JP6954338B2 - 光学フィルム及びその製造方法、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents
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Description
[2] 前記外部ヘイズが、0.1〜5%である、[1]に記載の光学フィルム。
[3] 前記紫外線吸収剤の含有量は、前記シクロオレフィン系樹脂に対して0.5〜5質量%である、[1]又は[2]に記載の光学フィルム。
[4] 前記有機溶媒は、100〜300ppmのトルエンを含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の光学フィルム。
[5] 前記Mc/Msが0.7以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の光学フィルム。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の光学フィルムと、その改質領域が設けられた面に配置された偏光子とを含む、偏光板。
[7] 第1の偏光板と、液晶セルと、第2の偏光板と、バックライトとをこの順に含む液晶表示装置であって、前記第1の偏光板は、第1の偏光子と、前記第1の偏光子の前記液晶セルとは反対側の面に配置された保護フィルムF1と、前記第1の偏光子の前記液晶セル側の面に配置された保護フィルムF2とを含み、前記第2の偏光板は、第2の偏光子と、前記第2の偏光子の前記液晶セル側の面に配置された保護フィルムF3と、前記第2の偏光子の前記液晶セルとは反対側の面に配置された保護フィルムF4とを含み、前記保護フィルムF1及びF2の少なくとも一方が、[1]〜[5]のいずれかに記載の光学フィルムであり、且つ前記第1の偏光子が、前記光学フィルムの改質領域が設けられた面に配置されているか、及び/又は前記保護フィルムF3及びF4の少なくとも一方が、[1]〜[5]のいずれかに記載の光学フィルムであり、且つ前記第2の偏光子が、前記光学フィルムの改質領域が設けられた面に配置されている、液晶表示装置。
[8] 前記保護フィルムF1及びF2の少なくとも一方が、[1]〜[5]のいずれかに記載の光学フィルムであり、且つ前記第1の偏光子が、前記光学フィルムの改質領域が設けられた面に配置されている、[7]に記載の液晶表示装置。
[9] シクロオレフィン系樹脂と、紫外線吸収剤及び酸化防止剤の少なくとも一方とを含むフィルムであって、その表面に垂直な切断面において、少なくとも一方の表面から厚み方向に0.1tの位置までの領域Sにおける前記紫外線吸収剤及び前記酸化防止剤の合計含有量をMs、前記フィルムの中心から厚み方向に±0.1tの位置までの領域Cにおける前記紫外線吸収剤及び前記酸化防止剤の合計含有量をMcとしたとき(但し、前記フィルムの厚みをtとする)、Mc/Msが0.01以上1未満であり、且つ残留溶媒量が100ppm以上2000ppm以下であるシクロオレフィン系樹脂フィルムを得る工程と、前記シクロオレフィン系樹脂フィルムの前記領域Sを構成する面に、有機溶媒と接触させて溶媒処理する工程とを含む、光学フィルムの製造方法。
このように、溶媒処理による溶媒のフィルム内部への過剰な浸透を抑制できるので、当該フィルム表面でのケミカルクラックを抑制でき、得られる光学フィルムと偏光子との接着性が損なわれ難い。さらに、該フィルム表面が過剰に粗化され難いので、得られる光学フィルムの外部ヘイズが過剰に増大するのを抑制できる。このように、偏光子との接着性が良く、外部ヘイズの過剰な増大も抑制できるので、液晶表示装置のコントラストの低下を抑制できる。本発明は、このような知見に基づきなされたものである。
図1は、本発明の光学フィルムの構成の一例を示す図である。図1に示されるように、本発明の光学フィルム10は、溶媒処理によって粗化された表面を含む改質領域10Aを有する。さらに、本発明の光学フィルム10は、シクロオレフィン系樹脂と、紫外線吸収剤及び酸化防止剤の少なくとも一方とを含み、且つ紫外線吸収剤及び酸化防止剤の少なくとも一方が、光学フィルム10の溶媒処理によって粗化された表面に偏在していることが好ましい(図1参照)。
シクロオレフィン系樹脂は、シクロオレフィン単量体の重合体、又はシクロオレフィン単量体とそれ以外の共重合性単量体との共重合体である。
