JP2005001289A - セルロースエステルフィルムの製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】偏光板用保護フィルム等に用いられるセルロースエステルフィルムの製造方法について、設備コスト及び原材料コストの低減、並びに端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保による製造装置の稼働率向上、セルロースエステルフィルムの必要物性の確保を図る。また、折れ・貼り付き等の巻中故障がないフィルムの製造を可能とする。
【解決手段】溶液流延製膜法により、最終膜厚30〜125μmのセルロースエステルフィルムを製造する方法であって、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立することを特徴とする。
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
【選択図】 なし
【解決手段】溶液流延製膜法により、最終膜厚30〜125μmのセルロースエステルフィルムを製造する方法であって、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立することを特徴とする。
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光板用保護フィルム等に用いられるセルロースエステルフィルムの製造方法及び製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示装置(LCD)は種々のところに使用されるに伴って、LCDに使用される液晶表示素子すなわち偏光板についても高生産性化(生産量増大)が求められている。しかも、液晶表示装置(LCD)については薄型化が進んでおり、LCDに使用される偏光板についても薄膜化が要望されている。
【0003】
ところで、現在、LCDの偏光板用の保護フィルムとしては、主にセルローストリアセテート(TAC)フィルムが用いられているが、偏光板の高生産性化に伴い、このようなLCD用セルロースエステルフィルムの高生産性化が進むと、セルロースエステルフィルム品質に負荷が増大する。
【0004】
従来より、溶液流延製膜法によりセルロースエステルフィルムを製造する装置においては、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラム(支持体)上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、乾燥させた後に巻取り機で巻き取ることにより、セルロースエステルフィルムを製造していた。
【0005】
しかしながら、このような溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法及び装置において、従来よりセルロースエステルフィルムの製品幅とこの製品幅に対する装置幅について規定した技術に関する先行文献は、見当たらない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来は、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法及び装置について、セルロースエステルフィルムの製品幅とこの製品幅に対する装置幅の規定が特にないため、セルロースエステルフィルムの製品幅に対して過剰な装置仕様であったり、あるいは限られた装置幅から無理なセルロースエステルフィルムの製品幅の確保を行なっていた。
【0007】
従って、上記前者の場合には、必要なセルロースエステルフィルムの製品幅を獲得するために、フィルム端部のスリット幅が過剰となり、装置トラブル起因の稼働率の低下が起こるのみならず、装置及び原材料の無駄が多く、設備投資が高くつくとともに、運転費用もかさむという問題があった。また上記後者の場合には、安定なフィルム搬送が困難であるため、装置の稼働率の低下、及びフィルム物性への悪影響が生じるという問題があった。しかも、従来は、セルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施すことにより形成されたエンボス部に、適正なエンボス幅及び高さの選定が行なわれていなかったため、セルロースエステルフィルムの元巻きに、折れ・貼り付き等の巻中故障が発生するという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムを製造する方法及び装置について、設備コスト及び原材料コストの低減、並びに端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保による製造装置の稼働率向上、セルロースエステルフィルムの必要物性の確保を図ることができ、また、折れ・貼り付き等の巻中故障がないフィルムの製造が可能である、セルロースエステルフィルムの製造方法及び製造装置を提供しようとすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラム(支持体)上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、溶液流延製膜法により、最終膜厚30〜125μmのセルロースエステルフィルムを製造する方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立することを特徴としている。
【0010】
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
上記請求項1記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。
【0011】
また、上記請求項1記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0012】
つぎに、本発明の請求項4記載の発明は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、セルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取る、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%であることを特徴としている。
【0013】
上記請求項4記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいのが、好ましい。
【0014】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。
【0015】
また、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mであるのが、好ましい。
【0016】
本発明の請求項8記載の発明は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、セルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取る、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立すること、
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
さらに、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%であること、を特徴としている。
【0017】
上記請求項8記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。
【0018】
また、上記請求項8記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0019】
上記請求項8記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいのが、好ましい。
【0020】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。
【0021】
また、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mであるのが、好ましい。
【0022】
上記セルロースエステルフィルムの製造方法においては、セルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープに用いられる溶媒は、塩化メチレンでも、それ以外の溶媒であっても良い。
【0023】
また、本発明の請求項9記載の発明は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体と、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延する流延ダイと、流延の際、流延ダイの流延上流側から減圧する減圧チャンバと、ドープ膜(ウェブ)を支持体上から剥離する剥離ロールと、剥離後のウェブを搬送する端部に規制力を設けた搬送ロールと、ロール搬送の前または後にウェブを幅手方向に延伸させるテンターとを備えており、溶液流延製膜法により最終膜厚30〜125μmのセルロースエステルフィルムを製造するセルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立することを特徴としている。
【0024】
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
上記請求項9記載のセルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。そして、この場合、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0025】
本発明の請求項12記載の発明は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体と、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延する流延ダイと、流延の際、流延ダイの流延上流側から減圧する減圧チャンバと、ドープ膜(ウェブ)を支持体上から剥離する剥離ロールと、剥離後のウェブを搬送する端部に規制力を設けた搬送ロールと、ロール搬送の前または後にウェブを幅手方向に延伸させるテンターとを備えており、端部に規制力を設けた搬送ロールによってセルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取る、セルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%であることを特徴としている。
【0026】
上記請求項12記載のセルロースエステルフィルムの製造装置において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいものであるのが、好ましい。
【0027】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。
【0028】
また、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mであるのが、好ましい。
【0029】
本発明の請求項16記載の発明は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体と、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延する流延ダイと、流延の際、流延ダイの流延上流側から減圧する減圧チャンバと、ドープ膜(ウェブ)を支持体上から剥離する剥離ロールと、剥離後のウェブを搬送する端部に規制力を設けた搬送ロールと、ロール搬送の前または後にウェブを幅手方向に延伸させるテンターとを備えており、端部に規制力を設けた搬送ロールによってセルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取る、セルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立すること、
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
さらに、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%であること、を特徴としている。
【0030】
上記請求項16記載のセルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。
【0031】
また、上記請求項16記載のセルロースエステルフィルムの製造装置において、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0032】
上記請求項16記載のセルロースエステルフィルムの製造装置において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいのが、好ましい。
【0033】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。
【0034】
また、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mであるのが、好ましい。
【0035】
また、上記セルロースエステルフィルムの製造装置においては、セルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープに用いられる溶媒は、塩化メチレンでも、それ以外の溶媒であっても良い。
【0036】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を説明する。
【0037】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法を実施する装置は、溶液流延製膜法により膜厚30〜125μmのセルロースエステルフィルムを製造するものであって、駆動金属製回転エンドレスベルトまたは駆動金属製回転ドラムよりなる支持体表面、さらに詳しくは、支持体の上部移行部の表面(キャスト面)上に、フィルムの原料溶液であるドープを流延するドープ流延ダイと、ドープ流延ダイによって支持体上に流延膜(ウェブ)を形成する際、流延膜が支持体上に密着して形成されるように流延膜上流側から減圧する手段としての減圧チャンバとを具備している。
【0038】
