JP4453654B2 - 内燃機関の失火判定装置およびこれを搭載する車両並びに失火判定方法 - Google Patents

内燃機関の失火判定装置およびこれを搭載する車両並びに失火判定方法 Download PDF

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Description

本発明は、内燃機関の失火判定装置およびこれを搭載する車両並びに失火判定方法に関し、詳しくは、出力軸がねじれ要素を介して後段に接続された複数気筒の内燃機関の失火を判定する失火判定装置および内燃機関とこの失火判定装置を搭載する車両並びに出力軸がねじれ要素を介して後段に接続された複数気筒の内燃機関の失火を判定する失火判定方法に関する。
従来、この種の内燃機関の失火判定装置としては、エンジンのクランク軸に発電可能なモータが取り付けられた車両において、エンジンのトルク変動をモータにより打ち消す制振制御の際のモータのトルク補正量に基づいてエンジンの失火を判定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、モータによる制振制御が実行されていないときやモータによる制振制御が実行されていてもエンジンが高回転高トルクで運転されているときには、クランク角位置での回転変動に基づいて失火を判定し、モータによる制振制御が実行されており、且つ、エンジンが低回転で運転されていたり低トルクで運転されているときには、制振制御の際のモータのトルク補正量に基づいてエンジンの失火を判定している。
特開2001−65402号公報
上述の装置のようにモータによる制振制御を行なっているときには従来の失火判定手法では失火を判定するのは困難となるが、失火の判定が困難となる要因としては、こうした制振制御に限られない。例えば、エンジンのトルク変動を抑制する目的で用いられるダンパなどのねじれ要素を介して変速機などにエンジンが接続されているときには、エンジンの運転ポイントによってはダンパを含めた変速機全体が共振し、失火の判定が困難となる。
本発明の内燃機関の失火判定装置およびこれを搭載する車両並びに失火判定方法は、ダンパなどのねじれ要素を介して後段に接続された内燃機関の失火をより確実に判定することを目的の一つとする。また、本発明の内燃機関の失火判定装置およびこれを搭載する車両並びに失火判定方法は、ダンパなどのねじれ要素を介して後段に接続された内燃機関の失火を精度よく判定することを目的の一つとする。
本発明の内燃機関の失火判定装置およびこれを搭載する車両並びに失火判定方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明の内燃機関の失火判定装置は、
出力軸がねじれ要素を介して後段に接続された複数気筒の内燃機関の失火を判定する失火判定装置であって、
前記内燃機関の出力軸の回転位置を検出する回転位置検出手段と、
前記検出された回転位置に基づいて前記内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転数である単位回転角回転数を演算する単位回転角回転数演算手段と、
前記内燃機関の運転ポイントが前記ねじれ要素を含む後段の共振領域に属するときには、前記演算された単位回転角回転数の変動に対して前記内燃機関の出力軸が720度回転する時間を周期とする正弦波成分を加減算して得られる演算後回転数の変動に基づいて前記内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する失火判定手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の内燃機関の失火判定装置では、内燃機関の出力軸の回転位置に基づいて内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転数である単位回転角回転数を演算し、内燃機関の運転ポイントがねじれ要素を含む後段の共振領域に属するときには、演算した単位回転角回転数の変動に対して内燃機関の出力軸が720度回転する時間を周期とする正弦波成分を加減算して得られる演算後回転数の変動に基づいて内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する。これにより、ねじれ要素を含む後段の共振の影響を抑制し、失火をより確実に且つ精度よく判定することができる。
こうした本発明の内燃機関の失火判定装置において、前記失火判定手段は、前記内燃機関からの出力トルクと前記ねじれ要素の特性とに基づく振幅の正弦波成分を用いて失火を判定する手段であるものとすることもできる。また、前記失火判定手段は、最小値が該正弦波成分の周期における前記演算された単位回転角回転数の変動のうちの最小値に一致する位相の正弦波成分を用いて失火を判定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、より明確に失火を判定することができる。
また、本発明の内燃機関の失火判定装置において、前記失火判定手段は、前記演算後回転数の変動分が閾値変動分未満のときに失火と判定する手段であるものとすることもできる。
本発明の内燃機関の失火判定装置において、前記失火判定手段は、前記内燃機関の運転ポイントが前記共振領域に属しないときには前記演算された単位回転角回転数の変動に基づいて該内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関の運転ポイントがねじれ要素を含む後段の共振領域に属しないときにも失火をより確実に精度よく判定することができる。
本発明の車両は、出力軸がねじれ要素としてのダンパを介して変速機構に接続された複数気筒の内燃機関と、該内燃機関の失火を判定する上述のいずれかの態様の本発明の内燃機関の失火判定装置と、を搭載することを要旨とする。したがって、本発明の車両は、本発明の内燃機関の失火判定装置が奏する効果、例えば、ねじれ要素を含む後段の共振の影響を抑制して失火をより確実に精度よく判定することができる効果などと同様の効果を奏することができる。
