JP6728665B2 - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光学フィルムの製造方法に関する。
液晶表示装置は、テレビ、ノートパソコン、及びスマートフォン等の液晶ディスプレイとして広く用いられている。液晶表示装置は、通常、液晶セルと、それを挟持する一対の偏光板とを含み;偏光板は、偏光子と、保護フィルムとを含む。
保護フィルムを構成する材料として、セルロースエステルやシクロオレフィン系樹脂が知られている。セルロースエステルを主成分とする保護フィルムとしては、セルロースエステルを溶媒に溶解させた溶液を流延した後、乾燥又は延伸して得られるフィルムが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。シクロオレフィン系樹脂を主成分とするフィルムとしては、シクロオレフィン系樹脂を溶媒に溶解させた溶液を流延して得られるフィルムが知られている(例えば特許文献3参照)。
保護フィルムは、その機能に応じた位相差を有することが求められる。例えば、IPS方式の液晶セルの位相差フィルムとして用いられる保護フィルムは、位相差の絶対値ができるだけ小さいこと、即ちゼロ付近であることが求められる。位相差がゼロ付近である保護フィルムとしては、セルロースエステルとRt低下剤とを含む溶液を流延した後、延伸して得られるフィルム(例えば特許文献4参照)等が知られている。
保護フィルムは、さらに良好な機械的強度を有することが求められる。例えば、保護フィルムを含む偏光板を打ち抜き加工する際に、保護フィルムにクラックが発生しにくいことも求められる。そのようなクラックを抑制できる保護フィルムとして、シクロオレフィン系樹脂を含む溶融物を、特定の条件で流延して得られるフィルムが知られている(例えば特許文献5参照)。
特開2008−268419号公報 特開2002−292659号公報 特開2006−058834号公報 特許第5401569号公報 特開2008−274136号公報
しかしながら、特許文献1及び3に示されるフィルムは、位相差が高く、ゼロ位相差フィルムとしては適していなかった。
一方、特許文献2や4に示されるようなフィルムは、位相差は低いものの、無機ポリマー又はRth低下剤とセルロースエステルとの相溶性不良や添加剤のブリードアウトが生じやすく、フィルムのヘイズが増大しやすいという問題があった。特許文献4に示されるシクロオレフィン系樹脂フィルムは、位相差は低いものの、打ち抜き加工時のクラックを十分には抑制できないという問題があった。
このように、ヘイズを増大させることなく、位相差を十分に低くすることができ、且つ打ち抜き加工時のクラックを十分に抑制できる光学フィルムが求められている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ヘイズを増大させることなく、位相差の絶対値を十分に低くすることができ、且つ偏光板の打ち抜き加工時のクラックを十分に抑制できる光学フィルムを提供することを目的とする。
[1] 一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体由来の構成単位を含むシクロオレフィン系重合体と溶媒とを含む溶液を得る第1の工程と、前記溶液を、支持体上に流延し、残留溶媒量Sが30〜70質量%となるまで乾燥させた膜状物を剥離する第2の工程と、剥離された前記膜状物を、延伸することなく乾燥させるか、又は延伸倍率10%以下で延伸しながら乾燥させて、測定波長550nm、23℃55%RHの環境下で測定される、下記式(1a)で表される面内方向の位相差Roが0nm以上3nm以下であり、下記式(1b)で表される厚み方向の位相差Rtが−5nm以上5nm以下である光学フィルムを得る第3の工程とを含む、光学フィルムの製造方法。
Figure 0006728665
(一般式(A−1)中、
は、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、又は炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルシリル基を表し、
は、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表し、
pは、0〜2の整数を表す)
式(1a):Ro=(nx−ny)×d
式(1b):Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
(式(1a)及び式(1b)中、
nxは、前記光学フィルムの面内遅相軸方向の屈折率を表し、
nyは、前記面内遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
nzは、前記光学フィルムの厚さ方向の屈折率を表し、
dは、前記光学フィルムの厚み(nm)を表す)
[2] 前記第3の工程の乾燥又は延伸は、下記式(1)〜(3)を全て満たすように行う、[1]に記載の光学フィルムの製造方法。
T≧−3.85*S+207.7 …(1)
150≦T≦200 …(2)
2≦S≦15 …(3)
(Tは、乾燥又は延伸するときの雰囲気の温度(℃)を表し、
は、乾燥又は延伸を開始するときの前記膜状物の残留溶媒量(質量%)を表す)
[3] 前記シクロオレフィン系重合体は、前記シクロオレフィン系重合体からなる厚み60μmの試料フィルムを延伸倍率30%で延伸した後のRt/Roが1.0〜1.6を満たすものである、[1]又は[2]に記載の光学フィルムの製造方法。
[4] 前記溶液が、フラノース環又はピラノース環を1〜12個有する糖エステル化合物をさらに含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
[5] 前記糖エステル化合物が、脂肪族アシル基と芳香族アシル基の少なくとも一方を有し、且つ前記芳香族アシル基の置換度が前記脂肪族アシル基の置換度よりも高い、[4]に記載の光学フィルムの製造方法。
[6] 前記光学フィルムの厚みが、5〜30μmである、[1]〜[5]のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
[7] 前記光学フィルムが、偏光子保護フィルムである、[1]〜[6]のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
本発明によれば、ヘイズが十分に低減され、且つ偏光板の打ち抜き加工時のクラックを十分に抑制できる光学フィルムを提供できる。
位相差が大きい溶液製膜(キャスト)フィルムの分子の配向状態のイメージを示す説明図である。 位相差がゼロ付近の溶液製膜(キャスト)フィルムの分子の配向状態のイメージを示す説明図である。 位相差がゼロ付近の溶融製膜(メルト)フィルムの分子の配向状態のイメージを示す説明図である。 本発明の液晶表示装置の構成の一例を示す模式図である。
前述の通り、セルロースエステルを主成分とするフィルムは、位相差が発現しやすい。それは、以下の理由によると考えられる。セルロースエステルは、主鎖方向をnxとすると、側鎖がny方向に存在するため、ny方向に配向しやすく、xy面内に位相差が出やすい。特に溶液製膜法の場合、支持体上でドープが乾燥するときに、厚み方向に収縮するため、xy面内に位相差が出やすい。
位相差の発現のしやすさは、樹脂のRt/Roによって推定できる。セルロースエステル等のRt/Roが高い樹脂は、延伸倍率を下げる、若しくは延伸乾燥温度を高くして樹脂の配向を緩和させる等の延伸乾燥条件を適正化しても、Rtが出やすい。Rtは、支持体から剥離するときの膜状物の残留溶媒量を多くして剥離することで、ある程度は低減できる。しかしながら、セルロースエステルの場合、膜状物の残留溶媒量が多い状態では、支持体から膜状物を剥離するときの剥離力が大きくなる。剥離力にくらべて剥離張力が小さいと、支持体に膜状物が持って行かれやすく、剥離ができない。つまり、セルロースエステルの場合、剥離できる程度にまで膜状物を乾燥させると、膜状物の残留溶媒量が少なくなりすぎて、樹脂の配向が生じて位相差が出やすくなる。
従って、セルロースエステルを用いてゼロ位相差フィルムを得るためには、セルロースエステルと、それとは反対の複屈折性(負の複屈折性)を示すRt低下剤とを組み合わせることが必要となる。それにより、セルロースエステルと添加剤との相溶性不良や、Rt低下剤のブリードアウト等が生じ、得られる光学フィルムのヘイズが増大しやすい。
これに対して本発明者らは、(1)Rt/Roが低い樹脂として、「非対称な構造を有するシクロオレフィン単量体の重合体を選択」し、且つ「膜状物の剥離条件を適正化」することで、樹脂の配向が進行していない状態で支持体から膜状物を剥離できることを見出した。この理由は明らかではないが、以下のように推測される。非対称な構造を有するシクロオレフィン単量体の重合体は、主鎖がx方向に並んでも、側鎖がxy面内だけでなく、それ以外の種々の方向を向くため、Roのみが発現しやすく、Rtが大きくなりにくいと考えられる。
さらに、剥離した「膜状物の延伸乾燥条件を適正化」することで、得られる光学フィルムのRtをゼロに近づけることができる。それにより、Rt低下剤等を添加しなくても、ゼロ位相差フィルムを得ることができる。
また、本発明者らは、(2)このようなRtをゼロに近づけた光学フィルムを「溶液製膜法」によって製造することで、光学フィルムの機械特性を高めうること、具体的には偏光板の打ち抜き加工時にクラックの発生を低減できることをさらに見出した。この理由は明らかではないが、以下のように推測される。位相差が発現している状態は、樹脂の分子が配向している状態であるため、この配向に沿ってクラックが発生することがある(図1B参照)。位相差をゼロに近づけた状態では、樹脂の分子がほぼランダムに配向している状態になり、強い部分と弱い部分の差が少なくなり、均一になるので、クラックの発生を抑えられると考えられる(図1A参照)。
「溶融製膜法(メルト法)」でもRtをゼロに近づけることはできるが、機械特性、特に偏光板加工特性のうちでも打ち抜き時にクラックの発生は十分には抑制できない。「溶液製膜法(キャスト法)」では、溶媒によって樹脂の分子がほぐれてその分子鎖が伸び、さらにその伸びた状態で樹脂の分子同士が絡まっている状態になる。そのため、分子同士の間に絡まりが強い部分と弱い部分とのムラが少なく、十分な強度が得られやすい(図1A参照)。一方、「溶融製膜法(メルト法)」では、樹脂の分子鎖を延ばす溶媒がないため、そのような樹脂の分子同士の絡まり合いが生じにくい。その結果、分子鎖は糸毬状になりやすく、分子間に弱い部分が多くなり、機械特性が改善しないと考えられる(図1C参照)。
