以下に、図面を参照して参考例及び本発明の実施の形態について説明する。
第1図及び第2図は参考例に係るエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図、第3図はこのエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図、第4図(a)はこのエアバッグのリヤパネル及び第2インナーパネルの平面図(分解図)、第4図(b)は第4図(a)のB−B線に沿う断面図である。なお、第1図はエアバッグに乗員が突っ込んで来る前の状態を示し、第2図はエアバッグに乗員が突っ込んで来た後の状態を示している。
この参考例では、エアバッグ10は、車両の運転席用エアバッグである。
このエアバッグ10は、乗員対向面を構成するフロントパネル12と、該乗員対向面と反対側の外面を構成するリヤパネル14と、該エアバッグ10の内部を第1室1と第2室2とに区画する内部部材としての第1及び第2インナーパネル22A,22Bと、該第2室2とエアバッグ10の外部とを連通するベントホール18と、該ベントホール18からのガスの流出を規制する蓋部材60と、該蓋部材60をインナーパネル22Bに連結する繋ぎ部材としてのテザー70等を備えている。
該フロントパネル12、リヤパネル14並びに第1及び第2インナーパネル22A,22Bはそれぞれ円形の織布よりなる。該フロントパネル12とリヤパネル14とは略同一直径のものであり、それらの外周縁部同士がシーム15によって縫合されることにより、袋体状とされている。該シーム15は、フロントパネル12及びリヤパネル14の外周に沿って円環状に周設されている。該シーム15は縫糸等よりなるが、これに限定されない。
該リヤパネル14には、インフレータ(ガス発生器)用開口16と前記ベントホール18とが設けられている。該開口16はリヤパネル14の中央に配置されている。この開口16の周縁部には、エアバッグ10の外側から、円環形の織布よりなるパッチクロス61が取り付けられている。符号62(第4図)は、このパッチクロス61とリヤパネル14とを縫合したシームを示している。該シーム62は、このパッチクロス61の外周に沿って円環状に周設されている。開口16の周囲には、該パッチクロス61とリヤパネル14とを貫通したボルト挿通孔20が設けられている。ベントホール18は、該パッチクロス61の外周縁部とリヤパネル14の外周縁部(シーム15)との間に配置されている。
このベントホール18に対し、エアバッグ10の外側から前記蓋部材60が重ね合わされている。この参考例では、該蓋部材60はパッチクロス61と一体に設けられており、該パッチクロス61の外周縁部からリヤパネル14の外周側に向って舌片状に延出している。
第4図(a)に示すように、この蓋部材60の周縁部のうち、パッチクロス61の外周縁部から該リヤパネル14の外周側に向って延在する1対の側縁部がシーム63によってそれぞれリヤパネル14に結合されている。各シーム63は、リヤパネル14の中心側において前記シーム62に合流している。蓋部材60の先端側(リヤパネル14外周側)の辺縁部は、該リヤパネル14に対し非結合となっている。ベントホール18は、このシーム63同士の間に位置している。
なお、第4図(b)の通り、リヤパネル14を平たく展延させた状態における、該蓋部材60の一方の側縁部の該リヤパネル14への縫着位置と、他方の側縁部の該リヤパネル14への縫着位置との間隔(シーム63同士の間隔)Dは、該蓋部材60を平たく展延させた状態におけるその両側縁部同士の間隔(即ち該蓋部材60の幅)Wよりも狭くなっている。このため、リヤパネル14を平たく展延させても、図示の如く該蓋部材60には弛みが残り、テザー70によって蓋部材60がエアバッグ10の内部側へ引張られていない場合には、該蓋部材60とリヤパネル14との間に隙間Sが生じることとなる。
ただし、この蓋部材60の構成及びリヤパネル14への結合構造はこれに限定されるものではない。例えば、蓋部材60は、パッチクロス61と別体に設けられてもよい。
このエアバッグ10の内部に前記第1インナーパネル22A及び第2インナーパネル22Bが設けられている。この第1及び第2インナーパネル22A,22Bはフロントパネル12及びリヤパネル14と略同心状に配置され、その外周縁部同士がシーム23Bによって縫合されている。この第1及び第2インナーパネル22A,22Bにより、エアバッグ10の内部が中央の第1室1と、該第1室1を取り囲む第2室2とに区画される。第1室1はインナーパネル22A,22Bの内側である。
フロントパネル12側の第1インナーパネル22Aの中央部(エアバッグ10が膨張した状態にあっては、インナーパネル22Aの先端側となる部分)が、該フロントパネル12の中央部に対し、シーム23Aによって縫合されている。
リヤパネル14側の第2インナーパネル22Bの中央部(エアバッグ10が膨張した状態にあっては、第2インナーパネル22Bの後端側となる部分)には、該リヤパネル14のインフレータ用開口16と略同心状に配置されるインフレータ用開口24が設けられている。また、このインナーパネル22Bの該開口24の周囲には、リヤパネル14のボルト挿通孔20と重なるボルト挿通孔26が設けられている。
該第1及び第2インナーパネル22A,22Bには、それぞれ、第1室1と第2室2とを連通する連通部としての連通口27,28が設けられている。この参考例では、第2インナーパネル22Bの連通口28は、前記インフレータ用開口24に比較的近接して設けられており、インフレータ用開口16,24を介して第1室1内に配置される後述のインフレータ36のガス噴出方向の延長線上、即ち該インフレータ36のガス噴出口36aと対峙するように配置されている。ただし、連通口27,28の配置はこれに限定されない。
なお、開口16,24や連通口27,28、ベントホール18の周縁部に補強用のパッチ等を取り付けてもよい。
この参考例では、該第2インナーパネル22Bと蓋部材60とが繋ぎ部材としてのテザー70により連結されている。なお、この参考例では、該テザー70は第2インナーパネル22Bと一体に設けられており、一端が該第2インナーパネル22Bの外周縁部に連なっている。該テザー70の他端は、ベントホール18を通り抜けて、蓋部材60のベントホール18との対向面に縫着されている。符号71は、このテザー70を蓋部材60に縫着したシームを示している。
ただし、該テザー70は第1インナーパネル22A又は蓋部材60と一体に設けられてもよく、これらとは別体に設けられてもよい。また、該テザー70は、各インナーパネル22A,22Bのうちの外周縁部以外の箇所に連結されてもよい。
このエアバッグ10を取付けるためのリテーナ30には、中央にインフレータ取付口32が設けられ、その周囲にボルト挿通孔34が設けられている。
インフレータ36は略円柱形状のものであり、その筒軸方向の先端側の側周面にガス噴出口36aが設けられている。この参考例では、該ガス噴出口36aは、インフレータ36の周方向に等間隔にて4個設けられている。インフレータ36は、これらのガス噴出口36aから放射方向にガスを噴出するよう構成されている。このインフレータ36の筒軸方向の途中部分(該ガス噴出口36aよりも後端側)の側周面からは、インフレータ固定用のフランジ38が突設されている。該フランジ38には、ボルト挿通孔40が設けられている。このインフレータ36は、該先端側がインフレータ取付口32に嵌装される。
エアバッグ10をリテーナ30に取り付けるに当っては、第2インナーパネル22Bのインフレータ用開口24の周縁部をリヤパネル14のインフレータ用開口16の周縁部と重ね合わせ、リテーナ30のインフレータ取付口32の周縁部に重ね合わせる。そして、押えリング42のスタッドボルト44を第2インナーパネル22B、リヤパネル14、リテーナ30及びフランジ38の各ボルト挿通孔26,20,34,40に通し、その先端にナット46を締め込んで、第2インナーパネル22B、リヤパネル14及びインフレータ36をリテーナ30に固定する。
これにより、第2インナーパネル22Bのインフレータ用開口24の周縁部はリヤパネル14のインフレータ用開口16の周縁部に連なり、第1及び第2インナーパネル22A,22Bの外周縁部同士が連なり、第1インナーパネル22Aの中央部はフロントパネル12に連なったものとなる。
その後、エアバッグ10を折り畳み、このエアバッグ10の折り畳み体を覆うようにモジュールカバー48をリテーナ30に取り付けることにより、エアバッグ装置が構成される。このエアバッグ装置は、自動車のステアリングホイール50に設置される。
このように構成されたエアバッグ装置を搭載した車両の衝突時等には、インフレータ36が作動してエアバッグ10内にガスが噴出する。エアバッグ10は、このガスにより膨出してモジュールカバー48を押し開き、車両室内に展開する。
このエアバッグ10は、まず第1室1内にインフレータ36からのガスが供給されて該第1室1が膨張する。この際、該第1室1の膨張に伴い第1及び第2インナーパネル22A,22Bが乗員側へ展張されると共に、蓋部材60がテザー70を介してこのインナーパネル22A,22Bによりエアバッグ10の内部側へ引張られてベントホール18に重なり、ベントホール18を閉鎖する。次いで、連通口27,28を介して第1室1から第2室2にガスが流入し、該第2室2が膨張する。
このエアバッグ10にあっては、該第1室1は、エアバッグ10の全体に比べて容積が小さく、且つ直接ベントホール18に連通していないので、きわめて迅速に膨張する。そのため、早期のうちに、蓋部材60がエアバッグ内部側へ引張られてベントホール18に重なり、該ベントホール18が閉鎖される。これにより、該ベントホール18を介して第2室2内のガスがエアバッグ外部に流出することが規制され、第2室2も速やかに高内圧となる。この結果、エアバッグ10全体の膨張が早期化される。
なお、この参考例では、第1室1と第2室2とを連通する連通口28が、該第1室1内に配置されたインフレータ36のガス噴出方向の延長線上、即ち該インフレータ36のガス噴出口36aと対峙するように配置されているので、インフレータ36が作動したときには、該ガス噴出口36aから該連通口28に向かってガスが噴出される。このため、該インフレータ36からのガスは、該連通口28を通って第2室2に流入し易い。これにより、第2室2の膨張が一層早期化される。
その後、この膨張したエアバッグ10に乗員が突っ込んで来た場合には、第2図のように、このエアバッグ10のフロントパネル12が乗員に押されてリヤパネル14側へ後退してインナーパネル22A,22Bが弛み、蓋部材60をエアバッグ10の内部側へ引張る力が解除される。これにより、該蓋部材10がエアバッグ10内のガス圧によってベントホール18から離反し、該ベントホール18が開放する。この結果、該ベントホール18からエアバッグ10の外部にガスが流出し、乗員に加えられる衝撃が吸収される。
第5図及び第6図は別の参考例に係るエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図、第7図はこのエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図である。なお、第5図はエアバッグに乗員が突っ込んで来る前の状態を示し、第6図はエアバッグに乗員が突っ込んで来た後の状態を示している。
この参考例では、エアバッグ10Aは、乗員対向面を構成するフロントパネル12と、該乗員対向面と反対側の外面を構成するリヤパネル14と、このエアバッグ10Aの内部において該フロントパネル12とリヤパネル14とを連結する、内部部材としての吊紐80と、このエアバッグ10Aの内外を連結するベントホール18と、該ベントホール18からのガスの流出を規制する蓋部材60と、該蓋部材60を該吊紐80に連結する繋ぎ部材としてのテザー70A等を備えている。
この参考例でも、該フロントパネル12及びリヤパネル14の外周縁部同士がシーム15によって縫合されることにより袋状のエアバッグ10Aの外殻が構成され、その内部に吊紐80が設けられている。また、この参考例でも、リヤパネル14に、インフレータ(ガス発生器)用開口16と、前記ベントホール18と、該リヤパネル12をリテーナ30に固定するためのボルト挿通孔20とが設けられている。前記蓋部材60は、該リヤパネル14の外面側から該ベントホール18に重ね合わされている。
