JP2010189688A - 微細構造体の製造方法および微細構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属基板と、前記金属基板の表面に存在する金属酸化物層と、前記金属酸化物層の表面に存在する導電性メッシュ層とを有し、前記導電性メッシュ層が、電気抵抗率が103Ω・cm以下の材料で形成され、平均開孔径が3〜1000nmであり、かつ、密度が1×106〜1×1010/mm2の貫通孔を有する微細構造体である。
【選択図】なし
Description
即ち、本発明は、以下の(1)〜(11)を提供する。
上記導電性メッシュ層が、電気抵抗率が103Ω・cm以下の材料で形成され、平均開孔径が3〜1000nmであり、かつ、密度が1×106〜1×1010個/mm2の貫通孔を有する微細構造体。
上記マイクロポアの平均開孔径が5〜1000nmであり、かつ、密度が1×106〜1×1010個/mm2である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の微細構造体。
規則化度(%)=B/A×100 (i)
上記式(i)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に上記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる上記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
上記金属基板上に上記金属酸化物層を形成する酸化物層形成工程と、
上記金属酸化物層の表面に上記導電性メッシュ層を形成し、微細構造体を得るメッシュ層形成工程とを有する微細構造体の製造方法。
上記メッシュ層形成工程が、上記金属酸化物層に蒸着処理またはスパッタリング処理を施して、上記金属酸化物層の表面に上記導電性メッシュ層を形成する工程である上記(10)に記載の微細構造体の製造方法。
本発明の微細構造体は、金属基板と、上記金属基板の表面に存在する金属酸化物層と、上記金属酸化物層の表面に存在する導電性メッシュ層とを有し、
上記導電性メッシュ層が、電気抵抗率が103Ω・cm以下の材料で形成され、平均開孔径が3〜1000nmであり、かつ、密度が1×106〜1×1010個/mm2の貫通孔を有する微細構造体である。
次に、本発明の微細構造体について、図1を用いて説明する。
図1に示すように、本発明の微細構造体1は、金属基板2、金属酸化物層3および所定の貫通孔5を有する導電性メッシュ層4を具備するものである。
また、後述するように、金属酸化物層3は、深さ方向にマイクロポア6を有しているのが好ましい。なお、この場合において、マイクロポア6と貫通孔5とは、連続した孔を構成するものである。
以下に、金属基板、金属酸化物層および導電性メッシュ層のそれぞれについて、材料、寸法、形成方法等について詳述する。
上記金属基板は特に限定されないが、金属基板に陽極酸化処理を施すことにより後述する金属酸化物層を形成できる理由から、バルブ金属を用いたバルブ金属基板であるのが好ましい。
バルブ金属とは、陽極酸化により金属表面がその金属の酸化物の皮膜で覆われる特性を有し、更にその酸化皮膜が、電流を一方方向にのみ流して逆方向には非常に流しにくい特性を有する金属のことであり、その具体例としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン等が挙げられる。
これらのうち、陽極酸化処理を施して形成される金属酸化物層に存在するマイクロポアのポア配列の規則性が向上し、また、このマイクロポアを利用して容易に形成することができる導電性メッシュ層の貫通孔の配列の規則性も向上し、その結果、電磁波の遮蔽効果がより向上する理由から、アルミニウム基板であるのが好ましい。
アルミニウム基板は特に限定されず、その具体例としては、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハー、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等が挙げられる。
特に、アルミニウム純度が上記範囲であると、陽極酸化処理を施して形成される金属酸化物層に存在するマイクロポアのポア配列の規則性が十分となり、また、このマイクロポアを利用して容易に形成することができる導電性メッシュ層の貫通孔の配列の規則性も向上し、その結果、電磁波の遮蔽効果がより向上する。
熱処理を施す場合は、200〜350℃で30秒〜2分程度施すのが好ましい。具体的には、例えば、金属基板を加熱オーブンに入れる方法等が挙げられる。
このような熱処理を施すことにより、後述する陽極酸化処理により生成するマイクロポアの配列の規則性が向上する。
また、熱処理後の金属基板は、急速に冷却するのが好ましい。冷却する方法としては、例えば、水等に直接投入する方法等が挙げられる。
