JP5043617B2 - 異方導電性部材およびその製造方法 - Google Patents

異方導電性部材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、異方導電性部材およびその製造方法に関する。
異方導電性部材は、半導体素子等の電子部品と回路基板との間に挿入し、加圧するだけで電子部品と回路基板間の電気的接続が得られるため、半導体素子等の電子部品等の接続部材及び機能検査を行う際の検査用コネクタ等、広く使用されているほか、光伝送素材の用途としても応用が期待でき、注目度が高い部材である。
特に半導体素子等の電子接続部材は、そのダウンサイジング化が顕著であり、従来のワイヤーボンディングのような直接配線基板を接続するような方式では、接続の安定性を十分に保証することができない。これに代わり近年注目されているのが異方導電性部材であり、絶縁素材の皮膜中に導電性部材が貫通林立したタイプや、金属球を配置したタイプのものが注目されている。
また、検査用コネクタは、半導体素子等の電子部品を回路基板に実装した後に機能検査を行うと、電子部品が不良であった場合に、回路基板もともに処分されることとなり、金額的な損失が大きくなってしまうという問題を回避するためである。
即ち、半導体素子等の電子部品を、実装時と同様のポジションで回路基板に異方導電性部材を介して接触させて機能検査を行うことで、電子部品を回路基板上に実装せずに、機能検査を実施でき、上記の問題を回避することができる。
このような異方導電性部材として、特許文献1には、「接着性絶縁材料からなるフィルム基板中に、導電性材料からなる複数の導通路が、互いに絶縁された状態で、かつ該フィルム基板を厚み方向に貫通した状態で配置され、フィルム基板の長手方向と平行な導通路の断面における形状の外周上の2点間の最大長の平均が10〜30μmであり、隣接する導通路の間隔が、上記最大長の平均の0.5〜3倍であることを特徴とする異方導電性フィルム。」が開示されている。
また、特許文献2には、「絶縁性樹脂よりなるフィルム基材中に、複数の導通路が、互いに絶縁されて、該フィルム基材を厚み方向に貫通し、かつ、千鳥配列で配置されている、異方導電性フィルムであって、導通路列内の導通路間距離よりも、隣り合う導通路列間での導通路間距離が小さいことを特徴とする、異方導電性フィルム。」が開示されている。
このような異方導電性フィルムの製造方法として、特許文献1および2には、異方導電性材料の細線を絶縁性フィルム上に挟み込んだ後、加熱及び加圧により一体化し、厚み方向にスクライブする方法が開示されている。
また、特許文献3には、レジストとマスクを用いて導電性の柱を電鋳で作製し、これに絶縁性素材を流し込み硬化させることで異方導電性フィルムを製造する方法が検討されている。
一方、特許文献4には、「電気的絶縁材からなる保持体と、該保持体中に互いに絶縁状態にて備えられた複数の導電部材とを有し、前記各導電部材の一端が前記保持体の一方の面において露出しており、前記各導電部材の他端が前記保持体の他方の面において露出している電気的接続部材を製造する方法において、基体と、該基体に積層されて設けられるところの前記保持体となる絶縁層とを有する母材に対し前記絶縁層側から高エネルギービームを照射して、複数の領域において前記絶縁層の全部と前記基体の一部とを除去し、前記母材に複数の穴を形成する第1の工程と、
形成された複数の穴に、前記絶縁層の面と面一またはこの面より突出させて、前記導電部材となる導電材料を充填する第2の工程と、前記基体を除去する第3の工程と、を有することを特徴とする電気的接続部材の製造方法。」が開示されており、絶縁層として、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の種々の材質に関する検討も行なわれている。
ところで、近年、半導体素子等の電子部品は、高集積化が一層進むことに伴い、電極(端子)サイズはより小さくなり、電極(端子)数はより増加し、端子間の距離もより狭くなってきている。また、狭ピッチで多数配置されている各端子の表面が本体表面よりも奥まった位置にある表面構造の電子部品も現れてきている。
そのため、このような電子部品に対応できるよう、異方導電性部材における導通路もその外径(太さ)をより小さくし、かつ、狭ピッチで配列させる必要が生じている。
しかしながら、上記特許文献1〜4等に記載されている異方導電性フィルムや電気的接続部材を製造する方法では、導通路のサイズを小さくすることは非常に困難であり、狭ピッチに対応した導電部材を高密度で充填させる方法が期待されている。
特開2000−012619号公報 特開2005−085634号公報 特開2002−134570号公報 特開平03−182081号公報
したがって、本発明は、導通路の設置密度を飛躍的に向上させ、高集積化が一層進んだ現在においても半導体素子等の電子部品の接続部材及び検査用コネクタ等として使用することができる異方導電性部材、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、絶縁性基材としてアルミニウムの陽極酸化皮膜を用い、皮膜内に存在するマイクロポアを利用することにより、導通路の密度を飛躍的に向上できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(i)〜(x)を提供する。
(i)絶縁性基材中に、導電性部材からなる複数の導通路が、互いに絶縁された状態で前記絶縁性基材を厚み方向に1000万個/mm2以上の密度で貫通し、かつ、前記各導通路の一端が前記絶縁性基材の一方の面において露出し、前記各導通路の他端が前記絶縁性基材の他方の面において露出した状態で設けられる異方導電性部材の製造方法であって、少なくとも、
(1)アルミニウム基板を陽極酸化し、マイクロポアを有するアルミナ皮膜を形成する陽極酸化処理工程、
(2)前記陽極酸化処理工程の後に、前記陽極酸化により生じたマイクロポアによる孔を貫通化して前記絶縁性基材を得る貫通化処理工程、および
(3)前記貫通化処理工程の後に、得られた前記絶縁性基材における貫通化した孔の内部に導電性部材を充填して前記異方導電性部材を得る導電性部材充填工程、
を具備する、異方導電性部材の製造方法であって、
前記(1)陽極酸化処理工程が、下記(1−a)〜(1−b)からなる群から選択されるいずれかの処理を含む、異方導電性部材の製造方法。
(1−a)陽極酸化処理(X)を施した後、陽極酸化皮膜を溶解し得る酸またはアルカリを用いて、前記陽極酸化皮膜を完全に溶解した後に、再度陽極酸化(Y)を施す処理。なお、前記陽極酸化処理(X)の条件は、電圧3〜250V、電解時間0.5〜30時間である。
(1−b)アルミニウム基板表面を陽極酸化処理(Z)し、酸またはアルカリを用いて、前記陽極酸化皮膜を部分的に溶解させ、再度陽極酸化処理(W)を実施して前記マイクロポアを深さ方向に成長したのちに、前記マイクロポアの断面形状の変曲点よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する処理。なお、前記陽極酸化処理(Z)の条件は、電圧3〜250V、電解時間0.5〜30時間である。
(ii)更に、
(4)前記導電性部材充填工程の後に、前記絶縁性基材の表面および裏面を平滑化する表面平滑処理工程を具備する上記(i)に記載の異方導電性部材の製造方法。
(iii)更に、
(5)前記表面平滑工程の後に、前記絶縁性基材の表面および裏面から前記導電性部材が突出した構造を形成する導通路突出工程を具備する上記(ii)に記載の異方導電性部材の製造方法。
iv)上記(2)貫通化処理工程が、下記(2−a)および(2−b)からなる群から選択されるいずれかの処理を含む上記(i)乃至(iii)のいずれかに記載の異方導電性部材の製造方法。
(2−a)酸またはアルカリを用いて、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板を溶解し、マイクロポアによる孔を貫通化する処理。
(2−b)陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板を機械的に研磨し、マイクロポアによる孔を貫通化する処理。
)上記(3)導電性部材充填工程が、下記(3−a)〜(3−c)からなる群から選択されるいずれかの処理を含む上記(i)乃至(iv)のいずれかに記載の異方導電性部材の製造方法。
(3−a)導電性部材を有する液中に、前記貫通化した孔を有する絶縁性基材を浸漬し、該孔内に導電性部材を充填する処理。
(3−b)電解めっきにより、前記貫通化した孔内に導電性部材を充填する処理。
(3−c)蒸着により前記貫通化した孔内に導電性部材を充填する処理。
vi)上記(4)表面平滑処理工程が、下記(4−a)〜(4−c)からなる群から選択されるいずれかの処理を含む上記(ii)乃至()のいずれかに記載の異方導電性部材の製造方法。
(4−a)化学機械研磨(CMP)による処理。
(4−b)電解研磨による処理。
(4−c)イオンミリング処理。
vii)上記(5)導通路露出工程が、下記(5−a)および(5−b)からなる群から選択されるいずれかの処理を含む上記(iii)乃至(vi)のいずれかに記載の異方導電性部材の製造方法。
(5−a)前記絶縁性基材の表面および裏面の一部を除去することにより、前記絶縁性基材の表面および裏面から導電性部材が突出した構造を形成する処理。
(5−b)前記導通路の表面に導電性部材を析出されることにより、前記絶縁性基材の表面および裏面から導電性部材が突出した構造を形成する処理。
viii)上記(i)〜(vii)に記載の製造方法により製造された異方導電性部材。
ix)表面および裏面の少なくとも一方に保護材に設けられたことを特徴とする、上記(viii)に記載の異方導電性部材。
以下に示すように、本発明によれば、導通路の設置密度を飛躍的に向上させ、高集積化が一層進んだ現在においても半導体素子等の電子部品の接続部材及び検査用コネクタ等として使用することができる異方導電性部材、および、その製造方法を提供することができる。
また、本発明の異方導電性部材は、電子部品の電極(パッド)部分に接合される導通路の数が多く、圧力が分散されるため、電極へのダメージを軽減することが可能である。また、単一の電極に多くの導通路が接合(接触)しているので、導通路の一部分に異常が起きても全体の導電性確認への影響は極めて小さくなる。更に、評価用の回路基板の位置決めに対する負荷を大幅に低減することができる。
更に、本発明の異方導電性部材の製造方法は、本発明の異方導電性部材を効率的に製造することができるため非常に有用である。
以下に、本発明の異方導電性部材およびその製造方法を詳細に説明する。
本発明の異方導電性部材は、絶縁性基材中に、導電性部材からなる複数の導通路が、互いに絶縁された状態で上記絶縁性基材を厚み方向に貫通し、かつ、上記各導通路の一端が上記絶縁性基材の一方の面において露出し、上記各導通路の他端が上記絶縁性基材の他方の面において露出した状態で設けられる異方導電性部材である。
次に、本発明の異方導電性部材について、図1を用いて説明する。
図1は、本発明の異方導電性部材の好適な実施態様の一例を示す簡略図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は図1(A)の切断面線IB−IBからみた断面図である。
本発明の異方導電性部材1は、絶縁性基材2および導電性部材からなる複数の導通路3を具備するものである。
この導通路3は、軸線方向の長さが絶縁性基材2の厚み方向Zの長さ(厚み)以上で、かつ、密度が1000万個/mm2以上となるよう互いに絶縁された状態で絶縁性基材2を貫通して設けられる。
