JP6493213B2 - 位相差フィルム、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents

位相差フィルム、偏光板及び液晶表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、位相差フィルム、偏光板及び液晶表示装置に関する。より詳しくは、白色光を発する発光ダイオードをバックライトとして具備した液晶表示装置の、斜め方向からの青色光の光漏れによるカラーシフトの発生を低減する位相差フィルム、偏光板及び液晶表示装置に関する。
液晶テレビのバックライトとして、従来用いられてきた冷陰極管は水銀を含むことによる有害性、温度特性が悪い、消費電力が大きい、高速点滅ができない等の欠点があり、改善のため白色光を発する発光ダイオード(例えば、青色光を発する発光ダイオードと黄色/緑・赤の蛍光体との組合せ)の置き換えが進められている(例えば、特許文献1参照。)。
バックライトとして白色光を発する発光ダイオード(以下、白色LEDともいう。)を用いることで前記欠点を改善することができるが、長期間にわたり高温高湿環境下に液晶表示装置が置かれると、画像の色調変動が大きくなり、特に、50インチ以上に大画面化した場合には、画面の各所で明るさや色のばらつきが発生するという問題があった。さらにこの傾向は、液晶セルガラス等の部材を薄膜化した際において顕著に表れやすい。
本発明者らの検討によれば、当該問題の原因は、白色LEDバックライトの蛍光体(赤〜緑)の蛍光効率が劣化し、結果として光源の青色光のみが強調され、当該青色光の斜め方向からの光漏れが多いことによって、カラーシフトが発生するものと推察された。
液晶表示装置には液晶セル層のリターデーションを光学的に補償するために、位相差フィルムが用いられているが、従来、コントラスト性能に優れているとされていた逆波長分散性を有する位相差フィルムでは、短波長側に光吸収ピークのある青色光の斜め方向からの光漏れを十分に抑えられないことが明らかになった。
したがって、白色LEDバックライトを用いた液晶表示装置の場合は、順波長分散性の位相差フィルムを用いて液晶セル層の厚さ方向のリターデーションを補償することが望ましい。
位相差フィルムに順波長分散性を持たせるには、アセチル基の置換度を調整したセルロースアセテートを用いたり、リターデーション上昇剤を位相差フィルムに含有させたりすることが知られているが(例えば、特許文献2〜4を参照。)、当該アセチル基の置換度を調整したセルロースアセテートの種類によって、また当該リターデーション上昇剤を順波長分散性を発現する量まで含有させることによって、いずれもフィルムの水素結合性が強くなるため、ウェブの流延ベルトでの剥離性が劣化して、ベルトからの剥離時に横段が発生しやすく、大画面の液晶表示パネルの観察時にスジ状のムラが見られるという新たな問題が発生した。
特開2010−241995号公報 特許第4187593号公報 特開2012−214683号公報 特開2003−344655号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、白色LEDバックライトを具備した液晶表示装置の斜め方向からの青色光の光漏れによるカラーシフトの発生を低減し、かつウェブの流延ベルトでの剥離性の劣化による横段の発生を改善して視認性の向上した位相差フィルムを提供することである。さらに当該位相差フィルムを具備する視認性の向上した偏光板及び液晶表示装置を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、特定のアセチル基置換度を有するセルロースアセテートと、特定の環構造を有する含窒素複素環化合物を含有し、かつ順波長分散性を有する位相差フィルムによって、本発明の課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.アセチル基置換度が2.56〜2.70の範囲内であるセルロースアセテートと、下記一般式(3)で表される構造を有する含窒素複素環化合物の少なくとも1種とを含有し、かつフィルム厚さ方向のリターデーションが、下記式1を満たす波長分散性を示すことを特徴とする位相差フィルム。
Figure 0006493213
(式中Aはピラゾール環を表し、Ar 及びAr はそれぞれ芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表し、置換基を有してもよい。R は水素原子、アルキル基、アシル基、スルホニル基、又はアルキルオキシカルボニル基を表す。qは1又は2を表し、n及びmは1〜3の整数を表す。)
式1 1.0≦Rth(450)/Rth(650)≦1.2
(ここでRth(450)及びRth(650)は、それぞれ23℃・55%RHの環境下、波長450nm及び650nmの光を用いて測定される下記式(ii)で表されるフィルム厚さ方向のリターデーション値Rth(nm)を表す。
式(ii) Rth={(n+n)/2−n}×d
但し、nは、光学フィルムの面内方向において屈折率が最大になる方向xにおける屈折率を表す。nは光学フィルムの面内方向において、前記方向xと直交する方向yにおける屈折率を表す。nは、フィルムの厚さ方向zにおける屈折率を表す。dは光学フィルムの厚さ(nm)を表す。
2.さらに、糖エステル又は下記一般式(4)で表される構造を有する重縮合エステルを少なくとも1種含有することを特徴とする第項に記載の位相差フィルム。
一般式(4):B−(G−A)−G−B
(式中、B及びBは、それぞれ独立に脂肪族又は芳香族モノカルボン酸残基、若しくはヒドロキシ基を表す。Gは、炭素数2〜12のアルキレングリコール残基、炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基を表す。Aは、炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。nは1以上の整数を表す。)
.膜厚が20〜40μmの範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の位相差フィルム。
.紫外線吸収剤を含有することを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載の位相差フィルム。
.第1項から第項までのいずれか一項に記載の位相差フィルムが、水糊又は活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて偏光子と貼合されていることを特徴とする偏光板。
.前記偏光子の前記位相差フィルムが貼合されている面とは反対側の面に、ポリエステルフィルム又はアクリルフィルムが、水糊又は活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて偏光子と貼合されていることを特徴とする第5項に記載の偏光板。
.第項又は第項に記載の偏光板が具備されていることを特徴とする液晶表示装置。
.バックライトとして、白色光を発する発光ダイオードが具備されていることを特徴とする第項に記載の液晶表示装置。
本発明の上記手段により、白色LEDバックライトを具備した液晶表示装置の斜め方向からの青色光の光漏れによるカラーシフトの発生を低減し、かつウェブの流延ベルトでの剥離性の劣化による横段の発生を改善して視認性の向上した位相差フィルムを提供することができる。さらに当該位相差フィルムを具備する視認性の向上した偏光板及び液晶表示装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明者らの検討によれば、バックライトとして白色LEDを用いる液晶表示装置は、長期間にわたり高温高湿環境下に置かれると、画面の各所で明るさや色のばらつきが生じるという問題が発生するが、これは白色LEDバックライトの蛍光体(赤〜緑)の蛍光効率が劣化し、結果として光源の青色光のみが強調され、当該青色光の斜め方向からの光漏れが多いことによってカラーシフトが発生するものと推察された。
光漏れに関しては、液晶表示装置の液晶セル層のリターデーションを光学的に補償する位相差フィルムを用いることが有効であるが、従来、コントラスト性能に優れているとされていた逆波長分散性を有する位相差フィルムでは、波長が長くなるにしたがって大きな面内方向の位相差を示すため、短波長すなわち青色光において効果的に光学補償作用を与えることができないため、青色光の斜め方向からの光漏れを十分に抑えられない。
したがって、短波長側に光吸収ピークのある青色光に対しては、長波長側よりも短波長側でリターデーションが大きい順波長分散性の位相差フィルムを用いて液晶セル層の厚さ方向のリターデーションを補償することが有効であるものと推察される。しかしながら、位相差フィルムを構成するセルロースアセテートの種類によって、また従来知られているリターデーション上昇剤を順波長分散性を発現する量まで位相差フィルムに含有させることによって、いずれもフィルムの水素結合性が強くなるためウェブの流延ベルトとの親和性が増し、ウェブの剥離性が劣化することによる横段が発生しやすくなる。当該横段は、特に大画面の液晶表示パネルでは、観察時にスジ状のムラとして観察されるという新たな視認性の問題が発生する。
本発明者らは、この水素結合性に着目して検討した結果、水素結合性の弱い特定のセルロースアセテートと、後述するセルロースアセテートとのCH/π相互作用により、流延ベルトとの親和性を低下できる特定の含窒素複素環化合物をリターデーション上昇剤として用いる位相差フィルムによって、青色光の斜め方向からの光漏れを十分に抑制できる順波長分散性を付与しながら、ウェブの流延ベルトとの剥離性を改善してスジ状のムラのない視認性に優れる位相差フィルムが得られたものと推察される。
本発明の位相差フィルムの好ましい溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程の一例を示す模式図
本発明の位相差フィルムは、アセチル基置換度が2.56〜2.70の範囲内であるセルロースアセテートと、前記一般式(3)で表される構造を有する含窒素複素環化合物を少なくとも1種含有し、かつフィルム厚さ方向のリターデーションの波長分散性が前記式1を満たすことを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記含窒素複素環化合物が、ピラゾール環を有する化合物であり、さらに前記一般式(3)で表される構造を有する化合物であることが、順波長分散性を付与して、白色LEDバックライトを具備した液晶表示装置の斜め方向からの青色光の光漏れによるカラーシフトの発生を低減し、かつウェブの流延ベルトでの剥離性の劣化による横段の発生を改善する効果も高く、好ましい。
さらに糖エステル、又は前記一般式(4)で表される構造を有する重縮合エステルを少なくとも1種含有することが、リターデーションを調整し、かつリターデーションの安定性を向上する観点から、好ましい。
本発明の位相差フィルムは、膜厚が20〜40μmの範囲内であることが、薄膜の液晶セルガラス等の部材の薄膜化に対して、当該部材の歪みを小さくでき、かつ当該歪みに起因する光漏れを低減できるため、好ましい。
また、本発明の位相差フィルムは、紫外線吸収剤を含有することが、当該位相差フィルムを視認側に貼合した場合に、液晶セル層への不要な紫外線の影響を緩和する観点から、好ましい。
本発明の位相差フィルムは、水糊又は活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて偏光子と貼合されていることが、フィルムの伸縮を抑え、環境の湿度変動によるリターデーションの変動が小さい偏光板を提供することができ好ましく、さらに前記偏光子の前記位相差フィルムが貼合されている面とは反対側の面に、ポリエステルフィルム又はアクリルフィルムが、水糊又は活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて偏光子と貼合されていることが、より環境変動に対する耐久性の高い偏光板を提供する観点から、好ましい。
本発明の位相差フィルム及び偏光板は、液晶表示装置に好適に具備される。当該液晶表示装置は、バックライトとして、白色光を発する発光ダイオードが具備されていることが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪本発明の位相差フィルムの概要≫
本発明の位相差フィルムは、アセチル基置換度が2.56〜2.70の範囲内であるセルロースアセテートと、前記一般式(3)で表される構造を有する含窒素複素環化合物の少なくとも1種とを含有し、かつフィルム厚さ方向のリターデーションが、下記式1を満たす波長分散性を示すことを特徴とする。
式1 1.0≦Rth(450)/Rth(650)≦1.2
(ここでRth(450)及びRth(650)は、それぞれ23℃・55%RHの環境下、波長450nm及び650nmの光を用いて測定される下記式(ii)で表されるフィルム厚さ方向のリターデーション値Rth(nm)を表す。)
式(ii) Rth={(n+n)/2−n}×d
(ここでRth(450)及びRth(650)は、それぞれ23℃・55%RHの環境下、波長450nm及び650nmの光を用いて測定される下記式(ii)で表されるフィルム厚さ方向のリターデーション値Rth(nm)を表す。
但し、nは、光学フィルムの面内方向において屈折率が最大になる方向xにおける屈折率を表す。nは光学フィルムの面内方向において、前記方向xと直交する方向yにおける屈折率を表す。nは、フィルムの厚さ方向zにおける屈折率を表す。dは光学フィルムの厚さ(nm)を表す。)
Rth(450)/Rth(650)の値は、白色LEDの種類にもよるが、1.0〜1.2の範囲内であることが必要である。1.0未満では逆波長分散性となり、短波長側のLED光に対する光学補償を行う本発明の効果を示さない。1.2を超える場合は、リターデーション上昇剤を多量に添加する必要があるため、内部ヘイズが高くなりコントラストが低下する。
本発明の位相差フィルムの波長分散性は1.0〜1.15の範囲内であることが、光学補償機能を十分に発現し、同時にリターデーション上昇剤等がフィルムからブリードアウトしたり、内部ヘイズが高くなることを抑制でき、より好ましい範囲である。
上記厚さ方向のリターデーション値Rthは自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃・55%RHの環境下、450nm及び650nmの波長において、三次元屈折率測定を行い、得られた屈折率nx、ny、nzから算出することができる。
本発明の位相差フィルムは、水素結合性が弱く、かつリターデーションの出やすいセルロースアセテートと、水素結合性が最適に制御され、かつリターデーション上昇剤として機能する含窒素複素環化合物を含有する構成によって、白色LEDバックライトを具備した液晶表示装置の斜め方向からの青色光の光漏れによるカラーシフトの発生を低減し、かつウェブの流延ベルトでの剥離性の劣化による横段の発生を改善して視認性の向上した位相差フィルムを提供することができる。
≪本発明の位相差フィルムの構成≫
<セルロースアセテート>
本発明の位相差フィルムを構成するセルロースアセテートは、アセチル基置換度が、2.56〜2.70の範囲内であるセルロースアセテートであり、水素結合性の弱いセルロースアセテートであることが特徴である。アセチル基置換度が2.0〜2.55の範囲のセルロースアセテートでは、水素結合性が強くウェブの流延ベルトからの剥離性が劣化する。また、2.70を超えるアセチル基置換度を有するセルロースアセテートでは、リターデーション発現性が小さく、リターデーション上昇剤の添加量が多く必要となり、ヘイズが上昇しやすく、ブリードアウト耐性も劣る。
原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、いずれの原料セルロースから得られるセルロースアセテートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
セルロースアセテートは、アセチル基置換度が2.56〜2.70の範囲内のセルロースアセテートであることが、ウェブのベルトからの剥離性を向上し横段の発生を低減する観点から必要であり、さらにリターデーション発現性や順波長分散性に優れる。中でも2.60〜2.65であることがより好ましい。
なお、アセチル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めることができる。
本発明に係るセルロースアセテートの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは75000以上であり、75000〜300000の範囲であることがより好ましく、100000〜240000の範囲内であることが更に好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。セルロースアセテートの重量平均分子量(Mw)が75000以上であればセルロースアセテート層自身の自己成膜性や密着の改善効果が発揮され、好ましい。本発明では2種以上のセルロースアセテートを混合して用いることもできる。
前記セルロースアセテートの平均分子量(Mn、Mw)は、それぞれゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより以下の測定条件で測定することができる。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500〜2800000の範囲内の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
<含窒素複素環化合物>
本発明に係る含窒素複素環化合物は、セルロースアセテートとのCH/π相互作用によって、水素結合性を制御し、流延ベルトとの親和性を低下することができ、当該化合物を含有させることによりウェブの流延ベルトとの剥離性を改善して、スジ状のムラのない視認性に優れる位相差フィルムを得ることができる。
ここでCH/π相互作用とは、セルロースアセテートのような水素結合供与性部位(例えば、ヒドロキシ基の水素原子)や水素結合受容性部位(例えば、エステル基のカルボニル酸素原子)と添加剤の相溶性に関わるものであり、樹脂の主鎖又は側鎖に存在する水素結合性部位と、添加剤の芳香族化合物のπ電子との間の結合相互作用である。このCH/π相互作用によって、流延ベルトの極性成分と樹脂の水素結合性部位との相互作用よりも添加剤と樹脂の相互作用の方が強くなり、樹脂の水素結合性部位が流延ベルトの極性成分と接着する力を弱め、結果としてウェブの流延ベルトからの剥離性が向上する。
樹脂の水素結合性部位(セルロースアセテート樹脂のCH)と添加剤のπを用いてCH/π相互作用を形成する場合、当然、添加剤のπ性は強い方がよい。このπ性の強さを端的に表す例としてNICS(nucleus−independent chemical shift)値という指標がある。
このNICS値は、磁気的性質による芳香族性の定量化に用いられる指標であり、環が芳香族であれば、その環電流効果によって環の中心が強く遮蔽化され、反芳香族なら逆に反遮蔽化される(J.Am.Chem.Soc.1996、118、6317)。NICS値の大小により、環電流の強さ、つまり環の芳香族性へのπ電子の寄与度を判断することができる。具体的には、環内部中心に直接配置した仮想リチウムイオンの化学シフト(計算値)を表し、この値が負に大きいほどπ性が強い。
NICS値の測定値に関していくつか報告されている。例えば、Canadian Journal of Chemistry.,2004,82,50−69(文献A)やThe Journal of Organic Chemistry.,2000,67,1333−1338(文献B)に測定値が報告されている。
具体的には、ベンゼン環(−7.98)やナフタレン環(−8.11)のような芳香族炭化水素よりも、ピロール環(−14.87)、チオフェン環(−14.09)フラン環(−12.42)、ピラゾール環(−13.82)、又はイミダゾール環(−13.28)などの5員の芳香族複素環、トリアゾール環(−13.18)、オキサジアゾール環(−12.44)又はチアゾール環(−12.82)などの6員の芳香族炭化水素環の方が、NICS値が大きくなり、このような芳香族5員環、又は芳香族6員環を有する化合物を用いることで、CH/π相互作用を強めることができるものと予測される(括弧内はNICS値を示す。)。
本発明に係る含窒素複素環化合物は、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、又はイミダゾール環を有する含窒素複素環化合物であることが特徴であり、下記一般式(1)で表される構造を有する含窒素複素環化合物のうち、上記特定環構造を有する含窒素複素環化合物であることが好ましい。下記一般式(1)で表される構造を有する化合物はセルロースアセテートとともに用いることにより、偏光板を液晶表示装置に用いたとき、環境の湿度変動によるリターデーションの変動の発生を抑え、コントラスト低下や色ムラの発生を抑制することができ、さらに、含窒素複素環化合物の種類と添加量を適宜調整することによって、順波長分散性を示す位相差上昇剤として機能する。
分子量は100〜800の範囲内であることが、流延ベルトとの親和性を制御する観点から好ましい範囲であり、250〜450の範囲内であることがより好ましい。
〈一般式(1)で表される構造を有する化合物〉
Figure 0006493213
前記一般式(1)において、A、A及びBは、それぞれ独立に、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。この中で、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が好ましく、特に5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環であることが好ましい。
