以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の偏光板は、偏光子を第1の保護フィルムと第2の保護フィルムによって挟持してなる偏光板において、該第1の保護フィルムは、セルロースエステル樹脂層(A)とアクリル樹脂層(B)を積層するフィルムであり、
前記セルロースエステル樹脂層(A)は、含有するセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂の合計量を100質量%とした時、セルロースエステル樹脂を55〜99質量%、アクリル樹脂を1〜45質量%含む層であり、
前記アクリル樹脂層(B)は、含有するセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂の合計量を100質量%とした時、セルロースエステル樹脂を1〜45質量%、アクリル樹脂を55〜99質量%含む層であり、
該第2の保護フィルムは、少なくともセルロースエステル樹脂とレターデーション調整剤を含むフィルムであり、
かつ前記第1の保護フィルムのセルロースエステル樹脂層(A)側が偏光子側に隣接してなり、アクリル樹脂層(B)上に更に硬化性樹脂層を有することを特徴とする。
本発明者は、偏光子を第1の保護フィルムと第2の保護フィルムによって挟持してなる偏光板において、第1の保護フィルムとして外部からの湿熱に対する影響が大きいセルロースエステルフィルムを用い、かつ第2の保護フィルムとしてレターデーション調整剤を含む従来の溶液製膜法によって製膜したセルロースエステルフィルムを用いると、フィルム製膜時や乾燥時の応力によって発生するレターデーション調整剤の分布が、偏光板化した後の湿熱条件による偏光板の寸法変化で発生する応力により拡大し、液晶表示装置の画面上に雲状にくすんだように見えるムラが発生することを突き止めた。
そこで、第1の保護フィルムとして、セルロースエステル樹脂層(A)の外側にアクリル樹脂層(B)を積層してなるフィルムを用い、偏光子を挟持する第2の保護フィルムとして、レターデーション調整剤を含むフィルムを用い、かつ第1の保護フィルムの該セルロースエステル樹脂層(A)側を偏光子に貼合することで、湿熱による影響も受けにくい偏光板を作製することが可能となり、雲状にくすんだように見えるムラの発生が起こらないことを見出し本発明を成すに至った次第である。また、該セルロースエステル樹脂層(A)側を偏光子に貼合するため鹸化適性を付与することも可能である。
更に、第1の保護フィルムは、セルロースエステル樹脂層(A)の外側にアクリル樹脂層(B)を共押出しして溶融流延法によって製造し、かつ第2の保護フィルムも、レターデーション調整剤のフィルム内での均一分布に優れる溶融流延法によって製造することが好ましいことも見出した。
以下、本発明を詳細に説明する。
《第1の保護フィルム》
本発明の第1の保護フィルムは、セルロースエステル樹脂の溶融組成物とアクリル樹脂の溶融組成物を共押出ししてセルロースエステル樹脂層(A)とアクリル樹脂層(B)が積層された形態を有する保護フィルムであることが好ましく、該セルロースエステル樹脂層(A)が、含有するセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂の合計量を100質量%とした時、セルロースエステル樹脂を55〜99質量%、アクリル樹脂を1〜45質量%含み、該該アクリル樹脂層(B)が、含有するセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂の合計量を100質量%とした時、セルロースエステル樹脂を1〜45質量%、アクリル樹脂を55〜99質量%含む積層型の溶融流延フィルムである。
最初にアクリル樹脂層(B)について説明する。
<アクリル樹脂層(B)>
アクリル樹脂層(B)は、含有するセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂の合計量を100質量%とした時、アクリル樹脂を55〜99質量%、好ましくは60〜99質量%、セルロースエステル樹脂を1〜45質量%、好ましくは1〜40質量%含有することが好ましい。
アクリル樹脂成分が多くなると、より高温・高湿下での寸法変化が抑制され、偏光板として用いた時の雲状にくすんだように見えるムラの発生がなく、更に偏光板のカールやパネルの反りを著しく低減することができ、上記物性を長時間維持することが可能となる。従って、アクリル樹脂が55質量%未満だと偏光板化した後の雲状にくすんだように見えるムラの発生、光漏れ、カール、平面性が劣化する。しかしながら99質量%以上だと積層界面での密着性、フィルムとしての平面性が劣る為、上記範囲内にすることが有効である。
本発明のアクリル樹脂層(B)は偏光板の視認側表面、またはバックライト側表面に配置されることが好ましい。
本発明のアクリル樹脂層(B)は延性破壊が起こらないことが好ましい。本発明における延性破壊とは、ある材料が有する強度よりも、大きな応力が作用することで生じるものであり、最終破断までに材料の著しい伸びや絞りを伴う破壊と定義される。その破面には、ディンプルと呼ばれる窪みが無数に形成される特徴がある。
従って「延性破壊が起こらないアクリル樹脂層」とは、フィルムを2つに折り曲げるような大きな応力を作用させても破断等の破壊がみられないことが特徴である。
アクリル樹脂層(B)は、高温の環境下での使用を考慮すると、その張力軟化点を、110〜145℃とすることが好ましく、120℃〜140℃に制御することがより好ましい。
本発明のアクリル樹脂層(B)は、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であることが好ましい。より好ましくは120℃以上である。特に好ましくは150℃以上である。
尚、ここで言うガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
本発明のアクリル樹脂層(B)は、フィルム面内の直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5個/10cm四方以下、一層好ましくは0.1個/10cm四方以下である。
ここで欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさである。
欠点が、ロール傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して大きさを確認する。
尚、反射光で観察する場合に、欠点の大きさが不明瞭であれば、表面にアルミや白金を蒸着して観察する。
このような欠点頻度にて表される品位のフィルムを得るには、樹脂溶液を流延直前に高精度濾過することや、流延機周辺のクリーン度を高くすること、また、流延後の乾燥条件を段階的に設定し、効率よくかつ発泡を抑えて乾燥させることが有効である。
欠点の個数が1個/10cm四方より多いと、例えば後工程での加工時などでフィルムに張力がかかると、欠点を基点としてフィルムが破断して生産性が著しく低下する場合がある。
また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察などにより目視で確認でき、光学部材として用いたとき輝点が生じる場合がある。
また、目視で確認できない場合でも、該フィルム上にハードコート層などを形成したときに、塗剤が均一に形成できず欠点(塗布抜け)となる場合がある。
また、本発明のアクリル樹脂層(B)は、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。
破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
本発明の第1の保護フィルムにおけるアクリル樹脂層(B)の厚みは5μm以上であることが好ましい。より好ましくは10μm以上であり、経済的な観点から100μm以下であることが好ましい。
尚、フィルムの厚みは用途により適宜選定することができる。
本発明のアクリル樹脂層(B)は、その単独では全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。かかる全光線透過率にて表される優れた透明性を達成するには、可視光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。
本発明のアクリル樹脂層(B)は、透明性を表す指標の1つであるヘイズ値(濁度)が2.0%未満であることが好ましいが、液晶表示装置に組み込んだ際の輝度、コントラストの点から好ましくは0.5%以下が好ましい。
かかるヘイズ値を達成するには、樹脂中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散を低減させることが有効である。
尚、上記アクリル樹脂層(B)の全光線透過率およびヘイズ値は、JIS−K7361−1−1997およびJIS−K7136−2000に従い、測定した値である。
本発明のアクリル樹脂層(B)は、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂以外の樹脂を含有することもできるが、その樹脂はアッベ数が30〜60の樹脂(D)であることが好ましい。
〈アクリル樹脂〉
本発明に用いられるアクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。樹脂としては、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。
共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン、核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、或いは2種以上を併用して用いることができる。
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
本発明のアクリル樹脂層(B)に用いられるアクリル樹脂は、フィルムとしての機械的強度、フィルムを生産する際の流動性、粘度等を制御する観点から重量平均分子量(Mw)が80000〜1000000であることが好ましく、100000〜280000であることがより好ましい。
本発明のアクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
アクリル樹脂の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、或いは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系およびアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。
重合温度については、懸濁または乳化重合では30〜100℃、塊状または溶液重合では80〜160℃で実施しうる。更に、生成共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
この分子量とすることで、耐熱性と脆性の両立を図ることができる。
本発明のアクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。
アクリル樹脂層(B)においては、アクリル樹脂は1種以上使用してもよいが、この場合、いずれのアクリル樹脂の重量平均分子量も80000〜1000000であることが好ましい。
アクリル樹脂層(B)は、アクリル樹脂層(B)単独として、下記式(i)〜(iv)を満たし、かつ、張力軟化点が105〜145℃であり、光弾性係数が−5.0×10−8cm2/N〜8.0×10−8cm2/Nであることが好ましい。
式(i) |Ro(590)|≦10nm
式(ii) |Rth(590)|≦20nm
式(iii) |Ro(480)−Ro(630)|≦5nm
式(iv) |Rth(480)−Rth(630)|≦10nm
尚、Ro=(nx−ny)×d、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dであり、nxは、フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率を、nyは面内で遅相軸に直交する方向の屈折率を、nzは厚み方向の屈折率をそれぞれ表す。dはフィルムの膜厚(nm)を表す。()内の数値590、480、630はそれぞれ複屈折を測定した光の波長(nm)を表す。光弾性係数は、測定波長590nmの値である。即ちアクリル樹脂層(B)に用いるアクリル樹脂としては、複屈折性をできるだけ排除し、同時に複屈折性の波長分散性を有さないことが好ましい。
〈セルロースエステル樹脂(セルロースエステルともいう)〉
セルロースには、1グルコース単位の2位、3位、6位に1個ずつ、計3個の水酸基があり、置換度とは、1グルコース単位に平均してアシル基がどのような位置にどれだけ結合しているかを示す数値である。従って、最大の置換度は3.00であり、上記アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。このようなセルロースの水酸基の一部またはすべてがアシル基で置換されたものをセルロースエステルと称している。尚、アシル基の置換度は、ASTM−D817に規定の方法により求めることができる。
アクリル樹脂層(B)に用いるセルロースエステルは、2位、3位、及び6位のアセチル基による平均置換度の合計をXとし、2位、3位、及び6位の炭素数3〜5のアシル基の平均置換度の合計をYとしたときに、下記式(1)〜(3)を同時に満たすセルロースエステルであることが好ましい(以下、平均置換度を単に置換度と称する。)。
2.40≦X+Y≦3.00 … 式(1)
0≦X≦2.40 … 式(2)
0.10≦Y<3.00 … 式(3)
(式中、Xは2位、3位、及び6位のアセチル基による平均置換度を示す。Yは2位、3位、及び6位の炭素数3〜5のアシル基の平均置換度の合計を示す。)
中でも1.00≦X≦2.20であり、0.50≦Y≦2.00が好ましい。より好ましくは1.20≦X≦2.00であり、0.70≦Y≦1.70である。
Yはブチリル基、プロピオニル基であることが好ましく、特にプロピオニル基であることが、本発明の効果が得られ且つ延伸処理がし易い為好ましい。
セルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、或いは単独で使用することができる。
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることができる。
セルロースエステルは、公知の方法を参考にして合成することができる。例えば、原料セルロースの水酸基を無水酢酸、及び無水プロピオン酸及び/または無水酪酸を用いて常法により、アセチル基、プロピオニル基、またはブチリル基を上記の範囲内に置換することで得られる。以上のような方法を用いて、前記式(1)〜(3)を同時に満たす本発明のセルロースエステルを合成することができる。このようなセルロースエステルの合成方法は、特に限定はないが、例えば、特開平10−45804号或いは特表平6−501040号に記載の方法を参考にして合成することができる。
セルロースエステルは、特に限定はないが、10万〜40万の重量平均分子量(Mw)を有することが好ましく、15万〜30万の重量平均分子量を有することが更に好ましく、18万〜30万の重量平均分子量を有することが最も好ましい。
更に、本発明に用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比が1.3〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.5〜5.0であり、更に好ましくは1.7〜4.0であり、更に好ましくは2.0〜3.5のセルロースエステルが好ましく用いられる。Mw/Mnが5.5を超えると、粘度が高くなり、溶融濾過性が低下する傾向があり好ましくない。一方、工業上の製造特性の点から、1.3以上であることが好ましい。
尚、Mw及びMw/Mnは下記の要領で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出できる。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
本発明のセルロースエステルのアルカリ土類金属含有量は、1〜50ppmの範囲であることが好ましい。
セルロースエステルのアルカリ土類金属含有量の範囲が1〜50ppmであると、リップ付着汚れの増加がなく、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティング部で破断がなくなり、本発明の効果をより奏する点で好ましい。更に、本発明では、ロースエステルのアルカリ土類金属含有量が1〜30ppmの範囲が好ましい。ここでいうアルカリ土類金属とはCa、Mgの総含有量のことであり、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いて測定することができる。
セルロースエステル中の残留硫酸含有量は、硫黄元素換算で0.1〜45ppmの範囲であることが好ましい。これらは塩の形で含有していると考えられる。残留硫酸含有量が45ppmを超えると熱溶融時のダイリップ部の付着物が増加する傾向がある。また、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティングの際に破断しやすくなる傾向がある。従って1〜30ppmの範囲がより好ましい。残留硫酸含有量は、ASTM D817−96に規定の方法により測定することができる。
セルロースエステル中の遊離酸含有量は、1〜500ppmであることが好ましい。上記の範囲であると、ダイリップ部の付着物の増加がなく、また破断しにくい。更に、本発明については、1〜100ppmの範囲であることが好ましく、更に破断しにくくなる。特に1〜70ppmの範囲が好ましい。遊離酸含有量はASTM D817−96に規定の方法により測定することができる。
合成したセルロースエステルの洗浄を、溶液流延法に用いられる場合に比べて、更に十分に行うことによって、残留アルカリ土類金属含有量、残留硫酸含有量、及び残留酸含有量を上記の範囲とすることができ好ましい。
また、セルロースエステルの洗浄は、水に加えて、メタノール、エタノールのような貧溶媒、或いは結果として貧溶媒であれば貧溶媒と良溶媒の混合溶媒を用いることができ、残留酸以外の無機物、低分子の有機不純物を除去することができる。
