明 細 書
窒化化合物半導体素子およびその製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、窒化化合物半導体素子およびその製造方法に関している。
背景技術
[0002] 組成が一般式 In Ga A1 N (ただし、 x+y+z= l、 0≤x≤l, 0≤y≤l, 0≤ζ≤1)
x y z
で示される窒化化合物半導体のバンドギャップは、各元素の組成比率を調節するこ とにより、青色光や紫外光に対応する大きさを有することができる。このため、窒化化 合物半導体を活性層として備える半導体レーザなどの発光素子が活発に研究されて いる。
[0003] 図 1は、窒化化合物半導体の結晶構造を示している。窒化化合物半導体は、図 1 に示すように、六方晶系の結晶構造を有している。このため、上面(主面)を (0001) 面とし、共振器端面を M面(1— 100)とする構成の半導体レーザを作製する場合、こ れらの面に垂直な A面ではなぐ A面から 30° だけ傾斜した結晶面に沿ってへき開 が生じやすくなる。その結果、 A面に沿ったへき開を行うときだけでなぐ M面(1— 10 0)に沿ったへき開を行って共振器端面を形成するときにも、 M面(1— 100)から 60 ° だけ傾斜した方向に「へき開ずれ (端面クラック)」が発生しやす!/、と 、う問題がある
[0004] このような問題のため、従来、平滑な共振器端面を有する窒化化合物半導体素子 を作製することが非常に困難であった。
[0005] 従来、窒化化合物半導体素子の基板として広く用いられてきたサファイア基板は、 へき開性を有して ヽな ヽため、サファイア基板を備えた半導体レーザを形成する場 合は、サファイア基板上に成長させた窒化化合物半導体層の側から、 M面に沿って スクライブを行なうことにより、窒化化合物半導体層に傷を形成し、へき開面の形成を 容易にする試みが行なわれてきた。
[0006] 特許文献 1は、窒化化合物半導体層にエツジスクライブを施した後、ブレーキング によってへき開を行なう方法を開示している。
[0007] なお、近年用いられている GaN基板を備えた半導体レーザをへき開する場合も同 様に、 GaN基板上に成長させた窒化化合物半導体層の側から M面に沿ってスクライ ブ溝を形成し、それによつて、へき開を容易化する試みがなされている。特許文献 2 は、窒化化合物半導体層にスクライブ溝を線状に形成した後、ブレーキングによって へき開を行なう方法を開示して ヽる。
特許文献 1 :特開 2000— 058972号公報
特許文献 2 :特開 2003— 17791号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] し力しながら、上記の従来技術によると、スクライブやダイシングによって窒化化合 物半導体層に傷を形成するため、「バリ」、「欠け」、「端面クラック」、「スクライブ屑」な どが発生しやすぐ製造歩留まりが低下するという問題がある。また、活性層の歪み や結晶欠陥が生じやすくなるため、共振器端面 (光出射面)に傷や凹凸が生じ、光学 特性や信頼性が低下するという問題もある。
[0009] 本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、へ き開を歩留まり良く行なうことができる窒化化合物半導体素子およびその製造方法を 提供することにある。
課題を解決するための手段
[0010] 本発明による窒化化合物半導体素子の製造方法は、上面および下面を有する基 板と、前記基板の上面に支持される積層構造とを備えた窒化化合物半導体素子の 製造方法であって、前記基板に分割されるべきウェハを用意する工程と、前記積層 構造を構成する複数の半導体層を前記ウェハ上に成長させる工程と、前記ウェハお よび積層構造をへき開することにより、へき開面を形成する工程とを包含し、前記へき 開面が形成されるべき位置に複数の空隙を配列する工程を更に含む。
[0011] 好ましい実施形態において、前記ウェハに平行な面内における前記空隙の断面は 、 10 m X 10 mの矩形領域に収まる大きさおよび形状を有して 、る。
[0012] 好ま 、実施形態にぉ 、て、前記複数の空隙を配列する工程は、針状部材の先端 を前記積層構造の上面に押圧することにより、前記空隙として機能する凹部を前記
