JP5555117B2 - 光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
光学フィルムとその製造方法、偏光板および液晶表示装置 Download PDFInfo
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Description
そのため、ヘイズなどに悪影響を生じさせずに、セルロースアシレートフィルムの光弾性係数を低減させる方法については、さらなる検討が求められているのが実情であった。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、ヘイズが小さく、PVA偏光子への貼り合わせが良好であり、液晶表示装置に組み込んだときの光モレが改善された光学フィルムを提供することである。
[2] 前記光弾性係数低減剤が下記一般式(1)または一般式(2)で表される繰り返し単位のいずれか一つを含む[1]に記載の光学フィルム。
[3] 前記光弾性係数低減剤が下記一般式(3)、一般式(4)または一般式(5)のいずれかで表される繰り返し単位を含む化合物であることを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
[4] 前記光弾性係数低減剤が下記一般式(6)で表される繰り返し単位を含む化合物であることを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
[5] 前記光弾性係数低減剤が下記一般式(7)または一般式(8)のいずれかで表される繰り返し単位を含む化合物であることを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
[7] 前記光弾性係数低減剤が(メタ)アクリル樹脂であることを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
[8] 前記光弾性係数低減剤が下記一般式(11)で表される化合物であることを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
[9] 前記外層中における、前記セルロースアシレート100質量部に対する前記光弾性係数低減剤の添加量が0.1〜300質量部であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[10] 前記コア層の熱可塑性樹脂がアクリル樹脂、あるいは、シクロ系構造またはノルボルネン構造を有するポリオレフィン樹脂であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[11] 全膜厚に占める、前記外層の合計膜厚の割合が70%以下であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[12] 下記式(I)で定義される面内方向のレターデーションRe及び下記式(II)で定義される膜厚方向のレターデーションRthが、25℃相対湿度60%環境下で波長590nmにおいて下記式(III)及び下記式(IV)を満たすことを特徴とする、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(I) Re=(nx―ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(III) |Re|<10nm
式(IV) |Rth|<25nm
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
[13] 光弾性係数の値が−6.0〜6.0×10-12Pa-1であることを特徴とする、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[14] セルロースアシレートと有機系の光弾性係数低減剤と有機溶媒を含有するドープ(A)、および熱可塑性樹脂と有機溶媒を含有するドープ(B)を流延基材側から(A)−(B)の順番に同時又は逐次に流延基材上に流延する工程と、前記有機溶媒を除去する工程を含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
[15] 共流延法により、各層を同時または逐次に流延製膜することにより製造することを特徴とする[14]に記載の光学フィルムの製造方法。
[16] 偏光子と、[1]〜[13]のいずれか一項に記載の光学フィルムを少なくとも1枚含むことを特徴とする偏光板。
[17] [1]〜[13]のいずれか一項に記載の光学フィルム、または[16]に記載の偏光板を含むことを特徴とする液晶表示装置。
[18] IPSモードであることを特徴とする[17]に記載の液晶表示装置。
本発明の光学フィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、熱可塑性樹脂を含有するコア層と、該コア層の少なくとも片側に、セルロースアシレートを含む外層を有し、前記外層に有機系の光弾性係数低減剤を含むことを特徴とする。
ここで、明細書中、光弾性係数低減剤とは、下記式(1A)で定義される△C(A)が−0.02以下を満たす化合物のことを言う。
式(1A):△C(A)=(C(A)−C(0))/A (Pa-1×10-12/質量部)
