JP5791631B2 - 核酸の単離方法およびそのキット - Google Patents

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Description

本開示は、核酸の単離および精製に関する。より本質的には、本開示は、綿またはその誘導体を用いた核酸の単離および精製のための方法およびキットを提供する。
核酸抽出プロトコルは、シリカベースのプロトコルと非シリカベースのプロトコルに大きく分類することができる。既存のシリカプロトコルと非シリカプロトコルは、非核酸成分を除去するための水洗浄に耐えることができず、あるパーセンテージのアルコールをその中に含む水性洗浄液を必要とする。溶出した核酸溶液中のアルコールの存在は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を阻害し、したがって、通常、両プロトコルとも、高速回転または残存アルコールを除去するための他の方法、および室温または高温の水性バッファーによる核酸の溶出を必要とする。場合により、両プロトコルとも、ポリエチレングリコールまたは水性アルコール洗浄に関して高塩濃度を必要とする。高濃度の塩および水性アルコールの使用は、核酸を溶出する前のこれらの成分の厳密な除去、または遠心分離機の使用などのように、核酸の溶出に制限を加える。したがって、既存のシリカベースのプロトコルまたは非シリカベースのプロトコルの中に、ポイント・オブ・ケア(POC)で用いることができるものはないが、それは、遠心分離機がエアロゾルを発生させるからである。文献中に報告されている非シリカベースのプロトコルの一部を以下に示す。
米国特許第7264927号:この文書には、核酸と結合し、最終的には、核酸をバッファーまたは脱イオン水中で溶出させるためのポリアルキレングリコールと高塩濃度の使用を伴うセルロースまたはセルロース紙の使用が記載されている。
米国特許第6084091号:核酸の単離に(ジャガイモデンプンのような)セルロース粉末を用いる方法が記載されている。
米国特許第5804684号:核酸の抽出に濾紙を用いる方法が記載されている。この場合、濾紙は、濾紙を支えるフィルターまたはバリアとしての柔らかいティッシュペーパーまたは綿片を用いて、プラスチックチップのような材料に収容されている。
上記のプロセスは全て、最終的な核酸の単離に市販のシリカカラムを用いるか、またはより長い試料処理時間(30分超)を必要とするか、もしくはマトリックスの洗浄時の高濃度の塩の使用もしくは遠心分離機の使用などを伴う。セルロースベースの核酸抽出法の中に、100%水性バッファーまたは水で核酸を洗浄するものはなく、通常は、あるパーセンテージのアルコールまたはポリオール含有化合物を含む。
したがって、本開示は、試料から核酸の単離するための方法であって、前記方法が、(a)溶解バッファーを核酸を含む試料に添加して、溶解溶液を得る工程、または(b)溶解バッファーを結合バッファーと組み合わせて試料に添加して、溶解溶液を得る工程、(c)結合バッファーを工程(a)の溶液に添加して、核酸をマトリックスに結合させるか、または工程(b)の溶液をマトリックスに直接結合させる工程、および(d)マトリックスに結合した核酸を洗浄し、溶出させて、核酸を単離し、精製する工程を含む、方法;ならびに試料から核酸を単離するためのキットであって、前記キットが、マトリックスおよびバッファーを含む、キットに関する。
本開示の特徴は、添付の図と併せて、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるであろう。これらの図は、本開示と一致するいくつかの実施形態のみを示すものと理解されるため、これらを本開示の範囲に対する限定とみなすべきではない。というのは、本開示は、添付の図の使用を通じて、さらに具体的かつ詳細に説明されるからである。
[a]注射器、[b]注射針、[c]注射器に取り付けたプラスチック鋳型、[d]スクリューキャップ式プラスチックボトル、[e]ガラス試験管、[f]スクリューキャップ式ガラスバイアルに充填された綿。 [a]使い捨てプラスチック製スポイト、[b]成形したプラスチック製パスツールピペット、[c]ガラス製パスツールピペット、[d]ゴム製のヘッドを有するプラスチック製スポイト、[e]綿棒、[f]成形されたプラスチックピペットに充填された綿。 [a]エッペンドルフ管、[b]スクリューキャップ式ガラス管、[c]成形したプラスチック製1mLチップ、[d]ゴム製のヘッドを有する目盛付き使い捨てガラスピペット、[e]ビスコース棒、[f]プラスチック製およびゴム製のヘッドを有するガラスピペットに充填された綿。 様々なプロトコルで精製したDNA試料をPCRで増幅させた。レーン1:分子量マーカー、レーン2:1mLピペットチップに充填されたビスコース、レーン3:市販のビスコース棒、レーン4:1mLピペットチップに充填された綿、レーン5:市販のシリカカラム、レーン6:市販の綿棒を用いて精製したDNA、レーン7:増幅されていないDNA、レーン8:水ブランク。 様々なプロトコルで精製したDNA試料をPCRで増幅させた。レーン1:1mLピペットチップに充填された綿、レーン2:水ブランク、レーン3:2mL注射器に充填された綿、レーン4:市販のシリカカラム、レーン5:分子量マーカー。 様々なプロトコルで精製したDNA試料をPCRで増幅させた。レーン1:分子量マーカー、レーン2:市販のシリカプロトコル、レーン3:1mLピペットチップに充填された綿、レーン4:ピペットチップに充填されたWhatman No.1濾紙、レーン5:FTAカードプロトコル。 様々なプロトコルで精製した30ct RNA試料をRT−PCRで増幅させた。レーン1:分子量マーカー、レーン2:脱脂綿、レーン3:オートクレーブした綿、レーン4:水酸化ナトリウムで洗浄した綿、レーン5:塩酸で洗浄した綿、レーン6:吸収綿、レーン7:Qiagen社製のシリカカラム、レーン8:FTAカード。 自動核酸抽出用の綿充填カートリッジの構成要素。
以下の詳細な説明において、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照する。詳細な説明、図面、および特許請求の範囲に記載された例示的実施例は、限定であることを意図するものではない。他の実施形態を利用してもよく、また、本明細書に提示された主題の精神または範囲から逸脱することなく、他の変更を行なってもよい。本開示の態様は、本明細書に広く記載され、かつ図に示されているように、多種多様に組み合わせることができ、これらの態様は全て、明確に企図され、かつ本開示の一部を形成することが容易に理解されよう。
本開示は、試料から核酸を単離するための方法であって、前記方法が、
(a)溶解バッファーを核酸を含む試料に添加して、溶解溶液を得る工程;または
(b)溶解バッファーを結合バッファーと組み合わせて試料に添加して、溶解溶液を得る工程;
(c)結合バッファーを工程(a)の溶液に添加して、核酸をマトリックスに結合させるか、または工程(b)の溶液を前記マトリックスに直接結合させる工程;および
(d)マトリックスに結合した核酸を洗浄し、溶出させて、核酸を単離し、精製する工程
を含む、方法に関する。
本開示の一実施形態では、核酸は、DNA、RNA、およびPNAを含む群から選択される。
本開示の別の実施形態では、試料は、生物学的または非生物学的試料である。
本開示のさらに別の実施形態では、生物学的試料は、血液、喀痰、血清、唾液または組織抽出物を含む群から選択され、非生物学的試料は、化学合成したPNAを含む群から選択される。
本開示のまた別の実施形態では、溶解バッファーは、グアニジンチオシアネート(guanidine thiocyanate)、塩酸グアニジン、EDTA、トリス、洗剤、ポリオール、グループIA陽イオンを含有する一価塩もしくはグループIIA陽イオンを含有する二価塩、および任意に尿素を加えたタンパク質消化酵素、またはこれらの任意の組合せを含む群から選択される。
本開示のまた別の実施形態では、EDTAは、約10mM〜約300mMの範囲、好ましくは約100mMの濃度である。
本開示のまた別の実施形態では、グアニジンチオシアネートまたは塩酸グアニジンは、約0.1M〜約7Mの範囲の濃度である。
本開示のまた別の実施形態では、尿素は、約0.01M〜約7Mの範囲の濃度である。
本開示のまた別の実施形態では、トリスは、約0.01mM〜約100mMの範囲、好ましくは約20mMの濃度である。
本開示のまた別の実施形態では、ポリオールは、約0.01%〜約30%(v/v)の範囲の濃度である。