本発明者は、上記の従来技術の問題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法について、セルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイから流延する際の流延幅、流延した流延膜を支持体上に密着させるための減圧チャンバの幅、及び支持体(ベルトまたはドラム)幅を規定することにより、セルロースエステルフィルムについて、キズ、シワのない安定な搬送が可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0039】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法の第1は、支持体上にセルロースエステルフィルムのドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させて、セルロースエステルフィルムを製造するもので、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立するものである。
【0040】
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
ここで、セルロースエステルフィルムのドープの流延幅(mm)−X(mm)が、200mm以下であれば、スリットする耳部の幅が狭すぎて、吸引や巻取り等の耳部搬送中に破断が生じ、これが原因でフィルム製品ベースの搬送のトラブルになるので、好ましくない。またドープの流延幅(mm)−X(mm)が、800mmを超えると、スリットする耳部の幅が広すぎて、吸引や巻取り等の耳部搬送装置に負荷がかゝりすぎ、これが原因でフィルム製品ベースの搬送のトラブルになるので、好ましくない。
【0041】
また、減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)が、210mm以下であれば、前述のスリットする耳部の幅が狭すぎて、吸引や巻取り等の耳部搬送中に破断が生じ、また減圧チャンバ幅外の非減圧部の幅が広くなり、横段等の不安定箇所が多くなり、品質が安定しないので、好ましくない。また減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)が、820mmを超えると、前述のスリットする耳部の幅が広すぎて、吸引や巻取り等の耳部搬送装置に負荷がかゝりすぎ、これが原因でフィルム製品ベースの搬送のトラブルになるので、好ましくない。
【0042】
さらに、支持体幅(mm)−X(mm)が、400mm以下であれば、前述のスリットする耳部の幅が狭すぎて、吸引や巻取り等の耳部搬送中に破断が生じ、また支持体端部の温度ムラの影響による光学物性等のムラがフィルム製品幅内に影響するので、好ましくない。また支持体幅(mm)−X(mm)が、1000mmを超えると、前述のスリットする耳部の幅が広すぎて、吸引や巻取り等の耳部搬送装置に負荷がかゝりすぎ、これが原因でフィルム製品ベースの搬送のトラブルになるので、好ましくない。
【0043】
上記溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。
【0044】
ここで、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340mm未満であれば、装置のコストがかゝりすぎるので、好ましくない。また1980mmを超えると、装置の精度が維持できなくなり、フィルム製品の幅手方向の物性が悪くなるので、好ましくない。
【0045】
また、上記溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0046】
ここで、搬送ロールの偏芯が50μm以上であれば、搬送張力及び温度が不均一になり、フィルム製品の幅手方向の物性が悪くなるので、好ましくない。
【0047】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法の第1発明によれば、設備コスト及び原材料コストの低減、並びに端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保による製造装置の稼働率の向上が可能である。
【0048】
つぎに、本発明者は、上記の従来技術の問題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法について、エンボス高さ、エンボス内幅、及び張力条件を規定することにより、セルロースエステルフィルムについて、折れ・貼り付き等の巻中故障がないフィルムの製造が可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0049】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法の第2は、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、セルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取ることにより、セルロースエステルフィルムを製造するもので、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%である。
【0050】
ここで、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5%未満であれば、巻取り時の規制力が弱すぎるために、巻きずれが発生することがあるので、好ましくない。またエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の2%を超えると、巻取り時の幅手方向エンボス内側の巻き込み空気が逃げづらいために巻きが「馬の背状」に変形するので、好ましくない。またエンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02%未満であれば、巻取り時にフィルム同士のくっつきに起因する変形故障が発生するので、好ましくない。またエンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.2%を超えると、巻取り時の幅手方向エンボス内側の巻き込み空気が逃げづらいために巻きが「馬の背状」に変形するので、好ましくない。
【0051】
上記のセルロースエステルフィルムの製造方法において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいのが、好ましい。その理由は、巻取り時の変形故障や「馬の背状」変形を防止するためである。
【0052】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。その理由は、同様に、巻取り時の変形故障や「馬の背状」変形を防止するためである。
【0053】
なお、ここで、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件としては、通常、巻ずれや巻中、巻外故障の回避のため、巻芯の張力が最も強く、巻外に向かって弱くする方法で巻き取る。このセルロースエステルフィルムの巻取張力条件であるコーナー/テーパー方式の「コーナー」とは、セルロースエステルフィルムの巻き取りの際、巻ずれ、故障回避のために行なっている巻芯からの一定の巻取張力が、巻中に向かって巻取径(mm)のどの程度まで行なわれているか、を示す%値であり、「テーパー」とは、巻中から巻外屁の張力の低下率を示す%値である。
【0054】
また、上記のセルロースエステルフィルムの製造方法において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mであるのが、好ましい。ここで、セルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000m未満であれば、得られるセルロースエステルフィルムの巻本数が多すぎて、包装の対応が困難であるので、好ましくない。またセルロースエステルフィルムの巻取り長さが5500mを超えると、貼付き等の故障が増大するので、好ましくない。
【0055】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法の第2発明によれば、セルロースエステルフィルムの必要物性を確保することができる。
【0056】
さらに、本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法の第3は、上記2つの発明を組み合わせたものであって、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、セルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取る、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立すること、
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
さらに、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%である。
【0057】
上記溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。
【0058】
また、上記溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0059】
上記のセルロースエステルフィルムの製造方法において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいのが、好ましい。
【0060】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。
【0061】
また、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mであるのが、好ましい。
【0062】
なお、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法の第3発明における数値の限定理由は、上記セルロースエステルフィルムの製造方法の第1発明と第2発明における数値の限定理由と、同様である。
【0063】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法の第3発明によれば、設備コスト及び原材料コストの低減、並びに端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保による製造装置の稼働率の向上が可能である。また、セルロースエステルフィルムの必要物性を確保することができる。
【0064】
つぎに、本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置の第1は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体と、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延する流延ダイと、流延の際、流延ダイの流延上流側から減圧する減圧チャンバと、ドープ膜(ウェブ)を支持体上から剥離する剥離ロールと、剥離後のウェブを搬送する端部に規制力を設けた搬送ロールと、ロール搬送の前または後にウェブを幅手方向に延伸させるテンターとを備えており、溶液流延製膜法により最終膜厚30〜125μmのセルロースエステルフィルムを製造する装置であって、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立することを特徴としている。
【0065】
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
上記セルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。そして、この場合、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0066】
なお、本発明のセルロースエステルフィルムの製造装置の第1発明における数値の限定理由は、上記セルロースエステルフィルムの製造方法の第1発明における数値の限定理由と、同様である。
【0067】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置の第1発明によれば、設備コスト及び原材料コストの低減、並びに端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保による製造装置の稼働率の向上が可能である。
【0068】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置の第2は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体と、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延する流延ダイと、流延の際、流延ダイの流延上流側から減圧する減圧チャンバと、ドープ膜(ウェブ)を支持体上から剥離する剥離ロールと、剥離後のウェブを搬送する端部に規制力を設けた搬送ロールと、ロール搬送の前または後にウェブを幅手方向に延伸させるテンターとを備えており、端部に規制力を設けた搬送ロールによってセルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取るもので、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%である。
【0069】
上記セルロースエステルフィルムの製造装置において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいものであるのが、好ましい。
【0070】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。
【0071】
なお、本発明のセルロースエステルフィルムの製造装置の第2発明における数値の限定理由は、上記セルロースエステルフィルムの製造方法の第2発明における数値の限定理由と、同様である。
【0072】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置の第2発明によれば、セルロースエステルフィルムの必要物性を確保することができる。
【0073】
さらに、本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置の第3は、上記2つの発明を合わせたものであって、支持体と、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延する流延ダイと、流延の際、流延ダイの流延上流側から減圧する減圧チャンバと、ドープ膜(ウェブ)を支持体上から剥離する剥離ロールと、剥離後のウェブを搬送する端部に規制力を設けた搬送ロールと、ロール搬送の前または後にウェブを幅手方向に延伸させるテンターとを備えており、端部に規制力を設けた搬送ロールによってセルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取るもので、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立すること、