[式(1A)中、C(A)は光弾係数低減剤が添加されたセルロースアシレートフィルムの光弾性係数、C(0)は光弾係数低減剤が添加されていないセルロースアシレートフィルムの光弾性係数とする。Aは該フィルム中のセルロースエステルの質量を100としたときの該化合物の質量を表す。]
本発明では、このような有機系の光弾性係数低減剤を、セルロースアシレートを含む外層に添加することで、外層および積層体全体の光弾性係数を低減でき、その結果、いかなる理論に拘泥するものでもないが、液晶表示装置に本発明のフィルムを組み込んだときの光モレを低減することができる。また、有機系の光弾性係数低減剤は、無機微粒子を用いた場合よりも添加時のヘイズの上昇が少ないため、無機微粒子よりもはるかに好適に光学フィルム用途に用いることができる。
以下、本発明のフィルムの好ましい態様について説明する。
(光弾性係数)
光弾性係数は物質固有の性質であり、光弾性係数をほとんど発現しない物質はむしろまれである。例えば、高分子樹脂の多くは、外部応力や熱応力により複屈折を発現する。光弾性係数は、印加される応力の方向に関連して符号を定義することができる。即ち、媒体(高分子樹脂) に引っ張り応力を加えた場合、引っ張り応力と平行な方向に偏光面を有する偏光に対する屈折率nparaと、それに直交する方向に偏光面を有する偏光に対する屈折率に対して、下記(1B) 式で表される光弾性係数cの正負で光弾性係数の符号が表現される。
c=Δn/σ=(npara−nperp)/σ ・・・・・(1B)
つまり、nparaの方がよりnperpも大きい場合に光弾性係数は正、小さい場合は負となる。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。本願明細書においては、特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
式(11)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
式(12)
Rth={(nx+ny)/2−nz}xd
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
式(I) Re=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(III) |Re|<10nm
式(IV) |Rth|<25nm
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
また、本発明のフィルムは、Rth<25nmを満たすことが好ましく、−15≦Rth≦5nmであることがより好ましく、−10≦Rth≦0nmであることが特に好ましい。
本発明のフィルムは、前記コア層の片側に前記外層を少なくとも1層有する。本発明のフィルムは、前記コア層の両面に前記外層を少なくとも1層ずつ有することが好ましく、前記コア層の両面に前記外層を1層ずつ有することがより好ましい。
本発明のフィルムは、前記外層の膜厚は1層当り1〜60μmであることが好ましく、1〜40μmであることがより好ましく、1〜20μmであることが特に好ましい。前記コア層の膜厚は10〜120μmであることが好ましく、14〜100μmであることがより好ましく、19〜80μmであることが特に好ましい。
また、積層体としての光学フィルム全体の膜厚は、11〜240μmが好ましく、更に好ましくは15〜150μmであり、20〜100μmが最も好ましい。
本発明のフィルムは、フィルム幅が400〜2500mmであることが好ましく、1000mm以上であることがより好ましく、1500mm以上であることが特に好ましく、1800mm以上であることがより特に好ましい。
本発明のフィルムは、前記コア層の片側にセルロースアシレートを含む外層を有し、前記外層に有機系の光弾性係数低減剤を含む。
前記有機系の光弾性係数低減剤としては、特に制限はないが、例えば下記のような化合物を挙げることができる。
例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、炭素数1〜20の直鎖、分岐、または環状のアルキル基(メチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数2〜20のアルケニル基(ビニル基、プロペニル基等)、炭素数2〜20のアルキニル基(エチニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基、t−ブチルエチニル基等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等)、炭素数2〜20のアシル基(ベンゾイル基等)、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基等)、炭素数1〜20のカルバモイル基(N,N−ジエチルカルバモイル基等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシ基等)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(フェニルスルホニル基等)、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、シリル基(トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリビニルシリル基等)等が挙げられる。
