JP2006196612A - 記憶素子及びメモリ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層17に対して中間層16を介して磁化固定層19が設けられ、中間層16が酸化マグネシウムから成り、中間層16の下側に接する強磁性層15がCoFeBを主成分とする磁性材料から成り、積層方向に電流を流すことにより、記憶層17の磁化M1の向きが変化して、記憶層17に対して情報の記録が行われる記憶素子3を構成する。
【選択図】 図2
Description
特に、不揮発性メモリは、ハードディスクや光ディスクのように可動部分が存在しないので、本質的に小型化を図る上で有利である特徴を有している。
しかしながら、フラッシュメモリは、書き込み速度がμ秒のオーダーと遅いため、高速なアクセスに向かないという欠点がある。
一方、FRAMにおいては、書き換え可能回数が1012〜1014と有限であるため、完全にSRAMやDRAMを置き換えるには耐久性が小さく、また強誘電体キャパシタの微細加工が難しいという問題が指摘されている。
このMRAMは、磁気モーメントの回転により記憶を行うため、書き換え可能回数が大きい。
また、アクセス時間についても非常に高速である。
シリコン基板等の半導体基体110の素子分離層102により分離された部分に、各メモリセルを選択するための選択用トランジスタを構成する、ドレイン領域108、ソース領域107、並びにゲート電極101が、それぞれ形成されている。
また、ゲート電極101の上方には、図中前後方向に延びるワード線105が設けられている。
ドレイン領域108は、図中左右の選択用トランジスタに共通して形成されており、このドレイン領域108には、配線109が接続されている。
そして、ワード線105と、上方に配置された、図中左右方向に延びるビット線106との間に、磁化の向きが反転する記憶層を有する磁気記憶素子103が配置されている。この磁気記憶素子103は、例えば磁気トンネル接合素子(MTJ素子)により構成される。
さらに、磁気記憶素子103は、水平方向のバイパス線111及び上下方向のコンタクト層104を介して、ソース領域107に電気的に接続されている。
ワード線105及びビット線106にそれぞれ電流を流すことにより、電流磁界を磁気記憶素子103に印加して、これにより磁気記憶素子103の記憶層の磁化の向きを反転させて、情報の記録を行うことができる。
一方、記録された情報を書き換えるためには、アドレス配線にある程度の電流を流さなければならない。
ところが、MRAMを構成する素子の微細化に従い、アドレス配線も細くなるため、充分な電流が流せなくなってくる。
スピン注入による磁化反転とは、磁性体の中を通過してスピン偏極した電子を、他の磁性体に注入することにより、他の磁性体において磁化反転を起こさせるものである。
シリコン基板等の半導体基体60の素子分離層52により分離された部分に、各メモリセルを選択するための選択用トランジスタを構成する、ドレイン領域58、ソース領域57、並びにゲート電極51が、それぞれ形成されている。このうち、ゲート電極51は、図5中前後方向に延びるワード線を兼ねている。
ドレイン領域58は、図5中左右の選択用トランジスタに共通して形成されており、このドレイン領域58には、配線59が接続されている。
そして、ソース領域57と、上方に配置された、図5中左右方向に延びるビット線56との間に、スピン注入により磁化の向きが反転する記憶層を有する記憶素子53が配置されている。
この記憶素子53は、例えば磁気トンネル接合素子(MTJ素子)により構成される。
図中61及び62は磁性層を示しており、2層の磁性層61,62のうち、一方の磁性層を磁化の向きが固定された磁化固定層として、他方の磁性層を磁化の向きが変化する磁化自由層即ち記憶層とする。
また、記憶素子53は、ビット線56と、ソース領域57とに、それぞれ上下のコンタクト層54を介して接続されている。これにより、磁気記憶素子53に電流を流して、スピン注入により記憶層の磁化の向きを反転させることができる。
また、スピン注入による磁化反転を利用することにより、外部磁界により磁化反転を行う一般的なMRAMと比較して、素子の微細化が進んでも、書き込みの電流が増大しないという利点がある。
従って、スピン注入による磁化反転に必要となる電流(反転電流)が大き過ぎると、スピン注入による磁化反転が起こるバイアス電圧よりも低いバイアス電圧で、トンネルバリアが絶縁破壊してしまう。
このため、トンネルバリアが絶縁破壊しないように、記憶素子のスピン注入効率を向上して、反転電流を低減する必要がある。
しかしながら、KuV/kBTの値が小さ過ぎる場合には、熱揺らぎの影響によって、磁化が熱擾乱することにより、磁化の向きを規定することが困難となってくる。
即ち、記憶素子のサイズが小さいほど、記憶層の磁性体の体積Vが小さくなるため、反転電流が少なくてすむが、記憶素子のサイズが小さくなり過ぎると、熱揺らぎの影響によって記憶素子に記録を保持することが困難になる。
また、記憶素子を小さくしていくと、リソグラフィによる記憶素子のパターニングが、難しくなっていく。
そして、中間層が酸化マグネシウムから成ることにより、中間層として、酸化マグネシウムによりトンネル絶縁層が構成され、トンネル絶縁層を流れるトンネル電流によって、記憶層に記録された情報(記憶層の磁化状態)を読み出すことができる。また、酸化マグネシウムから成るトンネル絶縁層により、磁気抵抗変化率(MR比)を大きくすることができる。
しかも、CoFeBを主成分とする磁性材料から成る強磁性層の上に、酸化マグネシウム(MgO)から成る中間層を形成していることにより、強磁性層と中間層とが強く結晶配合すると考えられる。これにより、CoFe等の結晶質磁性材料を用いた場合と比較して、記憶素子の磁気抵抗変化率(MR比)を大きくすることが可能になる。
