JP5628491B2 - 樹脂表面改質方法および表面改質樹脂基材 - Google Patents

樹脂表面改質方法および表面改質樹脂基材 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂基材表面に、他の層を介在させることなく、密着性が良好で耐久性に優れる、極めて薄い厚みの改質層を形成する樹脂表面改質方法、及び表面改質樹脂基材に関する。
従来、樹脂基材表面に撥水撥油性を持たせる手段として、樹脂基材表面に、有機フッ素鎖を有するコーティング剤や、アクリル・エポキシ系のUV硬化樹脂等の塗料を塗布する方法が知られている。しかしながら、この方法は、成膜される撥水撥油性の膜の厚さが数ミクロンと厚くなり、樹脂本来の特性を損ねたり、樹脂構造体の寸法に誤差が生じる等の問題があった。
また、基材表面に薄い厚みの改質層を形成する手段として、(a)シランカップリング剤を基材表面に作用させる方法、(b)樹脂基材表面に、スパッタ法等により金属又は無機酸化物系の膜を成膜して、密着層を形成し、この密着層上にシランカップリング剤を作用させる方法、(c)樹脂基材表面を、酸素プラズマ、UVオゾン等により活性化した後にシランカップリング剤を作用させる方法等が知られている。
しかしながら、上記(a)の方法は、形成される金属酸化物等からなる基材の表面に存在する水酸基とシランカップリング剤との反応により高い密着性を実現するものであるため、表面に水酸基が存在しない樹脂基材を用いる場合には、密着性に優れた改質層が得られないという問題があった。また、(b)の方法は、コストがかかる、光学的性能が低下する、樹脂基材表面と密着層との密着性が劣る等の問題があり、(c)の方法は、基材表面改質効果が持続しない、改質表面を軽く擦っただけで改質効果が大幅に劣化する等の、耐久性の問題があった。
これらの問題を解決する手段として、特許文献1には、樹脂基材上に、特定のパーヒドロポリシラザンをコーティングした後、さらに、フッ素樹脂コーティング剤をコーティングして、撥水、撥油被膜を構成する方法が開示されている。また、特許文献2には、樹脂基材上に、シラノール形成成分を含有した成形用材料を用いて構成層を成形し、その上にシランカップリング剤を塗布して被膜を形成する方法が開示されている。
しかしながら、これらの方法は、基材と改質層(被膜)との間に他の層を介在させるものであるため、形成される被膜がまだなお厚くなり、製造工程も煩雑となる等の問題があった。
特開2006−89859号公報 特開平11−293013号公報
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、樹脂基材上に、他の層を介在させることなく、樹脂基材との密着性が良好で耐久性に優れる、極めて薄い厚みの改質層を形成する樹脂表面改質方法、及び、この方法により得られる表面改質樹脂基材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、樹脂基材表面に、水蒸気を含む窒素雰囲気下で、243nm以下の波長を含んだ紫外線を照射した後、該基材表面に、後述する式(1)で表されるシラン化合物を含む溶液を接触させると、樹脂基材表面に、密着性が良好で耐久性に優れる、極めて薄い厚みの改質層を、簡便かつ効率よく形成できることを見出し、この知見を一般化することにより本発明を完成させるに至った。
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(6)の樹脂表面改質方法が提供される。
(1)水蒸気を含む不活性ガス雰囲気下で、樹脂基材表面に、243nm以下の波長の紫外線を照射した後、前記樹脂基材表面に、式(1)
Figure 0005628491
(Xは、アルコキシル基、イソシアネート基又はハロゲン原子を表し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基又はアリール基を表す。nは1〜4のいずれかの整数を表す。nが2以上のとき、複数のXは同一でも相異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、複数のRは同一でも相異なっていてもよい。)で示されるシラン化合物を用いてなる改質層を形成することを特徴とする樹脂表面改質方法。
(2)式(1)で示されるシラン化合物において、式(1)中の少なくとも一つのRがパーフルオロアルキル鎖又はパーフルオロポリエーテル鎖を含む基であり、nが1〜3のいずれかの整数である(1)の樹脂表面改質方法。
(3)紫外線を照射した樹脂基材表面に、気体状態の前記式(1)で示される化合物を接触させることによって、改質層を形成することを特徴とする(1)又は(2)に記載の樹脂表面改質方法。
(4)紫外線を照射した樹脂基材表面に、前記式(1)で示されるシラン化合物を含む溶液を接触させることによって、改質層を形成することを特徴とする(1)又は(2)に記載の樹脂表面改質方法。
(5)前記水蒸気を含む不活性ガスが、不活性ガスを水中に吹き込むことで得られるものである(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂表面改質方法。
