、特許文献2および3の実施例ではいずれもアセチル置換度0.19、プロピオニル置換度2.56のセルロースエステル樹脂を1種のみ用いて、アクリル樹脂と混合した表層およびその他の層を形成した例のみしか具体的な検討はされていなかった。また、特許文献2および3の実施例では、得られた積層フィルムを偏光子と貼り合わせて偏光板を製造するときに、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の混合層である表層に対して、コロナ処理を施してから、アクリル接着剤を用いて偏光子と貼合していた。
一方、偏光板や液晶表示装置を製造するときの歩留まりの向上などを目的として、偏光板保護フィルムと偏光子を一度貼り合わせて偏光板を製造した後、偏光板を液晶セルのガラス基板に一度貼り合わせた後に再び偏光板を剥離して貼り直しできる性能、いわゆるリワーク性も、偏光板保護フィルムに求められている。
特開2001−215331号公報 国際公開WO2010/116857号公報 国際公開WO2010/116858号公報
本発明者らが特許文献1に記載の方法で、共流延でセルローストリアセテートフィルム/アクリル樹脂フィルム/セルローストリアセテートフィルムを製造したところ、得られたフィルムは共流延界面密着性に問題があり、リワーク時に層間剥離してフィルムの剥げ残りが生じる問題があることが新たにわかった。
一方、本発明者らが特許文献2および3に記載の方法でアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の積層フィルムにおいて、各層をアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂を含有させた混合層としたところ、従来のアルカリ鹸化による手法で偏光子と(メタ)アクリル系樹脂フィルムを貼り合わせると、偏光子との接着性がセルロースエステルフィルムに劣る問題があることがわかった。そのため偏光子との接着性を向上させるための易接着処理(例えば、コロナ処理)をフィルム面に行うか、紫外性線硬化型の接着剤を用いて接着層を設ける等、従来のアルカリ鹸化による手法よりも工程が増え、歩留まり低下の要因となるとともに、偏光板保護フィルムの製法としてもコスト上の問題が生じることがわかった。
また、本発明者らが特許文献2および3に記載の方法において、積層フィルムの外層や各層のアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の含有比率を変化させるよう検討したものの、単にこれら2成分の含有比率を変化させただけでは、従来のアルカリ鹸化の手法による偏光子との接着性を改善できないどころか、含有比率を変化させると得られるフィルムのヘイズが高くなってしまう問題も生じることがわかった。
本発明が解決しようとする課題は、光弾性係数が小さく、低ヘイズであり、従来のアルカリ鹸化の手法による偏光子との接着性および各層間の界面密着性に優れる光学フィルムを提供することである。
本発明者らが上記課題を解決するために鋭意検討したところ、アクリル樹脂を主成分とする層とセルロースアシレートを主成分とする外層を共流延製膜するにあたり、アクリル樹脂の重量平均分子量を大幅に高くし、かつ、セルロースアシレートを主成分とする外層に特定の置換度の第二のセルロースアシレートを適切な割合で添加することで、透明性に優れ、従来のアルカリ鹸化の手法による偏光子との接着性および各層間の界面密着性に優れる光学フィルムを得られることを見出すに至った。すなわち、上記課題を解決することができ、本発明の完成に至った。
以下の構成の本発明により、上記課題は解決することができる。
[1] 重量平均分子量が100万を超えるアクリル樹脂を含むA層と、
該A層の少なくとも一方の面に積層された、互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含むB層を有し、
前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜8020(質量比)であり、前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする光学フィルム。
式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
式(2A) 0.2≦Y≦1.2
(式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
(式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。)
[2] 前記B層の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2B)を満たすことを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
[3] 前記B層の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2A)を満たすことを特徴とする[1]または[2]に記載の光学フィルム。
[4] 前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂が、重量平均分子量が100万を超え180万以下であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[5] 前記B層に含まれる重量平均分子量10万以上のポリマーが、セルロースアシレートのみであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[6] 前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂が、ポリメチルメタクリレートからなることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[7] 前記A層が、前記式(1)ならびに式(2)および(3)の少なくとも一方を満たすセルロースアシレートを含み、前記アクリル樹脂の該セルロースアシレートに対する含有比が95/5〜80/20(質量比)であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[8] 前記B層の前記第1のセルロースアシレートのアシル基がアセチル基からなり、アセチル置換度が2.7〜3.0であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[9] 前記B層の膜厚が、1μm〜10μmであり、フィルム全体の膜厚が20μm〜80μmであることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[10] ヘイズの値が0.3%以下であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[11] 光弾性係数の値が−5.0×10-12Pa-1〜5.0×10-12Pa-1であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[12] 下記式(I)で定義される面内方向のリターデーションRe及び下記式(II)で定義される膜厚方向のリターデーションRthが、25℃相対湿度60%環境下において下記式(III)及び下記式(IV)を満たすことを特徴とする、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(I) Re=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(III) |Re|<10nm
式(IV) |Rth|<25nm
(式(I)〜(IV)中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(μm)である。)
[13] 熱可塑性樹脂と溶媒を含有する少なくとも2種のドープ(A)および(B)を流延基材側から(B)−(A)の順番に同時又は逐次に流延基材上に流延する工程を含み、前記ドープ(A)は重量平均分子量が100万を超えるアクリル樹脂を含有し、前記ドープ(B)は互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含有し、前記ドープ(B)における前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜8020(質量比)であり、前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
式(2A) 0.2≦Y≦1.2
(式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
(式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。)
[14] 前記ドープ(B)の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2B)を満たすことを特徴とする[13]に記載の光学フィルム。
[15] 前記ドープ(B)の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2A)を満たすことを特徴とする[13]または[14]に記載の光学フィルム。
[16] 前記溶媒として、メチレンクロライドと炭素数1〜4の低級アルコールを使用し、メチレンクロライドの炭素数1〜4の低級アルコールに対する含有比率が90/10〜60/40(体積比)の範囲であることを特徴とする[13]〜[15]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[17] 前記ドープ(B)に含まれるポリマーの重量平均分子量が10万以上であって、セルロースアシレートのみであることを特徴とする[13]〜[16]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[18] [13]〜[17]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とする光学フィルム。
[19] 偏光子と、[1]〜[12]および[18]のいずれか一項に記載の光学フィルムを含むことを特徴とする偏光板。
[20] [1]〜[12]および[18]のいずれか一項に記載の光学フィルムまたは[19]に記載の偏光板を含むことを特徴とする液晶表示装置。
本発明によれば、光弾性係数が小さく、低ヘイズであり、従来のアルカリ鹸化の手法による偏光子との接着性および各層間の界面密着性に優れる光学フィルムおよびその製造方法を提供することができる。
ドラム流延装置の一例を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。(メタ)アクリルとは、メタクリル又はアクリルを表し、(メタ)アクリロイルとは、メタクリロイル又はアクリロイルを表す。また、本明細書中、「主成分とする」とは、50質量%以上であることを意味する。例えばセルロースアシレート層に含まれるセルロースアシレートの主成分とは、セルロースアシレート層に含まれるセルロースアシレートのうち、50質量%以上を占めるセルロースアシレートのことを意味する。
[光学フィルム]
本発明の光学フィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、重量平均分子量が100万を超えるアクリル樹脂を含むA層と、
該A層の少なくとも一方の面に積層された、互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含むB層を有し、
前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜8020(質量比)であり、前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする。
式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
式(2A) 0.2≦Y≦1.2
(式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
(式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。)
なお、以下において本発明のフィルムの前記A層をアクリル樹脂層とも言い、前記B層をセルロースアシレート層とも言う。
本発明のフィルムは、前記B層の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(1)および前記式(2A)を満たす第一の態様と、前記式(1)および前記式(2B)を満たす第二の態様と、前記式(1)、前記式(2A)および前記式(2B)を満たす第三の態様があり、いずれも好ましい。第二の態様と第三の態様がより好ましく、第三の態様が特に好ましい。
本発明のフィルムでは、このような重量平均分子量が従来光学フィルム分野に用いられていたアクリル樹脂よりもはるかに大きいアクリル樹脂を用い、かつ、セルロースアシレートを主成分とする外層に、上記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たす置換度の第二のセルロースアシレートを適切な割合で添加することで、光弾性係数が小さく、低ヘイズであり、従来のアルカリ鹸化の手法による偏光子との接着性および各層間の界面密着性に優れる光学フィルムを得られる。
いかなる理論に拘泥するものでもないが、外層であるB層の第二のセルロースアシレートの置換度を上記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たす範囲に制御することで、前記外層であるB層の両表面(前記A層側の界面と、偏光板の偏光子側の界面)において前記第二のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基を適切な置換度まで減らして、外層であるB層の両表面の疎水性質を適度に抑制することができたと推定される。その結果、前記B層と前記A層との層間密着性を改善することができ、前記B層のアルカリ鹸化適性を高めて従来のアルカリ鹸化の手法による偏光子との接着性を改善することができたと推定される。
さらに、同様にいかなる理論に拘泥するものでもないが、上記構成に加えて重量平均分子量が従来光学フィルム分野に用いられていたアクリル樹脂よりもはるかに大きいアクリル樹脂を用い、かつ、セルロースアシレートを主成分とする外層に上記式(1)を満たす置換度の第二のセルロースアシレートを適切な割合で添加することで、前記A層とB層の界面の相溶性も高めることができ、積層フィルム全体のヘイズを低減し、透明性が高い光学フィルムを得られたと推定される。
また、本発明のフィルムでは前記B層は前記A層の一方の面のみに設けることができ、すなわち、前記B層は前記A層の少なくとも一方の外層(表層とも言う)である。さらに、フィルムの物性や環境変化に対する挙動を揃えるため、前記B層が前記A層の両面に設けられて、B層/A層/B層となる態様が好ましい。すなわち、前記B層が前記A層の両方の外層であり、前記A層がコア層であることがより好ましい。
以下、本発明のフィルムの好ましい態様について説明する。
<フィルム構成および特性>
(セルロースアシレート(B)層とアクリル樹脂(A)層の比率)
本発明のフィルムは、前記アクリル樹脂(A)層の膜厚が20〜60μmであることが好ましく、前記セルロースアシレート(B)層の膜厚が(複数のB層を含む場合はいずれのB層も)1〜10μmであることが好ましい。
また、前記セルロースアシレート(B)層の膜厚は1層当り1〜10μmであることが好ましく、1〜8μmであることがより好ましく、1〜5μmであることが特に好ましい。前記アクリル樹脂(A)層の膜厚は20〜60μmであることが好ましく、25〜50μmであることがより好ましく、25〜40μmであることが特に好ましい。
また、積層体としての光学フィルム全体の膜厚は、11〜240μmが好ましく、より好ましくは15〜150μmであり、特に好ましくは20〜80μmであり、より特に好ましくは、20〜50μmである。
本発明のフィルムは、前記B層の膜厚が、1μm〜10μmであり、フィルム全体の膜厚が20μm〜80μmであることが好ましい。
さらに、全膜厚に占める、前記セルロースアシレート層の合計膜厚の割合が、40%以下であることが好ましく、1〜30%であることがより好ましく、5〜20%であることが特に好ましい。ただし、ここでいうセルロースアシレート層の合計膜厚とは、セルロースアシレート層が2層ある場合は2層の合計膜厚を意味する。
