JP5924888B2 - 核酸抽出方法、核酸抽出試薬キットおよび核酸抽出用試薬 - Google Patents

核酸抽出方法、核酸抽出試薬キットおよび核酸抽出用試薬 Download PDF

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Description

本発明は、被検試料からPCR法やRT−PCR法等の遺伝子増幅反応に直接適用可能な核酸(DNAおよびRNA)を簡便かつ迅速に調製するための、核酸抽出方法、核酸抽出試薬キットおよび核酸抽出用試薬に関する。
遺伝子増幅反応に供するための核酸は、通常、被検試料の細胞壁や細胞膜を物理的または化学的に破壊した後、被検試料中のタンパク質を変性させ、核酸のみを分離することにより、調製される。この際に使用される試薬としては、強アルカリ性の水酸化ナトリウム溶液や、フェノール、クロロホルム等の有機溶剤、毒物である2−メルカプトエタノール等が用いられるが、これらの試薬はいずれも慎重に取り扱う必要がある。これに加えて、このような試薬が調製後の核酸に残存すると、その後の遺伝子増幅反応に悪影響を与える可能性がある。この問題を回避するために、遠心分離操作やカラムクロマトグラフィー等を用いて、さらに核酸を精製する操作や、若干の夾雑物が存在しても遺伝子増幅反応がなされるように反応液に妨害反応を抑制する効果を有する試薬を添加することが、頻繁に行われている。
上記のうち前者の精製操作については、生化学実験にて汎用的に用いられる緩衝液を含む溶解液に核酸を含む試料を入れた溶液(吸着液)を、シリカ、ガラス、ラテックス、ポリスチレン、セルロース、アガロース、塩基性タンパク質(プロタミン等)を原料して作成した粒子および/または基板、また、その粒子および/または基板の表面にイオン性や疎水性等の官能基を結合させた固体材料に接触させて、固体材料に核酸を吸着させる工程を経た後、固定材料に回収液を接触させて核酸を含む溶出液を得る方法がよく用いられる。例えば、特許文献2では吸着液もしくは回収液を得るために固定材料を遠心することを特徴とした方法が、特許文献3では両性イオン性緩衝液を吸着液および回収液に用いる方法が開示されている。また、核酸と夾雑成分の分子量の差に基づく方法(ゲル濾過クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー等)も良く用いられる。
後者の試薬の添加についても頻繁に研究がなされており、例えば、被検試料由来の陽イオンおよび陰イオンによる遺伝子増幅反応の妨害を抑制するために、これらの成分を捕捉し、中和することのできる両性イオン性緩衝成分を核酸抽出液に添加・混在させる方法が特許文献1に開示されている。
ところが、被検試料の由来によっては、上記の核酸抽出・精製操作そのものを妨害する成分が多量に含まれていることがあり、このような場合には、被検試料毎に特化した精製方法をさらに組み合わせることが、しばしば必要とされていた。
その一方で、現在国内外の試薬メーカーから使用者の利便性を高めるための種々の核酸抽出・精製キットが開発され、製品として販売されているが、これらの多くは、調製可能な核酸がDNAまたはRNAに限定されており、被検試料が個別に限定されているといった制限がある。このため、使用者は、被検試料の種類、状態、検出対象等となる核酸の種類等を鑑みて、種々の選択肢の中から最適な方法、キットを選択する必要があった。
被検試料が十分に入手できる場合、被検試料に含まれる夾雑成分が推測可能な場合、検出対象となるDNAまたはRNAが決定されている場合には、既存の方法の中から最適な方法およびその組み合わせを選択することも可能である。しかしながら、被検試料がごく微量しか入手できない場合、被検試料に含まれる夾雑成分に関する情報が不足している場合、検出対象となるDNAまたはRNAが複数存在する場合には、既存の方法との適合性を事前に調査することが困難である場合もある。したがって、このような場合にも、例えば事前の調査が必要ない、広い範囲で適用可能な核酸の抽出方法が望まれている。
また、被検試料数が著しく多い場合には、短時間にPCRもしくはRT−PCR測定に適用できる試料を調製する必要があるため、核酸抽出前後に精製操作が必要な煩雑な方法は適用しづらく、精製操作が省略可能な核酸の抽出方法も望まれている。
このようなニーズに応じるべく、簡便かつ短時間に遺伝子増幅反応に直接適用可能な核酸が試薬キット(例えば、製品名:セルイーズ(Biocosm株式会社製)、製品名:シカジーニアスDNA抽出試薬(関東化学株式会社製)等)が販売されている。しかしながら、これらの試薬キットの添付文書(例えば、非特許文献1)に記載されている核酸はDNAのみであるためRNAに適用可能であるか否かについては不明であり、さらに、その組成については開示されていない。
また、特許文献4および5には、人体に有毒性を示さない試薬だけで構成された組成物を用いて、カラムクロマトグラフィー等の精製操作を行うことなく遺伝子増幅反応に直接適用可能な核酸を抽出・調製する方法が開示されている。特許文献4の実施例には、クリプトスポリジウム属および、細胞壁を有しない被検試料の代表例として、レジオネラ(グラム陰性菌)とHeLa細胞(ヒト培養細胞)からDNAを抽出した結果が、また、特許文献5の実施例には、これらに加え、煮沸処理にて細胞壁を破壊したイネ種子(植物)から、DNAを抽出した結果が、それぞれ記載されている。しかしながら、例えば、細胞壁を有するグラム陽性菌や真菌・酵母等の研究試料としてニーズの高い他の被検試料に対し、これらの方法が適用可能か否かについては、不明である。
さらに、特許文献4および5には、核酸としてDNAが抽出できることは具体的に示されているものの、RNAの抽出および引き続く分析が可能であるか否かについては、具体的に記載されていない。さらに、これらの文献に記載の方法は、試薬の混合と加熱操作を繰り返すステップが多く、簡便とは言い難く、このような方法で抽出された核酸は損傷を受けることも考えられる。したがって、損傷の少ない核酸を、より温和な条件で、短時間かつ簡便に調製するための方法が望まれている。
RNAを抽出する方法としては、グアニジンチオシアネートによりRNA分解酵素を失活させ、密度勾配遠心によりRNAを回収することを特徴とするグアニジン−塩化セシウム超遠心法が知られている(例えば、非特許文献2)。本方法は、高純度のRNAが得られるという利点を有するが、超遠心分離機が必要で多大な時間(例えば、数日)を要する、低分子RNAは回収できないといった課題を有する。
次に、グアニジンチオシアネートによりRNA分解酵素を失活させ、フェノール・クロロホルムを加えて遠心分離後、上層を回収(上層にRNA、中間層にタンパク質、下層にDNAが含まれる)する、AGPC(Acid Guanidinium-Phenol-Chloroform)法が知られている(例えば、非特許文献3)。本方法は、現在でも広く用いられている方法であり、超遠心分離機ではなく通常の遠心分離機が使用できる、コストが低いといった利点を有するが、有毒なフェノールやクロロホルムを使用する必要がある、方法の実施に比較的長時間を要する(数時間程度)といった課題を有する。
また、核酸を結合させた固相を含む試料をシリカメンブレンに通すことで液体を取り除いた後、固相から核酸を分離することで精製する、シリカメンブレン(スピンカラム)を用いた方法が知られている(例えば、特許文献2)。本方法は、比較的簡便な操作により、高純度の核酸が得られるとの利点を有するものの、高度に精製された核酸を得るためには遠心操作を何度も繰り返す必要があり、本精製作業を実施するためには比較的長時間(30分〜数時間)を要する、試料の種類に合わせて抽出用溶液とシリカメンブレンとの相性を考慮する必要がある(固相から核酸が分離しない溶液を選択する)といった課題を有する。
