本発明の実施形態について、図面を用いて以下、詳細に説明する。
ただし、本発明はこれらの説明に限定されず、その形態及び態様を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書で説明する各図において、膜や層、基板などの厚さや領域の大きさ等の各構成要素の大きさは、個々に説明の明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしも各構成要素はその大きさに限定されず、また各構成要素間での相対的な大きさに限定されない。
また、本明細書等において、第1、第2などとして付される序数詞は、便宜上用いるものであって工程の順番や積層の順番などを示すものではない。また、本明細書等において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
また、本明細書等で説明する本発明の構成において、同一部分又は同様の機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
また、実際の製造工程において、エッチングなどの処理によりレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、理解を容易にするため、図面においては省略して示すことがある。
また、本明細書等において、「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」又は「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
また、電圧は、ある電位と、基準の電位(例えば接地電位(GND)またはソース電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧を電位と言い換えることが可能である。
また、本明細書等において、「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
また、本明細書等においては、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(容量素子、抵抗素子など)などが有するすべての端子について、その接続先を特定しなくても、当業者であれば、発明の一態様を構成することは可能な場合がある。つまり、接続先を特定しなくても、発明の一態様が明確であり、本明細書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。特に、端子の接続先が複数考えられる場合には、その端子の接続先を特定の箇所に限定する必要はない。従って、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(容量素子、抵抗素子など)などが有する一部の端子についてのみ、その接続先を特定することによって、発明の一態様を構成することが可能な場合がある。
また、本明細書等においては、ある回路について、少なくとも接続先を特定すれば、当業者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。又は、ある回路について、少なくとも機能を特定すれば、当業者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。つまり、機能を特定すれば、発明の一態様が明確であり、本明細書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。従って、ある回路について、機能を特定しなくても、接続先を特定すれば、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。又は、ある回路について、接続先を特定しなくても、機能を特定すれば、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。
また、本明細書等において、二次電池用の正極及び負極の双方を併せて電極とよぶことがあるが、この場合、電極は正極及び負極のうち少なくともいずれか一方を示すものとする。
また、本明細書等において充電レートCとは、二次電池を充電する際の速さを表す。例えば、容量1Ahの電池を1Aで充電する場合の充電レートは1Cである。また、放電レートCとは、二次電池を放電する際の速さを表す。例えば、容量1Ahの電池を1Aで放電する場合の放電レートは1Cである。
また、この発明を実施するための形態に記載の内容は、適宜組み合わせて用いることができる。
[1.蓄電装置及びその充電方法]
本発明の一態様に係る蓄電装置の充放電方法及びそのシステムについて、図1及び図2を用いて説明する。
[1.1.二相共存反応する活物質]
本発明の一態様に係る蓄電装置は、正極と、負極と、電解液とを有する蓄電体を有する。特に、正極には少なくとも二相共存反応をする活物質を用いるとよい。
ここで二相共存反応とは、正極において充電状態の結晶相と放電状態の結晶相との二つの相が共存して進行する反応である。この二相共存反応により、充放電中に電位平坦領域(プラトー領域)が生じると考えられている。
また、二相共存反応をする活物質を用いた場合、充電中の電位の平坦性とともに、充電末期の電圧変化が急峻となる。
二相共存反応をする活物質として、例えばオリビン型のリン酸鉄リチウム(LiFePO4)やスピネル型のリチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)を用いることができる。
正極活物質に二相共存反応をする活物質としてリン酸鉄リチウムを用いた場合の電池の充放電特性を、図23に示す。充電曲線及び放電曲線のいずれも、電位変化において電位平坦領域(プラトー領域)が確認できる。
なお、上記に示す平坦とは、二相共存反応をする活物質を用いた場合に示される充放電特性の一部の定性的な表現であり、定量的な議論には及ぶべきものではない。
ただし、あえて定量的に表現するならば、充電曲線又は放電曲線が平坦な領域(プラトー領域)を有するとは、充放電容量(mAh/g)の値に依らず電圧が一定又は概略一定であることをいう。電圧が概略一定であるとは、充放電容量の変化量が10mAh/gに対して、電圧の変化の絶対値が5mV以内であることをいう。
ここで、特に本発明の一態様においては、二相共存反応をする活物質を用いることで、充電の末期の電圧変化が急峻となるため好ましい。
なお、正極、負極、電解液等の蓄電体の構成については後に詳述する。
[1.2.蓄電装置の充電方法]
次に、本発明の一態様に係る蓄電装置の充電方法について、図1及び図2を用いて説明する。
図1は、本発明の一態様に係る蓄電装置の充電方法を示すフロー図である。まず、蓄電装置の充電を開始する(ステップS050)と、第1の電圧を用いた充電を行う(ステップS051)。第1の電圧とは、電解液の分解がほとんど生じない電圧である。ただし、第1の電圧の範囲においても、電解液中の不純物の反応や熱的な揺らぎ等により、微量に分解は生じ得る。しかし、分解電位を超えた、電解液の分解の生じる電圧下では、対数的に電流値が増加する。従って、電解液の分解の生じない電圧とは、厳密に分解の生じない電圧のみを指す場合に限らず、電解液の分解の生じる電位と比較して、ほとんど電流の流れない電圧を指す趣旨である。
ステップS051における充電方法は、定電流定電圧充電(CCCV充電)を行うことが好ましい。CCCV充電を用いた場合は高い容量まで充電することができ、例えば定電流充電(CC充電)よりも高い容量まで充電することができるためである。ただし充電方法はこれに限られず、定電流充電、定電圧充電、パルス充電、あるいはその他の充電方法により充電を行ってもよい。
例えば、CCCV充電を行う場合、充電の終了は、蓄電装置を流れる電流値が、適宜設定する下限電流値以下か否かを判定することによって決定することができる。例えば電流値が0.01C以下となった場合に充電を終了する。
次に、上記の充電によって、蓄電装置の容量が規定の容量に達しているか否かを判定する(ステップS052)。
当該判定を行うために、蓄電装置の出荷時の容量をあらかじめ記憶させておくとよい。
本明細書でいう蓄電装置の出荷時の容量とは、蓄電装置の製造後出荷する際の容量であり、ユーザーが最初に使用する前の容量である。なお、蓄電装置の製造後、蓄電装置をエージング処理する場合には、エージング処理後の容量である。
また、蓄電装置の出荷時の容量とは、蓄電装置を出荷する段階において、通常の充電方法により最大限に充電し得る容量(最大容量)である。当該容量は、蓄電装置の出荷前の充電により形成される負極の不可逆容量に相当する容量を含んでもよい。なお、この出荷前に形成される負極の不可逆容量に相当する容量分を、あらかじめ本発明の一態様に係る追加の充電により充電しておくとよい。
このような蓄電装置の出荷時の容量を記憶させておくために、蓄電装置にメモリを実装させておくとよい。メモリについては後述するが、不揮発性のRAMを用いるとよい。または、マスクROM等の読み出し専用のメモリを用いてもよい。また、メモリは、本発明の一態様に係る充電方法を制御するための機能を有する回路内に設けてもよい。
蓄電装置の容量が規定の容量に達しているか否かの判定は、蓄電装置の出荷時の容量(最大容量)に対する差分を求めればよい。例えば、ステップS051における充電後の蓄電装置の容量が、蓄電装置の出荷時の容量よりも規定の容量分低いか否かを求める。
ステップS051における充電後の蓄電装置の容量と、蓄電装置の出荷時の容量との差が、規定の容量を超えない場合には、蓄電装置の充電を終了とする(ステップS056)。
一方、ステップS051における充電後の蓄電装置の容量と、蓄電装置の出荷時の容量との差が、規定の容量を超える場合には、蓄電装置に対して追加の充電を行うため、ステップS053に移行する。
なお、当該判定を行うために、蓄電装置にこれらの判定を行うための回路を設けるとよい。
次に、蓄電装置の抵抗値が規定の抵抗値に達しているか否かを判定する(ステップS053)。蓄電装置の抵抗値、すなわち正極の抵抗値がすでに十分高い場合には、正極が劣化してこれ以上の充電は困難であるため、充電は行わずに終了する(ステップS056)。
一方、蓄電装置の抵抗値が規定の抵抗値に達していない場合には、高電圧を用いた追加の充電を行うために、ステップS054へ移行する。
ここで、蓄電装置の抵抗値は、蓄電装置に所定の放電電流を流し、蓄電装置の電圧降下を測定することで算出することができる。
ステップS054に示す追加の充電は、蓄電装置の電解液の分解が生じる電圧を用いて行う。正極に二相共存反応をする活物質としてリン酸鉄リチウムを用いる場合、電解液の分解が生じる電圧として4.0V(vs.Li/Li+)よりも大きい電圧を用いるとよい。好ましくは4.3V(vs.Li/Li+)以上、より好ましくは4.6V(vs.Li/Li+)以上である。ただし、高電圧にすると正極の抵抗値が増大するため、目的に応じて追加の充電の際に電圧は、電解液の分解が生じる電圧の範囲において適宜設定すればよい。
また、ステップS054に示す追加の充電は、所定の期間(例えば時刻0から時刻t1の期間)に限って行う。このため、蓄電装置にタイマカウンタ等の期間の計測手段を設けておくことが好ましい。
所定の期間の経過後、追加の充電を停止し、蓄電装置の抵抗値が規定の抵抗値に達しているか否かの判定を行う(ステップS055)。蓄電装置の抵抗値が規定の抵抗値に達していない場合には、ステップS054に戻り、再び高電圧を用いた追加の充電を行う。一方、蓄電装置の抵抗値が規定の抵抗値に達している場合には、充電は終了する(ステップS056)。
ステップS055における抵抗値の判定は、ステップS053における抵抗値の判定と同様に行う。
このように、追加の充電を所定の期間に区分し、蓄電装置の抵抗値を定期的に判定することで、蓄電装置の抵抗値の大幅な増大を防止しつつ、追加の充電を行うことができる。
図2は、CCCV充電を行った後に、追加の充電を行った場合の電圧に対する充電容量の変化を示す模式図である。充電の対象である蓄電装置には、二相共存反応する活物質を正極に用いる。横軸に充電容量を示し、縦軸に電圧を示す。
CC充電においては、その大部分において、電圧の変化の少ないプラトー領域が現れる。CC充電の末期では電圧が急激に上昇する。CC充電の終止電圧をV1とすると、電圧がV1に達した後は、電圧をV1の定電圧としたCV充電に切り換える。このときの充電容量をC1とすると、さらにCV充電によって、充電容量はC2まで増加する。
以上のCCCV充電によって用いる電圧は、図2に示すとおり、最大がV1であり、蓄電装置の電解液の分解が生じることのない範囲である。
この後、追加の充電を行う場合には、蓄電装置の電解液の分解が生じる電圧V2を用いて行う。追加の充電を行うことによって、蓄電装置の充電容量は、C2よりも高いC3まで増大させることができる。ここで、追加の充電により増大した容量C3は、蓄電装置の出荷時の容量(最大容量)を上限とするものである。
[1.3.蓄電体を充放電する蓄電装置]
本発明の一態様に係る蓄電体を充放電する蓄電装置の一例を、図3乃至図5を用いて説明する。
図3に示す蓄電体を充放電する蓄電装置では、蓄電体201と、コンバータ202と、回路203と、負荷204と、電源205と、スイッチ206と、スイッチ207と、スイッチ208と、クーロンカウンタ209と、抵抗210と、コンバータ211とを用いる。なお、各構成要素を同一の装置に設けることにより、接続点数などを減らすこともできる。例えば、蓄電体201と回路203とを同一の装置に設けてもよい。あるいは、蓄電体201とコンバータ202と回路203とを同一の装置に設けてもよい。
蓄電体201を有する蓄電装置については後に詳説するが、上記したように、正極に二相共存反応をする活物質を用いた蓄電体201を用いるとよい。
コンバータ202は、蓄電体201及び回路203に接続される。
コンバータ202は、例えば電源205から供給される電圧を変換することにより、蓄電体201の充放電の際の電流値を制御することができる機能を有する。
コンバータ202としては、例えば昇降圧型コンバータを用いることができる。昇降圧型コンバータは、例えばスイッチングレギュレータ及び制御回路を有する。スイッチングレギュレータは、例えばインダクタ、スイッチを有する。昇降圧型コンバータは、例えば制御回路によりスイッチを制御することにより、入力電圧の昇圧又は降圧を切り換えることができ、昇圧又は降圧された電圧の値を制御することができる。これにより、任意の定電圧を蓄電体201に出力することができ、また定電流充電や定電圧充電を行うことができる。なお、これに限定されず、制御回路の代わりに回路203によりスイッチングレギュレータのスイッチを制御してもよい。昇降圧型コンバータとしては、例えばSEPIC(Single Ended Primary Inductor Converter)型コンバータ又はZeta型コンバータ等を用いることができる。
回路203は、蓄電体201に接続される。回路203には、蓄電体201又は電源205から電力が供給される。
回路203は、コンバータ202の状態を指示する命令信号を生成して出力することにより、コンバータ202の出力電圧の値を制御することができる機能を有する。なお、回路203を制御回路としてもよい。または、回路203をマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ(MPUともいう)、マイクロコントロールユニット(MCUともいう)、フィールド プログラマブル ゲート アレイ(FPGAともいう)、中央演算装置(CPUともいう)、若しくはバッテリマネジメントユニット(BMUともいう)としてもよい。
また、回路203は、蓄電体201の出荷時の容量(最大容量)を記憶させておくためのメモリを有しているとよい。ただし、メモリは回路203内に必ずしも設ける必要はなく、別途蓄電装置が有していてもよい。
負荷204は、蓄電体201、コンバータ202、回路203に接続される。負荷204には、蓄電体201又は電源205から電力が供給される。なお、回路203には、負荷204から制御信号が入力されてもよい。負荷204にパワーゲートを設け、パワーゲートにより負荷204を構成する回路に対する電力の供給を制御してもよい。なお、回路203は、必ずしも負荷204に接続されていなくてもよい。
電源205としては、例えば系統電源を用いた電源回路などを用いることができる。また、これに限定されず、例えば給電装置などを用いて非接触で電力を供給することができる装置を用いてもよい。
スイッチ206は、例えば蓄電体201の正極に接続され、蓄電体201とコンバータ202との導通を制御することができる機能を有する。スイッチ206は、コンバータ202の制御回路又は回路203により制御してもよい。
スイッチ207は、蓄電体201と負荷204との導通を制御することができる機能を有する。スイッチ207は、コンバータ202の制御回路又は回路203により制御してもよい。
スイッチ208は、電源205とコンバータ202との導通を制御することができる機能を有する。スイッチ208は、コンバータ202の制御回路又は回路203により制御してもよい。
スイッチ206、スイッチ207、スイッチ208としては、例えばトランジスタ、ダイオードなどを用いることができる。
抵抗210は、スイッチ206を介して蓄電体201と電気的に接続する。
クーロンカウンタ209は、抵抗210の両端子と電気的に接続する。クーロンカウンタ209は、抵抗210に流れる電流値を検出することで、蓄電体201の容量(電荷量)を検出する。検出された蓄電体201の容量は、蓄電体201に対して上述した追加の充電を行うか否かの判定の情報として用いることができる。クーロンカウンタ209については、後に詳述する。
クーロンカウンタ209は、回路203と電気的に接続され、回路203によって制御される。また、クーロンカウンタ209により検出した蓄電体201の容量に係る情報を、回路203に送信する。
図3においては、クーロンカウンタ209は回路203とは別に示したが、回路203内に設けられていてもよい。また、抵抗210やクーロンカウンタ209は蓄電装置が必ずしも有する必要はなく、蓄電装置を充電するための充電器などが有していてもよい。
