JP4801263B2 - プラスチック積層体および画像表示保護フイルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面硬度、耐摩耗性および耐引っ掻き性に優れたプラスチック積層体に関するものであり、具体的には、デイスプレイ表示部、計器表示部などの保護フイルム、シートキーボード、銘板、タッチパネルなどに好適なプラスチック積層体と画像表示保護フイルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プラスチック基材シートに耐摩耗性や表面硬度を付与する方法として、例えば、特開平5−162261号公報、特開平8−197670号公報および特開平9−300549号公報に、プラスチック基材シートの上に活性線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などのハードコート層を形成させる方法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のプラスチック積層体では、次のような問題点を有していることがわかった。
【0004】
すなわち、上記の従来のプラスチック積層体では、ハードコート層に十分な表面硬度と耐摩耗性を有しているが、カールが大きいためにハードコート層にクラックが入り易く、また、基材との密着性も不十分で、特にフイルムに用いられた場合、走行安定性が悪く加工できないなどの問題を生じた。
【0005】
これの対策として、ハードコート層にシリカなどのフィラーを添加して、表面硬度と耐摩耗性を維持し、カールを小さくする試みが行なわれている。しかしながら、この方法では、加工途中でフィラーが析出し、例えば、外観が悪くなる、ハードコート層の上に反射防止層などを積層させたとき、ハードコート層の上の層との密着性が低下する、フィラーが基材反対面に裏写りして加工上で不良率が大きくなるなどの問題を生じた。
【0006】
本発明の目的は、表面硬度と耐摩耗性を有し、カールが少なく、密着性が良好で高い生産収率が得られるプラスチック積層体を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、かかるプラスチック積層体からなる画像表示保護フイルム、およびプラスチック積層体を用いてなる画像表示装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らが鋭意検討の結果、本発明の目的は下記の構成を有する本発明によって工業的に有利に達成された。
【0009】
[1]プラスチック基材の少なくとも片方の面にハードコート層を設けたプラスチック積層体において、
該ハードコート層の表面硬度が2H以上で、表面削れ指数が1.0〜15.0で、かつハードコート層表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.001〜0.02μmであり、
該ハードコート層が、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと、微粒子と、末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する高分子量モノマーおよび/またはアクリル系重合体からなる樹脂を含有し、
該1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートの含有量が、ハードコート層の樹脂組成物の固形分中50〜95重量%であり、
該微粒子が、粉体状シリカまたはコロイダルシリカであり、該微粒子の表面が有機化合物とシリルオキシ基を介して処理結合されており、その含有量がハードコート層の樹脂組成物の固形分中5〜50重量%であり、
該末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する高分子量モノマーが、末端に(メタ)アクリロイル基を有する数平均分子量が1,000〜10,000の高分子量化合物であり、重合および/または反応後の含有量が、ハードコート層の樹脂組成物の固形分中5〜50重量%であり、
該アクリル系重合体が、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを必須成分として共重合体させてなる(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、またはスチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体とを必須成分として共重合させてなるスチレン/アクリル系共重合体であって、その重量平均分子量が5,000〜100,000であり、重合および/または反応後の含有量が、ハードコート層の樹脂組成物の固形分中5〜50重量である
ことを特徴とするプラスチック積層体。
【0013】
[2] 前記プラスチック基材が、ポリエステルまたはアセテートまたはアクリレート系樹脂からなることを特徴とする上記[1]に記載のプラスチック積層体。
【0014】
[3] 前記ハードコート層の上に反射防止層を設けたことを特徴とする上記[1]または[2]に記載のプラスチック積層体。
【0015】
[4] 前記反射防止層が金属酸化物の多層積層体からなり、かつ480〜650nmでの光線反射率が2%以下であることを特徴とする上記[3]に記載のプラスチック積層体。
【0016】
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかに記載のプラスチック積層体からなる画像表示保護フイルム。
【0017】
[6] 上記[1]〜[4]のいずれかに記載のプラスチック積層体を、粘着層または接着剤層を介して、画像表示面および/またはその前面板の表面に貼着してなる画像表示装置。
【0018】
[7] プラスチック基材の少なくとも片方の面にハードコート層、反射防止層が順次積層されているプラスチック積層体において、
該ハードコート層が、微粒子と、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと、末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する高分子量モノマーおよび/またはアクリル系重合体とを重合および/または反応せしめてなる樹脂を含有し、
