以下、本発明を更に詳細に述べる。
本発明は、セルロースエステルを含有する光学フィルム形成材料を加熱溶融し、溶融流延法によって製膜した光学フィルムにおいて、該光学フィルム形成材料に、前記一般式(1)で表されるイミド構造基を有する化合物を含有することを特徴とする。
一般式(1)で表されるイミド構造基を有する化合物としては、紫外線吸収剤、透湿度調整剤、可塑剤、酸化防止剤、剥離助剤、機械物性改善剤、リタデーション制御剤、波長分散剤、平面性改良剤などが挙げられる。
好ましくは、一般式(1)で表されるイミド構造基を有する化合物が紫外線吸収剤、透湿度調整剤、可塑剤、酸化防止剤であることが好ましい。
まず、本発明の一般式(1)で表される構造を有する化合物について説明する。
Z1は、−C−N−C−部と共に、5〜6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
形成される5〜6員環としては、例えば、コハクサンイミド環、マレイミド環、ウラゾール環、ヒダントイン環、オキサゾリンジンジオン環、チアゾリンジンジオン環等があげられ、中でもコハクサンイミド環、マレイミド環が好ましい。
形成される環は置換基を有していても良く、またさらに別の環と縮合環を形成しても良い。
置換基としては、例えば、特に制限はないが、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等)、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基等)、ホスホノ基、アシル基(例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、シアノ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、複素環オキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホン酸基、スルホン酸の塩、アミノカルボニルオキシ基、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基等)、アニリノ基(例えば、フェニルアミノ基、クロロフェニルアミノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、イミド基、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、複素環チオ基、チオウレイド基、カルボキシル基、カルボン酸の塩、ヒドロキシル基、メルカプト基、ニトロ基等の各基が挙げられる。これらの置換基は同様の置換基によってさらに置換されていてもよい。
Lは2価に連結基を表す。
2価の連結基として例えば、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、あるいはこれらの連結基の組み合わせを挙げることができる。これらのうちアルキレン基、アリーレン基が好ましい。
次に、前記一般式(6)で表される化合物について説明する。
Z2は、C・・・C部と共に、5〜6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
好ましくは、脂肪族炭化水素環、芳香族炭化水素環、または複素環が好ましく、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロペンタン環、シクロブタン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、ピラゾール環、ベンゼン環が挙げられる。
これらのうち、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびベンゼン環が好ましい。
形成される環は置換基を有していても良く、またさらに別の環と縮合環を形成しても良い。
置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基が好ましい。
Lは2価の連結基を表す。2価の連結基としては、一般式(1)であげた連結基が好ましい。・・・は、単結合または2重結合を表す。
次に、一般式(7)で表される化合物について説明する。
R101は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)を表す。rは0〜8の整数を表す。
この中で、水素原子が特に好ましい。
Lは2価の連結基を表す。2価の連結基としては、一般式(1)であげた連結基が好ましい。
本発明においては、前記一般式(1)で表される部分構造(イミド部分構造基)を有する化合物が、前記一般式(6)又は前記一般式(7)で表される化合物が本発明の効果を奏する点でより好ましい。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、偏光子や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物が好ましい。
本発明の光学フィルムは、一般式(1)で表されるイミド構造基を有する紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
更に、好ましくは、一般式(1)で表されるイミド構造基を有するベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物である。
特に本発明において、前記一般式(2)及び(3)で表される化合物を用いることが好ましい。
中でも、一般式(2)で表されるイミド構造基を有する紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
次に、一般式(2)で表される化合物について説明する。
R31、R32は各々独立に、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、モノまたはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基等)、アリールアミノ基、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、シアノ基、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル等)を表す。特に、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が好ましい。
R33、R34、R35はそれぞれ独立に、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)モノまたはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基等)、アリールアミノ基、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、シアノ基、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル等)を表す。
特に、ハロゲン原子としてはクロル基、アルキル基としてはメチル基、アルコキシ基としてはメトキシ基、プロポキシ基が好ましい。
l、m、nは0〜4の整数を表す。Z1は、−C−N−C−部と共に、5〜6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Z1は、一般式(1)であげた構造が好ましい。Lは2価の連結基を表す。2価の連結基としては、一般式(1)であげた連結基が好ましい。
以下、本発明に好ましく用いられる一般式(2)で表される化合物の代表例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
次に一般式(3)で表される化合物について説明する。
R11は水素原子、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、オキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アシル基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)又はアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)を表す。R12及びR13各々独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アシル基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、スルホニル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば炭素原子数1ないし4のアルキルアミノ基)、アリールアミノ基、(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等)、ヒドロキシル基、シアノ基、カルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えばエチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)又はオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基等)、を表す。mは、0〜3の整数を表し、nは0〜5の整数を表す。Z1は、−C−N−C−部と共に、5〜6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Z1は、一般式(1)であげた構造が好ましい。Lは2価の連結基を表す。2価の連結基としては、一般式(1)であげた連結基が好ましい。
以下、本発明に好ましく用いられる一般式(3)で表される化合物の代表例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、従来公知の紫外線吸収剤を、本発明の効果を損なわない程度に、添加してもよい。
例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物が好ましい。
また、特開平10−182621号、同8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号、特開2003−113317号公報記載の高分子紫外線吸収剤などが挙げられる。
本発明において、紫外線吸収剤は、セルロースエステルに対して、0.1〜20質量部添加することが好ましく、更に0.5〜10質量部添加することが好ましく、さらに1〜5質量部添加することが好ましい。
これらは、2種以上を併用しても良い。
(可塑剤)
本発明の光学フィルムには、可塑剤を添加することが好ましい。
