JP5888040B2 - 偏光板保護フィルムおよびその製造方法、並びにそれを用いた偏光板および表示装置 - Google Patents

偏光板保護フィルムおよびその製造方法、並びにそれを用いた偏光板および表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、偏光板保護フィルムおよびその製造方法、並びにそれを用いた偏光板および表示装置に関する。
液晶表示装置は、液晶テレビやパソコンの液晶ディスプレイ等の用途で、需要が拡大している。通常、液晶表示装置は、透明電極、液晶層、カラーフィルター等をガラス板で挟み込んだ液晶セルと、その両側に設けられた2枚の偏光板で構成されており、それぞれの偏光板は、偏光子(偏光膜、偏光フィルムともいう)を2枚の光学フィルム(偏光板保護フィルム)で挟持した構成となっている。この偏光板保護フィルムとしては、通常、セルローストリアセテート(TAC)フィルムが用いられている。
セルローストリアセテート(TAC)に代わる材料として、近年ではアクリル樹脂が検討されている。ポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるアクリル樹脂は、光学性能に優れ、高い光線透過率や低複屈折率、低位相差の光学等方材料として各種光学材料への適用が従来提案されている。
ここで、フィルム状の光学用透明高分子材料に要求される特性として、まず、透明性および光学等方性が高いことが挙げられる。また、これに加えて耐熱性に優れることも要求される。
しかしながら、アクリル樹脂として一般的なポリメタクリル酸メチルはガラス転移温度が低く、高温での寸法安定性に代表される耐熱性に問題がある。そこで従来、アクリル樹脂の耐熱性を改良する手段として、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体をラクトン環化縮合反応させることでラクトン環含有重合体が提案されている(特許文献1および2を参照)。かような改質技術によればアクリル樹脂のガラス転移温度が上昇し、耐熱性は改善されうる。しかしながら、この方法では多段階の合成反応を経るため、生産負荷・生産コストの面から好ましくない。また、アクリル樹脂は硬脆く割れやすい特性(脆性)を有しているが、この課題は特許文献1および2の技術では解決されない。
そこで、アクリル樹脂の有する脆性の解消を図ることを目的として、例えば特許文献3では、衝撃吸収剤として微小なゴム粒子を分散添加することが提案されている。しかしながら、この技術ではフィルムのヘイズが上昇することから、偏光板保護フィルムの用途には適していないという問題がある。
ところで、近年、スマートフォンやタブレット端末に代表されるモバイル用液晶ディスプレイの市場が急速に拡大していることに伴い、これらの用途に用いられる偏光板保護フィルムとして、従来よりも非常に薄い、例えば膜厚20〜30μm程度のものを開発することが求められている。この領域の膜厚になると十分な強度が得られず、例えばリワーク時に偏光板が割れてしまうという課題がある。偏光板保護フィルムの強度を上げるには、樹脂の分子量を大きくすることも一つの解決策ではあるが、この場合には加工時の樹脂の粘度が上昇するため、加工しにくくなるという問題がある。特に溶融加工する場合における溶融粘度の上昇は深刻な問題であり、粘度の上昇を補償すべく加工温度を上げると、一方で樹脂の熱劣化を招き、かえって強度が得られなくなってしまう。
特開2000−230016号公報 特開2002−254544号公報 特開2006−284882号公報
本発明は、従来の技術における上述した課題に鑑みなされたものであり、アクリル樹脂を用いた偏光板保護フィルムにおいて、耐熱性を確保しつつ、ヘイズの上昇を防止して透明性を維持しながら樹脂の脆性を改善し、しかも、製造時の樹脂の粘度の上昇を抑えながら、薄膜化した場合であっても偏光板の割れを効果的に防止することができる手段を提供することを目的とする。また本発明の他の目的は、偏光板保護フィルムにセルロース系樹脂をブレンドした場合でも、セルロース系樹脂由来の凸状異物を低減させることができる手段を提供することである。
本発明者らは、上記目的に鑑み、鋭意研究を重ねた。その結果、偏光板保護フィルムに、マクロモノマー由来の繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含有させ、かつ、フィルムの長手方向または幅手方向の少なくとも一方の破断点応力を所定の値以上とすることで、上述した課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.マクロモノマー由来の繰り返し単位を含むアクリル樹脂を樹脂成分100質量%に対して50〜100質量%含有し、長手方向または幅手方向の少なくとも一方の破断点応力が120MPa以上である、偏光板保護フィルム;
2.セルロース系樹脂をさらに含有する、上記1に記載の偏光板保護フィルム;
3.幅手方向の破断点応力が長手方向の破断点応力よりも大きい、上記1または2に記載の偏光板保護フィルム;
4.膜厚が10〜35μmである、上記1〜3のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルム;
.マクロモノマー由来の繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含む溶融樹脂を支持体上に流延して得られる延伸前フィルムを、「延伸前フィルムのTg+40」℃以下の延伸温度で2.5倍以上、長手方向(MD方向)または幅手方向(TD方向)の少なくとも一方に延伸する工程を含む、上記1〜4のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルムの製造方法;
.前記延伸温度が「延伸前フィルムのTg+25」℃以下である、上記に記載の製造方法;
.前記溶融樹脂がセルロース系樹脂をさらに含む、上記またはに記載の製造方法;
.前記アクリル樹脂のモノマー成分を前記セルロース系樹脂の存在下で重合することにより、前記アクリル樹脂と前記セルロース系樹脂との樹脂混合物を得る工程をさらに含む、上記に記載の製造方法;
.上記1〜のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルムと、偏光子の少なくとも一方の表面とが貼合されてなる、偏光板;
10.上記に記載の偏光板を備えた、表示装置。
本発明によれば、アクリル樹脂を用いた偏光板保護フィルムにおいて、耐熱性を確保しつつ、ヘイズの上昇を防止して透明性を維持しながら樹脂の脆性を改善し、しかも、製造時の樹脂の粘度の上昇を抑えながら、薄膜化した場合であっても偏光板の割れを効果的に防止することができる手段が提供される。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
≪偏光板保護フィルム≫
本発明の一形態は、偏光板保護フィルムに関する。そして、本形態に係る偏光板保護フィルムは、マクロモノマー由来の繰り返し単位を含むアクリル樹脂(以下、単に「マクロモノマー含有アクリル樹脂」)を含有し、長手方向または幅手方向の少なくとも一方の破断点応力が120MPa以上である点に特徴を有する。なお、本明細書において、上記特定のアクリル樹脂を「マクロモノマー含有アクリル樹脂」とも称する。また、本明細書において、「アクリル樹脂」の概念には、メタクリル酸またはその誘導体由来の繰り返し単位や、(メタ)アクリル酸またはその誘導体以外のビニルモノマー由来の繰り返し単位を含む樹脂も含まれるものとする。
<マクロモノマー含有アクリル樹脂>
本形態に係る偏光板保護フィルムは、上述したように、マクロモノマー含有アクリル樹脂を含有するものである。かような構成とすることで、本形態の偏光板保護フィルムを偏光子と貼合して得られる偏光板の耐熱性(寸法安定性)を確保しつつ、ヘイズの上昇を防止して透明性を維持しながら樹脂の脆性を改善し、しかも、製造時の樹脂の粘度の上昇を抑えながら、薄膜化した場合であっても偏光板の割れを効果的に防止することができる。そのメカニズムとして、マクロモノマーの有する側鎖(一般に繰り返し構造を有する)どうしが、樹脂の溶融時などの高温条件下では糸毬状にまとまって存在する一方で、温度が低下すると互いに相互作用して三次元ネットワーク状に絡み合い、フィルムの強度を向上させるものと考えられる。
(マクロモノマー)
本発明において、「マクロモノマー」とは、10〜100個の繰り返し単位からなる分子鎖を有し、末端にラジカル重合可能な不飽和結合を有する化合物を意味する。マクロモノマーの分子量について特に制限はないが、3000〜10000が好ましい。マクロモノマーの分子量が3000以上であれば本発明の効果を十分に発揮することができる。一方、マクロモノマーの分子量が10000以下であれば、アクリル樹脂自体の分子量を増大させる虞が低減され、樹脂の溶融粘度を低く抑えることに寄与しうる。
本発明に用いられうるマクロモノマーの例としては、例えば、東亞合成(株)製マクロモノマーAA−6(メチルメタクリレート重合体の末端にメタクリロイル基が付加されてなる;分子量6000)、AS−6(スチレン重合体の末端にメタクリロイル基が付加されてなる;分子量6000)、AN−6S(スチレン−アクリロニトリル共重合体の末端にメタクリロイル基が付加されてなる;分子量6000)、AB−6(ブチルアクリレート重合体の末端にメタクリロイル基が付加されてなる;分子量6000)、(株)ダイセル製プラクセルFA10L(ヒドロキシエチルアクリレートにε−カプロラクタム重合体が付加されてなる)などが挙げられる。
なお、マクロモノマーとしては、市販品に限らず、自ら合成したものをもちいてももちろんよい。例えば、上述した市販品と同様の構造を有しつつ、分子量を上述の範囲で変化させたものを自ら合成して、本発明におけるマクロモノマーとして用いることが可能である。すなわち、マクロモノマーとして、例えば、以下のものが用いられうる:
・メチルメタクリレート重合体の末端に(メタ)アクリロイル基が付加されてなる分子量3000〜10000の化合物;
・スチレン重合体の末端に(メタ)アクリロイル基が付加されてなる分子量3000〜10000の化合物;
・スチレン−アクリロニトリル共重合体の末端にメタクリロイル基が付加されてなる分子量3000〜10000の化合物;
・ブチルアクリレート重合体の末端に(メタ)アクリロイル基が付加されてなる分子量3000〜10000の化合物;
・ヒドロキシエチルアクリレートにε−カプロラクタム重合体が付加されてなる分子量3000〜10000の化合物。