これらの関係を満たすことで、流延時の面状がより良好となる傾向にある。さらに、得られる光学フィルムの界面密着性、カール性、吸水量低減などを好ましく調整することができる。
(レターデーション)
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。本願明細書においては、特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
Figure 0005542086
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
式(11)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
式(12)
Rth={(nx+ny)/2−nz}xd
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
本発明のフィルムは、下記式(I)で定義される面内方向のリターデーションRe及び下記式(II)で定義される膜厚方向のリターデーションRthが、25℃相対湿度60%環境下において下記式(III)及び下記式(IV)を満たし、かつ、25℃相対湿度10%環境下で測定される前記Rthと、25℃相対湿度80%環境下で測定される前記Rthとの差の絶対値が、10nm以下であることが好ましい。
式(I) Re=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(III) |Re|<10nm
式(IV) |Rth|<25nm
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(μm)である。)
本発明のフィルムは、|Re|<10nmを満たすことが好ましく、|Re|≦5nmであることがより好ましく、|Re|≦2nmであることが特に好ましい。
また、本発明のフィルムは、|Rth|<25nmを満たすことが好ましく、|Rth|≦15nmであることがより好ましく、|Rth|≦10nmであることが特に好ましい。
(ヘイズ)
本発明のフィルムは、ヘイズが0.7%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることが特に好ましい。ヘイズを0.7%以下とすることでフィルムの透明性がより高くなり、光学フィルムとしてより用いやすくなる。
(光弾性係数)
本発明のフィルムは、光弾性係数の絶対値が5×10-12Pa-1以下であることが好ましく、3×10-12Pa-1以下であることがより好ましく、1×10-12Pa-1以下であることが特に好ましい。光弾性係数は物質固有の性質であり、光弾性係数をほとんど発現しない物質はむしろまれである。例えば、高分子樹脂の多くは、外部応力や熱応力により複屈折を発現する。光弾性係数は、印加される応力の方向に関連して符号を定義することができる。即ち、媒体(高分子樹脂) に引っ張り応力を加えた場合、引っ張り応力と平行な方向に偏光面を有する偏光に対する屈折率nparaと、それに直交する方向に偏光面を有する偏光に対する屈折率に対して、下記(21) 式で表わされる光弾性係数cの正負で光弾性係数の符号が表現される。
c=Δn/σ=(npara−nperp)/σ ・・・・・(21)
つまり、nparaの方がよりnperpも大きい場合に光弾性係数は正、小さい場合は負となる。 本発明のフィルムの光弾性係数が−5×10-12〜5×10-12Pa-1の範囲であれば、本発明のフィルムを液晶表示装置に組み込んだときの表示ムラが抑制でき、好ましい。特に、本発明のフィルムを延伸後に液晶表示装置に組み込むときに上記範囲であることが好ましい。
(フィルム幅)
本発明のフィルムは、フィルム幅が400〜2500mmであることが好ましく、1000mm以上であることがより好ましく、1500mm以上であることが特に好ましく、1800mm以上であることがより特に好ましい。
<アクリル樹脂(A)層>
本発明のフィルムは、アクリル樹脂を含む前記アクリル樹脂層(A)層を有し、前記アクリル樹脂層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂の重量平均分子量が100万を超える。
(アクリル樹脂)
本発明に用いられるアクリル樹脂には、メタクリル系樹脂も含まれ、アクリレート/メタクリレートの誘導体、特にアクリレートエステル/メタクリレートエステルの(共)重合体がよく知られている。前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜100質量%、及びこれと共重合可能な他の単量体単位0〜50質量%からなるものが、光弾性係数の小さいフィルムを得るために好ましく、メチルメタクリレート単位100質量%からなるポリメチルメタクリレートであることがより好ましい。
アクリル樹脂において、前記共重合可能な他の単量体としては、アルキル基の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して共重合成分として用いることができる。
これらの中でも、前記アクリル樹脂の耐熱分解性や流動性の観点から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が好ましく、メチル(メタ)アクリレートやn−ブチル(メタ)アクリレートがより好ましく、メチル(メタ)アクリレートが特に好ましく用いられる。
なお、高温、高湿の環境にも性能変化の少ない透明性の高い光学フィルムを形成する場合は、アクリル樹脂は、共重合成分として脂環式アルキル基を含有するか、又は分子内環化により分子主鎖に環状構造を形成させたアクリル樹脂も用いることができる。分子主鎖に環状構造を形成させたアクリル樹脂の例としては、一つの好ましい態様としてラクトン環含有重合体を含むアクリル系の熱可塑性樹脂が挙げられ、好ましい樹脂組成や合成方法は特開2006−171464号公報に記載されている。また、別の好ましい態様としてグルタル酸無水物を共重合成分として含有する樹脂が挙げられ、共重合成分や具体的合成方法については特開2004−070296号公報に記載されている。
(アクリル樹脂の重量平均分子量)
ここで、アクリル樹脂として一般に分子量10万程度のものが製膜に用いられている。詳しくは、溶融製膜では、高分子量のアクリル樹脂フィルムを製膜することがそもそも不可能である。また、アクリル樹脂フィルムは溶液製膜によっても製膜可能だが、その場合は溶液流延しやすい粘度のドープを調製する必要がある。従来、分子量30万程度のアクリル樹脂であれば、流延適性が高いドープを調製しやすく、このようなアクリル樹脂が従来製膜に用いられていた。
これに対し、本発明のフィルムでは、前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂の重量平均分子量が100万を超える。前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂の重量平均分子量は100万を超え300万以下であることが好ましく、100万を超え180万以下であることがより好ましく、110万を超え180万以下であることが特に好ましい。
アクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
アクリル樹脂の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法を用いることができる。
アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。
(アクリル樹脂と併用できる他の熱可塑性樹脂)
アクリル樹脂は、更に別の熱可塑性樹脂を含むことができる。本発明においてアクリル樹脂と併用できる他の熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が100℃以上、全光線透過率が85%以上の性能を有するものが、前記アクリル樹脂と混合してフィルム状にした際に、耐熱性や機械強度を向上させる点において好ましい。
前記A層(アクリル樹脂)層中におけるアクリル樹脂とその他の熱可塑樹脂成分の含有割合は、[アクリル樹脂/(全熱可塑樹脂)]×100の質量割合で、好ましくは30〜99質量%、より好ましくは50〜97質量%、特に好ましくは60〜95質量%、より特に好ましくは80〜95質量%である。前記アクリル樹脂層中のアクリル樹脂の含有割合が30質量%以上であれば、耐熱性を十分に発揮できるため好ましい。
前記その他の熱可塑性樹脂としては、例えば、セルロースアシレート;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体;などが挙げられる。ゴム質重合体は、表面に本発明における環重合体と相溶し得る組成のグラフト部を有するのが好ましく、また、ゴム質重合体の平均粒子径は、フィルム状とした際の透明性向上の観点から、100nm以下である事が好ましく、70nm以下である事が更に好ましい。
前記その他の熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂と熱力学的に相溶する樹脂が好ましく用いられる。このような他の熱可塑性樹脂としては、セルロースアシレートや、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを有するアクリロニトリル−スチレン系共重合体やポリ塩化ビニル樹脂等が好ましく挙げられる。それらの中でもセルロースアシレートおよびアクリロニトリル−スチレン系共重合体が、ガラス転移温度が120℃以上、面方向の100μm当たりの位相差が20nm以下で、全光線透過率が85%以上である光学フィルムが容易に得られるので好ましい。
前記セルロースアシレートとしては、特に制限はない。その中でも後述する前記B層において第2のセルロースアシレートとして含まれる、前記式(1)ならびに前記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすセルロースアシレートが、前記B層とも界面における密着性を高める観点から、好ましい。
本発明のフィルムは、前記A層が、前記式(1)ならびに前記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすセルロースアシレートを含み、前記アクリル樹脂の該セルロースアシレートに対する含有比が95/5〜80/20(質量比)であることがより好ましく、93/7〜80/20(質量比)であることが特に好ましい。
なお、前記式(1)ならびに前記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすセルロースアシレートの好ましい態様の詳細については後述する。
前記アクリロニトリル−スチレン系共重合体としては、具体的には、その共重合比がモル単位で、1:10〜10:1の範囲のものが有用に使用される。
<セルロースアシレート(B)層>
本発明のフィルムは、前記A層の表面に少なくとも一方の面に積層された、互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含むB層を有する。さらに本発明のフィルムは、前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜8020(質量比)であり、前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする。
式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
式(2A) 0.2≦Y≦1.2
(式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
(式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。)
(セルロースアシレートの種類)
本発明に用いられるセルロースアシレートは、前記B層の前記第1のセルロースアシレートは特に定めるものではなく、前記第2のセルロースアシレートは前記式(1)ならびに前記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たす限りは特に制限はない。原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
(セルロースアシレートのアシル置換度)
本発明の光学フィルムにおいて、前記B層は互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含む。
(1)第1のセルロースアシレート
前記B層の前記第1のセルロースアシレートとして用いられるセルロースアシレートは、アシル基の総置換度が1.2以上3.0以下であることが好ましい。
さらに、本発明に用いられるセルロースアシレートは、アシル基の総置換度をTA全、炭素数が2のアシル基の置換度をTA2、炭素原子数が3以上7以下のアシル基の置換度をTA3としたときに、以下の条件を満たすことが好ましい。以下の範囲にすることで、隣接層との密着性、ドラム剥離性、フィルムのカール低減の観点で優れた光学フィルムを得ることができる。
2.2≦TA全≦3.0
1.5≦TA2≦3.0
0.0≦TA3≦0.7
また、前記第1のセルロースアシレートは、より好ましくは以下の条件を満たすセルロースアシレートである。
2.5≦TA全≦3.0
2.4≦TA2≦3.0
0.0≦TA3≦0.1
さらに好ましくは、TA2、すなわちアセチル置換度が2.8〜2.94である。また、セルロースアシレートは、TA全が2.8〜2.94であることが特に好ましく、TA3は0であることが特に好ましい。セルロースアシレートは、アセチル置換度が2.8〜2.94のセルロースアセテートであることがより特に好ましい。
特にセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これらの中でより好ましいセルロースアシレートは、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートであり、更に好ましくはセルロースアセテートである。
本発明のフィルムでは、前記B層の前記第1のセルロースアシレートのアシル基がアセチル基からなり、アセチル置換度が2.7〜3.0であることが特に好ましい。
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めることができる。
(2)第2のセルロースアシレート
本発明の光学フィルムにおいて、前記B層の前記第2のセルロースアシレートとして用いられるセルロースアシレートは、前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする。
式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
式(2A) 0.2≦Y≦1.2
(式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
(式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。)
前記第2のセルロースアシレートは、前記式(1)について、2.55≦X+Y≦2.85を満たすことが好ましく、2.60≦X+Y≦2.95を満たすことがより好ましく、
2.65≦X+Y≦2.90を満たすことが特に好ましい。
前記第2のセルロースアシレートは、前記式(2A)について、0.2≦Y<1.2を満たすことが好ましく、0.4≦Y<1.0を満たすことがより好ましく、0.6≦Y<0.9を満たすことが特に好ましい。
前記第2のセルロースアシレートは、前記式(2B)について、下記式(2B')を満たすことが好ましく、下記式(2B'')を満たすことがより好ましい。なお、式(2B')、式(2B'')におけるDS(n)とnは、式(2B)と同義である。
式(2B') −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.25n+2.35
式(2B'') −0.15n+1.25≦DS(n)≦−0.22n+2.1
本発明の光学フィルムにおいて、前記B層の前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比は90/10〜8020(質量比)である。前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比は、90/10〜70/30(質量比)であることが好ましく、90/10〜80/20(質量比)であることがより好ましい。
