上述の装置のようにモータによる制振制御を行なっているときには従来の失火判定手法では失火を判定するのは困難となるが、失火の判定が困難となる要因としては、こうした制振制御に限られない。例えば、エンジンのトルク変動を抑制する目的で用いられるダンパなどのねじれ要素を介して変速機などにエンジンが接続されているときには、エンジンの運転ポイントによってはダンパを含めた変速機全体が共振し、失火の判定が困難となる。
本発明の内燃機関の失火判定装置およびこれを搭載する車両並びに失火判定方法は、ダンパなどのねじれ要素を介して後段に接続された内燃機関の失火をより確実に判定することを目的の一つとする。また、本発明の内燃機関の失火判定装置およびこれを搭載する車両並びに失火判定方法は、ダンパなどのねじれ要素を介して後段に接続された内燃機関の失火を精度よく判定することを目的の一つとする。
本発明の内燃機関の失火判定装置およびこれを搭載する車両並びに失火判定方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明の第1の内燃機関の失火判定装置は、
出力軸がねじれ要素を介して後段に接続された複数気筒の内燃機関の失火を判定する失火判定装置であって、
前記内燃機関の出力軸の回転位置を検出する回転位置検出手段と、
前記検出された回転位置に基づいて前記内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転数である単位回転角回転数を演算する単位回転角回転数演算手段と、
前記内燃機関の運転ポイントが前記ねじれ要素を含む後段の共振領域に属しないときには前記演算された単位回転角回転数に対して第1の手法を用いて該内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定し、前記内燃機関の運転ポイントが前記共振領域に属するときには前記演算された単位回転角回転数に対して前記第1の手法とは異なる第2の手法を用いて該内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する失火判定手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第1の内燃機関の失火判定装置では、複数気筒の内燃機関の運転ポイントが内燃機関を後段に接続するねじれ要素を含む後段の共振領域に属しないときには内燃機関の出力軸の回転位置に基づいて演算される内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転数である単位回転角回転数に対して第1の手法を用いて内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する。そして、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属するときには単位回転角回転数に対して第1の手法とは異なる第2の手法を用いて内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する。このように、内燃機関の運転ポイントが内燃機関を後段に接続するねじれ要素を含む後段の共振領域に属するか否かにより失火の判定手法を変更することにより、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属するときに、より確実に精度よく失火を判定することができる。
こうした本発明の第1の内燃機関の失火判定装置において、前記第1の手法は前記演算された単位回転角回転数の変動に基づいて失火を判定する手法であり、前記第2の手法は前記演算された単位回転角回転数に対して低周波数領域をカットするハイパスフィルタを施してなるフィルタ処理後回転数の変動に基づいて失火を判定する手法である、ものとすることもできる。
この第2の手法としてハイパスフィルタを用いる態様の本発明の第1の内燃機関の失火判定装置において、前記第2の手法は、前記内燃機関の回転数に応じたハイパスフィルタを用いる手法であるものとすることもできる。この場合、前記第2の手法は、前記内燃機関の回転数が大きくなるほど高い周波数以下の領域をカットするハイパスフィルタを用いる手法であるものとすることもできる。更にこの場合、前記第2の手法は、前記内燃機関の回転数の半分の周波数以上の周波数以下の領域をカットするハイパスフィルタを用いる手法であるものとすることもできる。これらは、1気筒が失火しているときの失火気筒に基づく回転変動は内燃機関の回転数の半分の周波数であり、この近傍以下の周波数領域をカットすることにより共振による成分を除去できることに基づいている。
また、第2の手法としてハイパスフィルタを用いる態様の本発明の第1の内燃機関の失火判定装置において、前記第2の手法は、前記内燃機関の回転数に応じて前記内燃機関の爆発燃焼の周波数の減衰は小さいが該爆発燃焼の周波数を気筒数で除した周波数の減衰は大きい所定のハイパスフィルタの枚数を変えて得られるハイパスフィルタを前記演算された単位回転角回転数に施して得られるフィルタ処理後回転数の変動に基づいて失火を判定する手法であるものとすることもできる。こうすれば、所定のハイパスフィルタの枚数を変えることによりハイパスフィルタを内燃機関の回転数に応じたものとすることができる。この場合、前記第2の手法は、前記内燃機関の回転数が大きくなるほど前記所定のハイパスフィルタの枚数が少なくなる傾向のハイパスフィルタを前記演算された単位回転角回転数に施して得られるフィルタ処理後回転数の変動に基づいて失火を判定する手法であるものとすることもできる。更に、この場合、前記第2の手法は、前記内燃機関の回転数が第1の回転数未満のときには前記所定のハイパスフィルタを第1の枚数により構成されるハイパスフィルタを前記演算された単位回転角回転数に施して得られるフィルタ処理後回転数の変動に基づいて失火を判定し、前記内燃機関の回転数が前記第1の回転数以上で該第1の回転数より大きな前記第2の回転数未満のときには前記所定のハイパスフィルタを前記第1の枚数より少ない第2の枚数により構成されるハイパスフィルタを前記演算された単位回転角回転数に施して得られるフィルタ処理後回転数の変動に基づいて失火を判定する手段であるものとすることもできる。
さらに、第2の手法としてハイパスフィルタを用いる態様の本発明の第1の内燃機関の失火判定装置において、前記第2の手法は、前記内燃機関の回転と前記ねじれ要素のねじれに基づいて生じる共振の周期との関係である共振周期関係に応じたハイパスフィルタを前記演算された単位回転角回転数に施して得られるフィルタ処理後回転数の変動に基づいて失火を判定する手法であるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関の回転とねじれ要素のねじれに基づいて生じる共振の周期との関係である共振周期関係に応じたハイパスフィルタを用いるから、ねじれ要素のねじれに基づいて生じる共振の影響をより確実に除去したフィルタ処理後回転数を得ることができ、内燃機関の失火をより精度よく判定することができる。この場合、前記第2の手法は、前記共振周期関係として前記共振の周期が前記内燃機関の1回転である関係のときには前記内燃機関の爆発燃焼の周波数の減衰は小さいが該爆発燃焼の周波数を気筒数で除して2倍した周波数の減衰は大きい第1のハイパスフィルタを前記演算された単位回転角回転数に施して得られるフィルタ処理後回転数の変動に基づいて失火を判定し、前記共振周期関係として前記共振の周期が前記内燃機関の2回転である関係のときには前記内燃機関の爆発燃焼の周波数の減衰は小さいが該爆発燃焼の周波数を気筒数で除した周波数の減衰は大きい第2のハイパスフィルタを前記演算された単位回転角回転数に施して得られるフィルタ処理後回転数の変動に基づいて失火を判定する手法であるものとすることもできる。更にこの場合、前記第1のハイパスフィルタは前記内燃機関の爆発燃焼の周波数の減衰は小さいが該爆発燃焼の周波数を気筒数で除した周波数の減衰は大きい所定のハイパスフィルタを第1の枚数を用いて構成されてなり、前記第2のハイパスフィルタは前記所定のハイパスフィルタを前記第1の枚数より少ない第2の枚数を用いて構成されてなる、ものとすることもできる。
あるいは、第2の手法としてハイパスフィルタを用いる態様の本発明の第1の内燃機関の失火判定装置において、前記第2の手法は、前記フィルタ処理後回転数の変動分が閾値変動分未満のときに失火と判定する手法であるものとすることもできる。ハイパスフィルタを施すことにより、失火気筒に基づく回転変動が小さくなることに基づく。この場合、前記第2の手法は、前記内燃機関の出力トルクに応じた閾値変動分を用いて失火を判定する手法であるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関の出力トルクに応じてより確実に精度よく失火を判定することができる。
これらいずれかの態様の本発明の第1の内燃機関の失火判定装置において、前記単位回転角回転数に代えて前記内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転角速度である単位回転角角速度を用いて失火を判定するものとすることもできる。単位回転角回転数は、係数を乗じるだけで単位回転角角速度とすることができるから、単位回転角回転数に代えて単位回転角角速度を用いても同様に内燃機関の失火を精度よく判定することができる。
本発明の第2の内燃機関の失火判定装置は、
出力軸がねじれ要素を介して後段に接続された複数気筒の内燃機関の失火を判定する失火判定装置であって、
前記内燃機関の出力軸の回転位置を検出する回転位置検出手段と、
前記検出された回転位置に基づいて前記内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転角速度である単位回転角角速度を演算する単位回転角角速度演算手段と、
前記内燃機関の運転ポイントが前記ねじれ要素を含む後段の共振領域に属しないときには前記演算された単位回転角角速度に対して第1の手法を用いて該内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定し、前記内燃機関の運転ポイントが前記共振領域に属するときには前記演算された単位回転角角速度に対して前記第1の手法とは異なる第2の手法を用いて該内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する失火判定手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第2の内燃機関の失火判定装置では、複数気筒の内燃機関の運転ポイントが内燃機関を後段に接続するねじれ要素を含む後段の共振領域に属しないときには内燃機関の出力軸の回転位置に基づいて演算される内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転角速度である単位回転角角速度に対して第1の手法を用いて内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する。そして、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属するときには単位回転角角速度に対して第1の手法とは異なる第2の手法を用いて内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する。このように、内燃機関の運転ポイントが内燃機関を後段に接続するねじれ要素を含む後段の共振領域に属するか否かにより失火の判定手法を変更することにより、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属するときに、より確実に精度よく失火を判定することができる。