さらに、核酸(DNA、RNA)を磁性ビーズに可逆的に結合させ、磁石を用いてビーズを回収した後、ビーズから核酸を分離することで精製する、磁性ビーズを用いた方法が知られている(例えば、非特許文献4)。このような方法は、遠心操作と比べて簡便な操作手順で高純度の核酸が得られるとの利点を有するものの、試料の種類に合わせて抽出用溶液と磁性ビーズとの相性を考慮する必要がある(磁性ビーズから核酸が分離しない溶液を選択する)、コストが高いといった課題を有する。
上記のとおり、これまで行われたRNAの抽出方法は、試薬の混合、ピペット操作、遠心分離等多くの工程を経る必要があり、調製に時間を要していたことから、かかる調製作業中に安定性の低いRNAは分解されやすく、特に試料に含まれるRNAが少量である場合には、抽出を行うことができないといった問題があった。また、抽出工程数が多いと、環境中に普遍的に存在するRNA分解酵素が、器具や作業者を介して混入するという問題がある。
そのため、より短時間かつ少ない工程で、RNAが調製可能な方法、特に、遺伝子増幅反応に供することのできるRNAの鋳型が調製可能な方法が望まれている。
特表2008−531039号公報 特開平2−289596号公報 特開2009−284784号公報 特開2006−61041号公報 国際公開2007/116450号公報
「シカジーニアスDNA抽出試薬」添付文書 Chirgwin,J. M. et al. (1979) Isolation of biologically active ribonucleic acid fromsources enriched in ribonuclease. Biochemistry 18 (24): 5294-5299 Chomczynski,P. and Sacchi, N. (1987) Single-step method of RNA isolation by acidguanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction. AnalyticalBiochemistry 162 (1): 156-159 DeAngelis, M. M. et al. (1995) Solid-phase reversibleimmobilization for the isolation of PCR products. Nucleic Acids Research23 (22): 4742-4743
したがって、本発明が解決しようとする課題は、多種多様な被検試料に適用可能であり、PCR法やRT−PCR法等の遺伝子増幅反応に直接使用可能な核酸鋳型を、簡便かつ迅速に、好ましくは温和な条件で、調製する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記問題点に鑑み鋭意検討する中で、両性イオン性緩衝液を含む核酸抽出用試薬を用いることにより、DNAおよびRNAとともに抽出される夾雑成分によって遺伝子増幅反応が妨害されることが抑制されることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に関する。
(1) 両性イオン性緩衝液を含む核酸抽出用試薬を、被検試料と接触させる工程を含む、核酸抽出方法。
(2) 核酸抽出用試薬が、タンパク質分解酵素および/または界面活性剤を含む、(1)に記載の核酸抽出方法。
(3) タンパク質分解酵素が、プロテアーゼKである、(2)に記載の核酸抽出方法。
(4) 核酸抽出用試薬中におけるタンパク質分解酵素の濃度が、0.09〜45U/mLである、(2)または(3)に記載の核酸抽出方法。
(5) 界面活性剤が、ステロイド骨格を有する界面活性剤である、(2)〜(4)のいずれかに記載の核酸抽出方法。
(6) 界面活性剤が、グリココール酸またはその塩である、(2)〜(5)のいずれかに記載の核酸抽出方法。
(7) 核酸抽出用試薬中における界面活性剤の濃度が、0.009〜9mmol/Lである、(2)〜(6)のいずれかに記載の核酸抽出方法。
(8) 両性イオン性緩衝液が、グッド緩衝液である、(1)〜(7)のいずれかに記載の核酸抽出方法。
(9) 両性イオン性緩衝液が、トリシンを含む、(1)〜(8)のいずれかに記載の核酸抽出方法。
(10) 核酸抽出用試薬中における緩衝剤の濃度が、9〜364mmol/Lである、(1)〜(9)のいずれかに記載の核酸抽出方法。
(11) 被検試料が、細胞壁を有する生物由来の試料である、(1)〜(10)のいずれかに記載の核酸抽出方法。
(12) 細胞壁を有する生物が、グラム陽性菌、真菌または酵母である、(1)〜(11)のいずれかに記載の核酸抽出方法。
(13) 被検試料から核酸としてDNAおよび/またはRNAが、抽出される、(1)〜(12)のいずれかに記載の核酸抽出方法。
(14) 被検試料と接触させ、被検試料から核酸を抽出した核酸抽出用試薬は、核酸増幅反応に供されるものである、(1)〜(13)のいずれかに記載の核酸抽出方法。
(15) 両性イオン性緩衝液を含む、核酸抽出用試薬。
(16) 核酸抽出用試薬を構成する両性イオン性緩衝液と各構成成分とを含む、核酸抽出試薬キット。
本発明により、被検試料の種類や夾雑成分の有無を考慮することなく、ごく少量の被検試料から、一定の操作方法で、簡便かつ迅速に核酸を抽出することができ、さらに、PCRおよびRT−PCR法に供するための鋳型を調製することができる。また、食中毒や感染症等の検査市場において、日々、遺伝子検査の需要が高まっているが、本発明を用いることで、これまでネックとなっていた検体調製(PCRおよびRT−PCR用鋳型の調製)の作業の、大幅な短縮および省力化が可能となる。
特に、RNAは、抽出、精製作業中に容易に分解するため、従来技術では取り扱いが難しかったが、本発明によれば、精製操作を省略することも可能となり精製操作時におけるRNAの損傷、分解が防止されるため、このようなRNAも好適に抽出ができる。さらに、本発明で調製されたRNAは、従来技術により得られたものとは異なり、保存安定性に優れており、再測定等が必要な際にも信頼性のあるデータを得ることが可能である。
さらに、本願発明は、核酸の抽出段階で、遺伝子増幅反応における夾雑物による悪影響を予め防止することが可能であるから、遺伝子増幅反応においてその目的に適した緩衝液を利用することが可能であり、例えば、特許文献1に記載の方法のように遺伝子増幅反応において特定の緩衝液に制限されない。
また、特に、核酸抽出用試薬が界面活性剤およびタンパク質分解酵素、特にグリココール酸およびプロテアーゼKを組み合わせて含む場合には、細胞壁を有する細胞を被検試料とした場合であっても、好適に核酸を抽出することができ、本発明は、より広範な被検試料に対し適用可能となる。