(セルロースアシレートの重量平均分子量)
本発明に用いられるセルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)は、前記セルロースアシレート層に主成分として用いられる前記セルロースアシレートの重量平均分子量が5万〜50万であることがフィルム面状を改善する観点から好ましく、8万〜40万であることがより好ましく、10万〜30万であることが特に好ましい。
本発明に用いられるセルロースアシレートの重量平均分子量は、特にアクリル樹脂との密着性の観点からは、75000〜300000の範囲であることがより好ましく、100000〜240000の範囲内であることが更に好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。セルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)が75000以上であればセルロースアシレート層自身の自己成膜性や密着の改善効果が発揮され、好ましい。本発明では前記第1のセルロースアシレートと前記第2のセルロースアシレートに加えて、さらにその他のセルロースアシレートを混合して用いることもできる。
(B層に含まれるその他のポリマー)
本発明の光学フィルムは、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、前記セルロースアシレート(B)層が、前記第1のセルロースアシレートおよび前記第2のセルロースアシレート以外にその他のポリマー成分を含んでいてもよい。その他のポリマー成分としては、特に制限はないが、例えば、アクリル樹脂や、前記A層の主成分として用いられている前記アクリル樹脂などを挙げることができる。
本発明の光学フィルムは、前記B層に含まれる重量平均分子量10万以上のポリマーが、セルロースアシレートのみであることが好ましい。
<添加剤>
本発明の光学フィルムには、前記アクリル樹脂層および前記セルロースエステル層のそれぞれにおいて、主原料となる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂とともに、添加剤を含有していてもよい。
(可塑剤)
本発明のフィルムには、光学フィルムに柔軟性を与え、寸法安定性を向上させ、耐湿性を向上させるために可塑剤を用いることが好ましい。
本発明では、分子量500〜10万の樹脂成分を有する可塑剤を好ましく用いることができる。例えば、前述のアクリル樹脂、特開2002−22956号公報に記載のポリエステル及び又はポリエーテル、特開平5−197073号公報に記載のポリエステルエーテル、ポリエステルウレタン又はポリエステル、特開平2−292342号公報に記載のコポリエステルエーテル、特開2002−146044号公報等記載のエポキシ樹脂又はノボラック樹脂等が挙げられる。
また、耐揮発性、ブリードアウト、低ヘイズなどの点で優れる可塑剤としては、例えば特開2009−98674号公報に記載の両末端が水酸基であるポリエステルジオールを用いるのが好ましい。また、光学フィルムの平面性や低ヘイズなどの点で優れる可塑剤としては、WO2009/031464号公報に記載の糖エステル誘導体も好ましい。
《重縮合エステル》
本発明では、前記高分子可塑剤として、重縮合エステルを用いることが好ましい。
本発明で使用される重縮合エステルは、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸から選ばれた少なくとも1種以上のジカルボン酸と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールに、炭素数6〜20の芳香族環含有ジオールから選ばれた少なくとも1種類以上のジオールから合成される。合成方法としては、ジカルボン酸とジオールの脱水縮合反応、又は、ジオールへの無水ジカルボン酸の付加及び脱水縮合反応などの公知の方法を利用することができる。
以下、本発明における重縮合エステルの合成に好ましく用いることができるジカルボン酸及びジオールについて説明する。
ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のいずれも用いることができる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。なかでも、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
また芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−キシリデンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
これらの中でもより好ましい脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。特に好ましくは、脂肪族ジカルボン酸としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸であり、芳香族ジカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸である。より特に好ましくは、コハク酸またはアジピン酸である。
本発明に用いる脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、3〜12であることが好ましく、3〜8であることがより好ましい。芳香族ジカルボン酸の炭素数は、8〜14であることが好ましく、8であることがより好ましい。
本発明では2種以上のジカルボン酸の混合物を用いてもよく、この場合、2種以上のジカルボン酸の平均炭素数が3〜14であることが好ましく、3〜8であることがより好ましい。
ジカルボン酸の炭素数が上記範囲であれば、光ムラの改良に加えて、熱可塑性ポリマーとの相溶性に優れ、ポリマーフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。
脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを併用することも好ましい。具体的には、アジピン酸とフタル酸との併用、アジピン酸とテレフタル酸との併用、コハク酸とフタル酸との併用、コハク酸とテレフタル酸のとの併用が好ましく、コハク酸とフタル酸との併用、コハク酸とテレフタル酸との併用がより好ましい。脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを併用する場合、両者の比率(モル比)は95:5〜40:60が好ましく、55:45〜45:55がより好ましい。
ジオール(グリコール)としては、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオール、及び炭素数6〜20の芳香族環含有ジオールから選ばれものであることが好ましい。
脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エタンジオール(エチレングリコール)、3−オキサペンタンー1,5−ジオール(ジエチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、又は1,4−シクロヘキサンジメタノール等があり、これらのグリコールは、1種又は2種以上の混合物として使用される。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エタンジオール(以下、エチレングリコールとも言う)、3−オキサペンタンー1,5−ジオール、1,2−プロパンジオール(以下、プロピレングリコールとも言う)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。より特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオールである。
炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールとしては、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコール及びポリプロピレンエーテルグリコール並びにこれらの組み合わせが挙げられる。その平均重合度は、特に限定されないが好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、更には2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。これらの例としては、典型的に有用な市販のポリエーテルグリコール類としては、カーボワックス(Carbowax)レジン、プルロニックス(Pluronics)レジン及びニアックス(Niax)レジンが挙げられる。
炭素数6〜20の芳香族ジオールとしては、特に限定されないがビスフェノールA、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ヒドロキシベンゼン、1,4−ヒドロキシベンゼン、ベンゼン−1,4−メタノール、が挙げられ、好ましくはビスフェノールA、1,4−ヒドロキシベンゼン、ベンゼン−1,4−ジメタノールである。
芳香族ジオールの炭素数は6〜12であることが好ましい。
2種以上のジオールを用いる場合には、該2種以上の平均炭素数が2〜12となることが好ましい。
ジオールの炭素数が上記範囲であれば、光ムラの改良に加えて、熱可塑性ポリマーとの相溶性に優れ、ポリマーフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。
本発明では2種以上のジオールの混合物を用いてもよく、この場合、2種以上のジオールの平均炭素数が2〜12であることが好ましく、2〜7であることがより好ましい。
具体的には、エチレングリコールとプロピレングリコールとの併用が好ましい。2種以上のジオールの混合物を用いる場合、両者の比率(モル比)は95:5〜95:5が好ましく、55:45〜45:55がより好ましい。
本発明の光学フィルムに用いられる重縮合エステルの両末端は封止、未封止を問わない。
重縮合エステルの両末端が未封止の場合、該オリゴマーはポリエステルポリオールであることが好ましい。
また、少なくとも一方の末端が封止され、該末端が炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族環含有基、炭素数1〜22の脂肪族カルボニル基、及び炭素数6〜20の芳香族カルボニル基から選ばれた少なくとも一種であることも好ましい。
更に、重縮合エステルの両末端が封止されている場合、モノアルコール、モノカルボン酸と反応させて封止することがより好ましい。このとき、該オリゴマーの両末端はモノアルコール残基又はモノカルボン酸残基となっている。ここで、残基とは、オリゴマーの部分構造で、オリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばモノカルボン酸R−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR−CO−である。
モノアルコール残基としては炭素数1〜30の置換、無置換のモノアルコール残基が好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどの置換アルコールなどが挙げられる。
好ましく使用され得る末端封止用アルコール残基は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールであり、特にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ベンジルアルコールである。
モノカルボン酸残基としては、炭素数2〜22の脂肪族モノカルボン酸残基であることが好ましく、炭素数2〜3の脂肪族モノカルボン酸残基であることが更に好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
ポリエステル系オリゴマーの両末端のモノカルボン酸残基の炭素数が3以下であると、揮発性が低下し、該オリゴマーの加熱による減量が大きくならず、工程汚染の発生や面状故障の発生を低減することができる。即ち、封止に用いるモノカルボン酸類としては脂肪族モノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸が炭素数2〜22の脂肪族モノカルボン酸であることがより好ましく、炭素数2〜3の脂肪族モノカルボン酸であることが更に好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられる。芳香族環含有モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等が挙げられる。
これらのなかでも、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸(末端がアセチル基となる)が最も好ましい。封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。
両末端を封止した場合は常温での状態が固体形状となりにくく、ハンドリングが良好となり、また湿度安定性、偏光板耐久性に優れたポリマーフィルムを得ることができる。
重縮合エステルの数平均分子量は500〜2000であることが好ましく、600〜1500がより好ましく、700〜1200がさらに好ましい。重縮合エステルの数平均分子量は600以上であれば揮発性が低くなり、セルロースエステルフィルムの延伸時の高温条件下における揮散によるフィルム故障や工程汚染を生じにくくなる。また、2000以下であればセルロースエステルとの相溶性が高くなり、製膜時及び加熱延伸時のブリードアウトが生じにくくなる。
以下の表1および表2に本発明に用いられる重縮合エステルの具体例を記すが、これらに限定されるものではない。下記表1および表2中、PAはフタル酸、TPAはテレフタル酸、IPAはイソフタル酸、AAはアジピン酸、SAはコハク酸、2,6−NPAは2,6−ナフタレンジカルボン酸を表す。
Figure 0005542086
Figure 0005542086
本発明に用いられる重縮合エステルの合成は、常法によりジオールとジカルボン酸とのポリエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。また、本発明に係る重縮合エステルについては、村井孝一編者「可塑剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
本発明のフィルムの前記B層(セルロースエステル層)における前記重縮合エステルの含有量は、セルロースエステル量に対し5乃至40質量%であることが好ましく、8乃至30質量%であることがさらに好ましく、10乃至25質量%であることが最も好ましい。本発明のフィルムの前記A層における前記重縮合エステルの含有量も、前記B層と同様である。
本発明に用いられる重縮合体が含有する原料の脂肪族ジオール、ジカルボン酸エステル、又はジオールエステルのセルロースエステル層中の含有量は、1質量%未満が好ましく、0.5質量%未満がより好ましい。ジカルボン酸エステルとしては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、アジピン酸ジ(ヒドロキシエチル)、コハク酸ジ(ヒドロキシエチル)等が挙げられる。ジオールエステルとしては、エチレンジアセテート、プロピレンジアセテート等が挙げられる。
本発明で使用される重縮合エステルに含まれるジカルボン酸残基、ジオール残基、モノカルボン酸残基の各残基の種類及び比率はH−NMRを用いて通常の方法で測定することができる。通常、重クロロホルムを溶媒として用いることができる。
重縮合エステルの数平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することができ、通常、ポリスチレンを標準資料として用いることができる。
《アクリルオリゴマーまたはアクリル樹脂》