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
さらに、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%であること、を特徴としている。
【0074】
上記セルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。そして、この場合、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0075】
上記セルロースエステルフィルムの製造装置において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいものであるのが、好ましい。
【0076】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。
【0077】
また、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mであるのが、好ましい。
【0078】
なお、本発明のセルロースエステルフィルムの製造装置の第3発明における数値の限定理由は、上記セルロースエステルフィルムの製造方法の第1発明と第2発明における数値の限定理由と、同様である。
【0079】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置の第3発明によれば、設備コスト及び原材料コストの低減、並びに端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保による製造装置の稼働率の向上が可能である。また、セルロースエステルフィルムの必要物性を確保することができる。
【0080】
上記セルロースエステルフィルムに使用するセルロースエステルは、リンターパルプ、ウッドパルプ及びケナフパルプの群から選ばれたセルロースを用い、セルロースに無水酢酸、無水プロピオン酸または無水酪酸を常法により反応して得られるものであり、なかでもセルロースの水酸基に対する全アシル基の置換度が2.5〜3.0のセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート及びセルロースアセテートプロピオネートブチレートが好ましい。上記セルロースエステルのアセチル基の置換度は、少なくとも1.5であることが好ましい。セルロースエステルの分子量は、数平均分子量として70,000〜300,000、とくに80,000〜200,000が、フィルムに成形した場合の機械的強度上好ましい。通常、セルロースエステルは反応後の水洗等処理後においてフレーク状となり、その形状で使用されるが、粒径を0.05〜2.0mmの粒状とすることにより溶解性を早めることができる。
【0081】
セルロースエステルの溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどの低級アルコール類、シクロヘキサン、ジオキサン類、塩化メチレン(メチレンクロライド)のような低級脂肪族塩化炭化水素類などを用いることができる。
【0082】
なお、上記本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法及び装置においては、セルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープに用いられる溶媒が、塩化メチレン以外の溶媒であっても良い。
【0083】
ドープの調製方法は、セルロースエステルに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中でフレーク状のセルロースエステルを攪拌しながら溶解してドープを形成する。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。ドープ中のセルロースエステルの濃度は10〜35%程度であり、好ましくは15〜25%である。有用なポリマーをドープ中に含有させるには、予め有機溶媒に該ポリマーを溶解してから添加してもよいし、ドープに直接添加してもよい。この場合、ポリマーがドープ中で白濁したり、相分離したりしないように添加する。
【0084】
溶剤比率としては、例えば塩化メチレン70〜95重量%、その他の溶剤は5〜30重量%が好ましい。またセルロースエステルの濃度は10〜50重量%が好ましい。溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、溶剤が沸騰しないように定められる。
【0085】
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。
【0086】
本発明によるセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルと溶剤のほかに、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有している。
【0087】
可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
【0088】
本発明で用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート(TPP)、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。上記の可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れたフィルムが得られるため、特に好ましい。
【0089】
本発明において、吸水率ならびに水分率を特定の範囲内にするために、好ましい可塑剤の添加量としては、セルロースエステルに対する重量%で、12重量%以下である。可塑剤を2種類以上併用する場合には、これらの可塑剤の合計量が12重量%以下であれば、良い。
【0090】
本発明で用いることのできる紫外線吸収剤としては特に限定しないが、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
【0091】
一般に用いられるものとしては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。
【0092】
また本発明のセルロースエステルフィルムにすべり性の向上、巻取り後のブロッキング防止等の目的でマット剤として加える微粒子は、主ドープに添加してもよいが、添加液に加えるのが生産性の上からは好ましい。添加液に添加し、フィルムに含有せしめる。また、主ドープに含有せしめてもよいが、微粒子としてはいかなるものも用いることができる。
【0093】
本発明に使用される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。その中でも、微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。これらの例としては、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されているものがあり、使用することができる。さらに、二酸化ケイ素微粒子の1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛比重が70g/リットル以上の二酸化ケイ素微粒子であることが好ましい。これらを満足する二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジル200V、アエロジルR972Vがあり、フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0094】
本発明において、上記微粒子はセルロースエステルに対して、0.04〜0.4重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。
【0095】
本発明においては、セルロースエステルを溶解して得られるドープを支持体上に流延(キャスト工程)した後、加熱して溶剤の一部を除去(支持体上乾燥工程)した後、支持体から剥離し、剥離したフィルムを乾燥(フィルム乾燥工程)して、セルロースエステルフィルムを得る。
【0096】
キャスト工程における支持体はベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が使用される。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲0℃から溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、5〜30℃の支持体上に流延する方が、ドープをゲル化させ剥離限界時間をあげられるため、好ましく、5〜15℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。
【0097】
支持体上乾燥工程ではドープを流延し、一旦ゲル化させた後、流延から剥離するまでの時間を100%としたとき、流延から30%以内にドープ温度を40〜70℃にすることで、溶剤の蒸発を促進し、それだけ早く支持体上から剥離することができ、さらに剥離強度が増すため好ましく、30%以内にドープ温度を55〜70℃にすることがより好ましい。この温度を20%以上維持することが好ましく、40%以上がさらに好ましい。
【0098】
支持体上での乾燥は残留溶媒量60〜150%で支持体から剥離することが、支持体からの剥離強度が小さくなるため好ましく、80〜120%がより好ましい。剥離するときのドープの温度は0〜30℃にすることが剥離時のベース強度をあげることができ、剥離時のベース破断を防止できるため好ましく、5〜20℃がより好ましい。
【0099】
フィルム乾燥工程においては支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式または、クリップテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。液晶表示用部材用としては、テンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。
【0100】
フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で行なうのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行なうことが寸法安定性を良くするためさらに好ましい。これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。
【0101】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造に係わる巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0102】
本発明によるセルロースエステルフィルムの厚さは、特に限定されないが、LCDに使用される液晶表示素子すなわち偏光板用の保護フィルムに用いられることから、通常、60μm以下であることが好ましく、中でも、厚さ20〜60μm以下のセルロースエステルフィルムが好ましい。その理由は、厚さ60μm以下のセルロースエステルフィルムは、例えば偏光板用保護フィルムとして用いられる際に、より品質に対して厳しい性能が求められるためである。
【0103】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0104】
実施例1
ドープ処方1
セルローストリアセテート 100重量部
塩化メチレン 350重量部
エタノール 12重量部
トリフェニルホスフェート 12重量部
チヌビン326 0.5重量部
(チバスペシャルティケミカルズ社製)
アエロジル200V(日本アエロジル社製) 0.1重量部
つぎに、上記のドープ処方1の組成物を用い、本発明の請求項1のセルローストリアセテートフィルムの製造方法及び請求項9記載のセルローストリアセテートフィルムの製造装置により、セルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0105】
上記のドープ処方1の組成物を流延ダイを通して駆動回転ステンレス製エンドレスベルト(支持体)の上部移行部の表面(キャスト面)上に、製膜速度30m/分で流延するとともに、エンドレスベルトの温度を25℃に制御し、移動する流延膜(ウェブ)を乾燥し、流延膜中の残留溶媒質量が25%になるまで溶媒を蒸発して剥離した。剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、フィルムを最終的に20℃に冷却して巻取り機に巻き取り、乾燥膜厚40μmのセルローストリアセテートフィルムを得た。
【0106】
ここで、製膜条件は、下記の表1に示すように、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:1350(mm)、流延幅−製品幅:400(mm)、減圧チャンバ幅−製品幅:450(mm)、及び支持体幅−製品幅:650(mm)とした。
【0107】
この実施例1において得られたセルローストリアセテートフィルムについて、溶液流延製膜装置の安定搬送時間、フィルムの配向角の測定し、得られた結果を、下記の表1にあわせて示した。なお、配向角θは、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて測定を行なった。
【0108】
また、セルローストリアセテートフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立するか、どうかを確認した。
【0109】
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<10
なお、搬送ロールの偏心の程度(μm)の測定結果も表1にあわせて示した。
【0110】
実施例2
ドープ処方2
セルローストリアセテート 100重量部
酢酸メチル 450重量部
アセトン 50重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 1重量部
チヌビン326 0.5重量部
(チバスペシャルティケミカルズ社製)
アエロジル200V(日本アエロジル社製) 0.1重量部
つぎに、上記のドープ処方2の組成物を用い、製膜条件は、下記の表1に示すように、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:1370(mm)、流延幅−製品幅:380(mm)、減圧チャンバ幅−製品幅:430(mm)、及び支持体幅−製品幅:630(mm)として、本発明の請求項1のセルローストリアセテートフィルムの製造方法及び請求項9記載のセルローストリアセテートフィルムの製造装置により、乾燥膜厚40μmのセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0111】