(1)シクロオレフィン単量体の開環重合体
(2)シクロオレフィン単量体とそれと開環共重合可能な共重合性単量体との開環共重合体
(3)上記(1)又は(2)の開環(共)重合体の水素添加物
(4)上記(1)又は(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフツ反応により環化した後、水素添加した(共)重合体
(5)シクロオレフィン単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体
(6)シクロオレフィン系単量体のビニル系環状炭化水素単量体との付加共重合体及びその水素添加物
(7)シクロオレフィン系単量体と(メタ)アクリレートとの交互共重合体
紫外線吸収剤は、光学フィルムの耐久性を向上させる目的で添加される。そのような紫外線吸収剤は、400nm以下の紫外線を吸収する化合物であることが好ましく、具体的には、波長370nmの光の透過率が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下の化合物である。
酸化防止剤は、高温高湿下における光学フィルムの劣化を抑制する目的で添加され得る。酸化防止剤の例には、ヒンダードフェノール系化合物が含まれる。ヒンダードフェノール系化合物の例には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアネート等が含まれる。酸化防止剤は、1種類であってもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
中でも、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。
具体的には、光学フィルムの表面に垂直な切断面において、光学フィルムの領域C(中間層領域)における紫外線吸収剤及び酸化防止剤の合計含有量をMcとし、粗化された表面を含む領域Sの紫外線吸収剤及び酸化防止剤の合計含有量をMsとしたとき、Mc/Msが0.01以上1未満であることが好ましく、0.01以上0.7以下であることがより好ましい。Mc/Msが1未満、好ましくは0.7以下であると、光学フィルム中で紫外線吸収剤又は酸化防止剤が表層に偏在している。そのため、シクロオレフィン系樹脂フィルムの表面に溶媒処理を行って光学フィルムを得る際に、溶媒が該フィルムの内部に過剰に浸透するのを抑制しうる。それにより、得られる光学フィルムの表面の外部ヘイズが過剰に増大するのを抑制できるだけでなく、ケミカルクラックによる偏光子との接着性の低下も抑制できる。
1)光学フィルム10をミクロトームで切断し、光学フィルム10の表面に垂直な切断面を得る。
2)得られた光学フィルム10の切断面のうち、領域Sと領域Cを含む測定領域における有機物の面分布像を、Thermo Fisher Scientific 社のNicolet380を用いてATR法により測定する。測定領域は、光学フィルムの厚みをtとしたとき、領域Sと領域Cを含む1.5t×1.5tの領域(領域Sと領域Cとを含む)としうる。
3)測定対象となる紫外線吸収剤又は酸化防止剤のピーク(測定対象ピーク)を抽出し、その吸光度から含有量を数値化し、可視化したIRイメージ像を得る。IRイメージ像から、光学フィルム10の切断面における紫外線吸収剤又は酸化防止剤の分布状態を把握する。
Mc/Msの値は、上記測定領域のうち、領域Sにおける測定対象ピークの吸光度の積算値と、領域Cにおける測定対象ピークの吸光度の積算値との比から求めることができる。測定対象ピークは、予め測定しておくものとする。Mc/Ms’の値も同様にして測定することができる。
光学フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤をさらに含んでいてもよい。他の添加剤の例には、可塑剤、熱安定剤、微粒子(マット剤)、界面活性剤、フッ素系界面活性剤及び剥離助剤等が含まれる。
微粒子は、光学フィルムの表面に凹凸を付与し、滑り性を向上させうる。微粒子は、無機微粒子又は有機微粒子でありうる。無機微粒子の例には、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物の微粒子や;炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等の微粒子が含まれる。有機微粒子の例には、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等の微粒子が含まれる。中でも、ヘイズを生じ難く、着色も少ないことから、シリカ粒子が好ましい。
