JP6678292B2 - コモンモードノイズフィルタ - Google Patents

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Description

本発明は、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用される小形で薄型のコモンモードノイズフィルタに関するものである。
従来、モバイル機器においてメインICとディスプレイやカメラを接続するデジタルデータ伝送規格としてmipi(Mobile Industry Processor Interface)D−PHY規格が採用されており、2本の伝送ラインを用いた差動信号で伝送する方式が用いられている。近年、カメラの解像度が飛躍的に高まり、更に高速な伝送方式として、3本の伝送ラインを用いて、送信側から各伝送ラインに異なる電圧を送り、受信側で各ライン間の差分をとることで差動出力をする方式がmipiC−PHY規格として制定され実用化されている。
従来のこの種のコモンモードノイズフィルタは、図9に示すように、複数の絶縁体層1と、3つの独立した第1〜第3のコイル2〜4を有し、第1〜第3のコイル2〜4はそれぞれ、コイル導体2a、2b、コイル導体3a、3b、コイル導体4a、4b同士をそれぞれ電気的に接続することによって形成され、かつこの3つの第1〜第3のコイル2〜4を下から順に積層方向に配置していた。このような構成において、コモンモードノイズが入力された場合には、第1〜第3のコイル2〜4が強めあいインダクタンスとして動作することによってノイズを抑制していた。
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献としては、例えば、特許文献1が知られている。
特開2003−77727号公報
上記した従来のコモンモードノイズフィルタにおいては、第1のコイル2と第3のコイル4との間に第2のコイル3を配置しているため、第1のコイル2と第3のコイル4との距離が遠く、これにより、第1のコイル2と第3のコイル4はほとんど磁気結合しなかった。
このようなフィルタを、前述の3線式の差動信号線路に適用し差動データ信号を伝送すると、磁気結合ができていない第1のコイル2と第3のコイル4ではおのおのに発生する磁束がキャンセルせず、磁気結合ができていない成分で大きな残留インダクタンスを発生させるため、差動データ信号には損失が発生し、差動信号品質が大きく劣化してしまう。
これに対し、図10に示すように、第1のコイル2を構成するコイル導体2a、第2のコイル3を構成するコイル導体3a、第3のコイル4を構成するコイル導体4a、第1のコイル2を構成するコイル導体2b、第2のコイル3を構成するコイル導体3b、第3のコイル4を構成するコイル導体4bの順に積層して、第1のコイル2と第2のコイル3とが隣り合う箇所を2箇所とし、第2のコイル3と第3のコイル4とが隣り合う箇所を2箇所として、磁気結合を高めるようにすることが考えられる。
しかし、この場合、第1のコイル2と第3のコイル4とは、第2のコイル3を挟んだ状態であり、さらに距離も離れているため他と比べて磁気結合が小さく、各コイル間の磁気結合はバランスが悪くなるという課題を有する。
このようなコモンモードノイズフィルタに、差動信号が入力された場合、第2のコイル3は、近接する第1のコイル2と第3のコイル4と良好な磁気結合をしているため、差動信号の劣化が少ない。しかし、本構成においても、コイル導体2bとコイル導体4bとの距離、およびコイル導体4aとコイル導体2aとの距離が離れてしまい磁気結合が弱いため、同様に第1のコイル2と第3のコイル4を流れる差動信号が劣化してしまうという課題が生じてしまう。
本発明は上記従来の課題を解決するもので、3線式の差動信号線路に用いられる3つのコイル間でバランスよく磁気結合させることができ、さらに、差動信号を劣化させないコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
上記目的を解決するために本発明は、複数の非磁性体層と、前記複数の非磁性体層に形成された複数のコイル導体とを備え、複数の前記コイル導体は1ターン以上の渦巻き状に形成され、前記コイル導体単独あるいは複数の前記コイル導体同士を電気的に接続することによって互いに独立する第一、第二、第三のコイルを構成されるものであり、前記第一のコイルを構成する前記コイル導体、前記第二のコイルを構成する前記コイル導体、前記第三のコイルを構成する前記コイル導体が積層された積層部を形成し、前記積層部の積層方向から見て前記第二のコイルを構成する前記コイル導体は、前記第一、第三のコイルを構成する前記コイル導体と交差する部分を除いて重なっておらず、前記第二のコイルを構成する前記コイル導体を、前記第三のコイルを構成する前記コイル導体と同一の前記非磁性体層上に位置させ、前記第二のコイルを構成する前記コイル導体、前記第三のコイルを構成する前記コイル導体と前記第一のコイルを構成する前記コイル導体とを前記積層部の積層方向と直交する方向にずらして配置しているものである。
