つぎに、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、フィルム材料として、種々の樹脂を用いることができるが、中でもセルロースエステルが好ましい。
セルロースエステルは、セルロース由来の水酸基がアシル基などで置換されたセルロースエステルである。例えば、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどのセルロースアシレートや、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートなどが挙げられる。中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、脂肪族ポリエステルグラフト側鎖を有するセルロースアセテートが好ましい。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その他の置換基が含まれていてもよい。
セルローストリアセテートの例としては、アセチル基の置換度が2.0以上3.0以下であることが好ましい。置換度をこの範囲にすることで、良好な成形性が得られ、かつ所望の面内リタデーション(Ro)、及び厚み方向リタデーション(Rt)を得ることができるのである。アセチル基の置換度が、この範囲より低いと、位相差フィルムとしての耐湿熱性、特に湿熱下での寸法安定性に劣る場合があり、置換度が大きすぎると、必要なリタデーション特性が発現しなくなる場合がある。
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。また、それらから得られたセルロースエステルは、それぞれ任意の割合で混合使用することができる。
本発明において、セルロースエステルの数平均分子量は、60000〜300000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。さらに70000〜200000が好ましい。
本発明において、セルロースエステルには、種々の添加剤を配合することができる。
本発明による光学フィルムの製造方法では、セルロースエステルと厚み方向リタデーション(Rt)を低減する添加剤とを含有するドープ組成物を用いるのが、好ましい。
本発明において、光学フィルムの厚み方向リタデーション(Rt)を低減することが、IPSモードで動作する液晶表示装置の視野角拡大の意味において重要であるが、本発明において、このようなリタデーション低減添加剤としては、下記のものが挙げられる。
一般に、光学フィルムのリタデーションは、セルロースエステル由来のリタデーションと、添加剤由来のリタデーションの和として現れる。従って、セルロースエステルのリタデーションを低減させるための添加剤とは、セルロースエステルの配向を乱し、かつ自身が配向しにくいおよび/または分極率異方性が小さい添加剤が厚み方向リタデーション(Rt)を効果的に低下させる化合物である。従って、セルロースエステルの配向を乱すための添加剤としては、芳香族系化合物より、脂肪族系化合物が好ましい。
ここで、具体的なリタデーション低減剤として、例えば、つぎの一般式(1)または(2)で表わされるポリエステルが挙げられる。
一般式(1) B1−(G−A−)mG−B1
一般式(2) B2−(G−A−)nG−B2
上記式中、B1はモノカルボン酸成分を表わし、B2はモノアルコール成分を表わし、Gは2価のアルコール成分を表わし、Aは2塩基酸成分を表わし、これらによって合成されたことを表わす。B1、B2、G、およびAは、いずれも芳香環を含まないことが特徴である。m、nは、繰り返し数を表わす。
B1で表わされるモノカルボン酸成分としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸等を用いることができる。
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜12であることが特に好ましい。酢酸を含有させると、セルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましいモノカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
B2で表わされるモノアルコール成分としては、特に制限はなく、公知のアルコール類を用いることができる。例えば炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールまたは脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜12であることが特に好ましい。
Gで表わされる2価のアルコール成分としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等を挙げることができるが、これらのうち、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましく、さらに、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールが好ましく用いられる。
Aで表わされる2塩基酸(ジカルボン酸)成分としては、脂肪族2塩基酸、脂環式2塩基酸が好ましく、例えば脂肪族2塩基酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等、特に、脂肪族カルボン酸としては、炭素数4〜12を有するもの、これらから選ばれる少なくとも1つのものを使用する。つまり、2種以上の2塩基酸を組み合わせて使用してよい。
上記の一般式(1)または(2)における繰り返し数m、nは、1以上で170以下が好ましい。
ポリエステルの重量平均分子量は、20000以下が好ましく、10000以下であることがさらに好ましい。特に重量平均分子量が500〜10000のポリエステルは、セルロースエステルとの相溶性が良好で、製膜において蒸発も揮発も起こらない。
ポリエステルの重縮合は常法によって行なわれる。例えば上記2塩基酸とグリコールの直接反応、上記の2塩基酸またはこれらのアルキルエステル類、例えば2塩基酸のメチルエステルとグリコール類とのポリエステル化反応またはエステル交換反応により熱溶融縮合法か、あるいはこれらの酸の酸クロライドとグリコールとの脱ハロゲン化水素反応の何れかの方法により用意に合成し得るが、重量平均分子量がさほど大きくないポリエステルは直接反応によるのが、好ましい。低分子量側に分布が高くあるポリエステルは、セルロースエステルとの相溶性が非常によく、フィルム形成後、透湿度も小さく、しかも透明性に富んだセルロースエステルフィルムを得ることができる。
分子量の調節方法は、特に制限がなく、従来の方法を使用できる。例えば、重合条件にもよるが、1価の酸または1価のアルコールで分子末端を封鎖する方法により、これらの1価のものの添加する量によりコントロールできる。この場合、1価の酸がポリマーの安定性から好ましい。例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸等を挙げることができるが、重縮合反応中には系外に溜去せず、停止して、このような1価の酸を反応系外に除去するときに溜去しやすいものが選ばれる。これらを混合使用しても良い。また、直接反応の場合には、反応中に溜去してくる水の量により反応を停止するタイミングを計ることよっても重量平均分子量を調節できる。その他、仕込むグリコールまたは2塩基酸のモル数を偏らせることよってもできるし、反応温度をコントロールしても調節できる。
上記一般式(1)または(2)で表わされるポリエステルは、セルロースエステルに対し、1〜40質量%含有することが好ましく、特に5〜15質量%含有することが好ましい。
本発明において、リタデーション低減添加剤としては、さらに下記のものが挙げられる。
本発明の光学フィルムの製造に使用するドープは、主に、セルロースエステル、リタデーション低減添加剤としてのポリマー(エチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー)、及び有機溶媒を含有する。
本発明において、リタデーション低減添加剤としてのポリマーを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量をあまり大きくしない方法でできるだけ分子量を揃えることのできる方法を用いることが望ましい。かかる重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、さらに特開2000−128911号公報または特開2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、あるいは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いられるが、特に、該公報に記載の方法が好ましい。
本発明において、有用なリタデーション低減添加剤としてのポリマーを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるがこれに限定されない。
エチレン性不飽和モノマーを重合して得られるリタデーション低減添加剤としてのポリマーを構成するエチレン性不飽和モノマー単位としては、まず、ビニルエステルとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等が挙げられる。
つぎに、アクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル等;メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものが挙げられる。
さらに、不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることができる。
上記モノマーで構成されるポリマーはコポリマーでもホモポリマーでもよく、ビニルエステルのホモポリマー、ビニルエステルのコポリマー、ビニルエステルとアクリル酸またはメタクリル酸エステルとのコポリマーが好ましい。
本発明において、アクリル系ポリマーという(単にアクリル系ポリマーという)のは、芳香環あるいはシクロヘキシル基を有するモノマー単位を有しないアクリル酸またはメタクリル酸アルキルエステルのホモポリマーまたはコポリマーを指す。
芳香環及びシクロヘキシル基を有さないアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。
アクリル系ポリマーは、上記モノマーのホモポリマーまたはコポリマーであるが、アクリル酸メチルエステルモノマー単位が30質量%以上を有していることが好ましく、また、メタクリル酸メチルエステルモノマー単位が40質量%以上有することが好ましい。特にアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルのホモポリマーが好ましい。
上述のエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマーは、いずれもセルロースエステルとの相溶性に優れ、蒸発や揮発もなく生産性に優れ、偏光板用保護フィルムとしての保留性がよく、透湿度が小さく、寸法安定性に優れている。
