JP2004193595A - 磁気セル及び磁気メモリ - Google Patents

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Abstract

【課題】 電流直接駆動による磁化反転の際の反転電流を低減させることができる磁気セル及びそれを用いた磁気メモリを提供することを目的とする。
【解決手段】 磁化(M1)方向が第1の方向に実質的に固定された第1の強磁性層(C1)と、磁気(M2)方向が前記第1の方向とは反対の第2の方向に実質的に固定された第2の強磁性層(C2)と、前記第1及び第2の強磁性層の間に設けられ、磁化(M)方向が可変の第3の強磁性層(A)と、前記第1及び第3の強磁性層の間に設けられた第1の中間層(B1)と、前記第2及び第3の強磁性層の間に設けられた第2の中間層(B2)と、を備えたことを特徴とする磁気セルを提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、磁気セル及び磁気メモリに関し、特にスピン偏極した電子を流すことにより書き込みが可能な磁気セル及び磁気メモリに関する。
磁性体の磁化方向を制御するためには、従来、磁界を印加する方法が採られてきた。例えば、ハードディスクドライブ(hard disk drive)においては、記録ヘッドから発生する磁場により、媒体の磁化方向を反転させ、書き込みを行なっている。また、固体磁気メモリでは、磁気抵抗効果素子の近傍に設けられた配線に電流を流すことで生じる電流磁界をセルに印加することで、セルの磁化方向制御を行なう。これらの外部磁場による磁化方向制御は古い歴史をもち、確立された技術といえる。
一方、昨今のナノテクノロジーの進歩により、磁性材料も急激に微細化し、磁化制御もナノスケールで局所的に行なう必要が出てきた。しかしながら、磁場は根本的に空間に広がる性質を有するので、局所化が難しい。ビットやセルのサイズが微小化するにつれ、特定のビットやセルを選択してその磁化方向を制御させる場合に、隣のビットやセルにまで磁場が及んでしまう「クロストーク」の問題が顕著となる。また、磁場を局所化させるために磁場発生源を小さくすると、十分な発生磁場が得られないという問題が生じる。
最近、磁性体に電流を流すことにより磁化反転を起こす「電流直接駆動型磁化反転」が見出された(例えば、非特許文献1参照)。
電流による磁化の反転は、スピン偏極した電流が磁性層を通過する際に発生するスピン偏極電子の角運動量が、磁化反転させたい磁性体の角運動量に伝達・作用することで磁化の反転を起こす現象である。この現象を用いれば、ナノスケールの磁性体に対して、より直接的に作用させることが可能であり、より微小な磁性体に対する記録が可能になる。
F. J. Albert, et al., Appl. Phy. Lett. 77, 3809 (2000)
しかしながら、現在のところ、磁化を反転させるための反転電流は、セルのサイズが100ナノメータから数10ナノメータ程度の場合でも、10mA〜数mAと極めて大きいという問題がある。つまり、電流による素子破壊を防止し、発熱を防止し、さらに低消費電力化のためには、できるだけ小さな電流で磁化反転するような磁気セル構造が望まれる。
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、電流直接駆動による磁化反転の際の反転電流を低減させることができる磁気セル及びそれを用いた磁気メモリを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の第1の磁気セルは、磁化が第1の方向に実質的に固定された第1の強磁性層と、磁化が前記第1の方向とは反対の第2の方向に実質的に固定された第2の強磁性層と、前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層との間に設けられ、磁化の方向が可変の第3の強磁性層と、前記第1の強磁性層と前記第3の強磁性層との間に設けられた第1の中間層と、前記第2の強磁性層と前記第3の強磁性層との間に設けられた第2の中間層と、を備え、
前記第1及び第2の強磁性層の間で電流を流すことによりスピン偏極した電子を前記第3の強磁性層に作用させて前記第3の強磁性層の磁化の方向を前記電流の向きに応じた方向に決定可能としたことを特徴とする。
第1及び第2の強磁性層すなわち2つの磁性固着層の磁化を反平行としたことにより、第3の強磁性層すなわち磁性記録層へ働くスピン方向は最終的に同一方向となり、2倍の作用が働く。その結果として、磁性記録層の磁化の反転のための電流を低減することが可能となる。
ここで、前記第3の強磁性層の磁化容易軸は、前記第1の方向に対して略平行であるものとすれば、スピン偏極電流による書き込みをより確実に行い、且つ、読み出しの際には、大きな磁気抵抗効果を利用することができる。
また、前記第1の強磁性層と前記第3の強磁性層との間の電気抵抗は、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第1の方向と略同一の状態において第1の値となり、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第2の方向と略同一の状態において前記第1の値よりも大なる第2の値となり、前記第2の強磁性層と前記第3の強磁性層との間の電気抵抗は、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第2の方向と略同一の状態において第3の値となり、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第1の方向と略同一の状態において前記第3の値よりも大なる第4の値となるものすれば、いわゆるノーマルタイプの磁気抵抗効果を示す組合せにより、確実な書き込みができる。
また、前記第1の強磁性層から前記第3の強磁性層を介して前記第2の強磁性層に向けて電子電流を流した場合には、前記第3の強磁性層の磁化の方向は前記第1の方向とされ、前記第2の強磁性層から前記第3の強磁性層を介して前記第1の強磁性層に向けて電子電流を流した場合には、前記第3の強磁性層の磁化の方向は前記第2の方向とすることができる。
また、前記第1の強磁性層と前記第3の強磁性層との間の電気抵抗は、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第1の方向と略同一の状態において第1の値となり、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第2の方向と略同一の状態において前記第1の値よりも小なる第2の値となり、前記第2の強磁性層と前記第3の強磁性層との間の電気抵抗は、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第2の方向と略同一の状態において第3の値となり、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第1の方向と略同一の状態において前記第3の値よりも小なる第4の値となるものとすれば、いわゆるリバースタイプの磁気抵抗効果を示す組合せにより、確実な書き込みができる。
また、前記第1の中間層の膜厚と前記第2の中間層の膜厚とが互いに異なるものとすれば、磁気抵抗効果を利用した第3の強磁性層の磁化の読み出しを容易にできる。
また、前記第1の中間層の電気抵抗と前記第2の中間層の電気抵抗とが互いに異なるものとしても、磁気抵抗効果を利用した第3の強磁性層の磁化の読み出しを容易にできる。
また、前記第1及び第2の中間層のいずれか一方は、中間物質層を含むものとしても、磁気抵抗効果を利用した第3の強磁性層の磁化の読み出しを容易にできる。
また、前記第1及び第2の中間層のいずれか一方は、ピンホールを有する絶縁体からなり、前記ピンホールは、前記絶縁体の両側に隣接する前記強磁性層の材料によって充填されてなるものとしても、磁気抵抗効果を利用した第3の強磁性層の磁化の読み出しを容易にできる。
また、前記第1及び第2の強磁性層は、膜厚及び材料の少なくともいずれかが異なるものとしても、磁気抵抗効果を利用した第3の強磁性層の磁化の読み出しを容易にできる。
また、前記第1及び第2の強磁性層は、静磁結合してなるものとすれば、これらの反平行の磁化を容易に実現できる。
また、前記第1及び第2の強磁性層の少なくともいずれかは、隣接して設けられた反強磁性層によりその磁化方向が固定されてなるものとしてもよい。
また、前記第1及び第2の強磁性層の少なくともいずれかに隣接して非磁性層と第4の強磁性層と反強磁性層とがこの順に積層され、前記非磁性層の両側に隣接する前記強磁性層の磁化の方向は、同一の方向に固定されてなるものとしてもよい。
または、前記第1及び第2の強磁性層の少なくともいずれかに隣接して非磁性層と第4の強磁性層と反強磁性層とがこの順に積層され、前記非磁性層の両側に隣接する前記強磁性層の磁化の方向は、反対の方向に固定されてなるものとしてもよい。
一方、本発明の第2の磁気セルは、磁化が第1の方向に実質的に固定された第1の強磁性層を含む第1の磁化固着部と、磁化が前記第1の方向とは反対の第2の方向に実質的に固定された第2の強磁性層を含む第2の磁化固着部と、前記第1の磁化固着部と前記第2の磁化固着部との間に設けられ、磁化の方向が可変の第3の強磁性層と、前記第1の磁化固着部と前記第3の強磁性層との間に設けられた第1の中間層と、前記第2の磁化固着部と前記第3の強磁性層との間に設けられた第2の中間層と、を備え、
前記第3の強磁性層の磁化容易軸は、前記第1の方向に対して略平行であり、前記第1及び第2の磁化固着部の少なくともいずれかは、強磁性層と非磁性層とが交互に積層され前記強磁性層が前記非磁性層を介して反強磁性結合してなる積層体を有し、前記第1の強磁性層は、前記第1の中間層に隣接し、前記第2の強磁性層は、前記第2の中間層に隣接し、前記第1の磁化固着部と前記第2の磁化固着部との間で電流を流すことによりスピン偏極した電子を前記第3の強磁性層に作用させて前記第3の強磁性層の磁化の方向を前記電流の向きに応じた方向に決定可能としたことを特徴とする。
ここで、前記第1及び第2の磁化固着部のいずれか一方が有する前記強磁性層の数は偶数であり、前記第1及び第2の磁化固着部のいずれか他方が有する前記強磁性層の数は奇数であるものとすれば、最も外側に位置する2つの磁性層の磁化方向が平行となる。これら両外側の磁性層FMを図示しない反強磁性層により磁化固着する際に、固着すべき方向が同一であることから、形成プロセスが容易であるというメリットがある。
また、前記第1及び第2の磁化固着部と、前記第3の強磁性層と、前記第1及び第2の中間層と、がその上に積層された基板をさらに備え、前記第1及び第2の磁化固着部のうちの前記基板から遠い側に設けられたものが有する前記強磁性層の数は、偶数であるものとすることができる。基板から遠い磁性固着層は、横方向の寸法が微細加工により小さくなるため、磁極からの漏れ磁場が生じやすい。この漏れ磁場による磁気バイアスは、反転電流をシフトさせ、いずれかの方向において磁場バイアスがない場合に比べ反転電流が大きくなる。これに対して、偶数の強磁性層を反強磁性結合させた積層膜による磁性固着構造を採用すれば、反転電流のシフトを防ぎ、いずれの方向についても反転電流を低く維持できる
また、前記第3の強磁性層は、強磁性体からなる複数の層を積層させた積層体であるものとすれば、安定した書き込みを確実且つ容易に実施できる。
また、前記第1及び第2の中間層のいずれか一方は導電体からなり、いずれか他方は絶縁体からなるものとすれば、磁気抵抗効果を利用した第3の強磁性層の磁化の読み出しを容易にできる。
また、前記第2の強磁性層に隣接して設けられた第3の中間層と、前記第3の中間層に隣接して設けられ、磁化の方向が可変の第4の強磁性層と、前記第4の強磁性層に隣接して設けられた第4の中間層と、前記第4の中間層に隣接して設けられ、磁化の方向が実質的に前記第1の方向に固定された第5の強磁性層と、をさらに備えたものとしてもよい。
一方、本発明の磁気メモリは、上記のいずれかの複数の磁気セルを絶縁体を間に介しつつマトリクス状に設けたメモリセルを備えたことを特徴とする。
ここで、前記メモリセル上の前記磁気セルのそれぞれに対して、プローブによりアクセス可能とすることができる。
また、前記メモリセル上の前記磁気セルのそれぞれにワード線とビット線とが接続され、前記ワード線とビット線とを選択することにより、特定の磁気セルに対して情報の記録または読み出しを可能とすることもできる。
本発明によれば、微小サイズの磁性体に局所的に低消費電力で磁化を書き込むことができる磁気セルを提供でき、さらには、磁気抵抗効果を用いてその書き込み磁化を読み出すことが可能な磁気セルを提供できる。これらの磁気セルは極めて微小であるために、磁気素子の高密度化、高機能化、さらには磁気素子を含むデバイスの全体サイズ縮小化へ効果大であり産業上のメリットは多大である。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる磁気セルの基本的な断面構造を例示する模式図である。この磁気セルは、磁化M1、M2の向きが互いに反平行な2つの磁性固着層(磁性固着層)C1、C2と、磁化方向が可変なひとつの磁性記録層(磁性記録層)A、そして磁性記録層Aと磁性固着層の間に中間層B1、B2を有する。
電流Iを上下の固着層C1、C2間に流すことによって、磁性記録層Aの磁化Mの方向を制御することができる。具体的には、電流Iの流れる向き(極性)を変えることで磁性記録層Aの磁化Mの向きを反転させることができる。情報を記録させる場合には、磁化Mの方向に応じて、「0」と「1」とをそれぞれ割り当てればよい。
また、本発明の磁気セルにおいては、各層の磁化方向は、面内方向に限定されず、膜面に対して略垂直な方向であってもよい。
図2は、磁化が膜面に対して垂直な方向に制御された磁気セルの断面構造を表す模式図である。この磁気セルの場合、磁化M、M1、M2は、膜面に対して略垂直な方向に制御されている。このようにしても、電流Iを上下の固着層C1、C2間に流すことによって、磁性記録層Aの磁化Mの方向を制御することができる。
次に、本発明の磁気セルにおける「書き込み」のメカニズムについて説明する。
図3は、図1に表した磁気セルにおける「書き込み」のメカニズムを説明するための模式断面図である。2つの磁性固着層C1、C2を設け、これらの界面を横切るように電流Iを流して、磁性記録層Aに対する書き込みを行うメカニズムは、次のとおりに説明される。まず、中間層B1を介した磁気抵抗効果と、中間層B2を介した磁気抵抗効果が、いずれも、ノーマルタイプである場合について説明する。ここで、「ノーマルタイプ」の磁気抵抗効果とは、中間層の両側の磁性層の磁化が平行時よりも反平行時に電気抵抗が高くなる場合をいう。つまり、ノーマルタイプの場合、中間層B1を介した磁性固着層C1と磁性記録層Aとの間の電気抵抗は、磁性固着層C1と磁性記録層Aの磁化が平行な時には反平行時よりも低くなる。また、中間層B2を介した磁性固着層C2と磁性記録層Aとの間の電気抵抗も、磁性固着層C2と磁性記録層Aの磁化が平行な時には反平行時よりも低くなる。
まず、図3(a)において、磁化M1を有する第1の磁性固着層C1を通過した電子は、磁化M1の方向のスピンをもつようになり、これが磁性記録層Aへ流れると、このスピンのもつ角運動量が磁性記録層Aへ伝達され、磁化Mに作用する。一方、第2の磁性固着層C2の磁化M2は、磁化M1とは逆向きである。このため、電子の流れが第2の磁性固着層C2へ入る界面においては、磁化M1と同方向のスピン(同図において右向き)を有する電子は反射される。この反射された電子が有する逆向きスピンは、やはり磁性記録層Aに作用する。すなわち、第1の磁性固着層の磁化と同じ方向のスピン電子が、磁性記録層Aに対して2回作用するため、実質的に2倍の書き込み作用が得られる。その結果として、磁性記録層Aに対する書き込みを従来よりも小さい電流で実施できる。
また、図3(b)は、電流Iを反転させた場合を表す。この場合には、電流Iを構成する電子は、まず、第2の磁性固着層C2の磁化M2の作用を受けて、この方向(同図において左向き)のスピンを有する。このスピン電子は、磁性記録層Aにおいてその磁化Mに作用する。さらに、スピン電子は、それとは逆向きの磁化M1を有する第1の磁性固着層C1との界面において反射されて、中間層B2に溜まり、もう一度磁性記録層Aの磁化Mに作用する。
以上、中間層B1、B2を介した磁性固着C1、C2と磁性記録Aとの間の磁気抵抗効果がいずれも「ノーマルタイプ」の場合について説明した。
次に、これらが「リバースタイプ」の場合について説明する。
図4は、磁気セルがリバースタイプの磁気抵抗効果を示す場合における「書き込み」のメカニズムを説明するための模式断面図である。
すなわち、リバースタイプの場合には、中間層B1を介した磁性固着層C1と磁性記録層Aとの間の電気抵抗が、磁性固着層C1と磁性記録層Aの磁化が平行な時に反平行時よりも高くなる。また、中間層B2を介した磁性固着層C2と磁性記録層Aとの間の電気抵抗も、磁性固着層C2と磁性記録層Aの磁化が平行な時に反平行時よりも高くなる。
中間層B1、B2を介した磁気抵抗効果がリバースタイプの場合には、磁性固着層C1から磁性記録層Aへ作用するスピン電子は、図4(a)に表したように、図3(a)の場合とは逆向きとなる。また、磁性固着層C2から磁性記録層Aに作用するスピン電子も、図3(a)とは逆向きとなる。その結果、磁性記録層Aの磁化Mの方向は、図4(a)に表したように磁性固着層C1の磁化M1とは反平行となり、磁性固着層C2の磁化M2と同じ方向になる。
一方、磁性固着層C2から磁性固着層C1に向けて電子電流を流した場合には、図4(b)に表したように磁性記録層Aの磁化Mの方向は、磁性固着層C1の磁化M1と同じ向きとなる。
以上説明したように、中間層B1、B2を介した磁気抵抗効果が、いずれもノーマルタイプの場合あるいは、いずれもリバースタイプの場合には、電子の流れ方向に応じて、磁性記録層Aの磁化Mの向きが決定される。
しかし、中間層B1、B2を介した磁気抵抗効果のうちのいずれか一方がノーマルタイプで、いずれか他方がリバースタイプの場合には、磁性記録層Aに流入する電子のスピン偏極度が小さくなるために書き込みには不利である。例えば、中間層B1を介した磁性固着層C1と磁性記録層Aとの間の磁気抵抗効果がノーマルタイプであり、一方、中間層B2を介した磁性固着層C2と磁性自由層Aとの間の磁気抵抗効果がリバースタイプである場合には、磁性記録層Aに作用する電子のスピン方向は、これら中間層B1、B2の界面で逆向きとなるので、本発明の効果は得られにくい。
以上説明したように、本実施形態によれば、2つの磁性固着層の磁化M1、M2を反平行としたことにより、磁性記録層Aへ働くスピン方向は最終的に同一方向となり、2倍の作用が働く。その結果として、磁性記録層Aの磁化の反転のための電流を低減することが可能となる。
以上説明した「書き込み」のメカニズムは、図2に表したように磁化が膜面に対して垂直な方向に制御された磁気セルにおいても同様である。
図5は、図2に表した磁気セルにおける「書き込み」のメカニズムを説明するための模式断面図である。同図については、図1乃至図3に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図5に表したように、磁化方向が垂直とされた場合にも、2つの磁性固着層の磁化M1、M2を反平行としたことにより、磁性記録層Aへ働くスピン方向は最終的に同一方向となり、2倍の作用が働く。その結果として、磁性記録層Aの磁化の反転のための電流を低減することが可能となる。
次に、本実施形態の磁気セルにおける「読み出し」の方法について説明する。本実施形態の磁気セルにおいて、磁性記録層Aの磁化Mの方向の検出は、各層の磁化の相対的な向きにより電気抵抗が変わる「磁気抵抗効果」を利用して行うことができる。
図6は、本実施形態の磁気セルの読み出し方法を説明するための概念図である。すなわち、磁気抵抗効果を利用する場合、磁性固着層C1、C2のいずれかと磁性記録層との間でセンス電流Iを流し、磁気抵抗を測定すればよい。図6においては、第1の磁性固着層C1と磁性記録層Aとの間で磁気抵抗を測定する場合を例示したが、これとは逆に、第2の磁性固着層C2と磁性記録層Aとの間で磁気抵抗を測定してもよい。
