JP2009126899A - セルロースエステルフィルム及び光学フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】幅手方向の位相差ムラを抑え、かつ、額縁ムラのないセルロースエステルフィルムを提供する。
【解決手段】溶融流涎によって製造されたセルロースエステル流涎物を縦方向と横方向の2方向に10%〜100%延伸したセルロースエステルフィルムにおいて、該セルロースエステルフィルムの100質量部のうち、N−ビニル−2−ピロリドンをモノマーとして含有して重合した高分子化合物を4〜25質量部含むことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースエステルフィルム及びそれを用いた光学フィルムに関する。
現在、セルロースエステルフィルム(代表的にはセルローストリアセテートフィルム)は、その透明性や光学的欠点のない特性からハロゲン化銀写真感光材料や光学フィルムに広く使用されている。特に液晶表示装置の偏光板用保護フィルムとしては、極めて好ましいものとして重用されている。
セルロースエステルフィルムの溶融製膜法では、シクロオレフィンポリマー等他の光学用途の樹脂には見られないほど多くの可塑剤を添加して(例えば特許文献1参照)いる。
一方、光学異方性が小さく、更に環境変化に対して光学異方性(Re、Rth)の変化が小さく、また液晶表示装置に用いた場合の視野角依存性が小さいセルロースエステルフィルムが要求されている。
セルロースエステルフィルムの長手、幅手方向の光弾性係数をそれぞれC(md)、C(td)とした時、それぞれの値が1×10-9〜1×10-13Pa-1の範囲にすることで、優れた視野角補償機能を有し、経時での視野角補償機能の耐久性を向上させることが出来るセルロースエステルフィルムの発明が開示されて(例えば、特許文献2参照)いる。また、膜厚方向の光弾性係数が、1.0×10-13Pa-1以下であるセルロースアシレートフィルムにより、光学異方性が小さく、更に環境変化に対して光学異方性(Re、Rth)の変化が小さく、また液晶表示装置に用いた場合の視野角依存性が小さいという効果を奏して(例えば、特許文献3参照)いる。また、光弾性係数を5.0×10-13Pa-1以下にすることで面内及び厚さ方向レターデーションの発現性に優れ、かつ幅方向の厚さ変動が少ないセルロースアシレートフィルムを得て(例えば、特許文献4参照)いる。光弾性係数を2.5×10-13Pa-1以下にすることで光学的異方性(Re、Rth)が小さく実質的に光学的等方性であるセルロースアシレートフィルムを得て(例えば、特許文献5参照)いる。更に、光弾性係数を1×10-13〜25×10-13Pa-1とすることで、ReとRthの発現領域が広いセルロースアシレートフィルムが得られ、かつ、そのセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示装置は、コーナー部の縁に光学的なムラ(額縁、または額縁ムラとも称する)が発生しない発明が(例えば、特許文献6参照)ある。これらの方法では、幅手方向に位相差のムラが出来るという問題点を有しており、その解決方法が望まれていた。
特開2003−245966号公報 特開2004−272234号公報 特開2006−206826号公報 特開2006−323329号公報 特開2006−293255号公報 特開2006−249418号公報
本発明の目的は、幅手方向の位相差ムラを抑え、かつ、額縁ムラのないセルロースエステルフィルムを提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
1.溶融流涎によって製造されたセルロースエステル流涎物を縦方向と横方向の2方向に10%〜100%延伸したセルロースエステルフィルムにおいて、該セルロースエステルフィルムの100質量部のうち、N−ビニル−2−ピロリドンをモノマーとして含有して重合した高分子化合物を4〜25質量部含むことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
2.前記N−ビニル−2−ピロリドンをモノマーとして含有して重合した高分子化合物が、アクリレートモノマーとのコポリマー又はブロックポリマーであることを特徴とする前記1に記載のセルロースエステルフィルム。
3.前記セルロースエステルフィルムが、更に、セルロースエステルフィルム100質量部のうち、ペンタエリスリトールテトラベンゾエートを2〜20質量部含むことを特徴とする前記1又は2に記載のセルロースエステルフィルム。
4.前記セルロースエステルフィルムの幅手方向の光弾性係数が1×10-12〜20×10-12Pa-1であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
5.前記1〜4のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムを用いることを特徴とする光学フィルム。
本発明により、幅手方向の位相差ムラを抑え、かつ、額縁ムラのないセルロースエステルフィルムを提供することができた。
本発明を更に詳しく説明する。
《セルロースエステル》
本発明に用いるセルロースエステルには特に限定はないが、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであり、芳香族カルボン酸のエステルでもよく、特にセルロースの炭素数低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味している。水酸基に結合するアシル基は、直鎖であっても分岐してもよく、また環を形成してもよい。更に別の置換基が置換してもよい。
同じ置換度である場合、前記炭素数が多いと複屈折性が低下するため、炭素数としては炭素数2〜6のアシル基の中で選択することが好ましい。
本発明に好ましいセルロースエステルとしては、下記式(1)及び(2)を同時に満足するものが好ましい。
式(1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(2) 0≦Y≦1.5
式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基またはブチリル基の置換度である。
この中で特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。セルロースアセテートプロピオネートでは、1.0≦X≦2.5であり、0.1≦Y≦1.5、2.0≦X+Y≦3.0であることが好ましい。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することが出来る。
本発明に用いられるセルロースエステルの数平均分子量は、60000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。更に70000〜200000のものが好ましく用いられる。
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることが出来る。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。
本発明に係わるセルロースエステルは、セルロース原料のアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて反応が行われる。
