JP5888040B2 - 偏光板保護フィルムおよびその製造方法、並びにそれを用いた偏光板および表示装置 - Google Patents
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Description
2.セルロース系樹脂をさらに含有する、上記1に記載の偏光板保護フィルム;
3.幅手方向の破断点応力が長手方向の破断点応力よりも大きい、上記1または2に記載の偏光板保護フィルム;
4.膜厚が10〜35μmである、上記1〜3のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルム;
5.マクロモノマー由来の繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含む溶融樹脂を支持体上に流延して得られる延伸前フィルムを、「延伸前フィルムのTg+40」℃以下の延伸温度で2.5倍以上、長手方向(MD方向)または幅手方向(TD方向)の少なくとも一方に延伸する工程を含む、上記1〜4のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルムの製造方法;
6.前記延伸温度が「延伸前フィルムのTg+25」℃以下である、上記5に記載の製造方法;
7.前記溶融樹脂がセルロース系樹脂をさらに含む、上記5または6に記載の製造方法;
8.前記アクリル樹脂のモノマー成分を前記セルロース系樹脂の存在下で重合することにより、前記アクリル樹脂と前記セルロース系樹脂との樹脂混合物を得る工程をさらに含む、上記7に記載の製造方法;
9.上記1〜4のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルムと、偏光子の少なくとも一方の表面とが貼合されてなる、偏光板;
10.上記9に記載の偏光板を備えた、表示装置。
本発明の一形態は、偏光板保護フィルムに関する。そして、本形態に係る偏光板保護フィルムは、マクロモノマー由来の繰り返し単位を含むアクリル樹脂(以下、単に「マクロモノマー含有アクリル樹脂」)を含有し、長手方向または幅手方向の少なくとも一方の破断点応力が120MPa以上である点に特徴を有する。なお、本明細書において、上記特定のアクリル樹脂を「マクロモノマー含有アクリル樹脂」とも称する。また、本明細書において、「アクリル樹脂」の概念には、メタクリル酸またはその誘導体由来の繰り返し単位や、(メタ)アクリル酸またはその誘導体以外のビニルモノマー由来の繰り返し単位を含む樹脂も含まれるものとする。
本形態に係る偏光板保護フィルムは、上述したように、マクロモノマー含有アクリル樹脂を含有するものである。かような構成とすることで、本形態の偏光板保護フィルムを偏光子と貼合して得られる偏光板の耐熱性(寸法安定性)を確保しつつ、ヘイズの上昇を防止して透明性を維持しながら樹脂の脆性を改善し、しかも、製造時の樹脂の粘度の上昇を抑えながら、薄膜化した場合であっても偏光板の割れを効果的に防止することができる。そのメカニズムとして、マクロモノマーの有する側鎖(一般に繰り返し構造を有する)どうしが、樹脂の溶融時などの高温条件下では糸毬状にまとまって存在する一方で、温度が低下すると互いに相互作用して三次元ネットワーク状に絡み合い、フィルムの強度を向上させるものと考えられる。
本発明において、「マクロモノマー」とは、10〜100個の繰り返し単位からなる分子鎖を有し、末端にラジカル重合可能な不飽和結合を有する化合物を意味する。マクロモノマーの分子量について特に制限はないが、3000〜10000が好ましい。マクロモノマーの分子量が3000以上であれば本発明の効果を十分に発揮することができる。一方、マクロモノマーの分子量が10000以下であれば、アクリル樹脂自体の分子量を増大させる虞が低減され、樹脂の溶融粘度を低く抑えることに寄与しうる。
・メチルメタクリレート重合体の末端に(メタ)アクリロイル基が付加されてなる分子量3000〜10000の化合物;
・スチレン重合体の末端に(メタ)アクリロイル基が付加されてなる分子量3000〜10000の化合物;
・スチレン−アクリロニトリル共重合体の末端にメタクリロイル基が付加されてなる分子量3000〜10000の化合物;
・ブチルアクリレート重合体の末端に(メタ)アクリロイル基が付加されてなる分子量3000〜10000の化合物;
・ヒドロキシエチルアクリレートにε−カプロラクタム重合体が付加されてなる分子量3000〜10000の化合物。
本形態の偏光板保護フィルムに含まれるマクロモノマー含有アクリル樹脂は、メチルメタクリレート(MMA)由来の繰り返し単位を含むものであることが好ましい。MMA由来の繰り返し単位を含むアクリル樹脂の構造は、好ましくは下記の化学式1で表される。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2800000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