積層構造に形成する工程を含む。
[0013] 好ましい実施形態において、前記針状部材の先端を前記積層構造の上面に当接 するとき、前記ウェハに対して垂直な方向と押圧方向との間に形成される角度を 5° 以上に設定する。
[0014] 好ましい実施形態において、前記窒化化合物半導体素子は、前記押圧方向を含 む平面に平行なへき開面を共振器端面として備える半導体レーザである。
[0015] 本発明による窒化化合物半導体素子は、上面および下面を有する基板と、前記基 板の上面に支持される積層構造とを備え、前記基板および積層構造が少なくとも 2つ のへき開面を有する窒化化合物半導体素子であって、前記積層構造は、前記 2つの へき開面のいずれかに接する少なくとも 1つの空隙を備える。
[0016] 好ま 、実施形態にぉ 、て、前記基板の上面は矩形の形状を有しており、前記空 隙は、前記基板の上面における 4隅の少なくとも 1つに位置している。
[0017] 好ましい実施形態において、前記基板の上面に平行な面内における前記空隙の 断面は、 10 m X 10 mの矩形領域に収まる大きさおよび形状を有して 、る。
[0018] 好ま 、実施形態にぉ 、て、前記積層構造は、 n型窒化化合物半導体層および p 型窒化化合物半導体層と、前記 n型窒化化合物半導体層および p型窒化化合物半 導体層の間に挟まれた活性層とを含み、前記へき開面の少なくとも一部が共振器端 面として機能するレーザ共振器構造を備えて!/ヽる。
[0019] 好ま 、実施形態にぉ 、て、前記空隙の底部と前記基板との間隔は、前記活性層 と前記基板との間隔よりも小さい。
[0020] 好ましい実施形態において、前記積層構造内におけるレーザ光導波路部分と前記 空隙との間にトレンチが形成されている。
[0021] 好ま 、実施形態にぉ 、て、前記トレンチの底部と前記基板との間隔は、前記活性 層と前記基板との間隔よりも小さい。
[0022] 好ま 、実施形態にぉ 、て、前記基板は窒化化合物半導体である。
[0023] 好ま 、実施形態にぉ ヽて、前記基板の下面に形成された裏面電極を備えており
、前記裏面電極は、前記基板の下面から前記空隙を視認できる平面パターンを有し ている。
発明の効果
[0024] 本発明では、空隙の配列がへき開面の正確な位置決めに寄与するため、へき開の 難しい窒化化合物半導体の製造歩留まりを大きく向上させる。空隙は、スクライブ溝 に比べ、へき開面方向におけるサイズが充分に小さい。このため、 1次へき開および 2次へき開の両方の場合にへき開面の位置決め精度を高めることができる。また、ド ット状の空隙が離散的に配列されるため、ライン状のスクライブ溝に比べて、へき開面 のずれを抑制することが可能になる。
図面の簡単な説明
[0025] [図 1]窒化化合物半導体の結晶構造を示す斜視図である。
[図 2]空隙 3の配列とへき開方向との関係を示す平面図である。
[図 3] (a)および (b)は、本発明の実施形態においてウェハ上に積層構造を形成する 工程を示す断面図である。
[図 4]本発明の実施形態 1における空隙 3の配列を示す図である。
[図 5] (a)および (b)は、それぞれ、空隙 3の形成方法を模式的に示す図である。
[図 6] (a)は、へき開工程前の状態を示す図であり、(b)は、へき開後の個々のチップ の 1つを示す図である。
[図 7] (a)は、本発明の実施形態における 1次へき開の様子を示す平面図であり、 (b) は、比較例における 1次へき開の様子を示す平面図である。
[図 8] (a)は、本発明の実施形態における 2次へき開の様子を示す平面図であり、 (b) は、比較例における 2次へき開の様子を示す平面図である。
[図 9] (a)から(c)は、本発明の好ましい実施形態における裏面電極のパターンを示 す平面図である。
[図 10] (a)は、本発明による半導体素子の他の実施形態示す上面図であり、 (b)は、 その断面図である。
[図 11] (a)は、本発明による半導体素子の更に他の実施形態示す上面図であり、 (b) は、その断面図である。
[図 12] (a)は、本発明による半導体素子の更に他の実施形態示す上面図であり、 (b) は、その断面図である。
[図 13] (a)は、本発明の実施形態 2における空隙 300の配列を示す上面図であり、 (b )は、空隙 300の形状を示す平面図であり、(c)は、空隙 300の他の形状を示す平面 図である。