つまり、位相差をゼロに近づけることで樹脂の配向を少なくし、且つ溶液製膜法で製膜することで樹脂の分子同士の絡まり合いの強い部分と弱い部分のムラを少なくすることができる。それにより、得られる光学フィルムの機械的強度を高めることができると考えられる。
このように、本発明では、「非対称な構造を有するシクロオレフィン単量体の重合体」を用いて「溶液製膜(キャスト)」し、且つ「膜状物の剥離条件」と「剥離した膜状物の延伸乾燥条件」とを適正化する。それにより、ヘイズを増大させることなくRtがゼロ近傍に調整され、且つ偏光板の打ち抜き加工時にクラックを生じない光学フィルムを得ることができる。本発明は、このような知見に基づきなされたものである。
1.光学フィルムの製造方法
本発明の光学フィルムの製造方法は、1)シクロオレフィン系重合体と溶媒とを含む溶液を得る工程(第1の工程)と、2)得られた溶液を支持体上に流延した後、残留溶媒量Sが30〜70%となるまで乾燥させた膜状物を剥離する工程(第2の工程)と、3)剥離された膜状物を、延伸することなく乾燥するか、又は延伸倍率10%以下で延伸しながら乾燥させて光学フィルムを得る工程(第3の工程)とを含む。
1-1.1)の工程について
シクロオレフィン系重合体と、必要に応じて他の成分とを溶媒に溶解させて、溶液(以下、「ドープ液」という)を得る。
(シクロオレフィン系重合体)
ドープ液に含有されるシクロオレフィン系重合体は、シクロオレフィン単量体の重合体、又はシクロオレフィン単量体とそれ以外の共重合性単量体との共重合体である。
シクロオレフィン単量体は、ノルボルネン骨格を有するシクロオレフィン単量体であり、RoやRt(特にRt)が低い光学フィルムを得る観点から、非対称な構造を有するシクロオレフィン単量体を含むことが好ましい。
非対称な構造を有するシクロオレフィン単量体は、下記式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体であることが好ましい。
Figure 0006728665
一般式(A−1)のRは、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、又は炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルシリル基を表す。中でも、炭素数1〜5の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜3の炭化水素基がより好ましい。
一般式(A−1)のRは、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、又はハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子若しくはヨウ素原子)を表す。中でも、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基及びアリロキシカルボニル基が好ましく、溶液製膜時の溶解性を確保する観点から、アルコキシカルボニル基及びアリロキシカルボニル基がより好ましい。
一般式(A−1)のpは、0〜2の整数を表す。pは、1又は2であることが好ましい。
一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体は、非対称な構造を有する。即ち、一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体の置換基R及びRが、分子の対称軸に対して片側の環構成炭素原子のみに置換されているので、分子の対称性が低い。そのような非対称な構造を有するシクロオレフィン単量体は、主鎖がx方向に並んでも、側鎖がxy面内だけでなく、それ以外の種々の方向を向くため、Roのみが発現しやすく、Rtが大きくなりにくいと考えられる。
一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体の含有割合は、シクロオレフィン系重合体を構成する全シクロオレフィン単量体の合計に対して、例えば50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上とし得る。一般式(A−1)で表される単量体を一定以上含むシクロオレフィン系重合体は、光学フィルムのRtを低くしやすい。
シクロオレフィン単量体は、必要に応じて一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体以外の他のシクロオレフィン単量体をさらに含んでもよい。他のシクロオレフィン単量体の例には、下記式(A−2)で表されるシクロオレフィン単量体が含まれる。
Figure 0006728665
一般式(A−2)のR〜Rは、独立して水素原子、炭素原子数1〜30の炭化水素基、又は極性基を表す。但し、R〜Rの全てが水素原子となる場合を除き、RとRが同時に水素原子となるか、又はRとRが同時に水素原子となる場合はないものとする。
炭素原子数1〜30の炭化水素基は、炭素原子数1〜10の炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数1〜5の炭化水素基であることがより好ましい。炭素原子数1〜30の炭化水素基は、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はケイ素原子を含む連結基をさらに有していてもよい。そのような連結基の例には、カルボニル基、イミノ基、エーテル結合、シリルエーテル結合、チオエーテル結合等の2価の極性基が含まれる。炭素原子数1〜30の炭化水素基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が含まれる。
極性基の例には、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、アミノ基、アミド基及びシアノ基が含まれる。中でも、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基及びアリロキシカルボニル基が好ましく、溶液製膜時の溶解性を確保する観点から、アルコキシカルボニル基及びアリロキシカルボニル基が好ましい。
一般式(A−2)のpは、0〜2の整数を示す。pは、1又は2であることが好ましい。
一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体の具体例を例示化合物15〜34に示し、一般式(A−2)で表されるシクロオレフィン単量体の具体例を例示化合物1〜14に示す。
Figure 0006728665
他のシクロオレフィン単量体の例には、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン等も含まれる。
シクロオレフィン単量体と共重合可能な共重合性単量体の例には、シクロオレフィン単量体と開環共重合可能な共重合性単量体、シクロオレフィン単量体と付加共重合可能な共重合性単量体が含まれる。
開環共重合可能な共重合性単量体の例には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン及びシクロオクタジエン等のシクロオレフィンが含まれる。
付加共重合可能な共重合性単量体の例には、不飽和二重結合含有化合物、ビニル系環状炭化水素単量体、(メタ)アクリレートが含まれる。不飽和二重結合含有化合物の例には、炭素原子数2〜12(好ましくは2〜8)のオレフィン系化合物であり、その例には、エチレン、プロピレン、ブテンが含まれる。ビニル系環状炭化水素単量体の例には、4−ビニルシクロペンテン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロペンテン等のビニルシクロペンテン系単量体が含まれる。(メタ)アクリレートの例には、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1〜20のアルキル(メタ)アクリレートが含まれる。
シクロオレフィン系重合体におけるシクロオレフィン単量体の含有割合は、シクロオレフィン系重合体を構成する全単量体の合計に対して例えば50〜100モル%、好ましくは60〜100モル%とし得る。
シクロオレフィン系重合体は、前述の通り、一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体を含むシクロオレフィン単量体を重合又は共重合して得られる重合体であり、その例には、以下のものが含まれる。
(1)シクロオレフィン単量体の開環重合体
(2)シクロオレフィン単量体とそれと開環共重合可能な共重合性単量体との開環共重合体
(3)上記(1)又は(2)の開環(共)重合体の水素添加物
(4)上記(1)又は(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフツ反応により環化した後、水素添加した(共)重合体
(5)シクロオレフィン単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体
(6)シクロオレフィン単量体のビニル系環状炭化水素単量体との付加共重合体及びその水素添加物
(7)シクロオレフィン単量体と(メタ)アクリレートとの交互共重合体
中でも、(1)〜(3)が好ましく、(3)がより好ましい。即ち、シクロオレフィン系重合体は、それを含む光学フィルムのRt/Roを一定以下とする観点から、下記一般式(B−1)で表される構造単位を含むことが好ましく、必要に応じて下記一般式(B−2)で表される構造単位をさらに含み得る。一般式(B−1)で表される構造単位は、前述の一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体由来の構造単位であり、一般式(B−2)で表される構造単位は、前述の一般式(A−2)で表されるシクロオレフィン単量体由来の構造単位である。
Figure 0006728665
一般式(B−1)のXは、−CH=CH−又は−CHCH−である。一般式(B−1)のR、R及びpは、一般式(A−1)のR、R及びpとそれぞれ同義である。
Figure 0006728665
一般式(B−2)のXは、−CH=CH−又は−CHCH−である。一般式(B−2)のR〜R及びpは、一般式(A−2)のR〜R及びpとそれぞれ同義である。
シクロオレフィン系重合体は、いずれも公知の方法、例えば特開2008−107534号公報、特開2005−227606号公報及び特許第4466272号公報に記載の方法で得ることができる。例えば、(3)の重合体は、モノマーを溶液重合させた後、得られた開環重合体の主鎖の二重結合を水素化する。水素化後に得られた重合体から触媒を除去(脱触媒)し、さらに減圧乾燥して溶媒を除去(脱溶媒)して、(3)の重合体を得る。