本形態に係る偏光板保護フィルムは、マクロモノマー含有アクリル樹脂に加えて、その他の樹脂を含んでもよい。その他の樹脂としては、マクロモノマー含有アクリル樹脂以外のアクリル樹脂、セルローストリアセテート等のセルロース系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系高分子等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。なかでも、マクロモノマー含有アクリル樹脂以外のアクリル樹脂またはセルロース系樹脂が透明性、光学等方性などの観点からは好ましい。以下、これらのマクロモノマー含有アクリル樹脂以外のアクリル樹脂およびセルロース系樹脂の好ましい形態について、簡単に説明する。
マクロモノマー含有アクリル樹脂以外のアクリル樹脂としては、従来公知のアクリル樹脂が用いられうる。マクロモノマー含有アクリル樹脂以外のアクリル樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99モル%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50モル%からなるものが好ましい。共重合可能な他の単量体としては、アルキル基の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル基の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン、核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。これらのなかでも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
セルロース系樹脂としては、従来公知のセルロース系樹脂が用いられうる。セルロース系樹脂としては、例えば、セルロースエステル樹脂やセルロースエーテル樹脂などが挙げられる。
の関係を満たすアシル基置換度を有するものであることが好ましい。
本発明において用いられるマクロモノマー含有アクリル樹脂は、当該アクリル樹脂のモノマー成分をセルロース系樹脂の存在下で重合する工程を経て得られるアクリル樹脂とセルロース系樹脂との樹脂混合物の形態であることが好ましい。かような構成とすることにより、別々の樹脂成分どうしを混合(ブレンド)する場合と比較して、より低混練でのポリマーブレンドが可能であり、破断点応力も上昇する傾向にある。以下、かような重合手法の一例について説明する。
シラップを得る工程では、アクリル樹脂のモノマー成分およびセルロース系樹脂を含むシラップを得る。用いられる各成分の具体的な種類やそれらの配合比については、上述した通りであるためここでは詳細な説明を省略する。
シラップには、原料となるセルロース系樹脂に含まれる、微小な異物(アシル基置換度が異なるセルロースエステルや未反応のセルロースなど)や不純物(カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンなど)が含まれる。そのような微小な異物や不純物を含むシラップから得られる樹脂混合物を含む偏光板保護フィルムは、ヘイズが高くなりやすい。そのため、シラップに含まれる微小な異物や不純物を除去することが好ましい。
本工程では、セルロース系樹脂の存在下で、アクリル樹脂のモノマー成分を塊状重合させることが好ましい。これにより、アクリル樹脂のモノマー成分の重合物(すなわち、アクリル樹脂)とセルロース系樹脂とが均一に相溶した樹脂混合物(熱可塑性樹脂)を得ることができる。このようにして得られた樹脂混合物(熱可塑性樹脂)を含む偏光板保護フィルムはヘイズが低減されるため、好ましいのである。
本形態に係る偏光板保護フィルムは、上述した樹脂成分に加えて、各種の添加剤を含みうる。以下、本形態に係る偏光板保護フィルムに含まれうる添加剤の具体例について説明するが、下記の形態のみに限定されるわけではない。
可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れるが、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。
酸化防止剤としては、通常知られているものを使用することができる。特に、ラクトン系、イオウ系、フェノール系、二重結合系、ヒンダードアミン系、リン系化合物のものを好ましく用いることができる。
着色剤とは染料や顔料を意味するが、本発明では、液晶画面の色調を青色調にする効果またはイエローインデックスの調整、ヘイズの低減を有するものを指す。
紫外線吸収剤についても特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。高分子型の紫外線吸収剤としてもよい。
