JP2004175094A - 高分子樹脂積層体、およびその製造方法、ならびに車両用窓材 - Google Patents

高分子樹脂積層体、およびその製造方法、ならびに車両用窓材 Download PDF

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Abstract

【課題】プラズマ活性化工程を利用することなく、電子ビーム加熱による酸化珪素の蒸発と基板上堆積という非常にシンプルなプロセスによって、ガラス板同等の耐磨耗性と高度な耐候性能を有する高分子樹脂積層体を提供する。
【解決手段】高分子樹脂基板の少なくとも一方の面に、厚みが3〜70μmの活性光線硬化層と、厚みが3.5〜12μmの酸化珪素の真空蒸着層が、この順に積層されてなる高分子樹脂積層体であって、該活性光線硬化層は最大荷重1mNの条件下でナノインデンテーション測定を行った時の硬度が0.2〜0.8GPaの範囲にあり、かつヤング率と硬度を乗じた値が1〜6(GPa)2の範囲にある活性光線硬化層であって、かつ該酸化珪素の真空蒸着層は最大荷重1mNの条件下でナノインデンテーション測定を行った時のヤング率が45〜125GPaの範囲にある酸化珪素の蒸着層である事を特徴とする高分子樹脂積層体。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、表面硬度、耐磨耗性が付与された高分子樹脂積層体に関し、その中でも特に、高分子樹脂基板としてポリカーボネート樹脂基板を用いた、耐熱性、耐湿性、ならびに紫外線耐性等の耐候性能に非常に優れた高分子樹脂積層体に関するものであり、更に本高分子樹脂積層体を用いてなる各種車両用の窓材(ここで窓材とは少なくとも透視が可能であるものを示す)に関するものである。
また本高分子樹脂積層体は、各種建築物の窓材、高速道路等の透明遮音板等にも好適に用いられ、更には、各種の太陽電池パネル(多結晶シリコン、アモルファスシリコン、化合物半導体、グレッチェル型湿式太陽電池等)、液晶表示装置(LCD)やプラズマディスプレー(PDP)、エレクトロルミネセンスディスプレー(EL、LED)、電気泳動ディスプレー、その他の発光素子によるディスプレー等の表面保護板もしくは基板として、もしくは各種の携帯情報端末、タッチパネル入力装置等で用いられる透明タブレットの透明電極基板等の用途にも好適に用いる事が可能である。
【0002】
【従来の技術】
高分子樹脂材料は耐衝撃性、軽量性、加工性等の特徴を生かして、多方面の用途で使用されている。特に近年、その軽量性、安全性を活かして各種車両の窓材の用途に、表面硬度や耐磨耗性を高めた高分子樹脂成形物を適用しようとする動きがある。このような用途ではガラス並の高度な耐磨耗性や屋外での耐候性が要求される。例えば自動車では、ワイパー作動時のすり傷防止やウインドウ昇降時のすり傷防止等において高いレベルの耐摩耗性が要求されるし、非常に高い温度や湿度の環境下での使用も前提にしなくてはならない。
【0003】
高分子樹脂成形物の表面硬度や耐磨耗性を改良する方法として、例えば高分子樹脂成形物の表面にアクリル樹脂層をコーティングし、さらにその上にシロキサン系の硬化被膜をコーティングする方法があり、例えばアルキルトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランとの縮合物にコロイド状シリカを添加したコーティング用組成物が記載されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
これらの例はすべて湿式コーティングにより層の積層を行っているが、最近では真空蒸着、CVD(化学気相堆積法)等の真空プロセス(乾式コーティング)により無機酸化物による層を積層する方法が提案されてきている。
【0005】
例えば、真空槽内で電子ビームによる加熱等によって酸化珪素等の材料を蒸発せしめ、蒸発粒子を真空槽内に配置した基板上に堆積させて層を積層する電子ビーム蒸着方法が提案されている。(例えば、特許文献4参照)
また電子ビーム加熱により酸化アルミニウムや酸化珪素を蒸発させ、蒸着粒子を蒸着源と基板との間の空間に発生させたプラズマを通過させ、蒸着粒子の運動エネルギーを高めてから基板上に堆積する方法(HADプロセス)が提案されている。(例えば非特許文献1、2)
【0006】
【特許文献1】
特開昭63−278979号公報
【特許文献2】
特開平1−306476号公報
【特許文献3】
特開2000−318106号公報
【特許文献4】
特開2002−127286号公報
【非特許文献1】
M.Krug、「Abrasion resistant coatings on plastic by PVD high rate deposition」、Proceedings of the 3rd−ICCG2000、p577
【非特許文献2】
鈴木 巧一 他、「表面処理技術最前線レポート▲4▼ フラウンホーファー 電子ビーム・プラズマ研究所(III)」、工業材料、Vol.49No.7 p72(2001年7月号)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前記の湿式コーティングにより成膜を行ってなる高分子樹脂積層体では、シロキサンの硬化皮膜の硬度が低い為に、代替対象として考えるガラス板に対比して、耐磨耗性に劣るという欠点がある。
【0008】
また前記の真空プロセス(乾式コーティング)により無機酸化膜を成膜してなる高分子樹脂積層体では、ガラス板とほぼ同等の高い磨耗性能が得られるものの、これら無機酸化層(酸化珪素、酸化アルミニウム等)と下地となる有機物層との充分な密着性を経時的にも安定して確保する事が難しく、更に各種耐候性試験においては該界面付近での有機層の経時劣化に起因する性能不良が多く観られ、充分な耐環境性、耐候性能を得るのが難しかった。
【0009】
例えば、前記特許文献4に示した電子ビーム蒸着法(蒸着粒子へのプラズマ活性化は行われていない)では、後述の耐湿・耐水性(沸水試験)、耐候性(キセノンウエザー試験)に必ずしも充分な性能を得る事が難しかった。
【0010】
また真空槽を所定の圧力まで真空排気した後に、アルゴン等の不活性ガス、もしくは酸素、窒素等の反応性ガスをおよそ2×10-2〜6×10-1Pa前後の分圧で槽内に導入し、高周波の電磁波や電子ビーム、イオンビーム等の照射によって槽内にプラズマを発生させた状態において電子ビーム蒸着を行い、該プラズマ領域を通過する蒸着粒子に大きな運動エネルギーを付与するプラズマ活性化蒸着法に関しては、基板表面への高エネルギーイオン入射によるダメージ(具体的には基板表面の有機層の分子鎖切断、親水性官能基導入による表面吸着水の増加などが問題になる)、プラズマによる基板表面の帯電増加による蒸着膜への性能影響、プラズマに起因した基板温度の上昇といった問題があり、更に前記導入ガスによって真空圧力が増加し、気体分子の平均自由工程が短くなる事に起因して、逆に蒸着層の緻密性の低下が観られたり、高分子樹脂積層体の耐候性能や耐湿・耐熱性能等が不十分になる場合もあった。
【0011】
例えば前記例示のHADプロセスでは、前記の非特許文献1によれば、蒸着粒子へのプラズマ活性化に伴ない、蒸着中に著しい基板表面温度の上昇が観られている。このように著しい温度上昇が発生すると高分子樹脂基板の熱変形が発生しやすくなり、更には無機酸化物層と有機物との熱膨張率差に基づく大きな界面応力が生じ、諸性能を低下させるといった問題がある。
【0012】
これらの事情に鑑み、本発明者らは、これらのプラズマ活性化工程を利用することなく、電子ビーム加熱による酸化珪素の蒸発と基板上堆積という非常にシンプルなプロセスによって、ガラス板同等の耐磨耗性と高度な耐候性能を有する高分子樹脂積層体を提供することを課題とした。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本願発明は次の通りである。
1.高分子樹脂基板の少なくとも一方の面に、厚みが3〜70μmの活性光線硬化層と、厚みが3.5〜12μmの酸化珪素の真空蒸着層が、この順に積層されてなる高分子樹脂積層体であって、該活性光線硬化層は最大荷重1mNの条件下でナノインデンテーション測定を行った時の硬度が0.2〜0.8GPaの範囲にあり、かつヤング率と硬度を乗じた値が1〜6(GPa)2の範囲にある活性光線硬化層であって、かつ該酸化珪素の真空蒸着層は最大荷重1mNの条件下でナノインデンテーション測定を行った時のヤング率が45〜125GPaの範囲にある酸化珪素の蒸着層である高分子樹脂積層体。
2.高分子樹脂基板の少なくとも一方の面に、厚みが3〜70μmの活性光線硬化層と、厚みが3.5〜12μmの酸化珪素の真空蒸着層が、この順に積層されてなる高分子樹脂積層体であって、該活性光線硬化層は最大荷重1mNの条件下でナノインデンテーション測定を行った時の硬度が0.2〜0.8GPaの範囲にあり、かつヤング率と硬度を乗じた値が1〜6(GPa)2の範囲にある活性光線硬化層であって、かつ該高分子樹脂積層体の酸素透過率が0〜0.5cc/m2/dayの範囲にある高分子樹脂積層体。
3.酸化珪素の真空蒸着層の表面粗さ(RMS)が0〜2.5nmの範囲にある前記1もしくは2の高分子樹脂積層体。
4.酸化珪素の真空蒸着層は、電子ビーム蒸着法により形成された酸化珪素の真空蒸着層である前記1〜3の高分子樹脂積層体。
5.活性光線硬化層は、吸水率が2重量%以下である活性光線硬化層である前記1〜4の高分子樹脂積層体。
6.活性光線硬化層は、分子内もしくは単位繰り返し構造内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートの1種もしくは2種以上を混合した成分が、不揮発成分全体に対して50重量%以上を占める前駆材料に活性光線を照射して硬化してなる活性光線硬化層である前記1〜5の高分子樹脂積層体。
7.活性光線硬化層の前駆材料に、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランが不揮発成分全体に対して5〜30重量%の割合で混合されている前記1〜6の高分子樹脂積層体。
8.活性光線硬化層の前駆材料に、ジメチルポリシロキサンの側鎖メチル基の少なくとも一部をポリアルキレンオキシ基を含む有機基で置換してなるポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンが不揮発成分全体に対して0.01〜0.3重量%の割合で混合されている前記1〜7の高分子樹脂積層体。
9.活性光線硬化層の前駆材料に、紫外線吸収剤が混合され、該紫外線吸収剤は、不揮発成分全体に対する混合比率(重量%)と活性光線硬化層の厚み(μm)との積が45〜120(重量%・μm)の範囲となるような重量割合で混合されており、活性光線硬化層単独での300〜350nmの波長領域の光吸収(ABS)がいずれも2.0以上である前記1〜8の高分子樹脂積層体。
10.活性光線硬化層の前駆材料に、ヒンダードアミン系の光安定剤が、不揮発成分全体に対して0.2〜4重量%の割合で混合されている前記1〜9の高分子樹脂積層体。
11.活性光線硬化層が、前駆材料がコーティングされた基板周囲の雰囲気の酸素濃度が2%以下になるように不活性ガスによる置換を行った状態で、活性光線を照射し、前駆材料を硬化してなる活性光線硬化層である前記1〜10の高分子樹脂積層体。
12.高分子樹脂基板の厚みが0.1〜25mmの範囲にある前記1〜11の高分子樹脂積層体。
13.酸化珪素の真空蒸着膜の表面に、フルオロアルキル基およびまたはアルキル基を有するシロキサンを縮合してなる、厚みが30nm以下で表面の水の接触角が85度以上である撥水層が形成されている前記1〜11の高分子樹脂積層体。
14.高分子樹脂基板が、ポリカーボネート樹脂による成形基板である前記1〜13の高分子樹脂積層体。
15.高分子樹脂基板として、ポリカーボネート基板の少なくとも活性光線硬化層及び酸化珪素の真空蒸着層を積層する面に、紫外線吸収剤を含むアクリル樹脂によるフィルムを積層してなる基板を用いる前記1〜14の高分子樹脂積層体。
16.酸化珪素の真空蒸着膜を、蒸着が為される領域内にある基板上の任意の一点についての垂線と、この点と蒸着源を結ぶ直線との為す角度が少なくとも30度未満となる条件で形成する前記1〜15の高分子樹脂積層体の製造方法。
17.活性光線硬化層を、同一もしくは異なる組成の前駆材料液を用いて形成する2つの硬化層を積層して作成する前記1〜15の高分子樹脂積層体。
18.前記17記載の高分子樹脂積層体の製造方法。
19.高分子樹脂基板の厚みが1〜25mmの範囲にある前記1〜15および17のいずれかに記載の高分子樹脂積層体を少なくとも窓材の構成要素として含む車両用窓材。
【0014】
以下において、本願発明を更に詳しく説明する。
酸化珪素の真空蒸着層は、蒸着源に二酸化珪素を用いた電子ビーム蒸着法により成膜することが好ましい。電子ビーム蒸着法は各種の乾式コーティング法の中でも成膜速度が高く、装置構造が非常に簡単であり、また成膜時の基板表面のダメージが少ない等の特徴を有し、好ましく用いられる。
【0015】
尚、蒸着源としては、化学組成的に完全な二酸化珪素でなく、酸化数が2未満である酸化珪素や、酸素と珪素以外の元素を若干含むようなものであっても用いる事は可能である。このような場合としては、原料価格の観点から純度のあまり高くない酸化珪素を用いることが好ましい場合が挙げられるが、これ以外にも、蒸着膜の色相を意図的に変化する目的や蒸着膜の脆性を改良する目的、赤外線や紫外線の吸収能および導電性を付与する目的等において、意図的に異種元素を微量混合する場合があり、こうした異種元素としてはチタン、アルミナ、ジルコニウム、鉛、セリウム、亜鉛、錫等が好ましく挙げられる。
【0016】
二酸化珪素を蒸着源とする電子ビーム蒸着法により得られる酸化珪素の蒸着層は通常、無色透明になり、酸化数(SiOxのXの値)はほぼ2であり、成膜工程での還元はほとんど受けていないと考えられるので、蒸着時に真空槽内に酸素その他の反応性ガスを外部より供給する必要は特に無いが、蒸着膜の透明性や硬度の向上、脆性の改良等の目的により、酸素や窒素、有機珪素化合物(好適な例としてテトラエトキシシラン、ヘキサジメチルシロキサン等)等のガスをわずかに真空槽内に供給した状態で酸化珪素の蒸着を行っても良い。ただし、これらのガスの導入量については、得られた蒸着膜が後述するナノインデンテーション測定によるヤング率の好適範囲を満たすように調節することが必要である。
【0017】
一般に電子ビーム蒸着における蒸着源としては、多少の気孔を内部に含む事の多い焼結体の形状よりも、気孔を殆ど含まずに成形する事が可能な溶融体の形状が好ましい。これは任意形状に溶融成形が可能であり、蒸着装置の設計自由度が非常に高まる事に加え、蒸着源を電子ビームで加熱する際の放出ガスが極めて少ない為に、蒸着条件に悪影響を与え難い為である。二酸化珪素は溶融成形が可能であり、蒸着源として好適である。
【0018】
本願発明においては、これら酸化珪素の蒸着層は、最大荷重1mNの条件下でナノインデンテーション測定を行った際のヤング率が45〜125GPa、より好ましくは50〜125GPa、更に好ましくは55〜125GPaの範囲にある事が好ましい。
【0019】
すなわちヤング率が45GPa以上の酸化珪素の蒸着層が積層された高分子樹脂積層体では、耐候性(キセノンウエザー試験)や耐湿・耐水性能(沸水試験)等が優れていた。
【0020】
一方、蒸着層のヤング率が45GPa未満の高分子樹脂積層体では、車両用窓材を初めとする目的用途に必要な耐候性能や耐湿・耐水性能を得る事は難しかった。
【0021】
尚、ヤング率の値は、二酸化珪素の溶融成形体であるガラス板のヤング率の値を上限とし、その値はおよそ125GPaである。
尚、前記条件下でナノインデンテーション測定を行った際の硬度(塑性変形硬さ)については、大きな限定はないが、好ましくは5GPa以上であると良い。これは硬度が5GPa未満の場合には、耐磨耗性能(テーバー磨耗性)が低下する場合がある為である。
【0022】
ここでナノインデンテーション測定によるヤング率が前記範囲にある蒸着層を積層した高分子樹脂積層体が優れた耐候性能、耐湿・耐水性能を示す理由については以下のように推定される。
【0023】
すなわち、一般に電子ビーム加熱による真空蒸着法において、酸化珪素の蒸着層は多くの場合、粒状の成長形態を有する事が知られている。すなわち蒸着層は粒径数10nm前後の微細な酸化珪素の粒が積み重なってなる構造を有し、この結果、これらの粒子間に非常にわずかな隙間が含まれる。
【0024】
尚、このような微細構造については、例えば、高分解の走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて、蒸着膜の断面を観察する事により、ある程度評価が可能である。
【0025】
さてナノインデンテーション測定によるヤング率が前記の好適範囲にある蒸着層は、このような酸化珪素の粒がより密度高く詰まっており、隙間が少ない構造を有している為に、ナノインデンテーション圧子による押し込みに対する反発力が大きく、変形が起こり難いと考えられる。
【0026】
このように緻密性の高い構造の蒸着層では、構造がより安定で、熱的、もしくは経時的な形状変化が少ないと考えられる。おそらくこうした構造の安定性が、前記の各種性能が優れる理由であると観られる。
【0027】
また本願発明においては、高分子樹脂積層体の酸素透過率はおよそ0〜0.5cc/m2/day、より好ましくは0〜0.3cc/m2/day、更に好ましくは0〜0.1cc/m2/dayの範囲にあることが好ましい。
【0028】
すなわち酸素透過率が前記範囲にある高分子樹脂積層体では、耐候性(キセノンウエザー試験)や耐湿・耐水性能(沸水試験)等が優れており、その値が小さいほど、性能が優れる傾向にある。
【0029】
一方、酸素透過率が0.5cc/m2/dayを超える高分子樹脂積層体では、車両用窓材を初めとする目的用途に必要な耐候性能や耐湿・耐水性能を得る事が難しい。
【0030】
すなわち高分子樹脂積層体における各種劣化や変形の要因としては、紫外線や熱等の要素に加え、積層体内部に拡散、侵入してくる酸素や水蒸気等のガスも大きく寄与していると考えられる。これらのガスの積層体内部への拡散、進入が効果的に抑制される事によって、前記の各種性能が向上すると考えられる。
【0031】
尚、本願発明の高分子樹脂積層体において、その酸素透過率の値を左右するのは、主として酸化珪素の蒸着層である。
【0032】
すなわち本願発明における高分子樹脂基板ならびに活性光線硬化層の酸素透過率は多くの場合、前記好適範囲から大きく逸脱している。例えば本実施例におけるポリカーボネート樹脂による2mm厚の成形板に活性光線硬化層を積層したサンプル(蒸着層を積層する前段階)の酸素透過率はおよそ200〜400cc/m2/dayの範囲にある。これに対して、このサンプル上に酸化珪素の蒸着層を積層した後のサンプルはいずれも0.5cc/m2/day以下の好適範囲を示す。これらの事より、本願発明に係る高分子樹脂積層体において酸素透過率の好不適を左右するのは主として蒸着層の酸素遮断性能であると言える。
【0033】
尚、酸化珪素の蒸着層の酸素透過率は一般的に水蒸気の透過率とも良い相関があると言われており、酸素透過率の小さい積層体では水蒸気透過率も小さな値を示すと考えられる。
【0034】
