JP2014211632A - トナー粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】スチレンアクリル系樹脂を主成分とする結着樹脂、着色剤、並びにポリエステル部位及びビニルポリマー部位を有するブロックポリマーを含有するトナー粒子の製造方法であって、懸濁重合法または溶解懸濁法によって樹脂粒子を製造した後に、樹脂粒子を水系媒体に分散させた状態で、水系媒体の温度を、樹脂粒子のガラス転移点TgA(℃)以上、樹脂粒子におけるブロックポリマー由来の吸熱ピークのオンセット温度TmA(℃)以下の温度範囲内であって、温度変動幅20℃以下、温度変動速度0.35℃/分以下で、60分以上保持する工程を有することを特徴とするトナー粒子の製造方法。
【選択図】なし
Description
これらの要求を両立するためには、トナーを軟化させつつ高温保存における物性変化を抑えるという、トレードオフ関係を解消する必要がある。
この課題に対し、熱に対する応答速度に優れる結晶性樹脂を添加するトナーが検討されている。しかし、単純に結晶性樹脂を添加しただけでは、トナーの耐熱保存性が悪化する場合があるだけでなく、高温保存によって結晶性樹脂の結晶化度が変化し、それに伴ってトナーの性能が劣化する場合がある。そのため、該結晶性樹脂の特性を活用するために、種々の工夫がなされたトナーが提案されている。具体的には、結晶性樹脂を、該結晶性樹脂の融点未満の温度に長時間置くことで、該結晶性樹脂の結晶を成長させ、耐熱保存性の向上、及び高温放置による結晶化度の変化を抑える工夫がなされている。
特許文献1では、結晶性樹脂を含有したトナーを45℃以上65℃以下の温度で保管する工程を含むトナーの製造方法が提案されている。しかしながら、上記したトナーの製造方法では、該温度で保管する工程により、一部のトナーが凝集する場合がある。また、乾式で該工程を行うことで、トナー表面近傍に存在していた結晶性樹脂が、結晶成長に伴いトナー表面に移行する現象が生じ、画像濃度やその他のトナーの現像性能が低下する恐れがあった。
特許文献2では、非晶性ポリエステルに結晶性ポリエステルを添加したトナーにおいて、該結晶性ポリエステルの融点未満の特定の温度で加熱処理を行うトナーが提案されている。上記したトナーでは、結着樹脂に非晶性ポリエステルを用いているため、トナーの製造工程において結晶性ポリエステルが結着樹脂に相溶する。そのため、その後の加熱処理における結晶化度の向上効率が非常に低くなるだけでなく、一部の成分については相溶したままになってしまい、充分な耐熱保存性が得られない場合があった。
特許文献3では、結晶性樹脂を含有した懸濁重合トナーを、製造工程中で結晶性樹脂の融点未満の温度に保持する工程を含むトナーの製造方法が提案されている。上記したトナーでは、結着樹脂と結晶性樹脂が非相溶系になる。そのため、トナー中の結晶性樹脂の分散状態が均一になりにくく、その状態から結晶化度を向上させても充分な低温定着性と耐熱保存性が両立できない場合があった。
以上、結晶性樹脂を導入したトナーにおいて、結晶性樹脂の添加による定着性能を充分に活かしながら、保存性に対する弊害を抑えるために種々の工夫がなされているが、充分な性能が効率的に得られるトナーの製造方法は未だ提案されていなかった。
以下のi)またはii)の方法:
i)重合性単量体、着色剤及びブロックポリマーを含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に加えて、造粒し、造粒された粒子中に含有される重合性単量体を重合して樹脂粒子を製造する、
ii)有機溶媒に、結着樹脂、着色剤及びブロックポリマーを溶解又は分散して樹脂溶液を調製し、該樹脂溶液を水系媒体中に加えて、造粒し、造粒された粒子中に含有される有機溶媒を除去して樹脂粒子を製造する、
によって樹脂粒子を得る工程(A)、及び、
該樹脂粒子が水系媒体に分散された状態で、該水系媒体の温度を、以下の条件を満たすように60分以上保持する工程(B)、
I)該樹脂粒子のガラス転移点TgA(℃)以上、該樹脂粒子における該ブロックポリマーに由来する吸熱ピークのオンセット温度TmA(℃)以下の温度である、
II)温度変動幅が20℃以下である、
III)温度変動速度が0.35℃/分以下である、
を有するトナー粒子の製造方法であって、
該トナー粒子が、
a)スチレンアクリル系樹脂を主成分とする結着樹脂、
b)着色剤、及び、
c)ブロックポリマー
を含有し、
該ブロックポリマーが、
a)ポリエステル部位及びビニルポリマー部位を有し、
b)吸熱ピークを有する、
ことを特徴とするトナー粒子の製造方法に関する。
本発明のトナーの製造方法においては、以下の工程(B)がアニール工程である。
工程(B):
樹脂粒子が水系媒体に分散された状態で、水系媒体の温度を、以下の条件を満たすように60分以上保持する工程。
(I)樹脂粒子のガラス転移点TgA(℃)以上、該樹脂粒子における該ブロックポリマーに由来する吸熱ピークのオンセット温度TmA(℃)以下の温度である。
(II)温度変動幅が20℃以下である。
(III)温度変動速度が0.35℃/分以下である。
一方で、本発明における結着樹脂と、示差走査熱量分析装置での測定において吸熱ピークを有する結晶性樹脂としてビニルポリマー部位及びポリエステル部位を有するブロックポリマーを用いた場合のアニール工程前後の吸熱特性の変化を図3に示す。結晶性樹脂由来の吸熱ピークとは異なる温度に新たに吸熱ピークが発生し、さらにアニール工程を続けることで元の結晶性樹脂由来の吸熱ピークと融合される挙動を示し、その吸熱量の変化は非常に大きなものとなった。このことから、本発明において、結着樹脂と、示差走査熱量分析装置での測定において吸熱ピークを有する、ビニルポリマー部位及びポリエステル部位を有するブロックポリマーを用いた場合には、従来とは異なる現象によって、アニール工程による効果が大幅に向上していると考えられる。
この現象については明確にはなっていないが、トナー中における結晶性樹脂の存在状態が起因していると考えている。結晶性樹脂として結晶性ポリエステルを用いた場合を例に説明する。この場合、トナー中において、結晶性ポリエステルは、図4のように結着樹脂と完全に相分離したドメインを形成して存在することが多い。但し、一部の結晶性ポリエステルは、結着樹脂と相溶し、結着樹脂のガラス転移温度を低下させる。このことは、トナーのガラス転移温度の測定データの解析から確認できる。一般的にアニール工程を行った場合、結晶成長は主に、元から存在する結晶性樹脂のドメイン周辺で起こることが推測される。結着樹脂と相溶した成分については、元から存在するドメインに統合されることで結晶化すると推測され、結着樹脂と相溶した成分の結晶化には非常に時間がかかると考えられる。
