以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法は、溶液流延製膜法によるものであり、回転する冷却ドラム上にセルロースエステル溶液(ドープ)を流延し、冷却ドラム上で冷却、乾燥して得られたフィルムを剥離し、剥離後のフィルムを乾燥して、セルロースエステルフィルムを得る、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、冷却ドラム上への流延ダイによるドープ流延位置が、冷却ドラムの最上部を基準点0度としかつドラムの回転方向1周を360度に分割して表示した場合に、180度〜340度の範囲の位置であり、流延後に冷却ドラム上に形成されたフィルム(ウェブ)を、上記のドープ流延位置を基準点0度としかつドラムの回転方向1周を360度に分割して表示した場合に、ドープ流延位置から180度〜330度の範囲でドラム上で乾燥させた後、剥離する。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法は、溶液流延製膜法によるものであり、セルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを、回転する冷却ドラム支持体上に流延するドープ流延手段と、ドープ流延手段によって冷却ドラム上に形成されたウェブを、冷却ドラムから剥離させる剥離手段と、剥離手段によって冷却ドラムから剥離させられたウェブを、搬送しながら乾燥させる乾燥手段と、乾燥後のフィルムを巻き取る巻取り手段とを具備している。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法により製造されたセルロースエステルフィルムは、1500〜3300mmの幅を有するものであり、優れた光学特性を有するものである。
以下、これらについて詳述する。
本発明に用いられるセルロース誘導体の原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。また、これらから得られたセルロース誘導体は、それぞれを単独あるいは任意の割合で混合使用することができるが、綿花リンターを50重量%以上使用することが好ましい。
セルロースエステルフィルムの分子量が大きいと、弾性率が大きくなるが、分子量を上げすぎると、セルロースエステルの溶解液の粘度が高くなりすぎるため、生産性が低下する。セルロースエステルの分子量は数平均分子量(Mn)で80000〜200000のものが好ましく、100000〜200000のものがさらに好ましい。本発明で用いられるセルロースエステルはMw/Mn比が1.4〜3.0が好ましく、さらに好ましくは1.4〜2.3である。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。
測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806,K805,K803G(昭和電工株式会社製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1重量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所株式会社製)
流量:1.0ml/分
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー株式会社製)Mw=1,000,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
セルロースエステルの総アシル基置換度は2.3〜2.9が用いられ、2.6〜2.9が好ましく用いられる。総アシル基置換度はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
ここで、上記セルロース誘導体に対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
良溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類の他、メチルセロソルブ、ジメチルイミダゾリノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、ニトロエタン、塩化メチレン、アセト酢酸メチルなどが挙げられるが、1,3−ジオキソラン、THF、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸メチル及び塩化メチレンが好ましい。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40重量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。これらは、ドープを冷却ドラムに流延した後、溶媒が蒸発し始めてアルコールの比率が多くなることで、ウェブ(冷却ドラム上にセルロース誘導体のドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)をゲル化させ、ウェブを丈夫にして、冷却ドラムから剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロース誘導体の溶解を促進したりする役割もある。
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。これらのうち、ドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、かつ毒性がないことなどからエタノールが好ましい。これらの有機溶媒は、単独ではセルロース誘導体に対して溶解性を有しておらず、貧溶媒という。
このような条件を満たす好ましい高分子化合物であるセルロース誘導体を高濃度に溶解する溶剤として最も好ましい溶剤は塩化メチレン:エチルアルコールの比が95:5〜80:20の混合溶剤である。あるいは、酢酸メチル:エチルアルコール60:40〜95:5の混合溶媒も好ましく用いられる。
本発明におけるフィルムには、フィルムに加工性・柔軟性・防湿性を付与する可塑剤、フィルムに滑り性を付与する微粒子(マット剤)、紫外線吸収機能を付与する紫外線吸収剤、フィルムの劣化を防止する酸化防止剤等を含有させても良い。
本発明において使用する可塑剤しては、特に限定はないが、フィルムにヘイズを発生させたり、フィルムからブリードアウトあるいは揮発しないように、セルロース誘導体や加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物の重縮合物と、水素結合などによって相互作用可能である官能基を有していることが好ましい。
このような官能基としては、水酸基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、カルボン酸残基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルホン酸残基、ホスホニル基、ホスホン酸残基等が挙げられるが、好ましくはカルボニル基、エステル基、ホスホニル基である。
このような可塑剤の例として、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることができるが、特に好ましくは多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等の非リン酸エステル系可塑剤である。
多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。
本発明に用いられる多価アルコールは、つぎの一般式(1)で表される。
一般式(1) R1−(OH)n
(ただし、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数を表す)
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
好ましい多価アルコールの例としては、アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