本発明においては、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、アクリルオリゴマーまたはアクリル樹脂を前記A層(アクリル樹脂層)または前記B層(セルロースアシレート層)に添加することもできる。前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂に対する、アクリルオリゴマーまたはアクリル樹脂の割合は、前記アクリル樹脂層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂を基準とした場合に、2〜140質量%が好ましく、より好ましくは4〜100質量%、最も好ましくは6〜60質量%である。前記B層に主成分として用いられる前記第1のセルロースアシレートに対する、アクリルオリゴマーまたはアクリル樹脂の割合は、B層に主成分として用いられる前記第1セルロースアシレートを基準とした場合に、0〜140質量%が好ましく、より好ましくは0〜100質量%、最も好ましくは0〜60質量%である。また、アクリルオリゴマーまたはアクリル樹脂の分子量は、500〜20万が好ましく、更に好ましくは1000〜10万、より更に好ましくは1200〜5万以下であり、特に好ましくは1200〜1万である。この分子量範囲にすることで、前記アクリル樹脂層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂またはセルロースアシレート層の透明性に優れる。
この目的で使用できるアクリルオリゴマーまたはアクリル樹脂の組成は、脂肪族の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー又はシクロへキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分として含むことが好ましい。主成分とは、(共)重合体中で他の共重合可能な成分よりも構成質量比率が高いことをいう。
好ましくは、これら成分の構成質量比率が、40〜100質量%、更に好ましくは60〜100質量%、最も好ましくは70〜100質量%である。
脂肪族の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることが出来る。なかでも、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル(i−、n−)、メタアクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えばアクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸(2又は4−クロロフェニル)、メタクリル酸(2又は4−クロロフェニル)、アクリル酸(2又は3又は4−エトキシカルボニルフェニル)、メタクリル酸(2又は3又は4−エトキシカルボニルフェニル)、アクリル酸(o又はm又はp−トリル)、メタクリル酸(o又はm又はp−トリル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェネチル、アクリル酸(2−ナフチル)等を挙げることが出来るが、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニチル、メタクリル酸フェネチルを好ましく用いることが出来る。
シクロへキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、アクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)等を挙げることが出来るが、アクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸シクロヘキシルを好ましく用いることが出来る。
上記モノマーに加えて、更に共重合可能な成分としては、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して共重合成分として用いることができる。
アクリルオリゴマーまたはアクリル樹脂で重量平均分子量が1万以下のものを合成するためには、通常の重合では分子量のコントロールが難しい。このような低分子量のポリマーの重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に特開2000−128911号又は同2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、あるいは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることが出来、いずれも本発明において好ましく用いられるが、特に、該公報に記載の方法が好ましい。
前記低分子〜オリゴマー化合物としては、例えばリン酸エステル、カルボン酸エステル、ポリオールエステル等が用いられる。
リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が含まれる。好ましくは、トリフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェートである。
カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジフェニルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート等が挙げられる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
これらの好ましい可塑剤は、25℃においてTPP(融点約50℃)以外は液体であり、沸点も250℃以上である。
その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。グリコール酸エステルの例としては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、メチルフタリルメチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートなどがある。
また、特開平5−194788号、特開昭60−250053号、特開平4−227941号、特開平6−16869号、特開平5−271471号、特開平7−286068号、特開平5−5047号、特開平11−80381号、特開平7−20317号、特開平8−57879号、特開平10−152568号、特開平10−120824号の各公報などに記載されている可塑剤も好ましく用いられる。これらの公報によると可塑剤の例示だけでなくその利用方法あるいはその特性についての好ましい記載が多数あり、本発明においても好ましく用いられるものである。
その他の可塑剤としては、特開平11−124445号記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−246704号記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号記載のクエン酸エステル類、特開平11−90946号記載の置換フェニルリン酸エステル類、特開2003−165868号等記載の芳香環とシクロヘキサン環を含有するエステル化合物などが好ましく用いられる。
これらの可塑剤は単独若しくは2種類以上を混合して用いてもよい。可塑剤の添加量は各ドープに含まれる熱可塑性樹脂100質量部に対して一般的に2〜120質量部使用することができ、2〜70質量部が好ましく、更に好ましくは2〜30質量部、特に5〜20質量部が好ましい。また、後述する本発明の製造方法に用いるドープ(A)、(B)のうち隣接する層に共通の可塑剤を用いると、流延時のドープの界面の乱れの発生が少なくなったり、界面の密着が良化したり、カールが低減したりする観点から、好ましい。特に、ドープ(A)、(B)が共通の可塑剤を含有することが好ましい。
(その他の添加剤)
本発明の光学フィルムには、前記可塑剤以外に、その他の添加剤を用いてもよい。
添加剤の例には、紫外線吸収剤、フッ素系界面活性剤(好ましい添加量は熱可塑性樹脂に対して0.001〜1質量%)、剥離剤(0.0001〜1質量%)、劣化防止剤(0.0001〜1質量%)、光学異方性制御剤(0.01〜10質量%)、赤外線吸収剤(0.001〜1質量%)等が含まれる。
紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な画像表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものを用いることが好ましい。特に、波長370nmでの透過率が、20%以下であることが望ましく、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。このような紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、前記のような紫外線吸収性基を含有する高分子紫外線吸収化合物等があげられるが、これらに限定されない。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、微量の有機材料、無機材料及びそれらの混合物からなる粒子を分散含有していてもよい。これらの粒子は、製膜時におけるフィルムの搬送性向上を目的として(マット剤として)添加される場合には、粒子の粒径は5〜3000nmであるのが好ましく、添加量は1質量%以下であるのが好ましい。
フィルムの表面に凹凸を与えたり、フィルム内部に光散乱性を付与したりするために粒子を添加することもでき、その場合には、粒子の粒径は1〜20μmであるのが好ましく、添加量は2〜30質量%好ましい。これら粒子屈折率は本発明のポリマーフィルムの屈折率との差が0〜0.5であるのが好ましく、例えば、無機材料の粒子の例には、酸化珪素、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粒子が含まれる。有機材料の粒子の例には、アクリル樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、スチレン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が含まれる。粒子により光学フィルムに光拡散性を付与する際には、ヘイズの値に制限はないが、後方散乱性が高くなり全光透過率の低下が大きくなり過ぎない範囲に設定することが好ましい。具体的には、ヘイズは1〜60%が好ましく、更に好ましくは3〜50%である。
<光学フィルム上への付加的な層の積層>
本発明の光学フィルムは、例えば、その上に更に0.1μm以上15μm以下の厚みの硬化性樹脂層を設けてもよい。また、本発明の光学フィルムは、該硬化性樹脂層の上に、帯電防止層、高屈折率層、低屈折率層等の光学機能層を設けることもできる。また、硬化性樹脂層が帯電防止層や高屈折率層を兼ねることもできる。
硬化性樹脂層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を光透過性基材上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
また、硬化性樹脂層には、公知のレベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、屈折率調節用無機フィラー、散乱粒子、チキソトロピー剤等の添加剤を用いることができる。
また、硬化性樹脂層を設けた光学フィルムの強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましい。
[光学フィルムの製造方法]
本発明の光学フィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、熱可塑性樹脂と溶媒を含有する少なくとも2種のドープ(A)および(B)を流延基材側から(B)−(A)の順番に同時又は逐次に流延基材上に流延する工程を含み、前記ドープ(A)は重量平均分子量が100万を超えるアクリル樹脂を含有し、前記ドープ(B)は互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含有し、前記ドープ(B)における前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜8020(質量比)であり、前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする。
式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
式(2A) 0.2≦Y≦1.2
(式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
(式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。)
本発明の製造方法は、前記ドープ(B)の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(1)および前記式(2A)を満たす第一の態様と、前記式(1)および前記式(2B)を満たす第二の態様と、前記式(1)、前記式(2A)および前記式(2B)を満たす第三の態様があり、いずれも好ましい。
本発明の第一の態様〜第三の態様の製造方法に対応して、本発明の第一の態様〜第三の態様のフィルムをそれぞれ製造することができる。
<ドープの調製>
本発明の光学フィルムに用いる熱可塑性樹脂の溶液(ドープ)の調製について、その溶解方法は、室温溶解法、冷却溶解法又は高温溶解方法により実施され、更にはこれらの組合せで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号などの各公報にはセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。これらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明の熱可塑性樹脂に対しても、これらの技術を適宜適用できるものである。これらの詳細、特に非塩素系溶媒系については、前記の公技番号2001−1745号の22〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。更に熱可塑性樹脂のドープ溶液は、溶液濃縮、濾過が通常実施され、同様に前記の公技番号2001−1745号の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
(有機溶媒)
本発明の熱可塑性樹脂を溶解し、ドープを形成する有機溶媒(溶剤とも言う)について記述する。用いる有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒が挙げられ、例えば溶解度パラメーターで17〜22の範囲ものが好ましい。溶解度パラメーターは、例えばJ.Brandrup、E.H等の「PolymerHandbook(4th.edition)」、VII/671〜VII/714に記載の内容のものを表す。低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類、フルオロアルコール類(例えば、特開平8−143709号公報 段落番号[0020]、同11−60807号公報 段落番号[0037]等に記載の化合物)等が挙げられる。
本発明で用いられる溶剤は、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが面状安定性を付与するために好ましく、更に好ましくは、良溶剤と貧溶剤の混合比率は良溶剤が60〜99質量%であり、貧溶剤が40〜1質量%である。本発明において、良溶剤とは使用する樹脂を単独で溶解するもの、貧溶剤とは使用する樹脂を単独で膨潤するか又は溶解しないものをいう。本発明に用いられる良溶剤としては、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類が挙げられる。また、本発明に用いられる貧溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン等が好ましく用いられる。
前記ドープ(A)及び(B)に含有される有機溶媒のうちアルコールの割合が有機溶剤全体の10〜50質量%であることが製膜後の支持体(流延基材)上での乾燥時間を短縮し、早く剥ぎ取って乾燥することができるという理由から好ましい。
本発明の製造方法では、前記重量平均分子量が100万を超えるアクリル樹脂、特定の置換度の範囲である前記第1および第2のセルロースアシレートを良好に溶解させて、得られる本発明の光学フィルムのヘイズを低減する観点から、前記溶媒として、メチレンクロライドと炭素数1〜4の低級アルコールを使用し、メチレンクロライドの炭素数1〜4の低級アルコールに対する含有比率が90/10〜60/40(体積比)の範囲であることが好ましい。
メチレンクロライドの炭素数1〜4の低級アルコールに対する含有比率は、80/20〜60/40(体積比)の範囲であることがより好ましく、80/20〜70/30であることが特に好ましい。