次に、図3で示した蓄電体201を充放電する蓄電装置の充放電方法について、図4を用いて説明する。
蓄電体201のCCCV充電の期間、及び追加の充電の期間では、図4(A)に示すように、回路203等で制御することにより、スイッチ207をオフ状態にし、スイッチ206及びスイッチ208をオン状態にする。これにより、蓄電体201の正極と電源205とをコンバータ202を介して電気的に接続する。これにより、電源205からコンバータ202を介して蓄電体201に電流が流れ、蓄電体201が充電される。蓄電装置に入力する電圧及び電流は、コンバータ202等を用いて適宜調整することができる。
ここで、追加の充電において、追加の充電を行うか否かの判定を行うために、定期的に蓄電体201の抵抗値を確認する。抵抗値の測定は、図4(B)に示すように、コンバータ202を用いて所定の電流を蓄電体201に流し、そのときの蓄電体201の電圧降下をコンバータ211により測定することで算出すればよい。
例えば、コンバータ202により所定の電流I1を蓄電体201に流し、このときの電圧V1aをコンバータ211により測定する。さらに、コンバータ202により所定の電流I2を蓄電体201に流し、このときの電圧V2aをコンバータ211により測定する。蓄電体201の抵抗をRとすると、以上の測定により、R=(V1a−V2a)/(I1−I2)の関係から抵抗を算出することができる。
このために、回路203を用い、コンバータ202とコンバータ211を同期させて制御する。また、蓄電体201の抵抗の算出は、回路203を用いて演算すればよい。
なお、以上のような蓄電体201の抵抗値の測定方法は一例であって、これに限らず、その他の方法により抵抗値の測定を行ってもよい。
蓄電体201の放電の期間では、図5に示すように、回路203等で制御することにより、スイッチ208をオフ状態にし、スイッチ206及びスイッチ207をオン状態にする。これにより、蓄電体201の正極及び負極と負荷204とを電気的に接続し、蓄電体201から負荷204に電流が流れる。
なお、負荷204への電力の供給は、電源205が接続されている状態においては、蓄電体201を必ずしも用いる必要はない。電源205から負荷204へ電力の供給を行ってもよい。なお、この場合には、負荷204への電力供給を行うと同時に、蓄電体201への充電を行うこともできる。
[2.制御回路]
回路203の例について図6を用いて説明する。
[2.1.回路構成]
回路203は、プロセッサ710、バスブリッジ711、RAM(Random Access Memory)712、メモリインターフェース713、コントローラ720、割り込みコントローラ721、I/Oインターフェース(入出力インターフェース)722、及びパワーゲートユニット730を有する。
さらに、回路203は、水晶発振回路741、タイマー回路745、I/Oインターフェース746、I/Oポート750、コンパレータ751、I/Oインターフェース752、バスライン761、バスライン762、バスライン763、及びデータバスライン764を有する。さらに、回路203は、外部装置との接続部として少なくとも接続端子770乃至接続端子776を有する。なお、各接続端子770乃至接続端子776は、1つの端子又は複数の端子でなる端子群を表す。また、水晶振動子743を有する発振子742が、接続端子772、及び接続端子773を介して回路203に接続されている。
プロセッサ710はレジスタ785を有し、バスブリッジ711を介してバスライン761乃至バスライン763、及びデータバスライン764に接続されている。
メモリ712は、プロセッサ710のメインメモリとして機能することができる記憶装置であり、例えばランダムアクセスメモリが用いられる。メモリ712は、プロセッサ710が実行する命令、命令の実行に必要なデータ、及びプロセッサ710の処理によるデータを記憶する装置である。プロセッサ710が処理する命令により、メモリ712へのデータの書き込み、読み出しが行われる。
回路203では、低消費電力モードのときにメモリ712に対する電力供給が遮断される。そのため、メモリ712は電源が供給されていない状態でもデータを保持することができるメモリで構成することが好ましい。
メモリインターフェース713は、外部記憶装置との入出力インターフェースである。プロセッサ710が処理する命令により、メモリインターフェース713を介して、接続端子776に接続される外部記憶装置へのデータの書き込み及び読み出しが行われる。
クロック生成回路715は、プロセッサ710で使用されるクロック信号MCLK(以下、単に「MCLK」ともよぶ。)を生成する回路であり、RC発振器などを有する。MCLKはコントローラ720及び割り込みコントローラ721にも出力される。
コントローラ720は回路203の制御を行う回路であり、例えば、回路203の電源制御、クロック生成回路715、水晶発振回路741の制御などを行うことができる。
接続端子770は、外部の割り込み信号入力用の端子であり、接続端子770を介してマスク不可能な割り込み信号NMIがコントローラ720に入力される。コントローラ720にマスク不可能な割り込み信号NMIが入力されると、コントローラ720は直ちにプロセッサ710にマスク不可能な割り込み信号NMI2を出力し、プロセッサ710に割り込み処理を実行させる。
また、割り込み信号INTが、接続端子770を介して割り込みコントローラ721に入力される。割り込みコントローラ721には、周辺回路からの割り込み信号(T0IRQ、P0IRQ、C0IRQ)も、バス(761乃至764)を経由せずに入力される。
割り込みコントローラ721は割り込み要求の優先順位を割り当てる機能を有する。割り込みコントローラ721は割り込み信号を検出すると、その割り込み要求が有効であるか否かを判定する。有効な割り込み要求であれば、コントローラ720に割り込み信号IRQを出力する。
また、割り込みコントローラ721はI/Oインターフェース722を介して、バスライン761及びデータバスライン764に接続されている。
コントローラ720は、割り込み信号INTが入力されると、プロセッサ710に割り込み信号INT2を出力し、プロセッサ710に割り込み処理を実行させる。
また、割り込み信号T0IRQが割り込みコントローラ721を介さず直接的にコントローラ720に入力される場合がある。コントローラ720は、割り込み信号T0IRQが入力されると、プロセッサ710にマスク不可能な割り込み信号NMI2を出力し、プロセッサ710に割り込み処理を実行させる。
コントローラ720のレジスタ780は、コントローラ720内に設けられ、割り込みコントローラ721のレジスタ786は、I/Oインターフェース722に設けられている。
続いて、回路203が有する周辺回路を説明する。回路203は、周辺回路として、タイマー回路745、I/Oポート750及びコンパレータ751を有する。これらの周辺回路は一例であり、回路203が使用される電気機器に応じて、必要な回路を設けることができる。
タイマー回路745は、クロック生成回路740から出力されるクロック信号TCLK(以下、単に「TCLK」ともよぶ。)を用いて、時間を計測することができる機能を有する。また、タイマー回路745は、決められた時間間隔で、割り込み信号T0IRQを、コントローラ720及び割り込みコントローラ721に出力する。タイマー回路745は、I/Oインターフェース746を介して、バスライン761及びデータバスライン764に接続されている。
TCLKはMCLKよりも低い周波数のクロック信号である。例えば、MCLKの周波数を数MHz程度(例えば、8MHz)とし、TCLKは、数十kHz程度(例えば、32kHz)とする。クロック生成回路740は、回路203に内蔵された水晶発振回路741と、接続端子772及び接続端子773に接続された発振子742を有する。発振子742の振動子として、水晶振動子743が用いられている。なお、CR発振器などでクロック生成回路740を構成することで、クロック生成回路740の全てのモジュールを回路203に内蔵することが可能である。
I/Oポート750は、接続端子774を介して接続された外部機器と情報の入出力を行うためのインターフェースであり、デジタル信号の入出力インターフェースである。これにより、回路203にデータ信号を入力することができる。例えば、I/Oポート750は、入力されたデジタル信号に応じて、割り込み信号P0IRQを割り込みコントローラ721に出力する。なお、接続端子774を複数設けてもよい。
コンパレータ751は、例えば接続端子775から入力されるアナログ信号の電位(又は電流)と基準信号の電位(又は電流)との大小を比較でき、値が0又は1のデジタル信号を生成することができる。さらに、コンパレータ751は、このデジタル信号に応じて、割り込み信号C0IRQを生成することができる。割り込み信号C0IRQは、割り込みコントローラ721に出力される。
I/Oポート750及びコンパレータ751は共通のI/Oインターフェース752を介してバスライン761及びデータバスライン764に接続されている。ここでは、I/Oポート750、コンパレータ751各々のI/Oインターフェースに共有することができる回路があるため、1つのI/Oインターフェース752で構成しているが、I/Oポート750、コンパレータ751のI/Oインターフェースを別々に設けることもできる。
また、周辺回路のレジスタは、対応する入出力インターフェースに設けられている。タイマー回路745のレジスタ787はI/Oインターフェース746に設けられ、I/Oポート750のレジスタ783及びコンパレータ751のレジスタ784は、それぞれ、I/Oインターフェース752に設けられている。
回路203は内部回路への電力供給を遮断するためのパワーゲートユニット730を有する。パワーゲートユニット730により、動作に必要な回路のみに電力供給を行うことで、回路203全体の消費電力を低くすることができる。
図6に示すように、回路203内の破線で囲んだユニット701、ユニット702、ユニット703、ユニット704の回路は、パワーゲートユニット730を介して、接続端子771に接続されている。接続端子771は、例えば図3に示す蓄電体201に接続される。なお、接続端子771と蓄電体201の間にコンバータを設けてもよい。
本発明の一態様においては、ユニット701は、タイマー回路745、及びI/Oインターフェース746を含み、ユニット702は、I/Oポート750、コンパレータ751、及びI/Oインターフェース752を含み、ユニット703は、割り込みコントローラ721、及びI/Oインターフェース722を含み、ユニット704は、プロセッサ710、メモリ712、バスブリッジ711、及びメモリインターフェース713を含む。
パワーゲートユニット730は、コントローラ720により制御される。パワーゲートユニット730は、ユニット701乃至704への電源電圧の供給を遮断するためのスイッチ731及びスイッチ732を有する。このときの電源電圧としては、例えば蓄電体201の電源電圧などを用いることができる。
スイッチ731、スイッチ732のオン/オフはコントローラ720により制御される。具体的には、コントローラ720は、プロセッサ710の要求によりパワーゲートユニット730が有するスイッチの一部又は全部をオフ状態とする信号を出力する(電力供給の停止)。また、コントローラ720は、マスク不可能な割り込み信号NMI、又はタイマー回路745からの割り込み信号T0IRQをトリガーにして、パワーゲートユニット730が有するスイッチをオン状態とする信号を出力する(電力供給の開始)。
なお、図6では、パワーゲートユニット730に、2つのスイッチ(スイッチ731、スイッチ732)を設ける構成を示しているが、これに限定されず、電源遮断に必要な数のスイッチを設ければよい。
また、ここでは、ユニット701に対する電力供給を独立して制御することができるようにスイッチ731を設け、ユニット702乃至704に対する電力供給を独立して制御することができるようにスイッチ732を設けているが、このような電力供給経路に限定されるものではない。例えば、スイッチ732とは別のスイッチを設けて、メモリ712の電力供給を独立して制御することができるようにしてもよい。また、1つの回路に対して、複数のスイッチを設けてもよい。
また、コントローラ720には、パワーゲートユニット730を介さず、常時、接続端子771から電源電圧が供給される。また、ノイズの影響を少なくするため、クロック生成回路715の発振回路、水晶発振回路741には、それぞれ、電源電圧の電源回路と異なる外部の電源回路から電源電位が供給される。
[2.2駆動方法例]
コントローラ720及びパワーゲートユニット730などを備えることにより、回路203を3種類の動作モードで動作させることが可能である。第1の動作モードは、通常動作モードであり、回路203の全ての回路がアクティブな状態である。ここでは、第1の動作モードを「Activeモード」とよぶ。
第2、及び第3の動作モードは低消費電力モードであり、一部の回路をアクティブにするモードである。第2の動作モードでは、コントローラ720、並びにタイマー回路745とその関連回路(水晶発振回路741、I/Oインターフェース746)がアクティブである。第3の動作モードでは、コントローラ720のみがアクティブである。ここでは、第2の動作モードを「Noff1モード」と呼び、第3の動作モードを「Noff2モード」とよぶことにする。Noff1モードでは、コントローラ720と周辺回路の一部(タイマー動作に必要な回路)が動作し、Noff2モードでは、コントローラ720のみが動作している。
なお、クロック生成回路715の発振器、及び水晶発振回路741は、動作モードに関わらず、電源が常時供給される。クロック生成回路715及び水晶発振回路741を非アクティブにするには、コントローラ720から又は外部からイネーブル信号を入力し、クロック生成回路715及び水晶発振回路741の発振を停止させることにより行われる。
また、Noff1、Noff2モードでは、パワーゲートユニット730により電力供給が遮断されるため、I/Oポート750、I/Oインターフェース752は非Activeになるが、接続端子774に接続されている外部機器を正常に動作させるために、I/Oポート750、I/Oインターフェース752の一部には電力が供給される。具体的には、I/Oポート750の出力バッファ、I/Oポート750用のレジスタ783である。
なお、本明細書では、回路が非アクティブとは、電力の供給が遮断されて回路が停止している状態の他、Activeモード(通常動作モード)での主要な機能が停止している状態や、Activeモードよりも省電力で動作している状態を含む。
上記構成にすることにより、例えばユーザーが蓄電装置の充電動作を強制的に終了させた場合に、プロセッサ710の要求によりパワーゲートユニット730が有するスイッチの一部又は全部をオフ状態とする信号を出力し、Noff1、Noff2モードに切り換え、不要な回路ブロックに対する電力の供給を停止させることもできる。
[2.3.レジスタ]
さらに、各回路ブロックに適用可能なレジスタの構成例について図7を参照して説明する。
[2.3.1.回路構成例]
図7(A)に示すレジスタは、記憶回路651と、記憶回路652と、セレクタ653と、を有する。
記憶回路651には、リセット信号RST、クロック信号CLK、及びデータ信号Dが入力される。記憶回路651は、クロック信号CLKに従って入力されるデータ信号Dのデータを保持し、データ信号Qとして出力することができる機能を有する。記憶回路651としては、例えばバッファレジスタや、汎用レジスタなどのレジスタを構成することができる。又は、記憶回路651としては、SRAM(Static Random Access Memory)などからなるキャッシュメモリを設けることもできる。これらのレジスタやキャッシュメモリは記憶回路652にデータを退避させることができる。
記憶回路652には、書き込み制御信号WE、読み出し制御信号RD、及びデータ信号が入力される。書き込み制御信号WE、読み出し制御信号RDなどは、例えば端子を介して入力されてもよい。
記憶回路652は、書き込み制御信号WEに従って、入力されるデータ信号のデータを記憶し、読み出し制御信号RDに従って、記憶されたデータをデータ信号として出力することができる機能を有する。
セレクタ653は、読み出し制御信号RDに従って、データ信号D又は記憶回路652から出力されるデータ信号を選択して、記憶回路651に入力する。
記憶回路652には、トランジスタ631及び容量素子632が設けられている。
トランジスタ631は、nチャネル型トランジスタであり、選択トランジスタとしての機能を有する。トランジスタ631のソース及びドレインの一方は、記憶回路651の出力端子に接続されている。さらに、トランジスタ631のバックゲートには、電源電位が供給される。トランジスタ631は、書き込み制御信号WEに従って記憶回路651から出力されるデータ信号の保持を制御することができる機能を有する。
トランジスタ631としては、例えばオフ電流の低いトランジスタを適用してもよい。オフ電流の低いトランジスタとしては、例えばシリコンよりもバンドギャップの広い酸化物半導体を含むチャネル形成領域を有し、該チャネル形成領域が実質的にi型であるトランジスタを適用することができる。
例えば、水素又は水などの不純物を可能な限り除去し、酸素を供給して酸素欠損を可能な限り減らすことにより、上記酸化物半導体を含むトランジスタを作製することができる。このとき、チャネル形成領域において、二次イオン質量分析法(SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry))の測定値でドナー不純物といわれる水素の量を1×1019/cm3以下、好ましくは1×1018/cm3以下に低減することが好ましい。トランジスタ631のオフ電流は、25℃でチャネル幅1μmあたり1×10−19A(100zA)以下である。より好ましくは1×10−22A(100yA)以下である。トランジスタのオフ電流は、低ければ低いほどよいが、トランジスタのオフ電流の下限値は、約1×10−30A/μmであると見積もられる。