更に、セルロースエステルの洗浄は、劣化防止剤の存在下で行うことも好ましく、セルロースエステルの耐熱性、製膜安定性が向上する。
使用される劣化防止剤は、セルロースエステルに発生したラジカルを不活性化する、或いはセルロースエステルに発生したラジカルに酸素が付加したことが起因のセルロースエステルの劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることができるが、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物が好ましい。
また、セルロースエステルの耐熱性、機械特性、光学特性等を向上させるため、セルロースエステルの良溶媒に溶解後、貧溶媒中に再沈殿、濾過することによって、或いは、貧溶媒中に撹拌懸濁させ、濾過することによって、セルロースエステルの低分子量成分、その他不純物を除去することができる。この時、前述のセルロースエステルの洗浄同様に、劣化防止剤の存在下で行うことが好ましい。セルロースエステルの洗浄に使用する劣化防止剤は、洗浄後セルロースエステル中に残存していてもよい。残存量は0.01〜2000ppmがよく、より好ましくは0.05〜1000ppmである。更に好ましくは0.1〜100ppmである。更に、セルロースエステルの再沈殿処理の後、別のポリマー或いは低分子化合物を添加してもよい。
また、セルロースエステルはフィルムにした時の輝点異物が少ないものであることが好ましい。輝点異物とは、2枚の偏光板を直交に配置し(クロスニコル)、この間にセルロースエステルフィルムを配置して、一方の面から光源の光を当てて、もう一方の面からセルロースエステルフィルムを観察した時に、光源の光が漏れて見える点のことである。このとき評価に用いる偏光板は輝点異物がない保護フィルムで構成されたものであることが望ましく、偏光子の保護にガラス板を使用したものが好ましく用いられる。輝点異物はセルロースエステルに含まれる未アシル化もしくは低アシル度のセルロースがその原因の1つと考えられ、輝点異物の少ないセルロースエステルを用いる(置換度の分散の小さいセルロースエステルを用いる)ことと、溶融したセルロースエステルを濾過すること、或いはセルロースエステルの合成後期の過程や沈殿物を得る過程の少なくともいずれかにおいて、一度溶液状態として同様に濾過工程を経由して輝点異物を除去することもできる。
フィルム膜厚が薄くなるほど単位面積当たりの輝点異物数は少なくなり、フィルムに含まれるセルロースエステルの含有量が少なくなるほど輝点異物は少なくなる傾向があるが、輝点異物は、輝点の直径0.01mm以上が200個/cm2以下であることが好ましく、更に100個/cm2以下であることが好ましく、50個/cm2以下であることが好ましく、30個/cm2以下であることが好ましく、10個/cm2以下であることが好ましいが、皆無であることが最も好ましい。また、0.005〜0.01mm以下の輝点についても200個/cm2以下であることが好ましく、更に100個/cm2以下であることが好ましく、50個/cm2以下であることが好ましく、30個/cm2以下であることが好ましく、10個/cm2以下であることが好ましいが、皆無であることが最も好ましい。
輝点異物を溶融濾過によって除去する場合、セルロースエステルを単独で溶融させたものを濾過するよりも可塑剤、劣化防止剤等を添加混合した組成物を濾過することが輝点異物の除去効率が高く好ましい。もちろん、セルロースエステルの合成の際に溶媒に溶解させて濾過により低減させてもよい。紫外線吸収剤、その他の添加物も適宜混合したものを濾過することができる。溶融濾過はセルロースエステルを含む溶融物の粘度が10000Pa・s以下で濾過されることが好ましく、更に好ましくは5000Pa・s以下が好ましく、1000Pa・s以下であることが更に好ましく、500Pa・s以下であることが更に好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などの弗素樹脂等の従来公知のものが好ましく用いられるが、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。絶対濾過精度としては50μm以下のものが好ましく用いられ、30μm以下のものが更に好ましく、10μm以下のものが更に好ましく、5μm以下のものが更に好ましく用いられる。これらは適宜組み合わせて使用することもできる。濾材はサーフェースタイプでもデプスタイプでも用いることができるが、デプスタイプの方が比較的目詰まりしにくく好ましく用いられる。
セルロースエステルは、1種以上使用してもよいが、含有されるセルロースエステル樹脂が(メタ)アクリル基が導入されたジアセチルセルロース樹脂であることはない。
また、セルロースエステルとしては、後述のセルロースエステル樹脂層(A)に使用することができるセルロースエステルをそのまま使用することもできる。
〈アクリル樹脂およびセルロースエステル樹脂以外であってアッベ数が30〜60の樹脂(D)〉
アクリル樹脂層(B)はフィルムの物性を損なわない範囲であれば、種々の樹脂(D)を使用することが可能である。樹脂(D)はアッベ数が30〜60であることが光学特性を好ましく調整できるため好ましい。
具体的には、メチル(メタ)アクリレート−スチレン樹脂(スチレン比率50質量%を超えるもの)、スチレン−無水マレイン酸、スチレン−フマル酸、スチレン−イタコン酸、スチレン−N−置換マレイミド等の不飽和基含有二価カルボン酸誘導体とスチレン、α−メチルスチレン、核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物との共重合体、インデン−スチレン樹脂、インデン−メチル(メタ)アクリレート樹脂等のインデン共重合体(アクリレートとの共重合体にあっては、インデン比率50質量%を超えるもの)、オレフィン−マレイミド共重合体、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、オクタアセチルサッカロース等が挙げられる。
特に、メチル(メタ)アクリレート−スチレン樹脂(アッベ数:35〜52)、インデン−メチル(メタ)アクリレート共重合体(アッベ数:34〜51)、インデン−クマロン共重合体(アッベ数:35〜40)などが、本発明の効果を発現し易く好ましく用いられる。
市販品として、KT75(電気化学工業(株)製メチルメタクリレート−スチレン共重合体、アッベ数46)を使用することができる。
尚、アッベ数の測定に関しては、公知の方法で測定を行った。すなわち、アッベ屈折率計を用いて、フラウンホーファーのC線(656.3nm)、D線(590.3nm)、F線(486.1nm)におけるそれぞれの屈折率、nc、nd、nfを測定し、下記式より算出した。
アッベ数(νd)=(nd−1)/(nf−nc)
本発明のアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂と混合可能な樹脂(D)を選択するには、予め相溶性試験を行うのが好ましい。
具体的には、例えばそれぞれメチレンクロライド100mlに溶解した樹脂(A)、(B)および(D)の5%濃度の溶液を混合し、濁度を測定しおよび目視で混合状態を観察することにより相溶性試験とすることができる。この試験により簡易的に樹脂の選択が可能となる。
〈その他の添加剤〉
本発明のアクリル樹脂層(B)においては、組成物の流動性や柔軟性を向上するために、可塑剤を併用することも可能である。
可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、或いはエポキシ系等が挙げられる。
この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れるが、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。
従って、用途に応じてこれらの可塑剤を選択、或いは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
特に、アジピン酸、フタル酸などを用いると可塑化特性に優れたものが得られる。グリコールとしてはエチレン、プロピレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ネオペンチレン、ジエチレン、トリエチレン、ジプロピレンなどのグリコールが挙げられる。
これらの二価カルボン酸およびグリコールはそれぞれ単独で、或いは混合して使用してもよい。
このエステル系の可塑剤はエステル、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは600〜3000の範囲が可塑化効果が大きい。
また、可塑剤の粘度は分子構造や分子量と相関があるが、アジピン酸系可塑剤の場合相溶性、可塑化効率の関係から200〜5000mPa・s(25℃)の範囲が良い。更に、いくつかのポリエステル系可塑剤を併用してもかまわない。
可塑剤はアクリル樹脂を含有する組成物100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。可塑剤の添加量が30質量部を越えると、表面がべとつくので、実用上好ましくない。
アクリル樹脂を含有する組成物は紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系またはサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
更に、アクリル樹脂層(B)に用いられるアクリル樹脂には成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、アクリル樹脂含有フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
本発明のアクリル樹脂組成物として、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。
ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる1種、或いは2種以上の混合物を挙げることができる。
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
<セルロースエステル樹脂層(A)>
セルロースエステル樹脂層(A)は、含有するセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂の合計量を100質量%とした時、セルロースエステル樹脂を55〜99質量%以上含み、アクリル樹脂を1〜45質量%含む層である。好ましくはセルロースエステル樹脂を60〜99質量%、アクリル樹脂を1〜40質量%含有することが好ましい。
セルロースエステル樹脂が55%未満だと偏光子を挟んで偏光板を作製する際、鹸化適性が劣り生産性が低下する。また鹸化適性が劣ることにより、偏光板化した後の保護フィルム間での密着性が低下し、このため偏光板の湿度依存性が高くなり、光漏れが生じやすくなる。99質量%以上だと保護フィルムの平面性が悪くなり積層界面での密着性に劣る為、上記範囲内に調整することが有効である。
〈セルロースエステル〉
セルロースエステルは、前述のアクリル樹脂層(B)で使用可能なセルロースエステルをそのまま使用することができる。
また、以下のセルロースエステルを使用することも可能である。
セルロースエステルは、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであり、芳香族カルボン酸のエステルでもよく、特にセルロースの炭素数低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味している。水酸基に結合するアシル基は、直鎖であっても分岐してもよく、また環を形成してもよい。更に別の置換基が置換してもよい。
同じ置換度である場合、炭素数としては炭素数2〜6のアシル基の中で選択することが好ましい。
本発明のセルロースエステルとしては、下記式(a)および(b)を同時に満足するものが好ましい。
式(a) 2.4≦X+Y≦3.0
式(b) 0.1≦Y≦1.5
式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基またはブチリル基の置換度、X+Yは総アシル基の置換度を表す。
この中で特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
セルロースエステルの分子量は数平均分子量(Mn)で60000〜300000のものが好ましく、70000〜200000のものが更に好ましい。
本発明で用いられるセルロースエステルは重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比が4.0以下であることが好ましく、更に好ましくは1.4〜2.3である。
セルロースエステルの平均分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。
測定条件は前述と同じ条件をとることができる。
本発明の第1の保護フィルムにおけるセルロースエステル樹脂層(A)は、それ単独で5〜200μmであることが好ましく、より好ましくは、10〜150μm、特に好ましくは10〜80μmである。
〈アクリル系ポリマー〉
セルロースエステル樹脂層(A)には、前記アクリル樹脂層(B)で用いられるアクリル樹脂以外に、低分子量のアクリル系ポリマーを含有することができる。
アクリル系ポリマーとしては、セルロースエステル樹脂層(A)に含有させた場合、機能として延伸方向に対して負の複屈折性を示すことが好ましく、特に構造が限定されるものではないが、エチレン性不飽和モノマーを重合して得られた重量平均分子量が500以上40000以下である重合体であることが好ましい。
(アクリル系ポリマーの複屈折性試験法)
アクリル系ポリマーを溶媒に溶解しキャスト製膜した後、加熱乾燥し、透過率80%以上のフィルムについて複屈折性の評価を行った。
アッベ屈折率計−4T((株)アタゴ製)に多波長光源を用いて屈折率測定を行った。延伸方向の屈折率nyおよび直交する面内方向の屈折率をnxとした。550nmの各々の屈折率について(ny−nx)<0であるフィルムについて、(メタ)アクリル系ポリマーは延伸方向に対して負の複屈折性であると判断する。
前記重量平均分子量が500以上40000以下であるアクリル系ポリマーは、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーであってもよい。
該重合体の重量平均分子量が500以上40000以下のもので該重合体の組成を制御することにより、セルロースエステル樹脂と該重合体との相溶性を良好にすることができる。
芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーについて、好ましくは重量平均分子量が500以上10000以下のものであれば、上記に加え、製膜後のセルロースエステルフィルムの透明性が優れ、透湿度も極めて低く、偏光板用保護フィルムとして優れた性能を示す。
該重合体は、重量平均分子量が500以上40000以下であるから、オリゴマーから低分子量重合体の間にあると考えられるものである。このような重合体を合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量を余り大きくしない方法でできるだけ分子量を揃えることのできる方法を用いることが望ましい。
特に、用いられるアクリル系ポリマーとしては、分子内に芳香環と水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと、分子内に芳香環を有せず、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとXa、Xbを除く共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとを共重合して得られた重量平均分子量2000以上40000以下の重合体X、または芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaと、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとを重合して得られた重量平均分子量500以上5000以下の重合体Yであることが好ましい。
[重合体X、重合体Y]
セルロースエステル樹脂層(A)のレターデーションを調整するために、分子内に芳香環と水酸基またはアミド基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと、分子内に芳香環を有せず、水酸基またはアミド基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとXa、Xbを除く共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとを共重合して得られた重量平均分子量2000以上30000以下の高分子量の重合体X、そして、芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaと、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとを重合して得られた重量平均分子量500以上5000以下の低分子量の重合体Yを含有することが好ましい。
重合体Xは、分子内に芳香環と水酸基またはアミド基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有せず、水酸基またはアミド基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとXa、Xbを除く共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとを共重合して得られた重量平均分子量2000以上、40000以下の重合体である。
好ましくは、Xaは分子内に芳香環と水酸基またはアミド基を有しないアクリルまたはメタクリルモノマー、Xbは分子内に芳香環を有せず水酸基またはアミド基を有するアクリルまたはメタクリルモノマーである。
本発明に用いられる重合体Xは、下記一般式(X)で表される。
一般式(X)
−[Xa]m−[Xb]n−[Xc]p−
