JP5779441B2 - 剥離性積層フィルムの製造方法、及び偏光板の製造方法 - Google Patents
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Description
また、セルロースエステルフィルムは透過率が高く、アルカリ水溶液に浸漬させてその表面を鹸化し親水化することで、偏光子との優れた密着性を実現し、偏光板が作製されている。しかしながら、薄膜化により、搬送性が困難になるという問題があった。溶液流延製膜で薄膜であっても、優れた面状を有し、搬送性が良好な光学フィルムが求められている。
この方法では、溶融製膜で外層に添加された可塑剤の一部がフィルムから揮散し、不均一となり、平面性、カール、寸法安定性、レターデーション均一性が劣化するという課題を解決する方法が開示されている。これは、加熱溶融時に生じるフィルム内部からの添加剤の揮発防止を目的として、溶融可能なセルロースエステル(セルロースアセテートプロピオネテート、セルロースアセテートブチレートなど)と可塑剤を含有するA層の両側に、非接着性の剥離可能な熱可塑性樹種層Bを3層以上の共押し出しで、添加剤揮発の解決を図っているものであり、あくまで基層となる中央のフィルムを保護するための積層体であった。
すなわち本発明は以下の構成により達成される。
前記積層体を前記流延用支持体より剥離する工程と、
剥離した前記積層体を乾燥させる工程とを含むことを特徴とする剥離性積層フィルムの製造方法。
[2] [1]に記載の剥離性積層フィルムの製造方法は、前記セルロースエステルと、前記セルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂とのSP値の差が0.2MPa1/2以上であることが好ましい(SP値はHoy法で測定された溶解度パラメーターを表す)。
[3] [1]又は[2]に記載の剥離性積層フィルムの製造方法は、前記ドープAと前記ドープBとを流延用支持体上に流延して前記積層体を形成する工程と同時又は逐次に、更に、前記ドープAと前記ドープBのうち前記支持体と接していない方のドープの表面上に前記ドープA、前記ドープB、又は前記ドープA及び前記ドープBとは異なるドープCのいずれかを1層以上流延し、3層以上の積層体を得ることが好ましい。
[4] [1]〜[3]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法は、前記ドープA、前記ドープBおよび前記ドープAをこの順で流延用支持体上に同時又は逐次流延して、3層の積層体を形成することが好ましい。
[5] [1]〜[4]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法は、前記積層体を、長尺状で、3層であり、内層と表裏面の外層に剥離可能な剥離性積層フィルムとなるように形成することが好ましい。
[6] [1]〜[5]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法は、前記A層の膜厚が5〜60μmであり、剥離性積層フィルムの全体膜厚が20〜200μmであることが好ましい。
[7] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法は、前記ドープAに用いるセルロースエステルは、下記式(I)〜(III)を満たすセルロースアシレートであることが好ましい。
式(I):1.0≦X+Y≦3.0
式(II):0≦X≦3.0
式(III):0≦Y≦2.6
(式(I)〜(III)において、Xは前記セルロースアシレートのグルコース単位の水酸基のアセチル基による置換度であり、Yは前記セルロースアシレートのグルコース単位の水酸基の炭素原子数が3以上のアシル基による置換度である。)
[8] [1]〜[7]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法は、前記ドープBに用いる、前記セルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂がアクリル樹脂であることが好ましい。
[9] [8]に記載の剥離性積層フィルムの製造方法は、前記アクリル樹脂の主成分として用いられるアクリル樹脂の重量平均分子量が60万〜400万であることが好ましい。
[10] [9]に記載の剥離性積層フィルムの製造方法は、前記アクリル樹脂の主成分として用いられるアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw1)が100万〜300万であり、かつ該アクリル樹脂を100℃で1時間加熱処理した後の重量平均分子量(Mw2)が、Mw2/Mw1≧0.8を満たすことが好ましい。
[11] [10]に記載の剥離性積層フィルムの製造方法は、前記アクリル樹脂の主成分として用いられるアクリル樹脂の主成分がPMMAであり、モノマーであるMMAの含有量が1質量%未満であることが好ましい。
[12] [10]または[11]に記載の剥離性積層フィルムの製造方法は、前記アクリル樹脂の主成分として用いられるアクリル樹脂を2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)または2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を重合開始剤として重合する工程を含むことが好ましい。
[13] [1]〜[12]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法は、前記積層体の少なくとも一方の面に塗布層を設けることが好ましい。
[14] [1]〜[13]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法で製造された剥離性積層フィルムをそのまま巻き取ることを特徴とする剥離性積層フィルムロールの製造方法。
[15] [1]〜[13]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法で製造された剥離性積層フィルムの積層体の一部の層を剥離して、該剥離した層を個別のフィルムとして巻き取ることを特徴とするフィルムの製造方法。
[16] [1]〜[13]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法で製造された剥離性積層フィルム、もしくは、[14]に記載の剥離性積層フィルムロールの製造方法で製造された剥離性積層フィルムロールから前記A層を剥離して得られたフィルム、または、[15]に記載のフィルムの製造方法で製造され、かつ前記A層を含むフィルム。
[17] セルロースエステルを含むA層と、前記セルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂を含むB層とを含む積層体を有し、
前記A層と前記B層の密着力が5N/cm以下であることを特徴とする剥離性積層フィルム。
[18] [17]に記載の剥離性積層フィルムは、前記B層と前記A層とのSP値の差が0.2MPa1/2以上であることが好ましい(SP値はHoy法で測定された溶解度パラメーターを表す)。
[19] [17]又は[18]に記載の剥離性積層フィルムは、前記A層とB層を含む積層体が、A層、B層、又はA層及びB層とは異なるC層をさらに有する、3層以上の積層体であることが好ましい。
[20] [19]に記載の剥離性積層フィルムは、前記3層以上の層がすべて異なることが好ましい。
[21] [17]〜[20]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムは、前記A層とB層を含む積層体が、前記A層、前記B層および前記A層の順に積層された3層の積層体であることが好ましい。
[22] [17]〜[21]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムは、前記A層とB層を含む積層体が、長尺状で、3層であり、内層と表裏面の外層に剥離可能な積層体であることが好ましい。
[23] [17]〜[22]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムは、前記A層の膜厚が5〜60μmであり、剥離性積層フィルムの全体膜厚が20〜200μmであることが好ましい。
[24] [17]〜[23]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムは、前記B層に含まれる前記セルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂がアクリル樹脂であることが好ましい。