この参考例では、吊紐80は、フロントパネル12側の第1の吊紐構成部材81と、リヤパネル14側の第2の吊紐構成部材82とからなる。
第1の吊紐構成部材81は、この参考例では、フロントパネル12の中央部に配置された基片部81aと、該基片部81aの外周から放射方向に延出した2本の紐状体81b,81bとを有している。該基片部81aは、フロントパネル12よりも小径の円形の織布よりなり、紐状体81b,81bは、この基片部81aの中心を挟んで互いに反対側となる位置関係にて配置されている。該基片部81aは、フロントパネル12と略同心状に配置され、該フロントパネル12の中央部に対しシーム83により縫着されている。
また、第2の吊紐構成部材82は、この参考例では、リヤパネル14の中央部に配置された基片部82aと、該基片部82aの外周から放射方向に延出した2本の紐状体82b,82bとを有している。該基片部82aは、リヤパネル14よりも小径の円形の織布よりなり、紐状体82b,82bは、この基片部82aの中心を挟んで互いに反対側となる位置関係にて配置されている。該基片部82aの中央には、リヤパネル14のインフレータ用開口16と重なるインフレータ用開口82cが設けられている。また、この開口82cの周囲には、ボルト挿通孔20と重なるボルト挿通孔82dが設けられている。
これらの吊紐構成部材81,82の各紐状体81b,82bの先端部同士がシーム84により縫合されている。
この参考例では、一方の紐状体81b,82bの連続体(以下、この連続体を吊紐80と称することがある。)の途中部に、テザー70Aの一端側が縫着されている。符号72は、このテザー70Aの一端側を吊紐80に縫着したシームを示している。また、このテザー70Aの他端側は、ベントホール18を通り抜けて、蓋部材60の該ベントホール18との対向面に縫着されている。符号71は、このテザー70Aの他端側を蓋部材60に縫着したシームを示している。
このエアバッグ10Aをリテーナ30に取り付けるに当っては、基片部82aのインフレータ用開口82cの周縁部をそれぞれリヤパネル14のインフレータ用開口16の周縁部と重ね合わせ、リテーナ30のインフレータ取付口32の周縁部に重ね合わせる。そして、押えリング42のスタッドボルト44を基片部82a、リヤパネル14、リテーナ30及びフランジ38の各ボルト挿通孔82d,20,34,40に通し、その先端にナット46を締め込んで、基片部82a、リヤパネル14及びインフレータ36をリテーナ30に固定する。
これにより、紐状体82bが基片部82aを介してリヤパネル14に連なり、紐状体82b,81b同士がシーム84により連なり、紐状体81bが基片部81aを介してフロントパネル12に連なったものとなる。
このエアバッグ10Aは、前述の第1〜4図のエアバッグ10において、内部部材としてインナーパネル22A,22Bを設ける代わりに吊紐80を設けたものであり、このエアバッグ10Aのその他の構成は第1〜4図のエアバッグ10と同様となっている。また、このエアバッグ10Aを備えたエアバッグ装置の構成も、前述の第1〜4図の参考例と同様である。第5〜7図において、第1〜4図と同一符号は同一部分を示している。
このエアバッグ10Aを備えたエアバッグ装置にあっては、車両衝突時等にインフレータ36がガス噴出作動してエアバッグ10Aが膨張すると、吊紐80がこの膨張に伴い乗員側へ展張されると共に、蓋部材60がテザー70Aを介してこの吊紐80によりエアバッグ10の内部側へ引張られてベントホール18に重なり、ベントホール18を閉鎖する。これにより、エアバッグ10A内が速やかに高内圧となり、エアバッグ10Aの膨張展開が早期化される。
その後、この膨張したエアバッグ10Aに乗員が突っ込んで来た場合には、第6図のように、このエアバッグ10Aのフロントパネル12が乗員に押されてリヤパネル14側へ後退して吊紐80が弛み、蓋部材60をエアバッグ10Aの内部側へ引張る力が解除される。これにより、該蓋部材60がエアバッグ10A内のガス圧によってベントホール18から離反し、該ベントホール18が開放する。この結果、該ベントホール18からエアバッグ10Aの外部にガスが流出し、乗員に加えられる衝撃が吸収される。
このエアバッグ10Aにあっては、内部部材として、エアバッグ10Aのフロントパネル12とリヤパネル14とを連結する吊紐80を用いているため、構成がシンプルである。
上記の各参考例では、テザー70,70Aを介して蓋部材60をインナーパネル22A,22B又は吊紐80に連結しているが、エアバッグの乗員対向面(フロントパネル12)に連結してもよい。第8図及び第9図はこのように構成されたエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図、第10図はこのエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図、第11図(a)はこのエアバッグのリヤパネルの平面図、第11図(b)は第11図(a)のB−B線に沿う断面図である。なお、第8図はエアバッグに乗員が突っ込んで来る前の状態を示し、第9図はエアバッグに乗員が突っ込んで来た後の状態を示している。
この参考例のエアバッグ10Bは、乗員対向面を構成するフロントパネル12と、該乗員対向面と反対側の外面を構成するリヤパネル14と、このエアバッグ10Bの内部を第1室1と第2室2とに区画する第1及び第2インナーパネル22A,22B’と、該第2室2とエアバッグ10の外部とを連通するベントホール18と、このエアバッグ10Bの外側から該ベントホール18を覆う蓋部材60Bと、該蓋部材60Bをフロントパネル12に連結する繋ぎ部材としてのテザー70B等を備えている。
この参考例におけるフロントパネル12、リヤパネル14並びに第1及び第2インナーパネル22A,22B’の構成は、該第2インナーパネル22B’が前記第2インナーパネル22Bからテザー70を省略したものとなっていること以外は、前述の第1〜4図の参考例と同様となっている。
なお、この参考例でも該リヤパネル14の中央のインフレータ用開口16の周縁部にパッチクロス61が取り付けられているが、この参考例では、該パッチクロス61は前記蓋部材60Bとは別体に設けられている。このパッチクロス61の外周縁部とリヤパネル14の外周縁部との中間付近にベントホール18が設けられている。
第11図(a)に示すように、この参考例では、該蓋部材60Bは略半円形のパネルであり、略U字形に延在する円弧状の辺と、その両端を繋ぐ弦状の辺とにより外周が構成されている。この蓋部材60Bは、図示の通り、該弦状の辺がリヤパネル14の中央側を向いた姿勢で該リヤパネル14の外面側からベントホール18に重ね合わされ、その外周縁部のうち、前記円弧状の辺に沿う縁部がシーム64によってベントホール18の周囲部分(リヤパネル14)に縫着されている。このシーム64は該円弧状の辺に沿って略U字形に延設されており、このシーム64よりも蓋部材60Bの中央側にベントホール18が位置している。この蓋部材60Bの外周縁部のうち該弦状の辺に沿う部分はリヤパネル14に対し非結合となっている。
なお、リヤパネル14を平たく展延させた状態における、シーム64による該弦状の辺の一端側の該リヤパネル14への縫着位置と、他端側の該リヤパネル14への縫着位置との間隔は、蓋部材60Bを平たく展延させた状態における該弦状の辺の両端同士の間隔(即ち該蓋部材60Bの幅)よりも狭くなっている。このため、リヤパネル14を平たく展延させても該蓋部材60Bには弛みが残り、テザー70Bによって蓋部材60Bがエアバッグ10Bの内部側へ引張られていない場合には、該蓋部材60Bとリヤパネル14との間に隙間S’が生じることとなる。第11図(b)の通り、この隙間S’はリヤパネル14の中央側に向って開放している。
この参考例では、エアバッグ10Bの内側において、テザー70Bの一端側がフロントパネル12に縫着されている。符号73は、このテザー70Bの一端側をフロントパネル12に縫着したシームを示している。また、このテザー70Bの他端側は、ベントホール18を通り抜けて、エアバッグ10Bの外側の蓋部材60Bに縫着されている。符号74は、このテザー70Bの他端側を該蓋部材60Bに縫着したシームを示している。
このエアバッグ10Bのその他の構成は前述の第1〜4図のエアバッグ10と同様となっている。また、このエアバッグ10Bを備えたエアバッグ装置の構成も、第1〜4図のエアバッグ装置と同様となっている。このエアバッグ10Bのリテーナ30への取付手順はエアバッグ10と同様であり、説明は省略する。第8〜11図において第1〜4図と同一符号は同一部分を示している。
このエアバッグ10Bを備えたエアバッグ装置にあっては、車両衝突時等にインフレータ36がガス噴出作動してエアバッグ10Bが膨張した場合、フロントパネル12が乗員側へ膨らみ出すのに伴い、蓋部材60Bがテザー70Bを介してこのフロントパネル12によりエアバッグ10Bの内部側へ引張られてベントホール18に重なり、ベントホール18を閉鎖する。これにより、エアバッグ10B内が速やかに高内圧となり、エアバッグ10Bの膨張展開が早期化される。
その後、この膨張したエアバッグ10Bに乗員が突っ込んで来た場合には、第9図のように、該フロントパネル12が乗員に押されてリヤパネル14側へ後退するため、蓋部材60Bをエアバッグ10Bの内部側へ引張る力が解除される。これにより、該蓋部材60Bがエアバッグ10B内のガス圧によってベントホール18から離反し、該ベントホール18が開放する。この結果、該ベントホール18からエアバッグ10Bの外部にガスが流出し、乗員に加えられる衝撃が吸収される。
なお、この参考例では、該蓋部材60Bとリヤパネル14との間の隙間S’がリヤパネル14の中央側に向って開放しているため、ベントホール18を通り抜けたガスは、この隙間S’を通ってリヤパネル14の中央側へ向って流出することとなる。
第8〜11図では別体のテザー70Bを採用しているが、第12,13図のエアバッグ10B'のように、テザー70付きの第2インナーパネル22Bを用いた場合であっても、エアバッグ10B'の膨張時にベントホール18を通り抜けたガスはリヤパネル14の中央側へ向って流出する。
なお、第12,13図は、テザー70A及び第2インナーパネル22B'の代わりに上記テザー70付きの第2インナーパネル22Bを用いたこと以外は第9図及び第10図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
本発明では、第14〜16図のように、テザーの先端(蓋部材側の一端)を複数に分岐させ、分岐させた各々の先端を蓋部材に連結してもよい。
第14〜16図では、テザー76は第2インナーパネル22B”と一連一体である。このテザー76の先端側に別体の布片を縫着することにより、テザー76の先端に2葉の分岐テザー76a,76bを形成している。各分岐テザー76a,76bを蓋部材60B”に縫着している。蓋部材60B”は、前記蓋部材60Bと同様にシーム64によってその3辺がリヤパネル14に縫着されている。蓋部材60B”は略方形であり、そのリヤパネル14の中央側に対峙する一辺がリヤパネル14に対し縫着されず、フリーとなっている。エアバッグが膨張して蓋部材60B”がリヤパネル14から離反するときには、ベントホール18からのガスはこのリヤパネル中央側の一辺部分を通ってリヤパネル14の中央側に向って流出する。
この参考例では、二股状に分れた分岐テザー76a,76bがそれぞれ縫着位置を異ならせてシーム72によって蓋部材60B”に縫着されている。そのため、エアバッグの膨張初期にテザー76が蓋部材60B”を引張る際の張力が蓋部材60B”の広い範囲に分散され、蓋部材60B”が万遍なくベントホール18の周縁部に密着するように重なる。また、この参考例では、二股状に分れた分岐テザー76a,76bが逆V字状を呈しており、テザー76をベントホール18の中央へ導くガイドの役割を果す。これにより、蓋部材60B”はベントホール18の全体を密閉する如く閉鎖することが可能である。
