本発明の偏光板保護フィルムの製造方法は、シクロオレフィン系樹脂を含有する偏光板保護フィルムの製造方法であって、前記偏光板保護フィルムの膜厚が、5〜40μmの範囲内であり、かつ、前記偏光板保護フィルムの少なくとも片側の表面に、水分が100〜10000ppmの範囲内のガス雰囲気下で、希ガスを放電ガスとしたエキシマ光を積算光量1〜5000mJ/cm2の範囲内で照射することを特徴とする。この特徴は各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記エキシマ光の中心波長が、172nm又は222nmのいずれかであることが、エキシマ光強度が強く、前記「脆弱層」の強靱化を行う観点から、好ましい。
また、前記偏光板保護フィルムを、酸素濃度が10000ppm以下の環境下で前記エキシマ光を照射することは、酸素が存在するとエキシマ光の照射による効果が低下するため、前記「脆弱層」の強靱化をより達成する観点から、当該酸素濃度以下の環境下で照射を行うことが好ましい。
さらに、前記偏光板保護フィルムを、水分が100〜10000ppmの範囲内のガス雰囲気下で前記エキシマ光を照射することが、水分子のヒドロキシ基が親水化のために有効に作用するため、好ましい実施態様である。
本発明に係る前記偏光板保護フィルムは、幅手方向及び長手方向の延伸倍率の総和で30%以上の倍率で延伸されることが、薄膜な偏光板保護フィルムを形成する上で、好ましい。
また、本発明の偏光板の製造方法は、シクロオレフィン系樹脂を含有する偏光板保護フィルムとポリビニルアルコール系偏光子とを貼合する偏光板の製造方法であって、前記偏光板保護フィルムの膜厚が、5〜40μmの範囲内であり、かつ、前記偏光板保護フィルムの前記ポリビニルアルコール系偏光子と貼合する側の表面に、希ガスを放電ガスとしたエキシマ光を積算光量1〜5000mJ/cm2の範囲内で照射する工程を有することが、前記「脆弱層」の強靱化を促進し、水糊や紫外線硬化型接着剤を用いて接着しても剥離することなく密着性が改善される。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪本発明の偏光板保護フィルムの製造方法の概要≫
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法は、シクロオレフィン系樹脂を含有する偏光板保護フィルムの製造方法であって、前記偏光板保護フィルムの膜厚が、5〜40μmの範囲内であり、かつ、前記偏光板保護フィルムの少なくとも片側の表面に、水分が100〜10000ppmの範囲内のガス雰囲気下で、希ガスを放電ガスとしたエキシマ光を積算光量1〜5000mJ/cm2の範囲内で照射することを特徴とする。
本発明は、前記膜厚の範囲のような薄膜化を延伸処理によって行う際に、シクロオレフィンフィルムの表面に薄い「脆弱層」が形成され、これが水糊や紫外線硬化型接着剤を介してPVA偏光子と接着した際に、接着強度を阻害して、その部分から剥離してしまうという現象に対して、前記「脆弱層」を強靱化する方法について検討したものである。
その結果、エキシマ光照射時に付随する発熱による前記「脆弱層」の溶融によって、表面の強靱化が達成され、かつ、エキシマ光照射によってシクロオレフィン系樹脂の−C−C−結合を切断し、ヒドロキシ基、カルボキシ基及びカルボニル基などの極性基を表面部位に導入することによって親水化し、水糊や紫外線硬化型接着剤を用いて接着しても、その部分から剥離することなく、密着性が改善されるものである。
以下、本発明の構成要素を詳細に説明する。
〔1〕エキシマ光の照射
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法は、前記偏光板保護フィルムの少なくとも片側の表面に、希ガスを放電ガスとしたエキシマ光を積算光量1〜5000mJ/cm2の範囲内で照射することを特徴とする。
希ガスを放電ガスとしたエキシマ光に用いられる希ガスとしては、Xe、Kr、Ar、Neなどが挙げられ、当該希ガスの原子は、化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。
しかしながら、放電などによりエネルギーを得た希ガスの励起原子は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には、
e+Xe→Xe*
Xe*+2Xe→Xe2 *+Xe
Xe2 *→Xe+Xe+hν(172nm)
となり、励起されたエキシマ分子であるXe2 *が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。
エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。さらには始動及び再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。
エキシマ光を得るには、誘電体バリアー放電を用いる方法が知られている。誘電体バリアー放電とは、両電極間に透明石英などの誘電体を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じ、雷に似た非常に細いマイクロディスチャージ(micro discharge)と呼ばれる放電であり、マイクロディスチャージ(micro discharge)のストリーマが管壁(誘導体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、マイクロディスチャージ(micro discharge)は消滅する。
このマイクロディスチャージ(micro discharge)が管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため、肉眼でも確認できる光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
効率よくエキシマ光を得る方法としては、誘電体バリアー放電以外に、無電極電界放電でも可能である。容量性結合による無電極電界放電で、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極及びその配置は基本的には誘電体バリアー放電と同じで良いが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られるため、チラツキが無い長寿命のランプが得られる。
誘電体バリアー放電の場合は、マイクロディスチャージ(micro discharge)が電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行わせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。
このため、細い金属線を網状にした電極が用いられる。この電極は、光を遮らないようにできるだけ細い線が用いられるため、酸素雰囲気中では真空紫外光により発生するオゾンなどにより損傷しやすい。これを防ぐためには、ランプの周囲、すなわち照射装置内を窒素などの不活性ガスの雰囲気にし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。合成石英の窓は高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じる。したがって、照射装置内の酸素濃度は後述するように10000ppm以下であることが好ましい。
二重円筒型ランプは外径が25mm程度であるため、ランプ軸の直下とランプ側面では照射面までの距離の差が無視できず、照度に大きな差を生じる。したがって、仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば、酸素雰囲気中の距離を一様にでき、一様な照度分布が得られる。
無電極電界放電を用いた場合には、外部電極を網状にする必要は無い。ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がる。外部電極には通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用される。しかし、ランプの外径は誘電体バリアー放電の場合と同様に大きいため一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
細管エキシマランプの最大の特徴は、構造がシンプルなことである。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。
細管ランプの管の外径は6nm〜12mm程度で、あまり太いと始動に高い電圧が必要になる。
放電の形態は、誘電体バリアー放電及び無電極電界放電のいずれも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であっても良いが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。また、アルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。
また、波長の短い172nmの光のエネルギーは、有機物の結合を解離させる能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間で前記「脆弱層」の強靱化を達成できる。
また、やや波長の長い塩化クリプトン(KrCl)を用いた222nmの波長のエキシマ光を用いることも高いエネルギーを得ることができるため、好ましい光照射である。
エキシマランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で、すなわち短い波長でエネルギーを照射するため、照射対象物全体の著しい表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。このため、熱の影響を受けやすいとされる樹脂系フィルム材料の表面処理に適している。
本発明に係るシクロオレフィンフィルムへのエキシマ光の積算光量は1〜5000mJ/cm2の範囲内で照射することが、前記「脆弱層」を強靱化するために必要である。1/cm2未満では、表面改質すなわち親水基の導入が不十分となり本発明の効果が得られない。5000/cm2では、熱ダメージによってシクロオレフィンフィルムの機械的強度が低下することがあり、好ましくない。
光源として、Xeを放電ガスとした中心波長が172nmのエキシマランプを使用した場合は、積算光量が50〜1000mJ/cm2の範囲内で照射することが好ましい。
又は、光源として、KrClを放電ガスとした中心波長が222nmのエキシマランプを使用した場合は、積算光量が3000〜10000mJ/cm2の範囲内となるように光照射することが好ましい。
紫外線照射時の反応には、酸素が必要であるが、真空紫外線は、酸素による吸収があるため紫外線照射工程での効率が低下しやすいことから、真空紫外線の照射は、可能な限り酸素濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、真空紫外線照射時の酸素濃度は、10000ppm以下であり、10〜10000ppmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは50〜5000ppmの範囲、更に好ましく1000〜5000ppmの範囲である。
真空紫外線照射時に用いられる、照射雰囲気を満たすガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
また、紫外線照射時の反応に水分が100〜10000ppmの範囲内のガス雰囲気下で前記エキシマ光を照射することが、水分子を構成するヒドロキシ基が「脆弱層」の親水化のために有効に作用する。好ましくは、500〜8000ppmの範囲である。
図1は、真空紫外線照射装置の一例を示している。
図1は、枚葉状の基材へのエキシマ光照射を示しているが、フィルムを搬送しながら、連続的に照射する装置であってもよく、好ましくは生産性の観点からフィルムを搬送しながら連続的に照射する装置である。
真空紫外線照射装置200は、ステージ224上に補助配線が形成されたシクロオレフィンフィルムBを載せてチャンバー222内を搬送する。チャンバー222内は、排気によって水蒸気が除去され、不活性ガスの導入により酸素濃度が一定に調整されている。ステージ224はヒーターを内蔵しシクロオレフィンフィルムBを加熱することが可能である。
チャンバー222内は、遮蔽板226によってシクロオレフィンフィルムBの搬送方向Vに沿って三つのゾーンに分けられ、中央のゾーンには複数のXeエキシマランプ28が設置されている。
Xeエキシマランプ228は、電源を内蔵するホルダー230によって支持され、点灯制御される。シクロオレフィンフィルムBを、このXeエキシマランプ228が設置されたゾーン内を通過させることにより、真空紫外線を照射することができる。
エキシマ光照射装置は、市販の装置を用いることもでき、ウシオ電機(株)や(株)エム・ディ・エキシマより市販されているエキシマ照射装置を適宜用いることができる。
具体的には下記に挙げた装置条件で行うことができる。
エキシマ照射装置1(MECL−M−1−200 波長:172nm、ランプ封入ガス:Xe (株)エム・ディ・コム製)
(処理条件)
エキシマ光強度:130mW/cm2
試料と光源との距離:2mm
酸素濃度:0.1%
エキシマ照射装置2(MECL−M−1−200-222 波長:222nm、ランプ封入ガス:KrCl (株)エム・ディ・コム製)