本発明の核酸抽出方法の好適な実施態様の一例を示すフローチャート図である。 プロテアーゼKの濃度を段階的に変更した試薬1を用いて、出芽酵母懸濁液から抽出・増幅したDNAを、アガロース電気泳動した際の観察図である。 グリココール酸Naの濃度を段階的に変更した試薬1を用いて、出芽酵母懸濁液から抽出・増幅したDNAを、アガロース電気泳動した際の観察図である。 トリシン濃度の範囲を段階的に変更した試薬1を用いて、ヒト血液成分含む出芽酵母懸濁液から抽出・増幅したDNAを、アガロース電気泳動した際の観察図である。 本発明の核酸抽出方法および熱水抽出法により、黄色ブドウ球菌、大腸菌O157、出芽酵母の各懸濁液から抽出されたDNA量を、アガロース電気泳動法で比較した結果を示した観察図である。 従来の試薬を用いた方法および熱水抽出法により、黄色ブドウ球菌、大腸菌O157、出芽酵母の各懸濁液から抽出されたDNA量を、アガロース電気泳動法で比較した結果を示した観察図である。 本発明の核酸抽出試薬キットおよび既存製品(セルイーズ マウステール)を用いて、動物細胞から抽出したDNA量を比較した結果を示したアガロース電気泳動の観察図である。 本発明の核酸抽出方法および熱水抽出法により、黄色ブドウ球菌、大腸菌O157、出芽酵母の各懸濁液から抽出されたRNA量を、比較した結果を示したアガロース電気泳動の観察図である。 本発明の方法を用いた、血液成分が混入した出芽酵母懸濁液からのDNAの抽出についての結果を示すアガロース電気泳動の観察図である。 本発明の方法を用いた、血液成分が混入した出芽酵母懸濁液からのRNAの抽出についての結果を示すアガロース電気泳動の観察図である。
以下、本発明の好適な実施態様に基づき、本発明を詳述する。
本発明の核酸抽出方法の説明に先立ち、まず、本発明の核酸抽出用試薬および核酸抽出試薬キットについて説明する。
本発明の核酸抽出用試薬は、被検試料中の核酸、特にDNAおよび/またはRNAの抽出に用いられるものである。そして、本発明の核酸抽出用試薬は、例えば、被検試料中から核酸が抽出した後に、核酸増幅反応に供される遺伝子増幅反応用核酸抽出試薬である。
なお、別段の記載がない限り、本発明において、核酸とは、核酸とは、天然由来のDNA(デオキシリボ核酸)およびRNA(リボ核酸)、またはその誘導体(メチル化体、酸化体、2量体)、人工的に作成されたDNAおよびRNAの模倣物(プライマー、非天然型核酸塩基を含む等)、修飾体(チオリン酸エステル体、チオール化体、リン酸化体、アミノ化体、ビオチン化体、蛍光標識体等)をいう。
また、別段の記載がない限り、本発明において、抽出とは、生体膜(細胞壁、細胞膜、核膜、ミトコンドリア膜)等で外界と隔絶された殻状体の中に格納されている物質(内容物)を、その殻状体に対し液体を接触させることによりその構造を破壊し、内容物と液体との親和性及び溶解性に基づいて液体中に内容物を移行させることをいう。
また、本発明の核酸抽出用試薬は、両性イオン性緩衝液を含む。
両性イオン性緩衝液は、緩衝剤として両性イオン性化合物を含むものであり、一定のpH範囲において、当該化合物は、正電荷と負電荷とを同時に有する両性イオンとして両性イオン性緩衝液中に存在する。核酸抽出試薬がこのような両性イオン性緩衝液を含むことにより、抽出および遺伝子増幅反応における検体試料中に含まれる夾雑成分による影響を低減することができ、この結果、被検試料の種類や夾雑成分の有無を考慮することなく、核酸を抽出することができるとともに、核酸抽出後における精製作業の省略が可能となる。このような効果が得られる理由は完全に解明されていないが、例えば、負電荷を有する核酸等に付着することで、核酸がDNAポリメラーゼと結合することを妨害すると考えられている陽イオン性の夾雑物を、両性イオン性化合物が、その負電荷により捕獲するとともに、DNAポリメラーゼが活性化する際に必須な2価の陽イオン(マグネシウムイオン等)を電気的に中和することで、DNAポリメラーゼの活性を阻害すると考えられている陰イオン性の夾雑物を、両性イオン性化合物が、その正電荷により捕獲し、これらの夾雑物を凝集、沈降させる結果、夾雑物による核酸やポリメラーゼ等への影響を低減できるためであると考えられる。
核酸抽出用試薬に含まれる両性イオン性緩衝液としては、特に限定されず、例えば、グッド緩衝液を用いることができる。具体的には、緩衝剤として、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸(EPPS)、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)、2−ヒドロキシ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸(HEPPSO)、3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、2−ヒドロキシ−3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロパンスルホン酸)(POPSO)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、2−ヒドロキシ−N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPSO)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−エタンスルホン酸(TES)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、N,N,N−トリメチル−2−アミノエタンアミニウムクロリド(コラミン塩酸)、アセトアミドグリシン、グリシンアミドまたはこれらの塩から選択される1種または2種以上を含む緩衝液が挙げられ、好ましくは、緩衝剤としてN,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、2−ヒドロキシ−N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPSO)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−エタンスルホン酸(TES)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)から選択される1種または2種以上を含む緩衝液を用いることができ、より好ましくは、緩衝剤として、ビシン、トリシン、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸から選択される1種または2種以上を含む緩衝液を用いることができ、さらに好ましくは、緩衝剤としてトリシンを含む緩衝液を用いることができる。
また、両性イオン性緩衝液は、上述したような両性イオン性化合物以外の緩衝剤を含んでいてもよい。このような緩衝剤としては、核酸抽出に関与する酵素の活性が至適になるように、中性から弱アルカリ性に調整できるものであれば良く、特に限定されないが、好ましくは、トリスヒドロキシアミノメタン、リン酸、ホウ酸、3,3−ジメチルグルタル酸、マレイン酸、イミダゾール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ピロリン酸、グリシン、またはこれらの塩(例えばNa塩、K塩、塩酸塩)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
核酸抽出用試薬中における緩衝剤の濃度は、その緩衝剤の種類によって異なり、特に限定されないが、陽イオンおよび/または陰イオン性の夾雑物を十分に中和することができるように、夾雑成分に対して過剰量の緩衝剤が両性イオン性緩衝液中に存在し、かつ緩衝剤自身が遺伝子増幅反応を阻害しない濃度に設定する必要があるとの観点から、好ましくは、9〜364mmol/Lであり、より好ましくは、91〜182mmol/Lである。特に、両性イオン性化合物、好ましくはトリシンの濃度が上記範囲内であると、本願の効果はより顕著に発揮される。
