発明の分野
本発明は、エアバッグ内部からエアバッグ外部へガスを流出させることにより、乗員がエアバッグによってソフトに受け止められるようにするためのベントホールと、該ベントホールからのガスの流出を規制する規制手段とを備えたエアバッグに関する。また、本発明は、このエアバッグを備えたエアバッグ装置に関する。
発明の背景
エアバッグにベントホールを設け、膨張したエアバッグに車両乗員等が突っ込んで来たときに、該ベントホールを介してエアバッグ内部からガスを流出させることにより、該車両乗員等をエアバッグによってソフトに受け止めて拘束することは周知である。
特開2000−16228号公報には、エアバッグ内部のガス圧が所定圧に達するまではベントホールが蓋部材によって覆われており、所定圧を超えるとこのガス圧により該蓋部材が押し開かれてベントホールが開放するよう構成されたエアバッグが記載されている。
なお、同号公報では、車両の運転席用エアバッグが例示されている。同号のエアバッグは、それぞれ円形の2枚のシート材(パネル)の周縁部同士を縫い合わせてなるものであり、その全体が1個の室となっている。このエアバッグの車両乗員側と反対側のシート材にベントホールが設けられており、このベントホールを覆うように蓋部材が設けられている。
同号公報のエアバッグにあっては、該エアバッグが膨張する場合、エアバッグ内部のガス圧が所定圧となるまではベントホールが蓋部材によって覆われており、該ベントホールからのガスの流出が規制されているので、エアバッグ内部が速やかに高圧となり、エアバッグが迅速に展開する。
そして、エアバッグ内部のガス圧が所定圧を超えると、該蓋部材が押し開かれてベントホールが開放するので、この膨張したエアバッグに車両乗員が突っ込んで来た場合には、該ベントホールを介してエアバッグ内部からガスが流出することにより、該車両乗員がエアバッグによってソフトに受け止められ、拘束される。
特開2000−16228号公報
上記特開2000−16228号にあっては、エアバッグ内部の圧力が所定以上に高くなったときには、エアバッグに乗員が突っ込んで来る前の段階であってもベントホールが開となり、ベントホールから徒らにガスが流出してしまうおそれがある。
発明の概要
本発明は、エアバッグに乗員が突っ込んで来るまではベントホールが閉又は小開度となっており、エアバッグに乗員が突っ込むとベントホールが開又は大開度となるエアバッグ及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
本発明のエアバッグは、ベントホールと、該ベントホールからのガスの流出を規制する規制手段とを有するエアバッグにおいて、該ベントホールは、膨張した状態におけるエアバッグの乗員対向面と反対側の面又はエアバッグの側面に設けられており、該規制手段は、該エアバッグの内側に配置され、該ベントホールを覆う蓋部材と、該エアバッグ内部を通って該蓋部材と前記乗員対向面とを繋ぐ繋ぎ部材とを備え、エアバッグが膨張したときに、該繋ぎ部材により該蓋部材がエアバッグ外部側への移動を阻止されて前記ベントホールに重なり、これにより該ベントホールが閉又は小開度とされ、膨張したエアバッグに乗員が接触して前記乗員対向面を後退させることにより、該蓋部材がエアバッグ内部のガス圧によって該ベントホールからエアバッグ外に押し出され、これにより該ベントホールが開又は大開度となることを特徴とする。
本発明のエアバッグ装置は、上記本発明のエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するガス発生器と、該エアバッグが取り付けられるリテーナと、該エアバッグを該リテーナに固定する固定部材とを備える。
該固定部材はエアバッグの内部に配置されており、該固定部材に、前記繋ぎ部材の挿通部が設けられており、該繋ぎ部材は、一端側が該エアバッグの前記乗員対向面に連なり、途中部が該挿通部に挿通され、他端側が前記蓋部材の一端に連なっており、該蓋部材の、前記ベントホールを挟んで該繋ぎ部材と反対側の端部が、エアバッグの該ベントホール周囲部に結合されていてもよい。
実施の形態に係るエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図である。
図1のエアバッグ及びエアバッグ装置の乗員受け止め時の断面図である。
図1のエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図である。
図1のエアバッグのリヤパネルの平面図である。
実施の形態に係るエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図である。
図5のエアバッグ及びエアバッグ装置の乗員受け止め時の断面図である。
図5のエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図である。
実施の形態に係るエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図である。
図8のエアバッグ及びエアバッグ装置の乗員受け止め時の断面図である。
図8のエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図である。
実施の形態に係るエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図である。
図11のエアバッグ及びエアバッグ装置の乗員受け止め時の断面図である。
図11のエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図である。
実施の形態に係るエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図である。
図14のエアバッグ及びエアバッグ装置の乗員受け止め時の断面図である。
図14のエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図である。
図17aは図14のエアバッグのベントホール付近の拡大分解斜視図、図17bは図17aのベントホール付近の拡大斜視図である。
図18aは実施の形態に係る助手席用エアバッグの膨張時の斜視図、図18bは図18aのエアバッグの垂直断面図である。
図19aは図18aのエアバッグに乗員が突っ込んで来る前の水平断面図、図19bは図18aのエアバッグに乗員が突っ込んで来た後の水平断面図である。
実施の形態に係るエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図である。
図20のエアバッグ及びエアバッグ装置の乗員受け止め時の断面図である。
実施の形態に係るエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図である。
実施の形態に係るエアバッグの作動態様を示す水平断面図であり、図23aは、膨張したエアバッグの乗員対向面を乗員が後退させる前の状態を示し、図23bは、乗員が乗員対向面を後退させた状態を示している。
図24aは実施の形態に係るエアバッグの膨張時の斜視図、図24bは図24aのエアバッグの垂直断面図である。
図25aは図24aのエアバッグに乗員が接触する前の水平断面図、図25bは図24aのエアバッグに乗員が接触した後の水平断面図である。
図24aのエアバッグの膨張開始直後の水平断面図である。
図27aは実施の形態に係るエアバッグの蓋部材とカバーパネルとの分解平面図、図27bはカバーパネル取付後の蓋部材の平面図である。
図27aの蓋部材を備えたエアバッグの膨張時の水平断面図である。
図27aのエアバッグに乗員が接触した後の水平断面図である。
図29のXXX部分の斜視図である。
図31aは実施の形態に係るエアバッグの膨張時の斜視図、図31bは図31aのエアバッグの膨張時の垂直断面図である。
図31aのエアバッグの膨張時の水平断面図である。
図31aのエアバッグに乗員が接触した後の水平断面図である。
図31aのエアバッグに乗員が接触した後の垂直断面図である。
図35aは、実施の形態に係るエアバッグの膨張途中時の水平断面図、図35bは、図35aのエアバッグの膨張完了時の水平断面図である。
詳細な説明
本発明のエアバッグ及びエアバッグ装置にあっては、エアバッグが膨張した場合、このエアバッグに乗員が突っ込んで来る前の段階においては、繋ぎ部材により蓋部材がエアバッグ外部側への移動を阻止されてベントホールに重なり、これにより該ベントホールが閉又は小開度とされる。そのため、該ベントホールからのガスの流出が規制され、エアバッグが速やかに膨張する。また、これにより、エアバッグ装置のガス発生器からエアバッグ内に供給されたガスが無駄にエアバッグ外に流出することが防止ないし抑制されるため、ガス発生器として比較的低出力のものを用いることができ、エアバッグ装置の小型、軽量化及び構成コストの低減を図ることも可能となる。
この膨張したエアバッグに乗員が突っ込むと、エアバッグの乗員対向面が乗員に押されて後退し、その分、蓋部材がエアバッグ外部側へ移動可能となる。これにより、該蓋部材がエアバッグ内部のガス圧によりベントホールからエアバッグ外部に押し出され、ベントホールが開又は大開度となり、該ベントホールからエアバッグ外にガスが流出する。これにより、乗員がエアバッグによってソフトに受け止められ、拘束される。
本発明の態様について次に説明する。
i)前記乗員対向面と反対側の面又は前記側面のエアバッグ内側面に、前記繋ぎ部材の挿通部が設けられており、該繋ぎ部材は、一端側が前記乗員対向面に連なり、途中部が該挿通部に挿通され、他端側が前記蓋部材の一端(以下、「自由端」という。)に連なっており、該蓋部材の、前記ベントホールを挟んで該繋ぎ部材と反対側の端部(以下、「固定端」という。)が、エアバッグの該ベントホール周囲部に結合されていてもよい。
この態様にあっては、エアバッグが膨張すると、蓋部材と、繋ぎ部材のうち該蓋部材に連なる部分(挿通部から蓋部材にかけての部分)とが連続してエアバッグ内面に沿って延在するようになるため、この蓋部材のエアバッグ内面への密着性即ちベントホールの閉鎖性が良好なものとなる。
ii)該蓋部材に第1の開口が設けられており、該第1の開口を覆うように、該蓋部材にカバーパネルが重ね合わされており、該カバーパネルは、一端が、該第1の開口よりも前記繋ぎ部材側において該蓋部材に結合され、他端が、該第1の開口を挟んで該繋ぎ部材と反対側において該蓋部材に結合されており、該カバーパネルのうち、該第1の開口と重ならない部分に、第2の開口が設けられており、エアバッグが膨張したときには、該蓋部材が該繋ぎ部材に引張られて緊張するのに伴い、該カバーパネルも緊張して該蓋部材に重なり、これにより該第1の開口及び第2の開口がそれぞれ閉となり、膨張したエアバッグに乗員が接触して前記乗員対向面を後退させたときには、該蓋部材の緊張が解けて該蓋部材がエアバッグ内部のガス圧により前記ベントホールからエアバッグ外に押し出されるのに伴い、該カバーパネルも緊張が解けて該蓋部材から離反し、これにより該第1の開口及び第2の開口がそれぞれ開となるよう構成されてもよい。
この態様では、蓋部材に第1の開口が設けられており、この第1の開口がカバーパネルによって覆われている。また、このカバーパネルには、該第1の開口と重ならない位置関係にて、第2の開口が設けられている。
この態様にあっては、エアバッグが膨張したときには、蓋部材が繋ぎ部材に引張られて緊張してベントホールに重なるのに伴い、カバーパネルも緊張して蓋部材に重なり、これにより該第1の開口及び第2の開口がそれぞれ閉となる。これにより、エアバッグ内のガスが該第1の開口及び第2の開口並びにベントホールからエアバッグ外に流出することが規制され、エアバッグが速やかに膨張する。
また、膨張したエアバッグに乗員が接触してエアバッグの乗員対向面を後退させたときには、蓋部材の緊張が解けてこの蓋部材がエアバッグ内部のガス圧によりベントホールからエアバッグ外に押し出されるのに伴い、カバーパネルも緊張が解けて蓋部材から離反し、これにより該第1の開口及び第2の開口がそれぞれ開となる。
そのため、ベントホールからエアバッグ外に流出したガスが蓋部材の裏側(エアバッグ側)に吹き当っても、このガスは、該第1の開口及び第2の開口を通り抜けて蓋部材の表側(エアバッグと反対側)へ流れるので、ガスがスムーズにエアバッグ外に流出する。
また、膨張したエアバッグに乗員が接触したときの乗員対向面の後退量が少なく、蓋部材のベントホールからの離反距離が小さい場合でも、この蓋部材とベントホールとの間からだけでなく、該第1の開口及び第2の開口からもガスが流出するので、十分にガスがエアバッグ外に流出するようになる。
iii)該第1の開口及び第2の開口は、それぞれ、前記繋ぎ部材の長手方向に延在したスリットよりなってもよい。
この場合、蓋部材とカバーパネルとが繋ぎ部材に引張られることにより緊張して互いに重なり合ったときの、該第1の開口及び第2の開口の閉鎖性が良好なものとなる。
iv)エアバッグの前記乗員対向面と反対側の面又は前記側面のうち、前記ベントホール(以下、「メインベントホール」と称する。)と前記挿通部との間の部分に、エアバッグの内外を連通したサブベントホールが設けられており、前記蓋部材は、該メインベントホール及びサブベントホールを連続して覆うものであり、該蓋部材の該サブベントホールとの対面領域よりも前記繋ぎ部材側の部分、又は該繋ぎ部材の長手方向の途中部に、該蓋部材が該メインベントホールから押し出されたときに該サブベントホールと重なって該サブベントホールを開放させる開放口が設けられていてもよい。
この態様では、エアバッグの乗員対向面又は側面のうち、メインベントホールとテザーの挿通部との間の部分に、エアバッグの内外を連通するサブベントホールが設けられており、蓋部材は、これらのメインベントホールとサブベントホールの双方を連続して覆うものとなっている。また、この蓋部材の該サブベントホールとの対面領域よりも繋ぎ部材側の部分、又は該繋ぎ部材の長手方向の途中部には、この蓋部材がメインベントホールから押し出されたときにサブベントホールと重なって該サブベントホールを開放させる開放口が設けられている。
