JP2006113567A - 偏光板保護フィルム、その製造方法、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents

偏光板保護フィルム、その製造方法、偏光板及び液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 製膜時に溶媒を使用しない溶融流延法によって製造され、押し出し機のリップ付着汚れが少なく、熱延伸時及び熱延伸後のスリッティング部での破断が少ない偏光板保護フィルム、その製造方法、該偏光板保護フィルムを用いた偏光板、及び該偏光板を用いて表示品質が改善された液晶表示装置を提供することにある。
【解決手段】 0.01〜5質量%のヒンダードアミン化合物またはヒンダードフェノール化合物、可塑剤及びセルロース樹脂を含むフィルム形成材料を加熱溶融して得られる溶融物を用いて溶融流延法によって製造する偏光板保護フィルムであって、該セルロース樹脂が、アシル基の総置換度が2.5〜2.9、アルカリ土類金属の含有量(Ca、Mgの総含有量)が1〜50ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素の含有量として)が0.1〜45ppmであることを特徴とする偏光板保護フィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は偏光板保護フィルム、その製造方法、偏光板及び液晶表示装置に関する。
偏光子を保護する目的として、偏光板保護フィルムが使用されている。この偏光板保護フィルムは、偏光子の両面をサンドイッチする構成で偏光板としている。従来、位相差フィルムを貼付して視野角補償フィルムとした光学補償フィルムにより、液晶表示装置の表示品質を向上することが行われてきた。近年は偏光板保護フィルムに位相差フィルムの機能が融合されるようになり、保護フィルムの役割が多機能化し、かつ部材が削減できるようになってきた。
一方、液晶表示装置の表示品質において視野角の補償が改良されつつあり、ディスコティック液晶のフィルムをツイストネマチック(TN)型液晶セルの上面と下面に配置して、液晶セルの視野角特性を改善できることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
液晶モードの改善による視野角改良の技術は、液晶性化合物を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる垂直配向(VA)型液晶セルを用いた液晶表示装置が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。VA型液晶は、従来のTN型液晶表示装置と比較して、視野角が広く、応答が高速であるとの特徴があるとされているが、それでもCRTと比較すれば改善が必要である。
VA型液晶表示装置は、略垂直配向した液晶層と、この液晶層を介して互いに対向しクロスニコル状態に配置された一対の偏光板とによって黒表示を行っている。これを表面法線方向から観察すると良好な黒表示であるが、表示面法線から傾斜した方向(以下、「斜め視野角方向」ということにする。)から観察すると光漏れが発生し黒表示の品位が低下する。
この斜め視野角方向における光漏れは、垂直配向状態の液晶層を斜め視野角方向から観察すると複屈折が生じること、及びクロスニコル状態に配置された一対の偏光板の透過軸を斜め視野角方向から観察すると、互いに直交した関係からずれることに起因する。
これらの光学的観点から視野角の表示品質を補償する方法について、例えば特許文献3に、マルチドメイン分割したVA型であるMVA型の液晶表示装置において補償フィルムの設計値が開示されている。しかしながら、特許文献3において、具体的な樹脂を用いて作製された光学補償フィルムを備えた偏光板を用いた液晶表示装置の開示、及び視野角補償において偏光板保護フィルム自身が光学補償フィルムの機能を兼ね備えた一体型の保護フィルムを有する偏光板を含む液晶表示装置については開示されていない。近年、動画像を主目的としたTV用液晶表示装置の需要の拡大に対しても、表示品質の改善と生産性に優れた偏光板を備えた液晶表示装置の開発が望まれている。
一方、偏光板の偏光子はヨウ素等を高分子フィルムに吸着・延伸したものである。即ち、二色性物質(ヨウ素)を含むHインキと呼ばれる溶液を、ポリビニルアルコールのフィルムに湿式吸着させた後、このフィルムを一軸延伸することにより、二色性物質を一方向に配向させたものである。
偏光板の保護フィルムとしては、セルロース樹脂、特にセルロースアセテートの中でも特にセルローストリアセテートが用いられている。
一般にセルロース樹脂で構成される偏光板保護フィルムは物理的に偏光板の保護のために用いられている。しかしながら、フィルムの製造方法はハロゲン系の溶媒を用いた溶液流延法による製膜方法であるため、溶媒回収に要する費用は非常に大きい負担となっていた。そのため、ハロゲン系以外の溶媒がいろいろと試験されたが満足する溶解性の得られる代替物はなかった。代替溶媒以外に、冷却法等新規溶解方法も試されたが(例えば、特許文献4参照。)、工業的な実現が難しくさらなる検討が必要とされている。
従来、偏光板保護フィルムの材料としてセルロース樹脂を用いてフィルム製造する場合、該樹脂を溶媒に溶解した溶液を流延し、次いで溶媒を蒸発し乾燥することによって製膜する所謂溶液流延法が行われている。溶液流延法は、フィルム内部に残存する溶媒を除去しなければならないため、乾燥ライン、乾燥エネルギー、及び蒸発した溶媒の回収及び再生装置等、製造ラインへの設備投資及び製造コストが膨大になっており、これらを削減することが重要な課題となっている。
そこで製膜時に蒸発及び乾燥させる溶媒がなければ、溶液流延法で抱えている課題を回避できると期待できる。
この点を改善するため、溶融流延法による製膜方法が提案されている(特許文献5参照。)。しかしながら、溶融流延法による偏光板保護フィルムの製造は困難であり、いまだ実用化されていない。特に押出し部のリップ付着汚れによるフィルム表面性の劣化や、延伸時あるいはスリッティング部の破断が起こりやすく、それらの改善が必要であることが分かった。
特開平7−191217号公報 特開平2−176625号公報 特開2003−262869号公報 特開平10−95861号公報 特開2000−352620号公報
本発明の目的は、製膜時に溶媒を使用しない溶融流延法によって製造され、押し出し機のリップ付着汚れが少なく、熱延伸時及び熱延伸後のスリッティング部での破断が少ない偏光板保護フィルム、その製造方法、該偏光板保護フィルムを用いた偏光板、及び該偏光板を用いて表示品質が改善された液晶表示装置を提供することにある。
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
(1)0.01〜5質量%のヒンダードアミン化合物またはヒンダードフェノール化合物、可塑剤及びセルロース樹脂を含むフィルム形成材料を加熱溶融して得られる溶融物を用いて溶融流延法によって製造する偏光板保護フィルムであって、該セルロース樹脂が、アシル基の総置換度が2.5〜2.9、アルカリ土類金属の含有量(Ca、Mgの総含有量)が1〜50ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素の含有量として)が0.1〜45ppmであることを特徴とする偏光板保護フィルム。
(2)前記セルロース樹脂の遊離酸含有量が1〜500ppmであることを特徴とする前記(1)項に記載の偏光板保護フィルム。
(3)面内リターデーションRoが30〜200nm、厚み方向のリターデーションRtが70〜400nmであることを特徴とする前記(1)または(2)項に記載の偏光板保護フィルム。
(4)アシル基の総置換度が2.5〜2.9、アルカリ土類金属の含有量が1〜50ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素の含有量として)が0.1〜45ppmであるセルロース樹脂、ヒンダードアミン化合物またはヒンダードフェノール化合物及び可塑剤を含むフィルム形成材料を加熱溶融して押し出した後、冷却して得られるフィルムを再度加熱して熱延伸後冷却することを特徴とする偏光板保護フィルムの製造方法。
(5)前記セルロース樹脂の遊離酸含有量が1〜100ppmであることを特徴とする前記(4)項に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
(6)前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルムを偏光子の少なくとも一方の面に用いることを特徴とする偏光板。
(7)前記(6)項に記載の偏光板を用いることを特徴とする液晶表示装置。
本発明により、製膜時に溶媒を使用しない溶融流延法によって製造され、押し出し機のリップ付着汚れが少なく、熱延伸時及び熱延伸後のスリッティング部での破断が少ない偏光板保護フィルム、その製造方法、該偏光板保護フィルムを用いた偏光板、及び該偏光板を用いて表示品質が改善された液晶表示装置を提供することができる。
本発明は、セルロース樹脂を熱溶融することによって製膜する方法を究明するためになされたもので、最適な温度で溶融・流延することによってフィルム状に製膜し、偏光板保護フィルムが提供でき、また、延伸工程によって光学的に特徴のある偏光板保護フィルム(位相差フィルム)が提供でき、これを用いて偏光板化することで表示品質が改善された液晶表示装置を得るに至った。
本発明者は鋭意研究の結果、0.01〜5質量%のヒンダードアミン化合物またはヒンダードフェノール化合物、可塑剤及びセルロース樹脂を含むフィルム形成材料を加熱溶融して得られる溶融物を用いて溶融流延法によって製造する偏光板保護フィルムであって、該セルロース樹脂が、アシル基の総置換度が2.5〜2.9、アルカリ土類金属の含有量(Ca、Mgの総含有量)が1〜50ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素の含有量として)が0.1〜45ppmである偏光板保護フィルムにより、製膜時に溶媒を使用しない溶融流延法によって製造され、押し出し機のリップ付着汚れが少なく、熱延伸時及び熱延伸後のスリッティング部での破断が少ない偏光板保護フィルムが得られることを見出した。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔溶融流延法〕
本発明の偏光板保護フィルムは溶融流延によって形成されたセルロース樹脂フィルムであることを特徴とする。すなわち、前記溶液流延に用いる溶媒を用いずに、フィルム構成材料を加熱溶融し、この溶融物を用いて製造されたフィルムである。
加熱溶融する成形法は、さらに詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度等に優れる偏光板保護フィルムを得るためには、溶融押し出し法が優れている。
ここでフィルム構成材料が加熱されて、その流動性を発現させた後ドラム上またはエンドレスベルトに押し出し製膜することが、溶融流延製膜法として本発明の溶融流延法に含まれる。
溶融流延法による製膜は、溶液流延法と著しく異なり、流延する材料に揮発成分が存在すると、フィルムや偏光板保護フィルムとしての機能を活用するためのフィルムの平面性及び透明性確保の点から好ましくない。これは製膜されたフィルムに揮発成分が混入すると透明性が低下すること、及びダイ−スリットから押し出しされて製膜されたフィルムを得る場合、フィルム表面に筋が入る要因となり平面性劣化を誘発することがある。従って、フィルム構成材料を製膜加工する場合、加熱溶融時に揮発成分の発生を回避する観点から、製膜するための溶融温度よりも低い領域に揮発する成分が存在することは好ましくない。