[図 14] (a)は、本発明の実施形態 2における空隙 300の他の配列を示す上面図であ り、(b)は、空隙 300a、 300b, 300cの形状を示す平面図である。
[図 15] (a)は、本発明の実施形態 2における空隙 300の他の配列を示す上面図であ り、(b)は、空隙 300aによる構成単位を示す平面図であり、(c)は、エツジスクライブ に近い位置に設けられる空隙 300cを示す平面図である。
符号の説明
1 ウエノヽ
10 n型 GaN層
11 n型 Al Ga Nからなるクラッド層
0.04 0.96
12 n型 GaN力 なる第 1の光ガイド層
13 多重量子井戸活性層
14 p型 Al Ga Nからなるキャップ層
0.15 0.85
15 p型 GaN力 なる第 2の光ガイド層
16 p型 Al Ga Nからなる p型クラッド層
0.05 0.95
17 p型 GaNからなる p型コンタクト層
20 電極層(裏面電極)
30 ライン状空隙 (スクライブ溝)
35 トレンチ
45 空隙を形成するための針状部材
300 空隙
発明を実施するための最良の形態
本発明の窒化化合物半導体素子は、上面および下面を有する基板と、基板の上 面に支持される積層構造とを備え、基板および積層構造が少なくとも 2つのへき開面 を有している。本発明では、製造工程中に行う結晶の「へき開」を容易にするために、 基板となるウェハ上に設けた積層構造の上面に複数の「空隙」を配列する。へき開は
、空隙の配列に沿って生じるため、最終的に得られる各半導体素子の大部分には空 隙 (の少なくとも一部)が存在することになる。
[0028] 空隙は、ウェハ面内において離散的に配列され、互いに平行な関係にある 2つの へき開面の間隔に比べて充分に小さなサイズを有して 、る。ウェハ面に平行な平面 内における空隙のサイズは、好ましくは縦 10 m X横 10 mの矩形領域に含まれる 大きさである。このように小さな空隙の配列を利用してへき開を行うことにより、後に詳 しく説明する種々の効果を得ることが可能になる。
[0029] 以下、図面を参照しながら、本発明による窒化化合物半導体素子の主要な特徴点 を説明する。本発明の窒化物化合物半導体素子は、好適には、へき開面を共振器 端面として利用する半導体レーザである力 LED (Light Emitting Diode)などの 他の発光素子やトランジスタであってもよい。半導体レーザ以外の半導体素子は、へ き開面を共振器端面として利用しないが、へき開により硬い窒化化合物を歩留まり良 くチップに分離することができれば、製造が容易になるなどの利点がある。
[0030] まず、図 2を参照する。図 2は上面に積層構造が形成されたウェハの上面図である
[0031] 図 2に示す例では、ライン 25とライン 26とが交差する点にドット状の空隙 3が設けら れている。ここでは、ライン 25に沿って 1次へき開を行った後、ライン 26に沿って 2次 へき開を行う。隣接する 2つのライン 25と、隣接する 2つライン 26とによって囲まれた 領域が個々の半導体レーザ (チップ)を構成することになる。
[0032] 空隙 3は、針状部材の先端を積層構造の上面に対して押圧することによって容易 に形成することができる。例えばダイヤモンドから形成された針状部材の先端を直径 数/ z m程度の大きさにカ卩ェしておけば、押圧により、積層構造の上面に 2次元的に 離散した微細な凹部を形成することができる。この凹部は、ウェハ面に平行な一方向 に長く延びた「スクライブ溝」ではなぐ相対的に「点」に近い形状を有しているため、 ライン 25に沿った 1次へき開のみならず、ライン 26に沿った 2次へき開をも適切に案 内することができる。
[0033] へき開は、へき開面を形成すべき位置のウェハ端面近傍にスクライブ傷を形成した 後、スクライブ傷を形成した部分にブレーキング装置を用いてウェハ裏面力 力を印
カロすることにより開始させることができる。図 2に示す太い 3本の実線は、 1次へき開の ために設けたスクライブ傷を示して 、る。
[0034] 以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
[0035] (実施形態 1)