本発明の光学フィルムは、前述の通り、溶媒処理によって形成された改質領域10Aを有する(図1参照)。改質領域10Aの厚みは、10〜1000nmであることが好ましく、20〜800nmであることがより好ましい。
光学フィルムを、23℃55%RHの環境にて5時間以上調湿する。その後、得られる光学フィルムの全ヘイズを、ヘイズメーター(型式NDH 2000、日本電色(株)製)により測定する。
i)まず、光学フィルムを含まないブランクヘイズ1を測定する。即ち、洗浄したスライドガラス上にグリセリンを一滴(0.05ml)滴下し、カバーガラスを乗せて得られる積層物をヘイズメーター(型式NDH 2000、日本電色(株)製)にセットし、ブランクヘイズ1を測定する。
ii)次に、光学フィルムを含むヘイズ2を測定する。即ち、洗浄したスライドガラス上にグリセリン(0.05ml)を滴下し(図4(a)参照)、その上に上記調湿した光学フィルムを気泡が入らないように乗せる(図4(b)参照)。次いで、光学フィルム上にグリセリン(0.05ml)を滴下し(図4(c)参照)、その上にカバーガラスを載せる(図4(d)参照)。得られた積層物を前述のヘイズメーターにセットし、ヘイズ2を測定する。
iii)前記i)及びii)で測定した値を下記式に当てはめて、光学フィルムの内部ヘイズを算出する。
光学フィルムの内部ヘイズ=(ヘイズ2)−(ヘイズ1)
なお、ヘイズの測定において、ガラス及びグリセリンは、後述する実施例と同様のものを使用する。
前記1)で得られた全ヘイズの値と、前記2)で得られた内部ヘイズの値とを下記式に当てはめて、外部ヘイズを算出する。
光学フィルムの外部ヘイズ(%)=全ヘイズ−内部ヘイズ
光学フィルムに含まれる残留溶媒量は、100〜2000ppmであることが好ましい。そのような光学フィルムは、残留溶媒量が100〜2000ppmのシクロオレフィン系樹脂フィルムを溶媒処理して得られる。シクロオレフィン系樹脂フィルムに含まれる残留溶媒量が100ppm以上であると、溶媒処理した際に、フィルム表面と内部とで溶媒の濃度勾配を少なくできるので、フィルム内部に溶媒が過剰に浸透するのを抑制し、光学フィルムの外部ヘイズの増大や接着性の低下を抑制し得る。シクロオレフィン系樹脂フィルムに含まれる残留溶媒量が2000ppm以下であると、光学フィルムの強度が損なわれ難い。光学フィルムに含まれる残留溶媒量は、100〜800ppmであることがより好ましい。
光学フィルムは、その用途に応じて種々の位相差値をとり得る。例えば、光学フィルムが、VAモードやIPSモードの液晶表示装置の光学フィルムとして用いられる場合、光学フィルムの測定波長590nm、23℃55%RHの環境下で測定される面内方向の位相差Ro及び厚み方向の位相差Rthは、例えば下記関係を満たし得る。
0nm≦Ro≦300nm
−200nm≦Rth≦200nm
式(2a):Ro=(nx−ny)×d
式(2b):Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、
nxは、光学フィルムの面内遅相軸方向の屈折率を表し、
nyは、光学フィルムの面内遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
nzは、光学フィルムの厚み方向の屈折率を表し、
dは、光学フィルムの厚み(nm)を表す。)
1)光学フィルムを23℃55%RHの環境下で24時間調湿する。この光学フィルムの平均屈折率をアッベ屈折計で測定し、厚みdを市販のマイクロメーターを用いて測定する。
2)調湿後の光学フィルムの、測定波長590nmにおけるリターデーションRo及びRthを、それぞれ自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃55%RHの環境下で測定する。具体的には、
i)フィルム面の法線方向に平行に測定波長590nmの光を入射させたときのRoを、アクソスキャンにて測定する。