また、特開2003−277342号公報に例示されるような、ポリエステル系樹脂の片末端に重合可能な官能基を有する化合物を縮合反応させてマクロモノマーとしたものが用いられてもよい。
(マクロモノマー含有アクリル樹脂の構造の好ましい形態)
本形態の偏光板保護フィルムに含まれるマクロモノマー含有アクリル樹脂は、メチルメタクリレート(MMA)由来の繰り返し単位を含むものであることが好ましい。MMA由来の繰り返し単位を含むアクリル樹脂の構造は、好ましくは下記の化学式1で表される。
化学式1において、MMAはメチルメタクリレート由来の繰り返し単位を表す。また、化学式1において、Xは、マクロモノマー由来の繰り返し単位を表し、Yは、メチルメタクリレートおよびマクロモノマーと共重合可能なモノマー由来の繰り返し単位を表す。また、化学式1において、p、qおよびrは、MMA、XおよびYの質量割合であり、p+q+r=100である。なお、MMA、XおよびYの結合形態について特に制限はなく、ランダム、ブロックなど、いかなる結合形態も採用されうる。
ここで、本形態の偏光板保護フィルムに含まれるマクロモノマー含有アクリル樹脂を構成する繰り返し単位(MMA、X、およびY)のうち、MMAが主成分であることが好ましい。かような構成とすることで、透明性に優れ、かつ、光学等方性も確保することができる。このような観点から、化学式1において、50≦p≦99であり、かつ、1≦q≦50であることが好ましい。また、60≦p≦95であり、かつ、5≦q≦40であることがより好ましく、75≦p≦90であり、かつ、10≦q≦25であることがさらに好ましい。マクロモノマーの含有割合がかような範囲内の値であれば、マクロモノマーの導入による本発明の効果を十分に発揮させることができ、しかも重合反応を効率的に進行させることができる。なお、rについては、0≦r≦30であることが好ましく、0≦r≦10であることがより好ましく、0≦r≦5であることがさらに好ましい。
化学式1において繰り返し単位MMAを構成することになるモノマーは、メチルメタクリレートである。また、化学式1において繰り返し単位Xを構成することになるモノマーは、上述したマクロモノマーである。さらに、化学式1において繰り返し単位Yを構成することになるモノマーもまた、対応するビニルモノマーである。
ここで、化学式1において繰り返し単位Yを構成することになるビニルモノマーの具体例について特に制限はないが、例えば、特開2009−122664号公報、特開2009−139661号公報、特開2009−139754号公報、特開2009−294262号公報、国際公開2009/054376号パンフレット等に記載のものが使用されうる。
本形態の偏光板保護フィルムに含まれるマクロモノマー含有アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは300000以下であり、より好ましくは50000〜100000であり、さらに好ましくは60000〜80000である。マクロモノマー含有アクリル樹脂のMwがかような範囲内の値であれば、フィルムの製造時における樹脂の溶融粘度の上昇が抑制されるため、好ましい。なお、本明細書において、樹脂成分の重量平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより行うものとする。測定条件は以下の通りである。
(樹脂の重量平均分子量の測定条件)
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2800000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
<その他の樹脂>
本形態に係る偏光板保護フィルムは、マクロモノマー含有アクリル樹脂に加えて、その他の樹脂を含んでもよい。その他の樹脂としては、マクロモノマー含有アクリル樹脂以外のアクリル樹脂、セルローストリアセテート等のセルロース系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系高分子等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。なかでも、マクロモノマー含有アクリル樹脂以外のアクリル樹脂またはセルロース系樹脂が透明性、光学等方性などの観点からは好ましい。以下、これらのマクロモノマー含有アクリル樹脂以外のアクリル樹脂およびセルロース系樹脂の好ましい形態について、簡単に説明する。
(マクロモノマー含有アクリル樹脂以外のアクリル樹脂)
マクロモノマー含有アクリル樹脂以外のアクリル樹脂としては、従来公知のアクリル樹脂が用いられうる。マクロモノマー含有アクリル樹脂以外のアクリル樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99モル%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50モル%からなるものが好ましい。共重合可能な他の単量体としては、アルキル基の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル基の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン、核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。これらのなかでも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
本発明に係るマクロモノマー含有アクリル樹脂以外のアクリル樹脂は、マクロモノマー含有アクリル樹脂との相溶性、フィルムとしての機械的強度、フィルムを生産する際の流動性の点から重量平均分子量(Mw)が30000〜200000のものであることが好ましい。
なお、マクロモノマー含有アクリル樹脂以外のアクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。
(セルロース系樹脂)
セルロース系樹脂としては、従来公知のセルロース系樹脂が用いられうる。セルロース系樹脂としては、例えば、セルロースエステル樹脂やセルロースエーテル樹脂などが挙げられる。
セルロースエステル樹脂の具体的な形態についても特に制限はないが、特に脆性の改善や透明性の観点から、下記数式(1)〜(3):
式中、Aはアセチル基の置換度を表し、Bは炭素数3〜7のアシル基の置換度の総和を表す、
の関係を満たすアシル基置換度を有するものであることが好ましい。
セルロースエステル樹脂の炭素数2〜7のアシル基の総置換度(A+B)が2.0以上であれば(すなわち、セルロースエステル分子の2,3,6位の水酸基の残度が1.0以下であれば)、偏光板保護フィルムにおけるヘイズの上昇が防止される。また、アシル基総置換度(A+B)が2.0以上で、かつ、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.0以上であれば、脆性の低下が防止される。
セルロースエステル樹脂のアシル基置換度は、総置換度(A+B)が2.0〜3.0であり、アセチル基の置換度(A)が0.15〜2.0であり、炭素数が3〜7のアシル基の置換度(B)が1.2〜3.0であれば問題ないが、炭素数が3〜7以外のアシル基、すなわち、アセチル基や炭素数が8以上のアシル基の置換度の総計が1.3以下とされることが好ましい。また、セルロースエステル樹脂の炭素数2〜7のアシル基の総置換度(A+B)は、2.5〜3.0の範囲であることがさらに好ましい。
なお、前記アシル基は、脂肪族アシル基であっても、芳香族アシル基であってもよい。脂肪族アシル基の場合は、直鎖であっても分岐していてもよく、さらに置換基を有してもよい。本発明におけるアシル基の炭素数は、アシル基の置換基を包含するものである。
セルロースエステル樹脂が芳香族アシル基を置換基として有する場合、芳香族環に置換する置換基の数は0〜5個であることが好ましい。この場合も、上述した好ましい実施形態では、置換基を含めた炭素数が3〜7であるアシル基の置換度が1.0〜2.75となるように留意が必要である。例えば、ベンゾイル基は炭素数が7になるため、炭素を含む置換基を有する場合は、ベンゾイル基としての炭素数は8以上となり、炭素数が3〜7のアシル基には含まれないこととなる。
さらに、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上のとき、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
セルロースエステル樹脂としては、特にセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらのなかで特に好ましいセルロースエステル樹脂は、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースプロピオネートである。本発明では2種以上のセルロースエステル樹脂を混合して用いることもできる。
なお、アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。また、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
セルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に脆性の改善の観点から好ましくは75000以上であり、75000〜300000の範囲であることがより好ましく、100000〜240000の範囲内であることがさらに好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。セルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が75000を下回る場合は、耐熱性や脆性の改善効果が十分に得られない虞がある。
セルロースエーテル樹脂の具体的な形態についても特に制限はないが、セルロース分子中の2,3,6位の少なくとも1つの置換基に、エーテル結合を有する。ここでいうエーテル結合とは、炭素−酸素−炭素結合のことである。セルロースエーテル樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、偏光板保護フィルムとしての透明性、耐久性を確保するためには、エチルセルロースが最適である。エトキシル置換度は、1.9〜2.9の範囲であることが好ましく、溶融時の粘度の関係と耐湿熱環境の安定性のバランスから、2.2〜2.9の範囲であることが特に好ましい。また、エーテル置換度はASTM D4794−94に記載の方法にて定量することができる。セルロースエーテルの分子量としては、単独でフィルム化することができればよく、具体的には、数平均分子量Mnが、30000〜300000の範囲であればよく、好ましくは50000〜200000のものが使用される。分子量が30000以上であればフィルムの脆性が改善され、300000以下であれば粘度の上昇が抑えられ、成形加工時の成形安定性が向上しうる。