前記揮発成分とは、フィルム構成材料中のいずれかが吸湿した水分、あるいは混入している酸素、窒素等のガス、または材料の購入前または合成時に混入している溶媒が挙げられ、加熱による蒸発、昇華あるいは分解による揮発が挙げられる。ここでいう溶媒とは溶液流延として樹脂を溶液として調整するための溶媒と異なり、フィルム構成材料中に微量に含まれるものである。従ってフィルム構成材料を選択することは、揮発成分の発生を回避する上で重要である。
本発明の溶融流延に用いるフィルム構成材料は、前記水分や前記溶媒等に代表される揮発成分を、製膜する前に、または加熱時に除去することが好ましい。この除去する方法は、乾燥による方法が適用でき、加熱法、減圧法、加熱減圧法等の方法で行うことができる。乾燥は空気中または不活性ガスとして窒素あるいはアルゴン等の不活性ガスを選択した雰囲気下で行ってもよい。これらの不活性ガスは水や酸素の含有量が低いことが好ましく、実質的に含有しないことが好ましい。これらの公知の乾燥方法を行うとき、フィルム構成材料が分解しない温度領域で行うことがフィルムの品質上好ましい。例えば、前記乾燥工程で除去した後の残存する水分または溶媒は、各々フィルム構成材料の全体に質量に対して5質量%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下にすることである。
特にセルロース樹脂の水分は、3質量%未満のものが好ましく用いられる。これらの特性値はASTM−D817−96により測定することができる。セルロース樹脂は、さらに熱処理することで水分を低減させて0.1〜1000ppmとして用いることが好ましい。
フィルム構成材料は、製膜前に乾燥することにより、揮発成分の発生を削減することができ、樹脂単独、または樹脂とフィルム構成材料の内、樹脂以外の少なくとも1種以上の混合物または相溶物に分割して乾燥することができる。好ましい乾燥温度は80℃以上、かつ、乾燥する材料のTg以下であることが好ましい。材料同士の融着を回避する観点を含めると、乾燥温度は、より好ましくは100〜(Tg−5)℃、さらに好ましくは110〜(Tg−20)℃である。好ましい乾燥時間は0.5〜24時間、より好ましくは1〜18時間、さらに好ましくは1.5〜12時間である。これらの範囲よりも低いと揮発成分の除去率が低いか、または乾燥に時間がかかり過ぎることがあり、また乾燥する材料にTgが存在するときには、Tgよりも高い乾燥温度に加熱すると、材料が融着して取り扱いが困難になることがある。乾燥は1気圧以下で行うことが好ましく、特に真空〜1/2気圧に減圧しながら行うことが好ましい。乾燥は、樹脂等の材料は適度に撹拌しながら行うことが好ましく、乾燥容器内で下部より乾燥空気もしくは乾燥窒素を送り込みながら乾燥させる流動床方式が、より短時間で必要な乾燥を行うことができるため好ましい。
乾燥工程は2段階以上に分離してもよく、例えば予備乾燥工程による材料の保管と、製膜する直前〜1週間前の間に行う直前乾燥を行った素材を用いて製膜してもよい。
〔セルロース樹脂〕
本発明に用いられるセルロース樹脂は、セルロースの2位、3位、6位の水酸基と脂肪族カルボン酸もしくは芳香族カルボン酸がエステル結合したセルロースエステルであることが好ましい。
セルロースの水酸基部分の水素原子が脂肪族アシル基との脂肪酸エステルであるとき、脂肪族アシル基は炭素原子数が2〜20で具体的にはアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等が挙げられる。
本発明において前記脂肪族アシル基とはさらに置換基を有するものも包含する意味であり、置換基としては上述の芳香族アシル基において、芳香族環がベンゼン環であるとき、ベンゼン環の置換基として例示したものが挙げられる。
また、上記セルロース樹脂のエステル化された置換基が芳香環であるとき、芳香族環に置換する置換基の数は0または1〜5個であり、好ましくは1〜3個で、特に好ましいのは1または2個である。さらに、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよいが、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリン等)を形成してもよい。
芳香族アシル基において、芳香族環がベンゼン環であるとき、ベンゼン環の置換基の例としてハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基及びアリールオキシスルホニル基、−S−R、−NH−CO−OR、−PH−R、−P(−R)2、−PH−O−R、−P(−R)(−O−R)、−P(−O−R)2、−PH(=O)−R−P(=O)(−R)2、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)(−O−R)、−P(=O)(−O−R)2、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)2−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)(−O−R)、−O−P(=O)(−O−R)2、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)(−O−R)、−NH−P(=O)(−O−R)2、−SiH2−R、−SiH(−R)2、−Si(−R)3、−O−SiH2−R、−O−SiH(−R)2及び−O−Si(−R)3が含まれる。上記Rは脂肪族基、芳香族基またはヘテロ環基である。置換基の数は、1〜5個であることが好ましく、1〜4個であることがより好ましく、1〜3個であることがさらに好ましく、1個または2個であることが最も好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基及びウレイド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基及びカルボンアミド基がより好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基及びアリールオキシ基がさらに好ましく、ハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基が最も好ましい。
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が含まれる。上記アルキル基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル及び2−エチルヘキシルが含まれる。上記アルコキシ基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基は、さらに別のアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ、ブチルオキシ、ヘキシルオキシ及びオクチルオキシが含まれる。
上記アリール基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリール基の例には、フェニル及びナフチルが含まれる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシ基の例には、フェノキシ及びナフトキシが含まれる。上記アシル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アシル基の例には、ホルミル、アセチル及びベンゾイルが含まれる。上記カルボンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。カルボンアミド基の例には、アセトアミド及びベンズアミドが含まれる。上記スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド及びp−トルエンスルホンアミドが含まれる。上記ウレイド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。ウレイド基の例には、(無置換)ウレイドが含まれる。
上記アラルキル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アラルキル基の例には、ベンジル、フェネチル及びナフチルメチルが含まれる。上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルが含まれる。上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニルが含まれる。上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、8〜20であることが好ましく、8〜12であることがさらに好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例には、ベンジルオキシカルボニルが含まれる。上記カルバモイル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。カルバモイル基の例には、(無置換)カルバモイル及びN−メチルカルバモイルが含まれる。上記スルファモイル基の炭素原子数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。スルファモイル基の例には、(無置換)スルファモイル及びN−メチルスルファモイルが含まれる。上記アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アシルオキシ基の例には、アセトキシ及びベンゾイルオキシが含まれる。
上記アルケニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルケニル基の例には、ビニル、アリル及びイソプロペニルが含まれる。上記アルキニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルキニル基の例には、チエニルが含まれる。上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。上記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
本発明で用いられるセルロース樹脂は、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、及びセルロースフタレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
これらの中で特に好ましいセルロース樹脂は、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートが挙げられる。
本発明に用いられるセルロース樹脂のアシル基の総置換度は2.5〜2.9が用いられる。2.5未満では経時や環境条件によって位相差が変動しやすくなり、2.9を超えると熱延伸によって破断しやすくなる。好ましくは、アセチル基置換度が1.5〜2.5で、炭素数3以上のアシル基の置換度の合計が0.1〜1.2、さらに好ましくはアセチル基の置換度が1.5〜2.0、炭素数3以上のアシル基の置換度の合計が0.6〜0.9であることが好ましい。より好ましくは炭素数3〜22のアシル基が上記の置換度の範囲であり、特に好ましくは炭素数3〜22のアシル基として炭素数3のプロピオニル基もしくは炭素数4のブチリル基であり、これらが上記範囲であることである。
このようなセルロース樹脂は、例えば、セルロースの水酸基を無水酢酸、無水プロピオン酸及び/または無水酪酸を用いて常法によりアセチル基、プロピオニル基及び/またはブチル基を上記の範囲内に置換することで得られる。このようなセルロースエステルの合成方法は、特に限定はないが、例えば、特開平10−45804号あるいは特表平6−501040号に記載の方法を参考にして合成することができる。