また、この導通路3は、各導通路3の一端が絶縁性基材2の一方の面において露出し、各導通路3の他端が絶縁性基材2の他方の面において露出した状態で設けられるが、図1(B)に示すように、各導通路3の一端が絶縁性基材2の一方の面2aから突出し、各導通路3の他端が絶縁性基材2の他方の面2bから突出した状態で設けられるのが好ましい。即ち、各導通路3の両端は、絶縁性基材の主面である2aおよび2bから突出する各突出部4aおよび4bを有するのが好ましい。
更に、この導通路3は、少なくとも絶縁性基材2内の部分(以下、「基材内導通部5」ともいう。)が、該絶縁性基材2の厚み方向Zと略平行(図1においては平行)となるように設けられるのが好ましい。
次に、絶縁性基材および導通路のそれぞれについて、材料、寸法、形成方法等について説明する。
[絶縁性基材]
本発明の異方導電性部材を構成する上記絶縁性基材は、マイクロポアを有するアルミニウム基板の陽極酸化皮膜からなる構造体である。
ここで、アルミニウムの陽極酸化皮膜の素材であるアルミナは、従来公知の異方導電性フィルム等を構成する絶縁性基材(例えば、熱可塑性エラストマー等)と同様、電気抵抗率は1014Ω・cm程度である。
本発明においては、上記絶縁性基材の厚み(図1(B)においては符号6で表される部分)は、10〜2000μmであるのが好ましく、50〜1500μmであるのがより好ましく、100〜1000μmであるのが特に好ましい。絶縁性基材の厚みがこの範囲であると、絶縁性基材の取り扱い性が良好となる。
また、本発明においては、上記絶縁性基材における上記導通路間の幅(図1(B)においては符号7で表される部分)は、10nm以上であるのが好ましく、20〜100nmであるのがより好ましく、20〜50nmであるのが更に好ましい。絶縁性基材における導通路間の幅がこの範囲であると、絶縁性基材が絶縁性の隔壁として十分に機能する。
本発明においては、上記絶縁性基材は、マイクロポアについて下記式(i)により定義される規則化度が50%以上であることが好ましい。
規則化度(%)=B/A×100 (i)
上記式(i)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に上記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる上記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
図2は、ポアの規則化度を算出する方法の説明図である。図2を用いて、上記式(1)をより具体的に説明する。
図2(A)に示されるマイクロポア101は、マイクロポア101の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円103(マイクロポア102に内接している。)を描いた場合に、円3の内部にマイクロポア101以外のマイクロポアの重心を6個含んでいる。したがって、マイクロポア101は、Bに算入される。
図2(B)に示されるマイクロポア104は、マイクロポア104の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円106(マイクロポア105に内接している。)を描いた場合に、円106の内部にマイクロポア104以外のマイクロポアの重心を5個含んでいる。したがって、マイクロポア104は、Bに算入されない。
また、図2(B)に示されるマイクロポア107は、マイクロポア107の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円109(マイクロポア108に内接している。)を描いた場合に、円109の内部にマイクロポア107以外のマイクロポアの重心を7個含んでいる。したがって、マイクロポア107は、Bに算入されない。
本発明においては、上記絶縁性基材は、例えば、アルミニウム基板を陽極酸化し、陽極酸化により生じたマイクロポアを貫通化することにより製造することができる。
ここで、陽極酸化および貫通化の処理工程については、後述する本発明の異方導電性部材の製造方法において詳述する。
[導通路]
本発明の異方導電性部材を構成する上記導通路は導電性部材からなるものである。
上記導電性部材は、電気抵抗率が103Ω・cm以下の材料であれば特に限定されず、その具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)等の金属や、導電性高分子、カーボンナノチューブ等のいわゆる有機素材が好適に例示される。
中でも、電気伝導性の観点から金属が好ましく、中でも銅、金、アルミニウム、ニッケルがより好ましく、銅、金が特に好ましい。
また、コストの観点から、導通路の上記絶縁性基材の両面から露出した面や突出した面(以下、「端面」ともいう。)の表面だけが金で形成されるのがより好ましい。
本発明においては、上記導通路は柱状であり、その直径(図1(B)においては符号8で表される部分)は20〜400nmであるのが好ましく、40〜200nmであるのがより好ましく、50〜100nmであるのが更に好ましい。導通路の直径がこの範囲であると、電気信号を流した際に十分な応答が得ることができるため、本発明の異方導電性部材を電子部品の検査用コネクタとして、より好適に用いることができる。
また、本発明においては、上記導通路の両端が上記絶縁性基材の両面から突出している場合、その突出した部分(図1(B)においては符号4aおよび4bで表される部分。以下、「バンプ」ともいう。)の高さは、5〜500nmであるのが好ましく、10〜200nmであるのがより好ましい。バンブの高さがこの範囲であると、電子部品の電極(パッド)部分との接合性が向上する。
本発明においては、上記導通路は上記絶縁性基材によって互いに絶縁された状態で存在するものであるが、その密度は1000万個/mm2以上であり、5000万個/mm2以上であるのが好ましく、1億個/mm2以上であるのがより好ましい。
上記導通路の密度がこの範囲にあることにより、本発明の異方導電性部材は高集積化が一層進んだ現在においても半導体素子等の電子部品の検査用コネクタ等として使用することができる。
本発明においては、隣接する各導通路の中心間距離(図1においては符号9で表される部分。以下、「ピッチ」ともいう。)は、20〜500nmであるのが好ましく、40〜200nmであるのがより好ましく、50〜140nmであるのが更に好ましい。ピッチがこの範囲であると、導通路直径と導通路間の幅(絶縁性の隔壁厚)とのバランスがとりやすい。
本発明においては、上記導通路は、例えば、上記絶縁性基材における貫通化したマイクロポアによる孔の内部に導電性部材を充填することにより製造することができる。
ここで、導電性部材を充填する処理工程については、後述する本発明の異方導電性部材の製造方法において詳述する。
本発明の異方導電性部材は、上述したように、上記絶縁性基材の厚みが30〜1000μmであり、かつ、上記導通路の直径が5〜500nmであるのが、高い絶縁性を維持しつつ、かつ、高密度で導通が確認できる理由から好ましい。
本発明の異方導電性部材の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう。)は、上述した本発明の異方導電性部材を製造する異方導電性部材の製造方法であって、少なくとも、
(1)アルミニウム基板を陽極酸化し、マイクロポアを有するアルミナ皮膜を形成する陽極酸化処理工程、
(2)前記陽極酸化処理工程の後に、前記陽極酸化により生じたマイクロポアによる孔を貫通化して前記絶縁性基材を得る貫通化処理工程、および
(3)前記貫通化処理工程の後に、得られた前記絶縁性基材における貫通化した孔の内部に導電性部材を充填して前記異方導電性部材を得る導電性部材充填工程、
を具備する、異方導電性部材の製造方法ある。
次に、本発明の製造方法に用いられるアルミニウム基板ならびに該アルミニウム基板に施す各処理工程について詳述する。
[アルミニウム基板]
本発明の製造方法に用いられるアルミニウム基板は、特に限定されず、その具体例としては、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハ、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等が挙げられる。
本発明の製造方法においては、アルミニウム基板のうち、後述する陽極酸化処理工程により陽極酸化皮膜を設ける表面は、アルミニウム純度が、95.0質量%以上であるのが好ましく、99.5質量%以上であるのがより好ましく、99.99質量%以上であるのが更に好ましい。アルミニウム純度が上記範囲であると、マイクロポアの配列の規則性が向上するので好ましい。
また、本発明の製造方法においては、アルミニウム基板のうち後述する陽極酸化処理工程を施す表面は、あらかじめ脱脂処理および鏡面仕上げ処理が施されるのが好ましい。
<熱処理>
熱処理を施す場合は、200〜350℃で30秒〜2分程度施すのが好ましい。これにより、後述する陽極酸化処理工程により生成するマイクロポアの配列の規則性が向上する。
熱処理後のアルミニウム基板は、急速に冷却するのが好ましい。冷却する方法としては、例えば、水等に直接投入する方法が挙げられる。
<脱脂処理>
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、アルミニウム基板表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分等を溶解させて除去し、有機成分を原因とする後述の各処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
脱脂処理としては、具体的には、例えば、各種アルコール(例えば、メタノール等)、各種ケトン(例えば、メチルエチルケトン等)、ベンジン、揮発油等の有機溶剤を常温でアルミニウム基板表面に接触させる方法(有機溶剤法);石けん、中性洗剤等の界面活性剤を含有する液を常温から80℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(界面活性剤法);濃度10〜200g/Lの硫酸水溶液を常温から70℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜80秒間接触させ、その後、水洗する方法;濃度5〜20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を常温でアルミニウム基板表面に30秒間程度接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して電解し、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;各種公知の陽極酸化処理用電解液を常温でアルミニウム基板表面に接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して、または、交流電流を流して電解する方法;濃度10〜200g/Lのアルカリ水溶液を40〜50℃でアルミニウム基板表面に15〜60秒間接触させ、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;軽油、灯油等に界面活性剤、水等を混合させた乳化液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(乳化脱脂法);炭酸ナトリウム、リン酸塩類、界面活性剤等の混合液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(リン酸塩法);等が挙げられる。
これらのうち、アルミニウム表面の脂分を除去しうる一方で、アルミニウムの溶解がほとんど起こらない観点から、有機溶剤法、界面活性剤法、乳化脱脂法、リン酸塩法が好ましい。