この態様にあっては、エアバッグが膨張したときには、蓋部材が繋ぎ部材に引張られて緊張してメインベントホール及びサブベントホールの双方に重なる。これにより、該メインベントホール及びサブベントホールからのガスの流出が規制され、エアバッグが速やかに膨張する。
また、膨張したエアバッグに乗員が接触してエアバッグの乗員対向面を後退させたときには、蓋部材がエアバッグ内部のガス圧によりメインベントホールからエアバッグ外に押し出されてメインベントホールが開又は大開度となると共に、この蓋部材のメインベントホールからの押し出しに伴い、開放口がサブベントホール側に移動して該サブベントホールに重なる。これにより、該サブベントホールも開となり、メインベントホール及びサブベントホールの双方からガスが流出する。
従って、膨張したエアバッグに乗員が接触したときの乗員対向面の後退量が少なく、蓋部材のメインベントホールからの離反距離が小さい場合でも、この蓋部材とメインベントホールとの間からだけでなく、サブベントホールからもガスが流出するので、十分にガスがエアバッグ外に流出するようになる。
v)前記挿通部から該メインベントホールに向う方向に位置を異ならせて複数個の該サブベントホールが配設されており、該サブベントホール開放口は、該繋ぎ部材の長手方向に延在する長孔状となっていてもよい。
このように構成した場合、膨張したエアバッグに乗員が接触したときの乗員対向面の後退量が多いほど、開放口のサブベントホール側への移動距離が大きくなり、その分、開放口がより多くのサブベントホールと重なるようになる。これにより、サブベントホールの全体の開放量が増大して、より多量にガスがエアバッグ外に流出するようになる。
このようにエアバッグ外へのガスの流出量が増えることにより、エアバッグの衝撃吸収量も増大する。
従って、この態様によれば、エアバッグの乗員対向面の後退量に合わせて衝撃吸収量を調節することができる。
なお、例えば、乗員の体格が大きいほど、あるいは衝突速度が速いほど、膨張したエアバッグに乗員が接触したときの乗員対向面の後退量が多くなる。請求項6の態様にあっては、この場合、サブベントホールの全体の開放量が増大して、より多量にガスがエアバッグ外に流出するようになるので、十分に衝撃を吸収することができる。
vi)本発明では、エアバッグの乗員対向面と反対側の面、又はエアバッグの側面に、少なくとも2個のベントホールが設けられると共に、これらのベントホールにそれぞれ蓋部材が設けられ、且つこれらの蓋部材の自由端側とエアバッグの乗員対向面とがそれぞれ繋ぎ部材によって連結された構成であってもよい。
この場合、各繋ぎ部材の長手方向の途中部同士を、エアバッグの内圧が所定圧以上になると結合を解除するように構成された結合手段により結合解除可能に結合してもよい。
このように構成した場合、エアバッグが膨張を開始してから、エアバッグの内圧が所定圧に達するまでは、各繋ぎ部材の長手方向の途中部同士が結合されているので、各繋ぎ部材の乗員側への伸び出しが規制される。そのため、エアバッグの乗員対向面がエアバッグの膨張完了時の位置まで膨らみ出す前に、各繋ぎ部材が緊張するようになる。これにより、エアバッグの膨張開始後、早期のうちに各蓋部材が各繋ぎ部材に引っ張られて緊張して各ベントホールを閉鎖するようになるため、エアバッグの内部が速やかに高内圧となり、エアバッグが迅速に膨張する。
その後、エアバッグの内圧が所定圧以上になったときには、結合手段による繋ぎ部材同士の結合が解除されて繋ぎ部材同士が分離する。これにより、各繋ぎ部材の乗員側への伸び出し規制が解除され、エアバッグの乗員対向面が該エアバッグの膨張完了時の位置まで膨らみ出す。
繋ぎ部材は、蓋部材と乗員対向面とを直接的に繋ぐものであってもよく、間接的に内部部材を介して、繋ぐものであってもよい。
vii)該エアバッグ内に、膨張した状態におけるエアバッグの乗員対向面と、これと反対側とを連結した内部部材が設けられており、前記繋ぎ部材は、該内部部材に連結されていてもよい。
この態様では、エアバッグの内部に、膨張した状態におけるエアバッグの乗員対向面と、これと反対側とを連結した内部部材を設け、この内部部材に繋ぎ部材を連結している。この場合、エアバッグが膨張するのに伴い、内部部材が乗員側へ展張されると共に、蓋部材が繋ぎ部材を介してこの内部部材によりエアバッグ内部側へ引張られてベントホールに重なる。そして、このエアバッグが乗員を受け止めて乗員対向面が後退すると、該内部部材が弛んで蓋部材をエアバッグ内部側へ引張る力が解除され、蓋部材がベントホールから離反する。
viii)前記内部部材は、エアバッグの内部を、中央の第1室と該第1室を取り囲む第2室とに区画するインナーパネルであり、該インナーパネルには、該第1室と第2室とを連通する連通部が設けられており、該エアバッグは、まず該第1室内にガスが導入されて該第1室が膨張し、次いで該連通部を介して該第1室から第2室へガスが流入することにより該第2室が膨張するよう構成されており、前記ベントホールは、該第2室とエアバッグ外部とを連通するものであってもよい。
この態様にあっては、まず、内部部材としてのインナーパネルによって囲まれたエアバッグ中央の第1室にガスが導入されて該第1室が膨張し、これに伴って該インナーパネルが乗員側へ展張される。この第1室は、エアバッグ全体に比べて容積が小さく、且つ直接ベントホールに連通していないので、きわめて迅速に膨張する。そのため、早期のうちに、蓋部材が繋ぎ部材を介して該インナーパネルによりエアバッグ内部側へ引張られてベントホールに重なり、該ベントホールが閉又は小開度とされる。この結果、該ベントホールを介して第2室内のガスがエアバッグ外部に流出することが規制され、該第2室も速やかに高内圧となり、エアバッグ全体の膨張展開が早期化される。
ix)前記内部部材は、一端がエアバッグの乗員対向面に連結され、他端が該乗員対向面と反対側に連結された吊紐であってもよい。
この態様にあっては、内部部材は、エアバッグの乗員対向面と、これと反対側とを連結する吊紐であるため、構成を簡易なものとすることができる。
x)該エアバッグの内部を横切って、膨張した状態における該エアバッグの側部同士を連結した内部部材が設けられており、前記繋ぎ部材は、該内部部材に連結されていてもよい。
この態様にあっては、内部部材はエアバッグの内部を横切ってエアバッグの側部同士を連結するように配設されているので、ベントホールの配置の自由度が高い。
xi)前記繋ぎ部材と該内部部材とが一連一体となっていてもよい。
この態様にあっては、内部部材と繋ぎ部材とが一連一体であるため、縫合の手間が少なく、エアバッグの製作が容易である。
また、この態様にあっては、乗員対向面の比較的広い範囲にわたって、エアバッグの潰れ(該乗員対向面の後退)を感知することができる。即ち、例えば、乗員が乗員対向面の中央部からずれてエアバッグに突っ込み、該乗員対向面の比較的外周側の部分を後退させた場合でも、エアバッグの内部を横切って該エアバッグの側部同士を連結した内部部材は、この乗員対向面の退動に伴って後退し、蓋部材をエアバッグ内部側へ引張る力を解除してベントホールを開放させることが可能である。
xii)前記繋ぎ部材は、一端が前記蓋部材に連結され、他端が前記乗員対向面に連結されていてもよい。
この態様にあっては、ベントホールの位置の如何に拘らず、蓋部材と乗員対向面とを容易に連結することができる。
xiii)エアバッグの前記乗員対向面と反対側の面に、ガス発生器からのガスをエアバッグ内に導入するためのガス導入口、又はガス発生器が配置されるガス発生器配置部が設けられており、該繋ぎ部材の前記他端は、該乗員対向面のうち、該ガス導入口又はガス発生器配置部と対面する部分に連結されていてもよい。
この態様にあっては、該ガス導入口からガスが導入されるか、又は該ガス発生器配置部に配置されたガス発生器が作動して該ガス発生器からエアバッグ内にガスが噴出すると、このガスは、エアバッグの乗員対向面のうち、該ガス導入口又はガス発生器配置部との対面部分に吹き当り、この対面部分を速やかに乗員側に展開させる。繋ぎ部材は、この対面部分に連結されているので、繋ぎ部材も速やかに乗員側に展張される。これにより、エアバッグの膨張開始後、早期のうちに蓋部材が繋ぎ部材に引張られて緊張してベントホールに重なった状態となる。
このように、エアバッグの膨張開始後、早期のうちに蓋部材がベントホールに重なった状態となることにより、エアバッグがきわめて迅速に膨張するようになる。
xiv)前記繋ぎ部材と前記蓋部材とが一体に構成されていてもよい。
このように構成することにより、各部材の製作工程やエアバッグ全体の縫製工程の簡易化を図ることが可能となる。
xv)前記乗員対向面のエアバッグ内側面に前記繋ぎ部材が引き通される引き通し部が設けられており、前記繋ぎ部材は、一端が前記蓋部材に連結され、その長手方向の途中部分が該引き通し部に引き通されていてもよい。
この態様にあっては、乗員対向面の後退量が少ない場合であっても、蓋部材のベントホールからの離反量を多くすることができる。
xvi)前記乗員対向面に前記引き通し部として複数個の乗員側引き通し部が互いに配置位置を異ならせて設けられ、前記乗員対向面と反対側の面に反乗員側引き通し部が設けられており、該繋ぎ部材の途中部分が各乗員側引き通し部と反乗員側引き通し部とに交互に引き通されていてもよい。
この態様にあっては、乗員対向面の後退量が少ない場合であっても、蓋部材のベントホールからの離反量を多くすることができる。
また、この態様によると、乗員対向面の異なる位置にそれぞれ引き通し部が設けられて繋ぎ部材の途中部分が引き通されているので、乗員対向面が部分的に後退した場合であっても、繋ぎ部材が弛んで蓋部材がベントホールからエアバッグ外に押し出されるようになる。
xvii)該エアバッグ内に、該繋ぎ部材の長手方向の途中部分を前記乗員対向面と反対側に引張る引張り部材が設けられており、該引張り部材は、基端側が該乗員対向面と反対側のエアバッグ内側面に連結されており、該引張り部材の先端側には、該繋ぎ部材が引き通されるガイド部が設けられており、該繋ぎ部材は、その長手方向の途中部分が該ガイド部に引き通されていてもよい。
この態様にあっては、エアバッグが膨張した場合、繋ぎ部材の基端側(蓋部材と反対側)が乗員対向面側に引張られ、該繋ぎ部材の長手方向の途中部分が引張り部材によって該乗員対向面と反対側に引張られるので、膨張したエアバッグの該乗員対向面を乗員が後退させる前の段階において繋ぎ部材が弛みにくい。
xviii)本発明では、蓋部材は、エアバッグの膨張開始時点において、ベントホールからエアバッグの外部側にはみ出しておらず、且つエアバッグの内部側からベントホールに重なった状態となっていることが好ましい。これにより、エアバッグの膨張開始時からベントホールが蓋部材によって閉又は小開度とされるため、エアバッグの膨張途中において、ベントホールからエアバッグ外にガスが流出することが防止ないし抑制される。この結果、エアバッグが迅速に膨張する。
xix)本発明では、エアバッグを折り畳む際に、蓋部材がベントホールからエアバッグの外部側にはみ出しておらず、且つこの蓋部材がエアバッグ内部側からベントホールに重なっている状態として、エアバッグを折り畳むことが好ましい。エアバッグをこのように折り畳むことにより、エアバッグが膨張したときには、このエアバッグの膨張開始時から蓋部材がベントホールに重なった状態となっている。
xx)該エアバッグの内外を常時連通する常開型ベントホールが設けられていてもよい。
この常開型ベントホールが設けられたエアバッグにあっては、エアバッグ膨張時においても主として該常開型ベントホールからエアバッグ外にガスが流出する。乗員がエアバッグを押し潰し、エアバッグの厚みに変化を及ぼした場合、蓋部材付きベントホールも開放状態となるため、この開放した蓋部材付きベントホールと常開型ベントホールとの双方から速やかにガスが流出する。
xxi)本発明では、エアバッグの内部に配置されたエアバッグ固定部材に、繋ぎ部材の挿通部を設けてもよい。
なお、本発明において、前述の各引き通し部やガイド部に引き通される繋ぎ部材の長手方向の途中部分とは、繋ぎ部材がこの挿通部にも挿通される場合には、該繋ぎ部材の長手方向の途中部分であって、且つこの挿通部を挟んで蓋部材と反対側に延在する部分をいう。
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
第1図及び第2図は実施の形態に係るエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図、第3図はこのエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図、第4図はこのエアバッグのリヤパネルの平面図である。なお、第1図はエアバッグに乗員が突っ込んで来る前の状態を示し、第2図はエアバッグに乗員が突っ込んで来た後の状態を示している。
この実施の形態では、エアバッグ10は、車両の運転席用エアバッグである。
このエアバッグ10は、乗員対向面を構成するフロントパネル12と、該乗員対向面と反対側の外面を構成するリヤパネル14と、該エアバッグ10の内部を第1室1と第2室2とに区画する内部部材としての第1及び第2インナーパネル22A,22Bと、該第2室2とエアバッグ10の外部とを連通するベントホール18と、該ベントホール18からのガスの流出を規制する蓋部材60と、該蓋部材60をインナーパネル22Bに連結する繋ぎ部材としてのテザー70等を備えている。
該フロントパネル12、リヤパネル14並びに第1及び第2インナーパネル22A,22Bはそれぞれ円形の織布よりなる。該フロントパネル12とリヤパネル14とは略同一直径のものであり、それらの外周縁部同士がシーム15によって縫合されることにより、袋体状とされている。該シーム15は、フロントパネル12及びリヤパネル14の外周に沿って円環状に周設されている。該シーム15は縫糸等よりなるが、これに限定されない。