また、スピン注入により記憶素子の記憶層の磁化の向きを反転させるために必要な電流量(反転電流、閾値電流)を低減することができる。
さらに、記憶素子の磁気抵抗変化率が充分な大きさであるため、磁気抵抗変化を利用して記憶素子の記憶層に記録された情報を読み出せば、高い出力が得られることから、容易に情報の読み出しを行うことができる。
このような構成としたときには、記憶素子の磁気抵抗変化率を充分に大きくすることができる。また、記憶素子に熱が加わったときの記憶素子の特性の劣化を抑制することができる。
このような構成としたときには、中間層の上側に接する強磁性層に、ボロンを含まない材料や、ボロンの含有量が上記範囲外である材料を用いた場合と比較して、記憶素子の磁気抵抗変化率を高めることができる。
このような構成としたときには、記憶層とは反対の側に反強磁性層が設けられたことにより、反強磁性層により磁化固定層の強磁性層の磁化の向きが固定される。
ここで、反強磁性層に接する強磁性層を例えばCoFeB層とすると、おそらくは反強磁性層との結晶配向が充分に得られない等の理由により、CoFe層と比較して、反強磁性結合強度が弱くなる。従って、反強磁性層に接する強磁性層をCoFe層とすることが好ましい。
また、CoFe層のFe含有量を20原子%よりも少なくすることにより、反強磁性層との反強磁性結合を充分な磁界強度とすることができる。これにより、記憶素子の磁気抵抗変化率を充分な大きさとすることも可能になる。
これにより、メモリ全体の消費電力を低減することが可能になる。
従って、従来にない低消費電力のメモリを実現することが可能になる。
これにより、記憶素子を備えたメモリにおいて、例えば、情報の読み出しを行う際に記憶素子に流す電流を小さくして、読み出し時の消費電力を低減したり、出力を検出するための回路等の構成を簡略化したり、読み出し感度を向上したりすることが可能になる。
これにより、耐熱性を有し、信頼性の高いメモリを実現することができる。
本発明は、前述したスピン注入により、記憶素子の記憶層の磁化の向きを反転させて、情報の記録を行うものである。記憶層は、強磁性層等の磁性体により構成され、情報を磁性体の磁化状態(磁化の向き)により保持するものである。
中間層を、MgOから成る絶縁層(トンネルバリアとなるトンネル絶縁層)により構成することにより、記憶素子の磁気抵抗変化率を大きくすることができる。
また、中間層(MgO層)の下側に接する強磁性層の材料を、CoFeBを主成分とした磁性材料とすることにより、記憶素子の磁気抵抗変化率をさらに大きくすることができると共に、スピン注入の効率を高くすることができる。
これにより、記憶素子の磁気抵抗変化率を大きくすることによって、読み出し特性を向上して、読み出しエラーを低減することができる。また、スピン注入の効率を高めて、記憶層の磁化の向きを反転させるために必要な電流量を低減することが可能になる。
磁化固定層は、単層の強磁性層、或いは複数層の強磁性層により構成し、複数層の強磁性層を非磁性層を介して積層したいわゆる積層フェリ構造とすることも可能である。
反強磁性層として用いられる材料としては、鉄、ニッケル、白金、イリジウム、ロジウム等のマンガン合金、コバルトやニッケル酸化物等が使用できる。
非磁性層として用いられる材料としては、ルテニウム、銅、クロム、金、銀等が使用できる。膜厚は材料によって変動するが、ほぼ0.4nm〜2.5nmの範囲で使用する。
磁化固定層を構成する強磁性層の材料としては、CoもしくはCo−Fe系強磁性材料を用いて、そのFe含有量を0〜20%とするのがよい。Fe含有量が20%をこえて多くなり過ぎると、高温の熱処理によって劣化しやすくなる。
また、この強磁性層のCoFe層の組成は、鉄Feの含有量が20原子%よりも少ないことが望ましい。これは、鉄Feの含有量を20原子%よりも少なくすることにより、反強磁性層との反強磁性結合を充分な磁界強度とすることができるからである。
飽和磁化量が少なくでき、なおかつ抵抗変化率が大きく、優れた軟磁気特性を有することから、CoFeB等の組成の非晶質磁性材料を記憶層に用いることが望ましく、さらに望ましくは、ボロンBの含有量が10〜30%であり、かつCoとFeとの組成比がCo:Fe=9:1〜5:5であることが好ましい。
これにより、飽和磁化量を低減し、なおかつ、大きな抵抗変化率を得ることができる。
例えば、AlOxから成るバリア層を構成した記憶素子において、スピン注入による磁化反転を可能とするためには、およそ3〜8×106(A/cm2)の電流密度を必要とする。
バリア層内のピンホール密度等の信頼性にもよるが、スピン注入による磁化反転が可能であり、かつ比較的低抵抗のバリア層の絶縁耐電圧は、およそ1V程度である。
従って、記憶素子の面積を仮に0.06×0.167μm=0.01μm2であるとした場合に、3〜8×106(A/cm2)の電流密度を得るためには、それぞれ33.3〜12.5(Ωμm2)よりも面積抵抗値が小さい必要がある。
なお、磁化反転に必要な電流密度が小さいほど、記憶素子の面積抵抗値が大きくてもよくなる。
従って、バリア層の面積抵抗値は、スピン注入に必要な電流密度を得る観点から、少なくとも30Ωμm2以下であることが好ましく、15Ωμm2以下であることがさらに好ましい。
なお、信頼性を確保する観点から、絶縁破壊電圧と磁化反転のためのバイアス電圧の間にはマージンが存在していた方が好ましいため、バリア層の材料にMgOを用いた場合でも、30Ωμm2以下であることが望ましい。
即ち、この強磁性層の材料として、CoFeB、並びに、CoとFeとBとを主成分として有し、さらに例えば、磁性元素であるNiや、B,Si,Zr,Nb,Cu,Ta等の非磁性元素を添加したものを用いる。
これにより、前述したように、記憶素子のスピン注入の効率を高めることができると共に、記憶素子の磁気抵抗変化率を高めることができる。
