以下に、図面を用いて、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
また、発明の実施の形態の説明に用いられる図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
図1−図6を用いて、本実施の形態の半導体装置を説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として、電荷量を検出することが可能なクーロン・カウンタについて説明する。
<<クーロン・カウンタの構成例1>>
図1は、クーロン・カウンタの構成の一例を示す回路図である。クーロン・カウンタ100は、抵抗110、増幅回路130、電圧電流変換回路(V−I変換回路)150及び累積加算回路170を有する。クーロン・カウンタ100は、抵抗110を流れる電流Isから、検出対象から出力された電荷量Qsを検出する機能を備える。ここでは、クーロン・カウンタ100の検出対象は、二次電池10(以下、電池10と呼ぶ。)である。電池10は、高電位用の端子111及び低電位用の端子112に接続されている。
増幅回路130(AMP)は、2つの入力端子間の電圧を増幅し、増幅した電圧を出力する機能を有する。電流Isが流れることにより、抵抗110の両端には電圧Vs(=Is×Rs)が発生する。増幅回路130の非反転入力端子と反転入力端子間には電圧Vsが入力される。増幅回路130は、電圧Vsを増幅して、電圧Vaを生成する機能を有する。電圧Vaは、電圧Vsに比例する電圧である。
V−I変換回路150(V/I)は、入力された電圧を電流に変換し、出力する機能を有する回路である。ここでは、V−I変換回路150は、増幅回路130で増幅された電圧Vaを電流Icに変換する。後述するように、電流Icは、電圧Vaに比例する電流である。
<累積加算回路;ADDの構成例1>
図1の累積加算回路170(ADD)は、入力される電流Icに応じた信号を生成する機能を有する回路である。累積加算回路170は、トランジスタ181、トランジスタ182、容量素子183及びコンパレータ191を有する。
容量素子183の一方の端子(ノードN11)は、トランジスタ181に接続され、他方の端子の電位は、抵抗110の一方の端子と同じ電位にされている。トランジスタ181は、ノードN11とV−I変換回路150の出力との接続を制御するスイッチの機能を有する。トランジスタ181のオン、オフはそのゲートに入力される信号CONにより制御される。
トランジスタ182は、ノードN11と、電圧VREF3が入力されるノードN12間を接続するスイッチの機能を有する。そのため、トランジスタ182は、ノードN11の電圧Vcをリセットするリセット回路として機能することができる。トランジスタ182のオン、オフは、そのゲートに入力される信号SETにより制御される。トランジスタ182がオン状態である期間は、ノードN11はノードN12に接続されるため、その電圧Vcは一定電位となり、トランジスタ182等による電圧降下を無視する場合は、電圧VREF3と等しくなる。
なお、ノードN11の電位をリセットするための回路(トランジスタ182)は、必要に応じて形成すればよい。
トランジスタ181及び容量素子183は、サンプル−ホールド回路の機能を有する。トランジスタ181をオンすることにより、電流IcがV−I変換回路150からノードN11に入力され、容量素子183が充電される(サンプリング動作)。トランジスタ181をオフすることにより、ノードN11が電気的に浮遊状態とされ、容量素子183で電荷が保持される状態になる(ホールド動作)。また、ホールド動作は、ノードN11の電圧が保持されている状態ということもできる。
ノードN11の電圧Vcは、容量素子183に保持されている電荷Qcに比例し、電荷Qcは電流Icに比例するため、ノードN11の電圧Vc、または電圧Vcに応じた信号から、抵抗110を流れた電荷量を表すデータを得ることができる。よって、これらの信号から、電池10の充電容量(または残存容量と呼ぶこともある)を得ることができる。
電圧Vcは、コンパレータ191を経て出力信号OUTとして、クーロン・カウンタ100から出力される。コンパレータ191は電圧Vcと基準電圧を比較して、”0”又は”1”の論理値を出力する。
図1の例では、コンパレータ191の非反転入力端子はノードN11(容量素子183の端子)に接続され、同反転入力端子は電位VREF1が入力される。コンパレータ191からは、電圧Vcが基準電圧を超えるとハイレベル(論理値”1”)の信号OUTが出力され、電圧Vcが基準電圧未満となるとローレベル(論理値”0”)の信号OUTが出力される。なお、累積加算回路170において、VREF3<VREF1である。
コンパレータ191としては、ノイズ耐性が高いヒステリシス・コンパレータを用いることが好ましい。ヒステリシス・コンパレータを用いることにより、ノイズの影響により出力信号OUTの電位の切り替えが頻繁に起こることを抑制することができる。
なお、累積加算回路170では、電圧Vcに対応する信号を生成するアナログ回路として、コンパレータ191が用いられているが、本実施の形態ではこれに限定されない。例えば、このようなアナログ回路としてアナログ−デジタル変換回路、増幅回路等を用いることができる。
また、クーロン・カウンタ100の出力信号は、コンパレータ191からの出力信号OUTに限定されるものではない。例えば、ノードN11の電圧Vcを信号として出力させることができる。この場合、ノードN11に増幅回路を接続し、増幅回路の出力をクーロン・カウンタ100から出力できる構成とすればよい。
<累積加算回路;ADDの駆動方法例>
次に、図2のクーロン・カウンタ100のタイミングチャートを参照して、累積加算回路170の駆動方法を説明する。図2には、信号SET、信号CON、ノードN11の電圧Vc、及び出力信号OUTの波形を示す。
さらに、図2には、部分的に拡大された信号CONの波形を示す。期間Tconは、信号CONの1周期である。期間Tcon_onは、信号CONがハイレベルの期間である。期間Tconにおいて、期間Tcon_onは、トランジスタ181がオンである期間であって、サンプリング動作を行うサンプリング期間である。それ以外の期間は、トランジスタ181をオフにして、ホールド動作を行うホールド期間である。
抵抗110を流れた電荷量を検出するには、最初に、ノードN11(容量素子183の端子)の電圧をリセットするリセット動作を行う。信号SETをハイレベルにして、トランジスタ182をオンにする。この動作により、電圧Vcは、電圧VREF3にリセットされる。
信号SETがローレベルの期間は、信号CONに従って、上述したサンプリング動作及びホールド動作が繰り返される。期間Tcon_onでは、トランジスタ181がオンになり、ノードN11に電流Icが入力され、容量素子183が充電される。そして、信号CONをローレベルにしてトランジスタ181をオフ状態することで、ノードN11は電気的に浮遊状態とされ、容量素子183により電荷Qcが保持される。
以上のサンプリング動作及びホールド動作を繰り返すことで、電流Icに応じた電荷がノードN11に供給される場合、図2に示すように、電圧Vcが上昇する。そして、電圧Vcが電圧VREF1を超えると、出力信号OUTはローレベルからハイレベルに切り替る。また、電圧Vcが、電圧VREF1よりも小さくなると、出力信号OUTはハイレベルからローレベルに切り替る。
[電圧Vcの計算例]
累積加算回路170は、容量素子183に充電された電荷Qcを累積加算する演算機能を有し、その演算結果を電圧Vcに対応する信号OUTとして出力する機能を有する。よって、信号OUTから、抵抗110を流れた電荷量Qsを検出することができる。以下、累積加算回路170の演算処理機能について説明する。
電荷Qcは、電流Icを時間で積分することで得られるため、ノードN11の電圧Vcのリセット動作を実行した後、N回のサンプリングにより容量素子183に保持されている電荷Qcは、式(a1)で表すことができる。電荷Qcと容量素子183の容量値Ccとの関係から、電圧Vcは式(a2)で表される。ここで検出期間中において電流Icが一定であると仮定すると、電圧Vcは、式(a3)で表される。
式(a3)で示すように、電圧Vcは電流Icの比例関数で表される。ここで、V−I変換回路150の機能により、電流Icは電圧Vaに比例する電流である。電圧Vaは、抵抗110を流れる電流Isに比例する電圧である。従って、電圧Vc、又は電圧Vcに対応する信号を検出することで、抵抗110を流れた電荷の総和(Qs)を検出することが可能である。
例えば、クーロン・カウンタ100を電池10の電力管理装置に用いることができる。このような電力管理装置では、出力信号OUTを検出することで、電池10の充電状態を監視することができる。例えば、コンパレータ191に入力される電圧VREF1を、例えば、電池10の充電完了状態に対応する電圧に設定して、出力信号OUTがハイレベルに切り替ることをトリガーにして、電池10の充電を停止させるような制御が可能である。
[累積加算回路のトランジスタについて]
また、高精度の電荷量Qsの検出には、累積加算回路170のホールド動作期間(信号CONがローレベルの期間)において、ノードN11の電圧の変動を抑制することが望ましい。電荷のリークパスとなる箇所は、例えばトランジスタ181、トランジスタ182のそれぞれのソース−ドレイン間の電流パスがある。そのため、トランジスタ181及び/又はトランジスタ182として、リーク電流が小さいトランジスタを用いることが望ましい。
このようなトランジスタとしては、例えば、シリコンよりもバンドギャップが広く、実質的に真性な酸化物半導体でチャネル領域が形成されているトランジスタを適用することができる。
この場合、チャネル領域が形成される酸化物半導体は、アルカリ金属、水素又は水等の不純物を可能な限り低減し、また酸素を供給して酸素欠損を可能な限り低減することが、オフ電流の低減に非常に効果的である。例えば、チャネル形成領域において、二次イオン質量分析法(SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry))の測定値でドナー不純物といわれる水素の量を1×1019atoms/cm3以下、好ましくは1×1018atoms/cm3以下に低減することが好ましい。トランジスタ181及び/又はトランジスタ182のオフ電流は、25℃でチャネル幅1μmあたり1×10−19A(100zA)以下であることが好ましく、1×10−22A(100yA)以下がより好ましい。電荷のリークパスとなるトランジスタのオフ電流は、低ければ低いほどよいが、トランジスタのオフ電流の下限値は、約1×10−30A/μmであると見積もられる。なお、これらのオフ電流の値は、ソースとドレイン間の電圧は、例えば、0.1V、5V、または、10V程度の場合である。
トランジスタ181、トランジスタ182に用いられる酸化物半導体としては、例えばIn酸化物、Zn酸化物、In−Zn酸化物、又はIn−Ga−Zn酸化物等が挙げられる。
なお、酸化物半導体を用いたトランジスタ(以下、酸化物半導体トランジスタと呼ぶ。)を用いる場合、そのしきい値電圧を制御する必要がある場合は、デュアルゲート構造(図26B参照)とするとよい。デュアルゲート構造とすることで、バックゲートに電圧または信号を供給して酸化物半導体トランジスタのしきい値電圧制御を行うことができる。
以下、図3A、図3Bおよび図4を用いて、累積加算回路170の他の構成例を説明する。以下に示す累積加算回路171〜173も、累積加算回路170と同様に、電圧Vc、又は電圧Vcに対応する信号を検出することで、抵抗110を流れた電荷の総和(Qs)を検出することが可能である。
<累積加算回路;ADD構成例2>
図3Aは、累積加算回路171の構成の一例を示す回路図である。図1の累積加算回路170は、電圧Vcが基準電圧を超えることを検出する機能を有するが、図3Aの累積加算回路171は、電圧Vcが基準電圧よりも低下したことを検出する機能を有する。
累積加算回路171において、ノードN11をリセットするための電圧として、ノードN12には電圧VREF1が印加される。また、コンパレータ192の非反転入力端子には、電圧VREF3が入力され、その反転入力端子にはノードN11が接続されている。例えば、コンパレータ192の基準電圧がVREF3であれば、電圧Vcが電圧VREF3よりも低くなると出力信号OUTの電位がローレベルから、ハイレベルに切り替る。コンパレータ192としては、コンパレータ191と同様、ヒステリシス・コンパレータが好ましい。
<累積加算回路;ADDの構成例3>
図3Bは、累積加算回路172の構成の一例を示す回路図である。累積加算回路172は、電圧Vcが基準電圧を超えたこと、及び基準電圧未満になったこと双方を検出する機能を有する。累積加算回路172は、コンパレータ191及びコンパレータ192双方を有し、コンパレータ191、コンパレータ192から、それぞれ、信号OUT1、OUT2が出力される。ノードN12にはリセット用の電圧VREF2が供給される。累積加算回路172で使用される電圧は、VREF1>VREF2>VREF3である。
信号OUT1により電圧Vcの増加が検出できる。コンパレータ191では、電圧Vcが電圧VREF1を超えるとハイレベルの信号OUT1を出力する。信号OUT2により電圧Vcの低下が検出できる。コンパレータ192では、電圧Vcが電圧VREF3未満となるとハイレベルの信号OUT2を出力する。
<累積加算回路の構成例4>
なお、累積加算回路170−172において、コンパレータ191、及びコンパレータ192の出力信号の変化をカウントするカウンタを設けることができる。このカウンタとしては、例えば、コンパレータ191、192の出力信号がローレベルからハイレベルに切り替る回数をカウントする機能を有する回路を用いることができる。また、累積加算回路172においては、このカウンタが、コンパレータ191の出力信号のカウント値と、コンパレータ192の出力信号のカウント値を演算(和、差分等)する機能を有することが好ましい。そのような、累積加算回路を備えたクーロン・カウンタの構成例を図4に示す。
図4は、クーロン・カウンタの構成の一例を示す回路図である。図4に示すように、クーロン・カウンタ103は、抵抗110、増幅回路130、電圧電流変換回路150、及び累積加算回路173を有している。
累積加算回路(COUNT)173は、累積加算回路170〜172と同様に、入力される電流Icに応じた信号を生成する機能を有する回路である。累積加算回路173は、トランジスタ181、トランジスタ182、容量素子183、コンパレータ191、コンパレータ192、カウンタ193及びOR回路194を有しており、累積加算回路172にカウンタ193及びOR回路194を追加した回路に相当する。
ノードN11の電圧Vcは、コンパレータ191及びコンパレータ192に入力される。コンパレータ191では、ノードN11の電圧Vcの増加を検出し、コンパレータ192では、電圧Vcの低下を検出する。コンパレータ191、コンパレータ192は、それぞれ、電圧Vcを基準電圧と比較して、比較結果として”0”又は”1”の論理値を出力する。
なお、累積加算回路173において使用される電圧は、VREF3<VREF2<VREF1である。
コンパレータ191の非反転入力端子はノードN11(容量素子183の端子)に接続され、同反転入力端子には電圧VREF1が入力されている。コンパレータ191の出力信号(UP)は、非反転入力端子に入力されている電圧Vcが基準電圧を超えると、ハイレベル(”1”)となり、電圧Vcが基準電圧未満となるとローレベル(”0”)となる。
コンパレータ192の反転入力端子はノードN11(容量素子183の端子)に接続され、同非反転入力端子には電圧VREF3が入力されている。コンパレータ192は、反転入力端子に入力されている電圧Vcが基準電圧未満になると、ハイレベル(”1”)の信号DOWNを出力し、電圧Vcが基準電圧を超えるとローレベル(”0”)の信号DOWNを出力する。
コンパレータ191、192の出力信号(UP、DOWN)は、カウンタ193に入力される。カウンタ193では、信号UP、及び信号DOWNの変化をそれぞれカウントし、それぞれのカウント値を得る。信号UP、DOWNのカウント値は、それぞれの信号がローレベルからハイレベルに切り替る回数である。カウンタ193では、信号UP、信号DOWNのカウント値を演算処理し、信号OUTとして出力する。信号OUTは、nビット(例えば、16ビット)のデジタル信号となる。
信号OUTのデータは、例えば、信号UPと信号DOWNのカウント値の和、差分等がある。
また、クーロン・カウンタ103の出力信号は、カウンタ193からの出力信号OUTに限定されるものではない。例えば、ノードN11の電圧Vcを信号として出力させることができる。この場合、ノードN11に増幅回路を接続し、増幅回路の出力をクーロン・カウンタ103から出力できる構成とすればよい。
トランジスタ182は、ノードN11と、電圧VREF2が入力されるノードN12間を接続するスイッチの機能を有する。そのため、トランジスタ182は、ノードN11の電圧Vcをリセットするリセット回路として機能することができる。トランジスタ182のオン、オフは、そのゲートに入力される信号SETにより制御される。
信号SETは、OR回路194の出力信号である。OR回路194には、コンパレータ191の出力信号UP、及びコンパレータ192の出力信号DOWNが入力されている。信号SETは、信号UPと信号DOWNの論理和である。従って、信号UP及び信号DOWNの一方がハイレベルとなると、トランジスタ182がオンになる。トランジスタ182がオン状態である期間は、ノードN11はノードN12に接続されるため、その電圧Vcは一定電位となり、トランジスタ182等による電圧降下を無視する場合は、電圧VREF2と等しくなる。
<累積加算回路;COUNTの駆動方法例>
次に、図5のクーロン・カウンタ103のタイミングチャートを参照して、累積加算回路173の駆動方法を説明する。図5には、信号CON、ノードN11の電圧Vc、OR回路194、コンパレータ191及びコンパレータ192の出力信号(SET、UP、DOWN)の波形を示す。
さらに、図5には、部分的に拡大された信号CONの波形を示す。期間Tconは、信号CONの1周期である。期間Tcon_onは、信号CONがハイレベルの期間である。期間Tconにおいて、期間Tcon_onは、トランジスタ181がオンである期間であって、サンプリング動作を行うサンプリング期間である。それ以外の期間は、トランジスタ181をオフにして、ホールド動作を行うホールド期間である。
信号CONに従って、上述したサンプリング動作及びホールド動作が繰り返される。期間Tcon_onでは、トランジスタ181がオンになり、ノードN11に電流Icが入力され、容量素子183が充電される。信号CONをローレベルにしてトランジスタ181をオフにすることで、ノードN11は電気的に浮遊状態とされ、容量素子183により電荷Qcが保持される。
以上のサンプリング動作及びホールド動作を繰り返すことで、電流Icに応じた電荷がノードN11に供給される場合、図5に示すように、電圧Vcが増加する。そして、電圧Vcが電圧VREF1を超えると、コンパレータ191の出力信号UPはローレベルからハイレベルに切り替る。コンパレータ191の出力信号UPの変化に対応して、OR回路194からハイレベルの信号SETが出力される。信号SETにより、トランジスタ182がオンになり電圧Vcが電圧VREF2にリセットされる。
また、電流Icに応じた電荷がノードN11から流出される場合、図5に示すように、電圧Vcは低下する。そして、電圧Vcが電圧VREF3未満となると、コンパレータ192の出力信号DOWNはローレベルからハイレベルに切り替る。コンパレータ192の出力信号DOWNの変化に対応して、OR回路194からハイレベルの信号SETが出力される。信号SETによりトランジスタ182がオンになり、電圧Vcが電圧VREF2にリセットされる。
また、カウンタ193では、ハイレベルの信号UP、DOWNが入力された回数をカウントしている。このように、累積加算回路173は、容量素子183に充電された電荷Qcを累積加算する演算機能を有し、その演算結果を電圧Vcに対応する信号OUTとして出力する機能を有する。よって、信号OUTから、抵抗110を流れた電荷量Qsを検出することができる。
例えば、クーロン・カウンタ103も、電池10の電力管理装置に用いることができる。このような電力管理装置では、出力信号OUTを検出することで、電池10の充電状態を監視することができる。出力信号OUTの値により、電池10の充電の開始や、停止を行うような制御が可能である。
以下、図6を用いて、増幅回路130及びV−I変換回路150のより詳細な構成について説明する。図6は、クーロン・カウンタ100の構成例を示す回路図である。
なお、図6の例では、累積加算回路170(ADD)には、オペアンプ184が更に設けられている。オペアンプ184により電圧フォロワが構成されており、この電圧フォロワ回路を介して、電圧VREF3がノードN12に供給されている。
<増幅回路;INT−AMPの構成例>
図6の例では、増幅回路130として計装アンプが設けられている。増幅回路130(INT−AMP)は、抵抗131−134、オペアンプ135及びオートゼロ・アンプ140を有する。オペアンプ135により電圧フォロワが構成されている。
抵抗131、抵抗110及び抵抗132は直列に接続されている。オートゼロ・アンプ140は、これら直列接続された抵抗の両端の電圧を増幅し、増幅された電圧Vaを出力する機能を有する。オートゼロ・アンプ140は、非反転入力端子が抵抗133を介してオペアンプ135でなる電圧フォロワに接続されており、その出力端子は、抵抗134を介して、その反転入力端子に接続されている。
オートゼロ・アンプ140のより詳細な構成は、実施の形態2で説明される。オートゼロ・アンプ140は、オフセット電圧値が小さく、また温度ドリフトの少ない増幅回路であるので、抵抗110の両端の小さな電位差の増幅手段として、非常に好適である。