本発明において、水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマーの場合はホモポリマーではなく、コポリマーの構成単位である。この場合、好ましくは、水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位がアクリル系ポリマー中2〜20質量%含有することが好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、ドープ組成物が、セルロースエステルと、リタデーション低減添加剤としての重量平均分子量500以上3000以下のアクリル系ポリマーとを含有することが好ましい。
また、本発明の光学フィルムの製造方法においては、ドープ組成物が、セルロースエステルと、リタデーション低減添加剤としての重量平均分子量5000以上30000以下のアクリル系ポリマーとを含有するが好ましい。
本発明において、リタデーション低減添加剤としてのポリマーの重量平均分子量が500以上3000以下、あるいはまたポリマーの重量平均分子量が5000以上30000以下のものであれば、セルロースエステルとの相溶性が良好で、製膜中において蒸発も揮発も起こらない。また、製膜後の光学フィルムの透明性が優れ、透湿度も極めて低く、偏光板用保護フィルムとして優れた性能を示す。
本発明において、リタデーション低減添加剤として、側鎖に水酸基を有するポリマーも好ましく用いることができる。水酸基を有するモノマー単位としては、前記したモノマーと同様であるが、アクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル、またはこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることができ、好ましくは、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルである。ポリマー中に水酸基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルモノマー単位はポリマー中2〜20質量%含有することが好ましく、より好ましくは2〜10質量%である。
前記のようなポリマーが上記の水酸基を有するモノマー単位を2〜20質量%含有したものは、勿論、セルロースエステルとの相溶性、保留性、寸法安定性が優れ、透湿度が小さいばかりでなく、偏光板用保護フィルムとしての偏光子との接着性に特に優れ、偏光板の耐久性が向上する効果を有している。
また、本発明においては、上記ポリマーの主鎖の少なくとも一方の末端に水酸基を有することが好ましい。主鎖末端に水酸基を有するようにする方法は、特に主鎖の末端に水酸基を有するようにする方法であれば限定ないが、アゾビス(2−ヒドロキシエチルブチレート)のような水酸基を有するラジカル重合開始剤を使用する方法、2−メルカプトエタノールのような水酸基を有する連鎖移動剤を使用する方法、水酸基を有する重合停止剤を使用する方法、リビングイオン重合により水酸基を末端に有するようにする方法、特開2000−128911号公報または特開2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、あるいは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等により得ることができ、特に該公報に記載の方法が好ましい。この公報記載に関連する方法で作られたポリマーは、綜研化学社製のアクトフロー・シリーズとして市販されており、好ましく用いることができる。
上記の末端に水酸基を有するポリマー及び/または側鎖に水酸基を有するポリマーは、本発明において、セルロースエステルに対するポリマーの相溶性、透明性を著しく向上する効果を有する。
本発明において、有用なリタデーション低減添加剤としては、上記のほかにも、例えば特開2000−63560号公報記載のジグリセリン系多価アルコールと脂肪酸とのエステル化合物、特開2001−247717号公報記載のヘキソースの糖アルコールのエステルまたはエーテル化合物、特開2004−315613号公報記載のリン酸トリ脂肪族アルコールエステル化合物、特開2005−41911号公報記載の一般式(1)で表わされる化合物、特開2004−315605号公報記載のリン酸エステル化合物、特開2005−105139号公報記載のスチレンオリゴマー、および特開2005−105140号公報記載のスチレン系モノマーの重合体が挙げられる。
上述したリタデーション低減添加剤の含有量は、セルロースエステル系樹脂に対して5〜25質量%含有させることが好ましい。リタデーション低減添加剤の含有量が5質量%未満であれば、フィルムのリタデーション低減効果が発現しないので、好ましくない。またリタデーション低減添加剤の含有量が25質量%を超えると、いわゆるブリードアウトが生じるなど、フィルム中の安定性が低下するので、好ましくない。
本発明による光学フィルムの製造方法において、上記セルロース誘導体に対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
良溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類の他、メチルセロソルブ、ジメチルイミダゾリノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、ニトロエタン、塩化メチレン、アセト酢酸メチルなどが挙げられるが、1,3−ジオキソラン、THF、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸メチル及び塩化メチレンが好ましい。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。これらは、ドープを金属支持体に流延した後、溶媒が蒸発し始めてアルコールの比率が多くなることで、ウェブ(金属支持体上にセルロース誘導体のドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)をゲル化させ、ウェブを丈夫にして、金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロース誘導体の溶解を促進したりする役割もある。
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。これらのうち、ドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、かつ毒性がないことなどからエタノールが好ましい。これらの有機溶媒は、単独ではセルロース誘導体に対して溶解性を有しておらず、貧溶媒という。
このような条件を満たす好ましい高分子化合物であるセルロース誘導体を高濃度に溶解する溶剤として最も好ましい溶剤は塩化メチレン:エチルアルコールの比が95:5〜80:20の混合溶剤である。あるいは、酢酸メチル:エチルアルコール60:40〜95:5の混合溶媒も好ましく用いられる。
本発明において、フィルムには、フィルムに加工性・柔軟性・防湿性を付与する可塑剤、フィルムに滑り性を付与する微粒子(マット剤)、紫外線吸収機能を付与する紫外線吸収剤、フィルムの劣化を防止する酸化防止剤等を含有させても良い。
本発明において使用する可塑剤としては、特に限定はないが、フィルムにヘイズを発生させたり、フィルムからブリードアウトあるいは揮発しないように、セルロース誘導体や加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物の重縮合物と、水素結合などによって相互作用可能である官能基を有していることが好ましい。
このような官能基としては、水酸基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、カルボン酸残基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルホン酸残基、ホスホニル基、ホスホン酸残基等が挙げられるが、好ましくはカルボニル基、エステル基、ホスホニル基である。
このような可塑剤の例として、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることができるが、特に好ましくは多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等の非リン酸エステル系可塑剤である。
多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。
本発明に用いられる多価アルコールは、つぎの一般式(3)で表される。
一般式(3) R1−(OH)n
(ただし、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数を表す)
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
好ましい多価アルコールの例としては、アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
本発明において、多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させると、セルロース誘導体との相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は、特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが、さらに好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロース誘導体との相溶性の点では、小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
グリコレート系可塑剤は、特に限定されないが、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するグリコレート系可塑剤を、好ましく用いることができる。好ましいグリコレート系可塑剤としては、例えばブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等を用いることができる。
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等を用いることができるが、本発明では、リン酸エステル系可塑剤を実質的に含有しないことが好ましい。
ここで、「実質的に含有しない」とは、リン酸エステル系可塑剤の含有量が1質量%未満、好ましくは0.1質量%であり、特に好ましいのは添加していないことである。
これらの可塑剤は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
可塑剤の使用量は、1〜20質量%が好ましい。6〜16質量%がさらに好ましく、特に好ましくは8〜13質量%である。可塑剤の使用量が、セルロース誘導体に対して1質量%未満では、フィルムの透湿度を低減させる効果が少ないため、好ましくなく、20質量%を越えると、フィルムから可塑剤がブリードアウトし、フィルムの物性が劣化するため、好ましくない。
本発明において、セルロース誘導体には、滑り性を付与するために、マット剤等の微粒子を添加するのが好ましい。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