本開示のまた別の実施形態では、洗剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、Triton X−100、Tween20およびNP−40またはこれらの任意の組合せを含む群から選択され、ここで、タンパク質消化酵素はプロテイナーゼKである。
本開示のまた別の実施形態では、結合バッファーは、ポリオールまたは非ポリオールを任意に加えた水である。
本開示のまた別の実施形態では、ポリオールは、ポリエチレングリコール、グリセロール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群から選択される水溶性ポリオール化合物を含む。
本開示のまた別の実施形態では、非ポリオールは、メタノール、エタノール、プロパノールからなるアルコール、もしくは酸、アミン、アルコール、フェノール、アミドもしくはエステルの官能基を官能基の1つとして含む任意の水溶性液;またはこれらの任意の組合せを含む。
本開示のまた別の実施形態では、洗浄および溶出は、それぞれ、洗浄バッファーおよび溶出バッファーを用いて行なわれる。
本開示のまた別の実施形態では、洗浄は、約1%〜約99%(v/v)、好ましくは約30%〜約70%(v/v)および任意に約50%(v/v)の水性アルコールを含む洗浄バッファーによる最初の洗浄と、それに次ぐ、100%の水を含む洗浄バッファーによる複数回の洗浄を含む。
本開示のまた別の実施形態では、水性アルコールは、エタノール、メタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、グリセロール、PEG、PPG、エチレングリコールおよびプロピレングリコールを含む群から選択される。
本開示のまた別の実施形態では、水は、脱イオン水、DNアーゼ不含水、RNアーゼ不含水、ミリQ水、濾過水、水道水および地下水またはこれらの任意の組合せを含む群から選択される。
本開示のまた別の実施形態では、前記洗浄バッファーは、約5〜約12の範囲のpHを有する、MgCl、CaCl、NaClおよびKClを含む群から選択される塩、またはビシン、トリシン、トリス、HEPES、CHAPS、リン酸塩、酢酸塩、MES、ピリジン、ピペラジン、ビス−トリス、PIPES、ACES、BES、TES、ホウ酸塩、TAPS、CHES、CAPS、エタノールアミンおよびピペリジンを含む群から選択されるバッファーを任意に含むことができる。
本開示のまた別の実施形態では、溶出バッファーは、約8〜約11の範囲のpHを有するバッファーまたは塩とともに、約45℃〜約99℃の範囲の温度を有する温水を含む。
本開示のまた別の実施形態では、水は、脱イオン水、DNアーゼ不含水、RNアーゼ不含水、ミリQ水、濾過水、水道水および地下水またはこれらの任意の組合せを含む群から選択される。
本開示のまた別の実施形態では、バッファーは、約5〜約12の範囲のpHを有するか、または約7〜約10のpKaを有する、ビシン、トリシン、トリス、HEPES、CHAPS、リン酸塩、酢酸塩、MES、ピリジン、ピペラジン、ビス−トリス、PIPES、ACES、BES、TES、ホウ酸塩、TAPS、CHES、CAPS、エタノールアミンおよびピペリジンまたはこれらの任意の組合せを含む群から選択される。
本開示のまた別の実施形態では、塩は、約0.01mM〜約100mMの範囲、好ましくは約5mM〜約50mMの範囲の濃度のMgCl、CaCl、NaClおよびKClまたはこれらの任意の組合せを含む群から選択される
本開示のまた別の実施形態では、マトリックスは、綿、綿の誘導体および綿のブレンドを有する合成ポリマーまたはこれらの任意の組合せを含む群から選択される。
本開示のまた別の実施形態では、綿は、天然綿、脱脂綿、臨床等級の綿、市販の綿、綿紡糸、水で洗浄した綿、酸または塩基で洗浄した綿、オートクレーブした綿、約1〜約14の範囲のpHを有するバッファーで処理した綿、塩溶液で処理した綿、有機溶媒で処理した綿、圧縮した綿および加工した綿を含む群から選択される。
本開示はさらに、試料から核酸を単離するためのキットであって、前記キットが、マトリックスおよびバッファーを含む、キットに関する。
本開示の一実施形態では、マトリックスは、綿、綿の誘導体および綿のブレンドを有する合成ポリマーまたはこれらの任意の組合せを含む群から選択される。
本開示の別の実施形態では、綿は、天然綿、脱脂綿、臨床等級の綿、市販の綿、綿紡糸、水で洗浄した綿、酸または塩基で洗浄した綿、オートクレーブした綿、約1〜約14の範囲のpHを有するバッファーで処理した綿、塩溶液で処理した綿、有機溶媒で処理した綿、圧縮した綿および加工した綿を含む群から選択される。
本開示のさらに別の実施形態では、バッファーは、上記のような溶解バッファー、結合バッファー、洗浄バッファーおよび溶出バッファーを含む群から選択される。
本開示のまた別の実施形態では、試料は生物学的または非生物学的試料を含む。
本開示のまた別の実施形態では、生物学的試料は、血液、喀痰、血清、唾液または組織抽出物を含む群から選択され、非生物学的試料は、化学合成したPNAを含む群から選択される。
本開示は、綿を用いる核酸抽出システムを構築するための方法に関する。綿は、核酸抽出において言及した全ての溶液が綿と相互作用するような形で収容される。
別の実施形態では、本開示で用いられる様々な材料の仕様を以下に示す。
綿、綿の誘導体、綿を含む材料および綿様材料:ふわふわとした綿は、綿植物の綿実の周りに丸莢として得られる。核酸抽出のために、綿は、マトリックスとして好ましい材料である。綿の形態は、天然綿、脱脂綿、臨床等級の綿、市販の綿、綿紡糸、水で洗浄した綿、酸または塩基で洗浄した綿、オートクレーブした綿、バッファー(pH1〜14)で処理した綿、塩溶液で処理した綿、有機溶媒で処理した綿、圧縮した綿、加工した綿などであることができ、これらは好適である。任意の綿布もしくは異なる形態の綿または綿のブレンドもしくは綿含有材料を含む合成ポリマーを核酸抽出に用いることができる。綿に似た繊維としてふるまう羊毛、生糸、カシミヤなどのような材料も本開示の一部と考えられる。有機農法によって、または殺虫剤および農薬を用いて産生された綿も本開示の一部と考えられる。異なる地理的環境で産生された綿は、組成、構造、色および品質がわずかに異なり、世界の全領域で生育した綿は本開示の一部であると考えられる。綿由来の、またはその製造において綿を用いる材料を含む、任意の製品も本開示の一部と考えられ、核酸抽出に用いることができる。
溶解バッファー:溶解バッファーは、綿への核酸の結合を可能にし、かつ異なる種類の試料(血液、喀痰、血清、唾液、組織抽出物など)の取扱いも可能にする高濃度のEDTAを含有する。構成塩のバリエーションが可能であり、EDTAの使用は一例として示されているのであって、本開示に対する限定とみなされるべきではない。通常、負電荷を有する任意の高濃度の分子は、溶液中の核酸と反発し、綿への結合を増強することができる。溶解バッファーは、グアニジンチオシアネートまたは塩酸グアニジン、EDTA、トリス、洗剤から構成され、任意に尿素、ポリオール、グループIA陽イオンを含有する一価塩および/もしくはグループIIA陽イオンを含有する二価塩、ならびにプロテイナーゼKまたは任意のタンパク質消化酵素を含む。グアニジンチオシアネートまたは塩酸グアニジンは、0.1〜7Mのどこかの濃度であることができる。グアニジンチオシアネートは、いくつかの用途では塩酸グアニジンまたは尿素と置き換えることができ、その濃度も、0.1〜7Mと様々であり得る。尿素はタンパク質を変性させるために用いられ、それは、グアニジン塩の機能を補完し、0〜7Mと様々であり得る。通常、文献に報告されている血液の溶解プロトコルのほとんどは、1〜20mMの範囲のEDTAを含んでいる。本発明者らの溶解バッファーは、好ましくは10〜300mMの範囲、より好ましくは約100mM範囲の、著しく異なる量のEDTAを含み得る。EDTA濃度は、RNAおよびPNAのような他の核酸に対して操作することができるが、一般に、より高濃度のEDTAは、PCRおよびRT−PCRにおけるサイクル時間(Ct)およびシグナル強度を改善するのに役立つことが分かった。著しく異なる濃度のEDTAは、(血液の場合)ヘモグロビン中に存在する鉄を捕捉するのに役立ち、任意のDNアーゼおよびRNアーゼ活性を防止し、かつ核酸が綿に結合することができる負電荷の強い雰囲気を生成する。その重要な側面は、本実施形態が、マトリックスへのDNA結合を塩基性条件下で行なう初めての例であるということである。重要なことに、溶液の結合pHは、綿へのDNA/RNA結合に大きな影響を及ぼし、したがって、結合には、約8〜10のpHが好ましいが、7.1〜12のpHを用いることもできる。