上記一般式(X)において、Xaは分子内に芳香環と水酸基またはアミド基とを有しないエチレン性不飽和モノマーを表し、Xbは分子内に芳香環を有せず、水酸基またはアミド基を有するエチレン性不飽和モノマーを表し、XcはXa、Xbを除く共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを表す。m、nおよびpは、各々モル組成比を表す。ただし、m≠0、m+n+p=100である。
更に、重合体Xとして好ましくは、下記一般式(X−1)で表される重合体である。
一般式(X−1)
−[CH2−C(−R1)(−CO2R2)]m−[CH2−C(−R3)(−CO2R4−OH)−]n−[Xc]p−
上記一般式(X−1)において、R1、R3は、それぞれ水素原子またはメチル基を表す。R2は炭素数1〜12のアルキル基またはシクロアルキル基を表す。R4は−CH2−、−C2H4−または−C3H6−を表す。Xcは、[CH2−C(−R1)(−CO2R2)]または[CH2−C(−R3)(−CO2R4−OH)−]に重合可能なモノマー単位を表す。m、nおよびpは、モル組成比を表す。ただしm≠0、m+n+p=100である。
本発明の重合体Xを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるが、これに限定されない。
Xにおいて、水酸基とは、水酸基のみならずエチレンオキシド連鎖を有する基をいう。
分子内に芳香環と水酸基またはアミド基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(i−、n−)であることが好ましい。
分子内に芳香環を有せず、水酸基またはアミド基を有するエチレン性不飽和モノマーXbは、水酸基を有するモノマー単位として、アクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、またはこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることができ、好ましくは、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)およびメタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)である。
Xbにおいてアミド基を有するモノマー単位としては、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。
Xcとしては、Xa、Xb以外のモノマーで、かつ共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば、特に制限はないが、芳香環を有していないものが好ましい。
XaおよびXbのモル組成比m:nは99:1〜65:35の範囲が好ましく、更に好ましくは95:5〜75:25の範囲である。Xcのpは0〜10である。Xcは複数のモノマー単位であってもよい。
また、Xbのモル組成比が上記範囲を超えると製膜時にヘイズが出る傾向があり、これらの最適化を図りXa、Xbのモル組成比を決めることが好ましい。
高分子量の重合体Xの分子量は、重量平均分子量が5000以上40000以下であることがより好ましく、更に好ましくは5000以上20000以下である。
重量平均分子量を5000以上とすることにより、光学補償フィルムの高温高湿下における寸法変化が少ない、偏光板保護フィルムとしてカールが少ない等の利点が得られ好ましい。
重量平均分子量が40000以下とした場合は、セルロースエステルとの相溶性がより向上し、高温高湿下においてのブリードアウト、更に製膜直後でのヘイズの発生が抑制される。
本発明の重合体Xの重量平均分子量は、公知の分子量調節方法で調整することができる。そのような分子量調節方法としては、例えば、四塩化炭素、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル等の連鎖移動剤を添加する方法等が挙げられる。
また、重合温度は、通常、室温から130℃、好ましくは50℃から100℃で行われるが、この温度または重合反応時間を調整することで可能である。
重量平均分子量の測定方法は、下記の方法により求めることができる。
(平均分子量測定方法)
重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。測定条件は上述の通りである。
本発明に用いられる低分子量の重合体Yは、芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上5000以下の重合体である。重量平均分子量500以上であれば重合体の残存モノマーが減少し好ましい。
また、5000以下とすることは、レターデーション値Rth低下性能を維持するために好ましい。Yaは、好ましくは芳香環を有さないアクリルまたはメタクリルモノマーである。
本発明に用いられる重合体Yは、下記一般式(Y)で表される。
一般式(Y)
−[Ya]k−[Yb]q−
上記一般式(Y)において、Yaは芳香環を有しないエチレン性不飽和モノマーを表し、YbはYaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを表す。kおよびqは、各々モル組成比を表す。ただし、k≠0、k+q=100である。
本発明の重合体Yにおいて、更に好ましくは下記一般式(Y−1)で表される重合体である。
一般式(Y−1)
−[CH2−C(−R5)(−CO2R6)]k−[Yb]q−
上記一般式(Y−1)において、R5は、それぞれ水素原子またはメチル基を表す。R6は炭素数1〜12のアルキル基またはシクロアルキル基を表す。Ybは、[CH2−C(−R5)(−CO2R6)]と共重合可能なモノマー単位を表す。kおよびqは、それぞれモル組成比を表す。ただしk≠0、k+q=100である。
Ybは、Yaである[CH2−C(−R5)(−CO2R6)]と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はない。Ybは複数であってもよい。k+q=100、qは好ましくは1〜30である。
芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーを重合して得られる重合体Yを構成するエチレン性不飽和モノマーYaは、アクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたもの;不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることができる。
Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はないが、ビニルエステルとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル等が好ましい。Ybは複数であってもよい。
重合体X、Yを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量を余り大きくしない方法で、かつ出来るだけ分子量を揃えることのできる方法を用いることが望ましい。
かかる重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に特開2000−128911号または同2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いられる。
特に、重合体Yは、分子中にチオール基と2級の水酸基とを有する化合物を連鎖移動剤として使用する重合方法が好ましい。この場合、重合体Yの末端には、重合触媒および連鎖移動剤に起因する水酸基、チオエーテルを有することとなる。この末端残基により、Yとセルロースエステルとの相溶性を調整することができる。
重合体XおよびYの水酸基価は、30〜150[mgKOH/g]であることが好ましい。
(水酸基価の測定方法)
水酸基価の測定は、JIS K 0070(1992)に準ずる。この水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数と定義される。
具体的には試料Xg(約1g)をフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬(無水酢酸20mlにピリジンを加えて400mlにしたもの)20mlを正確に加える。フラスコの口に空気冷却管を装着し、95〜100℃のグリセリン浴にて加熱する。1時間30分後、冷却し、空気冷却管から精製水1mlを加え、無水酢酸を酢酸に分解する。
次に電位差滴定装置を用いて0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定を行い、得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。
更に空試験として、試料を入れないで滴定し、滴定曲線の変曲点を求める。水酸基価は、次の式によって算出する。
水酸基価={(B−C)×f×28.05/X}+D
式中、Bは空試験に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、Cは滴定に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、fは0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、Dは酸価、また、28.05は水酸化カリウムの1mol量56.11の1/2を表す。
上述の重合体X、重合体Yは何れもセルロースエステルとの相溶性に優れ、蒸発や揮発もなく生産性に優れ、保護フィルムとしての保留性がよく、透湿度が小さく、寸法安定性に優れている。
本発明で用いられる重合体Xもしくは重合体Yの含有量は、5〜20質量%が好ましい。重合体Xもしくは重合体Yは、セルロースエステル全質量に対し、総量として5質量%以上であれば、レターデーション値の調整に十分な作用をする。また、総量として20質量%以下であれば、偏光子PVAとの接着性が良好である。
重合体Xと重合体Yは、溶融組成物としてセルロースエステルに直接添加することができる。
〈その他の添加剤〉
本発明におけるセルロースエステル樹脂層(A)には、フィルムに加工性を付与する可塑剤、フィルムの劣化を防止する酸化防止剤、紫外線吸収機能を付与する紫外線吸収剤、フィルムに滑り性を付与する微粒子(マット剤)、フィルムのレターデーションを調整するレターデーション調整剤等の添加剤を含有させることが好ましい。
〈可塑剤〉
可塑剤としては、アルコール系化合物、リン酸エステル系可塑剤、エチレングリコールエステル系可塑剤、グリセリンエステル系可塑剤、ジグリセリンエステル系可塑剤(脂肪酸エステル)、多価アルコールエステル系可塑剤、ジカルボン酸エステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリマー可塑剤等が挙げられる。
添加量はセルロースエステル100質量部に対して好ましくは1〜50質量%、より好ましくは3〜30質量%である。特に5〜15質量%が好ましい。
(アルコール系化合物)
本発明に用いられるアルコール系化合物は、1価〜多価のアルコール系化合物を用いることができる。
具体的には、1価のアルコールとしては、ブチルアルコール、(iso−またはn−)アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、1−オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、n−ドデシルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール等、2価のアルコールとしては、1,5−ペンタジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2メチル2,4ペンタジオール、1,6−ヘキサンジオール等、3価のアルコールとしては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、フィタントリオール等、4価のアルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等、多価アルコールとしては、ポリグリセリンが挙げられる。
これらの中で、炭素数が7以上の1価のアルコールが好ましい。更に沸点が160℃以上であることが好ましい。
また、水溶性となる為ブリードアウト耐性が劣化する。上記アルコール系化合物の中では、ヘプチルアルコール、1−オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、n−ドデシルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール等が本発明の効果を得る上で好ましいアルコール系化合物である。
以下、その他で本発明に好ましく用いられる可塑剤について更に説明する。具体例はこれらに限定されるものではない。
(リン酸エステル系の可塑剤)
具体的には、トリアセチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸アルキルエステル、トリシクロベンチルホスフェート、シクロヘキシルホスフェート等のリン酸シクロアルキルエステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルオスフェート、トリスオルト−ビフェニルホスフェート等のリン酸アリールエステルが挙げられる。
これらの置換基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていても良い。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでも良く、また置換基同志が共有結合で結合していても良い。
(エチレングリコールエステル系の可塑剤)
具体的には、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート等のエチレングリコールアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジシクロプロピルカルボキシレート、エチレングリコールジシクロヘキルカルボキシレート等のエチレングリコールシクロアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジベンゾエート、エチレングリコールジ4−メチルベンゾエート等のエチレングリコールアリールエステル系の可塑剤が挙げられる。
(グリセリンエステル系の可塑剤)
具体的にはトリアセチン、トリブチリン、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンオレートプロピオネート等のグリセリンアルキルエステル、グリセリントリシクロプロピルカルボキシレート、グリセリントリシクロヘキシルカルボキシレート等のグリセリンシクロアルキルエステル、グリセリントリベンゾエート、グリセリン4−メチルベンゾエート等のグリセリンアリールエステル、ジグリセリンテトラアセチレート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンテトララウレート、等のジグリセリンアルキルエステル、ジグリセリンテトラシクロブチルカルボキシレート、ジグリセリンテトラシクロペンチルカルボキシレート等のジグリセリンシクロアルキルエステル、ジグリセリンテトラベンゾエート、ジグリセリン3−メチルベンゾエート等のジグリセリンアリールエステル等が挙げられる。
(多価アルコールエステル系の可塑剤)
具体的には、特開2003−12823号公報の段落30〜33記載の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。
(ジカルボン酸エステル系の可塑剤)
具体的には、ジドデシルマロネート(C1)、ジオクチルアジペート(C4)、ジブチルセバケート(C8)等のアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロペンチルサクシネート、ジシクロヘキシルアジーペート等のアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルサクシネート、ジ4−メチルフェニルグルタレート等のアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジヘキシル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロヘキシル−1,2−シクロブタンジカルボキシレート、ジシクロプロピル−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニル−1,1−シクロプロピルジカルボキシレート、ジ2−ナフチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロプロピルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルフタレート、ジ4−メチルフェニルフタレート等のアリールジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。
(多価カルボン酸エステル系の可塑剤)
具体的には、トリドデシルトリカルバレート、トリブチル−meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロヘキシルトリカルバレート、トリシクロプロピル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート、テトラ3−メチルフェニルテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、テトラヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、テトラブチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、テトラシクロプロピル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、トリシクロヘキシル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニル−1,2,3,4,5,6−シクロヘキシルヘキサカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、トリドデシルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレート、テトラオクチルベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロペンチルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、テトラシクロヘキシルベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤トリフェニルベンゼン−1,3,5−テトラカルトキシレート、ヘキサ4−メチルフェニルベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。