一般的に、可塑剤として知られる化合物を添加することは機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率の低減等の光学フィルムの改質の観点において好ましい。
また、溶融流延法においては、用いるセルロースエステル単独のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加により光学フィルム構成材料の溶融温度を低下させる目的、または同じ加熱温度においてセルロースエステルよりも可塑剤を含む光学フィルム構成材料の粘度が低下できる目的を含んでいる。
ここで、本発明において、光学フィルム構成材料の溶融温度とは、該材料が加熱され流動性が発現された状態において材料が加熱された温度を意味する。
セルロースエステル単独では、ガラス転移温度よりも低いと光学フィルム化するための流動性は発現されない。しかしながら、セルロースエステルは、ガラス転移温度以上において熱量の吸収により弾性率あるいは粘度が低下し、流動性が発現される。光学フィルム構成材料を溶融させるためには、添加する可塑剤がセルロースエステルのガラス転移温度よりも低い融点またはガラス転移温度をもつことが上記目的を満たすために好ましい。
本発明において好ましく用いられる一般式(1)で表されるイミド構造基を部分構造として有する可塑剤としては、多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤、多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤、燐酸エステル系可塑剤、炭水化物エステル系可塑剤などが挙げられる。
本発明においては、前記一般式(4)で表される多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤を添加することが好ましい。
次に、一般式(4)で表される化合物について説明する。
一般式(4)において、Xはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロ環(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基等)を表す。Z1は、−C−N−C−部と共に、5〜6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Z1は、一般式(1)であげた構造が好ましい。Lは2価の連結基を表す。2価の連結基としては、一般式(1)であげた連結基が好ましい。
pは、0〜5の整数を表し、qは1〜6の整数を表し、2≦p+q≦6であり、Aはp+q価の多価アルコール残基を表す。
Xは置換または無置換のアリール基が好ましい。
好ましくは、Aが3価の多価アルコールで、pは0〜2の整数を表し、qは1〜3の整数を表すことが好ましい。
以下、本発明に好ましく用いられる一般式(4)で表される化合物の代表例を例示するが、これらに限定されるものではない。
さらに、下記のような可塑剤が好ましい。
これらの可塑剤は、単独で用いても良く、また必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。
また、本発明の効果を損なわない程度に、従来公知の可塑剤を添加してもよい。
従来公知の可塑剤としては、多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤、多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤、燐酸エステル系可塑剤、炭水化物エステル系可塑剤、ポリマー可塑剤などが挙げられる。
また可塑剤の添加量は、セルロースエステルに対して、1〜30質量%含有させることが好ましく、より好ましくは2〜25質量%、特に好ましくは7〜20質量%である。
《酸化防止剤》
下記一般式(A)、一般式(B)、一般式(C−1)、一般式(C−3)、一般式(C−4)、一般式(C−5)及び前記一般式(C−2)について説明する。
セルロースエステルは、熱だけでなく酸素によっても分解が促進されるため、本発明の光学フィルムにおいては安定化剤として酸化防止剤を含有することが好ましい。
特に、溶融製膜が行われるような高温環境下では、光学フィルム成形材料の熱、及び酸素による分解が促進されるため、酸化防止剤を含有することが好ましい。
本発明において有用な酸化防止剤としては、酸素による光学フィルム成形材料の劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でも有用な酸化防止剤としては、フェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、耐熱加工安定剤、酸素スカベンジャー等が挙げられ、これらの中でも、特にフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物が好ましい。
これらの化合物を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、熱や熱酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において一般式(1)で表されるイミド構造基を有する酸化防止剤を用いることが好ましい。
好ましくは、一般式(1)で表されるイミド構造基を有する下記一般式(A)、一般式(B)、一般式(C−1)、一般式(C−3)、一般式(C−4)、一般式(C−5)及び前記一斑式(C−2)で表される化合物を用いることが好ましく、より好ましくは、一般式(1)で表されるイミド構造基を有する一般式(A)、(C−2)で表される化合物を用いることが好ましい。
(フェノール系化合物)
フェノール系化合物は既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されており、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。このような化合物のうち好ましい化合物として、一般式(1)で表されるイミド構造基を持つ下記一般式(A)で表される化合物が好ましい。
下記一般式(A)で表される化合物について説明する。
一般式(A)において、R11〜R16は置換基を表す。置換基としては、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子等)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、シアノ基、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基等)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等)、ウレイド基(例えば3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基等)、スルファモイルアミノ基(ジメチルスルファモイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えばエチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アシル基(例えばアセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基等)、アミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミンオキシド基(例えばピリジン−オキシド基)、イミド基(例えばフタルイミド基等)、ジスルフィド基(例えばベンゼンジスルフィド基、ベンゾチアゾリル−2−ジスルフィド基等)、カルボキシル基、スルホ基、ヘテロ環基(例えば、ピロール基、ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基等)等が挙げらる。これらの置換基はさらに置換されてもよい。
また、R11は水素原子、R12、R16はt−ブチル基であるフェノール系化合物が好ましい。
(ヒンダードアミン系化合物)
本発明において有用な酸化防止剤の一つとして、一般式(1)で表されるイミド構造基を有する下記一般式(B)で表されるヒンダードアミン系化合物が好ましい。
一般式(B)で表される化合物について説明する。
一般式(B)において、R21〜R27は置換基を表す。置換基としては前記一般式(A)のR11〜R16で表される置換基と同義である。R24は水素原子、メチル基、R27は水素原子、R22、R23、R25、R26はメチル基が好ましい。
(リン系化合物)
本発明において有用な酸化防止剤の一つとして、一般式(1)で表されるイミド構造基を持つ下記一般式(C−1)、一般式(C−3)、一般式(C−4)、一般式(C−5)及び前記一般式(C−2)で表される部分構造を分子内に有する化合物が好ましい。
一般式(C−1)で表される化合物について説明する。
一般式(C−1)において、Ph1及びPh′1は置換基を表す。置換基としては前記一般式(A)のR11〜R16で表される置換基と同義である。
より好ましくは、Ph1及びPh′1はフェニレン基を表し、該フェニレン基の水素原子はフェニル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基または炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。Ph1及びPh′1は互いに同一でもよく、異なってもよい。
Xは単結合、硫黄原子または−CHR6−基を表す。R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。また、これらは前記一般式(A)のR11〜R16で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。
前記一般式(C−2)で表される化合物について説明する。
一般式(C−2)において、Ph2及びPh′2は置換基を表す。置換基としては前記一般式(A)のR11〜R16で表される置換基と同義である。より好ましくは、Ph2及びPh′2はフェニル基またはビフェニル基を表し、該フェニル基またはビフェニル基の水素原子は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基または炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。Ph2及びPh′2は互いに同一でもよく、異なってもよい。また、これらは前記一般式(A)のR11〜R16で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。
下記一般式(C−3)で表される化合物について説明する。
