JP4748132B2 - 反射防止積層体の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、このようなドライコーティングプロセスでは装置が高価で、成膜速度が遅く、生産性が高くないなどの課題を有している。
特に、ディスプレイの反射防止膜などの最外層に使用される形態においては、表面の汚れ防止、容易拭き取り性いわゆる防汚性能が必要であるが、これらの機能を付与するために別途ウェットあるいはドライプロセスにてフッ素含有ケイ素化合物などの保護膜を設ける必要があり、工程が煩雑でより高価なものとなってしまうなどの課題もある。
本発明の反射防止積層体は、過酷な環境に充分に耐えられるもので、防汚性に優れているので取り扱い易く、反射防止膜として、ディスプレイの前面に好適に使用される。
また、本発明の反射防止積層体は、コーティング方式によって製造することができるので、従来の蒸着方式などと比較して、装置コストも比較的安価で、生産速度も10倍以上で、大量生産ができることから、安価な反射防止積層体が得られる。
本発明における低屈折率層は、テトラエトキシシランなどのSiアルコキシドとフッ素含有ケイ素化合物およびその加水分解物を主成分とする組成物からなるものであり、これを基材に塗工し、加熱乾燥し、塗膜を形成可能とするものであり、該組成物中にさらに長鎖Rf基など導入し膜密度を制御することで、膜の屈折率を低下させるものである。
本発明において用いられる、Siアルコキシドは、
一般式(A) Si(OR)4
(ただし、Rはアルキル基)で表されるものであり、テトラメトキシシラン、テ
トラエトキシシランなどが例示される。
フッ素含有ケイ素化合物は、
一般式(B) CF3−(CF2)p−(CH)n−Si(OR)3
(ただし、pは0≦p≦8の整数、nはn<5の整数、R:アルキル基、)で表されるもので、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシランなどが例示され、mが8より大きくなると均質な膜が形成できなくなるため不適である。
一般式(A)のSiアルコキシドと一般式(B)のフッ素含有ケイ素化合物との比率がモル比で(A)/(B)=1.0/0.01〜1.0/0.2とすることで低屈折率化と強度を両立することができ、防汚性能も発現でき好適であるが、さらに好ましくは1.0/0.03〜1/0.1の範囲である。フッ素含有ケイ素化合物のSiアルコキシドに対するモル比が、0.01以下では低屈折率化が図れず、また防汚機能も充分ではない。また、フッ素含有ケイ素化合物のSiアルコキシドに対するモル比が、0.2より過剰になると低屈折率化と防汚は良好であるが、Rf基の増加によりシロキサン架橋が充分得られず強度が著しく低下してしまい不適である。
有機ケイ素化合物は、上記に例示した化合物に例示に限定されるものでなく、2種以上組み合わせても何ら差し支えなく、Siアルコキシドとフッ素含有ケイ素化合物を併用してあれば良い。
特に、下地との密着性を重視する場合、塩酸を触媒として通常用いられる加水分解水(通常、アルコキシド1molに対し、水2〜4mol)よりも多い状態で反応させる。すなわち、一般式(A)のSiアルコキシドと一般式(B)のRf−Siとを合わせた全シラン化合物を0.1N〜5.0Nの塩酸によって加水分解を行い、加水分解の際の塩酸中の水が、全シラン化合物:水のモル比で1:5〜1:10mol/molの比率とすることで密着良好で均一な透明塗膜が形成することができる。
塩酸の規定度が低い場合、水の比率が高すぎる場合(1:10以上)は、その加水分反応溶液を基材にコーティングしたとき、斑点状のハジキや欠陥が生じ易く、水の比率が低い(1:5以下)場合は、塗膜は均一であるが、下地のハードコート層との密着がやや低下するため望ましくない。
また各成分を別々に加水分解反応させた後、混合させても良いが、反応させる前に混合して、同時に共加水分解させた方が均質な重合体ができるため望ましい。
本発明におけるハードコート層は、アクリル化合物の少なくとも1種が分子中にウレタン結合を有する、いわゆるウレタンアクリレートからなる電離放射線硬化樹脂を用いることで、ハードコートとしての性能を発揮しつつ、低屈折率層との高い密着性も発現させるものである。
ウレタン/アクリルの混合比は塗膜中における固形分比で30wt%以上が好適であるが、30%より少ない固形分比では効果が少ない。
前記ハードコート層に、平均粒子径が0.01〜3μmの無機あるいは有機物微粒子を混合分散させる。または、表面形状を凹凸させることで、一般的にアンチグレアと呼ばれる光拡散性処理を施すことができる。上記微粒子は透明であれば特に限定されるものではないが、低屈折率材料が好ましく、酸化珪素が安定性、耐熱性等の点からで好ましい。
塗膜の厚さは、目的の光学設計にあわせて、液の濃度や塗工量によって適宜選択調整することができる。
前処理としては、アルカリ処理法、酸処理、コロナ処理法、大気圧グロー放電プラズマ法等を挙げることができるが、なかでもアルカリ処理が有効で、使用するアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液、あるいはそれらの水溶液に、更にアルコール等の各種有機溶媒を加えたアルカリ水溶液等を挙げることができる。アルカリ処理の条件は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合、0.1〜10Nの濃度の水溶液として使用することが望ましく、更には、1〜2Nの濃度が望ましい。また、アルカリ水溶液の温度は、0〜100℃、好ましくは、20〜80℃である。アルカリ処理の時間は、0.01〜10時間、好ましくは、0.1〜1時間である。
