JP6878778B2 - ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法 - Google Patents
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具体的なポリビニルアルコール系フィルムに対する要望は、5m以上の幅広化、4km以上の長尺化、かつ製造が困難になる厚さ40μm以下の薄型フィルムにおいても、幅方向の端部まで使用可能な均質性が要望されている。
本発明の目的は、幅方向の両端部まで均質であり、かつ端部に浮きやうねりの無い、幅広長尺薄型のポリビニルアルコール系フィルムを製造することができるポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を提供することである。
及び前記第2金属加熱ロール群の前記少なくとも1本の金属加熱ロールの幅をBa、当該金属加熱ロールで乾燥させるフィルムの幅をAaとしたとき、下記条件(2)を満足し、かつ前記フィルムの両端部が前記金属加熱ロールより外側に配置されていることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
条件(1):複数本の金属加熱ロールは、含水率が13重量%以上のフィルムを乾燥させる第1金属加熱ロール群と、含水率が7重量%以上13重量%未満のフィルムを乾燥させる第2金属加熱ロール群と、含水率が7重量%未満のフィルムを乾燥させる第3金属加熱ロール群とから成り、
第2金属加熱ロール群の少なくとも1本の金属加熱ロールは、金属加熱ロールの幅が当該金属加熱ロールで乾燥させるフィルムの幅より小さく設定され、
第2金属加熱ロール群の残りの金属加熱ロールと第1及び第3金属加熱ロール群の金属加熱ロールは、金属加熱ロールの幅が当該金属加熱ロールで乾燥させるフィルムの幅より大きく設定されている。
条件(2):0.999×Aa≧Ba≧0.98×Aa
なお、本発明において、金属加熱ロールで乾燥させるフィルムの幅とは、1番目の金属加熱ロールについてはキャストドラムから剥離した後のフィルムの幅を意味し、2番目以降の金属加熱ロールについては前段の金属加熱ロールから剥離した後のフィルムの幅を意味する。
このように、複数本の金属加熱ロールにおいては、含水率が7重量%以上13重量%未満のフィルムを乾燥させる第2金属加熱ロール群の少なくとも1本の金属加熱ロールの幅だけが、乾燥させるフィルムの幅より小さく設定されている。
このような複数本の金属加熱ロールを用いてフィルムを乾燥させると、含水率が7重量%以上13重量%未満のフィルムを乾燥させるときに、少なくとも1本の金属加熱ロールでは、フィルムの幅方向の端部が金属加熱ロールに接触しないことになるので、フィルムの剥離現象は発生し難くなり、これにより、幅方向の両端部まで均質であり、かつ端部に浮きやうねりの無い、幅広長尺薄型のポリビニルアルコール系フィルムを製造することが可能となる。
所定の条件とは、以下のとおりである。
条件(1):複数本の金属加熱ロールは、含水率が13重量%以上のフィルムを乾燥させる第1金属加熱ロール群と、含水率が7重量%以上13重量%未満のフィルムを乾燥させる第2金属加熱ロール群と、含水率が7重量%未満のフィルムを乾燥させる第3金属加熱ロール群とから成り、
第2金属加熱ロール群の少なくとも1本の金属加熱ロールは、金属加熱ロールの幅が当該金属加熱ロールで乾燥させるフィルムの幅より小さく設定され、
第2金属加熱ロール群の残りの金属加熱ロールと第1及び第3金属加熱ロール群の金属加熱ロールは、金属加熱ロールの幅が当該金属加熱ロールで乾燥させるフィルムの幅より大きく設定されている。
ここで、他の金属加熱ロールとは、第1金属加熱ロール群の金属加熱ロールと、第3金属加熱ロール群の金属加熱ロールと、第2金属加熱ロール群において前記少なくとも1本の金属加熱ロールを除いた残りの金属加熱ロールを意味する。なお、第2金属加熱ロール群に含まれる金属加熱ロールが1本だけの場合は、第2金属加熱ロール群における残りの金属加熱ロールは0本となる。
条件(2):0.999×Aa≧Ba≧0.98×Aa
条件(2a):0.998×Aa≧Ba≧0.985×Aa
さらに、幅Baが下記条件(2b)を満足することが更に好ましい。
条件(2b):0.997×Aa≧Ba≧0.99×Aa
金属加熱ロールの幅Baが大きすぎると剥離回避が困難となる傾向にあり、小さすぎるとフィルム端部に反りや浮きが生じる傾向にある。
上述したように、本発明では、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、T型スリットダイから、回転するキャストドラム上に吐出及び流涎して製膜し、キャストドラムから剥離して得られる含水率が13重量%以上で幅が5m以上のフィルムを、上述した所定の条件を満たす複数本の金属加熱ロールの外周部に順次接触させながら搬送して乾燥させることによりポリビニルアルコール系フィルムが製造される。
かかる重量平均分子量が小さすぎるとポリビニルアルコール系樹脂を光学フィルムとする場合に充分な光学性能が得られにくい傾向があり、大きすぎるとポリビニルアルコール系樹脂フィルムを偏光膜とする場合に延伸が困難となる傾向がある。
なお、本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、GPC−MALS法により測定される重量平均分子量である。
かかるポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを温水や熱水に溶解して、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調製する。
かかる樹脂濃度が低すぎると乾燥負荷が大きくなるため生産能力に劣る傾向があり、高すぎると粘度が高くなりすぎて均一な溶解ができ難くなる傾向がある。
(A)キャスト法によりフィルムを製膜する工程。
(B)製膜されたフィルムを加熱して乾燥する工程。