本発明のコモンモードノイズフィルタは、第一のコイルを構成するコイル導体、第二のコイルを構成するコイル導体、第三のコイルを構成するコイル導体を順に積層された積層部を形成し、第一、第三のコイルを構成するコイル導体と第二のコイルを構成するコイル導体とを、積層部の積層方向と直交する方向にずらして配置したために、互いに隣に積層された第一のコイルと第二のコイル、第二のコイルと第三のコイルの磁気結合を弱くすることができ、これにより、互いに離れて積層された第一のコイルと第三のコイルの磁気結合と、第一のコイルと第二のコイルの磁気結合、第二のコイルと第三のコイルの磁気結合とのバランスをよくすることができるという効果を奏するものである。
本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図 同コモンモードノイズフィルタの断面図 本発明の実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図 本発明の実施の形態3におけるコモンモードノイズフィルタの主要部の断面図 同コモンモードノイズフィルタの他の例を示す主要部の断面図 本発明実施の形態4におけるコモンモードノイズフィルタの主要部の断面図 本発明の実施の形態5におけるコモンモードノイズフィルタの主要部の断面図 同コモンモードノイズフィルタの他の例の分解斜視図 従来のコモンモードノイズフィルタの分解斜視図 同コモンモードノイズフィルタの他の例を示す分解斜視図
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図、図2は同コモンモードノイズフィルタの断面図である。
本発明の実施の形態1におけるコモンモードノイズフィルタは、図1、図2に示すように、第一〜第七の非磁性体層11a〜11gと、第一〜第六の非磁性体層11a〜11fに形成された第一〜第六のコイル導体12a、12b、13a、13b、14a、14bとを備え、2つのコイル導体同士を電気的に接続することによってそれぞれ構成され、かつ互いに独立する第一のコイル12、第二のコイル13、第三のコイル14を形成している。
上記構成において、第一〜第七の非磁性体層11a〜11gは、下から順に積層されたもので、同じ厚みのシート状に形成されたCu−Znフェライト、ガラスセラミック等の非磁性材料から構成されている。
また、第一のコイル12、第二のコイル13、第三のコイル14は、前述のように、それぞれ2つのコイル導体を電気的に接続して構成されている。
この内、第一のコイル12は第一のコイル導体12aと第四のコイル導体12bとで構成されており、また第二のコイル13は第二のコイル導体13aと第五のコイル導体13bとで構成されており、そして第三のコイル14は第三のコイル導体14aと第六のコイル導体14bとで構成されている。
これらの各コイル導体は、それぞれ各非磁性体層の上面に銀等の導電材料を渦巻状にめっきまたは印刷することにより設けられたものである。
また、これらの各コイル導体の形状は、長辺と短辺を連続させて渦巻き状に1ターン以上に形成したもので、その内形と外形の輪郭が概ね矩形状をしており、配線等に用いる部分を除いた主要部である渦巻き状部分の導体幅、導体間ピッチ、導体厚み寸法などの導体パターンが同じになるように形成されている。
そして、第一のコイル導体12aは第1の非磁性体層11aの上面に形成され、第二のコイル導体13aは第二の非磁性体層11bの上面に形成され、第三のコイル導体14aは第三の非磁性体層11cの上面に形成され、第四のコイル導体12bは第四の非磁性体層11dの上面に形成され、第五のコイル導体13bは第五の非磁性体層11eの上面に形成され、第六のコイル導体14bは第六の非磁性体層11fの上面に形成され、この構成により積層部15が設けられる。
すなわち、第一のコイル12を構成する第一のコイル導体12a、第二のコイル13を構成する第二のコイル導体13a、第三のコイル14を構成する第三のコイル導体14a、第一のコイル12を構成する第四のコイル導体12b、第二のコイル13を構成する第五のコイル導体13b、第三のコイル14を構成する第六のコイル導体14bが順に積層されている。