図7は、磁化の相対的な向きによる磁気抵抗の変化を説明するための概念図である。すなわち、同図(a)は、磁性固着層C1の磁化M1と、磁性記録層Aの磁化Mとが同一の方向の場合を表す。この場合、これらにセンス電流Iを流して検出される磁気抵抗は、ノーマルタイプの磁気抵抗効果において相対的に小さな値となり、リバースタイプの磁気抵抗効果においては相対的に大きな値となる。
一方、図7(b)は、磁性固着層C1の磁化M1と、磁性記録層Aの磁化Mとが反平行の場合を表す。この場合、これらにセンス電流Iを流して検出される磁気抵抗は、ノーマルタイプの磁気抵抗効果において相対的に大きな値となり、リバースタイプの磁気抵抗効果においては相対的に小さな値となる。
これら抵抗が互いに異なる状態に、それぞれ「0」と「1」を対応づけることにより、2値データの記録読み出しが可能となる。
一方、磁気セルの両端を介してセンス電流を流すことにより磁気抵抗を検出する方法もある。すなわち、第1の磁性固着層C1と第2の磁性固着層C2との間でセンス電流を流すことにより磁気抵抗を検出する。しかし、本発明においては、一対の磁性固着層C1、C2の磁化M1、M2は、反平行である。このため、「対称構造」すなわち磁性固着層C1、C2のスピン依存散乱の大きさが同一であると、あるいは、磁性固着層C1、C2から磁性記録層に作用する電子のスピン偏極度が同一であると、磁性記録層Aの磁化Mがどちらの方向にある場合も、検出される磁気抵抗は、同一になってしまう。そこで、「非対称構造」を採用する必要がある。
図8は、非対称構造の第1の具体例を表す模式断面図である。
非対称構造の一例として、磁性固着層C1、C2の厚みや材料などを互いに異ならせることにより、磁化M1、M2の大きさを変えることができる。図8に表した具体例の場合、第2の磁性固着層C2を第1の磁性固着層C1よりも厚く形成することにより、磁性固着層C2によるスピン依存バルク散乱の寄与をC1のそれよりも大きくする。このようにすれば、磁性固着層C1、C2を介してセンス電流を流して「読み出し」を行う場合に、磁性記録層Aの磁化Mの方向に応じて、検出される磁気抵抗が異なる。
但し、図8に表したように第1及び第2の磁性固着層C1、C2の厚みを変える代わりに、それらの材料を変えることにより、磁性固着層C1、C2によるスピン依存散乱の大きさを変えてもよい。
図9(a)は、非対称構造の第2の具体例を表す模式断面図である。
すなわち、本具体例の場合、中間層B1、B2の厚みが異なる。つまり、中間層B1は磁気抵抗効果が検出されやすい厚さにし、もう一方の中間層B2は磁気抵抗効果が検出されにくい厚さにする。この場合、中間層B1の厚みの範囲としては0.2nmから10nmの範囲、中間層B2の厚みの範囲としては3nmから50nmの範囲とするとよい。
このようにすれば、中間層B1を挟んだ磁性固着層C1と磁性記録層Aとの間の磁気抵抗効果を主に検出することができ、磁性記録層Aの磁化Mを検出することが容易となる。
図9(b)は、非対称構造の第3の具体例を表す模式断面図である。すなわち、本具体例においては、中間層B1、B2の電気抵抗が互いに異なるものとされている。このためには、中間層B1、B2の材料や組成を互いに異なるものとしたり、いずれか一方の中間層に添加元素を加えるなどの方法が有効である。
またさらに、中間層B1、B2の一方を銅(Cu)などの導電材料により形成し、他方を絶縁体により形成してもよい。中間層B1(あるいはB2)を薄い絶縁体により形成すると、いわゆるトンネル磁気抵抗効果(tunneling magnetoresistance effect:TMR)が得られ、磁性記録層Aの磁化の読み出しに際して、大きな再生信号出力を得ることが可能となる。
図10は、非対称構造の第4の具体例を表す模式断面図である。
すなわち、本具体例の場合、中間層B2に中間物質層IEが挿入されている。この中間物質層IEは、磁気抵抗効果の増大を起こすためのものである。中間物質層IEとしては、例えば、不連続な絶縁性の薄膜を挙げることができる。すなわち、ピンホールなどを有する絶縁性の薄膜を中間層に挿入することにより、磁気抵抗効果を増大させることが可能となる。
このような不連続な絶縁性の薄膜としては、例えば、ニッケル(Ni)と銅(Cu)の合金の酸化物または窒化物、ニッケル(Ni)と金(Au)の合金の酸化物または窒化物、アルミニウム(Al)と銅(Cu)の合金の酸化物または窒化物などを挙げることができる。
これら合金の酸化物や窒化物などの化合物は、加熱等によって平衡状態へ近づけることで相分離し、AuやCu等の化合物化(酸化や窒化など)されにくく従って低電気抵抗の相と、NiやAl等の酸化等がされやすく電気抵抗が高い化合物相とに分離する。このため、組成および温度あるいは印加エネルギーを制御することにより、ピンホールが存在する不連続な絶縁性薄膜を形成することができる。このように非磁性体が充填されたピンホールを形成すると、電流が流れる経路を狭窄することができ、スピン依存散乱効果を高抵抗で検出できるため、大きな磁気抵抗効果が得られる。
このような中間物質層IEを中間層B1、B2のいずれかに挿入することにより、その両側の磁性固着層と磁性記録層との間の磁気抵抗効果が増大されて検出が容易となる。
図11は、非対称構造の第5の具体例を表す模式断面図である。
すなわち、本具体例の場合、中間層B2は、ピンホールPHを有する絶縁層とされている。ピンホールPHは、その両側の磁性固着層および磁性中間層の材料により埋め込まれている。
このように、磁性固着層C2(またはC1)と磁性記録層AとがピンホールPHを介して接続されていると、いわゆる「磁性ポイントコンタクト」が形成され、極めて大きい磁気抵抗効果が得られる。従って、このピンホールPHを介した両側の磁性層の間での磁気抵抗効果を検出することにより、磁性記録層Aの磁化Mの方向を容易に判定することができる。
ここで、ピンホールPHの開口径は、概ね20nm以下であることが望ましい。また、ピンホールPHの形状は、円錐状、円柱状、球状、多角錘状、多角柱状などの各種の形状を取りうる。また、ピンホールPHの数は、1個でも複数でもよい。但し、少ない方が望ましい。
以上、図8乃至図11を参照しつつ、磁気抵抗効果により記録層Aの磁化の方向を容易に読み出すための非対称構造の具体例について説明した。これらの非対称構造は、図2に表した垂直磁化型の磁気セルについても同様に適用して同様の作用が得られる。
次に、本発明の磁気セルにおいて、2つの磁性固着層C1、C2の磁化M1、M2の方向を互いに反平行にする方法について説明する。
まず、第1の方法として、固着層C1、C2を静磁結合させることにより、磁化M1、M2を反平行にする方法を挙げることができる。
図12は、固着層C1、C2の静磁結合を表す模式断面図である。すなわち、本具体例の場合、磁気セルの両側面に絶縁層ILを介して磁気ヨークMYが設けられている。磁気ヨークMYには、その内部に矢印で表したような磁界が形成され、これら磁気ヨークMYと固着層C1、C2を介した環流磁界が形成されている。このように、磁気ヨークMYを介して固着層C1、C2を静磁結合させると、環流磁界により、磁化M1と磁化M2とを反平行にすることができる。
この場合、固着層の磁化M1、M2の方向をあらかじめ設定するためには、2つの固着層C1、C2の厚さを異なるようにして、外部からパルス磁場をかけるなどして磁化M1、M2の方向を制御することができる。
また、一方の固着層の外側に接して反強磁性層を形成して一方向異方性を付与することで固着層の磁化方向は制御可能となる。
図13は、反強磁性層を設けた磁気セルを表す模式断面図である。すなわち、固着層C2の下に反強磁性層AFが設けられ、固着層C2と磁性結合させることにより、磁化M2の方向が固定されている。そして、磁気ヨークMYを介してこの固着層C2と静磁結合している固着層C1の磁化M1は、磁化M2とは逆方向となる。
また、固着層C1、C2の磁化をそれぞれ反強磁性層により固着してもよい。
図14は、固着層C1、C2の磁化をそれぞれ反強磁性層により固着した磁気セルを表す模式断面図である。すなわち、固着層C1に隣接して反強磁性層AF1が設けられ、固着層C2に隣接して反強磁性層AF2が設けられている。そして、それぞれの固着層の磁化M1、M2は、隣接する反強磁性層AF1、AF2によって反平行に固着されている。
このような構造は、反強磁性層AF1、AF2のブロッキング温度が異なるように、それらの材料を適宜選択することにより容易に形成できる。すなわち、図14に表した積層構造を形成した後に、磁場を印加しつつ加熱する。しかる後に、冷却すると、まず、ブロッキング温度の高い反強磁性層において、磁化が固着される。その後、磁場を反転させてさらに冷却すると、ブロッキング温度が低い反強磁性層において磁化が固着され、反平行の磁化が得られる。
図15も、固着層C1、C2の磁化をそれぞれ反強磁性層により固着した磁気セルを表す模式図である。すなわち、本具体例の場合、固着層C2の外側には反強磁性層AF2が設けられ、もう一方の固着層C1の外側には非磁性層ACを介して磁性層FMと反強磁性層AF1が設けられている。
この場合、非磁性層ACは、磁性固着層C1と磁性層FMが反強磁性層間交換結合するような厚さとしておく。また、非磁性層ACの材料としては、ルテニウム(Ru)や銅(Cu)などを用いることができる。
通常の磁場中熱処理による一方向異方性の付与プロセスによれば、2つの反強磁性層AF1、AF2と接したそれぞれの磁性層FM、C2は、磁化の方向が同じ向きとなる。固着層C1は、磁性層FMと反強磁性結合しているため、その磁化M1は、反対の方向を向き、その結果として、磁化M1と磁化M2とを反平行に固着することができる。また、この場合、2つの反強磁性層AF1、AF2と接したそれぞれの磁性層FM、C2は、磁化の方向が同じ向きとなるので、磁化固着形成プロセスが容易になるという利点がある。
なお、この構造の場合、記録層Aへの書き込みの電流Iは、同図に矢印I1(またはこれと反対方向)で表したように、固着層C1、C2の間で流すことが望ましい。しかしながら、使用上の観点に立てば、図15の反強磁性層AF1、AF2のそれぞれ上部と下部に設けられた図示しない電極を用いて、同図の矢印I2(またはこれと反対方向)で表したように、反強磁性層AF1、AF2の間に書き込み電流を流すほうが容易であり、このように流しても記録層Aに書き込むことができる。
図16は、固着層C1、C2の磁化を反強磁性層により固着した磁気セルのもうひとつの具体例を表す模式断面図である。
すなわち、本具体例の場合、磁性固着層C1、C2の外側に非磁性層AC、FCを介して磁性層FM1、FM2と反強磁性層AF1、AF2が設けられている。非磁性層ACは、その両側の磁性層の間で反強磁性層間交換結合が生ずるように調節されている。一方、非磁性層FCは、その両側の磁性層の間で強磁性層間結合が生ずるように調節されている。
一般に、非磁性層を介した層間交換相互作用は、図17に模式的に表したように非磁性層の膜厚に対して正負に振動する。従って、図17において符号が異なる2つのピーク位置に対応するように、非磁性層AC、FCの膜厚を設定すればよい。例えば、図17におけるtを非磁性層ACの膜厚とし、tを非磁性層FCの膜厚とすればよい。
このような構造にすれば、反強磁性層AF1、AF2による一方向異方性の付与により、これらに接したそれぞれの磁性層FM1、FM2の磁化配置を同じ向きとし、最終的に磁性固着層C1、C2の磁化方向を反平行に固着できる。
また、磁性固着層C1、C2の磁化をこれらに隣接して設けられたハードマグネットにより固着してもよい。あるいは、磁性固着層C1あるいはC2自身にハードマグネットを用いてもよい。この場合のハードマグネットとしては、コバルト白金(CoPt)、鉄白金(FePt)、コバルト・クロム白金(CoCrPt)などの磁性材料を用いることができる。
図16に表した構造の場合も、記録層Aへの書き込みの電流Iは、同図に矢印I1(またはこれと反対方向)で表したように、固着層C1、C2の間で流すことが望ましい。しかしながら、使用上の観点に立てば、図16の反強磁性層AF1、AF2のそれぞれ上部と下部に設けられた図示しない電極を用いて、同図の矢印I2(またはこれと反対方向)で表したように、反強磁性層AF1、AF2の間に書き込み電流を流すほうが容易であり、このように流しても記録層Aに書き込むことができる。
以上、本発明の磁気セルにおいて、固着層C1、C2の磁化M1、M2を反平行に固着する方法について説明した。
さて、本発明は、磁性記録層Aが1層のみでなく、複数の場合にも適応できる。
図18は、2層の磁性記録層を設けた磁気セルを表す模式断面図である。すなわち、この磁気セルにおいては、磁性固着層C1、中間層B1、磁性記録層A1、中間層B2、磁性固着層C2、中間層B3、磁性記録層A2、中間層B4、磁性固着層C3がこの順に積層されている。すなわち、固着層C2を共有するようにして、その上下にそれぞれ図1に例示した磁気セルが直列に形成された構造を有する。このように、2層の記録層A1、A2を直列に積層すると、再生出力信号を増大させることができる。
また、図18において、2つの磁性記録層A1、A2の厚みや材料を変えてこれら磁性記録層A1、A2の磁化反転電流が異なるようにすれば、多値記録が可能となる。また、3層以上の磁性記録層を直列に積層することにより、さらにデータ種類の多い多値記録も可能となる。なお、固着磁性層C2の磁化固着は、C2層内部に反強磁性層を挿入して一方向異方性を付与すれば、より効果的である。
本発明においては、磁性固着層C1(またはC2)を複数層とし、あるいは磁性記録層Aを複数層とすることができる。特に、磁性固着層C1(またはC2)として、反強磁性結合した強磁性層/非磁性層/強磁性層という積層膜を用いた場合に、界面と層内でのスピン依存散乱がより強調されるため、より小さい電流で磁性記録層Aの磁化反転が図れる。
この具体例として、図15に関して前述した構造を挙げることができる。すなわち、同図において、磁性層FM、非磁性層AC、磁性固着層C1からなる積層構造をまとめて「磁性固着構造P1」と見ることができる。この場合、同図に表したように、磁性固着構造P1のうちの、中間層B1に接した磁性固着層C1の磁化方向が磁性固着層C2の磁化方向と反平行である場合に、本発明の効果が得られる。
図19は、磁性固着層と磁性記録層Aとをそれぞれ積層構造とした具体例を表す模式断面図である。すなわち、磁性固着構造P1として、磁化が反平行に結合した磁性層FM/非磁性層AC/磁性固着層C1からなる積層体が設けられている。さらに、磁性記録層Aとして、反強磁性結合した磁性層A1/非磁性層AC/磁性層A2/非磁性層AC/磁性層A3からなる積層体が設けられている。この構造において、中間層B1に接した磁性固着層C1の磁化方向は、磁性固着層C2の磁化方向と反平行であり、また、磁性記録層Aのうちで、中間層B1と中間層B2にそれぞれ接した磁性層A1、A2の磁化が互いに平行方向である場合に、本発明の効果が得られる。
磁性記録層Aを反強磁性結合した積層構造とすることにより、磁性記録層の実効的な飽和磁化を下げることができる。つまり、磁化的なエネルギーを低くできるので、磁化の反転電流、すなわち書き込みのために必要な臨界電流を下げることができる。
また、この構造においては、磁性固着構造P1を設けることにより、最も外側に位置する2つの磁性層(磁性固着構造P1の一番上の磁性層FMと、磁性固着層C2)の磁化方向が平行となる。これら外側の磁性層FMと磁性固着層C2を図示しない反強磁性層により磁化固着する際に、固着すべき方向が同一であることから、形成プロセスが容易であるというメリットがある。
図20も、磁性固着層と磁性記録層Aとをそれぞれ積層構造とした具体例を表す模式断面図である。すなわち、磁性固着構造P1として、磁化が反平行に結合した磁性層FM/非磁性層AC/磁性固着層C1からなる積層構造が設けられている。また、磁性記録層Aとして、強磁性結合した磁性層A1/非磁性層FC/磁性層A2からなる積層構造が設けられている。この構造において、中間層B1に接する磁性固着層C1の磁化方向は、中間層B2に接する磁化固着層C2の磁化方向と反平行であり、また、磁性記録層Aの2つの磁性層A1、A2の磁化が平行である場合に、本発明の効果が得られる。
磁性記録層Aを強磁性結合した積層構造とすると、磁性記録層の実効的な飽和磁化を下げることができる。つまり、磁化的なエネルギーを低くできるので、磁化の反転電流、すなわち書き込みのために必要な臨界電流を下げることができる。
また、この構造においても、磁性固着構造P1を設けることにより、最も外側に位置する2つの磁性層(磁性固着構造P1の一番上の磁性層FMと、磁性固着層C2)の磁化方向が平行となる。これら外側の磁性層FMと磁性固着層C2を図示しない反強磁性層により磁化固着する際に、固着すべき方向が同一であることから、形成プロセスが容易であるというメリットがある。
図21も、磁性固着層と磁性記録層Aとをそれぞれ積層構造とした具体例を表す模式断面図である。すなわち、磁性固着構造P1として、磁化が反平行に結合した磁性層FM/非磁性層AC/磁性固着層C1からなる積層構造が設けられている。また、磁性記録層Aとして、磁性層A1/磁性層A2/磁性層A3からなる積層構造が設けられている。この構造において、中間層B1に接した磁性固着層C1の磁化方向は、中間層B2に接した磁性固着層C2の磁化方向と反平行であり、磁性記録層Aは3つの磁性層A1〜A3の磁化が平行である場合に、本発明の効果が得られる。
磁性記録層Aを強磁性結合した積層構造とすると、中央の磁性層(A2)に飽和磁化が小さなパーマロイなどを用いることができ、さらに、外側の磁性層(A1、A3)にCoFe等のほどほどにスピン非対称性が大きな材料を用いることができるため、磁化反転電流を低くできる。つまり、書き込みの臨界電流値を下げることができるという効果が得られる。
また、この構造においても、磁性固着構造P1を設けることにより、最も外側に位置する2つの磁性層(磁性固着構造P1の一番上の磁性層FMと、磁性固着層C2)の磁化方向が平行となる。これら外側の磁性層FMと磁性固着層C2を図示しない反強磁性層により磁化固着する際に、固着すべき方向が同一であることから、形成プロセスが容易であるというメリットがある。
図22は、2つの磁性固着構造が設けられた具体例を表す模式断面図である。すなわち、磁性固着構造P1として、磁化が反平行に結合した磁性層FM/非磁性層AC/磁性固着層C1からなる積層構造が設けられ、さらに、磁性固着構造P2として、磁化が反平行に結合した磁性固着層C2/非磁性層AC/磁性層FM/非磁性層AC/磁性層FMからなる積層構造が設けられている。この構造において、磁性固着構造P1を構成する磁性層のうち中間層B1に接した磁性固着層C1の磁化方向と、磁性固着構造P2を構成する磁性層のうち中間層B2に接した磁性固着層C2の磁化方向とが反平行の場合に、本発明の効果が得られる。
また、この構造においては、磁性固着構造P1、P2を構成する磁性層の総数を、P1とP2でそれぞれ偶数、奇数としている。このようにすると、最も外側に位置する2つの磁性層(磁性固着構造P1の一番上の磁性層FMと、磁性固着構造P2の一番下の磁性層FM)の磁化方向が平行となる。これら両外側の磁性層FMを図示しない反強磁性層により磁化固着する際に、固着すべき方向が同一であることから、形成プロセスが容易であるというメリットがある。
図23は、2つの磁性固着構造とともに磁性記録層も積層構造とした具体例を表す模式断面図である。すなわち、磁性固着構造P1として、磁化が反平行に結合した磁性層FM/非磁性層AC/磁性固着層C1からなる積層構造が設けられ、さらに、磁性固着構造P2として、磁化が反平行に結合した磁性固着層C2/非磁性層AC/磁性層FM/非磁性層AC/磁性層FMからなる積層構造が設けられている。そして、磁性記録層Aとして、反強磁性結合した磁性層A1/非磁性層AC/磁性層A2/非磁性層AC/磁性層A3からなる積層構造が設けられている。この構造において、磁性固着積層P1を構成する磁性層のうち中間層B1に接した磁性固着層C1の磁化方向と、磁性固着構造P2を構成する磁性層のうち中間層B2に接した磁性固着層C2の磁化方向とが反平行であり、磁性記録層Aについては中間層B1と中間層B2にそれぞれ接した磁性層A1、A3の磁化が平行方向である場合に、本発明の効果が得られる。
また、この構造においても、磁性固着構造P1、P2を構成する磁性層の総数を、P1とP2でそれぞれ偶数、奇数としている。このようにすると、最も外側に位置する2つの磁性層(磁性固着構造P1の一番上の磁性層FMと、磁性固着構造P2の一番下の磁性層FM)の磁化方向が平行となる。これら両外側の磁性層FMを図示しない反強磁性層により磁化固着する際に、固着すべき方向が同一であることから、形成プロセスが容易であるというメリットがある。