(処理条件)
エキシマ光強度:60mW/cm2
試料と光源との距離:20mm
酸素濃度:20%
本発明の偏光板保護フィルムの製造方法は、後述するように、ドープ調製工程、流延工程、溶媒蒸発工程、剥離工程、予備乾燥工程、延伸処理工程、本乾燥工程、巻取り工程の一連の工程によって製造される。この工程の中で、延伸処理工程以降に前記偏光板保護フィルムの少なくとも片側の表面に、希ガスを放電ガスとしたエキシマ光を照射することが好ましい。すなわち、前記「脆弱層」が形成された後にエキシマ光を照射して、当該「脆弱層」を強靱化し、かつ最表層を親水化することが好ましい。
エキシマ光を照射する位置は前記延伸処理工程以降が好ましく、例えば、延伸処理工程の後半部分で延伸処理と同時に行ってもよく、また、巻き取ったシクロオレフィンフィルムを巻き出してからオフラインで行ってもよい。好ましくは、前記本乾燥工程と巻取り工程の間でエキシマ光を必要十分に照射し、巻き取ることである。また、後述する偏光板を製造する直前に行ってもよい。
なお、上記光照射に加え、コロナ放電処理やプラズマ処理を行ってもよい。コロナ放電処理とは、大気圧下、電極間に1kV以上の高電圧を印加し、放電することで行う処理である。コロナ放電処理によって、フィルム表面に酸素含有極性基(水酸基、カルボニル基、カルボン酸基等)が発生し、表面が親水化される。コロナ放電処理は、春日電機(株)や(株)トーヨー電機などで市販されている装置を用いて行うことができる。また、プラズマ処理は、プラズマ化したガスを基材表面に照射し、基材表面を改質する処理であり、グロー放電処理、フレームプラズマ処理等が挙げられる。これらは、たとえば、特開平6−123062号公報、特開平11−293011号公報、特開平11−005857号公報等に記載された方法を用いることができる。プラズマ処理によって、フィルム表面に酸素含有極性基(ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボン酸基等)が発生し、表面が親水化される。たとえば、グロー放電処理は、相対する電極の間にフィルムを置き、装置中にプラズマ励起性気体を導入し、電極間に高周波電圧を印加することにより、該気体をプラズマ励起させ、電極間においてグロー放電を行うものである。これにより、フィルム表面が処理されて、親水性が高められる。
〔2〕偏光板の製造方法
本発明に係る偏光板は、本発明に係るエキシマ光を照射されたシクロオレフィンフィルムのエキシマ光の照射面に、ポリビニルアルコール系の水糊又は紫外線硬化型接着剤を用いて、偏光子の少なくとも一方の面に貼合されている構成である。
前述のように、下記前処理工程において、シクロオレフィンフィルムの偏光子と貼合する面をエキシマ光の照射を行ってもよい。
図2は本発明に係る偏光板の構成を示す模式図である。
本発明に係る偏光板Aは、本発明に係るシクロオレフィンフィルムB及び偏光板保護フィルムDの間に偏光子Cが挟持されてなる構成を有する。シクロオレフィンフィルムBと偏光子Cの間は水糊又は紫外線硬化型接着剤である接着層Eがあり、シクロオレフィンフィルムBの当該接着層Eに接する側が、本発明に係るエキシマ光が照射された部位になる。また、同様に偏光板保護フィルムDと偏光子Cの間には接着層Eがある。
前記偏光板保護フィルムDは、本発明のシクロオレフィンフィルム、又は従来の偏光板保護フィルムのどちらでも用いることができる。
例えば、従来の偏光板保護フィルムとしては、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC6UY、KC6UA、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタ(株)製)が好ましく用いられる。
また、本発明の偏光板が視認側の偏光板として用いられる場合は、偏光板保護フィルムDには、防眩層又はクリアハードコート層、反射防止層、帯電防止層、防汚層等を設けることが好ましい。
シクロオレフィンフィルムBの偏光子とは反対側の面には、液晶セルに接着するための粘着層及びセパレーター(いずれも不図示)が形成されていてもよい。
〈偏光子〉
本発明に係る偏光板の主たる構成要素である偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
偏光子としては、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行った偏光子が用いられ得る。偏光子の膜厚は、薄膜偏光板を形成するために、3〜30μmの範囲内であることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましく、5〜10μmであることが、よりいっそうの薄膜化の観点から好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、ケン化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。中でも、熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能及び耐久性能に優れている上に、色ムラが少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
また、薄膜な偏光子は、例えば、熱可塑性樹脂層上に親水性高分子層を塗布方式で積層した後、好ましくは延伸処理を施して延伸積層体を形成し、次いで二色性物質で該親水性高分子層を染色処理して偏光機能を付与した後、該熱可塑性樹脂層を剥離して偏光子とすることが好ましい。当該偏光子は最終的に前記親水性高分子層のことを指し、前記熱可塑性樹脂層を剥離するため、その膜厚は15μm以下、さらには10μm以下という薄膜化が可能である。
前記熱可塑性樹脂層は、親水性高分子層を形成するための基材として機能する。用いられる熱可塑性樹脂層は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)を含むオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を含むエステル系樹脂がある。
熱可塑性樹脂層(延伸前)の厚さは、適宜に決定できるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。熱可塑性樹脂層の厚さは、5〜150μmの場合に特に好適である。
前記親水性高分子層は、親水性高分子を主成分として含有する層であり、該親水性高分子層は後述する染色処理によって二色性物質を吸着したものである。これにより、親水性高分子層が、本発明の偏光板において、薄膜な偏光子として機能することになる。
親水性高分子層を構成する親水性高分子については、特に制限はないが、ポリビニルアルコール系材料が好ましく例示される。
薄膜な偏光子は、熱可塑性樹脂層上に親水性高分子層を積層して積層体を形成し、更に延伸処理して延伸積層体を形成する。該延伸処理は、染色処理する後や同時に行ってもよいが、染色処理する前に行うことが、配向する親水性高分子の分子に沿って染色を可能にするため、均一な偏光特性を付与する観点からも好ましい。
例えば、熱可塑性樹脂層に、親水性高分子を含有する水溶液を塗布した後、乾燥、延伸することにより得ることができる。延伸処理は、一軸延伸、二軸延伸、斜め延伸などが施される。
続いて、二色性物質による染色処理することにより、親水性高分子層に二色性物質が吸着されて偏光子として機能するようになる。
当該延伸積層体を形成し偏光子を作製する詳細については、特開2011−100161号公報を参照することができる。
〈偏光板の作製〉
本発明の偏光板は、一般的な方法で作製することができる。本発明に係るシクロオレフィンフィルムの偏光子対向面側を適宜表面処理し、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、水系接着剤(水糊ともいう。)又は紫外線硬化型接着剤を用いて貼り合わせることができる。もう一方の面にも前述の通り、本発明に係るシクロオレフィンフィルム又は他の偏光板保護フィルムを貼合する。偏光子との貼合の向きは、例えば、偏光子の吸収軸と各保護フィルムの遅相軸が直交するように貼合することが好ましい。
[水糊]
本発明に係る偏光板は、本発明に係るシクロオレフィンフィルムを完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(水糊)を用いて偏光子に貼り合わせることが、コスト及び密着性の観点から好ましい。もう一方の面には他の偏光板保護フィルムを貼合することができる。本発明のシクロオレフィンフィルムは液晶表示装置とされた際に、偏光子の液晶セル側に設けられることが好ましく、偏光子の外側のフィルムは、従来の偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。
[紫外線硬化型接着剤]
本発明に係る偏光板においては、シクロオレフィンフィルムと偏光子との貼合に紫外線硬化型接着剤を適用することにより、薄膜でも強度が高く、平面性に優れた偏光板を得ることができる。
〈紫外線硬化型接着剤の組成〉
偏光板用の紫外線硬化型接着剤組成物としては、光ラジカル重合を利用した光ラジカル重合型組成物、光カチオン重合を利用した光カチオン重合型組成物、並びに光ラジカル重合及び光カチオン重合を併用したハイブリッド型組成物が知られている。
光ラジカル重合型組成物としては、特開2008−009329号公報に記載のヒドロキシ基やカルボキシ基等の極性基を含有するラジカル重合性化合物及び極性基を含有しないラジカル重合性化合物を特定割合で含む組成物)等が知られている。特に、ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の好ましい例には、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が含まれる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物の例には、N置換(メタ)アクリルアミド系化合物、(メタ)アクリレート系化合物などが含まれる。(メタ)アクリルアミドは、アクリアミド又はメタクリアミドを意味する。
また、光カチオン重合型組成物としては、特開2011−028234号公報に開示されているような、(α)カチオン重合性化合物、(β)光カチオン重合開始剤、(γ)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤、及び(δ)ナフタレン系光増感助剤の各成分を含有する紫外線硬化型接着剤組成物が挙げられる。ただし、これ以外の紫外線硬化型接着剤が用いられてもよい。
以下、本発明に係る偏光子とシクロオレフィンフィルム及び他の偏光板保護フィルムとの接着について説明する。
(1)前処理工程
前処理工程は、シクロオレフィンフィルムの偏光子との接着面に易接着処理を行う工程である。易接着処理としては、前述のエキシマ光の照射、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。
(紫外線硬化型接着剤の塗布工程)
紫外線硬化型接着剤の塗布工程としては、偏光子とシクロオレフィンフィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、上記紫外線硬化型接着剤を塗布する。偏光子又はシクロオレフィンフィルムの表面に直接、紫外線硬化型接着剤を塗布する場合、その塗布方法に特段の限定はない。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の湿式塗布方式が利用できる。また、偏光子と保護フィルムの間に、紫外線硬化型接着剤を塗布したのち、ローラー等で加圧して均一に押し広げる方法も利用できる。
(貼合工程)
上記の方法により紫外線硬化型接着剤を塗布した後は、貼合工程で処理される。この貼合工程では、例えば、先の塗布工程で偏光子の表面に紫外線硬化型接着剤を塗布した場合、そこにシクロオレフィンフィルム及び他の偏光板保護フィルムが重ね合わされる。また、シクロオレフィンフィルム及び他の偏光板保護フィルムの表面に紫外線硬化型接着剤を塗布する方式の場合には、そこに偏光子が重ね合わされる。また、偏光子とシクロオレフィンフィルムの間に紫外線硬化型接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子とシクロオレフィンフィルムとが重ね合わされる。そして、通常は、この状態で両面の保護フィルム側から加圧ローラー等で挟んで加圧することになる。加圧ローラーの材質は、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置される加圧ローラーは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
(硬化工程)
硬化工程では、未硬化の紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射して、カチオン重合性化合物(例えば、エポキシ化合物やオキセタン化合物)やラジカル重合性化合物(例えば、アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物等)を含む紫外線硬化型接着剤層を硬化させ、紫外線硬化型接着剤を介して重ね合わせた偏光子と本発明に係るシクロオレフィンフィルムを接着させる。偏光子の両面にシクロオレフィンフィルム及び他の保護フィルムを貼合する本発明の構成においては、偏光子の両面にそれぞれ紫外線硬化型接着剤を介してシクロオレフィンフィルム及び他の保護フィルムを重ね合わせた状態で、紫外線を照射し、両面の紫外線硬化型接着剤を同時に硬化させるのが有利である。