<V−I変換回路;VI−CONVの構成例>
V−I変換回路150(VI−CONV)は、電圧Vaを電流Ieに変換する回路と、定電流Icomを生成する回路を有する。V−I変換回路150からは電流Ic=Ie−Icomが累積加算回路170に出力される。
V−I変換回路150は、オペアンプ151、トランジスタ152−154、抵抗155、及び電流源回路160を有する。電流源回路160は、電流Icomを生成する機能を有する回路である。抵抗155は電流Ie及びIcomの値を規定する抵抗である。ここでは、電流源回路160で生成される電流は、Icom=VREF2/Rcom1の関係を有する。
また、オペアンプ151、トランジスタ152−154及び抵抗155を含む回路ブロックは、電流源回路の機能を有し、また電圧Vaを電流Ieに変換する機能を有する。トランジスタ152のソース−ドレイン間には、そのゲートに入力された電圧Vaに対応する電流Ieが流れる。トランジスタ152のゲートには、オペアンプ151の出力電圧が入力されている。オペアンプ151は、その反転入力端子の電圧が、非反転入力端子の電圧Vaと等しくなるように動作するため、電流Ie=Va/Rcom1となる。トランジスタ153及びトランジスタ154はカレントミラーを構成しており、このカレントミラーによりトランジスタ152で生成された電流Ieは、V−I変換回路150の出力へ取り出される。
なお、クーロン・カウンタ100で使用される電圧(例えば、VREF1、VREF2、VREF3)を生成する電圧生成回路を、クーロン・カウンタ100内に設けてもよい。
[電流Icの算出]
以下、数式を参照して、増幅回路130の出力電圧Vaを電流Icに変換するV−I変換回路150の機能について説明する。
まず、増幅回路130の出力電圧Vaを求める。抵抗131と抵抗132の抵抗値がRa1に等しく、かつ抵抗133と抵抗134の抵抗値がRa2に等しい場合、電圧Vaは式(b1)で表される。式(b1)に示すように、電圧Vaは電圧Vsに比例する電圧であることがわかる。
累積加算回路170の出力電流Icは、式(b2)に示すように、電流Ieと電流Icomの差になる。Ie=Va/Rcom1、Icom=VREF2/Rcom1から、式(b3)、(b4)が得られる。電流Icは電圧Vsに比例する電流であることから、式(b4)は、V−I変換回路150において、電圧Vaが電流Icに変換されることを表している。
<電荷量Qsの算出>
以下、数式を参照して、クーロン・カウンタ100により、抵抗110に流れた電荷量Qsを検出できること説明する。
式(c1)に示すように、電荷量Qsは電流Isを時間で積分することにより得られる。電荷量Qsの検出期間において電流Isが一定であると仮定すると、電荷量Qsは、式(c2)で近似される。
また、式(a3)の右辺のIcに式(b4)を代入すると、電圧Vcは式(d1)で表すことができる。式(d1)から、式(d2)、式(d3)が導けられる。
さらに、式(d3)から、電荷量Qsは下記式(d4)で表される。
したがって、式(d4)に示すように、電圧Vcを検出することで、抵抗110を流れた電荷の総和Qsに関するデータを得ることができる。つまり、クーロン・カウンタ100の出力OUTから電荷量Qsに関するデータを取得できることが可能である。以下に、式(d4)から算出される電荷量Qsの一例を示す。
[算出条件:クーロン・カウンタ100の仕様]
抵抗値:Ra1=100kΩ、Ra2=1MΩ
容量値:Cc=1nF
サンプリング回数:N=200回
時間:Tcon=60sec、Tcon_on=10μsec
電圧値:Vc=1.15V、VREF3=0.25V
[算出結果]
Qs≒3.37Ahr (1Ahr=3600Coulomb)
なお、ここでは、図6を参照して、累積加算回路170を有するクーロン・カウンタ100について説明したが、他の累積加算回路を有するクーロン・カウンタについても同様である。図7に、累積加算回路173を有するクーロン・カウンタ103の構成例を示す。クーロン・カウンタ103は、クーロン・カウンタ100と同様に動作する。また、内部で使用される電圧(例えば、VREF1、VREF2、VREF3)を生成する電圧生成回路を、クーロン・カウンタ103内に設けてもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態2)
図8−図13を用いて、半導体装置の一例としてクーロン・カウンタについて説明する。本実施の形態では、一部の回路がICチップに集積されたクーロン・カウンタについて説明する。
<<クーロン・カウンタの構成例2>>
図8は、クーロン・カウンタの構成例を示す回路図である。図8に示すように、クーロン・カウンタ200は、クーロン・カウンタ100と同様に、増幅回路230、V−I変換回路250及び累積加算回路270を有し、更に、電圧生成回路220を有する。検出対象の電池10は、高電位用の端子211と低電位用の端子212間に接続されている。クーロン・カウンタ200は、クーロン・カウンタ100と同様に、抵抗210の両端に生じた電圧Vsから、抵抗210を流れた電荷量Qsを検出する機能を有する。
点線で示す回路ブロックは、ICチップ201に集積されている回路を示す。ICチップ201には、複数の端子213が設けられている。なお、図面が煩雑になるのを避けるため、図8において、電源電圧VSS用の端子のみに符号213を付している。
<電圧生成回路の構成例>
電圧生成回路220は、ICチップ201の内部回路で使用する電圧VREF1、VREF2、及びVREF3を生成する機能を有する回路である。電圧生成回路220は、オペアンプ221、及びオペアンプ221の出力に接続された分圧回路を有する。この分圧回路は、直列に接続された抵抗222−225を有する。
オペアンプ221には、端子213を介して外部から電圧VREFが供給されている。電圧VREF1はオペアンプ221の出力電圧に対応する。また、分圧回路から電圧VREF2、VREF3が出力される。ここでは、VREF1>VREF2>VREF3の関係を有する。
<増幅回路;INT−AMPの構成例>
図9は、増幅回路230(INT−AMP)の構成例を示す回路図である。
増幅回路230は、抵抗231−234、オペアンプ235及びオートゼロ・アンプ240を有する点は、図6の増幅回路130と同様である。増幅回路230は、更にマルチプレクサ236を有する。マルチプレクサ236は、信号XCONの制御により、オペアンプ235の出力信号(VREF2_O)、またはオートゼロ・アンプ240の出力信号(AZA_OUT)を出力する機能を有する。
オートゼロ・アンプ240は、オペアンプ241(Aa)、オペアンプ242(Ab)、トランジスタ243−246、インバータ247、容量素子248及び容量素子249を有する。オペアンプ241は、電圧Vsを増幅するためのメイン・アンプである。オペアンプ242は、オペアンプ241のオフセット電圧のゼロ調整を行うアンプ(Nulling amplifier、またはNull amplifier)である。トランジスタ243−246は、信号NCLKにより、オン、オフが制御されるスイッチとして機能する。
信号NCLKは、ハイレベルとローレベルの2つの相を有するクロック信号であり、オートゼロ・アンプ240の動作は2つのモードに分かれる。信号NCLKがハイレベルの期間が第1のモードであり、オペアンプ242によりオペアンプ242自身のオフセット電圧のゼロ調整が行われる。信号NCLKがローレベルの期間が第2のモードであり、ゼロ調整されたオペアンプ242により、オペアンプ241のオフセット電圧がゼロ値に補正される。
ハイレベルの信号NCLKが入力されると、トランジスタ243及びトランジスタ244がオンになり、トランジスタ245及びトランジスタ246はオフ状態となる。オペアンプ242の2つの入力端子が短絡され、オペアンプ242の出力電圧により、自身のオフセット電圧が計測される。オペアンプ242の出力電圧は、容量素子248で保持される。容量素子248で保持されている電圧は、オペアンプ242のゼロ調整用の電源入力端子NAに入力され、オペアンプ242のオフセット電圧がゼロ値に補正される。
他方、オペアンプ241は、容量素子249で保持されている電圧によりオフセット電圧が補正されている状態で、入力端子間の電圧;(Vin+)−(Vin−)を増幅し、増幅された電圧を出力する。
オペアンプ241のオフセット電圧をゼロ値に補正するための電圧は、信号NCLKがローレベルの期間に取得され、容量素子249に記憶されている。
ローレベルの信号NCLKが入力されると、トランジスタ245及びトランジスタ246がオンになり、トランジスタ243及びトランジスタ244はオフになる。容量素子248によりゼロ調整用電圧が印加されている状態で、オペアンプ242は入力端子間の電圧を増幅して、容量素子249の端子、及びオペアンプ241の電源端子へ出力する。オペアンプ242の出力電圧は、オペアンプ241のオフセット電圧をゼロ値に補正するための電圧であり、容量素子249で保持される。
以上のように、信号NCLKにより、容量素子248及び容量素子249の充電と放電を交互に繰り返すことで、オペアンプ241のオフセット電圧をゼロ値に補正することができる。
オートゼロ・アンプ240の出力信号AZA_OUTは、マルチプレクサ236に入力される(図9)。マルチプレクサ236は、信号XCONがハイレベルのときは、信号(AZA_OUT)を出力し、信号XCONがローレベルのときは、信号VREF2_Oを出力する。
<V−I変換回路;VI−CONVの構成例>
図10は、V−I変換回路250(VI−CONV)の構成例を示す回路図である。V−I変換回路250は、入力電圧Vaを電流Icに変換する機能を有しており、V−I変換回路150と同様に、電圧Vaを電流Ieに変換する回路と、定電流Icomを生成する回路を有する。
V−I変換回路250は、V−I変換回路150と同様、オペアンプ251、トランジスタ252−254、抵抗255及び電流源回路260を有する。オペアンプ251、トランジスタ252−254、及び抵抗255で構成される回路ブロックにおいて、電圧Vaが電流Ieに変換される。
電流源回路260は、電流Icomを生成する機能を有する回路である。電流源回路260は、抵抗256、容量素子257、オペアンプ262、トランジスタ263−トランジスタ269を有する。
電流源回路260において、抵抗256、オペアンプ262及びトランジスタ263−267でなる回路ブロックが定電流Icomを生成する電流源回路として機能する。トランジスタ264とトランジスタ265、並びに、トランジスタ266とトランジスタ267により2つのカレントミラーが構成されている。
261で示される回路ブロックは、V−I変換回路250の出力(VIout)に接続される配線258に流れる電流を補正する機能を有し、V−I変換回路250のオフセット電流を補正する機能を有する。以下、回路ブロック261を電流補正回路261と呼ぶ。抵抗256は、電流Icom及びV−I変換回路250のオフセット電流を規定する抵抗である。ここでは、Rcom2>Rcom1とすることで、電流源回路260のオフセット電流を大きくし、電流源回路260の出力電流のゼロ調整を行うようにしている。
電流補正回路261のトランジスタ268及びトランジスタ269は、配線258に接続されている。トランジスタ268は、電流源回路260のカレントミラーを構成するトランジスタ266と並列に接続されており、そのゲートは容量素子257の端子(NC)に接続されている。トランジスタ269は、容量素子257の端子(NC)と配線258との接続を制御するスイッチとして機能する。トランジスタ269のオン、オフは信号NCONにより制御される。
トランジスタ269及び容量素子257はサンプル−ホールド回路として機能する。トランジスタ269でなるスイッチがオンの期間に、オフセット電流補正用の電圧Vcnが取得される。トランジスタ269を介して電流が容量素子257に供給され、容量素子257が充電される。トランジスタ269をオフにすることで、容量素子257において電圧Vcnが保持される。
トランジスタ268のソース−ドレイン間には、容量素子257で保持されている電圧Vcnに応じた電流Icnが流れる。この電流Icnにより、配線258に流れる電流Icが補正される。これが、電流補正回路261によるV−I変換回路250のオフセット電流のゼロ調整機能である。V−I変換回路250の出力誤差は電荷量Qsの検出誤差となるため、電流補正回路261によりV−I変換回路250の出力誤差を抑えることができるため、クーロン・カウンタ200の検出精度が向上される。
<累積加算回路の構成例>
図11は、累積加算回路270(ADD)の構成例を示す回路図である。
累積加算回路270は、累積加算回路170と同様に、入力電流をサンプリングして、電圧として保持し、その電圧に応じた信号を生成する機能を有する。累積加算回路270は、累積加算回路170と同様に、トランジスタ281、トランジスタ282、容量素子283、オペアンプ284、及びコンパレータ291を有する。累積加算回路270は、更に、トランジスタ285、オペアンプ286及びオペアンプ287を有する。
トランジスタ285及びオペアンプ286は、累積加算回路270の入力端子(ノードVIout)の電圧をノードN21(容量素子283の端子)の電圧Vcに調節する機能を有する。トランジスタ285のオン、オフは信号PREにより制御される。後述するように、電流Ie−Icomのサンプリング動作の前に、このノードVIoutの電圧の調節が実行されるため、トランジスタ285及びオペアンプ286は、プリチャージ回路として機能するということもできる。
オペアンプ287は電圧フォロワを構成し、ノードN21の電圧Vcは、この電圧フォロワを介して、信号MONIとしてクーロン・カウンタ200の外部に出力される。
トランジスタ281及び/又はトランジスタ282も、累積加算回路171(図3A)のトランジスタ181、182と同様に、酸化物半導体を用いたトランジスタとすることが好ましい。
また、増幅回路230及びV−I変換回路250にも、酸化物半導体トランジスタを適用することができる。増幅回路230では、例えば、トランジスタ245及び/又はトランジスタ246を酸化物半導体トランジスタとしてもよい。また、V−I変換回路250では、例えば、トランジスタ269を酸化物半導体トランジスタとしてもよい。
また、累積加算回路270においても、図3A及び図3Bに示すようにコンパレータ292を設けてもよい。
<クーロン・カウンタの駆動方法例1>
図12及び図13のタイミングチャートを用いて、図8のクーロン・カウンタ200の駆動方法の一例を説明する。図12には、累積加算回路270の入力信号(SET、CON)、及び出力信号(MONI、OUT)を示す。図13には、累積加算回路270の入力信号(SET、CON、PRE)、V−I変換回路250の入力信号(NCON)、及び増幅回路230の入力信号(XCON)を示す。
図12に示すように、累積加算回路270は、累積加算回路170と同様に駆動される。まず、信号SETにより、ノードN21の電圧が電圧VREF3にリセットされる。信号CONがハイレベルの期間、ノードN21に電流Ie−Icomが流れ、容量素子283が充電される。電流Ie−Icomに応じた電荷が容量素子283に保持される。ノードN21の電圧Vcが電圧VREF1を超えると、信号OUTがローレベルからハイレベルに切り替る。
図13に示すように、電圧Vcのホールド期間では、V−I変換回路250のオフセット電流の補正動作(ゼロ調整動作)、及びノードVIout(累積加算回路270の入力端子)の電圧を調節するプリチャージ動作が行われる。以下、図13を参照して、期間Tconでのクーロン・カウンタ200の動作について説明する。
マルチプレクサ236制御用の信号XCONがハイレベルである期間に、信号NCONがハイレベルである期間Toffsetが存在する。期間Toffsetでは、V−I変換回路250に電圧VREF2が入力されるため、上記式(b3)によると、Ie−Icom=0となる。しかしながら、電流源回路260の抵抗256により、Icはゼロ値にならない。期間Toffsetに配線258を流れる電流がオフセット電流である。期間Toffsetでは、トランジスタ269をオンにして、上述したようにオフセット電流により容量素子257を充電して、V−I変換回路250のオフセット電流を補正する電圧Vcnを取得する。
次に、信号NCONをローレベルにし、次いでマルチプレクサ236の制御用の信号XCONをローレベルにする。XCONがローレベルである期間に累積加算回路270の入力信号PREがハイレベルである期間Tpreが存在する。期間Tpreでは、トランジスタ285により累積加算回路270の入力端子(ノードVIout)はオペアンプ286の出力に接続される。オペアンプ286は電圧フォロワとして機能するため、期間Tpreでは、ノードVIoutの電圧はノードN21の電圧Vcに設定される。
期間Tpreの経過後、入力信号CONがハイレベルになり、累積加算回路270において電流Ie−Icomがサンプリングされる。期間Tcon_onでは、V−I変換回路250において、配線258を流れる電流Icは、トランジスタ268のソース−ドレイン間を流れる電流Icnにより補正されているため、高い精度で電圧Vcを検出することができる。
以上が、期間Tconでのクーロン・カウンタ200の動作である。
図14に、実際に作製されたクーロン・カウンタ200の出力信号波形の測定結果の一例を示す。図14には、電圧VREF1は約1.25Vであり、電圧VREF3は約0.25Vであり、抵抗110間の電圧Vsが28mVの場合の信号波形を示す。また、この信号の測定時に、クーロン・カウンタ200の信号OUTをマイクロ・プロセッサに入力し、マイクロ・プロセッサ内のカウンタにおいて、信号OUTがローレベルからハイレベルに切り替るまでの期間Tout_Hiに対応するカウント値を取得した。そのカウント値は127であった。
また、累積加算回路270(170)の代わりに、累積加算回路171(図3A)、累積加算回路172(図3B)、累積加算回路173(図4)を用いることができる。一例として、累積加算回路270(170)の代わりに、累積加算回路173を用いたクーロン・カウンタの構成例を、図15に示す。なお、図面が煩雑になるのを避けるため、図15において、電源電圧VSS用の端子のみに符号213を付している。
<クーロン・カウンタの構成例3>
図15は、クーロン・カウンタの構成例を示す回路図である。図15に示すように、クーロン・カウンタ203は、クーロン・カウンタ200と同様に、増幅回路230、V−I変換回路250、累積加算回路273及び電圧生成回路220を有する。
点線で示す回路ブロックは、ICチップ204に集積されている回路を示す。ICチップ204には、複数の端子213が設けられている。
図16は、累積加算回路273の構成例を示す回路図である。
累積加算回路273は、累積加算回路173と同様に、入力電流をサンプリングして、電圧として保持し、その電圧に応じたnビットのデジタル信号を生成する機能を有する。累積加算回路273は、累積加算回路173と同様に、トランジスタ281、トランジスタ282、容量素子283、オペアンプ284、及びコンパレータ291、292、及びカウンタ293を有する。累積加算回路273は、更に、トランジスタ285、オペアンプ286、及びオペアンプ287を有する。
トランジスタ285及びオペアンプ286は、累積加算回路273の入力端子(ノードVIout)の電位を、ノードN21(容量素子283の端子)の電圧Vcに調節する機能を有する。トランジスタ285のオン、オフは信号PREにより制御される。後述するように、電流Ie−Icom(=Ic)のサンプリング動作の前に、このノードVIoutの電圧の調節が実行されるため、トランジスタ285及びオペアンプ286は、プリチャージ回路として機能するということもできる。
オペアンプ287は電圧フォロワを構成し、ノードN21の電圧Vcは、この電圧フォロワを介して、信号MONIとしてクーロン・カウンタ203の外部に出力される。
<クーロン・カウンタの駆動方法例2>
図5及び図17のタイミングチャートを用いて、クーロン・カウンタ203の駆動方法の一例を説明する。図5の電圧Vcが、信号MONIに対応する。
図5に示すように、累積加算回路273は、累積加算回路173と同様に駆動される。信号CONに従って、電流Ie−Icomがサンプリングされ、容量素子283において電荷Qcとして保持される。容量素子283で保持されている電荷Qcに応じてノードN21の電圧Vcが変化する。
ノードN21の電圧Vcが電圧VREF1を超えると、コンパレータ291はハイレベル(論理値”1”)の信号UPを出力する。電圧Vcが電圧VREF3を未満となると、コンパレータ292はハイレベル(論理値”1”)の信号DOWNを出力する。カウンタ293では、信号UP及び信号DOWNの変化をカウントしている。例えば、信号UPのカウント値と、信号DOWNのカウント値の和が信号OUTとして出力される。なお、信号OUTは、例えば16ビットのデジタル信号とすることができる。
図17に示すように、電圧Vcのホールド期間では、V−I変換回路250のオフセット電流の補正動作(ゼロ調整動作)、及びノードVIout(累積加算回路273の入力端子)の電位を調節するプリチャージ動作が行われる。以下、図17を参照して、期間Tconでのクーロン・カウンタ203の動作について説明する。
マルチプレクサ236の制御用の信号XCONがハイレベルである期間に、V−I変換回路250の入力信号NCONがハイレベルである期間Toffsetが存在する。期間Toffsetでは、V−I変換回路250に電圧VREF2が入力されるため、上記式(b3)によると、Ie−Icom=0となる。しかしながら、電流源回路260の抵抗256により、Icはゼロ値にならない。期間Toffsetに配線258を流れる電流がオフセット電流である。期間Toffsetでは、トランジスタ269をオンにして、上述したようにオフセット電流により容量素子257を充電して、V−I変換回路250のオフセット電流を補正する電圧Vcnを取得する。