図24も、2つの磁性固着構造とともに磁性記録層も積層構造とした具体例を表す模式断面図である。すなわち、磁性固着構造P1として、磁化が反平行に結合した磁性層FM/非磁性層AC/磁性固着層C1からなる積層構造が設けられ、磁性固着構造P2として、磁化が反平行に結合した磁性固着層C2/非磁性層AC/磁性層FM/非磁性層AC/磁性層FMからなる積層構造が設けられている。そしてさらに、、磁性記録層Aとして、強磁性結合した磁性層A1/非磁性層FC/磁性層A2からなる積層構造が設けられている。この構造において、磁性固着構造P1を構成する磁性層のうち中間層B1に接した磁性固着層C1の磁化方向と、磁性固着構造P2を構成する磁性層のうち中間層B2に接した磁性固着層C2の磁化方向とが反平行であり、磁性記録層Aについては2つの磁性層A1、A2の磁化が平行配置である場合に、本発明の効果が得られる。
また、この構造においても、磁性固着構造P1、P2を構成する磁性層の総数を、P1とP2でそれぞれ偶数、奇数としている。このようにすると、最も外側に位置する2つの磁性層(磁性固着構造P1の一番上の磁性層FMと、磁性固着構造P2の一番下の磁性層FM)の磁化方向が平行となる。これら両外側の磁性層FMを図示しない反強磁性層により磁化固着する際に、固着すべき方向が同一であることから、形成プロセスが容易であるというメリットがある。
図25も、2つの磁性固着構造とともに磁性記録層も積層構造とした具体例を表す模式断面図である。すなわち、磁性固着構造P1として、磁化が反平行に結合した磁性層FM/非磁性層AC/磁性層C1からなる積層構造が設けられ、磁性固着構造P2として、磁化が反平行に結合した磁性層C2/非磁性層AC/磁性層FM/非磁性層AC/磁性層FMからなる積層構造が設けられている。そしてさらに、磁性記録層Aとして、磁性層A1/磁性層A2/磁性層A3からなる積層構造が設けられている。この構造において、磁性固着構造P1を構成する磁性層のうち中間層B1に接した磁性固着層C1の磁化方向と、磁性固着構造P2を構成する磁性層のうち中間層B2に接した磁性固着層C2の磁化方向とが反平行であり、磁性記録層Aについては3つの磁性層A1〜A3の磁化が平行である場合に、本発明の効果が得られる。
また、この構造においても、磁性固着構造P1、P2を構成する磁性層の総数を、P1とP2でそれぞれ偶数、奇数としている。このようにすると、最も外側に位置する2つの磁性層(磁性固着構造P1の一番上の磁性層FMと、磁性固着構造P2の一番下の磁性層FM)の磁化方向が平行となる。これら両外側の磁性層FMを図示しない反強磁性層により磁化固着する際に、固着すべき方向が同一であることから、形成プロセスが容易であるというメリットがある。
以上、具体例を参照しつつ説明したように、磁性固着構造P1、P2として磁性層が反強磁性結合した積層構造を採用することで、同じ厚さの単層膜を用いた場合に比べて、磁気記録層の磁化を反転させるための反転電流を小さくすることができる。さらに、反強磁性結合した積層構造を用いることにより、漏れ磁場を低減し、クロストークなどの問題を解消できる。
特に、基板から遠い磁性固着層は、横方向の寸法が微細加工により小さくなるため、磁極からの漏れ磁場が生じやすい。この漏れ磁場による磁気バイアスは、反転電流をシフトさせ、いずれかの方向において磁場バイアスがない場合に比べ反転電流が大きくなる。これに対して、反強磁性結合した積層膜による磁性固着構造を採用すれば、反転電流のシフトを防ぎ、いずれの方向についても反転電流を低く維持できる。
以上説明したように、本発明においては、小さな電流で磁性記録層の磁化制御が可能となり、さらにはその読み出しも可能となる。このため、後に詳述するように、本発明の磁気セルを複数個並べることによって、消費電力が小さく信頼性が高いプローブ・ストレージや固体メモリなどの磁気メモリを実現できる。
次に、本発明の磁気セルを構成する各要素について詳述する。
まず、磁性固着層C1、C2と、磁性記録層Aの材料としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、または、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む合金、「パーマロイ」と呼ばれるNiFe系合金、あるいはCoNbZr系合金、FeTaC系合金、CoTaZr系合金、FeAlSi系合金、FeB系合金、CoFeB系合金などの軟磁性材料、ホイスラー合金、磁性半導体、CrO、Fe、La1―XSrMnOなどのハーフメタル磁性体酸化物(あるいはハーフメタル磁性体窒化物)のいずれかを用いることができる。
ここで「磁性半導体」としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)の少なくともいずれかの磁性元素と、化合物半導体または酸化物半導体とからなるものを用いることができ、具体的には、例えば、(Ga、Cr)N、(Ga、Mn)N、MnAs、CrAs、(Ga、Cr)As、ZnO:Fe、(Mg、Fe)Oなどを挙げることができる。
本発明においては、磁性固着層C1、C2、磁性記録層Aの材料として、これらのうちから用途に応じた磁気特性を有するものを適宜選択して用いればよい。ただし、中間層B1を介した磁気抵抗効果と中間層B2を介した磁気抵抗効果が、いずれもノーマルタイプまたは、いずれもリバースタイプとなるように各層の材料を組合せることが望ましい。それらの組み合わせについては後述する。
また、これら磁性層に用いる材料としては、連続的な磁性体でもよく、あるいは非磁性マトリクス中に磁性体からなる微粒子が析出あるいは形成されてなる複合体構造を用いることもできる。このような複合体構造としては、例えば、「グラニュラー磁性体」などと称されるものを挙げることができる。
また一方、磁性固着層C1、C2の少なくともいずれかを、磁性層/非磁性層/磁性層、あるいは磁性層/非磁性層/磁性層/非磁性層/磁性層、あるいは磁性層/磁性層などのような多層膜とした場合には、中間層B1(またはB2)に直接に接する磁性層の磁化の向きが、磁性固着層C1とC2とで反平行となるようにすることが望ましい。
本発明者は、磁性固着層C1(またはC2)を、反強磁性結合した強磁性層/非磁性層/強磁性層の積層膜とした場合に、より小さい電流で磁性記録層Aの磁化反転が図れることを見出した。これは、反強磁性結合を示す非磁性層のスピン依存散乱効果と反射効果によると考えられる。また、このような3層の積層膜を磁性固着層C1(またはC2)に用いることにより、磁場に対する特性シフトを防ぐことができる。
なお、図15などに表した構造において、磁性固着層C2とともに非磁性層ACを介した強磁性層FMも固着されている。そこで、後述する実施例などにおいては、これら3層膜をまとめて「磁性固着層」と称する場合もある。
また一方、磁性記録層Aの材料として、[(CoあるいはCoFe合金)/(NiFeあるいはNiFeCoからなるパーマロイ合金あるいはNi)]からなる2層構造、あるいは[(CoあるいはCoFe合金)/(NiFeあるいはNiFeCoからなるパーマロイ合金あるいはNi)/(CoあるいはCoFe合金)]からなる3層構造の積層体を用いることもできる。これらの多層構造からなる磁性層の場合、外側のCoあるいはCoFe合金の厚さは0.2nmから1nmの範囲であることが好ましい。この構造によれば、より小さな電流で磁化反転を得ることができる。
また、磁性記録層Aを磁性体膜を積層させた多層膜として構成してもよい。この場合、この多層膜を構成するそれぞれの磁性体膜の磁化がすべて一方向に揃っていてもよく、または、磁性記録層Aを構成する複数の磁性層のうちで2つの中間層B1、B2に直接に接する外側の2つの磁性層の磁化が平行であってもよい。2つの中間層B1、B2に直接に接する外側の2つの磁性層の磁化が互いに反平行である場合には、本発明の効果を得ることが困難である。
また、いずれの場合においても、磁性記録層Aの磁化容易軸が磁性固着層C1、C2の磁化M1、M2の磁化軸と平行(または反平行)であると、磁性記録層Aに対する磁化の書き込みに有利である。
一方、中間層B1、B2の材料としては、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)あるいはこれらのいずれか一種以上を含む合金をはじめとし、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、シリコン(Si)及び鉄(Fe)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む酸化物あるいは窒化物、フッ化物からなる絶縁体を用いることができる。導電層の場合には、酸素等の異種元素が添加されていてもよい。また、異種元素が不連続な高電気抵抗薄膜を形成していてもよい。さらに、絶縁層の場合には磁性固着層ホールが形成され、そこに磁性層が進入していてもよい。
また、中間層B1、B2の材料としては、いずれもノーマル(normal)タイプの磁気抵抗効果が得られるもの、または、いずれもリバース(reverse)タイプの磁気抵抗効果が得られるものを用いることが望ましい。磁気抵抗効果がノーマルタイプとなるかリバースタイプとなるかは、中間層の材料とその両側の磁性層の材料の組合せに応じて決定される。
本発明においては、いずれか一方がノーマルタイプで他方がリバースタイプとなるものを用いることは望ましくない。ここで、前述したように、「ノーマルタイプ」とは、中間層の両側に設けられた磁性層の磁化方向が反平行の時に抵抗が大きくなるものをいう。また、「リバースタイプ」とは、中間層の両側に設けられた磁性層の磁化方向が反平行の時に抵抗が小さくなるものをいう。この理由は以下の如くである。
すなわち、リバースタイプの場合には、ノーマルタイプと逆向きのスピンが伝導に寄与する(トンネリングも含む)。このため、中間層の両側の磁性層の磁化が反平行時に抵抗が小さくなる。しかし、このように反平行の電子がトンネルに寄与すると、書き込み方向は、ノーマルタイプの場合とは逆になる。よって、磁性固着層C1(またはC2)から磁性記録層Aに向けて電流を流すと、磁性記録層Aの磁化は、磁性固着層C1(またはC2)の磁化に対して反平行となる。また、磁性記録層Aから磁性固着層C1(またはC2)に向けて電流を流すと、磁性記録層Aの磁化は磁性固着層C1(またはC2)の磁化に対して平行になる。このため、本発明においては、両側の磁性層との組合せで2つの中間層B1、B2のいずれか一方をノーマルタイプとし、いずれか他方をリバースタイプとしても効果が得られない。つまり、本発明においては、両端の磁性固着層C1、C2の磁化を反平行配置とし、磁性層及び中間層の材料を適宜組み合わせることにより、中間層B1を介した磁気抵抗効果と中間層B2を介した磁気抵抗効果がいずれもノーマルタイプ、あるいはいずれもリバースタイプとなるように構成することが必要である。
なお、ノーマルタイプの磁気抵抗効果を得るための中間層B1、B2の材料としては、上述したように、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)およびこれらの化合物、アルミナ、酸化マグネシウム(MgO)、窒化アルミニウム(Al−N)、酸化窒化シリコン(Si−O−N)、銅(Cu)が中に詰められた穴付き絶縁体、磁性体材料が中に詰められた穴付き絶縁体などを挙げることができる。
中間層B1、B2の材料としてこれらの材料を用い、両側に配置される磁性固着層C1、C2、磁性記録層Aの材料として、Co,Fe,Ni、またはCoFeやNiFeなどのこれらおよびMn,Crのいずれかを含む合金、あるいはCoFeB、ホイスラー合金などのいわゆる金属系強磁性体を組み合わせることで、磁性固着層C1と磁性記録層Aとの間、および磁性固着層C2と磁性記録層Aとの間でノーマルタイプの磁気抵抗効果が得られる。
また、磁性層にCrO、Fe、La1―XSrMnO等の酸化物系の磁性体を用いる場合、磁性固着層C1、C2と磁性記録層Aが同一材料である場合には、ノーマルタイプの磁気抵抗効果が得られる。
なお、リバースタイプの磁気抵抗効果を得るための中間層B1、B2の材料としては、酸化タンタル(Ta‐O)などを挙げることができる。つまり、磁性固着層C1、C2および磁性記録層Aの材料として、前記したいわゆる金属系強磁性体を用いた場合、酸化タンタルの中間層B1、B2と組み合わせることでリバースタイプタイプの磁気抵抗効果が得られる。
さらにリバースタイプの磁気抵抗効果が得られる磁性層/中間層/磁性層の組み合わせとしては、金属系磁性層/酸化物絶縁体中間層/酸化物系磁性層という組合せを挙げることができる。例えば、Co/SrTiO/La0.7Sr0.3MnO、CoFe/SrTiO/La0.7Sr0.3MnO等を用いることができる。
また、リバースタイプの磁気抵抗効果が得られる磁性層/中間層/磁性層の組合せとして、Fe/CoCr/La0.7Sr0.3MnO等のマグネタイト/絶縁体中間層/ぺロブスカイト系酸化物磁性体からなる系を挙げることができる。
またさらに、リバースタイプの磁気抵抗効果が得られる磁性層/中間層/磁性層の組合せとして、CrO/Cr酸化物絶縁体/Coが挙げることができる。
一方、磁性固着層C1、C2の磁化を固着するための反強磁性層AFの材料としては、鉄マンガン(FeMn)、白金マンガン(PtMn)、パラジウム・マンガン(PdMn)、パラジウム白金マンガン(PdPtMn)、イリジウムマンガン(IrMn)、白金イリジウムマンガン(PtIrMn)などを用いることが望ましい。また、層間結合を使って固着させる際の非磁性層としては、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)あるいはこれらのいずれか一種以上を含む合金が好ましい。
本発明の磁気セルにおける磁性固着層C1、C2の厚さは、0.6nm〜100nmの範囲内とすることが好ましく、磁性記録層Aの厚さは、0.2nm〜50nmの範囲内とすることが好ましい。また、中間層B1、B2の厚さは、導体の場合には0.2nm〜20nm、絶縁体を含む場合には0.2nm〜50nmの範囲内とすることが望ましい。
本発明の磁気セルの平面形状としては、磁性記録層Aの平面形状が、縦横比で1:1から1:5の範囲にあるような長方形、縦長(横長)6角形、楕円形、菱型、平行四辺形が好ましく、エッジドメインが形成されにくい一軸性の形状磁気異方性を生じやすい形状であることが望ましい。ただし、ドーナツ状セルの場合には、例外的に還流磁区が形成され易い方が好ましい。また、その磁性記録層Aの寸法は、長手方向の一辺が5nmから1000nm程度の範囲内とすることが望ましい。
なお、図1などにおいて、磁性固着層C1、C2と、磁性記録層Aの膜面方向の寸法を同一として表したが、本発明はこれには限定されない。すなわち、配線の接続のため、あるいは磁化方向の制御のために、磁気セルの各層の寸法が互いに異なるように形成してもよい。また、形状が異なっていても良い。
以上に説明したように、本発明の磁気セルは、スピン偏極電流により小さい書き込み電流で磁性記録層Aに磁化を書き込むことができる。さらには、磁気抵抗効果を用いて磁性記録層Aの磁化を読み出すこともできる。しかも、その素子はサイズが小さいためにアレイ化あるいは集積化が容易である、という利点を有する。
本発明の磁気セルは、微小かつ磁化反転機能を有することから、各種用途に適用できる。次に、本発明の磁気セルを並べて記録再生装置に適応した具体例について説明する。
図26は、本発明の磁気セルを用いた磁気メモリを表す模式図である。すなわち、本具体例は、本発明の磁気セルを、いわゆる「パターンド(patterned)媒体」に適用し、これにプローブでアクセスする、プローブストレージである。
記録媒体は、導電性基板110の上において、高抵抗の絶縁体100の面内に、本発明の磁気セル10がマトリクス状に配置された構造を有する。これら磁気セルの選択のために、媒体表面上にプローブ200が設けられ、プローブ200と媒体表面との相対的位置関係を制御するための駆動機構210、磁気セル10にプローブ200から電流または電圧を印加するための電源220、磁気セルの内部磁化状態を電気抵抗の変化として検出するための検出回路230が設けられている。
図26に表した具体例においては、駆動機構210はプローブ200に接続されているが、媒体とプローブとの相対位置が変化すればよいので、媒体側に設けてもよい。同図に表したように、本発明の磁気セル10を複数個、導電性基板110の上に配列させてパターンド媒体とし、導電性プローブ200と基板110との間に磁気セル10を介して電流を流すことによって、記録再生を行なう。
また、図26に表した具体例においては、各セル10は、基板110において下側電極のみを共有しているが、図27に表したように、各セル10が、その一部の層を共有する構造としてもよい。このような構造にすれば、さらにプロセスの簡易化および特性の均質化が図れる。
磁気セル10の選択は、導電性プローブ200とパターンド媒体との相対的位置関係を変えることで行なう。導電性プローブ200は、磁気セル10に対して電気的に接続されればよく、接触していても、非接触してもよい。非接触の場合には、磁気セル10とプローブ200との間に流れるトンネル電流あるいは電界放射による電流を用いて記録再生を行なうことができる。
磁気セル10への記録は、磁気セルにアクセスしたプローブ200から磁気セル10へ流れる電流、あるいは磁気セル10からプローブ200へ流れる電流により行われる。磁気セル10のサイズ、構造、組成等により決定される磁化反転電流をIsとすると、Isよりも大きな書き込み電流Iwをセルに流すことで記録が可能となる。その記録される磁化の方向は、電子電流を基準とした場合に、最初に通過する磁性固着層の磁化の方向と同一である。従って、電子の流れ、すなわち電流の極性を反転させることで、「0」または「1」の書き込みを適宜行なうことができる。
再生は、記録と同じく磁気セル10へアクセスしたプローブ200から流れる、あるいはプローブへ流れる電流によりなされる。ただし、再生時には、磁化反転電流Isよりも小さな再生電流Irを流す。そして、電圧あるいは抵抗を検出することで、磁性記録層Aの記録状態を判定する。よって、本具体例の磁気メモリにおいては、Iw>Irなる関係をもつ電流を流すことで記録再生が可能となる。
図28は、本発明の磁気セルを用いた磁気メモリの第2の具体例を表す模式断面図である。
すなわち、本具体例の磁気メモリは、電極層(下部配線)110の上に複数の磁気セル10が並列配置された構造を有する。それぞれの磁気セル10は、絶縁体100によって電気的に隔絶されている。それぞれの磁気セル10には、一般にビット線、ワード線と呼ばれる配線120が接続されている。ビット線とワード線を指定することにより、特定の磁気セル10を選択できる。
磁気セル10への記録は、配線120から磁気セル10へ流れる電流、あるいは磁気セル10から配線120へ流れる電流によりなされる。磁気セル10のサイズ、構造、組成等により決定される磁化反転電流をIsとすると、Isよりも大きな書き込み電流Iwをセルに流すことで記録が可能となる。その記録される磁化の方向は、電子電流を基準として、最初に通過する磁性固着層の磁化の方向と同一である。従って、この場合も、電子の流れ、すなわち電流の極性を反転させることで、「0」、「1」の書き込みを行なうことができる。
再生は、記録と同じく磁気セル10へアクセスした配線から流れる、あるいは配線へ流れる電流によりなされる。ただし、再生時にはIsよりも小さな再生電流Irを流す。そして電圧あるいは抵抗(電圧印加の場合には電流を)を検出することで、記録状態を判定する。よって、本具体例の磁気メモリにおいても、Iw>Irなる関係をもつ電流を流すことで記録再生が可能となる。
以下、実施例を参照しつつ、本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明する。
(第1の実施例)
図29(a)は、本実施例の磁気セルの要部断面構造を表す模式図であり、同図(b)は、比較例の磁気セルの要部断面構造を表す模式図である。
すなわち、本実施例の磁気セル(サンプルI)は、電極EL1、磁性固着層C1、中間層B1、磁性記録層A、中間層B2、磁性固着層C2、電極EL2が積層された構造を有する。また、比較例の磁気セル(サンプルII)は、電極EL1、磁性記録層A、中間層B、磁性固着層C、電極EL2が積層された構造を有する。各層の材料と膜厚は以下の如くである。