また、核酸抽出用試薬は、好ましくは、タンパク質分解酵素および/または界面活性剤を含む。これにより、比較的温和な条件において、細胞壁、細胞膜、核膜等を十分に破壊することができ、核酸の抽出をより容易にすることができる。さらに好ましくは、核酸抽出用試薬は、タンパク質分解酵素および界面活性剤を含み、これにより、タンパク質分解酵素および界面活性剤が協調して作用し、細胞壁、細胞膜、核膜等をより好適に破壊することができる。
このようなタンパク質分解酵素としては、被検試料の核酸が抽出される程度に、細胞壁、細胞膜および核膜(真核生物の場合)を破壊できるようタンパク質を分解する能力を有するものであれば、特に限定されず、例えば、セリンプロテアーゼに属しているプロテアーゼK、トリプシン、キモトリプシン、スブチリシン等、アスパラギン酸プロテアーゼに属しているペプシン、カテプシンD等、システインプロテアーゼに属しているパパイン、カテプシン、カスパーゼ、カルパイン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができるが、好ましくは、タンパク質の基質特異性が広く、かつキレート剤や変性剤の存在下でも活性を保つプロテアーゼKを用いる。
また、核酸抽出用試薬中におけるタンパク質分解酵素の濃度は、タンパク質分解酵素の種類により、特に限定されないが、好ましくは、0.09〜45U/mLであり、さらに好ましくは、0.9〜45U/mLである。これにより、核酸の抽出時における細胞壁、細胞膜および核膜の破壊が促進され、核酸の抽出を効率的に行うことができ、遺伝子増幅反応時における核酸配列の増幅量を十分なものとすることができる。特に、核酸抽出用試薬がタンパク質分解酵素としてプロテアーゼKを上述した濃度含む場合には、顕著に上述した効果が得られる
また、界面活性剤としては、細胞壁、細胞膜および核膜の破壊に寄与するものであれば特に限定されないが、好ましくは、ステロイド骨格を有する界面活性剤を用いることができ、具体的には、デオキシコール酸、グリココール酸、またはこれらの塩(例えば、Na、K塩等)を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに好ましくは、界面活性剤として、グリココール酸またはその塩(例えば、Na、K塩)を用いる。
核酸抽出用試薬中における界面活性剤の濃度は、界面活性剤の種類により異なるが、例えばグリココール酸の場合は、好ましくは、0.009〜9mmol/Lであり、より好ましくは、0.9〜9mmol/Lである。デオキシコール酸の場合は、好ましくは0.009〜9mmol/Lであり、より好ましくは、0.9〜9mmol/Lである。これにより、核酸の抽出時における細胞壁、細胞膜および核膜の破壊が促進され、核酸の抽出を効率的に行うことができ、遺伝子増幅反応時における核酸配列の増幅量を十分なものとすることができる。特に、核酸抽出用試薬が界面活性剤としてグリココール酸またはその塩を上述した濃度含む場合には、顕著に上述した効果が得られる。
また、核酸抽出用試薬は、上述した以外の成分を含んでもよい。このような成分としては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、O,O’−ビス(2−アミノフェニル)エチレングリコール四酢酸(BAPTA)、trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸(CyDTA)およびそれらの塩等のキレート剤、酢酸カルシウム、ギ酸カルシウム、塩化カルシウム等のカルシウム塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の非特異吸着抑制剤、グリセリン等の凍結防止剤等が挙げられ、タンパク質分解酵素(例えばプロテアーゼK)およびDNA分解酵素(例えばDNase I)の酵素反応および遺伝子増幅反応(例えばPCR用DNAポリメラーゼ)を妨害しない範囲で、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、核酸抽出用試薬が界面活性剤およびタンパク質分解酵素を同時に含む場合には、界面活性剤としてグリココール酸を、タンパク質分解酵素としてプロテアーゼKを含むことが好ましい。このような組み合わせにより、十分に温和な条件下において、検体試料中の細胞壁、細胞膜、核膜等をより容易かつ迅速に破壊することができ、核酸をより効率的に抽出することが可能となる。
また、核酸抽出用試薬の20℃におけるpHは、特に限定されないが、タンパク質分解酵素(例えばプロテアーゼK)およびDNA分解酵素(例えばDNase I)の酵素反応および遺伝子増幅反応(例えばPCR用DNAポリメラーゼ)の活性が全て維持されるよう、好ましくは7.5〜8.7であり、より好ましくは、8.0〜8.5である。
本発明の核酸抽出試薬キットは、少なくとも上述したような核酸抽出用試薬を構成する両性イオン性緩衝液と各構成成分とを含む。
核酸抽出試薬は、核酸抽出試薬キットにおいて、その各構成成分が混合された状態で存在してもよいし、保存安定性の向上、製造コストの低減等の観点から、必要に応じて、これらの成分が分離して存在してもよい。
また、核酸抽出試薬キットは、その目的に応じ、他の試薬を有していてもよい。例えば、核酸抽出試薬キットは、目的とする核酸以外の核酸を分解するための核酸分解試薬(例えば、DNA分解試薬、RNA分解試薬)、RNA分解酵素の活性を阻害するタンパク質(RNase Inhibitor)、PCR等の遺伝子増幅試薬(DNAポリメラーゼ、プライマー、核酸塩基、Mg含有緩衝液)、遺伝子増幅産物を検出するための電気泳動関連試薬(アガロースゲル、分子量マーカー、移動度マーカー、検出試薬)等を、1種または2種以上組み合わせて有することができる。
また、本発明の核酸抽出試薬キットは、後述する核酸の抽出方法を実施するための器具(例えば、密閉容器等)を備えていてもよい。
上述したような本発明の核酸抽出用試薬および核酸抽出試薬キットは、以下に説明する本発明の核酸抽出方法に好適に適用することができる。
次に、本発明の核酸抽出方法について説明する。
図1に、本発明の核酸抽出方法の好適な実施態様の一例を示すフローチャート図を示す。なお、図中に記載された試薬中の構成成分や反応条件等については、あくまでも本発明の実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれに限定されるべきではない。
本発明の核酸抽出方法は、両性イオン性緩衝液を含む核酸抽出用試薬(試薬1)を、被検試料と接触させる工程を含む。
本実施態様においては、まず、被検試料を上述した核酸抽出用試薬と混合して混合液を得、これにより被検試料と核酸抽出用試薬とを接触させる。
本発明の核酸抽出方法では、被検試料として核酸を含む細胞(微生物、動物、植物)またはウイルスを用いる。このような被検試料としては、特に限定されないが、好ましくは、被検試料は、細胞壁を有する生物(真核生物または原核生物)由来の試料であり、より好ましくはグラム陽性菌、真菌または酵母であり、さらに好ましくは、黄色ブドウ球菌または出芽酵母である。