一方で、示差走査熱量分析装置での測定において吸熱ピークを有する結晶性樹脂として、ビニルポリマー部位及びポリエステル部位を有するブロックポリマーを用いた場合には、結晶性樹脂が結着樹脂中に微分散した状態が観察される場合が多い。これは図1に示すように、ポリエステル部位をビニルポリマー部位が取り囲んだ、ミセル状の微分散状態を形成することに起因すると考えられる(参考文献 ポリマーブレンド 秋山三郎著 シーエムシー出版 1981年12月8日第1刷発行 p172)。
この時、結着樹脂に相溶している成分についても、ミセル状であると推測される。この状態からアニール工程を行った場合、形成されたミセルを起点として、速やかに結晶核の形成が行われ、この核形成工程により、元の結晶性樹脂が有していた吸熱ピークとは異なる温度に吸熱ピークが発生すると考えられる。
また、アニール工程を続けることで、結晶核は成長するため、吸熱ピークは元の結晶性
樹脂と同等の温度まで上昇する。本工程では、結晶核の形成によって結晶成長効率が飛躍的に向上すると考えられ、結果として前述したように大幅な吸熱量増加に繋がったと考えられる。
以上のように本発明者らは、スチレンアクリル系樹脂を主成分とする結着樹脂と、示差走査熱量分析装置での測定において吸熱ピークを有する、ビニルポリマー部位及びポリエステル部位を有するブロックポリマーを用いたトナー粒子において、アニール工程での特有の現象を見出し、本発明に至った。
なお、一般的なブロックポリマーの定義としては、線状に連結した複数のブロックで構成されたポリマー(高分子学会 国際純正応用化学連合高分子命名法委員会による高分子科学の基本的術語の用語集)とあり、本発明もその定義に従う。
ここで、「スチレンアクリル系樹脂を主成分とする」とは、結着樹脂の50質量%以上がスチレンアクリル系樹脂であることを意味する。本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知のトナーに用いられる他の結着樹脂を用いることも可能である。
該ビニルポリマー部位において、例えば、スチレン、メタクリル酸エステル(例えば、メチルメタクリレート)、及びアクリル酸エステル(例えば、n−ブチルアクリレート)の如き公知のビニルモノマーをビニルポリマー部位の構成単位として用いることができる。スチレンをビニルポリマーの主構成単位として用いることが、スチレンアクリル系樹脂を主成分とする結着樹脂との相溶性や相分離構造の形成の観点から、より好ましい。
ここで、樹脂粒子の製造が終了したかどうかの判断については、樹脂粒子の重合転化率(質量%)または脱溶剤率(質量%)によって行う。本発明では、重合転化率または脱溶剤率が99.0%以上に達した時点で、樹脂粒子の製造が終了したとみなし、該樹脂粒子を用いてアニール工程を行うことができる。
樹脂粒子が懸濁重合法または溶解懸濁法で製造されることで、結着樹脂中にブロックポリマーがミセル状に分散する状態を形成することができる。その結果、上記したような本発明の効果が得られる。
また、アニール工程における水系媒体の温度がTgA(℃)以上、TmA(℃)以下であることで、ブロックポリマーの分子運動が結着樹脂に束縛されにくく、かつブロックポリマーの再結晶化が起こるため、アニール工程による効果が得られる。
アニール工程における水系媒体の温度変動速度が0.35℃/分以下であることで、ブロックポリマーの結晶核が効率的に形成され、ブロックポリマーのドメインを微分散させながら、効率的に結晶成長を行うことができる。
また、保持時間が60分以上であることで、ブロックポリマーの結晶化に伴う耐熱性の向上効果が得られる。尚、保持時間の上限としては特に定められるものではないが、1200分以上保持しても効果に大きな変化は生じないため、製造効率との兼ね合いから決定すればよい。
さらに、アニール工程における水系媒体の温度変動幅が20℃以下であることで、ブロックポリマーの結晶核の形成と、結晶成長が充分な速度で行われるため、ブロックポリマ
ーを微分散かつ高結晶化度の状態にすることができる。
上記した制御により、優れた低温定着性(低エネルギーでの定着)と耐熱保存性の両立が可能であり、かつ高温保存をした後にも、定着性能や現像性能の変化が少ないトナーの製造が可能となる。
なお、上記保持時間については、アニール工程の合計時間が上記範囲に入っていればよく、数回に分けてアニール工程を行ってもよい。保持時間は120分以上であることが好ましい。但し、数回に分けてアニール工程を行う場合、アニール工程の間において、樹脂粒子が分散された水系媒体の温度をTmA(℃)よりも高くならないように制御する必要がある。
また、温度変動速度は、0.35℃/分以下であればアニール工程中に変化させてもよい。該温度変動速度は0.20℃/分以下であることが好ましい。ここで、温度変動速度は、アニール工程における水系媒体の温度変動量(℃)を該温度変動に要した時間(分)で除した値の最大値で示される。本発明において、アニール工程中の温度変動が複数回生じる場合、その各温度変動において算出される温度変動速度が上記範囲を満たしていればよい。尚、温度変動速度の算出は、5分以上の時間での温度変化に基づいて行う。さらに、アニール工程全体における上記温度変動幅は、アニール工程中における水系媒体の最高温度と最低温度の差であり、15℃以下であることが好ましい。本発明において、アニール工程中の温度変動が複数回生じる場合、その各温度変動において温度変動幅が上記範囲を満たしていればよい。
低温定着性と耐熱性の両立、及びアニール効率という観点から、ブロックポリマーのポリエステル部位が、下記式(1)で示されるジカルボン酸と、下記式(2)で示されるジオールとから構成される、結晶性部位であることが好ましい。
HOOC−(CH2)m−COOH 式(1)
[式中、mは、6乃至14の整数を示す]
HO−(CH2)n−OH 式(2)
[式中、nは、6乃至16の整数を示す]
上記構成成分を用いることで、トナー粒子中におけるブロックポリマーの分散を、より微分散にすることができ、かつアニール時の結晶成長速度がより早くなる。これにより、耐熱性を維持しながら、より優れた低温定着性を得ることができる。
上記mのより好ましい範囲としては7乃至10であり、上記nのより好ましい範囲としては6乃至12である。