この積層部15内において各コイル導体の接続は、第一のコイル12を構成する第一のコイル導体12aと第四のコイル導体12bとの間については、第二〜第四の非磁性体層11b〜11dにそれぞれ形成された3つのビア電極16aによって電気的に接続され、第二のコイル13を構成する第二のコイル導体13aと第五のコイル導体13bとの間については、第三〜第五の非磁性体層11c〜11eにそれぞれ形成された3つのビア電極16bによって電気的に接続され、第三のコイル14を構成する第三のコイル導体14aと第六のコイル導体14bとの間については、第四〜第六の非磁性体層11d〜11fにそれぞれ形成された3つのビア電極16cによって電気的に接続されている。
したがって、第一のコイル12を構成する第一のコイル導体12aと第四のコイル導体12bの間には、第二のコイル13を構成する第二のコイル導体13aと、第三のコイル14を構成する第三のコイル導体14aとが位置し、第二のコイル13を構成する第二のコイル導体13aと第五のコイル導体13bの間には、第三のコイル14を構成する第三のコイル導体14aと、第一のコイル12を構成する第四のコイル導体12bとが位置し、第三のコイル14を構成する第三のコイル導体14aと第六のコイル導体14bの間には、第一のコイル12を構成する第四のコイル導体12bと、第二のコイル13を構成する第五のコイル導体13bとがそれぞれ位置することになる。
すなわち、同一コイルを構成するコイル導体間には、他の2つのコイルを構成するコイル導体の1つずつ計2つが位置している。
このような構成によって、3つの独立した第一のコイル12、第二のコイル13、第三のコイル14が設けられ、第一のコイル12と第二のコイル13、第二のコイル13と第三のコイル14、第三のコイル14と第一のコイル12がそれぞれ磁気結合する構成にしている。
そしてさらに、本発明のコモンノードノイズフィルタは、特に、順に積層された第一〜第六の非磁性体層11a〜11fの内、奇数層の第一、第三、第五の絶縁体層11a、11c、11e上に設けた第一、第三、第五のコイル導体12a、14a、13bと、偶数層の第二、第四、第六の絶縁体層11b、11d、11f上に設けた第二、第四、第六のコイル導体13a、12b、14bを、積層部15の積層方向と直交する方向にずらして配置している。すなわち、互いに隣に積層されたコイル導体同士を積層方向と直交する方向にずらして配置している。換言すれば、本実施の形態1では隣り合うコイル導体間の巻軸が、積層方向と直交する方向にずれている。
なお、第一、第三のコイル12、14を構成する第一、第三、第四、第六のコイル導体12a、14a、12b、14bと、第二のコイル13を構成する第二、第五のコイル導体13a、13bとを、積層部15の積層方向と直交する方向にずらして配置すればよく、積層部15の中央部分で隣接する第三のコイル導体14aと第四のコイル導体12bとを略対向させてもよい。
本実施の形態では、図1のように、各コイル導体の矩形状の輪郭の対角方向にずらして配置しており、奇数層の第一、第三、第五の絶縁体層11a、11c、11e上に設けた第一、第三、第五のコイル導体12a、14a、13bを図1において下側の対角方向ずらしており、偶数層の第二、第四、第六の絶縁体層11b、11d、11f上に設けた第二、第四、第六のコイル導体13a、12b、14bを図面上側の対角方向にずらして配置している。
そして、第一、第三、第五のコイル導体12a、14a、13bと、第二、第四、第六のコイル導体13a、12b、14bは、それぞれ積層方向から見たときに主要部である渦巻き状部分が重なるようにして配置している。
このようにすることにより、互いに隣に積層された各コイル導体間の距離を調整することにより、磁気結合を調整できるため、第一のコイル12と第二のコイル13、第二のコイル13と第三のコイル14の磁気結合を弱くして、第一のコイル12と第三のコイル14の磁気結合とのバランスをよくすることができる。
なお、第三のコイル導体14aと第四のコイル導体12bを上面視で重なるように配置すれば、互いに隣に積層される回数が多くなる第一のコイル12と第二のコイル13、第二のコイル13と第三のコイル14の磁気結合を弱くして、互いに隣に積層される回数が少ない第一のコイル12と第三のコイル14の磁気結合を強くすることができるため、3つのコイル12、13、14間でよりバランスよく磁気結合させることができる。この場合、他のコイル導体においては、互いに隣に積層されたコイル導体同士を積層方向と直交する方向にずらして配置する。