5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環の構造は、例えばベンゼン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、フラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、オキサジアゾール環、イソオキサジアゾール環、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、イソチアジアゾール環等が挙げられる。
、A及びBで表される5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環は、置換基を有していてもよく、当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、シクロアルケニル基(2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アルキニル基(エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(2−ピロール基、2−フリル基、2−チエニル基、ピロール基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、ピラゾリノン基、ピリジル基、ピリジノン基、2−ピリミジニル基、トリアジン基、ピラゾール基、1,2,3−トリアゾール基、1,2,4−トリアゾール基、オキサゾール基、イソオキサゾール基、1,2,4−オキサジアゾール基、1,3,4−オキサジアゾール基、チアゾール基、イソチアゾール基、1,2,4−チオジアゾール基、1,3,4−チアジアゾール基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アシルオキシ基(ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等)、アミノ基(アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等)、スルファモイル基(N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N′−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等)、スルホ基、アシル基(アセチル基、ピバロイルベンゾイル基等)、カルバモイル基(カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等)等の各基が挙げられる。
前記一般式(1)において、A、A及びBは、ベンゼン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環を表すことが、光学特性の変動効果に優れ、かつ耐久性に優れた位相差フィルムが得られるために好ましい。
前記一般式(1)において、T及びTは、それぞれ独立に、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環を表す。これらの中で、ピラゾール環、トリアゾール環又はイミダゾール環であることが、湿度変動に対するリターデーションの変動抑制効果に特に優れ、かつ耐久性に優れた樹脂組成物が得られるために好ましく、ピラゾール環であることが特に好ましい。T及びT2で表されるピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環、イミダゾール環は、互変異性体であってもよい。ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環の具体的な構造を下記に示す。
Figure 0006493213
式中、※は一般式(1)におけるL、L、L又はLとの結合位置を表す。Rは水素原子又は非芳香族置換基を表す。Rで表される非芳香族置換基としては、前記一般式(1)におけるAが有してもよい置換基のうちの非芳香族置換基と同様の基を挙げることができる。Rで表される置換基が芳香族基を有する置換基の場合、AとT又はBとTがねじれやすくなり、A、B及びTがセルロースアセテートとの相互作用を形成できなくなるため、光学的特性の変動を抑制することが難しい。光学的特性の変動抑制効果を高めるためには、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアシル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
前記一般式(1)において、T及びTは置換基を有してもよく、当該置換基としては、前記一般式(1)におけるA及びAが有してもよい置換基と同様の基を挙げることができる。
前記一般式(1)において、L、L、L及びLは、それぞれ独立に、単結合又は、2価の連結基を表し、2個以下の原子を介して、5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が連結されている。2個以下の原子を介してとは、連結基を構成する原子のうち連結される置換基間に存在する最小の原子数を表す。連結原子数2個以下の2価の連結基としては、特に制限はないが、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、O、(C=O)、NR、S、(O=S=O)からなる群より選ばれる2価の連結基であるか、それらを2個組み合わせた連結基を表す。Rは、水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基の例には、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、芳香族炭化水素環基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ピリジル基等)、シアノ基等が含まれる。L、L、L及びLで表される2価の連結基は置換基を有してもよく、置換基としては特に制限はないが、例えば、前記一般式(1)におけるA及びAが有してもよい置換基と同様の基を挙げることができる。
前記一般式(1)において、L、L、L及びLは、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物の平面性が高くなることで、水を吸着する樹脂との相互作用が強くなり、光学的特性の変動が抑制されるため、単結合又は、O、(C=O)−O、O−(C=O)、(C=O)−NR又はNR−(C=O)であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
前記一般式(1)において、nは0〜5の整数を表す。nが2以上の整数を表すとき、前記一般式(1)における複数のA、T、L、Lは同じであってもよく、異なっていてもよい。nが大きい程、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物と水を吸着する樹脂との相互作用が強くなることで光学的特性の変動抑制効果が優れ、nが小さいほど、水を吸着する樹脂との相溶性が優れる。このため、nは1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
〈一般式(2)で表される構造を有する化合物〉
一般式(1)で表される構造を有する化合物は、一般式(2)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
Figure 0006493213
(式中、A、A、T、T、L、L、L及びLは、それぞれ前記一般式(1)におけるA、A、T、T、L、L、L及びLと同義である。A及びTは、それぞれ一般式(1)におけるA及びTと同様の基を表す。L及びLは、前記一般式(1)におけるLと同様の基を表す。mは0〜4の整数を表す。)
mが小さい方がセルロースアセテートとの相溶性に優れるため、mは0〜2の整数であることが好ましく、0〜1の整数であることがより好ましい。
<一般式(1.1)で表される構造を有する化合物>
一般式(1)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(1.1)で表される構造を有するトリアゾール化合物であることが好ましい。
Figure 0006493213
(式中、A、B、L及びLは、上記一般式(1)におけるA、B、L及びLと同様の基を表す。kは、1〜4の整数を表す。Tは、1,2,4−トリアゾール環を表す。)
さらに、上記一般式(1.1)で表される構造を有するトリアゾール化合物は、下記一般式(1.2)で表される構造を有するトリアゾール化合物であることが好ましい。
Figure 0006493213
(式中、Zは、下記一般式(1.2a)の構造を表す。qは、2〜3の整数を表す。少なくとも二つのZは、ベンゼン環に置換された少なくとも一つのZに対してオルト位又はメタ位に結合する。)
Figure 0006493213
(式中、R10は水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。pは1〜5の整数を表す。*はベンゼン環との結合位置を表す。Tは1,2,4−トリアゾール環を表す。)
前記一般式(1)、(2)、(1.1)又は(1.2)で表される構造を有する化合物は、水和物、溶媒和物若しくは塩を形成してもよい。なお、本発明において、水和物は有機溶媒を含んでいてもよく、また溶媒和物は水を含んでいてもよい。即ち、「水和物」及び「溶媒和物」には、水と有機溶媒のいずれも含む混合溶媒和物が含まれる。塩としては、無機又は有機酸で形成された酸付加塩が含まれる。無機酸の例として、ハロゲン化水素酸(塩酸、臭化水素酸など)、硫酸、リン酸などが含まれ、またこれらに限定されない。また、有機酸の例には、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、アルキルスルホン酸(メタンスルホン酸など)、アリルスルホン酸(ベンゼンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸など)などが挙げられ、またこれらに限定されない。これらのうち好ましくは、塩酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩である。
塩の例としては、親化合物に存在する酸性部分が、金属イオン(例えばアルカリ金属塩、例えばナトリウム又はカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム又はマグネシウム塩、アンモニウム塩アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアルミニウムイオンなど)により置換されるか、あるいは有機塩基(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペリジン、など)と調整されたときに形成される塩が挙げられ、またこれらに限定されない。これらのうち好ましくはナトリウム塩、カリウム塩である。
溶媒和物が含む溶媒の例には、一般的な有機溶剤のいずれも含まれる。具体的には、アルコール(例、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブタノール)、エステル(例、酢酸エチル)、炭化水素(例、トルエン、ヘキサン、ヘプタン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、ニトリル(例、アセトニトリル)、ケトン(アセトン)などが挙げられる。好ましくは、アルコール(例、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブタノール)の溶媒和物である。これらの溶媒は、前記化合物の合成時に用いられる反応溶媒であっても、合成後の晶析精製の際に用いられる溶媒であってもよく、又はこれらの混合であってもよい。
また、2種類以上の溶媒を同時に含んでもよいし、水と溶媒を含む形(例えば、水とアルコール(例えば、メタノール、エタノール、t−ブタノールなど)など)であってもよい。
なお、前記一般式(1)、(2)、(1.1)又は(1.2)で表される構造を有する化合物を、水や溶媒、塩を含まない形態で添加しても、本発明における樹脂組成物又は位相差フィルム中において、水和物、溶媒和物又は塩を形成してもよい。
前記一般式(1)、(2)、(1.1)又は(1.2)で表される構造を有する化合物の分子量は特に制限はないが、小さいほど樹脂との相溶性に優れ、大きいほど環境湿度の変化に対する光学値の変動抑制効果が高いため、150〜2000であることが好ましく、200〜1500であることがより好ましく、300〜1000であることがより好ましい。
さらに、本発明に係る含窒素複素環化合物は、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物であることが特に好ましい。
Figure 0006493213
(式中Aはピラゾール環を表し、Ar及びArはそれぞれ芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表し、置換基を有してもよい。Rは水素原子、アルキル基、アシル基、スルホニル基、又はアルキルオキシカルボニル基をす。qは1又は2を表し、n及びmは1〜3の整数を表す。)
Ar及びArで表される芳香族炭化水素環又は芳香族複素環は、それぞれ一般式(1)で挙げた5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環であることが好ましい。また、Ar及びArの置換基としては、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物で示したのと同様な置換基が挙げられる。
の具体例としては、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、アシル基(アセチル基、ピバロイルベンゾイル基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基)等が挙げられる。
qは1又は2を表し、n及びmは1〜3の整数を表す。
以下に、本発明に用いられる5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物の具体例を例示する。中でも前記一般式(1)、(2)、(1.1)、(1.2)で表される構造を有する化合物が好ましく、さらに一般式(3)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。本発明で用いることができる前記5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物は、以下の具体例によって何ら限定されることはない。なお、前述のように、以下の具体例は互変異性体であってもよく、水和物、溶媒和物又は塩を形成していてもよい。
Figure 0006493213
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次に、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物の合成方法について説明する。
前記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、公知の方法で合成することができる。前記一般式(1)で表される構造を有する化合物において、1,2,4−トリアゾール環を有する化合物は、いかなる原料を用いても構わないが、ニトリル誘導体又はイミノエーテル誘導体と、ヒドラジド誘導体を反応させる方法が好ましい。反応に用いる溶媒としては、原料と反応しないと溶媒であれば、いかなる溶媒でも構わないが、エステル系(例えば、酢酸エチル、酢酸メチル等)、アミド系(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、エーテル系(エチレングリコールジメチルエーテル等)、アルコール系(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等)、芳香族炭化水素系(例えば、トルエン、キシレン等)、水を挙げられることができる。使用する溶媒として、好ましくは、アルコール系溶媒である。また、これらの溶媒は、混合して用いても良い。
溶媒の使用量は、特に制限はないが、使用するヒドラジド誘導体の質量に対して、0.5〜30倍量の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは、1.0〜25倍量であり、特に好ましくは、3.0〜20倍量の範囲内である。
ニトリル誘導体とヒドラジド誘導体を反応させる場合、触媒を使用しなくても構わないが、反応を加速させるために触媒を使用する方が好ましい。使用する触媒としては、酸を用いても良く、塩基を用いても良い。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等が挙げられ、好ましくは塩酸である。酸は、水に希釈して添加しても良く、ガスを系中に吹き込む方法で添加しても良い。塩基としては、無機塩基(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)及び有機塩基(ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、カリウムエチラート、ナトリウムブチラート、カリウムブチラート、ジイソプロピルエチルアミン、N,N′−ジメチルアミノピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−メチルモルホリン、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、ピリジン等)のいずれを用いて良く、無機塩基としては、炭酸カリウムが好ましく、有機塩基としては、ナトリウムエチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウムブチラートが好ましい。無機塩基は、粉体のまま添加しても良く、溶媒に分散させた状態で添加しても良い。また、有機塩基は、溶媒に溶解した状態(例えば、ナトリウムメチラートの28%メタノール溶液等)で添加しても良い。
触媒の使用量は、反応が進行する量であれば特に制限はないが、形成されるトリアゾール環に対して1.0〜5.0倍モルの範囲内が好ましく、更に1.05〜3.0倍モルの範囲内が好ましい。
イミノエーテル誘導体とヒドラジド誘導体を反応させる場合は、触媒を用いる必要がなく、溶媒中で加熱することにより目的物を得ることができる。
反応に用いる原料、溶媒及び触媒の添加方法は、特に制限がなく、触媒を最後に添加しても良く、溶媒を最後に添加しても良い。また、ニトリル誘導体を溶媒に分散若しくは溶解させ、触媒を添加した後、ヒドラジド誘導体を添加する方法も好ましい。
反応中の溶液温度は、反応が進行する温度であればいかなる温度でも構わないが、好ましくは、0〜150℃の範囲内であり、更に好ましくは、20〜140℃の範囲内である。また、生成する水を除去しながら、反応を行っても良い。
反応溶液の処理方法は、いかなる手段を用いても良いが、塩基を触媒として用いた場合は、反応溶液に酸を加えて中和する方法が好ましい。中和に用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸又は酢酸等が挙げられるが、特に好ましくは酢酸である。中和に使用する酸の量は、反応溶液のpHが4〜9になる範囲であれば特に制限はないが、使用する塩基に対して、0.1〜3倍モルが好ましく、特に好ましくは、0.2〜1.5倍モルの範囲内である。
反応溶液の処理方法として、適当な有機溶媒を用いて抽出する場合、抽出後に有機溶媒を水で洗浄した後、濃縮する方法が好ましい。ここでいう適当な有機溶媒とは、酢酸エチル、トルエン、ジクロロメタン、エーテル等非水溶性の溶媒、又は、前記非水溶性の溶媒とテトラヒドロフラン又はアルコール系溶媒との混合溶媒のことであり、好ましくは酢酸エチルである。
一般式(1)で表される構造を有する化合物を晶析させる場合、特に制限はないが、中和した反応溶液に水を追加して晶析させる方法、若しくは、一般式(1)で表される構造を有する化合物が溶解した水溶液を中和して晶析させる方法が好ましい。
例えば、例示化合物1は以下のスキームによって合成することができる。
(例示化合物1の合成)
Figure 0006493213
n−ブタノール350mlにベンゾニトリル77.3g(75.0mmol)、ベンゾイルヒドラジン34.0g(25.0mmol)、炭酸カリウム107.0g(77.4mmol)を加え、窒素雰囲気下、120℃で24時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、析出物を濾過後、濾液を減圧下で濃縮した。濃縮物にイソプロパノール20mlを加え、析出物を濾取した。濾取した析出物をメタノール80mlに溶解し、純水300mlを加え、溶液のpHが7になるまで酢酸を滴下した。析出した結晶を濾取後、純水で洗浄し、50℃で送風乾燥することにより、例示化合物1を38.6g得た。収率は、ベンゾイルヒドラジン基準で70%であった。
得られた例示化合物1のH−NMRスペクトルは以下のとおりである。
H−NMR(400MHz、溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):7.56−7.48(6H、m)、7.62−7.61(4H、m)
(例示化合物6の合成)
例示化合物6は以下のスキームによって合成することができる。
Figure 0006493213
n−ブタノール40mlに1,3−ジシアノベンゼン2.5g(19.5mmol)、ベンゾイルヒドラジン7.9g(58.5mmol)、炭酸カリウム9.0g(68.3mmol)を加え、窒素雰囲気下、120℃で24時間撹拌した。反応液を冷却後、純水40mlを加え、室温で3時間撹拌した後、析出した固体を濾別し、純水で洗浄した。得られた固体に水及び酢酸エチルを加えて分液し、有機層を純水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた粗結晶をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン)で精製し、例示化合物6を5.5g得た。収率は、1,3−ジシアノベンゼン基準で77%であった。