また、該ポリエステル部位の溶解パラメータ(SP)値が9.40以上9.85以下であることがより好ましい。上記範囲を満たすことで、溶融時の結着樹脂とブロックポリマーの相溶性が高くなり、より大きな低温定着効果が得られる。
ガラス転移点TgB(℃)が、TmA(℃)以上であることが好ましい。該TgB(℃)がTmA(℃)以上であることで、アニール工程はビニルポリマー部位のガラス転移点TgB(℃)以下で行われることになる。これにより、樹脂粒子中に微分散したブロックポリマーのドメインの移動及び再配置を、ビニルポリマー部位によって抑えながら、結晶化度の向上を行うことができる。結果として低温定着性を維持しながら、より優れた耐熱保存性を得ることができる。
該ビニルポリマー部位のTgB(℃)は、ビニルポリマー部位を構成する単量体の種類や、ビニルポリマー部位の分子量で制御することができる。
さらに、該ブロックポリマーにおけるポリエステル部位とビニルポリマー部位の質量比が30:70〜70:30であることが好ましく、40:60〜70:30であることがより好ましい。上記範囲にあることで、樹脂粒子中でのブロックポリマーの分散状態を微分散にしつつ、結晶性樹脂としての溶融特性も両立することができる。その結果、より優れた低温定着性を保持しながら、アニール工程における効果もより効率的に得ることができる。該ブロックポリマーにおけるポリエステル部位とビニルポリマー部位の比率は、ブロックポリマーの製造時の温度や合成時間の如き製造条件、及び単量体の仕込み比などで制御可能である。尚、該ブロックポリマーにおけるポリエステル部位とビニルポリマー部位の比率の分析方法については後述する。
また、該ブロックポリマーの吸熱量は、トナー粒子に含有させた際の結晶性維持及びアニール工程での結晶成長速度の観点から、20J/g以上120J/g以下であることが好ましく、30J/g以上90J/g以下であることがより好ましい。上記範囲にあることで、トナー粒子に含有させた際にも結晶性を維持する部分が存在するため、アニール工程時に該部分を起点として結晶成長が速やかに行われる。
該Tmp(℃)及び吸熱量は、ブロックポリマーにおけるポリエステル部位を構成する単量体の種類や分子量で制御することができる。なお、Tmp(℃)及び吸熱量の測定方法については後述する。
該ブロックポリマーの重量平均分子量(Mw)は20000以上45000以下であることが好ましい。Mwが20000以上であることで、結着樹脂に相溶したブロックポリマーが、アニール工程においてより速やかに再結晶化する。また、Mwが45000以下であることで、ブロックポリマーの溶融粘度を低温定着性に適したものにすることができる。該ブロックポリマーの重量平均分子量(Mw)は23000以上40000以下であることがより好ましい。該ブロックポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ブロックポリマー製造時の合成温度や合成時間によって制御することが可能である。尚、該ブロックポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定方法については後述する。
本発明において、該ブロックポリマーを調製する方法としては、ポリエステル部位とビニルポリマー部位とを別々に調製し、両者を結合する方法、ポリエステル部位を調製し、これにビニルポリマー部位の原料であるビニルモノマーを仕込み、重合反応を行う方法などを用いることができる。
本発明において、該ブロックポリマーの含有量は、結着樹脂100質量部に対して10質量部以上100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上70質量部以下であることがより好ましい。
本発明のトナー粒子は、懸濁重合法または溶解懸濁法を用いて樹脂粒子を製造した後に、該樹脂粒子を水系媒体中においてアニール工程を実施することで製造される。
まず、懸濁重合法を用いた樹脂粒子の具体的な製造方法を説明する。
トナー粒子の結着樹脂を形成する重合性単量体、着色剤及びブロックポリマーを加え、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機を用いて、重合性単量体に他の成分を溶融、溶解あるいは分散させた重合性単量体組成物を調製する。このとき、上記重合性単量体組成物中には、必要に応じて離型剤や極性樹脂、多官能性単量体、顔料分散剤、荷電制御剤、粘度調整のための溶剤、さらに他の添加剤(例えば、連鎖移動剤)を適宜加えることができる。
次いで、上記重合性単量体組成物を、予め用意しておいた分散安定剤を含有する水系媒体中に加えて、高速攪拌機もしくは超音波分散機の如き高速分散機を用いて造粒を行う。
重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に他の添加剤とともに混合してもよく、水系媒体中に懸濁させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。また、造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。
懸濁液中の重合性単量体組成物の粒子が粒子状態を維持し、且つ粒子の浮遊や沈降が生じることがないよう、撹拌しながら、懸濁液を加熱し、造粒された粒子中に含有される重合性単量体を重合する。重合を完結させ、必要に応じて、残留重合性単量体除去処理や脱溶剤処理を行うことで樹脂粒子の水系媒体分散液が形成される。
次に、溶解懸濁法を用いた樹脂粒子の具体的な製造方法を説明する。
有機溶媒中に、結着樹脂、着色剤及びブロックポリマーを加え、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機を用いてこれらを均一に溶解あるいは分散させた樹脂溶液を調製する。このとき、樹脂溶液中には、必要に応じて離型剤としてのワックスや荷電制御剤、さらに分散剤の如き添加剤を適宜加えることができる。
次いで、上記樹脂溶液を、予め用意しておいた分散安定剤を含有する水系媒体中に加え、高速撹拌機もしくは超音波分散機の如き高速分散機を用いて、溶解樹脂の液滴を造粒する。
造粒された粒子から有機溶媒を除去するために、系全体を徐々に昇温し、溶解樹脂液滴中の有機溶媒を蒸発除去する。上記のようにして溶解樹脂液滴から有機溶媒を除去し樹脂粒子の水系媒体分散液を形成する。