本発明の多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させると、セルロース誘導体との相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は、特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが、さらに好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロース誘導体との相溶性の点では、小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
グリコレート系可塑剤は、特に限定されないが、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するグリコレート系可塑剤を、好ましく用いることができる。好ましいグリコレート系可塑剤としては、例えばブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等を用いることができる。
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等を用いることができるが、本発明では、リン酸エステル系可塑剤を実質的に含有しないことが好ましい。
ここで、「実質的に含有しない」とは、リン酸エステル系可塑剤の含有量が1重量%未満、好ましくは0.1重量%であり、特に好ましいのは添加していないことである。
これらの可塑剤は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
可塑剤の使用量は、1〜20重量%が好ましい。6〜16重量%がさらに好ましく、特に好ましくは8〜13重量%である。可塑剤の使用量が、セルロース誘導体に対して1重量%未満では、フィルムの透湿度を低減させる効果が少ないため、好ましくなく、20重量%を越えると、フィルムから可塑剤がブリードアウトし、フィルムの物性が劣化するため、好ましくない。
本発明におけるセルロース誘導体には、滑り性を付与するために、マット剤等の微粒子を添加するのが好ましい。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
無機化合物の微粒子の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫等の微粒子が挙げられる。この中では、ケイ素原子を含有する化合物の微粒子であることが好ましく、特に二酸化ケイ素微粒子が好ましい。二酸化ケイ素微粒子としては、例えばアエロジル株式会社製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,R805、OX50、TT600などが挙げられる。
有機化合物の微粒子の例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素化合物樹脂、ウレタン樹脂等の微粒子が挙げられる。
微粒子の1次粒径は、特に限定されないが、最終的にフィルム中での平均粒径は、0.05〜5.0μm程度が好ましい。さらに好ましくは、0.1〜1.0μmである。
微粒子の平均粒径は、セルロースエステルフィルムを電子顕微鏡や光学顕微鏡で観察した際に、フィルムの観察場所における、粒子の長軸方向の長さの平均値を指す。フィルム中で観察される粒子であれば、1次粒子であっても、1次粒子が凝集した2次粒子であってもよいが、通常観察される多くは2次粒子である。
測定方法の一例としては、1つのフィルムにつき、ランダムに10箇所の垂直断面写真を撮影し、各断面写真について、長軸長さが、0.05〜5μmの範囲にある100μm2中の粒子個数をカウントする。このときカウントした粒子の長軸長さの平均値を求め、10箇所の平均値を平均した値を平均粒径とする。
微粒子の場合は、1次粒径、溶媒に分散した後の粒径、フィルムに添加されたの粒径が変化する場合が多く、重要なのは、最終的にフィルム中で微粒子がセルロースエステルと複合し凝集して形成される粒径をコントロールすることである。
ここで、微粒子の平均粒径が、5μmを超えた場合は、ヘイズの劣化等が見られたり、異物として巻状態での故障を発生する原因にもなる。また、微粒子の平均粒径が、0.05μm未満の場合は、フィルムに滑り性を付与するのが難しくなる。
上記の微粒子は、セルロースエステルに対して、0.04〜0.5重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.25重量%添加して使用される。微粒子の添加量が0.04重量%以下では、フィルム表面粗さが平滑になりすぎて、摩擦係数の上昇によりブロッキングを発生する。微粒子の添加量が0.5重量%を超えると、フィルム表面の摩擦係数が下がりすぎて、巻き取り時に巻きズレが発生したり、フィルムの透明度が低く、ヘイズが高くなるため、液晶表示装置用フィルムとしての価値を持たなくなるので、上記の範囲が必須である。
微粒子の分散は、微粒子と溶剤を混合した組成物を高圧分散装置で処理することが好ましい。本発明で用いる高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。
高圧分散装置で処理することにより、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が980N/cm2以上であることが好ましい。さらに好ましくは、装置内部の最大圧力条件が1960N/cm2以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が100kcal/hr以上に達するものが、好ましい。
上記のような高圧分散装置としては、例えばMicrofluidics Corporation社製の超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザーが挙げられ、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモゲナイザーなどが挙げられる。
本発明において、微粒子は、低級アルコール類を25〜100重量%含有する溶剤中で分散した後、セルロースエステル(セルロース誘導体)を溶剤に溶解したドープと混合し、該混合液を冷却ドラム上に流延し、乾燥して製膜することを特徴とするセルロースエステルフィルムを得る。
ここで、低級アルコールの含有比率としては、好ましくは50〜100重量%、さらに好ましくは75〜100重量%である。
また、低級アルコール類の例としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。
低級アルコール以外の溶媒としては、特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
微粒子は、溶媒中で1〜30重量%の濃度で分散される。これ以上の濃度で分散すると、粘度が急激に上昇し、好ましくない。分散液中の微粒子の濃度としては、好ましく、5〜25重量%、さらに好ましくは、10〜20重量%である。
フィルムの紫外線吸収機能は、液晶の劣化防止の観点から、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムなどの各種光学フィルムに付与されていることが好ましい。このような紫外線吸収機能は、紫外線を吸収する材料をセルロース誘導体中に含ませても良く、セルロース誘導体からなるフィルム上に紫外線吸収機能のある層を設けてもよい。
本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報に記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
本発明において、有用な紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