アシル化剤が酸クロライドの場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には特開平10−45804号に記載の方法を参考にして合成することが出来る。
セルロースエステルを構成するグルコース単位の6位には、2位及び3位と異なり、反応性の高い一級ヒドロキシル基が存在し、この一級ヒドロキシル基は、硫酸を触媒とするセルロースエステルの製造過程で硫酸エステルを優先的に形成する。
そのため、セルロースのエステル化反応において、触媒硫酸量を増加させることにより、通常のセルロースエステルに比べて、グルコース単位の6位よりも2位及び3位の平均置換度を高めることが出来る。
更に、必要に応じて、セルロースをトリチル化すると、グルコース単位の6位のヒドロキシル基を選択的に保護出来るため、トリチル化により6位のヒドロキシル基を保護し、エステル化した後、トリチル基(保護基)を脱離することにより、グルコース単位の6位よりも2位及び3位の平均置換度を高めることが出来る。具体的には、特開2005−281645号記載の方法で製造されたセルロースエステルも好ましく用いることが出来る。
尚、合成されたセルロースエステルは、精製して低分子量成分を除去したり、未酢化または低酢化度の成分を濾過で取り除くことも好ましく行われる。
また、混酸セルロースエステルの場合には、特開平10−45804号公報に記載の方法で得ることが出来る。
また、セルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成することにより不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。
《セルロースエステルフィルムを構成するセルロースエステル以外の添加剤》
本発明は、セルロースエステルを含む溶融物をフィルム状に成形することを特徴とするが、溶融物には、セルロースエステル以外の添加剤を含有させる。
添加剤は、セルロースエステルフィルム全体の質量の1質量%以上50質量%以下含有される。
Tmは、溶融物をダイから押し出す際の溶融温度(℃)を表す。
添加剤の添加量については、全ての添加剤を合計してセルロースエステルフィルム全体の1〜50質量%であることが好ましい。
好ましい添加剤について以下に述べる。
〈可塑剤〉
可塑剤とは、一般的には高分子中に添加することによって脆弱性を改良したり、柔軟性を付与したりする効果のある添加剤であるが、本発明においては、セルロースエステル単独での溶融温度よりも溶融温度を低下させるため、また同じ加熱温度においてセルロースエステル単独よりも可塑剤を含むフィルム構成材料の溶融粘度を低下させるために、可塑剤を添加する。
また、セルロースエステルの親水性を改善し、セルロースエステルフィルムの透湿度改善するためにも添加されるため透湿防止剤としての機能を有する。
ここで、フィルム構成材料の溶融温度とは、該材料が加熱され流動性が発現された状態の温度を意味する。セルロースエステルを溶融流動させるためには、少なくともガラス転移温度よりも高い温度に加熱する必要がある。
ガラス転移温度以上においては、熱量の吸収により弾性率あるいは粘度が低下し、流動性が発現される。しかしセルロースエステルでは高温下では溶融と同時に熱分解によってセルロースエステルの分子量の低下が発生し、得られるフィルムの力学特性等に悪影響を及ぼすことがあるため、なるべく低い温度でセルロースエステルを溶融させる必要がある。
フィルム構成材料の溶融温度を低下させるためには、セルロースエステルのガラス転移温度よりも低い融点またはガラス転移温度をもつ可塑剤を添加することで達成することができる。
本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造においては、可塑剤として、N−ビニル−2−ピロリドンをモノマーとして含有して重合した高分子化合物をセルロースエステルフィルム100質量部に対して4〜25質量部含有する。より好ましくは、セルロースエステルフィルム100質量部に対して4〜20質量部であり、最も好ましくは4〜15質量部である。
本発明で使用するN−ビニル−2−ピロリドンをモノマーとして含有して重合した高分子化合物は、アクリレートモノマーとのコポリマー又はブロックポリマーであることが好ましい。本発明に係るアクリレートモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル類、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、クロルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。又、特に好ましいものとしては、メチル(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。
N−ビニル−2−ピロリドンをモノマーとして含有して重合した高分子化合物の具体例としては、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドン・メチル(メタ)アクリレート共重合体、ビニルピロリドン・エチル(メタ)アクリレート共重合体、ビニルピロリドン・ブチル(メタ)アクリレート共重合体、ビニルピロリドン・2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート共重合体、ビニルピロリドン・スチレン共重合体等を挙げることができる。好ましくは、ビニルピロリドン・メチル(メタ)アクリレート共重合体、ビニルピロリドン・エチル(メタ)アクリレート共重合体、ビニルピロリドン・ブチル(メタ)アクリレート共重合体、ビニルピロリドン・2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート共重合体等であり、特に好ましくはビニルピロリドン・メチル(メタ)アクリレート共重合体である。
本発明に使用することができるその他の可塑剤としては特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤及びアクリル系可塑剤等から選択される。
そのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は有機酸と3価以上のアルコールが縮合した構造を有する分子量350〜1500の多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
〈酸化防止剤、熱劣化防止剤〉
本発明では、酸化防止剤、熱劣化防止剤としては、通常知られているものを使用することができる。特に、ラクトン系、イオウ系、フェノール系、二重結合系、ヒンダードアミン系、リン系化合物のものを好ましく用いることができる。
例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社から、”IrgafosXP40”、”IrgafosXP60”という商品名で市販されているものを含むものが好ましい。