また、脱脂処理には、従来公知の脱脂剤を用いることができる。具体的には、例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
<鏡面仕上げ処理>
鏡面仕上げ処理は、アルミニウム基板の表面の凹凸をなくして、電着法等による粒子形成処理の均一性や再現性を向上させるために行われる。アルミニウム基板の表面の凹凸としては、例えば、アルミニウム基板が圧延を経て製造されたものである場合における、圧延時に発生した圧延筋が挙げられる。
本発明において、鏡面仕上げ処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨が挙げられる。
機械研磨としては、例えば、各種市販の研磨布で研磨する方法、市販の各種研磨剤(例えば、ダイヤ、アルミナ)とバフとを組み合わせた方法等が挙げられる。具体的には、研磨剤を用いる場合、使用する研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行う方法が好適に例示される。この場合、最終的に用いる研磨剤としては、#1500のものが好ましい。これにより、光沢度を50%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに50%以上)とすることができる。
化学研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法等が挙げられる。
また、リン酸−硝酸法、Alupol I法、Alupol V法、Alcoa R5法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好適に例示される。中でも、リン酸−硝酸法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好ましい。
化学研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
電解研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法;米国特許第2708655号明細書に記載されている方法;「実務表面技術」,vol.33,No.3,1986年,p.32−38に記載されている方法;等が好適に挙げられる。
電解研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
これらの方法は、適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更する機械研磨を施し、その後、電解研磨を施す方法が好適に挙げられる。
鏡面仕上げ処理により、例えば、平均表面粗さRa0.1μm以下、光沢度50%以上の表面を得ることができる。平均表面粗さRaは、0.03μm以下であるのが好ましく、0.02μm以下であるのがより好ましい。また、光沢度は70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。具体的には、変角光沢度計(例えば、VG−1D、日本電色工業社製)を用いて、正反射率70%以下の場合には入反射角度60度で、正反射率70%を超える場合には入反射角度20度で、測定する。
[(1)陽極酸化処理工程]
上記陽極酸化工程は、上記アルミニウム基板に陽極酸化処理を施すことにより、該アルミニウム基板表面にマイクロポアを有する酸化皮膜を形成する工程である。
本発明においては、陽極酸化処理として従来公知の方法を用いることができるが、上記絶縁性基材が、上記式(i)により定義される規則化度に優れた、好ましくは、該規則化度が50%以上となるように配列するマイクロポアを有するアルミニウム基板の陽極酸化皮膜であるため、後述する自己規則化法を用いるのが好ましい。
また、陽極酸化処理は定電圧処理として実施することが好ましい。
自己規則化法は、陽極酸化皮膜のマイクロポアが規則的に配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。具体的には、高純度のアルミニウムを使用し、電解液の種類に応じた電圧で、長時間(例えば、数時間から十数時間)かけて、低速で陽極酸化皮膜を形成させる。
この方法においては、ポア径は電圧に依存するので、電圧を制御することにより、ある程度所望のポア径を得ることができる。
自己規則化法によりマイクロポアを形成するには、少なくとも後述する陽極酸化処理(A)を施せばよいが、後述する自己規則化方法Iまたは自己規則化方法IIにより形成するのが好ましい。
次に、好適態様である自己規則化方法Iおよび自己規則化方法IIについて詳述する。
[(1−a)自己規則化方法I]
自己規則化方法Iでは、陽極酸化処理(陽極酸化処理(A))を施した後、陽極酸化皮膜皮膜を溶解し得る酸またはアルカリを用いて、前記陽極酸化皮膜を完全に溶解(脱膜処理(B))した後に、再度陽極酸化(再陽極酸化処理(C))を施す。
次に、自己規則化方法Iの各処理について詳述する。
<陽極酸化処理(A)>
陽極酸化処理(A)における電解液の平均流速は、0.5〜20.0m/minであるのが好ましく、1.0〜15.0m/minであるのがより好ましく、2.0〜10.0m/minであるのが更に好ましい。上記範囲の流速で陽極酸化処理(A)を行うことにより、均一かつ高い規則性を有することができる。
また、電解液を上記条件で流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。特に、かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため好ましい。このようなかくはん装置としては、例えば、「マグネティックスターラーHS−50D(AS ONE製)」等が挙げられる。
陽極酸化処理(A)は、例えば、酸濃度1〜10質量%の溶液中で、アルミニウム基板を陽極として通電する方法を用いることができる。
陽極酸化処理(A)に用いられる溶液としては、酸溶液であることが好ましく、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸、グリコール酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸等がより好ましく、中でも硫酸、リン酸、シュウ酸が特に好ましい。これらの酸は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
陽極酸化処理(A)の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度0.1〜20質量%、液温−10〜30℃、電流密度0.01〜20A/dm2、電圧3〜300V、電解時間0.5〜30時間であるのが好ましく、電解液濃度0.5〜15質量%、液温−5〜25℃、電流密度0.05〜15A/dm2、電圧5〜250V、電解時間1〜25時間であるのがより好ましく、電解液濃度1〜10質量%、液温0〜20℃、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧10〜200V、電解時間2〜20時間であるのが更に好ましい。
陽極酸化処理(A)の処理時間は、0.5分〜16時間であるのが好ましく、1分〜12時間であるのがより好ましく、2分〜8時間であるのが更に好ましい。
陽極酸化処理(A)は、一定電圧下で行う以外に、電圧を断続的または連続的に変化させる方法も用いることができる。この場合は電圧を順次低くしていくのが好ましい。これにより、陽極酸化皮膜の抵抗を下げることが可能になり、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
本発明の製造方法においては、このような陽極酸化処理(A)により形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、1〜300μmであるのが好ましく、5〜150μmであるのがより好ましく、10〜100μmであるのが更に好ましい。
また、本発明の製造方法においては、このような陽極酸化処理(A)により形成される陽極酸化皮膜のマイクロポアの平均ポア密度は1000万個/mm2であるのが好ましい。
また、マイクロポアの占める面積率は、20〜50%であるのが好ましい。
ここで、マイクロポアの占める面積率は、アルミニウム表面の面積に対するマイクロポアの開口部の面積の合計の割合で定義される。
<脱膜処理(B)>
脱膜処理(B)は、上記陽極酸化処理(A)によりアルミニウム基板表面に形成した陽極酸化皮膜を溶解させて除去する処理である。
上記陽極酸化処理(A)によりアルミニウム基板表面に陽極酸化皮膜を形成した後、後述する貫通化処理工程を直ちに施してもよいが、上記陽極酸化処理(A)の後、更に脱膜処理(B)および後述する再陽極酸化処理(C)をこの順で施した後に、後述する貫通化処理工程を施すのが好ましい。
陽極酸化皮膜は、アルミニウム基板に近くなるほど規則性が高くなっているので、この脱膜処理(B)により、一度陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に残存した陽極酸化皮膜の底部分を表面に露出させて、規則的な窪みを得ることができる。したがって、脱膜処理(B)では、アルミニウムは溶解させず、アルミナ(酸化アルミニウム)からなる陽極酸化皮膜のみを溶解させる。
アルミナ溶解液は、従来公知のものを限定せずに使用できるが、クロム化合物、硝酸、リン酸、ジルコニウム系化合物、チタン系化合物、リチウム塩、セリウム塩、マグネシウム塩、ケイフッ化ナトリウム、フッ化亜鉛、マンガン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物、バリウム化合物およびハロゲン単体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有した水溶液が好ましい。
具体的なクロム化合物としては、例えば、酸化クロム(III)、無水クロム(VI)酸等が挙げられる。
ジルコニウム系化合物としては、例えば、フッ化ジルコンアンモニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウムが挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、酸化チタン、硫化チタンが挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、フッ化リチウム、塩化リチウムが挙げられる。
セリウム塩としては、例えば、フッ化セリウム、塩化セリウムが挙げられる。
マグネシウム塩としては、例えば、硫化マグネシウムが挙げられる。
マンガン化合物としては、例えば、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カルシウムが挙げられる。
モリブデン化合物としては、例えば、モリブデン酸ナトリウムが挙げられる。
マグネシウム化合物としては、例えば、フッ化マグネシウム・五水和物が挙げられる。
バリウム化合物としては、例えば、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウム、塩素酸バリウム、塩化バリウム、フッ化バリウム、ヨウ化バリウム、乳酸バリウム、シュウ酸バリウム、過塩素酸バリウム、セレン酸バリウム、亜セレン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、亜硫酸バリウム、チタン酸バリウム、水酸化バリウム、硝酸バリウム、あるいはこれらの水和物等が挙げられる。
上記バリウム化合物の中でも、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウムが好ましく、酸化バリウムが特に好ましい。