該リヤパネル14には、インフレータ(ガス発生器)用開口16と前記ベントホール18とが設けられている。該開口16はリヤパネル14の中央に配置されている。この開口16の周縁部には、エアバッグ10の外側から、円環形の織布よりなるパッチクロス61が取り付けられている。符号62(第4図)は、このパッチクロス61とリヤパネル14とを縫合したシームを示している。該シーム62は、このパッチクロス61の外周に沿って円環状に周設されている。開口16の周囲には、該パッチクロス61とリヤパネル14とを貫通したボルト挿通孔20が設けられている。ベントホール18は、該パッチクロス61の外周縁部とリヤパネル14の外周縁部(シーム15)との間に配置されている。
このベントホール18に対し、エアバッグ10の内側から前記蓋部材60が重ね合わされている。この実施の形態では、該蓋部材60は前記テザー70と一連一体に構成されている。
このエアバッグ10の内部に前記第1インナーパネル22A及び第2インナーパネル22Bが設けられている。この第1及び第2インナーパネル22A,22Bはフロントパネル12及びリヤパネル14と略同心状に配置され、その外周縁部同士が第1の結合手段としてのテアシーム23Bによって縫合されている。この第1及び第2インナーパネル22A,22Bにより、エアバッグ10の内部が中央の第1室1と、該第1室1を取り囲む第2室2とに区画される。第1室1はインナーパネル22A,22Bの内側である。
フロントパネル12側の第1インナーパネル22Aの中央部(エアバッグ10が膨張した状態にあっては、インナーパネル22Aの先端側となる部分)が、該フロントパネル12の中央部に対し、シーム23Aによって縫合されている。
リヤパネル14側の第2インナーパネル22Bの中央部(エアバッグ10が膨張した状態にあっては、第2インナーパネル22Bの後端側となる部分)には、該リヤパネル14のインフレータ用開口16と略同心状に配置されるインフレータ用開口24が設けられている。また、このインナーパネル22Bの該開口24の周囲には、リヤパネル14のボルト挿通孔20と重なるボルト挿通孔26が設けられている。
該第1及び第2インナーパネル22A,22Bには、それぞれ、第1室1と第2室2とを連通する連通部としての連通口27,28が設けられている。この実施の形態では、第2インナーパネル22Bの連通口28は、前記インフレータ用開口24に比較的近接して設けられており、インフレータ用開口16,24を介して第1室1内に配置される後述のインフレータ36のガス噴出方向の延長線上、即ち該インフレータ36のガス噴出口36aと対峙するように配置されている。ただし、連通口27,28の配置はこれに限定されない。
なお、開口16,24や連通口27,28、ベントホール18の周縁部に補強用のパッチ等を取り付けてもよい。
この実施の形態では、前記テザー70は第2インナーパネル22Bと一体に設けられており、一端(基端)側が該第2インナーパネル22Bの外周縁部に連なっている。該テザー70の他端(先端)側が、ベントホール18を覆う蓋部材60となっている。
ただし、該テザー70は第1インナーパネル22Aと一体に設けられてもよく、これらとは別体に設けられてもよい。また、該テザー70は、各インナーパネル22A,22Bのうちの外周縁部以外の箇所に連結されてもよい。蓋部材60も、このテザー70とは別体に設けられて該テザー70の先端に取り付けられてもよい。
この実施の形態では、リヤパネル14のエアバッグ内側面に、該テザー70の途中部が挿通される挿通部90が設けられている。第4図に示すように、該挿通部90は、この実施の形態では、ベントホール18よりもリヤパネル14の中央側(ベントホール18と前記パッチクロス61の外周縁との間)に配置されている。この実施の形態では、該挿通部90は、略長方形の小クロスよりなる。長方形の小クロスの1対の2辺部分がリヤパネル14にシーム91により縫着されている。テザー70は、クロスの残りの1対の2辺からクロスと該パネル14との間を引き通される。
第4図の通り、蓋部材60は、ベントホール18をリヤパネル14の半径方向に横切るように延在しており、この蓋部材60のリヤパネル14中央側(基端側)にテザー70が連なり、前記挿通部90に挿通されている。この蓋部材60の先端側は、シーム63により、ベントホール18よりもリヤパネル14外周側において該リヤパネル14に縫着されている。
なお、テザー70の長さは、エアバッグ10が膨張したときに、該テザー70がインナーパネル22A,22Bによってエアバッグ10の内側へ引張られて緊張し、これにより蓋部材60のエアバッグ10外部側への移動(エアバッグ10内のガス圧によりベントホール18からエアバッグ10外に押し出されること)が阻止されるようになり、なおかつ、該蓋部材60がテザー70によって過度にエアバッグ10の内側へ引張られてリヤパネル14の内側面から浮き上ってしまうこともない寸法とされている。
このエアバッグ10を取付けるためのリテーナ30には、中央にインフレータ取付口32が設けられ、その周囲にボルト挿通孔34が設けられている。
インフレータ36は略円柱形状のものであり、その筒軸方向の先端側の側周面にガス噴出口36aが設けられている。この実施の形態では、該ガス噴出口36aは、インフレータ36の周方向に等間隔にて4個設けられている。インフレータ36は、これらのガス噴出口36aから放射方向にガスを噴出するよう構成されている。このインフレータ36の筒軸方向の途中部分(該ガス噴出口36aよりも後端側)の側周面からは、インフレータ固定用のフランジ38が突設されている。該フランジ38には、ボルト挿通孔40が設けられている。このインフレータ36は、該先端側がインフレータ取付口32に嵌装される。
エアバッグ10をリテーナ30に取り付けるに当っては、第2インナーパネル22Bのインフレータ用開口24の周縁部をリヤパネル14のインフレータ用開口16の周縁部と重ね合わせ、リテーナ30のインフレータ取付口32の周縁部に重ね合わせる。そして、押えリング42のスタッドボルト44を第2インナーパネル22B、リヤパネル14、リテーナ30及びフランジ38の各ボルト挿通孔26,20,34,40に通し、その先端にナット46を締め込んで、第2インナーパネル22B、リヤパネル14及びインフレータ36をリテーナ30に固定する。
これにより、第2インナーパネル22Bのインフレータ用開口24の周縁部はリヤパネル14のインフレータ用開口16の周縁部に連なり、第1及び第2インナーパネル22A,22Bの外周縁部同士が連なり、第1インナーパネル22Aの中央部はフロントパネル12に連なったものとなる。
その後、エアバッグ10を折り畳み、このエアバッグ10の折り畳み体を覆うようにモジュールカバー48をリテーナ30に取り付けることにより、エアバッグ装置が構成される。ただし、エアバッグ10のリテーナ30への取り付けに先立って、予めエアバッグ10が折り畳まれていてもよい。このエアバッグ装置は、自動車のステアリングホイール50に設置される。
本発明では、エアバッグ10を折り畳む際には、蓋部材60がベントホール18からエアバッグ10の外部側にはみ出しておらず、且つこの蓋部材60がエアバッグ10の内部側から該ベントホール18に重なっている状態として、エアバッグ10を折り畳むことが好ましい。エアバッグ10をこのように折り畳むことにより、エアバッグ10が膨張した場合には、このエアバッグ10の膨張開始時から蓋部材60がベントホール18に重なった状態となっている。これにより、エアバッグ10の膨張開始時から、該ベントホール18からのガスの流出が規制されるため、エアバッグ10が迅速に膨張するようになる。
このように構成されたエアバッグ装置を搭載した車両の衝突時等には、インフレータ36が作動してエアバッグ10内にガスが噴出する。エアバッグ10は、このガスにより膨出してモジュールカバー48を押し開き、車両室内に展開する。
このエアバッグ10は、まず第1室1内にインフレータ36からのガスが供給されて該第1室1が膨張する。この際、該第1室1の膨張に伴い第1及び第2インナーパネル22A,22Bが乗員側へ展張されると共に、テザー70がこのインナーパネル22A,22Bによりエアバッグ10の内部側へ引張られて緊張し、蓋部材60のエアバッグ10外部側への移動を阻止するようになる。これにより、蓋部材60がエアバッグ10内のガス圧によってベントホール18からエアバッグ10外に押し出されることなく、ベントホール18に重なった状態となり、ベントホール18が閉鎖される。次いで、連通口27,28を介して第1室1から第2室2にガスが流入し、該第2室2が膨張する。
このエアバッグ10にあっては、該第1室1は、エアバッグ10の全体に比べて容積が小さく、且つ直接ベントホール18に連通していないので、きわめて迅速に膨張する。そのため、早期のうちに、テザー70が緊張して蓋部材60のエアバッグ外部側への移動が阻止され、ベントホール18が閉鎖状態となる。これにより、該ベントホール18を介して第2室2内のガスがエアバッグ外部に流出することが規制され、第2室2も速やかに高内圧となる。この結果、エアバッグ10全体の膨張が早期化される。
なお、前述の通り、この実施の形態では、エアバッグ10を折り畳む際に、蓋部材60がエアバッグ10の内部側から該ベントホール18に重なっている状態としてエアバッグ10を折り畳んでいるので、該蓋部材60は、このエアバッグ10の膨張開始時からベントホール18に重なった状態となっている。これにより、エアバッグ10の膨張開始時から、該ベントホール18からのガスの流出が規制されるため、第2室2がきわめて迅速に膨張する。
この実施の形態では、第1室1と第2室2とを連通する連通口28が、該第1室1内に配置されたインフレータ36のガス噴出方向の延長線上、即ち該インフレータ36のガス噴出口36aと対峙するように配置されているので、インフレータ36が作動したときには、該ガス噴出口36aから該連通口28に向かってガスが噴出される。このため、該インフレータ36からのガスは、該連通口28を通って第2室2に流入し易い。これにより、第2室2の膨張が一層早期化される。
その後、この膨張したエアバッグ10に乗員が突っ込んで来た場合には、第2図のように、このエアバッグ10のフロントパネル12が乗員に押されてリヤパネル14側へ後退してインナーパネル22A,22Bが弛み、その分だけ蓋部材60がエアバッグ10の外部側へ移動可能となる。これにより、該蓋部材60がエアバッグ10内のガス圧によってベントホール18から押し出され、該ベントホール18が開放する。この結果、該ベントホール18からエアバッグ10の外部にガスが流出し、乗員がエアバッグ10によってソフトに受け止められ、拘束される。
第5図及び第6図は別の実施の形態に係るエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図、第7図はこのエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図である。なお、第5図はエアバッグに乗員が突っ込んで来る前の状態を示し、第6図はエアバッグに乗員が突っ込んで来た後の状態を示している。
この実施の形態では、エアバッグ10Aは、乗員対向面を構成するフロントパネル12と、該乗員対向面と反対側の外面を構成するリヤパネル14と、このエアバッグ10Aの内部において該フロントパネル12とリヤパネル14とを連結する、内部部材としての吊紐80と、このエアバッグ10Aの内外を連結するベントホール18と、該ベントホール18からのガスの流出を規制する蓋部材60と、該蓋部材60を該吊紐80に連結する繋ぎ部材としてのテザー70A等を備えている。
この実施の形態でも、該フロントパネル12及びリヤパネル14の外周縁部同士がシーム15によって縫合されることにより袋状のエアバッグ10Aの外殻が構成され、その内部に吊紐80が設けられている。また、この実施の形態でも、リヤパネル14に、インフレータ(ガス発生器)用開口16と、前記ベントホール18と、該リヤパネル12をリテーナ30に固定するためのボルト挿通孔20とが設けられている。前記蓋部材60は、該リヤパネル14の内面側から該ベントホール18に重ね合わされている。この実施の形態でも、該蓋部材60は前記テザー70Aと一連一体に構成されている。
この実施の形態では、吊紐80は、フロントパネル12側の第1の吊紐構成部材81と、リヤパネル14側の第2の吊紐構成部材82とからなる。
第1の吊紐構成部材81は、この実施の形態では、フロントパネル12の中央部に配置された基片部81aと、該基片部81aの外周から放射方向に延出した2本の紐状体81b,81bとを有している。該基片部81aは、フロントパネル12よりも小径の円形の織布よりなり、紐状体81b,81bは、この基片部81aの中心を挟んで互いに反対側となる位置関係にて配置されている。該基片部81aは、フロントパネル12と略同心状に配置され、該フロントパネル12の中央部に対しシーム83により縫着されている。
また、第2の吊紐構成部材82は、この実施の形態では、リヤパネル14の中央部に配置された基片部82aと、該基片部82aの外周から放射方向に延出した2本の紐状体82b,82bとを有している。該基片部82aは、リヤパネル14よりも小径の円形の織布よりなり、紐状体82b,82bは、この基片部82aの中心を挟んで互いに反対側となる位置関係にて配置されている。該基片部82aの中央には、リヤパネル14のインフレータ用開口16と重なるインフレータ用開口82cが設けられている。また、この開口82cの周囲には、ボルト挿通孔20と重なるボルト挿通孔82dが設けられている。
これらの吊紐構成部材81,82の各紐状体81b,82bの先端部同士がシーム84により縫合されている。
この実施の形態では、一方の紐状体81b,82bの連続体(以下、この連続体を吊紐80と称することがある。)の途中部に、テザー70Aの一端(基端)側が縫着されている。符号72は、このテザー70Aの一端側を吊紐80に縫着したシームを示している。この実施の形態でも、該テザー70Aの他端(先端)側が、ベントホール18を覆う蓋部材60となっている。