該1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートの含有が、ハードコート層の樹脂組成物の固形分中50〜95重量%であり、
該微粒子が、粉体状シリカまたはコロイダルシリカであり、該微粒子の表面が有機化合物とシリルオキシ基を介して処理結合されており、その含有量がハードコート層の樹脂組成物の固形分中5〜50重量%であり、
該末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する高分子量モノマーが、末端に(メタ)アクリロイル基を有する数平均分子量が1,000〜10,000の高分子量化合物であり、重合および/または反応後の含有量が、ハードコート層の樹脂組成物の固形分中5〜50重量%であり、
該アクリル系重合体が、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを必須成分として共重合体させてなる(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、またはスチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体とを必須成分として共重合させてなるスチレン/アクリル系共重合体であって、その重量平均分子量が5,000〜100,000であり、重合および/または反応後の含有量が、ハードコート層の樹脂組成物の固形分中5〜50重量である
ことを特徴とするプラスチック積層体。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のプラスチック積層体は、プラスチック基材とハードコート層からなる基本積層構造を有している。
【0020】
本発明に使用するプラスチック基材は、特に限定されるものではなく、公知のプラスチック基材シートの中から適宜選択して用いることができる。このようなプラスチック基材シートとして、例えば、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ジアセテート系、トリアセテート系、ポリスチレン系、ポリカーボネート系、ポリメチルペンテン系、ポリスルフォン系、ポリエーテルエチルケトン系、ポリイミド系、フッ素系、ナイロン系、アクリレート系などの樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中で、ポリエステル、アセテートおよびアクリレート系樹脂が、光学的および強度的な観点から、また均一性に優れたものが得られ易いことからより好ましく用いられる。
【0021】
特に、透明性に優れ、光学的に異方性がない点で、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースあるいはポリメチルメタクリレート樹脂が好ましく用いられる。
【0022】
上記プラスチック基材はシート状であることが好ましく、また、400〜800nmでの光線透過率が40%以上、ヘイズが5%以下のものが好ましい。光線透過率が40%に満たない場合は、あるいはヘイズが5%より大きい場合には、表示部材として用いたとき、鮮明性に欠ける傾向がある。また、このような効果を発揮する点で光線透過率の上限値が99.5%、ヘイズの下限値は0.1%程度までが実用的な範囲である。上記プラスチック基材は、未着色でもよいし、着色されているものであってもよい。
【0023】
本発明で用いられる上記プラスチック基材に、ハードコート層を設ける前に各種表面処理(例えば、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、エッチング処理、粗面化処理など)や、接着促進のための表面コーテイング(ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエステルアクリレート系、ポリウレタンアクリレート系、ポリエポキシアクリレート系、チタネート系化合物など)を行なってもよい。特に、親水基含有ポリエステル樹脂にアクリル系化合物をグラフト化させた共重合体と架橋結合剤からなる組成物を下塗りしたプラスチック基材は、接着性を向上し、耐湿熱性や耐沸水性などの耐久性に優れたプラスチック基材シートとして好ましく用いられる。
【0024】
プラスチック基材にこれらの組成物を下塗り層とする場合の層の厚みは、通常0.01〜2g/m2 、より好ましくは0.1〜1g/m2 で、下塗り層の厚みが0.01g/m2 より薄いと均一に塗布することが難しく、2g/m2 を超えると、この上に積層するハードコート層の表面硬度と耐摩耗性の優れた積層体を得ることが難しく好ましくない。
【0025】
本発明で用いられるプラスチック基材の厚みは、機械的強度と熱伝導性の点から、通常5〜5000μm、好ましくは10〜3000μmである。また、2枚以上のプラスチックシートを公知の方法で貼り合わせ、更に厚いプラスチック基材とすることもできる。
【0026】
本発明におけるハードコート層を構成する成分として、アクリル、エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、ポリシロキサンなどの熱硬化樹脂、多官能のアクリル、ウレタン、ポリエステル、エポキシなどの単量体、プレポリマーまたはポリマーを電子線、紫外線あるいは放射線などで架橋させて得られる活性線硬化型樹脂が挙げられる。
【0027】
特に電子線、紫外線あるいは放射線などで架橋させてなる活性線硬化型樹脂が好ましく用いられ、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基(但し、本発明で「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタアクリロイル基とを略して表示したものである)を有する多官能(メタ)アクリレート化合物を用いることができる。この中で、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、微粒子、末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する高分子量モノマおよび/またはアクリル系重合体からなる樹脂を含有し、該微粒子が粉体状シリカまたはコロイダルシリカで、該微粒子の表面が有機化合物とシリルオキシ基を介して処理結合されてなる樹脂からなるハードコート層が表面硬度、耐摩耗性に優れ、カールが小さく、クラックが生じにくいなどの点でより好ましく用いられる。