上記した方法において形成された樹脂粒子を含有する水系媒体分散液を、前述の条件に従ってアニール工程を実施する。該アニール工程は、樹脂粒子の水系媒体分散液を冷却する過程で行ってもよいし、一度樹脂粒子の水系媒体分散液を冷却した後に、再加熱によって行ってもよい。この時、必要に応じて界面活性剤や無機微粒子の如き分散安定剤を添加しても良い。その後、必要に応じて洗浄を行い、種々の方法によって乾燥、分級を行うことでトナー粒子を得ることができる。
単官能性重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、及び、p−フェニルスチレンの如きスチレン誘導体類;
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレー
ト、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、及び、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体類;
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、及び、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体類;
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、及び、ジビニルエーテルが挙げられる。
上記した単官能性重合性単量体を単独で、あるいは二種以上組み合わせて、又は、単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体とを組み合わせて、又は、多官能性重合性単量体を単独で、あるいは、二種以上を組み合わせて使用できる。
また、スチレンアクリル系樹脂のSP値は9.45以上9.90以下であることが好ましく、より好ましくは9.50以上9.85以下である。この範囲にあることでトナー時における相分離状態、溶融時における相溶状態のバランスがとり易くなり、より効果的にアニールを行うことができ、より優れた低温定着性を有するトナーを得ることができる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、又は以下に示すイエロー、マゼンタ、及びシアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用できる。シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー用の着色剤として、例えば、以下に示す着色剤を用いることができる。
イエロー着色剤としては、顔料系としては、モノアゾ化合物、ジスアゾ化合物、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、111、128、155、174、180、185が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、モノアゾ化合物、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19等が例示できる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が利用できる。具体的にはC.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
これらの着色剤は単独または混合し、更には固溶体の状態で用いることができる。黒色着色剤として下記磁性体を用いる場合、その添加量は結着樹脂100質量部に対して40質量部以上150質量部以下であることが好ましい。黒色着色剤としてカーボンブラックを用いる場合、その添加量は結着樹脂100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。また、カラートナー用途の場合、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー粒子中への分散性の点から選択され、その好ましい添加量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である。
有機金属化合物、キレート化合物、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、ノンメタルカルボン酸系化合物及びその誘導体が挙げられる。また、スルホン酸基、スルホン酸塩基、或いは、スルホン酸エステル基を有するスルホン酸系樹脂も好ましく用いることができる。
また、水系媒体中に添加する分散安定剤としては、公知の界面活性剤や有機分散剤、無機分散剤を使用することができる。これらの中でも無機分散剤は、トナー粒子の超微粉が生成しにくく、重合温度や時間経過によっても安定性が崩れにくく、洗浄も容易でトナーに悪影響を与えにくいため、好適に使用することができる。無機分散剤としては、以下のものが挙げられる。リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛の如きリン酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き無機塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナの如き無機酸化物。これらの無機分散剤は、重合終了後に酸あるいはアルカリを加えて溶解することにより、ほぼ完全に取り除くことができる。
<TgA、TmA、TcA、Tmp、TgB、及びトナー粒子のガラス転移点の測定方法>
TgA、TmA、TcA、Tmp、TgB及びトナー粒子のガラス転移点は示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いて、ASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、測定サンプル2mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲0℃から120℃の間で、昇温速度1℃/min、振幅温度幅±0.318℃/minの設定でモジュレーション測定を行う。この昇温過程で、温度0℃から120℃の範囲において比熱変化が得られる。