(ポリマー可塑剤)
本発明ではポリマー可塑剤を使用することも好ましい。
特に特開2007−231157号公報段落0103〜0116に記載のポリエステル、前述のポリエステル系可塑剤を好ましく使用することができる。
(糖エステル可塑剤)
セルロースエステル樹脂層(A)は、フラノース構造およびピラノース構造から選押出し機少なくとも一種の構造が1〜12個結合した糖化合物の水酸基をエステル化した糖エステル可塑剤を使用することも好ましい。
糖エステル化合物としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ラクトース、スクロース、セロビオース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースなどが挙げられるが、特にフラノース構造とピラノース構造を両方有するものが好ましい。例としてはスクロースが挙げられる。
市販品としては、例えばモノペットSB(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
上記可塑剤の中でも熱溶融時に揮発成分を生成しないことが一般的には好ましい。具体的には特表平6−501040号に記載されている不揮発性リン酸エステルが挙げられ、例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステルや上記例示化合物の中ではトリメチロールプロパントリベンゾエート等が好ましいがこれらに限定されるものではない。
揮発成分が上記可塑剤の熱分解によるとき、上記可塑剤の熱分解温度Td(1.0)は、1.0質量%減少したときの温度と定義すると、フィルム形成材料の溶融温度よりも高いことが求められる。熱分解温度Td(1.0)は、市販の示差熱重量分析(TG−DTA)装置で測定することができる。
〈酸化防止剤〉
本発明では、酸化防止剤としては、通常知られているものを使用することができる。
特に、ラクトン系、イオウ系、フェノール系、二重結合系、ヒンダードアミン系、リン系化合物のものを好ましく用いることができる。
例えば、チバ・ジャパン株式会社から、“IrgafosXP40”、“IrgafosXP60”という商品名で市販されているものを含むものが好ましい。
上記フェノール系化合物としては、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有するものが好ましく、例えば、チバ・ジャパン株式会社、“Irganox1076”、“Irganox1010”、株式会社ADEKA“アデカスタブAO−50”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記リン系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“SumilizerGP”、株式会社ADEKAから“ADK STAB PEP−24G”、“ADK STAB PEP−36”および“ADK STAB 3010”、チバ・ジャパン株式会社から“IRGAFOS P−EPQ”、堺化学工業株式会社から“GSY−P101”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記ヒンダードアミン系化合物は、例えば、チバ・ジャパン株式会社から、“Tinuvin144”および“Tinuvin770”、株式会社ADEKAから“ADK STAB LA−52”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記イオウ系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“Sumilizer TPL−R”および“Sumilizer TP−D”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記二重結合系化合物は、住友化学株式会社から、“Sumilizer GM”および“Sumilizer GS”という商品名で市販されているものが好ましい。
更に、酸捕捉剤として米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物を含有させることも可能である。
これらの酸化防止剤等は、再生使用される際の工程に合わせて適宜添加する量が決められるが、一般には、フィルムの主原料である樹脂に対して、0.05〜20質量%、好ましくは0.1〜1質量%の範囲で添加される。
これらの酸化防止剤は、一種のみを用いるよりも数種の異なった系の化合物を併用することで相乗効果を得ることができる。例えば、ラクトン系、リン系、フェノール系および二重結合系化合物の併用は好ましい。
〈着色剤〉
本発明においては、着色剤を使用することが好ましい。着色剤と言うのは染料や顔料を意味するが、本発明では、液晶画面の色調を青色調にする効果またはイエローインデックスの調整、ヘイズの低減を有するものを指す。
着色剤としては各種の染料、顔料が使用可能だが、アントラキノン染料、アゾ染料、フタロシアニン顔料などが有効である。
〈紫外線吸収剤〉
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。高分子型の紫外線吸収剤としてもよい。上記ベンゾトリアゾール系化合物は、例えば、チバ・ジャパン株式会社から、“Tinuvin928”という商品名で市販されているものが好ましい。
〈マット剤〉
本発明では、フィルムの滑り性を付与するためにマット剤を添加することが好ましい。
本発明で用いられるマット剤としては、得られるフィルムの透明性を損なうことがなく、溶融時の耐熱性があれば無機化合物または有機化合物どちらでもよく、例えば、タルク、マイカ、ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪成土、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、クレー、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ワラストナイト、窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ化チタン、炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭化ケイ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、ホワイトカーボンなどが挙げられる。これらのマット剤は、単独でも二種以上併用しても使用できる。
粒径や形状(例えば針状と球状など)の異なる粒子を併用することで高度に透明性と滑り性を両立させることもできる。
これらの中でも、セルロースエステルと屈折率が近いので透明性(ヘイズ)に優れる二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
二酸化珪素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKEP−10、シーホスターKEP−30、シーホスターKEP−50(以上、株式会社日本触媒製)、サイロホービック100(富士シリシア製)、ニップシールE220A(日本シリカ工業製)、アドマファインSO(アドマテックス製)等の商品名を有する市販品などが好ましく使用できる。
粒子の形状としては、不定形、針状、扁平、球状等特に制限なく使用できるが、特に球状の粒子を用いると得られるフィルムの透明性が良好にできるので好ましい。
粒子の大きさは、可視光の波長に近いと光が散乱し、透明性が悪くなるので、可視光の波長より小さいことが好ましく、更に可視光の波長の1/2以下であることが好ましい。粒子の大きさが小さすぎると滑り性が改善されない場合があるので、80nmから180nmの範囲であることが特に好ましい。
尚、粒子の大きさとは、粒子が1次粒子の凝集体の場合は凝集体の大きさを意味する。また、粒子が球状でない場合は、その投影面積に相当する円の直径を意味する。
〈粘度低下剤〉
本発明において、溶融粘度を低減する目的として、水素結合性溶媒を添加することができる。水素結合性溶媒とは、J.N.イスラエルアチビリ著、「分子間力と表面力」(近藤保、大島広行訳、マグロウヒル出版、1991年)に記載されるように、電気的に陰性な原子(酸素、窒素、フッ素、塩素)と電気的に陰性な原子と共有結合した水素原子間に生ずる、水素原子媒介「結合」を生ずることができるような有機溶媒、すなわち、結合モーメントが大きく、かつ水素を含む結合、例えば、O−H(酸素水素結合)、N−H(窒素水素結合)、F−H(フッ素水素結合)を含むことで近接した分子同士が配列できるような有機溶媒をいう。
これらは、セルロース樹脂の分子間水素結合よりもセルロースとの間で強い水素結合を形成する能力を有するもので、本発明で行う溶融流延法においては、用いるセルロース樹脂単独のガラス転移温度よりも、水素結合性溶媒の添加によりセルロース樹脂組成物の溶融温度を低下することができる、または同じ溶融温度においてセルロース樹脂よりも水素結合性溶媒を含むセルロース樹脂組成物の溶融粘度を低下することができる。
<本発明の第1の保護フィルムの製造方法>
本発明の第1の保護フィルムの製造方法は、セルロースエステル樹脂の溶融組成物とアクリル樹脂の溶融組成物を共押出ししてセルロースエステル樹脂層(A)とアクリル樹脂層(B)を積層する溶融流延フィルムの製造方法であることが好ましい。
本発明の第1の保護フィルムは、セルロースエステル樹脂を55%〜95質量%含有するセルロースエステル樹脂層(A)の片側に、アクリル樹脂を55〜95質量%含有するアクリル樹脂層(B)を配し、該層(A)、(B)をフラットダイから2層以上積層された状態でフィルム状に押出し、冷却することによって得られる。
本発明のフィルムの構成層は、2層以上であれば何層積層してもかまわないが、製造設備が複雑化する等の観点から、一般的には2層が好ましい。本発明での「積層」とは、少なくとも2種以上の溶融した樹脂を流動性をもったまま接合せしめ、一体のシートフィルム状に加工することをいう。セルロースエステル樹脂を55%〜95質量%含有する層(A)は最終的な偏光板保護フィルムとして5〜200μmの厚みを有することが好ましく、特に好ましくは10〜80μmの範囲である。アクリル樹脂を55〜95質量%含有する層(B)は本発明の機能を発揮するために、5μm以上であることが好ましく、経済的な観点から5〜100μmの厚みであることが好ましい。
加熱溶融する溶融流延による成形法は、更に詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類出来る。これらの中で、機械的強度及び表面精度等に優れる偏光板保護フィルムを得るためには、溶融押出し法が優れており、本発明では特に好ましく用いられる。得られるフィルムの物性を鑑みると、溶融樹脂温度は120〜300℃の範囲であることが好ましく、200℃〜270℃であることがより好ましい。その場合は、シリンダー温度が、通常150〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃の範囲で適宜設定される。樹脂温度が過度に低いと流動性が悪化し、フィルムにヒケやひずみを生じ、膜厚の調整が困難になる恐れがある。樹脂温度が過度に高いと樹脂の熱分解によるボイドやシルバーストリークが発生したり、フィルムが黄変するなどの成形不良が発生するおそれがある。
実際のフローは、粉体またはペレット状に成形された原料のセルロースエステル樹脂及びアクリル樹脂を熱風乾燥または真空乾燥した後、フィルム構成材料と共に、加熱し溶融し、その流動性を発現させた後、溶融押出し、Tダイよりシート状に押し出して、例えば、静電印加法等により冷却ロール或いはエンドレスベルト等に密着させ、冷却固化させ、未延伸シートを得る。冷却ロールの温度は50〜150℃に維持されていることが好ましい。
また、共押出しによりウェブを形成し、形成したウェブを、第一冷却ロールと、該第一冷却ロールに引き続いて配置される第二冷却ロールにて冷却しながら引き取り搬送するときに、前記第一冷却ロール面に前記セルロースエステル樹脂層(A)が接し、前記第二冷却ロール面に前記アクリル樹脂層(B)が接しながら引き取り搬送されることが好ましい。
図1は、本発明の第1の保護フィルムの製造方法を実施する装置の全体構成を示す概略フローシートであり、図2は、ダイスから冷却ロール部分の拡大図である。
図1と図2において、本発明による第1の保護フィルムの製造方法は、セルロースエステル樹脂、アクリル樹脂などのフィルム材料を混合した後、押出し機1を用いて、ダイス4から第1冷却ロール5上に溶融押出し、第1冷却ロール5表面にセルロースエステル樹脂層(A)を外接させるとともに、更に、第2冷却ロール7表面にアクリル樹脂層(B)を外接させ、第3冷却ロール8(必要であれば)へ搬送し合計3本の冷却ロールに順に外接させて、冷却固化してセルロースエステルフィルム10とする。ついで、剥離ロール9によって剥離したセルロースエステルフィルム10を、ついで延伸装置12によりフィルムの両端部を把持して延伸した後、巻取り装置16により巻き取る。また、平面性を矯正するために溶融フィルムを第1冷却ロール5表面に挟圧するタッチロール6が設けられている。このタッチロール6は表面が弾性を有し、第1冷却ロール5との間でニップを形成している。タッチロール6についての詳細は後述する。
図2のダイスから冷却ロールへの押出しは、その位置関係から(a)、(b)、(c)が例として挙げられるが、特に限定されるものではない。
図3に本発明に好ましい共押出しダイ溶融製膜装置の概略図を示す。
後述するように粉体またはペレット状に成形されたアクリル樹脂は、単軸押出し機(A)溶融混練され、セルロースエステル樹脂は二軸押出し機(B)で溶融混練される。セルロースエステル樹脂には可塑剤、酸化防止剤、などの添加剤を含む為、それらを均一に混練するため、二軸押出し機を使用するのが好ましい。二軸押出し機は二本のスクリューにより単軸押出し機より強い剪断力がかかり、材料を混合する効果が高い。二軸押出し機は、同方向回転型と異方向回転型の二種類があるが、本発明においてはより強い剪断力が得られる同方向型が好ましく用いられる。更にスクリューの送り、ニーディングなどのセグメントを本発明の材料を溶融混練するのに最適な組み合せになるようデザインすることができる。例えば、無機微粒子マット剤のような分散しにくい材料を所望の分散度に分散できるだけのニーディングディスクを組み込み、かつ所望の押出し量が得られるようにスクリューの径を選定することができる。同方向回転型二軸押出し機に原料を供給する際には、各原料を別個に供給しても良いし、予め混合してから供給しても良い。原料を押出し機に供給するには、公知のスクリューフィーダー、電磁振動フィーダー、強制押込み型スクリューフィーダー、等の連続式フィーダーが使用できる。セルロースエステル樹脂、アクリル樹脂は押出し機に供給する前に乾燥することが好ましく、乾燥温度はその樹脂のTg以下が好ましいが、可塑剤などの添加剤のガラス転移点や融点がセルロースエステル樹脂、アクリル樹脂の乾燥温度以下だと、一緒に乾燥した場合に機壁に融着したりするので好ましくない。そのような場合は、セルロースエステル樹脂、アクリル樹脂と添加剤を別個に乾燥、供給することが好ましい。セルロースエステル樹脂、アクリル樹脂と添加剤を予め混合して供給する場合は、乾燥温度を各材料のうち最も低いTgないし融点以下の温度に設定すれば良い。乾燥後吸湿しない様に、乾燥が終了した材料は速やかに押出し機に供給されることが好ましい。そのため、押出し機直上に乾燥機を設置し、乾燥を終了した原料を前述した連続式フィーダーで押出し機に供給することができる。また、乾燥を効率良く行い、乾燥終了した原料の吸湿を防止するために、真空乾燥、減圧乾燥、または不活性ガスを導入しながらの乾燥も好ましく用いられる。同じ目的で、乾燥機とフィーダー、フィーダーと押出し機投入口の間も減圧ないし不活性ガス雰囲気とすることが好ましく行われる。セルロースと添加剤を粉体で供給する場合、別個フィードでも、混合フィードでも、均一混合のために粒径、粒度分布が一致ないし近似していることが好ましい。そのため、混合した原料を粉砕機で粉砕することも好ましく行われる。
また、溶融成形したフィルムの不良品や、成形時の製品にならない耳部(以後回収品と呼ぶ)、などを粉砕して再度成形原料とすることもできる。この回収品もペレット化しても良いし、造粒しても良い。回収品だけでペレット化ないし造粒しても良いし、バージンの原料と混合してペレット化ないし造粒しても良い。もちろん、バージン原料とは別個に押出し機に供給しても良いし、例えば、セルロースエステル樹脂、アクリル樹脂と回収品を混合して供給することもできる。
その後、各溶融された樹脂流をフィードブロックと呼ばれる合流器で積層したり、マニフォールドで拡幅された樹脂流を口金ランド部で合流積層したりして、共押出しダイ(本発明ではフラットダイ)より溶融押出しされ、セルロースエステル樹脂を含有する層(A)、アクリル樹脂を含有する層(B)を配された2層に積層されたシートにし、該溶融樹脂積層シートを、図では引取りロールとしたドラムのような移動冷却媒体に密着冷却固化させてキャストシートを得る。
まず、作製したペレットを前記一軸や二軸タイプの押出し機を用いて、押し出す際の溶融温度Tmを200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどでろ過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に共押出し、冷却ロール上で固化し、弾性タッチロールと押圧しながら流延する。