本実施の形態のように各コイルをそれぞれ二つのコイル導体を接続する場合には、第一のコイル12と第二のコイル13とが互いに隣に積層される箇所は二箇所あり、第二のコイル13と第三のコイル14とが互いに隣に積層される箇所も二箇所あるのに対し、第一のコイル12と第三のコイル14とが互いに隣に積層される箇所が一箇所のため、互いに隣に積層される回数の多い第一のコイル12と第二のコイル13との間の磁気結合、第二のコイル13と第三のコイル14との間の磁気結合が弱くなる作用が大きくなり、第一、第二、第三のコイル12、13、14の磁気結合のバランスをよくすることができるものである。
この効果は、本実施の形態とは別の各コイルをそれぞれ三つ以上のコイル導体を接続する構成(図示していない)においても、同様の作用効果が得られるものである。
また、別に、各コイルをそれぞれ単独のコイル導体とした構成(図示していない)においても、互いに隣に積層された第一のコイル導体と第二のコイル導体、第二のコイル導体と第三のコイル導体の磁気結合を弱くして、互いに離れて積層される第一のコイル導体と第三のコイル導体の磁気結合とのバランスをよくすることができるものである。
ここで、奇数層の絶縁体層に設けた各コイル導体と偶数層に設けた各コイル導体を積層部15の積層方向と直交する方向にずらすとは、積層部15の積層方向の断面で見たときに、各コイル導体の内周から外周に向かう同じ巻き数部分の断面が積層方向と直交方向にずれていることを意味している。
各コイル導体の断面のずれについての判断は、各コイル導体の断面形状が矩形状であれば対角線が交差する中央部や各角部などを基準点として比較することができる。また各コイル導体の断面が長楕円形や扁平な半月形のような場合には、横幅寸法、厚み寸法のそれぞれ半分となる位置などを基準点にして判断することができる。
そして、この実施の形態1においては、奇数層の絶縁体層に設けた各コイル導体と偶数層に設けた各コイル導体とを積層部の積層方向と直交する方向にずらす量については、非磁性体層の厚み寸法をT、ずらし量をSとしたとき、0<S≦2.0×Tとすることが好ましい。
ずらし量Sが0(零)の状態からわずかな量でもずらし量Sを設けることにより、前述した磁気結合を弱くする作用が生じ、各コイル間の磁気結合のバランスをよくする効果が生じてくる。
また、ずらし量Sを0(零)から大きくしていくと各コイル間の磁気結合のバランスがよりよくなっていくが、ずらし量Sが非絶縁体層の厚み寸法Tの2倍以上になると、各コイル導体間の全体の磁気結合が弱くなり好ましくない。
ずらし量Sのより好適な範囲は、1.6×T≦S≦1.8×Tとすることが望ましい。
さらに、コイル巻数が巻けるため、コモンモードノイズが侵入してきたときに、インピーダンスが高くなり、これにより、コモンモードノイズの除去能力が高いという効果を得ることができる。
上述した構成では、図2のように、積層部15の積層方向の断面で見たときに、各コイル導体の内周から外周に向かう同じ巻き数部分において、内周から同じターン数の部分(図2では1ターンの部分)の第一のコイル導体12aと第二のコイル導体13aとを結んだ破線Laと、第二のコイル導体13aと第三のコイル導体14aとを結んだ破線Lbと、第一のコイル導体12aと第三のコイル導体14aとを結んだ破線Lcとにより形成される三角形の形状が、正三角形に相似した形状(または巻軸を結んだ線が正三角形に相似した形状)となり、各コイル導体間を概ね同じ間隔に配置することができるため、各コイル導体間の磁気結合のバランスをよくすることができ、さらに、同じターン数部分のいずれの隣り合う3つの各コイル導体が同様に概ね同じ間隔で配置されるので、各コイルの磁気結合の強さを概ね同じにすることができるものである。
そしてこのように構成した積層部15には、第一の非磁性体層11aの下方、第七の非磁性体層11gの上方に、シート状に構成されたNi−Cu−Znフェライト等の磁性材料からなる複数の磁性体層17が構成されている。
なお、第一〜第七の非磁性体層11a〜11g、磁性体層17の枚数は、図1に記載の枚数に限定されない。また、磁性体層17は無くてもよいし、磁性体層17を他の非磁性体層と交互に積層したものとしてもよい。
また、上記した構成により、積層体18が形成される。また、この積層体18の両端面には、第1〜第6のコイル導体12a、12b、13a、13b、14a、14bの端部と接続する6つの外部電極(図示せず)が設けられている。
以上ようにしてコモンモードフィルタが構成されている。
なお、本実施の形態では、各コイル導体に内形と外形の輪郭が概ね矩形状のものを用い、その矩形状の対角方向にずらしたもので説明したが、長辺方向または短辺方向のいずれか一方にずらして配置してもよく、本実施の形態と同様に磁気結合のバランスをよくする効果を得ることができる。