塩化マグネシウムは、RNアーゼ活性を失活させるために、通常、より高濃度で用いられるため、DNA溶解プロトコルでは、それは存在しないかまたは最小量(20mM以内)で用いられる。同様に、EDTAの使用もRNアーゼを失活させ、MgClの使用は必ずしも必須ではなく、それは、任意の核酸用途について任意選択である。トリスは、溶解に選択されるバッファーであり、本発明者らは、0〜100mMを用いることができ、通常、約20mMが最適であることを見出した。本発明者らの溶解バッファーにおいて、トリスの役割は溶解を助けることであり、任意の好適なバッファーに置き換えることができることに留意すべきである。結合バッファーにおけるポリオールの使用は、切断され、変性したタンパク質の溶解度を高めることができる。結合バッファー中のポリオールのパーセンテージは、0〜30%(v/v)であることができる。用途によっては、個別の結合バッファーを添加せず、溶解後に、核酸をマトリックスと直接結合させた。これらのバッファーは全て、通常、脱イオン水中で作製し、RNA用途については、水を任意にDEPCで処理し、オートクレーブすることができる。プロテイナーゼK溶解は、血液、喀痰、唾液、精液などについては、上記の溶解バッファーの添加の前に行なうことができ、また、任意に溶解バッファーとともに行なうことができる。プロテイナーゼK処理は、記載した溶解バッファー中で効果があることが分かった。そのため、この処理は、溶解バッファー添加の前であってもよく、または核酸を含む任意の種類の液体試料については、溶解バッファーと一緒にすることができる。溶解バッファー中で用いられる洗剤は、SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)、SDS、Triton X−100、Tween20、または当技術水準で公知の任意の他のよく用いられるイオン性、非イオン性洗剤を含む群から選択され得る。
結合バッファー:溶解後に添加すると、核酸と綿との結合を開始させる結合バッファーは、組成とpHに関して非常に融通性が高いことが分かった。結合バッファーは、水を添加するだけで、溶解バッファー中の塩の濃度を希釈するのに十分であるほど融通性があり、核酸の綿への良好な結合が認められた。溶解時または結合バッファーの添加後に相互作用するように綿を入れて、所与の試料から核酸を抽出することができる。実際的には、結合バッファー組成物は、4〜12、好ましくは7〜10の範囲の任意のpHであることができる。血液、喀痰または唾液のような複雑な試料の場合、結合バッファーは、あるパーセンテージの、PEG、グリセロール、PPG、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのような、水溶性ポリオール化合物を有することができる。PEGおよびPPGの分子量は、200〜200,000の範囲であることができ、実際的には、それは、1000〜20,000である。結合溶液中のポリオール化合物のパーセンテージは、最大50%(v/v)であることができるが、実際的な用途では、それは、1〜30%(v/v)である。ポリオール化合物は、溶解した成分の完全混和性を保証することができ、プロテイナーゼK溶解が完全である場合、ポリオールのパーセンテージを1%にまで減少させることができる。当技術水準で公知のバッファーとしては、結合バッファーを調製するために使用可能なpH5〜12の範囲、好ましくは7〜10の範囲のビシン、トリシン、トリス、HEPES、CHAPS、リン酸塩、酢酸塩、MES、ピリジン、ピペラジン、ビス−トリス、PIPES、ACES、BES、TES、ホウ酸塩、TAPS、CHES、CAPS、エタノールアミン、ピペリジンなどが挙げられ、バッファーの存在は、必須ではなく、それが使用可能な、試料タイプ、試料容量、温度、溶解バッファー組成に依存する。緩衝塩を用いる場合、その濃度は、1〜200mM、好ましくは1〜100mM、最も好ましくは5〜50mMと様々であり得る。上記の濃度は、結合溶液の濃度であり、溶解バッファーに添加した後、濃度は、溶解バッファーの組成によって変化することになる。また、上で定義したpHは、それを作製したときの結合バッファーのpHについてのものであり、溶解バッファーに添加すると、混合溶液(溶解バッファー+結合バッファー)のpHは変化し得る。メタノール、エタノール、およびプロパノールのようなアルコールはポリオールではないが、それらを結合バッファーの調製に用いることもできる。一般に、酸、アミン、アルコール、フェノール、アミド、エステルなどの官能基を官能基の1つとして有する任意の水溶性液を用いることができる。
洗浄バッファー:洗浄バッファーは、非核酸成分を綿から選択的に洗い落とす溶液である。臨床試料が血液の場合、結合後、綿は褐色になる。色を取り除くためには、あるパーセンテージのエタノールを含む洗浄バッファー(洗浄バッファー1と呼ぶ)が役立つことが分かった。具体的には、最初の洗浄を、1〜99%(v/v)、好ましくは30〜70%(v/v)、より好ましくは50%(v/v)エタノールを含むバッファーまたは水を用いて行なった。必要な場合、非核酸成分を除去するために、複数回の水性エタノール洗浄を行なうことができるが、それは、試料に左右され得る。メタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、グリセロール、PEG、PPG、エチレングリコール、プロピレングリコールまたは任意の他の水溶性アルコールを洗浄溶液中のエタノールに置き換えることができる。一価または二価の陽イオンがその組成として洗浄バッファー1とともに存在する洗浄バッファー2を用いることができる。洗浄バッファー1と2が同じ組成を有し、水、アルコールおよび一価または二価の陽イオンから構成され得ることも可能である。綿を洗浄バッファー1および2で洗浄する回数は、0〜10回、理想的には1〜3回の範囲であることができる。その後の洗浄は、通常、脱イオン水によるものであり、洗浄回数は、1〜10回、好ましくは2から5回、より好ましくは3〜5回であることができる。洗浄工程で用いる脱イオン水は、DNアーゼ、RNアーゼ不含水、またはミリQ水もしくは濾過水もしくは水道水もしくは地下水と置き換えることができる。本発明者らは、水性アルコールによる最初の洗浄で非核酸成分のほとんどが除去され、その後、複数回の水(100%水)洗浄で残存アルコールが除去される傾向があることを認めた。水洗浄によって、得られる核酸がPCR可能で、PCRの阻害因子を全くまたは最小限しか含まないことが保証される。洗浄バッファーは、pH5〜12の範囲の、MgCl、CaCl、NaCl、KClのような塩、またはビシン、トリシン、トリス、HEPES、CHAPS、リン酸塩、酢酸塩、MES、ピリジン、ピペラジン、ビス−トリス、PIPES、ACES、BES、TES、ホウ酸塩、TAPS、CHES、CAPS、エタノールアミン、ピペリジンなどのようなバッファーを任意に含むことができる。バッファーまたは塩、それらの組合せは、1〜1000mM、好ましくは20〜200mMの範囲、より好ましくは約100mMの濃度であることができる。
溶出バッファー:任意の温かい(45〜99℃)水性バッファー溶液は、綿から核酸を溶出させることができる。溶出pHは、重要であることが分かったが、8〜11の範囲にあることが好ましく、核酸の完全な回収のために、溶出は、45〜99℃の温度で行なわれるべきである。溶出工程でのバッファー作製に用いられる脱イオン水は、DNアーゼ、RNアーゼ不含水、またはミリQ水もしくは濾過水もしくは水道水もしくは地下水と置き換えることができる。当技術水準で公知のバッファーとしては、溶出に使用可能なpH5〜12の範囲のビシン、トリシン、トリス、HEPES、CHAPS、リン酸塩、酢酸塩、MES、ピリジン、ピペラジン、ビス−トリス、PIPES、ACES、BES、TES、ホウ酸塩、TAPS、CHES、CAPS、エタノールアミン、ピペリジンなどが挙げられるが、最も好ましいバッファーは、7〜10の範囲のpKaを有するバッファーである。結合した核酸の溶出に綿を用いるときはいつでも、溶出バッファーは温かく、実際を考慮して、45〜99℃の範囲であるべきである。これは、文献に報告されているほとんどの方法と全く対照的である。それらの方法では、脱イオン水を用いて温かい条件で溶出を行なうが、綿に結合した核酸を温水で完全には溶出させることができず、バッファーまたは塩の存在が極めて重要である。塩は、0〜100mM、好ましくは5〜50mMの範囲の濃度のMgCl、CaCl、NaCl、KClなどであることができる。バッファーは、バッファー、すなわち、ビシン、トリシン、トリス、HEPES、CHAPS、リン酸塩、酢酸塩、MES、ピリジン、ピペラジン、ビス−トリス、PIPES、ACES、BES、TES、ホウ酸塩、TAPS、CHES、CAPS、エタノールアミン、ピペリジンの群から選択することができる。