上記酸化物半導体としては、例えばIn系金属酸化物、Zn系金属酸化物、In−Zn系金属酸化物、又はIn−Ga−Zn系金属酸化物などを適用することができる。
容量素子632の一対の電極の一方はトランジスタ631のソース及びドレインの他方に接続され、他方には低電源電位VSSが供給される。容量素子632は、記憶するデータ信号のデータに基づく電荷を保持することができる機能を有する。トランジスタ631のオフ電流が非常に低いため、電源電圧の供給が停止しても容量素子632の電荷は保持され、データが保持される。
トランジスタ633は、pチャネル型トランジスタである。トランジスタ633のソース及びドレインの一方には高電源電位VDDが供給され、ゲートには、読み出し制御信号RDが入力される。
トランジスタ634は、nチャネル型トランジスタである。トランジスタ634のソース及びドレインの一方は、トランジスタ633のソース及びドレインの他方に接続されており、ゲートには、読み出し制御信号RDが入力される。
トランジスタ635は、nチャネル型トランジスタである。トランジスタ635のソース及びドレインの一方は、トランジスタ634のソース及びドレインの他方に接続されており、ソース及びドレインの他方には、低電源電位VSSが供給される。
インバータ636の入力端子は、トランジスタ633のソース及びドレインの他方に接続されている。また、インバータ636の出力端子は、セレクタ653の入力端子に接続される。
容量素子637の一対の電極の一方はインバータ636の入力端子に接続され、他方には低電源電位VSSが供給される。容量素子637は、インバータ636に入力されるデータ信号のデータに基づく電荷を保持することができる機能を有する。
なお、上記に限定されず、例えば相変化型メモリ(PRAM(Phase−change RAM)又はPCM(Phase Change Memory)ともいう)、抵抗変化型メモリ(ReRAM(Resistive RAM)ともいう)、磁気抵抗型メモリ(MRAM(Magnetoresistive RAM)ともいう)などを用いて記憶回路652を構成してもよい。例えば、MRAMとしては磁気トンネル接合素子(MTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子ともいう)を用いたMRAMを適用することができる。
[2.3.2.駆動方法例]
次に、図7(A)に示すレジスタの駆動方法例について説明する。
まず、通常動作期間において、電力となる電源電圧、リセット信号RST、クロック信号CLKは、レジスタに供給された状態である。このとき、セレクタ653は、データ信号Dのデータを記憶回路651に出力する。記憶回路651は、クロック信号CLKに従って入力されたデータ信号Dのデータを保持する。このとき、読み出し制御信号RDによりトランジスタ633がオン状態になり、トランジスタ634がオフ状態になる。
次に、電源電圧を停止する直前のバックアップ期間において、書き込み制御信号WEのパルスに従って、トランジスタ631がオン状態になり、記憶回路652にデータ信号Dのデータが記憶され、トランジスタ631がオフ状態になる。その後レジスタに対するクロック信号CLKの供給を停止させ、さらにその後レジスタに対するリセット信号RSTの供給を停止させる。なお、トランジスタ631がオン状態のとき、トランジスタ631のバックゲートに正電源電位を供給してもよい。このとき、読み出し制御信号RDによりトランジスタ633がオン状態になり、トランジスタ634がオフ状態になる。
次に、電源停止期間において、レジスタに対する電源電圧の供給を停止させる。このとき、記憶回路652のトランジスタ631のオフ電流が低いため、記憶されたデータが保持される。なお、高電源電位VDDの代わりに接地電位GNDを供給することにより、電源電圧の供給を停止するとみなすこともできる。例えば、接地電位は、図7(A)に示す端子を介して供給される。なお、トランジスタ631がオフ状態のとき、トランジスタ631のバックゲートに負電源電位を供給してトランジスタ631のオフ状態を維持してもよい。
次に、通常動作期間に戻る直前のリカバリー期間において、レジスタに対する電源電圧の供給を再開させ、その後クロック信号CLKの供給を再開させ、さらにその後リセット信号RSTの供給を再開させる。このとき、クロック信号CLKが供給される配線を高電源電位VDDにしておき、その後クロック信号CLKの供給を再開させる。さらに、読み出し制御信号RDのパルスに従ってトランジスタ633がオフ状態になり、トランジスタ634がオン状態になり、記憶回路652に記憶された値のデータ信号がセレクタ653に出力される。セレクタ653は、読み出し制御信号RDのパルスに従って上記データ信号を記憶回路651に出力する。これにより、電源停止期間の直前の状態に記憶回路651を復帰させることができる。
その後、通常動作期間において、再び記憶回路651の通常動作を行う。
以上が図7(A)に示すレジスタの駆動方法例である。
なお、レジスタは、図7(A)に示す構成に限定されない。
例えば、図7(B)に示すレジスタは、図7(A)に示すレジスタの構成と比較してトランジスタ633、トランジスタ634、インバータ636、容量素子637が無く、セレクタ654を有する構成である。図7(A)に示すレジスタと同じ部分については、図7(A)に示すレジスタの説明を適宜援用する。
このとき、トランジスタ635のソース及びドレインの一方は、セレクタ653の入力端子に接続される。
また、セレクタ654は、書き込み制御信号WE2に従って、データとなる低電源電位VSS又は記憶回路651から出力されるデータ信号を選択して、記憶回路652に入力する。
次に、図7(B)に示すレジスタの駆動方法例について説明する。
まず、通常動作期間において、電源電圧、リセット信号RST、クロック信号CLKは、レジスタに供給された状態である。このとき、セレクタ653は、データ信号Dのデータを記憶回路651に出力する。記憶回路651は、クロック信号CLKに従って入力されたデータ信号Dのデータを保持する。また、書き込み制御信号WE2に従いセレクタ654は、低電源電位VSSを記憶回路652に出力する。記憶回路652では、書き込み制御信号WEのパルスに従いトランジスタ631がオン状態になり、記憶回路652に低電源電位VSSがデータとして記憶される。
次に、電源電圧を停止する直前のバックアップ期間において、書き込み制御信号WE2に従いセレクタ654により、低電源電位VSSの供給の代わりに記憶回路651の出力端子とトランジスタ631のソース及びドレインの一方が導通状態になる。さらに、書き込み制御信号WEのパルスに従いトランジスタ631がオン状態になり、記憶回路652にデータ信号Dのデータが記憶され、トランジスタ631がオフ状態になる。このとき、データ信号Dの電位が高電源電位VDDと同じ値のときのみ、記憶回路652のデータが書き換わる。さらに、レジスタに対するクロック信号CLKの供給を停止させ、レジスタに対するリセット信号RSTの供給を停止させる。なお、トランジスタ631がオン状態のとき、トランジスタ631のバックゲートに正電源電位を供給してもよい。
次に、電源停止期間において、レジスタに対する電源電圧の供給を停止させる。このとき、記憶回路652において、トランジスタ631のオフ電流が低いため、データの値が保持される。なお、高電源電位VDDの代わりに接地電位GNDを供給することにより、電源電圧の供給を停止させるとみなすこともできる。なお、マルチプレクサにより、トランジスタ631がオフ状態のとき、トランジスタ631のバックゲートに負電源電位を供給してトランジスタのオフ状態を維持してもよい。
次に、通常動作期間に戻る直前のリカバリー期間において、レジスタに対する電源電圧の供給を再開し、その後クロック信号CLKの供給を再開させ、さらにその後リセット信号RSTの供給を再開させる。このとき、クロック信号CLKが供給される配線を高電源電位VDDにしておき、その後クロック信号CLKの供給を再開させる。セレクタ653は、読み出し制御信号RDのパルスに従って記憶回路652の記憶されたデータに応じた値のデータ信号を記憶回路651に出力する。これにより、電源停止期間の直前の状態に記憶回路651を復帰させることができる。
その後、通常動作期間において、再び記憶回路651の通常動作を行う。
以上が図7(B)に示すレジスタの駆動方法例である。
図7(B)に示す構成にすることにより、バックアップ期間における低電源電位VSSであるデータの書き込みを無くすことができるため、動作を速くすることができる。
上記レジスタをレジスタ784乃至787に用いた場合、ActiveモードからNoff1、Noff2モードへ移行する際は、電源遮断に先立って、レジスタ784乃至787の記憶回路651のデータは記憶回路652に書き込まれ、記憶回路651のデータを初期値にリセットし、電源が遮断される。
また、Noff1、又はNoff2モードからActiveへ復帰する場合、レジスタ784乃至787に電力供給が再開されると、まず記憶回路651のデータが初期値にリセットされる。そして、記憶回路652のデータが記憶回路651に書き込まれる。
従って、低消費電力モードでも、回路203の処理に必要なデータがレジスタ784乃至787で保持されているため、回路203を低消費電力モードからActiveモードへ直ちに復帰させることが可能になる。よって、回路203の消費電力を低減させることができる。
[3.メモリ]
本発明の一態様に適用可能なメモリの例について説明する。該メモリは、例えば図6に示すメモリ712に適用することもできる。また、酸化物膜を用いたトランジスタを有するメモリは、蓄電装置の出荷時の容量(最大容量)を記憶させるためのメモリに適用することもできる。
[3.1.SRAM]
ここでは、インバータの回路を応用したフリップフロップで構成するメモリである、SRAM(Static Random Access Memory)について説明する。
SRAMはフリップフロップを用いてデータを保持するため、DRAM(Dynamic Random Access Memory)とは異なり、リフレッシュ動作が不要である。そのため、データの保持時の消費電力を抑えることができる。また、容量素子を用いないため、高速動作の求められる用途に好適である。
図8は、本発明の一態様に係るSRAMのメモリセルに対応する回路図である。なお、図8には一つのメモリセルのみを示すが、当該メモリセルを複数配置したメモリセルアレイに適用しても構わない。
図8に示すメモリセルは、トランジスタTr1eと、トランジスタTr2eと、トランジスタTr3eと、トランジスタTr4eと、トランジスタTr5eと、トランジスタTr6eと、を有する。トランジスタTr1e及びトランジスタTr2eはpチャネル型トランジスタであり、トランジスタTr3e及びトランジスタTr4eはnチャネル型トランジスタである。トランジスタTr1eのゲートは、トランジスタTr2eのドレイン、トランジスタTr3eのゲート、トランジスタTr4eのドレイン、並びにトランジスタTr6eのソース及びドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタTr1eのソースには高電源電位VDDが与えられる。トランジスタTr1eのドレインは、トランジスタTr2eのゲート、トランジスタTr3eのドレイン及びトランジスタTr5eのソース及びドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタTr2eのソースには高電源電位VDDが与えられる。トランジスタTr3eのソースには接地電位GNDが与えられる。トランジスタTr3eのバックゲートはバックゲート線BGLに電気的に接続される。トランジスタTr4eのソースには接地電位GNDが与えられる。トランジスタTr4eのバックゲートはバックゲート線BGLに電気的に接続される。トランジスタTr5eのゲートはワード線WLに電気的に接続される。トランジスタTr5eのソース及びドレインの他方はビット線BLBに電気的に接続される。トランジスタTr6eのゲートはワード線WLに電気的に接続される。トランジスタTr6eのソース及びドレインの他方はビット線BLに電気的に接続される。
ここでは、トランジスタTr5e及びトランジスタTr6eとしてnチャネル型トランジスタを適用した例を示す。ただし、トランジスタTr5e及びトランジスタTr6eは、nチャネル型トランジスタに限定されず、pチャネル型トランジスタを適用することもできる。その場合、後に示す書き込み、保持及び読み出しの方法も適宜変更すればよい。
このように、トランジスタTr1e及びトランジスタTr3eを有するインバータと、トランジスタTr2e及びトランジスタTr4eを有するインバータとをリング接続することで、フリップフロップが構成される。
pチャネル型トランジスタとしては、例えばシリコンを用いたトランジスタを適用すればよい。ただし、pチャネル型トランジスタは、シリコンを用いたトランジスタに限定されない。また、nチャネル型トランジスタとしては、後述する酸化物膜を用いたトランジスタを用いればよい。
ここでは、トランジスタTr3e及びトランジスタTr4eとして、酸化物膜を用いたトランジスタを適用する。当該トランジスタは、オフ電流が極めて小さいため、貫通電流も極めて小さくなる。
なお、トランジスタTr1e及びトランジスタTr2eとして、pチャネル型トランジスタに代えて、nチャネル型トランジスタを適用することもできる。トランジスタTr1e及びトランジスタTr2eとしてnチャネル型トランジスタを用いる場合、デプレッション型トランジスタを適用すればよい。
図8に示したメモリセルの書き込み、保持及び読み出しについて以下に説明する。
書き込み時は、まずビット線BL及びビット線BLBにデータ0又はデータ1に対応する電位を印加する。
例えば、データ1を書き込みたい場合、ビット線BLを高電源電位VDD、ビット線BLBを接地電位GNDとする。次に、ワード線WLにトランジスタTr5e、トランジスタTr6eのしきい値電圧に高電源電位VDDを加えた電位以上の電位(VH)を印加する。
次に、ワード線WLの電位をトランジスタTr5e、トランジスタTr6eのしきい値電圧未満とすることで、フリップフロップに書き込んだデータ1が保持される。SRAMの場合、データの保持で流れる電流はトランジスタのリーク電流のみとなる。ここで、SRAMを構成するトランジスタの一部に上記オフ電流の低いトランジスタを適用することにより、データ保持のための待機電力を小さくすることができる。
読み出し時は、あらかじめビット線BL及びビット線BLBを高電源電位VDDとする。次に、ワード線WLにVHを印加することで、ビット線BLは高電源電位VDDのまま変化しないが、ビット線BLBはトランジスタTr5e及びトランジスタTr3eを介して放電し、接地電位GNDとなる。このビット線BLとビット線BLBとの電位差をセンスアンプ(図示せず)にて増幅することにより保持されたデータ1を読み出すことができる。
なお、データ0を書き込みたい場合は、ビット線BLを接地電位GND、ビット線BLBを高電源電位VDDとし、その後にワード線WLにVHを印加すればよい。次に、ワード線WLの電位をトランジスタTr5e、トランジスタTr6eのしきい値電圧未満とすることで、フリップフロップに書き込んだデータ0が保持される。読み出し時は、あらかじめビット線BL及びビット線BLBを高電源電位VDDとし、ワード線WLにVHを印加することで、ビット線BLBは高電源電位VDDのまま変化しないが、ビット線BLはトランジスタTr6e及びトランジスタTr4eを介して放電し、接地電位GNDとなる。このビット線BLとビット線BLBとの電位差をセンスアンプにて増幅することにより保持されたデータ0を読み出すことができる。
以上の態様により、待機電力の小さいSRAMを提供することができる。
[3.2.DOSRAM]
本発明の一態様に係る酸化物膜を用いたトランジスタは、オフ電流を極めて小さくすることができる。すなわち、当該トランジスタを介した電荷のリークが起こりにくい電気特性を有する。以下では、このような電気特性を有するトランジスタを適用した、既知の記憶素子を有すると比べ、機能的に優れた記憶素子を有するメモリとして、DOSRAM(Dynamic Oxide Semiconductor Random Access Memory)について説明する。DOSRAMとは、上記オフ電流の低いトランジスタを、メモリセルの選択トランジスタ(スイッチング素子としてのトランジスタ)に用いたメモリを指す。
まず、メモリについて、図9を参照して説明する。ここで、図9(A)はメモリのメモリセルアレイを示す回路図である。図9(B)はメモリセルの回路図である。
図9(A)に示すメモリセルアレイは、メモリセル1050と、ビット線1051と、ワード線1052と、容量線1053と、センスアンプ1054と、をそれぞれ複数有する。
なお、ビット線1051及びワード線1052がグリッド状に設けられ、各メモリセル1050はビット線1051及びワード線1052の交点に付き一つずつ配置される。ビット線1051はセンスアンプ1054と接続され、ビット線1051の電位をデータとして読み出す機能を有する。
図9(B)より、メモリセル1050は、トランジスタ1055と、キャパシタ1056と、を有する。また、トランジスタ1055のゲートはワード線1052と電気的に接続される。トランジスタ1055のソースはビット線1051と電気的に接続される。トランジスタ1055のドレインはキャパシタ1056の一端と電気的に接続される。キャパシタ1056の他端は容量線1053に電気的に接続される。
図10は、メモリの斜視図である。図10に示すメモリは上部に記憶回路としてメモリセルを複数含む、メモリセルアレイ(メモリセルアレイ3400a乃至メモリセルアレイ3400n(nは2以上の整数))を複数層有し、下部にメモリセルアレイ3400a乃至メモリセルアレイ3400nを動作させるために必要な論理回路3004を有する。
キャパシタ1056に保持された電圧は、トランジスタ1055のリークによって時間が経つと徐々に低減していく。当初V0からV1まで充電された電圧は、時間が経過するとdata1を読み出す限界点であるVAまで低減する。この期間を保持期間T_1とする。すなわち、2値メモリセルの場合、保持期間T_1の間にリフレッシュをする必要がある。