さて電子ビーム加熱による真空蒸着法においては、蒸着層の表面に微細な凹凸が生じる場合が多いが、本願発明においては、酸化珪素の蒸着層のこうした凹凸の程度ができる限り小さい事が好ましく、具体的には酸化珪素の蒸着層の表面粗さ(RMS)の値がおよそ0〜2.5nm、より好ましくは0〜2.0nm、更に好ましくは0〜1.5nmの範囲にある事が好ましい。
【0035】
すなわち表面粗さが前記範囲にある酸化珪素の蒸着層が積層された高分子樹脂積層体では耐候性能や耐湿・耐水性能に優れており、その値が小さいほど(0に近い程)性能が優れる傾向にある。
【0036】
一方、蒸着層の表面粗さが2.5nmを超える場合には目的用途に必要な耐候性能や耐湿・耐水性能を得る事が難しい。
【0037】
ここで表面粗さが0〜2.5nmの範囲外の蒸着層を積層した高分子樹脂積層体の耐候性能、耐湿・耐水性能が低い理由については以下の事が考えられる。すなわち、蒸着層の表面の凹凸は蒸着層の内部構造を反映したものと考えられ、凹凸の程度の大きな蒸着層においては、層を構成する粒子の中に非常に大きなサイズのものを多く含んでいる事が予想される。そのため、蒸着層と活性光線硬化層の界面における実効的な接触面積(例えば、1nm未満の距離で層が近接した場合に「実効的な接触」と考える)が大きく減少し、一般に実効的な接触面積(このような概念は学術的には「真接触面積」と呼ばれる事もある)が小さくなると、層間の密着力の低下を招く事から、前記の各種性能を低下するものと考えられる。
【0038】
さてこうした酸化珪素の蒸着層に係る好適物性を実現する為の具体的方策としては、例えば高分子樹脂基板や蒸着を行う真空槽の内壁からの蒸着中の放出ガス(主にH2Oと推定される)の量を極力減らすように工夫する事が効果的である。すなわち蒸着を開始する前に基板や真空槽内壁に吸着したガスを充分に除去する工程(以下脱ガス工程と記す)を行う事、脱ガス工程を効率的にする基板や真空槽内壁を高効率で加熱できる機構を備えておく事、また同時に蒸着装置の真空排気能力(真空ポンプの能力)をできる限り高いものにしておく事が非常に肝要である。
【0039】
より具体的には、基板をセットした真空槽(チャンバー)の到達真空圧力が、蒸着を開始する前段階で、少なくとも1×10-3Pa以下、より好ましくは5×10-4Pa以下、更に好ましくは3×10-4Pa以下になるように真空排気ならびに脱ガス工程を行う事が好ましい。
【0040】
また蒸着源と基板との位置関係に関しては、蒸着源がなるべく基板の垂直方向に近い位置になるように配置する事が好ましい。すなわち蒸着源からの蒸着流が、斜め方向から基板に入射した場合には、垂直方向から入射した場合よりも蒸着層のヤング率や硬度が低下する傾向が観られ、蒸着層の緻密性が低下するので好ましくない。
【0041】
より具体的には好ましい膜質を得る目的において、蒸着が為される領域内にある基板上の任意の一点についての垂線と、この点と蒸着源を結ぶ直線との為す角度が少なくとも30度未満、より好ましくは25度未満、更に好ましくは20度未満、最も好ましくは15度未満となるように、蒸着源と基板との位置関係を設定することが好ましい。
【0042】
また基板の面積がある程度以上大きくなっていくと、単一の蒸着源ではなく、複数個の蒸着源を異なる位置に配置する方法が好ましく用いられるが、こうした場合には基板上の各点が少なくともいずれか1つの蒸着源に対して前記の位置関係を満たすことが好ましい。
【0043】
尚、基板を一方向に搬送し、この搬送路の途中に設けた開口部の部分において蒸着が為されるように配置した方法も好ましく用いられ、特に面内の膜厚分布の低減に有効であるが、この方法では蒸着中に基板と蒸着源との位置関係が経時変化していくことに起因して、優れた膜質を得るための条件が多少厳しくなり、実際に蒸着が為される開口部の領域全域において、前記角度が15度未満であることが好ましく、より好ましくは10度未満である。
【0044】
尚、基板を把持するホルダーもしくは治具等には、電気伝導性の良いものを用い、装置外部との電気的接続が多少なりとも取れるようにしておくと好ましい場合が多い。すなわち必要に応じて、ホルダーもしくは治具等を電気的に接地(アース)したり、もしくは電圧を印加したりできるようにしておく事が好ましい。これはおそらく基板表面の帯電や、基板と蒸着源間の電位勾配等が、蒸着層の特性になんらかの影響を与える場合があるからではないかと推定される。
【0045】
さて蒸着層の膜厚についてはおよそ3.5〜12μm、より好ましくは4〜10μm、更に好ましくは4.5〜7μmの範囲にある事が好ましい。すなわち蒸着層の膜厚は耐磨耗性に大きく影響し、3.5μm未満の膜厚では後述のテーバー磨耗試験においてガラス同等レベルの耐磨耗性(磨耗輪CS−10F、荷重5N、1000回転の試験によるサンプルのヘイズ値上昇がおよそ1.2%以下)を得る事が難しい。
【0046】
また蒸着層の膜厚は厚い程、耐磨耗性が向上する傾向にあるが、膜厚の増加とともに蒸着層と基板間の界面応力が増加し、活性光線硬化層との密着性が低下する等の悪影響が現れてくる為、蒸着層の膜厚は12μm以下が好ましい。
【0047】
さて一方、本発明者らは、蒸着層の密着力を充分に確保し、かつ経時的にも安定した密着性を得る目的において、蒸着層の下地として、機械的物性が以下の特定範囲にある活性光線硬化層を用いる事が好ましい事を見い出した。
【0048】
すなわち活性光線硬化層は、最大荷重1mNの条件でのナノインデンテーション測定による硬度(塑性変形硬さ)がおよそ0.2〜0.8GPa、より好ましくは0.3〜0.6GPa、更に好ましくは0.4〜0.5GPaの範囲にあって、かつヤング率と硬度を乗じた積の値が1〜6(GPa)2、より好ましくは2〜5(GPa)2、更に好ましくは2.5〜4.5(GPa)2の範囲にある活性光線硬化層である事が好ましい。
【0049】
このような好適範囲を有する理由については、例えば以下のような推定が可能である。
【0050】
すなわち本願発明の活性光線硬化層は、蒸着層の積層や層間の熱膨張率差等によって生ずる歪を良く緩和する特性を有する事が好ましいと考えられる。活性光線硬化層の内部もしくは蒸着層との界面に蓄えられる歪のエネルギーは、硬化層のヤング率が低い程小さくなり、また硬化層の塑性変形性が大きい程(硬度が小さい程)、歪エネルギーが散逸しやすくなる。しかしながら活性光線硬化層上に蒸着粒子が衝突した際に層表面であまり大きな塑性変形が起こってしまうと、形成された高分子樹脂積層体の性能に悪影響を与える。
【0051】
すなわちこうした相反する2つの要素のバランスから、前記の好適範囲が決まるものと推定され、実際、活性光線硬化層の硬度が0.8GPaを超える場合や、ヤング率と硬度を乗じた積の値が6(GPa)2を超えるような場合には、蒸着膜の密着性が不充分になる場合が多く、時には蒸着膜が経時的に自然剥離していくような場合も観られる。
【0052】
また硬度が0.2GPa未満である場合や、ヤング率と硬度を乗じた積の値が1(GPa)2未満となる場合には、蒸着層を積層した際の高分子樹脂積層体の表面に微小な凹凸やクラック等の外観不良が発生したり、高分子樹脂積層体の耐熱性や耐湿・耐水性能が不充分になる場合が多い。
【0053】
なお、本実施例ならびに比較例では活性光線硬化層のナノインデンテーション測定は酸化珪素の蒸着層を積層する前の段階において実施したが(すなわち活性光線硬化層を積層した高分子樹脂積層体を130℃の熱風乾燥機で30分の熱処理を施した後の状態を示す)、必要によっては、蒸着層が積層された高分子樹脂積層体について、蒸着層と活性光線硬化層の界面から蒸着層を剥脱する操作を行い、同操作で表面露出した活性光線硬化層について測定を行う事が可能である。このような蒸着層の剥脱方法としては、例えば、高分子樹脂積層体に機械的に大きな曲げ変形を与え、蒸着層にクラックが生じる程度の強い圧縮応力もしくは引っ張り応力を与え、蒸着層を自然剥離させる方法が好ましく挙げられる。ここで、もし蒸着層が自然に剥離しない場合でも、応力を与えた部分の蒸着層の表面にセロテープを貼り付け、強く引き剥がす事によって、多くの場合、蒸着層のみの剥離が可能である。
【0054】
蒸着層の剥脱方法としては、この他に、急激な温度変化(熱ショック)を与えて蒸着層を自然剥離させる方法、ふっ酸等の強酸を用いて酸化珪素の蒸着層を溶解させる方法等が挙げられるが、後者の例のように化学薬品を用いる方法は、活性光線硬化層の表面状態を大きく変化させる場合があるので好ましくない。
【0055】
さて前記の機械物性に加えて、活性光線硬化層は、吸水率がおよそ0〜2%の範囲にある層であることが好ましく、より好ましくは0〜1.5%、更に好ましくは0〜1%の範囲である。すなわち吸水率が2%を超える場合には、高分子樹脂積層体の耐水性(沸水試験)が不充分になる場合が多く、更に、真空蒸着前に行う基板の脱ガス時間が増加する問題や、蒸着の最中に基板内部からの水分放出が増加して、蒸着条件を悪化させるといった問題が生じる。
【0056】
活性光線硬化層の膜厚は、3〜70μmの範囲、より好ましくは5〜60μm、更に好ましくは10〜50μmの範囲にあることが好ましい。ここで膜厚が3μm未満であると活性光線硬化時に雰囲気酸素による硬化障害の影響を受けやすくなるので好ましくない。また活性光線硬化層の膜厚が70μmを越えると、硬化収縮による内部応力が増大し、高分子樹脂基板と活性光線硬化層間の密着性が低下したり、硬化層にクラックを生じやすくなり、もしくは活性光線硬化層のコーティングにおいて表面平滑性を得るのが難しくなるので好ましくない。
【0057】
また活性光線硬化層は、高分子樹脂積層体の耐熱性(熱安定性)等の観点から、好ましくは層のガラス転移温度もしくは軟化温度が120℃以上、より好ましくは150℃以上である事が好ましい。これらは例えば示差熱分析(DSC)における吸熱ピーク(複数ピークが現れる場合には、主成分に由来するメインピークの温度)や、熱走査型の動的粘弾性の分析等によって測定が可能である。
【0058】
尚、より簡便な方法としては、ガラス板上等に活性光線硬化層を硬化、積層した試験片を作成し、試験片をヒーターで加熱しながら、活性光線硬化層の表面をガラス棒で軽く押して、層の柔軟性や粘着性(タック性)が著しく変化し始める温度を活性光線硬化層の軟化温度とする方法等を用いても良い。
【0059】
このような特性を有する活性光線硬化層としては、例えば、分子内もしくは単位繰り返し構造内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートの1種もしくは2種以上を混合した成分が、不揮発成分全体に対して50重量%以上を占める前駆材料に活性光線を照射して硬化してなる活性光線硬化層が好ましく用いられる。
【0060】
具体的には、シクロ環を含有する多官能(メタ)アクリレート(例えばジシクロペンタニルジアクリレート、ジシクロペンタニルジメタクリレート)、イソシアヌル環、シアヌル環を含有する多官能アクリレート(例えばイソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、シアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート)、2官能イソシアネートを変性してなる多官能ウレタンアクリレート(例えばヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートを変性してなるヘキサアクリレート)、1,3−ジオキサンを含有する多官能アクリレート、フタル酸を変性してなるポリエステルアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびまたはそのエチレンオキサイドおよびまたはプロピレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等が好ましく挙げられるが、この他にも、前記の変性物を含めた各種の構造の多官能(メタ)アクリレートが使用可能である。
【0061】
しかしながら、これらの1種もしくは2種以上を主成分とする前駆材料を硬化されてなる活性光線硬化層のナノインデンテーション物性値が前記の好適範囲となるように選択を行う事が好ましく、更に吸水率や熱的物性についても先述の好適範囲となるように選択を行う事が好ましい。
【0062】
尚、活性光線硬化層の吸水率を低める観点から、分子内もしくは単位繰り返し構造内に、水酸基、アミノ基等の親水基を側鎖、末端に含有する事はあまり好ましくなく、脂肪鎖や脂肪環等の疎水基を適度な割合で含んでいる事が好ましい。ただし脂肪鎖の含有率は高くなりすぎると硬化層の耐熱性が低下する場合があり、好ましくない。
【0063】
また活性光線硬化層の耐熱性を高める観点、ならびに活性光線硬化時の収縮率の低減、更にキセノンウエザー試験等の長期紫外線暴露における活性光線硬化層の経時収縮や脆化の抑制の観点から、分子内もしくは単位繰り返し構造内に、シクロ環、イソシアヌル環、シアヌル環、イソホロン、1,3−ジオキサン等の構造を含む事が好ましい。尚、芳香環の含有は耐熱性の向上には好適ではあるが、あまり含有率が高いと活性光線硬化層の紫外線耐性が低下するので好ましくない。
【0064】
さて、これらの前駆材料は、必要に応じて適当な溶剤で希釈の後、高分子樹脂基板上に湿式コーティングを行い、その後、紫外線(可視光線を含んで良い)や電子線等の活性光線を適量照射する事によって層の硬化を行う。このようにして活性光線硬化層は、高分子樹脂基板上に積層される。
【0065】
またこうした活性光線硬化層の前駆材料の硬化に関しては、前駆材料がコーティングされた基板近傍の雰囲気を窒素ガス等の不活性ガスにより置換を行い、該雰囲気の酸素濃度をおよそ2%以下に減少した状態で活性光線を照射して硬化を行う方法も必要に応じて好ましく用いられる。
【0066】
このように窒素ガス等の不活性ガスによる雰囲気の置換を行った状態で、活性光線硬化層の前駆材料を活性光線により硬化させた場合には、酸素による硬化阻害が抑制される為、一般の大気雰囲気下で硬化した場合に比べて、活性光線硬化層の硬化性、特に表層付近の硬化性が向上するが、この結果として、高分子樹脂積層体の耐候性能や耐湿・耐水性能についても向上する場合が多い。
【0067】
活性光線硬化層には、必要に応じて、前駆材料の不揮発成分全体に対して50重量%未満、より好ましくは30%未満の割合で1種ないし数種の副成分を混合してもよい。
【0068】
このような副成分としては、分子内もしくは単位繰り返し構造内に含まれる官能基数が1である(メタ)アクリレート、ビニル基やアリル基を有する化合物、珪素アルコキシドを始めとする各種のアルコキシド成分、平均粒径(直径)が3〜30nmの超微粒子、光重合開始剤等の硬化剤もしくは硬化触媒、光重合開始助剤(増感剤)、レベリング剤、光吸収剤(紫外線吸収剤)、光安定剤、熱安定剤(酸化防止剤)、消泡剤、増粘剤等が挙げられる。
【0069】
副成分としては特に、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランを活性光線硬化層の前駆材料に混合する事が好ましく行われ、高分子樹脂積層体の耐候性(紫外線耐性、耐水性等)の著しい向上効果が得られる場合が多い。
【0070】
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランの混合量は、前駆材料の不揮発成分全体に対して5〜30重量%の割合とする事が好ましい。この範囲以外の比率での混合では耐候性向上の効果が少ない。
【0071】
また副成分として、混合比率は非常に少ないが重要度が高いものが、レベリング剤である。レベリング剤は、一般に湿式コーティングにおいて、基板上に塗工された塗液のレベリング性を高める目的で混合される。本発明の高分子樹脂積層体においても、活性光線硬化層の表面平滑性を向上させる為に、レベリング剤の混合は重要であるが、それに加え、驚くべき事にレベリング剤の混合によって、積層体の耐水性が著しく向上する場合が多い。
【0072】
特にレベリング剤として、ジメチルポリシロキサンの側鎖メチル基の少なくとも一部をポリアルキレンオキシ基を含む有機基で置換してなるポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン化合物を有するレベリング剤を用いた場合に、耐水性の向上効果が高い。
【0073】
ここでポリアルキレンオキシ基としては、例えばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等が好適である。
【0074】
この原因は定かではないが、一般にレベリング剤として用いられる化合物は、それを含んでコーティングされた層の表面近傍に偏析し、表面エネルギーを低下させる事が知られている。すなわち前記のレベリング剤を用いた場合、ポリジメチルシロキサンの側鎖メチル基が活性光線硬化層表面に高密度に存在した状態が作り出され、活性光線硬化層表面の水分吸着性が低下する事が推定される。そのため蒸着粒子の基板上への堆積がよりスムーズに行われ、密着力が向上するという可能性が考えられる。
【0075】
また表面エネルギーの低下によって、蒸着層と活性光線硬化層の界面での水分の浸透が抑制される結果、耐水性が向上するという可能性も考えられる。
【0076】
ただし側鎖メチル基の置換が全く為されていないジメチルポリシロキサンでは、活性光線硬化層の前駆材料との相溶性が非常に低い為、完全に相分離が起こる為、良好なレベリング性が得られない場合が多い。
【0077】
また側鎖メチル基をポリアルキレンオキシ基を含まない有機基により置換した場合には、ポリアルキレンオキシ基を含む有機基で置換した場合のような性能向上は見られない。
【0078】
これらポリエーテル変性ジメチルシロキサンは、不揮発成分全体に対して0.01〜0.3重量%の割合で混合される事が好ましい。0.01重量%未満では、レベリング性や耐水性の向上効果が殆ど無く、0.3重量%を超えると活性光線硬化層と蒸着膜の密着力が低下する場合があり、好ましくない。
【0079】
また副成分としては平均粒径が3〜30nm程度の二酸化珪素の微粒子や有機シリコーン重合微粒子、もしくはアクリル樹脂架橋微粒子、ジビニルベンゼンの架橋微粒子等を用いる事ができ、活性光線硬化層の硬化収縮率や熱膨張率の低減、ヤング率の増加、屈折率の調整(例えば酸化珪素の蒸着層と活性光線硬化層の屈折率ミスマッチングの低減)等の効果を得る事ができる。
【0080】
これらの微粒子は、分散性を高める観点から適当な表面処理を施す事も好ましく、例えばアクリロイル基、メタアクリロイル基、アルコキシシリコーン基を含有する有機成分等により、好ましい表面処理が可能である。
【0081】
さて紫外線吸収剤も副成分として非常に重要である。これは紫外線への長期暴露による高分子樹脂基板の経時着色や、高分子樹脂基板と活性光線硬化層の密着性の低下を抑制する目的で混合する。特に高分子樹脂基板としてポリカーボネート樹脂の成形基板を用いる場合には紫外線吸収剤を混合する必要性が高くなる。紫外線吸収剤としては、高分子樹脂基板の光劣化の原因になる300〜350nmの波長領域に大きな光吸収率を有する有機化合物もしくは無機化合物超微粒子による紫外線吸収剤が好ましく用いられ、例えばベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系等の有機化合物による紫外線吸収剤や、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機化合物の微粒子(粒径3〜30nm程度)等が好ましく用いられる。
【0082】
これらの中でも特に、分子内にベンゾトリアゾール骨格やトリアジン骨格を含む有機化合物は、上記波長領域の光吸収率が高く、かつ光化学的な安定性に優れている為、最も好ましく用いられる。