また、各コイル導体の形状においても、矩形状に限定されるものではなく、内形と外形の輪郭が円形、長円形、楕円形などの形状のものでもよく、本実施の形態と同様に磁気結合のバランスをよくする効果を得ることができる。
さらに、図1、図2に示す構成について、第一のコイル導体12aと第二のコイル導体13aを入れ替え、第四のコイル導体12bと第五のコイル導体13bを入れ替えた構成としてもよい。
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図である。なお、この本発明の実施の形態2においては、上記した本発明の実施の形態1と同様の構成を有するものについては、同一符号を付しており、その説明は省略する。
本発明の実施の形態2が上記した本発明の実施の形態1と相違する点は、図3に示すように、第二のコイル13を構成する第二のコイル導体13aを、第三のコイル14を構成する第三のコイル導体14aと同一の第二の非磁性体層11b上において互いに平行になるように位置させ、第二のコイル13を構成する第五のコイル導体13bを、第三のコイル14を構成する第六のコイル導体14bと同一の第四の非磁性体層11d上において互いに平行になるように位置させた点である。
このとき、互いに平行になるように位置する2つのコイル(第二のコイル13、第三のコイル14)を構成するコイル導体13a、13b、14a、14bと、他のコイル(第一のコイル12)を構成する第一、第四のコイル導体12a、12bとを、積層部15の積層方向と直交する方向にずらして配置する。
なお、第二のコイル13を構成する第二のコイル導体13a、13bと互いに平行になるように位置するコイルを、第一のコイル12を構成する第一、第四のコイル導体12a、12bとしてもよい。
このような構成によって、積層部15全体の厚みを薄くすることができる。
さらに、積層部15の積層方向の断面で見たときに、各コイル導体の内周から外周に向かう同じ巻き数部分において、内周から同じターン数の部分の第一のコイル導体12aと第二のコイル導体13aとを結んだ線と、第二のコイル導体13aと第三のコイル導体14aとを結んだ線と、第一のコイル導体12aと第三のコイル導体14aとを結んだ線とにより形成される三角形の形状が、正三角形に相似した形状とすれば、各コイル導体間を概ね同じ間隔に配置することができるため、各コイル導体間の磁気結合のバランスをよくすることができる。また、第二のコイル導体13aと第三のコイル導体14aの間隔を調整し、第二のコイル導体13aと第三のコイル導体14aと第一のコイル導体12aのそれぞれの間の距離の調整が第二の非磁性体層11bの厚みのみで容易に調整できるため、第一〜第三のコイル相互の磁気結合を強くできる。さらに、第四のコイル導体12b、第五のコイル導体13b、第六のコイル導体14bについても同様である。
また前記磁気結合のバランスをとる一方で、差動信号伝送において、差動モードの特性インピーダンスが静電容量にも依存するため、各コイル間の静電容量のバランスをとることも重要であるが、この静電容量調整のため非磁性体層11eと非磁性体層11dとの誘電率を異なるものにしてもよい。
(実施の形態3)
図4は本発明の実施の形態3におけるコモンモードノイズフィルタの主要部の断面図である。なお、この本発明の実施の形態3においては、上記した本発明の実施の形態1と同様の構成を有するものについては、同一符号を付しており、その説明は省略する。図4では、第二のコイル13として第五のコイル導体13b、第一、第三のコイル12、14として第四、第六のコイル導体12b、14bの断面を模式的に表した図面であり、各コイル導体の内周から外周に向かうときに隣接する2つの巻き数部分を示している。つまり、3線式の差動信号線路においては、第四、第五、第六のコイル導体12b、13b、14bの3線が相互に磁気結合しているが、図4における断面図は、N周回目の前記3線のコイル導体断面と(N−1)周回目の前記3線のコイル導体断面を模式的に示している。
本発明の実施の形態3が上記した本発明の実施の形態1と相違する点は、図4に示すように、第二のコイル13を構成する第五のコイル導体13bと、各コイル導体の内周から外周に向かうときに隣接する巻き数(ターン数)部分における第一、第三のコイル12、14を構成する第四、第六のコイル導体12b、14bとが、上面視で重ならないようにした点である。
このとき、上面視で第四、第六のコイル導体12b、14b同士が完全に重なっているが、少なくとも上面視で重なる部分を有していればよい。
