JP2016177238A - 光学フィルム、円偏光板、及びタッチパネル表示装置 - Google Patents

光学フィルム、円偏光板、及びタッチパネル表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、可視光における広い帯域の光に対して、実質的にλ/4の位相差を付与することができ、偏光板の接着性が高く、高湿化においても打鍵耐性が高く、タッチパネルの応答不良がなく、表示ムラが抑制すること可能とする。【解決手段】本発明の光学フィルムは、グルコース骨格の一部が芳香族環で置換された特定のセルロース誘導体、及びセルロース誘導体の前駆体の混合物が含有され、前記セルロース誘導体が、前記セルロース誘導体及び前記前駆体の総量に対して、20〜50質量%含有され、下記式(A)〜(C)を満たすことを特徴とする光学フィルム。式(A):5°≦50℃に加熱した2mol/Lの水酸化カリウム溶液中で90秒間鹸化処理する鹸化処理前後のフィルムの水の接触角の差分の絶対値≦25°式(B):120≦Ro(550)≦160nm式(C):0.65≦Ro(450)/Ro(550)≦0.95【選択図】なし

Description

本発明は、光学フィルム、円偏光板、及びタッチパネル表示装置に関する。特に、タッチパネルを搭載した有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する。)表示装置で反射防止部材として用いられる円偏光板に用いた場合に、可視光における広い帯域の光に対して、実質的にλ/4の位相差を付与することができ、偏光板の接着性が高く、打鍵耐久性があり表示ムラを抑制することが可能となる。
従来、指などで触れることにより情報を入力する技術が知られている。その中でも特に注目されている技術として、ディスプレイに表示された種々のボタンを指などで触れることにより、通常のボタンを指などで押した場合と同様の情報入力を可能とする表示装置がある。この技術は、ディスプレイとボタンの共用化を可能にすることから、省スペース化や部品点数の削減という大きなメリットをもたらす。
指などの接触を検出するタッチパネルには、種々のタイプのものが存在するが、スマートフォン等の、多点検出を必要とするデバイスで一般に普及しているものとして、静電容量式が挙げられる。静電容量式のタッチパネルは、例えば、検出面内にマトリックス状の電極パターンを備えており、指などで接触した位置の静電容量変化を検出するようになっている。
更に近年、タッチパネルを搭載したスマートフォン以外にも、タブレットやノートパソコンなどにもタッチパネルが搭載され、携帯情報端末として用途拡大が見込まれ、それに伴いタッチパネルを搭載した表示装置の大型化、軽量化、薄膜化が要望されていた。また、タッチパネルを搭載した表示装置の用途として、近年、曲面の表示装置が挙げられる。
また、タッチパネルを搭載した表示装置は、室外で使用されることが多く、外光などが入射する環境下で使用される。外光等の入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、それによる反射像が表示画像と混合することにより、画面表示品質を低下させてしまう。特に、有機EL表示装置においては、従来の液晶表示装置に比べて部材が少なく表示装置の薄膜化が可能であるが、光の取り出し効率を高めるべく、ディスプレイの背面側にアルミニウム板等の反射体が設けられるため、ディスプレイに入射した外光が、この反射体で反射されることで画像のコントラストが低下するため、外光反射防止機能を付与することが求められている。
加えて、タッチパネルを搭載した表示装置は携帯性が高いため、高湿環境下でも使用されるだけではなく、衣類の中など気密性の高い環境下に長時間おかれることがある。それに伴い、表示装置のムラの発生や、タッチパネルの応答不良などの問題が発生し、耐久性の高いタッチパネルを搭載した表示装置が求められている。
前述の外光反射防止機能を付与する技術としては、円偏光板を用いることが知られている。円偏光板に用いられる吸収型直線偏光板には、一般的に二色性色素を吸着させたポリビニルアルコール樹脂(以下、PVAと略記する。)を、高倍率で延伸して得られる偏光子が用いられ、当該偏光子の保護フィルムとして、従来セルロースエステル等のセルロース樹脂を用いた円偏光板用のλ/4位相差フィルムの検討がなされてきている。
一方、従来の位相差フィルムは、縦延伸又は横延伸して得られるため、その面内遅相軸は、フィルムの長尺方向に対して0°又は90°の方向となる。このため、偏光子の吸収軸と位相差フィルムの面内遅相軸とが所望の角度をなすように貼り合わせるためには、長尺状の偏光子と、斜めに切り出した位相差フィルムとを、1枚ずつ貼り合わせるバッチ式で行わざるを得ず、生産性の悪化や切り屑等の付着による製品の歩留りの低下が問題として挙げられていた。特に、有機EL表示装置が大型化されつつある昨今において、得られた位相差フィルムを斜めに切り出して偏光子に貼り合わせる方法は、フィルムの利用効率が低く、生産性が低いため、改善が求められていた。
これに対して、斜め方向に延伸し、面内遅相軸がフィルムの幅方向(又は長尺方向)に対して斜めである長尺状の位相差フィルムの製造方法が種々提案されている。このような位相差フィルムは、従来のようなバッチ式による貼り合わせとは異なり、長尺状の偏光子とロール・to・ロールで貼り合わせることで円偏光板を製造することができる。そのため、生産性が飛躍的に向上し、歩留りも大幅に改善できる。また、ロール・to・ロールで貼り合わせて円偏光板を製造できるため、大型のディスプレイに用いられる円偏光板を製造する場合に、長尺状の位相差フィルムの利用面積を高めることができ、円偏光板の製造コストを大幅に低減することができる。
ところで、光ピックアップ装置のように、特定波長のレーザー光源を用いる光学装置に使用される位相差フィルムは、特定波長の光のみに対して1/4波長の位相差(以下、リターデーションとも称する)を付与できればよい。しかしながら、カラー画像表示装置や有機EL表示装置などの外光反射防止膜(円偏光板)を構成する位相差フィルムは、可視光の全波長域の光に対して位相差値が変動しないフラットな波長の位相差値、又は可視光の全波長域の光に対して1/4波長の位相差を付与することが求められる。
特許文献1では、VA方式の位相差フィルムとして、面内位相差Roが50nm程度、厚さ方向の位相差Rtが130nm程度の位相差フィルムを、セルロースエステル樹脂を用いて製造した光学フィルムが開示されている。
しかしながら、セルロースエステル樹脂は、置換度を下げることにより、比較的位相差発現性が高まる一方で、波長分散特性は逆波長分散性が弱まる傾向にあり、置換度を上げると逆波長分散性は高まるものの、位相差発現性が低下するという特性を有している。そのため、単層で広帯域のλ/4板を得るためには、膜厚を厚くせざるを得ないという問題があり、表示装置の薄膜化が困難であり、高湿下での打鍵に対する耐久性が不十分であった。
そこで、特許文献2及び3では、セルロースエステル樹脂に特定の芳香族エステル基を導入することにより、セルロースエステル樹脂フィルムの波長分散特性を改善する技術が検討されている。
しかしながら、特許文献2及び3で開示されているセルロースエステル樹脂フィルムを用いた際には、鹸化処理前後の水の接触角差が5°未満であり、偏光板を作製する場合において水糊接着に適用できないだけではなく、光硬化性樹脂を接着剤として用いた偏光板を具備したタッチパネルを搭載した表示装置を作製すると、タッチパネルの応答不良が生じてしまうことがわかり、改善が求められている。
一方、特許文献4では、セルロースエステル樹脂にトリアジンを母核とする添加剤を加えることにより、他の添加剤と比べて鹸化処理後の水の接触角が高いことが開示されている。
しかしながら、実際に検討を行ってみると、位相差は発現できるが波長分散性が悪く、更に、λ/4位相差フィルムを斜め延伸で作製することは、従来の一軸延伸より高度な技術が必要であり、従来の一軸延伸より延伸温度が高く、搬送速度が遅いため、トリアジンを母核とする添加剤が生産工程を飛散し汚染するだけではなく、表示装置として用いた際にはフィルム表面が脆いためかコントラストを下げてしまい、改善が求められている。
特開2007−47537号公報 特開2008−95026号公報 特開2013−210561号公報 特開2005−25120号公報
そこで、本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、可視光における広い帯域の光に対して、実質的にλ/4の位相差を付与することができ、偏光板の接着性が高く、高湿化においても打鍵耐性が高く、タッチパネルの応答不良がなく、表示ムラを抑制することが可能な光学フィルム、それを用いた円偏光板を提供することである。
特には、タッチパネルを具備した有機EL表示装置を用いても、上記性質に優れたタッチパネル表示装置を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、光学フィルムは、グルコース骨格の一部が芳香族環を有する置換基で置換された特定のセルロース誘導体、及びセルロース誘導体の前駆体の混合物が含有され、前記セルロース誘導体が、前記セルロース誘導体及び前記前駆体の総量に対して、20〜50質量%の範囲内で含有され、特定式を満たすことを特徴とする光学フィルムを用いることによって、可視光における広い帯域の光に対して、実質的にλ/4の位相差を付与することができ、偏光板の接着性が高く、高湿化においても打鍵耐性が高く、タッチパネルの応答不良がなく、表示ムラが抑制されることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、下記の手段により解決される。
1.グルコース骨格の一部が芳香族環を有する置換基で置換されたセルロース誘導体、及びセルロース誘導体の前駆体との混合物が含有された光学フィルムであって、
前記セルロース誘導体のグルコース骨格に置換された置換基が、下記(a)〜(c)を満たし、かつ、
前記セルロース誘導体が、前記セルロース誘導体及び前記前駆体の総量に対して、20〜50質量%の範囲内で含有され、下記式(A)〜(C)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
(a)前記グルコース骨格に置換された芳香族環を有する置換基の置換度が、グルコース骨格単位当たり0.05〜0.60の範囲内である。
(b)前記芳香族環を有する置換基の極大吸収波長が、220〜400nmの範囲内である。
(c)前記芳香族環を有する置換基の総置換度が、グルコース骨格単位当たり1.7〜3.0の範囲内である。
式(A):5°≦下記条件Aにおける鹸化処理前後のフィルムの水の接触角の差分の絶対値≦25°
(前記条件Aとは、50℃に加熱した2mol/Lの水酸化カリウム溶液中で90秒間鹸化処理することである。)
式(B):120≦Ro(550)≦160nm
(前記Ro(550)とは、温度23℃、55%RHの環境下、光波長550nmで測定したときのフィルム面内の位相差値のことである。)
式(C):0.65≦Ro(450)/Ro(550)≦0.95
(前記Ro(450)/Ro(550)とは、温度23℃、55%RHの環境下、光波長450nm及び550nmでそれぞれ測定したフィルム面内の位相差値Ro(450)とRo(550)との比の値である。)
2.前記前駆体が、前記グルコース骨格に前記芳香族環を有する置換基が導入される前の前駆体であることを特徴とする第1項に記載の光学フィルム。
3.前記芳香族環を有する置換基が、芳香族アシル基又は芳香族カルバモイル基であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の光学フィルム。
4.前記セルロース誘導体のグルコース骨格に置換された置換基のうち、前記芳香族環を有する置換基以外のその他の置換基が、炭素原子数2〜7の範囲内である無置換の脂肪族アシル基であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
5.長尺方向に対して斜め方向に延伸されることで、長尺方向に対して40〜50°の範囲内に遅相軸を有し、下記式で定義される収縮率が、10〜30%の範囲内であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
収縮率(%)=(1−sin(π−θ))×100
(上記式中、θは、長尺方向に対する延伸方向の角度を示す。)
6.第1項から第5項までのいずれか一項に記載の光学フィルムと、長尺状偏光子とが貼合されていることを特徴とする円偏光板。
7.第1項から第5項までのいずれか一項に記載の光学フィルムと、長尺状偏光子とが水糊貼合されていることを特徴とする円偏光板。
8.第6項又は第7項に記載の円偏光板が具備されていることを特徴とするタッチパネル表示装置。
本発明の上記手段により、可視光における広い帯域の光に対して、実質的にλ/4の位相差を付与することができ、偏光板の接着性が高く、高湿化においても打鍵耐性が高く、タッチパネルの応答不良がなく、表示ムラが抑制することが可能な光学フィルム、それを用いた円偏光板、及びタッチパネル表示装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
タッチパネルを搭載した表示装置のうち、特に、表示装置として有機EL表示装置を用いた際に、打鍵に対する耐久性が低くなる要因としては、次のように考えている。
ここで、タッチパネルは、例えば静電容量方式であれば、x軸にパターン化された透明導電フィルムと、y軸にパターン化された透明導電フィルムを、粘着フィルムを用いて積層させ、最表面にカバーガラスを設けることで作製できるが、透明導電層は微小な膜厚偏差及び微小な傷の影響をうけ断線してしまうほど、繊細な層である。
前述のとおり、表示装置には偏光板が備えられているが、一般的に偏光子と偏光板保護フィルムは光硬化接着又は水糊(ポリビニルアルコール)接着剤により接着されて作製される。光硬化接着剤は、水糊接着剤と比べて偏光板自体の耐水性は向上できる一方、接着貼合時の硬化収縮による残留応力によりフィルムへの歪みが生じ、また接着層も固く、高湿下においては、打鍵時に透明導電層の断線前に、光学フィルムの膨張により偏光板の接着層にクラック等が発生し、その微小な膜厚偏差が生じたまま打鍵が行われることにより、透明導電層への断線に繋がると推測している。
また、水糊接着は、接着層自体は固くないが、耐水性が弱く、湿度環境下の打鍵時には接着力の低下が起こり、タッチパネルの応答不良が生じるだけではなく、接着力の低下した部分への水分の浸透が表示装置側のムラを発生させると推測している。
本発明者らは、検討を進めた結果、上記手段を採用することにより、フィルムの接着表面は平滑性をもち、打鍵時の応力緩和を可能とする緩衝部位を偏光子との接着表面に持たせることで本願効果が得られることを考えた。
これは、本願の規定する鹸化処理前後のフィルムの水の接触角の差分が5°以上25°以下であることは、従来の汎用のセルロースエステルに比べて半分以下であり、従来の認識では接着に寄与する親水基部分が不十分で、偏光子との接着不良を起こすと推測されるが、鹸化条件を長時間にしても接触角の差分が前記範囲にあり、本願の位相差フィルムと偏光子との接着が良好であることを加味すると、本願規程の樹脂を用いることで、最表面は適度な疎水基を有し平滑性を保ちながらも、親水部位が内部にもネットワークを形成して緩衝部位を形成し、接着性も高く、打鍵に対する耐性を付与できたと推測する。