この実施の形態でも、リヤパネル14のエアバッグ内側面に、該テザー70Aの途中部が挿通される挿通部90が設けられている。この挿通部90の構成は、前述の実施の形態と同様である。この実施の形態でも、該挿通部90は、ベントホール18よりもリヤパネル14の中央側に配置されている。
また、この実施の形態でも、蓋部材60は、ベントホール18をリヤパネル14の半径方向に横切るように延在しており、この蓋部材60のリヤパネル14中央側(基端側)にテザー70Aが連なり、前記挿通部90に挿通されている。この蓋部材60の先端部は、ベントホール18よりもリヤパネル14外周側において該リヤパネル14に縫着されている。
なお、このテザー70Aの長さも、エアバッグ10Aが膨張したときに、該テザー70Aが吊紐80によってエアバッグ10Aの内側へ引張られて緊張し、これにより蓋部材60のエアバッグ10A外部側への移動(エアバッグ10A内のガス圧によりベントホール18からエアバッグ10A外に押し出されること)が阻止されるようになり、なおかつ、該蓋部材60がテザー70Aによって過度にエアバッグ10Aの内側へ引張られてリヤパネル14の内側面から浮き上ってしまうこともない寸法とされている。
このエアバッグ10Aをリテーナ30に取り付けるに当っては、基片部82aのインフレータ用開口82cの周縁部をそれぞれリヤパネル14のインフレータ用開口16の周縁部と重ね合わせ、リテーナ30のインフレータ取付口32の周縁部に重ね合わせる。そして、押えリング42のスタッドボルト44を基片部82a、リヤパネル14、リテーナ30及びフランジ38の各ボルト挿通孔82d,20,34,40に通し、その先端にナット46を締め込んで、基片部82a、リヤパネル14及びインフレータ36をリテーナ30に固定する。
これにより、紐状体82bが基片部82aを介してリヤパネル14に連なり、紐状体82b,81b同士がシーム84により連なり、紐状体81bが基片部81aを介してフロントパネル12に連なったものとなる。
このエアバッグ10Aは、前述の第1〜4図のエアバッグ10において、内部部材としてインナーパネル22A,22Bを設ける代わりに吊紐80を設けたものであり、このエアバッグ10Aのその他の構成は第1〜4図のエアバッグ10と同様となっている。また、このエアバッグ10Aを備えたエアバッグ装置の構成も、前述の第1〜4図の実施の形態と同様である。第5〜7図において、第1〜4図と同一符号は同一部分を示している。
この実施の形態でも、エアバッグ10Aを折り畳む際には、蓋部材60がエアバッグ10Aの内部側から該ベントホール18に重なっている状態としてエアバッグ10Aを折り畳んでいる。
このエアバッグ10Aを備えたエアバッグ装置にあっては、車両衝突時等にインフレータ36がガス噴出作動してエアバッグ10Aが膨張すると、吊紐80がこの膨張に伴い乗員側へ展張されると共に、テザー70Aがこの吊紐80によりエアバッグ10Aの内部側へ引張られて緊張し、蓋部材60のエアバッグ10A外部側への移動を阻止するようになる。これにより、蓋部材60がエアバッグ10A内のガス圧によってベントホール18からエアバッグ10A外に押し出されることなく、ベントホール18に重なった状態となり、ベントホール18が閉鎖される。この結果、エアバッグ10A内が速やかに高内圧となり、エアバッグ10Aの膨張展開が早期化される。
この実施の形態でも、エアバッグ10Aを折り畳む際に、蓋部材60がエアバッグ10Aの内部側から該ベントホール18に重なっている状態としてエアバッグ10Aを折り畳んでいるので、該蓋部材60は、このエアバッグ10Aの膨張開始時からベントホール18に重なった状態となっている。これにより、エアバッグ10Aの膨張開始時から、該ベントホール18からのガスの流出が規制されるため、エアバッグ10Aがきわめて迅速に膨張する。
その後、この膨張したエアバッグ10Aに乗員が突っ込んで来た場合には、第6図のように、このエアバッグ10Aのフロントパネル12が乗員に押されてリヤパネル14側へ後退して吊紐80が弛み、その分だけ蓋部材60がエアバッグ10Aの外部側へ移動可能となる。これにより、該蓋部材60がエアバッグ10A内のガス圧によってベントホール18からエアバッグ10A外に押し出され、該ベントホール18が開放する。この結果、該ベントホール18からエアバッグ10Aの外部にガスが流出し、乗員がエアバッグ10Aによってソフトに受け止められ、拘束される。
このエアバッグ10Aにあっては、内部部材として、エアバッグ10Aのフロントパネル12とリヤパネル14とを連結する吊紐80を用いているため、構成がシンプルである。
上記の各実施の形態では、テザー70,70Aをエアバッグ内部部材としてのインナーパネル22A,22Bや吊紐に連結しているが、テザーをエアバッグのフロントパネル12(乗員対向面)に直接的に連結してもよい。第8図及び第9図はこのように構成されたエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図であり、第10図はこのエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図である。なお、第8図はエアバッグに乗員が突っ込んで来る前の状態を示し、第9図はエアバッグに乗員が突っ込んで来た後の状態を示している。
この実施の形態のエアバッグ10Bは、前述の第5〜7図のエアバッグ10Aにおいて、フロントパネル12に取り付けられる第1の吊紐構成部材81から延出した2本の紐状体81bのうちの一方を、繋ぎ部材としてのテザー70Bに代えた構成となっている。
即ち、この実施の形態では、該第1の吊紐構成部材81の基片部81aから、エアバッグ10Bのフロントパネル12とリヤパネル14とを連結する吊紐80を構成するための紐状体81bと、該フロントパネル12と蓋部材60とを繋ぐ繋ぎ部材としてのテザー70Bとがそれぞれ延出している。
この実施の形態でも、該基片部81aがフロントパネル12に縫着され、該紐状体81bの先端側が、リヤパネル14側の第2の吊紐構成部材82から延出した紐状体82bの先端側にシーム84によって結合されることにより、該フロントパネル12とリヤパネル14とを連結する吊紐80が構成される。また、該基片部81aを介して、テザー70Bの一端(基端)側が、フロントパネル12に連結される。
この実施の形態でも、該テザー70Bの他端(先端)側に、蓋部材60が一連一体に設けられている。
また、この実施の形態でも、リヤパネル14のエアバッグ内側面に、該テザー70Aの途中部が挿通される挿通部90が設けられている。この挿通部90の構成は、前述の各実施の形態と同様である。この実施の形態では、該挿通部90は、リヤパネル14の中央部(パッチクロス61の外周縁)に比較的近接して配置されている。
テザー70Bは、途中部がこの挿通部90に挿通され、先端側がリヤパネル14の内面に沿って該リヤパネル14の外周側に向って引き回されている。このテザー70Bの先端に連なる蓋部材60は、ベントホール18をリヤパネル14の半径方向に横切るように延在し、その先端側が、シーム63により該ベントホール18よりもリヤパネル14外周側において該リヤパネル14に縫着されている。
この実施の形態でも、テザー70Bの長さは、エアバッグ10Bが膨張したときに、該テザー70Bがフロントパネル12によって乗員側へ引張られて緊張し、これにより、蓋部材60のエアバッグ10B外部側への移動(エアバッグ10B内のガス圧によりベントホール18からエアバッグ10B外に押し出されること)が阻止されるようになり、なおかつ、該蓋部材60がテザー70Bによって過度にエアバッグ10B内部側へ引張られてリヤパネル14の内側面から浮き上ってしまうこともない寸法とされている。
このエアバッグ10Bのその他の構成は第5〜7図のエアバッグ10Aと同様となっている。また、このエアバッグ10Bを備えたエアバッグ装置の構成も、前述の第5〜7図の実施の形態と同様である。エアバッグ10Bの折り畳み方法も、エアバッグ10Aと同様である。第8〜10図において、第5〜7図と同一符号は同一部分を示している。
このエアバッグ10Bを備えたエアバッグ装置にあっては、車両衝突時等にインフレータ36がガス噴出作動してエアバッグ10Bが膨張すると、テザー70Bがフロントパネル12により直接的に乗員側へ引張られて緊張し、蓋部材60のエアバッグ10B外部側への移動を阻止するようになる。これにより、蓋部材60がエアバッグ10B内のガス圧によってベントホール18からエアバッグ10B外に押し出されることなく、ベントホール18に重なった状態となり、ベントホール18が閉鎖される。この結果、エアバッグ10B内が速やかに高内圧となり、エアバッグ10Bの膨張展開が早期化される。
この実施の形態でも、エアバッグ10Bを折り畳む際に、蓋部材60がエアバッグ10Bの内部側から該ベントホール18に重なっている状態としてエアバッグ10Bを折り畳んでいるので、該蓋部材60は、このエアバッグ10Bの膨張開始時からベントホール18に重なった状態となっている。これにより、エアバッグ10Bの膨張開始時から、該ベントホール18からのガスの流出が規制されるため、エアバッグ10Bがきわめて迅速に膨張する。
その後、この膨張したエアバッグ10Bに乗員が突っ込んで来た場合には、第9図のように、このエアバッグ10Bのフロントパネル12が乗員に押されてリヤパネル14側へ後退し、その分だけ蓋部材60がエアバッグ10Bの外部側へ移動可能となる。これにより、該蓋部材60がエアバッグ10B内のガス圧によってベントホール18からエアバッグ10B外に押し出され、該ベントホール18が開放する。この結果、該ベントホール18からエアバッグ10Bの外部にガスが流出し、乗員がエアバッグ10Bによってソフトに受け止められ、拘束される。
上記の各実施の形態では、リヤパネル14の内側面に繋ぎ部材としてのテザーの挿通部90を設けているが、エアバッグの内部に配置された他の部材、例えば該リヤパネル14をリテーナ30に固定するための固定部材としての押えリング42に、テザーの挿通部を設けてもよい。
第11図及び第12図はこのように構成されたエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図であり、第13図はこのエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図である。なお、第11図はエアバッグに乗員が突っ込んで来る前の状態を示し、第12図はエアバッグに乗員が突っ込んで来た後の状態を示している。
この実施の形態のエアバッグ10Cは、前述の第8〜10図のエアバッグ10Bにおいてリヤパネル14に設けられる挿通部90を省略した構成となっている。この実施の形態では、エアバッグ10C内に配置された、該リヤパネル14をリテーナ30に固定するための押えリング42に、繋ぎ部材としてのテザー70Bの途中部が挿通される挿通部43が設けられている。
詳しくは、この実施の形態では、押えリング42に、該押えリング42の外周縁部から側方へ突出する突片状の挿通部43が一体に形成されており、この挿通部43に設けられたテザー挿通孔(符号略)に、テザー70Bの途中部が挿通されている。ただし、この挿通部43は、押えリング42とは別体に設けられ、後から該押えリング42に取り付けられたものであってもよい。
このエアバッグ10Cのその他の構成は第8〜10図のエアバッグ10Bと同様となっている。また、このエアバッグ10Cを備えたエアバッグ装置の構成も、前述の第8〜10図の実施の形態と同様である。このエアバッグ10Cの折り畳み方法も、エアバッグ10Bと同様である。第11〜13図において、第8〜10図と同一符号は同一部分を示している。
この実施の形態のエアバッグ装置の作動態様は、第8〜10図のエアバッグ装置と同様である。
なお、上記の各実施の形態においては、各テザー70,70A,70Bの長さを長くすると、蓋部材60がベントホール18からエアバッグ10,10A,10B又は10C外に押し出されたときに、該蓋部材60がベントホール18からより離れた位置まで移動し、ベントホール18の開度が大きくなる。また、各テザー70,70A,70Bの長さを短くすると、該蓋部材60がベントホール18から比較的近い位置までしか移動せず、ベントホール18の開度が小さくなる。
従って、各テザー70,70A,70Bの長さを適宜設定することにより、蓋部材60がベントホール18から押し出されたときの該ベントホール18の開度(即ち、ベントホール18からのガスの流出速度又は流出量)をコントロールすることが可能である。
第14図及び第15図はさらに別の実施の形態に係るエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図、第16図はこのエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図、第17a図はこのエアバッグのベントホール付近の拡大分解斜視図、第17b図はこのベントホール付近の拡大斜視図である。なお、第14図はエアバッグに乗員が突っ込んで来る前の状態を示し、第15図はエアバッグに乗員が突っ込んで来た後の状態を示している。
この実施の形態のエアバッグ10Dは、前述の第8〜10図のエアバッグ10Bにおいて、繋ぎ部材とは別体に設けられた蓋部材60Aによりエアバッグ10Dの内側からベントホール18を覆い、この蓋部材60Aと該エアバッグ10D内の吊紐80とを繋ぎ部材としてのテザー70Cにより繋いだ構成となっている。
詳しくは、この実施の形態では、蓋部材60Aは長方形シートよりなる。この蓋部材60Aは、その長手方向がリヤパネル14の半径方向となるように配置され、該長手方向の両端部が、ベントホール18を挟んだ両側においてそれぞれシーム64によりリヤパネル14に縫着されている。
