JP7314942B2 - 光学フィルム、偏光板保護フィルムおよび偏光板 - Google Patents

光学フィルム、偏光板保護フィルムおよび偏光板 Download PDF

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Description

本発明は、光学フィルム、偏光板保護フィルム、および偏光板に関する。
液晶表示装置や有機EL表示装置などの表示装置に用いられる偏光板は、通常、偏光子と、その両面に接着剤を介して配置された2つの偏光板保護フィルムとを有する。
このような偏光板は、使用時には、環境温度の急激な変化に晒される。偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを高延伸倍率で延伸したフィルムであり、高い残留応力を有するため、環境温度の変化によって膨張・収縮しやすい。そのため、偏光板は、環境温度の急激な変化(高温と凍結を繰り返すヒートサイクル)に晒されると、偏光子の膨張・収縮に起因して偏光板保護フィルムに裂けやクラック(割れ)などが生じやすく、それにより、偏光板にクラック(割れ)が生じることがあった。
このようなヒートサイクル試験における偏光板のクラックを抑制する方法として、特許文献1では、偏光子と、その両面に接着剤層を介して配置された透明保護フィルムとを含み、偏光子の両面の接着剤層のガラス転移温度が所定の範囲に調整された偏光板が示されている。特許文献2では、偏光子と、その両面に接着層を介して配置された保護フィルムとを含み、偏光子と接着層と保護フィルムの剛性の積が所定の範囲に調整された偏光板が示されている。
しかしながら、特許文献1および2の偏光板では、偏光板保護フィルムに起因する偏光板のクラックを十分には抑制することはできなかった。特に、特許文献2の偏光板では、剛性が80℃における弾性率を元に計算されているため、例えば-40℃のような低温では、偏光板のクラックを抑制できなかった。
ところで、偏光板保護フィルムとしては、優れた透明性や寸法安定性、低吸湿性を有することから、ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂フィルムが用いられている。(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、一般的に脆く、割れやすいことから、ゴム粒子などの衝撃緩和剤を添加して用いられている。
特許文献3では、(メタ)アクリル系樹脂と、粒径が異なる少なくとも2種の共役ジエン系ゴムを含むグラフト共重合体とを含む光学フィルムが示されている。このような光学フィルムは、粒径の異なる2種類のゴム粒子を含むことで、耐熱性、靭性、ヘイズに優れるとされている。
特開2017-194572号公報 特開2018-25772号公報 特表2011-521068号公報
しかしながら、特許文献3のフィルムにおいても、ヒートサイクル試験に晒されたときの偏光板のクラック、特に-40℃のような低温環境下での偏光板保護フィルムのクラックやそれによる偏光板のクラックを抑制できるものではなかった。
特に、偏光板は、用途に応じて、従来の長方形ではなく、角が丸い形状、複雑な曲面を持った形状、または中央部に穴が開いた形状に打ち抜かれることがある。異形に打ち抜かれた偏光板には応力が残留しやすいため、ヒートサイクル試験では、その部分を起点として偏光板保護フィルムにクラックが生じやすく、その結果、偏光板にもクラックが生じやすい。また、偏光板が大型化するほど、ヒートサイクル試験における偏光板のクラックが生じやすい。したがって、これまで以上に、ヒートサイクル試験における偏光板のクラックを抑制できることが望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低温環境下に晒されてもクラックを生じることなく使用可能な偏光板を付与しうる光学フィルム、およびそれを用いた偏光板を提供することを目的とする。
上記課題は、以下の構成によって解決することができる。
本発明の光学フィルムは、重量平均分子量が20万以上である(メタ)アクリル系樹脂と、ガラス転移温度が-15℃以下である架橋重合体を含むコア部と、当該コア部を覆うシェル部とを有し、ゴム粒子と、ガラス転移温度が80℃以上である有機微粒子とを含む光学フィルムであって、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であり、かつJIS K 7127に準拠して測定される、-40℃における破断伸度が10%以上である。
また、本発明の偏光板は、偏光子と、その少なくとも一方の面に配置された本発明の光学フィルムとを含む。
本発明によれば、低温環境下に晒されてもクラックを生じることなく使用可能な偏光板を付与しうる光学フィルム、およびそれを有する偏光板を提供することができる。
図1は、本発明の偏光板の構成例を示す断面模式図である。
本発明者らは鋭意検討した結果、1)重量平均分子量が20万以上である(メタ)アクリル系樹脂と、2)ガラス転移温度が-15℃以下であるゴム状重合体を含む特定のゴム粒子と、3)ガラス転移温度が80℃以上である有機微粒子とを含む光学フィルムであって、4)ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であり、5)-40℃における破断伸度が10%以上である光学フィルムは、低温環境下に晒されても偏光板の割れを抑制できること、それにより、低温と高温を繰り返すヒートサイクル試験において偏光板の割れを抑制できることを見出した。
この理由は明らかではないが、以下のように推測される。偏光子は、高倍率で延伸されたフィルムであり、環境温度の変化によって膨張・収縮しやすい。
特に高温環境下では、偏光子は、ホウ酸架橋や結晶構造が一部壊れるなどして熱劣化しやすく、収縮しやすい。光学フィルムのガラス転移温度(Tg)や有機微粒子のガラス転移温度(Tg)が高いほど(上記3)と4)の要件)、高温環境下における偏光子の収縮しようとする力を抑えこむことができるため、偏光子の収縮量を少なくすることができる。また、それにより、低温環境下における偏光子の膨張量を少なくすることができるため、低温環境下において光学フィルムにかかる力も少なくすることができる。
一方、高温環境下から低温環境下に変化する際、高温で膨張した光学フィルムが急冷されることで、当該光学フィルムの破断伸度低下が、偏光子の変形に追随できなくなり、当該光学フィルムの破断伸度以上に延ばされやすい。これに対し、光学フィルムの-40℃での破断伸度が10%以上であると(上記5)の要件)、高温で膨張した光学フィルムが急冷される際に、当該光学フィルムの破断伸度が偏光子の変形に追従できるため、光学フィルムの割れを抑制できる。
それにより、異形に打ち抜かれた偏光板であっても、ヒートサイクル試験における光学フィルムのクラックに起因する偏光板の割れを抑制できると考えられる。
上記5)の要件、すなわち、-40℃での破断伸度が10%以上とすることは、上記1)~4)の要件の全てを満たすことによって好ましく実現できる。
1.光学フィルム
本発明の光学フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂と、ゴム粒子と、有機微粒子とを含む。
1-1.(メタ)アクリル系樹脂
(メタ)アクリル系樹脂は、重量平均分子量Mwが20万以上である樹脂であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwが20万以上であると、フィルムの靱性を高めやすく、-40℃における破断伸度を高めやすいからである。(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwは、30万~300万であることが好ましく、50万~200万であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算にて測定することができる。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、または(メタ)アクリル酸エステルとそれと共重合可能な共重合モノマーとの共重合体である。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味する。(メタ)アクリル酸エステルは、メタクリル酸メチルであることが好ましい。
すなわち、(メタ)アクリル系樹脂は、少なくとも、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を含み、メタクリル酸メチル以外の共重合モノマー(以下、単に「共重合モノマー」という)に由来する構造単位をさらに含みうる。
共重合モノマーの例には、
アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、六員環ラクトンメタクリル酸エステルなどのアルキル基の炭素数が1~20のアクリル酸エステルまたはアルキル基の炭素数が2~20のメタクリル酸エステル類;
スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン類;
ビニルシクロヘキサンなどの脂環式ビニル類;
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロニトリル-スチレン共重合体などの不飽和ニトリル類;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステルなどの不飽和カルボン酸類;
酢酸ビニル、エチレンやプロピレンなどのオレフィン類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;
(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、プロピル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、フェニル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;