【0083】
分子内にベンゾトリアゾール骨格やトリアジン骨格を含む化合物としては、例えば、イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ジ(1,1−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が好ましく挙げられる。
【0084】
この他に好適に用いる事のできる紫外線吸収剤として、前記のベンゾトリアゾール骨格やトリアジン骨格等を含む化合物とメタクリロイル基、アクリロイル基もしくはビニル基を含有する化合物を共重合してなる化合物(例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等)が挙げられる。これらは反応型紫外線吸収剤と呼ばれており、活性光線硬化層中で重合反応し固定される事から、耐久性を高める目的のために好ましく用いられる。
【0085】
このような紫外線吸収剤の混合によって、300〜350nmの波長領域の活性光線硬化層の光吸収(ABS)をいづれも2.0以上(%表示では99%以上)にすることが好ましい。
【0086】
この目的において、例えば有機化合物による紫外線吸収剤を活性光線硬化層の前駆材料に混合する場合には、不揮発成分全体に対する混合比率(重量%)と活性光線硬化層の膜厚(μm)との積が45〜120(重量%・μm)の範囲、より好ましくは55〜100(重量%・μm)の範囲、最も好ましくは65〜90(重量%・μm)の範囲となるような重量割合で混合される事が好ましい。
【0087】
この積の値が45(重量%・μm)未満では、前記波長領域での光吸収(ABS)を2.0以上とする事が難しく、120(重量%・μm)を超えると、混合した紫外線吸収剤による光吸収の影響で硬化層内部の光重合の著しい阻害が起こりやすくなるので好ましくない。
【0088】
ただし活性光線硬化層の機械的物性の確保や、蒸着層との密着力の確保という観点から、紫外線吸収剤はあまり過剰な比率で混合する事は好ましくなく、活性光線硬化層の前駆材料の不揮発成分全体に対して20重量%以下とする事が好ましい。
【0089】
尚、こうした紫外線吸収剤混合量の増加に伴う光重合の阻害や層物性の低下を抑制する観点から、活性光線硬化層を同一組成もしくは異なる組成の前駆材料を用いて形成した2層の硬化層を積層することにより作成することも好ましく行われる。この方法は活性光線硬化層に混合する紫外線吸収剤の必要量を夫々の硬化層に適当な割合で分配混合することにより1層の硬化層への混合量をより低く抑えることができ、前記目的において好適である。
【0090】
尚、このような2層の硬化層の積層を行う場合、1層目の硬化層を形成した後、2層目の硬化層をコーティングする前に、1層目の硬化層の表面処理を行うことが多くの場合、好ましい。
【0091】
これは1層目の硬化層の表面エネルギーを高め、2層目のコーティング時に塗液の濡れ性、レベリング性等を向上させることにより、2層目の硬化層において良好な塗面を得る目的である。
【0092】
このような表面処理としては、コロナ処理、UVオゾン処理、減圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等の物理的方法や、アルカリ性水溶液中への浸漬処理(尚、アルカリ性水溶液への浸漬処理の後には純水等による水洗を十分に行う)等の化学的方法も好ましく用いられる。
【0093】
さて活性光線硬化層の前駆材料を紫外線照射により硬化させる場合には、副成分として光重合開始剤を混合する必要が出てくる。尚、電子線照射により硬化させる場合には一般に混合の必要は無い。
【0094】
光重合開始剤としては、硬化に用いる紫外線ランプの発光強度が強い波長領域であって、かつ高効率の光励起が可能なおよそ350nm以下の波長領域で光励起されやすく、化合物の開裂やラジカル発生等が起きる化合物による光重合開始剤を主に用いる事が好ましい。
【0095】
具体的には例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、ジベンゾスベロン、メチルフェニルグリオキシレート、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム等が例示される。
【0096】
また前述の通り、前駆材料に紫外線吸収剤が混合されている場合には、300〜350nmの波長領域の照射された紫外線は、比較的表層の付近で吸収されて層の内部まで届きにくい状況が生まれる。
【0097】
この為、例えば350nm超の波長領域(可視領域を含む)で光励起が為される化合物による光重合開始助剤(増感剤)等を適量混合する方法も好ましく用いられる。
【0098】
尚、一般に350nm超の波長領域では、350nm以下の波長領域より光励起効率が大きく低下する為に、350nm超の波長領域で光励起する光重合開始剤単独での充分な硬化は困難であるので、前述のように350nm以下の波長領域で光励起される光重合開始剤と併用する事が好ましい。
【0099】
このような重合開始助剤(増感剤)としては例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン等が例示される。
【0100】
尚、光重合開始助剤(増感剤)は、光重合開始助剤を含む光重合開始剤の全量に対し、およそ5〜30重量%の割合で混合されている事が好ましい。
【0101】
光重合開始剤の混合量については、大気雰囲気下で硬化を行う場合においては、前駆材料の不揮発成分全体に対して1〜10重量%、より好ましくは2〜8重量%、更に好ましくは3〜7重量%の範囲が好ましい。
【0102】
また窒素等の不活性ガスによる置換を行い、酸素濃度をおよそ2%以下に減少した状態で紫外線硬化を行う場合には0.1〜1重量%の範囲での混合が好ましい。
【0103】
更に活性光線硬化層には、副成分として光安定剤や熱安定剤(酸化防止剤)の混合が好ましい場合がある。
光安定剤は、紫外線への暴露等で発生するラジカルの捕捉作用を有し、活性光線硬化層の紫外線耐性を高め、脆化を抑制するといった添加効果がある。
【0104】
具体的には、例えば各種のヒンダードアミン系光安定剤が好ましく、同骨格を有する多種の化合物が使用可能である。
【0105】
熱安定剤は、高分子樹脂の酸化防止やラジカル型の分解反応の抑制といった作用を有し、光安定剤同様に活性光線硬化層の紫外線耐性を高め、脆化を抑制するといった添加効果がある。尚、熱安定剤と光安定剤は併用する事で添加効果が増強される場合もある。
【0106】
具体的には、例えば各種のヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系(イオウ系)、リン系、ラクトン系、ビタミンE系等の熱安定剤が挙げられ、これらの中でも各種のヒンダードフェノール系、ホスファイト系の熱安定剤が特に好ましく用いられる。
【0107】
これら光安定剤およびまたは熱安定剤の混合量は、活性光線硬化層の前駆材料の不揮発成分全体に対して、およそ0.2〜4重量%、より好ましくは0.5〜2重量%である。
【0108】
混合量が0.2重量%未満では紫外線耐性向上の効果が殆ど観られず、4重量%を超えると活性光線硬化層の白化や着色を生ずる場合が観られ、好ましくない。
【0109】
尚、両者を併用する場合には、光安定剤/熱安定剤の混合比率は、およそ3:1〜1:3の範囲とする事が好ましい。
【0110】
さて活性光線硬化層の前駆材料の高分子樹脂基板へのコーティング方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、(ドクター)ナイフコート法、ダイレクトグラビヤコート法、オフセットグラビヤ法、リバースグラビヤ法、リバースロールコート法、(マイヤー)バーコート法等の方法が適用できる。
【0111】
尚、コーティングに好適な塗液粘度への調整の目的で、各種の溶剤による前駆材料の希釈も必要に応じて行われる。溶剤としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ノルマルブチルアルコール、ターシャルブチルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、ジアセトンアルコール等が例示される。
【0112】
尚、活性光線硬化層の前駆材料を塗布した高分子樹脂基板は、前駆材料中の残留溶剤の乾燥除去、レベリング性の向上、活性光線硬化層と高分子樹脂基板との間の密着性の向上等の各種目的において、活性光線の照射を行う前に一度50〜130℃に昇温することが好ましい場合が多い。
【0113】
また活性光線硬化層を高分子樹脂基板を積層した後、蒸着層を積層する前に、この積層体を該高分子樹脂基板のガラス転移温度付近の温度(好ましくはガラス転移温度より20℃程度低い温度)で熱処理を行う事が好ましい。こうした熱処理の実施により、活性光線硬化層を積層した高分子樹脂基板の残留応力が熱的に緩和されて、層の密着性の向上が観られると同時に、活性光線硬化層中に含まれる揮発性成分(主に光重合開始剤の分解物)が揮発除去され、真空蒸着時に揮発成分の真空槽への放出量が減少するといった効果があり、好ましく実施される。
【0114】
また高分子樹脂基板上に活性光線硬化層を積層するにあたっては、必要に応じて高分子樹脂基板上に各種の表面処理を施してもよい。このような表面処理としては、各種のプラズマ処理、コロナ処理、UV−オゾン処理、高圧の熱水もしくは水蒸気による表面洗浄、アルコール等による溶剤洗浄などの方法が好ましく用いられ、表面の汚染物質の除去、表面活性化による層間の密着性向上、前駆材料のレベリング性の向上等の効果を得ることができる。
【0115】
尚、活性光線硬化層上への表面処理は、その方法によっては、逆効果になる場合が多いので注意が必要である。前記各種の表面処理方法の中でも特にプラズマ処理、コロナ処理、UV−オゾン処理等については硬化層表面に親水性の官能基が導入される結果として、硬化層表面の水分の吸着量、もしくは吸着力が増加する場合が多い。
【0116】
こうした活性光線硬化層表面の吸着水は、酸化珪素の真空蒸着時に放出されて蒸着層の緻密性を低下させたり、蒸着層と活性光線硬化層の密着性を低下させるといった悪影響を与える場合が多く、好ましくない。
【0117】
これらの事から、活性光線硬化層上への表面処理方法としては、前記の高圧の熱水もしくは水蒸気による表面洗浄、もしくはアルコール等による溶剤洗浄等の比較的穏やかな方法を選択する事が好ましい。尚、こうした熱水もしくは溶剤洗浄においては、音響振動(超音波等)を液中に発生させることにより洗浄効率を高めることも好ましく行われる。
【0118】
さて活性光線硬化層や蒸着層は、高分子樹脂基板の片面もしくは両面に形成、積層されるが、両面積層の場合には必要に応じて、活性光線硬化層ならびに蒸着層の形成を両面同時に行う事も可能である。
【0119】
これらの一例を示すと、例えば活性光線硬化層のコーティングから真空蒸着層の形成まで一貫して、基板の上端を治具で把持し、吊り下げた状態で基板を搬送する事が好ましい。
【0120】
例えば、基板は、コーティング工程を行うゾーン、熱風乾燥工程を行うゾーン、活性光線による硬化工程を行うゾーン、熱処理工程を行うゾーン、そして真空蒸着装置の順に搬送される。尚、熱処理工程を行うゾーンから真空蒸着装置までの基板搬送路は、基板の吸湿を最小に抑える目的で、できる限り湿度の低い環境にすることが好ましい。
【0121】
コーティング工程では、例えば活性光線硬化層の前駆材料液のディップコーティングが行われ、熱風乾燥工程では前駆材料液中の溶剤乾燥が行われる。活性光線による硬化工程では、搬送路の両側に配置された紫外線ランプもしくは電子線発生装置等から紫外線もしくは電子線等の活性光線が基板に照射され、基板両面にコーティングされた前駆材料の硬化が行われ、熱処理工程では活性光線硬化層が積層された基板に所定の熱処理が施される。
【0122】
ここで各工程の所要時間の短縮の為に、必要に応じて、同一工程を行うゾーンを複数個、並列もしくは直列に配置する事も好ましく行われる。
【0123】
ただし熱処理工程を行うゾーンについては、複数個のゾ−ンを設ける代わりに、ゾーンを大きくする事(例えば大型の熱風乾燥機を使用しても良い)でも対応可能である。
【0124】
尚、活性光線硬化層を形成する一連の工程は、場合によっては真空装置内でも行うことができる。例えば活性光線硬化層の前駆材料液を減圧したタンク内に入れておき、タンクを多数の微細孔を設けたノズルを通して真空装置内に繋げておくと、タンクと真空装置との差圧に基づき前駆材料液が微細孔から蒸気状に噴射されるので、このノズルを基板と相対させることにより真空中で基板に前駆材料液をコーティングすることができる。
【0125】
またこれ以外でも真空装置内で加熱したタングステンワイヤー上に前駆材料液を連続的に滴下して蒸発させるいわゆるフラッシュ蒸着法等によっても、真空中で基板にコーティングすることができる。
【0126】
基板の加熱や活性光線の照射は真空装置内でも容易に行うことが可能であるので、基板を搬送しながら、前記のコーティング、基板加熱、活性光線の照射、基板加熱の工程を続けて行うような配置とすれば、真空装置内で活性光線硬化層の形成が可能となる。
【0127】
このように真空装置内で活性光線硬化層を形成した後、真空状態を破ることなく基板をそのまま真空蒸着装置に搬送すれば、基板上への層形成工程のすべてを真空装置内で行うことが可能となり、トータルの真空排気時間の著しい低減が可能で、生産性を大きく向上されることができるので、好ましい。
基板は真空蒸着装置の内部でも、同様に端部を治具で把持した状態で各部屋を順に搬送される事が好ましい。
【0128】
真空蒸着装置においては、基板を取り込んで真空排気(粗引きと中引き)を行う初期排気工程と、基板加熱を行って基板の吸着ガスを放出させる脱ガス工程、基板を冷却する冷却工程、真空蒸着を行う工程、圧力を大気圧に戻して基板を装置外部に取り出すリーク工程等が必要になる。
【0129】
これら各工程における所要時間を短縮し、工程条件を安定化させる目的で、各工程はそれぞれ独立した真空槽内で行う事が好ましい。また各工程の所要時間が大きく異なる場合には、所要時間が最も短い工程(多くの場合、真空蒸着工程が相当する)の所要時間に、この他の工程の所要時間を近づけるように、該当工程を担当する真空槽を並列に配置して処理する事が好ましい。
【0130】
尚、一つの真空槽内で2枚以上の複数枚の基板を同時に処理する事も可能であるが、工程条件の不安定性が生ずるので、より好ましくは真空槽内では1枚の基板のみを処理するようにし、同一工程を担当する真空槽を並列に数槽配置する方法が用いられる。
【0131】
又、隣接する真空槽同士はロードロック方式等を用いて、真空度を悪化させずに相互接続ができるようにしておくと良い。
【0132】
さて、このような真空槽の配置の一例を図3に示したが、これは真空蒸着工程の所要時間が最も短い場合に好適な配置の一例である。ここでは真空蒸着工程のみを1つの真空槽で行い、初期排気工程とリーク工程については並列配置した3つの真空槽で、脱ガス工程、冷却工程については並列配置3、直列配置2、計6つの真空槽を用いて処理するようにしている。尚、ここでは真空蒸着工程を行う真空槽の前後には、それぞれ冷却工程からの基板搬送、およびリーク工程への基板搬送の為の、搬送接続用の真空槽を設けている。
【0133】
真空排気系としては、油回転ポンプ(ロータリーポンプ)、メカニカルブースターポンプ、油拡散ポンプ(ディフュージョンポンプ)、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ等の各種ポンプが用いられるが、特に前記の脱ガス工程、冷却工程、蒸着工程を行う部屋には1×10-2Pa以下の圧力領域での排気能力に優れたクライオポンプやターボ分子ポンプ等が備えられている事が好ましい。
【0134】
また蒸着室内には基板の搬送路の両側にそれぞれ電子ビーム蒸着源が設けられている。蒸着源としては、例えば二酸化珪素を円柱ロッド状に溶融成形したものが好適に用いられる。このように円柱ロッド状に成形された蒸着源を用いると、ロッドを回転させながら、長さ方向に少しづつ動かす事で、電子ビームが蒸着源に当たる位置を一定に制御する事ができるので好ましい。
【0135】
蒸着は、蒸着室内の所定位置に基板を静止させた後、シャッターの開閉によって蒸着の開始、終了を制御する事ができる。また特に蒸着層の膜厚の面内均一性を高める目的で、前記のシャッターを利用せず、基板の搬送路の近傍に適当な幅の開口部を設けた仕切り板を設けておき、基板を搬送させながら蒸着を行い、開口部を基板が通過時する時のみ蒸着が為されるようにする事もできる。
【0136】
尚、こうした両面蒸着の方法に関しては、基板の搬送路の片側のみに電子ビーム蒸着源を設け、片面の蒸着を終了した後に、基板を裏表反転させる工程を行った後に、他面の蒸着を行うといった方法を用いる事も可能である。ただしこの場合、基板の反転機構を真空槽内に設ける必要があり、装置スペースや搬送機構の複雑化等の問題が生じる場合がある。
【0137】
さて高分子樹脂基板の好適な厚みは、用途によって異なるが、平均厚みはおよそ0.1〜25mmの範囲にある事が好ましい。厚みが0.1mm未満では、活性光線硬化層と蒸着層の積層プロセスにおける基板のハンドリング性に問題を生じる場合が多い為、好ましくない。また25mmを超えると基板自身の重量が増加して、軽量化の目的に反するので好ましくない。
【0138】
尚、車両や建築物の窓材等の用途では、基板の平均厚みは1〜25mmの範囲にある事が好ましい。これは厚みが1mm未満では、窓材としての力学的強度が不十分になりやすい為である。
【0139】
高分子樹脂基板の形状に関しては大きな限定はないが、平らなシート状の基板は活性光線硬化層や蒸着層の均一な厚みでのコーティングが実現しやすいので最も好ましく用いられる。
【0140】
また曲面や凹凸等の多少複雑な形状を有する成形物も用いることができるが、均一な厚みでのコーティングの実現は多少難しくなる。これらの場合、活性光線硬化層のコーティング方法は制約を受け、ディップコート法、スプレーコート法等に限定され、蒸着層についても蒸着源の配置を工夫する事などが必要になる場合が多い。
【0141】
尚、高分子樹脂基板には必要に応じて、各種の紫外線吸収剤、可視光線吸収剤(顔料、染料等)、赤外線吸収剤や、光安定剤、熱安定剤(酸化防止剤)、離形剤、帯電防止剤、難燃剤等の添加物を適量混合する事が好ましく行われ、更に場合によっては、高分子樹脂基板のヤング率を高める効果を有する無機酸化物微粒子、層状マイカ等を適量混合する事も可能である。
【0142】
高分子樹脂基板としては、例えばポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂や各種のポリオレフィン系樹脂(例えばJSR社の商品名「アートン」、日本ゼオン社の商品名「ゼオノア」)等を成形してなる高分子樹脂基板が挙げられる。
【0143】
これらの中でも特に、耐衝撃性、透明性、成形性、軽量性等の観点からポリカーボネート樹脂を成形してなる高分子樹脂基板が最も好ましく用いられ、各種車両や建築物等の窓材の用途においては特に好ましく用いられる。
尚、ここでポリカーボネートとは、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸結合形成性化合物との重縮合物を意味する。