また、紫外線吸収剤の市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を、好ましく使用できる。
また、本発明において使用し得る紫外線吸収剤であるベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明において、これらの紫外線吸収剤の配合量は、セルロースエステル(セルロース誘導体)に対して、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜5重量%が好ましい。紫外線吸収剤の使用量が少なすぎると、紫外線吸収効果が不充分の場合があり、紫外線吸収剤の多すぎると、フィルムの透明性が劣化する場合があるので、好ましくない。紫外線吸収剤は熱安定性の高いものが好ましい。
また、本発明のセルロースエステルフィルムに用いることのできる紫外線吸収剤は、特開平6−148430号公報及び特開2002−47357号公報に記載の高分子紫外線吸収剤(または紫外線吸収性ポリマー)を好ましく用いることができる。とりわけ特開平6−148430号公報に記載の一般式(1)、あるいは一般式(2)、あるいは特開2002−47357号公報に記載の一般式(3)(6)(7)で表される高分子紫外線吸収剤が、好ましく用いられる。
酸化防止剤は、一般に、劣化防止剤ともいわれるが、光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルム中に含有させるのが好ましい。すなわち、液晶画像表示装置などが高湿高温の状態に置かれた場合には、光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルムの劣化が起こる場合がある。酸化防止剤は、例えばフィルム中の残留溶媒中のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸などによりフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、フィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、セルロース誘導体に対して重量割合で1ppm〜1.0重量%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
以下、本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法について述べる。フィルムは、溶液流延製膜方法により作製できる。
図1は、溶液流延製膜法による本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法の第1実施形態を実施する装置の具体例を示すフローシートである。なお、本発明の実施にあたっては、以下に示す図面のプロセスに限定されるものではない。
図1において、まず、セルロースエステル系樹脂を、良溶媒及び貧溶媒の混合溶媒に溶解し、これに上記の可塑剤や紫外線吸収剤を添加して樹脂溶液(ドープ)を調製する。
ついでドープを、例えば加圧型定量ギヤポンプを通して流延ダイ(2)に送液され、流延ダイ(2)からハードクロム鍍金により鏡面処理された表面を有するステンレス鋼製回転の冷却ドラム(1)上に流延するが、本発明においては、冷却ドラム(1)上への流延ダイ(2)によるドープ流延位置が、冷却ドラム(1)の最上部を基準点0度としかつドラム(1)の回転方向1周を360度に分割して表示した場合に、180度〜340度の範囲の位置であり、流延後に冷却ドラム(1)上に形成されたフィルム(ウェブ)(10)を、上記のドープ流延位置を基準点0度としかつドラム(1)の回転方向1周を360度に分割して表示した場合に、ドープ流延位置から180度〜330度の範囲でドラム(1)上で乾燥させた後、剥離するものである。
ここで、流延後に冷却ドラム(1)上に形成されたフィルム(ウェブ)(10)は、冷却ドラム(1)上で乾燥させるのが好ましく、ドープ流延位置から270度〜330度の範囲でドラム(1)上で乾燥させるのが、好ましい。
なお、この図1に示す実施形態においては、冷却ドラム(1)上への流延ダイ(2)によるドープ流延位置が、冷却ドラム(1)の最上部を基準点0度としかつ冷却ドラム(1)の回転方向1周を360度に分割して表示した場合に、300度の位置であり、流延によって形成されたドープ膜(ウェブ)を冷却ドラム(1)上で乾燥させ、ついで上記のドープ流延位置を基準点0度としかつ冷却ドラム(1)の回転方向1周を360度に分割して表示した場合に、ドープ流延位置から315度の位置で、冷却ドラム(1)から剥離ロール(3)によりフィルム(ウェブ)(10)を剥離する。
流延ダイ(2)によるドープの流延には、流延されたドープ膜(ウェブ)をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。
冷却ドラム(1)上へドープを流延する際は、原料樹脂の溶解に用いた溶剤の沸点未満、混合溶剤では最も沸点の低い溶剤の沸点未満の温度に制御し、製膜時の冷却ドラム(1)の温度は、冷却ドラム(1)に室温以上の乾燥風を吹き付けて乾燥する場合、冷却ドラム(1)表面の温度を25℃以下、−20℃以上にする必要がある。
冷却ドラム(1)表面の温度を25℃以下にするためには、流延直前において、冷却ドラム(1)表面に冷却風を吹きつける、あるいは冷却ドラム(1)表面に溶剤を塗布し乾燥させて、その蒸発潜熱で冷却ドラム(1)表面を冷却する、などの方法がある。
図2は、溶液流延製膜法による本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法の第2実施形態を実施する装置の具体例を示す冷却ドラムおよび流延ダイ部分の要部側面図である。
この図2において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、冷却ドラム(1)上への流延ダイ(2)によるドープ流延位置が、冷却ドラム(1)の最上部を基準点0度としかつ冷却ドラム(1)の回転方向1周を360度に分割して表示した場合に、250度の位置であり、かつ上記のドープ流延位置を基準点0度としかつ冷却ドラム(1)の回転方向1周を360度に分割して表示した場合に、ドープ流延位置から280度の位置で、冷却ドラム(1)から剥離ロール(3)によりフィルム(ウェブ)(10)を剥離し、さらに、搬送ロール(4)によって90度方向を変えて搬送している点にある。
図3は、溶液流延製膜法による本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法の第3実施形態を実施する装置の具体例を示す冷却ドラムおよび流延ダイ部分の要部側面図である。
この図3において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、冷却ドラム(1)上への流延ダイ(2)によるドープ流延位置が、冷却ドラム(1)の最上部を基準点0度としかつ冷却ドラム(1)の回転方向1周を360度に分割して表示した場合に、180度の位置であり、かつ上記のドープ流延位置を基準点0度としかつ冷却ドラム(1)の回転方向1周を360度に分割して表示した場合に、ドープ流延位置から280度の位置で、冷却ドラム(1)から剥離ロール(3)によりフィルム(ウェブ)(10)を剥離している点にある。
このような本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法によれば、冷却ドラム(1)上への流延ダイによるドープ流延位置が、冷却ドラム(1)の最上部を基準点0度としかつドラム(1)の回転方向1周を360度に分割して表示した場合に、180度〜340度の範囲の位置であり、流延後に冷却ドラム(1)上に形成されたフィルム(ウェブ)を、上記のドープ流延位置を基準点0度としかつドラム(1)の回転方向1周を360度に分割して表示した場合に、ドープ流延位置から180度〜330度の範囲でドラム(1)上で乾燥させた後、剥離するもので、本発明によれば、冷却ドラム(1)上での流延開始(キャスト)位置を特定の位置にすることで、リボン(流延膜状ドープ)の冷却ドラム(1)回転方向への引っ張りを抑制して、薄膜のセルロースエステルフィルムをドラム方式で製膜することを可能にし、薄膜フィルムの製造では課題となっているセルロースエステル溶液の流延部の振動や、リボンの振動によるキャスト横段(フィルム長手方向のムラ)を抑えることができる。また、キャスト位置を従来の真上付近から下げることで、エアの巻き込み量を減少することができ、生産速度を上げることができて、フィルムの生産性を向上することができ、さらに、流延時のエアの巻き込み方向も、反重力方向とすることができて、エアの巻き込みを抑えることができ、光学特性に優れたセルロースエステルフィルムを製造することができる。
