JP2013119201A - 熱可塑性樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】少ない滑剤の添加量でも、滞留劣化物による故障が低減された熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を、押し出し機30のホッパー37から投入する工程と、前記押し出し機30において前記樹脂組成物を圧縮する工程と、前記押し出し機30において前記樹脂組成物を混練する工程と、前記混練した樹脂組成物を、フィルタ部50でろ過する工程と、前記ろ過した樹脂組成物を、ダイ70からフィルム状に押し出す工程と、前記押し出された前記樹脂組成物を、冷却固化して熱可塑性樹脂フィルムを得る工程と、を含み、滑剤を、前記投入する工程の後かつ前記混練する工程の前、または前記混練工程の後かつ前記ろ過する工程の前において投入する、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に関する。
液晶表示装置の偏光板保護フィルムなどの光学フィルムとしては、セルロースエステル、オレフィン系樹脂、または(メタ)アクリル樹脂などを主成分とする熱可塑性樹脂フィルムが用いられている。これらの熱可塑性樹脂フィルムは、溶液流延法や溶融押し出し法によって製造されているが、溶剤が不要であることから、溶融押し出し法によって製造されることが望まれている。
熱可塑性樹脂フィルムを溶融押し出し法によって製造する場合、1)熱可塑性樹脂を押し出し機内で溶融混練する工程、2)溶融樹脂をフィルタでろ過する工程、3)ろ過した溶融樹脂を、ダイからフィルム状に押し出した後、冷却固化する工程を含む。しかしながら、溶融樹脂が、押し出し機のシリンダや、フィルタ、ダイおよびそれらを連結する配管などの流路の内壁面に付着または滞留しやすく、滞留劣化物を生じやすいという問題があった。滞留劣化物は、得られるフィルムに異物として混入したり、スジ状故障などを生じさせたりするため、極力少ないことが望まれる。
このような溶融樹脂の流路内壁面への付着を抑制するために、滑剤が利用されている。例えば、特許文献1には、(メタ)アクリル樹脂フィルムを溶融押し出し法で製造する際に、(メタ)アクリル樹脂と滑剤を含む樹脂組成物を押し出し機のホッパーから供給し、溶融混練する方法が提案されている。特許文献2には、(メタ)アクリル樹脂の積層フィルムを共押出法で製造する際に、共押出する一の層の滑剤の含有量を多くし、かつ他の層の滑剤の含有量を少なくする方法が提案されている。特許文献3では、光学機器部品を射出成形法で製造する際に、金型の内壁面に滑剤を予め塗布した後、当該金型内に溶融樹脂を充填して成形する方法が提案されている。
特開2011―138119号公報 特開2004−151573号公報 特開2005−125504号公報
しかしながら、特許文献2の方法では、共流延させる溶融樹脂のうち、滑剤の含有量が少ない溶融樹脂の流路内壁面への付着を十分には抑制できなかった。特許文献3の方法では、バッチ方式でフィルムを成形する場合には有効であるが、フロー方式(連続方式)でフィルムを成形する場合には有効ではなかった。
特許文献1の方法では、溶融樹脂の、押し出し機の内壁面への付着をある程度抑制できるが、フィルタ部とダイの先端部との間の流路内壁面への付着は、十分には抑制できなかった。そのため、流路内壁面に付着した溶融樹脂が、滞留劣化物となり、得られるフィルムに異物として混入したり、フィルムにスジ状の故障を生じたりすることがあった。滑剤の大部分が、フィルタ部通過時やダイに到達する前に揮発し、フィルタ部とダイの先端部との間の流路において滑剤の効果が十分には得られないためであると考えられる。
フィルタ部とダイの先端部との間の流路においても滑剤の効果を十分に得るためには、滑剤の添加量を多くすることも有効である。しかしながら、滑剤の添加量を多くすると、得られるフィルムに滑剤が残留し、ブリードアウトしやすく、耐久性が低下しやすいという問題があった。このように、少ない滑剤の添加量でも、フィルタ部とダイの先端部との間の流路において滑剤の効果が十分に得られることが求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、少ない滑剤の添加量でも、フィルタやダイにおいても滑剤の効果が得られ、滞留劣化物による故障が低減された熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
[1] 熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を、押し出し機のホッパーから投入する工程と、前記押し出し機において前記樹脂組成物を圧縮する工程と、前記圧縮した樹脂組成物を混練する工程と、前記混練した樹脂組成物を、フィルタ部でろ過する工程と、前記ろ過した樹脂組成物を、ダイからフィルム状に押し出す工程と、前記押し出された前記樹脂組成物を、冷却固化して熱可塑性樹脂フィルムを得る工程と、を含み、滑剤を、前記投入する工程の後かつ前記混練する工程の前、または前記混練する工程の後かつ前記ろ過する工程の前において投入する、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[2] 前記滑剤を、前記混練する工程の直前または前記ろ過する工程の直前で投入する、[1]に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[3] 前記押し出し機は、前記樹脂組成物を圧縮する圧縮部と、前記圧縮した樹脂組成物を混練する混練部と、前記混練部よりも前記樹脂組成物の押し出し方向上流側に設けられたベントとを有し、前記滑剤を、前記ベントから投入する、[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[4] 前記押し出し機と前記フィルタ部とを連通する配管が設けられ、かつ前記配管は、前記フィルタ部よりも前記押し出し方向上流側に設けられた投入口を有し、前記滑剤を、前記投入口から投入する、[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[5] 前記滑剤の添加量は、前記熱可塑性樹脂の合計に対して0.05〜2.0質量%である、[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[6] 前記滑剤は、高級アルコール系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤または脂肪酸エステル系滑剤である、[1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[7] 前記熱可塑性樹脂は、セルロースエステル、(メタ)アクリル樹脂およびシクロオレフィン樹脂からなる群より選ばれる一以上である、[1]〜[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[8] 前記熱可塑性樹脂フィルムは、光学フィルムである、[1]〜[7]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[9] 前記光学フィルムは、偏光板保護フィルムである、[8]に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
本発明によれば、少ない滑剤の添加量でも、フィルタやダイにおいても滑剤の効果が得られ、滞留劣化物による故障が低減された熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法を提供することができる。
フィルムの製造装置の一例を示す模式図である。 単軸押し出し機の一例を示す側面図である。 二軸押し出し機の一例を示す側面図である。 図3Aの二軸押し出し機の上面図である。 液晶表示装置の基本構成の一例を示す模式図である。
1.熱可塑性樹脂フィルムの製造方法
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を、溶融押し出し法で製膜するものである。まず、溶融押し出し法に用いられる、フィルムの製造装置について説明する。
図1は、フィルムの製造装置の一例を示す模式図である。図1に示されるように、フィルムの製造装置10は、原料である樹脂組成物を溶融混練する押し出し機30と、溶融混練された樹脂をろ過するフィルタ部50と、ろ過された溶融樹脂をフィルム状に吐出するダイ70と、吐出された溶融樹脂を冷却する冷却ロール90と、得られたフィルムを巻き取る巻き取り装置110とを含み、必要に応じて冷却固化して得られたフィルムを延伸する延伸装置130をさらに含んでもよい。
押し出し機30は、単軸押し出し機であっても、多軸押し出し機であってもよい。図2は、単軸押し出し機の一例を示す側面図である。図2に示されるように、単軸押し出し機30は、シリンダ32と、その内部に設けられた単軸スクリュー34とを有する。
シリンダ32は、原料である樹脂組成物を供給するための供給口36と、溶融混練した樹脂組成物を吐出する吐出口38とを有する。供給口36には、樹脂組成物を投入するためのホッパー37(図1参照)が設けられている。シリンダ32の外周部には、温度調整手段(不図示)が設けられている。温度調整手段は、電気ヒータや温水などが流れるジャケットなどでありうる。
シリンダ32の内径Dに対するシリンダ32の長さLの比(L/D)は、例えば20〜70程度としうる。シリンダ32の内径は30mm〜150mm程度としうる。
単軸スクリュー34は、スクリュー軸34aと、スクリューフライト部34bとを有し、モータ(不図示)によって回転駆動できるようになっている。単軸スクリュー34は、種類の異なるスクリューセグメントが組み合わされたものであってよい。
スクリュー圧縮比(C/R)は、例えば2.5〜4.5程度としうる。スクリュー圧縮比(C/R)は、後述する供給部Aと計量部(図2では混練部Cに相当)との溝間1ピッチあたりの容積比として表される。
シリンダ32の内部は、樹脂組成物の押し出し方向(矢印の方向)に、供給口36から供給された原料である樹脂組成物を定量輸送する供給部Aと、樹脂組成物を圧縮する圧縮部Bと、圧縮された樹脂組成物を混練する混練部Cと、混練された樹脂組成物を吐出口38から排出する排出部Dと、を有する。
シリンダ32は、供給部Aよりも下流側かつ混練部Cよりも上流側;好ましくは混練部Cの直前に、後述する滑剤を投入するための投入口39をさらに有することが好ましい。混練部Cの直前とは、混練部C近傍の圧縮部Bであり;具体的には、圧縮部Bの下流端から当該圧縮部Bの全長に対して30%以下の領域を示す。
投入口39は、例えばベントなどであってもよい。投入口39は、一つであってもよいし、複数あってもよい。