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、金属基板表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分等を溶解させて除去し、有機成分を原因とする後述の各処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
鏡面仕上げ処理は、金属基板の表面の凹凸、例えば、金属基板の圧延時に発生した圧延筋等をなくして、電着法等による封孔処理の均一性や再現性を向上させるために行われる。
本発明において、鏡面仕上げ処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨が挙げられる。
また、リン酸−硝酸法、Alupol I法、Alupol V法、Alcoa R5法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好適に挙げられる。中でも、リン酸−硝酸法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好ましい。
化学研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
電解研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。具体的には、変角光沢度計(例えば、VG−1D、日本電色工業社製)を用いて、正反射率70%以下の場合には入反射角度60度で、正反射率70%を超える場合には入反射角度20度で、測定する。
上記金属基板の表面に設けられる上記金属酸化物層は、金属酸化物で形成される層であれば特に限定されないが、電磁波の遮蔽効果がより向上する理由から、絶縁性を有するものが好ましい。
具体的な絶縁抵抗としては、105Ωm以上であるのが好ましく、108Ωm以上であるのがより好ましく、1010Ωm以上であるのが特に好ましい。
同様に、上記マイクロポアの密度は、1×106〜1×1010個/mm2であるのが好ましく、5×106〜5×109個/mm2であるのがより好ましく、1×107〜1×109個/mm2であるのが特に好ましい。
上記マイクロポアの平均開孔径と密度が上記範囲であると、後述する導電性メッシュ層の貫通孔の平均開孔径を3〜1000nmの範囲とし、かつ、密度を1×106〜1×1010個/mm2の範囲としやすい。
同様に、上記マイクロポアのアスペクト比(平均深さ/平均開孔径)が8以上であるのが好ましく、10以上であるのが好ましく、20以上であるのが特に好ましい。
上記マイクロポアの平均深さとアスペクト比が上記範囲であると、後述する導電性メッシュ層を蒸着処理またはスパッタリング処理により形成する際に、マイクロポアの底部に導電材料が形成され難くなり、結果として本発明の微細構造体を製造しやすくなる。
上記マイクロポアの規則化度が上記範囲であると、電磁波の遮蔽効果がより向上する。
上記式(i)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に上記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる上記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
図2(A)に示されるマイクロポア101は、マイクロポア101の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円103(マイクロポア102に内接している。)を描いた場合に、円3の内部にマイクロポア101以外のマイクロポアの重心を6個含んでいる。したがって、マイクロポア101は、Bに算入される。
図2(B)に示されるマイクロポア104は、マイクロポア104の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円106(マイクロポア105に内接している。)を描いた場合に、円106の内部にマイクロポア104以外のマイクロポアの重心を5個含んでいる。したがって、マイクロポア104は、Bに算入されない。
また、図2(B)に示されるマイクロポア107は、マイクロポア107の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円109(マイクロポア108に内接している。)を描いた場合に、円109の内部にマイクロポア107以外のマイクロポアの重心を7個含んでいる。したがって、マイクロポア107は、Bに算入されない。
上記金属酸化物層の厚みが上記範囲であると、電磁波を上記金属基板の表面に十分に透過することができ、かつ、上記金属基板の表面で反射した電磁波を十分に蓄えることができるため、電磁波の遮蔽効果がより向上することになる。
以下に、上記金属酸化物層の好ましい形成方法として、アルミニウム基板の陽極酸化処理を例に挙げて説明する。
陽極酸化処理は、アルミニウム基板を陽極酸化することにより、該アルミニウム基板表面にマイクロポアを有する酸化皮膜を形成する処理である。