こうした本発明の第2の内燃機関の失火判定装置において、前記第1の手法は前記演算された単位回転角角速度に基づいて失火を判定する手法であり、前記第2の手法は前記演算された単位回転角角速度に対して低周波数領域をカットするハイパスフィルタを施してなるフィルタ処理後角速度に基づいて失火を判定する手法である、ものとすることもできる。
こうした第2の手法としてハイパスフィルタを用いる態様の本発明の第2の内燃機関の失火判定装置において、前記第2の手法は、前記内燃機関が所定負荷以上の高負荷で運転されているときには前記フィルタ処理後角速度に対して高負荷用の判定処理を施して失火を判定し、前記内燃機関が前記所定負荷未満の低負荷で運転されているときには前記フィルタ処理後角速度に対して前記高負荷用の判定処理とは異なる低負荷用の判定処理を施して失火を判定する手法であるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属しているときに内燃機関が所定負荷以上の高負荷で運転されているでも、あるいは内燃機関が所定負荷未満の低負荷で運転されているときにでも、より適正に内燃機関の失火を判定することができる。
この第2の手法として内燃機関の負荷により処理を変更して失火を判定する態様の本発明の第2の内燃機関の失火判定装置において、前記高負荷用の判定処理は、前記フィルタ処理後角速度の微分値の絶対値を第1の所定範囲で積分して得られる高負荷用判定パラメータに基づいて失火を判定する処理であるものとすることもできる。この場合、前記第1の所定範囲は、前記複数気筒のうちの対象の気筒の圧縮行程における上死点から該対象の気筒の次の気筒の圧縮行程における上死点までに含まれる第1の所定クランク角範囲であるものとすることもできる。また、前記高負荷用の判定処理は、前記高負荷用判定パラメータが高負荷用所定値未満のときに失火と判定する処理であるものとすることもできる。これらにより、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属しており内燃機関が高負荷で運転されているときの内燃機関の失火を精度よく判定することができる。
また、第2の手法として内燃機関の負荷により処理を変更して失火を判定する態様の本発明の第2の内燃機関の失火判定装置において、前記低負荷用の判定処理は、前記フィルタ処理後角速度の第2の所定範囲で積分して得られる低負荷用判定パラメータに基づいて失火を判定する処理であるものとすることもできる。この場合、前記第2の所定範囲は、前記複数気筒のうちの対象の気筒の圧縮行程における上死点から該対象の気筒の次の気筒の圧縮行程における上死点までに含まれる第1の所定クランク角範囲であるものとすることもできる。また、前記低負荷用の判定処理は、前記低負荷用判定パラメータが低負荷用所定値未満のときに失火と判定する処理であるものとすることもできる。これらにより、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属しており内燃機関が低負荷で運転されているときの内燃機関の失火を精度よく判定することができる。
さらに、第2の手法として内燃機関の負荷により処理を変更して失火を判定する態様の本発明の第2の内燃機関の失火判定装置において、前記第2の手法は、前記内燃機関の排ガスを浄化する浄化装置に含まれる触媒を活性化するために暖機運転しているときには、前記内燃機関の負荷に拘わらずに、前記低負荷用の判定処理を施して失火を判定する手法であるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属しており内燃機関を触媒の活性化のための暖機運転しているときの内燃機関の失火を精度よく判定することができる。
第2の手法としてハイパスフィルタを用いる態様の本発明の第2の内燃機関の失火判定装置において、前記第2の手法は、前記内燃機関から出力されるトルクのうち往復運動を行なう部品の慣性に基づく往復質量慣性トルクが前記内燃機関の出力軸の回転角速度に与える影響成分を演算すると共に前記フィルタ処理後角速度から前記演算した影響成分を減じて得られる判定用角速度を用いて失火を判定する手法であるものとすることもできる。こうすれば、フィルタ処理後角速度から往復運動を行なう部品の慣性に基づく往復質量慣性トルクによる影響成分を減じた判定用角速度を用いて失火を判定することにより、内燃機関の爆発燃焼や失火などの気筒内の圧力に伴うトルクの影響を顕在化して失火を判定するから、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属するときの内燃機関の失火をより精度よく失火を判定することができる。この場合、前記往復質量慣性トルクは、往復部品の質量の総和をMとし、前記内燃機関の出力軸の回転位置の基準位置からの角度をθとし、前記内燃機関のピストンの頂面の投影面積をAとし、前記内燃機関の出力軸の回転角速度をωとし、前記内燃機関の気筒内の体積を前記出力軸の回転位置の角度θの関数としてV(θ)としたときに、次式で示されてなるものとすることもできる。
これらのいずれかの態様の本発明の第2の内燃機関の失火判定装置において、前記単位回転角角速度に代えて前記内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転数である単位回転角回転数を用いて失火を判定するものとすることもできる。単位回転角角速度は、係数を乗じるだけで単位回転角回転数とすることができるから、単位回転角角速度に代えて単位回転角回転数を用いても同様に内燃機関の失火を精度よく判定することができる。
本発明の車両は、出力軸がねじれ要素としてのダンパを介して車軸側である後段に接続された複数気筒の内燃機関と、前記内燃機関の失火を判定する上述のいずれかの態様の本発明の第1または第2の内燃機関の失火判定装置と、を備えることを要旨とする。したがって、本発明の車両は、本発明の第1または第2の内燃機関の失火判定装置が奏する効果、例えば、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属するときでも、より確実に精度よく失火を判定することができる効果などと同様の効果を奏することができる。ここで、ダンパの後段としては変速機構などが含まれる。
こうした本発明の車両において、前記ダンパの後段側に該ダンパに接続されたダンパ軸と車軸側に接続された駆動軸とに接続され、電力と動力の入出力を伴って前記ダンパ軸と前記駆動軸とに動力を入出力する電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力する電動機と、を備えるものとすることもできる。この場合、電力動力入出力手段や電動機により車軸側のトルク変動に伴う振動を抑制する制振制御を行なっている場合でも、内燃機関の失火を精度良く判定することができる。
本発明の第1の内燃機関の失火判定方法は、
出力軸がねじれ要素を介して後段に接続された複数気筒の内燃機関の失火を判定する失火判定方法であって、
内燃機関の出力軸の回転位置に基づいて前記内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転数である単位回転角回転数を演算し、前記内燃機関の運転ポイントが前記ねじれ要素を含む後段の共振領域に属しないときには前記演算した単位回転角回転数に対して第1の手法を用いて該内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定し、前記内燃機関の運転ポイントが前記共振領域に属するときには前記演算した単位回転角回転数に対して前記第1の手法とは異なる第2の手法を用いて該内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する、
ことを要旨とする。
この本発明の第1の内燃機関の失火判定方法では、複数気筒の内燃機関の運転ポイントが内燃機関を後段に接続するねじれ要素を含む後段の共振領域に属しないときには内燃機関の出力軸の回転位置に基づいて演算される内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転数である単位回転角回転数に対して第1の手法を用いて内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する。そして、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属するときには単位回転角回転数に対して第1の手法とは異なる第2の手法を用いて内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する。このように、内燃機関の運転ポイントが内燃機関を後段に接続するねじれ要素を含む後段の共振領域に属するか否かにより失火の判定手法を変更することにより、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属するときに、より確実に精度よく失火を判定することができる。
こうした本発明の第1の内燃機関の失火判定方法において、前記第1の手法は前記演算された単位回転角回転数の変動に基づいて失火を判定する手法であり、前記第2の手法は前記演算された単位回転角回転数に対して低周波数領域をカットするハイパスフィルタを施してなるフィルタ処理後回転数の変動に基づいて失火を判定する手法である、ものとすることもできる。
この第2の手法としてハイパスフィルタを用いる態様の本発明の第1の内燃機関の失火判定方法において、前記第2の手法は、前記内燃機関の回転数に応じて前記内燃機関の爆発燃焼の周波数の減衰は小さいが該爆発燃焼の周波数を気筒数で除した周波数の減衰は大きい所定のハイパスフィルタの枚数を変えて得られるハイパスフィルタを前記演算された単位回転角回転数に施して得られるフィルタ処理後回転数の変動に基づいて失火を判定する手法であるものとすることもできる。こうすれば、所定のハイパスフィルタの枚数を変えることによりハイパスフィルタを内燃機関の回転数に応じたものとすることができる。
また、第2の手法としてハイパスフィルタを用いる態様の本発明の第1の内燃機関の失火判定方法において、前記第2の手法は、前記内燃機関の回転と前記ねじれ要素のねじれに基づいて生じる共振の周期との関係である共振周期関係に応じたハイパスフィルタを前記演算された単位回転角回転数に施して得られるフィルタ処理後回転数の変動に基づいて失火を判定する手法であるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関の回転とねじれ要素のねじれに基づいて生じる共振の周期との関係である共振周期関係に応じたハイパスフィルタを用いるから、ねじれ要素のねじれに基づいて生じる共振の影響をより確実に除去したフィルタ処理後回転数を得ることができ、内燃機関の失火をより精度よく判定することができる。