(6)前記樹脂基材が、ポリオレフィン類、ポリカーボネート、及びポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂から形成されたものである(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂表面改質方法。
本発明の第2によれば、下記(7)の表面改質樹脂基材が提供される。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の方法により樹脂基材表面に改質層が形成されてなる表面改質樹脂基材。
本発明の樹脂表面改質方法によれば、さまざまな形状を有する樹脂基材表面に、他の層を介在させることなく、樹脂基材との密着性が良好で耐久性に優れる、極めて薄い厚みの改質層を、簡便且つ効率よく形成することができる。
本発明の表面改質樹脂基材は、本発明の樹脂表面改質方法により得られるものであり、樹脂基材と改質層との密着性及び耐久性に優れている。
水蒸気を含む不活性ガス雰囲気下で紫外線を照射するための装置の概略図である。 摩擦回数(往復)と対n−ヘキサデカン接触角(°)との関係を示すグラフ図である。
以下、本発明を、1)樹脂表面改質方法、及び、2)表面改質樹脂基材に項分けして詳細に説明する。
1)樹脂表面改質方法
本発明の樹脂表面改質方法は、樹脂基材表面に、水蒸気を含む不活性ガス雰囲気下で、243nm以下の波長を含んだ紫外線を照射した後、前記式(1)で示される化合物を用いてなる改質層を形成することを特徴とする。
本発明に用いる樹脂基材としては、特に制限されないが、ポリオレフィン類、ポリカーボネート、及びポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂から形成されたものであることが好ましく、より密着性が良好で耐久性に優れた改質層が得られることから、ポリオレフィン類から形成されたものがより好ましく、中でも環状オレフィンポリマーから形成されたものが特に好ましい。
ポリオレフィン類としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセンポリエチレン等のエチレンの単独重合体又は共重合体;
ポリプロピレン、メタロセンポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン等のα−オレフィン等のα−オレフィンの単独重合体又は共重合体、;
エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ポリブテン−1共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体等のエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体;
ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリp−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物の重合体;
環状オレフィンポリマー;が挙げられる。
また、ポリオレフィン類として、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のα−オレフィンとカルボン酸不飽和アルコールとの共重合体及びその鹸化物;
エチレン−α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体(エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等)、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体(エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等)等のα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸エステル又はα,β−不飽和カルボン酸等との共重合体;
ポリエチレンやポリプロピレン等のα−オレフィン(共)重合体をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性オレフィン樹脂;
エチレンとメタクリル酸との共重合体等にNaイオンやZnイオン等を作用させたアイオノマー樹脂;等のα−オレフィンと極性基含有モノマーとの共重合体;
も挙げられる。
環状オレフィンポリマーは、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有する重合体である。重合体の脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造等が挙げられる。これらの中でも、機械的強度、耐熱性等の観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、シクロアルカン構造が最も好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械的強度、耐熱性、及び成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