上記フェノール系化合物としては、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有するものが好ましく、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社、”Irganox1076”、”Irganox1010”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記リン系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、”SumilizerGP”、株式会社ADEKAからADK STAB PEP−24G”、”ADK STAB PEP−36”及び”ADK STAB 3010”、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社から”IRGAFOS P−EPQ”、堺化学株式会社から“GSY−P101”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記ヒンダードアミン系化合物は、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社から、”Tinuvin144”及び”Tinuvin770”、株式会社ADEKAから”ADK STAB LA−52”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記イオウ系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、”Sumilizer TPL−R”及び”Sumilizer TP−D”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記二重結合系化合物は、住友化学株式会社から、”Sumilizer GM”及び”Sumilizer GS”という商品名で市販されているものが好ましい。
さらに、酸捕捉剤として米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物を含有させることも可能である。
これらの酸化防止剤等は、再生使用される際の工程に合わせて適宜添加する量が決められるが、一般には、フィルムの主原料である樹脂に対して、0.05〜20質量%の範囲で添加される。
これらの酸化防止剤、熱劣化防止剤は、一種のみを用いるよりも数種の異なった系の化合物を併用することで相乗効果を得ることができる。例えば、ラクトン系(HP103 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、リン系、フェノール系および二重結合系化合物の併用は好ましい。
《レターデーション調整剤》
本発明のセルロースエステルフィルムにおいてレターデーションを調整するための化合物を含有させてもよい。
レターデーションを調整するために添加する化合物は、欧州特許第911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物を使用することも出来る。
また2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環を有する化合物が特に好ましい。
本発明に係るセルロースエステルフィルムとしては、ヘイズ値が1.0%を超えると光学用材料として影響を与えるため、好ましくはヘイズ値は1.0%未満、より好ましくは0.5%未満である。ヘイズ値はJIS−K7136に基づいて測定することができる。
〈着色剤〉
本発明においては、着色剤を使用することが好ましい。着色剤と言うのは染料や顔料を意味するが、本発明では、本発明のセルロースエステルフィルムを液晶画面に用いる際その色調を青色調にする効果またはイエローインデックスの調整、ヘイズの低減を有するものを指す。
着色剤としては各種の染料、顔料が使用可能だが、アントラキノン染料、アゾ染料、フタロシアニン顔料などが有効である。
〈紫外線吸収剤〉
紫外線吸収剤は、本発明のセルロースエステルフィルムを偏光子や表示装置に用いる際その紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号、同8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号、特開2003−113317号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、6−(2−ベンゾトリアゾール)−4−t−オクチル−6’−t−ブチル−4’−メチル−2,2’メチレンビスフェノール等を挙げることができるが、これらに限定されない。
また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)234、チヌビン(TINUVIN)360、チヌビン(TINUVIN)900、チヌビン(TINUVIN)928(いずれもチバスペシャルティーケミカルズ社製)、LA31(ADEKA社製)、JAST−500(城北化学社製)、Sumisorb 250(住友化学社製)が挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明においては、紫外線吸収剤は0.1〜5質量%添加することが好ましく、さらに0.2〜3質量%添加することが好ましく、さらに0.5〜2質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
またこれらのベンゾトリアゾール構造やベンゾフェノン構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、可塑剤、酸化防止剤、酸掃去剤等の他の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
〈マット剤〉
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、滑り性や光学的、機械的機能を付与するためにマット剤を添加することができる。マット剤としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
マット剤の形状は、球状、棒状、針状、層状、平板状等の形状のものが好ましく用いられる。マット剤としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の金属の酸化物、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることができる。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低くできるので好ましい。これらの微粒子は有機物により表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。
表面処理は、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサン等で行うことが好ましい。微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れる。また、微粒子の一次粒子の平均粒径は0.01〜1.0μmの範囲であることが好ましい。好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmが好ましく、さらに好ましくは、7〜14nmである。これらの微粒子は、偏光板保護フィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させるために好ましく用いられる。
二酸化ケイ素の微粒子としては、日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることができ、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。