樹脂粒子のガラス転移点TgA(℃)、及びトナー粒子のガラス転移点は、可逆比熱変化曲線の比熱変化が出る前と出た後の、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状変化部分の曲線が交わる点の温度とする。
樹脂粒子におけるブロックポリマー由来の吸熱ピークのオンセット温度TmA(℃)は、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、吸熱ピーク曲線において低温側でこう配が最大になる点で、吸熱ピーク曲線に対して引いた接線との交点の温度とする。また、該吸熱ピークの頂点の温度をTmp(℃)とし、吸熱量(J/g)をブロックポリマー由来の吸熱量とする。尚、吸熱量は、吸熱ピークの面積から装置付属の解析ソフトを用いて計算により求める。
一方、トナー粒子のTmpについても、測定サンプルをトナー粒子に変更する以外は同様に測定し、吸熱ピークの頂点の温度をTmp(℃)とする。また、吸熱量(J/g)は吸熱ピークの面積から装置付属の解析ソフトを用いて計算により求める。
尚、ブロックポリマーのビニルポリマー部位の吸熱特性を測定する際には、ブロックポリマーのポリエステル部位を加水分解させて測定を行う。具体的な方法は、ブロックポリマー30mgにジオキサン5ml、10質量%の水酸化カリウム水溶液1mlを加え、温度70℃で6時間振とうさせてポリエステル部位を加水分解させる。その後、溶液を乾燥させ、得られた固形分をエタノールに分散及び溶解させる。さらにろ過、洗浄によって溶解物を取り除くことでビニルポリマー部位が得られる。その後の操作は、他の樹脂成分における測定と同様にして行う。
ブロックポリマーの冷結晶化に伴う発熱が終了する温度TcA(℃)は、ブロックポリマーを、測定温度100℃から0℃の間で、降温速度1℃/minの設定で測定を行った際の発熱ピークにおける、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、発熱ピーク曲線において低温側でこう配が最大になる点で、発熱ピーク曲線に対して引いた接線との交点の温度とする。
ブロックポリマーのポリエステル部位とビニルポリマー部位の比率は核磁気共鳴分光分析(1H−NMR)[400MHz、CDCl3、室温(25℃)]を用いて行った。測定装置:FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数:64回
得られたスペクトルの積分値からポリエステル部位とビニルポリマー部位の質量比(C/A比)を算出した。
本発明におけるSP値は、Fedorsの式(1)を用いて求めた。ここでのΔei、
及びΔviの値は著「コーティングの基礎科学」54〜57頁、1986年(槇書店)の表3〜9による原子および原子団の蒸発エネルギーとモル体積(25℃)を参照した。
δi=[Ev/V]1/2=[Δei/Δvi]1/2 式(1)
Ev:蒸発エネルギー
V:モル体積
Δei:i成分の原子または原子団の蒸発エネルギー
Δvi:i成分の原子または原子団のモル体積
例えば、ヘキサンジオールは、原子団(−OH)×2+(−CH2)×6から構成され、計算SP値は下記式で求められる。
δi=[Δei/Δvi]1/2=[{(5220)×2+(1180)×6}/{(13)×2+(16.1)×6}]1/2
SP値(δi)は11.95となる。
ブロックポリマー又は各種樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下のようにして測定する。
まず、室温で、ブロックポリマー又は各種樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:LF−604の2連[昭和電工(株)製]
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量 :0.020ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
微粒子の体積平均粒径はマイクロトラック粒度分布測定装置HRA(X−100)(日機装社製)を用い、粒径0.001〜10μmのレンジ設定で測定を行い、体積平均粒径(μm又はnm)として測定する。
樹脂粒子の重合転化率または脱溶剤率は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用い、以下のようにして測定する。
樹脂粒子分散液約500mgを精秤しサンプルビンに入れる。これに精秤した約10gのアセトンを加えてフタをした後、よく混合し、発振周波数42kHz、電気的出力125Wの卓上型超音波洗浄器(商品名「B2510J−MTH」、ブランソン社製)にて超音波を30分間照射する。その後、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)を用いて濾過を行い、濾液2μLをガスクロマトグラフィーで分析する。そして、予め使用した重合性単量体または溶剤を用いて作成した検量線により、残留している重合性単量体または溶剤の「残存量」を算出する。その後、下記式に従い、樹脂粒子の重合転化率(質量%)または脱溶剤率(質量%)を規定する。(式) 100×(1−(残存量)/(使用した重合性単量体または溶剤の総量))
撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管、及び、減圧装置を備えた反応容器に、セバシン酸100.0部及び、1,12−ドデカンジオール106.5部を添加して撹拌しながら温度130℃まで加熱した。エステル化触媒としてチタン(IV)イソプロポキシド0.7部を加えた後、温度160℃に昇温し5時間かけて縮重合する。その後、温度180℃に昇温し、減圧させながら所望の分子量となるまで反応させてポリエステル(1)を得た。ポリエステル(1)の重量平均分子量(Mw)は19000、融点(Tm)は84℃であった。得られたポリエステル(1)が、結晶性ポリエステル1である。
<ブロックポリマー1の製造>
撹拌機、温度計、及び、窒素導入管を備えた反応容器にポリエステル(1)100.0部、脱水クロロホルム440.0部を添加して完全に溶解させた後、トリエチルアミン5.0部を加え、氷冷させながら、2−ブロモイソブチリルブロミド15.0部を徐々に加えた。その後、室温(25℃)で一昼夜撹拌し、樹脂溶解液を得た。
メタノール550.0部を入れた容器に、上記樹脂溶解液を徐々に滴化して樹脂分を再沈殿させた後、濾過、精製、乾燥させてポリエステル(2)を得た。