(C)乾燥されたフィルムの両端部をスリットした後、ロールに巻き取る工程。
工程(A)において、まず、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、通常、脱泡処理される。脱泡方法としては、静置脱泡やベントを有する多軸押出機による脱泡などの方法が挙げられる。ベントを有する多軸押出機としては、通常は、ベントを有した2軸押出機が用いられる。
かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の温度が低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると発泡する傾向がある。
かかる水溶液の粘度が低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると流涎が困難となる傾向がある。
かかる吐出速度が遅すぎると生産性に劣る傾向があり、速すぎると流涎が困難となる傾向がある。
かかる直径が小さすぎると乾燥長が不足し速度が出にくい傾向があり、大きすぎると輸送性に劣る傾向がある。
かかる回転速度が遅すぎると生産性に劣る傾向があり、速すぎると乾燥が不十分となる傾向がある。
かかる表面温度が低すぎると乾燥不良となる傾向があり、高すぎると発泡してしまう傾向がある。
このようにして含水率が13重量%以上で幅が5m以上のフィルムが得られる。
なお、本発明の製造方法によるポリビニルアルコール系フィルムであって、幅方向の両端部がスリット(切断)されていないポリビニルアルコール系フィルムを、以下では「ポリビニルアルコール系フィルム(スリット無し)」ともいう。
|Rc(nm)−Re(nm)|≦20nm ・・・(1)
特に好ましくは下記数式(2)、更に好ましくは下記数式(3)を満足することである。
|Rc(nm)−Re(nm)|≦15nm ・・・(2)
|Rc(nm)−Re(nm)|≦10nm ・・・(3)
なお、偏光度は、一般的に2枚の偏光膜を、その配向方向が同一方向になるように重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H11)と、2枚の偏光膜を、配向方向が互いに直交する方向になる様に重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H1)より、下記数式(4)にしたがって算出される。
〔(H11−H1)/(H11+H1)〕1/2 ・・・(4)
単体透過率は、分光光度計を用いて偏光膜単体の光線透過率を測定して得られる値である。
以下、本発明の偏光膜から偏光板を製造する方法について説明する。
(1)フィルムの含水率(%)
得られたポリビニルアルコール系フィルムから10cm×10cmの試験片を切り出し、初期の重量(A)と、83℃の真空乾燥機で20分乾燥後の重量(B)から、下記数式(5)により含水率を算出した。
含水率(%)=100×(A−B)/A ・・・(5)
得られたポリビニルアルコール系フィルム(スリット無し)を、長さ方向に100m巻き取りながら、両端部の幅方向へのうねり幅(cm)を目視で観察した。
得られたポリビニルアルコール系フィルムから、幅方向全福×長さ方向50mmの試験片を10枚切り出し、「KOBRA−WFD」(王子計測機器(株)製、測定波長590nm)を用いて、幅方向中央部の面内位相差Rcと、周辺部(端部より10cmの位置とする)の面内位相差Re(nm)を測定し、|Rc(nm)−Re(nm)|の最大値を面内位相差のムラとした。
得られたポリビニルアルコール系フィルム(スリット無し)の幅方向両端部から、フィルムの長さ方向1m×幅方向1mの試験片を切り出し、23℃50%RHの恒温恒湿室で、平坦な定盤上に1時間静置した後、隙間ゲージを用いて、長さ方向の端部の浮き量を測定し、最大値を端部のうき量(mm)とした。
得られた偏光膜の幅方向中央部と両端部から、4cm×4cmの試験片を3枚切り出し、自動偏光フィルム測定装置(日本分光(株)製VAP7070)を用いて偏光度と単体透過率を測定した。
(ポリビニルアルコール系フィルムの製造)
重量平均分子量142000、ケン化度99.8モル%のポリビニルアルコール系樹脂1000部、水2000部、可塑剤としてグリセリン100部を入れ、撹拌しながら150℃まで昇温して、樹脂濃度25%に濃度調整を行い、均一に溶解したポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。次いで、該ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、ベントを有する二軸押出機に供給して脱泡した後、T型スリットダイから、回転するキャストドラムに吐出(吐出速度2.5m/分)及び流延して、フィルム幅5500mmに製膜した。次いで、キャストドラムから含水率20%のフィルムを剥離し、フィルムの表面と裏面とを合計10本の金属加熱ロールに交互に接触させながら搬送して乾燥を行った。
10本の金属加熱ロールは、フィルムの搬送方向の最上流側に位置するものを第1金属加熱ロールとし、下流側に向かうに従って順番に第2金属加熱ロール、第3金属加熱ロール、…、第9金属加熱ロールとし、最下流側に位置するものを第10金属加熱ロールとする。本実施例では、第1〜4金属加熱ロールが第1金属加熱ロール群であり、第5〜7金属加熱ロールが第2金属加熱ロール群であり、第8〜10金属加熱ロールが第3金属加熱ロール群である。
第1〜5金属加熱ロールは、直径0.4m、幅6000mm、温度は70〜90℃である。第6金属加熱ロールは、直径0.4m、幅5400mm、温度は70℃である。第7〜10金属加熱ロールは、直径0.3m、幅6000mm、温度は50〜70℃である。剥離から乾燥までの含水率、フィルム幅は、表1のとおりである。
最後に120℃で熱処理を行い、両端部50mmをスリットして、幅5000mm、厚さ60μm、長さ5kmのポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性を表2に示す。