【0144】
かかる芳香族ジヒドロキシ化合物としては、具体的にはビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、4,4−ジヒドロキシフェニル−1,1’−m−ジイソプロピルベンゼン、4,4’−ジヒドロキシフェニル−9,9−フルオレンなどのビス(4−ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−シクロヘキサン、4−[1−〔3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキシル〕−1−メチルエチル]−フェノール、4,4’−〔1−メチル−4−(1−メチルエチル)−1,3−シクロヘキサンジイル〕ビスフェノール、2,2,2’,2’−テトラヒドロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビス−〔1H−インデン〕−6,6’−ジオールなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテルなどのジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン、などのジヒドロキシジアリールスルホン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−3,3’−イサチンなどのジヒドロキシジアリールイサチン類、3,6−ジヒドロキシ−9,9−ジメチルキサンテンなどのジヒドロキシジアリールキサンテン類、レゾルシン、3−メチルレゾルシン、3−エチルレゾルシン、3−ブチルレゾルシン、3−t−ブチルレゾルシン、3−フェニルレゾルシン、3−クミルレゾルシン、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2−フェニルヒドロキノン、2−クミルヒドロキノンなどのジヒドロキシベンゼン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニル等ジヒドロキシジフェニル類が挙げられる。
【0145】
中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0146】
炭酸結合形成性化合物としては、具体的にはホスゲンやトリクロロメチルクロロフォーメート、ビス(トリクロロメチル)カーボネートなどのホスゲン類、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネートなどのジアリールカーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート類、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネートなどのアルキルアリールカーボネート類などを挙げることができる。
【0147】
ホスゲン類を用いる場合はポリカーボネートは溶液法で製造され、カーボネート結合を有する炭酸エステル類を用いる場合は溶融法で製造される。
【0148】
炭酸エステル類の中ではジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。また、これらの化合物は単独または組み合わせて用いることができる。
【0149】
なお、他の成分を共重合またはブレンド成分として含むものもポリカーボネートの範疇に含まれる。
【0150】
本願発明にもっとも適するものは芳香族ジヒドロキシ化合物として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを使用し、炭酸結合形成性化合物として、ホスゲン類やカーボネート結合を有する炭酸エステル類を使用するポリカーボネートである。
【0151】
それ以外の成分の共重合率またはブレンド率が高いとポリカーボネートの特徴が薄れるため、共重合率またはブレンド率は20重量%以下が望ましく、10重量%以下が更に望ましい。
【0152】
さて、こうしたポリカーボネートによる成形基板の少なくとも片面に、紫外線吸収剤を含み、樹脂自身の耐候性に優れるポリカーボネート以外の樹脂によるフィルムを積層してなる基板も好ましく用いられる。
【0153】
このような基板を用い、フィルムを積層した側の基板面が屋外側の面(太陽光が主に入射する面)になるように用いることにより、高分子樹脂積層体の耐候性能を更に高める事ができる。
【0154】
フィルムは、取り扱い性やラミネート適性から10〜200μm程度の厚みが好ましく、あらかじめ成形してあるポリカーボネート基板にラミネートしたり、場合によっては粘着加工を行っても良いし、共押し出し法により一体成形しても良いし、インジェクション型内でのインサート成形、もしくは二色成形によってポリカーボネートと一体化しても良い。
このような方法によると、積層したフィルム自身の紫外線照射による着色、物性劣化は極めて少ない上に、紫外線を長期にわたりほぼ100%吸収可能な量の紫外線吸収剤を混合したフィルムを用いることにより、ポリカーボネート基板には全く紫外線が入射しないので紫外線による着色や物性劣化の心配が無くなる。
【0155】
このような樹脂フィルムとしては特にアクリル系の樹脂によるフィルムが好ましく挙げられ、ポリカーボネート上に積層して一体化した樹脂基板として、例えば帝人化成の商品名「パンライトPC−8111」などが好ましく例示される。尚、こうしたアクリル樹脂のフィルムを用いた場合には、フィルムを積層した側の基板面の硬度が向上するといった効果も得ることができる。
【0156】
本願発明の高分子樹脂積層体は、その用途における必要性から、積層体の透視性が高いことが好ましい。具体的には積層体のヘーズ(曇値)は5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下である。
【0157】
高分子樹脂積層体の光透過率に関しては、一般的には高いことが望まれ、全光線透過率の値で50%以上である事が好ましく、より好ましくは70%以上、更に好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上である。
【0158】
しかしながら高分子樹脂積層体の用途によっては必ずしも高い光透過率が望まれない場合もあり、例えば、自動車の後部座席用の窓材においては太陽光線の直射による車内温度の上昇を抑える目的等において、高分子樹脂基板内に可視光の吸収剤(顔料、染料等)を混合する等の方法により、意図的に積層体の光透過率を低下させる場合には、前記の全光線透過率の好適範囲を逸脱していても構わない。
【0159】
尚、本願発明の高分子樹脂積層体の酸化珪素の蒸着層の形成面に、更に各種の機能層の積層を行う事も可能であり、高分子樹脂積層体の用途に応じて好ましく行われる。
【0160】
ただし本願発明の高分子樹脂積層体は、透明性(透視性)を特徴とするものであるので、これら機能層にも透明性(透視性)が必要とされる。
【0161】
こうした機能層の例としては、例えば多種の薄膜誘電体およびまたは金属層の積層による反射防止層、赤外線反射層(熱線遮断層)、紫外線反射層、ならびにカラーデザイン層等や、インジウム/錫酸化物、インジウム/亜鉛酸化物、酸化錫等による透明導電層、チタン酸化物等による超親水層、後述の撥水層等が挙げられ、この他に不透明な導電層を間欠パターン形成してなる電磁遮蔽層等が挙げられる。
【0162】
本願発明の用途においては、これらの中でも撥水層が特に好ましく挙げられ、酸化珪素の真空蒸着層の表面に、もしくは前記の各種機能層の最表面として積層形成する事で、表面の撥水性が高まり、また屋外使用時における各種の汚染を抑制する効果が得られる。
【0163】
具体的には、撥水層としては、例えばフルオロアルキル基およびまたはアルキル基を有するシロキサンとを有する各種の(フルオロ)アルキルシロキサンによる層が挙げられ、酸化珪素の蒸着膜と充分な結合力をもって形成する事により、積層体表面の耐磨耗性の低下、ならびに磨耗に伴なう表面撥水性の低下を抑制する事が可能である。
【0164】
撥水層では、層の表面に対する水の接触角が85度以上を示す事が好ましく、より好ましくは90度以上、更に好ましくは100度以上である。尚、ここで一般的にアルキルシリコ−ンのみで90度以上の接触角を得る事は難しく、より高い接触角を得るにはフルオロアルキルシロキサンを混合もしくは単独で使用する事が好ましい。ただし撥水層の機械的強度の観点からはアルキルシリコーン、特にアルキル基がメチル基であるアルキルシリコーンがより優れている。
【0165】
撥水層の厚みは、表面が(フルオロ)アルキルシリコーンの皮膜によって完全に覆われるのに必要な層の厚みがあれば十分であるが、これより多少厚みが増しても構わない。しかしながら撥水層の機械的強度はあまり高くなく、下地に強固に化学結合が為された部分を除いては磨耗への耐性が低い。従って、たとえ撥水層に磨耗傷が生じても傷が肉眼で気にならない程度の膜厚、すなわち20nm以下、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下の膜厚に形成する事が望ましい。
【0166】
(フルオロ)アルキルシロキサンによる撥水層の形成方法としては、例えば、(フルオロ)アルキルシロキサン、もしくは(フルオロ)アルキルシロキサンとアルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを同時に真空槽内に所定のガス分圧で導入した後、真空槽内で高周波プラズマ処理を行う事によって、発生するラジカル活性種によりシロキサンを重縮合させ、基板表面に強固に化学結合した撥水層を形成する事ができる。フルオロアルキルシロキサンとしては、例えば、(ヘプタデカンフロロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)−1−トリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM7803)を好適に用いる事ができる。アルキルシロキサンとしては、メチルトリメトキシシランやメチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等を好ましく用いる事ができる。
【0167】
またこれらの(フルオロ)アルキルシロキサンの加水分解縮合物の湿式コーティングによっても同様に撥水層の形成が可能である。
【0168】
(フルオロ)アルキルシロキサンの加水分解縮合物は、公知の方法で、前記の(フルオロ)アルキルシリコーンを希塩酸や酢酸水溶液等により加水分解して作成が可能であるが、この他にフルオロアルキルシリコーン系コーティング液として市販されているものもあり(例えば信越化学工業株式会社製、KP801M、KP880等)、好ましく用いられる。
【0169】
これらの湿式コーティングにおいては、撥水層の極めて薄い膜厚を実現する為に、(フルオロ)アルキルシロキサンの加水分解縮合物を多量の溶剤で希釈し、少なくとも1重量%以下の固形分濃度にてコーティングを行う事が好ましい。
【0170】
コーティング方法としては、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、グラビヤロール等によるロールコート法等が好適に用いられるが、場合によっては、液を染み込ませた織布、不織布等を基板表面に擦りつけるといった方法を用いても構わない。
【0171】
尚、撥水層の機械強度を高めるには、シロキサン加水分解物の縮合を充分に進める事が好ましいので、コーティングの後、室温付近で溶剤の乾燥除去を介して、110〜130℃程度の温度で熱処理を施す事が好ましい。
【0172】
さて、これらの方法により作成された高分子樹脂積層体は、更に各種の加工工程(切断、孔開け、接着、粘着、組み立て等)を施す事によって、広い用途に用いる事ができる。
それらの中でも、本願発明の高分子樹脂積層体は、特に各種車両(自動車、トラック、バス、二輪車、飛行機、列車等)の窓材として非常に好適であり、従来のガラス板に比べて軽量性(燃費向上等の省エネルギー効果も有する)、安全性(耐衝撃性、割れにくさ)、デザイン性、その他に大きな優位性を有する。
【0173】
[本願発明の高分子樹脂積層体の具体的な目標性能]
さてこれまで述べてきた本願発明の高分子樹脂積層体に係る具体的な目標性能については、使用用途にもよって異なるが、後述の実施例に記載した各種試験を用いて性能を評価する場合においては、例えば、以下のような目標が挙げられる。
1.耐磨耗性能(テーバー磨耗試験)
酸化珪素の蒸着層が形成された面を磨耗輪CS−10F、1000サイクル条件で試験した場合の、サンプルのヘイズ値の増加(△H)が1.2%以下である事。
2.耐候性(スーパーキセノンウエザー試験、2000時間)
i)サンプルの着色(△b*)が3以下、より好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である事。
ii)酸化珪素の蒸着層ならびに活性光線硬化層の層間密着性が良好(80/100以上)である事。
iii)肉眼観察において、外観の悪化(クラック、シワ、窪み、膨れ等)が少ない事。
3.耐熱性(110℃、500時間)
i)サンプルの着色(△b)が2以下、より好ましくは1以下である事。
ii)酸化珪素の蒸着層ならびに活性光線硬化層の層間密着性が良好(80/100以上)である事。
iii)肉眼観察において、外観の悪化(クラック、シワ、窪み、膨れ等)が少ない事。
4.耐湿・耐水性(沸水試験、3時間)
i)酸化珪素の蒸着層ならびに活性光線硬化層の層間密着性が良好(80/100以上)である事。
ii)肉眼観察において、外観の悪化(クラック、シワ、窪み、膨れ等)が少ない事。
5.環境サイクル性(ヒートサイクル試験)
i)酸化珪素の蒸着層ならびに活性光線硬化層の層間密着性が良好(80/100以上)である事。
ii)肉眼観察において、外観の悪化(クラック、シワ、窪み、膨れ等)が少ない事。
6.表面硬度
鉛筆硬度がF以上である事。
【0174】
【実施例】
以下に本願発明における好適な実施例について説明する。しかしながら本願発明はこれらの例に限定されるものでは決してない。
【0175】
尚、実施例および比較例における各種測定、特性評価は以下の要領にて行った。
【0176】
ここで作成したサンプルによっては、蒸着層の積層直後から蒸着層が経時的に自然剥離していくといった現象が観られ、充分に評価が行えないものがあり、これらについては蒸着膜がわずかに残存している部分で可能な範囲で評価を行った。従って、このようなサンプルでは全項目の評価は為されていない。これら評価不可であった項目に関しては、サンプルの性能評価表に☆印を記入した。
1.活性光線硬化層、蒸着層、撥水層の厚みの測定
活性光線硬化層については、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察像に基づいて層の膜厚を求めた。
【0177】
蒸着層の膜厚については、公知の光干渉法に基づいて膜厚を測定した。尚、光干渉法による膜厚の算出においては、下記5の要領で測定した波長589nmにおける蒸着膜の屈折率の値を用いた。尚、本法による膜厚測定については、専用の測定装置として例えば大塚電子株式会社製瞬間マルチ測光システム「PHOTAL」がある。
【0178】
撥水層の膜厚については、非常に極薄である為に、実際の高分子樹脂積層体のサンプル上での測定は困難であった。この為、表面清浄なシリコンウエハー上に実施例と全く同様の方法で積層した撥水層の膜厚をエリプソメトリー法により求めて、これを実施例の高分子樹脂積層体における撥水層の膜厚とほぼ等しいと考える事にした。
2.ナノインデンテーション測定
株式会社エリオニクス製のナノ・インデンテーション・テスター ENT−1100aを用いて、酸化珪素の蒸着層および活性光線硬化層のナノインデンテーション測定を行った。尚、測定位置はサンプルの中央部(対角線の交点付近)とした。
【0179】
すなわち稜間隔115度の三角錐圧子を用い、最大荷重値を均等に250分割してステップ状に押し込み荷重を増加させていき(最大荷重1m(ミリ)Nの場合には4μN/ステップとなる)、最大荷重に到達後、同様にステップ状に押し込み荷重を徐荷していく。
【0180】
測定は25℃の恒温条件下で行い、測定装置とサンプルの温度を十分に安定させた後に、最大荷重1mN、最大荷重保持時間1秒の条件で、荷重/変位曲線の測定を行い、5回の連続測定の平均値をもって測定値とした。
尚、ナノインデンテーション測定においては、測定条件によって得られるヤング率と硬度の値が相違するので注意が必要である。特に最大荷重の条件による測定値の相違は著しく大きく、多くの場合、最大荷重を大きくする程、得られるヤング率と硬度の値がともに小さくなる。
【0181】
例えば、後述の比較例1においては、最大荷重1mNの条件で測定した場合には、蒸着層のヤング率は29.6GPa、硬度(塑性変形硬さ)は4.5GPaの値が得られたが、同じサンプルを最大荷重0.1mNの条件で測定した場合には、ヤング率は42GPa、硬度(塑性変形硬さ)は8.2GPaと大きく異なる測定値となる。
【0182】
そのため本願発明においては、測定値の再現性が高いとの理由から最大荷重1mNの条件を採用した。
なお、本実施例ならびに比較例では活性光線硬化層のナノインデンテーション測定は酸化珪素の蒸着層を積層する前の段階において実施した。(すなわち活性光線硬化層を積層した高分子樹脂積層体を130℃の熱風乾燥機で30分の熱処理を施した後の状態を示す)
またナノインデンテーションの測定においては、圧子の先端摩耗等によって測定データの誤差を生じる場合があるので、各サンプルの測定を行う前には、まず市販のシリコンウエハの測定を行い、最大荷重1mNの条件下でシリコンウエハを押し込んだ時の最大変位の値が55nm±3nmの範囲内にあることを確認した後に、サンプルの測定を行う事とした。尚、最大変位の値がこの範囲を逸脱した場合には、新しい圧子に交換を行うものとした。
【0183】
尚、参考の為、別表2には、1.1mm厚の市販の板ガラスならびに0.4mm厚のポリカーボネートの成形シート(帝人化成「パンライトPC−1151」)を前記測定条件にて測定した結果を併記した。
3.表面粗さの測定
デジタルインスツルメント社製の原子力間顕微鏡(ナノスコープIIIa D3100)を用い、蒸着膜表面の1μm角の領域の凹凸像の測定を行った。すなわち全測定点の高さ情報(Z座標)から、次式(1)に基づいて表面粗さ(RMS)を求めた。
【0184】
RMS={Σ(Zi−Zave)2/N}1/2 ・・・(1)
ここで、Ziは測定点の高さ座標(Z座標)、Zaveは平均化された平面の高さ座標(Z座標)であり、測定点と平均化平面との高さの差の二乗値を全測定点について足し合わせた総計を測定点の総数Nで割り、その平方根を取ったものがRMS値となる。
【0185】
ここで測定点の総数Nは、N=256×256=65536とした。
【0186】
尚、測定は蒸着膜表面の異なる5個所について行い、各部の凹凸像から求めた表面粗さの平均値をもって、蒸着膜の表面粗さ(RMS)の値とした。
4.酸素透過率
MOCON社製の酸素透過率測定システム「OX−TRAN 2/20」を用い、40℃、90%RHの条件でサンプルの酸素透過率の測定を行った。
【0187】
測定には、所定の大きさ(およそ10cm角)のサンプルもしくはその大きさに切断したサンプルを用い、酸化珪素の蒸着層が積層された面が、測定セルに接するような向きでOリングを介して、測定セルにサンプルを治具で固定した。