このように、投入口39が、押し出し機30内の圧力が高い領域に設けられているため、滑剤を揮発させにくくしうる。また、投入口39が、押し出し機30内の原料の供給口36から離れた領域に設けられているため、揮発した滑剤が押し出し方向とは反対方向に流れて、原料の供給口36から除去されるのを抑制しうる。
多軸押し出し機は、好ましくは二軸押し出し機である。図3Aは、二軸押し出し機の一例を示す側面図であり、図3Bは、図3Aの二軸押し出し機の上面図である。図3Aおよび図3Bに示されるように、二軸押し出し機30’は、シリンダ42と、その内部に並列に配置された2本のスクリュー44および44とを有する。
図3Aに示されるように、シリンダ42は、原料である樹脂組成物を供給するための供給口46と、溶融混練した樹脂組成物を吐出する吐出口48とを有する。供給口46には、樹脂組成物を投入するためのホッパー47が設けられている。シリンダ42には、ベント口45が設けられてもよい。シリンダ42の外周部には、前述と同様の温度調整手段(不図示)が設けられている。
シリンダ42の内径に対するシリンダ42の長さの比(L/D)や、シリンダ42の内径は、前述と同様としうる。
2本のスクリュー44は、それぞれスクリュー軸44aと、スクリューフライト部44bとを有し、モータ(不図示)によって回転駆動できるようになっている。2本のスクリュー44および44は、2本のスクリュー軸44aと44aが平行になるように配置されてもよいし、傾斜するように配置されてもよい。また、2本のスクリュー軸44aと44aの回転方向は同方向であってもよいし、異方向であってもよい。
スクリュー44は、種類の異なるスクリューセグメントが組み合わされたものであってよい。スクリューセグメントの例には、原料である樹脂組成物を供給または圧縮する(供給部または圧縮部を構成する)スクリューセグメント;樹脂組成物に強い剪断を付与して溶融または分散させる(混練部を構成する)ニーディングディスクセグメントやロータセグメントなどが含まれる。
スクリュー44は、混練部としてニーディングディスクセグメントを有することが好ましい。ニーディングディスクセグメントを構成するニーディングディスクエレメントの形状には、送りタイプ、逆送りタイプまたはニュートラルタイプなどがあり、滞留時間を短くできることなどから、好ましくは順送りタイプとしうる。ニーディングディスクエレメントの形状やエレメント間隔は、樹脂の分散混合性能に応じて適宜調整されうる。スクリュー圧縮比は、前述と同様としうる。
シリンダ42の内部は、樹脂組成物の押し出し方向に、供給部A1と、第1の圧縮部B1と、第1の混練部C1と、ベント部A2と、第2の圧縮部B2と、第2の混練部C2と、排出部Dとを有する。このように、図3Aおよび図3Bでは、圧縮部と混練部がそれぞれ2つずつ設けられる例を示したが、これに限定されず、必要とされる混練性能に応じて適宜設定されればよい。
供給部A1、第1の圧縮部B1、ベント部A2、第2の圧縮部B2および排出部Dにおけるスクリュー軸44aには、2条ネジまたは1条ネジと呼ばれるスクリューエレメントが複数設けられたスクリューセグメントが設けられている。
第1の混練部C1および第2の混練部C2におけるスクリュー軸44aには、楕円状のニーディングディスクと呼ばれるスクリューエレメントが複数設けられたニーディングセグメントが設けられている。
シリンダ42の供給部A1よりも下流側かつ第1の混練部C1または第2の混練部C2よりも上流側;好ましくは供給部A1よりも下流側かつ第1の混練部C1よりも上流側;さらに好ましくは第1の混練部C1の直前に、後述する滑剤を投入するための投入口49をさらに有することが好ましい。第1の混練部C1の直前とは、第1の混練部C1近傍の第1の圧縮部B1であり;具体的には、第1の圧縮部B1の下流端から、当該圧縮部B1の全長に対して30%以下の領域を示す。
投入口49は、一つであっても、複数であってもよい。投入口49が複数設けられる場合、例えば第1の混練部C1の直前部と第2の混練部C2の直前部に、それぞれ設けることもできる。
フィルタ部50は、押し出し機30の押し出し方向下流側に配置され、押し出し機30で溶融混練された樹脂をろ過する。フィルタ部50は、例えばリーフディスクタイプのフィルタであり、好ましくはステンレス繊維焼結フィルタである。フィルタの濾過精度は、3〜15μmmであることが好ましい。
押し出し機30とフィルタ部50とを連通する配管60は、後述する滑剤を投入するための投入口62を有することが好ましい。投入口62は、配管60のフィルタ部50よりも上流側;好ましくはフィルタ部50の直前部に設けられる。
押し出し機30とダイ70との間には、必要に応じて押出し流量を安定化するためのギアポンプ150や、樹脂を均一に混合するためのスタチックミキサなどの混合装置(不図示)などがさらに設けられてもよい。
ダイ70は、公知のものであってよく、Tダイなどである。ダイ70の表面は、ハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)などを溶射もしくはメッキした後;バフ、平面切削、電解研磨などの表面加工をさらに施したものでありうる。ダイ70のリップ部の材質は、ダイの表面の材質と同様としうる。ダイ70のリップ部の表面精度は0.5S以下が好ましく、0.2S以下がより好ましい。
ダイ70のリップクリアランスは、好ましくは900μm以上であり、より好ましくは1mm以上2mm以下である。リップクリアランスが上記範囲外であると、得られるフィルムに斑点状のムラが生じやすい。
ダイ70の内壁面に、傷や可塑剤の凝結物などの異物が付着すると、押し出される溶融樹脂の表面にスジ状の欠陥(ダイライン)が生じることがある。ダイラインなどの表面欠陥を低減するためには、押し出し機30からダイ70の先端までの流路の内壁面は、樹脂の滞留部が付着しにくい構造であること;例えば押し出し機30からダイ70の先端までの流路の内壁面には、傷などがないことが好ましい。
押し出し機30やダイ70などの内壁面は、溶融樹脂が付着しにくくするために、表面粗さを小さくする、または表面エネルギーを低くする表面加工が施されていることが好ましい。そのような表面加工の例には、ハードクロムメッキやセラミック溶射した後、表面粗さ0.2S以下となるように研磨する加工が含まれる。
冷却ロール90は、高剛性の金属ロールであり、内部に温度制御可能な媒体を流通できる構造を有する。冷却ロール90の表面の材質は、ステンレス、アルミニウム、チタンなどでありうる。冷却ロール90の表面には、樹脂を剥離しやすくしたりするためなどから、ハードクロムメッキなどの表面処理を施してもよい。冷却ロール90の表面の粗さRaは、得られるフィルムのヘイズを低く維持するために、0.1μm以下とすることが好ましく、0.05μm以下とすることがより好ましい。冷却ロール90は、複数の冷却ロール90A、90B、90Cおよび90Dで構成されうる。
弾性タッチロール92は、冷却ロール90Aと対向して配置されている。そして、ダイ70から押し出された溶融樹脂が、冷却ロール90Aと弾性タッチロール92とでニップされるようになっている。弾性タッチロール92は、特開平03−124425号、特開平08−224772号、特開平07−100960号などに記載のものが用いられる。
延伸装置130は、必要に応じて設けられうる。延伸装置130は、特に制限されないが、ロール延伸機、テンター延伸機、またはそれらを組み合わせたものなどでありうる。テンター延伸機は、予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーンを有するものが好ましく、各ゾーン間に、各ゾーン間を断熱するためのニュートラルゾーンをさらに有するものが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、1)熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を、押し出し機30のホッパーから投入する工程(投入工程)と、2)押し出し機30において樹脂組成物を圧縮する工程と(圧縮工程)、3)押し出し機30において樹脂組成物を混練する工程と(混練工程)、4)混練した樹脂組成物を、フィルタ部50でろ過する工程と(ろ過工程)、5)ろ過した樹脂組成物を、ダイ70からフィルム状に押し出す工程と(押し出し工程)、6)押し出された樹脂組成物を、冷却固化して熱可塑性樹脂フィルムを得る工程(冷却固化工程)と、を含む。本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、必要に応じて、7)得られたフィルムを延伸する工程(延伸工程)などをさらに含んでもよい。
1)投入工程について
熱可塑性樹脂フィルムの原料となる樹脂組成物を、押し出し機30のホッパーから投入する。熱可塑性樹脂フィルムの原料となる樹脂組成物の形態は、特に制限されないが、予め溶融混練されたペレットであることが好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムの原料となる樹脂組成物は、予め乾燥させておくことが好ましい。具体的には、真空または減圧乾燥機や除湿熱風乾燥機などで、熱可塑性樹脂フィルムの原料に含まれる水分量を200ppm以下、好ましくは100ppm以下となるまで乾燥させておくことが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムの原料となる樹脂組成物のホッパーからの供給は、原料の酸化分解を防止するためなどから、真空下、減圧下または不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムの原料となる樹脂組成物について
熱可塑性樹脂フィルムの原料となる樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂は、特に制限されないが、好ましくはセルロースエステル、(メタ)アクリル樹脂およびシクロオレフィン樹脂であり、より好ましくは(メタ)アクリル樹脂およびシクロオレフィン樹脂である。
セルロースエステル
セルロースエステルは、セルロースを、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸とエステル化反応させて得られる化合物である。セルロースエステルに含まれるアシル基は、脂肪族アシル基または芳香族アシル基であり、好ましくは脂肪族アシル基である。脂肪族アシル基は、直鎖であっても分岐していてもよく、さらに置換基を有してもよい。アシル基で置換されていない部分は、通常、水酸基として存在している。
セルロースエステルは、(メタ)アクリル樹脂との相溶性を高めたり、得られるフィルムの脆性を付与したりする観点から、アシル基の総置換度(Dall)が1.5〜3.0であることが好ましく、2.0〜3.0であることがより好ましい。セルロースエステルのアシル基の総置換度が1.5未満であると、水酸基を比較的多く含むことから、セルロースエステル分子間の水素結合が強固に生じるため、セルロースエステルと(メタ)アクリル樹脂とを溶融混合する際に、セルロースエステルと(メタ)アクリル樹脂とが十分に相溶せず、得られるフィルムのヘイズが高いことがある。さらにセルロースエステルと(メタ)アクリル樹脂が十分には相溶しないことから、(メタ)アクリル樹脂が、金属製のシリンダ内壁面やフィルタに付着しやすくなる。
