以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜4に、本発明の第1実施形態であるステアリングホイール用のエアバッグ装置M1を示す。
なお、実施形態における前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両に搭載されたステアリングホイールWの直進操舵時を基準とするものであり、ステアリングホイールWを組み付けるステアリングシャフトSS(図3,4の二点鎖線参照)の軸方向に沿った上下を上下方向とし、ステアリングシャフトSSの軸直交方向である車両の前後を前後方向とし、ステアリングシャフトSSの軸直交方向である車両の左右を左右方向として、前後・上下・左右の方向を示すものである。
第1実施形態のエアバッグ装置M1は、図2〜4に示すように、ステアリングホイールWの中央のボス部Bにおける上部に配置される構成である。ステアリングホイールWは、操舵時に把持するリング部Rと、中央に配置されてステアリングシャフトSSに連結されるボス部Bと、ボス部Bとリング部Rとを連結する4本のスポーク部Sと、を備えて構成されている。また、ステアリングホイールWは、構成部品上では、エアバッグ装置M1とステアリングホイール本体1とから構成されている。
ステアリングホイール本体1は、リング部R,ボス部B,スポーク部Sの各部を連結するように配置されるアルミニウム合金等からなる芯金2と、リング部Rとリング部R側のスポーク部Sとの芯金2を被覆する合成樹脂製の被覆層3と、ボス部Bの下部側に配置される合成樹脂製のロアカバー4と、を備えて構成されている。
エアバッグ装置M1は、図3,4に示すように、折り畳まれたエアバッグ33と、エアバッグ33に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ33とインフレーター8とを収納して保持するケースとしてのバッグホルダ10と、バッグホルダ10の開口10aを覆うように配設されるエアバッグカバーとしてのパッド24と、エアバッグ33に形成される排気孔38を開閉可能な開閉部材50と、開閉部材50の開閉を制御する制御機構としての係止部材20と、を備えて構成されている。実施形態の場合、インフレーター8と係止部材20とは、図1に示す制御装置59により、作動を制御される。
制御装置59は、図1に示すように、運転席SE1に着座した乗員(運転者)MDのシートベルトの装着状態を検知可能なシートベルトセンサ60、運転席SE1に着座した乗員MDの体格や、ステアリングホイールWと乗員MDとの距離を検知可能な乗員検知センサとしての位置検知センサ61、乗員MDの重量を検知可能な乗員検知センサとしての重量センサ62、及び、車両の加速度や加速の方向等を検知可能な衝突検知センサ63等と、電気的に接続され、これらのシートベルトセンサ60、乗員検知センサとしての位置検知センサ61や重量センサ62、あるいは、衝突検知センサ63等からの電気信号を入力させて、インフレーター8を作動させるとともに、好適な膨張モードでエアバッグ33を膨張させるように、制御機構としての係止部材20の作動を制御する。
インフレーター8は、上部に膨張用ガスを吐出する複数のガス吐出口8bを備えた略円柱状の本体8aと、本体8aの外周面から突出して配置される略四角板状のフランジ部8cと、を備えて構成されている。フランジ部8cには、後述するリテーナ6から突出するボルト6aを挿通させるための挿通孔8dが、形成されている。
リテーナ6は、図3,4に示すように、略四角環状体の板金製として、四隅に、下方へ突出するボルト6aを備えて構成されている。このリテーナ6は、各ボルト6aを、エアバッグ33の内周面側における流入用開口36の周縁やバッグホルダ10を経て、インフレーター8のフランジ部8cから突出させる。そして、フランジ部8cから突出した各ボルト6aにナット7を締結することにより、エアバッグ33とインフレーター8とが、リテーナ6を利用して、バッグホルダ10に取り付けられている。
バッグホルダ10は、エアバッグ33の収納部位を構成するもので、図3,4に示すように、それぞれ、板金製とするホルダ本体11と2つの保持プレート15とを備えて構成されている。
ホルダ本体11は、略四角板状の底壁部12と、底壁部12の周縁から上方に延びるとともに上端側を開口させて構成される側壁部13と、を備えて構成されている。底壁部12における中央付近には、円形に開口してインフレーター8の本体8aを下方から上方へ挿通可能な挿通孔12aが、形成されている。挿通孔12aの周縁には、リテーナ6の各ボルト6aを挿通させる4つの挿通孔12bが、形成されている。また、底壁部12における挿通孔12aの前方側には、開閉部材50を構成する紐状部材51の後述する元部側部位52から延びるように、紐状部材51の先端側部位53から構成される連結部材の端部側に形成されるループ部53aを挿通可能とする貫通孔12cが、形成されている(図5参照)。
また、底壁部12の下部側であって、貫通孔12cの近傍となる部位には、制御機構としての係止部材20が、配設されている。この係止部材20は、開閉部材50から延びる連結部材(紐状部材51の先端側部位53)の端部側を連結するもので、図3,5に示すように、先端側部位53の端部側に形成されるループ部53aに挿通される係止ピン21と、底壁部12の下面側に固着されて係止ピン21を引き込み可能に作動するアクチュエータ22と、係止ピン21の先端側において底壁部12から下方に延びるように構成されて係止ピン21の先端側を支持可能とされる支持ブラケット23と、から構成されている。アクチュエータ22が係止ピン21を引き込ませるように作動すると、係止ピン21が、ループ部53aを係止している状態から係止を解除する状態に移行する。このアクチュエータ22は、制御装置59からの電気信号により係止ピン21を移動できれば、油圧・水圧・空気圧、あるいは、インフレーター等の膨張するガス圧を発生させる場合を含めた流体圧を利用するピストンシリンダ、それらの流体圧や電気を利用したモータ、電磁ソレノイド、復元時の付勢力を利用するばね等を、使用することができる。なお、アクチュエータ22の非作動時には、係止時における係止ピン21からのループ部53aの抜けを防止するように、係止ピン21は、先端側を支持ブラケット23により支持されている。
ホルダ本体11に固着された保持プレート15は、左右両側のスポーク部Sにおけるリング部R近傍の被覆層3(図2,4参照)の部位付近まで延びる保持部15aを備え、各保持部15aには、ホーンスイッチ16が取り付けられている。また、各保持プレート15には、後述するリベット31を挿通させるための取付孔15bが、形成されている。そして、実施形態の場合、エアバッグ装置M1は、ホーンスイッチ16の下面側において芯金2に固定される連結板18(図4参照)に、ホーンスイッチ16を介在させて支持されることにより、ステアリングホイール本体1のボス部Bの上部に取り付けられることとなる。
エアバッグカバーとしてのパッド24は、オレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂製とされて、図2〜4に示すように、ボス部Bの上部側を覆う天井壁部25と、天井壁部25の外周縁から下方に延びる略四角筒形状の側壁部28と、を備えて構成されている。天井壁部25における側壁部28の内側部位は、折り畳まれたエアバッグ33を覆う部位として構成され、その部位には、エアバッグ33の膨張時に開く複数の扉部27が、周囲に破断予定部26を設けて、配設されている。扉部27は、実施形態の場合、図2に示すごとく、前後方向に沿って2枚並設されており、内部に膨張用ガスを流入させたエアバッグ33に押圧されて、周囲の略H字形状の破断予定部26を破断させて、前後に開く構成である。側壁部28には、水平方向に貫通する複数の取付孔29が、形成されている。これらの取付孔29には、パッド24をバッグホルダ10に保持させるための固着手段としてのリベット31が挿入されている。
エアバッグ33は、図6,9,10に示すように、膨張用ガスを流入させて膨張する袋状のバッグ本体34と、バッグ本体34の膨張完了時の形状を規制するテザー45と、を備えて構成されている。
バッグ本体34は、膨張完了時の外周壁が、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。バッグ本体34の外周壁は、膨張完了時にステアリングホイールW側となって膨張用ガスを流入させる流入用開口36を有した車体側壁部35と、流入用開口36と対向して配置されて膨張完了時に乗員(運転者)側となる乗員側壁部41と、から構成されている。
流入用開口36は、インフレーター8の本体8aを下方から挿入させて、インフレーター8のガス吐出口8bから吐出される膨張用ガスを、バッグ本体34内に流入させるための部位である。また、流入用開口36の周縁には、リテーナ6に形成されたボルト6aを挿通させる取付孔37が、4個形成されている。また、車体側壁部35における流入用開口36の前方側となる部位には、バッグ本体34内部に流入した膨張用ガスの一部を排出可能な排気孔38が、形成されている。さらに、排気孔38の左右両側となる部位には、それぞれ、開口面積を排気孔38より小さく設定される円形に開口したベントホール39,39が、形成されている。
バッグ本体34は、図9に示すように、車体側壁部35を構成する円形状の車体側基布42と、乗員側壁部41を構成する円形状の乗員側基布43と、から構成されている。流入用開口36は、車体側基布42の中央に形成されており、取付孔37、排気孔38、及び、ベントホール39は、それぞれ、車体側基布42の所定位置に、形成されている。
テザー45は、バッグ本体34と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。テザー45は、図11に示すように、バッグ本体34の膨張完了時における車体側壁部35と乗員側壁部41との離隔距離を規制して、バッグ本体34の膨張完了形状を規制するもので、図9に示すように、車体側壁部35側と乗員側壁部41側との2枚のテザー用基布46,47から、構成されている。各テザー用基布46,47は、略円形とされて各車体側壁部35,乗員側壁部41に連結される連結部46a,47aと、各連結部46a,47aの左右両縁側から延設される帯状の延設部46b,47bと、から構成されている。テザー用基布46の連結部46aには、図9に示すように、流入用開口36や取付孔37に対応して、開口(図符号省略)が形成されている。
開閉部材50は、第1実施形態の場合、排気孔38の周縁を全周にわたって囲むように配置される紐状部材51の元部側部位52から構成され、この元部側部位52から延びるように構成される紐状部材51の先端側部位53が、先端側のループ部53aを、制御機構としての係止部材20に連結される連結部材を構成している。また、実施形態の場合、紐状部材51の元部側部位52は、排気孔38の周縁に配設されるパッチ部55の部位に、配置されている。
パッチ部55は、実施形態の場合、ポリアミド糸やポリエステル糸等から構成されるとともに表面にシリコンコーティングを施したコート布から形成されるもので、図7のAに示すように、内周縁55aを排気孔38の周縁に一致させた略円環状とされている。そして、パッチ部55は、内周縁55a側と外周縁55b側とを、縫合部位56I,56Oの部位で、それぞれ、バッグ本体34を構成する車体側基布42(車体側壁部35)の外周面側に縫着されている。また、パッチ部55における内周縁55a及び外周縁55bから離れた中間部位には、紐状部材51の元部側部位52を挿通可能な挿通孔55cが、パッチ部55の中央を中心とした円周上に、断続的に、設けられている。実施形態の場合、パッチ部55は、図7のAに示すように、内周縁55a側の内径寸法(排気孔38の内径寸法)D1をφ60に設定され、外周縁55b側の外径寸法D2をφ130に設定されている。