2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。平均粒径や材質の異なる微粒子、例えば、アエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用できる。
これらのマット剤の添加方法は混練する等によって行うことが好ましい。また、別の形態として予め溶媒に分散したマット剤とセルロースエステル及び/または可塑剤及び/または紫外線吸収剤を混合分散させた後、溶媒を揮発または沈殿させた固形物を得て、これをセルロースエステル溶融物の製造過程で用いることが、マット剤がセルロース樹脂中で均一に分散できる観点から好ましい。
上記マット剤は、フィルムの機械的、電気的、光学的特性改善のために添加することもできる。
なお、これらの微粒子を添加するほど、得られる偏光板保護フィルムの滑り性は向上するが、添加するほどヘイズが上昇するため、含有量は好ましくは0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.5質量%である。
なお、本発明に係るセルロースエステルフィルムとしては、ヘイズ値が1.0%を超えると光学用材料として影響を与えるため、好ましくはヘイズ値は1.0%未満、より好ましくは0.5%未満である。ヘイズ値はJIS−K7136に基づいて測定することができる。
セルロースエステルフィルム構成材料は溶融及び製膜工程において、揮発成分が少ないまたは発生しないことが求められる。これは加熱溶融時に発泡して、セルロースエステルフィルム内部の欠陥やフィルム表面の平面性劣化を削減または回避するためである。
〈その他の添加剤〉
本発明のセルロースエステルフィルムには、前記化合物以外に、通常のセルロースエステルフィルムに添加することのできる添加剤を含有させることができる。
これらの添加剤としては、ポリマー等を挙げることができる。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
〈アクリル系ポリマー〉
本発明では、添加剤の他に光学特性を調整するために、重量平均分子量が500以上30000以下であるアクリル系ポリマーを含む溶融組成物を溶融製膜することが好ましい。
本発明に係るアクリル系ポリマーとしては、分子内に親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーXが上げられる。
そしてより好ましくは、エチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーYをともに使用するものであることが好ましい。
本発明に係るポリマーXは分子内に親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーである。
好ましくは、Xaは分子内に親水性基を有しないアクリルまたはメタクリルモノマー、Xbは分子内に親水性基を有するアクリルまたはメタクリルモノマーである。
(数平均分子量、重量平均分子量の測定)
なお、本発明における数平均分子量、重量平均分子量の測定は、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
<セルロースエステルフィルムの溶融製膜>
本発明における溶融製膜とは、セルロースエステル及び可塑剤などの添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースエステルを含む溶融物を流延することを溶融製膜として定義する。
加熱溶融する成形法は、更に詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類出来る。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れるセルロースエステルフィルムを得るためには、溶融押出し法が優れている。
≪製膜工程≫
以下、フィルムの製膜工程について説明する。
〈セルロースエステルと添加剤の溶融ペレット製造工程〉
溶融押出に用いる複数の原材料は、通常あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥セルロースエステルや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出機に供給し1軸や2軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることでできる。
原材料は、押出する前に乾燥しておくことが原材料の分解を防止する上で重要である。特にセルロースエステルは吸湿しやすいので、除湿熱風乾燥機や真空乾燥機で70〜140℃で3時間以上乾燥し、水分率を200ppm以下、更に100ppm以下にしておくことが好ましい。
添加剤は、押出機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
酸化防止剤の混合は、固体同士で混合してもよいし、必要により、酸化防止剤を溶剤に溶解しておき、セルロースエステルに含浸させて混合してもよく、あるいは噴霧して混合してもよい。
真空ナウターミキサなどが乾燥と混合を同時にできるので好ましい。また、フィーダー部やダイからの出口など空気と触れる場合は、除湿空気や除湿したN2ガスなどの雰囲気下にすることが好ましい。
また、押出機への供給ホッパー等は保温しておくことが吸湿防止できるので好ましい。マット剤やUV吸収剤などは、得られたペレットにまぶしたり、フィルム製膜時に押出機中で添加してもよい。
押出機は、せん断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
ニーダーディスクは、混錬性を向上できるが、せん断発熱に注意が必要である。ニーダーディスクを用いなくても混合性は十分である。ベント孔からの吸引は必要に応じて行えばよい。低温であれば揮発成分はほとんど発生しないのでベント孔なしでもよい。
ペレットの色は、黄味の指標であるb*値が−5〜10の範囲にあることが好ましく、−1〜8の範囲にあることがさらに好ましく、−1〜5の範囲にあることがより好ましい。b*値は分光測色計CM−3700d(コニカミノルタセンシング(株)製)で、光源をD65(色温度6504K)を用い、視野角10°で測定することができる。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押し出し機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
〈セルロースエステル樹脂混合物の溶融物をダイから押し出す工程〉
除湿熱風や真空または減圧下で乾燥したポリマーを1軸や2軸タイプの押し出し機を用いて、押し出す際の溶融温度Tmを200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどでろ過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延する。
供給ホッパーから押し出し機へ導入する際は真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。なお、Tmは、押し出し機のダイ出口部分の温度である。
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。
ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、ろ過精度を調整できる。