このうち、炭素数3〜7のアシル基の置換度は、3.0以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましい。炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.2未満であると、例えば(メタ)アクリル樹脂との混合物としたときに、セルロースエステルと(メタ)アクリル樹脂を十分に相溶させにくく、得られるフィルムのヘイズが高いことがある。
アシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法で測定することができる。
セルロースエステルの例には、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどが含まれ、好ましくはセルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネートである。
セルロースエステル樹脂の重量平均分子量Mwは、(メタ)アクリル樹脂との相溶性を高める観点から、7.5×10以上であることが好ましく、7.5×10〜2.4×10の範囲であることがより好ましく、1.0×10〜2.4×10の範囲であることがさらに好ましく、1.6×10〜2.4×10の範囲であることが特に好ましい。重量平均分子量Mwが7.5×10未満であると、得られるフィルムの可とう性が低く、耐熱性が十分でないことがある。一方、重量平均分子量Mwが2.4×10超であると、溶融物の粘度が高く、溶融押し出ししにくいだけでなく、(メタ)アクリル樹脂との相溶性が低く、得られる光学フィルムのヘイズが上昇しやすい。
セルロースエステルは、公知の方法で合成することができる。具体的には、セルロースと、少なくとも酢酸またはその無水物を含む炭素原子数3以上の有機酸またはその無水物とを、触媒の存在下でエステル化反応させてセルロースのトリエステル体を合成する。次いで、セルロースのトリエステルを加水分解して、所望のアシル置換度を有するセルロースエステル樹脂を合成する。得られたセルロースエステル樹脂を、ろ過、沈殿、水洗、脱水および乾燥させた後、セルロースエステル樹脂を得ることができる(特開平10−45804号に記載の方法を参照)。
原料となるセルロースは、例えば綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)およびケナフなどを用いることができる。原料となるセルロースは、一種類だけであってもよいし、二種類以上の混合物であってもよい。
(メタ)アクリル樹脂
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、または(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合モノマーとの共重合体でありうる。(メタ)アクリル酸エステルは、好ましくはメチルメタクリレートである。共重合体におけるメチルメタクリレート由来の構成単位の含有割合は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
共重合体における共重合モノマーの例には、アルキル部分の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート;アルキル部分の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート;後述のラクトン環構造を形成しうる、水酸基を有するアルキル部分の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸などのα,β−不飽和酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和基含有二価カルボン酸;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物など、アクリロイルモルホリン(ACMO)などのアクリルアミド誘導体;N−ビニルピロリドン(VP)などが含まれる。これらは、一種類で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、共重合体の耐熱分解性や流動性を高めるためには、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアルキルアクリレート;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルなどの水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。熱可塑性樹脂をセルロースエステルと(メタ)アクリル樹脂との混合物としたときの、セルロースエステルとの相溶性を高めるためには、アクリロイルモルホリンなどが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂は、得られるフィルムの耐熱性を高めたり、光弾性係数を調整したりする観点などから、ラクトン環構造を含有することが好ましい。(メタ)アクリル樹脂に含まれるラクトン環構造は、好ましくは下記一般式(1)で表される。
Figure 2013119201
式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基は、酸素原子を含んでいてもよい。有機残基の例には、直鎖もしくは分岐状のアルキル基、直鎖もしくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基(Acはアセチル基)、−CN基などが含まれる。式(1)で示されるラクトン環構造は、後述するように、水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造である。
ラクトン環構造を含有する(メタ)アクリル樹脂は、アルキル部分の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(好ましくはメチルメタクリレート)をさらに含み、必要に応じて水酸基を含有するモノマー、不飽和カルボン酸、一般式(2)で表されるモノマーなどに由来する構成単位をさらに含んでいてもよい。
Figure 2013119201
一般式(2)におけるRは、水素原子またはメチル基を示す。Xは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基(Ac:アセチル基)、−CN基、アシル基または−C−OR基(Rは水素原子または炭素数1〜20の有機残基)を示す。
ラクトン環構造を含有する(メタ)アクリル樹脂における、式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90質量%であり、より好ましくは20〜90質量%であり、さらに好ましくは30〜90質量%であり、特に好ましくは40〜80質量%である。ラクトン環構造の含有割合が90質量%超であると、得られるフィルムの可とう性が低下しやすい。また、ラクトン環構造の含有割合が90質量%超である(メタ)アクリル樹脂の溶融物は、金属への付着性が高く、当該溶融物が金属製のシリンダ内壁面やフィルタなどにさらに付着しやすいため、生産性を低下させやすい。ラクトン環構造の含有割合が5質量%未満であると、必要な位相差を有するフィルムが得られにくく、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が十分でないことがある。
ラクトン環構造を含有する(メタ)アクリル樹脂における、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有割合は、好ましくは10〜95質量%であり、より好ましくは10〜80質量%であり、さらに好ましくは10〜65質量%であり、特に好ましくは20〜60質量%である。
ラクトン環構造を含有する(メタ)アクリル樹脂における、水酸基含有モノマー、不飽和カルボン酸または一般式(2)で表されるモノマーに由来する構成単位の含有割合は、それぞれ独立に好ましくは0〜30質量%であり、より好ましくは0〜20質量%であり、さらに好ましくは0〜10質量%である。
ラクトン環構造を含有する(メタ)アクリル樹脂は、少なくとも、水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、それ以外のアルキル(メタ)アクリレートとを含むモノマー成分を重合反応させて、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得るステップ;得られた重合体を加熱処理してラクトン環構造を導入するステップ、を経て製造されうる。
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量Mwは、好ましくは1.1×10〜1.0×10の範囲内であり、より好ましくは1.4×10〜6.0×10の範囲内であり、さらに好ましくは2.0×10〜4.0×10の範囲内である。(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量Mwが1.1×10未満であると、得られるフィルムの脆性が高すぎることがあり、1.0×10超であると、溶融物の粘度が高すぎたり、得られるフィルムのヘイズが高かったりする。
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2800000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂は、例えば懸濁重合、乳化重合、溶液重合または塊状重合などの公知の方法で製造されうる。重合開始剤は、通常のパーオキサイド系化合物、アゾ系化合物、レドックス系化合物を用いることができる。重合温度は、懸濁重合または乳化重合では30〜100℃程度とし;溶液重合または塊状重合では、80〜160℃程度としうる。得られる重合体の還元粘度を調整するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いてもよい。
(メタ)アクリル樹脂の市販品の例には、デルペット60N、80N、80NH(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)などが含まれる。
(メタ)アクリル樹脂は、一種類であっても、二種類以上の混合物であってもよい。
