JP7314988B2 - 光学フィルム、偏光板、光学フィルムの製造方法 - Google Patents

光学フィルム、偏光板、光学フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、光学フィルム、偏光板、光学フィルムの製造方法に関する。
液晶表示装置や有機EL表示装置などの表示装置は、偏光板保護フィルムなどの光学部材を有する。そのような光学部材に用いられる光学フィルムとしては、優れた透明性や寸法安定性、低吸湿性を有することから、シクロオレフィン系樹脂フィルムや、(メタ)アクリル系樹脂フィルム(例えば特許文献1や2を参照)などが用いられることがある。
これらのフィルムは、溶融製膜法(メルト法)や溶液製膜法(キャスト法)などの任意の方法で製造されうる。中でも、高分子量の樹脂を用いることができることから、溶液製膜法で製造されることがある。溶液製膜法では、樹脂を溶媒に溶解させたドープを得る工程と、当該ドープを支持体上に流延した後、剥離して膜状物を得る工程と、得られた膜状物を乾燥させる工程とを経て、フィルムを得る。
特開2017-52920号公報 国際公開第2012/114718号 特開2014-38180号公報
しかしながら、シクロオレフィン系樹脂や(メタ)アクリル系樹脂などの疎水性を示す樹脂は、(疎水性を示す)溶媒との親和性が高いため、溶液製膜法で製膜する際の乾燥性が低いという問題があった。また、シクロオレフィン系樹脂や(メタ)アクリル系樹脂は、一般的にガラス転移温度(Tg)がそれほど高くはないため、これらの膜状物を高温で乾燥させると、搬送張力によって膜状物が不均一に伸びやすく、例えばトタン状のような変形を生じやすい。それにより、膜厚ムラを生じやすいという問題もあった。
これに対し、特許文献3では、メタクリル酸メチルと、嵩高さ指数が一定以上の環状の部分構造を有するモノマーとの共重合体を用いることで、乾燥性を高めることができる。しかしながら、乾燥性のさらなる向上が望まれている。
乾燥性をさらに高くするためには、乾燥温度を高くすることが有効であり;乾燥温度を高くするためには、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)を高くすることが有効である。例えば、前述のような環構造を有するモノマーに由来する構造単位を含む(メタ)アクリル系樹脂は、高いガラス転移温度を有するものの;当該構造単位の含有量が多すぎると、得られるフィルムが脆くなりやすい。したがって、得られるフィルムを脆くすることなく(すなわち、靱性を損なうことなく)、高い乾燥温度で乾燥させても変形しにくいこと、当該変形に起因する膜厚ムラを抑制できることが望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高い乾燥効率で得られ、かつ乾燥時の変形に起因する膜厚ムラが抑制され、十分な靱性を有する光学フィルム、偏光板、および光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題は、以下の構成によって解決することができる。
本発明の光学フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂、および極性基を有するシクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる熱可塑性樹脂と、張力調整剤とを含む光学フィルムであって、前記張力調整剤は、含窒素ヘテロ環化合物、または前記熱可塑性樹脂とともにアイオノマーを形成する金属イオンであり、前記光学フィルムを、エタノール/メチレンクロライド(8/92質量比)混合溶媒に13.5質量%の濃度となるように溶解させた溶液の、23℃におけるB型粘度計における粘度が5000~50000mPa・sであり、かつ前記溶液の塗膜を、残留溶媒量が5質量%となるまで23℃で乾燥させて、乾燥厚み40μmのフィルムとしたときの、JISK 7115:1999に準拠して下記条件で測定される伸び率が5%以下である。
(測定条件)
測定温度:(Tg-10)℃(Tgは、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度を示す)
引張荷重:0.75N
引張時間:15分
本発明の偏光板は、偏光子と、その少なくとも一方の面に配置された本発明の光学フィルムとを含む。
本発明の光学フィルムの製造方法は、(メタ)アクリル系樹脂、および極性基を有するシクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる熱可塑性樹脂と、含窒素ヘテロ環化合物、または前記熱可塑性樹脂とともにアイオノマーを形成する金属イオンである張力調整剤と、溶媒とを含み、23℃においてB型粘度計により測定される粘度が5000~50000mPa・sであるドープを得る工程と、前記ドープを支持体上に流延した後、剥離して膜状物を得る工程と、前記膜状物を乾燥させる工程とを含む。
本発明によれば、高い乾燥効率で得られ、かつ乾燥時の変形に起因する膜厚ムラが抑制され、十分な靱性を有する光学フィルム、偏光板、光学フィルムの製造方法を提供することができる。
図1は、ウェット状態の膜状物の強度と、ドープの粘度との関係を示す説明図である。
本発明者らは、乾燥時の膜状物の変形(伸び)は、膜状物の強度が低い場合に生じやすいこと;膜状物の強度は、ドープの粘度と相関関係があることに着目した。
図1は、ウェット状態の膜状物の強度(伸びにくさ)と、ドープの粘度との関係を示す説明図である。図1に示されるように、樹脂を溶媒に溶解させたドープの粘度が低く、取り扱いやすい範囲である場合(図1の点線1、状態a)、当該ドープから得られるウェット状態の膜状物を高温下でロール搬送すると、膜状物の強度(引張強度)が低いため、搬送方向に伸びやすい(図1の点線1、状態b)。一方で、樹脂の分子量を大きくし、膜状物の強度を高くして伸びにくくすると(図1の点線2の状態c)、ドープの粘度が高くなり、取り扱える範囲を超えてしまい、製膜性が損なわれる(図1の点線2の状態d)。このように、ドープの粘度を、取り扱いやすい範囲に低く維持しつつ、膜状物の強度を高めて搬送張力によって伸びにくくすることは困難であった。
これに対して、本発明者らは、カルボニル基などの極性基を有する熱可塑性樹脂に、張力調整剤として特定の含窒素ヘテロ環化合物または特定の金属イオンを添加することで、ドープの粘度(溶液粘度)を低く維持しつつ(図1の実線の状態a)、得られる膜状物の強度を高めて伸びにくくしうること(図1の実線の状態c)を見出した。つまり、良好な製膜性と、(乾燥時の変形に起因する)膜厚ムラの抑制と、を高度に両立できることを見出した。
この理由は明らかではないが、以下のように推測される。熱可塑性樹脂が有するカルボニル基などの極性基と、張力調整剤である含窒素ヘテロ環化合物の窒素原子または金属イオンとが相互作用しやすいため、カルボニル基などの極性基を有する熱可塑性樹脂の分子同士が、含窒素ヘテロ環化合物または金属イオンを介して擬似架橋、具体的には、擬似的な三次元ネットワーク構造を形成しやすい。その結果、熱可塑性樹脂の分子量を高くしなくても、すなわち、ドープの粘度を増大させなくても、膜状物の強度が高められ、伸びにくくなる。一方、ドープの状態では、溶媒によって濃度が薄まるため、熱可塑性樹脂の極性基と、張力調整剤である含窒素ヘテロ環化合物の窒素原子や金属イオンとの相互作用は切断されやすく、粘度の過剰な上昇も生じにくい。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
1.光学フィルム
本発明の光学フィルムは、熱可塑性樹脂と、張力調整剤とを含む。
1-1.熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂は、溶液製膜法で製膜でき、かつ良好な透明性と、低い吸湿性とを有する光学フィルムが得られやすい観点などから、(メタ)アクリル系樹脂、または極性基を有するシクロオレフィン系樹脂であることが好ましい。
((メタ)アクリル系樹脂)
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、または(メタ)アクリル酸エステルとそれと共重合可能な共重合モノマーとの共重合体である。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味する。(メタ)アクリル酸エステルは、メタクリル酸メチルであることが好ましい。
すなわち、(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を含み、それと共重合可能なメタクリル酸メチル以外の共重合モノマー(以下、単に「共重合モノマー」という)に由来する構造単位をさらに含みうる。
共重合モノマーは、特に制限されないが、溶液製膜時の乾燥性を高めやすくする観点では、環構造を有する共重合モノマーを含むことが好ましい。環構造の例には、脂環、芳香環およびイミド環が含まれる。そのような環構造を有する共重合モノマーは、分子の自由体積が大きいことから、溶液製膜工程において、膜状物の樹脂マトリクス中で、溶媒分子を移動させるための隙間(空間)を形成しやすい。それにより、溶媒の除去性、すなわち、乾燥性を高めることができる。
環構造を有する共重合モノマーの例には、
(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルなどの脂環を有する(メタ)アクリル酸エステル;
ビニルシクロヘキサンなどの脂環を有するビニル類;
スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレンなどの芳香環を有するビニル類;および
N-フェニルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-o-クロロフェニルマレイミドなどのマレイミド類(イミド環を有する化合物)が含まれる。
中でも、環構造を有する共重合モノマーは、芳香環を有する共重合モノマー(例えば芳香環を有するビニル類)、またはイミド環を有する共重合モノマー(例えばマレイミド類)であることが好ましい。これらのモノマーは、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度を高めやすいだけでなく、張力調整剤と相互作用して、擬似架橋を形成しやすい。
共重合モノマーに由来する構造単位は、環構造を有する共重合モノマーに由来する構造単位以外の他の共重合モノマーに由来する構造単位をさらに含んでもよい。
他の共重合モノマーの例には、環構造を有しない共重合モノマー、すなわち、
