JP6350606B2 - 気泡欠陥の少ない偏光子 - Google Patents

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Description

本発明は、気泡欠陥の少ない偏光子およびその製造方法に関する。
近年、液晶表示装置の光学素子として、偏光板が、液晶テレビ、携帯電話またはパソコンの液晶表示装置に組み込まれ幅広く使われている。最近、これら液晶表示装置の小型化、軽量化のため、薄型の偏光板が開発されている。これまでも基材フィルム表面にポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を用いてポリビニルアルコール系樹脂層を設けた後で、延伸し、次いで染色して偏光子および偏光板を製造する方法が提案されている(特許文献1および2)。
特開2000−338329号公報 特開2009−93074号公報
偏光子および偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液から製造される、その水溶液の調製工程においてポリビニルアルコールは、気泡を噛み込みやすく、ポリビニルアルコール系樹脂層を形成する際に、形成するポリビニルアルコール系樹脂層の表面に気泡に起因する円形の凹状欠陥や、延伸後の樹脂層の延伸方向に生ずる楕円状もしくは線状の気泡欠陥に起因する空隙が発生することを本発明は、見出した。本発明者は、かかる気泡欠陥に起因する空隙が少ない偏光子およびかかる偏光子からなる偏光性積層フィルム並びにその製造方法を提供する。
本発明は、吸収軸方向における長さが100μm以上の空隙が10個/m以下であるポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光子を提供する。また、本発明は、かかる偏光子が基材フィルムの少なくとも一方の面に積層された偏光性積層フィルム及び偏光子の少なくとも片面に、透明保護フィルムを積層した偏光板を提供する。
偏光子の吸収軸方向の長さが100μm以上の空隙が10個/m以下である偏光性積層体は、典型的には、以下の(ア)乃至(ウ)の工程を含む製造方法により製作される。
(ア)基材フィルムの少なくとも一方の面に、減圧脱泡したポリビニルアルコール系樹脂水溶液を塗工して、基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層が形成された積層フィルムを得る樹脂層形成工程と、
(イ)積層フィルムを延伸して延伸フィルムを得る延伸工程と、
(ウ)延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色して偏光子層を形成する染色工程。
本発明は、かかる偏光性積層フィルムの偏光子層の基材フィルム側とは反対側の面に透明保護フィルムを貼合して多層フィルムを得る工程(貼合工程)と、
多層フィルムから基材フィルムを剥離する工程(剥離工程)を含む、偏光子の片面に透明保護フィルムが設けられた偏光板の製造方法を提供する。
本発明によれば、偏光子を製造する際に、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を減圧して脱泡することにより、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を塗工液として基材フィルムにコートしポリビニルアルコール系樹脂層を形成する際に、塗工液中の気泡が破裂してコート塗工層に円形の凹状欠陥の生成を軽減することができる。その結果、コート後の基材フィルムおよびポリビニルアルコール系樹脂層からなる積層体を延伸しても、延伸方向に生ずる、気泡欠陥に起因する楕円状もしくは線状の空隙の発生が抑制された偏光子およびかかる偏光子からなる偏光性積層体を提供することができる。
本発明に係る偏光性積層フィルムの基本的な層構成の一例を示す概略断面図である。 本発明に係る偏光板の基本的な層構成の一例を示す概略断面図である。 図1に示す偏光性積層フィルムの製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。 図2に示す偏光板の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
<偏光性積層フィルムの構成>
図1は、本発明に係る偏光性積層フィルムの基本的な層構成の一例を示す概略断面図である。偏光性積層フィルム10は、基材フィルム11と、基材フィルム11の一方の面に形成されている偏光子層12とを備える。偏光子層12は、厚さ10μm以下であり、二色性色素を吸着配向させたポリビニルアルコール系樹脂から形成されている。
以下、各構成要素について詳細に説明する。
[基材フィルム]
基材フィルム11の材料としては、たとえば、透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、セルローストリアセテート等のセルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、およびこれらの混合物などが挙げられる。
基材フィルムの材料として、セルロースエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂および(メタ)アクリル系樹脂からなる群から選択される少なくともいずれか1つが含まれることが好ましい。
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートなどが挙げられる。
これらの中でも、セルローストリアセテートが特に好ましい。セルローストリアセテートは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。セルローストリアセテートの市販品の例としては、フジタック(登録商標)TD80(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UF(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UZ(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD40UZ(富士フィルム(株)製)、KC8UX2M(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)などが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。ポリプロピレンからなる基材フィルムを用いた場合、安定的に高倍率に延伸しやすく好ましい。環状ポリオレフィン系樹脂としては、好ましくはノルボルネン系樹脂が用いられる。
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、たとえば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、およびこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびにそれらの水素化物などが挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
環状ポリオレフィン系樹脂としては種々の製品が市販されている。具体例としては、Topas(登録商標)(Ticona社製)、アートン(登録商標)(JSR(株)製)、ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、アペル(登録商標)(三井化学(株)製)が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。たとえば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(たとえば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。