熱可塑性樹脂が、(メタ)アクリル樹脂とセルロースエステルとの混合物である場合、(メタ)アクリル樹脂とセルロースエステルとの含有比率(質量比)は、(メタ)アクリル樹脂:セルロースエステル=95:5〜30:70であることが好ましく、90:10〜50:50であることがより好ましく、90:10〜60:40であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル樹脂の含有割合が、(メタ)アクリル樹脂とセルロースエステルの合計に対して95質量%超であると、セルロースエステルによる効果が十分に得られず、30質量%未満であると、得られるフィルムの耐熱湿性が十分であることがある。
シクロオレフィン樹脂
シクロオレフィン樹脂は、シクロオレフィンの単独重合体またはシクロオレフィンとそれと共重合可能なモノマーとの共重合体、あるいはそれらの水添物でありうる。シクロオレフィンの共重合体における、シクロオレフィン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは50モル%以下であり、より好ましくは15〜50モル%である。シクロオレフィンの共重合体に含まれる共重合モノマーは、一種類であっても二種類以上であってもよい。
シクロオレフィンの例には、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセンなどの多環構造の不飽和炭化水素;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素などが含まれ、好ましくはノルボルネンである。シクロオレフィンは、置換基(極性基)をさらに有していてもよい。
シクロオレフィンが有する置換基(極性基)の例には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが含まれ、好ましくはエステル基、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基である。
共重合体における共重合モノマーの例には、エチレンまたはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどの炭素数3〜20のα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエンなどが含まれる。
シクロオレフィン樹脂の例には、特開2010−78700号に記載のシクロオレフィン樹脂が含まれる。シクロオレフィン樹脂の市販品の例には、ゼオノア(ZEONOR)(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(ZEONEX)(日本ゼオン(株)製)、APEL(三井化学(株)製)などが好ましく用いられる。
熱可塑性樹脂フィルムの原料となる樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、微粒子(マット剤)などの添加剤をさらに含有していてもよい。
酸化防止剤
溶融押出法でフィルムを製造する工程では、高温下で樹脂組成物を溶融混練するため、樹脂組成物に含まれる樹脂などが熱や酸素によって分解されやすい。そのような、樹脂などの熱や酸素による分解を抑制するために、熱可塑性樹脂フィルムの原料となる樹脂組成物は、安定化剤として酸化防止剤をさらに含むことが好ましい。
酸化防止剤の例には、イオウ系化合物、フェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、不飽和二重結合を含有する化合物などが含まれる。
イオウ系化合物の例には、住友化学社製Sumilizer TPL−R、Sumilizer TP−Dなどが含まれる。
フェノール系化合物の例には、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有する化合物(例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなど)が含まれる。フェノール系化合物の市販品の例には、BASFジャパン株式会社製Irganox1076、Irganox1010などが含まれる。
リン系化合物の例には、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト等が含まれる。リン系化合物の市販品の例には、住友化学株式会社製SumilizerGP、株式会社ADEKA製ADK STAB PEP−24G、ADK STAB PEP−36およびADK STAB 3010、BASFジャパン株式会社製IRGAFOS P−EPQ、堺化学工業株式会社製GSY−P101などが含まれる。
ヒンダードアミン系化合物の例には、BASFジャパン株式会社製Tinuvin144およびTinuvin770、株式会社ADEKA製ADK STAB LA−52などが含まれる。
不飽和二重結合を含有する化合物の例には、住友化学株式会社製Sumilizer GM、およびSumilizer GSなどが含まれる。
酸化防止剤は、一種類のみであっても二種類以上の混合物であってもよいが、好ましくは二種類以上の混合物であることが好ましい。例えば、リン系化合物、フェノール系化合物および不飽和二重結合を含有する化合物を併用することが好ましい。
酸化防止剤の含有量は、前述の熱可塑性樹脂の合計に対して0.001〜5質量%であることが好ましく、0.005〜2質量%であることがより好ましい。
紫外線吸収剤
熱可塑性樹脂フィルムの原料となる樹脂組成物は、必要に応じて紫外線吸収剤をさらに含有してもよい。紫外線吸収剤は、波長400nm以下の紫外線を吸収する化合物であり、好ましくは波長370nmでの透過率が10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である化合物である。
紫外線吸収剤の光線透過率は、紫外線吸収剤を溶媒(例えばジクロロメタン、トルエンなど)に溶解した溶液を、常法により、分光光度計により測定することができる。分光光度計は、例えば、島津製作所社製の分光光度計UVIDFC−610、日立製作所社製の330型自記分光光度計、U−3210型自記分光光度計、U−3410型自記分光光度計、U−4000型自記分光光度計等を用いることができる。
紫外線吸収剤は、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体および高分子紫外線吸収剤などであってよく、得られるフィルムの透明性を損なわないためには、好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびベンゾフェノン系紫外線吸収剤であり、さらに好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤がより好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例には、5-クロロ-2-(3,5-ジ-sec-ブチル-2-ヒドロキシルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、(2-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖および側鎖ドデシル)-4-メチルフェノールなどが含まれる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品の例には、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328(BASFジャパン株式会社製)などのチヌビン類が含まれる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例には、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4-ベンジルオキシベンゾフェノンなどが含まれる。
高分子紫外線吸収剤の例には、特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が含まれる。紫外線吸収剤は、一種類であってもよいし、二種以上の混合物であってもよい。
紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収剤の種類にもよるが、樹脂組成物全体に対して0.5〜4質量%であることが好ましく、0.6〜3.5質量%であることがより好ましい。
微粒子(マット剤)
熱可塑性樹脂フィルムの原料となる樹脂組成物は、得られる熱可塑性樹脂フィルムの表面の滑り性を高めるためなどから、微粒子(マット剤)をさらに含有してもよい。
微粒子は、無機微粒子であっても有機微粒子であってもよい。無機微粒子の例には、二酸化珪素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムなどが含まれる。なかでも、二酸化珪素や酸化ジルコニウムが好ましく、得られるフィルムのヘイズの増大を少なくするためには、より好ましくは二酸化珪素である。
二酸化珪素の微粒子の例には、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKE−P10、KE−P30、KE−P50、KE−P100(以上日本触媒(株)製)などが含まれる。
酸化ジルコニウムの微粒子の例には、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)などが含まれる。
ポリマー微粒子を構成するポリマーの種類には、シリコーン樹脂、フッ素樹脂およびアクリル樹脂などが含まれ、好ましくはシリコーン樹脂であり、より好ましくは三次元の網状構造を有するシリコーン樹脂である。ポリマー微粒子の例には、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)が含まれる。
なかでも、アエロジルR972V、NAX50、シーホスターKE−P30などが、得られるフィルムの濁度を低く保ちつつ、摩擦係数を低減させうるため特に好ましい。
微粒子は、分散性を高め、得られるフィルムのヘイズの増大を少なくするためには、表面処理されていることが好ましい。表面処理剤の例には、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどが含まれる。
微粒子の一次粒子径は、5〜50nmであることが好ましく、7〜20nmであることがより好ましい。一次粒子径が大きいほうが、得られるフィルムの滑り性を高める効果は大きいが、透明性が低下しやすい。そのため、微粒子は、粒子径0.05〜0.3μmの二次凝集体として含有されていてもよい。微粒子の一次粒子またはその二次凝集体の大きさは、透過型電子顕微鏡にて倍率50万〜200万倍で一次粒子または二次凝集体を観察し、一次粒子または二次凝集体100個の粒子径の平均値として求めることができる。
微粒子の含有量は、前述の熱可塑性樹脂の合計に対して0.05〜1.0質量%であることが好ましく、0.1〜0.8質量%であることがより好ましい。