なお、第14〜16図は、図面を明瞭とするために、テザー76付きの第2インナーパネル22B”と蓋部材60B”付きのリヤパネル14のみを示している。第14〜16図に示すエアバッグのその他の構成は前記第12,13図のエアバッグ10B'と同一となる。
第14〜16図では、テザー76の先端側が2葉に分岐しているが、3葉以上に分岐してもよい。
本発明では、第17,18図に示すようにタック67a付きの蓋部材67をリヤパネル14に縫着してもよい。
この蓋部材67は略方形であり、1対の対向辺に沿ってタック67aが設けられている。蓋部材67の4辺のうち、このタック67aが沿っている各対向辺と、これに直交する1辺とがシーム64によってリヤパネル14に縫着されている。残りの一辺がリヤパネル14に縫着されず、フリーとなっている。このフリーな一辺は、リヤパネル14の中央側に位置している。この蓋部材67にテザー76が縫着されている。
エアバッグが膨張してベントホール18からガスが流出する際は、第18図の通り、タック67aを伸ばすようにして蓋部材67が孕み出すため、ガスがスムーズに流出する。
なお、テザー76以外のテザーが蓋部材67に連結されてもよいことは明らかである。
本発明では、第19,20図のように繋ぎ部材として長い紐状のテザー90をフロントパネル12とリヤパネル14との間を交互に架け渡してもよい。
この第19,20図では、フロントパネル12の異なる3ヶ所にテザー90の挿通部91,93,95が設けられ、リヤパネル14の異なる3ヶ所に挿通部92,94,96が設けられている。各挿通部91〜96は、略長方形の小クロスよりなる。長方形の小クロスの1対の2辺部分がフロントパネル12又はリヤパネル14に縫着されている。テザー90は、クロスの残りの1対の2辺からクロスと該パネル12又は14との間を引き通される。
このテザー90の先端は蓋部材60Bにシーム74によって縫着される。テザー90は、挿通部91,92,93,94,95,96の順に摺動可能に挿通され、末端がフロントパネル12にシーム97によって縫着されている。
このエアバッグ10Cのその他の構成は前述の第8〜11図のエアバッグ10”と同様となっている。第19,20図において第8〜11図と同一符号は同一部分を示している。
このエアバッグ10Cを備えたエアバッグ装置にあっても、車両衝突時等にインフレータ36がガス噴出作動してエアバッグ10Cが膨張した場合、第20図の通り、フロントパネル12が乗員側へ膨らみ出すのに伴い、蓋部材60Bがテザー90を介してこのフロントパネル12によりエアバッグ10Cの内部側へ引張られてベントホール18に重なり、ベントホール18を閉鎖する。
その後、この膨張したエアバッグ10Cに乗員が突っ込んで来た場合には、図示は省略するが、前記第9図と同様に、該フロントパネル12が乗員に押されてリヤパネル14側へ後退するため、蓋部材60Bをエアバッグ10Cの内部側へ引張る力が解除され、該蓋部材60Bがベントホール18から離反し、該ベントホール18が開放する。
この参考例では、フロントパネル12の異なる複数箇所に挿通部91,93,95が設けられているので、少なくともいずれか1個の挿通部91,93,95の近傍領域のみに乗員が当ってその部分のフロントパネル12のみがエアバッグ10C内に押し込まれた場合でも、テザー90によって蓋部材60Bが引張られる力が軽減され、蓋部材60Bが開放する。
第19,20図の参考例では、フロントパネル12の挿通部91,93,95と同数個の挿通部92,94,96をリヤパネル14に設けているが、リヤパネル14の挿通部の数をフロントパネル12の挿通部の数よりも1個少なくし、テザー90の末端をリヤパネル14に縫着してもよい。テザー90の末端は、フロントパネル12及びリヤパネル14以外のインナーパネル22A又は22Bに連結されてもよい。
なお、この参考例でもタック付きの蓋部材を用いてもよい。
本発明では、蓋部材は、エアバッグが所定以上膨張するまではベントホールを部分的に覆っており、エアバッグが所定以上膨張すると該ベントホールを大開度とする構成であってもよい。
例えば、第21図の蓋部材60Cのように、リヤパネルのベントホール18に重なる部分に該ベントホール18よりも小径の開口よりなる補助ベントホール18Sを設けてもよい。エアバッグ内は該補助ベントホール18Sと上記ベントホール18とを介して常時、エアバッグ外に連通している。第21図のその他の構成は前記参考例と同一である。
エアバッグの膨張初期段階に乗員がエアバッグに当ったときには、補助ベントホール18Sを介してエアバッグ内のガスが流出し、衝撃が吸収される。
上記の各参考例は、車両の運転席用エアバッグ及びエアバッグ装置への適用例を示しているが、本発明は、これ以外の種々のエアバッグ及びエアバッグ装置にも適用可能である。
第22,23図は助手席用エアバッグの一例を示している。
この助手席用エアバッグ100は、折り畳まれてコンテナ101内に収容され、インフレータ102によって膨張される。この助手席用エアバッグはインストルメントパネル103に設置されている。コンテナ101の上方はリッド104によって覆われている。105はウィンドシールドを示す。
この助手席用エアバッグ100の側面にベントホール110が設けられ、その外側に蓋部材120が被さっている。この蓋部材120はエアバッグ100と同様のクロスよりなり、その3辺がエアバッグ100に縫着され、ウィンドシールド105側の残りの一辺がエアバッグ100に対しフリーとなっている。
エアバッグ100の内面のうち乗員対向面100fに繋ぎ部材としてのテザー130の一端が連結され、該テザー130の他端がベントホール110を通って蓋部材120に縫着により連結されている。エアバッグ100の内面のうちウィンドシールド対向面100eに挿通部131が設けられ、テザー130が該挿通部131に挿通されている。
このエアバッグ100を備えたエアバッグ装置にあっては、車両衝突時等にインフレータ102がガス噴出作動してエアバッグ100が膨張した場合、第22図(a)及び第23図(a)の通り、乗員対向面100fが乗員側へ膨らみ出すのに伴い、蓋部材120がテザー130を介してエアバッグ100の内部側へ引張られてベントホール110に重なり、ベントホール110を閉鎖する。これにより、エアバッグ100内が速やかに高内圧となり、エアバッグ100の膨張展開が早期化される。
その後、この膨張したエアバッグ100に乗員が突っ込んで来た場合には、第22図(b)及び第23図(b)のように、乗員対向面100fが乗員に押されて後退するため、蓋部材120をエアバッグ100の内部側へ引張る力が解除される。これにより、該蓋部材120がエアバッグ100内のガス圧によってベントホール110から離反し、該ベントホール110が開放する。この結果、該ベントホール110からエアバッグ100の外部にガスが流出し、乗員に加えられる衝撃が吸収される。
なお、この参考例では、第23図(b)の通り、該蓋部材120とエアバッグ100との間の隙間がウィンドシールド105に向って開放しているため、ベントホール110を通り抜けたガスは、ウィンドシールド105へ向って流出することとなる。
本発明では、ベントホールをスリット状に構成してもよい。第24図はこのように構成されたエアバッグの一例を示す要部分解斜視図である。
この第24図の参考例は、前述の第12,13図の参考例において、エアバッグ10のリヤパネル14に、円形開口状のベントホール18を設ける代わりに、スリット状のベントホール18Aを設けた構成となっている。なお、図示の通り、この参考例のベントホール18Aは、2条のスリットが直角に交叉した如き略十字形のスリット形状を有したものとなっているが、ベントホールのスリット形状はこれに限定されるものではなく、例えば一直線状や、中心から複数方向へスリットが延出した如き放射状、あるいはC字状やL字状など、種々の形状とすることができる。
このスリット状ベントホール18Aをエアバッグ外部側から蓋部材60Bが覆っている。また、このスリット状ベントホール18Aに繋ぎ部材としてのテザー70が引き通され、このテザー70を介して該蓋部材60Bとエアバッグ内部側のインナーパネル22Bとが連結されている。
この参考例のその他の構成は第12,13図の参考例と同様であり、第24図において第12,13図と同一符号は同一部分を示している。
このようにベントホール18Aをスリット状とすることにより、エアバッグ膨張時にこのベントホール18Aが蓋部材60Bによって覆われた状態となっているときの該ベントホール18Aからのガスリークを大幅に抑止ないし防止することができる。
即ち、このスリット状のベントホール18Aは、蓋部材60Bがリヤパネル14から離隔して、このベントホール18Aの周囲部が該蓋部材60Bとリヤパネル14との間にめくれ出さない限り、図示の如く開口面積がきわめて小さいか又は殆ど開口が存在しない状態となっているので、このベントホール18Aからのガスリークが大幅に抑制される。
また、膨張したエアバッグに乗員が突っ込んでエアバッグが潰れ、これに伴って蓋部材60Bをエアバッグ内部側に引張る力が解除されて該蓋部材60Bがリヤパネル14から離反すると、ベントホール18Aの周囲部が該蓋部材60Bとリヤパネル14との間にめくれ出すため、このベントホール18Aの開放時の開口面積は円形開口状のベントホール18と略同等のものとなり、このベントホール18Aから速やかにガスが流出するようになる。
この参考例でも、該蓋部材60Bとリヤパネル14との間の隙間はリヤパネル14の中央側に向って開放するため、ベントホール18Aを通り抜けたガスは、この隙間を通ってリヤパネル14の中央側へ向って流出することとなる。
なお、当然ながら、上記の第12,13図以外の各実施の形態においても、ベントホールをスリット状としてもよい。ただし、本発明においては、ベントホールの形状は図示の如き円形開口状やスリット状に限定されるものではなく、図示以外の形状としてもよい。
本発明においては、蓋部材付きのベントホールの他に、蓋部材が装着されていないベントホールが設けられていてもよい。第25図はこのように構成されたエアバッグの一例を示す要部分解斜視図である。
この第25図の参考例は、上記第24図の参考例において、リヤパネル14に、蓋部材60Bによって覆われるスリット状のベントホール18Aとは別に、蓋部材によって覆われない(即ち、常時開放した状態でエアバッグ内外を連通している)常開型ベントホール18Bを設けた構成となっている。なお、この参考例では、該常開型ベントホール18Bは円形開口状のものであり、蓋部材付きベントホール18Aを挟んで両側に設けられているが、この常開型ベントホール18Bの形状や個数及び配置はこれに限定されない。
この参考例のその他の構成は第24図の参考例と同様となっている。
このように常開型ベントホール18Bが設けられたエアバッグにあっては、エアバッグ膨張途中時においても主としてこの常開型ベントホール18Bを通してエアバッグ内のガスがエアバッグ外に流出する。その後、膨張したエアバッグに乗員が突っ込んで来てエアバッグが押し潰されると、蓋部材60Bをエアバッグ内部側へ引張っていた力が解除されて蓋部材60Bがベントホール18Aから離反し、該ベントホール18Aが開放する。この結果、開放した蓋部材60B付きベントホール18Aと常開型ベントホール18Bとの双方を通って速やかにエアバッグ外にガスが流出するようになる。
上記の第24図以外の各実施の形態においても、蓋部材付きベントホールとは別に常開型ベントホールが設けられてもよい。
本発明においては、蓋部材と、該蓋部材をエアバッグ内部に連結する繋ぎ部材とが一体に構成されてもよい。第26,27図はこのように構成されたエアバッグ10’を備えたエアバッグ装置の断面図である。なお、第26図は乗員受け止め前の状態を示し、第27図は乗員受け止め後の状態を示している。
前述の第1〜4図の参考例では、エアバッグ内部のインナーパネル22Bに繋ぎ部材としてのテザー70を一体に設け、このテザー70の先端を蓋部材60に縫着して該インナーパネル22Bと蓋部材60とを連結した構成となっているが、この参考例のエアバッグ10’においては、テザー70’付きの蓋部材60’を設け、このテザー70’の先端をインナーパネル22A,22Bに縫着して該インナーパネル22A,22Bと蓋部材60’とを連結した構成となっている。