ハロゲン単体としては、例えば、塩素、フッ素、臭素が挙げられる。
中でも、上記アルミナ溶解液が、酸を含有する水溶液であるのが好ましく、酸として、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等が挙げられ、2種以上の酸の混合物であってもよい。
酸濃度としては、0.01mol/L以上であるのが好ましく、0.05mol/L以上であるのがより好ましく、0.1mol/L以上であるのが更に好ましい。上限は特にないが、一般的には10mol/L以下であるのが好ましく、5mol/L以下であるのがより好ましい。不要に高い濃度は経済的でないし、より高いとアルミニウム基板が溶解するおそれがある。
アルミナ溶解液は、−10℃以上であるのが好ましく、−5℃以上であるのがより好ましく、0℃以上であるのが更に好ましい。なお、沸騰したアルミナ溶解液を用いて処理すると、規則化の起点が破壊され、乱れるので、沸騰させないで用いるのが好ましい。
アルミナ溶解液は、アルミナを溶解し、アルミニウムを溶解しない。ここで、アルミナ溶解液は、アルミニウムを実質的に溶解させなければよく、わずかに溶解させるものであってもよい。
脱膜処理(B)は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を上述したアルミナ溶解液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
浸せき法は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を上述したアルミナ溶解液に浸せきさせる処理である。浸せき処理の際にかくはんを行うと、ムラのない処理が行われるため、好ましい。
浸せき処理の時間は、10分以上であるのが好ましく、1時間以上であるのがより好ましく、3時間以上、5時間以上であるのが更に好ましい。
<再陽極酸化処理(C)>
上記脱膜処理(B)により陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に規則的な窪みを形成した後、再び陽極酸化処理を施すことで、マイクロポアの規則化度がより高い陽極酸化皮膜を形成することができる。
再陽極酸化処理(C)における陽極酸化処理は、従来公知の方法を用いることができるが、上述した陽極酸化処理(A)と同一の条件で行われるのが好ましい。
また、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。これらの方法によれば、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
また、再陽極酸化処理(C)を低温で行うと、マイクロポアの配列が規則的になり、また、ポア径が均一になる。
一方、再陽極酸化処理(C)を比較的高温で行うことにより、マイクロポアの配列を乱し、また、ポア径のばらつきを所定の範囲にすることができる。また、処理時間によっても、ポア径のばらつきを制御することができる。
本発明の製造方法においては、このような再陽極酸化処理(C)により形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、30〜1000μmであるのが好ましく、50〜500μmであるのが更に好ましい。
また、本発明の製造方法においては、このような陽極酸化処理(C)により形成される陽極酸化皮膜のマイクロポアのポア径は0.01〜0.5μmであるのが好ましく、0.02〜0.1μmであるのがより好ましい。
平均ポア密度は、1000万個/mm2以上であるのが好ましい。
[(1−b)自己規則化方法II]
自己規則化方法IIでは、アルミニウム基板表面を陽極酸化処理し(陽極酸化処理(D))、酸またはアルカリを用いて、前記陽極酸化皮膜を部分的に溶解させ(酸化皮膜溶解処理(E))、再度陽極酸化処理を実施して前記マイクロポアを深さ方向に成長したのちに、前記マイクロポアの断面形状の変曲点よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する。
次に、自己規則化方法IIの各処理について詳述する。
<陽極酸化処理(D)>
陽極酸化処理(D)は、従来公知の電解液を用いることができるが、直流定電圧条件下にて、通電時の皮膜形成速度Aと、非通電時の皮膜溶解速度Bとした時、以下一般式(ii)で表されるパラメータRが、160≦R≦200、好ましくは170≦R≦190、特に好ましくは175≦R≦185を満たす電解液を用いて処理を施すことで、孔の規則配列性を大幅に向上することができる。
R=A[nm/s]÷(B[nm/s]×印加電圧[V]) ・・・ (ii)
陽極酸化処理(D)における電解液の平均流速は、上述した陽極酸化処理(A)と同様、0.5〜20.0m/minであるのが好ましく、1.0〜15.0m/minであるのがより好ましく、2.0〜10.0m/minであるのが更に好ましい。上記範囲の流速で陽極酸化処理(D)を行うことにより、均一かつ高い規則性を有することができる。
また、電解液を上記条件で流動させる方法は、上述した陽極酸化処理(A)と同様、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。特に、かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため、好ましい。そのようなかくはん装置としては、例えば、「マグネティックスターラーHS−50D(AS ONE製)」等が挙げられる。
また、陽極酸化処理液の粘度としては、25℃1気圧下における粘度が0.0001〜100.0Pa・sが好ましく、0.0005〜80.0Pa・sが更に好ましい。上記範囲の粘度を有する電解液で陽極酸化処理(D)を行うことにより、均一かつ高い規則性を有することができる。
陽極酸化処理(D)で用いる電解液には、酸性、アルカリ性いずれも使用することができるが、孔の真円性を高める観点から酸性の電解液が好適に用いられる。
具体的には、上述した陽極酸化処理(A)と同様、塩酸、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、グリコール酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸、グリコール酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸等がより好ましく、中でも硫酸、リン酸、シュウ酸が特に好ましい。これらの酸は単独でまたは2種以上を組み合わせて、上記一般式(ii)の計算式より所望のパラメータに調整して用いることができる。
陽極酸化処理(D)の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、上述した陽極酸化処理(A)と同様、一般的には電解液濃度0.1〜20質量%、液温−10〜30℃、電流密度0.01〜20A/dm2、電圧3〜500V、電解時間0.5〜30時間であるのが好ましく、電解液濃度0.5〜15質量%、液温−5〜25℃、電流密度0.05〜15A/dm2、電圧5〜250V、電解時間1〜25時間であるのがより好ましく、電解液濃度1〜10質量%、液温0〜20℃、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧10〜200V、電解時間2〜20時間であるのが更に好ましい。
本発明の製造方法においては、このような陽極酸化処理(D)により形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、0.1〜300μmであるのが好ましく、0.5〜150μmであるのがより好ましく、1〜100μmであるのが更に好ましい。
また、本発明の製造方法においては、このような陽極酸化処理(D)により形成される陽極酸化皮 膜のマイクロポアの平均ポア密度は50〜1500個/μm2であるのが好ましい。
また、マイクロポアの占める面積率は、20〜50%であるのが好ましい。
ここで、マイクロポアの占める面積率は、アルミニウム表面の面積に対するマイクロポアの開口部の面積の合計の割合で定義される。
この陽極酸化処理(D)により、図3(A)に示されるように、アルミニウム基板12の表面に、マイクロポア16aを有する陽極酸化皮膜14aが形成される。なお、陽極酸化皮膜14aのアルミニウム基板12側には、バリア層18aが存在している。
<酸化皮膜溶解処理(E)>
酸化皮膜溶解処理(E)は、上記陽極酸化処理(D)により形成された陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの経(ポア径)を拡大させる処理(孔径拡大処理)である。
酸化皮膜溶解処理(E)は、上記陽極酸化処理(D)後のアルミニウム基板を酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
酸化皮膜溶解処理(E)において、酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。中でも、クロム酸を含有しない水溶液が安全性に優れる点で好ましい。酸水溶液の濃度は1〜10質量%であるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜60℃であるのが好ましい。
一方、酸化皮膜溶解処理(E)において、アルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜120分であるのが好ましく、10〜90分であるのがより好ましく、15〜60分であるのが更に好ましい。
また、酸化皮膜溶解処理(E)において、ポア径の拡大量は陽極酸化処理(D)の条件により異なるが、処理前後の拡大比が1.05倍〜100倍が好ましく、1.1倍〜75倍がより好ましく、1.2倍〜50倍が特に好ましい。
この酸化皮膜溶解処理(E)により、図3(B)に示されるように、図3(A)に示される陽極酸化皮膜14aの表面およびマイクロポア16aの内部(バリア層18aおよび多孔質層)が溶解し、アルミニウム基板12上に、マイクロポア16bを有する陽極酸化皮膜14bを有するアルミニウム部材が得られる。なお、図3(A)と同様、陽極酸化皮膜14bのアルミニウム基板12側には、バリア層18bが存在している。
自己規則化方法IIにおいては、上記酸化皮膜溶解処理(E)の後に、再度上記陽極酸化処理(D)を施すのが好ましい。
再度の陽極酸化処理(D)により、図3(C)に示されるように、図3(B)に示されるアルミニウム基板12の酸化反応が進行し、アルミニウム基板12上に、マイクロポア16bよりも深くなったマイクロポア16cを有する陽極酸化皮膜14cを有するアルミニウム部材が得られる。なお、図3(A)と同様、陽極酸化皮膜14cのアルミニウム基板12側には、バリア層18cが存在している。
また、自己規則化方法IIにおいては、上記陽極酸化処理(D)、上記酸化皮膜溶解処理(E)および上記陽極酸化処理(D)をこの順に施した後に、更に上記酸化皮膜溶解処理(E)を施すのが好ましい。
この処理により、マイクロポアの中に処理液が入るため、再度の陽極酸化処理(D)で形成された陽極酸化皮膜を全て溶解し、再度の陽極酸化処理(D)で形成されたマイクロポアのポア径を広げることができる。
即ち、再度の酸化皮膜溶解処理(E)により、図3(D)に示されるように、図3(C)に示される陽極酸化皮膜14cの変曲点より表面側のマイクロポア16cの内部が溶解し、すなわち、マイクロポア16cの断面形状の変曲点よりも上方の陽極酸化皮膜14cが除去されて、アルミニウム基板12上に、直管状のマイクロポア16dを有する陽極酸化皮膜14dを有するアルミニウム部材が得られる。なお、図3(A)と同様、陽極酸化皮膜14dのアルミニウム基板12側には、バリア層18dが存在している。