前述の通り、樹脂組成物は、ペレット化されていることが好ましい。樹脂組成物のペレット化は、公知の方法で行うことができる。例えば、前述の樹脂組成物を押し出し機にて溶融混錬した後、ダイからストランド状に押し出す。ストランド状に押し出された溶融樹脂を、水冷または空冷した後、カッティングしてペレットを得ることができる。
紫外線吸収剤、酸化防止剤または微粒子(マット剤)などの少量成分は、前述の樹脂組成物からなるメインペレットに含有させてもよいし、前述の樹脂組成物とは別の高濃度のマスターペレットに含有させてもよい。
2)圧縮工程
圧縮工程では、押し出し機30内で、投入された樹脂組成物を圧縮して溶融させる。圧縮工程は、図2で示される単軸押し出し機では圧縮部Bで行うことができ;図3Aで示される二軸押し出し機では第1の圧縮部B1および第2の圧縮部B2で行うことができる。
3)混練工程
混練工程では、押し出し機30内で、溶融された樹脂組成物を分散および混練させる。混練工程は、図2で示される単軸押し出し機では混練部Cで行うことができ;図3Aで示される二軸押し出し機では第1の混練部C1および第2の混練部C2で行うことができる。
2)の圧縮工程および3)の混練工程における樹脂の溶融温度は、熱可塑性樹脂の種類、溶融物の粘度や吐出量、得られるフィルムの膜厚などにもよるが、フィルムのガラス転移温度をTg℃としたときに、好ましくはTg℃〜(Tg+100)℃の範囲であり、より好ましくは(Tg+10)℃〜(Tg+90)℃の範囲である。例えば、セルロースエステル、(メタ)アクリル樹脂またはそれらの混合物を含む樹脂組成物の溶融温度は、150〜300℃程度、好ましくは200〜260℃、より好ましくは240〜260℃としうる。溶融温度が低すぎると、溶融粘度が高いため、樹脂組成物を十分に混練できないことがある。一方、溶融温度が高すぎると、樹脂が熱劣化することがある。
2)の圧縮工程および3)の混練工程における樹脂の溶融粘度は、1〜10000Pa・sであることが好ましく、10〜1000Pa・sであることがより好ましい。溶融物の溶融粘度が高すぎると、圧力が上昇するため、押し出し機内での滞留時間が長くなりやすい。押し出し機内での樹脂組成物の滞留時間は、5分以下、好ましくは3分以下、より好ましくは2分以下である。滞留時間は、フィルム材料の供給量、シリンダの内径(D)に対するシリンダの長さ(L)の比であるL/D、スクリューの回転数またはスクリューの溝の深さなどによって調整することができる。
2)の圧縮工程および3)の混練工程における樹脂のせん断速度は、1/秒〜10000/秒、好ましくは5/秒〜1000/秒、より好ましくは10/秒〜100/秒である。
4)ろ過工程
ろ過工程では、押し出し機30内で溶融混練された樹脂組成物を、フィルタ部50でろ過する。それにより、溶融混練された樹脂組成物に含まれる異物などを除去する。
本発明では、前述した通り、押し出し機30、フィルタ部50、ダイ70およびそれらを連結する配管60の内壁面への溶融した樹脂組成物(溶融樹脂)の付着を抑制するために、滑剤を投入する。滑剤の投入は、1)の投入工程の後かつ3)の混練工程の前または3)の混練工程の後かつ4)のろ過工程の前;好ましくは3)の混練工程の直前または4)のろ過工程の直前;より好ましくは3)の混練工程の直前に行う。押し出し機30よりも下流側にある、フィルタ部50やダイ70の先端部まで、滑剤の効果を十分に発現させるためである。
即ち、滑剤の投入を、1)の投入工程において原料である樹脂組成物と同時に行うと、押し出し機30の原料の供給口36付近(供給部A)の圧力は低いため、滑剤が押し出し機30の熱によって揮発しやすく、揮発した滑剤が押し出し方向とは反対方向に逆流して除去されやすい。これに対して、滑剤の投入を、1)の投入工程の後かつ3)の混練工程の前、または3)の混練工程の後かつ4)のろ過工程の前で行うと、押し出し機30の圧縮部Bや配管60内の圧力は高いため、滑剤を揮発させにくくし、溶融樹脂中に留まらせることができる。その結果、4)のろ過工程や5)の押し出し工程においても、滑剤を溶融樹脂中に留まらせることができ、フィルタ部50、ダイ70およびそれらを連結する配管60などの内壁面への溶融樹脂の付着を抑制できる。
滑剤の投入を、1)の投入工程の後かつ3)の混練工程の前で行うためには、例えば図2の単軸押し出し機30では、混練部Cの直前部に設けられた投入口39から;図3の二軸押し出し機30’では、第1の混練部C1の直前部に設けられた投入口49から、それぞれ滑剤を投入すればよい。滑剤の投入を、3)の混練工程の後かつ4)のろ過工程の前で行うためには、例えば図1の配管60のフィルタ部50の直前部に設けられた投入口62などから滑剤を投入すればよい。
滑剤について
本発明に用いられる滑剤の例には、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンワックスなどの炭化水素系滑剤;ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸系滑剤;セチルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール系滑剤;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、硬化ひまし油などの脂肪酸エステル系滑剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸系滑剤などが含まれる。なかでも、高級アルコール系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤および脂肪酸エステル系滑剤などが好ましい。
高級アルコール系滑剤の炭素数は、好ましくは12〜22である。脂肪酸アミド系滑剤または脂肪酸エステル系滑剤を構成する脂肪酸の炭素数は、それぞれ好ましくは12〜22である。
これらの滑剤は、樹脂組成物の溶融粘度を低下させ、溶融押し出しする際に、押し出し機30、フィルタ部50、ダイ70およびそれらを連結する配管60の内壁面への樹脂の付着を抑制しうる。
滑剤の添加量は、前述の熱可塑性樹脂の合計に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜2質量%であり、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。滑剤の添加量が少なすぎると、フィルタ部50、ダイ70およびそれらを連結する配管60などにおいて滑剤の効果が得られにくい。一方、滑剤の添加量が多すぎると、得られるフィルムに滑剤が残留し、ブリードアウト耐性などが低下しやすい。
5)押し出し工程
フィルタ部50でろ過された溶融樹脂を、ダイ70からフィルム状に押し出す。ダイ70の出口部分における溶融樹脂の溶融温度Tmは200〜300℃程度としうる。
6)冷却固化工程
ダイ70から押し出された樹脂を、冷却ロール90Aと弾性タッチロール92とでニップして、フィルム状の溶融樹脂を所定の厚みにする。そして、フィルム状の溶融樹脂を、複数の冷却ロール90A〜90Dで段階的に冷却して固化させる。
冷却ロール90Aの表面温度Tr1と冷却ロール90Bの表面温度Tr2は、それぞれ独立に(Tg−50)℃以上Tg以下としうる。
冷却ロール90Bの周速度R2は、冷却ロール90Aの周速度R1よりも大きいことが好ましい。これらの2つの冷却ロール間のフィルムに張力が加わり、それによりフィルムと冷却ロール90Aとの密着性が高められる。この周速度の比は1.00〜1.05の範囲であることが好ましい。周速度の比が1.05超であると、フィルムが破断するおそれがある。同様に、冷却ロール90Cの周速度が、冷却ロール90Aの周速度よりも大きいことが好ましい。
ドロー比は5〜30であることが好ましい。ドロー比は、ダイ70のリップクリアランスを、冷却ロール90A〜90D上で冷却固化して得られるフィルムの平均膜厚で除して得られる値である。ドロー比を上記範囲とすることで、液晶表示装置で画像を表示したときに、明暗のスジや斑点状ムラとなる故障が少ないフィルムが得られやすい。ドロー比は、ダイリップクリアランスと冷却ロールの引き取り速度により調整できる。
ダイ70のリップ(開口部)から冷却ロール90Aの表面への溶融樹脂の吐出は、好ましくは70kPa以下、より好ましくは50〜70kPaに減圧下で行うことが好ましい。得られるフィルムにダイラインが生じにくいからである。
弾性タッチロール92の表面温度Tr0は、フィルムのガラス転移温度(Tg)以下であることが好ましく、Tg−50≦Tr0≦Tgであることがより好ましい。弾性タッチロール92の表面温度Tr0がTg超であると、フィルムと冷却ロール90Aとが剥離しにくくなることがある。
弾性タッチロール92の線圧を9.8〜147N/cmにすることが好ましい。線圧が9.8N/cm未満であると、ダイラインを十分に抑制しにくい。
熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、ダイ70から押し出されたフィルム状の溶融樹脂の、弾性タッチロール92でニップされる直前の弾性タッチロール92側の表面温度Ttは、好ましくはTg<Tt<Tg+110℃であり、より好ましくはTg+10℃<Tt<Tg+90℃であり、さらに好ましくはTg+20℃<Tt<Tg+70℃である。フィルム状の溶融樹脂の表面温度Ttが上記範囲であると、ニップするときのフィルム状の溶融樹脂の粘度を、適切な範囲にすることができ、ダイラインを抑制しやすい。
フィルム状の溶融樹脂の、弾性タッチロール92にニップされる直前の弾性タッチロール92側の表面温度Ttの調整は、例えばダイ70と冷却ロール90Aとの間のエアギャップ(距離)を短くして、ダイ70と冷却ロール90Aとの間での冷却を抑制する方法、ダイ70と冷却ロール90Aとの間を断熱材で囲って保温または加温する方法などによって行うことができる。加温は、熱風、赤外線ヒータまたはマイクロ波による加熱などでありうる。
フィルムの表面温度やロールの表面温度は、非接触式の赤外温度計で測定できる。具体的には、フィルムまたはロールの表面温度は、非接触ハンディ温度計(IT2−80、(株)キーエンス製)を用いて、フィルムまたはロールの幅方向の任意の10箇所の表面温度を、フィルムまたはロールの表面から0.5m離れた位置で測定する。
冷却ロール90A〜90Dで固化させたフィルムを、剥離ロール(不図示)などで剥離する。フィルムを剥離する際は、変形を防止するために、フィルムに加える張力を調整することが好ましい。
7)延伸工程
得られたフィルムを、必要に応じて延伸装置130にて延伸してもよい。延伸は、フィルムの幅方向(TD方向)、搬送方向(MD方向)または斜め方向のうち少なくとも一方向に延伸すればよく、フィルムの幅方向(TD方向)と搬送方向(MD方向)の両方に延伸することが好ましい。
フィルムの幅方向(TD方向)と搬送方向(MD方向)の両方に延伸する場合、フィルムの幅方向(TD方向)の延伸と搬送方向(MD方向)の延伸とは、逐次的に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