[25] [24]に記載の剥離性積層フィルムは、前記アクリル樹脂の主成分として用いられるアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw1)が100万〜300万であり、かつ該アクリル樹脂を100℃で1時間加熱処理した後の重量平均分子量(Mw2)が、Mw2/Mw1≧0.8を満たすことが好ましい。
[26] [25]に記載の剥離性積層フィルムは、前記アクリル樹脂の主成分として用いられるアクリル樹脂の主成分がPMMAであり、モノマーであるMMAの含有量が1質量%未満であることが好ましい。
[27] [17]〜[26]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムは、前記B層が搬送用支持体であることが好ましい。
[28] [17]〜[27]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムは、前記積層体の少なくとも一方の面に更に塗布層を有することが好ましい。
[29] [17]〜[28]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムから、前記A層とB層を含む積層体のいずれかの層を剥離して得られるフィルム。
[30] [1]〜[13]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法を含み、
前記積層体を、長尺状で、3層であり、内層と表裏面の外層に剥離可能な剥離性積層フィルムとなるように形成し、
該剥離性積層フィルムの前記表裏面の外層をそれぞれ前記内層から剥離させる工程と、
該表裏面の外層で偏光子を挟持することを特徴とする偏光板の製造方法。
[31] [30]に記載の偏光板の製造方法は、前記表裏面の外層が、いずれも前記A層であることが好ましい。
[32] 偏光子と、該偏光子の少なくとも一方の表面の保護フィルムとしての[16]または[29]に記載のフィルムを含むことを特徴とする偏光板。
[33] [32]に記載の偏光板は、[17]〜[28]のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの前記A層を、偏光子の両表面の保護フィルムとして有することが好ましい。
[34] [16]もしくは[29]に記載のフィルム、又は[32]もしくは[33]に記載の偏光板を用いた液晶表示装置。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の剥離性積層フィルムは、セルロースエステルを含むA層と、前記セルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂を含むB層とを含む積層体を有し、前記A層と前記B層の密着力が5N/cm以下であることを特徴とする。
なお、本発明のフィルム及び光学フィルムは、剥離性積層フィルムから剥離して得られるものであるが、本明細書において、単に「フィルム」と記載した場合の該「フィルム」には両者(フィルム及び光学フィルム)を含むものとする。
以下、本発明の剥離性積層フィルムの好ましい態様について説明する。
(A層の厚み)
本発明の剥離性積層フィルムの積層体は、セルロースエステルを含むA層と、セルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂を含有するB層とを有し、A層とB層の密着力が5N/cm以下である積層体である。このような構成により、本発明のフィルムは、厚膜の製造条件下で各層が薄膜として適した特性を有する。
A層とB層を含む前記積層体の合計膜厚は、20μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上180μm以下の厚みであることがより好ましく、30μm以上150μm以下であることが特に好ましく、最も好ましくは40μm以上100μm以下である。薄すぎると成膜適性の観点から面状の悪化等が懸念され、厚すぎるとハンドリング性の悪化等が懸念される。積層体の合計膜厚が40μm以上100μm以下であると、現在セルロース系フィルムとして流通している厚みに近いため、搬送や加工などの各種技術や装置の転用や導入が非常に容易である点でも好ましい。
また、A層単体の膜厚は所望の厚みをすることができるが、5μm以上60μm以下であることが好ましく、8μm以上50μm以下の厚みであることがより好ましく、10μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
B層単体の膜厚は、A層同様に所望の厚みとすることができる。
ただし、B層を搬送用支持体として製造する場合は、B層は他の層を支持補助するために適度な機械性能を有する必要があるためある程度の厚みを有する必要がある。
本発明の剥離性積層フィルムは、A層とB層以外に、A層やB層と異なる溶液成膜可能な樹脂を含むC層を更に含んでもよく、またA層、B層及びC層をそれぞれ複数層有する互層構造とすることもできる。
本発明の剥離性積層フィルム、及び該剥離性積層フィルムから剥離されて得られるフィルムは、フィルム幅が400〜2500mmであることが好ましく、1000mm以上であることがより好ましく、1500mm以上であることが特に好ましく、1800mm以上であることがより特に好ましい。
以下、A層、B層の構成について順に説明する。
本発明の剥離性積層フィルムにおいて、A層はセルロースエステルを含み、好ましくはセルロースアシレートを主成分として含む。なお、主成分とは層を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。
前記A層の厚みの好ましい態様については、本発明の層構成の説明において上述したとおりである。
本発明に用いられるセルロースアシレートは、特に定めるものではない。原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
更に、本発明に用いられるセルロースエステル(好ましくはセルロースアシレート)は、アシル基の総置換度をX+Y、炭素数が2のアシル基(アセチル基)の置換度をX、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度をYとしたときに、以下の条件を満たすことが好ましい。以下の範囲にすることで、隣接層との密着性、流延時の支持体からの剥離性、フィルムのカール低減の観点で優れたA層を得ることができる。
1.0≦X+Y≦3.0
0≦X≦3.0
0≦Y≦2.6
2.0≦X+Y≦3.0
1.5≦X≦3.0
0≦Y≦2.0
本発明の剥離性積層フィルムにおいて、B層は、セルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂を含有する。本明細書中、セルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂とは、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、等が挙げられ、これらの樹脂及びこれら複数種の樹脂の混合樹脂から選ぶことができる。
剥離性を付与するためには、A層とB層の組成が相溶性を有しないことが好ましく、その指標としてSP値(溶解度パラメーター)を用いることができ、上記樹脂やその組成を適宜選択してB層を形成することができる。なお、A層およびB層に用いる樹脂の溶解度パラメーターSP値は、後述の有機溶剤の溶解度パラメーターと同様に「PolymerHandbook(4th.edition)」に記載の内容のものを表す。
本発明において剥離性を付与するためには、A層に用いる樹脂とB層に用いる樹脂のSP値の差が0.2MPa1/2以上となる様にそれぞれの層に用いる材料を選択することで調整することができる。なお、層のSP値とは、実質的に層に用いる樹脂のSP値に相当する。したがって、本発明において、A層に用いる樹脂(セルロースエステル)とB層に用いる樹脂のSP値の差は0.2MPa1/2以上であることが好ましい。
前記(メタ)アクリル酸系樹脂の繰り返し構造単位は、特に限定されない。前記(メタ)アクリル酸系樹脂は、繰り返し構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の繰り返し構造単位を有することが好ましい。
CH2=C(X)R201
前記(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは10〜100重量%、更に好ましくは40〜100重量%、特に好ましくは50〜100重量%である。
前記水酸基含有単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
前記不飽和カルボン酸を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
前記一般式(201)で表される単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