紫外線の照射条件は、本発明に適用する紫外線硬化型接着剤を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。紫外線の照射量は積算光量で50〜1500mJ/cm2の範囲であることが好ましく、100〜500mJ/cm2の範囲であるのがさらに好ましい。本発明ではシクロオレフィンフィルム側又は他の偏光板保護フィルム側から紫外線照射することが歩留り向上の点でも好ましい。
偏光板の製造工程を連続ラインで行う場合、ライン速度は、接着剤の硬化時間によるが、好ましくは1〜500m/minの範囲、より好ましくは5〜300m/minの範囲、さらに好ましくは10〜100m/minの範囲である。ライン速度が1m/min以上であれば、生産性を確保することができ、又は本発明に係る保護フィルムへのダメージを抑制することができ、耐久性に優れた偏光板を作製することができる。また、ライン速度が500m/min以下であれば、紫外線硬化型接着剤の硬化が十分となり、目的とする硬度を備え、接着性に優れた紫外線硬化型接着剤層を形成することができる。
また、上記他の偏光板保護フィルムが、セルロースアシレート系樹脂フィルムの場合は、偏光子と貼合される面がケン化処理され、ポリビニルアルコール系水糊によって貼合される態様も好ましい。
〔3〕シクロオレフィン系樹脂を含有する偏光板保護フィルム
本発明に係るシクロオレフィンフィルムは、シクロオレフィン系樹脂を主成分として含有し、膜厚が5〜40μmの範囲内である、薄膜な光学フィルムであり、偏光板保護フィルム、位相差フィルム等に用いられることが好ましい。また、本発明に係るシクロオレフィンフィルムがλ/4位相差フィルムである場合は、偏光子に貼合されることで円偏光板を形成し、例えば有機エレクトロルミネッセンス表示装置の反射防止フィルムとして使用することができる。
〔3.1〕シクロオレフィン系樹脂(シクロオレフィン系重合体)
シクロオレフィン系樹脂としては、種々のシクロオレフィン単量体の重合体を用いることができるが、ノルボルネン骨格を有するシクロオレフィン単量体を単独重合又は共重合して得られる重合体を用いることが好ましい。
中でも極性基を有するシクロオレフィン単量体を単独重合又は共重合して得られる重合体を用いることが、好ましい。
以下において、本発明で用いられるシクロオレフィン単量体の説明をする。
本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂は、下記で示される一般式(A−1)及び(A−2)で表されるシクロオレフィン単量体から単独重合又は共重合して得られる重合体であることが好ましい。特に一般式(A−2)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂であることが、接着剤との相互作用による偏光子との接着性を向上する観点から、好ましい。
一般式(A−1)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体を説明する。
(一般式(A−1)中、R
1〜R
4は、それぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表す。又は、酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換又は非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、若しくは極性基を表す。pは、0〜2の自然数を表す。)
上記極性基としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基などが挙げられ、これら極性基はメチレン基などの連結基を介して結合していてもよい。また、カルボニル基、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、イミノ基など極性を有する2価の有機基が連結基となって結合している炭化水素基なども極性基として挙げられる。これらの中では、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリルオキシカルボニル基が好ましく、特にアルコキシカルボニル基又はアリルオキシカルボニル基であることが、溶液製膜時の溶解性を確保する観点からも好ましい。
次に、本発明で好ましい、一般式(A−2)で表されるシクロオレフィン単量体を説明する。
(一般式(A−2)中、R
5は、独立に水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、又は炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルシリル基を表す。R
6は、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。pは、0〜2の整数を表す。)
本発明においては、一般式(A−2)で表されるように、置換基R
5及びR
6が片側炭素に置換されたシクロオレフィン単量体を用いることで、分子の対称性が崩れたためか溶媒揮発時の樹脂の拡散運動を促進し、それに伴い樹脂の極性基がシリカ粒子と相互作用が強まり、二次凝集体を形成しやすくする観点から、好ましい。
R5は、炭素数1〜3の炭化水素基、R6は、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリルオキシカルボニル基が好ましく、特にアルコキシカルボニル基又はアリルオキシカルボニル基であることが、本発明の効果に加えて溶液製膜時の溶解性を確保する観点からも好ましい。
以下に、本願における一般式(A−1)及び(A−2)の構造を具体的に示すが、以下の具体例によって限定されるものではない。
シクロオレフィン系樹脂としては、ノルボルネン骨格を有する前記一般式(A−1)及び(A−2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体を単独重合又は共重合して得られる重合体であり、例えば以下のものが挙げられる。
(1)シクロオレフィン単量体の開環重合体
(2)シクロオレフィン単量体と共重合性単量体との開環共重合体
(3)上記(1)又は(2)の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体
(4)上記(1)又は(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体
(5)シクロオレフィン単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和重合体
(6)シクロオレフィン系単量体の付加型(共)重合体及びその水素添加(共)重合体
(7)シクロオレフィン系単量体とメタクリレート、又はアクリレートとの交互共重合体
中でも(1)〜(3)が好ましく、(3)がより好ましい。
本発明に用いられる好ましいシクロオレフィン重合体としては、下記一般式(B−1)及び一般式(B−2)で表される構造単位を有するものも挙げられる。このようなシクロオレフィン系樹脂は、一般式(B−1)で表される構造単位のみ、一般式(B−2)で表される構造単位のみ、一般式(B−1)と一般式(B−2)のそれぞれの構造単位を含む共重合体でもよい。
好ましくは、一般式(B−2)の構造体のみ、又は一般式(B−1)と一般式(B−2)の両者の構造単位を含む共重合体の樹脂である。得られるシクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度が高くかつ透過率の高い優れたものとなる点で好ましい。
(一般式(B−1)中、Xは、−CH=CH−で表される基又は−CH
2CH
2−で表される基である。R
1〜R
4は、それぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表す。又は、酸素原子、窒素原子、イオウ原子若しくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換又は非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、若しくは極性基を表す。pは、0〜2の自然数を表す。)
(一般式(B−2)中、Xは、−CH=CH−で表される基又は−CH
2CH
2−で表される基である。R
5は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、又は炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルシリル基を表す。R
6は、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。pは、0〜2の整数を表す。)
本明細書では、本願に用いられるシクロオレフィン系樹脂の製造方法等については、特開2008−107534号公報の記載を援用するものとし、その説明を省略する。
シクロオレフィン系樹脂は1種単独で、又は2種以上を併用することができる。
本発明に係るシクロオレフィン系樹脂の好ましい分子量は、エキシマ光照射によってシクロオレフィン系樹脂の−C−C−結合を切断し、ヒドロキシ基、カルボキシ基及びカルボニル基などの極性基を表面部位に導入することによって親水化し、下記ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は8000〜100000、さらに好ましくは10000〜80000、特に好ましくは12000〜50000であり、重量平均分子量(Mw)は20000〜300000、さらに好ましくは30000〜250000、特に好ましくは40000〜200000の範囲のものが好適である。
重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定する。
測定条件は以下のとおりである。
溶媒: ジクロロメタン
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
数平均分子量及び重量平均分子量が上記範囲にあることによって、シクロオレフィン系樹脂の耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性と、本発明に係るシクロオレフィンフィルムとしての成形加工性が良好となる。
本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、通常、110℃以上、好ましくは110〜350℃、さらに好ましくは120〜250℃、特に好ましくは120〜220℃である。Tgが110℃以上の場合が、高温条件下での使用、又はコーティング、印刷などの二次加工により変形が起こりにくいため好ましい。
一方、Tgが350℃以下とすることで、成形加工が困難になる場合を回避し、成形加工時の熱によって樹脂が劣化する可能性を抑制することができる。
また、シクロオレフィン系樹脂は、市販品を好ましく用いることができ、市販品の例としては、JSR(株)からアートン(ARTON:登録商標)G、アートンF、アートンR、及びアートンRXという商品名で発売されており、これらを使用することができる。
〔3.2〕添加剤
本発明に係るシクロオレフィンフィルムには、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤、位相差上昇剤、帯電防止剤、剥離剤などを含んでもよく、以下に主要な添加剤の詳細を記す。
[可塑剤]
本発明において可塑剤として、ポリエステル、糖エステル、多価アルコールエステル、多価カルボン酸エステル(フタル酸エステルを含む)、グリコレート、及びエステル系化合物(脂肪酸エステルやリン酸エステルなどを含む)が含まれる。これらは、単独で用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、ポリエステルを用いることが好ましく、ジカルボン酸とジオールを反応させて得られる繰り返し単位を含むポリエステルであることが好ましい。
ポリエステルを構成するジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又は脂環式ジカルボン酸であり、好ましくは芳香族ジカルボン酸である。ジカルボン酸は、一種類であっても、二種類以上の混合物であってもよい。
ポリエステルを構成するジオールは、芳香族ジオール、脂肪族ジオール又は脂環式ジオールであり、好ましくは脂肪族ジオールであり、より好ましくは炭素数1〜4のジオールである。ジオールは、一種類であっても、二種類以上の混合物であってもよい。
なかでも、ポリエステルは、少なくとも芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、炭素数1〜4のジオールとを反応させて得られる繰り返し単位を含むことが好ましく、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸とを含むジカルボン酸と、炭素数1〜4のジオールとを反応させて得られる繰り返し単位を含むことがより好ましい。
ポリエステルの分子の両末端は、封止されていても、封止されていなくてもよいが、フィルムの透湿性を低減する観点からは、封止されていることが好ましい。