斜め延伸における収縮倍率を説明する模式図 本発明のλ/4位相差フィルムの製造方法に適用可能な斜め延伸装置のレールパターンの一例を示した概略図 本発明の実施形態に係る製造方法の一例(長尺フィルム原反ロールから繰り出してから斜め延伸する例)を示す概略図 本発明の実施形態に係る製造方法の一例(長尺フィルム原反を巻き取らずに連続的に斜め延伸する例)を示す概略図 本発明のタッチパネル表示装置の構成の一例を示す概略断面図 接着性の測定用サンプルの一例を示す模式図
本発明の光学フィルムは、グルコース骨格の一部が芳香族環を有する置換基で置換された前記(a)〜(c)を満たす特定のセルロース誘導体、及びセルロース誘導体の前駆体との混合物が含有され前記セルロース誘導体が、前記セルロース誘導体及び前記前駆体の総量に対して、20〜50質量%の範囲内で含有され、前記式(A)〜(C)を満たすことを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項8までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記前駆体が、前記グルコース骨格に前記芳香族環を有する置換基が導入される前の前駆体であることが、耐打健性の観点で好ましい。
また、前記芳香族環を有する置換基が、芳香族アシル基又は芳香族カルバモイル基であることが、可視光における広い帯域の光に対して、実質的にλ/4の位相差を付与する観点で好ましい。
また、前記セルロース誘導体のグルコース骨格に置換された置換基のうち、前記芳香族環を有する置換基以外のその他の置換基が、炭素原子数2〜7の範囲内である無置換の脂肪族アシル基であることが、耐打健性の観点で好ましい。
また、長尺方向に対して斜め方向に延伸されることで、長尺方向に対して40〜50°の範囲内に遅相軸を有し、上記式で定義される収縮率が、10〜30%の範囲内であることが、光学調整の観点で好ましい。
また、前記光学フィルムと長尺状偏光子とが貼合された円偏光板であることが、外光反射効果の観点から、好ましい。
また、前記光学フィルムと長尺状偏光子とが水糊貼合された円偏光板であることが、高湿下の耐打健性を付与する観点から、好ましい。
また、本発明のタッチパネル表示装置は、前記円偏光板を具備することを特徴とする。これにより、高湿化においても打鍵耐性が高く、タッチパネルの応答不良がなく、表示ムラが抑制することが可能となる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本発明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《光学フィルム》
本発明における光学フィルムとは、可視光における広い帯域の光に対して、実質的にλ/4の位相差を付与する樹脂フィルムであることが好ましく、前記光学フィルムを用いた円偏光板を具備したタッチパネル表示装置に用いることが可能である。表示装置は、本願の円偏光板を具備しているものであればよく、特に有機ELにおいては好適に用いることが可能である。
(光学フィルムの光学特性)
本発明において「光学フィルム」とは、透過光に対して所望の位相差を付与する光学的な機能を有するフィルムをいう。光学的機能としては、例えば、ある特定の波長の直線偏光を楕円偏光や円偏光に変換する、又は楕円偏光や円偏光を直線偏光に変換する機能等が挙げられる。また、特に「λ/4位相差フィルム」とは、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルムの面内位相差が約1/4となる特性を備えた光学フィルムをいう。
本発明の光学フィルムは、可視光の波長の範囲において円偏光を得るため、可視光の波長の範囲においておおむね波長の1/4の位相差を有する広帯域λ/4位相差フィルムであることが好ましい。
本発明の光学フィルムの面内位相差Ro(λ)及び膜厚方向の位相差Rt(λ)は、下記式(i)で表される。なお、λは各位相差を測定する波長(nm)を表す。本発明で用いる位相差の値は、例えば、Axometrics社製のAxoscanを用いて、23℃、55%RHの環境下で、各波長での複屈折率を測定することにより算出することができる。
式(i)
Ro(λ)=(nxλ−nyλ)×d
Rt(λ)=〔(nxλ+nyλ)/2−nzλ〕×d
上記式(i)において、λは測定に用いた光波長(nm)を表す。n、n、nは、それぞれ23℃、55%RHの環境下で測定され、nはフィルムの面内の最大の屈折率(遅相軸方向の屈折率)を表し、nはフィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、nはフィルム面内に垂直な厚さ方向の屈折率を表す。dはフィルムの厚さ(nm)を表す。
ここで、光波長λ(nm)における光学フィルムの面内位相差をRo(λ)としたとき、本発明の光学フィルムでは、光波長550nmで測定したフィルム面内の位相差値Ro(550)が120〜160nmの範囲内で、光波長450nm及び550nmでそれぞれ測定したフィルム面内の位相差値Ro(450)とRo(550)との比の値Ro(450)/Ro(550)が0.65〜0.95の範囲内であることを特徴とする。
本発明で規定する位相差値Ro(550)は、120〜160nmの範囲内であることを特徴とし、好ましくは130〜150nmの範囲内であり、より好ましくは135〜145nmの範囲内である。
本発明の光学フィルムにおいて、Ro(550)が120〜160nmの範囲内であれば、波長550nmにおける位相差がおおむね1/4波長となり、このような特性を備えた光学フィルムを用いて円偏光板を作製し、例えば、有機EL表示装置にこの円偏光板を具備することにより、室内照明の映り込みなどを防止できる。
また、本発明の光学フィルムにおいては、波長分散特性の指針であるフィルム面内の位相差値Ro(450)とRo(550)との比の値であるRo(450)/Ro(550)が、0.65〜0.95の範囲内であることを特徴とし、好ましくは0.70〜0.92の範囲内であり、より好ましくは0.75〜0.89の範囲内である。
Ro(450)/Ro(550)が0.65〜0.95の範囲内であれば、位相差が適度な逆波長分散特性を発現し、長尺円偏光板を作製した場合には、広い帯域の光に対して反射防止効果が得られる。
一方、膜厚方向の位相差Rt(λ)は、光波長550nmで測定した位相差Rt(550)が60〜200nmの範囲内であることが好ましく、70〜150nmの範囲内であることがより好ましく、70〜100nmの範囲内であることが更に好ましい。
Rt(550)が60〜200nmの範囲内であれば、大画面で斜めから見た時の色相の変化を防止することができる。
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置に搭載しても良い。例えば、本発明の位相差範囲(Ro(550))で、反射型液晶表示装置に搭載しても良い。また、位相差範囲(Ro(550))を120〜160nmより小さな領域とし、VAモードやIPSモード等の液晶表示装置用光学補償フィルムとして用いても、良好な性能を有する。
(光学フィルムの表面特性)
本願の光学フィルムは、鹸化前の水の接触角と50℃に加熱した2mol/Lの水酸化カリウム溶液(KOH)中で90秒間鹸化処理した際のフィルムの水の接触角をそれぞれ測定し、鹸化処理前後のフィルムの水の接触角の差分が5〜25°の範囲内であることを特徴とする。
なお、水の接触角はJIS−R3257に基づいて、温度23℃、相対湿度55%の雰囲気下で、反射ミラーの表面に水3μL滴下して、その水滴の滴下1分後の接触角を接触角計DM300(協和界面化学)を用いて測定した。
<セルロース誘導体と当該セルロース誘導体の前駆体との混合>
本発明では、グルコース骨格の一部が芳香族環を有する置換基で置換されたセルロース誘導体、及びセルロース誘導体の前駆体(以下、単に「前駆体」ともいう。)の混合物を含有し、前記セルロース誘導体が、前記セルロース誘導体及び前記前駆体の総量に対して、20〜50質量%の範囲内で含有されることが、偏光板の接着性、及び耐打健性の観点で好ましい。また、前記前駆体が、前記グルコース骨格に前記芳香族環を有する置換基が導入される前の前駆体であることが更に好ましい。
前述のとおり、前記セルロース誘導体及び前記前駆体を混合することで、前記表面特性を有しており、最表面は適度な疎水基を有し平滑性を保ちながらも、親水部位が内部にもネットワークを形成して緩衝部位を形成し、接着性も高く、打鍵に対する耐性を付与できたと推測する。
セルロース誘導体の、当該セルロース誘導体及び前記前駆体の総量に対する混合比率が50質量%以下の場合は、波長分散値性がよく、打鍵性耐性が低下しにくい。また、混合比率が20質量%以上であれば、位相差調整しやすく、タッチパネルの応答不良が生じにくい。
(セルロース誘導体)
本発明の光学フィルムを構成するセルロース誘導体においては、セルロース誘導体のグルコース骨格に置換された置換基が、下記要件(a)〜(c)を満たすことを特徴とする。
本発明に係るセルロース誘導体のグルコース骨格に置換された置換基の第一の要件(a)は、グルコース骨格に置換された芳香族環を有する置換基の置換度が、グルコース骨格単位当たり0.05〜0.60の範囲内であることである。
本発明に係るセルロース誘導体のグルコース骨格に置換された置換基の第二の要件(b)は、前記芳香族環を有する置換基の極大吸収波長が、220〜400nmの範囲内であることである。
更に好ましくは、芳香族環を有する置換基の極大吸収波長が200〜300nmの範囲内である。
本発明に係るセルロース誘導体のグルコース骨格が有する置換基の第三の要件(c)は、グルコース骨格が有する置換基の総置換度が、グルコース骨格単位当たり1.7〜3.0の範囲内である。
更に好ましくは、水との配向を抑制することから2.4〜3.0の範囲内である。
すなわち、本発明に係るセルロース誘導体は、セルロース誘導体を構成するグルコース骨格(β−グルコース環)の2位、3位及び6位のヒドロキシ基の一部が芳香族環を有する置換基で置換されたセルロース誘導体である。
更に、本発明に係るセルロース誘導体の詳細について説明する。
本発明に係るセルロース誘導体のグルコース骨格としては、下記一般式(1)で表されるグルコース骨格単位を有するセルロース誘導体である。
Figure 2016177238
上記一般式(1)において、Rはグルコース骨格の2位に位置する基であり、Rはグルコース骨格の3位に位置する基であり、Rはグルコース骨格の6位に位置する基である。R、R及びRは、前述の要件(a)〜(c)を満たす限り特に限定されず、各々水素原子又は置換基を表す。なお、本発明においてグルコース骨格とは、上記一般式(1)におけるR、R及びRを除いた部分をいうものとする。
また、本発明に係るセルロース誘導体は、重量平均分子量Mwが50000〜500000の範囲内のものが好ましく、より好ましくは100000〜300000の範囲内であり、更に好ましくは150000〜250000の範囲内である。
セルロース誘導体の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、それぞれゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
((芳香族環を有する置換基))
本発明に係るセルロース誘導体は、グルコース骨格の一部が芳香族環を有する置換基で置換されたことを特徴とする。芳香族環を有する置換基としては、極大吸収波長が、220〜400nmの範囲内であれば特に限定されない。また、芳香族環を有する置換基としては、芳香族環に電子吸引性又は電子供与性の官能基が結合していても良い。波長分散性の改良には、電子供与性基を芳香族環に結合させることが好ましい。
ここで、本発明において、芳香族環を有する置換基の極大吸収波長は、日本分光社製のV−650を用いて220〜800nmまでの波長領域で測定するものとする。芳香族環を有する置換基は、いずれもメチル基を結合させた構造とし、ジクロロメタンに溶解し、最大の吸収極大の吸光度が1.0となるよう濃度調整して測定を行うものとする。
本発明に係るセルロース誘導体は、このような芳香族環を有する置換基の置換度が、グルコース骨格単位当たり、0.05〜0.60となる範囲内である。ここでいう置換度とは、グルコース骨格単位における2位、3位及び6位の位置における多重結合を有する置換基の数の総和のセルロース誘導体全体における平均値を意味する。
芳香族環を有する置換基を、前記一般式(1)を用いて説明すると、R、R及びRとしては、例えば、R−CO−、R−NHCO−等として表すことができ、Rは芳香族基を表す。つまり、芳香族環を有する置換基としては、芳香族アシル基(R−CO−)又は芳香族カルバモイル基(R−NHCO−)であることが好ましい。
本発明に係る芳香族環を有する置換基において、芳香族基としては、芳香族炭化水素環基でも芳香族複素環基でも良く、より好ましくは芳香族炭化水素環基である。
芳香族炭化水素環基としては、例えば、炭素原子数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがより好ましく、6〜10のものが最も好ましい。芳香族炭化水素環基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が特に好ましい。
芳香族複素環基としては、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のうち少なくとも一つを含むものが好ましい。芳香族複素環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン等が挙げられる。
芳香族複素環基としては、ピリジル基、チオフェニル基、トリアジニル基、キノリル基が、特に好ましい。
芳香族アシル基の好ましい例としては、例えば、ベンゾイル基、フェニルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル、4−チオメチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、4−ヘプチルベンゾイル基、2,4,5−トリメトキシベンゾイル基、2,4,5−トリメチルベンゾイル基、3,4,5−トリメトキシベンゾイル基及びナフトイル基等が挙げられる。
また、芳香族アシル基の他の例としては、以下に示すカルボン酸からヒドロキシ基を除いた形の基が挙げられる。そのようなカルボン酸としては、例えば、2−チオフェンカルボン酸、3−チオフェンカルボン酸、4−チアゾールカルボン酸、2−チアゾールカルボン酸、2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸、4−オキサゾールカルボン酸、2−オキサゾールカルボン酸、2−ピロールカルボン酸、3−ピロールカルボン酸、3−イミダゾールカルボン酸、2−トリアゾールカルボン酸、1−ピロールカルボン酸、1−イミダゾールカルボン酸、1−ピラゾールカルボン酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、2−ピラジンカルボン酸、4−ピリミジンカルボン酸、2−ピリミジンカルボン酸、2−キノリンカルボン酸、2−キノキサリンカルボン酸、7−キノリンカルボン酸、9−カルバゾールカルボン酸、2−ベンゾチオフェンカルボン酸、2−ベンゾフランカルボン酸、2−インドールカルボン酸、2−ベンゾチアゾールカルボン酸、2−ベンゾオキサゾールカルボン酸、2−ベンゾイミダゾールカルボン酸等の化合物を挙げることができる。
