本発明の実施形態について、以下に説明する。まず、はじめに、本明細書に用いる用語の定義などを明確にする。
本明細書において、「GaN系半導体」とは、Al、Ga、およびIn等のIII族元素と、V族元素であるNとの化合物で構成された六方晶構造をとる窒化物III−V族化合物半導体であって、AlXGaYIn1-X-YN(但し、0≦X≦1、0≦Y≦1、かつ0≦X+Y≦1)の組成比で表される物質の他、そのIII族元素の一部(20%程度以下)を他の元素で置換した物質や、そのV族元素の一部(20%程度以下)を他の元素で置換した物質を含む。
本明細書において、「GaN系基板」とは、GaN系半導体と同様、III族元素とNとの化合物で構成された六方晶構造をとる窒化物III−V族化合物半導体を主たる構成要素とする基板であって、AlXGaYIn1-X-YN(但し、0≦X≦1、 0≦Y≦1、 且つ0≦X+Y≦1)の組成比で表される基板の他、そのIII族元素の一部(20%程度以下)を他の元素で置換した基板や、そのV族元素の一部(20%程度以下)を他の元素で置換した基板を含む。なお、GaN系半導体以外の物質を主要構成要素とする異種基板上に、GaN系半導体を厚く堆積した後に後述するLD構造を積層したウェハを作製し、以下の各実施形態においてウェハを分割する前に該異種基板を除去した場合も、本明細書で定義されたGaN系基板の範疇に含まれる。
本明細書において、「LD構造」とは、発光部と、共振器以外の導波路構造を内部に含む主にGaN系半導体により構成された構造体であり、上記GaN系基板上に堆積もしくはエピタキシャル成長された層構造であって、電極金属や、該電極とGaN系半導体との間に挿入された絶縁体膜等を除く。また、このLD構造には、一部異なる結晶構造をとるGaN系半導体や、GaN系半導体以外の材料が混入していてもよい。
本明細書において、「ストライプ状光導波路」とは、発光部と、この発光部で発した光を閉じ込めて導波するための一体構造である。
本明細書において、「表面凹凸の平均値Ra」とは、段差計を用いて測定した粗度曲線の、中心線を基準とした平均値である。
本明細書において、「RMS値」あるいは単に「凹凸の平均」とは表面凹凸の大きさを表し、成長層表面に平行方向に、長さ4μmにわたってAFM(AtomicForce Microscope)にて粗さ曲線を測定し、RMS(Root Mean Square:中心線から粗さ曲線までの偏差の二乗の平方根)として計算された値である。
本明細書において、「溝の深さ」とは、GaN系半導体レーザ素子をGaN系基板とLD構造との界面の中心線を水平に置いたとき、劈開導入溝もしくは劈開補助溝の縁から垂直に該溝の谷間の深さを測った値を示す。そして、この「溝の深さ」は、3つの種類があり、1つ目は「LD構造として積層されたGaN系半導体表面を基準とした深さ」であり、2つ目は「GaN系基板とLD構造との界面の中心線を基準とした深さ」であり、3つ目は「GaN系基板裏面を基準とした深さ」である。
又、図1のような六方晶構造において、<0001>が全てのAで表される面の法線方向即ち[0001]及び[000−1]方向を表し、<1−100>が全てのBで表される面の法線方向即ち[1−100]、[10−10]、[01−10]、[−1100]、[−1010]及び[0−110]方向を表し、<11−20>が全てのCで表される面の法線方向即ち[11−20]、[1−210]、[−2110]、[−1−120]、[−12−10]及び[2−1−10]方向を表しているものとする。
又、以下の各実施形態では、窒化物半導体素子に、GaN系半導体レーザ素子を代表として、説明を行う。
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図面を参照して以下に説明する。図2は、本実施形態におけるGaN系半導体レーザ素子を分割する前のウェハの構成を示す断面図である。図3は、ウェハの分割を説明するための断面図及び上面図である。図4は、分割されたGaN系半導体レーザ素子の外観斜視図である。
1.GaN系半導体レーザ素子の製造方法(ウェハの形成)
まず、図2を用いてウェハの形成について説明する。
最初に(0001)面を結晶成長用の表面とする膜厚が100〜500μmのn−GaN系基板200を有機洗浄する。尚、本実施形態では、このn−GaN系基板200の膜厚が135μmの厚さに調整されている。
洗浄したn−GaN系基板をMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置内に搬入し、水素(H2)雰囲気の中で、約1100℃の高温でクリーニングを行う。その後、降温して、キャリアガスとしてH2を10l/min流しながら、シラン(SiH4)を10nmol/min導入するとともに、600℃でアンモニア(NH3)およびトリメチルガリウム(TMG)をそれぞれ5l/minおよび20mol/min導入することによって、10nm以上10μm以下(例えば100nm)の厚みのn−GaN系バッファ層201を成長させる。
尚、このバッファ層201としては、SiH4の導入量を0mol/minとして形成されたGaNバッファ層でも良い。又、AlやInを含むGaNバッファ層としても構わない。このとき、バッファ層にAlを含むときはトリメチルアルミニウム(TMA)を、又、バッファ層にInを含むときはトリメチルインジウム(TMI)を成膜時に適量導入すればよい。又、バッファ層201はn−GaN系基板の表面歪の緩和、表面モフォロジや凹凸の改善(平坦化)を目的に設けた層であり、n−GaN系基板において、結晶成長用n−GaNの結晶性が優れている場合にはバッファ層201がなくても良い。
次に、窒素(N2)とアンモニア(NH3)をそれぞれ5l/min流しながら約1050℃まで昇温する。その後キャリアガスをN2からH2に代えて、TMGを100μmol/min、SiH4を10nmol/min導入して、n−GaNコンタクト層202を0.1〜10μm(例えば4μm)成長させる。
次に、TMGの流量を50μmol/minに調整し、TMAを一定量導入してn−Alx1Ga1-x1N層(例えばx1=0.2)を積層することで、例えば、総膜厚0.8μmのn−AlGaNクラッド層203を形成する。尚、このn−AlGaNクラッド層203は、後述するn−GaN光ガイド層204に比べて、屈折率が小さくかつバンドギャップが大きな材料であれば他材料からなる膜でも構わない。又、何層かの層を組み合わせて、その平均屈折率と平均バンドギャップとが、上述のn−GaN光ガイド層204との比較条件を満たすようにしても良い。