まず、図 3 (a)および図 3 (b)を参照しながら、ウェハ 1の上面に半導体層を積層する 工程を説明する。図 3 (a)および図 3 (b)は、部分断面図であり、図示されている部分 は、実際には直径 50mm程度の大きさを有するウェハの一部に過ぎない。
[0036] 図 3 (a)に示すように、上面が(0001)面である GaNウェハ 1を用意する。なお、図 3 に現れている GaNウェハ 1の断面は、(1 100)面であり、 1次へき開によって露出 することになる。く 11 20>方向は、図の紙面上にあり、 GaNウェハ 1の上面(000
1)に平行である。
[0037] 次に、図 3 (b)に示すように、 GaNウェハ 1上に窒化化合物半導体の積層構造 40を 形成する。本実施形態では、有機金属気相成長(MOVPE)法により、 In Ga A1 N ( x y z ただし、 x+y+z= l、 0≤x≤l、 0≤y≤l, 0≤z≤ 1)で示される窒化化合物半導体 の層を成長させる。具体的には、以下に説明するようにして積層構造 40の形成を行
[0038] まず、 GaNウェハ 1を、 MOVPE装置の反応炉内のサセプタに保持する。そして、 反応炉を約 1000°Cにまで昇温し、原料ガスとしてトリメチルガリウム (TMG)およびァ ンモユア (NH )ガスと、キャリアガスである水素と窒素を同時に供給するとともに、 n型
3
ドーパントとしてシラン (SiH )ガスを供給し、厚さが約 1 μ mで Si不純物濃度が約 5 X
4
1017cm— 3の n型 GaN層 10を成長させる。
[0039] その後、トリメチルアルミニウム (TMA)も供給しながら、厚さが約 1. 8 mで Si不純 物濃度が約 5 X 1017cm 3の n型 Al Ga N力もなる n型クラッド層 11を成長させる。
0.04 0.96
その後、厚さが約 150nmで Si不純物濃度が約 5 X 1017cm 3の n型 GaN力もなる第 1 の光ガイド層 12を成長させた後、温度を約 800°Cまで降温し、キャリアガスを窒素の みに変更して、トリメチルインジウム (TMI)と TMGを供給して、膜厚が約 3nmの In
0.10
Ga N力もなる量子井戸(3層)と膜厚約 9nmの In Ga Nバリア層(2層)からなる
0.90 0.02 0.98
多重量子井戸活性層 13を成長させる。
[0040] 再び反応炉内の温度を約 1000°Cにまで昇温し、キャリアガスに水素を混合して、 p 型ドーパントであるビスシクロペンタジェ-ルマグネシウム(Cp Mg)ガスを供給しなが
2
ら、膜厚約 lOnmで Mg不純物濃度が約 l X 1019cm 3の p型 Al Ga Nからなるキ
0.15 0.85
ヤップ層 14を成長させる。
[0041] 次に、厚さが約 120nmで Mg不純物濃度が約 1 X 1019cm— 3の p型 GaN力もなる第 2 の光ガイド層 15を成長させる。その後、厚さが約 0. 5 mで不純物濃度が約 1 X 101 9cm 3の p型 Al Ga N力もなる p型クラッド層 16を成長させる。最後に、厚さが約 0
0.05 0.95
. 1 μ mで Mg不純物濃度が約 1 X 102Qcm 3の p型 GaNからなる p型コンタクト層 17を 成長させる。
[0042] なお、本発明の実施にとって、積層構造 40の具体的構成や半導体層の成長方法 は任意であり、上記の構成および成長方法は一例に過ぎな、、。
[0043] 積層構造 40を形成した後は、電流狭窄のためのストライプ状リッジを形成する工程 、電極を形成する工程、ウェハ 1の裏面を研磨する工程などを経て、空隙 3の形成ェ 程を行なう。尚、ウェハ 1の裏面を研磨する工程では、ウェハ 1の厚さを約 100 m程 度に薄くする。
[0044] 以下、図 4を参照しながら、空隙 3の配置例と形成方法を説明する。図 4では、簡単 のため、積層構造 40の詳細な構成を記載していない。また、現実の積層構造 40の 上面には、上述したリッジストライプや電極などが存在しており、図 4に示すように平 滑ではない。