次いで、撹拌機、温度計、及び、窒素導入管を備えた反応容器に上記で得られたポリエステル(2)100.0部、スチレン155.0部、臭化銅(I)3.5部、及び、ペンタメチルジエチレントリアミン8.5部を添加して撹拌しながら、温度110℃で重合反応を行った。所望の分子量となったところで反応を停止して、メタノール250.0部で再沈殿、濾過、精製し、未反応のスチレン及び触媒を除去した。その後、50℃に設定した真空乾燥機で乾燥してポリエステル部位とビニルポリマー部位を有するブロックポリマー1を得た。
表1に示すような原料に変更すること以外はブロックポリマー1の製造方法と同様にしてブロックポリマー2〜11を得た。
撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管、及び、減圧装置を備えた反応容器に、セバシン酸100.0部及び、1,12−ドデカンジオール106.5部を添加して撹拌しながら温度130℃まで加熱した。エステル化触媒としてチタン(IV)イソプロポキシド0.7部を加えた後、温度160℃に昇温し5時間かけて縮重合する。その後、温度180℃
に昇温し、減圧させながら所望の分子量となるまで反応させて結晶性ポリエステル2を得た。結晶性ポリエステル2の重量平均分子量(Mw)は35000、融点(Tm)は84℃であった。
・スチレン 49.0部
・n−ブチルアクリレート 21.0部
・ピグメントブルー15:3 6.0部
・サリチル酸アルミニウム化合物 1.0部
(ボントロンE−88:オリエント化学社製)
・極性樹脂 5.0部
(スチレン−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体(質量比95:2:2:3)、酸価=10mgKOH/g、ガラス転移点(Tg)=80℃、重量平均分子量(Mw)=15000)
・離型剤 パラフィンワックス 7.0部
(HNP−9:日本精鑞製:融点=75℃)
・ブロックポリマー1 30.0部
上記の処方を混合し、それに15mmのセラミックビーズを入れ、アトライター(三井三池化工機製)を用いて2時間分散して、重合性単量体組成物を得た。
高速撹拌装置TK−ホモミキサー(特殊機化工業製)を備えた容器に、イオン交換水800部とリン酸三カルシウム15.5部を添加し、回転数を15000回転/分に調整し、70℃に加温して水系分散媒体とした。
該重合性単量体組成物に重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート4.0部を添加し、これを上記水系分散媒体に投入した。上記高速撹拌装置にて15000回転/分を維持しつつ、3分間分散させて造粒を行った(造粒工程)。その後、高速撹拌装置からプロペラ撹拌羽根に撹拌機を代え、150回転/分で攪拌しながら70℃を保持して8.0時間重合を行い、100℃に昇温して4時間加熱することで、溶剤及び未反応モノマーの除去を行った(重合工程)。こうして得られた樹脂粒子分散液が樹脂粒子分散液1である。
分散液の一部を抜き取り、攪拌を続けながら温度を20℃まで冷却した。抜き取った分散液に含まれる樹脂粒子の重合転化率を測定したところ100.0(質量%)であった。抜き取った分散液を洗浄・乾燥したものを樹脂粒子1とした。得られた樹脂粒子における
TgA(℃)は45℃、TmA(℃)は75℃であった。
表3に示すような原料に変更すること以外は樹脂粒子分散液1の製造方法と同様にして樹脂粒子分散液2〜13を得た。
還流冷却管、撹拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を入れた。
・トルエン 100.0部
・スチレン 75.0部
・n−ブチルアクリレート 25.0部
・t−ブチルパーオキシピバレート 3.0部
上記容器内を毎分200回転で撹拌し、70℃に加熱して10時間撹拌した。さらに、100℃に加熱して6時間溶媒を留去させて結着樹脂1を得た。次いで、
・結着樹脂1 70.0部
・ブロックポリマー1 30.0部
・離型剤 パラフィンワックス 7.0部
(HNP−9:日本精鑞製 融点75℃)
・ピグメントブルー15:3 6.0部
・サリチル酸アルミニウム化合物 1.0部
(ボントロンE−88:オリエント化学社製)
・酢酸エチル 200.0部
上記成分をボールミルにて10時間混合分散させ、得られた分散液を、リン酸三カルシウム3.5質量%を含むイオン交換水2000部に投入し、高速撹拌装置TK−ホモミキサーにて回転数を15000回転/分で10分間造粒を行った。その後、汎用攪拌機(スリーワンモーター)にて150回転/分で撹拌しながらウォーターバス中において75℃で4時間保持し、脱溶剤を行い、樹脂粒子分散液14を得た。
分散液の一部を抜き取り、攪拌を続けながら温度を20℃まで冷却した。抜き取った分散液に含まれる樹脂粒子の脱溶剤率を測定したところ100.0(質量%)であった。抜き取った分散液の洗浄・乾燥し、得られた樹脂粒子におけるTgA(℃)は50℃、TmA(℃)は75℃であった。
(結着樹脂分散液の調製)
・スチレン 75.0部
・n−ブチルアクリレート 25.0部
上記処方の混合物を、水系媒体に、分散、乳化し、10分間ゆっくりと混合した。尚、水系媒体としては、イオン交換水120.0部に、非イオン性界面活性剤(三洋化成(株)製:ノニポール400)1.5部及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)2.2部を溶解したものを用いた。乳化液の混合を続けながら、これに重合開始剤として過硫酸アンモニウム1.5部を溶解したイオン交換水10.0部を投入した。更に、窒素置換を行った後、撹拌しながら内容物が温度70℃になるまで加熱し、4時間そのまま乳化重合を継続した。その後、固形分濃度が20.0質量%になるようイオン交換水の量を調整し、結着樹脂分散液を得た。得られた結着樹脂分散液中に分散した樹脂粒子は、体積平均粒径が0.29μmであった。
(ブロックポリマー分散液の調製)
・ブロックポリマー1 50.0部
・アニオン性界面活性剤 7.0部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 200.0部
以上を温度95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。その後、固形分濃度が20.0質量%になるようイオン交換水の量を調整し、ブロックポリマー分散液を得た。得られたブロックポリマー分散液中に分散したブロックポリマー粒子は、体積平均粒径が0.31μmであった。