(メタ)アクリル酸グリシジルなどの不飽和グリシジル類;
N-フェニルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-o-クロロフェニルマレイミドなどのマレイミド類が含まれる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、光学フィルムのガラス転移温度(Tg)を高くして、偏光板における高温時の偏光子の収縮量を少なくする観点では、嵩高い構造を有する共重合モノマーが好ましい。
嵩高い構造を有する共重合モノマーの例には、
(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、六員環ラクトンメタクリル酸エステルなどのシクロ環を有する(メタ)アクリル酸エステル;ビニルシクロヘキサンなどの脂環式ビニル類;およびN-フェニルマレイミドなどのマレイミド類からなる群より選ばれるシクロ環またはマレイミド環を有する共重合モノマー;
(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの共重合モノマーが含まれる。
中でも、嵩高い構造を有する共重合モノマーは、シクロ環を有する(メタ)アクリル酸エステル類、マレイミド類からなる群より選ばれるシクロ環を有する共重合モノマー、分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、およびそれらの組み合わせであることが好ましい。
共重合モノマーに由来する構造単位の含有量(好ましくは嵩高い構造を有する共重合モノマーに由来する構造単位の含有量)は、(メタ)アクリル系樹脂を構成する構造単位の合計100質量%に対して0~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル系樹脂のモノマーの種類や組成は、H-NMRにより特定することができる。
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、110℃以上であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が110℃以上であると、偏光板において高温時の偏光子の収縮量を少なくしやすいため、低温時に偏光子によって光学フィルムに加わる力を少なくしやすい。光学フィルムのガラス転移温度(Tg)が160℃以下であると、例えばシクロ環またはマレイミド環を有する共重合モノマーに由来する構造単位の含有量を多くしすぎる必要がないため、光学フィルムの靱性が損なわれにくい。(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、125~160℃であることが好ましく、130~150℃であることがより好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121-2012に準拠して測定することができる。
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、モノマーの種類や組成によって調整することができる。(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)を高めるためには、例えば上記嵩高い構造を有する共重合モノマー、好ましくはシクロ環を有する共重合モノマーの含有比率を多くすればよい。
1-2.ゴム粒子
ゴム粒子は、光学フィルムに柔軟性や靱性を付与しつつ、光学フィルムの表面に凹凸を形成して滑り性を付与する機能を有しうる。
ゴム粒子は、ゴム状重合体(架橋重合体)を含むグラフト共重合体、すなわち、ゴム状重合体(架橋重合体)からなるコア部と、それを覆うシェル部とを有するコアシェル型のゴム粒子であって、ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)が-15℃以下のものであることが好ましい。
ゴム状重合体のガラス転移温度が-15℃以下であると、低温時(-40℃)の光学フィルムの破断伸度を高めやすいため、ヒートサイクル試験において、光学フィルムが低温時の偏光子の変形(膨張)に追従しやすく、低温下での偏光板のクラックを抑制しやすい。ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)は、-20℃以下であることがより好ましく、-30℃以下であることがさらに好ましい。ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)は、前述と同様の方法で測定される。
ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば構成するモノマー組成などによって調整することができる。ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)を低くするためには、後述するように、例えばコア部のアクリル系ゴム状重合体を構成するモノマー混合物(a’)における、アルキル基の炭素数が4以上のアクリル酸エステル/それ以外の共重合可能なモノマー(好ましくはメタクリル酸メチル)の質量比を多くする(例えば3~9とする)ことが好ましい。
ゴム状重合体は、ガラス転移温度が上記範囲内となるものであればよく、特に制限されないが、その例には、ブタジエン系架橋重合体、(メタ)アクリル系架橋重合体、およびオルガノシロキサン系架橋重合体が含まれる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂との屈折率差が小さく、光学フィルムの透明性が損なわれにくい観点では、(メタ)アクリル系架橋重合体が好ましく、アクリル系架橋重合体(アクリル系ゴム状重合体)がより好ましい。
すなわち、ゴム粒子は、アクリル系ゴム状重合体(a)を含むアクリル系グラフト共重合体、すなわち、アクリル系ゴム状重合体(a)を含むコア部と、それを覆うシェル部とを有するコアシェル型の粒子であることが好ましい。当該コアシェル型の粒子は、アクリル系ゴム状重合体(a)の存在下で、メタクリル酸エステルを主成分とするモノマー混合物(b)を少なくとも1段以上重合して得られる多段重合体(または多層構造重合体)である。重合は、乳化重合法で行うことができる。
(コア部:アクリル系ゴム状重合体(a)について)
アクリル系ゴム状重合体(a)は、アクリル酸エステルを主成分とする架橋重合体である。アクリル系ゴム状重合体(a)は、アクリル酸エステルを50~100質量%と、それと共重合可能な他のモノマー50~0質量%とを含むモノマー混合物(a’)、および、1分子あたり2個以上の非共役な反応性二重結合を有する多官能性モノマー0.05~10質量部(モノマー混合物(a’)100質量部に対して)を重合させて得られる架橋重合体である。当該架橋重合体は、これらのモノマーを全部混合して重合させて得てもよいし、モノマー組成を変化させて2回以上で重合させて得てもよい。
アクリル系ゴム状重合体(a)を構成するアクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルなどのアルキル基の炭素数1~12のアクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。アクリル酸エステルは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。ゴム粒子のガラス転移温度を-15℃以下にする観点では、アクリル酸エステルは、少なくとも、炭素数4~10のアクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましい。
アクリル酸エステルの含有量は、モノマー混合物(a’)100質量%に対して50~100質量%であることが好ましく、60~99質量%であることがより好ましく、70~99質量%であることがさらに好ましい。アクリル酸エステルの含有量が50重量%以上であると、フィルムに十分な靱性を付与しやすい。
また、アクリル系ゴム状重合体(a)のガラス転移温度を-15℃以下にしやすくする観点では、前述の通り、モノマー混合物(a’)における、アルキル基の炭素数が4以上のアクリル酸アルキルエステル/それ以外の共重合可能なモノマー(好ましくはメタクリル酸メチル)の合計の質量比は、3以上であることが好ましく、4以上10以下であることがより好ましい。
共重合可能なモノマーの例には、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル;スチレン、メチルスチレンなどのスチレン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類なども含まれる。
多官能性モノマーの例には、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトロメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが含まれる。
多官能性モノマーの含有量は、モノマー混合物(a’)の合計100質量%に対して0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。多官能性モノマーの含有量が0.05質量%以上であると、得られるアクリル系ゴム状重合体(a)の架橋度を高めやすいため、得られるフィルムの硬度、剛性が損なわれすぎず、10質量%以下であると、フィルムの靱性が損なわれにくい。
(シェル部:モノマー混合物(b)について)
モノマー混合物(b)は、アクリル系ゴム状重合体(a)に対するグラフト成分であり、シェル部を構成する。モノマー混合物(b)は、メタアクリル酸エステルを主成分として含むことが好ましい。
モノマー混合物(b)を構成するメタクリル酸エステルは、メタクリル酸メチルなどのアルキル基の炭素数1~12のメタクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。メタクリル酸エステルは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