得られた例示化合物6のH−NMRスペクトルは以下のとおりである。
H−NMR(400MHz、溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):8.83(1H、s)、8.16〜8.11(6H、m)、7.67−7.54(7H、m)
(例示化合物176の合成)
例示化合物176は以下のスキームによって合成することができる。
Figure 0006493213
脱水テトラヒドロフラン520mlにアセトフェノン80g(0.67mol)、イソフタル酸ジメチル52g(0.27mol)を加え、窒素雰囲気下、氷水冷で撹拌しながら、ナトリウムアミド52.3g(1.34mol)を少しずつ滴下した。氷水冷下で3時間撹拌した後、水冷下で12時間撹拌した。反応液に濃硫酸を加えて中和した後、純水及び酢酸エチルを加えて分液し、有機層を純水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた粗結晶にメタノールを加えて懸濁洗浄することにより、中間体Aを55.2g得た。
テトラヒドロフラン300ml、エタノール200mlに中間体A55g(0.15mol)を加え、室温で撹拌しながら、ヒドラジン1水和物18.6g(0.37mol)を少しずつ滴下した。滴下終了後、12時間加熱還流した。反応液に純水及び酢酸エチルを加えて分液し、有機層を純水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた粗結晶をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン)で精製することによって、例示化合物176を27g得た。
得られた例示化合物176のH−NMRスペクトルは以下のとおりである。なお、互変異性体の存在により、ケミカルシフトが複雑化するのを避けるために、測定溶媒にトリフルオロ酢酸を数滴加えて測定を行った。
H−NMR(400MHz、溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):8.34(1H、s)、7.87〜7.81(6H、m)、7.55〜7.51(1H、m)、7.48−7.44(4H、m)、7.36−7.33(2H、m)、7.29(1H、s)
その他の化合物についても同様の方法によって合成が可能である。
〈一般式(1)〜(3)で表される構造を有する化合物の使用方法について〉
本発明に係る前記一般式(1)〜(3)で表される構造を有する化合物は、適宜量を調整して位相差フィルムに含有することができるが、添加量としては位相差フィルム中に、0.1〜10質量%含むことが好ましく、特に、1〜5質量%含むことが好ましく、2〜5質量%含むことが特に好ましい。添加量はセルロースアセテートの種類、当該化合物の種類によって異なるものであるが、本発明の位相差フィルムが所望のリターデーション値を有し、かつ順波長分散性を示す添加量によって最適値を決定することができる。この範囲内であれば、本発明の位相差フィルムの機械強度を損なうことなく、環境湿度の変化に依存したリターデーションの変動を低減することができる。
また、前記一般式(1)〜(3)で表される構造を有する化合物の添加方法としては、位相差フィルムを形成する樹脂に粉体で添加しても良く、溶媒に溶解した後、位相差フィルムを形成する樹脂に添加しても良い。
本発明の位相差フィルムには、前記含窒素複素環化合物以外に、糖エステル、重縮合エステルをリターデーション調整剤、リターデーション安定剤として含有することが好ましい。
〈糖エステル〉
本発明に係る糖エステルとしては、ピラノース環又はフラノース環の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基の全て若しくは一部をエステル化した糖エステルであることが好ましい。
本発明に係る糖エステルとは、フラノース環又はピラノース環の少なくともいずれかを含む化合物であり、単糖であっても、糖構造が2〜12個連結した多糖であってもよい。そして、糖エステルは、糖構造が有するOH基の少なくとも一つがエステル化された化合物が好ましい。本発明に係る糖エステルにおいては、平均エステル置換度が、4.0〜8.0の範囲内であることが好ましく、5.0〜7.5の範囲内であることがより好ましい。
本発明に係る糖エステルとしては、特に制限はないが、下記一般式(A)で表される構造を有する糖エステルを挙げることができる。
一般式(A)
(HO)−G−(O−C(=O)−R
上記一般式(A)において、Gは、単糖類又は二糖類の残基を表し、Rは、脂肪族基又は芳香族基を表し、mは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合しているヒドロキシ基の数の合計であり、nは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R)基の数の合計であり、3≦m+n≦8であり、n≠0である。
一般式(A)で表される構造を有する糖エステルは、ヒドロキシ基の数(m)、−(O−C(=O)−R)基の数(n)が固定された単1種の化合物として単離することは困難であり、式中のm、nの異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られている。したがって、ヒドロキシ基の数(m)、−(O−C(=O)−R)基の数(n)が各々変化した混合物としての性能が重要であり、本発明の位相差フィルムの場合、平均エステル置換度が、5.0〜7.5の範囲内である糖エステルが好ましい。
上記一般式(A)において、Gは単糖類又は二糖類の残基を表す。単糖類の具体例としては、例えばアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソースなどが挙げられる。
以下に、一般式(A)で表される構造を有する糖エステルの単糖類残基を有する化合物の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物に限定されるものではない。
Figure 0006493213
また、二糖類残基の具体例としては、例えば、トレハロース、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、イソトレハロース等が挙げられる。
以下に、一般式(A)で表される構造を有する糖エステルの二糖類残基を有する化合物の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物に限定されるものではない。
Figure 0006493213
一般式(A)において、Rは、脂肪族基又は芳香族基を表す。ここで、脂肪族基及び芳香族基は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。
また、一般式(A)において、mは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合しているヒドロキシ基の数の合計であり、nは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R)基の数の合計である。そして、3≦m+n≦8であることが必要であり、4≦m+n≦8であることが好ましい。また、n≠0である。なお、nが2以上である場合、−(O−C(=O)−R)基は互いに同じでもよいし異なっていてもよい。
の定義における脂肪族基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数1〜25のものが好ましく、1〜20のものがより好ましく、2〜15のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、アミル、iso−アミル、tert−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビシクロオクチル、アダマンチル、n−デシル、tert−オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ジデシル等の各基が挙げられる。
また、Rの定義における芳香族基は、芳香族炭化水素基でもよいし、芳香族複素環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニル等の各環が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環が特に好ましい。芳香族複素環基としては、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のうち少なくとも一つを含む環が好ましい。複素環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン等の各環が挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環が特に好ましい。
次に、一般式(A)で表される糖エステルの好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの例示する化合物に限定されるものではない。
糖エステルは一つの分子中に二つ以上の異なった置換基を含有していても良く、芳香族置換基と脂肪族置換基を1分子内に含有、異なる二つ以上の芳香族置換基を1分子内に含有、異なる二つ以上の脂肪族置換基を1分子内に含有することができる。
また、2種類以上の糖エステルを混合して含有することも好ましい。芳香族置換基を含有する糖エステルと、脂肪族置換基を含有する糖エステルを同時に含有することも好ましい。
Figure 0006493213
Figure 0006493213
〈合成例:一般式(A)で表される糖エステルの合成例〉
以下に、本発明に好適に用いることのできる糖エステルの合成の一例を示す。
Figure 0006493213
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖を34.2g(0.1モル)、無水安息香酸を180.8g(0.8モル)、ピリジンを379.7g(4.8モル)、それぞれ仕込み、撹拌下で窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×10Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエンを1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液を300g添加し、50℃で30分間撹拌した後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水を100g添加し、常温で30分間水洗した後、トルエン層を分取し、減圧下(4×10Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4及びA−5の混合物を得た。得られた混合物をHPLC及びLC−MASSで解析したところ、A−1が7質量%、A−2が58質量%、A−3が23質量%、A−4が9質量%、A−5が3質量%で、糖エステルの平均エステル置換度が、6.57であった。なお、得られた混合物の一部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA−1、A−2、A−3、A−4及びA−5を得た。
当該糖エステルの添加量は、セルロースアセテートに対して0.1〜20質量%の範囲で添加することが好ましく、1〜15質量%の範囲で添加することがより好ましい。
また、糖エステルの50質量%トルエン溶液における色相APHAが10〜300の範囲内であることが好ましく、さらに10〜40の範囲であることがより好ましい。
〈重縮合エステル〉
本発明の位相差フィルムは、下記一般式(4)で表される構造を有する重縮合エステルを用いることが、フィルム物性以外にリターデーション調整剤として機能するため、好ましい。
当該重縮合エステルはその可塑的な効果から、本発明の位相差フィルムにおいては、1〜30質量%の範囲で含有することが好ましく、2〜20質量%の範囲で含有することがより好ましく、更に好ましくは3〜10質量%の範囲である。
一般式(4)
−(G−A)−G−B
上記一般式(4)において、B及びBは、それぞれ独立に脂肪族又は芳香族モノカルボン酸残基、若しくはヒドロキシ基を表す。Gは、炭素数2〜12のアルキレングリコール残基、炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基を表す。Aは、炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。nは1以上の整数を表す。
本発明において、重縮合エステルは、ジカルボン酸とジオールを反応させて得られる繰り返し単位を含む重縮合エステルであり、Aは重縮合エステル中のカルボン酸残基を表し、Gはアルコール残基を表す。
重縮合エステルを構成するジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又は脂環式ジカルボン酸であり、好ましくは芳香族ジカルボン酸である。ジカルボン酸は、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。特に芳香族、脂肪族を混合させることが好ましい。
重縮合エステルを構成するジオールは、芳香族ジオール、脂肪族ジオール又は脂環式ジオールであり、好ましくは脂肪族ジオールであり、より好ましくは炭素数1〜4のジオールである。ジオールは、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
中でも、少なくとも芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、炭素数1〜8のジオールとを反応させて得られる繰り返し単位を含むことが好ましく、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸とを含むジカルボン酸と、炭素数1〜8のジオールとを反応させて得られる繰り返し単位を含むことがより好ましい。
重縮合エステルの分子の両末端は、封止されていても、封止されていなくてもよい。
一般式(4)のAを構成するアルキレンジカルボン酸の具体例としては、1,2−エタンジカルボン酸(コハク酸)、1,3−プロパンジカルボン酸(グルタル酸)、1,4−ブタンジカルボン酸(アジピン酸)、1,5−ペンタンジカルボン酸(ピメリン酸)、1,8−オクタンジカルボン酸(セバシン酸)などから誘導される2価の基が含まれる。Aを構成するアルケニレンジカルボン酸の具体例としては、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。Aを構成するアリールジカルボン酸の具体例としては、1,2−ベンゼンジカルボン酸(フタル酸)、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
Aは、1種類であっても、2種類以上が組み合わされてもよい。中でも、Aは、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸と炭素原子数8〜12のアリールジカルボン酸との組み合わせが好ましい。
一般式(4)中のGは、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基、炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基、又は炭素原子数4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基を表す。
における炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、及び1,12−オクタデカンジオール等から誘導される2価の基が含まれる。
における炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基の例には、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)などから誘導される2価の基が含まれる。Gにおける炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどから誘導される2価の基が含まれる。
は、1種類であっても、2種類以上が組み合わされてもよい。中でも、Gは、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基が好ましく、2〜5がさらに好ましく、2〜4が最も好ましい。
一般式(4)におけるB及びBは、各々芳香環含有モノカルボン酸又は脂肪族モノカルボン酸から誘導される1価の基、若しくはヒドロキシ基である。
芳香環含有モノカルボン酸から誘導される1価の基における芳香環含有モノカルボン酸は、分子内に芳香環を含有するカルボン酸であり、芳香環がカルボキシ基と直接結合したものだけでなく、芳香環がアルキレン基などを介してカルボキシ基と結合したものも含む。芳香環含有モノカルボン酸から誘導される1価の基の例には、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、フェニル酢酸、3−フェニルプロピオン酸などから誘導される1価の基が含まれる。中でも安息香酸、パラトルイル酸が好ましい。
脂肪族モノカルボン酸から誘導される1価の基の例には、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸などから誘導される1価の基が含まれる。中でも、アルキル部分の炭素原子数が1〜3であるアルキルモノカルボン酸から誘導される1価の基が好ましく、アセチル基(酢酸から誘導される1価の基)がより好ましい。
本発明に係る重縮合エステルの重量平均分子量は、500〜3000の範囲であることが好ましく、600〜2000の範囲であることがより好ましい。重量平均分子量は前記ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
以下、一般式(4)で表される構造を有する重縮合エステルの具体例を示すが、これに限定されるものではない。
Figure 0006493213
Figure 0006493213
Figure 0006493213
以下、上記説明した重縮合エステルの具体的な合成例について記載する。
〈重縮合エステルP1〉
エチレングリコール180g、無水フタル酸278g、アジピン酸91g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応のエチレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP1を得た。酸価0.20、数平均分子量450であった。
〈重縮合エステルP2〉
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸103g、アジピン酸244g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、下記重縮合エステルP2を得た。酸価0.10、数平均分子量450であった。
Figure 0006493213
〈重縮合エステルP3〉
1,4−ブタンジオール330g、無水フタル酸244g、アジピン酸103g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,4−ブタンジオールを減圧留去することにより、重縮合エステルP3を得た。酸価0.50、数平均分子量2000であった。
〈重縮合エステルP4〉
1,2−プロピレングリコール251g、テレフタル酸354g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP4を得た。酸価0.10、数平均分子量400であった。
〈重縮合エステルP5〉
1,2−プロピレングリコール251g、テレフタル酸354g、p−トロイル酸680g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、下記重縮合エステルP5を得た。酸価0.30、数平均分子量400であった。
Figure 0006493213
〈重縮合エステルP6〉
180gの1,2−プロピレングリコール、292gのアジピン酸、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中200℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP6を得た。酸価0.10、数平均分子量400であった。
〈重縮合エステルP7〉
180gの1,2−プロピレングリコール、無水フタル酸244g、アジピン酸103g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中200℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP7を得た。酸価0.10、数平均分子量320であった。
〈重縮合エステルP8〉
エチレングリコール251g、無水フタル酸244g、コハク酸120g、酢酸150g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中200℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応のエチレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP8を得た。酸価0.50、数平均分子量1200であった。
〈重縮合エステルP9〉
上記重縮合エステルP2と同様の製造方法で、反応条件を変化させて、酸価0.10、数平均分子量315の重縮合エステルP9を得た。
<その他の添加剤>
本発明の位相差フィルムは、前記添加剤の他に、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤等を含有することも好ましい。
〈多価アルコールエステル〉
本発明の位相差フィルムにおいては、可塑剤として多価アルコールエステルを含有することも好ましい。
