JP2013082192A - 溶液製膜方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】加工適性及びリワーク性に優れたセルロースアシレートフィルムを製造する。
【解決手段】セルロースアシレート11が溶剤12に溶解したドープ13をドラム29に流延する。流延膜32をドラム29の周面29a上でゲル化して固めてから剥ぎ取る。流延膜32の温度は、剥ぎ取り時点まで、(ドープ13のゲル化点TG−3)℃よりも低くならないように保つ。流延膜32の温度はドラム29の周面29aの温度制御により調整する。流延膜32の乾燥を促進するために、給気部35により流延膜32に気体を送る。この乾燥により、冷却によるゲル化作用を補って自己支持性の発現を促す。
【選択図】図1

Description

本発明は、セルロースアシレートフィルムを製造する溶液製膜方法に関する。
セルロースアシレートフィルムは、用途に応じた寸法に切断されて利用される。切断は、他の部材と組み合わせる前に、セルロースアシレートフィルムだけで為される場合もあるが、他の部材と組み合わせた後に、その部材とともに為されることもある。後者の例としては偏光板を製造する場合がある。偏光板を製造する場合には、偏光膜と、これを保護する保護フィルムとして用いるセルロースアシレートフィルムとを貼り合わせてから、切断処理をする。なお、偏光膜の両面に配される一対の保護フィルムのうち一方を、光学補償フィルム(位相差フィルムを含む)に代える場合も同様である。このように、光学補償フィルムを保護フィルムとして用いることもある。
偏光膜と保護フィルムとの貼り合わせからなる複層構造のフィルムから偏光板とするために、目的とする寸法に切断する場合には、複層構造フィルムに対して、一方のフィルム面から切断刃を押しつけて切断する。このように複層構造フィルムを切断すると、切断により形成された切断面から保護フィルムの内部へとクラックが生じてしまうことがある。切断によりこのようにクラックが生じる保護フィルムは、加工適性が悪いとの評価が為され、得られる偏光板についてもその商品価値が著しく低くなる。
また、液晶ディスプレイを製造する際には、偏光板をガラス基板に貼り付ける。この貼り合わせに際し、その貼り合わせ状態が所期の状態にならない場合には、偏光板をガラス基板から一旦剥がしてから再び貼り合わせるといういわゆるリワークを実施する。偏光板の保護フィルムの中には、このリワークの中でも特にガラス基板から剥がす剥離時に、保護フィルムの一部がガラス基板上に残ってしまうことがある。このように全体が剥がれることなく一部がガラス基板上に剥げ残るような保護フィルムは、リワーク性が悪いとの評価が為され、好ましくない。
以上のような表示装置等の光学用途に用いるセルロースアシレートフィルムの製造方法として、溶液製膜方法がある。溶液製膜方法は、ポリマーを溶剤に溶かしたドープを、支持体の上に流延して流延膜を形成し、この流延膜を固めて剥ぎ取り、剥ぎ取った流延膜、すなわち湿潤フィルムを乾燥してポリマーフィルムにする製造方法である。ドープを流延する支持体としては、断面円形の中心にある回転軸を回転中心にして周方向に回転するドラム、または、少なくともふたつのローラの周面に掛け渡されて長手方向に周回するベルトが用いられる。ドラムの大きさは、その製造限界から、大きくても断面円形の直径が約3.5mのものとされ、流延膜が形成される周面の周方向長さは約3.5π(単位;m)程度にとどまる。これに対し、ベルトは、100m以上の長さにも製造することができ、流延膜が形成されてから剥ぎ取るまでの距離(以下、流延膜搬送距離と称する)をドラムよりも長くすることができる。また、溶液製膜は、流延膜の固め方によって、周知のように、乾燥ゲル化方式と冷却ゲル化方式とに大別される。
乾燥ゲル化方式は、流延膜を所期の乾燥レベルにまで乾燥し、この乾燥により流延膜をゲル化して固めるものである。すなわち、剥ぎ取った後の湿潤フィルムが搬送可能となるような程度にまで流延膜を乾燥して固める。乾燥は、流延膜に乾燥風を吹き付けて行うことが通常である。この乾燥をより促進するために、乾燥風を加熱して温風にしたり、さらには、支持体を加熱することにより流延膜を加熱することも行われる。乾燥により流延膜を固めるには、下記の冷却ゲル化方式により固めるよりも長い時間を要することから、支持体としてはドラムではなくベルトを用いることが通例である。
これに対し、冷却ゲル化方式は、流延膜を積極的に冷却することにより溶剤残留率が非常に高い状態でゲル状にし、剥ぎ取っても搬送可能な程度に固くなるまでゲル化をすすめるものである。この方式は、乾燥ゲル化方式によるよりも短い時間で流延膜を固めることができるので、支持体としてはドラムで足りる場合もある。
以上のように、乾燥ゲル化方式と冷却ゲル化方式とのいずれの場合であっても、流延膜はゲル化して固まる。
上記の乾燥ゲル化方式と冷却ゲル化方式とを比べると、後者は、溶剤残留率が高いうちに支持体から剥がすことができるので製造効率の点で著しく優位にある。しかし、冷却ゲル化方式で得られるセルロースアシレートフィルムは、上記の加工適性とリワーク性との観点では、乾燥ゲル化方式で得られるセルロースアシレートフィルムに劣る。
乾燥ゲル化方式を用いた溶液製膜方法、冷却ゲル化方式を用いた溶液製膜方法については、それぞれ多くの提案がなされている。例えば、乾燥ゲル化方式を用いた溶液製膜方法として、特許文献1の方法においては、支持体の温度を1℃以上80℃以下の範囲にし、支持体から流延膜が剥がれる剥取位置で、ガス流を吹き付ける。この方法によると、所期のレタデーションをもつフィルムを効率よく製造することができるとしている。
また、乾燥と冷却との両方を行うことで流延膜をゲル化する方法も提案されている(特許文献2参照)。この特許文献2では、支持体としてのベルトの表面温度を−20〜40℃としている。この特許文献2は、1対のローラにベルトをまきかけ、一方のローラ上で流延と剥ぎ取りとを行う。この一方のローラから他方のローラに向かうベルトに対向して送風口が設けられており、この送風口から乾燥風が送られる。他方のローラから剥取位置に向かうベルトに対向するように、クーラが備えられ、このクーラから冷却風を出して流延膜を冷却する。このようにして、特許文献2は、ベルト上の流延膜を、搬送路における上流域で乾燥し、剥ぎ取り直前で冷却する。この方法によると、光学特性に優れたフィルムを効率よく製造することができる。
特開2000−239403号公報 特開2006−306059号公報
しかしながら、特許文献1,2の方法を適用しても、加工適性及びリワーク性を確実に向上することはできない。具体的には、特許文献1の方法によると、加工適性及びリワーク性が比較的良い場合があるものの、非常に悪い場合も多く、特許文献1の方法は加工適性及びリワーク性を確実に向上するものではない。また、特許文献2の方法についても、得られるフィルムによって加工適性及びリワーク性が異なり、特許文献2の方法はこれらの向上に寄与するものとは言い難い。
そこで本発明は、フィルムの加工適性とリワーク性とを向上する溶液製膜方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、セルロースアシレートが溶剤に溶解したドープを支持体上に連続して流延することにより形成した流延膜を、前記溶剤が残存する状態で前記支持体から剥ぎ取ることにより湿潤フィルムとし、前記湿潤フィルムを乾燥してフィルムを製造する溶液製膜方法において、{(前記ドープのゲル化点TG)−3}℃よりも低くならないように前記流延膜の温度を剥ぎ取り時点まで保ち、剥ぎ取った湿潤フィルムの搬送が可能な程度に前記流延膜が固まるように、前記流延膜の乾燥をすすめることを特徴として構成されている。
前記支持体の温度を制御することにより、前記流延膜の温度を調整し、前記流延膜に気体を送ることにより、前記流延膜の乾燥をすすめることが好ましい。
{(前記ドープのゲル化点TG)+3}℃よりも高くならないように前記流延膜の温度を剥ぎ取り時点まで保つことが好ましい。
前記支持体の流延面の幅方向に長手方向が一致するように配され、前記湿潤フィルムの搬送路に関し前記支持体とは反対側に備えられたローラの周面に、前記湿潤フィルムを巻き掛けて、前記湿潤フィルムを搬送させることにより前記流延膜を剥ぎ取り、
前記湿潤フィルムの前記支持体から剥がれた一方のフィルム面上の空間を第1空間とし、他方のフィルム面上の空間を第2空間とするときに、前記ローラに向かう前記湿潤フィルムの搬送路が前記第2空間側に凸となるように、前記ローラより上流の前記第2空間の圧力を前記第1空間の圧力よりも小さくすることが好ましい。
気体を吸引する吸引装置により、前記ローラより上流の前記第2空間の気体を吸引して、前記ローラと前記支持体から前記湿潤流延膜が剥がれる剥取位置との間の前記第2空間を減圧することが好ましい。
前記吸引装置は、減圧すべき前記第2空間を外部空間と仕切るチャンバを備え、前記チャンバ内の圧力を調整することにより、前記ローラに向かう前記湿潤フィルムの搬送の経路を制御することが好ましい。
粘度が7Pa・s以上9Pa・s以下の範囲である前記ドープを、前記支持体に流延することが好ましい。前記ドープの温度を調整することにより前記粘度を制御することが好ましい。前記粘度は、前記流延ダイにおける前記ドープの圧力損失に基づいて求めることが好ましい。
本発明の溶液製膜方法によると、加工適性とリワーク性とに優れたフィルムを製造することができる。
本発明を実施した溶液製膜設備の概略図である。 加工適性とフィルムの配向度との関係を示すグラフである。 配向度とドラムの温度との関係を示すグラフである。 ゲル化点の求め方を説明するグラフである。 経路制御部の概略を示す一部断面側面図である。 経路制御部の概略を示す平面図である。 流延室の概略を示す一部断面図である。 ドープの粘度と温度との関係を示すグラフである。