核酸の回収:現在のシステムを用いると、核酸の回収は、使用される溶解バッファー、結合バッファー、洗浄バッファーおよび溶出バッファー、ならびにこれらの組合せに左右される。組合せ次第では、核酸の回収は、任意のシリカベースの核酸抽出システムに匹敵し得る。低力価の試料の場合、本発明者らの綿ベースの核酸抽出アプローチの効率がシリカよりも良い場合があることも観察された。
綿の分量:綿の分量は、臨床試料の容量によって決まり、1〜300μLの範囲の試料の場合、5〜30mgの綿で十分であることが分かった。ミリリットルの範囲の試料の容量の場合、50mg以上の綿が不可欠であり得る。任意の臨床試料、環境試料または野外試料から核酸を抽出するには、全体で1ミリグラムから10グラムの綿で十分である。
各アッセイの価格:このプロトコルで用いられる綿は、任意の薬局または小売店で市販されている(オートクレーブされているかまたは浄化されている可能性がある)脱脂綿であるので、各核酸抽出の価格は最低限であり、これまで文献で報告されているうち最も安価なものの1つである。さらに、核酸溶出物中のPCR阻害因子の偶発的存在の排除、POC使用に対する単純さおよび適応性、自動化のしやすさなどを考慮することで、このアプローチが優れたものとなり、抽出当たりのコストは、おまけであろう。
成分の安全性および溶液の廃棄:綿ベースの核酸抽出システムでは、水性源のバッファーのほとんどが利用される。廃棄物は、これらのバッファーとともに、当業者が安全かつ効果的に処分することができる。綿は、カートリッジに充填することができ、溶解溶液、結合溶液、洗浄溶液は全て、医療従事者または分析者が廃棄物を処分する必要のないPOC使用向けのカートリッジに捕捉され、このカートリッジは内蔵型である。
抽出された核酸の使用:本実施形態に記載の綿プロトコルを用いて抽出された核酸は、PCRまたはRT−PCR可能な状態であることができる。記載された綿プロトコルの他の用途は、保管、保存、さらなる生化学的および分子生物学的使用などのための、臨床試料からの核酸の回収に関するものである。抽出された核酸は、時には当業者が発見する任意の生化学的または分子生物学的用途に用いることができる。
核酸抽出に好適な形態の綿の使用:本実施形態は、遠心分離機または他の回転装置のような最小限の設備条件で綿を用いて、核酸を「PCR可能な形態」で抽出することができる。綿は、試料の分量、試料の性質および試料の起源に応じて、核酸抽出に好適な任意の形態で充填することができる。核酸は、溶液またはエマルジョン中に得られたものであることが好ましく、これは、記載された溶解システム、結合システム、洗浄システムおよび溶出システムに従って処理される。したがって、綿の充填は、核酸抽出の重要な部分であり、綿が核酸を含む溶液と接触するようになり得る性質はいずれも、本開示の一部とみなされる。図1〜図3は、綿を充填することができるいくつかの方法を示しているが、それは、決して限定とみなされるべきではない。簡単に言うと、綿は、核酸を含む溶液が綿と接触するようになるか、または綿が液体と接触するように充填され、本開示の一部とみなされる。
別の実施形態では、綿は、プラスチック製の改良型1mL ピペットチップ、プラスチック製の改良型2mL ピペットチップ、15mL ファルコンチューブ、50mL ファルコンチューブ、1.5mL エッペンドルフチューブ、2mL エッペンドルフチューブ、5mL ホウケイ酸ガラス試験管、4mL スクリューキャップ式プラスチックバイアル、3mL プラスチック製パスツールピペット、ガラス製パスツールピペット、ゴム球付きのガラス製パスツールピペット、ゴム球付きのプラスチック製パスツールピペット、ゴムとプラスチックの成型物が球として付いたガラスピペット、プラスチックキャップ付きの2mL ガラスバイアル、使い捨てのオートクレーブ済み10mL プラスチック注射器、5mL 注射器に取り付けられたプラスチック成型物、50mL 注射器に取り付けられた使い捨てユニットなどの中に充填することができる。綿は綿棒として作製することもでき、この棒は、手製または機械製であることができる。ビスコースと、任意の綿混合ポリマー(1〜100%)、または化学的もしくは物理的に修飾された綿(1〜100%)とでできた、図3[e]に示す綿棒は、本開示の一部とみなされる。
臨床試料を保存するための綿の使用:綿を試料に直接曝露させて、吸収剤とすることができ、綿は、試料を安全な形態で安定化し、保存する。安全な形態は、添加された試料の核酸内容物がそれほど分解されない手段と定義される。結合は、可逆的な様式であることができ、その場合、核酸は、本実施形態に記載の核酸抽出プロトコルを用いて抽出することができる。綿には、場合により、試料および試料成分の安定性を向上させる安定化剤を埋め込むことができる。場合により、綿には、酵素もしくは化学物質、または本プロトコルで報告された溶解バッファー、もしくはプロテイナーゼKを含む溶解バッファー、もしくは安定化するバッファー塩を加えたプロテイナーゼKを埋め込むことができる。綿は、EDTA処理、アジ化ナトリウム処理、塩基処理、酸処理、溶解バッファー処理、蜂蜜処理、任意の抗菌剤処理、任意の抗微生物剤処理、任意の抗ウイルス化合物処理するか、またはEDTAとアジ化ナトリウム、抗菌剤、抗微生物剤、抗ウイルス剤、抗凝固剤、当技術水準で公知の臨床試料の安定化剤、蜂蜜、もしくはこれらの任意の組合せで処理することができる。保存するために綿に添加される試料の容量は、任意の容量であることができるが、実際的には、それは、1μL〜20mLであることができ、使用される綿の分量は、任意の量であることができ、実際的には、それは、1mg〜10グラムであることができる。試料を回収するとき、それは、溶解バッファーが浸透した綿の上で行なうことができ、これも本開示の一部とみなされる。
核酸抽出用の綿充填システムの使用方法:綿を、本実施形態に記載の報告された核酸抽出プロトコルを用いて、図1〜図3に例示する装置に充填した。綿を、本実施形態に記載の溶解システム、結合システム、洗浄システムおよび溶出システムと相互作用させる機構は、加熱、振盪、ボルテックス処理、撹拌、持続的な運動、ピペッティング、または固体と液体を相互作用させる任意の他の手段であることができる。本質的には、核酸を含む液体が、綿繊維と接触するようになる。
別の実施形態では、本方法は、文献に報告されている最も簡単でかつ最も融通性が高い核酸抽出プロトコルの1つである。ほとんど全ての文献法は、内容物をスピンダウンするための遠心分離機、もしくは磁気粒子をそのままの位置に保持するための磁石、または両方を必要とし、本実施形態で報告された方法は、遠心分離機または磁石の必要性を完全に排除する。既存の核酸プロトコルは、試料の容量に限度があるか、またはより大きい容量の試料に対して複数回の処理を必要とする。このプロトコルは、単一の使い捨て抽出システムを用いてほぼ全ての試料分量(実際上は、1μL〜20mL)をほぼ同じ時間で処理することができる。本方法は、さらなる特徴付け、およびPCR、シークエンシングまたはブロッティングなどの下流の処理にすぐに用いることができる核酸を生じさせる。このシステムは、その単純さのために、文献に報告されたものとしては初めて、ポイント・オブ・ケア(POC)または既定の実験室検査に等しく適したものになっている。
本実施形態に記載の綿プロトコルは、遠心分離機の使用の排除、ユーザー間の最小限のばらつき、シリカプロトコルに匹敵する効率、任意の既存の核酸プロトコルと比較した使い易さ、任意の試料分量を処理する能力、核酸の適切な回収、低力価試料を採取する能力、自動化のし易さ、既定の病院環境とポイント・オブ・ケア設定の両方への適合性、ならびに核酸の回収および品質における高い一貫性のような顕著な特色を有する。