前記単量体成分を重合して分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得るための重合反応の形態としては、溶剤を用いた重合形態であることが好ましく、溶液重合が特に好ましい。
また、本発明の製造方法では、(メタ)アクリル系樹脂を有機溶媒に溶解させて溶液流延を行って前記B層を形成するため、(メタ)アクリル系樹脂の合成時における有機溶媒は、溶融製膜を行う場合よりも限定されず、沸点が高い有機溶媒を用いて合成してもよい。
重合開始剤の量の調整により、重合体の重量平均分子量を調整することができる。
これに対し、本発明の剥離性積層フィルムではセルロースエステルのA層との共流延を実現するため、更に大きい重量平均分子量の(メタ)アクリル系樹脂を用いて製膜されたことが好ましい。すなわち、本発明の剥離性積層フィルムに用いられるB層を形成する樹脂は、特に光学フィルムとしての脆性、自己成膜性の観点で、重量平均分子量(Mw)は60万〜400万が好ましく、80万〜200万がより好ましく、100万より大きく200万以下の範囲であることが更に好ましく、100万より大きく180万以下の範囲であることが特に好ましい。(メタ)アクリル系樹脂を用いる場合、その主成分となる(メタ)アクリル系樹脂の重合平均分子量が60万〜400万であることが好ましく、80万〜200万がより好ましい。なお、主成分とは層を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。
B層を形成する樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
B層を形成する樹脂が、重量平均分子量80万〜200万であり、分子内にメチルメタクリレート単位を50質量%以上有する(メタ)アクリル系樹脂であることが特に好ましい。
本発明の剥離性積層フィルムは、後述する本発明の製造方法によって共流延や逐次流延による積層によって製膜されることが好ましい。このように溶液製膜によって、セルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂を含有する前記B層を形成することによって、セルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂を含有する層を溶融製膜により形成した場合よりも、前記A層の表面面状を改善することができる。
本発明の剥離性積層フィルムには、前記B層及び前記A層のそれぞれにおいて、主原料となる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂とともに、前記湿度依存性改良剤以外の添加剤、例えば、可塑剤、脆性改良剤、A層とB層の層間剥離促進剤、帯電防止剤、フィラー、紫外線吸収剤、遊離酸、ラジカルトラップ剤、粒子等を、本発明の趣旨に反しない限りにおいて含有させてもよい。
以下、本発明の剥離性積層フィルムに添加してもよい添加剤について説明する。
本発明の剥離性積層フィルムにおいて、B層には脆性改良剤を含んでもよい。前記脆性改良剤としては、特に制限はないが、例えば下記のような化合物を挙げることができる。(繰り返し単位を有する化合物)
本発明における脆性改良剤としては繰り返し単位を有する化合物が好ましい。繰り返し単位を有する化合物とは、縮合物若しくは付加物を挙げることができ、縮合物としては、多価アルコールと多塩基酸との縮合物、多価エーテルアルコールと多塩基酸との縮合物、多価アルコールと多塩基酸との縮合物とイソシアナート化合物との縮合物を好ましく挙げることができ、付加物としては、アクリル酸エステルの付加物、メタクリル酸エステルの付加物を好ましく挙げることができる。また、ポリエーテル系化合物、ポリウレタン系化合物、ポリエーテルポリウレタン系化合物、ポリアミド系化合物、ポリスルフォン系化合物、ポリスルフォンアミド系化合物、その他の高分子系化合物としては数平均分子量が600以上の化合物を用いることもできる。
そのうち少なくとも1種は、多価アルコールと多塩基酸との縮合物、多価エーテルアルコールと多塩基酸との縮合物、アクリル酸エステルの付加物又はメタクリル酸エステルの付加物であることが好ましく、多価アルコールと多塩基酸との縮合物又はアクリル酸エステルの付加物であることがより好ましく、多価アルコールと多塩基酸との縮合物であることが更に好ましい。
本発明においては、フィルムに柔軟性を与え、寸法安定性を向上させ、耐湿性を向上させるために可塑剤を用いてもよい。
これらの好ましい可塑剤は、25℃においてTPP(融点約50℃)以外は液体であり、沸点も250℃以上である。
また、耐揮発性、ブリードアウト、低ヘイズなどの点で優れる可塑剤としては、例えば特開2009−98674号公報に記載の両末端が水酸基であるポリエステルジオールを用いるのが好ましい。また、光学フィルムの平面性や低ヘイズなどの点で優れる可塑剤としては、特開2009−155454号公報、特開2009−235377号公報、特開2009−299014号公報、特開2010−031132号公報、特開2010−053254号公報、特開2010−242050号公報に記載のポリエステル化合物や、WO2009/031464号公報に記載の糖エステル誘導体も好ましい。
本発明のフィルムには、フィルム自身の耐光性向上、或いは偏光板、液晶表示装置の液晶化合物等の画像表示部材の劣化防止のために、更に紫外線吸収剤を添加してもよい。
本発明のフィルムは、偏光板の保護フィルムとして用いることができる。この場合樹脂と、25℃におけるテトラヒドロフラン/水=6/4の体積比である混合溶媒中における酸解離定数が2〜7の有機酸を該樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部含有することが好ましい。このような有機酸を用いることで、前記偏光板保護フィルムは、高温低湿下での偏光子耐久性を悪化させることなく高温高湿下での偏光子耐久性を改善することができる。
(溶解度)
本発明のフィルムに含まれる有機酸は、25℃における水に対する溶解度が0.1質量%以下である。前記有機酸の25℃における水に対する溶解度は0.06質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以下であることがより好ましい。
本発明における前記溶解度の測定方法としては、丸善(株)刊 実験化学講座第4版の153ページ〜156ページに記載の方法を採用した。
本発明における前記酸解離定数の測定方法としては、丸善(株)刊 実験化学講座第2版の215ページ〜217ページに記載のアルカリ適定法を採用した。
本発明のフィルムに含まれる有機酸の分子量は、200〜1000であることが好ましく、250〜800であることがより好ましく、280〜500であることが特に好ましい。分子量が上述の範囲の下限値以上であると高温低湿下における偏光子耐久性が改善され、分子量が上述の範囲の上限値以下であると高温高湿下における偏光子耐久性が改良され、好ましい。
本発明のフィルムに含まれる有機酸は、芳香環構造を含むことが好ましく、炭素数6〜12のアリール基を含むことが好ましく、フェニル基を含むことが特に好ましい。前記有機酸の芳香環構造は、その他の環と縮合環を形成していてもよい。前記有機酸の芳香環構造は、置換基を有していてもよく、該置換基としては本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限はないが、ハロゲン原子又はアルキル基であることが好ましく、ハロゲン原子又は炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましく、塩素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
一般式(3)
前記R7及びR8はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜12のアルキル基(シクロアルキル基も含む)又は炭素数6〜12のアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基(シクロアルキル基も含む)又はフェニル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、シクロヘキサン基又はフェニル基であることが特に好ましい。
前記R6が有していてもよい置換基としては本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限はないが、ハロゲン原子又はアルキル基であることが好ましく、ハロゲン原子又は炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましく、塩素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