なお、この参考例でも、エアバッグ10’のリヤパネル14に第24,25図の各参考例と同様のスリット状のベントホール18Aが設けられ、このベントホール18Aをエアバッグ外部側から蓋部材60’が覆っている。
この参考例では、該蓋部材60’とテザー70’とが一連の基布により構成されており、該テザー70’は蓋部材60’の外縁部から延出したものとなっている。このテザー70’は、根元側が、蓋部材60’のベントホール18Aと重なる部分まで折り返され、シーム(符号略)によりこの部分に留め付けられている。
このテザー70’は、ベントホール18Aからエアバッグ10’の内部に引き込まれ、先端側がインナーパネル22A,22Bに縫着されている。この参考例では、該インナーパネル22A,22Bの周縁部同士を縫合するシーム23Bによりテザー70’がこれらと一体に縫い合わされているが、テザー70’の縫着位置はこれに限定されない。
このエアバッグ10’のその他の構成は第1〜4図のエアバッグ10と同様であり、その作動態様も同様となっている。
このように蓋部材60’とテザー70’とを一体に構成したことにより、エアバッグ10’の各部材の製作工程やエアバッグ10’全体の縫製工程の簡易化を図ることが可能となる。
なお、当然ながら、上記の第1〜4図以外の各実施の形態においても、蓋部材と繋ぎ部材(テザー)とを一体に構成してもよい。
本発明においては、この蓋部材と繋ぎ部材(テザー)との一体化構造は任意であり、特定の形態に限定されるものではない。例えば、上記の第26,27図の参考例では、蓋部材60’の外縁部から延出したテザー70’を蓋部材60’のベントホール18Aと重なる部分まで折り返して該ベントホール18Aに挿通するようにしているが、蓋部材の該ベントホールと重なる位置から直接テザーが延出した構成としてもよい。
第28図及び第29図はさらに別の参考例に係るエアバッグ装置の断面図であり、第28図は乗員受け止め前の状態を示し、第29図は乗員受け止め時の状態を示している。
この参考例のエアバッグ10Dは、乗員対向面を構成するフロントパネル12と、該乗員対向面と反対側の外面を構成するリヤパネル14と、このエアバッグ10Dの内部を横切って該エアバッグ10Dの側部同士を連結する内部部材としての吊紐200と、該フロントパネル12とリヤパネル14とを連結する吊紐201と、このエアバッグ10Dの内外を連結するベントホール18と、該ベントホール18からのガスの流出を規制する蓋部材202と、該蓋部材202を該吊紐200に連結する繋ぎ部材としてのテザー203等を備えている。
この参考例でも、該フロントパネル12及びリヤパネル14の外周縁部同士がシーム15によって縫合されることにより袋状のエアバッグ10Dの外殻が構成されている。吊紐200は、このエアバッグ10Dの径方向に張り渡され、その両端側が該シーム15によってフロントパネル12及びリヤパネル14の外周縁部にそれぞれ縫着されている。この吊紐200は、エアバッグ10Dの膨張時に該エアバッグ10Dが所定以上側方へ膨らみ出すことを防止ないし抑制するものである。
吊紐201は、一端側が、リヤパネル14のインフレータ用開口(符号略)の周縁部に縫着されたパッチクロス204に結合され、他端側が、フロントパネル12の中央付近にシーム(符号略)により縫着されている。この吊紐201は、エアバッグ10Dの膨張時に該エアバッグ10Dが所定以上乗員側へ膨らみ出すことを防止ないし抑制するものである。
ベントホール18は、この参考例では円形開口状のものであるが、ベントホールの開口形状はこれに限定されない。このベントホール18は、ステアリングホイール50と重ならない位置に配置されている。
このベントホール18を覆う蓋部材202は、前述の第17,18図の参考例における蓋部材67と同様に、リヤパネル14に縫着された1対の対向辺に沿ってタック(符号略)が形成された構成のものであり、ベントホール開放動作時には、このタックを伸ばすようにしてベントホール18から離反する。
テザー203は、一端側がベントホール18を介してこの蓋部材202に縫着され、他端側は、吊紐200の延在方向(即ちエアバッグ10Dの径方向)の途中部に縫着されている。
このエアバッグ10Dを備えたエアバッグ装置のその他の構成は、前述の各参考例と同様である。
このエアバッグ10Dが膨張する場合、第28図に示すように、該エアバッグ10Dの内部を横切って吊紐200が緊張し、これによりエアバッグ10Dの側方への過度の膨らみ出しが抑制されると共に、フロントパネル12とリヤパネル14との間で吊紐201が緊張し、これによりエアバッグ10Dの乗員側への過度の膨らみ出しが抑制される。また、図示の通り、この吊紐200の緊張に伴い、テザー203を介して蓋部材202がエアバッグ10Dの内部側へ引張られ、該蓋部材202によりベントホール18が閉鎖される。この結果、エアバッグ10Dの内部が速やかに高内圧となり、エアバッグ10Dの膨張が早期化される。
その後、この膨張したエアバッグ10Dに乗員が突っ込んで来た場合には、第29図のように、このエアバッグ10Dのフロントパネル12が乗員に押されてリヤパネル14側へ退動し、これに伴って吊紐200も後退することにより、蓋部材202をエアバッグ10Dの内部側へ引張る力が解除される。これにより、該蓋部材202がエアバッグ10D内のガス圧によってベントホール18から離反し、該ベントホール18が開放する。この結果、該ベントホール18からエアバッグ10Dの外部にガスが流出し、乗員に加えられる衝撃が吸収される。
このエアバッグ10Dにあっては、フロントパネル12の比較的広い範囲にわたって、エアバッグ10Dの潰れ(該フロントパネル12の退動)を感知することができる。即ち、乗員が膨張したエアバッグ10Dのフロントパネル12の中央部に突っ込んで来た場合はもちろんのこと、該中央部からずれてエアバッグ10Dに突っ込み、該フロントパネル12の比較的外周側の部分を後退させた場合でも、エアバッグ10Dの内部を横切って該エアバッグ10Dの側部同士を連結した吊紐200は、このフロントパネル12の退動に伴って後退し、蓋部材202をエアバッグ内部側へ引張る力を解除してベントホール18を開放させることが可能である。
また、このエアバッグ10Dにあっては、上記のように吊紐200は該エアバッグ10Dの内部を横切って該エアバッグ10Dの側部同士を連結するように配設されているので、ベントホール18の配置の自由度が高い。
なお、この参考例では、吊紐200はエアバッグ10Dを一直線状に横断するものであるが、途中で枝分れして複数方向にエアバッグを横断するよう構成してもよい。2本以上の吊紐がエアバッグを横断するように配設されてもよい。エアバッグ内を横切るように配設される内部部材は特定の形態に限定されるものではなく、例えば吊紐の代りに、エアバッグを横断して該エアバッグ内を乗員側及びこれと反対側に区画するインナーパネルを設け、このインナーパネルにテザー(繋ぎ部材)を介して蓋部材を連結してもよい。
第30図はさらに別の参考例に係るエアバッグの要部分解斜視図であり、第31図は、このエアバッグのベントホール開放動作を概略的に示す、第30図のXXXI−XXXI線に沿う部分の断面図である。なお、第31図(a)はベントホール開放前の状態を示し、同(b)はベントホール開放後の状態を示している。
この参考例では、エアバッグのリヤパネル14に設けられたベントホール18をエアバッグの内側から覆う補助蓋部材210が設けられている。また、蓋部材211がエアバッグの外側から該ベントホール18を覆っている。この参考例では、該ベントホール18は円形開口となっている。
この参考例では、補助蓋部材210は、ベントホール18よりも大径の円形シートよりなる。この補助蓋部材210は、エアバッグの内側からベントホール18に略同心状に重ね合わされると共に、該ベントホール18を介して、エアバッグの外側の蓋部材211に対しシーム212により縫い付けられている。補助蓋部材210とリヤパネル14とは非結合となっている。
この補助蓋部材210の材質に特に制限はないが、例えば、エアバッグの基布と同種又は別種の布材、シリコン、ゴム、あるいは紙などの軟質材料により補助蓋部材210を構成することが好ましい。
蓋部材211は、この参考例では、略方形シートよりなり、1対の対向辺と、これに直交する一辺とがシーム213によりリヤパネル14(ベントホール18の周囲部)に縫い付けられている。この蓋部材211の残りの一辺は、リヤパネル14に縫着されず、フリーとなっている。このフリーな一辺は、リヤパネル14の中央側に位置している。
この参考例では、前述の第17,18図及び第28,29図の各参考例における蓋部材67、202と同様に、シーム213で蓋部材211をリヤパネル14に縫着するに際し、該蓋部材211に弛みを持たせ、このシーム213によって縫着される前記三辺に沿ってタック211t(第31図(a)。ただし、前記1対の対向辺に沿って形成されたタック211tのみ図示。)を形成している。
補助蓋部材210及びベントホール18を介してこの蓋部材211にテザー70の先端が結合され、このテザー70を介して蓋部材211とエアバッグ内部側のインナーパネル22Bとが連結されている。
なお、この参考例では、補助蓋部材210と蓋部材211とを結合するシーム212は、ベントホール18と略同心状に該ベントホール18よりも小径の円を描くように延設され、その中心付近に、テザー70がシーム214により縫着されている。このシーム214は、該テザー70の先端、補助蓋部材210の中央付近及び蓋部材211の中央付近の3者を結合している。
この参考例のその他の構成は、前述の第12,13図の参考例と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
この参考例にあっては、エアバッグが膨張する場合、第31図(a)のように、蓋部材211がテザー70を介してインナーパネル22Bによりエアバッグ内部側へ引張られてエアバッグの外側からベントホール18に重なると共に、補助蓋部材210がエアバッグの内側からベントホール18に重なる。この補助蓋部材210は、エアバッグの外側からベントホール18を介して蓋部材211によって支持されているため、エアバッグ内のガス圧によってベントホール18からエアバッグ外に押し出されることなく、該ベントホール18の周縁部に密着する。これにより、ベントホール18の閉鎖性が良好なものとなる。
なお、第31図(a)の符号Fは、テザー70に作用する張力(蓋部材211をエアバッグ内部側へ引張る力)を示し、符号Pは、補助蓋部材210及び蓋部材211に作用するエアバッグ内のガス圧を示している。
膨張したエアバッグに乗員が突っ込んでエアバッグが潰れ、これに伴って蓋部材211をエアバッグ内部側に引張る力Fが解除されると、第31図(b)のように、エアバッグ内のガス圧により、蓋部材211がベントホール18から離反すると共に、補助蓋部材210がこの蓋部材211によるエアバッグ外側からの支持を失ってベントホール18からエアバッグ外に押し出される。これにより、ベントホール18が開放状態となり、該ベントホール18からエアバッグ外にガスが流出する。第31図(b)の符号Gは、このベントホール18からエアバッグ外に流出するガス流を示している。
なお、この際、蓋部材211はタック211tを伸ばすようにして孕み出す。そのため、ベントホール18からのガスの流出だけでなく、補助蓋部材210のエアバッグ外部への移動もスムーズである。
この参考例ではベントホール18が円形開口状となっているが、スリット状や方形など、他の形状であってもよい。補助蓋部材210も、円形に限定されるものではなく、ベントホールの形状に合わせて種々の形状とすることができる。蓋部材211の形状も、方形に限定されるものではなく、種々の形状とすることができる。
この参考例では、補助蓋部材210は、エアバッグの内側からベントホール18を覆い、該ベントホール18を介してエアバッグ外の蓋部材211に連結された構成となっているが、本発明の補助蓋部材の構成はこれに限定されない。(例えば、本発明の補助蓋部材は、蓋部材とエアバッグ外面との間に配置されてもよく、エアバッグの内側と、蓋部材とエアバッグ外面との間との双方に配置されてもよい。)