また、これらの芳香族アシル基は、更に置換基を有していても良い。
芳香族カルバモイル基の好ましい例としては、例えば、フェニルカルバモイル基、ビフェニルカルバモイル基、4−メチルフェニルカルバモイル基、4−チオメチルフェニルカルバモイル基、4−メトキシカルバモイル基、4−ヘプチルカルバモイル基、2,4,5−トリメトキシカルバモイル基、2,4,5−トリメチルカルバモイル基、3,4,5−トリメトキシカルバモイル基及び1−ナフチルカルバモイル基等が挙げられる。
また、芳香族カルバモイル基の他の例としては、以下に示すカルバミン酸からヒドロキシ基を除いた形の基が挙げられる。そのようなカルバミン酸としては、例えば、2−チオフェンカルバミン酸、3−チオフェンカルバミン酸、4−チアゾールカルバミン酸、2−チアゾールカルバミン酸、2−フランカルバメート基、3−フランカルバメート基、4−オキサゾールカルバミン酸、2−オキサゾールカルバミン酸、2−ピロールカルバミン酸、3−ピロールカルバミン酸、3−イミダゾールカルバミン酸、2−トリアゾールカルバミン酸、1−ピロールカルバミン酸、1−イミダゾールカルバミン酸、1−ピラゾールカルバミン酸、2−ピリジンカルバミン酸、3−ピリジンカルバミン酸、4−ピリジンカルバミン酸、2−ピラジンカルバミン酸、4−ピリミジンカルバミン酸、2−ピリミジンカルバミン酸、2−キノリンカルバミン酸、2−キノキサリンカルバミン酸、7−キノリンカルバミン酸、2−ベンゾチオフェンカルバミン酸、2−ベンゾフランカルバミン酸、2−インドールカルバミン酸、2−ベンゾチアゾールカルバミン酸、2−ベンゾオキサゾールカルバミン酸、2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸等を挙げることができる。
また、これらの芳香族カルバモイル基は、更に置換基を有していても良い。
((その他の置換基))
上記一般式(1)においては、前述の要件(a)〜(c)を満たす限りにおいては、上記の芳香族環を有する置換基以外の置換基を有していても良い。このような置換基として、R、R及びRが脂肪族アシル基である場合が挙げられる。
脂肪族アシル基は、−(C=O)RのRが脂肪族基である基をいう。脂肪族基部位は、直鎖、分岐及び環状の脂肪族基のいずれであっても良い。脂肪族アシル基の炭素原子数は、2〜20が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜7が更に好ましい。なお、炭素原子数1の脂肪族アシル基(ホルミル基)は、合成上、セルロース誘導体に導入することが困難である。
前記脂肪族アシル基は無置換であることが好ましく、中でも、アセチル基、プロピオニル基又はブチリル基が好ましい。
なお、前記脂肪族アシル基の、脂肪族基部位は、置換基を1以上有していても良い。
本発明に係るセルロース誘導体は、公知の方法、例えば、「セルロースの事典」131〜164頁(朝倉書店、2000年)等に記載の方法を参考にして製造することができる。
なお、本発明において、グルコース骨格の置換基の置換度は、Cellulose Communication 6,73−79(1999)及びChrality 12(9),670−674に記載の方法を利用して、H−NMR又は13C−NMRにより、決定することができる。
(前駆体)
本発明における前駆体とは、セルロース、又は、セルロースのグルコース骨格がヒドロキシ基やアシル基等の置換基を有するものをいい、例えばセルロースエステル等が挙げられる。当該セルロース誘導体と混合される前駆体は、前記セルロース誘導体のグルコース骨格に当該芳香族環を有する置換基を導入する前の前駆体であることが好ましいが、前記セルロース誘導体のグルコース骨格に当該芳香族環を有する置換基を導入する前の前駆体以外の前駆体であってもよい。すなわち、本発明でいうセルロース誘導体と混合する「セルロース誘導体の前駆体」と、本発明の「セルロース誘導体」の前駆体とは、同じであってもよいし、異なるものであってもよい。 本発明の光学フィルムは、セルロース誘導体と前駆体が相溶しており、40μmの本発明の光学フィルムのヘイズ値をヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色工業(株)製)を用いて測定した際に、ヘイズ値が0.90以下である。なお、光源は5V9Wハロゲン球、受光部はシリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)であり、測定はJIS K−7136に準じて測定した。
<光学フィルムの各種添加剤>
本発明の光学フィルムには、様々な機能を付与する目的で、各種添加剤を含有させることができる。
本発明に適用可能な添加剤は、特に制限はなく、本発明の目的効果を損なわない範囲で、例えば、紫外線吸収剤、可塑剤、劣化抑制剤、マット剤、位相差上昇剤、波長分散改良剤等が用いることができる。
以下に、本発明の光学フィルムに適用可能な代表的添加剤について示す。
(紫外線吸収剤)
本発明の光学フィルムには、紫外線吸収剤を含有させることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報に記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
本発明の光学フィルムを、位相差フィルムの他に、偏光板の保護フィルムとして用いる場合、紫外線吸収剤としては、偏光子や有機EL素子の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ有機EL素子の表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ない特性を備えていることが好ましい。
本発明に有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
また、市販品として、「チヌビン(TINUVIN)109」、「チヌビン(TINUVIN)171」、「チヌビン(TINUVIN)326」、「チヌビン(TINUVIN)328」(以上、商品名、BASFジャパン社製)を好ましく使用できる。
紫外線吸収剤の添加量は、セルロース誘導体及び前駆体の混合物に対して0.1〜5.0質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜5.0質量%の範囲内であることが更に好ましい。
(可塑剤)
一般的に、セルロースエステルフィルムは、セルロースアセテートに比較して柔軟性に乏しく、フィルムに曲げ応力やせん断応力がかかると、フィルムに割れ等が生じ易い。また、光学フィルムとして加工する際に、切断部にひびが入りやすく、切り屑が発生しやすい。発生した切り屑は、光学フィルムを汚染し、光学的欠陥の原因となっていた。これらの問題点を改良すべく、光学フィルムに可塑剤を含有させることができる。
可塑剤として、具体的には、例えば、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、正リン酸エステル系、酢酸エステル系、ポリエステル・エポキシ化エステル系、リシノール酸エステル系、ポリオレフィン系、ポリエチレングリコール系化合物等を挙げることができる。
本発明の光学フィルムに使用できる可塑剤としては、常温、常圧、液状で、かつ沸点が200℃以上の化合物から選択することが好ましい。具体的な化合物名としては、例えば、脂肪族二塩基酸エステル系、フタル酸エステル系、ポリオレフィン系を挙げることができる。
可塑剤の添加量としては、セルロース誘導体及び前駆体の混合物に対して、0.5〜40.0質量%の範囲内であることが好ましく、1.0〜30.0質量%の範囲内であることがより好ましく、3.0〜20.0質量%の範囲内であることが特に好ましい。可塑剤の添加量が0.5質量%以上であると、可塑効果が十分で、加工適性が向上する。また、40.0質量%以下であると、長時間経時した場合における可塑剤の分離溶出を抑制でき、光学的ムラ、他部品への汚染等をより確実に抑制することができる。
(劣化抑制剤)
本発明の光学フィルムには、劣化防止剤、例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル重合禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン類等を含有させることができる。
劣化抑制剤については、例えば、特開平3−199201号公報、同5−197073号公報、同5−194789号公報、同5−271471号公報、同6−107854号公報等に記載がある。
劣化防止剤の添加量は、劣化防止剤の添加による効果が発現し、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)を抑制する観点から、光学フィルムの作製に用いるセルロース溶液(ドープ)の0.01〜1質量%の範囲内であることが好ましく、0.01〜0.2質量%の範囲内であることが更に好ましい。
特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(略称:BHT)、トリベンジルアミン(略称:TBA)を挙げることができる。
(マット剤微粒子)
本発明の光学フィルムには、マット剤として微粒子を含有させることができる。
当該マット剤微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等を挙げることができる。
これらのマット剤微粒子の中では、ケイ素を含むものが、濁度(ヘイズ)が低くなる点で好ましく、特に、二酸化ケイ素が好ましい。
二酸化ケイ素の微粒子は、一次平均粒子サイズが1〜20nmの範囲内であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。一次平均粒子サイズは、5〜16nmの範囲内のものが光学フィルムのヘイズを下げることができる観点から更に好ましい。見かけ比重は、90〜200g/リットルの範囲内であることが更に好ましく、100〜200g/リットルの範囲内であることが特に好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
これらの微粒子は、通常、平均粒子サイズが0.05〜2.0μmの範囲内となる二次粒子を形成する。これら二次粒子は、光学フィルム中では、一次粒子の凝集体として存在し、光学フィルム表面に0.05〜2.0μmの凹凸を形成させる。二次平均粒子サイズは、0.05〜1.0μmの範囲内であることが好ましく、0.1〜0.7μmの範囲内であることが更に好ましく、0.1〜0.4μmの範囲内であることが特に好ましい。
一次粒子及び二次粒子サイズは、光学フィルム中の微粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒子サイズとした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子サイズとする。
二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製、商品名)等の市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル(株)製、商品名)で市販されており、使用することができる。
これらの中でも、アエロジル200V及びアエロジルR972Vが、一次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化ケイ素の微粒子であり、光学フィルムのヘイズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましい。
前記マット剤微粒子は、以下の方法により調製して、光学フィルムに適用することが好ましい。すなわち、溶媒とマット剤微粒子を撹拌混合したマット剤微粒子分散液をあらかじめ調製し、このマット剤微粒子分散液を、別途用意したセルロース誘導体及び前駆体の混合物の濃度が5質量%未満である各種添加剤溶液に添加して撹拌溶解した後、更にメインのセルロース誘導体及び前駆体の混合物のドープ液と混合する方法が好ましい。
マット剤微粒子の表面は、疎水化処理が施されているため、疎水性を有する添加剤が添加されると、マット剤微粒子表面に添加剤が吸着され、これを核として、添加剤の凝集物が発生しやすい。したがって、相対的に親水的な添加剤をあらかじめマット剤微粒子分散液と混合した後、疎水的な添加剤を混合することにより、マット剤表面での添加剤の凝集を抑制することができ、ヘイズが低く、液晶表示装置に組み込んだ際の黒表示における光漏れが少ない光学フィルムを作製でき好ましい。
マット剤微粒子分散剤と添加剤溶液の混合、セルロース誘導体及び前駆体の混合物のドープ液との混合にはインラインミキサーを使用することが好ましい。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化ケイ素微粒子を溶媒等と混合して分散するときの二酸化ケイ素の濃度は5〜30質量%の範囲内であることが好ましく、10〜25質量%の範囲内であることが更に好ましく、15〜20質量%の範囲内であることが特に好ましい。分散濃度が高い方が同量の添加量に対する濁度が低くなり、ヘイズや凝集物の発生を抑制することができるため好ましい。
最終的なセルロース誘導体及び前駆体の混合物のドープ溶液中でのマット剤の添加量は、0.001〜1.0質量%の範囲内であることが好ましく、0.005〜0.5質量%の範囲内であることが更に好ましく、0.01〜0.1質量%の範囲内であることが特に好ましい。
《光学フィルムの製造方法》
本発明の光学フィルムを製造する方法としては、特段の制限はなく、溶液流延法又は溶融流延法等が挙げられるが、溶液流延法により製造する方法が好ましい。
[溶液流延法]
本発明の光学フィルムは、溶液流延法によって製造することが好ましい態様である。溶液流延法は、セルロース誘導体及び前駆体を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いて光学フィルムを製造する方法である。
溶液流延法には、本発明で規定する特性を満たすセルロース誘導体、前駆体、及び各種添加剤等を有機溶媒に加熱溶解させてドープを調製する工程、調製したドープをベルト状又はドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、剥離したウェブを延伸又は収縮する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程等が含まれる。
(ドープを調製する工程)
ドープの調製に用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル類、炭素原子数が3〜12のケトン類、炭素原子数が3〜12のエステル類及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素類から選ばれることが好ましい。