多価アルコールエステルは2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる化合物であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(5)で表される。
一般式(5) R11−(OH)
ただし、R11はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/又はフェノール性ヒドロキシ基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースアセテートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
Figure 0006493213
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本発明に用いられる多価アルコールエステルは、位相差フィルムに対して0.5〜5質量%の範囲で含有することが好ましく、1〜3質量%の範囲で含有することがより好ましく、1〜2質量%の範囲で含有することが特に好ましい。
本発明に用いられる多価アルコールエステルは、従来公知の一般的な合成方法に従って合成することができる。
〈リン酸エステル〉
本発明の位相差フィルムは、可塑剤としてリン酸エステルを用いることができる。リン酸エステルとしては、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等が挙げることができる。
具体的なリン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
〈グリコール酸のエステル類〉
また、本発明においては、多価アルコールエステル類の1種として、グリコール酸のエステル類(グリコレート化合物)を用いることができる。
本発明に適用可能なグリコレート化合物としては、特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えば、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられ、好ましくはエチルフタリルエチルグリコレートである。
〈紫外線吸収剤〉
本発明の位相差フィルムは、偏光板の視認側やバックライト側に用いられることが好ましいことから、紫外線吸収機能を付与することを目的として、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系又はサリチル酸フェニルエステル系等の紫外線吸収剤が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
なお、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、昇華しにくいか、あるいは高沸点で揮発しにくく、フィルムの高温乾燥時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる観点から好ましい。
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、例えば、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が、特に好ましい。
これら紫外線吸収剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン社製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビンシリーズ、あるいは2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](分子量659;市販品の例としては、株式会社ADEKA製のLA31)を好ましく使用できる。
上記紫外線吸収剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、一般には、セルロースアセテートに対して、0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲で添加される。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアセテート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
〈酸化防止剤〉
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に液晶表示装置などが置かれた場合には、位相差フィルムの劣化が起こる場合がある。
酸化防止剤は、例えば、位相差フィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等により位相差フィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、本発明の位相差フィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、位相差フィルムに対して質量割合で1ppm〜1.0%の範囲が好ましく、10〜1000ppmの範囲が更に好ましい。
〈剥離促進剤〉
本発明の位相差フィルムには、剥離促進剤を含むことが、より剥離性と高める観点から好ましい。剥離促進剤は、例えば、0.001〜1質量%の割合で含めることができ、0.5質量%以下の添加であれば剥離剤のフィルムからの分離等が発生し難いため好ましく、0.005質量%以上であれば所望の剥離低減効果を得ることができるため好ましいため、0.005〜0.5質量%の割合で含めることが好ましく、0.01〜0.3質量%の割合で含めることがより好ましい。剥離促進剤としては、公知のものが採用でき、有機、無機の酸性化合物、界面活性剤、キレート剤等を使用することができる。中でも、多価カルボン酸及びそのエステルが効果的であり、特に、クエン酸のエチルエステル類が効果的に使用することができる。
〈微粒子(マット剤)〉
位相差フィルムは、表面の滑り性を高めるため、必要に応じて微粒子(マット剤)をさらに含有してもよい。
微粒子は、無機微粒子であっても有機微粒子であってもよい。無機微粒子の例には、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムなどが含まれる。中でも、二酸化ケイ素や酸化ジルコニウムが好ましく、得られるフィルムのヘイズの増大を少なくするためには、より好ましくは二酸化ケイ素である。
二酸化ケイ素の微粒子の例には、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKE−P10、KE−P30、KE−P50、KE−P100(以上日本触媒(株)製)などが含まれる。中でも、アエロジルR972V、NAX50、シーホスターKE−P30などが、得られるフィルムの濁度を低く保ちつつ、摩擦係数を低減させるため特に好ましい。
微粒子の一次粒子径は、5〜50nmの範囲であることが好ましく、7〜20nmの範囲であることがより好ましい。一次粒子径が大きい方が、得られるフィルムの滑り性を高める効果は大きいが、透明性が低下しやすい。そのため、微粒子は、粒子径0.05〜0.3μmの範囲の二次凝集体として含有されていてもよい。微粒子の一次粒子又はその二次凝集体の大きさは、透過型電子顕微鏡にて倍率50〜200万倍で一次粒子又は二次凝集体を観察し、一次粒子又は二次凝集体100個の粒子径の平均値として求めることができる。
微粒子の含有量は、位相差フィルムを形成する樹脂に対して0.05〜1.0質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜0.8質量%の範囲であることがより好ましい。
≪位相差フィルムの製造方法≫
本発明の位相差フィルムの製造方法としては、通常のインフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点から製膜方法は、溶液流延製膜法と溶融流延製膜法が選択でき、特に溶液流延製膜法であることが、均一で平滑な表面を得ることができる観点から好ましい。
(A)溶液流延製膜法
以下、本発明の位相差フィルムを溶液流延法で製造する製造例について説明する。
本発明の位相差フィルムの製造は、セルロースアセテート、含窒素複素環化合物及びその他の添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状若しくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸する工程、更に乾燥する工程、及び冷却後巻き取る工程により行われる。本発明の位相差フィルムは固形分中に好ましくはセルロースアセテートを60〜95質量%の範囲で含有するものである。
(1)溶解工程
セルロースアセテートに対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で当該セルロースアセテート、場合によって、本発明に係る含窒素複素環化合物、糖エステル、重縮合エステル、その他可塑剤等を撹拌しながら溶解しドープを形成する工程、あるいは当該セルロースアセテート溶液に、本発明に係る含窒素複素環化合物、糖エステル、重縮合エステル等のその他の化合物溶液を混合して主溶解液であるドープを形成する工程である。
本発明の位相差フィルムを溶液流延法で製造する場合、ドープを形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースアセテート及びその他の化合物を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができ、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用することができる。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の範囲の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ないときは非塩素系有機溶媒系でのセルロースアセテート及びその他の化合物の溶解を促進する役割もある。本発明の位相差フィルムの製膜においては、得られる位相差フィルムの平面性を高める点から、アルコール濃度が0.5〜15.0質量%の範囲内にあるドープを用いて製膜する方法を適用することができる。
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、セルロースアセテート及びその他の化合物を、計15〜45質量%の範囲で溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からメタノール及びエタノールが好ましい。
セルロースアセテート、含窒素複素環化合物、糖エステル、重縮合エステル、及び多価アルコールエステル等のその他の化合物の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載されている高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
ドープ中のセルロースアセテートの濃度は、10〜40質量%の範囲であることが好ましい。溶解中又は後のドープに化合物を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
濾過は捕集粒子径0.5〜5μmで、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることが好ましい。
この方法では、粒子分散時に残存する凝集物や主ドープ添加時発生する凝集物を、捕集粒子径0.5〜5μmで、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることで凝集物だけ除去できる。主ドープでは粒子の濃度も添加液に比べ十分に薄いため、濾過時に凝集物同士がくっついて急激な濾圧上昇することもない。
図1は、本発明に好ましい溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程の一例を模式的に示した図である。
仕込釜41より濾過器44で大きな凝集物を除去し、ストック釜42へ送液する。その後、ストック釜42より主ドープ溶解釜1へ各種添加液を添加する。
その後、主ドープは主濾過器3にて濾過され、これに紫外線吸収剤添加液が16よりインライン添加される。
多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。
返材とは、位相差フィルムを細かく粉砕した物で、位相差フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでフィルムの規定値を越えた位相差フィルム原反が使用される。
また、ドープ調製に用いられる樹脂の原料としては、あらかじめセルロースアセテート及びその他の化合物などをペレット化したものも、好ましく用いることができる。
(2)流延工程
(2−1)ドープの流延
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ30に送液し、無限に移送する無端の金属支持体31、例えば、ステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mの範囲、好ましくは1.5〜3mの範囲、さらに好ましくは2〜2.8mの範囲とすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下、さらに好ましくは−30〜0℃の範囲に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃の範囲が更に好ましい。あるいは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。
(3)溶媒蒸発工程
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブという。)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が、乾燥効率が良く好ましい。また、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
面品質、透湿性、剥離性の観点から、30〜120秒以内で当該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
(4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃の範囲であり、さらに好ましくは11〜30℃の範囲である。
なお、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により50〜120質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるツレや縦スジが発生しやすいため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。
ウェブの残留溶媒量は下記式(Z)で定義される。
式(Z)
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
金属支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mの範囲内であるが、剥離の際に皺が入りやすい場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましい。
本発明においては、当該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃の範囲内とするのが好ましく、10〜40℃の範囲内がより好ましく、15〜30℃の範囲内とするのが最も好ましい。
(5)乾燥及び延伸工程
乾燥工程は予備乾燥工程、本乾燥工程に分けて行うこともできる。
〈予備乾燥工程〉
金属支持体から剥離して得られたウェブを乾燥させる。ウェブの乾燥は、ウェブを、上下に配置した多数のローラーにより搬送しながら乾燥させてもよいし、テンター乾燥機のようにウェブの両端部をクリップで固定して搬送しながら乾燥させてもよい。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は好ましくはフィルムのガラス転移点−5℃以下、100℃以上で10分以上60分以下の熱処理を行うことが効果的である。乾燥温度は100〜200℃の範囲内、更に好ましくは110〜160℃の範囲内で乾燥が行われる。
〈延伸工程〉
本発明の位相差フィルムは、所望のリターデーションを付与するために、MD方向(長手方向ともいう。)及び/又はTD方向(幅手方向ともいう。)に延伸することが好ましく、少なくともテンター延伸装置によって、TD方向に延伸して製造することが好ましい。
当該延伸は、一軸延伸又は二軸延伸とすることができ、二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方の方向の張力を緩和して収縮させる態様も含まれる。
本発明のセルロースアセテートフィルムは、延伸後の膜厚が所望の範囲になるようにMD方向及び/又はTD方向に、好ましくはTD方向に、フィルムのガラス転移温度をTgとしたときに、(Tg+15)〜(Tg+50)℃の温度範囲で延伸することが好ましい。上記温度範囲で延伸すると、リターデーションの調整がしやすく、また延伸応力を低下できるのでヘイズが低くなる。また、破断の発生を抑制し、平面性、フィルム自身の着色性に優れた偏光板位相差フィルムが得られる。延伸温度は、(Tg+20)〜(Tg+40)℃の範囲で行うことが好ましい。
なお、ここでいうガラス転移温度Tgとは、市販の示差走査熱量測定器を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
具体的な位相差フィルムのガラス転移温度Tgの測定方法は、JIS K7121(1987)に従って、セイコーインスツル(株)製の示差走査熱量計DSC220を用いて測定する。
本発明の位相差フィルムは、ウェブを少なくともTD方向に1.1倍以上延伸することが好ましい。延伸の範囲は、元幅に対して1.1〜1.5倍であることが好ましく、1.05〜1.3倍であることがより好ましい。上記範囲内であれば、フィルム中の分子の移動が大きく、所望のリターデーション値が得られるばかりではなく、フィルムの寸法変化の挙動を所望の範囲内に制御することができる。
さらに、当該延伸は製膜した後残留溶剤量が40質量%以上であるときに該フィルムをMD方向に延伸を開始することが好ましく、残留溶剤量が40質量%未満であるときにTD方向に延伸することが好ましい。
MD方向に延伸するために、剥離張力を130N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは150〜170N/mである。剥離後のウェブは高残留溶剤状態であるため、剥離張力と同様の張力を維持することで、MD方向への延伸を行うことができる。ウェブが乾燥し、残留溶剤量が減少するにしたがって、MD方向への延伸率は低下する。
なお、MD方向の延伸倍率は、ベルト支持体の回転速度とテンター運転速度から算出できる。
TD方向に延伸するには、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップ又はピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が好ましく用いられる。
本発明の位相差フィルムは延伸することにより必然的にリターデーションを有するが、面内リターデーション値Ro、及び厚さ方向のリターデーション値Rthは自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃・55%RHの環境下、590nmの波長において、三次元屈折率測定を行い、得られた屈折率nx、ny、nzから算出することができる。
本発明の位相差フィルムは、下記式(i)で定義される面内方向のリターデーション値Roが40〜70nmの範囲内であり、下記式(ii)で定義される厚さ方向のリターデーション値Rthが100〜300nmの範囲内であることが、VAモード型液晶表示装置に具備された場合に視認性を向上する観点から好ましい。本発明の位相差フィルムは、本発明に係るセルロースアセテート及び含窒素複素環化合物を含有し、少なくとも前記TD方向に延伸倍率を調整しながら延伸することで、上記リターデーション値の範囲内に調整することができる。
式(i):Ro=(n−n)×d(nm)
式(ii):Rth={(n+n)/2−n}×d(nm)〔式(i)及び式(ii)において、nは、フィルムの面内方向において屈折率が最大になる方向xにおける屈折率を表す。nは、フィルムの面内方向において、前記方向xと直交する方向yにおける屈折率を表す。nは、フィルムの厚さ方向zにおける屈折率を表す。dは、フィルムの厚さ(nm)を表す。〕
〈ナーリング加工〉
所定の熱処理又は冷却処理の後、巻取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。更に、幅手両端部にはナーリング加工をすることが好ましい。
ナーリング加工は、加熱されたエンボスローラーを押し当てることにより形成することができる。エンボスローラーには細かな凹凸が形成されており、これを押し当てることでフィルムに凹凸を形成し、端部を嵩高くすることができる。
本発明の位相差フィルムの幅手両端部のナーリングの高さは4〜20μm、幅5〜20mmが好ましい。
また、本発明においては、上記のナーリング加工は、フィルムの製膜工程において乾燥終了後、巻取りの前に設けることが好ましい。
(6)巻取り工程
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
巻取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使い分ければよい。
(B)溶融流延法
本発明の位相差フィルムを溶融流延法で製造する方法は、B1)溶融ペレットを製造する工程(ペレット化工程)、B2)溶融ペレットを溶融混練した後、押し出す工程(溶融押出し工程)、B3)溶融樹脂を冷却固化してウェブを得る工程(冷却固化工程)、B4)ウェブを延伸する工程(延伸工程)、を含む。