これらの被検試料を含む検体の由来は、特に限定されず、いかなるものであってもよい。例えば、微生物およびウイルス試料を含む検体としては、血液、尿、糞便、粘液(例えば、膣、子宮頚、口腔、鼻腔等)、食品、作物、上下水道、天然水(例えば、河川水、湖沼水、地下水、雨水、海水)、土壌等が挙げられ、それぞれに適した方法で採取された一次検体を直接または培養によって増殖させたものが使用できる。
また、例えば、動物試料を含む検体としては、血液、尿、糞便、粘液(例えば、膣、子宮頚、口腔、鼻腔等)、皮膚、毛根、食品(肉類)、手術で摘出された生検試料等が挙げられ、それぞれに適した方法で採取された一次検体を直接または培養によって増殖させたものが使用できる。また、これらの検体中の細胞を凍結させたもの、パラフィン包埋切片としたものについても使用できる。
また、例えば、植物由来の検体としては、種子、果実、種皮、茎、葉、根等が挙げられる。
なお、本発明の核酸抽出方法では、上述したような被検試料に夾雑物が含まれていた場合であっても、好適に核酸の抽出が可能である。すなわち、夾雑物が含まれ得る検体試料について、その有無を検討することなく、本発明の方法を適用することも可能である。本願明細書中において、夾雑物とは、分子サイズに限らず、正もしくは負に荷電している化合物、タンパク質分解酵素(例えばプロテアーゼK)およびDNA分解酵素(例えばDNase I)および遺伝子増幅用酵素(例えばPCR用DNAポリメラーゼ)の活性を阻害する化合物、またはこれらの安定性を低減させる化合物、等を1種または2種以上含む組成物をいう。このような夾雑物としては、特に限定されないが、例えば、血清、血球、尿、便、粘液、髄液、唾液、土壌、細胞断片、培地、タンパク質、脂質、油脂、多糖、オリゴ糖、色素、金属塩、酸性塩、塩基性塩、抗生物質、薬物、界面活性剤等が挙げられる。上述した中でも、血清、尿、粘液、細胞断片、培地、金属塩、酸性塩および塩基性塩は、抽出後の抽出液に存在することにより、核酸増幅反応を妨害しやすいが、このような夾雑物が存在した場合であっても、本発明によれば、このような妨害を抑制できる。
被検試料と核酸抽出用試薬との混合方法は、特に限定されず、適宜被検試料の状態に適した方法を採用することができる。例えば、被検試料が懸濁液であった場合には、混合は、被検試料に核酸抽出用試薬を添加することにより行うことができる。また、例えば、被検試料がコロニーや固形物を大量に含む場合には、混合は、生化学的実験で汎用される緩衝液(例えば、PBS)、生理食塩水等にこれらを懸濁させ、これに対し核酸抽出用試薬を添加することにより行うことができる。
また、被検試料と核酸抽出用試薬との混合を、密閉可能な容器中で行うことができる。このような場合、例えば、ピペット、点眼瓶等の器具を用いて、被検試料および核酸抽出用試薬の容器への輸送を行うことができる。
混合液中における被検試料と核酸抽出用試薬との混合比(体積比)は、特に限定されないが、例えば、1:1000〜1:10、好ましくは、1:100〜1:10とすることができる。
次に、混合液を、所定の温度に調節し、一定時間静置する。
混合液の温度は、例えば、核酸抽出用試薬にタンパク質分解酵素が含まれる場合には、この至適温度付近(例えば、至適温度より5℃低い温度から、至適温度より5℃高い温度範囲内)とすることができる。
また、核酸抽出用試薬にタンパク質分解酵素が含まれない場合には、混合液の温度は、25〜70℃とすることができる。
また、静置時間は、特に限定されないが、例えば、5〜30分、好ましくは、5〜10分とすることができる。
次に、核酸抽出用試薬に、タンパク質分解酵素が含まれる場合には、この失活温度付近(例えば、失活温度より2℃低い温度から、失活温度より2℃高い温度範囲内)にて、一定時間静置する。
静置時間は、特に限定されないが、例えば、3〜15分、好ましくは、3〜5分とすることができる。
以上の操作により、検体試料から混合液中に核酸が抽出された抽出液が得られる。
こうして得られた抽出液は、遺伝子増幅反応に供される。 増幅の対象の核酸がDNAの場合には、得られた抽出液をそのまま遺伝子増幅反応におけるDNAの鋳型として用い、PCR法に供することも可能であるが、遠心分離や濾過操作等により沈殿物を除去した後の上澄をPCR法に用いることもできる。
増幅の対象の核酸がRNA由来のものである場合には、さらに、混合液中のDNAを分解して、分解処理後の混合液をRT−PCR法に供する。
このような場合、図1にあるように、本実施態様では、さらにDNA分解試薬(試薬2)を抽出液に接触させる工程を有する。
上記工程としては、例えば、核酸抽出試薬キットに含まれるDNA分解試薬を抽出液に添加し、抽出液を所定の温度に調節し、一定時間静置することにより行うことができる。
このような温度としては、例えば、DNA分解試薬中に含まれるDNA分解酵素の至適温度付近(例えば、至適温度より2℃低い温度から、至適温度より2℃高い温度範囲内)とすることができる。
また、静置時間は、DNAが十分に分解可能な時間であれば特に限定されないが、例えば、10〜30分、好ましくは、10〜15分とすることができる。
次に、DNA分解酵素の失活温度付近(例えば、失活温度より2℃低い温度から、失活温度より2℃高い温度範囲内)にて、抽出液を一定時間静置する。
静置時間は、特に限定されないが、例えば、5〜30分、好ましくは、5〜15分とすることができる。
以上の操作により、DNAが除去され、かつRNAを含む抽出液を得ることができる。そして、この処理後の抽出液中に残存するRNAをRT−PCR法の鋳型として使用することが可能となる。
以上、本発明について好適な実施態様に基づき詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。
以下、本発明を、実施例をあげてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
まず、核酸の抽出に用いる試薬として、以下の組成の試薬1および試薬2を調製し、試薬1および試薬2からなる核酸抽出試薬キットを準備した。
試薬1(本発明の核酸抽出用試薬)
プロテアーゼK 18 U/mL
Tris−HCl pH 7.5 0.9 mM
酢酸カルシウム 0.09 mM
グリココール酸ナトリウム 9 mM
EDTA・2Na 0.9 mM
トリシン pH 8.5 182 mM
塩化ナトリウム 9 mM
グリセリン 5 %(v/v)
試薬2(DNA分解試薬)
DNase I 1 U/μL
Tris−HCl pH 7.5 20 mM
塩化マグネシウム 50 mM
グリセリン 50 %(v/v)
なお、別段の記載がない限り、以下で述べる試薬1および2の組成は上記のとおりである。
また、本実施例において、試薬1および試薬2は、核酸の抽出において、原則以下のように使用することとした。
増幅対象がDNAに由来する場合: 検体(1μL)を試薬1(100μL)で懸濁し、65℃で6分間、94℃で3分間連続的に加温する。その後、遠心操作(10,000×g、5分)で上清を回収して抽出液を得、これをPCR法の鋳型として使用する。
増幅対象がRNAに由来する場合: DNAの場合と同様に被検試料(1μL)と試薬1(100μL)を懸濁し、加温操作と遠心操作を経て上清を回収する。この上清5μLに5μLの試薬2と45μLの超純水を加え、37℃で15分間、75℃で5分間連続的に加熱して抽出液を得、これをRT−PCR法の鋳型として使用する。
(実施例1)
・プロテアーゼK濃度が異なる試薬1を用いたDNAの抽出