(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチルなどの炭素原子数2~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸類;
酢酸ビニル、エチレンやプロピレンなどのオレフィン類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;
(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、プロピル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類が含まれる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
共重合モノマーに由来する構造単位の総量は、求められる性能に応じて適宜調整されうるが、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全構造単位100質量%に対して、例えば0~50質量%であり、10~40質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。また、当該共重合モノマーに由来する構造単位の総量に対する、環構造を有する共重合モノマーに由来する構造単位の含有量は、例えばフィルムの耐熱性や乾燥温度を高めやすくする観点では、50質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
すなわち、(メタ)アクリル系樹脂が、環構造を有する共重合モノマーに由来する構造単位を含む場合、その含有量は、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全構造単位に対して10~40質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。環構造を有する共重合モノマーに由来する構造単位の含有量が10質量%以上であると、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度を高めやすいため、溶液製膜時の乾燥温度を高めやすいだけでなく、膜状物中に環構造に由来して、溶媒が移動できる空間を形成しやすいため、乾燥性も高めやすい。また、環構造を有する共重合モノマーに由来する構造単位の含有量が40質量%以下であると、(メタ)アクリル系樹脂を含む膜状物が脆くなりすぎない。
(メタ)アクリル系樹脂のモノマーの種類や組成は、H-NMRにより特定することができる。
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、90℃以上であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂のTgが90℃以上であると、光学フィルムの耐熱性を高めうるだけでなく、溶液製膜時の乾燥温度を高めることができるため、乾燥性を高めやすい。溶液製膜時の乾燥温度をより高めやすくし、かつ光学フィルムの靱性を損ないにくくする観点では、(メタ)アクリル系樹脂のTgは、100~150℃であることがより好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121-2012またはASTM D 3418-82に準拠して測定することができる。
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、モノマー組成によって調整することができる。(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)を高めるためには、例えば環構造を有する共重合モノマーに由来する構造単位の含有量を多くすることが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、60~300万であることが好ましい。メタクリル系樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、フィルムに十分な機械的強度(靱性)を付与しつつ、製膜性や乾燥性も損なわれにくい。(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、上記観点から、100万~200万であることがより好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算にて測定することができる。具体的には、東ソー社製 HLC8220GPC)、カラム(東ソー社製 TSK-GEL G6000HXL-G5000HXL-G5000HXL-G4000HXL-G3000HXL 直列)を用いて測定することができる。測定条件は、後述する実施例と同様としうる。
(極性基を有するシクロオレフィン系樹脂)
極性基を有するシクロオレフィン系樹脂は、特に制限されないが、極性基を有するノルボルネン骨格含有モノマーに由来する構造単位を含む重合体であることが好ましい。
極性基を有するノルボルネン骨格含有モノマーは、式(A-1)または(A-2)で表されるモノマーであることが好ましく、樹脂が有する極性基をフィルム表面に局在化させやすくする観点では、式(A-2)で表されるモノマーであることがより好ましい。
Figure 0007314988000001
式(A-1)中、R~Rは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~30の炭化水素基、または極性基を表す。ただし、R~Rの少なくとも一つは極性基である。また、RおよびRが水素原子であり、かつRおよびRが水素原子以外の基である場合を除く。
極性基は、酸素原子、硫黄原子および窒素原子などの電気陰性度の高い原子によって分極が生じている官能基をいう。そのような極性基の例には、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、およびこれらの基がアルキレン基などの連結基を介して結合した基などが含まれる。中でも、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基が好ましく、溶液製膜時の溶解性を確保する観点では、アルコキシカルボニル基およびアリールオキシカルボニル基がより好ましい。
pは、0~2の整数を表す。
Figure 0007314988000002
式(A-2)中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5の炭化水素基、または炭素原子数1~5のアルキル基を有するアルキルシリル基を表す。中でも、炭素原子数1~3の炭化水素基が好ましい。
は、極性基を示す。極性基の例には、前述と同様のものが含まれる。中でも、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、またはシアノ基が好ましく、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基およびアリールオキシカルボニル基がより好ましく、溶液製膜時の溶解性を確保する観点では、アルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基がさらに好ましい。
pは、0~2の整数を表す。
式(A-1)または(A-2)で表されるモノマーの例には、以下のものが含まれる。
Figure 0007314988000003
極性基を有するシクロオレフィン系樹脂は、必要に応じて上記極性基を有するノルボルネン骨格含有モノマーと共重合可能な共重合モノマー(以下、「共重合モノマー」という)に由来する構造単位をさらに含んでもよい。
共重合モノマーの例には、極性基を有しないノルボルネン骨格含有モノマー;極性基を有するノルボルネン骨格含有モノマーと開環共重合可能な共重合モノマー;および極性基を有するノルボルネン骨格含有モノマーと付加共重合可能な共重合モノマーが含まれる。
開環共重合可能な共重合モノマーの例には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどの、ノルボルネン骨格を有しないシクロオレフィンが含まれる。
付加共重合可能な共重合モノマーの例には、不飽和二重結合含有化合物、ビニル系環状炭化水素単量体、(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。不飽和二重結合含有化合物の例には、炭素原子数2~12(好ましくは2~8)のオレフィン系化合物であり、その例には、エチレン、プロピレン、ブテンが含まれる。ビニル系環状炭化水素単量体の例には、4-ビニルシクロペンテン、2-メチル-4-イソプロペニルシクロペンテン等のビニルシクロペンテン系単量体が含まれる。(メタ)アクリル酸エステルの例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの炭素原子数1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが含まれる。
中でも、極性基を有するシクロオレフィン系樹脂は、式(A-1)または(A-2)で表されるモノマーの単独重合体または共重合体であることが好ましく、例えば以下のものが挙げられる。
(1)極性基を有するノルボルネン骨格含有モノマーの開環重合体
(2)極性基を有するノルボルネン骨格含有モノマーと共重合性単量体との開環共重合体
(3)上記(1)または(2)の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体
(4)上記(1)または(2)の開環(共)重合体をフリーデル・クラフツ反応により環化した後、水素添加した(共)重合体
(5)極性基を有するノルボルネン骨格含有モノマーと不飽和二重結合含有化合物との飽和重合体
(6)極性基を有するノルボルネン骨格含有モノマーの付加型(共)重合体及びその水素添加(共)重合体
(7)極性基を有するノルボルネン骨格含有モノマーとメタクリレート、又はアクリレートとの交互共重合体
中でも、(1)~(3)が好ましく、(3)がより好ましい。すなわち、シクロオレフィン系樹脂は、式(B-1)で表される構造単位または式(B-2)で表される構造単位を含む重合体であることが好ましい。式(B-1)で表される構造単位は、前述の式(A-1)で表されるモノマーに由来し;式(B-2)で表される構造単位は、前述の式(A-2)で表されるモノマーに由来する。このようなシクロオレフィン系樹脂は、式(B-2)で表される構造単位を含む重合体、または式(B-1)で表される構造単位と式(B-2)で表される構造単位の両方を含む重合体であることが好ましい。シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度が高く、かつ透明性の高い優れたものとなるからである。