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
ダイに傷や可塑剤の凝結物等の異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインとも呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出し機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。
押出し機やダイなどの溶融樹脂と接触する内面は、表面粗さを小さくしたり、表面エネルギーの低い材質を用いるなどして、溶融樹脂が付着し難い表面加工が施されていることが好ましい。具体的には、ハードクロムメッキやセラミック溶射したものを表面粗さ0.2S以下となるように研磨したものが挙げられる。
本発明の第1冷却ロール、第2冷却ロール(場合によっては第3冷却ロール)には特に制限はないが、高剛性の金属ロールで内部に温度制御可能な熱媒体または冷媒体が流れるような構造を備えるロールであり、大きさは限定されないが、溶融押し出されたフィルムを冷却するのに十分な大きさであればよく、通常冷却ロールの直径は100mmから1m程度である。
冷却ロールの表面材質は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどが挙げられる。更に表面の硬度をあげたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。
冷却ロール表面の表面粗さは、Raで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできるのである。もちろん表面加工した表面は更に研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
第1冷却ロールに対向して配置されるタッチロール6としては、特開平03−124425号、特開平08−224772号、特開平07−100960号、特開平10−272676号、WO97−028950、特開平11−235747号、特開2002−36332号、特開2005−172940号や特開2005−280217号に記載されているような表面が薄膜金属スリーブ被覆シリコンゴムロールを使用することができる。
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
図4は本発明に好ましい別の共押出しダイ溶融製膜装置の概略図を示す。
この場合は、セルロースエステル樹脂層(A)用、またはアクリル樹脂層(B)用の溶融組成物を混練する単軸押出し機(A)、二軸押出し機(B)の二台とし、共押出しダイ手前にて分流供給する形式により3層構成のシートを作製することが可能である。
溶融押出しの際、共押出しスリットダイとしてはT型ダイ、L型ダイ、フィッシュテイル型ダイのフラットダイが好ましく、ダイリップ間隔は50μm〜2mmであることが望ましい。また、共押出しダイのタイプとしては、図5で示すフィードブロックを有するダイ、図6で示すマルチマニフォールドダイ、マルチスロットダイ等のいずれのタイプでもよいが、マルチマニフォールドダイがフィルムの厚み精度、平面性付与の観点から特に好ましい。フィードブロックとマルチマニフォールドダイを組み合わせることにより、例えば5層、7層といった多層フィルムを成形することができる。この場合、セルロースエステル樹脂、またはアクリル樹脂の混合比率を任意に変化させた多層構成の溶融流延フィルムを得ることができる。
本発明において好ましいフラットダイである図6で示すマルチマニフォールドダイでは、単軸押出し機、もしくは二軸押出し機によって溶融混練されたセルロースエステル樹脂またはアクリル樹脂は、流量制御のためのギヤポンプ(図示していない)を介して押出し部A、Bに導入され、液だまりであるマニフォールドA、Bにて押出し量を安定化し、リップ調整ボルト51によって制御された膜厚で溶融押出し製膜される。押出し機とダイの間にフィルターを配置することも好ましい。
フラットダイの材質としては、溶融樹脂がダイなどの金属材質と接着しやすくなり、このためにダイすじといわれる固定すじが発生しやすくなり、光学用途としては利用出来なくなる恐れがある為、溶融樹脂との接液面材質は、通常のクロムメッキや窒化鋼などではなく、TiNのような離形性に優れたセラミック系材質や、SUS材質などが好ましい。
複数層に積層されたウェブを冷却ロールに密着させて冷却固化する為、ドラム上でシートが滑ると分子配向が生じ、いわゆるレターデーションばらつきが生じるため、該ウェブにエアーナイフ、エアーチャンバー、プレスロール法、流動パラフィン塗布法、静電気印加法などから選ばれた方法等の密着性向上手段によりキャストをしてもよい。
図7は溶融フィルムの引き取りの別形態図である。この場合は、第1冷却ロールとして図示の冷却ドラム、密着手段(エアーナイフ等)により、ダイから供給されるフィルム組成物を所望の厚みで冷却・固化し剥離ロールを介してフィルムを形成する。
溶融製膜された保護フィルムの幅は1.4m以上が生産性の点から好ましい。より好ましくは1.4〜3mの範囲である。
〈延伸工程〉
本発明では、上記のようにして得られたフィルムは冷却ロールに接する工程を通過後、更に少なくとも1方向に1.01〜3.0倍延伸することが好ましい。延伸によりスジの鋭さが緩やかになり高度に矯正することができる。
縦(フィルム搬送方向)、横(幅方向)両方向にそれぞれ1.1〜2.0倍延伸することが好ましい。
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。
通常、延伸倍率は1.01〜3.0倍、好ましくは1.1〜2.0倍、より好ましくは1.2〜1.5倍であり、延伸温度は、通常、フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行われる。
延伸は、幅方向で制御された均一な温度分布下で行うことが好ましい。好ましくは±2℃以内、更に好ましくは±1℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内である。
上記の方法で作製した保護フィルムのレターデーション調整や寸法変化率を小さくする目的で、フィルムを搬送方向や幅方向に収縮させてもよい。
搬送方向に収縮するには、例えば、幅延伸を一時クリップアウトさせて搬送方向に弛緩させる、または横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。
本発明の第1の保護フィルムの面内レターデーション(Ro)、厚み方向レターデーション(Rth)は適宜調整することができるが、Ro≦10nm、−10nm≦Rth≦10nmであることが好ましく、Ro≦5nm、−5nm≦Rth≦5nmであることがより好ましい。
尚、フィルムの遅相軸方向の屈折率Nx、進相軸方向の屈折率Ny、厚み方向の屈折率Nz、フィルムの膜厚をd(nm)とすると、
Ro=(Nx−Ny)×d
Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d
として表される。
、尚、レターデーション値(Ro)、(Rth)は自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmで求めることができる。
レターデーションのバラツキは小さいほど好ましく、通常±10nm以内、好ましくは±5nm以下、より好ましくは±2nm以下である。
〈清掃設備〉
溶融流延製造装置には、ベルトおよびロールを自動的に清掃する装置を付加させることが好ましい。清掃装置については特に限定はないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール、粘着ロール、ふき取りロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、レーザーによる焼却装置、或いはこれらの組み合わせなどがある。
清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
本発明の第1の保護フィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。
本発明の第1の保護フィルムの膜厚に特に制限はないが、偏光板保護フィルム用としてはセルロースエステル樹脂層(A)とアクリル樹脂層(B)の合計の膜厚が、20〜200μmであることが好ましく、25〜100μmであることがより好ましく、30〜80μmであることが特に好ましい。
<硬化性樹脂層(ハードコート層)>
本発明の第1の保護フィルムは、硬化性樹脂層を更に有する。この硬化性樹脂層は、表面硬度ばかりでなく脆性、特に耐屈曲性に対しても改善効果を示す。
本発明の硬化性樹脂層は、一層であってもよいし、使用用途の程度によっては二層以上であってもよい。生産性の点から一層以上4層以下であることが好ましい。
また、保護フィルムのアクリル樹脂層(B)上に設けるが、両面に設けてもよい。
硬化性樹脂層を構成する透明樹脂の屈折率としては、1.47以上であることが好ましく、より好ましくは1.47〜1.70である。
屈折率をこの範囲とするには、透明樹脂の種類および量割合を適宜選択すればよい。屈折率が1.47未満であると、硬度の高い樹脂が得られにくい。屈折率が1.70より大きいと、フィルムのムラが目立ちやすくなりやすい。
尚、透明樹脂の屈折率は、例えば23℃においてアッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。
硬化性樹脂は、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることが更に好ましい。
硬化性樹脂としては、熱または活性線照射によって硬化する樹脂を使用することができるが、特に好ましくは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等により硬化する樹脂である。
硬化性樹脂として具体的には、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等の紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物を更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。
例えば、特開昭59−151110号号公報に記載のものを用いることができる。例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
これら硬化性樹脂の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾインおよびその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等およびこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。
また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。
硬化性樹脂組成物に用いられる光重合開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜25質量部であり、好ましくは1〜15質量部である。
アクリレート系樹脂としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
これらの市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B((株)ADEKA製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)、NKハードB−420、NKエステルA−DOG、NKエステルA−IBD−2E(新中村化学工業(株)製)等を適宜選択して利用できる。
また、その他として、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジオキサングリコールアクリレート、エトキシ化アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
〈硬化樹脂層の製造方法〉
硬化樹脂層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法を用いて、硬化樹脂層を形成する塗布組成物をアクリル含有樹脂フィルム上に塗布し、塗布後、加熱乾燥し、UV硬化処理することが好ましい。
塗布量はウェット膜厚として0.1〜40μmが適当で、好ましくは、0.5〜30μmである。
また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.1〜30μm、好ましくは1〜20μmである。この範囲内において、ハード性の不足、カールや脆性の悪化、加工適性の低下が防止される。
上記UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm2、好ましくは5〜150mJ/cm2である。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。
張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性優れたフィルムを得ることができる。
有機溶媒としては、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等が好ましい。また、有機溶媒の含有量としては塗布組成物中、5〜80質量%が好ましい。
第1の保護フィルムと硬化樹脂層の間、または硬化樹脂層上には更に、導電層、中間層、低屈折率層や高屈折率層などの反射防止層、防汚層などを設けることも好ましい。
《第2の保護フィルム》
本発明の第2の保護フィルムは、少なくともセルロースエステル樹脂とレターデーション調整剤を含む溶融組成物を用いる溶融流延フィルムであることが好ましい。
溶液流延法では、溶液中、またはウェブ中でのレターデーション調整剤等の沈降により分布に不均一が生じる場合があるため、溶融物を均一に押出すことに優れる溶融流延法をとることが好ましい。
用いられるセルロースエステル樹脂や可塑剤、ポリマー、紫外線吸収剤、マット剤等の添加剤はセルロースエステル樹脂層(A)で説明した化合物を適宜使用することができる。
また、第2の保護フィルムの溶融流延法よる製膜については、特に限定されるものではないが、第1の保護フィルムの製膜で用いる方法に従って行うことができる。
ここではレターデーション調整剤について詳細に説明する。
第2の保護フィルムで用いることのできるレターデーション調整剤は、下記円盤状化合物、または棒状化合物であることが好ましい。
<レターデーション調整剤>
〈円盤状化合物及び棒状化合物〉
円盤状化合物及び棒状化合物は、下記一般式(1)〜(5)で表される化合物であることが好ましい。
(一般式(1)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、芳香族環またはヘテロ環を表し、X1は単結合、−NR4−、−O−または−S−を表し、X2は単結合、−NR5−、−O−または−S−を表し、X3は単結合、−NR6−、−O−または−S−を表す。R4、R5及びR6はそれぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。)
一般式(2):AR1−L1−AR2
(一般式(2)中、AR1及びAR2は、それぞれ独立に芳香族基を表し、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−、またはこれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表す。)
(一般式(3)中、R1〜R7、R9及びR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R1〜R5のうち少なくとも1つは電子供与性基を表す。R8は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。)
一般式(4):AR1−L1−(AR2−L2)n−AR3
(一般式(4)中、AR1、AR3は、それぞれ独立にアリール基、アリールカルボニル基または芳香族ヘテロ環を表し、AR2はアリーレン基または芳香族ヘテロ環を表し、L1、L2はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。nは3以上の整数を表し、それぞれAR2、L2は同一であってもよいし異なっていてもよい。)
一般式(5):AR1−L1−X−L2−AR2
(一般式(5)中、AR1、AR2はそれぞれ独立にアリール基または芳香族ヘテロ環を表す。L1、L2は、それぞれ独立に−C(=O)O−、または−C(=O)NR−を表す。Rは水素原子またアルキル基を表す。Xは下記一般式(5−A)または一般式(5−B)を表す。)
(一般式(5−A)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
(一般式(5−B)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
最初に、前記一般式(1)の化合物について説明する。
前記一般式(1)中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して、芳香族環またはヘテロ環を表す。R1、R2、R3で表される芳香族環は、フェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルであることが特に好ましい。R1で表される芳香族環は置換基を有していてもよく、該置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルオンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基及びアシル基が含まれる。