紐状部材51は、排気孔38の周縁を全周にわたって囲むとともに、パッチ部55に設けられる挿通孔55cに貫通されて、パッチ部55の表裏にわたって配置されている。具体的には、紐状部材51は、一方の端部51a側を、紐状部材51における他方の部位を挿通可能なループ状として、排気孔38の周縁を全周にわたって囲むような投げ縄状として構成されるもので、この排気孔38の周縁を囲むように配置される投げ縄状の部位が、開閉部材50を構成する元部側部位52を構成している。そして、元部側部位52から延びる他方の端部51b側の部位が、先端側にループ部53aを配置させて係止部材20に連結される連結部材としての先端側部位53を構成している。実施形態の場合、紐状部材51は、長さ寸法を、ループ部53aが係止ピン21との係止状態を維持されて排気孔38を閉塞させた閉塞モードでエアバッグ33が膨張する際にも、エアバッグ33が、排気孔38の閉塞状態を維持しつつ、支障なく膨張を完了可能な寸法に、設定されている。また、紐状部材51は、係止部材20による係止維持状態でエアバッグ33を膨張させる際に必要な強度が確保できれば、形成材料を特に限られるものではなく、例えば、ポリアミド繊維やアラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維等からなるものを使用することができる。
第1実施形態のエアバッグ装置M1では、作動時に、エアバッグ33は、排気孔38を開口させた開口モードと、排気孔38を閉塞させた閉塞モードと、の2つのモードで膨張を完了させることとなる。この開口モードと閉塞モードとは、制御機構としての係止部材20により制御されるもので、具体的には、開口モードでは、係止部材20と紐状部材51におけるループ部53aとの連結が解除されることとなり、このとき、紐状部材51における元部側部位(開閉部材)52が、排気孔38の周縁を構成する車体側基布42(車体側壁部35)に多数のタックTを寄せるようにして、排気孔38が縮径されるようにして閉塞されていても、この排気孔38から排気されるように向かう膨張用ガスGが、排気孔38の周縁を構成する車体側基布42を押し広げるように、押圧することとなって、タックTが解消されて、排気孔38が開口されることとなる(図7のA及び図8のA参照)。また、閉塞モードでは、係止部材20と紐状部材51におけるループ部53aとの連結が維持されることとなり、開口状態の排気孔38の周縁において、紐状部材51における元部側部位(開閉部材)52が、エアバッグ33における排気孔38周縁の部位の移動に伴う相対的な先端側部位(連結部材)53の引張を受けて、巾着の口を絞るようにして、排気孔38の周縁を構成する車体側基布42に多数のタックTを設けるようにして、排気孔38が閉塞されることとなる(図7のB及び図8のB参照)。
次に、第1実施形態のエアバッグ装置M1の車両への搭載について述べる。予め、パッチ部55をエアバッグ33の排気孔38の周囲に縫着させ、パッチ部55に、紐状部材51を取り付けておく。そして、排気孔38を開口させた状態のエアバッグ33の流入用開口36から、リテーナ6を内部に挿入させ、各ボルト6aを取付孔37から突出させる。そして、エアバッグ33を、排気孔38の開口状態を維持させつつ、バッグホルダ10内に収納可能なように、折り畳む。
次いで、各ボルト6aを底壁部12の挿通孔12bから突出させ、ループ部53aを貫通孔12cから突出させるようにして、折り畳まれたエアバッグ33を、予め、係止部材20、ホーンスイッチ16、及び、連結板18を、取り付けておいたバッグホルダ10内に収納させる。そして、係止部材20の係止ピン21をループ部53aに挿通させ、係止ピン21の先端側を支持ブラケット23に支持させるようにして、ループ部53aを係止部材20に係止させる。その後、インフレーター8の本体8aを、下方から底壁部12の挿通孔12a内に挿入させて、各ボルト6aを、フランジ部8cの挿通孔8dから突出させる。そして、各ボルト6aにナット7を締結させて、バッグホルダ10に、エアバッグ33とインフレーター8とを保持させる。
その後、エアバッグ33にパッド24を被せて、側壁部28の段差部28aにバッグホルダ10の係止爪13aを係止させるとともに、バッグホルダ10と側壁部28とをリベット31により締結すれば、エアバッグ装置M1を組み立てることができる。
このようにして組み立てたエアバッグ装置M1は、車両に取り付け済みのステアリングホイール本体1の図示しない取付座に対し、所定のボルトを使用して、連結板18を連結させれば、ステアリングホイール本体1に組み付けることができ、このとき、ステアリングホイールWの組み立てと、車両へのステアリングホイールWの搭載と、が完了することとなる。なお、エアバッグ装置M1の車両への搭載時には、制御装置59から延びる作動信号入力用のリード線を、インフレーター8と係止部材(制御機構)20とに接続させておく。
エアバッグ装置M1の車両への搭載後、走行中の車両が衝突すれば、制御装置59がインフレーター8に作動信号を出力することとなって、インフレーター8が、ガス吐出口8bから膨張用ガスを吐出させ、エアバッグ33が、膨張用ガスを内部に流入させて膨張し、パッド24の扉部27,27を前後両側に開かせて、乗員MD側に突出し、膨張を完了することとなる。
そして、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ33が、排気孔38を開口させた状態で、折り畳まれて収納されていることから、装置側となるステアリングホイールWに乗員MDが過度に近接している状態で作動する際に、膨張初期のエアバッグ33が、閉塞モードと開口モードとにかかわらず、排気孔38を大きく開口させた状態で、乗員MDと接触することとなる。そのため、排気孔38から多量の膨張用ガスGを排出させることができ、乗員MDと接触しているエアバッグ33の内圧上昇を抑えることができて、乗員MDを不必要に押圧することを防止できる。具体的には、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、制御装置59が、運転席SE1に着座した乗員(運転者)MDのシートベルトの装着状態を検知可能なシートベルトセンサ60からの電気信号を入力させるように構成されており、制御装置59が、シートベルトセンサ60からの作動信号を受けて、乗員MDのシートベルト非装着状態を検知した場合には、インフレーター8の作動と略同時に、アクチュエータ22に作動信号を出力させて、係止ピン21を引き込むように作動させる構成である。そのため、シートベルト非装着状態の乗員MDが、図12に示すようにステアリングホイールWと接触していても、エアバッグ33は、排気孔38を大きく開口させた状態を維持しつつ膨張することから、排気孔38から多量の膨張用ガスGを排出させることができ、乗員MDと接触しているエアバッグ33の内圧上昇を抑えることができて、乗員MDを不必要に押圧することを防止できる。
また、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、排気孔38を開口させた開口モードと、排気孔38を閉塞させた閉塞モードと、の2つのモードでエアバッグ33の膨張を完了させることができることから、エアバッグ33の膨張完了時の内圧も、調整することができる。具体的には、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、制御装置59が、シートベルトセンサ60からの作動信号を受けて、乗員MDのシートベルト装着状態を検知した場合には、紐状部材51における先端側部位(連結部材)53のループ部53aと係止ピン21との係止状態を維持させた状態で、エアバッグ33が展開膨張することとなり、紐状部材51における元部側部位(開閉部材)52が、エアバッグ33における排気孔38周縁の部位の移動に伴う相対的な先端側部位(連結部材)53の引張を受けて、巾着の口を絞るようにして、排気孔38が、エアバッグ33の膨張途中において、開口状態から閉塞されることとなる。
その後、所定のセンサ60,61,62からの信号を入力させている制御装置59が、例えば、シートベルトを装着した状態の小柄乗員MD1や、シートベルトを装着した状態でステアリングホイールWに近づいて着座している乗員MDを検知した場合には、インフレーター8から膨張用ガスが吐出されてエアバッグ33が膨張を略完了させた後に、制御装置59がアクチュエータ22に作動信号を出力させて、係止ピン21を引き込むように作動させ、先端側部位(連結部材)53と係止ピン21との係止状態を解除させることとなり、エアバッグ33が、図11のAに示すように、排気孔38を開口させた開口モードで膨張を完了させることとなる。そして、開口モードでは、エアバッグ33が、開口した排気孔38から膨張用ガスGを排気させつつ、内圧を低く設定された状態で膨張を完了させることから、小柄乗員MD1や、ステアリングホイールWに近づいて着座している乗員MDに好適となり、このような乗員MD1(MD)を、内圧を低く設定されたエアバッグ33により、必要以上に押圧することを抑えて、ソフトに保護することができる(図1参照)。
逆に、センサ60,61,62からの信号を入力させている制御装置59が、例えば、シートベルトを装着した状態の大柄乗員MD2や、シートベルトを装着した状態でステアリングホイールWから離れて着座している乗員MDを検知した場合には、制御装置59からアクチュエータ22に作動信号が出力されず、紐状部材51における先端側部位(連結部材)53のループ部53aと係止ピン21との係止状態を維持させた状態で、エアバッグ33が、図11のBに示すように、排気孔38を閉塞させた閉塞モードで膨張を完了させることとなる。そして、閉塞モードでは、エアバッグ33が、排気孔38から膨張用ガスを排気させずに、内圧を高く設定された状態で膨張を完了させることから、大柄乗員MD2や、ステアリングホイールWから離れて着座している乗員MDに好適となり、このような乗員MD2(MD)を、十分な内圧を確保して、クッション性よく膨張したエアバッグ33により、底付きすることなく、的確に保護することができる(図1参照)。
したがって、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、膨張時のエアバッグ33が、装置側(ステアリングホイールW側)に過度に近接している乗員MDを不必要に押圧することを防止でき、かつ、非近接状態で着座した乗員MDを、体格差や着座位置等に応じて、的確な内圧で保護することができる。
また、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ33は、排気孔38を開口させた状態で折り畳まれて収納されており、排気孔38は、エアバッグ33の膨張に伴って、閉塞状態に移行することとなるが、紐状部材51における元部側部位(開閉部材)52が、エアバッグ33における排気孔38周縁の部位の移動に伴う相対的な先端側部位(連結部材)53の引張を受けて、巾着の口を絞るようにして、排気孔38を閉塞させる構成であることから、エアバッグ33の膨張途中において、排気孔38を円滑に閉塞させることができる。