アセチル基、プロピオニル基、ブチル基等のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。
本発明で用いられるセルロース樹脂の原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロース樹脂は適宜混合して、あるいは単独で使用することができる。特に置換度が異なるセルロース樹脂を混合して用いることが好ましい。
(アルカリ土類金属含有量)
本発明に用いられるセルロース樹脂のアルカリ土類金属含有量は、1〜50ppmの範囲である。50ppmを超えるとリップ付着汚れが増加あるいは熱延伸時や熱延伸後でのスリッティング部で破断しやすくなる。1ppm未満でも破断しやすくなるがその理由はよく分かっていない。1ppm未満にするには洗浄工程の負担が大きくなりすぎるためその点でも好ましくない。さらに1〜30ppmの範囲が好ましい。ここでいうアルカリ土類金属とはCa、Mgの総含有量のことであり、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いて測定することができる。
(残留硫酸含有量)
本発明に用いられるセルロース樹脂中の残留硫酸含有量は、硫黄元素換算で0.1〜45ppmの範囲である。これらは塩の形で含有していると考えられる。残留硫酸含有量が45ppmを超えると熱溶融時のダイリップ部の付着物が増加するため好ましくない。また、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティングの際に破断しやすくなるため好ましくない。少ない方が好ましいが、0.1未満とするにはセルロース樹脂の洗浄工程の負担が大きくなりすぎるため好ましくないだけでなく、逆に破断しやすくなることがあり好ましくない。これは洗浄回数が増えることが樹脂に影響を与えているのかもしれないがよく分かっていない。さらに0.1〜30ppmの範囲が好ましい。残留硫酸含有量は、ASTM−D817−96により測定することができる。
(遊離酸含有量)
本発明に用いられるセルロース樹脂中の遊離酸含有量は、1〜500ppmであることが好ましい。ここでいう遊離酸とは、セルロースエステルを構成するカルボン酸成分であり、セルロースアセテートであれば酢酸、セルロースアセテートプロピオネートであれば、酢酸もしくはプロピオン酸、セルロースアセテートブチレートであれば、酢酸もしくは酪酸であり、セルロースに結合していない状態で樹脂中に含まれるものを指す。遊離酸含有量が、500ppmを超えるとダイリップ部の付着物が増加し、またウェブが破断しやすくなる。遊離酸含有量は洗浄で1ppm未満にすることは困難である。さらに1〜100ppmの範囲であることが好ましく、さらに破断しにくくなる。特に1〜70ppmの範囲が好ましい。遊離酸含有量はASTM−D817−96により測定することができる。
合成したセルロースエステルの洗浄を、溶液流延法に用いられる場合に比べてさらに十分に行うことによって、アルカリ土類金属量及び残留硫酸含有量を上記の範囲とすることができ、溶融流延法によってフィルムを製造する際に、リップ部への付着が軽減され、平面性に優れるフィルムが得られ、寸法変化、機械強度、透明性、耐透湿性、Rt値、Ro値が良好なフィルムを得ることができる。
また、セルロース樹脂の極限粘度は、1.5〜1.75dl/gが好ましく、さらに1.53〜1.63の範囲が好ましい。
セルロースエステルの水分量は、得られるフィルムの高い透明性を得る点から0.01から2.0質量%であることが好ましく更に0.01から1.5質量%であることが好ましい。これらの特性値はASTM−D817−96により測定することができる。このようなセルロースエステルの合成方法は、特に限定はないが、例えば、特開平10−45804号公報に記載の方法で合成することができる。
本発明で用いられるセルロース樹脂はフィルムにしたときの輝点異物が少ないものであることが好ましい。輝点異物とは、2枚の偏光板を直交に配置し(クロスニコル)、この間にセルロースエステルフィルムを配置して、一方の光源側の偏光板の透過軸に前記偏光板保護フィルムの遅相軸が平行に位置するとき、他方の偏光板の外側の面に垂直な位置で観察したときの光が漏れてくることを意味する。このとき評価に用いる偏光板は輝点異物がない保護フィルムで構成されたものであることが望ましく、偏光子の保護にガラス板を使用したものが好ましく用いられる。輝点異物はセルロース樹脂に含まれる水酸基のエステル化部分が未反応であることがその原因の1つと考えられ、輝点異物の少ないセルロース樹脂を用いることと、加熱溶融したセルロース樹脂を濾過することによって除去し、低減することができる。また、フィルム膜厚が薄くなるほど単位面積当たりの輝点異物数は少なくなり、フィルムに含まれるセルロース樹脂の含有量が少なくなるほど輝点異物は少なくなる傾向がある。
上記は、輝点の個数としては、面積250mm2当たり、偏光クロスニコル状態で認識される大きさが5〜50μmの輝点が、フィルムを観察時のとして300個以下、50μm以上の輝点が0個であることが好ましい。さらに好ましくは、5〜50μmの輝点が200個以下である。
輝点が多いと、液晶ディスプレイの画像に重大な悪影響を及ぼす。本発明は偏光板保護フィルム自身が位相差フィルムとして機能するため、この輝点の存在は複屈折の乱れの要因であり、画像に及ぼす悪影響は大きなものとなる点で好ましくない。
濾過によって輝点異物の除去し、連続して溶融流延の製膜工程が実施される場合、加熱溶融時のセルロース樹脂は安定剤が存在することが樹脂の劣化防止のために好ましい。
熱溶融による輝点異物の濾過工程を含む溶融流延法は、後述の可塑剤とセルロース樹脂の組成物とした場合、可塑剤が添加しない系と比較して熱溶融温度を低下させる観点から輝点異物の除去効率の向上と熱分解の回避の観点から好ましい方法である。また、後述する他の添加剤として紫外線吸収剤や微粒子も適宜混合したものを同様に濾過することもできる。
濾材としては、ガラス繊維、耐熱樹脂、炭素繊維等の従来公知のものが好ましく用いられるが、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。絶対濾過精度としては50μm以下のものが好ましく用いられ、30μm以下のものがさらに好ましく、10μm以下のものがさらに好ましく、5μm以下のものがさらに好ましく用いられる。これらは適宜組み合わせて使用することもできる。濾材はサーフェースタイプでもデプスタイプでも用いることができるが、デプスタイプの方が比較的目詰まりしにくく好ましく用いられる。
別の実施態様では、加熱してフィルム構成材料を溶融する前に、該構成材料の少なくともセルロース樹脂においては、該材料の合成後期の過程や沈殿物を得る過程の少なくともいずれかにおいて、一度溶液状態として同様に濾過工程を経由して輝点異物を除去することもできる。
前述の溶融樹脂を濾過する方法は、溶融物の粘度が高いため溶液での濾過の方が効率がよい。
なお、一度セルロース樹脂を溶媒で溶解する場合、セルロース樹脂溶液に本発明で用いられるヒンダードアミン化合物またはヒンダードフェノール化合物、あるいはさらに可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子やその他の添加剤を含有させて均一なセルロース樹脂溶液とし、これを濾過した後、溶媒を乾燥させて固形物を得ることが好ましい。これを用いてセルロース樹脂を含有する溶融物を得ることができる。溶媒としては、メチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等の溶液流延法で用いられる良溶媒を用いることができ、同時にメタノール、エタノール、ブタノール等の貧溶媒を用いてもよい。
また、上記溶液状態とするために該構成材料の溶媒への溶解の過程で−20℃以下に冷却した工程を介することもできる。セルロース樹脂への安定剤、可塑剤、その他添加剤のいずれか一種以上の添加を行うときは、本発明に用いるセルロース樹脂の合成工程過程において、特に限定はないが該樹脂の合成工程後期までに少なくとも一度溶液状態で輝点異物や不溶物を濾別するために濾過を行い、その後他の添加剤の添加を行い、溶媒の除去または酸析によって固形分を分離して乾燥してもよく、ペレット化するときに粉体混合したフィルム構造材料を得てもよい。
セルロース樹脂以外の構成材料を溶融前に該樹脂と均一に混合しておくことは、加熱溶融させる際に均一な溶融性を与えることに寄与できる。
セルロース樹脂に添加する安定剤、可塑剤及び上記その他添加剤を添加するときは、それらを含めた総量が、セルロース樹脂の質量に対して1〜30質量%であることが好ましい。
本発明の偏光板保護フィルムはセルロース樹脂以外の高分子材料やオリゴマーを適宜選択して混合してもよい。高分子材料やオリゴマーはセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上であることが好ましい。セルロース樹脂以外の高分子材料やオリゴマーの少なくとも1種以上を混合することによって、加熱溶融時の粘度制御やフィルム加工後のフィルム物性を向上することもできる。
本発明においては、ヒンダードアミン化合物またはヒンダードフェノール化合物を前記セルロース樹脂の加熱溶融前または加熱溶融時に添加することが必要である。その添加量は、0.01〜5質量%が好ましい。
本発明の偏光板保護フィルムには、さらに安定剤、酸捕捉剤、過酸化物分解剤、ラジカル捕捉剤、金属不活性化剤、アミン類等を含有させることが好ましい。これらは、特開平3−199201号、同5−197073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号公報等に記載がある。
一方、フィルム構成材料を加熱溶融すると分解反応が著しくなり、この分解反応によって着色や劣化を伴うことがある。また、分解反応によって好ましくない揮発成分の発生が併発することもある。
フィルム構成材料は、材料の変質や吸湿性を回避する目的で、1種以上のペレットとして保存し、これを用いて溶融物を作製することができる。ペレット化は、溶融する際のフィルム構成材料の混合性または相溶性が向上でき、フィルムの光学的な均一性を得ることにも寄与する。
本発明の偏光板保護フィルムはヘイズ値は3%未満であることが好ましく、より好ましくは1%未満であり、さらに好ましくは0.3%未満であり、特に好ましくは0.1%未満である。
〔ヒンダードフェノール化合物〕
本発明に用いられるヒンダードフェノール化合物は、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されているもの等の、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。このような化合物には、下記一般式(1)で表される化合物が含まれる。
Figure 2006113567
式中、R1、R2及びR3は、さらに置換されているかまたは置換されていないアルキル置換基を表す。ヒンダードフェノール化合物の具体例には、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシルβ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミドN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリトリトール−テトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。上記タイプのヒンダードフェノール化合物は、例えば、Ciba Specialty Chemicalsから、”Irganox1076”及び”Irganox1010”という商品名で市販されている。