次に、信号NCONをローレベルにし、次いでマルチプレクサ236制御用の信号XCONをローレベルにする。信号XCONがローレベルである期間に累積加算回路273の入力信号PREがハイレベルである期間Tpreが存在する。期間Tpreでは、トランジスタ285により累積加算回路273の入力端子(ノードVIout)はオペアンプ286の出力に接続される。オペアンプ286は電圧フォロワとして機能するため、期間Tpreでは、ノードVIoutの電圧はノードN21の電圧Vcに設定される。
期間Tpreの経過後、入力信号CONがハイレベルになり、累積加算回路273において電流Ie−Icomがサンプリングされる。期間Tcon_onでは、V−I変換回路250において、配線258を流れる電流Icは、トランジスタ268のソース−ドレイン間を流れる電流Icnにより補正されているため、高い精度で電圧Vcを検出することができる。
以上が、期間Tconでのクーロン・カウンタ203の動作である。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体装置の一例として、制御手段を備えた蓄電装置について説明する。
<蓄電装置の構成例>
図18は、蓄電装置の構成例を示す回路図である。蓄電装置300は、蓄電体301、管理装置310を有する。図18は、蓄電体301の充電状態を示しており、電源302は、蓄電体301を充電するための電源である。
蓄電体301(BAT)としては、例えばリチウムイオン二次電池、鉛蓄電池、リチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル水素蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池、ニッケル鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、及び酸化銀・亜鉛蓄電池等の二次電池;レドックス・フロー電池、亜鉛・塩素電池、及び亜鉛臭素電池等の液循環型の二次電池;アルミニウム・空気電池、空気亜鉛電池、空気・鉄電池等のメカニカルチャージ型の二次電池;ナトリウム・硫黄電池、リチウム・硫化鉄電池等の高温動作型の二次電池等を用いることができる。なお、これらに限定されず、例えばリチウムイオンキャパシタ等を用いて蓄電体301を構成してもよい。
管理装置310は、蓄電体301の充電状態等を管理するシステムである。管理装置310は、マイクロ・プロセッサ・ユニット320(以下、MPU320と呼ぶ。)、信号生成回路321、電源制御回路330、及びクーロン・カウンタ100を有する。
MPU320は、管理装置310の制御装置として機能し、電源制御回路330及びクーロン・カウンタ100へ制御信号を送信する機能等を有する。MPU320は、管理装置310の外部回路と信号の送信、受信が可能となっている。
信号生成回路321は、管理装置310の内部回路で使用される信号を生成する機能を有する。信号生成回路321では、クーロン・カウンタ100で使用される信号(例えば、累積加算回路170の制御信号CON)が生成される。なお、信号生成回路321をMPU320に設けることができる。
電源制御回路330は、電源302から供給される電力を直流電力に変換する機能を有する。電源制御回路330は、直流電力の生成部であるコンバータ340と、コンバータ340の制御部である制御回路350を有する。制御回路350は、充電の開始・停止、並びに充電電流Ich、充電電圧Vchの設定等の機能を有する。
ここでは、電源302として直流電源を用い、電源制御回路330として、降圧型DC−DCコンバータが用いられている。また、コンバータ340には、スイッチング・レギュレータが用いられている。コンバータ340は、スイッチとして機能するトランジスタ341、平滑回路及び分圧回路を有する。図18の例では、平滑回路は、整流素子342、コイル343、抵抗344、及び容量素子345を有する。分圧回路は、抵抗346及び抵抗347を有する。
トランジスタ341のスイッチング動作は、制御回路350からの制御信号GSにより制御される。また、制御信号GSにより、コンバータ340の出力電圧、出力電流が調節される。制御回路350では、例えば、クロック信号のデューティー比を変化させることで、信号GSが生成される。信号GSを生成するためのクロック信号は、制御回路350の内部回路、又は信号生成回路321で生成することができる。また、蓄電装置300の外部回路で生成してもよい。
抵抗344は、コンバータ340の出力電流Ichを検出するための抵抗である。制御回路350は、信号SENSE1及び信号SENSE2により、抵抗344の両端の電位差を検出する。この検出された電位差から、抵抗344を流れる電流を得ることができる。また抵抗346、抵抗347を含む分圧回路の出力信号FBは、コンバータ340の出力電圧Vchを検出するため信号である。信号FBは制御回路350に入力される。
制御回路350では、信号(SENSE1、SENSE2、FB)に基づき、信号GSを生成する。
クーロン・カウンタ100では、上述したように抵抗110の両端に生ずる電圧Vsから、信号OUTが生成される。信号OUTは、MPU320に入力される。MPU320は、信号OUTに基づき、電源制御回路330の制御信号を生成し、制御回路350に出力する。制御回路350はこの制御信号に基づき、信号GSを出力する。例えば、MPU320では、ハイレベル(論理値1)の信号OUTが入力されると、蓄電体301の充電を停止させる命令信号を生成する。制御回路350ではこの命令信号が入力されると、信号GSにより、トランジスタ341をオフ状態にする。
また、MPU320では、電源制御回路330に蓄電体301の充電を開始させる命令が生成される。管理装置310外部からの信号、又はMPU320の内部回路で生成された信号をトリガーにして、充電開始の命令信号を制御回路350に出力する。制御回路350はこの命令信号に基づき、信号GSをコンバータ340に入力する。
(実施の形態4)
本実施の形態では、蓄電装置等の半導体装置の制御に用いられるMPUについて説明する。
<MPUの構成例>
図19は、MPU700の構成の一例を示すブロック図である。MPU700は、例えば、図18の蓄電装置300のMPU320に用いることができる。
MPU700は、プロセッサ710、バスブリッジ711、メモリ712、メモリ・インターフェース713、コントローラ720、割り込みコントローラ721、I/Oインターフェース(入出力インターフェース)722、及びパワーゲートユニット730を有する。
さらに、MPU700は、水晶発振回路741、タイマー回路745、I/Oインターフェース746、I/Oポート750、コンパレータ751、I/Oインターフェース752、バスライン761、バスライン762、バスライン763、及びデータバスライン764を有する。さらに、MPU700は、外部装置との接続部として少なくとも接続端子770乃至接続端子776を有する。なお、各接続端子770乃至接続端子776は、1つの端子又は複数の端子でなる端子群を表す。また、水晶振動子743を有する発振子742が、接続端子772、及び接続端子773を介してMPU700に接続されている。
プロセッサ710はレジスタ785を有し、バスブリッジ711を介してバスライン761乃至バスライン763、及びデータバスライン764に接続されている。
メモリ712は、プロセッサ710のメインメモリとして機能することができる記憶装置であり、例えばRAM(Random Access Memory)が用いられる。メモリ712は、プロセッサ710が実行する命令、命令の実行に必要なデータ、及びプロセッサ710の処理によるデータを記憶する装置である。プロセッサ710が処理する命令により、メモリ712へのデータの書き込み、読み出しが行われる。
MPU700では、低消費電力モードのときにメモリ712に対する電力供給が遮断される。そのため、メモリ712は電源が供給されていない状態でもデータを保持することができるメモリで構成することが好ましい。
メモリ・インターフェース713は、外部記憶装置との入出力インターフェースである。プロセッサ710が処理する命令により、メモリ・インターフェース713を介して、接続端子776に接続される外部記憶装置へのデータの書き込み及び読み出しが行われる。
クロック生成回路715は、プロセッサ710で使用されるクロック信号MCLK(以下、単に「MCLK」とも呼ぶ。)を生成する回路であり、RC発振器等を有する。MCLKはコントローラ720及び割り込みコントローラ721にも出力される。
コントローラ720はMPU700の制御を行う回路であり、例えば、MPU700の電源制御、クロック生成回路715、水晶発振回路741の制御等を行うことができる。
接続端子770は、外部の割り込み信号入力用の端子であり、接続端子770を介してマスク不可能な割り込み信号NMIがコントローラ720に入力される。コントローラ720にマスク不可能な割り込み信号NMIが入力されると、コントローラ720は直ちにプロセッサ710にマスク不可能な割り込み信号NMIを出力し、プロセッサ710に割り込み処理を実行させる。
また、割り込み信号INTが、接続端子770を介して割り込みコントローラ721に入力される。割り込みコントローラ721には、周辺回路からの割り込み信号(T0IRQ、P0IRQ、C0IRQ)も、バス(761乃至764)を経由せずに入力される。
割り込みコントローラ721は割り込み要求の優先順位を割り当てる機能を有する。割り込みコントローラ721は割り込み信号を検出すると、その割り込み要求が有効であるか否かを判定する。有効な割り込み要求であれば、コントローラ720に割り込み信号IRQを出力する。
また、割り込みコントローラ721はI/Oインターフェース722を介して、バスライン761及びデータバスライン764に接続されている。
コントローラ720は、割り込み信号INTが入力されると、プロセッサ710に割り込み信号INTを出力し、プロセッサ710に割り込み処理を実行させる。
また、割り込み信号T0IRQが割り込みコントローラ721を介さず直接コントローラ720に入力される場合がある。コントローラ720は、割り込み信号T0IRQが入力されると、プロセッサ710にマスク不可能な割り込み信号NMIを出力し、プロセッサ710に割り込み処理を実行させる。
コントローラ720のレジスタ780は、コントローラ720内に設けられ、割り込みコントローラ721のレジスタ786は、I/Oインターフェース722に設けられている。
続いて、MPU700が有する周辺回路を説明する。MPU700は、周辺回路として、タイマー回路745、I/Oポート750及びコンパレータ751を有する。これらの周辺回路は一例であり、MPU700が使用される電気機器に応じて、必要な回路を設けることができる。
タイマー回路745は、クロック生成回路740から出力されるクロック信号TCLK(以下、単に「TCLK」とも呼ぶ。)を用いて、時間を計測することができる機能を有する。また、タイマー回路745は、決められた時間間隔で、割り込み信号T0IRQを、コントローラ720及び割り込みコントローラ721に出力する。タイマー回路745は、I/Oインターフェース746を介して、バスライン761及びデータバスライン764に接続されている。
TCLKはMCLKよりも低い周波数のクロック信号である。例えば、MCLKの周波数を数MHz程度(例えば、8MHz)とし、TCLKは、数十kHz程度(例えば、32kHz)とする。クロック生成回路740は、MPU700に内蔵された水晶発振回路741と、接続端子772及び接続端子773に接続された発振子742を有する。発振子742の振動子として、水晶振動子743が用いられている。なお、CR発振器等でクロック生成回路740を構成することで、クロック生成回路740の全てのモジュールをMPU700に内蔵することが可能である。
I/Oポート750は、接続端子774を介して接続された外部機器と情報の入出力を行うためのインターフェースであり、デジタル信号の入出力インターフェースである。例えば、I/Oポート750には、接続端子774を介して、クーロン・カウンタ(100、200)の出力信号OUTが入力される。例えば、I/Oポート750は、入力された信号OUTに応じて、割り込み信号P0IRQを割り込みコントローラ721に出力する。
コンパレータ751は、例えば接続端子775から入力されるアナログ信号の電位(又は電流)と基準信号の電位(又は電流)との大小を比較でき、値が0又は1のデジタル信号を生成することができる。さらに、コンパレータ751は、このデジタル信号の値に応じて割り込み信号C0IRQを生成することができる。割り込み信号C0IRQは、割り込みコントローラ721に出力される。
I/Oポート750及びコンパレータ751は共通のI/Oインターフェース752を介してバスライン761及びデータバスライン764に接続されている。ここでは、I/Oポート750、コンパレータ751各々のI/Oインターフェースに共有することができる回路があるため、1つのI/Oインターフェース752で構成しているが、I/Oポート750、コンパレータ751のI/Oインターフェースを別々に設けることもできる。
また、周辺回路のレジスタは、対応する入出力インターフェースに設けられている。タイマー回路745のレジスタ787はI/Oインターフェース746に設けられ、I/Oポート750のレジスタ783及びコンパレータ751のレジスタ784は、それぞれ、I/Oインターフェース752に設けられている。
MPU700は内部回路への電力供給を遮断するためのパワーゲートユニット730を有する。パワーゲートユニット730により、動作に必要な回路のみに電力供給を行うことで、MPU700全体の消費電力を低くすることができる。
図19に示すように、MPU700内の破線で囲んだユニット701−704の回路は、パワーゲートユニット730を介して、接続端子771に接続されている。
本実施の形態では、ユニット701は、タイマー回路745、及びI/Oインターフェース746を含み、ユニット702は、I/Oポート750、コンパレータ751、及びI/Oインターフェース752を含み、ユニット703は、割り込みコントローラ721、及びI/Oインターフェース722を含み、ユニット704は、プロセッサ710、メモリ712、バスブリッジ711、及びメモリ・インターフェース713を含む。
パワーゲートユニット730は、コントローラ720により制御される。パワーゲートユニット730は、ユニット701乃至704への電源電圧の供給を遮断するためのスイッチ731及びスイッチ732を有する。このときの電源電圧としては、例えば蓄電体301の電源電圧等を用いることができる。
スイッチ731、スイッチ732のオン/オフはコントローラ720により制御される。具体的には、コントローラ720は、プロセッサ710の要求によりパワーゲートユニット730が有するスイッチの一部又は全部をオフ状態とする信号を出力する(電力供給の停止)。また、コントローラ720は、マスク不可能な割り込み信号NMI、又はタイマー回路745からの割り込み信号T0IRQをトリガーにして、パワーゲートユニット730が有するスイッチをオン状態とする信号を出力する(電力供給の開始)。
なお、図19では、パワーゲートユニット730として、2つのスイッチ(スイッチ731、スイッチ732)が設けられている回路ブロックを示しているが、これに限定されず、電源遮断に必要な数のスイッチをパワーゲートユニット730に設ければよい。
また、本実施の形態では、ユニット701に対する電力供給を独立して制御することができるようにスイッチ731を設け、ユニット702乃至704に対する電力供給を独立して制御することができるようにスイッチ732を設けているが、このような電力供給経路に限定されるものではない。例えば、スイッチ732とは別のスイッチを設けて、メモリ712の電力供給を独立して制御することができるようにしてもよい。また、1つの回路に対して、複数のスイッチを設けてもよい。
また、コントローラ720には、パワーゲートユニット730を介さず、常時、接続端子771から電源電圧が供給される。また、ノイズの影響を少なくするため、クロック生成回路715の発振回路、水晶発振回路741には、それぞれ、電源電圧の電源回路と異なる外部の電源回路から電源電圧が供給される。
<MPUの駆動方法例>
コントローラ720及びパワーゲートユニット730等を備えることにより、MPU700を3種類の動作モードで動作させることが可能である。第1の動作モードは、通常動作モードであり、MPU700の全ての回路がアクティブな状態である。ここでは、第1の動作モードを「Activeモード」と呼ぶ。
第2、及び第3の動作モードは低消費電力モードであり、一部の回路をアクティブにするモードである。第2の動作モードでは、コントローラ720、並びにタイマー回路745とその関連回路(水晶発振回路741、I/Oインターフェース746)がアクティブである。第3の動作モードでは、コントローラ720のみがアクティブである。ここでは、第2の動作モードを「Noff1モード」と呼び、第3の動作モードを「Noff2モード」と呼ぶことにする。Noff1モードでは、コントローラ720と周辺回路の一部(タイマー動作に必要な回路)が動作し、Noff2モードでは、コントローラ720のみが動作している。
なお、クロック生成回路715の発振器、及び水晶発振回路741には、動作モードに関わらず、電源が常時供給される。クロック生成回路715及び水晶発振回路741を非アクティブにするには、コントローラ720から又は外部からイネーブル信号を入力し、クロック生成回路715及び水晶発振回路741の発振を停止させることにより行われる。
また、Noff1、Noff2モードでは、パワーゲートユニット730により電力供給が遮断されるため、I/Oポート750、I/Oインターフェース752は非Activeになるが、接続端子774に接続されている外部機器を正常に動作させるために、I/Oポート750、I/Oインターフェース752の一部には電力が供給される。具体的には、I/Oポート750の出力バッファ、I/Oポート750用のレジスタ783である。
なお、本明細書では、回路が非アクティブとは、電力の供給が遮断されて回路が停止している状態の他、Activeモード(通常動作モード)での主要な機能が停止している状態や、Activeモードよりも省電力で動作している状態を含む。
例えば、このような動作モードを有するMPU700を図18の蓄電装置300のMPU320に用いた場合の蓄電装置の動作方法を以下に示す。ユーザーが蓄電体301の充電を強制的に終了させると、その強制終了の命令をコントローラ720が受け取る。この命令の受信をトリガーにして、コントローラ720は、プロセッサ710に割り込み信号INTを出力し、プロセッサ710に割り込み処理を実行させる。例えば、プロセッサ710では、制御回路350での信号GSの発振を停止させる命令信号を生成し、I/Oポート750を介して制御回路350に出力する。そして、プロセッサ710は、MPU320を低消費電力モードに移行する要求をパワーゲートユニット730に出力する。
以下、MPU700に適用可能なレジスタについて図20A及び図20Bを参照して説明する。図20A及び図20Bは、レジスタの構成例を示す回路図である。
<レジスタの構成例1>
図20Aに示すように、レジスタ611は、記憶回路651、記憶回路652、及びセレクタ653を有する。
記憶回路651には、リセット信号RST、クロック信号CLK、及びデータ信号Dが入力される。記憶回路651は、クロック信号CLKに従って入力されるデータ信号Dのデータを保持し、データ信号Qとして出力することができる機能を有する。記憶回路651としては、例えばバッファレジスタや、汎用レジスタ等のレジスタを構成することができる。又は、記憶回路651としては、SRAM(Static Random Access Memory)等からなるキャッシュメモリを設けることもできる。これらのレジスタやキャッシュメモリは記憶回路652にデータを退避させることができる。
記憶回路652には、書き込み制御信号WE、読み出し制御信号RD、及びデータ信号が入力される。記憶回路652は、書き込み制御信号WEに従って、入力されるデータ信号のデータを記憶し、読み出し制御信号RDに従って、記憶されたデータをデータ信号として出力することができる機能を有する。
セレクタ653は、読み出し制御信号RDに従って、データ信号D又は記憶回路652から出力されるデータ信号を選択して、記憶回路651に入力する。
記憶回路652には、トランジスタ631及び容量素子632が設けられている。
トランジスタ631は、nチャネル型トランジスタであり、選択トランジスタとしての機能を有する。トランジスタ631のソース及びドレインの一方は、記憶回路651の出力端子に接続されている。さらに、トランジスタ631のバックゲートには、電源電圧が供給される。トランジスタ631は、書き込み制御信号WEに従って記憶回路651から出力されるデータ信号の保持を制御することができる機能を有する。
トランジスタ631としては、クーロン・カウンタ100のトランジスタ181、トランジスタ182(図1参照)と同様に、オフ電流の低いトランジスタ(例えば、酸化物半導体トランジスタ)を適用してもよい。
容量素子632の一対の電極の一方はトランジスタ631のソース及びドレインの他方に接続され、他方には低電源電圧VSSが供給される。容量素子632は、記憶するデータ信号のデータに基づく電荷を保持することができる機能を有する。トランジスタ631のオフ電流が非常に低いため、電源電圧の供給が停止しても容量素子632の電荷は保持され、データが保持される。
トランジスタ633は、pチャネル型トランジスタである。トランジスタ633のソース及びドレインの一方には高電源電圧VDDが供給され、ゲートには、読み出し制御信号RDが入力される。