B1)ペレット化工程
位相差フィルムの主成分であるセルロースアセテートを含む組成物は、あらかじめ混練してペレット化しておくことが好ましい。ペレット化は、公知の方法で行うことができ、例えば前述のセルロースアセテートと、必要に応じて可塑剤等の添加剤とを含む樹脂組成物を、押出機にて溶融混錬した後、ダイからストランド状に押し出す。ストランド状に押し出された溶融樹脂を、水冷又は空冷した後、カッティングしてペレットを得ることができる。
ペレットの原材料は、分解を防止するために、押出機に供給する前に乾燥しておくことが好ましい。
酸化防止剤と熱可塑性樹脂の混合は、固体同士で混合してもよいし、溶剤に溶解させた酸化防止剤を熱可塑性樹脂に含浸させて混合してもよいし、酸化防止剤を熱可塑性樹脂に噴霧して混合してもよい。また、押出機のフィーダー部分やダイの出口部分の周辺の雰囲気は、ペレットの原材料の劣化を防止するため等から、除湿した空気又は窒素ガス等の雰囲気とすることが好ましい。
押出機では、樹脂の劣化(分子量の低下、着色、ゲルの生成等)が生じないように、低いせん断力又は低い温度で混練することが好ましい。例えば、二軸押出機で混練する場合、深溝タイプのスクリューを用いて、二つのスクリューの回転方向を同方向にすることが好ましい。均一に混錬するためには、二つのスクリュー形状が互いに噛み合うようにすることが好ましい。
B2)溶融押出し工程
得られた溶融ペレットと、必要に応じて他の添加剤とを、ホッパーから押出機に供給する。ペレットの供給は、ペレットの酸化分解を防止するため等から、真空下、減圧下又は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。そして、押出機にて、フィルム材料である溶融ペレット、必要に応じて他の添加剤を溶融混練する。
押出機内のフィルム材料の溶融温度は、フィルム材料の種類にもよるが、フィルムのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、好ましくはTg〜(Tg+100)℃の範囲内であり、より好ましくは(Tg+10)〜(Tg+90)℃の範囲内である。
さらに、可塑剤や微粒子等の添加剤を、押出機の途中で添加する場合、これらの成分を均一に混合するために、押出機の下流側に、スタチックミキサー等の混合装置をさらに配置してもよい。
押出機から押し出された溶融樹脂を、必要に応じてリーフディスクフィルター等で濾過した後、スタチックミキサー等でさらに混合して、ダイからフィルム状に押し出す。
押出し流量は、ギヤポンプを用いて安定化させることが好ましい。また、異物の除去に用いるリーフディスクフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターであることが好ましい。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合わせた上で圧縮し、接触箇所を焼結して一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
ダイの出口部分における樹脂の溶融温度は、200〜300℃程度の範囲内とし得る。
B3)冷却固化工程
ダイから押し出された樹脂を、冷却ローラーと弾性タッチローラーとでニップして、フィルム状の溶融樹脂を所定の厚さにする。そして、フィルム状の溶融樹脂を、複数の冷却ローラーで段階的に冷却して固化させる。
冷却ローラーの表面温度は、得られたフィルムのガラス転移温度をTg(℃)としたとき、Tg(℃)以下とし得る。複数の冷却ローラーの表面温度は異なっていてもよい。
弾性タッチローラーは挟圧回転体ともいう。弾性タッチローラーは、市販のものを用いることもできる。弾性タッチローラー側のフィルム表面温度は、フィルムのTg〜(Tg+110)℃の範囲とし得る。
冷却ローラーから固化したフィルム状の溶融樹脂を剥離ローラー等で剥離してウェブを得る。フィルム状の溶融樹脂を剥離する際は、得られたウェブの変形を防止するために、張力を調整することが好ましい。
B4)延伸工程
得られたウェブを、延伸機にて延伸してフィルムを得る。延伸は、ウェブの幅方向、搬送方向又は斜め方向のいずれかに行う。
ウェブの延伸方法、延伸倍率及び延伸温度は、前述と同様とし得る。
<位相差フィルムの物性>
(ヘイズ)
本発明の位相差フィルムは、ヘイズが1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましい。ヘイズを1%未満とすることにより、フィルムの透明性がより高くなり、光学用途のフィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。ヘイズは、JIS K7136に準じて、ヘイズメーター(NDH2000型、日本電色工業(株)製)を用いて測定することができる。
(平衡含水率)
本発明の位相差フィルムは、25℃、相対湿度60%における平衡含水率が4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。平衡含水率を4%以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性や寸法がより変化しにくく好ましい。平衡含水率は、試料フィルムを23℃、相対湿度20%に調湿された部屋に4時間以上放置した後、23℃80%RHに調湿された部屋に24時間放置し、サンプルを微量水分計(例えば三菱化学(株)製、CA−20型)を用いて、温度150℃で水分を乾燥・気化させた後、カールフィッシャー法により定量する。
(フィルム長、幅、膜厚)
本発明の位相差フィルムは、長尺であることが好ましく、具体的には、100〜10000m程度の長さであることが好ましく、ロール状に巻き取られる。また、本発明の位相差フィルムの幅は1m以上であることが好ましく、更に好ましくは1.4m以上であり、特に1.4〜4mであることが好ましい。
フィルムの膜厚は、表示装置の薄型化、生産性の観点から、10〜100μmの範囲内であることが好ましい。膜厚が10μm以上であれば、一定以上のフィルム強度やリターデーションを発現させることができる。膜厚が100μm以下であれば、熱や湿度によるリターデーションの変動を抑えることができる。好ましくは、20〜70μmの範囲内である。
フィルムの膜厚ムラは、厚さ方向又は幅方向のいずれも0〜5μmの範囲内が好ましく、より好ましくは0〜3μmの範囲内であり、さらに好ましくは0〜2μmの範囲内である。
<偏光板>
本発明の偏光板は、本発明の位相差フィルムが、水糊又は活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて、少なくとも偏光子の一方の面に貼合されていることが好ましい。
また、前記偏光子の前記位相差フィルムが貼合されている面とは反対側の面に、ポリエステルフィルム又はアクリルフィルムが、水糊又は活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて偏光子と貼合されていることが、湿度に対するリターデーションの変動をより小さくすることから、好ましい。
本発明の偏光板が視認側の偏光板として用いられる場合は、偏光板の視認側のフィルムは、防眩層あるいはクリアハードコート層、反射防止層、帯電防止層、防汚層等を設けることが好ましい。
〔偏光子〕
本発明の偏光板の主たる構成要素である偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
偏光子としては、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行った偏光子が用いられ得る。偏光子の膜厚は2〜30μmが好ましく、特に2〜15μmであることが好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、ケン化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。中でも、熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能及び耐久性能に優れている上に、色ムラが少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
〈積層フィルム型の偏光子〉
また、本発明の偏光板は薄膜とすることが好ましく、偏光子の厚さは2〜15μmの範囲内であることが、偏光板の強度と薄膜化を両立する観点から特に好ましい。
このような薄膜の偏光子としては、特開2011−100161号公報、特許第4691205号公報、特許4751481号公報、特許第4804589号公報に記載の方法で、積層フィルム型の偏光子を作製することが好ましい。
一例として、以下の工程によって製造される薄膜の積層フィルム型の偏光子(偏光性積層フィルム)を用いることが、偏光板の全体の厚さを薄くして軽量化できる観点から好ましい。
(偏光性積層フィルムの製造方法)
本発明に用いられる偏光性積層フィルムの製造方法は下記工程を含む。
(a)熱可塑性樹脂にゴム成分が分散されてなる基材フィルムの一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る積層工程、
(b)積層フィルムを一軸延伸して延伸フィルムを得る延伸工程、
(c)延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色して、染色フィルムを得る染色工程、
(d)染色フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を、架橋剤を含む溶液に浸漬して偏光子層を形成し、架橋フィルムを得る架橋工程、及び
(e)架橋フィルムを乾燥する乾燥工程
以下、各工程を説明すると、
(a)積層工程
本工程では、熱可塑性樹脂にゴム成分が分散(ブレンド分散)されてなるフィルムを基材フィルムとして、その一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得ることが好ましい。
(1)基材フィルム
基材フィルムのベースとなる熱可塑性樹脂は、透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂であることが好ましい。このような熱可塑性樹脂の具体例を挙げれば、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル系樹脂;セルロースアシレート系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;酢酸ビニル系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;及びこれらの混合物又は共重合物などが挙げられる。
熱可塑性樹脂に分散されるゴム成分はゴム弾性を有する樹脂成分であり、通常、ゴム粒子として熱可塑性樹脂中に均一に分散される。ゴム成分を混合分散させることにより、基材フィルム、ひいては延伸フィルムの引き裂き強度を向上させることができる。ゴム成分は、ゴム弾性を有する樹脂である限り特に制限されないが、熱可塑性樹脂との相溶性の観点から、用いる熱可塑性樹脂と同種あるいは類似の樹脂から構成されることが好ましい。
例えば、熱可塑性樹脂が鎖状ポリオレフィン系樹脂である場合、ゴム成分は、エチレン及びα−オレフィンから選択される2種以上のモノマーの共重合体であることができる。この場合において、当該共重合体を構成する各モノマーの含有量(重合比率)は、90質量%未満であることが好ましく、80質量%未満であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂である場合、相溶性の観点から、ゴム成分としてゴム弾性を有するアクリル系重合体を含有することが好ましい。アクリル系重合体は、アクリル酸アルキルを主体とする重合体であるのがよく、アクリル酸アルキルの単独重合体であってもよいし、アクリル酸アルキル50質量%以上と他のモノマー50質量%以下との共重合体であってもよい。
ゴム成分の配合量は、好ましくは熱可塑性樹脂の5〜50質量%であり、より好ましくは10〜45質量%である。ゴム成分の配合量が少なすぎると、十分な引き裂き強度向上効果が得られにくい傾向にあり、ゴム成分の配合量が多すぎると、基材フィルムの取扱い性が低下する傾向にある。
ゴム成分の熱可塑性樹脂への分散方法は特に限定されず、例えば別々に作製した熱可塑性樹脂とゴム成分(ゴム粒子)をプラストミル等で混練して分散させる方法や、熱可塑性樹脂調製時に同じ反応容器内でゴム成分も調製してゴム成分が分散された熱可塑性樹脂を得るリアクターブレンド法などを挙げることができる。リアクターブレンド法は、ゴム成分の分散程度を向上させる上で有利である。
(2)ポリビニルアルコール系樹脂層
ポリビニルアルコール系樹脂層を形成するポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂及びその誘導体が挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールなどの他、ポリビニルアルコール樹脂をエチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどで変性したものが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール樹脂を用いるのが好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂は、完全ケン化品であることが好ましい。ケン化度の範囲は、好ましくは80.0〜100.0モル%の範囲であり、より好ましくは90.0〜99.5モル%の範囲であり、さらに好ましくは94.0〜99.0モル%の範囲である。
上述のポリビニルアルコール系樹脂には、必要に応じて、可塑剤、界面活性剤等の添加剤が添加されてもよい。可塑剤としては、ポリオール及びその縮合物などを用いることができ、例えばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどが例示される。添加剤の配合量は特に制限されないが、ポリビニルアルコール系樹脂の20質量%以下とするのが好適である。
ポリビニルアルコール系樹脂溶液を基材フィルムに塗工する方法としては、ワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などの公知の方法から適宜選択できる。乾燥温度は、例えば50〜200℃の範囲であり、好ましくは60〜150℃の範囲である。乾燥時間は、例えば2〜20分の範囲である。
積層フィルムにおけるポリビニルアルコール系樹脂層の厚さは、3μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上45μm以下がより好ましい。3μm以下であると延伸後に薄くなりすぎて染色性が著しく悪化してしまい、50μmを超えると、得られる偏光性積層フィルムが厚くなる。
本発明に用いる偏光子としてのポリビニルアルコール系樹脂層の厚さは、薄膜化と偏光子としての強度、柔軟性の観点から、下記延伸処理後の膜厚として2〜15μmの範囲内であることが好ましい。
(b)延伸工程
本工程は、基材フィルム及びポリビニルアルコール系樹脂層を備える積層フィルムを一軸延伸して延伸フィルムを得る工程である。積層フィルムの延伸倍率は、所望する偏光特性に応じて適宜選択することができるが、好ましくは積層フィルムの元長に対して5〜17倍の範囲内であり、より好ましくは5〜8倍の範囲内である。
延伸は、積層フィルムの長手方向(フィルム搬送方向)に延伸を行う縦延伸であることが好ましい。縦延伸方式としては、ローラー間延伸方法、圧縮延伸方法、テンターを用いた延伸方法などが挙げられる。なお、一軸延伸は、縦延伸処理に限定されることはなく、斜め延伸等であってもよい。
(c)染色工程
本工程は、延伸フィルムのポリビニルアルコール樹脂層を、二色性色素で染色して染色フィルムを得る工程である。二色性色素としては、例えば、ヨウ素や有機染料などが挙げられる。有機染料としては、例えば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックなどが使用できる。これらの二色性物質は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
二色性色素としてヨウ素を使用する場合、染色効率をより一層向上できることから、さらにヨウ化物を、ヨウ素を含有する染色溶液に添加することが好ましい。このヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化スズ、ヨウ化チタンなどが挙げられる。
(d)架橋工程
本工程は、二色性色素で染色させて得られた染色フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層に対して架橋処理を行い、ポリビニルアルコール系樹脂層を偏光子層とする架橋フィルムを得る工程である。架橋工程は、例えば架橋剤を含む溶液(架橋溶液)中に染色フィルムを浸漬することにより行うことができる。架橋剤としては、従来公知の物質を使用することができる。例えば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物や、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(e)乾燥工程
得られた架橋フィルムは、通常、洗浄を行った後、乾燥される。これにより偏光性積層フィルムが得られる。洗浄は、イオン交換水、蒸留水などの純水に架橋フィルムを浸漬することにより行うことができる。水洗浄温度は、通常3〜50℃の範囲、好ましくは4〜20℃の範囲である。浸漬時間は、通常2〜300秒間の範囲、好ましくは5〜240秒間である。洗浄は、ヨウ化物溶液による洗浄処理と水洗浄処理とを組み合わせてもよく、適宜にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノール等の液体アルコールを配合した溶液を用いることもできる。
乾燥方法としては、任意の適切な方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)を採用しうる。例えば、加熱乾燥の場合の乾燥温度は、通常20〜95℃の範囲であり、乾燥時間は、通常1〜15分間程度である。
偏光性積層フィルムは、二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂層からなる偏光子層を備えるものであり、これ自体偏光板として用いることができる。本発明の好ましい実施態様としては、上記工程によって偏光性積層フィルムを形成した後、当該偏光性積層フィルムの前記ポリビニルアルコール層を基材フィルムから剥離することによって、当該ポリビニルアルコール層を本発明に係る偏光子として用いることである。本発明の方法によれば、偏光子層の厚さを15μm以下にすることが可能であるため、薄型の偏光子を得ることができる。また、本発明に用いられる偏光子は、偏光性能及び耐久性にも優れる。
〔偏光板の作製〕
本発明の偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の位相差フィルムの偏光子側をアルカリケン化処理し、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(水糊)を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には他の偏光板保護フィルムを貼合することができる。本発明の位相差フィルムは液晶表示装置とされた際に、偏光子の液晶セル側に設けられることが好ましく、偏光子の外側のフィルムは従来の偏光板保護フィルムを用いることができる。
例えば、従来の偏光板保護フィルムとしては、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC6UY、KC6UA、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタ(株)製)が好ましく用いられる。
[活性エネルギー線硬化性接着剤]
また、本発明の偏光板においては、本発明の位相差フィルムと偏光子とが、活性エネルギー線硬化性接着剤により貼合されていることも好ましい。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、下記紫外線硬化型接着剤を用いることが好ましい。
本発明においては、位相差フィルムと偏光子との貼合に紫外線硬化型接着剤を適用することにより、薄膜でも強度が高く、平面性に優れた偏光板を得ることができる。
〈紫外線硬化型接着剤の組成〉
偏光板用の紫外線硬化型接着剤組成物としては、光ラジカル重合を利用した光ラジカル重合型組成物、光カチオン重合を利用した光カチオン重合型組成物、並びに光ラジカル重合及び光カチオン重合を併用したハイブリッド型組成物が知られている。
光ラジカル重合型組成物としては、特開2008−009329号公報に記載のヒドロキシ基やカルボキシ基等の極性基を含有するラジカル重合性化合物及び極性基を含有しないラジカル重合性化合物を特定割合で含む組成物)等が知られている。特に、ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の好ましい例には、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が含まれる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物の例には、N置換(メタ)アクリルアミド系化合物、(メタ)アクリレート系化合物などが含まれる。(メタ)アクリルアミドは、アクリアミド又はメタクリアミドを意味する。
また、光カチオン重合型組成物としては、特開2011−028234号公報に開示されているような、(α)カチオン重合性化合物、(β)光カチオン重合開始剤、(γ)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤、及び(δ)ナフタレン系光増感助剤の各成分を含有する紫外線硬化型接着剤組成物が挙げられる。ただし、これ以外の紫外線硬化型接着剤が用いられてもよい。