なお、第17a図に示すように、リヤパネル14を平たく展延させた状態における、シーム64による蓋部材60Aの両端部の該リヤパネル14への縫着位置同士の間隔L2は、蓋部材60Aを平たく展延させた状態における該蓋部材60Aの両端部同士の間隔L1よりも狭くなっている。このため、蓋部材60Aを、その両端側からリヤパネル14の内側面に重ね合わせていくと、第17b図のように、該蓋部材60Aの長手方向中央付近に弛み60aが生じることとなる。
テザー70Cは、一端(基端)側が吊紐80の途中部にシーム72により縫着され、他端(先端)側が、この蓋部材60Aの長手方向中央付近にシーム71により縫着されている。
この実施の形態では、テザー70Cの長さは、エアバッグ10Dが膨張したときに、蓋部材60Aの長手方向中央付近に生じる前記弛み60a分だけ、該蓋部材60Aをエアバッグ10Dの内部側へ引張りうる寸法となっている。
このように構成することにより、エアバッグ10Dが膨張したときには、蓋部材60Aは、該エアバッグ10D内のガス圧によりその長手方向の両端側から中央付近に向ってリヤパネル14の内側面に押し付けられていき、該中央付近に生じた弛み60aがテザー70Cによってエアバッグ10Dの内部側へ引張られた状態となる。この結果、該蓋部材60Aは、エアバッグ10D内のガス圧によりベントホール18からエアバッグ10D外に押し出されることなく、ベントホール18に重なり、該ベントホール18を閉鎖するようになる。
このエアバッグ10Dのその他の構成は第8〜10図のエアバッグ10Bと同様となっている。また、このエアバッグ10Dを備えたエアバッグ装置の構成も、前述の第8〜10図の実施の形態と同様である。エアバッグ10Dの折り畳み方法も、エアバッグ10Bと同様である。第14〜17b図において、第8〜10図と同一符号は同一部分を示している。
このエアバッグ10Dを備えたエアバッグ装置にあっては、車両衝突時等にインフレータ36がガス噴出作動してエアバッグ10Dが膨張すると、吊紐80がこの膨張に伴い乗員側へ展張されると共に、テザー70Dがこの吊紐80によりエアバッグ10Dの内部側へ引張られて緊張し、蓋部材60Aをその弛み60a分だけ該エアバッグ10Dの内部側へ引張るようになる。これにより、蓋部材60Aがエアバッグ10D内のガス圧によってベントホール18からエアバッグ10D外に押し出されることなく、ベントホール18に重なった状態となり、ベントホール18が閉鎖される。この結果、エアバッグ10D内が速やかに高内圧となり、エアバッグ10Dの膨張展開が早期化される。
なお、この実施の形態でも、エアバッグ10Dを折り畳む際に、蓋部材60Aがエアバッグ10Dの内部側から該ベントホール18に重なっている状態としてエアバッグ10Dを折り畳んでいるので、該蓋部材60Aは、このエアバッグ10Dの膨張開始時からベントホール18に重なった状態となっている。これにより、エアバッグ10Dの膨張開始時から、該ベントホール18からのガスの流出が規制されるため、エアバッグ10Dがきわめて迅速に膨張する。
その後、この膨張したエアバッグ10Dに乗員が突っ込んで来た場合には、第15図のように、このエアバッグ10Dのフロントパネル12が乗員に押されてリヤパネル14側へ後退して吊紐80が弛み、その分だけ蓋部材60Aがエアバッグ10Dの外部側へ移動可能となる。これにより、該蓋部材60Aがエアバッグ10D内のガス圧によってベントホール18からエアバッグ10D外に押し出され、該ベントホール18が開放する。この結果、該ベントホール18からエアバッグ10Dの外部にガスが流出し、乗員がエアバッグ10Dによってソフトに受け止められ、拘束される。
なお、この実施の形態においては、蓋部材60Aの弛み60aの量を多くすると、蓋部材60Aがベントホール18からエアバッグ10D外に押し出されたときに、該蓋部材60Aがベントホール18からより離れた位置まで移動し、ベントホール18の開度が大きくなる。また、蓋部材60Aの弛み60aの量を少なくすると、該蓋部材60Aがベントホール18から比較的近い位置までしか移動せず、ベントホール18の開度が小さくなる。
従って、テザー70Cの長さだけでなく、この蓋部材60Aの弛み60aの量を適宜設定することによっても、蓋部材60Aがベントホール18から押し出されたときの該ベントホール18の開度(即ち、ベントホール18からのガスの流出速度又は流出量)をコントロールすることが可能である。
上記の各実施の形態は、車両の運転席用エアバッグ及びエアバッグ装置への本発明の適用例を示しているが、本発明は、これ以外の種々のエアバッグ及びエアバッグ装置にも適用可能である。
第18a,18b,19a,19b図は本発明を適用した助手席用エアバッグの一例を示している。なお、第18a図はこの助手席用エアバッグの膨張時の斜視図、第18b図はこの膨張したエアバッグの垂直断面図、第19a図はこの膨張したエアバッグに乗員が突っ込んで来る前の水平断面図、第19b図はこの膨張したエアバッグに乗員が突っ込んで来た後の水平断面図である。
この助手席用エアバッグ100は、折り畳まれてコンテナ101内に収容され、インフレータ102によって膨張される。この助手席用エアバッグはインストルメントパネル103に設置されている。コンテナ101の上方はリッド104によって覆われている。105はウィンドシールドを示す。
この助手席用エアバッグ100の側面にベントホール110が設けられ、該エアバッグ100の内側からベントホール110に蓋部材120が被さっている。この蓋部材120は、エアバッグ100の略先後方向(乗員側と、該乗員と反対側を結ぶ方向)に該ベントホール110を横切って延在しており、その乗員と反対側の端部がベントホール110よりもエアバッグ100の後端側(乗員と反対側)においてエアバッグ100の側面(内側面)にシーム121により縫着され、乗員側の端部にテザー130が連なっている。
この実施の形態では、該蓋部材110とテザー130とは一連一体に構成されているが、これらは別体に設けられてもよい。
該ベントホール110よりも乗員側となる位置において、該エアバッグ100の側面(内側面)に、テザー130を挿通するための挿通部140が取り付けられている。この挿通部140の構成は、前述の第1〜4図の実施の形態における挿通部90と同様となっている。符号141は、この挿通部140を構成する小クロスの両端側をエアバッグ100の側面に縫着したシームを示している。
テザー130は、途中部がこの挿通部140に挿通され、末端(蓋部材120と反対側の端部)がシーム131によりエアバッグ100の乗員対向面100fに縫着されている。
この実施の形態でも、テザー130の長さは、エアバッグ100が膨張したときに、該テザー130が該エアバッグ100の乗員対向面100fによって乗員側へ引張られて緊張し、これにより、蓋部材120のエアバッグ100外部側への移動(エアバッグ100内のガス圧によりベントホール110からエアバッグ100外に押し出されること)が阻止されるようになり、なおかつ、該蓋部材120がテザー130によって過度にエアバッグ100内部側へ引張られてエアバッグ100の側面から浮き上ってしまうこともない寸法とされている。
この実施の形態でも、エアバッグ100を折り畳む際には、蓋部材120がエアバッグ100の内部側から該ベントホール110に重なっている状態としてエアバッグ100を折り畳んでいる。
このエアバッグ100を備えたエアバッグ装置にあっては、車両衝突時等にインフレータ102がガス噴出作動してエアバッグ100が膨張した場合、第18b図及び第19a図の通り、乗員対向面100fが乗員側へ膨らみ出すのに伴い、テザー130が該乗員対向面100fにより乗員側へ引張られて緊張し、蓋部材120のエアバッグ100外部側への移動を阻止するようになる。これにより、蓋部材120がエアバッグ100内のガス圧によりベントホール110からエアバッグ100外に押し出されることなく、ベントホール110に重なった状態となり、ベントホール110が閉鎖される。これにより、エアバッグ100内が速やかに高内圧となり、エアバッグ100の膨張展開が早期化される。
この実施の形態でも、エアバッグ100を折り畳む際に、蓋部材120がエアバッグ100の内部側から該ベントホール110に重なっている状態としてエアバッグ100を折り畳んでいるので、該蓋部材120は、このエアバッグ100の膨張開始時からベントホール110に重なった状態となっている。これにより、エアバッグ100の膨張開始時から、該ベントホール110からのガスの流出が規制されるため、エアバッグ100がきわめて迅速に膨張する。
その後、この膨張したエアバッグ100に乗員が突っ込んで来た場合には、第19b図のように、乗員対向面100fが乗員に押されて後退するため、その分だけ蓋部材120がエアバッグ100の外部側へ移動可能となる。これにより、該蓋部材120がエアバッグ100内のガス圧によってベントホール110からエアバッグ100外に押し出され、該ベントホール110が開放する。この結果、該ベントホール110からエアバッグ100の外部にガスが流出し、乗員がエアバッグ100によってソフトに受け止められ、拘束される。
なお、この実施の形態でもテザー130の長さを適宜設定することにより、蓋部材120がベントホール110から押し出されたときの該ベントホール110の開度(即ち、ベントホール110からのガスの流出速度又は流出量)をコントロールすることが可能である。
この助手席用エアバッグ100においても、前述の第14〜17b図の実施の形態のように、ベントホール110を弛み付きの蓋部材で覆い、エアバッグ100が膨張するときには、テザー130で該蓋部材をその弛みの分だけエアバッグ100の内側へ引張って該蓋部材をベントホール110に密着させると共に、膨張したエアバッグ100に乗員が突っ込んできたときには、該テザー130による引張りを解除して、蓋部材をその弛み分だけベントホール110から押し出させるよう構成してもよい。
この場合、テザー130の長さだけでなく、この蓋部材の弛みの量を適宜設定することによっても、蓋部材がベントホール110から押し出されたときの該ベントホール110の開度(即ち、ベントホール110からのガスの流出速度又は流出量)をコントロールすることが可能である。
第20図及び第21図はさらに別の実施の形態に係るエアバッグ装置の断面図であり、第20図は乗員受け止め前の状態を示し、第21図は乗員受け止め時の状態を示している。
この実施の形態のエアバッグ10Eは、乗員対向面を構成するフロントパネル12と、該乗員対向面と反対側の外面を構成するリヤパネル14と、このエアバッグ10Eの内部を横切って該エアバッグ10Eの側部同士を連結する内部部材としての吊紐200と、該フロントパネル12とリヤパネル14とを連結する吊紐201と、このエアバッグ10Eの内外を連結するベントホール18と、該ベントホール18からのガスの流出を規制する蓋部材202と、該蓋部材202を該吊紐200に連結する繋ぎ部材としてのテザー203等を備えている。
この実施の形態でも、該フロントパネル12及びリヤパネル14の外周縁部同士がシーム15によって縫合されることにより袋状のエアバッグ10Eの外殻が構成されている。吊紐200は、このエアバッグ10Eの径方向に張り渡され、その両端側が該シーム15によってフロントパネル12及びリヤパネル14の外周縁部にそれぞれ縫着されている。この吊紐200は、エアバッグ10Eの膨張時に該エアバッグ10Eが所定以上側方へ膨らみ出すことを防止ないし抑制するものである。
吊紐201は、一端側が、リヤパネル14のインフレータ用開口(符号略)の周縁部に縫着されたパッチクロス204に結合され、他端側が、フロントパネル12の中央付近にシーム(符号略)により縫着されている。この吊紐201は、エアバッグ10Eの膨張時に該エアバッグ10Eが所定以上乗員側へ膨らみ出すことを防止ないし抑制するものである。
ベントホール18は、この実施の形態では円形開口状のものであるが、ベントホールの開口形状はこれに限定されない。このベントホール18は、ステアリングホイール50と重ならない位置に配置されている。
このベントホール18に対し、エアバッグ10Eの内側から前記蓋部材202が重ね合わされている。この実施の形態でも、該蓋部材202は前記テザー203と一連一体に構成されている。
この実施の形態でも、リヤパネル14のエアバッグ内側面に、該テザー203の途中部が挿通される挿通部90が設けられている。図示の通り、該挿通部90は、この実施の形態ではベントホール18よりもリヤパネル14の外周側に配置されている。この挿通部90の構成は、前述の第1〜4図の実施の形態のものと同様である。符号91は、この挿通部90を構成する小クロスをリヤパネル14に縫着したシームを示している。
蓋部材202は、ベントホール18をリヤパネル14の半径方向に横切るように延在しており、この蓋部材202のリヤパネル14外周側にテザー203の一端側が連なり、前記挿通部90に挿通されている。この蓋部材202のリヤパネル14中央側の端部は、シーム205により、ベントホール18よりも該リヤパネル14中央側において該リヤパネル14に縫着されている。
テザー203の他端側は、シーム206により吊紐200の延在方向(即ちエアバッグ10Eの径方向)の途中部に縫着されている。
なお、テザー203の長さは、エアバッグ10Eが膨張し、吊紐200が該エアバッグ10Eの径方向に緊張したときに、該テザー203もこの吊紐200によってエアバッグ10Eの内側へ引張られて緊張し、これにより蓋部材202のエアバッグ10E外部側への移動(エアバッグ10E内のガス圧によりベントホール18からエアバッグ10E外に押し出されること)が阻止されるようになり、なおかつ、該蓋部材202がテザー203によって過度にエアバッグ10Eの内側へ引張られてリヤパネル14の内側面から浮き上ってしまうこともない寸法とされている。
このエアバッグ10Eのその他の構成は、前述の第1〜4図のエアバッグ10と同様である。
この実施の形態でも、エアバッグ10Eを折り畳む際に、蓋部材202がエアバッグ10Eの内部側から該ベントホール18に重なっている状態としてエアバッグ10Eを折り畳んでいる。