環状オレフィンポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
環状オレフィンポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が過度に少ないと透明性及び耐熱性に劣り好ましくない。
なお、環状オレフィンポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択される。
環状オレフィンポリマーの具体例としては、例えば、(i)ノルボルネン系重合体、(ii)単環の環状オレフィンポリマー、(iii)環状共役ジエン重合体、(iv)ビニル脂環式炭化水素重合体等が挙げられる。
(i)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体は、格別な制限はなく、例えば、特開平3−14882号公報や、特開平3−122137号公報等に開示されている公知の重合体であり、具体的には、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーとビニル化合物の付加型共重合体、及びこれらの水素添加物等が挙げられる。
ノルボルネン系モノマーは分子内にノルボルネン環構造を有するモノマーであり、具体的には、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]−デカ−3,7−ジエン、テトラシクロ[7.4.0.110,13.02,7]−トリデカ−2,4,6,11−テトラエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン等が挙げられる。これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ビニル化合物としては、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なものであれば、格別な制限はない。例えば、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン等の炭素数2〜20のエチレン又はα−オレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン;等が挙げられる。これらのビニル系化合物は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(ii)単環の環状オレフィンポリマー
単環の環状オレフィンポリマーとしては、特開昭64−66216号公報等に開示されている、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン単量体の付加重合体及びその水素添加物が挙げられる。
(iii)環状共役ジエン重合体
環状共役ジエン重合体としては、特開平6−136057号公報や特開平7−258318号公報等に開示されている、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン単量体を、1,2−又は1,4−付加重合した重合体及びその水素添加物等が挙げられる。
(iv)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、特開昭51−59989号公報等に開示されている、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素単量体の重合体及びその水素添加物;特開昭63−43910号公報、特開昭64−1706号公報等に開示されている、スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族単量体の重合体の芳香環部分の水素添加物;等が挙げられる。
前記環状オレフィンポリマーの分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ法で測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量で、5,000以上、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000、特に好ましくは25,000〜200,000の範囲であるときに、機械的強度と成形加工性とが高度にバランスし、好適である。
ポリカーボネートとしては、例えば、ビスフェノールAポリカーボネート、分岐ビスフェノールAポリカーボネート、o,o,o’,o’−テトラメチルビスフェノールAポリカーボネート等が挙げられる。
ポリエステルとしては、主鎖にポリエステル構造を有するものであれば特に限定されない。例えば、エチレンテレフタレート単位を主体とし、他のポリエステル単位を含むコポリエステル等が挙げられる。このようなコポリエステルの共重合成分としては、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸及びセバシン酸並びにこれらのアルキルエステル誘導体等のジカルボン酸成分;プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−へキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール成分;等が挙げられる。