第32図は実施の形態に係るエアバッグの要部分解斜視図であり、第33図は、このエアバッグのベントホール開放動作を概略的に示す、第32図のXXXIII−XXXIII線に沿う部分の断面図である。なお、第33図(a)はベントホール開放前の状態を示し、同(b)はベントホール開放後の状態を示している。
この実施の形態では、エアバッグのリヤパネル14に複数のベントホール18が設けられ、これらがエアバッグの外側から共通の蓋部材220によって覆われている。
詳しくは、この実施の形態では、リヤパネル14に2個のベントホール18が設けられている。これらのベントホール18,18は、第32図の通り、リヤパネル14の外周側と中央側とに位置を異ならせて隣接配置されている。該ベントホール18,18は、この実施の形態ではいずれも円形開口状となっている。
蓋部材220は、この実施の形態では略長方形状のシートであり、長手方向をリヤパネル14の半径方向として配置され、該長手方向の一半側により一方のベントホール18を覆うと共に、他半側により他方のベントホール18を覆っている。この蓋部材220の1対の長辺及びリヤパネル14外周側の短辺がシーム221によりリヤパネル14に縫着されており、残りのリヤパネル14中央側の短辺が、該リヤパネル14に縫着されず、フリーとなっている。即ち、この実施の形態でも、該蓋部材220とリヤパネル14との間の隙間は、該リヤパネル14の中央側へ向って開放している。
なお、この実施の形態でも、シーム221で蓋部材220をリヤパネル14に縫着するに際し、該蓋部材220に弛みを持たせることにより、このシーム221によって縫着される前記三辺に沿ってタック220t(第33図(a)。ただし、リヤパネル14外周側の短辺に沿って形成されたタック220tのみ図示。)を形成している。
この実施の形態では、リヤパネル14の中央側に位置するベントホール18、即ち蓋部材220の開放部に近い方のベントホール18を通して蓋部材220にテザー70の先端が結合され、このテザー70を介して蓋部材220とエアバッグ内部側のインナーパネル22Bとが連結されている。符号222は、テザー70を蓋部材220に結合したシームを示している。
この実施の形態のその他の構成は、前述の第12,13図の参考例と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
この実施の形態にあっては、エアバッグが膨張する場合、第33図(a)のように、蓋部材220がテザー70を介してインナーパネル22Bによりエアバッグ内部側へ引張られてエアバッグの外側からリヤパネル14に重なり、双方のベントホール18,18を閉鎖する。この際、該テザー70は蓋部材220の開放部に近い部分を引張るため、この蓋部材220の開放部付近が強くリヤパネル14に接触する。これにより、蓋部材220の開放部の閉鎖性が良好なものとなる。
膨張したエアバッグに乗員が突っ込んでエアバッグが潰れ、これに伴って蓋部材220をエアバッグ内部側に引張る力Fが解除されることにより、第33図(b)のように、エアバッグ内のガス圧により蓋部材220がリヤパネル14から離反して双方のベントホール18,18が開放状態となり、エアバッグ外にガスが流出する。
なお、この実施の形態でも、蓋部材220はタック220tを伸ばすようにして孕み出すため、ベントホール18からのガスの流出がスムーズである。
この実施の形態にあっては、2個のベントホール18,18を1枚の蓋部材220で覆うため、部品点数を少なくすることができ、エアバッグ縫製作業の簡易化や部材コストの低減を図ることが可能である。
なお、この実施の形態ではベントホールが2個設けられているが、3個以上設けられてもよい。この場合、1枚の蓋部材により覆われるベントホールの個数は何個でもよい。また、前述の通り、ベントホールや蓋部材の形状は図示のものに限定されない。
第34図はさらに別の参考例に係るエアバッグの要部分解斜視図であり、第35図は蓋部材とテザーとの連結構造を概略的に示す、第34図のXXXV−XXXV線に沿う部分の断面図である。なお、第35図はベントホール開放状態を示している。
この参考例では、蓋部材230のベントホール対面部分にテザー挿通部231が設けられており、エアバッグ内部側のインナーパネル22Bに連なるテザー232の途中部が、ベントホール233を介してこのテザー挿通部231に挿通されている。これにより、該テザー232を介して蓋部材230とインナーパネル22Bとが連結されている。なお、この参考例では、蓋部材230及びベントホール233がそれぞれ略方形状となっているが、これに限定されるものではない。
該テザー挿通部231は、この参考例では、略長方形の小クロスよりなる。長方形の小クロスの1対の2辺部分が蓋部材230に縫着されている。符号234(第33図)は、このクロスを蓋部材230に縫着したシームを示している。テザー232は、クロスの残りの1対の2辺から、該クロスと該蓋部材230との間を引き通される。
テザー232は、この参考例ではインナーパネル22Bと一体に形成されており、一端側が該インナーパネル22Bに連なっている。このテザー232は、テザー挿通部231に摺動可能に挿通された後、折り返されて、末端が該インナーパネル22Bに縫着されている。第34図の符号(二点鎖線)236は、このテザー232の末端の縫着位置を示している。
なお、第34図の符号(二点鎖線)237a,237bは、蓋部材230のリヤパネル14との縫合予定線を示し、第35図の符号238は、この蓋部材230とリヤパネル14とを縫合したシームを示している。この蓋部材230のリヤパネル14への取付方法は、第30,31図の参考例における蓋部材211のリヤパネル14への取付方法と同様である。
この参考例のその他の構成は前述の第12,13図の参考例と同様であり、同一符号は同一部分を示している。また、この参考例のエアバッグ装置の作動も、第12,13図の参考例と同様である。
この参考例にあっては、テザー232がテザー挿通部231を介して蓋部材230に対し摺動可能に連結されているので、該テザー232と蓋部材230との連結部に無理な力が加えられることが防止ないし抑制される。
第36図はさらに別の参考例に係るエアバッグの要部分解斜視図であり、第37図は、このエアバッグを備えたエアバッグ装置の縦断面図である。
この参考例のエアバッグ10Eは、前述の第12,13図の参考例のエアバッグ10B’において、第1インナーパネル22Aの周縁部にテザー挿通部240を設け、このテザー挿通部240の挿通孔241にテザー242の途中部を摺動可能に引き通すと共に、このテザー242の一端を蓋部材60Bに縫着し、他端をリヤパネル14の中央付近に縫着した構成となっている。第35図の符号243は、テザー242の一端を蓋部材60Bに縫着したシームを示し、符号244は、テザー242の一端を蓋部材60Bに縫着したシームを示している。
この参考例では、該テザー挿通部240は、第1インナーパネル22Aから一体に延出した舌片状のものであり、その途中部(中央付近)に挿通孔241が設けられた構成となっている。ただし、テザー挿通部の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、前述の第34,35図の参考例におけるテザー挿通部231のように、小クロスをインナーパネル22Aの側面に取り付けてテザー挿通部を構成してもよい。また、テザー挿通部240は、第2インナーパネル22Bに設けられてもよい。
この参考例のその他の構成は前述の第12,13図の参考例と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
この参考例でも、エアバッグ10Eが膨張した場合、第37図の通り、フロントパネル12が乗員側へ膨らみ出すのに伴い、インナーパネル22A,22Bが乗員側へ伸び出してテザー242の途中部を引張る。これにより、蓋部材60Bが該テザー242を介してインナーパネル22Aによりエアバッグ10Eの内部側へ引張られてベントホール18に重なり、ベントホール18を閉鎖する。
その後、この膨張したエアバッグ10Eに乗員が突っ込んで来て該フロントパネル12がリヤパネル14側へ後退すると、インナーパネル22A,22Bが弛んで蓋部材60Bをエアバッグ10Eの内部側へ引張る力が解除され、該蓋部材60Bがベントホール18から離反し、該ベントホール18が開放する。
このエアバッグ10Eにあっては、インナーパネル22A,22Bが弛むと、テザー242のうちテザー挿通部240とリヤパネル14との間に延在した部分が、挿通孔241を通って、該テザー挿通部240よりも蓋部材60B側へ繰り出される。このため、インナーパネル22A,22Bの弛み量が小さい場合であっても、蓋部材60Bのベントホール18からの離反量を多くすることができる。
本発明では、ベントホールを複数設け、これらを共通の蓋部材で覆う場合、このうち2個以上のベントホールにそれぞれ繋ぎ部材を通し、複数の繋ぎ部材で蓋部材とエアバッグの乗員対向面とを繋ぐようにしてもよい。
第38図はこのように構成されたエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図、第39図はこのエアバッグのベントホール付近の平面図、第40図及び第41図はこのエアバッグ装置の縦断面図である。なお、第39図は、このエアバッグのベントホール付近をエアバッグ内部側から見た図である。また、第40図はエアバッグに乗員が突っ込んで来る前の状態を示し、第41図はエアバッグに乗員が突っ込んで来た後の状態を示している。
この実施の形態のエアバッグ10Fは、前述の第5〜7図のエアバッグ10Aにおいて、リヤパネル14に3個のベントホール181,182,183を設けてこれらのベントホール181〜183を共通の蓋部材60Fで覆うと共に、このうち2個のベントホール182,183にそれぞれ繋ぎ部材としてのテザー701,702を通し、これら2本のテザー701,702で蓋部材60Fとフロントパネル12とを連結した如き構成となっている。
第38,39図の通り、この実施の形態では、ベントホール182,183は、ベントホール181よりもリヤパネル14の内周側に設けられている。また、これらのベントホール182,183は、該リヤパネル14の周方向に隣り合うように配置されており、ベントホール181は、該周方向においてこれらのベントホール182,183同士の中間付近に位置している。この実施の形態では、これらのベントホール181〜183はいずれも円形開口となっている。
この実施の形態の蓋部材60Fは、略方形のパネルよりなる。図示の通り、この蓋部材60Fの周縁部のうち、ベントホール181を挟んでベントホール182,183と反対側の端部(ベントホール181よりもリヤパネル14の外周側の端部)がシーム65によってリヤパネル14に縫着されている。
この実施の形態では、テザー701,702は、第39図に示すように、円形断面形状の紐状体よりなる。これらのテザー701,702は、それぞれ、一端側が各ベントホール182,183に引き通され、蓋部材60Fの各ベントホール182,183との対向面にシーム703によって縫着されており、他端側は、フロントパネル12のエアバッグ内側面にシーム704によって縫着されている。
本発明においては、このテザー701,702が引き通されたベントホール182,183は、テザーが引き通されていないベントホール181よりも小さいことが好ましく、具体的には、該ベントホール182,183の開口面積は、710mm2以下、特に80mm2以下であることが好ましい。このようにすることにより、蓋部材60Fによる各ベントホール181〜183の閉鎖効果が向上する。
この実施の形態のその他の構成は、前述の第5〜7図の参考例と同様であり、第38〜41図において、第5〜7図と同一符号は同一部分を示している。
このエアバッグ10Fが膨張する場合、第40図に示すように、フロントパネル12が乗員側へ膨らみ出すのに伴い、蓋部材60Fがテザー701,702を介してエアバッグ10Fの内部側へ引張られてベントホール181〜183に重なり、これらのベントホール181〜183を閉鎖する。これにより、エアバッグ10F内が速やかに高内圧となり、エアバッグ10Fの膨張展開が早期化される。