シクロオレフィン系重合体のRt/Roは、RoやRt(特にRt)が低い光学フィルムを得る観点から、0.7〜2.0であることが好ましい。Rt/Roが0.7以上であると、得られる光学フィルムのRoが過剰に大きくなりにくく、2.0以下であると、得られる光学フィルムのRtが過剰に大きくなりにくい。シクロオレフィン系重合体のRt/Roは、1.0〜1.6であることがより好ましい。
シクロオレフィン系重合体のRt/Roは、以下の手順で測定できる。試料フィルムの作製条件や測定条件は、後述する実施例と同様である。
1)シクロオレフィン系重合体をメチレンクロライドとエタノールの混合溶媒に溶解させた溶液を、ガラス板上に流延し、残留溶媒量が5質量%となるまで乾燥させて、膜厚60μmのフィルムを得る。得られたフィルムを一方向に1.3倍(30%)延伸して、試料フィルムを得る。
2)得られた試料フィルムの位相差を、温度23℃、相対湿度55%の環境下、波長550nmで、面内方向の位相差Ro及び厚み方向の位相差Rtを、Axometrics社製Axoscanを用いて測定する。
3)上記2)で得られたRoとRtから、Rt/Roを算出する。
シクロオレフィン系重合体のRt/Roは、非対称な構造を有するシクロオレフィン単量体の含有割合によって調整され得る。シクロオレフィン系重合体のRt/Roを小さくするためには、シクロオレフィン単量体やそれと共重合可能な単量体の種類にもよるが、例えば非対称な構造を有するシクロオレフィン単量体(一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体)の含有割合を多くすることが好ましい。
シクロオレフィン系重合体の固有粘度〔η〕inhは、0.2〜5cm/gであることが好ましく、0.3〜3cm/gであることがより好ましく、0.4〜1.5cm/gであることがさらに好ましい。
シクロオレフィン系重合体の数平均分子量(Mn)は、8000〜100000であることが好ましく、10000〜80000であることがより好ましく、12000〜50000であることがさらに好ましい。シクロオレフィン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、20000〜300000であることが好ましく、30000〜250000であることがより好ましく、40000〜200000であることがさらに好ましい。シクロオレフィン系重合体の数平均分子量や重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にてポリスチレン換算にて測定することができる。
シクロオレフィン系重合体の固有粘度〔η〕inh、数平均分子量及び重量平均分子量が上記範囲にあると、成形加工性を損なうことなく、得られる光学フィルムの耐熱性、耐水性、耐薬品性又は機械的特性を高め得る。
シクロオレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、通常、110℃以上であり、110〜350℃であることが好ましく、120〜250℃であることがより好ましく、120〜220℃であることがさらに好ましい。Tgが110℃以上であると、高温条件下での変形を抑制しやすい。一方、Tgが350℃以下であると、成形加工が容易となり、成形加工時の熱による樹脂の劣化も抑制しやすい。
シクロオレフィン系重合体の含有量は、得られる光学フィルムに対して70質量%以上、好ましくは80質量%以上となるように調整され得る。
ドープ液は、必要に応じて他の成分をさらに含み得る。他の成分の例には、糖エステル化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤及び微粒子(マット剤)等が含まれる。
(糖エステル化合物)
糖エステル化合物は、膜状物を支持体から剥離するときの剥離力(剥離に要する力)を低減し、剥離性を高める機能を有し得る。即ち、溶液製膜法でフィルムを作製する場合、後述の2)の工程において支持体から膜状物を剥離する際の、剥離張力と膜状物の強度とのバランスが重要となる。残留溶媒を多く含む膜状物は柔らかいため、特に薄膜であるときに剥離張力によって伸びやすい。膜状物が伸びると、延伸と同様に樹脂の配向が起こり、かえって位相差が発生してしまう場合がある。この場合には、支持体からの膜状物の剥離力を下げることが有効である。
金属支持体と樹脂は、いずれも疎水性のため親和性が高く、剥離力が大きくなりやすい。これに対して、適度な親水性を有する糖エステル化合物を添加することで、膜状物の剥離力を小さくすることができる。
糖エステル化合物は、ピラノース環とフラノース環の少なくとも一方を1個以上12個以下有する糖のOH基の少なくとも一部が、モノカルボン酸でエステル化された化合物である。
糖エステル化合物を構成する糖は、フラノース環又はピラノース環の少なくとも一方を1〜12個有する糖である。糖エステル化合物を構成する糖の例には、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース及びケストースが含まれる。中でも、フラノース環とピラノース環の両方を含む糖が好ましく、スクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース及びスタキオースがより好ましく、スクロースであることがさらに好ましい。
糖のOH基をエステル化するためのモノカルボン酸は、脂肪族モノカルボン酸又は芳香族モノカルボン酸であり得る。脂肪族モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸及びイソ酪酸等の飽和脂肪酸;ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸及びリノレン酸等の不飽和脂肪酸;シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸及びシクロオクタンカルボン酸又はそれらの誘導体等の脂環族モノカルボン酸が含まれる。芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸、トルイル酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸及びテトラリンカルボン酸又はそれらの誘導体が含まれる。
糖エステル化合物は、下記一般式(C)で表されるピラノース環又はフラノース環の少なくとも一種を1〜12個有する化合物であることが好ましい。
Figure 0006728665
一般式(C)のR11〜R15及びR21〜R25は、それぞれ炭素原子数2〜22のアシル基又は水素原子を示す。アシル基は、脂肪族アシル基又は芳香族アシル基であり得る。
脂肪族アシル基は、前述の脂肪族モノカルボン酸由来のアシル基であることが好ましく、その例には、アセチル基、プロピオニル基等が含まれ、好ましくはアセチル基である。
芳香族アシル基は、前述の芳香族モノカルボン酸由来のアシル基であることが好ましく、その例には、ベンゾイル基が含まれる。ベンゾイル基のベンゼン環上には置換基があってもよい。置換基の例には、アルキル基、アルケニル基、及びアルコキシル基が含まれる。
後述する膜状物を金属支持体から剥離するときの、膜状物を剥離しやすくし(剥離に要する力を少なくし)、得られる光学フィルムのRtを低くする観点から、芳香族アシル基(AR)の置換度が、脂肪族アシル基(AL)の置換度よりも高い(AR>AL)ことが好ましい。芳香族アシル基(AR)のほうが、脂肪族アシル基(AL)よりも金属支持体との親和性が低いことから、剥離に要する力を低減できるからである。
一般式(C)のm及びnは、それぞれ0〜12の整数、m+nは1〜12の整数である。
糖エステル化合物のエステル化率は、ピラノース環又はフラノース環に存在するOH基の50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。糖エステル化合物のエステル化率が50%以上であると、延伸・乾燥時の熱によるフィルムの着色を抑制しやすい。
以下に、糖エステル化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
Figure 0006728665
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糖エステル化合物の含有量は、シクロオレフィン系重合体に対して5〜30質量%であることが好ましい。糖エステル化合物の含有量がシクロオレフィン系重合体に対して5質量%以上であれば、膜状物の剥離に要する力を十分に低減し得る。糖エステル化合物の含有量がシクロオレフィン系重合体に対して30質量%以下であれば、糖エステルを添加した光学フィルムのヘイズの過剰な増大を抑制し得る。糖エステル化合物の含有量は、シクロオレフィン系重合体に対して10〜20質量%であることがより好ましい。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、光学フィルムの耐久性を向上させる目的で添加される。そのような紫外線吸収剤の例には、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体、及び高分子紫外線吸収剤が含まれる。
中でも、良好な紫外線吸収能を有することから、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物及びトリアジン系化合物が好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物及びベンゾフェノン系化合物がより好ましい。
ベンゾトリアゾール系化合物の例には、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノールが含まれる。ベンゾフェノン系化合物の例には、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノンが含まれる。
市販品の例には、Tinuvin109、Tinuvin171、Tinuvin234、Tinuvin326、Tinuvin327、Tinuvin328、Tinuvin928等のTinuvinシリーズがあり、これらはいずれもBASF社製の市販品である。