n−AlGaNクラッド層203の形成後、TMAの供給を停止するとともに、TMGを100μmol/minに調整して、n−GaN光ガイド層204を50〜200nm(例えば100nm)の厚さになるように成長させる。その後、TMGの供給を停止し、キャリアガスをH2からN2に再び代えて700℃まで降温する。そして、TMIを一定量、TMGを15μmol/min導入し、InvGa1-vN(0<v<1)よりなる障壁層を成長させる。所定時間経過後、TMIの供給をある一定量にまで増加し、InWGa1-WN(0<w<1)よりなる井戸層を成長させる。
このTMIの供給量の変化を繰り返しすことによって、InGaN障壁層とInGaN井戸層との交互積層構造からなるInGaN多重量子井戸活性層205形成する。障壁層および井戸層を形成するInGaNの組成比および膜厚は、発光波長が370〜430nmの範囲になるように設計し、成長時に導入するTMIの流量は、その設計値に等しいIn組成の膜が得られるように調整する。
このInGaN多重量子井戸活性層205において、井戸層の層数が2〜6層であることが望ましく、特に3層であることが望ましい。InGaN多重量子井戸活性層205の形成が終了すると、TMIおよびTMGの供給を停止して、再び1050℃まで昇温する。そして、キャリアガスを再びN2からH2に代えた後、TMGを50μmol/min、TMAを適量、p型ドーピング原料であるビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を10nmol/min流すことによって、0〜20nm厚のp−AlzGa1-zN(0≦z≦0.3)蒸発防止層206を成長させる。このp−AlGaN蒸発防止層206の成長が終了すると、TMAの供給を停止するとともに、TMGの供給量を100μmol/minに調整して、50〜200nm(例えば100nm)の厚さのp−GaN光ガイド層207を成長させる。
次に、TMGの流量を50μmol/minに調整するとともに、TMAを一定量導入することによって、p型Alx2Ga1-x2N層(例えばx2=0.2))を積層することで、例えば総膜厚0.8μmのp−AlGaNクラッド層208を形成する。尚、このp−AlGaNクラッド層208は、p−GaN光ガイド層207に比べて、屈折率が小さくかつバンドギャップが大きな材料であれば他材料からなる膜でも構わない。又、何層かの層を組み合わせて、その平均屈折率と平均バンドギャップが、上述のp−GaN光ガイド層207との条件を満たすようにしても良い。
最後に、TMGの供給量を100μmol/minに調整し、TMAの供給を停止し、膜厚0.01〜10μm(例えば0.1μm)のp−GaNコンタクト層209の成長を行う。このようにすることで、GaN系基板200上に対するLD構造の成長を終了する。成長が終了すると、TMGおよびCp2Mgの供給を停止して降温した後、ウェハを室温でMOCVD装置より取り出す。このようにして形成されたウェハの表面の平坦度を測定したところ、表面凹凸の平均値でRa=100Å以下であった。
続いて、該ウェハを、レーザ素子にするため加工する。まず、p電極部分の形成にあたり、GaN系基板200の<1−100>方向(図3参照)に沿ってストライプ状にエッチングを行い、リッジストライプ部211を形成する。その後、SiO2誘電体膜212を蒸着させ、次いでp−GaNコンタクト層209を露出させ、Pd/Mo/Auの順で蒸着してp電極213を形成する。尚、p電極213として、Pd/Pt/Auの順に形成したもの、又は、Pd/Auの順に形成したもの、又は、Ni/Auの順に形成したもののいずれかを用いるようにしても良い。
次に、研磨等の物理的手法や、ウェットエッチング又はドライエッチング等の化学的手法を用いることで、n−GaN系基板200の裏面側を削って、ウェハの厚さを80〜160μmに調整する。このようにすることで、ウェハを分割しやすい厚さに調整する。即ち、ウェハの厚みがこの範囲よりも薄くなると、素子形成時のハンドリング等に支障をきたし、逆に、この範囲よりも厚くなると、ウェハの分割が難しくなる。
次に、n−GaN系基板200の裏面側からHf/Alの順序でn電極210を形成する。このように、n電極210にHfをもちいるとn電極のコンタクト抵抗を下げられるため有効である。又、n電極210として、Ti/Alの順に形成したもの、又は、Ti/Moの順に形成したもの、又は、Hf/Auの順に形成したもの等を用いるようにしても良い。
尚、n電極210の形成にあたり、n−GaN系基板200の裏面側から電極形成を行う代わりに、ドライエッチング法を用いて、ウェハの表側からn−GaN層202を露出させてn電極を形成しても構わない。
(ウェハの分割)次に、図3を参照して本実施形態におけるウェハの分割方法を説明する。図3(a)には、上述のようにしてLD構造がGaN系基板200上に形成されたウェハの断面図を、図3(b)には、上述のようにしてLD構造がGaN系基板200上に形成されたウェハの上面図を、それぞれ示す。
尚、図3において、簡単に説明するため、GaN系基板250が、n−GaN系基板200、n−GaNバッファ層201及びn電極210を含んでいるものとして、又、LD構造251が、n−GaNコンタクト層202、n−AlGaNクラッド層203、n−GaN光ガイド層204、InGaN多重量子井戸活性層205、p−AlGaN蒸発防止層206、p−GaN光ガイド層207、p−AlGaNクラッド層208、p−GaNコンタクト層209、SiO2誘電体膜212及びp電極213を含んでいるものとする。
上述のようにして、ウェハにおいて、そのGaN系基板250上にLD構造251が構成されるとき、図3(b)のように、LD構造251に、ストライプ状導波路253が設けられる。このストライプ状導波路253は、<1−100>方向に平行となるようにして設けられる。このストライプ状導波路253の間に、<11−20>方向にウェハを分割して複数のバーを得るための補助となる劈開導入溝252が設けられる。この劈開導入溝252が設けられた部分の断面図が、図3(a)のようになる。