なお、本明細書中、上記の一般式(1)の各置換基以外の、各一般式における置換基の例についても、上記の一般式(1)の各置換基として挙げた例と同様である。
前記R1は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
前記R2は水素原子または−COOR9(R9は炭素数1〜20の炭化水素基を表わす)であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
前記X1は5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。
前記X2は5員環または6員環であることが好ましく、5員環であることがより好ましい。
このとき、前記一般式(1)または一般式(2)で表される繰り返し単位は、共重合体全体において30モル%以上含まれることが好ましく、50モル%以上含まれることがより好ましく、70モル%以上含まれることが特に好ましい。この比率は、後述する一般式(3)〜一般式(8)などで表される前記有機系の光弾性係数低減剤の場合も同様である。
また、前記有機系の光弾性係数低減剤が共重合体である場合、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよい。また、グラフト重合体であってもよい。
以下、各構造の光弾性係数低減剤として用いられる化合物について順に説明する。
本発明で好ましく用いられる主鎖に環構造を持ち1,3型で結合した化合物としては、特に限定されることはない。その中でも、具体的には下記一般式(3)、一般式(4)または一般式(5)のいずれかで表される繰り返し単位を含む化合物であることが好ましい。
前記R5は、炭素数2〜8の飽和炭化水素基が好ましく、炭素数2〜8の分岐鎖を有する飽和炭化水素基、または炭素数2〜8の環状の飽和炭化水素基であることがより好ましく、炭素数2〜8の分岐鎖を有する飽和炭化水素基であることが特に好ましい。
前記R7は、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜6の炭化水素基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基であることが特に好ましい。
本発明で好ましく用いられる主鎖に環構造をもち1,2型で結合した化合物としては、特に限定されることはない。その中でも、具体的には下記一般式(6)で表される繰り返し単位を含む化合物であることが好ましい。
前記R8は、炭素数2〜8の飽和炭化水素基が好ましく、炭素数2〜8の分岐鎖を有する飽和炭化水素基、または炭素数2〜8の環状の飽和炭化水素基であることがより好ましく、炭素数2〜8の分岐鎖を有する飽和炭化水素基であることが特に好ましい。
本発明で好ましく用いられる側鎖に5員環または6員環構造をもつ化合物としては、特に限定されることはない。その中でも、具体的には下記一般式(7)または一般式(8)のいずれかで表される繰り返し単位を含む化合物であることが好ましい。
水添石油樹脂とは、石油ナフサの熱分解又は触媒を用いた接触分解により得られるスペント留分のことを言う。
前記水添石油樹脂の例は、重合性を有するスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ジシクロペンタジエン、アルキルインデン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ナフタリン等を主として含むC9留分をフリーデツクラフツ型触媒又は熱により重合して得られるC9系石油樹脂;イソプレン、ペンテン、ペンタジエン、メチルプテン等を主成分とするC5留分を同様に重合して得られるC5系石油樹脂、前記C5留分とC9留分を共重合して得られるC5−C9系石油樹脂;シクロペンタジエンを重合して得られるDCPD系石油樹脂;シクロペンタジエンとスチレンを共重合して得られるDCPD−St系石油樹脂;リモネン、ピネン類を重合して得られるテルペン系石油樹脂;主としてクマロンを重合して得られるクロマン系石油樹脂;そして天然ロジン等の石油樹脂を水素化触媒存在下、水素ガスにより水素化にて水素化した樹脂である。
本発明で好ましく用いられる水添石油樹脂としては、特に限定されることはない。その中でも、具体的には市販品のC5系水添石油樹脂のクイントン1700(日本ゼオン(株)製)やC9系水添石油樹脂KR1842(荒川化学工業(株)製)であることが好ましい。
本発明で好ましく用いられる(メタ)アクリル樹脂としては、特に限定されることはない。その中でも、脂肪族の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー又はシクロへキシル基などの環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分として含むものを好ましく用いることができ、脂肪族の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、シクロへキシル基などの環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分として含むものをより好ましく用いることができる。