陽極酸化処理としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、後述する自己規則化法を用いるのが好ましい。
この方法においては、ポア径は電圧に依存するので、電圧を制御することにより、ある程度所望のポア径を得ることができる。
陽極酸化処理(a−1)をする際の平均流速は、0.5〜20.0m/minであるのが好ましく、1.0〜15.0m/minであるのがより好ましく、2.0〜10.0m/minであるのが更に好ましい。上記範囲の流速で陽極酸化処理を行うことにより、均一かつ高い規則性を有することができる。
また、電解液を上記条件で流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。特に、かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため、好ましい。このようなかくはん装置としては、例えば、「マグネティックスターラーHS−50D(AS ONE製)」等が挙げられる。
陽極酸化処理(a−1)に用いられる溶液としては、酸溶液であることが好ましく、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸、グリコール酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸等がより好ましく、中でも硫酸、リン酸、シュウ酸が特に好ましい。これらの酸は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、このような陽極酸化処理(a−1)により形成されるマイクロポアは、1μm2の範囲において、ポア径の分散が平均径の3%以内であることが好ましく、2%以内であることがより好ましい。なお、ポア径の平均径および分散はそれぞれ下記式で求めることができる。
平均径:μx=(1/n)ΣXi
分散:σ2=(1/n)(ΣXi2)−μx 2
分散/平均径=σ/μx≦0.03
ここで、Xiは、1μm2の範囲で測定された1個のマイクロポアのポア径である。
更に、このような陽極酸化処理(a−1)により形成されるマイクロポアの占める面積率は、20〜50%であるのが好ましい。
ここで、マイクロポアの占める面積率は、アルミニウム表面の面積に対するマイクロポアの開口部の面積の合計の割合で定義される。
脱膜処理(a−2)は、上記陽極酸化処理(a−1)によりアルミニウム基板表面に形成した陽極酸化皮膜を溶解させて除去する処理である。
ジルコニウム系化合物としては、例えば、フッ化ジルコンアンモニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウムが挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、酸化チタン、硫化チタンが挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、フッ化リチウム、塩化リチウムが挙げられる。
セリウム塩としては、例えば、フッ化セリウム、塩化セリウムが挙げられる。
マグネシウム塩としては、例えば、硫化マグネシウムが挙げられる。
マンガン化合物としては、例えば、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カルシウムが挙げられる。
モリブデン化合物としては、例えば、モリブデン酸ナトリウムが挙げられる。
マグネシウム化合物としては、例えば、フッ化マグネシウム・五水和物が挙げられる。
バリウム化合物としては、例えば、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウム、塩素酸バリウム、塩化バリウム、フッ化バリウム、ヨウ化バリウム、乳酸バリウム、シュウ酸バリウム、過塩素酸バリウム、セレン酸バリウム、亜セレン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、亜硫酸バリウム、チタン酸バリウム、水酸化バリウム、硝酸バリウム、あるいはこれらの水和物等が挙げられる。上記バリウム化合物の中でも、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウムが好ましく、酸化バリウムが特に好ましい。
ハロゲン単体としては、例えば、塩素、フッ素、臭素が挙げられる。
酸濃度としては、0.01mol/L以上であるのが好ましく、0.05mol/L以上であるのがより好ましく、0.1mol/L以上であるのが更に好ましい。上限は特にないが、一般的には10mol/L以下であるのが好ましく、5mol/L以下であるのがより好ましい。不要に高い濃度は経済的でないし、より高いとアルミニウム基板が溶解するおそれがある。
浸せき処理の時間は、10分以上であるのが好ましく、1時間以上であるのがより好ましく、3時間以上、5時間以上であるのが更に好ましい。