図1の溶液製膜設備10は、セルロースアシレート11が溶剤12に溶解したドープ13から湿潤フィルム16を形成する湿潤フィルム形成装置17と、形成した湿潤フィルムの各側部を保持手段(図示無し)により保持して搬送しながら一定の溶剤残留率になるまで乾燥をすすめる第1テンタ18と、湿潤フィルム16の側部を保持手段(図示無し)により保持して幅方向での張力を適宜加えながらさらに乾燥をすすめる第2テンタ19と、第2テンタ19を経た湿潤フィルム16をローラ21で搬送しながら乾燥をさらにすすめてフィルム23にするローラ乾燥装置22と、乾燥したフィルム23をロール状に巻き取る巻取装置24とを有する。なお、溶液製膜設備10は、第2テンタ19とローラ乾燥装置22との間、ローラ乾燥装置22と巻取装置24との間の各搬送路に、湿潤フィルム16とフィルム23との各側端部を切除するスリット装置(図示無し)を備えるが図示は略す。
湿潤フィルム形成装置17は、支持体としてのドラム29を備える。ドラム29は、断面円形の中央に回転軸29bを有し、この回転軸29bは駆動手段(図示せず)により周方向に回転する。これにより、ドラム29は、周方向に回転する。この回転により、周面29aは、ドープ13が流延される無端の流延面となる。
ドラム29の駆動手段は、コントローラ(図示せず)を有し、このコントローラは目的とする速度でドラム29が回転するように、駆動手段を制御する。
ドラム29の上方には、ドープ13を流出する流延ダイ31が備えられる。ドープ13が流出する流延ダイ31の流出口(図示無し)は、回転軸29bの長手方向に延びたスリット形状であり、この流出口がドラム29の周面29aに対向するように流延ダイ31は配される。回転しているドラム29に流延ダイ31からドープ13を連続的に流出することにより、ドープ13はドラム29上で流延される。この流延により、ドラム29の流延面である周面29aに流延膜32が形成される。
流延ダイ31からドラム29に至るドープ13に関して、ドラム29の回転方向における上流には、減圧チャンバ44(図7参照)が設けられるが、図1では図示を略す。この減圧チャンバ44は、流出したドープ13の上流側エリアの雰囲気を吸引して前記エリアを減圧する。
フィルム形成装置17のドラム29と、第1テンタ18との間の渡りには、ローラ48が複数備えられる。これらのローラ48による搬送が可能な程度にまで、流延膜32をドラム29上で固めてから、溶剤を含む状態でドラム29から剥がす。
ドラム29は、周面29aの温度を制御する温度コントローラ34を有する。温度コントローラ34により周面29aの温度を制御することにより、周面29aに接している流延膜32の温度を制御する。
湿潤フィルム形成装置17は、流延膜32に気体を送る給気部35を有する。給気部35は、ダクト36と、送風機37と、コントローラ38とを含む。ダクト36は、ダクト本体36aと複数のノズル36bとを有する。ダクト本体36aは、通過する流延膜32を覆うようにドラム29の周面29aに沿った形状とされ、ドラム29の周面29に対向して設けられる。ノズル36bは、ダクト本体36aのドラム36と対向する対向面に突出して設けられる。各ノズル36bは、回転軸29bの長手方向に一致するドラム29の幅方向、すなわち流延膜32の幅方向に長く延びた形状であり、複数のノズル36aはドラムの周方向に並ぶように形成されてある。ドラム29の周面29aに向かうノズル36bの先端にはスリット(図示無し)が形成されてある。このスリットは、ドラム29の幅方向に延びた開口である。各スリットは、ダクト本体36aに供給されてきた気体を流出する。
送風機37は、ダクト本体36aに気体を供給する。コントローラ38は、送風機37からダクト36へ送り出す気体の温度、湿度、流量を制御する。この制御によりノズル36bからの気体の温度、湿度、流量及び流速を調整する。例えば、送風機37の気体はコントローラ38により加熱され、この加熱された気体を温風として流延膜32に吹き付けることにより、流延膜32の乾燥をすすめる。なお、送風機37の気体をコントローラ38により冷却し、この冷却された気体を冷風として流延膜32に吹き付けることによっても、流延膜32の乾燥をすすめることはできる。
ダクト36は、他の送風手段に代えてもよい。他の送風手段としては、例えば、開口が先端に形成され、この先端をドラム29に向けた複数の送風ノズル(図示無し)がある。この場合には、複数の送風ノズルを送風機37に接続し、送風機37から案内された気体を、各先端の開口から出すとよい。
なお、フィルム形成装置17は、流延ダイ31、ドラム29、ダクト36、経路制御部41を覆うように囲む流延室(ケーシング)45を備える。送風機37、コントローラ38、温度コントローラ34は、流延室45の外部に配されることが好ましい。流延室45は給排気ユニット88(図7参照)を備え、給排気ユニット88は内部に気体を送り込む給気部91(図7参照)と、内部の気体を外部に排出する排気部92(図7参照)とを有する。この給排気ユニット88により、流延室45の内部は、温度、湿度、溶剤ガス濃度が、それぞれ所定範囲に制御される。この制御によっても流延膜32の乾燥はある程度すすむが、十分とはいえないので、給気部35を用いることが好ましい。なお、溶剤ガスとは、溶剤12が蒸発して気体となったものである。
ドラム29の温度を高めに設定するほど、流延膜32の乾燥はすすむ。また、溶剤12の種類によっては、蒸発しやすく、流延膜32の乾燥がすすみやすい場合もある。しかし、蒸発する溶剤12の量には限界がある。そこで、より多くの溶剤を蒸発させる場合には、給気部35により、乾燥を促進する。
流延膜32の温度に対しては、給気部35による気体の影響は皆無ではないものの、接しているドラム29の周面29aの温度の影響の方が極めて大きい。しかも、流延膜32は薄いので、形成されるとほぼ同時に流延膜32の温度はドラム29の周面29aの温度と同じ温度になり、剥取位置PP(図5参照)に至るまで、ドラム29の周面29aの温度に保たれる。すなわち、流延位置PCから剥取位置PPに至るまでの流延膜32の温度はドラム29の周面29aと同じ温度に保たれる。このため、流延膜32の温度を検出しなくてもよく、ドラム29の周面29aの設定温度を流延膜32の温度とみなしてよい。したがって、流延膜32の温度制御手段は、支持体としてのドラム29である。ドラム29の設定温度については、別の図面を用いて後述する。
剥ぎ取りの際には、湿潤フィルム16を剥ぎ取り用のローラ(以下、剥取ローラと称する)33で支持し、流延膜32がドラム29から剥がれる剥取位置PP(図5参照)を、一定に保持する。
剥取ローラ33の上流には、剥取ローラ33に向かう湿潤フィルム16の経路を制御する経路制御部41を設けることが好ましい。
流延膜32をドラム29から剥ぎ取る方法については、別の図面を用いて後述する。
剥ぎ取りによって形成された湿潤フィルム16は、ローラ48で搬送されて第1テンタ18に案内される。第1テンタ18では、湿潤フィルム16の側端部を保持手段(図示無し)で保持し、この保持手段で搬送しながら湿潤フィルム16を乾燥する。保持手段は、複数のピン(図示無し)である。ピンを湿潤フィルム16の側端部に貫通させることにより、湿潤フィルム16が保持される。各側端部のピンは、湿潤フィルム16の幅方向に対して適宜張力を加えながら、搬送方向に移動する。張力は、製造すべきフィルム23の光学性能(例えばレタデーション)に基づき設定する。例えば、フィルム23に目的とする光学性能を発現させるために所定の拡幅率で湿潤フィルム16の幅を拡げる場合には、所定の拡幅率となるように湿潤フィルム16に幅方向での張力を付与する。
第1テンタ18の下流の第2テンタ19にも、湿潤フィルム16の各側端部を保持する保持手段が複数備えられる。この保持手段は、湿潤フィルム16の側端部を把持するクリップである。複数のクリップは、所定のタイミングで、湿潤フィルム16の幅方向に対して所定の張力を付与する。第2テンタ19において付与する張力も、製造すべきフィルム23の光学性能(例えばレタデーション)に基づき設定する。
第1,第2テンタ18,19は、いずれも搬送路を囲むチャンバ(図示無し)を有する。第1,第2テンタ18,19の各チャンバの内部には、ダクト(図示無し)がそれぞれ備えられ、これらのダクト(図示無し)には、湿潤フィルム16の搬送路に対向して給気ノズル(図示無し)と吸引ノズル(図示無し)とがそれぞれ複数形成されてある。給気ノズルからの乾燥気体の送出と吸引ノズルからの気体の吸引により、第1,第2テンタ18,19のチャンバの内部は一定の湿度及び溶剤ガス濃度に保持される。第1,第2テンタ18,19の各チャンバ内部を通過させることにより、湿潤フィルム16の乾燥をすすめる。第1テンタ18では、第2テンタ19のクリップによる把持が可能な程度にまで、湿潤フィルム16を乾燥する。これに対し、第2テンタ19では、幅方向における張力付与のタイミングを考慮して、達すべき乾燥の度合いを決定する。
第2テンタ19を経た湿潤フィルム16はスリット装置(図示無し)で、保持手段による保持跡がある各側端部を、切断刃で連続的に切断して除去される。一方の側端部と他方の側端部との間の中央部はローラ乾燥装置22へ送る。
湿潤フィルム16は、ローラ乾燥装置22へ送られると、搬送方向に並んで配された複数のローラ21の周面で支持される。これらのローラ21の中には、周方向に回転する駆動ローラがあり、この駆動ローラの回転により搬送される。
ローラ乾燥装置22は、乾燥した気体を流出するダクト(図示無し)を備え、乾燥気体が送り込まれる空間を外部と仕切るチャンバ(図示無し)を有する。複数のローラ21はこのチャンバ内に収容されてある。ローラ乾燥装置22のチャンバには気体の導入口(図示無し)と排気口(図示無し)とが形成され、ダクトからの乾燥気体の供給と排気口からの排気により、ローラ乾燥装置22のチャンバ内部は一定の湿度及び溶剤ガス濃度に保持される。このローラ乾燥装置22のチャンバ内部を通過させることにより、湿潤フィルム16は乾燥してフィルム23になる。
ローラ乾燥装置22で乾燥したフィルム23はスリット装置(図示無し)で、各側端部を切断刃で連続的に切断して除去される。一方の側端部と他方の側端部との間の中央部は巻取装置24へ送り、ロール状に巻き取る。