このエアバッグ10Eが膨張する場合、第20図に示すように、該エアバッグ10Eの内部を横切って吊紐200が緊張し、これによりエアバッグ10Eの側方への過度の膨らみ出しが抑制されると共に、フロントパネル12とリヤパネル14との間で吊紐201が緊張し、これによりエアバッグ10Eの乗員側への過度の膨らみ出しが抑制される。
また、図示の通り、この吊紐200の緊張に伴い、テザー203がエアバッグ10Eの内部側へ引張られて緊張し、蓋部材202のエアバッグ10E外部側への移動を阻止するようになる。これにより、蓋部材202がエアバッグ10E内のガス圧によってベントホール18からエアバッグ10E外に押し出されることなく、ベントホール18に重なった状態となり、ベントホール18が閉鎖される。この結果、エアバッグ10E内が速やかに高内圧となり、エアバッグ10Eの膨張展開が早期化される。
この実施の形態でも、エアバッグ10Eを折り畳む際に、蓋部材202がエアバッグ10Eの内部側から該ベントホール18に重なっている状態としてエアバッグ10Eを折り畳んでいるので、該蓋部材202は、このエアバッグ10Eの膨張開始時からベントホール18に重なった状態となっている。これにより、エアバッグ10Eの膨張開始時から、該ベントホール18からのガスの流出が規制されるため、エアバッグ10Eがきわめて迅速に膨張する。
その後、この膨張したエアバッグ10Eに乗員が突っ込んで来た場合には、第21図のように、このエアバッグ10Eのフロントパネル12が乗員に押されてリヤパネル14側へ退動し、これに伴って吊紐200も後退することにより、テザー203が弛み、その分だけ蓋部材202がエアバッグ10Eの外部側へ移動可能となる。これにより、該蓋部材202がエアバッグ10E内のガス圧によってベントホール18からエアバッグ10E外に押し出され、該ベントホール18が開放する。この結果、該ベントホール18からエアバッグ10Eの外部にガスが流出し、乗員がエアバッグ10Eによってソフトに受け止められ、拘束される。
このエアバッグ10Eにあっては、フロントパネル12の比較的広い範囲にわたって、エアバッグ10Eの潰れ(該フロントパネル12の退動)を感知することができる。即ち、乗員が膨張したエアバッグ10Eのフロントパネル12の中央部に突っ込んで来た場合はもちろんのこと、該中央部からずれてエアバッグ10Eに突っ込み、該フロントパネル12の比較的外周側の部分を後退させた場合でも、エアバッグ10Eの内部を横切って該エアバッグ10Eの側部同士を連結した吊紐200は、このフロントパネル12の退動に伴って後退し、テザー203を弛ませて蓋部材202によるベントホール18の閉鎖を解除させることが可能である。
また、このエアバッグ10Eにあっては、上記のように吊紐200は該エアバッグ10Eの内部を横切って該エアバッグ10Eの側部同士を連結するように配設されているので、ベントホール18の配置の自由度が高い。
なお、この実施の形態では、吊紐200はエアバッグ10Eを一直線状に横断するものであるが、途中で枝分れして複数方向にエアバッグを横断するよう構成してもよい。2本以上の吊紐がエアバッグを横断するように配設されてもよい。エアバッグ内を横切るように配設される内部部材は特定の形態に限定されるものではなく、例えば吊紐の代りに、エアバッグを横断して該エアバッグ内を乗員側及びこれと反対側に区画するインナーパネルを設け、このインナーパネルにテザー(繋ぎ部材)を介して蓋部材を連結してもよい。
本発明では、第22図のエアバッグ10Fのように、繋ぎ部材として長い紐状のテザー300をフロントパネル12とリヤパネル14との間を交互に架け渡してもよい。
このエアバッグ10Fにおいては、フロントパネル12に、テザー300の途中部分が引き通される複数の引き通し部301が互いに位置を異ならせて設けられると共に、リヤパネル14にも、これと同様の複数の引き通し部302が互いに位置を異ならせて設けられている。これらの引き通し部301,302は、略長方形の小クロスよりなり、この長方形の小クロスの1対の2辺部分がフロントパネル12又はリヤパネル14に縫着されている。テザー300は、クロスの残りの1対の2辺からクロスと該パネル12又は14との間を引き通される。
この実施の形態でも、該テザー300の先端側に、エアバッグ10Fの内部側からベントホール18を覆う蓋部材303が一連一体に設けられている。この蓋部材303は、ベントホール18をリヤパネル14の半径方向に横切るように延在しており、そのリヤパネル14中央側の端部がシーム304により該リヤパネル14に縫着されている。テザー300の先端側は、この蓋部材303のリヤパネル14外周側に連なっている。
また、この実施の形態でも、リヤパネル14には、該テザー300の先端側が挿通される挿通部90が設けられている。該挿通部90はベントホール18よりもリヤパネル14外周側に配置されており、テザー300の先端側は、この挿通部90に挿通されて蓋部材303に連なっている。この挿通部90の構成は、前述の各実施の形態のものと同様である。
このテザー90の他端側(蓋部材303と反対側)は、フロントパネル12側の引き通し部301とリヤパネル14側の引き通し部302とに交互に摺動可能に引き通され、末端がフロントパネル12に縫着されている。ただし、第22図においては、このテザー300の末端のフロントパネル12への縫着部の図示は省略されている。
このエアバッグ10Fのその他の構成は前述の第1〜4図のエアバッグ10と同様である。
この実施の形態でも、エアバッグ10Fを折り畳む際に、蓋部材303がエアバッグ10Fの内部側から該ベントホール18に重なっている状態としてエアバッグ10Fを折り畳んでいる。
このエアバッグ10Fが膨張した場合、第22図の通り、フロントパネル12が乗員側へ膨らみ出すのに伴い、テザー300がこのフロントパネル12とリヤパネル14との間で緊張し、蓋部材303のエアバッグ10F外部側への移動を阻止するようになる。これにより、蓋部材303がエアバッグ10F内のガス圧によってベントホール18からエアバッグ10F外に押し出されることなく、ベントホール18に重なった状態となり、ベントホール18が閉鎖される。この結果、エアバッグ10F内が速やかに高内圧となり、エアバッグ10Fの膨張展開が早期化される。
この実施の形態でも、エアバッグ10Fを折り畳む際に、蓋部材303がエアバッグ10Fの内部側から該ベントホール18に重なっている状態としてエアバッグ10Fを折り畳んでいるので、該蓋部材303は、このエアバッグ10Fの膨張開始時からベントホール18に重なった状態となっている。これにより、エアバッグ10Fの膨張開始時から、該ベントホール18からのガスの流出が規制されるため、エアバッグ10Fがきわめて迅速に膨張する。
その後、この膨張したエアバッグ10Fに乗員が突っ込んで来た場合には、図示は省略するが、前記第2図と同様に、該フロントパネル12が乗員に押されてリヤパネル14側へ後退するため、テザー300が弛み、その分だけ蓋部材303がエアバッグ10Fの外部側へ移動可能となる。これにより、該蓋部材303がエアバッグ10F内のガス圧によってベントホール18からエアバッグ10F外に押し出され、該ベントホール18が開放する。この結果、該ベントホール18からエアバッグ10Fの外部にガスが流出し、乗員がエアバッグ10Fによってソフトに受け止められ、拘束される。
このエアバッグ10Fにあっては、テザー300がフロントパネル12とリヤパネル14との間でジグザグに引き回されているので、該フロントパネル12が乗員に押されてリヤパネル14側に後退したときの該テザー300全体の弛み量は、ジグザグに引き回されていない場合に比べて多くなる。これにより、フロントパネル12の後退量が少ない場合であっても、このテザー300の弛み量、即ち蓋部材303のベントホール18からの孕み出し量を十分に確保することが可能となる。
また、このエアバッグ10Fにあっては、フロントパネル12の異なる位置にそれぞれ引き通し部301が設けられているので、フロントパネル12が部分的に後退した場合であっても、テザー300が弛んで蓋部材303がベントホール18からエアバッグ10F外に押し出されるようになる。
第23a,23b図はさらに別の実施の形態に係るエアバッグの作動態様を示す水平断面図である。なお、第23a図は、膨張したエアバッグの乗員対向面を乗員が後退させる前の状態を示し、第23b図は、乗員が乗員対向面を後退させた状態を示している。
この実施の形態のエアバッグ100Aは、前述の第18a〜第19b図の実施の形態のエアバッグ100において、エアバッグ膨張時にテザー130の長手方向の途中部分を乗員対向面100fと反対側へ引張る引張り部材400が設けられた構成となっている。
詳しくは、該引張り部材400は、この実施の形態では紐状又は帯状のものであり、その一端側(基端側)が、エアバッグ100Aの膨張時の乗員対向面100fと反対側のエアバッグ内側面100r(以下、この面をリヤ面100rと称することがある。)にシーム401によって縫着されている。この引張り部材400の他端側(先端側)は、図示の通り、引張り部材400の基端側に折り返され、該引張り部材400の長手方向の途中部分にシーム402によって縫着されている。これにより、該引張り部材400の先端側に、環状のガイド部403が形成されている。
テザー130は、基端側がシーム131により乗員対向面100fに縫着され、その長手方向の途中部分が該ガイド部403に摺動可能に挿通され、先端側が、エアバッグ100Aの側面に設けられた挿通部140に摺動可能に挿通されて蓋部材120に連なっている。
このエアバッグ100Aのその他の構成は、第18a〜第19b図のエアバッグ100と同様である。このエアバッグ100Aの折り畳み方法も、エアバッグ100と同様である。
この実施の形態でも、エアバッグ100Aを折り畳む際に、蓋部材120がエアバッグ100Aの内部側から該ベントホール110に重なっている状態としてエアバッグ100Aを折り畳んでいるので、エアバッグ100Aが膨張した場合、このエアバッグ100Aの膨張開始時から蓋部材120がベントホール110に重なった状態となっている。これにより、エアバッグ100Aの膨張開始時から、該ベントホール110からのガスの流出が規制されるため、エアバッグ100Aがきわめて迅速に膨張する。
このエアバッグ100Aが膨張した場合、第23a図に示すように、テザー130の基端側が該エアバッグ100Aの乗員対向面100fにより乗員側に引張られると共に、その長手方向の途中部分が、引張り部材400を介して該エアバッグ100Aのリヤ面100rにより乗員と反対側へ引張られる。そのため、この膨張したエアバッグ100Aに乗員が突っ込み、乗員が乗員対向面100fをリヤ面100r側へ後退させる前の段階においては、該テザー130に弛みが生じにくく、蓋部材120によるベントホール18の閉鎖性が良好なものとなる。
なお、第23b図のように、膨張したエアバッグ100Aに乗員が突っ込み、乗員が乗員対向面100fをリヤ面100r側に後退させた場合には、この乗員対向面100fの後退に伴い、テザー130のうちガイド部403よりも該乗員対向面100f側に延在していた部分が該ガイド部403を通って蓋部材120側に繰り出される。これにより、蓋部材120のエアバッグ100A外部側への移動が許容され、蓋部材120がエアバッグ100A内のガス圧によりベントホール110から該エアバッグ100A外に押し出されてベントホール110が開放する。
前記の第18a〜第19b図及び第23a,23b図の各実施の形態では、エアバッグ100,100Aの一方の側面にのみベントホール110が設けられているが、本発明においては、エアバッグの双方の側面にベントホールが設けられてもよい。
第24a図はこのように構成されたエアバッグ100Bの膨張時の斜視図、第24b図はこの膨張したエアバッグ100Bの垂直断面図、第25a図はこの膨張したエアバッグ100Bに乗員が接触する前の水平断面図、第25b図はこの膨張したエアバッグ100Bに乗員が接触した後の水平断面図、第26図はこのエアバッグ100Bの膨張開始直後の水平断面図である。
このエアバッグ100Bも、車両のインストルメントパネル(図示略)に設置される助手席用エアバッグである。この実施の形態でも、該エアバッグ100Bは、折り畳まれてコンテナ101A内に収容され、インフレータ102Aによって膨張される。
このエアバッグ100Bは、第24b図及び第25a図に示すように、膨張した状態においては、後端側(乗員と反対側)が窄まった略三角形の側面視形状及び平面視形状を有している。この実施の形態では、該エアバッグ100Bの下面の後端付近がインフレータ配置部100gとなっている。この実施の形態では、該エアバッグ100Bの下面の後端付近にインフレータ差込口(図示略)が設けられており、このインフレータ差込口からエアバッグ100B内にインフレータ102Aが差し込まれている。
第24b図の符号106は、このインフレータ102A及びエアバッグ100Bをコンテナ101Aに固定するための固定部材を示している。この固定部材106は、エアバッグ100Bの内部側から、インフレータ102Aと該エアバッグ100Bのインフレータ配置部100gとをコンテナ101Aの底面に押え付けるように配置されている。この固定部材106は、ボルト106aによりコンテナ101Aの底面に固定されている。
第25a図に示すように、この実施の形態では、エアバッグ100Bの左右の側面100h,100mにそれぞれベントホール110が設けられている。双方のベントホール110に、それぞれ、エアバッグ100Bの内側から蓋部材120が重なっている。
この実施の形態でも、各蓋部材120は、エアバッグ100Bの略先後方向(乗員側と、該乗員と反対側を結ぶ方向)に各ベントホール110を横切って延在しており、その乗員と反対側の端部が、各ベントホール110よりもエアバッグ100Bの後端側において、各々が重なるエアバッグ100の側面100h,100m(内側面)に対してシーム121により縫着されている。各蓋部材120の乗員側の端部にはそれぞれテザー130が連なっている。