無機化合物の微粒子の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫等の微粒子が挙げられる。この中では、ケイ素原子を含有する化合物の微粒子であることが好ましく、特に二酸化ケイ素微粒子が好ましい。二酸化ケイ素微粒子としては、例えばアエロジル株式会社製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、R805、OX50、TT600などが挙げられる。
有機化合物の微粒子の例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素化合物樹脂、ウレタン樹脂等の微粒子が挙げられる。
微粒子の1次粒径は、特に限定されないが、最終的にフィルム中での平均粒径は、0.05〜5.0μm程度が好ましい。さらに好ましくは、0.1〜1.0μmである。
微粒子の平均粒径は、セルロースエステルフィルムを電子顕微鏡や光学顕微鏡で観察した際に、フィルムの観察場所における、粒子の長軸方向の長さの平均値を指す。フィルム中で観察される粒子であれば、1次粒子であっても、1次粒子が凝集した2次粒子であってもよいが、通常観察される多くは2次粒子である。
測定方法の一例としては、1つのフィルムにつき、ランダムに10箇所の垂直断面写真を撮影し、各断面写真について、長軸長さが、0.05〜5μmの範囲にある100μm2中の粒子個数をカウントする。このときカウントした粒子の長軸長さの平均値を求め、10箇所の平均値を平均した値を平均粒径とする。
微粒子の場合は、1次粒径、溶媒に分散した後の粒径、フィルムに添加された後の粒径が変化する場合が多く、重要なのは、最終的にフィルム中で微粒子がセルロースエステルと複合し凝集して形成される粒径をコントロールすることである。
ここで、微粒子の平均粒径が、5μmを超えた場合は、ヘイズの劣化等が見られたり、異物として巻状態での故障を発生する原因にもなる。また、微粒子の平均粒径が、0.05μm未満の場合は、フィルムに滑り性を付与するのが難しくなる。
上記の微粒子は、セルロースエステルに対して、0.04〜0.5質量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3質量%、さらに好ましくは0.05〜0.25質量%添加して使用される。微粒子の添加量が0.04質量%未満では、フィルム表面粗さが平滑になりすぎて、摩擦係数の上昇によりブロッキングを発生する。微粒子の添加量が0.5質量%を超えると、フィルム表面の摩擦係数が下がりすぎて、巻き取り時に巻きズレが発生したり、フィルムの透明度が低く、ヘイズが高くなるため、液晶表示装置用フィルムとしての価値を持たなくなるので、上記の範囲が好ましい。
微粒子の分散は、微粒子と溶剤を混合した組成物を高圧分散装置で処理することが好ましい。本発明で用いる高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。
高圧分散装置で処理することにより、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が980N/cm2以上であることが好ましい。さらに好ましくは、装置内部の最大圧力条件が1960N/cm2以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が100kcal/hr以上に達するものが、好ましい。
上記のような高圧分散装置としては、例えばMicrofluidics Corporation社製の超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザーが挙げられ、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモゲナイザーなどが挙げられる。
本発明において、微粒子は、低級アルコール類を25〜100質量%含有する溶剤中で分散した後、セルロースエステル(セルロース誘導体)を溶剤に溶解したドープと混合し、該混合液を金属支持体上に流延し、乾燥して製膜することを特徴とするセルロースエステルフィルムを得る。
ここで、低級アルコールの含有比率としては、好ましくは50〜100質量%、さらに好ましくは75〜100質量%である。
また、低級アルコール類の例としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。
低級アルコール以外の溶媒としては、特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
微粒子は、溶媒中で1〜30質量%の濃度で分散される。これ以上の濃度で分散すると、粘度が急激に上昇し、好ましくない。分散液中の微粒子の濃度としては、好ましく、5〜25質量%、さらに好ましくは、10〜20質量%である。
フィルムの紫外線吸収機能は、液晶の劣化防止の観点から、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムなどの各種光学フィルムに付与されていることが好ましい。このような紫外線吸収機能は、紫外線を吸収する材料をセルロース誘導体中に含ませても良く、セルロース誘導体からなるフィルム上に紫外線吸収機能のある層を設けてもよい。
本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報に記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
本発明において、有用な紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
また、紫外線吸収剤の市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を、好ましく使用できる。
また、本発明において使用し得る紫外線吸収剤であるベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明において、これらの紫外線吸収剤の配合量は、セルロースエステル(セルロース誘導体)に対して、0.01〜10質量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜5質量%が好ましい。紫外線吸収剤の使用量が少なすぎると、紫外線吸収効果が不充分の場合があり、紫外線吸収剤の多すぎると、フィルムの透明性が劣化する場合があるので、好ましくない。紫外線吸収剤は熱安定性の高いものが好ましい。
また、本発明において、光学フィルムに用いることのできる紫外線吸収剤は、特開平6−148430号公報及び特開2002−47357号公報に記載の高分子紫外線吸収剤(または紫外線吸収性ポリマー)を好ましく用いることができる。とりわけ特開平6−148430号公報に記載の一般式(1)、あるいは一般式(2)、あるいは特開2002−47357号公報に記載の一般式(3)(6)(7)で表される高分子紫外線吸収剤が、好ましく用いられる。
酸化防止剤は、一般に、劣化防止剤ともいわれるが、光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルム中に含有させるのが好ましい。すなわち、液晶画像表示装置などが高湿高温の状態に置かれた場合には、光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルムの劣化が起こる場合がある。酸化防止剤は、例えばフィルム中の残留溶媒中のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸などによりフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、フィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、セルロース誘導体に対して質量割合で1ppm〜1.0質量%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
以下、本発明による光学フィルムの製造方法について詳しく述べる。フィルムは、溶液流延製膜方法により作製できる。
図1は、溶液流延製膜法による本発明の光学フィルムの製造方法を実施する装置の具体例を示すフローシートである。なお、本発明の実施にあたっては、以下に示す図面のプロセスに限定されるものではない。
本発明の溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂及び添加剤を含む樹脂溶液(ドープ)を金属支持体上に流延して流延膜(ウェブ)を形成し、溶剤の一部を蒸発させた後に、金属支持体から剥離する工程と、剥離したウェブの両端部を把持して、延伸することなく搬送しながら乾燥する把持乾燥工程と、ついでウェブを幅手方向に延伸する工程とを備えている。
まず、図示しない溶解釜において、熱可塑性樹脂、例えばセルロースエステル系樹脂を、良溶媒及び貧溶媒の混合溶媒に溶解し、これに上記の可塑剤や紫外線吸収剤等の添加剤を添加して樹脂溶液(ドープ)を調製する。
図1において、ついで溶解釜で調整されたドープを、例えば加圧型定量ギヤポンプを通して、導管によって流延ダイ(2)に送液し、無限に移送する例えば回転駆動ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる金属支持体(1)上の流延位置に、流延ダイ(2)からドープを流延する。
なお、図示は省略したが、例えば加圧型定量ギヤポンプを通して流延ダイ(2)に送液されたドープを、流延ダイ(2)からハードクロム鍍金により鏡面処理された表面を有するステンレス鋼製回転の冷却ドラム(図示略)上に流延しても、良い。
流延ダイ(2)によるドープの流延には、流延されたドープ膜(ウェブ)をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。
なお、流延ダイ(2)としては、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。
本発明による光学フィルムの製造方法では、セルロースエステル溶液(ドープ)の固形分濃度が、20〜30質量%であるのが、好ましい。
ここで、セルロースエステル溶液(ドープ)の固形分濃度が、20質量%未満であれば、金属支持体(1)上で充分な乾燥ができず、剥離時にドープ膜の一部が金属支持体(1)上に残り、ドラム汚染につながるため、好ましくない。また固形分濃度が30%を超えると、ドープ粘度が高くなり、ドープ調整工程でフィルター詰まりが早くなったり、金属支持体(1)上への流延時に圧力が高くなり、押し出せなくなるため、好ましくない。
金属支持体(1)として回転駆動エンドレスベルトを具備する図示の製膜装置では、該ベルト金属支持体(1)は一対のドラムおよびその中間に配置されかつエンドレスベルト金属支持体(1)の上部移行部及び下部移行部をそれぞれ裏側より支えている複数のロール(図示略)より構成される。
回転駆動エンドレスベルト金属支持体(1)の両端巻回部のドラムの一方、もしくは両方に、ベルト金属支持体(1)に張力を付与する駆動装置が設けられ、これによってベルト金属支持体(1)は張力が掛けられて張った状態で使用される。
また、ベルト金属支持体(1)の幅は1800〜2200mm、セルロースエステル溶液の流延幅は1750〜2150mm、巻き取り後のフィルムの幅は1490〜2500mmである。これにより、金属支持体方式によって幅の広い液晶表示装置用セルロースエステルフィルムを製造することができるものである。