本発明に用いる樹脂基材の形状は、特に制限されない。例えば、板状、フィルム状、シート状、柱状、その他の任意の立体形状等が挙げられる。また、その大きさも特に制限されない。
本発明の樹脂表面改質方法においては、まず、前記樹脂基材表面に、水蒸気を含む不活性ガス雰囲気下で、243nm以下の波長を含んだ紫外線を照射する(工程1)。
用いる不活性ガスとしては、基材、水蒸気、243nm以下の波長を含んだ紫外線、及び前記式(1)で表される化合物に対して不活性なガスであれば、特に制限されない。具体的には、アルゴン、ヘリウム等の希ガス;窒素ガス等が挙げられる。
水蒸気を含む不活性ガス雰囲気下とする方法としては、特に限定されないが、例えば、(α)工程1を実施するチャンバー内に、水蒸気と不活性ガスをそれぞれ別々に導入する方法、(β)不活性ガスを水中に吹き込んで得られる水蒸気を含有する不活性ガスを、工程1を実施するチャンバー内に導入する方法、(γ)不活性ガスと水蒸気を混合した後、工程1を実施するチャンバー内に導入する方法、等が挙げられる。これらの中でも、簡便であることから、(β)の方法が好ましい。
(β)の方法において、水中に不活性ガスを吹き込むときの温度は、特に制限されないが、操作性の観点から、通常、−10〜+70℃、好ましくは0〜50℃である。
水蒸気を含む不活性ガス中の水蒸気量は、温度にも依存するが、通常、1重量%以上あれば良好な表面改質効果を示す。より好ましくは1.5〜4.5重量%である。
樹脂基材表面に照射する紫外線は、243nm以下の波長を含んだ紫外線であって、水分子を分解しうるエネルギーを有するものであれば、特に制約されない。例えば、Arエキシマレーザー(126nm)、Krエキシマレーザー(146nm)、Xeエキシマレーザー(172nm)、KrClエキシマレーザー(222nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Krエキシマランプ(126nm)、Xeエキシマランプ(172nm)、KrClエキシマランプ(222nm)、ArFエキシマランプ(193nm)、低圧水銀灯(185nm)等が挙げられる(カッコ内は、各光源の主波長を表す。)。
紫外線の波長の下限は、大気及び水蒸気、不活性ガスへの吸収を考慮しても被照射物に充分な光量が到達する波長として通常150nmである。これらの中でも、扱いが容易でかつ短時間での照射でも密着性が良好で耐久性に優れた改質層が得られることから、波長170〜190nmのランプ光源が好ましく、Xeエキシマランプが特に好ましい。
照射強度は、通常1〜100mW/cmである。
照射時間は、通常、数秒から数十分である。
工程1は、例えば、図1に示す表面改質装置100を使用して実施することができる。
図1に示す装置は、基本的に、水蒸気を含む不活性ガス(以下、「湿潤不活性ガス」ということがある。)を生成させる湿潤不活性ガス生成容器3と、不活性ガス雰囲気下で、樹脂基材13表面に、243nm以下の波長を含んだ紫外線を照射する紫外線照射装置10、及び樹脂基材13を載置し、該基材表面に改質層を形成する作業を行うチャンバー6とからなる。
湿潤不活性ガス生成容器3には、不活性ガスを導入口1から導入する配管2と、生成した湿潤不活性ガスをチャンバー6内に送り込む配管5が取り付けられている。また、チャンバー6内には、樹脂基材13表面に、243nm以下の波長を含んだ紫外線を照射する紫外線照射装置10、樹脂基材13を載置する樹脂基材載置台8、及び排気口7が備えられている。
湿潤不活性ガス生成容器3内には、所定量の水4が充填されている。水の量は、不活性ガスを吹き込むことにより、湿潤不活性ガスを生成させることができる量であればよく、装置の大きさ等に応じて適宜な量を設定することができる。また、用いる水としては、イオン交換水、純水等の不純物の少ないものが好ましい。
紫外線照射装置10は紫外線照射部11及び紫外線照射窓12を備え、紫外線照射部11からは、243nm以下の波長を含む紫外線が紫外線照射窓12を通して、樹脂基材13表面に照射される。
樹脂基材載置台8は、例えば、紫外線を照射する際、紫外線照射部11と樹脂基材載置台8に載置された樹脂基材13の表面との距離を簡便に調整することができるように、上下に伸縮自在な可動台9を備えるものであってもよい。
図1に示す表面改質装置100において、先ず、不活性ガスが、導入口1から配管2を通して、湿潤不活性ガス生成容器3内の水4中に送り込まれ、湿潤不活性ガスが生成する。そして、生成した湿潤不活性ガスは配管5を通してチャンバー6内に送り込まれる。
このとき生成する湿潤不活性ガスは、水蒸気で飽和された状態であるものが好ましい。例えば、25℃での水蒸気飽和量は、1.9重量%である。
チャンバー6内が湿潤不活性ガスで十分に満たされた後、さらに、該湿潤不活性ガスをチャンバー6に送りこみながら、樹脂基材載置台8に載置された樹脂基材13に、紫外線照射部11から紫外線照射窓12を通して243nm以下の波長を含んだ紫外線が照射される。