また、エアバッグ100の両側面100h,100m(内側面)には、それぞれ、各ベントホール110よりも乗員側となる位置に、テザー130を挿通するための挿通部140が取り付けられている。各テザー130は、各蓋部材120から乗員側へ引き回され、途中部がそれぞれ挿通部140に挿通されている。
この実施の形態でも、各蓋部材120と、これに連なるテザー130とは、一連一体に構成されている。また、この実施の形態では、左右のテザー130,130の乗員側端部同士が、取付片部132を介して互いに連続している。即ち、この実施の形態では、左右の蓋部材120,120と、各蓋部材120に連なるテザー130,130と、取付片部132とが、1枚の基布から切り出されることにより一体に構成されている。ただし、これらの部材120,130,132同士は別体に構成されてもよい。
該取付片部132が、エアバッグ100Bの乗員対向面100f(内側面)に対してシーム131により縫着されている。これにより、各テザー130の乗員側の端部が該乗員対向面100fに連結されている。
このエアバッグ100Bを例に用いて説明するが、本発明においては、各テザー130の乗員側端部は、エアバッグ100Bの乗員対向面100fのうち、前記インフレータ配置部100g即ちインフレータ102Aと対面した部分に連結されていることが好ましい。第25a図の通り、この実施の形態では、該乗員対向面100fの左右方向の中央付近がインフレータ102に対面しており、各テザー130の乗員側端部は、この乗員対向面100fの左右方向の中央付近に連結されている。第25a図の線分LCは、エアバッグ100Bの左右方向の中央を通る中央線を示している。
詳しくはこのエアバッグ100Bを備えたエアバッグ装置の作動の説明の中で述べるが、このように、エアバッグ100Bの乗員対向面100fのうち、インフレータ102Aと対面した部分に各テザー130の乗員側端部を連結することにより、エアバッグ100Bの膨張開始後、早期のうちに各蓋部材120が各ベントホール110に重なるようになる。
また、本発明においては、各テザー130の乗員側端部の乗員対向面100fへの結合位置Kは、この乗員対向面100fのうち、膨張したエアバッグ100Bの上端部100tよりも50mm以上下位であり、なおかつ該エアバッグ100Bの下端部100bよりも100mm以上上位であると共に、該乗員対向面100fの左右方向の中央(前記中央線LC)から該左右方向にそれぞれ200mm以下の範囲W内に位置していることが好ましい。
各テザー130の乗員側端部の乗員対向面100fへの結合位置Kをこのように設定することにより、乗員の座高や着座位置にある程度のばらつきがあっても、膨張したエアバッグ100Bの乗員対向面100fを乗員が押圧したときに、この乗員対向面100fと各テザー130の乗員側端部との結合位置Kに、乗員の腹部から頭部の間のいずれかの部位が当り、各テザー130が蓋部材120側に押されて各蓋部材120が開放動作するようになる。
このエアバッグ100Bのその他の構成は、前述の第18a〜第19b図のエアバッグ100と同様である。また、このエアバッグ100Bの折り畳み方法もエアバッグ100と同様である。第24〜26図において第18a〜第19b図と同一符号は同一部分を示している。
このエアバッグ100Bを備えたエアバッグ装置の作動について次に説明する。
車両衝突時等には、インフレータ102Aが作動し、このインフレータ102Aからエアバッグ100B内にガスが噴出してエアバッグ100Bが膨張する。この際、第25a図の通り、エアバッグ100Bの乗員対向面100fが乗員側へ膨らみ出すのに伴い、各テザー130が乗員側へ展張される。そして、各蓋部材120が各テザー130により乗員側へ引張られて緊張し、各ベントホール110に重なる。これにより、各ベントホール110が閉鎖されてエアバッグ100B外へのガスの流出が規制される。
このエアバッグ100Bにあっては、インフレータ102Aと対面するエアバッグ100Bの乗員対向面100fの左右方向中央付近に各テザー130の乗員側端部が連結されている。第26図に示すように、インフレータ102Aが作動した場合には、該インフレータ102Aから噴出したガスは、この乗員対向面100fの左右方向中央付近に吹き当るため、この乗員対向面100fの左右方向中央付近が速やかに乗員側へ展開する。これにより、各テザー130も速やかに乗員側に展張される。この結果、エアバッグ100Bの膨張開始後、早期のうちに各蓋部材120が各テザー130に引張られて緊張して各ベントホール110を閉鎖するようになるので、エアバッグ100Bがきわめて迅速に膨張する。
なお、この実施の形態でも、エアバッグ100Bを折り畳む際に、各蓋部材120がエアバッグ100Bの内部側から各ベントホール110に重なっている状態としてエアバッグ100Bを折り畳んでいるので、各蓋部材120は、このエアバッグ100Bの膨張開始時から各ベントホール110に重なった状態となっている。これにより、エアバッグ100Aの膨張開始時から、各ベントホール110からのガスの流出が規制される。
その後、この膨張したエアバッグ100Bに乗員が突っ込んで来た場合には、第25b図のように、乗員対向面100fが乗員に押されて後退する。これにより、各テザー130が各蓋部材120Aを乗員側へ引張る力が解除されるため、各蓋部材120の緊張が解けて、各蓋部材120がエアバッグ100B内のガス圧によって各ベントホール110からエアバッグ100B外に押し出され、各ベントホール110が開放する。この結果、各ベントホール110からエアバッグ100Bの外部にガスが流出し、乗員がエアバッグ100Bによってソフトに受け止められ、拘束される。
このエアバッグ100Bにあっては、該エアバッグ100Bの左右の側面100h,100mにそれぞれベントホール110が設けられているので、各ベントホール110が開放したときには、エアバッグ100Bから略左右均等にガスが流出するようになる。
また、膨張したエアバッグ100Bに乗員が接触したときの乗員対向面100fの後退量が少なく、各ベントホール110からの各蓋部材120の離反距離が小さい場合でも、双方のベントホール110からガスが流出することにより、十分にエアバッグ100B外にガスが流出するようになる。
第27a図は異なる実施の形態に係るエアバッグ100Cの蓋部材120Aとカバーパネル150との分解平面図、第27b図はカバーパネル150取付後の蓋部材120Aの平面図、第28図はこの蓋部材120Aを備えたエアバッグ100Cの膨張時の水平断面図、第29図はこの膨張したエアバッグ100Cに乗員が接触した後の水平断面図、第30図は第29図のXXX部分(ベントホール110付近)の斜視図である。なお、第30図では、エアバッグ100Cのベントホール110付近のパネルの図示が省略されている。
このエアバッグ100Cにおいても、その左右の側面100h,100mにそれぞれベントホール110が設けられ、各ベントホール110に、エアバッグ100Cの内側から、それぞれ蓋部材120Aが重なっている。
この実施の形態でも、各蓋部材120Aは、エアバッグ100Cの略先後方向(乗員側と、該乗員と反対側を結ぶ方向)に各ベントホール110を横切って延在しており、その乗員と反対側の端部が、各ベントホール110よりもエアバッグ100Cの後端側(乗員と反対側)において、各々が重なるエアバッグ100Cの側面100h,100m(内側面)に対してシーム121により縫着されている。また、各蓋部材120Aの乗員側の端部にはそれぞれテザー130が連なっている。
この実施の形態では、各蓋部材120Aに複数個(この実施の形態では3個)の第1の開口122が設けられている。この実施の形態では、各第1の開口122は、各蓋部材120Aに連なるテザー130の長手方向に延在したスリット状のものであり、該テザー130の幅方向に間隔を置いて互いに平行に配設されている。なお、この実施の形態でも、各蓋部材120Aと、これに連なるテザー130とは、一連一体に構成されている。
この実施の形態では、これらの第1の開口122を覆うように、各蓋部材120Aにカバーパネル150が重ね合わされている。このカバーパネル150は、各蓋部材120Aと略等幅の略長方形状の織布よりなる。
各カバーパネル150の一端側は、各蓋部材120Aの第1の開口122よりもテザー130側において、シーム123により該蓋部材120Aに縫着されている。また、各カバーパネル150の他端側は、各蓋部材120Aの、第1の開口122を挟んでテザー130と反対側の端部に重ね合わされ、前記シーム121により、この蓋部材120Aの端部と一緒にエアバッグ100Cの側面100h,100mに縫着されている。ただし、このカバーパネル150の他端側は、蓋部材120Aをエアバッグ100Cの側面100h,100mに縫着する前に、予め蓋部材120Aに縫着されていてもよい。
各カバーパネル150のうち、各第1の開口122と対面しない部分には、複数個(この実施の形態では4個)の第2の開口151が設けられている。この実施の形態では、該第2の開口151も、各蓋部材120Aに連なるテザー130の長手方向に延在したスリット状のものであり、該テザー130の幅方向に間隔を置いて互いに平行に配設されている。
第27b図に示す通り、これらの開口122,151は、カバーパネル150が蓋部材120Aに重なり合ったときに、隣り合う第2の開口151,151同士の間の該カバーパネル150のパネル部分にそれぞれ第1の開口122が対面すると共に、隣り合う第1の開口122,122同士の間の蓋部材120Aのパネル部分にそれぞれ第2の開口151が対面するように配置されている。
このエアバッグ100Cのその他の構成は、前述の第24a〜26図のエアバッグ100Bと同様である。また、このエアバッグ100Cの折り畳み方法も、エアバッグ100Bと同様である。第27a〜30図において第24a〜26図と同一符号は同一部分を示している。
このエアバッグ100Cを備えたエアバッグ装置の作動は次の通りである。
車両衝突時等には、インフレータ102Aが作動し、このインフレータ102Aからエアバッグ100C内にガスが噴出してエアバッグ100Cが膨張する。この際、第28図の通り、エアバッグ100Cの乗員対向面100fが乗員側へ膨らみ出すのに伴い、各テザー130が乗員側へ展張される。そして、各蓋部材120Aが各テザー130により乗員側へ引張られて緊張し、各ベントホール110に重なる。
また、各蓋部材120Aがテザー130により乗員側へ引張られて緊張するのに伴い、各カバーパネル150も、各々のテザー130側の端部が乗員側に引張られて緊張し、第28図の如く各蓋部材120Aに重なる。これにより、各蓋部材120Aの第1の開口122がカバーパネル150によって閉鎖されると共に、各カバーパネル150の第2の開口151が蓋部材120Aによって閉鎖される。
この結果、各ベントホール110及び各開口122,151からのガスの流出が阻止され、エアバッグ100Cが速やかに膨張するようになる。
なお、この実施の形態でも、エアバッグ100Cを折り畳む際に、各蓋部材120Aがエアバッグ100Cの内部側から各ベントホール110に重なっている状態としてエアバッグ100Cを折り畳んでいるので、各蓋部材120Aは、このエアバッグ100Cの膨張開始時から各ベントホール110に重なった状態となっている。これにより、エアバッグ100Cの膨張開始時から、各ベントホール110からのガスの流出が規制されるため、エアバッグ100Cがきわめて迅速に膨張する。
なお、このエアバッグ100Cにあっても、インフレータ102Aと対面するエアバッグ100Cの乗員対向面100fの左右方向中央付近に各テザー130の乗員側端部が連結されている。従って、インフレータ102Aが作動した場合、該インフレータ102Aから噴出したガスがこの乗員対向面100fの左右方向中央付近に吹き当り、この乗員対向面100fの左右方向中央付近が速やかに乗員側へ展開する。これにより、各テザー130も速やかに乗員側に展張される。この結果、エアバッグ100Cの膨張開始後、早期のうちに、各蓋部材120A及び各カバーパネル150が各テザー130に引張られて緊張して各ベントホール110並びに第1及び第2の開口122,151を閉鎖するようになるので、エアバッグ100Cがきわめて迅速に膨張する。
その後、この膨張したエアバッグ100Cに乗員が突っ込んで来た場合には、第29図のように、乗員対向面100fが乗員に押されて後退する。これにより、各テザー130が各蓋部材120Aを乗員側へ引張る力が解除されるため、各蓋部材120Aの緊張が解けて、各蓋部材120Aがエアバッグ100C内のガス圧によって各ベントホール110からエアバッグ100C外に押し出され、各ベントホール110が開放する。これにより、各ベントホール110からエアバッグ100Bの外部にガスが流出し、乗員がエアバッグ100Bによってソフトに受け止められる。
この際、各蓋部材120Aの緊張が解けるのに伴い、各カバーパネル150の緊張も解ける。そのため、第30図のように、各カバーパネル150が各蓋部材120Aから離反する。これにより、第1の開口122及び第2の開口151も開となる。
そのため、各ベントホール110からエアバッグ100C外に流出したガスは、蓋部材120Aの裏側(エアバッグ100C側)に吹き当っても、これらの第1の開口122及び第2の開口151を通り抜けて蓋部材120Aの表側(エアバッグ100Cと反対側)へ流れ出すことができるので、各ベントホール110からスムーズにガスが流出する。
また、膨張したエアバッグ100Cに乗員が接触したときの乗員対向面100fの後退量が少なく、各ベントホール110からの各蓋部材120Aの離反距離が小さい場合でも、各蓋部材120Aと各ベントホール110との間からだけでなく、第1の開口112及び第2の開口151からもガスが流出するので、十分にエアバッグ100C外にガスが流出するようになる。
なお、この実施の形態では、第1の開口112と第2の開口151が、それぞれ、テザー130の長手方向に延在したスリット状のものとなっているが、第1の開口122及び第2の開口151の形状はこれに限定されない。また、各開口122,151の個数も、上記の個数に限定されない。