好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂として、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が用いられる。
基材フィルム11には、上記の熱可塑性樹脂の他に、任意の適切な添加剤が添加されていてもよい。このような添加剤としては、たとえば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、および着色剤などが挙げられる。基材フィルム中の上記にて例示した熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。基材フィルム中の熱可塑性樹脂の含有量が50重量%未満の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現されないおそれがあるからである。
基材フィルム11の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性の点から1〜500μmが好ましく、1〜300μmがより好ましく、さらには5〜200μmが好ましい。基材フィルム11の厚さは、5〜150μmが最も好ましい。
基材フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂の延伸に適した温度範囲で延伸できるように、融点が110℃以上のものを用いることが好ましい。好ましくは、融点が130℃以上のものを用いる。基材フィルムの融点が110℃未満であると、後述の延伸工程(S20)において、基材フィルムが融解しやすく延伸温度を十分に上げることができず、5倍超の延伸が困難になるためである。基材フィルムの融点とは、ISO3146に基づいて昇温速度10℃/minで測定した値である。
基材フィルム11は、偏光子層12との密着性を向上させるために、少なくとも偏光子層12が形成される側の表面に、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等を行ってもよい。また密着性を向上させるために、基材フィルム11の偏光子層12が形成される側の表面にプライマー層等の薄層を形成してもよい。
[偏光子層]
本発明の偏光子は、吸収軸方向における長さが100μm以上の空隙が10個/m以下のポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光子である。かかる偏光子の厚みは、10μm以下、さらに薄くして7μm以下とすることもできる。偏光子層12の厚みを10μm以下とした薄型の偏光性積層フィルムを製作できる。
偏光子層12は、具体的には、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂層に二色性色素を吸着配向させたものである。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、99.0モル%以下である。本発明において、ケン化度が99.0モル%以下のポリビニルアルコール系樹脂は、5倍超の一軸延伸を実施した場合にも一定の染色速度を維持できるので、偏光性能が高い薄型偏光性積層フィルムを、効率良く生産できるメリットがある。一方、ケン化度が99.0モル%を超えるポリビニルアルコール系樹脂を使用した場合には、著しく染色速度が遅くなり、十分な偏光性能を有する偏光性積層フィルムが得られない場合があり、また製造において通常の数倍もの時間を要する不具合を生じる場合がある。
また、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、90モル%以上であることが好ましく、94モル%以上であることがより好ましい。ケン化度が90モル%より小さいと、耐水性などの強度が十分でない場合がある。
ここでいうケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基がケン化工程により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、下記式で定義される数値である。JIS K 6726(1994)で規定されている方法で求めることができる。
ケン化度(モル%)=(水酸基の数)÷(水酸基の数+酢酸基の数)×100
ケン化度が高いほど、水酸基の割合が高いことを示しており、すなわち結晶化を阻害する酢酸基の割合が低いことを示している。また、本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂は、ケン化度が99.0モル%以下であれば特に限定されるものではなく、一部が変性されている変性ポリビニルアルコールでもよい。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂をエチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどで数%ほど変性したものなどが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度も特に限定されるものではないが、100〜10000が好ましく、1500〜10000がより好ましい。
このような特性を有するポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば(株)クラレ製のPVA124(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、PVA117(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、PVA624(ケン化度:95.0〜96.0モル%)およびPVA617(ケン化度:94.5〜95.5モル%);例えば日本合成化学工業(株)製のAH−26(ケン化度:97.0〜98.8モル%)、AH−22(ケン化度:97.5〜98.5モル%)、NH−18(ケン化度:98.0〜99.0モル%)およびN−300(ケン化度:98.0〜99.0モル%);例えば日本酢ビ・ポバール(株)のJF−17(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、JF−17L(ケン化度:98.0〜99.0モル%)およびJF−20(ケン化度:98.0〜99.0モル%)などが挙げられる。
かかるポリビニルアルコール系樹脂を基材に塗工し、樹脂層を形成したものが本発明にかかる偏光子層12の製作に使用できる。ポリビニルアルコール系樹脂の樹脂層を形成する方法は、所望の厚さの偏光子層12を得やすいという点から、ポリビニルアルコール系樹脂の溶液を基材フィルム11上に塗布して樹脂層を形成する方法が好ましい。偏光子層12は、好ましくは5倍超、さらに好ましくは5倍超でかつ8倍以下の延伸倍率で一軸延伸されている。
基材フィルムの少なくとも片面に、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光子層が形成されていて、前記偏光子層の吸収軸方向の長さが100μm以上の空隙が10個/m以下である偏光性積層体の製造方法について以下説明する。