B(ボロン)の含有量を上記範囲内とすることにより、記憶素子の磁気抵抗変化率を充分に大きくすることができる。また、記憶素子に熱が加わったときの記憶素子の特性の劣化を抑制することができる。
即ち、前述した、磁化固定層を構成する強磁性層の材料や、記憶層を構成する強磁性層の材料を、使用することが可能である。
このメモリは、互いに直交する2種類のアドレス配線(例えばワード線とビット線)の交点付近に、磁化状態で情報を保持することができる記憶素子が配置されて成る。
即ち、シリコン基板等の半導体基体10の素子分離層2により分離された部分に、各メモリセルを選択するための選択用トランジスタを構成する、ドレイン領域8、ソース領域7、並びにゲート電極1が、それぞれ形成されている。このうち、ゲート電極1は、図中前後方向に延びる一方のアドレス配線(例えばワード線)を兼ねている。
ドレイン領域8は、図中左右の選択用トランジスタに共通して形成されており、このドレイン領域8には、配線9が接続されている。
また、この記憶素子3は、2種類のアドレス配線1,6の交点付近に配置されている。
この記憶素子3は、ビット線6と、ソース領域7とに、それぞれ上下のコンタクト層4を介して接続されている。
これにより、2種類のアドレス配線1,6を通じて、記憶素子3に上下方向(記憶素子3の積層方向)の電流を流して、スピン注入により記憶層の磁化の向きを反転させることができる。
図2に示すように、この記憶素子3は、スピン注入により磁化M1の向きが反転する記憶層17に対して、下層に磁化固定層19を設けている。
磁化固定層19の下に反強磁性層12が設けられ、この反強磁性層12により、磁化固定層19の磁化の向きが固定される。
具体的には、磁化固定層19は、2層の強磁性層13,15が、非磁性層14を介して積層されて反強磁性結合した構成である。
磁化固定層19の各強磁性層13,15が積層フェリ構造となっているため、強磁性層13の磁化M13が右向き、強磁性層15の磁化M15が左向きとなっており、互いに反対向きになっている。
これにより、磁化固定層19の各強磁性層13,15から漏れる磁束が、互いに打ち消し合う。
なお、磁化固定層19の2層の強磁性層13,15のうち、記憶層17の側にある強磁性層15は、その磁化M15の向きが、記憶層17に記録された情報を読み出す際に、記憶層17の磁化M1の向きの基準となるので、参照層とも称される。
そして、特に、記憶層17をCoFeB層とした場合には、飽和磁化量を少なくすることができ、なおかつ抵抗変化率を大きくすることができるため、記憶層をCoFeB層とすることが望ましい。さらに望ましくは、CoFeBのボロンBの含有量が15〜30%であり、かつCoとFeとの組成比がCo:Fe=9:1〜5:5であることが好ましい。
例えば、CoFe合金にボロンBが20〜30原子%添加されたアモルファス(非晶質)のCoFeBを用いることも可能である。
なお、これら磁化固定層19の強磁性層13,15の材料は、記憶素子3の特性を良好にするために、それぞれ後述するように限定される。
これにより、絶縁層16を酸化アルミニウム層とした場合と比較して、記憶素子3の磁気抵抗変化率(MR比)を大きくすることができる。
これにより、スピン分極率を大きくして、スピン注入効率を向上することができるため、記憶層17の磁化M1の向きを反転させるための電流をさらに低減することができる。
そして、特にCoFeB層のB含有率を10〜30%とすることにより、抵抗変化率を大きくして、かつ必要な耐熱性を確保することができる。
反強磁性層12の材料としては、鉄、ニッケル、白金、イリジウム、ロジウム等の金属元素とマンガンとの合金、コバルトやニッケルの酸化物等が使用できる。
記憶素子3の磁気抵抗変化率を大きくすることができることにより、情報を読み出す際に高い出力を得て、読み出しエラーを低減することや、容易に情報の読み出しを行うことが可能になる。
これにより、記憶素子3を備えたメモリにおいて、例えば、情報の読み出しを行う際に記憶素子3に流す電流を小さくして、読み出し時の消費電力を低減したり、出力を検出するための回路等の構成を簡略化したり、読み出し感度を向上したりすることが可能になる。
また、読み出しエラーを低減することができることから、記憶素子3の数を増やして、メモリの大容量化を図ることも可能になる。
これにより、記憶層17の磁化M1の向きを反転させるための電流をさらに低減することができる。
即ち、記憶素子3に情報の記録を行うために必要な電流量を低減することができ、記憶素子3を備えたメモリにおいて、消費電力を低減することができる。
従って、従来にない低消費電力のメモリを実現することが可能になる。
これにより、耐熱性を有し、信頼性の高いメモリを実現することができる。
この記憶素子30は、図2に示した先の実施の形態の記憶素子3の構成に対して、下地層11とキャップ層18の間にある各層12〜17を、上下逆に積層した構成となっている。
即ち、記憶層17がトンネルバリアとなる絶縁層16の下に接して設けられている。
即ち、記憶素子30を2種類のアドレス配線の交点付近に配置してメモリを構成し、2種類のアドレス配線を通じて記憶素子30に上下方向(積層方向)の電流を流して、スピン注入により記憶層17の磁化の向きを反転させて、記憶素子30に情報の記録を行うことができる。
これにより、記憶素子30を備えたメモリにおいて、読み出し時の消費電力を低減したり、出力を検出するための回路等の構成を簡略化したり、読み出し感度を向上したりすることが可能になる。
また、読み出しエラーを低減することができることから、記憶素子30の数を増やして、メモリの大容量化を図ることも可能になる。
従って、従来にない低消費電力のメモリを実現することが可能になる。
これにより、耐熱性を有し、信頼性の高いメモリを実現することができる。