劈開導入溝252は、LD構造251表面上において、図3(b)のように、ストライプ状導波路253間にダイヤモンド針で罫書きするスクライブが施されることによって、設けられる。このとき、LD構造251の表面から劈開導入溝252の最深部までの深さdは、少なくとも、1μm≦d≦10μmの深さとなるようにする。このようにすることで、ウェハの分割してバーを得る際に、折れの無いバーを得られる割合となる「バーの歩留まり」を良くすることができる。
更に、LD構造251の厚さがあまり厚くなく、GaN系基板250とLD構造251との界面に劈開導入溝252が到達可能である場合、GaN系基板250とLD構造251との界面から劈開導入溝252の最深部までの深さd1を、1μm≦d1≦10μmの深さとなるようにすることができる。このようにすることで、分割したバーより得られる素子が、RMS値が0.5nm以下となるレーザ光の共振器端面が平坦な素子であり、且つ、共振器長のばらつきが一定範囲に収まっている素子が得られる割合となる「素子の歩留まり」を向上させることができる。
これは、LD構造251の一部に劈開性がないか、又は、劈開方向が異なっている物質が含まれていて分割圧力が分散されるかするために、望まない荒れが生じて出射光のファーフィールド・パターン(FFP)が悪化したり、共振器端面の反射率低下がおきるのを防止できるからである。
そして、この劈開導入溝252の溝入れ方向は、上述したように、GaN系基板250の<11−20>である。又、劈開導入溝252の始点及び終点は、ストライプ状導波路253から50μm以上離れた点とすることによって、バーの歩留まり良く分割することができ、更に好ましくは、100μm以上離れた点とすることで素子の歩留まりを上げることができる。
尚、本実施形態では、図3(a)のように、GaN系基板250とLD構造251との界面から劈開導入溝252の最深部までの深さを、1μmとなる深さで一定とした。又、ストライプ状導波路253から劈開導入溝252の始点及び終点への距離を125μmとした。
又、このようにして劈開導入溝252を設ける際、バーの歩留まり良く分割するために、上述した範囲内でできるだけ<11−20>方向に直線形状で長く形成するのが望ましいが、破線形状としても構わない。又、劈開導入溝252の形成方法は、上述したスクライブ以外にRIE(Reactive Ion etching)などのドライエッチングやウェットエッチングを用いても構わない。
更に、この劈開導入溝252を、図3(b)のように、ストライプ状導波路253の間毎に設けるようにしたが、各劈開導入溝252の間隔が1mm以内となるような間隔となるようにするとともに、その始点及び終点とストライプ状導波路253との距離が上述の条件を満たすようにすれば、ストライプ状導波路253の間毎に設ける必要はない。
次に、このようにして劈開導入溝252が設けられたウェハを<11−20>方向に分割して、バーを得る。このウェハの分割では、劈開導入溝252の位置する位置に対して、ブレーキング刃をGaN系基板250の裏面側から当ててウェハを押し割る。このようにすることで、分割されたバーにおいて、ストライプ状導波路253が分割された部分に劈開面を使用した端面を形成することができる。尚、刃をぶつけることで与える衝撃によるクリービング、又は、局所的に罫書き線周辺のみを加熱して分割する手法、又は、音波や水流による衝撃等によるブレーキングなどを用いて、ウェハの分割を行うようにしても構わない。
このようにして分割することによって、図3のようなウェハから共振器長500μmのバーを多数得た。共振器長は設定値の500μm±5μmに収まっており、バーの歩留まりが92%、素子の歩留まりが90%に収まった。このとき、分割したバーにおいて、劈開導入溝252間における端面の凹凸の平均を測定した。この結果、劈開導入溝252から50μm以内の距離ではRMS値で最大10nmと大きかったが、劈開導入溝から100μm以上離れた地点では最大でも0.5nmと非常に平坦な面を備えていた。サファイア基板上にGaN系半導体を堆積した場合、この半導体部のRMS値は平均して3.5nmであることから、劈開した端面が更に平坦なものとして品質が向上していることが確認された。
このように図3のようなウェハから分割して得られたバーは、裏面あるいは表面を、ストライプ状導波路253の間毎に、<1−100>方向に罫書きして分割することによって、GaN系半導体レーザ素子を得る。このとき、罫書きする際の針圧(ウェハに針を押し当てる時の荷重)を調整して<1−100>方向に押し割るようにして分割してGaN系半導体レーザ素子を得るようにしても構わないし、又は、完全に切断して分割し、GaN系半導体レーザ素子を得るようにしても構わない。
2.GaN系半導体レーザ素子の構成
図4を参照して、上述のようにしてウェハから分割されて形成されたGaN系半導体レーザ素子1の構成について説明する。
尚、図4において、簡単に説明するため、GaN系基板10が、n−GaN系基板200及びn−GaNバッファ層201を含んでいるものとして、又、LD構造11が、n−GaNコンタクト層202、n−AlGaNクラッド層203、n−GaN光ガイド層204、InGaN多重量子井戸活性層205、p−AlGaN蒸発防止層206、p−GaN光ガイド層207、p−AlGaNクラッド層208、p−GaNコンタクト層209及びSiO2誘電体膜212を含んでいるものとする。
上述のようにして、GaN系基板上にLD構造が構成されたウェハが分割されて得たGaN系半導体レーザ素子1は、GaN系基板10上に構成されたLD構造11に、劈開によりミラー端面12が形成されている。又、このLD構造11内部に、ストライプ状導波路13が設けられ、レーザ光を導波する役割をはたす。
又、GaN系基板10の下面に設けられたn電極210及びLD構造11の上面に設けられたp電極213は、GaN系半導体レーザ素子1の動作時に外部から電力を供給するためのものである。更に、GaN系半導体レーザ素子1の表面上の4隅に位置する部分において、LD構造11側に溝入れ部14が形成されている。
この溝入れ部14は、ウェハのバー分割する際にミラー端面12の形成を目的とするため、ウェハ上面に予め形成された劈開導入溝252(図3)に相当し、本実施形態ではGaN系基板10とLD構造11との界面から溝入れ部14の最深部までの深さを1μmとする。又、溝入れ部14は、本実施形態ではGaN系半導体レーザ素子1をGaN系基板10を下にして2次元的に投影したとき、上記ストライプ状導波路13から125μm離れた位置から形成されている。尚、GaN系半導体レーザ素子1に対する溝入れ部14の数は、本実施形態では4つとされているが、ウェハ上面に予め形成された劈開導入溝252の状態により変化し、少なくとも1つ以上あればよい。