[0045] 本実施形態における空隙 3は、く 11— 20>方向およびく 1— 100〉に沿って行 列状に離散的に配列されており、積層構造 40中に形成される光導波路 18とは交差 していない。く 11— 20>方向において隣接する 2つの空隙 3の距離は、最終的に得 られるレーザ素子のく 11— 20 >方向サイズ (チップ幅)と略同じ値に設定されて 、る 。本実施形態では、各レーザ素子のく 11— 20>方向サイズは約 200 μ mであるた め、く 11— 20 >方向における空隙 3の配列ピッチも 200 /z mに設定されている。一 方、空隙 3の < 1 100>方向における配列ピッチは、個々のレーザ素子の共振器 長に等しい値に設定されている。本実施形態では、共振器長が約 600 mであるた め、空隙 3のく 1— 100〉方向における配列ピッチも 600 /z mに設定されている。な
お、レーザ素子のサイズは上記の値に限定されず、空隙 3の配列間隔は、レーザ素 子のサイズに応じて適切な値に設定される。
[0046] 各空隙 3は、ウェハ 1の上面に平行な面内において、 10 m X 10 m以下の大き さに設定される。空隙 3は、ウェハ 1の上面に平行な断面は、典型的には円形 (直径 3 m程度)の形状を有しているが、楕円形の形状を有していても良い。断面形状が楕 円形の場合、その長軸方向のサイズは例えば 5〜6 m程度、短軸方向サイズは例 えば 2〜3 μ m程度に設定される。なお、空隙 3の深さは 2〜7 μ m程度である。このよ うに、個々のレーザ素子のサイズに比べて充分に小さな空隙 3を図 4に示すライン 25 およびライン 26に沿って配列することにより、 1次および 2次へき開の両方を正確な位 置で行うことが可能になる。
[0047] 図 4に示すライン 25は、く 11— 20 >方向に配列された複数の空隙 3の列によって 規定され、このライン 25に沿って 1次へき開を生じさせることになる。一方、二次へき 開は、ライン 26に沿って生じさせることになる。このため、空隙 3は、ライン 25とライン 2 6とが交差する交点 (格子点)上に配置されることが好ましい。ただし、ライン 25とライ ン 26とが交差する交点の全ての位置に空隙 3を設ける必要は無い。
[0048] 図 5 (a)および図 5 (b)は、それぞれ、空隙 3の形成工程を模式的に示す図である。
簡単のため、図 5では、ストライプ状リッジや電極の記載は省略している。
[0049] 図 5 (a)に示す例では、針状部材 45をウェハ 1の上面に垂直な方向に上下させるこ とにより、積層構造 40に凹部 (空隙)を離散的に形成している。針状部材 45の上下 動作に同期させて、ウェハ 1を移動させることにより、図 4に示す格子点の位置に微細 な凹部 (空隙)を形成することができる。図 5 (a)の下方には、形成される凹部 (空隙 3 )の平面形状を模式的に記載している。図 5 (a)の下方に示す例では、簡単のため、 ウェハ 1の表面に平行な面内において空隙 3が等方的な形状を有するように記載さ れているが、針状部材 45の先端部の断面形状を調整することにより、多様な形状を 有する空隙 3を形成することができる。へき開を所定方向に案内するためには、個々 の空隙 3がへき開方向に長軸を有する異方的な形状を有して 、ることが好ま 、。
[0050] 図 5 (b)に示す例では、針状部材 45をウェハ 1の上面に垂直な方向から傾斜させて いる。このような傾斜を与えることにより、図 5 (b)の下方に示すように、 1次へき開の方
向であるく 11— 20 >方向に幾分延びた形状の凹部が形成される。針状部材 45の 先端が、例えば三角錐の形状を有する場合、三角錐の稜線 (エッジ)をウェハ 1に向 けた傾斜状態で押圧動作を行うと、より小さな力により、積層構造 40の上面に凹部を 形成することができる。針上部材 45を斜めに押圧することにより、針状部材の磨耗劣 化を抑制することができる。押圧方向とウェハに垂直な方向との間に形成される角度 は、 5° 以上に設定することが好ましぐ例えば 10〜45° の範囲に設定される。
[0051] 以下、図 6 (a)および (b)を参照しながら、へき開工程を説明する。図 6 (a)は分割 前の状態を示しており、図 6 (b)は、分割された個々のチップの 1つを示している。
[0052] 上述した方法により空隙 3を形成した後、図 6 (a)に示すライン 25に沿って 1次へき 開を行なう。このとき、不図示の装置を用いてウェハ 1の裏面力 応力を印加すると、 く 11— 20 >方向に平行なライン 25上に配列された複数の空隙 3に沿ってへき開が 進行する。このため、 60° 方向への「へき開ずれ」(端面クラック)発生が抑制され、 M面すなわち(1 100)面の平滑な共振器端面を有するレーザバーが作製される。