また、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法において、冷却ドラム(1)の流延直前の位置における表面温度が、25℃以下である。冷却ドラム(1)に室温以上の乾燥風を吹き付けて乾燥する場合、ドラム(1)表面の温度を25℃以下にする必要がある。
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法では、セルロースエステル溶液(ドープ)の固形分濃度が、20〜30重量%である。
ここで、セルロースエステル溶液(ドープ)の固形分濃度が、20重量%未満であれば、冷却ドラム(1)上で充分な乾燥ができず、剥離時にドープ膜の一部が冷却ドラム(1)上に残り、ドラム汚染につながるため、好ましくない。また固形分濃度が30%を超えると、ドープ粘度が高くなり、ドープ調整工程でフィルター詰まりが早くなったり、冷却ドラム(1)上への流延時に圧力が高くなり、押し出せなくなるため、好ましくない。
さらに、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法においては、冷却ドラムの幅は2200〜4200mm、セルロースエステル溶液の流延幅は2000〜4000mm、巻き取り後のフィルムの幅は1500〜3300mmである。これにより、冷却ドラム方式によって幅の広い液晶表示装置用セルロースエステルフィルムを製造することができるものである。
ここで、冷却ドラム(1)の幅、セルロースエステル溶液の流延幅、および巻き取り後のフィルムの幅が、それぞれ上記の下限値未満では、近年の液晶表示装置の薄型化には、対応することができず、また、冷却ドラム(1)の幅、セルロースエステル溶液の流延幅、および巻き取り後のフィルムの幅が、それぞれ上限値を超えると、剥離後のフィルムの残留溶媒量が多い状態で、テンター入り口でフィルムが垂れ下がり、幅手の伸びにムラが生じ、リタデーションのばらつきが大きくなり、好ましくない。また垂れ下がったフィルムがテンターのガイドに当たり、フィルムが破断し生産をとめてしまう場合もある。
また、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法では、冷却ドラム(1)の周速度が80〜200m/minである。
ここで、冷却ドラム(1)の周速度が80m/min未満であれば、生産効率が悪く、また品質面でも、薄膜フィルムの場合は乾燥が進みすぎるため、好ましくない。200m/minを超えると、また冷却ドラム(1)の周速度が200m/minを超えると、冷却ドラム(1)上での乾燥が不十分となり、剥離時にドープ膜の一部が冷却ドラム(1)上に残り、ドラム汚染につながるため、好ましくない。
すなわち、本発明によれば、薄膜フィルムでは、乾燥する溶剤量が少なくてすむため、冷却ドラム(1)の周速度を従来のドラム周速度より速くすることにより、フィルムの生産速度アップが可能で、セルロースエステルフィルムの生産性を増大することができる。
上記のようにして冷却ドラム(1)表面に流延されたドープは、冷却ゲル化によりゲル膜の強度(フイルム強度)が増加して、さらに剥ぎ取りまでの間で乾燥が促進されることによってもゲル膜の強度(フイルム強度)が増加する。
冷却ドラム(1)上では、ウェブ(10)が冷却ドラム(1)から剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させるため、ウェブ(10)の支持残留溶媒量が10〜250重量%の状態で剥離するのが好ましく、20〜220重量%の状態で剥離するのがより好ましい。残留溶剤量が250重量%を越えると、冷却ドラム(1)上にセルロースエステルの剥げ残りが発生する場合がある。
冷却ドラム(1)からウェブ(10)を剥離するときのウェブ(10)の温度は、0〜30℃が好ましい。また、ウェブ(10)は、冷却ドラム(1)から剥離直後に、冷却ドラム(1)密着面側からの溶媒触媒で温度が一旦急速に下がり、雰囲気中の水蒸気や溶剤蒸気などの揮発成分がコンデンスしやすいため、剥離時のウェブ温度は5〜30℃がさらに好ましい。
ここで、残留溶媒量は、下記の式で表わせる。
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させたときの重量である。
冷却ドラム(1)とウェブ(10)を剥離する際の剥離張力は、通常20〜25kg/mで剥離が行なわれるが、剥離できる最低張力〜17kg/mで剥離することが好ましい。さらに好ましくは、最低張力〜14kg/mで剥離することである。
図1を参照すると、剥離後、ウェブ(フィルム)(10)は渡り部(図示略)を通って、テンター乾燥装置(5)に運ばれる。渡り部は0本以上の搬送ロールより成り、1本以上の搬送ロールから成るのが好ましく、3本以上の搬送ロールから成るのがより好ましい。渡り部の搬送ロールも、冷却ドラム(1)と同様に、温度調整装置を取り付けて温度調整することが好ましい。例えば、搬送ロールにそれぞれジャケットを取り付け、そのジャケット内に冷却用媒体を循環させる方法などが挙げられる。
また、各搬送ロールの温度は、10℃以下が好ましく、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−10℃以下とすることである。また、渡り部室内の温度は、同様に10℃以下が好ましく、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−10℃以下とすることである。なお、ウェブ(10)を冷却することにより、貯蔵弾性率を高く保持することができ、搬送時の不良の発生を防止できる。
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法においては、冷却ドラム(1)上からウェブ(流延膜)(10)を剥離後、乾燥工程を経て、フィルム(20)を巻き取るまでの間に、ウェブ(10)を搬送方向(MD方向)に2〜20%の延伸率で延伸する工程を経るのが、好ましい。
図1では、冷却ドラム(1)上でウェブ(10)が冷却ドラム(1)から剥離ロール(3)によって剥離可能な膜強度となるまで乾燥固化させた後に剥離し、ついで周速度をコントロールできるドライブロールを少なくとも1つ具備する搬送方向(MD方向)延伸ユニット(図示略)により、剥離工程直後のウェブ(10)を、搬送方向(MD方向)に2〜20%の延伸率で延伸するものである。
延伸ユニットの例としては、ダンサーロール(ドライブロール)を用いたもの、および複数のドライブロールを用いたものが挙げられる。
まず、ダンサーロール(ドライブロール)を用いたものとしては、前後一対の搬送ロールの間に、ダンサーロール(ドライブロール)が配置され、これらのロール群が例えば2セット設けられて、延伸ユニットが構成される。そして、これらのダンサーロール(ドライブロール)を搬送ロールより周速度を速く回転させることで、ウェブ(10)をMD方向(製膜方向)に延伸することができる。
つぎに、複数のドライブロールを用いたものとしては、前後一対の搬送ロールの間に、2〜5個のドライブロールが配置され、これらのロール群によって延伸ユニットが構成される。そして、これら2〜5個のドライブロールの周速度をコントロールすることにより、ウェブ(10)をMD方向(製膜方向)に延伸することができるものである。
画像表示部材用フィルムとしては、ウェブ(またはフィルム)の両側縁部をクリップ等で固定して延伸するテンター方式が、フィルムの平面性や寸法安定性を向上させるために好ましい。