ポリエステルは、下記一般式(I)又は(II)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。下記式において、nは1以上の整数である。
一般式(I)
B−(G−A)n−G−B
一般式(II)
C−(A−G)n−A−C
一般式(I)及び(II)のAは、炭素原子数3〜20(好ましくは4〜12)のアルキレンジカルボン酸から誘導される2価の基、炭素原子数4〜20(好ましくは4〜12)のアルケニレンジカルボン酸から誘導される2価の基、又は炭素原子数8〜20(好ましくは8〜12)のアリールジカルボン酸から誘導される2価の基を表す。
Aにおける炭素原子数3〜20のアルキレンジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、1,2−エタンジカルボン酸(コハク酸)、1,3−プロパンジカルボン酸(グルタル酸)、1,4−ブタンジカルボン酸(アジピン酸)、1,5−ペンタンジカルボン酸(ピメリン酸)、1,8−オクタンジカルボン酸(セバシン酸)などから誘導される2価の基が含まれる。Aにおける炭素原子数4〜20のアルケニレンジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、マレイン酸、フマル酸などから誘導される2価の基が含まれる。Aにおける炭素原子数8〜20のアリールジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、1,2−ベンゼンジカルボン酸(フタル酸)、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸などから誘導される2価の基が含まれる。
Aは、一種類であっても、二種類以上が組み合わされてもよい。なかでも、Aは、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸と炭素原子数8〜12のアリールジカルボン酸との組み合わせが好ましい。
一般式(I)及び(II)のGは、炭素原子数2〜20(好ましくは2〜12)のアルキレングリコールから誘導される2価の基、炭素原子数6〜20(好ましくは6〜12)のアリールグリコールから誘導される2価の基、又は炭素原子数4〜20(好ましくは4〜12)のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基を表す。
Gにおける炭素原子数2〜20のアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、及び1,12−オクタデカンジオール等から誘導される2価の基が含まれる。
Gにおける炭素原子数6〜20のアリールグリコールから誘導される2価の基の例には、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)などから誘導される2価の基が含まれる。Gにおける炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどから誘導される2価の基が含まれる。
Gは、一種類であっても、二種類以上が組み合わされてもよい。なかでも、Gは、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールであることが好ましい。
一般式(I)のBは、芳香環含有モノカルボン酸又は脂肪族モノカルボン酸から誘導される1価の基である。
芳香環含有モノカルボン酸から誘導される1価の基における芳香環含有モノカルボン酸は、分子内に芳香環を含有するカルボン酸であり、芳香環がカルボキシ基と直接結合したものだけでなく、芳香環がアルキレン基などを介してカルボキシ基と結合したものも含む。芳香環含有モノカルボン酸から誘導される1価の基の例には、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、フェニル酢酸、3−フェニルプロピオン酸などから誘導される1価の基が含まれる。
脂肪族モノカルボン酸から誘導される1価の基の例には、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸などから誘導される1価の基が含まれる。なかでも、アルキル部分の炭素原子数が1〜3であるアルキルモノカルボン酸から誘導される1価の基が好ましく、アセチル基(酢酸から誘導される1価の基)がより好ましい。
一般式(II)のCは、芳香環含有モノアルコール又は脂肪族モノアルコールから誘導される1価の基である。
芳香環含有モノアルコールは、分子内に芳香環を含有するアルコールであり、芳香環がOH基と直接結合したものだけでなく、芳香環がアルキレン基などを介してOH基と結合したものも含む。芳香環含有モノアルコールから誘導される1価の基の例には、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどから誘導される1価の基が含まれる。
脂肪族モノアルコールから誘導される1価の基の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどから誘導される1価の基が含まれる。なかでも、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素原子数1〜3のアルコールから誘導される1価の基が好ましい。
ポリエステルの重量平均分子量は、500〜3000の範囲であることが好ましく、600〜2000の範囲であることがより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であれば、本発明に係るポリエステルの光学フィルムからの耐染みだし性を満たし、目的の効果を得ることができる。重量平均分子量は前記ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
上記ポリエステルは、シクロオレフィンフィルムに1〜20質量%の範囲で含有させることが好ましく、3〜15質量%の範囲で含有させることがより好ましい。
また、可塑剤として、フラノース構造若しくはピラノース構造を1個有する化合物(A)、又はフラノース構造若しくはピラノース構造の少なくとも1種を2個以上、12個以下で結合した化合物(B)中のOH基の全て若しくは一部を脂肪族アシル基によりエステル化した化合物である糖エステル又は糖エステルを含むことも好ましい。
好ましい化合物(A)及び化合物(B)の例としては、以下に示す化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
化合物(A)の例としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース等が挙げられる。なお、化合物(A)には、マルトースを高圧で水素添加して還元して得られるマルチトールも含まれる。
また、化合物(B)の例としては、ラクトース、スクロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース、ケストースなどが挙げられる。これらの化合物(A)及び化合物(B)の中で、特にフラノース構造とピラノース構造とを両方有するものが好ましい。例としてはスクロースが挙げられる。
糖エステルを合成する際に用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
これら化合物の製造方法の詳細は、例えば特開平8−245678号公報に記載されている。
上記化合物(A)及び化合物(B)のエステル化化合物に加えて、オリゴ糖のエステル化化合物を、フラノース構造若しくはピラノース構造の少なくとも1種を3〜12個結合した化合物として適用できる。
オリゴ糖は、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるものである。本実施形態に適用できるオリゴ糖としては、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。オリゴ糖も上記化合物(A)及び化合物(B)と同様な方法でアセチル化できる。
次に、糖エステルの製造例の一例を示す。グルコース(29.8g、166mmol)にピリジン(100ml)を加えた溶液に無水酢酸(200ml)を滴下し、24時間反応させた。その後、エバポレートで溶液を濃縮し氷水へ投入した。1時間放置した後、ガラスフィルターにてろ過し、固体と水を分離し、ガラスフィルター上の固体をクロロホルムに溶かし、これが中性になるまで冷水で分液した。有機層を分離後、無水硫酸ナトリウムにより乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ過により除去した後、クロロホルムをエバポレートにより除き、更に減圧乾燥することによりグリコースペンタアセテート(58.8g、150mmol、90.9%)を得た。なお、上記無水酢酸の替わりに、上述のモノカルボン酸を使用することができる。
[紫外線吸収剤]
本発明に係るシクロオレフィンフィルムは、偏光板や液晶表示装置に照射される不要な紫外線を遮蔽するために、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報に記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
本発明の光学フィルムを、位相差フィルムのほかに、偏光板保護フィルムとして用いる場合、紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ液晶の表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ない特性を備えていることが好ましい。
紫外線吸収剤の添加量は、シクロオレフィン系樹脂に対して0.1〜5.0質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜5.0質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
本発明に有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
また、市販品として、「チヌビン(TINUVIN)109」、「チヌビン(TINUVIN)171」、「チヌビン(TINUVIN)326」、「チヌビン(TINUVIN)328」(以上、商品名、BASFジャパン社製)を好ましく使用できる。
[酸化防止剤]
酸化防止剤は、例えば、シクロオレフィンフィルム中の残留溶媒のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりシクロオレフィンフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、フィルム中に含有させることが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
[マット剤]
本発明のシクロオレフィンフィルムには、フィルムの製膜時に、フィルム表面に凹凸を付与し、すべり性を確保し、安定な巻取り形状を達成するためにマット剤を含有することが好ましい。
また、作製されたフィルムがハンドリングされる際に、傷が付いたり、搬送性が悪化することを防止するためにも、当該マット剤は機能することができる。
マット剤としては、無機化合物の微粒子や樹脂の微粒子が挙げられる。無機化合物の微粒子の例として、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等を挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが、濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。
微粒子の一次粒子の平均粒径は、5〜400nmの範囲内が好ましく、さらに好ましいのは10〜300nmの範囲内である。これらは主に粒径0.05〜0.3μmの範囲内の二次凝集体として含有されていてもよく、平均粒径80〜400nmの範囲内の粒子であれば凝集せずに一次粒子として含まれていることも好ましい。
フィルム中のこれらの微粒子の含有量は、0.01〜1質量%の範囲内であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量%の範囲内であることが好ましい。
まあ、共流延法による多層構成の場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
樹脂の微粒子の例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR812が、基材フィルムのヘイズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。
本発明に係る光学フィルムにおいては、少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0の範囲内であることが好ましい。
[位相差上昇剤]
本願でいう位相差上昇剤とは、シクロオレフィン系樹脂100質量部に対して当該化合物を3質量部含有した光学フィルムの厚さ方向のリターデーション値Rt(光波長590nm測定)が、未添加の光学フィルムと比べて1.1倍以上の値を示す機能を有する化合物をいう。