本発明で好ましく用いられるトリプチセン誘導体としては、特に限定されることはない。その中でも、下記一般式(11)で表される化合物であることが好ましい。
前記R12は、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基または水酸基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
前記R13は、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基または水酸基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
前記R14は、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基または水酸基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
前記R15は、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基または水酸基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
前記R16は、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基または水酸基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
前記m1〜m3はそれぞれ独立に、0〜2であることが好ましく、0〜1であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
本発明では、前記有機系の光弾性係数低減剤の添加量はセルロースアシレート100質量部に対して0.1〜300質量部使用することができ、1〜200質量部が好ましく、5〜150質量部がさらに好ましい。
本発明に用いられる外層ドープに含有されるセルロースアシレートは、特に定めるものではない。原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
さらに、本発明に用いられるセルロースアシレートはアシル基の総置換度をTA全、炭素数が2のアシル基の置換度をTA2、炭素原子数が3以上7以下のアシル基の置換度をTA3としたときに、以下の条件を満たすことが好ましい。以下の範囲にすることで、隣接層との密着性、ドラム剥離性、フィルムのカール低減の観点で優れた光学フィルムを得ることができる。
2.2≦TA全≦3.0
1.5≦TA2≦3.0
0.0≦TA3≦0.7
2.5≦TA全≦3.0
2.4≦TA2≦3.0
0.0≦TA3≦0.1
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂を含有するコア層を含む。
以下、コア層の好ましい態様について説明する。
本発明において前記コア層に用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、透明性の優れた熱可塑性樹脂であることが好ましい。前記コア層に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、又はポリカーボネート系ポリマーやポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーが挙げられる。特に、透明性、耐熱性、耐水性に優れ、固有複屈折率が低く、光弾性係数が小さいアクリル樹脂、あるいは、シクロ系またはノルボルネン構造を有するポリオレフィンが好適に用いられる。前記シクロ系またはノルボルネン構造を有するポリオレフィンとしては、特許第3924236号に記載のポリオレフィンを好ましく用いることができる。
アクリロニトリル−スチレン系共重合体としては、具体的には、その共重合比がモル単位で、1:10〜10:1の範囲のものが有用に使用される。
本発明の光学フィルムには、前記コア層および前記外層のそれぞれにおいて、主原料となる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂とともに、前記光弾性係数低減剤以外の添加剤を、本発明の趣旨に反しない限りにおいて含有させてもよい。
本発明においては、光学フィルムに柔軟性を与え、寸法安定性を向上させ、耐湿性を向上させるために可塑剤を用いてもよい。
これらの好ましい可塑剤は、25℃においてTPP(融点約50℃)以外は液体であり、沸点も250℃以上である。
また、耐揮発性、ブリードアウト、低ヘイズなどの点で優れる可塑剤としては、例えば特開2009−98674号公報に記載の両末端が水酸基であるポリエステルジオールを用いるのが好ましい。また、光学フィルムの平面性や低ヘイズなどの点で優れる可塑剤としては、WO2009/031464号公報に記載の糖エステル誘導体も好ましい。
本発明の光学フィルムには、フィルム自身の耐光性向上、或いは偏光板、液晶表示装置の液晶化合物等の画像表示部材の劣化防止のために、更に紫外線吸収剤を添加してもよい。