このテンター(5)を用いる方法として、例えば、特開昭59−11006号公報には、フェノキシ樹脂等のフィルムから液晶表示パネルの基板を製造する技術が開示されており、このフィルムにはセルロースアセテートフィルムも使用できることが、その中に示唆されている。また、特開平4−284211号、特開昭62−115035号公報には、テンター乾燥装置を用いたセルローストリアセテートフィルムの製造方法が開示されている。
特に、冷却ドラム(1)から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブ(またはフィルム)は幅手方向に収縮しようとする。高温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。
テンター(5)を用いる方法としては、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅手方向にクリップでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法/テンター方式が好ましい。
上記において、ウェブ(フィルム)(10)の残留溶媒量が10〜100重量%のときに80〜130℃、及び/又は残留溶媒量が5〜10重量%のときに90〜150℃に保持する場合、テンター(5)で幅保持もしくはフィルム幅に対して1〜20%程度の延伸を行なうと、セルロースエステルフィルムの平面性の向上効果が大きく特に好ましい。
また、テンター(5)の前後での、ウェブ(10)に搬送方向に沿って作用する張力の差を8N/mm2以下とすることが好ましい。
なお、ウェブ(10)を予熱する予熱工程と、この予熱工程の後、テンター式乾燥機(5)を用いてウェブ(10)を延伸する延伸工程と、この延伸工程の後、ウェブ(10)をこの延伸工程での延伸量よりも少ない量だけ緩和させる緩和工程とを具備し、予熱工程および延伸工程における温度T1を、(フィルムのガラス転移温度Tg−60℃)以上とし、かつ、緩和工程における温度T2を、(T1℃−10℃)以下とすることが好ましい。
特に、上記延伸工程でのウェブ(10)の延伸率を、この延伸工程に入る直前のウェブ幅に対する比率で0〜30%に、他方、緩和工程でのウェブ(10)の延伸率を、−10〜10%とすることが望ましい。
テンター装置(5)による延伸工程においては、例えばセルロースエステルフィルムを製造する際の延伸倍率は、製膜方向もしくは幅手方向に対して、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍である。2軸方向に延伸する場合、高倍率で延伸する側が、1.01〜3倍であり、好ましくは1.5〜3倍であり、もう一方の方向の延伸倍率は0.8〜1.5倍、好ましくは0.9〜1.2倍に延伸することができる。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸は、テンター装置(5)によって行なうことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
なお、テンター装置(5)による延伸工程においては、テンター装置(5)の底の前寄り部分から吹込まれ、テンター装置(5)の天井の後寄り部分から排出せられる温風(11)によってウェブ(10)が、延伸と共に乾燥されている。
テンター装置(5)による延伸工程の後に、後乾燥装置(6)を設けることが好ましい。後乾燥装置(6)内では、側面から見て千鳥配置せられた複数の搬送ロール(7)によってウェブ(10)が蛇行せられ、その間にウェブ(10)が乾燥せられるものである。また、後乾燥装置(6)でのフィルム搬送張力は、ドープの物性、剥離時及びフィルム搬送工程での残留溶媒量、後乾燥装置(6)での温度等に影響を受けるが、30〜250N/mが好ましく、60〜150N/mがさらに好ましい。80〜120N/mが最も好ましい。
なお、ウェブ(またはフィルム)(10)を乾燥させる手段は、特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点から熱風で乾燥するのが好ましく、例えば後乾燥装置(6)の底の前寄り部分から吹込まれ、後乾燥装置(6)の天井の後寄り部分から排出せられる温風(12)によって乾燥される。乾燥温度は40〜160℃が好ましく、50〜160℃が平面性、寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。この場合、乾燥雰囲気を溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することは勿論のことである。
乾燥時のウェブ搬送張力は、30〜300N/幅mであり、40〜270N/幅mが、より好ましい。
乾燥工程及び/又は熱矯正装置の前及び/又は後に、ウェブ(またはフィルム)(10)表面のクリーン化装置が配置されるのが、好ましい。
クリーン化装置は、搬送途中のウェブ(またはフィルム)(10)に対し、超音波振動を与えると共に表面に高圧風を吹き当てて付着物を吹き飛ばして吸引し、付着している粉塵などを除去するものである。この他、火炎処理(コロナ処理、プラズマ処理)を行なう方式、粘着ロールを設置する方式など、公知の手段・方法を特別の制限なく用いることができる。
なお、配置するクリーン化手段は、単一であってもよいし、2以上の複数であってもよい。
ウェブ(10)に対する粉塵などの付着は、静電気の作用による場合が多いので、上記のクリーン化装置の前に除電手段、例えば、除電バーを配置してウェブ(10)の静電気を除去することが好ましい。除電バーとしては、公知のものを特別の制限なく用いることができる。
乾燥工程では、ウェブ(またはフィルム)(10)に含有される可塑剤が蒸発し、ロールや壁面においてコンデンスする現象を抑制する対策として、単位時間当たり供給風量に対して特定量以上の新鮮なガスを流入させることが好ましい。そして、供給する新鮮ガスの量は、全供給風量の5〜50%に設定することが好ましい。
新鮮ガス供給量を5〜50%にしているのは、5%未満では、新鮮ガス量が少なすぎて可塑剤コンデンスを抑制しきれないためであり、50%を超えると新鮮ガス量が多すぎ、ランニングコストで無駄が多くなるためである。
上記の対策の他、例えば、つぎのような構成が採用可能である。第1に、乾燥・矯正工程室内の空気を一部循環させ、クーラーコイルなどに通すことにより可塑剤を強制的に除去した後、ヒーターで規定温度に上昇させる構成、第2に、可塑剤が金属面に接触する部分の温度を上げる構成、例えば、蒸気・面ヒーターなどにより金属面弥接触する部分の温度を上げる構成である。第3に、ロール面上での可塑剤の蒸気圧を下げるために、新鮮空気を供給する構成である。新鮮空気を供給する手段としては、ロールの近傍に幅手方向にスリットを設け、パンチ板箱からエア風を供給し、供給空気の風速分布を抑える構成などが採用されるが、これに限定されるものではない。
なお、乾燥工程あるいは熱矯正工程室あるいはそれらから出てきたフィルムの冷却工程から、フィルムを出す際のフィルム温度は、60℃以下とすることが好ましい。
ここで、60℃を超える温度で矯正、冷却工程ボックスから搬出した場合には、可塑剤のコンデンスが発生しやすい条件下にあるからである。
後乾燥装置(6)での搬送方向へフィルムの伸びを防止する目的で、テンションカットロールを設けることが好ましい。乾燥終了後、巻き取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。
つぎに、セルロースエステルフィルムの両側縁部に設けるエンボスについて説明する。搬送乾燥工程を終えたセルロースエステルフィルムに対し、巻取工程に導入する前段において、エンボス加工装置によりフィルムにエンボスを形成する加工が行なわれる。エンボス加工装置としては、特開昭63−74850号公報に記載されている装置が利用できる。