【0188】
酸素透過率の測定はおよそ1時間に1回の割合で約15時間に渡って行い、測定値が次第に減少していき、ほぼ一定の値に収束していく場合には、その収束する値をもってサンプルの酸素透過率の値とした。また測定値が測定時間内に減少と増加を繰り返す不安定性を有する場合には、測定開始後5〜15時間の測定データの平均値をもって高分子樹脂積層体サンプルの酸素透過率の値とした。
5.蒸着層の屈折率の測定
アタゴ製多波長アッベ屈折計DR−M2を用い、蒸着層の積層された面を検光子側のガラス面と、ブロモナフタレンの液膜を介して密着させた後に、サンプルの端面から測定光を入射させて測定を行った。尚、測定波長は589nmとした。
6.活性光線硬化層の吸水率の測定
ガラス板上に直接活性光線硬化層を形成した後に、刃物等を用いてガラス板上から硬化層を膜片状もしくは粉上に約1g前後の量のサンプルをかきとり、このサンプルを膜中の揮発性物質を揮発除去するために真空乾燥機で100℃で2時間の熱乾燥を行い、サンプルを真空乾燥機から取り出した直後にその重量(ア)を正確に秤量した。次にサンプルを30℃、95%RHの恒温恒湿槽内に48時間保持して充分に吸湿させ、サンプルを恒温恒湿槽から取り出した直後にその重量(イ)を正確に秤量した。そして活性光線硬化層の吸水率(%)を{(イ)−(ア)}/(ア)×100の値として求めた。上記測定は5回繰り返して行い、これらの測定値の平均値を採用した。
尚、ここでサンプル重量の秤量には、最小単位1mg以下で正確な秤量が可能な天秤を用いた。
7.活性光線硬化層の光吸収(紫外線吸収)の測定
日立製作所製の分光光度計U−3500を用い、活性光線硬化層の各サンプルの300〜350nmの波長領域の光吸収(ABS)を測定した。
ここで測定に用いた活性光線硬化層のサンプルの作成法は以下の通りである。
ポリビニルアルコール(和光純薬工業、平均重合度2000)を1重量%濃度で、水とノルマルプロパノールの3:1の混合溶剤に溶解した液を、メッシュ#10のバーコーターを用いて、0.5mm厚のポリカーボネートシート(帝人化成、パンライト「PC−1151」)の片面にコーティングし、室温で15分乾燥後、120℃で15分熱乾燥して、ポリビニルアルコールの層が片面に積層されたポリカーボネートシートを準備した。
【0189】
次にこのシートのポリビニルアルコール層が積層された面に、実施例記載と同じ膜厚で活性光線硬化層を積層し、活性光線硬化層上から所望の形状にナイフで切れ目を入れた後に、端部からセロテープ等で引き剥がす等の操作により、活性光線硬化層のみ単独で剥離した。
8.鉛筆硬度の測定
日本工業規格K5400に記載されている鉛筆硬度測定法に準拠して測定を行った。尚、サンプルの傷付きの有無の判定は、前記規格に準拠して測定者の肉眼にて行うが、傷つきの判定が微妙となる場合には、傷(凹部)の深さを市販の触針式表面粗さ計により測定し、異なる5個所で測定した深さの平均値が0.2μm以上である場合に「傷が発生した」と判定することとした。
9.テーバー摩耗性の測定
ASTM D1044に基づいて測定を行った。すなわちテーバー摩耗試験機(東洋精機(株)製)を用い、Calibrase社製CS−10FおよびCS−10の摩耗輪を使用し、試験荷重を4.9Nとした。また試験回転数については、CS−10Fの磨耗輪で1000サイクルと2000サイクルの試験を、CS−10の磨耗輪で1000サイクルの試験を行った。
【0190】
ここでCS−10FならびにCS−10の磨耗輪については、粒径20〜50μm前後の微粒子(無機微粒子)がゴムの中に所定量分散されてなる磨耗輪の硬度が日本工業規格K6301に記載されているゴム硬度測定法に準拠して測定を行った時のゴム硬度が所定の範囲(規格範囲)にある事を確認して用いた。
また上記方法によりサンプル表面(酸化珪素の蒸着層の積層されている面)の磨耗試験を行い、次式から求められるサンプルのヘーズ値の摩耗試験前後での値の差(ΔH)をもって、高分子樹脂積層体のサンプルの磨耗性能の評価を行った。ヘーズ(H)=(拡散透過率/全光線透過率)×100 (%)
尚、この際、サンプルは、磨耗試験が為された面を光線の検出器側に向けてセッティングして測定を行った。
10.ヘーズ値および全光線透過率の測定
日本電色工業社製の測定器(商品名「COH−300A」)を用いて測定を行った。
11.密着性評価
日本工業規格K5400に記載されている碁盤目テープ試験法に準拠して、蒸着層と活性光線硬化層の層間の密着性評価を行った。
【0191】
尚、サンプルによっては、蒸着層の積層直後から蒸着層が経時的に自然剥離していくといった現象が観られ、充分に評価が行えないものがあったが、このようなサンプルについては蒸着層の密着性を0/100(自然)とサンプルの評価評価表に記載することとした。
12.外観評価
蒸着層が積層されたサンプル表面について、肉眼でよく観察し(透過光、反射光の両方により観察を行う)、以下のような各種外観欠点の発生状況を評価した。
【0192】
ここで外観欠点としては、肉眼での認識が可能なサイズと異常の程度を有する欠点を対象とし、5cm四方のサンプルの表面に、層の剥離(剥離面積がおよそ1mm2以上のもの)、クラック(長さ2mm以上のもの)、顕著なシワや表面荒れ、白化が平均1個所以上確認された場合に、それぞれ「層剥離」、「クラック」、「シワ」、「荒れ」、「白化」と、サンプルの性能評価表に記入する事とした。
【0193】
またブツ状欠点、すなわち深さもしくは高さがおよそ1μm以上の表面凹凸であって、その径がおよそ20μm以上であるような欠点(これらの欠点は肉眼で観察可能である)に関して、その発生の程度に応じて以下のA〜Fにランク付けして評価した。なお、目標値はD以上とした。
A:サンプル表面の2cm四方の面積内に観察されるブツ状欠点の数が平均1ケ未満
B:サンプル表面の2cm四方の面積内に観察されるブツ状欠点の数が平均1〜3ケ
C:サンプル表面の2cm四方の面積内に観察されるブツ状欠点の数が平均4〜9ケ
D:サンプル表面の2cm四方の面積内に観察されるブツ状欠点の数が平均10〜20ケ
E:サンプル表面の2cm四方の面積内に観察されるブツ状欠点の数が平均21〜40ケ
F:サンプル表面の2cm四方の面積内に観察されるブツ状欠点の数が平均41〜70ケ
G:サンプル表面の2cm四方の面積内に観察されるブツ状欠点の数が平均71ケ以上
13.接触角測定
協和界面化学株式会社製の接触角測定装置を用いて、測定を行った。
14.耐侯性(スーパーキセノンウエザー試験)
6cm×14cmのサイズに切断した試験サンプルを、蒸着層の積層面に試験に用いられる紫外光が直接照射されるような向きで、スーパーキセノンウエザーメータ(スガ試験機株式会社製)内部にセットし、UV照射強度180W/m2、ブラックパネル温度63℃、降雨なし(102分間)と降雨あり(18分間)からなるサイクルを何回も繰り返しながら、紫外光を連続照射する2000時間の暴露試験を行った。
【0194】
尚、本条件は、屋外暴露試験10年におよそ相当する促進試験であると考えられる。
【0195】
試験後のサンプルについては、前記要領で外観評価と密着性評価を行い、更には試験前後のサンプルの可視域の透過スペクトルを測定し、日本工業規格Z8729号に定めるLab表色系のクロマティクネス指数b*値の増加、すなわち試験前後のサンプル色差△ bの値を比較して、サンプルの着色の程度を評価した。
【0196】
ここで透過スペクトルの測定は日立製分光光度計U3500の入射角0度の積分球測定モードで行い、b値の計算には日本工業規格Z8720に規定される標準の光Cを採用し、2度視野の条件を用いた。
15.耐湿、耐水試験(沸水試験)
高分子樹脂積層体のサンプルを、マグネットスターラーにより攪拌が行われている沸騰水中(イオン交換水)に3時間、完全に浸せきした後に、室温で自然乾燥させ、前記要領で外観評価と密着性試験を行った。
16.高温環境耐久性
試験サンプルを110℃の温度にコントロールした熱風乾燥機内で500時間放置し、その後、試験サンプルを取り出して、前記要領で外観評価、密着性評価を行った。
17.環境サイクルテスト
試験サンプルを80℃で80%RH環境下に4時間、25℃で50%RH環境下に1時間、−15℃環境下に4時間、25℃で50%RH環境下に1時間放置するサイクルを1サイクルとし、このようなサイクルを20回繰り返した後で試験サンプルを取り出して、前記要領で外観評価、密着性評価を行った。尚、サイクル中の昇温、降温の温度変化のスピードはおよそ1℃/分とした。
【0197】
[実施例1]
高分子樹脂基板として、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとより合成されたポリカーボネート樹脂による厚み2mm、縦横350mm×250mmの成形板(帝人化成「パンライトPC−1111」)を用いた。
活性光線硬化層の前駆材料液は、以下の要領で作成した。
すなわち主成分の多官能アクリレートとして、シクロ環を含有するジアクリレートであるジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)90重量部とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDPE−6E」)10重量部とを混合して用い、紫外線吸収剤2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(チバスペシャリティケミカルズ「チヌビン1577FF」)1.7重量部、光重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティケミカルス「IRGACURE184」)7重量部と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.05重量部、ノルマルプロピルアルコール80重量部とを混合し、よく攪拌して、前駆材料液とした。
【0198】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記ポリカーボネート基板の片面にコーティングした後、70℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmの高圧水銀ランプにより、積算光量1.2J/cm2の紫外線を照射し、厚み40μmの活性光線硬化層を積層した。
【0199】
そして更にこの基板を22cm角の大きさに切断した後に、130℃にコントロールした熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0200】
この基板を図1の模式図に示す配置で真空蒸着装置内にセッティングし、以下の条件で真空蒸着層を積層した。蒸着源と基板の中央(対角線の交点)との直線距離は約60cmであり、基板の中央が蒸着源の真上の位置にくるようにして基板の配置を行った。
【0201】
尚、基板は20cm角の空孔部を有する金属製ホルダーに、金属製クリップで端部を固定して配置した。
【0202】
すなわちこの配置においては、蒸着が為される領域(20cm角)内にある基板上の任意の一点についての垂線と、この点と蒸着源を結ぶ直線との為す角度がおよそ0〜13度の範囲になる。
【0203】
真空排気は、油回転ポンプ(ロータリーポンプ)による排気(粗引き)、メカニカルブースターポンプによる排気(中引き)、ターボ分子ポンプとクライオポンプ(併用)による排気(本引き)の順に行った。
【0204】
尚、真空排気中には、基板(基板ホルダー)上方に配置したセラミックヒーターによる基板加熱を実施し、100℃で1時間の基板加熱を行い、その後、基板を45℃まで冷却した(基板温度の測定は基板に近接配置した熱電対により行った)。冷却の後、真空槽内の圧力(以下到達真空圧力と記す)は2.9×10-4Paであった。
【0205】
蒸着源として、二酸化珪素の溶融体の破砕状粒(高純度化学研究所、SIO07GB、粒径2〜5mm)を用い、電子ビーム走査により二酸化珪素溶融体を加熱気化して、蒸着を行った。
【0206】
尚、基板上への蒸着の開始、終了は、蒸着源の真上に設けたシャッターの開閉によって行った。
【0207】
蒸着物の堆積レートをおよそ0.5μm/分で一定になるようにして、基板上に膜厚5.5μmの蒸着膜を堆積した。尚、ここで蒸着中の真空圧力(以下蒸着時真空圧力と記す)でおよそ2〜4×10-3Paの間にあった。
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0208】
[実施例2]
活性光線硬化層を以下の要領で作成した以外は、実施例1と同様な方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0209】
すなわち主成分の多官能アクリレートとしてイソシアヌル酸を含有するトリアクリレートであるイソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート(東亜合成化学「アロニックスM315」)80重量部とジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)20重量部とを混合して用い、これに紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)2.4重量部(尚、「チヌビン384−2」には若干の溶剤が含まれているが、固形分重量として2.4重量部である。以下の実施例、比較例でも同様である)、1−メトキシ−2−プロパノール70重量部を60℃加熱下で攪拌しながら完全に溶解した。
【0210】
室温に冷却の後、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業「KBM5103」)20重量%、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)6重量部と、ポリエチレンオキシド変性ジメチルポリシロキサン(チッソ「DBE−224」)0.09重量部、イソプロピルアルコール50重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0211】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記ポリカーボネート基板の片面にコーティングした後、100℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量0.6J/cm2の紫外線を照射して、厚み40μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0212】
尚、蒸着膜の膜厚は5.3μm、到達真空圧力は2.8×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜4×10-3Paの間であった。
【0213】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0214】
[実施例3]
活性光線硬化層を以下の要領で作成した以外は、実施例1と同様な方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0215】
すなわち主成分の多官能アクリレートとして1、3−ジオキサンを含有するジアクリレート(日本化薬「KAYARAD R604」)65重量部とジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)25重量部とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬「KAYARAD DPHA」)10重量部とを混合して用い、これにγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業「KBM5103」)20重量%、紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)2.4重量部、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)6重量部と、ポリエチレンオキシド変性ジメチルポリシロキサン(チッソ「DBE−224」)0.09重量部、イソプロピルアルコール60重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0216】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、80℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量1.2J/cm2の紫外線を照射して、厚み35μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0217】
尚、蒸着膜の膜厚は6.2μm、到達真空圧力は3.5×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ3〜5×10-3Paの間であった。
【0218】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0219】
[実施例4]
活性光線硬化層を以下の要領で作成した以外は、実施例1と同様な方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0220】
すなわち主成分の多官能アクリレートとして、ヘキサメチレンの脂肪鎖を含有するヘキサアクリレートであるヘキサメチレンジイソシアネート変性ウレタンヘキサアクリレート(共栄社化学「UA−306H」)60重量部とジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)40重量部とを混合して用い、これに紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)2.8重量部、1−メトキシ−2−プロパノール100重量部を60℃加熱下で攪拌しながら完全に溶解した。
【0221】
室温に冷却の後、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業「KBM5103」)20重量%と、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)6重量部と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.12重量部、イソプロピルアルコール50重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0222】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、100℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量0.6J/cm2の紫外線を照射して、厚み25μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0223】
尚、蒸着膜の膜厚は4.5μm、到達真空圧力は3.0×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜4×10-3Paの間であった。
【0224】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0225】