本発明の第2の内燃機関の失火判定方法は、
出力軸がねじれ要素を介して後段に接続された複数気筒の内燃機関の失火を判定する失火判定方法であって、
前記内燃機関の出力軸の回転位置に基づいて前記内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転角速度である単位回転角角速度を演算し、前記内燃機関の運転ポイントが前記ねじれ要素を含む後段の共振領域に属しないときには前記演算した単位回転角角速度に対して第1の手法を用いて該内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定し、前記内燃機関の運転ポイントが前記共振領域に属するときには前記演算した単位回転角角速度に対して前記第1の手法とは異なる第2の手法を用いて該内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する、
ことを特徴とする。
この本発明の第2の内燃機関の失火判定方法では、複数気筒の内燃機関の運転ポイントが内燃機関を後段に接続するねじれ要素を含む後段の共振領域に属しないときには内燃機関の出力軸の回転位置に基づいて演算される内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転角速度である単位回転角角速度に対して第1の手法を用いて内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する。そして、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属するときには単位回転角角速度に対して第1の手法とは異なる第2の手法を用いて内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する。このように、内燃機関の運転ポイントが内燃機関を後段に接続するねじれ要素を含む後段の共振領域に属するか否かにより失火の判定手法を変更することにより、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属するときに、より確実に精度よく失火を判定することができる。
こうした本発明の第2の内燃機関の失火判定方法において、前記第1の手法は前記演算された単位回転角角速度に基づいて失火を判定する手法であり、前記第2の手法は前記演算された単位回転角角速度に対して低周波数領域をカットするハイパスフィルタを施してなるフィルタ処理後角速度に基づいて失火を判定する手法である、ものとすることもできる。
この第2の手法としてハイパスフィルタを用いる態様の本発明の第2の内燃機関の失火判定方法において、前記第2の手法は、前記内燃機関が所定負荷以上の高負荷で運転されているときには前記フィルタ処理後角速度の微分値の絶対値を第1の所定範囲で積分して得られる高負荷用判定パラメータに基づいて失火を判定し、前記内燃機関が前記所定負荷未満の低負荷で運転されているときには前記フィルタ処理後角速度の第2の所定範囲で積分して得られる低負荷用判定パラメータに基づいて失火を判定する手法であるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属しているときに内燃機関が所定負荷以上の高負荷で運転されているでも、あるいは内燃機関が所定負荷未満の低負荷で運転されているときにでも、より適正に内燃機関の失火を判定することができる。
また、第2の手法としてハイパスフィルタを用いる態様の本発明の第2の内燃機関の失火判定方法において、前記第2の手法は、前記内燃機関から出力されるトルクのうち往復運動を行なう部品の慣性に基づく往復質量慣性トルクが前記内燃機関の出力軸の回転角速度に与える影響成分を演算すると共に前記フィルタ処理後角速度から前記演算した影響成分を減じて得られる判定用角速度を用いて失火を判定する手法であるものとすることもできる。こうすれば、フィルタ処理後角速度から往復運動を行なう部品の慣性に基づく往復質量慣性トルクによる影響成分を減じた判定用角速度を用いて失火を判定することにより、内燃機関の爆発燃焼や失火などの気筒内の圧力に伴うトルクの影響を顕在化して失火を判定するから、内燃機関の運転ポイントが共振領域に属するときの内燃機関の失火をより精度よく失火を判定することができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の第1実施例である内燃機関の失火判定装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。第1実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にねじれ要素としてのダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。ここで、第1実施例の内燃機関の失火判定装置としては、主としてエンジン22を制御するエンジン用電子制御ユニット24が該当する。
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な6気筒の内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入する共に気筒毎に設けられた燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃料室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化装置(三元触媒)134を介して外気へ排出される。
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からのエアフローメータ信号AF,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,空燃比センサ135aからの空燃比AF,酸素センサ135bからの酸素信号などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、上述したクランクポジションセンサ140は、クランクシャフト26と回転同期して回転するように取り付けられて10度毎に歯が形成されると共に基準位置検出用に2つ分の欠歯を形成したタイミングローターを有する電磁ピックアップセンサとして構成されており、クランクシャフト26が10度回転する毎に整形波を生じさせる。
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された第1実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
次に、こうして構成された第1実施例のハイブリッド自動車20に搭載されたエンジン22のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する際の動作について説明する。図3は、エンジンECU24により実行される失火判定処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎に繰り返し実行される。
失火判定処理が実行されると、エンジンECU24のCPU24aは、まず、エンジン22の回転数NeとトルクTeとを入力し(ステップS100)、入力した回転数NeとトルクTeとに基づいてエンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段(動力分配統合機構30など)の共振領域にあるか否かを判定する処理を実行する(ステップS110)。ここで、第1実施例では、エンジン22の回転数Neについては、クランクポジションセンサ140からのクランク角CAに基づいて演算により求められたものを入力するものとし、トルクTeについては、モータMG1のトルク指令Tm1*とエンジン22の回転数Neから計算されたものを入力するものとした。エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域にあるか否かについては、予め実験などにより共振領域となるエンジン22の回転数NeとトルクTeとを求めて共振運転範囲としてROM24bに記憶しておき、入力したエンジン22の回転数NeとトルクTeが記憶した共振運転範囲に属するか否かにより判定するものとした。なお、共振運転範囲は、エンジン22の特性やダンパ28より後段(動力分配統合機構30)などの特性によって実験により求めることができる。
ステップS110でエンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域にはないと判定されると、図4に例示する通常失火検出処理によりエンジン22のいずれかの気筒が失火している否かの失火検出を行ない(ステップS120)、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域にあると判定されると図5に例示する共振領域失火検出処理によりエンジン22のいずれかの気筒が失火している否かの失火検出を行なって(ステップS130)、失火判定処理を終了する。
図4の通常失火検出処理では、まず、クランクポジションセンサ140により検出されるクランク角CAを入力すると共に図6に例示するN30演算処理により演算されるクランク角CAが30度ごとの回転数である30度回転数N30を入力し(ステップS200)、入力した30度回転数N30の逆数をとってクランクシャフト26が30度回転するのに要する30度回転所要時間T30を計算する(ステップS210)。ここで、30度回転数N30は、N30演算処理に示すように、基準となるクランク角から30度毎のクランク角CAを入力し(ステップS400)、30度を30度回転するのに要する時間によって除することにより30度回転数N30を計算する(ステップS410)、ことにより求めることができる。次に、30度回転所要時間T30が閾値Trefより大きいか否かを判定し(ステップS220)、30度回転所要時間T30が閾値Trefより大きいときには、失火していると判定し、入力したクランク角CAに基づいて失火している気筒を特定して(ステップS230)、通常失火検出処理を終了する。ここで、閾値Trefは、30度回転所要時間T30の基準となるクランク角CAで燃焼行程となる気筒が失火していないときの30度回転所要時間T30より大きく、その気筒が失火しているときの30度回転所要時間T30より小さな値として設定されており、実験などにより求めることができる。失火している気筒は、閾値Trefを超えた30度回転所要時間T30の基準となるクランク角CAで燃焼行程となる気筒として特定することができる。エンジン22の運転状態が共振領域にないときに1気筒が失火しているエンジン22の30度回転所要時間T30とクランク角CAとの時間変化の一例を図7に示す。図示するように、クランク角CAが720度に1回の割合で30度回転所要時間T30が閾値Trefを超えている。なお、30度回転所要時間T30が閾値Tref以下のときには、失火していないと判定して通常失火検出処理を終了する。