〔ヒンダードアミン化合物〕
本発明に用いられるヒンダードアミン化合物(HALS)としては、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。このような化合物には、下記一般式(3)で表される化合物が含まれる。
Figure 2006113567
式中、R1及びR2は、Hまたは置換基である。ヒンダードアミン化合物の具体例には、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−アリル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(4−t−ブチル−2−ブテニル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−エチル−4−サリチロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル−β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1−ベンジル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルマレイネート(maleinate)、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アジペート、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1−アリル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−フタレート、1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−アセテート、トリメリト酸−トリ−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステル、1−アクリロイル−4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ジブチル−マロン酸−ジ−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジベンジル−マロン酸−ジ−(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジメチル−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オキシ)−シラン,トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフィット、トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフェート,N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアミン、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアセトアミド、1−アセチル−4−(N−シクロヘキシルアセトアミド)−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン、4−ベンジルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ジブチル−アジパミド、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ジシクロヘキシル−(2−ヒドロキシプロピレン)、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−p−キシリレン−ジアミン、4−(ビス−2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリルアミド−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、α−シアノ−β−メチル−β−[N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)]−アミノ−アクリル酸メチルエステル。好ましいヒンダードアミン化合物の例には、以下のHALS−1及びHALS−2が含まれるがこれのみに限定されない。
Figure 2006113567
上記化合物は、少なくとも1種以上含有させることが好ましく、セルロース樹脂の質量に対して、含有量は0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.8質量%である。
上記化合物の含有量が上記範囲よりも少ないと、セルロース樹脂の熱分解が生じやすく、また上記添加量の範囲よりも多いと樹脂への相溶性の観点から偏光板保護フィルムとしての透明性の低下を引き起こし、またフィルムが脆くなるために好ましくない。
本発明において、フィルム構成材料の熱溶融時の安定化のために用いる化合物として有用な酸捕捉剤は、米国特許第4,137,201号明細書に記載されているエポキシ化合物等が好ましい。例えば、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシド等の縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテル等、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、炭素原子数2〜22個の脂肪酸の炭素原子数2〜4個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)等)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリド等(例えば、エポキシ化大豆油等のエポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。特に好ましいのは、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物 EPON 815c、及び下記一般式(2)で表される他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物である。
Figure 2006113567
式中、nは0〜12の整数である。用いることができるその他の酸捕捉剤としては、特開平5−194788号公報の段落87〜105に記載されているものが含まれる。
酸捕捉剤の含有量は0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜0.8質量%がさらに好ましい。
〔可塑剤〕
本発明の偏光板保護フィルムでは、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率の低減等のため可塑剤を含有させる。
また本発明で行う溶融流延法においては、用いるセルロース樹脂単独のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させる目的、または同じ加熱温度においてセルロース樹脂単独よりも可塑剤を含むフィルム構成材料の溶融粘度が低下できる目的を含んでいる。
ここで、フィルム構成材料の溶融温度とは、該材料が加熱され流動性が発現された状態の温度を意味する。
セルロース樹脂単独ではガラス転移温度よりも低いとフィルム化するための流動性は発現されない。しかしながら該樹脂は、ガラス転移温度以上において、熱量の吸収により弾性率あるいは粘度が低下し、流動性が発現される。フィルム構成材料の溶融温度を低下させるためには、添加する可塑剤がセルロース樹脂のガラス転移温度よりも低い融点またはガラス転移温度をもつことが上記目的を満たすために好ましい。
本発明で用いられるセルロース樹脂フィルムは、少なくとも1種の可塑剤を含有する。
添加する可塑剤は特に限定されないが、揮発性が低い可塑剤が好ましい。また、2種以上の可塑剤を含有させることが好ましい。2種以上の可塑剤を含有させることによって、可塑剤を少なくすることができる。その理由は明らかではないが、1種類当たりの添加量を減らすことができることと、2種の可塑剤どうし及びセルロースエステルとの相互作用によって溶出が抑制されるものと思われる。また、溶融温度を低下する効果も期待できる。
可塑剤は特に限定されず、多価アルコールエステル系可塑剤、フタル酸エステル、クエン酸エステル、脂肪酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、グリコレート系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤等が好ましく用いられる。そのうち、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤を用いることが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に用いられる多価アルコールは次の一般式(1)で表される。
一般式(1) R1−(OH)n
ただし、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものをあげることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。好ましくは多価アルコールの炭素数が4以上であることが好ましく、さらに好ましくは5〜60であり、特に好ましくは6〜30である。
本発明の多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜5000であることが好ましく、300〜1500がより好ましく、350〜750であることがさらに好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
Figure 2006113567
Figure 2006113567
Figure 2006113567
Figure 2006113567
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートあるいは特表平6−501040号記載の不揮発性リン酸エステルが挙げられ、例えば、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステル等が挙げられる。トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤の比率が全可塑剤の40%未満であることが好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。「実質的に含有しない」とはリン酸エステル系可塑剤の含有量が1質量%未満、好ましくは0.1質量%であり、特に好ましいのは添加していないことである。前述のように、リン酸エステル系可塑剤が含まれるとハードコート層を形成する際に基材が変形しやすくなるため、好ましくない。
セルロースエステルフィルム中の可塑剤の総含有量は、固形分総量に対し、5〜30質量%が好ましく、6〜20質量%がさらに好ましく、特に好ましくは8〜15質量%である。また、2種の可塑剤の含有量は各々少なくとも1質量%以上であり、好ましくは各々2質量%以上含有することである。
多価アルコールエステル系可塑剤は1〜20質量%含有することが好ましく、特に3〜15質量%含有することが好ましい。少ないと平面性の劣化が認められ、多すぎるとブリードアウトがしやすい。多価アルコールエステル系可塑剤とその他の可塑剤との比率は1:4〜4:1の範囲であることが好ましく、1:3〜3:1であることがさらに好ましい。可塑剤の総含有量が多すぎても、また少なすぎてもフィルムが変形しやすく好ましくない。