前記R7が有していてもよい置換基としては本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限はないが、炭素数6〜12のアリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
本発明に用いられる有機酸は、商業的に入手してもよく、公知の方法によって合成してもよい。
前記有機酸は、フィルムに用いられる樹脂に対して1〜20質量%であることが好ましい。1質量%以上であれば、偏光子耐久性改良効果が得られやすく、また20質量%以下であれば、偏光板保護フィルムを製膜した場合にブリードアウトや染み出しも発生しにくい。前記有機酸の含有量は1〜15質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが特に好ましい。
本発明の偏光板に用いられる前記偏光板保護フィルムに含まれる有機酸は、25℃におけるテトラヒドロフラン/水=6/4の体積比である混合溶媒中における酸解離定数が2〜7であることが好ましく、3〜6であることがより好ましく、3〜5であることが更に好ましい。
本発明における前記酸解離定数の測定方法としては、丸善(株)刊 実験化学講座第2版の215ページ〜217ページに記載のアルカリ適定法を採用した。
フィルムの表面に凹凸を与えたりフィルム内部に光散乱性を付与したりするために粒子を添加することもでき、その場合には、粒子の粒径は1〜20μmであるのが好ましく、添加量は2〜30質量%好ましい。これら粒子屈折率は本発明のポリマーフィルムの屈折率との差が0〜0.5であるのが好ましく、例えば、無機材料の粒子の例には、酸化珪素、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粒子が含まれる。有機材料の粒子の例には、アクリル樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、スチレン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が含まれる。
本発明の剥離性積層フィルム及び該剥離性積層フィルムから剥離されて得られるフィルムには、前記積層体の少なくとも一方の面に更に他の塗布層を設けてもよい。
そのような塗布層としては、例えば、0.1μm以上15μm以下の厚みの硬化性樹脂層を設けてもよい。また、本発明の光学フィルムは、該硬化性樹脂層の上に、帯電防止層、高屈折率層、低屈折率層等の光学機能層を設けることもできる。また、硬化性樹脂層が帯電防止層や高屈折率層を兼ねることもできる。
硬化性樹脂層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を光透過性基材上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
また、硬化性樹脂層には、公知のレベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、屈折率調節用無機フィラー、散乱粒子、チキソトロピー剤等の添加剤を用いることができる。
また、棒状又は円盤状の液晶性重合化合物を配向させて、硬化させてなる位相差を形成することもできる。
本発明の剥離性積層フィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、セルロースエステルと溶媒を含むA層形成用のドープAと、少なくとも前記セルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂と溶媒を含み、A層とB層の密着力が5N/cm以下となるように調製されたB層形成用のドープBとを流延用支持体上に同時又は逐次に流延して積層体を形成する工程と、前記積層体を前記流延用支持体より剥離する工程と、剥離した前記積層体を乾燥させる工程とを含むことを特徴とする。
以下、本発明の製造方法について、好ましい態様を説明する。
本発明の剥離性積層フィルムの製膜の方法としては、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法など、公知のフィルム成形方法が挙げられる。本発明の製造方法は、これらの中でも、溶液キャスト法(溶液流延法)を用いることで、本発明のフィルムを生産性よく製造することを特徴とする。
本発明の剥離性積層フィルムの製造に用いる熱可塑性樹脂の溶液(ドープ)の調製について、その溶解方法は、室温溶解法、冷却溶解法又は高温溶解方法により実施され、更にはこれらの組合せで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号などの各公報にはセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。これらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明のセルロースエステル及びその他の熱可塑性樹脂に対しても、これらの技術を適宜適用できるものである。これらの詳細、特に非塩素系溶媒系については、前記の公技番号2001−1745号の22〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。更に熱可塑性樹脂のドープ溶液は、溶液濃縮、濾過が通常実施され、同様に前記の公技番号2001−1745号の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
本発明の製造方法において、前記セルロースエステル及び前記ドープAのセルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂をそれぞれ溶解しドープを形成する有機溶媒について記述する。用いる有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒が挙げられ、例えば溶解度パラメーターで17〜22の範囲ものが好ましい。溶解度パラメーターは、例えばJ.Brandrup、E.H等の「PolymerHandbook(4th.edition)」、VII/671〜VII/714に記載の内容のものを表す。低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類、フルオロアルコール類(例えば、特開平8−143709号公報 段落番号[0020]、同11−60807号公報 段落番号[0037]等に記載の化合物)等が挙げられる。
本発明の剥離性積層フィルムを形成する材料は、有機溶媒に10〜60質量%の固形分濃度(乾燥後固体となる成分の和)で溶解していることが好ましく、更に好ましくは10〜50質量%である。セルロースアシレート系樹脂を主成分とする場合には、10〜30質量%溶解していることが好ましく、15〜25質量%であることが好ましく、18〜20質量%であることが最も好ましい。但し、用途によっては、有機溶剤の含有量を少なくでき、乾燥時間の短縮ができるという理由などからドープAの固形分濃度が20質量%を超え22質量%以下であっても好ましい場合がある。これらの固形分濃度に調製する方法は、溶解する段階で所定の固形分濃度になるように調製してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。更に、予め高濃度の光透過性基材を形成する材料の溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度の溶液としてもよい。
支持体離型性、界面密着性、低カールを達成する観点から、ドープA、B中の熱可塑性樹脂の組成は、以下の条件を満たすことが好ましい。ドープA中の熱可塑性樹脂中にセルロースエステルの占める割合は、50〜100質量%が好ましく、更に好ましくは70〜100質量%、最も好ましくは80〜100質量%である。またドープB中の熱可塑性樹脂中に(メタ)アクリル系樹脂の占める割合は、30〜100質量%が好ましく、更に好ましくは50〜100質量%、最も好ましくは70〜100質量%である。
一方、共流延製膜にて良好な面状のフィルムを得るためには、ドープBとドープAの固形分濃度の差が10質量%以内であることが好ましく、5質量%以内であることがより好ましい。
特に、ドープBにおいて、固形分濃度が16〜30質量%であり、かつ、ドープBとドープAの固形分濃度の差が10質量%以内であることが好ましい。
本発明の製造方法では、また、25℃における流前記ドープAの複素粘度ηAと、前記ドープBの複素粘度ηBが、下記式(III)の関係を満たすように制御することが、好ましい。
(式III) ηA≦ηB
この範囲内であれば、フィルムの白化の抑制効果が更に高まる。更に好ましくは、20〜80Pa・sであり、とくに好ましくは、25〜70Pa・sである。粘度の測定は次のようにして行った。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定した。