上記脱膜処理(a−2)により陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に規則的な窪みを形成した後、再び陽極酸化処理を施すことで、マイクロポアの規則化度がより高い陽極酸化皮膜を形成することができる。
再陽極酸化処理(a−3)は、従来公知の方法を用いることができるが、上述した陽極酸化処理(a−1)と同一の条件で行われるのが好ましい。
また、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。これらの方法によれば、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
一方、再陽極酸化処理(a−3)を比較的高温で行うことにより、マイクロポアの配列を乱し、また、ポア径のばらつきを所定の範囲にすることができる。また、処理時間によっても、ポア径のばらつきを制御することができる。
また、このような再陽極酸化処理(a−3)により形成されるマイクロポアは、1μm2の範囲において、ポア径の分散が平均径の3%以内であることが好ましく、2%以内であることがより好ましい。
更に、このような陽極酸化処理(a−3)により形成されるマイクロポアの占める面積率は、20〜50%であるのが好ましい。
例えば、インプリント法(突起を有する基板またはロールをアルミニウム板に圧接し、凹部を形成する、転写法、プレスパターニング法)を用いる方法が挙げられる。具体的には、複数の突起を表面に有する基板をアルミニウム表面に押し付けて窪みを形成させる方法が挙げられる。例えば、特開平10−121292号公報に記載されている方法を用いることができる。
また、アルミニウム表面にポリスチレン球を稠密状態で配列させ、その上からSiO2を蒸着した後、ポリスチレン球を除去し、蒸着されたSiO2をマスクとして基板をエッチングして窪みを形成させる方法も挙げられる。
粒子線法は、アルミニウム表面に粒子線を照射して窪みを形成させる方法である。粒子線法は、窪みの位置を自由に制御することができるという利点を有する。
粒子線としては、例えば、荷電粒子ビーム、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)、電子ビームが挙げられる。
粒子線法としては、例えば、特開2001−105400号公報に記載されている方法を用いることもできる。
ブロックコポリマー法は、アルミニウム表面にブロックコポリマー層を形成させ、熱アニールによりブロックコポリマー層に海島構造を形成させた後、島部分を除去して窪みを形成させる方法である。
ブロックコポリマー法としては、例えば、特開2003−129288号公報に記載されている方法を用いることができる。
レジストパターン・露光・エッチング法は、フォトリソグラフィあるいは電子ビームリソグラフィ法によりアルミニウム板表面のレジストに露光および現像を施し、レジストパタンを形成した後これをエッチングする。レジストを設け、エッチングしてアルミニウム表面まで貫通した窪みを形成させる方法である。
(1)アルミニウム基板の表面を陽極酸化して、アルミニウム基板の表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する工程
(2)酸またはアルカリを用いて、上記陽極酸化皮膜を部分的に溶解させる工程
(3)陽極酸化処理を実施して上記マイクロポアを深さ方向に成長させる工程
(4)上記マイクロポアの断面形状の変曲点よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する工程
工程(1)では、アルミニウム基板の少なくとも一方の表面を陽極酸化処理して、該アルミニウム基板の表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する。
工程(1)は、上記陽極酸化処理(a−1)と同様の手順で実施することができる。
図3は、アルミニウム基板および該アルミニウム基板上に形成される陽極酸化皮膜の模式的な端面図である。
図3(A)は、工程(1)により、アルミニウム基板12a表面に、マイクロポア16aを有する陽極酸化皮膜14aが形成された状態を示している。
工程(2)では、工程(1)で形成した陽極酸化皮膜を、酸またはアルカリを用いて、部分的に溶解させる。
ここで、陽極酸化皮膜を部分的に溶解させるとは、工程(1)で形成した陽極酸化皮膜を完全に溶解させるのではなく、図3(B)に示されるように、アルミニウム基板12a上に、マイクロポア16bを有する陽極酸化皮膜14bが残存するように、図3(A)に示す陽極酸化皮膜14aの表面およびマイクロポア16aの内部を部分的に溶解させることを示す。
また、陽極酸化皮膜の溶解量は、陽極酸化皮膜全体の0.001〜50質量%であるのが好ましく、0.005〜30質量%であるのがより好ましく、0.01〜15質量%であるのが更に好ましい。溶解量が上記範囲であると、陽極酸化皮膜の表面の配列が不規則な部分を溶解させて、マイクロポアの配列の規則性を高くすることができるとともに、マイクロポアの底部分に陽極酸化皮膜を残存させて、工程(3)で実施する陽極酸化処理の起点を残すことができる。