また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマー等も好ましく用いられる。
これらの化合物の添加量は可塑剤がフィルムを構成する樹脂に対して、0.5質量%以上〜20質量%未満の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1質量%以上〜20質量%未満の範囲にある。
揮発成分が上記可塑剤の熱分解によるとき、上記可塑剤の熱分解温度Td(1.0)は、1.0質量%減少したときの温度と定義すると、フィルム構成材料の溶融温度(Tm)よりも高いことが好ましい。特に、可塑剤はセルロース樹脂に対する添加量が他のフィルム構成材料よりも多く、品質に与える影響が大きいためである。熱分解温度Td(1.0)は、市販の示差熱重量分析(TG−DTA)装置で測定することができる。
〔その他の添加剤〕
本発明の偏光板保護フィルムには下記添加剤を含有することが好ましい。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、偏光子や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。本発明に用いる紫外線吸収剤において、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号、同8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(いずれもチバ−スペシャルティ−ケミカルズ社製)を用いることもできる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明においては、紫外線吸収剤は0.1〜20質量%添加することが好ましく、さらに0.5〜10質量%添加することが好ましく、さらに1〜5質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
(微粒子)
本発明の偏光板保護フィルムは、滑り性や光学的、機械的機能を付与するために微粒子を添加することができる。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
微粒子の形状は、球状、棒状、針状、層状、平板状等の形状のものが好ましく用いられる。微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の金属の酸化物、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることができる。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低くできるので好ましい。これらの微粒子は有機物により表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。
表面処理は、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサン等で行うことが好ましい。微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れる。また、微粒子の一次粒子の平均粒径は0.01〜1.0μmの範囲である。好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmが好ましく、さらに好ましくは、7〜14nmである。これらの微粒子は、セルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させるために好ましく用いられる。微粒子のセルロースエステル中の含有量はセルロースエステルに対して0.005〜10質量%が好ましい。
二酸化ケイ素の微粒子としては、日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることができ、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。
2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。平均粒径や材質の異なる微粒子、例えば、アエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用できる。
これらの微粒子の添加方法は混練する等によって行うことが好ましい。また、別の形態として予め溶媒に分散した微粒子とセルロースエステル及び/または可塑剤及び/または紫外線吸収剤を混合分散させた後、溶媒を揮発または沈殿させた固形物を得て、これをセルロースエステル溶融物の製造過程で用いることが、微粒子がセルロース樹脂中で均一に分散できる観点から好ましい。
上記微粒子は、フィルムの機械的、電気的、光学的特性改善のために添加することもできる。
また、本発明の偏光板保護フィルムはリターデーションを調節するための添加剤を含有させることができる。リターデーションを調節するために添加する化合物は、欧州特許911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物をリターデーション制御剤として使用することもできる。また二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環を有する化合物が特に好ましい。
本発明の偏光板保護フィルムには、液晶あるいはポリイミド等から形成された光学異方性層を設けることもでき、偏光板保護フィルムとこれらの学異方性層とを組み合わせて最適な光学補償を行うこともできる。
〔偏光板保護フィルムの製造方法〕
以下に本発明の偏光板保護フィルムの製造方法を詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。この中で、縦方向とは、フィルムの製膜搬送する方向(長手方向)を、横方向(幅手方向)とはフィルムの製膜搬送方向と直角方向のことをいう。
原料のセルロース樹脂またはフィルムを構成する材料の混合物をペレット状に成型し、熱風乾燥または真空乾燥した後、加熱溶融して得られる溶融物を用いて溶融押し出し、Tダイよりシート状に押し出しして、静電印加法等により冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、フィルムを得る。冷却ドラムの温度は90〜150℃に維持されていることが好ましい。
前述の冷却ドラムから剥離され、得られたフィルムを1つまたは複数のロール群及び/または赤外線ヒーター等の加熱装置を介して、再度加熱して長手方向に一段または多段縦延伸後冷却することが好ましい。このとき、本発明のフィルムのガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃の範囲内で加熱して搬送方向あるいは幅手方向に延伸することが好ましい。(Tg−20)〜(Tg+20)℃の温度範囲内で横延伸し次いで熱固定することが好ましい。横延伸する場合、2つ以上に分割された延伸領域で温度差を1〜50℃の範囲で順次昇温しながら横延伸すると幅方向の厚さ及び光学的な分布が低減でき好ましい。
また延伸工程の後、緩和処理を行うことも好ましい。
フィルムのTgは、フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって制御することができる。本発明の用途においてはフィルムのTgは120℃以上が好ましく、さらに135℃以上が好ましい。これは液晶表示装置に本発明の偏光板保護フィルムを用いた場合、該フィルムのTgが上記よりも低いと、使用環境の温度やバックライトの熱による影響によって、フィルム内部に固定された分子の配向状態に影響を与え、リターデーション値及びフィルムとしての寸法安定性や形状に大きな変化を与える可能性が高くなる。逆に該フィルムのTgが高過ぎると、フィルム構成材料の分解温度に近ずくため製造しにくくなり、フィルム化するときに用いる材料自身の分解によって揮発成分の存在や着色を呈することがある。従って、250℃以下が好ましい。このとき、フィルムのTgはJIS K7121に記載の方法にて求めることができる。
本発明に係る偏光板保護フィルムは、位相差フィルムの機能を複合させるため、屈折率制御を延伸操作により行うことが好ましい。以下、その延伸方法について説明する。
本発明の偏光板保護フィルムの製造において、セルロース樹脂の1方向に0.8〜2.0倍及びフィルム面内にそれと直交する方向に1.01〜2.5倍延伸することで、Ro及びRtの範囲に制御することができる。延伸は延伸倍率や温度を変えて複数回に分けて行ってもよく、同時に2軸方向に延伸してもよい。本発明では、面内リターデーションRoが30〜200nm、厚み方向のリターデーションRtが70〜400nmとすることが好ましい。
例えばフィルムの長手方向及びそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅手方向に対して、逐次または同時に延伸することができる。
このとき少なくとも1方向に対しての延伸倍率が小さ過ぎると十分な位相差が得られず、大き過ぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、下記定義のフィルムの屈折率nx、ny、nzを本発明の範囲に入れるために有効な方法である。
Ro=(nx−ny)×d
Rt={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、Roはフィルム面内リターデーション値、Rtはフィルム厚み方向リターデーション値、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚さを表す。)
例えば溶融して流延した方向に延伸した場合、幅方向の収縮が大き過ぎると、nzの値が大きくなり過ぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制あるいは、幅方向にも延伸することで改善できる。幅方向に延伸する場合、幅手で屈折率に分布が生じる場合がある。これは、テンター法を用いた場合にみられることがあるが、幅方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、所謂ボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、該流延方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制でき、幅手の位相差の分布を少なく改善できるのである。
さらに、互いに直行する2軸方向に延伸することにより、得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のムラが問題となることがある。
セルロースエステルフィルム支持体の膜厚変動は、±3%、さらに±1%、さらに好ましくは±0.1%の範囲とすることが好ましい。以上のような目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に1.0〜2.0倍、幅方向に1.01〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に1.01〜1.5倍、幅方向に1.2〜2.0倍に範囲で行うことが本発明のリターデーション値を得るためにより好ましい。延伸温度は80〜200℃が好ましく、より好ましくは90〜180℃である。
本発明の偏光板保護フィルムと貼合される偏光子が長手方向に吸収軸を有する場合、幅方向に偏光子の透過軸が一致することになる。本発明の偏光板保護フィルムは、長手方向または幅方向に遅相軸を有することが好ましく、幅方向に遅相軸を有することがより好ましい。