本発明の内燃機関の失火判定方法は、
出力軸がねじれ要素を介して後段に接続された複数気筒の内燃機関の失火を判定する失火判定方法であって、
内燃機関の出力軸の回転位置に基づいて前記内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転数である単位回転角回転数を演算し、前記内燃機関の運転ポイントが前記ねじれ要素を含む後段の共振領域に属するときには前記演算した単位回転角回転数の変動に対して前記内燃機関の出力軸が720度回転する時間を周期とする正弦波成分を加減算して得られる演算後回転数の変動に基づいて前記内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する、
ことを特徴とする。
この本発明の内燃機関の失火判定方法では、内燃機関の出力軸の回転位置に基づいて内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転数である単位回転角回転数を演算し、内燃機関の運転ポイントがねじれ要素を含む後段の共振領域に属するときには、演算した単位回転角回転数の変動に対して内燃機関の出力軸が720度回転する時間を周期とする正弦波成分を加減算して得られる演算後回転数の変動に基づいて内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する。これにより、ねじれ要素を含む後段の共振の影響を抑制し、失火をより確実に且つ精度よく判定することができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例である内燃機関の失火判定装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にねじれ要素としてのダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。ここで、実施例の内燃機関の失火判定装置としては、主としてエンジン22を制御するエンジン用電子制御ユニット24が該当する。
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な6気筒の内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入する共に気筒毎に設けられた燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃料室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化装置(三元触媒)134を介して外気へ排出される。
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からのエアフローメータ信号AF,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,空燃比センサ135aからの空燃比AF,酸素センサ135bからの酸素信号などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20に搭載されたエンジン22のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する際の動作について説明する。図3は、エンジンECU24により実行される失火判定処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎に繰り返し実行される。
失火判定処理が実行されると、エンジンECU24のCPU24aは、まず、エンジン22の回転数NeとトルクTeとを入力し(ステップS100)、入力した回転数NeとトルクTeとに基づいてエンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段(動力分配統合機構30など)の共振領域にあるか否かを判定する処理を実行する(ステップS110)。ここで、実施例では、エンジン22の回転数Neについては、クランクポジションセンサ140からのクランク角CAに基づいて演算により求められたものを入力するものとし、トルクTeについては、モータMG1のトルク指令Tm1*とエンジン22の回転数Neから計算されたものを入力するものとした。エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域にあるか否かについては、予め実験などにより共振領域となるエンジン22の回転数NeとトルクTeとを求めて共振運転範囲としてROM24bに記憶しておき、入力したエンジン22の回転数NeとトルクTeが記憶した共振運転範囲に属するか否かにより判定するものとした。なお、共振運転範囲は、エンジン22の特性やダンパ28より後段(動力分配統合機構30)などの特性によって実験により求めることができる。
ステップS110でエンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域にはないと判定されると、図4に例示する通常失火検出処理によりエンジン22のいずれかの気筒が失火している否かの失火検出を行ない(ステップS120)、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域にあると判定されると図5に例示する共振領域失火検出処理によりエンジン22のいずれかの気筒が失火している否かの失火検出を行なって(ステップS130)、失火判定処理を終了する。