紫外線吸収剤の含有量は、シクロオレフィン系重合体に対して0.1〜10質量%であることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量がシクロオレフィン系重合体に対して0.1質量%以上であれば、光学フィルムの耐久性(特に耐候性)を十分に高めうる。紫外線吸収剤の含有量がシクロオレフィン系重合体に対して10質量%以下であれば、得られる光学フィルムの透明性が損なわれ難い。紫外線吸収剤の含有量は、シクロオレフィン系重合体に対して0.5〜5質量%であることがより好ましい。
(微粒子)
微粒子は、光学フィルムの表面に凹凸を付与し、滑り性を向上させうる。微粒子は、無機微粒子又は有機微粒子でありうる。無機微粒子の例には、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物の微粒子や;炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等の微粒子が含まれる。有機微粒子の例には、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等の微粒子が含まれる。中でも、ヘイズを生じ難く、着色も少ないことから、シリカ粒子が好ましい。
微粒子の平均粒子径は、1nm〜500nmであることが好ましく、5nm〜300nmであることがより好ましい。平均粒子径を1nm以上とすることで、易接着層の滑り性を効果的に高めることができ、500nm以下とすることで、ヘイズを低く抑えることができる。微粒子の平均粒子径は、レーザー回折法によって粒径分布を測定し、測定された粒径分布において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(50%体積累積径D50)とする。
微粒子の含有量は、得られる光学フィルムに対して10質量%以下となるように調整され得る。
(溶媒)
ドープ液に用いられる溶媒は、シクロオレフィン系重合体の良溶媒を1種類以上含むことが好ましい。
良溶媒の例には、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンのような脂環式炭化水素類;トルエンやキシレンのような芳香族炭化水素類;ジクロロメタンやクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等の脂肪族エーテル類;並びにペンタン、ヘキサン及びヘプタンのような脂肪族炭化水素類が含まれる。中でも、シクロオレフィン系樹脂を溶解させ易い点から、メチレンクロライドが好ましい。
ドープ液の調製に用いられる溶媒は、必要に応じてシクロオレフィン系重合体の貧溶媒をさらに含んでもよい。貧溶媒の例には、メタノール、エタノール、n−ブタノール等の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコール、及びテトラヒドロフラン等が含まれる。
良溶媒と貧溶媒とを併用する場合、良溶媒の含有比率を51〜100質量%とし、貧溶媒の含有比率を0〜49質量%とすることが好ましい。
ドープ液の樹脂濃度は、支持体上に流延した後の乾燥負荷を低減する観点では高いほうが好ましいが、濾過時の負荷が増えて濾過精度が悪くなる。これらを両立するドープの樹脂濃度は、10〜35質量%であることが好ましく、15〜25質量%であることがより好ましい。
樹脂の溶解は、一般的な方法で行うことができる。加熱と加圧を組み合わせると、常圧における沸点以上に加熱できる。溶媒の常圧での沸点以上で且つ加圧下で溶媒が沸騰しない温度で加熱しながら攪拌溶解すると、塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、樹脂を貧溶媒と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶媒を添加して溶解してもよい。
加圧は、窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶媒の蒸気圧を発現させる方法によって行うことができる。加熱は、外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
樹脂を溶解させるときの加熱温度は、樹脂の溶解性の観点からは高いほうが好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。加熱温度は、45〜120℃であることが好ましく、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。
異物故障を抑制する観点等から、得られたドープ液を濾材で濾過することが好ましい。濾過したドープ液を脱泡した後、送液ポンプで流延ダイに供給する。
1-2.2)の工程について
得られたドープ液を、支持体上に流延し、乾燥及び剥離して膜状物を得る。ドープ液の流延は、流延ダイから吐出させて行うことができる。
支持体は、金属支持体であることが好ましく、ステンレススティールベルト又は鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムであり得る。支持体の表面は、鏡面仕上げされていることが好ましい。
支持体の表面温度は、−50℃〜溶媒の沸点未満の温度で、高い方が膜状物の乾燥速度を高くすることができるので好ましいが、高過ぎると膜状物が発泡したり、平面性が劣化したりする。従って、支持体の表面温度は、0〜40℃であることが好ましく、5〜30℃であることがより好ましい。
支持体から剥離する際の膜状物の残留溶媒量(剥離時の残留溶媒量S)は、得られる光学フィルムの位相差RoやRtを低減しやすくする観点から、30〜70質量%であることが好ましく、35〜60質量%であることがより好ましい。剥離時の残留溶媒量Sが30質量%以上であると、乾燥又は延伸時にシクロオレフィン系重合体が流動しやすく無配向にしやすいため、得られる光学フィルムのRoやRtを低減し得る。剥離時の残留溶媒量Sが70質量%以下であると、膜状物を剥離する際に要する力が過剰に大きくなりにくいので、膜状物の破断を抑制し得る。
膜状物の残留溶媒量は、下記式で定義される。以下においても同様である。
膜状物の残留溶媒量(質量%)=(膜状物の加熱処理前重量-膜状物の加熱処理後重量)/膜状物の加熱処理後重量×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、120℃60分の加熱処理をいう。
剥離して得られた膜状物は、必要に応じてさらに乾燥させてもよい。
1-3.3)の工程について
剥離した膜状物を、延伸することなく乾燥するか、又は延伸しながら乾燥させる。
延伸は、少なくとも一方向に行うことができる。延伸方向は、膜状物の長手方向(MD方向)、膜状物の長手方向と直交する幅手方向(TD方向)、及び膜状物の長手方向に対して斜め方向のいずれであってもよい。延伸は、逐次延伸でもよいし、同時延伸でもよい。
延伸倍率は、RoやRt(特にRt)が十分に小さい光学フィルムを得る観点から、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。延伸倍率は、{(延伸後の膜状物の延伸方向大きさ)/(延伸前の膜状物の延伸方向大きさ)}×100として定義される。
乾燥又は延伸を行うときの雰囲気の温度(延伸乾燥温度)Tは、RoやRt(特にRt)が十分に小さい光学フィルムを得る観点から、140〜220℃であることが好ましい。雰囲気の温度Tの調整は、例えば熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができ、簡便さの点から、熱風で行うことが好ましい。温度Tが150℃以上であると、乾燥又は延伸時に膜状物に加わる張力が大きくなりにくいので、得られる光学フィルムのRoやRtが増大しにくい。温度Tが200℃以下であると、膜状物中の溶媒の気化による気泡の発生を高度に抑制しやすい。乾燥又は延伸を行うときの雰囲気の温度Tは、150〜200℃であることがより好ましい。
乾燥又は延伸を開始するときの膜状物中の残留溶媒量Sは、1〜20質量%であることが好ましい。RoやRtを低くし、且つ得られる光学フィルムの機械強度の低下を抑制する観点から、乾燥又は延伸を開始するときの膜状物中の残留溶媒量Sは、2〜15質量%であることがより好ましい。乾燥又は延伸を開始する時の残留溶媒量Sが2質量%以上であると、残留溶媒による可塑効果で、乾燥又は延伸を行うときの膜状物の実質的なTgが低くなるため、乾燥又は延伸を行うときの雰囲気の温度によって光学フィルムのRoやRtが増大しにくい。乾燥又は延伸を開始する時の残留溶媒量Sが15質量%以下であると、膜状物中の溶媒の気化による気泡の発生を高度に抑制できる。光学フィルム内に気泡が一定量以上あると、これをきっかけにして機械強度が低下し、打ち抜き加工性も低下したり、ヘイズも増大したりする可能性がある。乾燥又は延伸を開始する時の残留溶媒量Sが15質量%以下であると、膜状物中の溶媒の気化による気泡の発生を高度に抑制できるので、それによる光学フィルムの機械強度の低下やヘイズの増大を高度に抑制できる。
通常、セルロースエステルを用いた場合は、延伸乾燥時の膜状物の残留溶媒量Sを多くする必要があった。延伸乾燥時の残留溶媒量Sが多いと、膜厚・幅方向位相差のバラツキが生じやすい。これに対して本発明では、非対称な構造を有するシクロオレフィン単量体の重合体を用いるので、延伸乾燥時の残留溶媒量Sを比較的低くしても、得られる光学フィルムのRtの増大を抑制し得る。さらに、延伸乾燥時の残留溶媒量Sを比較的低くし得るので、延伸方向の位相差のバラツキも生じにくくし得る。
乾燥又は延伸は、下記式(1)〜(3)を全て満たすように行うことが特に好ましい。
T≧−3.85*S+207.7 …(1)
150≦T≦200 …(2)
2≦S≦15 …(3)
(上記式中、
Tは、乾燥又は延伸するときの雰囲気の温度(℃)を表し、
は、乾燥又は延伸を開始するときの前記膜状物の残留溶媒量(質量%)を表す)
式(2)と式(3)を満たす範囲で、式(1)をさらに満たすように乾燥又は延伸を行うことで、乾燥又は延伸を行うときの膜状物の残留溶媒量Sを適度に高め、且つ膜状物に加わる張力を適度に低くし得る。その結果、膜状物中の樹脂を無配向にしやすくなるので、得られる光学フィルムのRoやRtを十分に低くし、且つヘイズの増大を抑制できる。
膜状物の乾燥又は延伸は、乾燥装置内に複数配置したロールに膜状物を交互に通し、膜状物を搬送させながら乾燥又は延伸するロール法や、クリップで膜状物の両端を把持して搬送させながら乾燥又は延伸するテンター法で行うことができる。