応力に対して、正の複屈折を得るセルロース樹脂を用いる場合、上述の構成から、幅方向に延伸することで、フィルムの遅相軸が幅方向に付与することができる。この場合、本発明において、表示品質の向上のためには、フィルムの遅相軸が、幅方向にあるほうが好ましく、本発明のリターデーション値を得るためには、(幅方向の延伸倍率)>(流延方向の延伸倍率)を満たすことが必要である。また、面内リターデーションRo、厚み方向のリターデーションRtは温度や湿度等の環境変動があっても変動しにくいことが望まれる。具体的にはRo、Rtともに1nm/℃以下の変化率、2nm/%RH以下の変化率でることが好ましい。
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて、横方向に延伸すると同時に縦方向に収縮させる方法等が挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、所謂テンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
本発明の偏光板保護フィルムの厚さは10〜500μmが好ましい。特に20μm以上、さらには35μm以上が好ましい。また、150μm以下、さらには120μm以下が好ましい。特に好ましくは25〜90μmが好ましい。上記領域よりも偏光板保護フィルムが厚いと偏光板加工後の偏光板が厚くなり過ぎ、ノート型パソコンやモバイル型電子機器に用いる液晶表示においては、特に薄型軽量の目的には適さない。一方、上記領域よりも薄いと位相差フィルムとしてのリターデーションの発現が困難となり、加えてフィルムの透湿性が高くなり偏光子に対して湿度から保護する能力が低下してしまうために好ましくない。
溶液流延法ではフィルムの厚みが増えると乾燥負荷が著しく増加してしまうが、本発明では乾燥工程が不要なため、膜厚が厚いフィルムを生産性よく製造することができる。そのため、必要な位相差の付与や透湿性の低減等の目的に応じてフィルムの厚みを増やすことが今まで以上にやりやすくなるという利点がある。
本発明の偏光板保護フィルムの幅は1〜4mが好ましく、特に1.4〜4mが好ましい。巻きの長さとしては500〜5000mが好ましく、1000〜5000mがより好ましい。幅手両端部には膜厚の0〜25%の高さのナーリングを設けて巻き取られる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、陽電子消滅寿命法により求められる自由体積半径が0.25〜0.35nmであることが好ましい。特に好ましくは、陽電子消滅寿命法により求められる自由体積半径が0.25〜0.31nmであって、半値幅が0.04〜0.1nmであることが好ましい。
本発明における自由体積半径とは、セルロース樹脂分子鎖に占有されていない空隙部分を表している。これは、陽電子消滅寿命法を用いて測定することが出来る。具体的には、陽電子を試料に入射してから消滅するまでの時間を測定し、その消滅寿命から原子空孔や自由体積の大きさ、数濃度等に関する情報を非破壊的に観察することにより求めることが出来る。
〈陽電子消滅寿命法による自由体積半径の測定〉
下記測定条件にて陽電子消滅寿命と相対強度を測定する。
(測定条件)
陽電子線源:22NaCl(強度1.85MBq)
ガンマ線検出器:プラスチック製シンチレーター+光電子増倍管
装置時間分解能:290ps
測定温度:23℃
総カウント数:100万カウント
試料サイズ:20mm×15mmにカットした切片を20枚重ねて約2mmの厚みにする。試料は測定前に24時間真空乾燥を行なう。
照射面積:約10mmφ
1チャンネルあたりの時間:23.3ps/ch
上記の測定条件に従って、陽電子消滅寿命測定を実施し、非線形最小二乗法により3成分解析して、消滅寿命の小さいものから、τ1、τ2、τ3とし、それに応じた強度をI1,I2,I3(I1+I2+I3=100%)とした。最も寿命の長い平均消滅寿命τ3から、下記式を用いて自由体積半径R3(nm)を求めた。τ3が空孔での陽電子消滅に対応し、τ3が大きいほど空孔サイズが大きいと考えられている。
τ3=(1/2)〔1−{R3/(R3+0.166)}+(1/2π)sin{2πR3/(R3+0.166)}〕−1
ここで、0.166(nm)は空孔の壁から浸出している電子層の厚さに相当する。
以上の測定を2回繰り返し、相対強度と空隙半径より求めたピーク及びピーク形から、その平均値及び半値幅を求める。
陽電子消滅寿命法は、例えばMATERIAL STAGE vol.4,No.5 2004 p21−25、東レリサーチセンター THE TRC NEWS No.80(Jul.2002)p20−22、「ぶんせき,1988,pp.11−20」に「陽電子消滅法による高分子の自由体積の評価」が掲載されており、これらを参考にすることが出来る。
本発明に係るセルロースエステルフィルムの特に好ましい自由体積半径は、0.25〜0.31nmであって、半値幅が0.04〜0.100nmである。本発明のフィルムの自由体積半径は、0.20nm〜0.40nmの範囲に分布していることが好ましく、自由体積半径のピーク値が0.25〜0.31nmにあることが好ましい。半値幅は0.040〜0.095nmであることが好ましく、更に好ましくは0.045〜0.090nmであり、更に好ましくは0.050〜0.085nmである。
セルロースエステルフィルムの自由体積半径を所定の範囲にする方法は特に限定はされないが、下記の方法によってこれらを制御することが出来る。
セルロースエステルフィルムは、加熱溶融物を用いて溶融流延法によって製造されたセルロースエステルフィルムを、更に、105〜170℃で、好ましくは雰囲気置換率12回/時間以上、更に好ましくは12〜45回/時間の雰囲気下で搬送しながら熱処理することによって、所定の自由体積半径であるセルロースエステルフィルムを得ることが出来る。処理する時間は1〜60分が好ましい。
雰囲気置換率は、熱処理室の雰囲気容量をV(m3)、Fresh−air送風量をFA(m3/hr)とした場合、下式によって求められる単位時間あたり熱処理室の雰囲気をFresh−airで置換する回数である。Fresh−airは熱処理室に送風される風のうち、循環再利用している風ではなく、可塑剤や添加剤などの揮発した成分を含まない、若しくはそれらが除去された新鮮な風のことを意味している。
雰囲気置換率=FA/V(回/時間)
更に温度が155℃を超えると、本発明の効果は得られ難く、105℃を下回っても本発明の効果は得られ難い。処理温度としては、120〜160℃であることが更に好ましい。
溶融流延法では、溶液流延法のように製膜の際に溶媒を使用しておらず、使用する添加剤も揮発しにくいものが選択されているため、雰囲気置換率は低くてもよいが、好ましくは、該処理部において雰囲気置換率が12回/時間以上の雰囲気置換率に維持された雰囲気下で処理されることである。雰囲気置換率を制御することによって、揮発した成分がフィルムに再付着することが低減される。ただし、置換率を必要以上に増加させるとコストが高くなるため好ましくなく、また、45回を超えると熱処理工程内でウェブがばたつくことにより、平面性が劣化する懸念がある。この条件下における処理時間は1分〜1時間が好ましい。
又、熱処理工程において、厚み方向に加圧処理することも自由体積半径をより好ましい範囲に制御することが出来る。好ましい圧力は0.5〜10kPaである。
本発明の偏光板保護フィルムの遅相軸または進相軸と製膜方向とのなす角度をθ1とするとθ1は−1〜+1°であることが好ましく、−0.5〜+0.5°であることがより好ましく、−0.1〜+0.1°であることが特に好ましい。
このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことができる。
θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制または防止することに寄与でき、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
本発明の偏光板保護フィルムの光弾性係数は−10-13Pa-1〜10-13Pa-1であることが好ましく、特に1×10-13Pa-1〜1×10-9Pa-1であることが好ましい。
本発明の偏光板保護フィルムがマルチドメイン化されたVAモードに用いられるとき、偏光板保護フィルムの配置は、偏光板保護フィルムの進相軸がθ1として上記領域に配置されることが、本発明の目的である表示画質の向上のために寄与でき、偏光板及び液晶表示装置としてMVAモードとしたとき、例えば図1に示される構成をとることができる。
また、セルロースエステルフィルムの面内方向のリターデーション(Ro)分布は、5%以下に調整することが好ましく、より好ましくは2%以下であり、特に好ましくは、1.5%以下である。また、フィルムの厚み方向のリターデーション(Rt)分布を10%以下に調整することが好ましいが、さらに好ましくは、2%以下であり、特に好ましくは、1.5%以下である。
上記、リターデーション分布の数値は、得られたフィルムの幅手方向に1cm間隔でリターデーションを測定し、得られたリターデーションの変動係数(CV)で表したものである。リターデーション、その分布の数値の測定方法については、例えば、面内及び厚み方向のリターデーションをそれぞれ(n−1)法による標準偏差を求め、以下で示される変動係数(CV)を求め、指標とする。
変動係数(CV)=標準偏差/リターデーション平均値
本発明の偏光板保護フィルムにおいて、リターデーション値の分布変動が小さい方が好ましく、液晶表示装置に本発明の偏光板保護フィルムを含む偏光板を用いるとき、該リターデーション分布変動が小さいことが色ムラ等を防止する観点で好ましい。
本発明の偏光板保護フィルムは、リターデーション値の波長分散性を有していてもよく、液晶表示素子に上記同様に用いる場合、表示品質の向上のために、該波長分散性に関して適宜選択することができる。ここで、本発明の位相差フィルムの590nmの測定値Roと同様に、450nmにおける面内リターデーションR450、650nmの面内リターデーションをR650と定義する。
本発明において表示装置が後述のMVAに用いる場合、本発明の偏光板保護フィルムの面内リターデーションにおける波長分散性は、好ましくは、0.7<(R450/R0)<1.0、1.0<(R650/R0)<1.5である。さらに好ましくは0.7<(R450/R0)<0.95、1.01<(R650/R0)<1.2であり、特に好ましくは0.8<(R450/R0)<0.93、1.02<(R650/R0)<1.1の範囲内にあることが、表示の色再現性において有効な効果を発揮するために選択することができる。
本発明の偏光板保護フィルムはVAモードまたはTNモードの液晶セルの表示品質の向上に適したリターデーション値に調整している。その中で特にVAモードとして上記のマルチドメインに分割したMVAモードに好ましく用いられる。このとき面内リターデーションであるRoが30〜200nmであり、かつ厚さ方向のリターデーションであるRtは70〜400nmであることが求められる。
上記面内リターデーションは2枚の偏光板がクロスニコルに配置され、偏光板の間に液晶セルが配置された、例えば図1の構成であるときに、表示面の法線方向から観察するときを基準にして、表示面の法線方向に対して斜め方向から観察したとき、偏光板のクロスニコル状態からのずれによて生じる光漏れを主に補償する。厚さ方向のリターデーションは、上記TNモードやVAモード、特にMVAモードにおいて液晶セルが黒表示状態であるときに、同様に斜めから見たときに認められる液晶セルの複屈折を主に補償する。この両者の挙動を融合するとRo及びRtは本発明の範囲で光学的に補償できる。また、本発明において液晶セル自身のリターデーションに対してRo及びRtを調節することができる。