Figure 0007314988000004
式(B-1)中のXは、-CH=CH-または-CHCH-を表す。式(B-1)中のR~Rおよびpは、式(A-1)中のR~Rおよびpとそれぞれ同義である。
Figure 0007314988000005
式(B-2)中のXは、-CH=CH-または-CHCH-を表す。式(B-2)中のR、Rおよびpは、式(A-2)中のR、Rおよびpとそれぞれ同義である。
極性基を有するノルボルネン骨格含有モノマーに由来する構造単位の含有量(好ましくは式(B-1)で表される構造単位と式(B-2)で表される構造単位の総量)は、シクロオレフィン系樹脂を構成する全構造単位に対して50~100質量%としうる。
極性基を有するシクロオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2万~30万であることが好ましい。極性基を有するシクロオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であると、フィルムに十分な機械的強度を付与しつつ、製膜性が損なわれにくい。極性基を有するシクロオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、上記観点から、4万~20万であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)は、前述と同様の方法で測定することができる。
極性基を有するシクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、通常110℃以上であり、110~350℃であることが好ましく、120~250℃であることがより好ましく、120~220℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であると、高温条件下での使用や、コーティング、印刷などの二次加工による変形が抑制されるため好ましい。また、ガラス転移温度(Tg)が350℃以下であると、成形加工や成形加工時の熱による樹脂劣化が抑制されるため好ましい。
熱可塑性樹脂の含有量は、光学フィルムに対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
1-2.張力調整剤
張力調整剤は、熱可塑性樹脂が有するカルボニル基などの極性基と相互作用して(擬似架橋して)、フィルムの伸び率を低くする。張力調整剤は、特に制限されないが、上記機能を発現しやすい観点から、含窒素ヘテロ環化合物、または、極性基を有する熱可塑性樹脂とアイオノマーを形成する金属イオンであることが好ましい。
(含窒素ヘテロ環化合物)
含窒素ヘテロ環化合物は、下記式(I)で表される構造を含むことが好ましい。
Figure 0007314988000006
式(I)中、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表す。脂肪族炭化水素基の例には、メチル基、エチル基などの炭素原子数1~3のアルキル基が含まれる。芳香族炭化水素基の例には、フェニル基などの炭素原子数6~14のアリール基が含まれる。中でも、立体障害が少なく、熱可塑性樹脂との相互作用を生じやすくする観点から、Rは、水素原子または脂肪族炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
nは、0または1である。
中でも、nが1であるとき、Rは、水素原子であることが好ましい。すなわち、式(I)で表される構造における、窒素原子を含む環(含窒素ヘテロ環、式(I)の*の部分)が、NH基を有することで、例えば(メタ)アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂との間で適度な強さの水素結合を形成しやすい。それにより、溶液製膜時のドープの粘度を増大させることなく、フィルムの伸び率を低くしやすい。
式(I)で表される構造における含窒素ヘテロ環の構成原子数(環構成原子数)は、5または6である。当該含窒素ヘテロ環の構成原子は、窒素原子と、炭素原子とを含み、必要に応じて酸素原子または硫黄原子をさらに含んでもよい。また、当該含窒素ヘテロ環を構成する窒素原子は、1つであってもよいし、2以上あってもよい。当該含窒素ヘテロ環は、脂肪族ヘテロ環(飽和環)であってもよいし、芳香族ヘテロ環(不飽和環)であってもよい。
すなわち、式(I)で表される構造における含窒素ヘテロ環の例には、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン環などの脂肪族ヘテロ環(飽和環)や;ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾリン環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環などの芳香族ヘテロ環(不飽和環)が含まれる。
また、式(I)で表される構造における含窒素ヘテロ環は、他の環と縮環していてもよい。他の環との縮環した、式(I)で表される構造における含窒素ヘテロ環は、さらに水素添加されていてもよい。
また、芳香族環に由来する構造単位を含む(メタ)アクリル系樹脂とπ―π相互作用を形成しやすく、光学フィルムの伸び率をより低減しやすくする観点では、含窒素ヘテロ環化合物は、芳香環を含むことが好ましい。すなわち、式(I)で表される構造における含窒素ヘテロ環が、芳香族ヘテロ環であるか;または、当該含窒素ヘテロ環が、芳香族ヘテロ環もしくは芳香族炭化水素環と縮環していることが好ましい。
式(I)で表される構造を有する含窒素ヘテロ環化合物の例には、以下のものが含まれる。
Figure 0007314988000007
Figure 0007314988000008
Figure 0007314988000009
中でも、式(I)で表される構造における含窒素ヘテロ環は、NH基を有する芳香族ヘテロ環であるか;または、式(I)で表される構造における含窒素ヘテロ環がNH基を有し、かつ芳香族ヘテロ環もしくは芳香族炭化水素環と縮環していることがより好ましい。
また、含窒素ヘテロ環化合物は、ヒドロキシ基を有しないことが好ましい。含窒素ヘテロ環化合物の立体障害の程度にもよるが、ヒドロキシ基を有しないほうが、熱可塑性樹脂が有する極性基との相互作用が強くなりすぎず、溶液製膜時のドープの粘度が増大しすぎないからである。
含窒素ヘテロ環化合物の分子量は、250以下であることが好ましい。分子量が250以下である含窒素ヘテロ環化合物は、立体障害を生じるような嵩高い構造を有しないため、熱可塑性樹脂が有する極性基と相互作用しやすく、擬似架橋を形成しやすい。当該含窒素ヘテロ環化合物の分子量は、上記観点から、80~180であることがより好ましい。含窒素ヘテロ環化合物の分子量は、式量から算出することができる。
(金属イオン)
金属イオンは、熱可塑性樹脂が有するカルボニル基などの極性基と相互作用して、擬似架橋を形成しうるものであればよく、特に制限されない。すなわち、金属イオンは、熱可塑性樹脂の極性基などと相互作用して、アイオノマーを形成しうる。
金属イオンの例には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、銀イオンなどの1価の金属イオン;亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオン、銅イオン、バリウムイオンなどの2価の金属イオン;アルミニウムイオンなどの3価の金属イオンが含まれる。中でも、安定性が高く、かつ架橋部位を多くしうる観点から、マグネシウムイオンなどの2価のイオン、およびアルミニウムイオンなどの3価のイオンが好ましく、アルミニウムイオンがより好ましい。
熱可塑性樹脂が金属イオンを介して擬似架橋されたアイオノマーは、例えば熱可塑性樹脂が有するカルボニル基などの極性基を、(前述の金属イオンを含む)金属塩で中和させて得ることができる。中和に用いられる金属塩は、金属酸化物、金属水酸化物、または金属炭酸塩などであり、好ましくは酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどの金属酸化物である。
張力調整剤の含有量は、熱可塑性樹脂に対して1~20質量%であることが好ましい。張力調整剤の含有量が1質量%以上であると、光学フィルムの伸び率を十分に低くしやすく、20質量%以下であると、ドープの粘度が増大しすぎないため、製膜性が損なわれにくい。張力調整剤の含有量は、上記観点から、熱可塑性樹脂に対して3~15質量%であることがより好ましい。
1-3.他の成分
光学フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分の例には、ゴム粒子、ゴム粒子以外の微粒子、残留溶媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが含まれる。
1-3-1.ゴム粒子
ゴム粒子は、光学フィルムに柔軟性や靱性を付与しつつ、光学フィルムの表面に凹凸を形成して滑り性を付与しうる。
ゴム粒子は、ゴム状重合体(架橋重合体)を含むグラフト共重合体、すなわち、ゴム状重合体(架橋重合体)からなるコア部と、それを覆うシェル部とを有するコアシェル型のゴム粒子であることが好ましい。
ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)は、-10℃以下であることが好ましい。ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)が-10℃以下であると、フィルムに十分な靱性を付与しやすい。ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)は、-15℃以下であることがより好ましく、-20℃以下であることがさらに好ましい。ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)は、前述と同様の方法で測定される。
ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)は、例えばコア部やシェル部を構成するモノマー組成、コア部とシェル部の質量比(グラフト率)、および後述するような軟質層と硬質層の質量比などによって調整することができる。ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)を低くするためには、後述するように、例えばコア部のアクリル系ゴム状重合体(a)を構成するモノマー混合物(a’)における、アルキル基の炭素原子数が4以上のアクリル酸エステル/共重合可能なモノマーの合計の質量比を多くする(例えば3以上、好ましくは4以上10以下とする)ことが好ましい。