本発明に係る位相差上昇剤は、特に制限されるものではなく、例えば従来知られている、特開2006−113239号公報段落〔0143〕〜〔0179〕に記載の芳香族環を有する円盤状化合物(1,3,5−トリアジン系化合物等)、特開2006−113239号公報段落〔0106〕〜〔0112〕記載の棒状化合物、特開2012−214682号公報段落〔0118〕〜〔0133〕記載のピリミジン系化合物等を用いることができる。
本発明に用いられる位相差上昇剤に求められる特性としては、シクロオレフィン系樹脂との相溶性に優れること、フィルム薄膜化したときに位相差発現性に優れること、また耐析出性に優れること、高湿度下において水分の出入りに伴うリターデーション値変動耐性に優れることなどが挙げられるが、このような観点から位相差上昇剤を選択することが好ましい。
位相差上昇剤の光学フィルム中への添加量は、シクロオレフィン系樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲内であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。
〔3.3〕シクロオレフィンフィルムの物性
本発明に係るシクロオレフィンフィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、5〜40μmの範囲であり、最近の薄型化を考慮すると5〜35μmであることがより好ましく、10〜20μmの範囲であることが特に好ましい。
フィルム厚さの調製は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。以上のようにして得られシクロオレフィンフィルムの幅は0.5〜4mの範囲が好ましく、より好ましくは0.6〜3mの範囲、さらに好ましくは0.8〜2.5mである。長さは1ロールあたり100〜10000mの範囲で巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜9000mの範囲であり、さらに好ましくは1000〜8000mの範囲である。
本発明に係るシクロオレフィンフィルムは使用するポリマー構造、添加剤の種類及び添加量、延伸時の残留溶媒量、延伸方向、延伸温度、延伸倍率、乾燥時の残留溶媒量などの工程条件を適宜調節することで所望の光学特性を実現することができる。
本明細書において、Ro、Rtは各々、23℃・55%RHの環境下で光波長590nmにおける面内のリターデーション値及び厚さ方向のリターデーション値を表す。
Roは、AXOMETRICS社製AxoScanにおいて波長590nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rtは、前記Ro、面内の遅相軸(AxoScanにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長590nmの光を入射させて測定したリターデーション値、及び面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したリターデーション値の計三つの方向で測定したリターデーション値を基にAxoScanが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、AxoScanはnx、ny、nzを算出し下記式(i)及び(ii)に基づいてリターデーション値を計算する。
式(i):Ro=(nx−ny)×d(nm)
式(ii):Rt={(nx+ny)/2−nz}×d(nm)
(式中、Roはフィルム内の面内リターデーション値を表し、Rtはフィルム内の厚さ方向のリターデーション値を表す。また、dは、光学フィルムの厚さ(nm)を表す。nxは、フィルムの面内の最大の屈折率を表し、遅相軸方向の屈折率ともいう。nyは、フィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率を表す。nzは、厚さ方向におけるフィルムの屈折率を表す。)
本発明に係るシクロオレフィンフィルムのリターデーション値は特に限定されるものではないが、VA型液晶表示装置用であれば、Roは30〜70nmの範囲であり、Rtが70〜200nmの範囲であると、光学補償フィルムとして好ましい。
また、IPS型液晶表示装置であれば、Roは0〜10nmの範囲であり、Rtは−10〜10nmの範囲であることが、光学補償フィルムとして好ましい。
本発明に係るシクロオレフィンフィルムは、高透明性であることがコントラスト向上や輝度向上の観点で好ましい。23℃・55%RHの環境下で調湿後測定される全光線透過率が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。全光線透過率は、JIS7375:2008「プラスチック−全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に従って測定することができる。
本発明に係るシクロオレフィンフィルムは、25℃・60%RHにおける平衡含水率が3%以下であることが位相差変動やベンディングの観点で好ましく、1%以下であることがより好ましい。平衡含水率を3%以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性や寸法がより変化しにくく好ましい。
平衡含水率は、試料フィルムを23℃・20%RHに調湿された部屋に4時間以上放置した後、23℃・80%RHに調湿された部屋に24時間放置し、サンプルを微量水分計(例えば三菱化学アナリテック(株)製、CA−20型)を用いて、温度150℃で水分を乾燥・気化させた後、カールフィッシャー法により定量する。
〔4〕シクロオレフィンフィルムの製造方法
本発明に係るシクロオレフィンフィルムの製造方法は、溶液流延製膜法又は溶融流延製膜法を採用することができるが、溶液流延製膜法によって製造することが好ましい。
〈溶液流延製膜法〉
本発明に係るシクロオレフィンフィルムは、少なくともシクロオレフィン系樹脂、及び添加剤を有機溶媒を用いてドープを調製する工程(ドープ調製工程)と、前記ドープを支持体上に流延してウェブ(流延膜ともいう。)を形成する工程(流延工程)と、支持体上でウェブから溶媒を蒸発させる工程(溶媒蒸発工程)、ウェブを支持体から剥離する工程(剥離工程)、得られたフィルムを乾燥させる工程(予備乾燥工程)、フィルムを延伸する工程(延伸工程)、延伸後のフィルムを更に乾燥させる工程(本乾燥工程)、得られたシクロオレフィンフィルムを巻取る工程(巻取り工程)によって製造されることが好ましく、かつ延伸工程以降にエキシマ光の照射を行うことが特徴である。
以上の工程を、図を用いて説明する。
図3は、本発明に好ましい溶液流延製膜法のドープ調製工程、流延工程、乾燥工程及び巻取り工程の一例を模式的に示した図である。
分散機によって溶媒と本発明に用いられるシリカ粒子を分散させた微粒子分散液は仕込み釜41から濾過器44を通過しストック釜42にストックされる。一方主ドープであるシクロオレフィン系樹脂は溶媒とともに溶解釜1にて溶解され、適宜ストック釜42に保管されている微粒子分散液が添加されて混合され主ドープを形成する。得られた主ドープは、濾過器3、ストック釜4から濾過器6によって濾過され、合流管20によって添加剤が添加されて、混合機21で混合されて加圧ダイ30に液送される。
一方、添加剤(前記添加剤及びマット剤など)は、溶媒に溶解され、添加剤仕込み釜10から濾過器12を通過してストック釜13にストックされる。その後、濾過器15を通して導管16を経由して合流管20、混合機21によって主ドープと混合される。
加圧ダイ30に液送された主ドープは、金属ベルト状の支持体31上に流延されてウェブ32を形成し、所定の乾燥後剥離位置33で剥離されフィルムを得る。剥離されたウェブ32は、多数の搬送ローラーに通しながら、所定の残留溶媒量になるまで乾燥された後、延伸装置34によって長手方向又は幅手方向に延伸される。延伸後、乾燥装置35によって所定の残留溶媒量になるまで、搬送ローラー36に通しながら乾燥し、巻取り装置37によって、ロール状に巻取られる。
以下、各工程について説明する。
(1)ドープ調製工程
シクロオレフィン系樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で当該シクロオレフィン系樹脂、添加剤、及びマット剤を撹拌しながら溶解しドープを調製する工程、又は当該シクロオレフィン系樹脂溶液に、前記添加剤、及びマット剤を混合して主溶解液であるドープを調製する工程である。
本発明に係るシクロオレフィンフィルムを溶液流延法で製造する場合、ドープを形成するのに有用な有機溶媒は、シクロオレフィン系樹脂、添加剤を同時に溶解するものであることが好ましい。
用いられる有機溶媒として、以下の溶媒が好ましく用いられる。
溶液流延法に用いられる溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン、及びこれらの混合溶媒などの芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、ジエチルエーテル;などが挙げられる。これら溶媒は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶媒が良溶媒と貧溶媒の混合溶媒である場合、当該良溶媒は、例えば、塩素系有機溶媒としては、ジクロロメタン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等が挙げられ、中でもジクロロメタンであることが好ましい。
本発明に用いられる貧溶媒はアルコール系溶媒であることが好ましく、メタノール、エタノール及びブタノールから選択されることが、剥離性を改善し、高速度流延を可能にする観点から好ましい。中でもエタノールが上記観点から好ましい。
本発明では、混合溶媒であれば、前記良溶媒を溶媒全体量に対して55質量%以上を用いることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上用いることである。
また、本発明に係るシクロオレフィンフィルムは、アルコール系溶媒と水とを組み合わせて用いることが、フィルムの強度を上げるために好ましく用いることができる。水は全溶媒量に対して0.1〜1質量%含むことが好ましい。0.1質量%以上であれば、他のアルコール系溶媒やシクロオレフィン系樹脂や化合物Aと相互作用しやすくなるため好ましく、1質量%以内であれば疎水性の強いシクロオレフィン系樹脂のゲル化を抑制し、異物の発生を抑えることができる。
シクロオレフィン系樹脂及び添加剤の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載されている高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、0.8〜4MPaの範囲で行うことが溶解性の観点から好ましい。
ドープ中のシクロオレフィン系樹脂の濃度は、10〜40質量%の範囲であることが好ましい。溶解中又は後のドープに化合物を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
ドープの溶解温度は、特に限定されるものではないが、15〜50℃の範囲内で調製することが好ましい。溶解温度が、15℃以上であれば十分に樹脂や添加剤を溶解できるため、異物の少ないフィルムが得られる。また50℃以下であれば、得られるフィルムの着色を抑制できる観点から好ましい。
ドープの濾過については、好ましくはリーフディスクフィルターを具備する主な濾過器3で、ドープを例えば、90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の10倍〜100倍の濾材で濾過することが好ましい。
本発明において、濾過に使用する濾材は、絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると、濾過材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行わなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。
このため、本発明において、シクロオレフィン系樹脂含有ドープに使用する濾材は、絶対濾過精度0.008mm以下のものが好ましく、0.001〜0.008mmの範囲が、より好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材がさらに好ましい。
濾材の材質には、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
本発明において、濾過の際のドープの流量が、10〜80kg/(h・m2)、好ましくは20〜60kg/(h・m2)であることが好ましい。ここで、濾過の際のドープの流量が、10kg/(h・m2)以上であれば、効率的な生産性となり、濾過の際のドープの流量が、80kg/(h・m2)以内であれば、濾材にかかる圧力が適正となり、濾材を破損させることがなく、好ましい。
濾圧は、3500kPa以下であることが好ましく、3000kPa以下が、より好ましく、2500kPa以下であることがさらに好ましい。なお、濾圧は、濾過流量と濾過面積を適宜選択することで、コントロールできる。
多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。
返材とは、例えば、シクロオレフィンフィルムを細かく粉砕した物で、シクロオレフィンフィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでフィルムの規定値を越えたシクロオレフィンフィルム原反が使用される。