図5の共振領域失火検出処理では、まず、クランクポジションセンサ140により検出されるクランク角CAを入力すると共に図6に例示するN30演算処理により演算されるクランク角CAが30度ごとの回転数である30度回転数N30を入力する(ステップS300)。そして、エンジン22の回転数Neに基づいてハイパスフィルタを設定し(ステップS310)、30度回転数N30に設定したハイパスフィルタを施してフィルタ処理後回転数F(N30)を得る(ステップS320)。ここで、ハイパスフィルタを施すのは、1気筒が失火しているときの共振周波数は失火の周波数、即ちクランクシャフト26が720度回転するのに要する時間の周期に相当する周波数(エンジン22の回転数Neの半分の周波数)となるため、クランクシャフト26が120度回転する毎に燃焼行程を実行する6気筒のエンジン22では、その周期に相当する周波数を透過すると共に共振周波数をカットすることにより、30度回転数N30の変化から共振による影響を取り除くためである。ハイパスフィルタとしては、第1実施例では次式(1)に示す伝達関数Gのものを用いた。第1実施例で用いたハイパスフィルタのボード線図の一例を図8に示す。ハイパスフィルタの特性は、共振周波数のゲインを十分落とすように設計すればよいから、エンジン22の回転数Neからクランクシャフト26が720度回転するのに要する時間を求め、その時間を周期とする周波数が十分にカットされるようカットオフ周波数を設定すればよい。
続いて、エンジン22のトルクTeに基づいて閾値Frefを設定すると共に(ステップS330)、フィルタ処理後回転数F(N30)の変化における谷と山の差である変動分ΔFが設定した閾値Fref未満であるか否かを判定し(ステップS340)、変動分ΔFが閾値Fref未満のときには、失火していると判定し、入力したクランク角CAに基づいて失火している気筒を特定して(ステップS350)、共振領域失火検出処理を終了する。ここで、閾値Frefは、30度回転数N30の基準となるクランク角CAで燃焼行程となる気筒が失火していないときのフィルタ処理後回転数F(N30)の変動分より小さく、その気筒が失火しているときのフィルタ処理後回転数F(N30)の変動分より大きな値として設定されるものであり、実験などにより求めることができる。第1実施例では、エンジン22のトルクTeと閾値Trefとの関係を予め実験などに求めてマップとしてROM24bに記憶しておき、トルクTeが与えられると記憶したマップから対応する閾値Frefを導出して設定するものとした。エンジン22の運転状態が共振領域に属するときに1気筒が失火しているエンジン22の30度回転所要時間T30とクランク角CAとフィルタ処理後回転数F(N30)の時間変化の一例を図9に示す。図示するように、フィルタ処理後回転数F(N30)は共振による影響が除かれて、良好に失火を検出している。なお、フィルタ処理後回転数F(N30)の変動分ΔFが閾値Fref以下のときには、失火していないと判定して共振領域失火検出処理を終了する。
以上説明した第1実施例のハイブリッド自動車20が搭載する内燃機関の失火判定装置によれば、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属しないときには通常時失火検出処理により失火を判定し、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときには通常時失火検出処理とは異なる共振領域失火検出処理により失火を判定するから、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属しないときでも属するときでも、より確実に精度よく失火を判定することができる。
また、第1実施例のハイブリッド自動車20が搭載する内燃機関の失火判定装置によれば、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときには、30度回転数N30に共振による影響を取り除くハイパスフィルタを施したフィルタ処理後回転数F(N30)の変動分ΔFが閾値Fref未満であるか否かにより失火を判定するから、共振領域に属するときでも、より確実に精度よく失火を判定することができる。しかも、ハイパスフィルタの特性をエンジン22の回転数Neによって設定するから、より精度よく失火を判定することができる。また、失火判定の閾値Frefをエンジン22のトルクTeによって変更するから、より精度よく失火を判定することができる。
第1実施例のハイブリッド自動車20が搭載する内燃機関の失火判定装置では、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属しないときには30度回転所要時間T30が閾値Trefより大きいか否かにより失火を判定する処理を通常時失火検出処理として失火を判定するものとしたが、30度回転所要時間T30に基づく失火検出に限定されず、他の失火検出処理を通常時失火検出処理として失火を判定するものとしてもよい。
第1実施例のハイブリッド自動車20が搭載する内燃機関の失火判定装置では、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときには30度回転数N30にハイパスフィルタを施したフィルタ処理後回転数F(N30)の変動分ΔFが閾値Fref未満であるか否かにより失火を判定する処理を共振領域失火検出処理として失火を判定するものとしたが、フィルタ処理後回転数F(N30)の変動分ΔFに基づく失火検出に限定されず、共振による影響を取り除いたエンジン22の回転変動により失火を判定する処理など他の処理を共振領域失火検出処理として失火を判定するものとしてもよい。
第1実施例のハイブリッド自動車20が搭載する内燃機関の失火判定装置では、共振領域失火検出処理として、30度回転数N30に対してエンジン22の回転数Neに応じたハイパスフィルタを施して得られるフィルタ処理後回転数F(N30)の変動分ΔFにより失火を判定するものとしたが、30度回転数N30に対してエンジン22の回転数Neに拘わらず同一のハイパスフィルタを施して得られるフィルタ処理後回転数F(N30)の変動分ΔFにより失火を判定するものとしてもよい。この場合、ハイパスフィルタの特性としては、共振領域となるエンジン22の回転数Neの範囲の下限回転数の3倍の周波数は透過するが共振領域となるエンジン22の回転数Neの範囲の上限回転数の半分の周波数はカットするものとすればよい。
第1実施例のハイブリッド自動車20が搭載する内燃機関の失火判定装置では、共振領域失火検出処理として、フィルタ処理後回転数F(N30)の変動分ΔFがエンジン22のトルクTeに応じた閾値Fref未満のときに失火していると判定するものとしたが、フィルタ処理後回転数F(N30)の変動分ΔFがエンジン22のトルクTeに拘わらずに一定の閾値未満のときに失火していると判定するものとしてもよい。
第1実施例のハイブリッド自動車20が搭載する内燃機関の失火判定装置では、エンジン22の回転数NeとトルクTeとに基づいてエンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段(動力分配統合機構30など)の共振領域にあると判定されたときには、クランクシャフト26が720度回転する周期、即ちエンジン22の2回転に相当する周期を失火の周期とし、その周期に対応する周波数が十分にカットされるようカットオフ周波数を設定したハイパスフィルタを30度回転数N30に施してフィルタ処理後回転数F(N30)を得てエンジン22のいずれかの気筒が失火しているか否かの失火検出を行なうものとしたが、エンジン22の回転数NeとトルクTeとに基づいてエンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域にあると判定されたときには、エンジン22の回転数Ne,トルクTeに基づいてダンパ28を含む後段の共振の周期がエンジン22の1回転に相当する領域(回転1次の領域)にあるか2回転に相当する領域(回転0.5次の領域)にあるかの共振周期を判定すると共にこの判定結果の共振周期に応じたハイパスフィルタを30度回転数N30に施してフィルタ処理後回転数F(N30)を得てエンジン22のいずれかの気筒が失火しているか否かの失火検出を行なうものとしてもよい。この場合、図5の共振領域失火検出処理に代えて図10の共振領域失火検出処理を実行すればよい。図10の共振領域失火検出処理を実行する変形例のハイブリッド自動車20Bについて以下に説明する。
図10の共振領域失火検出処理では、クランク角CAと30度回転数N30を入力すると(ステップS300)、エンジン22の回転数NeとトルクTeとを入力し(ステップS302)、入力したエンジン22の回転数NeとトルクTeとに基づいてダンパ28を含む後段の共振の周期がエンジン22の1回転に相当する領域(回転1次の領域)にあるか2回転に相当する領域(回転0.5次の領域)にあるかの共振周期を判定する(ステップS304)。ここで、エンジン22のトルクTeは、エンジン22の回転数Neとスロットルバルブ124の開度(アクセル開度)とにより出力されていると想定されるトルクを計算したものを入力するものとした。共振周期の判定は、実施例では、エンジン22の回転数NeとトルクTeとに対してダンパ28を含む後段の共振の周期が回転1次の領域となるか回転0.5次の領域となるかを予め実験により求めてマップとしてエンジンECU24のROM24bに記憶しておき、エンジン22の回転数NeとトルクTeとが与えられるとマップから対応する共振の周期の領域を導出することにより行なうものとした。共振の周期の領域のマップの一例を図11に示す。
共振周期の判定により(S304,S306)、その結果として共振の周期がエンジン22の2回転に相当する領域(回転0.5次の領域)と判定されたときには、エンジン22の回転数Neに基づいて回転0.5次用のハイパスフィルタを設定したり(ステップS308)、共振の周期がエンジン22の1回転に相当する領域(回転1次の領域)と判定されたときには、エンジン22の回転数Neに基づいて回転1次用のハイパスフィルタを設定したりし(ステップS309)、30度回転数N30に設定したハイパスフィルタを施してフィルタ処理後回転数F(N30)を得て(ステップS320)、このフィルタ処理後回転数F(N30)に基づいて上述したS330〜S350を実行してエンジン22のいずれかの気筒が失火しているか否かの失火検出を行なう。ここで、ステップS312のエンジン22の回転数Neに基づいて回転0.5次用のハイパスフィルタを設定する処理は、クランク角CAが720度回転する時間を共振の周期とするから、上述した第1実施例の図5の共振領域失火検出処理におけるステップS310の処理と同一となる。この変形例のハイブリッド自動車20Bでは、エンジン22の爆発燃焼の周波数の減衰は小さいが共振の周波数の減衰は大きい基本ハイパスフィルタの重ねる枚数を変えることにより回転0.5次用のハイパスフィルタや回転1次用のハイパスフィルタを設定するものとした。失火の周波数は爆発燃焼の周波数を気筒数で除したものであり、回転0.5次の共振はこの失火の周波数となり、回転1次の共振は失火の周波数の2倍の周波数となる。6気筒エンジンの場合、2000rpmでは気筒の爆発の周波数が100Hz、回転0.5次の共振の周波数が17Hz、回転1次の共振の周波数が33Hzとなるから、基本ハイパスフィルタとして、例えば、爆発の周波数(100Hz)に対する減衰率が99%で回転0.5次の周波数(17Hz)に対する減衰率が50%、回転1次の周波数(33Hz)に対する減衰率が70%、のものを用いるものとし、フィルタ処理後回転数F(N30)における共振の影響成分の設計値を減衰率25%とすると、回転0.5次用のハイパスフィルタとしては基本ハイパスフィルタを2枚重ねたものを用いることができ、回転1次用のハイパスフィルタとしては基本ハイパスフィルタを4枚重ねたものを用いることができる。こうした考えに基づいて、変形例のハイブリッド自動車20Bでは、基本ハイパスフィルタの重ねる枚数を代えることにより回転0.5次用のハイパスフィルタや回転1次用のハイパスフィルタを設定するものとした。なお、回転0.5次用のハイパスフィルタや回転1次用のハイパスフィルタは基本ハイパスフィルタの重ねる枚数を変えることにより設定するものに限定されるものではなく、回転0.5次用のハイパスフィルタや回転1次用のハイパスフィルタを各々用意して用いるものとしてもよい。