【0028】
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該アルコール性水酸基が2個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを用いることができる。
【0029】
具体的には、
(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレートなど、
(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、
(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど、
(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど、(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類、および
(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類、
などが挙げられる。
【0030】
特に、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体の少なくとも1種を含むハードコート層は、硬度および硬化性はもちろん、耐摩耗性と可撓性に優れているので好ましく用いられる。
【0031】
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物が挙げられる。
【0032】
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用してもよい。
【0033】
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体の使用割合は、樹脂固形分総量に対して50〜95重量%が望ましい。上記単量体の使用割合が50重量%未満の場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜が得られ難い。また、その量が95重量%を超える場合は、重合による収縮が大きく、硬化被膜に歪みが残ったり、被膜の可撓性が低下し、さらに硬化被膜側に大きくカールする問題がある。
【0034】
さらに、本発明においては、分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物も含んでいても良い。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−及びi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、及びt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどが挙げられる。特にプラスチック基材との密着性を良くするために、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドンなどが好ましい。これらの単量体は、1種または2種以上混合して使用しても良い。
【0035】
本発明におけるハードコート層には、末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する高分子量モノマーを用いることができる。例えば、末端に(メタ)アクリロイル基を有する高分子化合物で、数平均分子量が好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜6、000程度のものが良い。高分子部分は主成分が、例えば、メチルメタクリレート重合体、スチレン重合体、スチレン/アクリロニトリル重合体、ブチルアクリレート重合体、シリコーン重合体などからなるものが挙げられる。このような末端に(メタ)アクリロイル基を有する高分子化合物としては、例えば、マクロモノマー(AS−6、AN−6、AB−6、AK−32など:東亞合成(株)製)を挙げることができる。これら高分子量モノマーの使用割合は、樹脂固形分総量に対して5〜50重量%であることが望ましい。より好ましくは5〜30重量%である。
【0036】
本発明で用いられるアクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルを必須成分として共重合させてなる(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体や、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸及び/またはそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなるスチレン/アクリル系共重合体などが挙げられ、その重量平均分子量は5,000以上100,000以下であることが好ましい。これらアクリル系重合体の使用割合は、樹脂固形分総量に対して好ましくは5〜50重量%である。
【0037】
なお、末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する高分子量モノマーとアクリル共重合体を併用するときは、両者の総量が樹脂固形分総量に対して5〜50重量%となるように配合することが望ましい。
【0038】
本発明で用いられる微粒子はとしては、珪素化合物または金属化合物または高分子化合物またはそれらの混合物が挙げられる。珪素化合物としては、例えば、シリカ粒子として湿式シリカまたは、乾式シリカまたはコロイダルシリカなどが挙げられる。また、金属化合物としては、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどが挙げられる。また、高分子化合物としては、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂などが挙げられる。また、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモンなどの導電性の微粒子も挙げられる。
【0039】
これらの微粒子の中で、透明性およびハードコート性等の点でシリカ粒子が好ましく用いられる。シリカ粒子の比表面積は、好ましくは0.1〜3000m2/gで、より好ましくは10〜1500m2/gである。
【0040】