一般式(C−3)において、Ph3は置換基を表す。置換基としては前記一般式(A)のR11〜R16で表される置換基と同義である。より好ましくは、Ph3はフェニル基またはビフェニル基を表し、該フェニル基またはビフェニル基の水素原子は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基または炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。また、これらは前記一般式(A)のR11〜R16で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。
下記一般式(C−4)で表される化合物について説明する。
一般式(C−4)において、Ph4は置換基を表す。置換基としては前記一般式(A)のR11〜R16で表される置換基と同義である。
より好ましくは、Ph4は炭素数1〜20のアルキル基またはフェニル基を表し、該アルキル基またはフェニル基は前記一般式(A)のR11〜R16で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。
下記一般式(C−5)で表される化合物について説明する。
一般式(C−5)において、Ph5、Ph′5及びPh″5は置換基を表す。置換基としては前記一般式(A)のR11〜R16で表される置換基と同義である。
より好ましくは、Ph5、Ph′5及びPh″5は炭素数1〜20のアルキル基またはフェニル基を表し、該アルキル基またはフェニル基は前記一般式(A)のR11〜R16で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。
酸化防止剤は、前述のセルロースエステル同様に、製造時から持ち越される、あるいは保存中に発生する残留酸、無機塩、有機低分子等の不純物を除去することが好ましく、より好ましくは純度99%以上である。残留酸及び水としては、0.01〜100ppmであることが好ましく、セルロースエステルを溶融製膜する上で、熱劣化を抑制でき、製膜安定性、光学フィルムの光学物性、機械物性が向上する。
下記に、本発明において一般式(1)で表されるイミド構造基を有する酸化防止剤の代表例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、本発明の効果を損なわない程度に、従来公知の酸化防止剤を添加してもよい。
例えば、下記のような化合物が挙げられる。
IRGANOX 1010:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製
IRGAFOS P−EPQ:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製
TINUVIN 770:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製
TINUVIN 144:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製
ADK STABLA LA−52:株式会社ADK 製
Sumilizer GP:住友化学(株)製
PEP−24G: 株式会社ADK 製
Sumilizer TP−D:住友化学(株)製
GSY−P101:堺化学工業株式会社 製
Sumilizer GM:住友化学(株)製
Sumilizer GS:住友化学(株)製
酸化防止剤は0.1〜10質量%添加することが好ましく、さらに0.2〜5質量%添加することが好ましく、さらに0.5〜2質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤の添加量が少なすぎると溶融時に安定化作用が低いために、効果が得られず、また添加量が多すぎるとセルロースエステルへの相溶性の観点から光学フィルムとしての透明性の低下を引き起こし、また光学フィルムが脆くなることがあるため好ましくない。
また、前記一般式(5)で表される化合物を添加することにより、溶融製膜時のセルロースエステルの安定性が高められるため好ましい。
一般式(5)で表される化合物について説明する。
一般式(5)において、R2はアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば炭素原子数1ないし4のアルキルアミノ基)、アリールアミノ基、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、ヒドロキシル基、シアノ基、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)又はオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)を表す。
R6は水素原子またはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、またはアシル基(例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)を表す。
nは1または2を表す。Z1は、−C−N−C−部と共に、5〜6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Z1としては、一般式(1)であげた構造が好ましい。
Lは2価の連結基を表す。2価の連結基としては、一般式(1)であげた連結基が好ましい。
nが1であるとき、R1はアリール基、ヒドロキシル基、アシル基を表し、nが2であるとき、R1は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、一般式(1)であげた連結基が好ましい。mは、0〜3の整数を表す。
一般式(5)において、nは1が好ましく、その時のR1は置換または無置換のフェニル基が好ましく、アルキル基、アシルオキシ基が置換したフェニル基がさらに好ましく、R2は水素原子またはアルキル基が好ましい。
下記に、一般式(5)で表されるイミド構造基を有する化合物の代表例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、本発明の効果を損なわない程度に、従来公知のベンゾフラノン系化合物を添加してもよい。例えば、特開平7−233160号、特開平7−247278号に記載されているようなベンゾフラノン系の化合物が挙げられる。
一般式(5)で表されるこれらの化合物は、それぞれ1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、セルロースエステル100質量部に対して、通常0.001〜10.0質量部、好ましくは0.01〜5.0質量部、さらに好ましくは、0.1〜3.0質量部である。
(セルロースエステル)
次に、本発明に好ましく用いられるセルロースエステルについて、詳述する。
本発明の光学フィルムは、溶融流延法により製造される。
溶融流延法とは、セルロースエステルを加熱により溶融したもの(メルト)を支持体上に流延して光学フィルムを形成する。溶融流延法は光学フィルム製造時の有機溶媒使用量を、大幅に少なくすることができるため、従来の有機溶媒を多量に使用する従来の溶液流延法に比較して、環境適性が大幅に向上した光学フィルムが得られるため、溶融流延法により光学フィルムを製造することが好ましい。
本発明における溶融流延とは、溶媒を用いずにセルロースエステルを流動性を示す温度まで加熱溶融しこれを用いて製膜する方法であり、例えば流動性のセルロースエステルをダイスから押し出して製膜する方法である。
なお、溶融セルロースエステルを調製する過程の一部で溶媒を使用してもよいが、フィルム状に成形を行う溶融製膜プロセスにおいては溶媒を用いずに成形加工する。
光学フィルムを構成するセルロースエステルとしては、溶融製膜可能なセルロースエステルであれば特に限定はされず、例えば芳香族カルボン酸エステル等も用いられるが、光学特性等の得られる光学フィルムの特性を鑑みると、セルロースの低級脂肪酸エステルを使用するのが好ましい。
本発明に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは低級脂肪酸の炭素原子数が5以下であり、具体的には、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースピバレート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの好ましいものとして挙げられる。
炭素原子数が5以下の脂肪酸で置換されたセルロースエステルであれば、溶融製膜性が良好であり、得られる光学フィルムの力学特性に優れ、光学フィルムとして用いることが容易である。
力学特性と溶融製膜性の双方を両立させるために、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレート等のように混合脂肪酸エステルを用いてもよい。
次に、本発明に好ましく用いられるセルロースエステルのアシル基の置換度について説明する。
セルロースには、1グルコース単位の2位、3位、6位に1個ずつ、計3個の水酸基があり、総置換度とは、平均して1グルコース単位にいくつのアシル基が結合しているかを示す数値である。従って、最大の置換度は3.0である。これらアシル基は、グルコース単位の2位、3位、6位に平均的に置換していてもよいし、分布をもって置換していてもよい。
混合脂肪酸エステルの置換度として、さらに好ましいセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートの低級脂肪酸エステルは炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)、(II)及び(III)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロース樹脂である。
なお、アセチル基の置換度と他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法より求めたものである。
式(I) 2.4≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.4
式(III) 0.5≦Y≦2.9
この内、特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.2≦X≦2.1であり、0.6≦Y≦1.4であることが好ましい。さらに好ましくは、1.3≦X≦1.8であり、0.9≦Y≦1.4である。
アシル基の置換度の異なるセルロースエステルをブレンドして、光学フィルム全体として上記範囲に入っていてもよい。上記アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