MD方向の延伸は、例えば複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用する方法で行うことができる。TD方向の延伸は、例えば膜状物の両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げる方法で行うことができる。
2.光学フィルム
本発明の光学フィルムの製造方法によって得られる本発明の光学フィルムは、前述の通り、ヘイズを増大させることなく、位相差Ro及びRtが低く、且つ良好な機械的強度を有する。
(位相差Ro及びRt)
本発明の光学フィルムの、測定波長590nm、23℃55%RHの環境下で測定される面内方向の位相差Roは、0nm≦Ro≦3nmを満たすことが好ましく、0nm≦Ro≦1nmを満たすことがより好ましい。本発明の光学フィルムの、測定波長590nm、23℃55%RHの環境下で測定される厚み方向の位相差Rtは、−5nm≦Rt≦5nmを満たすことが好ましく、−3nm≦Rt≦3nmを満たすことがより好ましい。このような位相差を有する本発明の光学フィルムは、例えばIPSモードの液晶表示装置の光学フィルムとして好適である。このような位相差を有する本発明の光学フィルムは、例えばIPSモードの液晶表示装置の光学フィルムとして好適である。
光学フィルムのRo及びRtは、それぞれ下記式で定義される。
式(1a):Ro=(nx−ny)×d
式(1b):Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、
nxは、光学フィルムの面内遅相軸方向の屈折率を表し、
nyは、光学フィルムの面内遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
nzは、光学フィルムの厚み方向の屈折率を表し、
dは、光学フィルムの厚み(nm)を表す。)
光学フィルムのRo及びRtの測定は、以下の方法で行うことができる。
1)光学フィルムを23℃55%RHの環境下で24時間調湿する。
2)調湿後の光学フィルムの、測定波長550nmにおけるリターデーションRo及びRtを、それぞれ自動複屈折率計 Axometorics社製Axoscanを用いて、23℃55%RHの環境下で測定する。具体的な測定手順や測定条件は、後述する実施例と同様である。
光学フィルムの位相差Ro及びRtは、剥離時の残留溶媒量S、乾燥又は延伸を開始するときの残留溶媒量S、及び延伸倍率によって調整され得る。光学フィルムの位相差Rtを低くするためには、例えば剥離時の残留溶媒量Sや乾燥又は延伸を開始するときの残留溶媒量Sは多くすることが好ましく、延伸倍率は低くすることが好ましい。
(ヘイズ)
本発明の光学フィルムのヘイズは、0.01〜2.0であることが好ましい。光学フィルムのヘイズが2.0以下であると、液晶表示装置の表示画像のコントラストを高め得る。本発明の光学フィルムのヘイズは、0.01〜1.0であることがより好ましい。光学フィルムのヘイズは、ヘイズメーター(型式NDH 2000、日本電色(株)製)により測定することができる。
光学フィルムのヘイズは、光学フィルムの製造工程において、膜状物を乾燥又は延伸するときの残留溶媒量Sや雰囲気の温度Tによって調整することができる。光学フィルムのヘイズを低くするためには、例えば膜状物を乾燥又は延伸するときの残留溶媒量Sや雰囲気の温度Tはいずれも低くすることが好ましい。
(厚み)
光学フィルムの厚みは、例えば5〜200μmとし得る。偏光板の打ち抜き加工性を損なうことなく、RoとRtを上記範囲に調整しやすくする観点から、5〜100μmであることがより好ましく、5〜60μmであることがさらに好ましく、5〜30μmであることが特に好ましい。
3.偏光板
本発明の偏光板は、偏光子と、2つの保護フィルム(偏光子保護フィルム)とを含み、2つの保護フィルムの少なくとも一方を本発明の光学フィルムとし得る。本発明の光学フィルムが偏光子の一方の面にのみ配置される場合は、偏光子の他方の面には、他の光学フィルムが配置され得る。
3-1.偏光子
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素又は二色性染料で染色したフィルム(好ましくはさらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよいし;ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素又は二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくは、さらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。偏光子の吸収軸は、通常、最大延伸方向と平行である。
例えば、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールが用いられる。中でも、熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。
偏光子の厚みは、5〜30μmであることが好ましく、偏光板を薄型化するため等から、5〜20μmであることがより好ましい。
3-2.本発明の光学フィルム
本発明の光学フィルムは、偏光子の少なくとも一方の面に配置され得る。
本発明の光学フィルムが、例えばIPS用の位相差フィルムとして用いられる場合、本発明の光学フィルムの面内遅相軸と偏光子の吸収軸とは略直交となることが好ましい。
3-3.他の光学フィルム
偏光子の他方の面には、必要に応じて他の光学フィルムが配置されてもよい。他の光学フィルムの例には、市販のセルロースアシレートフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC6UA、KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UE、KC4UE、KC4HR−1、KC4KR−1、KC4UA、KC6UA以上コニカミノルタオプト(株)製)等が含まれる。
他の光学フィルムの厚みは、特に限定はないが、10〜100μmであることが好ましく、10〜60μmであることがより好ましく、20〜60μmであることが特に好ましい。
3-4.偏光板の製造方法
本発明の偏光板は、偏光子と、本発明の光学フィルムとを、接着剤又は粘着剤を介して貼り合わせて得ることができる。
接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂やウレタン樹脂を主成分として含む水系接着剤や、エポキシ系樹脂等の光硬化性樹脂を主成分として含む活性エネルギー線硬化型接着剤でありうる。粘着剤は、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン及びポリエーテル等をベースポリマーとして含むものでありうる。中でも、本発明の光学フィルムとの親和性が良いことから、活性エネルギー線硬化性接着剤を用いることが好ましい。
活性エネルギー線硬化型接着剤は、光ラジカル重合性化合物を主成分とする光ラジカル重合型組成物、光カチオン重合性化合物を主成分とする光カチオン重合型組成物、又は光ラジカル重合性化合物と光カチオン重合性化合物とを併用したハイブリッド型組成物であり得る。
光ラジカル重合型組成物は、特開2008−009329号公報に記載のヒドロキシ基やカルボキシ基等の極性基を含有するラジカル重合性化合物及び極性基を含有しないラジカル重合性化合物を特定割合で含む組成物でありうる。ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることがより好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する化合物の例には、N置換(メタ)アクリルアミド系化合物及び(メタ)アクリレート系化合物等が含まれる。(メタ)アクリルアミドは、アクリアミド又はメタクリアミドを意味する。
光カチオン重合型組成物は、特開2011−028234号公報に開示されているような、(α)カチオン重合性化合物、(β)光カチオン重合開始剤、(γ)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤、及び(δ)ナフタレン系光増感助剤の各成分を含有する組成物でありうる。
活性エネルギー線硬化性接着剤を用いた偏光板の製造方法は、例えば1)偏光子と偏光板保護フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布する工程、2)得られた接着剤層を介して偏光子と偏光板保護フィルムとを貼り合せる工程、3)接着剤層を介して偏光子と偏光板保護フィルムとが貼り合わされた状態で、活性エネルギー線を照射して、接着剤層を硬化させて偏光板を得る工程、及び4)得られた偏光板を所定の形状に打ち抜く(切断する)工程とを含む。1)の工程の前に、必要に応じて4)偏光板保護フィルムの偏光子を接着する面を、易接着処理(コロナ処理やプラズマ処理等)する工程を実施してもよい。
1)の工程では、活性エネルギー線硬化性接着剤の塗布は、硬化後の接着剤層の厚みが、例えば0.01〜10μm、好ましくは0.5〜5μmとなるように行うことが好ましい。
3)の工程では、照射する活性エネルギー線は、可視光線、紫外線、X線及び電子線等を用いることができる。取扱いが容易で硬化速度も十分であることから、一般的には、紫外線を用いることが好ましい。紫外線の照射条件は、接着剤を硬化しうる条件であればよい。例えば、紫外線の照射量は積算光量で50〜1500mJ/cmであることが好ましく、100〜500mJ/cmであることがさらに好ましい。
4)の工程では、得られた偏光板を、例えばトムソン型等により所定の形状に打ち抜く(切断する)。本発明の光学フィルムを含む偏光板は、薄膜でも十分な機械的強度を有するので、打ち抜き加工時のクラックの発生を良好に抑制し得る。
4.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、それを挟持する一対の偏光板とを含む。
図2は、液晶表示装置の基本的な構成の一例を示す模式図である。図2に示されるように、本発明の液晶表示装置10は、液晶セル20と、それを挟持する第1の偏光板30及び第2の偏光板40と、バックライト50とを含む。
液晶セル20の表示モードは、例えばTN(Twisted Nematic)、VA(Vistical Alignment)、又はIPS(In Plane Switching)等のいずれの表示モードであってよい。モバイル機器向けの液晶セルは、例えばIPSモードが好ましい。中・大型用途の液晶セルは、例えばVAモードが好ましい。