(1)前処理工程
前処理工程は、位相差フィルムの偏光子との接着面に易接着処理を行う工程である。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。
(紫外線硬化型接着剤の塗布工程)
紫外線硬化型接着剤の塗布工程としては、偏光子と位相差フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、上記紫外線硬化型接着剤を塗布する。偏光子又は位相差フィルムの表面に直接、紫外線硬化型接着剤を塗布する場合、その塗布方法に特段の限定はない。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の湿式塗布方式が利用できる。また、偏光子と位相差フィルムの間に、紫外線硬化型接着剤を流延させたのち、ローラー等で加圧して均一に押し広げる方法も利用できる。
(2)貼合工程
上記の方法により紫外線硬化型接着剤を塗布した後は、貼合工程で処理される。この貼合工程では、例えば、先の塗布工程で偏光子の表面に紫外線硬化型接着剤を塗布した場合、そこに位相差フィルムが重ね合わされる。また、はじめに位相差フィルムの表面に紫外線硬化型接着剤を塗布する方式の場合には、そこに偏光子が重ね合わされる。また、偏光子と位相差フィルムの間に紫外線硬化型接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子と位相差フィルムとが重ね合わされる。そして、通常は、この状態で両面の位相差フィルム側から加圧ローラー等で挟んで加圧することになる。加圧ローラーの材質は、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置される加圧ローラーは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
(3)硬化工程
硬化工程では、未硬化の紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射して、カチオン重合性化合物(例えば、エポキシ化合物やオキセタン化合物)やラジカル重合性化合物(例えば、アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物等)を含む紫外線硬化型接着剤層を硬化させ、紫外線硬化型接着剤を介して重ね合わせた偏光子と位相差フィルムを接着させる。偏光子の片面に位相差フィルムを貼合する場合、活性エネルギー線は、偏光子側又は位相差フィルム側のいずれから照射してもよい。また、偏光子の両面に位相差フィルムを貼合する場合、偏光子の両面にそれぞれ紫外線硬化型接着剤を介して位相差フィルムを重ね合わせた状態で、紫外線を照射し、両面の紫外線硬化型接着剤を同時に硬化させるのが有利である。
紫外線の照射条件は、本発明に適用する紫外線硬化型接着剤を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。紫外線の照射量は積算光量で50〜1500mJ/cmの範囲であることが好ましく、100〜500mJ/cmの範囲であるのがさらに好ましい。
偏光板の製造工程を連続ラインで行う場合、ライン速度は、接着剤の硬化時間によるが、好ましくは1〜500m/minの範囲、より好ましくは5〜300m/minの範囲、さらに好ましくは10〜100m/minの範囲である。ライン速度が1m/min以上であれば、生産性を確保することができ、又は位相差フィルムへのダメージを抑制することができ、耐久性に優れた偏光板を作製することができる。また、ライン速度が500m/min以下であれば、紫外線硬化型接着剤の硬化が十分となり、目的とする硬度を備え、接着性に優れた紫外線硬化型接着剤層を形成することができる。
〔ポリエステルフィルム及びアクリルフィルム〕
前記偏光子の前記位相差フィルムが貼合されている面とは反対側の面に、ポリエステルフィルム又はアクリルフィルムが、水糊又は活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて偏光子と貼合されていることが、湿度変動に対する耐久性の高い偏光板が得られる観点から、好ましい態様である。貼合は、前記水糊でも活性エネルギー線硬化性接着剤である紫外線硬化型接着剤のどちらでも使用することができるが、本発明の効果の観点からは紫外線硬化型接着剤を用いることが好ましい。
本発明において、外側フィルム(偏光板保護フィルム)を透湿性が低いポリエステルフィルム又はアクリルフィルム、内側フィルム(位相差フィルム)を、本発明の湿度変動に対するリターデーションの変動が改善された位相差フィルムとする構成にすると、外部からの水分の影響を少なくすることができ、かつ内部の水分を放出しやすくなって、総合的に偏光板の湿度変動に対する耐久性が向上した、偏光板が得られるものと推定される。
(1)ポリエステルフィルム
ポリエステルフィルムを形成するポリエステル樹脂は特に限定されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカジカルボン酸等のジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等のジオールを、それぞれ1種を重縮合してなるホモポリマー、又はジカルボン酸1種以上とジオール2種以上を重縮合してなる共重合体、あるいはジカルボン酸2種以上とジオールを1種以上重縮合してなる共重合体、及びこれらのホモポリマーや共重合体を2種以上ブレンドしてなるブレンド樹脂のいずれかのポリエステル樹脂を挙げることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましく用いられる。また、上記の樹脂を混合して用いることもできる。
ポリエステルフィルムは、例えば上記のポリエステル樹脂をフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させてフィルムを形成させる方法等によって得られる。本発明の偏光板におけるポリエステルフィルムとしては、無延伸フィルム、延伸フィルムのいずれも用いることができる。例えば、複屈折が小さいものが要求される場合には無延伸フィルムを好適に用いることができる。また、複屈折を液晶表示装置の光学補償に用いる場合等においては、延伸フィルムを好適に用いることができる。また、延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムは強度の点からも好適に用いられる。
ポリエステルフィルムは、TACフィルムに比べ耐久性に優れるが、TACフィルムと異なり複屈折性を有しやすいため、これを偏光板保護フィルムとして用いた場合、斜め方向から観察すると虹状の色ムラが生じ、画質が低下する。
このため、ポリエステルフィルムは、3000〜30000nmの面内方向のリターデーション値を有するポリエステルフィルムであることが好ましい。このとき前記液晶セルに対して出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光板保護フィルムが、3000〜30000nmのリターデーション値を有するポリエステルフィルムであることが好ましい。また、前記ポリエステルフィルムの面内方向のリターデーション値Roと厚さ方向のリターデーション値Rthとの比の値(Ro/Rth)が0.200以上であることが好ましい。このような構成とすることで、いずれの観察角度においても透過光のスペクトルは光源に近似したスペクトルを得ることが可能となり、虹状の色ムラが無い良好な視認性を確保することができる。また、薄膜化に適した機械的強度を備えることができる。
このようなポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを用いることができるが、他の共重合成分を含んでも構わない。これらの樹脂は透明性に優れるとともに、熱的、機械的特性にも優れており、延伸加工によって容易にリターデーション値を制御することができる。特に、ポリエチレンテレフタレートは固有複屈折が大きく、フィルムの厚さが薄くても比較的容易に大きなリターデーション値が得られるので、最も好適な素材である。
なお、上記リターデーション値は、二軸方向の屈折率と厚さを測定して求めることがで、KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社)、Axometrics社製Axoscanといった市販の自動複屈折測定装置を用いて求めることもできる。
ポリエステルフィルムは、一般的なポリエステルフィルムの製造方法に従って製造することができる。例えば、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後、テンターにより横方向に延伸し、熱処理を施す方法が挙げられる。
本発明に係るポリエステルフィルムは一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであっても構わないが、二軸延伸フィルムを偏光板保護フィルムとして用いた場合、フィルム面の真上から観察しても虹状の色ムラが見られないが、斜め方向から観察した時に虹状の色ムラが観察される場合があるので注意が必要である。
この現象は、二軸延伸フィルムが、走行方向、幅方向、厚さ方向で異なる屈折率を有する屈折率楕円体からなり、フィルム内部での光の透過方向により面内方向のリターデーションがゼロになる(屈折率楕円体が真円に見える)方向が存在するためである。したがって、液晶表示画面を斜め方向の特定の方向から観察すると、面内方向のリターデーション値がゼロになる点を生じる場合があり、その点を中心として虹状の色ムラが同心円状に生じることとなる。そして、フィルム面の真上(法線方向)から虹状の色ムラが見える位置までの角度をθとすると、この角度θは、フィルム面内の複屈折が大きいほど大きくなり、虹状の色ムラは見え難くなる。二軸延伸フィルムでは角度θが小さくなる傾向があるため、一軸延伸フィルムの方が虹状の色ムラは見え難くなり好ましい。
しかしながら、完全な一軸性(一軸対称性)フィルムでは配向方向と直行する方向の機械的強度が著しく低下するので好ましくない。本発明に係るポリエステルフィルムは、実質的に虹状の色ムラを生じない範囲、又は液晶表示画面に求められる視野角範囲において虹状の色ムラを生じない範囲で、二軸性(二軸対称)を有していることが好ましい。
偏光板保護フィルムの機械的強度を保持しつつ、色ムラの発生を抑制する手段として、偏光板保護フィルムのリターデーション(面内方向のリターデーション)値と厚さ方向のリターデーション(Rth)値との比の値が特定の範囲に収まるように制御することが好ましい。面内リターデーションと厚さ方向リターデーションの差が小さいほど、観察角度による複屈折の作用は等方性を増すため、観察角度によるリターデーションの変化が小さくなる。そのため、観察角度による虹状の色ムラが発生し難くなると考えられる。
本発明に係るポリエステルフィルムの面内方向のリターデーション値Roと厚さ方向のリターデーション値Rthの比の値(Ro/Rth)は、好ましくは0.200以上、より好ましくは0.500以上、さらに好ましくは0.600以上である。上記面内方向のリターデーション値Roと厚さ方向のリターデーション値Rthの比(Ro/Rth)が大きいほど、複屈折の作用は等方性を増し、観察角度による虹状の色ムラの発生が生じ難くなる。そして、完全な一軸性(一軸対称)フィルムでは上記面内方向のリターデーション値Roと厚さ方向のリターデーション値Rthの比の値(Ro/Rth)は2.0となる。しかし、前述のように完全な一軸性(一軸対称)フィルムに近づくにつれ配向方向と直行する方向の機械的強度が著しく低下する。
一方、本発明に係るポリエステルフィルムの面内方向のリターデーション値Roと厚さ方向のリターデーション値Rthの比の値(Ro/Rth)は、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下である。観察角度による虹状の色ムラ発生を完全に抑制するためには、上記面内方向のリターデーション値Roと厚さ方向リターデーション値Rthの比の値(Ro/Rth)が2.0である必要は無く、1.2以下で十分である。また、上記比率が1.0以下であっても、液晶表示装置に求められる視野角特性(左右180度、上下120度程度)を満足することは十分可能である。
本発明に係るポリエステルフィルムの製膜条件を具体的に説明すると、縦延伸温度、横延伸温度は80〜130℃が好ましく、特に好ましくは90〜120℃の範囲内である。縦延伸倍率は1.0〜3.5倍が好ましく、特に好ましくは1.0倍〜3.0倍の範囲内である。また、横延伸倍率は2.5〜6.0倍が好ましく、特に好ましくは3.0〜5.5倍の範囲内である。リターデーションを上記範囲に制御するためには、縦延伸倍率と横延伸倍率の比率を制御することが好ましい。縦横の延伸倍率の差が小さすぎるとリターデーションを高くすることが難しくなり好ましくない。また、延伸温度を低く設定することもリターデーションを高くする上では好ましい対応である。続く熱処理においては、処理温度は100〜250℃が好ましく、特に好ましくは180〜245℃の範囲内である。
リターデーションの変動を抑制するためには、フィルムの厚さムラが小さいことが好ましい。延伸温度、延伸倍率はフィルムの厚さムラに大きな影響を与えることから、厚さムラの観点からも製膜条件の最適化を行う必要がある。特にリターデーションを高くするために縦延伸倍率を低くすると、縦厚さムラが悪くなることがある。縦厚さムラは延伸倍率のある特定の範囲で非常に悪くなる領域があることから、この範囲を外したところで製膜条件を設定することが望ましい。
フィルムの厚さムラは5.0%以下であることが好ましく、4.5%以下であることがさらに好ましく、4.0%以下であることがよりさらに好ましく、3.0%以下であることが特に好ましい。
前述のように、フィルムのリターデーション値を特定範囲に制御するためには、延伸倍率や延伸温度、フィルムの厚さを適宜設定することにより行うことができる。例えば、延伸倍率が高いほど、延伸温度が低いほど、フィルムの厚さが厚いほど高いリターデーション値を得やすくなる。逆に、延伸倍率が低いほど、延伸温度が高いほど、フィルムの厚さが薄いほど低いリターデーション値を得やすくなる。ただし、フィルムの厚さを厚くすると、厚さ方向のリターデーション値が大きくなりやすい。そのため、フィルム厚さは後述の範囲に適宜設定することが望ましい。また、リターデーション値の制御に加えて、加工に必要な物性等を勘案して最終的な製膜条件を設定する必要がある。
本発明に係るポリエステルフィルムの厚さは任意であるが、15〜300μmの範囲が好ましく、より好ましくは15〜200μmの範囲である。15μmを下回る厚さのフィルムでも、原理的には3000nm以上のリターデーション値を得ることは可能である。しかし、その場合にはフィルムの力学特性の異方性が顕著となり、裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下する。特に好ましい厚さの下限は25μmである。一方、ポリエステルフィルムの厚さの上限は、300μmを超えると偏光板の厚さが厚くなりすぎてしまい好ましくない。ポリエステルフィルムとしての実用性の観点からは厚さの上限は200μmが好ましい。特に好ましい厚さの上限は一般的なTACフィルムと同等程度の100μmである。上記厚さ範囲においてもリターデーション値を本発明の範囲に制御するために、フィルム基材として用いるポリエステルはポリエチレンタレフタレートが好適である。
本発明に係るポリエステルフィルムには、種々の添加剤を用いてもよい。他の添加剤としては、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、フッ素系界面活性剤、剥離剤、マット剤、劣化防止剤、光学異方性制御剤、赤外線吸収剤等が挙げられ、必要に応じ適宜使用することができる。
(2)アクリルフィルム
アクリルフィルム(以下、アクリル樹脂フィルムともいう。)に含有されるアクリル樹脂は、(メタ)アクリル樹脂を意味し、アクリル樹脂とメタクリル系樹脂の両方を含む概念である。以下、アクリル樹脂について説明する。
アクリル樹脂は、上述したように(メタ)アクリル樹脂であり、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体を意味する。メタクリル酸エステルの重合体としては、例えば、メタクリル酸アルキルを主体とする重合体からなるものが好ましい。メタクリル酸アルキルの単量体組成は、全単量体の合計100質量%を基準として、メタクリル酸アルキルが、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、かつメタクリル酸アルキルが99質量%以下である。なお、アクリル樹脂としては、メタクリル酸アルキルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸アルキル50質量%以上とメタクリル酸アルキル以外の単量体50質量%以下との共重合体であってもよい。メタクリル酸アルキルとしては、通常、そのアルキル基の炭素数が1〜4のものが用いられ、中でもメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
また、メタクリル酸アルキル以外の単量体は、分子内に1個の重合性炭素−炭素二重結合を有する単官能単量体であってもよいし、分子内に2個以上の重合性炭素−炭素二重結合を有する多官能単量体であってもよい。特に、単官能単量体が好ましく用いられ、その例としては、アクリル酸メチルやアクリル酸エチルのようなアクリル酸アルキル、さらには本発明の効果を損なわない範囲で、スチレンやアルキルスチレンのようなスチレン系単量体、アクリロニトリルやメタクリロニトリルのような不飽和ニトリルが挙げられる。共重合成分としてアクリル酸アルキルを用いる場合、その炭素数は通常1〜8である。
また、アクリル樹脂としては、グルタルイミド誘導体、グルタル酸無水物誘導体、ラクトン環構造などを有しないことが好ましい。これらのアクリル樹脂は、アクリル樹脂フィルムとして十分な機械強度や耐湿熱性が得られない場合がある。
本発明においては、ドープ中の有機溶媒の含有量を少なくでき、乾燥時間の短縮ができ、かつ形成するフィルムの面状に優れるという観点から、本発明に適用するアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、80000以上であることが好ましく、更には、積層したときのフィルム面状を更に改良することができる観点から、アクリル樹脂の重量平均分子量としては、100000〜4000000の範囲であることが好ましい。
アクリル樹脂の重量平均分子量の上限は、粘度が過度に高くなることなく溶液流延適性を維持でき、また、ドープ調製時に有機溶媒や添加剤との相溶性を確保することができるという理由から、上限としては4000000とすることが好ましい。
本発明に用いられるアクリル樹脂の重量平均分子量は、前記ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
アクリルフィルムの柔軟性を向上させてハンドリング性を高めるため、アクリル樹脂にはゴム弾性体粒子を配合していることが好ましい。ゴム弾性体粒子は、ゴム弾性体を含有する粒子であり、ゴム弾性体のみからなる粒子であってもよいし、ゴム弾性体の層を有する多層構造の粒子であってもよい。ゴム弾性体としては、例えば、オレフィン系弾性重合体、ジエン系弾性重合体、スチレン−ジエン系弾性共重合体、アクリル系弾性重合体が挙げられる。中でも、アクリル樹脂フィルムの表面硬度や耐光性、透明性の点からは、アクリル系弾性重合体が好ましい。
アクリル系弾性重合体は、アクリル酸アルキルを主体とする重合体であるのが好ましく、アクリル酸アルキルの単独重合体であってもよいし、アクリル酸アルキル50質量%以上とアクリル酸アルキル以外の単量体50質量%以下との共重合体であってもよい。アクリル酸アルキルとしては、通常、そのアルキル基の炭素数が4〜8のものが用いられる。また、アクリル酸アルキル以外の単量体の例としては、メタクリル酸メチルやメタクリル酸エチルのようなメタクリル酸アルキル、スチレンやアルキルスチレンのようなスチレン系単量体、アクリロニトリルやメタクリロニトリルのような不飽和ニトリル等の単官能単量体や、(メタ)アクリル酸アリルや(メタ)アクリル酸メタリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、マレイン酸ジアリルのような二塩基酸のジアルケニルエステル、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル等の多官能単量体が挙げられる。
アクリル系弾性重合体を含有するゴム弾性体粒子は、アクリル系弾性重合体の層を有する多層構造の粒子であることが好ましく、アクリル系弾性重合体の外側にメタクリル酸アルキルを主体とする重合体の層を有する2層構造のものであってもよいし、更にアクリル系弾性重合体の内側にメタクリル酸アルキルを主体とする重合体の層を有する3層構造のものであってもよい。なお、アクリル系弾性重合体の外側又は内側に形成される層を構成するメタクリル酸アルキルを主体とする重合体の単量体組成の例は、先にアクリル樹脂の例として挙げたメタクリル酸アルキルを主体とする重合体の単量体組成の例と同様である。このような多層構造のアクリル系ゴム弾性体粒子は、例えば特公昭55−27576号公報に記載の方法により、製造することができる。
ゴム弾性体粒子としては、その中に含まれるゴム弾性体の数平均粒径が10〜300nmのものを使用することができる。これにより、接着剤を用いてアクリル樹脂フィルムを偏光フィルムに積層したときに、アクリル樹脂フィルムを接着剤層から剥がれ難くすることができる。このゴム弾性体の数平均粒径は、好ましくは50nm以上、250nm以下である。