ii)さらに、アクソスキャンにより、試料片の面内遅相軸を傾斜軸(回転軸)として、試料片の表面の法線に対してθの角度(入射角(θ))から測定波長590nmの光を入射させたときの位相差R(θ)を測定した。位相差R(θ)の測定は、θが0°〜50°の範囲で10°毎に6点行う。試料片の面内遅相軸は、アクソスキャンにより確認する。
iii)測定されたRo及びR(θ)と、前述の平均屈折率と厚みとから、アクソスキャンがnx、ny及びnzを算出し、上記式(2b)に基づいて測定波長590nmでのRthを算出する。
光学フィルムの厚みは、求められるRoとRthの範囲にもよるが、例えば10〜200μmであり、10〜100μmであることが好ましく、15〜60μmであることがより好ましく、15〜30μmであることがさらに好ましい。
本発明の光学フィルムは、1)シクロオレフィン系樹脂と、紫外線吸収剤と酸化防止剤の少なくとも一方とを含み、Mc/Msが0.01以上1未満を満たし、且つ残留溶媒量が100ppm以上2000ppm以下を満たすシクロオレフィン系樹脂フィルムを得る工程と、2)シクロオレフィン系樹脂フィルムの領域Sを構成する面を有機溶媒と接触させて溶媒処理する工程とを経て製造される。
シクロオレフィン系樹脂と、紫外線吸収剤と酸化防止剤の少なくとも一方とを含み、Mc/Msが0.01以上1未満を満たし、且つ残留溶媒量が100ppm以上2000ppm以下を満たすシクロオレフィン系樹脂フィルムを得る。シクロオレフィン系樹脂フィルムのMc/Msは、光学フィルムにおけるMc/Msと同様に定義される。即ち、シクロオレフィン系樹脂フィルムのMcは、シクロオレフィン系樹脂フィルムの領域C(中間層領域)における紫外線吸収剤及び酸化防止剤の合計含有量を示し;シクロオレフィン系樹脂フィルムにおけるMsは、シクロオレフィン系樹脂フィルムの溶媒処理が施される面を含む領域Sにおける紫外線吸収剤及び酸化防止剤の合計含有量を示す。
少なくともシクロオレフィン系樹脂と紫外線吸収剤及び酸化防止剤の少なくとも一方とを溶媒に溶解させてドープを得る。シクロオレフィン系樹脂と紫外線吸収剤及び酸化防止剤の少なくとも一方とを溶媒に同時に混合及び溶解させてドープを得てもよいし、シクロオレフィン系樹脂を溶媒に溶解させた樹脂溶液と、紫外線吸収剤及び酸化防止剤の少なくとも一方とを溶媒に溶解させた添加剤溶液とを混合してドープを得てもよい。
得られたドープを流延ダイから吐出させて金属支持体上に流延し、得られた流延膜を乾燥及び剥離して膜状物を得る。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
(Mは、膜状物の質量を示し、Nは、当該膜状物を120℃で1時間の加熱した後の質量を示す)
剥離して得られた膜状物を延伸して、位相差を調整することが好ましい。
前記(1-2)又は(1-4)で得られた膜状物を乾燥させて、シクロオレフィン系樹脂フィルムを得る。シクロオレフィン系樹脂フィルムの残留溶媒量は、主に本工程で調整され得る。従って、乾燥温度及び乾燥時間は、得られるシクロオレフィン系樹脂フィルムにおける残留溶媒量が前述の範囲となるように調整され得る。
得られたシクロオレフィン系樹脂フィルムの前述の領域Sを構成する面を、有機溶媒と接触させて溶媒処理する。それにより、溶媒処理によって粗化された表面を含む改質領域を有する光学フィルムを得る。
親水化処理の例には、コロナ(放電)処理、プラズマ処理、フレーム処理、イトロ処理、グロー処理、オゾン処理、及びプライマー塗布処理が含まれる。中でも、生産性の観点から、コロナ処理及びプラズマ処理が好ましい。
本発明の偏光板は、偏光子と、2つの保護フィルムとを含み、保護フィルムの少なくとも一方を本発明の光学フィルムとし得る。本発明の光学フィルムが偏光子の一方の面にのみ配置される場合は、偏光子の他方の面には、他の光学フィルムが配置され得る。
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
本発明の光学フィルムは、偏光子の少なくとも一方の面に配置され得る。本発明の光学フィルムの改質領域が設けられた面と偏光子とは、直接又は接着剤層を介して積層され得る。
偏光子の他方の面には、必要に応じて他の光学フィルムが配置されてもよい。他の光学フィルムの例には、市販のセルロースアシレートフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC6UA、KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UE、KC4UE、KC4HR−1、KC4KR−1、KC4UA、KC6UA以上コニカミノルタオプト(株)製)等が含まれる。