図1には、支持体としてドラム29を用いた場合を示してある。しかし、支持体は、複数のローラ(図示せず)の周面に巻き掛けた環状のベルト(図示せず)であっても構わない。ベルトを支持体とする場合には、ベルトが巻き掛けられた複数のローラのうち、少なくともひとつを周方向に回転する駆動ローラとする。この駆動ローラの回転により、ベルトは長手方向に搬送され、連続的に周回する。
ベルトを支持体とする場合には、ベルトが巻き掛けられたローラを、周面の温度調整可能なものとし、このローラによりベルトの温度を制御するとよい。このように、本発明は、支持体をドラム29に限定するものではない。
ドラム29の周面29aにおいてドープ13が接触して流延膜32が形成され始める流延位置PCから剥取位置PPへ至るまでの流延時間は、ドラム29の回転速度に依存する。例えば、ドラム29の回転速度が大きい場合ほど、流延時間は短くなる。また、ドラム29は、作製することができる大きさに限界があることから、ベルトに比べて流延位置から剥取位置までの流延膜搬送距離が極端に短い。そこで、ドラム29を支持体として用いる場合には、流延面である周面29aの温度を低めに設定して、流延膜32を積極的に冷却することにより、ゲル化をすることが好ましい。ただし、流延膜32を冷却するにしてもその温度が低いほどよいわけではなく、その温度の下限値及び設定方法については後述する。これに対してベルトを支持体として用いる場合には、流延位置PCから剥取位置PPまでの流延膜搬送距離が、ベルトの長さに依存する。そこで、例えば、10m未満の短いベルトを支持体として用いる場合には、ドラム29を使用する場合のようにベルトを低めの温度に設定して、流延膜を積極的に冷却することにより、ゲル化をするとよい。ただし、前述の通り、流延膜32を冷却するにしてもその温度が低いほどよいわけではなく、その温度の下限値及び設定方法については後述する。
一方、例えば10m以上の長いベルトを支持体として用いる場合には、ベルトを高めの温度に設定して、流延膜の乾燥をすすめてゲル化するとよい。乾燥をすすめるためにベルトの温度を高めに設定する場合には、流延膜の乾燥速度(単位時間あたりに流延膜から蒸発する溶剤の量)をより大きくすることに主眼を置くことから流延膜を積極的、意図的には冷却しない。しかし、セルロースアシレートフィルムを製造する場合には、ドープ13の成分等により、流延ダイ31から流出する時点のドープ13に比べて流延膜は温度が低くなる。この意味では、乾燥によりゲル化する場合であっても、結果的に流延膜は、流延ダイ31からの流出時のドープ13に比べて、温度が低いことになる。
ドラム29の周面29aの温度の設定方法について、図2〜図4を用いて以下説明する。加工適性とフィルムの配向度とは互いに関連性がある。まず、加工適性とフィルムの配向度との関係を求める。なお、ここでの配向度は、フィルム面に沿う方向における配向の度合いである。この関係は、例えば図2のようなグラフとして表してもよい。図2においては、縦軸は加工適性であり、下方へ向かうほど加工適性が良い。横軸は配向度であり、右に向かうほど配向度は高い。
図2において、破線で示す曲線(A)と実線で示す曲線(B)とは、互いに異なる処方のドープ13から、互いに同じ製造条件で、それぞれ得られたフィルムに関するグラフである。曲線(A)と曲線(B)とは、配向度と加工適性との関係が互いに異なる。このように、配向度と加工適性との関係は、ドープ13の処方に依存する。曲線(A)、(B)のいずれにおいても、加工適性が悪い場合ほど、配向度が高い。したがって、加工適性を上げるためには、配向度がより低くなるようにフィルムを製造するとよい。
なお、冷却によりゲル化する場合は、乾燥によりゲル化する場合に比べて溶剤残留率が極めて高い状態でドラム29から流延膜32を剥ぎ取る。このため、ドラム29から流延膜32を剥ぎ取る際に、剥ぎ取り方向に一致する湿潤フィルム16の搬送方向に湿潤フィルム16がより大きく伸びる傾向がある。そこで、この伸びが原因のひとつとなって、乾燥によりゲル化して得られるフィルム23よりも冷却によりゲル化して得られるフィルム23の方が高い配向度を示す傾向が多い。しかし、加工適性と配向度との関係は、両者ともに共通しており、配向度が高くなるほど加工適性は悪くなる。また、加工適性と配向度との関係は、冷却と乾燥とのいずれでゲル化するかに関わらず、ドープ13の処方と相関関係がある。このため、加工適性と配向との関係は、ドープ13の処方毎に求めれば足りる。
ここで、目的とする加工適性のレベルをMTとし、この目的レベルMTに対応する配向度を求める。求めた配向度は、加工適性の目的レベルMTに対応する配向度なので、以降これを目的配向度PTと称する。加工適性の目的レベルMTを達成するためには、目的配向度PT以下の配向度をもつようにフィルム23を製造する。このように、目的とする加工適性のレベルから、製造すべきフィルム23の配向度の目的値を設定する。曲線(A)における目的配向度をPTa、曲線(B)における目的配向度をPTbとする。
なお、縦軸を、加工適性に代えてリワーク性にしても、同様なグラフが得られる。したがって、加工適性の目的レベルPTをリワーク性の目的レベルに代えても構わない。
また、ドラム29の温度と得られるフィルムの配向度との関係を求める。この関係は、例えば図3のようなグラフとして表してもよい。図3においては、縦軸は配向度であり、下方へ向かうほど配向度が低い。横軸は支持体の温度であり、右に向かうほど温度が高い。図3には、図2の曲線(A)のフィルムを製造するドープ13を用いる場合について示してある。しかし、図2の曲線(B)のフィルムを製造するドープ13を用いる場合も同様の傾向が得られる。すなわち、ドラム29の温度と得られるフィルムの配向度との関係は、用いるドープ13の処方に関わらず、同様の傾向となる。
図3に示すように、ドラム29の温度が高いほど、得られるフィルムの配向度は低い。したがって、配向度をより低くするためには、ドラム29の温度をより高くして流延膜32の温度をより高い温度に保持し、フィルム23を製造するとよい。また、ある一定の処方のドープ13から得られるフィルムについて、図2に示すように加工適性と配向度とは1対1対応になっており、図3に示すように配向度とドラム29の温度とは1対1対応になっている。よって、ある一定の処方のドープ13から得られるフィルムについて、加工適性とドラム29の温度とは1体1対応であることになる。
ここで、目的配向度PTに対応するドラム29の周面29aの温度を求める。このドラム29の周面29aの温度をT1とする。ドラム29の周面29aの温度が高いほど、得られるフィルムの配向度は低いので、目的配向度PT以下の配向度を発現させるという観点ではドラム29の周面29aの温度はT1以上であればよい。したがって、T1はドラム29の周面29aの設定すべき温度の下限値ということになる。そこで、以上のようにして求めたドラム29の周面29aの温度T1を最低設定温度と称する。なお、ドラム29の周面29aの設定温度の上限値(以降、最高設定温度と称する)には、図3において符号T2を付し、この最高設定温度については後述する。
このように、ドラム29の周面29aの設定温度の下限値は、配向度を介して加工適性の目的レベルから設定される。また、前述のように、流延膜32の温度とドラム29の周面29aの温度とは等しいとみなすことができる。そこで、加工適性が目的レベルMTを満足するようなフィルム23を製造するには、流延膜32の温度が剥ぎ取り時点まで(剥取位置PPに至るまで)T1よりも低くならないように保つために、ドラム29の周面29aの温度を最低設定温度T1以上にする。これにより、加工適性が目的レベルMTを満足するようなフィルムが製造される。
リワーク性は、加工適性が目的レベルMTであれば、目的とするレベルになる。また、上記の例では、ドラム29の周面29aの設定温度の下限値を、配向度を介して、加工適性の目的レベルから設定しているが、リワーク性の目的レベルから配向度を介して設定してもよい。この場合には、リワーク性が目的レベルを満たせば、加工適性も目的レベルを満たすようになる。
一方、ある一定の処方のドープ13についてのゲル化点TGは、以下の方法で求めることができる。この方法は、貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’からゲル化点を求めるものであり、ゲル化点を求める方法として既に広く用いられる。図4において左の実線で示す縦軸は貯蔵弾性率G’であり、右の破線で示す縦軸は損失弾性率G’’である。いずれの縦軸も、上方に向かうほど高い値であることを示す。横軸はドープの温度であり、右へ向かうほど温度が高い。貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’の求め方は、特に限定されず、公知の求め方でよい。なお、本実施形態では、Physica社製の粘弾性測定装置(型式:MCR−300)により貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’を求めている。
図4において実線で示す曲線(1)は貯蔵弾性率G‘とドープ13の温度との関係を示すグラフであり、破線で示す曲線(2)は損失弾性率G’’とドープ13の温度との関係を示すグラフである。貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’は、ともに、ドープ13の温度が高くなるほど低くなる。このように、ドープ13の貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’は、それぞれ温度に対する依存性、すなわち温度依存性がある。しかし、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’とはドープ13の温度に対する依存性が互いに異なり、ドープ13のようなポリマー溶液においては、両者をグラフ化すると交点が存在する。この交点を示す温度が、ドープ13のゲル化点TGである。以上のように、貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’をグラフ化した場合の交点からドープ13のゲル化点TGを求める。