ここで、金属支持体(1)の幅、セルロースエステル溶液の流延幅、および巻き取り後のフィルムの幅が、それぞれ上記の下限値未満では、近年の液晶表示装置の大型化には、対応することができず、また、金属支持体(1)の幅、セルロースエステル溶液の流延幅、および巻き取り後のフィルムの幅が、それぞれ上限値を超えると、剥離後のフィルムの残留溶媒量が多い状態で、後述する延伸工程のテンター入り口でフィルムが垂れ下がり、幅手の伸びにムラが生じ、リタデーションのばらつきが大きくなり、好ましくない。また垂れ下がったフィルムがテンターのガイドに当たり、フィルムが破断し生産をとめてしまう場合もある。
また、金属支持体(1)の周速度は、80〜200m/minであるのが好ましい。
すなわち、薄膜フィルムでは、乾燥する溶剤量が少なくてすむため、金属支持体(1)の周速度を従来のドラム周速度より速くすることにより、フィルムの生産速度アップが可能で、セルロースエステルフィルムの生産性を増大することができる。
金属支持体(1)としてエンドレスベルトを用いる場合には、製膜時のベルト温度は、一般的な温度範囲0℃〜溶剤の沸点未満の温度、混合溶剤では最も沸点の低い溶剤の沸点未満の温度で流延することができ、さらには5℃〜溶剤沸点−5℃の範囲が、より好ましい。このとき、周囲の雰囲気湿度は露点以上に制御する必要がある。
上記のようにして金属支持体(1)表面に流延されたドープは、冷却ゲル化によりゲル膜の強度(フイルム強度)が増加して、さらに剥ぎ取りまでの間で乾燥が促進されることによってもゲル膜の強度(フイルム強度)が増加する。
また、製膜速度を上げるために、加圧流延ダイ(2)を流延用金属支持体(1)上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層製膜してもよい。
金属支持体(1)からウェブ(10)を剥離するときのウェブ温度は、0〜30℃が好ましい。また、ウェブ(10)は、金属支持体(1)からの剥離直後に、金属支持体(1)密着面側からの溶媒蒸発で温度が一旦急速に下がり、雰囲気中の水蒸気や溶剤蒸気など揮発性成分がコンデンスしやすいため、剥離時のウェブ温度は5〜30℃がさらに好ましい。
エンドレスベルト金属支持体(1)上に流延されたドープにより形成されたドープ膜(ウェブ)を、金属支持体(1)上で加熱し、金属支持体(1)から剥離ロール(3)によってウェブが剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法、及び/または金属支持体(1)の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等がある。
金属支持体(1)にエンドレスベルトを用いる方式においては、金属支持体(1)とウェブ(10)を剥離ロール(3)によって剥離する際の剥離張力は、通常100N/m〜200N/mで剥離が行なわれるが、従来よりも薄膜化されている光学フィルムでは、剥離の際にウェブ(10)の残留溶媒量が多く、搬送方向に伸びやすいために、幅手方向にフィルムは縮みやすく、乾燥と縮みが重なると、端部がカールし、折れ込むことにより、シワが入りやすいため、剥離できる最低張力〜170N/mで剥離することが好ましく、さらに好ましくは、最低張力〜140N/mで剥離することである。
金属支持体(1)上でウェブ(10)が剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させた後に、ウェブ(10)を剥離ロール(3)によって剥離する。
本発明においては、剥離工程においてウェブ(10)が剥離ロール(3)によって剥離されてから、つぎの把持乾燥装置(4)においてウェブ(10)の両端部が把持されるまでの間に、ウェブ(10)に含まれる残留溶媒量の減少量が、5〜15質量%となされている。
ここで、剥離工程においてウェブ(10)が剥離されてから、つぎの把持乾燥装置(4)においてウェブ(10)の両端部が把持されるまでの間に、ウェブ(10)に含まれる残留溶媒量の減少量が、5質量%未満であれば、把持工程での残留溶媒量が多く、把持部でフィルムが軟らかいために、裂けてしまったり、把持部材の温度が高く、発泡してフィルムが裂けてしまうので、好ましくない。またウェブ(10)に含まれる残留溶媒量の減少量が、15質量%を超えると、剥離部から把持工程に入るまでの乾燥量が大きいため、幅手方向の収縮量が大きくなり、広幅フィルムの製作が不可能になったり、面内リタデーション(Ro)を高くすることができなくなるので、好ましくない。
把持乾燥装置(4)に入る直前のウェブ(10)に含まれる残留溶媒量が、70〜250質量%、好ましくは80〜200質量%、望ましくは90〜170質量%である。
ここで、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
式中、Mは、フィルムの任意時点での質量、Nは、質量Mのものを110℃で3時間乾燥させた後の質量を表わす。
ここで、把持乾燥装置(4)に入る直前のウェブ(10)に含まれる残留溶媒量が70質量%未満であれば、把持乾燥工程で乾燥を進めると、延伸工程でフィルムに過剰な応力が加わり、高い面内リタデーション(Ro)を出せなかったり、ヘイズが高くなってしまうので、好ましくない。また把持乾燥装置(4)に入る直前のウェブ(10)に含まれる残留溶媒量が、250質量%を超えると、把持部でフィルムが軟らかいために、裂けてしまったり、把持部材の温度が高く、発泡してフィルムが裂けてしまうので、好ましくない。また把持工程入り側でのフィルム自重も大きくなり、把持部でフィルムに裂けが発生する危険性が高くなるため、好ましくない。
ここで、把持乾燥工程(4)に入る直前のウェブ(10)に含まれる残留溶媒量は、金属支持体(1)上での乾燥(温度及び静圧)および金属支持体(1)の搬送速度により、剥離時の残留溶媒量を変更することで調整することができる。
把持乾燥装置(4)を出たウェブ(10)は、ついで、延伸工程の延伸装置(5)において延伸される。
把持乾燥装置(4)におけるウェブ(10)の入り幅とウェブ(10)の出幅とから算出されるウェブ(10)の幅手方向の伸縮率は、−5〜0%である。そして、つぎの延伸装置(5)におけるウェブ(10)の幅手方向の延伸率は、3〜60%、好ましくは5〜40%、さらに好ましくは10〜35%である。
ここで、把持乾燥装置(4)におけるウェブ(10)の幅手方向の伸縮率が、−5%未満であれば、広い幅のフィルムを得ることが不可能になったり、高い面内リタデーション(Ro)を得ることが難しくなるので、好ましくない。またウェブ(10)の幅手方向の伸縮率が、0%を超えると、高残留溶媒量下での延伸により、把持部が裂けてしまうので、好ましくない。
なお、把持乾燥工程の伸縮率は、把持開始する部分でのウェブ(10)の幅手方向の張り状態を把持部の幅を変更することで調整することができる。
具体的には、伸縮率0%の場合は、把持開始時にウェブ(10)を張った状態で把持し、その幅を把持開放まで保持する。伸縮率がマイナスの場合は、予め把持開始部でウェブ(10)をたるませておく。
また、延伸装置(5)におけるウェブ(10)の幅手方向の延伸率が3%未満であれば、最も幅広いベルトや流延幅の装置を用いても、広幅のフィルムを得ることが不可能となるので、好ましくない。また延伸装置(5)におけるウェブ(10)の幅手方向の延伸率が60%を超えると、高くなったヘイズを熱処理しても低くできなくなったり、延伸温度によってはフィルムが裂けてしまうので、好ましくない。
本発明の方法において、把持乾燥工程におけるウェブ(10)の把持乾燥装置(4)としては、ピンテンター、クリップテンター、およびニップ・ロールによるフィルム端部把持乾燥装置を用いることができるが、中でも、把持乾燥装置(4)として、ピンテンターであるのが、好ましい。なお、この場合のピンテンターは、ウェブ(10)の両側縁部をピンで固定して把持乾燥するためのもので、このような把持乾燥装置(4)におけるウェブ(10)の入り幅とウェブ(10)の出幅とから算出されるウェブ(10)の幅手方向の伸縮率は、上記のように、−5〜0%となされているものである。
本発明の方法において、延伸工程におけるウェブ(10)の延伸装置(5)は、液晶表示装置用フィルムとしては、ウェブ(またはフィルム)(10)の両側縁部をクリップで固定して延伸するクリップテンターであることが好ましく、フィルムの平面性や寸法安定性を向上させるために好ましい。
延伸工程のテンター(5)に入る直前のウェブ(フィルム)(10)の残留溶媒量が、10〜35質量%であることが好ましい。
延伸工程においては、テンター(5)の底の前寄り部分の温風吹出し手段すなわち温風吹出しスリット口(5a)から温風(11)が吹込まれ、テンター(5)の天井の後寄り部分の排出口(5b)から排気風(12)が排出せられることによってウェブ(10)が、延伸されると共に乾燥されている。
テンター(5)の温風吹出しスリット口(5a)の形状は、温風の吹き出しによりフィルムを効率的に加熱する形状であれば、特に限定されない。例えば図示のようなスリット形状、あるいはまたパンチ板形状のようなものが挙げられる。
テンター(5)におけるウェブの延伸率が20〜100%であり、かつテンター(5)における温風吹出しスリット口(5a)から吹き出す温風(11)の温度が160℃〜200℃である。
テンター(5)におけるウェブ(10)の延伸率は、30〜80%であることが好ましく、さらに30〜60%であることが望ましい。また、テンター(5)における温風吹出しスリット口(5a)から吹き出す温風(11)の温度は、165〜190℃であることが好ましく、さらに170〜185℃であることが望ましい。
延伸工程のテンター(5)の後に、後乾燥装置(6)を設けることが好ましい。後乾燥装置(6)内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロール(7)によってウェブ(10)が蛇行せられ、その間にウェブ(10)が乾燥せられるものである。また、後乾燥装置(6)でのフィルム搬送張力は、ドープの物性、剥離時及びフィルム搬送工程での残留溶媒量、後乾燥装置(6)での温度等に影響を受けるが、30〜250N/mが好ましく、60〜150N/mがさらに好ましい。80〜120N/mが最も好ましい。
なお、ウェブ(またはフィルム)(10)を乾燥させる手段は、特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点から熱風で乾燥するのが好ましく、例えば後乾燥装置(6)の底の前寄り部分の温風入口から吹込まれる乾燥風(15)によって乾燥され、後乾燥装置(6)の天井の後寄り部分の出口から排気風(16)が排出せられることによって乾燥される。乾燥風(15)の温度は40〜160℃が好ましく、50〜160℃が平面性、寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。この場合、乾燥雰囲気を溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することは勿論のことである。
乾燥時のウェブ搬送張力は、30〜300N/mであり、40〜270N/mが、より好ましい。
本発明の方法において、金属支持体(1)からウェブ(10)を剥ぎ取る剥離工程から最終的にフィルム(20)を巻き取る巻取り工程までの間に、フィルム(20)を170〜200℃の温度下で15秒〜300秒間、加熱する熱処理工程を設けることが好ましい。
熱処理工程は、延伸工程で高延伸条件の場合にヘイズが高くなりかつ液晶表示装置でコントラスト性能が低下するのを抑えるために、必要な工程であるが、延伸工程の前に熱処理を実施しても、延伸工程でヘイズが高くならない効果がある。また延伸工程でヘイズが高くなったものを、その後の熱処理工程で熱処理をすることにより、ヘイズを低くすることができる。