本発明に好ましく用いられるセルロースエステルは、50,000〜150,000の数平均分子量(Mn)を有することが好ましく、55,000〜120,000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、60,000〜100,000の数平均分子量を有することが最も好ましい。
さらに、本発明で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比が1.3〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.5〜5.0であり、さらに好ましくは1.7〜3.5であり、さらに好ましくは2.0〜3.0のセルロースエステルが好ましく用いられる。
なお、Mn及びMw/Mnは下記の要領で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより算出した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒 :テトヒドロフラン
装置 :HLC−8220(東ソー(株)製)
カラム :TSKgel SuperHM−M(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
試料濃度 :0.1質量%
注入量 :10μl
流量 :0.6ml/min
校正曲線 :標準ポリスチレン:PS−1(Polymer Laboratories社製)Mw=2,560,000〜580までの9サンプルによる校正曲線を使用した。
本発明で好ましく用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。
製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、あるいは単独で使用することができる。
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることができる。
セルロースエステルは、例えば、原料セルロースの水酸基を無水酢酸、無水プロピオン酸及び/または無水酪酸を用いて常法によりアセチル基、プロピオニル基及び/またはブチル基を上記の範囲内に置換することで得られる。
このようなセルロースエステルの合成方法は、特に限定はないが、例えば、特開平10−45804号あるいは特表平6−501040号に記載の方法を参考にして合成することができる。
本発明に好ましく用いられるセルロースエステルのアルカリ土類金属含有量は、1〜50ppmの範囲であることが好ましい。
アルカリ土類金属含有量が上記の範囲であればリップ付着物が軽減され、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティング部で破断を生じない。
さらに1〜30ppmの範囲が好ましい。
ここでいうアルカリ土類金属とはCa、Mgの総含有量のことであり、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いて測定することができる。
本発明に好ましく用いられるセルロースエステル中の残留硫酸含有量は、硫黄元素換算で0.1〜45ppmの範囲であることが好ましい。これらは塩の形で含有していると考えられる。
残留硫酸含有量が上記の範囲であると、熱溶融時のダイリップ部の付着物が軽減され、また、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティングの際の破断を生じない。
さらに1〜30ppmの範囲が好ましい。残留硫酸含有量は、ASTM−D817−96に規定の方法より測定することができる。
本発明に好ましく用いられるセルロースエステル中の遊離酸含有量は、1〜500ppmであることが好ましい。
遊離酸含有量が上記の範囲であるとダイリップ部の付着物が軽減され、また、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティングの際の破断を生じない。
特に1〜70ppmの範囲が好ましい。遊離酸含有量はASTM−D817−96に規定の方法より測定することができる。
合成したセルロースエステルの洗浄を、溶液流延法に用いられる場合に比べて、さらに十分に行うことによって、残留酸含有量を上記の範囲とすることができ、溶融流延法によって光学フィルムを製造する際に、リップ部への付着が軽減され、平面性に優れる光学フィルムが得られ、寸法変化、機械強度、透明性、耐透湿性、Rt値、Ro値が良好な光学フィルムを得ることができる。
Roとは面内リタデーションを示し、面内の長手方向MDの屈折率と幅方向TDの屈折率との差に厚みを乗じたもの、Rtとは厚み方向リタデーションを示し、面内の屈折率(長手方向MDと幅方向TDの平均)と厚み方向の屈折率との差に厚みを乗じたものである。
また、セルロースエステルの洗浄は、水に加えて、メタノール、エタノールのような貧溶媒、あるいは結果として貧溶媒であれば貧溶媒と良溶媒の混合溶媒を用いることができ、残留酸以外の無機物、低分子の有機不純物を除去することができる。さらに、セルロースエステルの洗浄は、ヒンダードアミン、亜リン酸エステルといった酸化防止剤の存在下で行うことが好ましく、セルロースエステルの耐熱性、製膜安定性が向上する。
また、セルロースエステルの耐熱性、機械物性、光学物性等を向上させるため、セルロースエステルの良溶媒に溶解後、貧溶媒中に再沈殿させ、セルロースエステルの低分子量成分、その他不純物を除去することができる。この時、前述のセルロースエステルの洗浄同様に、酸化防止剤の存在下で行うことが好ましい。
さらに、セルロースエステルの再沈殿処理の後、別のポリマーあるいは低分子化合物を添加してもよい。
本発明では、セルロースエステル樹脂のほか、セルロースエーテル系樹脂、ビニル系樹脂(ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等も含む)、環状オレフイン樹脂、ポリエステル系樹脂(芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、若しくはそれらを含む共重合体)、アクリル系樹脂(共重合体も含む)等を含有させることができる。
セルロースエステル以外の樹脂の含有量としては0.1〜30質量%が好ましい。
(マット剤)
また、本発明の光学フィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては無機化合物として、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
二酸化珪素微粒子の一次粒子平均径としては、5〜16nmが好ましく、5〜12nmがより好ましい。一次粒子の平均径が小さい方がヘイズが低く好ましい。また、見かけ比重は90〜200g/Lが好ましく、100〜200g/Lがさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
マット剤の添加量は1m2当たり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gがさらに好ましく、0.10〜0.18gが特に好ましい。
二酸化珪素微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製のAEROSIL R972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600、NAX50等、日本触媒(株)製のKE−P10、KE−P30、KE−P100、KE−P150等が挙げらる。
この中でも、AEROSIL200V、R972Vが一次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/L以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましい。
また、NAX50、KE−P30、KE−P100は、少量で摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
また、酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
また、ポリマーの例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。
中でもシリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これら微粒子は、通常平均粒径が0.01〜1.0μmの二次粒子を形成させることが好ましく、0.1〜0.8μmがさらに好ましく、0.2〜0.5μmが最も好ましい。
これらの微粒子は光学フィルム中では、一次粒子の凝集体として存在し光学フィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を形成させる。
これらの微粒子の含有量は、光学フィルムに対して0.005〜0.3質量%が好ましく、0.05〜0.2質量%が好ましく、0.1〜0.2質量%が最も好ましい。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。
(レタデーション制御剤)
本発明の光学フィルムは、液晶表示品質の向上のために、光学フィルム中にレターデーション制御剤を添加したり、配向膜を形成して液晶層を設け、偏光板保護フィルムと液晶層由来のレターデーションを複合化したりすることにより光学補償能を付与することができる。
レターデーションを調節するために添加する化合物は、欧州特許911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション制御剤として使用することもできる。あるいは、特開2006−2025号公報に記載の棒状化合物が挙げられる。また二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。
該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。
中でも、特開2006−2026号公報に記載の1,3,5−トリアジン環が特に好ましい。
(溶融流延法)
本発明の光学フィルムは、溶融流延によって形成される。
溶液流延法において用いられる溶媒(例えば塩化メチレン等)を用いずに、加熱溶融する溶融流延による成形法は、さらに詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度等に優れる光学フィルムを得るためには、溶融押し出し法が優れている。
以下、溶融押し出し法を例にとり、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。
図1は、本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置の1つの実施形態の一例を示す概略フローシート図である。