次に、一般式(1)中、R1、R2、R3で表されるヘテロ環基は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有するヘテロ環は、一般に不飽和ヘテロ環であり、好ましくは最多の二重結合を有するヘテロ環である。前記ヘテロ環は5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることが更に好ましく、6員環であることが最も好ましい。ヘテロ環のヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子または酸素原子であることが好ましく、窒素原子であることが特に好ましい。芳香族性を有するヘテロ環としては、ピリジン環(ヘテロ環基としては、2−ピリジルまたは4−ピリジル)が特に好ましい。ヘテロ環基は、置換基を有していてもよい。ヘテロ環基の置換基の例は、前記アリール部分の置換基の例と同様である。
一般式(1)において、X1、X2及びX3がそれぞれ単結合である場合のヘテロ環基は、窒素原子に遊離原子価をもつヘテロ環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつヘテロ環基は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることが更に好ましく、5員環であることが最も好ましい。前記ヘテロ環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、ヘテロ環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例、O、S)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつヘテロ環基の例を示す。
更に一般式(1)中、X1は単結合、−NR4−、−O−または−S−を表し、X2は単結合、−NR5−、−O−または−S−を表し、X3は単結合、−NR6−、−O−または−S−を表す。R4、R5及びR6はそれぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
一般式(1)において、前記R4、R5及びR6がそれぞれ表すアルキル基は、環状アルキル基であってもよいし鎖状アルキル基であってもよいが、鎖状アルキル基を表すのが好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基を表すのがより好ましい。前記アルキル基の炭素数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8が特に好ましく、1〜6であることが最も好ましい。
前記アルキル基は、置換基を有していてもよい。該置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ)及びアシルオキシ基(例、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ)が含まれる。
一般式(1)において、前記R4、R5及びR6がそれぞれ表すアルケニル基は、環状アルケニル基であってもよいし鎖状アルケニル基であってもよいが、鎖状アルケニル基を表すのが好ましく、分岐を有する鎖状アルケニル基よりも、直鎖状アルケニル基を表すのがより好ましい。前記アルケニル基の炭素数は、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることが更に好ましく、2〜8であることが特に好ましく、2〜6であることが最も好ましい。前記アルケニル基は置換基を有していてもよい。該置換基の例は、前述のアルキル基の置換基と同様である。
一般式(1)において、前記R4、R5及びR6がそれぞれ表す芳香族環及びヘテロ環基は、R1、R2、及びR3でそれぞれ表される芳香族環及びヘテロ環と同様であり、好ましい範囲も同様である。また、該芳香族環基及びヘテロ環基は更に置換基を有していてもよく、置換基の例にはR1、R2、及びR3の芳香族環及びヘテロ環の置換基と同様のものが挙げられる。
これらの中で特に好ましいのが、X1が−NR4−、X2が−NR5−、X3が−NR6−であるものである。
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示す。
以下、他の化合物の具体例として、特開2006−71876号公報段落番号[0079]〜[0103]に記載の化合物が挙げられる。
一般式(1)で表される低分子化合物の合成例を示す。尚、下記合成例に示す以外の化合物に対しても、これらの例と同様に合成できる。
[合成例1]
(例示化合物I−(2)の合成)
2,4−ジ−m−トルイジノ−6−クロル−1,3,5−トリアジン8.1kg(25モル)と、p−アニシジン3.1kg(25モル)とを入れ、DMF20Lで溶解した。次いで、炭酸カリウム5.2kg(37.5モル)を加え120℃で2時間反応させた。冷却後、酢酸エチル100Lで抽出し、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。酢酸エチルを減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:n−ヘキサン/酢酸エチル=5/1(体積比))で単離し目的物を得た(収量9.1kg、収率88%)。化学構造はNMRスペクトル、MSスペクトルおよび元素分析で確認した。
次に、前記一般式(2)の化合物について説明する。
前記一般式(2)で表される化合物は、直線的な分子構造を有することが好ましい。「直線的な分子構造」とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。「熱力学的に最も安定な構造」は、結晶構造解析または分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例、WinMOPAC2000(富士通(株)製))を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。「分子構造が直線的である」とは、前記のように分子軌道の計算等により求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造全体の角度が140°〜180°であることを意味する。
一般式(2)において、AR1及びAR2は、それぞれ独立に、芳香族基である。本明細書において、「芳香族基」は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基を含む。前記芳香族基としては、アリール基及び置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性ヘテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることが更に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に最多の二重結合を有する。前記ヘテロ環のヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子または硫黄原子が更に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。
前記芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環及びピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
置換アリール基及び置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ)、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(例、N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基(例、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル)、ウレイド基、アルキルウレイド基(例、N−メチルウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N,N,N′−トリメチルウレイド)、アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチル、オクチル、イソプロピル、s−ブチル、t−アミル、シクロヘキシル、シクロペンチル)、アルケニル基(例、ビニル、アリル、ヘキセニル)、アルキニル基(例、エチニル、ブチニル)、アシル基(例、ホルミル、アセチル、ブチリル、ヘキサノイル、ラウリル)、アシルオキシ基(例、アセトキシ、ブチリルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ラウリルオキシ)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ)、アリールオキシ基(例、フェノキシ)、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニルアミノ基(例、ブトキシカルボニルアミノ、ヘキシルオキシカルボニルアミノ)、アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ)、アリールチオ基(例、フェニルチオ)、アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル)、アミド基(例、アセトアミド、ブチルアミド基、ヘキシルアミド、ラウリルアミド)及び非芳香族性ヘテロ環基(例、モルホリル、ピラジニル)が含まれる。
置換アリール基及び置換芳香族性ヘテロ環基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキル置換アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基及びアルキル基が好ましい。
上述のアルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基のアルキル部分と、アルキル基とは、更に置換基を有していてもよい。アルキル部分及びアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、ウレイド基、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基及び非芳香族性ヘテロ環基が含まれる。アルキル部分及びアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基及びアルコキシ基が好ましい。
一般式(2)において、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表す。前記アルキレン基は、鎖状でもよく環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロヘキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。アルキレン基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが特に好ましく、1〜6であることが最も好ましい。
アルケニレン基及びアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することが更に好ましい。アルケニレン基及びアルキニレン基の炭素数は、2〜10であることが好ましく、2〜8であることがより好ましく、2〜6であることが更に好ましく、2〜4であることが特に好ましく、炭素数2であること(ビニレンまたはエチニレン)が最も好ましい。
下記組み合わせからなる2価の連結基の例を示す。
L−1:−O−CO−アルキレン基−CO−O−
L−2:−CO−O−アルキレン基−O−CO−
L−3:−O−CO−アルケニレン基−CO−O−
L−4:−CO−O−アルケニレン基−O−CO−
L−5:−O−CO−アルキニレン基−CO−O−
L−6:−CO−O−アルキニレン基−O−CO−
一般式(2)で表される化合物の分子構造において、L1を挟んで、AR1とAR2とが形成する角度は、140°〜180°であることが好ましい。
一般式(2)で表される化合物の具体例を示す。
前記一般式(2)の例示化合物(1’)〜(34’)、(41’)、(42’)は、シクロヘキサン環の1位と4位とに二つの不斉炭素原子を有する。ただし、一般式(2)の例示化合物(1’)、(4’)〜(34’)、(41’)、(42’)は、対称なメソ型の分子構造を有するため光学異性体(光学活性)はなく、幾何異性体(トランス型とシス型)のみ存在する。一般式(2)の例示化合物(1’)のトランス型(1−trans)とシス型(1−cis)とを、以下に示す。
上述したように、一般式(2)で表される化合物は直線的な分子構造を有することが好ましい。そのため、トランス型の方がシス型よりも好ましい。一般式(2)の例示化合物(2’)及び(3’)は、幾何異性体に加えて光学異性体(合計4種の異性体)を有する。前記幾何異性体については、同様にトランス型の方がシス型よりも好ましい。前記光学異性体については、特に優劣はなく、D、L或いはラセミ体のいずれでもよい。一般式(2)の例示化合物(43’)〜(45’)では、中心のビニレン結合にトランス型とシス型とがある。前記と同様の理由で、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
本発明においては、溶液状態における紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長側にある一般式(2)で表される化合物を、二種類以上併用してもよい。一般式(2)で表される化合物は、文献記載の方法を参照して合成できる。このような文献としては、「Mol.Cryst.Liq.Cryst.,」53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J.Am.Chem.Soc.,113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J.Org.Chem.,40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
次に、前記一般式(3)の化合物について説明する。
前記一般式(3)中、R1〜R7、R9及びR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。該置換基としては後述の置換基T1が適用できる。
また、R1〜R5のうち少なくとも1つは電子供与性基を表す。一般式(3)においては、R1、R3またはR5のうちの1つが電子供与性基であることが好ましく、R3が電子供与性基であることがより好ましい。
前記「電子供与性基」とはHammetのσp値が0以下のものを表し、Chem.Rev.,91,165(1991).記載のHammetのσp値が0以下のものが好ましく適用でき、より好ましくは−0.85〜0のものが用いられる。前記電子供与性基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基などが挙げられる。
前記電子供与性基として好ましくはアルキル基、アルコキシ基であり、より好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4である。)である。
一般式(3)におけるR1として好ましくは、水素原子または電子供与性基であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、更に好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基であり、特に好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)であり、最も好ましくはメトキシ基である。
一般式(3)におけるR2として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4、より好ましくはメチル基である。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)である。特に好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基である。
一般式(3)におけるR3として好ましくは、水素原子または電子供与性基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、更に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基であり、特に好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)である。最も好ましくはn−プロポキシ基、エトキシ基、メトキシ基である。
一般式(3)におけるR4として好ましくは、水素原子または電子供与性基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基であり、更に好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4)であり、特に好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、最も好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基である。
一般式(3)におけるR5として好ましい基は、R2で挙げた基と同じものが挙げられる。
一般式(3)におけるR6、R7、R9及びR10として好ましくは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子である。
一般式(3)中、R8は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子を表し、可能な場合には置換基を有してもよい。該置換基としては後述の置換基T1が適用できる。
一般式(3)におけるR8として好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12アリールオキシ基であり、より好ましくは、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4である。)であり、特に好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基である。
以下に置換基T1について説明する。