熱処理は、フィルムのガラス転移温度(Tg)を大きく超えるため、フィルムが軟化する。そのため、フィルム搬送には、超鏡面の大径ロールを複数用いるか、把持乾燥工程と同様の手段で搬送するのが好ましい。また、把持乾燥工程の全部または一部を熱処理工程と兼ねても良い。
乾燥工程及び/又は熱矯正装置の前及び/又は後に、ウェブ(またはフィルム)(10)表面のクリーン化装置が配置されるのが、好ましい。
クリーン化装置は、搬送途中のウェブ(またはフィルム)(10)に対し、超音波振動を与えると共に表面に高圧風を吹き当てて付着物を吹き飛ばして吸引し、付着している粉塵などを除去するものである。この他、火炎処理(コロナ処理、プラズマ処理)を行なう方式、粘着ロールを設置する方式など、公知の手段・方法を特別の制限なく用いることができる。なお、配置するクリーン化手段は、単一であってもよいし、2以上の複数であってもよい。
ウェブ(10)に対する粉塵などの付着は、静電気の作用による場合が多いので、上記のクリーン化装置の前に除電手段、例えば、除電バーを配置してウェブ(10)の静電気を除去することが好ましい。除電バーとしては、公知のものを特別の制限なく用いることができる。
乾燥工程では、ウェブ(またはフィルム)(10)に含有される可塑剤が蒸発し、ロールや壁面においてコンデンスする現象を抑制する対策として、単位時間当たり供給風量に対して特定量以上の新鮮なガスを流入させることが好ましい。そして、供給する新鮮ガスの量は、全供給風量の5〜50%に設定することが好ましい。
新鮮ガス供給量を5〜50%にしているのは、5%未満では、新鮮ガス量が少なすぎて可塑剤コンデンスを抑制しきれないためであり、50%を超えると新鮮ガス量が多すぎ、ランニングコストで無駄が多くなるためである。
後乾燥装置(6)でのフィルムの搬送方向への伸びを防止する目的で、テンションカットロールを設けることが好ましい。乾燥終了後、巻き取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。
つぎに、セルロースエステルフィルムの両側縁部に設けるエンボスについて説明する。
搬送乾燥工程を終えたセルロースエステルフィルムに対し、巻取工程に導入する前段において、エンボス加工装置によりフィルムにエンボスを形成する加工が行なわれる。エンボス加工装置としては、特開昭63−74850号公報に記載されている装置が利用できる。
ここで、エンボスの高さh(μm)は、フィルム膜厚Tの0.05〜0.3倍の範囲、幅Wは、フィルム幅Lの0.005〜0.02倍の範囲に設定する。エンボスは、フィルムの両面に形成してもよい。この場合、エンボスの高さh1+h2(μm)は、フィルム膜厚Tの0.05〜0.3倍の範囲、幅Wはフィルム幅Lの0.005〜0.02倍の範囲に設定する。例えばフィルム膜厚40μmであるとき、エンボスの高さh1+h2(μm)は2〜12μmに設定する。エンボス幅は5〜30mmに設定する。
エンボス高さの下限については、フィルム間の部分的な密着ムラを防ぐために必要な高さから、一方、上限は、これ以上にするとエンボスが高すぎるため、ロール状製品形態が馬の背状に多角形状に変形し、故障を誘発するからである。
エンボスの幅については、エンボス部は最終的にロス部分となるため少なくしたいが、例えば50μm以内の薄膜フィルムで、50m/分以上の高速製膜時において、フィルムのすべりを抑えるための最低限必要なエンボス幅である。但し、前述のエンボスの高さともリンクしており、ピラミッド状、馬の背、多角形状、巻きずれ故障を全てクリアーするエンボス高さ×エンボス幅を決定したものである。なお、エンボスは、フィルムの両端部だけでなく中央部部分にも配置することができる。
本発明において、巻取前及び巻取部直後に除電器を設置し、フィルムを除電するのが好ましい。
除電器は、元巻を再繰り出しした際の帯電電位が±2KV以下となるように、巻取時に除電装置あるいは強制帯電装置により逆電位を与える構成で行なうことができるが、強制帯電電位が、1〜150Hzで正負交互に変換される除電器により除電する構成とすることもできる。
また、上記の除電器に代えて、イオン風を発生させるイオナイザーや除電バーを利用することができる。ここで、イオナイザー除電は、エンボス加工装置から搬送ロールを経て巻き取られていくフィルムに向けてイオン風を吹き付けることによって行なわれる。イオン風は、除電器により発生される。除電器としては、公知のものを制限なく用いることができる。
製膜巻取り時の除電は、元巻を再繰出しして機能性膜塗工する際、帯電電位が±2KV以上あると塗布ムラを誘発するためであり、特に薄膜、高速化を追求した場合、再繰り出し時のフィルム剥離帯電が高くなるため、製膜時除電は必須となる。
巻取工程は、乾燥が終了したフィルム(20)を巻取り装置(8)によって巻き取り、光学フィルムの元巻を得る工程である。乾燥を終了するフィルム(20)の残留溶媒量は、0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以下とすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
フィルムの巻き取り方法は、一般に使用されているワインダーを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の張力をコントロールする方法があり、それらを使い分ければよい。
巻取りコア(巻芯)への、フィルムの接合は、両面接着テープでも、片面接着テープでもどちらでも良い。
本発明において、光学フィルムは、巻き取り後のフィルムの幅が、1400〜2500mmであることが好ましい。
本発明においては、光学フィルムの乾燥後の膜厚は、液晶表示装置の薄型化の観点から、仕上がりフィルムとして、50〜65μmの範囲が好ましい。ここで、乾燥後のフィルム膜厚とは、フィルム中の残留溶媒量が0.5質量%以下の状態のフィルムを言うものである。
ここで、巻き取り後の光学フィルムの膜厚が薄過ぎると、例えば偏光板用保護フィルムとしての必要な強度が得られない場合がある。フィルムの膜厚が厚過ぎると、従来の光学フィルムに対して薄膜化の優位性がなくなる。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、流延ダイの口金のスリット間隙、流延ダイの押し出し圧力、金属支持体の速度等をコントロールするのがよい。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
溶液流延製膜法を通しての流延直後からの乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気で行なってもよい。ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことはもちろんである。
本発明において、光学フィルムは、含水率としては0.1〜5%が好ましく、0.3〜4%がより好ましく、0.5〜2%であることがさらに好ましい。
本発明において、光学フィルムは、透過率が90%以上であることが望ましく、さらに好ましくは92%以上であり、さらに好ましくは93%以上である。
また、本発明の方法により製造された光学フィルムは、3枚重ねた場合のヘイズが、0.3〜2.0であることが望ましい。
ここで、光学フィルムのヘイズの測定は、例えば、JIS K6714に規定される方法に従って、ヘイズ・メーター(1001DP型、日本電色工業株式会社製)を用いて測定すれば、良い。
また、本発明による光学フィルムの製造方法で製造されたセルロースエステルフィルムの機械方向(MD方向)の引張弾性率が、1500MPa〜3500MPa、機械方向に垂直な方向(TD方向)の引張弾性率が、3000MPa〜4500MPaであるのが好ましく、フィルムのTD方向弾性率/MD方向弾性率の比が、1.40〜1.90であるのが好ましい。
ここで、セルロースエステルフィルムのTD方向弾性率/MD方向弾性率の比が、1.40未満であれば、1650mmを超える幅のフィルムの巻取りでは中央部のたるみが大きくなり、巻き芯のフィルムの貼り付きが多くなるため、好ましくない。また、フィルムのTD方向弾性率/MD方向弾性率の比が、1.90を超えると、偏向板での過熱後のそりが生じたり、液晶パネルに組み込んだ際にバックライトの熱によりバックライト側と表面側の偏光板の寸法変化の挙動が大きく異なることにより、コーナーにムラが生じるので、好ましくない。
フィルムのMD方向、及びTD方向の引張弾性率の具体的な測定方法としては、例えばJIS K7217の方法が挙げられる。
すなわち、引っ張り試験器(ミネベア社製、TG−2KN)を用い、チャッキング圧:0.25MPa、標線間距離:100±10mmで、サンプルをセットし、引っ張り速度:100±10mm/分の速度で引っ張る。その結果、得られた引張応力−歪み曲線から、弾性率算出開始点を10N、終了点を30Nとし、その間に引いた接線を外挿し、弾性率を算出するものである。
本発明において、光学フィルムでは、下記式で定義される面内リタデーション(Ro)が、温度23℃、湿度55%RHの条件下で30〜300nm、厚み方向リタデーション(Rt)が、温度23℃、湿度55%RHの条件下で70〜400nmであることが好ましい。
Ro=(nx−ny)×d
Rt={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、Roはフィルム面内リタデーション値、Rtはフィルム厚み方向リタデーション値、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率(屈折率は波長590nmで測定)、dはフィルムの厚さ(nm)を表わす。
なお、リタデーション値Ro、Rtは、自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて、温度23℃、湿度55%RHの環境下で、波長が590nmで求めることができる。
本発明の方法で製造された光学フィルムは、フィルムの面内リタデーション(Ro)が、45〜80nm、厚み方向リタデーション(Rt)が、100〜130nmであり、Rt/Roが、1.90〜2.50であることが好ましい。
また、本発明の方法で製造された光学フィルムは、巻き取り後のフィルムの幅が、1490〜2500mmであり、かつ巻き取り後のフィルムの膜厚が、50〜65μmであることが好ましい。
ここで、膜厚については、幅の広いフィルムを得るために高延伸する場合、延伸により膜厚が薄くなるため、延伸工程の前では予め得たいフィルムの膜厚より厚めにする必要がある。従って従来の延伸倍率のものと比べると、広い幅のフィルムを得るための延伸率が高い製品はフィルムの自重が大きくなり、テンター入り側でのクリップミスが発生しやすくなる。最終膜厚が50〜65μ程度であれば、フィルム自重の影響がなく、クリップも安定し、延伸が可能である。またさらに膜厚が薄くなると、剥離直後での把持手段で把持した部分のフィルム強度が低いために、フィルムが裂けてしまうため、好ましくない。
本発明の方法により製造された光学フィルムは、液晶表示用部材、詳しくは偏光板用保護フィルムに用いられるのが好ましい。特に、透湿度と寸法安定性に対して共に厳しい要求のある偏光板用保護フィルムにおいて、本発明の方法により製造された光学フィルムは好ましく用いられる。