試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜70℃であり、より好ましくは−5〜35℃である。上記のとおり、本発明では、25℃における値を採用した。
(流延)
本発明の製造方法においては、セルロースエステルと有機溶媒を含有するドープ(A)、ドープAのセルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂と有機溶媒を含有するドープ(B)を共流延法や逐次流延法により流延基材上に積層し流延する工程を含む。積層体の形成方法としては同時に流延ができる共流延法が好ましく、以降は共流延の事例を用いて説明する。
積層の層数は特に規定はないが、各層や積層体全体の厚み、層間の密着力によって積層体のハンドリング性が変化するので、層構成によって流延可能な層数を選択できる。
このとき、積層フィルムの全体膜厚が20〜200μmであると、既知の溶液流延方法の技術を使うことができるので好ましい。
また、積層の形態は少なくともドープAとドープBの積層体よりなるが、更にドープA及び/又はドープBの複数の層が互層構造を構成してもよく、互層構造を取る場合に各層A、各層Bの厚みを変えてもよく、材料組成比等を変えて物性等が異なるフィルムを得られる様にしてもよい。
更に、必要に応じて前記ドープAと前記ドープBに用いられる樹脂とは異なる溶液成膜可能な樹脂有機溶媒を含有するドープC等の複数種の材料を用いて多種の層からなる積層体を成膜することもできる。
図2はドラムを含む流延設備を示す図である。図2は流延設備101の要部を示す概略図であって、側面からの平面図である。なお、上述の図1と同様の装置及び部材については、同じ符号を付し、説明を略する。図2では図1のバンドの代わりにドラム102を用いている。流延ダイ14からの流延ドープ12は、ドラム102上に形成された流延膜が流延開始位置PSから下方に向かうように、ドラム102の最上部よりやや下方に流延されている。この場合も、ドラム102上の流延開始位置PSにおける接線と流延ダイ14からの流延曲線の接線とができるだけ一致するように、流延開始位置PSを定めることが好ましい。
流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムを支持体から剥ぎ取り、更に100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時の支持体の表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
本発明の製造方法は、前記有機溶媒を除去する工程を含む。
ドラムやバンド上で乾燥され、剥離されたウェブの乾燥方法について述べる。ドラムやベルトが1周する直前の剥離位置で剥離されたウェブは、千鳥状に配置されたロ−ル群に交互に通して搬送する方法や剥離されたウェブの両端をクリップ等で把持させて非接触的に搬送する方法などにより搬送される。乾燥は、搬送中のウェブ(フィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエ−ブなどの加熱手段などを用いる方法によって行われる。急速な乾燥は、形成されるフィルムの平面性を損なう恐れがあるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で乾燥を行うのが好ましい。支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。収縮は、高温度で乾燥するほど大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているように、乾燥の全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンタ−方式)が好ましい。上記乾燥工程における乾燥温度は、100〜145℃であることが好ましい。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なるが、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。
本発明では、多層流延したドープを乾燥させてから、支持体から剥離することが好ましい。
本発明の製造方法は、前記製膜工程のあとに、製膜した前記積層フィルムを延伸する工程を含んでもよい。
本発明の剥離性積層フィルムの製造では、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が120質量%未満の時に延伸することが好ましい。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量の更に好ましい範囲は10質量%〜50質量%、特に12質量%〜35質量%が最も好ましい。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
また、延伸はフィルム搬送方向(縦方向)に行っても、フィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に行っても、両方向に行ってもよい。
一方、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、可塑剤として揮散しやすい低分子可塑剤を用いる場合は、室温(15℃)〜145℃以下の範囲が好ましい。
同時2軸延伸する場合、延伸温度は110℃〜190℃で行った場合でも本発明の剥離性積層フィルムを得ることができ、同時2軸延伸する場合の延伸温度は、120℃〜150℃であることがより好ましく、130℃〜150℃であることが特に好ましい。また、同時2軸延伸することで、ヘイズはある程度高くなるものの、光学発現性を更に高めることができる。
一方、逐次2軸延伸する場合、先にフィルム搬送方向に平行な方向に延伸し、その次にフィルム搬送方向に直交する方向に延伸することが好ましい。前記逐次延伸を行う延伸温度のより好ましい範囲は上記同時2軸延伸を行う延伸温度範囲と同様である。
本発明の剥離性積層フィルムの製造方法は乾燥工程終了後に熱処理工程を設けることが好ましい。当該熱処理工程における熱処理は乾燥工程終了後に行われればよく、延伸/乾燥工程後直ちに行ってよいし、あるいは乾燥工程終了後に後述する方法で一旦巻き取った後に、熱処理工程だけを別途設けてもよい。本発明においては乾燥工程終了後に一旦、室温〜100℃以下まで冷却した後において改めて前記熱処理工程を設けることが好ましい。これは熱寸法安定性のより優れたフィルムを得られる点で有利であるからである。同様の理由で熱処理工程直前において残留溶媒量が2質量%未満、好ましくは0.4質量%未満まで乾燥されていることが好ましい。
熱処理は150〜200℃の温度で行うことが好ましく、160〜180℃の温度で行うことが更に好ましい。また、熱処理は1〜20分間行うことが好ましく、5〜10分間行うことが更に好ましい。
また、延伸処理されたフィルムは、その後、100℃以上に加熱された水蒸気を吹き付けられる工程を経て製造されてもよい。この水蒸気の吹付け工程を経ることにより、製造されるフィルムの残留応力が緩和されて、寸度変化が小さくなるので好ましい。水蒸気の温度は100℃以上であれば特に制限はないが、フィルムの耐熱性などを考慮すると、水蒸気の温度は、200℃以下となる。
前記剥離性積層フィルムの耳部をフィルム走行方向で切断し、リサイクル用のポリマー原料として回収する耳部回収工程とを有することが好ましい。ここで切断する耳部の幅は、10〜500mmが好ましい。
本発明の剥離性積層フィルムは、50m以上の長さのロール形態とした後に、巻き形状や面状の点で問題が生じた際に、バルクロールとして回収し、リサイクル用の原料としてもよい。この際、耳部回収と同様に、積層体をそのまま回収してもよいし、剥離などの手法により各層を分離して回収してもよい。リサイクルした原料としては、一方の樹脂への他方の樹脂のコンタミネーションによる含有率は20%以下であることが好ましく、更に好ましくは10%以下である。
また、剥離性積層フィルムの一部の層を剥離して、該剥離した層を個別のフィルムとして巻き取ることもできる。剥離方法については後述する。
例えば、剥離性積層フィルムから剥離したA層をセルロースエステルフィルムとして巻き取ることで、長尺のセルロースエステルフィルムを得ることができる。該長尺のセルロースエステルフィルムは、そのまま偏光板保護フィルムとして用いてもよい。ここで、長尺とは、長手方向の長さが5m以上であれば特に限定はなく、好ましくは100m以上、更に好ましくは1000m以上300000m以下であることが製造工程上好ましい。