図2及び図3等により、先に求めた最低設定温度T1と、ゲル化点TG(単位;℃)との関係を求めると、最低設定温度T1(単位;℃)は、{(ゲル化点TG)−3}℃と一致(T1=(TG−3)℃)する。このように、最低設定温度T1と、ある一定の処方のドープについてのゲル化点TGとは一致するので、ゲル化点TGを求められるのであれば、配向度を介して加工適性やリワーク性からドラム29の周面29aの設定温度の下限値を求めなくてもよい。すなわち、ドラム29の周面29aの設定温度は、加工適性やリワーク性の改善の観点においては、{(ゲル化点TG)−3}以上とすればよい。
なお、最低設定温度T1がゲル化点TGよりも3℃低い温度に一致するという関係は、厚みが40μm及び40μmよりも厚い例えば60μmのフィルム23に対して、現在において求められる加工適性の目的レベルMP及びリワーク性の目的レベルに基づく。今後、求められる加工適性のレベルが現在のレベルよりも高くなる可能性は強い。その場合には、求められる加工適性のレベルに対応する支持体の温度を、配向度を介して同様に求めるとよい。求められる加工適性のレベルが上がると、配向度を介して同様に求める支持体の最低設定温度T1は、ゲル化点TGとの差(=TG−T1)が3℃よりも小さくなる。そのため、ドラム29の周面29aの設定温度は、{(ゲル化点TG)−3}℃よりもさらに高い温度となる。また、現在求められるフィルムの中で最も薄いものの厚みは40μmであるが、今後、求められるフィルムの厚みはより薄くなる可能性がある。フィルムの厚みが薄くなるほど、セルロースアシレート分子の微細な結晶化は進みやすい傾向があり、この傾向に伴い、加工適性はより低くなる可能性がある。そのため、40μmよりも薄いフィルム23を製造して加工適性が低くなる場合には、ドラム29の周面29aの設定温度は、{(ゲル化点TG)−3}℃よりもさらに高い温度とすればよい。
上記の最低設定温度T1の設定方法ならびに、加工適性及びリワーク性の向上の観点からドラム29の周面29aの温度を{(ゲル化点TG)−3}℃以上にすることは、流延膜をゲル化して剥ぎ取るいずれの溶液製膜にも適用可能である。また、上記の最低設定温度T1の設定方法でドラム29の周面29aやベルトの温度を設定し、これらの温度を一定の温度以上にすることは、加工適性ならびにリワーク性を確実に向上させる。さらには、これらの方法によると、製造すべきフィルム23の目的とする光学性能(例えば、レタデーション)に影響を与えないので、第1テンタ18や第2テンタ19での延伸やローラ乾燥装置22での乾燥等を、これまで設定した条件のまま変えることなく行ってよい。
ただし、冷却によりゲル化を図る場合には、ドラム29の周面29aの温度を高く設定するほど、ゲル化はすすみにくくなり、剥取位置PPに達しても流延膜32は、搬送に十分な程度には固まらない等の問題が生じる。そこで、従来の冷却ゲル化方式では、製造の効率化を主眼において、支持体の公知の温度範囲の中でも特に低い温度に支持体の温度を設定して流延膜を冷却することが一般的である。例えば、セルロースアシレートがセルローストリアセテート(TAC)である冷却ゲル化方式においては、流延膜搬送距離が10m程度のドラム29した場合には、周面29aの温度を−10℃程度に冷却する。ところが、ドラム29の温度を低い温度にするほど配向度が大きくなり、加工適性やリワーク性が悪化することから、本発明では、冷却によりゲル化を図る場合のようにドラム29を積極的に冷却しても、その温度を上記の最低設定温度T1よりも低い温度にはしない。
そこで、ドラム29を積極的に冷却して冷却によるゲル化を図る場合には、剥ぎ取った湿潤フィルム16の搬送が可能な程度、すなわち自己支持性が発現する程度に流延膜32を固めるために、流延膜32の乾燥をすすめる。つまり、自己支持性を発現させるために、流延膜32に対して、冷却に加えて乾燥を行う。このように、本発明では、製造効率の観点を含めてドラム29を積極的に冷却する場合には、最低設定温度T1によって従来の冷却ゲル化方式におけるよりも冷却によるゲル化効果が低くなる分、乾燥によってゲル化効果を補う。すなわち、流延膜32の乾燥工程は、冷却のゲル化効果(ゲル化作用)を補って流延膜を固めるゲル化補填の工程である。なお、支持体としてのドラム29を、流延膜搬送距離が例えば100mのように長いベルトを支持体に代えても、ベルトを積極的に冷却する場合には、{(ゲル化点TG)−3}℃以上の温度では流延膜32が自己支持性を発現するほどにはゲル化はすすまない。このため、冷却によるゲル化効果を補うための乾燥工程を実施する。また、本実施形態では、ゲル化効果を補う乾燥は、冷却されている流延膜32に対して行う。すなわち、冷却と乾燥とを併行して実施する。
ただし、剥ぎ取り時における溶剤残留率が過度に少なすぎると、剥ぎ取りに要する湿潤フィルム16の張力を高くせざるを得なくなる。剥ぎ取りに要する湿潤フィルム16の張力が高すぎると、配向度が高くなることがある。そこで、剥ぎ取り時における溶剤残留率が100%を下回らないように、前記流延膜32の乾燥をすすめることが好ましい。
流延膜32の乾燥は、給気部35による気体の供給により行う。流延膜32の乾燥のすすみ度合い、すなわち乾燥速度は、給気部35のダクト36のノズル36bからの気体の温度、流量、流速を制御することにより調整する。
次に、最高設定温度T2(図3参照)について説明する。この最高設定温度T2は、製造効率を重視する場合に意義がある。最高設定温度T2は{(ドープのゲル化点TG)+3}にする。これにより、確実に、従来の冷却ゲル化方式と同レベルの製造速度でフィルム23が製造される。すなわち、周面29aの温度を{(ドープのゲル化点TG)−3}℃以上{(ドープのゲル化点TG)+3}以下の範囲にすることで、流延膜32の温度を剥ぎ取り時まで{(ドープのゲル化点TG)−3}℃以上{(ドープのゲル化点TG)+3}以下の範囲に保つ。これにより、加工適性及びリワーク性を向上したフィルムが、従来の冷却ゲル化方式の製造速度と同程度の速度で製造される。例えば、流延膜搬送距離が10m、製造するフィルムの厚みが40μmの場合に、ドラム29の周面29aの温度を{(ドープのゲル化点TG)+3}以下にする場合は概ね80m/分の速度でフィルム23が製造される。これに対して、同様の場合に、ドラム29の周面29aの温度を{(ドープのゲル化点TG)+3}よりも高い温度とする場合には、40m/分にも満たない速度でしかフィルム23を製造することができなくなることがある。ドラム29に代えてベルトを用いる場合でも同様である。なお、最高設定温度を{(ゲル化点TG)+3}℃にすると、流延膜搬送距離が長くなるほど、より速い速度でフィルム23が製造される。
なお、上記の最高設定温度T2は、前述のように、ドープ13の処方ならびに目的とする製造速度に応じて、より高い温度に変えてもよい。
以上のように、本発明は、流延膜32をゲル化して固める溶液製膜であれば適用可能である。また、本発明は、本実施形態のように支持体としてドラム29を使用する場合にも適用可能である。ドラムは、フィルムをより広幅に製造する場合に、より広幅のバンドを製造するよりも簡易に幅が大きいものを製造することができる。したがって、フィルム23に対する広幅化の要請にも応えうる。
なお、本発明は、処方が互いに異なるドープ13を共流延してフィルム23を製造する場合にも適用可能である。この場合には、ドラム29に接するように流延されるドープについてゲル化点TGを求め、このゲル化点TGを基準に最低設定温度T1や最高設定温度T2を求める。
なお、加工適性とリワーク性とをより確実に向上させたり、より大きく向上させるには、流延膜32を以下の方法でドラム29から剥ぎ取ることが好ましい。
剥ぎ取りの工程について、図5及び図6を参照しながら具体的に説明する。図5,図6においては、矢線Z1は湿潤フィルム16の搬送方向、矢線Z2は湿潤フィルム16の幅方向を示す。なお、周面29aの幅方向は、湿潤フィルム16の幅方向Z2に一致する。図5及び図6は、概略図であり、湿潤フィルム16の厚みに対して剥取ローラ33を小さく描いてある。
以降の説明においては、湿潤フィルム16のドラム29から剥がれた一方のフィルム面側の空間を第1空間51、他方のフィルム面側の空間を第2空間52と称する。図6は、第1空間51側から湿潤フィルム16及び経路制御部41を見た図である。剥取ローラ33は、長手方向が、ドラム29の周面の幅方向に一致するように配される。剥取ローラ33は、湿潤フィルム16の搬送路に関し、ドラム29とは反対側に備えられる。つまり、ドラム29は第1空間51に備わるので剥取ローラ33は第2空間52に備えられることになる。
剥取ローラ33は、駆動手段70とこの駆動手段70を制御するコントローラ71とを備える。この駆動手段70により剥取ローラ33は所定の回転速度で周方向に回転する。コントローラ71は、設定した剥取ローラ33の回転の速度の信号が入力されると、剥取ローラ33がその設定速度で回転するように駆動手段70を制御する。
剥取ローラ33は、案内されてきた湿潤フィルム16を周面で支持し、回転することにより湿潤フィルム16を搬送する。湿潤フィルム16が剥取ローラ33に巻き掛かるように、ドラム29と剥取ローラ33とを配置しておくとともに剥取ローラ33の下流の搬送路を定めておく。このように、剥取ローラ33に湿潤フィルム16を巻き掛けて、湿潤フィルム16を剥取ローラ33で搬送させることにより、流延膜32をドラム29から剥ぎ取る。
なお、剥取ローラ33は、必ずしも駆動ローラでなくてもよく、搬送されている湿潤フィルム16に周面が接することにより従動するいわゆる従動ローラであってもよい。この場合には、他の搬送手段を剥取ローラ33の下流に設ける。そして、湿潤フィルム16を剥取ローラ33で支持し、設けた搬送手段で湿潤フィルム16を搬送させることにより、流延膜32をドラム29から剥ぎ取る。