ゴム状重合体の例には、ブタジエン系架橋重合体、(メタ)アクリル系架橋重合体、およびオルガノシロキサン系架橋重合体が含まれる。中でも、メタクリル系樹脂との屈折率差が小さく、光学フィルムの透明性が損なわれにくい観点では、(メタ)アクリル系架橋重合体が好ましく、アクリル系架橋重合体(アクリル系ゴム状重合体)がより好ましい。
すなわち、ゴム粒子は、アクリル系ゴム状重合体(a)を含むアクリル系グラフト共重合体であることが好ましい。アクリル系ゴム状重合体(a)を含むアクリル系グラフト共重合体は、アクリル系ゴム状重合体(a)を含むコア部と、それを覆うシェル部とを有するコアシェル型の粒子であることが好ましい。そのようなコアシェル型の粒子は、アクリル系ゴム状重合体(a)の存在下で、メタクリル酸エステルを主成分とするモノマー混合物(b)を少なくとも1段以上重合して得られる多段重合体である。重合は、乳化重合法で行うことができる。
(コア部について)
コア部を構成するアクリル系ゴム状重合体(a)は、アクリル酸エステルを主成分とする架橋重合体である。アクリル系ゴム状重合体(a)は、アクリル酸エステルと、それと共重合可能な任意のモノマーとを含むモノマー混合物(a’)、および、1分子あたり2以上の非共役な反応性二重結合(ラジカル重合性基)を有する多官能性モノマーを重合させて得られる架橋重合体である。アクリル系ゴム状重合体(a)は、これらのモノマーを全部混合して重合させて得てもよいし、モノマー組成を変化させて2回以上で重合させて得てもよい。
アクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルなどのアルキル基の炭素数1~12のアクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。アクリル酸エステルは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)を-15℃以下にする観点では、アクリル酸エステルは、少なくとも、炭素数4~10のアクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましい。
アクリル酸エステルの含有量は、モノマー混合物(a’)100質量%に対して50~100質量%であることが好ましく、60~99質量%であることがより好ましく、70~99質量%であることがさらに好ましい。アクリル酸エステルの含有量が50重量%以上であると、フィルムに十分な靱性を付与しやすい。
また、ゴム粒子のガラス転移温度(Tg)を-10℃以下にしやすくする観点では、モノマー混合物(a’)における、アルキル基の炭素数が4以上のアクリル酸アルキルエステル/それ以外の共重合可能なモノマーの合計の質量比は、3以上であることが好ましく、4以上10以下であることがより好ましい。
共重合可能なモノマーの例には、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル;スチレン、メチルスチレンなどのスチレン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類などが含まれる。
多官能性モノマーの例には、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトロメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが含まれる。
多官能性モノマーの含有量は、モノマー混合物(a’)の合計100質量%に対して0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。多官能性モノマーの含有量が0.05質量%以上であると、得られるアクリル系ゴム状重合体(a)の架橋度を高めやすいため、得られるフィルムの硬度、剛性が損なわれすぎず、10質量%以下であると、フィルムの靱性が損なわれにくい。
(シェル部について)
シェル部を構成するモノマー混合物(b)の重合体は、アクリル系ゴム状重合体(a)に対するグラフト成分である。モノマー混合物(b)は、メタアクリル酸エステルを主成分として含む。
メタクリル酸エステルは、メタクリル酸メチルなどのアルキル基の炭素数1~12のメタクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。メタクリル酸エステルは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
メタクリル酸エステルの含有量は、モノマー混合物(b)100質量%に対して50質量%以上であることが好ましい。メタクリル酸エステルの含有量が50質量%以上であると、得られるフィルムの硬度、剛性を低下させにくくしうる。また、メチレンクロライドなどの溶媒との親和性を高める観点では、メタクリル酸エステルの含有量は、モノマー混合物(b)100質量%に対して70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
モノマー混合物(b)は、必要に応じて他のモノマーをさらに含んでもよい。他のモノマーの例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルなどのアクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルなどの脂環式構造、複素環式構造または芳香族基を有する(メタ)アクリル系モノマー類(環構造含有(メタ)アクリル系モノマー)が含まれる。
(ゴム粒子(アクリル系グラフト共重合体)について)
アクリル系グラフト共重合体の例には、アクリル系ゴム状重合体(a)5~75質量部の存在下で、メタクリル酸エステルを主成分とするモノマー混合物(b)95~25質量部を少なくとも1段階で重合させた重合体が含まれる。
アクリル系グラフト共重合体は、必要に応じて、アクリル系ゴム状重合体(a)の内側に硬質重合体をさらに含んでもよい。そのようなアクリル系グラフト共重合体は、以下の(I)~(III)の重合工程を経て得ることができる。
(I)メタクリル酸エステル40~100質量%と、これと共重合可能な他のモノマー60~0質量%からなるモノマー混合物(c1)、および多官能性モノマー0.01~10質量部(モノマー混合物(c1)の合計100質量部に対して)を重合して硬質重合体を得る工程
(II)アクリル酸エステル60~100質量%と、これと共重合可能な他のモノマー0~40質量%からなるモノマー混合物(a1)、および多官能性モノマー0.1~5質量部(モノマー混合物(a1)の合計100質量部に対して)を重合して軟質重合体を得る工程
(III)メタクリル酸エステル60~100質量%と、これと共重合可能な他のモノマー40~0質量%からなるモノマー混合物(b1)、および多官能性モノマー0~10質量部(モノマー混合物(b1)の合計100質量部に対して)を重合して硬質重合体を得る工程
(I)~(III)の各重合工程の間に、他の重合工程がさらに含まれてもよい。
アクリル系グラフト共重合体は、さらに(IV)の重合工程を経て得られてもよい。
(IV)メタクリル酸エステル40~100質量%、アクリル酸エステル0~60質量%、および共重合可能な他のモノマー0~5質量%からなるモノマー混合物(b2)、ならびに多官能性モノマー0~10質量部(モノマー混合物(b2)100質量部に対して)を重合して硬質重合体を得る。
各工程で用いられるメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、共重合可能な他のモノマー、および多官能性モノマーは、前述と同様のものを用いることができる。
軟質層は、光学フィルムに衝撃吸収性を付与しうる。軟質層の例には、アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系ゴム状重合体(a)からなる層が含まれる。硬質層は、光学フィルムの靱性を損ないにくくし、かつゴム粒子の製造時に、粒子の粗大化や塊状化を抑制しうる。硬質層の例には、メタクリル酸エステルを主成分とする重合体からなる層が含まれる。
アクリル系グラフト共重合体におけるグラフト率(アクリル系ゴム状重合体(a)に対するグラフト成分の質量比)は、10~250%であることが好ましく、25~200%であることがより好ましく、40~200%であることがより好ましく、60~150%であることがさらに好ましい。グラフト率が10%以上であると、シェル部の割合が少なくなりすぎないため、フィルムの硬度や剛性が損なわれにくい。アクリル系グラフト共重合体のグラフト率が250%以下であると、アクリル系ゴム状重合体(a)の割合が少なくなりすぎないため、フィルムの靱性や脆性改善効果が損なわれにくい。
アクリル系グラフト共重合体のグラフト率は、以下の方法で測定される。
1)アクリル系グラフト共重合体2gを、メチルエチルケトン50mlに溶解させ、遠心分離機(日立工機(株)製、CP60E)を用い、回転数30000rpm、温度12℃にて1時間遠心し、不溶分と可溶分とに分離する(遠心分離作業を合計3回セット)。
2)得られた不溶分の重量を下記式に当てはめて、グラフト率を算出する。
グラフト率(%)=[{(メチルエチルケトン不溶分の重量)-(アクリル系ゴム状重合体(a)の重量)}/(アクリル系ゴム状重合体(a)の重量)]×100
ゴム粒子の平均粒子径は、100~400nmであることが好ましく、150~300nmであることがより好ましい。平均粒子径が100nm以上であると、フィルムに十分な靱性を付与しやすく、400nm以下であると、フィルムの透明性が低下しにくい。
ゴム粒子の平均粒子径は、フィルム表面および切片のSEM撮影またはTEM撮影によって得た粒子100個の円相当径の平均値として特定される。円相当径は、撮影によって得られた粒子の投影面積を、同じ面積を持つ円の直径に換算することによって求めることができる。この際、倍率5000倍のSEM観察および/またはTEM観察によって観察されるゴム粒子(アクリル系グラフト共重合体)を、平均粒子径の算出に使用する。なお、分散液でのゴム粒子(アクリル系グラフト共重合体)の平均粒子径は、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子株式会社製 ELSZ-2000ZS)で測定することができる。