ろ過精度を粗、密と連続的に複数回繰り返した多層体としたものが好ましい。また、ろ過精度を順次上げていく構成としたり、ろ過精度の粗、密を繰り返す方法をとることで、フィルターのろ過寿命が延び、異物やゲルなどの補足精度も向上できるので好ましい。
ダイに傷や異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインとも呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押し出し機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。
押し出し機やダイなどの溶融樹脂と接触する内面は、表面粗さを小さくしたり、表面エネルギーの低い材質を用いるなどして、溶融樹脂が付着し難い表面加工が施されていることが好ましい。具体的には、ハードクロムメッキやセラミック溶射したものを表面粗さ0.2S以下となるように研磨したものが挙げられる。
可塑剤などの添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押し出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
〈ダイから押し出された溶融物を、冷却ロールと弾性タッチロールとの間に押圧しながら流延してフィルムとする工程〉
この工程では、ダイから押し出されたフィルム状の溶融物を、冷却ロールと弾性タッチロールとでニップすることにより、所定のフィルム形状、膜厚に成形する。
〔冷却ロール〕
本発明に係る冷却ロールには特に制限はないが、高剛性の金属ロールで内部に温度制御可能な熱媒体または冷媒体が流れるような構造を備えるロールであり、大きさは限定されないが、溶融押出されたフィルムを冷却するのに十分な大きさであればよく、通常冷却ロールの直径は100mmから1m程度である。
冷却ロールの表面材質は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどが挙げられる。更に表面の硬度をあげたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。
冷却ロール表面の表面粗さは、Raで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできるのである。もちろん表面加工した表面は更に研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
本発明に係る冷却ロールは少なくとも一つであり、二つ以上有しているのが好ましい。一つしかない場合、冷却ロールの表面温度Trは、Tg−50≦Tr≦Tgに設定される。二つ以上の場合、第1冷却ロールと第2冷却ロールの表面温度は、Tg−50≦Tr1≦Tg、Tg−50≦Tr2≦Tgに設定される。
なお、Tgとは、セルロースエステル樹脂混合物のガラス転移温度(℃)をいう。
ガラス転移温度Tgの測定方法は、JIS K7121に従って、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計DSC220を用いて行なった。
サンプル10mg程度をセットし、窒素流量50ml/minの条件下で、20℃/minで室温から250℃まで昇温して10分間保持し(1stスキャン)、次に20℃/minの速度で30℃まで降温して10分間保持し(2ndスキャン)、さらに20℃/minで250℃まで昇温し(3rdスキャン)、DSC曲線を得た。得られた3rdスキャンのDSC曲線からのガラス転移温度を求めた。
〔弾性タッチロール〕
本発明に係る弾性タッチロールとしては、特開平03−124425号、特開平08−224772号、特開平07−100960号、特開平10−272676号、WO97−028950、特開平11−235747号、特開2002−36332号、特開2005−172940号や特開2005−280217号に記載されているような表面が薄膜金属スリーブ被覆シリコンゴムロールを使用することができるが、下記の弾性タッチロールであることが好ましい。
セルロースエステルを含む溶融物は他の熱可塑性樹脂と比較して、溶融粘度が高く、延伸もしにくい。
そのため、ドロー比が大きいと搬送方向で膜厚変動が生じやすく、又、テンター工程で延伸する際にも破断しやすくなるという問題があり、せいぜいドロー比7〜8程度で実施していたのであるが、本発明では、セルロースエステルを含む溶融物をダイからフィルム状に押出し、ドロー比10以上30以下として得られたフィルムを、弾性タッチロールで冷却ロールに押圧しながら搬送することが好ましい。
ドロー比とは、ダイのリップクリアランスを冷却ロール上で固化したフィルムの平均膜厚で除した値である。ドロー比をこの範囲とすることで、液晶表示装置で画像を表示したときに、明暗のスジや斑点状むらがなく、生産性の良好な偏光板保護フィルムが得られるのである。
ドロー比は、ダイリップクリアランスと冷却ロールの引き取り速度により調整できる。ダイリップクリアランスは、900μm以上が好ましく、更に1mm以上2mm以下が好ましい。大きすぎても、小さすぎても斑点状むらが改善されない場合がある。
本発明で用いる弾性タッチロールは、金属製外筒と内筒との2重構造になっており、その間に冷却流体を流せるように空間を有しているものである。
更に、金属製外筒は弾性を有していることにより、タッチロール表面の温度を精度よく制御でき、かつ適度に弾性変形する性質を利用して、長手方向にフィルムを押圧する距離が稼げるとの効果を有することにより、液晶表示装置で画像を表示したときに、明暗のスジや斑点むらがないという効果が得られるのである。
金属製外筒の肉厚の範囲は、0.003≦(金属製外筒の肉厚)/(タッチロール半径)≦0.03であれば、適度な弾性となり好ましい。タッチロールの半径が大きければ金属外筒の肉厚が厚くても適度に撓むのである。
弾性タッチロールの直径は100mm〜600mmが好ましい。金属製外筒の肉厚があまり薄すぎると強度が不足し、破損の懸念がある。一方、厚すぎると、ロール質量が重くなりすぎ、回転むらの懸念がある。従って、金属外筒の肉厚は、0.1〜5mmであることが好ましい。
金属外筒表面の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできるのである。
金属外筒の材質は、平滑で、適度な弾性があり、耐久性があることが求められる。炭素鋼、ステンレス、チタン、電鋳法で製造されたニッケルなどが好ましく用いることができる。更にその表面の硬度をあげたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。表面加工した表面は更に研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
内筒は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどの軽量で剛性のある金属製内筒であることが好ましい。内筒に剛性をもたせることで、ロールの回転ぶれを抑えることができる。内筒の肉厚は、外筒の2〜10倍とすることで十分な剛性が得られる。
内筒には更にシリコーン、フッ素ゴムなどの樹脂製弾性材料が被覆されていてもよい。
冷却流体を流す空間の構造は、ロール表面の温度を均一に制御できるものであればよく、例えば、巾方向に行きと戻りが交互に流れるようにしたり、スパイラル状に流れるようにすることでロール表面の温度分布の小さい温度制御ができる。
冷却流体は、特に制限はなく、使用する温度域に合わせて、水やオイルを使用できる。