これらシリカ粒子の使用形態は、乾燥状態の粉末、水もしくは有機溶媒で分散した状態で用いることができる。特に、透明性を要求されるためにはコロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカは、微粒子状のシリカ粒子を水または有機溶媒中でコロイド状分散液として、例えば、スノーテックス20,メタノールシリカゾル、IPA−ST、DMAC−ST、XBA−ST(以上日産化学工業(株)製)などが挙げられる。また、粉末状シリカとしては、アエロジル130,アエロジル300(日本アエロジル(株)製)等を挙げることができる。
【0041】
さらにハードコート層中のシリカ粒子の安定性、分散性、透明性、塗膜の耐摩耗性、耐引っ掻き性、密着性などの点で、シリカ粒子が粉体状シリカまたはコロイダルシリカで有機化合物とシリルオキシ基を介して結合している反応性シリカ粒子であることがより好ましい。反応性シリカ粒子は、分子中に重合性不飽和基、加水分解性シリル基、イソシアネート基およびチオイソシアネート基を含有する有機化合物と粉体状シリカまたはコロイダルシリカから選ばれるシリカ粒子を混合し、加水分解反応させ、上記有機化合物とシリカ粒子を化学的に結合させることにより得られる。
【0042】
また、重合性不飽和基とは、活性ラジカル種により付加重合を経て分子間で化学架橋する成分である。重合性不飽和基としては、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基およびスチリル基等を挙げることができる。
【0043】
加水分解性シリル基は、加水分解及び縮合反応によりシリカ粒子の表面に存在するシラノール基と結合する成分である。加水分解性シリル基としては、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基、アミノシリル基、オキシムシリル基、ヒドリドシリル基等を挙げることができる。
【0044】
本発明における微粒子の平均粒子径は、好ましくは0.001〜20μmである。透明な硬化組成物を形成するために好ましい粒子径は0.001〜2μm、さらに好ましくは0.001〜0.1μmである。形状としては、球状、多孔質状、中空状、板状、不定形状などが挙げられ、本発明では球状と中空状の微粒子が透明性の点で好ましく用いられる。
【0045】
微粒子の添加量は、樹脂固形分中5〜50重量%が好ましい。 添加量が5重量%未満の場合、十分な硬度が得られ難く、50重量%を超えると粒子の欠落や塗膜の透明性が低下するなどの問題がある。
【0046】
本発明において、ハードコート層の化合物組成を重合および/または反応させる方法として紫外線を照射する方法が挙げられるが、この場合には前記組成物に光重合開始剤を加えることが望ましい。
【0047】
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせてもよい。光重合開始剤の使用量は樹脂固形分中、0.01〜10重量部が適当である。
【0048】
また、他の方法として、電子線または放射線を重合および/または反応手段として用いることができる。電子線またはガンマ線を用いる場合は、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。
【0049】
本発明で用いられる化合物組成には、製造時の熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルあるいは2,5−t−ブチルハイドロキノンなど、公知の熱重合防止剤を加えることが望ましい。熱重合防止剤の好ましい添加量は、樹脂固形分中、0.005〜0.05重量%である。
【0050】
本発明で用いられる化合物組成には、また塗工時の作業性の向上、塗工膜厚のコントロールを目的として、本発明の目的を損なわない範囲において、有機溶剤を配合することができる。
【0051】
有機溶剤としては、塗工時の作業性、硬化前後の乾燥性の点から、沸点が50〜150℃の有機溶剤が用い易い。具体的な例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエンなどの芳香族系溶剤、ジオキサンなどの環状エーテル系溶剤などを挙げることができる。これらの溶剤は単独であるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0052】
本発明で用いられる化合物組成には、また本発明の目的を損なわない範囲で、各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、レベリング剤および帯電防止剤などが挙げられる。
【0053】
本発明で用いられる化合物組成の重合および/または反応のために、紫外線、電子線、放射線(α線、β線、γ線など)などを用いることができるが、紫外線を用いることが簡便でありより好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯および炭素アーク灯など挙げることができる。また、電子線または放射線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、塗布層中に光重合開始剤や光増感剤など含有させなくてもよい点から有利である。
【0054】
さらに、ハードコート層を構成する組成物に、顔料や染料などの着色剤を配合して用いることもできる。着色剤を含有している場合、上記プラスチック積層体として波長550nmでの光線透過率が40〜80%であることが望ましい。
【0055】
また、ハードコート層の厚さは、用途に応じて適宜選択されるが、通常3μm〜50μm、より好ましくは5μm〜30μmである。ハードコート層の厚さが、3μm未満では、表面硬度が不十分で傷が付き易くなる。また、50μmを超える場合は、硬化膜が脆くなり、ハードコート層を設けたプラスチック基材を折り曲げたときに硬化膜にクラックが入りやすくなる。
【0056】
本発明におけるハードコート層の鉛筆硬度は、2H以上であることが必要で通常3〜4H程度である。鉛筆硬度が2H未満であれば十分な硬度が得られず好ましくない。
【0057】