実施の形態1のような構成の場合、図4において、N周回目の第五のコイル導体13bが、(N−1)周回目の第四、第六のコイル導体12b、14bと上面視で重なった場合、N周回目の第五のコイル導体13bが、(N−1)周回目の第四、第六のコイル導体12b、14bとの間で、余分な浮遊容量が増加するため、差動信号が入ってきた場合に、浮遊容量の影響が出やすい高周波領域において差動信号が劣化する可能性がある。しかし、本実施の形態3においては、N周回目のコイルと(N−1)周回目のコイルが上面視で重ならないため、不要な浮遊容量が低減され差動信号の劣化が低減される。
さらに、図4に示すように、第二のコイル13を構成する第五のコイル導体13bと、各コイル導体の内周から外周に向かうときに隣接する巻き数(ターン数)部分における、第一、第三のコイル12、14を構成する第四、第六のコイル導体12b、14bとの間の距離Da、Dbを、第一、第二、第三のコイル12、13、14を構成する各コイル導体間の距離La、Lb、Lcより長くしている。
3線式の差動信号線路を考えた場合、図4に示すN周回目のコイルと(N−1)周回目のコイルを考えたとき、隣接する巻き数部分における第四、第六のコイル導体12b、14bとの間の距離Da、Dbが、各コイル導体間の距離La、Lb、Lcと同じか短くすると、第五のコイル導体13bと隣接する巻き数部分の第四、第六のコイル導体12b、14bとの間の不要な浮遊容量が増加するため、第五のコイル導体13bと第六のコイル導体14bとの間の差動モードの特性インピーダンスに比べて、第五のコイル導体13bと第四のコイル導体12bの差動線路間、第五のコイル導体13bと第六のコイル導体14bの差動線路間の、差動モードでの特性インピーダンスが低くなり、これにより、3線間のバランスが崩れ、差動信号が劣化する可能性があった。
これに対し、本実施の形態の構成3において距離Da、Dbを距離La、Lb、Lcより長くすることによって、第五のコイル導体13bと隣接する巻き数部分の第四、第六のコイル導体12b、14bとの間の不要な浮遊容量をさらに低減させることができる。
さらに、図5に示すように、各コイル導体の内周から外周に向かうときに、N周回目のコイルと(N−1)周回目のコイル、(N−2)周回目のコイルを考えたときに、隣接する巻き数部分における第四、第六のコイル導体12b、14b同士の間に、2つの第五のコイル導体13b同士を隣接するように、第四、第五、第六のコイル導体12b、13b、14bを周回するように配置して、第五のコイル導体13bと隣接する巻き数部分の第四、第六のコイル導体12b、14bとの間の不要な浮遊容量を低減するようにしてもよい。
第五のコイル導体13b同士は同電位であるため、この間に大きな不要な浮遊容量は発生せず、また、互いに隣接する巻き数部分の第四、第六のコイル導体12b、14bは、間に2つの第五のコイル導体13bが位置するため、第五のコイル導体13bと、隣接する巻き数部分における第四、第六のコイル導体12b、14bとの間の距離が長くなり、これにより、第五のコイル導体13bと隣接する巻き数部分の第四、第六のコイル導体12b、14bとの間の不要な浮遊容量を低減させることができる。同様に、(N−2)周回目のコイル配置を図5のようにすることで、第四のコイル導体12b同士、また第六のコイル導体14b同士との間の不要な浮遊容量がそれぞれ低減されることになり、差動信号の劣化を防ぐことができる。
さらに、図5に示すように隣接する巻き数部分における第五のコイル導体13b同士の距離P、第四、第六のコイル導体12b、14b同士の距離Qa、Qbは、それぞれ絶縁性を考慮する必要がないため狭くできるため、各コイル導体間の距離La、Lb、Lcより短くすれば、上面視でコイルが形成される箇所の面積を小さくすることができるため、コイルを同一面内でより多く巻けるようになる。
これにより、第五のコイル導体13bと隣接する巻き数部分の第四、第六のコイル導体12b、14bの不要な浮遊容量を低減し差動信号の劣化を防ぐとともに、コモンモードノイズが進入したときに巻数が多くなることでインピーダンスがより高くなり、ノイズ除去性能が向上する。
(実施の形態4)
図6は本発明の実施の形態4におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図である。なお、この本発明の実施の形態4においては、上記した本発明の実施の形態1と同様の構成を有するものについては、同一符号を付しており、その説明は省略する。
本発明の実施の形態4が上記した本発明の実施の形態1、3と相違する点は、図6に示すように、第1〜第6のコイル導体12a、12b、13a、13b、14a、14bを、少なくとも他のコイル導体とは互いに上面視にて重ならないようにした点である。