次に、前記工程1で得られた樹脂基材13の表面に、前記式(1)で示されるシラン化合物(以下、「シラン化合物(1)」ということがある。)を用いてなる層を形成する(工程2)。
前記式(1)において、Xは、アルコキシル基、イソシアネート基又はハロゲン原子を表す。
アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシル基が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
Rは置換基を有していてもよいアルキル基又はアリール基を表す。置換基を有していてもよいアルキル基におけるアルキル基の炭素数は、通常1〜40、好ましくは1〜30である。
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアリール基におけるアリール基の炭素数は、通常6〜20、好ましくは6〜12である。
前記アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、及び9−アントラニル基等が挙げられる。
前記アルキル基又はアリール基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;アミノ基、ベンジルアミノ基等の置換基を有していてもよいアミノ基;ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基等のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチレン基等の置換基を有していてもよいアリール基;グリシジル基;アクリロキシ基、メタクリロキシ基等のエステル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;メルカプト基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基;等が挙げられる。
これらの中でも、Rとしては、本発明の効果がより現れることから、前記の置換基としてフッ素原子を含むものが好ましく、具体的には、少なくともパーフルオロアルキレン鎖又はパーフルオロポリエーテル鎖を含む基が好ましい。
パーフルオロアルキレン鎖又はパーフルオロポリエーテル鎖を含む基を有するシラン化合物(1)を用いることにより、樹脂基材表面上に、優れた撥水・撥油性を有する改質層を形成することができる。
パーフルオロアルキレン鎖としては、例えば、−(CFCF)m−、−(CFCFCF)m−、−(CF(CF)CF)m−、−((CF(CF))p(CF)m)−等が挙げられる。
また、Rがパーフルオロアルキレン鎖を含むものである場合、末端が−CFで終端したものであってもよい。
式中、m、pは、それぞれ独立して、1〜20の整数を表す。
パーフルオロポリエーテル鎖としては、例えば、−(CFCFO)q−、−(CFCFCFO)q−、−(CF(CF)CFO)q−、−((CFCFO)q(CFO)r)−等が挙げられる。式中、q、rは、それぞれ独立して、1〜20の整数を表す。
前記式(1)中、nは1〜4のいずれかの整数を表す。nが2以上のとき、複数のXは同一でも相異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、複数のRは同一でも相異なっていてもよい。
シラン化合物(1)の具体例としては、アリルトリメトキシシラン、3−ブテニルトリメトキシシラン、3―アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−(ビニルベンジル)アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩、アリルトリクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、β−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、δ−メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;
式(1−1):R−R−SiX(式中、Xは前記と同じ意味を表し、Rは、パーフルオロポリエーテル鎖を含有するパーフルオロアルキル基を表し、Rはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基を表す。)で示されるシラン化合物、及び、式(1−2)
Figure 0005628491
(式中、Xは前記と同じ意味を表し、Rは炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を表し、Rはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基を表し、sは1〜5の整数を表す。)で表されるシラン化合物;等が挙げられる。
これらの中でも、シラン化合物(1)としては、前記式(1−1)で表されるシラン化合物、式(1−2)で表されるシラン化合物が好ましく、式(1−1a):R−CHCH−SiX’(式中、Rは前記と同じ意味を表し、X’はアルコキシ基を表す。)で表されるシラン化合物、式(1−2a)