ここで、エンボスの高さh(μm)は、フィルム膜厚Tの0.05〜0.3倍の範囲、幅Wは、フィルム幅Lの0.005〜0.02倍の範囲に設定する。エンボスは、フィルムの両面に形成してもよい。この場合、エンボスの高さh1+h2(μm)は、フィルム膜厚Tの0.05〜0.3倍の範囲、幅Wはフィルム幅Lの0.005〜0.02倍の範囲に設定する。例えばフィルム膜厚40μmであるとき、エンボスの高さh1+h2(μm)は2〜12μmに設定する。エンボス幅は5〜30mmに設定する。
エンボス高さの下限については、フィルム間の部分的な密着ムラを防ぐために必要な高さから、一方、上限は、これ以上にするとエンボスが高すぎるため、ロール状製品形態が馬の背状に多角形状に変形し、故障を誘発するからである。
エンボスの幅については、エンボス部は最終的にロス部分となるため少なくしたいが、例えば50μm以内の薄膜フィルムで、50m/分以上の高速製膜時において、フィルムのすべりを抑えるための最低限必要なエンボス幅である。但し、前述のエンボスの高さともリンクしており、ピラミッド状、馬の背、多角形状、巻きずれ故障を全てクリアーするエンボス高さ×エンボス幅を決定したものである。なお、エンボスは、フィルムの両端部だけでなく中央部部分にも配置することができる。
本発明において、巻取前及び巻取部直後に除電器を設置し、フィルムを除電するのが好ましい。
除電器は、元巻を再繰り出しした際の帯電電位が±2KV以下となるように、巻取時に除電装置あるいは強制帯電装置により逆電位を与える構成で行なうことができるが、強制帯電電位が、1〜150Hzで正負交互に変換される除電器により除電する構成とすることもできる。
また、上記の除電器に代えて、イオン風を発生させるイオナイザーや除電バーを利用することができる。ここで、イオナイザー除電は、エンボス加工装置から搬送ロールを経て巻き取られていくフィルムに向けてイオン風を吹き付けることによって行なわれる。イオン風は、除電器により発生される。除電器としては、公知のものを制限なく用いることができる。
製膜巻取り時の除電は、元巻を再繰出しして機能性膜塗工する際、帯電電位が±2KV以上あると塗布ムラを誘発するためであり、特に薄膜、高速化を追求した場合、再繰り出し時のフィルム剥離帯電が高くなるため、製膜時除電は必須となる。
乾燥が終了したフィルム(20)を巻取り装置(8)によって巻き取り、光学フィルムの元巻を得る工程である。乾燥を終了するフィルム(20)の残留溶媒量は、0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下とすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
フィルムの巻き取り方法は、一般に使用されているワインダーを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の張力をコントロールする方法があり、それらを使い分ければよい。
巻取りコア(巻芯)への、フィルムの接合は、両面接着テープでも、片面接着テープでもどちらでも良い。
初期巻取開始時は、巻取り張力は280N/m幅以下、エンボス部のみタッチロール巻取の押圧力+巻取初期張力が60N/m幅以上となるよう巻取るのが好ましい。
この巻取り条件範囲については、280N/m以上では、巻取時の張力、及びタッチロール押圧力によりエンボス部にかかる半径方向圧力が大きすぎ、前述の再繰り出し時のフィルム剥離帯電量が大きすぎるためであり、一方、60N/m以下では、巻取張力が弱すぎて、特に2000m以上の長尺巻取の際、仕上がった製品ロール輸送時に巻きずれたり、再繰り出し時の繰り出し張力により巻きずれたりするためである。
タッチロール(図示略)の押圧は、押し圧検出器を設置して監視し、3〜100N/m幅に設定するのが好ましい。
タッチロールの押圧手段としては、例えば、複動式低摩擦シリンダあるいは張力フィードバックをかけるためにサーボモータが利用され、両サイドからそれぞれ単独にて制御できるように押圧する。押圧検出機にて両サイドの押圧を測定するのが好ましい。
タッチロールの材質は、金属あるいは硬質合成樹脂とする。タッチさせる位置は、フィルムが製品ロールと接する接線直後の位置とすることが好ましい。
巻き上がるにつれタッチロールの移動する方向は、巻取芯からの法線方向が、より好ましい。
巻取終了前0〜5秒及び巻き取り開始後の0〜5秒間において、巻取部のエッジポイントコントロール(EPC)の制御を自動から固定になるように設定して巻き取りを行なうのが好ましい。
ウェブ(10)を冷却ドラム支持体(1)から剥離させるまでのプロセス平均雰囲気(米国連邦規格 Federal Standard 209D)を、クラス10以上、クラス10000以下とし、ウェブ(10)を冷却ドラム支持体(1)から剥離させた以降のプロセス平均雰囲気(米国連邦規格 Federal Standard 209D)を、クラス100以上、クラス10000以下とすることで、表示装置に加工した際に表示の欠陥、外観の劣化で大きな問題となる異物の個数を大幅に低減したフィルムが得られる。
本発明においては、セルロースエステルフィルムの乾燥後の膜厚は、液晶表示装置の薄型化の観点から、仕上がりフィルムとして10〜50μmの範囲が好ましい。ここで、乾燥後のフィルム膜厚とは、フィルム中の残留溶媒量が0.5重量%以下の状態のフィルムを言うものである。
フィルムの膜厚が薄過ぎると、例えば偏光板用保護フィルムとしての必要な強度が得られない場合がある。フィルムの膜厚が厚過ぎると、従来のセルロースエステルフィルムに対して薄膜化の優位性がなくなる。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、流延ダイの口金のスリット間隙、流延ダイの押し出し圧力、冷却ドラム支持体の速度等をコントロールするのがよい。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
溶液流延製膜法を通しての流延直後からの乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気で行なってもよい。ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことはもちろんである。
本発明の方法により製造されたセルロースエステルフィルムは、液晶表示用部材、詳しくは偏光板用保護フィルムに用いられるのが好ましい。特に、透湿度と寸法安定性に対して共に厳しい要求のある偏光板用保護フィルムにおいて、本発明の方法により製造されたセルロースエステルフィルムは好ましく用いられる。
ところで、偏光フィルムは、従来から使用されている、例えば、ポリビニルアルコールフィルムのような延伸配向可能なフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して縦延伸したものである。偏光フィルム自身では、十分な強度、耐久性がないので、一般的にはその両面に保護フィルムとしての異方性のないセルロースエステルフィルムを接着して偏光板としている。
上記偏光板には、本発明の方法により製造されたセルロースエステルフィルムを位相差フィルムして貼り合わせて作製してもよいし、また本発明の方法により製造されたセルロースエステルフィルムを位相差フィルムと保護フィルムとを兼ねて、直接偏光フィルムと貼り合わせて作製してもよい。貼り合わせる方法は、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行なうことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコール水溶液が好ましく用いられる。さらに、長手方向に延伸し、二色性染料処理した長尺の偏光フィルムと長尺の本発明の方法により製造された位相差フィルムとを貼り合わせることによって長尺の偏光板を得ることができる。偏光板はその片面または両面に感圧性接着剤層(例えば、アクリル系感圧性接着剤層など)を介して剥離性シートを積層した貼着型のもの(剥離性シートを剥すことにより、液晶セルなどに容易に貼着することができる)としてもよい。
このようにして得られた偏光板は、種々の表示装置に使用できる。特に電圧無印加時に液晶性分子が実質的に垂直配向しているVAモードや、電圧無印加時に液晶性分子が実質的に水平かつねじれ配向しているTNモードの液晶セルを用いた液晶表示装置が好ましい。