[0053] 本実施形態では、空隙 3の存在により、上記クラック発生を原因とするレーザバーの 分断が生じにくくなるため、レーザバーを長くすることが可能となり、製造効率改善に 伴 、製造コストを低くし、歩留まりを向上させることができる。
[0054] 次に、 1次へき開で得られたレーザバーの共振器端面の一方(出射側)に酸化ニォ ブ (Nb O )からなる誘電体保護膜、他方 (反射側)に SiOと Nb Oからなる誘電体多
2 5 2 5 層膜を形成した後、ライン 26に沿った 2次へき開を行なうことにより、各レーザバーか らレーザチップ (個々の半導体レーザ)を分離する。個々の半導体レーザは、ウェハ 1 力 分割されたチップを基板として備えて 、る。
[0055] こうしてへき開工程が終了した後は、次に、窒化アルミニウム (A1N)など力 なるサ ブマウントの上面に各半導体レーザの n側部分を接触させるように半田を介して設置 し、ワイヤーボンディングで配線する。このとき、空隙 3がレーザ素子の特定の位置に 存在することを利用して、実装工程時における位置決めマーカーとしての機能を空 隙 3〖こ発揮させることちできる。
[0056] 上記の方法によって製造されたレーザ素子は平滑な共振器面を有しており、室温 にお ヽて閾値電流 30mA、 75mW出力時に動作電流 80mAで連続発振が確認さ
れ、 1000時間以上の寿命を示した。
[0057] なお、上記の例では、ライン 26に沿ってもへき開を行っている力 共振器端面以外 の面はへき開面である必要はないので、ライン 26に沿ってはレーザなどによる切断を 行っても良い。ただし、本発明における空隙 3には、く 11— 20 >方向のサイズが充 分に小さ 、ため、 2次へき開を歩留まり良く行 、やす 、と 、う利点がある。
[0058] 図 6 (b)に示す例では、空隙 3を横切る位置でへき開が生じている力 へき開面は、 空隙 3を常に横切る必要はなぐ空隙 3の近傍に形成される場合もある。図 6 (b)に示 すように、空隙 3を横切るように 1次および 2次へき開が生じると、最終的に得られる半 導体レーザの各チップには、空隙 3の一部が四隅に含まれることになる。ただし、個 々の半導体レーザは、空隙 3の一部を四隅の全てに含む必要は無ぐへき開面の位 置によって、個々の半導体レーザに含まれる空隙 3の(一部または全体の)個数は変 動し得る。極端な場合、ある特定の半導体レーザは、最終的には 1つの空隙 3も含ま ない場合がありえる。そのような場合、その半導体レーザに隣接するいずれかの半導 体レーザには、少なくとも 1つの空隙 3が含まれ得る。
[0059] 空隙 3の内部を、空気以外の材料で埋めてもよい。空隙 3の内部が何らかの材料に よって埋め込まれていたとしても、へき開を行うことは可能である力 固体材料で埋め 込まれていない方力 へき開は容易である。
[0060] 次に、図 7および図 8を参照しながら、空隙がライン状空隙 (スクライブ溝)に比べて 優れている理由を説明する。
[0061] 図 7 (a)は、本発明の実施形態における 1次へき開の様子を示す平面図であり、図 7 (b)は、比較例における 1次へき開の様子を示す平面図である。本発明の実施形態 では、空隙 3の各々がへき開の起点になり得るため、 1次へき開に際して角度 Θのず れが発生したとしても、へき開の進行に伴って空隙 3の各々でへき開面の位置が補 償される (へき開位置の自己回復)。このため、へき開面が予定位置力 大きくはず れてしまうことはない。これに対し、長さが 40 mを超えるようなスクライブ溝が配列さ れた比較例では、図 7 (b)に示すように、へき開面がずれ出すと、スクライブ溝 30にず れを補償する機能がないため、へき開面が予定位置力も大きく外れることが多い。
[0062] 図 8 (a)は、本発明の実施形態における 2次へき開の様子を示す平面図であり、図