そして、この実施例2により得られたセルローストリアセテートフィルムについて、溶液流延製膜装置の安定搬送時間、搬送ロールの偏心の程度(μm)、フィルムの配向角の測定を、実施例1の場合と同様に行ない、得られた結果を下記表1にあわせて示した。
【0112】
比較例1
つぎに、比較のために、上記のドープ処方2の組成物を用い、上記実施例1の場合と同様に実施するが、製膜条件は、下記の表1に示すように、実施例1の場合とは異なるものとした。すなわち、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:1560(mm)、流延幅−製品幅:190(mm)、減圧チャンバ幅−製品幅:240(mm)、及び支持体幅−製品幅:440(mm)とした。
【0113】
そして、この比較例1により得られたセルローストリアセテートフィルムについて、溶液流延製膜装置の安定搬送時間、搬送ロールの偏心の程度(μm)、フィルムの配向角の測定を、実施例1の場合と同様に行ない、得られた結果を下記表1にあわせて示した。
【0114】
【表1】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1及び実施例2によれば、セルローストリアセテートフィルムの端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保により、安定搬送時間が1ケ月以上と非常に長く、製造装置の稼働率を向上することができる。また、配向角のばらつきが非常に小さく、セルローストリアセテートフィルムの必要物性を確保することができた。これに対し、比較例1によれば、セルローストリアセテートフィルムの安定搬送時間が3時間で破断し、製造装置の稼働率を向上することができない。また、配向角のばらつきが大きいため、セルローストリアセテートフィルムの必要物性を確保することができなかった。
【0115】
実施例3
つぎに、上記のドープ処方2の組成物を用い、本発明の請求項4のセルローストリアセテートフィルムの製造方法及び請求項12記載のセルローストリアセテートフィルムの製造装置により、下記表2に示す製膜条件で、乾燥膜厚40μmで長さ3900mのセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0116】
ここで、製膜条件は、下記の表2に示すように、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:900(mm)とした場合に、セルローストリアセテートフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の1.1%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.07%とした。
【0117】
また、巻取り機によるセルローストリアセテートフィルムの巻取張力条件は、初期張力が200N/m、及び3900m後の終張力が140N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも60N/m小さいものであるとし、巻き取り方式であるコーナー/テーパー方式のコーナーを28%、テーパーを81%とした。
【0118】
この実施例3において得られたセルローストリアセテートフィルムについて、巻取り後の巻中故障の発生状況を測定し、得られた結果を、下記の表2に示した。実施例4
さらに、上記ドープ処方1の組成物を用い、本発明の請求項4のセルローストリアセテートフィルムの製造方法及び請求項12記載のセルローストリアセテートフィルムの製造装置により、上記実施例3の場合と同様に実施するが、製膜条件は、下記の表2に示すように、実施例3の場合とは異なるものとした。すなわち、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:1460(mm)とした場合に、セルローストリアセテートフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の1.1%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.07%とした。
【0119】
なお、巻取り機によるセルローストリアセテートフィルムの巻取張力条件は、下記の表2に示すように、上記実施例3の場合と同様にして、乾燥膜厚40μmで長さ3900mのセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0120】
この実施例4において得られたセルローストリアセテートフィルムについて、巻取り後の巻中故障の発生状況を測定し、得られた結果を、下記の表2にあわせて示した。
【0121】
比較例2
つぎに、比較のために、上記ドープ処方2の組成物を用い、上記実施例3の場合と同様に実施するが、製膜条件は、下記の表2に示すように、実施例3の場合とは異なるものとした。すなわち、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:1460(mm)とした場合に、セルローストリアセテートフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の1.5%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.019%とした。
【0122】
また、巻取り機によるセルローストリアセテートフィルムの巻取張力条件が、初期張力200N/m、及び3900m後の終張力165N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも40N/m小さいものであるとし、巻き取り方式であるコーナー/テーパー方式のコーナーを28%、テーパーを37%として、乾燥膜厚40μmで長さ3900mのセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0123】
【表2】
上記表2の結果から明らかなように、本発明の実施例3と4では、セルローストリアセテートフィルムの元巻きに、折れ・貼り付き等の巻中故障の発生がなく、偏光板用保護フィルムとして有用なセルローストリアセテートフィルム製品を製造することができた。これに対し、比較例2によれば、セルローストリアセテートフィルムの元巻きに、折れ・貼り付き等の巻中故障が多発し、偏光板用保護フィルムとして充分な性能を有するセルローストリアセテートフィルム製品を製造することができなかった。
【0124】
実施例5
また、上記ドープ処方1の組成物を用い、本発明の請求項8のセルローストリアセテートフィルムの製造方法及び請求項16記載のセルローストリアセテートフィルムの製造装置により、セルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0125】
上記のドープ処方1の組成物を流延ダイを通して駆動回転ステンレス製エンドレスベルト(支持体)の上部移行部の表面(キャスト面)上に、製膜速度30m/分で流延するとともに、エンドレスベルトの温度を25℃に制御し、移動する流延膜(ウェブ)を乾燥し、流延膜中の残留溶媒質量が25%になるまで溶媒を蒸発して剥離した。剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、フィルムを最終的に20℃に冷却して巻取り機に巻き取り、乾燥膜厚40μmで長さ3900mのセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0126】
ここで、製膜条件は、上記の表1に示すように、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:1350(mm)、流延幅−製品幅:400(mm)、減圧チャンバ幅−製品幅:450(mm)、及び支持体幅−製品幅:650(mm)とした。さらに、製膜条件として、上記の表2に示すように、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:1350(mm)とした場合に、セルローストリアセテートフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の1.1%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.05%とした。
【0127】
また、巻取り機によるセルローストリアセテートフィルムの巻取張力条件が、初期張力240N/m、及び3900m後の終張力130N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも60N/m小さいものであるとし、巻き取り方式であるコーナー/テーパー方式のコーナーを25%、テーパーを93%として、乾燥膜厚40μmで長さ3900mのセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0128】
この実施例5において得られたセルローストリアセテートフィルムについて、溶液流延製膜装置の安定搬送時間、フィルムの配向角の測定し、得られた結果を、下記の表1にあわせて示した。なお、配向角θは、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて測定を行なった。
【0129】
この実施例5において得られたセルローストリアセテートフィルムについて、巻取り後の巻中故障の発生状況を測定し、得られた結果を、下記の表2にあわせて示した。
【0130】
この実施例5において得られたセルローストリアセテートフィルムについての溶液流延製膜装置の安定搬送時間、及びフィルムの配向角は、上記実施例1の場合と全く同様であり、セルローストリアセテートフィルムの端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保により、安定搬送時間が非常に長く、製造装置の稼働率を向上することができる。また、配向角のばらつきが非常に小さく、セルローストリアセテートフィルムの必要物性を確保することができた。
【0131】
さらに、上記の表2に示すように、セルローストリアセテートフィルムの元巻きに、折れ・貼り付き等の巻中故障の発生がなく、偏光板用保護フィルムとして有用なセルローストリアセテートフィルム製品を製造することができた。
【0132】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載のセルロースエステルフィルムの製造方法、及び本発明の請求項9記載のセルロースエステルフィルムの製造装置によれば、セルロースエステルフィルムの端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保により、安定搬送時間が非常に長く、製造装置の稼働率を向上することができる。また、配向角のばらつきが非常に小さく、セルロースエステルフィルムの必要物性を確保することができるという効果を奏する。
【0133】
また、本発明の請求項4記載のセルローストリアセテートフィルムの製造方法、及び請求項12記載のセルローストリアセテートフィルムの製造装置によれば、セルローストリアセテートフィルムの元巻きに、折れ・貼り付き等の巻中故障の発生がなく、偏光板用保護フィルムとして有用なセルローストリアセテートフィルム製品を製造することができるという効果を奏する。
【0134】
さらに、本発明の請求項8記載のセルロースエステルフィルムの製造方法、及び本発明の請求項16記載のセルロースエステルフィルムの製造装置によれば、セルロースエステルフィルムの端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保により、安定搬送時間が非常に長く、製造装置の稼働率を向上することができる。また、配向角のばらつきが非常に小さく、セルロースエステルフィルムの必要物性を確保することができる。さらに、セルローストリアセテートフィルムの元巻きに、折れ・貼り付き等の巻中故障の発生がなく、偏光板用保護フィルムとして有用なセルローストリアセテートフィルム製品を製造することができるという効果を奏する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光板用保護フィルム等に用いられるセルロースエステルフィルムの製造方法及び製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示装置(LCD)は種々のところに使用されるに伴って、LCDに使用される液晶表示素子すなわち偏光板についても高生産性化(生産量増大)が求められている。しかも、液晶表示装置(LCD)については薄型化が進んでおり、LCDに使用される偏光板についても薄膜化が要望されている。
【0003】
ところで、現在、LCDの偏光板用の保護フィルムとしては、主にセルローストリアセテート(TAC)フィルムが用いられているが、偏光板の高生産性化に伴い、このようなLCD用セルロースエステルフィルムの高生産性化が進むと、セルロースエステルフィルム品質に負荷が増大する。
【0004】
従来より、溶液流延製膜法によりセルロースエステルフィルムを製造する装置においては、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラム(支持体)上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、乾燥させた後に巻取り機で巻き取ることにより、セルロースエステルフィルムを製造していた。
【0005】
しかしながら、このような溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法及び装置において、従来よりセルロースエステルフィルムの製品幅とこの製品幅に対する装置幅について規定した技術に関する先行文献は、見当たらない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来は、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法及び装置について、セルロースエステルフィルムの製品幅とこの製品幅に対する装置幅の規定が特にないため、セルロースエステルフィルムの製品幅に対して過剰な装置仕様であったり、あるいは限られた装置幅から無理なセルロースエステルフィルムの製品幅の確保を行なっていた。
【0007】