メタクリル酸エステルの含有量は、モノマー混合物(b)100質量%に対して50質量%以上であることが好ましい。メタクリル酸エステルの含有量が50質量%以上であると、得られるフィルムの硬度、剛性を低下させにくくしうる。
モノマー混合物(b)は、必要に応じて他のモノマーをさらに含んでもよい。他のモノマーの例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルなどのアクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルなどの脂環式構造、複素環式構造または芳香族基を有する(メタ)アクリル系モノマー類(環構造含有(メタ)アクリル系モノマー)が含まれる。
(コアシェル型のゴム粒子:アクリル系グラフト共重合体について)
アクリル系グラフト共重合体、すなわち、コアシェル型のゴム粒子の例には、(メタ)アクリル系ゴム状重合体(a)としてのアクリル系ゴム状重合体5~90質量部(好ましくは5~75質量部)の存在下で、メタクリル酸エステルを主成分とするモノマー混合物(b)95~25質量部を少なくとも1段階で重合させた重合体が含まれる。
アクリル系グラフト共重合体は、必要に応じて、アクリル系ゴム状重合体(a)の内側に硬質重合体をさらに含んでもよい。そのようなアクリル系グラフト共重合体は、以下の(I)~(III)の重合工程を経て得ることができる。
(I)メタクリル酸エステル40~100質量%と、これと共重合可能な他のモノマー60~0質量%からなるモノマー混合物(c1)、および多官能性モノマー0.01~10質量部(モノマー混合物(c1)の合計100質量部に対して)を重合して硬質重合体を得る工程
(II)アクリル酸エステル60~100質量%と、これと共重合可能な他のモノマー0~40質量%からなるモノマー混合物(a1)、および多官能性モノマー0.1~5質量部(モノマー混合物(a1)の合計100質量部に対して)を重合して軟質重合体を得る工程
(III)メタクリル酸エステル60~100質量%と、これと共重合可能な他のモノマー40~0質量%からなるモノマー混合物(b1)、および多官能性モノマー0~10質量部(モノマー混合物(b1)の合計100質量部に対して)を重合して硬質重合体を得る工程
(I)~(III)の各重合工程の間に、他の重合工程がさらに含まれてもよい。
アクリル系グラフト共重合体は、さらに(IV)の重合工程を経て得られてもよい。
(IV)メタクリル酸エステル40~100質量%、アクリル酸エステル0~60質量%、および共重合可能な他のモノマー0~5質量%からなるモノマー混合物(b2)、ならびに多官能性モノマー0~10質量部(モノマー混合物(b2)100質量部に対して)を重合して硬質重合体を得る。
各工程で用いられるメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、共重合可能な他のモノマー、および多官能性モノマーは、前述と同様のものを用いることができる。
軟質層は、光学フィルムに衝撃吸収性を付与しうる。軟質層の例には、アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系ゴム状重合体(a)からなる層が含まれる。硬質層は、光学フィルムの靱性を損ないにくくし、かつゴム粒子の製造時に、粒子の粗大化や塊状化を抑制しうる。硬質層の例には、メタクリル酸エステルを主成分とする重合体からなる層が含まれる。
アクリル系グラフト共重合体のグラフト率(アクリル系ゴム状重合体(a)に対するグラフト成分(シェル部)の質量比)は、10~250%であることが好ましく、40~230%であることがより好ましく、60~220%であることがさらに好ましい。グラフト率が10%以上であると、シェル部の割合が少なくなりすぎないため、フィルムの硬度や剛性が損なわれにくい。アクリル系グラフト共重合体のグラフト率が250%以下であると、アクリル系ゴム状重合体(a)の割合が少なくなりすぎないため、フィルムの靱性や脆性改善効果が損なわれにくい。
アクリル系グラフト共重合体のグラフト率は、以下の方法で測定される。
1)アクリル系グラフト共重合体2gを、メチルエチルケトン50mlに溶解させ、遠心分離機(日立工機(株)製、CP60E)を用い、回転数30000rpm、温度12℃にて1時間遠心し、不溶分と可溶分とに分離する(遠心分離作業を合計3回セット)。
2)得られた不溶分の重量を下記式に当てはめて、グラフト率を算出する。
グラフト率(%)=[{(メチルエチルケトン不溶分の重量)-(アクリル系ゴム状重合体(a)の重量)}/(アクリル系ゴム状重合体(a)の重量)]×100
ゴム粒子(アクリル系グラフト共重合体)の平均粒子径は、100~400nmであることが好ましく、150~300nmであることがより好ましい。平均粒子径が100nm以上であると、フィルムに十分な靱性を付与しやすく、400nm以下であると、フィルムの透明性が低下しにくい。
ゴム粒子(アクリル系グラフト共重合体)の平均粒子径は、フィルム表面および切片のSEM撮影またはTEM撮影によって得た粒子100個の円相当径の平均値として特定される。円相当径は、撮影によって得られた粒子の投影面積を、同じ面積を持つ円の直径に換算することによって求めることができる。この際、倍率5000倍のSEM観察および/またはTEM観察によって観察されるゴム粒子(アクリル系グラフト共重合体)を、平均粒子径の算出に使用する。なお、分散液でのゴム粒子(アクリル系グラフト共重合体)の平均粒子径は、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子株式会社製 ELSZ-2000ZS)で測定することができる。
ゴム粒子の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂に対して5~40質量%であることが好ましく、7~30質量%であることがより好ましく、8~25質量%とすることもできる。ゴム粒子の含有量が5質量%以上であると、(メタ)アクリル系樹脂フィルムに十分な柔軟性や靱性を付与しやすいだけでなく、表面に凹凸を形成して滑り性も付与しうる。ゴム粒子の含有量が40質量%以下であると、ヘイズが上昇しすぎない。
1-3.有機微粒子
有機微粒子は、光学フィルムの滑り性を高める機能を有する。
有機微粒子は、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上の粒子であることが好ましい。有機微粒子のガラス転移温度が80℃以上であると、光学フィルムを高温で変形させにくくしうるため、偏光板のヒートサイクル試験において、高温時の偏光子の収縮量を少なくしうる。それにより、低温時に偏光子によって光学フィルムに加わる力を少なくすることができるため、光学フィルムのクラックおよびそれによる偏光板のクラックを抑制しやすい。また、光学フィルムの-40℃における破断延度も高めやすい。有機微粒子のガラス転移温度は、100℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度は、前述と同様の方法で測定される。
有機微粒子のガラス転移温度(Tg)は、有機微粒子を構成するモノマー組成によって調整されうる。有機微粒子のガラス転移温度(Tg)を高くするためには、例えば後述する多官能モノマーに由来する構造単位の含有量を多くすることが好ましい。
有機微粒子を構成する樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が上記範囲となるようなものであればよく、その例には、(メタ)アクリル酸エステル類、イタコン酸ジエステル類、マレイン酸ジエステル類、ビニルエステル類、オレフィン類、スチレン類、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、不飽和ニトリル類、不飽和カルボン酸類、および多官能モノマー類からなる群より選ばれる1以上に由来する構造単位を含む重合体や、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリフェニレンスルフィドなどが含まれる。
上記重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステル類、オレフィン類、スチレン類、(メタ)アクリルアミド類、不飽和ニトリル類、不飽和カルボン酸類および多官能モノマー類は、上記(メタ)アクリル系樹脂や上記アクリル系ゴム状重合体(a)を構成するモノマーとして挙げたものと同様のものを用いることができる。イタコン酸ジエステル類の例には、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジプロピルが含まれる。マレイン酸ジエステル類の例には、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピルが含まれる。ビニルエステル類の例には、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルが含まれる。アリル化合物の例には、酢酸アリル、カプロン酸アリル、ラウリン酸アリル、安息香酸アリルなどが含まれる。ビニルエーテル類の例には、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテルなどが含まれる。ビニルケトン類の例には、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトンなどが含まれる。
中でも、(メタ)アクリル系樹脂との親和性が高く、応力に対する柔軟性があり、かつガラス転移温度を上記範囲に調整しやすい観点などから、(メタ)アクリル酸エステル類、ビニルエステル類、スチレン類、オレフィン類からなる群より選ばれる1以上に由来する構造単位と、多官能モノマー類に由来する構造単位とを含む共重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル類に由来する構造単位と、多官能モノマー類に由来する構造単位とを含む共重合体がより好ましく、(メタ)アクリル酸エステル類に由来する構造単位と、スチレン類に由来する構造単位と、多官能モノマー類に由来する構造単位とを含む共重合体がさらに好ましい。特にスチレン類に由来する構造単位を含む共重合体からなる有機微粒子は、(メタ)アクリル系樹脂との屈折率差を少なくしうる。