例えば、トランジスタ1055のオフ電流が十分小さくない場合、キャパシタ1056に保持された電圧の時間変化が大きいため、保持期間T_1が短くなる。従って、頻繁にリフレッシュをする必要がある。リフレッシュの頻度が高まると、メモリの消費電力が高まってしまう。
本実施形態では、トランジスタ1055のオフ電流が極めて小さいため、保持期間T_1を極めて長くすることができる。すなわち、リフレッシュの頻度を少なくすることが可能となるため、消費電力を低減することができる。例えば、オフ電流が1×10−21Aから1×10−25Aであるトランジスタ1055でメモリセルを構成すると、電力を供給せずに数日間から数十年間に渡ってデータを保持することが可能となる。
以上のように、本発明の一態様によって、集積度が高く、消費電力の小さいメモリを得ることができる。
[3.3.NOSRAM]
次に、図8及び図10に示すメモリとは異なるメモリとして、NOSRAM(Non−volatile Oxide Semiconductor Random Access Memory)について説明する。NOSRAMとは、上記オフ電流の低いトランジスタを、メモリセルの選択トランジスタ(スイッチング素子としてのトランジスタ)に用い、シリコン材料などを用いたトランジスタをメモリセルの出力トランジスタに用いたメモリを指す。
図11(A)はメモリを構成するメモリセル及び配線を含む回路図である。また、図11(B)は図11(A)に示すメモリセルの電気特性を示す図である。
図11(A)より、メモリセルは、トランジスタ1071と、トランジスタ1072と、キャパシタ1073とを有する。ここで、トランジスタ1071のゲートはワード線1076と電気的に接続される。トランジスタ1071のソースはソース線1074と電気的に接続される。トランジスタ1071のドレインはトランジスタ1072のゲート及びキャパシタ1073の一端と電気的に接続され、この部分をノード1079とする。トランジスタ1072のソースはソース線1075と電気的に接続される。トランジスタ1072のドレインはドレイン線1077と電気的に接続される。キャパシタ1073の他端は容量線1078と電気的に接続される。
なお、図11に示すメモリは、ノード1079の電位に応じて、トランジスタ1072の見かけ上のしきい値電圧が変動することを利用したものである。例えば、図11(B)は容量線1078の電圧VCLと、トランジスタ1072を流れるドレイン電流Id_2との関係を説明する図である。
なお、トランジスタ1071を介してノード1079の電位を調整することができる。例えば、ソース線1074の電位を高電源電位VDDとする。このとき、ワード線1076の電位をトランジスタ1071のしきい値電圧Vthに高電源電位VDDを加えた電位以上とすることで、ノード1079の電位をHIGHにすることができる。また、ワード線1076の電位をトランジスタ1071のしきい値電圧Vth以下とすることで、ノード1079の電位をLOWにすることができる。
そのため、トランジスタ1072は、LOWで示したVCL−Id_2カーブと、HIGHで示したVCL−Id_2カーブのいずれかの電気特性となる。すなわち、LOWでは、VCL=0VにてId_2が小さいため、データ0となる。また、HIGHでは、VCL=0VにてId_2が大きいため、データ1となる。このようにして、データを記憶することができる。
トランジスタ1071としてオフ電流の低いトランジスタを用いることにより、データの保持時間を長くすることができる。トランジスタ1072を用いることにより、データを読み出す際にデータが失われないため、繰り返しデータを読み出すことができる。
[4.クーロンカウンタ]
ここでは、蓄電装置の充放電容量(クーロン量)を算出し、読み出すことのできるクーロンカウンタについて説明する。
図12は、クーロンカウンタの構成の一例を示す回路図である。クーロンカウンタは、抵抗250、増幅回路251、電圧電流変換回路252及び積分回路253を有する。クーロンカウンタは、抵抗250を流れる電流Isから、被検出対象である蓄電体201から出力された電荷量を検出する機能を備える。蓄電体201は、高電位側の端子254及び低電位用の端子255に接続されている。
増幅回路251は、2つ入力端子間の電圧を増幅し、増幅した電圧を出力する機能を有する。電流Isが流れることにより、抵抗250の両端には電圧Vs(=Is×Rs)が発生する。増幅回路251の非反転入力端子と反転入力端子間には電圧Vsが入力される。増幅回路251は、電圧Vsを増幅して、電圧Vaを生成する機能を有する。電圧Vaは、電圧Vsに比例する電圧である。
電圧電流変換回路252(V/I)は、入力された電圧を電流に変換し、出力する機能を有する回路である。ここでは、電圧電流変換回路252は電圧Vaを電流Icに変換する。電流Icは、電圧Vaに比例する電流である。
積分回路253は、入力される電流Icにより供給された電荷Qcに応じた信号を生成する機能を有する回路である。積分回路253は、トランジスタ256、トランジスタ257、容量素子258及びコンパレータ259を有する。
トランジスタ256は、容量素子258の端子(ノード260)と電圧電流変換回路252の出力との接続を制御するスイッチの機能を有する。トランジスタ256のオン、オフはそのゲートに入力される信号CONにより制御される。
トランジスタ257は、ノード260と、基準電圧VREF3が入力されるノード261間を接続するスイッチの機能を有する。そのため、トランジスタ257は、ノード260の電圧Vcをリセットするリセット回路として機能することができる。トランジスタ257のオン、オフは、そのゲートに入力される信号SETにより制御される。トランジスタ257がオン状態である期間は、ノード260はノード261に接続されるため、その電圧Vcは一定電位となり、トランジスタ257などによる電圧降下を無視する場合は、基準電圧VREF3と等しくなる。
また、ノード260の電位をリセットするための回路(トランジスタ257)は、必要に応じて形成すればよい。
トランジスタ256及び容量素子258は、サンプル−ホールド回路の機能を有する。トランジスタ256をオンすることにより、電流Icが電圧電流変換回路252からノード260に入力され、容量素子258が充電される(サンプル動作)。トランジスタ257をオフすることにより、ノード260が電気的に浮遊状態とされ、容量素子258において電荷量Qcが保持される(ホールド動作)。
ノード260の電圧Vcは、容量素子258に保持されている電荷量Qcに比例し、電荷量Qcは電流Icに比例するため、ノード260からの出力信号(電圧Vc)、または電圧Vcに応じた信号から、抵抗250を流れた電荷量に関するデータを得ることができる。よって、これらの信号から、蓄電体201の充電容量又は残容量を算出することができる。
電圧Vcは、コンパレータ259を経て出力信号OUTとして、クーロンカウンタから出力される。コンパレータ259の非反転入力端子は、ノード260(容量素子258の端子)に接続され、同反転入力端子には、電位VREF1が入力される。コンパレータ259は、電圧Vcが基準電圧よりも高ければハイレベルの信号OUTを出力し、低ければ、ローレベルの信号OUTを出力する。
コンパレータ259としては、ノイズ耐性が高いヒステリシスコンパレータを用いることが好ましい。ヒステリシスコンパレータを用いることにより、ノイズの影響により出力信号OUTの電位の切り替えが頻繁に起こることを抑制することができる。
なお、積分回路253では、電圧Vcに対応する信号を生成するアナログ回路として、コンパレータ259が用いられているが、これに限定されない。例えば、このようなアナログ回路としてアナログ−デジタル変換回路、増幅回路等を用いることができる。
また、クーロンカウンタの出力信号は、コンパレータ259からの出力信号OUTに限定されるものではない。例えば、ノード260の電圧Vcを信号として出力させることができる。この場合、ノード260に増幅回路を接続し、増幅回路で増幅された電圧を出力信号として取り出せばよい。
以上のようなクーロンカウンタを用いることで、蓄電装置が有する蓄電体の容量を検出することができる。特に、蓄電体の正極に二相共存反応をする活物質を用いた場合、電位変化にプラトーな領域を有するため、蓄電体の電圧を測定しても容量を算出することができない。このため、充電容量を測定することのできる上述のクーロンカウンタが適している。
[5.半導体装置の構造例]
上記制御回路やメモリ、クーロンカウンタなどの半導体装置の構造例について説明する。
[5.1.トランジスタの構造]
まず、半導体装置に適用可能なトランジスタの構造例について説明する。
トランジスタの構造は、特に限定されず任意の構造とすることができる。トランジスタの構造として、例えば、以下に説明するボトムゲート構造のスタガ型やプレーナ型などを用いることができる。また、トランジスタはチャネル形成領域が1つ形成されるシングルゲート構造でも、2つ形成されるダブルゲート構造若しくは3つ形成されるトリプルゲート構造などのマルチゲート構造であってもよい。また、チャネル形成領域の上下にゲート絶縁膜を介して配置された2つのゲート電極を有する構造(本明細書においては、これをデュアルゲート構造という)でもよい。
[5.1.1.ボトムゲート構造]
図13に、ボトムゲート型トランジスタの一種であるボトムゲートトップコンタクト構造のトランジスタ421の構成例を示す。図13(A)は、トランジスタ421の平面図であり、図13(B)は、図13(A)中の一点鎖線A1−A2における断面図であり、図13(C)は、図13(A)中の一点鎖線B1−B2における断面図である。
トランジスタ421は、絶縁表面を有する基板400上に設けられたゲート電極401と、ゲート電極401上に設けられたゲート絶縁膜402と、ゲート絶縁膜402を介してゲート電極401と重畳する酸化物膜404と、酸化物膜404と接して設けられたソース電極405a及びドレイン電極405bと、を有する。また、ソース電極405a及びドレイン電極405bを覆い、酸化物膜404と接するように絶縁膜406が設けられている。なお、基板400は、他の素子が形成された被素子形成基板であってもよい。
なお、酸化物膜404のうち、ソース電極405a及びドレイン電極405bに接する領域にn型化領域403を有していてもよい。
[5.1.2.トップゲート構造]
図14(A)に、トップゲート構造のトランジスタ422を示す。
トランジスタ422は、絶縁表面を有する基板400上に設けられた絶縁膜408と、絶縁膜408上に設けられた酸化物膜404と、酸化物膜404に接して設けられたソース電極405a及びドレイン電極405bと、酸化物膜404、ソース電極405a及びドレイン電極405b上に設けられたゲート絶縁膜409と、ゲート絶縁膜409を介して酸化物膜404と重畳するゲート電極410と、を有する。
なお、酸化物膜404のうち、ソース電極405a及びドレイン電極405bに接する領域にn型化領域403を有していてもよい。
[5.1.3.デュアルゲート構造]
図14(B)に、チャネル形成領域の上下にゲート絶縁膜を介して配置された2つのゲート電極を有する、デュアルゲート構造のトランジスタ423を示す。
トランジスタ423は、絶縁表面を有する基板400上に設けられたゲート電極401と、ゲート電極401上に設けられたゲート絶縁膜402と、ゲート絶縁膜402を介してゲート電極401と重畳する酸化物膜404と、酸化物膜404と接して設けられたソース電極405a及びドレイン電極405bと、ソース電極405a及びドレイン電極405bを覆い、酸化物膜404と接するゲート絶縁膜409と、ゲート絶縁膜409を介して酸化物膜404と重畳するゲート電極410と、を有する。
なお、酸化物膜404のうち、ソース電極405a及びドレイン電極405bに接する領域にn型化領域403を有していてもよい。
[5.2.トランジスタの構成要素]
トランジスタの各構成要素について説明する。
[5.2.1.導電層]
ゲート電極401及びゲート電極410としては、例えばAl、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wなどを有する層を用いることができる。
ソース電極405a及びドレイン電極405bとしては、例えばAl、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wなどを有する層を用いることができる。
[5.2.2.絶縁層]
ゲート絶縁膜402、絶縁膜406、ゲート絶縁膜409としては、例えば酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、又は酸化窒化アルミニウム膜を用いることができる。
[5.2.3.酸化物膜]
さらに、酸化物膜404に適用可能な材料について説明する。
[5.2.3.1.単層膜]
酸化物膜404としては、例えばIn系金属酸化物、Zn系金属酸化物、In−Zn系金属酸化物、又はIn−Ga−Zn系金属酸化物などの膜を適用することができる。
また、上記In−Ga−Zn系金属酸化物に含まれるGaの一部若しくは全部の代わりに他の金属元素を含む金属酸化物を用いてもよい。上記他の金属元素としては、例えばガリウムよりも多くの酸素原子と結合が可能な金属元素を用いればよく、例えばチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ゲルマニウム、及び錫のいずれか一つ又は複数の元素を用いればよい。また、上記他の金属元素としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムのいずれか一つ又は複数の元素を用いればよい。これらの金属元素は、スタビライザーとしての機能を有する。なお、これらの金属元素の添加量は、金属酸化物が半導体として機能することが可能な量である。ガリウムよりも多くの酸素原子と結合が可能な金属元素を用い、さらには金属酸化物中に酸素を供給することにより、金属酸化物中の酸素欠陥を少なくすることができる。
酸化物膜中の水素濃度は、二次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)において、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下とすることができる。
また、酸化物膜中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とすることができる。
また、酸化物膜中の炭素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とすることができる。
また、酸化物膜中のシリコン濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とすることができる。
また、酸化物膜では、昇温脱離ガス分光法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)分析によるm/zが2(水素分子など)である気体分子(原子)、m/zが18である気体分子(原子)、m/zが28である気体分子(原子)及びm/zが44である気体分子(原子)の放出量が、それぞれ1×1019個/cm3以下、好ましくは1×1018個/cm3以下であることが好ましい。
酸化物膜404には、例えば酸化物半導体膜を用いることができる。
以上のように、本実施の形態に示すように酸化物半導体に接し酸化物を形成し、酸化物半導体と酸化物とを含む酸化物積層とすることによって、水素、水分等の不純物又は酸化物半導体に接する絶縁膜からの不純物が、酸化物半導体膜中に入り込むことによってキャリアの形成を抑制することができる。
また、上記酸化物積層膜をトランジスタに用いることにより、トランジスタのオフ電流を低くすることができる。よって、上記オフ電流の低いトランジスタとして上記酸化物積層膜を用いたトランジスタを用いることができる。
以上のように、本発明の一態様によって、集積度が高く、消費電力の小さいメモリを得ることができる。
[6.蓄電装置]
蓄電装置の一例として、以下にリチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池について説明する。
[6.1.正極]
まず、蓄電装置の正極について、図15を用いて説明する。
正極6000は、正極集電体6001と、正極集電体6001上に塗布法、CVD法、又はスパッタリング法等により形成された正極活物質層6002などにより構成される。図15(A)においては、シート状(又は帯状)の正極集電体6001の両面に正極活物質層6002を設けた例を示しているが、これに限られず、正極活物質層6002は、正極集電体6001の一方の面にのみ設けてもよい。また、図15(A)においては、正極活物質層6002は、正極集電体6001上の全域に設けているが、これに限られず、正極集電体6001の一部に設けても良い。例えば、正極集電体6001と正極タブとが接続する部分には、正極活物質層6002を設けない構成とするとよい。
正極集電体6001には、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、銅、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性の高く、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることができる。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。正極集電体6001は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。正極集電体6001は、厚みが10μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
図15(B)は、正極活物質層6002の縦断面を示した模式図である。正極活物質層6002は、粒状の正極活物質6003と、導電助剤としてのグラフェン6004と、バインダ6005(結着剤)とを含む。