本発明の剥離性積層フィルムから剥離したフィルムを、偏光板の保護フィルムとして使用し、偏光子と接着させる場合には、偏光子との接着性の観点から、酸処理、アルカリ処理、プラズマ処理、コロナ処理等の表面を親水的にする処理を実施することが特に好ましい。
その中でも、本発明の剥離性積層フィルムは、前記B層の両側にセルロースアシレートのA層を有するため、このセルロースアシレートのA層をアルカリ鹸化して、通常使用される、ポリビニルアルコール偏光子との貼り合わせを改善することが好ましい。A層がなければ、接着剤を使用する必要があり、生産効率に劣るため不利となる。
剥離性積層フィルム(剥離性積層体)からの各層の剥離は、物理的な折り曲げ、切断端面からの捲れ、熱、湿熱処理を起点として、剥離することができる。
積層フィルムの各層の物理機械特性(延性、靭性)の差異を利用する方法と、熱、湿熱処理による寸法変化等の物性変化の差異を利用する方法、上下の膜厚方向のせん断速度差を利用したなどが行なうことができ、フィルムの特性に応じて、適宜使い分けることができる。熱、湿熱寸法変化の差異を利用する場合も、剥離時に、加熱ロールや、加熱した水蒸気を所望の箇所に当てることで局所的な変化を生じさせ、その層ごとの変位量の差が剪断力として働き、その力が層間の密着力を超すと剥離が起きることになる。
なお、本発明の剥離性積層フィルムから複数のフィルムを同時に得ることもできるが、そのまま積層体として巻き取り、適宜剥離して用いることもできる。成膜された層が非常に薄い場合は可搬性の観点から積層体のまま、ハンドリングして加工することが好ましい。
本発明では、剥離したA層を薄膜のセルロースエステルフィルムとして用いることができる。該フィルムを光学フィルムとして用いることが好ましい。同様に、剥離したB層も、セルロースエステル以外の樹脂の光学フィルムとして、好ましく用いることができる。
(レターデーション)
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。本願明細書においては、特に記載がないときは、波長λは、590nmとする。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
式(10): n=(nTE×2+nTM)/3
[式中、nTEはフィルム平面方向の偏光で測定した屈折率であり、nTMはフィルム面法線方向の偏光で測定した屈折率である。]
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
式(11)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
式(12)
Rth={(nx+ny)/2−nz}xd
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
剥離したセルロースエステルフィルムの光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることが更に好ましい。また、該セルロースエステルフィルムのヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることが更に好ましい。
剥離したセルロースアセテートフイルムの弾性率は、1000〜8000MPaであることが好ましく、2000〜6000MPaであることが更に好ましい。
剥離したセルロースエステルフィルムの配向度は、P1が0≦|P1|≦0.20を満たすのが好ましい。より好ましくは0≦|P1|≦0.10であり、特に好ましくは0≦|P1|≦0.05である。配向度については、特開2008−260921号公報に記載されている方法により求めることができる。
剥離したセルロースエステルフィルムを光学フィルムとして用いる場合、より好ましい態様では、光学フィルム内部におけるデラミ(剥がし試験での割れ)が小さい。このようなデラミの大きさは、特定の方法で測定した際に生じるデラミに由来する剥離部の筋の幅によって定量化することができ、本明細書中、デラミとは、特開平9−185148号公報[0030]の記載に基づいて観測し、測定した値のことを言う。前記デラミは実用上300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。
前記デラミが280μm以下であれば、液晶表示板のリワーク作業の際にフィルム内で割れが発生しにくくなり、製造コスト上の損失が生じる可能性が低くなるため好ましい。なお、本明細書中、リワーク作業とは、液晶ディスプレイのガラス基板へ偏光板を貼り合わせるときにミスが生じた場合に、貼り合わせをし直すことを目的として、一度偏光板をガラス基板から剥す作業のことを言う。
即ち、本発明のフィルムのうち、より好ましい態様の光学フィルムを用いると、本発明の液晶表示装置のリワーク性が向上し、製造コストの観点から好ましい。
本発明の剥離性積層フィルム、並びに該剥離性積層フィルムから剥離したセルロースエステルを含むA層及びセルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂からなるB層については、光学フィルムとしての均一性の観点から、フィルム表面が平滑であることが好ましい。
フィルム表面の平滑性の評価は、表面粗さ測定機(株式会社小坂研究所製)を用いてJIS B0601:2001、ISO 4287:1997に基づいて、平均算術粗さ(Ra)で評価することができる。
剥離性積層フィルムの最外層表面である、製膜時の空気界面(エア面)側表面及び支持体面側表面の好ましい平均算術粗さ(Ra外)は、どちらの表面においても0.05μm以下であり、より好ましくは0.03μm以下であり、特に好ましくは0.02μm以下である。
A層とB層を剥離した面の好ましい平均算術粗さ(Ra内)は0.2μm以下であり、より好ましくは0.1μm以下であり、特に好ましくは0.05μm以下である。
本発明の剥離性積層フィルム、並びに該剥離性積層フィルムから剥離したセルロースエステルを含むA層及びセルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂からなるB層については、液晶ディスプレイ部材として表面処理や貼り合せ等の加工上の観点から、フィルム表面が適度な親疎水性を有していることが好ましい。
親疎水性は、フィルム表面の接触角測定で大まかに評価出来る。接触角測定は、接触角測定機(協和界面科学株式会社製)を用いて、滑落法により、水滴の接触角を測定することで評価を行うことができる。
剥離性積層フィルムの最外層表面である、製膜時の空気界面(エア面)側表面及び支持体面側表面の好ましい接触角は、どちらの表面においても40〜100度であり、より好ましくは45〜90度であり、特に好ましくは50〜80度である。
A層とB層を剥離した面の好ましい接触角の範囲は40〜120度であり、より好ましくは45〜110度の範囲であり、特に好ましくは50〜100度である。120度より接触角が小さいと、偏光板保護フィルムとして用いる際に、偏光子との貼り合せ等の加工性が向上して、好ましい。
本発明の剥離性積層フィルム、並びに該剥離性積層フィルムから剥離したセルロースエステルを含むA層及びセルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂からなるB層については、防塵性の観点から、フィルム表面の帯電量が小さいことが好ましい。剥離性積層フィルム及び該剥離性積層フィルムから剥離したフィルムの表面について、常温常湿で測定した垂直剥離帯電が−200pc(ピコクーロン)/cm2〜+200pc(ピコクーロン)/cm2であることが好ましい。より好ましくは−100pc/cm2〜+100pc/cm2であり、更に好ましくは−50pc/cm2〜+50pc/cm2であり、最も好ましくは0pc/cm2である。ここで、単位のpc(ピコクーロン)は、10-12クーロンである。更に好ましくは、常温10%RHで測定した垂直剥離帯電が−100pc/cm2〜+100pc/cm2であり、さらに好ましくは−50pc/cm2〜+50pc/cm2であり、最も好ましくは0pc/cm2である
垂直剥離帯電は、特許3847130号に記載の方法で測定することができる。
本発明の偏光板は、偏光子と、本発明のフィルムを含むことを特徴とする。
本発明の光学フィルムは、偏光子とその少なくとも一方の側に配置された保護フィルムとを有する偏光板において、その保護フィルムとして使用することができる。
剥離性積層体として、内層となる搬送用支持体としてのB層の両側に外層であるセルロースからなるA層若しくは、外層の一方がA層で他方がC層からなる3層構成の場合、この剥離性積層体から偏光板を製造することができる。
前述の剥離方法でB層から両側のA層(C層)を同時又は逐次で剥離し、剥離後の2層で偏光子を挟持することでこの2層を保護フィルムとした偏光板を作成することができる。