有機微粒子が、多官能モノマーに由来する構造単位を含む場合、有機微粒子における多官能モノマーに由来する構造単位の含有量は、通常、ゴム粒子における多官能モノマーに由来する構造単位の含有量よりも多い。具体的には、多官能モノマーに由来する構造単位の含有量は、上記共重合体を構成する多官能モノマー以外のモノマーに由来する構造単位の合計100質量%に対して、例えば50~500質量%でありうる。
このような重合体からなる粒子(重合体粒子)は、任意の方法、例えば乳化重合、懸濁重合、分散重合、シード重合などの方法により製造されうる。中でも、粒子径が揃った重合体粒子が得られやすい観点などから、水性媒体下でのシード重合や乳化重合が好ましい。
重合体粒子の製造方法としては、例えば、
・単量体混合物を水性媒体に分散させた後、重合させる1段重合法、
・単量体を水性媒体中で重合させることで種粒子を得た後、単量体混合物を種粒子に吸収させた後、重合させる2段重合法、
・2段重合法の種粒子を製造する工程を繰り返す多段重合法などが挙げられる。これらの重合法は、重合体粒子の所望する平均粒子径に応じて適宜選択できる。なお、種粒子を製造するための単量体は、特に限定されず、重合体粒子用の単量体をいずれも使用できる。
有機微粒子は、コアシェル型の粒子であってもよい。そのような有機微粒子は、例えば(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体あるいは共重合体を含む低Tgのコア部と、高Tgのシェル部とを有する粒子などでありうる。
有機微粒子と(メタ)アクリル系樹脂との屈折率差の絶対値Δnは、得られるフィルムのヘイズ上昇を高度に抑制する観点では、0.1以下であることが好ましく、0.085以下であることがより好ましく、0.065以下であることがさらに好ましい。
有機微粒子の平均粒子径は、0.04~2μmであることが好ましく、0.08~1μmであることがより好ましい。有機微粒子の平均粒子径が0.04μm以上であると、得られるフィルムに十分な滑り性を付与しやすい。有機微粒子の平均粒子径が2μm以下であると、ヘイズの上昇を抑制しやすい。有機微粒子の平均粒子径は、ゴム粒子の平均粒子径と同様の方法で測定することができる。
有機微粒子の平均粒子径は、凝集性の粒子であれば、凝集体の平均大きさ(平均二次粒径)を意味し、非凝集性の粒子であれば、一粒子のサイズを測定した平均値を意味する。
有機微粒子の平均粒子径の、ゴム粒子の平均粒子径に対する比率(有機微粒子の平均粒子径r2の、ゴム粒子の平均粒子径r1に対する比率r2/r1)は、偏光板のクラックを抑制しやすくする観点では、0.5~2であることが好ましく、0.8~1.2であることがより好ましい。
有機微粒子の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂に対して0.3~3質量%であることが好ましく、0.5~2質量%であることがより好ましく、0.7~2質量%であることがさらに好ましい。有機微粒子の含有量が0.3質量%以上であると、光学フィルムに十分な滑り性を付与しうるだけでなく、光学フィルムのガラス転移温度(Tg)を低くしすぎないため、偏光板において高温時の偏光子の収縮量を少なくしやすい。それにより、低温時に偏光子により光学フィルムに力がかかりすぎないようにすることができる。有機微粒子の含有量が3質量%以下であると、ヘイズの上昇を抑制しやすい。
有機微粒子のゴム粒子に対する含有比率(有機微粒子の含有量m2の、ゴム粒子の含有量m1に対する比m2/m1)は、0.05~0.5であることが好ましい。m2/m1が0.05以上であると、ゴム粒子の含有量が一定である場合、有機微粒子の含有量が多いほうが、高温時に光学フィルムを変形させにくくしうる。そのため、偏光板のヒートサイクル試験において、高温時の偏光子の収縮量を少なくしうる。それにより、低温時に偏光子によって光学フィルムに加わる力を少なくすることができるため、光学フィルムのクラックを抑制しやすい。m2/m1は、0.1~0.2であることがより好ましい。
1-4.その他の成分
本発明の光学フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分の例には、残留溶媒や紫外線吸収剤、酸化防止剤などが含まれる。
例えば、本発明の光学フィルムは、後述するように溶液流延方式により製造されることから、溶液流延方式で用いられるドープの溶媒に由来する残留溶媒を含んでいてもよい。
残留溶媒量は、光学フィルムに対して700ppm以下であることが好ましく、30~700ppmであることがより好ましい。残留溶媒の含有量は、後述する光学フィルムの製造工程における、支持体上に流延させたドープの乾燥条件によって調整されうる。
光学フィルムにおける残留溶媒の含有量は、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより測定することができる。ヘッドスペースガスクロマトグラフィー法では、試料を容器に封入し、加熱し、容器中に揮発成分が充満した状態で速やかに容器中のガスをガスクロマトグラフに注入し、質量分析を行って化合物の同定を行いながら揮発成分を定量するものである。ヘッドスペース法では、ガスクロマトグラフにより、揮発成分の全ピークを観測することを可能にするとともに、電磁気的相互作用を利用した分析法を用いることによって、高精度で揮発性物質やモノマー等を定量をも併せて行うことができる。
1-5.物性
(ガラス転移温度(Tg))
光学フィルムのガラス転移温度(Tg)は、110℃以上であることが好ましい。光学フィルムのガラス転移温度(Tg)が110℃以上であると、光学フィルムのガラス転移温度(Tg)が適度に高いため、偏光板のヒートサイクル試験において、高温時の偏光子の収縮量を少なくしうる。それにより、低温時に偏光子によって光学フィルムに加わる力を少なくすることができるため、低温時の光学フィルムのクラックを抑制しやすい。また、光学フィルムの-40℃における破断延度も高めやすい。光学フィルムのガラス転移温度(Tg)は、上記観点から、120~160℃であることが好ましく、125~150℃であることがより好ましい。光学フィルムのガラス転移温度(Tg)は、前述と同様の方法で測定することができる。
光学フィルムのガラス転移温度(Tg)は、(メタ)アクリル系樹脂の種類や重量平均分子量Mw、ゴム粒子および有機微粒子のガラス転移温度(Tg)やそれらの含有比率(m2/m1)などによって調整することができる。光学フィルムのガラス転移温度(Tg)を高くするためには、例えば(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwを大きくしたり、嵩高い共重合モノマーに由来する構造単位を含む(メタ)アクリル系樹脂を選択したり、ガラス転移温度(Tg)の高い有機微粒子を選択したり、有機微粒子のゴム粒子に対する含有比率(m2/m1)を高くしたりすることが好ましい。
(-40℃での破断伸度)
光学フィルムの-40℃における破断伸度は、10%以上であることが好ましい。光学フィルムの-40℃における破断伸度が10%以上であると、低温時の光学フィルムの破断伸度が高いため、ヒートサイクル試験において偏光板が低温環境下に曝されても、偏光子の変形に追従しうる。そのため、光学フィルムのクラック、およびそれに起因する偏光板のクラックを抑制できる。光学フィルムの-40℃における破断伸度は、15%以上であることがより好ましい。光学フィルムの-40℃における破断伸度の上限値は、光学フィルムのコシを損なわないようにする観点では、例えば50%でありうる。
光学フィルムの-40℃での破断伸度は、JIS K 7127に準拠して測定することができる。具体的には、以下の方法で測定することができる。
1)まず、光学フィルムを所定の大きさに切り出し、試料片とする。
2)得られた試料片を、-40℃の環境下でテンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC-1225A)を用いて破断点伸度(引張破壊伸びともいう)を測定する。測定は、測定温度を-40℃にする以外はJIS K 7127に記載の方法に従って行う。
なお、試験片は、製膜方向(MD方向)を長手方向としたものと、幅方向(TD方向)を長手方向としたものとをそれぞれ5枚ずつ準備し、それぞれの試料の長手方向に引っ張った時の破断伸度を測定し、それらの平均値を「破断伸度」とする。
光学フィルムの-40℃における破断伸度は、主に、(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwや、ゴム粒子や有機微粒子、光学フィルムのガラス転移温度(Tg)などによって調整することができる。光学フィルムの-40℃における破断伸度を高めるためには、例えば(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwは大きくすることが好ましく、ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)は低くすることが好ましく、有機微粒子および光学フィルムのガラス転移温度(Tg)は高くすることが好ましい。
(ヘイズ)
本発明の光学フィルムは、透明性が高いことが好ましい。光学フィルムのヘイズは、4.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。ヘイズは、試料40mm×80nmを25℃、60%RHでヘイズメーター(HGM-2DP、スガ試験機)でJISK-6714に従って測定することができる。
(位相差RoおよびRt)
本発明の光学フィルムは、例えばIPSモード用の位相差フィルムとして用いる観点では、測定波長550nm、23℃55%RHの環境下で測定される面内方向の位相差Roは、0~10nmであることが好ましく、0~5nmであることがより好ましい。本発明の光学フィルムの厚み方向の位相差Rtは、-20~20nmであることが好ましく、-10~10nmであることがより好ましい。