ここで、本発明の記憶素子の構成において、具体的に各層の材料や膜厚等を選定して、特性を調べた。
実際には、メモリには、図1や図5に示したように、記憶素子以外にもスイッチング用の半導体回路等が存在するが、ここでは、記憶層の磁気抵抗特性を調べる目的で、記憶素子のみを形成したウエハにより検討を行った。
まず、厚さ0.575mmのシリコン基板上に厚さ300nmの熱酸化膜を形成し、その上に下部電極層として、Ta(3nm)/Al(60nm)の積層膜を予め形成した後に、その上に図2に示した構成の記憶素子3を形成した。
具体的には、図2に示した構成の記憶素子3において、下地層11を膜厚3nmのTa膜、反強磁性層12を膜厚30nmのPtMn膜、磁化固定層19を構成する強磁性層13を膜厚2nmのCo90Fe10膜(添え字は原子%)、積層フェリ構造の磁化固定層19を構成する非磁性層14を膜厚0.8nmのRu膜、磁化固定層19を構成する強磁性層15を膜厚2nmのCo48Fe32B20膜(添え字は原子%)、トンネル絶縁層となる絶縁層16を膜厚1.6nmの酸化マグネシウム(MgO)膜、記憶層17を膜厚3nmのCo48Fe32B20膜(添え字は原子%)、キャップ層18を膜厚5nmのTa膜と選定して、各層を形成した。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成1)として、記憶素子3を作製した。
膜構成1:
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co90Fe10(2nm)/Ru(0.8nm)/Co48Fe32B20(2nm)/MgO(1.6nm)/Co48Fe32B20(3nm)/Ta(5nm)
なお、上記膜構成で、合金組成の示されていないPtMnの組成はPt50Mn50(原子%)とした。
酸化マグネシウム膜から成る絶縁層16以外の各層は、DCマグネトロンスパッタ法を用いて成膜した。
酸化マグネシウム膜から成る絶縁層16は、MgOターゲットを用いて、RFスパッタ法によって、直接酸化物を所定の膜厚分だけ堆積させた。
記憶素子3の各層を成膜した後に、磁場中熱処理炉で、所定の条件で熱処理(磁場中熱処理)を行い、反強磁性層12のPtMn膜の規則化熱処理及び高温耐久熱処理を行った。
その後、リフトオフにより記憶素子3の上面のコンタクトを形成した。
次に、Cr(20nm)/Cu(100nm)/Au(100nm)の充分に抵抗が低い上部電極層を形成して、フォトリソグラフィを用いて上部電極となるビット線及び測定用のパッド部分を形成して、記憶素子の試料を作製し、サンプル1の試料とした。
記憶層17としてCo90Fe10膜を形成し、その他の構成は膜構成1と同様にして、記憶素子3を作製し、サンプル2の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成2)として、記憶素子を作製した。
膜構成2:
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co90Fe10(2nm)/Ru(0.8nm)/Co48Fe32B20(2nm)/MgO(1.6nm)/Co90Fe10(3nm)/Ta(5nm)
図2に示した記憶素子3を作製する代わりに、図3に示した記憶素子30を作製した。
具体的には、図3に示した記憶素子30において、下地層11を膜厚3nmのTa膜、記憶層17を膜厚3nmのCo48Fe32B20膜(添え字は原子%)、トンネル絶縁層となる絶縁層16を膜厚0.8nmの酸化マグネシウム膜、磁化固定層19を構成する強磁性層15を膜厚2nmのCo48Fe32B20膜(添え字は原子%)と膜厚1nmのCo90Fe10膜(添え字は原子%)との積層膜、積層フェリ構造の磁化固定層19を構成する非磁性層14を膜厚0.8nmのRu膜、磁化固定層19を構成する強磁性層13を膜厚2.5nmのCo90Fe10膜、反強磁性層12を膜厚30nmのPtMn膜、キャップ層18を膜厚5nmのTa膜と選定して、各層を形成した。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成3)として、記憶素子30を作製して、サンプル3の試料とした。
膜構成3:
Ta(3nm)/Co48Fe32B20(3nm)/MgO(0.8nm)/Co48Fe32B20(2nm)/Co90Fe10(1nm)/Ru(0.8nm)/Co90Fe10(2.5nm)/PtMn(30nm)/Ta(5nm)
磁化固定層19を構成する強磁性層15として、膜厚2.5nmのCo90Fe10膜を形成し、その他の構成は膜構成3と同様にして、記憶素子30を作製し、サンプル4の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成4)として、記憶素子を作製した。
膜構成4:
Ta(3nm)/Co48Fe32B20(3nm)/MgO(0.8nm)/Co90Fe10(2.5nm)/Ru(0.8nm)/Co90Fe10(2.5nm)/PtMn(30nm)/Ta(5nm)
磁化固定層19の強磁性層(参照層)15及び記憶層17として、Co42Fe28B30膜を形成し、その他の構成は膜構成1と同様にして、記憶素子3を作製し、サンプル5の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成5)として、記憶素子を作製した。
膜構成5:
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co90Fe10(2nm)/Ru(0.8nm)/Co42Fe28B30(2nm)/MgO(1.6nm)/Co42Fe28B30(3nm)/Ta(5nm)