弾性タッチロールの表面温度Tr0は、フィルムのガラス転移温度(Tg)より低いことが好ましい。Tgより高いと、フィルムとロールとの剥離性が劣る場合がある。Tg−50℃〜Tgであることが更に好ましい。
本発明で用いる弾性タッチロールは、巾方向の中央部が端部より径が大きいいわゆるクラウンロールの形状とすることが好ましい。
タッチロールは、その両端部を加圧手段でフィルムに押圧するのが一般的であるが、この場合、タッチロールが撓むため、端部にいくほど強く押圧されてしまう現象がある。ロールをクラウン形状にすることで高度に均一な押圧が可能となるのである。
本発明で用いる弾性タッチロールの幅は、フィルム幅よりも広くすることで、フィルム全体を冷却ロールに密着できるので好ましい。また、ドロー比が大きくなると、フィルムの両端部がネックイン現象により耳高(端部の膜厚が厚くなる)になる場合がある。
この場合は、耳高部を逃げるように、金属製外筒の幅をフィルム幅より狭くしてもよい。あるいは、金属製外筒の外径を小さくして耳高部を逃げてもよい。
金属製弾性タッチロールの具体例としては、特許第3194904号、特許第3422798号、特開2002−36332号、特開2002−36333号に記載されている成形用ロールが挙げられる。
弾性タッチロールの撓みを防止するため、冷却ロールに対してタッチロールの反対側にサポートロールを配してもよい。
弾性タッチロールの汚れを清掃する装置を配してもよい。清掃装置としては、例えば、ロール表面を必要により溶剤を浸透させた不織布などの部材をロールに押し当てる方法、液体中にロールを接触させる方法、コロナ放電やグロー放電などのプラズマ放電によりロール表面の汚れを揮発させる方法などが好ましく用いることができる。
弾性タッチロールの表面温度Tr0を更に均一にするため、タッチロールに温調ロールを接触させたり、温度制御された空気を吹き付けたり、液体などの熱媒体を接触させてもよい。
本発明では、更に弾性タッチロール押圧時のタッチロール線圧を1kg/cm以上、15kg/cm以下、タッチロール側フィルム表面温度Ttを、Tg<Tt<Tg+110℃とすることが好ましい。
弾性タッチロール線圧をこの範囲とすることで液晶表示装置で画像を表示した際の明暗のスジや斑点状むらのない偏光板保護フィルムが得られるのである。
線圧とは、弾性タッチロールがフィルムを押圧する力を押圧時のフィルム幅で除した値である。線圧を上記の範囲にする方法は、特に限定はなく、例えば、エアーシリンダーや油圧シリンダーなどでロール両端を押圧することができる。
サポートロールにより弾性タッチロールを押圧することで、間接的にフィルムを押圧してもよい。
弾性タッチロールでフィルムを押圧する際のフィルム温度は、高いほど、ダイラインに起因する明暗のスジが改良されるのだが、あまり高すぎると、斑点状むらが劣化する。これは、フィルム中から揮発成分が揮発し、タッチロールで押圧する際に均一に押圧されないためと予想している。低すぎるとダイラインに起因する明暗のスジが改善されない。
押圧時のフィルム温度を上記範囲にする方法は特に限定はないが、例えば、ダイと冷却ロール間の距離を近づけて、ダイと冷却ロール間での冷却を抑制する方法やダイと冷却ロール間を断熱材で囲って保温したり、あるいは熱風や赤外線ヒータやマイクロ波加熱等により加温する方法が挙げられる。
フィルム表面温度およびロール表面温度は非接触式の赤外温度計で測定できる。具体的には、非接触ハンディ温度計(IT2−80、(株)キーエンス製)を用いてフィルムの幅手方向に10箇所を被測定物から0.5mの距離で測定する。
弾性タッチロール側フィルム表面温度Ttは、搬送されているフィルムをタッチロールをはずした状態でタッチロール側から非接触式の赤外温度計で測定したフィルム表面温度のことをさす。
〈冷却したフィルムをTg+30℃以上Tg+60℃以下の範囲で加熱する工程および延伸工程〉
通常の製膜工程では、溶融流延されフィルム形状とした後は、素早く冷却ロールで冷却するのが良いとされていた。
しかし本発明では、冷却ロールで冷却された後、再度加熱処理することを特徴とする。つまり、冷却工程の後に、冷却したフィルムをTg+30℃以上Tg+60℃以下の範囲で再度加熱する工程を設けるのである。加熱時間は5〜60秒が好ましく、さらには10〜30秒の範囲が好ましい。
この再度加熱する工程は、延伸工程であることが好ましい。延伸しながら再度加熱する工程であることが好ましい。この延伸工程は横延伸工程(フィルム幅方向)であることが好ましい。
本発明では、少なくとも1.01〜5.0倍延伸することが好ましい。好ましくは縦、横(巾方向)両方向にそれぞれ1.1〜3.0倍延伸することが好ましい。
冷却したフィルムをTg+30℃以上Tg+60℃以下の範囲で加熱する工程は、複数有していても良い。この場合は、各加熱工程の間にTg以下の温度に保たれた冷却ロールによって冷却することが好ましい。
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、所望のレターデーション特性が得られるように温度、倍率を選ぶことができる。
延伸は、幅手方向で制御された均一な温度分布下で行うことが好ましい。好ましくは±2℃以内、さらに好ましくは±1℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内である。
〈延伸工程の後工程(含む、巻き取り工程)〉
上記の方法で作製したセルロースエステルフィルムにおいて、可塑剤等の凝結物がヘイズ故障とならない程度に減少した後は、レターデーション調整や寸法変化率を小さくする目的で、フィルムを長手方向や幅手方向に収縮させてもよい。
長手方向に収縮するには、例えば、巾延伸を一時クリップアウトさせて長手方向に弛緩させる、または横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。
後者の方法は一般の同時二軸延伸機を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行うことが出来る。必要により任意の方向(斜め方向)の延伸と組み合わせてもよい。長手方向、巾手方向とも0.5%から10%収縮させることで光学フィルムの寸法変化率を小さくすることができる。
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。
なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、原材料として再利用される。
本発明では、フィルムの自由体積を小さくすることにより、レターデーション(Ro、Rt)の湿度変化率、寸法変化率を小さくすることができるので好ましい。
自由体積を小さくするには、延伸工程の後にフィルムのTg近傍で熱処理をする工程を有することが有効である。熱処理時間は1秒以上から効果が認められ、長時間ほど効果が高くなるが1000時間程度で飽和するので、Tg−20℃〜Tgで1秒〜1000時間が好ましい。
更にTg−15℃〜Tgで1分〜1時間が好ましい。また、Tg以上からTg−20℃の範囲をゆっくりと冷却しながら熱処理すると一定温度で熱処理するよりも短時間で効果が得られるので好ましい。
冷却速度は、−0.1℃/秒〜−20℃/秒が好ましく、更に−1℃/秒〜−10℃/秒が好ましい。熱処理する方法は特に限定はなく、温調されたオーブンやロール群、熱風、赤外ヒーター、マイクロ波加熱装置などにより処理できる。
フィルムは搬送しながらでも枚葉やロール状で熱処理してもよい。搬送しながらの場合は、ロール群やテンターを用いて熱処理しながら搬送できる。ロール状で熱処理する場合は、フィルムをTg近傍の温度でロール状に巻き取って、そのまま冷却することで徐冷してもよい。