ここで、マイクロポアのポア径の拡大量は、再度の陽極酸化処理(D)の処理条件により異なるが、処理前後の拡大比が1.05倍〜100倍が好ましく、1.1倍〜75倍がより好ましく、1.2倍〜50倍が特に好ましい。
自己規則化方法IIは、上述した陽極酸化処理(D)と酸化皮膜溶解処理(E)のサイクルを1回以上行うものである。繰り返しの回数が多いほど、上述したポアの配列の規則性が高くなる。
また、直前の陽極酸化処理(D)で形成された陽極酸化皮膜を酸化皮膜溶解処理(E)で全て溶解することにより、皮膜表面から見たマイクロポアの真円性が飛躍的に向上するため、上記サイクルを2回以上繰り返して行うのが好ましく、3回以上繰り返して行うのがより好ましく、4回以上繰り返して行うのが更に好ましい。
また、上記サイクルを2回以上繰り返して行う場合、各回の酸化皮膜溶解処理および陽極酸化処理の条件は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよく、また、最後の処理を陽極酸化処理で終えてもよい。
本発明の製造方法においては、陽極酸化処理として、以下に述べるインプリント処理を用いた方法も好ましく用いることができる。
[(1−c):インプリント処理を用いた方法]
インプリント処理を用いた方法では、アルミニウム基板の表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成させる陽極酸化処理の前に、陽極酸化処理のマイクロポアの生成の起点となる複数の窪みを該アルミニウム基板の表面に所定の間隔および配列で形成させておく。このような窪みを形成させることにより、マイクロポアの配列およびポア径の真円度を所望の範囲に制御することが容易となる。
窪みを形成させる方法は、特に限定されず、例えば、インプリント(転写)法を含む物理的方法、粒子線法、ブロックコポリマー法、レジストパターン・露光・エッチング法が挙げられる。なお、インプリント処理では、窪みの形成に、自己規則化方法(I)における、陽極酸化処理工程(A)および脱膜処理(B)をこの順に実施することにより窪みを形成する手順や、電気化学的粗面化処理によりくぼみを形成する手順のような電気化学的な方法は用いない。
陽極酸化処理のマイクロポアの生成の起点となる複数の窪みを所定の間隔および配列で形成させておくことにより陽極酸化により形成されるマイクロポアの起点を任意の所望の配列とすることができるようになり、得られる構造体の真円性を高くすることができる。
<物理的方法>
例えば、インプリント法(突起を有する基板またはロールをアルミニウム基板に圧接し、凹部を形成する、転写法、プレスパターニング法)を用いる方法が挙げられる。具体的には、複数の突起を表面に有する基板をアルミニウム基板の表面に押し付けて窪みを形成させる方法が挙げられる。例えば、特開平10−121292号公報に記載されている方法を用いることができる。
また、アルミニウム基板の表面にポリスチレン球を稠密状態で配列させ、その上からSiO2を蒸着した後、ポリスチレン球を除去し、蒸着されたSiO2をマスクとして基板をエッチングして窪みを形成させる方法も挙げられる。
<粒子線法>
粒子線法は、アルミニウム基板の表面に粒子線を照射して窪みを形成させる方法である。粒子線法は、窪みの位置を自由に制御することができるという利点を有する。
粒子線としては、例えば、荷電粒子ビーム、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)、電子ビームが挙げられる。
粒子線法としては、例えば、特開2001−105400号公報に記載されている方法を用いることもできる。
<ブロックコポリマー法>
ブロックコポリマー法は、アルミニウム基板の表面にブロックコポリマー層を形成させ、熱アニールによりブロックコポリマー層に海島構造を形成させた後、島部分を除去して窪みを形成させる方法である。
ブロックコポリマー法としては、例えば、特開2003−129288号公報に記載されている方法を用いることができる。
<レジストパターン・露光・エッチング法>
レジストパターン・露光・エッチング法は、フォトリソグラフィあるいは電子ビームリソグラフィ法により、アルミニウム基板の表面上に形成したレジスト膜に露光および現像を施し、レジストパターンを形成した後これをエッチングする。レジストを設け、エッチングしてアルミニウム基板の表面まで貫通した窪みを形成させる方法である。
上述した種々の窪みを形成させる方法の中でも、物理的方法、FIB法、レジストパターン・露光・エッチング法が望ましい。
インプリント処理において、アルミニウム基板の表面に複数の窪みを所定の間隔および配列で形成する場合、特に0.1μm前後の間隔で微細な窪みを形成する場合、上記アルミニウム板表面に微細な窪みを人工的に規則正しく形成するのに、電子ビームリソグラフィやX線リソグラフィなどを用いた高解像度の微細加工技術を毎回適用することは経済的でないため、複数の突起を表面に備えた基板を陽極酸化するアルミニウム基板表面に押し付けるインプリント(転写)法が好ましい。
具体的には、突起を有する基板またはロールをアルミニウム基板表面に密着させ、油圧プレスなどを用いて圧力を印加することにより実施できる。基板に設ける突起の配列(パターン)は、陽極酸化処理によって形成する陽極酸化皮膜のマイクロポアの配列に対応させるものとし、正六角形状の周期的な配列は言うに及ばず、周期的配列の一部を欠いたような任意のパターンとすることもできる。また、突起を形成する基板は鏡面の表面を有するとともに、押し付ける圧力により突起が破壊したり、突起の配置が変形することのない強度と硬度を有するものが望ましい。このためには、アルミニウムやタンタルのような金属基板も含め、微細加工が容易で汎用的なシリコン基板等を用いることができるが、強度の高いダイヤモンドやシリコンカーバイドで構成されている基板は、繰り返し使用回数を多くすることができるので、より望ましい。これによって、突起を有する基板またはロールを1個作製しておけば、これを繰り返し使用することにより、効率的に多数のアルミニウム板に規則的な窪み配列を形成することができる。
上記のインプリント法を用いた場合の圧力としては、基板の種類にもよるが、0.001〜100トン/cm2が好ましく、0.01〜75トン/cm2がより好ましく、0.1〜50トン/cm2が特に好ましい。
また、プレス時の温度としては、0〜300℃が好ましく、5〜200℃がより好ましく、10〜100℃が特に好ましく、プレスの時間としては、2秒〜30分が好ましく、5秒〜15分がより好ましく、10秒〜5分が特に好ましい。
また、プレス後の表面形状を固定化する観点から、アルミニウム基板の表面を冷却する方法も後処理として付け加えることができる。
インプリント処理を用いた方法では、上記のようにアルミニウム基板の表面に窪みを形成した後、該アルミニウム基板表面に陽極酸化処理を施す。
このとき、陽極酸化処理は、従来公知の方法を用いることができ、一定電圧で処理する方法や、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。
また、陽極酸化処理を低温で行うと、マイクロポアの配列が規則的になり、また、ポア径が均一になる。
一方、陽極酸化処理を比較的高温で行うことにより、マイクロポアの配列を乱し、また、ポア径のばらつきを所定の範囲にすることができる。また、処理時間によっても、ポア径のばらつきを制御することができる。
本発明においては、このような陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、30〜1000μmであるのが好ましく、50〜500μmであるのが更に好ましい。
また、本発明の製造方法においては、このような陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜のマイクロポアのポア径は0.01〜0.5μmであるのが好ましく、0.02〜0.1μmであるのがより好ましい。
平均ポア密度は、1000万個/mm2以上であるのが好ましい。
本発明の製造方法においては、陽極酸化処理工程で上記(1−a)〜(1−c)の処理のいずれかを実施することが好ましい。
[(2)貫通化処理工程]
上記貫通化処理工程は、上記陽極酸化処理工程の後に、上記陽極酸化により生じたマイクロポアによる孔を貫通化して上記絶縁性基材を得る工程である。
上記貫通化処理工程では、下記(2−a)または(2−b)の処理を実施することが好ましい。
(2−a)酸またはアルカリを用いて、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板を溶解し、マイクロポアによる孔を貫通化する処理(化学溶解処理)。
(2−b)陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板を機械的に研磨し、マイクロポアによる孔を貫通化する処理(機械的研磨処理)。
以下(2−a)、(2−b)の処理について詳述する。
[(2−a)化学溶解処理]
化学溶解処理では、具体的には、例えば、上記陽極酸化処理工程の後に、アルミニウム基板(図3(D)においては符号12で表される部分)を溶解し、さらに、陽極酸化皮膜の底部(図3(D)においては符号18dで表される部分)を除去して、マイクロポアによる孔を貫通化させる。
<アルミニウム基板の溶解>
上記陽極酸化処理工程の後のアルミニウム基板の溶解は、陽極酸化皮膜(アルミナ)は溶解しにくく、アルミニウムを溶解しやすい処理液を用いる。
即ち、アルミニウム溶解速度1μm/分以上、好ましくは3μm/分以上、より好ましくは5μm/分以上、および、陽極酸化皮膜溶解速度0.1nm/分以下、好ましくは0.05nm/分以下、より好ましくは0.01nm/分以下の条件を有する処理液を用いる。
具体的には、アルミよりもイオン化傾向の低い金属化合物を少なくとも1種含み、かつ、pHが4以下8以上、好ましくは3以下9以上、より好ましくは2以下10以上の処理液を使用して浸漬処理を行う。
このような処理液としては、酸またはアルカリ水溶液をベースとし、例えば、マンガン、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、銅、水銀、銀、パラジウム、白金、金の化合物(例えば、塩化白金酸)、これらのフッ化物、これらの塩化物等を配合したものであるのが好ましい。
中でも、酸水溶液ベースが好ましく、塩化物をブレンドするのが好ましい。
特に、塩酸水溶液に塩化水銀をブレンドした処理液(塩酸/塩化水銀)、塩酸水溶液に塩化銅をブレンドした処理液(塩酸/塩化銅)が、処理ラチチュードの観点から好ましい。
なお、このような処理液の組成は特に限定されず、例えば、臭素/メタノール混合物、臭素/エタノール混合物、王水等を用いることができる。
また、このような処理液の酸またはアルカリ濃度は、0.01〜10mol/Lが好ましく、0.05〜5mol/Lがより好ましい。
更に、このような処理液を用いた処理温度は、−10℃〜80℃が好ましく、0℃〜60℃が好ましい。
本発明の製造方法においては、アルミニウム基板の溶解は、上記陽極酸化処理工程の後のアルミニウム基板を上述した処理液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。このときの接触時間としては、10秒〜5時間が好ましく、1分〜3時間がより好ましい。
<陽極酸化皮膜の底部の除去>
アルミニウム基板を溶解した後の陽極酸化皮膜の底部の除去は、酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸せきさせることにより行う。底部の陽極酸化皮膜が除去されることにより、マイクロポアによる孔が貫通する。