図2は、図1の製造装置の要部拡大の一例を示すフローシートである。
光学フィルムの製造方法は、セルロース樹脂等の光学フィルム材料を混合した後、押出し機1を用いて、流延ダイ4から第1冷却ロール5上に溶融押し出し、第1冷却ロール5に外接させるとともに、さらに、第2冷却ロール7、第3冷却ロール8の合計3本の冷却ロールに順に外接させて、冷却固化して光学フィルム10とする。
ついで、剥離ロール9によって剥離した光学フィルム10を、ついで延伸装置12により光学フィルムの両端部を把持して幅方向に延伸した後、巻取り装置16により巻き取る。
また、平面性を矯正するために溶融フィルムを第1冷却ロール5表面に挟圧する6が設けられている。このタッチロール6は表面が弾性を有し、第1冷却ロール5との間でニップを形成している。タッチロール6についての詳細は後述する。
光学フィルムの製造方法において、溶融押し出しの条件は、他のポリエステル等の熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして行なうことができる。材料は予め乾燥させておくことが好ましい。真空または減圧乾燥機や除湿熱風乾燥機等で水分を1000ppm以下、好ましくは200ppm以下に乾燥させることが望ましい。
例えば、熱風や真空または減圧下で乾燥したセルロースエステル系樹脂を押出し機1を用いて、押し出し温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルター2等で濾過し、異物を除去する。
供給ホッパー(図示略)から押出し機1へ導入する際は、真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして、酸化分解等を防止することが好ましい。
可塑剤等の添加剤を予め混合しない場合は、それらを押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサー等の混合装置を用いることが好ましい。
本発明において、セルロース樹脂と、その他必要により添加される安定化剤等の添加剤は、溶融する前に混合しておくことが好ましく、セルロース樹脂と添加剤を加熱前に混合することがさらに好ましい。混合は、混合機等により行なってもよく、また、前記したようにセルロース樹脂調製過程において混合してもよい。混合機を使用する場合は、V型混合機、円錐スクリュー型混合機、水平円筒型混合機等、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー等一般的な混合機を用いることができる。
上記のように光学フィルム構成材料を混合した後に、その混合物を押出し機1を用いて直接溶融して製膜するようにしてもよいが、一旦、光学フィルム構成材料をペレット化した後、該ペレットを押出し機1で溶融して製膜するようにしてもよい。
また、光学フィルム構成材料が、融点の異なる複数の材料を含む場合には、融点の低い材料のみが溶融する温度で一旦、いわゆるおこし状の半溶融物を作製し、半溶融物を押出し機1に投入して製膜することも可能である。
光学フィルム構成材料に熱分解しやすい材料が含まれる場合には、溶融回数を減らす目的で、ペレットを作製せずに直接製膜する方法や、上記のようなおこし状の半溶融物を作ってから製膜する方法が好ましい。
押出し機1は、市場で入手可能な種々の押出し機を使用可能であるが、溶融混練押出し機が好ましく、単軸押出し機でも2軸押出し機でもよい。
光学フィルム構成材料からペレットを作製せずに、直接製膜を行なう場合、適当な混練度が必要であるため2軸押出し機を用いることが好ましいが、単軸押出し機でも、スクリューの形状をマドック型、ユニメルト、ダルメージ等の混練型のスクリューに変更することにより、適度の混練が得られるので、使用可能である。光学フィルム構成材料として、一旦、ペレットやおこし状の半溶融物を使用する場合は、単軸押出し機でも2軸押出し機でも使用可能である。
押出し機1内及び押出した後の冷却工程は、窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、あるいは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが好ましい。
押出し機1内の光学フィルム構成材料の溶融温度は、光学フィルム構成材料の粘度や吐出量、製造するシートの厚み等によって好ましい条件が異なるが、150〜300℃が好ましく、180〜270℃がより好ましく、200〜250℃がさらに好ましい。押出し時の溶融粘度は、10〜100000ポイズ、好ましくは100〜10000ポイズである。また、押出し機1内での光学フィルム構成材料の滞留時間は短い方が好ましく、5分以内、好ましくは3分以内、より好ましくは2分以内である。
滞留時間は、押出し機1の種類、押出す条件にも左右されるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。
押出し機1のスクリューの形状や回転数等は、光学フィルム構成材料の粘度や吐出量等により適宜選択される。本発明において押出し機1でのせん断速度は、1/秒〜10000/秒、好ましくは5/秒〜1000/秒、より好ましくは10/秒〜100/秒である。
本発明に使用できる押出し機1としては、一般的にプラスチック成形機として入手可能である。
押出し機1から押し出された光学フィルム構成材料は、流延ダイ4に送られ、流延ダイ4のスリットから光学フィルム状に押し出される。流延ダイ4はシートや光学フィルムを製造するために用いられるものであれば特に限定はされない。
流延ダイ4の材質としては、ハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)等を溶射もしくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以降の砥石を用いるラッピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は樹脂の流れ方向に垂直な方向)、電解研磨、電解複合研磨等の加工を施したもの等が挙げられる。流延ダイ4のリップ部の好ましい材質は、流延ダイ4と同様である。またリップ部の表面精度は0.5S以下が好ましく、0.2S以下がより好ましい。
この流延ダイ4のスリットは、そのギャップが調整可能なように構成されている。
これを図3(a)は流延ダイの要部の一例を示す外観図、図3(b)は流延ダイの要部の一例を示す断面図である。
流延ダイ4のスリット32を形成する一対のリップのうち、一方は剛性の低い変形しやすいフレキシブルリップ33であり、他方は固定リップ34である。
そして、多数のヒートボルト35が流延ダイ4の幅方向すなわちスリット32の長さ方向に一定ピッチで配列されている。各ヒートボルト5には、埋め込み電気ヒータ37と冷却媒体通路とを具えたブロック36が設けられ、各ヒートボルト35が各ブロック36を縦に貫通している。
ヒートボルト35の基部はダイ本体31に固定され、先端はフレキシブルリップ33の外面に当接している。そしてブロック36を常時空冷しながら、埋め込み電気ヒータ37の入力を増減してブロック36の温度を上下させ、これによりヒートボルト35を熱伸縮させて、フレキシブルリップ33を変位させて光学フィルムの厚さを調整する。
ダイ後流の所要箇所に厚さ計を設け、これによって検出されたウェブ厚さ情報を制御装置にフィードバックし、この厚さ情報を制御装置で設定厚み情報と比較し、同装置から来る補正制御量の信号によってヒートボルトの発熱体の電力またはオン率を制御するようにすることもできる。
ヒートボルトは、好ましくは、長さ20〜40cm、直径7〜14mmを有し、複数、例えば数十本のヒートボルトが、好ましくはピッチ20〜40mmで配列されている。
ヒートボルトの代わりに、手動で軸方向に前後動させることによりスリットギャップを調節するボルトを主体とするギャップ調節部材を設けてもよい。
ギャップ調節部材によって調節されたスリットギャップは、通常200〜1000μm、好ましくは300〜800μm、より好ましくは400〜600μmである。
第1〜第3冷却ロールは、肉厚が20〜30mm程度のシームレスな鋼管製で、表面が鏡面に仕上げられている。その内部には、冷却液を流す配管が配置されており、配管を流れる冷却液によってロール上の光学フィルムから熱を吸収できるように構成されている。
一方、第1冷却ロール5に当接するタッチロール6は、表面が弾性を有し、第1冷却ロール5への押圧力によって第1冷却ロール5の表面に沿って変形し、第1ロール5との間にニップを形成する。すなわち、タッチロール6が本発明の挟圧回転体に相当する。
図4は挟圧回転体の第1実施形態の一例を示す断面図である。(タッチロール6の一実施形態(以下、タッチロールA)の概略断面)を示す。図に示すように、タッチロールAは、可撓性の金属スリーブ41の内部に弾性ローラ42を配したものである。
金属スリーブ41は厚さ0.3mmのステンレス製であり、可撓性を有する。金属スリーブ41が薄すぎると強度が不足し、逆に厚すぎると弾性が不足する。
これらのことから、金属スリーブ41の厚さとしては、0.1〜1.5mmが好ましい。
弾性ローラ42は、軸受を介して回転自在な金属製の内筒43の表面にゴム44を設けてロール状としたものである。
そして、タッチロールAが第1冷却ロール5に向けて押圧されると、弾性ローラ42が金属スリーブ41を第1冷却ロール5に押しつけ、金属スリープ41及び弾性ローラ42は第1冷却ロール5の形状になじんだ形状に対応しつつ変形し、第1冷却ロールとの間にニップを形成する。金属スリーブ41の内部で弾性ローラ42との間に形成される空間には、冷却水45が流される。
図5は挟圧回転体の第2実施形態の一例(以下、タッチロールB)を示す回転軸に垂直な平面での断面図である。
図6は挟圧回転体の第2実施形態(タッチロールB)の回転軸を含む平面の一例を示す断面図である。
図5、図6においてタッチロールBは、可撓性を有する、シームレスなステンレス鋼管製(厚さ4mm)の外筒51と、この外筒51の内側に同一軸心状に配置された高剛性の金属内筒52とから概略構成されている。
外筒51と内筒52との間の空間53には、冷却液54が流される。詳しくは、タッチロールBは、両端の回転軸55a、55bに外筒支持フランジ56a、56bが取付けられ、これら両外筒支持フランジ56a、56bの外周部間に薄肉金属外筒51が取付けられている。
また、一方の回転軸55aの軸心部に形成されて流体戻り通路57を形成する流体排出孔58内に、流体供給管59が同一軸心状に配設され、この流体供給管59が薄肉金属外筒51内の軸心部に配置された流体軸筒60に接続固定されている。
この流体軸筒60の両端部に内筒支持フランジ61a、61bがそれぞれ取り付けられ、これら内筒支持フランジ61a、61bの外周部間から他端側外筒支持フランジ56bにわたって約15〜20mm程度の肉厚を有する金属内筒52が取付けられている。