前記置換基T1としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換または未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、アルキルスルフィニル基またはアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。
また、置換基T1が二つ以上ある場合は、同一でもよいし異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
以下に一般式(3)で表される化合物に関して具体例をあげて詳細に説明する。但し、一般式(3)で表される化合物は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
一般式(3)で表される化合物は、置換安息香酸とフェノール誘導体との一般的なエステル反応によって合成することができ、エステル結合形成反応であればどのような反応を用いてもよい。例えば、置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノールと縮合する方法や、縮合剤または触媒を用いて置換安息香酸とフェノール誘導体とを脱水縮合する方法などが挙げられる。
本発明においては、製造プロセス等を考慮すると置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノールと縮合する方法が好ましい。
以下に一般式(3)で表される低分子化合物の合成法について具体的に記載するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
[合成例2]
(例示化合物A−12の合成)
2,4,5−トリメトキシ安息香酸45.0g(212ミリモル)、トルエン180ml、ジメチルホルムアミド1.8mlを60℃に加熱した後、塩化チオニル27.8g(233ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で2.5時間加熱撹拌した。その後、予め4−ヒドロキシ安息香酸メチル35.4g(233ミリモル)をジメチルホルムアミド27mlに溶解させた液をゆっくりと添加し、80℃で3時間加熱撹拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、メタノール270mlを加え、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を64.5g(収率88%)得た。また化合物の同定は1H−NMR(400MHz)およびマススペクトルにより行った。
1H−NMR(CDCl3)δ3.95(m,9H),3.99(s,3H),6.57(s,1H),7.28(d,2H),7.57(s,1H)8.11(d,2H)
マススペクトル:m/z 347(M+H)+ 得られた化合物の融点は121〜123℃であった。
次に、前記一般式(4)の化合物について説明する。
前記一般式(4)において、AR1及びAR3がアリール基または芳香族ヘテロ環を表す場合は、AR1及びAR3は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。AR1及びAR3で表されるアリール基及びAR3で表されるアリールカルボニル基に含まれるアリール基としては、好ましくは炭素数6〜30のアリール基である。上記前記アリール基は、単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、該置換基としては後述の置換基T2が適用できる。なかでも、炭素数6〜20のアリール基がより好ましく、炭素数6〜12のアリール基が特に好ましい。上記前記アリール基としては、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
一般式(4)において、AR2はアリーレン基または芳香族ヘテロ環を表し、繰り返し単位中のAR2は、すべて同一であってもよいし異なっていてもよい。前記アリーレン基として好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基であり、前記アリーレン基は単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基T2が適用できる。
一般式(4)中、AR2で表されるアリーレン基としてより好ましくは炭素数6〜20のアリーレン基であり、特に好ましくは炭素数6〜12のアリーレン基である。このようなアリーレン基としては、例えばフェニレン基、p−メチルフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
一般式(4)中、AR1、AR2、AR3で表される芳香族ヘテロ環は、酸素原子、窒素原子または硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環であり、好ましくは5または6員環の酸素原子、窒素原子または硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環である。また、可能な場合には更に置換基を有してもよい。置換基としては後述の置換基T2が適用できる。
一般式(4)中、AR1、AR2、AR3で表される芳香族ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、ピロロトリアゾール、ピラゾロトリアゾールなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましいものは、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾールである。
一般式(4)中、L1、L2はそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。L1、L2は、同じであってもよく異なっていてもよい。また、繰り返し単位中のL2は、すべて同一であってもよいし異なっていてもよい。
前記2価の連結基の例として好ましいものは、−NR7−(R7は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基を表す)で表される基、−SO2−、−CO−、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−S−、−SO−及びこれらの2価基を2つ以上組み合わせて得られる基であり、その内より好ましいものは−O−、−CO−、−SO2NR7−、−NR7SO2−、−CONR7−、−NR7CO−、−COO−、及びOCO−、アルキニレン基であり、最も好ましくは−CONR7−、−NR7CO−、−COO−、及びOCO−、アルキニレン基である。
本発明の一般式(4)で表される化合物において、AR2はL1及びL2と結合するが、AR2がフェニレン基である場合、L1−AR2−L2、及びL2−AR2−L2は互いにパラ位(1,4−位)の関係にあることが最も好ましい。
一般式(4)中、nは3以上の整数を表し、好ましくは3〜7であり、より好ましくは3〜5である。
以下に前述の一般式(4)における置換基T2について説明する。
置換基T2として好ましくは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換または無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族または非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5または6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換または無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換または無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換または無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)を表わす。
前記の一般式(4)における置換基T2の中で、水素原子を有するものはこれを取り去り、更に前記の置換基T2で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
以下に一般式(4)で表される化合物に関して具体例を挙げて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
以下に一般式(4)で表される化合物の合成方法を述べる。以下の合成例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[合成例3]
(例示化合物(1)aの合成)
下記スキームに従い、一般式(4)の例示化合物(1)aを合成した。
−中間体(C)の合成−
2,4,5−トリメトキシ安息香酸300g、トルエン1200ml、ジメチルホルムアミド12mlを80℃に加熱した後、塩化チオニル112.1mlをゆっくりと45分かけて滴下し、滴下後80℃で1時間加熱攪拌した。その後、反応液に4−ヒドロキシ安息香酸214.8gをジメチルホルムアミド800mlに溶解させた溶液を加え、更に80℃で2時間反応させた。反応後、トルエンを留去した後、室温まで冷却した。次いでメタノール2500mlを加え、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として中間体(C)を263.8g(収率56.3%)得た。
−例示化合物(1)aの合成−
中間体(C)108.4g、ジメチルアミノピリジン7.24g、上記化合物(D)32.67g、塩化メチレン500mlを加熱還流させた後、ジシクロヘキシルカルボジイミド67.31gの塩化メチレン200ml溶液をゆっくりと30分かけて滴下し、更に2時間加熱還流させた。その後、反応液を室温まで冷却し、析出した結晶(ジシクロヘキシルウレア)をろ別し、ろ液を減圧濃縮した。残さをメタノールにて3回再結晶を行い、白色の結晶として一般式(4)の例示化合物(1)aを91.42g(収率75.8%)得た。また化合物の同定は1H−NMR(400MHz)により行った。
1H−NMR(CDCl3)δ3.93(s,6H),3.95(s,6H),4.00(s,6H),6.61(s,2H),7.32(d,4H),7.38(d,4H),7.61(s,2H),7.68(d,4H),8.29(d,4H)
得られた化合物の融点は199〜200℃であった。
次に、前記一般式(5)の化合物について説明する。
前記一般式(5)中、AR1、AR2はアリール基または芳香族ヘテロ環を表し、AR1、AR2で表されるアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、該アリール基は、単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基T3が適用できる。
一般式(5)中、AR1、AR2で表されるアリール基として、より好ましくは炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくは炭素数6〜12アリール基である。このようなアリール基としては、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。
一般式(5)中、AR1、AR2で表される芳香族ヘテロ環としては酸素原子、窒素原子或いは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環であれば特に限定されないが、好ましくは5または6員環の酸素原子、窒素原子もしくは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環である。また、可能な場合には更に置換基を有してもよい。置換基としては後述の置換基T3が適用できる。
一般式(5)中、AR1、AR2で表される芳香族ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、ピロロトリアゾール、ピラゾロトリアゾールなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾールが挙げられる。
一般式(5)中、L1、L2は、−C(=O)O−、または−C(=O)NR−を表し。これらはどちらも同様に好ましい。
前記Rは水素原子またはアルキル基を表し、Rとして好ましくは水素原子または、炭素数1〜6アルキル基であり、より好ましくは水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基であり、更に好ましくは水素原子、メチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
一般式(5−A)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、該置換基としては後述の置換基T3が適用できる。
また、一般式(5−A)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8として好ましくは、水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、フッ素原子であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子であり、最も好ましくは水素原子である。
一般式(5−B)におけるR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、該置換基としては後述の置換基T3が適用できる。
また、一般式(5−B)におけるR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18として好ましくは、水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、フッ素原子であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子であり、最も好ましくは水素原子である。
以下に前述の置換基T3について説明する。
置換基T3としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換または未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基T3は更に置換されてもよい。
また、置換基T3が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
以下に一般式(5)で表される化合物について具体例を挙げて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
一般式(5)で表される化合物は、置換安息香酸とフェノール、或いはアニリン誘導体の一般的なエステル化反応、アミド化反応によって合成でき、エステル結合形成反応であればどのような反応を用いてもよい。例えば、置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノール、或いはアニリン誘導体と縮合する方法、縮合剤或いは触媒を用いて置換安息香酸とフェノール、或いはアニリン誘導体とを脱水縮合する方法などが挙げられる。
製造プロセス等を考慮すると置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノール、或いはアニリン誘導体と縮合する方法が好ましい。
以下に一般式(5)で表される化合物の合成方法を述べる。以下の合成例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。
[合成例4]
(例示化合物A’−1の合成)
2,4,5−トリメトキシ安息香酸40.1g(189ミリモル)、4、4′−ジヒドロキシビフェニル16.75g(90ミリモル)、トルエン200ml、ジメチルホルムアミド2mlを70℃に加熱した後、塩化チオニル23.6g(198ミリモル)をゆっくりと滴下し、70℃で2.5時間加熱攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、メタノール300mlを加え、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を48.4g(収率94%)得た。また化合物の同定は1H−NMR(400MHz)により行った。
1H−NMR(CDCl3)δ3.93(s,6H),3.95(s,6H),3.99(s,6H),6.58(s,2H),7.28(d,4H),7.62(m,6H)
得られた化合物の融点は227〜229℃であった。
本発明において、前記一般式(1)〜(5)で表される化合物の添加量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、セルロースエステル100質量部に対して、通常1.0〜30質量部、好ましくは2.0〜20質量部である。これらは2種以上を併用してもよい。
本発明の第2の保護フィルムの面内レターデーション(Ro)、厚み方向レターデーション(Rth)は光学補償機能を付与するために、一般式(1)〜(5)の化合物を添加し、適宜前記延伸操作を行うことによって、Roは0〜100nm、Rthは−150〜400nの範囲に調整することが好ましく、特にRoは50〜100nm、Rthは70〜400nmの範囲に調整することが好ましい。
《偏光板》
本発明に用いられる偏光板は一般的な方法で作製することができる。すなわち、本発明の第1の保護フィルムのセルロースエステル樹脂層(A)側と、第2の保護フィルムを鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子を挟持するように貼り合わせることが好ましい。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
一般に偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
《液晶表示装置》
本発明の第1の保護フィルム、第2の保護フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。本発明に係る偏光板は、粘着層等を介して液晶セルに貼合する。その際、前記第2の保護フィルムが液晶セル側に配置されるように貼合することが好ましい。