RoおよびRtは、それぞれ下記式で定義される。
式(2a):Ro=(nx-ny)×d
式(2b):Rt=((nx+ny)/2-nz)×d
(式中、
nxは、フィルムの面内遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率を表し、
nyは、フィルムの面内遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表し、
dは、フィルムの厚み(nm)を表す。)
本発明の光学フィルムの面内遅相軸とは、フィルム面において屈折率が最大となる軸をいう。(メタ)アクリル系樹脂フィルムの面内遅相軸は、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)により確認することができる。
RoおよびRtは、以下の方法で測定することができる。
1)本発明の光学フィルムを23℃55%RHの環境下で24時間調湿する。このフィルムの平均屈折率をアッベ屈折計で測定し、厚みdを市販のマイクロメーターを用いて測定する。
2)調湿後のフィルムの、測定波長550nmにおけるリターデーションRoおよびRtを、それぞれ自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃55%RHの環境下で測定する。
本発明の光学フィルムの位相差RoおよびRtは、例えば(メタ)アクリル系樹脂の種類によって調整することができる。光学フィルムの位相差RoおよびRtを低くするためには、延伸によって位相差を発現しにくい(メタ)アクリル系樹脂を用いることが好ましい。
(厚み)
本発明の光学フィルムの厚みは、例えば5~100μm、好ましくは5~40μmとしうる。
2.光学フィルムの製造方法
本発明の光学フィルムは、溶液流延方式(キャスト法)で製造される。すなわち、本発明の光学フィルムは、1)少なくとも前述の(メタ)アクリル系樹脂、ゴム粒子、有機微粒子、および溶媒を含むドープを得る工程と、2)得られたドープを支持体上に流延し、乾燥および剥離して、膜状物を得る工程と、3)得られた膜状物を、乾燥させながら延伸する工程とを経て製造されうる。
1)の工程について
前述の(メタ)アクリル系樹脂、ゴム粒子、および有機微粒子を、溶媒に溶解または分散させて、ドープを調製する。
ドープに用いられる溶媒は、少なくとも(メタ)アクリル系樹脂を溶解させうる有機溶媒(良溶媒)を含む。良溶媒の例には、メチレンクロライドなどの塩素系有機溶媒や;酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフランなどの非塩素系有機溶媒が含まれる。中でも、メチレンクロライドが好ましい。
ドープに用いられる溶媒は、貧溶媒をさらに含んでいてもよい。貧溶媒の例には、炭素原子数1~4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールが含まれる。ドープ中のアルコールの比率が高くなると、膜状物がゲル化しやすく、金属支持体からの剥離が容易になりやすい。炭素原子数1~4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノールを挙げることができる。これらのうちドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいことなどからエタノールが好ましい。
ドープの調製は、前述の溶媒に、(メタ)アクリル系樹脂、およびゴム粒子をそれぞれ直接添加し、混合して調製してもよいし;前述の溶媒に、(メタ)アクリル系樹脂を溶解させた樹脂溶液と、前述の溶媒に、ゴム粒子および必要に応じて有機微粒子を分散させた微粒子分散液とを予め調製しておき、それらを混合して調製してもよい。
有機微粒子の添加方法は、特に制限されず、有機微粒子を個別に溶媒に添加してもよいし、有機微粒子の集合体として溶媒に添加してもよい。有機微粒子の集合体は、相互の連結(融着)が抑制された複数の有機微粒子の集合体からなる。そのため、取り扱い性に優れ、(メタ)アクリル系樹脂や溶媒に、有機微粒子の集合体を分散させれば、容易に有機微粒子に別れるため、有機微粒子の分散性を良好としうる。有機微粒子の集合体は、例えば、有機微粒子と、無機粉末とを含むスラリーを噴霧乾燥させることによって得ることができる。
2)の工程について
得られたドープを、支持体上に流延する。ドープの流延は、流延ダイから吐出させて行うことができる。
次いで、支持体上に流延されたドープ中の溶媒を蒸発させ、乾燥させる。乾燥されたドープを支持体から剥離して、膜状物を得る。
支持体から剥離する際のドープの残留溶媒量(剥離時の膜状物の残留溶媒量)は、得られる(メタ)アクリル系樹脂フィルムの位相差を低減しやすくする点では、10~150質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましい。剥離時の残留溶媒量が10質量%以上であると、乾燥または延伸時に、(メタ)アクリル系樹脂が流動しやすく、無配向にしやすいため、得られる(メタ)アクリル系樹脂フィルムの位相差を低減しやすい。剥離時の残留溶媒量が150質量%以下であると、ドープを剥離する際に要する力が過剰に大きくなりにくいので、ドープの破断を抑制しやすい。
剥離時のドープの残留溶媒量は、下記式で定義される。以下においても同様である。
ドープの残留溶媒量(質量%)=(ドープの加熱処理前質量-ドープの加熱処理後質量)/ドープの加熱処理後質量×100
尚、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、140℃30分の加熱処理をいう。
剥離時の残留溶媒量は、支持体上でのドープの乾燥温度や乾燥時間、支持体の温度などによって調整することができる。
3)の工程について
剥離して得られた膜状物を、乾燥させながら延伸する。
延伸は、求められる光学特性に応じて行えばよく、少なくとも一方の方向に延伸することが好ましく、互いに直交する二方向に延伸(例えば、膜状物の幅方向(TD方向)と、それと直交する搬送方向(MD方向)の二軸延伸)してもよい。
延伸倍率は、光学フィルムを例えばIPS用の位相差フィルムとして用いる観点では、1.01~2.0倍とすることができる。延伸倍率は、(延伸後のフィルムの延伸方向大きさ)/(延伸前のフィルムの延伸方向大きさ)として定義される。なお、二軸延伸を行う場合は、TD方向とMD方向のそれぞれについて、上記延伸倍率とすることが好ましい。
なお、光学フィルムの面内遅相軸方向(面内において屈折率が最大となる方向)は、通常、延伸倍率が最大となる方向である。
延伸温度(乾燥温度)は、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg-65)℃~(Tg+60)℃であることが好ましく、(Tg-50)℃~(Tg+50)℃であることがより好ましく、(Tg-30)℃~(Tg+50)℃であることがさらに好ましい。延伸温度が(Tg-30)℃以上であると、膜状物を延伸に適した柔らかさにしやすいだけでなく、延伸時に膜状物に加わる張力が大きくなりすぎないので、得られる(メタ)アクリル系樹脂フィルムに過剰な残留応力が残りにくくしうる。延伸温度がTg以下であると、膜状物中の溶媒の気化による気泡の発生などを抑制しやすい。延伸温度は、具体的には、60~140℃としうる。
延伸温度は、(a)テンター延伸機などのように非接触加熱型で乾燥させる場合は、延伸機内温度または熱風温度などの雰囲気温度、(b)熱ローラーなどの接触加熱型で乾燥させる場合は、接触加熱部の温度、あるいは(c)膜状物(被乾燥面)の表面温度のいずれかの温度として測定することができる。中でも、(a)テンター延伸機などのように非接触加熱型で乾燥させる場合は、延伸機内温度または熱風温度などの雰囲気温度を測定することが好ましい。
延伸開始時の膜状物中の残留溶媒量は、剥離時の膜状物中の残留溶媒量と同程度であることが好ましい。
膜状物のTD方向(幅方向)の延伸は、例えば膜状物の両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げる方法(テンター法)で行うことができる。膜状物のMD方向の延伸は、例えば複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用する方法(ロール法)で行うことができる。
得られる光学フィルムは、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種表示装置における偏光板保護フィルム(位相差フィルムも含む)として好ましく用いられる。
3.偏光板
本発明の偏光板は、偏光子と、その少なくとも一方の面に配置された本発明の光学フィルムとを有する。
図1は、本発明の偏光板の構成例を示す断面図である。図1に示されるように、本発明の偏光板10は、偏光子20と、その両面に配置された偏光板保護フィルム30Aおよび30Bと、偏光板保護フィルム30Aおよび30Bと偏光子20との間に配置された接着剤層40Aおよび40Bとを有する。偏光板保護フィルム30Aおよび30Bのうち少なくとも一方が、本発明の光学フィルムである。
3-1.偏光子20
偏光子20は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素または二色性染料で染色したフィルム(好ましくはさらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよいし;ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素または二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくは、さらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。偏光子の吸収軸は、通常、最大延伸方向と平行である。