Figure 0005628491
(式中、X’、R、sは前記と同じ意味を表し、tは5〜10の整数を表す。)で示されるシラン化合物がより好ましく、式(1−1b)
Figure 0005628491
で示されるシラン化合物(以下、「シラン化合物(1−1b)」という。)、及び、式(1−2b)
Figure 0005628491
で示されるシラン化合物(以下、「シラン化合物(1−2b)」という。)が特に好ましい。
なお、アミノ基を有するシラン化合物(1)を用いる場合には、親水性、生体親和性等の機能を有する改質層を形成することができる。
樹脂基材表面に、シラン化合物(1)を用いてなる改質層を形成する方法は、特に制限されない。例えば、(i)加熱、減圧等によりシラン化合物(1)を気化させ、気体状態のシラン化合物(1)を樹脂基材表面に接触させることによって、改質層を形成する方法、又は、(ii)シラン化合物(1)を溶媒に溶解又は分散させて溶液を調製し、そのシラン化合物(1)を含む溶液を樹脂基材表面に接触させることによって、改質層を形成する方法が好ましい。
(i)、(ii)のいずれの方法による場合も、より具体的には、従来公知の方法を採用できる。例えば、(i)の方法としては、いわゆる真空蒸着法を、(ii)の方法としては、いわゆるディップコート法を採用すればよい。
以上のようにして形成される改質層としては、シラン化合物(1)又はその縮合物が分子間力により樹脂基材と結合してなる層、樹脂基材表面に存在する水酸基とシラン化合物(1)の加水分解物とが縮合反応により結合してなる層等が挙げられる。
本発明によれば、樹脂基材上に、他の層を介在させることなく、密着性が良好で耐久性に優れる、極めて薄い厚みの改質層を簡便かつ効率よく形成することができる。
得られる改質層の厚みは、通常100nm以下、好ましくは、5〜20nmである。このような薄い厚みの改質層を形成できるので、樹脂本来の特性を損ねたり、樹脂構造体の寸法に誤差が生じるおそれがない。
以上のように形成される改質層は密着性が良好で耐久性にも優れている。
密着性が良好で耐久性に優れる改質層を形成できることは、例えば、パーフルオロアルキレン鎖又はパーフルオロポリエーテル鎖を含む基を有するシラン化合物(1)を用いて、樹脂基材表面上に、撥油性を有する改質層を形成した場合、樹脂基材の改質面を、不織布ワイパー等で何度も擦った後においても、対n−ヘキサデカン接触角が低下しないことにより確認することができる。
本発明において、樹脂基材表面に、密着性が良好で耐久性に優れた層が得られるのは、次のような理由によると考えられる。
すなわち、工程1において、湿潤不活性ガス雰囲気下で243nm以下の波長を含んだ紫外線を照射することにより、樹脂基材表面に、水酸基等の酸素原子を含む官能基が生成する。次に、工程2において、紫外線照射面とシラン化合物(1)を接触させることにより、シラン化合物(1)が加水分解してシラノール化合物が生成する。次いで、生成したシラノール化合物が、前記樹脂基材表面の水酸基と反応して強固な共有結合が形成され、樹脂基材表面に改質層が形成される。
本発明の樹脂表面改質方法によれば、さまざまな形状を有する樹脂基材表面に、他の層を介在させることなく、樹脂基材との密着性が良好で耐久性に優れる、極めて薄い厚みの改質層を、簡便且つ効率よく形成することができる。
2)表面改質樹脂基材
本発明の表面改質樹脂基材は、本発明の樹脂表面改質方法により表面が改質されてなる樹脂基材である。本発明の表面改質樹脂基材は、密着性が良好で耐久性に優れる、厚さが極めて薄い改質層を有する。
本発明の樹脂表面改質方法によれば、樹脂基材表面に撥水・撥油性及び防汚性を付与することができる。
本発明の表面改質樹脂基材は、光ディスク、光ファイバー、光コネクター、ポリゴンミラー等の反射デバイス、光カード、光学レンズ、回折格子、光学ミラー、液晶表示素子基板、導光体、光拡散板、偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散シート、プリズムシート、自動車の窓材、航空機用窓材、自動販売機用窓材、ショーケース材などの光学材料;
バイオチップ等のマイクロアレイ、マイクロリアクター、マイクロフルイディック等の検査素子用基材、培養容器、顕微鏡観察用容器などの医療器材;等に好適に用いることができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
以下の実施例において、樹脂基材、紫外線照射装置、及びシラン化合物(1)は、以下のものを用いた。
(i)樹脂基材
樹脂基材としては、環状オレフィンポリマー(商品名:ゼオネックス480R、日本ゼオン社製)を板状に成形して得られた樹脂板(以下、「樹脂基材」という。)をアセトン脱脂して用いた。アセトン脱脂後の樹脂基材表面の、対水接触角及び対n−ヘキサデカン接触角を、後述する方法により測定したところ、対水接触角は91°、対n−ヘキサデカン接触角は9°だった。
(ii)紫外線照射装置
紫外線照射は、Xeエキシマランプ照射装置(「UER20−172C」、ウシオ電機社製)を使用し、発光波長172nm、照射強度:照射窓近傍で10mW/cmで行った。