本形態に係る偏光板保護フィルムは、フィルムの滑り性を付与するためにマット剤を含有してもよい。本発明で用いられるマット剤としては、得られるフィルムの透明性を損なうことがなく、溶融時の耐熱性があれば無機化合物または有機化合物どちらでもよく、例えば、タルク、マイカ、ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪成土、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、クレー、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ワラストナイト、窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ化チタン、炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭化ケイ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、ホワイトカーボンなどが挙げられる。これらのマット剤は、単独でも二種以上併用しても使用できる。粒径や形状(例えば針状と球状など)の異なる粒子を併用することで高度に透明性と滑り性を両立させることもできる。これらのなかでも、セルロースエステルと屈折率が近いので透明性(ヘイズ)に優れる二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
本発明において、溶融粘度を低減する目的として、水素結合性溶媒を添加することができる。水素結合性溶媒とは、J.N.イスラエルアチビリ著、「分子間力と表面力」(近藤保、大島広行訳、マグロウヒル出版、1991年)に記載されるように、電気的に陰性な原子(酸素、窒素、フッ素、塩素)と電気的に陰性な原子と共有結合した水素原子間に生ずる、水素原子媒介「結合」を生ずることができるような有機溶媒、すなわち、結合モーメントが大きく、かつ水素を含む結合、例えば、O−H(酸素水素結合)、N−H(窒素水素結合)、F−H(フッ素水素結合)を含むことで近接した分子同士が配列できるような有機溶媒をいう。
本発明の偏光板保護フィルムは、多層構造アクリル系粒状複合体(アクリル粒子)を含有してもよい。かようなアクリル粒子の市販品の例としては、例えば、三菱レイヨン社製「メタブレン」、鐘淵化学工業社製「カネエース」、呉羽化学工業社製「パラロイド」、ロームアンドハース社製「アクリロイド」、ガンツ化成工業社製「スタフィロイド」およびクラレ社製「パラペットSA」などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
上述したように、本形態に係る偏光板保護フィルムは、長手方向(MD方向)または幅手方向(TD方向)の少なくとも一方の破断点応力が120MPa以上である点にも特徴を有する。長手方向(MD方向)と幅手方向(TD方向)とでは、幅手方向(TD方向)の破断点応力がより大きいことが好ましい。かような構成とすることで、本形態に係る偏光板保護フィルムが偏光子とロール・トゥ・ロールで貼合されてなる偏光板の割れが効果的に防止されうる。これは、以下のように説明される。すなわち、一般に偏光子は吸収軸が存在する長手方向(MD方向)に裂けやすい。したがって、本形態に係る偏光板保護フィルムを偏光子に対してロール・トゥ・ロールで貼合して偏光板を構成したときに、偏光板保護フィルムの幅手方向(TD方向)の破断点応力がより大きければ、偏光子の長手方向(MD方向)への裂けが抑制され、同時に偏光板の割れも防止されるのである。ここで、長手方向(MD方向)および幅手方向(TD方向)の破断点応力はいずれも大きいほど好ましいが、一例として、幅手方向(TD方向)の破断点応力は、好ましくは120MPa以上であり、より好ましくは130MPa以上である。また、幅手方向(TD方向)の破断点応力が120MPa以上であれば、長手方向(MD方向)の破断点応力は120MPa未満でもよく、好ましくは90MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上である。なお、破断点応力の上限値についても特に制限はないが、現実的には、いずれも200MPa程度以下である。フィルムの破断点応力が長手方向(MD方向)および幅手方向(TD方向)ともに200MPa以下であれば、フィルムの剛直性が高くなりすぎることによる取扱い性の低下が生じる虞が特に低減される。ここで、破断点応力の値としては、後述する実施例の欄に記載の手法により測定された値を採用するものとする。
本発明に係る偏光板保護フィルムを製造するには、たとえば、マクロモノマー由来の繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含む溶融樹脂を支持体上に流延して、フィルム(延伸前フィルム)を得る。そして、このようにして得られた延伸前フィルムを延伸すればよい。
溶融押出に用いる複数の原材料は、通常あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。ペレット化は公知の方法で行われ、例えば、乾燥状態の樹脂成分や可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出機に供給し一軸や二軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押し出し、水冷または空冷し、カッティングすることで製造することができる。
除湿熱風や真空または減圧下で乾燥したポリマーを一軸や二軸タイプの押出し機を用いて、押し出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過し異物を除去したあと、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロール上で固化させる。
冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップする際のタッチロール側のフィルム温度は後述する延伸前フィルムのTg以上「延伸前フィルムのTg+110」℃以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールが使用できる。
延伸工程の詳細について特に制限はない。ただし、本発明に係る偏光板保護フィルムの製造方法の好ましい実施形態では、上述した流延工程において得られたフィルム(延伸前フィルム)を、「延伸前フィルムのTg+40」℃以下の延伸温度で2.5倍以上、長手方向(MD方向)または幅手方向(TD方向)の少なくとも一方に延伸することが好ましい。また、延伸処理は、MD(長手方向、搬送方向ともいう)延伸、TD(MD方向に垂直な方向、幅手方向ともいう)延伸の順に行うことが好ましい。なお、上述した好ましい延伸温度・延伸倍率の規定は、この範囲で行われた延伸を合算したものとする。すなわち「延伸前フィルムのTg+40」℃以下の延伸温度で1.5倍、同方向にさらに1.8倍と2回に分けて延伸した場合は1.5×1.8=2.7倍延伸とみなす。以下では、好ましい実施形態として、MD延伸−TD延伸の順に延伸処理が行われ、TD延伸において上述した好ましい延伸温度・延伸倍率による延伸処理が行われる形態について、詳細に説明する。
ここでは、MD延伸工程におけるロール延伸について、詳しく説明する。ロール延伸とは、低速ロール群と、高速ロール群の周速度差によってフィルムをMD延伸する方法である。
予熱ロール群および冷却ロール群におけるロール表面粗度は、目的に応じてロール材質および粗度を変更すればよい。
MD延伸の後、テンター延伸{フィルムの両端をチャックで把持しこれを幅方向(搬送方向と直角方向)に広げて延伸}等によりTD延伸を行うことができる。
上記の方法で作製したフィルムにおいて、可塑剤等の凝結物がヘイズ故障とならない程度に減少した後は、レターデーション調整や寸法変化率を小さくする目的で、フィルムをMD方向やTD方向に収縮させることが好ましい。
本発明により提供される偏光板保護フィルムは、偏光子と貼合されて、偏光板を構成する。
上記形態により提供される偏光板は、各種の表示装置に用いることができる。すなわち、本発明のさらに他の形態によれば、上記形態により提供される偏光板を備えた表示装置もまた、提供される。本形態に係る表示装置は、本発明により提供される、耐熱性等に優れた偏光板保護フィルムを用いていることから、同様に耐熱性等に優れたものである。
<アクリル樹脂の合成>
下記の表1に示す組成および分子量(重量平均分子量(Mw))を有する共重合体として、アクリル樹脂(A−1〜A−4)を常法に従って合成し、後述する偏光板保護フィルムの作製に用いた。
下記の材料を真空ナウターミキサーで90℃、1Torr(133.3Pa)で3時間混合しながらさらに乾燥し、得られた混合物を、2軸式押し出し機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。
アデカスタブLA−31((株)ADEKA製) 2.0質量部
PEP−36G((株)ADEKA製) 0.1質量部
Irganox1010(BASFジャパン(株)製) 0.5質量部
SumilizerGS(住友化学(株)製) 0.24質量部
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.4質量部
得られたペレットを、90℃の除湿空気を5時間以上循環させて乾燥を行い、温度を保ったまま、次工程の1軸押出機に導入した。
アクリル樹脂A−4に代えてアクリル樹脂A−3を用いたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム1の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム2を作製した。なお、延伸前に測定したフィルムのガラス転移温度は110℃であった。
幅手方向に延伸する際の温度を135℃(Tg+25℃)としたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム1の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム3を作製した。
下記の材料を真空ナウターミキサーで90℃、1Torr(133.3Pa)で3時間混合しながらさらに乾燥し、得られた混合物を、2軸式押し出し機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。
セルロースエステル樹脂(アセチル置換度0.2、プロピオニル置換度2.76、重量平均分子量200000) 20質量部
アデカスタブLA−31((株)ADEKA製) 2.0質量部
PEP−36G((株)ADEKA製) 0.1質量部
Irganox1010(BASFジャパン(株)製) 0.5質量部
SumilizerGS(住友化学(株)製) 0.24質量部
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.4質量部