トランジスタ634は、nチャネル型トランジスタである。トランジスタ634のソース及びドレインの一方は、トランジスタ633のソース及びドレインの他方に接続されており、ゲートには、読み出し制御信号RDが入力される。
トランジスタ635は、nチャネル型トランジスタである。トランジスタ635のソース及びドレインの一方は、トランジスタ634のソース及びドレインの他方に接続されており、ソース及びドレインの他方には、低電源電圧VSSが供給される。
インバータ636の入力端子は、トランジスタ633のソース及びドレインの他方に接続されている。また、インバータ636の出力端子は、セレクタ653の入力端子に接続される。
容量素子637の一対の電極の一方はインバータ636の入力端子に接続され、他方には低電源電圧VSSが供給される。容量素子632は、インバータ636に入力されるデータ信号のデータに基づく電荷を保持することができる機能を有する。
なお、記憶回路652の構成は上記に限定されない。例えば相変化型メモリ(PRAM(Phase−change RAM)又はPCM(Phase Change Memory)ともいう)、抵抗変化型メモリ(ReRAM(Resistance RAM)ともいう)、磁気抵抗型メモリ(MRAM(Magnetoresistive RAM)ともいう)等を用いて記憶回路652を構成してもよい。例えば、MRAMとしては磁気トンネル接合素子(MTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子ともいう)を用いたMRAMを適用することができる。
次に、レジスタ611の駆動方法の一例を説明する。
まず、通常動作期間において、電力となる電源電圧、リセット信号RST、クロック信号CLKは、レジスタに供給された状態である。このとき、セレクタ653は、データ信号Dのデータを記憶回路651に出力する。記憶回路651は、クロック信号CLKに従って入力されたデータ信号Dのデータを保持する。このとき、読み出し制御信号RDによりトランジスタ633がオン状態になり、トランジスタ634がオフ状態になる。
次に、電源電圧の供給を停止する直前のバックアップ期間において、書き込み制御信号WEのパルスに従って、トランジスタ631がオン状態になり、記憶回路652にデータ信号のデータが記憶され、トランジスタ631がオフ状態になる。その後レジスタに対するクロック信号CLKの供給を停止させ、さらにその後レジスタに対するリセット信号RSTの供給を停止させる。なお、トランジスタ631がオン状態のとき、トランジスタ631のバックゲートに正の電源電圧を供給してもよい。このとき、読み出し制御信号RDによりトランジスタ633がオン状態になり、トランジスタ634がオフ状態になる。
次に、電源停止期間において、レジスタに対する電源電圧の供給を停止させる。このとき、記憶回路652のトランジスタ631のオフ電流が低いため、記憶されたデータが保持される。なお、高電源電圧VDDの代わりに接地電位GNDを供給することにより、電源電圧の供給を停止するとみなすこともできる。なお、トランジスタ631がオフ状態のとき、トランジスタ631のバックゲートに負電源電圧を供給してトランジスタ631のオフ状態を維持してもよい。
次に、通常動作期間に戻る直前のリカバリー期間において、レジスタに対する電源電圧の供給を再開させ、その後クロック信号CLKの供給を再開させ、さらにその後リセット信号RSTの供給を再開させる。このとき、クロック信号CLKが供給される配線を高電源電圧VDDにしておき、その後クロック信号CLKの供給を再開させる。さらに、読み出し制御信号RDのパルスに従ってトランジスタ633がオフ状態になり、トランジスタ634がオン状態になり、記憶回路652に記憶された値のデータ信号がセレクタ653に出力される。セレクタ653は、読み出し制御信号RDのパルスに従って上記データ信号を記憶回路651に出力する。これにより、電源停止期間の直前の状態に記憶回路651を復帰させることができる。
その後、通常動作期間において、再び記憶回路651の通常動作を行う。
<レジスタの構成例2>
なお、レジスタは、図20Aに示す構成に限定されない。例えば、図20Bに示すようなレジスタ612を用いることができる。レジスタ611との相違点は、レジスタ612には、トランジスタ633、トランジスタ634、インバータ636、及び容量素子637が無く、セレクタ654がある点である。図20Aに示すレジスタ611と同じ部分については、図20Aに示すレジスタ611の説明を適宜援用する。
トランジスタ635のソース及びドレインの一方は、セレクタ653の入力端子に接続される。また、セレクタ654は、書き込み制御信号WE2に従って、データとなる低電源電圧VSS又は記憶回路651から出力されるデータ信号を選択して、記憶回路652に入力する。
通常動作期間において、電源電圧、リセット信号RST、クロック信号CLKは、レジスタ612に供給されている状態である。このとき、セレクタ653は、データ信号Dのデータを記憶回路651に出力する。記憶回路651は、クロック信号CLKに従って入力されたデータ信号Dのデータを保持する。また、書き込み制御信号WE2に従いセレクタ654は、低電源電圧VSSを記憶回路652に出力する。記憶回路652では、書き込み制御信号WEのパルスに従いトランジスタ631がオン状態になり、記憶回路652に低電源電圧VSSがデータとして記憶される。
電源電圧を停止する直前のバックアップ期間において、書き込み制御信号WE2に従いセレクタ654により、低電源電圧VSSの供給の代わりに記憶回路651の出力端子とトランジスタ631のソース及びドレインの一方が導通状態になる。さらに、書き込み制御信号WEのパルスに従いトランジスタ631がオン状態になり、記憶回路652にデータ信号Dのデータが記憶され、トランジスタ631がオフ状態になる。このとき、データ信号Dの電位が高電源電圧VDDと同じ値のときのみ、記憶回路652のデータが書き換わる。さらに、レジスタ612に対するクロック信号CLKの供給を停止させ、レジスタ612に対するリセット信号RSTの供給を停止させる。なお、トランジスタ631がオン状態のとき、トランジスタ631のバックゲートに正電源電圧を供給してもよい。
電源停止期間において、レジスタ612に対する電源電圧の供給を停止させる。このとき、記憶回路652において、トランジスタ631のオフ電流が低いため、データの値が保持される。なお、高電源電圧VDDの代わりに接地電位GNDを供給することにより、電源電圧の供給を停止させるとみなすこともできる。なお、トランジスタ631がオフ状態のとき、トランジスタ631のバックゲートに負電源電圧を供給してトランジスタ631のオフ状態を維持してもよい。
通常動作期間に戻る直前のリカバリー期間において、レジスタ612に対する電源電圧の供給を再開し、その後クロック信号CLKの供給を再開させ、さらにその後リセット信号RSTの供給を再開させる。このとき、クロック信号CLKが供給される配線を高電源電圧VDDにしておき、その後クロック信号CLKの供給を再開させる。セレクタ653は、読み出し制御信号RDのパルスに従って記憶回路652の記憶されたデータに応じた値のデータ信号を記憶回路651に出力する。これにより、電源停止期間の直前の状態に記憶回路651を復帰させることができる。その後、通常動作期間となり、再び記憶回路651の通常動作を行う。
レジスタ612では、バックアップ期間における低電源電圧VSSであるデータの書き込みを無くすことができるため、動作を速くすることができる。
レジスタ611又はレジスタ612を図19のMPU700に用いた場合、MPU700において、ActiveモードからNoff1、Noff2モードへ移行する際は、電源遮断に先立って、レジスタ784乃至787の記憶回路651のデータは記憶回路652に書き込まれ、記憶回路651のデータを初期値にリセットし、電源が遮断される。
また、Noff1、又はNoff2モードからActiveへ復帰する場合、レジスタ784乃至787に電源供給が再開されると、まず記憶回路651のデータが初期値にリセットされる。そして、記憶回路652のデータが記憶回路651に書き込まれる。
従って、低消費電力モードでも、MPU700の処理に必要なデータがレジスタ784乃至787で保持されているため、MPU700を低消費電力モードからActiveモードへ直ちに復帰させることが可能になる。よって、MPU700の消費電力を低減させることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)
以下、図21−図24Bを参照して、蓄電装置等の半導体装置の記憶手段として用いることが可能なメモリについて説明する。例えば、本実施の形態のメモリは、例えば、MPU700において、そのプロセッサ710のキャッシュメモリ、メモリ712に用いることが可能である(図19参照)。
<メモリの構成例1;SRAM>
SRAM(Static Random Access Memory)について説明する。図21は、SRAMのメモリセルの構成の一例を示す回路図である。
SRAMではフリップフロップにデータが保持されるため、DRAM(Dynamic Random Access Memory)とは異なり、リフレッシュ動作が不要である。そのため、データの保持時の消費電力を抑えることができる。また、データの書込み、保持に容量素子が用いられていないため、SRAMは高速動作が求められるメモリに好適である。
図21に示すように、メモリセル1040(SRAM−Cell)は、トランジスタ1041―1046を有する。トランジスタ1041及びトランジスタ1042はpチャネル型トランジスタであり、トランジスタ1043及びトランジスタ1044はnチャネル型トランジスタである。SRAMは、メモリセル1040がアレイ状に配置されたメモリアレイを有する。
メモリセル1040には、トランジスタ1041及びトランジスタ1043を有するインバータと、トランジスタ1042及びトランジスタ1044を有するインバータとをリング接続することで、フリップフロップが構成されている。
トランジスタ1041のゲートは、トランジスタ1042のドレイン、トランジスタ1043のゲート、トランジスタ1044のドレイン、並びにトランジスタ1046のソース及びドレインの一方に接続される。トランジスタ1041のソースには高電源電圧VDDが与えられる。トランジスタ1041のドレインは、トランジスタ1042のゲート、トランジスタ1043のドレイン及びトランジスタ1045のソース及びドレインの一方と接続される。
トランジスタ1042のソースには高電源電圧VDDが与えられる。トランジスタ1043のソースには接地電位GNDが与えられる。トランジスタ1044のソースには接地電位GNDが与えられる。トランジスタ1043、1044のバックゲートはバックゲート線BGLに接続される。トランジスタ1045のゲートはワード線WLに接続される。トランジスタ1045のソース及びドレインの他方はビット線BLBに接続される。トランジスタ1046のゲートはワード線WLに接続される。トランジスタ1046のソース及びドレインの他方はビット線BLに接続される。
なお、本実施の形態では、トランジスタ1045、1046としてnチャネル型トランジスタが適用された例を示す。ただし、トランジスタ1045、1046は、nチャネル型トランジスタに限定されず、pチャネル型トランジスタを適用することもできる。その場合、書き込み、保持及び読み出しのための制御信号の電位のレベル等を適宜変更すればよい。
トランジスタ1043及びトランジスタ1044を、酸化物半導体トランジスタにすることが好ましい。これにより、トランジスタ1043、1044の貫通電流を極めて小さくすることができる。酸化物半導体トランジスタが用いられる場合、トランジスタ1043、1044にバックゲートを設け、これらのバックゲートに、バックゲート線BGLを接続する。このような構成にすることで、バックゲート線BGLに入力される電位により、トランジスタ1043、1044のしきい値電圧を調節することができる。
トランジスタ1041、1042として、pチャネル型トランジスタに代えて、nチャネル型トランジスタを適用することもできる。トランジスタ1041及びトランジスタ1042としてnチャネル型トランジスタを用いる場合、デプレッション型トランジスタを適用すればよい。
pチャネル型トランジスタとしては、例えばシリコンを用いたトランジスタを適用すればよい。ただし、pチャネル型トランジスタは、シリコンを用いたトランジスタに限定されない。また、nチャネル型トランジスタとしては、実施の形態6で後述する酸化物膜を用いたトランジスタを用いればよい。
以下、メモリセル1040の書き込み、保持及び読み出しについて説明する。
書き込み時は、まずビット線BL及びビット線BLBにデータ0又はデータ1に対応する電位を印加する。
例えば、データ1を書き込みたい場合、ビット線BLを高電源電圧VDD、ビット線BLBを接地電位GNDとする。次に、ワード線WLにトランジスタ1045、トランジスタ1046のしきい値電圧に高電源電圧VDDを加えた電位以上の電位(VH)を印加する。
次に、ワード線WLの電位をトランジスタ1045、トランジスタ1046のしきい値電圧未満とすることで、フリップフロップに書き込んだデータ1が保持される。SRAMの場合、データの保持で流れる電流はトランジスタのリーク電流のみとなる。ここで、SRAMを構成するトランジスタの一部に上記オフ電流の低いトランジスタを適用することにより、データ保持のための待機電力を小さくすることができる。
読み出し時は、あらかじめビット線BL及びビット線BLBを高電源電圧VDDとする。次に、ワード線WLにVHを印加することで、ビット線BLは高電源電圧VDDのまま変化しないが、ビット線BLBはトランジスタ1045及びトランジスタ1043を介して放電し、接地電位GNDとなる。このビット線BLとビット線BLBとの電位差をセンスアンプ(図示せず)にて増幅することにより保持されたデータ1を読み出すことができる。
なお、データ値”0”を書き込む場合は、ビット線BLを接地電位GND、ビット線BLBを高電源電圧VDDとし、その後にワード線WLにVHを印加すればよい。次に、ワード線WLの電位をトランジスタ1045、トランジスタ1046のしきい値電圧未満とすることで、フリップフロップに書き込んだデータ0が保持される。読み出し時は、あらかじめビット線BL及びビット線BLBを高電源電圧VDDとし、ワード線WLにVHを印加することで、ビット線BLBは高電源電圧VDDのまま変化しないが、ビット線BLはトランジスタ1046及びトランジスタ1044を介して放電し、接地電位GNDとなる。このビット線BLとビット線BLBとの電位差をセンスアンプにて増幅することにより保持されたデータ値”0”を読み出すことができる。
以上のメモリセル1040により、待機電力の小さいSRAMを提供することができる。このようなSRAMは、MPU700のメモリ712のキャッシュメモリ、プロセッサ710等に適用することができる。
上述したように、酸化物半導体トランジスタはオフ電流が極めて小さいという優れた電気特性を有する。このような酸化物半導体トランジスタの電気特性を効果的に利用した2種類のメモリについて説明する。ここでは、それぞれのメモリを『DOSRAM』、『NOSRAM』と呼ぶことにする。
DOSRAMとは、Dynamic Oxide Semiconductor Random Access Memoryに由来する名称である。また、NOSRAMとは、Non−volatile Oxide Semiconductor Random Access Memoryに由来する名称である。DOSRAM、NOSRAMのメモリセルには、メモリセルの選択トランジスタ(スイッチング素子としてのトランジスタ)に酸化物半導体トランジスタが用いられている。
<メモリの構成例2;DOSRAM>
図22A、図22Bは、DOSRAMの構成の一例を示す回路図である。図22Aにはメモリセルアレイを示し、図22Bにはメモリセルを示す。図23は、複数のICチップを積層することで構成されたDOSRAMの模式的な分解斜視図である。
図22Aに示すように、DOSRAMのメモリセルアレイ1059(DOSRAM−MA)は、メモリセル1050、ビット線1051、ワード線1052、容量線1053、及びセンスアンプ1054を有する。
複数のメモリセル1050はアレイ状に配置されており、各メモリセル1050は、ビット線1051及びワード線1052に接続されている。ビット線1051にはセンスアンプ1054が接続されている。メモリセルアレイ1059の駆動回路からの制御信号により、センスアンプ1054からは、ビット線1051の電位がデータとして読み出される。
図22Bに示すように、メモリセル1050は、トランジスタ1055、及び容量素子1056を有する。トランジスタ1055は、ゲートがワード線1052と接続され、そのソースはビット線1051と接続され、そのドレインは容量素子1056の一方の端子に接続される。容量素子1056の他方の端子は容量線1053に接続される。
容量素子1056に保持された電圧は、トランジスタ1055のリーク電流によって時間が経つと徐々に低減していく。当初V0からV1まで充電された電圧は、時間が経過するとdata1を読み出す限界点であるVAまで低減する。この期間を保持期間T_1とする。すなわち、2値メモリセルの場合、保持期間T_1の間にリフレッシュをする必要がある。
例えば、トランジスタ1055のオフ電流が十分小さくない場合、容量素子1056に保持された電圧の時間変化が大きいため、保持期間T_1が短くなる。従って、頻繁にリフレッシュをする必要がある。リフレッシュの頻度が高まると、メモリの消費電力が高まってしまう。
トランジスタ1055のオフ電流が極めて小さいため、保持期間T_1を極めて長くすることができる。すなわち、リフレッシュの頻度を少なくすることが可能となるため、消費電力を低減することができる。例えば、オフ電流が1×10−21Aから1×10−25Aであるトランジスタ1055でメモリセルを構成すると、電力を供給せずに数日間から数十年間に渡ってデータを保持することが可能となる。従って、データ保持に必要な消費電力を削減することができる。
図23には、記憶容量の大きなDOSRAMの構成例を示す。DOSRAMは、メモリセルアレイが形成された複数のICチップ1060(1)−1060(n)と、各ICチップ1060に形成されたメモリセルアレイを動作させるための処理回路が形成されたICチップ1061を有する。図23のようなDOSRAMは、CPU、MPU等のプロセッサユニットの主記憶装置として好適である。
<メモリの構成例3;NOSRAM>
ここでは、NOSRAMの一例として、上記オフ電流の低いトランジスタを、メモリセルの選択トランジスタ(スイッチング素子としてのトランジスタ)に用い、シリコン材料等を用いたトランジスタをメモリセルの出力トランジスタに用いられた構造のメモリについて説明する。
図24Aは、NOSRAMのメモリセルの構成の一例を示す回路図であり、図24Bは図24Aに示すメモリセルの電気特性を示す図である。
図24Aに示すようにより、メモリセル1070(NOSRAM−Cell)は、トランジスタ1071、トランジスタ1072、及び容量素子1073を有する。トランジスタ1071に、酸化物半導体トランジスタが適用される。トランジスタ1071としてオフ電流の低いトランジスタを用いることにより、データの保持時間を長くすることができる。また、データを読み出す際にデータが失われないため、繰り返しデータを読み出すことができる。
トランジスタ1071は、ゲートがワード線1076と接続され、そのソースはソース線1074と接続され、そのドレインはトランジスタ1072のゲート及び容量素子1073の一方の端子と接続されている。容量素子1073の一方の端子をノード1079と呼ぶ。容量素子1073のもう一方の端子は容量線1078と接続される。トランジスタ1072のソースはソース線1075と接続され、同ドレインはドレイン線1077と接続される。
メモリセル1070のデータの保持機能は、ノード1079の電位に応じて、トランジスタ1072の見かけ上のしきい値電圧が変動することを利用したものである。図24Bは、容量線1078の電圧VCLに対するトランジスタ1072のソース−ドレイン間電流Id_2の変化を示すグラフである。
トランジスタ1071のスイッチング動作により、ノード1079の電位を調整することができる。例えば、ソース線1074の電位を高電源電圧VDDとする。このとき、ワード線1076の電位をトランジスタ1071のしきい値電圧Vthに高電源電圧VDDを加えた電位以上とすることで、ノード1079の電位をハイレベルにすることができる。また、ワード線1076の電位をトランジスタ1071のしきい値電圧Vth以下とすることで、ノード1079の電位をローレベルにすることができる。
そのため、トランジスタ1072の電圧−電流特性は、LOWで示した曲線か、HIGHで示した曲線のいずれかで示される。すなわち、LOWとは、VCL=0VのときのId_2が十分に小さい状態であり、ノード1079においてデータ値”0”が保持されている状態である。また、HIGHでは、VCL=0VのときのId_2が十分に大きい状態であり、ノード1079でデータ値”1”が保持されている状態である。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態6)
本実施の形態では、半導体装置の一例として、トランジスタ及びその作製方法等を説明する。
半導体装置のトランジスタの構造は特に限定されず、任意の構造とすることができる。トランジスタの構造として、ゲート電極の構造の違いにより、ボトムゲート構造、トップゲート構造、デュアルゲート構造に分類される。なお、デュアルゲート構造とは、チャネル形成領域の上下にゲート絶縁膜を介して配置された2つのゲート電極を有する構造のことをいう。
また、トランジスタの構造をチャネルの数で分類することがある。1つのチャネルが形成されるシングルゲート構造、複数のチャネルが形成されるマルチチャネル構造(マルチゲート構造と呼ばれることも或る)がある。マルチチャネル構造において、チャネルの数が、2つの場合はダブルゲート構造とよばれ、3つの場合はトリプルゲート構造と呼ばれる。