(iii)シラン化合物(1)
シラン化合物(1)として、前記シラン化合物(1−1b)又はシラン化合物(1−2b)を用いた。
(iv)対水接触角及び対n−ヘキサデカン接触角
樹脂基材表面の、対水接触角及び対n−ヘキサデカン接触角は、以下のようにして測定した。
成形体の表面に水滴又はn−ヘキサデカンを滴下してから30秒後に、接触角測定器(エルマ販売株式会社製、G−1−1000)を用いて接触角を測定した。これを各5回繰り返して、最大と最小の数値を削除して平均値を求め、その値を接触角とした。
(v)改質層の厚み
樹脂基材の表面に形成した改質層の厚みは、レーザーエリプソメータ(株式会社溝尻光学工業所製、型式:DHA−FX)を使用して測定した。
(実施例1)
(1)紫外線照射
以下の実験は、図1に示す表面改質装置100を使用して行った。
チャンバー6内の樹脂基板載置台8上に、紫外線(Xeエキシマランプ)の照射窓11と樹脂基材表面との距離が1.5mmになるように、前記樹脂基材12を載置した。
導入口1から、25℃で、4NL/分の流量で窒素ガス(純度:99.5%以上)を流して、イオン交換水4中に吹き込んで得られた、水蒸気を十分に含有した窒素ガス(以下、「湿潤窒素」という。この湿潤窒素中の飽和した水蒸気量は、約1.9重量%だった。)を配管5を通してチャンバー6内に、流速1.4m/分で1分間流し続けた。その後、引き続き湿潤窒素を流速1.4m/分で流しながら、樹脂基板載置台8上の樹脂基材表面に、紫外線照射装置10により、照射窓11を通してXeエキシマランプを5分間照射した。
照射後の樹脂基材表面の、対水接触角及び対n−ヘキサデカン接触角を測定したところ、対水接触角及び対n−ヘキサデカン接触角はともに10°以下であった。
(2)真空蒸着法による改質層の形成
次いで、紫外線照射後の樹脂基材の紫外線照射面上に、シラン化合物(1−1b)を用いる真空蒸着法により、シラン化合物(1−1b)を用いてなる改質層(厚み9.6nm)が形成された表面改質樹脂基材1を得た。
シラン化合物(1−1b)を用いる真空蒸着法は、真空蒸着装置(アルバックテクノ株式会社製)内に、ルツボに入れたシラン化合物(1−1b)と樹脂基材を入れ、真空度:3.0×10−3Paまで排気して、室温から25℃/分で525℃まで加熱後3分保持し、その後自然冷却して行った。
得られた表面改質樹脂基材1を、大気下で24時間静置した後、該表面改質樹脂基材1の対水接触角及び対n−ヘキサデカン接触角を測定したところ、対水接触角は115°、対n−ヘキサデカン接触角は66°だった。
(実施例2)
(1)紫外線照射
実施例1と同様にして、樹脂基材表面に、湿潤窒素雰囲気下で紫外線(Xeエキシマランプ)を照射した。
(2)ディップコート
(1)で紫外線照射された樹脂基材を、シラン化合物(1−1b)の0.1重量%溶液(溶媒:パーフルオロヘキサン)に1時間浸漬した後引き上げて乾燥することにより、シラン化合物(1−1b)を用いてなる改質層(厚み5.3nm)が形成された表面改質樹脂基材2を得た。
浸漬処理後、大気下で24時間静置した後、表面改質樹脂基材2の水接触角及び対n−ヘキサデカン接触角を測定したところ、対水接触角は114°、対n−ヘキサデカン接触角は70°だった。
(実施例3)
(1)紫外線照射
実施例1と同様にして、樹脂基材表面に、湿潤窒素雰囲気下で紫外線(Xeエキシマランプ)を照射した。
(2)真空蒸着
実施例1において、(1)で紫外線処理された樹脂基材表面に、シラン化合物(1−1b)の代わりにシラン化合物(1−2b)を用いる以外は、実施例1と同様にして真空蒸着法により、シラン化合物(1−2b)を用いてなる改質層(厚み15.3nm)を形成して、表面改質樹脂基材3を得た。
得られた表面改質樹脂基材3を、80℃、90%Rh雰囲気下で1時間静置した後、得られた表面改質樹脂基材3表面の、対水接触角及び対n−ヘキサデカン接触角を測定したところ、対水接触角は118°、対n−ヘキサデカン接触角は77°だった。
(比較例1)
(1)Oプラズマ処理
比較例1は、実施例1で使用した真空蒸着装置(アルバックテクノ株式会社製)のOスパッタエッチング機構を使用して行った。
真空蒸着装置のチャンバー内に樹脂基材を載置し、排気しながら酸素を流し、真空度0.4Paに調整したチャンバー内で、RF出力450Wで発生させた酸素プラズマに樹脂基材を10分間曝した。処理後の樹脂基材表面の、対水接触角及び対n−ヘキサデカン接触角を測定したところ、対水接触角及び対n−ヘキサデカン接触角はそれぞれ10°以下であった。
(2)真空蒸着
(1)でOプラズマ処理された樹脂基材表面に、実施例1と同様にして、シラン化合物(1−1b)を用いる真空蒸着法により、シラン化合物(1−1b)を用いてなる改質層(厚み17.4nm)を形成して、表面改質樹脂基材4を得た。
得られた表面改質樹脂基材4を大気下で24時間静置した後、表面改質樹脂基材4表面の、対水接触角及び対n−ヘキサデカン接触角を測定したところ、対水接触角は133°、対n−ヘキサデカン接触角は69°だった。
(比較例2)
(1)紫外線照射