さらに、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、閉塞モードにおいて、排気孔38の外周縁を略全周にわたって囲む紐状部材51の元部側部位(開閉部材)52を牽引させるようにして、図7のB及び図8のBに示すように、排気孔38の周縁を構成するエアバッグ33の車体側基布42(車体側壁部35)に多数のタックTを寄せるようにして、縮径させることにより、排気孔38を閉塞させる構成であることから、閉塞モードでエアバッグ33を膨張させる際、このタックTを設けてタックT相互を寄せた基布(車体側壁部35)のしわ分、エアバッグ33が、容積を小さくするような態様となる。逆に、開口モードでエアバッグ33を膨張させる際には、このタックTを設けてなる基布のしわ分、エアバッグ33が、容積を大きくするような態様となる。そのため、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、開口モードでエアバッグ33を膨張させる場合と、閉塞モードでエアバッグ33を膨張させる場合と、で、若干容積を異ならせることができることから、内圧差を増大させることができる。
また、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、排気孔38の周縁に、パッチ部55を配設させ、紐状部材51を、パッチ部55における内周縁55a及び外周縁55bから離れた中間部位において、パッチ部55に断続的に形成される挿通孔55cを貫通して、パッチ部55の表裏にわたって配置させている。すなわち、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、排気孔38の周縁に配置される紐状部材51が、エアバッグ33を構成する車体側基布42(車体側壁部35)ではなく、車体側基布42と別体とされるパッチ部55に挿通されて配置されていることから、閉塞モードでエアバッグ33を膨張させる場合にも、エアバッグ33を構成する車体側基布42が直接牽引されるような態様とならず、パッチ部55における紐状部材51を挿通させる挿通孔55cの周縁の部位が、牽引されるような態様となる。すなわち、エアバッグ33を構成する車体側基布42は、このパッチ部55における挿通孔55cの周縁の部位を介して間接的に牽引されるような態様となることから、エアバッグ33を構成する基布にダメージを与えることを防止できる。
特に、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、パッチ部55の内周縁55a側の内径寸法(排気孔38の内径寸法)を、φ60と大きく設定されていることから、閉塞モードにおいて、排気孔38を縮径させるように閉塞させる際に、必ず、タックTを寄せるようにして、基布(車体側壁部35)にしわを発生させることができる。また、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、パッチ部55を車体側基布42(車体側壁部35)に縫着させている内側の縫合部位56Iが、図7のAに示すように、パッチ部55の内周縁55aから離れた幅方向の略中間位置に、形成されていることから、排気孔38の周縁(パッチ部55の内周縁55a)に支障なくしわを発生させることができる。さらに、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、パッチ部55を、表面にシリコンコーティングを施したコート布から形成していることから、パッチ部55表面の摩擦抵抗が高く、閉塞モードにおいて、排気孔38が、多数のタックTを寄せるようにして、縮径されて閉塞される際に、タックTを形成するパッチ部55の表面相互が重なり合って相互にずれ難い態様となって、容易に開きがたく、ガス漏れを極力抑えた状態で排気孔38を閉塞することができる。
なお、第1実施形態では、紐状部材51が、一方の端部51aをループ状として、他方の部位を挿通させた投げ縄状として構成されているが、紐状部材51Aとして、図13に示すように、中間部位を元部側部位(開閉部位)52Aとし、両端側を先端側部位(連結部材)53A,53Aとして、この両方の端部51a,51b側にループ部53a,53aを設け、この2つのループ部53a,53aを係止部材20の係止ピン21に挿通させる構成のものを使用してもよい。
また、第1実施形態では、パッチ部55を、エアバッグ33の外周側に配置させているが、勿論、パッチ部を、エアバッグの内周側に配置させ、紐状部材を、先端側のループ部を外周側に突出させるように、流入用開口の近傍を貫通させて、エアバッグを構成してもよい。
また、第1実施形態のエアバッグ装置M1において、装置側に近接している近接乗員を考慮しなければ、予め紐状部材を絞るようにして、排気孔38を閉塞させた状態で、エアバッグを折り畳んで収納させたエアバッグ装置を、車両に搭載してもよい。
次に、本発明の第2実施形態であるエアバッグ装置M2について説明をする。第2実施形態のエアバッグ装置M2は、ステアリングホイール用とされるもので、第1実施形態のエアバッグ装置M1と同様に、ステアリングホイールWに搭載されている(図1の括弧内の符号参照)。第2実施形態のエアバッグ装置M2は、エアバッグ33Aと、インフレーター8と、バッグホルダ10と、パッド24と、エアバッグ33Aの排気孔38Aを開閉可能な開閉部材としての開閉弁68と、開閉弁68の開閉を制御する制御機構としての係止部材20と、開閉弁68を係止部材20に連結させる連結部材71と、を備えて構成されている。第2実施形態のエアバッグ装置M2では、エアバッグ33A、開閉弁68、及び、連結部材71以外は、前述の第1実施形態のエアバッグ装置M1と同一の構成であることから、同一の部材には、同一の図符号を付して説明を省略する。そして、第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、インフレーター8と係止部材20とは、第1実施形態のエアバッグ装置M1と同様に、図1に示す制御装置59により、作動を制御される。
エアバッグ33Aは、図15,17,18に示すように、車体側壁部35Aにおける排気孔38Aと流入用開口36Aとの間であって、流入用開口36Aの前縁側となる位置に、開閉部材としての開閉弁68の弁体69から延びる連結部材71を挿通可能な挿通孔66を備える以外は、前述の第1実施形態のエアバッグ装置M1におけるエアバッグ33と同様の構成である。そのため、エアバッグ33Aにおいて、エアバッグ33と同一の部材には、同一の図符号の末尾に「A」を付して説明を省略する。
開閉部材としての開閉弁68は、図16に示すように、エアバッグ33Aの外周側において排気孔38Aを閉塞可能に配置される弁体69と、排気孔38Aの周縁に形成される略環状の弁座70と、から構成されるもので、開閉弁68と係止部材20とを連結する連結部材71は、弁体69から延びるように構成されて、排気孔38Aを経てエアバッグ33A内に挿入されている。
弁体69は、実施形態の場合、エアバッグ33Aの外周側Oの部位を拡径させ、内周側Iの部位を縮径させた略円錐台板状とされており、図16に示すように、弁座に対して、エアバッグ33Aの外周側Oから内周側Iに向かって差し込まれるようにして、嵌合される構成である。実施形態では、弁体69は、図14に示すごとく、排気孔38Aを開口させるように、弁座70との間に隙間を設けるような状態で、折り畳まれたエアバッグ33Aとともに収納されて車両に搭載されている。また、弁体69は、閉塞モード時に、排気孔38Aを隙間なく閉塞可能なように、外周面69aを、排気孔38Aの内周面(弁座70の内周面70a)の傾斜と略一致させるように、傾斜させて構成されている。実施形態の場合、弁体69は、剛性を有して構成されるもので、具体的には、ポリプロピレン等の合成樹脂製とされている。
弁座70は、エアバッグ33Aを構成する車体側基布42Aより形状保持性を有して構成される略円環状とされている。弁座70は、具体的には、排気孔38Aを中央に貫通させた略円環状とされて、排気孔38Aの周縁に固着されるもので、排気孔38Aを構成する内周面70aを、エアバッグ33Aの外周側Oを拡径させ、内周側Iを縮径させた断面略テーパ状として、弁体69を嵌合可能に、構成されている。実施形態の場合、弁座70は、ゴム材料等の弾性体から構成されて、閉塞モードにおいて、弁体69により、排気孔38Aを隙間なく閉塞可能な構成とされている。具体的には、実施形態の場合、弁座70は、シリコンゴムから構成されている。
連結部材71は、弁体69から延びて、排気孔48Aを経てバッグ本体34A内に挿入されるもので、元部71b側を、弁体69における内側面の中央に連結させて、バッグ本体34内部に配置される可撓性を有した長尺状とされている。具体的には、連結部材71は、実施形態の場合、紐状材から構成されるもので、先端71a側に、端部をリング状に縫着させて構成されるループ部72を、配設させた構成とされている。そして、この連結部材71は、車体側壁部35Aに形成される挿通孔66を貫通されて、先端71a側を、バッグ本体34Aの外周側に配置させる構成である。連結部材71の先端71a側に配設されるループ部72は、係止部材20の係止ピン21を挿通可能に構成されており、図14に示すように、エアバッグ33Aの折り畳み収納時において、係止ピン21を挿通されて、係止部材20に係止されることとなる。また、連結部材71は、実施形態の場合、長さ寸法を、ループ部72が係止ピン21との係止状態を維持された閉塞モードでエアバッグ33Aが膨張する際にも、エアバッグ33Aが支障なく膨張を完了可能な寸法に、設定されている。
第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、作動時に、エアバッグ33Aは、排気孔38Aを開口させた開口モードと、排気孔38を閉塞させた閉塞モードと、の2つのモードで膨張を完了させることとなる。具体的には、開口モードにおいて、係止部材20と連結部材71におけるループ部72との連結が解除されると、弁体69が排気孔38Aを閉塞していても、排気孔38Aから排気されるように作用する膨張用ガスGにより弁体69が、エアバッグ33Aの外周側へ押し出されるような態様となって、排気孔38Aが開口されることとなる(図19のB参照)。また、閉塞モードにおいて、係止部材20と連結部材71におけるループ部72との連結が維持された状態では、弁体69が、エアバッグ33Aにおける排気孔38A周縁の部位の移動に伴う相対的な連結部材71の引張を受けて、排気孔38Aの周縁に配置される弁座70に外周側から嵌合されるようにして、排気孔38Aが、弁体69により閉塞されることとなる(図19のA参照)。
第2実施形態のエアバッグ装置M2も、前述の第1実施形態のエアバッグ装置M1と同様にして車両に搭載することができる。なお、エアバッグ33Aは、開閉弁68の弁体69を、弁座70に嵌合させずに、排気孔38Aを開口させた状態で、折り畳まれて収納されることとなる(図14参照)。
そして、第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、エアバッグ33Aが、排気孔38Aを開口させた状態で、折り畳まれて収納されていることから、装置側となるステアリングホイールWに乗員MDが過度に近接している状態で作動する際に、膨張初期のエアバッグ33Aが、閉塞モードと開口モードとにかかわらず、排気孔38Aを大きく開口させた状態で、乗員MDと接触することとなる。具体的には、第2実施形態のエアバッグ装置M2でも、第1実施形態のエアバッグ装置M1と同様に、制御装置59が、シートベルトセンサ60からの作動信号を受けて、乗員MDのシートベルト非装着状態を検知した場合には、インフレーター8の作動と略同時に、アクチュエータ22に作動信号を出力させて、係止ピン21を引き込むように作動させる構成である。そのため、図20に示すように、シートベルト非装着状態の乗員MDが、ステアリングホイールWと接触していても、エアバッグ33Aは、排気孔38Aを大きく開口させた状態を維持しつつ膨張することから、排気孔38Aから多量の膨張用ガスGを排出させることができ、乗員MDと接触しているエアバッグ33Aの内圧上昇を抑えることができて、乗員MDを不必要に押圧することを防止できる。