これらのセルロースエステル樹脂やセルロースエーテル樹脂は、原料であるセルロースの置換反応が不十分であることに由来する低置換度成分や、その他の不純物を含有する。これらの不純物は溶融粘度が高く塊状を保ったまま流動する傾向にあり、流延法で作製した場合にはフィルム中に凸状異物として存在することがある。本発明によれば、フィルムがアクリル樹脂とともにセルロース系樹脂を含む場合であっても、セルロース由来のこれらの凸状異物の顕在化を抑制することができ、見栄え上の実害を防止することが可能となる。
本形態に係る偏光板保護フィルムにおけるマクロモノマー含有アクリル樹脂の含有量について特に制限はなく、フィルムを構成する樹脂成分の1〜100質量%(好ましくは5〜100質量%)がマクロモノマー含有アクリル樹脂でありうる。ただし、本形態に係る偏光板保護フィルムは、フィルムを構成する樹脂の主成分としてマクロモノマー含有アクリル樹脂を含むことが好ましい。具体的には、マクロモノマー含有アクリル樹脂の含有割合は、フィルムを構成する樹脂成分100質量%に対して、好ましくは50〜100質量%であり、より好ましくは55〜100質量%であり、さらに好ましくは60〜100質量%であり、特に好ましくは70〜100質量%であり、最も好ましくは80〜100質量%である。ここで、フィルムの靭性(剛性ではなくしなやかさ)という観点から、偏光板保護フィルムを構成する樹脂成分のうち、マクロモノマー含有アクリル樹脂以外の樹脂は、セルロース系樹脂であることが好ましい。言い換えれば、偏光板保護フィルムを構成する樹脂成分のうち、セルロース系樹脂の含有割合は、樹脂成分の全量100質量%に対して、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下であり、最も好ましくは20質量%以下である。
(アクリル樹脂とセルロース系樹脂との樹脂混合物を得るための好ましい手法)
本発明において用いられるマクロモノマー含有アクリル樹脂は、当該アクリル樹脂のモノマー成分をセルロース系樹脂の存在下で重合する工程を経て得られるアクリル樹脂とセルロース系樹脂との樹脂混合物の形態であることが好ましい。かような構成とすることにより、別々の樹脂成分どうしを混合(ブレンド)する場合と比較して、より低混練でのポリマーブレンドが可能であり、破断点応力も上昇する傾向にある。以下、かような重合手法の一例について説明する。
この重合手法は、1)アクリル樹脂のモノマー成分およびセルロース系樹脂を含むシラップを得る工程と、2)シラップに含まれるモノマー成分を重合させて樹脂混合物を得る工程とを有する。得られる偏光板保護フィルムのヘイズを低くするためには、工程1)と工程2)の間で、工程3)シラップに含まれる不純物や異物を除去する工程をさらに行うことが好ましい。この工程3)を行うことによってセルロース系樹脂由来の不溶成分が除去され、凸状異物の発生がさらに効果的に抑制されうる。
1)シラップを得る工程
シラップを得る工程では、アクリル樹脂のモノマー成分およびセルロース系樹脂を含むシラップを得る。用いられる各成分の具体的な種類やそれらの配合比については、上述した通りであるためここでは詳細な説明を省略する。
シラップの23℃における粘度は、4000Pa・s以下であることが好ましく、3500Pa・s以下であることがより好ましい。シラップの粘度が4000Pa・s以下であれば、セルロース系樹脂とアクリル樹脂のモノマー成分とが相溶しやすいため、得られるフィルムのヘイズの上昇が抑えられる。粘度の測定は、振動粘度計(CBCマテリアルズ(株)社製 VM−100A)を用いて行うことができる。なお、シラップの粘度は、例えばアクリル樹脂のモノマー成分とセルロース系樹脂との配合比や、セルロース系樹脂の分子量などによって調整されうる。
3)シラップに含まれる不純物や異物を除去する工程
シラップには、原料となるセルロース系樹脂に含まれる、微小な異物(アシル基置換度が異なるセルロースエステルや未反応のセルロースなど)や不純物(カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンなど)が含まれる。そのような微小な異物や不純物を含むシラップから得られる樹脂混合物を含む偏光板保護フィルムは、ヘイズが高くなりやすい。そのため、シラップに含まれる微小な異物や不純物を除去することが好ましい。
シラップに含まれる不純物や異物を除去する方法は、特に制限されず、シラップをろ過する方法、遠心分離する方法などが含まれる。
ろ過に用いられるろ紙の空隙率は76〜95%であることが好ましい。ろ紙の捕集粒子径は0.5〜5μmであることが好ましい。ろ紙は、ろ過効率を高めるために、複数枚重ねて用いてもよい。
2)シラップに含まれるモノマー成分を重合させる工程
本工程では、セルロース系樹脂の存在下で、アクリル樹脂のモノマー成分を塊状重合させることが好ましい。これにより、アクリル樹脂のモノマー成分の重合物(すなわち、アクリル樹脂)とセルロース系樹脂とが均一に相溶した樹脂混合物(熱可塑性樹脂)を得ることができる。このようにして得られた樹脂混合物(熱可塑性樹脂)を含む偏光板保護フィルムはヘイズが低減されるため、好ましいのである。
セルロース系樹脂の存在下でのモノマー成分の重合は、ラジカル重合開始剤、および必要に応じて連鎖移動剤、分散剤または乳化剤などを用いて行うことができる。
ラジカル重合開始剤の例には、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物;有機過酸化物と還元剤とを組み合せたレドックス系開始剤;過硫酸塩と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが含まれる。ラジカル重合開始剤は、1種類だけでもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
連鎖移動剤の例には、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどが含まれる。分散剤の例には、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキサイドなどが含まれる。分散助剤の例には、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、過酸化水素水、硼酸などが含まれる。乳化剤の例には、公知のアニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤などが含まれる。
セルロース系樹脂の存在下でモノマー成分を重合させる場合には、セルロース系樹脂とモノマー成分とを混合した後、30分間以上経過した後に重合反応を開始させることが好ましい。これにより、モノマー成分とセルロース系樹脂とが均一に混合されうるという利点がある。
重合温度は、例えば0〜150℃とすることができ、50〜90℃とすることが好ましい。重合時間は、例えば1〜10時間とすることができる。重合は、必要に応じて窒素雰囲気下で行うこともできる。
<添加剤>
本形態に係る偏光板保護フィルムは、上述した樹脂成分に加えて、各種の添加剤を含みうる。以下、本形態に係る偏光板保護フィルムに含まれうる添加剤の具体例について説明するが、下記の形態のみに限定されるわけではない。
(可塑剤)
可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れるが、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
特に、アジピン酸、フタル酸などを用いると可塑化特性に優れたものが得られる。グリコールとしてはエチレン、プロピレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ネオペンチレン、ジエチレン、トリエチレン、ジプロピレンなどのグリコールが挙げられる。これらの二価カルボン酸およびグリコールはそれぞれ単独で、あるいは混合して使用してもよい。このエステル系の可塑剤はエステル、オリゴエステル(スクロースオクタベンゾエート、モノペットSB第一工業製薬(株)製等も含む)、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲がよいが、好ましくは600〜3000の範囲が、可塑化効果が大きい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、通常知られているものを使用することができる。特に、ラクトン系、イオウ系、フェノール系、二重結合系、ヒンダードアミン系、リン系化合物のものを好ましく用いることができる。
例えば、BASFジャパン株式会社から、「IrgafosXP40」、「IrgafosXP60」という商品名で市販されているものを含むものが好ましい。
上記フェノール系化合物としては、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有するものが好ましく、例えば、BASFジャパン株式会社から「Irganox1076」、「Irganox1010」、株式会社ADEKAから「アデカスタブAO−50」という商品名で市販されているものが好ましい。上記リン系化合物は、例えば、住友化学株式会社から「SumilizerGP」、株式会社ADEKAから「ADK STAB PEP−24G」、「ADK STAB PEP−36」および「ADK STAB 3010」、チバ・ジャパン株式会社から「IRGAFOS P−EPQ」、堺化学工業株式会社から「GSY−P101」という商品名で市販されているものが好ましい。
上記ヒンダードアミン系化合物は、例えば、BASFジャパン株式会社から「Tinuvin144」および「Tinuvin770」、株式会社ADEKAから「ADK STAB LA−52」という商品名で市販されているものが好ましい。
上記イオウ系化合物は、例えば、住友化学株式会社から「Sumilizer TPL−R」および「Sumilizer TP−D」という商品名で市販されているものが好ましい。