この実施の形態では、蓋部材60Fはその一端側のみがシーム65によりリヤパネル14に縫着されているが、ベントホール181を挟んで該蓋部材60Fの他端側に位置する2個のベントホール182,183を介して、該蓋部材60Fの他端側がテザー701,702によりエアバッグ内部側に引張られるので、蓋部材60Fは、その一端側から他端側にかけての広い範囲にわたってリヤパネル14の外面に密着するようになる。
その後、この膨張したエアバッグ10Fに乗員が突っ込んで来た場合には、第41図のように、このエアバッグ10Dのフロントパネル12が乗員に押されてリヤパネル14側へ退動し、これに伴ってテザー701,702も後退することにより、蓋部材60Fをエアバッグ内部側へ引張る力が解除される。これにより、該蓋部材60Fがエアバッグ10F内のガス圧によって各ベントホール181〜183から離反し、各ベントホール181〜183が開放する。この結果、各ベントホール181〜183からエアバッグ10Fの外部にガスが流出し、乗員に加えられる衝撃が吸収される。
上記のエアバッグ10Fにおいては、テザー701,702をフロントパネル12に対し直接的に連結しているが、吊紐80の途中部に連結してもよい。
上記のエアバッグ10Fは、第5〜7図のエアバッグ10Aと同様に、内部部材としてフロントパネル12とリヤパネル14とを連結する吊紐80が設けられたものであるが、第1〜4図のエアバッグ10のように、内部パネルとして、エアバッグ内部を中央の第1室とこれを取り囲む第2室とに区画するインナーパネル22A,22Bが設けられたエアバッグにも、該エアバッグ10Fと同様の構成を適用することができる。
第42図はこのように構成されたエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図である。
この実施の形態のエアバッグ(符号略)は、前述の第1〜4図のエアバッグ10において、リヤパネル14に3個のベントホール181,182,183を設けてこれらのベントホール181〜183を共通の蓋部材60Fで覆うと共に、このうち2個のベントホール182,183にそれぞれ繋ぎ部材としてのテザー701,702を通し、これら2本のテザー701,702で蓋部材60Fとインナーパネル22A,22Bとを連結した如き構成となっている。
この実施の形態における各ベントホール181〜183の配置及び蓋部材60Fのシーム65によるリヤパネル14への縫着位置は、前述の第38〜42図の実施の形態と同様である。
この実施の形態でも、テザー701,702は、それぞれ一端側がベントホール182,183に引き通され、蓋部材60Fの各ベントホール182,183との対向面に縫着されている。
各テザー701,702の他端側は、この実施の形態では、インナーパネル22Aの外周付近に縫着されている。ただし、各テザー701,702の縫着位置はこれに限定されるものではない。各テザー701,702は、インナーパネル22Bに縫着されてもよい。また、各テザー701,702は、インナーパネル22A,22Bや蓋部材60Fと一体に形成されてもよい。
この実施の形態のその他の構成は第1〜4図の参考例と同様であり、第42図において第1〜4図と同一符号は同一部分を示している。
この実施の形態のエアバッグ及びエアバッグ装置の作動態様は第1〜4図の参考例と同様であり、この実施の形態における蓋部材60Fによる各ベントホール181〜183の閉鎖及び開放動作は、第38〜42図の実施の形態と同様である。
本発明においては、ベントホールを複数設けた場合、全てのベントホールに繋ぎ部材(テザー)を通して蓋部材とエアバッグの乗員対向面とを連結してもよい。
第43図はこのように構成されたエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図である。
この実施の形態のエアバッグ(符号略)は、前述の第5〜7図のエアバッグ10において、リヤパネル14に3個のベントホール181,182,183を設けてこれらのベントホール181〜183を共通の蓋部材60Fで覆うと共に、これらのベントホール181,182,183にそれぞれ繋ぎ部材としてのテザー705,701,702を通し、これら3本のテザー705,701,702で蓋部材60Fとフロントパネル12とを連結した如き構成となっている。
この実施の形態における各ベントホール181〜183の配置及び蓋部材60Fのシーム65によるリヤパネル14への縫着位置も、前述の第38〜42図の実施の形態と同様である。
この実施の形態では、テザー705は、一端側がベントホール181に引き通されて蓋部材60Fの該ベントホール181との対向面に縫着されており、他端側は、フロントパネル12のエアバッグ内側面に縫着されている。
また、テザー701,702は、それぞれ、一端側が各ベントホール182,183に引き通されて蓋部材60Fの各ベントホール182,183との対向面に縫着されており、他端側は、フロントパネル12とリヤパネル14とを連結する吊紐80の途中部(紐状体81b)に縫着されている。
ただし、各テザー705,701,702の縫着位置はこれに限定されるものではない。例えば、すべてのテザー705,701,702の該他端側をフロントパネル12に、或いは吊紐80の途中部に縫着してもよい。
この実施の形態のその他の構成は第5〜7図の参考例と同様であり、第43図において第5〜7図と同一符号は同一部分を示している。
このエアバッグにあっては、3個のベントホール181〜183の全てにそれぞれテザー705,701,702が通され、これら3本のテザー705,701,702で蓋部材60Fとフロントパネル12及びインナーパネル22A,22Bとが連結されているので、エアバッグ膨張時には、蓋部材60Fがすべてのベントホール181〜183に密着するようになり、該蓋部材60Fによる閉鎖効果が高い。
なお、当然ながら、ベントホールは4個以上設けられてもよい。そして、このうちの一部のベントホールにそれぞれ繋ぎ部材を通して蓋部材とエアバッグの乗員対向面とを連結してもよく、全てのベントホールにそれぞれ繋ぎ部材を通して蓋部材とエアバッグの乗員対向面とを連結してもよい。
前述の第19,20図の参考例では、フロントパネル12のエアバッグ内側面の複数箇所に乗員側挿通部91,93,95を設けると共に、リヤパネル14のエアバッグ内側面の複数箇所に反乗員側挿通部92,94,96を設け、テザー90の途中部をこれらの挿通部91〜96に交互に挿通することにより、該フロントパネル12とリヤパネル14との間にテザー90をジグザグ状に掛け渡しているが、フロントパネル12の代わりに内部部材に複数の挿通部を設け、この内部部材側挿通部とリヤパネル14の反乗員側挿通部とに交互にテザーを挿通するよう構成してもよい。
第44図はこのように構成されたエアバッグ及びエアバッグ装置の一例を示す分解斜視図であり、第45図はこのエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図である。なお、第45図は、エアバッグ膨張時であって、且つこの膨張したエアバッグに乗員が突っ込んでくる前の状態を示している。
この実施の形態のエアバッグ10Gは、内部部材として、フロントパネル12とリヤパネル14とを連結した複数(この実施の形態では4本)の吊紐80Aを備えている。これらの吊紐80Aは、エアバッグ10G(フロントパネル12及びリヤパネル14)の中央部と外周部との間の途中部において、該エアバッグ10Gの周方向に位置を異ならせて配置されている。なお、該周方向に隣り合う吊紐80A,80A同士の間は略等間隔となっている。
この実施の形態では、各吊紐80Aは、フロントパネル12の中央部に縫着された基片部85の周縁部にその一端が連なっている。即ち、この実施の形態では、第44図の通り、これらの吊紐80Aは基片部85を介して一連一体に構成されており、該基片部85の外周縁から放射状に延出したものとなっている。
この基片部85がシーム86によってフロントパネル12のエアバッグ内側面に縫着されると共に、各吊紐80Aの他端側が、リヤパネル14における各吊紐80Aの前記一端側との対面領域にシーム87によって縫着されることにより、これらの吊紐80Aを介してフロントパネル12とリヤパネル14とが連結されている。なお、第44図の符号(二点鎖線)88は、リヤパネル14における各吊紐80Aの他端側の縫着位置を示している。
この実施の形態では、各吊紐80Aの延在方向の途中部に、繋ぎ部材としてのテザー70Gの挿通部(内部部材側挿通部)98が設けられている。
なお、この実施の形態では、該挿通部98は各吊紐80Aを貫通した小孔よりなり、各吊紐80Aには、該吊紐80Aの延在方向と交叉方向に間隔をおいて2個ずつ設けられている。各吊紐80Aにおいて、テザー70Gは、エアバッグ外周側から一方の小孔に挿通され、当該吊紐80Aのエアバッグ内周側を回り込んで他方の小孔に挿通されている。ただし、この内部部材側挿通部98の構成及びテザー70Gの挿通方法はこれに限定されない。
リヤパネル14のうち、エアバッグの周方向に隣り合う吊紐80A同士の中間付近には、それぞれ反乗員側挿通部99が設けられている。即ち、エアバッグ10Gの周方向において、吊紐80A(内部部材側挿通部98)と反乗員側挿通部99とが交互に配置されている。この実施の形態でも、各反乗員側挿通部99は略長方形の小クロスよりなる。この長方形の小クロスの1対の2辺部分がリヤパネル14に縫着されており、残りの1対の2辺からテザー70Gがこのクロスとリヤパネル14との間を引き通される。
図示の通り、テザー70Gは、エアバッグ10Gの周方向に引き回され、その途中部が吊紐80Aの挿通部98とリヤパネル14の反乗員側挿通部99とに交互に挿通されている。
この実施の形態でも、リヤパネル14に3個のベントホール181,182,183が設けられており、これらのベントホール181〜183が共通の蓋部材60Gによって覆われている。これらのベントホール181〜183の配置は、前述の第38〜41図の実施の形態と同様である。
テザー70Gの一端側は、エアバッグ10Gの内部側からベントホール182に引き通され、蓋部材60Gのうち該ベントホール182との対面領域に縫着されており、他端側は、ベントホール183に引き通され、蓋部材60Gのうち該ベントホール183との対面領域に縫着されている。
この実施の形態のその他の構成は、前述の各実施の形態と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
このように構成されたエアバッグ10Gを備えたエアバッグ装置にあっても、車両衝突時等にインフレータ36がガス噴出作動してエアバッグ10Gが膨張した場合には、フロントパネル12が乗員側へ膨らみ出し、これに伴って各吊紐80Aが乗員側へ展張されることにより、蓋部材60Gがテザー70Gを介してエアバッグ10Gの内部側へ引張られてベントホール181〜183に重なり、これらのベントホール181〜183を閉鎖する。
図示は省略するが、その後、この膨張したエアバッグ10Gに乗員が突っ込んで来た場合には、フロントパネル12が乗員に押されてリヤパネル14側へ後退するため、吊紐80Aが弛んで蓋部材60Gをエアバッグ10Gの内部側へ引張る力が解除され、該蓋部材60Gがベントホール181〜183から離反し、これらのベントホール181〜183が開放する。
この実施の形態では、エアバッグ10Gの周方向に位置を異ならせて配置された各吊紐80Aに挿通部98が設けられ、これらの挿通部98にテザー70Gの途中部が挿通されている。そのため、膨張したエアバッグ10Gのフロントパネル12のうち少なくともいずれか1個の吊紐80Aの近傍領域のみに乗員が当り、この吊紐80Aのみが弛んだ場合でも、テザー70Gによって蓋部材60Gを引張る力が軽減され、蓋部材60Gが開き出すようになる。
なお、この実施の形態では、内部部材として、エアバッグ10Gの周方向に位置を異ならせて配置された複数本の吊紐80Aを設けているが、これ以外にも、例えば前述の第1〜4図のエアバッグ10のように、エアバッグ内部を中央の第1室1とこれを取り囲む第2室2とに区画するインナーパネル22A,22Bを設け、これらのインナーパネル22A及び/又は22Bに、その周方向に位置を異ならせて複数個のテザー挿通部を設けてもよい。