導電助剤としては、後述するグラフェンの他、アセチレンブラック(AB)やケッチェンブラック、グラファイト(黒鉛)粒子、カーボンナノチューブなどを用いることができるが、ここでは一例として、グラフェン6004を用いた正極活物質層6002について説明する。
正極活物質6003は、原料化合物を所定の比率で混合し焼成した焼成物を、適当な手段により粉砕、造粒及び分級した、平均粒径や粒径分布を有する二次粒子からなる粒状の正極活物質である。このため、図15(B)においては、正極活物質6003を模式的に球で示しているが、この形状に限られるものではない。
正極活物質6003としては、リチウムイオン等のキャリアイオンの挿入及び脱離が可能な材料であればよい。
例えば、オリビン型構造の材料(一般式LiMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上))を用いることができる。一般式LiMPO4の代表例としては、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等のリチウム化合物を正極活物質として用いることができる。
又は、一般式Li(2−j)MSiO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等の複合酸化物を用いることができる。一般式Li(2−j)MSiO4の代表例としては、Li(2−j)FeSiO4、Li(2−j)NiSiO4、Li(2−j)CoSiO4、Li(2−j)MnSiO4、Li(2−j)FekNilSiO4、Li(2−j)FekColSiO4、Li(2−j)FekMnlSiO4、Li(2−j)NikColSiO4、Li(2−j)NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(2−j)FemNinCoqSiO4、Li(2−j)FemNinMnqSiO4、Li(2−j)NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、Li(2−j)FerNisCotMnuSiO4(r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等の化合物を正極活物質として用いることができる。
また、層状岩塩型の結晶構造を有する、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、LiNiO2、LiMnO2、Li2MnO3、LiNi0.8Co0.2O2等のNiCo系(一般式は、LiNixCo1−xO2(0<x<1))、LiNi0.5Mn0.5O2等のNiMn系(一般式は、LiNixMn1−xO2(0<x<1))、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等のNiMnCo系(NMCともいう。一般式は、LiNixMnyCo1−x−yO2(x>0、y>0、x+y<1))などのリチウム含有材料を用いることができる。
また、LiMn2O4等のスピネル型の結晶構造を有する活物質、LiMVO4等の逆スピネル型の結晶構造を有する活物質等、その他種々の化合物を用いることができる。
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンの場合、正極活物質6003として、上記化合物や酸化物において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。
なお、図示しないが、正極活物質6003の表面に炭素層を設けてもよい。炭素層を設けることで、電極の導電性を向上させることができる。正極活物質6003への炭素層の被覆は、正極活物質の焼成時にグルコース等の炭水化物を混合することで形成することができる。
また、導電助剤として正極活物質層6002に添加するグラフェン6004は、酸化グラフェンに還元処理を行うことによって形成することができる。
ここで、本明細書においてグラフェンは、単層のグラフェン、又は2層以上100層以下の多層グラフェンを含むものである。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいう。また、酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物のことをいう。なお、酸化グラフェンを還元してグラフェンを形成する場合、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素はグラフェンに残存する。グラフェンに酸素が含まれる場合、酸素の割合は、XPSで測定した場合にグラフェン全体の2atomic%以上20atomic%以下、好ましくは3atomic%以上15atomic%以下である。
ここで、グラフェンが多層グラフェンである場合、酸化グラフェンを還元したグラフェンを有することで、グラフェンの層間距離は0.34nm以上0.5nm以下、好ましくは0.38nm以上0.42nm以下、さらに好ましくは0.39nm以上0.41nm以下である。通常のグラファイトは、単層グラフェンの層間距離が0.34nmであり、本発明の一態様に係る蓄電装置に用いるグラフェンの方が、その層間距離が長いため、多層グラフェンの層間におけるキャリアイオンの移動が容易となる。
酸化グラフェンは、例えばHummers法とよばれる酸化法を用いて作製することができる。
Hummers法は、グラファイト粉末に、過マンガン酸カリウムの硫酸溶液、過酸化水素水等を加えて酸化反応させて酸化グラファイトを含む分散液を作製する。酸化グラファイトは、グラファイトの炭素の酸化により、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の官能基が結合する。このため、複数のグラフェンの層間距離がグラファイトと比較して長くなり、層間の分離による薄片化が容易となる。次に、酸化グラファイトを含む混合液に、超音波振動を加えることで、層間距離が長い酸化グラファイトを劈開し、酸化グラフェンを分離するとともに、酸化グラフェンを含む分散液を作製することができる。そして、酸化グラフェンを含む分散液から溶媒を取り除くことで、粉末状の酸化グラフェンを得ることができる。
なお、酸化グラフェンの作製は過マンガン酸カリウムの硫酸溶液を用いたHummers法に限られず、例えば硝酸、塩素酸カリウム、硝酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム等を使用するHummers法、又はHummers法以外の酸化グラフェンの作製方法を適宜用いてもよい。
また、酸化グラファイトの薄片化は、超音波振動の付加の他、マイクロ波やラジオ波、又は熱プラズマの照射や、物理的応力の付加により行ってもよい。
作製した酸化グラフェンは、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等を有する。酸化グラフェンはNMP(N−メチルピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなどともいう。)に代表される極性溶媒の中においては、官能基中の酸素がマイナスに帯電するため、NMPと相互作用する一方で異なる酸化グラフェンどうしとは反発し、凝集しにくい。このため、極性溶媒中においては、酸化グラフェンが均一に分散しやすい。
また、酸化グラフェンの一辺の長さ(フレークサイズともいう。)は一辺の長さが50nm以上100μm以下、好ましくは800nm以上20μm以下とするとよい。
図15(B)に示す正極活物質層6002の断面図のように、複数の粒状の正極活物質6003は、複数のグラフェン6004によって被覆されている。一枚のシート状のグラフェン6004は、複数の粒状の正極活物質6003と接続する。特に、グラフェン6004がシート状であるため、粒状の正極活物質6003の表面の一部を包むように面接触することができる。正極活物質と点接触するアセチレンブラック等の粒状の導電助剤と異なり、グラフェン6004は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、導電助剤の量を増加させることなく、粒状の正極活物質6003とグラフェン6004との電気伝導性を向上させることができる。
また、複数のグラフェン6004どうしも面接触している。これはグラフェン6004の形成に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いるためである。均一に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還元してグラフェンとするため、正極活物質層6002に残留するグラフェン6004は部分的に重なり合い、互いに面接触する程度に分散していることで電気伝導の経路を形成している。
また、グラフェン6004の一部は複数の正極活物質6003の間に設けられ、三次元的に配置されるように形成されている。また、グラフェン6004は炭素分子の単層又はこれらの積層で構成される極めて薄い膜(シート)であるため、個々の粒状の正極活物質6003の表面をなぞるようにその表面の一部を覆って接触しており、正極活物質6003と接していない部分は複数の粒状の正極活物質6003の間で撓み、皺となり、あるいは引き延ばされて張った状態を呈する。
従って、複数のグラフェン6004により正極6000中に電気伝導のネットワークを形成している。このため正極活物質6003どうしの電気伝導の経路が維持されている。以上のことから、酸化グラフェンを原料とし、溶媒などと混ぜてペーストとした後に還元したグラフェンを導電助剤として用いることで、高い電気伝導性を有する正極活物質層6002を形成することができる。
また、正極活物質6003とグラフェン6004との接触点を増やすために、導電助剤の添加量を増加させなくてもよいため、正極活物質6003の正極活物質層6002における比率を増加させることができる。これにより、二次電池の放電容量を増加させることができる。
粒状の正極活物質6003の一次粒子の平均粒径は、500nm以下、好ましくは50nm以上500nm以下のものを用いるとよい。この粒状の正極活物質6003の複数と面接触するために、グラフェン6004は一辺の長さが50nm以上100μm以下、好ましくは800nm以上20μm以下であると好ましい。
また、正極活物質層6002に含まれるバインダ(結着剤)には、代表的なポリフッ化ビニリデン(PVDF)の他、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等を用いることができる。
以上に示した正極活物質層6002は、正極活物質6003、導電助剤としてのグラフェン6004及びバインダを、正極活物質層6002の総量に対して、それぞれ正極活物質を90wt%以上94wt%以下、グラフェンを1wt%以上5wt%以下、バインダを1wt%以上5wt%以下の割合で含有することが好ましい。
[6.2.負極]
次に、蓄電装置の負極について、図16を用いて説明する。
負極6100は、負極集電体6101と、負極集電体6101上に塗布法、CVD法、又はスパッタリング法等により形成された負極活物質層6102などにより構成される。図16(A)においては、シート状(又は帯状)の負極集電体6101の両面に負極活物質層6102を設けた例を示しているが、これに限られず、負極活物質層6102は、負極集電体6101の一方の面にのみ設けてもよい。また、図16(A)においては、負極活物質層6102は、負極集電体6101上の全域に設けているが、これに限られず、負極集電体6101の一部に設けても良い。例えば、負極集電体6101と負極タブとが接続する部分には、負極活物質層6102を設けない構成とするとよい。
負極集電体6101には、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、銅、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性の高く、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。負極集電体6101は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。負極集電体6101は、厚みが10μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
図16(B)は、負極活物質層6102の一部の断面を模式的に示した図である。ここでは負極活物質層6102に、負極活物質6103とバインダ6105(結着剤)を有する例を示すが、これに限られず、少なくとも負極活物質6103を有していればよい。
負極活物質6103は、金属の溶解・析出、又は金属イオンの挿入・脱離が可能な材料であれば、特に限定されない。負極活物質6103の材料としては、リチウム金属の他、蓄電分野に一般的な炭素材である黒鉛を用いることができる。黒鉛は、低結晶性炭素として軟質炭素や硬質炭素等が挙げられ、高結晶性炭素として、天然黒鉛、キッシュ黒鉛、熱分解炭素、液晶ピッチ系炭素繊維、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、液晶ピッチ、石油又は石炭系コークス等が挙げられる。
また、負極活物質6103には上述の材料の他、キャリアイオンとの合金化、脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な合金系材料を用いることができる。キャリアイオンがリチウムイオンである場合、合金系材料としては、例えば、Mg、Ca、Al、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Ag、Au、Zn、Cd、Hg及びIn等のうちの少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような金属は黒鉛に対して容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと飛躍的に高い。このため、負極活物質6103にシリコンを用いることが好ましい。
図16(B)においては、負極活物質6103を粒状の物質として表しているが、これに限られず、負極活物質6103の形状としては、例えば板状、棒状、円柱状、粉状、鱗片状等任意の形状とすることができる。また、板状の表面に凹凸形状を有するものや、表面に微細な凹凸形状を有するもの、多孔質形状を有するものなど立体形状を有するものであってもよい。
塗布法を用いて負極活物質層6102を形成する場合は、負極活物質6103に、導電助剤(図示せず)や結着剤6105を添加して、負極ペーストを作製し、負極集電体6101上に塗布して乾燥させればよい。
なお、負極活物質層6102にリチウムをプレドープしてもよい。プレドープの方法としては、スパッタリング法により負極活物質層6102表面にリチウム層を形成してもよい。また、負極活物質層6102の表面にリチウム箔を設けることで、負極活物質層6102にリチウムをプレドープすることもできる。
また、負極活物質6103の表面に、グラフェン(図示せず)を形成することが好ましい。例えば、負極活物質6103をシリコンとした場合、充放電サイクルにおけるキャリアイオンの吸蔵・放出に伴う体積の変化が大きいため、負極集電体6101と負極活物質層6102との密着性が低下し、充放電により電池特性が劣化してしまう。そこで、シリコンを含む負極活物質6103の表面にグラフェンを形成すると、充放電サイクルにおいて、シリコンの体積が変化したとしても、負極集電体6101と負極活物質層6102との密着性の低下を抑制することができ、電池特性の劣化が低減されるため好ましい。
負極活物質6103の表面に形成するグラフェンは、正極の作製方法と同様に、酸化グラフェンを還元することによって形成することができる。該酸化グラフェンは、上述した酸化グラフェンを用いることができる。
また、負極活物質6103の表面に、酸化物等の被膜6104を形成してもよい。充電時において電解液の分解等により形成される皮膜(SEIとも呼ばれる)は、その形成時に消費された電荷量を放出することができず、不可逆容量を形成する。これに対し、酸化物等の被膜6104をあらかじめ負極活物質6103の表面に設けておくことで、不可逆容量の発生を抑制又は防止することができる。
このような負極活物質6103を被覆する被膜6104には、ニオブ、チタン、バナジウム、タンタル、タングステン、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、クロム、アルミニウム若しくはシリコンのいずれか一の酸化膜、又はこれら元素のいずれか一とリチウムとを含む酸化膜を用いることができる。このような被膜6104は、従来の電解液の分解生成物により負極表面に形成される被膜に比べ、十分緻密な膜である。
例えば、酸化ニオブ(Nb2O5)は、電気伝導度が10−9S/cmと低く、高い絶縁性を示す。このため、酸化ニオブ膜は負極活物質と電解液との電気化学的な分解反応を阻害する。一方で、酸化ニオブのリチウム拡散係数は10−9cm2/secであり、高いリチウムイオン伝導性を有する。このため、リチウムイオンを透過させることが可能である。
負極活物質6103を被覆する被膜6104の形成には、例えばゾル−ゲル法を用いることができる。ゾル−ゲル法とは、金属アルコキシドや金属塩等からなる溶液を、加水分解反応・重縮合反応により流動性を失ったゲルとし、このゲルを焼成して薄膜を形成する方法である。ゾル−ゲル法は液相から薄膜を形成する方法であるから、原料を分子レベルで均質に混合することができる。このため、溶媒の段階の金属酸化膜の原料に、黒鉛等の負極活物質を加えることで、容易にゲル中に活物質を分散させることができる。このようにして、負極活物質6103の表面に被膜6104を形成することができる。
当該被膜6104を用いることで、上述した間歇的な放電を伴う充電とあわせて、蓄電装置の容量の低下を防止することができる。
[6.3.電解液]
蓄電装置に用いる電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