基材フィルムの少なくとも一方の面に、減圧脱泡したポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を塗布して、基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層が形成された積層フィルムを得る樹脂層形成工程について説明する。
基材フィルムに塗布するポリビニルアルコール系樹脂の水溶液は、通常、ポリビニルアルコールを4wt%〜10wt%含むものであり、好ましくは、6wt%〜9wt%である。4wt%以下であると乾燥する際により熱量が必要となりラインスピードを落とす必要が生じ生産性が悪化するため好ましくない。10wt%以上となるとゲル化が生じやすくなり保管性が悪化するため好ましくない。ポリビニルアルコール系樹脂としては、偏光子についての説明において例示したものが用いられる。
ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液としては、脱泡したポリビニルアルコール系樹脂の水溶液が好ましく、脱泡の方法としては、気泡の除去効率の良さから減圧による脱泡が好ましい。PVA水溶液は非常に泡立ちやすく、生じた泡は破泡しにくいので、減圧によっても泡立ちで生じた泡を再度液中に混入させないよう、静置した状態で減圧し、減圧状態を維持して、水溶液中から泡が除去されるのを待つ方法がより好ましい
本発明の脱泡工程においては、真空ポンプで吸気する減圧方法が用いられる。脱泡用の容器としては特に指定はなく、減圧に耐えられる容器であればよく、簡便に実施できる。
減圧は、通常、容器内の圧力(ゲージ圧)をできるだけ下げて、低くすると、処理時間が短くなるので好適である。容器内の圧力(ゲージ圧)は、通常、−0.04Mpa以下、好ましくは、−0.05Mpa以下、さらに好ましくは、−0.08Mpa以下、なおさらに好ましくは、−0.09Mpa以下に設定される。処理時間は、典型的には、30分以上であり、好ましくは60分以上、さらに好ましくは120分もしくはそれ以上であるが、生産性を損なわない範囲で長くしてもよい。
脱泡したポリビニルアルコール系樹脂の水溶液(PVA水溶液もしくは塗工液とも記す)を塗工する際には、送液される塗工液の温度は、塗工時に基材に塗工液が接した場合に基材が弛み、形成されるポリビニルアルコール系樹脂層の膜厚精度に影響しないように、上限を設定し、一方で、PVA水溶液のゲル化が生じないように下限を設定すればよく、塗工液の温度は、通常、10〜80℃であり、好ましくは15〜60℃、より好ましくは20℃〜40℃である。
本発明においては、PVA水溶液の製造と塗工工程は連続的である必要はなく、ポリビニルアルコール系樹脂を水に溶解後、生成するPVA水溶液を、いったんドラム缶やコンテナなどの輸送用の容器に移し、塗工工程へPVA水溶液を搬送して供給してもよい。このようにポリビニルアルコール系樹脂の溶解を行う設備(溶解設備)とポリビニルアルコール系樹脂の基材への塗工を行う設備(塗工設備)とを分けることによりそれぞれ設備をコンパクトにできる形態でも実施できる。
[樹脂層形成工程(S10)]
ここでは、基材フィルムの一方の表面上にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層を形成する。
基材フィルムに適した材料は、上記にて偏光性積層フィルムの構成の説明で述べた通りである。なお、本実施形態において、樹脂層を形成するために適したポリビニルアルコール系樹脂の材料は、偏光性積層フィルムの構成の説明で述べた通りである。
ポリビニルアルコール系樹脂の樹脂層は、通常、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる塗工液を基材フィルムの一方の表面上に塗工し、水などの溶剤を蒸発させて乾燥することにより形成される。樹脂層をこのように形成することにより、薄く形成することが可能となる。ポリビニルアルコール系樹脂溶液を基材フィルムに塗工する方法としては、ワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法、などを公知の方法から適宜選択して採用できる。カンマコート法(ナイフコーター)、ダイコート法、リップコート法が好ましい。乾燥温度は、例えば、50℃〜200℃であり、好ましくは60℃〜150℃である。乾燥時間は、例えば、2分〜20分である。
形成する樹脂層の厚みは、延伸後の染色性を考慮すると、下限は、通常、3μmを超える厚みである。最終的に得られる偏光子層の厚みを10μm以下とする場合は、形成する樹脂層の厚みは、通常、30μm以下である。形成する樹脂層の厚みは、好ましくは、5μm〜20μmである。
また、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂の密着性を向上させるために、基材フィルムと樹脂層の間にプライマー層を設けても良い。プライマー層はポリビニルアルコール系樹脂に架橋剤などを含有する組成物で形成することが密着性の観点から好ましい。
かくして得られる基材フィルムにポリビニルアルコール系樹脂層を積層したフィルムを延伸して延伸フィルムを得る延伸工程および得られた延伸フィルムの樹脂層を二色性色素で染色して偏光子層を形成する染色工程について、以下説明する。基材フィルムおよび樹脂層からなる積層フィルムを、積層フィルムの元長に対して、5倍超の延伸倍率となるように一軸延伸し延伸フィルムを得る。好ましくは、5倍超かつ8倍以下の延伸倍率となるように一軸延伸する。延伸倍率が5倍以下だと、ポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層が十分に配向しないため、結果として、偏光子層の偏光度が十分に高くならない。一方、延伸倍率が8倍を超えると延伸時の積層フィルムの破断が生じ易くなると同時に、延伸フィルムの厚みが必要以上に薄くなり、後工程での加工性・ハンドリング性が低下するおそれがある。延伸工程(S20)における延伸処理は、一段での延伸に限定されることはなく多段で行うこともできる。多段で行う場合は、延伸処理の全段を合わせて5倍超の延伸倍率となるように延伸処理を行う。
本実施形態における延伸工程(S20)においては、積層フィルムの長手方向に対して行なう縦延伸処理が好ましいが、偏光性能をさほど求めない場合にはテンター法による横一軸延伸などに代表される固定端一軸延伸であっても構わない。縦延伸方式としては、ロール間延伸方法、圧縮延伸方法、テンターを用いた延伸方法などが挙げられる。延伸処理は、縦延伸処理に限定されることはなく、斜め延伸処理等であってもよい。また、自由端一軸延伸であることが好ましい。
また、延伸処理は、湿潤式延伸方法と乾式延伸方法のいずれも採用できるが、乾式延伸方法を用いる方が、積層フィルムを延伸する際の温度を広い範囲から選択することができる点で好ましい。
本実施形態においては、基材フィルムの融点の−30℃から+5℃の温度範囲で延伸処理を行なうことが好ましい。さらに好ましくは、基材フィルムの融点の−25℃から融点の温度範囲で延伸処理を行う。延伸温度を基材フィルム11の融点の−30℃より低くすると、5倍超の高倍率延伸が困難になる。延伸温度が基材フィルムの融点の+5℃を超えると、基材フィルムの融解により延伸が困難となるため好ましくない。なお、延伸温度は上記範囲内であって、さらに好ましくは120℃以上である。延伸温度が120℃以上の場合、5倍超の高延伸倍率であっても延伸処理に困難性を伴わないからである。延伸処理の温度調整は、通常、加熱炉の温度調整により行われる。
[染色工程(S30)]
ここでは、延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を、二色性色素で染色する。