ゴム粒子の含有量は、熱可塑性樹脂に対して0~30質量%であることが好ましく、2~20質量%であることがより好ましい。ゴム粒子の含有量が2質量%以上であると、得られるフィルムに十分な靱性を付与しやすく、30質量%以下であると、ヘイズが上昇しすぎない。
1-3-2.微粒子
光学フィルムは、滑り性をさらに高める観点などから、マット剤として、無機微粒子またはゴム粒子以外の有機微粒子をさらに含んでもよい。
無機微粒子を構成する無機材料の例には、二酸化珪素(SiO)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、およびリン酸カルシウムが含まれ、ヘイズの増大を少なくする観点では、好ましくは二酸化ケイ素である。有機微粒子は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは80℃以上の樹脂粒子である。中でも、フィルムの靱性を高めやすい観点から、有機微粒子が好ましい。
1-3-3.残留溶媒
光学フィルムは、後述するように溶液製膜法により製造されることから、溶液製膜法で用いられるドープの溶媒に由来する残留溶媒を含んでいてもよい。
残留溶媒量は、光学フィルムに対して700ppm以下であることが好ましく、30~700ppmであることがより好ましい。残留溶媒の含有量は、後述する光学フィルムの製造工程における、支持体上に流延させたドープの乾燥条件によって調整されうる。
光学フィルムの残留溶媒量は、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより測定することができる。ヘッドスペースガスクロマトグラフィー法では、試料を容器に封入し、加熱し、容器中に揮発成分が充満した状態で速やかに容器中のガスをガスクロマトグラフに注入し、質量分析を行って化合物の同定を行いながら揮発成分を定量するものである。ヘッドスペース法では、ガスクロマトグラフにより、揮発成分の全ピークを観測することを可能にするとともに、電磁気的相互作用を利用した分析法を用いることによって、高精度で揮発性物質やモノマーなどの定量も併せて行うことができる。
1-4.光学フィルムの物性
(溶液粘度)
光学フィルムを、エタノール/メチレンクロライド(8/92質量比)混合溶媒に13.5質量%の濃度となるように溶解させた溶液の、23℃におけるB型粘度計における粘度は、5000~50000mPa・sであることが好ましい。当該溶液粘度の範囲は、光学フィルムの製造工程におけるドープの粘度の範囲にほぼ対応している。そのため、当該溶液の粘度が5000mPa・s以上であると、得られるフィルムの伸び率を低くすることができ;50000mPa・s以下であると、溶液製膜時のドープの粘度が高すぎないため、製膜性が損なわれない。光学フィルムの溶液粘度は、上記観点から、10000~40000mPa・sであることがより好ましく、20000~35000mPa・sであることがさらに好ましい。
光学フィルムの溶液粘度は、熱可塑性樹脂の分子量や、張力調整剤の種類および含有量などによって調整することができる。光学フィルムの溶液粘度を低くするためには、例えば熱可塑性樹脂の分子量を低くしたり、張力調整剤の含有量を一定以下としたりすることが好ましい。
(伸び率)
光学フィルムの伸び率は、5%以下であることが好ましい。伸び率が5%以下であると、溶液製膜工程の延伸後の乾燥時などにおいて、高温で乾燥されても、膜状物が伸びにくい。そのため、トタン状の変形を抑制することができ、当該変形に起因する膜厚ムラを低減できる。光学フィルムの上記伸び率は、上記観点から、3%以下であることがより好ましく、0.1~2%であることがさらに好ましい。
光学フィルムの伸び率は、以下の手順で測定することができる。
1)まず、上記溶液粘度の測定用に調製した溶液を、ガラス板上にアプリケータにより塗布し、当該塗膜を、残留溶媒量が5質量%程度となるまで23℃で乾燥させた後、ガラス板から剥がして、乾燥厚み40μmのフィルムを複数枚準備する。
フィルムの残留溶媒量は、以下の方法で測定することができる。
フィルムの残留溶媒量(質量%)=(フィルムの加熱処理前質量-フィルムの加熱処理後質量)/フィルムの加熱処理後質量×100
なお、加熱処理とは、140℃15分の加熱処理をいう。
2)次いで、上記1)で得られた、残留溶媒量が5質量%以下のフィルムと5質量%超10質量%未満のフィルム(それぞれ2点ずつ)の伸び率を、JIS K 7115:1999(引張クリープ試験)に準拠して、下記条件でそれぞれ測定する。すなわち、伸び率は、所定時間、所定の荷重を付与したことにより生じた伸び(標線間距離の変化量)ΔLの、初期の標線間距離Lに対する割合(ΔL/L×100)(%)として表される。測定装置としては、オリエンテック社製テンシロンRTC-1225Aを用いることができる。
(測定条件)
測定温度:(Tg-10)℃
引張荷重:0.75N
引張時間:15分
3)上記2)で得られた測定結果から、横軸:残留溶媒量(質量%)、縦軸:伸び率(%)のプロットを作成し、残留溶媒量が5質量%であるときの伸び率を内挿により求める。なお、内挿は、一次関数により行う。
光学フィルムの伸び率は、例えば張力調整剤の種類や含有量によって調整することができる。光学フィルムの伸び率を低くするためには、例えば張力調整剤の含有量を適度に(溶液粘度が増大しすぎない程度に)多くすることが好ましい。すなわち、光学フィルムの溶液粘度を低く維持しつつ、伸び率を低くするためには、例えば熱可塑性樹脂の分子量を高くするのではなく、張力調整剤の含有量を(溶液粘度が増大しすぎない程度に)一定以上とすることが好ましい。
(ヘイズ)
光学フィルムは、透明性が高いことが好ましい。光学フィルムのヘイズは、4.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。ヘイズは、試料40mm×80mmを25℃、60%RHでヘイズメーター(HGM-2DP、スガ試験機)で、JISK-6714に従って測定することができる。
(位相差RoおよびRt)
光学フィルムは、例えばIPSモード用の位相差フィルムとして用いる観点では、測定波長550nm、23℃55%RHの環境下で測定される面内方向の位相差Roは、0~10nmであることが好ましく、0~5nmであることがより好ましい。光学フィルムの厚み方向の位相差Rtは、-20~20nmであることが好ましく、-10~10nmであることがより好ましい。
RoおよびRtは、それぞれ下記式で定義される。
式(2a):Ro=(nx-ny)×d
式(2b):Rt=((nx+ny)/2-nz)×d
(式中、
nxは、フィルムの面内遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率を表し、
nyは、フィルムの面内遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表し、
dは、フィルムの厚み(nm)を表す。)
光学フィルムの面内遅相軸とは、フィルム面において屈折率が最大となる軸をいう。光学フィルムの面内遅相軸は、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)により確認することができる。
RoおよびRtは、以下の方法で測定することができる。
1)光学フィルムを23℃55%RHの環境下で24時間調湿する。このフィルムの平均屈折率をアッベ屈折計で測定し、厚みdを市販のマイクロメーターを用いて測定する。
2)調湿後のフィルムの、測定波長550nmにおけるリターデーションRoおよびRtを、それぞれ自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃55%RHの環境下で測定する。
光学フィルムの位相差RoおよびRtは、例えば熱可塑性樹脂の種類や延伸条件によって調整することができる。光学フィルムの位相差RoおよびRtを低くするためには、例えば延伸によって位相差が出にくい熱可塑性樹脂を選択する(例えば負の複屈折を有するモノマー由来の構造単位と、正の複屈折を有するモノマー由来の構造単位とで位相差を相殺できるようなモノマー比率を有する樹脂を選択する)ことが好ましい。
(厚み)
光学フィルムの厚みは、例えば5~100μm、好ましくは5~40μmとしうる。
2.光学フィルムの製造方法
本発明の光学フィルムの製造方法は、特に制限されないが、比較的分子量が高い樹脂を用いることができるなど、使用できる材料の制限が少ない観点から、溶液製膜法(キャスト法)が好ましい。
すなわち、本発明の光学フィルムは、1)少なくとも熱可塑性樹脂と、張力調整剤と、溶媒とを含むドープを得る工程と、2)得られたドープを支持体上に流延し、乾燥および剥離して膜状物を得る工程と、3)得られた膜状物をさらに乾燥させる工程とを経て製造されうる。
1)の工程について
本工程では、例えば熱可塑性樹脂と、張力調整剤とを、溶媒に溶解または分散させて、ドープを得ることができる。
用いられる熱可塑性樹脂および張力調整剤は、それぞれ前述のものである。なお、張力調整剤が金属イオンである場合、金属イオンは、金属塩として添加されうる。
用いられる溶媒は、少なくとも熱可塑性樹脂を溶解させうる有機溶媒(良溶媒)を含む。良溶媒の例には、メチレンクロライドなどの塩素系有機溶媒や;酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフランなどの非塩素系有機溶媒が含まれる。中でも、メチレンクロライドが好ましい。
用いられる溶媒は、貧溶媒をさらに含んでいてもよい。貧溶媒の例には、炭素原子数1~4の直鎖または分岐状の脂肪族アルコールが含まれる。ドープ中のアルコールの比率が高くなると、膜状物がゲル化しやすく、金属支持体からの剥離が容易になりやすい。炭素原子数1~4の直鎖または分岐状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノールを挙げることができる。これらのうちドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいことなどからエタノールが好ましい。
ドープの粘度は、特に制限されないが、製膜性を高める点では低いほうが好ましく、得られるフィルムの伸び率を低くする点では高いほうが好ましい。具体的には、23℃においてB型粘度計で測定されるドープの粘度は、5000~50000mPa・sであることが好ましい。ドープの粘度が5000mPa・s以上であると、製膜性を損なわない程度に、得られるフィルムの伸び率を低くすることができ;50000mPa・s以下であると、得られるフィルムの伸び率を低くしつつ、ドープの粘度も高すぎないため、製膜性が損なわれない。ドープの粘度は、上記観点から、10000~40000mPa・sであることがより好ましく、20000~35000mPa・sであることがさらに好ましい。