本発明におけるハードコート層は、表面削れ指数が1.0〜15.0の範囲内にあることが必要である。この削れ指数の値は、ハードコート層に含まれるフィラーの析出を示すパラメーターである。この削れ指数が上記範囲より大きくなると削れた白粉がフイルム表面に付着し、例えば、ハードコート層の上にさらに積層した反射防止層に転写して密着性低下の原因となる。この値は小さければ小さいほど密着性の向上に好ましい。しかしながら、削れ指数を小さくするためにはフィラー添加量を減量するかなくす必要があり、この場合には、ハードコート層のカールが大きくなり、クラックが発生しやすいなどの問題を生じ好ましくない。
【0058】
次に、本発明におけるハードコート層の表面平均粗さ(Ra)は、0.001〜0.02μm、好ましくは0.001〜0.01μmの範囲内にあることが必要である。この範囲よりRaが大きい場合には、フイルム表面が歪んで見えたり、この上に反射防止層が積層された場合、密着性が低下し好ましくない。また、Raが反対に小さい場合には、フイルム表面の滑りが悪くなり好ましくない。
【0059】
本発明においては、シート状のプラスチック基材の上に形成されたハードコート層の上に、さらに金属酸化物よりなる反射防止層を形成することができる。反射防止層には、高屈折率化合物と低屈折率化合物の積層やフッ化マグネシウムや酸化ケイ素などの無機物を用いることができる。特に、光反射防止膜の構成としては種々のものがあるが、少なくとも誘電体層、導電体層を含む次のような多層構成で、蒸着やスパッタリングなどの真空薄膜膜形成技術を用いて形成することもできる。
【0060】
高屈折率膜材料としては、TiO2、ZrO2、ITO、SnO2、Y2O3 およびZnOなどが挙げられる。低屈折率膜材料としては、SiO2やMgF2などが挙げられる。また、ITO、SnO2およびZnOなどは、導電性膜としての役目と高屈折率膜としての役目を併せ持たせることができる。
【0061】
本発明では、TiNx、Au、Ag、NiOxなどの光吸収膜を、構成要素として介在挿入させることも可能であり、種々の膜構成が考えられる。
【0062】
本発明のプラスチック積層体においては、可視光線の広い領域、具体的には少なくとも波長480nmから650nmの範囲内で、反射率が0〜2%であることが外光の映り込みを減少させ、視認性を向上させるので好ましい。特に反射率1%以下が人の目や精神の疲労を最小限に抑えるため特に好ましい。この結果、プラスチック積層体をディスプレイなどの文字、表示部材部品の表面に貼ることにより、部品に入射してきた光の反射光を低減させることができる。
【0063】
本発明の好ましい態様としては、反射防止層の上に、さらに厚み1〜20nmの範囲の、水の接触角が90deg以上である撥水・撥油層の透明層を設けることができる。撥水層を設ける目的は、反射防止層を保護し、かつ防汚染性能を高めるものであり、要求性能を満たすものであれば良い。撥水層の材料としては、疎水基を有する化合物が良く、例えば、パーフルオロシラン、フルオロカーボンなどが挙げられる。撥水層の形成方法としては、材料に応じて、蒸着、スパッタリングなどの物理的気相析出法およびCVDなどの化学気相析出法を用いることができる。
【0064】
本発明のプラスチック積層体には、プラスチック基材のハードコート層を有する面の反対面に粘着層を設けることができる。粘着層としては、2つの物体をその粘着作用により接着させるものであれば特に限定しない。粘着層を形成する粘着剤としては、ゴム系、ビニル重合系、縮合重合系、熱硬化性樹脂系およびシリコーン系などを用いることができる。この中で、ゴム系の粘着剤としては、ブタジェン−スチレン共重合体系(SBR)、ブタジェン−アクリロニトリル共重合体系(NBR)、クロロプレン重合体系、イソブチレン−イソプレン共重合体系(ブチルゴム)などを挙げることができる。ビニル重合系の粘着剤としては、アクリル樹脂系、スチレン樹脂系、酢酸ビニル−エチレン共重合体系および塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系などを挙げることができる。縮合重合系の粘着剤としては、ポリエステル樹脂系を挙げることができる。熱硬化樹脂系の粘着剤としては、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、ホルマリン樹脂系などを挙げることができる。これらの樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用しても良い。
【0065】
さらに、粘着剤は溶剤型粘着剤と無溶剤型粘着剤のいずれでも使用することができる。粘着層の形成は、上記のような粘着剤を用いて、塗布等通常行われている技術を用いて実施される。さらに、粘着層に着色剤を含有させても良い。これは、粘着剤に、例えば、顔料や染料などの着色剤を混合して用いることによって容易に達成される。着色剤を含有している場合、プラスチック積層体として550nmでの光線透過率が40〜80%の範囲内であることが望ましい。
【0066】
次に、本発明のプラスチック積層体の製造方法について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
本発明のプラスチック積層体は、プラスチック基材にハードコート層を塗布、重合、および/または反応させることにより製造される。
【0068】
ハードコート層の塗布手段としては、刷毛塗り、浸漬塗り、ナイフ塗り、スプレー塗り、流し塗りおよび回転塗り(スピンナーなど)などの通常行われている塗布方法を用いることができる。各々の方式には特徴があり、積層体の要求特性、使用用途などにより、塗布方法を適宜選択する。ハードコート層を形成する化合物組成の重合および/または反応方法としては、スチーム、ガスあるいは電気などの熱源を利用する方法や、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。
【0069】
本発明のプラスチック積層体は、表面硬度が高く、耐摩耗性を有しているため、広範な用途に使用することができる。例えば、本発明のプラスチック積層体は、ブラウン管(CRT)用フイルター、メンブレンスイッチ、ディスプレイ、銘板や計器のカバーなどの分野において用いることができる。特にハードコート層の上に反射防止層を積層したフイルムは画像表示保護フイルムとして好ましく用いることができる。
【0070】
特に画像表示部材としては、液晶表示板(LCD)、テレビ・コンピュターなどのブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、ガラスなどが挙げられ、この画像表示面および/またはその前面板に装着することにより画像表示装置とすることができる。