第1の偏光板30は、液晶セル20の視認側の面に配置されており、第1の偏光子31と、第1の偏光子31の液晶セルとは反対側の面に配置された保護フィルム33(F1)と、第1の偏光子31の液晶セル側の面に配置された保護フィルム35(F2)とを含む。
第2の偏光板40は、液晶セル20のバックライト側の面に配置されており、第2の偏光子41と、第2の偏光子41の液晶セル側の面に配置された保護フィルム43(F3)と、第2の偏光子41の液晶セルとは反対側の面に配置された保護フィルム45(F4)とを含む。
第1の偏光子31の吸収軸と第2の偏光子41の吸収軸とは直交していることが好ましい。
保護フィルム33(F1)、35(F2)、43(F3)及び45(F4)の少なくとも一つを本発明の光学フィルムとし得る。例えば、保護フィルム35(F2)を本発明の光学フィルムとし、IPS用の位相差フィルムとして用いる場合、本発明の光学フィルムの面内遅相軸と偏光子の吸収軸とは略直交となることが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.光学フィルムの材料
1)樹脂
1-1)シクロオレフィン系重合体
<シクロオレフィン系重合体1の合成>
シクロオレフィン単量体として一般式(A−1)の例示化合物26を100質量部と、分子量調節剤である1−ヘキセンを3.6質量部と、トルエンを200質量部とを窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。これに、重合触媒としてトリエチルアルミニウム((C253Al)1.5モル/lのトルエン溶液を0.17質量部と、t−ブタノ−ル及びメタノールで変性した六塩化タングステン(WCl6)を含み、t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35:0.3:1(モル比)であるWCl6溶液(濃度0.05モル/l)を1.0質量部とを加え、80℃で3時間加熱攪拌して開環重合反応させて、重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は98%であった。
Figure 0006728665
得られた重合体溶液の4000質量部をオートクレーブに入れ、この重合体溶液にRuHCl(CO)[P(C6533を0.48質量部加え、水素ガス圧を10MPa、反応温度160℃の条件で3時間加熱攪拌して、水素添加反応を行った。
得られた反応溶液を冷却した後、水素ガスを放圧し、この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収した。回収した凝固物を乾燥させて、シクロオレフィン系重合体1を得た。
<シクロオレフィン系重合体2の合成>
シクロオレフィン単量体(一般式A−1)の例示化合物5を19質量部と、シクロオレフィン単量体(一般式A−2)の例示化合物26を181質量部と、分子量調整剤として1−ヘキセンを18質量部と、トルエンを750質量部とを窒素置換した反応容器に仕込み、60℃に加熱した。これに、重合触媒としてトリエチルアルミニウム((C253Al)1.5モル/lのトルエン溶液0.62質量部と、t−ブタノ−ル及びメタノールで変性した六塩化タングステン(WCl6)を含み、t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35:0.3:1(モル比)であるWCl6溶液(濃度0.05モル/l)を5.1質量部とを加え、80℃で3時間加熱攪拌することにより開環共重合反応させて、開環共重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
得られた開環共重合体溶液4000質量部をオートクレーブに入れ、この共重合体溶液にRuHCl(CO)[P(Cを0.48質量部加え、水素ガス圧10MPa、反応温度165℃の条件下で3時間加熱攪拌して、水素添加反応を行った。
Figure 0006728665
得られた反応溶液を冷却した後、水素ガスを放圧し、この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収した。回収した凝固物を乾燥させて、シクロオレフィン系重合体2を得た。
<シクロオレフィン系重合体3の合成>
シクロオレフィン単量体(一般式A−1)の例示化合物5を99質量部と、シクロオレフィン単量体(一般式A−2)の例示化合物26を101質量部と、分子量調整剤として1−ヘキセンを18質量部と、トルエンを750質量部とを窒素置換した反応容器に仕込み、60℃に加熱した。これに、重合触媒としてトリエチルアルミニウム((C253Al)1.5モル/lのトルエン溶液0.62質量部と、t−ブタノ−ル及びメタノールで変性した六塩化タングステン(WCl6)を含み、t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35:0.3:1(モル比)であるWCl6溶液(濃度0.05モル/l)を5.1質量部とを加え、80℃で3時間加熱攪拌することにより開環共重合反応させて、開環共重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は96%であった。
Figure 0006728665
得られた開環共重合体溶液4000質量部をオートクレーブに入れ、この共重合体溶液にRuHCl(CO)[P(Cを0.48質量部加え、水素ガス圧10MPa、反応温度165℃の条件下で3時間加熱攪拌して、水素添加反応を行った。
得られた反応溶液を冷却した後、水素ガスを放圧し、この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収した。回収した凝固物を乾燥させて、シクロオレフィン系重合体3を得た。
<シクロオレフィン系重合体4の合成>
シクロオレフィン単量体の例示化合物Aを72質量部と、シクロオレフィン単量体(一般式A−2)の例示化合物26を128質量部と、分子量調整剤として1−ヘキセンを18質量部と、トルエンを750質量部とを窒素置換した反応容器に仕込み、60℃に加熱した。これに、重合触媒としてトリエチルアルミニウム((C253Al)1.5モル/lのトルエン溶液0.62質量部と、t−ブタノ−ル及びメタノールで変性した六塩化タングステン(WCl6)を含み、t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35:0.3:1(モル比)であるWCl6溶液(濃度0.05モル/l)を5.1質量部とを加え、105℃で3時間加熱攪拌することにより開環共重合反応させて、開環共重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は96%であった。
Figure 0006728665
得られた開環共重合体溶液4000質量部をオートクレーブに入れ、この共重合体溶液にRuHCl(CO)[P(Cを0.48質量部加え、水素ガス圧10MPa、反応温度160℃の条件下で3時間加熱攪拌して、水素添加反応を行った。
得られた反応溶液を冷却した後、水素ガスを放圧し、この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収した。回収した凝固物を乾燥させて、シクロオレフィン系重合体4を得た。
1−2)比較用樹脂
CAP:イーストマンケミカル製(アセチル基置換度1.5、プロピオニル基置換度0.9のセルロースアセテートプロピオネート、重量平均分子量Mw=170000)
DAC:イーストマンケミカル製CA−394−60s(アセチル基置換度2.4のセルロースジアセテート、重量平均分子量Mw=160000)
PC:帝人社製Panlite K−1300Y(ポリカーボネート、重量平均分子量Mw=30000)
シクロオレフィン系重合体1〜4及び比較用樹脂のガラス転移温度(Tg)及びRt/Roを、以下の方法で測定した。
(ガラス転移点(Tg))
上記樹脂のガラス転移温度(Tg)を、JIS K7121(1987)に準拠して測定した。具体的には、上記樹脂を秤量したアルミパンを、示差走査熱量測定器(セイコーインスツル(株)製DSC−6220型)にセットし、昇温速度20℃/分で昇温させた。得られたDSC曲線から、JIS K7121(1987)に準拠して中間点ガラス転移温度(Tmg)を求め、それを「ガラス転移点(Tg)」とした。
(Rt/Ro)
1)試料フィルムの作製
撹拌容器にメチレンクロライドとエタノールを投入し、撹拌しながら上記樹脂をさらに投入し、完全に溶解させてドープ液を得た。
樹脂:100質量部
ジクロロメタン:300質量部
エタノール:20質量部
得られたドープ液を、ガラス板上にブレードコーターを用いて流延(キャスト)した。流延して1分後に剥離し、剥離したフィルム室温で残留溶媒が5質量%になるまで乾燥させて、膜厚60μmのフィルムを得た。
得られたフィルムを、自動2軸延伸装置IMC-18B2型(株式会社井元製作所製)を用いて、下記条件で延伸した。
(延伸条件)
サンプル:100mm×100mm(チャック掴みしろ20mmずつ)
延伸倍率:X方向30%(1.3倍)、Y方向0%(保持のみ)
延伸速度:120mm/min
延伸温度:各樹脂の(Tg−30)℃
2)試料フィルムのRo及びRtの測定
得られた試料フィルムの位相差は、温度23℃、相対湿度55%の環境下、波長550nmで、面内方向の位相差Ro及び厚み方向の位相差Rtを、Axometrics社製Axoscanを用いて測定した。具体的には、以下の手順で測定を行った。
1)光学フィルムを23℃55%RHの環境下で24時間調湿した。
2)調湿後の光学フィルムの、550nmの波長における3次元の屈折率(nx、ny及びnz)を、Axometrics社製Axoscanを用いて23℃55%RHの環境下で測定した。得られた屈折率nx及びnyを、前述の式(1a)に当てはめて面内方向の位相差Roを算出した。同様に、得られた屈折率nx、ny及びnzを、前述の式(1b)に当てはめて厚み方向の位相差Rtを算出した。
3)試料フィルムのRt/Roの算出
上記2)で得られたRoとRtから、Rt/Roを算出した。
得られた測定結果を、表1に示す。
Figure 0006728665
2)糖エステル化合物
原料として表2に示される糖を用いて、表2に示されるような脂肪族基(AL)及び芳香族基(AR)の置換基の種類と置換基数となるように、糖エステル化合物1及び2を合成した。合成は、特開2014−149325号の段落0085〜0088に記載の方法と同様にして行った。表中、「(AL+ARの置換基数/全OH基数)」とは、糖エステルの置換基である全OH基に対する脂肪族基(AL)及び芳香族基(AR)の置換基の合計数を表す。例えば、「5/8」とは、8個の置換基中5個がAL及び/又はARの置換基であることを示す。