[実施例5]
活性光線硬化層を以下の要領で作成した以外は、実施例1と同様な方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0226】
すなわち主成分の多官能アクリレートとして、イソホロンを含有するヘキサアクリレートであるイソホロンジイソシアネート変性ウレタンヘキサアクリレート(共栄社化学「UA−306I」)50重量部とジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)50重量部とを混合して用い、これに紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)2.8重量部、1−メトキシ−2−プロパノール100重量部を70℃加熱下で攪拌しながら完全に溶解した。
【0227】
室温に冷却の後、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業「KBM5103」)20重量%と、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)6重量部と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.12重量部、イソプロピルアルコール50重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0228】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、100℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量0.6J/cm2の紫外線を照射して、厚み22μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0229】
尚、蒸着膜の膜厚は4.4μm、到達真空圧力は2.9×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜4×10-3Paの間であった。
【0230】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0231】
[実施例6]
活性光線硬化層を以下の要領で作成した以外は、実施例1と同様な方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0232】
すなわち主成分の多官能アクリレートとしてウレタン系の5官能アクリレート(根上工業「UN−9000H」)70量部とジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)20重量部とトリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬「KAYARAD TMPTA」)10重量部とを混合して用い、これに紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)2.4重量部、1−メトキシ−2−プロパノール100重量部を60℃加熱下で攪拌しながら完全に溶解した。
【0233】
室温に冷却の後、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業「KBM5103」)20重量%と光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)6重量部と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン製「SH28PA」)0.12重量部、イソプロピルアルコール50重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0234】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、100℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量0.9J/cm2の紫外線を照射して、厚み40μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0235】
尚、蒸着膜の膜厚は6.1μm、到達真空圧力は3.3×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ3〜5×10-3Paの間であった。
【0236】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0237】
[実施例7]
活性光線硬化層を以下の要領で作成した以外は、実施例1と同様な方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0238】
すなわち主成分の多官能アクリレートとしてポリエステルジオールからなるテトラアクリレート(東亜合成化学「アロニックスM8030」)85重量部とジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)15重量部とを混合して用い、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業「KBM5103」)20重量%、紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)2.4重量部、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)5重量部、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン製「SH28PA」)0.12重量部、1−メトキシ−2−プロパノール20重量部、イソプロピルアルコール80重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0239】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、100℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量0.9J/cm2の紫外線を照射して、厚み32μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0240】
尚、蒸着膜の膜厚は4.9μm、到達真空圧力は3.1×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜5×10-3Paの間であった。
【0241】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0242】
[実施例8]
活性光線硬化層を以下の要領で作成した以外は、実施例1と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0243】
すなわち主成分の多官能アクリレートとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートTMP−3EO−A」)80重量部とジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)20重量部とを混合して用い、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業「KBM5103」)20重量%、これに紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)2.4重量部、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)6重量部、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン製「SH28PA」)0.12重量部、イソプロピルアルコール80重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0244】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、80℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量1.2J/cm2の紫外線を照射して、厚み40μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0245】
尚、蒸着膜の膜厚は6.2μm、到達真空圧力は3.8×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ4〜6×10-3Paの間であった。
【0246】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0247】
[実施例9]
実施例8において、活性光線硬化層の前駆材料液中にヒンダードアミン系の光安定剤(旭電化工業「アデカスタブLA−82」)1.2重量部を混合した事の以外は、実施例8と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0248】
尚、蒸着膜の膜厚は6.0μm、到達真空圧力は3.9×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ4〜6×10-3Paの間であった。
【0249】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0250】
[実施例10]
実施例8において、活性光線硬化層を以下の要領で窒素ガスにより置換した雰囲気下で作成した以外は、実施例8と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0251】
すなわち実施例8の活性光線硬化層の前駆材料液の光重合開始剤の混合量を0.6重量部に減らした前駆材料液を用いて、実施例8と同様にバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、80℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥した。ついで、紫外線硬化装置内のサンプルへの紫外線照射の行われる領域に窒素を流出させて、前駆材料がコーティングされている基板近傍の酸素濃度が2%以下になるように雰囲気を置換した状態で、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量1.2J/cm2の紫外線を照射して、厚み40μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0252】
尚、蒸着膜の膜厚は5.8μm、到達真空圧力は3.2×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜5×10-3Paの間であった。
【0253】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0254】
[実施例11]
活性光線硬化層の前駆材料液を以下の要領で作成し、窒素ガスにより置換した雰囲気下で活性光線硬化層を作成した以外は、実施例1と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0255】
主成分の多官能アクリレートとしてジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)50重量部とポリエステルジオールおよびウレタンジオールを原料とする2官能アクリレート(日本化薬「KAYARAD UX−8101」)50重量部を混合して用い、これと紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)2重量部、1−メトキシ−2−プロパノール50重量部を70℃の加熱下でよく混合し、室温に冷却後、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)0.5重量部、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.1重量部、イソプロピルアルコール60重量部を混合し、これらを良く攪拌して前駆材料液とした。
【0256】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、80℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥した。ついで紫外線硬化装置内のサンプルへの紫外線照射の行われる領域に窒素を流出させて、前駆材料がコーティングされている基板近傍の酸素濃度が2%以下になるように雰囲気を置換した状態で、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量1.2J/cm2の紫外線を照射して、厚み35μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0257】
尚、蒸着膜の膜厚は5.8μm、到達真空圧力は3.2×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜5×10-3Paの間であった。
【0258】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0259】
[実施例12]
活性光線硬化層を以下の要領で作成した以外は、実施例1と同様な方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0260】
すなわち主成分の多官能アクリレートとしてジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)100重量部を用い、これにγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業「KBM5103」)20重量%、紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)2.4重量部、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)6重量部、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.12重量部、イソプロピルアルコール80重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0261】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、80℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量1.2J/cm2の紫外線を照射して、厚み35μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0262】
尚、蒸着膜の膜厚は6.0μm、到達真空圧力は3.2×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜5×10-3Paの間であった。
【0263】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0264】
[実施例13]
実施例12において活性光線硬化層を以下の要領で窒素ガスにより置換した雰囲気下で作成した以外は、実施例12と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0265】
すなわち実施例12の活性光線硬化層の前駆材料液の光重合開始剤の混合量を0.6重量部に減らした前駆材料液を用いて、実施例9と同様にバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、80℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥した。ついで、紫外線硬化装置内のサンプルへの紫外線照射の行われる領域に窒素を流出させて、前駆材料がコーティングされている基板近傍の酸素濃度が2%以下になるように雰囲気を置換した状態で、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量0.9J/cm2の紫外線を照射して、厚み35μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0266】
尚、蒸着膜の膜厚は5.8μm、到達真空圧力は2.8×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ1〜4×10-3Paの間であった。
【0267】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0268】
[実施例14]
実施例12において、活性光線硬化層を以下の要領で電子線硬化法により作成した以外は、実施例12と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0269】
活性光線硬化層の前駆材料液は以下の要領で作成した。
【0270】
すなわち主成分の多官能アクリレートとしてジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)100重量部を用い、これにγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業「KBM5103」)20重量%、紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)3.2重量部、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.12重量部、イソプロピルアルコール80重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0271】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、80℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、ESI社製の電子線照射装置TYPE:CB250/15/180Lにより加速電圧150KV、照射線量400KGY・m/分の条件で電子線を照射して、厚み35μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0272】
尚、蒸着膜の膜厚は5.5μm、到達真空圧力は3.1×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜4×10-3Paの間であった。
【0273】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0274】
[実施例15]
活性光線硬化層を以下の要領で電子線硬化法を用いて作成した以外は、実施例1と同様な方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0275】