出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae、ATCC 9763)をサブローブドウ糖寒天培地に播種し、37℃で一晩好気培養した。得られたコロニーを被検試料とした。プロテアーゼKのみ0〜45U/mLの範囲で段階的に濃度を変更した上記試薬1を用いて、増幅対象をDNAとして被検試料から核酸の抽出を行い、PCR法の鋳型を調製した。
次に、939bpのPCR産物を得るために、センスプライマー(配列番号1:URA3-U、5’-GCACAGAACAAAAACCT-3’)およびアンチセンスプライマー(配列番号2:URA3-L、5’-TCATTACGACCGAGATT-3’)を用いてURA3遺伝子配列をPCR法により増幅した。まず、10μM フォワードプライマー 1μL、10μM リバースプライマー 1μL、5×AptaTaq DNA Master(ロシュ)4μL、上記鋳型2μLおよび超純水12μLを混合して全量20μLのPCR反応混合液を調製した。そして、PCRを次のような温度条件で行った:〔94℃、30秒→48℃、90秒→72℃、60秒〕×30回→72℃、7分。増幅産物をアガロースゲル電気泳動に供した結果を図2に示す。
図中、各レーンの実験において、試薬1中のプロテアーゼK濃度を以下のように構成した。
レーン1: 0 U/mL
レーン2: 0.009 U/mL
レーン3: 0.09 U/mL
レーン4: 0.9 U/mL
レーン5: 9 U/mL
レーン6: 45 U/mL
レーンM: 100bp DNA Ladder
図2に示された結果において、いずれの方法で行った被検試料についても、DNAが抽出され、また増幅されたことが確認できた。また、試薬1中のプロテアーゼKの濃度が0.09〜45U/mLの範囲の場合には、増幅産物量が比較的多いことが確認できた。
(実施例2)
・グリココール酸濃度が異なる試薬1を用いたDNAの抽出
出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae、ATCC 9763)をサブローブドウ糖寒天培地に播種し、37℃で一晩好気培養した。得られたコロニーを被検試料とした。グリココール酸Naのみ0〜9mmol/Lの範囲で段階的に濃度を変更した上記試薬1を用いて、増幅対象をDNAとして被検試料から核酸の抽出を行い、PCR法の鋳型を調製した。
次に、939bpのPCR産物を得るために、センスプライマー(配列番号1:URA3-U、5’-GCACAGAACAAAAACCT-3’)およびアンチセンスプライマー(配列番号2:URA3-L、5’-TCATTACGACCGAGATT-3’)を用いてURA3遺伝子配列をPCR法により増幅した。まず、10μM フォワードプライマー 1μL、10μM リバースプライマー 1μL、5×AptaTaq DNA Master(ロシュ)4μL、上記鋳型2μLおよび超純水12μLを混合して全量20μLのPCR反応混合液を調製した。そして、PCRを次のような温度条件で行った:〔94℃、30秒→48℃、90秒→72℃、60秒〕×30回→72℃、7分。増幅産物をアガロースゲル電気泳動に供した結果を図3に示す。
図中、各レーンの実験において、試薬1中のグリココール酸Na濃度を以下のように構成した。
レーンM: 100bp DNA Ladder
レーン1: 0 mmol/L
レーン2: 0.009 mmol/L
レーン3: 0.09 mmol/L
レーン4: 0.9 mmol/L
レーン5: 9 mmol/L
図3に示された結果において、試薬1中のグリココール酸Naの濃度が0.009〜9mmol/Lの範囲の場合には、増幅産物量が比較的多いことが確認できた。
(実施例3)
・トリシン濃度の異なる試薬1を用いたDNAの抽出
出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae、ATCC 9763)をサブローブドウ糖寒天培地に播種し、37℃で一晩好気培養した。得られたコロニー1μLをヒトプール血清10μLに懸濁し、この全量を被検試料とした。トリシンのみ0〜364mmol/Lの範囲で段階的に濃度を変更した上記試薬1を用いて、増幅対象をDNAとして被検試料から核酸の抽出を行い、PCR法の鋳型を調製した。なお、トリシンを含まない試薬1は、対照として用いた。
次に、939bpのPCR産物を得るために、センスプライマー(配列番号1:URA3-U、5’-GCACAGAACAAAAACCT-3’)およびアンチセンスプライマー(配列番号2:URA3-L、5’-TCATTACGACCGAGATT-3’)を用いてURA3遺伝子配列を増幅した。まず、10μM フォワードプライマー 1μL、10μM リバースプライマー 1μL、5×AptaTaq DNA Master(ロシュ)4μL、鋳型2μLおよび超純水12μLを混合して全量20μLのPCR反応混合液を調製した。そして、PCRを次のような温度条件で行った:〔94℃、30秒→48℃、90秒→72℃、60秒〕×30回→72℃、7分。増幅産物をアガロースゲル電気泳動に供した結果を図4に示す。
図中、各レーンの実験において、試薬1中のトリシン濃度を以下のように構成した。
レーン1: 0 mmol/L
レーン2: 9 mmol/L
レーン3: 91 mmol/L
レーン4: 182 mmol/L
レーン5: 364 mmol/L
レーンM: 100bp DNA Ladder
図4に示された結果において、試薬1中のトリシンの濃度が9〜364mmol/Lの範囲の場合には、増幅産物由来のバンドが十分に認められた。
(実施例4)
・本発明の核酸抽出試薬キットを用いた、黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)、大腸菌O157(グラム陰性菌)、真菌(出芽酵母)からのDNAの抽出
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC 102141)と大腸菌O157(Escherichia coli、ATCC 35150)とをSCD寒天培地に、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae、ATCC 9763)をサブローブドウ糖寒天培地にそれぞれ播種し、37℃で一晩好気培養した。得られた各コロニーを被検試料として、上記試薬1を用いて、増幅対象をDNAとして被検試料から核酸の抽出を行い、PCR法の鋳型を調製した。また、本発明(試薬1)の代わりに超純水を用いて同様の操作を行い、これを対照の鋳型とした。
次に、各鋳型について、10μM フォワードプライマー 1μL、10μM リバースプライマー 1μL、5×AptaTaq DNA Master(ロシュ)4μL、各鋳型2μLおよび超純水12μLを混合して全量20μLのPCR反応混合液をそれぞれ調製し、これをPCR反応によるDNAの増幅反応に供した。
黄色ブドウ球菌については、324bpのPCR産物を得るために、センスプライマー(配列番号3:S4F、5’-GACAACTAGAGATAGAGCCTTCC-3’)およびアンチセンスプライマー(配列番号4:S4R、5’-AGTCGAGTTGCAGACTAC-3’)を用いて16S rRNAの配列をPCR法により増幅した。PCRは次のような温度条件で行った:〔94℃、30秒→54℃、90秒→72℃、60秒〕×30回→72℃、7分。