フィルムの表面に凹凸を与えたりフィルム内部に光散乱性を付与したりするために粒子を添加することもでき、その場合には、粒子の粒径は1〜20μmであるのが好ましく、添加量は2〜30質量%好ましい。これら粒子屈折率は本発明のポリマーフィルムの屈折率との差が0〜0.5であるのが好ましく、例えば、無機材料の粒子の例には、酸化珪素、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粒子が含まれる。有機材料の粒子の例には、アクリル樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、スチレン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が含まれる。
本発明では、前記有機系の光弾性係数低減剤を用いることで、従来の無機微粒子を多量に用いて光弾性係数を低減させる方法に比べて、本発明のフィルムのヘイズを小さくすることができる。前記無機微粒子は、本発明の上記趣旨に反しない限りにおいて、添加することが好ましい。
本発明の光学フィルムは、例えば、その上に更に0.1μm以上15μm以下の厚みの硬化性樹脂層を設けてもよい。また、本発明の光学フィルムは、該硬化性樹脂層の上に、帯電防止層、高屈折率層、低屈折率層等の光学機能層を設けることもできる。また、硬化性樹脂層が帯電防止層や高屈折率層を兼ねることもできる。
硬化性樹脂層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を光透過性基材上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
また、硬化性樹脂層には、公知のレベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、屈折率調節用無機フィラー、散乱粒子、チキソトロピー剤等の添加剤を用いることができる。
本発明の光学フィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、セルロースアシレートと有機系の光弾性係数低減剤と有機溶媒を含有するドープ(A)、および熱可塑性樹脂と有機溶媒を含有するドープ(B)を流延基材側から(A)−(B)の順番に同時又は逐次に流延基材上に流延する工程と、前記有機溶媒を除去する工程を含むことを特徴とする。
本発明の光学フィルムに用いる熱可塑性樹脂の溶液(ドープ)の調製について、その溶解方法は、室温溶解法、冷却溶解法または高温溶解方法により実施され、さらにはこれらの組合せで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号などの各公報にはセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。これらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明の熱可塑性樹脂に対しても、これらの技術を適宜適用できるものである。これらの詳細、特に非塩素系溶媒系については、前記の公技番号2001−1745号の22〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。さらに熱可塑性樹脂のドープ溶液は、溶液濃縮、濾過が通常実施され、同様に前記の公技番号2001−1745号の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
本発明において、前記セルロースアシレートおよび前記熱可塑性樹脂をそれぞれ溶解し、ドープを形成する有機溶媒について記述する。用いる有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒が挙げられ、例えば溶解度パラメーターで17〜22の範囲ものが好ましい。溶解度パラメーターは、例えばJ.Brandrup、E.H等の「PolymerHandbook(4th.edition)」、VII/671〜VII/714に記載の内容のものを表す。低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類、フルオロアルコール類(例えば、特開平8−143709号公報 段落番号[0020]、同11−60807号公報 段落番号[0037]等に記載の化合物)等が挙げられる。
前記外層ドープ及びコア層ドープに含有される有機溶媒のうちアルコールの割合が有機溶剤全体の10〜50質量%であることが製膜後の支持体(流延基材)上での乾燥時間を短縮し、早く剥ぎ取って乾燥することができるという理由から好ましく、15〜30質量%であることがより好ましい。
その中でも、セルロースアシレート溶解前のタイミングで前記有機系の光弾性係数低減剤を前記外層用のドープ(A)に添加することが好ましい。
本発明における光学フィルム製膜の方法としては、溶液キャスト法(溶液流延法)を用いる。本発明の製造方法は、セルロースアシレートと有機系の光弾性係数低減剤と有機溶媒を含有するドープ(A)、および熱可塑性樹脂と有機溶媒を含有するドープ(B)を流延基材側から(A)−(B)の順番に同時又は逐次に流延基材上に流延する工程を含む。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、前記少なくとも2種の外層用ドープ、コア層用ドープを流延基材側からこの順番に同時に流延基材上に共流延することが好ましい。
本発明の製造方法は、前記有機溶媒を除去する工程を含む。