別の実施形態では、本開示に記載された方法は、綿のような繊維性材料を用いて、PCRまたは逆転写酵素−PCR(RT−PCR)またはシークエンシングまたはブロッティングが可能なフォーマットで生物学的起源のほとんど全ての臨床試料または分析試料から核酸を抽出する。この手順は、溶解、綿への核酸の結合、水溶液による核酸が結合した綿の洗浄、およびKClのような塩を含むバッファー中での核酸の溶出を含む。シリカまたは非シリカプロトコルにおける典型的な溶解バッファーは、血液中の鉄に結合する、EDTA(キレート剤)のような、いくつかの四塩基性または二塩基性イオンを含む。報告された本プロトコルでは、全ての核酸が選択的に綿に結合する環境を作り出すために、高濃度のEDTA(10〜300mM)を添加する。通常、マトリックス(シリカまたは非シリカ)への結合を可能にするために、溶解バッファーのpHを6に合わせる。その場合、タンパク質および他の成分の大半は、中性または正の電荷を有するのに対し、核酸は依然として負の電荷を有し、マトリックスと相互作用する。現在のシステムでは、結合pHは、塩基性(pH8〜11)であるべきであり、負電荷を有する過剰なEDTA(10〜300mM)それ自体がバッファーとして働き、pHを約8に至らせる。本発明者らのプロトコルは、核酸を溶解させ、塩基性pHでマトリックスに結合させることができる初めてのプロトコルである。結合バッファーは、水、3〜11の範囲のpHを有する任意の水性バッファー、またはポリエチレングリコール(PEG、1〜30%)もしくはグリセロール(1〜30%)もしくはポリプロピレングリコール(PPG、1〜30%)もしくはエチレングリコール(1〜50%)もしくはプロピレングリコール(1〜50%)もしくは任意の水溶性アルコールもしくは上記のものの任意の組合せを含有する水であることができる。結合バッファーは、溶解バッファー塩の希釈を保証し、EDTAが豊富な雰囲気中での核酸の結合を増強し、かつ溶解した粒子を可溶化することができる。報告したプロトコルは、様々なpHを有する広範なバッファーに耐えて結合することができ、結合バッファーのpHまたは組成にとても融通性があることも文献では初めてである。長い試料処理時間、試料容量に対する限度および核酸の定量の実現不可能性は、FTAカードに付随する欠点であるが、これは、本実施形態で報告した、綿を用いる核酸抽出プロトコルでは存在しない。最後に、報告されている文献プロトコルは全て、室温または場合により、高温で水性バッファーまたは水中で溶出を行ない、本発明者らの核酸洗浄は室温で水を用いて、溶出は高温(50〜99℃)で行なう。本実施形態で定義したプロトコルおよびマトリックスを用いて、高温脱イオン水によって、結合した核酸の全てが溶出されるわけではなく、バッファーもしくは塩またはそれらの組合せの存在が絶対に必要である。このことも、結合した核酸を高温脱イオン水中でマトリックスから溶出させることができる文献の核酸抽出プロトコルとは全く対照的である(シリカプロトコルと非シリカプロトコルは両方とも、核酸の高温水溶出を可能にする)。溶出バッファーはpH8〜10の間のどこかであることができるが、これは、溶出pHに融通性があり、KClのような、相当な濃度の塩が、結合した核酸の綿からの効率的な溶出に好ましいことを示している。
別の実施形態では、下記の方法において、綿および他の綿ベースの繊維性材料を、綿からの核酸溶出に特有の、特別な溶解、結合、洗浄および溶出条件下での核酸の定量的抽出に用いた。本開示は、一態様では、綿を用いる、任意の環境源、臨床源、細菌源、真菌源、および動物源からの迅速な核酸単離システムを提供する。試料は、細胞ライセート、体液、植物、組織、および細菌細胞と細胞のライセートであることができる。綿およびビスコースは、それぞれ、所与の条件下で核酸に結合することが分かった天然におよび人工的に得られる繊維性材料である。綿上での核酸結合および核酸の選択的保持ならびに特定の溶出条件下での核酸の放出の過程をDNAおよびRNAにより例示する。
別の実施形態では、血液のような臨床試料からの典型的なDNA抽出において、血液を、グアニジンチオシアネート、EDTA、トリスのようなバッファー、triton X−100のような洗剤から構成され、任意に尿素、ポリオール、グループIA陽イオンを含有する一価塩および/またはグループIIA陽イオンを含有する二価塩、ならびにプロテイナーゼKのようなタンパク質切断酵素を含む溶解バッファーで溶解させた。グアニジンチオシアネートの濃度は、0.1〜7Mのどこかであることができる。グアニジンチオシアネートは、いくつかの用途では、塩酸グアニジンと置き換えることができ、その濃度も、1〜6Mと様々に異なり得る。尿素はタンパク質を変性させるために用いられ、それは、グアニジン塩の機能を補完し、0〜7Mと様々に異なり得る。通常、文献に報告されている血液の溶解プロトコルのほとんどは、20mMの範囲のEDTAを含む。本発明者らの溶解バッファーは、綿への効率的な核酸結合のために、10〜300mMの範囲、好ましくは約100mM範囲のかなり大量のEDTAに耐えることができる。EDTA濃度は、RNAおよびPNAのような他の核酸に対して操作することができるが、一般に、より高濃度のEDTAは、PCRおよびRT−PCRにおけるサイクル時間(Ct)およびシグナル強度を改善するのに役立つことが分かった。かなり高濃度のEDTAは、(血液の場合)ヘモグロビン中に存在する鉄を捕捉するのに役立ち、任意のDNアーゼ活性を防止し、かつ核酸が綿に結合することができる負電荷の強い雰囲気を生成する。その重要な側面は、バッファー中の顕著により高濃度のEDTAの添加がバッファーのpHを塩基性にすることであり、本発明者らの知る限り、本実施形態は、マトリックスへの核酸結合を塩基性条件下で行なう初めての例である。重要なことに、極めて酸性のpHでは、EDTAが溶解バッファーから沈殿する可能性があるので、溶液の結合pHは、綿への核酸結合を可能にするために塩基性でなければならず、したがって、結合には、8を上回るpHが好ましい。塩化マグネシウムは、RNアーゼ活性を失活させるために、通常、より高濃度で用いられるため、核酸溶解プロトコルでは、それを用いることができる。トリスは、溶解に選択されるバッファーであり、本発明者らは、0〜100mMを用いることができ、通常、約20mMが最適であることを見出した。溶解または結合バッファーにおけるポリオールの使用は、プロテイナーゼKの活性を増大させ、かつ切断されたタンパク質の溶解度を高めることができる。溶解バッファー中のポリオールのパーセンテージは、0〜30%(v/v)であることができる。これらのバッファーは全て、脱イオン水中で作製し、RNA用途については、水をDEPCで処理し、オートクレーブすることができた。プロテイナーゼK溶解は、血液、喀痰、唾液などについては、上記の溶解バッファーの添加の前に行なうことができ、また、尿、汗などについては、溶解バッファーとともに行なうことができる。プロテイナーゼK処理は、記載した溶解バッファー中で効果があることが分かった。そのため、この処理は、溶解バッファー添加の前であることができるし、または核酸を含む任意の種類の臨床試料については、溶解バッファーと一緒にすることができる。
別の実施形態では、溶解後に添加すると、核酸の綿との結合を開始させる結合バッファーは、組成に関して非常に融通性があることが分かった。結合バッファーは、水を添加するだけで、溶解バッファー中の塩の濃度を希釈するのに十分であるほど融通性があり、核酸の綿への良好な結合が認められた。溶解時または結合バッファーの添加後に相互作用するように綿を入れることができる。結合バッファー組成物は、5〜12、好ましくは7〜10の範囲の任意のpHであることができる。血液、喀痰または唾液のような複雑な試料の場合、結合バッファーは、あるパーセンテージの、PEG、グリセロール、PPG、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのような、ポリオール化合物を有することができる。エタノールまたは水性エタノールのような(シリカベースの核酸システムに)従来用いられている結合溶液は、綿に対する核酸の結合親和性を低下させることが分かった。すなわち、結合工程におけるエタノールの存在は、綿への核酸結合の効率を低下させることが分かった。
別の実施形態では、洗浄バッファーは、非核酸成分を綿から選択的に洗い落とす溶液である。臨床試料が血液の場合、結合後、綿は褐色になり、色を取り除くためには、あるパーセンテージのエタノールを含む洗浄バッファー(洗浄バッファー1と呼ぶ)が役立つことが分かった。具体的には、最初の洗浄を、10〜90%、好ましくは30〜70%、より好ましくは50%エタノールを含むバッファーまたは水を用いて行なった。メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、PEG、PPG、エチレングリコール、プロピレングリコールまたは任意の他の水溶性アルコールは、洗浄溶液中のエタノールに取って代わることができる。一価または二価の陽イオンがその組成として洗浄バッファー1とともに存在する洗浄バッファー2を用いることができる。洗浄バッファー1と2が同じ組成を有し、水、アルコールおよび一価または二価の陽イオンから構成され得ることも可能である。綿を洗浄バッファーで洗浄する回数は、0〜10回、理想的には1〜3回の範囲であることができる。その後の洗浄は、通常、脱イオン水によるものであり、洗浄回数は、1〜10回、好ましくは2から5回、より好ましくは3〜5回であることができる。洗浄工程で用いる脱イオン水は、DNアーゼ、RNアーゼ不含水、またはミリQ水もしくは濾過水もしくは水道水もしくは地下水に置き換えることができる。