本発明の偏光板は、偏光子と、本発明の光学フィルムの改質領域が設けられた面とを、接着剤又は粘着剤を介して貼り合わせて得ることができる。
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、それを挟持する一対の偏光板とを含む。
1)シクロオレフィン系樹脂
(合成例1)
シクロオレフィン単量体として一般式(A−1)の例示化合物11を100質量部と、分子量調節剤である1−ヘキセンを3.6質量部と、トルエンを200質量部とを窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。これに、重合触媒としてトリエチルアルミニウム((C2H5)3Al)1.5モル/lのトルエン溶液を0.17質量部と、t−ブタノ−ル及びメタノールで変性した六塩化タングステン(WCl6)を含み、t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35:0.3:1(モル比)であるWCl6溶液(濃度0.05モル/l)を1.0質量部とを加え、80℃で3時間加熱攪拌して開環重合反応させて、重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は96%であった。
得られた重合体溶液の4000質量部をオートクレーブに入れ、この重合体溶液にRuHCl(CO)[P(C6H5)3]3を0.48質量部加え、水素ガス圧を10MPa、反応温度160℃の条件で3時間加熱攪拌して、水素添加反応を行った。
得られた反応溶液を冷却した後、水素ガスを放圧し、この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収した。回収した凝固物を乾燥させて、シクロオレフィン系樹脂1を得た。
紫外線吸収剤A:Tinuvin928(2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール)(下記式参照)
紫外線吸収剤C:CHIMASSORB 81(下記式参照)
<シクロオレフィン系樹脂フィルム1の作製>
(微粒子添加液の調製)
下記成分を、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。さらに、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを、日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を得た。
微粒子(アエロジルR812:日本アエロジル株式会社製、一次平均粒子径:7nm、見掛け比重50g/L):4質量部
メチレンクロライド:96質量部
次いで、下記成分を加熱しながら十分に溶解させて、ドープ液を得た。
合成例1で得たシクロオレフィン系樹脂1:100質量部
紫外線吸収剤A:8質量部
IRGANOX1010(酸化防止剤):0.2質量部
メチレンクロライド:210質量部
微粒子添加液:3質量部
得られたドープ液を40℃に保ち、40℃に保温された無端の金属支持体であるステンレスベルト上に均一に流延した。この流延膜を、残留溶媒量が80質量%となるまで乾燥させた後、ステンレスベルト上から剥離して膜状物を得た。得られた膜状物を、残留溶剤量が5質量%となるまで40℃で乾燥させた後、幅方向に延伸倍率1.5倍で延伸した。得られた膜状物を、多数のロールで搬送させながら120℃でさらに乾燥させて、厚み20μm、幅1.3mのシクロオレフィン系樹脂フィルム1を得た。
シクロオレフィン系樹脂フィルム1の作製において、ドープの溶媒組成を表2に示されるように変更した以外は同様にしてシクロオレフィン系樹脂フィルム2〜5を得た。
シクロオレフィン系樹脂フィルム3の作製において、ドープの溶媒組成と延伸後の乾燥温度を表2に示されるように変更した以外は同様にしてシクロオレフィン系樹脂フィルム6〜11を得た。
シクロオレフィン系樹脂フィルム3の作製において、ドープに含まれる紫外線吸収剤の含有量を表2に示されるように変更した以外は同様にしてシクロオレフィン系樹脂フィルム12〜16を得た。