以下、図25A−図26Bを参照して、トランジスタの構造の3つの構成例を示す。これらの構成例においては、トランジスタはシングルゲート構造であるが、マルチゲート構造とすることができる。
<トランジスタの構成例1;ボトムゲート>
図25A−図25Cに、ボトムゲート型トランジスタの構成例を示す。図25Aは、トランジスタの平面図であり、図25Bは、切断線A1−A2による図25Aの断面図であり、図25Cは、切断線B1−B2による図25Aの断面図である。
トランジスタ421は、絶縁表面を有する基板400上に設けられたゲート電極401と、ゲート電極401上に設けられたゲート絶縁膜402と、ゲート絶縁膜402を介してゲート電極401と重畳する酸化物膜404と、酸化物膜404と接して設けられたソース電極405a及びドレイン電極405bとを有する。また、ソース電極405a及びドレイン電極405bを覆い、酸化物膜404と接するように絶縁膜406が設けられている。なお、基板400は、他の素子が形成された被素子形成基板であってもよい。
なお、酸化物膜404は、ソース電極405a及びドレイン電極405bに接する領域にn型化領域を有していてもよい。
<トランジスタの構成例2;トップゲート構造>
図26Aは、トップゲート構造のトランジスタの構成例を示す断面図である。
トランジスタ422は、絶縁表面を有する基板400上に設けられた絶縁膜408と、絶縁膜408上に設けられた酸化物膜404と、酸化物膜404に接して設けられたソース電極405a及びドレイン電極405bと、酸化物膜404、ソース電極405a及びドレイン電極405b上に設けられたゲート絶縁膜409と、ゲート絶縁膜409を介して酸化物膜404と重畳するゲート電極410とを有する。
なお、酸化物膜404は、ソース電極405a及びドレイン電極405bに接する領域にn型化領域403を有していてもよい。
<トランジスタの構成例3;デュアルゲート構造>
図26Bは、デュアルゲート構造のトランジスタの構成例を示す断面図である。デュアルゲート型トランジスタとは、ゲート絶縁膜を介してチャネル形成領域の上下にそれぞれゲート電極が設けられているトランジスタである。
トランジスタ423は、絶縁表面を有する基板400上に設けられたゲート電極401と、ゲート電極401上に設けられたゲート絶縁膜402と、ゲート絶縁膜402を介してゲート電極401と重畳する酸化物膜404と、酸化物膜404と接して設けられたソース電極405a及びドレイン電極405bと、ソース電極405a及びドレイン電極405bを覆い、酸化物膜404と接するゲート絶縁膜409と、ゲート絶縁膜409を介して酸化物膜404と重畳するゲート電極410とを有する。
なお、酸化物膜404のうち、ソース電極405a及びドレイン電極405bに接する領域にn型化領域403を有していてもよい。
<トランジスタの構成要素>
以下、トランジスタ(421−423)の各構成要素について説明する。
[導電層]
ゲート電極401及びゲート電極410としては、例えばAl、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、W等を有する層を用いることができる。
ソース電極405a及びドレイン電極405bとしては、例えばAl、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、W等を有する層を用いることができる。
[絶縁層]
ゲート絶縁膜402、絶縁膜406、ゲート絶縁膜409としては、例えば酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、又は酸化窒化アルミニウム膜を用いることができる。
なお、本明細書中では、酸化窒化物とは、酸素の含有量が窒素よりも多い化合物のことをいう。また、窒化酸化物とは、窒素の含有量が酸素よりも多い化合物のことをいう。
また、酸素が多く含まれる成膜条件で絶縁膜を成膜することにより、過剰酸素を含む絶縁膜を形成できる。また、より多くの過剰酸素を絶縁膜に含ませたい場合には、イオン注入法やイオンドーピング法やプラズマ処理によって酸素を添加すればよい。これにより、酸化物膜に酸素を供給することができる。
[酸化物膜;単層膜]
酸化物膜404としては、例えばIn酸化物、Zn酸化物、In−Zn酸化物、又はIn−Ga−Zn酸化物等の膜を適用することができる。
また、酸化物膜404としては、In−Ga−Zn酸化物のGaの一部若しくは全部を他の金属元素に置換した酸化物を用いることができる。この金属元素としては、例えばガリウムよりも多くの酸素原子と結合が可能な金属元素を用いればよく、例えばチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ゲルマニウム、錫、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム等がある。In−Ga−Zn酸化物中の一部または全てのGaを、これら金属元素のうち1つの元素、又は複数の元素と置換すればよい。これらの金属元素は、スタビライザーとしての機能を有し、酸化物膜中での酸素欠損の発生を抑制する機能を有していてもよい。なお、これらの金属元素の添加量は、酸化物が半導体として機能することが可能な量である。Gaよりも多くの酸素原子と結合が可能な金属元素を用い、さらには酸化物中に酸素を供給することにより、酸化物中の酸素欠陥を少なくすることができる。
酸化物膜404中の水素濃度は、二次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)において、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下とすることができる。
また、酸化物膜404中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とすることができる。
また、酸化物膜404中の炭素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とすることができる。
また、酸化物膜404中のシリコン濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とすることができる。
また、酸化物膜404中のナトリウム濃度は、SIMSにおいて、5×1016atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1015atoms/cm3以下とすることができる。また、酸化物膜404中のリチウム濃度は、SIMSにおいて、5×1015atoms/cm3以下、好ましくは1×1015atoms/cm3以下とすることができる。また、酸化物膜404中のカリウム濃度は、SIMSにおいて、5×1015atoms/cm3以下、好ましくは1×1015atoms/cm3以下とすることができる。
また、酸化物膜404では、昇温脱離ガス分光法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)分析によるm/zが2(水素分子等)である気体分子(原子)、m/zが18である気体分子(原子)、m/zが28である気体分子(原子)及びm/zが44である気体分子(原子)の放出量が、それぞれ1×1019個/cm3以下、好ましくは1×1018個/cm3以下であることが好ましい。
酸化物膜404には、例えば酸化物半導体膜を用いることができる。なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、CAAC−OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。酸化物半導体膜が複数の構造を有する場合、ナノビーム電子回折を用いることで構造解析が可能となる場合がある。
以下では、酸化物半導体膜の構造について説明する。
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに大別される。非単結晶酸化物半導体膜とは、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜、多結晶酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜などをいう。
まずは、CAAC−OS膜について説明する。なお、以下の説明において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
CAAC−OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
CAAC−OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって観察すると、明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
CAAC−OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
一方、CAAC−OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
なお、CAAC−OS膜に対し、電子回折を行うと、配向性を示すスポット(輝点)が観測される。例えば、CAAC−OS膜の上面に対し、例えば1nm以上30nm以下の電子線を用いる電子回折(ナノビーム電子回折ともいう。)を行うと、スポットが観測される。
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC−OS膜の結晶部は配向性を有していることを確認することができる。
なお、CAAC−OS膜に含まれるほとんどの結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体内に収まる大きさの場合も含まれる。ただし、CAAC−OS膜に含まれる複数の結晶部が連結することで、一つの大きな結晶領域を形成する場合がある。例えば、平面TEM像において、2500nm2以上、5μm2以上または1000μm2以上となる結晶領域が観察される場合がある。
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
一方、CAAC−OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO4の単結晶酸化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC−OS膜の場合は、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
以上のことから、CAAC−OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
なお、結晶部は、CAAC−OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC−OS膜の形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
また、CAAC−OS膜中において、c軸配向した結晶部の分布が均一でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の結晶部が、CAAC−OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりもc軸配向した結晶部の割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域が変質し、部分的にc軸配向した結晶部の割合の異なる領域が形成されることもある。
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
CAAC−OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
また、CAAC−OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源となることがある。
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
CAAC−OS膜の形成では、成膜中に、水素や水等を膜中に含ませないようにすることにより、酸化物膜404に含まれる不純物濃度を低減する。また、酸化物膜404の成膜後に、加熱処理を行うことにより、酸化物膜に含まれる水素や水等を除去することによって、不純物濃度を低減してもよい。この後に、酸化物膜404に酸素を供給し、酸素欠損を補填することにより、酸化物膜404を高純度化することができる。また、酸化物膜に酸素を添加してもよい。高純度化された酸化物膜は、i型(真性半導体)又はi型に限りなく近い。また、i型に限りなく近い酸化物膜のキャリア密度は、1×1017/cm3未満、1×1015/cm3未満、又は1×1013/cm3未満である。
なお、酸化物半導体膜に酸素を供給することで、酸化物半導体膜の酸素欠損密度を低減することができる場合がある。酸素欠損は、酸素が入ることで安定状態とすることができる。また、電気的に中性になる。例えば、酸化物半導体膜中、又は酸化物半導体膜の近傍に設けられた絶縁膜中が過剰酸素を有することで、酸化物半導体膜の酸素欠損を効果的に低減することができる。過剰酸素とは、例えば、化学量論的組成を超えて含まれる酸素をいう。又は、過剰酸素とは、例えば、加熱することで放出される酸素をいう。酸化物半導体膜中で、酸素欠損は、隣接する酸素原子を捕獲していくことで、見かけ上移動することがある。同様に、過剰酸素も酸化物半導体膜中を見かけ上移動することがある。
このように、酸素欠損は、水素又は酸素のいずれかによって、準安定状態又は安定状態となることがある。酸化物半導体膜中の水素濃度が高い場合、酸素欠損に捕獲される水素が多くなる。一方、酸化物半導体膜中の水素濃度が低い場合、酸素欠損に捕獲される水素が少なくなる。
[酸化物膜;積層膜]
さらに、酸化物膜404は積層膜でもよい。酸化物積層膜について以下に説明する。酸化物積層膜の構造例を図27A及び図27Bに示す。また、図27A及び図27Bは、酸化物膜404として酸化物積層膜が用いられたトップゲート型トランジスタ422(図26A)の部分拡大図に対応する。
図27Aに示すように、酸化物積層膜441は、酸化物層461、酸化物層462、及び酸化物層463を有する。酸化物層461は、トランジスタのバックチャネル側の絶縁膜と酸化物層462との間に存在する層である。酸化物層463は、トランジスタのゲート絶縁膜409と酸化物層462との間に存在する層である。
図27Bに示すように、酸化物積層膜442は、酸化物層462、及び酸化物層463を有する。図27Bの酸化物積層膜442は、図27Aの酸化物積層膜441において、酸化物層461が形成されていない膜に対応する。
酸化物層461及び酸化物層463は、酸化物層462を構成する金属元素を一種以上含む酸化物層である。
酸化物層462は、上記酸化物膜404に適用可能な酸化物を用いて形成される。
酸化物層461としては、In−M−Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、Ce又はHf等の金属)で表記され、酸化物層462よりもMの原子数比が高い酸化物層を含む。具体的には、酸化物層461として、酸化物層462よりも前述の元素を1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比で含む酸化物層を用いる。前述の元素はインジウムよりも酸素と強く結合するため、酸素欠損が酸化物層に生じることを抑制することができる機能を有する。即ち、酸化物層461は酸化物層462よりも酸素欠損が生じにくい酸化物層である。
酸化物層463としては、酸化物層461と同様にIn−M−Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、Ce又はHf等の金属)で表記され、酸化物層462よりもMの原子数比が高い酸化物層を含む。具体的には、酸化物層463として、酸化物層462よりも前述の元素を1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比で含む酸化物層を用いる。
つまり、酸化物層461、酸化物層462、酸化物層463が、少なくともインジウム、亜鉛及びM(Al、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、Ce又はHf等の金属)を含むIn−M−Zn酸化物であるとき、酸化物層461をIn:M:Zn=x1:y1:z1[原子数比]、酸化物層462をIn:M:Zn=x2:y2:z2[原子数比]、酸化物層463をIn:M:Zn=x3:y3:z3[原子数比]とすると、y1/x1及びy3/x3がy2/x2よりも大きくなることが好ましい。y1/x1及びy3/x3はy2/x2よりも1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上とする。このとき、酸化物層462において、y2がx2以上であるとトランジスタの電気特性を安定させることができる。ただし、y2がx2の3倍以上になると、トランジスタの電界効果移動度が低下してしまうため、y2はx2の3倍未満であることが好ましい。
なお、酸化物層461がIn−M−Zn酸化物であるとき、InとMの原子数比率は好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%以上とする。また、酸化物層462がIn−M−Zn酸化物であるとき、InとMの原子数比率は好ましくはInが25atomic%以上、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%以上、Mが66atomic%未満とする。また、酸化物層463がIn−M−Zn酸化物であるとき、InとMの原子数比率は好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%以上とする。なお、上記のInとMの原子数比率はInおよびMの和を100atomic%としたときの値である。
なお、酸化物層461と酸化物層463とは、異なる構成元素を含む層としてもよいし、同じ構成元素を同一の原子数比で、又は異なる原子数比で含む層としてもよい。
酸化物層461、酸化物層462、及び酸化物層463には、例えば、インジウム、亜鉛及びガリウムを含んだ酸化物半導体を用いることができる。具体的には、酸化物層461としては、In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、In:Ga:Zn=1:6:4[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、In:Ga:Zn=1:9:6[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、又はその近傍の組成を有する酸化物を用いることができる。酸化物層462としては、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、In:Ga:Zn=3:1:2[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、又はその近傍の組成を有する酸化物を用いることができる。酸化物層463としては、In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、In:Ga:Zn=1:6:4[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、In:Ga:Zn=1:9:6[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、又はその近傍の組成を有する酸化物を用いることができる。
酸化物層461の厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下とする。また、酸化物層462の厚さは、3nm以上150nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。酸化物層463の厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下とする。
なお、酸化物層461及び酸化物層463は、酸化物層462に用いる材料よりもインジウムの原子数比が少ない材料を用いる。酸化物層中のインジウムやガリウム等の含有量は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)や、X線電子分光法(XPS)で比較することができる。
また、酸化物層461及び酸化物層463は、酸化物層462を構成する金属元素を一種以上含み、伝導帯下端のエネルギーが酸化物層462よりも、0.05eV、0.07eV、0.1eV、0.15eVのいずれか以上であって、2eV、1eV、0.5eV、0.4eVのいずれか以下の範囲で真空準位に近い酸化物半導体で形成することが好ましい。
なお、酸化物層461、酸化物層462、及び酸化物層463は、CAAC−OS膜の他に、非晶質酸化物膜、単結晶酸化物膜、多結晶酸化物膜、及び微結晶酸化物膜で構成することもできる。酸化物層462は、結晶部を含むCAAC−OS膜であり、酸化物層461及び酸化物層463は、必ずしも結晶性を有していなくてもよく、非晶質酸化物膜であってもよい。例えば、酸化物層461を非晶質酸化物膜とし、酸化物層462及び酸化物層463をCAAC−OS膜とする。このように、チャネルが形成される酸化物層462をCAAC−OS膜とすることにより、トランジスタに安定した電気特性を付与することができる。また、酸化物層461を非晶質酸化物膜とすることにより、酸化物層462の形成に対する酸化物層461の影響を低減できるため、酸化物層462がCAAC−OS膜になりやすくなる。
