JP6750261B2 - ポリビニルアルコール系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法、偏光フィルム及び偏光板 - Google Patents
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また、TD方向の厚み変動だけを低減しても、ポリビニルアルコール系フィルムロールからフィルムを巻き出して、偏光フィルムを製造する場合には、MD方向(流れ方向:長手方向)の厚み変動のため、染色、延伸、ホウ酸処理といった各工程に供するにあたり均一な処理が困難となり、偏光フィルムの面内で偏光度が不均一になるという問題がある。
また、上記特許文献1の場合と同じように、TD方向の厚み変動だけを低減しても、ポリビニルアルコール系フィルムロールからフィルムを巻き出して、偏光フィルムを製造する場合には、MD方向の厚み変動のため、染色、延伸、ホウ酸処理といった各工程に供するにあたり均一な処理が困難となり、偏光フィルムの面内で偏光度が不均一になるという問題がある。
更に、本発明の第3の要旨は、前記ポリビニルアルコール系フィルムからなることを特徴とする偏光フィルムに関するものである。
そして、本発明の第4の要旨は、前記偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムを設けてなる偏光板に関するものである。
<測定方法>
まず、ポリビニルアルコール系フィルムの任意の箇所の厚みを測定する。
・流れ方向(MD方向)の測定はキーエンス社製「分光干渉型膜厚計SI-T80」を用いて0.3mm刻みで幅方向(TD方向)の中央部と両端部の3箇所をそれぞれ6万点測定する。
・TD方向の測定は山文電気社製「連続膜厚計TOF-5R01」を用いてMD方向の先端部、中央部、終端部の3箇所をそれぞれ4000点測定する。
次いで、上記厚みの測定値について、下記式より標準偏差を計算する。
変動係数(C.V.)=100×S.D./x
また、上記厚みの変動係数の下限値は通常0.01%、好ましくは0.05%、特に好ましくは0.1%である。
ここで、本発明における平均ケン化度は、JIS K 6726に準じて測定されるものである。
(A)キャスト法によりフィルムを製膜する工程。
(B)製膜されたフィルムを加熱して乾燥する工程。
(C)乾燥されたフィルムをスリットした後、ロールに巻き取る工程。
工程(A)においては、上記のポリビニルアルコール系樹脂を、水などの溶剤を用いて洗浄し、遠心分離機などを用いて脱水して、含水率50重量%以下のポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキとすることが好ましい。含水率が大きすぎると、所望する水溶液濃度にすることが難しくなる傾向がある。
かかるポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを温水や熱水に溶解して、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調製する。
かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の温度が低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると発泡する傾向がある。
かかる水溶液の粘度が、低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると流涎が困難となる傾向がある。
かかる吐出速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると流涎が困難となる傾向がある。
かかる直径が小さすぎると乾燥長が不足し速度が出にくい傾向があり、大きすぎると輸送性が低下する傾向がある。
キャストドラムの幅が小さすぎると生産性が低下する傾向がある。
かかる回転速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると乾燥が不充分となる傾向がある。
かかる表面温度が低すぎると乾燥不良となる傾向があり、高すぎると発泡してしまう傾向がある。
また、熱ロールは、例えば、表面をハードクロムメッキ処理又は鏡面処理した、直径0.2〜2mのロールであり、通常2〜30本、好ましくは10〜25本を用いて乾燥を行うことが好ましい。
なお、フィルムの長さの上限は、破断回避の点から、好ましくは50km以下、特に好ましくは40km以下、更に好ましくは30km以下である。
また、幅方向(TD方向)の厚みの変動係数は、偏光フィルムの偏光性能の点で、0.7%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.6%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。
ここで、ポリビルアルコール系フィルムの厚みが薄い場合は、偏光フィルム製造において流れ方向に偏光度が不均一になりやすく、原反の流れ方向(MD方向)の厚み精度が重要となる。
これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液とキャストドラムの安定した接触は重要であり、接触線(タッチライン)がMD方向に前後すると、フィルムのMD方向に厚み変動が生じる。また、接触線がTD方向にゆらぐと、フィルムのTD方向に厚み変動が生じる。かかるタッチラインの安定化のためには、次の[I]〜[V]を調整する手法が有効であり好ましい。
該飛行距離Aが長いほど、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液はキャストドラム2の回転や環境の気流の影響を受けやすいため、吐出口1aからキャストドラム2への距離は可能な限り近接していることが望ましい。
本発明において、T型スリットダイ1の吐出口1aからキャストドラム2の表面(接地点P)への最短距離Bは好ましくは2mm以下であり、特に好ましくは、1.5mm以下、更に好ましくは1mm以下である。かかる最短距離Bが大きすぎるとフィルムの厚み変動が増大する傾向がある。
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液が、上方からキャストドラム2に吐出され接地するまでに、重力により液だれするとタッチラインは乱れやすい。例えば、接地点Pにおけるキャストドラム2の接線と吐出方向Dが平行な場合、吐出液は重力により下方だれしてスムーズな接地になりがたい。
本発明においては、T型スリットダイ1からキャストドラム2への吐出方向(T型スリットダイ内部のリップ面が向いている方向)Dと、T型スリットダイ1の吐出口1aとキャストドラム2の中心軸Cを結ぶ平面Eとのなす角度θが40°以下であることが好ましく、特に好ましくは1〜30°、更に好ましくは2〜20°、殊に好ましくは3〜10°である。かかる角度θが大きすぎるとフィルムの厚み変動が増大する傾向にある。
樹脂の押出し成形において、タッチラインを強制的に安定化するための一般的な手法である。エアナイフやエアチャンバとしては、公知の手法を用いることができる。
製膜されるフィルムの幅が2m以上であるため、T型スリットダイの幅も2m以上となる。かかる場合は、重力の影響を無視できず、T型スリットダイに剛性の高い材質を用いると共に、幅方向におけるT型スリットダイ中央部がたわまないように、吊り上げる手法が有効である。
本発明においては、1本以上の吊り具でT型スリットダイが吊り上げられることが好ましく、具体的には、T型スリットダイの幅方向中央部の重力によるたわみが0.3mm以下であることが好ましく、特に好ましくは0.2mm以下、更に好ましくは0.1mm以下である。かかるたわみ量を低減するには、吊り具の本数を増やしたり、吊り上げ位置を変更したりするなどの手法が挙げられる。
当然のことながら、キャストドラムが空間的にゆれるようでは、T型スリットダイからの吐出液は安定した接地ができない。本発明においては、回転するキャストドラムの上下、前後(MD方向)、左右(TD方向)への揺れが、それぞれ±50μm以下であることが好ましく、特に好ましくは±40μm以下、更に好ましくは±30μm以下である。かかる揺れが大きすぎると、フィルムの厚み変動が増大する傾向にある。キャストドラムのゆれを低減するには、キャストドラムの重量を低減したり、モーター回転精度を上げたりするといった手法が挙げられる。
なお、偏光度は、一般的に2枚の偏光フィルムを、その配向方向が同一方向になるように重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H11)と、2枚の偏光フィルムを、配向方向が互いに直交する方向になる様に重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H1)より、下式にしたがって算出される。
〔(H11−H1)/(H11+H1)〕1/2
単体透過率は、分光光度計を用いて偏光フィルム単体の光線透過率を測定して得られる値である。
以下、本発明の偏光板の製造方法について説明する。
限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
各物性について、次のようにして行った。
ポリビニルアルコール系フィルムのMD方向とTD方向の厚みを測定した。
・流れ方向(MD方向)の測定はキーエンス社製「分光干渉型膜厚計SI-T80」を用いて0.3mm刻みで、幅方向(TD方向)の中央部と両端部(両端から20cm内側)の3か所をそれぞれ6万点測定する。
・TD方向の測定は山文電気社製「連続膜厚計TOF-5R01」を用いて、流れ方向(MD方向)の先端部、中央部、終端部の3箇所をそれぞれ4000点測定する。
上記厚みの測定値を用いて、下記式より計算した。
得られた偏光フィルムの幅方向の中央部から、延伸方向200mm×幅方向40mmの短冊サンプルを切り出し、大塚電子社製「RETS−1100A」を用いて延伸方向に10mmピッチで10点の偏光度を測定した。
(ポリビニルアルコール系フィルムの製造)
重量平均分子量142,000、ケン化度99.8モル%のポリビニルアルコール系樹脂1000kg、水2000kg、可塑剤としてグリセリン100kgを入れ、撹拌しながら150℃まで昇温して、樹脂濃度25%に濃度調整を行い均一に溶解したポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。次に該ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、2軸押出機に供給して脱泡した後、水溶液温度を95℃にし、T型スリットダイ吐出口より回転するキャストドラムに、吐出速度2.5m/分で流延して製膜した。T型スリットダイ吐出口からキャストドラム表面への最短距離は2mmであり、T型スリットダイからキャストドラムへの吐出方向(T型スリットダイ内部のリップ面が向いている方向)と、T型スリットダイ吐出口とキャストドラム中心軸を結ぶ平面とのなす角度は15°である(表1参照。)。