経路制御部41は、ドラム29と剥取ローラ33との間の第2空間52に備えてあり、湿潤フィルム16が所期の経路で搬送されるように制御する。経路制御部41は、減圧すべき空間を外部空間と仕切るチャンバ55と、チャンバ55の内部の雰囲気を吸引するポンプ56と、ポンプ56の吸引力を制御するコントローラ57とを備える。コントローラ57は、チャンバ55の内部における設定した圧力の値に対応する信号が入力されると、その設定圧力になるようにポンプ56の吸引力を調整する。
チャンバ55は、減圧すべき第2空間52を、湿潤フィルム16の搬送方向Z1における上流側の外部空間と仕切る第1部材61と、下流側の外部空間と仕切る第2部材62と、幅方向Z2の各側部側の外部空間と仕切る第3部材63及び第4部材64、下方の外部空間と仕切る第5部材65とを備える。第1〜第5部材61〜65は板状であり、これらのうち第1〜第4部材61〜64は起立した姿勢で配されてある。また、チャンバ55には、第1部材〜第4部材61〜64に囲まれるようにして、湿潤フィルム16に対向する第1の開口68が形成され、チャンバ55の外部の気体がこの第1開口68から内部へ吸引される。
第1部材61は、ドラム29に対向するように配され、ドラム29の周面29aに沿う曲面を有する。第1部材61は、流延膜32の厚みを考慮して、ドラム29との距離が100μm以上2500μm以下の範囲となるように配される。搬送方向Z1における第1部材61の上流端61Uは、ドラム29の下流端29Dよりも上流に位置する。
第2部材62は、剥取ローラ33に対向するように配され、剥取ローラ33の周面に沿う曲面を有する。第2部材62は、剥取ローラ33との距離が100μm以上2500μm以下の範囲となるように配される。搬送方向Z1における第2部材62の下流端62Dは、剥取ローラ33の上流端33Uよりも下流に位置する。第2部材62には、チャンバ55の内部の気体が流出する第2の開口69が形成されている。第2の開口69はポンプ56に接続する。
図5における上方から湿潤フィルム16を見たときに、第3部材63と第4部材64とは、図6に示すように、その各内面が湿潤フィルム16の側縁16eよりも外側になるように配される。これにより、経路が安定するまでの間の湿潤フィルム16は、第3部材63と第4部材64とにぶつからない。第3部材63と第4部材64との湿潤フィルム16と対向する対向面は、側方から見たときに、本実施形態では図5に示すように、湿潤フィルム16の所期の経路に重ならないように曲面とされてあるが、必ずしも曲面でなくてもよい。
チャンバ55の内部は、気体が吸引されることにより減圧状態となる。チャンバ55の内部が減圧されると、ドラム29と剥取ローラ33との間の第2空間52も減圧されて、第1空間51よりも低い圧力となる。これにより、剥取ローラ33に向かう湿潤フィルム16はチャンバ55側に引き寄せられて、直線経路(図5中の破線で示す符号A)から曲線経路(図5中において実線で示す)に経路を変え、図5のように側方から見たときに、搬送路は第2空間52側に凸の形状とされる。このように、経路制御部41は、ドラム29と剥取ローラ33との間の第2空間52の気体を吸引する吸引ユニットであり、この吸引によりドラム29と剥取ローラ33との間の第2空間52を減圧して、湿潤フィルム16の搬送路を第2空間52側に凸形状にする。
湿潤フィルム16の搬送路を第2空間52側に凸形状にすることにより、剥ぎ取りのために湿潤フィルム16に付与する力のうち湿潤フィルム16の長手方向にかかる力を従来よりも大幅に小さくして、付与する力のうち、より多くの力が剥ぎ取りのために用いられるようになる。このため、湿潤フィルム16のポリマーであるセルロースアシレートの、フィルム面に沿う方向における配向が抑制され、結果として加工適性とリワーク性とがともに、より確実に向上したり、より大きく向上する。
従来の方法では、剥ぎ取りの力が過度に大きすぎると湿潤フィルム16が剥ぎ取り時に切断することがある。製造速度を速くする場合ほど、剥ぎ取り時の溶剤残留率が高いので、流延膜32とドラム29との密着力がより大きい。したがって、製膜速度を速くする場合ほど剥ぎ取りの力がより大きくなるので切断もしやすい。これに対し、本発明の上記の方法によると、一定の製造速度のもとで剥ぎ取りのために付与する力をより少なくすることができるので、結果として、製造速度をより大きくすることができるという効果もある。しかも、上記の方法によると、剥ぎ取り直後という非常に溶剤残留率が高い湿潤フィルム16に、気体の吹付も実施しないので、湿潤フィルム16のフィルム面の平滑性が維持されるとともに、異物による汚染も回避することができる。
以上のように剥取ローラ33に向かう湿潤フィルム16の搬送の経路を制御することにより、剥取位置PPにおけるドラム29の周面29aと湿潤フィルム16とのなす角θ1を大きくすることができ、このため、剥ぎ取りのために要する力を低く抑えやすくなる。
剥取位置PPにおけるドラム29の周面29aと湿潤フィルム16とのなす角θ1は、30°以上80°以下の範囲にすることがより好ましい。
剥取位置PPにおけるドラム29の周面29aと湿潤フィルム16とのなす角θ1を大きくすると、剥取ローラ33に対する巻き掛け中心角θ2は、直線経路Aの場合の巻き掛け中心角よりも大きくなる。巻き掛け中心角θ2が大きく保持されやすいと、ドラム29と剥取ローラ33との間の搬送路の形状も、凸形状のまま、より保持しやすくなる。
なお、巻き掛け中心角θ2は、湿潤フィルム16が剥取ローラ33に巻き掛かった巻き掛け領域72と剥取ローラ33の断面円形の中心とからなる扇形における中心角である。
剥取位置PPにおけるドラム29の周面29aと湿潤フィルム16とのなす角θ1と、巻き掛け中心角θ2とを、より大きくする観点からは、本実施形態のように、剥取ローラ33を従動ローラではなく駆動ローラとすることがより好ましい。第2空間52側に凸とした搬送の経路の形状を保持する、もしくはより大きな凸とする場合には、駆動ローラの回転速度を低下させるとよい。このように、剥取位置PPにおけるドラム29の周面29aと湿潤フィルム16とのなす角θ1と、巻き掛け中心角θ2とは、剥取ローラ33に向かう湿潤フィルム16の搬送の経路をチャンバ55による吸引のみでより大きくする方法の他に、剥取ローラ33を駆動ローラにしてこの駆動ローラの回転速度を制御することによってもより大きくすることができる。
本実施形態では、第2空間52を第1空間51よりも低い圧力となるように、第2空間52を減圧したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2空間52の減圧に代えて、あるいは加えて、第1空間51を加圧してもよい。ただし、この加圧は、動圧での加圧ではなく、静圧での加圧である。
静圧としての加圧は、ドラム29の下流側の一部と剥取ローラ33の上流側の一部とを含むように、第1空間51と湿潤フィルム16の直線経路Aをチャンバ(図示せず)で囲み、このチャンバ内に気体を一定時間送り込む送り込み操作と、送り込み操作を一定時間停止する停止操作とを繰り返すことで行うことができる。この方法によると、気体の吹付という動圧の発生を大幅に抑止することができるとともに、湿潤フィルム16に対して第1空間51側から圧力を付与することができる。また、ドラム29と剥取路ローラ33との間を数mm程度という極めて小さな隙間にする場合でも、この方法によると確実に第1空間51と第2空間52とに圧力差をつけることができる。さらに、幅方向Z2に延びたスリット状の開口から気体を吸引するよりも、フィルム面の平滑性をより確実に保持することができる。
ドラム29と剥取ローラ33までの第1空間51と第2空間52とに圧力差を設けるための方法として、さらに別の方法もある。例えば、チャンバ55や、第1空間51と湿潤フィルム16の直線経路Aを囲む上記チャンバ(図示せず)を用いずに、湿潤フィルム形成装置17(図1参照)を構成するチャンバ(図示無し)の中に、内部空間を仕切る仕切り部材を設けて、該圧力差をつける方法がある。仕切り部材によって形成された各空間の圧力をそれぞれ制御することにより、湿潤フィルム16の搬送路よりも上方の第1空間51と、下方の第2空間52とに、圧力差をつけることができる。なお、湿潤フィルム形成装置17を構成するチャンバ(図示無し)は、ドラム29や流延ダイ31、ダクト36、剥取ローラ33を覆うようにして外部空間と仕切るように形成するとよい。ドラム29と剥取ローラ33との距離が5000μm以上の場合には、チャンバ55を用いて該圧力差をつけることがより好ましく、5000μm未満の場合には、チャンバ55や第1空間51と湿潤フィルム16の直線経路Aを囲む上記チャンバ(図示せず)とを用いずに、湿潤フィルム形成装置17を構成するチャンバ(図示無し)を仕切り部材で仕切って該圧力差をつける方法でもよい。
第1空間51と第2空間52との圧力の差は、剥取位置PPから剥取ローラ33における巻き掛け領域を通過するまでの湿潤フィルム16の溶剤残留率に基づいて決定することが好ましい。溶剤残留率が大きいほど圧力差を大きくして搬送路をより大きく凸にすることが好ましい。溶剤残留率が大きいほど、ドラム29と流延膜32との密着力が強いとともに、湿潤フィルム16が破断しやすいからである。
剥取位置PPは、幅方向Z2における中央に向かうほど、ドラム29の回転方向における下流側に形成される。このため、剥ぎ取りに際して湿潤フィルム16の長手方向に付与される力は、幅方向Z2における中央に向かうほど大きくなり、面配向が大きくなる。そこで、剥取位置PPでは、中央に向かうに従い、第2空間52の圧力が低くなるようにすることがより好ましい。これにより、面配向が幅方向Z2において一定であるフィルム23を製造することができる。剥取位置PPにおいて中央に向かうに従い第2空間52の圧力が低くなるようにするためには、例えば、チャンバ55の内部に、独立したチャンバ(図示無し)をさらに設け、このチャンバとチャンバ55との各内部圧力を独立して制御するという方法がある。