陽極酸化皮膜の底部の除去は、予めpH緩衝液に浸漬させてマイクロポアによる孔の開口側から孔内にpH緩衝液を充填した後に、開口部の逆面、即ち、陽極酸化皮膜の底部に酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させる方法により行うのが好ましい。
酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は1〜10質量%であるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜40℃であるのが好ましい。
一方、アルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液や、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜120分であるのが好ましく、10〜90分であるのがより好ましく、15〜60分であるのが更に好ましい。
また、予めpH緩衝液に浸漬させる場合は、上述した酸/アルカリに適宜対応した緩衝液を使用する。
[(2−b)機械的研磨処理]
機械的研磨処理では、具体的には、例えば、上記陽極酸化処理工程の後に、アルミニウム基板(図3(D)においては符号12で表される部分)およびアルミニウム基板近傍の陽極酸化皮膜(図3(D)においては符号18dで表される部分)を機械的に研磨して除去することにより、マイクロポアによる孔を貫通化させる。
機械的研磨処理では、公知の機械的研磨処理方法を幅広く用いることができ、例えば、鏡面仕上げ処理について例示した機械研磨を用いることができる。但し、精密研磨速度が高いことから化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことが好ましい。CMP処理には、フジミインコーポレイテッド社製のPNANERLITE−7000、日立化成社製のGPX HSC800、旭硝子(セイミケミカル)社製のCL−1000等のCMPスラリーを用いることができる。
これらの貫通化処理工程により、図3(D)に示されるアルミニウム基板12およびバリア層18dがなくなった状態の構造物、即ち、図4(A)に示される絶縁性基材20が得られる。
[(3)導電性部材充填工程]
導電性部材充填工程は、上記貫通化処理工程の後に、得られた上記絶縁性基材における貫通化した孔の内部に導電性部材を充填して上記異方導電性部材を得る工程である。
上記導電性部材充填工程では、下記(3−a)〜(3−c)のいずれかの処理を実施することが好ましい。
(3−a)導電性部材を有する液中に、前記貫通化した孔を有する絶縁性基材を浸漬し、該孔内に導電性部材を充填する処理(浸漬処理)。
(3−b)電解めっきにより、前記貫通化した孔内に導電性部材を充填する処理(電解めっき処理)。
(3−c)蒸着により前記貫通化した孔内に導電性部材を充填する処理(蒸着処理)。
ここで、充填する導電性部材は、異方導電性部材の導通路を構成するものであり、本発明の異方導電性部材において説明したものと同様である。
以下(3−a)〜(3−c)の処理について詳述する。
[(3−a)浸漬処理]
導電性部材を有する液中に、前記貫通化した孔を有する絶縁性基材を浸漬し、孔内に導電性部材を充填する処理としては、無電解めっき処理や、高粘度の溶融金属浸漬処理、導電性高分子溶解液浸漬処理など、公知の方法を用いることができるが、導電性材料としての好ましい素材が金属であることから、無電解めっき処理、溶融金属浸漬処理が好ましく、操作の簡易性から無電解めっき処理が好ましい。
無電解めっきの方法としては、公知の方法及び処理液を用いることができ特に限定されないが、析出させる金属核を予め設け、その後に該金属を含む溶剤に溶ける化合物と還元剤を液に溶かし、絶縁性基材を該液に浸漬することにより、貫通化した孔内に金属を充填させる方法が好ましい。
また、後述する電解めっき処理と併用して処理しても良い。
[(3−b)電解めっき処理]
本発明の製造方法において、電解めっきにより、貫通化した孔内に導電性部材を充填する場合は、パルス電解または定電位電解の際に休止時間を設ける必要がある。休止時間は、10秒以上必要で、30〜60秒であるのが好ましい。
また、電解液のかくはんを促進するため、超音波を加えることも望ましい。
更に、電解電圧は、通常20V以下であって望ましくは10V以下であるが、使用する電解液における目的金属の析出電位を予め測定し、その電位+1V以内で定電位電解を行うことが好ましい。なお、定電位電解を行う際には、サイクリックボルタンメトリを併用できるものが望ましく、Solartron社、BAS社、北斗電工社、IVIUM社等のポテンショスタット装置を用いることができる。
めっき液は、従来公知のめっき液を用いることができる。
具体的には、銅を析出させる場合には硫酸銅水溶液が一般的に用いられるが、硫酸銅の濃度は、1〜300g/Lであるのが好ましく、100〜200g/Lであるのがより好ましい。また、電解液中に塩酸を添加すると析出を促進することができる。この場合、塩酸濃度は10〜20g/Lであるのが好ましい。
また、金を析出させる場合、テトラクロロ金の硫酸溶液を用い、交流電解でめっきを行うのが望ましい。
[(3−c)蒸着処理]
蒸着により貫通化した孔内に導電性部材を充填する場合、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)といった公知の蒸着処理を用いることができる。蒸着処理を行う際の条件としては、その対象物質により異なるが、温度−40℃〜80℃、真空度10−3Pa以下が蒸着速度の観点から好ましく、−20℃〜60℃、真空度真空度10−4Pa以下がより好ましい。
また、充填を均一に行うために、蒸着方向に対する絶縁性基板の面を適宜傾けて、斜め方向から蒸着する方法も好適に用いることができる。
これらの導電性部材充填工程により、図4(B)に示される異方導電性部材21が得られる。
[(4)表面平滑処理工程]
本発明の製造方法においては、上記導電性部材充填工程の後に、上記絶縁性基材の表面および裏面を平滑化する表面平滑処理工程を具備するのが好ましい。表面平滑処理工程を実施することにより、導電性部材を充填させた後の絶縁性基材の表面および裏面の平滑化と、該表面および裏面に付着した余分な導電性部材を除去することができる。
表面平滑処理工程では、下記(4−a)〜(4−c)のいずれかの処理を実施することが好ましい。
以下(4−a)〜(4−c)の処理について詳述する。
(4−a)化学機械研磨(CMP)による処理。
(4−b)電解研磨による処理。
(4−c)イオンミリング処理。
[(4−a)化学機械研磨(CMP)による処理]
CMP処理には、フジミインコーポレイテッド社製のPNANERLITE−7000、日立化成社製のGPX HSC800、旭硝子(セイミケミカル)社製のCL−1000等のCMPスラリーを用いることができる。
なお、陽極酸化皮膜を研磨したくないので、層間絶縁膜やバリアメタル用のスラリーを用いるのは好ましくない。
[(4−b)電解研磨による処理]
電解研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法;米国特許第2708655号明細書に記載されている方法;「実務表面技術」,vol.33,No.3,1986年,p.32−38に記載されている方法;等が好適に挙げられる。
[(4−c)イオンミリング処理]
イオンミリング処理は、上記CMPによる処理や、電解研磨処理よりもさらに精密な研磨が必要な際に施され、公知の技術を用いることができる。イオン種としては一般的なアルゴンイオンを用いることが好ましい。
[(5)導通路突出工程]
本発明の製造方法においては、上記表面平滑処理工程の後に、上記絶縁性基材の表面および裏面から上記導電性部材が突出した構造を形成する導通路突出工程を具備するのが好ましい。
導通路突出工程では、下記(5−a)または(5−b)のいずれかの処理を実施することが好ましい。
(5−a)上記絶縁性基材の表面および裏面の一部を除去することにより、上記絶縁性基材の表面および裏面から導電性部材が突出した構造を形成する処理。
(5−b)上記導通路の表面に導電性部材を析出させることにより、上記絶縁性基材の表面および裏面から導電性部材が突出した構造を形成する処理。
上記(5−a)処理では、上記表面平滑処理工程後の異方導電性部材を酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させることにより、異方導電性部材表面の絶縁性基材のみを一部溶解させて除去して導通路を突出させる(図4(C))。
上記(5−a)処理は、導通路を構成する導電性部材を溶解しない条件であれば、上述した酸化皮膜溶解処理(E)と同様の処理条件で施すことができる。特に、溶解速度を管理しやすい酸水溶液またはアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。
上記(5−b)処理では、図4(B)に示される導通路3の表面にのみ、導電性部材を析出させることにより、導通路を突出させる(図4(D))。導電性部材の析出は、無電解めっきまたは電着処理により行うことができる。なお、析出させる導電性部材は、導電性部材充填工程で充填した導電性部材と同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
[保護膜形成処理]
本発明の製造方法においては、アルミナで形成された絶縁性基材が、空気中の水分との水和により、経時により孔径が変化してしまうことから、上記導電性部材充填工程前に、保護膜形成処理を施すことが好ましい。
保護膜としては、Zr元素および/またはSi元素を含有する無機保護膜、あるいは、水不溶性ポリマーを含有する有機保護膜が挙げられる。
Zr元素を有する保護膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、ジルコニウム化合物が溶解している水溶液に直接浸せきして処理する方法が一般的である。また、保護膜の強固性と安定性の観点から、リン化合物をあわせて溶解させた水溶液を用いることが好ましい。
ここで、ジルコニウム化合物としては、具体的には、例えば、ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カルシウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、テトラクロロビス(テトラヒドロフラン)ジルコニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド等が挙げられ、中でも、フッ化ジルコン酸ナトリウムが好ましい。
また、水溶液におけるジルコニウム化合物の濃度としては、保護膜厚の均一性の観点から、0.01〜10wt%が好ましく、0.05〜5wt%がより好ましい。
リン化合物としては、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム等が挙げられ、中でも、リン酸水素ナトリウムが好ましい。
また、水溶液におけるジルコニウム化合物の濃度としては、保護膜厚の均一性の観点から、0.1〜20wt%が好ましく、0.5〜10wt%がより好ましい。
また、処理温度としては、0〜120℃が好ましく、20〜100℃がより好ましい。
一方、Si元素を有する保護膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩が溶解している水溶液に直接浸せきして処理する方法が一般的である。
アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、ケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率(一般に〔SiO2〕/〔M2O〕のモル比で表す。)と濃度によって保護膜厚の調節が可能である。