前記炭素数1〜4の低級アルコールとしては、メタノール、エタノールおよびn−ブタノールが好ましく、メタノールまたはエタノールがより好ましく、メタノールが特に好ましい。
光学フィルムを形成する材料は、有機溶媒に10〜60質量%の濃度で溶解していることが好ましく、更に好ましくは10〜50質量%である。セルロースアシレート系樹脂を主成分とする場合には、10〜30質量%溶解していることが好ましく、より好ましくは13〜27質量%であり、特には15〜25質量%である。これらの濃度に調製する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように調製してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。更に、予め高濃度の光透過性基材を形成する材料の溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度の溶液としてもよい。
(ドープの固形分濃度)
本発明の製造方法では、ドープ(B)の固形分濃度(ドープ乾燥後、固体となる成分の濃度)はその分子量に応じて適切に選ばれるものであるが、溶液流延製膜を行うのに適切な粘度のドープを得るためには、固形分濃度が16〜30質量%であることが好ましい。従来、有機溶剤の含有量を少なくでき、乾燥時間の短縮ができるという理由からは、固形分濃度が30〜50%であることが好ましいと考えられていたところ、本発明では、このような範囲に固形分濃度を調整することが本発明の効果を得る観点からはより好ましいことを見出した。前記ドープ(B)の固形分濃度は、16〜30質量%であることがより好ましく、18〜25質量%であることが特に好ましい。
本発明の製造方法では、さらに前記ドープ(A)および前記ドープ(B)の固形分濃度がいずれも16〜30質量%であることが好ましい。
一方、本発明の製造方法では、共流延製膜にて良好な面状のフィルムを得るためには、前記ドープ(B)の固形分濃度を前記ドープ(A)の固形分濃度と同程度とすることが好ましい。ドープ(B)とドープ(A)の固形分濃度の差が10質量%以内であることが好ましく、5質量%以内であることがより好ましい。
特に、ドープ(B)において、乾燥後固体となる成分の和の濃度が16〜30質量%であり、かつ、ドープ(B)とドープ(A)の濃度の差が10質量%以内であることが好ましい。
(ドープの複素粘度)
本発明の製造方法では、前記ドープ(A)および前記ドープ(B)の複素粘度がいずれも10〜80Pa・s以下であることが好ましい。複素粘度をこのような範囲とすることにより、溶液流延適性がより向上する傾向にあり好ましい。ここで、本発明におけるドープの複素粘度とは、溶液剪断レオメータ測定によって測定した粘度をいう。
さらに好ましくは、20〜80Pa・sであり、とくに好ましくは、25〜70Pa・sである。粘度の測定は次のようにして行った。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定した。
試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜70℃であり、より好ましくは−5〜35℃である。
本発明の製造方法では、また、流延時のドープの粘度も表層とコア層で異なっていてもよく、表層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度が表層の粘度より小さくてもよい。本発明の製造方法では、その中でも、前記ドープ(A)および前記ドープ(B)の複素粘度がいずれも10〜80Pa・s以下であり、かつ、前記ドープ(B)の複素粘度が前記ドープ(A)の複素粘度よりも大きいことが、製膜後のフィルム面状を改善する観点から、好ましい。
(ドープの熱可塑性樹脂の組成)
さらに、支持体離型性、界面密着性、低カールなどを達成する観点からは、前記ドープ(A)、(B)中の熱可塑性樹脂の組成は、以下の条件を満たすことも好ましい。ドープ(A)中の熱可塑性樹脂中セルロースアシレート系樹脂の占める割合は、50〜100質量%が好ましく、更に好ましくは70〜100質量%、最も好ましくは80〜100質量%である。またドープ(B)中の熱可塑性樹脂中アクリル樹脂の占める割合は、30〜100質量%が好ましく、更に好ましくは50〜100質量%、最も好ましくは70〜100質量%である。
(同時又は逐次流延工程)
熱可塑性樹脂と有機溶媒を含有する少なくとも2種のドープ(A)および(B)を流延基材側から(A)−(B)の順番に同時又は逐次に流延基材上に流延する工程を含む。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、前記少なくとも2種のドープ(A)、(B)を流延基材側からこの順番に同時に流延基材上に流延することが好ましい。
ドープは、ドラム上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。ドラムの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延及び乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
図1はドラムを含む流延設備を示す図である。図1は流延設備101の要部を示す概略図であって、側面からの平面図である。図1ではドラム102を用いている。流延ダイ14からの流延ドープ12は、ドラム102上に形成された流延膜が流延開始位置PSから下方に向かうように、ドラム102の最上部よりやや下方に流延されている。この場合も、ドラム102上の流延開始位置PSにおける接線と流延ダイ14からの流延曲線の接線とができるだけ一致するように、流延開始位置PSを定めることが好ましい。
ドラム102は、温度調整機能を有している。流延膜の外側には、複数の凝縮板105が設置されており、凝縮板105同士の隙間の傾斜をつたわって、外部の液受け53に入り、回収タンク56に回収される。ドラム102上を走行した流延膜は、フィルム36として剥ぎ取りローラ37により剥ぎ取られ、次の工程である乾燥設備に送られる。これにより、液だれを防止しながら、流延膜を均一に乾燥し、溶媒を高収率で回収することができる。ただし、ドラム102の回転方向を逆として、流延膜の走行方向が流延開始位置PSから上向きになされた場合にも、流延膜の均一乾燥と、フィルム36の厚みの均一化効果は得られる。
ドープは、表面温度が5℃以下のドラム上に流延することが好ましい。流延基材(ドラム)の表面温度は−30〜5℃が好ましく、−10〜2℃がより好ましい。
流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムから剥ぎ取り、更に100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
本発明では、流延基材上に前記2種以上のドープを流延して製膜する。本発明のフィルムの製造方法としては、上記以外に特に制限はなく公知の共流延方法を用いることができる。例えば、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からドープ溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からドープ溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。
本発明の製造方法は、流延基材側から順に少なくとも2種のドープ(A)、(B)を同時共流延することが好ましい。更に、本発明の製造方法は、前記基材側から順に、支持体側から順に、ドープ(A)、(B)、(A)の順に同時共流延することが好ましい。ここで、一つの積層フィルム中の複数の(A)は、組成が全く同一でも異なっていてもよい。
共流延の場合、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるドープ溶液を共流延して、積層フィルムを作製することもできる。例えば、マット剤は、支持体面側の表層に多く、又は支持体面側の表層のみに入れることが出来る。可塑剤、紫外線吸収剤は表層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。又、コア層と表層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えば表層に低揮発性の可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。
<乾燥工程>
本発明の製造方法は、前記有機溶媒を除去する工程を含む。
ドラム上で乾燥され、剥離されたウェブの乾燥方法について述べる。ドラムが1周する直前の剥離位置で剥離されたウェブは、千鳥状に配置されたロ−ル群に交互に通して搬送する方法や剥離されたウェブの両端をクリップ等で把持させて非接触的に搬送する方法などにより搬送される。乾燥は、搬送中のウェブ(フィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエ−ブなどの加熱手段などを用いる方法によって行われる。急速な乾燥は、形成されるフィルムの平面性を損なう恐れがあるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で乾燥を行うのが好ましい。支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。収縮は、高温度で乾燥するほど大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているように、乾燥の全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンタ−方式)が好ましい。上記乾燥工程における乾燥温度は、100〜145℃であることが好ましい。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なるが、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。
多層流延したドープを乾燥させてから、支持体から剥離することが好ましい。ドープが流延基材上に流延され剥離される時間、すなわち、流延基材上を搬送される時間が60秒以内であることが好ましく、30秒以内であることがより好ましい。
<延伸工程>
本発明の製造方法は、前記製膜工程のあとに、製膜した前記積層フィルムを延伸する工程を含んでもよい。
本発明のフィルムの製造では、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が120質量%未満の時に延伸することが好ましい。
なお、残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量の更に好ましい範囲は10質量%〜50質量%、特に12質量%〜35質量%が最も好ましい。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
延伸倍率は、一般的に5%〜100%で行うことができ、15%〜40%にすることも好ましい。ここで、一方の方向に対して5%〜100%延伸するとは、フィルムを支持しているクリップやピンの間隔を延伸前の間隔に対して1.05〜2.00倍の範囲にすることを意味している。
また、延伸はフィルム搬送方向(縦方向)に行っても、フィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に行っても、両方向に行ってもよい。
本発明では、溶液流延製膜したものは、特定の範囲の残留溶媒量であれば高温に加熱しなくても延伸可能であるが、乾燥と延伸を兼ねると、工程が短くてすむので好ましい。本発明では、前記延伸工程における延伸温度は、110〜190℃であることが好ましく、120〜150℃であることがより好ましい。延伸温度が120℃以上であることが低ヘイズ化の観点から好ましく、150℃以下であることが光学発現性を高める観点(薄膜化の観点)から好ましい。
一方、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、可塑剤として揮散しやすい低分子可塑剤を用いる場合は、室温(15℃)〜145℃以下の範囲が好ましい。
また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの光学発現性を高める観点、特にフィルムのRth(レターデーション)の値を高める観点から、有効な方法である。
本発明では、延伸工程において同時に2軸方向に延伸してもよいし、逐次に2軸方向に延伸してもよい。逐次に2軸方向に延伸する場合は、それぞれの方向における延伸ごとに延伸温度を変更してもよい。
同時2軸延伸する場合、延伸温度は110℃〜190℃で行った場合でも本発明のフィルムを得ることができ、同時2軸延伸する場合の延伸温度は、120℃〜150℃であることがより好ましく、130℃〜150℃であることが特に好ましい。また、同時2軸延伸することで、ヘイズはある程度高くなるものの、光学発現性を更に高めることができる。
一方、逐次2軸延伸する場合、先にフィルム搬送方向に平行な方向に延伸し、その次にフィルム搬送方向に直交する方向に延伸することが好ましい。前記逐次延伸を行う延伸温度のより好ましい範囲は上記同時2軸延伸を行う延伸温度範囲と同様である。
<熱処理工程>
本発明のフィルムの製造方法は乾燥工程終了後に熱処理工程を設けることが好ましい。当該熱処理工程における熱処理は乾燥工程終了後に行われればよく、延伸/乾燥工程後直ちに行ってよいし、あるいは乾燥工程終了後に後述する方法で一旦巻き取った後に、熱処理工程だけを別途設けてもよい。本発明においては乾燥工程終了後に一旦、室温〜100℃以下まで冷却した後において改めて前記熱処理工程を設けることが好ましい。これは熱寸法安定性のより優れたフィルムを得られる点で有利であるからである。同様の理由で熱処理工程直前において残留溶媒量が2質量%未満、好ましくは0.4質量%未満まで乾燥されていることが好ましい。
熱処理は、搬送中のフィルムに所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエーブなどの加熱手段などを用いる方法により行われる。
熱処理は150〜200℃の温度で行うことが好ましく、160〜180℃の温度で行うことが更に好ましい。また、熱処理は1〜20分間行うことが好ましく、5〜10分間行うことが更に好ましい。
(加熱水蒸気処理)
また、延伸処理されたフィルムは、その後、100℃以上に加熱された水蒸気を吹き付けられる工程を経て製造されてもよい。この水蒸気の吹付け工程を経ることにより、製造される光学フィルムの残留応力が緩和されて、寸度変化が小さくなるので好ましい。水蒸気の温度は100℃以上であれば特に制限はないが、フィルムの耐熱性などを考慮すると、水蒸気の温度は、200℃以下となる。
<表面処理工程>
本発明の光学フィルムを、偏光板の保護フィルムとして使用し、偏光子と接着させる場合には、偏光子との接着性の観点から、アルカリ鹸化処理により表面を親水的にする処理を実施することが特に好ましい。
光学フィルム表面処理としては、その他、酸処理、プラズマ処理、コロナ処理等が知られているが、安価かつ接着性良好なアルカリ鹸化処理を採用できることが求められている。本発明の光学フィルムでは、前記A層の少なくとも一方の表面に特定のセルロースアシレートを主成分とする前記B層を外層として有することから、この前記B層をアルカリ処理(アルカリ鹸化)するだけで、偏光子として通常使用されるポリビニルアルコール偏光子と貼り合わせ時の接着性が良好となる。その結果、偏光板リワーク工程において、偏光子からのフィルム剥がれが発生しにくくなり、リワーク性を改善することができる。
本発明の光学フィルムは互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含むB層を有し、前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜8020(質量比)であり、前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が前記式(1)ならびに前記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たす。このような構成の前記B層を有することで、本発明の光学フィルムは、アクリル樹脂を主成分とする層が偏光子側の最外層である光学フィルムや、セルロースアシレート1種のみとアクリル樹脂との混合層が偏光子側の最外層である光学フィルムに対して、従来のアルカリ鹸化の手法による偏光子との接着性および各層間の界面密着性に優れる。