こうした変形例のハイブリッド自動車20Bが搭載する内燃機関の失火判定装置によれば、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときには、共振の周期がエンジン22の1回転に相当する領域(回転1次の領域)にあるか2回転に相当する領域(回転0.5次の領域)にあるかを判定し、共振の周期に応じたハイパスフィルタを30度回転数N30に施して得られるフィルタ処理後回転数F(N30)を用いて失火を判定するから、ダンパ28を含む後段の共振の周期に応じて、より精度良くエンジン22の失火を判定することができる。
変形例のハイブリッド自動車20Bが搭載する内燃機関の失火判定装置では、エンジン22の回転数NeとトルクTeとに基づいてダンパ28を含む後段の共振の周期がエンジン22の1回転に相当する領域にあるか2回転に相当する領域にあるかの共振周期を判定するものとしたが、エンジン22の回転数NeとトルクTeとのうち一方のみによりダンパ28を含む後段の共振の周期がエンジン22の1回転に相当する領域にあるか2回転に相当する領域にあるかの共振周期を判定するものとしてもよく、エンジン22の回転数NeとトルクTeとに他の要件、例えばダンパ28より後段の接続状態などの要件を加えてダンパ28を含む後段の共振の周期がエンジン22の1回転に相当する領域にあるか2回転に相当する領域にあるかの共振周期を判定するものとしてもよい。
第1実施例のハイブリッド自動車20が搭載する内燃機関の失火判定装置では、エンジン22の回転数NeとトルクTeとに基づいてエンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段(動力分配統合機構30など)の共振領域にあるか否かを判定すると共に共振領域にあると判定したときにはクランクシャフト26が720度回転する周期を失火の周期とし、その周期に対応する周波数が十分にカットされるようカットオフ周波数を設定したハイパスフィルタを30度回転数N30に施してフィルタ処理後回転数F(N30)を得てエンジン22のいずれかの気筒が失火しているか否かの失火検出を行なうものとしたが、エンジン22の回転数Neだけでエンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域にあるか否かを判定すると共にエンジン22の回転数Neに応じたハイパスフィルタを30度回転数N30に施してフィルタ処理後回転数F(N30)を得てエンジン22のいずれかの気筒が失火しているか否かの失火検出を行なうものとしてもよい。この場合、図3の失火判定処理におけるステップS110の共振領域にあるか否かの判定は、エンジン22の回転数Neが所定回転数(例えば4000rpmや5000rpmなど)以下となるときに共振領域にあると判定するものとすればよい。そして、共振領域における失火検出処理については図5の共振領域失火検出処理に代えて図12の共振領域失火検出処理を実行すればよい。図12の共振領域失火検出処理を実行する変形例のハイブリッド自動車20Cについて以下に説明する。
図12の共振領域失火検出処理では、クランク角CAと30度回転数N30を入力すると(ステップS300)、エンジン22の回転数Neを入力すると共に(ステップS312)、エンジン22が基本回転数(例えば、2000rpm)で回転しているときの爆発燃焼の周波数の減衰は小さいが失火の周波数の減衰は比較的大きい基本ハイパスフィルタを第1の枚数(例えば1枚や2枚,3枚など)だけ重ねて得られるフィルタを30度回転数N30に施す第1フィルタ処理を実行してフィルタ処理後回転数F(N30)を演算し(ステップS314)、入力したエンジン22の回転数Neを閾値Nrefと比較する(ステップS316)。ここで、閾値Nrefは、第1フィルタ処理では失火の判定のために必要な共振の影響の除去が十分でない回転数領域であるか否かを判定するための閾値であり、第1フィルタ処理に用いるフィルタの性能と共振によって定めることができ、例えば2000rpmや2500rpmなどを用いることができる。
エンジン22の回転数Neが閾値Nref以上のときには、第1フィルタ処理で共振の影響を十分に除去できる領域であると判断し、第1フィルタ処理により得られたフィルタ処理後回転数F(N30)に基づいて上述したS330〜S350を実行してエンジン22のいずれかの気筒が失火しているか否かの失火検出を行ない、エンジン22の回転数Neが閾値Nref未満のときには、第1フィルタ処理では共振の影響を十分に除去できない領域であると判断し、第1フィルタ処理に用いた基本ハイパスフィルタを第2の枚数(例えば、1枚や2枚,3枚など)だけ重ねて得られるフィルタを第1フィルタ処理により得られたフィルタ処理後回転数F(N30)に施す第2フィルタ処理を実行して実行用のフィルタ処理後回転数F(N30)を演算し(ステップS318)、第2フィルタ処理により得られたフィルタ処理後回転数F(N30)に基づいて上述したS330〜S350を実行してエンジン22のいずれかの気筒が失火しているか否かの失火検出を行なう。フィルタ処理として、基本ハイパスフィルタを施す演算をその枚数分繰り返すものとすれば、第1フィルタ処理は基本ハイパスフィルタを施す処理を第1の枚数分繰り返す処理となり、第2フィルタ処理は基本ハイパスフィルタを施す処理を第2の枚数分繰り返す処理となる。したがって、フィルタ処理後回転数F(N30)は、エンジン22の回転数Neが閾値Nref以上のときには基本ハイパスフィルタを施す処理を第1の枚数の分だけ繰り返すことにより得られることになり、エンジン22の回転数Neが閾値Nref未満のときには基本ハイパスフィルタを施す処理を第1の枚数と第2の枚数の和の分だけ繰り返すことにより得られることになる。この結果、エンジン22の回転数Neが閾値Nref以上のときのフィルタ処理に要する演算処理を、エンジン22の回転数Neが閾値Nref未満のときのフィルタ処理に要する演算処理に比して、負荷としては軽減したものとなる。
こうした変形例のハイブリッド自動車20Cが搭載する内燃機関の失火判定装置によれば、エンジン22の回転数Neが所定回転数(例えば4000rpmや5000rpmなど)以下であるか否かによりエンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するか否かを判定し、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときには、まず、第1フィルタ処理を実行し、エンジン22の回転数Neが閾値Nref以上であるか否かにより第1フィルタ処理では共振の影響を十分に除去できない領域であるか否かを判定して第2フィルタ処理を実行してフィルタ処理後回転数F(N30)を演算し、このフィルタ処理後回転数F(N30)を用いて失火を判定するから、エンジン22の回転数Neに応じてより精度良くエンジン22の失火を判定することができる。しかも、第1フィルタ処理として基本ハイパスフィルタを施す処理を第1の枚数の分だけ繰り返す処理を実行し、第2フィルタ処理として基本ハイパスフィルタを施す処理を第1の枚数と第2の枚数の和の分だけ繰り返す処理を実行するから、エンジン22の回転数Neが閾値Nref以上のときのフィルタ処理に要する演算処理を、エンジン22の回転数Neが閾値Nref未満のときのフィルタ処理に要する演算処理に比して軽減することができる。また、第1フィルタ処理や第2フィルタ処理として回数は異なるが基本ハイパスフィルタを用いたフィルタ処理を繰り返すだけだから、複数の諸元のハイパスフィルタを用意する必要がない。
変形例のハイブリッド自動車20Cが搭載する内燃機関の失火判定装置では、エンジン22の回転数Neを一つの閾値Nrefと比較して基本ハイパスフィルタを第1の枚数だけ重ねたフィルタによる第1フィルタ処理を施してフィルタ処理後回転数F(N30)を演算して失火を判定したり第1フィルタ処理に加えて基本ハイパスフィルタを第2の枚数だけ重ねたフィルタによる第2フィルタ処理を施してフィルタ処理後回転数F(N30)を演算して失火を判定したりするものとしたが、エンジン22の回転数Neを二つ以上の閾値と比較して3以上のフィルタ処理の選択的に施してフィルタ処理後回転数F(N30)を演算して失火を判定するものとしてもよい。例えば、エンジン22の回転数Neを二つの閾値Nref1,Nref2(Nref1<Nref2)と比較して、エンジン22の回転数Neが閾値Nref2以上のときには基本ハイパスフィルタを第1の枚数だけ重ねたフィルタによる第1フィルタ処理を施してフィルタ処理後回転数F(N30)を演算して失火を判定し、エンジン22の回転数Neが閾値Nref1以上で閾値Nref2未満のときには第1フィルタ処理に加えて基本ハイパスフィルタを第2の枚数だけ重ねたフィルタによる第2フィルタ処理を施してフィルタ処理後回転数F(N30)を演算して失火を判定し、エンジン22の回転数Neが閾値Nref1未満のときには第1フィルタ処理と第2フィルタ処理とに加えて基本ハイパスフィルタを第3の枚数だけ重ねたフィルタによる第3フィルタ処理を施してフィルタ処理後回転数F(N30)を演算して失火を判定するなどとしてもよい。
次に、本発明の第2実施例としての内燃機関の失火判定装置を搭載したハイブリッド自動車20Dについて説明する。第2実施例のハイブリッド自動車20Dは、ハード構成としてエンジン22が8気筒である点を除いて図1,2を用いて説明した第1実施例のハイブリッド自動車20のハード構成と同一である。重複した説明を省略するために、第2実施例のハイブリッド自動車20Dのハード構成については、第1実施例のハイブリッド自動車20のハード構成に付した符号と同一の符号を付し、その説明は省略する。
第2実施例のハイブリッド自動車20Dが搭載する内燃機関の失火判定装置は、図5に例示する共振領域失火検出処理に代えて図13に例示する共振領域失火検出処理を実行する点を除いて、第1実施例のハイブリッド自動車20が搭載する内燃機関の失火判定装置と同様に図3の失火判定処理や図4の通常失火検出処理を実行する。これらの処理については上述した。