本発明の方法により製造された光学フィルムからなる偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化とともに、耐久性及び寸法安定性、光学的等方性に優れた偏光板を提供することができる。
ところで、偏光フィルムは、従来から使用されている、例えば、ポリビニルアルコールフィルムのような延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光フィルム自身では、十分な強度、耐久性がないので、一般的にはその両面に保護フィルムとしての異方性のないセルロースエステルフィルムを接着して偏光板としている。
上記偏光板には、本発明の方法により製造された光学フィルムを位相差フィルムとして貼り合わせて作製してもよいし、また本発明の方法により製造された光学フィルムを位相差フィルムと保護フィルムとを兼ねて、直接偏光フィルムと貼り合わせて作製してもよい。貼り合わせる方法は、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行なうことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコール水溶液が好ましく用いられる。さらに、長手方向に延伸し、二色性染料処理した長尺の偏光フィルムと長尺の本発明の方法により製造された位相差フィルムとを貼り合わせることによって長尺の偏光板を得ることができる。偏光板はその片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
このようにして得られた偏光板は、種々の表示装置に使用できる。特に電圧無印加時に液晶性分子が実質的に垂直配向しているVAモードや、電圧無印加時に液晶性分子が実質的に水平かつねじれ配向しているTNモードの液晶セルを用いた液晶表示装置が好ましい。
ところで、偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、光学フィルムあるいはセルロースエステルフィルムをアルカリケン化処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬、延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリケン化処理とは、水系接着剤の濡れを良くし、接着性を向上させるために、セルロースエステルフィルムを高温の強アルカリ液中に漬ける処理のことをいう。
本発明の方法により製造された光学フィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引き層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布あるいは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
このようにして得られた偏光板が、液晶セルの片面または両面に設けられ、これを用いて、液晶表示装置が得られる。
液晶表示装置は、棒状の液晶分子が一対のガラス基板に挟持された液晶セルと、液晶セルを挾むように配置された偏光膜及びその両側に配置された透明保護層からなる2枚の偏光板を持つものである。
本発明の方法により製造された光学フィルムからなる偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化とともに、耐久性及び寸法安定性、光学的等方性に優れた偏光板を提供することができる。さらに、この偏光板あるいは位相差フィルムを用いた液晶表示装置は、長期間に亘って安定した表示性能を維持することができる。
本発明の方法により製造された光学フィルムは、反射防止用フィルムあるいは光学補償フィルムの基材としても使用できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1−1〜1−19(本発明製法1)
<ドープ組成1>
セルローストリアセテート 100質量部
(Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1)
トリフェニルフォスフェート 8質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
メチレンクロライド 440質量部
エタノール 40質量部
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5質量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5質量部
アエロジル972V(日本アエロジル株式会社製) 0.2質量部
上記の材料を、順次密閉容器中に投入し、容器内の温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行なって、セルローストリアセテートを完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、液温を43℃まで下げた。このドープを濾紙(安積濾紙株式会社製、安積濾紙No.244)を使用して濾過し、ドープを得た。
図1に示す金属支持体式溶液流延製膜装置を用い、鏡面処理された表面を有する駆動回転ステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる金属支持体(1)上に、上記のように調製したドープを均一に流延し、流延によって形成されたドープ膜(ウェブ)を金属支持体(1)上で乾燥させ、ウェブがエンドレスベルトよりなる支持体の下面に至り、ほぼ一巡したところで、剥離ロール(3)によりウェブ(フィルム)(10)を金属支持体(1)から剥離した。なお、金属支持体(1)による冷却温度は、0℃〜25℃とした。
剥離したウェブ(10)の両端部を把持して、延伸することなく搬送しながら乾燥する把持乾燥工程と、ついでウェブ(10)を幅手方向に延伸する工程とを備えており、剥離工程においてウェブ(10)が剥離ロール(3)によって剥離されてから、つぎのピンテンターよりなる把持乾燥装置(4)においてウェブ(10)の両端部が把持されるまでの間に、ウェブ(10)に含まれる残留溶媒量の減少量が、5〜15質量%となされている。
ピンテンターよりなる把持乾燥装置(4)における乾燥温度を120℃とした。また、ピンテンターよりなる把持乾燥装置(4)に入る直前のウェブ(10)に含まれる残留溶媒量が、70〜250質量%となされている。
ここで、把持乾燥工程(4)に入る直前のウェブ(10)に含まれる残留溶媒量は、金属支持体(1)上での乾燥(温度及び静圧)および金属支持体(1)の搬送速度により、剥離時の残留溶媒量を変更することで調整した。
そして、ピンテンターよりなる把持乾燥装置(4)におけるウェブ(10)の入り幅とウェブ(10)の出幅とから算出されるウェブ(10)の幅手方向の伸縮率を−5〜0%の範囲とした。
ここで、把持乾燥装置(4)におけるウェブ(10)の幅手方向の伸縮率は、把持開始する部分でのウェブ(10)の幅手方向の張り状態を把持部の幅を変更することで調整した。具体的には、伸縮率0%の場合は、把持開始時にウェブ(10)を張った状態で把持し、その幅を把持開放まで保持する。伸縮率がマイナスの場合は、予め把持開始部でウェブ(10)をたるませておいた。
ついで、剥離後のウェブ(10)を、クリップテンターよりなる延伸装置(5)に導入して、ウェブ(10)の両端を部クリップではさみ、幅を保持したまま、105℃の温風(11)を当てて乾燥させながら、ウェブ(10)を幅手方向に延伸した。この延伸装置(5)におけるウェブ(10)の幅手方向の延伸率を、3〜40%の範囲とした。
なお、クリップテンター(5)における温風吹出しスリット口(5a)から吹き出す温風(11)の温度は160℃とした。
その後、ウェブ(フィルム)(10)を、側面から見て千鳥配置せられかつ多数の鏡面搬送ロール(7)を具備するロール搬送乾燥装置(6)で、100℃の乾燥風(15)にて乾燥させた。乾燥が終了したフィルム(20)を巻取り装置(8)によって巻き取り、最終的に膜厚80μm、およびフィルム幅:1860mmのセルローストリアセテートフィルム(20)を得た。
巻取りロールに巻き取られるセルロースアセテートフィルムの幅手方向両端部にエンボス加工を施し、エンボス加工による凸部の高さを4〜12μmの範囲とするとともに、エンボス加工による凸部の高さの差を2μm以下とした。
巻取り時にセルロースアセテートフィルムの表面電位を除去または低減する手段として除電ブロアを用いた。
実施例1−1〜1−19においては、下記の表1に示すように、把持乾燥工程入口の残留溶媒量(質量%)、支持体(1)による搬送速度(m/min)、把持乾燥工程でのウェブ(10)の伸縮率(%)、延伸工程でのウェブ(10)の延伸率(%)、並びに最終的に得られる巻取りフィルムの幅(mm)およびフィルムの厚み(μm)の各条件を変更して、セルローストリアセテートフィルムの製造を行なった。
<セルローストリアセテートフィルムの評価>
こうして製造された実施例1−1〜1−19の各セルローストリアセテートフィルムについて、フィルムのコンデンス故障、押され故障、およびヘイズ(3枚)をそれぞれ評価し、得られた結果を、下記の表1に示した。
ここで、セルローストリアセテートフィルムのコンデンス故障は、つぎのようにして評価した。
すなわち、フィルムのコンデンス故障は、オンラインの故障計のCCD画像にて、シミ状の模様の個数を観察し、以下の段階評価を行なったものである。
○:シミ状の模様(コンデンス故障)が見られない
△:100mに1箇所のシミ状模様が見られるもの
×:100mに5箇所以上のシミ状模様が見られるもの
また、セルローストリアセテートフィルムの押され故障は、つぎのようにして評価した。
すなわち、フィルム押され故障は、フィルムから全幅で長手方向に1mの長さに切り出し、この試料にシャーカステン上で光を透過させながら、ルーペで、変形している押されの有無、及び大きさを観察し、以下の段階評価を行なったものである。
○:ほとんど押されがない
△:50μm以上の大きさの押されはなく、50μm未満のものが、0〜10 個観察された
×:50μm以上の大きさの押されが1〜10個観察され、50μm未満のものが31〜50個観察された。
さらに、セルローストリアセテートフィルムのヘイズは、つぎのようにして測定した。すなわち、流延製膜されたフィルムをサンプリングし、その中から無作為に10箇所選んで、JIS K6714に規定される方法に従って、ヘイズ・メーター(1001DP型、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
実施例1−20〜1−24
上記実施例1−1〜1−19の場合と同様に、セルローストリアセテートフィルムを製造するが、下記のドープ組成2を用いて実施した。
<ドープ組成2>
セルロースアセテートプロピオネート 100質量部
(アセチル基置換度+プロピオニル基置換度=2.45、
Mn=60000、Mw=180000、Mw/Mn=3.00)
トリフェニルフォスフェート 8質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
メチレンクロライド 360質量部
エタノール 60質量部
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5質量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5質量部
アエロジル972V(日本アエロジル株式会社製) 0.2質量部