また、第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、排気孔38Aを開口させた開口モードと、排気孔38Aを閉塞させた閉塞モードと、の2つのモードでエアバッグ33の膨張を完了させることができることから、エアバッグ33の膨張完了時の内圧も、調整することができる。具体的には、第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、制御装置59が、シートベルトセンサ60からの作動信号を受けて、乗員MDのシートベルト装着状態を検知した場合には、連結部材71の先端側のループ部72と係止ピン21との係止状態を維持させた状態で、エアバッグ33Aが展開膨張することとなり、弁体69が、エアバッグ33Aにおける排気孔38A周縁の部位の移動に伴う相対的な連結部材71の引張を受けて、排気孔38Aの周縁に配置される弁座70に外周側から嵌合されるようにして、排気孔38Aが、エアバッグ33Aの膨張途中において、開口状態から閉塞されることとなる。
その後、制御装置59が、例えば、シートベルトを装着した状態の小柄乗員MD1や、シートベルトを装着した状態でステアリングホイールWに近づいて着座している乗員MDを検知した場合には、インフレーター8から膨張用ガスが吐出されてエアバッグ33Aが膨張を略完了させた後に、制御装置59がアクチュエータ22に作動信号を出力させて、係止ピン21を引き込むように作動させ、連結部材71のループ部72と係止ピン21との係止状態を解除させることとなり、エアバッグ33Aが、図19のAに示すように、排気孔38Aを開口させた開口モードで膨張を完了させることとなる。そして、開口モードでは、エアバッグ33Aが、開口した排気孔38Aから膨張用ガスGを排気させつつ、内圧を低く設定された状態で膨張を完了させることから、小柄乗員MD1や、ステアリングホイールWに近づいて着座している乗員MDに好適となり、このような乗員MD1(MD)を、内圧を低く設定されたエアバッグ33Aにより、必要以上に押圧することを抑えて、ソフトに保護することができる(図1参照)。
逆に、制御装置59が、例えば、シートベルトを装着した状態の大柄乗員MD2や、シートベルトを装着した状態でステアリングホイールWから離れて着座している乗員MDを検知した場合には、制御装置59からアクチュエータ22に作動信号が出力されず、連結部材71のループ部72と係止ピン21との係止状態を維持させた状態で、エアバッグ33Aが、図19のAに示すように、排気孔38Aを閉塞させた閉塞モードで膨張を完了させることとなる。そして、閉塞モードでは、エアバッグ33Aが、排気孔38Aから膨張用ガスを排気させずに、内圧を高く設定された状態で膨張を完了させることから、大柄乗員MD2や、ステアリングホイールWから離れて着座している乗員MDに好適となり、このような乗員MD2(MD)を、十分な内圧を確保して、クッション性よく膨張したエアバッグ33Aにより、底付きすることなく、的確に保護することができる(図1参照)。
したがって、第2実施形態のエアバッグ装置M2においても、膨張時のエアバッグ33Aが、装置側(ステアリングホイールW側)に過度に近接している乗員MDを不必要に押圧することを防止でき、かつ、非近接状態で着座した乗員MDを、体格差や着座位置等に応じて、的確な内圧で保護することができる。
また、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、エアバッグ33Aは、排気孔38Aを開口させた状態で折り畳まれて収納されており、排気孔38Aは、エアバッグ33Aの膨張に伴って、閉塞状態に移行することとなるが、エアバッグ33Aにおける排気孔38A周縁の部位の移動に伴う相対的な連結部材71の引張を受けて、エアバッグ33Aの内周側に向かうように相対移動する弁体69の外周面69aが、外周側Oの部位を拡径させ、内周側Iの部位を縮径させた略円錐台板状とされており、排気孔38Aの閉塞時に、弁座70に対して、エアバッグ33Aの外周側Oから内周側Iに向かって差し込まれるようにして、嵌合される構成であることから、エアバッグ33Aの膨張途中において、排気孔38Aを円滑に閉塞させることができる。
さらに、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、排気孔38Aの周縁を構成する弁座70が、エアバッグ33Aを構成する周壁(車体側基布42A)より形状保持性を有した構成とされ、排気孔38Aを閉塞する弁体69が、剛性を有した構成とされていることから、閉塞モードにおいて、弁体69と排気孔38A周縁(弁座70の内周面70a)との間に隙間が生じがたく、膨張用ガスが漏れることを極力抑えることができる。また、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、排気孔38Aが、周縁に、形状保持性を有した略環状の弁座70を配設させていることから、開口モードにおいては、排気孔38Aの開口面積を安定させることができて、排気孔38Aから、安定して、膨張用ガスを排出させることができる。
なお、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、弁体69として、エアバッグ33Aの外周側Oの部位を拡径させ、内周側Iの部位を縮径させた略円錐台板状のものを使用しているが、弁体の形状はこれに限られるものではなく、図21に示すように、略球体の弁体69Aを、エアバッグ33Aの外周側Oから嵌合させるようにして、使用してもよい。さらに、弁体としては、連結部材71側を先細り形状とした半球状や略円錐形状のものを使用してもよい。そして、第2実施形態のエアバッグ装置M2では、弁座70が、排気孔38Aの内周面を構成する内周面70aを、エアバッグ33Aの外周側Oを拡径させ、内周側Iを縮径させた断面略テーパ状としており、弁体69,69Aを、弁座70に対して、エアバッグ33Aの外周側Oから内周側Iに向かって差し込むようにして、嵌合させている構成であることから(図16のB及び図21のB参照)、閉塞モードにおいて、弁体69,69Aにより、排気孔38Aを隙間なく閉塞させることができて、排気孔38Aと弁体69,69Aとの間の隙間から膨張用ガスが漏れることを極力防止することができる。
このような点を考慮しなければ、開閉弁(開閉部材)68Aとして、図22に示すように、内径をエアバッグ33Aの外周側Oと内周側Iとで一定とした弁座70Aと、エアバッグ33Aの外周側Oにフランジ部69bを配設させた略円柱状とされて、閉塞時にフランジ部69bを弁座70Aに当接させる構成の弁体69Bと、を備える構成のものを使用してもよい。さらには、このような構成の弁座70Aに対して、図23に示すように、外径寸法を排気孔38Aの内径寸法よりも大きくされた略円板状として、閉塞時にエアバッグ33Aの外周側Oから弁座70Aに当接させる構成の弁体69Cを使用してもよい。さらにまた、弁座70Aに、前述の弁体69,69Aを対応させて使用してもよく、この場合、閉塞時、弁座70Aにおける外周側の縁部(エッジ部分)が、弁体69,69Aに当接して、線シールすることが可能となる。
なお、第2実施形態のエアバッグ装置M2において、装置側に近接している近接乗員を考慮しなければ、図24に示すように、エアバッグ33Aの折り畳み収納時に、弁体69を弁座70に嵌合させ、排気孔38Aを閉塞させるようにしたエアバッグ装置を、車両に搭載してもよい。
次に、本発明の第3実施形態のエアバッグ装置M3について説明をする。第3実施形態のエアバッグ装置M3は、ステアリングホイール用とされるもので、第1,第2実施形態のエアバッグ装置M1,M2と同様に、ステアリングホイールWに搭載されている(図1の括弧内の符号参照)。第3実施形態のエアバッグ装置M3では、エアバッグ33B、開閉部材としてのフラップ材78、及び、連結部材79以外は、前述の第1実施形態のエアバッグ装置M1と同一の構成であることから、同一の部材には、同一の図符号を付して説明を省略する。そして、第3実施形態のエアバッグ装置M3においても、インフレーター8と係止部材20とは、第1実施形態のエアバッグ装置M1と同様に、図1に示す制御装置59により、作動を制御される。
エアバッグ33Bは、図25,26に示すように、ベントホールを配設させない構成とされるとともに、車体側壁部35Bにおける排気孔38Bと流入用開口36Bとの間であって、排気孔38Bの後縁側となる位置と、流入用開口36Bの前縁側となる位置と、に、フラップ材78から延びる連結部材79を挿通可能な挿通孔75,76を備える以外は、前述の第1実施形態のエアバッグ装置M1におけるエアバッグ33と同様の構成である。そのため、エアバッグ33Bにおいて、エアバッグ33と同一の部材には、同一の図符号の末尾に「B」を付して説明を省略する。
開閉部材としてのフラップ材78は、可撓性を有したシート材から形成されるもので、図25,27に示すように、エアバッグ33Bの外周側に配置されて、排気孔38Bを閉塞可能な略長方形状とされている。具体的には、フラップ材78は、エアバッグ33Bを構成する基布と同様のポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から、構成されるもので、実施形態の場合、前縁78a側を排気孔38Bの周縁に縫着させた構成とされている。エアバッグ33Bにおける排気孔38Bの周縁に形成される挿通孔75は、フラップ材78を、排気孔38Bを覆うように平らに展開させた状態で、フラップ材78の後縁近傍となる位置に、配設されている。
連結部材79は、フラップ材78における排気孔38B周縁に結合させた前縁78aと対向する後縁78bから延びるように構成されるもので、可撓性を有した長尺状とされて、先端79a側に係止部材20に連結されるループ部80を配設させ、エアバッグ33Bの車体側壁部35Bに形成される挿通孔75,76を貫通されるように、構成されている。具体的には、連結部材79は、元部79b側をフラップ材78の後縁78b側に縫着されるもので、フラップ材78を、排気孔38Bの外周側を塞ぐように配設させた状態において、排気孔38B近傍に形成される挿通孔75に貫通されて、中間部位79cをバッグ本体34Bの内周側に位置させ、ループ部80が形成される先端79a側を、バッグ本体34B外に突出させるように、再度、流入用開口36B近傍に形成される挿通孔76に、貫通されることとなる(図25,28参照)。すなわち、連結部材79は、エアバッグ33Bの折り畳み収納時において、元部79b側と先端79a側とをバッグ本体34Bの外周側に位置させ、中間部位79cをバッグ本体34Bの内周側に位置させるように配置されている。連結部材79の先端79a側に配設されるループ部80は、係止部材20の係止ピン21を挿通可能に構成されており、エアバッグ33Bの折り畳み収納時には、図示しないが、第1,第2実施形態のエアバッグ装置M1,M2と同様に、係止ピン21を挿通されて、係止部材20に係止されることとなる。また、連結部材79は、実施形態の場合、長さ寸法を、ループ部80が係止ピン21との係止状態を維持された閉塞モードでエアバッグ33Bが膨張する際にも、エアバッグ33Bが支障なく膨張を完了可能な寸法に、設定されている。