最外層がメタクリル酸メチルを主体とする重合体であり、その中にアクリル系弾性重合体が包み込まれているゴム弾性体粒子においては、それを母体のアクリル樹脂に混合すると、ゴム弾性体粒子の最外層が母体のアクリル樹脂と混和する。このため、その断面において、酸化ルテニウムによるアクリル系弾性重合体への染色を施し、電子顕微鏡で観察した場合、そのゴム弾性体粒子が、最外層を除いた状態の粒子として観察することができる。具体的には、内層がアクリル系弾性重合体であり、外層がメタクリル酸メチルを主体とする重合体である2層構造のゴム弾性体粒子を用いた場合には、内層のアクリル系弾性重合体部分が染色されて単層構造の粒子として観察される。また、最内層がメタクリル酸メチルを主体とする重合体であり、中間層がアクリル系弾性重合体であり、最外層がメタクリル酸メチルを主体とする重合体である3層構造のゴム弾性体粒子を用いた場合には、最内層の粒子中心部分が染色されず、中間層のアクリル系弾性重合体部分のみが染色された2層構造の粒子として観察されることになる。
なお、本明細書において、ゴム弾性体粒子の数平均粒径とは、このように、ゴム弾性体粒子を母体樹脂に混合して断面を酸化ルテニウムで染色したときに、染色されてほぼ円形状に観察される部分の径の数平均値である。
アクリルフィルムにおいて、ゴム弾性体粒子の配合量は特には限定されないが、例えば、透明なアクリル系樹脂に、数平均粒子径が10〜300nmのゴム弾性体粒子が25〜45質量%配合されているものが好ましい。
アクリル樹脂は、例えば、ゴム弾性体粒子を得た後、その存在下にアクリル樹脂の原料となる単量体を重合させて、母体のアクリル樹脂を生成させることにより製造してもよいし、ゴム弾性体粒子とアクリル系樹脂とを得た後、両者を溶融混練等により混合することにより製造してもよい。
アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは、80〜120℃の範囲内が好ましい。さらに、アクリル樹脂は、フィルムに成形したときの表面の硬度が高いもの、具体的には、鉛筆硬度(荷重500gで、JIS K5600−5−4に準拠)でB以上のものが好ましい。
また、アクリル樹脂フィルムは、アクリル樹脂の柔軟性の観点から、曲げ弾性率(JIS K7171)が1500MPa以下であるのが好ましい。この曲げ弾性率は、より好ましくは1300MPa以下であり、更に好ましくは1200MPa以下である。この曲げ弾性率は、アクリル樹脂フィルム中のアクリル樹脂やゴム弾性体粒子の種類や量などによって変動し、例えば、ゴム弾性体粒子の含有量が多いほど、一般に曲げ弾性率は小さくなる。また、アクリル樹脂として、メタクリル酸アルキルの単独重合体を用いるよりも、メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキル等との共重合体を用いる方が、一般に曲げ弾性率は小さくなる。
また、ゴム弾性体粒子として、上記3層構造のアクリル系弾性重合体粒子を用いるよりも、上記2層構造のアクリル系弾性重合体粒子を用いる方が、一般に曲げ弾性率は小さくなり、更に単層構造のアクリル系弾性重合体粒子を用いる方が、一般に曲げ弾性率は小さくなる。また、ゴム弾性体粒子中、ゴム弾性体の平均粒径が小さいほど、又はゴム弾性体の量が多いほど、一般に曲げ弾性率は小さくなる。そこで、アクリル樹脂やゴム弾性体粒子の種類や量を上記所定の範囲で調整して、曲げ弾性率が1500MPa以下になるようにすることが好ましい。
アクリルフィルムを多層構成とする場合、アクリル樹脂組成物の層以外に存在しうる層は、その組成に特に限定はなく、例えば、ゴム弾性体粒子を含有しないアクリル樹脂又はその組成物の層であってもよいし、ゴム弾性体粒子の含有量やゴム弾性体粒子中のゴム弾性体の平均粒径が上記の規定外であるアクリル樹脂からなる層であってもよい。
典型的には2層又は3層構成であって、例えば、アクリル樹脂の層/ゴム弾性体粒子を含有しないアクリル樹脂又はその組成物の層からなる2層構成であってもよいし、アクリル樹脂組成物の層/ゴム弾性体粒子を含有しないアクリル樹脂又はその組成物の層/アクリル樹脂組成物の層からなる3層構成であってもよい。多層構成のアクリルフィルムは、アクリル樹脂組成物の層の面を、偏光子との貼合面とすればよい。
また、アクリルフィルムを多層構成とする場合、ゴム弾性体粒子や上記配合剤の各層の含有量を互いに異ならせてもよい。例えば、紫外線吸収剤及び/又は赤外線吸収剤を含有する層と、この層を挟んで紫外線吸収剤及び/又は赤外線吸収剤を含有しない層とが積層されていてもよい。また、アクリル樹脂組成物の層の紫外線吸収剤の含有量が、ゴム弾性体粒子を含有しないアクリル樹脂又はその組成物の層の紫外線吸収剤の含有量よりも、高くなるようにしてもよく、具体的には、前者を好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%とし、後者を好ましくは0〜1質量%、より好ましくは0〜0.5質量%としてもよく、これにより、偏光板の色調を悪化させることなく、紫外線を効率的に遮断することができ、長期使用時の偏光度の低下を防ぐことができる。
アクリルフィルムは、延伸されていない無配向性のものでもよく、延伸されたものでもよい。延伸処理を行わない場合、膜厚が厚くなるため偏光板の総膜厚が厚くなりやすくなるが、一方で膜厚が厚いためアクリルフィルムのハンドリング性が良好になる。このようなアクリルフィルムは、アクリル樹脂組成物を製膜して得られた未延伸フィルム(原反フィルム)から得ることができる。反対に、延伸した場合には、リターデーションが発現しやすくなる一方で、延伸することでアクリルフィルムの膜厚が薄くなるとともに剛性も向上するという利点がある。延伸フィルムは、未延伸フィルムを任意の方法で延伸することで製造することができる。
アクリル樹脂は、任意の方法で製膜して未延伸フィルムとすることができる。この未延伸フィルムは、透明で実質的に面内リターデーションがないものが好ましい。製膜方法としては、例えば、溶融樹脂を膜状に押し出して製膜する押出成形法、有機溶剤に溶解させた樹脂を平板上に流延した後で溶剤を除去して製膜する溶剤キャスト法などを採用することができる。
押出成形法の具体例としては、例えば、アクリル樹脂組成物を2本のロールで挟み込んだ状態で製膜する方法が挙げられる。この際、ロール表面の剛性を異ならせることで、アクリル樹脂フィルムの一方の面を滑面、他方の面を粗面とすることが可能である。
押出成形法の具体例としては、例えば、アクリル樹脂組成物を2本の金属製ロールで挟み込んだ状態で製膜する方法が挙げられる。この場合の金属製ロールは鏡面ロールであることが好ましい。これにより、表面平滑性に優れた未延伸フィルムを得ることができる。なお、アクリルフィルムとして多層構成のものを得る場合、上記アクリル樹脂組成物を、他のアクリル樹脂組成物とともに、多層押出後、製膜すればよい。このようにして得られる未延伸フィルムの厚さは、5〜200μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10μm〜85μmの範囲内である。
≪液晶表示装置≫
上記本発明の位相差フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に用いることによって、種々の視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することができる。
本発明の偏光板は、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種駆動方式の液晶表示装置に用いることができる。好ましくはVA(MVA,PVA)型液晶表示装置である。
液晶表示装置には、通常視認側の偏光板とバックライト側の偏光板の2枚の偏光板が用いられるが、本発明の偏光板を両方の偏光板として用いることも好ましく、片側の偏光板として用いることも好ましい。特に本発明の偏光板は外部環境に直接触れる視認側の偏光板として用いることが好ましく、その際は、本発明の位相差フィルムが、液晶セル側に配置されることが好ましい。
また、バックライト側の偏光板は本発明以外の偏光板を用いることもでき、その場合は偏光子の両面を、例えば市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC5UX、KC4UX、KC8UCR3、KC4SR、KC4BR、KC4CR、KC4DR、KC4FR、KC4KR、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC2UA、KC4UA、KC6UA、KC2UAH、KC4UAH、KC6UAH、以上コニカミノルタ(株)製、フジタックT40UZ、フジタックT60UZ、フジタックT80UZ、フジタックTD80UL、フジタックTD60UL、フジタックTD40UL、フジタックR02、フジタックR06、以上富士フイルム(株)製等)を貼合した偏光板が好ましく用いられる。
また、バックライト側の偏光板として、偏光子の液晶セル側に本発明の位相差フィルムを用い、反対側の面に上記市販の位相差フィルム、ポリエステルフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、又はシクロオレフィンポリマーフィルムを貼合した偏光板も好ましく用いることができる。
本発明の偏光板を用いることで、特に画面が30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、表示ムラ、正面コントラストなど視認性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
本発明の液晶表示装置のバックライトは平板型のバックライトであることが好ましく、平板型の蛍光ランプ、平板型の発光ダイオード(LEDともいう。)ランプ、又は有機EL素子基板のいずれかを用いることが好ましい。中でも、本発明の位相差フィルムを用いた偏光板は、白色発光のLEDバックライトを有する大画面の液晶表示装置に好適に具備され、液晶表示装置の斜め方向からの青色光の光漏れによるカラーシフトの発生を低減し、かつスジ状のムラがなく、正面コントラスト等の視認性の向上した液晶表示装置を提供することができる。
LEDランプとしては、赤色(R)LED、緑色(G)LED、及び青色(B)LEDを有するカラー液晶表示装置用LEDバックライトであって、例えば、上記赤色(R)LEDのピーク波長が610nm以上であり、上記緑色(G)LEDのピーク波長が530±10nmの範囲内であり、上記青色(B)LEDのピーク波長が480nm以下であるものが好ましく用いられる。ピーク波長が上記範囲内の緑色(G)LEDの種類としては、例えば、DG1112H(スタンレー電気(株)製)、UG1112H(スタンレー電気(株)製)、E1L51−3G(豊田合成(株)製)、E1L49−3G(豊田合成(株)製)、NSPG500S(日亜化学工業(株)製)等が挙げられる。赤色(R)LEDとして用いられるLEDの種類としては、例えばFR1112H(スタンレー電気(株)製)、FR5366X(スタンレー電気(株)製)、NSTM515AS(日亜化学工業(株)製)、GL3ZR2D1COS(シャープ(株)製)、GM1JJ35200AE(シャープ(株)製)等が挙げられる。青色(B)LEDとして用いられるLEDの種類としては、DB1112H(スタンレー電気(株)製)、DB5306X(スタンレー電気(株)製)、E1L51−3B(豊田合成(株)製)、E1L4E−SB1A(豊田合成(株)製)、NSPB630S(日亜化学工業(株)製)、NSPB310A(日亜化学工業(株)製)等が挙げられる。
上述した3色のLEDを組み合わせて白色バックライトとすることができる。或いは白色発光するLEDを直接用いることもできる。LEDランプを用いた液晶表示装置の構成の一例としては、特開2006−148036号公報図9記載の構成例を参照できる。
また、他の白色LEDとして、発光光源と、例えばβ型サイアロン蛍光体から構成される発光装置も好ましい例として挙げられる。特に240〜480nmの波長を含有している紫外光や可視光を励起源として照射することにより、β型サイアロン蛍光体は緑色の狭帯化発光するので、紫外LED又は青色LEDと、必要に応じて赤色蛍光体及び/又は青色蛍光体と組み合わせることで、容易に白色光が得られる。
また、β型サイアロン蛍光体を用いる白色LEDの例として、特開平5−152609号公報、特開平7−99345号公報、特許第2927279号などに記載されている公知の方法を用いてLEDを製造することができる。この場合において、発光光源は240〜480nmの波長の光を発する紫外LED又は青色LED、特に好ましくは440〜470nmの波長の光を発する青色LEDが好ましく、これらの発光素子としては、GaNやInGaNなどの窒化物半導体からなるものがあり、組成を調整することにより所定の波長の光を発する発光光源となりうる。
特にβ型サイアロン蛍光体のような緑色狭帯発光の蛍光体は青色LEDを励起源とし、発光波長のピークが600〜700nmである赤色の蛍光体、例えば、CaAlSiN:Eu等と組み合わせることにより、色再現性に優れた画像表示装置のバックライト用白色LEDに好適である。
これらの白色LEDは、高温での輝度低下が少ないので、これを用いた発光装置はその輝度低下及び色度ズレが小さく、高温にさらしても劣化せず、更に耐熱性に優れており酸化雰囲気及び水分環境下における長期間の安定性にも優れているので、これらを反映して当該発光装置が高輝度で長寿命になるという優れた特徴を有する。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例1
<位相差フィルム101の作製>
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジルR812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分撹拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
下記組成の主ドープを調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにアセチル基置換度2.41のセルロースアセテートC1を撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープを調製した。
〈主ドープの組成〉
メチレンクロライド 365質量部
エタノール 50質量部
セルロースアセテート(アセチル基置換度2.56、数平均分子量(Mn
)65000) 100質量部
含窒素複素環化合物 例示化合物No.176 3質量部
重縮合エステルP2 5質量部
微粒子添加液1 1質量部
以上を密閉されている主溶解釜1に投入し、撹拌しながら溶解してドープを調製した。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。剥離した位相差フィルムを、150℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に30%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は15%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のローラーで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。以上のようにして、乾燥膜厚40μmの位相差フィルム101を得た。
<位相差フィルム102〜125の作製>
位相差フィルム101において、セルロースアセテートの種類(アセチル基置換度2.42〜2.85の範囲)、含窒素複素環化合物の種類、添加量を表1のように変化させた以外は同様にして、位相差フィルム102〜125を作製した。
なお、含窒素複素環化合物の比較例として、以下のH−1及びH−2を用いた。
Figure 0006493213
<偏光板101〜125の作製>
上記で作製した各位相差フィルムの表面をアルカリケン化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光子1を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリケン化処理した各位相差フィルムと、同様のアルカリケン化処理したコニカミノルタタックKC6UA(コニカミノルタ(株)製)を用意し、これらのケン化した面が偏光子側となるようにして偏光子を間に挟んで貼り合わせ、各位相差フィルム、偏光子1、KC6UAがこの順に貼り合わせてある偏光板をそれぞれ得た。この際、各位相差フィルムのMD方向及びKC6UAの遅相軸が、偏光子の吸収軸と平行になるように貼り付けた。
<液晶表示装置101〜125の作製>
白色LEDをバックライトとして具備した液晶表示装置である、SONY製KDL−40HX720のあらかじめ貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板101〜125をそれぞれ液晶セルのガラス面の両面に、アクリル系粘着剤を用いて貼合した。
その際、その偏光板の貼合の向きは、位相差フィルムの面が、液晶セル側となるように、かつ、あらかじめ貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、それぞれ、偏光板101〜125に対応する液晶表示装置101〜125を各々作製した。
≪評価≫
<波長分散性及びリターデーション値の測定>
位相差フィルムの波長分散性は以下の手順によって測定した。
位相差フィルムの厚さ方向のリターデーション値Rthは、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃・55%RHの環境下、450nm及び650nmの波長において、位相差フィルムの10か所をサンプリングして、各々三次元屈折率測定を行い、得られた屈折率nx、ny、nzの平均値から、下記式(ii)を用いて算出した。
得られた測定値が下記式1を満たす場合は、順波長分散性を有する位相差フィルムである。
式1 1.0≦Rth(450)/Rth(650)≦1.2
(ここでRth(450)及びRth(650)は、それぞれ23℃・55%RHの環境下、波長450nm及び650nmの光を用いて測定される下記式(ii)で表されるフィルム厚さ方向のリターデーション値Rth(nm)を表す。)
また、位相差フィルムのリターデーション値は、温度23℃、相対湿度55%の環境下で、波長590nmで、下記式(i)により定義される面内方向のリターデーション値(Ro)及び下記式(ii)により定義される厚さ方向のリターデーション値(Rth)を、Axometrics社製Axoscanを用いて測定した。
具体的には、作製した位相差フィルムを23℃、55%RHの環境下で、590nmの波長において10か所で三次元の屈折率測定を行い、屈折率n、n、nの平均値を求めた後、下記式に従って面内方向のリターデーション値Ro及び厚さ方向のリターデーション値Rthを算出した。
式(i):Ro=(n−n)×d(nm)
式(ii):Rth={(n+n)/2−n}×d(nm)
〔式(i)及び式(ii)において、nは、フィルムの面内方向において屈折率が最大になる方向xにおける屈折率を表す。nは、フィルムの面内方向において、前記方向xと直交する方向yにおける屈折率を表す。nは、フィルムの厚さ方向zにおける屈折率を表す。dは、フィルムの厚さ(nm)を表す。〕
<色味変化(カラーシフト)>
黒表示時において、液晶セルの法線方向から一対の偏光板の透過軸の中心線方向(方位角45度)に視角を倒した場合の色度の変化Δxθ、Δyθを、極角0〜80度の間で測定した。ここで、Δxθ=xθ−xθ0、Δyθ=yθ−yθ0であり、(xθ0、yθ0)は黒表示における液晶セル法線方向で測定した色度であり、(xθ、yθ)は黒表示における液晶セル法線方向から一対の偏光板の透過軸の中心線方向に極角θ度まで視角を倒した方向で測定した色度である。
作製した液晶表示装置を60℃・80%RHの環境下で、3日放置した後、上記色度を測定し、結果を以下の基準で評価した。値が小さい程カラーシフトが小さい。
◎:Δxθ、Δyθがともに0.03以下である
○:Δxθ、Δyθがともに0.03を超えて0.05以下である
△:Δxθ、Δyθがともに0.05を超えて0.07以下である
×:Δxθ、Δyθがともに0.07を超える
<正面コントラスト>
作製した液晶表示装置をそれぞれ、23℃55%RHの環境で、液晶表示装置のバックライトを1時間連続点灯した後、正面コントラストを測定した。
測定にはELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて、液晶表示装置で白表示と黒表示の表示画面の法線方向からの輝度を測定し、その比を正面コントラストとした。
正面コントラスト=(表示装置の法線方向から測定した白表示の輝度)/(表示装置の法線方向から測定した黒表示の輝度)
液晶表示装置の任意の10点の正面コントラストを測定し、以下の基準にて評価した。
◎:正面コントラストが5000以上
○:正面コントラストが4500以上5000未満
△:正面コントラストが4000以上4500未満
×:正面コントラストが4000未満
<スジ発生率>
位相差フィルムの製膜時にウェブの流延ベルトからの剥離性が劣ると、フィルムに横段状のスジが発生する。
作製した液晶表示装置をそれぞれ、23℃55%RHの環境で、液晶表示装置のバックライトを1時間連続点灯した後、画面を黒表示にして当該スジが観察されるかを目視評価した。
◎:スジが全く観察されない
○:画面の端にやや弱いスジが観察される
△:画面の数か所に弱いスジが観察される
×:画面に強いスジがはっきりと観察される
実用上は○以上が許容内である。
位相差フィルムの構成及び以上の評価結果を下記表1に示した。
Figure 0006493213
本発明の位相差フィルムNo.101〜115は、比較例の位相差フィルムに対して順波長分散性を示し、LED光源の液晶表示装置に具備したときに、色味変化(カラーシフト)、正面コントラスト、及びスジ発生率において優れた特性を示すことが分かる。特に正面コントラストについては、含窒素複素環化合物として、ピラゾール環構造を有する化合物を用いた位相差フィルムNo.101〜108が優れていた。
実施例2
実施例1の位相差フィルムNo.102の作製において、フィルムの膜厚変化、含窒素複素環化合物の種類変化及び比較化合物を加えて、表2に記載の構成にした以外は同様にして、位相差フィルムNo.201〜210を作製した。また、実施例1と同様にして、偏光板201〜210、液晶表示装置201〜210を作製し、面内リターデーション値Ro、厚さ方向リターデーション値Rth、下記内部ヘイズ評価を加えて、実施例1と同様な評価を実施した。