エーテル類、ケトン類及びエステル類は、環状構造を有していても良い。エーテル類、ケトン類及びエステル類の官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性ヒドロキシ基のような他の官能基を有していても良い。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上記の好ましい炭素原子数の範囲内であることが好ましい。
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例としては、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等が挙げられる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例としては、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等が挙げられる。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例としては、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素類の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%の範囲内であることが好ましく、30〜70モル%の範囲内であることがより好ましく、35〜65モル%の範囲内であることが更に好ましく、40〜60モル%に範囲内であることが特に好ましい。ジクロロメタンが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
前記ドープの調製には、ジクロロメタンとアルコール類との混合溶媒を用いることが好ましく、ジクロロメタンに対するアルコール類の比率は1〜50質量%の範囲内であることが好ましく、5〜40質量%の範囲内であることが好ましく、8〜30質量%の範囲内であることが特に好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−ブタノールが好ましく、2種類以上のアルコールを混合して使用しても良い。
前記ドープは、0℃以上の温度(常温又は高温)条件下で、一般的な方法で、調製することができる。ドープの調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法及び装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特に、ジクロロメタン)を用いることが好ましい。
前記ドープ中のセルロース誘導体及び前駆体の混合物の濃度は、5〜40質量%の範囲内であることが好ましく、10〜30質量%の範囲内であることが更に好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、上記した各種添加剤を添加しておいても良い。
前記ドープは、常温(0〜40℃)でセルロース誘導体及び前駆体の混合物と有機溶媒とを撹拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧及び加熱条件下で撹拌しても良い。具体的には、セルロース誘導体及び前駆体の混合物と有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら撹拌する。
加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃の範囲内であり、更に好ましくは80〜110℃の範囲内である。
各成分はあらかじめ粗混合してから容器に投入しても良い。また、順次容器に投入しても良い。容器は撹拌できる機構を備えている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器内を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用して加圧しても良い。又は、容器を密閉後、各成分を加圧下で添加しても良い。
加熱する場合、容器の外周部より加熱する方法が好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設ける方法、配管して配管内に加熱した液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に撹拌翼を設けて、これを用いて撹拌することが好ましい。撹拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。撹拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置しても良い。容器内で各成分を溶媒中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、又は取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にも、セルロース誘導体及び前駆体の混合物を溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロース誘導体を溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法を適用することにより、迅速で均一な溶液が得られる効果がある。
冷却溶解法では、最初に、室温で有機溶媒中にセルロース誘導体及び前駆体の混合物を撹拌しながら徐々に添加する。前記混合物の量は、この混合物中に5〜40質量%の範囲内で含まれるように調整することが好ましい。セルロース誘導体の量は、10〜30質量%の範囲内であることが更に好ましい。更に、混合物中には前述の任意の添加剤を添加しておいても良い。
次に、混合物を−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、更に好ましくは−50〜−20℃、特に好ましくは−50〜−30℃)の範囲内で冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。冷却により、セルロース誘導体と有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることが更に好ましく、12℃/分以上であることが特に好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
更に、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、更に好ましくは0〜120℃、より更に好ましくは0〜50℃)の範囲内に加温すると、有機溶媒中にセルロース誘導体が溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでも良く、温浴中で加温しても良い。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることが更に好ましく、12℃/分以上であることがより更に好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を、加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返しても良い。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが好ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧及び減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが好ましい。
(ドープを流延する工程、ウェブを乾燥する工程)
上記のようにして調製したドープを、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%の範囲内となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が10℃以下のドラム又はバンド上に流延することが好ましい。
流延したドープをウェブとして乾燥する方法については、米国特許第2336310号明細書、同第2367603号明細書、同第2492078号明細書、同第2492977号明細書、同第2492978号明細書、同第2607704号明細書、同第2739069号明細書及び同第2739070号明細書の各文献、英国特許第640731号明細書及び同第736892号明細書の各文献、並びに特公昭45−4554号公報、同49−5614号公報、特開昭60−176834号公報、同60−203430号公報及び同62−115035号公報の各文献に記載がある。ドラム又はバンド上での乾燥は、流延膜に対し空気、窒素等の不活性ガスを送風することにより行うことができる。
調製したセルロース誘導体及び前駆体の混合物の溶液(ドープ)を用いて2層以上の流延を行いフィルム化することもできる。この場合、流延前のドープは、固形分量が5〜40%の範囲内となるように濃度を調整することが好ましい。
(ウェブを延伸する工程)
上記のように乾燥して得たウェブをドラム又はバンドから剥離し、剥離したウェブを延伸する。
本発明の光学フィルムは、上記のとおり、光波長550nmで測定した面内位相差Ro(550)が120〜160nmの範囲内であることを特徴としており、上記のようにして形成したウェブを延伸することによって当該面内位相差Roを付与し得る。
本発明に適用が可能な延伸方法は、特に限定されず、例えば、複数のローラーに周速差をつけ、その間で、複数のローラー間での周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に従って広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、又は縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法を、単独又は組み合わせて採用することができる。
すなわち、製膜方向に対して横方向に延伸しても、縦方向に延伸しても、両方向に延伸しても良く、更に両方向に延伸する場合は同時延伸であっても、逐次延伸であっても良い。なお、いわゆるテンター方式の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
延伸工程としては、通常、幅手方向(TD方向)に延伸し、搬送方向(MD方向)に収縮させる場合が多いが、収縮させる際、斜め方向に搬送させると主鎖方向を合わせ易くなるため、位相差発現効果は更に大きい。収縮率は搬送させる角度によって決めることができる。
図1は、斜め延伸における収縮倍率を説明する模式図である。
図1において、光学フィルムFを斜め延伸方向12に斜め延伸する際に、光学フィルムFは、斜め屈曲されることでMに収縮する。すなわち、光学フィルムFを把持した把持具が屈曲角度θで屈曲せずにそのまま進行する場合、所定の時間で長さM′だけ進行するはずである。しかしながら、実際には、屈曲角度θで屈曲し、M(ただし、M=M′)だけ進行する。このとき、フィルムの入り方向(延伸方向(TD方向)11と直交する方向)には、把持具はMだけ進行しているため、光学フィルムFは、長さM(ただし、M=M−M)だけ収縮したこととなる。
このとき、収縮率(%)は、
収縮率(%)=(M−M)/M×100
で表される。屈曲角度をθとすると、
=M×sin(π−θ)
となり、収縮率は、
収縮率(%)=(1−sin(π−θ))×100
で表される。
また、図1において、光学フィルムFは、搬送方向(MD方向)13に搬送され、遅相軸14を有する。
長尺円偏光板の生産性を考慮すると、本発明の光学フィルムは、搬送方向に対する配向角が45±2°であることが、偏光フィルムとのロール・to・ロールでの貼合が可能となり好ましい。
(斜め延伸装置による延伸)
次いで、45°の方向に延伸する斜め延伸方法について、更に説明する。
本発明の光学フィルムの製造方法において、延伸する光学フィルムに斜め方向の配向を付与する方法として、斜め延伸装置を用いることが好ましい。
本発明に適用可能な斜め延伸装置としては、レールパターンを多様に変化させることにより、フィルムの配向角を自在に設定でき、フィルムの配向軸をフィルム幅方向にわたって左右均等に高精度に配向させることができ、かつ、高精度でフィルム厚さやリターデーション値を制御できるフィルム延伸装置であることが好ましい。
図2は、本発明の光学フィルムの製造に適用可能な斜め延伸装置のレールパターンの一例を示した概略図である。なお、ここに示す図2は一例であって、本発明にて適用可能な斜め延伸装置はこれに限定されるものではない。
一般的に、斜め延伸装置においては、図2に示されるように、長尺のフィルム原反の繰出方向D1は、延伸後の延伸フィルムの巻取方向D2と異なっており、繰出角度θiを成している。繰出角度θiは0°超90°未満の範囲で、所望の角度に任意に設定することができる。なお、本明細書において、長尺とは、フィルムの幅に対し、少なくとも5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍又はそれ以上の長さを有するものをいう。
長尺のフィルム原反は、斜め延伸装置入口(図中Aの位置)において、その両端を左右の把持具(テンター)によって把持され、把持具の走行に伴い走行される。左右の把持具は、斜め延伸装置入口(図中Aの位置)で、フィルムの進行方向(繰出方向D1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具Ci、Coは、左右非対称なレールRi、Ro上を走行し、延伸終了時の位置(図中Bの位置)で、テンターで把持したフィルムを解放する。
このとき、斜め延伸装置入口(図中Aの位置)で相対していた左右の把持具は、左右非対称なレールRi、Ro上を走行するにつれて、Ri側を走行する把持具Ciは、Ro側を走行する把持具Coに対して進行する位置関係となる。
すなわち、斜め延伸装置入口(フィルムの把持具による把持開始位置)Aで、フィルムの繰出方向D1に対して略垂直な方向に相対していた把持具Ci、Coが、フィルムの延伸終了時の位置Bにある状態で、該把持具Ci、Coを結んだ直線がフィルムの巻取方向D2に対して略垂直な方向に対して角度θLだけ傾斜している。
以上の方法に従って、フィルム原反が斜め延伸されることとなる。ここで略垂直とは、90±1°の範囲にあることを示す。
上記のように構成される斜め延伸装置について更に詳しく説明する。
本発明の光学フィルムの製造に適用される斜め延伸装置は、フィルム原反を、延伸可能な任意の温度に加熱し、斜め延伸する装置である。
この斜め延伸装置は、加熱ゾーンと、フィルムを搬送するための把持具が走行する左右で一対のレールと、該レール上を走行する多数の把持具とを備えている。斜め延伸装置の入口部に順次供給されるフィルムの両端を、把持具で把持し、加熱ゾーン内にフィルムを導き、斜め延伸装置の出口部で把持具からフィルムを開放する。把持具から開放されたフィルムは巻芯に巻き取られる。一対のレールは、それぞれ無端状の連続軌道を有し、斜め延伸装置の出口部でフィルムの把持を開放した把持具は、外側を走行して順次入口部に戻されるようになっている。