第3実施形態のエアバッグ装置M3においても、作動時に、エアバッグ33Bは、排気孔38Bを開口させた開口モードと、排気孔38Bを閉塞させた閉塞モードと、の2つのモードで膨張を完了させることとなる。具体的には、開口モードにおいて、係止部材20と連結部材79におけるループ部80との連結が解除されると、フラップ材78が排気孔38Bを閉塞していても、排気孔38Bから排気されるように作用する膨張用ガスGにより、フラップ材78が押し上げられて、排気孔38Bが開口されることとなる(図27のB及び図28のB参照)。また、閉塞モードにおいて、係止部材20と連結部材79におけるループ部80との連結が維持された状態では、フラップ材78が、エアバッグ33Bにおける排気孔38B周縁の部位の移動に伴う相対的な連結部材79の引張を受けて、排気孔38Bの外周側を覆うように移動して、排気孔38Bが、フラップ材78により閉塞されることとなる(図27のA及び図28のA参照)。この閉塞モードにおいては、フラップ材78における前縁78aの左右両端78aa,78abと、連結部材79を貫通させた挿通孔75とを結ぶように、張力TL,TLが発生することとなり(図27のA参照)、フラップ材78が、排気孔38B周縁部位から浮き上がることを極力防止できて、的確に排気孔38Bを閉塞することができる。
第3実施形態のエアバッグ装置M3も、前述の第1実施形態のエアバッグ装置M1と同様にして車両に搭載することができる。なお、エアバッグ33Bは、フラップ材78と排気孔38B周縁部位との間に隙間を設けるようにして、排気孔38Bを開口させた状態で、折り畳まれて収納されることとなる。
そして、第3実施形態のエアバッグ装置M3においても、エアバッグ33Bが、排気孔38Bを開口させた状態で、折り畳まれて収納されていることから、装置側となるステアリングホイールWに乗員MDが過度に近接している状態で作動する際に、膨張初期のエアバッグ33Bが、閉塞モードと開口モードとにかかわらず、排気孔38Bを大きく開口させた状態で、乗員MDと接触することとなる。具体的には、第3実施形態のエアバッグ装置M3でも、制御装置59が、シートベルトセンサ60からの作動信号を受けて、乗員MDのシートベルト非装着状態を検知した場合には、インフレーター8の作動と略同時に、アクチュエータ22に作動信号を出力させて、係止ピン21を引き込むように作動させる構成である。そのため、図29に示すように、シートベルト非装着状態の乗員MDが、ステアリングホイールWと接触していても、エアバッグ33Bは、排気孔38Bを大きく開口させた状態を維持しつつ膨張することから、排気孔38Bから多量の膨張用ガスGを排出させることができ、乗員MDと接触しているエアバッグ33Bの内圧上昇を抑えることができて、乗員MDを不必要に押圧することを防止できる。
また、第3実施形態のエアバッグ装置M3においても、排気孔38Bを開口させた開口モードと、排気孔38Bを閉塞させた閉塞モードと、の2つのモードでエアバッグ33Bの膨張を完了させることができることから、エアバッグ33Bの膨張完了時の内圧も、調整することができる。具体的には、第3実施形態のエアバッグ装置M3においても、制御装置59が、シートベルトセンサ60からの作動信号を受けて、乗員MDのシートベルト装着状態を検知した場合には、連結部材79の先端側のループ部80と係止ピン21との係止状態を維持させた状態で、エアバッグ33Bが展開膨張することとなり、フラップ材78が、エアバッグ33Bにおける排気孔38B周縁の部位の移動に伴う相対的な連結部材79の引張を受けて、排気孔38Bの外周側を覆うように配置されることとなり、排気孔38Bが、エアバッグ33Bの膨張途中において、開口状態から閉塞されることとなる。
その後、制御装置59が、例えば、シートベルトを装着した状態の小柄乗員MD1や、シートベルトを装着した状態でステアリングホイールWに近づいて着座している乗員MDを検知した場合には、インフレーター8から膨張用ガスが吐出されてエアバッグ33Bが膨張を略完了させた後に、制御装置59がアクチュエータ22に作動信号を出力させて、係止ピン21を引き込むように作動させ、連結部材79のループ部80と係止ピン21との係止状態を解除させることとなり、エアバッグ33Bが、図28のBに示すように、排気孔38Bを開口させた開口モードで膨張を完了させることとなる。そして、開口モードでは、エアバッグ33Bが、開口した排気孔38Bから膨張用ガスを排気させつつ、内圧を低く設定された状態で膨張を完了させることから、小柄乗員MD1や、ステアリングホイールWに近づいて着座している乗員MDに好適となり、このような乗員MD1(MD)を、内圧を低く設定されたエアバッグ33Bにより、必要以上に押圧することを抑えて、ソフトに保護することができる(図1参照)。
逆に、制御装置59が、例えば、シートベルトを装着した状態の大柄乗員MD2や、シートベルトを装着した状態でステアリングホイールWから離れて着座している乗員MDを検知した場合には、制御装置59からアクチュエータ22に作動信号が出力されず、連結部材79のループ部80と係止ピン21との係止状態を維持させた状態で、エアバッグ33Bが、図28のAに示すように、排気孔38Bを閉塞させた閉塞モードで膨張を完了させることとなる。そして、閉塞モードでは、エアバッグ33Bが、排気孔38Bから膨張用ガスを排気させずに、内圧を高く設定された状態で膨張を完了させることから、大柄乗員MD2や、ステアリングホイールWから離れて着座している乗員MDに好適となり、このような乗員MD2(MD)を、十分な内圧を確保して、クッション性よく膨張したエアバッグ33Bにより、底付きすることなく、的確に保護することができる(図1参照)。
したがって、第3実施形態のエアバッグ装置M3においても、膨張時のエアバッグ33Bが、装置側(ステアリングホイールW側)に過度に近接している乗員MDを不必要に押圧することを防止でき、かつ、非近接状態で着座した乗員MDを、体格差や着座位置等に応じて、的確な内圧で保護することができる。
また、第3実施形態のエアバッグ装置M3では、エアバッグ33Bは、排気孔38Bを開口させた状態で折り畳まれて収納されており、排気孔38Bは、エアバッグ33Bの膨張に伴って、閉塞状態に移行することとなるが、フラップ材78を連結させた連結部材79は、排気孔38B近傍と流入用開口36B近傍との2箇所に設けられた挿通孔75,76に挿通されていることから、エアバッグ33Bにおける排気孔38B周縁の部位の移動に伴う相対的な連結部材79の引張を受けて、相対移動するフラップ材78を、確実に、排気孔38Bの外周側を覆うように移動させることができ、エアバッグ33Bの膨張途中において、排気孔38Bを円滑に閉塞させることができる。
さらに、第3実施形態のエアバッグ装置M3では、開閉部材が、可撓性を有したシート材からなるフラップ材78から構成されていることから、フラップ材78及び連結部材79をエアバッグ33Bとともに折り畳んで収納させることができて、装置の増大化や複雑化を招かない。
さらにまた、第3実施形態のエアバッグ装置M3では、エアバッグ33Bの外周側に配置されるフラップ材78における前縁78aと対向する側の後縁78bから延びる連結部材79が、排気孔38Bの近傍に形成される挿通孔75を貫通させるようにして、エアバッグ33Bの内周側を通る構成であることから、閉塞モードでエアバッグ33Bが膨張する際に、フラップ材78の部位に、前縁78aの左右両端78aa,78abと連結部材79を貫通させた挿通孔75とを結ぶように、張力TL,TLが発生することとなり(図27のA参照)、フラップ材78が、排気孔38B周縁部位から浮き上がることを極力防止できて、的確に排気孔38Bを閉塞することができる。そして、開口モードでエアバッグ33Bが膨張する際には、可撓性を有したシート材から構成されるフラップ材78は、排気孔38Bに作用する膨張用ガスGによって、排気孔38Bを開口させるように容易に押し上げられるような態様となることから、排気孔38Bを安定して容易に開口させることができる。
次に、本発明の第4実施形態のエアバッグ装置M4について説明をする。第4実施形態のエアバッグ装置M4は、助手席用とされるもので、図30に示すように、助手席前方に配設されるインストルメントパネル(以下「インパネ」と略す)83の上面83a側に配置されている。エアバッグ装置M4は、図30,31に示すように、折り畳まれたエアバッグ85と、エアバッグ85に膨張用ガスを供給するインフレーター8Dと、エアバッグ85とインフレーター8Dとを収納して保持する収納部位としてのケース10Dと、エアバッグ85とインフレーター8Dとをケース10Dに取り付けるリテーナ6Dと、ケース10Dを覆うように配設されるエアバッグカバー24Dと、エアバッグ85に形成される排気孔98を開閉可能な開閉部材97と、開閉部材97の開閉を制御する制御機構としての係止部材20Dと、開閉部材97を係止部材20Dに連結させる連結部材116と、を備えて構成されている。この第4実施形態の助手席用のエアバッグ装置M4を構成する各部材は、エアバッグ85、開閉部材97、及び、連結部材116を除いて、前述のエアバッグ装置M1を構成する各部材と、形状が若干異なる以外は、略同様の構成である。そのため、エアバッグ85、開閉部材97、及び、連結部材116以外の部材には、同一の符号の末尾に「D」を付して詳細な説明を省略する。なお、第4実施形態のエアバッグ装置M4においても、インフレーター8Dと係止部材20Dとは、図30に示すように、助手席SE2に着座した乗員MPのシートベルトの装着状態を検知可能なシートベルトセンサ60D、助手席SE2に着座した乗員MPの体格や、インパネ83と乗員MPとの距離を検知可能な位置検知センサ61D、乗員MPの重量を検知可能な重量センサ62D、及び、車両の加速度や加速の方向等を検知可能な衝突検知センサ63D等と、電気的に接続された制御装置59Dにより、作動を制御される構成である。また、第4実施形態のエアバッグ装置M4では、エアバッグカバー24Dは、インパネ83と一体的に構成されている。
エアバッグ装置M4において使用されるエアバッグ85では、開閉部材97は、エアバッグ85と一体的に形成されるもので、エアバッグ85は、図32〜34に示すように、膨張用ガスを流入させて膨張する袋状のバッグ本体86と、バッグ本体86に配設される開閉部材97と、を備える構成とされている。
バッグ本体86は、膨張完了時に、インパネ83とフロントウィンドシールドFWとの間に充満するように、膨張完了時の形状を、前端側を頂部とした略四角錐形状とされるもので、上下両側で略左右方向に沿って配設される上側壁部86a,下側壁部86bと、左右両側で略前後方向に沿って配設される左側壁部86c,右側壁部86dと、乗員側で上側壁部86aと下側壁部86bとを連結させるように略左右方向に沿って配設される後側壁部86eと、を備えている。そして、実施形態のバッグ本体86は、膨張完了時に乗員側となる後部側に配設される乗員保護部93と、膨張完了時に乗員保護部93の前方側であってインパネ83とフロントウィンドシールドFWとの間に配設されて前端側を閉塞された略筒形状の車体側部87と、を備える構成とされており、膨張完了時のバッグ本体86における下側壁部86bの前端側となる車体側部87の左右方向の中央付近となる部位に、膨張用ガスを流入させるように円形に開口されて、周縁をケース10Dに取り付ける流入用開口88を、配設させた構成とされている。流入用開口88の周縁には、リテーナ6Dのボルト6aを挿通させて、流入用開口88の周縁を、インフレーター8Dとともに、ケース10Dの底壁部12Dに取り付けるための複数の取付孔89が、形成されている。また、流入用開口88の左縁側における前後の中央付近には、連結部材116の先端116bを挿通可能に、前後方向に沿って形成されるスリット状の挿通孔90が、形成されている。また、バッグ本体86における左側壁部86c,右側壁部86dには、余剰の膨張用ガスを排気するベントホール91が、形成されている。