液晶表示装置において液晶セルの上下に本発明の偏光板が二枚配置された構成である場合、図中の2a及び2bのフィルムのRtは、上記範囲を満たしかつRtの両者の合計値が140〜500nmにすることが好ましい。このとき2a及び2bのRo、Rtが両者同じであっても異ってもよい。好ましくはRoが30〜200nm、かつRtは70〜400nm、特に好ましくはRoが35〜65nmであり、かつRtは90〜180nmで図1の構成でMVAモードの液晶セルに適用することである。Rt/Ro比は2〜6であることが好ましい。
液晶表示装置に本発明の偏光板保護フィルムを含む偏光板を用いる場合、少なくとも一方の面の偏光板が本発明の偏光板であることが好ましく、両面が本発明の偏光板であることがより好ましい。片方の偏光板のみが本発明の偏光板である場合、もう一方の面には従来の偏光板保護フィルムを用いた偏光板を用いることができる。この偏光板保護フィルムとしては、好ましくはRoは0〜4nm、Rtは20〜60nm、厚みは35〜85nmのセルロースエステルフィルムが用いられる。図1の2bにこのセルロースエステルフィルムが用いられ、2aに本発明の偏光板保護フィルムが用いられる。もしくは、2bが本発明の偏光板保護フィルムであって、2aが従来の偏光板保護フィルムであってもよい。この時、本発明の偏光板保護フィルムのRoは30〜200m、Rtは70〜400nmとすることが、表示品質の向上に寄与でき、またフィルムの生産面においても好ましい。
なお、従来の偏光板保護フィルムとしては、コニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC12UR、KC8UX−H、KC8UY−HA、KC8UX−RHA(コニカミノルタオプト(株)製)等が用いられる。また、本発明の偏光板保護フィルムは2aもしくは2bあるいはその両方に用いるだけでなく、1a、1bにも好ましく用いることができる。
本発明の偏光板において、偏光子からみて位相差フィルムとは反対側の面に用いられる偏光板保護フィルムには、表示装置の品質を向上する上で、他の機能性層を配置することも可能である。
例えば、反射防止、防眩、耐キズ、ゴミ付着防止、輝度向上のためにディスプレイとしての公知の機能層を構成物として含むフィルムや、または本発明の偏光板表面に貼付してもよいがこれらに限定されるものではない。
一般に位相差フィルムでは、上述のリターデーション値としてRoまたはRtの変動が少ないことが安定した光学特性を得るために求められている。特に複屈折モードの液晶表示装置は、これらの変動が画像のムラを引き起こす原因となることがある。
溶液流延法による方法によって製造された長尺状の偏光板保護フィルムは、該フィルム中のごく微量に残留した有機溶媒量の揮発に依存して変動することがある。この長尺状の偏光板保護フィルムは長尺の巻物(ロール)の状態で製造、保管、輸送され、偏光板製造業者等によって偏光板に加工される。従ってロールの巻きの中に行くほど、残留溶媒が存在する場合において揮発性が鈍化することがある。このため巻き外から巻き内、及び幅手方向では両端から中心にかけて微量な残留溶媒の濃度差が発生し、これらが引き金となってリターデーション値への経時的な変化と変動を与えることがあった。
一方、本発明の長尺状の偏光板保護フィルムは、溶融流延法によってフィルムを製造するため、溶液流延法と異なり揮発させるための溶媒が存在しないため、変動の少ない点で優れている技術である。本発明は、溶融流延によって製造されたフィルムを、連続的に延伸処理することによって長尺状の偏光板保護フィルムが得られる点で優れている。
溶融流延法による本発明の長尺状偏光板保護フィルムは、セルロース樹脂を主体として構成されるため、ケン化処理することができる。そのためポリビニルアルコール偏光子と水系の接着剤で貼合することができる。従来の偏光板加工方法が適用でき、ロールトウロール貼合が可能なため、特に長尺状であるロール偏光板が得られることに優れている。
これらの優れた効果は、特に100m以上の長尺の巻物において効果が発揮でき、1500m、2500m、5000mとより長尺化することによって、さらに著しい効果が得られる。
本発明の偏光板保護フィルムにおいて、ロール長さは生産性と運搬性を考慮すると、100〜5000m、好ましくは500〜4500mであり、このときのフィルムの幅は、偏光子の幅や製造ラインに適した幅を選択することができ、1〜4.0m、好ましくは1.4〜3.0mの幅で製造してロール状に巻き取り偏光板加工に用いてもよく、また、目的の倍幅以上のフィルムを製造してロールを巻き取り後断裁して目的の幅のロールとしてもよく、あるいはスリッティングしながら巻き取ってもよく、これらを偏光板加工に用いてもよい。
本発明の偏光板保護フィルム製造に際し、延伸の前及び/または後で帯電防止層、ハードコート層、易滑性層、接着層、ガスバリア層、防湿層、防眩層、バリアー層、液晶あるいはポリイミド等の光学異方性層等の機能性層を塗設してもよい。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、アルカリ等の薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことができる。
前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロース樹脂を含む組成物を共押し出しして、積層構造のセルロースエステルフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースエステルフィルムを作ることができる。例えば、マット剤等の微粒子は、スキン層に多く、またはスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多く入れることができ、コア層のみに入れてもよい。また、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えば、スキン層に低揮発性の可塑剤及び/または紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、あるいは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。スキン層とコア層のガラス転移温度が異なっていてもよく、スキン層のガラス転移温度よりコア層のガラス転移温度を低くすることができる。また、溶融流延時のセルロースエステルを含む溶融物の粘度もスキン層とコア層で異なっていてもよく、スキン層の粘度>コア層の粘度でも、コア層の粘度≧スキン層の粘度でもよい。
本発明の偏光板保護フィルムは、寸度安定性が、23℃55%RHに24時間放置したフィルムの寸法を基準としたとき、80℃90%RHにおける寸法の変動値が±0.5%未満であることが好ましく、さらに好ましくは±0.2%未満であり、さらに好ましくは±0.1%未満である。
本発明の偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られた偏光板保護フィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全鹸化ポリビニルアルコール水溶液を用いて、偏光子の両面に偏光板保護フィルムを貼り合わせることができる。この方法は、少なくとも片面に本発明の偏光板保護フィルムを偏光子に直接貼合できることができる点で好ましい。
また、上記アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、同6−118232号に記載されているような易接着加工を施して偏光板加工を行ってもよい。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、さらに該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、輸送時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは粘着層をカバーする目的で用いられる。
〈液晶表示装置〉
本発明の偏光板保護フィルムを含む偏光板で構成された液晶表示装置は、通常の偏光板と比較して高い表示品質を発現させるために用いる。特にマルチドメイン型の液晶表示装置、より好ましくは複屈折モードによってマルチドメイン型の液晶表示装置に使用することが本発明の効果をより発揮できる。
マルチドメイン化は、画像表示の対称性の向上にも適しており、種々の方式が報告されている「置田、山内:液晶,6(3),303(2002)」。該液晶表示セルは、「山田、山原:液晶,7(2),184(2003)」にも示されているが、これらに限定されない。
本発明の偏光板は垂直配向モードに代表されるMVA(Multi−domein Vertical Alignment)モード、特に4分割されたMVAモード、電極配置によってマルチドメイン化された公知のPVA(Patterned Vertical Alignment)モード、電極配置とカイラル能を融合したCPA(Continuous Pinwheel Alignment)モードに効果的に用いることができる。また、OCB(Optical Compensated Bend)モードへの適合においても光学的に二軸性を有するフィルムの提案が開示されており「T.Miyashita,T.Uchida:J.SID,3(1),29(1995)」、本発明の偏光板によって表示品質において、本発明の効果を発現することもできる。本発明の偏光板を用いることによって本発明の効果が発現できれば、液晶モード、偏光板の配置は限定されるものではない。
表示セルの表示品質は、人の観察において左右対称であることが好ましい。従って、表示セルが液晶表示セルである場合、実質的に観察側の対称性を優先してドメインをマルチ化することができる。ドメインの分割は、公知の方法を採用することができ、2分割法、より好ましくは4分割法によって、公知の液晶モードの性質を考慮して決定できる。
液晶表示装置はカラー化及び動画表示用の装置しても応用されつつあり、本発明における表示品質は、コントラストの改善や偏光板の耐性が向上したことにより、疲れにくく忠実な動画像表示が可能となる。
本発明の液晶表示装置は、本発明の偏光板保護フィルムを含む偏光板を液晶セルの一方の面のみに配置するか、もしくは両面に配置するものである。このとき偏光板に含まれる本発明の偏光板保護フィルムが液晶セル側となるように用いることで表示品質の向上に寄与できる。図1においては2a及び2bのフィルムが液晶表示装置の液晶セルに面することになる。
このような構成において、本発明の偏光板保護フィルムの存在は、液晶セルを光学的に補償することができる。本発明の偏光板を液晶表示装置に用いる場合は、液晶表示装置の偏光板の内の少なくとも一つの偏光板を、本発明の偏光板とすればよい。本発明の偏光板を用いることで、表示品質が向上し、視野角特性に優れた液晶表示装置が提供できる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の「部」は「質量部」を表す。
先ず測定方法及び用いる素材について記載する。
(リターデーションRo、Rt)
23℃、55%RHの環境下に24時間放置したフィルムを用いて、同環境下で、波長が590nmにおけるフィルムのリターデーションを自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)で求めた。アッベ屈折率計で測定したフィルム構成材料の平均屈折率と膜厚dを入力し、面内リターデーション(Ro)及び厚み方向のリターデーション(Rt)の値を得た。また、上記装置によって3次元屈折率nx、ny、nzの値が算出される。
式(1) Ro=(nx−ny)×d
式(2) Rt={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さを表す。)
(ヘイズ)
ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