(着色剤分散液の調製)
・シアン着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3) 20.0部
・アニオン性界面活性剤 3.0部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 78.0部
上記処方を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。その後、固形分濃度が20.0質量%になるようイオン交換水の量を調整し、着色剤分散液を得た。この着色剤分散液における粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA−700)を用いて測定したところ、含まれる着色剤の体積平均粒径は、0.20μmであり、また1.00μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
(ワックス分散液の調製)
・炭化水素ワックス 50.0部
(HNP−9:日本精鑞製 融点75℃)
・アニオン性界面活性剤 7.0部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 200.0部
上記処方を温度95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。その後、固形分濃度が20.0質量%になるようイオン交換水の量を調整し、ワックス分散液を得た。得られたワックス分散液中に分散したワックス粒子は、体積平均粒径が0.50μmであった。
(荷電制御粒子分散液の調製)
・ジアルキルサリチル酸の金属化合物 5.0部
(負荷電性制御剤、ボントロンE−84、オリエント化学工業社製)
・アニオン性界面活性剤 3.0部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 78.0部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。その後、固形分濃度が5.0質量%になるようイオン交換水の量を調整し、荷電制御粒子分散液を得た。
(混合液の調製)
・結着樹脂分散液 70.0部
・ブロックポリマー分散液 30.0部
・着色剤分散液 6.0部
・ワックス分散液 7.0部
以上を、撹拌装置,冷却管,温度計を装着した1リットルのセパラブルフラスコに投入し撹拌した。この混合液を1モル/L−水酸化カリウムを用いてpH=5.2に調整した。
この混合液に凝集剤として、8.0質量%塩化ナトリウム水溶液120.0部を滴下し、撹拌しながら温度55℃まで加熱した。この温度の時に、荷電制御粒子分散液2.0部を加えた。温度55℃で2時間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると平均粒径が3.3μmである凝集粒子が形成されていることが確認された。
その後、ここにアニオン製界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)3.0部を追加した後、撹拌を継続しながら温度95℃まで加熱し、4.5時間保持した。分散液の一部を抜き取り、攪拌を続けながら温度を20℃まで冷却した。抜き取った分散液を
洗浄・乾燥し、得られた樹脂粒子におけるTgA(℃)は45℃、TmA(℃)は75℃であった。
得られた樹脂粒子分散液1〜15の物性を表3に示す。
樹脂粒子分散液1〜11及び14を用いて、表4並びに図5〜9に示すようにアニール工程を実施した後、攪拌を続けながら温度を20℃まで冷却した。その後、洗浄・乾燥しトナー粒子1〜39を得た。得られたトナー粒子1〜39の物性を、表6に示す。
樹脂粒子分散液1、12、13、15を用いて、表5及び図5に示すようにアニール工程を実施した後、攪拌を続けながら温度を20℃まで冷却した。その後、洗浄・乾燥しトナー粒子40〜49を得た。
尚、上記アニール工程における、方式A〜Eの詳細については図5〜9で説明する通りである。
まず、各樹脂粒子分散液を、0.5℃/分の速度で100℃まで昇温させた。その後、方式A乃至Cについては0.5℃/分の速度で20℃まで冷却し、さらに1.0℃/分の速度でアニール開始温度まで昇温させ、アニール工程を開始した。アニール工程終了後、0.5℃/分の速度でアニール工程終了温度から20℃まで冷却した。尚、方式Cでは数回に処理を分けるが、各処理の間における冷却加熱工程については、0.5℃/分の速度で20℃まで冷却し、1.0℃/分の速度でアニール開始温度まで昇温させた。
また、方式D及びEについては、各樹脂微粒子を0.5℃/分の速度で100℃まで昇温させた後、1.0℃/分の速度でアニール開始温度まで冷却させ、アニール工程を開始した。アニール工程終了後、0.5℃/分の速度でアニール工程終了温度から20℃まで冷却した。
また、乾式でアニール工程を行う際には(比較例10)、指定された温度にて、トナー粒子を粉体のまま、金属製のバットに厚さ1cm程度で広げ、保存する手法を用いた。
尚、上記したアニール工程は、全て樹脂粒子分散液1Lに対して、ウォーターバスを用いて行ったが、本発明に示すアニール工程を行えば、処理量や処理装置については何を用いても構わない。
得られたトナー粒子40〜49の物性を、表6に示す。
実施例1〜39及び比較例1〜10で得られた各トナー粒子について、分級を行い、次いで、各トナー粒子100.0部を量り取り、一次粒子の個数平均粒径が40nmのシリカ微粒子1.0部を加え、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機製)を用いて混合し、各トナーを得た。
得られた各トナーについて、以下の方法に従って性能評価を行った。評価結果を表7に示す。
[耐熱性]
各トナー5gを50mLポリカップに取り、温度50℃/湿度10%RHで3日間放置し、凝集塊の有無を調べ評価した。
(評価基準)
A:凝集塊発生せず。
B:軽微な凝集塊が発生、軽い振とうで解れる。
C:軽微な凝集塊が発生、軽く指で押すと解れる。
D:凝集塊が発生、軽く指で押しても崩れない。
E:完全に凝集。
(現像スジ)