工程(2)にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.01〜1mol/Lであるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、0.5mol/L、40℃のリン酸水溶液、0.05mol/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.05mol/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜120分であるのが好ましく、10〜90分であるのがより好ましく、15〜60分であるのが更に好ましい。
工程(3)では、工程(2)で陽極酸化皮膜が部分的に溶解されたアルミニウム基板に対して、再び陽極酸化処理を実施してマイクロポアを深さ方向に成長させる。
図3(C)に示されるように、工程(3)の陽極酸化処理により、図3(B)に示されるアルミニウム基板12aの酸化反応が進行し、アルミニウム基板12b上に、マイクロポア16bよりも深さ方向に成長したマイクロポア16cを有する陽極酸化皮膜14cが形成される。
また、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。これらの方法によれば、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
上述した電圧を断続的に変化させる方法においては、電圧を順次低くしていくのが好ましい。これにより、陽極酸化皮膜の抵抗を下げることが可能になり、後に電着処理を行う場合に、均一化することができる。
工程(4)では、図3(C)に示されるマイクロポア16cの断面形状の変曲点30よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する。自己規則化法により形成されるマイクロポアは、図3(C)に示されるように、マイクロポア16cの上部を除いて、断面形状が略直管形状になる。言い換えると、マイクロポア16cの上部には、該マイクロポア16cの残りの部分とは断面形状が異なる部分(異形部分)20が存在する。工程(4)では、このようなマイクロポア16c上部に存在する異形部分20を解消するため、マイクロポア16cの断面形状の変曲点30よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する。
ここで、変曲点30とは、マイクロポア16cの断面形状がなす主たる形状(ここでは、略直管形状)に対して、著しく形状が変化する部分を指し、別の言い方をすると、マイクロポア16cの断面形状において、主たる形状(略直管形状)に対して、形状の連続性が失われる部分を指す。
マイクロポア16cの断面形状の変曲点30よりも上方の陽極酸化皮膜を除去することにより、図3(D)に示されるように、マイクロポア16d全体が略直管形状となる。
なお、後述するように、工程(3)および工程(4)を2回以上繰り返す場合、工程(4)実施後の陽極酸化皮膜14dでは、異形部分30が解消されて、マイクロポア16dの断面形状全体が略直管形状となるので、工程(4)に続いて実施する工程(3)(以下、本段落においては「工程(3′)」という。)で形成されるマイクロポア上部には新たに異形部分が生じる。したがって、工程(3′)に続いて実施する工程(4)(以下、本段落においては「工程(4′)」という。)では、工程(3′)で形成されたマイクロポア上部に新たに生じた異形部分を除去する必要がある。このため、工程(4′)では、工程(3′)で形成されるマイクロポアの変曲点よりも上方の陽極酸化被膜を除去する必要がある。
上記工程を2回以上繰り返して行う場合、各回の工程(3)および工程(4)の条件はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。規則化度向上性の観点から、工程(3)は、各回ごとに電圧を変えて実施することが好ましい。この場合、徐々に高電圧の条件に変えていくのが、規則化度向上性の観点から、より好ましい。
同様に、上記マイクロポアのアスペクト比(平均深さ/平均開孔径)が8以上であるのが好ましく、10以上であるのが好ましく、20以上であるのが特に好ましい。
同様に、上記マイクロポアについて上記式(i)により定義される規則化度が50%以上であるのが好ましく、65%以上であるのがより好ましく、80%以上であるのが特に好ましい。
上記金属酸化物層の表面に設けられる上記導電性メッシュ層は、電気抵抗率が103Ω・cm以下の材料で形成され、平均開孔径が3〜1000nmであり、かつ、密度が1×106〜1×1010個/mm2の貫通孔を有する層である。
電気抵抗率が上記範囲であると、電磁波の遮蔽効果がより向上することになる。
有機材料としては、具体的には、例えば、導電性カーボンブラックが挙げられる。
無機材料としては、具体的には、例えば、アルミニウム、金、銀、コンスタンタン、黄銅、銅、ニクロム、白金、鉄、ニッケル、タングステン等が挙げられる。