[偏光板]
本発明の光学フィルムは、偏光子とその少なくとも一方の側に配置された保護フィルムとを有する偏光板において、その保護フィルムとして使用することができる。
また偏光板の構成として、偏光子の両面に保護フィルムを配置する形態においては、一方の保護フィルム又は、位相差フィルムとして用いることもできる。
偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子及び染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造することができる。
また偏光子としては、公知の偏光子や、偏光子の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光子から切り出された偏光子を用いてもよい。偏光子の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光子は以下の方法により作製される。
すなわち、連続的に供給されるポリビニルアルコール系フィルムなどのポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸して、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内で、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70°傾斜するように、フィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
[液晶表示装置]
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に好適に用いられる。
本発明の光学フィルム及び本発明の偏光板は、液晶表示装置等の画像表示装置に有利に用いることができ、バックライト側の最表層に用いることが好ましい。
一般的に、液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、液晶セルは、2枚の電極基板の間に液晶を担持している。更に、光学異方性層が、液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置されるか、又は液晶セルと双方の偏光板との間に2枚配置されることもある。
液晶セルは、TNモード、VAモード、OCBモード、IPSモード又はECBモードであることが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
[測定方法]
<重量平均分子量測定条件>
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した。測定条件は以下の通りである。
溶媒 テトラヒドロフラン
装置名 TOSOH HLC−8220GPC
カラム TOSOH TSKgel Super HZM−H(4.6mm×15cm)を3本接続して使用した。
カラム温度 25℃
試料濃度 0.1質量%
流速 0.35ml/min
校正曲線 TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000〜1050までの7サンプルによる校正曲線を使用した。
(Re、Rth)
サンプルフィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃、相対湿度60%において、フィルム表面に対し垂直方向及び遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差を測定して、面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出した。
(ヘイズ)
ヘイズの測定は、フィルム試料40mm×80mmを、25℃、相対湿度60%でヘイズメーター"HGM−2DP"{スガ試験機(株)製}を用いJIS K−6714に従って測定した。
(光弾性係数)
作製した光学フィルムから1cm×5cmのサンプルを切り出し、分光エリプソメーター(M−220、日本分光株式会社製)を用いて、サンプルに25℃で応力をかけながら、フィルム面内のレターデーション値を測定し、レターデーション値と応力の関数の傾きから算出した。
(脆性)
JIS P8115に従い、MIT試験機によって折り曲げ試験を行い、耐折回数を測定した。耐折回数は実用上、1回以上が必要である。
なお、耐折回数は10回以上であることが好ましく、30回以上であることがより好ましい。
[実施例1〜7および比較例1〜11]
<ドープの作製>
下記表4の組成に従ってコア層用ドープおよび外層用ドープを作製し、さらに各ドープに熱可塑性樹脂100質量部に対して10質量部の可塑剤Aを添加した。可塑剤Aは、アジピン酸/プロピレングリコールの縮合物(数平均分子量=1000、末端アセチルエステル残基)である。
ここで、実施例1では下記表4に記載の組成のドープ溶媒を用いてドープを調製し、コア層用ドープ(A)は固形分濃度20質量%、複素粘度40Pa・sであり、外層用ドープ(B)は固形分濃度18質量%、複素粘度20Pa・sであった。その他の実施例においても、コア層用ドープ(A)は固形分濃度18〜22質量%、複素粘度20〜60Pa・s、外層用ドープ(B)は固形分濃度16〜22質量%、複素粘度10〜30Pa・sに調製した。
下記表4中、PMMAは、ポリメチルメタクリレート、数平均分子量=150万を表す。
下記表4中に記載したセルロースアシレートCA−1〜CA−6としては、下記表3に記載のものを用いた。なお、下記表3中におけるX、Yおよびnは、前記式(1)、式(2A)および式(2B)におけるX、Yおよびnと同義である。
Figure 0005542086
<製膜条件>
下記表4に記載のドープを用いて溶液流延製膜を行い、下記表4の構成となるように光学フィルムを作製した。具体的には、3層共流延が可能な流延ギーサーを通して、金属支持体上に、表4に記載の層構成となるように流延した。このとき、金属支持体面側から順にB層、A層、B層となるように流延した。膜厚構成は、各ドープ流量から均一厚みの膜が形成されたと仮定したときの換算膜厚である。金属支持体上にある間、ドープを40℃の乾燥風により乾燥してフィルムを形成した後に剥ぎ取り、フィルム両端をピンで固定し、その間を同一の間隔で保ちつつ105℃の乾燥風で5分間乾燥した。ピンを外した後、さらに130℃で20分間乾燥した。
なお、比較例7のフィルムについては3層共流延が可能な流延ギーサーの中央部のみを用いて単層のPMMAフィルムを製膜した。
比較例8では、外層用ドープ(B)の主成分として、第1のセルロースアシレートの代わりに、コア層用ドープ(A)に用いたPMMAと同じPMMAを用いた。
比較例9では、コア層用ドープ(A)に用いたPMMAを重量平均分子量100万以下のアクリル樹脂であるアクリル2(重量平均分子量670000のPMMA樹脂)を用いた以外は実施例2と同様にして製膜したところ、製膜中に面状が著しく悪化し、フィルムを採取することができなかった。
<光学フィルムの評価>
各実施例及び比較例で作成した光学フィルムをそれぞれ実施例1〜5および比較例1〜7の光学フィルムとした。
得られた各実施例及び比較例の光学フィルムについて、上記の測定方法にしたがって、Re、Rth、ヘイズ、光弾性係数、耐折回数を評価した。その結果を下記表4に記載した。
<偏光板の作製>
各実施例及び比較例で作成した各光学フィルム及びフジタックTD60UL(富士フイルム(株)製)を37℃に調温した4.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(けん化液)に1分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を通した。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムを作製した。
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光子を調製した。
このようにして得た偏光子と、前記鹸化処理したフィルムのうちから2枚選び、これらで前記偏光子を挟んだ後、PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とフィルムの長手方向とが直交するようにロールツーロールで貼り合わせて各実施例及び比較例の偏光板を作成した。ここで、偏光子の一方のフィルムは、表4に記載の各実施例または比較例の光学フィルムを鹸化したフィルムとし、他方のフィルムはフジタックTD60ULを鹸化したフィルムとした。
<偏光板リワーク性>
こうして加工した各実施例及び比較例の偏光板を、吸収軸と平行に4cm角の大きさで切り取り、綜研化学社製粘着剤SK−2057を用いて、サンプル面をガラス板に貼り合せた。この偏光板を、吸収軸に対して45°方向に剥離し、偏光子とサンプルフィルムの剥離の程度から、以下の基準で評価した。ランク4および5が実用上求められるレベルである。
5:ガラス側にフィルムの剥げ残りが発生しない。
4:ガラス側に剥げ残ったフィルムの面積が貼り合わせ面積の1/4以下。
3:ガラス側に剥げ残ったフィルムの面積が貼り合わせ面積の1/4を超え、1/2以下。
2:ガラス側に剥げ残ったフィルムの面積が貼り合わせ面積の1/2を超え、3/4以下。
1:ガラス側に剥げ残ったフィルムの面積が貼り合わせ面積の3/4を超える。
評価した結果を下記表4に記載した。
Figure 0005542086
上記表4より、各実施例の光学フィルムは、光弾性係数が小さく、低ヘイズであった。また、リワーク性が良好であることから、従来のアルカリ鹸化の手法による偏光子との接着性および各層間の界面密着性にも優れることがわかった。
一方、比較例1の光学フィルムは、外層中の炭素数3〜7のアシル基の置換度が高いセルロースアシレートの比率が高く、脆性およびリワーク性が悪化したことがわかった。
比較例2の光学フィルムは、前記式(1)〜(3)をいずれも満たさないセルロースアシレートとして低置換度のセルロースアセテートCA−2をコア層および外層に添加したものであり、得られたフィルムはヘイズが高く、各層間の密着性改良も不十分であった。いかなる理論に拘泥するものではないが、特にCA−2がコア層中のアクリル樹脂と混じり合わなかったことが主な原因と推測された。
比較例3の光学フィルムは、プロピオニル置換度が高く前記式(2)および式(3)をいずれも満たさないセルロースアシレートCA−3をコア層および外層に添加したものであり、密着改良効果が不十分であった。
比較例4の光学フィルムは、前記式(1)を満たさないセルロースアシレートCA−4をコア層および外層に添加したものであり、得られたフィルムはヘイズが高く、各層間の密着性改良も不十分であった。いかなる理論に拘泥するものではないが、特にCA−4がコア層中のアクリル樹脂と混じり合わなかったことが主な原因と推測された。
比較例5の光学フィルムは、ブチリル置換度が高く前記式(2)および式(3)をいずれも満たさないセルロースアシレートCA−5をコア層および外層に添加したものであり、ヘイズが高かった。いかなる理論に拘泥するものでもないが、特にCA−5が外層の第一のセルロースアシレートと混じり合わなかったことが主な原因と推測された。
比較例6の光学フィルムは、PMMA/CA−1/PMMAの3層共流延フィルムであり、外層に第二の樹脂成分として第2のセルロースアシレートをブレンドしなかった例であり、各層間の密着性が不十分であった。
比較例7の光学フィルムは、PMMAとセルロースアシレートCA−3をブレンドした単層フィルムであり、リワーク性が悪かった。
比較例8の光学フィルムは、外層用ドープ(B)の主成分として、第1のセルロースアシレートの代わりに、コア層用ドープ(A)に用いたPMMAと同じPMMAを用いたフィルムであり、リワーク性が悪かった。
(IPS型液晶表示装置における表示性能評価)
市販の液晶テレビ(IPSモードのスリム型42型液晶テレビ)から、液晶セルを挟んでいる偏光板を剥がし取り、前記作製した各実施例及び比較例の偏光板を、表4に記載の各実施例及び比較例の光学フィルム側が液晶セル側に配置されるように、粘着剤を介して液晶セルに再貼合した。組みなおした液晶テレビを、50℃、相対湿度80%の環境で3日間保持した後に、25℃、相対湿度60%の環境に移し、黒表示状態で点灯させ続け、48時間後に目視観察して、光ムラを評価した。
その結果、各実施例の液晶表示装置は、各比較例の液晶表示装置に比べて、光ムラが少ないことがわかった。
101 流延設備
102 ドラム
14 流延ダイ
12 ドープ
PS 流延開始位置
105 凝縮板
53 液受け
56 回収タンク
36 フィルム
37 剥ぎ取りローラ