また、電解液の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性等に対する安全性が高まる。また、蓄電装置の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー等がある。
また、電解液の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つ又は複数用いることで、蓄電装置の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電装置の破裂や発火などを防ぐことができる。
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、キャリアにリチウムイオンを用いる場合、例えばLiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiAlCl4、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C4F9SO2)(CF3SO2)、LiN(C2F5SO2)2等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
[6.4.セパレータ]
蓄電装置のセパレータには、セルロースや、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリブテン、ナイロン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等の多孔性絶縁体を用いることができる。また、ガラス繊維等の不織布や、ガラス繊維と高分子繊維を複合した隔膜を用いてもよい。
[6.5.非水系二次電池]
次に、非水系二次電池の構造について、図17及び図18を用いて説明する。
[6.5.1.コイン型二次電池]
図17(A)は、コイン型(単層偏平型)のリチウムイオン二次電池の外観図であり、部分的にその断面構造を併せて示した図である。
コイン型の二次電池950は、正極端子を兼ねた正極缶951と負極端子を兼ねた負極缶952とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット953で絶縁シールされている。正極954は、正極集電体955と、これと接するように設けられた正極活物質層956により形成される。また、負極957は、負極集電体958と、これに接するように設けられた負極活物質層959により形成される。正極活物質層956と負極活物質層959との間には、セパレータ960と、電解液(図示せず)とを有する。
負極957は負極集電体958上に負極活物質層959を有し、正極954は正極集電体955上に正極活物質層956を有する。
正極954、負極957、セパレータ960、電解液には、それぞれ上述した部材を用いることができる。
正極缶951、負極缶952には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶951は正極954と、負極缶952は負極957とそれぞれ電気的に接続する。
これら負極957、正極954及びセパレータ960を電解液に含浸させ、図17(A)に示すように、正極缶951を下にして正極954、セパレータ960、負極957、負極缶952をこの順で積層し、正極缶951と負極缶952とをガスケット953を介して圧着してコイン型の二次電池950を製造する。
[6.5.2.薄型二次電池]
次に、薄型の二次電池の一例について、図17(B)を参照して説明する。図17(B)では、説明の便宜上、部分的にその内部構造を露出して記載している。
図17(B)に示す薄型の二次電池970は、正極集電体971及び正極活物質層972を有する正極973と、負極集電体974及び負極活物質層975を有する負極976と、セパレータ977と、電解液(図示せず)と、外装体978と、を有する。外装体978内に設けられた正極973と負極976との間にセパレータ977が設置されている。また、外装体978内は、電解液で満たされている。なお、図17(B)においては、正極973、負極976、セパレータ977をそれぞれ一枚ずつ用いているが、これらを交互に積層した積層型の二次電池としてもよい。
正極、負極、セパレータ、電解液(電解質及び溶媒)には、それぞれ上述した部材を用いることができる。
図17(B)に示す薄型の二次電池970において、正極集電体971及び負極集電体974は、外部との電気的接触を得る端子(タブ)の役割も兼ねている。そのため、正極集電体971及び負極集電体974の一部は、外装体978から外側に露出するように配置される。
薄型の二次電池970において、外装体978には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造の積層フィルムを用いることができる。このような三層構造とすることで、電解液や気体の透過を遮断するとともに、絶縁性を確保し、併せて耐電解液性を有する。
[6.5.3.円筒型二次電池]
次に、円筒型の二次電池の一例について、図18を参照して説明する。円筒型の二次電池980は図18(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)981を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)982を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)982とは、ガスケット(絶縁パッキン)990によって絶縁されている。
図18(B)は、円筒型の二次電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶982の内側には、帯状の正極984と負極986とがセパレータ985を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶982は、一端が閉じられ、他端が開いている。
正極984、負極986、セパレータ985には、上述した部材を用いることができる。
電池缶982には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶982の内側において、正極、負極及びセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板988、989により挟まれている。
また、電池素子が設けられた電池缶982の内部は、電解液(図示せず)が注入されている。電解液には、上述した電解質及び溶媒を用いることができる。
円筒型の二次電池に用いる正極984及び負極986は捲回するため、集電体の両面に活物質層を形成する。正極984には正極端子(正極集電リード)983が接続され、負極986には負極端子(負極集電リード)987が接続される。正極端子983及び負極端子987は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子983は安全弁機構992に、負極端子987は電池缶982の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構992は、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子991を介して正極キャップ981と電気的に接続されている。安全弁機構992は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ981と正極984との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子991は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
[6.5.4.角型二次電池]
次に、角型の二次電池の一例について、図17(C)を参照して説明する。図17(C)に示す捲回体993は、負極994と、正極995と、セパレータ996と、を有する。捲回体993は、セパレータ996を挟んで負極994と、正極995とが重なり合って積層され、該積層シートを捲回したものである。この捲回体993を角型の封止缶などで覆うことにより角型の二次電池が形成される。なお、負極994、正極995及びセパレータ996からなる積層の積層数は、必要な容量と素子体積に応じて適宜設計すればよい。
円筒型の二次電池と同様に、負極994は端子997及び端子998の一方を介して負極タブ(図示せず)に接続され、正極995は端子997及び端子998の他方を介して正極タブ(図示せず)に接続される。その他、安全弁機構等の周辺構造は、円筒型の二次電池に準ずる。
以上のように二次電池として、コイン型、薄型(ラミネート型とも呼ばれる)、円筒型及び角型の二次電池を示したが、その他様々な形状の二次電池を用いることができる。また、正極と負極とセパレータとが複数積層された構造や、正極と負極とセパレータとが捲回された構造であってもよい。
[6.6.電気回路等を有する蓄電装置]
次に、電気回路等を有する蓄電装置について説明する。
図19は、上述した角型の二次電池に電気回路等を設けた蓄電装置の例を示す図である。図19(A)及び(B)に示す蓄電装置6600は、電池缶6604の内部に捲回体6601を収納したものである。捲回体6601は、端子6602及び端子6603を有し、電池缶6604の内部で電解液に含浸される。端子6603は電池缶6604に接し、端子6602は、絶縁材などを用いることにより電池缶6604から絶縁する構成としてもよい。電池缶6604は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。
さらに、図19(B)に示す蓄電装置6600に電気回路等を設けることができる。図19(C)及び(D)は、蓄電装置6600に、電気回路等を設けた回路基板6606、アンテナ6609、アンテナ6610、ラベル6608を設けた例を示す図である。
回路基板6606は、電気回路6607、端子6605等を有する。回路基板6606としては、例えばプリント基板(PCB)を用いることができる。プリント基板を回路基板6606として用いた場合、プリント基板上に抵抗素子、コンデンサ等の容量素子、コイル(インダクタ)、半導体集積回路(IC)などの電子部品を実装し結線して電気回路6607を形成することができる。電子部品としてはこれらの他に、サーミスタ等の温度検出素子、ヒューズ、フィルタ、水晶発振器、EMC対策部品等、種々の部品を実装することができる。
ここで、上記の半導体集積回路(IC)には、上述した酸化物半導体をチャネル形成領域などに用いたトランジスタを有する回路を用いることができる。これにより、電気回路6607の消費電力を大幅に低減することが可能となる。
これらの電子部品によって形成された電気回路6607は、例えば蓄電装置6600の過充電監視回路、過放電監視回路、過電流に対する保護回路等として機能させることができる。電気回路6607には、例えば図3に示す回路203を設けることができる。なお、蓄電装置6600に図3に示すコンバータ202を設けてもよい。
回路基板6606が有する端子6605は、端子6602、端子6603、アンテナ6609、アンテナ6610、及び電気回路6607に接続される。図19(C)及び(D)においては5つの端子を示しているが、これに限らず、任意の端子数とすればよい。端子6605を用いて蓄電装置6600の充放電を行う他、蓄電装置6600を搭載する電気機器との信号の授受を行うことができる。
アンテナ6609及びアンテナ6610は、例えば蓄電装置の外部との電力の授受、信号の授受を行うために用いることができる。アンテナ6609及びアンテナ6610の一方又は双方を上述した電気回路6607に電気的に接続することで、電気回路6607により外部との電力の授受又は信号の授受を制御することができる。あるいは、アンテナ6609及びアンテナ6610の一方又は双方を端子6605に電気的に接続することで、蓄電装置6600を搭載する電気機器の制御回路により外部との電力の授受又は信号の授受を制御することもできる。
なお、図19(C)及び(D)では2種類のアンテナを設けた蓄電装置6600の例であるが、アンテナは複数種設けてもよく、あるいはアンテナを設けない構成としてもよい。
図19(C)及び(D)においては、アンテナ6609及びアンテナ6610がコイル形状である場合を示すが、これに限られず、例えば線状、平板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。
なお、無線による電力の授受(非接触電力伝送、無接点電力伝送あるいはワイヤレス給電などともいう)には、電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電波方式等を用いることができる。
アンテナ6609の線幅は、アンテナ6610の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ6609により受電する電力量を上げることができる。
また、アンテナ6609及びアンテナ6610と、蓄電装置6600との間に層6611を有する。層6611は、例えば捲回体6601による電界又は磁界の遮蔽を防止することができる機能を有する。この場合、層6611には、例えば磁性体を用いることができる。あるいは、層6611を遮蔽層としてもよい。
なお、アンテナ6609及びアンテナ6610は、外部との電力の授受又は信号の授受とは異なる用途として用いることができる。例えば、蓄電装置6600を搭載する電気機器がアンテナを有さない機器である場合、アンテナ6609及びアンテナ6610を用いて電気機器への無線通信を実現することができる。
[7.電気機器]
本発明の一態様に係る蓄電装置は、様々な電気機器の電源として用いることができる。
[7.1.電気機器の範疇]
ここで電気機器とは、電気の力によって作用する部分を含む工業製品をいう。電気機器は、家電等の民生用に限られず、業務用、産業用、軍事用等、種々の用途のものを広くこの範疇とする。
[7.2.電気機器の一例]
本発明の一態様に係る蓄電装置を用いた電気機器としては、例えば、テレビやモニタ等の表示装置、照明装置、デスクトップ型やノート型等のパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画又は動画を再生する画像再生装置、CD(Compact Disc)プレーヤやデジタルオーディオプレーヤ等の携帯型又は据置型の音響再生機器、携帯型又は据置型のラジオ受信機、テープレコーダやICレコーダ(ボイスレコーダ)等の録音再生機器、ヘッドホンステレオ、ステレオ、リモートコントローラ、置き時計や壁掛け時計等の時計、コードレス電話子機、トランシーバ、携帯電話機、自動車電話、携帯型又は据置型のゲーム機、歩数計、電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子書籍、電子翻訳機、マイクロフォン等の音声入力機器、スチルカメラやビデオカメラ等の写真機、玩具、電気シェーバ、電動歯ブラシ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、温水器、扇風機、毛髪乾燥機、加湿器や除湿器やエアコンディショナ等の空気調和設備、食器洗い器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、懐中電灯、電動工具、煙感知器、補聴器、心臓ペースメーカ、携帯型X線撮影装置、放射線測定器、電気マッサージ器や透析装置等の健康機器や医療機器などが挙げられる。さらに、誘導灯、信号機、ガスメータや水道メータ等の計量器、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、自動販売機、自動券売機、現金自動支払機(CD。Cash Dispenserの略)や現金自動預金支払機(ATM。AutoMated Teller Machineの略)、デジタルサイネージ(電子看板)、産業用ロボット、無線用中継局、携帯電話の基地局、電力貯蔵システム、電力の平準化やスマートグリッドのための蓄電装置等の産業機器が挙げられる。また、蓄電装置からの電力を用いて電動機により推進する移動体(輸送体)なども、電気機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機を併せ持ったハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、これらのタイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、農業機械、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、電動カート、小型又は大型船舶、潜水艦、固定翼機や回転翼機等の航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船などが挙げられる。
なお、上記電気機器は、消費電力のほぼ全てを賄うための主電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。また、上記電気機器は、主電源や商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電気機器への電力の供給を行うことができる無停電電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。あるいは上記電気機器は、主電源や商用電源からの電気機器への電力の供給と並行して、電気機器への電力の供給を行うための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。
[7.3.電力系のネットワークの一例]
上述した電気機器は、個々に蓄電装置を搭載する場合に限らず、複数の電気機器と蓄電装置とこれらの電力系を制御する制御装置とを有線又は無線で接続した電力系のネットワーク(電力網)を形成してもよい。電力系のネットワークを制御装置により制御することによって、ネットワーク全体における電力の使用効率を向上させることができる。