延伸倍率は、各方向に1.01〜3.0倍、好ましくは1.1〜2.5倍としうる。フィルムの幅方向(TD方向)と搬送方向(MD方向)の両方に延伸する場合、各方向に最終的に1.01〜3.0倍、好ましくは1.1〜2.5倍とすることが好ましい。
延伸温度は、Tg−10℃〜(Tg+50)℃であることが好ましく、Tg−10℃〜(Tg+40)℃であることがより好ましい。例えば、(メタ)アクリル樹脂やセルロースエステルを含有するフィルムの延伸温度は、120〜180℃程度としうる。
延伸温度は、フィルムの幅方向(TD方向)または搬送方向(MD方向)に均一であることが好ましく、フィルムの延伸温度の幅方向または搬送方向のばらつきが±2℃以下であることが好ましく、±1℃以下であることがより好ましく、±0.5℃以下であることがさらに好ましい。
延伸後に得られるフィルムのレターデーションを調整したり、寸法変化を少なくしたりするために、必要に応じて、延伸後に得られるフィルムを搬送方向(MD方向)または幅方向(TD方向)に収縮させてもよい。延伸後に得られるフィルムを搬送方向(MD方向)に収縮させるには、例えば幅方向に把持したクリップを解除して、搬送方向に弛緩させたり;隣り合うクリップの間隔を搬送方向に徐々に狭くして搬送方向に弛緩させたりすればよい。
得られるフィルムの寸法変化率を小さくするためには、フィルムの幅方向(TD方向)と搬送方向(MD方向)ともに0.5〜10%収縮させることが好ましい。
得られる熱可塑性樹脂フィルムの幅は、例えば0.5〜4.0m、好ましくは1.0〜3.0mとしうる。熱可塑性樹脂フィルムの膜厚変動は、±3%以下であることが好ましく、±1%以下であることがさらに好ましい。
延伸後、得られる熱可塑性樹脂フィルムの両端部をスリットした後、ナール加工(エンボッシング加工)を施すことが好ましい。得られる熱可塑性樹脂フィルム同士の貼り付きやすり傷の発生を防止するためである。得られる熱可塑性樹脂フィルムを、巻取り機110によって巻き取る。
本発明では、滑剤の投入を、前述したタイミングで行う。そのため、4)のろ過工程や5)の押し出し工程においても、滑剤を溶融樹脂中に留まらせることができ、少ない滑剤の添加量であっても、フィルタ部50、ダイ70およびそれらを連結する配管60などにおいても、滑剤の効果を十分に得ることができる。その結果、フィルタ部50、ダイ70およびそれらを連結する配管60の内壁面への溶融樹脂の付着を抑制でき、それにより滞留劣化物の発生を抑制できる。従って、得られる熱可塑性樹脂フィルムは、滞留劣化物などの異物の混入や、滞留劣化物によるフィルム表面のスジ状故障が低減されうる。また、樹脂組成物を均一かつ十分に混練できるので、得られる熱可塑性樹脂フィルムの強度も高くしうる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法によって得られる熱可塑性樹脂フィルムは、種々の用途に用いることができ、好ましくは光学フィルムに用いられる。
光学フィルム
光学フィルムは、好ましくは液晶表示装置用の光学フィルムであり、その具体例には、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、ハードコートフィルム、防眩フィルム、帯電防止フィルム、視野角拡大用の光学補償フィルムなどが含まれる。偏光板保護フィルムは、単なる保護フィルムであってもよいが、位相差調整機能などをさらに有する保護フィルムであってもよい。
光学フィルムの厚みは、10〜200μmであることが好ましく、10〜120μmであることがより好ましく、10〜80μmであることがさらに好ましい。フィルムの厚みが10μmより小さすぎると、所望のレターデーションが得られにくい。一方、フィルムの厚みが200μmより大きすぎると、湿度などの影響によるレターデーションの変動が大きくなりやすい。
光学フィルムの、25℃、55%RHの環境下で、波長590nmにて測定される面内方向のレターデーションRoは0nm〜100nmの範囲であることが好ましく、0〜250nmの範囲であることがより好ましい。厚み方向のレターデーションRthは−100nm〜100nmの範囲であることが好ましく、−50nm〜50nmの範囲であることがより好ましい。レターデーションは、例えば熱可塑性樹脂フィルムの組成や延伸条件などによって調整されうる。
レターデーションRおよびRthは、それぞれ以下の式で表される。
式(I) R=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(nx:フィルム面内の遅相軸方向の屈折率、ny:フィルム面内において、遅相軸に対して直交する方向の屈折率、nz:厚み方向におけるフィルムの屈折率、d:フィルムの厚み(nm))
レターデーションRおよびRthは、例えば以下の方法によって求めることができる。
1)フィルムの平均屈折率を屈折計により測定する。
2)王子計測機器社製KOBRA−21ADHにより、フィルム法線方向からの波長590nmの光を入射させたときの面内方向のレターデーションRを測定する。
3)王子計測機器社製KOBRA−21ADHにより、フィルム法線方向に対してθの角度(入射角(θ))から波長590nmの光を入射させたときのレターデーション値R(θ)を測定する。θは0°よりも大きく、好ましくは30°〜50°である。
4)測定されたRおよびR(θ)と、前述の平均屈折率と膜厚とから、王子計測機器社製KOBRA−21ADHにより、nx、nyおよびnzを算出し、Rthを算出する。レターデーションの測定は、23℃55%RH条件下で行うことができる。
光学フィルムの面内遅相軸とフィルムの幅方向とのなす角θ1(配向角)は、−5°以上+5°以下であることが好ましく、−1°以上+1°以下であることがより好ましい。光学フィルムの配向角θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて測定することができる。
光学フィルムの、JIS K−7136に準拠して測定されるヘイズは、液晶表示装置において十分な輝度や高いコントラストを得るためには、0.5%以下であることがより好ましく、0.35%以下であることがさらに好ましく、0.05%以下であることが特に好ましい。光学フィルムのヘイズを低くするためには、溶融温度を高くしたり、セルロースエステルの炭素数3〜7のアシル基の置換度を高めたりすればよい。
光学フィルムのヘイズは、JIS K−7136に準拠した方法;具体的には、以下の方法で測定することができる。
1)得られた光学フィルムを、23℃55%RH下で5時間以上調湿する。その後、フィルムの表面に付着したホコリなどをブロワーなどで除去する。
2)次いで、光学フィルムのヘイズを、23℃55%RHの条件下にて、ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)にて測定する。ヘイズメーターの光源は、5V9Wのハロゲン球とし、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)としうる。
光学フィルムの可視光透過率は、90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましい。
光学フィルムは、必要に応じて他の機能層(接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)をさらに有していてもよい。
熱可塑性樹脂フィルムからなる光学フィルムは、前述のように偏光板に用いられうる。即ち、偏光板は、偏光子と、その少なくとも一方の面に配置された前述の熱可塑性樹脂フィルムからなる光学フィルムと、を含む。
偏光子は、一定方向の偏波面の光のみを通過させる素子である。偏光子の代表的な例は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムであり、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものと、がある。
偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素または二色性染料で染色して得られるフィルムであってもよいし、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素または二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくはさらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。偏光子の厚さは、5〜30μmであることが好ましく、10〜20μmであることがより好ましい。
ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール水溶液を製膜したものであってもよい。ポリビニルアルコール系フィルムは、偏光性能および耐久性能に優れ、色斑が少ないなどことから、エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましい。エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムの例には、特開2003−248123号、特開2003−342322号等に記載されたエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のフィルムが含まれる。
二色性色素の例には、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素およびアントラキノン系色素などが含まれる。
前述の光学フィルムは、偏光子の少なくとも一方の面に直接配置されてもよいし、他のフィルムまたは層を介して配置されてもよい。
偏光子の他方の面には、前述の光学フィルムが配置されてもよいし、それ以外の透明保護フィルムが配置されてもよい。透明保護フィルムの例には、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
偏光板は、通常、偏光子と、前述の光学フィルムとを貼り合わせるステップを経て得ることができる。貼り合わせに用いられる接着剤の例には、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液などである。
液晶表示装置は、液晶セルと、それを挟持する一対の偏光板と、を有する。そして、一対の偏光板のうち少なくとも一方が前述の光学フィルムを有する偏光板であり、好ましくは一対の偏光板の両方が前述の光学フィルムを有する偏光板である。
図4は、液晶表示装置の一実施形態の基本構成を示す模式図である。図4に示されるように、液晶表示装置210は、液晶セル220と、それを挟持する第一の偏光板240および第二の偏光板260と、バックライト280と、を有する。