<製造されたセルロースエステルフィルムの特性>
本発明のセルロースエステルフィルムの幅手方向の光弾性係数は、1×10-12〜20×10-12Pa-1であることが好ましく、5×10-12〜20×10-12Pa-1がより好ましい。
製膜、乾燥後のフィルムに荷重を加えながらフィルム面内のレターデーション(Ro)を測定し、これをフィルムの厚み(d)で割ってΔn(=Ro/d)を求める。荷重を変えながらΔnを求め、荷重−Δn曲線を作成して、その傾きを光弾性係数とした。フィルム面内のレターデーション(Ro)は、レターデーション測定装置(KOBURA31PR、王子計測機器社製)を用い、波長589nmにおける値を測定した。フィルムの巾手方向に荷重をかけそこから求めた光弾性係数をPa-1とした。
本発明のセルロースエステルフィルムのフィルムの面内レターデーション(Ro)、厚み方向レターデーション(Rt)は適宜調整することができ、位相差機能を有する場合Roは0〜300nm、Rtは−100〜400nmであり、RtとRoの比Rt/Roは、0.5〜4が好ましい。
なお、フィルムの遅相軸方向の屈折率Nx、進相軸方向の屈折率Ny、厚み方向の屈折率Nz、フィルムの膜厚をd(nm)とすると、
Ro=(Nx−Ny)×d
Rt={(Nx+Ny)/2−Nz}×d
として表される。(測定波長590nm)
レターデーションのバラツキは小さいほど好ましく、通常±10nm以内、好ましくは±5nm以下、より好ましくは±2nm以下である。
遅相軸方向の均一性も重要であり、フィルム巾方向に対して、角度が−5〜+5°であることが好ましく、更に−1〜+1°の範囲にあることが好ましく、特に−0.5〜+0.5°の範囲にあることが好ましく、特に−0.1〜+0.1°の範囲にあることが好ましい。これらのばらつきは延伸条件を最適化することで達成できる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、隣接する山の頂点から谷の底点までの高さが300nm以上であり、傾きが300nm/mm以上の長手方向に連続するスジがないことが好ましい。
スジの形状は、表面粗さ計を用いて測定したもので、具体的には、ミツトヨ製SV−3100S4を使用して、先端形状が円錐60°、先端曲率半径2μmの触針(ダイヤモンド針)に測定力0.75mNの加重をかけながら、測定速度1.0mm/secでフィルムの巾方向に走査し、Z軸(厚み方向)分解能0.001μmとして断面曲線を測定する。
この曲線から、スジの高さは、山の頂点から谷の底点までの垂直距離(H)を読み取る。スジの傾きは、山の頂点から谷の底点までの水平距離(L)を読み取り、垂直距離(H)を水平距離(L)で除して求める。
幅手方向の位相差ムラは、レターデーションのばらつきで測定される。レターデーションのばらつきが大きいフィルムを、クロスニコル下で観察すると、全体が均一な暗視野とならずに、明暗のムラが認められるという問題があった。レターデーションが均一であるなら、全面が暗視野となるはずである。
本発明のセルロースエステルフィルムは、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光子を保護するための偏光板保護フィルムとして有用であり、またレターデーションを調整することにより、液晶表示装置の光学補償フィルムとしても使用することができる。
実施例
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(用いる素材)
〈セルロースエステル〉
セルロースアセテートプロピオネート:アセチル基置換度1.63、プロピオニル基置換度1.21、総アシル基置換度2.84、数平均分子量90000であった。尚、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定した。
〈添加剤〉
N−ビニル−2−ピロリドンをモノマーとして含有して重合した高分子化合物(以下PVPと略す)(ビニルピロリドン・メチル−メタアクリレート共重合体(共重合モル比=2:8、分子量5000〜15000)) 表1記載量
ペンタエリスリトールテトラベンゾエート(以下PETBと略す)アルドリッチ社製
表1記載量
スミライザーGP 住友化学社製 0.06質量部
イルガノックス1010 チバスペシャルティ・ケミカルズ社製 0.5質量部
スミライザーGS 住友化学社製 0.5質量部
紫外線吸収剤Ti928 チバスペシャルティ・ケミカルズ社製 1.5質量部
マット剤 シーホスターKEP−30 日本触媒(株)製(平均粒径0.3μmシリカ微粒子) 0.1質量部
以下に使用したPVPの合成方法を記す。
〈ビニルピロリドン・メチル−メタアクリレート共重合体(共重合モル比=2:8、分子量5000〜15000)(PVP)の合成〉
トルエン100ml中に、N−ビニル−2−ピロリドンモノマーが20質量%、メタクリル酸メチルが80質量%の単量体混合物10gを加え、次いで、アゾイソブチロニトリル0.1gを加えた。窒素雰囲気下で80℃まで加熱し5時間反応させた。トルエン70mlを減圧留去した後、大過剰のメタノール中に滴下した。析出した沈殿物を濾過、洗浄、乾燥工程を経て粉末状の共重合体を得た。この共重合体は、標準ポリスチレンを基準とするGPC分析により、重量平均分子量は5000〜15000であり、Mw/Mnは3.0であると確認した。
NMRスペクトルから、上記共重合体が、ビニルピロリドン・メチル−メタアクリレート共重合体であることを確認した。上記重合体の組成は略、N−ビニル−2−ピロリドン:メチル−メタアクリレート=2:8であった。
《セルロースエステルフィルムの作製》
上記セルロースエステルを70℃、3時間減圧下で乾燥を行い室温まで冷却した後、可塑剤、添加剤、紫外線吸収剤、マット剤(尚、セルロースエステルの添加量は上記各添加物を加えて100質量部となる量である。)を混合した。この混合物を真空ナウターミキサーで80℃、133.3Paで3時間混合しながら更に乾燥した。得られた混合物を2軸式押し出し機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。この際、混錬時のせん断による発熱を抑えるためニーディングディスクは用いずオールスクリュータイプのスクリューを用いた。また、ベント孔から真空引きを行い、混錬中に発生する揮発成分を吸引除去した。なお、押出機に供給するフィーダーやホッパー、押出機ダイから冷却槽間は、乾燥窒素ガス雰囲気として、樹脂への水分の吸湿を防止した。
第1冷却ロール及び第2冷却ロールは直径40cmのステンレス製とし、表面にハードクロムメッキを施した。又、内部には温度調整用のオイル(冷却用流体)を循環させて、ロール表面温度を制御した。弾性タッチロールは、直径20cmとし、内筒と外筒はステンレス製とし、外筒の表面にはハードクロムメッキを施した。外筒の肉厚は2mmとし、内筒と外筒との間の空間に温度調整用のオイル(冷却用流体)を循環させて弾性タッチロールの表面温度を制御した。
得られたペレット(水分率50ppm)を、1軸押出機を用いてTダイからフィルム状に表面温度100℃の第1冷却ロール上に溶融温度250℃でフィルム状に溶融押し出しドロー比20で、膜厚80μmのキャストフィルムを得た。この際、Tダイのリップクリアランス1.5mm、リップ部平均表面粗さRa0.01μmのTダイを用いた。また押出機中間部のホッパー開口部から、滑り剤としてシリカ微粒子を、0.1質量部となるよう添加した。