従って、上記前者の場合には、必要なセルロースエステルフィルムの製品幅を獲得するために、フィルム端部のスリット幅が過剰となり、装置トラブル起因の稼働率の低下が起こるのみならず、装置及び原材料の無駄が多く、設備投資が高くつくとともに、運転費用もかさむという問題があった。また上記後者の場合には、安定なフィルム搬送が困難であるため、装置の稼働率の低下、及びフィルム物性への悪影響が生じるという問題があった。しかも、従来は、セルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施すことにより形成されたエンボス部に、適正なエンボス幅及び高さの選定が行なわれていなかったため、セルロースエステルフィルムの元巻きに、折れ・貼り付き等の巻中故障が発生するという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムを製造する方法及び装置について、設備コスト及び原材料コストの低減、並びに端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保による製造装置の稼働率向上、セルロースエステルフィルムの必要物性の確保を図ることができ、また、折れ・貼り付き等の巻中故障がないフィルムの製造が可能である、セルロースエステルフィルムの製造方法及び製造装置を提供しようとすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラム(支持体)上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、溶液流延製膜法により、最終膜厚30〜125μmのセルロースエステルフィルムを製造する方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立することを特徴としている。
【0010】
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
上記請求項1記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。
【0011】
また、上記請求項1記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0012】
つぎに、本発明の請求項4記載の発明は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、セルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取る、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%であることを特徴としている。
【0013】
上記請求項4記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいのが、好ましい。
【0014】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。
【0015】
また、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mであるのが、好ましい。
【0016】
本発明の請求項8記載の発明は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、セルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取る、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立すること、
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
さらに、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%であること、を特徴としている。
【0017】
上記請求項8記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。
【0018】
また、上記請求項8記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0019】
上記請求項8記載のセルロースエステルフィルムの製造方法において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいのが、好ましい。
【0020】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。
【0021】
また、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mであるのが、好ましい。
【0022】
上記セルロースエステルフィルムの製造方法においては、セルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープに用いられる溶媒は、塩化メチレンでも、それ以外の溶媒であっても良い。
【0023】
また、本発明の請求項9記載の発明は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体と、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延する流延ダイと、流延の際、流延ダイの流延上流側から減圧する減圧チャンバと、ドープ膜(ウェブ)を支持体上から剥離する剥離ロールと、剥離後のウェブを搬送する端部に規制力を設けた搬送ロールと、ロール搬送の前または後にウェブを幅手方向に延伸させるテンターとを備えており、溶液流延製膜法により最終膜厚30〜125μmのセルロースエステルフィルムを製造するセルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立することを特徴としている。
【0024】
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
上記請求項9記載のセルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。そして、この場合、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0025】
本発明の請求項12記載の発明は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体と、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延する流延ダイと、流延の際、流延ダイの流延上流側から減圧する減圧チャンバと、ドープ膜(ウェブ)を支持体上から剥離する剥離ロールと、剥離後のウェブを搬送する端部に規制力を設けた搬送ロールと、ロール搬送の前または後にウェブを幅手方向に延伸させるテンターとを備えており、端部に規制力を設けた搬送ロールによってセルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取る、セルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%であることを特徴としている。
【0026】
上記請求項12記載のセルロースエステルフィルムの製造装置において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいものであるのが、好ましい。
【0027】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。
【0028】
また、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mであるのが、好ましい。
【0029】
本発明の請求項16記載の発明は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体と、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延する流延ダイと、流延の際、流延ダイの流延上流側から減圧する減圧チャンバと、ドープ膜(ウェブ)を支持体上から剥離する剥離ロールと、剥離後のウェブを搬送する端部に規制力を設けた搬送ロールと、ロール搬送の前または後にウェブを幅手方向に延伸させるテンターとを備えており、端部に規制力を設けた搬送ロールによってセルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取る、セルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立すること、
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
さらに、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%であること、を特徴としている。
【0030】
上記請求項16記載のセルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。
【0031】
また、上記請求項16記載のセルロースエステルフィルムの製造装置において、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0032】
上記請求項16記載のセルロースエステルフィルムの製造装置において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいのが、好ましい。
【0033】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。
【0034】
また、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mであるのが、好ましい。
【0035】
また、上記セルロースエステルフィルムの製造装置においては、セルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープに用いられる溶媒は、塩化メチレンでも、それ以外の溶媒であっても良い。
【0036】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を説明する。
【0037】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法を実施する装置は、溶液流延製膜法により膜厚30〜125μmのセルロースエステルフィルムを製造するものであって、駆動金属製回転エンドレスベルトまたは駆動金属製回転ドラムよりなる支持体表面、さらに詳しくは、支持体の上部移行部の表面(キャスト面)上に、フィルムの原料溶液であるドープを流延するドープ流延ダイと、ドープ流延ダイによって支持体上に流延膜(ウェブ)を形成する際、流延膜が支持体上に密着して形成されるように流延膜上流側から減圧する手段としての減圧チャンバとを具備している。
【0038】
本発明者は、上記の従来技術の問題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法について、セルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイから流延する際の流延幅、流延した流延膜を支持体上に密着させるための減圧チャンバの幅、及び支持体(ベルトまたはドラム)幅を規定することにより、セルロースエステルフィルムについて、キズ、シワのない安定な搬送が可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0039】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法の第1は、支持体上にセルロースエステルフィルムのドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させて、セルロースエステルフィルムを製造するもので、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立するものである。
【0040】
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
ここで、セルロースエステルフィルムのドープの流延幅(mm)−X(mm)が、200mm以下であれば、スリットする耳部の幅が狭すぎて、吸引や巻取り等の耳部搬送中に破断が生じ、これが原因でフィルム製品ベースの搬送のトラブルになるので、好ましくない。またドープの流延幅(mm)−X(mm)が、800mmを超えると、スリットする耳部の幅が広すぎて、吸引や巻取り等の耳部搬送装置に負荷がかゝりすぎ、これが原因でフィルム製品ベースの搬送のトラブルになるので、好ましくない。
【0041】
また、減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)が、210mm以下であれば、前述のスリットする耳部の幅が狭すぎて、吸引や巻取り等の耳部搬送中に破断が生じ、また減圧チャンバ幅外の非減圧部の幅が広くなり、横段等の不安定箇所が多くなり、品質が安定しないので、好ましくない。また減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)が、820mmを超えると、前述のスリットする耳部の幅が広すぎて、吸引や巻取り等の耳部搬送装置に負荷がかゝりすぎ、これが原因でフィルム製品ベースの搬送のトラブルになるので、好ましくない。
【0042】
さらに、支持体幅(mm)−X(mm)が、400mm以下であれば、前述のスリットする耳部の幅が狭すぎて、吸引や巻取り等の耳部搬送中に破断が生じ、また支持体端部の温度ムラの影響による光学物性等のムラがフィルム製品幅内に影響するので、好ましくない。また支持体幅(mm)−X(mm)が、1000mmを超えると、前述のスリットする耳部の幅が広すぎて、吸引や巻取り等の耳部搬送装置に負荷がかゝりすぎ、これが原因でフィルム製品ベースの搬送のトラブルになるので、好ましくない。
【0043】
上記溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。
【0044】
ここで、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340mm未満であれば、装置のコストがかゝりすぎるので、好ましくない。また1980mmを超えると、装置の精度が維持できなくなり、フィルム製品の幅手方向の物性が悪くなるので、好ましくない。
【0045】
また、上記溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0046】
ここで、搬送ロールの偏芯が50μm以上であれば、搬送張力及び温度が不均一になり、フィルム製品の幅手方向の物性が悪くなるので、好ましくない。
【0047】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法の第1発明によれば、設備コスト及び原材料コストの低減、並びに端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保による製造装置の稼働率の向上が可能である。
【0048】