なお、図6は、第二のコイル13として第五のコイル導体13b、第一、第三のコイル12、14として第四、第六のコイル導体12b、14bの断面を模式的に表した図面である。印刷工法等のよるコイル導体形成では、線幅に対して厚みが線幅より小さい場合が多く、図6において、第四、第五、第六のコイル導体12b、13b、14bにおいては、このような場合を想定して図示してある。
このとき、第一のコイル12を構成する第四のコイル導体12bと第二のコイル13を構成する第五のコイル導体13bとを結んだ破線Laと、第二のコイル13を構成する第五のコイル導体13bと第三のコイル14を構成する第六のコイル導体14bとを結んだ破線Lbと、第一のコイル12を構成する第四のコイル導体12bと第三のコイル14を構成する第六のコイル導体14bとを結んだ破線Lcとにより形成される三角形の形状が、正三角形に相似した形状にするために、第四のコイル導体12bと第五のコイル導体13bとの間の距離t1を、第五のコイル導体13bと第六のコイル導体14bとの間の距離t2より大きくしている。このような構成により、各コイル間の磁気結合のバランスがとれる。
このように線幅に対して厚みが線幅より小さいコイル導体の場合、実施の形態3では、上面視で対向し重なる部分のある第四のコイル導体12bと第六のコイル導体14bとの間での静電容量が、互いに対向面積の少ない第四のコイル導体12bと第五のコイル導体13b、あるいは第六のコイル導体14bと第五のコイル導体13bとの静電容量よりも大きくなるが、本実施の形態4では、上面視で第四のコイル導体12bと第六のコイル導体14b、第五のコイル導体13bを重ならないように配置しているため、各コイル導体間の静電容量のバランスをとることができ、差動信号の劣化を防ぐことができる。
なお図6においては、距離t2<t1となっているが、静電容量調整のため、t2、t1の距離を形成する非磁性体層の誘電率を異なるものにしてもよい。
(実施の形態5)
図7は本発明の実施の形態5におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図である。なお、この本発明の実施の形態5においては、上記した本発明の実施の形態1と同様の構成を有するものについては、同一符号を付しており、その説明は省略する。
本発明の実施の形態5が上記した本発明の実施の形態1と相違する点は、図7に示すように、第一、第三のコイル12、14を構成する第四、第六のコイル導体12b、14b同士を積層方向に対向させ、この対向する第四、第六のコイル導体12b、14bの線幅を、他のコイル導体の線幅より広くした点である。
なお、図7は、第二のコイル13として第五のコイル導体13b、第一、第三のコイル12、14として第四、第六のコイル導体12b、14bの断面を模式的に表した図面である。
非磁性体層の厚みの生産上の薄層化に限界がある場合、対向する第四、第六のコイル導体12b、14b間の静電容量が減るとともに、対向する第四、第六のコイル導体12b、14b間の磁気結合が少し弱まることによって発生する磁束が完全にキャンセルせずに残留インダクタスが発生するため、この対向する第四、第六のコイル導体12b、14b間を差動信号が流れるときの差動モードの特性インピーダンスが上昇してしまい、差動信号の反射損失が発生し差動信号が劣化することになる。差動モードの特性インピーダンスを低減させるためには、対向する第四、第六のコイル導体12b、14b間の静電容量を少し大きくすることで調整でき、第四、第六のコイル導体12b、14bの線幅を広くすることで前記静電容量が増え、差動モードの特性インピーダンスの整合をとることができ信号劣化を防ぐことができる。
さらに、積層部15内のコイル導体を、第一のコイル12を構成する第一のコイル導体12a、第二のコイル13を構成する第二のコイル導体13a、第三のコイル14を構成する第三のコイル導体14aからなる第1の積層部15aと、第一のコイル12を構成する第四のコイル導体12b、第二のコイル13を構成する第五のコイル導体13b、第三のコイル14を構成する第六のコイル導体14bからなる第2の積層部15bに分けた場合、図8に示すように、第1の積層部15aと第2の積層部15bの最も近接するコイル導体間の距離を、他のコイル導体間の距離より広くしてもよい。
また、図8に示すように、第1の積層部15aにおける第一のコイル12を構成するコイル導体、第二のコイル13を構成するコイル導体、第三のコイル14を構成するコイル導体の積層順と、第2の積層部15b第一のコイル12を構成するコイル導体、第二のコイル13を構成するコイル導体、第三のコイル14を構成するコイル導体の積層順を逆にしてもよい。