上記二重結合系化合物は、住友化学株式会社から、「Sumilizer GM」および「Sumilizer GS」という商品名で市販されているものが好ましい。
さらに、酸捕捉剤として米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物を含有させることも可能である。
これらの酸化防止剤等は、再生使用される際の工程に合わせて適宜添加する量が決められるが、一般には、フィルムの主原料である樹脂に対して、0.05〜20質量%、好ましくは0.1〜1質量%の範囲で添加される。
これらの酸化防止剤は、1種のみを用いるよりも数種の異なった系の化合物を併用することで相乗効果を得ることができる。例えば、ラクトン系、リン系、フェノール系および二重結合系化合物の併用は好ましい。
(着色剤)
着色剤とは染料や顔料を意味するが、本発明では、液晶画面の色調を青色調にする効果またはイエローインデックスの調整、ヘイズの低減を有するものを指す。
着色剤としては各種の染料、顔料が使用可能であるが、アントラキノン染料、アゾ染料、フタロシアニン顔料などが有効である。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤についても特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。高分子型の紫外線吸収剤としてもよい。
(マット剤)
本形態に係る偏光板保護フィルムは、フィルムの滑り性を付与するためにマット剤を含有してもよい。本発明で用いられるマット剤としては、得られるフィルムの透明性を損なうことがなく、溶融時の耐熱性があれば無機化合物または有機化合物どちらでもよく、例えば、タルク、マイカ、ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪成土、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、クレー、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ワラストナイト、窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ化チタン、炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭化ケイ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、ホワイトカーボンなどが挙げられる。これらのマット剤は、単独でも二種以上併用しても使用できる。粒径や形状(例えば針状と球状など)の異なる粒子を併用することで高度に透明性と滑り性を両立させることもできる。これらのなかでも、セルロースエステルと屈折率が近いので透明性(ヘイズ)に優れる二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
二酸化珪素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKEP−10、シーホスターKEP−30、シーホスターKEP−50(以上、株式会社日本触媒製)、サイロホービック100(富士シリシア製)、ニップシールE220A(日本シリカ工業製)、アドマファインSO(アドマテックス製)等の商品名を有する市販品などが好ましく使用できる。
粒子の形状としては、不定形、針状、扁平、球状等特に制限なく使用できるが、特に球状の粒子を用いると得られるフィルムの透明性が良好にできるので好ましい。
粒子の大きさは、可視光の波長に近いと光が散乱し、透明性が悪くなるので、可視光の波長より小さいことが好ましく、さらに可視光の波長の1/2以下であることが好ましい。粒子の大きさが小さすぎると滑り性が改善されない場合があるので、80nmから180nmの範囲であることが特に好ましい。
なお、粒子の大きさとは、粒子が1次粒子の凝集体の場合は凝集体の大きさを意味する 。また、粒子が球状でない場合は、その投影面積に相当する円の直径を意味する。
(粘度低下剤)
本発明において、溶融粘度を低減する目的として、水素結合性溶媒を添加することができる。水素結合性溶媒とは、J.N.イスラエルアチビリ著、「分子間力と表面力」(近藤保、大島広行訳、マグロウヒル出版、1991年)に記載されるように、電気的に陰性な原子(酸素、窒素、フッ素、塩素)と電気的に陰性な原子と共有結合した水素原子間に生ずる、水素原子媒介「結合」を生ずることができるような有機溶媒、すなわち、結合モーメントが大きく、かつ水素を含む結合、例えば、O−H(酸素水素結合)、N−H(窒素水素結合)、F−H(フッ素水素結合)を含むことで近接した分子同士が配列できるような有機溶媒をいう。
(アクリル粒子)
本発明の偏光板保護フィルムは、多層構造アクリル系粒状複合体(アクリル粒子)を含有してもよい。かようなアクリル粒子の市販品の例としては、例えば、三菱レイヨン社製「メタブレン」、鐘淵化学工業社製「カネエース」、呉羽化学工業社製「パラロイド」、ロームアンドハース社製「アクリロイド」、ガンツ化成工業社製「スタフィロイド」およびクラレ社製「パラペットSA」などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
<偏光板保護フィルムの物性・光学特性>
上述したように、本形態に係る偏光板保護フィルムは、長手方向(MD方向)または幅手方向(TD方向)の少なくとも一方の破断点応力が120MPa以上である点にも特徴を有する。長手方向(MD方向)と幅手方向(TD方向)とでは、幅手方向(TD方向)の破断点応力がより大きいことが好ましい。かような構成とすることで、本形態に係る偏光板保護フィルムが偏光子とロール・トゥ・ロールで貼合されてなる偏光板の割れが効果的に防止されうる。これは、以下のように説明される。すなわち、一般に偏光子は吸収軸が存在する長手方向(MD方向)に裂けやすい。したがって、本形態に係る偏光板保護フィルムを偏光子に対してロール・トゥ・ロールで貼合して偏光板を構成したときに、偏光板保護フィルムの幅手方向(TD方向)の破断点応力がより大きければ、偏光子の長手方向(MD方向)への裂けが抑制され、同時に偏光板の割れも防止されるのである。ここで、長手方向(MD方向)および幅手方向(TD方向)の破断点応力はいずれも大きいほど好ましいが、一例として、幅手方向(TD方向)の破断点応力は、好ましくは120MPa以上であり、より好ましくは130MPa以上である。また、幅手方向(TD方向)の破断点応力が120MPa以上であれば、長手方向(MD方向)の破断点応力は120MPa未満でもよく、好ましくは90MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上である。なお、破断点応力の上限値についても特に制限はないが、現実的には、いずれも200MPa程度以下である。フィルムの破断点応力が長手方向(MD方向)および幅手方向(TD方向)ともに200MPa以下であれば、フィルムの剛直性が高くなりすぎることによる取扱い性の低下が生じる虞が特に低減される。ここで、破断点応力の値としては、後述する実施例の欄に記載の手法により測定された値を採用するものとする。
フィルムの破断点応力の値を制御するには、フィルムを構成する樹脂および添加剤の種類やその配合比、フィルム作製時の延伸条件などを調節すればよい(後述する製造方法に関する説明および実施例の記載を参照)。
本形態に係る偏光板保護フィルムの厚みは特に制限されず、通常は10〜60μm程度であるが、好ましくは15〜35μmであり、特に好ましくは20〜30μmである。本発明によれば、このように薄い偏光板保護フィルムを用いて偏光板を構成した場合であっても、偏光板の割れが効果的に防止され、偏光板の寸法安定性も向上させることができる。このため、近年の表示装置等の薄型化にも対応可能な偏光板として好適な技術が提供されうるのである。
本形態に係る偏光板保護フィルムの透湿度は、40℃、90%RHで10〜1200g/m・24hが好ましく、さらに20〜1000g/m・24hが好ましく、20〜850g/m・24hが特に好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することができる。
本形態に係る偏光板保護フィルムの破断伸度は10〜80%であることが好ましく20〜50%であることがさらに好ましい。
本形態に係る偏光板保護フィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることがさらに好ましい。
本形態に係る偏光板保護フィルムのヘイズは1%未満であることが好ましく、0〜0.5%であることが特に好ましい。
本形態に係る偏光板保護フィルムの、下記式で表されるリターデーション値Reは、好ましくは0〜10nmであり、より好ましくは0〜5nmである。また、リターデーション値Rthは、好ましくは5〜60nmであり、より好ましくは10〜40nmである。これらのリタデーション値Re、Rthを得るには、偏光板保護フィルムを製造する際の延伸操作の条件を調節することで、屈折率制御を行うことが好ましい。
式中、Reはフィルム面内リターデーション値、Rthはフィルム厚み方向リターデーション値、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。
上記屈折率は、例えばKOBRA−21ADHまたはKOBRA−WR(王子計測機器株式会社製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmで求めることができる。
≪偏光板保護フィルムの製造方法≫
本発明に係る偏光板保護フィルムを製造するには、たとえば、マクロモノマー由来の繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含む溶融樹脂を支持体上に流延して、フィルム(延伸前フィルム)を得る。そして、このようにして得られた延伸前フィルムを延伸すればよい。
本発明に係る偏光板保護フィルムの製造における「溶融樹脂の流延」は、溶融流延法として知られており、以下、この溶融流延法について詳細に説明する。
本発明における溶融流延法とは、所定の樹脂成分および可塑剤などの添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性の溶融物を流延する方法である。
加熱溶融する成形法は、さらに詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度および表面精度などに優れる偏光板保護フィルムを得るためには、溶融押し出し法が優れている。