ところで、偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、光学フィルムあるいはセルロースエステルフィルムをアルカリケン化処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬、延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリケン化処理とは、水系接着剤の濡れを良くし、接着性を向上させるために、セルロースエステルフィルムを高温の強アルカリ液中に漬ける処理のことをいう。
本発明の方法により製造されたセルロースエステルフィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引き層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布あるいは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
このようにして得られた偏光板が、液晶セルの片面または両面に設けられ、これを用いて、液晶表示装置が得られる。
本発明の方法により製造されたセルロースエステルフィルムからなる偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化とともに、耐久性及び寸法安定性、光学的等方性に優れた偏光板を提供することができる。さらに、この偏光板あるいは位相差フィルムを用いた液晶表示装置は、長期間に亘って安定した表示性能を維持することができる。
本発明の方法により製造されたセルロースエステルフィルムは、反射防止用フィルムあるいは光学補償フィルムの基材としても使用できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1
(ドープ組成1:固形分濃度20.1%)
セルローストリアセテート 100重量部
(Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1)
トリフェニルフォスフェート 8重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
メチレンクロライド 390重量部
エタノール 55重量部
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5重量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5重量部
アエロジル972V(日本アエロジル株式会社製) 0.2重量部
上記のドープ組成1の材料を、密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。フィルタープレスによる濾過の後、図1に示す冷却ドラム式溶液流延製膜装置を用い、温度5℃に保持した冷却ドラム(1)上に均一に流延した。
この実施例1では、冷却ドラム(1)上への流延ダイ(2)によるドープ流延位置が、冷却ドラム(1)の最上部を基準点0度としかつ冷却ドラム(1)の回転方向1周を360度に分割して表示した場合に、340度の位置であり、流延によって形成されたドープ膜(ウェブ)を冷却ドラム(1)上で乾燥させ、ついで上記のドープ流延位置を基準点0度としかつ冷却ドラム(1)の回転方向1周を360度に分割して表示した場合に、ドープ流延位置から330度の位置で、冷却ドラム(1)から剥離ロール(3)によりウェブ(フィルム)(10)を剥離した。
また、この実施例1では、冷却ドラム(1)のドラム幅を2700mm、ドープの流延幅を2500mmとし、また、冷却ドラム(1)の周速度を120m/minとした。
冷却ドラム(1)上で、残留溶媒量が100重量%になるまで溶媒を蒸発させ、ウェブ(フィルム)(10)を冷却ドラム(1)から剥離した。ついで、冷却ドラム(1)から剥離した後のウェブ(10)を、テンター(5)に導入して、ウェブ両端をクリップではさみ、幅を保持したまま105℃の乾燥風(11)を当てて乾燥させながら、ウェブ(10)を幅手方向に延伸した。
その後、側面から見て千鳥配置せられかつ表面粗さ(Rmax)0.8μmの多数の鏡面搬送ロール(7)を具備するロール搬送乾燥装置(6)で、100℃の乾燥風(12)にて乾燥させた。乾燥が終了したフィルム(20)を巻取り装置(8)によって巻き取り、最終的に膜厚40μm、およびフィルム幅:2000mmのセルローストリアセテートフィルム(20)を得た。
実施例2〜7
上記実施例1の場合とほゞ同様に、セルローストリアセテートフィルムを製造するが、各実施例において、製膜条件の一部を、種々異なるものとした。
まず、実施例2では、図1に示すように、冷却ドラム(1)上への流延ダイ(2)によるドープ流延位置を、冷却ドラム(1)の最上部を基準点0度とした場合に、300度の位置とし、また、ウェブ(10)の剥離位置を、このドープ流延位置を基準点0度とした場合に、ドープ流延位置から315度とした。
実施例3では、冷却ドラム(1)上への流延ダイ(2)によるドープ流延位置を、冷却ドラム(1)の最上部を基準点0度とした場合に、270度の位置とし、また、ウェブ(10)の剥離位置を、このドープ流延位置を基準点0度とした場合に、ドープ流延位置から330度とした。
実施例4では、図2に示すように、冷却ドラム(1)上への流延ダイ(2)によるドープ流延位置を、冷却ドラム(1)の最上部を基準点0度とした場合に、250度の位置とし、また、ウェブ(10)の剥離位置を、このドープ流延位置を基準点0度とした場合に、ドープ流延位置から280度とした。
実施例5では、ドープ流延位置を、冷却ドラム(1)の最上部を基準点0度とした場合に、240度の位置とし、また、ウェブ(10)の剥離位置を、このドープ流延位置を基準点0度とした場合に、ドープ流延位置から330度とした。なお、実施例5では、冷却ドラム(1)の周速度を200m/minとした。
実施例6では、ドープ流延位置を、冷却ドラム(1)の最上部を基準点0度とした場合に、180度の位置とし、また、ウェブ(10)の剥離位置を、このドープ流延位置を基準点0度とした場合に、ドープ流延位置から330度とした。
実施例7では、図3に示すように、冷却ドラム(1)上への流延ダイ(2)によるドープ流延位置を、冷却ドラム(1)の最上部を基準点0度とした場合に、180度の位置とし、また、ウェブ(10)の剥離位置を、このドープ流延位置を基準点0度とした場合に、ドープ流延位置から280度とした。
実施例8〜11
上記実施例5の場合とほゞ同様に、セルローストリアセテートフィルムを製造するが、各実施例において、製膜条件の一部を、種々異なるものとした。
実施例8では、実施例5の場合と同様に、ドープ流延位置を、冷却ドラム(1)の最上部を基準点0度とした場合に、240度の位置とし、またウェブ(10)の剥離位置を、このドープ流延位置を基準点0度とした場合に、ドープ流延位置から330度とした。冷却ドラム(1)の周速度を200m/minとした。そして、実施例8では、実施例5の場合と異なる点として、得られるセルローストリアセテートフィルム(20)の膜厚を50μmとした。
実施例9では、実施例5の場合と異なる点として、冷却ドラム(1)上からのウェブ(10)の剥離位置を、流延ダイ(2)によるドープ流延位置を基準点0度とした場合に、300度の位置とし、かつ得られるセルローストリアセテートフィルム(20)の膜厚を30μmとした。
実施例10では、実施例5の場合と異なる点として、冷却ドラム(1)上からのウェブ(10)の剥離位置を、流延ダイ(2)によるドープ流延位置を基準点0度とした場合に、280度の位置とし、かつ得られるセルローストリアセテートフィルム(20)の膜厚を20μmとした。
実施例11では、実施例5の場合と異なる点として、冷却ドラム(1)上からのウェブ(10)の剥離位置を、流延ダイ(2)によるドープ流延位置を基準点0度とした場合に、180度の位置とし、かつ得られるセルローストリアセテートフィルム(20)の膜厚を10μmとした。