乗員保護部93は、実施形態の場合、図32〜34に示すごとく、左右両側に並設されて上下方向に延びるように、後方側へ突出する2つの肩拘束部94L,94Rを備える構成とされ、肩拘束部94L,94R間に、相対的に前方へ凹む凹部95を配設させた構成とされている。凹部95は、エアバッグ85の膨張完了時に、肩拘束部94L,94R間において、上下方向に略沿うように、形成されることとなる。この左右の肩拘束部94L,94Rの隆起した状態と、凹部95の凹んだ状態と、は、バッグ本体86の後側壁部86eから上側壁部86a,下側壁部86bの領域内となる前方側に延びるように、車体側部87の流入用開口88近傍となる部位にかけて連続的に延設されている。具体的には、肩拘束部94L,94Rの隆起した状態と、凹部95の凹んだ状態と、は、後述する外側基布101の下側部位103の部位で、凹凸状態が収まって平面状となっている。
開閉部材97は、実施形態の場合、車体側部87の領域内に配設されており、具体的には、膨張完了時のバッグ本体86における左側壁部86cの前端近傍であって、上下の中央より若干下方となる位置に、配設されている。具体的には、開閉部材97は、膨張完了時のバッグ本体86における流入用開口88の上方に配置されるもので、後述する第1基布102と第2基布108とに形成される外側延設部106及び内側延設部109から、構成されている。
バッグ本体86及び開閉部材97は、前述のエアバッグ33,33A,33Bと同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から形成されるもので、図35に示すように、左側壁部86c,右側壁部86d及び下側壁部86bの前部側部位を構成する外側基布101と、上側壁部86a,後側壁部86e及び下側壁部86bの後部側部位を構成する2枚の内側基布111L,111Rと、の周縁相互を縫着させて、構成されている。
バッグ用基布を構成する外側基布101は、膨張完了時のバッグ本体86における左側壁部86cの領域を2分割するように、左側壁部86cの上部側から下側壁部86bの前部側部位及び右側壁部86dにかけての領域を構成する第1基布102と、左側壁部86cの下部側の領域を構成する第2基布108と、の2枚から、構成されるもので、第1基布102と第2基布108とを結合させた状態で、開いた蝶の形状に近似した左右対称形とされている。
第1基布102は、車体側部87における流入用開口88の周縁部位を構成する略長方形状の下側部位103と、下側部位103から右側に延びるように配設される略三角形板状とされる右側部位104と、下側部位103から左側に延びるように配設される左側部位105と、を備える構成とされている。実施形態の場合、左側部位105は、外形形状を、右側部位104の一部を切り欠いたような形状とされるもので、下縁105a側に、第2基布108の対応する上縁108a側を縫着させて第2基布108を結合させた状態で、右側部位104の外形形状と一致するような形状とされている。なお、実施形態のバッグ本体86では、第1基布102と第2基布108との境界線(左側部位105の下縁105a側と第2基布108の上縁108a側とを縫合させる後述する縫合部位113F,113B)PLは、バッグ本体86の膨張完了時に、ケース10Dの開口面と略沿うように前後方向に略沿って、配設されることとなる(図37,39参照)。第1基布102の所定位置には、流入用開口88、取付孔89、挿通孔90、及び、ベントホール91が形成され、左側部位105の下縁105a側に、開閉部材97における外側の部位(外周側の部位)を構成する外側延設部(延設部)106が、配設される構成である。外側延設部106は、左側部位105の下縁105aにおいて、膨張完了時のバッグ本体86における流入用開口88の上方となる部位を、部分的に延設させるように構成されるもので、下縁105aと略直交して突出するような略長方形状とされている。外側延設部106は、エアバッグ85の製造時に、左側部位105との境界部位付近で折り返されて、バッグ本体86内において先端106a側を流入用開口88側に向けるように、配置されることとなる。そして、第2基布108の上縁108a側にも、左側部位105に形成される外側延設部106の内周側に重ねられるようにして配置されて、開閉部材97を構成する内側延設部(延設部)109が、形成されている。内側延設部109は、外形形状を外側延設部106と同一として、形成されている。
バッグ用基布を構成する2枚の内側基布111L,111Rは、それぞれ、略C字形状に湾曲した帯状とされるもので、膨張完了時における上側壁部86aから下側壁部86bの後部側の部位にかけてを、左右方向に沿って2分割するような構成とされ、膨張完了時のバッグ本体86における上側壁部86a,後側壁部86eと、下側壁部86bの後部側の部位と、を、構成することとなる。
そして、第4実施形態のエアバッグ85では、開閉部材97は、第1基布102の左側部位105に形成される外側延設部106と、外側延設部106の内周側に重ねられた第2基布108の内側延設部109と、から構成されるもので、外側延設部106と内側延設部109とは、周縁を全周にわたって相互に結合させない非結合の状態とされている。そして、外側延設部106と内側延設部109とは、元部106b,109b側も相互に結合されておらず、この元部106b,109b側における非縫合部位114(非結合部位)、換言すれば、左側部位105の下縁105aと第2基布108の上縁108aとを縫着(結合)させて構成される縫合部位113F,113L間の非縫合部位114が、開口時に膨張用ガスを排出する排気孔98を構成することとなる。また、外側延設部106及び内側延設部109は、それぞれ、先端106a,109a側に、連結部材116を結合させた構成とされている。
連結部材116は、バッグ本体86と別体とされて、可撓性を有した帯状の布材から構成されている。実施形態の場合、連結部材116は、2つ配設されて、それぞれ、元部116a側を、外側延設部106と内側延設部109とに対して縫着させて、外側延設部106及び内側延設部109から延びるように構成されるもので、先端116b側に、係止部材20Dの係止ピン21Dを挿通可能な挿通孔116cを、配設させた構成とされている。そして、実施形態の場合、各連結部材116は、長さ寸法を、挿通孔116cに係止ピン21Dが挿通されて係止ピン21Dとの係止を維持されて、開閉部材97をバッグ本体86内に引き込むような閉塞モードでエアバッグ85が膨張する際にも、エアバッグ85が支障なく膨張を完了可能な寸法に、設定されている。また、実施形態の場合、各連結部材116は、閉塞モードでエアバッグ85が膨張を完了させた場合において、エアバッグ85の突出方向と略沿うように、ケース10Dの開口面と略直交して、配置される構成である(図37参照)。なお、実施形態の場合、連結部材116は、長手方向を、各外側延設部106,内側延設部109の先端106a,109a側の縁部に対して斜めに交差させるように、元部116a側を、外側延設部106,内側延設部109に、縫着されている。
第4実施形態のエアバッグ装置M4においても、作動時に、エアバッグ85は、排気孔98を開口させた開口モードと、排気孔98を閉塞させた閉塞モードと、の2つのモードで膨張を完了させることとなる。具体的には、開口モードにおいて、係止部材20Dと連結部材116の先端116bとの連結が解除されると、開閉部材97を構成する各外側延設部106,内側延設部109が、内側に引き込まれて排気孔98を閉塞していても、排気孔98から排気されるように作用する膨張用ガスGにより、各外側延設部106,内側延設部109が、エアバッグ85の外周側へ押し出されつつ、相互に開くような態様となって、排気孔98が開口されることとなる(図38,39参照)。また、閉塞モードにおいて、係止部材20Dと連結部材116の先端116bとの連結が維持された状態では、開閉部材97を構成する各外側延設部106,内側延設部109が、エアバッグ85における排気孔98周縁の部位の移動に伴う相対的な連結部材116の引張を受けて、バッグ本体86の内周側に引き込まれるようにして、排気孔98が、開閉部材97により閉塞されることとなる(図36,37参照)。
次に、第4実施形態のエアバッグ85の製造について述べる。第1基布102の外側延設部106と、第2基布108の内側延設部109とには、予め、連結部材116を縫着させておく。そして、まず、第1基布102の左側部位105と、第2基布108と、を、外側延設部106と内側延設部109との縁部相互と、下縁105a及び上縁108aと、を一致させるようにして、外表面側が対向するように重ね、下縁105aと上縁108aとを、縫合部位113F,113Bを形成するように、縫合糸を用いて直線縫いして、第1基布102と第2基布108とを連結させる。また、内側基布111L,111Rを、外表面側が対向するように相互に重ね、内側縁部111a,111aを、縫着させる。次いで、内側縁部111aの縫い代を内側に配設させつつ、前側縁部111b,111bを略直線状に配置させるように、内側基布111L,111Rを開き、直線状に配置させた各内側基布111L,111Rの前側縁部111bを、外側基布101の第1基布102における下側部位103の前側縁部103aに、縫着させる。同様に、直線状に配置させた各内側基布111L,111Rの後側縁部111cを、下側部位103の後側縁部103bに、縫着させる。そして、下側部位103における前後の左側縁部103cを、第1基布102の左側部位105の周縁部105bにおける元部側縁部105cに縫着させ、前後の右側縁部103dを、右側部位104の周縁部104aにおける元部側縁部104bに縫着させる。その後、左側部位105の周縁部105b及び第2基布108の周縁部108bと、内側基布111Lの外側縁部111dと、を縫着させ、右側部位104の周縁部104aと内側基布111Rの外側縁部111dと、を縫着させる。そして、縁部の縫合代がエアバッグ85の外表面に表れないように、バッグ本体86を流入用開口88を利用して反転させれば、開閉部材97とともに、エアバッグ85を製造することができる。
そして、第4実施形態のエアバッグ装置M4においても、上記のように製造したエアバッグ85の内部に、流入用開口88からリテーナ6Dを挿入させて、リテーナ6Dのボルト6aを取付孔89から突出させた状態で、エアバッグ85を、ケース10D内に収納可能なように折り畳む。このとき、開閉部材97は、各外側延設部106,内側延設部109を、先端106a,109aをバッグ本体86から突出させるようにして、排気孔98を開口させるような状態とされて、かつ、外側延設部106,内側延設部109の先端106a,109a側から延びる各連結部材116の先端116b側の部位を、挿通孔90からバッグ本体86外に突出させた状態で、バッグ本体86とともに折り畳まれることとなる。そして、エアバッグ85の折り畳み完了後にも、連結部材116の先端116b側の部位は、挿通孔90からバッグ本体86外に突出された状態を維持されることとなる。次いで、各ボルト6aを底壁部12Dの挿通孔12bから突出させ、連結部材116の先端116b側を貫通孔12cから突出させるようにして、折り畳まれたエアバッグ85を、予め係止部材20Dを取り付けておいたケース10D内に収納させる。そして、係止部材20Dの係止ピン21Dを挿通孔116cに挿通させ、係止ピン21Dの先端側を支持ブラケット23Dに支持させるようにして、各連結部材116の先端116b側を係止部材20Dに係止させる。次いで、第1実施形態のエアバッグ装置M1と同様に、インフレーター8Dをケース10Dに取り付け、その後、車両に搭載されたインパネ83におけるエアバッグカバー24Dにケース10Dを連結させ、ケース10Dを図示しない取り付けブラケットを利用して車両のボディ側に固定させれば、第4実施形態の助手席用のエアバッグ装置M4を車両に搭載することができる。