そして、実施例1−20〜1−24においては、下記の表1に示すように、把持乾燥工程入口の残留溶媒量(質量%)、支持体(1)による搬送速度(m/min)、把持乾燥工程でのウェブ(10)の伸縮率(%)、延伸工程でのウェブ(10)の延伸率(%)、並びに最終的に得られるフィルム幅(mm)およびフィルム厚み(μm)の各条件を変更して、セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製造を行なった。
<セルロースアセテートプロピオネートフィルムの評価>
こうして製造された実施例1−20〜1−24の各セルロースアセテートプロピオネートフィルムについて、上記実施例1−1〜1−19の場合と同様に、フィルムのコンデンス故障、押され故障、およびヘイズ(3枚)をそれぞれ評価し、得られた結果を、下記の表1にあわせて示した。
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1−1〜1−24のセルロースエステルフィルムによれば、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、いわゆる高延伸にしても、フィルムのヘイズが高くならず、フィルムのコンデンス故障、および押され故障が無く、フィルムの透明性、平面性に優れた光学特性、セルロースエステルフィルムを製造することができるとともに、生産速度を上げることができて、フィルムの生産性を向上することができ、ひいては近年の偏光板用保護フィルム等の薄膜化、広幅化、及び高品質化の要求に応えることができるものであった。
また、実施例1−20〜1−24の各セルロースアセテートプロピオネートフィルムについて、フィルムの面内リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)を測定するとともに、Rt/Roを計算し、得られた結果を、後述する下記の表3に示した。
なお、リタデーションRo、Rtは、つぎのようにして測定した。すなわち、各フィルムについて、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて23℃、55%RHの雰囲気下で590nmの波長において3次元屈折率測定を行ない、遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを求める。厚み方向のリタデーション(Rt)及び面内方向のリタデーション(Ro)は、下記のリタデーションの式から算出した。
Ro=(nx−ny)×d
Rt={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。
比較例1−1〜1−14(比較製法1)
比較のために、上記実施例1−1〜1−19のドープ組成1、および実施例1−20〜1−24のドープ組成2を用いて、セルローストリアセテートフィルムまたはセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製するが、上記実施例1の製法1の場合と異なる点は、ウェブ(10)の把持乾燥工程において、ピンテンターよりなる把持乾燥装置(4)の代わりに、ロール搬送による乾燥装置(図示略)を用いた比較製法1によって実施した点にある。
比較例1−1〜1−14においては、下記の表2に示すように、把持乾燥工程入口の残留溶媒量(質量%)、支持体(1)による搬送速度(m/min)、把持乾燥工程でのウェブ(10)の伸縮率(%)、延伸工程でのウェブ(10)の延伸率(%)、並びに最終的に得られる巻取りフィルム幅(mm)およびフィルム厚み(μm)の各条件を変更して、セルロースエステルフィルムの製造を行なった。
<セルロースエステルフィルムの評価>
こうして製造された比較例1−1〜1−14の各セルロースエステルフィルムについて、上記実施例1−1〜1−19の場合と同様に、フィルムのコンデンス故障、押され故障、およびヘイズ(3枚)をそれぞれ評価し、得られた結果を下記の表2に示した。
上記表2の結果から明らかなように、比較例1−1〜1−14で得られたセルロースエステルフィルムでは、高延伸にすると、フィルムのヘイズが高くなり、透明性、平面性が低下した。このため、セルロースエステルフィルムの生産速度を上げることができず、フィルムの生産性を向上することができないものであり、偏光板用保護フィルム等の薄膜化、広幅化、及び高品質化の要求に応えることができないものであった。
また、比較例1−9〜1−14の各セルロースアセテートプロピオネートフィルムについて、上記実施例1−20〜1−24の場合と同様に、フィルムの面内リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)を測定するとともに、Rt/Roを計算し、得られた結果を、下記の表3にあわせて示した。
上記表3の結果から明らかなように、本発明の実施例1−20〜1−24のセルロースアセテートプロピオネートフィルムでは、高い面内リタデーション(Ro)を得ることができるとともに、Rt/Roが、1.90〜2.50であるもので、本発明の実施例1−20〜1−24のセルロースアセテートプロピオネートフィルムによれば、位相差フィルムとして用いる場合に、視野角性能を確保したまま、高いカラーシフト性能を維持することが可能である。
これに対し、比較例1−9〜1−14の各セルロースアセテートプロピオネートフィルムでは、高い面内リタデーション(Ro)が得られず、Rt/Roも2.50を超えて大きいので、比較例1−9〜1−14の各セルロースアセテートプロピオネートフィルムでは、これらを位相差フィルムとして用いる場合に、視野角性能を確保したまま、高いカラーシフト性能を維持することが困難である。
実施例2−1〜2−28(本発明製法2)
上記実施例1−1〜1−19のドープ組成1、および実施例1−20〜1−24のドープ組成2を用いて、セルローストリアセテートフィルムまたはセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製するが、上記実施例1−1〜1−24の製法1の場合と異なる点は、ウェブ(10)の延伸工程から最終のフィルム巻取り工程までの間、フィルム(20)を170〜200℃の温度下で15秒〜300秒間、加熱する熱処理工程を設けた本発明の製法2によって実施した点にある。
なお、熱処理ゾーンのウェブ(フィルム)(10)の通過時間は、複数ある熱処理ゾーンの使用/未使用の選択で調整した。
また、実施例2−1〜2−28においては、下記の表4に示すように、把持乾燥工程入口の残留溶媒量(質量%)、金属支持体(1)による搬送速度(m/min)、把持乾燥工程でのウェブ(10)の伸縮率(%)、延伸工程でのウェブ(10)の延伸率(%)、熱処理ゾーンの温度(℃)、熱処理ゾーンのウェブ(フィルム)の通過時間、並びに最終的に得られるフィルム幅(mm)およびフィルム厚み(μm)の各条件を変更して、セルロースエステルフィルムの製造を行なった。
<セルロースエステルフィルムの評価>
こうして製造された実施例2−1〜2−28の各セルロースエステルフィルムについて、上記実施例1−1〜1−19の場合と同様に、フィルムのコンデンス故障、押され故障、およびヘイズ(3枚)をそれぞれ評価し、得られた結果を下記の表4に示した。
上記表4の結果から明らかなように、本発明の実施例2−1〜2−28のセルロースエステルフィルムによれば、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、いわゆる高延伸にしても、フィルムのヘイズが高くならず、フィルムのコンデンス故障、および押され故障が無く、フィルムの透明性、平面性に優れた光学特性、セルロースエステルフィルムを製造することができるとともに、生産速度を上げることができて、フィルムの生産性を向上することができ、ひいては近年の偏光板用保護フィルム等の薄膜化、広幅化、及び高品質化の要求に応えることができるものであった。
また、実施例2−20〜2−24、及び実施例2−27〜2−28の各セルロースアセテートプロピオネートフィルムについて、上記実施例1−20〜1−24の場合と同様に、フィルムの面内リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)を測定するとともに、Rt/Roを計算し、得られた結果を、下記の表5に示した。
上記表5の結果から明らかなように、本発明の実施例2−20〜2−24、及び実施例2−27〜2−28のセルロースアセテートプロピオネートフィルムでは、高い面内リタデーション(Ro)を得ることができるとともに、Rt/Roが、1.90〜2.50であるもので、本発明の実施例2−20〜2−24、及び実施例2−27〜2−28のセルロースアセテートプロピオネートフィルムによれば、位相差フィルムとして用いる場合に、視野角性能を確保したまま、高いカラーシフト性能を維持することが可能である。
実施例3−1〜3−24(本発明製法3)
上記実施例1−1〜1−19のドープ組成1、および実施例1−20〜1−24のドープ組成2を用いて、セルローストリアセテートフィルムまたはセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製するが、上記実施例1−1〜1−24の製法1の場合と異なる点は、図示は省略したが、加圧型定量ギヤポンプを通して流延ダイ(2)に送液されたドープを、流延ダイ(2)からハードクロム鍍金により鏡面処理された表面を有するステンレス鋼製の回転冷却ドラム(図示略)上に流延した本発明の製法3によって実施した点にある。
また、実施例3−1〜3−24においては、下記の表6に示すように、把持乾燥工程入口の残留溶媒量(質量%)、支持体(1)による搬送速度(m/min)、把持乾燥工程でのウェブ(10)の伸縮率(%)、延伸工程でのウェブ(10)の延伸率(%)、並びに最終的に得られるフィルム幅(mm)およびフィルム厚み(μm)の各条件を変更して、セルロースエステルフィルムの製造を行なった。
<セルロースエステルフィルムの評価>
こうして製造された実施例3−1〜3−24の各セルロースエステルフィルムについて、上記実施例1−1〜1−19の場合と同様に、フィルムのコンデンス故障、押され故障、およびヘイズ(3枚)をそれぞれ評価し、得られた結果を下記の表6に示した。
上記表6の結果から明らかなように、本発明の実施例3−1〜3−24のセルロースエステルフィルムによれば、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、いわゆる高延伸にしても、フィルムのヘイズが高くならず、フィルムのコンデンス故障、および押され故障が無く、フィルムの透明性、平面性に優れた光学特性、セルロースエステルフィルムを製造することができるとともに、生産速度を上げることができて、フィルムの生産性を向上することができ、ひいては近年の偏光板用保護フィルム等の薄膜化、広幅化、及び高品質化の要求に応えることができるものであった。
また、実施例3−20〜3−24の各セルロースアセテートプロピオネートフィルムについて、上記実施例1−20〜1−24の場合と同様に、フィルムの面内リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)を測定するとともに、Rt/Roを計算し、得られた結果を、後述する下記の表8に示した。
比較例2−1〜2−14(比較製法2)