得られたペレットを、90℃の除湿空気を5時間以上循環させて乾燥を行い、温度を保ったまま、次工程の1軸押出機に導入した。
(混合重合による樹脂粒状物1の調製)
メタクリル酸メチル78質量部、アクリル酸メチル2質量部、東亞合成(株)製マクロモノマーAA−6 20質量部、セルロースエステル樹脂(アセチル置換度0.2、プロピオニル置換度2.76、重量平均分子量200000)25質量部を混合し、濾過精度3μmの金属焼結フィルターを通過させてシラップを得た。このシラップに重合開始剤としてビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)−パーオキシジカーボネート0.02質量部を添加して30分間攪拌した。脱気後、ガラス板2枚を塩化ビニル製の無端チューブを介して構成されたセルの中に注入し、40℃温水浴にて15時間重合し、続いて130℃の空気浴にて3時間かけて重合を完結させて、樹脂混合物1からなる樹脂板を得た。得られた樹脂板を粉砕し6mmメッシュの篩いにかけて、樹脂粒状物1を得た。
下記の材料を真空ナウターミキサーで90℃、1Torr(133.3Pa)で3時間混合しながらさらに乾燥し、得られた混合物を、2軸式押し出し機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。
アデカスタブLA−31((株)ADEKA製) 2.0質量部
PEP−36G((株)ADEKA製) 0.1質量部
Irganox1010(BASFジャパン(株)製) 0.5質量部
SumilizerGS(住友化学(株)製) 0.24質量部
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.4質量部
得られたペレットを、90℃の除湿空気を5時間以上循環させて乾燥を行い、温度を保ったまま、次工程の1軸押出機に導入した。
幅手方向に延伸する際の温度を145℃(Tg+25℃)としたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム1の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム6を作製した。
アクリル樹脂A−4に代えてアクリル樹脂A−1を用いたこと、および、幅手方向に延伸する際の温度を125℃としたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム1の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム7を作製した。なお、延伸前に測定したフィルムのガラス転移温度は105℃であった。
(ゴム粒子1の作製)
内容積5Lのガラス製反応容器に、イオン交換水1700g、炭酸ナトリウム0.7gおよび過硫酸ナトリウム0.3gを仕込んで窒素気流下に撹拌した。次いで、分散剤(花王(株)製の「ペレックスOT−P」)4.46g、イオン交換水150g、メタクリル酸メチル150gおよびメタクリル酸アリル0.3gを加えた後、75℃に昇温して150分間撹拌を続けた。
下記の材料を真空ナウターミキサーで90℃、1Torr(133.3Pa)で3時間混合しながらさらに乾燥し、得られた混合物を、2軸式押し出し機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。
ゴム粒子1 5質量部
アデカスタブLA−31((株)ADEKA製) 2.0質量部
PEP−36G((株)ADEKA製) 0.1質量部
Irganox1010(BASFジャパン(株)製) 0.5質量部
SumilizerGS(住友化学(株)製) 0.24質量部
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 0.4質量部
得られたペレットを、90℃の除湿空気を5時間以上循環させて乾燥を行い、温度を保ったまま、次工程の1軸押出機に導入した。
樹脂をペレット化する際のアクリル樹脂A−1およびゴム粒子1の添加量を、アクリル樹脂A−1 90質量部およびゴム粒子1 10質量部としたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム8の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム9を作製した。なお、延伸前に測定したフィルムのガラス転移温度は105℃であった。
樹脂をペレット化する際のアクリル樹脂A−1およびゴム粒子1の添加量を、アクリル樹脂A−1 80質量部およびゴム粒子1 20質量部としたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム8の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム10を作製した。なお、延伸前に測定したフィルムのガラス転移温度は105℃であった。
アクリル樹脂A−1に代えてアクリル樹脂A−2を用いたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム7の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム11を作製した。なお、延伸前に測定したフィルムのガラス転移温度は105℃であった。