磁化固定層19の強磁性層(参照層)15及び記憶層17として、Co51Fe34B15膜を形成し、その他の構成は膜構成1と同様にして、記憶素子3を作製し、サンプル6の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成6)として、記憶素子を作製した。
膜構成6:
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co90Fe10(2nm)/Ru(0.8nm)/Co51Fe34B15(2nm)/MgO(1.6nm)/Co51Fe34B15(3nm)/Ta(5nm)
磁化固定層19の強磁性層(参照層)15及び記憶層17として、Co32Fe32Ni16B20膜を形成し、その他の構成は膜構成1と同様にして、記憶素子3を作製し、サンプル7の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成7)として、記憶素子を作製した。
膜構成7:
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co90Fe10(2nm)/Ru(0.8nm)/Co32Fe32Ni16B20(2nm)/MgO(1.6nm)/Co32Fe32Ni16B20(3nm)/Ta(5nm)
記憶層17として、Co32Fe32Ni16B20膜を形成し、その他の構成は膜構成1と同様にして、記憶素子3を作製し、サンプル8の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成8)として、記憶素子を作製した。
膜構成8:
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co90Fe10(2nm)/Ru(0.8nm)/Co48Fe32B20(2nm)/MgO(1.6nm)/Co32Fe32Ni16B20(3nm)/Ta(5nm)
磁化固定層19を構成する強磁性層13として、Co膜を形成し、その他の構成は膜構成1と同様にして、記憶素子3を作製し、サンプル9の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成9)として、記憶素子を作製した。
膜構成9:
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co(2nm)/Ru(0.8nm)/Co48Fe32B20(2nm)/MgO(1.6nm)/Co48Fe32B20(3nm)/ Ta(5nm)
絶縁層16のMgO膜の膜厚を0.8nmとして、その他の構成は膜構成1と同様にして、記憶素子3を作製し、サンプル10の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成10)として、記憶素子を作製した。
膜構成10:
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co90Fe10(2nm)/Ru(0.8nm)/Co48Fe32B20(2nm)/MgO(0.8nm)/Co48Fe32B20(3nm)/Ta(5nm)
強磁性層(参照層)15をCo90Fe10膜として、その他の構成は膜構成1と同様にして、記憶素子3を作製し、サンプル11の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成11)として、記憶素子を作製した。
膜構成11:
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co90Fe10(2nm)/Ru(0.8nm)/Co90Fe10(2nm)/MgO(1.6nm)/Co48Fe32B20(3nm)/Ta(5nm)
強磁性層(参照層)15及び記憶層17をCo90Fe10膜として、その他の構成は膜構成1と同様にして、記憶素子3を作製し、サンプル12の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成12)として、記憶素子を作製した。
膜構成12:
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co90Fe10(2nm)/Ru(0.8nm)/Co90Fe10(2nm)/MgO(1.6nm)/Co90Fe10(3nm)/Ta(5nm)
記憶層17をCo90Fe10膜として、その他の構成は膜構成3と同様にして、記憶素子30を作製し、サンプル13の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成13)として、記憶素子を作製した。
膜構成13:
Ta(3nm)/Co90Fe10(3nm)/MgO(0.8nm)/Co48Fe32B20(2nm)/Co90Fe10(1nm)/Ru(0.8nm)/Co90Fe10(2.5nm)/PtMn(30nm)/Ta(5nm)
記憶層17及び磁化固定層19の強磁性層(参照層)15をCo90Fe10膜として、その他の構成は膜構成4と同様にして、記憶素子30を作製し、サンプル14の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成14)として、記憶素子を作製した。
膜構成14:
Ta(3nm)/Co90Fe10(3nm)/MgO(0.8nm)/Co90Fe10(2.5nm)/Ru(0.8nm)/Co90Fe10(2.5nm)/PtMn(30nm)/Ta(5nm)
磁化固定層19の強磁性層(参照層)15及び記憶層17のCoFeB膜の組成をCo39Fe26B35(添え字は原子%)として、その他の構成は膜構成1と同様にして、記憶素子3を作製し、サンプル15の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成15)として、記憶素子を作製した。