このような構造において、トランジスタのゲート電極に電界を印加すると、酸化物積層膜(441、442)のうち、伝導帯下端のエネルギーが最も小さい酸化物層462にチャネルが形成される。すなわち、酸化物層462とゲート絶縁膜409との間に酸化物層463が形成されていることよって、トランジスタのチャネルをゲート絶縁膜409と接しない構造とすることができる。
ここで、酸化物積層膜441のバンド構造を説明する。
酸化物積層膜441のバンド構造は、例えば以下の方法を用いて特定することができる。例えば分光エリプソメータを用いて酸化物層461乃至酸化物層463のエネルギーギャップ、酸化物層461乃至酸化物層463のそれぞれの界面のエネルギーギャップを測定する。次に、紫外線光電子分光分析(UPSともいう)装置を用いて酸化物層461乃至酸化物層463のそれぞれの真空準位と価電子帯上端のエネルギー差を測定する。次に、真空準位と価電子帯上端のエネルギー差と、各層のエネルギーギャップとの差分として算出される真空準位と伝導帯下端のエネルギー差(電子親和力)をプロットする。以上の方法により、酸化物積層膜441のバンド構造を特定することができる。ここでは、酸化物層461及び酸化物層463をエネルギーギャップが3.15eVであるIn−Ga−Zn酸化物とし、酸化物層462をエネルギーギャップが2.8eVであるIn−Ga−Zn酸化物とする。さらに、酸化物層461と酸化物層462との界面近傍のエネルギーギャップを3eV、酸化物層463と酸化物層462との界面近傍のエネルギーギャップを3eVとする。
上記の方法により特定された酸化物積層膜441のバンド構造の模式図を図28Aに示す。図28Aは、酸化物層461及び酸化物層463と接する絶縁膜(408、409)が酸化シリコン膜の場合のバンド構造の模式図であり、その縦軸は電子エネルギー(eV)を表し、その横軸は距離を表している。また、EcI1及びEcI2は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーであり、EcS1は酸化物層461の伝導帯下端のエネルギーであり、EcS2は酸化物層462の伝導帯下端のエネルギーであり、EcS3は酸化物層463の伝導帯下端のエネルギーである。
図28Aに示すように、酸化物層461、酸化物層462、酸化物層463において、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化する。これは、酸化物層461、酸化物層462、酸化物層463の組成が近似することにより、酸素が相互に拡散しやすい点からも理解される。
なお、図28Aでは酸化物層461及び酸化物層463が同様のエネルギーギャップを有する酸化物層である場合について示したが、エネルギーギャップが異なる酸化物層でもよい。例えば、EcS3よりもEcS1が高いエネルギーを有する場合は、酸化物積層膜441のバンド構造は、図28Bのように示される。また、EcS3がEcS1よりも高いエネルギーであってもよい。
また、図28A、図28Bは、酸化物層462がウェル(井戸)となり、酸化物積層膜441が用いられたトランジスタでは、チャネルが酸化物層462に形成されることを示している。なお、酸化物積層膜441は伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化しているため、U字型井戸(U Shape Well)とも呼ぶことができる。また、このような構成で形成されたチャネルを埋め込みチャネルということもできる。
酸化物層461及び酸化物層463は、酸化物層462を構成する金属元素を一種以上含む酸化物層であるから、酸化物積層膜441は主成分を共通して積層された酸化物積層膜ともいえる。主成分を共通として積層された酸化物積層膜は、各層を単に積層するのではなく連続接合(ここでは、特に伝導帯下端のエネルギーが各層の間で連続的に変化するU字型の井戸構造)が形成されるように作製する。なぜなら、各層の界面にトラップ中心や再結合中心のような欠陥準位を形成するような不純物が混在していると、エネルギーバンドの連続性が失われ、界面でキャリアがトラップあるいは再結合により消滅してしまうためである。
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装置(スパッタリング装置)を用いて各層を大気に触れさせることなく連続して積層することが必要となる。スパッタリング装置における各チャンバーは、酸化物半導体にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空排気(5×10−7Pa〜1×10−4Pa程度まで)することが好ましい。又は、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に気体が逆流しないようにしておくことが好ましい。
高純度真性酸化物半導体を得るためには、チャンバー内を高真空排気するのみならずスパッタガスの高純度化も必要である。スパッタガスとして用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が−40℃以下、好ましくは−80℃以下、−100℃以下、−120℃以下にまで高純度化したガスを用いることで酸化物半導体に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。また、スパッタリング装置のリークレートが3×10−6Pa・m3/s以下、好ましくは1×10−6Pa・m3/s以下であることが好ましい。
なお、成膜していない期間においてもチャンバー内には、希ガスまたは酸素ガス等を微量流し続けることにより、成膜室の圧力を高く保てるため、真空ポンプ等から不純物(例えばシリコン、炭素等)が逆流することを抑制できる。また、配管、その他の部材等から不純物が放出することを抑制できる。従って、酸化物膜に対する不純物の混入を低減することができる。例えば、アルゴンを1sccm以上500sccm以下、好ましくは2sccm以上200sccm以下、さらに好ましくは5sccm以上100sccm以下流せばよい。
酸化物層461及び酸化物層463はバリア層として機能し、酸化物積層膜441に接する絶縁膜と、酸化物積層膜441との界面に形成されるトラップ準位の影響が、トランジスタのキャリアの主な経路(キャリアパス)となる酸化物層462へと及ぶことを抑制することができる。
例えば、酸化物半導体層の酸素欠損の影響は、酸化物半導体のエネルギーギャップ内の深いエネルギー位置に存在する局在準位として顕在化する。このような局在準位にキャリアがトラップされることで、トランジスタの信頼性が低下するため、酸化物半導体層に含まれる酸素欠損を低減することが必要となる。酸化物積層膜441においては、酸化物層462と比較して酸素欠損の生じにくい酸化物層(461、463)を酸化物層462の上下に接して設けることで、酸化物層462における酸素欠損を低減することができる。例えば、酸化物層462は、一定光電流測定法(CPMともいう)により測定された局在準位による吸収係数を1×10−3/cm未満、好ましくは1×10−4/cm未満とすることができる。
なお、チャネル形成領域とは、酸化物積層膜441(酸化物層461、酸化物層462、及び酸化物層463)のうち、ゲート電極410が重畳している領域をいう。ただし、酸化物積層膜441中にn型化領域403が形成されうる場合においては、酸化物積層膜441のうち、ゲート電極410が重畳し、かつn型化領域403に挟まれた領域がチャネル形成領域となる。このように、チャネル形成領域は、酸化物積層膜441のうち、ゲート電極410が重畳している領域に主に形成され、酸化物積層膜441の半導体特性に依存する。したがって、酸化物積層膜441のゲート電極410が重畳した領域は、酸化物積層膜441がi型の場合にはチャネル形成領域であり、酸化物積層膜441がn型の場合にはチャネル形成領域でない場合がある。なお、チャネルとは、チャネル形成領域において、電流が主として流れる経路をいう。
また、酸化物層462が、構成元素の異なる絶縁層(例えば、酸化シリコンを含む下地絶縁層)と接する場合、2層の界面に界面準位が形成され、該界面準位はチャネルを形成することがある。このような場合、しきい値電圧の異なる別のトランジスタが出現し、トランジスタの見かけ上のしきい値電圧が変動することがある。しかしながら、酸化物積層膜441においては酸化物層462を構成する金属元素を一種以上含んで酸化物層461が構成されるため、酸化物層461と酸化物層462の界面に界面準位を形成しにくくなる。よって酸化物層461を設けることにより、トランジスタのしきい値電圧等の電気特性のばらつきを低減することができる。
また、ゲート絶縁膜409と酸化物層462との界面にチャネルが形成される場合、該界面で界面散乱が起こり、トランジスタの電界効果移動度が低くなる。しかしながら、酸化物積層膜441においては、酸化物層462を構成する金属元素を一種以上含んで酸化物層463が構成されるため、酸化物層462と酸化物層463との界面ではキャリアの散乱が起こりにくく、トランジスタの電界効果移動度を高くすることができる。
また、酸化物層461及び酸化物層463は、酸化物積層膜441に接する絶縁層の構成元素が、酸化物層462へ混入して、不純物による準位が形成されることを抑制するためのバリア層としても機能する。
例えば、酸化物積層膜441に接する絶縁層として、シリコンを含む絶縁層を用いる場合、該絶縁層中のシリコン、又は絶縁層中に混入されうる炭素が、酸化物層461又は酸化物層463の中へ界面から数nm程度まで混入することがある。シリコン、炭素等の不純物が酸化物半導体層中に入ると不純物準位を形成し、不純物準位がドナーとなり電子を生成することでn型化することがある。
しかしながら、酸化物層461及び酸化物層463の膜厚が、数nmよりも厚ければ、混入したシリコン、炭素等の不純物が酸化物層462にまで到達しないため、不純物準位の影響は低減される。
ここで、酸化物層462に含まれるシリコンの濃度は3×1018atoms/cm3以下、好ましくは3×1017atoms/cm3以下とする。また、酸化物層462に含まれる炭素の濃度は3×1018atoms/cm3以下、好ましくは3×1017atoms/cm3以下とする。特に酸化物層462に第14族元素であるシリコン、及び炭素が多く混入しないように、酸化物層461及び酸化物層463で、キャリアパスとなる酸化物層462を挟む構成、又は囲む構成とすることが好ましい。すなわち、酸化物層462に含まれるシリコン及び炭素の濃度は、酸化物層461及び酸化物層463に含まれるシリコン及び炭素の濃度よりも低いことが好ましい。
また、水素や水分が不純物として酸化物半導体層に含まれてしまうとドナーを作りn型化するため、酸化物積層膜441の上方に水素や水分が外部から侵入することを防止する保護絶縁層(窒化シリコン層等)を設けることは、井戸型構造を実現する上で有用である。
さらに、図29A−図29Cに、酸化物積層膜の他の構成例を示す。図29A−図29Cでは、トップゲート型のトランジスタのチャネル幅方向における酸化物積層膜の断面構造を示す。
図29Aにおいては、酸化物積層膜443は、絶縁膜408の上に酸化物層461と、酸化物層461上に設けられた酸化物層462と、酸化物層462上に設けられた酸化物層463と、酸化物層461の側面、酸化物層462の側面、酸化物層463の側面に接して設けられた酸化物層464とを有する。酸化物層462は、酸化物層461、酸化物層463、及び酸化物層464により囲まれている。また、酸化物層464は、ゲート絶縁膜409に接している。
また、酸化物積層膜443は、任意の一又は複数の曲率半径で定義される曲面を有する。そのため、酸化物層464のゲート絶縁膜409に接している面の少なくとも一部は、曲面である。このような酸化物積層膜443を設ける場合、図29Aに示すように、ゲート電極410が絶縁膜408に接してもよい。
酸化物層464は、例えば酸化物層461に適用可能な材料を含む。酸化物層464は、例えばドライエッチング法等により、酸化物層461、酸化物層462、及び酸化物層463をエッチングする際に、酸化物層461の反応生成物が酸化物層462及び酸化物層463の側面に付着することにより生成される。
なお、酸化物層461、酸化物層463、及び酸化物層464は厳密に区別のつかない場合がある。そのため、酸化物層462が酸化物に囲まれていると言い換えることもできる。
また、酸化物積層膜を図29B、及び図29Cに示す構造とすることができる。図29Bに示すように、酸化物積層膜444を、端部に傾斜(テーパー角)領域を有する構造とすることができる。酸化物積層膜444の端部に傾斜(テーパー角)領域を設けることにより、ゲート絶縁膜409の被覆性を向上させることができる。
また、図29Cに示す酸化物積層膜445のように、酸化物積層膜444が有するテーパ領域の一部が削られた構造の酸化物積層膜とすることもできる。
酸化物積層膜443−445を有する示すトランジスタにおいて、酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜の上側及び下側に接して設けられる酸化物層の積層でなる酸化物積層膜の断面は、曲面又は傾斜領域を有することになる。酸化物積層膜の断面に曲面又は傾斜領域を有することで、酸化物積層膜上に形成される膜の被覆性を向上させることができる。よって、酸化物積層膜上に形成された膜を均一に形成することができ、膜密度の低い領域や、膜が形成されていない領域から酸化物積層膜中に不純物元素が入り込み、トランジスタの電気特性の劣化を抑制し、安定した特性のトランジスタとすることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態7)
本実施の形態では、酸化物半導体トランジスタを有する半導体装置、およびその作製方法について説明する。
図30は、半導体装置の積層構造の一例を説明する断面図である。図30には、半導体装置を構成する半導体素子として、トランジスタ1171、トランジスタ1172、及び容量素子1178が示されている。
上部のトランジスタ1171として、酸化物半導体トランジスタが形成されている。下部のトランジスタ1172は、酸化物半導体以外の半導体(例えば、シリコン)で作製されトランジスタである。トランジスタ1172を作製するための半導体としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、又はガリウムヒ素等がある。また、トランジスタ1172を高速動作させる場合は、単結晶半導体からトランジスタ1172を作製することが好ましい。
単結晶半導体を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体トランジスタは、オフ電流が数yA/μm〜数zA/μm程度という、優れたオフ電流特性を有する。これら2種類のトランジスタを組み合わせることで、回路の性能を向上させることができる。本実施の形態を適用して、例えば、クーロン・カウンタ(100、200)、蓄電装置300、MPU700等を作製することができる。
例えば、本実施の形態を適用することで、誤差の少ないクーロン・カウンタを作製することができる。また、高速動作可能で、かつ消費電力が少ないMPUを作製することができる。
図30の例では、トランジスタ1172は、バルク状の半導体基板1080を用いて作製されているが、バルク状の半導体基板の替わりに、SOI(Silicon On Insulator)基板から、トランジスタ1172を作製することができる。
SOI基板(SOIウェハともいう)は、半導体基板と、半導体基板上の埋め込み酸化膜(BOX(Buried Oxide)層ともいう)と、埋め込み酸化膜上の半導体膜(以下SOI層という)とからなる。該SOI基板は、シリコン基板の所定の深さに酸素イオンを注入して高温処理によってBOX層とSOI層を形成したSIMOX(Separation by IMplanted OXgen:SUMCO TECHXIV株式会社の登録商標)基板や、陽極化成による多孔質シリコン層を用いたELTRAN(Epitaxial Layer TRANsfer:キヤノン株式会社の登録商標)基板、熱酸化膜を形成した基板(デバイスウェハ)に水素イオンを注入して脆弱層を形成し、他のシリコン基板(ハンドルウェハ)と貼り合わせ後に熱処理により脆弱層からハンドルウェハを剥離してSOI層を形成したUNIBOND(SOITEC社の登録商標)基板等を適宜用いることができる。
一般的にはSOI基板はシリコン基板上にBOX層を介してシリコン薄膜からなるSOI層が設けられたものを指すが、シリコンに限られず、他の単結晶半導体材料を用いてもよい。また、SOI基板にはガラス基板等の絶縁基板上に絶縁層を介して半導体層が設けられた構成のものが含まれるものとする。
半導体基板の替わりに、SOI基板を用いた場合には、下部のトランジスタのチャネル領域に上記のSOI層を用いる。SOI基板を用いたトランジスタを用いることで、バルクシリコン基板を用いた場合と比較して、BOX層の存在により寄生容量が小さい、α線等の入射によるソフトエラーの確率が低い、寄生トランジスタの形成によるラッチアップが生じない、素子が容易に絶縁分離することができる等の多くの利点を有する。
また、SOI層は単結晶シリコン等の単結晶半導体からなる。従って、下部のトランジスタにSOI層を用いることで、半導体装置の動作を高速化することができる。
トランジスタ1172は、STI1085(Shallow Trench Isolation)によって他の素子と絶縁分離されている。STI1085を用いることにより、LOCOSによる素子分離法で発生した素子分離部のバーズビークを抑制することができ、素子分離部の縮小等が可能となる。一方で、構造の微細化小型化が要求されない半導体装置においてはSTI1085の形成は必ずしも必要ではなく、LOCOS等の素子分離手段を用いることもできる。なお、トランジスタ1172のしきい値を制御するため、STI1085間にはウェル1081が形成される。
トランジスタ1172は、基板1080中に設けられたチャネル形成領域と、チャネル形成領域を挟むように設けられた不純物領域1112(ソース領域及びドレイン領域ともいう)と、チャネル形成領域上に設けられたゲート絶縁膜1113、1114と、ゲート絶縁膜1113、1114上にチャネル形成領域と重畳するように設けられたゲート電極1116、1118とを有する。トランジスタ1172のゲート電極は、加工精度を高めるための第1の材料からなるゲート電極1116と、配線として低抵抗化を目的とした第2の材料からなるゲート電極1118を積層した構造とすることができるが、この構造に限らず、適宜要求される仕様に応じて、トランジスタ1172のゲート電極の材料、積層数、形状等を調整することができる。なお、図において、明示的にはソース電極やドレイン電極を有しない場合があるが、便宜上このような状態を含めてトランジスタとよぶ場合がある。
また、基板1080中に設けられた不純物領域1112には、図示しないが、コンタクトプラグが接続されている。ここでコンタクトプラグは、トランジスタ1172等のソース電極やドレイン電極としても機能する。また、不純物領域1112とチャネル形成領域との間には、不純物領域1112と異なる不純物領域1111が設けられている。不純物領域1111は、導入された不純物の濃度によって、LDD領域やエクステンション領域としてチャネル形成領域近傍の電界分布を制御することができる機能を果たす。ゲート電極1116、1118の側壁には絶縁膜1117を介してサイドウォール絶縁膜1115を有する。絶縁膜1117やサイドウォール絶縁膜1115を用いることで、LDD領域やエクステンション領域を形成することができる。
また、トランジスタ1172は、層間絶縁膜1088−1092により被覆されている。層間絶縁膜1088には保護膜としての機能を持たせることができ、外部からチャネル形成領域への不純物の侵入を防止することができる。また、層間絶縁膜1088をCVD法による窒化シリコン等の材料とすることで、チャネル形成領域に単結晶シリコンを用いた場合には加熱処理によって水素化を行うことができる。また、層間絶縁膜1088に引張応力又は圧縮応力を有する絶縁膜を用いることで、チャネル形成領域を構成する半導体材料に歪みを与えることができる。nチャネル型のトランジスタの場合にはチャネル形成領域となるシリコン材料に引張応力を、pチャネル型のトランジスタの場合にはチャネル形成領域となるシリコン材料に圧縮応力を付加することで、各トランジスタの移動度を向上させることができる。
なお、トランジスタ1172を、フィン型構造(トライゲート構造、Ωゲート構造ともいう)のトランジスタとしてもよい。フィン型構造とは、半導体基板の一部を板状の突起形状に加工し、突起形状の長尺方向を交差するようにゲート電極を設けた構造である。ゲート電極は、ゲート絶縁膜を介して突起構造の上面及び側面を覆う。トランジスタ1172をフィン型構造のトランジスタとすることで、チャネル幅を縮小してトランジスタの集積化を図ることができる。また、電流を多く流すことができ、加えて制御効率を向上させることができるため、トランジスタのオフ時の電流及び閾値電圧を低減することができる。
容量素子1178は、絶縁膜1083を誘電体膜とする。その一方の電極(端子)は、不純物領域1082で構成され、他方の電極(端子)は、電極1084及び電極1087とで構成されている。絶縁膜1083は、トランジスタ1172のゲート絶縁膜1113、1114と同一の膜から形成されている。電極1084及び電極1087は、トランジスタ1172のゲート電極1116、1118と同一の膜から形成されている。また、不純物領域1082は、トランジスタ1172が有する不純物領域1112と同一のプロセスを経て形成することができる。
トランジスタ1171は、回路構成に応じて半導体基板1080に作製される半導体素子、配線等に接続される。図30においては、トランジスタ1171のソース又はドレインがトランジスタ1172のゲートと電気的に接続されている例を示している。