サンプルI: EL1(Cu)/C1(Co:20nm)/B1(Cu:10nm)/A(Co:3nm)/B2(Cu:6nm)/C2(Co:20nm)/EL2(Cu)

サンプルII: EL1(Cu)/A(Co:3nm)/B(Cu:6nm)/C(Co:20nm)/EL2(Cu)

これらの積層構造は、超高真空スパッタ装置によって下側の電極EL2の上に形成した。そして、さらにその上に、図示しないタンタル(Ta)保護膜を形成してから、レジストを塗布しEB(electron beam)露光してマスクを形成したのち、イオンミリングで加工した。セルの加工サイズは100nm×50nmである。
得られたサンプルについて、膜面に対して垂直方向に流す電流量に対する抵抗の変化から磁性記録層Aの磁化反転電流値を求めた。その結果、正負反転電流の平均値は、サンプルIで1.4mA、サンプルIIで3.1mAであった。また、サンプルIIでは、正負電流に対する非対称性が見られていたが、サンプルIでは、この非対称性が解消した。
つまり、磁化が反平行の2層の磁性固着層C1、C2を設けることにより、記録層Aの磁化反転電流が低下するとともに、書き込み電流の対称性の改善が見られた。書き込み電流の対称性の向上は、磁化方向が反平行の反強磁性配置の固着層C1、C2を設けることにより、磁気セルが磁気的により安定になったためと考えられる。
(第2の実施例)
次に、本発明の第2の実施例として、図15に表した構造の磁気セルの実施例について説明する。なお、本実施例においては、図15の上下を逆さにした積層構造の磁気セルを試作した。
まず、超高真空スパッタ装置を用いて、ウェーハ上にタンタル(Ta)と銅(Cu)からなる下側電極EL1を形成したのち、その上にPtMn20nm(反強磁性層AF1)、CoFe5nm(磁性層FM)、Ru1nm(非磁性層AC)、CoFe2nm(磁性固着層C1)、Cu3nm(中間層B1)、CoFe2nm(磁性記録層A)、Cu3nm(中間層B2)、CoFe4nm(磁性固着層C2)、PtMn20nm(反強磁性層AF2)を形成した。さらに、この上に、銅(Cu)とタンタル(Ta)からなる積層膜を形成した。
このウェーハを磁場中真空炉にて、270℃で10時間、磁場中アニールして、一方向異方性を付与した。この時点でウェーハの一枚を取り出し、振動試料型磁束計(VSM)により磁化の印加磁場依存性のヒステリシスループ測定を行い、C1とC2の反平行磁化固着を確認した。この膜に対し、EBレジストを塗布してEB露光したのち、リフトオフで所定の形状のマスクを形成した。次に、イオンミリング装置によりマスクに被覆されない領域をエッチングした。ここで、エッチング量の把握は、スパッタされた粒子を作動排気による四重極分析器に導入して質量分析することで、正確に把握することができる。
エッチング後、マスクを剥離し、さらにSiOを成膜し、表面をイオンミリングにより平滑化し、タンタル(Ta)面を露出させる「頭だし」の工程を行なった。このタンタル面の上に、上側の電極を形成した。このようにして図6相当の素子を作成した。
以上説明したプロセスにより、磁性記録層Aの上下に配置された磁性固着層C1、C2の磁化の方向を反平行に固着することができる。
(第3の実施例)
第2実施例と同様のプロセスを用い、図16に表した構造の磁気セルを試作した。但し、本実施例においても、図16の上下を逆さにした積層構造の磁気セルを試作した。各層の材料と膜厚は、以下の如くである。

AF1(PtMn:20nm)/FM1(CoFe:5nm)/AC(Ru:1nm)/C1(CoFe:2nm)/B1(Cu:3nm)/A(CoFe:2nm)/B2(Cu:3nm)/C2(CoFe:2nm)/FC(Cu:5nm)/FM2(CoFe:5nm)/AF2(PtMn:20nm)

この構造においても、第2実施例に関して前述したものと同様のプロセスによって、磁性固着層C1、C2の磁化の方向を反平行に固着することができた。
(第4の実施例)
次に、本発明の第4の実施例として、2つの中間層B1、B2に非対称性を付与して磁気抵抗効果の検出が容易となるようなサンプル群(サンプルIIからサンプルV)を作製し、中間層が対称なサンプル(サンプルI)とともにその電流駆動磁化反転に伴う抵抗変化率を評価し、比較検討した。各サンプルの磁気セル中心部の構成は以下の如くである。

サンプルI: C1(CoFe:10nm)/B1(Cu:8nm)/A(CoFe:3nm)/B2(Cu:8nm)/C2(CoFe:10nm)

サンプルII: C1(CoFe:10nm)/B1(Cu:8nm)/A(CoFe:3nm)/B2(Cu:4nm)/C2(CoFe:10nm)

サンプルIII: C1(CoFe:10nm)/B1(Cu:8nm)/A(CoFe:3nm)/B2(Cu:2nm)/IE(Al−Cu−O:0.6nm)/B2(Cu:2nm)/C2(CoFe:10nm)

サンプルIV: C1(CoFe:10nm)/B1(Cu:8nm)/A(CoFe:3nm)/B2(Al−CoFe:3nm)/C2(CoFe:10nm)

サンプルV: C1(CoFe:20nm)/B1(Cu:8nm)/A(CoFe:3nm)/B2(Cu:8nm)/C2(Co:2nm)

ここでサンプルIは中間層B1、B2が対称なもの、サンプルIIは中間層B1、B2の膜厚が非対称性されたもの(図9(a))、サンプルIIIは片方の中間層B2に極薄の酸化物層(IE)が添加されたもの(図10)、サンプルIVは片方の中間層B2がアルミナとCoFeの同時蒸着によりアルミナ中にCoFeを析出させて磁性体の微小接点を形成したもの(図11)、サンプルVは磁性固着層C1、C2の厚さと組成に非対称性を有するもの(図8)である。
なお、サンプルIVでは、接点部の格子整合をとるためのアニールを行った。また、それぞれのサンプルの下側にはPtMn層/CoFe層/Ru層を設け、上側にはPtMn層を設けて、第2実施例と同様の方法で2つの固着層C1、C2の磁化を反平行に固着した。
得られたサンプルに対して、電流をスイープさせ、磁性記録層Aの磁化反転に伴う抵抗変化を求めた。その結果は、以下の如くである。