図3に、偏光板の製造工程の一例を模式的に示す。図3に示すように、本発明の剥離性フィルム7の内層であるB層2と、その両側の剥離性フィルム7の表裏面の外層であるA層1および3(片側はC層であってもよい)を剥離し、剥離した表裏面の外層のA層1および3を連続的に搬送し、偏光子フィルムの送り出し部4から搬送される偏光子6を挟持して貼り合わせて、本発明の偏光板8を製造することができる。なお、剥離性フィルムのB層2は、剥離された後は、例えば剥離性フィルムのB層を剥離したフィルムの巻取り部5に巻取って回収することができる。この場合、A層及びC層を極めて薄くしても積層体として厚みがあるため、表面加工や塗布層の付与は通常の厚膜同様に扱えるため各種操作の困難性は低く、その後の偏光板製造工程までの可搬性や製造適性も余り損なうことなく、保護フィルムも薄型化された薄型偏光板を製造できるため、本発明の剥離性積層体の活用方法として好ましく適用できる事例として挙げられる。
なお、剥離後にA層に鹸化処理を行ってもよい。
また、予め剥離性積層フィルムのままA層側を偏光子に貼り合わせ、その後、偏光子と貼り合せたA層から、B層を剥離してもよい。
偏光子への保護フィルム貼り合わせ方法として、水溶性の粘着剤や接着剤を用いてもよいし、アクリル系やエポキシ系、ウレタン系などの粘着剤も用いてもよい。
本発明の液晶表示装置は、本発明のフィルム、又は、本発明の偏光板を用いることを特徴とする。
本発明のフィルム、及び偏光板は、液晶表示装置等の画像表示装置に有利に用いることができ、バックライト側の最表層に用いることが好ましい。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
<重量平均分子量測定条件>
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した。測定条件は以下の通りである。
溶媒:テトラヒドロフラン
装置名:TOSOH HLC−8220GPC
カラム:TOSOH TSKgel Super HZM−H(4.6mm×15cm)を3本接続して使用した。
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
流速:0.35ml/min
校正曲線:TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000〜1050までの7サンプルによる校正曲線を使用した。
下記の90°剥離試験法で剥離性積層フィルムの密着力を測定した。
1.共流延フィルムを、粘着剤を介して、剥離性積層フィルムを上にし、ガラス板に貼り合わせる。例えば、セルロースエステルを含むA層をガラス板側に(下に)、前記セルロースエステルとは異なる溶液製膜可能な樹脂を含むB層を上にする。
試験サンプルサイズは幅1cm×長さ15cmで、貼り合わせ部分の長さは7cmとする。
2.剥離性積層フィルムの界面で、B層を90°方向へ引っ張ることで界面剥離を進行させ、フィルム端部のみ剥離する。このときの荷重を測定し、この値を密着力とする。
フィルムの厚みムラ(Rダンムラ、風ムラ)を偏光板クロスニコル下で観察し、以下の基準で評価した。
◎ : 厚みムラが視認されない。
○ : 厚みムラが極僅かに視認される。
△ : 厚みムラが僅かに視認されるが気にならない。
× : 厚みムラが明確にムラとして視認される。
面内、厚み方向レターデーションRe、Rthをコブラで測定(サンプルサイズ4cm×4cm)し、幅方向10点、20cm間隔で長手方向に測定して得られた平均値、標準偏差から、バラツキの変動係数を標準偏差/平均値で算出し、以下の基準で評価した。
◎ : バラツキが、1.5%未満。
○ : バラツキが、1.5%以上5%未満。
△ : バラツキが、5%以上10%未満。
× : バラツキが、10%以上。
<ドープの作製>
下記表1の組成に従ってドープを作製した。
下記表1中、アクリル1としては、開始剤として2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を用い、けん濁重合で重合した、PMMA(重量平均分子量Mw1=150万)を用いた。
アクリル2としては、市販の三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBR85を用いた。
添加剤A1としては、下記化合物を用いた。下記構造式中、Rはベンゾイル基を表し、平均置換度が5〜7のものを使用した。
添加剤A4としては、(株)クラレのブチルアクリレート−メチルメタアクリレートのブロック共重合体である、L4258を用いた。
表1に記載のドープを用いて溶液流延製膜を行い、下記表2の構成となるように剥離性積層フィルムを作製した。具体的には、3層共流延が可能な流延ギーサーを通して、金属支持体上に、表2に記載の層構成となるように流延した。このとき、金属支持体面側から順に下側層、中間層、上側層となるように流延し、各層の粘度は、共流延が可能なように各ドープの組み合わせに応じて適宜、固形分濃度で調整し、均一流延が可能な状態になるように設定した。金属支持体上にある間、ドープを40℃の乾燥風により乾燥してフィルムを形成した後に剥ぎ取り、フィルム両端をピンで固定し、その間を同一の間隔で保ちつつ105℃の乾燥風で5分間乾燥した。ピンを外した後、更に130℃で20分間乾燥し、積層フィルムの状態で巻き取った。
上側層、下側層のフィルム特性は、剥離性積層フィルムを各層に剥離した後の剥離性フィルムの特性をそれぞれ示す(表2)。
これに対して、本発明の製造方法では、剥離性積層フィルムを一旦製造することにより、厚みが10μmの薄膜なフィルムを得ることができ、該薄膜フィルムであっても、搬送が可能で、良好な面状、レターデーション均一性が得られた(試料101、201)。また、厚みが20〜30μmの薄膜でも、面状、レターデーション均一性が良好な試料(試料102、202、203、301〜304、401〜406)が得られる。
密着力が大きいものほど、レターデーション均一性が劣る傾向にある。また、試料302は密着力が特に良好であった。
また、剥離せずに積層した状態で乾燥を終え、巻取り直前に剥離した場合でも表2と同様な特性が得られた。
実施例及び比較例で作成した剥離性積層フィルムを37℃に調温した4.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(けん化液)に1分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を通した。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理した剥離性積層フィルムを作製し、上層と下層を中間層から剥離し搬送させて、偏光子(特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸して得られた厚み20μmの偏光子)と、上側層、下側層のケン化した面が前記偏光子側になるように、偏光子を挟んだ後、PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とフィルムの長手方向とが平行となるようにロールツーロールで貼り合わせて偏光板を作成した。いずれもポリビニルアルコールとの貼合性は十分であり、優れた偏光板加工適性を有していた。また、薄膜でありながら鹸化時には、積層されているので、鹸化工程の搬送性も良好であり、偏光板加工時のつれやシワの発生などなかった。更に3層積層の試料(201〜206、301〜304、401〜406)では2枚同時に鹸化できるため、生産性の向上も図れた。
(偏光板の評価)
上記で作製した試料202、407の剥離性積層フィルムを用いた偏光板について、波長410nm及び波長510nmにおける偏光子の直交透過率を測定した。
その後、60℃、相対湿度95%の環境下で800時間保存した後と、105℃、調湿なしで50時間保存した後のそれぞれについて同様の手法で直交透過率を測定した。経時前後の直交透過率の変化を求め、これを偏光子耐久性とし、試料202、407を用いた偏光板の直交透過率の変化は、それぞれWet条件で0.22%、0.10%、Dry条件では、0.00%、0.00%であり、特に試料407の偏光板のWet耐久性が優れていた。
(IPS型液晶表示装置への実装)
上記で作製した試料市販の液晶テレビ(IPSモードの42型液晶テレビ)から、液晶セルを挟んでいる偏光板を剥がし取り、実施例1で作製した偏光板405、406(試料405、406の剥離性積層フィルムを用いた偏光板)を、セルロースエステルフィルムT11側が液晶セル側に配置され、T10側が外側になるように、粘着剤を介して液晶セルに再貼合し、市販品の性能と表示性能を比べたところ、良好な表示性能が得られた。
(剥離性積層フィルム408の作製)
実施例1で作製した剥離性積層フィルム407における上側層及び下側層のドープにレターデーション発現剤として下記化合物Cがセルロースアシレート100質量部当たり、2.0質量%となるように添加して、実施例1と同様に剥離性積層フィルム408を製膜した。