導電層1174は、トランジスタ1171のソース電極又はドレイン電極としての機能を有していてもよい。一対の導電層1174は、酸素と結合し易い導電材料で形成することが好ましい。例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、W等を用いることができる。後のプロセス温度を比較的高くすることができること等から、融点の高いWを用いることが特に好ましい。なお、酸素と結合し易い導電材料には、酸素が拡散又は移動し易い材料も含まれる。
酸素と結合し易い導電材料と酸化物層を接触させると、酸化物層中の酸素が、酸素と結合し易い導電材料側に拡散又は移動する現象が起こる。トランジスタの作製工程には、いくつかの加熱工程があることから、上記現象により、酸化物層のソース電極層及びドレイン電極層と接触した近傍の領域に酸素欠損が発生し、当該領域はn型化する。したがって、n型化した当該領域はトランジスタのソース又はドレインとして作用させることができる。
チャネル長が短いトランジスタを形成する場合、上記酸素欠損の発生によってn型化した領域がトランジスタのチャネル長方向に延在してしまうことがある。この場合、トランジスタの電気特性には、しきい値電圧のシフトやゲート電圧でオンオフの制御ができない状態(導通状態)が現れる。そのため、チャネル長が短いトランジスタを形成する場合は、ソース電極及びドレイン電極に酸素と結合し易い導電材料を用いることは好ましくない。
したがって、本実施の形態に示すようにソース電極層及びドレイン電極層を積層とし、チャネル長を定める一対の導電層1175には、酸素と結合しにくい導電材料を用いる。当該導電材料としては、例えば、窒化タンタル、窒化チタン等の導電性窒化物、又はルテニウム等を用いることが好ましい。なお、酸素と結合しにくい導電材料には、酸素が拡散又は移動しにくい材料も含まれる。
上記酸素と結合しにくい導電材料を一対の導電層1175に用いることによって、酸化物膜1173に形成されるチャネル形成領域に酸素欠損が形成されることを抑制することができ、チャネルのn型化を抑えることができる。したがって、チャネル長が短いトランジスタであっても良好な電気特性を得ることができる。
なお、上記酸素と結合しにくい導電材料のみでソース電極層及びドレイン電極層を形成すると、酸化物膜1173とのコンタクト抵抗が高くなりすぎることから、一対の導電層1174を、酸化物膜1173上に形成し、導電層1174を覆うように導電層1175を形成することが好ましい。
絶縁膜1176は、ゲート絶縁膜としての機能を有していてもよい。絶縁膜1176としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム及び酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を用いることができる。また、絶縁膜1176は上記材料の積層であってもよい。
導電層1177は、ゲート電極としての機能を有していてもよい。導電層1177は、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Mo、Ru、Ag、Ta及びW等の導電膜を用いることができる。また、導電層1177は、上記材料の積層であってもよい。
絶縁膜1102には、酸素の拡散又は移動が少ない材料を用いると良い。また、絶縁膜1102は、膜中に水素の含有量が少ない材料を用いると良い。絶縁膜1102中の水素の含有量としては、好ましくは5×1019atoms/cm3未満、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3未満とする。絶縁膜1102中の水素の含有量を上記数値とすることによって、トランジスタ1171のオフ電流を低くすることができる。例えば、絶縁膜1102としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜を用いるとよい。
絶縁膜1102を覆って、更に層間絶縁膜1104、層間絶縁膜1105が形成されている。
また、トランジスタ1171においてチャネル長は短く、5nm以上60nm未満、好ましくは10nm以上40nm以下とする。トランジスタ1171は、酸化物半導体膜をチャネル領域に用いているため、短チャネル効果を有さない、又はその効果が極めて少ないため、チャネル長を短くしてもスイッチング素子としての優れた性能を示す。
トランジスタ1171のソース又はドレインの一方は、コンタクトプラグ1103bを介して配線1107aに接続され、その他方は、コンタクトプラグ1103cを介して配線1107bに接続されている。
ここでは、コンタクトプラグ1086a、1086b、1103a、1103b、1103c等は、それぞれ柱状又は壁状の形状を有している。これらのコンタクトプラグは層間絶縁膜に設けられた開口(ビア)内に導電材料を埋め込むことで形成される。導電材料として、タングステン、ポリシリコン等の埋め込み性の高い導電材料を用いることができる。また、図示しないが、当該材料の側面及び底面を、チタン膜、窒化チタン膜又はこれらの積層膜等からなるバリア膜(拡散防止膜)で覆うことができる。この場合、バリア膜も含めてコンタクトプラグという。
なお、コンタクトプラグは、接続用導体部、埋め込みプラグ、あるいは単にプラグとも呼ばれることがある。
配線1094、1098、1107a、1107bは、それぞれ層間絶縁膜1091、1096、1108中に埋め込まれている。これら配線1094、1098、1107a、1107bは、例えば銅、アルミニウム等の低抵抗な導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗な導電性材料を用いることで、配線1094、1098、1107a、1107bを伝播する信号のRC遅延を低減することができる。
配線1094、1098、1107a、1107bに銅を用いる場合には、銅のチャネル形成領域への拡散を防止するため、バリア膜1093、1097、1106を形成する。これらのバリア膜として、例えば窒化タンタル、窒化タンタルとタンタルとの積層、窒化チタン、窒化チタンとチタンとの積層等による膜を用いることができるが、配線材料の拡散防止機能、及び配線材料や下地膜等との密着性が確保される程度においてこれらの材料からなる膜に限られない。バリア膜1093、1097、1106は配線1094、1098、1107a、1107bとは別個の層として形成しても良く、バリア膜となる材料を配線材料中に含有させ、加熱処理によって層間絶縁膜1091、1096、1108に設けられた開口の内壁に析出させて形成しても良い。
層間絶縁膜1091、1096、1108は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、BPSG(Boron Phosphorus Silicate Glass)、PSG(Phosphorus Silicate Glass)、炭素を添加した酸化シリコン(SiOC)、フッ素を添加した酸化シリコン(SiOF)、Si(OC2H5)4を原料とした酸化シリコンで形成することができる。また、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)を原料とした膜(HSG膜)、MSQ(Methyl Silsesquioxane)を原料とした膜(MSG膜)、OSG(Organo Silicate Glass)を原料とした膜(OSQ膜)、有機ポリマー系の材料で形成された膜等も、これら層間絶縁膜に用いることができる。
特に半導体装置の微細化を進める場合には、配線間の寄生容量が顕著になり信号遅延が増大するため酸化シリコンの比誘電率(k=4.0〜4.5)では高く、kが3.0以下の材料を用いることが好ましい。また該層間絶縁膜に配線を埋め込んだ後にCMP処理を行うため、層間絶縁膜には機械的強度が要求される。この機械的強度を確保することができる限りにおいて、これらを多孔質(ポーラス)化させて低誘電率化することができる。層間絶縁膜1091、1096、1108は、スパッタリング法、CVD法、スピンコート法(Spin On Glass:SOGともいう)を含む塗布法等により形成する。
層間絶縁膜1091、1096、1108上には、層間絶縁膜1092、1100、1109を設けても良い。層間絶縁膜1092、1100、1109は、配線材料を層間絶縁膜1091、1096、1108中に埋め込んだ後、CMP等による平坦化処理を行う際のエッチングストッパとして機能する。
配線1094、1098、1107a、1107b上には、バリア膜1095、1099、1110が設けられている。銅等の配線材料の拡散を防止することを目的とした膜である。バリア膜1095、1099、1110は、配線1094、1098、1107a、1107bの上面のみに限らず、層間絶縁膜1091、1096、1108上に形成してもよい。バリア膜1095、1099、1110は、窒化シリコンやSiC、SiBON等の絶縁性材料で形成することができる。ただし、バリア膜1095、1099、1110の膜厚が厚い場合には配線間容量を増加させる要因となるため、バリア性を有し、かつ低誘電率の材料を選択することが好ましい。
配線1098は上部の配線部分と、下部のビアホール部分から構成される。下部のビアホール部分は下層の配線1094と接続する。該構造の配線1098はいわゆるデュアルダマシン法等により形成することができる。また、上下層の配線間の接続はデュアルダマシン法によらず、コンタクトプラグを用いて接続してもよい。
トランジスタ1171のソース又はドレインの一方は、容量素子1178の上部電極及びトランジスタ1172のゲート電極と電気的に接続する。
トランジスタ1172及び容量素子1178の上方には、配線1094が設けられている。容量素子の上部電極にあたる電極1084、1087は、層間絶縁膜1088、1089、1090を貫くコンタクトプラグ1086aを介して配線1094と電気的に接続する。また、トランジスタ1172のゲート電極は、層間絶縁膜1088、1089、1090を貫くコンタクトプラグ1086bを介して配線1094と電気的に接続する。他方、酸化物膜をチャネルに用いたトランジスタ1171のソース又はドレインの一方は、絶縁膜、層間絶縁膜を貫くコンタクトプラグ1103bを介して一旦上層の配線1107aと電気的に接続されている。配線1107aは、絶縁膜、層間絶縁膜及び下地絶縁膜1101を貫くコンタクトプラグ1103aを介して配線1098と電気的に接続されている。配線1098は、下層の配線1094と電気的に接続する。
なお、コンタクトプラグを用いた配線の電気的接続は、図30に示す配線1098と配線1107aとの接続のように複数本のコンタクトプラグを用いた接続でも良く、また、電極1084、1087と配線1094との接続のように壁状のコンタクトプラグを用いて接続しても良い。
上記の電気的接続の態様は一例であって、上記した配線とは異なる配線を用いて各素子の接続を行っても良い。例えば図30で示す態様においては、トランジスタ1171とトランジスタ1172及び容量素子1178との間には、配線を2層設けているが、1層でも良いし、3層以上設けてもよい。あるいは、配線を介さずに複数のプラグを上下に接続して、直接素子どうしを電気的に接続してもよい。また、図30で示す態様においては、配線1094、配線1098はダマシン法で形成しているが(配線1098の形成は、いわゆるデュアルダマシン法による。)、他の手法により形成した配線であってもよい。
なお、配線等の寄生容量の存在等のため、容量素子1178を設けない構成とすることもできる。また、トランジスタ1172の上方やトランジスタ1171の上方に更に容量素子を設けてもよい。
また、図示しないが、配線1098の不純物拡散防止膜として機能するバリア膜1099と、下地絶縁膜1101との間に、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等の金属酸化膜を設けることが好ましい。
図30において、トランジスタ1171と、トランジスタ1172とは、少なくとも一部が重畳するように設けられており、トランジスタ1171のソース領域又はドレイン領域と酸化物膜の一部が重畳するように設けられているのが好ましい。また、トランジスタ1171が、容量素子1178と重畳するように設けられていてもよい。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
なお、図30では、トランジスタ1171と容量素子1178とが、異なる層に設けられた例を示すが、これに限定されない。例えば、トランジスタ1171及び容量素子1178を同一平面に設けても構わない。このような構造とすることで、データ保持部の上に同様の構成のデータ保持部を重畳させることができる。よって、半導体装置の集積度を高めることができる。
このような半導体装置は、上記の構成に限らず、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意に変更が可能である。例えば、説明においては半導体材料を用いたトランジスタと、本発明の一態様に係る酸化物膜を用いたトランジスタの間の配線層は2層として説明したが、これを1層あるいは3層以上とすることもでき、また配線を用いることなく、コンタクトプラグのみによって両トランジスタを直接接続することもできる。この場合、例えばシリコン貫通電極(Through Silicon Via:TSV)技術を用いることもできる。また、配線は銅等の材料を層間絶縁膜中に埋め込むことで形成する場合について説明したが、例えばバリア膜\配線材料層\バリア膜の三層構造としてフォトリソグラフィ工程により配線パターンに加工したものを用いてもよい。
特に、トランジスタ1172とトランジスタ1171との間の階層に銅配線を形成する場合には、上層のトランジスタ1171の製造工程で実施される熱処理の影響を十分考慮する必要がある。換言すれば、トランジスタ1171の製造工程での熱処理の温度を配線材料の性質に適合するように留意する必要がある。例えば、トランジスタ1171の構成する膜に対して高温で熱処理を行った場合、銅配線では熱応力が発生し、これに起因したストレスマイグレーション等の不都合が生じるためである。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態8)
本発明の一態様に係る蓄電装置は、様々な電気機器の電源として用いることができる。
ここで電気機器とは、電気の力によって作用する部分を含む機器、装置のことをいう。電気機器は、家電等の民生用に限られず、業務用、産業用、軍事用等、種々の用途のものを広くこの範疇とする。
蓄電装置を電源とすることが可能な電気機器としては、例えば、テレビやモニタ等の表示装置、照明装置、デスクトップ型やノート型等のパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に記憶された静止画又は動画を再生する画像再生装置、CD(Compact Disc)プレーヤやデジタルオーディオプレーヤ等の携帯型又は据置型の音響再生機器、携帯型又は据置型のラジオ受信機、テープレコーダやICレコーダ(ボイスレコーダ)等の録音再生機器、ヘッドホンステレオ、ステレオ、リモートコントローラ、置き時計や壁掛け時計等の時計、コードレス電話子機、トランシーバ、携帯電話機、自動車電話、携帯型又は据置型のゲーム機、歩数計、電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子書籍、電子翻訳機、マイクロフォン等の音声入力機器、スチルカメラやビデオカメラ等の写真機、玩具、電気シェーバ、電動歯ブラシ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、温水器、扇風機、毛髪乾燥機、加湿器や除湿器やエアコンディショナ等の空気調和設備、食器洗い器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、懐中電灯、電動工具、煙感知器、補聴器、心臓ペースメーカ、携帯型X線撮影装置、放射線測定器、電気マッサージ器や透析装置等の健康機器や医療機器等が挙げられる。
さらに、誘導灯、信号機、ガスメータや水道メータ等の計量器、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、自動販売機、自動券売機、現金自動支払機(CD。Cash Dispenserの略)や現金自動預金支払機(ATM。AutoMated Teller Machineの略)、デジタルサイネージ(電子看板)、産業用ロボット、無線用中継局、携帯電話の基地局、電力貯蔵システム、電力の平準化やスマートグリッドのための蓄電装置等の産業機器が挙げられる。また、蓄電装置からの電力を用いて電動機により推進する移動体(輸送体)等も、蓄電装置を電源とすることが可能な電気機器である。
移動体として、例えば、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機を併せ持ったハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、これらのタイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、農業機械、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、電動カート、小型又は大型船舶、潜水艦、固定翼機や回転翼機等の航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船等が挙げられる。
なお、これらの電気機器は、動作時の主電源として蓄電装置を用いることが可能である。また、電気機器は、主電源や商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電気機器への電力の供給を行うことができる無停電電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。あるいは上記電気機器は、主電源や商用電源からの電気機器への電力の供給と並行して、電気機器への電力の供給を行うための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。
<電気機器の構成例;電力ネットワークシステム>
上述した電気機器は、個々に蓄電装置を搭載する場合に限らず、複数の電気機器と蓄電装置とこれらの電力系を制御する制御装置とを有線又は無線で接続することにより、電力供給を制御するためのネットワークシステム(電力ネットワークシステム)を構築することができる。電力系のネットワークを制御装置により制御することによって、ネットワーク全体における電力の使用効率を向上させることができる。
図31Aに、複数の家電機器、制御装置、及び蓄電装置等を住宅内で接続したHEMS(家庭内エネルギー管理システム。Home Energy Management Systemの略)の例を示す。このようなシステムによって、家全体の電力消費量を容易に把握することが可能になる。また、複数の家電機器の運転を遠隔操作することができる。また、センサや制御装置を用いて家電機器を自動制御する場合には、電力の節約にも貢献することができる。
住宅8000に設置された分電盤8003は、引込み線8002を介して電力系統8001に接続される。分電盤8003は、引込み線8002から供給される商用電力である交流電力を、複数の家電機器それぞれに供給するものである。制御装置8004は分電盤8003と接続されるとともに、複数の家電機器や蓄電システム8005、太陽光発電システム8006等と接続される。また制御装置8004は、住宅8000の屋外等に駐車され、分電盤8003とは独立した電気自動車8012とも接続することができる。
制御装置8004は、分電盤8003と複数の家電機器とを繋ぎネットワークを構成するものであり、ネットワークに接続された複数の家電機器を制御するものである。
また、制御装置8004は、インターネット8011に接続され、インターネット8011を経由して、管理サーバ8013と接続することができる。管理サーバ8013は、使用者の電力の使用状況を受信してデータベースを構築することができ、当該データベースに基づき、種々のサービスを使用者に提供することができる。また、管理サーバ8013は、例えば時間帯に応じた電力の料金情報を使用者に随時提供することができ、当該情報に基づいて、制御装置8004は住宅8000内における最適な使用形態を設定することもできる。
複数の家電機器は、例えば、図31Aに示す表示装置8007、照明装置8008、空気調和設備8009、電気冷蔵庫8010であるが、勿論これに限られず、上述した電気機器等住宅内に設置可能なあらゆる電気機器を指す。
例えば、表示装置8007は、表示部に液晶表示装置、有機EL(Electro Luminescence)素子等の発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)等の半導体表示装置が組み込まれ、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用等、情報表示用表示装置として機能するものが含まれる。
また、照明装置8008は、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を含むものであり、人工光源としては、白熱電球、蛍光灯等の放電ランプ、LED(Light Emitting Diode)や有機EL素子等の発光素子を用いることができる。図31Aに示す照明装置8008は天井に設置されたものであるが、この他、壁面、床、窓等に設けられた据付け型であってもよく、卓上型であってもよい。
また、空気調和設備8009は、温度、湿度、空気清浄度等の室内環境の調整を行う機能を有する。図31Aでは、一例としてエアコンディショナを示す。エアコンディショナは、圧縮機や蒸発器を一体とした室内機と、凝縮器を内蔵した室外機(図示せず)を備えるものや、これらを一体としたもの等で構成される。