又、本実施形態において、ウェハを分割してGaN系半導体レーザ素子を得る際、劈開導入溝部分によって発生する溝入れ部を切り落してしまっても構わない。これは、劈開導入溝形成時の塵などを除去できる等の効果がある。
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図面を参照して以下に説明する。図5は、本実施形態におけるGaN系半導体レーザ素子を分割する前のウェハの構成を示す断面図である。図6は、ウェハの分割を説明するための断面図及び上面図である。図7は、分割されたGaN系半導体レーザ素子の外観斜視図である。
1.GaN系半導体レーザ素子の製造方法
(ウェハの形成)
まず、図5を用いてウェハの形成について説明する。尚、図5において、図2に示すウェハにおける同一部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
本実施形態では、第1の実施形態(図2)と異なり、まず、(0001)面を結晶成長用の表面とする膜厚が100〜500μmのn−GaN系基板200の表面上に、電子ビーム法やスパッタリング法を用いて、SiO2で蒸着することによって、成長抑制膜を形成する。その後、光硬化性の樹脂を用いたリソグラフィー技術を用いることによって、n−GaN系基板200の<1−100>方向に沿って、n−GaN系基板200上に形成された成長抑制膜より、ストライプ状のSiO2マスク501を形成する。
このマスク501は、そのマスク幅が13μmとされるとともに、又、各マスク501間の窓部幅が7μmとされる。尚、成長抑制膜は、上述したSiO2以外に、SiNx、Al2O3、又は、TiO2などで構成されても構わない。又、マスクが空洞となっても構わない。
このようにして、表面上にマスク501が形成されたn−GaN系基板200を、有機洗浄した後、MOCVD装置内に搬入し、キャリアガスH2を流すとともに、TMGを100μmol/min、SiH4を10nmol/min導入して、n−GaNコンタクト層502を25μm成長させる。
このn−GaNコンタクト層502を形成させた後、第1の実施形態と同様に、TMAを導入することによってn−AlGaNクラッド層203を形成し、次に、TMAの供給を停止してn−GaN光ガイド層204を形成する。その後、キャリアガスをH2からN2に再び代えて700℃まで降温した後、TMI、TMGを導入することでInGaN障壁層とInGaN井戸層との交互積層構造から成るInGaN多重量子井戸活性層205を形成する。
そして、TMIおよびTMGの供給を停止して、再び1050℃まで昇温した後、キャリアガスを再びN2からH2に代え、TMG、TMA、Cp2Mgを流すことによって、p−AlGaN蒸発防止層206を成長させる。その後、TMAの供給を停止して、p−GaN光ガイド層207を成長させる。更に、再び、TMAを導入してp−AlGaNクラッド層208を形成すると、最後に、このTMAの供給を停止して、p−GaNコンタクト層209の成長を行って、GaN系基板200上に対するLD構造の成長を終了する。
このように表面上にLD構造が形成されたウェハを、TMGおよびCp2Mgの供給を停止して降温した後、MOCVD装置より取り出すと、レーザ素子にするため加工する。まず、エッチングを行って、リッジストライプ部211を形成した後、SiO2誘電体膜212を蒸着させ、次いでp−GaNコンタクト層209を露出させ、Pd/Mo/Auの順で蒸着してp電極213を形成する。尚、第1の実施形態と同様、p電極213として、Pd/Pt/Auの順に形成したもの、又は、Pd/Auの順に形成したもの、又は、Ni/Auの順に形成したもののいずれかを用いるようにしても良い。
次に、研磨等の物理的手法や、ウェットエッチング又はドライエッチング等の化学的手法を用いることで、n−GaN系基板200の裏面側を削って、ウェハの厚さを80〜160μmに調整する。そして、n−GaN系基板200の裏面側からHf/Alの順序でn電極210を形成する。又、第1の実施形態と同様、n電極210として、Ti/Alの順に形成したもの、又は、Ti/Moの順に形成したもの、又は、Hf/Auの順に形成したもの等を用いてるようにしても良い。
尚、n電極210の形成にあたり、n−GaN系基板200の裏面側から電極形成を行う代わりに、ドライエッチング法を用いて、エピタキシャルウェハの表側からn−GaN層202を露出させてn電極を形成しても構わない。
(ウェハの分割)
次に、図6を参照して本実施形態におけるウェハの分割方法を説明する。図6(a)には、上述のようにしてLD構造がGaN系基板200上に形成されたウェハの断面図を、図6(b)には、上述のようにしてLD構造がGaN系基板200上に形成されたウェハの上面図を、それぞれ示す。
尚、図6において、簡単に説明するため、GaN系基板510が、n−GaN系基板200及びn電極210を含んでいるものとして、又、LD構造511が、マスク501、n−GaNコンタクト層502、n−AlGaNクラッド層203、n−GaN光ガイド層204、InGaN多重量子井戸活性層205、p−AlGaN蒸発防止層206、p−GaN光ガイド層207、p−AlGaNクラッド層208、p−GaNコンタクト層209、SiO2誘電体膜212及びp電極213を含んでいるものとする。
上述のようにして、ウェハにおいて、そのGaN系基板510上にLD構造511が構成されるとき、第1の実施形態と同様、図6(b)のように、LD構造511内に、ストライプ状導波路253が設けられる。このストライプ状導波路253の間に、<11−20>方向にウェハを分割して複数のバーを得るための補助となる劈開補助溝512及び劈開導入溝513が設けられる。この劈開補助溝512及び劈開導入溝513が設けられた部分の断面図が、図6(a)のようになる。
まず、劈開補助溝512が、LD構造511表面上において、図6(b)のように、ストライプ状導波路253間にRIEが施されることによって、設けられる。この劈開補助溝512は、その深さが、LD構造511のエピタキシャル層厚の半分となるように形成される。即ち、劈開補助溝512が、LD構造511内に構成されるマスク501よりも上側に構成されることとなる。