上記の方法で得られるフィルム23は、厚みの均一性について実用レベルを十分満足する。しかし、今後、用途等によっては、厚みの均一性についてさらに向上したものが求められる可能性がある。フィルム23の厚み均一性を、より向上させるためには、以下の方法を行うとよい。なお、以下の方法は、経路制御部41を配さない場合であっても行うことができるし、また、流延膜の温度を(TG−3)℃以上に保持することを実施しない溶液製膜や、テンタをひとつしか用いない溶液製膜、流延支持体としてドラム29に代えてバンドを用いる溶液製膜など、他の公知の溶液製膜にも適用することができる。
図7に示すように、流延ダイ31、ドラム29、ダクト36、経路制御部41は、流延室45に収容される。ドラム29の回転方向における流延ダイ31の上流側には、前述の減圧チャンバ44が配されており、この減圧チャンバ44も流延室45に収容されている。
流延室45は、流延ダイ31とダクト36との間に第1シール部材81を備え、剥取ローラ33と減圧チャンバ44との間に第2シール部材82を備える。第1シール部材81と第2シール部材82とは、流延室45の内壁に、ドラム29に向かって起立した姿勢で設けられている。この第1シール部材81及び第2シール部材82により、流延室45内部は、流延ダイ31及び減圧チャンバ44を含む第1エリア83と、ダクト36や剥取ローラ33を含む第2エリア84とに仕切られる。ただし、通過する流延膜32と第1シール部材81とが接触しないように、第1シール部材81の先端とドラム29との間には流延膜32の厚みを考慮したわずかな隙間が設けられる。また、ドラム29と第2シール部材82とが接触しないように、第2シール部材82の先端とドラム29との間にはわずかな隙間が設けられる。
本実施形態では、流延室45を第1エリア83と第2エリア84との2つのエリアに仕切っている。ただし、流延膜32の冷却や乾燥等の速度調整等の目的に応じて、第2エリア84に第1シール部材81や第2シール部材82と同様のシール部材(図示せず)をさらに設けて、第2エリア84をさらに多くのエリアに仕切ってもよい。
第1シール部材81は、仕切板81aとラビリンスシール81bとを有し、第2シール部材82は、仕切板82aとラビリンスシール82bとを有する。仕切板81aと仕切板82aとは、それぞれ流延室45の内壁に取り付けられ、ドラム29に向かって起立した姿勢で延びている。ラビリンスシール81bは、仕切板81aのドラム29側先端に取り付けられ、ラビリンスシール82bは、仕切板82aのドラム29側先端に取り付けられる。
流延室45には、第1エリア83に接続する粘度制御装置87と、第2エリア84に接続する給排気ユニット88とが備えられる。
給排気ユニット88は、給気部91と、排気部92と、制御部93とを有する。給気部91は、第2エリア84に気体を供給する。排気部93は、第2エリア84の気体を外部に排出する。制御部93は、給気部91と排気部92とを制御する。例えば制御部93は、給気部91による給気のオン・オフと給気流量と送り出す気体の温度や湿度や溶剤ガス濃度とを制御し、排気部92による気体吸引のオン・オフと排気流量とを制御する。この給排気ユニット88により、第2エリア84の温度、湿度、溶剤ガス濃度が、それぞれ所定範囲に制御される。
粘度制御装置87は、粘度算出ユニット95と温度制御ユニット96とを有する。粘度算出ユニット95は、流量計97と、検出部98と、粘度算出部99とを含む。
流量計97は、流延ダイ31の上流の配管に設けられ、ドープ13の流量を計測して出力する。検出部98は流量計97と流延ダイ31との間の配管に設けられる。検出部98の位置は、流量計97の上流側でもよい。流延ダイ31からドラム29に向かうドープ13の圧力損失を検出する。具体的には、検出部98は、流延ダイ31に案内されるドープ13の圧力を検出し、この検出値と流延ダイ31から流出したドープ13の圧力とから圧力損失を算出して出力する。なお、流延ダイ31から流出したドープ13の圧力は測定する必要は無く、大気圧値を流延ダイ31から流出したドープ13の圧力値とみなしてよい。
粘度算出部99は、入力側が流量計97と検出部98とに接続し、出力側が温度制御ユニット96の温度算出部101に接続する。粘度算出部99は、ドープ13の流量と流延ダイ31における圧力損失とドープ13を流出する流延ダイ31の流路形状パラメータとが入力されると、これらの入力信号に基づき、ドープ13の粘度を算出して、出力する。粘度は、周知の以下の式(1)により算出される。このように、粘度算出ユニット95は、流延ダイ31から流出したドープ13につき、圧力損失から粘度を求める。以下の式において、Qはドープ13の流量(単位;mm/s)であり、ΔPは流延ダイ31における圧力損失であり、hとLとWとはドープ13を流出する流延ダイ31の流路形状パラメータである。hは、流延ダイ31のスリット形状の流出口における隙間の間隔(単位;mm)であり、流出口が矩形である場合には短辺の長さがこれにあたる。ηは粘度(単位;Pa・s)である。Lは平板長(単位;mm)である。流延ダイ31におけるドープ13の流路は、周知の通りドラム29の回転方向における上流側のブロック(図示無し)と下流側のブロック(図示無し)と、これらのブロックの各側部に配される側板とに囲まれて形成される。流出口から流延ダイ31内でのドープ13の流れ方向上流側への一定範囲は、流路の幅(ドラムの幅方向における長さ)が一定となっている。この一定幅となっている流路のドープ13の流れ方向における長さがLにあたる。Wは、流延ダイ31のスリット形状の流出口における隙間の長さ(単位;mm)であり、流出口が矩形である場合には長辺の長さがこれにあたる。
ΔP=12ηLQ/Wh・・・(1)
流延ダイ31から流出するドープ13の粘度は、他の公知の方法でも求めることができる。他の公知の方法で粘度を求める場合には、用いる他の方法による粘度と、上記の方法による粘度とは一定の相関関係があるので、用いる他の方法の粘度と上記の方法による粘度とを対応づけるとよい。しかし、ドープ13を流延する溶液製膜においては、流延ダイ31においてドープに対して高いせん断がかかるために、粘度をより精緻に制御する観点では上記の方法で粘度を求める方が好ましい。
温度制御ユニット96は、温度算出部101と、制御部102と、給気部103とを含む。温度制御ユニット96は、排気部104を含んでもよい。給気部103は、温度と流量とが入力されると、入力された温度の気体、例えば空気を、入力された流量で流出する。排気部104は、流量が入力されると、入力された流量で気体を吸引して外部へ排出する。
制御部102は、給気部103と流延ダイ31とに接続する。制御部102は、目的とするドープ13の温度(以下、ドープ目的温度と称する)が入力されると、給気部103から流出すべき気体の温度と流量とを算出し、給気部103に対して出力して給気部103を制御する。流延ダイ31には、内部に形成されたドープ13の流路の温度を調整するための温度調整機(図示無し)が備えられており、制御部102は、ドープ目的温度が入力されると、流延ダイ31の設定温度を算出し、流延ダイ31の温度調整機に対して流延ダイ31の設定温度を出力して温度調整機を制御する。
排気部104がある場合には、制御部102はこの排気部104にも接続する。制御部102は、ドープ目的温度が入力されると、排気部104により吸引すべき気体の流量を算出し、排気部104に対して出力して排気部104を制御する。
温度算出部101は、入力側が粘度算出ユニット95の粘度算出部99に接続し、出力側が制御部102に接続する。温度算出部101には、ドープ13の処方毎の粘度と温度との関係を入力してある。温度算出部101は、ドープ13の粘度が入力されると、この粘度が7Pa・s以上9Pa・s以下の範囲であるか否かを判定する。粘度が7Pa・s以上9Pa・s以下の範囲である場合には、制御部102に対してドープ目的温度を出力しないが、粘度が7Pa・s未満または9Pa・sより大きい場合には、制御部102に対してドープ目的温度を出力する。温度算出部101におけるドープ目的温度の出力の詳細については、別の図面を用いて後述する。
上記構成の粘度制御装置87は、以下のようにドラム29に流延されるドープ13の温度を制御する。まず、粘度算出ユニット95の流量計97は、流延ダイ31に向かうドープ13の流量を計測して粘度算出部99へ出力する。検出部98は、流延ダイ31からドラム29に向かうドープ13の圧力損失を検出して粘度算出部99へ出力する。粘度算出部99は、流延ダイ31に案内されるドープ13の流量と流延ダイ31における圧力損失とドープ13を流出する流延ダイ31の流路形状パラメータとが入力されると、これらの入力信号から、流延ダイ31からドラム29に向かうドープ13の粘度を算出する。粘度算出部99は、算出信号を温度制御ユニット96の温度算出部101へ出力する。
温度算出部101には、ドープ13の粘度と温度との関係が予め入力されている。温度算出部101は、この関係に基づき、所定の粘度範囲に対応するドープ13の温度範囲を特定する。温度算出部101は、粘度算出部99の算出信号が入力されると、この算出信号に対応するドープ13の粘度が、所定の粘度範囲であるか否かを判定する。粘度が所定の粘度範囲の上限より大きいと判定した場合には、先に特定してあるドープの温度範囲から抽出した温度をドープ目的温度として制御部102へ出力する。粘度が所定の温度範囲であると判定した場合には、温度算出部101は制御部102への出力は行わない。
制御部102は、ドープ目的温度が入力されると、給気部103から流出すべき気体の温度と流量とを算出し、給気部103へ出力する。給気部103は、入力された温度に気体の温度を調整し、温度調整した気体を入力された流量で第1エリア83に供給する。この供給により、第1エリア83の温度が調整される。流延ダイ31から出たドープ13の温度は、雰囲気の温度の影響を受ける。例えば、ドープ13は流延ダイ31から出ると、雰囲気温度と略同等になる場合があり、この場合には、第1エリア83の温度をドープ目的温度にしておくとよい。第1エリア83の温度をドープ目的温度にする場合には、制御部102は、給気部103から流出すべき気体の温度を、例えばドープ目的温度と同じ温度に算出する。