図20(A)に、複数の家電機器、制御装置、及び蓄電装置等を住宅内で接続したHEMS(家庭内エネルギー管理システム。Home Energy Management Systemの略)の例を示す。このようなシステムによって、家全体の電力消費量を容易に把握することが可能になる。また、複数の家電機器の運転を遠隔操作することができる。また、センサや制御装置を用いて家電機器を自動制御する場合には、電力の節約にも貢献することができる。
住宅8000に設置された分電盤8003は、引込み線8002を介して電力系統8001に接続される。分電盤8003は、引込み線8002から供給される商用電力である交流電力を、複数の家電機器それぞれに供給するものである。制御装置8004は分電盤8003と接続されるとともに、複数の家電機器や蓄電システム8005、太陽光発電システム8006等と接続される。また制御装置8004は、住宅8000の屋外などに駐車され、分電盤8003とは独立した電気自動車8012とも接続することができる。
制御装置8004は、分電盤8003と複数の家電機器とを繋ぎネットワークを構成するものであり、ネットワークに接続された複数の家電機器を制御するものである。
また、制御装置8004は、インターネット8011に接続され、インターネット8011を経由して、管理サーバ8013と接続することができる。管理サーバ8013は、使用者の電力の使用状況を受信してデータベースを構築することができ、当該データベースに基づき、種々のサービスを使用者に提供することができる。また、管理サーバ8013は、例えば時間帯に応じた電力の料金情報を使用者に随時提供することができ、当該情報に基づいて、制御装置8004は住宅8000内における最適な使用形態を設定することもできる。
複数の家電機器は、例えば、図20(A)に示す表示装置8007、照明装置8008、空気調和設備8009、電気冷蔵庫8010であるが、勿論これに限られず、上述した電気機器など住宅内に設置可能なあらゆる電気機器を指す。
例えば、表示装置8007は、表示部に液晶表示装置、有機EL(Electro Luminescence)素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの半導体表示装置が組み込まれ、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、情報表示用表示装置として機能するものが含まれる。
また、照明装置8008は、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を含むものであり、人工光源としては、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LED(Light Emitting Diode)や有機EL素子などの発光素子を用いることができる。図20(A)に示す照明装置8008は天井に設置されたものであるが、この他、壁面、床、窓等に設けられた据付け型であってもよく、卓上型であってもよい。
また、空気調和設備8009は、温度、湿度、空気清浄度等の室内環境の調整を行う機能を有する。図20(A)では、一例としてエアコンディショナを示す。エアコンディショナは、圧縮機や蒸発器を一体とした室内機と、凝縮器を内蔵した室外機(図示せず)を備えるものや、これらを一体としたもの等で構成される。
また、電気冷蔵庫8010は、食料品等を低温で保管するための電気機器であり、0℃以下で凍らせる目的の冷凍庫を含む。圧縮器により圧縮したパイプ内の冷媒が気化する際に熱を奪うことにより、庫内を冷却するものである。
これら複数の家電機器は、それぞれに蓄電装置を有していてもよく、また蓄電装置を有さずに、蓄電システム8005の電力や商用電源からの電力を利用してもよい。家電機器が蓄電装置を内部に有する場合には、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない場合であっても、蓄電装置を無停電電源として用いることで、当該家電機器の利用が可能となる。
以上のような家電機器のそれぞれの電源供給端子の近傍に、電流センサ等の電力検出手段を設けることができる。電力検出手段により検出した情報を制御装置8004に送信することによって、使用者が家全体の電力使用量を把握することができる他、該情報に基づいて、制御装置8004が複数の家電機器への電力の配分を設定し、住宅8000内において効率的なあるいは経済的な電力の使用を行うことができる。
また、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち電力使用率が低い時間帯において、商用電源から蓄電システム8005に充電することができる。また、太陽光発電システム8006によって、日中に蓄電システム8005に充電することができる。なお、充電する対象は、蓄電システム8005に限られず、制御装置8004に接続された電気自動車8012に搭載された蓄電装置でもよく、複数の家電機器が有する蓄電装置であってもよい。
このようにして、種々の蓄電装置に充電された電力を制御装置8004が効率的に配分して使用することで、住宅8000内において効率的なあるいは経済的な電力の使用を行うことができる。
以上のように、電力系をネットワーク化して制御する例として、家庭内規模の電力網を示したがこれに限らず、スマートメーター等の制御機能や通信機能を組み合わせた都市規模、国家規模の電力網(スマートグリッドという)を構築することもできる。また、工場や事業所の規模で、エネルギー供給源と消費施設を構成単位とするマイクログリッドを構築することもできる。
[7.4.電気機器の一例(電気自動車の例)]
次に、電気機器の一例として移動体の例について、図20(B)及び(C)を用いて説明する。本発明の一態様に係る蓄電装置を、移動体の制御用の蓄電装置に用いることができる。
図20(B)は、電気自動車の内部構造の一例を示している。電気自動車8020には、充放電の可能な蓄電装置8024が搭載されている。蓄電装置8024の電力は、電子制御ユニット8025(ECUともいう。Electronic Control Unitの略)により出力が調整されて、インバータユニット8026を介して走行モータユニット8027に供給される。インバータユニット8026は、蓄電装置8024から入力された直流電力を3相交流電力に変換するとともに、変換した交流電力の電圧、電流及び周波数を調整して走行モータユニット8027に出力することができる。
従って、運転者がアクセルペダル(図示せず)を踏むと、走行モータユニット8027が作動し、走行モータユニット8027で生じたトルクが出力軸8028及び駆動軸8029を介して後輪(駆動輪)8030に伝達される。これに追従して前輪8023も併せて稼働することで、電気自動車8020を駆動走行させることができる。
各ユニットには、例えば電圧センサ、電流センサ、温度センサ等の検出手段が設けられ、電気自動車8020の各部位における物理量が適宜監視される。
電子制御ユニット8025は、図示しないRAM、ROM等のメモリやCPUを有する処理装置である。電子制御ユニット8025は、電気自動車8020の加速、減速、停止等の操作情報、走行環境や各ユニットの温度情報、制御情報、蓄電装置の充電状態(SOC)などの入力情報に基づき、インバータユニット8026や走行モータユニット8027、蓄電装置8024に制御信号を出力する。当該メモリには、各種のデータやプログラムが格納される。
走行モータユニット8027は、交流電動機の他、直流電動機やこれらの電動機と内燃機関とを組み合わせて用いることができる。
なお、本発明の一態様に係る蓄電装置を具備していれば、上記で示した移動体に特に限定されないことは言うまでもない。
電気自動車8020に搭載された蓄電装置8024は、プラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図20(C)に、地上設置型の充電装置8021から電気自動車8020に搭載された蓄電装置8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクタの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、図20(B)に示す、蓄電装置8024と接続する接続プラグ8031を充電装置8021と電気的に接続させるプラグイン技術によって、外部からの電力供給により電気自動車8020に搭載された蓄電装置8024を充電することができる。充電は、AC/DCコンバータ等の変換装置を介して、一定の電圧値を有する直流定電圧に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を移動体に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、移動体どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、移動体の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電装置8024の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
なお、移動体が鉄道用電気車両の場合、架線や導電軌条からの電力供給により、搭載する蓄電装置に充電することができる。
蓄電装置8024として、本発明の一態様に係る蓄電装置を搭載することで、蓄電装置のサイクル特性が良好となり、利便性を向上させることができる。また、蓄電装置8024の特性の向上により、蓄電装置8024自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、燃費を向上させることができる。また、移動体に搭載した蓄電装置8024が比較的大容量であることから、屋内等の電力供給源として用いることもできる。この場合、電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。
[7.5.電気機器の一例(携帯情報端末の例)]
さらに、電気機器の一例として携帯情報端末の例について、図21を用いて説明する。
図21(A)は、携帯情報端末8040の正面及び側面を示した斜視図である。携帯情報端末8040は、一例として、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲーム等の種々のアプリケーションの実行が可能である。携帯情報端末8040は、筐体8041の正面に表示部8042、カメラ8045、マイクロフォン8046、スピーカ8047を有し、筐体8041の左側面には操作用のボタン8043、底面には接続端子8048を有する。
表示部8042には、表示モジュール又は表示パネルが用いられる。表示モジュール又は表示パネルとして、有機発光素子(OLED)に代表される発光素子を各画素に備えた発光装置、液晶表示装置、電気泳動方式や電子粉流体方式等により表示を行う電子ペーパ、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)、SED(Surface Conduction Electron−emitter Display)、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、カーボンナノチューブディスプレイ、ナノ結晶ディスプレイ、量子ドットディスプレイ等が用いることができる。
図21(A)に示す携帯情報端末8040は、筐体8041に表示部8042を一つ設けた例であるが、これに限らず、表示部8042を携帯情報端末8040の背面に設けてもよいし、折り畳み型の携帯情報端末として、二以上の表示部を設けてもよい。
また、表示部8042には、指やスタイラス等の指示手段により情報の入力が可能なタッチパネルが入力手段として設けられている。これにより、表示部8042に表示されたアイコン8044を指示手段により簡単に操作することができる。また、タッチパネルの配置により携帯情報端末8040にキーボードを配置する領域が不要となるため、広い領域に表示部を配置することができる。また、指やスタイラスで情報の入力が可能となることから、ユーザフレンドリなインターフェースを実現することができる。タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、赤外線方式、電磁誘導方式、表面弾性波方式等、種々の方式を採用することができるが、本発明に係る表示部8042は湾曲するものであるため、特に抵抗膜方式、静電容量方式を用いることが好ましい。また、このようなタッチパネルは、上述の表示モジュール又は表示パネルと一体として組み合わされた、いわゆるインセル方式のものであってもよい。
また、タッチパネルは、イメージセンサとして機能させることができるものであってもよい。この場合、例えば、表示部8042に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部8042に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
また、表示部8042にタッチパネルを設けずにキーボードを設けてもよく、さらにタッチパネルとキーボードの双方を設けてもよい。
操作用のボタン8043には、用途に応じて様々な機能を持たせることができる。例えば、ボタン8043をホームボタンとし、ボタン8043を押すことで表示部8042にホーム画面を表示する構成としてもよい。また、ボタン8043を所定の時間押し続けることで、携帯情報端末8040の主電源をオフするようにしてもよい。また、スリープモードの状態に移行している場合、ボタン8043を押すことで、スリープモード状態から復帰させるようにしてもよい。その他、押し続ける期間や、他のボタンと同時に押す等により、種々の機能を起動させるスイッチとして用いることができる。
また、ボタン8043を音量調整ボタンやミュートボタンとし、音出力のためのスピーカ8047の音量の調整等を行う機能を持たせてもよい。スピーカ8047からは、オペレーティングシステム(OS)の起動音等特定の処理時に設定した音、音楽再生アプリケーションソフトからの音楽等各種アプリケーションにおいて実行される音ファイルによる音、電子メールの着信音等様々な音を出力する。なお、図示しないが、スピーカ8047とともに、あるいはスピーカ8047に替えて、ヘッドフォン、イヤフォン、ヘッドセット等の装置に音を出力するためのコネクタを設けてもよい。
このようにボタン8043には、種々の機能を与えることができる。図21(A)では、左側面にボタン8043を2つ設けた携帯情報端末8040を図示しているが、勿論、ボタン8043の数や配置位置等はこれに限定されず、適宜設計することができる。
マイクロフォン8046は、音声入力や録音に用いることができる。また、カメラ8045により取得した画像を表示部8042に表示させることができる。
携帯情報端末8040の操作には、上述した表示部8042に設けられたタッチパネルやボタン8043の他、カメラ8045や携帯情報端末8040に内蔵されたセンサ等を用いて使用者の動作(ジェスチャー)を認識させて操作を行うこともできる(ジェスチャー入力という)。あるいは、マイクロフォン8046を用いて、使用者の音声を認識させて操作を行うこともできる(音声入力という)。このように、人間の自然な振る舞いにより電気機器に入力を行うNUI(Natural User Interface)技術を実装することで、携帯情報端末8040の操作性をさらに向上させることができる。
接続端子8048は、外部機器との通信のための信号や電力供給のための電力の入力端子である。例えば、携帯情報端末8040に外部メモリドライブするために、接続端子8048を用いることができる。外部メモリドライブとして、例えば外付けHDD(ハードディスクドライブ)やフラッシュメモリドライブ、DVD(Digital Versatile Disk)ドライブやDVD−R(DVD−Recordable)ドライブ、DVD−RW(DVD−ReWritable)ドライブ、CD(Compact Disc)ドライブ、CD−R(Compact Disc Recordable)ドライブ、CD−RW(Compact Disc ReWritable)ドライブ、MO(Magneto− Optical Disc)ドライブ、FDD(Floppy Disk Drive)、又は他の不揮発性のソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)デバイスなどの記録メディアドライブが挙げられる。また、携帯情報端末8040は表示部8042上にタッチパネルを有しているが、これに替えて筐体8041上にキーボードを設けてもよく、またキーボードを外付けしてもよい。
図21(A)では、底面に接続端子8048を1つ設けた携帯情報端末8040を図示しているが、接続端子8048の数や配置位置等はこれに限定されず、適宜設計することができる。
図21(B)は、携帯情報端末8040の背面及び側面を示した斜視図である。携帯情報端末8040は、筐体8041の表面に太陽電池8049とカメラ8050を有し、また、充放電制御回路8051、蓄電装置8052、DCDCコンバータ8053等を有する。なお、図21(B)では充放電制御回路8051の一例として蓄電装置8052、DCDCコンバータ8053を有する構成について示しており、蓄電装置8052には、上記実施の形態で説明した本発明の一態様に係る蓄電装置を用いる。
携帯情報端末8040の背面に装着された太陽電池8049によって、電力を表示部、タッチパネル、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池8049は、筐体8041の片面又は両面に設けることができる。携帯情報端末8040に太陽電池8049を搭載させることで、屋外などの電力の供給手段がない場所においても、携帯情報端末8040の蓄電装置8052の充電を行うことができる。