第46図はさらに別の実施の形態に係るエアバッグのインナーパネルとリヤパネルとの分解斜視図、第47図はこのエアバッグのリヤパネル、蓋部材及び各テザーの分解斜視図、第48図は第47図のIVXVIII−IVXVIII線に沿う断面図である。なお、第48図(a)は、蓋部材によるベントホール閉鎖時を示し、第48図(b)はベントホール開放時を示している。
この実施の形態の蓋部材160は、略方形のパネルよりなり、その1対の対向辺に沿ってそれぞれタック161が設けられている。このタック161は、蓋部材160の該対向辺に沿う縁部をそれぞれリヤパネル14側にジグザグ状(又は蛇腹状)に折り返すことにより形成されている。なお、この実施の形態では、タック161を形成するに当り、この蓋部材160の縁部を2回リヤパネル14側に折り返しており、これにより、第48図(a)の如く、該蓋部材160とリヤパネル14との間に第1折り返し部161aと第2折り返し部161bとが介在したものとなっている。ただし、この蓋部材160の縁部の折り返し回数は3回以上であってもよい。
この蓋部材160の4辺のうち、タック161が形成された各対向辺(第2折り返し部161bの先端縁)と、これに直交する1辺とがシーム162によってリヤパネル14に縫着されている。残りの一辺がリヤパネル14に縫着されず、フリーとなっている。このフリーな一辺は、リヤパネル14の中央側に位置しており、これにより、該蓋部材161は、リヤパネル14の中央側に向って開放する開放部を有したものとなっている。
インナーパネル22Bに連なる繋ぎ部材としてのテザー170がベントホール18に挿通され、その先端側が蓋部材160の該ベントホール18との対向面にシーム171により縫着されている。
この実施の形態では、各タック161の第1及び第2折り返し部161a,161bに、それぞれテザー挿通孔163a,163bが設けられている。各テザー挿通口163a,163bは、蓋部材160の開放部(前記フリーな一辺)の近傍に配置されている。また、リヤパネル14のうち、各タック161が重なる領域にも、それぞれテザー挿通孔14aが設けられている。これらのテザー挿通口14a,163a,163bは、各タック161が平たく潰れて各々の第1及び第2折り返し部163a,163bがリヤパネル14の外面に折り重なった状態となったときに互いに重なり合う位置関係にて配置されている。
なお、この実施の形態では、リヤパネル14の各テザー挿通口14aはスリット状となっており、各タック161のテザー挿通口163a,163bはそれぞれ円形開口となっているが、各テザー挿通口14a,163a,163bの開口形状はこれに限定されない。
第48図(a)の通り、各タック部161(第1及び第2折り返し部161a,161b)を貫通するように、これらのテザー挿通孔14a,163a,163bにタック押え付け用のテザー172が挿通されている。各テザー172の先端側は、蓋部材160のうち、その開放部の両端側の各タック161に重なる部分に対しそれぞれシーム173により縫着されている。
第46図の通り、各テザー172は、この実施の形態では、インナーパネル22Bと一体に形成されており、該インナーパネル22Bの外周縁部のうち、前記テザー170を挟んだ両側からそれぞれ延設されている。ただし、各テザー172の構成はこれに限定されるものではない。
この実施の形態のその他の構成は前述の第1〜4図と同様であり、第46〜48図において第1〜4図と同一符号は同一部分を示している。
この実施の形態では、エアバッグが膨張する場合、インナーパネル22Bにより、テザー170を介して蓋部材160のベントホール18との対面領域がエアバッグ内部側に引っ張られ、該ベントホール18の周縁部に重なる。また、この際、蓋部材160のうち、その開放部の両端側の各タック161に重なる部分も、それぞれタック押え付け用のテザー172を介してエアバッグ内部側に引張られる。これにより、各タック161が蓋部材160によってリヤパネル14の外面に強く押え付けられ、各タック161の第1及び第2折り返し部161a,161b同士、並びにこれらとリヤパネル14及び蓋部材160とが相互に密着するようになる。この結果、蓋部材160の開放部の閉鎖性が良好なものとなる。
膨張したエアバッグに乗員が突っ込んできてエアバッグが潰れると、各テザー170,172を介して蓋部材160をエアバッグ内部側に引張る力が解除される。これにより、第48図(b)のように、エアバッグ内のガス圧によって蓋部材160がリヤパネル14から離反してベントホール18が開放状態となる。この実施の形態にあっても、蓋部材160は、図示の如くタック161を伸ばすようにして孕み出すため、ベントホール18からのガスの流出がスムーズである。
第49図及び第50図はさらに別の実施の形態に係るエアバッグ及びエアバッグ装置の断面図であり、第51図はこのエアバッグ及びエアバッグ装置の分解斜視図である。なお、第49図はエアバッグに乗員が突っ込んで来る前の状態を示し、第50図はエアバッグに乗員が突っ込んで来た後の状態を示している。
この実施の形態のエアバッグ10Hは、前述の第5〜7図のエアバッグ10Aにおいて、フロントパネル12のエアバッグ内側面に縫着された第1の吊紐構成部材81の基片部81aに、繋ぎ部材としてのテザー174の挿通部175を設け、該テザー174の途中部をこの挿通部175に挿通し、該テザー174の一端側をベントホール18Hを介して蓋部材164に連結すると共に、他端側をリヤパネル14側に連結解除可能に連結した如き構成となっている。
この実施の形態では、リヤパネル14のインフレータ用開口16の周縁部をリテーナ30に固定する押えリング42Aから、該リテーナ30の板面に沿うように側方へ向って延出する板状の延出片140が設けられている。この延出片140にコ字形のスリット(符号略)を設けると共に、このスリットによって囲まれた部分を略Ω字形に屈曲させるようにして、フック部141が形成されている。ただし、フック部141の形成方法はこれに限定されない。
このフック部141の基端側には、該フック部141に対し下方(第49,50図における下方。以下、同様。)から所定以上のガス圧が加えられたときに該フック141が上方(第49,50図における上方。以下、同様。)へ回動することを誘導するためのヒンジ溝(符号略)が設けられている。
この実施の形態では、該フック部141により、繋ぎ部材としてのテザー174をリヤパネル14側に連結解除可能に連結する連結手段が構成されている。
リテーナ30のうち該フック部141と重なる部分に、上方へ向って高圧ガスを噴出可能なイグナイタ150が設置されている。この実施の形態では、該イグナイタ150により、フック部141によるテザー174のリヤパネル14側への連結を解除するための連結解除手段が構成されている。
リヤパネル14のうち該イグナイタ150及びフック部141と重なる部分には、該イグナイタ150からの噴出ガスをエアバッグ10H内に導入するためのガス導入口14bが設けられている。該イグナイタ150からの噴出ガスは、このガス導入口14bを通ってフック部141に噴き当り、該フック部141を上方へ回動させる。
なお、この実施の形態では、該リヤパネル14のインフレータ用開口16の周縁部に縫着された第2の吊紐構成部材82の基片部82aの周縁部から、該ガス導入口14bの周縁部に重なる補強用の延出部82eが突設されている。ガス導入口14bは、この延出部82eを貫通してエアバッグ10H内に開口している。
図示はしないが、この実施の形態では、車両のシートに乗員の体重を検知するセンサが設けられており、エアバッグ装置の制御回路は、このセンサにより検知された乗員の体重が所定値以下である場合にイグナイタ150をガス噴出作動させるよう設定されている。
前記テザー挿通部175は、この実施の形態でも、略長方形の小クロスよりなる。この長方形の小クロスの1対の2辺部分がシーム(符号略)によって前記基片部81aのエアバッグ内側面に縫着されている。テザー174は、この小クロスの残りの1対の2辺から、該小クロスと該基片部81aとの間を引き通される。ただし、この小クロスは、フロントパネル12のエアバッグ内側面に直接的に取り付けられてもよい。
この実施の形態では、リヤパネル14に2個のベントホール18,18Hが設けられており、これらが共通の蓋部材164によって覆われている。この蓋部材164の周縁部のうち、リヤパネル14の中央側の縁部が該リヤパネル14に対し非結合とされており、残りがシーム165によって該リヤパネル14に結合されている。ベントホール18Hは、ベントホール18よりもリヤパネル14の中央側、即ちこの蓋部材164の開放部側に位置している。
テザー174は、一端側が該ベントホール18Hに引き通され、蓋部材164の該ベントホール18Hとの対向面に対しシーム174aによって縫着されている。
このテザー174の他端側にはリング部174bが形成されており、このリング部174bが前記フック部141に引っ掛けられている。
このエアバッグ10Hのその他の構成は、前述の第5〜7図のエアバッグ10Aと同様であり、第49〜51図において第5〜7図と同一符号は同一部分を示している。
乗員の体重が小さい場合、膨張したエアバッグ10Hにこの乗員が突っ込んできても、該エアバッグ10Hの潰れ量が不十分となり、ベントホール18,18Hが十分に開放されないおそれがある。そのため、この実施の形態にあっては、前記センサによる乗員の体重の検出値が所定値以下である場合には、第50図のようにイグナイタ150を作動させ、このイグナイタ150からの噴出ガスによりフック部141を上方へ回動させ、テザー174(リング部174b)と該フック部141との係合を解除する。これにより、テザー174による蓋部材164の拘束が強制的に解除され、エアバッグ10Hの潰れ量が小さくても、蓋部材164がエアバッグ10H内のガス圧によりベントホール18,18Hから離反し、ベントホール18,18Hが開放されるようになる。
なお、前述の第19,20図の参考例のように、テザー174をフロントパネル12とリヤパネル14との間に交互に掛け回したり、あるいは第44,45図の実施の形態のように内部部材(この実施の形態では吊紐80)とリヤパネル14との間に交互に掛け回すように構成してもよい。
もちろん、内部部材は、フロントパネル12とリヤパネル14とを連結する吊紐80以外の構成であってもよい。
この実施の形態では、乗員の体重が所定値以下である場合にイグナイタ150をガス噴出作動させるよう制御しているが、イグナイタ150の制御方法はこれに限定されない。
これ以外にも、例えば、乗員の体重が所定値以下である場合にはイグナイタ150の点火タイミングを早め、乗員の体重が所定値以上である場合にはイグナイタ150の点火タイミングを遅らせるよう制御してもよい。このようにすることにより、乗員の体格に応じて、繋ぎ部材による蓋部材の開放タイミングよりも早く、又は、遅く作動させることができるので、より効果的に乗員を拘束することができる。
また、シートの前後位置検知センサでシートの前後位置を把握し、シートが所定位置よりも車両前方側にある場合には、イグナイタ150の点火タイミングを早め、シートが所定位置よりも車両後方側にある場合には、イグナイタ150の点火タイミングを遅らせるようにしてもよい。
カメラや赤外線センサ、距離測定装置などで乗員の着座位置を把握し、乗員がシートの前の方に浅く着座しているときにはイグナイタ150の点火タイミングを早め、乗員がシートに深く着座しているときにはイグナイタ150の点火タイミングを遅らせるようにしてもよい。
さらに、シートベルト装置に、タングがバックルにラッチされたことを検知するバックルスイッチや、ベルトに作用している張力を検知するベルトテンションセンサ等を設け、シートベルトの着用の有無の認識によりイグナイタ150の作動タイミングを調整するようにしてもよい。
ただし、これ以外の作動条件に基づいてイグナイタ150の作動を制御するようにしてもよい。