これらの材料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用していてもよい。
同様に、上記貫通孔の密度は、1×106〜1×1010個/mm2であり、5×106〜5×109個/mm2であるのがより好ましく、1×107〜1×109個/mm2であるのが特に好ましい。
上記貫通孔の平均開孔径と密度が上記範囲であると、得られる本発明の微細構造体が、紫外線やX線等の比較的波長の短い電磁波をより確実に遮蔽することができる。
膜厚が上記範囲であると、電磁波を上記金属酸化物層に十分に透過することができ、かつ、上記金属基板の表面で反射し、上記金属酸化物層で蓄積された電磁波を吸収する効果が十分となり、電磁波の遮蔽効果がより向上することになる。
これは、詳細なメカニズムは不明だが、本発明の微細構造体に照射された電磁波が、まず上記導電性メッシュ層の貫通孔を通り、次いで上記金属基板表面で反射した後に上記金属酸化物層に蓄えられ、最終的に上記導電性メッシュ層で徐々に吸収され、消滅するためであると考えられる。
これらのうち、導電性メッシュ層の厚さを容易に制御できる理由から、スパッタリング処理、蒸着処理が好ましい。
同様に、上記メッシュ層形成工程は、上記導電性メッシュ層の形成方法においても記載したように、上記金属酸化物層に蒸着処理またはスパッタリング処理を施して、上記金属酸化物層の表面に上記導電性メッシュ層を形成する工程であるのが好ましい。
これらの工程を有することにより、陽極酸化処理の条件を変更してマイクロポアの径を調整することにより、種々の波長の電磁波を遮蔽することも可能になると考えられるため好ましい。
(1)金属基板の前処理工程(電解研磨処理)
高純度アルミニウム基板(住友軽金属社製、純度99.99質量%、厚さ0.4mm)を、10cm四方の面積で陽極酸化処理できるようカットした後、以下組成の電解研磨液を用いて、電圧25V、液温度65℃、液流速3.0m/minの条件で電解研磨処理を施した。
陰極はカーボン電極とし、電源は、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
・85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
上記で得られた電解研磨処理後の金属基板に、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で1時間陽極酸化処理を施した。更に陽極酸化処理後のサンプルに、0.5mol/Lリン酸の混合水溶液を用いて40℃の条件で25分間浸漬して脱膜処理を施した。
これらの処理をこの順に4回繰り返した後、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で10時間再陽極酸化処理を施し、更に、0.5mol/Lリン酸の混合水溶液を用いて40℃の条件で25分間浸漬させて脱膜処理を施すことにより、アルミニウム基板表面に、マイクロポアが直管状で且つハニカム状に配列された陽極酸化皮膜を形成させた。
陽極酸化皮膜(金属酸化物層)を形成させた後の表面写真(倍率10000倍)を図5に示す。
上記で得られた陽極酸化皮膜(金属酸化物層)の表面に対して、SANYU ELECTRON製のAuスパッタリング装置SC−708を用いて、アルゴンガス雰囲気下にて1400V、24mA条件で20分間スパッタリングを施し、導通性メッシュ層を形成し、微細構造体を得た。
導電性メッシュ層を形成させた後の表面写真および断面写真(いずれも倍率10000倍)を図6に示す。
ここで、平均開口径は、FE−SEMにより表面写真(倍率50000倍)を撮影し、50点測定した平均値として算出した。
ここで、平均深さは、上記で得られた微細構造体をマイクロポアの部分で厚さ方向に対してFIBで切削加工し、その断面をFE−SEMにより表面写真(倍率50000倍)を撮影し、10点測定した平均値として算出した。
ここで、密度は、図7に示すように、上記式(i)により定義される規則化度が50%以上となるように配列するマイクロポア(貫通孔)の単位格子51中に1/2個のマイクロポア(貫通孔)52があるとして、下記式により計算した。ここで、下記式中、Ppは周期を表す。
密度(個/μm2)=(1/2個)/{Pp(μm)×Pp(μm)×√3×(1/2)}
ここで、規則化度は、FE−SEMにより表面写真(倍率20000倍)を撮影し、2μm×2μmの視野で、マイクロポアについて上記式(i)により定義される規則化度を測定した。
ここで、電気抵抗率は、四端子法により、メッシュ層における一定距離間に一定電流値を流した時の電位差から測定し、10点測定した平均値を算出した。
ここで、厚さは、FE−SEMにより断面写真を撮影し、50点測定した平均値として算出した。
(1)金属基板の前処理工程(電解研磨処理)
実施例1と同様の金属基板に対して同様の前処理を施した。