また、電気冷蔵庫8010は、食料品等を低温で保管するための電気機器であり、0℃以下で凍らせる目的の冷凍庫を含む。圧縮器により圧縮したパイプ内の冷媒が気化する際に熱を奪うことにより、庫内を冷却するものである。
これら複数の家電機器は、それぞれに蓄電装置を有していてもよく、また蓄電装置を有さずに、蓄電システム8005の電力や商用電源からの電力を利用してもよい。家電機器が蓄電装置を内部に有する場合には、停電等により商用電源から電力の供給が受けられない場合であっても、蓄電装置を無停電電源として用いることで、当該家電機器の利用が可能となる。
以上のような家電機器のそれぞれの電源供給端子の近傍に、電流センサ等の電力検出手段を設けることができる。電力検出手段により検出した情報を制御装置8004に送信することによって、使用者が家全体の電力使用量を把握することができる他、該情報に基づいて、制御装置8004が複数の家電機器への電力の配分を設定し、住宅8000内において効率的なあるいは経済的な電力の使用を行うことができる。
また、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち電力使用率が低い時間帯において、商用電源から蓄電システム8005に充電することができる。また、太陽光発電システム8006によって、日中に蓄電システム8005に充電することができる。なお、充電する対象は、蓄電システム8005に限られず、制御装置8004に接続された電気自動車8012に搭載された蓄電装置でもよく、複数の家電機器が有する蓄電装置であってもよい。
このようにして、種々の蓄電装置に充電された電力を制御装置8004が効率的に配分して使用することで、住宅8000内において効率的なあるいは経済的な電力の使用を行うことができる。
以上のように、電力系をネットワーク化して制御する例として、家庭内規模の電力網を示したがこれに限らず、スマートメーター等の制御機能や通信機能を組み合わせた都市規模、国家規模の電力網(スマートグリッドという)を構築することもできる。また、工場や事業所の規模で、エネルギー供給源と消費施設を構成単位とするマイクログリッドを構築することもできる。
<電気機器の構成例;電気自動車>
次に、電気機器の一例として移動体の例について、図31B及び図31Cを用いて説明する。本発明の一態様に係る蓄電装置を、移動体の制御用の蓄電装置に用いることができる。
図31Bは、電気自動車の内部構造の一例を示している。電気自動車8020には、充放電の可能な蓄電装置8024が搭載されている。蓄電装置8024の電力は、電子制御ユニット8025(ECUともいう。Electronic Control Unitの略)により出力が調整されて、インバータユニット8026を介して走行モータユニット8027に供給される。インバータユニット8026は、蓄電装置8024から入力された直流電力を3相交流電力に変換するとともに、変換した交流電力の電圧、電流及び周波数を調整して走行モータユニット8027に出力することができる。
従って、運転者がアクセルペダル(図示せず)を踏むと、走行モータユニット8027が作動し、走行モータユニット8027で生じたトルクが出力軸8028及び駆動軸8029を介して後輪(駆動輪)8030に伝達される。これに追従して前輪8023も併せて稼働することで、電気自動車8020を駆動走行させることができる。
各ユニットには、例えば電圧センサ、電流センサ、温度センサ等の検出手段が設けられ、電気自動車8020の各部位における物理量が適宜監視される。
電子制御ユニット8025は、図示しないRAM、ROM等のメモリやCPUを有する処理装置である。電子制御ユニット8025は、電気自動車8020の加速、減速、停止等の操作情報、走行環境や各ユニットの温度情報、制御情報、蓄電装置の充電状態(SOC)等の入力情報に基づき、インバータユニット8026や走行モータユニット8027、蓄電装置8024に制御信号を出力する。当該メモリには、各種のデータやプログラムが格納される。
走行モータユニット8027は、交流電動機の他、直流電動機やこれらの電動機と内燃機関とを組み合わせて用いることができる。
なお、本発明の一態様に係る蓄電装置を具備していれば、上記で示した移動体に特に限定されないことは言うまでもない。
電気自動車8020に搭載された蓄電装置8024は、プラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図31Cに、地上設置型の充電装置8021から電気自動車8020に搭載された蓄電装置8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクタの規格等はCHAdeMO(登録商標)等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、図31Bに示す、蓄電装置8024と接続する接続プラグ8031を充電装置8021と電気的に接続させるプラグイン技術によって、外部からの電力供給により電気自動車8020に搭載された蓄電装置8024を充電することができる。充電は、AC/DCコンバータ等の変換装置を介して、一定の電圧値を有する直流定電圧に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を移動体に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、移動体どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、移動体の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電装置8024の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
なお、移動体が鉄道用電気車両の場合、架線や導電軌条からの電力供給により、搭載する蓄電装置に充電することができる。
蓄電装置8024として、本発明の一態様に係る蓄電装置を搭載することで、蓄電装置のサイクル特性が良好となり、利便性を向上させることができる。また、蓄電装置8024の特性の向上により、蓄電装置8024自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、燃費を向上させることができる。また、移動体に搭載した蓄電装置8024が比較的大容量であることから、屋内等の電力供給源として用いることもできる。この場合、電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。
<電気機器の構成例;携帯情報端末>
さらに、図32A乃至図32Cを用いて、電気機器の一例として携帯情報端末の例について説明する。
図32Aは、携帯情報端末8040の正面及び側面を示した斜視図である。携帯情報端末8040は、一例として、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲーム等の種々のアプリケーションの実行が可能である。携帯情報端末8040は、筐体8041の正面に表示部8042、カメラ8045、マイクロフォン8046、スピーカ8047を有し、筐体8041の左側面には操作用のボタン8043、底面には接続端子8048を有する。
表示部8042には、表示モジュール又は表示パネルが用いられる。表示モジュール又は表示パネルとして、有機発光素子(OLED)に代表される発光素子を各画素に備えた発光装置、液晶表示装置、電気泳動方式や電子粉流体(登録商標)方式等により表示を行う電子ペーパ、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)、SED(Surface Conduction Electron−emitter Display)、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、カーボンナノチューブディスプレイ、ナノ結晶ディスプレイ、量子ドットディスプレイ等が用いることができる。
図32Aに示す携帯情報端末8040は、筐体8041に表示部8042を一つ設けた例であるが、これに限らず、表示部8042を携帯情報端末8040の背面に設けてもよいし、折り畳み型の携帯情報端末として、二以上の表示部を設けてもよい。
また、表示部8042には、指やスタイラス等の指示手段により情報の入力が可能なタッチパネルが入力手段として設けられている。これにより、表示部8042に表示されたアイコン8044を指示手段により簡単に操作することができる。また、タッチパネルの配置により携帯情報端末8040にキーボードを配置する領域が不要となるため、広い領域に表示部を配置することができる。また、指やスタイラスで情報の入力が可能となることから、ユーザフレンドリなインターフェースを実現することができる。タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、赤外線方式、電磁誘導方式、表面弾性波方式等、種々の方式を採用することができるが、本発明に係る表示部8042は湾曲するものであるため、特に抵抗膜方式、静電容量方式を用いることが好ましい。また、このようなタッチパネルは、上述の表示モジュール又は表示パネルと一体として組み合わされた、いわゆるインセル方式のものであってもよい。
また、タッチパネルは、イメージセンサとして機能させることができるものであってもよい。この場合、例えば、表示部8042に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部8042に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈等を撮像することもできる。
また、表示部8042にタッチパネルを設けずにキーボードを設けてもよく、さらにタッチパネルとキーボードの双方を設けてもよい。
操作用のボタン8043には、用途に応じて様々な機能を持たせることができる。例えば、ボタン8043をホームボタンとし、ボタン8043を押すことで表示部8042にホーム画面を表示する構成としてもよい。また、ボタン8043を所定の時間押し続けることで、携帯情報端末8040の主電源をオフするようにしてもよい。また、スリープモードの状態に移行している場合、ボタン8043を押すことで、スリープモード状態から復帰させるようにしてもよい。その他、押し続ける期間や、他のボタンと同時に押す等により、種々の機能を起動させるスイッチとして用いることができる。
また、ボタン8043を音量調整ボタンやミュートボタンとし、音出力のためのスピーカ8047の音量の調整等を行う機能を持たせてもよい。スピーカ8047からは、オペレーティングシステム(OS)の起動音等特定の処理時に設定した音、音楽再生アプリケーションソフトからの音楽等各種アプリケーションにおいて実行される音ファイルによる音、電子メールの着信音等様々な音を出力する。なお、図示しないが、音出力をスピーカ8047とともに、あるいはスピーカ8047に替えてヘッドフォン、イヤフォン、ヘッドセット等の装置に音を出力するためのコネクタを設けてもよい。
このようにボタン8043には、種々の機能を与えることができる。図32Aでは、左側面にボタン8043を2つ設けた携帯情報端末8040を図示しているが、勿論、ボタン8043の数や配置位置等はこれに限定されず、適宜設計することができる。
マイクロフォン8046は、音声入力や録音に用いることができる。また、カメラ8045により取得した画像を表示部8042に表示させることができる。
携帯情報端末8040の操作には、上述した表示部8042に設けられたタッチパネルやボタン8043の他、カメラ8045や携帯情報端末8040に内蔵されたセンサ等を用いて使用者の動作(ジェスチャー)を認識させて操作を行うこともできる(ジェスチャー入力という)。あるいは、マイクロフォン8046を用いて、使用者の音声を認識させて操作を行うこともできる(音声入力という)。このように、人間の自然な振る舞いにより電気機器に入力を行うNUI(Natural User Interface)技術を実装することで、携帯情報端末8040の操作性をさらに向上させることができる。
接続端子8048は、外部機器との通信や電力供給のための信号又は電力の入力端子である。例えば、携帯情報端末8040に外部メモリドライブするために、接続端子8048を用いることができる。外部メモリドライブとして、例えば外付けHDD(ハードディスクドライブ)やフラッシュメモリドライブ、DVD(Digital Versatile Disk)やDVD−R(DVD−Recordable)、DVD−RW(DVD−ReWritable)、CD(Compact Disc)、CD−R(Compact Disc Recordable)、CD−RW(Compact Disc ReWritable)、MO(Magneto Optical Disc)、FDD(Floppy Disk Drive)、又は他の不揮発性のソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)デバイス等の記録メディアドライブが挙げられる。また、携帯情報端末8040は表示部8042上にタッチパネルを有しているが、これに替えて筐体8041上にキーボードを設けてもよく、またキーボードを外付けしてもよい。
図32Aでは、底面に接続端子8048を1つ設けた携帯情報端末8040を図示しているが、接続端子8048の数や配置位置等はこれに限定されず、適宜設計することができる。
図32Bは、携帯情報端末8040の背面及び側面を示した斜視図である。携帯情報端末8040は、筐体8041の表面に太陽電池8049とカメラ8050を有し、また、充放電制御回路8051、蓄電装置8052、DC−DCコンバータ8053等を有する。なお、図32Bでは充放電制御回路8051の一例として蓄電装置8052、DC−DCコンバータ8053を有する構成について示しており、蓄電装置8052には、上記実施の形態で説明した本発明の一態様に係る蓄電装置を用いる。
携帯情報端末8040の背面に装着された太陽電池8049によって、電力を表示部、タッチパネル、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池8049は、筐体8041の片面又は両面に設けることができる。携帯情報端末8040に太陽電池8049を搭載させることで、屋外等の電力の供給手段がない場所においても、携帯情報端末8040の蓄電装置8052の充電を行うことができる。
また、太陽電池8049としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、非晶質シリコン又はこれらの積層からなるシリコン系の太陽電池や、InGaAs系、GaAs系、CIS系、Cu2ZnSnS4、CdTe−CdS系の太陽電池、有機色素を用いた色素増感太陽電池、導電性ポリマーやフラーレン等を用いた有機薄膜太陽電池、pin構造におけるi層中にシリコン等による量子ドット構造を形成した量子ドット型太陽電池等を用いることができる。
ここで、図32Bに示す充放電制御回路8051の構成、及び動作についての一例を、図32Cに示すブロック図を用いて説明する。
図32Cには、太陽電池8049、蓄電装置8052、DC−DCコンバータ8053、コンバータ8057、スイッチ8054、スイッチ8055、スイッチ8056、表示部8042について示しており、蓄電装置8052、DC−DCコンバータ8053、コンバータ8057、スイッチ8054、スイッチ8055、スイッチ8056が、図32Bに示す充放電制御回路8051に対応する箇所となる。
外光により太陽電池8049で発電した電力は、蓄電装置8052を充電するために必要な電圧とするために、DC−DCコンバータ8053で昇圧又は降圧される。そして、表示部8042の動作に太陽電池8049からの電力が用いられる際には、スイッチ8054をオンにし、コンバータ8057で表示部8042に必要な電圧に昇圧又は降圧する。また、表示部8042での表示を行わない際には、スイッチ8054をオフにし、スイッチ8055をオンにして蓄電装置8052の充電を行う。
なお、発電手段の一例として太陽電池8049を示したが、これに限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)等の他の発電手段を用いて蓄電装置8052の充電を行ってもよい。また、携帯情報端末8040の蓄電装置8052への充電方法はこれに限られず、例えば上述した接続端子8048と電源とを接続して充電を行ってもよい。また、無線で電力を送受信して充電する非接触電力伝送モジュールを用いてもよく、以上の充電方法を組み合わせてもよい。
ここで、蓄電装置8052の充電状態(SOC。State Of Chargeの略)が、表示部8042の左上(破線枠内)に表示される。これにより、使用者は、蓄電装置8052の充電状態を把握することができ、これに応じて携帯情報端末8040を節電モードと選択することもできる。使用者が省電力モードを選択する場合には、例えば上述したボタン8043やアイコン8044を操作し、携帯情報端末8040に搭載される表示モジュール又は表示パネルや、CPU等の演算装置、メモリ等の構成部品を省電力モードに切り換えることができる。具体的には、これらの構成部品のそれぞれにおいて、任意の機能の使用頻度を低減し、停止させる。省電力モードでは、また、充電状態に応じて設定によって自動的に省電力モードに切り替わる構成とすることもできる。また、携帯情報端末8040に光センサ等の検出手段を設け、携帯情報端末8040の使用時における外光の光量を検出して表示輝度を最適化することで、蓄電装置8052の電力の消費を抑えることができる。
また、太陽電池8049等による充電時には、図32Aに示すように、表示部8042の左上(破線枠内)にそれを示す画像等の表示を行ってもよい。
また、本発明の一態様に係る蓄電装置を具備していれば、図32に示した電気機器に限定されないことは言うまでもない。
<電気機器の構成例;蓄電システム>
さらに、電気機器の一例として蓄電システムの例について、図33A及び図33Bを用いて説明する。ここで説明する蓄電システム8100は、上述した蓄電システム8005として家庭で用いることができる。また、ここでは一例として家庭用の蓄電システムについて説明するが、これに限られず、業務用として又はその他の用途で用いることができる。
図33Aに示すように、蓄電システム8100は、系統電源8103と電気的に接続するためのプラグ8101を有する。また、蓄電システム8100は、家庭内に設けられた分電盤8104と電気的に接続する。
また、蓄電システム8100は、動作状態等を示すための表示パネル8102等を有していてもよい。表示パネルはタッチスクリーンを有していてもよい。また、表示パネルの他、主電源のオンオフを行うためのスイッチや蓄電システムの操作を行うためのスイッチ等を有していてもよい。
なお、図示しないが、蓄電システム8100を操作するために、蓄電システム8100とは別に、例えば室内の壁に操作スイッチを設けてもよい。あるいは、蓄電システム8100と家庭内に設けられたパーソナルコンピュータ、サーバ等と接続し、間接的に蓄電システム8100を操作してもよい。さらに、スマートフォン等の情報端末機やインターネット等を用いて蓄電システム8100を遠隔操作してもよい。これらの場合、蓄電システム8100とその他の機器とは有線により又は無線により通信を行う機構を、蓄電システム8100に設ければよい。
図33Bは、蓄電システム8100の内部を模式的に示した図である。蓄電システム8100は、複数の蓄電装置群8106とBMU(Battery Management Unit)8107とPCS(Power Conditioning System)8108とを有する。
蓄電装置群8106は、上述した蓄電装置8105を複数並べて接続したものである。系統電源8103からの電力を、蓄電装置群8106に蓄電することができる。複数の蓄電装置群8106のそれぞれは、BMU8107と電気的に接続されている。
BMU8107は、蓄電装置群8106が有する複数の蓄電装置8105の状態を監視及び制御し、また蓄電装置8105を保護することができる機能を有する。具体的には、BMU8107は、蓄電装置群8106が有する複数の蓄電装置8105のセル電圧、セル温度データ収集、過充電及び過放電の監視、過電流の監視、セルバランサ制御、電池劣化状態の管理、電池残量((充電率)State Of Charge:SOC)の算出演算、駆動用蓄電装置の冷却ファンの制御、又は故障検出の制御等を行う。なお、これらの機能の一部又は全部は上述のように、蓄電装置8105内に含めてもよく、あるいは蓄電装置群ごとに当該機能を付与してもよい。また、BMU8107はPCS8108と電気的に接続する。
ここで、BMU8107を構成する電子回路には、上述した酸化物半導体を有するトランジスタを用いた電子回路を有するとよい。この場合、BMU8107の消費電力を大幅に低減することが可能となる。
PCS8108は、交流(AC)電源である系統電源8103と電気的に接続され、直流−交流変換を行う。例えば、PCS8108は、インバータや、系統電源8103の異常を検出して動作を停止する系統連系保護装置等を有する。蓄電システム8100の充電時には、例えば系統電源8103の交流の電力を直流に変換してBMU8107へ送電し、蓄電システム8100の放電時には、蓄電装置群8106に蓄えられた電力を屋内等の負荷に交流に変換して供給する。なお、蓄電システム8100から負荷への電力の供給は、図33Aに示すように分電盤8104を介してもよく、あるいは蓄電システム8100と負荷とを有線又は無線により直接行ってもよい。
なお、蓄電システム8100への充電は上述する系統電源8103からに限らず、例えば屋外に設置した太陽発電システムから電力を供給してもよいし、電気自動車に搭載した蓄電システムから供給してもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。