膜構成15:
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co90Fe10(2nm)/Ru(0.8nm)/Co39Fe26B35(2nm)/MgO(1.6nm)/Co39Fe26B35(3nm)/Ta(5nm)
磁化固定層19の強磁性層(参照層)15及び記憶層17のCoFeB膜の組成をCo54Fe36B10(添え字は原子%)として、その他の構成は膜構成1と同様にして、記憶素子3を作製し、サンプル16の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成16)として、記憶素子を作製した。
膜構成16:
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co90Fe10(2nm)/Ru(0.8nm)/Co54Fe36B10(2nm)/MgO(1.6nm)/Co54Fe36B10(3nm)/Ta(5nm)
磁化固定層19の強磁性層(参照層)15及び記憶層17のCoFeNiB膜の組成をCo36Fe36Ni18B10(添え字は原子%)として、その他の構成は膜構成7と同様にして、記憶素子3を作製し、サンプル17の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成17)として、記憶素子を作製した。
膜構成17:
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co90Fe10(2nm)/Ru(0.8nm)/Co36Fe36Ni18B10(2nm)/MgO(1.6nm)/Co36Fe36Ni18B10(3nm)/Ta(5nm)
磁化固定層19の強磁性層(参照層)15及び記憶層17のCoFeNiB膜の組成をCo26Fe26Ni13B35(添え字は原子%)として、その他の構成は膜構成7と同様にして、記憶素子3を作製し、サンプル18の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成18)として、記憶素子を作製した。
膜構成18:
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co90Fe10(2nm)/Ru(0.8nm)/Co26Fe26Ni13B35(2nm)/MgO(1.6nm)/Co26Fe26Ni13B35(3nm)/Ta(5nm)
磁化固定層19の強磁性層13のCoFe膜の組成をCo80Fe20(添え字は原子%)として、その他の構成は膜構成1と同様にして、記憶素子3を作製し、サンプル19の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成19)として、記憶素子を作製した。
膜構成19:
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co80Fe20(2nm)/Ru(0.8nm)/Co48Fe32B20(2nm)/MgO(1.6nm)/Co48Fe32B20(3nm)/Ta(5nm)
トンネル絶縁層16を酸化アルミニウム膜として、その他の構成は膜構成1と同様にして、記憶素子3を作製し、サンプル20の試料とした。
即ち、各層の材料及び膜厚を、下記の構成(膜構成20)として、記憶素子を作製した。
Ta(3nm)/PtMn(30nm)/Co80Fe20(2nm)/Ru(0.8nm)/Co48Fe32B20(2nm)/Al(0.5nm)-Ox/Co48Fe32B20(3nm)/Ta(5nm)
トンネル絶縁層16の酸化アルミニウム膜は、DCマグネトロンスパッタ法によって金属Al膜を膜厚0.5nmで成膜した後に、10Torrの圧力の酸素に600秒間曝して酸化させることによって、酸化アルミニウム膜を形成した。酸化アルミニウム膜を形成した後に、再び1×10−7〜1×10−8Torrの高真空に排気して、それに続く各層の成膜を行った。
なお、測定に先立ち、記憶素子に対して、外部から磁界を与えることができるように構成した。
まず、図2に示した記憶素子3の構成において、トンネルバリアとなる絶縁層16の下に接している、磁化固定層19を構成する強磁性層(参照層)15の材料による特性の違いを調べた。
本発明の実施例であるサンプル1及びサンプル2と、比較例であるサンプル11及びサンプル12とについて、磁場中熱処理の条件を300℃・2時間として各サンプルの試料を作製した。
ワード線の端子とビット線の端子にかかるバイアス電圧が10mVとなるように調節し、外部磁界により記憶層の磁化の向きを反転させて、記憶素子全体の面積抵抗値を測定し、抵抗−外部磁界の関係を調べた。
その後、抵抗が高い状態での抵抗値(高抵抗)と、抵抗が低い状態での抵抗値(低抵抗)とから、(高抵抗−低抵抗)/低抵抗の式により、抵抗変化率を算出した。
一方、比較例であるサンプル11では、MgOから成るバリア層の下側にCoFe層(CoFe膜)が接していて、バリア層の上側にはCoFeB膜が接している。また、比較例であるサンプル12では、バリア層の下側及び上側にそれぞれ結晶質のCoFe層(CoFe膜)が接している。
一方、MgOから成るバリア層の下側に接している強磁性層をCoFe層としている、サンプル11及びサンプル12では、各々3%程度の抵抗変化率しか得られない。さらに、MgOから成るバリア層の形成条件がサンプル1と同じであるにもかかわらず、面積抵抗値が大きく増大している。
これらのことから、酸化マグネシウムから成るバリア層の下層に磁化固定層を形成した、いわゆるボトムピン型のトンネル接合素子において、高い抵抗変化率を得るには、バリア層の下にCoFeB層が接するように形成することが、必要であることがわかる。
即ち、少なくとも、酸化マグネシウムから成るバリア層の下側に接する強磁性層をCoFeB層としていればよい。