第2実施例のハイブリッド自動車20Dが搭載する内燃機関の失火判定装置では、エンジンECU24により図13の共振領域失火検出処理が実行されると、エンジンECU24のCPU24aは、まず、エンジン22の回転数NeやトルクTe,触媒暖機フラグFc,図14に例示するω10演算処理により演算されるクランクシャフト26が10度回転する毎の回転角速度である10度回転角速度ω10を入力する処理を実行する(ステップS500)。ここで、触媒暖機フラグFcは、エンジン22の浄化装置134に充填されている触媒を暖機するためにエンジン22を所定の運転状態として運転しているか否かを示すフラグであり、ハイブリッド用電子制御ユニット70により触媒を暖機するためにエンジン22を所定の運転状態として運転しているときに値1が設定され、触媒を暖機するためにエンジン22を所定の運転状態として運転していないときに値0が設定される。触媒を暖機するためのエンジン22の所定の運転状態としては、例えば、点火時期を通常時より遅角することにより、エンジン22の爆発燃焼による熱を浄化装置134に供給しやすくするなどを挙げることができる。また、10度回転角速度ω10は、ω10演算処理に示すように、クランク角CAを入力し(ステップS700)、クランクポジションセンサ140からの整形波から入力したクランク角CAより10度回転するまでの経過時間tを演算し、クランク角CAにおける10度回転角速度ω10を2π(10/360)/tにより演算する(ステップS710)、ことにより求めることができる。
こうしてデータを入力すると、入力した触媒暖機フラグFcの値を調べると共にエンジン22の回転数NeとトルクTeとによりエンジン22の運転状態が高負荷領域にあるか否かを判定する(ステップS510,S520)。エンジン22の運転状態が高負荷領域にあるか否かについては、予め高負荷となるエンジン22の回転数NeとトルクTeとを設定して高負荷領域を設定してROM24bに記憶しておき、エンジン22の回転数NeとトルクTeとが記憶した高負荷領域に属するか否かにより判定するものとした。
触媒暖機フラグFcが値0、即ち、触媒の暖機のためにエンジン22を所定の運転状態として運転していない状態で且つエンジン22が高負荷領域で運転されているときには、10度回転角速度ω10に対して高負荷用フィルタ処理を施してフィルタ後角速度ω10fhを演算する(ステップS530)。高負荷用フィルタ処理としては、例えば、エンジン22の爆発燃焼の周波数の減衰は小さいがダンパ28を含む後段の共振の周波数の減衰は大きい基本ハイパスフィルタを第1の枚数(例えば、3枚や4枚)重ねて得られるハイパスフィルタを10度回転角速度ω10に施す処理を用いることができる。この場合、10度回転角速度ω10に対して基本ハイパスフィルタを施す演算処理を第1の枚数に応答する回数だけ繰り返す処理を行なえばよい。
こうしてフィルタ後角速度ω10fhを演算すると、フィルタ後角速度ω10fhの微分値dω/dtを計算する(ステップS540)。実施例では、10度毎のクランクシャフト26の回転角速度である10度回転角速度ω10を計算していることを考慮して、次式(2)により得られるものを微分値dω/dtとした。式(2)では、クランク角CAのときの回転角速度である10度回転角速度ω10(CA)とクランク角(CA−10)のときの回転角速度である10度回転角速度ω10(CA−10)との差{ω10hi(CA)−ω10hi(CA−10)}をクランク角CAのときの回転角速度である10度回転角速度ω10hi(CA)でクランクシャフト26が10度回転するのに要する時間で除したものとして計算した。
続いて、微分値dω/dtの絶対値を圧縮行程の上死点から0度(TDC)の位置から上死点から90度(ATDC90)の位置までを積分区間として積分して判定用値J1として求め(ステップS550)、求めた判定用値J1を閾値Jref1と比較して(ステップS560)、判定用値J1が閾値Jref1未満のときに対象の気筒が失火していると判定して(ステップS570)、共振領域失火検出処理を終了する。エンジン22を高負荷領域で運転している最中に点火順の1番気筒と2番気筒とを失火させたときのフィルタ後角速度ω10fhと微分値dω/dtの変化の一例を図15に示す。図示するように、フィルタ後角速度ω10fhは、ダンパ28を含む後段の共振の影響が完全に除去されていないために失火の挙動や失火直後の挙動が不規則なものとなるが、微分値dω/dtは、フィルタ後角速度ω10fhに比して不規則性が小さくなっている。そして、失火気筒では、微分値dω/dtの変化が小さなものとなっている。第2実施例では、この失火気筒で微分値dω/dtの変化が小さなものになっていることに基づいて失火を判定している。フィルタ後角速度ω10fhに比して微分値dω/dtの方が不規則性が小さくなるのは、微分演算によりダンパ28を含む共振の周波数成分を爆発燃焼の周波数成分に比して大きくなますことに基づく。微分演算による周波数とゲインとの関係を図16に示す。なお、微分演算した微分値dω/dtを積分演算することから、なましの程度は元に戻るとも考えられるが、積分区間が短いことから、微分演算によるなましの程度の影響の方が大きく現われる。また、圧縮行程の上死点から0度(TDC)の位置から上死点から90度(ATDC90)の位置までを積分区間とするのは、8気筒のエンジンでは、クランクシャフト26が90度回転する毎に爆発燃焼が生じるため、圧縮行程の上死点から10度(ATDC10)から上死点から50度(ATDC50)では爆発燃焼により加速し、それ以降では次気筒の圧縮により減速するため、爆発燃焼が生じていれば加速と減速とが大きく現われ、失火していれば加速と減速とが小さく現われることに基づく。従って、微分値dω/dtは、爆発燃焼が生じていれば圧縮行程の上死点から10度(ATDC10)から上死点から50度(ATDC50)では比較的大きな正の値となり、それ以降では比較的大きな負の値となるのに対し、失火していれば圧縮行程の上死点から10度(ATDC10)から上死点から50度(ATDC50)では比較的小さな正の値となり、それ以降では比較的小さな負の値となる。従って、微分値dω/dtの絶対値をTDCの位置からATDC90の位置までを積分区間として積分すれば、爆発燃焼していれば大きな値となり、失火していれば小さな値となる。このため、判定用値J1と比較する閾値Jref1を爆発燃焼しているときに判定用値J1として計算される値より十分に小さく且つ失火しているときに判定用値J1として計算される値より十分に大きな値として設定すれば、判定用値J1と閾値Jref1とを比較することにより、対象の気筒が失火しているか否かを判定することができる。なお、ステップS560で判定用値J1が閾値Jref1以上と判定されたときには、対象の気筒は失火していない判断し共振領域失火検出処理を終了する。
ステップS510で触媒暖機フラグFcが値1、即ち、触媒の暖機のためにエンジン22を所定の運転状態として運転していると判定されるか、ステップS520でエンジン22が高負荷領域で運転されていないと判定されたときには、10度回転角速度ω10に対して低負荷用フィルタ処理を施してフィルタ後角速度ω10flを演算する(ステップS580)。低負荷用フィルタ処理としては、高負荷用フィルタ処理で用いた基本ハイパスフィルタを第2の枚数(例えば、1枚や2枚)重ねて得られるハイパスフィルタを10度回転角速度ω10に施す処理を用いることができる。この場合、10度回転角速度ω10に対して基本ハイパスフィルタを施す演算処理を第2の枚数に応答する回数だけ繰り返す処理を行なえばよい。高負荷用フィルタ処理に比して低負荷用フィルタ処理における基本ハイパスフィルタを重ねる枚数を少なくするのは、エンジン22の運転状態が低負荷であるため、ダンパ28を含む後段の共振の影響も小さく現われるからである。
続いて、フィルタ後角速度ω10flを圧縮行程の上死点から0度(TDC)の位置から上死点から90度(ATDC90)の位置までを積分区間として積分して判定用値J2として求め(ステップS590)、求めた判定用値J2を閾値Jref2と比較して(ステップS600)、判定用値J2が閾値Jref2未満のときに対象の気筒が失火していると判定して(ステップS610)、共振領域失火検出処理を終了する。エンジン22を低負荷領域で運転している最中に点火順の2番気筒を失火させたときのフィルタ後角速度ω10flとこのフィルタ後角速度ω10flの微分値dω/dtとの変化の一例を図17に示す。図示するように、失火している2番気筒における微分値dω/dtに比してフィルタ後角速度ω10flの方が変動が大きく現われる。このとき、フィルタ後角速度ω10flの変動は大きく負側に振れるものとなるから、その積分値としての判定用値J2は、爆発燃焼しているときには値0近傍となり、失火しているときには比較的大きな負の値となる。このため、判定用値J2と比較する閾値Jref2を爆発燃焼しているときに判定用値J2として計算される値(0近傍)より十分に小さく且つ失火しているときに判定用値J2として計算される値(比較的大きな負の値)より十分に大きな値として設定すれば、判定用値J2と閾値Jref2とを比較することにより、対象の気筒が失火しているか否かを判定することができる。なお、ステップS600で判定用値J2が閾値Jref2以上と判定されたときには、対象の気筒は失火していない判断し共振領域失火検出処理を終了する。
ここで、触媒の暖機のためにエンジン22を所定の運転状態として運転していると判定されたときもエンジン22が高負荷領域で運転されていないと判定されたときと同様にエンジン22のいずれかの気筒が失火しているかを判定するのは、触媒の暖機のためにエンジン22を所定の運転状態として運転しているときには、上述したように、点火時期を遅角するなどの運転状態とするために、エンジン22を高負荷領域で運転しているときに比して、爆発燃焼によるダンパ28を含む後段の共振が小さく現われるからである。
以上説明した第2実施例のハイブリッド自動車20Dが搭載する内燃機関の失火判定装置によれば、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときにエンジン22を高負荷領域で運転しているときには、10度毎のクランクシャフト26の回転角速度である10度回転角速度ω10に高負荷用フィルタ処理を施して得られるフィルタ後角速度ω10fhの微分値dω/dtの絶対値をTDCの位置からATDC90の位置までを積分区間として積分して判定用値J1を求め、この求めた判定用値J1を閾値Jref1と比較することにより、対象の気筒が失火しているか否かを判定するから、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときにエンジン22を高負荷領域で運転しているときのエンジン22の失火を精度良く判定することができる。また、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときにエンジン22を低負荷領域で運転しているときや触媒の暖機のためにエンジン22を所定の運転状態として運転しているときには、10度毎のクランクシャフト26の回転角速度である10度回転角速度ω10に低負荷用フィルタ処理を施して得られるフィルタ後角速度ω10flをTDCの位置からATDC90の位置までを積分区間として積分して判定用値J2を求め、この求めた判定用値J2を閾値Jref2と比較することにより、対象の気筒が失火しているか否かを判定するから、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときにエンジン22を低負荷領域で運転しているときや触媒の暖機のためにエンジン22を所定の運転状態として運転しているときのエンジン22の失火を精度良く判定することができる。