別の実施形態では、綿からの核酸の溶出は、任意の水性バッファーを用いて行なうことができる。バッファー濃度は、溶出バッファー中1〜200mM、好ましくは5〜50mM、より好ましくは30〜70mMである必要がある。当技術水準で公知のバッファーとしては、pH5〜12の範囲、好ましくは7〜10の範囲、より好ましくは8〜10の範囲のビシン、トリシン、トリス、HEPES、CHAPS、リン酸塩、酢酸塩、MES、ピリジン、ピペラジン、ビス−トリス、PIPES、ACES、BES、TES、ホウ酸塩、TAPS、エタノールアミン、CHES、CAPS、エタノールアミン、ピペリジンなどが挙げられるが、これらは高温条件下での綿からの核酸の溶出に有効である。綿からの核酸溶出は、50〜100℃、好ましくは70〜95℃、より好ましくは約85℃の高温で行なわれる必要がある。
別の実施形態では、精製した核酸は、10〜100%の純度であることができ、通常、PCR可能である。核酸の純度は、溶解バッファー、結合バッファー、洗浄バッファーおよび溶出バッファーと、精製用のマトリックス(綿または綿誘導体または綿混合材料)の最適な組合せによって決まる。本発明者らは、FTAカードもしくはセルロース結合粒子、またはセルロース濾紙は、これらのバッファー組合せの下では、効率的でないことを認め、綿が、核酸との相互作用に関して、他の形態のセルロースとは異なることを示した。関連した方法では、本開示は、以下の一般的なプロトコルを用いて、綿または綿誘導体または綿混合材料を固体マトリックスとして用いて核酸を含む試料から核酸を単離するための手段を提供する。
a)核酸を含む試料を溶解バッファーに添加した。溶解バッファーは、グアニジンチオシアネート、EDTA、トリス、洗剤から構成され、任意に尿素、ポリオール、グループIA陽イオンを含有する一価塩および/またはグループIIA陽イオンを含有する二価塩、ならびにプロテイナーゼKを含む。核酸試料と溶解バッファーを混合し、50〜95℃で1〜20分間加熱した。
b)結合バッファーを上記の溶液に添加する。結合バッファーは、水、pH4〜11のバッファー、またはポリオールを含む溶液であることができる。結合バッファーの容量は、溶解バッファーの容量の0.1〜10倍であることができる。
c)上記の溶液を、好ましくは、室温で数秒間から数分間、綿と相互作用させた。
d)その後、綿を、水性アルコールまたは水のみから構成される洗浄バッファーで特に洗浄した(最初の洗浄)。
e)その後、残存アルコールが綿から除去されるまで、上記の綿を水またはバッファーで洗浄した。
f)核酸を、KClのような塩(グループIAもしくはグループIIA陽イオンを含む塩)から構成されるバッファーおよび/またはビシン様バッファーを用いて溶出させた。溶出された核酸は、通常、PCRまたはRT−PCRに用いることが可能である。
本開示で用いられる方法と従来技術で用いられる方法の比較説明を提供する以下の表を援用して、本開示をさらに説明する。この表は、核酸の単離に対して用いられる方法の特徴付けに用いられる様々な方法に関する重要な態様のいくつかを比較するものである。
本開示の技術を、以下の実施例を援用して、さらに詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例を、本開示の範囲を限定するものとみなすべきではない。
一般的な方法論:核酸含有溶液を、好ましくは室温で、綿と接触させ、非核酸成分を、水性アルコールおよび水から構成される一連の洗浄液を用いて綿から洗い落とした。綿から得た核酸を、塩から構成される水性バッファーを用いて高温で溶出させた。溶出した核酸は、さらなる処理、またはPCRが可能である。以下の実施例は、研究室で一般に用いられる1mLピペットチップに充填した綿について示される。しかし、当業者であれば、綿を、液体がそれに接触する機会がある任意の形態で充填することができることを認識し得る。本質的に、入口と出口とを備え、その間に綿を充填することができるものはどれも、本開示の一部であるとみなされる。
実施例1:血液からのDNA抽出
a)50μLの血液を75μLの溶解バッファー(30μLの10mg/mLプロテイナーゼK、5.6Mグアニジンチオシアネート、100mM EDTA、20mMトリス、0.01%triton X−100)に添加した。得られた溶液を60℃に加熱し、その温度で3分間放置しておいた。その後、この溶液を85℃で2分間加熱した。
b)150μLの結合バッファー(0.1g/mLのPEG 6000を含む水)を上記の溶液に添加した。
c)8mgの綿を充填したプラスチック製の1mLスポイト(図2[a]に示すような、綿スポイト)を上記の溶液と相互作用させた。
d)その後、綿スポイトを各2mLの洗浄バッファー1(50%エタノール)および洗浄バッファー2(100mM MgClを含む50% エタノール)で洗浄した。
e)綿チップを水(3×1mL)で洗浄した。
f)核酸を100μLの溶出バッファー(10mM ビシン、10mM KCl、pH9.8)にて95℃で溶出させた。
実施例2:血液からのDNA抽出
a)100μLの血液を150μLの溶解バッファー(40μLの10mg/mLプロテイナーゼK、5.6Mグアニジンチオシアネート、100mM EDTA、20mM トリス、0.01%triton X−100)に添加した。得られた溶液を60℃に加熱し、その温度で3分間放置しておいた。その後、この溶液を85℃で2分間加熱した。
b)300μLの結合バッファー(0.1g/mLのPEG 6000を含む水)を上記の溶液に添加した。
c)10mgの綿を充填した成形した1mLピペットチップ(図3[c]に示すような、綿チップ)を上記の溶液と相互作用させた。
d)その後、綿チップを1mLの洗浄バッファー1(50%エタノール)および2mLの洗浄バッファー2(100mM MgClを含む50%エタノール)で洗浄した。
e)綿チップを水(3×1mL)で洗浄した。
f)核酸を200μLの溶出バッファー(10mM ビシン、10mM KCl、pH9.8)にて95℃で溶出させた。
実施例3:血液からのDNA抽出
a)100μLのマラリア(熱帯熱マラリア原虫(p.falciparum))寄生虫含有血液を150μLの溶解バッファー(40μLの10mg/mLプロテイナーゼK、5.6Mグアニジンチオシアネート、100mM EDTA、20mMトリス、0.01%triton X−100)に添加した。得られた溶液を60℃に加熱し、その温度で3分間放置しておいた。その後、この溶液を85℃で2分間加熱した。
b)300μLの結合バッファー(0.1g/mLのPEG 6000を含む水)を上記の溶液に添加した。
c)10mgの綿を充填した成形した1mLピペットチップ(図3[c]に示すような、綿チップ)を上記の溶液と相互作用させた。
d)その後、綿チップを1mLの洗浄バッファー1(50%エタノール)で洗浄した。
e)綿チップを2mLの洗浄バッファー2(100mM MgClを含む50%エタノール)で洗浄した。
f)綿チップを水(3×1mL)で洗浄した。
g)核酸を200μLの溶出バッファー(10mM ビシン、10mM KCl、pH9.8)にて95℃で溶出させた。
実施例4:血液からのRNA抽出
a)50μLのチクングンヤ陽性血液を75μLの溶解バッファー(30μLの10mg/mLプロテイナーゼK、5.6Mグアニジンチオシアネート、100mM EDTA、20mMトリス、0.01%triton X−100)に添加した。得られた溶液を60℃に加熱し、その温度で3分間放置しておいた。その後、この溶液を85℃で2分間加熱した。
b)150μLの結合バッファー(0.1g/mLのPEG 6000を含む水)を上記の溶液に添加した。
c)10mgの綿を充填した1mLピペットチップを上記の溶液と相互作用させた。
d)その後、綿チップを1mLの洗浄バッファー1(50mM MgClを含む50%エタノール)で特に洗浄した。
e)綿チップを水(3×1mL)で洗浄した。
f)核酸を200μLの溶出バッファー(10mM ビシン、10mM KCl、pH9.8)にて95℃で溶出させた。
実施例5:唾液からのDNA抽出