また、制御部102は、ドープ目的温度が入力されると、流延ダイ31の設定温度を算出し、流延ダイ31の温度調整機へ出力する。温度調整機は、入力された設定温度となるように流延ダイ31の温度を調整する。流延ダイ31の温度が調整されることにより、内部の流路を通過する間にドープ13の温度が調整される。制御部は、流延ダイ31の設定温度を、例えば、ドープ目的温度と同じ温度に算出する。
本実施形態では、第1エリア83と流延ダイ31との両方の温度調整をすることにより、ドープの温度をドープ目的温度となるように精緻に調整する。しかし、第1エリア83と流延ダイ31とのいずれか一方の温度調整でドープ13の温度がドープ目的温度となるように調整される場合には、いずれか一方の温度調整でよい。
なお、流延ダイ31から流出したドープ13に、温度調整された気体を吹き付けることでもドープ13の温度を調整することはできる。しかし、この方法では、気体の吹き付けによる動圧により、流延ダイ31から流出したドープ13の形状が乱れてしまい、流延膜32は膜面が平滑にならない場合が多く、好ましくない。これに対し、給気部103から第1エリア83への気体供給により第1エリア83の雰囲気全体を温度調整する本実施形態によると、流延膜32に対して加わる圧力は動圧ではなく静圧であるので、流延ダイ31から流出したドープ13の形状が乱れないので好ましい。
排気部104がある場合には、制御部102は、ドープ目的温度が入力されると、排気部104で吸引すべき気体の流量を算出し、排気部104へ出力する。排気部104は、入力された流量で第1エリア83の雰囲気を吸引する。この吸引により、第1エリア83の温度がより迅速に調整される。
ドラム29に流延されるドープ13は、以上のようにしてドープ目的温度に温度が調整されており、これにより粘度が所定の範囲に制御されている。所定の粘度範囲とは、7Pa・s以上9Pa・s以下の粘度範囲である。粘度が7Pa・s以上であると、7Pa・s未満に比べてフィルムの厚みの均一性が非常に優れる。また、粘度が9Pa・sよりも大きいと、フィルム23のフィルム面が鮫肌(シャークスキン)状になることが多いが、粘度を9Pa・s以下にすることにより、シャークスキンが確実に防止される。
温度算出部101によるドープ目的温度の算出方法について図8を参照しながら説明する。図8においては、縦軸はドープ13の温度であり、上方ほど温度が高いことを意味する。横軸はドープ13の粘度(単位;Pa・s)である。
破線で示す曲線(A)と実線で示す曲線(B)とは、互いに異なる処方のドープ13について、それぞれ得られた温度と粘度との関係を示すグラフである。このような温度と粘度との関係は、予め温度算出部101に入力してある。曲線(A)と曲線(B)とは、温度と粘度との関係が互いに異なる。このように、温度と粘度との関係は、ドープ13の処方に依存する。そこで、ドープ13の処方毎に、温度と粘度との関係を求め、求めた関係がそれぞれ温度算出部101にそれぞれ入力される。
温度算出部101は、ドープ13の粘度が7Pa・s以上9Pa・s以下という所定の温度範囲に対応するドープ13の温度を特定する。例えば、図8の曲線(A)については、粘度が7Pa・sであるドープ13の温度を特定して、これをTA7(℃)とし、粘度が9Pa・sであるドープ13の温度を特定して、これをTA9(℃)とする。図8に示すように、ドープ13の粘度は、温度が低いほど高いので、ドープ13の粘度が7Pa・s以上9Pa・s以下という所定の温度範囲に対応するドープ13の温度範囲は、TA9(℃)以上TA7(℃)以下の範囲と特定される。このように、所定の粘度範囲の下限と上限とにそれぞれ対応する温度が特定されると、所定の粘度範囲に対応する温度範囲が特定される。図8においては、曲線(A)のドープ13について、特定された温度範囲に符号TARを付す。
温度算出部101は、特定した温度範囲TARから一の温度を抽出し、抽出した温度をドープ目的温度として出力する。抽出する温度は、特に限定されず、任意でよい。ただし、粘度が9Pa・sに近いほどフィルム23の厚みがより均一になる傾向があるので、この傾向を考慮すると、9Pa・sに対応する温度TA9(℃)を抽出するように温度算出部101の出力を制御しておくとよい。なお、ドープ13における溶剤12の質量割合が非常に高い場合等には、粘度が9Pa・sになる温度が低すぎて製造速度等に限界が出る場合がある。このような場合には、製造速度等を優先して、粘度が9Pa・sよりも低くなる温度を抽出するように温度算出部101の出力を制御しておくとよい。
曲線(B)のドープ13の場合についても上記の曲線(A)のドープ13の場合と同様に、ドープ目的温度が出力される。すなわち、次のとおりである。まず、粘度が7Pa・sであるドープ13の温度を特定して、これをTB7(℃)とし、粘度が9Pa・sであるドープ13の温度を特定して、これをTB9(℃)とする。これにより、ドープ13の粘度が7Pa・s以上9Pa・s以下という所定の温度範囲に対応するドープ13の温度範囲は、TB9(℃)以上TB7(℃)以下の範囲と特定される。図8においては、曲線(B)のドープ13について、特定された温度範囲に符号TBRを付す。温度算出部101は、特定した温度範囲TBRから一の温度を抽出し、抽出した温度をドープ目的温度として出力する。
フィルム23の厚みをより均一にするためには、流延膜32の厚みをより均一にする。従来では、流延膜の厚みをより均一にするために、ドープの粘度をより低くし、これにより流延膜の露呈した一方の膜面の高さが一定にする(レベリング)方法が用いられている。さらに、従来は、ドープの粘度をより低くするために、湿潤フィルムを乾燥する乾燥工程で過度な負荷がかからない範囲で、ドープにおける溶剤の質量割合をより多くする(固形分の質量割合を低くする)ことが多かった。また、流延するドープの温度は、従来は、ドープに含まれる溶剤が急激に蒸発しない程度の比較的高めの温度に設定されてきた。例えば、溶媒の一成分としてジクロロメタンを用いるセルロースアシレートのドープの場合には、35℃程度の温度にしたドープを流延していた。これに対して、本発明では、ドープ13の粘度を従来よりも高い7Pa・s以上9Pa・s以下の範囲にする。そして、粘度の制御を、ドープ13における溶剤12(図1参照)の質量割合を変えることなく、ドープ13の温度を調整することにより行う。このため、ドープ13の温度調整は粘度制御のために行うものであり、ドープ13の温度は、従来よりも非常に低く設定してある。
以上の方法によると、ドープ13の処方を変えることなくフィルム23の厚みの均一性をより向上させることができる。例えば、流延膜の露出した膜面を平滑にすることを目的にして、ドープにおける溶媒の質量割合をより高めるという従来の方法を、上記の方法では用いる必要が無い。このため、ドープ13の処方の変更に伴う後工程の条件を変更する必要がないとともに、製造速度を下げる懸念も無い。後工程の条件とは、例えば、ダクト36における送風条件、第1テンタ18での送風条件や延伸条件である。また、ドープ13の温度は、ドープの処方に関わらず上記の方法で簡易に調整することができるので、粘度が簡易に制御される。さらに上記の方法では、粘度を従来よりも高めの上記の所定範囲に設定するために、ドープの温度は従来よりも低めに調整することになる。このため、溶剤12の急激な蒸発に伴うドープ13や流延膜32の発泡を懸念する必要がない。
以下に、本発明としての実施例と、本発明に対する比較例とを記載する。
図1に示す溶液製膜設備10を用いて、以下の処方のドープ13から厚みが60μmのフィルム23を製造した。ただし、本実施例においては、溶液製膜設備10に配した粘度算出ユニット95と、温度制御ユニット96の温度算出部101とは使用しなかった。制御部102に、ドープ目的温度として35℃を入力し、流延ダイ31から流出するドープ13の温度をドープ目的温度と同じになるように調整した。したがって、流延したドープ13(流延ダイ31から流出する時点のドープ13)の温度は35℃である。ドープ13のゲル化点TGは6℃であった。ドラム29の周面29aの温度をそれぞれ異なる温度にした実験1〜実験14を実施した。各実験におけるドラム29の周面29aの温度は表1に示す。
<ドープ13の処方>
固形成分 ・・・ドープ13における質量割合が20質量%
溶剤 ・・・ジクロロメタンとアルコールとの混合物であり、ジクロロメタン:アルコール=80:20
なお、上記の固形成分とは、ポリマー11としてのTACと、可塑剤と、マット剤と、UV吸収剤とである。
各実験で得られたフィルム23に関し、加工適性とリワーク性とを、以下の方法及び基準で評価した。結果については、表1に示す。
(ア)加工適性
得られたフィルム23を偏光膜の両面に接着剤を介して重ねて接着し、偏光板を作製した。偏光板を刃物で10cm×10cmの矩形に打ち抜き、評価用サンプルとした。この評価用サンプルのエッジすなわち切断面から、フィルム23の内部へとクラックが発生しているか否か、及び、確認されたクラックの程度を評価し、これを加工適性の評価とした。評価は、以下の基準に基づいて行った。クラックは、フィルム23の切断面から内部に向かう割れである場合もあるし、偏光膜とフィルム23との間での剥がれである場合もある。以下の基準で、A〜Cは加工適性が合格であるレベル、Dは加工適性が不合格であるレベルである。
A:クラックが認められない、または、クラックが発生してはいるが発生したクラックの範囲が長辺の長さの25%未満におさまっている。
B:クラックが発生している範囲が長辺の長さの25%以上50%未満の範囲におさまっている。
C:クラックが発生している範囲が長辺の長さの50%以上75%未満の範囲に収まっている。
D:クラックが発生している範囲が、長辺の長さの75%以上である。