本発明における表面粗さとは、表面粗さの定義は、JIS―B0601に準拠するものではあるが、原子間力顕微鏡などによって測定される微小領域、微小スケールにおける表面粗さのことである。算術平均粗さRa、10点平均粗さの計算はJIS−B0601の定義に準じた。
本発明によれば、ハードコート層をウレタン結合を有する電離放射線硬化樹脂とし、低屈折率層を
一般式(A) Si(OR)4
(ただし、Rはアルキル基)で表せられるSiアルコキシド、およびその加水分解物と
一般式(B) CF3−(CF2)p−(CH)n−Si(OR)3
(ただし、pは0≦p≦8の整数、nはn<5の整数、Rはアルキル基、)で表されるフッ素含有ケイ素化合物、およびその加水分解物とを主成分とする低屈折率のゾルゲルコーティング剤で形成される塗膜で、ハードコート層と低屈折率層との密着性を高めることができるものである。
なお、実施例3、4は参考例である。
80μm厚のトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを基材として、下記に示したハードコート組成物として、ウレタン結合を有するアクリル系紫外線硬化樹脂組成物を表面に塗工して、紫外線硬化させてハードコート層(5μm)を設けた基材を作製した。このハードコート層の表面をアルカリ処理を施し、下記に示した低屈折率コーティング組成物として、A1、A2を用いて、バーコーターにより塗布して、乾燥機で120℃―5min乾燥後、光学膜厚(nd=屈折率n*膜厚d(nm))が、nd=550/4nmになるよう濃度調整をして低屈折率層を形成し、各種評価用の反射防止積層体を得た。その反射防止積層体を、下記に示した評価方法に基づいて評価した結果を表1に示す。
市販のウレタンアクリレート(ヘキサンメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物)をMEK溶剤にて希釈NV50%溶液。紫外線硬化用開始剤として、アセトフェノン系開始剤を重合成分に対して2%添加した。
(A1):テトラメトキシシラン1molにトリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン0.1molになるように所定量混合し、混合物1molに対して0.3Nの塩酸3molと固形分換算で10%になるようにイソプロピルアルコールを混合し、室温で2時間攪拌反応させたて基本組成A1を得た。
(A2):テトラメトキシシラン1molにトリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン0.1molになるように所定量混合し、混合物1molに対して0.3Nの塩酸7molと固形分換算で10%になるようにイソプロピルアルコールを混合し、室温で2時間攪拌反応させたて基本組成A2を得た。
(1)表面粗さ:原子間力顕微鏡AFM(SPI3700;セイコー電子)を用い走査範囲□5μmにて測定した。
(2)光学特性:分光光度計により入射角5で550nmにおける反射率を測定した。
(3)密着性:塗料一般試験法JIS−K5400のクロスカット密着試験方法に準じて塗膜の残存数にて評価した。
(4)鉛筆硬度:塗料一般試験法JIS−K5400の鉛筆引っかき値試験方法に準じて塗膜の擦り傷にて評価した。
(5)耐擦傷試験:スチールウール#0000により、250g/cm2の荷重で往復5回擦傷試験を実施、目視による傷の外観を検査した。評価は、傷なし(◎)、かるく傷あり(○)、かなり傷つく(△)、著しく傷つく(×)の4段階評価を行った。
(6)指紋拭き取り性:塗膜表面に指紋を付着させ、ティッシュペーパーにて拭き取り性を目視で検査した。評価は、容易に拭き取れる(○)、拭き取れる(△)、拭き取れない(×)の3段階評価を行った。
(7)接触角:塗膜表面に水滴をのせ、水滴と表面の接触角を測定した。測定には協和界面科学(株)製の接触角計を用いた。
また、本発明の反射防止積層体において、ハードコート層表面のアルカリ処理(実施例1および2)のほうが密着強度に優れ、またコーティング組成物の加水分解条件で、水のモル比が多いA2を用いた系(実施例2)のほうが密着性、耐擦傷性も優れている。
Claims (2)
- 基材の少なくとも片面に該基材側から順にハードコート層と低屈折率層を備える反射防止積層体の製造方法であって、
ウレタン結合を有する多官能アクリル化合物を含む電離放射線硬化樹脂を塗工し、硬化させハードコート層を形成する工程と、
該ハードコート層上にアルカリ処理をおこなう工程と、
一般式(A) Si(OR)4
(ただし、Rはアルキル基)で表されるSiアルコキシドと、
一般式(B) CF3−(CF2)p−(CH2)n−Si(OR)3
(ただし、pは0≦p≦8の整数、nはn<5の整数、Rはアルキル基)で表されるフッ素含有ケイ素化合物と、塩酸を含むコーティング組成物を加水分解反応させる工程と、
前記加水分解させたコーティング組成物をアルカリ処理されたハードコート層上に直接塗布する工程と、
前記基材上のコーティング組成物を加熱乾燥し低屈折率層を形成する工程と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の反射防止積層体の製造方法。 - 前記コーティング組成物を加水分解反応させる工程において該コーティング組成物中の
塩酸が0.1N〜5.0Nの濃度であって、且つ、
該コーティング組成物において一般式(A)のSiアルコキシドと一般式(B)のフッ素含有ケイ素化合物とを合わせた全シラン化合物:塩酸中の水のモル比が1:5〜1:10mol/molの比率であること
を特徴とする反射防止積層体の製造方法。
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