O157については、180bpのPCR産物を得るために、センスプライマー(配列番号5:stx1F、5’-ATAAATCGCCATTCGTTGACTAC-3’)およびアンチセンスプライマー(配列番号6:stx1R、5’-AGAACGCCCACTGAGATCATC-3’)を用いてベロ毒素1遺伝子配列をPCR法により増幅した。PCRは次のような温度条件で行った:〔94℃、30秒→62℃、90秒→72℃、60秒〕×30回→72℃、7分。
出芽酵母については、939bpのPCR産物を得るために、センスプライマー(配列番号1:URA3-U、5’-GCACAGAACAAAAACCT-3’)およびアンチセンスプライマー(配列番号2:URA3-L、5’-TCATTACGACCGAGATT-3’)を用いてURA3遺伝子配列をPCR法により増幅した。PCRは次のような温度条件で行った:〔94℃、30秒→48℃、90秒→72℃、60秒〕×30回→72℃、7分。
各増幅産物をアガロースゲル電気泳動に供した結果を図5に示す。
図中、黄色ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌O157、出芽酵母のいずれについても、各レーンは下記の構成とした。
レーンM: 100bp DNA Ladder
レーン1: 本発明の試薬1を用いて調製したPCR用鋳型
レーン2: 本発明の試薬1の代わりに超純水を用いて調製したPCR用鋳型(対照)
図5に示された結果において、3種全ての被検試料において増幅産物に由来するバンドが検出されたことが確認された。特に、黄色ブドウ球菌や出芽酵母に対しては、対照よりも多くの増幅産物が得られることが確認された。
(比較例1)
・従来の核酸抽出試薬キットを用いた、黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)、大腸菌O157(グラム陰性菌)、真菌(出芽酵母)からのDNAの抽出
本発明の核酸抽出試薬キットに変えて、既存製品(シカジーニアスDNA抽出試薬、関東化学社製)を用い、核酸の抽出およびPCR法の鋳型の調製を同製品の製品マニュアルに従って行った以外は、前記実施例4と同様にして、PCR法の鋳型を調製し、当該鋳型の増幅を行った。
増幅産物をアガロース電気泳動に供した結果を図6に示す。
図中、黄色ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌O157、出芽酵母のいずれについても、各レーンは下記の構成とした。
レーンM: 100bp DNA Ladder
レーン1: 従来の核酸抽出試薬キット(シカジーニアスDNA抽出試薬、関東化学社製)を用いて調製した試料
レーン2: 上記試薬に代えて超純水を用いて調製した試料(対照)
図6に示された結果において、黄色ブドウ球菌およびO157の被検試料においては、実施例4(図5)と同等の増幅産物由来のバンドが検出されたが、出芽酵母の被検試料においては、増幅産物量が有意に少ないことが確認された。
(実施例5および参考例1)
本発明の核酸抽出試薬キットまたは既存製品(セルイーズ マウステール)を用いた、動物細胞からのDNAの抽出
マウステールを約3mm切り取ったものを動物細胞の被検試料として用いた。
試薬1を用いて、増幅対象をDNAとして被検試料から核酸の抽出を行い、PCR法の鋳型を調製した(実施例5)。一方、既存製品(セルイーズ マウステール;関東化学)のマニュアルに従って被検試料から核酸の抽出を行い、PCR法の鋳型を調製し、これを対照として用いた(参考例1)。
次に、494bpのPCR産物を得るために、センスプライマー(配列番号7:bGlo-F、5’-CCAATCTGCTCACACAGGATAGAGAGGGCAGG-3’)およびアンチセンスプライマー(配列番号8:bGlo-R5’-CCTTGAGGCTGTCCAAGTGATTCAGGCCATCG-3’)を用いてβ−グロビン遺伝子を増幅した。まず、10μM フォワードプライマー 0.4μL、10μM リバースプライマー 0.4μL、25mM MgCl 1.6μL、各2.5mM dNTP Mixture 1.6μL、10×Ex Taq Buffer(Mg2+ free、タカラバイオ)2μL、TaKaRa Ex Taq(タカラバイオ)0.1μL、超純水で3倍に希釈された鋳型1.2μLおよび超純水12.7μLを混合して全量20μLのPCR反応混合液を調製した。そして、PCRを次のような温度条件で行った:94℃、1分→〔94℃、30秒→60℃、30秒→72℃、30秒〕×35回→72℃、4分。各増幅産物をアガロースゲル電気泳動に供した結果を図7に示す。
図中、本発明の核酸酸抽出キットおよび既存製品(セルイーズ マウステール;関東化学)のいずれについても、各レーンは下記の構成とした。
レーンM: 100bp DNA Ladder
レーン1: 本発明の試薬1もしくは既存製品を用いて調製した試料
レーン2: 本発明の試薬1もしくは既存製品の代わりに超純水を用いて調製した試料(対照)
図7に示された結果において、本発明の核酸抽出試薬キットを用いた場合(実施例5)の増幅産物量は、マウステール、牛肉、豚肉等の生体試料(動物細胞)に対象を特化した既存製品(セルイーズ マウステール;関東化学)の場合(参考例1)と同等以上であったことが確認された。
(実施例6)
・黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)、大腸菌O157(グラム陰性菌)、真菌(出芽酵母)からのRNAの抽出
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC 102141)と大腸菌O157(Escherichia coli、ATCC 35150)をSCD寒天培地に、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae、ATCC 9763)をサブローブドウ糖寒天培地に播種し、37℃で一晩好気培養した。得られた各コロニーを被検試料として、上記試薬1および試薬を用いて、増幅対象をRNAとして被検試料から核酸の抽出を行い、RT−PCR法の鋳型を調製した。
2μM リバースプライマー(PCR反応混合液調製時に使用するものと同じ)0.5μL、5×PrimeScript Buffer for Real Time(タカラバイオ)2μL、PrimeScript RT Enzyme Mix I(タカラバイオ)0.5μL、鋳型5μLおよび超純水2μLを混合して全量10μLの逆転写反応混合液を調製した。次に、逆転写反応を次のような温度条件で行った:42℃、15分→85℃、5秒。これにより逆転写反応済みの鋳型を調製した。
次に、10μM フォワードプライマー 1μL、10μM リバースプライマー 1μL、5×AptaTaq DNA Master(ロシュ)4μL、逆転写反応済みの鋳型2μL、超純水12μLを混合して全量20μLのPCR反応混合液を調製し、これをPCR反応によるDNAの増幅反応に供した。それぞれの被検試料におけるプライマーと温度条件を以下に示す。
黄色ブドウ球菌については、324bpのRT−PCR産物を得るために、センスプライマー(配列番号3:S4F、5’-GACAACTAGAGATAGAGCCTTCC-3’)およびアンチセンスプライマー(配列番号4:S4R、5’-AGTCGAGTTGCAGACTAC-3’)を用いて16S rRNAの配列を増幅した。PCRは次のような温度条件で行った:〔94℃、30秒→54℃、90秒→72℃、60秒〕×30回→72℃、7分。