また、ドープ調製に用いられる樹脂の原料としては、あらかじめシクロオレフィン系樹脂及びその他の化合物などをペレット化したものも、好ましく用いることができる。
(2)流延工程
(2.1)ドープの流延
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ30に送液し、無限に移送する無端の金属支持体31、例えば、ステンレスベルト、又は回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mの範囲、好ましくは1.3〜3mの範囲、さらに好ましくは1.5〜2.8mの範囲とすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶媒が沸騰して発泡しない温度以下、さらに好ましくは−30〜0℃の範囲に設定される。温度が高い方がウェブ(流延用金属支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブという。)の乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブの発泡等により平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃の範囲が更に好ましい。又は、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
ダイは、ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して積層してもよい。
(2.2)溶媒蒸発工程
ウェブを流延用金属支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程であり、後述する剥離時の残留溶媒量を制御する工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が、乾燥効率が良く好ましい。また、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを30〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。30〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
面品質、透湿性、剥離性の観点から、30〜180秒以内で当該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
(2.3)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブはフィルムとして次工程に送られる。
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃の範囲であり、さらに好ましくは11〜30℃の範囲である。
本発明では、前記溶媒蒸発工程でウェブ中の溶媒を蒸発するが、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの残留溶媒量は、15〜100質量%の範囲内とすることが好ましい。残留溶媒量の制御は、前記溶媒蒸発工程における乾燥温度及び乾燥時間で行うことが好ましい。
前記残留溶媒量が15質量%以上であると、支持体上での乾燥過程において、マット剤が厚さ方向に分布を持たずフィルム中に均一に分散した状態になるため、好ましい。
また、前記残留溶媒量が100質量%以内であれば、フィルムが自己支持性を有し、フィルムの剥離不良を回避でき、ウェブの機械的強度も保持できることから剥離時の平面性が向上し、剥離張力によるツレや縦スジの発生を抑制できる。
ウェブ又はフィルムの残留溶媒量は下記式(Z)で定義される。
式(Z)
残留溶媒量(%)=(ウェブ又はフィルムの加熱処理前質量−ウェブ又はフィルムの加熱処理後質量)/(ウェブ又はフィルムの加熱処理後質量)×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
金属支持体からウェブを剥離してフィルムとする際の剥離張力は、通常、196〜245N/mの範囲内であるが、剥離の際に皺が入りやすい場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましい。
本発明においては、当該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃の範囲内とするのが好ましく、10〜40℃の範囲内がより好ましく、15〜30℃の範囲内とするのが最も好ましい。
(3)乾燥及び延伸工程
乾燥工程は予備乾燥工程、本乾燥工程に分けて行うこともできる。
(3.1)予備乾燥工程
金属支持体からウェブ剥離して得られたフィルムは、予備乾燥させる。フィルムの予備乾燥は、フィルムを、上下に配置した多数のローラーにより搬送しながら乾燥させてもよいし、テンター乾燥機のようにフィルムの両端部をクリップで固定して搬送しながら乾燥させてもよい。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。
ウェブの予備乾燥工程における乾燥温度は好ましくはフィルムのガラス転移点−5℃以下であって、30℃以上の温度で1分以上30分以下の熱処理を行うことが効果的である。乾燥温度は40〜150℃の範囲内、更に好ましくは50〜100℃の範囲内で乾燥が行われる。
(3.2)延伸工程
本発明に係るシクロオレフィンフィルムは、延伸装置34にて残留溶媒量下で延伸処理を行うことで、フィルム中の樹脂にシリカ粒子を均一に分散させたり、フィルムの平面性を向上したり、フィルム内の分子の配向を制御することで、所望の位相差値Ro及びRtを得ることができる。
本発明に係るシクロオレフィンフィルムの製造方法では、当該フィルムを延伸する工程において、延伸開始時の残留溶媒量を1質量%以上15質量%未満とすることが好ましい。より好ましくは2〜10質量%の範囲内であり、前記残留溶媒量の範囲であると、延伸時に不均一な応力がフィルムにかかることを回避することができる。
本発明に係るシクロオレフィンフィルムは、長手方向(MD方向、流延方向ともいう。)及び/又は幅手方向(TD方向ともいう。)、及び/又は斜め方向に延伸することが好ましく、少なくとも延伸装置によって、幅手方向に延伸して製造することが好ましい。
延伸操作は多段階に分割して実施してもよい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。
すなわち、例えば、次のような延伸ステップも可能である:
・長手方向に延伸→幅手方向に延伸→長手方向に延伸→長手方向に延伸
・幅手方向に延伸→幅手方向に延伸→長手方向に延伸→長手方向に延伸
・幅手方向に延伸→斜め方向に延伸
また、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。
本発明に係るシクロオレフィンフィルムは、延伸後の膜厚が所望の範囲になるように長手方向及び/又は幅手方向に、好ましくは幅手方向に、フィルムのガラス転移温度をTgとしたときに、(Tg+5)〜(Tg+50)℃の温度範囲で延伸することが好ましい。上記温度範囲で延伸すると、位相差の調整がしやすく、また延伸応力を低下できるのでヘイズが低くなる。また、破断の発生を抑制し、平面性、フィルム自身の着色性に優れたシクロオレフィンフィルムが得られる。延伸温度は、(Tg+10)〜(Tg+40)℃の範囲で行うことが好ましい。
なお、ここでいうガラス転移温度Tgとは、市販の示差走査熱量測定器を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。具体的なフィルムのガラス転移温度Tgの測定方法は、JIS
K7121(1987)に従って、セイコーインスツル(株)製の示差走査熱量計DSC220を用いて測定する。
本発明に係るシクロオレフィンフィルムは、幅手方向及び長手方向の延伸倍率の総和で30%以上の倍率で延伸されていることが好ましい。より好ましくは50%以上である。
ここで「総和」とは、例えば幅手方向及び長手方向の延伸倍率の和といい、例えば、幅手方向に30%及び長手方向に10%であれば、総和は40%になる。
フィルムの長手方向及び幅手方向においては、それぞれ1〜50%の範囲内の延伸率で延伸することが好ましい。特に当該延伸率の範囲は、元幅に対して10〜50%の範囲内で延伸することがさらに好ましい。本発明でいう延伸率とは、延伸前のフィルムの長手又は幅手の長さに対して、延伸後のフィルムの長手又は幅手の長さの比率(%)をいう。
長手方向に延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、又は縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。
幅手方向に延伸するには、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程又は一部の工程を幅方向にクリップ又はピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でもクリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が好ましく用いられる。
幅手方向への延伸に際し、フィルム幅手方向に100〜500%/minの延伸速度で延伸することが、好ましい。
延伸速度は、特に250%/min以上であれば、平面性が向上し、またフィルムを高速で処理することができるため、生産適性の観点で好ましく、500%/min以内であれば、フィルムが破断することなく処理することができ、好ましい。
好ましい延伸速度は、300〜400%/minの範囲内であり、低倍率の延伸時に有効である。延伸速度は下記式(D)によって定義されるものである。
式(D)
延伸速度(%/min)=[(d1/d2)−1]×100(%)/t
式(D)において、d1は延伸後の本発明に係るシクロオレフィンフィルムの前記延伸方向の幅寸法であり、d2は延伸前のシクロオレフィンフィルムの前記延伸方向の幅寸法であり、tは延伸に要する時間(min)である。
本発明に係るシクロオレフィンフィルムは、延伸することにより前述の所望の位相差値を付与することができる。
延伸工程では、通常、延伸した後、保持・緩和が行われる。すなわち、本工程は、フィルムを延伸する延伸段階、フィルムを延伸状態で保持する保持段階及びフィルムを延伸した方向に緩和する緩和段階をこれらの順序で行うことが好ましい。保持段階では、延伸段階で達成された延伸率での延伸を、延伸段階における延伸温度で保持する。緩和段階では、延伸段階における延伸を保持段階で保持した後、延伸のための張力を解除することによって、延伸を緩和する。緩和段階は、延伸段階における延伸温度以下で行えば良い。
(3.3)乾燥工程
乾燥工程では、乾燥装置35によって延伸後のフィルムを加熱して乾燥させる。
フィルム中に含有する有機溶媒量を調整するのに、乾燥工程の条件を適宜調整して行うことが好ましい。
熱風等によりフィルムを加熱する場合、使用済みの熱風(溶媒を含んだエアーや濡れ込みエアー)を排気できるノズルを設置して、使用済み熱風の混入を防ぐ手段も好ましく用いられる。熱風温度は、40〜350℃の範囲がより好ましい。また、乾燥時間は5秒〜60分程度が好ましく、10秒〜30分がより好ましい。
また、加熱乾燥手段は熱風に制限されず、例えば、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等を用いることができる。簡便さの観点からは、千鳥状に配置した搬送ローラー36でフィルムを搬送しながら、熱風等で乾燥を行うことが好ましい。乾燥温度は残留溶媒量、搬送における伸縮率等を考慮して、40〜350℃の範囲がより好ましい。
乾燥工程においては、残留溶媒量が一般的には0.5質量%以下になるまで、フィルムを乾燥することが好ましい。
(4)巻取り工程
(4.1)ナーリング加工
所定の熱処理又は冷却処理の後、巻取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。更に、幅手両端部にはナーリング加工をすることが好ましい。
ナーリング加工は、加熱されたエンボスローラーをフィルム幅手端部に押し当てることにより形成することができる。エンボスローラーには細かな凹凸が形成されており、これを押し当てることでフィルムに凹凸を形成し、端部を嵩高くすることができる。
本発明に係るシクロオレフィンフィルムの幅手両端部のナーリングの高さは4〜20μmの範囲、幅5〜20mmの範囲が好ましい。
(4.2)
良好な巻姿を得る別の手段として、巻き取る前に、フィルム同士のブロッキングを防止する目的で、マスキングフィルム(プロテクトフィルムともいう。)を重ねて同時に巻き取ってもよいし、延伸フィルムの少なくとも一方、好ましくは両方の端にテープ等を張り合わせながら巻き取ってもよい。マスキングフィルムとしては、上記フィルムを保護することができるものであれば特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが挙げられる。
また、本発明においては、上記のナーリング加工は、フィルムの製膜工程において乾燥終了後、巻取りの前に設けることが好ましい。
(4.3)巻取り工程
フィルム中の残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻取る工程であり、残留溶媒量を好ましくは1質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