8 (b)は、比較例における 2次へき開の様子を示す平面図である。図 8では、破線によ つてへき開面が示されている。く 1— 100〉方向に 2次へき開を行う場合でも、本実 施形態における空隙 3はへき開面の位置決め機能を有効に発揮する (A面精度向上 ) oこれは、く 1— 100〉方向に垂直な方向における空隙 3のサイズが充分に小さい 力もである。一方、比較例では、図 8 (b)に示すように、く 1 100>方向に垂直な方 向にスクライブ溝が長く延びているため、 2次へき開面の位置を特定する機能が充分 に発揮できず、へき開面が予定位置力 大きくずれてしま 、やす 、。
[0063] 上述してきたことから明らかなように、 1次へき開(M面へき開)のみならず、 2次へき 開 (A面へき開)についても、へき開面の位置決め効果を充分に発揮させるためには 、へき開を誘導または案内する空隙の形状をドット状にすることが好ましい。また、ドッ ト状の空隙は、図 6に示すライン 25、 26の各交点に配置することが最も好ましい。
[0064] 以下、へき開を適切に行うために好まし!/ヽ電極の形成方法を説明する。
[0065] GaNは可視光線を透過するため、 GaN力 なるウェハ 1の裏面力 空隙 3を視認す ることができる。したがって、ウェハ 1の裏面に電極層を形成する場合、図 9 (a)〜(c) に示す形状に電極層 20をパターユングすることが好ましい。図 9に示す例では、いず れの場合も、ウェハ 1の下面 (裏面)から空隙 3を視認できる開口領域が電極層 20に 形成されている。なお、図 9 (c)に示すように、電流注入路となるリッジ位置において は、ウェハ 1の裏面の電極層 20の上記開口領域が極力狭いことが好ましい。この理 由は、リッジ位置で電流が注入された際に、リッジ下部の活性層付近での発熱が大き くなり、且つ高出力で動作させる場合はレーザ端面での局所発熱も大きくなるため、 その下部に位置する上記電極層 20の面積を大きくすることにより、サブマウントへ効 率良く放熱を行うためである。
[0066] 次に、図 10〜図 12を参照しながら、本発明による半導体素子の更に好ましい実施 形態を説明する。
[0067] 図 10に示す半導体レーザ素子では、空隙 3が活性層 13の位置よりも深く形成され ている。へき開に際して、空隙 3の底部力 端面段差等の「へき開ずれ (端面クラック) 」が発生する場合があるが、図 10の構成によれば、このような端面クラックがリッジスト ライプ下方の活性層 13を横切ることを効果的に防止することができる。端面クラックが
活性層を横切ると、閾値電流が増加し、レーザビーム形状 (遠視野像)が乱れるという 問題が発生するが、図 10の構成を採用することにより、このような問題を解決すること ができる。活性層 13の深さは、結晶表面から 0. 6 m程度であるため、空隙 3の底部 を活性層 13の下方に位置させることも容易である。
[0068] 図 11に示す半導体レーザ素子でも、空隙 3が活性層 13の位置よりも深い位置に形 成されている。図 10の構成と異なる点は、光導波路領域 (発光領域) 18の両側が深 くエッチングされ、空隙 3の形成位置が活性層 13よりも下方である点にある。図 11の 構成によれば、空隙 3を起点とする端面クラックが活性層 13を横切ることがない。この 場合、空隙 3を浅く形成してもよい。
[0069] 図 12に示す半導体レーザ素子では、空隙 3と光導波路領域 (発光領域) 18との間 にトレンチ (分離溝)が形成されている。図 12の構成によれば、空隙 3を起点とする端 面クラックの進行がトレンチ 35によって遮断される。また、トレンチ 35が活性層 13を 横切る深さに形成されていれば、トレンチ 35に起因する端面クラックも活性層 13を横 切ることがない。このようなトレンチ 35は、空隙 3と光導波路領域 (発光領域) 18との 間にのみ形成されて ヽればよ 、が、図 12の破線で示す領域全体に形成されて 、て もよい。トレンチは、異方性の高いドライエッチング技術により好適に形成され得る。
[0070] 図 10〜12に示す構成は、チップ幅が縮小した場合に特に効果を発揮する。今後、 一枚のウェハから可能な限り多数のチップを取り出すことが望まれるが、そのような場 合、図示される構成を採用することにより、チップ幅を縮小することが好ましい。
[0071] (実施形態 2)