ドラムやバンド上で乾燥され、剥離されたウェブの乾燥方法について述べる。ドラムやバンドが1周する直前の剥離位置で剥離されたウェブは、千鳥状に配置されたロ−ル群に交互に通して搬送する方法や剥離されたウェブの両端をクリップ等で把持させて非接触的に搬送する方法などにより搬送される。乾燥は、搬送中のウェブ(フィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエ−ブなどの加熱手段などを用いる方法によって行われる。急速な乾燥は、形成されるフィルムの平面性を損なう恐れがあるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で乾燥を行うのが好ましい。支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。収縮は、高温度で乾燥するほど大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているように、乾燥の全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンタ−方式)が好ましい。上記乾燥工程における乾燥温度は、100〜145℃であることが好ましい。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量および乾燥時間が異なるが、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。
本発明の製造方法は、前記製膜工程のあとに、製膜した前記積層フィルムを延伸する工程を含んでもよい。
本発明のフィルムの製造では、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が120質量%未満の時に延伸することが好ましい。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量の更に好ましい範囲は10質量%〜50質量%、特に12質量%〜35質量%が最も好ましい。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
また、延伸はフィルム搬送方向(縦方向)に行っても、フィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に行っても、両方向に行ってもよい。
一方、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、可塑剤として揮散しやすい低分子可塑剤を用いる場合は、室温(15℃)〜145℃以下の範囲が好ましい。
同時2軸延伸する場合、延伸温度は110℃〜190℃で行った場合でも本発明のフィルムを得ることができ、同時2軸延伸する場合の延伸温度は、120℃〜150℃であることがより好ましく、130℃〜150℃であることが特に好ましい。また、同時2軸延伸することで、ヘイズはある程度高くなるものの、光学発現性を更に高めることができる。
一方、逐次2軸延伸する場合、先にフィルム搬送方向に平行な方向に延伸し、その次にフィルム搬送方向に直交する方向に延伸することが好ましい。前記逐次延伸を行う延伸温度のより好ましい範囲は上記同時2軸延伸を行う延伸温度範囲と同様である。
本発明の光学フィルムは低いRe、Rthが好ましいため、本発明の製造方法では、光学特性を発現させないという観点から、延伸工程を含まないことが、好ましい。
本発明のフィルムの製造方法は乾燥工程終了後に熱処理工程を設けることが好ましい。当該熱処理工程における熱処理は乾燥工程終了後に行われればよく、延伸/乾燥工程後直ちに行ってよいし、あるいは乾燥工程終了後に後述する方法で一旦巻き取った後に、熱処理工程だけを別途設けてもよい。
また、延伸処理されたフィルムは、その後、100℃以上に加熱された水蒸気を吹き付けられる工程を経て製造されてもよい。
本発明の光学フィルムを、偏光板の保護フィルムとして使用し、偏光膜と接着させる場合には、偏光膜との接着性の観点から、酸処理、アルカリ処理、プラズマ処理、コロナ処理等の表面を親水的にする処理を実施することが特に好ましい。
本発明の光学フィルムは、偏光子とその少なくとも一方の側に配置された保護フィルムとを有する偏光板において、その保護フィルムとして使用することができる。
本発明の偏光板は、偏光子と、本発明の光学フィルムを少なくとも1枚含むことを特徴とする。
すなわち、連続的に供給されるポリビニルアルコール系フィルムなどのポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸して、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内で、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するように、フィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に好適に用いられる。
本発明の液晶表示装置は、本発明の光学フィルム、または本発明の偏光板を含むことを特徴とする
液晶セルは、TNモード、VAモード、OCBモード、IPSモード又はECBモードであることが好ましく、IPSモードであることがより好ましい。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
<ドープの調製>
各層に用いるドープを下記組成に従って調製した。
セルロースアシレート 100質量部