図4の通常失火検出処理では、まず、クランクポジションセンサ140により検出されるクランク角CAを入力すると共に図6に例示するN30演算処理により演算されるクランク角CAが30度ごとの回転数である30度回転数N30を入力し(ステップS200)、入力した30度回転数N30の逆数をとってクランクシャフト26が30度回転するのに要する30度回転所要時間T30を計算する(ステップS210)。ここで、30度回転数N30は、N30演算処理に示すように、基準となるクランク角から30度毎のクランク角CAを入力し(ステップS400)、30度を30度回転するのに要する時間によって除することにより30度回転数N30を計算する(ステップS410)、ことにより求めることができる。次に、30度回転所要時間T30が閾値Trefより大きいか否かを判定し(ステップS220)、30度回転所要時間T30が閾値Trefより大きいときには、失火していると判定し、入力したクランク角CAに基づいて失火している気筒を特定して(ステップS230)、通常失火検出処理を終了する。ここで、閾値Trefは、30度回転所要時間T30の基準となるクランク角CAで燃焼行程となる気筒が失火していないときの30度回転所要時間T30より大きく、その気筒が失火しているときの30度回転所要時間T30より小さな値として設定されており、実験などにより求めることができる。失火している気筒は、閾値Trefを超えた30度回転所要時間T30の基準となるクランク角CAで燃焼行程となる気筒として特定することができる。エンジン22の運転状態が共振領域にないときに1気筒が失火しているエンジン22の30度回転所要時間T30とクランク角CAとの時間変化の一例を図7に示す。図示するように、クランク角CAが720度に1回の割合で30度回転所要時間T30が閾値Trefを超えている。なお、30度回転所要時間T30が閾値Tref以下のときには、失火していないと判定して通常失火検出処理を終了する。
図5の共振領域失火検出処理では、まず、クランクポジションセンサ140により検出されるクランク角CAを入力すると共に図6に例示するN30演算処理により演算されるクランク角CAが30度ごとの回転数である30度回転数N30を入力する(ステップS300)。そして、30度回転数N30からダンパ28を含む後段の共振による影響を取り除くための減算正弦波を設定し(ステップS310)、30度回転数N30の変化に対して設定した減算正弦波を減じて処理後回転数F(N30)を得る(ステップS320)。30度回転数N30から減算正弦波を減じるのは30度回転数N30からダンパ28を含む後段の共振による影響を取り除くためである。ここで、減算正弦波の周期は、1気筒が失火しているときの共振周波数の周期であり、失火の周期、即ちクランクシャフト26が720度回転するのに要する時間の周期(エンジン22の回転数Neの半分の周波数に相当する周期)として計算することができ、減算正弦波の振幅hは、エンジン22のトルク変動の振幅にダンパ28のねじれ特性を乗じたものとして計算することができる。また、減算正弦波の位相πは、クランク角CAが720度の範囲で30度回転数N30の最小ピークが正弦波の最小値に一致するように求めることができる。
続いて、処理後回転数F(N30)の変化における谷と山の差である変動分ΔFが設定した閾値Fref未満であるか否かを判定し(ステップS330)、変動分ΔFが閾値Fref未満のときには、失火していると判定し、入力したクランク角CAに基づいて失火している気筒を特定して(ステップS340)、共振領域失火検出処理を終了する。ここで、閾値Frefは、30度回転数N30の基準となるクランク角CAで燃焼行程となる気筒が失火していないときの処理後回転数F(N30)の変動分より小さく、その気筒が失火しているときの処理後回転数F(N30)の変動分より大きな値として設定されるものであり、実験などにより求めることができる。エンジン22の運転状態が共振領域に属するときに1気筒が失火しているエンジン22の30度回転所要時間T30とクランク角CAと30度回転数N30と減算正弦波と処理後回転数F(N30)の時間変化の一例を図8に示す。図示するように、処理後回転数F(N30)は共振による影響が除かれて、良好に失火を検出している。なお、処理後回転数F(N30)の変動分ΔFが閾値Fref以下のときには、失火していないと判定して共振領域失火検出処理を終了する。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20が搭載する内燃機関の失火判定装置によれば、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときには、30度回転数N30の変化から共振による影響を取り除くための減算正弦波を減じて得られる処理後回転数F(N30)の変動分ΔFが閾値Fref未満であるか否かにより失火を判定するから、共振領域に属するときでも、より確実に精度よく失火を判定することができる。
また、実施例のハイブリッド自動車20が搭載する内燃機関の失火判定装置によれば、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属しないときには通常時失火検出処理により失火を判定し、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属するときには通常時失火検出処理とは異なる共振領域失火検出処理により失火を判定するから、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属しないときでも属するときでも、より確実に精度よく失火を判定することができる。