シクロオレフィン系樹脂フィルム6の作製において、ドープに含まれる紫外線吸収剤の含有量を表2に示されるように変更した以外は同様にしてシクロオレフィン系樹脂フィルム17を得た。
シクロオレフィン系樹脂フィルム15の作製において、ドープに含まれるシクロオレフィン系樹脂の種類を表2に示されるように変更した以外は同様にしてシクロオレフィン系樹脂フィルム18〜20を得た。
シクロオレフィン系樹脂フィルム2の作製において、ドープに含まれる紫外線吸収剤の種類と含有量を表2に示されるように変更した以外は同様にしてシクロオレフィン系樹脂フィルム21〜23を得た。
(ペレットの作製)
乾燥させたシクロオレフィン系樹脂1を100質量部と、紫外線吸収剤A:3質量部と、IRGANOX1010(酸化防止剤):0.2質量部とを、二軸押出機により混合した。得られた混合物を、押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機で溶融押出してペレットを得た。
シクロオレフィン系樹脂フィルム21の作製において、延伸を行わず、且つ貧溶媒の種類を表2に示されるものに変更した以外は同様にしてシクロオレフィン系樹脂フィルム25を得た。
シクロオレフィン系樹脂フィルム2の作製において、紫外線吸収剤を添加せず、シクロオレフィン系樹脂1の添加量を108質量部とした以外は同様にしてシクロオレフィン系樹脂フィルム26を得た。
得られたシクロオレフィン系樹脂フィルムのMc/Msを、以下の手順で測定した。即ち、
1)シクロオレフィン系樹脂フィルムをミクロトームで切断し、シクロオレフィン系樹脂フィルムの表面に垂直な切断面を得た。
2)得られたシクロオレフィン系樹脂フィルムの切断面における測定対象物の面分布像(IRイメージ像)を、Thermo Fisher Scientific社製のNicolet 380を用いてATR法にてよって測定した。
(測定条件)
測定領域:30μm×30μm(シクロオレフィン系樹脂フィルムの表面と内部を含む領域)
3)上記測定領域について、測定対象となる紫外線吸収剤又は酸化防止剤のピーク(測定対象ピーク)を抽出し、その吸光度から含有量を数値化し、可視化したIRイメージ像を得た。
また、上記測定領域において、シクロオレフィン系樹脂フィルムの一方の面から厚み方向に2μmの位置までの領域における測定対象ピークの吸光度の積算値As1、シクロオレフィン系樹脂フィルムの他方の面から厚み方向に2μmの位置までの領域における測定対象ピークの吸光度の積算値As2、及びシクロオレフィン系樹脂フィルムの厚み方向の中心から厚み方向に±2μmの位置までの領域における測定対象ピークの吸光度の積算値Acを測定し、それらの比Ac/As1、Ac/As2をそれぞれ算出した。これらの比のうち、小さいほうの値を「Mc/Ms」とした。
得られたシクロオレフィン系樹脂フィルム中の残留溶媒の定性及び定量は、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより行った。ヘッドスペースガスクロマトグラフィーでは、試料を容器に封入して加熱し、容器中に揮発成分が充満した状態で速やかに容器中のガスをガスクロマトグラフに注入し、質量分析を行って化合物の同定を行いながら揮発成分の定量を行った。揮発成分の定量は、濃度が既知の試料を用いて検量線を予め作成しておき、測定で得られた揮発成分のピーク面積と検量線とを照合して行った。
(測定条件)
ヘッドスペース装置:HP7694 Head Space Sampler(ヒューレットパッカード社製)
温度条件:トランスファーライン200℃、ループ温度200℃
サンプル量:0.8g/20mlバイアル
GC:HP5890(ヒューレットパッカード社製)
MS:HP5971(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−624(30m×内径0.25mm)
オーブン温度:初期温度40℃(保持時間3分)、昇温速度10℃/分、到達温度200℃(保持時間5分)
測定モード:SIM(セレクトイオンモニター)モード
1)処理液の調製
<処理液1の調製>
シクロペンチルメチルエーテル(CPME)とアセトンとを、シクロペンチルメチルエーテル(CPME):アセトン=3:7(体積比)で混合して処理液1を得た。