なお、含窒素複素環化合物の比較例として、前記H−2及びH−3を用いた。
<内部ヘイズ>
試料フィルムを6cmピースに切り出し、両面にグリセリンを塗布し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S9111、MATSUNAMI製)を2枚用いて表裏より挟んで、完全に2枚のガラス板とフィルムを光学的に密着させ、JIS K7136に準じてヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間にグリセリンのみを挟み込んで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズ値として算出した。なお、ヘイズの測定はヘイズメーター(NDH2000型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
内部ヘイズは、フィルム作製過程及びフィルム作製後の、添加剤等のブリードアウトによるフィルム内部の濁りを評価するものであり、値が低い程優れている。
位相差フィルムの構成及び評価結果を下記表2に示した。
Figure 0006493213
本発明の位相差フィルムNo.201〜208は、色味変化(カラーシフト)、正面コントラスト、及びスジ発生率が優れていることが分かる。また、含窒素複素環化合物のNICS値との相関がみられる。
中でも、含窒素複素環化合物として、ピラゾール環構造を有する化合物No.172、176、及び185を用いた位相差フィルムNo.201〜203は、内部ヘイズ値が低く、色味変化(カラーシフト)、正面コントラスト、及びスジ発生率がより優れる結果であった。
実施例3
実施例1の位相差フィルムNo.102の作製において、重縮合エステルP2の代わりに、添加剤1(糖エステルB−2:ベンジルスクロース(糖残基が例示B−2で前記置換基がa1〜a4の混合物)、平均エステル置換度=5.5)、添加剤2(重縮合エステル例示化合物1−15)、添加剤3(紫外線吸収剤UV−1:2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール)を各々表3に記載の構成で添加し、フィルム膜厚を変化させた以外は同様にして、位相差フィルムNo.301〜308を作製した。
作製した位相差フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光板301〜308、液晶表示装置301〜308を作製し、実施例2と同様な評価を実施した。
位相差フィルムの構成及び評価結果を下記表3に示した。
Figure 0006493213
添加剤として、糖エステル、重縮合エステル添加し、膜厚が20〜40μmの範囲である位相差フィルムNo.305、306、及びさらに紫外線吸収剤を添加した位相差フィルムNo.308は、色味変化(カラーシフト)、正面コントラスト、及びスジ発生率がより優れる結果であった。
実施例4
下記手順に従って、ポリエステルフィルム及びアクリルフィルムを作製した。
<ポリエステルフィルム>
(製造例1−ポリエステルA)
エステル化反応缶を昇温し200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコール64.6質量部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行った。
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、あらかじめ濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度は0.62dl/gであり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。(以後、PET(A)と略す。)
(製造例2−ポリエステルB)
次に、乾燥させた紫外線吸収剤(2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)10質量部、粒子を含有しないPET(A)(固有粘度が0.62dl/g)90質量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を得た(以後、PET(B)と略す。)。
(製造例3−接着性改質塗布液の調製)
常法によりエステル交換反応及び重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%及び5−スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%及びネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n−ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。さらに、凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)製、サイリシア310)3質量部を水50質量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部にサイリシア310の水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、接着性改質塗布液を得た。
(PETフィルムの作製)
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層及び外層III用)にそれぞれ供給し、285℃
で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押出機の吐出量を調整した。
次いで、リバースロール法によりこの未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.096g/mになるように、上記接着性改質塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚さ60μmの一軸配向ポリエステルフィルムを得た。
<アクリルフィルムの作製>
(アクリル樹脂とアクリル弾性重合体粒子)
アクリル樹脂として、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチルの質量比96/4の共重合体を使用した。また、ゴム弾性体粒子として、最内層、中間層、最外層からなる3層構造のアクリル系弾性重合体粒子を使用した。このアクリル系弾性重合体粒子は、最内層は、メタクリル酸メチルに少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された硬質の重合体、中間層は、アクリル酸ブチルを主成分とし、さらにスチレン及び少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された軟質の弾性体、最外層は、メタクリル酸メチルに少量のアクリル酸エチルを用いて重合された硬質の重合体からなり、中間層である弾性体までの平均粒径が240nmである。
(アクリルフィルムの作製)
上記のアクリル樹脂と上記のアクリル系弾性重合体粒子が前者/後者=70/30の質量比で配合されているペレットを二軸押出機で溶融混練しつつ、アクリル樹脂組成物のペレットとした。このペレットを65mmφの一軸押出機に投入し、設定温度275℃のT型ダイを介して押し出し、押し出されたフィルム状溶融樹脂の両面を、45℃に温度設定された鏡面を有するポリシングロール(冷却ロール)と、表面が金属材料で形成され内部に流体が充填された弾性率の高い金属弾性ロール(弾性ロール)とで挟み込んで冷却し、厚さ60μmのアクリルフィルムを作製した。
<偏光板の作製>
(偏光子の調製)
下記工程によって、薄膜の偏光子を形成するため偏光性積層フィルムを作製し、当該偏光性積層フィルムから、基材フィルムを剥離することによって、薄膜の偏光子を得た。
(1)基材フィルムの作製
リアクターブレンド法によって、同じ反応容器内で熱可塑性樹脂及びゴム成分を順次調製した。具体的には、チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、第一工程としてプロピレンモノマーを気相中でフィードしていき、熱可塑性樹脂であるプロピレン単独重合体を製造した。プロピレンモノマーのフィードを止めて反応を停止させた後、その反応容器にそのまま、第二工程としてエチレンモノマーとプロピレンモノマーを気相中でフィードしていき、ゴム成分であるエチレン−プロピレン共重合体を製造し、ゴム成分であるエチレン−プロピレン共重合体が粒子状で分散されたプロピレン単独重合体を得た。共重合体に占めるエチレンユニットの含有量を重合時の物質収支から求めたところ、35質量%であった。また樹脂全体(熱可塑性樹脂及びゴム成分の合計)に占めるエチレンユニットの含有量を高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法に従って求め、この値から樹脂全体に占めるエチレン−プロピレン共重合体の含有量を算出したところ、29質量%であった(すなわち、エチレン−プロピレン共重合体の含有量は熱可塑性樹脂の40.8質量%)。
得られた混合樹脂を250℃で溶融混錬した後、Tダイにて280℃の温度で溶融押出を行い、厚さ100μmの基材フィルムを得た。
(2)プライマー層の形成
ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製「Z−200」、平均重合度1100、平均ケン化度99.5モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度3質量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(住友化学(株)製「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末6質量部に対して5質量部混合した。得られた混合水溶液を、コロナ処理を施した上記基材フィルムのコロナ処理面上にマイクログラビアコーターを用いて塗工し、80℃で10分間乾燥させることにより、厚さ0.2μmのプライマー層を形成した。
(3)ポリビニルアルコール系樹脂層の形成
ポリビニルアルコール粉末(クラレ(株)製「PVA124」、平均重合度2400、平均ケン化度98.0〜99.0モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度8質量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液を、上記プライマー層上にリップコーターを用いて塗工し、80℃で2分間、70℃で2分間、次いで60℃で4分間の条件下で乾燥させることにより、基材フィルム上にプライマー層を介してポリビニルアルコール系樹脂層が積層された積層フィルムを作製した。ポリビニルアルコール系樹脂層の厚さは9.8μmであった。
(4)延伸フィルムの作製
上記積層フィルムを160℃の延伸温度で5.8倍に自由端縦一軸延伸し、延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの厚さは28.5μmであり、ポリビニルアルコール系樹脂層の厚さは5.0μmであった。
(5)偏光性積層フィルムの作製
上記延伸フィルムを60℃の温浴に60秒間浸漬した後、ヨウ素とヨウ化カリウムとを含む水溶液である30℃の染色溶液に150秒間程度浸漬して、ポリビニルアルコール系樹脂層の染色を行い、次いで10℃の純水で余分なヨウ素液を洗い流した。次に、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む水溶液である76℃の架橋溶液に600秒間浸漬した。その後、10℃の純水で4秒間洗浄し、最後に50℃で300秒間乾燥させることにより、偏光性積層フィルムを得た。この偏光性積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を基材フィルムから剥離し、ポリビニルアルコール系樹脂層を偏光子2として用いた。
(紫外線硬化型接着剤液1の調製)
下記の各成分を混合した後、脱泡して、紫外線硬化型接着剤液1を調製した。なお、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートは、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、下記にはトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートの固形分量を表示した。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサ
ンカルボキシレート 45質量部
エポリードGT−301(ダイセル化学社製の脂環式エポキシ樹脂)
40質量部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル 15質量部
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート 2.3質量部
9,10−ジブトキシアントラセン 0.1質量部
1,4−ジエトキシナフタレン 2.0質量部
(偏光板の作製)
下記の方法に従って、偏光板401及び402を作製した。
まず、実施例3で作製した位相差フィルムNo.305の表面にコロナ放電処理を施した。なお、コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、ライン速度18m/分とした。次いで、位相差フィルムNo.305のコロナ放電処理面に、上記調製した紫外線硬化型接着剤液1を、硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗工して紫外線硬化型接着剤層を形成した。得られた紫外線硬化型接着剤層に、上記作製した偏光性積層フィルムの偏光子2(厚さ5μm)側を貼合し、その後基材フィルムは剥離した。
次いで、上記作製したポリエステルフィルム、及びアクリルフィルムにそれぞれ、コロナ放電処理を施した。コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、速度18m/分とした。
次いで、ポリエステルフィルム、及びアクリルフィルムのコロナ放電処理面に、上記調製した紫外線硬化型接着剤液1を、硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗工して紫外線硬化型接着剤層を形成した。
この紫外線硬化型接着剤層に、位相差フィルムの片面に貼合された偏光子2を貼合して、位相差フィルムNo.305/紫外線硬化型接着剤層/偏光子2/紫外線硬化型接着剤層/ポリエステルフィルム又はアクリルフィルムが積層された積層体を得た。その際に、位相差フィルム、及びアクリルフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸が互いに直交になるように貼合した。
この積層体の両面側から、ベルトコンベヤー付き紫外線照射装置(ランプは、ヘレウス・ノーブルライト・フュージョン・ユーブイシステムズ社製のDバルブを使用)を用いて、積算光量が750mJ/cmとなるように紫外線を照射し、それぞれの紫外線硬化型接着剤層を硬化させ、表4記載の総膜厚が91μmの偏光板401及び402を作製した。
(液晶表示装置401、402、及び403の作製)
SONY製KDL−40HX720のあらかじめ貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板401を液晶セルのガラス面の両面に、アクリル系粘着剤を用いて貼合した。
その際、その偏光板の貼合の向きは、位相差フィルムNo.305の面が、液晶セル側となるように、かつ、あらかじめ貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、偏光板401、及び402に対応する液晶表示装置401、及び402を作製した。
次に、実施例3で作製した偏光板305を用いて、冷陰極管をバックライトに用いた液晶表示装置SONY製KDL−52W5を用いて、あらかじめ貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記偏光板305を液晶セルのガラス面の両面に、同様に貼合した。
その際、その偏光板の貼合の向きは、位相差フィルムNo.305の面が、液晶セル側となるように、かつ、あらかじめ貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置403を作製した。
上記作製した各液晶表示装置401、402及び403について、実施例3と同様にして色味変化(カラーシフト)と正面コントラストの各評価を行った。
偏光板及び液晶表示装置の構成及び上記評価結果を表4に示す。
Figure 0006493213
表4の結果から、本発明の位相差フィルムは、白色LEDバックライトを使用した液晶表示装置に具備させることによって、色味変化(カラーシフト)及び正面コントラストに優れた偏光板、及び液晶表示装置を提供することができることが分かる。
また、本発明の位相差フィルムと、保護フィルムにポリエステルフィルム又はアクリルフィルムを用いた薄膜偏光子を用いた偏光板401及び402を具備した液晶表示装置401、402は、白色LEDバックライトを使用した液晶表示装置に具備させた場合に、色味変化(カラーシフト)及び正面コントラストにより優れていた。さらに、当該液晶表示装置401及び402は、60℃・80%RHといった高温高湿環境下に3日間置いた場合でも、液晶表示装置305よりも上記正面コントラストの経時変化が小さかった。
本発明の位相差フィルムは、白色LEDバックライトを具備した液晶表示装置の斜め方向からの青色光の光漏れによるカラーシフトの発生を低減でき、かつウェブの流延ベルトでの剥離性の劣化による横段の発生を改善して視認性の向上に効果を有するため、偏光板や液晶表示装置用途の光学フィルムとして好適に使用される。
1 溶解釜
3、6、12、15 濾過器
4、13 ストック釜
5、14 送液ポンプ
8、16 導管
10 紫外線吸収剤仕込釜
20 合流管
21 混合機
30 加圧ダイ
31 金属ベルト
32 ウェブ
33 剥離位置
34 テンター延伸装置
35 乾燥装置
41 仕込釜
42 ストック釜
43 ポンプ
44 濾過器

Claims (8)

  1. アセチル基置換度が2.56〜2.70の範囲内であるセルロースアセテートと、下記一般式(3)で表される構造を有する含窒素複素環化合物の少なくとも1種とを含有し、かつフィルム厚さ方向のリターデーションが、下記式1を満たす波長分散性を示すことを特徴とする位相差フィルム。
    Figure 0006493213
    (式中Aはピラゾール環を表し、Ar 及びAr はそれぞれ芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表し、置換基を有してもよい。R は水素原子、アルキル基、アシル基、スルホニル基、又はアルキルオキシカルボニル基を表す。qは1又は2を表し、n及びmは1〜3の整数を表す。)
    式1 1.0≦Rth(450)/Rth(650)≦1.2
    (ここでRth(450)及びRth(650)は、それぞれ23℃・55%RHの環境下、波長450nm及び650nmの光を用いて測定される下記式(ii)で表されるフィルム厚さ方向のリターデーション値Rth(nm)を表す。
    式(ii) Rth={(n+n)/2−n}×d
    但し、nは、光学フィルムの面内方向において屈折率が最大になる方向xにおける屈折率を表す。nは光学フィルムの面内方向において、前記方向xと直交する方向yにおける屈折率を表す。nは、フィルムの厚さ方向zにおける屈折率を表す。dは光学フィルムの厚さ(nm)を表す。)
  2. さらに、糖エステル又は下記一般式(4)で表される構造を有する重縮合エステルを少なくとも1種含有することを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルム。
    一般式(4):B−(G−A)−G−B
    (式中、B及びBは、それぞれ独立に脂肪族又は芳香族モノカルボン酸残基、若しくはヒドロキシ基を表す。Gは、炭素数2〜12のアルキレングリコール残基、炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基を表す。Aは、炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。nは1以上の整数を表す。)
  3. 膜厚が20〜40μmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の位相差フィルム。
  4. 紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の位相差フィルム。
  5. 請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の位相差フィルムが、水糊又は活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて偏光子と貼合されていることを特徴とする偏光板。
  6. 前記偏光子の前記位相差フィルムが貼合されている面とは反対側の面に、ポリエステルフィルム又はアクリルフィルムが、水糊又は活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて偏光子と貼合されていることを特徴とする請求項に記載の偏光板。
  7. 請求項又は請求項に記載の偏光板が具備されていることを特徴とする液晶表示装置。
  8. バックライトとして、白色光を発する発光ダイオードが具備されていることを特徴とする請求項に記載の液晶表示装置。
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