このように劈開補助溝512が構成されると、劈開補助溝512の中央側に、ダイヤモンド針で罫書きするスクライブが施されることによって、劈開導入溝513が設けられる。この劈開導入溝513は、劈開方向が他の部分と異なるLD構造511内におけるマスク501に達するように設けられる。このとき、LD構造511の表面から劈開導入溝513の最深部までの深さをd2とすると、少なくともLD構造511の表面を基準として1μm≦d2≦10μmとなるようにする。このようにすることで、バーの歩留まりを良くすることができる。
更に、LD構造511の厚さがあまり厚くなく、GaN系基板510とLD構造511との界面に劈開導入溝513が到達可能である場合、GaN系基板510とLD構造511との界面から劈開導入溝513の最深部までの深さd3が、GaN系基板510とLD構造511との界面の中心線を基準として1μm≦d3≦10μmとなるようにして、素子の歩留まりを向上させることができる。
これは、特にマスク501などのように、LD構造511の一部に劈開性がないか、又は、劈開方向が異なっている物質が含まれていて分割圧力が分散されるかするために、望まない荒れが生じて出射光のFFPが悪化したり、共振器端面の反射率低下がおきるのを防止できるからである。
そして、この劈開補助溝512及び劈開導入溝513の溝入れ方向は、上述したように、GaN系基板510の<11−20>である。又、劈開補助溝512及び劈開導入溝513の始点及び終点は、ストライプ状導波路253から50μm以上離れた点とすることによって、バーの歩留まり良く分割することができ、更に好ましくは、100μm以上離れた点とすることで素子の歩留まりを上げることができる。
尚、本実施形態では、図6(a)のように、GaN系基板510とLD構造511との界面から劈開導入溝513の最深部までの深さを、1μmとなる深さで一定とした。又、ストライプ状導波路253から劈開補助溝512及び劈開導入溝513の始点及び終点への距離を125μmとした。
又、このようにして劈開補助溝512及び劈開導入溝513を設ける際、バーの歩留まり良く分割するために、上述した範囲内でできるだけ<11−20>方向に長く形成するのが望ましいが、破線形状としても構わない。又、劈開導入溝513の形成方法は、上述したスクライブ以外にRIEなどのドライエッチングやウェットエッチングを用いても構わない。
更に、劈開補助溝512及び劈開導入溝513を、図6(b)のように、ストライプ状導波路253の間毎に設けるようにしたが、各劈開補助溝512及び劈開導入溝513の間隔が1mm以内となるような間隔となるようにするとともに、その始点及び終点とストライプ状導波路253との距離が上述の条件を満たすようにすれば、ストライプ状導波路253の間毎に設ける必要はない。
次に、このようにして劈開補助溝512及び劈開導入溝513が設けられたウェハを<11−20>方向に分割して、バーを得る。このウェハの分割では、第1の実施形態と同様、劈開導入溝513の位置する位置に対して、ブレーキング刃をGaN系基板510の裏面側から当ててウェハを押し割る。このようにすることで、分割されたバーにおいて、ストライプ状導波路253が分割された部分に劈開面を使用した端面を形成することができる。尚、刃をぶつけることで与える衝撃によるクリービング、又は、局所的に罫書き線周辺のみを加熱して分割する手法、又は、音波や水流による衝撃等によるブレーキングなどを用いて、ウェハの分割を行うようにしても構わない。
このようにして分割することによって、図6のようなウェハから共振器長500μmのバーを多数得た。共振器長は設定値の500μm±5μmに収まっており、バーの歩留まりが92%、素子の歩留まりが96%に収まった。このとき、分割したバーにおいて、劈開補助溝512間における端面の凹凸の平均を測定したところ、その結果が第1の実施形態のものと同等となった。よって、サファイア基板上にGaN系半導体を堆積した場合と比べ、劈開した端面が更に平坦なものとして品質が向上していることが確認された。
このように図6のようなウェハから分割して得られたバーは、第1の実施形態と同様に、裏面あるいは表面を、ストライプ状導波路253の間毎に、<1−100>方向に罫書きして分割することによって、GaN系半導体レーザ素子を得る。このとき、罫書きする際の針圧を調整して<1−100>方向に押し割るようにして分割してGaN系半導体レーザ素子を得るようにしても構わないし、又は、完全に切断して分割し、GaN系半導体レーザ素子を得るようにしても構わない。
2.GaN系半導体レーザ素子の構成
図7を参照して、上述のようにしてウェハから分割されて形成されたGaN系半導体レーザ素子2の構成について説明する。
尚、図7において、簡単に説明するため、LD構造21が、マスク501、n−GaNコンタクト層502、n−AlGaNクラッド層203、n−GaN光ガイド層204、InGaN多重量子井戸活性層205、p−AlGaN蒸発防止層206、p−GaN光ガイド層207、p−AlGaNクラッド層208、p−GaNコンタクト層209及びSiO2誘電体膜212を含んでいるものとする。
上述のようにして、GaN系基板上にLD構造が構成されたウェハが分割されて得たGaN系半導体レーザ素子2は、GaN系基板200上に構成されたLD構造21に、劈開によりミラー端面22が形成されている。又、このLD構造21内部に、ストライプ状導波路23が設けられ、レーザ光を導波する役割をはたす。
又、GaN系基板200の下面に設けられたn電極210及びLD構造21の上面に設けられたp電極213は、GaN系半導体レーザ素子2の動作時に外部から電力を供給するためのものである。更に、GaN系半導体レーザ素子2の表面上の4隅に位置する部分において、LD構造21側に溝入れ部24が形成されている。この溝入れ部24は、その深さがLD構造21の中央部分までの溝入れ部24aと、その深さが溝入れ部24aの底面からGaN系基板200に達するまでの溝入れ部24bとで構成される。
この溝入れ部24は、ウェハのバー分割する際にミラー端面22の形成を目的とするため、ウェハ上面に予め形成された劈開補助溝512及び劈開導入溝513(図6)に相当し、溝入れ部24aが劈開補助溝512に、溝入れ部24bが劈開導入溝513に相当する。このとき、本実施形態では、GaN系基板200とLD構造21との界面から溝入れ部24の最深部までの深さは、1μmとされる。