例えば、特開2003-248123号公報、特開2003-342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1~4モル%、重合度2000~4000、けん化度99.0~99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールが用いられる。
偏光子20の厚みは、5~30μmであることが好ましく、偏光板を薄型化するため等から、5~20μmであることがより好ましい。
3-2.偏光板保護フィルム30Aおよび30B
偏光板保護フィルム30Aおよび30Bは、偏光子20の両面に、接着剤層40Aおよび40Bを介してそれぞれ配置されている。偏光板保護フィルム30Aおよび30Bの少なくとも一方は、本発明の光学フィルムである。偏光板保護フィルム30Aおよび30Bの一方のみが本発明の光学フィルムである場合、他方は、他の光学フィルムであってもよい。
他の光学フィルムの例には、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC5UX、KC4UX、KC8UCR3、KC4SR、KC4BR、KC4CR、KC4DR、KC4FR、KC4KR、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY-HA、KC2UA、KC4UA、KC6UA、KC8UA、KC2UAH、KC4UAH、KC6UAH、以上コニカミノルタ(株)製、フジタックT40UZ、フジタックT60UZ、フジタックT80UZ、フジタックTD80UL、フジタックTD60UL、フジタックTD40UL、フジタックR02、フジタックR06、以上富士フイルム(株)製)などが含まれる。
他の光学フィルムの厚みは、偏光板のクラックを抑制する観点では厚いほうが好ましく、例えば5~100μm、好ましくは40~80μmとしうる。
3-3.接着剤層40Aおよび40B
接着剤層40Aおよび40Bは、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(水糊)、または活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物でありうる。活性エネルギー線硬化性接着剤は、光ラジカル重合を利用した光ラジカル重合型組成物、光カチオン重合を利用した光カチオン重合型組成物、またはそれらの併用物のいずれであってもよい。
3-4.偏光板の製造方法
本発明の偏光板10は、偏光子20と、偏光板保護フィルム30Aおよび30Bとを、接着剤を介して貼り合わせて得ることができる。接着剤は、前述の接着剤を用いることができる。
得られた偏光板10は、用途に応じて任意の形状または大きさに打ち抜き加工される。例えば、偏光板10は、角が丸い形状、複雑な曲面を持った形状、または中央部に穴が開いた形状などの任意の形状に打ち抜かれる。このように、偏光板を異形に打ち抜く際、偏光板保護フィルム30Aおよび30Bには、刃の先端の力が集中するため、応力が残留しやすく、偏光板のヒートサイクル試験においてクラックの起点となりやすい。
これに対して本発明の偏光板10は、偏光板保護フィルム30Aおよび30Bの少なくとも一方が、-40℃での破断伸度が10%以上である本発明の光学フィルムである。それにより、異形に打ち抜かれた偏光板10であっても、ヒートサイクル試験において、偏光子の膨張収縮する力がかかることによる、偏光板保護フィルム30Aまたは30Bのクラックを抑制しうる。それにより、偏光板保護フィルム30Aまたは30Bのクラックに起因する偏光板10のクラックを抑制することができる。
4.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、液晶セルの一方の面に配置された第1偏光板と、液晶セルの他方の面に配置された第2偏光板とを含む。
液晶セルの表示モードは、例えばSTN(Super-Twisted Nematic)、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensated Bend)、HAN(Hybridaligned Nematic)、VA(Vertical Alignment、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)、PVA(Patterned Vertical Alignment))、IPS(In-Plane-Switching)などでありうる。中でも、VA(MVA,PVA)モードおよびIPSモードが好ましい。
第1および第2偏光板のうち一方または両方が、本発明の偏光板である。本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムが液晶セル側となるように配置されることが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.光学フィルムの材料
(1)(メタ)アクリル系樹脂
以下の表1の(メタ)アクリル系樹脂1~9を用いた。
Figure 0007314942000001
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)およびガラス転移温度(Tg)は、以下の方法で測定した。
(重量平均分子量(Mw))
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー社製 HLC8220GPC)、カラム(東ソー社製 TSK-GEL G6000HXL-G5000HXL-G5000HXL-G4000HXL-G3000HXL 直列)を用いて測定した。試料20mg±0.5mgをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、0.45mmのフィルターで濾過した。この溶液をカラム(温度40℃)に100ml注入し、検出器RI温度40℃で測定し、スチレン換算した値を用いた。
(ガラス転移温度(Tg))
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121-2012に準拠して測定した。
(2)ゴム粒子
<ゴム粒子C1の調製>
内容積60リットルの還流冷却器付反応器に、イオン交換水38.2リットル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム111.6gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下75℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。過硫酸アンモニウム(APS)0.36gを投入し、5分間攪拌後にメタクリル酸メチル(MMA)1657g、アクリル酸ブチル(BA)21.6g、およびメタクリル酸アリル(ALMA)1.68gからなるモノマー混合物(c1)を一括添加し、発熱ピークの検出後さらに20分間保持して最内硬質層の重合を完結させた。
次に、過硫酸アンモニウム(APS)3.48gを投入し、5分間攪拌後にアクリル酸ブチル(BA)1961g、メタクリル酸メチル(MMA)346g、およびメタクリル酸アリル(ALMA)264.0gからなるモノマー混合物(a1)(BA/MMA=85/15質量比)を120分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに120分間保持して、軟質層(アクリル系ゴム状重合体)の重合を完結させた。
次に、過硫酸アンモニウム(APS)1.32gを投入し、5分間攪拌後にメタクリル酸メチル(MMA)2106g、アクリル酸ブチル(BA)201.6gからなるモノマー混合物(b1)を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに20分間保持して硬質層1の重合を完結した。
次いで、過硫酸アンモニウム(APS)1.32gを投入し、5分後にメタクリル酸メチル(MMA)3148g、アクリル酸ブチル(BA)201.6g、およびn-オクチルメルカプタン(n-OM)10.1gからなるモノマー混合物(b2)を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後にさらに20分間保持した。ついで95℃に昇温し、60分間保持して、硬質層2の重合を完結させた。
得られた重合体ラテックスを少量採取し、吸光度法により平粒子径を求めたところ、0.10μmであった。残りのラテックスを3質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩析・凝固させ、次いで、脱水・洗浄を繰り返した後、乾燥して、4層構造のアクリル粒子(ゴム粒子C1)を得た。得られたゴム粒子C1の平均粒子径は200nmであり、アクリル系ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)は-30℃であった。
<ゴム粒子C2の調製>
モノマー混合物(a1)におけるメタクリル差メチル(MMA)とアクリル酸ブチル(BA)の配合比(BA/MMA)を75/25質量比に変更した以外はゴム粒子C1と同様の方法でゴム粒子C2を得た。得られたゴム粒子C2の平均粒子径は200nmであり、アクリル系ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)は-15℃であった。
<ゴム粒子C3の調製>
モノマー混合物(a1)におけるメタクリル差メチル(MMA)とアクリル酸ブチル(BA)の配合比(BA/MMA)を65/35質量比に変更した以外はゴム粒子C1と同様の方法でゴム粒子C3を得た。得られたゴム粒子C3の平均粒子径は200nmであり、アクリル系ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)は0℃であった。
<ゴム粒子C4の調製>
モノマー混合物(b2)の重合時間を長くした以外はゴム粒子C1と同様の方法でゴム粒子C4を得た。得られたゴム粒子C4の平均粒子径は400nmであり、アクリル系ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)は-30℃であった。