ここで、Mとしては、特にナトリウム、カリウムが好適に用いられる。
また、モル比は、〔SiO2〕/〔M2O〕が0.1〜5.0が好ましく、0.5〜3.0がより好ましい。
更に、SiO2の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
有機保護膜としては、水不溶性ポリマーが溶解している有機溶剤に、直接浸せきしたのち、加熱処理により溶剤のみを揮発させる方法が好ましい。
水不溶性ポリマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリサルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、セロハン等が挙げられる。
また、有機溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等が挙げられる。
濃度としては、0.1〜50wt%が好ましく、1〜30wt%がより好ましい。
また、溶剤揮発時の加熱温度としては、30〜300℃が好ましく、50〜200℃がより好ましい。
保護膜形成処理後において、保護膜を含めた陽極酸化皮膜の膜厚は、0.1〜1000μmであるのが好ましく、1〜500μmであるのが更に好ましい。
本発明の製造方法においては、得られる異方導電性部材の用途に応じて、加熱処理を施すことにより、硬度および耐ヒートサイクル性を制御することができる。
例えば、100℃以上で加熱することが好ましく、200℃以上がより好ましく、400℃以上が特に好ましい。また加熱時間としては、10秒〜24時間が好ましく、1分〜12時間がより好ましく、30分〜8時間が特に好ましい。このような加熱処理により高度が向上し、半導体製造工程等における加熱および冷却のヒートサイクル時においても伸縮が抑制される。
(実施例1)
(A)鏡面仕上げ処理(電解研磨処理)
高純度アルミニウム基板(住友軽金属社製、純度99.99質量%、厚さ0.4mm)を10cm四方の面積で陽極酸化処理できるようカットし、以下組成の電解研磨液を用い、電圧25V、液温度65℃、液流速3.0m/minの条件で電解研磨処理を施した。
陰極はカーボン電極とし、電源は、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
(電解研磨液組成)
・85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
(B)陽極酸化処理工程(自己規則化方法I)
次いで、電解研磨処理後のアルミニウム基板に、0.20mol/L硫酸の電解液で、電圧20V、液温度10℃、液流速3.0m/minの条件で、12時間のプレ陽極酸化処理を施した。
その後、プレ陽極酸化処理後のアルミニウム基板を、0.2mol/L無水クロム酸、0.6mol/Lリン酸の混合水溶液(液温:50℃)に12時間浸漬させる脱膜処理を施した。
その後、0.40mol/L硫酸の電解液で、電圧20V、液温度7℃、液流速3.0m/minの条件で、10時間の再陽極酸化処理を施した。
なお、プレ陽極酸化処理および再陽極酸化処理は、いずれも陰極はステンレス電極とし、電源はGP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、冷却装置にはNeoCool BD36(ヤマト科学社製)、かくはん加温装置にはペアスターラー PS−100(EYELA社製)を用いた。更に、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
(C)貫通化処理工程
次いで、20質量%塩化水銀水溶液(昇汞)に20℃、3時間浸漬させることによりアルミニウム基板を溶解し、更に、5質量%リン酸に30℃、30分間浸漬させることにより陽極酸化皮膜の底部を除去し、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜からなる構造体(絶縁性基材)を作製した。
(D)加熱処理
次いで、上記で得られた構造体に、温度400℃で1時間の加熱処理を施した。
(E)導電性部材充填工程
次いで、上記加熱処理後の構造体の一方の表面に銅電極を密着させ、該銅電極を陰極にし、白金を正極にして電解めっきを行なった。
硫酸銅/硫酸/塩酸=200/50/15(g/L)の混合溶液を25℃に保った状態で電解液として使用し、定電圧パルス電解を実施することにより、マイクロポアからなる孔に銅が充填された構造体(異方導電性部材)を製造した。
ここで、定電圧パルス電解は、山本鍍金社製のめっき装置を用い、北斗電工社製の電源(HZ−3000)を用い、めっき液中でサイクリックボルタンメトリを行って析出電位を確認した後、皮膜側の電位を−2Vに設定して行った。また、定電圧パルス電解のパルス波形は矩形波であった。具体的には、電解の総処理時間が300秒になるように、1回の電解時間が60秒の電解処理を、各電解処理の間に40秒の休止時間を設けて5回施した。
銅を充填した後の表面をFE−SEMで観察すると、絶縁性基材(陽極酸化皮膜)の表面から銅が一部あふれるような形になっていた。
(F)表面平滑化処理工程
次いで、銅が充填された構造体の表面および裏面に、CMP処理を施した。
CMPスラリーとしては、フジミインコーポレイテッド社製のPNANERLITE−7000を用いた。
(G)導通路突出工程
次いで、CMP処理後の構造体をリン酸溶液に浸漬し、陽極酸化皮膜を選択的に溶解することで、導通路である銅の円柱を突出させた。
リン酸溶液は、上記貫通化処理と同じ液を使い、処理時間を5分とした。
次いで、水洗し、乾燥した後に、FE−SEMで観察した。
その結果、導通路の突出部の高さ(バンプ高さ)が10nmであり、電極部サイズである導通路の直径が30nmであり、部材の厚みが100μmであることを確認した。
(実施例2)
(A)〜(G)までの各処理を実施例1と同様に行った後、更に、絶縁性基材(陽極酸化皮膜)表面から突出した銅を金で被覆する処理を行った。
具体的には、実施例1で得られた導通路突出工程後の異方導電性部材を、金の無電解めっき液(メルプレートAU−601、メルテックス社製)に70℃で10秒間浸漬させることにより、めっきを施した。
実施例1と同様にFE−SEMで観察すると、突出部分は丸みを帯びており、バンプ高さは20nm程度に増加していた。また、FE−SEMによる観察より、電極部サイズである導通路の直径が30nmであり、部材の厚みが100μmであることを確認した。
(実施例3)
上記(B)陽極酸化処理工程((自己規則化方法I)におけるプレ陽極酸化および再陽極酸化処理)を0.20mol/Lシュウ酸の電解液、電圧50V、液温度20℃、液流速3.0m/minの条件に変え、上記(G)導通路突出工程の処理時間を10分とした以外は、実施例1と同じ条件で処理を行い、構造体(異方導電性部材)を製造した。
実施例1と同様にFE−SEMで観察すると、バンプ高さは40nmであり、電極部サイズである導通路の直径が130nmであり、部材の厚みが90μmであることを確認した。
(比較例1)
比較例1として、特許文献1(特開2000−12619号公報)に記載された実施例に相当する日東電工製のCupriを用いた。なお、Cupriは以下の方法により作製されていると推測できる。
先ず、金属材料からなる線材に、接着性絶縁材料からなる被覆層を形成する。被覆層の厚さは、通常、3〜50μm程度、好ましくは5〜20μm程度である。被覆層の厚さをこの程度の厚さにすることで、導通路の最大長(幅)の平均値に対する導通路と導通路との間隔を上記所定の間隔にすることができる。
この絶縁線材を芯材上に巻線して、ロール状の巻線コイルを形成する。
巻線は、リレー、トランスなどの電磁コイルを製造するための公知技術であるスピンドル方式や、フライヤー方式などを応用し、最密巻きにするのが好ましい。巻き幅(電磁コイルにおけるボビンの全長であって、1層内のターン数に関係する)、厚み(層数に関係する)などの巻線仕様は、目的に応じて適宜決定する。
次いで、巻線コイルに対して、加熱および/または加圧を施し、層内、層間において隣接する絶縁導線同士を接着性絶縁材料からなる被覆層の部分で融着および/または圧着させて一体化し、巻線コイルブロックを形成する。
次いで、巻線コイルブロックを薄くシート状にスライスすることにより異方導電性フィルムを形成した。
また、導通を確保するために反応性エッチングにより金属材料部分を露出させた。イオン反応性プラズマ装置を用いてテトラフルオロカーボン(CF4)を反応性ガスに採用し0.5L/min流しながら2000Wの電力で30分間処理した。
この導通路の両端を導電性材料で被覆することが望ましく、めっきや気相分解法などを用い、金属材料を積層する。
具体的には、接着性絶縁材料としてポリカルボジイミド樹脂(ガラス転移点170℃)、絶縁材料としてポリアミドイミド樹脂(ガラス転移点270℃)を用いた。
また、導通路には最大長(幅)の平均が18μmの円柱状の銅線を用い、導通路の両端の表面には金を積層し、隣接する導通路間の相互の中心間距離(ピッチ)は35μm、異方導電性フィルムの厚みは50μmに設定した。
また、FE−SEMで観察した結果、導通路の突出部の高さ(バンプ高さ)が15μmであり、電極部サイズである導通路の直径が18μmであることを確認した。
(比較例2)
比較例2として、特許文献3(特開2002−134570号公報)に記載された実施例に相当する例を行った。
具体的には、まず、図5(A)に示すように、厚み0.5mm×幅30mm×長さ30mmの方形の銅基板41に、厚み150μmの均一な厚みのレジスト層(膜)42を形成した。
レジスト材料は、ポリメチルメタアクリレート樹脂(PMMA樹脂)を用い、塗膜形成後、常温で4時間の乾燥を行った。
次いで、図5(B)に示すように、直径20μmの円形同士がピッチ40μmで細密充填状に配列されたマスク(ドイツ国カールスルーエ社製)43を銅基板41上に重ねて、垂直方向上方よりX線44を照射し、マスク43によって遮蔽されていないレジスト膜部分をX線に露光させた。
ここでは、レジスト側壁面の形状精度が優れているシンクロトロン放射X線を用いた。
次いで、図5(C)に示すように、レジスト膜のX線露光部分を現像により溶解除去することにより、アスペクト比((長さ/直径)の値)が10であるポーラスな構造が形成された微細構造レジスト膜45を有してなる母型Mを形成した。
次いで、図5(D)に示すように、前記溶解除去部分に、電鋳法により、ニッケル導電性極細線群46を形成した。めっき液47としてスルファミン酸浴を用い、ニッケル電極をプラス側の電極とし、銅基板をマイナス側の電極として電鋳を行った。
電鋳工程後、図5(E)に示すように、形成されたニッケル導電性極細線群46の周りの残存レジスト膜(微細構造レジスト膜)45を溶解除去し、銅基板41上にニッケル導電性極細線群46が形成された基体Vを得た。
次いで、この基体Vを型枠内に収容し、図5(F)に示すように、ニッケル導電性極細線群46の周りにシート状基材材料48(本例ではシリコーン樹脂)を充填し、これを硬化させることにより、銅基板上に、シリコーン樹脂製のシート状基材を作製した。
次いで、前記作製したものから銅基板を取り外し、更に表面・裏面をエキシマレーザーにてトリミング処理することにより、図5(G)に示すような異方導電性フィルム49を作製した。本例ではシリコーン樹脂層の厚みは約100μm、導電性部の突出部の高さ(バンプ高さ)は平均10μmであった。なお、得られた異方導電性フィルム49において各導電性極細線の露出している端部は研磨して尖らせ、更に電気抵抗を下げるため端部に金めっきを施した。