次いで、得られたフィルムをキャストドラムから剥離し、熱ロールを用いた乾燥とフローティングドライヤーを用いた熱処理を行なった。次いで両端部を幅4mになるようスリットで切り落とし、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。
得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性を表2に示す。
得られたポリビニルアルコール系フィルムを、水温25℃の水槽に浸漬しつつ、1.7倍に延伸した。次にヨウ素0.5g/L、ヨウ化カリウム30g/Lよりなる28℃の水溶液中に浸漬しつつ1.6倍に延伸し、ついでホウ酸40g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液(55℃)に浸漬するとともに、同時に2.1倍に一軸延伸しつつホウ酸処理を行なった。その後、ヨウ化カリウム水溶液で洗浄行い、乾燥して総延伸倍率5.8倍の偏光フィルムを得た。得られた偏光フィルムの偏光特性を表3に示す。
実施例1において、フィルム製膜の条件を表1に示す通りに変更した以外は同様に行い、ポリビニルアルコール系フィルムを得、更に、実施例1と同様に偏光フィルムを得た。
得られたポリビニルアルコール系フィルム、及び、偏光フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表2および表3に示す。
実施例1において、フィルム製膜の条件を表1に示す通りに変更し、更に水溶液の吐出に際しては、水溶液のタッチライン上部にエアナイフを設置し(高さ5mm、角度90°)、エアナイフから風速10kPaでエアを吐出し、タッチラインを安定化したこと以外は実施例1と同様に行ない、ポリビニルアルコール系フィルムを得、更に、実施例1と同様に偏光フィルムを得た。
得られたポリビニルアルコール系フィルム、及び、偏光フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表2および表3に示す。
また、T型スリットダイ吐出口からキャストドラム表面への最短距離(mm)、T型スリットダイからキャストドラムへの吐出方向(T型スリットダイ内部のリップ面が向いている方向)とT型スリットダイ吐出口とキャストドラム中心軸を結ぶ平面とのなす角度(°)、エアナイフの使用などで、厚み変動係数の小さなポリビニルアルコール系フィルムを製造できることがわかる。
Claims (8)
- 厚み5〜60μm、幅2m以上、長さ2km以上であるポリビニルアルコール系フィルムであって、フィルム全面における厚みの変動係数が1%以下であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。
- ポリビニルアルコール系フィルムの厚みが30μm以下であって、かつポリビニルアルコール系フィルムの流れ方向(MD方向)の厚みの変動係数が、0.7%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系フィルム。
- ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を、T型スリットダイから回転するキャストドラム上に吐出して製膜し、連続的に乾燥して得られるポリビニルアルコール系フィルムの製造方法であって、フィルム全面における厚みの変動係数が1%以下であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
- T型スリットダイからキャストドラムのドラム表面への最短距離が2mm以下であることを特徴とする請求項3記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
- T型スリットダイからキャストドラムへの吐出方向(T型スリットダイ内部のリップ面が向いている方向)と、T型スリットダイ吐出口とキャストドラム中心軸を結ぶ平面とのなす角度が、40°以下であることを特徴とする請求項3または4記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
- 水溶液がキャストドラムに接地するタッチラインを、エアナイフにより安定化させることを特徴とする請求項3〜5いずれか記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
- 請求項1または2記載のポリビニルアルコール系フィルムからなることを特徴とする偏光フィルム。
- 請求項7記載の偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムを設けてなることを特徴とする偏光板。
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