又、溝入れ部24は、本実施形態ではGaN系半導体レーザ素子2をGaN系基板200を下にして2次元的に投影したとき、上記ストライプ状導波路23から125μm離れた位置から形成されている。尚、GaN系半導体レーザ素子2に対する溝入れ部24の数は、本実施形態では4つとされているが、ウェハ上面に予め形成された劈開補助溝512及び劈開導入溝513の状態により変化し、少なくとも1つ以上あればよい。
又、本実施形態において、ウェハを分割してGaN系半導体レーザ素子を得る際、劈開導入溝部分によって発生する溝入れ部を切り落してしまっても構わない。これは、劈開導入溝形成時の塵などを除去できる等の効果がある。
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について、図面を参照して以下に説明する。図8は、本実施形態におけるGaN系半導体レーザ素子を分割する前のウェハの構成を示す断面図である。図9は、ウェハの分割を説明するための断面図及び上面図である。図10は、分割されたGaN系半導体レーザ素子の外観斜視図である。
1.GaN系半導体レーザ素子の製造方法
(ウェハの形成)
まず、図8を用いてウェハの形成について説明する。尚、図8において、図2に示すウェハにおける同一部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
本実施形態では、第1の実施形態(図2)と同様、まず、(0001)面を結晶成長用の表面とする膜厚が100〜500μmのn−GaN系基板200を有機洗浄した後、MOCVD装置内に搬入し、H2雰囲気の中で、約1100℃の高温でクリーニングを行う。そして、第1の実施形態と異なり、N2とNH3とをそれぞれ5l/min流しながら約1050℃まで降温した後、キャリアガスをN2からH2に代えて、TMG及びSiH4を導入して、n−GaNコンタクト層202を0.1〜10μm(例えば4μm)成長させる。
その後のLD構造及びn電極及びp電極の形成方法については、第1及び第2の実施形態と同様になる。即ち、n−GaNコンタクト層202上に、n−AlGaNクラッド層203、n−GaN光ガイド層204、InGaN多重量子井戸活性層205、p−AlGaN蒸発防止層206、p−GaN光ガイド層207、p−AlGaNクラッド層208、及び、p−GaNコンタクト層209が順に形成されて、LD構造の成長が終了される。そして、室温で、MOCVD装置よりLD構造が形成されたウェハが取り出される。
そして、このようにLD構造が形成されたウェハは、LD構造表面がストライプ状にエッチングされて、リッジストライプ部211が形成され、SiO2誘電体膜212が蒸着された後、p−GaNコンタクト層209を露出させる。そして、その表面上にp電極材料が蒸着されて、p電極213が形成される。更に、n−GaN系基板200の裏面が削られて、ウェハの厚さが調整されると、n−GaN系基板の裏面側に、n電極材料が蒸着されて、n電極210が形成される。
(ウェハの分割)
次に、図9を参照して本実施形態におけるウェハの分割方法を説明する。図9(a)には、上述のようにしてLD構造がGaN系基板200上に形成されたウェハの断面図を、図9(b)には、上述のようにしてLD構造がGaN系基板200上に形成されたウェハの上面図を、それぞれ示す。
尚、図9において、簡単に説明するため、GaN系基板700が、n−GaN系基板200及びn電極210を含んでいるものとして、又、LD構造701が、n−GaNコンタクト層202、n−AlGaNクラッド層203、n−GaN光ガイド層204、InGaN多重量子井戸活性層205、p−AlGaN蒸発防止層206、p−GaN光ガイド層207、p−AlGaNクラッド層208、p−GaNコンタクト層209、SiO2誘電体膜212及びp電極213を含んでいるものとする。
上述のようにして、ウェハにおいて、そのGaN系基板700上にLD構造701が構成されるとき、第1の実施形態と同様、図9(b)のように、LD構造701に、ストライプ状導波路703が設けられる。このストライプ状導波路703の間に、<11−20>方向にウェハを分割して複数のバーを得るための補助となる劈開導入溝702が設けられる。この劈開導入溝702が設けられた部分の断面図が、図9(a)のようになる。
この劈開導入溝702は、GaN系基板700の裏面に、ダイヤモンド針で罫書きするスクライブが施されることによって、設けられる。このとき、GaN系基板700の裏面から劈開導入溝702の最深部までの深さをd4とすると、少なくとも1μm≦d4≦10μmとなるようにする。そして、この劈開導入溝702の溝入れ方向は、上述したように、GaN系基板700の<11−20>である。又、劈開導入溝702の始点及び終点は、ストライプ状導波路703から50μm以上離れた点とすることによって、バーの歩留まり良く分割することができ、更に好ましくは、100μm以上離れた点とすることで素子の歩留まりを上げることができる。
尚、本実施形態では、図9(a)のように、GaN系基板700の裏面から劈開導入溝702までの深さd4を、4μmの深さで一定とした。又、ストライプ状導波路703から劈開導入溝702の始点及び終点への距離を125μmとした。又、このようにして劈開導入溝702を設ける際、バーの歩留まり良く分割するために、上述した範囲内でできるだけ<11−20>方向に長く形成するのが望ましいが、破線形状としても構わない。又、劈開補助溝702の形成方法は、上述したスクライブ以外にRIEなどのドライエッチングやウェットエッチングを用いても構わない。
更に、劈開導入溝702を、図9(b)のように、ストライプ状導波路703の間毎に設けるようにしたが、各劈開導入溝702の間隔が1mm以内となるような間隔となるようにするとともに、その始点及び終点とストライプ状導波路703との距離が上述の条件を満たすようにすれば、ストライプ状導波路703の間毎に設ける必要はない。
次に、このようにして劈開導入溝702が設けられたウェハを<11−20>方向に分割して、バーを得る。このウェハの分割では、第1の実施形態と異なり、劈開導入溝702の位置する位置に対して、ブレーキング刃をLD構造701の表面側から当ててウェハを押し割る。このようにすることで、分割されたバーにおいて、ストライプ状導波路703が分割された部分に劈開面を使用した端面を形成することができる。尚、刃をぶつけることで与える衝撃によるクリービング、又は、局所的に罫書き線周辺のみを加熱して分割する手法、又は、音波や水流による衝撃等によるブレーキングなどを用いて、ウェハの分割を行うようにしても構わない。