更に、第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールを線圧10kg/cmで押圧した。押圧時のタッチロール側のフィルム温度は、180℃±1℃であった。(ここでいう押圧時のタッチロール側のフィルム温度は、第1ロール(冷却ロール)上のタッチロールが接する位置のフィルムの温度を、非接触温度計を用いて、タッチロールを後退させてタッチロールがない状態で50cm離れた位置から幅方向に10点測定したフィルム表面温度の平均値を指す。)このフィルムのガラス転移温度Tgは136℃であった。(セイコー(株)製、DSC6200を用いてDSC法(窒素中、昇温温度10℃/分)によりダイスから押し出されたフィルムのガラス転移温度を測定した。)
なお、弾性タッチロールの表面温度は100℃、第2冷却ロールの表面温度は30℃とした。弾性タッチロール、第1冷却ロール、第2冷却ロールの各ロールの表面温度は、ロールにフィルムが最初に接する位置から回転方向に対して90°手前の位置のロール表面の温度を非接触温度計を用いて幅方向に10点測定した平均値を各ロールの表面温度とした。
得られたフィルムを予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターに導入し、巾方向に160℃で1.3倍延伸した後、巾方向に2%緩和しながら70℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落として、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施し、幅1430mmにスリットした膜厚60μmのセルロースエステルフィルム101を得た。この際、予熱温度、保持温度を調整し延伸によるボーイング現象を防止した。得られたセルロースエステルフィルム101から残留溶媒は検出されなかった。
次いで、PVP、PETBを表1のように変更した以外は本発明のセルロースエステルフィルム101と同様にして、幅1430mm、膜厚60μmのセルロースエステルフィルム102〜130を得た。
《セルロースエステルフィルムの評価》
得られたセルロースエステルフィルム101〜130について、上述した方法により、フィルムの巾手方向に荷重をかけ光弾性係数を得、表1に示す。また、以下の評価方法によって、位相差ムラを測定し、表1に示す。
《位相差ムラの測定方法》
得られたセルロースエステルフィルム101〜130を、偏光板によるクロスニコル下、すなわち、直交状態(クロスニコル状態)に配置した2枚の偏光子で挟み、一方の偏光板の外側から光を当て、他方の偏光板の外側から目視で観察し、下記基準でレターデーションの均一性のランク付けをした。
◎:光の透過はなく、全体に均一な暗視野
○:部分的にスジ状の明暗が認められる
×:部分的に強いスジ状の明暗が認められる
《偏光板の作製》
上記作製したセルロースエステルフィルム101〜130を使って、下記アルカリケン化処理、次いで偏光板の作製を行った。
〈アルカリケン化処理〉
ケン化工程 2M/l−NaOH 50℃ 90秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
中和工程 10質量%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
ケン化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで80℃で乾燥を行った。
〈偏光子の作製〉
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で5倍に搬送方向に延伸して偏光子を作った。
上記偏光子の片面にアルカリケン化処理した前記セルロースエステルフィルム101〜130を、もう一方の面にコニカミノルタタックKC4FR−1(コニカミノルタオプト(株)製)を、完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として、各々貼り合わせ、乾燥してセルロースエステルフィルム101〜130をそれぞれ使用した偏光板101〜130を作製した。
《液晶表示装置の作製》
VA型液晶表示装置である富士通製15型ディスプレイVL−150SDの予め貼合されていた視認側の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板101〜130をそれぞれ液晶セル(VA型)のガラス面に貼合し、対応する液晶表示装置101〜130を作製した。その際、上記作製したセルロースエステルフィルム101〜130が表示面側となるように、また偏光板の貼合の向きは予め貼合されていた偏光板と同一方向に吸収軸が向くように行った。
額縁ムラ評価方法
上記で得られた各液晶表示装置を、温度45℃±2℃、湿度95±3%RHの環境下に24時間保管した。その後すぐさま温度23℃、湿度55%RHの部屋に移し、パネルバックライトを点灯させる。点灯から24時間後、黒表示させた状態での四隅の正面輝度を測定し、平均値を算出する。なお、ここでいう「四隅」とは、有効表示画面の対角線上であって、隅からの距離が50mmのところをいう。
各液晶表示装置について、額縁ムラの発生を、上記四隅の正面輝度の平均値と、画面中央部の正面輝度との比によって、下記の4段階で評価した。評価ランクは以下のとおりである。なお、液晶表示装置の画面中央部の正面輝度を1とした。得られた結果を下記の表1に示した。
評価ランク
◎:額縁ムラの発生なし。(四隅正面輝度平均;1.00〜1.05)
○:裸眼では額縁ムラ認識できない。(四隅正面輝度平均;1.06〜1.10)
△:額縁ムラとして見えるが、使用にあたって支障はない。(四隅正面輝度平均;1.11〜1.20)
×:表示品質上問題がある。(四隅正面輝度平均;1.21以上)
Figure 2009126899
表1から、本発明のセルロースエステルフィルムは幅手方向の位相差ムラが少なく、かつ、本発明のセルロースエステルフィルムを使用した液晶表示装置は額縁ムラがないことが判る。

Claims (5)

  1. 溶融流涎によって製造されたセルロースエステル流涎物を縦方向と横方向の2方向に10%〜100%延伸したセルロースエステルフィルムにおいて、該セルロースエステルフィルムの100質量部のうち、N−ビニル−2−ピロリドンをモノマーとして含有して重合した高分子化合物を4〜25質量部含むことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
  2. 前記N−ビニル−2−ピロリドンをモノマーとして含有して重合した高分子化合物が、アクリレートモノマーとのコポリマー又はブロックポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルム。
  3. 前記セルロースエステルフィルムが、更に、セルロースエステルフィルム100質量部のうち、ペンタエリスリトールテトラベンゾエートを2〜20質量部含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースエステルフィルム。
  4. 前記セルロースエステルフィルムの幅手方向の光弾性係数が1×10-12〜20×10-12Pa-1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムを用いることを特徴とする光学フィルム。
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