以下、フィルムの製膜方法について説明する。
(樹脂成分と添加剤との溶融ペレットを製造する工程)
溶融押出に用いる複数の原材料は、通常あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。ペレット化は公知の方法で行われ、例えば、乾燥状態の樹脂成分や可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出機に供給し一軸や二軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押し出し、水冷または空冷し、カッティングすることで製造することができる。
原材料は、押出する前に乾燥しておくことが原材料の分解を防止する上で重要である。特にセルロース系樹脂を用いる場合、セルロース系樹脂は吸湿しやすいので、除湿熱風乾燥機や真空乾燥機で70〜140℃で3時間以上乾燥し、水分率を200質量ppm以下、さらに100質量ppm以下にしておくことが好ましい。
添加剤は、押出機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。酸化防止剤等少量の添加剤についてはさらに均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。なお、酸化防止剤の混合は、固体同士で混合してもよいし、必要により、酸化防止剤を溶剤に溶解しておき、樹脂成分に含浸させて混合してもよく、あるいは噴霧して混合してもよい。
真空ナウターミキサーなどが乾燥と混合を同時にできるので好ましい。また、フィーダー部やダイからの出口など空気と触れる場合は、除湿空気や除湿したNガスなどの雰囲気下にすることが好ましい。
また、押出機への供給ホッパー等は保温しておくことが吸湿防止できるので好ましい。
マット剤や紫外線吸収剤などは、得られたペレットにまぶしたり、フィルム製膜時に押出機中で添加したりしてもよい。
押出機は、せん断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、二軸押出機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
ニーダーディスクは、混錬性を向上できるが、せん断発熱に注意が必要である。ニーダーディスクを用いなくても混合性は十分である。ベント孔からの吸引は必要に応じて行えばよい。低温であれば揮発成分はほとんど発生しないのでベント孔なしでもよい。
ペレットの色は、黄味の指標であるb値が−5〜10の範囲にあることが好ましく、−1〜8の範囲にあることがさらに好ましく、−1〜5の範囲にあることがより好ましい。なお、b値は分光測色計CM−3700d(コニカミノルタセンシング(株)製)で、光源をD65(色温度6504K)とし、視野角10°で測定することができる。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
(樹脂成分と添加剤との溶融物をダイから押し出す工程)
除湿熱風や真空または減圧下で乾燥したポリマーを一軸や二軸タイプの押出し機を用いて、押し出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過し異物を除去したあと、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロール上で固化させる。
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
押し出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
濾過精度を粗、密と連続的に複数回繰り返した多層体としたものが好ましい。また、濾過精度を順次上げていく構成としたり、濾過精度の粗、密を繰り返したりする方法をとることで、フィルターの濾過寿命が延び、異物やゲルなどの補足精度も向上できるので好ましい。
ダイに傷や異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥をダイラインとも呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力ないものを用いることが好ましい。
押出機やダイなどの溶融樹脂と接触する内面は、表面粗さを小さくしたり、表面エネルギーの低い材質を用いたりするなどして、溶融樹脂が付着し難い表面加工が施されていることが好ましい。具体的には、ハードクロムメッキやセラミック溶射したものを表面粗さ0.2S以下となるように研磨したものが挙げられる。
可塑剤などの添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押出機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
(ダイから押し出された溶融物を冷却ロールと弾性タッチロールとの間に押圧しながら流延する工程)
冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップする際のタッチロール側のフィルム温度は後述する延伸前フィルムのTg以上「延伸前フィルムのTg+110」℃以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールが使用できる。
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
(延伸工程)
延伸工程の詳細について特に制限はない。ただし、本発明に係る偏光板保護フィルムの製造方法の好ましい実施形態では、上述した流延工程において得られたフィルム(延伸前フィルム)を、「延伸前フィルムのTg+40」℃以下の延伸温度で2.5倍以上、長手方向(MD方向)または幅手方向(TD方向)の少なくとも一方に延伸することが好ましい。また、延伸処理は、MD(長手方向、搬送方向ともいう)延伸、TD(MD方向に垂直な方向、幅手方向ともいう)延伸の順に行うことが好ましい。なお、上述した好ましい延伸温度・延伸倍率の規定は、この範囲で行われた延伸を合算したものとする。すなわち「延伸前フィルムのTg+40」℃以下の延伸温度で1.5倍、同方向にさらに1.8倍と2回に分けて延伸した場合は1.5×1.8=2.7倍延伸とみなす。以下では、好ましい実施形態として、MD延伸−TD延伸の順に延伸処理が行われ、TD延伸において上述した好ましい延伸温度・延伸倍率による延伸処理が行われる形態について、詳細に説明する。
1)MD延伸工程
ここでは、MD延伸工程におけるロール延伸について、詳しく説明する。ロール延伸とは、低速ロール群と、高速ロール群の周速度差によってフィルムをMD延伸する方法である。
ロール延伸の代表的な方式には、ヒーター加熱方式やオーブン加熱方式などがある。
ヒーター加熱方式は、低速ロール群で予熱されたフィルムを、低速ロール群と高速ロール群の間に設置されたヒーターにより瞬時に延伸温度にまで昇温し、比較的短い延伸スパンで延伸するものであり、オーブン加熱方式は、低速ロール群と高速ロール群の間にオーブンを設置し、このオーブンの中に予熱、延伸、冷却工程が含まれ、比較的長い延伸スパンで延伸するものである。
広幅の偏光板保護フィルムの作製には、幅収縮量を比較的小さく抑えられること、位相差の調整がしやすいことなどから、ヒーター加熱方式が好ましい。ここでは、ヒーター加熱方式について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
フィルムは低速ロール群で予熱され、低速ロール群と高速ロール群の間に設けられたヒーターによって延伸温度まで急激に温められてMD延伸され、高速ロール群で冷却され、次工程へと搬送される。低速ロール群の予熱ロールの本数は、擦り傷の観点から少ない方が望ましいが、フィルムの予熱温度に応じて本数を選択すればよく、1本以上、20本以下、好ましくは2本以上、15本以下のロールを使用する。
予熱ロール群の上限温度は、原則として予熱ロール間でMD延伸させないこと、粘着故障などが出ないことを考慮して、延伸前フィルムのTg以下、好ましくは「延伸前フィルムのTg−5」℃以下である。予熱ロール群による昇温速度は、熱膨張でシワが入らないことを考慮して、各ロールの入り側と出側でのフィルム温度差が80℃以下、好ましくは50℃以下となるようにするのが好ましい。
高速ロール群の冷却ロールの本数は、冷却する温度に応じて本数を選択すればよく、1本以上、15本以下、好ましくは2本以上、10本以下のロールを使用する。冷却ロール群の上限温度は、急冷しすぎないことを考慮して、延伸前フィルムのTg以下、好ましくは「延伸前フィルムのTg−5」℃以下である。冷却ロール群による降温速度は、熱収縮でシワが入らないこと、各ロールの入り側と出側でのフィルム温度差が100℃以下となるようにするのが好ましく、70℃以下となることがより好ましい。
予熱ロール群および冷却ロール群のロール径は、ロール強度、接触面積(伝熱・すべり)の観点から、100mmφ以上、400mmφ以下、好ましくは150mmφ以上、300mmφ以下である。特に、延伸ロール(ヒーターのすぐ上流・下流に位置するロール)は、実質延伸スパンSを短くするために、250mmφ以下が好ましい。
ところで、フィルムが滑って傷ついたり、ロール間でMD延伸されたりすることを防止するために、熱膨張や熱収縮に応じてドローをかける。ロールのドローは、隣り合うロール間で5%以下、好ましくは1%以下である。
ここで、ロールのドローとは、低速側のロールの周速度V1と、高速側のロールの周速度V2の比で、(V2−V1)/V1のことである。予熱ロール群および冷却ロール群におけるロールの駆動は、上記ロールのドローを制御するために、それぞれが駆動ロールであることが好ましいが、一部であれば、補助駆動ロール、フリーロールを使用してもよい。
減速機には遊星ローラーやロールギアなどが好適に用いられる。またダイレクトドライブ方式を使用することもでき、これらはシステムに応じて適宜選択すればよい。
予熱ロール群および冷却ロール群におけるロール表面粗度は、目的に応じてロール材質および粗度を変更すればよい。
例えば、高温でフィルムに接触するロールやすべり防止のためには、表面粗度0.5S以下、好ましくは0.2S以下の鏡面ロールを使用し、張力カットや張り付き防止のためには、表面粗度1.0S以上の表面の粗いロールを使用するのが好ましい。