二色性色素としては、たとえば、ヨウ素や有機染料などが挙げられる。有機染料としては、たとえば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックなどが使用できる。これらの二色性物質は、一種類でも良いし、二種類以上を併用して用いても良い。
染色工程は、たとえば、上記二色性色素を含有する溶液(染色溶液)に、延伸フィルム全体を浸漬することにより行う。染色溶液としては、上記二色性色素を溶媒に溶解した溶液を使用できる。染色溶液の溶媒としては、一般的には水が使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒がさらに添加されても良い。二色性色素の濃度としては、0.01重量%〜10重量%であることが好ましく、0.02重量%〜7重量%であることがより好ましく、0.025重量%〜5重量%であることが特に好ましい。
二色性色素としてヨウ素を使用する場合、染色効率をより一層向上できることから、さらにヨウ化物を添加することが好ましい。このヨウ化物としては、たとえば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどが挙げられる。これらヨウ化物の添加割合は、染色溶液において、0.01重量%〜20重量%であることが好ましい。ヨウ化物の中でも、ヨウ化カリウムを添加することが好ましい。ヨウ化カリウムを添加する場合、ヨウ素とヨウ化カリウムの割合は重量比で、1:5〜1:100の範囲にあることが好ましく、1:6〜1:80の範囲にあることがより好ましく、1:7〜1:70の範囲にあることが特に好ましい。
染色溶液への延伸フィルムの浸漬時間は、特に限定されないが、通常は15秒〜15分間の範囲であることが好ましく、1分〜3分間であることがより好ましい。また、染色溶液の温度は、10℃〜60℃の範囲にあることが好ましく、20℃〜40℃の範囲にあることがより好ましい。染色工程においては、余分な染色溶液を純水で洗い流してもよい。
染色工程において、染色に次いで架橋処理を行うことが出来る。架橋処理は、たとえば架橋剤を含む溶液(架橋溶液)中に延伸フィルムを浸漬することにより行うことができる。架橋剤としては、従来公知の物質を使用することができる。たとえば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物や、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらは一種類でも良いし、二種類以上を併用しても良い。
架橋溶液として、架橋剤を溶媒に溶解した溶液を使用できる。溶媒としては、たとえば水が使用できるが、さらに、水と相溶性のある有機溶媒を含んでも良い。架橋溶液における架橋剤の濃度は、これに限定されるものではないが、1重量%〜20重量%の範囲にあることが好ましく、6重量%〜15重量%であることがより好ましい。
架橋溶液中には、ヨウ化物を添加してもよい。ヨウ化物の添加により、ポリビニルアルコール系樹脂層の面内における偏光特性をより均一化させることができる。ヨウ化物としては、たとえば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンが挙げられる。ヨウ化物の含有量は、通常、0.05重量%〜15重量%、より好ましくは0.5重量%〜8重量%である。
架橋溶液への延伸フィルムの浸漬時間は、通常、15秒〜20分間であることが好ましく、30秒〜15分間であることがより好ましい。また、架橋溶液の温度は、10〜80℃の範囲にあることが好ましい。
最後に洗浄工程および乾燥工程を行なうことが好ましい。洗浄工程としては、水洗浄処理を施すことができる。水洗浄処理は、通常、イオン交換水、蒸留水などの純水に延伸フィルムを浸漬することにより行なうことができる。水洗浄温度は、通常3℃〜50℃、好ましくは4℃〜20℃の範囲である。浸漬時間は通常、2秒〜300秒間、好ましくは3秒〜240秒間である。
洗浄工程は、ヨウ化物溶液による洗浄処理と水洗浄処理を組み合わせてもよく、適宜にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノール等の液体アルコールを配合した溶液を用いることもできる。
洗浄工程の後に、乾燥工程を施すことが好ましい。乾燥工程として、任意の適切な方法(たとえば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)を採用しうる。たとえば、加熱乾燥の場合の乾燥温度は、通常、20℃〜95℃であり、乾燥時間は、通常、1分〜15分間程度である。以上の染色工程(S30)により、ポリビニルアルコール系樹脂層が偏光子としての機能を有することになる。本明細書においては、偏光子としての機能を有するポリビニルアルコール系樹脂層を偏光子層といい、基材フィルム上に偏光子層を備えた積層体を偏光性積層フィルムという。
本実施形態においては、ポリビニルアルコール系樹脂層にケン化度が99.0モル%以下であって、減圧脱泡したポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を使用し、また延伸工程(S20)においては、5倍超の延伸倍率で一軸延伸を行なっているので、染色工程(S30)において良好な染色速度が維持される。なお、ケン化度が高いポリビニルアルコール系樹脂を用いた樹脂層は、染色工程(S30)における染色速度が低下し、染色が不十分となりやすい。
<偏光板の構成>
図2は、本発明に係る偏光板の基本的な層構成の一例を示す概略断面図である。偏光板13は、透明保護フィルム14と、透明保護フィルム14の一方の面に形成されている偏光子層12とを備える。偏光子層12は、厚さ10μm以下であり、二色性色素を吸着配向させたポリビニルアルコール系樹脂から形成されている。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は99.0モル%以下である。
偏光板13において、透明保護フィルム14と偏光子層12とは、例えば、粘着剤または接着剤層で貼合されている。以下、各構成要素について詳細に説明する。
[透明保護フィルム]
透明保護フィルム14としては、光学機能を有さない単なる透明保護フィルムであってもかまわないし、位相差フィルムや輝度向上フィルムといった光学機能を併せ持つ透明保護フィルムであってもかまわない。透明保護フィルム14の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのような樹脂からなる酢酸セルロース系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのような樹脂からなるポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルムなど、当分野において従来より広く用いられてきているフィルムを挙げることができる。
環状ポリオレフィン系樹脂としては、適宜の市販品、例えば、Topas(登録商標)(Ticona社製)、アートン(登録商標)(JSR(株)製)、ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(登録商標)(ZEONEX)(日本ゼオン(株)製)、アペル(登録商標)(三井化学(株)製)を好適に用いることができる。このような環状ポリオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際には、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の方法が適宜用いられる。また、エスシーナ(登録商標)(積水化学工業(株)製)、SCA40(積水化学工業(株)製)、ゼオノア(登録商標)フィルム((株)オプテス製)などの予め製膜された環状ポリオレフィン系樹脂製のフィルムの市販品を用いてもよい。