液晶セル220の表示方式は、特に制限されず、TN(Twisted Nematic)方式、STN(Super Twisted Nematic)方式、IPS(In−Plane Switching)方式(FFS方式も含む)、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式、VA(Vertical Alignment)方式(MVA;Multi−domain Vertical AlignmentやPVA;Patterned Vertical Alignmentも含む)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)方式等がある。視野角が比較的広いなどの観点からは、IPS方式などが好ましく、コントラストが高いなどの観点からは、VA方式などが好ましい。
第一の偏光板240は、視認側に配置されており、第一の偏光子242と、それを挟持する保護フィルム244(F1)および246(F2)とを有する。第二の偏光板260は、バックライト280側に配置されており、第二の偏光子262と、それを挟持する保護フィルム264(F3)および266(F4)とを有する。保護フィルム246(F2)と264(F3)の一方は、必要に応じて省略されてもよい。
保護フィルム244(F1)、246(F2)、264(F3)および266(F4)の少なくとも一以上を前述の光学フィルムとしうるが、好ましくは液晶セル側に配置される保護フィルム246(F2)と264(F3)の少なくとも一方を、前述の光学フィルムとしうる。
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
1.熱可塑性樹脂フィルムの材料
1)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂P1:
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度0.2、プロピオニル置換度2.56、総アシル基置換度2.76、重量平均分子量Mw:19万)
熱可塑性樹脂P2:
セルロースアセテートプロピーネート(アセチル置換度1.6、プロピオニル置換度1.21、総アシル基置換度2.81、重量平均分子量Mw:21万)
熱可塑性樹脂P3:
(メタ)アクリル樹脂(メチルメタクリレート(MMA)とビニルピロリドン(VP)の共重合体(MMA/VP=70/30(質量比))、重量平均分子量Mw:10万)
熱可塑性樹脂P4:
(メタ)アクリル樹脂(メチルメタクリレート(MMA)とアクリロイルモルホリン(ACMO)の共重合体(MMA/ACMO=70/30(質量比))、重量平均分子量Mw:10万)
熱可塑性樹脂P5:
シクロオレフィン樹脂のペレット(ノルボルネン系重合体、日本ゼオン社製ZEONOR1420、Tg:136℃)
熱可塑性樹脂P7:
(メタ)アクリル樹脂のペレット(アクリル旭化成ケミカルズ(株)製80NH(PMMA))
熱可塑性樹脂P6:
以下の方法で合成して得られた、ラクトン環含有(メタ)アクリル樹脂のペレット
ラクトン環含有(メタ)アクリル樹脂のペレットの作製
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1mの反応釜に、204kgのメタクリル酸メチル(MMA)、51kgの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、249kgのトルエンを仕込み、窒素ガスを通じつつ、105℃まで昇温して還流させた。そして、得られた溶液に、重合開始剤として281gのターシャリーアミルパーオキシイソノナノエート(アトフィナ吉富製、商品名:ルペロックス570)を添加し、さらに561gの重合開始剤と5.4kgのトルエンからなる溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜110℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
得られた重合体溶液に、255gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(堺化学製、商品名:Phoslex A−18)を添加し、還流下(約90〜110℃)で5時間、環化縮合反応を行った。
次いで、上記環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度250℃、回転数150rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(Φ=42mm、L/D=42)に、樹脂量換算で15kg/時間の処理速度で導入し、押し出し機内で環化縮合反応と脱揮を行った。脱揮後、得られた溶融樹脂をストランド状に押し出した後、水冷してカッティングし、透明なペレットを得た。透明なペレットの、ラクトン環構造の含有割合は20質量%であった。
2)滑剤
滑剤1:新日本理化(株)社製コノール30s(ステアリルアルコール)
滑剤2:新日本理化(株)社製コノール1275(ラウリルアルコール)
滑剤3:理研ビタミン(株)社製リケマール900A(ステアリルステアレート)
2.ペレットの製造
(製造例1)
熱可塑性樹脂P1を、除湿熱風乾燥機にて90℃で6時間以上乾燥させて、水分率を80ppm以下とした。乾燥させた熱可塑性樹脂P1と、下記添加剤とをホッパーで混合し、樹脂組成物1とした。
(樹脂組成物1の組成)
熱可塑性樹脂P1:100質量部
GSY−P101(堺化学工業(株)製):0.25質量部
Irganox1010(BASFジャパン(株)製):0.5質量部
SumilizerGS(住友化学(株)製):0.24質量部
R972V(アエロジル社製):0.15質量部
樹脂組成物1を二軸押し出し機に投入して溶融混練した。ダイスの直前に設けられた目開き100μmの金属メッシュ(フィルタ部)にて、溶融樹脂をろ過した後、240℃で、ダイスの円形の口径からストランド状に押し出した。押し出された溶融樹脂を水冷した後、ストランドカッターで長径5mm、断面直径が2.5mmの円筒形にカットし、ペレットを得た。
(製造例2)
熱可塑性樹脂P1に代えて、熱可塑性樹脂P2を用い、かつ水分率が50ppmとした以外は製造例1と同様にしてペレットを得た。
(製造例3)
熱可塑性樹脂P1に代えて、熱可塑性樹脂P3を用い、かつ75℃で乾燥させて水分率を320ppmとした以外は製造例1と同様にしてペレットを得た。
(製造例4)
熱可塑性樹脂P1に代えて、熱可塑性樹脂P4を用い、かつ75℃で乾燥させて水分率を100ppmとした以外は製造例1と同様にしてペレットを得た。
(製造例5〜7)
熱可塑性樹脂P1に代えて、熱可塑性樹脂P5〜P7を用いた以外は製造例1と同様にしてペレットを得た。
3.熱可塑性樹脂フィルムの製造
(実施例1)
製造例1で得られたペレットを、減圧下、90℃、6時間乾燥させた後、単軸押し出し機に投入した。次いで、製造例1で得られたペレットに対して0.5質量%の滑剤1を、単軸押し出し機の混練部(図2では混練部Cに相当する部分)の直前に投入し、窒素雰囲気下、240℃で溶融混練した。その後、ダイから、表面温度が90℃である冷却ロール上に押し出した。そして、冷却ロール上に押し出された樹脂を、弾性タッチロールで押圧して成形した。
ダイのスリットのギャップが、フィルム幅方向の端部から30mm以内では0.7mm、それ以外の箇所では1mmとした。弾性タッチロールの表面温度は80℃とした。
ダイから押し出された樹脂が冷却ロールに接触する位置P1から、冷却ロールと弾性タッチロールとのニップ部分の、冷却ロールの回転方向上流端の位置P2までの、冷却ローラの周面に沿った長さLを20mmとした。弾性タッチロールの冷却ロールに対する線圧は14.7N/cmとした。
その後、弾性タッチロールを冷却ロールから離間させ、冷却ロールと弾性タッチロールとでニップされる直前の溶融樹脂の温度Tを測定した。当該溶融樹脂の温度Tは、ニップ上流端P2よりも更に1mm上流側の位置で、温度計(安立計器株式会社製HA−200E)により測定した結果、141℃であった。
ダイから押し出された樹脂を、複数の冷却ロールで冷却固化した後、剥離ロールで剥離して、厚さ80μm、幅1000mm、長さ1500mの原反フィルムを得た。得られた原反フィルムの両端部10cmをスリットし、ロール延伸装置にて原反フィルムの搬送方向(MD方向)に、150℃で延伸倍率2.0倍に延伸した。搬送方向(MD方向)の延伸は、原反フィルムの両面をロール延伸装置の加熱ヒータで加熱しながら、搬送方向下流側のロールの周速を、原反フィルムの搬送速度の2倍に設定して行った。
搬送方向(MD方向)に延伸後のフィルムは、両端部が収縮しているため、さらにフィルムの両端部を20cmスリットした。得られたフィルムの両端部を、テンター延伸機のクリップで把持して、予熱ゾーンで120℃に予熱した後、延伸ゾーンでフィルムの幅方向(TD方向)に150℃で延伸倍率2.0倍に延伸した。その後、得られたフィルムを、幅方向に3%緩和させながら30℃まで冷却させた。次いで、クリップを外して、フィルム両端部のクリップで把持されていた部分20cmを裁ち落とした後、フィルム両端部に幅20mm、高さ25μmのナーリング加工を施して、熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られた熱可塑性樹脂フィルムを、巻き取り張力220N/mにて巻き取った。熱可塑性樹脂フィルムは、膜厚20μm、幅1800mm、長さ5000mであり、DSC法により測定されるガラス転移温度は約120℃であった。
(実施例2)
製造例1で得られたペレットを製造例2で得られたペレットに変更した以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
(実施例3〜4)
製造例1で得られたペレットを製造例3〜4で得られたペレットに変更し、かつ減圧下、70℃、8時間で乾燥させた以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
(実施例5〜7)
製造例1で得られたペレットを、製造例5〜7で得られたペレットにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
(実施例8)
熱可塑性樹脂P1を、除湿熱風乾燥機にて90℃で6時間以上乾燥させて、水分率を80ppmとした。乾燥させた熱可塑性樹脂P1と、下記添加剤とをホッパーにて混合し、樹脂組成物2とした。
(樹脂組成物2の組成)
熱可塑性樹脂P1:100質量部
GSY−P101(堺化学工業(株)製):0.25質量部
Irganox1010(BASFジャパン(株)製):0.5質量部
SumilizerGS(住友化学(株)製):0.24質量部
R972V(アエロジル社製):0.15質量部