そしてこの金属内筒52と薄肉金属外筒51との間に、例えば10mm程度の冷却液の流送空間53が形成され、また金属内筒52に両端部近傍には、流送空間53と内筒支持フランジ61a、61b外側の中間通路62a、62bとを連通する流出口52a及び流入口52bがそれぞれ形成されている。
また、外筒51は、ゴム弾性に近い柔軟性と可撓性、復元性をもたせるために、弾性力学の薄肉円筒理論が適用できる範囲内で薄肉化が図られている。
この薄肉円筒理論で評価される可撓性は、肉厚t/ロール半径rで表されており、t/rが小さいほど可撓性が高まる。
このタッチロールBではt/r≦0.03の場合に可撓性が最適の条件となる。
通常、一般的に使用されているタッチロールは、ロール径R=200〜500mm(ロール半径r=R/2)、ロール有効幅L=500〜1600mmで、r/L<1で横長の形状である。
そして図6に示すように、例えばロール径R=300mm、ロール有効幅L=1200mmの場合、肉厚tの適正範囲は150×0.03=4.5mm以下であるが、溶融シート幅を1300mmに対して平均線圧を98N/cmで挟圧する場合、同一形状のゴムロールと比較して、外筒51の肉厚を3mmとすることで相当ばね定数も等しく、外筒51と冷却ロールとのニップのロール回転方向のニップ幅kも約9mmで、このゴムロールのニップ幅約12mmとほぼ近い値を示し、同じような条件下で挟圧できることが分かる。
なお、このニップ幅kにおけるたわみ量は0.05〜0.1mm程度である。
ここで、t/r≦0.03としたが、一般的なロール径R=200〜500mmの場合では、特に2mm≦t≦5mmの範囲とすると、可撓性も十分に得られ、また機械加工による薄肉化も容易に実施でき、極めて実用的な範囲となる。肉厚が2mm以下では加工時の弾性変形で高精度な加工ができない。
この2mm≦t≦5mmの換算値は、一般的なロール径に対して0.008≦t/r≦0.05となるが、実用にあたってはt/r≦0.03の条件下でロール径に比例して肉厚も大きくするとよい。
例えばロール径:R=200ではt=2〜3mm、ロール径:R=500ではt=4〜5mmの範囲で選択する。
このタッチロールA、Bは付勢手段により第1冷却ロールに向けて付勢される。その付勢手段の付勢力をF、ニップにおける光学フィルムの、第1冷却ロール5の回転軸に沿った方向の幅Wを除した値F/W(線圧)は、9.8〜147N/cmに設定される。
本発明において、タッチロールA、Bと第1冷却ロール5との間にニップが形成され、当該ニップを光学フィルムが通過する間に平面性を矯正することが好ましい。従って、タッチロールが剛体で構成され、第1冷却ロールとの間にニップが形成されない場合と比べて、小さい線圧で長時間かけて光学フィルムを挟圧するので、平面性をより確実に矯正することができる。
すなわち、線圧が9.8N/cmよりも小さいと、ダイラインを十分に解消することができなくなる。逆に、線圧が147N/cmよりも大きいと、光学フィルムがニップを通過しにくくなり、光学フィルムの厚さにかえってムラができてしまう。
また、タッチロールA、Bの表面を金属で構成することにより、タッチロールの表面がゴムである場合よりもタッチロールA、Bの表面を平滑にすることができるので、平滑性の高い光学フィルムを得ることができる。なお、弾性ローラ42の弾性体44の材質としては、エチレンプロピレンゴム、ネオプレンゴム、シリコンゴム等を用いることができる。
さて、タッチロール6によってダイラインを良好に解消するためには、タッチロール6が光学フィルムを挟圧するときの光学フィルムの粘度が適切な範囲であることが重要となる。
また、セルロースエステルは温度による粘度の変化が比較的大きいことが知られている。
従って、タッチロール6が光学フィルムを挟圧するときの粘度を適切な範囲に設定するためには、タッチロール6がセルロースフィルムを挟圧するときの光学フィルムの温度を適切な範囲に設定することが重要となる。
光学フィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、光学フィルムがタッチロール6に挟圧される直前の光学フィルムの温度Tを、Tg<T<Tg+110℃を満たすように設定することが好ましい。
即ち、タッチロール6に挟圧される直前の光学フィルムの温度Tが上記の範囲にすると、光学フィルムを挟圧するときの光学フィルムの粘度を適切な範囲に設定することができ、ダイラインの矯正が可能となり、また、光学フィルム表面とロールが均一に接着し、ダイラインの矯正が可能となる。
好ましくはTg+10℃<T<Tg+90℃、さらに好ましくはTg+20℃<T<Tg+70℃である。
タッチロール6が光学フィルムを挟圧するときの光学フィルムの温度を適切な範囲に設定するには、流延ダイ4から押し出された溶融物が第1冷却ロール5に接触する位置P1から第1冷却ロール5とタッチロール6とのニップの、第1冷却ロール5の回転方向に沿った長さLを調整すればよい。
本発明において、第1ロール5、第2ロール6に好ましい材質は、炭素鋼、ステンレス鋼、樹脂、等が挙げられる。また、表面精度は高くすることが好ましく表面粗さとして0.3S以下、より好ましくは0.01S以下とする。
本発明においては、流延ダイ4の開口部(リップ)から第1ロール5までの部分を70kPa以下に減圧させることにより、上記、ダイラインの矯正効果がより大きく発現する 好ましくは減圧は50〜70kPaである。流延ダイ4の開口部(リップ)から第1ロール5までの部分の圧力を70kPa以下に保つ方法としては、特に制限はないが、流延ダイ4からロール周辺を耐圧部材で覆い、減圧する等の方法がある。
このとき、吸引装置は、装置自体が昇華物の付着場所にならないようヒーターで加熱する等の処置を施すことが好ましい。本発明では、吸引圧が小さすぎると昇華物を効果的に吸引できないため、適当な吸引圧とする必要がある。
本発明において、Tダイ4から溶融状態のフィルム状のセルロースエステル系樹脂を、第1ロール(第1冷却ロール)5、第2冷却ロール7、及び第3冷却ロール8に順次密着させて搬送しながら冷却固化させ、未延伸の光学フィルム10を得る。
図1に示す本発明の実施形態では、第3冷却ロール8から剥離ロール9によって剥離した冷却固化された未延伸の光学フィルム10は、ダンサーロール(光学フィルム張力調整ロール)11を経て延伸機12に導き、そこで光学フィルム10を横方向(幅方向)に延伸する。この延伸により、光学フィルム中の分子が配向される。
光学フィルムを幅方向に延伸する方法は、公知のテンター等を好ましく用いることができる。
特に延伸方向を幅方向とすることで、偏光フィルムとの積層がロール形態で実施できるので好ましい。幅方向に延伸することで、セルロースエステル系樹脂フィルムからなる光学フィルムの遅相軸は幅方向になる。
一方、偏光フィルムの透過軸も、通常、幅方向である。偏光フィルムの透過軸と光学フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、液晶表示装置の表示コントラストを高くすることができるとともに、良好な視野角が得られるのである。
光学フィルム構成材料のガラス転移温度Tgは光学フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率を異ならしめることにより制御できる。
光学フィルムとして位相差フィルムを作製する場合、Tgは120℃以上、好ましくは135℃以上とすることが好ましい。液晶表示装置においては、画像の表示状態において、装置自身の温度上昇、例えば光源由来の温度上昇によって光学フィルムの温度環境が変化する。
このとき光学フィルムの使用環境温度よりも光学フィルムのTgが120℃以上であると、延伸によって光学フィルム内部に固定された分子の配向状態に由来するリタデーション値及び光学フィルムとしての寸法形状に調整することが容易である。
光学フィルムのTgを250℃以下にすると、光学フィルム構成材料を光学フィルム化するときの温度を最適化することができ、加熱するエネルギー消費が激減し、また光学フィルム化するときの材料自身の分解なく、着色も生じにくい。
従って、Tgは120℃〜250℃が好ましい。
また延伸工程には公知の熱固定条件、冷却、緩和処理を行なってもよく、目的とする光学フィルムに要求される特性を有するように適宜調整すればよい。
位相フィルムの物性と液晶表示装置の視野角拡大のための位相フィルムの機能付与するために、上記延伸工程、熱固定処理は適宜選択して行なわれている。このような延伸工程、熱固定処理を含む場合、加熱加圧工程は、それらの延伸工程、熱固定処理の前に行なうようにする。
光学フィルムとして位相差フィルムを製造し、さらに偏光板保護フィルムの機能を複合させる場合、屈折率制御を行う必要が生じるが、その屈折率制御は延伸操作により行なうことが可能であり、また延伸操作が好ましい方法である。以下、その延伸方法について説明する。
位相差フィルムの延伸工程において、セルロース樹脂の1方向に1.0〜2.0倍及び光学フィルム面内にそれと直交する方向に1.01〜2.5倍延伸することで、必要とされるリタデーションRo及びRthを制御することができる。ここで、Roとは面内リタデーションを示し、面内の長手方向MDの屈折率と幅方向TDの屈折率との差に厚みを乗じたもの、Rthとは厚み方向リタデーションを示し、面内の屈折率(長手方向MDと幅方向TDの平均)と厚み方向の屈折率との差に厚みを乗じたものである。
延伸は、例えば光学フィルムの長手方向及びそれと光学フィルム面内で直交する方向、即ち幅方向に対して、逐次または同時に行なうことができる。このとき少なくとも1方向に対しての延伸倍率が小さ過ぎると十分な位相差が得られず、大き過ぎると延伸が困難となりフィルム破断が発生してしまう場合がある。
互いに直交する2軸方向に延伸することは、光学フィルムの屈折率nx、ny、nzを所定の範囲に入れるために有効な方法である。ここで、nxとは長手MD方向の屈折率、nyとは幅手TD方向の屈折率、nzとは厚み方向の屈折率である。
例えば溶融流延方向に延伸した場合、幅方向の収縮が大き過ぎると、nzの値が大きくなり過ぎてしまう。この場合、光学フィルムの幅収縮を抑制、あるいは幅方向にも延伸することで改善できる。幅方向に延伸する場合、幅方向で屈折率に分布が生じることがある。
この分布は、テンター法を用いた場合に現れることがあり、光学フィルムを幅方向に延伸したことで、光学フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、いわゆるボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、流延方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制でき、幅方向の位相差の分布を少なくできる。