【0071】
前記のように作成したプラスチック積層体と画像表示面および/またはその前面板の表面とを密着させる手段は特に限定されないが、例えば、表示部材もしくはプラスチック基材に粘着層を塗布乾燥させ、積層体のハードコート層および反射防止層が表層になるように圧着ローラーなどで貼り合わせ、粘着材層を介して表示部材とプラスチック基材とを接着させることにより、プラスチック積層体からなる画像表示保護フイルムを装着した画像表示装置を得ることができる。
【0072】
このようにプラスチック基材の片方の面に、ハードコート層を積層させることにより、表面のキズが付きにくいプラスチック積層体および画像表示保護フイルムが得られる。
【0073】
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は、次のとおりである。
【0074】
(1)削れ指数
50×50mm角のフイルムを2枚ハードコート面通しで重ね、上下厚み10mm×50φのシリンダーにはさみ、上側から200gの荷重をかけて固定し、下側のフイルムを毎分50回転の速度で30回行なった。回転させた2枚のフイルム表面には削れ粉が白く斑点状になって見える。このフイルム表面を反射型微分干渉顕微鏡(日本光学製)を用いて、削れ粉の面積を接眼レンズを入れたマイクロメーターを使って求めた。
【0075】
全面に削れが発生しているものは実体顕微鏡で削れ物の状態を拡大しインスタントカメラにて写真を撮り定量し易いようにした。写真上に見える削れ物の全面積をカウントしcm2にて表した。上側のフイルムをA、下側のフイルムをBとし、A+Bの合計を削れ指数とした。
【0076】
(2)中心線平均粗さ
万能表面形状測定装置(小坂研究所製)を用いて、JIS B−0601に準じて測定した。
【0077】
(3)耐摩耗性
スチールウール#0000を用いて、200gの荷重で20往復フイルム表面を摩擦し、傷のつき具合いを次の基準で評価した。
○:強く摩擦してもほとんど傷がつかない。
△:かなり強く摩擦すると少し傷がつく。
×:弱い摩擦でも傷がつく。
【0078】
(4)鉛筆硬度
HEIDON(新東科学(株)製)を用いてJIS K−5400に準じて測定した。
【0079】
(5)耐引っ掻き性
タッチペンを用いて、1kgの荷重でフイルム表面を擦り、そのキズのつき具合いを次の基準で評価した。
○:傷がつかない。
△:やや薄い傷がつく。
×:はっきり見える傷がつく。
【0080】
(6)密着性
ハードコート層上に反射防止層を積層させたフイルムについて、エチルアルコールをしみ込ませた脱脂綿を用いて、1kgの荷重で20往復擦り、表面状態を観察した。
○: 変化なし
△: 一部表層の剥離が認められる。
×: 全面に剥離が認められる。
【0081】
(7)カール
10×10cmの大きさに切ったフイルムを、ハードコート層を上に平らなところに置いて、両端の浮き上がり状態を観察し、平面からの高さを測定した。
【0082】
(8)クラック発生曲率
10×2cmの大きさに切ったフイルムを、ハードコート層を上にして曲率のある円柱に巻き付け、表面クラックの発生有無の状態を観察した。
【0083】
(9)耐久性
ハードコート層上に反射防止層を積層させたフイルムについて、20×5cmの大きさに切ったフイルムを反射防止層を上にして、50φの円柱に巻き付けた状態で、40℃90%RHの恒温恒湿槽に24時間放置した後、密着性評価を行なった。
○:変化なし。
△:一部に剥離が認められる。
×:全面に剥離が認められる。
【0084】
(10)反射率
分光光度計((株)日立製作所)用いて550nmでの反射率を測定した。
【0085】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0086】
[参考例1]
メルカプトプロピルトリメトキシシラン221部、ジブチル錫ジラウレート1部からなる溶液に、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン223部を撹拌しながら50℃1時間かけて滴下後、70℃で3時間加熱撹拌した。これにペンタエリスリトールトリアクリレート555部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で10時間加熱撹拌してシラン化合物を得た。
【0087】
このシラン化合物30部を、窒素気流下、MEK−ST(日産化学(株)製、メチルエチルケトン分散コロイダルシリカ(平均粒子径0.01〜0.015μm)、シリカ濃度30%)233部、イソプロピルアルコール5部、イオン交換水3部の混合液を、80℃3時間撹拌後、オルト蟻酸メチルエステル18部を添加し、更に80℃1時間加熱撹拌を行ない、半透明のシリカ分散液を得た。
【0088】
[実施例1]
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフイルム(東レ株式会社製”ルミラー”)の片面に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製)75重量部、マクロモノマーAN−6S(東亞合成(株)社製、固形分50重量%、数平均分子量6,000)10重量部、参考例1で製造したシリカ分散液(固形分37重量%、シリカ粒子の含有量は固形分中70重量%)54重量部、光開始剤1−ヒドロキシフェニルケトン(チバ・スペシャリテイ・ケミカルズ(株)社製)5重量部、トルエン50重量部、メチルエチルケトン50重量部を攪拌混合した組成物をバーコータを用いて硬化後の膜厚が10μmになるように塗布し、塗膜層を設けたフイルムを作成した。得られたフイルムの塗膜層を熱風乾燥機で30秒間放置し、溶媒を揮発後、該塗膜面に高さ12cmの高さからセットした80W/cmの強度を有する高圧水銀灯の下を3m/分の速度で通過させた。塗膜は完全に硬化した。得られた塗膜の性能評価試験結果を表1に示す。
【0089】
[実施例2]
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフイルム(東レ株式会社製”ルミラー”)の片面に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート75重量部、マクロモノマーAA−6(東亞合成(株)社製、固形分40重量%、数平均分子量6,000)12.5重量部、参考例1で製造したシリカ分散液54重量部、光開始剤1−ヒドロキシフェニルケトン(チバ・スペシャリテイ・ケミカルズ(株)社製)5重量部、トルエン50重量部、メチルエチルケトン50重量部を攪拌混合した組成物をバーコータを用いて硬化後の膜厚が10μmになるように塗布し、塗膜層を設けたフイルムを作成した。得られたフイルムの塗膜層を熱風乾燥機で30秒間放置し、溶媒を揮発後、該塗膜面に高さ12cmの高さからセットした80W/cmの強度を有する高圧水銀灯の下を3m/分の速度で通過させた。塗膜は完全に硬化した。得られた塗膜の性能評価試験結果を表1に示す。