このようにして分割することによって、図9のようなウェハから共振器長500μmのバーを多数得た。共振器長は設定値の500μm±5μmに収まっており、バーの歩留まりが92%に収まった。このとき、分割したバーにおいて、劈開導入溝702間における端面の凹凸の平均を測定したところ、その結果が第1の実施形態のものと同等となった。よって、サファイア基板上にGaN系半導体を堆積した場合と比べ、劈開した端面が更に平坦なものとして品質が向上していることが確認された。
このように図9のようなウェハから分割して得られたバーは、第1の実施形態と同様に、裏面あるいは表面を、ストライプ状導波路703の間毎に、<1−100>方向に罫書きして分割することによって、GaN系半導体レーザ素子を得る。このとき、罫書きする際の針圧を調整して<1−100>方向に押し割るようにして分割してGaN系半導体レーザ素子を得るようにしても構わないし、又は、完全に切断して分割し、GaN系半導体レーザ素子を得るようにしても構わない。
2.GaN系半導体レーザ素子の構成
図10を参照して、上述のようにしてウェハから分割されて形成されたGaN系半導体レーザ素子3の構成について説明する。
尚、図10において、簡単に説明するため、LD構造31が、n−GaNコンタクト層202、n−AlGaNクラッド層203、n−GaN光ガイド層204、InGaN多重量子井戸活性層205、p−AlGaN蒸発防止層206、p−GaN光ガイド層207、p−AlGaNクラッド層208、p−GaNコンタクト層209及びSiO2誘電体膜212を含んでいるものとする。
上述のようにして、GaN系基板上にLD構造が構成されたウェハが分割されて得たGaN系半導体レーザ素子3は、GaN系基板200上に構成されたLD構造31に、劈開によりミラー端面32が形成されている。又、このLD構造31内部に、ストライプ状導波路33が設けられ、レーザ光を導波する役割をはたす。
又、GaN系基板200の下面に設けられたn電極210及びLD構造31の上面に設けられたp電極213は、GaN系半導体レーザ素子3の動作時に外部から電力を供給するためのものである。更に、GaN系半導体レーザ素子3の裏面上の4隅に位置する部分において、GaN系基板200側に溝入れ部34が形成されている。
この溝入れ部34は、ウェハのバー分割する際にミラー端面32の形成を目的とするため、ウェハ上面に予め形成された劈開導入溝702(図9)に相当する。このとき、本実施形態では、GaN系基板200裏面から溝入れ部34の最深部までの深さd4は、1μm≦d4<10μmとされる。
又、溝入れ部34は、本実施形態ではGaN系半導体レーザ素子3をGaN系基板200を下にして2次元的に投影したとき、上記ストライプ状導波路33から100μm以上離れた位置から形成されている。尚、GaN系半導体レーザ素子3に対する溝入れ部34の数は、本実施形態では4つとされているが、ウェハ下面に予め形成された劈開導入溝702の状態により変化し、少なくとも1つ以上あればよい。
又、本実施形態において、ウェハを分割してGaN系半導体レーザ素子を得る際、劈開導入溝部分によって発生する溝入れ部を切り落してしまっても構わない。これは、劈開導入溝形成時の塵などを除去できる等の効果がある。
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態について、図面を参照して以下に説明する。図11は、ウェハの分割を説明するための断面図及び上面図である。図12は、分割されたGaN系半導体レーザ素子の外観斜視図である。
1.GaN系半導体レーザ素子の製造方法
(ウェハの形成)
本実施形態において形成されるウェハは、第1の実施形態と同様、図2のような断面図で表されるウェハであるものとする。よって、その形成方法については、第1の実施形態を参照するものとして、詳細な説明は省略する。
即ち、n−GaN系基板200上に、n−GaNバッファ層201、n−GaNコンタクト層202、n−AlGaNクラッド層203、n−GaN光ガイド層204、InGaN多重量子井戸活性層205、p−AlGaN蒸発防止層206、p−GaN光ガイド層207、p−AlGaNクラッド層208、及び、p−GaNコンタクト層209が順に成長されて、LD構造が形成される。又、LD構造の表面上に、リッジストライプ部211が形成され、SiO2誘電体膜212が蒸着された後、p−GaNコンタクト層209を露出させる。そして、その表面上にp電極材料が蒸着されて、p電極213が形成される。更に、n−GaN系基板200の裏面が削られて、ウェハの厚さが調整されると、n−GaN系基板の裏面側に、n電極材料が蒸着されて、n電極210が形成される。
(ウェハの分割)
次に、図11を参照して本実施形態におけるウェハの分割方法を説明する。図11(a)には、上述のようにしてLD構造がGaN系基板200上に形成されたウェハの断面図を、図11(b)には、上述のようにしてLD構造がGaN系基板200上に形成されたウェハの上面図を、それぞれ示す。
尚、図11において、簡単に説明するため、図3と同様、GaN系基板250が、n−GaN系基板200、n−GaNバッファ層201及びn電極210を含んでいるものとして、又、LD構造251が、n−GaNコンタクト層202、n−AlGaNクラッド層203、n−GaN光ガイド層204、InGaN多重量子井戸活性層205、p−AlGaN蒸発防止層206、p−GaN光ガイド層207、p−AlGaNクラッド層208、p−GaNコンタクト層209、SiO2誘電体膜212及びp電極213を含んでいるものとする。
又、第1の実施形態と同様に、ウェハにおいて、そのGaN系基板250上にLD構造251が構成されるとき、図11(b)のように、LD構造251内に、ストライプ状導波路253が設けられる。
このようなウェハを、ダイヤモンド刃を備え半導体ウェハに溝を切るための装置であるダイサーにGaN系基板250の裏面が上になるように設置し、深さd5(0<d5≦40μm)、線幅w(0<w≦30μm)となるような劈開補助溝254を、図11(b)のように、<11−20>方向に沿って、直線状に設ける。更に、ウェハの表裏を逆にして、第1の実施形態と同様、LD構造251表面上において、ストライプ状導波路253間にダイヤモンド針で罫書きするスクライブが施されることによって、図11(b)のように、破線状の劈開導入溝252が設けられる。よって、劈開導入溝252が断続的であるのに対して、劈開補助溝254が連続的である。