第31a図はさらに異なる実施の形態に係るエアバッグ100Dの膨張時の斜視図、第31b図はこのエアバッグ100Dの膨張時の垂直断面図、第32図はこのエアバッグ100Dの膨張時の水平断面図、第33図はこの膨張したエアバッグ100Dに乗員が接触した後の水平断面図、第34図はこの膨張したエアバッグ100Dに乗員が接触した後の垂直断面図である。
このエアバッグ100Dにおいては、該エアバッグ100Dの左右の側面100h,100mのうち、各々のベントホール110(以下、このベントホール110を「メインベントホール」と称することがある。)と挿通部140との間の部分に、それぞれ複数個(この実施の形態では4個)の小孔状のサブベントホール160が設けられている。
この実施の形態の蓋部材120Bは、エアバッグ100Dの内側から、それぞれエアバッグ100Dの左右の側面100h,100mに沿って該エアバッグ100Dの先後方向(乗員側と、該乗員と反対側とを結ぶ方向)に延在して、これらのメインベントホール110とサブベントホール160の双方を連続して覆うものとなっている。
なお、この実施の形態では、エアバッグ100Dの各側面100h,100mにおいて、サブベントホール160は、各蓋部材120Bの長手方向及び幅方向にそれぞれ位置を異ならせて2行2列状に配列されている。
この実施の形態では、各蓋部材120Bの乗員と反対側に連なるテザー130の長手方向の途中部に、それぞれ、2個の開放口133が設けられている。これらの開放口133は、それぞれテザー130の長手方向に延在する長孔状となっており、該テザー130の幅方向に間隔をあけて互いに平行に配置されている。
これらの開放口133は、第34図に示すように、蓋部材120Bがメインベントホール110から押し出されるのに伴ってテザー130が該メインベントホール110側に所定距離移動したときに、それぞれサブベントホール160に重なるように配置されている。
各開放口133は、第34図の通り、エアバッグ100Dの各側面100h,100mにおいて蓋部材120Bの長手方向に並んでいる2個のサブベントホール160,160に連続して重なる長さを有している。
この実施の形態でも、エアバッグ100Dを折り畳む際に、各蓋部材120Bがエアバッグ100Dの内部側から各メインベントホール110及びサブベントホール160に重なっている状態としてエアバッグ100Dを折り畳んでいる。
このエアバッグ100Dのその他の構成は、前述の第24〜26図のエアバッグ100Bと同様であり、第31〜34図において第24〜26図と同一符号は同一部分を示している。
このエアバッグ100Dを備えたエアバッグ装置の作動は次の通りである。
車両衝突時等には、インフレータ102Aが作動し、このインフレータ102Aからエアバッグ100D内にガスが噴出してエアバッグ100Dが膨張する。この際、第32図の通り、エアバッグ100Dの乗員対向面100fが乗員側へ膨らみ出すのに伴い、各テザー130が乗員側へ展張される。そして、各蓋部材120Bが各テザー130により乗員側へ引張られて緊張し、各メインベントホール110及びサブベントホール160に重なる。
これにより、各メインベントホール110及びサブベントホール160からのガスの流出が規制され、エアバッグ100Dが速やかに膨張するようになる。
この実施の形態でも、エアバッグ100Dを折り畳む際に、各蓋部材120Bがエアバッグ100Dの内部側から各メインベントホール110及びサブベントホール160に重なっている状態としてエアバッグ100Dを折り畳んでいるので、各蓋部材120Bは、このエアバッグ100Dの膨張開始時から各ベントホール110及びサブベントホール160に重なった状態となっている。これにより、エアバッグ100Dの膨張開始時から、各メインベントホール110及びサブベントホール160からのガスの流出が規制されるため、エアバッグ100Dがきわめて迅速に膨張する。
なお、このエアバッグ100Dにあっても、インフレータ102Aと対面するエアバッグ100Dの乗員対向面100fの左右方向中央付近に各テザー130の乗員側端部が連結されている。従って、インフレータ102Aが作動した場合、該インフレータ102Aから噴出したガスがこの乗員対向面100fの左右方向中央付近に吹き当り、この乗員対向面100fの左右方向中央付近が速やかに乗員側へ展開する。これにより、各テザー130も速やかに乗員側に展張される。この結果、エアバッグ100Dの膨張開始後、早期のうちに、各蓋部材120Bが各テザー130に引張られて緊張して各メインベントホール110及びサブベントホール160を閉鎖するようになるので、エアバッグ100Dがきわめて迅速に膨張する。
その後、この膨張したエアバッグ100Dに乗員が突っ込んで来た場合には、第33図のように、乗員対向面100fが乗員に押されて後退する。これにより、各テザー130が各蓋部材120Bを乗員側へ引張る力が解除されるため、各蓋部材120Bの緊張が解けて、各蓋部材120Bがエアバッグ100D内のガス圧によって各メインベントホール110からエアバッグ100D外に押し出され、各メインベントホール110が開放する。
また、各メインベントホール110からの各蓋部材120Bの押し出しに伴い、各テザー130が各メインベントホール110側へ移動することにより、各開放口133が各サブベントホール160に重なり、各サブベントホール160も開放する。
この結果、各メインベントホール110及び各サブベントホール160からエアバッグ100D外にガスが流出し、乗員がエアバッグ100Dによってソフトに受け止められる。
このエアバッグ100Dにあっては、膨張した該エアバッグ100Dに乗員が接触したときの乗員対向面100fの後退量が少なく、各メインベントホール110からの各蓋部材120Bの離反距離が小さい場合でも、各蓋部材120Bと各ベントホール110との間からだけでなく、各サブベントホール160からもガスが流出するので、十分にエアバッグ100B外にガスが流出するようになる。
この実施の形態では、エアバッグ100Dの各側面100h,100mにおいて、挿通部140からメインベントホール110に向う方向には、2個のサブベントホール160が並んでいる。そのため、各開放口133のメインベントホール110側への移動距離が大きくなるほど、各開放口133と重なるサブベントホール160の個数が、0個から1個、1個から2個へと増えていく。
即ち、このエアバッグ100Dにあっては、乗員対向面100fの後退量が多いほど、各開放口133のメインベントホール110側への移動距離が大きくなり、その分、各開放口133がより多くのサブベントホール160と重なるようになる。これにより、サブベントホール160の全体の開放量が増大し、より多量にエアバッグ100D外にガスが流出するようになる。このようにエアバッグ100D外へのガスの流出量が増えることにより、エアバッグ100Dの衝撃吸収量も増大する。
従って、このエアバッグ100Dによれば、乗員対向面100fの後退量に合わせて衝撃吸収量を調節することができる。
例えば、乗員の体格が大きいほど、あるいは衝突速度が速いほど、膨張したエアバッグ100Dに乗員が接触したときの乗員対向面100fの後退量が多くなる。エアバッグ100Dにあっては、この場合、サブベントホール160の全体の開放量が増大して、より多量にガスがエアバッグ100D外に流出するようになるので、十分に衝撃を吸収することができる。
なお、サブベントホール160及び開放口133の形状や個数、配置等の構成は、上記の構成に限定されない。
第35a,35b図は、さらに別の実施の形態に係るエアバッグ100Eの水平断面図である。なお、第35a図は、このエアバッグ100Eの膨張途中時を示し、第35b図は、このエアバッグ100Eの膨張完了時を示している。
この実施の形態のエアバッグ100Eは、前述の第24a〜26図のエアバッグ100Bにおいて、左右の繋ぎ部材としてのテザー130,130の長手方向の途中部同士を、結合手段としてのテアシーム134によって結合解除可能に結合した構成となっている。
このテアシーム134は、所定以上の張力が作用すると切れる縫糸よりなる。この実施の形態では、エアバッグ100Eの内圧が所定圧以上になると、テアシーム134が切れ、これによりテザー130,130同士の結合が解除されてテザー130,130同士が分離するように構成されている。
このエアバッグ100Eのその他の構成は、前述の第24a〜第26図のエアバッグ100Bと同様である。第35a,35b図において第24a〜第26図と同一符号は同一部分を示している。
なお、この実施の形態でも、エアバッグ100Eを折り畳む際には、各蓋部材120がエアバッグ100Eの内部側から各ベントホール110に重なっている状態としてエアバッグ100Eを折り畳んでいる。
このエアバッグ100Eを備えたエアバッグ装置の作動について次に説明する。
車両衝突時等には、インフレータ102Aが作動し、このインフレータ102Aからエアバッグ100E内にガスが噴出してエアバッグ100Eが膨張する。この際、第35a図の通り、エアバッグ100Eの乗員対向面100fが乗員側へ膨らみ出すのに伴い、各テザー130が乗員側へ展張される。
このエアバッグ100Eにあっては、該エアバッグ100Eの内圧が所定圧に達するまでは、左右のテザー130,130の長手方向の途中部同士がテアシーム134によって結合されているので、各テザー130は、乗員側への伸び出しが規制されている。そのため、エアバッグ100Eの乗員対向面100fがエアバッグ100Eの膨張完了時の位置まで膨らみ出す前に、各テザー130が緊張するようになる。
これにより、エアバッグ100Eの膨張開始後、早期のうちに各蓋部材120が各テザー130に引っ張られて緊張して各ベントホール110を閉鎖するようになる。この結果、エアバッグ100Eの内部が速やかに高内圧となり、エアバッグ100Eが迅速に膨張する。
なお、この実施の形態でも、各テザー130の乗員側端部は、インフレータ102Aと対面するエアバッグ100Eの乗員対向面100fの左右方向中央付近に連結されているので、インフレータ102Aの作動開始後、このインフレータ102Aからの噴出ガス圧により、各テザー130が速やかに乗員側へ展張される。
さらに、この実施の形態でも、エアバッグ100Eを折り畳む際に、各蓋部材120がエアバッグ100Eの内部側から各ベントホール110に重なっている状態としてエアバッグ100Eを折り畳んでいるので、各蓋部材120は、このエアバッグ100Eの膨張開始時から各ベントホール110に重なった状態となっている。これにより、エアバッグ100Eの膨張開始時から、各ベントホール110からのガスの流出が規制される。
これらのことからも、エアバッグ100Eの膨張が迅速化される。
その後、このエアバッグ100Eの内圧が所定圧以上になると、テアシーム134が切れてテザー130,130同士が分離する。これにより、各テザー130の乗員側への伸び出し規制が解除され、第35b図のようにエアバッグ100Eが最大まで膨張する。
その後、この膨張したエアバッグ100Eに乗員が突っ込んで来た場合の各蓋部材120の作動は、前述のエアバッグ100Bと同様である。
この実施の形態では、テザー130,130の長手方向の途中部同士を結合解除可能に結合する結合手段として、所定以上の張力が作用すると切れるテアシーム134を用いているが、これ以外の結合手段を用いてもよい。例えば、剥離方向に所定以上の力が加えられると剥離する低接着力の接着剤を用いてテザー130,130同士を接着してもよい。
なお、本発明では、3個以上ベントホールを設け、各ベントホールにそれぞれ蓋部材を設けると共に、各蓋部材の自由端側とエアバッグの乗員対向面とをそれぞれテザーで連結し、これらの3本以上のテザーの長手方向の途中部同士を結合解除可能に結合してもよい。
上記の各実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記の各実施の形態に限定されるものではない。
本発明では、蓋部材は、エアバッグが所定以上膨張するまではベントホールを部分的に覆っており、エアバッグが所定以上膨張すると該ベントホールを大開度とする構成であってもよい。
上記の各実施の形態では、ベントホールは円形開口状となっているが、ベントホールの形状はこれに限定されるものではなく、スリット状など、種々の形状とすることが可能である。
上記の第1〜23b図の各実施の形態では、エアバッグにベントホールが1個だけ設けられているが、ベントホールが2個以上設けられてもよい。また、上記の第24a〜35b図の各実施の形態では、ベントホールが2個設けられているが、ベントホールが3個以上設けられてもよい。
また、上記の第1〜23b図の各実施の形態においても、上記の第27a〜30図の実施の形態のように、蓋部材に第1の開口を設けると共に、この第1の開口を覆うように該蓋部材にカバーパネルを重ね合わせ、且つこのカバーパネルに、該第1の開口と重なり合わない位置関係にて第2の開口を設けた構成を適用することができる。
さらに、上記の第1〜23b図の各実施の形態においても、上記の第31a〜34図の実施の形態のように、エアバッグのうち、メインベントホールとテザー挿通部との間の部分にサブベントホールを設けると共に、蓋部材を、これらのメインベントホールとサブベントホールの双方を連続して覆うものとし、且つ蓋部材の該サブベントホールよりもテザー側の部分、又はテザーの長手方向の途中部に、該蓋部材がメインベントホールから押し出されたときにサブベントホールと重なって該サブベントホールを開放させる開放口を設けた構成を適用することができる。
また、本発明においては、蓋部材が設けられているベントホールの他に、常時開放した状態となっている常開型ベントホールが設けられてもよい。
なお、本出願は、2006年2月3日付で出願された日本特許出願(特願2006−027355)及び2006年3月10日付で出願された日本特許出願(特願2006−066041)に基づいており、その全体が引用により援用される。