なお、斜め延伸装置のレールパターンは左右で非対称な形状となっており、製造すべき長尺延伸フィルムに与える配向角、延伸倍率等に応じて、そのレールパターンは手動で、又は自動で調整できるようになっている。本発明で用いられる斜め延伸装置では、各レール部及びレール連結部の位置を自由に設定し、レールパターンを任意に変更できることが好ましい(図2中の○部は連結部の一例を示している。)。
本発明において、斜め延伸装置の把持具は、前後の把持具と一定間隔を保って、一定速度で走行する。
把持具の走行速度は、適宜選択できるが、通常、1〜100m/分である。左右一対の把持具の走行速度の差は、走行速度の通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。これは、延伸工程出口でフィルムの左右に進行速度差があると、延伸工程出口においてシワや寄りが発生するため、左右の把持具の速度差は、実質的に同速度であることが求められるためである。一般的な斜め延伸装置等では、チェーンを駆動するスプロケットの歯の周期、駆動モーターの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これらは本発明で述べる速度差には該当しない。
本発明に適用可能な斜め延伸装置において、特にフィルムの搬送が斜めになる箇所には、把持具の軌跡を規制するレールにしばしば大きい屈曲率が求められる。急激な屈曲による把持具同士の干渉、又は局所的な応力集中を避ける目的から、屈曲部では把持具の軌跡が曲線を描くようにすることが好ましい。
本発明において、長尺フィルム原反は、斜め延伸装置入口(図中Aの位置)において、その両端を左右の把持具によって順次把持されて、把持具の走行に伴い走行される。斜め延伸装置入口(図中Aの位置)で、フィルム進行方向(繰出方向D1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具は、左右非対称なレール上を走行し、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱固定ゾーンを有する加熱ゾーンを通過する。
予熱ゾーンとは、加熱ゾーン入口部において、両端を把持した把持具の間隔が一定の間隔を保ったまま走行する区間をさす。
延伸ゾーンとは、両端を把持した把持具の間隔が開きだし、所定の間隔になるまでの区間をさす。延伸ゾーンでは、上記のような斜め延伸が行われるが、必要に応じて斜め延伸前後において縦方向又は横方向に延伸しても良い。斜め延伸の場合、屈曲時に遅相軸とは垂直の方向であるMD方向(進相軸方向)への収縮を伴う。
熱固定ゾーンとは、延伸ゾーンより後の把持具の間隔が再び一定となる期間において、両端の把持具が互いに平行を保ったまま走行する区間をさす。熱固定ゾーンを通過した後に、ゾーン内の温度がフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度Tg以下に設定される区間(冷却ゾーン)を通過しても良い。このとき、冷却によるフィルムの縮みを考慮して、あらかじめ対向する把持具間隔を狭めるようなレールパターンとしても良い。
各ゾーンの温度は、フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度Tgに対し、予熱ゾーンの温度はTg〜Tg+30℃の範囲内で、延伸ゾーンの温度はTg〜Tg+30℃の範囲内で、冷却ゾーンの温度はTg−30℃〜Tgの範囲内で設定することが好ましい。
なお、幅方向の厚さムラを制御するために、延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差をつけても良い。延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差をつけるには、温風を恒温室内に送り込むノズルの開度を幅方向で差をつけるように調整する方法や、ヒーターを幅方向に並べて加熱制御する等の公知の手法を用いることができる。
予熱ゾーン、延伸ゾーン、収縮ゾーン及び冷却ゾーンの長さは適宜選択でき、延伸ゾーンの長さに対して、予熱ゾーンの長さは通常100〜150%の範囲内であり、固定ゾーンの長さは通常50〜100%の範囲内である。
延伸工程における延伸倍率(W/W0)は、好ましくは1.3〜3.0の範囲内であり、より好ましくは1.5〜2.8の範囲内である。延伸倍率がこの範囲にあると幅方向厚さムラを小さくすることができる。斜め延伸装置の延伸ゾーンにおいて、幅方向で延伸温度に差をつけると幅方向厚さムラを更に改善することが可能になる。なお、W0は延伸前のフィルムの幅、Wは延伸後のフィルムの幅を表す。
本発明において適用可能な斜め延伸方法としては、上記図2に示した方法のほかに、図3(a)〜(c)及び図4(a)、(b)に示す延伸方法を挙げることができる。
図3は、本発明に適用可能な製造方法の一例(長尺フィルム原反ローラーから繰り出してから斜め延伸する例)を示す概略図であり、一旦ロール状に巻き取られた長尺フィルム原反を繰り出して斜め延伸するパターンを示す。
図4は、本発明に適用可能な他の製造方法の一例(長尺フィルム原反を巻き取らずに連続的に斜め延伸する例)を示す概略図であり、長尺フィルム原反を巻き取ることなく連続的に斜め延伸工程を行うパターンを示す。
図3に示す構成では、斜め延伸装置15、フィルム繰り出し装置16、搬送方向変更装置17及び巻取り装置18等が設けられている。また、図4に示す構成では、斜め延伸装置15、搬送方向変更装置17、巻取り装置18及び剥離・乾燥工程出口19等が設けられている。
図3は、フィルム繰り出し装置16から繰り出されるフィルムに対して斜め延伸を行う構成であり、図3(a)〜(c)は、フィルム繰り出し装置16の向き及び搬送方向変更装置17が設けられる位置をそれぞれ変更したものである。フィルム繰り出し装置16は、斜め延伸装置15入口に対して所定角度でフィルムを送り出せるように、スライド及び旋回可能に構成されている。また、フィルム繰り出し装置16は、図3(c)に示すように、スライド可能に構成され、搬送方向変更装置17により斜め延伸装置15入口にフィルムを送り出すように構成されていても良い。
図4は、剥離・乾燥工程出口19から搬送されてくるフィルムに対して直接的に斜め延を行う構成であり、図4(a)、(b)は、搬送方向変更装置17が設けられる位置を変更したものである。
フィルム繰り出し装置16又は剥離・乾燥工程出口19及び搬送方向変更装置17をこれらのような配置することにより、より製造装置全体の幅を狭くすることが可能となる他、フィルムの送り出し位置及び角度を細かく制御することが可能となる。これにより、膜厚及び光学値のバラツキが小さい長尺延伸フィルムを得ることが可能となる。なお、フィルム繰り出し装置16又は剥離・乾燥工程出口19及び搬送方向変更装置17を移動可能とすることにより、左右のクリップのフィルムへの噛込み不良を有効に防止することができる。
巻取り装置18は、斜め延伸装置15出口に対して所定角度でフィルムを引き取れるように配置されることにより、フィルムの引き取り位置及び角度を細かく制御することが可能となり、膜厚及び光学値のバラツキが小さい長尺延伸フィルムを得ることが可能となる。そのため、フィルムのシワの発生を有効に防止することができるとともに、フィルムの巻取り性が向上するため、フィルムを長尺で巻き取ることが可能となる。本発明において、延伸後のフィルムの引取り張力T(N/m)は、
100(N/m)< T <300(N/m)、好ましくは
150(N/m)< T <250(N/m)の範囲内で調整することである。
また、本発明の光学フィルムを製造する方法においては、上記のようにして巻き取ったフィルムを更に乾燥する乾燥工程、当該乾燥工程後にフィルムを再び巻き取る巻取工程を更に行うものとしても良い。
[溶融流延法]
本発明の光学フィルムは、上記説明した溶液流延法の他に、溶融流延法によって製造しても良い。溶融流延法は、セルロース誘導体、前駆体、及び可塑剤等の添加剤を含む組成物を、流動性を呈する温度まで加熱溶融し、その後、流動性を有する溶融物として流延する成形方法である。
加熱溶融する成形法としては、例えば、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類することができる。これらの成形法の中では、機械的強度及び表面精度等の点から、溶融押出し法が好ましい。
溶融押出し法に用いられる複数の原材料は、通常、あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。ペレット化は、公知の方法で行うことができ、例えば、乾燥セルロース誘導体や可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出機に供給し、一軸や二軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押し出し、水冷又は空冷し、カッティングすることで得ることができる。
添加剤は、押出機に供給する前に混合しておいても良いし、それぞれ個別のフィーダーで供給しても良い。なお、マット剤微粒子や酸化防止剤等の少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
ペレット化に用いる押出機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないように、ペレット化可能でなるべく低温で加工する方式が好ましい。例えば、二軸押出機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろん、ペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーに投入して押出機に供給し、加熱溶融した後、そのままフィルム製膜することも可能である。
上記ペレットを一軸や二軸タイプの押出機を用いて、押し出す際の溶融温度としては200〜300℃の範囲内とし、リーフディスクタイプのフィルター等で濾過して異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ローラーと弾性タッチローラーでフィルムをニップし、冷却ローラー上で固化させる。
供給ホッパーから押出機へ導入する際は、真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下で行って、酸化分解等を防止することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入する等して安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体が複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し、接触箇所を焼結して一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
可塑剤や微粒子等の添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいても良いし、押出機の途中で練り込んでも良い。均一に添加するために、スタチックミキサー等の混合装置を用いることが好ましい。
冷却ローラーと弾性タッチローラーでフィルムをニップする際のタッチローラー側のフィルム温度は、フィルムのTg〜Tg+110℃の範囲内とすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有する弾性タッチローラーとしては、公知の弾性タッチローラーを使用することができる。弾性タッチローラーは、挟圧回転体ともいい、市販されているものを用いることもできる。
冷却ローラーからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
上記のようにして得られたフィルムは、冷却ローラーに接する工程を通過した後、延伸操作により延伸及び収縮処理を施すことができる。延伸及び収縮する方法は、上記のような公知のローラー延伸装置や斜め延伸装置等を好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+60℃の温度範囲で行われることが好ましい。
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きや擦り傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施しても良い。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
本発明の光学フィルムは、遅相軸と、後述する偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層することにより、円偏光板とすることができる。なお、本発明でいう「実質的に45°」とは、40〜50°の範囲内であることをいう。
上記した本発明の光学フィルムの面内の遅相軸と偏光子の透過軸との角度とは、41〜49°の範囲内であることが好ましく、42〜48°の範囲内であることがより好ましく、43〜47°の範囲内であることが更に好ましく、44〜46°の範囲内であることが特に好ましい。
《円偏光板》
本発明の円偏光板は、長尺状の保護フィルム、長尺状の偏光子及び長尺状の本発明の光学フィルムをこの順に有する長尺ロールを断裁して作製される。
本発明の円偏光板は、本発明の光学フィルムを用いて作製されるため、特に後述する有機EL表示装置等に適用することにより、可視光の全波長において、有機EL素子の金属電極の鏡面反射を遮蔽する効果を発現し得る。その結果、観察時の映り込みを防止することができるとともに、タッチパネルを搭載した表示装置において耐打健性を向上させることができる。
また、本発明の円偏光板は、紫外線吸収機能を備えていることが好ましい。視認側に配置される保護フィルムが紫外線吸収機能を備えていると、偏光子と有機EL素子の両方に対して紫外線に対する保護効果を発現でき、好ましい。
更に、有機EL素子の発光体側(視認側と反対側)に配置される本発明の光学フィルムが紫外線吸収機能を備えていると、後述する有機EL表示装置に用いた場合に、より有機EL素子の劣化を抑制し得る。
また、本発明の円偏光板は、遅相軸の角度(すなわち配向角θ)を長手方向に対して「実質的に45°」となるように調整した本発明の光学フィルムを用いることにより、一貫した製造ラインにより接着剤層の形成、及び、偏光子と、位相差フィルムとしての本発明の光学フィルム光学フィルムとの貼り合わせが可能となる。
具体的には、偏光膜を延伸して偏光子を作製する工程を終えた後、続いて行われる乾燥工程中又は乾燥工程後に、偏光子と光学フィルムを貼合する工程を組み込むことで、それぞれを連続的に供給することができる。
更に、偏光子と光学フィルムの貼合後にロール状態で巻き取ることにより、次工程に一貫した製造ラインで繋げることができる。また、偏光子と光学フィルムを貼合する際に、同時に保護フィルムも供給し、連続的に貼合することもできる。性能及び生産効率の観点からは、偏光子に光学フィルムと保護フィルムとを同時に貼合する方が好ましい。すなわち、偏光膜を延伸して偏光子を作製する工程を終えた後、続いて行われる乾燥工程中又は乾燥工程後に、両側の面にそれぞれ保護フィルムと光学フィルムを接着剤により貼合し、巻き取ることでロール状態の円偏光板を得ることも可能である。