巻取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使い分ければよい。
〈溶融流延製膜法〉
本発明に係るシクロオレフィンフィルムは、溶融流延製膜法(以下、溶融押出法ともいう。)によっても製造することができ、その一例を以下に示す。
溶融押出法を用いてシクロオレフィンフィルムを製造する方法は、ガラス転移温度以上の温度に加熱溶融したシクロオレフィン系樹脂をダイスからフィルム状に押し出してシクロオレフィンフィルムを形成する工程(A)と、前記シクロオレフィンフィルムを、製膜用支持体で受けて、フィルムを冷却する工程(B)を有する。ガラス転移温度以上の温度に加熱しているシクロオレフィン系樹脂は溶融しているが、そのシクロオレフィン系樹脂は、冷却されてガラス転移温度未満になり、硬化する。そのため、ガラス転移温度以上の柔らかいシクロオレフィン系樹脂をフィルム状に製膜し、その後、冷却して硬化させることにより、所望のシクロオレフィンフィルムを得ることができる。
シクロオレフィンフィルムの製造方法に係る、前記工程(A)及び(B)のうちの少なくとも工程(B)においては、樹脂フィルムの中央領域と第一固定領域との間に第一伸張領域を設け、かつ樹脂フィルムの中央領域と第二伸張領域との間に第二伸張領域を設けることが好ましい。したがって、工程(B)においてシクロオレフィンフィルムは、その幅方向において、第一固定領域、第一伸張領域、中央領域、第二伸張領域及び第二固定領域をこの順に備える。また、前記の第一伸張領域及び第二伸張領域は、同一張力を与えられた場合、第一伸張領域及び第二伸張領域の伸び量が、中央領域の伸び量より大きくなるように設けられている。
このような構成を有することにより、シクロオレフィンフィルムの製造方法は、その中央領域においてゼロに近い厚さ方向の位相差値Rtを有するシクロオレフィンフィルムを製造できる。
次いで、図を交えて、溶融流延法によるシクロオレフィンフィルムの製造方法について説明する。
図4は、本発明に適用可能な溶融流延法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程の一例を模式的に示した図である。
図4に示すように、シクロオレフィンフィルム(410)の製造装置(400)は、ダイス(510)と、支持体としてのキャストロール(520)と、密着装置としての静電ピニング装置(531及び532)と、剥離装置としての剥離ロール(540)と、トリミング装置(550)と、巻取り装置としての巻取り軸(560)とを備える。
ダイス(510)は、図示しない樹脂供給装置からガラス転移温度以上の温度を有する単一の樹脂を、矢印A110で示すように供給されうるように設けられている。また、ダイス(510)は、このように供給された樹脂を、リップ(516)を通じてフィルム状に押し出して、溶融状態の樹脂からなる樹脂フィルム(420)を得られるように設けられている。
図4に示すように、キャストロール(520)は、ダイス(510)から押し出されたシクロオレフィンフィルム(420)を受けうる支持面としての外周面(521)を有するロールである。このキャストロール(520)は、ダイス(510)に対向する位置に設けられている。
また、キャストロール(520)は、図示しない駆動装置から与えられる駆動力によって、矢印A120で示すように回転しうるように設けられている。そのため、キャストロール(520)は、外周面(521)で受けたシクロオレフィンフィルム(420)を、当該キャストロール(520)の回転によって搬送しうる構成を有している。
さらに、キャストロール(520)は、温度調整が可能に設けられている。そのため、キャストロール(520)は、外周面(521)で受けたシクロオレフィンフィルム(420)を、所望の温度に冷却しうる構成を有している。キャストロール(520)の温度は、シクロオレフィンフィルム(420)がキャストロール(520)の周面(521)で受けられてから剥離ロール(540)によって剥離されるまでの期間において、シクロオレフィンフィルム(420)に含まれる樹脂のガラス転移温度未満にシクロオレフィンフィルム(420)を冷却できるように設定されている。
剥離ロール(540)は、キャストロール(520)と平行に、矢印A140で示すように回転しうるように設けられている。また、この剥離ロール(540)は、キャストロール(520)によってシクロオレフィンフィルム(420)に含まれる樹脂のガラス転移温度未満まで冷却されたシクロオレフィンフィルム(420)を、キャストロール(520)の外周面(521)から剥離できるように設けられている。さらに、剥離ロール(540)は、剥離したシクロオレフィンフィルム(420)を、トリミング装置(550)に送り出しうるように設けられている。
トリミング装置(550)は、剥離ロール(540)によって剥離されたシクロオレフィンフィルム(420)から、少なくとも第一固定領域及び第二固定領域を切り除くための装置である。
このトリミング装置(550)は、外周に刃を備えて対に設けられたトリミングナイフ(551及び552)を備える。トリミング装置(550)は、シクロオレフィンフィルム(420)から端部フィルム(428)を切り除いて残った中央領域を含むシクロオレフィンフィルム(410)を、巻取り軸(560)に送り出しうるように設けられている。
巻取り軸(560)は、図示しない駆動装置によって、矢印A160で示すように回転しうるように設けられている。そのため、巻取り装置(560)は、トリミング装置(550)から送られてきたシクロオレフィンフィルム(410)を巻き取って、フィルムロール(430)を得られる構成を有する。
以上のようにして、光学的な等方性を有するシクロオレフィンフィルム(410)が得られる。このシクロオレフィンフィルム(410)は、ゼロに近い厚さ方向の位相差値Rtを有する。また、シクロオレフィンフィルム(410)の面内方向の位相差値Roは、通常、ゼロに近い値となる。
溶融流延法を用いたシクロオレフィンフィルムの製造方法の詳細に関しては、例えば、特開2015−187629号公報に記載されている内容を参照することができる。
〔5〕液晶表示装置
上記本発明に係るシクロオレフィンフィルムを貼合した本発明に係る偏光板を液晶表示装置に用いることによって、種々の視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することができる。
本発明の偏光板は、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種駆動方式の液晶表示装置に用いることができる。好ましくはIPS型液晶表示装置である。
液晶表示装置には、通常視認側の偏光板とバックライト側の偏光板の2枚の偏光板が用いられるが、本発明の偏光板を両方の偏光板として用いることも好ましく、片側の偏光板として用いることも好ましい。
IPS型液晶表示装置における上記偏光板の貼合の向きは、特開2005−234431号公報を参照して行うことができるが、液晶表示装置の種類(テレビジョン、スマートフォン、タブレット等)によって最適な方向で貼合される。
本発明に用いる液晶セルは、液晶層と、前記液晶層を挟持する一対の基板とを含み、前記一対の基板の厚さが0.075〜0.125mmの範囲内のガラス基板であることが、液晶表示装置の薄型化、軽量化の観点から好ましい。
図5は、上記説明した本発明に係る偏光板101A及び101Bを液晶セル101Cの両面に配置した液晶表示装置100の構成の一例を示す概略断面図である。
図5において、液晶層107の両面を、透明基材としてガラス基板108A及び108Bで挟持して液晶セル101Cを構成し、それぞれのガラス基板108A及び108Bのそれぞれの表面に、粘着層106を介して、図5に示す構成の偏光板101A及び101Bが配置されて、液晶表示装置100を構成している。
当該偏光板101A及び101Bにおいて、本発明では、少なくとも他の偏光板保護フィルムが、102の位置に、シクロオレフィンフィルムが105の位置に貼合されている。本発明に係るシクロオレフィンフィルムはそれぞれ紫外線硬化型接着剤103A、103Bによって偏光子104に貼合されている。特に、液晶モードはIPS型液晶表示装置であることが好ましい。
液晶セル101Cは、液晶物質の両面を配向膜、透明電極及びガラス基板(108A及び108B)が配置されて構成している。
液晶セル101Cに用いることのできるガラス基板108A及び108Bを構成する材質としては、例えば、ソーダライムガラス、ケイ酸塩ガラスなどが挙げられ、ケイ酸塩ガラスであることが好ましく、具体的には、シリカガラス又はホウケイ酸ガラスであることがより好ましい。
ガラス基板を構成するガラスは、アルカリ成分を実質的に含有していない無アルカリガラスであること、具体的には、アルカリ成分の含有量が1000ppm以下であるガラスであることが好ましい。ガラス基板中のアルカリ成分の含有量は、500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。アルカリ成分を含有するガラス基材は、フィルム表面で陽イオンの置換が発生し、ソーダ吹きの現象が生じやすい。それにより、フィルム表層の密度が低下しやすく、ガラス基板が破損しやすいからである。
液晶表示装置を構成する液晶セルのガラス基板108A及び108Bの厚さは、0.075〜0.30mmの範囲内であることが好ましい。このような厚さとすることは、液晶表示装置の薄型化形成に寄与することができる点で好ましい。
ガラス基板は、公知の方法、例えばフロート法、ダウンドロー法、オーバーフローダウンドロー法などにより成形されうる。なかでも、成形時にガラス基材の表面が成形部材と接触せず、得られるガラス基材の表面に傷がつきにくいことなどから、オーバーフローダウンドロー法が好ましい。
また、このようなガラス基板は、市販品としても入手することができ、例えば、日本電気硝子社製のガラス基材(厚さ100〜200μm)等を挙げることができる。
また、図5に示すような偏光板101A、101Bと、液晶セル101Cを構成するガラス基板108A、108Bとは、粘着層106を介して接着されている。
粘着層としては、両面テープ、例えば、リンテック社製の厚さ25μmの両面テープ(基材レステープ MO−3005C)等や、又は前記活性光線硬化型樹脂層の形成に用いる組成物を適用することができる。
本発明の偏光板が用いられた液晶表示装置は、本発明の効果以外にも、層間の密着性に優れ、退色耐性、表示画像のエッグムラ耐性等に優れる利点を有する。
偏光板の位相差フィルム側の表面と、液晶セルの少なくとも一方の表面との貼合は、公知の手法により行われる。場合によっては、接着層を介して貼合されてもよい。
本発明の偏光板を用いることで、特に画面が30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、パネルベンドが抑制され、表示ムラ、正面コントラストなど視認性に優れ、薄膜で軽量化された液晶表示装置を得ることができる。
また、スマートフォンやタブレット等の超小型液晶表示装置にも好適に使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
実施例1
<シクロオレフィンフィルム1の作製>
市販品である商品名ゼオノア(ZF14:日本ゼオン(株)製)をテンターで幅手方向に2.5倍延伸し、厚さ40μmのシクロオレフィンフィルム1を作製した。
<シクロオレフィンフィルム2の作製>
市販品である商品名ゼオノア(ZF16:日本ゼオン(株)製)をテンターで幅手方向に2.5倍延伸し、厚さ40μmのシクロオレフィンフィルム2を作製した。
<シクロオレフィンフィルム3の作製>
(ドープの調製)
ジクロロメタン及びエタノールの入った加圧溶解タンクに、シクロオレフィン系樹脂:JSR(株)製ARTON G7810を撹拌しながら投入し、25℃の溶解温度で3時間撹拌しながら、完全に溶解した。その後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製した。ドープの組成を下記に示す。
シクロオレフィン系樹脂1(G7810) 100質量%
ジクロロメタン 420質量%
エタノール 40質量%
上記調製したドープを、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%未満になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力160N/mでステンレスバンド支持体上からドープ膜(ウェブ)を剥離した。
次いで、剥離したウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、120℃、140℃の乾燥ゾーンを多数のローラーで搬送させながら乾燥を終了させ、1.3m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ2.5μmのナーリング加工を施した後、コアに巻取り、シクロオレフィンフィルム3を作製した。シクロオレフィンフィルム3の膜厚は5μmとした。
<シクロオレフィンフィルム4〜11の作製>
シクロオレフィンフィルム3の作製において、ドープの流延量の調整及び表1に記載の延伸倍率(MD方向及びTD方向)によって延伸し、膜厚の異なるシクロオレフィンフィルム4〜11を作製した。なお、表中0%とは未延伸をいう。