得られた剥離性積層フィルム408において、上層側及び下側層のセルロースアシレートフィルムの部分の残留溶剤量が0.2%未満であった。
上記で作製した剥離性積層フィルム408上に下記組成の液を5.2ml/m2塗布し、60℃で10秒間乾燥させた。フィルムの表面を流水で10秒洗浄し、25℃の空気を吹き付けることでフィルム表面を乾燥させた。
<鹸化液組成>
イソプロピルアルコール 818質量部
水 167質量部
プロピレングリコール 187質量部
水酸化カリウム 80質量部
鹸化処理した剥離性積層フィルム408の上層側のセルロースアシレートフィルム上に、下記の組成の塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、更に90℃の温風で150秒乾燥して配向膜を形成した。
次に、上記セルロースアシレートフィルムの遅相軸と45°の方向に形成した配向膜にラビング処理を実施した。
下記構造の変性ポリビニルアルコール 20質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1.0質量部
上記配向膜上に、下記ディスコティック液晶性化合物91質量部、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)9質量部、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)1.5質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)3質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1質量部を、214.2質量部のメチルエチルケトンに溶解した塗布液を、#3のワイヤーバーコーターで5.2ml/m2塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、130℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック化合物を配向させた。次に、90℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射しディスコティック化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成すると共に、積層剥離性位相差フィルム408を作製した。
この積層剥離性位相差フィルム408を実施例1と同様の条件で、鹸化直前に剥離性積層フィルムを剥離し、鹸化を行ない、上層、下層フィルムの鹸化された剥離面を偏光子と貼り合わせ偏光板を作製した。
NEC製LA−1529HM型のTFT−TN液晶パネルの偏光板を剥がし、偏光板と液晶パネルの間に設置されている光学補償フィルムを剥がした。上述の方法で作製した偏光板試料を、位相差フィルム側を偏光子と液晶パネルとの間になるように、積層フィルムを剥離して、設置し添付した。この偏光板の貼付は、液晶パネルに対してバックライト側と画像観察面側の両側に実施した。
2 剥離性フィルムのB層
3 剥離性フィルムのA層(A層およびB層以外の他の層C層であってもよい)
4 偏光子フィルムの送り出し部
5 剥離性フィルムのB層を剥離したフィルムの巻取り部
6 偏光子
7 本発明の剥離性フィルム
8 本発明の偏光板
11 流延設備
12 ドープ
14 流延ダイ
31 バンド
32 バックアップローラ
33 バックアップローラ
36 フィルム
37 剥ぎ取りローラ
51 温調板
52 凝縮板
53 液受け
56 回収タンク
101 流延設備
102 ドラム
105 凝縮板
PS 流延開始位置
Claims (14)
- セルロースエステルと溶媒を含むA層形成用のドープAと、少なくとも前記セルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂と溶媒を含み、A層とB層の密着力が5N/cm以下となるように調製されたB層形成用のドープBとを流延用支持体上に同時又は逐次に流延して積層体を形成する工程と、
前記積層体を前記流延用支持体より剥離する工程と、
剥離した前記積層体を乾燥させる工程とを含み、
前記ドープBに用いる、前記セルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂がアクリル樹脂であることを特徴とする剥離性積層フィルムの製造方法。 - 前記セルロースエステルと、前記セルロースエステルとは異なる溶液成膜可能な樹脂とのSP値の差が0.2MPa1/2以上であることを特徴とする請求項1に記載の剥離性積層フィルムの製造方法(SP値はHoy法で測定された溶解度パラメーターを表す)。
- 前記ドープAと前記ドープBとを流延用支持体上に流延して前記積層体を形成する工程と同時又は逐次に、更に、前記ドープAと前記ドープBのうち前記支持体と接していない方のドープの表面上に前記ドープA、前記ドープB、又は前記ドープA及び前記ドープBとは異なるドープCのいずれかを1層以上流延し、3層以上の積層体を得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の剥離性積層フィルムの製造方法。
- 前記ドープA、前記ドープBおよび前記ドープAをこの順で流延用支持体上に同時又は逐次流延して、3層の積層体を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法。
- 前記積層体を、長尺状で、3層であり、内層と表裏面の外層に剥離可能な剥離性積層フィルムとなるように形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法。
- 前記A層の膜厚が5〜60μmであり、剥離性積層フィルムの全体膜厚が20〜200μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法。
- 前記ドープAに用いるセルロースエステルは、下記式(I)〜(III)を満たすセルロースアシレートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法。
式(I):1.0≦X+Y≦3.0
式(II):0≦X≦3.0
式(III):0≦Y≦2.6
(式(I)〜(III)において、Xは前記セルロースアシレートのグルコース単位の水酸基のアセチル基による置換度であり、Yは前記セルロースアシレートのグルコース単位の水酸基の炭素原子数が3以上のアシル基による置換度である。) - 前記アクリル樹脂の主成分として用いられるアクリル樹脂の重量平均分子量が60万〜400万であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法。
- 前記アクリル樹脂の主成分として用いられるアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw1)が100万〜300万であり、かつ該アクリル樹脂を100℃で1時間加熱処理した後の重量平均分子量(Mw2)が、Mw2/Mw1≧0.8を満たすことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法。
- 前記アクリル樹脂の主成分として用いられるアクリル樹脂の主成分がPMMAであり、モノマーであるMMAの含有量が1質量%未満であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法。
- 前記アクリル樹脂の主成分として用いられるアクリル樹脂を2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)または2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を重合開始剤として重合する工程を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法。
- 前記積層体の少なくとも一方の面に塗布層を設けることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法。
- 請求項1〜12のいずれか一項に記載の剥離性積層フィルムの製造方法を含み、
前記積層体を、長尺状で、3層であり、内層と表裏面の外層に剥離可能な剥離性積層フィルムとなるように形成し、
該剥離性積層フィルムの前記表裏面の外層をそれぞれ前記内層から剥離させる工程と、
該表裏面の外層で偏光子を挟持することを特徴とする偏光板の製造方法。 - 前記表裏面の外層が、いずれも前記A層であることを特徴とする請求項13に記載の偏光板の製造方法。
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