(イ)リワーク性
得られたフィルム23を偏光膜の両面に接着剤を介して重ねて接着し、偏光板を作製した。偏光板をガラス基板に貼り合わせた後、ガラス基板から剥がした。ガラス基板上における、フィルム23の剥げ残りの程度について目視で確認し、以下の基準に基づいてリワーク性を評価した。以下の基準で、A〜Cはリワーク性が合格であるレベル、Dはリワーク性が不合格であるレベルである。
A:剥げ残りが全く確認されない。
B:極わずかに剥げ残りがある程度である。
C:わずかに剥げ残りはあるが、実用上問題無い程度である。
D:剥げ残りが多くある。
Figure 2013082192
[比較例1]
ドラム29の周面29aの温度をそれぞれ異なる温度にした比較実験1〜比較実験7を実施した。各比較実験におけるドラム29の周面29aの温度は表1に示す。その他の条件は実施例1と同じである。
各比較実験で得られたフィルムに関し、それぞれ加工適性とリワーク性とを、実施例1と同じ方法及び基準で評価した。加工適性とリワーク性との結果については表1に示す。
実施例1と同じ処方のドープ13から厚みが40μmのフィルム23を製造した。ドラム29の周面29aの温度をそれぞれ異なる温度にした実験1〜実験14を実施した。各実験におけるドラム29の周面29aの温度は表2に示す。その他の条件は実施例1と同じである。
各実験で得られたフィルム23とに関し、それぞれ加工適性とリワーク性とを、実施例1と同じ方法及び基準で評価した。加工適性とリワーク性との結果については表2に示す。
Figure 2013082192
[比較例2]
ドラム29の周面29aの温度をそれぞれ異なる温度にした比較実験1〜比較実験7を実施した。各比較実験におけるドラム29の周面29aの温度は表2に示す。その他の条件は実施例2と同じである。
各比較実験で得られたフィルムに関し、それぞれ加工適性とリワーク性とを、実施例1と同じ方法及び基準で評価した。加工適性とリワーク性との結果については表2に示す。
実施例1のドープ13におけるポリマー11をセルロースジアセテート(DAC)に代えた。ドープ13のゲル化点TGは−25℃であった。このドープ13から厚みが40μmのフィルム23を製造した。ドラム29の周面29aの温度をそれぞれ異なる温度にした実験1〜実験14を実施した。各実験におけるドラム29の周面29aの温度は表3に示す。その他の条件は実施例1と同じである。
各実験で得られたフィルム23とに関し、それぞれ加工適性とリワーク性とを、実施例1と同じ方法及び基準で評価した。加工適性とリワーク性との結果については表3に示す。
Figure 2013082192
[比較例3]
ドラム29の周面29aの温度をそれぞれ異なる温度にした比較実験1〜比較実験7を実施した。各比較実験におけるドラム29の周面29aの温度は表3に示す。その他の条件は実施例3と同じである。
各比較実験で得られたフィルムに関し、それぞれ加工適性とリワーク性とを、実施例1と同じ方法及び基準で評価した。加工適性とリワーク性との結果については表3に示す。
実施例1のドープ13におけるポリマー11をセルロースアセテートプロピオネート(CAP)に代えた。ドープ13のゲル化点TGは−10℃であった。このドープ13から厚みが40μmのフィルム23を製造した。ドラム29の周面29aの温度をそれぞれ異なる温度にした実験1〜実験14を実施した。各実験におけるドラム29の周面29aの温度は表4に示す。その他の条件は実施例1と同じである。
各実験で得られたフィルム23とに関し、それぞれ加工適性とリワーク性とを、実施例1と同じ方法及び基準で評価した。加工適性とリワーク性との結果については表4に示す。
Figure 2013082192
[比較例4]
ドラム29の周面29aの温度をそれぞれ異なる温度にした比較実験1〜比較実験7を実施した。各比較実験におけるドラム29の周面29aの温度は表4に示す。その他の条件は実施例4と同じである。
各比較実験で得られたフィルムに関し、それぞれ加工適性とリワーク性とを、実施例1と同じ方法及び基準で評価した。加工適性とリワーク性との結果については表4に示す。
溶液製膜設備10に配した粘度算出ユニット95を用いて、ドープ13の粘度を算出した。流延したドープの温度は35℃であることを含め、その他の条件は、実施例1の実験1と同じである。得られたフィルム23について、厚みの均一性を以下の方法及び基準で評価し、これを実験1とした。ドープ13の粘度と、厚みの均一性の評価結果については、表5に示す。
(ウ)厚みの均一性
得られた長尺のフィルム23から、長さ2m、幅2mの大きさでサンプリングした。得られた長尺のフィルム23の幅方向に直管蛍光灯の長手方向が略一致するように、サンプリングしたシート状のフィルム23を直管蛍光灯下に置く。直管蛍光灯の光をフィルム23に照射して、直管蛍光灯をフィルム23に写り込ませる。フィルム23に写った直管蛍光灯の像の輪郭(エッジライン)のうち、直管蛍光灯の長手方向のエッジラインの直線性の度合いを評価することにより、これをフィルム23の厚みの均一性の評価とした。直線性の度合いは、直管蛍光灯の長手方向のエッジラインのうち、直線ではない部分を目視で特定し、その範囲の長さをXとするときに、エッジラインの一端から他端までの長さYに対するXの百分率(単位;%)を求めて、以下の基準で評価した。以下の基準において、A〜Cは厚みの均一性が現在の実用的観点で合格であるレベル、Dは厚み均一性が現在の実用的観点で不合格であるレベルである。なお、Cは、用途によっては将来的に不合格になる可能性があるレベルである。
A;エッジラインが一端から他端まで直線である
B;エッジラインのうち直線ではない部分が20%未満である
C;エッジラインのうち直線ではない部分が50%未満である
D;エッジラインのうち直線ではない部分が50%以上である
以下の方法で、実験1〜実験10を実施した。実施例1の実験1で用いたドープ13について、温度と粘度との関係を求めた。そして、粘度が表5の「ドープの粘度」欄に示す粘度になるように、ドープ13の温度を調整した。ドープ13の温度は、制御部102に、ドープ目的温度として表5の「ドープ目的温度」(単位;℃)を入力することで行い、このドープ目的温度と同じになるようにドープ13を温度調整した。したがって、流延したドープ13(流延ダイ31から流出する時点のドープ13)の温度は、制御部102に入力したドープ目的温度と同じである。溶液製膜設備10に配した粘度算出ユニット95を用いて、ドープ目的温度に温度を調整したドープ13の粘度を算出し、表5の「ドープの粘度」欄に示す粘度であることを確認した。その他の条件は、実験1と同じである。
実験1と同様に、各実験で得られたフィルム23について、厚みの均一性を評価した。評価の結果は表5に示す。
Figure 2013082192
10 溶液製膜設備
16 湿潤フィルム
17 湿潤フィルム形成装置
23 フィルム
29 ドラム
32 流延膜
33 剥取ローラ
35 給気部
36 経路制御部

Claims (9)

  1. セルロースアシレートが溶剤に溶解したドープを支持体上に連続して流延することにより形成した流延膜を、前記溶剤が残存する状態で前記支持体から剥ぎ取ることにより湿潤フィルムとし、前記湿潤フィルムを乾燥してフィルムを製造する溶液製膜方法において、
    {(前記ドープのゲル化点TG)−3}℃よりも低くならないように前記流延膜の温度を剥ぎ取り時点まで保ち、
    剥ぎ取った湿潤フィルムの搬送が可能な程度に前記流延膜が固まるように、前記流延膜の乾燥をすすめることを特徴とする溶液製膜方法。
  2. 前記支持体の温度を制御することにより、前記流延膜の温度を調整し、
    前記流延膜に気体を送ることにより、前記流延膜の乾燥をすすめることを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
  3. {(前記ドープのゲル化点TG)+3}℃よりも高くならないように前記流延膜の温度を剥ぎ取り時点まで保つことを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
  4. 前記支持体の流延面の幅方向に長手方向が一致するように配され、前記湿潤フィルムの搬送路に関し前記支持体とは反対側に備えられたローラの周面に、前記湿潤フィルムを巻き掛けて、前記湿潤フィルムを搬送させることにより前記流延膜を剥ぎ取り、
    前記湿潤フィルムの前記支持体から剥がれた一方のフィルム面上の空間を第1空間とし、他方のフィルム面上の空間を第2空間とするときに、前記ローラに向かう前記湿潤フィルムの搬送路が前記第2空間側に凸となるように、前記ローラより上流の前記第2空間の圧力を前記第1空間の圧力よりも小さくすることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の溶液製膜方法。
  5. 気体を吸引する吸引装置により、前記ローラより上流の前記第2空間の気体を吸引して、前記ローラと前記支持体から前記湿潤流延膜が剥がれる剥取位置との間の前記第2空間を減圧することを特徴とする請求項4記載の溶液製膜方法。
  6. 前記吸引装置は、減圧すべき前記第2空間を外部空間と仕切るチャンバを備え、前記チャンバ内の圧力を調整することにより、前記ローラに向かう前記湿潤フィルムの搬送の経路を制御することを特徴とする請求項5記載の溶液製膜方法。
  7. 粘度が7Pa・s以上9Pa・s以下の範囲である前記ドープを前記支持体に流延することを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項記載の溶液製膜方法。
  8. 前記ドープの温度を調整することにより前記粘度を制御することを特徴とする請求項7記載の溶液製膜方法。
  9. 前記粘度は、前記流延ダイにおける前記ドープの圧力損失に基づいて求めることを特徴とする請求項7または8記載の溶液製膜方法。
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