予熱ロール群および冷却ロール群におけるロール表面材質は、例えばハードクロム(H−Cr)、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化クロム等やこれらの複合物を表面加工したセラミックス、シリコン、フッ素、クロロブレン等のゴム、テフロン(登録商標)等の樹脂を使用する。
予熱ロール群および冷却ロール群におけるロールの配置・間隔は、ロール間でのMD延伸防止、フィルムの放冷防止のため、狭い方がよい。各ロール間で、ロール剥離から次のロールに着地するまでの距離は、200mm以下、好ましくは100mm以下である。
ニップロールの材質は、弾性変形しやすいシリコンゴム、フッ素ゴム、クロロブレンゴム等のゴムロールや、フッ素樹脂等の樹脂ロールが好適に用いられる。ニップロールの位置は、フィルムが剥離/着地する位置で押さえることが好ましい。また、ニップロールの圧力は、フィルムを圧着できること、フィルムにキズがつかないことなどの観点から、0.1〜50N/mm、好ましくは0.5〜20N/mmである。
また、ニップロールはフィルムのキズ防止のためフィルム端部だけをニップしてもよく、幅収縮抑制の観点からロールを太鼓型にしたり、フィルム幅手方向に対してある角度をもって配置してもよい。
つぎに、ヒーターの種類としては、クリーン、高効率、省スペースであることなどから、例えば、赤外線ヒーター、ハロゲンランプヒーター、セラミックヒーターなど放射型熱源が望ましく、樹脂の吸収特性に応じて選択すればよい。
ヒーターの本数は、ヒーター能力、MD延伸・予熱温度、搬送速度、膜厚、熱伝導率などから計算すればよく、通常、1〜12本、好ましくは1〜8本使用する。ヒーターの高さは、効率アップのため、フィルムに接触しない範囲で、なるべくフィルムの近くであるのが好ましい。例えば5〜100mm、好ましくは10〜50mmである。ヒーターの出力は、延伸温度、昇温速度などを考慮して、適宜出力値を調整すればよい。
MD延伸速度は、3000〜75000%/minであり、好ましくは5000〜50000%/minである。ここで、MD延伸速度(%/min)は、つぎのようにして定義される。
すなわち、低速側延伸ロールの周速度をV1、高速側延伸ロールの周速度をV2、実質延伸スパンをSとすると、下記数式(6)で表される。
MD延伸の好ましい延伸温度は、好ましくは「延伸前フィルムのTg−10」℃以上、「延伸前フィルムのTg+60」℃以下であり、より好ましくは「延伸前フィルムのTg」℃以上、「延伸前フィルムのTg+40」℃以下であり、さらに好ましくは「延伸前フィルムのTg」℃以上、「延伸前フィルムのTg+20」℃以下である。また、MD方向の延伸倍率は、好ましくは1.01〜6.0倍であり、より好ましくは1.1〜2.5倍であり、さらに好ましくは1.5〜2.0倍である。
また、MD延伸ロールの間隔は、フィルムがロールに保持されていない区間は短いほど幅収縮が抑えられる。ここで、ロールの中心同士の間の距離が、好ましくは400mm以下であり、より好ましくは300mm以下である。
MD延伸ゾーンにおける予熱・延伸・冷却ロールのクリーニング装置は、1本でも複数本でも良く、インラインあるいはオフラインに設けても良いし、場合によっては、設置しなくてもよい。
清掃手段としては、不織布を押し付けて汚れを拭き取る方法など、公知のロール清掃手段が好適に用いられる。
2)TD延伸工程
MD延伸の後、テンター延伸{フィルムの両端をチャックで把持しこれを幅方向(搬送方向と直角方向)に広げて延伸}等によりTD延伸を行うことができる。
フィルムの延伸は、幅方向で制御された均一な温度分布下で行うことが好ましい。好ましくは±2℃以内、さらに好ましくは±1℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内である。
上述したように、TD延伸の好ましい延伸温度は、「延伸前フィルムのTg+40」℃以下であり、より好ましくは「延伸前フィルムのTg+25」℃以下であり、さらに好ましくは「延伸前フィルムのTg+20」℃以下である。また、TD方向の延伸倍率は、好ましくは2.5倍以上であり、より好ましくは1.2〜6.0倍であり、さらに好ましくは2.0〜3.0倍である。
本実施形態によれば、TD延伸においてかような延伸温度・延伸倍率による延伸処理を行うことで、フィルムの破断点応力を上昇させることが可能となるため、好ましい。
(延伸工程の後工程(含む、巻き取り工程))
上記の方法で作製したフィルムにおいて、可塑剤等の凝結物がヘイズ故障とならない程度に減少した後は、レターデーション調整や寸法変化率を小さくする目的で、フィルムをMD方向やTD方向に収縮させることが好ましい。
MD方向に収縮するには、例えば、幅延伸を一時クリップアウトさせてMD方向に弛緩させる、または横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。
後者の方法は一般の同時二軸延伸機を用いて、縦方向の隣り合うクリップの間隔を、例えばパンタグラフ方式やリニアドライブ方式でクリップ部分を駆動して滑らかに徐々に狭くする方法によって行うことができる。
必要により任意の方向(斜め方向)の延伸と組み合わせてもよい。
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。
なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、原材料として再利用される。
≪偏光板≫
本発明により提供される偏光板保護フィルムは、偏光子と貼合されて、偏光板を構成する。
偏光板の主たる構成要素である偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。この偏光子は、ホウ酸(塩)を0.01〜5質量%程度含有するものであることが好ましい。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられうる。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、ケン化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。中でも、熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能および耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
偏光板を構成する偏光子の他方の面には、本発明に係る偏光板保護フィルムを用いてもよいし、他の光学フィルムを貼合することも好ましい。かような他の光学フィルムとしては、例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタオプト(株)製)が好ましく用いられる。
本発明の偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の偏光板保護フィルムをアルカリケン化処理し、処理したフィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、水系接着剤を用いて貼り合わせることが好ましい。
本発明に用いられる水系接着剤は、水を溶媒または分散媒として使用する接着剤であり、接着・乾燥後に偏光子に含まれるホウ酸(塩)を偏光板保護フィルムへ移行させることが可能であるものが好ましい。ポリビニルアルコール水溶液、特に完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液が好ましく用いられる。その他、アセトアセチル変性の反応型ポリビニルアルコール、ウレタン系接着剤等も好ましい。
偏光板の片側面(表示装置のパネル側の面)には、パネルに貼合するための粘着剤層を設けることが一般的である。粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1.0×10Paの範囲である粘着剤が用いられていることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体または架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。
具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
上記粘着剤としては1液型であってもよいし、使用前に2液以上を混合して使用する型であってもよい。
また上記粘着剤は有機溶剤を媒体とする溶剤系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルジョン型、コロイド分散液型、水溶液型などの水系であってもよいし、無溶剤型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
本形態に係る偏光板において、視認側表面に位置する偏光板保護フィルムの偏光子とは反対側の表面には、各種の機能性層が設けられうる。かような機能性層としては、例えば、クリヤハードコート(CHC;Clear Hard Coat)加工層、低反射(LR;Low Reflection)加工層、防眩性(AG;Anti-Glare)加工層、反射防止(AR;Anti-Reflection)加工層、帯電防止層、バックコート層、易滑性層、接着層、バリアー層、光学補償層などが挙げられる。これらの機能性層は、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が用いられてもよい。2種以上が用いられる場合、それぞれの積層順序には特に制限はなく、従来公知の知見を参照しつつ、適宜決定されうる。
≪表示装置≫
上記形態により提供される偏光板は、各種の表示装置に用いることができる。すなわち、本発明のさらに他の形態によれば、上記形態により提供される偏光板を備えた表示装置もまた、提供される。本形態に係る表示装置は、本発明により提供される、耐熱性等に優れた偏光板保護フィルムを用いていることから、同様に耐熱性等に優れたものである。
表示装置としては、例えば、液晶表示装置が挙げられる。液晶表示装置のモード(駆動方式)についても特に制限はなく、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種モード(駆動方式)の液晶表示装置が用いられうる。好ましくは、VA(MVA,PVA)型液晶表示装置である。これらの液晶表示装置に本発明により提供される偏光板保護フィルムを用いることで、特に30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、環境変動が少なく、色味むら、正面コントラストなど視認性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