酢酸n−ブチルと2−プロパノールとを、酢酸n−ブチル:2−プロパノール=3:7(体積比)で混合して処理液2を得た。
トルエンとメチルエチルケトンとを、トルエン:メチルエチルケトン=1:9(体積比)で混合して処理液3を得た。
トルエンとメチルエチルケトンとを、トルエン:メチルエチルケトン=3:7(体積比)で混合して処理液4を得た。
<光学フィルム1〜26の作製>
表3に示されるシクロオレフィン系樹脂フィルムの領域Sを構成する面(表2のMc/Msの値を有する面)に、電子照射量500W/m2/minの条件でコロナ放電処理を施した。得られたフィルムのコロナ処理面に、上記作製した処理液1をバーコーターにて塗布した後、30℃で2分間乾燥させて溶媒処理を行った。それにより、厚み800nmの改質領域を有する光学フィルム1〜26を得た。
光学フィルム21の作製において、溶媒処理に用いる処理液を、表3に示される処理液に変更した以外は同様にして光学フィルム27〜29を得た。
光学フィルム21の作製において、溶媒処理を行わなかった以外は同様にして光学フィルム30を得た。
1)偏光子の作製
厚さ25μmのポリビニルアルコールフィルムを、35℃の水で膨潤させた。得られたフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5gおよび水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、さらにヨウ化カリウム3g、ホウ酸7.5gおよび水100gからなる45℃の水溶液に浸漬した。得られたフィルムを、延伸温度55℃、延伸倍率5倍の条件で一軸延伸した。この一軸延伸フィルムを、水洗した後、乾燥させて、厚さ7μmの偏光子を得た。
得られた光学フィルムの改質領域が形成された面に、水系接着剤であるポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3質量%水溶液を塗布した後、上記作製した偏光子を貼り合わせた。貼り合わせは、光学フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とが直交するように行った。得られた積層物を60℃で5分間乾燥させて、評価用サンプルを得た。
◎:剥がれない
○:光学フィルムと偏光子との間の接着力に問題はなく、光学フィルムを剥がそうとすると、光学フィルムと偏光子の少なくとも一方の端部の一部に材料(基材)破壊が生じる
△:光学フィルムと偏光子との間の接着力に問題はなく、光学フィルムを剥がそうとすると、光学フィルムと偏光子の少なくとも一方の端部の一部に軽度の材料(基材)破壊が生じる
×:光学フィルムと偏光子との界面が剥がれる
1)全ヘイズの測定
光学フィルムを、23℃55%RHの環境にて5時間以上調湿した後、得られた光学フィルムの全ヘイズを、ヘイズメーター(型式NDH 2000、日本電色(株)製)により測定した。
i)まず、光学フィルムを含まないブランクヘイズ1を以下の手順で測定した。即ち、洗浄したスライドガラス上にグリセリンを一滴(0.05ml)滴下した。このとき液滴に気泡が入らないようにした。次いで、滴下したグリセリン上にカバーガラスを乗せた。カバーガラスは押さえなくてもグリセリンは広がった。得られた積層物をヘイズメーター(型式NDH 2000、日本電色(株)製)にセットし、ブランクヘイズ1を測定した。
ii)次に、光学フィルムを含めたヘイズ2を以下の手順で測定した。
スライドガラス上にグリセリン(0.05ml)を滴下した(図4(a)参照)。次いで、その上に上記調湿した光学フィルムを気泡が入らないように乗せた(図4(b)参照)。次いで、光学フィルム上にグリセリン(0.05ml)を滴下した(図4(c)参照)。次いで、その上にカバーガラスを載せた(図4(d)参照)。上記のように作製した積層体(上から、カバーガラス/グリセリン/光学フィルム/グリセリン/スライドガラス)を前述のヘイズメータ−にセットし、ヘイズ2を測定した。
iii)前記i)及びii)で測定した値を下記式に当てはめて、光学フィルムの内部ヘイズを算出した。
光学フィルムの内部ヘイズ=(ヘイズ2)−(ヘイズ1)
ガラス:MICRO SLIDE GLASS S9213 MATSUNAMI
グリセリン: 関東化学製 鹿特級(純度>99.0%) 屈折率1.47
前記1)で測定した全ヘイズと前記2)で算出した内部ヘイズとを下記式に当てはめて、外部ヘイズを算出した。