エアバッグ装置M4の車両への搭載後、走行中の車両が衝突すれば、制御装置59Dがインフレーター8Dに作動信号を出力することとなって、インフレーター8Dが、ガス吐出口8bから膨張用ガスを吐出させ、エアバッグ85が、膨張用ガスを内部に流入させて膨張し、エアバッグカバー24Dの扉部27D,27Dを前後両側に開かせて、乗員MP側に突出し、インパネ83とフロントウィンドシールドFWとの間に充満するように、膨張を完了することとなる。
そして、第4実施形態のエアバッグ装置M4においても、エアバッグ85が、排気孔98を開口させた状態で、折り畳まれて収納されていることから、装置側となるインパネ83に、乗員MPが過度に近接していたり、あるいは、チャイルドシートが近接している状態で作動する際に、膨張初期のエアバッグ85が、閉塞モードと開口モードとにかかわらず、排気孔98を大きく開口させた状態で、乗員MPやチャイルドシートの接触物と接触することとなる。具体的には、第4実施形態のエアバッグ装置M4でも、第1実施形態のエアバッグ装置M1と同様に、制御装置59Dが、シートベルトセンサ60Dからの作動信号を受けて、乗員MPのシートベルト非装着状態を検知した場合には、インフレーター8Dの作動と略同時に、アクチュエータ22Dに作動信号を出力させて、係止ピン21Dを引き込むように作動させる構成である。そのため、図40に示すように、シートベルト非装着状態の近接乗員MPが、インパネ83と接触していても、エアバッグ85は、排気孔98を大きく開口させた状態を維持しつつ膨張することから、排気孔98から多量の膨張用ガスGを排出させることができ、乗員MPと接触しているエアバッグ85の内圧上昇を抑えることができて、乗員MPを不必要に押圧することを防止できる。
また、第4実施形態のエアバッグ装置M4においても、排気孔98を開口させた開口モードと、排気孔98を閉塞させた閉塞モードと、の2つのモードでエアバッグ85の膨張を完了させることができることから、エアバッグ85の膨張完了時の内圧も、調整することができる。具体的には、第4実施形態のエアバッグ装置M4においても、制御装置59Dが、シートベルトセンサ60Dからの作動信号を受けて、乗員MPのシートベルト装着状態を検知した場合には、連結部材116の先端116b側と係止ピン21Dとの係止状態を維持させた状態で、エアバッグ85が展開膨張することとなり、開閉部材97の各外側延設部106,内側延設部109が、エアバッグ85における排気孔98周縁の部位の移動に伴う相対的な連結部材116の引張を受けて、先端106a,109a側を内周側に向けるようにして、バッグ本体86の内周側に引き込まれることとなり、排気孔98が、エアバッグ85の膨張途中において、開口状態から閉塞されることとなる。
その後、制御装置59Dが、例えば、シートベルトを装着した状態の小柄乗員MP1や、シートベルトを装着した状態でインパネ83に近づいて着座している乗員MPを検知した場合には、インフレーター8Dから膨張用ガスが吐出されてエアバッグ85が膨張を略完了させた後に、制御装置59Dがアクチュエータ22Dに作動信号を出力させて、係止ピン21Dを引き込むように作動させ、連結部材116の先端116bと係止ピン21Dとの係止状態を解除させることとなり、エアバッグ85が、図38,39に示すように、排気孔98を開口させた開口モードで膨張を完了させることとなる。そして、開口モードでは、エアバッグ85が、開口した排気孔98から膨張用ガスGを排気させつつ、内圧を低く設定された状態で膨張を完了させることから、小柄乗員MP1や、インパネ83に近づいて着座している乗員MPに好適となり、このような乗員MP1(MP)を、内圧を低く設定されたエアバッグ85により、必要以上に押圧することを抑えて、ソフトに保護することができる(図30参照)。
逆に、制御装置59Dが、例えば、シートベルトを装着した状態の大柄乗員MP2や、シートベルトを装着した状態でインパネ83から離れて着座している乗員MPを検知した場合には、制御装置59Dからアクチュエータ22Dに作動信号が出力されず、連結部材116の先端116bと係止ピン21Dとの係止状態を維持させた状態で、エアバッグ85が、図36,37に示すように、排気孔98を閉塞させた閉塞モードで膨張を完了させることとなる。そして、閉塞モードでは、エアバッグ85が、排気孔98から膨張用ガスを排気させずに、内圧を高く設定された状態で膨張を完了させることから、大柄乗員MP2や、インパネ83から離れて着座している乗員MPに好適となり、このような乗員MP2(MP)を、十分な内圧を確保して、クッション性よく膨張したエアバッグ85により、底付きすることなく、的確に保護することができる(図30参照)。
したがって、第4実施形態のエアバッグ装置M4においても、膨張時のエアバッグ85が、装置側(インパネ83)に過度に近接している乗員MPを不必要に押圧することを防止でき、かつ、非近接状態で着座した乗員MPを、体格差や着座位置等に応じて、的確な内圧で保護することができる。
また、第4実施形態のエアバッグ装置M4では、エアバッグ85は、排気孔98を開口させた状態で折り畳まれて収納されており、排気孔98は、エアバッグ85の膨張に伴って、閉塞状態に移行することとなるが、開閉部材97を構成する外側延設部106,内側延設部109の先端106a,109a側から延びるように形成される連結部材116は、バッグ本体86の内周側を通るようにして、先端116b側を係止部材20Dに係止されていることから、エアバッグ85における排気孔98周縁の部位の移動に伴う相対的な連結部材116の引張を受けて、外側延設部106,内側延設部109を、相対移動させ、先端106a,109aをバッグ本体86の内周側に向けるように、引き込むことができ、エアバッグ85の膨張途中において、排気孔98を円滑に閉塞させることができる。
さらに、第4実施形態のエアバッグ装置M4では、エアバッグ85の製造時において、隣り合う2枚の第1基布102と第2基布108とにおいて、左側部位105の下縁105aと第2基布108の上縁108aとを、外側延設部106及び内側延設部109の部位を除いて、縫合部位113F,113Bの部位で縫着させれば、バッグ本体86を形成するのと同時に、開閉部材97及び排気孔98を形成することができる。すなわち、第4実施形態のエアバッグ装置M4では、第1基布102と第2基布108とを縫合部位113F,113Bの部位で縫着させて外側基布101を形成し、外側基布101と内側基布111L,111Rとの周縁相互を縫着させてバッグ本体86を形成すれば、開閉部材97及び排気孔98も形成することができる。また、第4実施形態のエアバッグ装置M4では、排気孔98を、第1基布102と第2基布108とにおける縫合部位113F,113B間の部位、換言すれば、縫合部位113F,113B間となる縫合作業を行っていないだけの非縫合部位114(隙間)から構成していることから、前述のエアバッグ装置M1〜M3のごとく、エアバッグを構成する基布を別途切り欠いて、排気孔を構成する開口を形成しなくてもよい。そのため、第4実施形態のエアバッグ装置M4では、部品点数の増加を抑えることができ、また、エアバッグ85の製造工数及びコストが増大することを抑えることができる。
第4実施形態のエアバッグ装置M4では、閉塞モードでエアバッグ85が展開膨張する際には、開閉部材97を構成する外側延設部106及び内側延設部109の部位が、連結部材116によって、エアバッグ85内に引き込まれた状態で、エアバッグ85が膨張することとなる。この場合、外側延設部106,内側延設部109相互が、エアバッグ85内に流入した膨張用ガスの内圧により圧接されて、縫合部位113F,113B間の非縫合部位114に、縫合部位113F,113Bの端部相互を直線状に結ぶような線シール部位SL(図37参照)が形成されることとなって、的確に排気孔98を閉塞することができる。また、第4実施形態のエアバッグ装置M4では、開口モードでエアバッグ85が展開膨張する際には、バッグ本体86内への膨張用ガスの流入に伴って、非縫合部位114の部位において、外側延設部106と内側延設部109とが相互に離隔されるようにして、排気孔98が口開きするように自然に開口されるような態様となる。そのため、開口モード時に、排気孔98を安定して開口させることができる。
次に、本発明の第5実施形態のエアバッグ装置M5について説明をする。第5実施形態のエアバッグ装置M5は、助手席用とされるもので、第4実施形態のエアバッグ装置M4と同様に、助手席前方に配設されるインパネ83の上面83a側に配置されている(図30の括弧内の符号参照)。第5実施形態のエアバッグ装置M5は、エアバッグ119に形成される排気孔125を開閉可能な開閉部材としての排出路部127、及び、排出路部127を係止部材20Dに連結させる連結部材129以外は、前述の第4実施形態のエアバッグ装置M4と同一の構成であることから、同一の部材には、同一の図符号を付して説明を省略する。そして、第5実施形態のエアバッグ装置M5においても、インフレーター8Dと係止部材20Dとは、第4実施形態のエアバッグ装置M4と同様に、図30に示す制御装置59Dにより、作動を制御される。
エアバッグ119は、図41,42に示すように、膨張用ガスを流入させて膨張する袋状のバッグ本体120と、バッグ本体120に配設される開閉部材としての排出路部と、を備える構成とされている。
バッグ本体120は、膨張完了時に、インパネ83とフロントウィンドシールドFWとの間に充満するように、膨張完了時の形状を、前端側を頂部とした略四角錐形状とされるもので、上下両側で略左右方向に沿って配設される上側壁部120a,下側壁部120bと、左右両側で略前後方向に沿って配設される左側壁部120c,右側壁部120dと、乗員側で上側壁部120aと下側壁部120bとを連結させるように略左右方向に沿って配設される後側壁部120eと、を備えており、後側壁部120eの部位で乗員を保護する構成である。バッグ本体120は、前述のエアバッグ85と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から形成されるもので、所定形状の基布の周縁相互を縫着させて、構成されている。膨張完了時の下側壁部120bの前端側における左右方向の中央付近となる部位には、膨張用ガスを流入させるように円形に開口される流入用開口121が、配設され、流入用開口121の周縁には、リテーナ6Dのボルト6aを挿通させる取付孔122が、形成されている。また、流入用開口121の左縁側における前後の中央付近には、連結部材129の先端129bを挿通可能に、前後方向に沿って形成されるスリット状の挿通孔123が、形成されている。また、バッグ本体120における左側壁部120cには、排気孔125が、円形に開口して、形成されている。また、排気孔125の前縁側における左側壁部120cの内周側には、連結部材129を挿通可能なガイド部材126が、配設されている。実施形態の場合、ガイド部材126は、略前後方向に沿って配設される帯状として、両端側をバッグ本体120に縫着されるもので(図46参照)、このガイド部材126と左側壁部120cとの間に、連結部材129を挿通させる構成とされている。また、このガイド部材126は、閉塞モードでエアバッグ119が膨張を完了させた際に、バッグ本体120の内周側に引き込まれるようにして配置される排出路部127の先端127aの近傍となる位置に、配設されている。
開閉部材としての排出路部127は、排気孔125の周囲を全周にわたって覆うように、排気孔125から延びる円筒形状とされて、先端127a側を開口させて構成されている。実施形態の場合、排出路部127は、バッグ本体120と一体的に構成されるもので、バッグ本体120と同様にポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。この排出路部127は、図43に示すように、開口モードにおいては、バッグ本体120外に突出するようにして、排気孔125を開口させ、開口した先端127a側から膨張用ガスを排出させる構成とされ、閉塞モードにおいては、先端127aを流入用開口121側に向けるように、バッグ本体120の内周側に引き込まれ、かつ、エアバッグの内圧により左側壁部120dの内周側に押し付けられるようにして、元部側における排気孔125側に位置する部位127bで、排気孔125を閉塞させる構成である。