以下、実施例を用いて本発明の実施形態をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が下記の形態のみに限定されるわけではない。
≪偏光板保護フィルムの作製≫
<アクリル樹脂の合成>
下記の表1に示す組成および分子量(重量平均分子量(Mw))を有する共重合体として、アクリル樹脂(A−1〜A−4)を常法に従って合成し、後述する偏光板保護フィルムの作製に用いた。
<偏光板保護フィルム1の作製>
下記の材料を真空ナウターミキサーで90℃、1Torr(133.3Pa)で3時間混合しながらさらに乾燥し、得られた混合物を、2軸式押し出し機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。
アクリル樹脂A−4 100質量部
アデカスタブLA−31((株)ADEKA製) 2.0質量部
PEP−36G((株)ADEKA製) 0.1質量部
Irganox1010(BASFジャパン(株)製) 0.5質量部
SumilizerGS(住友化学(株)製) 0.24質量部
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.4質量部
得られたペレットを、90℃の除湿空気を5時間以上循環させて乾燥を行い、温度を保ったまま、次工程の1軸押出機に導入した。
上記ペレットを、1軸押出機を用いてTダイリップ部からフィルム状 に溶融押し出しし、その後表面温度が90℃の第1冷却ロール上にフィルム状に溶融押し出し、90μmのキャストフィルムを得た。この際第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールで押圧した。得られたフィルムのガラス転移温度は110℃であった。
得られたフィルムをまずロール周速差を利用した延伸機によって175℃で搬送方向に1.8倍延伸した。次に予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターに導入し、幅手方向に130℃(Tg+20℃)で2.5倍延伸した後、30℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落として、膜厚20μm、フィルム幅2500mmの偏光板保護フィルム1を得た。
<偏光板保護フィルム2の作製>
アクリル樹脂A−4に代えてアクリル樹脂A−3を用いたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム1の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム2を作製した。なお、延伸前に測定したフィルムのガラス転移温度は110℃であった。
<偏光板保護フィルム3の作製>
幅手方向に延伸する際の温度を135℃(Tg+25℃)としたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム1の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム3を作製した。
<偏光板保護フィルム4の作製>
下記の材料を真空ナウターミキサーで90℃、1Torr(133.3Pa)で3時間混合しながらさらに乾燥し、得られた混合物を、2軸式押し出し機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。
アクリル樹脂A−4 80質量部
セルロースエステル樹脂(アセチル置換度0.2、プロピオニル置換度2.76、重量平均分子量200000) 20質量部
アデカスタブLA−31((株)ADEKA製) 2.0質量部
PEP−36G((株)ADEKA製) 0.1質量部
Irganox1010(BASFジャパン(株)製) 0.5質量部
SumilizerGS(住友化学(株)製) 0.24質量部
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.4質量部
得られたペレットを、90℃の除湿空気を5時間以上循環させて乾燥を行い、温度を保ったまま、次工程の1軸押出機に導入した。
上記ペレットを、1軸押出機を用いてTダイリップ部からフィルム状 に溶融押し出しし、その後表面温度が90℃の第1冷却ロール上にフィルム状に溶融押し出し、90μmのキャストフィルムを得た。この際第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールで押圧した。得られたフィルムのガラス転移温度は120℃であった。
得られたフィルムをまずロール周速差を利用した延伸機によって175℃で搬送方向に1.8倍延伸した。次に予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターに導入し、幅手方向に140℃(Tg+20℃)で2.5倍延伸した後、30℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落として、膜厚20μm、フィルム幅2500mmの偏光板保護フィルム4を得た。
<偏光板保護フィルム5の作製>
(混合重合による樹脂粒状物1の調製)
メタクリル酸メチル78質量部、アクリル酸メチル2質量部、東亞合成(株)製マクロモノマーAA−6 20質量部、セルロースエステル樹脂(アセチル置換度0.2、プロピオニル置換度2.76、重量平均分子量200000)25質量部を混合し、濾過精度3μmの金属焼結フィルターを通過させてシラップを得た。このシラップに重合開始剤としてビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)−パーオキシジカーボネート0.02質量部を添加して30分間攪拌した。脱気後、ガラス板2枚を塩化ビニル製の無端チューブを介して構成されたセルの中に注入し、40℃温水浴にて15時間重合し、続いて130℃の空気浴にて3時間かけて重合を完結させて、樹脂混合物1からなる樹脂板を得た。得られた樹脂板を粉砕し6mmメッシュの篩いにかけて、樹脂粒状物1を得た。
(フィルムの作製)
下記の材料を真空ナウターミキサーで90℃、1Torr(133.3Pa)で3時間混合しながらさらに乾燥し、得られた混合物を、2軸式押し出し機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。
樹脂粒状物1 100質量部
アデカスタブLA−31((株)ADEKA製) 2.0質量部
PEP−36G((株)ADEKA製) 0.1質量部
Irganox1010(BASFジャパン(株)製) 0.5質量部
SumilizerGS(住友化学(株)製) 0.24質量部
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.4質量部
得られたペレットを、90℃の除湿空気を5時間以上循環させて乾燥を行い、温度を保ったまま、次工程の1軸押出機に導入した。
上記ペレットを、1軸押出機を用いてTダイリップ部からフィルム状 に溶融押し出しし、その後表面温度が90℃の第1冷却ロール上にフィルム状に溶融押し出し、90μmのキャストフィルムを得た。この際第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールで押圧した。得られたフィルムのガラス転移温度は120℃であった。
得られたフィルムをまずロール周速差を利用した延伸機によって175℃で搬送方向に1.8倍延伸した。次に予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターに導入し、幅手方向に140℃(Tg+20℃)で2.5倍延伸した後、30℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落として、膜厚20μm、フィルム幅2500mmの偏光板保護フィルム5を得た。
<偏光板保護フィルム6の作製>
幅手方向に延伸する際の温度を145℃(Tg+25℃)としたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム1の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム6を作製した。
<偏光板保護フィルム7の作製>
アクリル樹脂A−4に代えてアクリル樹脂A−1を用いたこと、および、幅手方向に延伸する際の温度を125℃としたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム1の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム7を作製した。なお、延伸前に測定したフィルムのガラス転移温度は105℃であった。
<偏光板保護フィルム8の作製>
(ゴム粒子1の作製)
内容積5Lのガラス製反応容器に、イオン交換水1700g、炭酸ナトリウム0.7gおよび過硫酸ナトリウム0.3gを仕込んで窒素気流下に撹拌した。次いで、分散剤(花王(株)製の「ペレックスOT−P」)4.46g、イオン交換水150g、メタクリル酸メチル150gおよびメタクリル酸アリル0.3gを加えた後、75℃に昇温して150分間撹拌を続けた。
次いで、アクリル酸ブチル689g、スチレン162gおよびメタクリル酸アリル17gの混合物と、過硫酸ナトリウム0.85g、分散剤(花王(株)製の「ペレックスOT−P」)7.4gおよびイオン交換水50gの混合物とを、別々に90分間かけて添加し、さらに90分間重合を続けた。
重合完了後、さらにメタクリル酸メチル326gおよびエチルアクリレート14gの混合物と、過硫酸ナトリウム0.34gを溶解させたイオン交換水30gとを、別々に30分間かけて添加した。
添加終了後、さらに60分間保持し重合を完了した。得られたラテックスを0.5質量%塩化アルミニウム水溶液に投入してゴム状重合体を凝集させた。これを温水にて5回洗浄後、乾燥してゴム粒子1を得た。
(フィルムの作製)
下記の材料を真空ナウターミキサーで90℃、1Torr(133.3Pa)で3時間混合しながらさらに乾燥し、得られた混合物を、2軸式押し出し機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。
アクリル樹脂A−1 95質量部
ゴム粒子1 5質量部