前述の第22図の助手席用エアバッグ100においては、該エアバッグ100のウィンドシールド対向面100eにテザー挿通部131が設けられ、該エアバッグ100の乗員対向面100fと蓋部材120とを繋ぐテザー130の途中部がこの挿通部131に挿入されているが、この挿通部131を省略し、該乗員対向面100fと蓋部材120との間に真っ直ぐにテザー130を延在させるようにしてもよい。
第52図はこのように構成された参考例に係る助手席用エアバッグ100Aの断面図であり、第53図はこのエアバッグ100Aの膨張時の側面図である。なお、第52図(a)はこのエアバッグ100Aに乗員が突っ込んで来る前の状態を示し、第50図(b)はエアバッグ100Aに乗員が突っ込んで来た後の状態を示している。
このエアバッグ100Aを例に用いて説明するが、本発明においては、テザー130の乗員対向面100fへの結合位置Kは、この乗員対向面100fのうち、膨張したエアバッグ100Aの上端部100tよりも50mm以上下位であり、なおかつ該エアバッグ100Aの下端部100bよりも100mm以上上位であると共に、該乗員対向面100fの左右方向の中央から該左右方向にそれぞれ200mm以下の範囲W内に位置していることが好ましい。
テザー130の乗員対向面100fへの結合位置Kをこのように設定することにより、乗員の座高や着座位置にある程度のばらつきがあっても、膨張したエアバッグ100Aの乗員対向面100fを乗員が押圧したときに、この乗員対向面100fとテザー130との結合位置Kに乗員の腹部から頭部の間のいずれかの部位が当り、テザー130が蓋部材120側に押されて該蓋部材120が開放動作するようになる。
この参考例のその他の構成は前述の第22図のエアバッグ100と同様であり、第52,53図において第22図と同一符号は同一部分を示している。
第22図の助手席用エアバッグ100においては、該エアバッグ100のウィンドシールド対向面100eに直接的にテザー挿通部131が取り付けられているが、該ウィンドシールド対向面100eから離隔していてもよい。
第54図はこのように構成された参考例に係る助手席用エアバッグ100Bの断面図である。なお、第54図(a)はこのエアバッグ100Bに乗員が突っ込んで来る前の状態を示し、第54図(b)はエアバッグ100Bに乗員が突っ込んで来た後の状態を示している。
このエアバッグ100Bにあっては、テザー挿通部131’は、一端が該エアバッグ100のウィンドシールド対向面100eに連なる中間パネル132の他端に設けられている。
第55図は補助蓋部材の構成例を示すエアバッグのベントホール付近の斜視図、第56図はこのエアバッグの補助蓋部材の分解斜視図、第57図はこの補助蓋部材の作動を示す、第55図のVXVII−VXVII線に沿う断面図である。なお、第57図(a)は補助蓋部材開放前の状態を示し、第57図(b)は補助蓋部材開放後の状態を示している。
この実施の形態では、リヤパネル14に2個のベントホール280,281が設けられ、該リヤパネル14のエアバッグ外部側からこれらのベントホール280,281が共通の蓋部材260で覆われていると共に、エアバッグ内部側から補助蓋部材210A,210Bによって該ベントホール280が覆われている。該蓋部材260は、ベントホール280を挟んでベントホール281と反対側の端部がシーム261によりリヤパネル14に縫着されている。ベントホール281に繋ぎ部材としてのテザー270が引き通され、このテザー270の一端側が、シーム271によって蓋部材260のベントホール281との対向面に縫着されている。図示はしないが、このテザー270の他端側は、エアバッグの乗員対向面又は内部部材に連結されている。
第56図に示すように、この実施の形態の補助蓋部材210A,210Bは、それぞれ、ベントホール280の周縁部の略半周分に沿う円弧状部210aと、該円弧状部210aの両端側を繋ぐ弦状部210bとを有し、且つ該ベントホール280よりも大径の略半円形状の織布よりなる。なお、この実施の形態では、該弦状部210bは、その延在方向の中間側ほど、円弧状部210aの両端を結ぶ直線から該円弧状部210aと反対側へ離反するように湾曲している。
一方の補助蓋部材210Aは、エアバッグ内部側からその円弧状部210aがベントホール280の周縁部の略半周分に重ね合わされ、シーム210cによりこのベントホール280の周縁部に縫着されている。また、他方の補助蓋部材210Bは、エアバッグ内部側からその円弧状部210aがベントホール280の周縁部の残りの略半周分に重ね合わされ、シーム210dによりこのベントホール280の周縁部に縫着されている。そして、これらの補助蓋部材210A,210Bの弦状部210b,210b側同士がベントホール280内で重なり合うことにより、該ベントホール280が閉鎖されている。これらの補助蓋部材210A,210B同士は非結合となっている。
ただし、該補助蓋部材210A,210Bの形状や配置等の構成はこれに限定されるものではない。
この実施の形態のその他の構成は前述の実施の形態と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
この実施の形態にあっては、エアバッグが膨張する場合、第57図(a)のように、蓋部材260がテザー270を介してエアバッグ内部側へ引張られてエアバッグの外側からベントホール280,281に重なると共に、補助蓋部材210A,210Bがエアバッグの内側からベントホール280に重なる。これらの補助蓋部材210A,210Bは、エアバッグの外側からベントホール280を介して蓋部材260によって支持されているため、エアバッグ内のガス圧によってベントホール280からエアバッグ外に押し出されることなく、該ベントホール280を閉鎖する。
この実施の形態では、ベントホール280には繋ぎ部材(テザー)が挿通されておらず、蓋部材260の該ベントホール280との対面領域が直接的にエアバッグ内部側へ引張られていないので、このベントホール280の周縁部に対する蓋部材260の密着度は、ベントホール281の周縁部に対する蓋部材260の密着度に比べて弱い。しかしながら、上記のように、このベントホール280はエアバッグ内部側から補助蓋部材210A,210Bによって覆われた状態となっているため、このベントホール280の閉鎖性も良好である。
膨張したエアバッグに乗員が突っ込んでエアバッグが潰れ、これに伴って蓋部材260をエアバッグ内部側に引張る力が解除されると、第57図(b)のように、蓋部材260がリヤパネル14の外面から離反すると共に、補助蓋部材210A,210Bがこの蓋部材260によるエアバッグ外側からの支持を失い、それぞれエアバッグ内部のガス圧によりベントホール280からエアバッグ外に押し出される。これにより、ベントホール280,281が開放状態となり、これらのベントホール280,281からエアバッグ外にガスが流出する。
この際、各補助蓋部材210A,210Bは、ベントホール280の周縁部に沿ってエアバッグの外部へ延出し、図示の如く該ベントホール280を取り囲むノズルのようになる。そのため、これらの補助蓋部材210A,210Bによって該ベントホール280からのガス流出方向が規制され、該ベントホール280から蓋部材260に向って強くガスが噴き出すようになる。この結果、該蓋部材260のエアバッグ外面からの離反が迅速化される。
なお、この実施の形態では2枚の補助蓋部材210A,210Bを設けているが、補助蓋部材を1枚のみ、又はベントホール280の周方向に位置をずらして3枚以上設けてもよい。
第58図は異なる実施の形態に係るエアバッグのベントホール付近の斜視図、第59図はこのベントホールに設けられたノズルの作動を示す、第58図のVXIX−VXIX線に沿う断面図である。なお、第59図(a)はノズル突出前の状態を示し、第59図(b)はノズル突出後の状態を示している。
この実施の形態でも、リヤパネル14に2個のベントホール280,281が設けられ、該リヤパネル14のエアバッグ外部側からこれらのベントホール280,281が共通の蓋部材260で覆われている。該蓋部材260は、ベントホール280を挟んでベントホール281と反対側の端部がシーム261によりリヤパネル14に縫着されている。ベントホール281に繋ぎ部材としてのテザー270が引き通され、このテザー270の一端側が、シーム271によって蓋部材260のベントホール281との対向面に縫着されている。図示はしないが、このテザー270の他端側は、エアバッグの乗員対向面又は内部部材に連結されている。
この実施の形態では、ベントホール280に、両端が開放した筒状のノズル290の一端側が連結されている。符号291は、このノズル290の一端側の周縁部をベントホール280の周縁部に縫着したシームを示している。この実施の形態では、該ノズル290は、基布を筒状に巻回して該巻回方向の両端部同士を縫合してなるものであるが、ノズル290の構成はこれに限定されるものではなく、例えば可撓性を有するゴムや合成樹脂等よりなるチューブなどから構成されてもよい。
このノズル290は、エアバッグが折り畳まれてエアバッグ装置の組み立てに供される前に、予めエアバッグの内側に配置された状態とされている。なお、この実施の形態では、ノズル290は、エアバッグの内側からベントホール280の周縁部に縫着されることにより、初めからエアバッグの内側に配置されているが、エアバッグの外側からベントホール280の周縁部に縫着され、ベントホール280を通してエアバッグの内側へ押し込まれてもよい。
なお、この実施の形態では、該ノズル290の基端(シーム291)から先端までの筒軸方向の長さは、ベントホール280の開口径よりも大きく設定されている。
この実施の形態のその他の構成は前述の実施の形態と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
この実施の形態にあっては、エアバッグが膨張する場合、第59図(a)のように、蓋部材260がテザー270を介してエアバッグ内部側へ引張られてエアバッグの外側からベントホール280,281に重なる。これによりベントホール280が蓋部材260によって塞がれた状態となるため、ノズル290は、ベントホール280からエアバッグ外に突出せず、エアバッグの内部に留まる。なお、第59図(a)では、各部の構成を明瞭なものとするためにノズル290を円筒形状のまま図示しているが、この際、ノズル290はエアバッグ内のガス圧によりリヤパネル14の内面に押し付けられ、閉口状態となる。これにより、ベントホール280はこのノズル290によっても閉鎖されることとなり、ベントホール280の閉鎖性が良好なものとなる。
なお、ノズル290の基端から先端までの筒軸方向の長さをベントホール280の開口径よりも小さく設定した場合には、このようにノズル290がリヤパネル14の内面に押し付けられても、ベントホール280が完全にはこのノズル290によって閉鎖されなくなる。
膨張したエアバッグに乗員が突っ込んでエアバッグが潰れ、これに伴って蓋部材260をエアバッグ内部側に引張る力が解除されると、第59図(b)のように、蓋部材260がリヤパネル14の外面から離反し、ベントホール280,281が開放される。これに伴い、ノズル290がエアバッグ内のガス圧によりベントホール280からエアバッグ外に押し出される。そして、このノズル290内にガスが流れ込むことによりノズル290が筒状に拡径して開放状態となり、このノズル290を通ってエアバッグ外にガスが流出するようになる。
このとき、該ノズル290から蓋部材260に向って強くガスが噴き出す。これにより、該蓋部材260のエアバッグ外面からの離反が迅速化される。
本発明においては、繋ぎ部材に補強を施してもよい。第60図(a),(b)は、それぞれ繋ぎ部材の補強構造の一例を示す斜視図である。
第60図(a)の繋ぎ部材としてのテザー70Cには、その両側縁に沿って、補強用のステッチが設けられている。
第60図(b)の繋ぎ部材としてのテザー70Dは、複数枚(図では2枚)の帯状体を縫い合わせてなるものである。
上記の補強構造はあくまで一例であり、上記以外の補強構造が採用されてもよい。例えば、繋ぎ部材を厚手の布地で形成してもよい。
上記の各実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記の各実施の形態に限定されるものではない。