連結部材129は、バッグ本体120と別体とされて、可撓性を有した帯状の布材から構成されている。実施形態の場合、連結部材129は、元部129a側を、排出路部127の先端127a側であって、膨張完了時の右縁127cに対して縫着させて、排出路部127から延びるように構成されるもので、先端129b側に、係止部材20Dの係止ピン21Dを挿通可能な挿通孔129cを、配設させた構成とされている。連結部材129は、具体的には、排出路部127内に挿入されて、元部129a側を排出路部127における膨張完了時の右縁127cの内周側に縫着され、排気孔125を経て、ガイド部材126に挿通されるように、バッグ本体120内に挿入され、先端129bを挿通孔123から突出させるように、構成されている。そして、実施形態の場合、連結部材129は、長さ寸法を、挿通孔129cに係止ピン21Dが挿通されて係止ピン21Dとの係止を維持されて、排出路部127をバッグ本体120内に引き込むような閉塞モードでエアバッグ119が膨張する際にも、エアバッグ119が支障なく膨張を完了可能な寸法に、設定されている。
そして、第5実施形態のエアバッグ装置M5においても、作動時に、エアバッグ119は、排気孔125を開口させた開口モードと、排気孔125を閉塞させた閉塞モードと、の2つのモードで膨張を完了させることとなる。この開口モードと閉塞モードとは、制御機構としての係止部材20Dにより制御されるもので、具体的には、開口モードでは、係止部材20Dと連結部材129の先端129bとの連結が解除されることとなり、このとき、排出路部127が、バッグ本体120の内周側に引き込まれて排気孔125を閉塞していても、排気孔125から排気されるように作用する膨張用ガスGにより、排出路部127が、バッグ本体120の外周側へ押し出されるような態様となって、排気孔125が開口されることとなる(図43のA及び図44参照)。また、閉塞モードでは、係止部材20Dと連結部材116の先端116bとの連結が維持されることとなり、排出路部127が、エアバッグ119における排気孔125周縁の部位の移動に伴う相対的な連結部材129の引張を受けて、バッグ本体120の内周側に引き込まれるようにして、排気孔125が、排出路部127により閉塞されることとなる(図43のB及び図45参照)。この閉塞モードにおいては、バッグ本体120の内周側に引き込まれている排出路部127の先端127aから延びる連結部材129において、先端127a近傍に位置する部位が、ガイド部材126により押さえられており、また、排出路部127が、エアバッグ119の内圧によって、左側壁部120dの内周側に押し付けられることとなって、排出路部127により、的確に排気孔125を閉塞することができる。
第5実施形態のエアバッグ装置M5も、前述の第4実施形態のエアバッグ装置M4と同様にして車両に搭載することができる。なお、エアバッグ119は、排出路部127をバッグ本体120の外周側に突出させるようにして、排気孔125を開口させた状態で、折り畳まれて収納されることとなる。
そして、第5実施形態のエアバッグ装置M5においても、エアバッグ119は、排気孔125を開口させた状態で、折り畳まれて収納されていることから、装置側となるインパネ83に、乗員MP等が過度に近接している状態で作動する際に、膨張初期のエアバッグ119が、閉塞モードと開口モードとにかかわらず、排気孔125を大きく開口させた状態で、乗員MPと接触することとなる。具体的には、第5実施形態のエアバッグ装置M5でも、制御装置59Dが、シートベルトセンサ60Dからの作動信号を受けて、乗員MPのシートベルト非装着状態を検知した場合には、インフレーター8Dの作動と略同時に、アクチュエータ22Dに作動信号を出力させて、係止ピン21Dを引き込むように作動させる構成である。そのため、図46に示すように、シートベルト非装着状態の近接乗員MPが、インパネ83と接触していても、エアバッグ119は、排気孔125を大きく開口させた状態を維持しつつ膨張することから、排気孔125から多量の膨張用ガスGを排出させることができ、乗員MPと接触しているエアバッグ119の内圧上昇を抑えることができて、乗員MPを不必要に押圧することを防止できる。
また、第5実施形態のエアバッグ装置M5においても、排気孔125を開口させた開口モードと、排気孔125を閉塞させた閉塞モードと、の2つのモードでエアバッグ119の膨張を完了させることができることから、エアバッグ119の膨張完了時の内圧も、調整することができる。具体的には、第5実施形態のエアバッグ装置M5においても、制御装置59Dが、シートベルトセンサ60Dからの作動信号を受けて、乗員MPのシートベルト装着状態を検知した場合には、連結部材129の先端129b側と係止ピン21Dとの係止状態を維持させた状態で、エアバッグ119が展開膨張することとなり、開閉部材としての排出路部127が、エアバッグ119における排気孔125周縁の部位の移動に伴う相対的な連結部材129の引張を受けて、先端127a側を内周側に向けるようにして、バッグ本体120の内周側に引き込まれることとなり、排気孔125が、エアバッグ119の膨張途中において、開口状態から閉塞されることとなる。
その後、制御装置59Dが、例えば、シートベルトを装着した状態の小柄乗員MP1や、シートベルトを装着した状態でインパネ83に近づいて着座している乗員MPを検知した場合には、インフレーター8Dから膨張用ガスが吐出されてエアバッグ119が膨張を略完了させた後に、制御装置59Dがアクチュエータ22Dに作動信号を出力させて、係止ピン21Dを引き込むように作動させ、連結部材129の先端129bと係止ピン21Dとの係止状態を解除させることとなり、エアバッグ119が、図44に示すように、排気孔125を開口させた開口モードで膨張を完了させることとなる。そして、開口モードでは、エアバッグ119が、開口した排気孔125から膨張用ガスGを排気させつつ、内圧を低く設定された状態で膨張を完了させることから、小柄乗員MP1や、インパネ83に近づいて着座している乗員MPに好適となり、このような乗員MP1(MP)を、内圧を低く設定されたエアバッグ119により、必要以上に押圧することを抑えて、ソフトに保護することができる(図30参照)。
逆に、制御装置59Dが、例えば、シートベルトを装着した状態の大柄乗員MP2や、シートベルトを装着した状態でインパネ83から離れて着座している乗員MPを検知した場合には、制御装置59Dからアクチュエータ22Dに作動信号が出力されず、連結部材129の先端129bと係止ピン21Dとの係止状態を維持させた状態で、エアバッグ119が、図45に示すように、排気孔125を閉塞させた閉塞モードで膨張を完了させることとなる。そして、閉塞モードでは、エアバッグ119、排気孔125から膨張用ガスを排気させずに、内圧を高く設定された状態で膨張を完了させることから、大柄乗員MP2や、インパネ83から離れて着座している乗員MPに好適となり、このような乗員MP2(MP)を、十分な内圧を確保して、クッション性よく膨張したエアバッグ119により、底付きすることなく、的確に保護することができる(図30参照)。
したがって、第5実施形態のエアバッグ装置M5においても、膨張時のエアバッグ119、装置側(インパネ83)に過度に近接している乗員MPを不必要に押圧することを防止でき、かつ、非近接状態で着座した乗員MPを、体格差や着座位置等に応じて、的確な内圧で保護することができる。
また、第5実施形態のエアバッグ装置M5では、エアバッグ119は、排気孔125を開口させた状態で折り畳まれて収納されており、排気孔125、エアバッグ119の膨張に伴って、閉塞状態に移行することとなるが、排出路部127の先端127a側から延びるように形成される連結部材129は、排気孔125を経て、ガイド部材126に挿通されつつバッグ本体120の内周側を通るようにして、先端129b側を係止部材20Dに係止されていることから、エアバッグ119における排気孔125周縁の部位の移動に伴う相対的な連結部材129の引張を受けて、排出路部127を、相対移動させ、先端127aをバッグ本体120の内周側に向けるように、引き込むことができ、エアバッグ119の膨張途中において、排気孔125を円滑に閉塞させることができる。
さらに、第5実施形態のエアバッグ装置M5では、開閉部材を構成する排出路部127は、可撓性を有した材料から構成されていることから、排出路部127及び連結部材129をエアバッグ119とともに折り畳んで収納させることができて、装置の増大化や複雑化を招かない。また、第5実施形態のエアバッグ装置M5では、閉塞モードでエアバッグ119が展開膨張する際には、排出路部127は、連結部材129によって、エアバッグ119内に引き込まれた状態で、エアバッグ119が膨張することとなり、このとき、排出路部127を構成する周壁自体で、排気孔125を閉塞することとなる。そして、排気孔125近傍のバッグ本体120の左側壁部120cの内周側には、連結部材129を挿通可能なガイド部材126が、形成されており、エアバッグ119(バッグ本体120)内に引き込まれた排出路部127は、ガイド部材126によりガイドされるとともに、エアバッグ119の内圧によって左側壁部120dの内周側に押し付けられることとなる。そのため、排出路部127により、的確に排気孔125を閉塞することができ、膨張用ガスが漏れることを極力防止できる。
なお、第5実施形態では、ガイド部材126は、連結部材129を挿通可能に構成されているが、ガイド部材として、連結部材だけでなく排出路部自体を挿通可能な構成のものを使用してもよく、このようなガイド部材では、閉塞モードでエアバッグを膨張させる際に、排出路部の先端側を直接ガイド部材により押さえることができる。
また、第1〜第5実施形態のエアバッグ装置M1〜M5では、制御装置59,59Dが、乗員MD,MPがシートベルトを装着して着座していることを検知した場合には、エアバッグ33,33A,33B,85,119の膨張初期において、係止部材20,20Dを作動させることなく、一旦、排気孔38,38A,38B,98,125を閉塞モードに移行させた状態でエアバッグ33,33A,33B,85,119を迅速に膨張させ、エアバッグ33,33A,33B,85,119が膨張を完了させる直前に、係止部材20,20Dを作動させて、開口モードに移行させる構成であるが、この係止部材20,20Dの作動タイミングは、着座した乗員の体格や位置によって早くするように変更でき、さらには、エアバッグの膨張初期から、開口モードとして、排気孔の開口状態を維持させた状態で、エアバッグを膨張させるように、構成してもよい。
さらに、第1〜第5実施形態のエアバッグ装置M1〜M5では、制御装置59,59Dが、シートベルトセンサ60,60Dと電気的に接続されて、座席SE1,SE2に着座した乗員(運転者)MD,MPのシートベルトの装着状態を検知可能な構成としているが、制御装置により着座した乗員のシートベルト装着状態を検知しない構成としてもよい。この場合、エアバッグの膨張初期において、係止部材は作動されないこととなるが、装置側に過度に近接している乗員に膨張初期のエアバッグが接触した場合、エアバッグは、排気孔を開口させた状態で、乗員と接触することとなるため、排気孔から多量の膨張用ガスを排出させることができて、乗員を不必要に押圧することを防止できる。