すなわち主成分の多官能アクリレートとしてジシクロペンタニルジメタクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP」)75重量部と、ジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)25重量部を混合して用い、これにγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業「KBM503」)20重量%、紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)3.5重量部、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.12重量部、イソプロピルアルコール80重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0276】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、80℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、ESI社製の電子線照射装置TYPE:CB250/15/180Lにより加速電圧150KV、照射線量400KGY・m/分の条件で電子線を照射して、厚み32μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0277】
尚、蒸着膜の膜厚は4.8μm、到達真空圧力は2.9×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜4×10-3Paの間であった。
【0278】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0279】
[実施例16]
実施例2で作成した高分子樹脂積層体の酸化珪素による蒸着層に積層して、以下の要領で撥水層を設けた。
【0280】
すなわち実施例2で作成した高分子樹脂積層体を、高周波発信用のアンテナ、高周波電源、反応ガス導入機構を有する真空槽内に移し、フルオロアルキルシロキサンを反応ガスとする高周波プラズマ処理を行った。
【0281】
フルオロアルキルシロキサンは、2ケのガス導入調整バルブを介して真空層に配管接続されたステンレス製の真空容器内に封入し、容器を恒温槽に浸漬して温度安定させておく。
【0282】
サンプルを真空槽内にセッティングした後、1×10-3Paまで真空排気を行い、その後、(ヘプタデカンフロロ−1,2,2,2−テトラヒドロデシル)−1−トリメトキシシラン(信越化学工業「KBM−7803」)の分圧がおよそ3〜4×10-2Pa前後になるようガス導入調整バルブの開度を調節して導入し、発信周波数13.56MHz、投入電力100Wの条件にて20秒間高周波プラズマ処理を施し、フルオロアルキルシロキサンの高周波プラズマによる撥水層を積層した。
【0283】
この撥水層の膜厚はおよそ4nm前後であった。
【0284】
尚、別表2に記載した本実施例の蒸着層の物性測定値について、表面粗さ(RMS)の測定値は撥水層を形成する前の蒸着層を測定して得た値であるが、これ以外の測定値はすべて撥水層を積層した後に測定を行って得た値である。
【0285】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0286】
[実施例17]
実施例2で作成した高分子樹脂積層体の酸化珪素による蒸着層に積層して、以下の要領で撥水層を設けた。
【0287】
すなわち実施例2で作成した高分子樹脂積層体の蒸着膜が形成された面に、まずUVオゾン処理(アイグラフィック社製OC2506タイプ)を1分間施し、その後、フルオロアルキルシロキサンの加水分解縮合物のコーティングを行った。
【0288】
フルオロアルキルシロキサンとしては、市販のコーティング液(信越化学工業「KP−801M」)をm−キシレンヘキサフロライド(アルドリッチ)により、5倍に希釈した液を用い、市販の不織布(旭化成「ベンコット」)に液を染み込ませた。
この不織布を高分子樹脂積層体の蒸着膜が形成された面に接触させながら、均一によく擦り込んで液を蒸着層上に転写し、その後、120℃で5分間熱処理を行って、フルオロアルキルシロキサンの加水分解縮合物による撥水層を積層した。
この撥水層の膜厚はおよそ6nm前後であった。
【0289】
尚、別表2に記載した本実施例の蒸着層の物性測定値について、表面粗さ(RMS)の測定値は撥水層を形成する前の蒸着層を測定して得た値であるが、これ以外の測定値はすべて撥水層を積層した後に測定を行って得た値である。
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0290】
[実施例18]
実施例1において、酸化珪素による蒸着層の膜厚を10.4μmとした以外は、実施例1と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0291】
尚、到達真空圧力は2.9×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜6×10-3Paの間であった。
【0292】
[実施例19]
基板として、厚みが4mm、大きさが300mm角のポリカーボネート成型板(帝人化成「パンライトPC−1111」)を用い、ディップコーティングにより活性光線硬化層を成型板の両面に形成した。
【0293】
活性光線硬化層の前駆材料液としては、主成分の多官能アクリレートとしてイソシアヌル酸を含有するトリアクリレートであるイソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート(東亜合成化学「アロニックスM315」)60重量部とジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)40重量部とを混合して用い、これに紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)6重量部、1メトキシ2プロパノール20重量部を60℃加熱下で攪拌しながら完全に溶解した。
【0294】
室温に冷却の後、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)6重量部と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.1重量部、エチルアルコール50重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0295】
横幅400mm、奥行40mm、深さ500mmのステンレス製のディップ槽を用い、成型板の一端を大型のクリップを挟んだ状態で、成型板の塗液への浸漬、引き上げを行い、ディップコーティングを行った。
【0296】
引き上げ速度は120mm/分とし、ディップコーティングの後、クリップで把持したまま室温で1分間放置し、更に120℃の熱風乾燥炉に入れて3分間の熱処理を施した。
【0297】
次に120W/cmの高圧水銀ランプを用い、積算光量1J/cm2の紫外線を成型板の両面から照射して、厚みが11μmの活性光線硬化層を両面に形成した。
【0298】
この基板の、活性光線硬化層がコーティング、形成されている部分について、実施例1と同様に22cm角に切断して130℃で30分の熱処理を施した後に真空蒸着装置にセットし、酸化珪素の蒸着層を積層した。
尚、蒸着膜の膜厚は5.3μm、到達真空圧力は2.8×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜4×10-3Paの間であった。
【0299】
引き続いて次に、この基板の表裏を裏返し、裏面にも同様に酸化珪素の蒸着を行って、基板の両面に蒸着層を積層した。後者の蒸着膜の膜厚は5.4μm、到達真空圧力は2.1×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ1〜4×10-3Paの間であった。
【0300】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0301】
尚、ここで[表2]、[表3]における値は、両面共にほぼ同じ値であるため、その平均値を示した。
【0302】
尚、この高分子樹脂積層体は厚みが4mmの基板を用いたために、酸素透過率の測定において同測定装置へのセッティングが困難であった。この為、高分子樹脂基板として厚み2mmのポリカーボネート基板(帝人化成「パンライトPC1111」)を用い、それ以外は全く前記と同様の条件で高分子樹脂積層体を作成し、酸素透過率の測定のみを行い、その値を[表2]、[表3]に記載した。
【0303】
[実施例20]
2層の積層コーティングにより活性光線硬化層を形成した。すなわち実施例19で用いた活性光線硬化層の前駆材料液を用い、実施例19と全く同じ要領でディップコーティングから紫外線照射までを実施して基板の両面に1層目の硬化層を形成した。
【0304】
次にこの基板の両面にコロナ処理を施した後、再度、前記の前駆材料液を用いて同じ要領でディップコーティングから紫外線照射までを行い、1層目の硬化層に積層して、2層目の硬化層を積層した。
【0305】
そして最後にこの基板を130℃にコントロールした熱風乾燥機内で30分の熱処理を行い、基板上への活性光線硬化層の形成を終了した。
【0306】
この活性光線硬化層の厚みは22μmであった。
この後、基板の両面に実施例19と全く同じ要領で酸化珪素の真空蒸着膜を形成した。
【0307】
尚、ここで先に形成した蒸着膜の膜厚はそれぞれ5.3μm、到達真空圧力は3.0×10-4Pa、蒸着時真空圧力は2〜4×10-3Paの間にあった。
また後に形成した蒸着膜の膜厚は5.4μm、到達真空圧力は2.3×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ1〜4×10-3Paの間であった。
【0308】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0309】
尚、ここで[表2]、[表3]における値は、両面共にほぼ同じ値であるため、その平均値を示した。
【0310】
尚、この高分子樹脂積層体は厚みが4mmの基板を用いたために、酸素透過率の測定において同測定装置へのセッティングが困難であった。この為、高分子樹脂基板として厚み2mmのポリカーボネート基板(帝人化成「パンライトPC1111」)を用い、それ以外は全く前記と同様の条件で高分子樹脂積層体を作成し、酸素透過率の測定のみを行い、その値を[表2]、[表3]に記載した。
【0311】
[実施例21]
高分子樹脂基板として、重量比率で約1.4%の紫外線吸収剤を混合した厚み50μmのアクリル樹脂によるフィルム(鐘淵化学「サンジュレンフィルムSD005N」)を両面に熱的にラミネートしてなる厚みが5mmのポリカーボネート基板(帝人化成「パンライトPC−8111」)を用いた以外は実施例19と同じ要領で高分子樹脂積層体を作成した。
【0312】
ただし活性光線硬化層を両面に形成した後の熱処理を110℃で45分に変更した。
【0313】
この蒸着膜の膜厚は5.5μm、到達真空圧力は3.6×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜4×10-3Paの間であった。
【0314】
続いて基板の表裏を裏返し、裏側の面にも同様に酸化珪素の蒸着を行って、基板の両面に蒸着層を積層した。後者の蒸着膜の膜厚は5.6μm、到達真空圧力は2.8×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜4×10-3Paの間であった。
【0315】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0316】
尚、ここで[表2]、[表3]における値は、両面共にほぼ同じ値であるため、その平均値を示した。
【0317】
尚、この高分子樹脂積層体は厚みが5mm強の基板を用いたために、酸素透過率の測定において同測定装置へのセッティングが困難であった。この為、高分子樹脂基板として厚み2mmのポリカーボネート基板(帝人化成「パンライトPC1111」)を用い、それ以外は全く前記と同様の条件で高分子樹脂積層体を作成し、酸素透過率の測定のみを行い、その値を[表2]、[表3]に記載した。
【0318】
[比較例1]
実施例1において、酸化珪素の蒸着層を以下の方法で形成した以外は実施例1と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0319】
すなわち本例では蒸着装置の真空排気に関して、油回転ポンプ(ロータリーポンプ)による排気(粗引き)の後、油拡散ポンプ(ディフュージョンポンプ)による排気(本引き)を行った。
【0320】
実施例1と同様の配置で、基板を真空槽内にセットして真空排気を行い、圧力2×10-3Paの真空度まで到達した後、電子ビーム加熱蒸着法によって、二酸化珪素を昇華させ、前記の活性光線硬化層上に膜厚3.2μmの酸化珪素の蒸着層を積層した。
【0321】
ただし実施例1では真空排気中(蒸着前)の基板加熱を実施しているが、本例では行わなかった。
【0322】
尚、蒸着時の真空圧力は1.6〜2×10-2Paの間であり、蒸着膜の堆積レートは実施例1と同様に約0.5μm/分であった。
【0323】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0324】
[比較例2]
比較例1で、膜厚5.6μmの酸化珪素の蒸着層を積層した以外は比較例1と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。尚、蒸着時の真空圧力は1.5〜2×10-2Paの間であった。
【0325】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0326】
[比較例3]
実施例1において、酸化珪素の蒸着層を以下の方法で形成した以外は実施例1と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0327】
すなわち真空装置内で図2のように基板を実施例と異なる位置にセッティングし、蒸着源と基板との位置関係を実施例と異ならせた。
【0328】
ここでは蒸着源(るつぼの中央)と基板の中央(対角線の交点)との直線距離は実施例同様に約60cmであるが、基板の中央が蒸着源から見て真上の位置にはなく、斜め上の方向(仰角約36度)になるように基板を配置してある。
【0329】
すなわちこの配置においては、蒸着が為される領域(20cm角)内にある基板上の任意の一点についての垂線と、この点と蒸着源を結ぶ直線との為す角度がおよそ27〜44度の範囲になる。
【0330】
尚、蒸着層の膜厚は5.3μm、到達真空圧力は2.8×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜5×10-3Paの間であった。また蒸着物の堆積レートは約0.4μmであった。
【0331】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0332】
[比較例4]
活性光線硬化層を以下の要領で作成した以外は、比較例1と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0333】
活性光線硬化層の前駆材料として、主成分の多官能アクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学製商品名「DPE−6A」)100重量部と、光重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティケミカルス「IRGACURE184」)3重量部、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.05重量部、ノルマルプロピルアルコール80重量部とを混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0334】
この前駆材料液をバーコーターを用いて、ポリカーボネート基板の片面にコーティングした後、70℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmの高圧水銀ランプにより、積算光量1.2J/cm2の紫外線を照射し、厚み5μmの活性光線硬化層を積層し、その後に130℃にコントロールされた熱風乾燥機の中で30分熱処理を施した。
【0335】
比較例1と同様に真空排気中(蒸着前)の基板加熱を実施せずに蒸着を行った。
【0336】
尚、蒸着層の膜厚は4.3μm、蒸着時の真空圧力は1.8〜2.1×10-2Paの間であり、蒸着層の堆積レートは約0.5μm/分であった。
【0337】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0338】
[比較例5]
活性光線硬化層を以下の要領で作成した以外は、実施例1と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0339】
すなわち活性光線硬化層の前駆材料として、主成分の多官能アクリレートとして平均官能基数15のウレタンアクリレート(新中村化学「U−15−HA」)80重量部とジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)20重量部とを用い、これに紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)4重量部、1−メトキシ−2−プロパノール120重量部を70℃の加熱下で混合し、室温冷却後、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)5重量部、ポリアルキレンオキシド変性ジメチルポリシロキサン(チッソ「DBE224」)0.08重量部、イソプロピルアルコール40重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0340】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、100℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量1.2J/cm2の紫外線を照射して、厚み13μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0341】
尚、蒸着膜の膜厚は4.5μm、到達真空圧力は2.9×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜4×10-3Paの間であった。
【0342】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0343】
[比較例6]
活性光線硬化層を以下の要領で作成した以外は、実施例1と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0344】