サンプル番号 抵抗変化率
サンプルI <0.1%
サンプルII 0.4%
サンプルIII 5.0%
サンプルIV 20%
サンプルV 0.6%

この結果から、非対称性を持たせると検出効率が高くなり、特に中間層B1、B2に非対称性を付与した場合に信号検出感度が高くなることが分かった。
(第5の実施例)
次に、本発明の第5の実施例として、第4実施例のサンプルIVと同様の構造をもつ磁気セルを、図26に表したように基板上に並べ、32×32のマトリックスを形成した。このマトリックスをさらに32×32並べ、合計で1M(メガ)ビットの記録再生媒体を形成した。そして、この記録再生媒体に対して、32個×32個からなるプローブで記録再生を行う磁気メモリを製作した。すなわち、本実施例の磁気メモリにおいては、マトリックス1セットに対してプローブ1個を対応させた。
プロービングは、図30に表した如くである。それぞれのプローブ200に対するセルの選択は、媒体に設けられたXY駆動機構により行なった。ただし、位置関係が相対的に変化するならばプローブ200に設けられた駆動機構210でセル選択を行なってもよい。また、プローブ200がマルチ化されているため、各プローブはいわゆるワード線WLとビット線BLに繋ぎ、ワード線WLとビット線BLを指定することで、プローブ200の選択を可能とした。
磁気セル10への記録再生は、磁気セルにアクセスしたプローブ200から注入される電流により行った。ここでは プラス1.2mAとマイナス1.2mAの電流を流すことで、それぞれ「0」、「1」信号を書き込み、再生は0.5mA以下の電流を流した場合のセル電圧を読み込み、その大小関係を「0」、「1」にアサインした。また、比較のため、プラス0.5mAとマイナス0.5mAの書き込み電流での書き込みを行い、再生電流0.4mA以下で読み込みを行なった。その結果、書き込み電流をプラス1.2mAとマイナス1.2mAとした場合には書き込めたが、プラス0.5mAとマイナス0.5mAでは書き込めないことを確認した。
(第6の実施例)
次に本発明の第6の実施例として、第4の実施例のサンプルIIIと同様の構造をもつ磁気セルを用いて磁気メモリを作製した実施例について説明する。
まず、ウェーハ上に、予め下側ビット線とトランジスタを形成し、この上に、第2実施例に関して前述したプロセスと同等の方法を用いて磁気セルアレイを形成した。さらに、その上にワード線を形成し、磁気セルの電極がビット線とワード線に接続される図31に表した構造の磁気メモリを形成した。
磁気セル10の選択は、磁気セルに繋がったワード線WLとビット線BLを指定することで可能となる。すなわち、ビット線BLを指定することでトランジスタTRをオン(ON)にし、ワード線WLと電極に挟まれた磁気セル10へ電流を流す。このとき、磁気セルのサイズ、構造、組成等により決定される磁化反転電流をIsとすると、Isよりも大きな書き込み電流Iwをセルに流すことで記録が可能となる。ここで作製した磁気セルは、Isの平均値が1.8mAであったので、書き込み電流にはこれを越える電流をもつ正負の極性をもつ電流で書き込みが可能となる。また読み込み電流は、1.8mAを超えてはならない。
なお第5実施例及び第6実施例では、プローブあるいはセル選択にトランジスタTRを用いたが、他のスイッチング素子を用いてもよい。できれば、オン時の抵抗が低抵抗のものが好ましい。また、ダイオードを用いてもよい。
(第7の実施例)
次に、本発明の第7の実施例として、第1実施例と同様の作製方法により、第1実施例におけるサンプルIの磁性記録層Aの構造を変形させた次のサンプルを作製した。

EL1(Cu)/C1(Co:20nm)/B1(Cu:10nm)/A(Co:0.6nm)/A(Ni:1.8nm )/A(Co:0.6nm)/B2(Cu:6nm)/C2(Co:20nm)/EL2(Cu)

すなわち、磁性記録層Aとして、Co(0.6nm)/Ni(1.8nm )/Co(0.6nm)という積層構造を採用した。このサンプルの磁化反転特性を評価したところ、反転電流は1.1mAであり、第1実施例のサンプルIよりもさらに反転電流が低減した。これは磁性記録層Aの磁気的エネルギーが下がったためであると考えられる。

(第8の実施例)
次に、本発明の第8の実施例として、図15に表した構造の磁気セルを作成した。まず、本実施例において作成した2種類の磁気セル(サンプルA10、サンプルB10)について説明する。
サンプルA10は、図示しない下側電極の上に、反強磁性層AF2としてPtMn(20nm)を形成し、この上に、磁性固着層C2としてCoFe(20nm)、中間層B2としてCu(4nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着層C1としてCoFe(4nm)、非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性層FMとしてCoFe(4nm)が積層され、その上に反強磁性層AF1としてPtMn(15nm)、さらに図示しない上側電極が形成された構造からなる「反平行デュアルピン構造」を有する。この構造において、2つの中間層B1、B2を介した磁気抵抗効果(MR)は、それぞれノーマルタイプのMRを示す。エレメントサイズとして60nm×110nm、80nm×165nm、110nm×240nmの3通りを作製した。
一方、サンプルB10は、図示しない下側電極の上に、反強磁性層AF2としてPtMn(20nm)を形成し、この上に、磁性固着層C2としてCoFe(10nm)、中間層B2としてAl(0.8 nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着層C1としてCoFe(4nm)、非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性層FMとしてCoFe(4nm)が積層され、その上に、反強磁性層AF1としてPtMn(15nm)、さらに図示しない上側電極が形成された構造を有する。
サンプルB10の構造においては、2つの中間層B1、B2の材質が異なるが、これらの中間層B1、B2を介したMRは、ともにノーマルタイプのMRを示すことは事前に確認した。エレメントサイズは、サンプルA10と同様の3通りとした。
サンプルA10は、次のように作製した。
まず、ウェーハ上に下側電極を形成したのち、そのウェーハを超高真空スパッタ装置へ導入し、表面をスパッタクリーニングした後、PtMn(20nm)/ CoFe(20nm)/Cu(4nm)/CoFe(2.5nm)/Cu(6nm)/CoFe(4nm)/ Ru(1nm)/CoFe (4nm)/PtMn(15nm)という多層膜を堆積して、装置から取り出した。
次に、ウェーハを真空磁場炉へ入れ、270℃で10時間、磁場中アニールを行い、固着層C1、C2に交換バイアスを付与した。次に、レジストを塗布してEB(電子ビーム)描画装置にて電子ビーム露光した後、上述したエレメントサイズに対応したマスクパターンを形成した。このパターンに対してイオンミリング装置により磁性固着層C2の上部までミリングしてエレメントを形成した。
エレメント形状は、エレメントの長手軸方向が磁性固着層C1、C2の交換バイアス方向に平行となるように設定した。そしてこのエレメントの周りにSiOを埋めこみ、上側電極を形成して磁気セルを完成した。
サンプルB10は、次のように作製した。
まず、ウェーハ上に下側電極を形成したのち、そのウェーハを超高真空スパッタ装置へ導入し、まずPtMn(20nm)/CoFe(10nm)/Alからなる多層膜を堆積させた。次に、スパッタ装置に酸素を導入してアルミニウム(Al)を酸化させてAlを形成した。なおここで、Alではなく、酸素が若干欠損した組成の酸化アルミニウムが形成される場合もある。これは、本願明細書において説明する他の実施例につていも同様である。
このAlの上に、さらに、CoFe(2.5nm)/Cu(6nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/PtMn(15nm)からなる多層膜を堆積し、装置から取り出した。
次に、レジストを塗布してEB描画装置にて電子ビーム露光した後、上述したエレメントサイズに対応したマスクパターンを形成した。その後、イオンミリング装置によりAlの上部までミリングしてエレメントを形成した。エレメントは、その長手軸方向が磁性固着層C1、C2の交換バイアス方向に対して平行となるように形成した。そして、エレメントの周りにSiOを埋めこみ、上側電極を形成して磁気セルを完成した。
さらに、比較のためサンプルC10、サンプルD10、サンプルE10、サンプルF10を作製した。これらの構造は、以下の如くである。
サンプルC10は、下側電極の上に、反強磁性層AF2としてPtMn(20nm)、磁性固着層C2としてCoFe(10nm)、中間層B2としてTaO1.4(1nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着層C1としてCoFe(4nm )、非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性層FMとしてCoFe(4nm)、反強磁性層AFとしてPtMn(15nm)がこの順に積層され、さらに上側電極が形成された構造を有する。この構造において、中間層B2のTaO1.4はリバースタイプのMRを示し、中間層B1のCuはノーマルタイプのMRを示すことを予め事前に確認した。このため、この構造は本発明の磁気セルとしては不適当であった。
サンプルD10は、下側電極の上に、反強磁性層としてPtMn(20nm)、磁性固着層としてCoFe(20nm)、中間層としてCu(4nm)、磁性記録層としてCoFe (2.5nm)、上側電極がこの順に積層されたシングルピン(single pin)構造を有する。
サンプルE10は、下側電極の上に、反強磁性層としてPtMn(20nm)、磁性固着層としてCoFe(20nm)、中間層としてAl(0.8 nm)、磁性記録層としてCoFe(2.5nm)、上側電極がこの順に積層されたシングルピン構造を有する。
サンプルF10は、下側電極の上に、磁性記録層としてCoFe(2.5nm)、中間層としてCu(6nm)、磁性固着層としてCoFe(4nm)、非磁性層としてRu(1nm)、磁性層としてCoFe(4nm)、反強磁性層としてPtMn(15nm)、上側電極がこの順に積層された構造を有する。
サイズ60nm×110nmのサンプルA10およびサイズ60nm×110nmのサンプルB10について、上側電極と下側電極との間に電流をプラスマイナス10mAまで流して、微分抵抗の電流依存性を測定した。
図32は、サンプルA10の微分抵抗を表すグラフ図である。
図33は、サンプルB10の微分抵抗を表すグラフ図である。
電流の極性は、電子の流れが磁性固着層C2から磁性固着層C1へ流れるときに電流がプラスとなるように定義した。サンプルA10の場合(図32)は、下に凸の曲線が得られ、サンプルB10(図33)の場合は、上に凸の曲線が得られた。そして、サンプルA10の場合もサンプルB10の場合も、高抵抗状態と低抵抗状態とが電流の変化により出現している。この結果から、磁気セルに流す電流の極性によって磁性記録層Aの磁化が反転し、信号の書き込みができていることが分かる。
図34は、図32及び図33におけるバックグラウンドの曲線成分を除去し、さらに低抵抗状態の微分抵抗によって規格化した微分抵抗変化を表すグラフ図である。図34には、同じサイズのサンプルD10、E10、F10の結果を併せて表した。同図から、サンプルA10及びB10は、他のサンプルに比べて磁化反転のための電流が非常に小さいことが分かる。なお、サンプルC10については、プラスマイナス10mAの電流で磁化の反転が観察されなかった。つまり、サンプルC10の磁化反転電流は、10mAより大きいことが分かった。
以上の結果から、サンプルA10、B10は、サンプルC10、D10、E10、F10に比べて、磁化反転のための臨界電流(Ic)が低く、低電流で書込みが可能であることがわかる。
図35は、磁化反転臨界電流Icの平均値とセルサイズとの関係を表すグラフ図である。ここで、臨界電流Icの平均値は、図32において高抵抗状態から低抵抗状態へ記録する場合の臨界電流Ic+と、低抵抗状態から高抵抗状態へ記録する場合の臨界電流Ic−とを平均した値である。
いずれのサンプルにおいても、臨界電流Icは、セルのサイズに対してほぼ比例関係にある。そして、サンプルA10、B10は、サンプルD10、E10、F10に比べて、低い電流密度で記録が可能であることが分かる。
以上説明した結果から、図15に表した構造によれば、低消費電力で書込みが可能であることが確認できた。
なお、サンプルB10の中間層B2に、MgO、SiO、Si−O−N、ホールが形成されそのホールに磁性体あるいは導電性金属(Cu、Ag、Au)が埋めこまれたSiOあるいはAlを用いた場合にも、上記と同様の傾向が得られることを確認した。

(第9の実施例)
次に、本発明の第9の実施例として、図19及び図20に表した構造の磁気セル(サンプルA20、B20)を作成した。
サンプルA20(図19)は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着層C2としてCoFe(20nm)、中間層B2としてAl(0.8nm)、磁性層A3としてCoFe(1nm)、非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性層A2としてCoFe(1nm)、非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性層A1としてCoFe (1nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着層C1としてCoFe(4nm)、非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性層FMとしてCoFe(4nm)が積層され、その上にPtMn(15nm)と上側電極が形成された構造を有する。つまり、サンプルA20は、反平行デュアルピン構造を有する。エレメントサイズとして60nm×110nm、80nm×165nm、110nm×240nmの3通りを作製した。
一方、サンプルB20(図20)は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着層C2としてCoFe(20nm)、中間層B2としてCu(4nm)、磁性層A2としてCoFe(1.25nm)、非磁性層FCとしてCu(0.3nm)、磁性層A1としてCoFe(1.25nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着層C1としてCoFe (4nm)、非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性層FMとしてCoFe(4nm)が積層され、その上にPtMn(15nm)と上側電極が形成された構造を有する。すなわち、サンプルB20も、反平行デュアルピン構造を有する。B20のエレメントサイズは、サンプルA20と同様にした。
サンプルA20は、次のように作製した。
まず、ウェーハ上に下側電極を形成したのち、そのウェーハを超高真空スパッタ装置へ導入し、まずPtMn(20nm)/CoFe(20nm)/Alを堆積した。次に、スパッタ装置内で酸素プラズマを発生させてAlを酸化させてAlを形成した。このAlの上に、さらにCoFe(1nm)/Ru(1nm)/CoFe(1nm)/Ru(1nm)/CoFe(1nm)/Cu(6nm)/CoFe(4nm)/Ru (1nm)/CoFe(4nm)/PtMn(15nm)多層膜を積層し、装置から取り出した。
次に、レジストを塗布してEB描画装置にて電子ビーム露光した後、上述のエレメントサイズに対応したマスクパターンを形成した。次に、イオンミリング装置によりAlの上部までミリングしてエレメントを形成した。エレメントは、その長手軸方向が磁性固着層の交換バイアス方向に対して平行となるように形成した。次に、エレメントの周りにSiOを埋めこみ、上側電極を形成して磁気セルを完成した。
サンプルB20はサンプルA20と同様の方法で作製した。
また、比較のためサンプルC20、D20、E20を作製した。
図36は、サンプルC20の断面構造を表す模式図である。
サンプルC20は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着層C2としてCoFe(20nm)、中間層B2としてAl(0.8nm)、磁性層A2としてCoFe(1nm)、非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性層A1としてCoFe(1nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着層C1としてCoFe(4nm)、非磁性層ACとしてRu (1nm)、磁性層FMとしてCoFe(4nm)がこの順に積層され、その上にPtMn(15nm)と上側電極が形成された構造を有する。
つまり、サンプルC20は、反平行デュアルピン構造を有するが、2つの中間層B1、B2に接した磁性層A1及び磁性層A2の磁化は互いに反平行であり、本発明の磁気セルとしては不適当である。
サンプルD20は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着層C1としてCoFe(20nm)、中間層B2としてAl(0.7nm)、磁性層A3としてCoFe(1nm)、非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性層A2としてCoFe(1nm)、非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性層A1としてCoFe(1nm)が積層され、その上に上側電極が形成された構造を有する。すなわち、サンプルD20は、シングルピン構造を有する。
サンプルE20は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着層C1としてCoFe(20nm)、中間層B2としてCu(4nm)、磁性層A2としてCoFe (1.25nm)、非磁性層FCとしてCu(0.3nm)、磁性層A1としてCoFe(1.25nm)が積層され、その上に上側電極が形成された、シングルピン構造を有する。
図37は、サイズ60nm×110nmのサンプルA20、B20、D20、E20について、微分抵抗変化の電流依存性を表すグラフ図である。同図から、本発明のサンプルA20、B20は、比較例のサンプルD20、E20よりも磁化反転の電流が小さいことが分かる。なおサンプルC20は、磁性層A1、A2の磁化が反転する前にセルが電気的に破壊したため、磁化反転は観察されなかった。
以上の結果から、サンプルA20、B20は、サンプルC20、D20、E20に比べて、磁化反転のための臨界電流Icが低く、低電流で書込みが可能であることがわかる。
図38は、臨界電流Icの平均値と、セルサイズとの関係を表すグラフ図である。いずれの素子も面積に対してほぼ比例関係にあり、サンプルA20とB20は、サンプルD20及びE20に比べて、低電流密度で記録が可能であることが分かる。
以上の結果から、図19及び図20に表した構造は、低消費電力で書込みが可能な磁気セルに適していることが確認できた。
なお、サンプルA20とサンプルB20の中間層B2として、MgO、SiO、Si−O−N、孔が形成されその孔に磁性体あるいは導電性金属(Cu、Ag、Au)が埋めこまれたSiOあるいはAlを用いた場合にも、上記と同様の傾向が得られることを見出した。