(Tg)
試料を丸く切り込み、10mgをアルミ製サンプルパンに封入し、24hr以上真空乾燥した。その後、示差走査熱量測定(DSC)((株)リガク製DSC8230型)で10℃/分で室温から300℃まで窒素ガス雰囲気中で昇温し、ガラス転移温度(Tg)を測定した。なお、TgはDSC曲線がベースラインから偏奇し始める温度を取ることにより求めた。
(素材)
〈セルロース樹脂〉
セルロース樹脂1:アセチル基の置換度が1.75、プロピオニル基の置換度が0.80、アルカリ土類金属含有量が6ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素として)が16ppm、遊離酸含有量が20ppm、極限粘度が1.54であるセルロースアセテートプロピオネート
セルロース樹脂2:アセチル基の置換度が1.92、プロピオニル基の置換度が0.76、アルカリ土類金属含有量が15ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素として)が20ppm、遊離酸含有量が8ppm、極限粘度が1.61であるセルロースアセテートプロピオネート
セルロース樹脂3:アセチル基の置換度が1.94、プロピオニル基の置換度が0.63、アルカリ土類金属含有量が8ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素として)が25ppm、遊離酸含有量が70ppm、極限粘度が1.54であるセルロースアセテートプロピオネート
セルロース樹脂4:アセチル基の置換度が2.11、プロピオニル基の置換度が0.70、アルカリ土類金属含有量が30ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素として)が45ppm、遊離酸含有量が110ppm、極限粘度が1.73であるセルロースアセテートプロピオネート
セルロース樹脂5:アセチル基の置換度が1.92、プロピオニル基の置換度が0.70、アルカリ土類金属含有量が6ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素として)が12ppm、遊離酸含有量が20ppm、極限粘度が1.59であるセルロースアセテートプロピオネート
セルロース樹脂6:アセチル基の置換度が2.10、プロピオニル基の置換度が0.82、アルカリ土類金属含有量が105ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素として)が80ppm、遊離酸含有量が510ppm、極限粘度が1.61であるセルロースアセテートプロピオネート
セルロース樹脂7:アセチル基の置換度が1.60、プロピオニル基の置換度が0.82、アルカリ土類金属含有量が100ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素として)が70ppm、遊離酸含有量が200ppm、極限粘度が1.5であるセルロースアセテートプロピオネート
セルロース樹脂8:アセチル基の置換度が1.75、プロピオニル基の置換度が0.80、アルカリ土類金属含有量が55ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素として)が60ppm、遊離酸含有量が110ppm、極限粘度が1.57であるセルロースアセテートプロピオネート
セルロース樹脂9:アセチル基の置換度が2.0、ブチリル基の置換度が0.70、アルカリ土類金属含有量が3ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素として)が1ppm、遊離酸含有量が20ppm、極限粘度が1.6であるセルロースアセテートブチレート
セルロース樹脂10:アセチル基の置換度が1.9、ブチリル基の置換度が0.9、アルカリ土類金属含有量が6ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素として)が12ppm、遊離酸含有量が20ppm、極限粘度が1.5であるセルロースアセテートブチレート
〈可塑剤〉
可塑剤1:トリメチロールプロパントリベンゾエート 10質量部
可塑剤2:トリフェニルホスフェート 10質量部
〈添加剤〉
添加剤1:IRGANOX1010(チバスペシャルティケミカルズ社製)
0.2質量部
添加剤2:エポキシ化タル油(酸捕捉剤) 0.2質量部
添加剤3:HALS−1 0.2質量部
実施例1
(偏光板保護フィルム1〜17の作製)
上記セルロース樹脂を120℃で1時間乾燥空気中で熱処理し、乾燥空気中で室温まで放冷した。乾燥したセルロース樹脂90質量部に対して、表1の構成でセルロース樹脂以外の可塑剤、添加剤を上記質量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合後、押出機を用い加熱してペレットを作製し、放冷した。
このペレットを120℃で乾燥後、押出機を使用し、表1記載の溶融温度で加熱溶融し、T型ダイから押出成形し、引き取りロールを介してロール温度が得られるフィルムの158℃で長手方向に1.1倍延伸し、つづいて幅方向にテンターを用いて1.4倍延伸後、緩和し、冷却しながら幅手両端部の耳部をスリッティングで除去し、さらに室温(20℃)まで冷却した後、両端部に高さ10μm、幅1.5cmのナーリングを設け、巻き取ってロール状の膜厚80μmの、Roが50nm、Rtが130nmの偏光板保護フィルム1を得た。
表1記載の組成物に変更し、延伸を制御して同様にして偏光板保護フィルム2〜17を得た。偏光板保護フィルム2〜14、14〜17は、Roが45〜55nm、Rtが125〜135nmであった。
(評価)
作製した偏光板保護フィルムについて、下記のようにして、リップ部付着、破断状況及び輝点の評価を行った。
〈リップ部付着〉
30000mを製膜した後に、T型ダイのリップ部への溶融物の付着状況を観察し、下記基準で評価した。
◎:リップ部への溶融物の付着は認められない
○:ごくわずかにリップ部への溶融物の付着が認められるが問題ない
△:リップ部への溶融物の付着がわずかに認められ、製膜されたフィルムに弱いスジが認められる
×:リップ部への溶融物の付着が認められ、製膜されたフィルムにスジが認められる
〈破断状況〉
さらに製膜を継続して、1週間の製膜中に、熱延伸からスリッタ部にかけてフィルムの破断状況を観察し、下記基準で評価した。
○:熱延伸からスリッタ部にかけてフィルムが破断することはなかった
△:熱延伸からスリッタ部にかけてフィルムが1〜2回破断した
×:熱延伸からスリッタ部にかけてフィルムの破断が3回以上破断した
評価の結果を表1に示す。
Figure 2006113567
本発明の偏光板保護フィルムは、比較例に比べ、リップ部付着、破断状況で優れていることが分かる。
(偏光板の作製)
次に、上記作製した偏光板保護フィルム1〜17及び市販のKC8UY(コニカミノルタ社製80μmTACフィルム)を下記のアルカリケン化処理し、それぞれ偏光板1〜17を作製した。
〈アルカリケン化処理〉
ケン化工程 2mol/L NaOH 50℃ 90秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
中和工程 10質量%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
ケン化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで80℃で乾燥した。
〈偏光子の作製〉
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で6倍に搬送方向に延伸して偏光子を作製した。
偏光子の液晶セル側に上記作製した偏光板保護フィルム(位相差フィルムとして使用)、液晶セルと反対側の面にKC8UYを保護フィルムとして、アルカリケン化処理面を完全鹸化型ポリビニルアルコール5質量%水溶液を接着剤として両面から貼合し、両面に保護フィルムが貼合された偏光板を作製した。
(VA型液晶表示装置の作製)
富士通製15型液晶ディスプレイVL−1530Sに貼合されていた偏光板を剥がし、上記作製した偏光板1〜17の透過軸が、貼合されていた偏光板の透過軸と同じ方向になるよう貼合し、それぞれVA型液晶表示装置1〜17を作製した。偏光板は2枚同一品を用意し、図1で示すように液晶セルに対して観察側及びバックライト側に各々1枚ずつ使用した。各々の偏光板に貼合された偏光板保護フィルム(位相差フィルム)が、液晶セル側に配置されるように貼合した。
(評価)
作製したVA型液晶表示装置について、下記のようにして視野角及び動画を評価した。
〈視野角〉
視野角評価は、上記で得られた偏光板を貼合した液晶パネルを、ELDIM社製EZ−contrastを用いて測定した。測定方法は、液晶パネルの白表示と黒表示時のコントラスト比が10以上を示すパネル面に対する法線方向からの傾き角の範囲を評価した。法線上を0°とすると傾き角が大きくなるほど視野角領域が広いこととなる。
評価パネルは水平方向を0°とした時、斜め45°方位におけるコントラストの値で、下記基準で評価した。
◎:パネル面に対する法線方向からの傾き角が80°以上である
○:パネル面に対する法線方向からの傾き角が70°以上80°未満である
×:パネル面に対する法線方向からの傾き角が70°に満たない
評価結果を表2に示した。
Figure 2006113567
表2より、本発明の偏光板を用いた液晶表示装置は視野角に優れた液晶表示装置であることが分かる。
本発明の表示装置の構成を示す模式図である。
符号の説明
1a 保護フィルム
1b 保護フィルム
2a 位相差フィルム
2b 位相差フィルム
5a、5b 偏光子
3a、3b フィルムの遅相軸方向
4a、4b 偏光子の透過軸方向
6a、6b 偏光板
7 液晶セル
9 液晶表示装置

Claims (7)

  1. 0.01〜5質量%のヒンダードアミン化合物またはヒンダードフェノール化合物、可塑剤及びセルロース樹脂を含むフィルム形成材料を加熱溶融して得られる溶融物を用いて溶融流延法によって製造する偏光板保護フィルムであって、該セルロース樹脂が、アシル基の総置換度が2.5〜2.9、アルカリ土類金属の含有量(Ca、Mgの総含有量)が1〜50ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素の含有量として)が0.1〜45ppmであることを特徴とする偏光板保護フィルム。
  2. 前記セルロース樹脂の遊離酸含有量が1〜500ppmであることを特徴とする請求項1に記載の偏光板保護フィルム。
  3. 面内リターデーションRoが30〜200nm、厚み方向のリターデーションRtが70〜400nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の偏光板保護フィルム。
  4. アシル基の総置換度が2.5〜2.9、アルカリ土類金属の含有量が1〜50ppm、残留硫酸含有量(硫黄元素の含有量として)が0.1〜45ppmであるセルロース樹脂、ヒンダードアミン化合物またはヒンダードフェノール化合物及び可塑剤を含むフィルム形成材料を加熱溶融して押し出した後、冷却して得られるフィルムを再度加熱して熱延伸後冷却することを特徴とする偏光板保護フィルムの製造方法。
  5. 前記セルロース樹脂の遊離酸含有量が1〜100ppmであることを特徴とする請求項4に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板保護フィルムを偏光子の少なくとも一方の面に用いることを特徴とする偏光板。
  7. 請求項6に記載の偏光板を用いることを特徴とする液晶表示装置。
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