得られた樹脂組成物2を、二軸押し出し機(テクノベル社製MFU2シリーズ)のホッパー(原料供給口)から投入した。次いで、熱可塑性樹脂P1に対して0.5質量%の滑剤1を、二軸押し出し機のニーディングディスクセグメント(図3Aでは第1の混練部C1に相当する部分)の直前に投入し、窒素雰囲気下、240℃で溶融混練した。溶融樹脂を、ダイの直前に設けられた目開き10μmの金属不織布フィルタ(フィルタ部)にてろ過した。その後、溶融樹脂を、ダイから表面温度が90℃である冷却ロール上にフィルム状に押し出した。ダイの、中央部のリップクリアランスを1mm、両端部のリップクリアランスを0.9mm、リップ幅を200mmとした。そして、冷却ロール上に押し出された樹脂を、弾性タッチロールで押圧して成形し、厚み80μm、幅150mm、長さ500mの原反フィルムを得た。
得られた原反フィルムを、二軸延伸機(井元製作所製)にて、フィルムの搬送方向(MD方向)、幅方向(TD方向)にそれぞれ120cm/分で延伸倍率2倍に延伸し、厚み20μmの熱可塑性樹脂フィルムを得た。
(実施例9)
製造例1で得られたペレットを、製造例1で得られたペレットと製造例3で得られたペレットとの混合物(製造例1のペレット/製造例3のペレット=30/70の質量比)に変更した以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
(実施例10)
製造例1で得られたペレットを、製造例1で得られたペレットと製造例4で得られたペレットとの混合物(製造例1のペレット/製造例4のペレット=30/70の質量比)に変更した以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
(実施例11〜12)
滑剤1を、滑剤2または3に変更した以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
(実施例13〜15)
滑剤1の添加量を表1に示されるように変更した以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
(実施例16)
製造例1で得られたペレットを、製造例1で得られたペレットと製造例4で得られたペレットとの混合物(製造例1のペレット/製造例4のペレット=30/70の質量比)に変更し、かつ滑剤1を滑剤2に変更した以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
(実施例17)
滑剤の投入を、混練部の直前ではなく、フィルタ部の直前で行った以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
(比較例1)
滑剤1を、製造例1で得られたペレットと混合してホッパーから投入した以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
(比較例2)
滑剤1を、製造例1で得られたペレットと混合してホッパーから投入し、かつ投入量を7質量%とした以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
(比較例3)
滑剤1を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂フィルムを得た。
得られた熱可塑性樹脂フィルムの、微小異物の有無および耐久性を、以下の方法で評価した。
〔微小異物の有無〕
得られた熱可塑性樹脂フィルムの巻きの先頭と後尾からそれぞれ長さ方向に1mずつ切り取って2枚のサンプルフィルムを得た。それぞれのサンプルフィルムに蛍光灯を当てたときの、反射光による光の屈折状態を目視観察し、異物の数をカウントした。2枚のサンプルフィルムにおける異物の数の平均値を「異物個数」とした。そして、微小異物の評価は、以下の基準に基づいて行った。
○:異物個数が15個未満
×:異物個数が15個以上
〔耐久性〕
得られた熱可塑性樹脂フィルムのヘイズを、ヘイズメーター(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)にて測定した。熱可塑性樹脂フィルムを、85℃90%下で500時間保存後のヘイズを、同様にして測定した。これらの保存前後のヘイズの変動量を算出し、熱可塑性樹脂フィルムの耐久性を以下の基準に基づいて評価した。
○:ヘイズの変動量が±0.2%以下
△:ヘイズの変動量が±0.2%超0.5%以下
×:ヘイズの変動量が±0.5%超
実施例1〜17および比較例1〜3の熱可塑性樹脂フィルムの評価結果を表1に示す。
Figure 2013119201
表1に示されるように、滑剤を押し出し機の混練部の直前で投入して製造した実施例1〜17のフィルムは、微小異物が少なく、耐久性も良好であることがわかる。一方、滑剤を押し出し機のホッパーから原料と混合して投入した比較例1のフィルムや、滑剤を投入しなかった比較例3のフィルムは、いずれも耐久性は良好であるが、微小異物が多いことがわかる。また、比較的大量の滑剤を押し出し機のホッパーから投入した比較例2のフィルムは、微小異物は少ないが、耐久試験後のフィルムが白くなり、耐久性が低いことがわかる。
比較例1では、滑剤を原料に混合して投入したため、フィルタよりも手前で滑剤が揮発し、フィルタやダイにおいて滑剤の効果が得られなかったことが示唆される。比較例2では、多量の滑剤を原料に混合して投入したため、フィルタやダイにおいても滑剤の効果が十分に得られるが、フィルムに滑剤が多く残留し、ブリードアウトが生じたことが示唆される。これに対して、実施例1〜16では、滑剤を混練部の直前で投入し、実施例17では滑剤をフィルタ部の直前で投入したため、フィルタやダイにおいても滑剤の効果が十分に得られたことが示唆される。実施例1〜17では、滑剤の添加量も少ないため、得られるフィルムの耐久性も維持されたことが示唆される。
実施例1と実施例13〜15の対比から、滑剤の添加量を多くすると、得られるフィルムの耐久性が若干低下することがわかる。これは、得られるフィルムに滑剤が残留するためと考えられる。
実施例1と実施例17との対比から、滑剤の投入をフィルタ部の直前で行うほうが、混練部の直前で行うよりも、得られるフィルムの微小異物が少ないものの、耐久性はやや低いことがわかる。これは、フィルタ部の直前で滑剤を投入することで、フィルタ部やダイにおいて滑剤の効果が得られやすい反面、得られるフィルムに滑剤が残留しやすくなるためと考えられる。
実施例1と実施例11〜12の対比から、滑剤の種類は、脂肪族アルコールのほうが、脂肪酸エステルよりも、得られるフィルムの耐久性を低下させにくいことが示唆される。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法によれば、少ない滑剤の添加量でも、滞留劣化物による故障が低減された熱可塑性樹脂フィルムを提供することができる。
10 フィルムの製造装置
30、30’ 押し出し機
32、42 シリンダ
34、44 スクリュー
34a、44a スクリュー軸
34b、44b スクリューフライト部
36、46 供給口
38、48 吐出口
39、49、62 投入口
37、47 ホッパー
45 ベント口
50 フィルタ部
60 配管
70 ダイ
90、90A、90B、90C、90D 冷却ロール
92 弾性タッチロール
110 巻き取り装置
130 延伸装置
150 ギアポンプ
210 液晶表示装置
220 液晶セル
240 第一の偏光板
242 第一の偏光子
244 保護フィルム(F1)
246 保護フィルム(F2)
260 第二の偏光板
262 第二の偏光子
264 保護フィルム(F3)
266 保護フィルム(F4)
280 バックライト
D シリンダの内径
L シリンダの長さ
A、A1 供給部
B 圧縮部
C 混練部
D 排出部
B1 第1の圧縮部
C1 第1の混練部
A2 ベント部
B2 第2の圧縮部
C2 第2の混練部

Claims (9)

  1. 熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を、押し出し機のホッパーから投入する工程と、
    前記押し出し機において前記樹脂組成物を圧縮する工程と、
    前記圧縮した樹脂組成物を混練する工程と、
    前記混練した樹脂組成物を、フィルタ部でろ過する工程と、
    前記ろ過した樹脂組成物を、ダイからフィルム状に押し出す工程と、
    前記押し出された前記樹脂組成物を、冷却固化して熱可塑性樹脂フィルムを得る工程と、
    を含み、
    滑剤を、前記投入する工程の後かつ前記混練する工程の前、または前記混練する工程の後かつ前記ろ過する工程の前において投入する、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  2. 前記滑剤を、前記混練する工程の直前または前記ろ過する工程の直前で投入する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  3. 前記押し出し機は、前記樹脂組成物を圧縮する圧縮部と、前記圧縮した樹脂組成物を混練する混練部と、前記混練部よりも前記樹脂組成物の押し出し方向上流側に設けられたベントとを有し、
    前記滑剤を、前記ベントから投入する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  4. 前記押し出し機と前記フィルタ部とを連通する配管が設けられ、かつ前記配管は、前記フィルタ部よりも前記押し出し方向上流側に設けられた投入口を有し、
    前記滑剤を、前記投入口から投入する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  5. 前記滑剤の添加量は、前記熱可塑性樹脂の合計に対して0.05〜2.0質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  6. 前記滑剤は、高級アルコール系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤または脂肪酸エステル系滑剤である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  7. 前記熱可塑性樹脂は、セルロースエステル、(メタ)アクリル樹脂およびシクロオレフィン樹脂からなる群より選ばれる一以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  8. 前記熱可塑性樹脂フィルムは、光学フィルムである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  9. 前記光学フィルムは、偏光板保護フィルムである、請求項8に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
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