本発明に係る偏光板は反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。
特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜け等もなく、その効果が長期間維持される。また、色ムラ、ギラツキや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果あった。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
表1および表2記載のアクリル樹脂A−AC1〜AC2およびアクリル系ポリマーB−AC1〜AC3を公知の方法によって作製した。
(表1、2中のモノマーの略称)
MMA:メタクリル酸メチル
MA:アクリル酸メチル
ACMO:N−アクリロイルモルホリン
HEMA:メタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)
<偏光板101の作製>
(第1の保護フィルムの作製)
アクリル樹脂A−AC1を55質量部、セルロースエステル樹脂としてセルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度0.1、プロピオニル基の置換度(Pr置換度)2.60、総アシル基置換度2.70、イーストマンケミカル社製、商品名:CAP−482−20)45質量部、リン系酸化防止剤(Irgafos168:チバ・ジャパン(株)製)0.2質量部の割合で配合して、アクリル樹脂層(B)の溶融組成物を調製した。
またセルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度1.60、プロピオニル基の置換度1.20、総アシル基置換度2.80、数平均分子量60000)80質量部、アクリル系ポリマーB−AC1を20質量部、Tinuvin928(チバ・ジャパン(株)製)1.5質量部、ADK STAB PEP−36((株)ADEKA製)0.01質量部、Irganox1010(チバ・ジャパン(株)製)0.5質量部、SumilizerGS(住友化学(株)製)0.2質量部、シーホスターKEP−30((株)日本触媒製)0.1質量部の割合で配合してセルロースエステル樹脂層(A)の溶融組成物を調製した。
上記2種の溶融組成物をそれぞれ、真空ナウターミキサーで70℃、1Torrで3時間混合しながら更に乾燥した。乾燥した混合物を、2軸式押出し機を用いて250℃で溶融混合し、それぞれペレット化した。この際、混錬時のせん断による発熱を抑えるためニーディングディスクは用いずオールスクリュータイプのスクリューを用いた。また、ベント孔から真空引きを行い、混錬中に発生する揮発成分を吸引除去した。尚、押出し機に供給するフィーダーやホッパー、押出し機ダイから冷却槽間は、乾燥窒素ガス雰囲気として、樹脂への水分の吸湿を防止した。
それぞれのペレットを、図3で示すような装置で、アクリル樹脂層(B)の溶融組成物を単軸押出し機、セルロースエステル樹脂層(A)の溶融組成物を二軸押出し機を用いてTダイにて積層し、表面温度Ta(℃)が100℃の第1冷却ロール上セルロースエステル樹脂層(A)が接するようにして、溶融温度240℃でフィルム状に溶融して押し出し、次いで第2冷却ロールの表面温度Tb(℃)が95℃になるように搬送し、総膜厚220μmの2層構成からなるキャストフィルムを共押出成形によって得た。この際、Tダイのリップクリアランス1.5mm、リップ部平均表面粗さRa0.01μmのTダイを用いた。また第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールで線圧10kg/cmで押圧した。
第1冷却ロール及び第2冷却ロールは直径40cmのステンレス製とし、表面にハードクロムメッキを施した。又、内部には温度調整用のオイル(冷却用流体)を循環させて、ロール表面温度を制御した。弾性タッチロールは、直径20cmとし、内筒と外筒はステンレス製とし、外筒の表面にはハードクロムメッキを施した。外筒の肉厚は2mmとし、内筒と外筒との間の空間に温度調整用のオイル(冷却用流体)を循環させて弾性タッチロールの表面温度を制御した。
次いでこのフィルムを、ロール周速差を利用した延伸機によって160℃で搬送方向に1.3倍延伸し、更に予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有する幅手方向の延伸機であるテンターに導入し、幅手方向に160℃で1.3倍延伸した後、70℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落として、幅2500mm、膜厚80μmの第1の保護フィルムを得た。
(第2の保護フィルムの作製)
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度1.90、プロピオニル基の置換度0.80、総アシル基置換度2.70、数平均分子量70000)100質量部、レターデーション調整剤 例示化合物I−(2)6質量部、可塑剤 トリメチロールプロパントリベンゾエート10質量部、Tinuvin928(チバ・ジャパン(株)製)1.5質量部、ADK STAB PEP−36((株)ADEKA製)0.01質量部、Irganox1010(チバ・ジャパン(株)製)0.5質量部、SumilizerGS(住友化学(株)製)0.2質量部、シーホスターKEP−30((株)日本触媒製)0.1質量部の割合で配合して第2の保護フィルムの溶融組成物を調製した。
上記溶融組成物を2軸式押出し機を用いて230℃で溶融混合しペレット化した。尚、このペレットのガラス転移温度Tgは137℃であった。
このペレットを用いて窒素雰囲気下、250℃にて溶融して流延ダイから第1冷却ロール上に押し出し、第1冷却ロールとタッチロールとの間にフィルムを挟圧して成形した。
流延ダイのギャップの幅がフィルムの幅方向端部から30mm以内では0.5mm、その他の場所では1mmとなるようにヒートボルトを調整した。タッチロールは、その内部に冷却水として80℃の水を流した。タッチロールの第1冷却ロールに対する線圧は14.7N/cmとした。更に、テンターに導入し、幅方向に160℃で1.3倍延伸した後、幅方向に3%緩和しながら30℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落とし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施し、巻き取り張力220N/m、テーパー40%で巻芯に巻き取った。尚、フィルムは、厚さが80μmとなるように、押し出し量及び引き取り速度を調整し、仕上がりのフィルム幅は、2500mm幅になるようにスリットし、巻き取った。巻長は2500mとした。
(偏光板の作製)
上記作製した第1の保護フィルムと第2の保護フィルムを使って、下記アルカリケン化処理、次いで偏光板の作製を行った。
〈アルカリケン化処理〉
ケン化工程 2M/l−NaOH 50℃ 90秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
中和工程 10質量%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
ケン化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで80℃で乾燥を行った。
〈偏光子の作製〉
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で5倍に搬送方向に延伸して偏光子を作った。
上記偏光子の片面にアルカリケン化処理した前記保護フィルムのセルロースエステル樹脂層(A)側を、もう一方の面に第2の保護フィルムを、完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として、各々貼り合わせ、乾燥して偏光板101作製した。
<偏光板102〜120の作製>
第1の保護フィルムのセルロースエステル樹脂層(A)中のセルロースエステル樹脂、アクリル樹脂の配合比率、アクリル樹脂層(B)中のアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂の配合比率、第2の保護フィルム中のレターデーション調整剤の種類、添加量を、表3のように変化させた以外は、偏光板101の作製と同様にして、偏光板102〜120を作製した。
《評価》
(液晶表示装置の作製)
VA型液晶表示装置である富士通製15型ディスプレイVL−150SDの予め貼合されていた視認側の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板をそれぞれ液晶セル(VA型)のガラス面に貼合し、対応する液晶表示装置を作製した。その際、偏光板の貼合の向きは予め貼合されていた偏光板と同一方向に吸収軸が向くように行った。
(レターデーションの測定)
第2の保護フィルムのレターデーションを下記手順にて測定した。
王子計測機器製KOBRA21ADHを用いて23℃、55%RH、波長590nmの環境下でレターデーション測定を行った。また、厚み方向のレターデーションを計算する際には、アッベの屈折計を用いて各層の屈折率を測定した値を用いた。
Ro=(nx−ny)×d
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸に直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnz、dはフィルムの厚み(nm)をそれぞれ表す。)
(鹸化適性)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、沃化カリウム2質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光子を作製した。
保護フィルム試料を、40℃の2.5N−水酸化ナトリウム水溶液で60秒間アルカリ処理し、更に水洗乾燥して表面を鹸化処理した。
前記偏光子の両面に、上記保護フィルムフィルムのアルカリ処理面を、完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として両面から貼合し、保護フィルムを接着した評価用偏光板を作製した。
次いでこの評価用偏光板を、80℃、90%RHで1000時間処理し、偏光子と保護フィルムとの張り合わせ状態を観察し下記の基準でランク付けした。
◎:剥離なし
○:僅かに剥離認められるが実用上問題ないレベル
△:やや剥離認められ実用上問題となるレベル
×:剥離発生
○以上が鹸化処理適性が実用上問題なく優れているものと判断した。
(雲状ムラ評価)
「雲状ムラ」とは、液晶表示装置の画面上に、雲状にくすんだように見えるムラが生じる欠陥であり、画面が白表示の場合に観察し易い欠陥である。この雲状ムラは、液晶表示装置を製造した直後には発生し難く、長期経時後に発生し易い。実施例で作製したそれぞれの偏光板について、80℃で30日間(長期経時に相当する加速条件)保管した。別に、より穏和な条件として50℃で30日間の保管を行った。これらの偏光板のそれぞれについて液晶表示装置を同様に作製し、全面白表示として雲状ムラの発生状況を目視で確認した。雲状ムラは、全画面中に対して雲状ムラの発生した領域(%)で評価した。
(視野角評価)
23℃、55%RHの環境で、ELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて液晶表示装置の視野角測定を行った。
〈視野角〉
◎:視野角が非常に広い
○:視野角が広い
△:視野角が狭い
×:視野角が非常に狭い
表3より、本発明の偏光板101、102、104〜106、108、111、112、114〜116、118は比較例に対して、鹸化適性に優れ、雲状ムラの発生もない総合的に優れた偏光板であることが分かる。
また、比較例の103、113は第2の保護フィルムにレターデーション調整剤が添加されていない為、Ro、Rthの値が低く視野角が狭かった。
実施例2
<偏光板201〜209、211〜215の作製>
実施例1の本発明の偏光板101の製造条件において、第1の保護フィルムに表4に示す構成でセルロースエステル樹脂(プロピオニル基置換度変化)、アクリル樹脂(A−AC−1〜A−AC−2、B−AC1〜B−AC3)及びCAB、PMMA、ポリスチレン、ポリエステル、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネートの各々の樹脂を用い、かつ第2の保護フィルムとしてレターデーション調整剤の種類、添加量を変えて、偏光板201〜209、211〜215を作製した。
尚、第2の保護フィルムにレターデーション調整剤を添加したものは、いずれもRo=50±5nm、Rth=240±10nmの範囲にあった。
(表4中の素材略称)
CAP:セルロースアセテートプロピオネート
CAB:セルロースアセテートブチレート(アセチル基置換度1.0、ブチリル基置換度1.7)
PMMA:ポリメチルメタクリレート(ダイヤナールBR83三菱レイヨン(株)製)
ポリスチレン:Daylark D332(ノヴァ・ケミカル社製)
ポリエステル:ECDEL9966(イーストマンケミカル社製)
ポリシクロオレフィン:ZEONOR1420R(日本ゼオン(株)製)
ポリカ:ポリカーボネート樹脂パンライト(帝人化成(株)製)
<偏光板210の作製>
第2の保護フィルムのみを下記に示す溶液流延法によって作製し、表4記載の溶融流延法によって作製された第1の保護フィルムと組み合わせて偏光板を作製した。
(微粒子分散液)
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製)
11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行い微粒子分散液を得た。
(インライン添加液)
メチレンクロライドを入れた溶解タンクにセルロースエステルAを添加し、加熱して完全に溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。
濾過後のセルロースエステル溶液を充分に攪拌しながら、ここに微粒子分散液をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、インライン添加液を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度1.90、プロピオニル基の置換度0.80、総アシル基置換度2.70、数平均分子量70000) 4質量部
微粒子分散液 11質量部
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステルAを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 380質量部
エタノール 70質量部
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度1.90、プロピオニル基の置換度0.80、総アシル基置換度2.70、数平均分子量70000) 100質量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート 10質量部
レターデーション調整剤(例示化合物A−12) 8質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液を調製した。
製膜ライン中で日本精線(株)製のファインメットNFでドープ液を濾過した。インライン添加液ライン中で、日本精線(株)製のファインメットNFでインライン添加液を濾過した。濾過したドープ液を100質量部に対し、濾過したインライン添加液を2質量部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、次いで、ベルト流延装置を用い、温度35℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が120%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルのウェブを50℃で溶媒を蒸発させ、1.65m幅にスリットし、その後、テンターで幅手方向に、160℃で1.3倍(30%)に延伸し、更に搬送張力を加えてフィルムが収縮しないように長手方向に1.0倍(0%)に延伸した。120℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1500mm幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、平均高さ10μmのナーリング加工を施し、平均膜厚が80μm、巻き長は2500mであった。
得られた偏光板について実施例1の評価を実施し、結果を表5に示した。
表5より、本発明の偏光板201〜209、211、212は視野角も広く、かつ雲状ムラの発生のない偏光板が得られることが分かった。
第2の保護フィルムを溶液流延法で作製した偏光板210は、やや雲状ムラの発生が見られたものの、視野角も広く実用上問題のない偏光板が得られることが分かった。
実施例3
実施例2で作製した第1の保護フィルムのアクリル樹脂層(B)上に下記ハードコート層を塗布してハードコート層付き第1の保護フィルムを作製し、該ハードコート層付き第1の保護フィルムと実施例2で作製した第2の保護フィルムとを用いて偏光板を作製し、その偏光板を液晶表示装置に装着した。
本発明の偏光板は、下記ハードコート層を設けたことにより表面の鉛筆硬度が4Hとなり、雲状ムラがなく、視野角が広く、かつ耐傷性の高い偏光板が得られることが分かった。
<ハードコート層>
下記ハードコート層組成物を第1の保護フィルムのアクリル樹脂層(B)側に乾燥膜厚3.5μmとなるように塗布し、80℃にて1分間乾燥した。
次に高圧水銀ランプ(80W)にて150mJ/cm2の条件で硬化させ、ハードコート層を有するハードコートフィルムを作製した。ハードコート層の屈折率は1.50であった。
〈ハードコート層組成物〉
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(2量体以上の成分を2割程度含む) 108質量部
イルガキュア184(チバ・ジャパン(株)製) 2質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 180質量部
酢酸エチル 120質量部