ドープの粘度は、熱可塑性樹脂の含有量や分子量、張力調整剤の含有量などによって調整されうる。ドープの粘度を低くするためには、熱可塑性樹脂の含有量や分子量、張力調整剤の含有量は、いずれも低くすることが好ましい。
ドープの調製は、溶媒に、熱可塑性樹脂と、張力調整剤とをそれぞれ直接添加し、混合して調製してもよいし;極性基を有する熱可塑性樹脂中に張力調整剤を均一に分散させやすくする観点から、溶媒に熱可塑性樹脂を溶解させた樹脂溶液と、溶媒に張力調整剤と、必要に応じてさらに少量の熱可塑性樹脂とを分散させた添加剤分散液とをそれぞれ調製しておき、それらを混合して調製してもよい。
2)の工程について
本工程では、得られたドープを、支持体上に流延する。ドープの流延は、流延ダイから吐出させて行うことができる。
次いで、支持体上に流延されたドープ中の溶媒を適度に蒸発させた後(乾燥させた後)、支持体から剥離して、膜状物を得る。
支持体から剥離する際のドープの残留溶媒量(剥離時の膜状物の残留溶媒量)は、例えば25質量%以上であることが好ましく、30~37質量%であることがより好ましく、30~35質量%であることがさらに好ましい。剥離時の残留溶媒量が25質量%以上であると、剥離後の膜状物から溶媒を一気に揮発させやすい。また、剥離時の残留溶媒量が37質量%以下であると、剥離による膜状物が伸びすぎるのを抑制できる。
剥離時のドープの残留溶媒量は、下記式で定義される。以下においても同様である。
ドープの残留溶媒量(質量%)=(ドープの加熱処理前質量-ドープの加熱処理後質量)/ドープの加熱処理後質量×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、140℃15分の加熱処理をいう。
剥離時の残留溶媒量は、支持体上でのドープの乾燥温度や乾燥時間、支持体の温度などによって調整することができる。
3)の工程について
本工程では、得られた膜状物を乾燥させる。
乾燥は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。また、乾燥は、必要に応じて延伸しながら行ってもよい。
延伸は、求められる光学特性に応じて行えばよく、少なくとも一方の方向に延伸することが好ましく、互いに直交する二方向に延伸(例えば、膜状物の幅方向(TD方向)と、それと直交する搬送方向(MD方向)の二軸延伸)してもよい。
延伸倍率は、光学フィルムを、例えばIPS用の位相差フィルムとして用いる観点では、1.01~2倍とすることができる。延伸倍率は、(延伸後のフィルムの延伸方向大きさ)/(延伸前のフィルムの延伸方向大きさ)として定義される。なお、二軸延伸を行う場合は、TD方向とMD方向のそれぞれについて、上記延伸倍率とすることが好ましい。
なお、光学フィルムの面内遅相軸方向(面内において屈折率が最大となる方向)は、通常、延伸倍率が最大となる方向である。
延伸時の乾燥温度(延伸温度)は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg-65)℃~(Tg+60)℃であることが好ましく、(Tg-50)℃~(Tg+50)℃であることがより好ましく、(Tg-30)℃~(Tg+50)℃であることがさらに好ましい。延伸温度が(Tg-65)℃以上であると、溶媒を適度に揮発させやすいため、延伸張力を適切な範囲に調整しやすく、(Tg+60)℃以下であると、溶媒が揮発しすぎないため、延伸性が損なわれにくい。熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂である場合、延伸温度は、例えば90℃以上としうる。
延伸温度は、(a)テンター延伸機などのように非接触加熱型で乾燥させる場合は、延伸機内温度または熱風温度などの雰囲気温度、(b)熱ローラーなどの接触加熱型で乾燥させる場合は、接触加熱部の温度、あるいは(c)膜状物(被乾燥面)の表面温度のいずれかの温度として測定することができる。中でも、(a)延伸機内温度または熱風温度などの雰囲気温度を測定することが好ましい。
延伸開始時の膜状物中の残留溶媒量は、剥離時の膜状物中の残留溶媒量と同程度であることが好ましく、例えば20~30質量%であることが好ましく、25~30質量%であることがより好ましい。
膜状物のTD方向(幅方向)の延伸は、例えば膜状物の両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げる方法(テンター法)で行うことができる。膜状物のMD方向の延伸は、例えば複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用する方法(ロール法)で行うことができる。
残留溶媒量をより低減させる観点から、延伸後に得られた膜状物をさらに乾燥(後乾燥)させることが好ましい。例えば、延伸後に得られた膜状物を、ロールなどで(一定の張力を付与した状態で)搬送しながらさらに乾燥させることが好ましい。
このときの乾燥温度(延伸しない場合の乾燥温度または延伸後の乾燥温度)は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg-30)~(Tg+30)℃であることが好ましく、(Tg-20)~Tg℃であることがより好ましい。乾燥温度が(Tg-30)℃以上、好ましくは(Tg-20)℃以上であると、延伸後の膜状物から溶媒の揮発速度を高めやすいため、乾燥効率を高めやすい。乾燥温度が(Tg+30)℃以下、好ましくはTg℃以下であると、膜状物が伸びることによるトタン状の変形などを高度に抑制しうる。乾燥温度は、前述と同様に、(a)延伸機内温度または熱風温度などの雰囲気温度を測定することが好ましい。
本発明では、膜状物が、上記張力調整剤を含む。そのような膜状物は、極性基を有する熱可塑性樹脂と張力調整剤とが相互作用し、擬似架橋を形成しうるため、伸びにくい。それにより、高温下で搬送しながら乾燥させる際に、膜状物が搬送張力によって伸びにくくしうる。その結果、トタン状の変形を抑制でき、当該変形に起因する膜厚ムラを抑制できる。
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置や有機EL表示装置などの表示装置における光学部材として用いられる。光学部材の例には、偏光板保護フィルム(位相差フィルムや輝度向上フィルムなどを含む)、透明基板、光拡散フィルムが含まれる。中でも、本発明の光学フィルムは、偏光板保護フィルムとして用いられることが好ましい。
3.偏光板
本発明の偏光板は、偏光子と、本発明の光学フィルムと、それらの間に配置された接着層とを有する。
3-1.偏光子
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素または二色性染料で染色したフィルム(好ましくはさらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよいし;ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素または二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくは、さらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。偏光子の吸収軸は、通常、最大延伸方向と平行である。
例えば、特開2003-248123号公報、特開2003-342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1~4モル%、重合度2000~4000、けん化度99.0~99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールが用いられる。
偏光子の厚みは、5~30μmであることが好ましく、偏光板を薄型化するため等から、5~20μmであることがより好ましい。
3-2.光学フィルム
本発明の光学フィルムは、偏光子の少なくとも一方の面(少なくとも液晶セルと対向する面)に配置されている。光学フィルムは、偏光板保護フィルムとして機能しうる。
本発明の光学フィルムが偏光子の一方の面のみに配置されている場合、偏光子の他方の面には、他の光学フィルムが配置されうる。他の光学フィルムの例には、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC5UX、KC4UX、KC8UCR3、KC4SR、KC4BR、KC4CR、KC4DR、KC4FR、KC4KR、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY-HA、KC2UA、KC4UA、KC6UA、KC8UA、KC2UAH、KC4UAH、KC6UAH、以上コニカミノルタ(株)製、フジタックT40UZ、フジタックT60UZ、フジタックT80UZ、フジタックTD80UL、フジタックTD60UL、フジタックTD40UL、フジタックR02、フジタックR06、以上富士フィルム(株)製)などが含まれる。
他の光学フィルムの厚みは、例えば5~100μm、好ましくは40~80μmでありうる。
3-3.接着層
接着層は、光学フィルム(または他の光学フィルム)と偏光子との間に配置されている。接着層の厚みは、例えば0.01~10μm、好ましくは0.03~5μm程度でありうる。
3-4.偏光板の製造方法
本発明の偏光板は、偏光子と本発明の光学フィルムを、接着剤を介して貼り合わせて得ることができる。接着剤は、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(水糊)、または活性エネルギー線硬化性接着剤でありうる。活性エネルギー線硬化性接着剤は、光ラジカル重合を利用した光ラジカル重合型組成物、光カチオン重合を利用した光カチオン重合型組成物、またはそれらの併用物のいずれであってもよい。
4.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、液晶セルの一方の面に配置された第1偏光板と、液晶セルの他方の面に配置された第2偏光板とを含む。
液晶セルの表示モードは、例えばSTN(Super-Twisted Nematic)、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensated Bend)、HAN(Hybridaligned Nematic)、VA(Vertical Alignment)、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)、PVA(Patterned Vertical Alignment)、IPS(In-Plane-Switching)などでありうる。中でも、VA(MVA,PVA)モードおよびIPSモードが好ましい。