得られたポリビニルアルコール系フィルムをロールから巻き出し、搬送ロールを用いて水平方向に搬送し、水温25℃の水槽に浸漬して膨潤させながら、流れ方向へ1.7倍に延伸した。次にヨウ素0.5g/L、ヨウ化カリウム30g/Lよりなる28℃の水溶液中に浸漬し染色しながら、流れ方向へ1.6倍に延伸した。次いで、ホウ酸40g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液(55℃)に浸漬し、ホウ酸架橋しながら、流れ方向へ2.1倍に一軸延伸した。その後、ヨウ化カリウム水溶液で洗浄行い、50℃で2分間乾燥して総延伸倍率5.7倍の偏光膜を得た。得られた偏光膜の偏光特性を表2に示す。
実施例1において、フィルムの乾燥条件を表1に示すとおりに変更した以外は同様に行い、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表2に示す。
更に、実施例1と同様にして偏光膜を得た。得られた偏光膜について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例1において、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液のキャストドラムへの吐出速度を1.3m/分に変えてフィルムの膜厚を表2に示すとおりに変更した以外は同様に行い、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表2に示す。
更に、実施例1と同様にして偏光膜を得た。得られた偏光膜について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例1において、フィルムの乾燥条件を表1に示すとおりに変更した以外は同様に行い、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表2に示す。
更に、実施例1と同様にして偏光膜を得た。得られた偏光膜について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例1において、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液のキャストドラムへの吐出速度を1.3m/分に変えてフィルムの膜厚を表2に示すとおりに変更し、またフィルムの乾燥条件を表1に示すとおりに変更した以外は同様に行い、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表2に示す。
更に、実施例1と同様にして偏光膜を製造しようとしたが、偏光膜製造の搬送中に端部折れが発生して、偏光膜を製造できなかった。
Ba,Bb 金属加熱ロールの幅
Fa,Fb フィルム
Ra,Rb 金属加熱ロール
W 金属加熱ロール端面とフィルム端面との距離
Claims (6)
- ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、T型スリットダイから、回転するキャストドラム上に吐出及び流涎して製膜し、キャストドラムから剥離して得られる含水率が13重量%以上で幅が5〜6mのフィルムを、下記条件(1)を満たす複数本の金属加熱ロールの外周部に順次接触させながら搬送して乾燥させること、
及び前記第2金属加熱ロール群の前記少なくとも1本の金属加熱ロールの幅をBa、当該金属加熱ロールで乾燥させるフィルムの幅をAaとしたとき、下記条件(2)を満足し、かつ前記フィルムの両端部が前記金属加熱ロールより外側に配置されていることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
条件(1):複数本の金属加熱ロールは、含水率が13重量%以上のフィルムを乾燥させる第1金属加熱ロール群と、含水率が7重量%以上13重量%未満のフィルムを乾燥させる第2金属加熱ロール群と、含水率が7重量%未満のフィルムを乾燥させる第3金属加熱ロール群とから成り、
第2金属加熱ロール群の少なくとも1本の金属加熱ロールは、金属加熱ロールの幅が当該金属加熱ロールで乾燥させるフィルムの幅より小さく設定され、
第2金属加熱ロール群の残りの金属加熱ロールと第1及び第3金属加熱ロール群の金属加熱ロールは、金属加熱ロールの幅が当該金属加熱ロールで乾燥させるフィルムの幅より大きく設定されている。
条件(2):0.999×Aa≧Ba≧0.98×Aa - 前記少なくとも1本の金属加熱ロールで乾燥させるフィルムの含水率が9〜12重量%の時に、前記少なくとも1本の金属加熱ロールの幅Baが、上記条件(2)を満足することを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
- 第2金属加熱ロール群の前記少なくとも1本の金属加熱ロールの直径が、0.3〜1mであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
- 製造されたポリビニルアルコール系フィルムの端部の幅方向へのうねり幅が、2cm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
- 製造されたポリビニルアルコール系フィルムの中央部の位相差をRc(nm)、周辺部の位相差をRe(nm)とした場合に、下記数式(1)を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
|Rc(nm)−Re(nm)|≦20nm ・・・(1) - 製造されたポリビニルアルコール系フィルムを平坦な定盤上に設置した時に、端部のうき量の最大値が、2mm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
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