(第10の実施例)
次に、本発明の第10の実施例として、図22に表した構造の磁気セル(サンプルA30、B30)を作成した。
サンプルA30は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性層FMとしてCoFe(4nm)、非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性層FMとしてCoFe(4nm)、非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性固着層C2としてCoFe(4nm)、中間層B2としてCu(3nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着層C1としてCoFe(4nm)、非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性層FMとしてCoFe(4nm)が積層され、その上にPtMn(15nm)とに上側電極が形成された構造を有する。つまり、サンプルA30は、反平行デュアルピン構造を有する。エレメントサイズとして60nm×110nm、80nm×165nm、110nm×240nmの3通りを作製した。
一方、サンプルB30は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性層FMとしてCoFe(4nm)、非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性層FMとしてCoFe(4nm)非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性固着層C2としてCoFe(4nm)、中間層B2としてCu(6nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、中間層B1としてAl(0.8nm)、磁性固着層C1としてCoFe(4nm)、非磁性層ACとしてRu(1nm)、磁性層FMとしてCoFe(4nm)がこの順に積層され、その上にPtMn(15nm)と上側電極が形成された構造を有する。つまり、サンプルB30も反平行デュアルピン構造を有する。サンプルB30のエレメントサイズは、サンプルA30と同様とした。サンプルB30の場合、2つの中間層B1、B2の材質は異なるが、いずれの場合も中間層を介したMRはそれぞれノーマルタイプのMRを示す。
サンプルA30は、次のように作製した。
まず、下側電極の上にSiO層とTa層をこの順に成長させた。その上にレジストを塗布してEB描画装置にてマスクパターンを描画した。次に、このパターン部のレジストを取り除き、イオンミリングでTa層にエレメントサイズに対応した穴を開けた。さらに、反応性イオンエッチングにてTa層の下にあるSiO層へエレメントサイズよりも僅かに大きな面積をもつ穴をあけて、下側電極の表面を露出させた。
このウェーハを超高真空スパッタ装置へ導入したのち、真空排気して、エッチングにより表面クリーニングしたのち、Ru/PtMn(20nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Cu(3nm)/CoFe(2.5nm)/Cu(6nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/PtMn(15nm)をこの順に成長させた。さらに、その上に上側電極を形成した。このウェーハを真空磁場炉へ入れ、270℃にて12時間、磁場中アニールして、磁性固着層に交換バイアスを導入した。その際、交換バイアスの方向は、エレメントの長手方向に対して平行にした。
サンプルB30は、次のように作製した。
まず、下側電極の上にSiO層およびTa層をこの順に成長させた。その上にレジストを塗布してEB描画装置にてマスクパターンを描画した。次に、このパターン部のレジストを抜き、イオンミリングでTa層にエレメントサイズに対応した穴を開けた。さらに、反応性イオンエッチングにてTa層の下にあるSiO層にエレメントサイズよりも僅かに大きな面積をもつ穴をあけて、下側電極の表面を露出させた。
このウェーハを超高真空スパッタ装置へ導入し、真空排気して、表面エッチングにより表面クリーニングしたのち、Ru/PtMn(20nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Cu(6nm)/CoFe(2.5nm)/Alを成長させた。この段階でチャンバー内に酸素を導入してアルミを酸化させたのち、再び超高真空まで排気して、残りのCoFe (4nm)/Ru(1nm)/ CoFe(4nm)/PtMn(15nm)をこの順に堆積した。さらに上側電極を形成した。このウェーハを真空磁場炉へ入れ、270℃にて12時間、磁場中アニールして、磁性固着層に交換バイアスを導入した。その際、交換バイアスの方向は、エレメントの長手方向に対して平行にした。
さらに、比較のためサンプルC30、サンプルD30、サンプルE30を作製した。
サンプルC30は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着構造P2としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、中間層B2としてCu(6nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、さらに、中間層B1としてTaO(1nm)、磁性固着構造P1としてCoFe(4nm)/Ru(1nm )/CoFe(4nm)がこの順に積層され、その上にPtMn(15nm)、上側電極が積層された構造を有する。この構造は、反平行デュアルピン構造である。しかしながら、中間層B2のCuは、ノーマルタイプのMRを示すのに対して、中間層B1のTaOはリバースタイプのMRを示すので、本発明に適合しない比較サンプルである。
サンプルD30は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着層構造P2としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、中間層としてCu(3nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、その上に上側電極を有するシングルピン構造からなる。
サンプルE30は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着構造P2としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、中間層としてAl(0.8nm )、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、この上に上側電極を有するシングルピン構造からなる。
図39は、サンプルA30、B30、D30、E30について、微分抵抗変化と電流との関係を表すグラフ図である。ここでサンプルのサイズは、60nm×110nmである。なお、サンプルC30は、磁性記録層Aの磁化が反転する前に磁気セルが電気的に破壊したため、磁化反転は観察されなかった。
以上の結果から、サンプルA30、B30は、サンプルC30、D30、E30に比べて、磁化反転のための臨界電流Icが低く、低電流で書込みが可能であることがわかる。
図40は、臨界電流Icの平均値とセルサイズとの関係を表すグラフ図である。いずれのサンプルにおいても、臨界電流Icはセルの面積に対してほぼ比例関係にあり、サンプルA30、B30は、サンプルD30、E30に比べて、低電流密度で記録が可能であることが分かる。
以上説明したように、図22に表した構造は、低消費電力で書込みが可能な磁気セルに適していることが確認された。
なお、サンプルA30の中間層B1として、MgO、SiO、Si−O−N、孔が形成されその孔に磁性体あるいは導電性金属(Cu、Ag、Au)が埋めこまれたSiOあるいはAlを用いた場合にも、上記と同様の傾向が得られることを見出した。

(第11の実施例)
次に、本発明の第11実施例として、図23及び図24に表した構造の磁気セル(サンプルA40、B40)を作成した。
サンプルA40(図23)は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着層構造P2としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe (4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、中間層B2としてCu(5nm)、磁性記録層AとしてCoFe(1nm)/Ru(1nm) /CoFe(1nm)/Ru(1nm)/CoFe(1nm)、中間層B1としてCu(10nm)、磁性固着構造P1としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、PtMn(15nm)、上側電極がこの順に形成された構造を有する。すなわち、サンプルA40は、反平行デュアルピン構造を有する。エレメントサイズとしては、60nm×110nm、80nm×165nm、110nm×240nmの3通りを作製した。
一方、サンプルB40は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着構造P2としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、中間層B2としてAl(0.8 nm)、磁性記録層AとしてCoFe(1.25nm)/Cu(0.3nm)/CoFe(1.25nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着構造P1としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、PtMn(15nm)、上側電極がこの順に形成された構造を有する。すなわち、サンプルB40も、反平行デュアルピン構造を有する。この構造において、2つの中間層B1、B2の材質は異なるが、これらいずれの場合も、中間層を介したMRはそれぞれノーマルタイプのMRを示す。エレメントサイズはA40と同様とした。
サンプルA40は、前述したA10と同様の方法で作製した。また、サンプルB40は、前述したサンプルB10と同様の方法で作製した。
さらに、比較のためサンプルC40、D40、E40を作製した。
サンプルC40は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着構造P2としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、中間層B2としてCu(5nm)、磁性記録層AとしてCoFe(1nm)/Ru(1nm)/CoFe(1nm)、さらに中間層B1としてCu(10nm)、磁性固着構造P1としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、PtMn(15nm)、上側電極がこの順に形成された構造を有する。この構造は、反平行デュアルピン構造であるが、2つの中間層B1、B2に接した磁性記録層Aを構成する磁性層の磁化は互いに反平行であり、本発明のものと異なる。
サンプルD40は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着構造としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Ru (1nm)/CoFe(4nm)、中間層B2としてCu(6nm)、磁性記録層AとしてCoFe(1nm)/Ru(1nm)/CoFe(1nm)/Ru(1nm)/CoFe(1nm)が積層され、その上に上側電極が形成された、シングルピン構造を有する。
サンプルE40は、下側電極の上にPtMn(20nm)、磁性固着構造としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、中間層としてAl(0.7nm)、磁性記録層AとしてCoFe(1.25nm)/Cu(0.3nm)/CoFe(1.25nm)、上側電極が形成された、シングルピン構造を有する。
図41は、サンプルA40、B40、D40、E40について、微分抵抗変化と電流との関係を表すグラフ図である。ここで、セルのサイズは、60nm×110nmである。図41から、サンプルA40、B40の磁化が反転する電流は、サンプルD40、E40に比べて非常に小さいことが分かる。なおサンプルC40については、磁性記録層Aの磁化が反転する前にセルが電気的に破壊したため、磁化反転は観察されなかった。
以上の結果から、サンプルA40、B40は、サンプルC40、D40、E40に比べて、 磁化反転のための臨界電流Icが低く、低電流で書込みが可能であることがわかる。
図42は、臨界電流Icの平均値とセルサイズとの関係を表すグラフ図である。いずれのサンプルでも、臨界電流Icはセルサイズに対してほぼ比例関係にあることが分かる。また、サンプルA40、B40は、サンプルD40、E40に比べて、低電流密度で記録が可能であることが分かる。
以上説明したように、図23及び図24に表した構造は、低消費電力で書込みが可能な磁気セルに適していることが確認できた。
なお、サンプルA40およびサンプルB40の中間層B2の材料として、MgO、SiO、Si−O−N、孔が形成されその孔に磁性体あるいは導電性金属(Cu、Ag、Au)が埋めこまれたSiOあるいはAlを用いた場合にも、上記と同様の傾向が得られることを見出した。

(第12の実施例)
次に、本発明の第12実施例として、図21及び図25に表した構造の磁気セル(サンプルA50、B50)を作成した。
サンプルA50(図21)は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着層C2としてCoFe(20nm)、中間層B2としてCu(6nm)、磁性記録層AとしてCoFe(0.8nm)/NiFe(0.8nm)/CoFe(0.8nm)、中間層B1としてAl(1.0nm)、磁性固着構造P1としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、PtMn(15nm)、上側電極が形成された構造を有する。すなわち、サンプルA50も、反平行デュアルピン構造を有する。
エレメントサイズとしては、60nm×110nm、80nm×165nm、110nm×240nmの3通りを作製した。
一方、サンプルB50は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着構造P2としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、中間層B2としてCu(6nm)、磁性記録層AとしてCoFe(0.8nm)/NiFe(0.8nm)/CoFe(0.8nm)、中間層B1としてCu(9nm)、磁性固着構造P1としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、PtMn(15nm)、上側電極がこの順に形成された構造を有する。すなわち、サンプルB50も反平行デュアルピン構造を有する。エレメントサイズはA50と同様とした。
なお、サンプルA50においては、2つの中間層B1、B2の材質は異なるが、これらの中間層を介したMRは、それぞれノーマルタイプのMRを示す。
サンプルA50は、次のように作製した。
まず、下側電極の上にSiO層とTa層をこの順に成長させた。その上にレジストを塗布してEB描画装置にてマスクパターンを描画した。次に、このパターン部のレジストを取り除き、イオンミリングでTa層にエレメントサイズに対応した穴を開けた。さらに、反応性イオンエッチングにてTa層の下にあるSiO層に、エレメントサイズよりも僅かに大きな面積をもつ穴をあけ、下側電極表面を露出させた。
次に、このウェーハを超高真空スパッタ装置へ導入したのち、真空排気して、表面エッチングにより表面クリーニングし、Ru/PtMn(20nm)/CoFe(20nm)/Cu(6nm)/CoFe(0.8nm)/NiFe(0.8nm)/CoFe(0.8nm)/Alを順次成長させた。次に、この状態で、チャンバー内に酸素を導入して表面のアルミを酸化させ、その後再び超高真空まで排気して、残りのCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/PtMn(15nm)を堆積し、さらに上側電極を形成した。
次に、このウェーハを真空磁場炉へ入れ、270℃にて12時間磁場中アニールして、磁性固着層へ交換バイアスを導入した。その際、交換バイアスの方向は、エレメントの長手方向に対して平行にした。
サンプルB50は、A10と同様の方法で作製した。
比較のために、サンプルC50とD50を作製した。
サンプルC50は、下側電極の上に、磁性固着層C2としてCoFe(12nm)、中間層B2としてCu(6nm)、磁性記録層AとしてCoFe(0.8nm)/NiFe(0.8nm)/CoFe(0.8nm)、PtMn(15nm)、上側電極がこの順に形成されたシングルピン構造を有する。
サンプルD50は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着構造としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、中間層B2としてCu(6nm)、磁性記録層AとしてCoFe(0.8nm)/NiFe(0.8nm)/CoFe(0.8nm)が積層され、その上に上側電極が形成された、シングルピン構造を有する。
図43は、サンプルA50、B50、C50、D50について、微分抵抗変化と電流との関係を表すグラフ図である。ここでサンプルのサイズは、60nm×110nmである。図43から、サンプルA50、B50は、サンプルC50、D50に比べて、磁化反転のための臨界電流Icが低く、低電流で書込みが可能であることがわかる。
図44は、臨界電流Icの平均値とセルサイズとの関係を表すグラフ図である。いずれのサンプルにおいても、臨界電流Icはセルサイズに対してほぼ比例関係にある。そして、サンプルA50、B50は、サンプルC50、D50に比べて、低電流密度で記録が可能であることが分かる。
以上説明したように、図21及び図25に表した構造は、低消費電力で書込みが可能な磁気セルに適していることが確認できた。
なお、サンプルA50、B50の中間層B2あるいは中間層B1に、MgO、SiO、Si−O−N、孔が形成されその孔に磁性体あるいは導電性金属(Cu、Ag、Au)が埋めこまれたSiOあるいはAlを用いた場合にも、上記と同様の傾向が得られることを見出した。

(第13の実施例)
次に、本発明の第13実施例として、反強磁性結合した3層膜を磁性固着構造として用いたサンプルと、単一の磁性層を磁性固着層として用いたサンプルの比較を行った。すなわち、図15(サンプルA60、E60)と図14(サンプルB60、F60)、図22(サンプルC60、G60)と図45(サンプルD60、H60)に表した構造を有する磁気セルをそれぞれ作成した。
サンプルA60(図15)は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着層C2としてCoFe(4nm)、中間層B2としてAl(0.8nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着構造P1としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)が積層され、その上に反強磁性層AF1としてPtMn(15nm)、上側電極が形成された構造を有する。すなわち、サンプルA60も、反平行デュアルピン構造を有する。
サンプルB60(図14)は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着層C2としてCoFe(4nm)、中間層B2としてAl(0.8nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着層C1としてCoFe(4nm)が積層され、その上に反強磁性層AF1としてPtMn(15nm)、さらに上側電極が形成された構造を有する。つまり、サンプルB60も、反平行デュアルピン構造を有する。
サンプルC60(図22)は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着構造P2としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、中間層B2としてAlO3(0.8nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着構造P1としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)が積層され、その上にPtMn(15nm)さらに上側電極が形成された構造を有する。すなわち、サンプルC60も、反平行デュアルピン構造を有する。
サンプルD60(図45)は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着構造P2としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)、中間層B2としてAl(0.8nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着層C1としてCoFe(4nm)が積層され、その上にPtMn(15nm)、上側電極が形成された構造を有する。すなわち、サンプルD60も、反平行デュアルピン構造を有する。
サンプルE60(図15)は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着層C2としてCoFe(4nm)、中間層B2としてAl(0.8nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着構造P1としてCoFe(5nm)/Ru(1nm)/CoFe(6nm)が積層され、その上にPtMn(15nm)、上側電極が形成された構造からなる反平行デュアルピン構造を有する。
サンプルF60(図14)は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着層C2としてCoFe(4nm)、中間層B2としてAl(0.8nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着層C1としてCoFe(6nm)が積層され、その上にPtMn(15nm)、上側電極が形成された構造からなる反平行デュアルピン構造をもつ。
サンプルG60(図22)は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着構造P2としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(3nm)、中間層B2としてAl(0.8nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着構造P1としてCoFe(5nm)/Ru(1nm)/CoFe(6nm)が積層され、その上にPtMn(15nm)、上側電極が形成された構造からなる反平行デュアルピン構造を有する。
サンプルH60(図45)は、下側電極の上に、PtMn(20nm)、磁性固着構造P2としてCoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(3nm)、中間層B2としてAl(0.8nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着層C1としてCoFe(6nm)が積層され、その上にPtMn(15nm)、上側電極が形成された構造からなる反平行デュアルピン構造を有する。
エレメントサイズは、全てのサンプルにおいて50nm×120nmである。 サンプルA60〜H60について、微分抵抗変化の電流依存性から求めた臨界電流Icの平均値を求めた。その結果は以下の如くである。