環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸されたものであってもよい。延伸することで、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムに任意の位相差値を付与することができる。延伸は、通常、フィルムロールを巻き出しながら連続的に行われ、加熱炉にて、ロールの進行方向、その進行方向と垂直の方向、またはその両方へ延伸される。加熱炉の温度は、通常、環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度近傍からガラス転移温度+100℃までの範囲である。延伸の倍率は、一つの方向につき通常、1.1〜6倍、好ましくは1.1〜3.5倍である。
環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、一般に表面活性が劣るため、偏光フィルムと接着させる表面には、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を行うのが好ましい。中でも、比較的容易に実施可能なプラズマ処理、コロナ処理が好適である。
酢酸セルロース系樹脂フィルムとしては、適宜の市販品、たとえば、フジタック(登録商標)TD80(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UF(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UZ(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD40UZ(富士フィルム(株)製)、KC8UX2M(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)を好適に用いることができる。
酢酸セルロース系樹脂フィルムの表面には、視野角特性を改良するために液晶層などを形成してもよい。また、位相差を付与するため酢酸セルロース系樹脂フィルムを延伸させたものでもよい。酢酸セルロース系樹脂フィルムは、偏光フィルムとの接着性を高めるため、通常はケン化処理が施される。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が採用できる。
上述したような透明保護フィルム14の表面には、ハードコート層、防眩層、反射防止層などの光学層を形成することもできる。透明保護フィルム表面にこれらの光学層を形成する方法はとくに限定されず、公知の方法を用いることができる。
透明保護フィルム14の厚みは薄型化の要求を満たそうとする場合、できるだけ薄いものが好ましく、88μm以下が好ましく、48μm以下がより好ましい。加工性を考慮すると、5μm以上であることが好ましい。
[偏光子層]
偏光子層12は、上述の偏光性積層フィルム10の偏光子層12と同様の構成とすることができる。
[粘着剤層]
透明保護フィルム14と偏光子層12との貼合に用いられる粘着剤は、通常、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂などをベースポリマーとし、そこに、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物などの架橋剤を加えた組成物からなる。
さらに微粒子を含有して光散乱性を示す粘着剤層とすることもできる。
粘着剤層の厚みは、加工性、耐久性の特性を考慮すると、1μm〜40μmが好ましい。粘着剤層の厚みが、3μm〜25μmの場合、偏光フィルムの寸法変化も押さえられるのでより好ましい。
粘着剤により透明保護フィルム14を偏光子層12に貼合する方法においては、透明保護フィルム14面に粘着剤層を設けた後、偏光子層12に貼合してもよいし、偏光子層12の表面に粘着剤層を設けた後、ここに透明保護フィルム14を貼合してもよい。
粘着剤層を形成する方法は特に限定されるものではなく、透明保護フィルム14面、もしくは偏光子層12面に、上記したベースポリマーをはじめとする各成分を含む溶液を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した後、透明保護フィルム14と偏光子層12とを貼り合わせてもよいし、セパレータ上に粘着剤層を形成した後、透明保護フィルム14面もしくは偏光子層12面に転写して積層してもよい。また、粘着剤層を透明保護フィルム14もしくは偏光子層12面に形成する際には必要に応じて透明保護フィルム14もしくは偏光子層12面、または粘着剤層の片方若しくは両方に密着処理、たとえば、コロナ処理等を施してもよい。
[接着剤層]
透明保護フィルム14と偏光子層12との貼合に用いられる接着剤は、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤などを用いた水系接着剤が挙げられる。透明保護フィルム14としてケン化処理などで親水化処理された酢酸セルロース系フィルムを用いる場合、偏光子層12との貼合用の水系接着剤として、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液が好適に用いられる。接着剤として用いるポリビニルアルコール系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるビニルアルコール系共重合体、さらにはそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体などがある。水系接着剤には、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物などが添加剤として添加されてもよい。このような水系の接着剤を用いた場合、それから得られる接着剤層は、通常、1μm以下となり、通常の光学顕微鏡で断面を観察しても、その接着剤層は事実上観察されない。
水系接着剤を用いて偏光子層12と透明保護フィルム14とを貼合する方法は特に限定されるものではなく、たとえば偏光子層12および/または透明保護フィルム14の表面に接着剤を均一に塗布し、塗布面にもう一方のフィルムを重ねてロールなどにより貼合し、乾燥する方法などが挙げられる。通常、接着剤は、その調製後、15〜40℃の温度下で塗布され、貼合温度は、通常15℃〜30℃の範囲である。
水系接着剤を使用する場合は、偏光子層12と透明保護フィルム14とを貼合した後、水系接着剤中に含まれる水を除去するため、乾燥させる。乾燥炉の温度は、30℃〜90℃が好ましい。30℃未満であると偏光子層12と透明保護フィルム14との接着面が剥離しやすくなる傾向がある。90℃以上であると熱によって光学性能が劣化するおそれがある。乾燥時間は10秒〜1000秒とすることができ、特に生産性の観点からは、好ましくは60秒〜750秒、更に好ましくは150秒〜600秒である。
乾燥後はさらに、室温またはそれよりやや高い温度、たとえば、20℃〜45℃程度の温度で12時間〜600時間程度養生しても良い。養生のときの温度は、乾燥時に採用した温度よりも低く設定されるのが一般的である。
また偏光子層12と透明保護フィルム14を貼合する際の接着剤として、光硬化性接着剤を用いることもできる。光硬化性接着剤としては、たとえば、光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤との混合物などを挙げることができる。