光学フィルムの外部ヘイズ=(全ヘイズ)−(内部ヘイズ)
<液晶表示装置1の作製>
(第1の偏光板の作製)
偏光子として、前述の「偏光子との接着性」の評価に用いた偏光子を準備した。保護フィルムF1として、コニカミノルタタック KC6UA(コニカミノルタ社製)を準備した。保護フィルムF2として、上記作製した光学フィルム1を準備した。
液晶表示装置として、VA方式の液晶表示装置であるシャープ製液晶テレビ「AQ−32AD5」を準備した。この装置から視認側の偏光板を剥がしとり、液晶セルの視認側の面に上記作製した偏光板1を、粘着剤を介して貼り付けて液晶表示装置を得た。
偏光板1の貼り付けは、光学フィルム1(保護フィルムF2)が液晶セル側となり、偏光子の吸収軸と光学フィルム1の遅相軸とが直交し、且つ液晶セルから剥がしとる前の視認側偏光板の吸収軸と一致するように行った。
液晶表示装置1の作製において、偏光板の保護フィルムF2の種類を、表4に示されるように変更した以外は同様にして液晶表示装置2〜30を得た。
液晶表示装置1の作製において、偏光板の保護フィルムF1とF2の種類を、表4に示されるように変更した以外は同様にして液晶表示装置31〜32を得た。
得られた液晶表示装置を、23℃55%RHの環境下で、バックライトを1週間連続点灯させた後、正面コントラストの測定を行った。正面コントラストの測定は、コニカミノルタセンシング社製の装置「CS−2000」を用い、波長550nmの光を照射して、液晶表示装置の白表示状態、黒表示状態での輝度をそれぞれ液晶表示装置の表示画面の法線方向から測定した。そして、得られた値を下記式に当てはめて、正面コントラスト(CR)を算出した。
正面コントラスト(CR)=(白表示状態での輝度)−(黒表示状態での輝度)
正面コントラストの値を、以下の基準に基づいて評価した。△以上を良好と判断した。
◎:900≦CR
○:850≦CR<900
△:800≦CR<850
×:800>CR
液晶表示装置として、IPS方式の液晶表示装置であるPanasonic製液晶テレビ「VIERA TH−26LX60」を準備した。この装置から視認側の偏光板を剥がしとり、液晶セルの視認側の面に上記作製した偏光板21を粘着剤を介して貼り付けて液晶表示装置33を得た。
偏光板21の貼り付けは、光学フィルム21(保護フィルムF2)が液晶セル側となり、偏光子の吸収軸と光学フィルム21の遅相軸とが直交し、且つ液晶セルから剥がしとる前の視認側偏光板の吸収軸と一致するように行った。
液晶表示装置32の作製において、偏光板の保護フィルムF1とF2の種類を、表5に示されるように変更した以外は同様にして液晶表示装置34〜36を得た。
10A、45A 改質領域
20 液晶表示装置
30 液晶セル
40 第1の偏光板
41 第1の偏光子
43 保護フィルム(F1)
45 保護フィルム(F2)
50 第2の偏光板
51 第2の偏光子
53 保護フィルム(F3)
55 保護フィルム(F4)
60 バックライト
Claims (3)
- 溶媒処理して光学フィルムとして用いられるシクロオレフィン系樹脂フィルムであって、
前記シクロオレフィン系樹脂フィルムは、シクロオレフィン系樹脂と、酸化防止剤とを含み、
前記シクロオレフィン系樹脂フィルムの表面に垂直な切断面において、表面から厚み方向に0.1tの位置までの領域Sにおける前記酸化防止剤の合計含有量をMsとし、前記シクロオレフィン系樹脂フィルムの中心から厚み方向に±0.1tの位置までの領域Cにおける前記酸化防止剤の合計含有量をMcとしたとき(但し、前記シクロオレフィン系樹脂フィルムの厚みをtとする)、Mc/Msが0.01以上1未満であり、
前記シクロオレフィン系樹脂フィルムは、100ppm以上2000ppm以下の残留溶媒を含み、かつ
前記残留溶媒として、ハロゲン化炭化水素類と、100〜300ppmのトルエンとを含む、
シクロオレフィン系樹脂フィルム。 - 前記Mc/Msが0.7以下である、
請求項1に記載のシクロオレフィン系樹脂フィルム。 - 請求項1または2に記載のシクロオレフィン系樹脂フィルムを得る工程と、
前記シクロオレフィン系樹脂フィルムの前記領域Sを構成する面を、有機溶媒と接触させて溶媒処理する工程と、
を含む、
光学フィルムの製造方法。
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