上記で得られた電解研磨処理後の金属基板に、0.30mol/L硫酸の電解液で、電圧25V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で1時間陽極酸化処理を施した。更に陽極酸化処理後のサンプルに、0.5mol/Lリン酸の混合水溶液を用いて40℃の条件で20分間浸漬して脱膜処理を施した。
これらの処理をこの順に4回繰り返した後、0.30mol/L硫酸の電解液で、電圧25V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で5時間再陽極酸化処理を施し、更に、0.5mol/Lリン酸の混合水溶液を用いて40℃の条件で20分間浸漬させて脱膜処理を施すことにより、アルミニウム基板表面に、マイクロポアが直管状で且つハニカム状に配列された陽極酸化皮膜を形成させた。
なお、陽極酸化処理および再陽極酸化処理ならびに冷却装置等は、実施例1と同様のものを用いた。
上記で得られた陽極酸化皮膜(金属酸化物層)の表面に対して、実施例1と同様の方法で導通性メッシュ層を形成し、微細構造体を得た。
貫通孔の平均開孔径:15nm
貫通孔の密度:約4.5億個/mm2
導電性メッシュ層の電気抵抗率:2.2×10-6Ω・cm
導電性メッシュ層の厚さ:200nm
マイクロポアの平均開孔径:30nm
マイクロポアの平均深さ:90μm
マイクロポアのアスペクト比:3000
マイクロポアの密度:約4.5億個/mm2
マイクロポアの規則化度:90%
陽極酸化処理によるマイクロポア形成処理で使用する電解液を、0.30mol/Lリン酸の電解液とし、電圧を195Vとし、脱膜処理で使用するリン酸混合水溶液の濃度を1.0mol/Lとした以外は、実施例2と同様の方法により、微細構造体を得た。
貫通孔の平均開孔径:150nm
貫通孔の密度:約300万個/mm2
導電性メッシュ層の電気抵抗率:2.2×10-6Ω・cm
導電性メッシュ層の厚さ:200nm
マイクロポアの平均開孔径:20nm
マイクロポアの平均深さ:60μm
マイクロポアのアスペクト比:300
マイクロポアの密度:約300万個/mm2
マイクロポアの規則化度:80%
2 金属基板
3 金属酸化物層
4 導電性メッシュ層
5 貫通孔
6 マイクロポア
12、12a、12b、 アルミニウム基板
14、14a、14b、14c、14d 陽極酸化皮膜
16、16a、16b、16c、16d マイクロポア
20 異形部分
30 変曲点
51 マイクロポア(貫通孔)の単位格子
52 マイクロポア(貫通孔)
101、102、104、105、107、108 マイクロポア
103、106、109 円
Claims (11)
- 金属基板と、前記金属基板の表面に存在する金属酸化物層と、前記金属酸化物層の表面に存在する導電性メッシュ層とを有し、
前記導電性メッシュ層が、電気抵抗率が103Ω・cm以下の材料で形成され、平均開孔径が3〜1000nmであり、かつ、密度が1×106〜1×1010個/mm2の貫通孔を有する微細構造体。 - 前記導電性メッシュ層の膜厚が40nm以下である請求項1に記載の微細構造体。
- 前記金属酸化物層が、前記金属基板の表面を酸化させた酸化物である請求項1または2に記載の微細構造体。
- 前記金属酸化物層が、前記金属酸化物層の深さ方向にマイクロポアを有し、
前記マイクロポアの平均開孔径が5〜1000nmであり、かつ、密度が1×106〜1×1010個/mm2である請求項1〜3のいずれかに記載の微細構造体。 - 前記マイクロポアの平均深さが1〜500μmであり、前記マイクロポアのアスペクト比(平均深さ/平均開孔径)が8以上である請求項4に記載の微細構造体。
- 前記マイクロポアについて下記式(i)により定義される規則化度が50%以上である、請求項4または5に記載の微細構造体。
規則化度(%)=B/A×100 (i)
前記式(i)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。 - 前記金属基板が、バルブ金属基板である請求項1〜6のいずれかに記載の微細構造体。
- 前記金属基板が、アルミニウム基板である請求項7に記載の微細構造体。
- 電磁波遮蔽用途に用いる請求項1〜8のいずれかに記載の微細構造体。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の微細構造体を製造する微細構造体の製造方法であって、
前記金属基板上に前記金属酸化物層を形成する酸化物層形成工程と、
前記金属酸化物層の表面に前記導電性メッシュ層を形成し、微細構造体を得るメッシュ層形成工程とを有する微細構造体の製造方法。 - 前記酸化物層形成工程が、前記金属基板に陽極酸化処理を施して前記マイクロポアを有する前記金属酸化物層を形成する工程であり、
前記メッシュ層形成工程が、前記金属酸化物層に蒸着処理またはスパッタリング処理を施して、前記金属酸化物層の表面に前記導電性メッシュ層を形成する工程である請求項10に記載の微細構造体の製造方法。
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