第1および第2偏光板のうち一方または両方が、本発明の偏光板である。本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムが液晶セル側となるように配置されることが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.光学フィルムの材料
(1)熱可塑性樹脂
樹脂A:ポリメチルメタクリレート(PMMA)、重量平均分子量118万、ガラス転移温度105℃
樹脂B:メタクリル酸メチル/N-フェニルマレイミド共重合体(MMA/N-PhM=70/30質量比)、重量平均分子量200万、ガラス転移温度130℃
樹脂C:式(B-2)で表される構造単位を含むシクロオレフィン樹脂(COP)、重量平均分子量14万、ガラス転移温度170℃
樹脂D:メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体(MMA/MAA=70/30質量比)、重量平均分子量150万、ガラス転移温度113℃
樹脂A~Dのガラス転移温度(Tg)および重量平均分子量(Mw)は、以下の方法でそれぞれ測定した。
〔ガラス転移温度(Tg)〕
樹脂のガラス転移温度を、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121-2012に準拠して測定した。
〔重量平均分子量(Mw)〕
樹脂の重量平均分子量(Mw)を、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー社製 HLC8220GPC)、カラム(東ソー社製 TSK-GEL G6000HXL-G5000HXL-G5000HXL-G4000HXL-G3000HXL 直列)を用いて測定した。試料20±0.5mgをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、0.45mmのフィルターで濾過した。この溶液をカラム(温度40℃)に100ml注入し、検出器RI温度40℃で測定し、スチレン換算して、重量平均分子量を求めた。
(2)添加剤
(添加剤1)
東京化成工業社製、CAS:2314-78-5(含窒素ヘテロ環化合物、分子量:127.14、下記構造参照)
Figure 0007314988000010
(添加剤2)
和光純薬社製、CAS:504-07-4(含窒素ヘテロ環化合物、分子量:114.1、下記構造参照)
Figure 0007314988000011
(添加剤3)
東京化成工業社製、CAS:253-82-7(含窒素ヘテロ環化合物、分子量:130.15、下記構造参照)
Figure 0007314988000012
(添加剤4)
東京化成工業社製、CAS:271-73-8(含窒素ヘテロ環化合物、分子量:119.13、下記構造参照)
Figure 0007314988000013
(添加剤5)
和光純薬社製、CAS:2786-62-1(含窒素ヘテロ環化合物、分子量:165.21、下記構造参照)
Figure 0007314988000014
(添加剤6)
酸化マグネシウム(金属酸化物)
(添加剤7)
酸化アルミニウム(金属酸化物)
(添加剤8)
東京化成工業社製、CAS:106-51-4(比較化合物、分子量:108.1、下記構造参照)
Figure 0007314988000015
(添加剤9)
東京化成工業社製、CAS:771-97-1(比較化合物、分子量:158.2、下記構造参照)
Figure 0007314988000016
(3)ゴム粒子
アクリル系ゴム粒子M-210(コア部:多層構造のアクリル系ゴム状重合体、シェル部:メタアクリル酸メチルを主成分とするメタクリル酸エステル系重合体、のコアシェル型のゴム粒子、Tg:約-10℃、平均粒子径:220nm)
2.光学フィルムの作製および評価
<実施例1>
(ドープの調製)
下記組成のドープを調製した。まず、加圧溶解タンクにメチレンクロライド、およびエタノールを添加した。次いで、加圧溶解タンクに、樹脂A(熱可塑性樹脂)を撹拌しながら投入した。次いで、添加剤1(張力調整剤)を投入し、これを60℃に加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。加熱温度は、室温から5℃/minで昇温し、30分間で溶解した後、3℃/minで降温した。得られた溶液を濾過した後、ドープを得た。
樹脂A(熱可塑性樹脂):100質量部
添加剤1(張力調整剤):3質量部
メチレンクロライド:581.3質量部
エタノール:50.4質量部
(製膜)
次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープを温度31℃、1800mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は28℃に制御した。ステンレスベルトの搬送速度は20m/minとした。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が30質量%になるまで溶剤を蒸発させた。次いで、剥離張力128N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。剥離したフィルムを多数のロールで搬送させながら、得られた膜状物を、テンターにて(Tg-15)℃(Tgは、樹脂AのTgを示す)の条件下で幅方向に1.2倍延伸した。
次いで、得られた膜状物を、下記搬送条件にてロールで搬送しながら、(Tg-10)℃(Tgは、樹脂AのTgを示す)で、前述のヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより測定される残留溶媒量が30~600質量ppmの範囲内となるまでさらに乾燥させた後、テンタークリップで挟んだ端部をレーザーカッターでスリットして巻き取り、膜厚40μmの光学フィルムを得た。
(搬送条件)
搬送速度:40m/min
搬送張力:75N/m
<実施例2~4、比較例2および3>
添加剤の種類を表1に示されるように変更した以外は実施例1の光学フィルムと同様にして、光学フィルムを作製した。
<実施例9~11>
(添加剤分散液の調製)
3質量部の表1の添加剤と、27質量部のメチレンクロライドとを、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マイルダー分散機マイルダー分散機(大平洋機工株式会社製)を用いて1500rpm条件下で分散し、添加剤分散液を得た。
(ドープの調製および製膜)
次いで、ドープの組成を下記のように変更した以外は実施例1と同様にしてドープの調製および製膜を行い、光学フィルムを得た。
表1に示される樹脂(熱可塑性樹脂):100質量部
メチレンクロライド:554.3質量部
エタノール:50.4質量部
添加剤分散液:30質量部
<実施例5および6>
添加剤の含有量を表1に示されるように変更した以外は実施例4の光学フィルムと同様にして、光学フィルムを作製した。
<実施例7および12>
樹脂の種類を表1に示されるように変更した以外は実施例3の光学フィルムと同様にして、光学フィルムを作製した。
<実施例8>
添加剤の種類を表1に示されるように変更した以外は実施例7の光学フィルムと同様にして、光学フィルムを作製した。
<実施例13>
(ゴム粒子分散液の調製)
20質量部の上記ゴム粒子と、380質量部のメチレンクロライドとを、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マイルダー分散機(大平洋機工株式会社製)を用いて1500rpm条件下で分散し、ゴム粒子分散液を得た。
(ドープの調製および製膜)
次いで、ドープの組成を下記のように変更した以外は実施例4と同様にしてドープの調製および製膜を行い、光学フィルムを得た。
樹脂A(熱可塑性樹脂):100質量部
添加剤4(張力調整剤):3質量部
メチレンクロライド:296.3質量部
エタノール:50.4質量部
ゴム粒子分散液:300質量部
<比較例1>
添加剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを作製した。
得られた光学フィルムの溶液粘度、伸び率、膜厚ムラおよびMIT屈曲性を、それぞれ以下の方法で評価した。
〔溶液粘度〕
得られた光学フィルムを、エタノール/メチレンクロライド(8/92質量比)混合溶媒に13.5質量%の濃度となるように溶解させた。そして、得られた溶液の23℃における粘度を、B型粘度計 型式VS-A1(芝浦システム株式会社)で、回転数30rpmの条件で測定した。
〔伸び率〕
1)まず、上記溶液粘度の測定用に調製した溶液を、ガラス板上にアプリケータにより、塗布した後、当該塗膜を、残留溶媒量が5質量%程度となるまで23℃で乾燥させて、乾燥厚み40μmのフィルムを複数枚準備した。
フィルムの残留溶媒量は、以下の方法で測定した。
フィルムの残留溶媒量(質量%)=(フィルムの加熱処理前質量-フィルムの加熱処理後質量)/フィルムの加熱処理後質量×100
なお、加熱処理は、140℃15分とした。
2)次いで、上記1)で得られたフィルムのうち、残留溶媒量が5質量%以下のフィルムと5質量%超10質量%未満のフィルム(それぞれ2点ずつ)の伸び率を、JIS K 7115:1999に準拠して、下記条件でそれぞれ測定した。測定装置としては、オリエンテック社製テンシロンRTC-1225Aを用いた。
(測定条件)
測定温度:(Tg-10)℃(Tg:樹脂のTg)
引張荷重:0.75N
引張時間:15分
3)上記2)で得られた測定結果から、横軸:残留溶媒量(質量%)、縦軸:伸び率(%)のプロットを作成し、残留溶媒量が5質量%であるときの伸び率を内挿により求めた。なお、内挿は、一次関数により行った。
〔膜厚ムラ〕
得られた光学フィルム(上記搬送条件でロール搬送しながら乾燥させた光学フィルム)を、全幅にわたってMD方向の長さが35mmとなるように切り出して、TDサンプルとした。一方、光学フィルムの幅方向中央部を、35mm幅でMD方向の長さが2mとなるように切り出して、MDサンプルとした。そして、得られたTDサンプルとMDサンプルを、連続厚み計(FILMTHICKNESS TESTERKG601A、ANRITSU(アンリツ電気(株))製)で測定し、(最大値-平均値)と(平均値-最小値)を算出し、それらの平均値を「膜厚ムラ」とした。そして、以下の基準に基づいて評価した。
◎:膜厚ムラが1μm以下
〇:膜厚ムラが1μm超3μm以下
△:膜厚ムラが3μm超5μm以下
×:膜厚ムラが5μm超
膜厚ムラが小さいほど、フィルムの品質に優れることを表す。