<ゴム粒子C5の調製>
モノマー混合物(b2)の重合時間を短くした以外はゴム粒子C1と同様の方法でゴム粒子C5を得た。得られたゴム粒子C5の平均粒子径は100nmであり、アクリル系ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)は-30℃であった。
(3)有機微粒子
<有機微粒子P1の調製>
(種粒子の作製)
攪拌機、温度計を備えた重合器に、脱イオン水1000gを入れ、そこへメタクリル酸メチル(MMA)50g、t-ドデシルメルカプタン6gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで加温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム1gを溶解した脱イオン水20gを添加した後、10時間重合させた。得られたエマルジョン中の種粒子の平均粒子径は、0.05μmであった。
(有機微粒子の作製)
攪拌機、温度計を備えた重合器に、ゲル化抑制剤としてラウリル硫酸ナトリウム2.4gを溶解した脱イオン水800gを入れ、そこへモノマー混合物としてメタクリル酸メチル(MMA)66g、スチレン(St)20gおよびメタクリル酸アリル(ALMA)64gと、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gとの混合液を入れた。次いで、混合液をT.Kホモミキサー(特殊機化工業社製)にて攪拌して、分散液を得た。
得られた分散液に、上記種粒子を含むエマルジョン60gを加え、30℃で1時間攪拌して種粒子にモノマー混合物を吸収させた。次いで、吸収させたモノマー混合物を、窒素気流下で50℃、5時間加温して重合させた後、室温(約25℃)まで冷却して、重合体微粒子(有機微粒子P1)のスラリーを得た。得られた有機微粒子P1の平均粒子径は、200nmであり、ガラス転移温度(Tg)は、100℃であった。
(有機微粒子の集合体の作製)
このエマルジョンを噴霧乾燥機としての坂本技研社製のスプレードライヤー(型式:アトマイザーテイクアップ方式、型番:TRS-3WK)で次の条件下にて噴霧乾燥して複合体1の集合体を得た。重合体粒子の集合体の平均粒子径は、30μmであった。
供給速度:25ml/min
アトマイザー回転数:11000rpm
風量:2m/min
噴霧乾燥機のスラリー入口温度:100℃
重合体粒子集合体出口温度:50℃
<有機微粒子P2の調製>
メタクリル酸アリル(ALMA)以外のモノマー混合物の組成をBA/MMA=15/85(質量比)に変更した以外は有機微粒子P1と同様の方法で有機微粒子P2を得た。得られた有機微粒子P2の平均粒子径は200nmであり、ガラス転移温度(Tg)は80℃であった。
<有機微粒子P3の調製>
メタクリル酸アリル(ALMA)以外のモノマー混合物の組成をBA/MMA=30/70(質量比)に変更した以外は有機微粒子P1と同様の方法で有機微粒子P3を得た。得られた有機微粒子P3の平均粒子径は200nmであり、ガラス転移温度(Tg)は60℃であった。
<有機微粒子P4の調製>
モノマー混合物の重合時間を短くした以外は有機微粒子P1と同様の方法で有機微粒子P4を得た。得られた有機微粒子P4の平均粒子径は100nmであり、ガラス転移温度(Tg)は100℃であった。
<有機微粒子P5の調製>
モノマー混合物の重合時間を長くした以外は有機微粒子P1と同様の方法で有機微粒子P5を得た。得られた有機微粒子P5の平均粒子径は400nmであり、ガラス転移温度(Tg)は100℃であった。
ゴム粒子C1~C5および有機微粒子P1~P5のガラス転移温度(Tg)および平均粒子径は、それぞれ以下の方法で測定した。
(ガラス転移温度(Tg))
ゴム粒子および有機微粒子のガラス転移温度は、上記(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度の測定方法と同様の方法で測定した。
(平均粒子径)
得られた分散液中のゴム粒子または有機微粒子の分散粒径を、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子株式会社製ELSZ-2000ZS)で測定した。なお、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子株式会社製 ELSZ-2000ZS)用いて測定されるゴム粒子または有機微粒子の平均粒子径は、光学フィルムをTEM観察して測定されるゴム粒子または有機微粒子の平均粒子径とほぼ一致するものである。
2.光学フィルムの作製および評価
<光学フィルム101の作製>
(ゴム粒子分散液の調製)
11.3質量部のゴム粒子C1と、200質量部のメチレンクロライドとを、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マイルダー分散機マイルダー分散機(大平洋機工株式会社製)を用いて1500rpm条件下で分散し、ゴム粒子分散液を得た。
(有機微粒子分散液の調製)
11.3質量部の有機微粒子P1と、84質量部のエタノールとを、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散した。
次いで、この溶液5質量部を、溶解タンク中の十分攪拌されているメチレンクロライド100質量部に、ゆっくりと添加し、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにてさらに分散させた。これを、日本精線株式会社製のファインメットNFでろ過し、有機微粒子分散液を得た。
(ドープの調製)
次いで、下記組成のドープを調製した。まず、加圧溶解タンクにメチレンクロライド、およびエタノールを添加した。次いで、加圧溶解タンクに、(メタ)アクリル系樹脂1を撹拌しながら投入した。次いで、上記調製した微粒子分散液を投入して、これを60℃に加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。加熱温度は、室温から5℃/minで昇温し、30分間で溶解した後、3℃/minで降温した。得られた溶液を濾過した後、ドープを得た。
(ドープの組成)
(メタ)アクリル系樹脂1:100質量部
メチレンクロライド:270質量部
エタノール:20質量部
ゴム粒子分散液:206質量部
有機微粒子分散液:160質量部
(製膜)
次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープを温度31℃、1800mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は28℃に制御した。ステンレスベルトの搬送速度は20m/minとした。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶剤量が30%になるまで溶剤を蒸発させた。次いで、剥離張力128N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。剥離したフィルムを多数のローラーで搬送させながら、得られた膜状物を、テンターにて(Tg+10)℃(本例では120℃)の条件下で幅方向に1.2倍延伸した。その後、ロールで搬送しながらさらに乾燥させ、テンタークリップで挟んだ端部をレーザーカッターでスリットして巻き取り、膜厚40μmの光学フィルム101を得た。
<光学フィルム102、103、111および119~121の作製>
(メタ)アクリル系樹脂の種類を表2に示されるように変更した以外は光学フィルム101と同様の方法で光学フィルム102、103、111および119~121を得た。
<光学フィルム104、113>
ゴム粒子の種類を表2に示されるように変更した以外は光学フィルム102と同様の方法で光学フィルム104および113を得た。
<光学フィルム105、106の作製>
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwを表2に示されるように変更した以外は光学フィルム102と同様の方法で光学フィルム105および106を得た。
<光学フィルム107の作製>
(メタ)アクリル系樹脂5のペレットを、乾燥機にて80℃で4時間乾燥させた後、φ65mm単軸押出機に供給した。押出機出口で樹脂温度が270℃となるように加熱溶融し、Tダイから溶融樹脂を押し出した。Tダイ出口における吐出直後の樹脂温度は270℃であった。吐出された溶融樹脂を、70℃に調整したキャストロールと70℃に調整したタッチロールとで挟み込み、冷却固化して、厚み140μmの原反フィルムを得た。
得られた原反フィルムを、同時二軸延伸機(熱処理ゾーン長/延伸ゾーン長=1.0)にて、縦方向と横方向とを同時に2倍、132℃(Tg+10℃)の条件で延伸した後、熱処理ゾーンにおいて、135℃において熱処理を施し、縦方向および横方向同時に5%緩和させて、Tg以下まで冷却させた。得られたフィルムの両端を連続的にスリットした後、引き取りロールで引き取りながら巻き取り、厚み40μmの光学フィルム107を得た。
<光学フィルム108、114および115の作製>
有機微粒子の含有量を表2に示されるように変更した以外は光学フィルム102と同様の方法で光学フィルム108、114および115を得た。
<光学フィルム109、110>
有機微粒子の種類を表2に示されるように変更した以外は光学フィルム102と同様の方法で光学フィルム104を得た。
<光学フィルム112>
ゴム粒子を配合しなかった以外は光学フィルム102と同様の方法で光学フィルム112を得た。
<光学フィルム116および117の作製>
有機微粒子の平均粒子径を表2に示されるように変更した以外は光学フィルム102と同様の方法で光学フィルム116および117を得た。
<光学フィルム118の作製>
ゴム粒子の平均粒子径を表2に示されるように変更した以外は光学フィルム102と同様の方法で光学フィルムを得た。
得られた光学フィルムのガラス転移温度(Tg)、および-40℃での破断伸度を、以下の方法で評価した。
(ガラス転移温度(Tg))
得られた光学フィルムのガラス転移温度(Tg)は、前述と同様の方法で測定した。