本発明の円偏光板は、偏光子を本発明の光学フィルムと保護フィルムによって挟持されてなることが好ましい。
<保護フィルム>
本発明の円偏光板は、偏光子を本発明の光学フィルムと保護フィルムとによって挟持されて構成されていることが好ましい。
このような保護フィルムとしては、他のセルロースエステル含有フィルムが好適に用いられ、例えば、市販のセルロースエステルフィルムを用いることができる。例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC5UX、KC4UX、KC8UCR3、KC4SR、KC4BR、KC4CR、KC4DR、KC4FR、KC4KR、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC2UA、KC4UA、KC6UAKC、2UAH、KC4UAH、KC6UAH(以上、コニカミノルタ(株)製)、フジタックT40UZ、フジタックT60UZ、フジタックT80UZ、フジタックTD80UL、フジタックTD60UL、フジタックTD40UL、フジタックR02、フジタックR06(以上、富士フイルム(株)製)等が好ましく用いられる。
保護フィルムの厚さは、特に制限されないが、10〜200μmの範囲内とすることができ、好ましくは10〜100μmの範囲内であり、より好ましくは10〜70μmの範囲内である。
<偏光子>
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、その例には、ポリビニルアルコール系偏光フィルムが挙げられる。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
偏光子は、ポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸した後、染色するか、又はポリビニルアルコールフィルムを染色した後、一軸延伸して、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を更に行って得ることができる。
偏光子の膜厚は、5〜30μmの範囲内であることが好ましく、5〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
ポリビニルアルコールフィルムとしては、例えば、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載の、エチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、鹸化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。また、特開2011−100161号公報、特許第4691205号公報、特許第4804589号公報に記載の方法で、偏光子を作製し本発明の光学フィルムと貼り合わせて偏光板を作製することが好ましい。
<円偏光板の製造方法>
本発明の光学フィルムと偏光子との貼り合わせは、特に限定はないが、当該光学フィルムを鹸化処理した後、完全鹸化型のポリビニルアルコール系接着剤を用いて行うことができる。また、活性光線硬化性接着剤等を用いて貼り合わせることもできるが、得られる接着剤層の弾性率が高く、偏光板の変形を抑制しやすい点などから、光硬化性接着剤を用いることが好ましい。
(ポリビニルアルコール系接着剤を用いた円偏光板の製造方法)
本発明に係る保護フィルムの偏光子に貼合する側をアルカリ鹸化処理液に浸漬して親水化処理を施し、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール接着剤(水溶液)を用いて貼り合わせることが好ましい。
以下に、完全鹸化型ポリビニルアルコール接着剤(水溶液)を用いた円偏光板の製造方法の一例を説明する。
(鹸化処理方法)
以下にアルカリ鹸化処理方法について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
光学フィルムは、通常長尺状フィルムの元巻きとしてロール保管されており、該元巻きから繰り出された保護フィルムは、鹸化液を貯留したバス中に浸漬、搬送され鹸化処理される。その際、鹸化処理されない面にポリエステルフィルムのようなプロテクトフィルムを貼合して保護することも行われる。鹸化処理後は、光学フィルムの表面を水、及び中和剤によりリンス、スクイーズし、加熱処理装置に導入され乾燥される。乾燥は、複数のガイドロールによりフィルムが把持され搬送される。加熱処理工程後必要であれば巻き取られる。
鹸化液は、通常NaOHの水溶液、又はKOHの水溶液が用いられ、濃度は0.5mol/L以上、3.0mol/L未満であることが、安全上、環境上、コスト上好ましい。
鹸化液の温度は、鹸化処理を均一に比較的短時間で行うために20〜60℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは25〜50℃の範囲内である。バス中で鹸化処理される時間は特に制限されるものではないが、5秒〜5分の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10秒〜2分の範囲内である。鹸化液は撹拌されていると均一な鹸化処理を行うことができ好ましい。
上記乾燥のための加熱処理の温度は、鹸化液が蒸発する温度であれば特に制限されないが、50〜120℃の範囲内であることが好ましく、60〜100℃の範囲内であることがより好ましい。加熱する際に熱風等を表面に吹き付けることは乾燥時間の短縮化に繋がるため好ましい。
偏光板のもう一方の面には、本発明に係る光学フィルムを用いても、また前述の保護フィルムを貼合することもできる。
(光硬化性接着剤を用いた円偏光板の製造方法)
光硬化性接着剤の好ましい例としては、特開2011−028234号公報に開示されているような、(α)カチオン重合性化合物、(β)光カチオン重合開始剤、(γ)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤、及び(δ)ナフタレン系光増感助剤の各成分を含有する光硬化性接着剤組成物が挙げられる。ただし、これ以外の光硬化性接着剤が用いられても良い。
以下、光硬化性接着剤を用いた円偏光板の製造方法の一例を説明する。
円偏光板は、(1)光学フィルムの偏光子を接着する面を易接着処理する前処理工程、(2)偏光子と光学フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、下記の光硬化性接着剤を塗布する接着剤塗布工程、(3)得られた接着剤層を介して偏光子と光学フィルムとを貼り合わせる貼合工程、及び(4)接着剤層を介して偏光子と光学フィルムとが貼り合わされた状態で接着剤層を硬化させる硬化工程、を含む製造方法によって製造することができる。(1)の前処理工程は、必要に応じて実施すれば良い。
((前処理工程))
前処理工程では、光学フィルムの、偏光子との接着面に易接着処理を行う。
偏光子の両面にそれぞれ光学フィルムを接着させる場合は、それぞれの光学フィルムの、偏光子との接着面に易接着処理を行う。易接着処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。
((接着剤塗布工程))
接着剤塗布工程では、偏光子と光学フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、上記光硬化性接着剤を塗布する。
((貼合工程))
光硬化性接着剤を塗布した後、貼合工程を行う。
貼合工程では、例えば、先の接着剤塗布工程で偏光子の表面に光硬化性接着剤を塗布した場合、そこに光学フィルムを重ね合わせる。
先の接着剤塗布工程で光学フィルムの表面に光硬化性接着剤を塗布した場合は、そこに偏光子を重ね合わせる。また、偏光子と光学フィルムの間に光硬化性接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子と光学フィルムとを重ね合わせる。偏光子の両面に光学フィルムを接着する場合であって、両面とも光硬化性接着剤を用いる場合は、偏光子の両面にそれぞれ、光硬化性接着剤を介して光学フィルムを重ね合わせる。そして、通常は、重ね合わせた状態で両側(偏光子の片面に光学フィルムを重ね合わせた場合は偏光子側と光学フィルム側、偏光子の両面に光学フィルムを重ね合わせた場合はその両面の光学フィルム側)からローラー等で挟んで加圧する。ローラーの材質は、例えば、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置されるローラーは、同じ材質であっても良いし、異なる材質であっても良い。
((硬化工程))
硬化工程では、未硬化の光硬化性接着剤に活性エネルギー線を照射して、エポキシ化合物やオキセタン化合物を含む接着剤層を硬化させる。それにより、光硬化性接着剤を介して重ね合わせた偏光子と光学フィルムとを接着させる。
偏光子の片面に光学フィルムを貼合する場合、活性エネルギー線は、偏光子側又は光学フィルム側のいずれから照射しても良い。また、偏光子の両面に光学フィルムを貼合する場合、偏光子の両面にそれぞれ光硬化性接着剤を介して光学フィルムを重ね合わせた状態で、いずれか一方の光学フィルム側から活性エネルギー線を照射し、両面の光硬化性接着剤を同時に硬化させるのが有利である。
活性エネルギー線としては、例えば、可視光線、紫外線、X線、電子線等を用いることができ、取扱いが容易で硬化速度も十分であることから、一般的には、電子線又は紫外線が好ましく用いられる。
電子線の照射条件は、光硬化性接着剤を硬化し得る条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5〜300kVの範囲内であり、更に好ましくは10〜250kVの範囲内である。加速電圧が5kV以上であると、電子線が光硬化性接着剤に到達して十分に硬化させることができ、加速電圧が300kV以下であると、試料を通る浸透力が強くなり過ぎず、電子線が跳ね返ることによる光学フィルムや偏光子へのダメージをより確実に抑制することができる。
照射線量としては、5〜100kGyの範囲内、更に好ましくは10〜75kGyの範囲内である。照射線量が5kGy以上であると、光硬化性接着剤を十分に硬化させることができ、100kGy以下であると、光学フィルムや偏光子にダメージを与えることがなく、機械的強度の低下や黄変の発生を抑制し、所定の光学特性を得ることができる。
紫外線の照射条件は、光硬化性接着剤を硬化し得る条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、紫外線の照射量は、積算光量で50〜1500mJ/cmの範囲内であることが好ましく、100〜500mJ/cmの範囲内であることが更に好ましい。
以上のようにして得られた円偏光板において、接着剤層の層厚は、特に限定されないが、通常0.01〜10μmの範囲内であり、好ましくは0.5〜5μmの範囲内である。
《タッチパネル表示装置》
本発明のタッチパネル表示装置は、表示装置としては液晶表示装置、有機EL表示装置が挙げられ、視認側にはタッチパネルが搭載されタッチパネル表示装置が作製される。
図5は、本発明のタッチパネル表示装置の構成の概略的な説明図である。なお、本発明のタッチパネル表示装置の構成は、図5に示されるものに何ら限定されるものではない。
<有機EL表示装置>
図5を用いて有機EL表示装置を説明する。上記の本発明の円偏光板を具備して作製された有機EL表示装置は外光反射が防止されている。有機EL表示装置の画面サイズは特に限定されず、20インチ以上とすることができる。
図5に示されるように、有機EL表示装置は、有機EL素子A上に円偏光板Bを積層している。有機EL素子Aは、ガラスやポリイミド等を用いた透明基板101上に順に金属電極102、TFT103、有機発光層104、透明電極(ITO等)105、絶縁層106、封止層107及び透明基板108(省略可)を積層して構成されている。このように構成される有機EL素子Aの厚さは1μm程度である。
また、円偏光板Bは、偏光子110が上記した本発明の光学フィルムである位相差フィルム109と保護フィルム111によって挟持されて構成されている。また、円偏光板Bの保護フィルム111上には、硬化層が積層されていることが好ましい。これにより、円偏光板Bによる反りを防止することができる。更に、円偏光板Bの硬化層上には、反射防止層が積層されていても良い。
一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に、金属電極、有機発光層及び透明電極を順に積層されて発光体である素子(有機EL素子)が構成されている。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、このような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体、又はこれらの正孔注入層、発光層及び電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
有機EL表示装置においては、有機発光層からの発光光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明であることが必要であり、通常、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いていることが好ましい。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Li等の金属電極を用いている。
本発明の円偏光板は、画面サイズが20インチ以上、すなわち対角線距離が50.8cm以上の大型画面からなる有機EL表示装置に適用することができる。
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度と極めて薄い膜で形成されている。そのため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
このような有機EL表示装置の透明電極の表面側(視認側)には円偏光板が設けられ、円偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないようにすることができる。
すなわち、有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光子により直線偏光成分のみが透過し、この直線偏光は本発明の光学フィルムにより円偏光となる。
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光子の偏光方向と直交しているので、円偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
<タッチパネル>
本願に用いるタッチパネルは、透明基板又は透明フィルム上に透明導電層のパターンの形状はタッチパネル(例えば、静電容量方式タッチパネル)として良好に動作するパターンであれば特に限定はされないが、例えば、特表2011−511357号公報、特開2010−164938号公報、特開2008−310550号公報、特表2003−511799号公報、特表2010−541109号公報に記載のパターンが挙げられる。