[実施例3]
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフイルム(東レ株式会社製”ルミラー”)の片面に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート66重量部、マクロモノマーAN−6S(東亞合成(株)社製、固形分50重量%、数平均分子量6,000)10重量部、スチレン−アクリル共重合体(固形分60%、重量平均分子量17,790)15重量部、参考例1で製造したシリカ分散液54重量部、1−ヒドロキシフェニルケトン 5重量部、トルエン50重量部、メチルエチルケトン50重量部を攪拌混合した組成物をバーコータを用いて硬化後の膜厚が10μmになるように塗布し、塗膜層を設けたフイルムを作成した。得られたフイルムの塗膜層を熱風乾燥機で30秒間放置し、溶媒を揮発後、該塗膜面に高さ12cmの高さからセットした80W/cmの強度を有する高圧水銀灯の下を3m/分の速度で通過させた。塗膜は完全に硬化した。得られた塗膜の性能評価試験結果を表1に示す。
【0090】
[実施例4]
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフイルム(東レ株式会社製”ルミラー”)の片面に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート68重量部、スチレン−アクリル共重合体(固形分60%、重量平均分子量17,790)20重量部、参考例1で製造したシリカ分散液54重量部、1−ヒドロキシフェニルケトン 5重量部、トルエン50重量部、メチルエチルケトン50重量部を攪拌混合した組成物をバーコータを用いて硬化後の膜厚が10μmになるように塗布し、塗膜層を設けたフイルムを作成した。得られたフイルムの塗膜層を熱風乾燥機で30秒間放置し、溶媒を揮発後、該塗膜面に高さ12cmの高さからセットした80W/cmの強度を有する高圧水銀灯の下を3m/分の速度で通過させた。塗膜は完全に硬化した。得られた塗膜の性能評価試験結果を表1に示す。
【0091】
[実施例5]
実施例1で得られたハードコート層の上に、反射防止膜を下記構成の反射防止膜になるように真空蒸着装置を用いて製膜した。
【0092】
次に、このようにして形成させた反射防止層の上に、パーフロロトリメトキシシランをCVD法により2nmの厚みになるように形成させフイルムを得た。得られた塗膜の性能評価試験結果を表1に示す。
【0093】
[実施例6]
厚さ80μmのトリアセテートフイルム(富士写真フイルム(株)製”フジタック”)に、実施例1と同様にしてハードコート層を、実施例5と同様に反射防止層および撥水層を設けたフイルムを作成した。得られた塗膜の性能評価試験を結果を表1に示す。
【0094】
[比較例1]
ハードコート層を、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)社製)100重量部、光開始剤1−ヒドロキシフェニルケトン(チバ・スペシャリテイ・ケミカルズ(株)社製)5重量部、トルエン50重量部、メチルエチルケトン50重量部を攪拌混合した組成物を用いた他は、実施例1と同様の方法でハードコート層を製膜した。得られた塗膜の性能評価試験結果を表1に示す。
【0095】
[比較例2]
ハードコート層を、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)社製)90重量部、マクロモノマーAN−6S(固形分50重量%、数平均分子量6,000)20重量部、光開始剤1−ヒドロキシフェニルケトン(チバ・スペシャリテイ・ケミカルズ(株)社製)5重量部、トルエン50重量部、メチルエチルケトン50重量部を攪拌混合した組成物を用いた他は、実施例1と同様の方法でハードコート層を製膜した。得られた塗膜の性能評価試験結果を表1に示す。
【0096】
[比較例3]
ハードコート層を、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)社製)85重量部、マクロモノマーAN−6S(固形分50重量%、数平均分子量6,000)20重量部、シリカ粉末(富士シリシア化学製:サイリシア310(平均粒子径1.4μm)5重量部、光開始剤1−ヒドロキシフェニルケトン(チバ・スペシャリテイ・ケミカルズ(株)社製)5重量部、トルエン50重量部、メチルエチルケトン50重量部を攪拌混合した組成物を用いた他は、実施例1と同様の方法でハードコート層を製膜した。得られた塗膜の性能評価試験結果を表1に示す。
【0097】
[比較例4]
比較例3で得られたハードコート膜上にそれぞれ実施例5と同様に反射防止層および撥水層を設けたフイルムを作成した。得られた塗膜の性能評価試験を結果を表1に示す。
【0098】
[実施例7]
実施例5で得られたプラスチック積層体をガラスに貼り合わせるために、反射防止層を施していない面に、粘着剤としてAGR−100(日本化薬(株)製)を用いて、ガラスと貼り合わせた後、1,000mj/cm2の紫外線照射量で硬化させた。試験結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
実施例1〜6は、評価項目すべてにおいて良好であった。
【0100】
比較例1は、削れ指数と中心線平均粗さが本発明範囲内より低いため、カールが大きく、クラックの発生曲率も大きかった。
【0101】
比較例2は、中心線平均粗さが本発明範囲内より低いため、耐引っ掻き性が低く、不十分であった。
【0102】
比較例3は、削れ指数が本発明範囲内を越えたため、耐摩耗性と耐引っ掻き性が不十分であった。
【0103】
比較例4は、反射防止層との密着性と耐久性が不十分であった。
【0104】
実施例7は、ガラスに貼り合わせ、表示部材として評価項目すべてにおいて良好であった。
【0105】
[実施例8〜10]