Claims (20)

  1. 重量平均分子量が100万を超えるアクリル樹脂を含むA層と、
    該A層の少なくとも一方の面に積層された、互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含むB層を有し、
    前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜8020(質量比)であり、
    第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
    式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
    式(2A) 0.2≦Y≦1.2
    (式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
    式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
    (式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。)
  2. 前記B層の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2B)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
  3. 前記B層の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2A)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
  4. 前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂が、重量平均分子量が100万を超え180万以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
  5. 前記B層に含まれるポリマーの重量平均分子量が10万以上であって、セルロースアシレートのみであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
  6. 前記A層に主成分として用いられる前記アクリル樹脂が、ポリメチルメタクリレートからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
  7. 前記A層が、前記式(1)ならびに式(2)および(3)の少なくとも一方を満たすセルロースアシレートを含み、
    前記アクリル樹脂の該セルロースアシレートに対する含有比が95/5〜80/20(質量比)であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
  8. 前記B層の前記第1のセルロースアシレートのアシル基がアセチル基からなり、アセチル置換度が2.7〜3.0であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
  9. 前記B層の膜厚が、1μm〜10μmであり、
    フィルム全体の膜厚が20μm〜80μmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
  10. ヘイズの値が0.3%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
  11. 光弾性係数の値が−5.0×10-12Pa-1〜5.0×10-12Pa-1であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
  12. 下記式(I)で定義される面内方向のリターデーションRe及び下記式(II)で定義される膜厚方向のリターデーションRthが、25℃相対湿度60%環境下において下記式(III)及び下記式(IV)を満たすことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
    式(I) Re=(nx−ny)×d
    式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
    式(III) |Re|<10nm
    式(IV) |Rth|<25nm
    (式(I)〜(IV)中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(μm)である。)
  13. 熱可塑性樹脂と溶媒を含有する少なくとも2種のドープ(A)および(B)を流延基材側から(B)−(A)の順番に同時又は逐次に流延基材上に流延する工程を含み、
    前記ドープ(A)は重量平均分子量が100万を超えるアクリル樹脂を含有し、
    前記ドープ(B)は互いにアシル置換度の異なる第1のセルロースアシレートと第2のセルロースアシレートを含有し、
    前記ドープ(B)における前記第1のセルロースのアシレートの前記第2のセルロースアシレートに対する含有比が90/10〜8020(質量比)であり、
    前記第2のセルロースアシレートのアシル置換度が下記式(1)ならびに下記式(2A)および(2B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする液晶表示装置の偏光板保護フィルムの製造方法。
    式(1) 2.55≦X+Y≦3.0
    式(2A) 0.2≦Y≦1.2
    (式(1)および(2A)中、Xは第2のセルロースアシレートのアセチル置換基を表し、Yは第2のセルロースアシレートの炭素数3〜7のアシル基の置換度を表す。)
    式(2B) −0.075n+0.72≦DS(n)≦−0.33n+2.88
    (式(2B)中、DS(n)は、第2のセルロースアシレートの炭素数nのアシル基の置換度を表し、nは3〜7の整数を表す。)
  14. 前記ドープ(B)の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2B)を満たすことを特徴とする請求項13に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルムの製造方法
  15. 前記ドープ(B)の前記第2のセルロースアシレートが、前記式(2A)を満たすことを特徴とする請求項13または14に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルムの製造方法
  16. 前記溶媒として、メチレンクロライドと炭素数1〜4の低級アルコールを使用し、メチレンクロライドの炭素数1〜4の低級アルコールに対する含有比率が90/10〜60/40(体積比)の範囲であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルムの製造方法。
  17. 前記ドープ(B)に含まれるポリマーの重量平均分子量が10万以上であって、セルロースアシレートのみであることを特徴とする請求項13〜16のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルムの製造方法
  18. 請求項13〜17のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とする液晶表示装置の偏光板保護フィルム。
  19. 偏光子と、請求項1〜12および18のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルムを含むことを特徴とする偏光板。
  20. 請求項1〜12および18のいずれか一項に記載の液晶表示装置の偏光板保護フィルムまたは請求項19に記載の偏光板を含むことを特徴とする液晶表示装置。
JP2011080593A 2011-03-31 2011-03-31 光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置 Expired - Fee Related JP5542086B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011080593A JP5542086B2 (ja) 2011-03-31 2011-03-31 光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011080593A JP5542086B2 (ja) 2011-03-31 2011-03-31 光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2012215688A JP2012215688A (ja) 2012-11-08
JP5542086B2 true JP5542086B2 (ja) 2014-07-09