タッチパネルは、透明フィルム122上にx軸にパターン化された透明導電性層123と、y軸にパターン化された透明導電性層123を、粘着フィルム121を用いて積層させ、最表面にカバーガラス124を設けることで作製でき、前記タッチパネルを有機EL表示装置と組み合わせることで、タッチパネル表示装置が作製できる。
以下、本発明について実施例及び比較例を用いて具体的に説明する。実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
<<λ/4位相差フィルムの作製>>
(セルロース誘導体の合成)
((セルロース誘導体A−1の合成))
メカニカルスターラー、温度計、冷却管及び滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、アセチル基置換度が1.60、プロピオニル基置換度0.85、重量平均分子量Mw:190000のセルロースアセテートプロピオネート(セルロースエステルY−1)を250g、N−メチルピロリドンを3200mL、それぞれ添加し、室温で撹拌した。ここに、8gのベンゾイルクロリドをゆっくりと滴下し、添加した後、更に50℃にて8時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液を激しく撹拌しながらメタノール20Lへ投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体A−1を得た。
上記合成したセルロース誘導体A−1のグルコース骨格に置換された置換基の置換度について、Cellulose Communication 6,73−79(1999)及びChrality 12(9),670−674に記載の方法に準じて、H−NMR及び13C−NMRにより測定し、その平均値を求めた結果、芳香族環を有する置換基であるベンゾイル基の置換度は0.04であり、アセチル基の置換度は1.60であり、プロピオニル基の置換度は0.85であり総置換度は2.49であった。
上記合成したセルロース誘導体A−1の重量平均分子量Mwを、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、210000であった。
具体的な測定条件を以下に示す。
溶媒:ジクロロメタン
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製のカラムを3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0mL/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)でMwが500〜1000000の範囲内にある13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
((セルロース誘導体A−2の合成))
メカニカルスターラー、温度計、冷却管及び滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、アセチル基置換度が1.60、プロピオニル基置換度0.85、重量平均分子量Mw:190000のセルロースアセテートプロピオネート(セルロースエステルY−1)を250g、N−メチルピロリドンを3200mL、それぞれ添加し、室温で撹拌した。ここに、3.7gのベンゾイルクロリドをゆっくりと滴下し、添加した後、更に80℃にて6時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液を激しく撹拌しながらメタノール20Lへ投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体A−2を得た。
前述の方法と同様に、H−NMR及び13C−NMRにより測定し、その平均値を求めた結果、芳香族環を有する置換基であるベンゾイル基の置換度は0.10であり、アセチル基の置換度は1.60であり、プロピオニル基の置換度は0.85であり総置換度は2.55であった。セルロース誘導体A−2の重量平均分子量Mwは225000であった。
((セルロース誘導体A−3の合成))
メカニカルスターラー、温度計、冷却管及び滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、アセチル基置換度が1.60、プロピオニル基置換度0.85、重量平均分子量Mw:190000のセルロースアセテートプロピオネート(セルロースエステルY−1)を250g、N−メチルピロリドンを3200mL、それぞれ添加し、室温で撹拌した。ここに、8.6gのベンゾイルクロリドをゆっくりと滴下し、添加した後、更に80℃にて8時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液を激しく撹拌しながらメタノール20Lへ投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体A−3を得た。
前述の方法と同様に、H−NMR及び13C−NMRにより測定し、その平均値を求めた結果、芳香族環を有する置換基であるベンゾイル基の置換度は0.25であり、アセチル基の置換度は1.60であり、プロピオニル基の置換度は0.85であり総置換度は2.70であった。セルロース誘導体A−3の重量平均分子量Mwは221000であった。
((セルロース誘導体A−4の合成))
メカニカルスターラー、温度計、冷却管及び滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、アセチル基置換度が1.60、プロピオニル基置換度0.85、重量平均分子量Mw:190000のセルロースアセテートプロピオネート(セルロースエステルY−1)を250g、N−メチルピロリドンを3200mL、それぞれ添加し、室温で撹拌した。ここに、9.0gのベンゾイルクロリドをゆっくりと滴下し、添加した後、更に80℃にて8時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液を激しく撹拌しながらメタノール20Lへ投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体A−4を得た。
前述の方法と同様に、H−NMR及び13C−NMRにより測定し、その平均値を求めた結果、芳香族環を有する置換基であるベンゾイル基の置換度は0.35であり、アセチル基の置換度は1.60であり、プロピオニル基の置換度は0.85であり総置換度は2.80であった。セルロース誘導体A−4の重量平均分子量Mwは230000であった。
((セルロース誘導体A−5の合成))
メカニカルスターラー、温度計、冷却管及び滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、アセチル基置換度が1.60、重量平均分子量Mw:150000のセルロースアセテート(セルロースエステルY−3)を250g、ジメチルホルムアミド3200mL、それぞれ添加し、室温で撹拌した。ここに、4.9gのベンゾイルクロリドをゆっくりと滴下し、添加した後、更に80℃にて8時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液を激しく撹拌しながらメタノール20Lへ投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体A−5を得た。
前述の方法と同様に、H−NMR及び13C−NMRにより測定し、その平均値を求めた結果、芳香族環を有する置換基であるベンゾイル基の置換度は0.61であり、アセチル基の置換度は1.60であり総置換度は2.21であった。セルロース誘導体A−5の重量平均分子量Mwは195000であった。
((セルロース誘導体A−6の合成))
メカニカルスターラー、温度計、冷却管及び滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、アセチル基置換度が1.60、重量平均分子量Mw:150000のセルロースアセテート(セルロースエステルY−3)を250g、ジメチルホルムアミド3200mL、それぞれ添加し、室温で撹拌した。ここに、3.7gのベンゾイルクロリドをゆっくりと滴下し、添加した後、更に80℃にて6時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液を激しく撹拌しながらメタノール20Lへ投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体A−6を得た。
前述の方法と同様に、H−NMR及び13C−NMRにより測定し、その平均値を求めた結果、芳香族環を有する置換基であるベンゾイル基の置換度は0.06であり、アセチル基の置換度は1.60であり総置換度は1.66であった。セルロース誘導体A−6の重量平均分子量Mwは191000であった。
((セルロース誘導体A−7の合成))
冷却管、窒素導入管、撹拌機及び温度計を備えた500mLの四ツ口フラスコに、60℃で12時間真空乾燥したアセチル基置換度が1.60、プロピオニル基置換度0.85、重量平均分子量Mw:190000のセルロースアセテートプロピオネート(セルロースエステルY−1)250gを入れ、N−メチルピロリドンを3200mL、それぞれ加えて懸濁液とした後、さらにフェニルイソシアネート(東京化成工業製)6.3gを加えた。
次に、窒素を導入し、撹拌しながら80℃に昇温した後、6時間反応させた。その後、25℃まで放冷した後、反応溶液を激しく撹拌しながらメタノール20Lへ投入して沈殿を生成させた。得られた固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体A−7を得た。
前述の方法と同様に、H−NMR及び13C−NMRにより測定し、その平均値を求めた結果、芳香族環を有する置換基であるカルバメート基の置換度は0.10であり、アセチル基の置換度は1.60であり、プロピオニル基の置換度は0.85であり総置換度は2.55であった。セルロース誘導体A−7の重量平均分子量Mwは227000であった。
(微粒子添加液の作製)
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリン分散機を用いて分散を行い、微粒子分散液を調製した。
溶解タンクにジクロロメタンを50質量部入れ、ジクロロメタンを十分に撹拌しながら上記調製した微粒子分散液50質量部をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が、所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過して、微粒子添加液を調製した。
(ポリエステル化合物の合成)
1,2−プロピレングリコール251g、アジピン酸150g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温した。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、可塑剤としてのポリエステルを得た。酸価0.15mgKOH/g、数平均分子量1400であった。
<位相差フィルム101の作製>
次いで、下記組成の主ドープ1を調製した。まず加圧溶解タンクにジクロロメタンを400kg/minの流量とエタノールを20kg/minの流量で添加した。溶媒の添加開始から3分後に、前記加圧溶解タンクに、前駆体としてセルロースエステルY−1を200kg/min撹拌しながら投入した。次いで、溶媒投入開始後5分後に、ポリエステル化合物を投入して、更に溶媒投入開始後15分後に、微粒子添加液を投入して、これを80℃に加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。加熱温度は室温から5℃/minの昇温し、30分間で溶解した後、3℃/minで降温した。
ドープ粘度は30000CPであり、含水率は0.50%であった。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244(濾過精度0.005mm)を使用して濾過流量300L/m・h、濾圧1.0×10Paにて濾過し、主ドープ1を調製した。
(主ドープ1の作製)
セルロースエステルY−1 100質量部
ジクロロメタン 200質量部
エタノール 10質量部
微粒子添加液 3質量部
ポリエステル化合物 5質量部
調製した主ドープ1を、ステンレス製無端支持体(ベルト)上で、流量1500L/hrで流延(キャスト)した。その際、流延端部のジクロロメタンを滴下しながら流延を行った。
乾燥温度40℃にて、流延したウェブ中の残留溶媒量が30質量%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレス製無端支持体上から剥離した。剥離したウェブを乾燥しながら残留溶媒量を5質量%に調整し、次いで、幅手方向に10%延伸し、乾燥ゾーンを多数のローラーで、搬送張力は100N/mとし、温度140℃で20分間搬送させながら乾燥をさせ、膜厚100μの原反フィルムを作製した。
前記原反フィルムを図2に記載の構成からなる斜め延伸装置を用いて搬送させ、175℃の熱をかけながらフィルム搬送方向に対して45°方向に1.7倍延伸し、ロール状の位相差フィルム101(本発明の光学フィルム)を得た。位相差フィルム101の膜厚は60μmであった。
なお、延伸条件としては、斜め延伸率100%、収縮率20%とした。
<位相差フィルム102の作製>
位相差フィルム101で作製した、主ドープ1を下記組成の主ドープ2にした以外は位相差フィルム101と同様にして、位相差フィルム102を得た。
(主ドープ2の作製)
セルロースエステルY−1 60質量部
セルロース誘導体A−1 40質量部
エタノール 10質量部
微粒子添加液 3質量部
ポリエステル化合物 5質量部
<位相差フィルム103〜117の作製>
上記位相差フィルム102の作製において、前駆体とセルロース誘導体を下記表1に示すように変更し、かつ、質量部比率を下記表1に変更した以外は、同様の方法で本発明の位相差フィルム103〜117を作製した。なお、セルロースエステルY−2は、アセチル基置換度が2.1、ブチリル基置換度0.4、重量平均分子量Mw:180000のセルロースアセテートブチレートを使用した。
<位相差フィルム118の作製>
上記位相差フィルム101で作製した、主ドープ1のセルロースエステルY−1をセルロースエステルY−4(セルローストリアセテート(TAC))に変更し、ポリエステル化合物を下記トリアジン化合物に変更した以外は位相差フィルム101と同様にして、位相差フィルム118を得た。
なお、セルローストリアセテート(TAC)は、アセチル基置換度が2.85、重量平均分子量Mw:270000である。
Figure 2016177238
<位相差フィルム119の作製>
上記位相差フィルム102の作製において、セルロース誘導体をセルロース誘導体A−7に変更した以外は、同様の方法で本発明の位相差フィルム119を作製した。
Figure 2016177238