△以上であれば、実用上問題となるようなフィルムの伸びは発生せず、良好であると判断した。
〔MIT屈曲性〕
得られた光学フィルムを、幅15mm、長さ150mm(長さ方向がMD方向)にカットし、試験片とした。この試験片を、温度25℃、相対湿度65%RHの状態で1時間以上静置させた。その後、耐折度試験機(テスター産業株式会社製、MIT、BE-201型、折り曲げ曲率半径0.38mm)を用いて、JIS P8115:2001に準拠して、荷重500gの条件で折り目の方向がTD方向となるように折り曲げて、試験片が破断するまでの折り曲げ回数を測定した。そして、光学フィルムのMIT屈曲性を、以下の基準で評価した。
◎:20000回以上
○:15000回~19999回
△:5000回~14999回
×:4999回以下
破断するまでの折り曲げ回数が多いほど、屈曲性に優れており、繰り返しの折り曲げ耐性に優れていることを示す。
△以上であれば良好と判断した。
実施例1~13および比較例1~3の光学フィルムの評価結果を、表1に示す。
Figure 0007314988000017
表1に示されるように、張力調整剤を含む実施例1~13の光学フィルムは、いずれも溶液に溶解させたときの粘度(ドープの粘度)を低く維持しつつ、低い伸び率を有し、膜厚ムラを低減できることがわかる。また、これらの光学フィルムは、良好な屈曲性を有することもわかる。
特に、張力調整剤としての含窒素ヘテロ環化合物が―NH基を有するほうが、―NH基を有しないものよりも、伸び率をより低くすることができ、膜厚ムラをより生じにくいことがわかる(実施例1と2の対比、実施例3と4の対比など)。
また、張力調整剤としての含窒素ヘテロ環化合物が芳香環を含むほうが、伸び率をより低くすることができ、膜厚ムラをより生じにくいことがわかる(実施例2と4の対比)。これは、樹脂と張力調整剤との間の相互作用が強まるからであると考えられる。また、樹脂がさらに芳香環を含むことで、得られるフィルムの伸び率をさらに低くしうることがわかる(実施例3と7の対比)。これは、樹脂中の芳香環と、張力調整剤中の芳香環との間のπ―π相互作用が生じることにより、両者の相互作用がさらに強まるためであると考えられる。
また、張力調整剤の含有量を多くすることで、フィルムの伸び率をより低くすることができ、膜厚ムラをより生じにくくしうることがわかる(実施例4と6の対比)。
これに対して、比較例1および2では、得られるフィルムの伸び率が高く、膜厚ムラを生じることがわかる。また、比較例3では、ドープの粘度が高く、得られるフィルムの屈曲性が低いことがわかる。
本出願は、2019年2月28日出願の特願2019-36189に基づく優先権を主張する。当該出願明細書に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
本発明によれば、高い乾燥効率で得られ、かつ乾燥時の変形に起因する膜厚ムラが抑制され、十分な靱性を有する光学フィルムを提供することができる。

Claims (19)

  1. (メタ)アクリル系樹脂、および極性基を有するシクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる、重量平均分子量が60万~300万の熱可塑性樹脂と、
    張力調整剤と
    を含む光学フィルムであって、
    前記張力調整剤は、分子量が250以下の含窒素ヘテロ環化合物であり、
    前記光学フィルムを、エタノール/メチレンクロライド(8/92質量比)混合溶媒に13.5質量%の濃度となるように溶解させた溶液の、23℃においてB型粘度計により測定される粘度が5000~50000mPa・sであり、かつ
    前記溶液の塗膜を、残留溶媒量が5質量%となるまで23℃で乾燥させて、乾燥厚み40μmのフィルムとしたときの、JIS K 7115:1999に準拠して下記条件で測定される伸び率が5%以下である、
    光学フィルム。
    (測定条件)
    測定温度:(Tg-10)℃(Tgは、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度を示す)
    引張荷重:0.75N
    引張時間:15分
  2. 記含窒素へテロ環化合物は、
    下記式(I)で表される構造を含み、
    前記式(I)で表される構造における、窒素原子を含む環の構成原子数は、5または6である、
    請求項1に記載の光学フィルム。
    Figure 0007314988000018
    (式(I)において、
    Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、
    nは、0または1である)
  3. 前記窒素原子を含む環は、芳香族へテロ環である、
    請求項2に記載の光学フィルム。
  4. 前記窒素原子を含む環は、芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環と縮環している、
    請求項2または3に記載の光学フィルム。
  5. 前記nは、1であり、かつ
    前記Rは、水素原子である、
    請求項2~4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
  6. 前記含窒素ヘテロ環化合物は、ヒドロキシ基を有さない、
    請求項1~のいずれか一項に記載の光学フィルム。
  7. (メタ)アクリル系樹脂、および極性基を有するシクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる、重量平均分子量が60万~300万の熱可塑性樹脂と、
    張力調整剤と
    を含む光学フィルムであって、
    前記張力調整剤は、前記熱可塑性樹脂とともにアイオノマーを形成する3価の金属イオンであり、
    前記張力調整剤の含有量は、前記熱可塑性樹脂に対して1~20質量%であり、
    前記光学フィルムを、エタノール/メチレンクロライド(8/92質量比)混合溶媒に13.5質量%の濃度となるように溶解させた溶液の、23℃においてB型粘度計により測定される粘度が5000~50000mPa・sであり、かつ
    前記溶液の塗膜を、残留溶媒量が5質量%となるまで23℃で乾燥させて、乾燥厚み40μmのフィルムとしたときの、JIS K 7115:1999に準拠して下記条件で測定される伸び率が5%以下である、
    光学フィルム
    (測定条件)
    測定温度:(Tg-10)℃(Tgは、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度を示す)
    引張荷重:0.75N
    引張時間:15分
  8. 前記張力調整剤の含有量は、前記熱可塑性樹脂に対して3~15質量%である、
    請求項1~のいずれか一項に記載の光学フィルム。
  9. 前記熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂である、
    請求項1~のいずれか一項に記載の光学フィルム。
  10. 前記(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、それと共重合可能な前記メタクリル酸メチル以外の共重合モノマーに由来する構造単位とを含み、
    前記共重合モノマーに由来する構造単位は、芳香環を有するモノマーに由来する構造単位またはイミド環を有するモノマーに由来する構造単位を含む、
    請求項に記載の光学フィルム。
  11. 前記熱可塑性樹脂は、重量平均分子量が60~300万の(メタ)アクリル系樹脂である、
    請求項に記載の光学フィルム。
  12. 偏光子と、
    前記偏光子の少なくとも一方の面に配置された、請求項1~11のいずれか一項に記載の光学フィルムと、を含む、
    偏光板。
  13. (メタ)アクリル系樹脂、および極性基を有するシクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる、重量平均分子量が60万~300万の熱可塑性樹脂と、
    分子量が250以下の含窒素ヘテロ環化合物である張力調整剤と、
    溶媒とを含み、
    23℃においてB型粘度計により測定される粘度が5000~50000mPa・sであるドープを得る工程と、
    前記ドープを支持体上に流延した後、剥離して膜状物を得る工程と、
    前記膜状物を乾燥させる工程とを含む、
    光学フィルムの製造方法。
  14. 前記熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂である、
    請求項13に記載の光学フィルムの製造方法。
  15. 前記含窒素へテロ環化合物は、
    下記式(I)で表される構造を含み、
    前記式(I)で表される構造における、窒素原子を含む環の構成原子数は、5または6である、
    請求項13または14に記載の光学フィルムの製造方法。
    Figure 0007314988000019
    (式(I)において、
    Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、
    nは、0または1である)
  16. 前記窒素原子を含む環は、芳香族へテロ環である、
    請求項15に記載の光学フィルムの製造方法。
  17. 前記窒素原子を含む環は、芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環と縮環している、
    請求項15または16に記載の光学フィルムの製造方法。
  18. 前記nは、1であり、かつ
    前記Rは、水素原子である、
    請求項1517のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  19. (メタ)アクリル系樹脂、および極性基を有するシクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる、重量平均分子量が60万~300万の熱可塑性樹脂と、
    前記熱可塑性樹脂とともにアイオノマーを形成する3価の金属イオンである張力調整剤と、
    溶媒とを含み、
    23℃においてB型粘度計により測定される粘度が5000~50000mPa・sであるドープを得る工程と、
    前記ドープを支持体上に流延した後、剥離して膜状物を得る工程と、
    前記膜状物を乾燥させる工程とを含む、
    学フィルムの製造方法。
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