a)50μLの唾液を100μLの溶解バッファー(10μLの10mg/mLプロテイナーゼK、5.6Mグアニジンチオシアネート、200mM EDTA、20mMトリス、0.01%triton X−100)に添加した。得られた溶液を60℃に加熱し、その温度で3分間放置しておいた。その後、この溶液を85℃で2分間加熱した。
b)250μLの結合バッファー(水中の10%グリセロール)を上記の溶液に添加した。
c)綿を充填した成形した1mLピペットチップ(図3[c]に示すような、綿チップ)を上記の溶液と相互作用させた。
d)その後、綿チップを3mLの洗浄バッファー1(200mM MgClを含む50%エタノール)で特に洗浄した。
e)各洗浄時に液体を3回ピペッティングすることにより、綿チップを水(3×1mL)で洗浄した。
f)核酸を250μLの溶出バッファー(10mM ビシン、50mM KCl、pH9.8)にて95℃で溶出させた。
実施例6:血液からのRNA抽出
a)100μLのチクングンヤ陽性血液を150μLの溶解バッファー(40μLの10mg/mLプロテイナーゼK、5.6Mグアニジンチオシアネート、100mM EDTA、20mMトリス、0.01%triton X−100)に添加した。得られた溶液を60℃に加熱し、その温度で3分間放置しておいた。その後、この溶液を85℃で2分間加熱した。
b)300μLの結合バッファー(0.1g/mLのPEG 6000を含む水)を上記の溶液に添加した。
c)10mgの綿を充填した成形した1mLピペットチップ(図3[c]に示すような、綿チップ)を上記の溶液と相互作用させた。
d)その後、綿チップを1mLの洗浄バッファー1(50%エタノール)および2mLの洗浄バッファー2(50mM MgClを含む50%エタノール)で特に洗浄した。
e)綿チップを水(2×1mL)で洗浄した。
f)核酸を100μLの溶出バッファー(10mM ビシン、10mM KCl、pH9.8)にて95℃で溶出させた。
実施例7:血液からのRNA抽出
a)50μLのチクングンヤ陽性血液を75μLの溶解バッファー(40μLの10mg/mLプロテイナーゼK、5.6Mグアニジンチオシアネート、80mM EDTA、20mMトリス、0.01%triton X−100)に添加した。得られた溶液を55℃に加熱し、その温度で3分間放置しておいた。その後、この溶液を70℃で2分間加熱した。
b)150μLの結合バッファー(0.1g/mLのPEG 8000を含む水)を上記の溶液に添加した。
c)10mgの綿を充填した2.5mLの注射器(図1[a]に示すような、綿注射器)を上記の溶液と相互作用させた。
d)その後、綿チップを1mLの洗浄バッファー1(50%エタノール)および2mLの洗浄バッファー2(50mM MgClを含む50%エタノール)で特に洗浄した。
e)綿注射器を水(3×1mL)で洗浄した。
f)核酸を100μLの溶出バッファー(10mM ビシン、10mM KCl、pH9.8)にて95℃で溶出させた。
実施例8:喀痰からのDNA抽出
a)100μLの喀痰を150μLの溶解バッファー(40μLの10mg/mLプロテイナーゼK、5.6Mグアニジンチオシアネート、100mM EDTA、20mMトリス、0.01%triton X−100)に添加した。得られた溶液を60℃に加熱し、その温度で5分間放置しておいた。その後、この溶液を75℃で2分間加熱した。
b)300μLの結合バッファー(0.1g/mLのPEG 6000を含む水)を上記の溶液に添加した。
c)10mgの綿を充填した5mLベローズピペット(図2[b]に示すような、綿ベローズ)を上記の溶液と相互作用させた。
d)その後、綿チップを1mLの洗浄バッファー1(50%エタノール)および洗浄バッファー2(50mM MgClを含む50%エタノール)で特に洗浄した。
e)綿ベローズを水(3×1mL)で洗浄した。
f)核酸を100μLの溶出バッファー(10mM トリシン、10mM KCl、pH9.8)にて95℃で溶出させた。
実施例9:血清からのDNA抽出
a)50μLの血清を75μLの溶解バッファー(60μLの10mg/mLプロテイナーゼK、5.6Mグアニジンチオシアネート、100mM EDTA、20mMトリス、0.01%triton X−100)に添加した。得られた溶液を60℃に加熱し、その温度で3分間放置しておいた。その後、この溶液を85℃で2分間加熱した。
b)150μLの結合バッファー(0.1g/mLのPEG 6000を含む水)を上記の溶液に添加した。
c)10mgの綿を充填した成形した1mLピペットチップ(図3[c]に示すような、綿チップ)を綿と相互作用させた。
d)その後、綿チップを1mLの洗浄バッファー1(50%エタノール)および2mLの洗浄バッファー2(50mM MgClを含む50%エタノール)で特に洗浄した。
e)綿チップを水(3×1mL)で洗浄した。
f)核酸を200μLの溶出バッファー(10mM ビシン、10mM KCl、pH9.8)にて95℃で溶出させた。
実施例10:血清からのRNA抽出
a)100μLのチクングンヤ陽性血清を150μLの溶解バッファー(40μLの10mg/mLプロテイナーゼK、5.6Mグアニジンチオシアネート、100mM EDTA、20mMトリス、0.01%triton X−100)に添加した。得られた溶液を60℃に加熱し、その温度で3分間放置しておいた。その後、この溶液を85℃で2分間加熱した。
b)300μLの結合バッファー(0.1g/mLのPEG 6000を含む水)を上記の溶液に添加した。
c)10mgの綿を充填した成形した1mLピペットチップ(図3[c]に示すような、綿チップ)を綿と相互作用させた。
d)その後、綿チップを3mLの洗浄バッファー1(50mM MgClを含む50%エタノール)で特に洗浄した。
e)綿チップを水(3×1mL)で洗浄した。
f)核酸を200μLの溶出バッファー(10mM ビシン、10mM KCl、pH9.8)にて95℃で溶出させた。
実施例11:喀痰からのDNA抽出
a)50μLの喀痰を150μLの溶解バッファー(40μLの10mg/mLプロテイナーゼK、5.6Mグアニジンチオシアネート、100mM EDTA、20mMトリス、0.01%triton X−100、pH9.5)に添加した。得られた溶液を60℃に加熱し、その温度で3分間放置しておいた。その後、この溶液を85℃で6分間加熱した。
b)150μLの結合バッファー(0.1g/mLのPEG 6000を含む水)を上記の溶液に添加した。
c)10mgの綿を上記の溶液と相互作用させた。
d)その後、綿を3mLの洗浄バッファー1(50mM MgClを含む50%エタノール)で特に洗浄した。
e)綿を水(3×1mL)で洗浄した。
f)核酸を100μLの溶出バッファー(10mM ビシン、10mM KCl、pH9.8)にて95℃で溶出させた。
実施例12:喀痰からのDNA抽出
a)50μLの喀痰を75μLの溶解バッファー(40μLの10mg/mLプロテイナーゼK、5.6Mグアニジンチオシアネート、100mM EDTA、20mMトリス、0.01%triton X−100、pH9.5)に添加した。得られた溶液を60℃に加熱し、その温度で5分間放置しておいた。
b)150μLの結合バッファー(0.1g/mLのPEG 6000を含む水)を上記の溶液に添加した。
c)10mgの綿を上記の溶液と相互作用させた。
d)その後、綿を3mLの洗浄バッファー1(100mM MgClを含む50%エタノール)で特に洗浄した。
e)綿を水(3×1mL)で洗浄した。
f)核酸を100μLの溶出バッファー(10mM ビシン、10mM KCl、pH9.8)にて95℃で溶出させた。
実施例13:組織からのRNA抽出
a)50μLの狂犬病陽性組織を175μLの溶解バッファー(40μLの10mg/mLプロテイナーゼK、5.6Mグアニジンチオシアネート、100mM EDTA、20mMトリス、0.01%triton X−100、pH9.5)に添加し、7分間ボルテックス処理し、上清をチューブに移した。得られた溶液を60℃に加熱し、その温度で3分間放置しておいた。その後、この溶液を75℃で3分間加熱した。
b)350μLの結合バッファー(0.1g/mLのPEG 6000を含む水)を上記の溶液に添加した。
c)20mgの綿を上記の溶液と相互作用させた。
d)その後、綿を3mLの洗浄バッファー1(100mM MgClを含む50%エタノール)で特に洗浄した。
e)綿を水(3×1mL)で洗浄した。
f)核酸を100μLの溶出バッファー(10mM ビシン、10mM KCl、pH9.8)にて95℃で溶出させた。
実施例14:血液からのRNA抽出
a)溶解バッファー、結合バッファー、洗浄バッファーおよび溶出バッファーをDEPC水中で調製した。