また、太陽電池8049としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、非晶質シリコン又はこれらの積層からなるシリコン系の太陽電池や、InGaAs系、GaAs系、CIS系、Cu2ZnSnS4、CdTe−CdS系の太陽電池、有機色素を用いた色素増感太陽電池、導電性ポリマーやフラーレン等を用いた有機薄膜太陽電池、pin構造におけるi層中にシリコン等による量子ドット構造を形成した量子ドット型太陽電池等を用いることができる。
ここで、図21(B)に示す充放電制御回路8051の構成、及び動作についての一例を、図21(C)に示すブロック図を用いて説明する。
図21(C)には、太陽電池8049、蓄電装置8052、DCDCコンバータ8053、コンバータ8057、スイッチ8054、スイッチ8055、スイッチ8056、表示部8042について示しており、蓄電装置8052、DCDCコンバータ8053、コンバータ8057、スイッチ8054、スイッチ8055、スイッチ8056が、図21(B)に示す充放電制御回路8051に対応する箇所となる。
外光により太陽電池8049で発電した電力は、蓄電装置8052を充電するために必要な電圧とするために、DCDCコンバータ8053で昇圧又は降圧される。そして、表示部8042の動作に太陽電池8049からの電力が用いられる際には、スイッチ8054をオンにし、コンバータ8057で表示部8042に必要な電圧に昇圧又は降圧する。また、表示部8042での表示を行わない際には、スイッチ8054をオフにし、スイッチ8055をオンにして蓄電装置8052の充電を行う。
なお、発電手段の一例として太陽電池8049を示したが、これに限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段を用いて蓄電装置8052の充電を行ってもよい。また、携帯情報端末8040の蓄電装置8052への充電方法はこれに限られず、例えば上述した接続端子8048と電源とを接続して充電を行ってもよい。また、無線で電力を送受信して充電する非接触電力伝送モジュールを用いてもよく、以上の充電方法を組み合わせてもよい。
ここで、蓄電装置8052の充電状態(SOC:State Of Charge)が、表示部8042の左上(破線枠内)に表示される。これにより、使用者は、蓄電装置8052の充電状態を把握することができ、これに応じて携帯情報端末8040を節電モードと選択することもできる。使用者が省電力モードを選択する場合には、例えば上述したボタン8043やアイコン8044を操作し、携帯情報端末8040に搭載される表示モジュール又は表示パネルや、CPU等の演算装置、メモリ等の構成部品を省電力モードに切り換えることができる。具体的には、これらの構成部品のそれぞれにおいて、任意の機能の使用頻度を低減し、停止させる。省電力モードでは、また、充電状態に応じて設定によって自動的に省電力モードに切り替わる構成とすることもできる。また、携帯情報端末8040に光センサ等の検出手段を設け、携帯情報端末8040の使用時における外光の光量を検出して表示輝度を最適化することで、蓄電装置8052の電力の消費を抑えることができる。
また、太陽電池8049等による充電時には、図21(A)に示すように、表示部8042の左上(破線枠内)にそれを示す画像等の表示を行ってもよい。
また、本発明の一態様に係る蓄電装置を具備していれば、図21に示した電気機器に限定されないことは言うまでもない。
[7.6.電気機器の一例(蓄電システムの例)]
さらに、電気機器の一例として蓄電システムの例について、図22を用いて説明する。ここで説明する蓄電システム8100は、上述した蓄電システム8005として家庭で用いることができる。また、ここでは一例として家庭用の蓄電システムについて説明するが、これに限られず、業務用として又はその他の用途で用いることができる。
図22(A)に示すように、蓄電システム8100は、系統電源8103と電気的に接続するためのプラグ8101を有する。また、蓄電システム8100は、家庭内に設けられた分電盤8104と電気的に接続する。
また、蓄電システム8100は、動作状態等を示すための表示パネル8102などを有していてもよい。表示パネルはタッチスクリーンを有していてもよい。また、表示パネルの他、主電源のオンオフを行うためのスイッチや蓄電システムの操作を行うためのスイッチ等を有していてもよい。
なお、図示しないが、蓄電システム8100を操作するために、蓄電システム8100とは別に、例えば室内の壁に操作スイッチを設けてもよい。あるいは、蓄電システム8100と家庭内に設けられたパーソナルコンピュータ、サーバ等と接続し、間接的に蓄電システム8100を操作してもよい。さらに、スマートフォン等の情報端末機やインターネット等を用いて蓄電システム8100を遠隔操作してもよい。これらの場合、蓄電システム8100とその他の機器とは有線により又は無線により通信を行う機構を、蓄電システム8100に設ければよい。
図22(B)は、蓄電システム8100の内部を模式的に示した図である。蓄電システム8100は、複数の蓄電装置群8106とBMU(Battery Management Unit)8107とPCS(Power Conditioning System)8108とを有する。
蓄電装置群8106は、上述した蓄電装置8105を複数並べて接続したものである。系統電源8103からの電力を、蓄電装置群8106に蓄電することができる。複数の蓄電装置群8106のそれぞれは、BMU8107と電気的に接続されている。
BMU8107は、蓄電装置群8106が有する複数の蓄電装置8105の状態を監視及び制御し、また蓄電装置8105を保護する機能を有する。具体的には、BMU8107は、蓄電装置群8106が有する複数の蓄電装置8105のセル電圧、セル温度データ収集、過充電及び過放電の監視、過電流の監視、セルバランサ制御、電池劣化状態の管理、電池残量((充電率)State Of Charge:SOC)の算出演算、駆動用蓄電装置の冷却ファンの制御、又は故障検出の制御等を行う。なお、これらの機能の一部又は全部は上述のように、蓄電装置8105内に含めてもよく、あるいは蓄電装置群ごとに当該機能を付与してもよい。また、BMU8107はPCS8108と電気的に接続する。
ここで、BMU8107を構成する電子回路には、上述した酸化物半導体を有するトランジスタを用いた電子回路を有するとよい。この場合、BMU8107の消費電力を大幅に低減することが可能となる。
PCS8108は、交流(AC)電源である系統電源8103と電気的に接続され、直流−交流変換を行う。例えば、PCS8108は、インバータや、系統電源8103の異常を検出して動作を停止する系統連系保護装置などを有する。蓄電システム8100の充電時には、例えば系統電源8103の交流の電力を直流に変換してBMU8107へ送電し、蓄電システム8100の放電時には、蓄電装置群8106に蓄えられた電力を屋内などの負荷に交流に変換して供給する。なお、蓄電システム8100から負荷への電力の供給は、図22(A)に示すように分電盤8104を介してもよく、あるいは蓄電システム8100と負荷とを有線又は無線により直接行ってもよい。
なお、蓄電システム8100への充電は上述する系統電源8103からに限らず、例えば屋外に設置した太陽発電システムから電力を供給してもよいし、電気自動車に搭載した蓄電システムから供給してもよい。
本実施例では、二相共存反応をする活物質としてリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を用いて蓄電装置を作製し、その充放電特性を評価した。
(リン酸鉄リチウムの作製)
蓄電装置には、表面に炭素層が形成されたLiFePO4を用いた。LiFePO4は、固相法を用いて作製した材料である。表面に炭素層が形成されたLiFePO4の作製では、ドライルーム環境下(露点−70℃以上−55℃以下)において、原料としてLi2CO3:FeC2O4・2H2O:NH4H2PO4=2:1:1のモル比となるように原料を秤量した。
次に、これらを、ボールミルを用いて混合・粉砕した。ボールミルは、遊星回転式ボールミルであり、500mlのジルコニアポットと、直径3mm、300gのジルコニアボールを用い、総量150gの上記原料を回転数300rpmで2時間処理を行った。混合・粉砕には、溶媒として250mlのアセトン(関東化学株式会社製、全体に対して0.0068%の水を含む)を用いた。
次に、ドライルーム環境下において、ホットプレートを用いて、50℃で1時間以上2時間以下の乾燥を行った。その後、上記ドライルーム環境下で真空乾燥機を用いて0.1MPaの真空中で、80℃で2時間の乾燥を行った。
次に、マッフル炉を用いて、350℃10時間の焼成を行った。このとき、N2流量は、5l/minである。
次に、炭素層を形成するために、焼成した試料に対してグルコースを10wt%秤量し、焼成した試料とグルコースを、ボールミルを用いて混合・粉砕した。ここでは、上記混合・粉砕の工程と同じ装置、方法を用いて混合・粉砕を行った。
次に、上記ドライルーム環境下において、ホットプレートを用いて、50℃で1時間以上2時間以下の乾燥を行った。その後、上記ドライルーム環境下で真空乾燥機を用いて0.1MPaの真空中で、80℃で2時間乾燥を行った。
次に、マッフル炉を用いて、600℃10時間の焼成を行った。
その後、上記ドライルーム環境下で、ボールミルを用いて凝集した活物質粒子の解砕を行った。この解砕工程は、上述した原料の混合・粉砕と同一の条件で行ったが、回転数200rpm、処理時間を30分とした点において異なる。
次に、上記ドライルーム環境下において、ホットプレートを用いて、50℃で1時間以上2時間以下の乾燥を行った。
その後、上記ドライルーム環境下で、真空乾燥機を用いて0.1MPaの真空中で、175℃の温度で2時間乾燥を行った。
以上の工程により、表面に炭素層が形成されたLiFePO4を作製した。得られたLiFePO4の一次粒子の径は、50nm以上300nm以下であり、二次粒子の径は、2μm以下であった。
(正極の作製)
正極を作製するために、まず表面に炭素層が形成されたLiFePO4とNMP(N−メチル−ピロリドン)を混練機により2000rpmで3分間攪拌・混合を行った。次に、超音波振動を3分間加え、混練機により2000rpmで1分間攪拌・混合を行う工程を5回繰り返し行った。
次に、酸化グラフェンを該混合物に加え、混練機により2000rpmでの2分間の攪拌・混合を8回行った。その後、結着剤としてPVDF(呉羽化学株式会社製)を加え混練機により2000rpmでの2分間の攪拌・混合を1回行った。さらに、NMPを添加して2000rpmで2分間の攪拌・混合を行う工程を、試料が塗工に適した粘度になるまで繰り返し行った。
なお、炭素層が形成されたLiFePO4、酸化グラフェン、PVDFの配合比を91.4:0.6:8(単位:wt%)とした。
ここで、酸化グラフェンは、Hummers法を用いて作製した。まずグラファイトと、KMO4と、硫酸と混合しグラファイトを酸化させ、さらに塩酸で洗浄した後、水に分散させ超音波洗浄機を用いてグラファイトの一部を剥離した。その後塩酸を除去し、減圧下でエバポレータ、エタノールを用いて水分を除去した。さらに、得られた試料をダンシングミルで粉砕し乾燥させることにより、酸化グラフェンを作製した。
以上の工程によりスラリーを形成した。さらに、スラリーを、塗工装置(アプリケータ)を用いて厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗工した。このとき、塗工装置の塗工部と塗工面との間隔を230μmとし、塗工の速度を10mm/secとした。
これを80℃の温度で40分間熱風乾燥した後、ロールプレス機を用いてプレスを行った。さらに、減圧雰囲気下で170℃の温度で10時間加熱し、再度プレスを行い、得られた電極の一部を打ち抜くことにより正極を作製した。
なお、プレス機のロールの温度を120℃とし、正極の厚さが20%減少する条件でプレスを行った。正極において、活物質層の厚さは、58μmであり、電極密度は、1.82g/cm3であり、LiFePO4の担持量は約9.7mg/cm2であり、単極理論容量は約1.6mAh/cm2である。
(負極の作製)
負極の作製では、粒子の表面に酸化珪素層が形成されたMCMBと、NMPと、PVDF(呉羽化学社製)と、を混練機により2000rpmで5分間攪拌・混合を行った。なお、MCMBに対するPVDFの重量比を10wt%(重量パーセント)とした。
さらに、NMPを添加して2000rpmで5分間の攪拌・混合を行う工程を、試料が塗工に適した粘度になるまで繰り返し行った。
以上の工程によりスラリーを形成した。さらに、スラリーを、塗工装置(アプリケータ)を用いて厚さ18μmの銅箔上に塗工した。このとき、塗工装置の塗工部と塗工面との間隔を230μmとし、塗工の速度を10mm/secとした。
これを70℃の温度で40分間熱風乾燥させた後、ロールプレス機を用いプレスを行った。さらに減圧雰囲気下で170℃の温度で10時間加熱し、再度プレスを行い、得られた電極の一部を打ち抜くことにより負極を作製した。なお、プレス機のロールの温度を120℃とし、正極の厚さが20%減少する条件でプレスを行った。なお、負極において、活物質層の厚さは89μmであり、電極密度は1.42g/cm3であり、MCMBの担持量は約11.4mg/cm2であり、単極理論容量は約4.2mAh/cm2である。
酸化珪素層が形成されたMCMBは、ゾルゲル法を用いて作製した材料である。酸化珪素層が形成されたMCMBの作製では、シリコンエトキシドと、塩酸と、トルエンを加え、撹拌してSi(OEt)4トルエン溶液を作製した。このとき、後に生成される酸化珪素の割合がMCMBに対して1wt%(重量パーセント)になるようにシリコンエトキシドの量を決定した。この溶液の配合比は、Si(OEt)4を3.14×10―4mol、1Nの塩酸を2.91×10―4mol、トルエンを2mlとした。
次に、上記ドライルーム環境下において、Si(OEt)4トルエン溶液に、平均粒径が9μmのMCMBを添加して撹拌した。この後、湿気環境において、70℃で3時間溶液を保持した。
次に、マッフル炉を用いて、窒素雰囲気下において500℃、3時間の焼成を行った。その後、凝集した活物質粒子の解砕を乳鉢で行うことにより、酸化珪素層が形成されたMCMBを作製した。
(評価用セル)
以上のようにして作製した正極及び負極を用いて、CR2032タイプ(直径20mm、高さ3.2mm)のコイン型セルを作製した。このとき、セパレータには、厚さ25μmのポリプロピレンを用いた。また、電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比で3:7の割合で混合し、混合した溶液に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルの濃度で溶解した電解液を用いた。
作製したコイン型セルの充放電容量の評価には、定電流充放電装置(東洋システム製TOSCAT−3100)を用い、環境温度を25℃、充放電レートを0.2C(34mA/g)、上限電圧を4.0V、下限電圧2.0Vとして、充放電試験を行った。
充放電試験の結果を図23に示す。図23は、横軸に容量(mAh/g)を、縦軸に電圧(V)を示す。充電容量及び放電容量は、ともに120mAh/gを上回る値となった。また、図23の充放電結果から明らかなように、リン酸鉄リチウムを正極活物質に用いた蓄電装置を作製することにより、その充電特性は充電中に平坦な領域(プラトー領域)を有するとともに、充電の末期において、電圧変化が急峻となることが確認できた。
本実施例では、正極活物質に二相共存反応をするリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を用いた場合における、高電圧印加時の電流値の変化を測定した。
測定は、CR2032タイプ(直径20mm、高さ3.2mm)のコイン型セルを作製して行った。正極には、配合比(重量%)を、炭素層を被覆したリン酸鉄リチウム:アセチレンブラック:PVDF=85:8:7とした電極を用いた。膜厚は75μm、担持量は9.8mg/cm2、単極理論容量は1.67mAh/cm2である。また負極には、配合比(重量%)を、黒鉛:アセチレンブラック:PVDF=93:2:5とした電極を用いた。膜厚は120μm、担持量は12mg/cm2、単極理論容量は4.46mAh/cm2である。
このとき、セパレータには、厚さ25μmのポリプロピレンを用いた。また、電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比で1:1の割合で混合し、混合した溶液に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルの濃度で溶解した電解液を用いた。測定の環境温度は60℃とした。
以上の試料及び測定条件で評価を行った。図24(A)は、定電流充電(CC充電)後の定電圧充電(CV充電)時における、電流値の電圧依存性を示す図である。横軸に時間(単位:秒)、縦軸に電流値(単位:mA)を示す。
定電圧充電に用いる電圧が3.8V、3.9V、4.0Vと比較的低い電圧の場合、定電圧保持時に流れる電流値は0.01mA以下と低かった。しかし、定電圧を4.1V以上に上げた場合、電流値は増加し、4.6Vでは0.12mA程度の高い電流値となった。従って、電圧を上げるほど電流値は増加する傾向が確認された。
図24(B)に、保持電圧(定電圧)と、電流値がおおよそ安定した300秒後の電流値(単位:mA/g)との関係を示す。電圧が4.0V程度まではセルに流れる電流値は微量であるが、電圧を増加させるとセルに流れる電流値は指数関数的に増大することが確認された。なお、このような電流値は電圧に依存することから、電流値の増大はセル内の電気化学的な反応によるものと考えられる。
以上のことから、通常のCCCV充電の後に、さらに定電圧として高い電圧を電池に印加することによって、電池に電流を流して追加の充電を行うことができることが確認できた。例えば、正極活物質にリン酸鉄リチウムを用いる場合、通常のCCCV充電における定電圧は4.0V以下で十分であるが、例えば4.6V等の高電圧を用いて追加的に充電を行うことで、さらに充電を行うことができる。