(アセチル置換度2.86、プロピオニル置換度0、全アシル置換度2.86)
光弾性係数低減剤(下記化合物1)100質量部
メチレンクロライド 830質量部
メタノール 210質量部
ブタノール 10質量部
アクリル樹脂 100質量部
(ダイヤナールBR88三菱レーヨン社製)
メチレンクロライド 415質量部
メタノール 105質量部
ブタノール 5質量部
上記のドープを用いて溶液流延製膜を行い、膜厚構成が外層(1)30μm/コア層30μm/外層(2)30μmとなるように光学フィルムを作製した。具体的には、3層共流延が可能な流延ギーサーを通して、表面温度を0℃に設定した金属ドラム支持体上に、表2に記載の層構成となるように流延した。このとき、ドラム支持体面側から順に外層(1)、コア層、外層(2)となるように流延した。膜厚構成は、各ドープ流量から均一厚みの膜が形成されたと仮定したときの換算膜厚である。ドラム支持体上にある間、ドープを40℃の乾燥風により乾燥してフィルムを形成した後に剥ぎ取り、フィルム両端をピンで固定し、その間を同一の間隔で保ちつつ105℃の乾燥風で5分間乾燥した。ピンを外した後、さらに130℃で20分間乾燥した。これを実施例1の光学フィルムとした。
膜厚構成を外層(1)30μm/コア層40μmに変更した以外は上記実施例1と同様にして、実施例2の光学フィルムを作成した。
外層用ドープに添加した化合物1の添加量を150質量部に変更した以外は上記実施例1と同様にして、実施例3の光学フィルムを作成した。
外層用ドープの化合物1を下記構造の化合物4に変更した以外は上記実施例1と同様にして、参考例7の光学フィルムを作成した。
外層用ドープの化合物1をC5系水添石油樹脂のクイントン1700(日本ゼオン(株)製)に変更した以外は上記実施例1と同様にして、実施例8の光学フィルムを作成した。
コア層用ドープをノルボルネン系樹脂(アートン、JSR社製)に変更した以外は上記実施例1と同様にして、実施例11の光学フィルムを作成した。
外層用ドープの化合物1を除いた以外は上記実施例1と同様にして、比較例1の光学フィルムを作成した。
外層用ドープの化合物1を下記構造の比較用化合物8(アセチル置換度1.5、全アシル置換度1.5、分子量6,000のセルロースアセテート)に変更した以外は上記実施例1と同様にして、比較例2の光学フィルムを作成した。
外層用ドープの化合物1を下記構造の比較用化合物9に変更した以外は上記実施例1と同様にして、比較例3の光学フィルムを作成した。なお、比較例3の化合物は、アジピン酸とエチレングリコールのエステルオリゴマーである。
膜厚構成をコア層60μmのみに変更した以外は上記実施例1と同様にして、比較例4の光学フィルムを作成した。
コア層ドープのアクリル樹脂をノルボルネン系樹脂(アートン、JSR社製)に変更し、膜厚構成をコア層80μmのみに変更した以外は上記実施例1と同様にして、比較例5の光学フィルムを作成した。
外層用ドープの化合物1を平均粒径20nmのほぼ球状のシリカ(石英、SiO2)(特開2005−208257号:実施例1で使用)に変更した以外は上記実施例1と同様にして、比較例3の光学フィルムを作成した。
作製した光学フィルムから1cm×5cmのサンプルを切り出し、分光エリプソメーター(M−220、日本分光株式会社製)を用いて、サンプルに25℃で応力をかけながら、フィルム面内のレターデーション値を測定し、レターデーション値と応力の関数の傾きから算出した。その結果を下記表に記載した。
ヘイズの測定は、得られた光学フィルム試料40mm×80mmを、25℃、相対湿度60%で、ヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定した。以下の基準で評価した結果を下記表に記載した。
○:ヘイズが5%以下である。
×:ヘイズが5%を超える。
作製した光学フィルムの脆性を以下の方法で検討した。
得られたフィルムを3cm×20cmに切断し、180°折曲げて折り曲げの前後で膜の状態を調べた。
以下の基準で評価した結果を下記表に記載した。
○:折り曲げが可能で且つ5回繰り返し折り曲げ後の膜に変化がなかったもの。
△:5回折り曲げ後に膜に外層、コア層ともに割れていないが折り曲げクセがつくもの。
×:5回の折り曲げ後にコア層が割れたもの。
1〕フィルムの鹸化
実施例及び比較例で作成した各光学フィルム及びフジタックTD60UL(富士フイルム(株)製)を37℃に調温した4.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(けん化液)に1分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を通した。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムを作製した。
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜を調製した。
このようにして得た偏光膜と、前記鹸化処理したフィルムのうちから2枚選び、これらで前記偏光膜を挟んだ後、PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とフィルムの長手方向とが直交するようにロールツーロールで貼り合わせて偏光板を作成した。ここで、偏光膜の一方のフィルムは、実施例または比較例に記載の光学フィルム群から選択される1枚を鹸化したフィルムとし、他方のフィルムはフジタックTD60ULを鹸化したフィルムとした。