第2実施例のハイブリッド自動車20Dが搭載する内燃機関の失火判定装置では、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときにエンジン22を高負荷領域で運転しているときには、10度回転角速度ω10に基本ハイパスフィルタを第1の枚数重ねたフィルタを用いてフィルタ処理によりフィルタ後角速度ω10fhを演算するものとしたが、10度回転角速度ω10に単一の高負荷用のハイパスフィルタを用いてフィルタ処理によりフィルタ後角速度ω10fhを演算するものとしてもよい。
第2実施例のハイブリッド自動車20Dが搭載する内燃機関の失火判定装置では、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときにエンジン22を高負荷領域で運転しているときには、10度回転角速度ω10に高負荷用フィルタ処理を施して得られるフィルタ後角速度ω10fhの微分値dω/dtの絶対値をTDCの位置からATDC90の位置までを積分区間として積分して判定用値J1を求めて失火を判定したが、フィルタ後角速度ω10fhの微分値dω/dtの絶対値をTDCとは異なる位置からATDC90とは異なる位置までを積分区間として積分して判定用値J1を求めて失火を判定するものとしてもよい。例えば、フィルタ後角速度ω10fhの微分値dω/dtの絶対値をATDC10の位置からATDC80の位置までを積分区間として積分して判定用値J1を求めて失火を判定するものなどとしてもよい。
第2実施例のハイブリッド自動車20Dが搭載する内燃機関の失火判定装置では、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときにエンジン22を低負荷領域で運転しているときや触媒の暖機のためにエンジン22を所定の運転状態として運転しているときには、10度回転角速度ω10に低負荷用フィルタ処理を施して得られるフィルタ後角速度ω10flをTDCの位置からATDC90の位置までを積分区間として積分して判定用値J2を求めて失火を判定したが、触媒の暖機のためにエンジン22を所定の運転状態として運転しているときにはエンジン22を低負荷領域で運転しているときとは異なる手法により失火を判定するものとしてもよい。
第2実施例のハイブリッド自動車20Dが搭載する内燃機関の失火判定装置では、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときにエンジン22を低負荷領域で運転しているときや触媒の暖機のためにエンジン22を所定の運転状態として運転しているときには、10度回転角速度ω10に基本ハイパスフィルタを第2の枚数重ねたフィルタを用いてフィルタ処理によりフィルタ後角速度ω10flを演算するものとしたが、10度回転角速度ω10に単一の低負荷用のハイパスフィルタを用いてフィルタ処理によりフィルタ後角速度ω10flを演算するものとしてもよい。
第2実施例のハイブリッド自動車20Dが搭載する内燃機関の失火判定装置では、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときにエンジン22を低負荷領域で運転しているときや触媒の暖機のためにエンジン22を所定の運転状態として運転しているときには、10度回転角速度ω10に低負荷用フィルタ処理を施して得られるフィルタ後角速度ω10flをTDCの位置からATDC90の位置までを積分区間として積分して判定用値J2を求めて失火を判定したが、フィルタ後角速度ω10flをTDCとは異なる位置からATDC90とは異なる位置までを積分区間として積分して判定用値J2を求めて失火を判定するものとしてもよい。例えば、フィルタ後角速度ω10flをATDC10の位置からATDC80の位置までを積分区間として積分して判定用値J2を求めて失火を判定するものなどとしてもよい。
第2実施例のハイブリッド自動車20Dが搭載する内燃機関の失火判定装置では、クランクポジションセンサ140からの整形波とクランク角CAとから10度回転角速度ω10を演算すると共にこれにフィルタ処理を施してフィルタ後角速度ω10fh,ω10flを演算して失火を判定するものとしたが、10度回転角速度ω10やフィルタ後角速度ω10fh,ω10flに代えてクランクシャフト26が他の角度、例えば1度や5度,20度など回転する毎の回転角速度であるNN度回転角速度ωNNを演算すると共にフィルタ処理を施してフィルタ後角速度ωNNfh,ωNNflを演算して失火を判定するものとしてもよい。
次に、本発明の第3実施例としての内燃機関の失火判定装置を搭載したハイブリッド自動車20Eについて説明する。第3実施例のハイブリッド自動車20Eは、ハード構成としてエンジン22が8気筒である点を除いて図1,2を用いて説明した第1実施例のハイブリッド自動車20のハード構成と同一である。重複した説明を省略するために、第3実施例のハイブリッド自動車20Eのハード構成についても、第1実施例のハイブリッド自動車20のハード構成に付した符号と同一の符号を付し、その説明は省略する。
第3実施例のハイブリッド自動車20Eが搭載する内燃機関の失火判定装置は、図5に例示する共振領域失火検出処理に代えて図18に例示する共振領域失火検出処理を実行する点を除いて、第1実施例のハイブリッド自動車20が搭載する内燃機関の失火判定装置と同様に図3の失火判定処理や図4の通常失火検出処理を実行する。これらの処理についても上述した。
第3実施例のハイブリッド自動車20Eが搭載する内燃機関の失火判定装置では、エンジンECU24により図18の共振領域失火検出処理が実行されると、エンジンECU24のCPU24aは、まず、エンジン22の回転数Neと図14に例示するω10演算処理により演算されるクランクシャフト26が10度回転する毎の回転角速度である10度回転角速度ω10を入力する処理を実行する(ステップS800)。ω10演算処理についても上述した。
続いて、エンジン22の回転数Neに基づいてハイパスフィルタを設定し(ステップS810)、10度回転角速度ω10に設定したハイパスフィルタを施してフィルタ後角速度ω10fを得る(ステップS820)。ここで、ハイパスフィルタの設定は、第1実施例の変形例や第2実施例で説明した基本ハイパスフィルタ、即ち、8気筒のエンジン22の爆発燃焼の周波数成分の減衰は小さいがダンパ28を含む後段の共振の周波数成分の減衰は大きい基本ハイパスフィルタをエンジン22の回転数Neに応じて重ねる枚数を決定することにより行なうことができる。
次に、エンジン22から出力されるトルクTeのうちピストン132などの往復運動を行なう部品の慣性に基づく往復質量慣性トルクTpを次式(3)により計算する(ステップS830)。ここで、式(3)中、「M」は往復部品の質量の総和を示し、「θ」はエンジン22のクランクシャフト26の回転位置の基準位置からの角度を示し、「A」はエンジン22のピストン132の頂面の投影面積を示し、「ω」はエンジン22のクランクシャフト26の回転角速度を示し、「V(θ)」はクランクシャフト26の回転位置の角度θにおけるエンジン22の気筒内の体積を示す。往復質量慣性トルクTpは、式(3)から明らかなように、エンジン22の気筒内の体積V(θ)によって変化するから、基本的には、爆発燃焼と同一の周波数で変動することになる。このことから、エンジン22のクランクシャフト26の回転角速度ωに代えてフィルタ後角速度ω10fを用いてもよいことが解る。また、クランクシャフト26の回転位置の角度θに代えてクランク角CAを用いてもよいことは明らかである。従って、クランク角CAとフィルタ後角速度ω10fを、式(3)中のクランクシャフト26の回転位置の角度θとクランクシャフト26の回転角速度ωに代入することにより、往復質量慣性トルクTpを計算することができる。
こうして往復質量慣性トルクTpを計算すると、計算した往復質量慣性トルクTpを用いて式(4)により往復質量慣性トルクTpのクランクシャフト26の回転角速度に与える影響成分ωpを計算する(ステップS840)。ここで、式(4)中、「Ie」はダンパ28よりエンジン22側の慣性モーメントを示す。エンジン22の筒内圧トルクを「Tin」とすると、エンジン22のトルクTeは、筒内圧トルクTinと往復質量慣性トルクTpとの和として表わされる。一方、クランクシャフト26についての運動方程式から式(5)が導き出される。式(5)中、「Kdmp」はダンパ28のバネ定数であり、「Cdmp」は減衰項の定数であり、「Δθ」はクランクシャフト26とキャリア軸34aとにおけるねじれ角であり、「ω」はクランクシャフト26の回転角速度であり、「ωinp」はダンパ28の後段側の軸(キャリア34が接続されている軸)の回転角速度である。いま、ダンパ28を含む後段の共振、即ちダンパ28のねじれに基づく共振の影響を除去した状態を考えれば、式(5)の左辺のクランクシャフト26の回転角速度ωはクランクシャフト26の回転角速度である10度回転角速度ω10からダンパ28のねじれに基づくトルクの影響を除去したフィルタ後角速度ω10fに置き換えられ、式(5)の右辺第1項は削除される。また、式(5)の右辺第2項の減衰項は他の項に比して十分小さいから値0とすることができる。さらに、エンジン22のトルクTeを筒内圧トルクTinと往復質量慣性トルクTpとの和とすることができる。これらのことを考慮すると、式(5)は式(6)のように表わされる。この式(6)をフィルタ後角速度ω10fについて解けば式(7)となり、さらに、フィルタ後角速度ω10fを筒内圧トルクTinによるクランクシャフト26の回転角速度ωjに往復質量慣性トルクTpのクランクシャフト26の回転角速度に与える影響成分ωpが加えられたもの(ω10f=ωj+ωp)とすれば、式(7)は式(8)となる。式(4)はこの式(8)における往復質量慣性トルクTpのクランクシャフト26の回転角速度に与える影響成分ωpと往復質量慣性トルクTpとの関係、即ち、式(8)の左辺第2項と同式右辺第2項とを等しいとする関係から導き出すことができる。
こうして往復質量慣性トルクTpのクランクシャフト26の回転角速度に与える影響成分ωpを計算すると、計算した影響成分ωpをフィルタ後角速度ω10fから減じて判定用角速度ωjを計算し(ステップS850)、各気筒の圧縮行程の上死点から0度(TDC)と上死点から90度(ATDC90)の判定用角速度ωj(TDC),ωj(ATDC90)の差分[ωj(TDC)−ωj(ATDC90)]を角速度差分ωDとして計算すると共に(ステップS860)、計算した角速度差分ωDの360度前に角速度差分ωDとして計算される値との差(角速度差分ωDの360度差)[ωD−ωD(360度前)]を判定用値Jωとして計算し(ステップS870)、計算した判定用値Jωを閾値Jrefと比較し(ステップS880)、判定用値Jωが閾値Jrefより大きいときには、判定用値Jωの計算の対象となる気筒が失火していると判定して(ステップS890)、共振領域失火検出処理を終了し、判定用値Jωが閾値Jrefより小さいときには失火していないと判定して共振領域失火検出処理を終了する。ここで、この判定用角速度ωjは、式(8)から解るように筒内圧トルクTinによるクランクシャフト26の回転角速度ωjである。この筒内圧トルクTinによるクランクシャフト26の回転角速度ωjは、筒内圧が直接影響するため、失火による影響を大きく反映するから、この回転角速度ωj、即ち判定用角速度ωjを用いて失火を判定することにより、エンジン22の失火を精度よく判定することができる。特に、式(3)から明らかなように、往復質量慣性トルクTpはエンジン22の回転数Neが大きくなるに従って大きくなるため、エンジン22の回転数Neが比較的大きいときでもエンジン22の失火を精度よく判定することができる。また、判定用角速度ωj(TDC),ωj(ATDC90)の差分である角速度差分ωDの更に360度差である判定用値Jωにより失火を判定することができるのは、クランク角90度毎に爆発燃焼を生じる8気筒のエンジン22であることを考慮すれば、若干の変動は生じるものの、角速度差分ωDおよび判定用値Jωは、全ての気筒が正常に燃焼(爆発)していれば値0となり、対象の気筒が失火していると正の値となることに基づく。従って、閾値Jrefとして適当な正の値を設定することにより、判定用値Jωが閾値Jrefより大きいときに対応する気筒が失火していると判定することができる。