実施例12〜15
上記実施例9の場合とほゞ同様に、セルローストリアセテートフィルムを製造するが、各実施例において、製膜条件の一部を、種々異なるものとした。
実施例12では、実施例9の場合と同様に、ドープ流延位置を、冷却ドラム(1)の最上部を基準点0度とした場合に、240度の位置とした。また実施例9の場合と異なる点として、冷却ドラム(1)上からのウェブ(10)の剥離位置を、流延ダイ(2)によるドープ流延位置を基準点0度とした場合に、301度の位置とし、かつ冷却ドラム(1)のドラム幅を2200mm、ドープの流延幅を2000mmとし、また、得られるフィルム幅を、1500mmとした。
実施例13では、実施例12の場合と異なる点として、冷却ドラム(1)上からのウェブ(10)の剥離位置を、流延ダイ(2)によるドープ流延位置を基準点0度とした場合に、302度の位置とし、かつ冷却ドラム(1)のドラム幅を4200mm、ドープの流延幅を4000mmとし、また、得られるフィルム幅を、3300mmとした。
実施例14
上記実施例9の場合とほゞ同様に、セルローストリアセテートフィルムを製造するが、下記のドープ組成2を用いて実施した。また、冷却ドラム(1)上からのウェブ(10)の剥離位置を、流延ダイ(2)によるドープ流延位置を基準点0度とした場合に、303度の位置とした。
(ドープ組成2:固形分濃度21.9%)
セルローストリアセテート 100重量部
(Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1)
トリフェニルフォスフェート 8重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
メチレンクロライド 360重量部
エタノール 40重量部
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5重量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5重量部
アエロジル972V(日本アエロジル株式会社製) 0.2重量部
実施例15
上記実施例9の場合とほゞ同様に、セルローストリアセテートフィルムを製造するが、下記のドープ組成3を用いて実施した。また、冷却ドラム(1)上からのウェブ(10)の剥離位置を、流延ダイ(2)によるドープ流延位置を基準点0度とした場合に、304度の位置とした。
(ドープ組成3:固形分濃度26.9%)
セルローストリアセテート 100重量部
(Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1)
トリフェニルフォスフェート 8重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
メチレンクロライド 280重量部
エタノール 25重量部
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5重量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5重量部
アエロジル972V(日本アエロジル株式会社製) 0.2重量部
下記の表1に、各実施例における冷却ドラム(1)の最上部の基準点0度としたドープの流延位置、流延ダイ(2)によるドープ流延位置を基準点0度としたウェブ(10)の剥離位置、得られたセルローストリアセテートフィルム(20)の膜厚(μm)、使用したドープ組成、冷却ドラム(1)のドラム幅(mm)、流延ダイ(2)によるドープ流延幅(mm)、得られたセルローストリアセテートフィルム(20)のフィルム幅(mm)、冷却ドラム(1)のドラム周速度(m/min)を、まとめて記載した。
比較例1〜3
比較のために、上記実施例1の場合と同様に、セルローストリアセテートフィルムを作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、比較例1では、冷却ドラム(1)上への流延ダイ(2)によるドープ流延位置を、冷却ドラム(1)の最上部の基準点0度とし、また、冷却ドラム(1)の周速度を、本発明の範囲外である50m/minとした点にある。比較例2では、流延ダイ(2)によるドープ流延位置を、冷却ドラム(1)の最上部を基準点0度とした場合に、本発明の範囲外である350度の位置とし、また、冷却ドラム(1)の周速度を、本発明の範囲外である70m/minとした点にある。比較例3では、流延ダイ(2)によるドープ流延位置を、本発明の範囲外である20度の位置とし、また、冷却ドラム(1)の周速度を、本発明の範囲外である30m/minとした点にある。
比較例4
比較のために、上記実施例1のドープ組成1を用いて、セルローストリアセテートフィルムを作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、金属支持体が、冷却ドラム方式でなく、従来のベルト方式による溶液流延製膜法を用いて、セルローストリアセテートフィルムを作製した。この比較例4におけるステンレス鋼製エンドレスベルトの幅を1900mm、ドープの流延幅を1800mm、最終フィルム幅を1500mmに、それぞれ設定した。また、エンドレスベルトのベルト移動速度を、50m/minとした。
下記の表1に、各比較例における冷却ドラム(1)上のドープ流延位置、ウェブ(10)の剥離位置、得られたセルローストリアセテートフィルム(20)の膜厚(μm)、使用したドープ組成、冷却ドラム(1)またはベルトの幅(mm)、流延ダイ(2)によるドープ流延幅(mm)、得られたセルローストリアセテートフィルム(20)のフィルム幅(mm)、冷却ドラム(1)またはベルトの周速度(m/min)を、あわせて記載した。
<キャスト横段故障(長手方向のムラ)の評価>
上記実施例1〜15、および比較例1〜4で得られたセルローストリアセテートフィルムを、長手方向3m(全幅)の試料を取り出し、黒い下地の平板上に静置した。一方、40Wの蛍光灯8本を10cm間隔に並べた照明板を準備した。この照明板を、静置したフィルムの上方1.5mに置き、フィルムの平面性を観察し、下記のようなランクで、キャスト横段故障(長手方向のムラ)を評価した。得られたセルローストリアセテートフィルム(20)のキャスト横段故障(長手方向のムラ)結果を、下記の表1にあわせて示した。
○:全くムラがない
△:弱いムラが10個程度ある
×:規則性のある強いムラが多数ある
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜15のセルローストリアセテートフィルムによれば、キャスト横段故障(長手方向のムラ)については、全くムラがなく、優れた結果が得られ、セルローストリアセテートフィルムは、優れた光学特性を具備するものであった。
これに対し、冷却ドラム(1)上への流延ダイ(2)によるドープ流延位置を、冷却ドラム(1)の最上部の基準点0度、および本発明の範囲外である350度の位置とした比較例1と2では、得られたセルローストリアセテートフィルムのキャスト横段故障(長手方向のムラ)については、問題は無いが、冷却ドラム(1)の周速度が、それぞれ50m/minと、70m/minであり、製膜速度が非常に遅く、生産性が劣るものであった。
また、冷却ドラム(1)上への流延ダイ(2)によるドープ流延位置を、本発明の範囲外である20度の位置とした比較例3では、得られたセルローストリアセテートフィルムのキャスト横段故障(長手方向のムラ)については、規則性のある強いムラが多数あり、セルローストリアセテートフィルムの品質として問題があるうえに、冷却ドラム(1)の周速度が30m/minと、製膜速度が非常に遅く、生産性が劣るものであった。
さらに、従来のベルト方式による溶液流延製膜法を用いて、セルローストリアセテートフィルムを作製した比較例4では、得られたセルローストリアセテートフィルムのキャスト横段故障(長手方向のムラ)については、規則性のある強いムラが多数あり、セルローストリアセテートフィルムの品質として問題があるうえに、冷却ドラム(1)の周速度が50m/minで、製膜速度が非常に遅く、生産性が劣るものであった。