(-40℃環境下での破断伸度)
得られた光学フィルムの-40℃での破断伸度は、以下の方法で測定した。
1)まず、光学フィルムを所定の大きさに切り出し、試料片とした。
2)得られた試料片を、-40℃の環境下でテンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC-1225A)を用いて破断点伸度(引張破壊伸びともいう)を測定した。測定は、測定温度を-40℃にする以外はJIS K 7127に記載の方法に従って行った。
なお、試験片は、製膜方向(MD方向)を長手方向としたものと、幅方向(TD方向)を長手方向としたものとをそれぞれ5枚ずつ準備し、それぞれの試料の長手方向に引っ張った時の破断伸度を測定し、それらの平均値を「破断伸度」とした。
そして、-40℃環境下での破断伸度が10%以上であれば良好であり、15%以上であるとさらに良好であると判断した。
得られた光学フィルム101~121の評価結果を、表2に示す。
Figure 0007314942000002
表2に示されるように、上記1)~4)の要件を全て満たす光学フィルム101~105、110および114~121は、いずれも-40℃での破断伸度が10%以上と高いことがわかる。
これに対して、上記1)~4)の要件のうち少なくとも一つを満たさない光学フィルム106~109、111~113は、いずれも-40℃での破断伸度が10%よりも低いことがわかる。
3.偏光板の作製および評価
3-1.評価1
<偏光板201の作製>
(偏光子の作製)
厚さ25μmのポリビニルアルコールフィルムを、35℃の水で膨潤させた。得られたフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5gおよび水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、さらにヨウ化カリウム3g、ホウ酸7.5gおよび水100gからなる45℃の水溶液に浸漬した。得られたフィルムを、延伸温度55℃、延伸倍率5倍の条件で一軸延伸した。この一軸延伸フィルムを、水洗した後、乾燥させて、厚み12μmの偏光子を得た。
(偏光板の作製)
対向フィルムとして、コニカミノルタタックKC6UA(厚み56μm、セルローストリアセテートフィルム、コニカミノルタ社製)を準備し、以下の条件でアルカリ鹸化処理した。具体的には、KC6UAを、1.5N水酸化ナトリウム水溶液に55℃にて30秒間浸漬した後、室温の水洗浴槽中で洗浄した。得られたKC6UAを30℃の温風で乾燥させた。
次いで、上記作製した偏光子の一方の面に、光学フィルム101を、水系接着剤としてポリビニルアルコール(クラレ製PVA-117H)3質量%水溶液(表中、水糊と表記)を介して貼り合わせ;偏光子の他方の面に、アルカリ鹸化処理したコニカミノルタタックKC6UAを、該水系接着剤を介して貼り合わせて、積層物を得た。光学フィルム101と偏光子の貼り合わせは、光学フィルム101の遅相軸と偏光子の吸収軸とが90°となるように行った。そして、得られた積層物を60℃で5分間乾燥させて、偏光板201を得た。
<偏光板202~221の作製>
光学フィルム101を、表3に示される光学フィルムに変更した以外は偏光板201と同様の方法で偏光板202~221を作製した。
得られた偏光板201~221のヒートサイクル試験における偏光板のクラック(1)を、以下の方法で評価した。
(偏光板のクラック)
(1)サンプルの作製
得られた偏光板を、170mm(偏光子の透過軸方向)×110mm(偏光子の吸収軸方向)の大きさに切り出し、切り出した偏光板の中央に直径10mmの円孔を開けた。
円孔が開けられた偏光板のうち、光学フィルム側の面に粘着剤層を積層し、この粘着剤層を介して偏光板をガラス板に貼り合わせて、偏光板サンプルとした。
(2)ヒートサイクル試験
(2-1)100サイクル
ガラス板に貼り合わせた偏光板サンプルについて、ヒートサイクル試験を行った。ヒートサイクル試験は、ガラス板に貼り合わせた偏光板サンプルを、-30℃で30分間保持した後、80℃に昇温して30分間保持し、その後、-30℃まで降温させるという操作を1サイクル(-30℃、30分保持→昇温→80℃30分間保持→-30℃まで降温)とし、これを合計100サイクル繰り返して行った。
各光学フィルムごとに6つの偏光板サンプルを準備し、6つの偏光板サンプルのそれぞれについてヒートサイクル試験を行った。そして、ヒートサイクル試験の評価は、試験後の光学フィルムにクラック(割れ)が観察されるサンプル数の全サンプル数(6)に対する割合をカウントすることにより行った。
クラックが観察されるサンプル数が0(/6)であれば良好と判断し、クラックが観察されるサンプル数が1以上(/6)であれば不良と判断した。
(2-2)300サイクル
また、100サイクルのヒートサイクル試験後でもクラックが発生しなかったもの(クラックが観察されるサンプル数が0であったもの)についてのみ、同様のヒートサイクルをさらに繰り返し、合計300サイクル行った。
そして、クラックが観察されるサンプル数が少ないほど、より好ましいと判断した。
得られた偏光板201~221の評価結果を、表3に示す。
Figure 0007314942000003
表3に示されるように、-40℃での破断伸度が10%以上である光学フィルムを用いた偏光板201~205、210および214~221は、いずれも偏光板のクラックを生じないことがわかる。
特に、ガラス転移温度(Tg)が高い有機微粒子を含む光学フィルムを用いることで、偏光板クラックをより高度に抑制できることがわかる(偏光板202と210の対比)。
また、有機微粒子のゴム粒子に対する含有量の比m2/m1が0.1~0.2である光学フィルムを用いることで、偏光板クラックをより高度に抑制できることがわかる(偏光板202、214および215の対比)。
また、有機微粒子のゴム粒子に対する平均粒子径の比r2/r1が0.8~1.2である光学フィルムを用いることで、偏光板クラックをより高度に抑制できることがわかる(偏光板202、216および217の対比)。
これに対して、-40℃での破断伸度が10%未満である光学フィルム206~209、211~213は、いずれも偏光板のクラックを生じることがわかる。
3-2.評価2
<偏光板222~224の作製>
対向フィルムの種類を表4に示されるように変更した以外は偏光板202と同様にして偏光板222~224を作製した。
<偏光板225、226の作製>
偏光子の厚みを表4に示されるように変更した(延伸倍率は一定のまま)以外は偏光板202と同様にして偏光板225、226を作製した。
得られた偏光板222~226、および上記作製した偏光板202および203の、偏光板の-40℃の破断伸度および偏光板クラックを評価した。なお、偏光板クラックは、前述と同様の方法で評価した。
(偏光板の-40℃での破断伸度)
光学フィルムを、偏光板に変更した以外は光学フィルムの-40℃での破断伸度と同様の方法で偏光板の-40℃での破断伸度を測定した。
得られた偏光板202、203および222~226の評価結果を、表4に示す。
Figure 0007314942000004
表4に示されるように、本発明の偏光板の中でも、光学フィルム103を含む偏光板203や、対向フィルムも光学フィルム102とした偏光板224は、300サイクルのヒートサイクル試験においても、偏光板のクラックを生じないことがわかる。
また、対向フィルムの厚みを大きくすることで、300サイクルのヒートサイクル試験においても、偏光板のクラックを生じないことがわかる(偏光板203、222、223の対比)。これは、対向フィルムが高温での偏光子の収縮を抑えるためと考えられる。さらに、偏光子の厚みを大きくすることで、300サイクルのヒートサイクル試験においても、偏光板のクラックを生じないことがわかる(偏光板202、225、226の対比)。これは、偏光子の厚みが薄いほうが、光学フィルムに加わる力が弱くなるためと考えられる。
本出願は、2018年7月31日出願の特願2018-144434に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
本発明によれば、低温環境下に晒されてもクラックを生じることなく使用可能な偏光板を付与しうる光学フィルム、およびそれを用いた偏光板を提供することができる。
10 偏光板
20 偏光子
30A、30B 偏光板保護フィルム
40A、40B 接着剤層

Claims (6)

  1. 重量平均分子量が20万以上であり、ガラス転移温度が110℃以上の(メタ)アクリル系樹脂と、
    ガラス転移温度が-15℃以下である架橋重合体を含むコア部と、当該コア部を覆うシェル部とを有するゴム粒子と、
    ガラス転移温度が80℃以上である有機微粒子と
    を含む光学フィルムであって、
    ガラス転移温度が110℃以上であり、かつ
    JIS K 7127に準拠して測定される-40℃における破断伸度が10%以上である、
    光学フィルム。
  2. 前記有機微粒子の含有量m2の、前記ゴム粒子の含有量m1に対する比m2/m1は、0.1~0.2(質量比)である、
    請求項1に記載の光学フィルム。
  3. ガラス転移温度が125℃以上である、
    請求項1または2に記載の光学フィルム。
  4. 前記(メタ)アクリル系樹脂は、シクロ環を有する(メタ)アクリル酸エステル類、マレイミド類からなる群より選ばれる共重合モノマーに由来する構造単位、および分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の少なくとも一方を含む、
    請求項3に記載の光学フィルム。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の光学フィルムを含む、
    偏光板保護フィルム。
  6. 偏光子と、
    その少なくとも一方の面に配置された請求項1~4のいずれか一項に記載の光学フィルムと
    を含む、偏光板。
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