偏光子層12と透明保護フィルム14を光硬化性接着剤にて貼合する方法としては、たとえば、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクタープレート法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などにより、偏光子層12および/または透明保護フィルム14の接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法が挙げられる。流延法とは、被塗布物である偏光子層12または透明保護フィルム14を、概ね垂直方向、概ね水平方向、または両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。
偏光子層12または透明保護フィルム14の表面に接着剤を塗布した後、偏光子層12および透明保護フィルム14を接着剤塗布面を介してニップロールなどで挟んで貼り合わせることにより接着される。また、偏光子層12と透明保護フィルム14とを重ね合わせた状態で偏光子層12と透明保護フィルム14との間に接着剤を滴下した後、この積層体をロール等で加圧して均一に押し広げる方法も好適に使用することができる。この場合、ロールの材質としては金属やゴム等を用いることが可能である。さらに、偏光子層12と透明保護フィルム14の間に接着剤を滴下した後、この積層体をロールとロールとの間に通し、加圧して押し広げる方法も好ましく採用される。この場合、これらロールは同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよい。上記ニップロール等を用いて貼り合わされた後の接着剤層の、乾燥または硬化前の厚さは、0.01μm〜5μmであることが好ましい。
偏光子層12および/または透明保護フィルム14の接着表面には、接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
接着剤として光硬化性樹脂を用いた場合は、偏光子層12と透明保護フィルム14とを接合後、活性エネルギー線を照射することによって光硬化性接着剤を硬化させる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好ましく用いられる。
光硬化性接着剤への光照射強度は、光硬化性接着剤の組成によって適宜決定され、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜6000mW/cm2であることが好ましい。照射強度が0.1mW/cm2以上である場合、反応
時間が長くなりすぎず、6000mW/cm2以下である場合、光源から輻射される熱および光硬化性接着剤の硬化時の発熱によるエポキシ樹脂の黄変や偏光フィルムの劣化を生じるおそれが少ない。光硬化性接着剤への光照射時間は、硬化させる光硬化性接着剤に応じて適用されるものであって特に限定されないが、上記の照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜10000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。光硬化性接着剤への積算光量が10mJ/cm2以上である場合、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、10000mJ/cm2以下である場合、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。なお、活性エネルギー線照射後の接着剤層の厚みは、通常、0.001μm〜5μm程度であり、好ましくは0.01μm〜2μm、さらに好ましくは0.01μm〜1μmである。
活性エネルギー線の照射によって光硬化性接着剤を硬化させる場合、偏光子層12の偏光度、透過率および色相、ならびに透明保護フィルム14の透明性など、偏光板の諸機能が低下しない条件で硬化を行うことが好ましい。
[他の光学層]
以上のようして製造される本発明の偏光板は、実用に際して他の光学層を積層した偏光板として用いることができる。また、上記透明保護フィルム14がこれらの光学層の機能を有していてもよい。他の光学層の例としては、ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルム、表面に凹凸形状を有する防眩機能付きフィルム、表面反射防止機能付きフィルム、表面に反射機能を有する反射フィルム、反射機能と透過機能とを併せ持つ半透過反射フィルム、視野角補償フィルムが挙げられる。
ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルムに相当する市販品としては、例えば、DBEF(3M社製、住友スリーエム(株)から入手可能)、APF(3M社製、住友スリーエム(株)から入手可能)が挙げられる。視野角補償フィルムとしては基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルム、ポリカーボネート系樹脂からなる位相差フィルム、環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムが挙げられる。基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルムに相当する市販品としては、WVフィルム(富士フィルム(株)製)、NHフィルム(新日本石油(株)製)、NRフィルム(新日本石油(株)製)などが挙げられる。また、環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムに相当する市販品としては、アートン(登録商標)フィルム(JSR(株)製)、エスシーナ(登録商標)(積水化学工業(株)製)、ゼオノア(登録商標)フィルム((株)オプテス製)などが挙げられる。
<偏光性積層フィルムの製造方法>
図3は、図1に示す偏光性積層フィルム10の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。これによると、偏光性積層フィルム10の製造方法は、基材フィルム11の一方の表面上にケン化度が99.0モル%以下であって、減圧脱泡したポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムとする樹脂層形成工程(S10)、上記積層フィルムを5倍超の延伸倍率で一軸延伸処理を施し延伸フィルムとする延伸工程(S20)、上記樹脂層を二色性色素で染色して偏光子層12として偏光性積層フィルム10を得る染色工程(S30)をこの順番に実施するものである。
この製造方法により得られる偏光性積層フィルム10は、延伸された基材フィルム11上に、厚さ10μm以下の偏光子層12を備えた偏光性積層フィルム10となる。これを、そのまま偏光板として用いることもできるし、後述するように、偏光子層12を透明保護フィルムへ転写するための中間体製品として用いることもできる。
得られた偏光子の視感度補正単体透過率(Ty)は、通常、40%以上であり、視感度補正偏光度(Py)は、通常、99.9%以上である。好ましくは、Tyは、41.0%以上であり、かつPyは99.9%以上である。さらに好ましくは、Tyは42.5%以上であり、かつPyは99.9%以上である。