このように劈開導入溝252が設けられるとき、LD構造251の表面から劈開導入溝252の最深部までの深さdは、少なくとも、1μm≦d≦10μmの深さとなるようにする。このようにすることで、バーの歩留まりを良くすることができる。このとき、更に、GaN系基板250とLD構造251との界面から劈開導入溝252の最深部までの深さd1を、1μm≦d1≦10μmの深さとなるようにすると、素子の歩留まりを向上させることができる。
そして、この劈開導入溝252の溝入れ方向は、上述したように、GaN系基板250の<11−20>であるとともに、劈開補助溝254の中心軸付近に一致するように整合される。又、劈開導入溝252の始点及び終点は、ストライプ状導波路253から50μm以上離れた点とすることによって、バーの歩留まり良く分割することができ、更に好ましくは、100μm以上離れた点とすることで素子の歩留まりを上げることができる。
尚、本実施形態では、図11(a)のように、GaN系基板250とLD構造251との界面から劈開導入溝252の最深部までの深さを、1μmとなる深さで一定とした。又、ストライプ状導波路253から劈開導入溝252の始点及び終点への距離を125μmとした。又、劈開補助溝254については、その深さd5を20μm、線幅wを20μm、<1−100>方向における各劈開補助溝254毎のピッチpを500μmとした。
又、このようにして劈開導入溝252を設ける際、バーの歩留まり良く分割するために、上述した範囲内でできるだけ<11−20>方向に長く形成するのが望ましいが、破線形状としても構わない。又、劈開導入溝252の形成方法は、上述したスクライブ以外にRIEなどのドライエッチングやウェットエッチングを用いても構わない。
次に、このようにして劈開導入溝252が設けられたウェハを<11−20>方向に分割して、バーを得る。このウェハの分割では、劈開導入溝252の位置する位置に対して、ブレーキング刃をGaN系基板250の裏面側の劈開補助溝254から当ててウェハを押し割る。このようにすることで、分割されたバーにおいて、ストライプ状導波路253が分割された部分に劈開面を使用した端面を形成することができる。尚、刃をぶつけることで与える衝撃によるクリービング、又は、局所的に罫書き線周辺のみを加熱して分割する手法、又は、音波や水流による衝撃等によるブレーキングなどを用いて、ウェハの分割を行うようにしても構わない。
このようにして分割することによって、図11のようなウェハから共振器長500μmのバーを多数得た。共振器長は設定値の500μm±5μmに収まっており、バーの歩留まりが96%に収まった。このとき、分割したバーにおいて、劈開導入溝252間における端面の凹凸の平均を測定したところ、その結果が第1の実施形態のものと同等となった。よって、サファイア基板上にGaN系半導体を堆積した場合と比べ、劈開した端面が更に平坦なものとして品質が向上していることが確認された。
このように図11のようなウェハから分割して得られたバーは、裏面あるいは表面を、ストライプ状導波路253の間毎に、<1−100>方向に罫書きして分割することによって、GaN系半導体レーザ素子を得る。このとき、罫書きする際の針圧を調整して<1−100>方向に押し割るようにして分割してGaN系半導体レーザ素子を得るようにしても構わないし、又は、完全に切断して分割し、GaN系半導体レーザ素子を得るようにしても構わない。
2.GaN系半導体レーザ素子の構成
図12を参照して、上述のようにしてウェハから分割されて形成されたGaN系半導体レーザ素子1aの構成について説明する。尚、図12のGaN系半導体レーザ素子1aは、図4のGaN系半導体レーザ素子1と同一の部分については、同一の符号付して、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の製造方法によって製造されたGaN系半導体レーザ素子1aは、第1の実施形態と同様、その表面上の4隅に位置する部分において、LD構造11側に、劈開導入溝252(図11)に相当する溝入れ部14が形成されている。更に、そのGaN系基板10の裏面側におけるミラー端面側の2カ所に、溝入れ部15が形成されている。この溝入れ部15は、ウェハ下面に予め形成された劈開補助溝254(図11)に相当する。
このとき、GaN系半導体レーザ素子1aに対する溝入れ部14の数は、本実施形態では4つとされているが、ウェハ上面に予め形成された劈開導入溝252の状態により変化し、少なくとも1つ以上あればよい。又、溝入れ部15の数についても同様、本実施形態では2つとされているが、ウェハ下面に予め形成された劈開補助溝254の状態により変化し、少なくとも1つ以上あればよい。
尚、本実施形態において、ウェハを分割してGaN系半導体レーザ素子を得る際、劈開導入溝部分によって発生する溝入れ部を切り落してしまっても構わない。これは、劈開導入溝形成時の塵などを除去できる等の効果がある。
又、本実施形態において、第1の実施形態と同様の構成のウェハに対して、劈開導入溝及び劈開補助溝をそれぞれ、ウェハの上面と下面に設けるようにして、GaN系半導体レーザ素子を分割するようにしたが、第2の実施形態(図5)と同様の構成のウェハに対して、劈開導入溝及び劈開補助溝をそれぞれ、ウェハの上面と下面に設けるようにして、GaN系半導体レーザ素子を分割するようにしても構わない。
上記各実施形態において、ミラー端面の形成方位として特定の面を選定して説明したが、六方晶のGaN系半導体固有の劈開面である{0001}面、{11−20}面、および{1−100}面のうちの任意の面に平行な面を選定してもよい。ただし、中でも{1−100}面が劈開性が良好なことから好ましい。即ち、(1−100)、(10−10)、(01−10)、(−1100)、(−1010)、及び(0−110)各面のいずれかをミラー端面とするのが好ましい。
又、本発明が適用される半導体レーザ素子の光導波路構造は、上記各実施の形態に示した例に限られるものではない。上記した各実施形態に示したリッジ構造を始めとして、セルフ・アラインド・ストラクチャ(SAS)構造、電極ストライプ構造、埋め込みヘテロ(BH)構造、チャネルド・サブストレイト・プレイナ(CSP)構造など、他の構造としても、本発明の本質にかかわるものではなく、上述と同様の効果が得られる。