延伸は、剥離したウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンター延伸機を用いて、160℃の温度で表1に記載の倍率で、元幅に対して長手方向(MD方向)及び幅手方向(TD方向)に延伸をした。このとき、テンターによる延伸を開始したときの残留溶媒量は、3〜15質量%であった。
<シクロオレフィンフィルム12の作製>
(微粒子分散液の調製)
シリカ微粒子(アエロジルR812 日本アエロジル(株)製) 11質量%
ジクロロメタン 89質量%
以上をディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリン分散機を用いて分散を行い、微粒子分散液を調製した。
(微粒子添加液1の調製)
溶解タンクにジクロロメタンを入れ、ジクロロメタンを十分に撹拌しながら上記調製した微粒子分散液を50質量%となるようにゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒子径が、所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過して、微粒子添加液1を調製した。
(ドープの調製)
ジクロロメタン及びエタノールの入った加圧溶解タンクに、シクロオレフィン系樹脂:JSR(株)製ARTON G7810及び添加剤を撹拌しながら投入した。次いで、微粒子添加液を下記記載の添加量になるように添加した後、25℃の溶解温度で3時間撹拌しながら、完全に溶解した。その後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製した。ドープの組成を下記に示す。
シクロオレフィン系樹脂1(G7810) 100質量%
ジクロロメタン 420質量%
エタノール 40質量%
微粒子添加液 フィルム中で0.50質量%になる量を添加
上記調製したドープを、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%未満になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力160N/mでステンレスバンド支持体上からドープ膜(ウェブ)を剥離した。
その後、120℃、140℃の乾燥ゾーンを多数のローラーで搬送させながら乾燥を終了させ、1.3m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ2.5μmのナーリング加工を施した後、コアに巻取り、シクロオレフィンフィルム12を作製した。シクロオレフィンフィルムの膜厚は5μmとした。
<シクロオレフィンフィルム13〜18の作製>
シクロオレフィンフィルム12の作製において、ドープの流延量の調整及び表1に記載の延伸倍率(MD方向及びTD方向)によって延伸し、膜厚の異なるシクロオレフィンフィルム13〜18を作製した。
延伸は、剥離したウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンター延伸機を用いて、160℃の温度で表1に記載の倍率で、元幅に対して長手方向(MD方向)及び幅手方向(TD方向)に延伸をした。このとき、テンターによる延伸を開始したときの残留溶媒量は、3〜15質量%であった。
<シクロオレフィンフィルム19及び20の作製>
シクロオレフィンフィルム12の作製において、ドープを下記ドープにし、表1に記載の膜厚及び延伸倍率にした以外は同様にして、シクロオレフィンフィルム19及び20を作製した。
(ドープの調製)
ジクロロメタン及びエタノールの入った加圧溶解タンクに、シクロオレフィン系樹脂:JSR(株)製ARTON G7810及び添加剤を撹拌しながら投入した。次いで、微粒子添加液を下記記載の添加量になるように添加した後、25℃の溶解温度で3時間撹拌しながら、完全に溶解した。その後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製した。ドープの組成を下記に示す。
シクロオレフィン系樹脂1(G7810) 100質量%
ジクロロメタン 420質量%
エタノール 40質量%
下記ポリエステル1 11質量%
微粒子添加液 フィルム中で0.50質量%になる量を添加
上記調製したドープを、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%未満になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力160N/mでステンレスバンド支持体上からドープ膜(ウェブ)を剥離した。
その後、120℃、140℃の乾燥ゾーンを多数のローラーで搬送させながら乾燥を終了させ、1.3m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ2.5μmのナーリング加工を施した後、コアに巻取り、シクロオレフィンフィルム19及び20を作製した。
〈ポリエステル1〉
エチレングリコール310g、テレフタル酸415g、アジピン酸365g、酢酸300g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.21gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応のエチレングリコールを減圧留去することにより、ポリエステル1を得た。酸価0.10、数平均分子量1000であった。
<シクロオレフィンフィルム21及び22の作製>
シクロオレフィンフィルム12の作製において、ドープを下記ドープにし、表1に記載の膜厚及び延伸倍率にした以外は同様にして、シクロオレフィンフィルム21及び22を作製した。
(ドープの調製)
ジクロロメタン及びエタノールの入った加圧溶解タンクに、シクロオレフィン系樹脂:JSR(株)製ARTON G7810及び添加剤を撹拌しながら投入した。次いで、微粒子添加液を下記記載の添加量になるように添加した後、25℃の溶解温度で3時間撹拌しながら、完全に溶解した。その後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製した。ドープの組成を下記に示す。
シクロオレフィン系樹脂1(G7810) 100質量%
ジクロロメタン 420質量%
エタノール 40質量%
ポリエステル1 11質量%
紫外線吸収剤1(TINUVIN928:BASFジャパン(株)製)
4質量%
微粒子添加液 フィルム中で0.50質量%になる量を添加
上記調製したドープを、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%未満になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力160N/mでステンレスバンド支持体上からドープ膜(ウェブ)を剥離した。
その後、120℃、140℃の乾燥ゾーンを多数のローラーで搬送させながら乾燥を終了させ、1.3m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ2.5μmのナーリング加工を施した後、コアに巻取り、シクロオレフィンフィルム21及び22を作製した。
以上作製したシクロオレフィンフィルムの内容を下記表1に示す。
<エキシマ光の照射>
上記作製したシクロオレフィンフィルム1〜22に対して、表2、表3及び表4記載のエキシマ光の照射を、図1の装置を用いて行った。加えて、図1の装置のチャンバー内の酸素濃度及び雰囲気中の水分量(窒素ガス中の水分量)を表2に記載のように変化させた。
〈照射条件1〉
エキシマ照射装置1(MECL−M−1−200 波長:172nm、ランプ封入ガス:Xe (株)エム・ディ・コム製)
(処理条件)
エキシマ光強度:130mW/cm2
試料と光源との距離:2mm
酸素濃度:0.1%
〈照射条件2〉
エキシマ照射装置2(MECL−M−1−200-222 波長:222nm、ランプ封入ガス:KrCl (株)エム・ディ・コム製)
(処理条件)
エキシマ光強度:60mW/cm2
試料と光源との距離:20mm
酸素濃度:20%
なお、エキシマ光照射フィルム1−4は、低圧水銀灯を用い、積算光量1500mJ/cm2に設定した。
<偏光板の作製>
1)偏光子の作製
ポリビニルアルコールフィルムの厚さ60μmの長尺ポリビニルアルコールフィルムを、ガイドロールを介して連続搬送しつつ、ヨウ素とヨウ化カリウム配合の染色浴(30℃)に浸漬して染色処理と2.5倍の延伸処理を施した後、ホウ酸とヨウ化カリウムを添加した酸性浴(60℃)中で、トータルとして5倍となる延伸処理と架橋処理を施し、得られた厚さ12μmのヨウ素−PVA系偏光子を、乾燥機中で50℃、30分間乾燥させて水分率4.9%の偏光子を得た。
2)水系接着剤1の調製及び貼合操作(表中、水糊と記載)
次の各成分を混合し、水系接着剤1を調製した。
純水 100質量部
ポリビニルアルコール系樹脂(日本合成化学工業(株)製 商品名「ゴーセファイマーZ200」] 3質量部
上記エキシマ光を照射したシクロオレフィンフィルムを、さらに表面処理としてコロナ出力強度2.0kWでコロナ放電処理を施した後、エキシマ光の照射面に上記水系接着剤1をワイヤーバー(#0)にて塗工し、偏光子の片面に貼合した。その後、直ちに80℃に設定した熱風循環式乾燥機で5分間乾燥して偏光板を作製した。
3)紫外線硬化型接着剤組成物の調製及び貼合操作(表中、UV硬化型接着剤と記載)
(紫外線硬化型接着剤組成物の調製)
ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA;興人製) 38質量部
トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA;東亞合成製、製品名「アロニックスM−220」) 23質量部
アクリロイルモルホリン(ACMO;興人製) 39質量部
を20℃で1時間半撹拌した。
続いて、
光重合開始剤:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(BASF製、製品名「イルガキュア907」) 3質量部
2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬製、製品名「DETX−S」)
1.5質量部
を添加して、紫外線硬化型接着剤組成物を調製した。
(偏光子と保護フィルムの貼合)
上記エキシマ光を照射したシクロオレフィンフィルムを、さらに表面処理として上記と同様なコロナ放電処理を施した後、エキシマ光の照射面に、ワイヤーバー(#0)を用いて、上記の紫外線硬化型接着剤組成物を塗布し、ロール貼合機を用いて、23℃の温度条件下で、偏光子の延伸方向とシクロオレフィンフィルムの長手方向とが平行となるように貼り合わせた。その後、コンベア式UV照射装置(ランプはフュージョンUVシステムズ社製のDバルブ使用)を用いて、積算光量750mJ/cm2になるように紫外線を照射して、接着剤組成物を硬化させ、偏光子の片面にシクロオレフィンフィルムが貼合積層された偏光板を得た。
≪評価≫
〈剥離性試験1〉
剥離性試験は、上記偏光板を23℃・55%RHの環境下で24時間静置した後、下記手順にて剥離試験を行い、ランク分けした。
(剥離試験法)
25mm幅の偏光板サンプルについて、23℃・55%RHの環境下で、90°ピール試験(JIS Z0237:2009に準拠)を、株式会社イマダ製90°剥離試験治具(P90‐200N)を用いて行った。
◎:界面剥離せず、基材部分が破壊
○:5N以上の力で界面剥離
△:1N以上〜5N未満の力で界面剥離
×:1N未満の力で界面剥離
〈剥離性試験2:耐久試験後剥離性〉
〈剥離性試験2〉
上記紫外線硬化型接着剤組成物を用いて接着下偏光板試料を用いて、当該偏光板を60℃・90%RHの環境下で1000時間、恒温槽の中に静置した後、剥離性試験1と同様に、23℃・55%RHの環境下で、90°ピール試験行った。
結果を、表2、表3及び表4に記載する。
表2、表3及び表4の結果から、本発明に係るエキシマ光の照射を行ったシクロオレフィンフィルムは、水糊及び紫外線硬化性接着剤を用いて偏光子と貼合しても、耐剥離性(密着性)に優れていることが分かる。
また、本発明に係るエキシマ光の照射を行ったシクロオレフィンフィルムは、耐久剥離性にも優れていることが分かる。
実施例2
実施例1で作製した偏光板4−1、4−2、6−1、6−2、8−1、8−2、9−1、9−2、10−1、10−2、13−1、13−2、15−1、15−2、16−1、16−2の水糊系接着剤及び紫外線硬化型接着剤を用いて偏光子と貼合した偏光板を用いて、偏光子のシクロオレフィンフィルムとは反対側の面に、市販のセルロースエステルフィルムであるコニカミノルタ製KC2UAをケン化処理後、水糊系接着剤にて貼合して、表5に記載の偏光板51〜66を作製した。
作製した偏光板を用いて下記手順にてカール評価を行い、結果を表5に示した。
(偏光板カール耐性)
〈偏光板カール耐性の評価方法〉
偏光板を幅手方向35mm、長手方向1mmに切り取ってカール測定用サンプルを作製した。これを25℃、55%RH雰囲気下で3日間放置した後、カール度の測定を行った。カール度は曲率半径の逆数を表すが、具体的にはJIS−K7619−1988のA法に準じて測定した。カール度に対する評価は以下のとおりである。
◎:0%以上3%未満
○:3%以上10%未満
△:10%以上30%未満
×:30%以上100%未満
表5の結果から、シクロオレフィンフィルムは、幅手方向及び長手方向の延伸倍率の総和で30%以上の倍率で延伸された場合に、偏光板カール耐性が特に優れた結果を示すことが分かった。