つぎに、本発明者は、上記の従来技術の問題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法について、エンボス高さ、エンボス内幅、及び張力条件を規定することにより、セルロースエステルフィルムについて、折れ・貼り付き等の巻中故障がないフィルムの製造が可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0049】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法の第2は、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、セルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取ることにより、セルロースエステルフィルムを製造するもので、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%である。
【0050】
ここで、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5%未満であれば、巻取り時の規制力が弱すぎるために、巻きずれが発生することがあるので、好ましくない。またエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の2%を超えると、巻取り時の幅手方向エンボス内側の巻き込み空気が逃げづらいために巻きが「馬の背状」に変形するので、好ましくない。またエンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02%未満であれば、巻取り時にフィルム同士のくっつきに起因する変形故障が発生するので、好ましくない。またエンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.2%を超えると、巻取り時の幅手方向エンボス内側の巻き込み空気が逃げづらいために巻きが「馬の背状」に変形するので、好ましくない。
【0051】
上記のセルロースエステルフィルムの製造方法において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいのが、好ましい。その理由は、巻取り時の変形故障や「馬の背状」変形を防止するためである。
【0052】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。その理由は、同様に、巻取り時の変形故障や「馬の背状」変形を防止するためである。
【0053】
なお、ここで、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件としては、通常、巻ずれや巻中、巻外故障の回避のため、巻芯の張力が最も強く、巻外に向かって弱くする方法で巻き取る。このセルロースエステルフィルムの巻取張力条件であるコーナー/テーパー方式の「コーナー」とは、セルロースエステルフィルムの巻き取りの際、巻ずれ、故障回避のために行なっている巻芯からの一定の巻取張力が、巻中に向かって巻取径(mm)のどの程度まで行なわれているか、を示す%値であり、「テーパー」とは、巻中から巻外屁の張力の低下率を示す%値である。
【0054】
また、上記のセルロースエステルフィルムの製造方法において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mであるのが、好ましい。ここで、セルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000m未満であれば、得られるセルロースエステルフィルムの巻本数が多すぎて、包装の対応が困難であるので、好ましくない。またセルロースエステルフィルムの巻取り長さが5500mを超えると、貼付き等の故障が増大するので、好ましくない。
【0055】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法の第2発明によれば、セルロースエステルフィルムの必要物性を確保することができる。
【0056】
さらに、本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法の第3は、上記2つの発明を組み合わせたものであって、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、セルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取る、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立すること、
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
さらに、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%である。
【0057】
上記溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。
【0058】
また、上記溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0059】
上記のセルロースエステルフィルムの製造方法において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいのが、好ましい。
【0060】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。
【0061】
また、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mであるのが、好ましい。
【0062】
なお、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法の第3発明における数値の限定理由は、上記セルロースエステルフィルムの製造方法の第1発明と第2発明における数値の限定理由と、同様である。
【0063】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法の第3発明によれば、設備コスト及び原材料コストの低減、並びに端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保による製造装置の稼働率の向上が可能である。また、セルロースエステルフィルムの必要物性を確保することができる。
【0064】
つぎに、本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置の第1は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体と、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延する流延ダイと、流延の際、流延ダイの流延上流側から減圧する減圧チャンバと、ドープ膜(ウェブ)を支持体上から剥離する剥離ロールと、剥離後のウェブを搬送する端部に規制力を設けた搬送ロールと、ロール搬送の前または後にウェブを幅手方向に延伸させるテンターとを備えており、溶液流延製膜法により最終膜厚30〜125μmのセルロースエステルフィルムを製造する装置であって、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立することを特徴としている。
【0065】
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
上記セルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。そして、この場合、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0066】
なお、本発明のセルロースエステルフィルムの製造装置の第1発明における数値の限定理由は、上記セルロースエステルフィルムの製造方法の第1発明における数値の限定理由と、同様である。
【0067】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置の第1発明によれば、設備コスト及び原材料コストの低減、並びに端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保による製造装置の稼働率の向上が可能である。
【0068】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置の第2は、金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体と、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延する流延ダイと、流延の際、流延ダイの流延上流側から減圧する減圧チャンバと、ドープ膜(ウェブ)を支持体上から剥離する剥離ロールと、剥離後のウェブを搬送する端部に規制力を設けた搬送ロールと、ロール搬送の前または後にウェブを幅手方向に延伸させるテンターとを備えており、端部に規制力を設けた搬送ロールによってセルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取るもので、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%である。
【0069】
上記セルロースエステルフィルムの製造装置において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいものであるのが、好ましい。
【0070】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。
【0071】
なお、本発明のセルロースエステルフィルムの製造装置の第2発明における数値の限定理由は、上記セルロースエステルフィルムの製造方法の第2発明における数値の限定理由と、同様である。
【0072】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置の第2発明によれば、セルロースエステルフィルムの必要物性を確保することができる。
【0073】
さらに、本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置の第3は、上記2つの発明を合わせたものであって、支持体と、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延する流延ダイと、流延の際、流延ダイの流延上流側から減圧する減圧チャンバと、ドープ膜(ウェブ)を支持体上から剥離する剥離ロールと、剥離後のウェブを搬送する端部に規制力を設けた搬送ロールと、ロール搬送の前または後にウェブを幅手方向に延伸させるテンターとを備えており、端部に規制力を設けた搬送ロールによってセルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取るもので、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立すること、
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
さらに、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%であること、を特徴としている。
【0074】
上記セルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmであるのが、好ましい。そして、この場合、搬送ロールの偏芯が、50μm未満であるのが、好ましい。
【0075】
上記セルロースエステルフィルムの製造装置において、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいものであるのが、好ましい。
【0076】
そして、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式であるのが、好ましい。
【0077】
また、この場合、巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mであるのが、好ましい。
【0078】
なお、本発明のセルロースエステルフィルムの製造装置の第3発明における数値の限定理由は、上記セルロースエステルフィルムの製造方法の第1発明と第2発明における数値の限定理由と、同様である。
【0079】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置の第3発明によれば、設備コスト及び原材料コストの低減、並びに端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保による製造装置の稼働率の向上が可能である。また、セルロースエステルフィルムの必要物性を確保することができる。
【0080】
上記セルロースエステルフィルムに使用するセルロースエステルは、リンターパルプ、ウッドパルプ及びケナフパルプの群から選ばれたセルロースを用い、セルロースに無水酢酸、無水プロピオン酸または無水酪酸を常法により反応して得られるものであり、なかでもセルロースの水酸基に対する全アシル基の置換度が2.5〜3.0のセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート及びセルロースアセテートプロピオネートブチレートが好ましい。上記セルロースエステルのアセチル基の置換度は、少なくとも1.5であることが好ましい。セルロースエステルの分子量は、数平均分子量として70,000〜300,000、とくに80,000〜200,000が、フィルムに成形した場合の機械的強度上好ましい。通常、セルロースエステルは反応後の水洗等処理後においてフレーク状となり、その形状で使用されるが、粒径を0.05〜2.0mmの粒状とすることにより溶解性を早めることができる。
【0081】
セルロースエステルの溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどの低級アルコール類、シクロヘキサン、ジオキサン類、塩化メチレン(メチレンクロライド)のような低級脂肪族塩化炭化水素類などを用いることができる。
【0082】
なお、上記本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法及び装置においては、セルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープに用いられる溶媒が、塩化メチレン以外の溶媒であっても良い。
【0083】
ドープの調製方法は、セルロースエステルに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中でフレーク状のセルロースエステルを攪拌しながら溶解してドープを形成する。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。ドープ中のセルロースエステルの濃度は10〜35%程度であり、好ましくは15〜25%である。有用なポリマーをドープ中に含有させるには、予め有機溶媒に該ポリマーを溶解してから添加してもよいし、ドープに直接添加してもよい。この場合、ポリマーがドープ中で白濁したり、相分離したりしないように添加する。
【0084】