偏光子の視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)は、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製、V7100)にて測定した。波長380nm〜780nmの範囲においてMD透過率とTD透過率を求め、式(1)、式(2)に基づいて各波長における単体透過率、偏光度を算出し、さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)を求めた。ここで、「MD透過率」とは、グラントムソンプリズムから出る偏光の向きと偏光板サンプルの透過軸を平行にしたときの透過率であり、式(1)、式(2)においては「MD」と表す。また、「TD透過率」とは、グラントムソンプリズムから出る偏光の向きと偏光板サンプルの透過軸を直交にしたときの透過率であり、式(1)、式(2)においては「TD」と表す。
単体透過率(%)=(MD+TD)/2 式(1)
偏光度(%)={(MD−TD)/(MD+TD)}1/2×100 式(2)
<偏光板の製造方法>
図4は、図2に示す偏光板13の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
これによると、偏光板13の製造方法は、基材フィルムの一方の表面上にケン化度が99.0モル%以下である減圧脱泡したポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層を形成して積層フィルムとする樹脂層形成工程(S10)、上記積層フィルムに5倍超の延伸倍率で一軸延伸処理を施し延伸フィルムとする延伸工程(S20)、二色性色素で染色して偏光子層12として偏光性積層フィルムを得る染色工程(S30)をこの順番に実施した後、上記偏光性積層フィルムの偏光子層12の基材フィルム11側の面とは反対側の面に透明保護フィルム14を貼合して多層フィルムを得る貼合工程(S40)、上記多層フィルムから基材フィルム11を剥離する剥離工程(S50)をこの順に備える。
この製造方法により得られる偏光板13は、透明保護フィルム14上に厚さ10μm以下の偏光子層12を備えた偏光板13となる。この偏光板13は、例えば、感圧式接着剤を介して他の光学フィルムや液晶セルに貼り合せるなどして用いることができる。
以下、図3および図4におけるS10〜S50の各工程について、詳しく説明する。なお、図3および図4のS10〜S30の各工程は同様の工程である。
[貼合工程(S40)]
ここでは、偏光子層の基材フィルム側の面とは反対側の面に透明保護フィルムを貼合して多層フィルムを得る。透明保護フィルムを貼合する方法としては、粘着剤で偏光子層12と透明保護フィルム14を貼合する方法、接着剤で偏光子層12面と透明保護フィルム14を貼合する方法が挙げられる。透明保護フィルムとして適した材料は、上述の偏光板の構成の説明で述べた通りである。また、使用に適した接着剤、粘着剤の材料、およびこれらを用いて偏光子層12と透明保護フィルム14を貼合する好ましい方法は、上述の偏光板の構成の説明で述べた通りである。
[剥離工程(S50)]
本実施形態の偏光板の製造方法では、図4に示すように、透明保護フィルムを偏光子層12に貼合する貼合工程(S40)の後、基材フィルムの剥離工程(S50)を行なう。
基材フィルムの剥離工程(S50)では、基材フィルムを多層フィルムから剥離する。基材フィルムの剥離方法は特に限定されるものでなく、通常の粘着剤付偏光板で行われる剥離フィルムの剥離工程と同様の方法で剥離できる。透明保護フィルムの貼合工程(S40)の後、そのまますぐ剥離してもよいし、一度ロール状に巻き取った後、別に剥離工程を設けて剥離してもよい。
以下、実施例および比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
<実施例1>
(1)基材フィルムの作製
エチレンユニットを約5重量%含むプロピレン/エチレンのランダム共重合体(住友化学(株)製の「住友ノーブレン W151」、融点Tm=138℃)からなる樹脂層の両面にプロピレンの単独重合体(住友化学(株)製の「住友ノーブレンFLX80E4」、融点Tm=163℃)からなる樹脂層を配置した3層構造の長尺の基材フィルムを、多層押出成形機を用いた共押出成形により作製した。基材フィルムの合計厚みは100μmであり、各層の厚み比(FLX80E4/W151/FLX80E4)は3/4/3であった。
(2)塗工液の調製
ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製の「Z−200」、平均重合度1100、平均ケン化度99.5モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(田岡化学工業(株)製の「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末2重量部に対して1重量部の割合で混合して、プライマー層形成用塗工液を得た。
得られたプライマー層形成用塗工液を30L(リッター)のステンレス容器に移し、塗工設備に移送した。
また、ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製の「PVA124」、平均重合度2400、平均ケン化度98.0〜99.0モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製し、これをポリビニルアルコール系樹脂層形成用塗工液とした。
得られたポリビニルアルコール系樹脂層形成用塗工液を30Lのステンレス容器に移し、塗工設備に移送した。
(3)減圧脱泡の実施
(2)で調製したポリビニルアルコール系樹脂層形成用塗工液を、処理容器の中に入れ、−0.04Mpa(ゲージ圧)で、120分間処理した。このとき容器は吸気しつづけた。脱泡処理後の液温は26.0℃であり特に加温、冷却を実施することなく塗工に使用した。
(4)プライマー層及びポリビニルアルコール系樹脂層の形成
上記(1)で作製した基材フィルムを連続的に搬送しながら、その片面にコロナ処理を施し、そのコロナ処理された面にマイクログラビアコーターを用いて上記(2)で作成したプライマー層形成用塗工液を連続的に塗工し、60℃で3分間乾燥させることにより、厚み0.2μmのプライマー層を形成した。引き続き、フィルムを搬送しながら、塗工ヘッドまでポリビニルアルコール系樹脂層形成用塗工液が充填された上記のカンマコーターを用いて該塗工液をプライマー層上に連続的に塗工し、90℃で1分間、70℃で3分間、次いで60℃で4分間乾燥させることにより、プライマー層上に厚み11.0μmのポリビニルアルコール系樹脂層を形成した。
さらに、ポリビニルアルコール系樹脂層を形成した面とは反対側の基材フィルム面に上記と同様の処理を施して、プライマー層及びポリビニルアルコール系樹脂層を順次形成して、基材フィルムの両面に厚み0.2μmのプライマー層及び厚み11.0μmのポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、ポリビニルアルコール系樹脂層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層の層構成からなる積層フィルムを得た。
(5)積層フィルムの延伸
上記(4)で得られた積層フィルムを連続的に搬送しながら、ニップロール間延伸方式により、160℃の延伸温度で縦方向(フィルム搬送方向)に5.5倍の倍率で自由端一軸延伸して延伸フィルムとした。延伸フィルムにおけるポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは、一方が5.5μm、他方が5.9μmであった。
(6)偏光性積層フィルムの作製