サンプル 臨界電流Icの平均(mA)
A60 0.36
B60 0.60
C60 0.29
D60 0.54
E60 0.32
F60 0.55
G60 0.28
H60 0.53

いずれの本発明のサンプルについてもIcが低いという結果が得られた。サンプルA60とB60とを比較すると、上部の磁性固着層が単一の磁性層C1の場合(図14)よりも、磁化が反平行に配置した磁性固着構造P1を設けた場合(図15)のほうが、より小さな臨界電流Icが得られる。同様に、サンプルC60(図22)とサンプルD60(図45)との比較、サンプルE60(図15)とサンプルF60(図14)との比較、サンプルG60(図22)とサンプルH60(図45)との比較、のいずれにおいても、上部の磁性固着層が単一の磁性層C1の場合(図14、図45)よりも、磁化が反平行に配置した磁性固着構造P1を設けた場合(図15、図22)のほうが、より小さな臨界電流Icが得られる。
すなわち、磁化固着構造として、反平行結合した磁性層と非磁性層との積層膜を用いることにより、臨界電流Icを下げる効果が顕著であることが確認できた。なお、中間層B2の材料が絶縁体以外の場合においても同様の効果が得られた。また、また磁性記録層Aが3層の磁性層により構成される場合も、同様の効果が得られた。

(第14の実施例)
次に、本発明の第14実施例として、エレメントサイズを60nm×130nmとして、以下に説明する構造をもつセルを作製し、臨界電流Icの平均を求めた。本実施例のサンプルを下部電極から見た積層構造と、臨界電流Icの測定結果を以下に表す。この結果から、本発明によれば、低消費電力で書込みが可能な磁気セルを提供できることがわかる。

サンプルA70: AF2(PtMn:20nm)/C2(CoFe:20nm)/ B2(MgO:1nm)/A(CoFe:2.5nm)/ B1(Cu:6nm)/C1(CoFe:5nm)/AC(Ru:1nm)/FM(CoFe:5nm)/AF1(PtMn:15nm)
Ic平均:0.67mA

サンプルA71: AF2(PtIrMn:17nm)/FM(CoFe:4nm)/AC(Ru:1nm)/C2(CoFe:4nm)/B2(MgO:1nm)/A3(CoFe:0.8 nm)/A2(NiFe:0.8)/A1(CoFe:0.8nm)/B1(Cu:6nm)/C1(CoFe:4nm)/AF1(PtIrMn:17nm)
Ic平均:0.41mA

サンプルA72: AF2(PtMn:20nm)/C2(CoFe:20nm)/B2(Si−O−N:1nm)/A3(CoFe:0.8nm)/A2(NiFe:0.8nm)/A1(CoFe:0.8 nm)/B1(Cu:6nm)/C1(CoFe:4nm) /AC(Ru:1nm)/FM(CoFe:4nm)/AF2(PtMn:15nm)
Ic平均:0.67mA

サンプルA73: AF2(PtMn:15nm)/C2(CoFe:20nm)/B2(SiO with holes:5nm)/A(CoFe:3nm)/B1(Cu:8nm)/C1(CoFe:4nm)/AC(Ru:1nm)/FM(CoFe:4nm)/AF1(PtMn:15nm)
Ic平均:0.59mA

サンプルA74: AF2(IrMn:19nm)/C2(CoFe:4nm)/B2(MgO:1nm)/A3(CoFe:0.8nm)/A2(NiFeCo:0.8nm)/A1(CoFe:0.8nm)/B1(Cu:6nm)/C1(CoFe:4nm)/AC(Ru:1nm)/FM(CoFe:4nm)/AF1(IrMn:19m)
Ic平均:0.82mA

サンプルA75: AF2(PtMn:20nm)/C2(CoFe:20nm)/B2(Cu:6nm)/A3(CoFe:0.8 nm)/A2(NiFe:0.8nm)/A1(CoFe:0.8nm)/B1(Cu:0.6nm)/B1(Al with holes stacked with Cu:3nm)/B1(Cu:0.6nm)/C1(CoFe:4nm)/AC(Ru:1nm)/FM(CoFe:4nm)/AF1(PtMn:15nm)
Ic平均:0.57mA

サンプルA76: AF2(PtMn:10nm)/FM(CoFe:4nm)/AC(Ru:1nm)/C2(CoFe:20nm)/B2(MgO:0.8nm)/A(CoFe:3nm)/B1(Cu:6nm)/C1(CoFe:5nm)/AF1(PtMn:15nm)
Ic平均:0.83mA

サンプルA77: AF2(PtMn:15nm)/FM(CoFe:4nm)/AC(Ru:1nm)/C2(CoFe:4nm)/B2(Al:0.7nm)/A3(CoFe:0.6 nm)/A2(NiFe:1nm)/A1(CoFe:0.6 nm)/B1(Cu:8nm)/C1(CoFe:5nm)/AF1(PtMn:15nm)
Ic平均:0.78mA

サンプルA78: AF2(PtIrMn:15nm)/C2(CoFe:20nm)/B2(Al with holes:3nm)/A(CoFe:3.6 nm)/B1(Cu:6nm)/C1(CoFe:5nm)/AC(Ru:1nm)/FM(CoFe:5nm)/AF1(PtIrMn:15nm)
Ic平均:0.90mA

サンプルA79: AF2(PtMn:20nm)/FM(CoFe:5nm)/AC(Ru:1nm)/C2(CoFe:5nm)/B2(Cu:6nm)/A3(CoFe:0.6nm)/A2(NiFe:1.2)/A1(CoFe:0.6nm)/B1(Si−N−O:1nm)/C1(CoFe:5nm)/AF1(PtMn:15nm)
Ic平均:0.78mA

(第15の実施例)
次に、本発明の第15の実施例として、リバースタイプの磁気抵抗効果を示す組合せを有する磁気セルと、ノーマルタイプとリバースタイプの磁気抵抗効果を示す組合せを有する磁気セルとをそれぞれ作成し評価した。
図46は、本実施において作成した磁気セルの断面構造を表す模式図である。この磁気セル(サンプルX)においては、磁性固着層C1と中間層B1と磁性記録層Aは、リバースタイプの磁気抵抗効果を示し、また磁性固着層C2と中間層B2と磁性記録層Aも、リバースタイプの磁気抵抗効果を示す。
また、図47は、比較例の磁気セルの断面構造を表す模式図である。この磁気セル(サンプルY)においては、磁性固着層C1と中間層B1と磁性記録層Aは、リバースタイプの磁気抵抗効果を示し、磁性固着層C2と中間層B2と磁性記録層Aは、ノーマルタイプの磁気抵抗効果を示す。それぞれの層構造は次のとおりである。

サンプルX:Fe/SrTiO(STO)/La0.7Sr0.3MnO(LSMO)/SrTiO/CoFe/PtMn

サンプルY:Fe/SrTiO/ La0.7Sr0.3MnO/SrTiO/La0.7Sr0.3MnO/CoFe/PtMn

ここでFe/STO/LSMOと、LSMO/STO/CoFeは、ともに、磁場の印加とともに抵抗は大きくなった。すなわち、2つの磁性層の磁化が平行時の抵抗が反平行の場合のそれよりも大きくなった。つまり、リバースタイプの磁気抵抗効果を示すことが予め確認できた。
また、LSMO/SrTiO/LSMO/CoFeは、磁場の印加とともに抵抗は小さくなった。すなわち、2つの磁性層の磁化が平行時の抵抗が反平行の場合のそれよりも小さくなった。つまり、ノーマルタイプMRを示すことが予め確認できた。
下側の固着磁性層C2を構成するFeとして、単結晶基板を用いることで、下部電極として兼用した。STOおよびLSMO膜は、パルスレーザ法を用いて加熱基板上で成長させた。そして、スパッタチャンバーへサンプルを真空中で搬送し、CoFe層およびPtMn層を形成し、さらに上側電極としてTa層を形成した。これらの膜形成のち、基板を磁場中アニール炉に導入し、PtMnに接したCoFe層に交換バイアスを導入し、一方向へ磁化を固着した。
次に、下部STO層まで削り、素子形成を行った。できあがった素子は、Fe基板ごとピクチャーフレーム形状に加工されたマグネットの一辺へ載せ、Feの磁化方向を上側の磁性固着層C1と反平行の方向に固着した。
このようにして作製したサンプルXとYに対し、77Kにて下部電極と上部電極との間に電流を流して、まず磁気抵抗を調べたところ、それぞれ17%と50%の値を得た。
次に、77Kにて微分抵抗の電流依存性を調べた。その結果、サンプルXは、約プラス60mAおよびマイナス55mAを中心にして微分抵抗になだらかな、しかしほぼ磁気抵抗の変化に対応する変化が見られた。一方、サンプルYは、プラスマイナス100mAの範囲で微分抵抗にある電流値での大きな変化は見られなかった。
以上説明したように、中間層B1とB2を挟んだ積層構造がいずれもリバースタイプの磁気抵抗効果を示す磁気セル(サンプルX)は、低消費電力で書込みが可能であった。一方、中間層B1を介した磁気抵抗効果はリバースタイプであり、中間層B2を介した磁気抵抗効果がノーマルタイプである場合(サンプルY)は、書き込み電流を低減するという効果が得られないことが確認できた。

(第16の実施例)
次に、本発明の第16の実施例として、図14に表した構造の磁気セルを作成した(サンプルXX)。また、比較のため、図48に表したように磁化が平行配置された2つの磁性固着層C1、C2をもつ磁気セル(サンプルYY)を作成した。
まず、本実施例において作成した2種類の磁気セル(サンプルXX、サンプルYY)について説明する。
サンプルXX(図14)は、図示しない下側電極の上に、反強磁性層AF2としてPtMn(15nm)を形成し、この上に、磁性固着層C2としてCoFe(12nm)、中間層B2として磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着層C1としてCoFe(6nm)、その上に反強磁性層AF1としてIrMn(15nm)、さらに図示しない上側電極が形成された構造からなる「反平行デュアルピン構造」を有する。
一方、サンプルYY(図48)は、図示しない下側電極の上に、反強磁性層AF2としてPtMn(15nm)を形成し、この上に、磁性固着層C2としてCoFe(12nm)、中間層B2としてCu(4nm)、磁性記録層AとしてCoFe(2.5nm)、中間層B1としてCu(6nm)、磁性固着層C1としてCoFe(6nm)、その上に、反強磁性層AF1としてPtMn(15nm)、さらに図示しない上側電極が形成された構造を有する。
以下に説明する作製方法により、サンプルXXの2つの磁性固着層C1、C2は反平行に固着し、一方、サンプルYYの2つの磁性固着層C1、C2は平行に固着した。
サンプルXXは、次のように作製した。
まず、ウェーハ上に下側電極を形成したのち、そのウェーハを超高真空スパッタ装置へ導入し、表面をスパッタクリーニングした後、PtMn(15nm)/ CoFe(12nm)/Cu(4nm)/CoFe(2.5nm)/Cu(6nm)/CoFe(6nm)/IrMn(15nm)という多層膜を堆積して、装置から取り出した。
次に、ウェーハを真空磁場炉へ入れ、270℃で10時間、磁場中アニールを行い、固着層C1、C2に同一方向の交換バイアスを付与し、次に温度を240℃にして磁場極性を反転させ、1時間磁場中アニールを行い、固着層C1にC2と逆向きの交換バイアスを付与した。
次に、レジストを塗布してEB(電子ビーム)描画装置にて電子ビーム露光した後、上述したエレメントサイズに対応したマスクパターンを形成した。このパターンに対してイオンミリング装置により磁性固着層C2の上部までミリングしてエレメントを形成した。
エレメント形状は、エレメントの長手軸方向が磁性固着層C1、C2の交換バイアス方向に平行となるように設定した。そしてこのエレメントの周りにSiOを埋めこみ、上側電極を形成して磁気セルを完成した。
一方、サンプルYYは、次のように作製した。
まず、ウェーハ上に下側電極を形成したのち、そのウェーハを超高真空スパッタ装置へ導入し、表面をスパッタクリーニングした後、PtMn(15nm)/CoFe(12nm)/Cu(4nm)/CoFe(2.5nm)/Cu(6nm)/CoFe(6nm)/PtMn(15nm)という多層膜を堆積して、装置から取り出した。
次に、ウェーハを真空磁場炉へ入れ、270℃で10時間、磁場中アニールを行い、固着層C1、C2に交換バイアスを付与した。
次に、レジストを塗布してEB(電子ビーム)描画装置にて電子ビーム露光した後、上述したエレメントサイズに対応したマスクパターンを形成した。このパターンに対してイオンミリング装置により磁性固着層C2の上部までミリングしてエレメントを形成した。
エレメント形状は、エレメントの長手軸方向が磁性固着層C1、C2の交換バイアス方向に平行となるように設定した。そしてこのエレメントの周りにSiOを埋めこみ、上側電極を形成して磁気セルを完成した。
エレメントサイズ50nm×110nm、80nm×160nmの2種類のサイズについて、上側電極と下側電極との間に電流をプラスマイナス10mAまで流して、微分抵抗の電流依存性を測定し、臨界電流Icの平均値を求めた。結果は以下の如くである。

サンプル サイズ 臨界電流Icの平均(mA)
XX 50nm×110nm 0.70
XX 80nm×160nm 1.83
YY 50nm×110nm 9.22
YY 80nm×160nm 反転せず

以上の結果から、参考サンプルとして作製した平行配置したデュアルピン構造は、反転電流の低減効果が得られないが、図14に表した「反平行デュアルピン構造」とすることで低電流で書込みが可能であることがわかる。
なお、サンプルXXの中間層B2として、MgO、SiO、Si−O−N、ホールが形成されそのホールに磁性体あるいは導電性金属(Cu、Ag、Au)が埋めこまれたSiOあるいはAlを用いた場合にも、上記と同様の傾向が得られることを確認した。

(第17の実施例)
次に、本発明の第17実施例として、本発明の磁気セルと、MOSFET(Metal-Semicoductor-Oxide Field Effect Transistor)とを組み込んだ磁気メモリ(Magnetic Random Access Memory:MRAM)について説明する。
図49は、本実施例の磁気メモリのメモリセルの断面構造を表す模式図である。この磁気メモリは、図31に表した等価回路を有する。ただし、ビット線とワード線の割り当てについては、図示したものとは逆にした。すなわち、このメモリセルは、本発明の磁気セル10とMOSFET(TR)とを有する。このメモリセルは、マトリクス状に設けられ、それぞれがビット線BLとワード線WLに接続されている。特定のメモリセルの選択は、そのメモリセルに接続されたビット線BLと、MOSFET(TR)のゲートGに接続されたワード線WLとを選択することにより実行される。
図49(a)及び(b)は、書き込み動作を説明するための概念図である。すなわち、磁気セル10への書きこみは、ビット線BLを通して磁気セル10へ電流を流すことにより行う。磁化反転電流Icより大きい書きこみ電流Iwを流すことで、磁性記録層Aに信号を書きこむ。磁気セル10がノーマルタイプのMRとノーマルタイプのMRとの組合せからなる場合には、電子が最初に流れた磁性固着層の磁化の向きと同方向になるように、磁性記録層の磁化が書きこまれる。従って、書き込み電流Iwの極性に応じて、磁性記録層Aの磁化の方向が変化し、同図(a)に表したように「0」を書き込み、同図(b)に表したように「1」を書きこむことができる。なお、「0」と「1」の割り当ては、逆にしてもよい。
図49(c)及び(d)は、読み出し動作を説明するための概念図である。読み出しは、磁気セル10の抵抗の大きさで検出する。センス電流Irの向きはどちらの向きでもよいが、センス電流Irは、磁化反転電流Icよりも小さくする必要がある。
図49に表した構造において、下側の中間層B2の抵抗が上側の中間層B1の抵抗に比べて大きいとすると、同図(c)に表した方向にセンス電流Irを流した場合には抵抗が大きく、同図(d)に表した方向にセンス電流Irを流した場合には抵抗が小さい。この抵抗の違いを電圧として検出することによって読み出しが可能となる。そこで、例えば、同図(c)に表した場合を「0」、同図(d)に表した場合を「1」と割り当てることができる。但し、「0」と「1」の割り当ては、逆にしてもよい。
以下、本実施例の磁気メモリについて、具体例を参照しつつさらに詳細に説明する。
MOSFETが形成されたウェーハに、まず下部配線および下側電極部を形成したのち、Ta(5nm)/Ru(2nm)/PtMn(15nm)/CoFe(15nm)/Al(0.8nm)/CoFe(0.6nm)/NiFe(1.2nm)/CoFe(0.6nm)/Cu(6nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/PtMn(15nm)なる多層膜を成長させた。そして、この多層膜に微細加工を施して素子化した。
その際、図50に表したように、中間層B2のAl層上部でイオンミリングを止めた。これは、中間層B2となるAl層をイオンミリングすると、その側面に、ミリングされた材料が再付着(リデポジション)してAlの側面で電流リークが生ずる場合があるからである。これに対して、図50に表したように中間層B2のAl層をイオンミリングによりエッチングしなければ、リデポジションによる電流リークを防ぐことができる。
磁気セルの積層構造をパターニングにより形成したら、その上部に配線を形成し、2×2のマトリクス状の磁気メモリを作製した。
得られた磁気メモリにおいて、ワード線WLとビット線BLとを選択することでメモリセルを選択した。
書き込み電流を(1)プラスマイナス0.15mA、20ミリ秒のパルス電流、(2)プラスマイナス0.5mA、10ミリ秒のパルス電流、(3)プラスマイナス2mA、0.8ナノ秒、の3通りとしてテストした。読み出しは、0.1mAのセンス電流を流し、電圧を読み取ることで行った。その結果、上記(1)の条件の場合、書きこみ後の抵抗変化が見られず、記録されていないことが明らかとなった。
上記(2)の条件の場合、始めにマイナス0.5mAの書き込み電流Iwを流した場合に、低抵抗状態から高抵抗状態へ抵抗が変化した。しかし、その後、極性を反転させた電流パルスで書きこみを行っても、抵抗は高抵抗状態を保ったままであった。これから、一方向のみ信号書き込みできたことが分かる。
上記(3)の条件の場合、書き込み電流Iwの極性に応じて抵抗が変化し、「0」信号と「1」信号ともに書き込むことができた。
また、10ナノ秒の0.3mAのパルス電流を図示しないワード線へ印加することで、先ほど書き込みが不充分であった(2)の条件においても書き込むことが可能となった。これは、追加したワード線から発生した電流磁界が、スピン偏極電子による磁化反転を促進したからである。
以上より、本発明の磁気メモリは、低電流で記録が可能な磁気メモリに適していることを示した。
なお、本発明の磁気メモリにおいてメモリセルを選択する方法は、MOSFET以外にもある。
図51は、ダイオードを用いた磁気メモリを表す模式図である。すなわち、縦横マトリクス状に配線されたビット線BLとワード線WLの交差点の付近に、本発明の磁気セル10と、ダイオードDとが直列に接続されている。
この磁気メモリの場合、ワード線WLとビット線BLとを指定することで特定のメモリセルにアクセスできる。この場合、ダイオードDは、選択されたワード線WL及びビット線BLに接続された他のメモリセルを流れる電流成分を遮断する役割を有する。