また、FE−SEMで観察した結果、導通路の突出部の高さ(バンプ高さ)が10μmであり、電極部サイズである導通路の直径が20μmであることを確認した。
実施例1〜3ならびに比較例1および2で得られた異方導電性部材(フィルム)を用いて、その異方導通性を評価した。
異方導電性部材の深さ方向の導通性については、作製した実施例1〜3ならびに比較例1、2で作製した異方導電性部材を1.5mm×6.0mmの大きさにカットしたデバイスを、Auより構成される同大きさの電極に挟み込み、200℃/0.5MPa/1分の条件で加圧圧着させ、その電気抵抗を測定した。抵抗値が小さいほど良好であることを表す。結果を表1に示す。また、異方導電性部材の面方向の絶縁性に関しては、図8に示すように、上記と同様のデバイス61の同じ面に10μmのピッチを空けてAuより構成される電極62を設け、その電気抵抗を測定した。抵抗値が大きいほど良好であることを表す。結果を表1に示す。
Figure 0005043617
本発明の異方導電性部材は、CPUなどのマザーボードとインターポーザーの間の電気的接点として用いることもでき、インターポーザーとSiウェハとの間の電気的接点として用いることができる。このような場合には、プローブではなく、信号取り出し用パッドを配線した基板上に本発明の異方導電性部材を組み合わせることで、検査プローブとしても用いることが可能である。
なお、Siウェハの信号取り出し面に本発明の異方導電性部材を一体化させておくことにより、配線構造へのダメージを与えることなく、また製法上も非常に精密なアライメントを必要とすることなく電気信号の取り出しが可能となる。半導体素子等の電子部品等の機能検査を行う際の検査用コネクタとして用いることもできる。
本発明の異方導電性部材をCPUなどのマザーボードとインターポーザの間の電気的接点や、インターポーザとSiウェハとの間の電気的接点として用いることが場合、その表面の汚染/キズ等を防ぐ観点から、適宜保護された形態で供給することが好ましい。
図7〜9は、本発明の異方導電性部材の供給形態の一例を示した模式図である。
図7では、ラベル貼付機で使用される、商品に価格表示や日付表示などを表示する表示ラベルのように、所定径および所定幅の巻き芯71に巻き取られたシート(台紙)72の外側面に、所定寸法の異方導電性部材73が貼り付けたロール状の供給形態が示されている。
ここで、異方導電性部材の寸法は、例えば、これを使用する半導体チップの寸法と略同一寸法とし、シート(台紙)の幅は、異方導電性部材の幅に応じて適宜決定することができる。
また、異方導電性部材の絶縁性基材はアルミナであり、後から切ったり、折り曲げたりすることは困難であるため、異方導電性部材の寸法に応じて巻き芯の径および幅を適宜決定することが望ましい。具体的には、シート長さ方向の異方導電性部材の寸法が大きくなるほど、巻き芯の径を大きくすることが望ましい。
また、異方導電性部材はシート(台紙)に貼り付けられているが、異方導電性部材を剥した際に接着剤が異方導電性部材表面に残らないように、例えば、剥離紙用シリコーンを用いて、異方導電性部材をシート(台紙)に貼り付けることが好ましい。
この供給形態では、ユーザは、シート(台紙)に貼り付けられた異方性導電部材を1枚ずつ剥がして使用することができる。
図8では、引き出し型の収納箱81の中に、所定寸法の異方導電性部材82を立てて並べて収納した状態で供給する形態が示されている。
ここで、収納箱の寸法は、異方導電性部材の寸法に応じて適宜変更することができる。
また、収納箱の内部では、隣接する異方導電性部材同士が接触するため、両者の間に緩衝材を挿入したり、個々の異方導電性部材を袋詰めするなど、隣接する異方性導電性部材同士が接触しないように収納することが望ましい。
この供給形態では、ユーザは、収納箱に収納された異方性導電部材を1枚ずつ取り出して使用することができる。
図9では、半導体ウェハのように、略円形の所定径の樹脂板91の一方の面の全面に異方導電性部材92を貼り付けた状態で供給する形態が示されている。
ここで、樹脂板の直径は、例えば、この異方性導電膜を使用する半導体ウェハの直径と略同一の5インチや8インチとすることができる。
また、異方導電性部材は、例えば、半導体チップのウェハレベルチップサイズパッケージ(Wafer Level Chip Size Package)と同様、これを使用する半導体チップの寸法と略同一寸法に切断して使用できるように、あらかじめ樹脂板とともに切れ目93を入れておくのが望ましい。
この供給形態では、ユーザは、樹脂板の一方の面の全面に貼り付けられた異方性導電部材を、切れ目に沿って樹脂板とともに切断して個々に分割した後、樹脂板を取り除いてから異方導電性部材を使用することができる。
本発明の異方導電性部材は、表面および裏面の少なくとも一方に、保護材が設けられた状態で供給することが好ましい。図7に示す供給形態では、シート(台紙)72が保護部材である。図8に示す供給形態では、収納箱81が保護部材であり、隣接する異方導電性部材の間に挿入される緩衝材や、個々の異方導電性部材を収容する袋が保護部材である。図9に示す供給形態では、樹脂板91が保護部材である。
図1(A),(B)は、本発明の異方導電性部材の好適な実施態様の一例を示す簡略図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は図1(A)の切断面線IB−IBからみた断面図である。 図2(A),(B)は、ポアの規則化度を算出する方法の説明図である。 図3(A)〜(D)は、本発明の製造方法における陽極酸化処理の一例を説明する模式的な端面図である。 図4(A)〜(D)は、本発明の製造方法における導電性部材充填工程等の一例を説明する模式的な端面図である。 図5(A)〜(G)は、比較例2の異方導電性部材の製造方法の手順を説明する模式的な断面図である。 図6は、実施例1〜3ならびに比較例1および2で得られた異方導電性部材(フィルム)の面方向の絶縁性(電気抵抗)を測定する装置の模式図である。 図7は、本発明の異方導電性部材の供給形態の一例を示した模式図である。 図8は、本発明の異方導電性部材の供給形態の別の一例を示した模式図である。 図9は、本発明の異方導電性部材の供給形態の別の一例を示した模式図である。
符号の説明
1 異方導電性部材
2 絶縁性基材
3 導通路
4a、4b 突出部
5 基材内導通部
6 絶縁性基材の厚み
7 導通路間の幅
8 導通路の直径
9 導通路の中心間距離(ピッチ)
12 アルミニウム基板
14a、14b、14c、14d 陽極酸化皮膜
16a、16b、16c、16d マイクロポア
18a、18b、18c、18d バリア層
20 絶縁性基材
21 異方導電性部材
41 銅基板
42 レジスト層
43 マスク
44 X線
M 母型
45 微細構造レジスト膜(残存レジスト膜)
46 ニッケル導電性極細線群
47 めっき浴
V 基体
48 シート状基材材料
49 異方導電性フィルム
61 デバイス
62 電極
71 巻き芯
72 シート(台紙)
73、82、92 異方導電性部材
81 収納箱
91 樹脂板
93 切れ目
101、102、104、105、107、108 マイクロポア
103、106、109 円

Claims (9)

  1. 絶縁性基材中に、導電性部材からなる複数の導通路が、互いに絶縁された状態で前記絶縁性基材を厚み方向に、1000万個/mm2以上の密度で貫通し、かつ、前記各導通路の一端が前記絶縁性基材の一方の面において露出し、前記各導通路の他端が前記絶縁性基材の他方の面において露出した状態で設けられる異方導電性部材の製造方法であって、少なくとも、
    (1)アルミニウム基板を陽極酸化し、マイクロポアを有するアルミナ皮膜を形成する陽極酸化処理工程、
    (2)前記陽極酸化処理工程の後に、前記陽極酸化により生じたマイクロポアによる孔を貫通化して前記絶縁性基材を得る貫通化処理工程、および
    (3)前記貫通化処理工程の後に、得られた前記絶縁性基材における貫通化した孔の内部に導電性部材を充填して前記異方導電性部材を得る導電性部材充填工程、
    を具備する、異方導電性部材の製造方法であって、
    前記(1)陽極酸化処理工程が、下記(1−a)〜(1−b)からなる群から選択されるいずれかの処理を含む、異方導電性部材の製造方法。
    (1−a)陽極酸化処理(X)を施した後、陽極酸化皮膜を溶解し得る酸またはアルカリを用いて、前記陽極酸化皮膜を完全に溶解した後に、再度陽極酸化(Y)を施す処理。なお、前記陽極酸化処理(X)の条件は、電圧3〜250V、電解時間0.5〜30時間である。
    (1−b)アルミニウム基板表面を陽極酸化処理(Z)し、酸またはアルカリを用いて、前記陽極酸化皮膜を部分的に溶解させ、再度陽極酸化処理(W)を実施して前記マイクロポアを深さ方向に成長したのちに、前記マイクロポアの断面形状の変曲点よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する処理。なお、前記陽極酸化処理(Z)の条件は、電圧3〜250V、電解時間0.5〜30時間である。
  2. 更に、
    (4)前記導電性部材充填工程の後に、前記絶縁性基材の表面および裏面を平滑化する表面平滑処理工程を具備する請求項1に記載の異方導電性部材の製造方法。
  3. 更に、
    (5)前記表面平滑工程の後に、前記絶縁性基材の表面および裏面から前記導電性部材が突出した構造を形成する導通路突出工程を具備する請求項2に記載の異方導電性部材の製造方法。
  4. 前記(2)貫通化処理工程が、下記(2−a)および(2−b)からなる群から選択されるいずれかの処理を含む請求項1乃至のいずれかに記載の異方導電性部材の製造方法。
    (2−a)酸またはアルカリを用いて、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板を溶解し、マイクロポアによる孔を貫通化する処理。
    (2−b)陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板を機械的に研磨し、マイクロポアによる孔を貫通化する処理。
  5. 前記(3)導電性部材充填工程が、下記(3−a)〜(3−c)からなる群から選択されるいずれかの処理を含む請求項1乃至のいずれかに記載の異方導電性部材の製造方法。
    (3−a)導電性部材を有する液中に、前記貫通化した孔を有する絶縁性基材を浸漬し、該孔内に導電性部材を充填する処理。
    (3−b)電解めっきにより、前記貫通化した孔内に導電性部材を充填する処理。
    (3−c)蒸着により前記貫通化した孔内に導電性部材を充填する処理。
  6. 前記(4)表面平滑処理工程が、下記(4−a)〜(4−c)からなる群から選択されるいずれかの処理を含む請求項2乃至のいずれかに記載の異方導電性部材の製造方法。
    (4−a)化学機械研磨(CMP)による処理。
    (4−b)電解研磨による処理。
    (4−c)イオンミリング処理。
  7. 前記(5)導通路突出工程が、下記(5−a)および(5−b)からなる群から選択されるいずれかの処理を含む請求項3乃至のいずれかに記載の異方導電性部材の製造方法。
    (5−a)前記絶縁性基材の表面および裏面の一部を除去することにより、前記絶縁性基材の表面および裏面から導電性部材が突出した構造を形成する処理。
    (5−b)前記導通路の表面に導電性部材を析出されることにより、前記絶縁性基材の表面および裏面から導電性部材が突出した構造を形成する処理。
  8. 請求項1乃至のいずれかに記載の製造方法により製造された異方導電性部材。
  9. 表面および裏面の少なくとも一方に、保護材が設けられたことを特徴とする、請求項に記載の異方導電性部材。
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