上記(5)で作製した延伸フィルムを連続的に搬送しながら、60℃の温水浴に滞留時間が60秒間となるように浸漬した後、ヨウ素とヨウ化カリウムとを含む30℃の染色溶液に滞留時間が150秒間程度となるように浸漬してポリビニルアルコール系樹脂層の染色処理を行い、次いで、10℃の純水で余分な染色溶液を洗い流した。引き続き、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む76℃の架橋溶液に滞留時間が600秒間となるように浸漬して架橋処理を行った。その後、10℃の純水で4秒間洗浄し、80℃で300秒間乾燥させることにより、偏光性積層フィルムを作製した。
得られた偏光性積層フィルムにおいて、基材両面に積層されている偏光子の厚みはそれぞれ、5.8μm、6.0μmであった。
(7)長さ100μm以上の空隙観察
得られた偏光性積層フィルムにおいて厚み6.0μmの面を剥離し、基材フィルムと厚み5.8μmの偏光子層からなる片面積層フィルムを作成した。
得られた片面積層フィルムを吸収軸方向に300mm、吸収軸と垂直方向に200mmのサイズにカットし、平面光源上において拡大率が10倍のスケール付ルーペを使用して目視観察した。計20枚(1.2m2)確認したところ吸収軸方向の長さが100μm以上の空隙は8個であり、単位面積当たりの数は、6.7個/m2であった。
得られた片面積層フィルム(基材フィルムと厚み5.8μmの偏光子層からなる片面積層フィルム)の波長380nm〜780nmの範囲におけるMD透過率とTD透過率を、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製、V7100)にて測定し、前記式(1)、式(2)に基づいて各波長における単体透過率、偏光度を算出し、さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)を求めたところ、Ty:42.9%、Py:99.92%であった。
(8)偏光板の作製
ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製の「KL−318」、平均重合度1800)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(田岡化学工業(株)製の「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末2重量部に対して1重量部の割合で混合し、接着剤水溶液とした。
次に、上記(6)で作製した偏光性積層フィルムを連続的に搬送しながら、上記接着剤水溶液を両面の偏光子層上に塗工した後、貼合面にケン化処理を施した透明保護フィルム〔トリアセチルセルロース(TAC)からなる透明保護フィルム(コニカミノルタオプト(株)製の「KC4UY」)、厚み40μm〕を偏光子層上に貼合し、一対の貼合ロール間に通すことにより圧着し、TAC/偏光子層/プライマー層/基材フィルム/プライマー層/偏光子層/TACの層構成からなる貼合フィルムを作製した。
次いで、貼合フィルムを、基材フィルムとプライマー層との界面で剥離分割して、TAC/偏光子層(5.8μm)/プライマー層/基材フィルムからなるフィルムと、プライマー層/偏光子層(6.0μm)/TACからなる偏光板を得た後、さらに前者のフィルムから基材フィルムを剥離除去して、もう1枚の偏光板を得た。基材フィルムを剥離する工程において、フィルムの破断などの不具合は生じなかった。
(8)粘着剤層積層工程
得られた偏光子の厚みが5.8μmの偏光板のプライマー層側の表面にコロナ処理を施し、離型処理が施されたPETフィルム(セパレーターフィルム)に厚み25μmのアクリル系粘着剤が積層されたシート状粘着剤を貼着して、「セパレートフィルム/粘着剤/プライマー層/偏光フィルム/接着剤層/透明保護フィルム」からなる粘着剤付偏光板を作成した。
(9)評価用サンプルの作成
得られた粘着剤付偏光板を吸収軸が辺に対して0°となるように、60mm×60mmのサイズでカットし、セパレーターフィルムを剥離し粘着面をガラスに貼合した。これを評価サンプルとした。
(10)熱衝撃試験(HS試験)
評価サンプル24枚を試験槽にいれ-40℃で30分、85℃で30分のサイクルを400回繰り返したところ、偏光子の吸収軸方向にクラックが生じた。
(11)クラック中の空隙観察
光学顕微鏡(キーエンス製 VHX-500)を用いて透過で生じたクラックを観察したところ、生じたクラックのうち1本にクラックの中に微小な気泡(マイクロバブル)によるものと見られる吸収軸方向に100μm未満の微小な空隙を有するものが観察された。微小な空隙は厚み方向の長さが偏光子の厚み以下であり非常に小さい、また気泡起因の空隙とは異なり微小な空隙は偏光子の膜中に埋没している。そのため通常目視や顕微鏡による発見および観察が困難であるが、前記のとおりクラックの中に観察されることがありクラックのきっかけになっているものと見られる。
この微小な空隙の大きさは吸収軸方向に100μm未満であり、別途、微小な空隙部分の中央を吸収軸方向に垂直に切断し断面を観察すると厚み方向の長さは3μm程度であった。
<実施例2>
実施例1における(3)の減圧処理のゲージ圧を−0.09Mpaとしたこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作成し評価を実施した。処理後の液温は24.7℃であった。得られた脱泡処理後の液は特に加温、冷却などの操作を実施することなく、塗工に使用した。
このとき評価した偏光子の厚みは5.2μmで片面積層フィルムとして吸収軸方向の長さが100μm以上の空隙を確認したところ、1個であり、単位面積当たりの空隙の数は、0.83個/m2であった。
HS試験において生じたクラックのうち、クラック内に前記の微小な空隙が観察されたものは1個であった。
この片面積層フィルムの視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)は、それぞれ Ty:42.5% Py:99.93%であった。
<比較例1>
実施例1における(3)の減圧脱泡処理を実施することなく、同様にして偏光性積層フィルムを作成したところ、一方の面の偏光子は、5.8μm、他方の面は、5.1μmであった。
このとき厚み5.8μmの面には長手方向の長さが100μm以上の空隙が44個/m2であった。
厚み5.8μmの面について実施例1と同様にして評価サンプルを作成し評価したところ、熱衝撃試験(HS試験)により生じたクラックのうち、クラック内にクラック発生の要因と見られる微小な空隙が観察されたものは14個であった
Figure 0006350606
空隙:吸収軸方向の長さが100μm以上の空隙の数(個/m2
熱衝撃試験:クラック内に吸収軸方向に100μm未満の微小な空隙が観察されたクラックの数(本)
本発明の製造方法によれば、気泡欠陥が少なく、クラック発生のリスクが低減された偏光子および当該偏光子からなる偏光性積層体並びに偏光板を製造することができる。
かかる偏光子からなる偏光板は、液晶表示装置に組み込み使用する際の温度変化を考慮した熱衝撃試験に供しても、ポリビニルアルコール系樹脂層中に残った微小気泡(マイクロバブル)由来の空隙に起因すると見られるクラックの発生も少ない。
10 偏光性積層フィルム、11 基材フィルム、12 偏光子層、13 偏光板、14 透明保護フィルム

Claims (3)

  1. 吸収軸方向における長さが100μm以上の空隙が0.83〜10個/mであり、
    厚みが10μm以下である、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光子。
  2. 請求項1に記載の偏光子を、基材フィルムの少なくとも一方の面に設けた偏光性積層フィルム。
  3. 請求項1に記載の偏光子の少なくとも一方の面に、透明保護フィルムを積層した偏光板。
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