すなわち活性光線硬化層の前駆材料として、主成分の多官能アクリレートとして、ヘキサメチレンの脂肪鎖を含有するヘキサアクリレートであるヘキサメチレンジイソシアネート変性ウレタンヘキサアクリレート(共栄社化学「UA−306H」)80重量部とジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)20重量部とを混合して用い、これに紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)3.5重量部、1−メトキシ−2−プロパノール120重量部を60℃加熱下で攪拌しながら完全に溶解する。
【0345】
室温に冷却の後、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)5重量部と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.1重量部、イソプロピルアルコール40重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0346】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、100℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量1.2J/cm2の紫外線を照射して、厚み14μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0347】
尚、蒸着膜の膜厚は4.7μm、到達真空圧力は3.0×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜4×10-3Paの間であった。
【0348】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0349】
[比較例7]
活性光線硬化層を以下の要領で作成した以外は、実施例1と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0350】
すなわち活性光線硬化層の前駆材料として、主成分の多官能アクリレートとして1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレート1,6HX−A」)80重量部とジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)20重量部とを用い、これに紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)1.5重量部、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)7重量部と、ポリエーテル変性ジメチルジシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.1重量部、イソプロピルアルコール20重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0351】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、80℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量1.2J/cm2の紫外線を照射して、厚み34μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0352】
尚、蒸着膜の膜厚は5.8μm、到達真空圧力は3.3×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ3〜6×10-3Paの間であった。
【0353】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0354】
[比較例8]
活性光線硬化層を以下の要領で作成した以外は、実施例1と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0355】
すなわち活性光線硬化層の前駆材料として、主成分の多官能アクリレートとして、ポリエステルジオールおよびウレタンジオールを原料とする2官能アクリレート(日本化薬「KAYARAD UX−8101」)80重量部とジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)20重量部とを用い、これに紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)1.3重量部、1−メトキシ−2−プロパノール70重量部を70℃の加熱下でよく混合し、室温冷却後、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)8重量部と、ポリエーテル変性ジメチルジシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.1重量部、イソプロピルアルコール30重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0356】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、100℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量1.2J/cm2の紫外線を照射して、厚み40μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0357】
尚、蒸着膜の膜厚は5.7μm、到達真空圧力は3.7×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ4〜6×10-3Paの間であった。
【0358】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0359】
[比較例9]
活性光線硬化層を以下の要領で作成した以外は、実施例1と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0360】
すなわち活性光線硬化層の前駆材料として、主成分の多官能アクリレートとして、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成化学「アロニックス M−305」)80重量部とジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)20重量部とを用い、これに紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)2.0重量部と、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)5重量部、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.1重量部、イソプロピルアルコール80重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0361】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、80℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量1.2J/cm2の紫外線を照射して、厚み27μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0362】
尚、蒸着膜の膜厚は4.9μm、到達真空圧力は6.3×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ6〜8×10-3Paの間であった。
【0363】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0364】
[比較例10]
活性光線硬化層を以下の要領で作成した以外は、実施例1と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
【0365】
すなわち活性光線硬化層の前駆材料として、主成分の多官能アクリレートとして、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート(東亞合成化学「アロニックスM−215」)80重量部とジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学「ライトアクリレートDCP−A」)20重量部とを用い、これに紫外線吸収剤イソ−オクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(チバスペシャリティケミカルズ製商品名「チヌビン384−2」)1.8重量部、1−メトキシ−2−プロパノール50重量部を60℃の加熱下で混合し、室温に冷却後に、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス「DAROCUR1173」)5重量部と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン「SH28PA」)0.1重量部、イソプロピルアルコール50重量部を混合し、これらを良く攪拌して、前駆材料液とした。
【0366】
この活性光線硬化層の前駆材料液をバーコーターを用いて前記基板の片面にコーティングした後、100℃にコントロールした熱風乾燥機内で1分間乾燥し、160W/cmのメタルハライドランプにより積算光量1.2J/cm2の紫外線を照射して、厚み28μmの活性光線硬化層を積層し、更に130℃にコントロールされた熱風乾燥機内で30分間の熱処理を施した。
【0367】
尚、蒸着膜の膜厚は5.2μm、到達真空圧力は6.9×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ7〜9×10-3Paの間であった。
【0368】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0369】
[比較例11]
実施例1において、酸化珪素による蒸着層の膜厚を15.8μmとした以外は、実施例1と同様の方法で高分子樹脂積層体を作成した。
尚、到達真空圧力は2.8×10-4Pa、蒸着時真空圧力はおよそ2〜6×10-3Paの間であった。
【0370】
以上の方法で作成した活性光線硬化層、真空蒸着層および高分子樹脂積層体についての各種評価結果を[表1]、[表2]、[表3]に示す。
【0371】
[比較例12]
実施例19で用いた活性光線硬化層の前駆材料液中の紫外線吸収剤「チヌビン384−2」の混合量を14重量部とした以外は実施例19と全く同じ要領で活性光線硬化層の形成を行った。
【0372】
しかしながら積算光量1J/cm2の紫外線を照射しても層の表面硬化が十分は進まず、積算光量を2J/cm2と倍増した場合においても表面硬化は不十分であった。
【0373】
このため、この後の工程を行うことは困難と判断して、積層体の作成を取りやめた。
【0374】
【表1】
Figure 2004175094
【0375】
【表2】
Figure 2004175094
【0376】
【表3】
Figure 2004175094
【0377】
表1は実施例および比較例における活性光線硬化層の前駆材料における不揮発成分全体の重量を100とした場合の各成分の重量比率、ならびに活性光線硬化層の紫外線吸収性能を示す表である。
【0378】
表2は実施例および比較例における活性光線硬化層と蒸着膜の物性評価結果、ならびに高分子樹脂積層体の初期性能の評価結果を示す表である。
【0379】
表3は実施例ならびに比較例における活性光線硬化層と蒸着膜の物性評価結果、ならびに高分子樹脂積層体の各種試験後の性能評価結果を示す表である。
【0380】
【発明の効果】
ポリカーボネート等の硬度や耐磨耗性の低い樹脂成形物に対して、本願発明を適用することにより、優れた耐磨耗性、表面硬度、耐候性、耐水性を有する高分子樹脂積層体を得ることができ、各種車両や建築物の窓材や透視性を必要とする構造材、その他の幅広い用途に利用することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における基板の真空蒸着装置内での配置を示す模式図である。
【図2】比較例3における基板の真空蒸着装置内での配置を示す模式図である。
【図3】本願発明の高分子樹脂積層体を連続生産する場合に好適な真空蒸着装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1. 基板
2.蒸着源
3.電子ビーム
4.基板搬送路
5A、5B、5C.初期排気工程を行う真空槽
6A,6B、6C.脱ガス工程を行う真空槽
7A、7B、7C.脱ガス工程を行う真空槽
8A、8B、8C.冷却工程を行う真空槽
9A、9B、9C.冷却工程を行う真空槽
10.冷却工程と真空蒸着工程との搬送接続用の真空槽
11.真空蒸着工程を行う真空槽
12.真空蒸着工程とリーク工程との搬送接続用の真空槽
13.リーク工程を行う真空槽
14.ヒーター
15.蒸着源
16.基板の搬送方向

Claims (19)

  1. 高分子樹脂基板の少なくとも一方の面に、厚みが3〜70μmの活性光線硬化層と、厚みが3.5〜12μmの酸化珪素の真空蒸着層が、この順に積層されてなる高分子樹脂積層体であって、該活性光線硬化層は最大荷重1mNの条件下でナノインデンテーション測定を行った時の硬度が0.2〜0.8GPaの範囲にあり、かつヤング率と硬度を乗じた値が1〜6(GPa)2の範囲にある活性光線硬化層であって、かつ該酸化珪素の真空蒸着層は最大荷重1mNの条件下でナノインデンテーション測定を行った時のヤング率が45〜125GPaの範囲にある酸化珪素の蒸着層である事を特徴とする高分子樹脂積層体。
  2. 高分子樹脂基板の少なくとも一方の面に、厚みが3〜70μmの活性光線硬化層と、厚みが3.5〜12μmの酸化珪素の真空蒸着層が、この順に積層されてなる高分子樹脂積層体であって、該活性光線硬化層は最大荷重1mNの条件下でナノインデンテーション測定を行った時の硬度が0.2〜0.8GPaの範囲にあり、かつヤング率と硬度を乗じた値が1〜6(GPa)2の範囲にある活性光線硬化層であって、かつ該高分子樹脂積層体の酸素透過率が0〜0.5cc/m2/dayの範囲にある事を特徴とする高分子樹脂積層体。
  3. 酸化珪素の真空蒸着層の表面粗さ(RMS)が0〜2.5nmの範囲にある事を特徴とする請求項1もしくは2のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  4. 酸化珪素の真空蒸着層は、電子ビーム蒸着法により形成された酸化珪素の真空蒸着層である請求項1〜3のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  5. 活性光線硬化層は、吸水率が2重量%以下である活性光線硬化層である事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  6. 活性光線硬化層は、分子内もしくは単位繰り返し構造内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートの1種もしくは2種以上を混合した成分が、不揮発成分全体に対して50重量%以上を占める前駆材料に活性光線を照射して硬化してなる活性光線硬化層である事を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  7. 活性光線硬化層の前駆材料に、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランが不揮発成分全体に対して5〜30重量%の割合で混合されている事を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  8. 活性光線硬化層の前駆材料に、ジメチルポリシロキサンの側鎖メチル基の少なくとも一部をポリアルキレンオキシ基を含む有機基で置換してなるポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンが不揮発成分全体に対して0.01〜0.3重量%の割合で混合されている事を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  9. 活性光線硬化層の前駆材料に、紫外線吸収剤が混合され、該紫外線吸収剤は、不揮発成分全体に対する混合比率(重量%)と活性光線硬化層の厚み(μm)との積が45〜120(重量%・μm)の範囲となるような重量割合で混合されており、活性光線硬化層単独での300〜350nmの波長領域の光吸収(ABS)がいずれも2.0以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  10. 活性光線硬化層の前駆材料に、ヒンダードアミン系の光安定剤が、不揮発成分全体に対して0.2〜4重量%の割合で混合されている事を特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  11. 活性光線硬化層が、前駆材料がコーティングされた基板周囲の雰囲気の酸素濃度が2%以下になるように不活性ガスによる置換を行った状態で、活性光線を照射し、前駆材料を硬化してなる活性光線硬化層である事を特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  12. 高分子樹脂基板の厚みが0.1〜25mmの範囲にある事を特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  13. 酸化珪素の真空蒸着膜の表面に、フルオロアルキル基およびまたはアルキル基を有するシロキサンを縮合してなる、厚みが20nm以下で表面の水の接触角が85度以上である撥水層が形成されている事を特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  14. 高分子樹脂基板が、ポリカーボネート樹脂による成形基板であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  15. 高分子樹脂基板として、ポリカーボネート基板の少なくとも活性光線硬化層及び酸化珪素の真空蒸着層を積層する面に、紫外線吸収剤を含むアクリル樹脂によるフィルムを積層してなる基板を用いることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の高分子樹脂積層体。
  16. 酸化珪素の真空蒸着膜を、蒸着が為される領域内にある基板上の任意の一点についての垂線と、この点と蒸着源を結ぶ直線との為す角度がすべて30度未満となる条件で形成することを特徴とする請求項1〜15のいずれかの高分子樹脂積層体の製造方法。
  17. 活性光線硬化層を、同一もしくは異なる組成の前駆材料液を用いて形成する2つの硬化層を積層して作成することを特徴とする請求項1〜15のいずれかの高分子樹脂積層体。
  18. 請求項17記載の高分子樹脂積層体の製造方法。
  19. 高分子樹脂基板の厚みが1〜25mmの範囲にある請求項1〜15および17のいずれかに記載の高分子樹脂積層体を少なくとも窓材の構成要素として含む車両用窓材。
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