b)50μLのチクングンヤ血液を50μLの10mg/mLプロテイナーゼKおよび250μLの溶解バッファー(5.6M グアニジンチオシアネート、20mM EDTA、20mMトリス、100mM MgCl、0.1%triton X−100)中に入れた。チューブを60℃に加熱し、その温度で3分間放置しておいた。その後、このチューブを80℃で2分間加熱した。
c)1mLの結合バッファー(10%PEG 6000)を上記の溶液に添加した。
d)注射器レバーを前後に5回引くことによって、綿を充填した3mL注射器(図1[a]に示すような、綿注射器)を溶液と相互作用させた。
e)その後、注射器レバーを前後に7回引くことによって、綿注射器を3mLの洗浄バッファー1(100mM MgClを含む50%エタノール)で特に洗浄した。
f)各洗浄時に、液体とともに注射器レバーを前後に3回引くことによって、綿注射器を水(3×2mL)で洗浄した。
g)液体とともに注射器レバーを前後に2回引くことによって、核酸を200μLの溶出バッファー(10mM ビシン、10mM KCl、pH9.8)にて95℃で溶出させた。
h)血液中に存在する核酸をPCR可能な形態で得た。プロトコル全体で約9分かかった。
実施例15:ペプチド核酸(PNA)抽出
a)50μLのPNA含有標準溶液を75μLの溶解バッファー(10μLの10mg/mLプロテイナーゼK、5.6Mの塩酸グアニジン、100mM EDTA、20mMトリス、0.01%triton X−100、pH9.5)に添加し、7分間ボルテックス処理し、上清をチューブに移した。得られた溶液を60℃に加熱し、その温度で3分間放置しておいた。その後、この溶液を75℃で3分間加熱した。
b)150μLの結合バッファー(0.1g/mLのPEG 6000を含む水)を上記の溶液に添加した。
c)10mgの綿を上記の溶液と相互作用させた。
d)その後、綿を3mLの洗浄バッファー1(100mM MgClを含む50%エタノール)で特に洗浄した。
e)その後、綿を水(3×1mL)で洗浄した。
f)タンパク質核酸を100μLの溶出バッファー(10mM ビシン、10mM KCl、pH9.8)にて95℃で溶出させた。
実施例16:PCR増幅
本開示のプロトコルで精製されたDNA/RNA試料を、PCR増幅、次いで、ゲル電気泳動にかける。結果を図4、図5、図6、および図7に示す。図4は、ビスコース、市販のビスコース棒、1mlピペットチップに充填された綿、市販のシリカカラムおよび綿棒を用いて単離および精製したDNA試料の比較バンドを提供する。同様に、図5は、様々なプロトコル、すなわち、1mLピペットチップに充填した綿、2mL注射器に充填した綿、市販のシリカカラム、および分子量マーカーで精製したDNA試料の比較バンドを提供する。
また、図6は、様々なプロトコル、すなわち、分子量マーカー、市販のシリカプロトコル、1mLピペットチップに充填した綿、ピペットチップに充填したWhatman No1濾紙およびFTAカードプロトコルで精製したDNA試料の比較バンドを提供する。
さらに、図7は、様々なプロトコルで精製し、RT−PCRで増幅させた30ct RNA試料の比較バンドを提供する。これらのプロトコルでは、様々な綿マトリックス源、すなわち、脱脂綿、オートクレーブした綿、水酸化ナトリウムで洗浄した綿、塩酸で洗浄した綿および吸収綿が用いられた。
様々な態様および実施形態が本明細書に開示されているが、当業者には他の態様および実施形態が明らかであろう。本明細書に開示された様々な態様および実施形態は、説明のためのものであって、限定を意図するものではなく、その真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示される。

Claims (16)

  1. 試料から核酸を単離するための方法であって、前記方法が、
    (a)塩基性pHを有する溶解バッファーを核酸を含む前記試料に添加して、溶解溶液を得る工程;
    (b)結合バッファーを工程(a)で得られた溶液に添加して、前記核酸を綿マトリックスに結合させる工程、ここで、前記結合は、pH8〜11の範囲で行われる;
    および
    (c)前記綿マトリックスに結合した核酸を洗浄バッファーで洗浄し、そして溶出バッファーで溶出させて、前記核酸を単離し、精製する工程からなり、
    前記溶解バッファーは、プロテイナーゼ、グアニジンチオシアネートまたは塩酸グアニジン、EDTA、トリス、洗剤、および適宜のMgCl を含み、
    前記核酸試料と前記溶解バッファーは、混合され、50〜95℃で1〜20分間、加熱され、
    前記溶解バッファーは、8〜11のpHの範囲を有し、
    前記結合バッファーは、PEGを加えた水であり、
    前記洗浄バッファーは、50%(v/v)エタノールを含む水を含み、そして、
    前記溶出バッファーは、8〜11の範囲のpHを有するビシンまたはトリシンおよびKClとともに、45℃〜99℃の範囲の温度を有する温水を含む、
    ことを特徴とする、前記方法。
  2. 前記核酸が、DNA、RNA、およびPNAを含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記試料が生物学的または非生物学的試料である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記生物学的試料が、血液、喀痰、血清、唾液または組織抽出物を含む群から選択され、かつ前記非生物学的試料が、化学合成したPNAを含む群から選択される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記EDTAが、10mM〜300mMの範囲の濃度である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記EDTAが、100mMの濃度である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記グアニジンチオシアネートまたは前記塩酸グアニジンが、0.1M〜7Mの範囲の濃度である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記トリスが、0.01mM〜100mMの範囲の濃度である、請求項1に記載の方法。
  9. 前記トリスが、20mMの濃度である、請求項に記載の方法。
  10. 前記PEGが、0.01%〜30%(v/v)の範囲の濃度である、請求項1に記載の方法。
  11. 前記洗剤が、Triton X−100である、請求項1に記載の方法。
  12. 前記綿が、天然綿、脱脂綿、臨床等級の綿、市販の綿、綿紡糸、水で洗浄した綿、酸または塩基で洗浄した綿、オートクレーブした綿、1〜14の範囲のpHを有するバッファーで処理した綿、塩溶液で処理した綿、有機溶媒で処理した綿、圧縮した綿および加工した綿を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
  13. 試料から核酸を単離するためのキットであって、前記キットが、綿マトリックスならびに
    (a)溶解バッファーであって、プロテイナーゼ、グアニジンチオシアネートまたは塩酸グアニジン、EDTA、トリス、洗剤、および適宜のMgCl を含み、8〜11のpHの範囲を有する前記溶解バッファー、
    (b)結合バッファーであって、PEGを加えた水である前記結合バッファー、
    (c)洗浄バッファーであって、50%(v/v)エタノールを含む水を含む前記洗浄バッファー、および、
    (d)溶出バッファーであって、8〜11の範囲のpHを有するビシンまたはトリシンおよびKClとともに、45℃〜99℃の範囲の温度を有する温水を含む前記溶出バッファー
    からなるバッファーを含む、前記キット。
  14. 前記綿マトリックスが、天然綿、脱脂綿、臨床等級の綿、市販の綿、綿紡糸、水で洗浄した綿、酸または塩基で洗浄した綿、オートクレーブした綿、1〜14の範囲のpHを有するバッファーで処理した綿、塩溶液で処理した綿、有機溶媒で処理した綿、圧縮した綿および加工した綿を含む群から選択される、請求項13に記載のキット。
  15. 前記試料が、生物学的または非生物学的試料を含む、請求項13に記載のキット。
  16. 前記生物学的試料が、血液、喀痰、血清、唾液または組織抽出物を含む群から選択され、かつ前記非生物学的試料が、化学合成したPNAを含む群から選択される、請求項13に記載のキット。
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