以上説明した第3実施例のハイブリッド自動車20Eに搭載された内燃機関の失火判定装置によれば、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときには10度毎のクランクシャフト26の回転角速度である10度回転角速度ω10にエンジン22の回転数Neに基づくハイパスフィルタを施して得られるフィルタ後角速度ω10fから往復質量慣性トルクTpのクランクシャフト26の回転角速度に与える影響成分ωpを減じて筒内圧トルクTinによるクランクシャフト26の回転角速度である判定用角速度ωjを求め、この判定用角速度ωjを用いて失火を判定するから、ダンパ28を含む後段の共振やエンジン22の回転数Neに拘わらず、エンジン22のいずれかの気筒の失火を精度よく判定することができる。
第3実施例のハイブリッド自動車20Eが搭載する内燃機関の失火判定装置では、判定用角速度ωj(TDC),ωj(ATDC90)の差分により角速度差分ωDを計算すると共に計算した角速度差分ωDの360度差により判定用値Jωを計算し、この計算した判定用値Jωに基づいてエンジン22の失火を判定するものとしたが、判定用角速度ωjの他の角度における角速度差分を計算すると共に計算した角速度差分の360度差などにより判定用値を計算し、この計算した判定用値に基づいてエンジン22の失火を判定するものや、判定用角速度ωjの60度差分などの所定角度差分を判定用値として用いてエンジン22の失火を判定するものなど、フィルタ後角速度ω10fから往復質量慣性トルクTpのクランクシャフト26の回転角速度に与える影響成分ωpを減じて得られる判定用角速度ωjを用いてエンジン22の失火を判定するものであれば、如何なる手法を用いてエンジン22の失火を判定するものとしても構わない。
上述した各実施例やその変形例のハイブリッド自動車が搭載する内燃機関の失火判定装置における失火の判定処理では、特に、駆動軸としてのリングギヤ軸32aのトルク変動に基づく振動を抑制する制振制御をモータMG1やモータMG2により行なうことを前提としていないが、モータMG1やモータMG2による制振制御を行なうものとしても上述の失火判定処理によりエンジン22の失火を判定することができる。
上述した各実施例やその変形例のハイブリッド自動車が搭載する内燃機関の失火判定装置では、6気筒のエンジン22や8気筒のエンジン22のいずれかの気筒の失火を判定するものとしたが、4気筒のエンジンのいずれかの気筒の失火を判定するものや12気筒のエンジンのいずれかの気筒の失火を判定するものなど、複数気筒のエンジンのいずれかの気筒の失火を判定するものであれば、気筒数はいくつでも構わない。
上述した各実施例やその変形例のハイブリッド自動車が搭載する内燃機関の失火判定装置では、減速ギヤ35を介してモータMG2をリングギヤ軸32aに接続する構成におけるエンジン22の失火の判定を行なうものとしたが、減速ギヤ35に代えて変速機を介してモータMG2をリングギヤ軸32aに接続する構成におけるエンジン22の失火の判定を行なうものとしてもよい。減速ギヤ35や変速機を介さずにモータMG2を直接リングギヤ軸32aに接続する構成におけるエンジン22の失火の判定を行なうものとしてもよい。
上述した各実施例やその変形例のハイブリッド自動車が搭載する内燃機関の失火判定装置では、エンジン22のクランクシャフト26にねじれ要素としてのダンパ28を介して接続されると共にモータMG1の回転軸や駆動軸としてのリングギヤ軸32aに接続される動力分配統合機構30とリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して接続されるモータMG2とを備える装置におけるエンジン22の失火判定装置としたが、エンジンのクランクシャフトがねじれ要素としてのダンパを介して後段に接続されているものであればよいから、図19の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図19における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するもののエンジン22の失火判定装置としてもよいし、図20の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26にダンパ28を介して接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるもののエンジン22の失火判定装置としてもよい。
上述の第1実施例やその変形例では、クランクポジションセンサ140からのクランク角CAに基づいてクランクシャフト26が30度回転する毎の回転数である30度回転数N30を用いてエンジン22の失火を判定したが、クランクシャフト26が30度回転する毎の回転角速度である30度回転角速度ω30を用いてエンジン22の失火を判定するものとしてもよい。30度回転角速度ω30は、換算係数を乗じることにより30度回転数N30とすることができるからである。この場合、クランクシャフト26が30度回転する毎の回転角速度に限定されるものではなく、クランクシャフト26が10度回転する毎の回転角速度やクランクシャフト26が5度回転する毎の回転角速度など種々の回転角速度を用いることもできる。同様に、上述の第2実施例や第3実施例或いはこれらの変形例では、クランクポジションセンサ140からのクランク角CAに基づいてクランクシャフト26が10度回転する毎の回転角速度である10度回転角速度ω10を用いてエンジン22の失火を判定するものとしたが、クランクシャフト26が10度回転する毎の回転数である10度回転数N10を用いてエンジン22の失火を判定するものとしてもよい。この場合、クランクシャフト26が10度回転する毎の回転数に限定されるものではなく、クランクシャフト26が5度回転する毎の回転数やクランクシャフト26が30度回転する毎の回転数など種々の回転数を用いることもできる。
ここで、各実施例や変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。第1実施例では、クランクシャフト26にねじれ要素としてのダンパ28を介して後段に接続された6気筒のエンジン22が「内燃機関」に相当し、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140が「回転位置検出手段」に相当し、クランクポジションセンサ140からのクランク角CAに基づいてクランクシャフト26が30度回転する毎の回転数である30度回転数N30を演算する図6のN30演算処理を実行するエンジンECU24が「単位回転角回転数演算手段」に相当し、エンジン22の回転数NeとトルクTeに基づいてエンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段(動力分配統合機構30など)の共振領域にあるか否かを判定すると共にエンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域にはないと判定されたときには図4に例示する通常失火検出処理によりエンジン22のいずれかの気筒が失火している否かの失火検出を行ない、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域にあると判定されると図5に例示する共振領域失火検出処理によりエンジン22のいずれかの気筒が失火している否かの失火検出を行なう図3の失火判定処理を実行するエンジンECU24が「失火判定手段」に相当する。第2実施例では、クランクシャフト26にねじれ要素としてのダンパ28を介して後段に接続された86気筒のエンジン22が「内燃機関」に相当し、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140が「回転位置検出手段」に相当し、クランクポジションセンサ140からのクランク角CAに基づいてクランクシャフト26が10度回転する毎の回転角速度である10度回転角速度ω10を演算する図14のω10演算処理を実行するエンジンECU24が「単位回転角角速度演算手段」に相当し、エンジン22の回転数NeとトルクTeに基づいてエンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段(動力分配統合機構30など)の共振領域にあるか否かを判定すると共にエンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域にはないと判定されたときには図4に例示する通常失火検出処理によりエンジン22のいずれかの気筒が失火している否かの失火検出を行ない、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域にあると判定されると図13に例示する共振領域失火検出処理によりエンジン22のいずれかの気筒が失火している否かの失火検出を行なう図3の失火判定処理を実行するエンジンECU24が「失火判定手段」に相当する。また、ダンパ28の後段の軸と車軸側の駆動軸としてのリングギヤ軸32aとに接続された動力分配統合機構30とこの動力分配統合機構30のサンギヤ31に接続されたモータMG1とが「電力動力入出力手段」に相当し、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して出力するモータMG2が「電動機」に相当する。なお、各実施例やその変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、各実施例やその変形例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、各実施例やその変形例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
なお、本発明は、こうしたハイブリッド自動車に搭載された内燃機関の失火判定装置に限定されるものではなく、自動車以外の移動体などに搭載された内燃機関や建設設備などの移動しない設備に組み込まれた内燃機関の失火判定装置としても構わない。また、内燃機関の失火判定方法の形態としてもよい。
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。