このとき、以下の基準でPVA偏光子への貼り合わせを評価した結果を下記表に記載した。
○:フィルムがポリビニルアルコールから剥離しない。
×:フィルムがポリビニルアルコールから容易に剥離する。
(IPS型液晶表示装置への実装)
市販の液晶テレビ(IPSモードのスリム型42型液晶テレビ)から、液晶セルを挟んでいる偏光板を剥がし取り、前記作製した偏光板を、実施例または比較例に記載のフィルム側が液晶セル側に配置されるように、粘着剤を介して液晶セルに再貼合した。組みなおした液晶テレビを、40℃・相対湿度80%の環境で10日間保持した後に、25℃・相対湿度60%の環境に移し、黒表示状態で点灯させ続け、48時間後に目視観察して、光ムラを評価した。
装置正面から観察した場合の黒表示時の輝度ムラを観察し、以下の基準で評価した。
◎ : 照度100lxの環境下でムラがほとんど視認されない。
○ : 照度100lxの環境下で淡いムラが視認される。
△ : 照度100lxの環境下で明確なムラが視認される。
× : 照度300lxの環境下で明確なムラが視認される。
なお、ヘイズの上昇した光学フィルムの使用は、光弾性係数が低減していても、光の散乱により光モレが悪化する。
正面方向の光ムラ評価結果を下記表1に示す。
比較例1および2および3および6については光弾性係数が低減されておらず、または光弾性係数は低減されてはいるがヘイズが大きく光モレが抑制できていなかった。比較例4および5についてはフィルムがポリビニルアルコールから容易に剥離してしまい、適切な偏光板加工適性を有していなかった。その他のフィルムについてはいずれもポリビニルアルコールとの貼合性は十分であり、優れた偏光板加工適性を有していた。
12 ドープ
14 流延ダイ
31 バンド
32 バックアップローラ
33 バックアップローラ
36 フィルム
37 剥ぎ取りローラ
51 温調板
52 凝縮板
53 液受け
56 回収タンク
101 流延設備
102 ドラム
105 凝縮板
PS 流延開始位置
Claims (14)
- 熱可塑性樹脂を含有するコア層と、
該コア層の少なくとも片側に、セルロースアシレートを含む外層を有し、
前記外層に有機系の光弾性係数低減剤を含み、
前記光弾性係数低減剤が水添石油樹脂であることを特徴とする光学フィルム。 - 前記外層中における、前記セルロースアシレート100質量部に対する前記光弾性係数低減剤の添加量が0.1〜300質量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 前記コア層の熱可塑性樹脂がアクリル樹脂、あるいは、シクロ系構造またはノルボルネン構造を有するポリオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 全膜厚に占める、前記外層の合計膜厚の割合が70%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 下記式(I)で定義される面内方向のレターデーションRe及び下記式(II)で定義される膜厚方向のレターデーションRthが、25℃相対湿度60%環境下で波長590nmにおいて下記式(III)及び下記式(IV)を満たすことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(I) Re=(nx―ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(III) |Re|<10nm
式(IV) |Rth|<25nm
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。) - 光弾性係数の値が−6.0〜6.0×10-12Pa-1であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- セルロースアシレートと有機系の光弾性係数低減剤と有機溶媒を含有するドープ(A)、および熱可塑性樹脂と有機溶媒を含有するドープ(B)を流延基材側から(A)−(B)の順番に同時又は逐次に流延基材上に流延する工程と、
前記有機溶媒を除去する工程を含み、
前記光弾性係数低減剤が下記一般式(3)、一般式(4)または一般式(5)のいずれかで表される繰り返し単位を含む化合物、下記一般式(6)で表される繰り返し単位を含む化合物、水添石油樹脂、あるいは、下記一般式(11)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 共流延法により、各層を同時または逐次に流延製膜することにより製造することを特徴とする請求項10に記載の光学フィルムの製造方法。
- 偏光子と、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学フィルムを少なくとも1枚含むことを特徴とする偏光板。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学フィルム、または請求項12に記載の偏光板を含むことを特徴とする液晶表示装置。
- IPSモードであることを特徴とする請求項13に記載の液晶表示装置。
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