Figure 0006728665
3)紫外線吸収剤
Tinuvin928:BASFジャパン社製(下記式で表される化合物)
Figure 0006728665
2.光学フィルムの作製
<光学フィルム1(比較)の作製>
(微粒子添加液の調製)
下記成分を、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。さらに、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを、日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を得た。
(微粒子添加液の組成)
微粒子(アエロジルR812:日本アエロジル株式会社製、一次平均粒子径:7nm、見掛け比重50g/L):4質量部
ジクロロメタン:48質量部
エタノール:48質量部
(ドープ液C1の調製)
まず、加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを投入し、撹拌しながら上記CAP(セルロースアセテートプロピオネート)を投入した。次いで、CAPを投入して15分後に、微粒子添加液をさらに投入し、80℃に加熱して撹拌しながら完全に溶解させた。加熱温度は、室温から5℃/minで昇温し、30分間で溶解した後、3℃/minで降温した。この溶液を、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244(濾過精度0.005mm)を用いて、濾過流量300L/m・h、濾圧1.0×10Paにて濾過し、ドープ液C1を得た。
(ドープ液C1の組成)
CAP(セルロースアセテートプロピオネート):100質量部
メチレンクロライド:400質量部
エタノール:77質量部
微粒子添加液:2質量部
(製膜)
得られたドープ液C1を、ステンレス製の無端支持体上に流延した。流延したドープ中の残留溶媒量Sが40質量%になるまで溶媒を蒸発させた後、得られた膜状物をステンレス製無端支持体上から剥離張力130N/mで剥離した。
剥離した膜状物を乾燥させながらテンター延伸装置に搬送し、幅方向に延伸倍率0%(幅の保持のみ)でテンター中を搬送した。このとき、テンターによる乾燥を開始したときの残留溶媒量Sが11質量%になるように、剥離からテンターまでの乾燥条件を調整した。また、テンター延伸装置の雰囲気温度(延伸乾燥温度)Tは185℃とし、延伸倍率を0%より大きくする場合は延伸速度は200%/minとした。
次いで、得られた膜状物を乾燥装置内において多数のローラーで搬送させながらさらに乾燥させた。乾燥装置内での乾燥温度は130℃、搬送張力は100N/mとした。それにより、膜厚10μmの光学フィルム1を得た。
なお、残留溶媒量は、下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)=(膜状物の加熱処理前重量-膜状物の加熱処理後重量)/膜状物の加熱処理後重量×100
残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、120℃60分の加熱処理をいう。
<光学フィルム2の作製>
光学フィルム1の作製において、延伸条件(延伸時の残留溶媒量S及び延伸温度)を表3に示されるように変更した以外は同様にして光学フィルム2を得た。
<光学フィルム3の作製>
光学フィルム1の作製において、ドープ液の組成を下記組成に変更した以外は同様にして光学フィルム3を得た。
(ドープ液C2の組成)
DAC(セルロースジアセテート):100質量部
メチレンクロライド:465質量部
エタノール:40質量部
微粒子添加液:2質量部
<光学フィルム4の作製>
光学フィルム3の作製において、延伸条件(延伸時の残留溶媒量S及び延伸温度)を表3に示されるように変更した以外は同様にして光学フィルム4を得た。
<光学フィルム5の作製>
光学フィルム1の作製において、ドープ液の組成を下記組成に変更した以外は同様にして光学フィルム5を得た。
(ドープ液C3の組成)
PC(帝人社製Panlite K−1300Y、ポリカーボネート):100質量部
メチレンクロライド:430質量部
エタノール:20質量部
微粒子添加液:2質量部
<光学フィルム6の作製>
光学フィルム5の作製において、延伸条件(延伸時の残留溶媒量S及び延伸温度)を表3に示されるように変更した以外は同様にして光学フィルム6を得た。
<光学フィルム7の作製>
(ペレットの作製)
乾燥させたシクロオレフィン系重合体1を100質量部と、Tinuvin928(紫外線吸収剤):6質量部とを、二軸押出機(スクリュー外形15mmφ、スクリューの長さとスクリューの直径の比(L/D)=30、せん断速度300sec−1)のホッパより投入した。重合体と紫外線吸収剤の混合物を230℃に加熱、溶融し、二軸押出機に装着されたストランドダイから、前記混合物を押し出し、カッティングすることで長さ4mm、直径3mmの円筒形の前記混合物のペレットを得た。
(製膜)
次いで、得られたペレットを、目開き3μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置したダブルフライト型50mm単軸押出機(スクリュー有効長さLとスクリュー径Dとの比L/D=32)に装填されたホッパーへ投入し、押出機出口温度280℃、押出機のギヤポンプの回転数10rpmで溶融樹脂をダイに供給した。そして、溶融樹脂を、280℃でダイから吐出させ、150℃に温度調整された冷却ロールにキャストして、フィルムを得た。エアギャップ量を50mmとした。得られたフィルムを、光学フィルム1と同様の条件で延伸して光学フィルム7を得た。
<光学フィルム8〜12の作製>
光学フィルム1の作製において、ドープ液の組成を下記組成に変更し、且つ剥離時の残留溶媒量Sを表3に示されるように変更した以外は同様にして光学フィルム8〜12を得た。
(ドープ液E1の組成)
シクロオレフィン系重合体1:100質量部
メチレンクロライド:300質量部
エタノール:20質量部
微粒子添加液:3質量部
Tinuvin928(紫外線吸収剤):6質量部
<光学フィルム13〜15の作製>
光学フィルム11の作製において、延伸倍率を表3に示されるように変更した以外は同様にして光学フィルム13〜15を得た。
<光学フィルム16〜18の作製>
光学フィルム11の作製において、樹脂の種類を表3に示されるように変更した以外は同様にして光学フィルム16〜18を得た。
<光学フィルム19〜36の作製>
光学フィルム11の作製において、延伸時の残留溶媒量Sと延伸温度の少なくとも一方を表4に示されるように変更した以外は同様にして光学フィルム19〜36を得た。
<光学フィルム37〜41の作製>
光学フィルム11の作製において、得られる光学フィルムの膜厚を表4に示されるように変更した以外は同様にして光学フィルム37〜41を得た。膜厚の調整は、ドープ液の流延量によって調整した。
<光学フィルム42〜45の作製>
光学フィルム38の作製において、添加剤の種類と含有量を表5に示されるように変更した以外は同様にして光学フィルム42〜45を得た。このうち、光学フィルム42は、剥離時の残留溶媒量Sも表5に示される値に変更した。
得られた光学フィルム1〜45の位相差Ro及びRt、ヘイズ、及び偏光板の打ち抜き加工性を、以下の方法で評価した。
(位相差Ro及びRt)
得られた光学フィルムの、550nmの波長における位相差Ro及びRtを、前述の樹脂の位相差Ro及びRtの測定方法と同様にして測定した。
(ヘイズ)
得られた光学フィルムの全ヘイズを、JIS K−7136に準拠して、ヘイズメーターNDH−2000(日本電色工業株式会社製)を用いて、23℃、55%RHの条件下で測定した。ヘイズメーターの光源は、5V9Wのハロゲン球とし、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)とした。
(偏光板の打ち抜き加工性)
1)偏光子の作製
厚み120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬した。次いで、ヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥して、厚み20μmの偏光子を得た。
2)紫外線硬化型接着剤の調製
下記成分を混合した後、脱泡して、紫外線硬化型接着剤を調製した。なお、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートは、50%プロピレンカーボネート溶液として配合した。下記には、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートの固形分量を表示した。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:45質量部
エポリードGT−301(ダイセル化学社製の脂環式エポキシ樹脂):40質量部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル:15質量部
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート:2.3質量部
9,10−ジブトキシアントラセン:0.1質量部
1,4−ジエトキシナフタレン:2.0質量部
3)偏光板の作製
上記作製した光学フィルムの表面に、コロナ放電処理を施した。コロナ放電処理は、コロナ出力強度2.0kW、ライン速度18m/分の条件で行った。次いで、光学フィルムのコロナ放電処理面に、上記で調製した紫外線硬化型接着剤を、硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗布して、紫外線硬化型接着剤層を形成した。得られた紫外線硬化型接着剤層に、上記作製した偏光子を貼り合わせた。
コニカミノルタタックKC2UA(厚み25μm、コニカミノルタ社製)の表面に、前述と同様の条件でコロナ放電処理を施した。このコニカミノルタタックKC2UAのコロナ放電処理面に、上記で調製した紫外線硬化型接着剤液を、硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗布して、紫外線硬化型接着剤層を形成した。この紫外線硬化型接着剤層に、光学フィルムが貼り合わされた偏光子の他方の面(光学フィルムが貼り合わされていない面)を貼り合わせて、光学フィルム/紫外線硬化型接着剤層/偏光子/紫外線硬化型接着剤層/コニカミノルタタックKC2UAの積層体を得た。