実施例7のガラスに代えて、17インチテレビブラウン管(CRT)、液晶表示板(LCD)およびプラズマディスプレイ(PDP)の表示画面前面に、実施例1で得られたプラスチック積層体を、実施例6と同じようにして装着し画像表示装置を得た。耐摩耗性、耐引っ掻き性はいずれもキズが付かず、反射率も0.6%で表示部材として評価項目すべてにおいて良好であった。
【0106】
【発明の効果】
本発明の優れた効果は、ハードコート層の表面削れ指数、表面平均粗さ(Ra)の範囲を適正化させたことにより生起されたものである。すなわち、本発明によれば、ハードコート層の鉛筆硬度、耐引っ掻き性および耐摩耗性が良好で、カールが小さく、特にハードコート層の上に反射防止層などの膜を積層した場合でも、密着性、耐久性が良いという著しい効果を奏するプラスチック積層体が得られる。そして、このプラスチック積層体は、各種画像表示装置の画像表示保護フイルムとして好適に用いられる。
Claims (7)
- プラスチック基材の少なくとも片方の面にハードコート層を設けたプラスチック積層体において、
該ハードコート層の表面硬度が2H以上で、表面削れ指数が1.0〜15.0で、かつハードコート層表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.001〜0.02μmであり、
該ハードコート層が、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと、微粒子と、末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する高分子量モノマーおよび/またはアクリル系重合体とからなる樹脂を含有し、
該1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートの含有量が、ハードコート層の樹脂組成物の固形分中50〜95重量%であり、
該微粒子が、粉体状シリカまたはコロイダルシリカであり、該微粒子の表面が有機化合物とシリルオキシ基を介して処理結合されており、その含有量がハードコート層の樹脂組成物の固形分中5〜50重量%であり、
該末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する高分子量モノマーが、末端に(メタ)アクリロイル基を有する数平均分子量が1,000〜10,000の高分子量化合物であり、重合および/または反応後の含有量が、ハードコート層の樹脂組成物の固形分中5〜50重量%であり、
該アクリル系重合体が、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを必須成分として共重合体させてなる(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、またはスチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体とを必須成分として共重合させてなるスチレン/アクリル系共重合体であって、その重量平均分子量が5,000〜100,000であり、重合および/または反応後の含有量が、ハードコート層の樹脂組成物の固形分中5〜50重量%である
ことを特徴とするプラスチック積層体。 - 前記プラスチック基材が、ポリエステルまたはアセテートまたはアクリレート系樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック積層体。
- 前記ハードコート層の上に反射防止層を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック積層体。
- 前記反射防止層が金属酸化物の多層積層体からなり、かつ480〜650nmでの光線反射率が2%以下であることを特徴とする請求項3に記載のプラスチック積層体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のプラスチック積層体からなる画像表示保護フイルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のプラスチック積層体を、粘着層または接着剤層を介して、画像表示面および/またはその前面板の表面に貼着してなる画像表示装置。
- プラスチック基材の少なくとも片方の面にハードコート層、反射防止層が順次積層されているプラスチック積層体において、
該ハードコート層が、微粒子と、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと、末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する高分子量モノマーおよび/またはアクリル系重合体とを重合および/または反応せしめてなる樹脂を含有し、
該1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートの含有が、ハードコート層の樹脂組成物の固形分中50〜95重量%であり、
該微粒子が、粉体状シリカまたはコロイダルシリカであり、該微粒子の表面が有機化合物とシリルオキシ基を介して処理結合されており、その含有量がハードコート層の樹脂組成物の固形分中5〜50重量%であり、
該末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する高分子量モノマーが、末端に(メタ)アクリロイル基を有する数平均分子量が1,000〜10,000の高分子量化合物であり、重合および/または反応後の含有量が、ハードコート層の樹脂組成物の固形分中5〜50重量%であり、
該アクリル系重合体が、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを必須成分として共重合体させてなる(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、またはスチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体とを必須成分として共重合させてなるスチレン/アクリル系共重合体であって、その重量平均分子量が5,000〜100,000であり、重合および/または反応後の含有量が、ハードコート層の樹脂組成物の固形分中5〜50重量%である
ことを特徴とするプラスチック積層体。
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