市販のカラーレーザープリンター(HP Color LaserJet 3525dn、HP社製)を、一色のプロセスカートリッジだけの装着でも作動するよう改造して評価を行った。このカラーレーザープリンターに搭載されていたシアンカートリッジから中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、代わりに評価するトナー(300g)を充填した。常温常湿下(23℃、60%RH)、受像紙として、キヤノン製オフィスプランナー(64g/m2)を用い、印字率2%チャートを500枚連続して画出しした。画出し後、さらにハーフトーン画像を出力し、該ハーフトーン画像における画像スジの有無、及び現像ローラ上のスジの有無について観察し、以下のように現像性を評価した。
(評価基準)
A:現像ローラ上にも、ハーフトーン部の画像上にも現像スジと見られる排紙方向の縦スジは見られない。
B:現像ローラの両端に周方向の細いスジが1乃至4本あるものの、ハーフトーン部の画像上に現像スジと見られる排紙方向の縦スジは見られない。
C:現像ローラの両端に周方向の細いスジが1乃至4本あり、ハーフトーン部の画像上にも細かい現像スジが数本見られる。
D:現像ローラの両端に周方向の細いスジが5本以上ある、或いは、ハーフトーン部の画像上に、細かい現像スジが5本以上見られる。
E:現像ローラ上とハーフトーン部の画像上に多数本の顕著な現像スジが見られる。
さらに、ベタ画像を出力し、該ベタ画像について反射濃度計であるマクベス濃度計(マクベス社製、SPIフィルターを使用)を用い、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対的な反射濃度を測定した。評価基準を以下に示す。尚、反射濃度の値が大きいほど、現像性に優れることを意味する。
(評価基準)
A:反射濃度が1.40以上である。
B:反射濃度が1.30以上1.40未満である。
C:反射濃度が1.25以上1.30未満である。
D:反射濃度が1.20以上1.25未満である。
E:反射濃度が1.20未満である。
さらに、温度45℃/湿度10%RHの環境に30日間放置したトナーを用い、上記した反射濃度の測定を行い、現像性に対する経時変化特性を評価した。評価基準を以下に示す。
(評価基準)
A:反射濃度が1.40以上である。
B:反射濃度が1.30以上1.40未満である。
C:反射濃度が1.25以上1.30未満である。
D:反射濃度が1.20以上1.25未満である。
E:反射濃度が1.20未満である。
定着ユニットを外したカラーレーザープリンター(HP Color LaserJet 3525dn、HP社製)を用意し、シアンカートリッジからトナーを取り出して、代わりに評価するトナーを充填した。次いで、受像紙(キヤノン製オフィスプランナー 64g/m2)上に、充填したトナーを用いて、縦2.0cm横15.0cmの未定着のトナー画像(0.6mg/cm2)を、通紙方向に対し上端部から1.0cmの部分に形成した。次いで、取り外した定着ユニットを定着温度とプロセススピードを調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。
まず、常温常湿環境下(23℃、60%RH)、プロセススピードを200mm/s、定着線圧20.0kgfに設定し、初期温度を100℃として設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で上記未定着画像の定着を行った。
低温定着性の評価基準は以下の通りである。低温側定着開始点温度とは、低温オフセット現象(トナーの一部が定着器に付着してしまう現象)が観察されない下限温度のことである。
A:低温側定着開始点温度が115℃以下。
B:低温側定着開始点温度が120℃或いは125℃。
C:低温側定着開始点温度が130℃或いは135℃。
D:低温側定着開始点温度が140℃或いは145℃。
E:低温側定着開始点温度が150℃以上。
Claims (5)
- 以下のi)またはii)の方法:
i)重合性単量体、着色剤及びブロックポリマーを含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に加えて、造粒し、造粒された粒子中に含有される重合性単量体を重合して樹脂粒子を製造する、
ii)有機溶媒に、結着樹脂、着色剤及びブロックポリマーを溶解又は分散して樹脂溶液を調製し、該樹脂溶液を水系媒体中に加えて、造粒し、造粒された粒子中に含有される有機溶媒を除去して樹脂粒子を製造する、
によって樹脂粒子を得る工程(A)、及び、
該樹脂粒子が水系媒体に分散された状態で、該水系媒体の温度を、以下の条件を満たすように60分以上保持する工程(B)、
I)該樹脂粒子のガラス転移点TgA(℃)以上、該樹脂粒子における該ブロックポリマーに由来する吸熱ピークのオンセット温度TmA(℃)以下の温度である、
II)温度変動幅が20℃以下である、
III)温度変動速度が0.35℃/分以下である、
を有するトナー粒子の製造方法であって、
該トナー粒子が、
a)スチレンアクリル系樹脂を主成分とする結着樹脂、
b)着色剤、及び、
c)ブロックポリマー
を含有し、
該ブロックポリマーが、
a)ポリエステル部位及びビニルポリマー部位を有し、
b)吸熱ピークを有する、
ことを特徴とするトナー粒子の製造方法。 - 該工程(B)における該水系媒体の温度を、該樹脂粒子のガラス転移点TgA(℃)以上、該ブロックポリマーの冷結晶化に伴う発熱が終了する温度TcA(℃)以下の温度範囲内とすることを特徴とする請求項1に記載のトナー粒子の製造方法。
- 該ブロックポリマーのポリエステル部位が、下記式(1)で示されるジカルボン酸と、下記式(2)で示されるジオールとから構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー粒子の製造方法。
HOOC−(CH2)m−COOH 式(1)
[式中、mは、6乃至14の整数を示す]
HO−(CH2)n−OH 式(2)
[式中、nは、6乃至16の整数を示す] - 該ブロックポリマーのビニルポリマー部位のガラス転移点TgB(℃)が、TmA(℃)以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトナー粒子の製造方法。
- 該ブロックポリマーにおけるポリエステル部位とビニルポリマー部位の質量比が30:70〜70:30であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトナー粒子の製造方法。
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