互いに直行する2軸方向に延伸することにより、得られる光学フィルムの膜厚変動が減少できる。位相差フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のムラが問題となることがある。
光学フィルムの膜厚変動は、±3%、さらに±1%の範囲とすることが好ましい。以上のような目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に1.0〜2.0倍、幅方向に1.01〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に1.01〜1.5倍、幅方向に1.05〜2.0倍に範囲で行なうことが必要とされるリタデーション値を得るためにより好ましい。
長手方向に偏光子の吸収軸が存在する場合、幅方向に偏光子の透過軸が一致することになる。長尺状の偏光板を得るためには、位相差フィルムは、幅方向に遅相軸を得るように延伸することが好ましい。
応力に対して、正の複屈折を得るセルロースエステルを用いる場合、上述の構成から、幅方向に延伸することで、位相差フィルムの遅相軸が幅方向に付与することができる。
この場合、表示品質の向上のためには、位相差フィルムの遅相軸が、幅方向にある方が好ましく、目的とするリタデーション値を得るためには、下記式の条件を満たすことが必要である。
式 (幅方向の延伸倍率)>(流延方向の延伸倍率)
延伸後、光学フィルムの端部をスリッター13により製品となる幅にスリットして裁ち落とした後、エンボスリング14及びバックロール15よりなるナール加工装置によりナール加工(エンボッシング加工)を光学フィルム両端部に施し、巻取り機16によって巻き取ることにより、光学フィルム(元巻き)F中の貼り付きや、すり傷の発生を防止する。
ナール加工の方法は、凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、光学フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、変形しており、光学フィルム製品として使用できないので、切除されて、原料として再利用される。
次に、光学フィルムの巻取り工程は、円筒形巻き光学フィルムの外周面とこれの直前の移動式搬送ロールの外周面との間の最短距離を一定に保持しながら光学フィルムを巻取りロールに巻き取るものである。かつ巻取りロールの手前には、光学フィルムの表面電位を除去または低減する除電ブロア等の手段が設けられている。
本発明の光学フィルムの製造に係わる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻き取り方法で巻き取ることができる。なお、光学フィルムの巻取り時の初期巻取り張力が90.2〜300.8N/mであるのが好ましい。
本発明の方法における光学フィルムの巻き取り工程では、温度20〜30℃、湿度20〜60%RHの環境条件にて、光学フィルムを巻き取ることが好ましい。
このように、光学フィルムの巻き取り工程での温度及び湿度を規定することにより、厚み方向リタデーション(Rt)の湿度変化の耐性が向上する。
巻き取り工程における温度が20〜30℃の範囲であれば、シワが発生がなく、光学フィルム巻品質劣化もない。
また、光学フィルムの巻き取り工程における湿度が20〜60%RHであれば、帯電しにくく、光学フィルム巻品質劣化も削減され、巻品質に優れ、貼り付き故障もなく、搬送性の劣化もない。
光学フィルムをロール状に巻き取る際の、巻きコアとしては、円筒上のコアであれは、どのような材質のものであってもよいが、好ましくは中空プラスチックコアであり、プラスチック材料としては加熱処理温度にも耐える耐熱性プラスチックであればどのようなものであってもよく、フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
またガラス繊維等の充填材により強化した熱硬化性樹脂が好ましい。例えば、中空プラスチックコア:FRP製の外径6インチ(以下、1インチは2.54cmである。)、内径5インチの巻きコアが用いられる。
これらの巻きコアへの巻き数は、100巻き以上であることが好ましく、500巻き以上であることがさらに好ましく、巻き厚は5cm以上であることが好ましく、光学フィルム基材の幅は80cm以上であることが好ましく、1m以上であることが特に好ましい。
本発明により得られる製造的効果は、特に光学フィルムの長さが100m以上の長尺で、フィルムの幅が1.35m以上の広幅の巻物においてより顕著となり、長さが1500m、2500m、5000mとより長尺化する程、幅が2m、4mと広幅になるほど、光学フィルムの製造に適している。
本発明の光学フィルムの製造において、ロール長さは、生産性と運搬性を考慮すると、長さは10〜5000mが好ましく、より好ましくは50〜4500mである。
このときの光学フィルムの幅は、偏光子の幅や製造ラインに適した幅を選択することができるが、0.5〜4.0m、好ましくは0.6〜3.0mの幅で光学フィルムを製造してロール状に巻き取ることが好ましい。
《光学フィルム》
本発明の光学フィルムとは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の各種表示装置に用いられる機能フィルムのことであり、詳しくは液晶表示装置用の偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、ハードコートフィルム、防眩フィルム、帯電防止フィルム、視野角拡大等の光学補償フィルム等である。
本発明の光学フィルムは、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムに好ましく用いられ、特に、偏光板保護フィルムに好ましく用いられる。
位相差フィルムを偏光板保護フィルムとする場合、該保護フィルムの厚さは、10〜500μmが好ましい。
特に、下限は20μm以上、好ましくは35μm以上である。上限は150μm以下、好ましくは120μm以下である。特に好ましい範囲は25〜90μmである。
位相差フィルムの厚さが500μm以下であると、ノート型パソコンやモバイル型電子機器に用いる液晶表示においては、特に薄型軽量の目的に適しており好ましい。
一方、位相差フィルムの厚さ10μm以上であると、位相差フィルムとしてのリタデーションの発現が可能となり、加えて光学フィルムの透湿性が低くなり、偏光子を湿度から保護する能力が向上し好ましい。
位相差フィルムの遅相軸または進相軸がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角度をθ1とすると、θ1は−1〜+1°、好ましくは−0.5〜+0.5°となるようにする。
このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器社製)を用いて行なうことができる。
θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制または防止することに寄与し、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現に寄与する。
位相差フィルムがマルチドメイン化されたVAモードに用いられるとき、位相差フィルムの配置は、位相差フィルムの進相軸がθ1として上記領域に配置することで、表示画質の向上に寄与し、偏光板及び液晶表示装置としてMVAモードとしたとき、例えば図7に示される構成をとることができる。
図7は液晶表示装置の構成図の概略を示す分解の一例を示す斜視図である。
図7において、21a、21bは保護フィルム、22a、22bは位相差フィルム、25a、25bは偏光子、23a、23bは光学フィルムの遅相軸方向、24a、24bは偏光子の透過軸方向、26a、26bは偏光板、27は液晶セル、29は液晶表示装置を示している。
光学フィルムの面内方向のリタデーションRo分布は、5%以下に調整することが好ましく、より好ましくは2%以下であり、特に好ましくは、1.5%以下である。
また、光学フィルムの厚み方向のリタデーションRt分布を10%以下に調整することが好ましいが、さらに好ましくは、2%以下であり、特に好ましくは、1.5%以下である。
位相差フィルムにおいて、リタデーション値の分布変動が小さい方が好ましく、液晶表示装置に位相差フィルムを含む偏光板を用いるとき、該リタデーション分布変動が小さいことが色ムラ等を防止する観点で好ましい。
位相差フィルムを、VAモードまたはTNモードの液晶セルの表示品質の向上に適したリタデーション値を有するように調整し、特にVAモードとして上記のマルチドメインに分割してMVAモードに好ましく用いられるようにするには、面内リタデーションRoを30nmよりも大きく、95nm以下に、かつ厚み方向リタデーションRtを70nmよりも大きく、400nm以下の値に調整することが求められる。
上記の面内リタデーションRoは、2枚の偏光板がクロスニコルに配置され、偏光板の間に液晶セルが配置された、例えば図7に示す構成であるときに、表示面の法線方向から観察するときを基準にしてクロスニコル状態にあるとき、表示面の法線から斜めに観察したとき、偏光板のクロスニコル状態からのずれが生じ、これが要因となる光漏れを、主に補償する。
厚さ方向のリタデーションは、上記TNモードやVAモード、特にMVAモードにおいて液晶セルが黒表示状態であるときに、同様に斜めから見たときに認められる液晶セルの複屈折を主に補償するために寄与する。
図7に示すように、液晶表示装置において、液晶セルの上下に偏光板が二枚配置された構成である場合、図中の22a及び22bは、厚み方向リタデーションRtの配分を選択することができ、上記範囲を満たしかつ厚み方向リタデーションRtの両者の合計値が140nmよりも大きくかつ500nm以下にすることが好ましい。
このとき22a及び22bの面内リタデーションRo、厚み方向リタデーションRtが両者同じであることが、工業的な偏光板の生産性向上において好ましい。特に好ましくは面内リタデーションRoが35nmよりも大きくかつ65nm以下であり、かつ厚み方向リタデーションRtが90nmよりも大きく180nm以下で、図7の構成でMVAモードの液晶セルに適用することである。
液晶表示装置において、一方の偏光板に例えば市販の偏光板保護フィルムとして面内リタデーションRo=0〜4nm及び厚み方向リタデーションRt=20〜50nmで厚さ35〜85μmのTACフィルムが、例えば図7の22bの位置で使用されている場合、他方の偏光板に配置される偏光フィルム、例えば、図7の22aに配置する位相差フィルムは、面内リタデーションRoが30nmよりも大きく95nm以下であり、かつ厚み方向リタデーションRtが140nmよりも大きく400nm以下であるものを使用することにより、表示品質が向上し、かつ光学フィルムの生産面からも好ましい。