そこで、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を行った。その結果、MgO層とその下のCoFeB層とが、強く結晶配向していることが明らかになった。また、その一方で、MgO層は成膜直後でも結晶層を有している、という特徴がある。
従って、おそらくは、成膜直後は非晶質であったCoFeB層が、成膜後に熱処理を行うことにより、MgO層の結晶方位の影響を大きく受けて結晶化することにより、MgO層の結晶方位に沿って自己整合的に結晶化するので、良好な配向が得られるものと考えられる。
次に、トンネルバリアとなる絶縁層(バリア層)16の上層に磁化固定層19を形成した、図3に示した記憶素子30の構成において、絶縁層(バリア層)16の下に接している強磁性層の材料、即ち記憶層17の材料による特性の違いを調べた。
本発明の実施例であるサンプル3及びサンプル4と、比較例であるサンプル13及びサンプル14とについて、実験1と同様の磁場中熱処理を行った各サンプルの試料を作製した。
そして、これら各試料について、前述した測定方法により、面積抵抗値及び抵抗変化率を測定した。
測定結果として、各サンプルの、記憶素子の低抵抗状態の面積抵抗値及び記憶素子の抵抗変化率を表2に示す。表2の各測定値は、それぞれのサンプルのウエハ上に作製された200個の記憶素子を測定した値の平均値である。
一方、比較例であるサンプル13では、MgOから成るバリア層の下側にCoFe層(CoFe膜)が接していて、バリア層の上側にはCoFeB膜が接している。また、比較例であるサンプル14では、バリア層の下側及び上側にそれぞれ結晶質のCoFe層(CoFe膜)が接している。
一方、MgOから成るバリア層の下側に接している強磁性層をCoFe層としている、サンプル13及びサンプル14では、各々3%程度の抵抗変化率しか得られない。さらに、MgOから成るバリア層の形成条件がサンプル3と同じであるにもかかわらず、面積抵抗値が大きく増大している。
これらのことから、酸化マグネシウムから成るバリア層の上層に磁化固定層を形成した、いわゆるトップピン型のトンネル接合素子においても、高い抵抗変化率を得るには、バリア層の下にCoFeB層が接するように形成することが、必要であることがわかる。
次に、本発明においてバリア層の下側に接して形成するCoFeB層において、特に良好な特性が得られる、CoFeBの組成の範囲について調べた。
具体的には、サンプル1、サンプル5、サンプル6、サンプル15、サンプル16の各サンプルについて、磁場中熱処理の条件を、260℃・2時間とした試料と、300℃・2時間とした試料とを、それぞれ作製した。
そして、これら各試料について、前述した測定方法により、面積抵抗値及び抵抗変化率を測定した。
測定結果として、各サンプルの、記憶素子の低抵抗状態の面積抵抗値及び記憶素子の抵抗変化率を、CoFeB層の組成比と合わせて、表3に示す。表3の各測定値は、それぞれのサンプルのウエハ上に作製された200個の記憶素子を測定した値の平均値である。なお、面積抵抗値は、磁場中熱処理の温度が260℃でも300℃でも大きな差は見られないが、表3では300℃・2時間の磁場中熱処理を行った試料の面積抵抗値の測定値を示している。
これに対して、Bの含有量が35原子%と多いサンプル15では、260℃と300℃それぞれの熱処理条件において抵抗変化率が低くなっている。
また、Bの含有量が10原子%と少ないサンプル16では、260℃の熱処理条件では良好な抵抗変化率を示しているものの、300℃の熱処理条件では抵抗変化率が大きく低下している。
従って、バリア層の下に接するCoFeB層の組成を、Bの含有量が15原子%〜30原子%の範囲にあるように設定することが望ましい。
即ち、MgOから成るバリア層の上側に接するCoFeB層と下側に接するCoFeB層の組成が異なっていてもよく、それぞれのCoFeB層において、Bの含有量が15原子%〜30原子%の範囲にあればよい。
次に、MgOから成るバリア層16を挟む強磁性層に、Co,Fe,B以外にNiが含まれているCoFeNiBを用いた場合において、特に良好な特性が得られるCoFeNiBの組成の範囲について調べた。
具体的には、サンプル7、サンプル8、サンプル17、サンプル18の各サンプルについて、実験3と同様に、磁場中熱処理の条件を260℃・2時間とした試料及び300℃・2時間とした試料を作製した。
そして、これら各試料について、前述した測定方法により、面積抵抗値及び抵抗変化率を測定した。
測定結果として、各サンプルの、記憶素子の低抵抗状態の面積抵抗値及び記憶素子の抵抗変化率を、CoFeNiB層の組成比(Ni含有量及びB含有量)と合わせて、表4に示す。なお、面積抵抗値は、磁場中熱処理の温度が260℃でも300℃でも大きな差は見られないが、表4では300℃・2時間の磁場中熱処理を行った試料の面積抵抗値の測定値を示している。
表4の結果に示すように、これらのサンプルのうち、Bの含有量が20%であるサンプル7の抵抗変化率が最も良好であり、Niを非晶質磁性層に用いる場合においても、実験3の結果と同様に、B量が15原子%〜30原子%の範囲にあることが望ましいことがわかる。
このように、B含有量が15原子%〜30原子%である範囲内であれば、バリア層の下側に接する強磁性層とバリア層の上側に接する強磁性層とにおいて、組成が異なっていてもよい。
さらに、この結果から類推できるような、Co,Fe,Niのうちいずれか1種もしくは2種以上の磁性元素を含み、B,Si,Zr,Nb,Cu,Ta等の公知の非磁性添加物を添加している磁性材料を用いることも可能である。
次に、反強磁性層による反強磁性結合を用いて磁化固定層の磁化の向きを固定する場合に、磁化固定層を構成する強磁性層のうち、反強磁性層側にある強磁性層の組成と、記憶素子の特性との関係を調べた。