比較のために、上記実施例3−1〜3−24の場合と同様に、セルローストリアセテートフィルムまたはセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製するが、上記実施例3−1〜3−24の本発明の製法3の場合と異なる点は、ウェブ(10)の把持乾燥工程において、ピンテンターよりなる把持乾燥装置(4)の代わりに、ロール搬送による乾燥装置(図示略)を用いた比較製法2によって実施した点にある。
比較例2−1〜2−14においては、下記の表7に示すように、把持乾燥工程入口の残留溶媒量(質量%)、支持体(1)による搬送速度(m/min)、把持乾燥工程でのウェブ(10)の伸縮率(%)、延伸工程でのウェブ(10)の延伸率(%)、並びに最終的に得られるフィルム幅(mm)およびフィルム厚み(μm)の各条件を変更して、セルロースエステルフィルムの製造を行なった。
<セルロースエステルフィルムの評価>
こうして製造された比較例2−1〜2−14の各セルロースエステルフィルムについて、上記実施例3−1〜3−24の場合と同様に、フィルムのコンデンス故障、押され故障、およびヘイズ(3枚)をそれぞれ評価し、得られた結果を下記の表7に示した。
上記表7の結果から明らかなように、比較例2−1〜2−14で得られたセルロースエステルフィルムでは、高延伸にすると、フィルムのヘイズが高くなり、透明性、平面性が低下した。このため、セルロースエステルフィルムの生産速度を上げることができず、フィルムの生産性を向上することができないものであり、偏光板用保護フィルム等の薄膜化、広幅化、及び高品質化の要求に応えることができないものであった。
また、比較例2−9〜2−14の各セルロースアセテートプロピオネートフィルムについて、上記実施例1−20〜1−24の場合と同様に、フィルムの面内リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)を測定するとともに、Rt/Roを計算し、得られた結果を、下記の表8にあわせて示した。
上記表8の結果から明らかなように、本発明の実施例3−20〜3−24のセルロースアセテートプロピオネートフィルムでは、高い面内リタデーション(Ro)を得ることができるとともに、Rt/Roが、1.90〜2.50であるもので、本発明の実施例3−20〜3−24のセルロースアセテートプロピオネートフィルムによれば、位相差フィルムとして用いる場合に、視野角性能を確保したまま、高いカラーシフト性能を維持することが可能である。
これに対し、比較例2−9〜2−14の各セルロースアセテートプロピオネートフィルムでは、高い面内リタデーション(Ro)が得られず、Rt/Roも2.50を超えて大きいので、比較例2−9〜2−14の各セルロースアセテートプロピオネートフィルムでは、これらを位相差フィルムとして用いる場合に、視野角性能を確保したまま、高いカラーシフト性能を維持することが困難である。
実施例4−1〜4−28(本発明製法4)
上記実施例3−1〜3−24の場合と同様に、流延ダイ(2)に送液されたドープを、流延ダイ(2)からハードクロム鍍金により鏡面処理された表面を有するステンレス鋼製の回転冷却ドラム(図示略)上に流延して、セルローストリアセテートフィルムまたはセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製するが、上記実施例3−1〜3−24の本発明の製法3の場合と異なる点は、ウェブ(10)の延伸工程から最終のフィルム巻取り工程までの間、フィルム(20)を170〜200℃の温度下で15秒〜300秒間、加熱する熱処理工程を設けた本発明の製法4によって実施した点にある。
なお、熱処理ゾーンのウェブ(フィルム)(10)の通過時間は、複数ある熱処理ゾーンの使用/未使用の選択で調整した。
また、実施例4−1〜4−28においては、下記の表9に示すように、把持乾燥工程入口の残留溶媒量(質量%)、支持体(1)による搬送速度(m/min)、把持乾燥工程でのウェブ(10)の伸縮率(%)、延伸工程でのウェブ(10)の延伸率(%)、熱処理ゾーンの温度(℃)、熱処理ゾーンのウェブ(フィルム)の通過時間、並びに最終的に得られるフィルム幅(mm)およびフィルム厚み(μm)の各条件を変更して、セルロースエステルフィルムの製造を行なった。
<セルロースエステルフィルムの評価>
こうして製造された実施例4−1〜4−28の各セルロースエステルフィルムについて、上記実施例1−1〜1−19の場合と同様に、フィルムのコンデンス故障、押され故障、およびヘイズ(3枚)をそれぞれ評価し、得られた結果を下記の表9に示した。
上記表9の結果から明らかなように、本発明の実施例4−1〜4−28のセルロースエステルフィルムによれば、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、いわゆる高延伸にしても、フィルムのヘイズが高くならず、フィルムのコンデンス故障、および押され故障が無く、フィルムの透明性、平面性に優れた光学特性、セルロースエステルフィルムを製造することができるとともに、生産速度を上げることができて、フィルムの生産性を向上することができ、ひいては近年の偏光板用保護フィルム等の薄膜化、広幅化、及び高品質化の要求に応えることができるものであった。
また、実施例4−20〜4−24、及び実施例4−27〜4−28の各セルロースアセテートプロピオネートフィルムについて、上記実施例1−20〜1−24の場合と同様に、フィルムの面内リタデーション(Ro)、厚み方向リタデーション(Rt)を測定するとともに、Rt/Roを計算し、得られた結果を、下記の表10に示した。
上記表10の結果から明らかなように、本発明の実施例4−20〜4−24、及び実施例4−27〜4−28のセルロースアセテートプロピオネートフィルムでは、高い面内リタデーション(Ro)を得ることができるとともに、Rt/Roが、1.90〜2.50であるもので、本発明の実施例4−20〜4−24、及び実施例4−27〜4−28のセルロースアセテートプロピオネートフィルムによれば、位相差フィルムとして用いる場合に、視野角性能を確保したまま、高いカラーシフト性能を維持することが可能である。
実施例5−1(偏光膜の作製)
図2に示す液晶表示パネルを作製するために、まず、偏光膜を作製した。すなわち、厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、温度110℃、延伸倍率5倍で一軸延伸した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、ついでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
(偏光板の作製)
ついで、下記の工程1〜工程5に従って、上記の偏光膜に、実施例1−2で作製した膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルム(T−1)と、実施例1−21で作製した膜厚60μmのセルロースアセテートプロピオネートフィルム(T−2)とを貼り合わせて偏光板1を作製した。
工程1:50℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に60秒間浸漬し、ついで水洗し乾燥して、偏光膜と貼合する側を鹸化したT−1、T−2のフィルムを得た。
工程2:偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、この偏光膜の両側に、工程1で処理したT−1、T−2のフィルムを積層して配置した。
工程4:工程3で配置した偏光膜とT−1、T−2のフィルムを、圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光膜とT−1、T−2のフィルムを2分間乾燥し、偏光板1を作製した。
つぎに、液晶表示パネルのもう一方の面に貼り合わせる偏光板2としては、上記の場合と同様にして作製した偏光板1を利用し、その貼合わせ方向が液晶を中心として対称となるように配置した。
従って、下記の表11に示すように、偏光板2のフィルムT−3が、実施例1−21で作製した膜厚60μmのセルロースアセテートプロピオネートフィルムとなり、偏光板2のフィルムT−4が、実施例1−2で作製した膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルムとした。なお、下記の表11には、T−1/T−2のフィルムの膜厚比をあわせて示した。
(液晶表示パネルの作製)
ついで、市販の液晶表示パネル(NEC製 カラー液晶ディスプレイ、MultiSync、LCD1525J:型名、LA−1529HM)の両面の偏光板をそれぞれ注意深く剥離し、この液晶に、上記作製した偏光板1および偏光板2を貼り合わせて、液晶表示パネルを作製しした。
このとき、図2に示すように、中央の液晶に対し、偏光板1および偏光板2の実施例1−2で作製した膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルム(T−1)と(T−4)がそれぞれ外側に、実施例1−21で作製した膜厚60μmのセルロースアセテートプロピオネートフィルム(T−2)と(T−3)がそれぞれ中央の液晶側となるように、貼り合わせた。
そしてこの場合、偏光板1の外側フィルム(T−1)側が液晶表示パネルの表示側であり、偏光板2の外側フィルム(T−4)がバックライト側である。
こうして得られた実施例5−1の液晶表示パネルについて、コントラストを測定し、得られた結果を下記の表11に示した。
(表示パネル実装時のコントラストの測定)
表示パネル実装時のコントラストの測定を表示パネルの視野角の評価を行なうことにより、実施した。ここで、視野角評価は、液晶表示パネルを、ELDIM社製EZ−contrastを用いて視野角を測定した。測定方法は、液晶表示パネルの白表示と、黒表示時のコントラストについて、パネル面に対する法線方向からの傾き角80°に対するコントラストが、全方位において下記値の範囲内でランク付けを行なった。
◎◎◎:コントラストが全方位40以上
◎◎ :コントラストが全方位30以上
◎ :コントラストが全方位20以上
○ :コントラストが全方位15以上
△ :コントラストが全方位5以上、15未満の領域が存在した
× :コントラストが全方位5未満の領域が存在した
実施例5−2〜5−25
上記実施例5−1の場合と同様に液晶表示パネルを作製するが、下記の表11に示すように、本発明の上記の実施例で作製した各種のセルローストリアセテートおよびセルロースアセテートプロピオネートフィルムを組み合わせて、T−1、T−2、T−3、T−4のフィルムを構成し、液晶表示パネルを作製した。
こうして得られた実施例5−2〜5−25の液晶表示パネルについて、上記実施例5−1の場合と同様に、コントラストを測定し、得られた結果を下記の表11にあわせて示した。
比較例3−1〜3−5
比較例のために、上記実施例5−1の場合と同様に液晶表示パネルを作製するが、下記の表11に示すように、上記の比較例で作製した各種のセルローストリアセテートおよびセルロースアセテートプロピオネートフィルムを組み合わせて、T−1、T−2、T−3、T−4のフィルムを構成し、液晶表示パネルを作製した。
こうして得られた比較例3−1〜3−5の液晶表示パネルについて、上記実施例5−1の場合と同様に、コントラストを測定し、得られた結果を下記の表11にあわせて示した。
上記表11の結果から明らかなように、本発明の実施例5−1〜5−25の液晶表示パネルによれば、比較例27〜31の液晶表示パネルに比べて、優れたコントラストを有していることが分かる。