溶剤比率としては、例えば塩化メチレン70〜95重量%、その他の溶剤は5〜30重量%が好ましい。またセルロースエステルの濃度は10〜50重量%が好ましい。溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、溶剤が沸騰しないように定められる。
【0085】
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。
【0086】
本発明によるセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルと溶剤のほかに、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有している。
【0087】
可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
【0088】
本発明で用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート(TPP)、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。上記の可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れたフィルムが得られるため、特に好ましい。
【0089】
本発明において、吸水率ならびに水分率を特定の範囲内にするために、好ましい可塑剤の添加量としては、セルロースエステルに対する重量%で、12重量%以下である。可塑剤を2種類以上併用する場合には、これらの可塑剤の合計量が12重量%以下であれば、良い。
【0090】
本発明で用いることのできる紫外線吸収剤としては特に限定しないが、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
【0091】
一般に用いられるものとしては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。
【0092】
また本発明のセルロースエステルフィルムにすべり性の向上、巻取り後のブロッキング防止等の目的でマット剤として加える微粒子は、主ドープに添加してもよいが、添加液に加えるのが生産性の上からは好ましい。添加液に添加し、フィルムに含有せしめる。また、主ドープに含有せしめてもよいが、微粒子としてはいかなるものも用いることができる。
【0093】
本発明に使用される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。その中でも、微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。これらの例としては、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されているものがあり、使用することができる。さらに、二酸化ケイ素微粒子の1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛比重が70g/リットル以上の二酸化ケイ素微粒子であることが好ましい。これらを満足する二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジル200V、アエロジルR972Vがあり、フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0094】
本発明において、上記微粒子はセルロースエステルに対して、0.04〜0.4重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.2重量%である。
【0095】
本発明においては、セルロースエステルを溶解して得られるドープを支持体上に流延(キャスト工程)した後、加熱して溶剤の一部を除去(支持体上乾燥工程)した後、支持体から剥離し、剥離したフィルムを乾燥(フィルム乾燥工程)して、セルロースエステルフィルムを得る。
【0096】
キャスト工程における支持体はベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が使用される。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲0℃から溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、5〜30℃の支持体上に流延する方が、ドープをゲル化させ剥離限界時間をあげられるため、好ましく、5〜15℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。
【0097】
支持体上乾燥工程ではドープを流延し、一旦ゲル化させた後、流延から剥離するまでの時間を100%としたとき、流延から30%以内にドープ温度を40〜70℃にすることで、溶剤の蒸発を促進し、それだけ早く支持体上から剥離することができ、さらに剥離強度が増すため好ましく、30%以内にドープ温度を55〜70℃にすることがより好ましい。この温度を20%以上維持することが好ましく、40%以上がさらに好ましい。
【0098】
支持体上での乾燥は残留溶媒量60〜150%で支持体から剥離することが、支持体からの剥離強度が小さくなるため好ましく、80〜120%がより好ましい。剥離するときのドープの温度は0〜30℃にすることが剥離時のベース強度をあげることができ、剥離時のベース破断を防止できるため好ましく、5〜20℃がより好ましい。
【0099】
フィルム乾燥工程においては支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式または、クリップテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。液晶表示用部材用としては、テンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。
【0100】
フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で行なうのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行なうことが寸法安定性を良くするためさらに好ましい。これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。
【0101】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造に係わる巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0102】
本発明によるセルロースエステルフィルムの厚さは、特に限定されないが、LCDに使用される液晶表示素子すなわち偏光板用の保護フィルムに用いられることから、通常、60μm以下であることが好ましく、中でも、厚さ20〜60μm以下のセルロースエステルフィルムが好ましい。その理由は、厚さ60μm以下のセルロースエステルフィルムは、例えば偏光板用保護フィルムとして用いられる際に、より品質に対して厳しい性能が求められるためである。
【0103】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0104】
実施例1
ドープ処方1
セルローストリアセテート 100重量部
塩化メチレン 350重量部
エタノール 12重量部
トリフェニルホスフェート 12重量部
チヌビン326 0.5重量部
(チバスペシャルティケミカルズ社製)
アエロジル200V(日本アエロジル社製) 0.1重量部
つぎに、上記のドープ処方1の組成物を用い、本発明の請求項1のセルローストリアセテートフィルムの製造方法及び請求項9記載のセルローストリアセテートフィルムの製造装置により、セルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0105】
上記のドープ処方1の組成物を流延ダイを通して駆動回転ステンレス製エンドレスベルト(支持体)の上部移行部の表面(キャスト面)上に、製膜速度30m/分で流延するとともに、エンドレスベルトの温度を25℃に制御し、移動する流延膜(ウェブ)を乾燥し、流延膜中の残留溶媒質量が25%になるまで溶媒を蒸発して剥離した。剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、フィルムを最終的に20℃に冷却して巻取り機に巻き取り、乾燥膜厚40μmのセルローストリアセテートフィルムを得た。
【0106】
ここで、製膜条件は、下記の表1に示すように、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:1350(mm)、流延幅−製品幅:400(mm)、減圧チャンバ幅−製品幅:450(mm)、及び支持体幅−製品幅:650(mm)とした。
【0107】
この実施例1において得られたセルローストリアセテートフィルムについて、溶液流延製膜装置の安定搬送時間、フィルムの配向角の測定し、得られた結果を、下記の表1にあわせて示した。なお、配向角θは、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて測定を行なった。
【0108】
また、セルローストリアセテートフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立するか、どうかを確認した。
【0109】
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<10
なお、搬送ロールの偏心の程度(μm)の測定結果も表1にあわせて示した。
【0110】
実施例2
ドープ処方2
セルローストリアセテート 100重量部
酢酸メチル 450重量部
アセトン 50重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 1重量部
チヌビン326 0.5重量部
(チバスペシャルティケミカルズ社製)
アエロジル200V(日本アエロジル社製) 0.1重量部
つぎに、上記のドープ処方2の組成物を用い、製膜条件は、下記の表1に示すように、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:1370(mm)、流延幅−製品幅:380(mm)、減圧チャンバ幅−製品幅:430(mm)、及び支持体幅−製品幅:630(mm)として、本発明の請求項1のセルローストリアセテートフィルムの製造方法及び請求項9記載のセルローストリアセテートフィルムの製造装置により、乾燥膜厚40μmのセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0111】
そして、この実施例2により得られたセルローストリアセテートフィルムについて、溶液流延製膜装置の安定搬送時間、搬送ロールの偏心の程度(μm)、フィルムの配向角の測定を、実施例1の場合と同様に行ない、得られた結果を下記表1にあわせて示した。
【0112】
比較例1
つぎに、比較のために、上記のドープ処方2の組成物を用い、上記実施例1の場合と同様に実施するが、製膜条件は、下記の表1に示すように、実施例1の場合とは異なるものとした。すなわち、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:1560(mm)、流延幅−製品幅:190(mm)、減圧チャンバ幅−製品幅:240(mm)、及び支持体幅−製品幅:440(mm)とした。
【0113】
そして、この比較例1により得られたセルローストリアセテートフィルムについて、溶液流延製膜装置の安定搬送時間、搬送ロールの偏心の程度(μm)、フィルムの配向角の測定を、実施例1の場合と同様に行ない、得られた結果を下記表1にあわせて示した。
【0114】
【表1】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1及び実施例2によれば、セルローストリアセテートフィルムの端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保により、安定搬送時間が1ケ月以上と非常に長く、製造装置の稼働率を向上することができる。また、配向角のばらつきが非常に小さく、セルローストリアセテートフィルムの必要物性を確保することができた。これに対し、比較例1によれば、セルローストリアセテートフィルムの安定搬送時間が3時間で破断し、製造装置の稼働率を向上することができない。また、配向角のばらつきが大きいため、セルローストリアセテートフィルムの必要物性を確保することができなかった。
【0115】
実施例3
つぎに、上記のドープ処方2の組成物を用い、本発明の請求項4のセルローストリアセテートフィルムの製造方法及び請求項12記載のセルローストリアセテートフィルムの製造装置により、下記表2に示す製膜条件で、乾燥膜厚40μmで長さ3900mのセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0116】
ここで、製膜条件は、下記の表2に示すように、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:900(mm)とした場合に、セルローストリアセテートフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の1.1%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.07%とした。
【0117】
また、巻取り機によるセルローストリアセテートフィルムの巻取張力条件は、初期張力が200N/m、及び3900m後の終張力が140N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも60N/m小さいものであるとし、巻き取り方式であるコーナー/テーパー方式のコーナーを28%、テーパーを81%とした。
【0118】
この実施例3において得られたセルローストリアセテートフィルムについて、巻取り後の巻中故障の発生状況を測定し、得られた結果を、下記の表2に示した。実施例4
さらに、上記ドープ処方1の組成物を用い、本発明の請求項4のセルローストリアセテートフィルムの製造方法及び請求項12記載のセルローストリアセテートフィルムの製造装置により、上記実施例3の場合と同様に実施するが、製膜条件は、下記の表2に示すように、実施例3の場合とは異なるものとした。すなわち、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:1460(mm)とした場合に、セルローストリアセテートフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の1.1%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.07%とした。
【0119】