得られた積層体の両面から、ベルトコンベヤー付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製のDバルブを使用)を用いて、積算光量が750mJ/cmとなるように紫外線を照射し、紫外線硬化型接着剤層を硬化させて、偏光板を得た。
4)偏光板の打ち抜き加工性の評価
トムソン刃(MIR-123、株式会社ヤカヤマ製)を用いて、大きさ50mm×50mmで角のRが2mmの打ち抜き用の木型を準備した。この木型を小型サーボクランクプレス PECS(株式会社トーコー製)にセットし、上記作製した偏光板を打ち抜いた。打ち抜いた偏光板の角部の割れ又は剥離の程度を、目視で観察し、以下の4段階で評価した。
◎:まったく割れおよび剥離が見られない
○:角部全体の5%未満に割れまたは剥離が見られる
△:角部全体の5%以上20%未満に割れまたは剥離が見られる
×:角部全体の20%以上に割れまたは剥離が見られる
同じ偏光板に対して同様の打ち抜きと評価を5回行った。そして、5回の評価で最も多い頻度の段階を「打ち抜き加工性」とした。
光学フィルム1〜18の製造条件と評価結果を表3に示し、光学フィルム19〜41の製造条件と評価結果を表4に示し、光学フィルム42〜45の製造条件と評価結果を表5に示す。表中の「延伸乾燥温度」は、延伸倍率が0%の場合は乾燥温度を意味する。
Figure 0006728665
Figure 0006728665
Figure 0006728665
本発明の光学フィルム9〜12、13〜14及び16〜41、及び43〜45は、いずれも位相差Ro及びRtが5nm以下と低く、ヘイズも1.9以下と低く、且つ偏光板の打ち抜き加工性も良好であった。
これに対して比較の光学フィルム1〜4は、セルロースエステルを主成分として含むことから、位相差Rtが5nmを超えて大きくなることがわかる。比較の光学フィルム5〜6は、ポリカーボネートを主成分として含むことから、位相差Roが5nmを超えて大きくなることがわかる。比較の光学フィルム7は、シクロオレフィン系重合体を主成分とするものの、溶融製膜フィルムであることから打ち抜き加工性が低いことがわかる。比較の光学フィルム8は、剥離時の残留溶媒量Sが低すぎることから、位相差Rtが5nmを超えて大きいことがわかる。比較の光学フィルム12は、剥離時の残留溶媒量Sが高すぎることから、膜状物の剥離に要する力が大きいため、支持体からの剥離ができず、フィルムの評価ができなかった。比較の光学フィルム15は、延伸倍率が10%を超えて高いことから、得られるフィルムのRo及びRtがいずれも5nmを超えて大きくなることがわかる。
延伸温度が200℃である光学フィルム19は、延伸温度が200℃超である光学フィルム21よりも、ヘイズが低く、偏光板の打ち抜き加工性が高いことがわかる。延伸温度が高くなりすぎないようにすることで、膜状物中で残留溶媒が気化することによる気泡の発生を高度に抑制できるからであると考えられる。延伸温度が200℃である光学フィルム9は、延伸温度が200℃未満である光学フィルム28よりも、位相差Rtが低いことがわかる。延伸温度が低すぎないと、延伸張力が大きくなりにくいからであると考えられる。
延伸乾燥時の残留溶媒量Sが15質量%である光学フィルム19は、延伸乾燥時の残留溶媒量Sが2質量%未満である光学フィルム23よりも、位相差Rtが低いことがわかる。延伸乾燥時の残留溶媒量Sが15質量%である光学フィルム19は、延伸乾燥時の残留溶媒量Sが15質量%超である光学フィルム27よりも、ヘイズが低く、偏光板の打ち抜き性も良好であることがわかる。これは、延伸乾燥中の残留溶媒量Sが多くなりすぎないようにすることで、膜状物中で残留溶媒が気化することによる気泡の発生を高度に抑制できるからであると考えられる。
糖エステル化合物をさらに含む光学フィルム43及び45は、糖エステル化合物を含まない光学フィルム38よりも、位相差Ro及びRtがいずれも低いことがわかる。これは、糖エステル化合物の添加により、膜状物の剥離に要する力を低減できるためであると考えられる。
糖エステル化合物の芳香族アシル基(AR)が脂肪族アシル基(AL)よりも多い光学フィルム43は、糖エステル化合物の芳香族アシル基が脂肪族アシル基よりも少ない光学フィルム45よりも、位相差Ro及びRtがいずれも低いことがわかる。これは、芳香族アシル基を多く含む糖エステル化合物は、芳香族アシル基が少ない糖エステル化合物よりも、膜状物の支持体からの剥離に要する力を低減することができ、膜状物が伸びることによる樹脂の配向を抑制できるからであると考えられる。
本発明によれば、ヘイズを増大させることなく、位相差の絶対値を十分に低くすることができ、且つ偏光板の打ち抜き加工時のクラックを十分に抑制できる光学フィルムを提供できる。
10 液晶表示装置
20 液晶セル
30 第1の偏光板
31 第1の偏光子
33 保護フィルム(F1)
35 保護フィルム(F2)
40 第2の偏光板
41 第2の偏光子
43 保護フィルム(F3)
45 保護フィルム(F4)
50 バックライト

Claims (8)

  1. 一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体由来の構成単位を含むシクロオレフィン系重合体と、フラノース環又はピラノース環を1〜12個有する糖エステル化合物とを含む溶液を得る第1の工程と、
    前記溶液を、支持体上に流延し、残留溶媒量Sが30〜70質量%となるまで乾燥させた膜状物を剥離する第2の工程と、
    剥離された前記膜状物を、延伸することなく乾燥させるか、又は延伸倍率10%以下で延伸しながら乾燥させて、測定波長550nm、23℃55%RHの環境下で測定される、下記式(1a)で表される面内方向の位相差Roが0nm以上3nm以下であり、下記式(1b)で表される厚み方向の位相差Rtが−5nm以上5nm以下である光学フィルムを得る第3の工程と
    を含む、光学フィルムの製造方法。
    Figure 0006728665
    (一般式(A−1)中、
    は、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、又は炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルシリル基を表し、
    は、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表し、
    pは、0〜2の整数を表す)
    式(1a):Ro=(nx−ny)×d
    式(1b):Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
    (式(1a)及び式(1b)中、
    nxは、前記光学フィルムの面内遅相軸方向の屈折率を表し、
    nyは、前記面内遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
    nzは、前記光学フィルムの厚さ方向の屈折率を表し、
    dは、前記光学フィルムの厚み(nm)を表す)
  2. 前記第3の工程の乾燥又は延伸は、下記式(1)〜(3)を全て満たすように行う、
    請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
    T≧−3.85*S+207.7 …(1)
    150≦T≦200 …(2)
    2≦S≦15 …(3)
    (Tは、乾燥又は延伸するときの雰囲気の温度(℃)を表し、
    は、乾燥又は延伸を開始するときの前記膜状物の残留溶媒量(質量%)を表す)
  3. 前記シクロオレフィン系重合体は、前記シクロオレフィン系重合体からなる厚み60μmの試料フィルムを延伸倍率30%で延伸した後のRt/Roが1.0〜1.6を満たすものである、
    請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記糖エステル化合物が、脂肪族アシル基と芳香族アシル基の少なくとも一方を有し、且つ前記芳香族アシル基の置換度が前記脂肪族アシル基の置換度よりも高い、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 前記光学フィルムの厚みが、5〜30μmである、
    請求項1〜のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 前記光学フィルムが、偏光子保護フィルムである、
    請求項1〜のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  7. 一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体由来の構成単位を含むシクロオレフィン系重合体と、フラノース環又はピラノース環を1〜12個有する糖エステル化合物とを含む、溶液製膜フィルムであって、
    Figure 0006728665
    (一般式(A−1)中、
    は、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、又は炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルシリル基を表し、
    は、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表し、
    pは、0〜2の整数を表す)
    下記式(1a)で表される面内方向の位相差Roが0nm以上3nm以下であり、下記式(1b)で表される厚み方向の位相差Rtが−5nm以上5nm以下である、
    光学フィルム
    式(1a):Ro=(nx−ny)×d
    式(1b):Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
    (式(1a)及び式(1b)中、
    nxは、前記光学フィルムの面内遅相軸方向の屈折率を表し、
    nyは、前記面内遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
    nzは、前記光学フィルムの厚さ方向の屈折率を表し、
    dは、前記光学フィルムの厚み(nm)を表す)
  8. 前記糖エステル化合物が、脂肪族アシル基と芳香族アシル基の少なくとも一方を有し、且つ前記芳香族アシル基の置換度が前記脂肪族アシル基の置換度よりも高い、
    請求項7に記載の光学フィルム。
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