図 13 (a)は、本実施形態におけるウェハ 1の端部近傍を示す平面図である。図 13 ( a)には、へき開開始位置を規定するための複数のエツジスクライブ 200が示されてい る。エツジスクライブ 200は、スクライブツールなどの公知の器具によってウェハ 1の表 面 (周縁領域)に形成された直線的な溝である。エツジスクライブ 200は、ウェハ 1の 表面とへき開予定面とが交差する位置に形成され、その長さは例えば 0. 1〜: Lmm に設定される。このようなエツジスクライブ 200の近傍に物理的な力を付与することに より、へき開が開始し、進行する。
[0072] 本実施形態に特徴的な点は、ウェハ 1の表面に平行な平面内における空隙 300の
形状にある。図 13 (b)は、本実施形態における空隙 300の平面図である。この図に 示されるように、各空隙 300は、へき開方向に長軸を有する異方的な形状を有し、し 力も、両端部が尖っている。各空隙 300の長さ(長軸方向サイズ)は、例えば 5〜60 IX mであり、短軸方向サイズ (幅および深さ)は例えば 3 μ mである。
[0073] このような空隙 300によれば、隣接する空隙 300と空隙 300との間においてへき開 方向が目的とするライン力 外れたとしても、次に生じるへき開の開始位置が目的の ライン上に矯正される。空隙 300の幅を 3 /z mに設定した場合、へき開のズレ幅を 3 m以下に抑制することができる。ただし、図 8 (a)および (b)を参照しつつ説明した効 果を得るためには、空隙 300のへき開方向における長さを制限する必要がある。この 長さは、好ましくは 45 μ m以下、より好ましくは 20 μ m以下に設定される。
[0074] なお、へき開は、エツジスクライブ 200が設けられた領域から一方向(図中右から左 )に進行するため、空隙 300の形状は、図 13 (c)に示す「矢印形状」を有していること が好ましい。図 13 (b)に示す空隙 300は、図中の右側に隣接する空隙力も延びてき たへき開面を受け入れる「2つのウィング部」を有している。このウィング部は、へき開 面のズレを減少させる機能を発揮する。このような形状を有する空隙 300は、図 5 (b) に示す方法では形成しにく!/、が、公知のフォトリソグラフィおよびエッチング技術を用 V、て容易に形成することができる。
[0075] 図 14 (a)は、図 13 (a)に示す例に比べて相対的に高い密度で空隙 300を配列した 例を示す平面図である。個々の空隙 300は、全て同じ大きさを有していてもよいが、 例えば図 14 (b)に示すように、形状および Zまたは大きさの異なる複数の空隙 300a 、 300b, 300c【こよって 1つの構成単位を形成してもよ!/ヽ。図 14 (b)【こ示す空隙 300 a、 300b, 300cは、それぞれ、隣接する空隙力も延びてきたへき開面を受け入れる「 2つのウィング部」を有している。このように、図 14 (b)に示すようにウィング部の大きさ が異なる複数の空隙 300a、 300b, 300cを、ウィング部の大きさの順番に配列すると 、エツジスクライブ 200から延び始めるへき開面の位置を、目的とするライン上に高い 精度で案内することが容易になる。
[0076] へき開面のズレは、隣接する空隙 300の間隔が広くなるほど、大きくなる傾向がある 。このため、隣接する空隙 300の間隔、あるいは、空隙 300の配列ピッチに応じて、ゥ
イング部のサイズを調整することが好ましい。図 15 (b)では、ウィング部の大きさが異 なる空隙 300a、 300b, 300cが配列されている力 1つのウェハ 1に対して 1種類の 空隙 (例えばウィング部が相対的に大きな空隙 300c)のみを用いても良い。
[0077] なお、エツジスクライブ 200に最も近い位置に設けられる空隙 300は、他の領域に 形成される空隙に比べて相対的に大きなウィング部を有していることが好ましい。図 1 5 (a)に示す例では、ウェハ 1の大部分には図 15 (b)に示すような空隙部 300aを配 列する一方で、エツジスクライブ 200に最も近い位置には図 15 (c)に示すような空隙 300cを配置している。
[0078] なお、エツジスクライブ 200【こ近!ヽ領域内【このみ、図 14 (b)【こ示す空隙 300a、 300 b、 300cをこの順番で設けてもよい。
産業上の利用可能性
[0079] 本発明による窒化化合物半導体レーザは、へき開が困難な GaN基板を用いる短 波長光源用レーザとして量産が期待される。