なお、巻取り機によるセルローストリアセテートフィルムの巻取張力条件は、下記の表2に示すように、上記実施例3の場合と同様にして、乾燥膜厚40μmで長さ3900mのセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0120】
この実施例4において得られたセルローストリアセテートフィルムについて、巻取り後の巻中故障の発生状況を測定し、得られた結果を、下記の表2にあわせて示した。
【0121】
比較例2
つぎに、比較のために、上記ドープ処方2の組成物を用い、上記実施例3の場合と同様に実施するが、製膜条件は、下記の表2に示すように、実施例3の場合とは異なるものとした。すなわち、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:1460(mm)とした場合に、セルローストリアセテートフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の1.5%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.019%とした。
【0122】
また、巻取り機によるセルローストリアセテートフィルムの巻取張力条件が、初期張力200N/m、及び3900m後の終張力165N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも40N/m小さいものであるとし、巻き取り方式であるコーナー/テーパー方式のコーナーを28%、テーパーを37%として、乾燥膜厚40μmで長さ3900mのセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0123】
【表2】
上記表2の結果から明らかなように、本発明の実施例3と4では、セルローストリアセテートフィルムの元巻きに、折れ・貼り付き等の巻中故障の発生がなく、偏光板用保護フィルムとして有用なセルローストリアセテートフィルム製品を製造することができた。これに対し、比較例2によれば、セルローストリアセテートフィルムの元巻きに、折れ・貼り付き等の巻中故障が多発し、偏光板用保護フィルムとして充分な性能を有するセルローストリアセテートフィルム製品を製造することができなかった。
【0124】
実施例5
また、上記ドープ処方1の組成物を用い、本発明の請求項8のセルローストリアセテートフィルムの製造方法及び請求項16記載のセルローストリアセテートフィルムの製造装置により、セルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0125】
上記のドープ処方1の組成物を流延ダイを通して駆動回転ステンレス製エンドレスベルト(支持体)の上部移行部の表面(キャスト面)上に、製膜速度30m/分で流延するとともに、エンドレスベルトの温度を25℃に制御し、移動する流延膜(ウェブ)を乾燥し、流延膜中の残留溶媒質量が25%になるまで溶媒を蒸発して剥離した。剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、フィルムを最終的に20℃に冷却して巻取り機に巻き取り、乾燥膜厚40μmで長さ3900mのセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0126】
ここで、製膜条件は、上記の表1に示すように、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:1350(mm)、流延幅−製品幅:400(mm)、減圧チャンバ幅−製品幅:450(mm)、及び支持体幅−製品幅:650(mm)とした。さらに、製膜条件として、上記の表2に示すように、セルローストリアセテートフィルムの製品幅:1350(mm)とした場合に、セルローストリアセテートフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の1.1%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.05%とした。
【0127】
また、巻取り機によるセルローストリアセテートフィルムの巻取張力条件が、初期張力240N/m、及び3900m後の終張力130N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも60N/m小さいものであるとし、巻き取り方式であるコーナー/テーパー方式のコーナーを25%、テーパーを93%として、乾燥膜厚40μmで長さ3900mのセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0128】
この実施例5において得られたセルローストリアセテートフィルムについて、溶液流延製膜装置の安定搬送時間、フィルムの配向角の測定し、得られた結果を、下記の表1にあわせて示した。なお、配向角θは、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて測定を行なった。
【0129】
この実施例5において得られたセルローストリアセテートフィルムについて、巻取り後の巻中故障の発生状況を測定し、得られた結果を、下記の表2にあわせて示した。
【0130】
この実施例5において得られたセルローストリアセテートフィルムについての溶液流延製膜装置の安定搬送時間、及びフィルムの配向角は、上記実施例1の場合と全く同様であり、セルローストリアセテートフィルムの端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保により、安定搬送時間が非常に長く、製造装置の稼働率を向上することができる。また、配向角のばらつきが非常に小さく、セルローストリアセテートフィルムの必要物性を確保することができた。
【0131】
さらに、上記の表2に示すように、セルローストリアセテートフィルムの元巻きに、折れ・貼り付き等の巻中故障の発生がなく、偏光板用保護フィルムとして有用なセルローストリアセテートフィルム製品を製造することができた。
【0132】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載のセルロースエステルフィルムの製造方法、及び本発明の請求項9記載のセルロースエステルフィルムの製造装置によれば、セルロースエステルフィルムの端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保により、安定搬送時間が非常に長く、製造装置の稼働率を向上することができる。また、配向角のばらつきが非常に小さく、セルロースエステルフィルムの必要物性を確保することができるという効果を奏する。
【0133】
また、本発明の請求項4記載のセルローストリアセテートフィルムの製造方法、及び請求項12記載のセルローストリアセテートフィルムの製造装置によれば、セルローストリアセテートフィルムの元巻きに、折れ・貼り付き等の巻中故障の発生がなく、偏光板用保護フィルムとして有用なセルローストリアセテートフィルム製品を製造することができるという効果を奏する。
【0134】
さらに、本発明の請求項8記載のセルロースエステルフィルムの製造方法、及び本発明の請求項16記載のセルロースエステルフィルムの製造装置によれば、セルロースエステルフィルムの端部スリットの安全な搬送幅範囲の確保により、安定搬送時間が非常に長く、製造装置の稼働率を向上することができる。また、配向角のばらつきが非常に小さく、セルロースエステルフィルムの必要物性を確保することができる。さらに、セルローストリアセテートフィルムの元巻きに、折れ・貼り付き等の巻中故障の発生がなく、偏光板用保護フィルムとして有用なセルローストリアセテートフィルム製品を製造することができるという効果を奏する。
Claims (16)
- 金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラム(以下、支持体という)上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、溶液流延製膜法により、最終膜厚30〜125μmのセルロースエステルフィルムを製造する方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立することを特徴とする、セルロースエステルフィルムの製造方法。
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm - セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmである、請求項1記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 搬送ロールの偏芯が、50μm未満である、請求項1または2記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、セルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取る、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%であることを特徴とする、セルロースエステルフィルムの製造方法。
- 巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいものである、請求項4記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式である、請求項5記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mである、請求項4〜6のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延ダイによってかつ流延上流側から減圧チャンバにより減圧しながら流延し、支持体上からウェブを剥離後、端部に規制力を設けた搬送ロールにてウェブを搬送し、ロール搬送の前または後にテンターにてウェブを幅手方向に延伸させ、セルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取る、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立すること、
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
さらに、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%であること、を特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。 - 金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体と、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延する流延ダイと、流延の際、流延ダイの流延上流側から減圧する減圧チャンバと、ドープ膜(ウェブ)を支持体上から剥離する剥離ロールと、剥離後のウェブを搬送する端部に規制力を設けた搬送ロールと、ロール搬送の前または後にウェブを幅手方向に延伸させるテンターとを備えており、溶液流延製膜法により最終膜厚30〜125μmのセルロースエステルフィルムを製造するセルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立することを特徴とする、セルロースエステルフィルムの製造装置。
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm - セルロースエステルフィルムの最終製品幅が、1340〜1980mmである、請求項9記載のセルロースエステルフィルムの製造装置。
- 搬送ロールの偏芯が、50μm未満である、請求項9または10記載のセルロースエステルフィルムの製造装置。
- 金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体と、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延する流延ダイと、流延の際、流延ダイの流延上流側から減圧する減圧チャンバと、ドープ膜(ウェブ)を支持体上から剥離する剥離ロールと、剥離後のウェブを搬送する端部に規制力を設けた搬送ロールと、ロール搬送の前または後にウェブを幅手方向に延伸させるテンターとを備えており、端部に規制力を設けた搬送ロールによってセルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取る、セルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%であることを特徴とする、セルロースエステルフィルムの製造装置。
- 巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、初期張力160〜305N/m、及び終張力77〜155N/mであり、かつ終張力は初期張力よりも50N/m以上小さいものである、請求項12記載のセルロースエステルフィルムの製造装置。
- 巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取張力条件が、セルロースエステルフィルムの巻径800mmを基準にして、コーナー0〜35%及びテーパー40〜170%を有するコーナー/テーパー方式である、請求項12記載のセルロースエステルフィルムの製造装置。
- 巻取り機によるセルロースエステルフィルムの巻取り長さが1000〜5500mである、請求項12〜14のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 金属製回転エンドレスベルトまたは金属製回転ドラムよりなる支持体と、支持体上にセルロースエステルフィルムの原料溶液であるドープを流延する流延ダイと、流延の際、流延ダイの流延上流側から減圧する減圧チャンバと、ドープ膜(ウェブ)を支持体上から剥離する剥離ロールと、剥離後のウェブを搬送する端部に規制力を設けた搬送ロールと、ロール搬送の前または後にウェブを幅手方向に延伸させるテンターとを備えており、端部に規制力を設けた搬送ロールによってセルロースエステルフィルムの両側縁部にエンボス加工を施し、巻取り機によって最終膜厚30〜125μm、及び巻径200〜800mmのセルロースエステルフィルムを巻き取る、セルロースエステルフィルムの製造装置において、セルロースエステルフィルムの最終製品幅をX(mm)とした場合に、下記の関係式が成立すること、
200mm<流延幅(mm)−X(mm)<800mm
210mm<減圧チャンバ幅(mm)−X(mm)<820mm
400mm<支持体幅(mm)−X(mm)<1000mm
さらに、セルロースエステルフィルム両側縁部のエンボスの幅Y(mm)が、それぞれフィルムの最終製品幅X(mm)の0.5〜2%であり、エンボスの高さZ(mm)が、エンボスの幅Y(mm)の0.02〜0.2%であること、を特徴とするセルロースエステルフィルムの製造装置。
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