実施例のハイブリッド自動車20が搭載する内燃機関の失火判定装置では、エンジン22の運転状態がダンパ28を含む後段の共振領域に属しないときには30度回転所要時間T30が閾値Trefより大きいか否かにより失火を判定する処理を通常時失火検出処理として失火を判定するものとしたが、30度回転所要時間T30に基づく失火検出に限定されず、他の失火検出処理を通常時失火検出処理として失火を判定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22のクランクシャフト26にねじれ要素としてのダンパ28を介して接続されると共にモータMG1の回転軸や駆動軸としてのリングギヤ軸32aに接続される動力分配統合機構30とリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して接続されるモータMG2とを備える装置におけるエンジン22の失火判定装置としたが、エンジンのクランクシャフトがねじれ要素としてのダンパを介して後段に接続されているものであればよいから、図9の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図9における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するもののエンジン22の失火判定装置としてもよいし、図10の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26にダンパ28を介して接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるもののエンジン22の失火判定装置としてもよい。
また、こうしたハイブリッド自動車に搭載された内燃機関の失火判定装置に限定されるものではなく、自動車以外の移動体などに搭載された内燃機関や建設設備などの移動しない設備に組み込まれた内燃機関の失火判定装置としても構わない。また、内燃機関の失火判定方法の形態としてもよい。
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、内燃機関を組み込んだ装置や内燃機関を搭載する自動車の製造産業などに利用可能である。
本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。 エンジン22の構成の概略を示す構成図である。 エンジンECU24により実行される失火判定処理の一例を示すフローチャートである。 通常時失火検出処理の一例を示すフローチャートである。 共振領域失火検出処理の一例を示すフローチャートである。 30度回転数N30の演算処理の一例を示すフローチャートである。 エンジン22の運転状態が共振領域にないときに1気筒が失火しているエンジン22の30度回転所要時間T30とクランク角CAとの時間変化の一例を示す説明図である。 エンジン22の運転状態が共振領域に属するときに1気筒が失火しているエンジン22の30度回転所要時間T30とクランク角CAと30度回転数N30と減算正弦波と処理後回転数F(N30)の時間変化の一例を示す説明図である。 変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。 変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
符号の説明
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、136,スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ 234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

Claims (7)

  1. 出力軸がねじれ要素を介して後段に接続された複数気筒の内燃機関の失火を判定する失火判定装置であって、
    前記内燃機関の出力軸の回転位置を検出する回転位置検出手段と、
    前記検出された回転位置に基づいて前記内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転数である単位回転角回転数を演算する単位回転角回転数演算手段と、
    前記内燃機関の運転ポイントが前記ねじれ要素を含む後段の共振領域に属するときには、前記演算された単位回転角回転数の変動に対して前記内燃機関の出力軸が720度回転する時間を周期とする正弦波成分を減算して得られる演算後回転数の変動に基づいて前記内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する失火判定手段と、
    を備える失火判定装置。
  2. 前記失火判定手段は、前記内燃機関からの出力トルク変動の振幅と前記ねじれ要素の特性とに基づく振幅の正弦波成分を用いて失火を判定する手段である請求項1記載の失火判定装置。
  3. 前記失火判定手段は、最小値が該正弦波成分の周期における前記演算された単位回転角回転数の変動のうちの最小値に一致する位相の正弦波成分を用いて失火を判定する手段である請求項1または2記載の失火判定装置。
  4. 前記失火判定手段は、前記演算後回転数の変動分が閾値変動分未満のときに失火と判定する手段である請求項1ないし3いずれか記載の失火判定装置。
  5. 前記失火判定手段は、前記内燃機関の運転ポイントが前記共振領域に属しないときには前記演算された単位回転角回転数の逆数としての単位回転角回転所要時間に基づいて該内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する手段である請求項1ないし4いずれか記載の失火判定装置。
  6. 出力軸がねじれ要素としてのダンパを介して変速機構に接続された複数気筒の内燃機関と、該内燃機関の失火を判定する請求項1ないし5いずれか記載の失火判定装置と、を搭載する車両。
  7. 出力軸がねじれ要素を介して後段に接続された複数気筒の内燃機関の失火を判定する失火判定方法であって、
    内燃機関の出力軸の回転位置に基づいて前記内燃機関の出力軸の所定の単位回転角毎の回転数である単位回転角回転数を演算し、前記内燃機関の運転ポイントが前記ねじれ要素を含む後段の共振領域に属するときには前記演算した単位回転角回転数の変動に対して前記内燃機関の出力軸が720度回転する時間を周期とする正弦波成分を減算して得られる演算後回転数の変動に基づいて前記内燃機関のいずれかの気筒が失火しているか否かを判定する、
    ことを特徴とする失火判定方法。
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