O157については、180bpのRT−PCR産物を得るために、センスプライマー(配列番号5:stx1F、5’-ATAAATCGCCATTCGTTGACTAC-3’)およびアンチセンスプライマー(配列番号6:stx1R、5’-AGAACGCCCACTGAGATCATC-3’)を用いてベロ毒素1遺伝子配列を増幅した。PCRは次のような温度条件で行った:〔94℃、30秒→62℃、90秒→72℃、60秒〕×30回→72℃、7分。
出芽酵母については、756bpのRT−PCR産物を得るために、センスプライマー(配列番号9:ACT1f、5’-TACGTTTCCATCCAAGCCGTT-3’)およびアンチセンスプライマー(配列番号10:ACT1r、5’-AACATACGCGCACAAAAGCAGA-3’)を用いてURA3遺伝子配列を増幅した。PCRは次のような温度条件で行った:〔94℃、30秒→53℃、90秒→72℃、60秒〕×30回→72℃、7分。
増幅産物をアガロースゲル電気泳動に供した結果を図8に示す。
図中、黄色ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌O157、出芽酵母のいずれについても、各レーンは下記の構成とした。
レーンM: 100bp DNA Ladder
レーン1: 本発明の試薬1および試薬2を用いて調製した試料(PrimeScript
RT Enzyme Mix Iを添加した状態)
レーン2: 本発明の試薬1および試薬2を用いて調製した試料(PrimeScript
RT Enzyme Mix Iを添加しなかった状態)
レーン3: 本発明の試薬1を超純水に置き換え、さらに試薬2を用いて調製した試料(PrimeScript RT Enzyme Mix Iを添加した状態)
レーン4: 本発明の試薬1を超純水に置き換え、さらに試薬2を用いて調製した試料(PrimeScript RT Enzyme Mix Iを添加しなかった状態)
図8に示された結果において、3種全ての被検試料において増幅産物由来のバンドが確認された。
(実施例7および比較例2)
・血液成分が混入した真菌(出芽酵母)試料における核酸の抽出
出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae、ATCC 9763)をサブローブドウ糖寒天培地に播種し、37℃で一晩好気培養した。得られたコロニー1μLをヒトプール血清10μLに懸濁し、この全量を被検試料とした。
この被検試料について、DNAの抽出およびPCR法を実施例4と同様に、RNAの抽出およびRT−PCR法を実施例6と同様に行い、増幅産物を得た(実施例7)。対照として、本発明の核酸抽出試薬キットに変えて既存製品(シカジーニアスDNA抽出試薬;関東化学)を用いて、比較例1と同様に、PCR用の鋳型を調製した。なお、RNAは同既存製品の適用外のためRT−PCR鋳型の調製は実施していない。増幅産物をアガロースゲル電気泳動に供した結果を図9(PCR)および図10(RT−PCR)に示す。
図9において、本発明の核酸抽出試薬キットおよび既存製品(シカジーニアスDNA抽出試薬;関東化学)のいずれについても、各レーンは下記の構成とした。
レーンM: 100bp DNA Ladder
レーン1: 本発明の試薬1もしくは既存製品を用いて調製した試料
レーン2: 本発明の試薬1もしくは既存製品の代わりに超純水を用いて調製した試料
また、図10において、各レーンは下記の構成とした。
レーンM: 100bp DNA Ladder
レーン1: 本発明の核酸抽出試薬キット(試薬1および試薬2)を用いて調製した試料(PrimeScript RT Enzyme Mix Iを添加した状態)
レーン2: 本発明の核酸抽出試薬キット(試薬1および試薬2)を用いて調製した試料(PrimeScript RT Enzyme Mix Iを添加しなかった状態)
レーン3: 本発明の試薬1を超純水に置き換え、さらに試薬2を用いて調製した試料(PrimeScript RT Enzyme Mix Iを添加した状態)
レーン4: 本発明の試薬1を超純水に置き換え、さらに試薬2を用いて調製した試料(PrimeScript RT Enzyme Mix Iを添加しなかった状態)
図9および図10に示される結果において、本発明の核酸抽出試薬キットを用いた場合には、血清(血液成分)が混入していてもDNAやRNAが検出できた。一方、既存製品を用いた対照実験では、DNAは検出されなかった。これにより、夾雑物の有無にかかわらず、本発明の方法により、核酸の抽出およびそれに引き続く対象となる核酸配列の増幅が可能となることが確認できた。
以上により、本発明の核酸抽出試薬キットおよび本発明の核酸抽出方法を用いた場合には、多種多様な被検試料に適用可能であり、PCR法やRT−PCR法等の遺伝子増幅反応に直接使用可能な核酸鋳型を、簡便かつ迅速に、好ましくは温和な条件で、調製することができることが確認できた。

Claims (10)

  1. 両性イオン性緩衝液および界面活性剤を含む核酸抽出用試薬を、被検試料と接触させる工程からなる核酸抽出方法であって、両性イオン性緩衝液がグッド緩衝液であり、界面活性剤がグリココール酸またはその塩であり、核酸抽出用試薬中における緩衝剤の濃度が、9〜364mmol/Lであり、核酸抽出用試薬中における界面活性剤の濃度が、0.009〜9mmol/Lであり、核酸抽出用試薬の被検試料との懸濁が一回のみであり、被検試料が細胞壁を有する生物由来の試料である、前記方法。
  2. 核酸抽出用試薬が、タンパク質分解酵素を含む、請求項1に記載の核酸抽出方法。
  3. タンパク質分解酵素が、プロテアーゼKである、請求項2に記載の核酸抽出方法。
  4. 核酸抽出用試薬中におけるタンパク質分解酵素の濃度が、0.09〜45U/mLである、請求項2または3に記載の核酸抽出方法。
  5. 両性イオン性緩衝液が、トリシンを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の核酸抽出方法。
  6. 細胞壁を有する生物が、グラム陽性菌、真菌または酵母である、請求項1〜のいずれか一項に記載の核酸抽出方法。
  7. 被検試料から核酸としてDNAおよび/またはRNAが、抽出される、請求項1〜のいずれか一項に記載の核酸抽出方法。
  8. 被検試料と接触させ、被検試料から核酸を抽出した核酸抽出用試薬は、核酸増幅反応に供されるものである、請求項1〜のいずれか一項に記載の核酸抽出方法。
  9. 両性イオン性緩衝液および界面活性剤を含み、被検試料が細胞壁を有する生物由来の試料である核酸抽出用試薬であって、両性イオン性緩衝液がグッド緩衝液であり、界面活性剤がグリココール酸またはその塩であ核酸抽出用試薬中における緩衝剤の濃度が、9〜364mmol/Lであり、核酸抽出用試薬中における界面活性剤の濃度が、0.009〜9mmol/Lであり、核酸抽出用試薬の被検試料との懸濁が一回のみである、前記試薬。
  10. 核酸抽出用試薬を構成する両性イオン性緩衝液と界面活性剤と各構成成分とを含み、被検試料が細胞壁を有する生物由来の試料である核酸抽出試薬キットであって、両性イオン性緩衝液がグッド緩衝液であり、界面活性剤がグリココール酸またはその塩であ核酸抽出用試薬中における緩衝剤の濃度が、9〜364mmol/Lであり、核酸抽出用試薬中における界面活性剤の濃度が、0.009〜9mmol/Lであり、核酸抽出用試薬の被検試料との懸濁が一回のみである、前記キット。
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