アデカスタブLA−31((株)ADEKA製) 2.0質量部
PEP−36G((株)ADEKA製) 0.1質量部
Irganox1010(BASFジャパン(株)製) 0.5質量部
SumilizerGS(住友化学(株)製) 0.24質量部
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.4質量部
得られたペレットを、90℃の除湿空気を5時間以上循環させて乾燥を行い、温度を保ったまま、次工程の1軸押出機に導入した。
上記ペレットを、1軸押出機を用いてTダイリップ部からフィルム状 に溶融押し出しし、その後表面温度が90℃の第1冷却ロール上にフィルム状に溶融押し出し、90μmのキャストフィルムを得た。この際第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールで押圧した。得られたフィルムのガラス転移温度は105℃であった。
得られたフィルムをまずロール周速差を利用した延伸機によって175℃で搬送方向に1.8倍延伸した。次に予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターに導入し、幅手方向に125℃(Tg+20℃)で2.5倍延伸した後、30℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落として、膜厚20μm、フィルム幅2500mmの偏光板保護フィルム8を得た。
<偏光板保護フィルム9の作製>
樹脂をペレット化する際のアクリル樹脂A−1およびゴム粒子1の添加量を、アクリル樹脂A−1 90質量部およびゴム粒子1 10質量部としたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム8の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム9を作製した。なお、延伸前に測定したフィルムのガラス転移温度は105℃であった。
<偏光板保護フィルム10の作製>
樹脂をペレット化する際のアクリル樹脂A−1およびゴム粒子1の添加量を、アクリル樹脂A−1 80質量部およびゴム粒子1 20質量部としたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム8の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム10を作製した。なお、延伸前に測定したフィルムのガラス転移温度は105℃であった。
<偏光板保護フィルム11の作製>
アクリル樹脂A−1に代えてアクリル樹脂A−2を用いたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム7の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム11を作製した。なお、延伸前に測定したフィルムのガラス転移温度は105℃であった。
<偏光板保護フィルム12の作製>
幅手方向に延伸する際の温度を160℃(Tg+50℃)としたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム1の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム12を作製した。
<偏光板保護フィルム13の作製>
アクリル樹脂A−4に代えてアクリル樹脂A−1を用いたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム5の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム13を作製した。なお、延伸前に測定したフィルムのガラス転移温度は120℃であった。
(溶融粘度の測定)
それぞれの偏光板保護フィルムを作製する際に得られたペレットについて、その溶融粘度を測定した。具体的には、ペレットを回転式レオメータ(Thermo Fischer製 Haake RS600)にて、240℃・せん断速度100毎秒の条件で溶融粘度を測定した。得られた値を十の位で四捨五入し、100Pa・s単位で下記の表2に示す。
表2に示すように、アクリル樹脂の分子量を増大させることによりフィルムの機械的強度を高めたフィルム11では、樹脂の溶融粘度の上昇が見られた。
≪偏光板1〜13の作製≫
上記で作製した偏光板保護フィルム1〜13のそれぞれに対して、下記のアルカリケン化処理を施し、偏光板を作製した。
<アルカリケン化処理>
ケン化工程 2M−NaOH 50℃ 180秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
中和工程 10質量%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
ケン化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで80℃で乾燥を行った。
<偏光子の作製>
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素1質量部およびホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で6倍に搬送方向に延伸して偏光子を作製した。
上記で作製した偏光子の片面に、同様にケン化処理を施したコニカミノルタオプト(株)製KC4UYを、その反対面側に上記でアルカリケン化処理を施した偏光板保護フィルム1を、接着剤を介して、偏光子の透過軸とフィルムの面内遅相軸とが平行になるように各々貼り合わせ、乾燥して、偏光板保護フィルム1〜13のそれぞれに対応する偏光板1〜13を作製した。
≪偏光板保護フィルムおよび偏光板の評価≫
上記で作製した偏光板保護フィルムおよび偏光板について、以下の評価を行った。結果を下記の表3に示す。
<偏光板保護フィルムの評価>
(破断点応力)
(株)エー・アンド・デイ製万能試験機テンシロンRTFにより、偏光板保護フィルム1〜13のMD/TD方向の破断点応力を測定した。いずれもTD方向の破断点応力が大きかったため、これを下記の表3に示し、MD方向の破断点応力の記載は省略する。
(ヘイズ)
日本電色工業(株)製ヘイズメーターNDH5000にて、偏光板保護フィルム1〜13のヘイズ値を測定した。
(凸状異物)
目視により1m光学フィルム試料の凸状異物(0.5μm以上のサイズのもの)を検査し、下記の基準で評価した。
○:0〜5個
△:6〜20個
×:21個以上
<偏光板の評価>
(偏光板割れ)
上記で作製した偏光板保護フィルムが外側に、かつ偏光板の吸収軸(MD方向)が折り目となるように偏光板を折り曲げた。試験片を変えて20回試験したときの、割れた回数に基づき、下記の基準に従って評価した。
◎:20回とも割れない
○:1〜2回割れる
△:3〜10回割れる
×:6回以上割れる
(寸法安定性)
偏光板を90℃の環境下に1000時間保存し、保存開始前のTD方向の寸法に対する寸法変化の割合(相対値)に基づき、下記の基準に従って評価した。
◎:0.1%未満
○:0.1%以上0.3%未満
△:0.3%以上1.0%未満
×:1.0%以上
表3に示すように、本発明に係る偏光板保護フィルムを用いて作製された偏光板は、耐熱性(寸法安定性)に優れ、ヘイズが低く(透明性が高く)、しかも偏光板の割れを効果的に防止することができることがわかる。これに対し、アクリル樹脂にマクロモノマーを導入していないフィルム7では偏光板の割れを防止することができなかった。また、ゴム粒子を添加することにより機械的強度を高めたフィルム8〜10では、ゴム粒子の添加量の増加に伴って破断点応力が上昇して偏光板の割れも改善されたが、一方でフィルムのヘイズが上昇してしまい、寸法安定性も低下する結果となった。フィルム11では、上述したように溶融粘度の上昇が見られたが、偏光板の割れを防止することもできなかった。マクロモノマーを導入したが高温で延伸処理を行ったフィルム12では、やはり偏光板の割れを防止することができなかった。
また、本発明に係る偏光板保護フィルムがアクリル樹脂に加えてセルロースエステル樹脂等のセルロース系樹脂をも含む場合には、セルロース系樹脂に由来する凸状異物の顕在化も低減させることができた(フィルム4〜6)。特に、この効果はより低温で延伸処理を行った場合に顕著であった。一方、アクリル樹脂のモノマー成分にマクロモノマーを導入することなくセルロース系樹脂の存在下で重合(混合重合)を行ったフィルム13では、低温で延伸処理を行ったにもかかわらず凸状異物が大量に発生する結果となった。

Claims (10)

  1. マクロモノマー由来の繰り返し単位を含むアクリル樹脂を樹脂成分100質量%に対して50〜100質量%含有し、長手方向または幅手方向の少なくとも一方の破断点応力が120MPa以上である、偏光板保護フィルム。
  2. セルロース系樹脂をさらに含有する、請求項1に記載の偏光板保護フィルム。
  3. 幅手方向の破断点応力が長手方向の破断点応力よりも大きい、請求項1または2に記載の偏光板保護フィルム。
  4. 膜厚が10〜35μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルム。
  5. マクロモノマー由来の繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含有する溶融樹脂を支持体上に流延して得られる延伸前フィルムを、「延伸前フィルムのTg+40」℃以下の延伸温度で2.5倍以上、長手方向(MD方向)または幅手方向(TD方向)の少なくとも一方に延伸する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
  6. 前記延伸温度が「延伸前フィルムのTg+25」℃以下である、請求項に記載の製造方法。
  7. 前記溶融樹脂がセルロース系樹脂をさらに含む、請求項またはに記載の製造方法。
  8. 前記アクリル樹脂のモノマー成分を前記セルロース系樹脂の存在下で重合することにより、前記アクリル樹脂と前記セルロース系樹脂との樹脂混合物を得る工程をさらに含む、請求項に記載の製造方法。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルムと、偏光子の少なくとも一方の表面とが貼合されてなる、偏光板。
  10. 請求項に記載の偏光板を備えた、表示装置。
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