実施例1において、湿潤窒素の代わりに、乾燥窒素を直接チャンバー内に流す他は、実施例1と同様にして、樹脂基材表面上に紫外線(Xeエキシマランプ)を照射した。照射後の樹脂基材表面の、表面改質樹脂基材4表面の、対水接触角及び対n−ヘキサデカン接触角を測定したところ、対水接触角は40°、対n−ヘキサデカン接触角は10°以下であった。
(2)真空蒸着
(1)で紫外線照射された樹脂基材表面に、実施例1と同様にして、シラン化合物(1−1b)を用いる真空蒸着法により、シラン化合物(1−1b)を用いてなる改質層(厚み9.6nm)を形成して、表面改質樹脂基材5を得た。
得られた表面改質樹脂基材5を大気下で24時間静置した後、表面改質樹脂基材5表面の、対水接触角及び対n−ヘキサデカン接触角を測定したところ、対水接触角は114°、対n−ヘキサデカン接触角は66°であった。
(比較例3)
(1)紫外線照射
実施例1と同様にして、樹脂基材表面に、湿潤窒素雰囲気下で紫外線(Xeエキシマランプ)を照射した。
(2)真空蒸着
(1)で紫外線処理された樹脂基材表面に、シラン化合物(1−1b)の代わりに、末端水酸基パーフルオロポリエーテル(商品名:フルオロリンクE10、ソルベイソレクシス社製)を用いる以外は、実施例1と同様の真空蒸着法により改質層(厚み37.6nm)を形成して、表面改質樹脂基材6を得た。
得られた表面改質樹脂基材6を大気下で24時間静置した後、表面改質樹脂基材6表面の、対水接触角及び対n−ヘキサデカン接触角を測定したところ、対水接触角は70°、対n−ヘキサデカン接触角は66°であった。
[密着性(耐久性)評価]
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた表面改質樹脂基材1〜6の改質面を、11mmφのアルミ製円柱に両面テープで貼り付けた不織布ワイパー(商品名:クローサーVT25、小津産業社製)で、1kgfの荷重にて擦り、擦った後の対n−ヘキサデカン接触角を測定した。測定は、n−ヘキサデカン接触角が49°以下になるまで繰り返し行った。
擦った回数(摩擦回数(往復))と、対n−ヘキサデカン接触角(°)を、下記第1表に示す。また、図2に、摩擦回数(往復)と、対n−ヘキサデカン接触角(°)との関係を示すグラフを示す。
Figure 0005628491
第1表及び図2のグラフから、実施例1〜3の表面改質樹脂基材1〜3は、600回摩擦しても、対n−ヘキサデカン接触角が60°以上であることがわかる。特に、実施例2の表面改質樹脂基材2は、1400回摩擦しても、対n−ヘキサデカン接触角が60°だった。
一方、比較例1〜3の表面改質樹脂基材4〜6は、400回摩擦した時点で、いずれも対n−ヘキサデカン接触角が51°以下に低下したことがわかる。
よって、実施例1〜3の表面改質基材1〜3は、比較例1〜3の表面改質基材4〜6に比して、表面改質によって得られた機能(耐油性)の耐久性及び密着性に優れることがわかった。
1・・・導入口、2,5・・・配管、3・・・湿潤不活性ガス生成容器、4・・・水、6・・・チャンバー、7・・・排気口、8・・・樹脂基材載置台、9・・・可動台、10・・・紫外線照射装置、11・・・紫外線照射部、12・・・紫外線照射窓、13・・・樹脂基材、100・・・表面改質装置

Claims (6)

  1. 水蒸気を含む不活性ガス雰囲気下で、樹脂基材表面に、243nm以下の波長の紫外線を照射した後、前記樹脂基材表面に、式(1)
    Figure 0005628491
    (Xは、アルコキシル基、イソシアネート基またはハロゲン原子を表し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基を表し、少なくとも一つのRがパーフルオロポリエーテル鎖を含む基であり、nが1〜3のいずれかの整数を表す。nが2以上のとき、複数のXは同一でも相異なっていてもよく、nが1または2のとき、複数のRは同一でも相異なっていてもよい。)で示されるシラン化合物を用いてなる改質層を形成することを特徴とする樹脂表面改質方法。
  2. 紫外線を照射した樹脂基材表面に、気体状態の前記式(1)で示される化合物を接触させることによって、改質層を形成することを特徴とする請求項1に記載の樹脂表面改質方法。
  3. 紫外線を照射した樹脂基材表面に、前記式(1)で示されるシラン化合物を含む溶液を接触させることによって、改質層を形成することを特徴とする請求項に記載の樹脂表面改質方法。
  4. 前記水蒸気を含む不活性ガスが、不活性ガスを水中に吹き込むことで得られるものである請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂表面改質方法。
  5. 前記樹脂基材が、ポリオレフィン類、ポリカーボネート、およびポリエステルからな群より選ばれる少なくとも一種の樹脂から形成されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂表面改質方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の方法により樹脂基材表面に改質層が形成されてなる表面改質樹脂基材。
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