《偏光板》
本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。
本発明の光学フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した光学フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
もう一方の面にも本発明の光学フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。
本発明の光学フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは市販の光学フィルムを用いることができる。
例えば、市販の光学フィルムとして、KC8UX2M、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UY−HA、KC8UX−RHA(以上、コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
あるいはさらにディスコチック液晶、棒状液晶、コレステリック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることも好ましい。
例えば、特開2003−98348記載の方法で光学異方性層を形成することができる。
本発明の光学フィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができる。
あるいは、光学フィルム以外の環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート等の光学フィルムをもう一方の面の偏光板保護フィルムとして用いてもよい。
上記アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、同6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施して偏光板加工を行なってもよい。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
偏光膜の膜厚は5〜40μm、好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。
該偏光膜の面上に、本発明のセルロースエステルフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
偏光膜は一軸方向(通常は長手方向)に延伸されているため、偏光板を高温高湿の環境下に置くと延伸方向(通常は長手方向)は縮み、延伸と垂直方向(通常は幅方向)には伸びる。偏光板保護用フィルムの膜厚が薄くなるほど偏光板の伸縮率は大きくなり、特に偏光膜の延伸方向の収縮量が大きい。
通常、偏光膜の延伸方向は偏光板保護用フィルムの流延方向(MD方向)と貼り合わせるため、偏光板保護用フィルムを薄膜化する場合は、特に流延方向の伸縮率を抑えることが重要である。本発明の光学フィルムは極めて寸法安定性に優れるため、このような偏光板保護フィルムとして好適に使用される。
即ち60℃、90%RHの条件での耐久性試験によっても波打ち状のむらが増加することはなく、裏面側に光学補償フィルムを有する偏光板であっても、耐久性試験後に視野角特性が変動することなく良好な視認性を提供することができる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、さらに該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。
プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。
また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶セルへ貼合する面側に用いられる。
《液晶表示装置》
本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルム(位相差フィルムを兼ねる場合も含む)として含む偏光板は、通常の偏光板と比較して高い表示品質を発現させることができ、特にマルチドメイン型の液晶表示装置、より好ましくは複屈折モードによってマルチドメイン型の液晶表示装置への使用に適している。
本発明の偏光板は、MVA(Multi−domein Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、CPA(Continuous Pinwheel Alignment)モード、OCB(Optical Compensated Bend)モード等に用いることができ、特定の液晶モード、偏光板の配置に限定されるものではない。
液晶表示装置はカラー化及び動画表示用の装置としても応用されつつあり、本発明により表示品質が改良され、コントラストの改善や偏光板の耐性が向上したことにより、疲れにくく忠実な動画像表示が可能となる。
位相差フィルムを含む偏光板を少なくとも含む液晶表示装置においては、本発明の光学フィルムとしての偏光板保護フィルムを含む偏光板を、液晶セルに対して、一枚配置するか、あるいは液晶セルの両側に二枚配置する。
このとき偏光板に含まれる偏光板保護フィルム側が液晶表示装置の液晶セルに面するように用いることで表示品質の向上に寄与できる。
図7においては22a及び22bの光学フィルムが液晶表示装置の液晶セルに面することになる。
このような構成において、本発明の光学フィルムとしての偏光板保護フィルムは、液晶セルを光学的に補償することができる。
本発明の偏光板を液晶表示装置に用いる場合は、液晶表示装置の偏光板の内の少なくとも一つの偏光板を、本発明の偏光板とすればよい。
本発明の偏光板を用いることで、表示品質が向上し、視野角特性に優れた液晶表示装置が提供できる。
本発明の偏光板において、偏光子からみて本発明の光学フィルムとしての偏光板保護フィルムとは反対側の面には、セルロース誘導体の偏光板保護フィルムが用いられ、汎用のTACフィルム等を用いることができる。液晶セルから遠い側に位置する偏光板保護フィルムは、表示装置の品質を向上する上で、他の機能性層を配置することも可能である。
例えば、反射防止、防眩、耐キズ、ゴミ付着防止、輝度向上のためにディスプレイとしての公知の機能層を構成物として含む光学フィルムや、または本発明の偏光板表面に貼付してもよいがこれらに限定されるものではない。
一般に位相差フィルムでは、上述のリタデーション値としてRoまたはRtの変動が少ないことが安定した光学特性を得るために求められている。
特に複屈折モードの液晶表示装置は、これらの変動が画像のムラを引き起こす原因となることがある。
本発明に従い溶融流延製膜法により製造される偏光板保護フィルムは、セルロースエステルを主体として構成されるため、セルロースエステル固有のケン化を活用してアルカリ処理工程を活用することができる。
これは、偏光子を構成する樹脂がポリビニルアルコールであるとき、従来の偏光板保護フィルムと同様に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて偏光板保護フィルムと貼合することができる。このために本発明は、従来の偏光板加工方法を適用できる点で優れている。
本発明において、特に100m以上の長尺の巻物において偏光板製造の生産性の向上が顕著となり、1500m、2500m、5000mとより長尺化する程、生産性の向上が顕著となるため、ロール長さを長くすることが好ましい。
例えば、偏光板保護フィルム製造において、ロール長さは、生産性と運搬性を考慮すると、10〜5000m、好ましくは50〜4500mであり、このときのフィルムの幅は、偏光子の幅や製造ラインに適した幅を選択することができる。
光学フィルムの幅を、0.5〜4.0m、好ましくは0.6〜3.0mで製造してロール状に巻き取り、偏光板加工に供してもよく、また、目的の倍幅以上の光学フィルムを製造してロールに巻き取った後、断裁して目的の幅のロールを得て、このようなロールを偏光板加工に用いるようにしてもよい。
偏光板保護フィルム製造に際し、延伸の前及び/または後で帯電防止層、ハードコート層、易滑性層、接着層、防眩層、バリアー層等の機能性層を塗設してもよい。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことができる。
製膜工程において、カットされた光学フィルム両端のクリップ把持部分は、粉砕処理された後、あるいは必要に応じて造粒処理を行なった後、同じ品種の光学フィルム用原料としてまたは異なる品種の光学フィルム用原料として再利用してもよい。
前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースエステルを含む組成物を共押出しして、積層構造の光学フィルムを作製することもできる。
例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成の光学フィルムを作ることができる。
例えば、マット剤は、スキン層に多く、またはスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多く入れることができ、コア層のみに入れてもよい。
また、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えば、スキン層に低揮発性の可塑剤及び/または紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、あるいは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。
スキン層とコア層のガラス転移温度が異なっていてもよく、スキン層のガラス転移温度よりコア層のガラス転移温度が低いことが好ましい。
このとき、スキン層とコア層の両者のガラス転移温度を測定し、これらの体積分率より算出した平均値を上記ガラス転移温度Tgと定義して同様に扱うこともできる。
また、溶融流延時のセルロースエステルを含む溶融物の粘度もスキン層とコア層で異なっていてもよく、スキン層の粘度>コア層の粘度でも、コア層の粘度≧スキン層の粘度でもよい。
本発明の光学フィルムは、寸度安定性が、23℃、55%RHに24時間放置した光学フィルムの寸法を基準としたとき、80℃、90%RHにおける寸法の変動値が±2.0%未満であり、好ましくは1.0%未満であり、さらに好ましくは0.5%未満である。
本発明の光学フィルムを位相差フィルムとして偏光板保護フィルムに用いる際に、位相差フィルム自身に上記の範囲以上の変動を有すると、偏光板としてのリタデーションの絶対値と配向角が当初の設定とずれるために、表示品質の向上能の減少あるいは表示品質の劣化を引き起こすことがあるため好ましくない。