(第18の実施例)
次に、本発明の第18の実施例として図26に表したプローブアクセス型の磁気メモリについて説明する。
本実施例においては、図27に表した記録再生一体型の磁気素子を基板上に形成した。
まず、ウェーハに下部配線を形成したのち、複数の磁気セルに共通接続される下側電極LEを形成した。そして、このウェーハ上に、Ta(5nm)/Ru(2nm)/PtMn(15nm)/CoFe(15nm)/Al(0.8nm)/CoFe(2nm)/Cu(6nm)/CoFe(4nm)/Ru(1nm)/CoFe(4nm)/PtMn(15nm)/Pt(2nm)という積層構造の多層膜を成長させた。
この多層膜に対して、2相分離型のポリマーを塗布して熱処理することで、セル用マスクを形成した。次に、イオンミリングを行うことで、パターンド媒体を形成できる。イオンミリングは、磁性記録層CoFe(2nm)の下までとし、中間層B2(Al(0.8nm))、磁性固着層C2(CoFe(15nm))は複数の磁気セルが共有する構造を形成した。
この構造においては、中間層B2をパターニングしないので、その側面へのリデポジションによる予期しない電流パスの形成を防ぐことができる。また、セル抵抗の均一性を得ることができる。これにより、直径約28nmの複数の磁気セルを形成できる。次に、磁気セル間に絶縁体100を埋め込み、図27に表した構造が完成した。
この複数の磁気セル10に対して、プローブ200を走査させ、各セルへ電気的に接触させることによってセルを選択できる。
まず、セル1にはプラス0.2mAの電流(ここでは、電子が上側電極から下側電極へ流れる向きをプラスと定義する)を流して信号「1」を書き込み、セル2にはマイナス0.2mAの電流を流して信号「0」を書き込んだ。さらに、セル3へプラス0.2mAの電流を流して信号「1」を、セル4へマイナス0.2mAの電流を流して信号「0」を書き込んだ。
次に、読み出しを行った。すなわち、プラス0.03mAのセンス電流を流して、各セルの抵抗を調べた。その結果、検出された抵抗は2値であり、セル1からセル4までそれぞれ、高抵抗、低抵抗、高抵抗、低抵抗となった。つまり、それぞれのセルに、「1」あるいは「0」信号が書き込まれていることを確認した。
なお、書込み電流がプラスマイナス0.05mAの場合には、安定した信号書込みができなかった。
以上説明したように、本実施例の磁気メモリは、低電流で記録が可能な磁気メモリに適していることが確認できた。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気セルを構成する各要素の具体的な寸法関係や材料、その他、電極、パッシベーション、絶縁構造などの形状や材質に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、磁気セルにおける反強磁性層、磁性固着層、中間層、磁性記録層、絶縁層などの構成要素は、それぞれ単層として形成してもよく、あるいは2以上の層を積層した構造としてもよい。
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気セルや磁気メモリを基にして、当業者が適宜設計変更して実施しうるすべての磁気セル、磁気メモリも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
本発明の第1の実施の形態にかかる磁気セルの基本的な断面構造を例示する模式図である。 磁化が膜面に対して垂直な方向に制御された磁気セルの断面構造を表す模式図である。 図1に表した磁気セルにおける「書き込み」のメカニズムを説明するための模式断面図である。 磁気セルがリバースタイプの磁気抵抗効果を示す場合における「書き込み」のメカニズムを説明するための模式断面図である。 図2に表した磁気セルにおける「書き込み」のメカニズムを説明するための模式断面図である。 本発明の実施形態の磁気セルの読み出し方法を説明するための概念図である。 磁化の相対的な向きによる磁気抵抗の変化を説明するための概念図である。 非対称構造の第1の具体例を表す模式断面図である。 (a)は、非対称構造の第2の具体例を表す模式断面図であり、(b)は、非対称構造の第3の具体例を表す模式断面図である。 非対称構造の第4の具体例を表す模式断面図である。 非対称構造の第5の具体例を表す模式断面図である。 固着層C1、C2の静磁結合を表す模式断面図である。 反強磁性層を設けた磁気セルを表す模式断面図である。 固着層C1、C2の磁化をそれぞれ反強磁性層により固着した磁気セルを表す模式断面図である。 固着層C1、C2の磁化をそれぞれ反強磁性層により固着した磁気セルを表す模式図である。 固着層C1、C2の磁化を反強磁性層により固着した磁気セルのもうひとつの具体例を表す模式断面図である。 非磁性層を介した層間交換相互作用の膜厚依存性を表すグラフ図である。 2層の磁性記録層を設けた磁気セルを表す模式断面図である。 磁性固着層と磁性記録層Aとをそれぞれ積層構造とした具体例を表す模式断面図である。 磁性固着層と磁性記録層Aとをそれぞれ積層構造とした具体例を表す模式断面図である。 磁性固着層と磁性記録層Aとをそれぞれ積層構造とした具体例を表す模式断面図である。 2つの磁性固着構造が設けられた具体例を表す模式断面図である。 2つの磁性固着構造とともに磁性記録層も積層構造とした具体例を表す模式断面図である。 2つの磁性固着構造とともに磁性記録層も積層構造とした具体例を表す模式断面図である。 2つの磁性固着構造とともに磁性記録層も積層構造とした具体例を表す模式断面図である。 本発明の磁気セルを用いた磁気メモリを表す模式図である。 各セル10が、その一部の層を共有する構造を表す模式図である。 本発明の磁気セルを用いた磁気メモリの第2の具体例を表す模式断面図である。 (a)は、本実施例の磁気セルの要部断面構造を表す模式図であり、同図(b)は、比較例の磁気セルの要部断面構造を表す模式図である。 第5実施例におけるプロービングを表す模式図である。 本発明の第6実施例における磁気メモリを表す概念図である。 サンプルA10の微分抵抗を表すグラフ図である。 サンプルB10の微分抵抗を表すグラフ図である。 図32及び図33におけるバックグラウンドの曲線成分を除去し、さらに低抵抗状態の微分抵抗によって規格化した微分抵抗変化を表すグラフ図である。 磁化反転臨界電流Icの平均値とセルサイズとの関係を表すグラフ図である。 サンプルC20の断面構造を表す模式図である。 サイズ60nm×110nmのサンプルA20、B20、D20、E20について、微分抵抗変化の電流依存性を表すグラフ図である。 臨界電流Icの平均値と、セルサイズとの関係を表すグラフ図である。 サンプルA30、B30、D30、E30について、微分抵抗変化と電流との関係を表すグラフ図である。 臨界電流Icの平均値とセルサイズとの関係を表すグラフ図である。 サンプルA40、B40、D40、E40について、微分抵抗変化と電流との関係を表すグラフ図である。 臨界電流Icの平均値とセルサイズとの関係を表すグラフ図である。 サンプルA50、B50、C50、D50について、微分抵抗変化と電流との関係を表すグラフ図である。 臨界電流Icの平均値とセルサイズとの関係を表すグラフ図である。 本発明の第13実施例におけるサンプルD60とサンプルH60の構造を表す模式図である。 本実施において作成した磁気セルの断面構造を表す模式図である。 比較例の磁気セルの断面構造を表す模式図である。 磁化が平行配置された2つの磁性固着層C1、C2をもつ磁気セルの断面構造を表す模式図である。 本発明の実施例の磁気メモリのメモリセルの断面構造を表す模式図である。 中間層B2のAl層上部でイオンミリングを止めた構造を表す模式図である。 ダイオードを用いた磁気メモリを表す模式図である。
符号の説明
10 磁気セル
100 絶縁体
110 基板(下側電極)
120 配線
200 プローブ
210 駆動機構
220 電源
230 検出回路
A、A1、A2 磁性記録層
AC 非磁性層
AF、AF1、AF2 反強磁性層
B、B1〜B4 中間層
BL ビット線
C、C1〜C3 磁性固着層
EL1、EL2 電極
FC 非磁性層
FM、FM1 磁性層
I 電流
IE 中間物質層
IL 絶縁層
Ir 再生電流
Is 磁化反転電流
Iw 電流
M、M1、M2 磁化
MY 磁気ヨーク
PH 磁性固着層ホール
TR トランジスタ
WL ワード線

Claims (18)

  1. 磁化が第1の方向に実質的に固定された第1の強磁性層と、
    磁化が前記第1の方向とは反対の第2の方向に実質的に固定された第2の強磁性層と、
    前記第1の強磁性層と前記第2の強磁性層との間に設けられ、磁化の方向が可変の第3の強磁性層と、
    前記第1の強磁性層と前記第3の強磁性層との間に設けられた第1の中間層と、
    前記第2の強磁性層と前記第3の強磁性層との間に設けられた第2の中間層と、
    を備え、
    前記第1及び第2の強磁性層の間で電流を流すことによりスピン偏極した電子を前記第3の強磁性層に作用させて前記第3の強磁性層の磁化の方向を前記電流の向きに応じた方向に決定可能としたことを特徴とする磁気セル。
  2. 前記第3の強磁性層の磁化容易軸は、前記第1の方向に対して略平行であることを特徴とする請求項1記載の磁気セル。
  3. 前記第1の強磁性層と前記第3の強磁性層との間の電気抵抗は、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第1の方向と略同一の状態において第1の値となり、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第2の方向と略同一の状態において前記第1の値よりも大なる第2の値となり、
    前記第2の強磁性層と前記第3の強磁性層との間の電気抵抗は、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第2の方向と略同一の状態において第3の値となり、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第1の方向と略同一の状態において前記第3の値よりも大なる第4の値となることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気セル。
  4. 前記第1の強磁性層から前記第3の強磁性層を介して前記第2の強磁性層に向けて電子電流を流した場合には、前記第3の強磁性層の磁化の方向は前記第1の方向とされ、
    前記第2の強磁性層から前記第3の強磁性層を介して前記第1の強磁性層に向けて電子電流を流した場合には、前記第3の強磁性層の磁化の方向は前記第2の方向とされることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気セル。
  5. 前記第1の強磁性層と前記第3の強磁性層との間の電気抵抗は、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第1の方向と略同一の状態において第1の値となり、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第2の方向と略同一の状態において前記第1の値よりも小なる第2の値となり、
    前記第2の強磁性層と前記第3の強磁性層との間の電気抵抗は、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第2の方向と略同一の状態において第3の値となり、前記第3の強磁性層の前記磁化の方向が前記第1の方向と略同一の状態において前記第3の値よりも小なる第4の値となることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気セル。
  6. 前記第1の中間層の電気抵抗と前記第2の中間層の電気抵抗とが互いに異なることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の磁気セル。
  7. 前記第1及び第2の中間層のいずれか一方は、ピンホールを有する絶縁体からなり、前記ピンホールは、前記絶縁体の両側に隣接する前記強磁性層の材料によって充填されてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の磁気セル。
  8. 前記第1及び第2の強磁性層の少なくともいずれかは、隣接して設けられた反強磁性層によりその磁化方向が固定されてなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の磁気セル。
  9. 前記第1及び第2の強磁性層の少なくともいずれかに隣接して非磁性層と第4の強磁性層と反強磁性層とがこの順に積層され、
    前記非磁性層の両側に隣接する前記強磁性層の磁化の方向は、同一の方向に固定されてなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の磁気セル。
  10. 前記第1及び第2の強磁性層の少なくともいずれかに隣接して非磁性層と第4の強磁性層と反強磁性層とがこの順に積層され、
    前記非磁性層の両側に隣接する前記強磁性層の磁化の方向は、反対の方向に固定されてなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の磁気セル。
  11. 磁化が第1の方向に実質的に固定された第1の強磁性層を含む第1の磁化固着部と、
    磁化が前記第1の方向とは反対の第2の方向に実質的に固定された第2の強磁性層を含む第2の磁化固着部と、
    前記第1の磁化固着部と前記第2の磁化固着部との間に設けられ、磁化の方向が可変の第3の強磁性層と、
    前記第1の磁化固着部と前記第3の強磁性層との間に設けられた第1の中間層と、
    前記第2の磁化固着部と前記第3の強磁性層との間に設けられた第2の中間層と、
    を備え、
    前記第3の強磁性層の磁化容易軸は、前記第1の方向に対して略平行であり、
    前記第1及び第2の磁化固着部の少なくともいずれかは、強磁性層と非磁性層とが交互に積層され前記強磁性層が前記非磁性層を介して反強磁性結合してなる積層体を有し、
    前記第1の強磁性層は、前記第1の中間層に隣接し、
    前記第2の強磁性層は、前記第2の中間層に隣接し、
    前記第1の磁化固着部と前記第2の磁化固着部との間で電流を流すことによりスピン偏極した電子を前記第3の強磁性層に作用させて前記第3の強磁性層の磁化の方向を前記電流の向きに応じた方向に決定可能としたことを特徴とする磁気セル。
  12. 前記第1及び第2の磁化固着部のいずれか一方が有する前記強磁性層の数は偶数であり、前記第1及び第2の磁化固着部のいずれか他方が有する前記強磁性層の数は奇数であることを特徴とする請求項11記載の磁気セル。
  13. 前記第1及び第2の磁化固着部と、前記第3の強磁性層と、前記第1及び第2の中間層と、がその上に積層された基板をさらに備え、
    前記第1及び第2の磁化固着部のうちの前記基板から遠い側に設けられたものが有する前記強磁性層の数は、偶数であることを特徴とする請求項12記載の磁気セル。
  14. 前記第3の強磁性層は、強磁性体からなる複数の層を積層させた積層体であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の磁気セル。
  15. 前記第1及び第2の中間層のいずれか一方は導電体からなり、いずれか他方は絶縁体からなることを特徴とする請求項1〜6及び8〜14のいずれか1つに記載の磁気セル。
  16. 請求項1〜15のいずれか1つに記載の複数の磁気セルを絶縁体を間に介しつつマトリクス状に設けたメモリセルを備えたことを特徴とする磁気メモリ。
  17. 前記メモリセル上の前記磁気セルのそれぞれに対して、プローブによりアクセス可能としたことを特徴とする請求項16記載の磁気メモリ。
  18. 前記メモリセル上の前記磁気セルのそれぞれにワード線とビット線とが接続され、
    前記ワード線とビット線とを選択することにより、特定の磁気セルに対して情報の記録または読み出しを可能とした請求項16記載の磁気メモリ。
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