(鹸化処理前後のフィルムの水の接触角の差分)
上記で作製した位相差フィルム101〜119を、JIS−R3257に基づいて、温度23℃、相対湿度55%の雰囲気下で、反射ミラーの表面に水3μL滴下して、その水滴の滴下1分後の接触角を接触角計DM300(協和界面化学)を用いて測定した。
続いて、位相差フィルムを50℃に加熱した2mol/Lの水酸化カリウム溶液(KOH)中で90秒間鹸化処理し、次いで水洗して、同様に水の接触角を測定し、鹸化処理前後のフィルムの水の接触角の差分の絶対値を求めた。
(位相差値の測定)
Axometrics社製のAxoscanを用いて、23℃、55%RHの環境下で光波長550nmでのフィルム面内の位相差値Ro(550)、Ro(450)/Ro(550)を測定した。
各項目についての評価結果を表2に示す。
Figure 2016177238
<<円偏光板の作製>>
(偏光子の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いで、ヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥して偏光子を得た。
<円偏光板201の作製>
下記工程1〜5に従って、上記作製した位相差フィルム101の遅送軸と、偏光子の吸収軸とが45°となるようにして、偏光子の裏面側には保護フィルム(コニカミノルタタックKC4UY、厚さ40μm、コニカミノルタ(株)製)を使用して円偏光板201を作製した。
工程1:50℃の2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで、水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した位相差フィルム及び保護フィルムを得た。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理した位相差フィルムの上にのせ、逆側には処理した保護フィルムを配置した。
工程4:工程3で積層した位相差フィルムと偏光子と裏面側の保護フィルムを圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子と位相差フィルム101と裏面側の保護フィルムを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、円偏光板201を作製した。
<円偏光板202〜208の作製>
上記円偏光板201の作製において、位相差フィルム101を各位相差フィルム102〜108に変更した以外は、同様の方法で円偏光板202〜208を作製した。
<円偏光板209の作製>
(光硬化性接着剤液の調製)
下記の各成分を混合した後、脱泡して、活性エネルギー線硬化性接着剤液を調製した。なお、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートは、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、下記にはトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートの固形分量を表示した。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシ
レート 45質量部
エポリードGT−301(ダイセル化学社製の脂環式エポキシ樹脂) 40質量部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル 15質量部
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート 2.3質量部
9,10−ジブトキシアントラセン 0.1質量部
1,4−ジエトキシナフタレン 2.0質量部
下記の方法に従って、円偏光板209を作製した。
保護フィルム(コニカミノルタタックKC4UY、厚さ40μm、コニカミノルタ(株)製)を準備し、上記調製した活性エネルギー線硬化性接着剤液を、マイクログラビアコーター(グラビアローラー:#300、回転速度140%/ライン速)を用いて、厚さ5μmになるように塗工して活性エネルギー線硬化性接着剤層aを形成した。
次いで、上記作製した位相差フィルム108に、上記調製した活性エネルギー線硬化性接着剤液を、上記と同様に、厚さ5μmとなるように塗工して活性エネルギー線硬化性接着剤層bを形成した。
上記活性エネルギー線硬化性接着剤層a及びbの間に、上記作製した偏光子を配置し、ローラー機で貼合し、保護フィルム1/活性エネルギー線硬化性接着剤層/偏光子/活性エネルギー線硬化性接着剤層/位相差フィルム108が積層された積層物を得た。その際に、位相差フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸が互いに直交になるようにローラー機で貼合した。
この積層物の両面側から、電子線を照射して、円偏光板209を作製した。
ライン速度は20m/min、加速電圧は250kV、照射線量は20kGyとした。
<円偏光板210〜219の作製>
上記円偏光板201の作製において、位相差フィルム101を各位相差フィルム109〜118に変更した以外は、同様の方法で円偏光板210〜219を作製した。
<円偏光板220の作製>
上記円偏光板209の作製において、位相差フィルム108を位相差フィルム118に変更した以外は、同様の方法で円偏光板220を作製した。
<円偏光板221の作製>
上記円偏光板201の作製において、位相差フィルム101を位相差フィルム119に変更した以外は、同様の方法で円偏光板221を作製した。
(円偏光板の接着力の測定)
得られた円偏光板201〜221に対して、各偏光板を50mm×50mmに切り出して測定用サンプルとした。測定用サンプルを、塗膜付着強度測定機(ダイプラ・ウィンテス社製、サイカスDN−EX20S型)の試料台上に配置し、測定用サンプルの下面を吸引して試料台に固定した。次いで、すくい角5°、逃げ角5°のV溝切刃を使用して、測定用サンプルの厚さ方向に、位相差フィルムfの表面から偏光子pの一部までを切削して、1.5mm間隔で2本の溝を形成した(図6参照)。そして、測定用サンプルの剥離強度を、表面−界面切削法(SAICAS法)により測定した。
測定条件は、以下のとおりとした。すなわち、切刃は、幅1.0mm、すくい角20°逃げ角10°の単結晶ダイヤモンド製のものを使用した。切削は、水平速度6μm/秒、垂直速度0.5μm/秒の条件で行った。具体的には、切刃を、位相差フィルムの表面からフィルムの厚さ方向(垂直方向)に、垂直速度0.5μm/秒で移動させて切削した。次いで、切刃が位相差フィルムと偏光子との界面まで到達(切削)した時点で、垂直速度を0μm/分とし;切刃をフィルム面に平行方向(水平方向)に動かして、平行力FH(kN)を測定した。得られた平行力FH(kN)と、切刃の幅w(m)とを下記式に当てはめて、剥離強度P(kN/m)を算出した。
剥離強度P(kN/m)=FH(kN)/w(m)
偏光子と位相差フィルムの接着性を、以下の基準に基づいて評価し、結果を表3に示す。
◎:剥離強度Pが4以上である
○:剥離強度Pが2.5以上4未満である
△:剥離強度Pが1.0以上2.5未満である
×:剥離強度Pが1.0未満である
<<タッチパネル表示装置の作製>>
(タッチパネル部材の作製)
特表2010−541109号公報に記載を参照し、PETフィルム上にパターン化された透明導電フィルムを用いて、図5にあるようにタッチパネル部材を作製した。
(有機EL表示装置の作製)
次に、3mm厚の50インチ(127cm)用無アルカリガラスを用いて、特開2010−20925号公報の実施例に記載されている方法に準じて、特開2010−20925号公報の図5に記載された構成からなる有機EL表示装置を作製した。
<タッチパネル表示装置301の作製>
図5の記載のように、前記有機EL表示装置上に粘着フィルムを用いて上記作製した円偏光板201を貼り合わせ、円偏光板上に粘着フィルムを用いてタッチパネル部材を貼り合せてタッチパネル表示装置301を作製した。
<タッチパネル表示装置302〜321の作製>
上記タッチパネル表示装置301の作製において、円偏光板201を各円偏光板202〜221に変更した以外は、同様の方法でタッチパネル表示装置302〜321を作製した。
(打鍵試験方法)
35℃、90%RHに制御された可変空調室内(朝日科学(株)製 AES−200)にて、得られたタッチパネル表示装置301〜321に対し、打鍵試験機202型−950−2(株式会社タッチパネル研究所製)を用いて、打鍵速度を2Hz、荷重150gの条件で、カバーガラス側の上方から入力ペンを1万5000回押し当てた。なお、入力ペンのペン先材料はゴム下に敷く測定盤をガラス基板とし、その上に、導電メッシュがガラス側になるようにして置き、上方から入力ペンを300g荷重で押し当て、摺動距離5cm、往復1秒(5cmを1秒間で往復)の条件で繰り返し摺動させることができる実験装置を用いて実験を行った。なお、入力ペンのペン先材料はポリアセタールで、Rは0.8mmである。
(抵抗値変化率評価)
タッチパネル試験機001型−29−2(株式会社タッチパネル研究所製)を用いて、打鍵試験前後のタッチパネル表示装置の端子間抵抗値を測定し、抵抗値変化率を下記評価基準に基づいて評価した。
5:打鍵試験前後の表面抵抗値の上昇率が0.1%未満の値を示す
4:打鍵試験前後の表面抵抗値の上昇率が0.1%以上0.5%未満の値を示す
3:打鍵試験前後の表面抵抗値の上昇率が0.5%以上1%未満の値を示す
2:打鍵試験前後の表面抵抗値の上昇率が1%以上の値を示す
1:打鍵後の表面抵抗値が断線のため測定できない
(表示装置のダークスポット評価)
上記打鍵試験後に50時間発光させた後の発光面を目視で評価した。無作為に抽出した20人による目視評価で連続点灯時間10時間経過後の各素子において、以下の評価基準で評価した。
◎:ダークスポットを確認した人数が0人の場合
○:ダークスポットを確認した人数が1〜2人の場合
△:ダークスポットを確認した人数が3〜4人の場合
×:ダークスポットを確認した人数が5人以上の場合
各項目についての評価結果を表3に示す。
Figure 2016177238
表2に示した評価結果から明らかなように、本発明の円偏光板は、接着性が高いことがわかる。
また、表3に示した評価結果から明らかなように、本発明の光学フィルムを用いた場合には、打鍵耐久性があり、表示ムラが抑制されていることがわかる。
11 延伸方向
12 斜め延伸方向
13 搬送方向
14 遅相軸
15 斜め延伸装置
16 フィルム繰り出し装置
17 搬送方向変更装置
18 巻取り装置
19 剥離・乾燥工程出口
101 透明基板
102 金属電極
103 TFT
104 有機発光層
105 透明電極
106 絶縁層
107 封止層
108 透明基板
109 λ/4位相差フィルム
110 偏光子
111 偏光板保護フィルム
121 粘着フィルム
122 透明フィルム
123 透明導電性層
A 有機EL素子
B 円偏光板
Ci、Co 把持具
D1 繰出方向
D2 巻取方向
F 光学フィルム
Ri、Ro レール
θ 屈曲角度
θi 屈曲角度(繰出し角度)
θL 角度
Wo 延伸前のフィルムの幅
W 延伸後のフィルムの幅

Claims (8)

  1. グルコース骨格の一部が芳香族環を有する置換基で置換されたセルロース誘導体、及びセルロース誘導体の前駆体との混合物が含有された光学フィルムであって、
    前記セルロース誘導体のグルコース骨格に置換された置換基が、下記(a)〜(c)を満たし、かつ、
    前記セルロース誘導体が、前記セルロース誘導体及び前記前駆体の総量に対して、20〜50質量%の範囲内で含有され、下記式(A)〜(C)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
    (a)前記グルコース骨格に置換された芳香族環を有する置換基の置換度が、グルコース骨格単位当たり0.05〜0.60の範囲内である。
    (b)前記芳香族環を有する置換基の極大吸収波長が、220〜400nmの範囲内である。
    (c)前記芳香族環を有する置換基の総置換度が、グルコース骨格単位当たり1.7〜3.0の範囲内である。
    式(A):5°≦下記条件Aにおける鹸化処理前後のフィルムの水の接触角の差分の絶対値≦25°
    (前記条件Aとは、50℃に加熱した2mol/Lの水酸化カリウム溶液中で90秒間鹸化処理することである。)
    式(B):120≦Ro(550)≦160nm
    (前記Ro(550)とは、温度23℃、55%RHの環境下、光波長550nmで測定したときのフィルム面内の位相差値のことである。)
    式(C):0.65≦Ro(450)/Ro(550)≦0.95
    (前記Ro(450)/Ro(550)とは、温度23℃、55%RHの環境下、光波長450nm及び550nmでそれぞれ測定したフィルム面内の位相差値Ro(450)とRo(550)との比の値である。)
  2. 前記前駆体が、前記グルコース骨格に前記芳香族環を有する置換基が導入される前の前駆体であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
  3. 前記芳香族環を有する置換基が、芳香族アシル基又は芳香族カルバモイル基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学フィルム。
  4. 前記セルロース誘導体のグルコース骨格に置換された置換基のうち、前記芳香族環を有する置換基以外のその他の置換基が、炭素原子数2〜7の範囲内である無置換の脂肪族アシル基であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
  5. 長尺方向に対して斜め方向に延伸されることで、長尺方向に対して40〜50°の範囲内に遅相軸を有し、下記式で定義される収縮率が、10〜30%の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
    収縮率(%)=(1−sin(π−θ))×100
    (上記式中、θは、長尺方向に対する延伸方向の角度を示す。)
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の光学フィルムと、長尺状偏光子とが貼合されていることを特徴とする円偏光板。
  7. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の光学フィルムと、長尺状偏光子とが水糊貼合されていることを特徴とする円偏光板。
  8. 請求項6又は請求項7に記載の円偏光板が具備されていることを特徴とするタッチパネル表示装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2017104308A1 (ja) * 2015-12-14 2017-06-22 コニカミノルタ株式会社 偏光板及び前記偏光板を含む画像表示装置
CN111161634A (zh) * 2018-11-08 2020-05-15 住友化学株式会社 光学膜

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