図8では、第1の積層部15aにおいて下から、第三のコイル14を構成する第三のコイル導体14a、第二のコイル13を構成する第二のコイル導体13a、第一のコイル12を構成する第一のコイル導体12aの順になっているのに対し、第2の積層部15bにおいて下から、第一のコイル12を構成する第四のコイル導体12b、第二のコイル13を構成する第五のコイル導体13b、第三のコイル14を構成する第六のコイル導体14bの順になっている。
図8に示した構成では、最も近接して対向する第一のコイル導体12aと第四のコイル導体12bは同電位であるため、浮遊容量がほとんど発生せず、これにより、特性インピーダンスが低下するのを防止でき、差動信号の品質劣化を抑制できる。
本発明に係るコモンモードノイズフィルタは、3線式の差動線路方式に用いられるもので、3つのコイル間でバランスよく磁気結合させることができ差動信号品質を維持し、コモンモードノイズを除去できるという効果を有するものであり、特にデジタル機器やAV機器、情報通信端末等に使用される小形で薄型のコモンモードノイズフィルタ等において有用となるものである。
11a〜11g 第一の非磁性体層〜第七の非磁性体層
12 第一のコイル
12a 第一のコイル導体
12b 第四のコイル導体
13 第二のコイル
13a 第二のコイル導体
13b 第五のコイル導体
14 第三のコイル
14a 第三のコイル導体
14b 第六のコイル導体
15 積層部
16a,16b,16c ビア電極
17 磁性体層
18 積層体

Claims (5)

  1. 複数の非磁性体層と、前記複数の非磁性体層に形成された複数のコイル導体とを備え、複数の前記コイル導体は1ターン以上の渦巻き状に形成され、前記コイル導体単独あるいは複数の前記コイル導体同士を電気的に接続することによって互いに独立する第一、第二、第三のコイルを構成されるものであり、前記第一のコイルを構成する前記コイル導体、前記第二のコイルを構成する前記コイル導体、前記第三のコイルを構成する前記コイル導体が積層された積層部を形成し、前記積層部の積層方向から見て前記第二のコイルを構成する前記コイル導体は、前記第一、第三のコイルを構成する前記コイル導体と交差する部分を除いて重なっておらず、前記第二のコイルを構成する前記コイル導体を、前記第三のコイルを構成する前記コイル導体と同一の前記非磁性体層上に位置させ、前記第二のコイルを構成する前記コイル導体、前記第三のコイルを構成する前記コイル導体と前記第一のコイルを構成する前記コイル導体とを前記積層部の積層方向と直交する方向にずらして配置していることを特徴とするコモンモードノイズフィルタ。
  2. 複数の非磁性体層と、前記複数の非磁性体層に形成された複数のコイル導体とを備え、複数の前記コイル導体は1ターン以上の渦巻き状に形成され、各前記コイル導体の渦巻き部分の導体パターンが同じ形状に設けられており、前記コイル導体単独あるいは複数の前記コイル導体同士を電気的に接続することによって互いに独立する第一、第二、第三のコイルを構成されるものであり、前記第一のコイルを構成する前記コイル導体、前記第二のコイルを構成する前記コイル導体、前記第三のコイルを構成する前記コイル導体を順に積層された積層部を形成し、前記積層部の積層方向から見て前記第二のコイルを構成する前記コイル導体は、前記第一、第三のコイルを構成する前記コイル導体と交差する部分を除いて重なっておらず、各前記コイル導体の内周から外周に向かうときに互いに隣接する巻き数部分における、前記第一、第三のコイルを構成する各前記コイル導体同士の間に、前記第二のコイルを構成する2つの前記コイル導体を設けたコモンモードノイズフィルタ。
  3. 前記積層部の積層方向の断面で見たときに、各前記コイル導体の内周から外周に向かう同じ巻き数部分において、前記第一、第二、第三のコイルを構成する各前記コイル導体を直線で結んでなる形状が正三角形に相似していることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載のコモンモードノイズフィルタ。
  4. 前記第一、第二、第三のコイルを構成する各前記コイル導体は、互いに上面視にて重ならないようにした請求項1、2のいずれかに記載のコモンモードノイズフィルタ。
  5. 前記近接する前記第二のコイルを構成する2つの前記コイル導体の中心間距離を、前記第一、第二、第三のコイルを構成する各前記コイル導体の中心間距離より短くした請求項に記載のコモンモードノイズフィルタ。
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