幅手方向に延伸する際の温度を160℃(Tg+50℃)としたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム1の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム12を作製した。
アクリル樹脂A−4に代えてアクリル樹脂A−1を用いたこと以外は、上述した偏光板保護フィルム5の作製と同様の手法により、偏光板保護フィルム13を作製した。なお、延伸前に測定したフィルムのガラス転移温度は120℃であった。
それぞれの偏光板保護フィルムを作製する際に得られたペレットについて、その溶融粘度を測定した。具体的には、ペレットを回転式レオメータ(Thermo Fischer製 Haake RS600)にて、240℃・せん断速度100毎秒の条件で溶融粘度を測定した。得られた値を十の位で四捨五入し、100Pa・s単位で下記の表2に示す。
上記で作製した偏光板保護フィルム1〜13のそれぞれに対して、下記のアルカリケン化処理を施し、偏光板を作製した。
ケン化工程 2M−NaOH 50℃ 180秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
中和工程 10質量%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
ケン化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで80℃で乾燥を行った。
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素1質量部およびホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で6倍に搬送方向に延伸して偏光子を作製した。
上記で作製した偏光板保護フィルムおよび偏光板について、以下の評価を行った。結果を下記の表3に示す。
(破断点応力)
(株)エー・アンド・デイ製万能試験機テンシロンRTFにより、偏光板保護フィルム1〜13のMD/TD方向の破断点応力を測定した。いずれもTD方向の破断点応力が大きかったため、これを下記の表3に示し、MD方向の破断点応力の記載は省略する。
日本電色工業(株)製ヘイズメーターNDH5000にて、偏光板保護フィルム1〜13のヘイズ値を測定した。
目視により1m2光学フィルム試料の凸状異物(0.5μm以上のサイズのもの)を検査し、下記の基準で評価した。
△:6〜20個
×:21個以上
<偏光板の評価>
(偏光板割れ)
上記で作製した偏光板保護フィルムが外側に、かつ偏光板の吸収軸(MD方向)が折り目となるように偏光板を折り曲げた。試験片を変えて20回試験したときの、割れた回数に基づき、下記の基準に従って評価した。
○:1〜2回割れる
△:3〜10回割れる
×:6回以上割れる
(寸法安定性)
偏光板を90℃の環境下に1000時間保存し、保存開始前のTD方向の寸法に対する寸法変化の割合(相対値)に基づき、下記の基準に従って評価した。
○:0.1%以上0.3%未満
△:0.3%以上1.0%未満
×:1.0%以上
Claims (10)
- マクロモノマー由来の繰り返し単位を含むアクリル樹脂を樹脂成分100質量%に対して50〜100質量%含有し、長手方向または幅手方向の少なくとも一方の破断点応力が120MPa以上である、偏光板保護フィルム。
- セルロース系樹脂をさらに含有する、請求項1に記載の偏光板保護フィルム。
- 幅手方向の破断点応力が長手方向の破断点応力よりも大きい、請求項1または2に記載の偏光板保護フィルム。
- 膜厚が10〜35μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルム。
- マクロモノマー由来の繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含有する溶融樹脂を支持体上に流延して得られる延伸前フィルムを、「延伸前フィルムのTg+40」℃以下の延伸温度で2.5倍以上、長手方向(MD方向)または幅手方向(TD方向)の少なくとも一方に延伸する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
- 前記延伸温度が「延伸前フィルムのTg+25」℃以下である、請求項5に記載の製造方法。
- 前記溶融樹脂がセルロース系樹脂をさらに含む、請求項5または6に記載の製造方法。
- 前記アクリル樹脂のモノマー成分を前記セルロース系樹脂の存在下で重合することにより、前記アクリル樹脂と前記セルロース系樹脂との樹脂混合物を得る工程をさらに含む、請求項7に記載の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルムと、偏光子の少なくとも一方の表面とが貼合されてなる、偏光板。
- 請求項9に記載の偏光板を備えた、表示装置。
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