具体的には、サンプル1、サンプル9、サンプル19の各サンプルについて、実験1と同様にして、磁場中熱処理の条件を300℃・2時間とした試料を作製した。
そして、これら各試料について、前述した測定方法により抵抗変化率を測定すると共に、ピン磁界強度Hpin、即ち反強磁性層によって磁化固定層に対して加わる磁界の強度を測定した。
測定結果として、各サンプルの記憶素子の抵抗変化率とピン磁界強度Hpinとを、磁化固定層19のうちの反強磁性層12側の強磁性層13の材料組成と合わせて、表5に示す。
これに対して、強磁性層13のFe含有量が20原子%であるサンプル15では、300℃・2時間の熱処理によって、ピン磁界強度が950(Oe)まで減少している。また、ピン磁界強度の減少によると思われる原因によって、抵抗変化率もサンプル1やサンプル9よりも低くなっている。
従って、磁化固定層のうちの反強磁性層側の強磁性層は、Fe含有量が20%よりも少ないことが望ましく、より好ましくは10%以下であることが望ましい。
次に、バリア層の材料と、反転電流との関係を調べた。
本発明の実施例であるサンプル10と、比較例であるサンプル20とについて、磁場中熱処理の条件を300℃・2時間として、実験1と同様にして、各サンプルの試料を作製した。
サンプル10の試料について、前述した測定方法により面積抵抗値及び抵抗変化率を測定したところ、MgOから成るバリア層16の膜厚を0.8nm(サンプル3及びサンプル4と同じ膜厚)としているので、面積抵抗値は約16Ωμm2であり、抵抗変化率は約50%であった。なお、抵抗変化率の大きさは、バイアス電圧の大きさによって変化する。
図4に示すように、ある一定以上の電流が印加されると、高抵抗状態から低抵抗状態へもしくはその逆へと変化し、磁化反転していることが確認できる。
また、図4に示すように、+側と−側とで反転電流の絶対値が異なる、オフセットを生じている。
そして、抵抗−電流曲線から、抵抗値が変化する電流値を求めて、これを磁化の向きを反転させる反転電流値とした。両極性の電流について、この反転電流値を求めた。
また、記憶素子の抵抗値によっても異なるが、およそ1.0〜1.2Vのバイアス電圧で、トンネル絶縁層が絶縁破壊することがわかっているため、印加電流の上限は0.8Vのバイアス電圧がかかる電流値までとした。
そして、+と−の両極性の反転電流値(絶対値)の平均値から、反転電流密度を算出した。
これは、おそらくは、バリア層の材料をMgOとしたことによって抵抗変化率が向上しているために、スピン注入効率が向上して、反転電流密度が小さくなったものと推測される。
また、スピン注入の効率を向上して、スピン注入により磁化反転を行う反転電流を低減することが可能である。
Claims (10)
- 情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層を有し、
前記記憶層に対して、中間層を介して磁化固定層が設けられ、
前記中間層が酸化マグネシウムから成り、
前記中間層の下側に接する強磁性層が、CoFeBを主成分とする磁性材料から成り、
積層方向に電流を流すことにより、前記記憶層の磁化の向きが変化して、前記記憶層に対して情報の記録が行われる
ことを特徴とする記憶素子。 - 前記CoFeBを主成分とする磁性材料は、ボロン(B)の含有量が15〜30原子%であることを特徴とする請求項1に記載の記憶素子。
- 前記中間層の上側に接する強磁性層が、Co,Fe,Niのうちいずれか1種もしくは2種以上の元素とボロン(B)とを主成分とする磁性材料から成り、かつボロン(B)の含有量が15〜30原子%であることを特徴とする請求項2に記載の記憶素子。
- 前記磁化固定層の前記記憶層とは反対の側に反強磁性層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の記憶素子。
- 前記磁化固定層において、前記反強磁性層に接する強磁性層がCoFe層であり、かつ前記CoFe層のFe含有量が20原子%よりも少ないことを特徴とする請求項4に記載の記憶素子。
- 情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層を有する記憶素子と、
互いに交差する2種類の配線とを備え、
前記記憶素子は、前記記憶層に対して、中間層を介して磁化固定層が設けられ、前記中間層が酸化マグネシウムから成り、前記中間層の下側に接する強磁性層が、CoFeBを主成分とする磁性材料から成り、積層方向に電流を流すことにより、前記記憶層の磁化の向きが変化して、前記記憶層に対して情報の記録が行われる構成であり、
前記2種類の配線の交点付近かつ前記2種類の配線の間に、前記記憶素子が配置され、
前記2種類の配線を通じて、前記記憶素子に前記積層方向の電流が流れる
ことを特徴とするメモリ。 - 前記記憶素子において、前記CoFeBを主成分とする磁性材料は、ボロン(B)の含有量が15〜30原子%であることを特徴とする請求項6に記載のメモリ。
- 前記中間層の上側に接する強磁性層が、Co,Fe,Niのうちいずれか1種もしくは2種以上の元素とボロン(B)とを主成分とする磁性材料から成り、かつボロン(B)の含有量が15〜30原子%であることを特徴とする請求項7に記載のメモリ。
- 前記記憶素子において、前記磁化固定層の前記記憶層とは反対の側に反強磁性層が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のメモリ。
- 前記磁化固定層において、前記反強磁性層に接する強磁性層がCoFe層であり、かつ前記CoFe層のFe含有量が20原子%よりも少ないことを特徴とする請求項9に記載のメモリ。
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