Family

ID=47268508

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011080593A Expired - Fee Related JP5542086B2 (ja) 2011-03-31 2011-03-31 光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5542086B2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0931907A (ja) * 1995-07-14 1997-02-04 Marui Sangyo Kk 路面凍結抑制方法及びその方法に用いる目地材
WO2014091759A1 (ja) * 2012-12-14 2014-06-19 コニカミノルタ株式会社 光学フィルムとその製造方法、円偏光板および有機el表示装置
WO2014148408A1 (ja) * 2013-03-18 2014-09-25 富士フイルム株式会社 光学フィルム材料、光学フィルム、偏光板の製造方法、および偏光板
JP6007874B2 (ja) * 2013-08-30 2016-10-12 コニカミノルタ株式会社 偏光板保護フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置
WO2015064732A1 (ja) * 2013-11-01 2015-05-07 富士フイルム株式会社 偏光板保護フィルム、ドープ組成物、偏光板保護フィルムの製造方法、偏光板ならびに液晶表示装置
JP6211103B2 (ja) * 2014-01-22 2017-10-11 富士フイルム株式会社 ドープ組成物、光学フィルム、光学フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置
KR20160101159A (ko) * 2014-01-24 2016-08-24 코니카 미놀타 가부시키가이샤 위상차 필름, 편광판 및 va형 액정 표시 장치
KR101907330B1 (ko) * 2015-01-16 2018-10-11 코니카 미놀타 가부시키가이샤 위상차 필름, 편광판 및 수직 배향형 액정 표시 장치

Family Cites Families (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4385466B2 (ja) * 2000-02-01 2009-12-16 コニカミノルタホールディングス株式会社 偏光板用保護フィルム及びその製造方法
JP5157032B2 (ja) * 2001-09-06 2013-03-06 コニカミノルタホールディングス株式会社 セルロースエステルフィルム、その製造方法、光学補償フィルム、偏光板及び液晶表示装置
JP2004177642A (ja) * 2002-11-27 2004-06-24 Konica Minolta Holdings Inc 位相差フィルムとその製造方法、光学補償フィルム、偏光板及び液晶表示装置
US8697201B2 (en) * 2005-03-31 2014-04-15 Kaneka Corporation Retardation film and production method thereof
JP2006317560A (ja) * 2005-05-10 2006-11-24 Kaneka Corp 偏光子保護フィルムならびにそれを用いた偏光板
JP2007284571A (ja) * 2006-04-17 2007-11-01 Fujifilm Corp セルロースエステルペレット、セルロースエステルフィルム、偏光板、位相差板および液晶表示装置
JP2007320052A (ja) * 2006-05-30 2007-12-13 Konica Minolta Opto Inc ハードコートフィルム、偏光板及び表示装置
JP2007304620A (ja) * 2007-07-11 2007-11-22 Konica Minolta Holdings Inc 光学異方体の製造方法とそれを用いた偏光板及び液晶表示装置
CN101821324B (zh) * 2007-10-13 2012-06-27 柯尼卡美能达精密光学株式会社 光学薄膜
WO2009096070A1 (ja) * 2008-01-30 2009-08-06 Konica Minolta Opto, Inc. アクリル樹脂含有フィルム、それを用いた偏光板及び液晶表示装置
JP5472097B2 (ja) * 2008-04-22 2014-04-16 コニカミノルタ株式会社 光学フィルム、光学フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置
JP5540394B2 (ja) * 2008-05-12 2014-07-02 サイデン化学株式会社 偏光板用粘着剤組成物
JP2009294260A (ja) * 2008-06-02 2009-12-17 Fujifilm Corp アクリルフィルムおよびその製造方法、並びに、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置
JP5464141B2 (ja) * 2008-06-18 2014-04-09 コニカミノルタ株式会社 偏光板、液晶表示装置、及び偏光板用保護フィルムの製造方法
KR101677781B1 (ko) * 2009-04-10 2016-11-18 코니카 미놀타 어드밴스드 레이어즈 인코포레이티드 광학 필름, 그것을 이용한 편광판 및 액정 표시 장치

Also Published As

Publication number Publication date
JP2012215688A (ja) 2012-11-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5875263B2 (ja) 光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置
JP5542086B2 (ja) 光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置
JP5799954B2 (ja) 防眩性フィルム、防眩性フィルムの製造方法、偏光板及び液晶表示装置
JP5894122B2 (ja) 光学フィルム、偏光板、及び液晶表示装置
JP6209130B2 (ja) 光学フィルム、組成物、平面画像表示装置、立体画像表示装置、液晶表示装置、有機el表示装置、光学フィルムの製造方法
WO2011114884A1 (ja) ハードコートフィルム、その製造方法、偏光板、及び液晶表示装置
WO2015076250A1 (ja) 光学フィルム、偏光板および液晶表示装置
TW201403144A (zh) 相位差膜、偏光板、液晶顯示裝置以及相位差膜的製造方法
US9784897B2 (en) Optical film, polarizing plate and liquid crystal display device
JP5597438B2 (ja) 光学フィルムの製造方法、光学フィルム、偏光板、及び画像表示装置
JP4664100B2 (ja) ポリビニルアルコール系フィルム、および偏光膜、偏光板
JP5726625B2 (ja) 光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置
WO2012026192A1 (ja) ハードコートフィルム、偏光板、及び液晶表示装置
JP5481338B2 (ja) 光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置
JP6277066B2 (ja) 光学フィルム、偏光板および液晶表示装置
JP5699519B2 (ja) 位相差フィルム、位相差フィルムの製造方法、偏光板及び液晶表示装置
JP5555117B2 (ja) 光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置
JP6048506B2 (ja) 光学フィルム
JP5872851B2 (ja) 剥離性積層フィルムとその製造方法、偏光板とその製造方法及び液晶表示装置
JP5779441B2 (ja) 剥離性積層フィルムの製造方法、及び偏光板の製造方法
JP2009086342A (ja) 液晶表示装置
JP5957818B2 (ja) 位相差フィルム、偏光板及び液晶表示装置
JP2011236259A (ja) 光学フィルムの製造方法、及び光学フィルム
JP6211118B2 (ja) 光学フィルム、偏光板、及び液晶表示装置
JP2010209233A (ja) セルロースアシレートフィルム、及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130610

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20131226

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20140128

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140328

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140415

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140502

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5542086

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees